説明

炊飯器

【課題】蒸気通路部の空間へのおねばの溜まりを低減させてお手入れ性を向上させ、炊飯時と保温時の蓋を開けて外蓋を閉じる時に蒸気通路部から水滴がご飯への滴下の低減する炊飯器を提供することを目的とする。
【解決手段】蓋体3の上面部を構成する外蓋5に蒸気孔6を設けるとともに蒸気孔6を囲むように外蓋下面側に円筒状壁B7を設け、蒸気通路部11の円筒状壁B7の端面のパッキン8と離間して装備される弁ホルダー12を備え、この弁ホルダー12は、円筒状壁B7の中空体からなり下面を塞ぐように弁13を設け、円筒状壁B7の端面のパッキン8において少なくともヒンジ側の一部のパッキン凸部8aは、弁ホルダー12の外面に他の部分より近接するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般家庭などで使用される炊飯器用ふきこぼれ防止弁および蒸気通路部に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の炊飯器において、鍋を収納する炊飯器本体の上面開口部を覆う蓋体と、蓋体の下方に設けた加熱板とを備え、蓋体には蒸気筒を配設した蒸気経路を、加熱板には蒸気穴をそれぞれ設け、ふきこぼれ防止弁を設けることにより、炊飯中に発生する鍋内の蒸気やおねばに対応したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図6は、特許文献1に記載された炊飯器用ふきこぼれ防止弁を示すものである。図6に示すように、調理器本体21と、調理器本体21内に着脱自在に収納される鍋22と、調理器本体21の上面開口部を開閉自在に覆う蓋体23と、蓋体23の上面を構成する外蓋25の蒸気孔210の周囲と蓋体23の内面を構成する蓋カバ−26の蒸気孔211の周囲との間に設けた筒状壁213と、筒状213壁内で蓋カバ−26の蒸気孔211部に設けた蒸気筒212とを備え、蒸気筒212は側壁上部に排気口214と、下面の内方に開口する通気口215と、排気口214の上側に設けたひさし部216から構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−154819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記図6の従来の構成では、炊飯中に鍋22内より発生した泡状のおねばは、蒸気の流れとともに、蒸気筒212の下面にある通気口215を通り、側壁上部の排気口214から排出されるが、通気口215や排気口214の上側のひさし部216や筒状壁213や外蓋25下面は温度が鍋22内より低いため、泡状のおねばは、通気口215や排気口214の上側のひさし部216や筒状壁213や外蓋25下面で冷やされて、消泡され液状のおねばとなり、蒸気の流れとは逆に上から下に流れて通気口215から鍋22内に戻ったり、パッキン29と蓋カバ−26と蒸気筒212によって構成される空間部に溜まることにより、おねばが乾燥して固着しとれにくくなり、お手入れがし難しいという課題を有していた。
【0006】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、蒸気通路の空間部に溜まる液状のおねばを少なくして、蒸気通路の空間部のお手入れ性を向上させつつ、炊飯時と保温時に外蓋を開けて閉じる時に蒸気通路部から水滴がご飯への滴下の低減する炊飯器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記従来の課題を解決するために、本発明の炊飯器は、蓋体の上面部を構成する外蓋に設けられた蒸気孔と、前記蒸気孔を囲むように外蓋下面側に設けられた円筒状壁と、前記円筒状壁の端面に配設されたリング状パッキンと、前記蓋体の下方に設けられ鍋の上面開口部を覆い蒸気穴を有した加熱板と、前記円筒状壁の内側に設けられその下面を塞ぐ弁を有した円筒状中空体の弁ホルダーとを備え、前記リング状パッキンにおいて少なくともヒンジ側の一部は前記弁ホルダーの外面に他の部分より近接するように構成したものである。
【0008】
これによって、リング状パッキンを加熱板に設けた蒸気穴の外周部で圧接して形成した蒸気通路部と円筒状壁の端面のリング状パッキンと離間して装備される弁ホルダーとの空間部に溜まる液状のおねばは、リング状パッキンと弁ホルダーの隙間より鍋内に還流してしまうので、おねばが乾燥して固着しとれにくくなりことは少なくなりお手入れ性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の炊飯器は、蒸気通路部のお手入れ性を向上させるとともに、蓋開閉時の露滴下を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態1における炊飯器を示す断面図
【図2】本発明の実施の形態1における炊飯器の蒸気通路部の断面図
【図3】本発明の実施の形態1における炊飯器を示す要部断面図
【図4】本発明の実施の形態2における炊飯器を示す断面図
【図5】本発明の実施の形態2における炊飯器の蒸気通路部の断面図
【図6】従来例における炊飯器の要部断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
第1の発明は、鍋を収納する上面開口の炊飯器本体と、前記炊飯器本体の上面開口部を開閉自在に覆う蓋体と、前記蓋体を前記炊飯器本体に対し開閉自在に軸支するヒンジ部と、前記蓋体の係止手段と、前記蓋体の上面部を構成する外蓋に設けられた蒸気孔と、前記蒸気孔を囲むように外蓋下面側に設けられた円筒状壁と、前記円筒状壁の端面に配設されたリング状パッキンと、前記蓋体の下方に設けられ前記鍋の上面開口部を覆い蒸気穴を有した加熱板と、前記円筒状壁の内側に設けられその下面を塞ぐ弁を有した円筒状中空体の弁ホルダーとを備え、前記リング状パッキンにおいて少なくともヒンジ側の一部は前記弁ホルダーの外面に他の部分より近接するようにしたことにより、炊飯中に鍋内より発生した蒸気は、外蓋の蒸気孔を囲む外蓋下面側の円筒状壁の端面のリング状パッキンに離間して装備される弁ホルダーとの隙間から弁ホルダー外面に沿って下方から上方に流れ、外蓋下面に到達した後、外蓋の蒸気孔より炊飯器本体外に排出される。
【0012】
また、炊飯中に鍋内より発生した泡状のおねばは、蒸気の流れとともに、弁ホルダー外面に沿って下方から上方に流れるが、おねばは粘度があるため蒸気の流れとは逆に上から下に流れて鍋内に戻ったり、弁ホルダー内部に溜まり消泡され液状のおねばとなり、おねばの自重で弁が下がり鍋内に還流されることにより炊飯器本体外へのふきこぼれを防止でき、蒸気通路部におねばが乾燥して固着しとれにくくなりことは少なくなりお手入れ性を向上させることができる。
【0013】
また、外蓋下面側の円筒状壁の端面のリング状パッキンにおいて少なくともヒンジ側の一部を弁ホルダーの外面の他の部分より近接するようにして空間が形成されるので、炊飯時や保温時に外蓋に設けた円筒状壁に露が付着しても空間に露を溜めることができるので、蓋開閉時の露滴下を低減させることができる。
【0014】
また、保温時には、弁ホルダーの下面を弁で塞ぎ、円筒状壁の端面のリング状パッキンにおいて少なくともヒンジ側の一部を弁ホルダーの外面の他の部分より近接させて設けているので、鍋内のご飯の熱は空気を媒体として炊飯器本体外には伝わりにくい。したがって、鍋内のご飯温度は外気の影響を受けにくく温度が維持され、鍋内の湿気も炊飯器本体外に出にくく、ご飯の乾燥が防止できる。
【0015】
第2の発明は、特に、第1の発明において、円筒状壁のヒンジ部側内面の上部から下部にリブを設け、前記リブの先端は弁ホルダーの外面に近接するようにすることにより、蒸気通路部に4方向が囲われた空間を形成することにより、保温時に円筒状壁の蒸気通路部に露が付着しても4方向が囲われた空間に露を溜めることができるので、蓋開閉時の露滴下を低減させることができる。
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0017】
(実施の形態1)
図1、図2、図3は、本発明の実施の形態1における炊飯器を示すものである。図において、1は米と水を入れる鍋で、2は鍋1を着脱自在に上面開口した炊飯器本体、3は炊飯器本体2の上面開口部を開閉自在に覆う蓋体、この蓋体3には炊飯器本体2に対し開閉自在に出来るように炊飯器本体2の後方で軸支するヒンジ部4があり、蓋体3を係止する手段を炊飯器本体2の前方に備えている。蓋体3の上面部を構成する合成樹脂製の外蓋5に蒸気孔6を設けている。蒸気孔6を囲むように外蓋5の下面側に円筒状壁A7aを設け、さらに円筒状壁A7aの外方に円筒状壁B7を設けて、円筒状壁B7の端面に合成ゴム製のパッキン8の凹部に嵌合させている。蓋体3の下方には鍋1の上面開口部を覆うように設けたアルミニウム製の加熱板9を設け、加熱板9には、加熱用の蓋ヒータ15と外蓋の蒸気孔6と同位置に鍋1内の蒸気を外部に導く蒸気穴10を設けている。パッキン8は、加熱板9に設けた蒸気穴10の外周部の平面で圧接して、蓋体3の内部に蒸気が漏れないように密閉するとともに、炊飯中に鍋1内から発生する蒸気を外蓋5の蒸気孔6から炊飯器本体2の外へ排出するように蒸気通路部11を構成している。蓋体3の内部には、蒸気通路部11を囲むように断熱材16を配置している。12は弁ホルダーで、合成樹脂製の円筒状壁C12aの中空体で、下面の開口部を設け十字状のリブの中央で係止され下面を塞ぐように弁13で構成されている。
【0018】
リブa14aは、外蓋5の下面側の円筒状壁A7aと円筒状壁B7の間で設けてあり、加熱板の蒸気穴10より蒸気通路部11に装備される弁ホルダー12の先端が、外蓋5の下面側のリブa14aに当接して、弁ホルダー12の円筒状壁C12aの外周にパッキン8と同じ位置の均等な4か所に凸部を設けて、パッキン8と係合させることで、弁ホルダー12とパッキン8に隙間を設けている。また、パッキン8の少なくともヒンジ側の一部にパッキン凸部8aを設け、弁ホルダー12の円筒状壁C12aに近接させる構成にしている。
【0019】
以上のように構成された炊飯器について、以下その動作、作用を説明する。まず、上記構成において炊飯を行うと、炊飯中に鍋1内より発生した蒸気は、外蓋5の蒸気孔6を囲む外蓋下面側の円筒状壁B7の端面のパッキン8に離間して装備される弁ホルダー12との隙間から弁ホルダー12外面に沿って蒸気通路部11の下方から上方に流れ、外蓋5下面に到達した後、円筒状壁A7aに沿って下方に流れて、外蓋5の蒸気孔6より炊飯器本体2の外方に排出される。また、炊飯中に鍋1内より発生した泡状のおねばは、蒸気の流れとともに、弁ホルダー12外面に沿って蒸気通路部11の下方から上方に流れ、外蓋5下面に到達した後、円筒状壁A7aに沿って下方に流れて、粘度があるため弁ホルダー12内部に溜まり消泡され液状のおねばとなる。溜まった液状のおねばの自重で弁ホルダー12の下面の弁13が下がり、鍋1内に還流されることにより炊飯器本体2外方へのふきこぼれる量を低減させることができる。また、おねばは、弁ホルダー12外面に沿って蒸気通路部11の下方から上方に流れるが、おねばの自重により蒸気の流れとは逆に上から下に流れて、パッキン8と弁ホルダー12の隙間より鍋1内に直接戻るので、蒸気通路部11におねばが乾燥して固着しとれにくくなりことは少なくなり、弁ホルダー12を取り外して、布巾などで拭き取ることができ、お手入れ性を向上させることができる。これは、設計水量より多くの水を加水された場合でも、同様の効果を得ることができる。
【0020】
また、炊飯時や保温時に、外蓋5の蒸気孔6を囲む外蓋下面側に設けた円筒状壁B7に露が付着しても、外蓋5を開ける場合、ほとんどの露は、外蓋下面側の円筒状壁B7の端面のパッキン8に離間して装備される弁ホルダー12との隙間から鍋1内に滴下させることができるが、外蓋5が全開になっても鍋1内に滴下しなかった露は、ヒンジ側のパッキン8の少なくともヒンジ側の一部にパッキン凸部8aが、弁ホルダー12の円筒状壁C12aに近接し空間を形成しているので、その空間に溜めて、蓋開閉時の露滴下を低減させることができる。
【0021】
また、保温時には、弁ホルダー12の下面を弁13で塞ぎ、円筒状壁B7の端面のパッキン凸部8aにおいて少なくともヒンジ側の一部を弁ホルダー12の外面の他の部分より近接させて設けているので、鍋1内のご飯の熱は空気を媒体として炊飯器本体2外方には伝わりにくい。したがって、鍋1内のご飯温度は外気の影響を受けにくく温度が維持され、鍋1内の湿気も炊飯器本体2の外方に出にくく、ご飯の乾燥が防止できる。
【0022】
(実施の形態2)
図4、図5は、本発明の実施の形態2における炊飯器を示すものである。炊飯器の構成は、実施の形態1と同様であるのでその説明を省略し、相違点を中心に説明する。
【0023】
パッキン8の少なくともヒンジ側の一部に設けたパッキン凸部8aの両端と同じ位置になるように、外蓋5の下面側の円筒状壁A7aと円筒状壁B7の間にリブa14aを2個所設けて、蒸気通路部11の円筒状壁B7に沿ってリブa14aの先端からパッキン凸部8aの端部までリブ14を設け、パッキン凸部8aは弁ホルダー12の円筒状壁C12aに近接させており、リブa14aの高さはパッキン凸部8aと同じ高さになるように設けて、蒸気通路部11のヒンジ側に4方向が囲われた空間を形成するように構成にしている。
【0024】
以上のように構成された炊飯器について、以下その動作、作用を説明する。まず、上記構成において炊飯を行うと、炊飯時や保温時に、外蓋5の蒸気孔6を囲む外蓋下面側に設けた円筒状壁B7に露が付着しても、外蓋5を開ける場合、ほとんどの露は、リブa14aからリブ14に沿って、外蓋下面側の円筒状壁B7の端面のパッキン8に離間して装備される弁ホルダー12との隙間から鍋1内に滴下させることができるが、外蓋5が全開になっても鍋1内に滴下しなかった露は、蒸気通路部11のヒンジ側に4方向が囲われた空間に確実に溜めることができるようになるので、蓋開閉時の露滴下を低減させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
以上のように、本発明にかかる炊飯器は、蒸気通路部のお手入れ性を向上させるとともに、蓋開閉時の露滴下を少なくすることができるので、家庭用のみならず業務用の炊飯器の用途にも応用できる。
【符号の説明】
【0026】
1 鍋
2 炊飯器本体
3 蓋体
4 ヒンジ部
5 外蓋
6 蒸気孔
7 円筒状壁B
7a 円筒状壁A
8 パッキン
8a パッキン凸部
9 加熱板
10 蒸気穴
11 蒸気通路部
12 弁ホルダー
12a 円筒状壁C
13 弁
14 リブ
14a リブa
15 蓋ヒータ
16 断熱材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍋を収納する上面開口の炊飯器本体と、
前記炊飯器本体の上面開口部を開閉自在に覆う蓋体と、
前記蓋体を前記炊飯器本体に対し開閉自在に軸支するヒンジ部と、
前記蓋体の係止手段と、
前記蓋体の上面部を構成する外蓋に設けられた蒸気孔と、
前記蒸気孔を囲むように外蓋下面側に設けられた円筒状壁と、
前記円筒状壁の端面に配設されたリング状パッキンと、
前記蓋体の下方に設けられ前記鍋の上面開口部を覆い蒸気穴を有した加熱板と、
前記円筒状壁の内側に設けられその下面を塞ぐ弁を有した円筒状中空体の弁ホルダーとを備え、
前記リング状パッキンにおいて少なくともヒンジ側の一部は前記弁ホルダーの外面に他の部分より近接するように構成した炊飯器。
【請求項2】
前記円筒状壁のヒンジ部側内面の上部から下部にリブを設け、前記リブの先端は弁ホルダーの外面に近接するように構成した請求項1記載の炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−111334(P2013−111334A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261409(P2011−261409)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】