説明

炊飯器

【課題】従来の技術では、PWMによる加熱制御を行う場合、加熱切時は蒸気発生しないため、前記鍋内の空気が排気されないため、ぬか臭が排出されずご飯に残り、香りを悪化させるという課題があった。特に、前記鍋を誘導加熱など高火力で加熱する場合、吹きこぼれや焦げつきを防止するよう加熱するには火力を低下する必要があり、そのためPWMを用いると入時間が短く、切時間が長くなり、よりご飯の香りを悪化させるという課題があった。
【解決手段】前記従来の課題を解決するために本発明の炊飯器は、本体1と、本体1内に着脱自在に収納される鍋2と、鍋2を加熱する加熱コイル5と、加熱コイル5を制御する制御手段8と、鍋2内の沸騰状態を維持することで、鍋2内の空気を排気する加熱排気手段8aとを備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般家庭、レストランなどで使用される炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の炊飯器の炊飯工程は、主に米に水を吸水させる浸水工程と、一気に鍋内の温度を上げて沸騰させる炊き上げ工程と、沸騰を維持させて米の澱粉を糊化させてご飯にする沸騰維持工程と、炊き上がったご飯を蒸らして鍋内を均一に仕上げるむらし工程からなり、各工程における制御方法を制御手段に記憶させている。
【0003】
また従来、鍋内の空気を本体外へ排気する蒸気筒を備え、炊き上げ工程や沸騰維持工程において、加熱手段による前記鍋を加熱し、加熱入時は前記鍋内の水が加熱され、沸点を超えると蒸気が発生し、前記鍋内の空気が本体外へ排気される。この時、ぬか臭などの臭いも同時に排出することで、ご飯の香りを良化させる炊飯器が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、PWM(Pulse Width Modulation)を用いて前記加熱手段による前記鍋の加熱の入切制御を行い、入時間、切時間の比率を変更することで周期全体の平均として火力を制御する炊飯器が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−70629号公報
【特許文献2】特許第4045751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の技術ではPWMによる加熱制御を行う場合、加熱切時は蒸気が発生せず、前記鍋内の空気が排気されないため、ぬか臭が排出されずご飯に残り、香りを悪化させるという課題があった。
【0007】
特に、前記鍋を誘導加熱など高火力で加熱する場合、吹きこぼれや焦げつきを防止するよう加熱するには火力を低下する必要があり、そのためPWMを用いると入時間が短く、切時間が長くなり、よりご飯の香りを悪化させるという課題があった。
【0008】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、ご飯の香りを良化させ、調理性能を向上した炊飯器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記従来の課題を解決するために本発明の炊飯器は、本体と、前記本体内に着脱自在に収納される鍋と、前記鍋を加熱する加熱手段と、前記加熱手段を制御する制御手段と、前記鍋内の沸騰状態を維持することで、前記鍋内の空気を排気する加熱排気手段とを備えたものである。
【0010】
これによって、沸騰状態を維持するので鍋内の空気を積極的に排気することとなる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によって、前記鍋内の空気を積極的に排気できるため、ご飯の香りを良化させ、
炊飯器の調理性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態1における炊飯器の側断面図
【図2】本発明の実施の形態1における炊飯器の炊飯工程図
【図3】本発明の実施の形態1における炊飯器のPWMで同一平均火力を入れる為に必要な入切時間の比較図
【発明を実施するための形態】
【0013】
第1の発明は、本体と、前記本体内に着脱自在に収納される鍋と、前記鍋を加熱する加熱手段と、前記加熱手段を制御する制御手段と、前記鍋内の蒸気を前記本体外へ導く蒸気筒と、前記鍋内の沸騰状態を維持することで、前記鍋内の空気を排気してご飯の匂いを良化させる加熱排気手段とを備えたものである。
【0014】
これによって、前記鍋内の空気を積極的に排気することができるため、ご飯の香りを良化させ、炊飯器の調理性能を向上させることができる。
【0015】
第2の発明は、特に、第1の発明において、前記加熱手段の火力を500〜900Wとするとしたものである。
【0016】
前記加熱手段の火力が500W以下であると、火力不足となり、炊飯性能を引き出すことが出来ない。また、特に沸騰維持工程において、前記加熱手段の火力が高いと吹きこぼれや焦げつきが発生するため、PWMを用いて加熱の入切制御を行い、入時間、切時間の比率を変更することで周期全体の平均として火力を制御するが、前記加熱手段の火力が900W以上であると、入時間が短く、切時間が長くなり、ご飯の香りを悪化させるという課題があった。
【0017】
本発明によって、炊飯に必要な火力を確保しつつ、また吹きこぼれや焦げつきを防止し、かつ前記鍋内の空気を積極的に排気することができるため、ご飯の香りを良化させ、炊飯器の調理性能を向上させることができる。
【0018】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明において、前記鍋が90℃以上となる工程において、前記加熱排気手段を動作させるものである。
【0019】
前記鍋が90℃以上のとき、前記鍋内の水が沸騰状態かそれに近い状態となっており、加熱入時は前記鍋内の水が加熱され、沸点を超えると蒸気が発生し、前記鍋内の空気が本体外へ排気される。
【0020】
本発明によって、前記鍋内に蒸気が発生している時に、前記鍋内の空気を積極的に排気することができるため、ご飯の香りを良化させ、炊飯器の調理性能を向上させることができる。
【0021】
第4の発明は、特に、第1から3のいずれか1つの発明において、前記加熱排気手段による加熱入切の周期に対する入時間の比率を70%以上とするものである。
【0022】
PWMを用いて加熱の入切制御を行う場合、加熱入切の周期に対する入時間の比率を70%以上とすれば前記鍋の熱容量により蒸気の発生は維持される。あるいは、蒸気の発生が短時間途切れても、すぐに次の周期の加熱が始まるので、ぬか臭などの臭いがご飯に付着することがない。
【0023】
本発明によって、前記鍋内の空気を積極的に排気できるため、ご飯の香りを良化させ、炊飯器の調理性能を向上させることができる。
【0024】
第5の発明は、特に、1から4のいずれか1つの発明において、前記加熱手段は前記鍋を加熱する加熱コイルと、前記加熱コイルに高周波電流を印加するインバータとを備えたものである。
【0025】
前記鍋を誘導加熱する場合、前記鍋のみが加熱されるため、シーズヒータ等で加熱する場合と比べると加熱入時の前記鍋の温度上昇と加熱切時の前記鍋の温度下降の温度勾配が大きくなる。つまりPWMを用いて加熱の入切制御を行う場合、よりご飯の香りを悪化させるという課題があった。
【0026】
本発明によって、前記鍋を誘導加熱する場合であっても前記鍋内の空気を積極的に排気できるため、ご飯の香りを良化させ、炊飯器の調理性能を向上させることができる。
【0027】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0028】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における炊飯器の側断面図を示すものである。
【0029】
図1において、本体1は、上面が開口する略円筒状に形成しており、本体1の内部に鍋収納部である保護枠10を備え、この保護枠10内には内周面に描かれた水位線を有する鍋2を着脱自在に配置している。保護枠10の外側には鍋2を加熱する加熱コイル5を備えている。
【0030】
制御手段8はインバータ7を制御し、加熱手段である加熱コイル5に高周波電流を印加することで鍋2を加熱する。また加熱コイル5の火力は700Wとする。
【0031】
本体1の上部に蓋3を開閉自在に取り付けている。蓋3は、保護枠10の後部にヒンジ3aを介して回動自在に支持し、回動バネにより付勢されている。蓋3のもう一端には、保護枠10の前方に回動自在に軸支されたフックボタン1aを配設し、蓋3の開放を抑止する。フックボタン1aが蓋3へ嵌合しているときには、蓋3は開放することなくフックボタン1aに保持され、閉塞状態となっている。
【0032】
蓋3の下部に、炊飯および保温中に鍋2内に発生する蒸気を排出する蒸気口4bを有する内蓋4を配設し、その上部には本体外部と蒸気筒口11aにて連通している筒形状の蒸気筒11を配設している。
【0033】
蒸気筒11と内蓋4の間に蒸気口パッキン6を配設し、蒸気が蓋3の内部に流入するのを防止している。また、内蓋4の外周部に、鍋2のフランジ部(図示しない)の上面と当接する内蓋パッキン4aを配設しており、炊飯および保温中に鍋2内に発生する蒸気が蒸気口4b以外から外部に流出するのを防止している。
【0034】
加熱排気手段8aは加熱手段を用いて鍋2の沸騰状態を維持するよう加熱し、鍋2内の空気を排気してご飯の匂いを良化させる。
【0035】
鍋温度検知手段9は、鍋2の底略中心部に当接して熱伝導によって鍋2の温度を検知することができる。蓋温度検知手段12は蓋3に当接して熱伝導によって鍋2の温度を検知することができる。
【0036】
操作表示部13はユーザからの操作を受け付け、またユーザに対して炊飯器の状態などを報知する。
【0037】
なお、本体1と蓋3と保護枠10と蒸気筒11には樹脂ケースを、鍋2には鉄やSUSなど金属製鍋を、内蓋3には金属製蓋を、内蓋パッキン4aと蒸気口パッキン6にはゴム製パッキンを、加熱コイル5には銅線コイルを、インバータ7には高周波インバータを、制御手段8にはマイクロコンピュータを、鍋温度検知手段9と蓋温度検知手段12にはサーミスタを、操作表示部13にはタッチパネルを用いることで容易に構成できる。
【0038】
以上のように構成された炊飯器について、以下その動作、作用を説明する。
【0039】
図2は本発明の実施の形態1における炊飯器の炊飯工程図である。
【0040】
図2で炊飯工程は、米に水を吸水させる浸水工程と、一気に鍋内の温度を上げて沸騰させる炊き上げ工程と、沸騰を維持させて米の澱粉を糊化させてご飯にする沸騰維持工程と、炊き上がったご飯を蒸らして鍋内を均一に仕上げるむらし工程からなり、各工程における制御方法を制御手段8に記憶させている。
【0041】
まず、ユーザが鍋2内に所定量の米と水を入れ、本体1にセットした後、操作表示部13を用いて炊飯開始の操作を行い、制御手段8が受け付けると、制御手段8は浸水工程を開始する。
【0042】
浸水工程は、米が糊化する温度よりも低温の水に米を浸して、予め米に吸水させることで、以降の工程において、米の中心部まで十分に糊化できるようにする工程である。
【0043】
また、浸水工程は、米に含まれるアミラーゼにより澱粉を分解し、グルコースを生成させ、ごはんの甘味を生み出す工程でもある。このため、浸水工程では、所定時間(例えば20分)、鍋温度検知手段9の検知温度が60℃前後になるよう制御する。
【0044】
つまり、制御手段は鍋温度検知手段9による温度検知をおこない、60℃以下であればインバータ7を動作させて加熱コイル5に高周波電流を印加し鍋2を加熱する。検知温度が60℃以上であればインバータ7を動作させて加熱コイル5へ電流印加を停止し鍋2の加熱を停止する。
【0045】
浸水工程開始から所定時間経過すると、炊き上げ工程に移行する。
【0046】
炊き上げ工程では、鍋温度検知手段9の検知温度が水の沸点近傍(例えば100℃)になるまで鍋2を加熱する。なお、この時、検知温度の温度勾配の違いによって被調理物の量、すなわち炊飯量を判定することができる。
【0047】
鍋温度検知手段9の検知温度が所定温度に達すると、沸騰維持工程に移行する。
【0048】
沸騰維持工程は、米の澱粉を糊化させて、糊化度を50%〜60%程度まで引き上げる工程である。沸騰維持工程では、鍋2に水がある間は、鍋2内の米及び水が沸騰状態を維持するように、制御手段8は鍋が90℃以上となる工程において、前記加熱排気手段を動作させる加熱排気手段8aを動作させて、加熱排気手段8aはインバータ7を動作させて加熱コイル5に高周波電流を印加し鍋2を加熱する。
【0049】
この時、PWMを用いて加熱の入切制御を行い、入時間、切時間の比率を70%以上に
する。
【0050】
図3は本発明の実施の形態1における炊飯器のPWMを用いて加熱する場合、火力1200Wと700Wとした時の、同一平均火力を入れる為に必要な入切時間の比較を示す図である。
【0051】
火力1200Wとした時、加熱周期16秒に対し、入時間を50%、切時間を50%とすると、平均すると600W相当の火力となる。一方、火力を700Wとした場合、同様の平均火力を得るためには、入時間を約85%、切時間を約15%となる。
【0052】
つまり、加熱コイル5が鍋2を加熱する火力を低下させるほど入時間を長くすることが可能となり、鍋2内で水が沸騰し蒸気が発生することで、鍋2内の空気を排気することができる。一方、加熱コイル5が鍋2を加熱する火力を低下させ過ぎる(約500W)と、火力不足となり、炊飯性能を引き出すことが出来ない。
【0053】
また、加熱入の間は沸騰維持されるが、加熱切にしても鍋2の熱容量により蒸気の発生は維持される。また、蒸気の発生が短時間途切れても、すぐに次の周期の加熱が始まるので、ぬか臭などの臭いがご飯に付着することがないため、入時間を70%以上とすることでご飯の香りを良化させ、炊飯器の調理性能を向上させることができる。
【0054】
この加熱により、鍋2内の水が吸水されたり蒸発したりして無くなると、鍋2の温度が上昇する。鍋温度検知手段9の検知温度が所定温度(例えば130℃)に到達すると、沸騰維持工程を終了し、むらし工程に移行する。
【0055】
むらし工程は、米の澱粉を糊化させて、糊化度を100%近くまで引き上げる工程である。むらし工程では、鍋底が焦げるのを避けつつ、ご飯の温度が低下するのを防ぎ、糊化を促進させて鍋2内のごはんを均一化するため、工程中で追い炊き加熱を経過時間に応じて複数回(例えば2回)行い、鍋温度検知手段9の温度が所定温度(例えば80℃)を保つよう加熱の入切を行う。
【0056】
なお、加熱排気手段8aは沸騰維持工程に用いることで鍋2内の空気を積極的に排気することができ、特にご飯の香りを良化させ、炊飯器の調理性能を向上させることができるが、他の工程で用いても構わない。
【0057】
なお、加熱コイル5の火力は700Wとしたが、500〜900Wのいずれかとしても同様の効果が得られる。
【0058】
なお、700Wで加熱することで、過加熱状態を防ぐことが可能であり、消費電力を減らすこと効果も得られる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、鍋内の空気を積極的に排気できるため、ご飯の香りを良化させ、炊飯器の調理性能を向上させることができ、一般家庭、レストランなどで使用される炊飯器に有用である。
【符号の説明】
【0060】
1 本体
2 鍋
5 加熱コイル
7 インバータ
8 制御手段
8a 加熱排気手段
11 蒸気筒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、
前記本体内に着脱自在に収納される鍋と、
前記鍋を加熱する加熱手段と、
前記加熱手段を制御する制御手段と、
前記鍋内の蒸気を前記本体外へ導く蒸気筒と、
前記鍋内の沸騰状態を維持することで、前記鍋内の空気を排気してご飯の匂いを良化させる加熱排気手段とを備える炊飯器。
【請求項2】
前記加熱手段の火力を500〜900Wとする請求項1に記載の炊飯器。
【請求項3】
前記鍋が90℃以上となる工程において、前記加熱排気手段を動作させる請求項1または2に記載の炊飯器。
【請求項4】
前記加熱排気手段による加熱入切の周期に対する入時間の比率を70%以上とする請求項1から3のいずれか1項に記載の炊飯器。
【請求項5】
前記加熱手段は前記鍋を加熱する加熱コイルと、前記加熱コイルに高周波電流を印加するインバータとを備える請求項1から4のいずれか1項に記載の炊飯器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2013−85916(P2013−85916A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232423(P2011−232423)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】