説明

炊飯器

【課題】過熱蒸気の温度を一層高くするとともに、装置の小型化を実現することができる過熱蒸気発生装置備える炊飯器において、蓋が開いた状態で、過熱蒸気が蓋部から鍋の外に噴出することを防止することができる炊飯器を提供する。
【解決手段】蒸気を発生する蒸気発生手段27と、過熱蒸気発生装置15と、蓋開閉検知手段25と、制御手段24を備え、蓋開閉検知手段25が蓋の開状態を検知している状態では、蒸気発生手段27と過熱蒸気発生装置15の通電を停止するようにしたことにより、蓋3が開いた状態で、蓋3から鍋2の外に過熱蒸気を噴出することを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鍋の開口部から鍋内に100℃を超える過熱蒸気を供給する過熱蒸気発生装置を備える炊飯器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の炊飯器としては、種々の構造のものが知られている。例えば、特許文献1(特許第4203995号公報参照)には、蓋の内部空間に配置された蒸気管(蒸気経路)の周囲にヒータを取り付けた炊飯器が開示されている。特許文献1の炊飯器によれば、ヒータにより蒸気管を加熱することで、蒸気管内を通る蒸気を加熱して、100℃を超える過熱蒸気を生成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4203995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の炊飯器においては、過熱蒸気の温度を高く(例えば130℃以上に)することができないという課題がある。すなわち、蒸気管の周囲にヒータを配置して蒸気管内を通る蒸気を加熱する構成では、蒸気とヒータとが直接接触していないため、ヒータの熱を蒸気に伝える熱効率が低い。また、前記構成では、ヒータの熱が蒸気管体に拡散する。蒸気管は空気に触れる部分が多いため、蒸気の加熱効率が悪くなる。このため、前記構成において過熱蒸気の温度を高くするには、例えばヒータの出力(仕事量)を高くする必要がある。ヒータの出力を高くするには、単純にはヒータを大型化すればよい。しかしながら、炊飯器のような電化製品においては、より一層の小型化が求められている。ヒータが大型化することは、炊飯器の大型化につながる。また、炊飯中や保温中に誤って蓋を開けてしまった場合、蒸気管内を通った蒸気がそのまま蓋から噴出する可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、前記課題を解決することにあって、過熱蒸気の温度を一層高くするとともに、装置の小型化を実現することができる過熱蒸気発生装置備える炊飯器において、蓋が開いた状態で、過熱蒸気が蓋部から鍋の外に噴出することを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記従来の課題を解決するために、本発明の炊飯器は、炊飯器本体内に着脱自在に収納される鍋と、前記鍋を加熱する加熱手段と、前記鍋内に供給するための蒸気を発生する蒸気発生手段と、前記鍋の開口部を覆う蓋本体と、前記蓋本体内に配設した前記蒸気発生手段から発生した蒸気を加熱して過熱蒸気を生成する過熱蒸気発生装置と、前記蓋本体の開閉状態を検知する蓋開閉検知手段と、前記加熱手段と前記蒸気発生手段と前記過熱蒸気発生装置を通電制御する制御手段を備え、前記制御手段は、前記蓋開閉検知手段が蓋の開状態を検知している状態では、前記蒸気発生手段と前記過熱蒸気発生装置の通電を停止するようにしたものである。
【0007】
これによって、蓋開閉検知手段により、蓋が開いていることを検知しているときは、前記蒸気発生手段からは蒸気は発生せず、さらに過熱蒸気発生装置からも過熱蒸気は発生しないので、蓋が開いた状態で、蓋の過熱蒸気投入管から過熱蒸気が噴出しないようになる

【発明の効果】
【0008】
本発明にかかる炊飯器によれば、炊飯中に誤って蓋を開けたり、保温中にご飯を取るために蓋を開けても、過熱蒸気が蓋部から鍋の外に噴出することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態にかかる炊飯器の模式断面図。
【図2】本発明の実施形態にかかる炊飯器の蓋の一部を切り欠いた状態を模式的に示す上面図。
【図3】本発明の実施の形態2における過熱蒸気炊飯器の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
第1の発明は、炊飯器本体内に着脱自在に収納される鍋と、前記鍋を加熱する加熱手段と、前記鍋内に供給するための蒸気を発生する蒸気発生手段と、前記鍋の開口部を覆う蓋本体と、前記蓋本体内に配設した前記蒸気発生手段から発生した蒸気を加熱して過熱蒸気を生成する過熱蒸気発生装置と、前記蓋本体の開閉状態を検知する蓋開閉検知手段と、前記加熱手段と前記蒸気発生手段と前記過熱蒸気発生装置を通電制御する制御手段を備え、前記制御手段は、前記蓋開閉検知手段が蓋の開状態を検知している状態では、前記蒸気発生手段と前記過熱蒸気発生装置の通電を停止するようにしたことにより、蒸気発生手段から発生した蒸気の温度を上昇させるとともに蒸気の圧力と流速を増大させて鍋内に勢いよく投入することで、鍋内のご飯全体に過熱蒸気を行き渡らせることができ、蒸気温度が安定したおいしいご飯を炊くことができる炊飯器において、蓋開閉検知手段により、蓋が開いていることを検知しているときは、前記蒸気発生手段からは蒸気は発生せず、さらに過熱蒸気発生装置からも過熱蒸気は発生しないので、蓋の過熱蒸気投入管から過熱蒸気が噴出しないようになり、蓋が開いた状態で、蓋から鍋の外に過熱蒸気を噴出することを防止できる。
【0011】
第2の発明は、特に、第1の発明において、蓋の開閉を制約する蓋ロック手段を備え、制御手段は、記蒸気発生手段と前記過熱蒸気発生装置を通電する工程では、前記蓋ロック手段により、蓋が開かないようにすることにより、前記蒸気発生手段からは蒸気が発生し、さらに過熱蒸気発生装置から過熱蒸気が発生する工程では、蓋を開けようとしても、蓋が開くことがないので、蓋の過熱蒸気投入管から過熱蒸気が鍋の外に噴出することを防止できる。
【0012】
第3の発明は、特に第2の発明において、炊飯器の状態を表示する表示手段を備え、制御手段は、記蒸気発生手段と前記過熱蒸気発生装置を通電する工程では、前記表示手段に蓋がロック状態であることを表示することにより、炊飯途中や保温途中の蒸気発生手段と過熱蒸気発生装置を通電する工程では、使用者が蓋を開けようとしても、前記蓋ロック手段により蓋が開かないことをお知らせすることができる。
【0013】
(実施の形態1)
図1又は図2を用いて、本発明の第1の実施の形態における炊飯器の全体構成について説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態における炊飯器の模式断面図である。図2は、本発明の実施形態にかかる炊飯器の蓋の一部を切り欠いた状態を模式的に示す上面図である。
【0014】
図1に示すように、本実施形態にかかる炊飯器は、内部に鍋収納部1aが形成された略有底筒状の炊飯器本体1と、鍋収納部1aに収納され、米と水が入れられる鍋2とを備えている。炊飯器本体1の上部には、炊飯器本体1の上部開口部を開閉可能な中空構造の蓋
3が取り付けられている。蓋3の内側(鍋2の開口部を覆う側)には、鍋2の上部開口部を密閉可能な略円盤状の内蓋(加熱板ともいう)4が着脱可能に取り付けられている。
【0015】
炊飯器本体1の鍋収納部1aは、上枠1bとコイルベース1cとで構成されている。上枠1bは、収納された鍋2の側壁に対して所定の隙間が空くように配置される筒状部分1baと、筒状部分1baの上部から外方に突出し炊飯器本体1の上部開口部の内周部に嵌合するフランジ部1bbとを備えている。また、フランジ部1bbには、水タンク5を収納する水タンク収納部1bcが形成されている。水タンク5は、蒸気を生成するための水を入れる有底筒状の容器である。水タンク収納部1bcの外周面には、水タンク5を加熱(誘導加熱)する水タンク加熱装置の一例である水タンク加熱コイル6が取り付けられている。なお、水タンク加熱コイル6に代えて、ヒータにより水タンク5を加熱するように構成されてもよい。水タンク加熱コイル6が水タンク5を加熱することにより、水タンク5内の水が沸騰して、約100℃の蒸気が生成される。蒸気発生手段27は、この水タンク5と水タンク加熱コイル6から構成されている。
【0016】
また、水タンク収納部1bcの側部には開口が設けられている。当該開口部分には、水タンク5の温度を測定するための水タンク温度センサ7が、水タンク収納部1bcに収納された水タンク5の側部に当接可能に配置されている。
【0017】
コイルベース1cは、鍋2の下部の形状に対応して有底筒状に形成され、その上部が上枠1bの筒状部分1baの下端部に取り付けられている。コイルベース1cの外周面には、鍋2を加熱(誘導加熱)する鍋加熱装置の一例である鍋底加熱ユニット8が取り付けられている。鍋底加熱ユニット8は、底内加熱コイル8aと底外加熱コイル8bとで構成されている。底内加熱コイル8aは、コイルベース1cを介して鍋2の底部の中央部周囲に対向するように配置されている。底外加熱コイル8bは、コイルベース1cを介して鍋2の底部のコーナー部に対向するように配置されている。
【0018】
コイルベース1cの底部の中央部分には開口が設けられている。当該開口部分には、鍋2の温度を測定するための鍋温度検知部の一例である鍋温度センサ9が、鍋収納部1aに収納された鍋2の底部に当接可能に配置されている。鍋2の温度は鍋2内の被炊飯物の温度と略同じであるので、鍋温度センサ9が鍋2の温度を検知することで、鍋2内の被炊飯物の温度を知ることができる。
【0019】
蓋3は、蓋3の外郭を構成する上外郭部材3aと下外郭部材3bとを備えている。また、蓋3は、ヒンジ軸3Aを備えている。ヒンジ軸3Aは、蓋3の開閉軸であり、炊飯器本体1の上枠1bに両端部を回動自在に固定されている。蓋3には、その中央部付近を蓋3の厚み方向に貫通するように貫通穴3cが設けられ、当該貫通穴3cに蒸気筒10が着脱可能に取り付けられている。蒸気筒10の上壁及び底壁には、鍋2内の余分な蒸気を炊飯器の外部に排出できるように、蒸気逃がし孔10a,10bが設けられている。蓋3の内蓋4側の貫通穴3cの周囲には、環状のパッキン11が取り付けられている。パッキン11は、内蓋4が蓋3に取り付けられたときに、内蓋4に設けられた蒸気逃がし孔4aの周囲に密着するように設けられている。
【0020】
また、蓋3には、内蓋4の温度を検知する内蓋温度検知部の一例である内蓋温度センサ12が取り付けられている。蓋3の底壁となる下外郭部材3bの内面(蓋内側)には、内蓋4を誘導加熱する内蓋加熱装置の一例である内蓋加熱コイル13が取り付けられている。
【0021】
内蓋4は、誘導加熱が可能なステンレスなどの磁性体金属で構成されている。内蓋4の外周部の鍋2側の面には、環状のパッキン14が取り付けられている。パッキン14は、
蓋3が閉状態にあるときに鍋2のフランジ部に密着するように設けられている。
【0022】
また、蓋3の内部には、鍋2内に100℃を超える過熱蒸気を投入するための過熱蒸気発生装置15が設けられている。過熱蒸気発生装置15は、水タンク5で発生した約100℃の蒸気を加熱して過熱蒸気を生成可能に構成されている。過熱蒸気発生装置15には、蒸気供給管16と過熱蒸気投入管17とが接続されている。また、過熱蒸気発生装置15には、過熱蒸気発生装置15で生成された過熱蒸気の温度を検知する過熱蒸気温度検知部の一例である過熱蒸気温度センサ18が当接している。
【0023】
蒸気供給管16は、蓋3が閉状態にあるときに水タンク5内と連通し、水タンク5内で発生した蒸気を過熱蒸気発生装置15へ導くように設けられている。蒸気供給管16の水タンク5側の端部には、環状のパッキン19が取り付けられている。パッキン19は、蓋3が閉状態にあるときに水タンク5のフランジ部に密着するように設けられている。
【0024】
過熱蒸気投入管17は、蓋3が閉状態にあるときに内蓋4に設けられた過熱蒸気投入孔4bを通じて鍋2内と連通し、過熱蒸気発生装置15で生成された過熱蒸気を鍋2内へ投入するように設けられている。過熱蒸気投入管17の鍋2側の端部には、環状のパッキン20が取り付けられている。パッキン20は、蓋3が閉状態にあるときに内蓋4の過熱蒸気供給孔4bの周囲に密着するように設けられている。
【0025】
また、蓋3には、炊飯コース、炊飯時間などの各種情報を表示する液晶ディスプレイなどの表示部21と、白米コースや玄米コース、白米(柔らかめ)コースなどの複数の炊飯コースの中から特定の炊飯コースを選択可能な炊飯コース選択部の一例である操作部22と、制御手段であるマイクロコンピュータ24が設けられている。操作部22は、炊飯コースの選択の他、炊飯の開始、取り消し、予約などの実行を指示できるように、炊飯開始ボタンなどの複数のボタンで構成されている。使用者は、表示部21の表示内容を参照しつつ、操作部22にて特定の炊飯コースを選択し、炊飯開始を指示することができる。
【0026】
マイクロコンピュータ24は、米を炊飯するための炊飯シーケンスを複数記憶する記憶部を備えている。ここで、「炊飯シーケンス」とは、予熱、昇温、沸騰維持、蒸らしの主として4つの工程からなり、各工程を順に行うにあたって、各工程において通電時間、加熱温度、加熱時間、加熱出力等が予め決められている炊飯の手順をいう。各炊飯シーケンスは、複数の炊飯コースのいずれかにそれぞれ対応している。
【0027】
また、マイクロコンピュータ24は、操作部22にて選択された炊飯コース及び各温度センサ7,9,及び12の検知温度に基づいて、各部及び各装置の駆動を制御し、炊飯工程を実行する。また、マイクロコンピュータ24は、操作部22にて選択された炊飯コース及び過熱蒸気温度センサ18の検知温度に基づいて、過熱蒸気を過熱蒸気発生装置15に生成させる。
【0028】
さらに、蓋3内部には、蓋の開閉状態を検知する、蓋開閉検知手段25を設けている。この蓋開閉検知手段25は、炊飯器本体1に設置されたマグネット26の磁気により接点を開閉するリードスイッチである。蓋が閉まっているときは、蓋開閉検知手段(リードスイッチ)25はマグネット26に近接し、蓋が開いた状態では離れるため、蓋の開閉検知が可能となる。蓋開閉検知手段25は、蓋3の開閉を検知し、マイクロコンピュータ24に信号を出力する。
【0029】
また、炊飯器本体1の内部には、鍋2を加熱(誘導加熱)する鍋加熱装置の一例である鍋底加熱ユニット8と、水タンク5を加熱(誘導加熱)する水タンク加熱装置の一例である水タンク加熱コイル6と、内蓋4を誘導加熱する内蓋加熱装置の一例である内蓋加熱コ
イル13と、鍋2内に100℃を超える過熱蒸気を投入するための過熱蒸気発生装置15とに、それぞれ独立して電力を供給もしくは停止する加熱制御部23が搭載されている。加熱制御部23は、マイクロコンピュータ24からの制御信号により、各種の加熱手段を通電制御する。
【0030】
以上のように構成された本発明の実施の形態1の炊飯器の炊飯工程における動作を、蒸気発生手段27である水タンク5と水タンク加熱コイル6と過熱蒸気発生装置15と蓋開閉検知手段25の動作に着目して説明する。
【0031】
まず、ユーザが、炊飯を行う米とその米量に対応する水とを鍋2に入れ、本体1に内装する。更に、水タンク5に所定量の水を入れ、本体1に内装する。ユーザが炊飯開始スイッチ22を操作すると炊飯工程が実施される。
【0032】
炊飯工程は、時間順に予熱、昇温、沸騰維持、蒸らしに大分される。
【0033】
予熱工程において、鍋2の温度が米の吸水に適した温度になるように鍋底加熱ユニット8を制御し、鍋内の米と水とを加熱する。
【0034】
次に、昇温工程において、鍋2の温度が所定値(100℃)になるまで鍋底加熱ユニット8によって鍋2を所定の熱量で加熱する。この時の温度上昇速度によって、炊飯量を判定する。
【0035】
沸騰維持工程において、鍋2の水が無くなり、鍋2の温度が100℃を超えた所定値になるまで、鍋底加熱ユニット8及び内蓋加熱コイル13に通電し、米と水を加熱する。
【0036】
最後に蒸らし工程において、一定時間の間に複数回、炊飯量に応じた鍋底加熱ユニット8及び内蓋加熱コイル13による加熱(追い炊き)と加熱の停止(休止)を繰り返す。
【0037】
予熱工程では昇温工程及び沸騰維持工程に比べ各加熱手段への通電量が少なく、炊飯器全体の消費電力が小さい。したがって、前炊き工程において水タンク加熱コイル6に通電し、水タンク5内の水を予熱する。
【0038】
沸騰維持工程と蒸らし工程(追い炊き時と休止時)において、水タンク加熱コイル6と過熱蒸気発生装置15を通電制御し、水タンク5から発生した蒸気を過熱蒸気発生装置15で過熱し鍋2内へ過熱蒸気を供給する。
【0039】
水タンク5内の水は予熱されているので、速やかに沸騰して蒸気供給管16に蒸気が導入される。
【0040】
過熱蒸気発生装置15は、沸騰維持工程からに通電され、過熱蒸気温度センサ18から得られる温度をもとに所定の温度に予熱する。これによって、蒸気供給管16から導入された蒸気は、過熱蒸気発生装置15を通過する際に温度が上昇し、過熱蒸気投入管17から排気される蒸気の温度は100℃以上に上昇する。
【0041】
蒸気供給管16から導入された過熱蒸気発生装置15を通過しながら加熱されると体積膨張し、過熱蒸気の圧力は大気圧よりも高くなるとともに過熱蒸気の流速は速くなる。よって、最適な温度の過熱蒸気を生成しかつ圧力と流速を増大させることで、鍋2内のご飯全体に過熱蒸気を行き渡らせ、よりご飯の糊化を促進しおいしいご飯を炊くことができる。
【0042】
このように、ユーザが炊飯開始スイッチ22を操作すると炊飯工程が実施されるが、その炊飯途中に、誤って炊飯器の蓋を開けようと蓋開閉ボタン31を押してしまった場合、蓋開閉検知手段25により蓋が開いたことを検知する。蓋開閉検知手段25は、検知した信号をマイクロコンピュータ24に出力する。
【0043】
マイクロコンピュータ24は、蓋開閉検知手段25からの信号を入力し、蓋3が開いていると判断した場合、水タンク加熱コイル6と過熱蒸気発生装置15への通電を停止する。
【0044】
蒸気発生手段27の水タンク5を加熱する加熱手段を水タンク加熱コイル6(誘導加熱)方式とすることで、通電を停止すると、ヒータのように余熱がないため、瞬時に水タンク5への加熱がなくなり、蒸気の発生はなくなる。
【0045】
以上のように、本実施の形態においては、蓋3の開閉状態を蓋開閉検知手段25により検知し、マイクロコンピュータ24は、その検知信号により蓋の開状態を検知すると、水タンク加熱コイル6と過熱蒸気発生装置15への通電を停止するので、前記蒸気発生手段からは蒸気は発生せず、さらに過熱蒸気発生装置からも過熱蒸気は発生しないので、蓋が開いた状態で、蓋の過熱蒸気投入管から鍋の外に噴出することを防止することができる。
【0046】
なお、本実施の形態では、炊飯中の、水タンク加熱コイル6と過熱蒸気発生装置15が通電制御する場合の動作について説明したが、保温中においても、水タンク加熱コイル6と過熱蒸気発生装置15が通電制御する工程において、同じ動作をさせることで、同様な効果を得ることができる。
【0047】
(実施の形態2)
図3を用いて、本発明の実施の形態2の炊飯器について説明する。図3は、本発明の実施の形態2炊飯器の断面図である。図3に示すように、本実施の形態における炊飯器は、炊飯器本体1の前方に、蓋3を開閉するための蓋開閉ボタン31を備えている。また、本体1の内部には、蓋開閉ボタン31の動作を制約する蓋ロック手段32を備えている。この蓋ロック手段32は、マイクロコンピュータ24からの信号により、蓋開閉ボタン31の動作を制約し、蓋が開くのを禁止できる。その他の構成は実施の形態1の炊飯器と同じであるので、共通の部分には同一の符号を用い、その説明を省略する。
【0048】
以上のように構成された本発明の実施の形態2の炊飯器について、以下その動作、作用を説明する。
【0049】
まず、ユーザが、炊飯を行う米とその米量に対応する水とを鍋2に入れ、蓋開閉ボタン31を操作して蓋3を開けて本体1に鍋2を内装する。更に、水タンク5に所定量の水を入れ、本体1に内装する。その後、蓋3を閉め、ユーザが炊飯開始スイッチ22を操作すると炊飯工程が実施される。
【0050】
炊飯工程は、時間順に予熱、昇温、沸騰維持、蒸らしに大分される。
【0051】
予熱工程において、鍋2の温度が米の吸水に適した温度になるように鍋底加熱ユニット8を制御し、鍋内の米と水とを加熱する。
【0052】
次に、昇温工程において、鍋2の温度が所定値(100℃)になるまで鍋底加熱ユニット8によって鍋2を所定の熱量で加熱する。この時の温度上昇速度によって、炊飯量を判定する。
【0053】
沸騰維持工程において、鍋2の水が無くなり、鍋2の温度が100℃を超えた所定値になるまで、鍋底加熱ユニット8及び内蓋加熱コイル13に通電し、米と水を加熱する。
【0054】
最後に蒸らし工程において、一定時間の間に複数回、炊飯量に応じた鍋底加熱ユニット8及び内蓋加熱コイル13による加熱(追い炊き)と加熱の停止(休止)を繰り返す。
【0055】
蒸らし工程(追い炊き時と休止時)において、水タンク加熱コイル6と過熱蒸気発生装置15を通電制御し、水タンク5から発生した蒸気を過熱蒸気発生装置15で過熱し鍋2内へ過熱蒸気を供給する。
【0056】
予熱工程では昇温工程及び沸騰維持工程に比べ各加熱手段への通電量が少なく、炊飯器全体の消費電力が小さい。したがって、前炊き工程において水タンク加熱コイル6に通電し、水タンク5内の水を予熱する。
【0057】
蒸らし工程では、沸騰維持工程終了後、鍋底加熱ユニット8及び内蓋加熱コイル13による加熱を停止し、水タンク加熱コイル6に通電する。水タンク5内の水は予熱されているので、速やかに沸騰して蒸気供給管16に蒸気が導入される。
【0058】
過熱蒸気発生装置15は、沸騰維持工程終了間際に通電され、過熱蒸気温度センサ18から得られる温度をもとに所定の温度に予熱する。これによって、蒸気供給管16から導入された蒸気は、過熱蒸気発生装置15を通過する際に温度が上昇し、過熱蒸気投入管17から排気される蒸気の温度は100℃以上に上昇する。
【0059】
蒸気供給管16から導入された過熱蒸気発生装置15を通過しながら加熱されると体積膨張し、過熱蒸気の圧力は大気圧よりも高くなるとともに過熱蒸気の流速は速くなる。
【0060】
よって、最適な温度の過熱蒸気を生成しかつ圧力と流速を増大させることで、鍋2内のご飯全体に過熱蒸気を行き渡らせ、よりご飯の糊化を促進しおいしいご飯を炊くことができる。
【0061】
このように、ユーザが炊飯開始スイッチ22を操作すると炊飯工程が実施されるが、その炊飯途中に、マイクロコンピュータ24は、炊飯中の各工程で、水タンク加熱コイル6と過熱蒸気発生装置15を通電制御する。少なくとも水タンク加熱コイル6と過熱蒸気発生装置15を通電時間中は、マイクロコンピュータ24は、蓋ロック手段32にロック信号を出力し、蓋開閉ボタン31の操作をしても蓋3が開くことを禁止する。
【0062】
また、マイクロコンピュータ24は、上記のように、蓋ロック手段32にロック信号を出力している間は、表示部21に、蓋の開閉が禁止されている状態であることを表示するように、信号を出力している。
【0063】
以上のように、本実施の形態においては、蓋3の開閉状態を蓋開閉検知手段25により検知し、マイクロコンピュータ24は、水タンク加熱コイル6と過熱蒸気発生装置15を通電制御している時間は、蓋ロック手段32にロック信号を出力し、蓋開閉ボタン31の操作を制約するので、炊飯中に誤って蓋開閉ボタンを操作してしまっても、蓋3が開くことを防止でき、蓋の過熱蒸気投入管から過熱蒸気が鍋の外に噴出することを防止できる。
【0064】
また、本実施の形態では、蓋ロック手段32にロック信号を出力している間は、表示部21に、蓋の開閉が禁止されている状態であることを表示しているので、ユーザが、炊飯途中に蓋を開けようとしても、蓋3が開かないことをお知らせすることができる。
【0065】
なお、本実施の形態では、炊飯中の、水タンク加熱コイル6と過熱蒸気発生装置15が通電制御する場合の動作について説明したが、保温中においても、水タンク加熱コイル6と過熱蒸気発生装置15が通電制御する工程において、同じ動作をさせることで、同様な効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
以上のように、本発明の炊飯器は、蒸気発生手段から発生した蒸気の温度を上昇させるとともに蒸気の流速を増大させて鍋内に勢いよく投入することで、鍋内のご飯全体に過熱蒸気を行き渡らせることができ、その過熱蒸気を炊飯器の外部に噴出させることができるので、家庭用及び業務用炊飯器等として有用である。
【符号の説明】
【0067】
1 炊飯器本体
1a 鍋収納部
2 鍋
3 蓋
3A ヒンジ軸
4 内蓋
5 水タンク
6 水タンク加熱コイル(水タンク加熱装置)
7 水タンク温度センサ
8 鍋底加熱ユニット(鍋加熱装置)
9 鍋温度センサ(鍋温度検知部)
10 蒸気筒
11,14,19,20 パッキン
12 内蓋温度センサ(内蓋温度検知部)
13 内蓋加熱コイル(内蓋加熱装置)
15 過熱蒸気発生装置
16 蒸気供給管
17 過熱蒸気投入管
18 過熱蒸気温度センサ(過熱蒸気温度検知部)
21 表示部
22 操作部
23 加熱制御部
24 マイクロコンピュータ(制御手段)
25 蓋開閉検知手段(リードスイッチ)
26 マグネット
27 蒸気発生手段
31 蓋開閉ボタン
32 蓋ロック手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炊飯器本体内に着脱自在に収納される鍋と、前記鍋を加熱する加熱手段と、前記鍋内に供給するための蒸気を発生する蒸気発生手段と、前記鍋の開口部を覆う蓋本体と、前記蓋本体内に配設した前記蒸気発生手段から発生した蒸気を加熱して過熱蒸気を生成する過熱蒸気発生装置と、前記蓋本体の開閉状態を検知する蓋開閉検知手段と、前記加熱手段と前記蒸気発生手段と前記過熱蒸気発生装置を通電制御する制御手段を備え、前記制御手段は、前記蓋開閉検知手段が蓋の開状態を検知している状態では、前記蒸気発生手段と前記過熱蒸気発生装置の通電を停止するようにした炊飯器。
【請求項2】
蓋の開閉を制約する蓋ロック手段を備え、制御手段は、前記蒸気発生手段と前記過熱蒸気発生装置を通電する工程では、前記蓋ロック手段により、蓋が開かないようにした請求項1記載の炊飯器。
【請求項3】
炊飯器の状態を表示する表示手段を備え、制御手段は、記蒸気発生手段と前記過熱蒸気発生装置を通電する工程では、前記表示手段に蓋がロック状態であることを表示するようにした請求項2記載の炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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