説明

炊飯器

【課題】炊飯器の保護枠でもある内ケースの底部上面に結晶化ガラス製セラミックス等のセラミックプレートからなる耐熱部材を取り付け、内ケース等を土鍋の底部に設ける発熱部材からの輻射熱から保護することを目的とする。
【解決手段】内壁を形成する内ケースと、外壁を形成する容器本体と、該容器本体に対し開閉自在な蓋部材と、前記内ケースと前記容器本体の間に設けられる誘導加熱式の加熱手段と、前記内ケース内に収納される土鍋を有する炊飯器において、前記加熱手段は、前記土鍋の底部に対向する底部コイルと、前記土鍋の湾曲部に対向する側部コイルを有し、前記内ケースの底部上面であって、前記底部コイルに対向する位置に、前記土鍋底部との間に空隙を有して耐熱部材を取り付け、前記空隙は外部と連通し、前記加熱手段の加熱時、前記空隙で加熱された空気が対流により上動し前記土鍋の外側部を加熱する炊飯器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、非金属鍋を用いた誘導加熱式炊飯器であって、非金属鍋を収納する内ケース底部の耐熱構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、非金属鍋、例えば、土鍋を用いた誘導加熱式炊飯器はすでに知られている。そしてこの炊飯器により、従来の金属鍋同様、飯米等が水を吸水する吸水工程、加熱温度を急激に上昇する炊き上げ工程、ほぼ100℃に維持される沸騰維持工程、炊き上げ終了後のむらし工程、むらし工程後に炊き上げた飯米等を長時間維持する保温工程の制御を行なうことが考えられている。
【0003】
その加熱制御は、誘導加熱方式が用いられる。この誘導加熱方式は、本体に内設したワークコイルにより土鍋底部に設ける金属を電磁誘導により発熱させ、その熱を利用して土鍋内の飯米等を炊飯するとともに、保温時にはヒータを備えた放熱板をも利用し土鍋内の飯米等を周囲から均一に保温し、温度むらなどによる部分的な結露を防止して最適な保温制御を行うものであり、飯米等をおいしく炊き上げ、且つ長時間に亘る保温を可能にしている。
【0004】
図7に本出願人がすでに提案した土鍋を用いた誘導加熱式炊飯器の一例を示す。誘導加熱式炊飯器aは、外郭を形成する図示しない容器本体内に配置される内ケースb及び容器本体の上部開口を閉蓋する図示しない蓋部材等からなり、内ケースbの外周底部及び外周湾曲側部には加熱手段としてのワークコイルcを有する。内ケースb内には、磁性材料からなる土鍋dが着脱自在に収納される。この土鍋dの底部には、鉄或いはステンレス等の金属eを接着しており、この金属eを電磁誘導により発熱させ、その熱で土鍋d内の内容物を加熱している(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
ところで、土鍋dは、熱伝導率が極端に小さく且つ発熱しないため、従来のようにワークコイルcに対向する底部及び湾曲側部に金属eを接着するものでは、金属eを接着した部分のみ加熱される。土鍋d内に水があれば水の対流により内部の温度がほぼ均一化されるため格別問題は生じないが、水がなくなり飯米等のみになると均一加熱が行われなくなり問題が発生することになる。しかしながら、そのような問題は、土鍋の側部にも加熱手段を設ける等により防止することができる。
【0006】
ところが、従来のようにワークコイルcに対向する底部及び湾曲側部に金属を接着するものでは、金属eで発熱した熱が輻射により内ケースbに伝えられ、場合によっては金属eに対向する位置の内ケースbの温度が異常に高くなり、その部分の内ケースb自体は勿論のこと、内ケースbの外側の部材及び制御素子等の電気部品にも悪影響を与える場合があることが判明した。詳述すると、従来内ケースbには、通常耐熱温度が約150℃のPET樹脂が用いられ、より耐熱性が要求される部分には、PETより高価で且つ耐熱温度の高い(約250度)のPPS樹脂が用いられており、耐熱性では問題がないと思われていた。ところが、土鍋の材質、形状並びに加熱出力等によっては、輻射熱により内ケースbの温度が約250℃以上にもなり、高価なPPS樹脂を用いても対応できない場合があることが判明した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−304709
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本願発明の目的は、このような従来の問題を解決することであり、より詳細には、炊飯器の保護枠でもある内ケースの底部上面に結晶化ガラス製セラミックス等のセラミックプレートからなる耐熱部材を取り付け、内ケース等を非金属鍋の底部に設ける発熱部材からの輻射熱から保護すること、また、土鍋をほぼ均等に加熱することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本願発明は以下の構成を採用する。
【0010】
請求項1に係る発明では、内壁を形成する内ケースと、外壁を形成する容器本体と、該容器本体に対し開閉自在な蓋部材と、前記内ケースと前記容器本体の間に設けられる誘導加熱式の加熱手段と、前記内ケース内に収納される土鍋を有する炊飯器において、前記加熱手段は、前記土鍋の底部に対向する底部コイルと、前記土鍋の湾曲部に対向する側部コイルを有し、前記内ケースの底部上面であって、前記底部コイルに対向する位置に、前記土鍋底部との間に空隙を有して耐熱部材を取り付け、前記空隙は外部と連通し、前記加熱手段の加熱時、前記空隙で加熱された空気が対流により上動し前記土鍋の外側部を加熱する構成。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明では、内ケースの底部上面であって、底部コイルに対向する位置に、土鍋底部との間に空隙を有して耐熱部材を取り付け、空隙を外部に連通し、加熱手段の加熱時、空隙で加熱された空気を対流により上動させて土鍋の外側部を加熱することにより、内ケース自体は勿論のこと、内ケースの外側の部材及び制御素子等の電気部品への熱の悪影響を防止することができ、非金属鍋を用いる炊飯器の信頼性及び安全性を高めることができる。また、内ケースの材質も従来のように安価なPET樹脂を用いることができるため、生産コストを低減することができる。さらには、土鍋をほぼ均等に加熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本願発明の土鍋を適用してなる炊飯器の全体断面図
【図2】図1の一部拡大断面図
【図3】本願発明の土鍋を適用してなる他の炊飯器の一部拡大断面図
【図4】本願発明の土鍋を適用してなる更に他の炊飯器の一部拡大断面図
【図5】本願発明の土鍋を適用してなる更に他の炊飯器の一部拡大断面図
【図6】本願発明の土鍋を適用してなる更に他の炊飯器の一部拡大断面図
【図7】従来の土鍋を適用してなる炊飯器の概略断面図
【実施例】
【0013】
以下、添付の図面を参照して、本願発明の実施例について詳述する。図1は、本願発明の耐熱部材を取り付けてなる炊飯器全体の断面図を示し、図2にその一部拡大断面図を示す。炊飯器1は、大別して、内部に非金属鍋である土鍋4が収納される容器本体2と、該容器本体2の上部開口を開閉自在な蓋部材3とからなる。該蓋部材3は、PP等からなる樹脂製部材で、上蓋5、下蓋6、放熱板7及び内カバー8等から構成される。
【0014】
蓋部材3の中央部には、調圧蓋9が設けられ、内部圧が所定以上に上昇すると内部の蒸気を調圧蓋9に形成される蒸気通路10を介して蒸気口11より外部に放出する。更に、蓋部材3の後方側(図1の紙面垂直方向)には、既に公知のバネ材を内在した図示しないヒンジ機構が設けられ、炊飯器1の前方側(図1の紙面垂直方向)上部に設けられる図示しないロック部材の施錠ないし開錠作用により蓋部材3を容器本体2に対して開閉自在にしている。
【0015】
前記容器本体2は、外壁を形成する外ケース12、該外ケース12内にあり内壁を形成する保護枠でもある内ケース13、それら内外ケース12、13の上端部を形成する肩部材14、及び炊飯器1の底部を形成する底部材15からなる。前記外ケース12は、ステンレス等の金属製で、上下開口の円筒状部材であり、炊飯器1の胴部を形成する。なお、この外ケース12は金属製ではなく、樹脂製であっても良い。
【0016】
前記肩部材14は、樹脂製、例えばPP等からなり、容器本体2の上端部を形成し、その後方側及び外周側部には、ヒンジ機構及び取手16がそれぞれ設けられる。容器本体2の内部を形成する前記内ケース13は、後述する土鍋4とほぼ同形状の有底筒状の皿部材で、その高さは土鍋4のほぼ半分であり、その上部には、筒状で金属製、例えばステンレス製の上部ケース17が肩部材14と内ケース13とで狭持される形態で取り付けられる。その取り付けは、肩部材14と内ケース13とを図示しないビスで締結する等により行われる。
【0017】
炊飯器1の底部を形成する底部材15は、内ケース13と同様、PP等からなる樹脂製部材であり、図示しないビスにより内ケース13等に取り付けられる。底部材15は、炊飯器1の底部外殻を構成し、その前方には図示しない冷却風の吸気口が、その後方には図示しない冷却風の排気口が設けられる。
【0018】
符号18は温度センサであり、土鍋4を内ケース13内に収納すると土鍋4によって押圧される。すると温度センサ18は、制御回路を通電し、炊飯器1の加熱制御を可能にする。該温度センサ18は、公知のもので土鍋4のセット状態を検知するリードスイッチ及び土鍋4の温度を検知するサーミスタからなる。
【0019】
前記内ケース13の下面底部及び湾曲部(湾曲部近傍の側部も含む)には、それぞれ誘導加熱を行うための加熱手段である底部コイル19及び側部コイル20が配置される。これら底部コイル19及び側部コイル20はコイル台25により固定される。底部コイル19及び側部コイル20は、銅線を必要回数同心状に巻回したものを中央部と外周部に直列に接続配置したものであり、底部コイル19は土鍋4の底部に対向し、側部コイル20は土鍋4の湾曲部及びその近傍の側部に対向するように配置される。
【0020】
炊飯器1の前方空間(図1の紙面垂直方向)には、各種スイッチボタン及び表示装置等が配置される操作基板、更にはIGBT等の各種電子回路素子が取り付けられる制御基板等が設けられ、飯米等の炊飯及び保温等を実行する。
【0021】
内ケース13と該内ケース13の上部に取り付けられる上部ケース17内には、飯米等を加熱調理するための土鍋4が収納自在に配置される。該土鍋4は、磁器、陶器、工業用セラミックス等を含むセラミックスから形成される有底筒状部材であり、ほぼ平坦な底部4aと、該底部4aに続く湾曲部4bと、該湾曲部4bに続く筒状部4cからなり、底部4aと湾曲部4bとの境目には下方に若干突き出たリング状の脚4dが形成され、更に筒状部4c上端には外周方向に突き出たフランジ4eが形成される。
【0022】
また、土鍋4の底部4aと湾曲部4bの前記底部コイル19及び側部コイル20に対向する面には、図に示すように金属であり発熱部材である厚さ約10〜数十ミクロンの銀膜21が取り付けられる。この銀膜21は、底部4aのほぼ全下面と、側部コイル20に対向する湾曲部4bの下面に設けられ、銀膜21の上面は更に釉薬でカバーされる。釉薬でカバーすることにより銀膜21が保護される。
【0023】
銀膜21に変えて他の金属、例えば、鉄、或いは磁性ステンレス(SUS430)等の薄板部材を用いることもできる。土鍋4の底部4aのほぼ全下面に銀膜21を取り付けることにより、温度センサ18の先端が銀膜21に当接し、銀膜21の発熱温度を検知することができるため、従来通りの精緻な炊飯器制御を行うことができる。
【0024】
前記内ケース13は、上述したように土鍋4とほぼ同形状の有底筒状の皿部材で、その高さは土鍋4のほぼ半分程度の高さにされ、その上部には、筒状で金属製の上部ケース17が取り付けられ、両部材13、17で土鍋4のほぼ全体をその内部に収納する。なお、上部ケース17は樹脂製でも良く、また、内ケース13と上部ケース17を一体化し、1つの内ケースとしても良い。
【0025】
内ケース13は、PETからなる樹脂部材であり、土鍋4と同様に、ほぼ平坦な底部13aと、該底部13aに続く湾曲部13bとからなり、該湾曲部13b上端には外周方向に突き出た断面L字状の受け部13cが形成され、この受け部13c上に前記上部ケース17の下端が当接する。なお、内ケース13は、PET樹脂に変え高価で且つ耐熱性の高いPPS樹脂にしても良い。
【0026】
内ケース13の底部13a上面には、底部13aの外径より小さい径のリング状のリブ22が設けられる。また、該リブ22と、底部13aと湾曲部13bとの境目との間の平面視ドーナツ状の領域には、ほぼ等間隔(120度)離れてほぼ同形の3個の方形溝23が下方に窪んだ形態で設けられる。この方形溝23内には、耐熱弾性部材である方形のシリコンゴムパッキン24を圧入する。即ち、シリコンゴムパッキン24は、リブ22の外側にリブ22を壁部として利用する形態で取り付けられる。この3個の方形溝23の中心が描く円の径は、土鍋4の脚4dの中心の径とほぼ同じにされ、土鍋4を内ケース13内に収納すると、その脚4dは3個のシリコンゴムパッキン24上に載置する。
【0027】
誘導加熱は、コイル19、20と発熱部材としての銀膜21の距離を常時一定にする必要があるが、土鍋4は高熱で焼き上げる等の理由により大きさにバラツキが生じるため、土鍋4を上部のフランジ4eで支持するとコイル19、20と銀膜21との距離にバラツキが生じる。この例のものは、脚4dで土鍋4を支持しており、コイル19、20と銀膜21の距離を常時一定にすることができる。また、誘導加熱は、振動を伴うが、土鍋4をシリコンゴムパッキン24で支持することにより、土鍋4の振動を防止することができるとともに、振動に伴う騒音の発生をも防止することができる。更には、土鍋4がかけたり、割れたりする弊害も防止できる。
【0028】
符号30は、耐熱部材である結晶化ガラス製のセラミックプレートである。該セラミックプレート30は、中央に前記温度センサ18が貫通可能な孔30aを有する厚さ略3mmの円盤状部材である。該セラミックプレート30の外径は、内ケース13の底部13a上面に形成されるリブ22の径より若干小さくされており、該底部13a上面のリブ22内に載置され、シリコン系の接着剤によりリブ22内の底部13a上面に接着される。なお、セラミックプレート30が接着される内ケース13の底部13a上面には、略0.3〜0.5mmの深さの接着代を円周状或いは放射状に設けておく。このような接着剤溜まりとしての接着代を設けることによりセラミックプレート30と内ケース13との接着効果を高めることができる。なお、上記したリブ22を設けることにより、内ケース13の底部13aの外周端とリブ22との間にリング状の凹部49が形成される。そして、この凹部49をおねば溜まりとして利用することにより、吹きこぼれ時に土鍋4の外周面を伝って流下するおねばを留めて溜めることができるとともに、セラミックプレート30及び温度センサ18へのおねばの付着を防止することができる。
【0029】
また、接着時、図2に示すようにセラミックプレート30の外周面とリブ22の内周面との間に若干の隙間sを設ける。隙間sを設けることにより、セラミックプレート30の接着時、はみだした接着剤をこの隙間sに留め、はみだした接着剤がリブ22の外方に流れ出る弊害を防止することができる。なお、耐熱部材であるプレート30を吸水性のある部材を用いて形成することにより、ふきこぼれ時に発生するおねばを該耐熱プレート30で吸水し、本体内部へ漏れ出ることを防止させても良い。
【0030】
セラミックプレート30を内ケース13の底部13a上面に接着することにより、セラミックプレート30は土鍋4の底面と対向するとともに、底部コイル19とも対向する。その結果、底部コイル19により発熱部材である銀膜21は略250〜300℃にも高温に発熱するが、この高温の輻射熱はセラミックプレート30により遮熱される。そのため、内ケース13の底部13a面乃至更にその下方の部材が高温になる弊害は防止される。
【0031】
なお、内ケース13自体、断熱性を有するため、セラミックプレート30を内ケース13の底部13a上面に接着することにより、底部二重の断熱構造が形成され、内ケース13下方の電気素子等への熱影響はより低減される。そして、セラミックプレート30を発熱部材である銀膜21に対向する部分のみに用いることによりコストダウンを図ることができる。前記シリコンゴムパッキン24も耐熱部材であり、この例のものでは第1耐熱部材であるセラミックプレート30の外側である外周に、第2耐熱部材であるシリコンゴムパッキン24を設けた形態となり、シリコンゴムパッキン24の下方等への熱の影響も防止される。
【0032】
セラミックプレート30を接着した内ケース13に土鍋4を収納すると、土鍋4の脚4dはシリコンゴムパッキン24に載置するとともに、土鍋4の底部4a下面とセラミックプレート30上面との間には約2mmの空隙31を形成する。そのため、この空隙31内で加熱された空気は、対流により矢印で示すように土鍋4の外周面に沿って上動し、土鍋4を外側部より加熱する。そのため、空隙31内の熱の籠もりによる局部加熱が防止されるとともに、均等加熱に近い加熱が行われ、その分、炊飯効率等が向上する。上記のように空隙31を設けることにより、空隙31、耐熱部材30及び内ケース底部13aとで三重の断熱構造を形成するため、熱を鍋側に保持し、内ケース底部13a外への熱の移行を低減することができる。
【0033】
この実施例では、費用対効果を考慮し、出力が大きく強磁力で発熱させる底部コイル19に対向する内ケース13面のみにセラミックプレート30を設けたが、側部コイル20に対向する内ケース13面にもセラミックプレート30を設けても良い。その場合には、リング形状に形成することになる。
【0034】
図3に変形例を示す。この例のものは、セラミックプレート上に土鍋を載せ、シリコンゴムパッキンを不要にしたものである。なお、図1及び図2のものと同じものは同じ符号で示し詳細な説明は省略する。
【0035】
土鍋4は図1及び図2のものと同一であり、その底部4aと湾曲部4bの底部コイル19及び側部コイル20に対向する面には、発熱部材である厚さ約10〜数十ミクロンの銀膜21を取り付け、更に銀膜21の上面は釉薬でカバーする。
【0036】
内ケース13は、PETからなる樹脂部材であり、土鍋4と同様に、ほぼ平坦な底部13aと、該底部13aに続く湾曲部13bとからなり、該湾曲部13b上端には外周方向に突き出た断面L字状の受け部13cが形成され、この受け部13c上に上部ケース17の下端が当接する。内ケース13の底部13aの全上面は水平である。
【0037】
耐熱部材である結晶化ガラス製のセラミックプレート30は、中央に温度センサ18が貫通可能な孔30aを有する厚さ略3mmの円盤状部材であり、その外径は、内ケース13の底部13aの径より若干小さく、且つ、土鍋4の脚4dの外径と同じか若干大きくされており、内ケース13の底部13a上面に載置され、シリコン系の接着剤により底部13a上面に接着される。なお、セラミックプレート30が接着される内ケース13の底部13a上面には、略0.3〜0.5mmの深さの接着代が円周状或いは放射状に設けられる。
【0038】
セラミックプレート30を接着した内ケース13に土鍋4を収納すると、土鍋4の脚4dはセラミックプレート30の外周近傍の上面に載置し、土鍋4の底部4a下面とセラミックプレート30上面との間には約2mmの空隙31を形成する。この場合、土鍋4の脚4dがリング状であると空隙31が密閉空間となり、温度が異常に上昇する場合が生じる。そのような場合には、リング状の脚4dを複数個に分断し、その間に外部に連通する開口を形成することにより、この空隙31内で加熱された空気を図1及び図2のものと同様に土鍋4の外側面に沿って上動させ、土鍋4を外部より加熱するようにしても良い。
【0039】
この例のものでは、図1及び図2のものと同様に内ケース13等への熱影響を防止できるとともに、シリコンゴムパッキンを不要にすることができるため、それだけ安価になる。また、土鍋4を固いセラミックプレート30上面に載せるため、図1及び図2の弾性体であるシリコンゴムパッキンに載せるものに比べ、コイルと土鍋底部の発熱部材との距離をより一定にすることができるためそれだけ発熱効率が向上する。
【0040】
図4に図3の更なる変形例を示す。この例のものは、セラミックプレート上に土鍋を載せるシリコンゴムパッキンを不要にするとともに、セラミックプレートの接着工程を短時間で行なうことができるようにしたものである。なお、図1及び図2のものと同じものは同じ符号で示し詳細な説明は省略する。
【0041】
土鍋4は図1及び図2のものと同一であり、その底部4aと湾曲部4bの底部コイル19及び側部コイル20に対向する面には、発熱部材である厚さ約10〜数十ミクロンの銀膜21を取り付け、更に銀膜21の上面は釉薬でカバーする。
【0042】
内ケース13は、PETからなる樹脂部材であり、土鍋4と同様に、ほぼ平坦な底部13aと、該底部13aに続く湾曲部13bとからなり、該湾曲部13b上端には外周方向に突き出た断面L字状の受け部13cが形成され、この受け部13c上に上部ケース17の下端が当接する。内ケース13の底部13aの全上面は水平である。
【0043】
耐熱部材である結晶化ガラス製のセラミックプレート30は、中央に温度センサ18が貫通可能な孔30aを有する厚さ略3mmの円盤状部材であり、その外径は、内ケース13の底部13aの径より小さく、且つ、土鍋4の脚4dの外径より大きくされており、内ケース13の底部13a上面に載置され、シリコン系の接着剤により底部13a上面に接着される。なお、セラミックプレート30が接着される内ケース13の底部13a上面には、略0.3〜0.5mmの深さの接着代が円周状或いは放射状に設けられる。
【0044】
セラミックプレート30を接着した内ケース13に土鍋4を収納すると、土鍋4の脚4dはセラミックプレート30の外周近傍の上面に載置し、土鍋4の底部4a下面とセラミックプレート30上面との間には約2mmの空隙31を形成する。この場合、土鍋4の脚4dがリング状であると空隙31が密閉空間となり、温度が異常に上昇する場合が生じる。そのような場合には、リング状の脚4dを複数個に分断し、その間に外部に連通する開口を形成することにより、この空隙31内で加熱された空気を図1及び図2のものと同様に土鍋4の外周面に沿って上動させ、土鍋4を外部より加熱するようにしても良い。
【0045】
ところで、内ケース13の底部13a上面にセラミックプレート30をシリコン系の接着剤により接着する際、接着剤が固化するために略一日かかり、予め接着しておく必要があり、そのためには、そのための作業場所が別途必要になり作業効率が悪くなる。
【0046】
この例のものは、このような弊害をなくするものである。内ケース13の底部13a外周端には、上下に貫通した穴35が等間隔に複数個、例えば3箇所設けられる。また、上下端に反対方向に延設する係止片37、37を有する金属製または樹脂製のプレート押え36を用意し、プレート押え36を前記穴35内に挿入し、上下端に反対方向に延設する係止片37、37で内ケース13の底部13a下面と、セラミックプレート30の上端面とを狭持するものである。
【0047】
即ち、内ケース13の底部13a上面に接着剤を塗布し、セラミックプレート30を載置する。その後、穴35内に上方からプレート押え36を圧入し、上端の係止片37でセラミックプレート30の上端面を狭持するとともに、下端の係止片37を内ケース13の底部13aの下面に無理嵌めし、セラミックプレート30を固定する。そして、そのままの状態で組み立てる。このようにすることにより予め接着しておく工程が不要になり、接着工程直後に組立工程を行なうことができ、作業効率並びに生産コストを大幅に低減することができる。
【0048】
この例のものでも、図1及び図2のものと同様に内ケース13等への熱影響を防止できるとともに、シリコンゴムパッキンを不要にすることができるため、それだけ安価になる。また、土鍋4を固いセラミックプレート30の上面に載せるため、図1及び図2の弾性体であるシリコンゴムパッキンに載せるものに比べ、コイルと土鍋底部の発熱部材との距離をより一定にすることができるためそれだけ発熱効率が向上する。
【0049】
図5に図4の更なる変形例を示す。この例のものは、図4にものと同様、セラミックプレート上に土鍋を載せるシリコンゴムパッキンを不要にするとともに、セラミックプレートの接着工程を短時間で行なうことができるようにしたものである。なお、図1及び図2のものと同じものは同じ符号で示し詳細な説明は省略する。
【0050】
土鍋4は、脚4dが省略される以外は図1及び図2のものと同一であり、その底部4aと湾曲部4bの底部コイル19及び側部コイル20に対向する面には、発熱部材である厚さ約10〜数十ミクロンの銀膜21を取り付け、更に銀膜21の上面は釉薬でカバーする。
【0051】
内ケース13は、PETからなる樹脂部材であり、土鍋4と同様に、ほぼ平坦な底部13aと、該底部13aに続く湾曲部13bとからなり、該湾曲部13b上端には外周方向に突き出た断面L字状の受け部13cが形成され、この受け部13c上に上部ケース17の下端が当接する。
【0052】
耐熱部材である結晶化ガラス製のセラミックプレート30は、中央に温度センサ18が貫通可能な孔30aを有する厚さ略3mmの円盤状部材であり、その外径は、内ケース13の底部13aの径より若干小さく、且つ、土鍋4の底部4aの外径と同じか若干大きくされており、更に、その外周端部近傍には上下方向に貫通した複数個、例えば3個の穴38が設けられる。そして、内ケース13の底部13aの上面に載置され、シリコン系の接着剤により底部13aの上面に接着される。なお、セラミックプレート30の穴38が位置する内ケース13の底部13aには、穴38と同径で上下方向に貫通した複数個、例えば3個の穴39が設けられ、セラミックプレート30を内ケース13の底部13aに載置後に、穴38と穴39とは上下に貫通した状態に配置される。
【0053】
そして、穴38と穴39との間にセラミックプレート30と内ケース13の底部13aとを狭持するゴム等からなる弾性部材40を圧入する。この弾性部材40は上下に傘部40a、40aを有し、この両傘部40a、40aによりセラミックプレート30と内ケース13の底部13aとを狭持する。即ち、穴38と穴39とが上下に貫通する状態でセラミックプレート30を内ケース13の底部13aに載置後、その上方より弾性部材40を圧入する。すると一方の傘部40aは、変形しながら穴38及び穴39を通り反対側に突出し、その傘部40aは、内ケース13底部13aの下面に係止される。その結果、弾性部材40は、両傘部40a、40aによりセラミックプレート30と内ケース13の底部13aとを狭持する。
【0054】
両傘部40a、40aによりセラミックプレート30と内ケース13の底部13aとが狭持される形態では、上方の傘部40aはセラミックプレート30の上方に突出することになり、その上面に土鍋4の底部4aが土鍋4の底部4a下面とセラミックプレート30上面との間に約2mmの空隙31を形成して載置される。このようにすることにより、コイルと土鍋底部の発熱部材との距離をより一定にすることができるためそれだけ発熱効率が向上するとともに、傘部40aは弾性体のため土鍋4の収納時に土鍋4に衝撃が加わり破損等の弊害が防止される。
【0055】
なお、この例のものにおいても、空隙31は、外部に開放状態にあるため、空隙31内で加熱された空気は、矢印で示すように土鍋4の外周面に沿って上動し、土鍋4を外部より加熱する。また、この例のものにおいても、セラミックプレート30と内ケース13の底部13aとを弾性部材40で狭持後、即組み立てることができるため、生産コストを大幅に低減することができる。更に、図1及び図2のものと同様に内ケース13等への熱影響を防止できるとともに、シリコンゴムパッキン24に換えて弾性部材40を利用することができるため、それだけ安価になる。
【0056】
この例のものでは、上部ケース17の下端或いは上端に第2の弾性部材41を設ける。図5では上部ケース17の下端と内ケース13の受け部13cとで狭持される第2の弾性部材41を示す。この第2の弾性部材41は、水平部41a及び垂直部41bを有する断面L字状のゴム等の弾性部材であり、円周上に等間隔に複数個、例えば3個設けられる。
【0057】
前記水平部41aは、内方に突出しており、内ケース13に土鍋4を収納すると土鍋4の外周は、水平部41aに当接した状態で収納される。即ち、水平部41aは、土鍋4収納時の土鍋4に対する衝撃を緩和するとともに、位置決め機能を有し、更には土鍋4のセンターずれをも防止する。
【0058】
図6に更なる変形例を示す。この例のものは、図3のもの(銀膜と内ケース底部上面との距離の一定化)と図5のもの(土鍋収納時の振動及び破損等の防止)との利点を合わせ持つ土鍋の載置手段に関するものである。なお、図1及び図2のものと同じものは同じ符号で示し詳細な説明は省略する。
【0059】
土鍋4は、脚4dを有し、その底部4aと湾曲部4bの底部コイル19及び側部コイル20に対向する面には、発熱部材である厚さ約10〜数十ミクロンの銀膜21を取り付け、更に銀膜21の上面は釉薬でカバーする。
【0060】
内ケース13は、PETからなる樹脂部材であり、土鍋4と同様に、ほぼ平坦な底部13aと、該底部13aに続く湾曲部13bとからなり、該湾曲部13b上端には外周方向に突き出た断面L字状の受け部13cが形成され、この受け部13c上に上部ケース17の下端が当接する。また、内ケース13の中央に設けられ温度センサ18が貫通する中央開口13dの内周端には、後記の内側ゴムパッキン45が嵌合可能な段部46が形成され、底部13aの外端部の上面には、後記の外側ゴムパッキン47が嵌入可能な嵌合溝48が形成される。
【0061】
前記内側ゴムパッキン45は、シリコンゴム等の耐熱性の部材であり、全体はリング状でその外周側部には断面コ字状の凹部45aが形成され、組立時に、内ケース13の中央開口13dの内周端に形成される段部46に内側ゴムパッキン45の凹部45aを嵌入する形態で取り付けられる。取り付けられた状態では、内側ゴムパッキン45の上面は水平部45bを有し、この水平部45bに土鍋4底部の水平な面を載置する。
【0062】
耐熱部材である結晶化ガラス製のセラミックプレート30は、中央に温度センサ18及び内側ゴムパッキン45が貫通可能な図1及び図2のものより大径な孔30aを有する厚さ略3mmの円盤状部材であり、その外径は、内ケース13の底部13aの径より小さく、且つ、土鍋4の脚4dの外径より大きくされる。そして、内ケース13の底部13a上面に載置され、シリコン系の接着剤により底部13a上面に接着される。
【0063】
なお、セラミックプレート30が内ケース13の底部13a上面に接着される前にセラミックプレート30の外周端に外側ゴムパッキン47が取り付けられる。この外側ゴムパッキン47は、内側ゴムパッキン45と同様シリコンゴム等の耐熱性の部材であり、全体はリング状でその内周側部には断面コ字状の凹部47aが形成され、組立時に、セラミックプレート30の外周端に凹部47aを嵌入する形態で取り付けられる。取り付けられた状態では、外側ゴムパッキン47の上面には傾斜部47bを有し、この傾斜部47bに土鍋4の湾曲した側面が載置する。
【0064】
土鍋4を内ケース13に収納すると、内側ゴムパッキン45の上面の水平部45bに土鍋4底部4aの水平面が載置し、外側ゴムパッキン47の上面の傾斜部47bに土鍋4の湾曲した側面が載置するとともに、土鍋4の脚4dは、セラミックプレート30の上面に当接或いはほぼ当接した状態にされる。そのため、内側ゴムパッキン45及び外側ゴムパッキン47により、土鍋4の収納時、振動等による衝撃により土鍋4が破損する等の弊害が防止され、更に、土鍋4の脚4dはセラミックプレート30の上面にほぼ当接した状態等になるため、コイルと土鍋底部の発熱部材との距離を一定にすることができそれだけ発熱効率が向上する。
【0065】
なお、この例のものも図5のものと同様に、上部ケース17の下端或いは上端に第2の弾性部材41を設ける。図6も上部ケース17の下端と内ケース13の受け部13cとで狭持される第2の弾性部材41を示す。この第2の弾性部材41は、水平部41a及び垂直部41bを有する断面L字状のゴム等の弾性部材であり、円周上の等間隔に複数個、例えば3個設けられる。
【0066】
前記水平部41aは、内方に突出しており、内ケース13に土鍋4を収納すると土鍋4の外周は、水平部41aに当接した状態で収納される。即ち、水平部41aは、土鍋4収納時の土鍋4に対する衝撃を緩和するとともに、位置決め機能を有し、更には土鍋4のセンターずれをも防止する。
【0067】
本願発明は、上記実施例の構成に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜設計変更可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0068】
1…炊飯器 2…容器本体
3…蓋部材 4…土鍋
4a…底部 4b…湾曲部
4c…筒状部 4d…脚
4e…フランジ 5…上蓋
6…下蓋 7…放熱板
8…内カバー 9…調圧蓋
10…蒸気通路 11…蒸気口
12…外ケース 13…内ケース
13a…底部 13b…湾曲部
13c…受け部 13d…中央開口
14…肩部材 15…底部材
16…取手 17…上部ケース
18…温度センサ 19…底部コイル
20…側部コイル 21…銀膜
22…リブ 23…方形溝
24…シリコンゴムパッキン 25…コイル台
30…セラミックプレート 30a…孔
31…空隙 35,38,39…穴
36…プレート押え 37…係止片
40…弾性部材 40a…傘部
41…第2の弾性部材 41a…水平部
41b…垂直部 45…内側ゴムパッキン
45a…凹部 45b…水平部
46…段部 47…外側ゴムパッキン
47a…凹部 47b…傾斜部
48…嵌合溝 49…凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内壁を形成する内ケースと、外壁を形成する容器本体と、該容器本体に対し開閉自在な蓋部材と、前記内ケースと前記容器本体の間に設けられる誘導加熱式の加熱手段と、前記内ケース内に収納される土鍋を有する炊飯器において、
前記加熱手段は、前記土鍋の底部に対向する底部コイルと、前記土鍋の湾曲部に対向する側部コイルを有し、
前記内ケースの底部上面であって、前記底部コイルに対向する位置に、前記土鍋底部との間に空隙を有して耐熱部材を取り付け、
前記空隙は外部と連通し、前記加熱手段の加熱時、前記空隙で加熱された空気が対流により上動し前記土鍋の外側部を加熱することを特徴とする炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−250071(P2012−250071A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−202178(P2012−202178)
【出願日】平成24年9月14日(2012.9.14)
【分割の表示】特願2006−49501(P2006−49501)の分割
【原出願日】平成18年2月27日(2006.2.27)
【出願人】(000003702)タイガー魔法瓶株式会社 (509)
【Fターム(参考)】