説明

炊飯器

【課題】米の表面の余分な水分をなくす効果を有する炊飯器を提供する。
【解決手段】鍋11の調理物を加熱する加熱コイル16と、鍋11の調理物を保温するフランジヒータ18と、鍋11上面に蓋をする内蓋56と、内蓋56に備えた鍋11内の圧力を調整する調圧部58と、鍋11内を減圧する減圧ポンプ82とを備え、予約炊飯待機時に減圧ポンプ82を動作させて鍋11内を減圧して、減圧ポンプ82を一定時間動作させた後停止させて、そのとき調圧部58を閉じて鍋11内の減圧を一定時間保持した後、調圧部58を開き鍋11内に外気を送り込み鍋11内の水面を揺らす機能を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調圧手段を備えた炊飯器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の炊飯器には、鍋内の減圧を行う減圧手段を一つだけ取り付けており、この減圧手段一つを炊飯予約とひたしと保温の工程のみに動作させていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−29402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来技術では予約炊飯待機時における水と米は、炊飯開始まで鍋内で放置されるため、米が過吸水し米の表面がふやける問題があった。これは予約炊飯したご飯の食味を落とす原因のひとつである。
【0005】
従来は減圧手段を炊飯器に一つだけ取り付けていたため、炊飯における浸し工程で減圧させてある一定の真空値に達成するまでの時間が長かった。そのため減圧させても米の吸水が十分にできていなかった。また従来において減圧手段は一つで制御を行っていたため、減圧手段の寿命に制約されて、各工程で減圧手段の性能を十二分に使うことができなかった。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑み、本発明の第1の目的は、米の表面の余分な水分をなくす効果を有する炊飯器を提供することにある。
【0007】
また本発明の第2の目的は、従来以上に減圧効果を発揮させ、むらし工程や炊き上がり直後にも減圧手段を動作させて調理物の食味向上を図る炊飯器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の炊飯器では、本体と、前記本体内の圧力を調整する調圧手段と、前記本体内を減圧する減圧手段とを備え、前記減圧手段を動作させて前記本体内を減圧して、前記減圧手段を一定時間動作させた後停止させて、前記本体内の減圧を一定時間保持した後、前記調圧手段を動作させ前記本体内の被調理物を動かす機能を備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項2の炊飯器では、本体と、前記本体を覆う蓋と、前記蓋に備えた前記本体内の圧力を調整する調圧手段と、前記本体内を減圧する複数の減圧手段と、前記蓋の開きを検知する検知手段とを備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項3の炊飯器では、浸し工程時に、前記減圧手段を動作させ前記本体内を減圧させる機能を備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項4の炊飯器では、前記浸し工程時に、前記減圧手段を複数動作させることを特徴とする。
【0012】
請求項5の炊飯器では、むらし工程時に、前記減圧手段を動作させることを特徴とする。
【0013】
請求項6の炊飯器では、前記むらし工程時に、前記減圧手段を複数動作させることを特徴とする。
【0014】
請求項7の炊飯器では、炊き上がり後、所定時間内に前記蓋の開きがない場合に前記減圧手段を動作させることを特徴とする。
【0015】
請求項8の炊飯器では、減圧開始時の前記減圧手段の動作では、複数の前記減圧手段を同時に動作させることを特徴とする。
【0016】
請求項9の炊飯器では、前記減圧時の2回目以降の前記減圧手段の動作では、複数の前記減圧手段を交互に動作させることを特徴とする。
【0017】
請求項10の炊飯器では、予約炊飯待機時に、前記減圧手段を動作させることを特徴とする。
【0018】
請求項11の炊飯器では、前記予約炊飯待機時に、前記減圧手段を複数動作させることを特徴とする。
【0019】
請求項12の炊飯器では、前記予約炊飯待機時に、複数の前記減圧手段を同時に動作させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
請求項1の炊飯器によれば、予約炊飯大気中に減圧手段で鍋内を減圧しその後保持して設定時間後、鍋内の減圧状態を解除して、鍋11内に外気を送り込み鍋11内の水面を揺らす。
【0021】
請求項2の炊飯器によれば、減圧手段を複数備えたことにより、鍋内の減圧速度が速くなる。
【0022】
請求項3の炊飯器によれば、浸し工程における鍋内の減圧速度が速くなる。
【0023】
請求項4の炊飯器によれば、浸し工程における鍋内の減圧速度がさらに速くなる。
【0024】
請求項5の炊飯器によれば、むらし工程における、鍋内の余分な水蒸気と露を鍋外に排出する。
【0025】
請求項6の炊飯器によれば、むらし工程における、鍋内の余分な水蒸気と露を鍋外に排出する効果を向上させる。
【0026】
請求項7の炊飯器によれば、蓋の開きを検知する蓋開閉検知手段を用いて、炊き上がり後、設定した時間内に蓋が開かないことを検知した場合は、減圧手段を動作させて、鍋内の余分な水蒸気とご飯表面の水分を鍋の外に排出させる。
【0027】
請求項8の炊飯器によれば、保温開始時に減圧手段を複数動作させることにより、鍋内を大気圧以下にする。
【0028】
請求項9の炊飯器によれば、初回の減圧手段動作で鍋内は大気圧以下の所定値以下となるため、2回目以降は一つの減圧手段のみを動作させる。この一つの減圧手段の動作するときには、複数の減圧手段をそれぞれ交互に動作させるので、一つあたりの減圧手段の動作時間を低減させることができる。
【0029】
請求項10の炊飯器によれば、予約炊飯待機時に減圧手段を動作させることにより、鍋内の減圧速度が速くなる。
【0030】
請求項11の炊飯器によれば、予約炊飯待機時に減圧手段を複数動作させることにより、鍋内の減圧速度がさらに速くなる。
【0031】
請求項12の炊飯器によれば、予約炊飯待機時に減圧手段を複数同時に動作させることにより、鍋内の減圧速度をより一層速くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第1実施例における炊飯器の全体断面図である。
【図2】同上、蓋開ボタン周辺の構造を示す要部断面図である。
【図3】同上、炊飯器の平面図である。
【図4】同上、加圧時における調圧部およびその周辺の拡大断面図である。
【図5】同上、減圧時における調圧部およびその周辺の拡大断面図である。
【図6】同上、図2とは別な断面であらわした加圧時における要部の拡大断面図である。
【図7】同上、外蓋を外した状態の蓋体内部の斜視図である。
【図8】同上、クランプと、調圧用ソレノイドおよび開閉用ソレノイドの周辺の構造を示す斜視図である。
【図9】同上、調圧用ソレノイドとその周辺の構造を示す斜視図である。
【図10】同上、開閉用ソレノイドとその周辺の構造を示す斜視図である。
【図11】同上、開閉用ソレノイドの非通電時における要部の断面図である。
【図12】同上、図11に示す状態から、内蓋組立体を装着した場合の要部の断面図である。
【図13】同上、図12に示す状態から、内蓋に変形を生じたときの要部の断面図である。
【図14】同上、調圧部の斜視図である。
【図15】同上、調圧弁カバーに嵌合部材を組み込んだ状態の斜視図である。
【図16】同上、調圧弁カバー周りの斜視図である。
【図17】同上、調圧弁カバーに固定部を組み込んだ状態の斜視図である。
【図18】同上、安全弁カバーのヒンジ機構付近を示す正面図である。
【図19】同上、安全弁カバーの断面図である。
【図20】同上、内蓋付近の断面図である。
【図21】同上、電気的構成を示すブロック図である。
【図22】同上、鍋内の温度および圧力の推移と、各部の動作状態をあらわしたタイミングチャートである。
【図23】同上、鍋内の温度および圧力の推移と、各部の動作状態をあらわしたタイミングチャートである。
【図24】本発明の第2実施例における炊飯器の電気的構成を示すブロック図である。
【図25】同上、鍋内の温度および圧力の推移と、各部の動作状態をあらわしたタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明における炊飯器の好ましい実施例を説明する。
【0034】
まず図1に基づき、炊飯器の基本的な構成について説明する。同図において、炊飯器の外郭をなす本体1は、その上面と上側面を構成する上枠2と、側面を構成するほぼ筒状の外枠3とにより形成され、外枠3の下方にある底部開口を覆う底板4が設けられている。その際、上枠2や底板4は、PP(ポリプロピレン)などの合成樹脂で形成される一方で、外枠3は清掃性や外観品位を向上させるために、例えばステンレスなどの金属部材で形成される。また、上枠2の上面内周部から垂下され、この上枠2と一体化したPPなどの合成樹脂で形成されるほぼ筒状の鍋収容部6と、この鍋収容部6の下面開口を覆って設けられ、PET(ポリエチレンテレフタレート)などの合成樹脂で形成される内枠8とにより、後述する鍋11を収納する有底筒状で非磁性材料からなる鍋収容体9が形成される。
【0035】
前記鍋収容体9内には、米や水などの被炊飯物を収容する有底筒状の鍋11が着脱自在に収容される。鍋11は、熱伝導性のよいアルミニウムを主材料とした鍋本体12と、この鍋本体12の外面の側面下部から底面部にかけて接合されたフェライト系ステンレスなどの磁性金属板からなる発熱体13とにより構成される。鍋11の側面中央から上部に発熱体13を設けないのは、鍋11の軽量化を図るためである。また、鍋11の上端周囲には、その外周側に延出する円環状のフランジ部14が形成される。なお、鍋収容部6の外周には加熱手段を設けない構成となっている。
【0036】
前記内枠8の外面の発熱体13に対向する側面下部および底面部には、鍋11の特に底部を電磁誘導加熱する加熱手段としての加熱コイル16が設けられている。そして、この加熱コイル16に高周波電流を供給すると、加熱コイル16から発生する交番磁界によって発熱体13が発熱し、炊飯時と保温時に鍋11ひいては鍋11内の被炊飯物を加熱するようになっている。
【0037】
また、内枠8の底部中央部には、鍋11の底部外面と弾発的に接触するように、温度検出手段としてサーミスタ式の鍋温度センサ17が配置され、この鍋温度センサ17の検出温度に応じて加熱コイル16の加熱量を調節し、鍋11を一定温度に保持する構成になっている。
【0038】
前記鍋収容体9の上端には、鍋11の側面上部、特にフランジ部14を加熱するためのコードヒータ18が円環状に配置される。このコードヒータ18は電熱式ヒータからなり、鍋収容体9の上端に載置して取付けられた熱放散抑止部材としてのヒータリング19上に保持されると共に、コードヒータ18を上から覆うようにしてヒータリング19に取付けられ、かつ熱伝導性に優れた例えばアルミ板からなる固定金具と放熱部とを兼用する金属板20を備えて、フランジヒータを構成している。この金属板20は、炊飯器本体1と蓋体31との隙間に対向して位置している。そして、前記金属板20の上面に鍋11のフランジ部14の下面が載置し、これにより、鍋11が本体1の上枠2に吊られた状態で、鍋収容体9内に収容されるようになっている。したがって、鍋11とこの鍋11が収容された鍋収容体9の上端との間における隙間がほとんどない構成になる。しかも、鍋11のフランジ部14は、外形がコードヒータ18と同等以上の大きさに形成されており、これにより、コードヒータ18が鍋11のフランジ部14で上から覆われるようになっている。但し、図示していないが、鍋11の持ち手部(フランジ部14)は非接触にし、部分的に隙間を形成することで、鍋11の外面に水が付着した状態で炊飯したときに、当該隙間から蒸気が排出されるようにしてある。
【0039】
蓋体31は、その上面外殻をなす外観部品としての外蓋32と、蓋体31の内面である下面を形成し、ステンレスやアルミニウムをアルマイトした金属性の放熱板34と、外蓋32の下方に位置して前記鍋11の上方開口部を覆い、外蓋32および放熱板34を結合させる蓋ベース材としての外蓋カバー35とを主たる構成要素としている。また、前記蓋体31の内部にあって、放熱板34の上面には、蓋加熱手段としての蓋ヒータ36が設けられている。この蓋ヒータ36は、コードヒータなどの電熱式ヒータや、電磁誘導加熱式による加熱コイルでもよい。
【0040】
前記上枠2の後方には、蓋体31と連結するヒンジ部38が設けられる。このヒンジ部38には、正面から見て左右方向に一対の孔(図示せず)が設けられていると共に、ねじりコイルバネなどで形成したヒンジバネ40が、その内部に収納される。一方、外蓋カバー35の後方にも、前記ヒンジ部38に設けた孔と対向するようにヒンジ受部としての外蓋カバーヒンジ孔(図示せず)が設けられる。そして、このヒンジ孔とヒンジ部38の孔に共通して、棒状のヒンジシャフト41を挿通することで、本体1と蓋体31がヒンジシャフト41を支点として開閉自在に軸支される。さらに、前記ヒンジバネ40の一端と他端が、外蓋カバー35と外枠2にそれぞれ引掛けられることで、蓋体31は常時開方向に付勢されている。
【0041】
蓋体31の前方上面には、蓋開ボタン46が露出状態で配設されており、この蓋開ボタン46を押すと、蓋体31と本体1との係合が解除され、ヒンジバネ40によって蓋体31が自動的に開く構成となっている。
【0042】
ここで、図2の断面図に基づいて、蓋開ボタン46周辺の構成をさらに詳しく説明すると、蓋体31には係止手段に相当するクランプ44が配置される。このクランプ44は、蓋体31の内部に設けた軸としてのクランプシャフト45を中心として、外蓋カバー35に対し回転自在に軸支される。蓋開閉手段に相当する蓋開ボタン46は、使用者が操作できるように蓋体31の前方上面から露出状態に配設される。蓋体31の内部には、クランプ44の基端部44Aを蓋開ボタン46側に付勢するバネなどのクランプ付勢手段(図示せず)が設けられ、これにより蓋開ボタン46を常時上方に押し上げる力が作用するようになっている。
【0043】
クランプ44は、蓋開ボタン46に当接する基端部44Aの他に、外蓋カバー35の下面にあるクランプ用孔48から下方に突出する垂下部44Bと、クランプ44の実質的な先端部に相当し、垂下部44Bの下端を起点として、そこから本体1の内方に延出する係合部44Cとにより構成される。クランプ44はステンレスなどの金属部品で形成し、係合部44Cは略L字状とする。そうすることで、クランプ44を合成樹脂で構成する場合と比べ、強度の強いクランプ受け50との係合を得られる。また、蓋体31の中央から左右の略均等位置に係合部44Cを設ける。これらの垂下部44Bや係合部44Cは、クランプ44の下側にあって左右一対に設けられる。クランプ44の回転中心となるクランプシャフト45は、垂下部44Bの上端に沿うように配置され、係合部44Cは本体1の略前後方向に遥動する。
【0044】
一方、上枠2に設けたヒンジ部38の略反対側に位置して、該上枠2の前方には受け手段に相当するクランプ受け50が配設されており、蓋体31を本体1側に閉じようとすると、クランプ付勢手段の付勢力により、クランプ44がクランプシャフト45を中心軸として回転し、当該クランプ受け50に係合することで、蓋体31を本体1に対し閉状態に保持するようになっている。クランプ受け50はステンレスなどの金属部品で形成する。そうすることで、クランプ受け50を合成樹脂で構成する場合と比べ、強度の強いクランプ44との係合を得られる。反対に蓋体31を開く場合には、蓋開ボタン46を押動操作し、クランプ44の基端部を下方に押下げてクランプ44を逆方向に回転させ、係合部44Cを本体1の前方に変位させて、クランプ44とクランプ受け50との係合を解除する。上枠2のクランプ受け下方部は、クランプ44がクランプシャフト45を軸として回転動作する際に、ぶつからない深さを有することが必要である。また、クランプ44とクランプ受け50下方部の隙間は、通常時のクランプ44とクランプ受け50の係合量よりも大となる寸法関係としておく。更に、外蓋カバー35と上枠2の隙間よりも大となる寸法関係としておく。
【0045】
なお、ここでは蓋体31側にある可動するクランプ44を係止手段といい、本体1側にある固定したクランプ受け50を受け手段としているが、蓋体31に固定した係止手段を設け、本体1に可動する受け手段を設けてもよい。
【0046】
55は、放熱板34の外側すなわち下側に設けられる内蓋組立体である。この内蓋組立体55は、鍋11の上方開口部とほぼ同径の円盤状を有し、ステンレスやアルミニウムをアルマイトした金属性の内蓋56と、鍋11と内蓋56との隙間を塞ぐために、当該内蓋56の外側全周に設けられ、シリコーンゴムやフッ素ゴムなどの弾性部材からなる蓋パッキン57と、鍋11の内圧力を調整する調圧部58とを備えている。そして、内蓋56と蓋パッキン57はパッキンベース59で一体化され、これにより外蓋カバー35内面に内蓋組立体55が着脱可能に設けられる。また、環状に形成された蓋パッキン57は、蓋体31を閉じた時(蓋閉時)に、鍋11のフランジ部14上面に当接して、この鍋11と内蓋56との間の隙間を塞ぎ、鍋11から発生する蒸気を密閉するものである。
【0047】
再度図1に戻って説明すると、前記放熱板34には、蓋体31に装着される内蓋56の温度を検知する蓋温度検知手段として、蓋ヒータ36による内蓋56の温度管理を行なうためのサーミスタ式の蓋温度センサ61が設けられる。また、蓋体31の上面後方寄り部には、蓋体31の上面側から着脱可能な蒸気口146が設けられる。
【0048】
前記内蓋56は、何れも鍋11の内部と連通する複数の孔すなわち連通孔77,181を備えている。また、これらの連通孔77,181を開閉する開閉手段として、調圧部58と開閉弁62がそれぞれ別個に設けられる。調圧部58および開閉弁62は、内蓋56を外蓋カバー35の下側に取付けたときに、何れも蒸気口146の入口側に臨んで設けられ、当該蒸気口146と蓋体31の内部で連通する。そして、これらの調圧部58や開閉弁62が連通孔77,181を開放または閉止することで、鍋11内の圧力を調節するようになっている。
【0049】
ここで、図4〜図6を参照しながら、連通孔77を開閉する調圧部58の構成をより詳しく説明する。調圧手段たる前記調圧部58は、調圧用の調圧弁65と、調圧弁65を保持する調圧弁ホルダー組立体66と、調圧弁65を覆うドーム状の調圧弁カバー67とを備えて構成される。調圧弁65は耐食性に優れた材料で、ある程度の重量を有する部品であればよく、例えばオーステナイト系のステンレス球で形成される。
【0050】
調圧弁ホルダー組立体66は、第1ホルダー68と、第2ホルダー69と、減圧支持部材に相当する第1調圧パッキン71と、第2調圧パッキン72と、鍋11内からの圧力が第1調圧パッキン71に直接加わらないように、この第1調圧パッキン71の下方にあって、加圧支持部材に相当する弁支持体73と、第1調圧パッキン71の下面に弁支持体73が当接する方向に、当該弁支持体73を付勢する弾性体としての調圧バネ74と、により構成される。弁支持体73には、鍋11内の加圧時にボール状の調圧弁65の下方に当接する調圧孔70が設けられる。この調圧孔70は、鍋11と蓋体31外部とを連通させる為のもので、鍋11内の蒸気が調圧孔70を通過すると、蒸気口146から外気へ放出されるようになっている。また、第1ホルダー68と第2ホルダー69には、互いを嵌合する為の凸状の係合部75と凹状の被係合部76がそれぞれ設けられている。これらの第1ホルダー68と第2ホルダー69は、前記第1調圧パッキン71や弁支持体73などを保持する保持部材として、内蓋56に設けた連通孔77に装着される。第1ホルダー68は全体がキャップ状に形成され、その中央部に貫通孔68Aを有し、貫通孔68Aの周辺部68Bと第2ホルダー69の上端部69Aとにより、第1調圧パッキン71の基部を挟持するようになっている。また、第2ホルダー69は筒状で、その下側には内蓋56の連通孔77周辺の下面に当接するフランジ69Bが形成されると共に、フランジ69Bの上方外周には、リング状の前記第2調圧パッキン72を嵌合させる凹溝69Cが形成される。さらに、第2ホルダー69の内周側には、調圧バネ74の一端部を嵌め込むために、断面L字状の突片69dが形成される。
【0051】
調圧弁ホルダー組立体66の組立に際しては、まず第2ホルダー69の凹溝69Cに調圧パッキン72を嵌め込んだものを、内蓋56に設けた連通孔77に差込み、第2ホルダー69の内周側で調圧バネ74を挟むようにして、弁支持体73を第2ホルダー69の上方から挿入する。次に、弁支持体73および第2ホルダー69の上端部69Aを覆うようにして、第1調圧パッキン71を弁支持体73に載置し、その状態から更に第1調圧パッキン71を挟む様にして、第1ホルダー68を上方から被せ、係合部75と被係合部76とを互いに嵌合させて、第2ホルダー69に第1ホルダー68を取付ける。そして、図4や図5に示すように、調圧弁ホルダー組立体66を組立てた状態では、鍋11内部に第2ホルダー69の内側面と弁支持体73の下面が直接対向し、これらの第2ホルダー69や弁支持体73の上側に配置された第1調圧パッキン71は、鍋11内から直接圧力を受けずに済む構造になっている。
【0052】
この様に組立てた調圧弁ホルダー組立66で調圧弁65を保持し、上方から調圧弁カバー67を被せることで調圧部58を構成する。この時、調圧弁ホルダー組立66と調圧弁カバー67との取付けは爪嵌合でも良いし、ネジやリベットなどの止着部材を利用して止めてもよい。調圧弁カバー67は、調圧弁65の移動範囲を規制するためのもので、調圧孔70から放出する蒸気を蒸気口146に導く複数の孔(図示せず)が設けられている。また内蓋56は、調圧弁ホルダー組立66と調圧弁カバー67とで峡持されるので、内蓋56の連通孔77は露出しない。
【0053】
弁支持体73の調圧孔70の開口面積は、弁支持体73の下側に形成した脚部79の内側の、鍋11内から直接圧力を受ける面80の面積より小さくなっている。また、調圧弁65は調圧孔70を塞ぐように保持される。よって、調圧孔70の開口面積と調圧弁65との重量により、鍋11内の圧力を調整することができる。
【0054】
調圧弁65を動かして蓋体31の密閉度即ち鍋11の内圧を調節する動作源として、蓋体31内の外蓋カバー35には、調圧部58内にある調圧弁65を動かすソレノイド78が設けられる。ソレノイド78の非通電状態では、その先端部を進出位置に保持し、調圧弁65を調圧孔70から退避する一方、ソレノイド78の通電状態では、その先端部を退避させ、調圧弁65を調圧孔70に自重で転動させ、調圧孔70を塞いで鍋11内に圧力を投入する。
【0055】
第1調圧パッキン71および第2調圧パッキン72は、何れもシリコーンゴム等の弾性部材で構成する。これにより、特に図5に示す鍋11内の減圧時には、第1調圧パッキン71の弾性変形により、調圧弁65が当該第1調圧パッキン71に密着し、第1調圧パッキン71における開口部すなわち孔71Aのシール性が向上する。
【0056】
ここで、上記図1〜図6の他に、図7〜図9をもさらに参照しながら、前記調圧部58の操作手段について説明する。蓋体31の内部には、電磁力により内部からプランジャー151を出没させて、調圧部58内にある調圧弁65を動かす調圧用ソレノイド78が設けられる。また、外蓋カバー35に向けてプランジャー151と共に可動する調圧フレーム152や、蓋体31内部を水密状態に保持する可撓性の調圧パッキン153も、同様に蓋体31内の外蓋カバー35に設けられる。調圧パッキン153は、調圧部58に臨んで外蓋カバー35に設けた取付け孔の周縁に嵌合する凹字状の取付部153Aが形成される。そして、図6にも示すように、これらの調圧用ソレノイド78や調圧フレーム152は、外蓋カバー35により蓋体31内に形成された調圧収容部154に収容配置される。
【0057】
調圧フレーム152は、図7〜図9に示すように、調圧弁65に向けて突出した調圧弁操作手段としての調圧操作部161と、調圧用ソレノイド78を囲うようにして設けたフレーム部162と、調圧操作部161の略反対側に設けられた規制手段としてのクランプ動作規制部163とを備えて構成される。ソレノイド78のプランジャー151ひいては調圧フレーム152は、鍋11内を非加圧状態とするために、調圧弁65を押すように常時位置している。このときの調圧フレーム152の位置を、第1フレーム位置とする。特に調圧弁65を操作する調圧フレーム152の部分を、前記調圧操作部161としている。こうすることで、蓋体31を開けようとする場合には、鍋11内を外気と連通させ、負圧の影響を受けずにスムーズな蓋開動作を得ることができる。
【0058】
上記連通孔77に対向する調圧部58とは別に、別な連通孔181に対向して、当該連通孔181を開閉する開閉弁62が内蓋56の上面側に設けられる。当該開閉弁62は、図11〜図13に示すように、上下動可能な開閉弁シャフト201と、シャフト押え202と、弾性体であるコイルスプリングからなるシャフトバネ203と、開閉弁シャフト201の下部に装着するシャフトパッキン204とを備えて構成される。シャフト押え202は筒状で、下端が内蓋56の連通孔181周囲に当接する一方で、上端から開閉弁シャフト201が挿通するようになっている。シャフトバネ203は、開閉弁シャフト201の外周に形成したフランジ201Aと前記シャフト押え202の上端とに間に設けられ、シャフトパッキン204が連通孔181から離れる方向に、開閉弁シャフト201を常時付勢する。このように、シャフトパッキン204を含む開閉シャフト201は、シャフトバネ203により連通孔181を開放する方向に常時付勢されているが、これは内蓋56の上部に溜まったオネバを、連通孔181から鍋11内に戻すことと、蓋体31を閉じる時に、鍋11内から連通孔181を通して外気に空気を抜け易くし、蓋閉時に掛かる力を低減させるためである。さらに、連通孔181に臨んで設けたシャフトパッキン204は、開閉弁シャフト201が下方に移動したときに連通孔181を確実に塞ぐように、柔軟性を有する材料で形成される。
【0059】
205は、前記開閉弁シャフト201やシャフトバネ203の外周を覆い、シャフト押え202の上部に被着される筒状の開閉弁カバーである。この開閉弁カバー205は、前記調圧弁カバー67に取付けてもよいし、調圧弁カバー67とは別個に設けて取付けてもよい。
【0060】
開閉弁62の上部に位置して、外蓋カバー35には操作手段としての開閉弁操作手段211が取付けられる。開閉弁操作手段211は、開閉弁62を操作するための操作部材212としての第1開閉シャフト212Aおよび第2開閉シャフト212Bと、操作部材212を上下に動作させるフレーム部材である開閉フレーム175と、前記第1開閉シャフト212Aと第2開閉シャフト212Bとの間にあって、コイルスプリングからなる弾性部材215と、外蓋カバー35の孔部216を塞ぐ可撓性のシール部材217と、シール部材217の上部に取付けられるキャップ218と、により構成される。シール部材217は、その外周部に蓋体31の内部をシールするシール部221が形成される一方で、中心部には前記操作部材212を覆う有底筒状の操作部222が設けられ、この操作部222が前記開閉弁シャフト201の上端面に当接するようになっている。ここでのシール部221は、断面がコ字状で、外蓋カバー35の孔部216周縁に装着されるようになっており、さらにこの孔部216の周縁とキャップ218の外周部との間に挟持される。また、シール部221と操作部222との間には、これらのシール部221や操作部222よりも肉薄で、柔軟性に富む繋ぎ部223で連結される。この繋ぎ部223は断面が湾曲した形状に形成されるが、操作部222が操作部材212に連動して、開閉弁シャフト201と同じ上下方向に可動する形状であれば、湾曲以外の形状であってもよい。
【0061】
前記キャップ218に挿通する操作部材212と、シール部材217の操作部222との間には、弾性部材215が装着される。また、操作部材212の上方には、前記開閉フレーム175の操作部材可動部188が貫通し当接する孔213が設けられる。
【0062】
有底筒状をなす第1開閉シャフト212Aの上部外周には、円環状の溝241が形成される一方で、第2開閉シャフト212Bの下部内周に形成され、前記溝241に爪242を嵌合させつつ、弾性部材215を介在した状態で、第1開閉シャフト212Aの上部に第2開閉シャフト212Bが上下動可能に装着される。ここで、溝241に一定の幅を持たせることにより、第2開閉シャフト212Bに対する第1開閉シャフト212Aの移動範囲が、溝241の幅で規制されるようになっており、これにより操作部材212は、弾性部材215の所定の取付け位置に設けられる。つまり、ここでの溝241と爪242は、弾性部材215間の弾性力や寸法のばらつきに依存せず、上下方向に可変可能な操作部材212の全長の上限と下限を、一律に規制する規制手段として設けられている。
【0063】
ここで開閉フレーム175とその周辺の構成を、前述した図7および図8や、図10に基づき説明すると、外蓋カバー35により蓋体31内に形成された調圧収容部154とは別の開閉収容部171に、開閉用ソレノイド172が配置される。この開閉用ソレノイド172も、前記調圧用ソレノイド78と同様に、電磁力により内部からプランジャー173を出没させる構成となっている。そして、前記開閉フレーム175は、開閉用ソレノイド172と共に開閉収容部171に収容配置され、プランジャー173と共に可動するようになっている。このように、開閉弁操作手段211を構成する開閉フレーム175が、好ましくはソレノイドである開閉用ソレノイド172を駆動源として動作することで、炊飯行程において確実に開閉フレーム175を移動させることが可能になる。また同様に、調圧フレーム152が、好ましくはソレノイドである調圧用ソレノイド78を駆動源として動作することで、炊飯行程において確実に調圧フレーム152を移動させることが可能になる。
【0064】
前記操作部材可動部188は、操作部材212と開閉用ソレノイド172のプランジャー173との間にあって、開閉フレーム175の後方に一体化して腕片状に形成される。また、この開閉フレーム175の前方には、操作部材可動部188の略反対側に位置して、規制手段としての突出したクランプ動作規制部189が設けられる。この操作部材可動部188は、その中央部188Aと先端部188Bで高低差を有する形状となっており、さらに操作部材212に設けた孔213に貫通した状態でセットされる。つまり、ここでの操作部材可動部188は、操作部材212との当接部にカム面188Cを形成しており、プランジャー173ひいてはこれに連動する操作部材可動部188が出没するのに伴い、操作部材212が接するカム面188Cの位置が変わることで、開閉用シャフト186ひいては開閉弁182が上下動するようになっている。
【0065】
251は、内蓋組立体55の内蓋56に設けられる安全弁である。この安全弁251Aは、鍋11内の圧力が何らかの要因で設定値以上である異常圧力に昇圧すると開弁して、鍋11の内圧を下げるものである。この安全弁251は、内蓋56に形成した孔252の周辺に設けられ、この孔252の下側から取付けられるベース部材253と、孔252の上側から取付けられるドーム状の安全弁カバー254と、安全弁カバー254内に設けられる開閉保持手段255と、孔252の内面とベース部材253との間を水密に封止する環状パッキン256とにより構成される。この中で、開閉保持手段255は、安全弁側カバー部材254内に上下動自在に設けられる弁体としての開閉手段257と、安全弁側カバー部材254および開閉手段257の間に介在する付勢手段としてのコイルスプリング258とを備えている。ベース部材253には、内蓋56の孔252ひいては安全弁251の内部から蒸気口146に連通する開放部259が開口形成されていると共に、開閉手段257の先端に設けられた弾性部材260が開放部259を常時塞ぐように、開閉保持手段255を構成するコイルスプリング258が、開閉手段257を一方向に付勢するようになっている。
【0066】
図14および図15に示すように、調圧部58の調圧弁カバー67を内蓋56に係合させるための嵌合部材261が付加される。嵌合部材261は弾性を有する線状体からなり、調圧弁カバー67の側部に形成した環状溝部67Aに嵌合する耐食性を有する金属製のリング状の固定部262と、この固定部262の両端から屈曲して形成され、調圧弁カバー67の挿通孔67Bに挿通される引掛け部263とにより構成される。また調圧弁カバー67には、嵌合部材261を装着したときに容易に弾性変形して、第1ホルダー68に係合し易いように、切れ目部となるスリット67Cが形成される。スリット67Cの形状などは特に限定されるものではなく、調圧弁カバー67自体が比較的弾性に富む材料ならば、スリット67Cを設けなくてもよい。さらに、302はフィルター押えである。
【0067】
ここでは、予め内蓋56に装着された調圧弁ホルダー組立体66上に調圧弁65を保持した状態で、上方から調圧弁カバー67を被せた後に、嵌合部材261を調圧弁カバー67に取付ける。嵌合部材261の固定部262を調圧弁カバー67の環状溝部67Aに嵌合させながら、引掛け部263を調圧弁カバー67の挿通孔67Bに差し込むと、嵌合部材261の弾性力が作用して、調圧弁カバー67が調圧弁ホルダー組立体66を締め付ける方向に弾性変形し、調圧弁カバー67を調圧弁ホルダー組立体66、ひいては内蓋56に係合させることができる。また、内蓋組立体61の細部を清掃する場合には、嵌合部材261を調圧弁カバー67から取外すだけで、調圧弁カバー67に対する弾性力が作用しなくなって、調圧弁カバー67を調圧弁ホルダー組立体66から簡単に外すことが可能になる。したがって、この場合は調圧弁カバー67や、調圧弁65や、調圧弁ホルダー組立体66などを、個々に清掃することができる。
【0068】
このように、本例では、鍋11を備えた本体1と、本体1を覆う蓋体21と、蓋体21に着脱可能な内蓋56と、本体1内の圧力を調整する圧力調整手段たる調圧部58とを備えた炊飯器において、調圧部58を内蓋56に係合させる嵌合部材261を設けると共に、この嵌合部材261は、調圧部58を固定するための固定部262と、調圧部58の調圧弁カバー67に着脱自在に係合される引掛け部263とを形成している。この場合、調圧部58とは別の嵌合部材261を利用して、調圧部58を内蓋56に係合させることができるので、調圧部58と内蓋56との係合状態を損ねることなく、安定した状態で調圧部58を内蓋56に組み込むことができる。また引掛け部263を調圧弁カバー67に取付けまたは取外すだけで、調圧部58と内蓋56とを簡単に着脱することができ、組立て作業が容易になるだけでなく、ユーザが清掃しやすい炊飯器を提供できる。
【0069】
また、本例における嵌合部材261が弾性部材よりなるので、嵌合部材261が持つ弾性力を利用して、調圧部58を内蓋56に係合したままの状態にすることができる。
【0070】
また、ここでの調圧部58は、調圧弁65と、少なくともこの調圧弁65の保持部材である調圧弁ホルダー組立体66またはカバー部材としての調圧弁カバー67とにより構成され、調圧弁カバー67を固定部262で固定する構成となっている。このように、調圧部58の調圧弁カバー67を嵌合部材261の固定部262が固定する構造になっていると、調圧弁カバー67に例えば切れ目部であるスリット67Cを入れて若干の弾性を持たせることにより、従来の圧入による係合をやめて、ダメージを受けることなく調圧部58の調圧弁カバー67と内蓋56とを簡単に着脱することができる。
【0071】
図16乃至図19に示すように調圧弁カバー67は、開閉弁カバー205及び安全弁カバー254と一体的に取り付けたもの又は一体成型されたものであり、ベース部材253の外周面に備えた凹溝300に係合可能な3つの係合爪片262A,262B,262Cを安全弁カバー254の内周面の3箇所に均等に備え、その内の調圧弁側の係合爪片262Cは、係合爪片262Cの左右両側に形成された切れ目部としての一対のスリット301,301によって、上側を除く左右下側を安全弁カバー254に自由端として形成されており、そのため調圧弁側の係合爪片262Cを安全弁カバー254と接続されている上側を軸として、安全弁カバー254の径方向に揺動自在とするヒンジ構造Hを有している。この調圧弁側の係合爪片262Cの外周には、安全弁カバー254の内側から外側へと、調圧弁カバー67へ向けて突設された突設部264を備えており、この突設部264には、安全弁カバー254の内側から外側に向けて上から下へと傾斜して形成された傾斜面265を備えており、この傾斜面265と連続する突設部264の外端部の上面266は、水平に形成されたものとする。ここで、突設部264の外端部の上面266は、環状溝部67Aに嵌合された状態での固定部262と当接可能に備えたものである。
【0072】
ここでは、凹溝300に3つの係合爪片262A,262B,262Cをそれぞれ係止させて、安全弁カバー254をベース部材253に取り付ける際に、3つの係合爪部262A,262B,262Cのうちの剛体として強度をもたせた係合爪部262A,262Bに対して、調圧弁側の係合爪片262Cに左右両側に形成された一対のスリット301,301によるヒンジ構造Hを有したことにより、取り付け際の挿入時に、調圧弁側の係合爪片262Cは、そのヒンジ構造Hによりその下部がベース部材253の外周面に沿って外側へ開く方向に弾性変形するため、容易に調圧弁側の係合爪片262Cのみならず、他の剛体としての係合爪部262A,262Bも容易にベース部材253、ひいては内蓋56に係合させることができる。その後、嵌合部材261の固定部262を調圧弁カバー67の環状溝部67Aに嵌合させる際に、この固定部262が環状溝部67Aを係止爪片262Cの傾斜面に沿って移動して、係止爪片262Cの外端部分の上面266に当接すると、前述の調圧弁側の係合爪片262Cの外側へ開く方向への弾性変形が規制され、3つの係合爪片262A,262B,262Cと凹溝300との係合状態が固定される。調圧弁側の係合爪片262Cに一対のスリット301,301によるヒンジ構造Hを備えたことにより、ベース部材253への係合による取り付け時の3つの係合爪片262A,262B,262Cへの負担を最小限にし、取り付け時の破損を防ぐことができる。また、調圧弁カバー67を調圧弁ホルダー組立体66に固定する固定部262で、安全弁カバー254をベース部材253に固定するため、部品を増やさずにできる。
【0073】
また、調圧弁カバー67を調圧弁ホルダー組立体66に固定する固定部262を外すことにより、調圧弁側の係合爪片262Cの外側へ開く方向への弾性変形の規制が解除され、安全弁カバーを容易にベース部材253から取り外すことができる。このように安全弁カバー67を容易に外すことができるため、交換時の部品破損を防ぐことができる。
【0074】
図20に示すように、ベース部材253の周縁上部に設けた階段状の第1段差部267と、第1段差部に対応して調圧弁ホルダー組立体66の周縁下部に設けた階段状の第2段差部268からなり、第1段差部267の上から第2段差部268を重ねて係合可能に構成されたベース部材253と調圧弁ホルダー組立体66とを連結する連結手段269を構成している。
【0075】
ここでは、連結手段により調圧弁ホルダー組立体66をベース部材253の上に重なる構造としたことにより、調圧弁カバー67又は調圧弁ホルダー組立体66、或いはその両方の不具合により調圧弁カバー67の取り付け部が破損した場合でも、連結手段によってベース部材253が調圧弁ホルダー組立体66を下から保持されることにより、調圧弁ホルダー組立体66の内蓋56からの脱落を防ぐことができる。このように調圧弁カバー67との取り付け部とベース部材253との連結手段269によって、調圧弁ホルダー組立体66の内蓋56からの脱落防止を2重に行うことができる。
【0076】
そして、内蓋組立体55を外蓋カバー35の下面に取付けると、シャフトバネ203によって上方に押し上げられた開閉弁シャフト201の上端面は、シール部材217の操作部222に当接する。このとき、開閉用ソレノイド172は非通電状態にあり、操作部材212の孔213には操作部材可動部188の中央部188Aが位置しているので、弾性部材215が撓んで操作部材212の第1開閉シャフト212Aが上方に押し上げられる。よって、シャフトパッキン204は連通孔181から離れて、当該連通孔181は開放された状態を保持する。つまり図11に示すように、通常時における開閉用ソレノイド172の非通電状態では、操作部材可動部188の中央部188Aに操作部材212が当接し、操作部材212の第1開閉シャフト212Aや開閉弁62の開閉弁シャフト201が上方に位置するので、内蓋56に形成した連通孔181は開放されたままの状態となる。
【0077】
逆に図12に示すように、炊飯の所定の行程が開始して、開閉用ソレノイド172が通電状態になると、開閉フレーム175が動作して、操作部材212の孔213内で操作部材可動部188が後退して貫通移動し、操作部材212は操作部材可動部188の先端部188Bに当接して保持される。前述のように、操作部材可動部188の中央部188Aと先端部188Bでは高低差を有しており、且つ先端部188Bは中央部188Aよりも操作部材212が当接するカム面188Cが下方に位置している。そのため、溝241と爪242との嵌合により操作部材212が一定範囲での全長を保ちながら、操作部材212およびシール部材217の操作部222は下方に移動し、内蓋組立体55に設けた開閉弁シャフト201が、シール部材217の操作部222によって下方に押し込まれることで、この開閉弁シャフト201の先端に取付けたシャフトパッキン204が連通孔181を閉止する。このとき、シャフトパッキン204が連通孔181を確実に閉塞するために、シール部材217の操作部222が開閉弁シャフト201を下方に押し込む力は、シャフトバネ203が開閉弁シャフト201を上方に付勢する力よりも大きくなるようにする。また本実施例では、開閉フレーム175の操作部材可動部188が開閉弁シャフト201を押す際のストローク(移動距離)が、溝241と爪242との嵌合により一定の範囲に規定されるため、シャフトパッキン204が連通孔181を安定して閉塞することができる。
【0078】
先に説明したように、調圧用ソレノイド78の周辺において、調圧フレーム152の後方には、調圧弁65を動かすための調圧操作部161が設けられる一方で、調圧フレーム152の前方には、突出したクランプ動作規制部163が設けられる。これと同様に、開閉用ソレノイド172の周辺において、開閉フレーム175の後方には、カム面188Cを有する操作部材可動部188が設けられ、開閉フレーム175の前方には、突出したクランプ動作規制部189が設けられる。そして、炊飯を開始し、加圧する所定の行程に移行するなどして、調圧用ソレノイド78のプランジャー151が第2のフレーム位置である後退位置に移動すると、クランプ44がクランプ受け50から係合解除する方向に動くのを規制するために、クランプ動作規制部163がクランプ44の基端部44Aの下方に潜り込むように配置されると共に、開閉用ソレノイド172のプランジャー173が同様に第2のフレーム位置である後退位置に移動すると、クランプ動作規制部189がクランプ44の基端部44Aの下方に潜り込むように配置される。このとき、蓋開ボタン46によりクランプ44を押し込もうとしても、クランプ44はその動きを規制されて、クランプ受け50との係合を解除できない。
【0079】
逆に、調圧用ソレノイド78のプランジャー151が、第1のフレーム位置である進出位置にあるときには、クランプ動作規制部163がクランプ44の基端部44Aから離れると共に、開閉用ソレノイド172のプランジャー173が、同様に第1のフレーム位置である進出位置にあるときにも、クランプ動作規制部189がクランプ44の基端部44Aから離れる。つまり、クランプ44の基端部44Aの下方に、クランプ動作規制部163とクランプ動作規制部189の両方またはどちらか一方が位置するときには、クランプ44の動作が規制され、クランプ44がクランプ受け50から係合解除できなくなるが、クランプ動作規制部163とクランプ動作規制部189の両方が、クランプ44の基端部44Aの下方から離れると、クランプ44の動作は規制されなくなり、蓋開ボタン46を押動操作すると、クランプ44がクランプ受け50から離脱して、蓋体31が開くようになっている。なお、クランプ動作規制部163,189は、クランプ44の基端部44Aの下方に潜り込まなくても、クランプ44の動作を規制する位置や形状を有していれば、どのようなものでも構わない。
【0080】
また別な例として、外蓋カバー35内における調圧フレーム152の可動部下方に、図示しない圧力検出手段を配置し、弾性部材である例えばバネによって、圧力検出弁を下方へ付勢するように構成してもよい。この場合、圧力検出弁の上部がクランプ動作規制手段を押し上げるように構成する。また、圧力検出弁とクランプ動作規制手段との間には、鍋11内部の圧力状態に応じた圧力検出弁の上下動に合わせて、クランプ動作規制手段を上下動させるパッキンを設ける。圧力検出弁は例えばカバーとホルダーで保持されるようにし、圧力検出弁の下方とカバーとの間に備えた前記ばねにより、当該圧力検出弁が常時下方に付勢される。また、これらの圧力検出ユニットと内蓋56との間をシールするパッキンを設けるのが好ましい。
【0081】
そしてこの例では、鍋11の内圧が所定値に到達すると、圧力検出弁は上方に移動する。これは圧力検出弁の下方で鍋11からの圧力を直接受ける面積と内圧力の割合が、ばねの付勢力よりも高くなったときに生じる。ばねの付勢力に抗して圧力検出弁が上部に移動すると、クランプ動作規制手段も上方へ移動する。上方へ移動突出したクランプ動作規制手段は、フレームの動作を妨げる位置、すなわち前記第2のフレーム位置から第1のフレーム位置への復帰を防止する第3のフレーム位置となる。この時、調圧弁58は調圧孔70を開放したまま、フレーム152がクランプ44の基端部44Aの下方に潜り込むように配置される。
【0082】
81は、蓋体31を本体1に閉じた状態で、鍋11内を通常の大気圧よりも低くするために設けた減圧手段である。この減圧手段81は、減圧駆動源としての減圧ポンプ82と、この減圧ポンプ82から本体1および蓋体31を経て、内蓋56に設けた孔83に至る管状の経路84とにより構成される。また、蓋体31の内部には、経路84の基端部を開閉する開閉体としての電磁弁87と、この電磁弁87を収容する弁収容体88が設けられる。弁収容体88には、前記内蓋56の孔83の周囲に向けて放熱板34から下方に突出した筒状の減圧パッキン89が接続される。ここでの内蓋56の孔83は、真空引き用の真空連通孔として設けられており、電磁弁87は孔83と減圧ポンプ82との間に設けられる。また経路84は、例えばゴムチューブなどの管で形成され、減圧ポンプ82と電磁弁87との間を連結する。なお、図1では減圧ポンプ82が本体1の後部に設けられているが、これは図7に示すように、蓋体31の後部に設けてもよい。
【0083】
そして、内蓋56を含む内蓋組立体55を蓋体31の下面に装着すると、減圧パッキン89が弾性変形しながら内蓋56の上面に密閉当接し、これにより孔83と減圧ポンプ82とを連通する経路84が形成される。また、内蓋組立体55を装着した状態で蓋体31を閉じると、蓋パッキン57が鍋11に密着して、連通孔77,181が閉塞状態にあれば、密閉した鍋11と電磁ポンプ82との間が経路84により連通する。この状態から減圧ポンプ82を起動させると、電磁弁87ひいては経路84が開放して、鍋11内の空気が経路84および減圧ポンプ82を通って本体1の外部に排出され、密閉した鍋11内の圧力が低下する。また、鍋11内の圧力が大気圧よりも一定値下がった場合に、電磁弁87ひいては経路84を閉塞して、鍋11内を減圧状態に保っている。さらに、スローリークにより鍋11内の圧力が上昇した場合にも、電磁弁87ひいては経路84を開放し、減圧ポンプ82を起動させて、鍋11内を大気圧よりも低い状態に維持している。
【0084】
この様な鍋11内が大気圧よりも低い減圧状態では、弁支持体73を構成する脚部79の内側の空気が鍋11内に吸引され、それに伴い調圧弁65や、この調圧弁65を載置支持する弁支持体73が、調圧バネ74の付勢に抗して下降する。しかし、弁支持体73の開口部70が第1調圧パッキン71の孔71Aよりも低い位置に移動すると、調圧弁65はそれまでの弁支持体73に代わって第1調圧パッキン71に載置され、当該第1調圧パッキン71の孔71Aを塞ぐので、鍋11内の密閉が確保され、減圧を継続して行なえる(図5参照)。
【0085】
逆に炊飯時などにおいて、鍋11内を大気圧以上に加圧する時には、弁支持体脚79の内側が鍋11内から直接圧力を受けるため、調圧弁65の自重に抗して弁支持体73が上昇する。ここで、弁支持体73の開口部70が第1調圧パッキン71の孔71Aよりも高い位置に移動すると、調圧弁65はそれまでの第1調圧パッキン71に代わって弁支持体73に載置され、調圧孔70を塞ぐと共に、弁支持体73に載置している調圧弁65も、弁支持体73と同様に上昇する。そして、弁支持体73は上昇後、第1調圧パッキン71に当接し、それにより第1調圧パッキン71の孔71Aを通過しようとする蒸気などを遮断して、鍋11内の密閉を保持できる(図4参照)。
【0086】
再度図1に戻り、前記本体1の前部には操作パネル101が設けられている。この操作パネル101の内側には、時間や選択したメニューを表示するLCD102や、他にいずれも図示しないが、現在の行程を表示するLEDや、炊飯を開始させたり、メニューを選択させたりする操作スイッチ103(図5参照)の他に、鍋11内の減圧状態を選択する減圧選択スイッチなどを配置した基板が配設される。操作パネル101にはボタン名などが表示され、電子部品である制御手段にほこりや水が付着することも防止している。なお、操作パネル101を蓋体31の正面側に設けてもよい。
【0087】
111は、本体1の内部前方に設けられた加熱制御手段である。この加熱制御手段111は、加熱手段である加熱コイル16を駆動させるための発熱素子(図示せず)を基板に備えて構成される。この加熱コイル16を駆動する素子は、加熱コイル16の発振と共に加熱されるが、動作状態を保証する使用条件温度を有するので、一定温度以下で使用する必要がある。そのために、加熱コイル16を駆動する素子は、例えばアルミニウムのような熱伝導性の良好な材料で構成されるフィン状の放熱器112に熱的に接続され、冷却手段である冷却ファン113から発する風を放熱器112に当てて熱を奪うことにより、使用条件温度内で素子を駆動するようにしている。
【0088】
冷却ファン113は、加熱制御手段111に取付けられた放熱器112の下方、若しくは側部に配置されている。また、本体1の底部若しくは側部には、冷却ファン113から発し、加熱制御手段111に取付けられた放熱器112から熱を奪って温かくなった風を、本体1の外部へ排出するための孔(図示せず)が複数設けられている。加熱制御手段111は製品内部すなわち本体1内に収納されるが、鍋11の外周囲のどの位置に配置してもよい。また、本体1の底部若しくは側部に設けた孔も、どの位置に配置してもよい。しかし、近年は製品の小形化設計が求められている背景もあり、加熱制御手段111や冷却ファン113と、温かな風を排出する孔114は、鍋11をはさんで略反対位置に配置するのが好ましい。
【0089】
また図2において、141は、蓋開ボタン46の裏(内)側部に取付けられた基板である。この基板141には、前記減圧手段81が動作すると点灯作動する警報手段としてのLED142と、磁気検知素子としてのホール素子143がそれぞれ実装される。LED142は、別な図3に示すように、蓋開ボタン46の上面に対向して設けられており、またホール素子143は、蓋開ボタン46が押されていない状態では、外蓋32に設けた磁性体としてのマグネット144に対向して配設される。ホール素子143は、前記クランプ44とクランプ受け50との係合を解除しようとしたときに、マグネット144から離れることにより、その動作を検知して後述する加熱制御手段111に検知信号を出力する検知手段として設けられる。なお、別なセンサにより同等の機能を有する検知手段を構成してもよい。
【0090】
LED142は、炊飯初期のひたしや保温の工程で減圧手段81が作動し、鍋11内が大気圧以下のときにのみ連続点灯すると共に、保温工程中に鍋11内が大気圧以下のときに、クランプ44とクランプ受け50との係合を解除しようとすると、ホール素子143からの検知出力を受けて所定時間点滅し、その後消灯する表示手段として設けられる。LED142に代わり、例えばLCDなどの他の表示手段を用いてもよいし、ブザーなどの報知手段を設けてもよい。この場合、報知手段も同様に工程や連動する構成としてよい。その他、前記蓋体31は、前述した外蓋32,放熱板34,外蓋カバー35,および内蓋組立体55の他に、蓋体31としての外観品位を向上させるために、外蓋32の上面部を覆う三次元形状の金属蓋33を備えてもよい。
【0091】
次に制御系統について、図21を参照しながら説明する。同図において、111は前述の加熱制御手段で、これは前記鍋温度センサ17および蓋温度センサ61からの各温度情報や、操作スイッチ103からの操作信号の他に、前記蓋開ボタン46に設けたホール素子143や、蓋体31の開閉を検知する別なホール素子191からの検知信号を受け付けて、炊飯時および保温時に鍋11の底部を加熱する加熱コイル16と、鍋11の側部を加熱するコードヒータ18と、蓋体31を加熱する蓋ヒータ36とを各々制御すると共に、前述した減圧ポンプ82や、電磁弁87や、蓋体31の内部に設けたソレノイド78,172や、LED142を含む表示手段128を各々制御するものである。特に本実施例の加熱制御手段111は、鍋温度センサ17の検出温度に基づいて主に加熱コイル16が制御されて鍋11の底部を温度管理し、蓋温度センサ52の検出温度に基づいて主に蓋ヒータ26が制御されて放熱板34ひいては内蓋56を温度管理するようになっている。加熱制御手段111は、自身の記憶手段(図示せず)に記憶されたプログラムの制御シーケンス上の機能として、炊飯時に前記鍋11内の被炊飯物を炊飯加熱する炊飯制御手段118と、保温時に鍋11内のご飯を所定の保温温度に保温加熱する保温制御手段119とをそれぞれ備えている。
【0092】
ここで、蓋開閉検知手段であるホール素子191について説明すると、このホール素子191は例えば蓋体31の後方に設けられた磁性体であるマグネット(図示せず)に対向して、本体1の内部に取付けられる。なお、同様の機能を発揮できれば、ホール素子191に代わり他のセンサを用いてもよい。
【0093】
ここでの保温制御手段119はタイマー手段120を備えており、保温動作が開始するとタイマー手段120を起動させて保温経過時間を計時し、この保温経過時間が予め設定した時間(例えば1時間)に達したら、鍋11内の圧力が加圧状態からほぼ大気圧に戻り、且つ鍋11内の温度が保温温度にまで低下した、いわゆる保温が安定する状態と判断するようになっている。また、加熱制御手段11はその他に、操作スイッチ103からの予約炊飯開始の指令を受けて、予め記憶手段に記憶された所定時間に鍋11内の被炊飯物が炊き上がるように炊飯制御手段118を制御する予約炊飯コースを実行可能な予約炊飯制御手段121を備えている。なお、前記所定時間は、操作スイッチ103の例えば時間キーや分キーを操作することで、適宜変更することができる。
【0094】
122は、加熱制御手段111からの制御信号を受けて、加熱コイル16に所定の高周波電流を供給する高周波インバータ回路などを内蔵した加熱コイル駆動手段である。またこれとは別に、加熱制御手段111の出力側には、加熱制御手段111からの制御信号を受けて、放熱板34や内蓋56を加熱するように蓋ヒータ36を駆動させる蓋ヒータ駆動手段123と、コードヒータ18をオンにするコードヒータ駆動手段124と、ソレノイド78,172をオンまたはオフにするソレノイド駆動手段125と、減圧ポンプ82を駆動させるポンプ駆動手段126と、電磁弁87をオンまたはオフにする電磁弁駆動手段127と、表示手段128を駆動させる表示駆動手段129が各々設けられる。前記炊飯制御手段118による炊飯時、および保温制御手段119による保温時には、鍋温度センサ17と蓋温度センサ61からの各温度検出により、加熱コイル16による鍋11の底部への加熱と、コードヒータ18による鍋11の側面への加熱と、蓋ヒータ36による蓋体31への加熱が行なわれるように構成する。また、前記炊飯制御手段118による炊飯が終了し、鍋11内の被調理物がご飯として炊き上がった後は、保温制御手段119による保温に自動的に移行し、鍋温度センサ17の検知温度に基づき、加熱コイル16やコードヒータ18による鍋11への加熱を調節することで、ご飯を所定の保温温度(約70℃〜76℃)に保温するように構成している。
【0095】
特に前記コードヒータ18による加熱について補足説明すると、炊飯後にご飯の温度が約100℃から約73℃の保温温度に低下するまでと、約73℃の保温安定時に、コードヒータ18を発熱させて、蓋体31と本体1との隙間の空間に金属板20から熱放射して、この隙間からの外気の侵入による冷えを抑制すると共に、鍋11のフランジ部14を加熱する。また、保温時にご飯を再加熱する期間にもコードヒータ18により鍋11のフランジ部14を加熱し、ご飯の加熱により発生する水分が鍋11の内面上部に結露することを防止するように構成している。
【0096】
さらに、本実施例における加熱制御手段111は、予約炊飯制御手段121による予約炊飯の待機時の炊飯が開始するまでの期間や、炊飯制御手段118が実質的な炊飯を開始するまでのひたし行程の期間や、保温制御手段119により前述した保温が安定する状態と判断した後で、鍋11内が大気圧より低くなるように、減圧ポンプ82や減圧状態保持用の電磁弁87を動作させる減圧制御手段130としての機能をも備えている。
【0097】
次に、上記構成について、その作用を図22および図23のタイミングチャートに基づき説明する。図22において、最上段およびその次の段にある各グラフは、鍋11内における圧力および温度の各推移を示し、以下、減圧ポンプ82の動作タイミングと、調圧弁65の動作タイミングとをそれぞれ示している(塗潰しの状態がオン)。また、図23において、最上段およびその次の段にある各グラフは、鍋11内における温度および圧力の各推移を示し、以下、調圧弁65(調圧用ソレノイド78)の動作タイミングと、開閉弁182(開閉用ソレノイド172)の動作タイミングとをそれぞれ示している(塗潰しの状態がオン)。
【0098】
炊飯や保温が行なわれていない切状態において、調圧用ソレノイド78と開閉用ソレノイド172は共に非通電(オフ)状態にある。このとき、調圧用ソレノイド78のプランジャー151は進出位置にあって、調圧孔70が開放するように調圧弁65が移動すると共に、開閉用ソレノイド172のプランジャー173も進出位置にあって、内蓋56の連通孔181が開放するように、開閉弁シャフト201が上方に移動する。したがって、鍋11内は調圧孔70および連通孔181を通して外部と連通し、大気圧に維持される。また、クランプ動作規制部163,189が、共にクランプ44の基端部44Aの下方から離れた位置にあるので、クランプ44の動作は規制されず、蓋開ボタン46を押動操作すれば、クランプ44がクランプ受け50から離脱する。すなわち切状態では、蓋体31を自由に開閉することができる。
【0099】
次に、予約炊飯時における動作を説明すると、操作スイッチ103の時間キーや分キーを操作することで、前記所定時間に相当する炊上がりの希望時刻を設定し、鍋11内に被炊飯物である米および水を入れて、その後で操作スイッチ103の別な例えばタイマースイッチを操作すると、予約炊飯制御手段120による予約炊飯コースが設定(セット)され、予約炊飯の待機状態に移行する。この予約炊飯コースでは、所定時間に鍋11内の被炊飯物が炊き上がるように炊飯制御手段117を制御するが、予約炊飯の待機状態から実質的に炊飯が開始する時点までの間に、減圧制御手段130が動作して鍋11内の圧力が大気圧(1atm=1013hPa)よりも低くなるように、減圧ポンプ82や電磁弁87が制御される。
【0100】
具体的には、予約炊飯コースがセットされると、減圧制御手段130は炊飯が開始する直前まで減圧選択スイッチをオンにすると共に、鍋11内が減圧中であることを表示手段128に表示させる。これにより、使用者は鍋11内が減圧中であることを知ることができる。また、減圧制御手段130は、鍋11内から空気を排出するために、減圧ポンプ82を駆動させる信号をポンプ駆動手段126に出力すると共に、この減圧ポンプ82に同期して電磁弁87ひいては経路94を開放させる信号を電磁弁駆動手段127に出力する。所定時間(例えば、3〜4分程度)の後、減圧制御手段130は減圧ポンプ82の駆動を停止させ、且つ電磁弁87ひいては経路94を閉じて、鍋11内を減圧状態に維持する。電磁弁駆動手段127は一定時間(例えば、約1〜20分程度)が経過すると、調圧弁65を開放させて、鍋11内に外気を取り込み、鍋11内を大気圧に戻す。このように一定時間の減圧後に鍋11内を大気圧に戻すことによって、米の表面の余分な水分を無くして、米が過吸水して米の表面がふやけて、ご飯の食味を落すことを防ぐことができる。また、鍋11内に外気を取り込み鍋内を大気圧に戻す際に、鍋11内に取り込まれた空気によって、鍋11内の水面が揺らされることによって、鍋11内の水が攪拌されて酸素消費分解(好気分解)による自然浄化が促進され、鍋11内の米と水の腐食を防止して、腐敗に伴う悪臭を抑制することができるとともに、米の吸水の促進と吸水状態の均一化を図ることができる。
【0101】
その後、鍋11内を大気圧に戻した後、調圧弁65を閉じる。その後、減圧制御手段130は、一定時間が経過すると、再び減圧ポンプ82を駆動させると共に、電磁弁87ひいては経路94を開放させて、鍋11内から空気を排出する。その後は上述した動作が繰り返されて、減圧ポンプ82と調圧弁65のオン,オフ制御により、鍋11内の圧力が所望の範囲内の値に維持された後、大気圧に戻されることの繰り返しが行われる。なお、実質的な炊飯が開始した後の動作は、後述する通常の炊飯動作と共通しているので、ここでは省略する。
【0102】
次に、予約炊飯を行なわない通常の炊飯について、その動作を説明する。なお、前述した通り、予約炊飯コースにおける実質的な炊飯が開始した後の動作は、これから説明する通常炊飯の動作と共通している。
【0103】
その後、鍋11内に被炊飯物である米および水を入れ、操作スイッチ103の例えば炊飯キーを操作すると、炊飯制御手段118による炊飯が開始する。ここで炊飯制御手段118は、実質的な炊飯を開始する前に、鍋11内の米に対する吸水を促進させるために、鍋温度センサ17による鍋11の底部の温度検知に基づいて、加熱コイル16とコードヒータ18で鍋11の底部と側面部をそれぞれ加熱し、鍋11内の水温を約45〜60℃に15〜20分間保持するひたしを行なう。このひたし中は、減圧手段81の減圧ポンプ82と電磁弁87が作動すると共に、鍋11内が大気圧以下のときには、調圧用ソレノイド78と開閉用ソレノイド172が共に通電(オン)状態になって、調圧用ソレノイド78のプランジャー151と開閉用ソレノイド172のプランジャー173が各々後退位置に移動する。これにより、調圧操作部161が調圧弁65から離れて、調圧弁65が第1調圧パッキン71の孔71Aを塞ぎ、また操作部材可動部188の先端部188Bに操作部材212が当接して、開閉弁シャフト201が下方に押し込まれ、シャフトパッキン204が内蓋56の連通孔181を塞ぐので、鍋11内の密閉が確保される。また、クランプ動作規制部163,189が、何れもクランプ44の基端部44Aの下方に潜り込むので、クランプ44の回動が規制され、蓋開ボタン46を押動操作しようとしても、クランプ44とクランプ受け50との係合が二重にロックされ、蓋体31が開かないようになる。
【0104】
また、ひたし行程が開始すると、減圧制御手段130は実質的な炊飯が開始する直前まで減圧選択スイッチをオンにすると共に、鍋11内が減圧中であることを表示手段128のLCDに表示させる。これにより、使用者は鍋11内が減圧中であることを知ることができる。その後、減圧制御手段130は減圧ポンプ82の駆動を停止させ、且つ電磁弁87ひいては経路84を閉じて、鍋11内を減圧状態に維持し、スローリークによる圧力上昇を考慮して、一定時間が経過すると、減圧制御手段130は再び減圧ポンプ82を駆動させると共に、電磁弁87ひいては経路84を開放させて、鍋11内から空気を排出する。このような動作を繰り返すことで、減圧ポンプ82と電磁弁87が同時にオン,オフ制御され、鍋11内の圧力が所望の範囲内の値に維持される。
【0105】
こうして、ひたし時には鍋11内は減圧状態が維持される。また、この減圧時には、調圧弁65が第1調圧パッキン71に載置され、当該第1調圧パッキン71の孔71Aを塞ぐので、鍋11内の密閉が確保される。そのため、ひたし時に密閉状態で鍋11内を減圧することができ、鍋11内において米に水を十分に吸水させることが可能になる。
【0106】
その後、所定時間のひたしが終了すると、炊飯制御手段118は実質的な炊飯動作を開始すると共に、減圧制御手段130による鍋11への減圧制御は中断し、減圧選択スイッチはオフになると共に、LCDによる減圧状態である旨の表示も停止する。併せて、減圧ポンプ82および電磁弁87は、その後の保温が安定した状態になるまでオフ状態となる。
【0107】
炊飯行程に移行すると、炊飯制御手段118は加熱コイル16により鍋11を強加熱し、被炊飯物への沸騰加熱を行なう。この沸騰加熱時に鍋11の底部の温度が90℃以上になり、蓋体31の温度が90℃以上で安定したら、鍋11内が沸騰状態になったものとして、それまでよりも加熱量を低減した沸騰継続加熱に移行する。沸騰加熱の途中で、炊飯制御手段118はソレノイド78をオフ状態にして、調圧弁65を調圧孔70から退避させる。これにより鍋11はほぼ大気圧に維持されるが、開閉用ソレノイド172は引き続きオン状態にあり、クランプ動作規制部189がクランプ44の基端部44Aの下方に位置して、蓋体31を開けることができないようになっている。
【0108】
なお、上述の蓋体31の温度が90℃以上で安定したことは、蓋温度センサ61からの検出温度の温度上昇率により検知される。また、この沸騰検知において、鍋温度センサ17と蓋温度センサ61とにより、鍋11の底部および蓋体31がいずれも90℃以上になったことを確認でき、完全に鍋11内が沸騰したことを精度よく検知できる。
【0109】
また、前記鍋11の底部,鍋11の側面部または蓋体31のいずれかが120℃以上の通常ではあり得ない検知温度になったら、加熱制御手段111は何らかの異常があると判断して炊飯加熱における加熱量を低減して全ての動作を停止する切状態にするか、後述するむらしに移行するか、保温を行ない、異常加熱を防止する。逆に、前記鍋11の底部または蓋体31のいずれかが90℃以上になって所定時間(例えば5分)経過しているのに、それ以外の鍋11の底部または蓋体31のいずれかが90℃未満で低い状態の場合、この温度の低い状態の鍋温度センサ17または蓋温度センサ61が、何らかの理由(汚れや傾きや接触不良など)で温度検知精度が悪化していると判断し、同様に炊飯加熱における加熱量を低減して全ての動作を停止する切状態にするか、むらしに移行するか、保温を行ない、これに対処する。
【0110】
沸騰継続に移行すると、炊飯制御手段118は蓋ヒータ36による蓋加熱を開始させる。ここでの蓋加熱は、内蓋56の温度が100〜110℃になるように、蓋温度センサ61の検知温度により管理される。そして、鍋11の底部が所定の温度上昇を生じたら、鍋11内の炊上がりを検知して、炊飯制御手段118による炊飯行程を終了し、保温制御手段119により保温行程に移行して、最初のむらしに移行する。むらし中は蓋温度センサ61の検出温度による温度管理によって蓋ヒータ36を通断電し、内蓋56への露付きを防止すると共に、ご飯が焦げない程度に高温(98〜100℃)が保持されるように、鍋11の底部の温度を管理する。むらしは所定時間(15〜20分)続けられ、むらしが終了したら保温制御手段119による保温に移行する。
【0111】
保温になると、加熱コイル16にて鍋11の底部と側面下部を加熱すると共に、鍋11内に収容するご飯の温度よりも僅かに高く、蓋ヒータ36により蓋体31の下面を加熱し、さらに鍋11の側面をコードヒータ18でご飯が乾燥せず、かつ露が多量に付着しないように温度管理する。鍋11内のご飯の温度は70〜76℃に温度保持されるが、この保温時においても、鍋温度センサ17や蓋温度センサ61が相互に異常に高かったり、あるいは異常に低かったりした場合には、異常を検知してこの異常加熱を防止する。
【0112】
前述したように、鍋11内の沸騰状態を検知すると、炊き上げ(沸騰継続加熱)とむらしが続けて行なわれるが、むらしの途中までは鍋11内を大気圧以上にするために、炊飯制御手段118は減圧手段81の作動を停止させつつ、調圧用ソレノイド78および開閉用ソレノイド172を何れもオン状態にし、連通孔77を調圧部58で閉止すると共に、別な連通孔181を開閉弁62で閉止する。これにより、炊飯加熱の継続中は、鍋11内と外部との連通が遮断され、鍋11内の圧力が上昇する。このとき、クランプ動作規制部163とクランプ動作規制部189の両方が、クランプ44の基端部44Aの下方に潜り込むので、クランプ44とクランプ受け50との係合が二重にロックされ、蓋体31を開けることはできない。
【0113】
その後、鍋11内が所定の圧力に到達したことを検知すると、調圧用ソレノイド78がオン状態からオフ状態に切り換わるため、調圧操作部161が調圧弁65を押す方向に調圧フレーム152が移動し、調圧孔70が開放して鍋11内の圧力が大気圧に近づく。この状態では、調圧フレーム152のクランプ動作規制部163が、クランプ44の基端部44Aの下方から離れた位置に移動するものの、別な開閉フレーム175のクランプ動作規制部189が、引き続きクランプ44の基端部44Aの下方に位置しているため、蓋開ボタン46によりクランプ44を押し込もうとしても、クランプ44はその動きを規制されて、蓋体31を開けることはできない。
【0114】
むらしに移行すると、その後の保温開始直後に蓋体31が開けられることを考慮して、鍋11内を徐々に大気圧に戻す動作が行なわれる。そして炊飯制御手段118は、むらしの途中で調圧用ソレノイド78を先にオン状態からオフ状態に切り換えて、調圧弁65を調圧孔70から退避させ、連通孔77を開放して鍋11内を大気圧に戻す。その後で、開閉用ソレノイド172をオン状態からオフ状態に切り換え、別な連通孔181を開放する。こうすれば、少なくとも調圧孔70を開放した後も、開閉用ソレノイド172がオフ状態になるまでは、蓋体31を開けることができなくなり、鍋11内が大気圧に戻りきらないうちに、不用意に蓋体31が開くのを防止できる。
【0115】
実質的な炊飯であるむらしが終了して保温工程に移行した直後は、鍋11内が調圧孔70および連通孔181を通して外部と連通し、大気圧に維持される。それと共に、クランプ動作規制部163,189の両方が、クランプ44の基端部44Aの下方から離れた位置にあるので、蓋体31を自由に開閉することができる。
【0116】
保温制御手段119は、炊飯行程が終了するとタイマー手段120による保温経過時間の計時を開始する。このとき減圧制御手段130は、当該保温経過時間が予め設定した時間になるまで、すなわち保温が安定する状態と判断されるまで、表示手段128のLCDを利用して、減圧表示を短時間繰り返し行なわせる。これにより利用者は、炊き上げ後、鍋11内が未だ減圧状態に移行していないことを理解できる。保温制御手段119は、保温経過時間が予め設定した時間に達すると、減圧制御手段130により鍋11内の圧力が大気圧よりも低くなるように、減圧ポンプ82や電磁弁87が再び作動制御する。それと共に、鍋11内を密閉状態にするために、調圧用ソレノイド78と開閉用ソレノイド172を同時にオン状態にする。これにより、クランプ動作規制部163とクランプ動作規制部189の両方が、クランプ44の基端部44Aの下方に潜り込んで、クランプ44の回動が規制される。なお、こうした動作は、保温工程の所定時間後ではなく、保温工程で鍋11内が所定温度に到達したのを鍋温度センサ17が検出したときに、行なわれるようにしてもよい。
【0117】
その後、減圧制御手段130は減圧ポンプ82の駆動を停止させ、且つ電磁弁87ひいては経路84を閉じて、鍋11内を減圧状態に維持し、スローリークによる圧力上昇を考慮して、一定時間が経過すると、減圧制御手段130は再び減圧ポンプ82を駆動させると共に、電磁弁87ひいては経路84を開放させて、鍋11内から空気を排出する。その後は上述した動作が繰り返されて、減圧ポンプ82と電磁弁87が同時にオン,オフ制御され、鍋11内の圧力が所望の範囲内の値に維持される。
【0118】
保温工程に移行すると、保温制御手段119は前記ホール素子143,191からの検知信号を受け付ける。すなわち、鍋11内を減圧状態にする減圧手段81の作動制御中であって、調圧用ソレノイド78と開閉用ソレノイド172が同時にオンしている状態で、使用者が蓋体31を開けようと意図して蓋開ボタン46を押動操作しようとすると、クランプ44はその回動を規制されてはいるものの、蓋開ボタン46がクランプ44の弾性などにより若干下方に押し込まれ、ホール素子143がマグネット144から離れた位置に移動する。このときのホール素子143からの検知信号を保温制御手段119が受けると、調圧用ソレノイド78と開閉用ソレノイド172は連動してオフ状態になり、双方のプランジャー151,173が進出して、調圧孔70および連通孔181を開放すると共に、クランプ44に対する回動規制も解除され、蓋開ボタン46を押し続けることで、蓋体31を開けることができるようになる。
【0119】
その後、鍋11内から炊き上がったご飯を取り出すなどして、蓋体31を再度閉じると、今度は別なホール素子191が蓋体31の閉状態を検知し、その信号を保温制御手段119に送出する。これを受けて保温制御手段119は、所定時間後に再び減圧手段81を作動させ、且つ不用意に蓋体31が開かないように、調圧用ソレノイド78と開閉用ソレノイド172を同時にオン状態にする。
【0120】
このように、内蓋56に設けた2つの連通孔77,181をそれぞれ開閉する動作を繰り返すことで、鍋11内の圧力を自在に変化させることができる。そして、炊飯コースや炊飯量に応じて加圧時の圧力を変えることで、炊き上がりを可変することができるようになる。
【0121】
また、前記むらしや保温工程中において、減圧手段81が作動し、鍋11内が大気圧以下のときには、LED142を連続点灯させる制御信号を、加熱制御手段111が表示駆動手段129に送出する。これにより使用者は、鍋11内が減圧中であることにより、蓋体31と本体1が係合ロックされていることを直ぐに認識できる。また、蓋開ボタン46を押動操作しようと意図してから、実際に蓋体31を開放できるまでには、若干のタイムラグがあるので、蓋体31のクランプ44と本体1のクランプ受け50との係合を解除しようと意図したときの検知信号をホール素子143が出力すると、LED142が点滅動作に切り替わり、その後所定時間が経過したら、LED142を自動的に消灯させるようにすれば、何故直ぐに蓋体31が開かないのかを使用者に理解させることができる。
【0122】
このように本実施例では、有底筒状の容器である鍋11や、商用電力を供給する電力供給手段としてのコードリール116や、鍋11および鍋11を加熱する加熱手段としての加熱コイル16を備えた炊飯器の本体1と、本体1に対し開閉自在に設けられる蓋体31とから構成し、鍋11の開口部を覆う内蓋56を蓋体31に着脱自在に備え、本体1と蓋体31はヒンジ軸であるヒンジシャフト41で軸支され、このヒンジシャフト41の略反対側に本体1と蓋体31との閉状態を保持する保持部としてのクランプ44を設け、蓋体31の内蓋56は、鍋11の内を連通する孔としての連通孔77,181と、これらの連通孔77,181を開閉する開閉手段として、連通孔181を開閉自在とする開閉装置たる開閉弁62と、連通孔77の開度ひいては鍋11内の圧力を調整する調圧装置たる調圧部58とを備えており、開閉弁62は、開閉弁としての開閉弁シャフト201と、この開閉弁シャフト201による連通孔181の開閉を自在に操作する開閉操作手段たる開閉弁操作手段211を備えた開閉フレーム175で構成される一方で、調圧部58は、調圧弁65と、この調圧弁65による連通77の開閉を自在に操作する調圧操作手段としての調圧操作部161を備えた調圧フレーム152で構成されるものにおいて、コードリール116からの電力供給が遮断されたのを検知すると、開閉弁操作手段211の駆動源であるソレノイド172または調圧操作部161の駆動源であるソレノイド78の何れか一方に、所定時間動作を継続させるための電力を供給し、それにより開閉フレーム175または調圧フレーム152を、クランプ部44の動きを規制する位置に所定時間留まらせる駆動手段341を、コードリール116とは別に設けている。
【0123】
このようにすると、開閉弁シャフト201や調圧弁65が内蓋56の連通孔77,181を塞いでいる状態で、例えば停電などによりコードリール116からの電力供給が途絶えると、コードリール116に代わる駆動手段341が、開閉弁操作手段211の駆動源であるソレノイド172または調圧操作部161の駆動源であるソレノイド78の何れか一方に電力を供給し、その何れか一方のソレノイド78,172の動作を所定時間継続させる。こうすることで、開閉弁シャフト201または調圧弁65の何れか一方で内蓋56の連通孔77,181を閉じたまま、クランプ44の動作を所定時間規制するように、開閉弁操作手段211または調圧操作部161の何れか一方が作用する。そのため、炊飯中の停電発生時などにおいても、クランプ44が動いて蓋体31が不意に開くことはなく、それに伴う米の生煮えを防止できると共に、炊飯器の周辺を汚すといった不具合も回避できる。
【0124】
本実施例は、鍋11を覆う内蓋56と、内蓋56内を調圧する調圧手段としての調圧部58と、調圧部58が閉塞した際に、鍋11内を調圧する安全手段としての安全弁251を設けた炊飯器において、調圧部58は、鍋11内と内蓋56外部との連結部に設けられた調圧孔70に配置される調圧弁65と、調圧弁65を覆う調圧カバーとしての調圧弁カバー67と、調圧弁65を保持する調圧ホルダとしての調圧弁ホルダー組立体66と、調圧弁カバー67を固定する固定部252から構成し、安全弁251は、安全弁としての開閉保持手段255と、調圧弁カバー67と一体的に備えた開閉保持手段255を覆う安全カバーとしての安全弁カバー254と、開閉保持手段255を保持する安全ホルダとしてのベース部材253から構成し、調圧弁カバー67を固定する固定部252により安全弁カバー254をベース部材253に固定する。
【0125】
この場合、構成部品の数を増やす事無く、確実な部品の固定保持が成される炊飯器を提供することができる。
【0126】
また、本実施例は、安全弁カバー67を安全弁ホルダとしてのベース部材253に係合させる係合部としての係合爪片262Cと、係合爪片262Cを係合解除方向へと移動させるヒンジ部としてのヒンジ機構Hとを備え、前記ヒンジ機構Hの前記係合解除方向への移動を固定部252によって規制する。
【0127】
この場合、部品交換時に安全弁カバー67を破損することなく作業を行うことができる。
【0128】
さらに、本実施例は、安全弁ホルダとしてのベース部材253に、調圧弁ホルダとしての調圧弁ホルダー組立体66を下側から保持する保持手段として連結手段269を備えている。
【0129】
この場合、調圧弁ホルダー組立体66の脱落防止を2重に行うことができる。
【0130】
また本実施例は請求項1に対応しており、鍋11の調理物を加熱する手段としての加熱コイル16と、鍋11の調理物を保温する機能としてのフランジヒータ18と、鍋11上面に蓋をする蓋としての内蓋56と、内蓋56に備えた鍋11内の圧力を調整する調圧手段としての調圧部58と、鍋11内を減圧する減圧手段としての減圧ポンプ82とを備え、予約炊飯待機時に減圧ポンプ82を動作させて鍋11内を減圧して、減圧ポンプ82を一定時間動作させた後停止させて、そのとき調圧部58を閉じて鍋11内の減圧を一定時間保持した後、調圧部58を開き鍋11内に外気を送り込み鍋11内の水面を揺らす機能を備えている。
【0131】
この場合、予約炊飯大気中に減圧ポンプ82で鍋11内を減圧し、その後保持して設定時間後、調圧部58を開き鍋11内の減圧状態を解除して、鍋11内に外気を送り込み鍋11内の水面を揺らすことによって、鍋11内の水が攪拌されて酸素消費分解(好気分解)による自然浄化が促進され、鍋11内の米と水の腐食を防止して、腐敗に伴う悪臭を抑制することができるとともに、米の吸水の促進と吸水状態の均一化を図ることができる。
【0132】
次に、本発明の実施例2を図24及び図25を参照しながら説明する。図24に示すように本実施例では、ポンプ駆動手段126によって駆動される複数の減圧手段として複数の減圧ポンプ82,270(以下、第1減圧ポンプ82,第2減圧ポンプ270と呼称する)を備えている。図24中のその他の構成については実施例1と同じなので詳細な説明は省略する。
【0133】
続いて、上記構成について、その作用を図25のタイミングチャートに基づき説明する。図25において、最上段およびその次の段にある各グラフは、鍋11内における圧力および温度の各推移を示し、以下、第1減圧ポンプ82と第2減圧ポンプ270の動作タイミングと、電磁弁87の動作タイミングとをそれぞれ示している(塗潰しの状態がオン)。
【0134】
炊飯開始後のひたし工程時に、第1減圧ポンプ82と第2減圧ポンプ270を同時に動作させる。ここでは、電磁弁87とともに第1減圧ポンプ82と第2減圧ポンプ270を同時に動作させて、鍋11内の減圧速度を速めることにより、ひたし工程中の鍋内の減圧保持時間t1がより長くなる。このようにひたし工程中の減圧保持時間t1が長くなったことにより、調理物である米の吸水率がより高くなり、加熱なしのひたしが可能となる。
【0135】
また、むらし工程時に設定した時間t2、第1減圧ポンプ82と第2減圧ポンプ270を動作させる。ここでは、むらし工程時に第1減圧ポンプ82と第2減圧ポンプ270を動作させることにより、鍋11内の水蒸気及び鍋11側面や内蓋56に付いた露を鍋11の外に排出させ、ご飯のべチャつきや露の付着を抑制することができる。
【0136】
さらに、炊き上がり後、ある一定時間内に蓋開閉検知手段143,191によって蓋11の開きを検知しない場合に第1減圧ポンプ82と第2減圧ポンプ270を動作させる。ここでは鍋11内の余分な水蒸気とご飯表面の余分な水分を鍋11の外に排出し、炊き上がったご飯のべチャつきを抑制する。
【0137】
また、保温に移行時に、炊き上がり後の初回または蓋11開き検知後の初回等の初回時における第1減圧ポンプ82と第2減圧ポンプ270の動作では、第1減圧ポンプ82と第2減圧ポンプ270を同時に動作させる。ここでは、第1減圧ポンプ82と第2減圧ポンプ270を同時に所定時間t3(例えば、約3〜4分程度)動作させることにより、初回時の真空引きで鍋11内の真空値を0.6気圧以下まで減圧することができる。
【0138】
そして保温時における2回目以降の第1減圧ポンプ82と第2減圧ポンプ270の動作においては、第1減圧ポンプ82と第2減圧ポンプ270を交互それぞれに動作させる。ここで保温時の第1減圧ポンプ82と第2減圧ポンプ270の動作例としては、前述の初回時に第1減圧ポンプ82と第2減圧ポンプ270を同時に動作させた後、2回目は第1減圧ポンプ82のみを動作させて、3回目は第2減圧ポンプ270のみを動作させるように、初回以降は第1減圧ポンプ82と第2減圧ポンプ270を交互に動作させる。
【0139】
本実施例は請求項2に対応しており、鍋11の調理物を加熱する手段としての加熱コイル16と、鍋11の調理物を保温する機能としてのフランジヒータ18と、鍋11上面に蓋をする蓋としての内蓋56と、内蓋56に備えた鍋11内の圧力を調整する調圧手段としての調圧部58と、鍋11内を減圧する複数の減圧手段としての第1減圧ポンプ82及び第2減圧ポンプ270と、内蓋56の開きを検知する蓋開閉検知手段143,191とを備えている。
【0140】
この場合、複数の減圧手段として第1減圧ポンプ82及び第2減圧ポンプ270を備えたことにより、鍋11内の減圧速度が速くなる。
【0141】
また本実施例は請求項3に対応しており、炊飯開始後の浸し工程時に、第1減圧ポンプ82及び第2減圧ポンプ270を動作させ鍋11内を減圧させる機能を備えたことにより、浸し工程における鍋11内の減圧速度が速くなる。
【0142】
さらに本実施例は請求項4に対応しており、浸し工程時に、第1減圧ポンプ82及び第2減圧ポンプ270を複数動作させることにより、浸し工程における鍋内の減圧速度がさらに速くなる。
【0143】
また本実施例は請求項5に対応しており、むらし工程時に、第1減圧ポンプ82及び第2減圧ポンプ270を動作させることにより、むらし工程における、鍋11内の余分な水蒸気と露を鍋11外に排出する。
【0144】
さらに本実施例は請求項6に対応しており、むらし工程時に、第1減圧ポンプ82及び第2減圧ポンプ270を複数動作させることにより、むらし工程における、鍋11内の余分な水蒸気と露を鍋11外に排出する効果を向上させる。
【0145】
また本実施例は請求項7に対応しており、炊き上がり後、所定時間内に蓋11の開きがない場合に第1減圧ポンプ82及び第2減圧ポンプ270を動作させることにより、蓋の開きを検知する蓋開閉検知手段143,191を用いて、炊き上がり後、設定した時間内に蓋11が開かないことを検知した場合は、第1減圧ポンプ82及び第2減圧ポンプ270を動作させて、鍋11内の余分な水蒸気とご飯表面の水分を鍋11の外に排出させる。
【0146】
さらに本実施例は請求項8に対応しており、減圧開始時の初回の第1減圧ポンプ82及び第2減圧ポンプ270の動作では、第1減圧ポンプ82及び第2減圧ポンプ270を同時に動作させて、保温開始時に第1減圧ポンプ82及び第2減圧ポンプ270を複数動作させることにより、鍋11内をより速く大気圧以下に減圧することができる。
【0147】
また本実施例は請求項9に対応しており、減圧時の2回目以降の第1減圧ポンプ82及び第2減圧ポンプ270の動作では、第1減圧ポンプ82及び第2減圧ポンプ270を交互に動作させることにより、初回の第1減圧ポンプ82及び第2減圧ポンプ270の動作で鍋11内は大気圧以下の所定値以下となるため、2回目以降は第1減圧ポンプ82及び第2減圧ポンプ270のどちらか一方のみを動作させる。この第1減圧ポンプ82及び第2減圧ポンプ270の一方を動作するときには、第1減圧ポンプ82及び第2減圧ポンプ270をそれぞれ交互に動作させるので、第1減圧ポンプ82及び第2減圧ポンプ270の一つあたりの動作時間を低減させることができ、第1減圧ポンプ82及び第2減圧ポンプ270の製品寿命の長寿命化を図ることができる。
【0148】
さらに本実施例は請求項10に対応しており、予約炊飯待機時に、第1減圧ポンプ82及び第2減圧ポンプ270を動作させることにより、鍋11内の減圧速度が速くなる。
【0149】
また本実施例は請求項11に対応しており、予約炊飯待機時に、第1減圧ポンプ82及び第2減圧ポンプ270を複数動作させることにより、鍋11内の減圧速度がさらに速くなる。
【0150】
さらに本実施例は請求項12に対応しており、予約炊飯待機時に、第1減圧ポンプ82及び第2減圧ポンプ270を同時に動作させることにより、鍋11内の減圧速度がより一層速くなる。
【0151】
なお、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能である。例えば、開閉弁装置としての開閉弁62や、調圧装置としての調圧部58の各部構成は、実施例中のものに限定されない。また、減圧手段である減圧ポンプの数も、第2実施例にあるような2つに限定されるものではなく、炊飯器に3つ以上の減圧ポンプを備えたとしてもよい。
【符号の説明】
【0152】
11 鍋(本体)
56 内蓋(蓋)
58 調圧部(調圧手段)
65 調圧弁
82 第1減圧ポンプ(減圧手段)
143,191 蓋開閉検知手段
270 第2減圧ポンプ(減圧手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、前記本体内の圧力を調整する調圧手段と、前記本体内を減圧する減圧手段とを備え、
前記減圧手段を動作させて前記本体内を減圧して、前記減圧手段を一定時間動作させた後停止させて、前記本体内の減圧を一定時間保持した後、前記調圧手段を動作させ前記本体内の被調理物を動かす機能を備えたことを特徴とする炊飯器。
【請求項2】
本体と、前記本体を覆う蓋と、前記蓋に備えた前記本体内の圧力を調整する調圧手段と、前記本体内を減圧する複数の減圧手段と、前記蓋の開きを検知する検知手段とを備えたことを特徴とする炊飯器。
【請求項3】
浸し工程時に、前記減圧手段を動作させ前記本体内を減圧させる機能を備えたことを特徴とする請求項2記載の炊飯器。
【請求項4】
前記浸し工程時に、前記減圧手段を複数動作させることを特徴とする請求項3記載の炊飯器。
【請求項5】
むらし工程時に、前記減圧手段を動作させることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の炊飯器。
【請求項6】
前記むらし工程時に、前記減圧手段を複数動作させることを特徴とする請求項5記載の炊飯器。
【請求項7】
炊き上がり後、所定時間内に前記蓋の開きがない場合に前記減圧手段を動作させることを特徴とする請求項2〜6のいずれか1項に記載の炊飯器。
【請求項8】
減圧開始時の前記減圧手段の動作では、複数の前記減圧手段を同時に動作させることを特徴とする請求項2〜7のいずれか1項に記載の炊飯器。
【請求項9】
前記減圧時の2回目以降の前記減圧手段の動作では、複数の前記減圧手段を交互に動作させることを特徴とする請求項8記載の炊飯器。
【請求項10】
予約炊飯待機時に、前記減圧手段を動作させることを特徴とする請求項2〜9のいずれか1項に記載の炊飯器。
【請求項11】
前記予約炊飯待機時に、前記減圧手段を複数動作させることを特徴とする請求項10記載の炊飯器。
【請求項12】
前記予約炊飯待機時に、複数の前記減圧手段を同時に動作させることを特徴とする請求項11記載の炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−183423(P2012−183423A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−150845(P2012−150845)
【出願日】平成24年7月4日(2012.7.4)
【分割の表示】特願2009−110048(P2009−110048)の分割
【原出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(390010168)東芝ホームテクノ株式会社 (292)
【Fターム(参考)】