説明

炊飯器

【課題】炊飯量に応じた炊飯制御を実行し、炊飯量が少ない場合でも硬化や褐変を生じさせにくく、また、食味のよい米飯を炊き上げることのできる炊飯器を得る。
【解決手段】炊飯量を判定する炊飯量判定手段と、加熱コイル3を駆動制御して沸騰維持工程とドライアップ工程と蒸らし工程とを含む炊飯工程を実行する制御手段8とを備え、炊飯量判定手段が鍋状容器5内の炊飯量を少量炊飯量であると判定した場合において、制御手段8は、ドライアップ工程におけるドライアップ判定温度T2aを、多量炊飯時におけるドライアップ判定温度T2よりも低く設定し、蒸らし工程の時間t5aを多量炊飯時の蒸らし工程の時間t5よりも長く設定し、沸騰維持工程の時間t1aを多量炊飯時の沸騰維持工程の時間t1と同等以上の長さに設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米等の食品を入れた鍋状容器を本体内に収容して加熱調理する炊飯器に関する。
【背景技術】
【0002】
米飯の美味しさには、食感、特に硬さが大きく影響する。そして、鍋に接している米飯は、鍋温度の影響を受けやすい。
例えば、炊飯工程の後半で行われるドライアップ工程(鍋内の余剰な水分を飛ばす工程)においては、鍋が高温に保持されるため、米飯内の水分が過剰に蒸発してしまい、いわゆる「カピカピ」の状態の硬い米飯になる可能性がある(硬化)。また、鍋が高温に保持されることで、米飯が黄色から茶色の状態に色づいてしまうこともある(褐変)。このような硬化や褐変の程度がひどいときには、「おこげ」や「焦げ」といった状態になる。
この硬化や褐変という現象は、鍋に接している米飯、特に加熱手段に近い鍋底部に接している米飯に顕著に発生する。
【0003】
炊飯量が多い場合は、全米飯量に対して鍋に接している米飯の割合が少ないため、炊き上がり後に使用者が鍋内の米飯全体を混ぜ合わせることで、硬化や褐変がほとんど分からなくなりうる。しかし、炊飯量が少ない場合は、全米飯量に対して鍋に接している米飯の割合が多いため、たとえ、炊き上がり後に使用者が鍋内の米飯全体を混ぜ合わせたとしても、褐変や硬化した米飯の存在が際だってしまうために、炊き上がりの米飯が美味しくないと感じられる場合があった。
このため、炊飯量に応じた炊飯制御を実行できる炊飯器が望まれている。
【0004】
そこで従来、炊飯量に応じた炊飯制御を実行する炊飯器として、炊飯量が少ない場合には、炊飯量が多い場合よりも炊き上げ工程(沸騰維持工程)の時間を長くするとともに炊き上がり終了温度を低くするという技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、この特許文献1には、炊飯量が少ない場合には、炊飯量が多い場合よりも蒸らし工程における追い炊き時のパワーも低く設定する旨の記載もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第352559号公報(第3頁、図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の炊飯器では、炊飯量が少ない場合には、炊飯量が多い場合よりも炊き上がり終了温度(ドライアップ判定温度)が低い分、鍋内に蒸発しきれない余剰な水分が残存しうる。米に十分に吸水されない遊離した水分が鍋内に残ると、飯粒表層がべちゃついた状態になるため、炊き上がりの米飯の食味が低下するという問題があった。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、炊飯量に応じた炊飯制御を実行し、炊飯量が少ない場合でも硬化や褐変を生じさせにくくして、食味のよい米飯を炊き上げることのできる炊飯器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る炊飯器は、本体と、前記本体に収容される鍋状容器と、前記鍋状容器の開口部を覆う蓋と、前記鍋状容器を加熱する加熱手段と、炊飯量を判定する炊飯量判定手段と、前記加熱手段を駆動制御して沸騰維持工程とドライアップ工程と蒸らし工程とを含む炊飯工程を実行する制御手段とを備え、前記炊飯量判定手段が、前記鍋状容器内の炊飯量を所定量以下の少量炊飯量であると判定した場合において、前記制御手段は、前記ドライアップ工程におけるドライアップ判定温度を、前記少量炊飯量より多い炊飯量を炊飯する多量炊飯時よりも低く設定し、前記蒸らし工程の時間を、前記多量炊飯時よりも長く設定し、前記沸騰維持工程の時間を、前記多量炊飯時と同等以上の長さに設定するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、少量の炊飯を行う場合でも、鍋状容器に接している部分の米飯に硬化や褐変が生じにくく、米飯を美味しい状態に炊き上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施の形態1に係る炊飯器の構成を示す断面模式図である。
【図2】実施の形態1に係る炊飯器の操作/表示部の正面図である。
【図3】実施の形態1に係る多量炊飯時の炊飯工程における、鍋状容器の内部温度及び鍋状容器温度の推移と、加熱コイルへの通電電力を示す図である。
【図4】実施の形態1に係る少量炊飯時の炊飯工程における、鍋状容器の内部温度及び鍋状容器温度の推移と、加熱コイルへの通電電力を示す図である。
【図5】実施の形態1に係る炊飯器の炊飯動作を説明するフローチャートである。
【図6】実施の形態2に係る少量炊飯時の炊飯工程における、鍋状容器の内部温度及び鍋状容器温度の推移と、加熱コイルへの通電電力を示す図である。
【図7】実施の形態2に係る炊飯器の炊飯動作を説明するフローチャートである。
【図8】実施の形態3に係る少量炊飯時の炊飯工程における、鍋状容器の内部温度及び鍋状容器温度の推移と、加熱コイルへの通電電力を示す図である。
【図9】実施の形態3に係る炊飯器の炊飯動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る炊飯器の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0012】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る炊飯器の構成を示す断面模式図である。
図1において、炊飯器100は、例えば外観が有底筒状に形成された本体1と、蓋体10とを備えている。蓋体10は、外蓋10aと内蓋10bとを有する。本体1は、容器カバー2と、加熱手段としての加熱コイル3と、鍋底温度センサー4と、蓋体を開閉自在に支持するヒンジ部6と、時間計測手段7と、制御手段8とを備えている。なお、加熱手段として、加熱コイル3に代えてシーズヒーター等の電気ヒーターを設けてもよい。
【0013】
容器カバー2は、有底筒状に形成されていて、その内部に鍋状容器5が着脱自在に収容される。容器カバー2の底部中央には、鍋底温度センサー4を挿入させる孔部2aが設けられている。鍋底温度センサー4は、例えばサーミスタからなる。鍋底温度センサー4は、バネ等の弾性手段によって上方に付勢されており、容器カバー2に収容された鍋状容器5の底面に接するように構成されている。鍋底温度センサー4が検知した鍋状容器5の温度に関する情報は、制御手段8に出力される。
【0014】
外蓋10aの上面には、操作/表示部13が設けられている。また、外蓋10aと内蓋10bとを貫通する取付部に、カートリッジ12が着脱自在に取り付けられている。このカートリッジ12には、炊飯中に発生する蒸気圧に応じて上下動する弁を備えた蒸気取入口12aと、蒸気取入口12aの弁を通過した蒸気を外部へ排出する蒸気排出口12bとが設けられている。
【0015】
内蓋10bは、外蓋10aの本体1側の面に係止材11を介して取り付けられている。内蓋10bの周縁部には、鍋状容器5の上端部外周に形成されたフランジ部5aとの密閉性を確保するためのシール材の蓋パッキン9が取り付けられている。また、内蓋10bには、鍋状容器5内の温度を検知する例えばサーミスタからなる内部温度センサー14が取り付けられている。内部温度センサー14が検知した鍋状容器5内の温度に関する情報は、制御手段8に出力される。
【0016】
本体1の底部には、鍋状容器5の重量を検出する重量センサー15が設けられている。重量センサー15は、鍋状容器5が空の状態をゼロ点とし、鍋状容器5の中に入れられた米、水の量を検出する。重量センサー15の検出値は、制御手段8に出力される。
【0017】
時間計測手段7は、制御手段8に指示されて経過時間をカウントする。時間計測手段7がカウントした経過時間は、制御手段8に出力される。
【0018】
制御手段8は、鍋底温度センサー4、操作/表示部13、及び内部温度センサー14からの出力と、重量センサー15の検出値から判定した炊飯量とに基づいて、加熱コイル3へ通電する高周波電流を制御するほか、炊飯器の動作全般を制御する。制御手段8による炊飯量の判定は、例えば、重量センサー15の検出値(重量)を、図示しない記憶手段に予め格納された重量と炊飯量との対応表に照らし合わせることで行うことができる。なお、本実施の形態1において本発明の炊飯量判定手段は、重量センサー15と制御手段8に相当する。
制御手段8は、その機能を実現する回路デバイスのようなハードウェアで構成することもできるし、マイコンやCPUのような演算装置と、その上で実行されるソフトウェアとにより構成することもできる。
【0019】
次に、操作/表示部13について説明する。
図2は、実施の形態1に係る炊飯器の操作/表示部13の正面図である。操作/表示部13のほぼ中央には、液晶表示板31が配置されている。液晶表示板31には、時刻と、米種表示32と、硬さ表示33と、メニュー表示34とが表示される。また、液晶表示板31の紙面左側には、米種スイッチ35と、硬さスイッチ36と、メニュースイッチ37と、切/保温スイッチ38が設けられ、液晶表示板31の紙面右側には、炊飯スイッチ39と、予約スイッチ40と、時刻スイッチ41とが設けられている。なお、図2で示す米種、硬さ、メニュー等の具体的名称や項目数等は一例であり、図示したものに限定されない。
【0020】
米種スイッチ35は、炊飯する米の種類を設定するための入力手段である。米種スイッチ35が押下される度に、これに対応して米種表示32の表示が「白米」、「無洗米」、「発芽玄米」、「玄米」に切り替わる。米種スイッチ35により設定された米の種類に関する情報は、制御手段8に出力される。
【0021】
硬さスイッチ36は、炊き上がりの硬さを設定するための入力手段である。硬さスイッチ36が押下される度に、これに対応して硬さ表示33の表示が「ふつう」、「かため」、「やわらか」に切り替わる。硬さスイッチ36に入力された炊き上がりの硬さに関する情報は、制御手段8に出力され、制御手段8が炊き上がりの硬さを選択する。
【0022】
メニュースイッチ37は、炊飯メニューを設定するための入力手段である。メニュースイッチ37が押下される度に、これに対応してメニュー表示34の表示が「早炊き」、「おかゆ」、「炊き込み」に切り替わる。また、メニュースイッチ37により設定された炊飯メニューに関する情報は、制御手段8に出力される。
【0023】
切/保温スイッチ38は保温動作の終了/開始を切り替えるための入力手段、炊飯スイッチ39は炊飯開始を指示するための入力手段、予約スイッチ40は炊飯予約を設定するための入力手段、時刻スイッチ41は現在時刻や予約時刻などの時刻を設定するための入力手段である。切/保温スイッチ38、炊飯スイッチ39、予約スイッチ40、時刻スイッチ41により設定された情報は、制御手段8に出力される。
【0024】
次に、本実施の形態1に係る炊飯器の炊飯工程の動作について説明する。
前述のように本実施の形態1に係る炊飯器は、米の種類、炊き上がりの硬さ、炊飯メニューの設定が可能であり、設定されたこれらの条件に基づいて、制御手段8が加熱コイル3への通電を制御して炊飯工程を実行するものである。さらに、本実施の形態1に係る炊飯器は、これらの設定された各種条件での炊飯工程において、炊飯量(少量炊飯/多量炊飯)に基づいて、動作制御を行うものである。以下、本実施の形態1に係る炊飯工程の動作を、炊飯量(少量炊飯/多量炊飯)に基づく動作制御に着目して説明する。
【0025】
図3は、実施の形態1に係る多量炊飯時の炊飯工程における、鍋状容器5の内部温度及び鍋状容器温度の推移と、加熱コイル3への通電電力を示す図であり、図4は、実施の形態1に係る少量炊飯時の炊飯工程における、鍋状容器5の内部温度及び鍋状容器温度の推移と、加熱コイル3への通電電力を示す図である。また、図5は、実施の形態1に係る炊飯器の炊飯工程を説明するフローチャートである。以下、実施の形態1に係る炊飯器の炊飯工程の動作を、適宜図3〜図5を参照して説明する。
【0026】
まず、炊飯工程を構成する各工程について大まかに説明する。
図3〜図5に示すように、本実施の形態1に係る炊飯器の炊飯工程は、予熱工程(図5のステップS2、ステップS8)、昇温工程(図5のステップS3、ステップS9)、沸騰維持工程(図5のステップS4、ステップS10)、ドライアップ工程、及び蒸らし工程(図5のステップS7、ステップS13)により構成される。また、ドライアップ工程は、ドライアップ前工程(図5のステップS5、ステップS11)とドライアップ後工程(図5のステップS6、ステップS12)からなる。
【0027】
予熱工程とは、鍋状容器5内の水が沸騰する前の段階で、鍋状容器5を所定温度で所定時間加熱し、これによって米の吸水を促進し、甘味成分である糖や旨味成分であるアミノ酸などの呈味成分を生成する工程である。予熱工程では、制御手段8は、鍋状容器5の温度が所定の予熱温度T3となるよう、加熱コイル3への通電と電力遮断を繰り返して温調する。ここで、予熱温度T3は、米の糊化が始まらない程度の温度に鍋状容器5内の水の温度を維持することのできる温度(例えば約60℃未満)である。
【0028】
昇温工程とは、予熱工程終了後から、鍋状容器5内の水が沸騰するまでの工程である。鍋状容器5内の水が沸騰すると、沸騰維持工程に入る。
沸騰維持工程では、水の沸騰が維持され、これにより米の澱粉の糊化が促進される。
【0029】
ドライアップ工程とは、余剰な水分を飛ばすための工程である。鍋状容器5内に余剰な水がなくなってドライアップ状態となったことを判定する温度(ドライアップ判定温度)に到達するまでの工程をドライアップ前工程、その後の工程をドライアップ後工程と称する。ドライアップ前工程においては、鍋状容器5内に遊離している余剰な水分が減っていくため、鍋状容器5の温度は沸騰維持工程のときよりも高温となる。ドライアップ前工程において、鍋状容器5がドライアップ判定温度(図3における温度T2、図4における温度T2a)に到達すると、ドライアップ後工程に移行する。ドライアップ後工程においても、鍋状容器5は沸騰温度以上の高温を保持している。そして、ドライアップ後工程で鍋状容器5が沸騰温度T1よりも低くなったら、蒸らし工程に移行し、蒸らし工程において所定時間が経過すると炊飯が終了する。
【0030】
ここで、ドライアップ工程においては、鍋状容器5は沸騰温度以上の高温であるため、鍋状容器5内の米飯、特に鍋状容器5に接している部分の米飯の水分の蒸発が進みやすい。ドライアップ工程の時間が長いほど、そして、前述のドライアップ判定温度の温度が高いほど、褐変や硬化といった反応は進みやすい。特に、前述のドライアップ判定温度の温度が高いほど、鍋状容器5に接している米飯は褐変が進む傾向がある。また、ドライアップ工程の時間が長いほど、鍋状容器5に接している米飯の水分が飛んで「カピカピ」の状態となって硬化する傾向がある。
【0031】
次に、図5に沿って、本実施の形態1に係る炊飯器の炊飯動作についてさらに説明する。使用者が、所定量の米とその米量に応じた水量の水を入れた鍋状容器5を本体1内の容器カバー2に収納し、外蓋10aを閉じ、操作/表示部13の炊飯スイッチ39を押して炊飯開始の動作指示を行うと、炊飯工程が開始される。
【0032】
使用者により炊飯スイッチ39がオンされて炊飯開始が指示されると、制御手段8は、重量センサー15が検知した重量に基づいて、炊飯量の判定を行う(S1)。ステップS1において、炊飯量が所定量Vより多いと判断した場合には(S1;Yes)、ステップS2の予熱工程に進み、炊飯量が所定量V以下であると判断した場合には(S1;No)、ステップS8の予熱工程に進む。
【0033】
[多量炊飯時の炊飯工程]
(予熱工程)
ステップS2の予熱工程は、炊飯量が所定量Vよりも大きいと判断されたとき(多量炊飯時)に実行する工程である。制御手段8は、時間計測手段7による予熱の経過時間の計測を開始し、鍋底温度センサー4の検知温度が予熱温度T3を維持するように、加熱コイル3への通電・電力遮断を繰り返して鍋状容器5の温度調節を行う(図3参照)。そして、時間計測手段7により計測された経過時間が所定の予熱時間に達すると、制御手段8は、ステップS3の昇温工程に進む。
【0034】
(昇温工程)
ステップS3の昇温工程は、予熱工程終了後から、制御手段8が内部温度センサー14の検知情報に基づいて鍋状容器5内の水の沸騰を検知するまでの間の工程である。昇温工程では、制御手段8は、単位時間当たりの電力量P1で加熱コイル3への間欠通電を行う(S31)。この昇温工程では、予熱工程よりもさらに米の吸水が進み、米の澱粉の糊化が始まる。制御手段8は、内部温度センサー14の検知温度に基づいて鍋状容器5内が沸騰したことを検知すると(S32)、ステップS4の沸騰維持工程に進む。
【0035】
(沸騰維持工程)
米を糊化させるには98℃以上を20分間保つことが必要である。そこで、ステップS4の沸騰維持工程では、制御手段8は、時間計測手段7による経過時間の計測を開始し(S41)、鍋状容器5内の米と水の焦げ付きを抑制しつつも内部温度センサー14の検知温度が98℃以上を保持するように単位時間当たりの電力量P2で加熱コイル3への間欠通電を行う(S42)。そして、時間計測手段7により計測された経過時間が所定時間t1に達すると(S43)、制御手段8は、ステップS5のドライアップ前工程に進む。
【0036】
(ドライアップ前工程)
ステップS5のドライアップ前工程は、沸騰維持工程終了後から、鍋状容器5がドライアップ判定温度T2に到達するまでの間の工程である。制御手段8は、鍋底温度センサー4の検知情報に基づいて、鍋状容器5がドライアップ判定温度T2に到達したか否かを検知する。ドライアップ前工程では、制御手段8は、単位時間当たりの電力量P3で加熱コイル3への間欠通電を行う(S51)。本実施の形態1のドライアップ前工程における単位時間当たりの電力量P3は、沸騰維持工程における単位時間当たりの電力量P2よりも大きい値としている。制御手段8は、鍋底温度センサー4の検知温度に基づいて鍋状容器5が所定のドライアップ判定温度T2に到達したことを検知すると(S52)、ステップS6のドライアップ後工程に進む。
なお、ドライアップ前工程に要する時間を時間t2と称する。
【0037】
(ドライアップ後工程)
ステップS6のドライアップ後工程では、制御手段8は、時間計測手段7による経過時間の計測を開始し(S61)、単位時間当たりの電力量P4で加熱コイル3への間欠通電を行う(S62)。ここで、ドライアップ後工程における単位時間当たりの電力量P4は、ドライアップ前工程における単位時間当たりの電力量P3よりも小さい値である。ドライアップ判定温度T2に到達した後に強い火力で加熱しすぎると、鍋状容器5内の水分が蒸発しすぎてしまうため、ドライアップ後工程においてはドライアップ前工程よりも小さい電力量P4で加熱を行う。そして、時間計測手段7により計測された経過時間が所定時間t3に達すると(S63)、制御手段8は、ステップS7の蒸らし工程に進む。
なお、ドライアップ前工程の時間t2とドライアップ後工程の時間t3を合わせたドライアップ工程の時間を、時間t4と称する。
【0038】
(蒸らし工程)
ステップS7の蒸らし工程では、制御手段8は、時間計測手段7による経過時間の計測を開始し(S71)、時間計測手段7により計測された経過時間が所定時間t5に達すると(S72)、炊飯工程を終了する。
以上、炊飯量が所定量Vより多い場合(多量炊飯時)の炊飯工程を説明した。
【0039】
[少量炊飯時の炊飯工程]
(予熱工程)
ステップS8の予熱工程は、炊飯量が所定量V以下であると判断されたとき(少量炊飯時)に実行する工程である。制御手段8は、時間計測手段7による予熱の経過時間の計測を開始し、鍋底温度センサー4の検知温度が予熱温度T3を維持するように、加熱コイル3への通電・電力遮断を繰り返して鍋状容器5の温度調節を行う(図4参照)。そして、時間計測手段7により計測された経過時間が所定の予熱時間に達すると、制御手段8は、ステップS9の昇温工程に進む。
【0040】
(昇温工程)
ステップS9の昇温工程は、予熱工程終了後から、制御手段8が内部温度センサー14の検知情報に基づいて鍋状容器5内の水の沸騰を検知するまでの間の工程である。昇温工程では、制御手段8は、単位時間当たりの電力量P1aで加熱コイル3への間欠通電を行う(S91)。そして、制御手段8は、内部温度センサー14の検知温度に基づいて鍋状容器5内が沸騰したことを検知すると(S92)、ステップS10の沸騰維持工程に進む。
【0041】
ここで、本実施の形態1では、少量炊飯時のステップS91における単位時間当たりの電力量P1aは、多量炊飯時のステップS31における電力量P1よりも小さい。より詳しくは、ステップS91(少量炊飯時)において、ステップS31(多量炊飯時)の電力量P1よりも小さい電力量P1aで加熱することで、ステップS9の昇温工程とステップS3の昇温工程の所要時間がほぼ同じになるようにしている。このようにすることで、沸騰を検知するまでの間に米が吸水、糊化する状態を、炊飯量の多い/少ないにかかわらずほぼ同じにすることができ、これにより、炊飯量が異なっても同じように美味しく炊き上げることができる。
【0042】
(沸騰維持工程)
ステップS10の沸騰維持工程では、制御手段8は、時間計測手段7による経過時間の計測を開始し(S101)、鍋状容器5内の米と水の焦げ付きを抑制しつつも内部温度センサー14の検知温度が98℃以上を保持するように単位時間当たりの電力量P2aで加熱コイル3への間欠通電を行う(S102)。そして、時間計測手段7により計測された経過時間が所定時間t1aに達すると(S103)、制御手段8は、ステップS11のドライアップ前工程に進む。
【0043】
ここで、本実施の形態1では、少量炊飯時の沸騰維持工程の時間t1a(S103)を、多量炊飯時の沸騰維持工程の時間t1(S43)よりも長く設定している。
そして、少量炊飯時において沸騰維持工程の時間t1aを長くしても鍋状容器5内の水分の過剰な蒸発を抑制できるよう、沸騰維持工程における単位時間当たりの電力量P2a(S102)を、多量炊飯時の沸騰維持工程における電力量P2(S42)よりも小さくしている。すなわち、少量炊飯時においては、多量炊飯時よりも小さい電力で長時間の沸騰維持工程を実行する。
【0044】
(ドライアップ前工程)
ステップS11のドライアップ前工程は、沸騰維持工程終了後から、鍋状容器5がドライアップ判定温度T2aに到達するまでの間の工程である。制御手段8は、鍋底温度センサー4の検知情報に基づいて、鍋状容器5が所定のドライアップ判定温度T2aに到達したか否かを検知する。ドライアップ前工程では、制御手段8は、単位時間当たりの電力量P3aで加熱コイル3への間欠通電を行う(S111)。本実施の形態1のドライアップ前工程における単位時間当たりの電力量P3aは、沸騰維持工程における単位時間当たりの電力量P2aよりも大きい値としている。制御手段8は、鍋底温度センサー4の検知温度に基づいて鍋状容器5が所定のドライアップ判定温度T2aに到達したことを検知すると(S112)、ステップS12のドライアップ後工程に進む。
【0045】
ここで、本実施の形態1では、少量炊飯時のドライアップ判定温度T2aを、多量炊飯時のドライアップ判定温度T2よりも低い温度に設定している。すなわち、少量炊飯時においては、鍋状容器5の温度が多量炊飯時よりも低い温度T2aに到達すると、鍋状容器5内がドライアップ状態になったものと判定する。
【0046】
また、少量炊飯時におけるドライアップ前工程に要する時間t2は、多量炊飯時におけるドライアップ前工程に要する時間t2とほぼ同じである。すなわち、少量炊飯時には、炊飯量及びドライアップ判定温度が多量炊飯時とは異なるが、ドライアップ判定温度に到達するまでの時間が多量炊飯時とほぼ同じとなるよう、単位時間当たりの電力量P3aを設定している。
【0047】
(ドライアップ後工程)
ステップS12のドライアップ後工程では、制御手段8は、時間計測手段7による経過時間の計測を開始し(S121)、単位時間当たりの電力量P4aで加熱コイル3への間欠通電を行う(S122)。ここで、ドライアップ後工程における単位時間当たりの電力量P4aは、ドライアップ前工程における単位時間当たりの電力量P3aよりも小さい値である。ドライアップ判定温度T2aに到達した後に強い火力で加熱しすぎると、鍋状容器5内の水分が蒸発しすぎてしまうため、ドライアップ後工程においてはドライアップ前工程よりも小さい電力量P4aで加熱を行う。そして、時間計測手段7により計測された経過時間が所定時間t3aに達すると(S123)、制御手段8は、ステップS13の蒸らし工程に進む。
【0048】
ここで、本実施の形態1では、少量炊飯時におけるドライアップ後工程に要する時間t3は、多量炊飯時におけるドライアップ後工程に要する時間t3とほぼ同じである。すなわち、少量炊飯時には、炊飯量及びドライアップ判定温度が多量炊飯時とは異なるが、ドライアップ判定温度から沸騰温度T1まで低下するのに要する時間が、多量炊飯時における当該時間とほぼ同じとなるよう、単位時間当たりの電力量P4aを設定している。
【0049】
(蒸らし工程)
ステップS13の蒸らし工程では、制御手段8は、時間計測手段7による経過時間の計測を開始し(S131)、時間計測手段7により計測された経過時間が所定時間t5aに達すると(S132)、炊飯工程を終了する。
【0050】
ここで、本実施の形態1では、少量炊飯時におけるステップS132の蒸らし工程の時間t5aは、多量炊飯時におけるステップS72の蒸らし工程の時間t5よりも長い時間である。
【0051】
以上のように本実施の形態1では、少量炊飯時には、沸騰維持工程の時間t1aを多量炊飯時の時間t1よりも長く設定し、ドライアップ判定温度T2aを多量炊飯時におけるドライアップ判定温度T2よりも低く設定し、蒸らし工程の時間t5aを多量炊飯時の時間t5よりも長く設定した。
【0052】
炊飯量が少ない場合には炊飯量が多い場合よりもドライアップ判定温度を低く設定することで、米飯の硬化や褐変を抑制することができ、特に褐変を抑えることができる。
【0053】
少量炊飯時にはドライアップ前工程の終了を判断するドライアップ判定温度を低くする分、鍋の中に余剰な水分が存在し、米に十分に吸水されない遊離した水分が残る可能性がある。そこで、本実施の形態1では、炊飯量が少ない場合には多い場合よりも蒸らし工程の時間を長くしている。このようにすることで、遊離した水分を吸収する時間を持つことができ、飯粒表層がべちゃつくのを抑え、食味の低下を抑制することができる。
【0054】
また、少量炊飯時にはドライアップ判定温度を多量炊飯時よりも低くする分、ドライアップ前工程において米に加えられる熱エネルギーが少なくなるため、米の中の澱粉の糊化が十分に起こらずに芯のある炊き上がりになる可能性もある。そこで、本実施の形態1では、沸騰維持工程や蒸らし工程の時間を長くすることでこれらの工程で糊化を促進し、炊飯量が少ない場合のドライアップ工程での糊化反応の不足分を補っている。このようにすることで、ドライアップ判定温度を低くすることによる糊化不足を解消することができる。
【0055】
なお、少量炊飯時における糊化不足の解消という観点では、沸騰維持工程と蒸らし工程のいずれの時間を長く設定してもよいが、沸騰維持工程の時間を長くする方がより効果的である。それは、沸騰維持工程の方が蒸らし工程よりも高温であるため、糊化が進みやすいからである。また、沸騰維持工程の時間の長さを調節する方が、蒸らし工程の時間を延長するよりも短時間の延長で糊化の不足分を補うことができるという利点がある。
一方で、蒸らし工程を延長する方が、沸騰維持工程の時間を延長するよりも少ないエネルギーで糊化の不足分を補うことができるという利点がある。例えば、沸騰維持工程の時間は多量炊飯時と少量炊飯時とで同じ時間を設定し、蒸らし工程の時間は少量炊飯時の方が長くなるよう設定することもできる。
【0056】
従来では、多量炊飯よりも少量炊飯の方が鍋に接している米飯の割合が多くなってしまうため、たとえ、炊き上がり後に鍋状容器内の米飯全体を混ぜ合わせたとしても褐変や硬化した米飯が際だつために美味しくないと感じてしまうことがあった。しかし、本実施の形態1の炊飯器によれば、米飯の褐変や硬化を抑制し、少量炊飯でも美味しく炊き上げることができる。
【0057】
また、少量炊飯の場合、ドライアップ判定温度を多量炊飯時よりも低く設定することで、ドライアップ前工程において入力される電力が少なくなることから、省エネルギーになる。また、炊飯量の多少によって炊飯制御を分けているので、多量炊飯の場合には上述のような少量炊飯の場合とは異なる制御が行われ、必要以上に沸騰維持工程若しくは蒸らし工程の時間が長くならないため時間短縮での炊飯が可能となる。
【0058】
実施の形態2.
本実施の形態2では、少量炊飯の場合には、ドライアップ工程の時間を多量炊飯時よりも短く、沸騰維持工程及び蒸らし工程の時間を多量炊飯時よりも長くすることで、少量炊飯でも硬化や褐変の少ない好ましい食味の米飯を炊き上げる炊飯工程を実行する例を示す。
なお、本実施の形態2では実施の形態1との相違点を中心に説明し、前述の図1〜図5と同一又は相当する構成には同一の符号を付す。
【0059】
図6は、実施の形態2に係る少量炊飯時の炊飯工程における、鍋状容器5の内部温度及び鍋状容器温度の推移と、加熱コイル3への通電電力を示す図であり、図7は実施の形態2に係る炊飯器の炊飯工程の動作を説明するフローチャートである。以下、本実施の形態2に係る炊飯器の炊飯動作を、図6、図7を参照して説明する。
【0060】
図7に示すように、使用者により炊飯スイッチ39がオンされて炊飯開始が指示されると、制御手段8は、重量センサー15が検知した重量に基づいて、炊飯量の判定を行う(S1)。ステップS1において、炊飯量が所定量Vより多いと判断した場合には(S1;Yes)、ステップS2の予熱工程に進み、炊飯量が所定量V以下であると判断した場合には(S1;No)、ステップS8の予熱工程に進む。
【0061】
[多量炊飯時の炊飯工程]
多量炊飯時の炊飯工程(ステップS2の予熱工程から炊飯終了までの工程)は、前述の実施の形態1と同様である。
【0062】
[少量炊飯時の炊飯工程]
(予熱工程、昇温工程、沸騰維持工程)
少量炊飯時の予熱工程(S8)、昇温工程(S9)、及び沸騰維持工程(S10)は、前述の実施の形態1と同様である。
【0063】
(ドライアップ前工程)
ステップS11aのドライアップ前工程では、制御手段8は、単位時間当たりの電力量P3bで加熱コイル3への間欠通電を行う(S111a)。制御手段8は、鍋底温度センサー4の検知温度に基づいて鍋状容器5が所定のドライアップ判定温度T2に到達したことを検知すると(S112a)、ステップS12aのドライアップ後工程に進む。
【0064】
ここで、本実施の形態2では、少量炊飯時のドライアップ判定温度T2を、多量炊飯時のドライアップ判定温度T2と同じ値に設定している。そして、ドライアップ前工程を開始してから鍋状容器5の温度がドライアップ判定温度T2に到達するまでの時間t2bが、多量炊飯時におけるドライアップ前工程の時間t2(図3参照)よりも短くなるよう、ドライアップ前工程における単位時間当たりの電力量P3bを設定している。
【0065】
(ドライアップ後工程)
ステップS12aのドライアップ後工程では、制御手段8は、時間計測手段7による経過時間の計測を開始する(S121a)。しかし、実施の形態1とは異なり、ドライアップ後工程においては加熱コイル3への通電を行わず、鍋状容器5を加熱しない。そして、時間計測手段7により計測された経過時間が所定時間t3bに達すると(S123a)、制御手段8は、ステップS13の蒸らし工程に進む。
【0066】
ここで、少量炊飯時におけるドライアップ後工程では、加熱コイル3による加熱を行わないので、鍋状容器5の温度がドライアップ判定温度T2から沸騰温度T1に低下するまでの時間は、多量炊飯時におけるその時間(図3の時間t3参照)よりも短くなる。このため、本実施の形態2の少量炊飯時におけるドライアップ後工程の時間t3bは、多量炊飯時のドライアップ後工程の時間t3(図3参照)よりも短く設定されている。
そして、少量炊飯時には、ドライアップ前工程の時間t2bが多量炊飯時のその時間t2よりも短く、ドライアップ後工程の時間t3bが多量炊飯時のその時間t3よりも短く設定されているので、ドライアップ工程全体の時間t4bも、多量炊飯時のその時間t4よりも短くなっている。
なお、この例では、少量炊飯時のドライアップ前工程の時間T2bを多量炊飯時の時間T2よりも短く、かつ、少量炊飯時のドライアップ後工程の時間T3bを多量炊飯時のドライアップ後工程の時間T3よりも短くすることにより(T2b<T2、かつ、T3b<T3)、少量炊飯時におけるドライアップ工程全体の時間T4bを多量炊飯時におけるその時間T4よりも短くする例を示した。しかし、少量炊飯時におけるドライアップ工程全体の時間T4bを多量炊飯時の時間T4よりも短くすればよく、時間T2b<時間T2、または、時間T3b<時間T3となるよう加熱制御を行うことにより、ドライアップ工程全体の時間T4b<時間T4としてもよい。
【0067】
(蒸らし工程)
ステップS13の蒸らし工程は、前述の実施の形態1と同様である。
【0068】
以上のように本実施の形態2では、少量炊飯時には、沸騰維持工程の時間t1aを多量炊飯時の時間t1よりも長く設定し、ドライアップ工程の時間t4bを多量炊飯時の時間t4よりも短く設定し、蒸らし工程の時間t5aを多量炊飯時の時間t5よりも長く設定した。
【0069】
少量炊飯の場合には多量炊飯の場合よりもドライアップ工程の時間を短くすることで、米飯の硬化や褐変を抑制することができ、特に硬化を抑えることができる。
【0070】
少量炊飯においてドライアップ工程の時間を短くする分、米に加えられる熱エネルギーが少なくなり、糊化が起こる時間も短くなるため、米の中の澱粉の糊化が十分に起こらずに芯のある炊き上がりになる可能性もある。そこで、本実施の形態2では、少量炊飯時において沸騰維持工程や蒸らし工程の時間を多量炊飯時よりも長くしている。このようにすることで、沸騰維持工程や蒸らし工程において糊化を促進し、ドライアップ工程を短くすることによる糊化不足を解消することができる。
【0071】
なお、少量炊飯時における糊化不足の解消という観点では、沸騰維持工程と蒸らし工程のいずれの時間を長く設定してもよいが、沸騰維持工程の時間を長くする方がより効果的である。それは、沸騰維持工程の方が蒸らし工程よりも高温であるため、糊化が進みやすいからである。また、沸騰維持工程の時間の長さを調節する方が、蒸らし工程の時間を延長するよりも短時間の延長で糊化の不足分を補うことができるという利点がある。
一方で、蒸らし工程を延長する方が、沸騰維持工程の時間を延長するよりも少ないエネルギーで糊化の不足分を補うことができるという利点がある。
したがって、実施の形態2の少量炊飯時には沸騰維持工程と蒸らし工程の両方の時間を多量炊飯時よりも長く設定する例を示したが、沸騰維持工程と蒸らし工程のうちいずれか一方の時間を、多量炊飯時よりも長く設定するようにしてもよい。
【0072】
このように、本実施の形態2の炊飯器によれば、米飯褐変や硬化を抑制し、少量炊飯でも美味しく炊き上げることができる。
【0073】
また、少量炊飯の場合、ドライアップ工程の時間を多量炊飯時よりも短くすることで、ドライアップ工程における入力電力が少なくなることから、省エネルギーになる。また、炊飯量の多少によって炊飯制御を分けているので、多量炊飯の場合には上述のような少量炊飯の場合とは異なる制御が行われ、必要以上に沸騰維持工程若しくは蒸らし工程の時間が長くならないため時間短縮での炊飯が可能となる。
【0074】
実施の形態3.
本実施の形態3では、少量炊飯の場合には、ドライアップ工程の時間を多量炊飯時よりも短くし、ドライアップ判定温度を多量炊飯時よりも低く設定し、沸騰維持工程及び蒸らし工程の時間を多量炊飯時よりも長くすることで、少量炊飯でも硬化や褐変の少ない好ましい食味の米飯を炊き上げる炊飯工程を実行する例を示す。
なお、本実施の形態3では実施の形態1、2との相違点を中心に説明し、前述の図1〜図7と同一又は相当する構成には同一の符号を付す。
【0075】
図8は、実施の形態3に係る少量炊飯時の炊飯工程における、鍋状容器5の内部温度及び鍋状容器温度の推移と、加熱コイル3への通電電力を示す図であり、図9は実施の形態3に係る炊飯器の炊飯工程の動作を説明するフローチャートである。本実施の形態3に係る炊飯器の炊飯動作を、図8、図9を参照して説明する。
【0076】
図9に示すように、使用者により炊飯スイッチ39がオンされて炊飯開始が指示されると、制御手段8は、重量センサー15が検知した重量に基づいて、炊飯量の判定を行う(S1)。ステップS1において、炊飯量が所定量Vより多いと判断した場合には(S1;Yes)、ステップS2の予熱工程に進み、炊飯量が所定量V以下であると判断した場合には(S1;No)、ステップS8の予熱工程に進む。
【0077】
[多量炊飯時の炊飯工程]
多量炊飯時の炊飯工程(ステップS2の予熱工程から炊飯終了までの工程)は、前述の実施の形態1、2と同様である。
【0078】
[少量炊飯時の炊飯工程]
(予熱工程、昇温工程、沸騰維持工程)
少量炊飯時の予熱工程(S8)、昇温工程(S9)、及び沸騰維持工程(S10)は、前述の実施の形態1、2と同様である。
【0079】
(ドライアップ前工程)
ステップS11bのドライアップ前工程では、制御手段8は、単位時間当たりの電力量P3cで加熱コイル3への間欠通電を行う(S111b)。制御手段8は、鍋底温度センサー4の検知温度に基づいて鍋状容器5が所定のドライアップ判定温度T2aに到達したことを検知すると(S112b)、ステップS12bのドライアップ後工程に進む。
【0080】
ここで、本実施の形態3では、少量炊飯時のドライアップ判定温度T2aを、多量炊飯時のドライアップ判定温度T2よりも低い温度に設定している。すなわち、少量炊飯時においては、鍋状容器5の温度が多量炊飯時よりも低い温度T2aに到達すると、鍋状容器5内がドライアップ状態になったものと判定する。
【0081】
また、本実施の形態3では、少量炊飯時においてドライアップ前工程を開始してから鍋状容器5の温度がドライアップ判定温度T2aに到達するまでの時間t2cが、多量炊飯時におけるドライアップ前工程の時間t2(図3参照)よりも短くなるよう、ドライアップ前工程における単位時間当たりの電力量P3cを設定している。
【0082】
(ドライアップ後工程)
ステップS12bのドライアップ後工程では、制御手段8は、時間計測手段7による経過時間の計測を開始する(S121b)。しかし、実施の形態1とは異なり、ドライアップ後工程においては加熱コイル3への通電を行わず、加熱しない。そして、時間計測手段7により計測された経過時間が所定時間t3cに達すると(S123b)、制御手段8は、ステップS13の蒸らし工程に進む。
【0083】
ここで、少量炊飯時におけるドライアップ後工程では、加熱コイル3による加熱を行わず、また、ドライアップ判定温度T2aは多量炊飯時のドライアップ判定温度T2よりも低い。このため、少量炊飯時において鍋状容器5の温度がドライアップ判定温度T2aから沸騰温度T1に低下するまでの時間は、多量炊飯時におけるその時間(図3の時間t3参照)よりも短くなる。このため、本実施の形態3の少量炊飯時におけるドライアップ後工程の時間t3cは、多量炊飯時のドライアップ後工程の時間t3(図3参照)よりも短く設定されている。
そして、少量炊飯時には、ドライアップ前工程の時間t2cが多量炊飯時のその時間t2よりも短く、ドライアップ後工程の時間t3cが多量炊飯時のその時間t3よりも短く設定されているので、ドライアップ工程全体の時間t4cも、多量炊飯時のその時間t4よりも短くなっている。
【0084】
(蒸らし工程)
ステップS13の蒸らし工程では、制御手段8は、時間計測手段7による経過時間の計測を開始し(S131)、時間計測手段7により計測された経過時間が所定時間t5aに達すると(S132)、炊飯工程が終了する。
【0085】
以上のように本実施の形態3では、少量炊飯時には、沸騰維持工程の時間t1aを多量炊飯時の時間t1よりも長く設定し、ドライアップ判定温度T2aを多量炊飯時におけるドライアップ判定温度T2よりも低く設定し、ドライアップ工程の時間t4cを多量炊飯時の時間t4よりも短く設定し、蒸らし工程の時間t5aを多量炊飯時の時間t5よりも長く設定した。
【0086】
少量炊飯の場合には多量炊飯の場合よりもドライアップ判定温度を低く設定するとともに、ドライアップ工程の時間を短くすることで、米飯の効果や褐変をさらに抑制することができる。
【0087】
少量炊飯時にはドライアップ判定温度を多量炊飯時よりも低くする分、鍋の中に余剰な水分が存在し、米に十分に吸水されない遊離した水分が残る可能性がある。そこで、本実施の形態3では、炊飯量が少ない場合には多い場合よりも蒸らし工程の時間を長くしている。このようにすることで、遊離した水分を吸収する時間を持つことができ、飯粒表層がべちゃつくのを抑え、食味の低下を抑制することができる。
【0088】
また、少量炊飯時には多量炊飯時よりもドライアップ判定温度を低くするとともにドライアップ工程の時間を短くする分、米に加えられる熱エネルギーが少なくなるため、米の中の澱粉の糊化が十分に起こらずに芯のある炊き上がりになる可能性もある。そこで、本実施の形態3では、少量炊飯時において沸騰維持工程や蒸らし工程の時間を多量炊飯時よりも長くしている。このようにすることで、沸騰維持工程や蒸らし工程において糊化を促進し、ドライアップ工程での糊化反応の不足分を補うことができる。
【0089】
なお、少量炊飯時における糊化不足の解消という観点では、沸騰維持工程と蒸らし工程のいずれの時間を長く設定してもよいが、沸騰維持工程の時間を長くする方がより効果的である。それは、沸騰維持工程の方が蒸らし工程よりも高温であるため、糊化が進みやすいからである。また、沸騰維持工程の時間の長さを調節する方が、蒸らし工程の時間を延長するよりも短時間の延長で糊化の不足分を補うことができるという利点がある。
一方で、蒸らし工程を延長する方が、沸騰維持工程の時間を延長するよりも少ないエネルギーで糊化の不足分を補うことができるという利点がある。例えば、沸騰維持工程の時間は多量炊飯時と少量炊飯時とで同じ時間を設定し、蒸らし工程の時間は少量炊飯時の方が長くなるよう設定することもできる。
【0090】
このように、本実施の形態3の炊飯器によれば、米飯褐変や硬化を抑制し、少量炊飯でも美味しく炊き上げることができる。
【0091】
また、少量炊飯の場合、ドライアップ工程の時間を短くすることでドライアップ工程における入力電力が少なくなることから、省エネルギーになる。また、炊飯量の多少によって炊飯制御を分けているので、多量炊飯の場合には上述のような少量炊飯の場合とは異なる制御が行われ、必要以上に沸騰維持工程若しくは蒸らし工程の時間が長くならないため時間短縮での炊飯が可能となる。
【0092】
なお、上記実施の形態1〜3では、炊飯量を多い場合(多量炊飯)と少ない場合(少量炊飯)の2段階に分ける例を示した。炊飯量の分け方は、鍋状容器5の最大炊飯量や加熱コイル3の加熱量、鍋状容器5の表面積等や、全炊飯量に占める鍋状容器5の加熱コイル3に近い部分に接する米飯量の割合を考慮して設定することができる。例えば、鍋状容器5の最大炊飯量が5.5合の場合、2合以下を少量炊飯とするとよい。それは、従来の炊飯制御で2合を炊飯した場合のテストを行った際、炊き上がった米飯のうち、20%以上が褐変や硬化した米飯となり、「硬い部分がある」、「焦げた部分が気になる」という評価となり、食味上好まれなかったが、3合を炊飯した場合、炊き上がった米飯のうち15%以下が褐変や硬化した米飯となり、「硬化や褐変がほとんど気にならない」という評価であったためである。
【0093】
また、炊飯量の分け方は2段階に限られるものではなく、3段階以上に炊飯量を分けてもよい。その場合、実施の形態1の炊飯工程の場合には、炊飯量が少ないものほど、ドライアップ判定温度を低く設定するとともに、沸騰維持工程と蒸らし工程の少なくともいずれかの時間を長く設定する。また、実施の形態2の炊飯工程の場合には、炊飯量が少ないものほど、ドライアップ工程の時間を短く設定するとともに、沸騰維持工程と蒸らし工程の少なくともいずれかの時間を長く設定する。また、実施の形態3の炊飯工程の場合には、炊飯量が少ないものほど、ドライアップ判定温度を低く設定するとともにドライアップ工程の時間を短く設定し、また、沸騰維持工程と蒸らし工程の少なくともいずれかの時間を長く設定する。このようにすることで、炊飯量にかかわらず好ましい食味の米飯を炊き上げることができる。
【0094】
また、実施の形態1、2、3で説明した炊飯工程は、早炊き炊飯メニューによる炊飯時に実行することとしてもよい。すなわち、一般的な早炊き炊飯においては、予熱工程や昇温工程の時間を短縮することで、炊飯工程の時間を短縮するようにしているが、この早炊き炊飯で少量の炊飯を行う場合には硬化や褐変といった現象が生じやすい。このため、早炊き炊飯を行う際に、実施の形態1、2、3で説明したように炊飯量に応じた炊飯工程を実行することで、より美味しい米飯を炊き上げることが可能となる。
【0095】
また、上記説明では、重量センサー15を設け、重量センサー15が検知した重量に基づいて制御手段8が炊飯量を判定する例を示したが、炊飯量判定手段の具体的構成はこれに限ったものではない。例えば、予熱工程若しくは昇温工程での鍋底温度センサー4や内部温度センサー14により検知される温度に基づいて鍋内の温度変化を検知し、この温度変化量から炊飯量を検出するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0096】
1 本体、2 容器カバー、2a 孔部、3 加熱コイル、4 鍋底温度センサー、5 鍋状容器、5a フランジ部、6 ヒンジ部、7 時間計測手段、8 制御手段、9 蓋パッキン、10 蓋体、10a 外蓋、10b 内蓋、11 係止材、12 カートリッジ、12a 蒸気取入口、12b 蒸気排出口、13 操作/表示部、14 内部温度センサー、15 重量センサー、31 液晶表示板、32 米種表示、33 硬さ表示、34 メニュー表示、35 米種スイッチ、36 硬さスイッチ、37 メニュースイッチ、38 切/保温スイッチ、39 炊飯スイッチ、40 予約スイッチ、41 時刻スイッチ、100 炊飯器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、
前記本体に収容される鍋状容器と、
前記鍋状容器の開口部を覆う蓋と、
前記鍋状容器を加熱する加熱手段と、
炊飯量を判定する炊飯量判定手段と、
前記加熱手段を駆動制御して沸騰維持工程とドライアップ工程と蒸らし工程とを含む炊飯工程を実行する制御手段とを備え、
前記炊飯量判定手段が、前記鍋状容器内の炊飯量を所定量以下の少量炊飯量であると判定した場合において、
前記制御手段は、
前記ドライアップ工程におけるドライアップ判定温度を、前記少量炊飯量より多い炊飯量を炊飯する多量炊飯時よりも低く設定し、
前記蒸らし工程の時間を、前記多量炊飯時よりも長く設定し、
前記沸騰維持工程の時間を、前記多量炊飯時と同等以上の長さに設定する
ことを特徴とする炊飯器。
【請求項2】
本体と、
前記本体に収容される鍋状容器と、
前記鍋状容器の開口部を覆う蓋と、
前記鍋状容器を加熱する加熱手段と、
炊飯量を判定する炊飯量判定手段と、
前記加熱手段を駆動制御して沸騰維持工程とドライアップ工程と蒸らし工程とを含む炊飯工程を実行する制御手段とを備え、
前記炊飯量判定手段が、前記鍋状容器内の炊飯量を前記少量炊飯量であると判定した場合において、
前記制御手段は、
前記ドライアップ工程の時間が、前記少量炊飯量より多い炊飯量を炊飯する多量炊飯時における当該時間よりも短くなるよう、前記加熱手段を制御し、
前記沸騰維持工程の時間および前記蒸らし工程の時間の少なくともいずれか一方を、前記多量炊飯時よりも長く設定する
ことを特徴とする炊飯器。
【請求項3】
前記炊飯量判定手段が、前記鍋状容器内の炊飯量を前記少量炊飯量であると判定した場合において、
前記制御手段は、
前記ドライアップ判定温度を、前記多量炊飯時におけるドライアップ判定温度よりも低い温度に設定し、
前記蒸らし工程の時間を、前記多量炊飯時よりも長く設定する
ことを特徴とする請求項2記載の炊飯器。
【請求項4】
前記炊飯量判定手段が、前記鍋状容器内の炊飯量を前記少量炊飯量であると判定した場合において、
前記制御手段は、
前記ドライアップ判定温度を、前記多量炊飯時におけるドライアップ判定温度と同じ温度に設定する
ことを特徴とする請求項2記載の炊飯器。
【請求項5】
前記制御手段は、炊飯メニューとして早炊き炊飯メニューを備え、
前記制御手段は、前記早炊き炊飯メニューが設定されている場合に、前記制御を行う
ことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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