炊飯方法及び炊飯器
【課題】メーカー仕様の硬さに関する炊飯条件をユーザーの好みの硬さの炊飯条件に修正してお好みの硬さで炊飯できる炊飯方法を提供すること。
【解決手段】米に吸水させる吸水工程、立上加熱工程、沸騰維持工程、蒸らし工程などの一連の工程で、沸騰維持工程では、沸騰維持時間及び沸騰維持電力量を規定して炊飯する方法であって、炊飯回数毎に実測沸騰維持時間を算出すると共に炊飯回数を記憶し、所定期間の実測沸騰維持時間と規定沸騰維持時間とを比較して、規定沸騰維持時間と略同じか超え又は下回る実測沸騰維持時間に対応する炊飯回数を算出して、基準回数を超えるときに規定沸騰維持電力量を修正せず、超えるときの炊飯回数が基準回数を超えるときに規定沸騰維持電力量を下方へ修正し、また、下回るときの炊飯回数が基準回数を超えるときに沸騰維持電力量を上方へ修正して、所定期間経過後は修正無し又は修正した沸騰維持電力量により炊飯を実行する。
【解決手段】米に吸水させる吸水工程、立上加熱工程、沸騰維持工程、蒸らし工程などの一連の工程で、沸騰維持工程では、沸騰維持時間及び沸騰維持電力量を規定して炊飯する方法であって、炊飯回数毎に実測沸騰維持時間を算出すると共に炊飯回数を記憶し、所定期間の実測沸騰維持時間と規定沸騰維持時間とを比較して、規定沸騰維持時間と略同じか超え又は下回る実測沸騰維持時間に対応する炊飯回数を算出して、基準回数を超えるときに規定沸騰維持電力量を修正せず、超えるときの炊飯回数が基準回数を超えるときに規定沸騰維持電力量を下方へ修正し、また、下回るときの炊飯回数が基準回数を超えるときに沸騰維持電力量を上方へ修正して、所定期間経過後は修正無し又は修正した沸騰維持電力量により炊飯を実行する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は炊飯方法及び炊飯器に係り、さらに詳しくは所定回数の炊飯履歴からユーザーの好みの硬さを把握して、以後の炊飯をメーカー仕様の硬さの炊飯条件を修正してユーザーの好みの硬さで炊飯する炊飯方法及びこの方法を用いた炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気炊飯器(以下、炊飯器という)は一般家庭などにおいて既に必需品となっており、様々なタイプのものが製品化されている。この種の炊飯器は炊飯時に鍋内の圧力をほぼ常圧で炊飯するタイプのものと、所定圧力に昇圧して炊飯するタイプのものとに大別されている。近年、これらの炊飯器にはマイクロコンピュータが搭載されて、このマイクロコンピュータによって、様々な炊飯コース、例えば、白米・玄米などの米種に応じた米種炊飯コース、硬め・柔らかめなどを調節してお好みの炊飯ができるお好み炊飯コース、及びすしめしを炊飯するすしめし炊飯コースなどの炊飯コースが1台の炊飯器でできるようになっている。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、3段階の硬さ、やわらかめ、ふつう、かためで炊飯できる炊飯メニューを備えた常圧式の炊飯器が記載されている。
【0004】
この炊飯器は、炊飯中に発生する水蒸気を外へ逃がす蒸気口と、この蒸気口を開閉する蒸気口開閉装置と、炊き分けメニューをユーザーが選択できる炊飯シーケンス選択手段と、蒸気口開閉装置を制御するとともに一連の炊飯工程を実行する制御手段とを備えている。炊き分けメニューは、「やわらかめ」、「ふつう」、「かため」及びすし飯メニューなどとなっている。また、一連の炊飯工程は、吸水工程、昇温工程、炊き上げ工程、沸騰維持工程及び追い炊き工程となっている。この炊飯器は、炊飯時に鍋内の圧力が若干上昇するが、その上限圧力は1.01atmとなっている。
【0005】
この炊飯器は、炊飯シーケンス選択手段でふつうメニューが選択されると、吸水工程では蒸気口が閉成されて、この閉成状態が炊き上げ工程まで継続される。以降の沸騰維持工程及び追い炊き工程では、この蒸気口が所定時間間歇的に3回〜7回開閉されて、この炊飯メニューが実行される。また、他の炊飯メニューも同様の炊飯工程で炊飯されるようになっている。
【0006】
また、下記特許文献2には、5段階の硬さ、すなわち硬め、少し硬め、ふつう、少し柔らかめ、柔らかめで炊飯できる炊飯コースを備えた圧力式の炊飯器が記載されている。
【0007】
この炊飯器は、水と米とを含む炊飯物を入れる鍋と、この鍋を収容し鍋内の炊飯物を加熱する加熱手段を設けた炊飯器本体と、炊飯器本体の開口部を塞ぐ蓋体と、鍋内と外気とを連通又は遮断する圧力弁と、この圧力弁に付設されて圧力弁を強制的に開放させる圧力弁開放機構と、加熱手段の加熱量を制御するとともに圧力弁を炊飯中に強制的に所定単位時間で間歇的に開放させて一連の炊飯工程を実行する制御手段と、硬め、少し硬め、ふつう、少し柔らかめ、柔らかめなどを含む炊飯コース群からユーザーが任意の炊飯コースを選択できる選択手段とを備えている。
【0008】
この炊飯器において、炊飯コース選択手段で硬さ「ふつう炊飯コース」が選択されると、制御手段は、図11の炊飯工程を実行する。吸水工程Iでは、圧力弁を開放した状態で加熱手段への通電を行って鍋内の温度を所定の吸水温度で所定時間をかけて炊飯物に所定の水を吸水させる。この吸水工程が終了すると、立上加熱工程IIへ移行し、この立上加熱工程では、圧力弁を閉成させると同時に加熱手段へフルパワー通電を行い、鍋内を大気圧を超える圧力に昇圧して所定時間t1かけて鍋内を加熱・沸騰させる。この立上加熱工程が終了すると、制御手段は、沸騰維持工程IIIへ移行させる。この沸騰維持工程では、圧力弁開放機構を作動させて、圧力弁を強制的に所定の単位時間で複数回間歇的に開放させる。この圧力弁の開放時には鍋内の状態が加圧状態から一気に大気圧近傍まで低下して鍋内に圧力変動が起こり、この圧力変動が間歇的に複数回に亘って繰り返される。この間歇的な圧力弁の開放により、鍋内の圧力が大きく変動し、その度毎に鍋内に激しい沸騰現象、いわゆる突沸現象が生じて大量の泡が発生する。同時に鍋内の中央側の米粒が鍋内の側方へ移動し、或いは逆方向の移動を繰り返して鍋内の米粒が効率よく攪拌される。この沸騰維持工程が所定時間t2継続された後に、鍋底近傍に設置した鍋底センサが所定の鍋底温度を検出すると、制御手段は加熱手段への通電を停止して蒸らし工程IVへ移行させる。このとき、圧力弁の開放動作は行われない。所定時間が経過すると、圧力弁を開放させて加熱手段で再加熱が実行される。この再加熱が終了し、所定時間が経過するとこの炊飯コースの一連の炊飯工程を終了する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3536495号公報(段落〔0019〕〜〔0021〕、図4)
【特許文献2】特開2006−325705号公報(段落〔0075〕、図6、図7)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献1、2の炊飯器は、例えば硬さが「かため」、「ふつう」及び「やわらか」という3段階の炊飯条件に区分されている場合、ユーザーが炊飯時にこの中から所望の炊飯条件を選定することによって、選定された硬さのご飯が炊き上がる。しかし、この硬さの区分は、メーカーによって決定されているため、ユーザーの好みの硬さとは必ずしも合致しないことがある。すなわち、メーカーによって硬さが3段階「かため」、「ふつう」及び「やわらか」に区分されていても、これらの区分は、図12に示すように、それぞれ所定範囲を有し、硬さに幅があることから、その区分内でさらに細分化されうる。例えば、「かため」は、さらに細部化されて、例えば「ふつうのかため(2)」に対して、その前後の「ややかため(1)」及び「さらにかため(3)」などに区分され、同様にして、他の「ふつう」、「やわらか」もそれぞれ(1)〜(3)に区分される。さらに、これらの区分は際限なく細分化されうる。このようにユーザーの硬さに関する嗜好は、通常、際限なく細分化されうるため、メーカーはユーザーの嗜好調査を行い、その調査結果に基づいて最も平均的な区分を設定している。例えば、図12の「やわらか」に対しては(2)、「ふつう」及び「かため」に対してもそれぞれ(2)などに仕様を決定している。
【0011】
しかしながら、昨今、ユーザーの好みが個人化し、また年齢層、家族構成などによりさらに多様化しており、ユーザーの好みの硬さが、例えば図12のやわらか(3)、ふつう(1)及びかため(1)であると、上記のメーカーによる区分では対応できない。かといって、特定のユーザーの好みに合わせてメーカーによる区分を規定すると、他のユーザーの好みに適合しないことになる。
【0012】
そのため、個々のユーザーは炊飯時にメーカーの仕様を一応の目安にして、加える水の量、すなわち加水量を調節することによって、好みの硬さに調節して炊飯している。通常の炊飯時には、所定の炊飯量、例えば米3カップを炊飯する場合、この炊飯量に対応した水が鍋内の水量線Mまで加えられる。しかし、ユーザーは硬めの炊き上がりを所望するときには、図13に示すように、水量をこの水量線Mより少ないLとし、柔らかめにするときには水量を水量線Mより多くしたHとして、加水量の調節によって好みの硬さの炊飯を行っている。加水量の調節を行う際には、鍋内に表示された基準の水量線を見て、炊飯毎に目分量で調節しなければならないので、炊飯する人によって加水量が異なってしまう。しかも鍋内を覗き込んで調節しなければならないため、加水量を一定にするのが難しく、しかもその調節作業も面倒なものとなっている。
【0013】
本発明者らは、この実際の炊飯状況に鑑みて、この課題の解決法を検討した。その結果、ユーザーが加水量を調節すると、この加水量の増減が一連の炊飯工程において、沸騰維持工程の沸騰維持時間t2(図11参照)の長短になって現れることが判明した。すなわち、加水量を基準の水量線より多くすると炊き上がったご飯が柔らかめになるが、このとき沸騰維持時間t2は長くなっている。一方、加水量を基準の水量線より少なくすると炊き上がったご飯は硬めになるが、このとき、沸騰維持時間t2は短くなっている。この沸騰維持時間t2の長短は、加水量の増減に対応する一方で、沸騰維持電力量の増減に対応している。すなわち、沸騰維持時間が長いと沸騰維持電力量が多くなり、沸騰維持時間が短いと沸騰維持電力量が少なくなる。
【0014】
本発明者らは、これらの関係から、加水量を調節した炊飯が複数回実施されたときに、こられの履歴データに基づいて、メーカー仕様硬さに対応する沸騰維持電力量を修正すれば、基準の水量線に対する加水量の増減を行わなくても、ユーザーの好みの硬さに炊飯できることを見出して、本発明を完成させるに至ったものである。
【0015】
本発明は、上記の知見に基づいてなされたもので、本発明の目的は、メーカー仕様の硬さに関する炊飯条件をユーザーの好みの硬さの炊飯条件に修正し、好みの硬さで炊飯できる炊飯方法及び炊飯器を提供することにある。すなわち、メーカー仕様の加水量においてもユーザーの好みの炊飯ができる炊飯方法及び炊飯器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、鍋内に入れられた米に吸水させる吸水工程、吸水後に鍋内を一気に加熱して沸騰させる立上加熱工程、沸騰状態を維持して炊き上げる沸騰維持工程、炊き上がったご飯から余分な水分を除去する蒸らし工程などを含む一連の炊飯工程で、前記沸騰維持工程では、該沸騰維持工程における沸騰維持時間及び沸騰維持電力量を予め規定して炊飯する炊飯方法において、炊飯毎に、実際にかかった実測沸騰維持時間を算出すると共に炊飯回数を記憶し、所定期間の数回分の前記実測沸騰維持時間と前記規定沸騰維持時間とを比較して、前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間と略同じになる炊飯回数、前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間を超える炊飯回数及び前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間を下回る炊飯回数をそれぞれ算出して、前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間と略同じ炊飯回数が基準回数を超えるときには前記規定沸騰維持電力量を修正せず、前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間を超える炊飯回数が基準回数を超えるときには前記規定沸騰維持電力量を下方へ修正し、また、前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間を下回る炊飯回数が基準回数を超えるときには前記沸騰維持電力量を上方へ修正して、前記所定期間経過後は前記修正しない又は修正した沸騰維持電力量により炊飯を実行することを特徴とする。
【0017】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の炊飯方法において、前記沸騰維持工程では、炊飯量に対応して所定の沸騰維持時間及び該沸騰維持時間に対応する沸騰維持電力量を予め規定しておき、炊飯毎に、前記鍋内の炊飯量を判定して、この炊飯量に対応して実際にかかった炊飯量別の実測沸騰維持時間を算出すると共にこの炊飯量別の炊飯回数を記憶し、所定期間の数回分の前記炊飯量別の実測沸騰維持時間と前記炊飯量別の規定沸騰維持時間とを比較して、炊飯量別に、前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間と略同じになる炊飯回数、前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間を超える炊飯回数又は前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間を下回る炊飯回数を算出して、前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間と略同じになる炊飯回数が基準回数を超えるときに前記規定沸騰維持電力量を修正せず、前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間を超えるときの炊飯回数が基準回数を超えるときに前記規定沸騰維持電力量を下方へ修正し、また、前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間を下回るときの炊飯回数が基準回数を超えるときに前記沸騰維持電力量を上方へ修正して、前記所定期間経過後は前記修正しない又は修正した沸騰維持電力量により炊飯を実行することを特徴とする。
【0018】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の炊飯方法において、前記基準回数は、前記記憶された炊飯回数の半分を超える回数であることを特徴とする。
【0019】
請求項4に記載の発明は、米と水とを含む炊飯物を入れる鍋と、前記鍋内の炊飯物を加熱する加熱手段と、前記加熱手段を制御して前記鍋内の米に水を吸水させる吸水工程、吸水後に鍋内を一気に加熱して沸騰させる立上加熱工程、沸騰状態を維持して炊き上げる沸騰維持工程、炊き上ったご飯から余分な水分を除去する蒸らし工程などを含む一連の炊飯工程を実行する制御装置とを備えた炊飯器において、前記制御装置は、前記沸騰維持工程における沸騰維持時間及び沸騰維持電力量を予め規定して記憶した第1の記憶手段と、炊飯毎に実際にかかった実測沸騰維持時間を算出すると共に炊飯回数をカウントする時間・回数算出手段と、前記時間・回数算出手段の出力を記憶する第2の記憶手段と、前記第2の記憶手段に記憶された所定期間の数回分の前記実測沸騰維持時間と前記規定沸騰維持時間とを比較して前記規定沸騰維持電力量を修正する沸騰維持電力修正手段を備え、前記沸騰維持電力修正手段は、前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間と略同じになる炊飯回数、前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間を超える炊飯回数及び前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間を下回る炊飯回数を算出して、前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間と略同じ炊飯回数が基準回数を超えるときには前記規定沸騰維持電力量を修正せず、前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間を超える炊飯回数が基準回数を超えるときには前記規定沸騰維持電力量を下方へ修正し、また、前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間を下回る炊飯回数が基準回数を超えるときには前記沸騰維持電力量を上方へ修正して、前記所定期間経過後は前記修正しない又は修正した沸騰維持電力量により炊飯を実行することを特徴とする。
【0020】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の炊飯器において、前記制御装置は、前記鍋内の少なくても3段階の炊飯量を判定する量判定手段を備え、第1の記憶手段に炊飯量に対応して所定の沸騰維持時間及び前記規定沸騰維持時間に対応する沸騰維持電力量を規定して、炊飯毎に、前記鍋内の炊飯量を前記量判定手段で判定して、この炊飯量に対応して実際にかかった炊飯量別の実測沸騰維持時間を算出すると共にこの炊飯量別の炊飯回数を前記時間・回数算出手段で算出して前記第2の記憶手段に記憶し、沸騰維持電力修正手段は、前記第2の記憶手段に記憶された所定期間に記憶された数回分の前記炊飯量別の実測沸騰維持時間と前記炊飯量別の規定沸騰維持時間と比較して、炊飯量別毎に、前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間と略同じになる炊飯回数、前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間を超える炊飯回数及び前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間を下回る炊飯回数を算出して、前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間と略同じ炊飯回数が基準回数を超えるときには前記規定沸騰維持電力量を修正せず、前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間を超える炊飯回数が基準回数を超えるときには前記規定沸騰維持電力量を下方へ修正し、また、前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間を下回る炊飯回数が基準回数を超えるときには前記沸騰維持電力量を上方へ修正して、前記所定期間経過後は前記修正しない又は修正した沸騰維持電力量により炊飯を実行することを特徴とする。
【0021】
請求項6に記載の発明は、請求項4又は5に記載の炊飯器において、前記基準回数は、前記記憶された炊飯回数の半分を超える回数であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
請求項1の発明によれば、炊飯時に、ユーザーが米量に応じてご飯を好みの硬さに調整するために、鍋に加える水量を調節した時に、メーカーが数回の炊飯履歴からユーザーの好みの硬さに関する炊飯条件が把握でき、以後の炊飯をメーカー仕様の炊飯条件を修正してユーザーの好みの硬さの炊飯条件で炊飯できる。したがって、ユーザーは炊飯時に加水量をメーカー仕様に合わせても、ユーザーの好みの炊飯が可能になる。
【0023】
請求項2の発明によれば、炊飯量別に、数回の炊飯履歴からユーザーの好みの硬さに関する炊飯条件が把握でき、以後の炊飯をメーカー仕様の炊飯条件を修正してユーザーの好みの硬さの炊飯条件で炊飯できる。
【0024】
請求項3の発明によれば、基準回数を記憶されている炊飯回数の半分を超える回数にすることにより、より確実にユーザーの炊飯嗜好に合わせた炊飯が可能になる。
【0025】
請求項4の発明によれば、炊飯時に、ユーザーが米量に応じてご飯を好みの硬さに調整するため、鍋に加える水量を調節した時に、数回の炊飯履歴からユーザーの好みの硬さに関する炊飯条件を把握して、以後の炊飯をメーカー仕様の炊飯条件を修正してユーザーの好みの硬さの炊飯条件で炊飯できる炊飯器を提供できる。したがって、炊飯時に加水量をメーカー仕様に合わせても、ユーザーの好みの炊飯が可能になる。
【0026】
請求項5の発明によれば、炊飯量別に、数回の炊飯履歴からユーザーの好みの硬さに関する炊飯条件が把握でき、以後の炊飯をメーカー仕様の炊飯条件を修正してユーザーの好みの硬さの炊飯条件で炊飯できる炊飯器を提供できる。
【0027】
請求項6の発明によれば、基準回数を記憶されている炊飯回数の半分を超える回数にすることにより、より確実にユーザーの炊飯嗜好に合わせた炊飯が可能になる炊飯器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態に係る炊飯器の正面図である。
【図2】図1の炊飯器の縦断面図である。
【図3】図2の圧力弁及びこの圧力弁の開放機構部分を拡大した拡大断面図である。
【図4】炊飯器を制御する制御手段のブロック図である。
【図5】炊飯工程のフローチャート図である。
【図6】図5の沸騰維持工程のフローチャート図である。
【図7】図5の沸騰維持工程における炊飯量別の沸騰維持時間及び電力量を規定した規定表である。
【図8】小炊飯量の炊飯工程における鍋内の温度/圧力変化を示した曲線図である。
【図9】中炊飯量の炊飯工程における鍋内の温度/圧力変化を示した曲線図である。
【図10】大炊飯量の炊飯工程における鍋内の温度/圧力変化を示した曲線図である。
【図11】従来技術の炊飯器の炊飯工程における鍋内の温度/圧力変化を示した曲線図である。
【図12】硬さの区分を説明する説明図である。
【図13】従来技術の鍋の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。但し、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための炊飯方法及び炊飯器を例示するものであって、本発明をこれらに特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものにも等しく適応し得るものである。すなわち、以下の説明は、圧力式炊飯器となっているが、これに限定されるものでなく非圧力式の炊飯器にも適用できるものである。
【0030】
図1〜図4を参照して、本発明の実施形態に係る炊飯器の構造及び制御装置を説明する。なお、図1は本発明の実施形態に係る炊飯器の正面図、図2は図1の炊飯器の縦断面図、図3は図2の圧力弁開放機構を拡大した拡大断面図、図4は制御装置を構成するブロック図である。
【0031】
本発明の実施形態に係る炊飯器1は、図1及び図2に示すように、米と水とを含む炊飯物を入れる鍋7と、上方にこの鍋7が収容される開口部及び内部にこの鍋7を加熱し炊飯物を加熱する加熱手段5を有する炊飯器本体(以下、単に本体という)2と、この本体2の一側に枢支されて開口部を覆い閉塞状態に係止する蓋体10と、この蓋体10に装着されて鍋7内の内圧を調整する圧力弁13と、この圧力弁13を開放制御する圧力弁開放機構18と、各種の炊飯メニューを表示して選択する表示操作部25と、表示操作部で選択された炊飯メニューに基づいて加熱手段5及び圧力弁開放機構18を制御して鍋7内の炊飯物を所定温度に加熱して一連の炊飯工程を実行する制御装置24(図4参照)とを有している。
【0032】
本体2は、図2に示すように、有底箱状の外部ケース3と、この外部ケース3に収容される内部ケース4とからなり、外部ケース3と内部ケース4との間に隙間が形成されて、この隙間に制御装置24を構成する制御回路基板等(図示省略)が配設されている。内部ケース4には、深底の容器からなる鍋7が収容される。この鍋7は、アルミニウムとステンレスとのクラッド材で形成されている。また、この内部ケース4は、その底部4a及び側部4bにそれぞれ底部ヒータ5b及び側部ヒータ5aが設けられ、底部4aに鍋底温度を検知するサーミスタ等からなる鍋底温度センサ6が設けられている。底部ヒータ5bは環状に巻装した電磁誘導コイル(以下、単にIHコイルともいう)が使用されている。
【0033】
また、本体2には、図1に示すように、その正面に表示操作部25が設けられている。この表示操作部25には、図1に示すように、各種の炊飯選択メニュー及び時刻等が表示される表示パネル8と、この表示パネル8の左右及び下方に設けられた複数個のスイッチ操作釦3a〜3c、9とを備えている。これらのスイッチ操作釦は、炊飯器1を作動させる炊飯/スタート釦3a、炊飯コースを選択するメニュー選択釦3b、コース選択釦3c及び表示パネル8に表示されたメニュー等を選択・決定する十字シフトキー9などとなっている。
【0034】
蓋体10は、図2に示すように、鍋7の開口部を閉蓋する内蓋11と、本体2の開口部全体を覆う外蓋12等とで構成されている。この蓋体10は、一側がヒンジ機構Hにより本体2に枢支され、他側が係止機構21により本体2の係止部に係止されている。図2及び図3に示すように、内蓋11には、負圧弁17及び圧力弁13が設けられている。圧力弁13は圧力弁開放機構18によって開放される。圧力弁13は、所定径の弁孔14bが形成された弁座14aと、この弁孔14bを塞ぐように弁座14a上に載置される金属製のボール15と、このボール15の移動を規制することで弁座14a上にボール15を保持するカバー14cとで構成されている。また、圧力弁開放機構18は、電磁コイルが巻回されたシリンダ19aと、このシリンダ19a内から電磁コイルの励磁により入出しボール15を移動させるプランジャ19bと、プランジャ19bの先端に装着された作動棹20と、シリンダ19aの一端部と作動棹20との間に設けられたバネとで構成されている。
【0035】
圧力弁開放機構18は、制御装置24により制御される。すなわち、制御装置24からの指令に基づき、電磁コイルが励磁されるとプランジャ19bがバネの付勢力によりシリンダ19a内に引き込まれ、この引き込みにより、ボール15が弁孔14b上に戻り、弁孔14bがボール15で閉塞される。また、この閉塞状態において、電磁コイルへの励磁がストップされると、プランジャ19bがシリンダ19aから飛出してボール15に衝突し、ボール15が所定方向に押し出される。この押し出しにより、ボール15は弁孔14b上から移動して弁孔14bを強制的に開放させる。内蓋11には、鍋7内の蒸気圧力が所定圧力以上の異常圧力に上昇したときに、鍋7内の圧力を外部に逃がす安全弁16が設けられている。また、この内蓋11には、蒸気温度センサ23(図3参照)が取り付けられている。
【0036】
内蓋11と外蓋12とは、図2に示すように、その間に所定広さの隙間空間Sをあけて結合されている。外蓋12には、鍋7から排出される水分を含むおねばを一時貯留する貯留タンク22が着脱自在に装着されている。この貯留タンク22は、圧力弁13を介して放出される蒸気などを吐出させる吐出筒22aと、内部におねばを一時貯留する空間22bと、蒸気を外部へ逃す蒸気口22cと、タンク弁221とを有している。隙間空間S及び貯留タンク22の空間22bは、おねばを一時貯留する貯留部となっている。なお、おねばは粘り気のある糊状の汁であって、この糊状の汁は旨み成分を含んでおり、このおねばがそのまま鍋7外へ排出されてしまうとご飯が美味しく炊きあがらない。そこで、このおねばを貯留する貯留タンク22を設けて、この貯留タンク22におねばを一時貯留しておき、鍋7内の加熱が終了して鍋7内が負圧になったときにおねばを鍋7内に戻すことでご飯を美味しく炊きあげることができる。
【0037】
次に、図4を参照して所定の炊飯工程を実行するための制御装置24の構成を説明する。制御装置24は、図4に示すように、CPU、ROM、RAMなどが搭載された回路基板からなるハードウェアを備え、炊飯/スタート釦3a、メニュー選択釦3b、コース選択釦3c、及び鍋底温度センサ6、蒸気温度センサ23などにそれぞれ接続されて、これらの釦及びセンサの信号がCPUに入力されるようになっている。また、CPUには、所定時間を計時するタイマー及びROM、RAM(記憶手段)などが接続されている。この記憶手段には、一連の炊飯工程を実行する炊飯プログラム、沸騰維持工程における炊飯量別の規定沸騰維持時間及び規定沸騰維持電力量などが記憶されている。また、この記憶手段には、炊飯量別の実測沸騰維持時間及び炊飯回数なども記憶されるようになっている。なお、特許請求範囲の第1、第2の記憶手段は、この記憶手段を便宜上区別して表現したもので、実際の記憶手段は1個のメモリーなどで構成されている。このCPUは、圧力弁開閉制御手段、炊飯量判定手段、加熱制御手段、時間・回数算出手段、沸騰維持電力修正手段などを制御するようになっている。時間・回数算出手段は、炊飯毎に実際にかかった実測沸騰維持時間を算出すると共に炊飯回数をカウントするものであり、沸騰維持電力修正手段は、所定期間の数回分の実測沸騰維持時間と規定沸騰維持時間とを比較して規定沸騰維持電力量を修正するものとなっている。また、出力部(ドライバー)には、ヒータ5a、5bなどの加熱手段5、圧力弁開放機構18、及び表示器(表示パネル)8などが接続されている。ROMには、各種の炊飯コース、及びこの炊飯コースを実行するプログラムが収納されている。IHコイルは、インバータ回路に接続されて、この回路によってIHコイル5bが制御される。
【0038】
次に、図1〜図10を参照して、この炊飯器を用いた炊飯工程を説明する。なお、図5は炊飯工程のフローチャート図、図6は図5の沸騰維持工程のフローチャート図、図7は図5の沸騰維持工程における炊飯量別の沸騰維持時間及び電力量を規定した規定表、図8は小炊飯量の炊飯工程における鍋内の温度/圧力変化を示した曲線図、図9は中炊飯量の炊飯工程における鍋内の温度/圧力変化を示した曲線図、図10は大炊飯量の炊飯工程における鍋内の温度/圧力変化を示した曲線図である。
【0039】
まず、図1〜図5を参照して、炊飯器を用いた炊飯工程を説明する。
【0040】
初めに、鍋7に所定量の米とこの米量に対応する水が量を調節して入れられる。水量は鍋の内壁に記された米量に対応した基準水量線と同じか、又は基準水量線より上下させることにより調節される。この加水量の調節によって、ユーザーの好みの硬さに炊き上げることができる。次に、炊飯物を入れた鍋7を本体の内部ケース4内に収納して、蓋体10を閉めて炊飯セットする(図5ステップS1、以下同様とする)。続いて、表示操作部25を操作して炊飯コース等を設定し、炊飯をスタートする(S2)。この炊飯スタートにより、加熱手段5のコイル5bに高周波電流が流れ、鍋7に渦電流が生じることにより鍋が発熱して吸水工程Iが開始される(S3)。このとき、圧力弁13は開成されている。この吸水工程Iでは、鍋内が加熱されると共に吸水タイマー(図示せず)が所定の吸水時間の計時を開始し、同時に鍋底温度センサ6が鍋底温度を測定する。
【0041】
所定の吸水時間が経過すると、制御装置24は、立上加熱工程IIへ移行させて、ここで加熱手段5を全加熱量で加熱する(フルパワー加熱)と同時に圧力弁13を閉成する(S4)。圧力弁は、圧力弁解放機構19により、プランジャ19bがシリンダ19a内へ引き込まれ、ボール15が弁孔14bの上に戻った状態でボールの自重によって弁孔14bを塞がれて閉成され、鍋内は大気圧を超える圧力に昇圧される。なお、鍋内の圧力は、ボールの重さに応じて決定される。この立上加熱工程IIでは、炊飯量の判定が行われる(S5)。
【0042】
立上加熱工程IIで鍋7内が昇圧・沸騰し、蒸気センサ23が所定温度(例えば、75℃)を検出すると、制御装置は沸騰維持工程IIIへ移行させる(S6)。この沸騰維持工程IIIでは、圧力弁開放機構18を作動させて、圧力弁13を強制的に所定の単位時間で複数回間歇的に開放させる。この圧力弁13の間歇的な開放により、開放時には鍋内の状態が加圧状態から一気に大気圧近傍まで低下して鍋内に圧力変動が起こり、この圧力変動が間歇的に複数回に亘って繰り返される。この間歇的な圧力弁13の開放により、鍋内の圧力が大きく変動し、その度毎に鍋内に激しい沸騰現象、いわゆる突沸現象が生じて大量の泡が発生する。同時に鍋内の中央側の米粒が鍋内の側方へ或いは逆方向への移動を繰り返して鍋内の米粒が効率よく攪拌される。この攪拌により、米粒全体に十分な熱が加わり、加熱ムラがなくなる。この沸騰維持工程IIIにおいて、圧力弁13が強制的に複数回に亘り開放された後は、このような強制的な開放作動をさせずに残りの沸騰維持工程を継続する。この残りの沸騰維持工程では、圧力弁13は、その弁口を塞ぐボールの自重と鍋内圧力とのバランスによって略一定の加圧状態が維持されるように小刻みな開閉動作が繰り返される。
【0043】
沸騰維持工程が所定時間継続された後に、鍋底近傍に設置した鍋底センサが所定の鍋底温度(130℃)を検出すると、制御手段は加熱手段への通電を停止して蒸らし工程IVへ移行させる(S7)。このとき、圧力弁13の開放動作は行われない。蒸らし工程IVでは、所定時間が経過すると、圧力弁を開放させて加熱手段で再加熱を行い、この再加熱が終了すると、炊飯回数のカウントを行って(S8)、一回の炊飯工程を終了し、以後の炊飯では、同じ工程を繰り返して実行する。
【0044】
この炊飯工程では、炊飯量の大小に対応して、立上加熱工程II及び沸騰維持工程IIIの時間が変化する。具体的には、立上加熱工程II及び沸騰維持工程IIIの時間は、炊飯量が少ないときには立上加熱工程IIの時間が短くなり、沸騰維持工程IIIの時間が長くなる。一方、炊飯量が多くなると、立上加熱工程IIの時間が長くなり、沸騰維持工程IIIの時間は短くなる。図8は小炊飯量の炊飯工程における鍋内の温度/圧力変化を示し、立上加熱工程II及び沸騰維持工程IIIの時間はt11、t21である。図9は中炊飯量の炊飯工程における鍋内の温度/圧力変化を示し、立上加熱工程II及び沸騰維持工程IIIの時間はt12、t22である。図10は大炊飯量の炊飯工程における鍋内の温度/圧力変化を示し、立上加熱工程II及び沸騰維持工程IIIの時間はt13、t23となる。これらの関係は、t11<t12<t13、t21>t22>t23となっている。
【0045】
炊飯量の判定は、本実施形態においては立上加熱工程のみで行ったが、吸水工程及び/又は立上加熱工程で行うことができる。なお、この判定方法には、公知の手段を用いるので、説明を省略する。
【0046】
次に、主に図5〜図10を参照して、炊飯履歴から規定沸騰維持電力量を修正する方法を説明する。
【0047】
一回の炊飯は、図5に示す炊飯工程、すなわち吸水工程I、立上加熱工程II、沸騰維持工程III及び蒸らし工程IVを含む一連の炊飯工程で行う。以後の炊飯も同様の炊飯工程で実行するが、炊飯ごとに炊飯回数がカウントされており、この炊飯回数は、所定期間における炊飯履歴となる。そこで、この履歴データから、ユーザーのお好みの硬さに関する炊飯条件を把握して、以後の炊飯をメーカー仕様の炊飯条件を修正してユーザーお好みの硬さで炊飯する。
【0048】
メーカー仕様の硬さは、沸騰維持工程における沸騰維持時間及び沸騰維持電力量で規定されている。これらの沸騰維持時間及び沸騰維持電力量は、炊飯量、例えば、炊飯量を小、中及び大に対応して規定する。炊飯量を小(例えば、1カップ)、中(例えば、3カップ)及び大(例えば、5.5カップ)に対して、沸騰維持時間T1及び沸騰維持電力量P1、中炊飯量に対して沸騰維持時間T2及び沸騰維持電力量P2、大炊飯量に対して沸騰維持時間T3及び沸騰維持電力量P3を規定して、これらの規定値は、制御装置24の記憶手段に記憶される(図7参照)。これらのT1〜T3及びP1〜P3の関係は、T1>T2>T3、P1<P2<P3となっている。
【0049】
一方、実際の炊飯においては、ユーザーによって加水量が調整されており、加水量の大小によって実際にかかった沸騰維持時間が変化する。そこで、炊飯毎に炊飯回数のカウントを行うと共に、実際にかかった沸騰維持時間を計測する。これらの計測も炊飯量に対応して行う。小炊飯量に対しては、沸騰維持時間ta、tb、tc、・・・、を、中炊飯量に対しては沸騰維持時間td、te、tf、・・・、を、及び大炊飯量に対しては沸騰維持時間tg、th、ti、・・・をそれぞれ計測する。これらの計測値(実測値)は、規定値T1、T2、T3と所定の関係にある。すなわち、小炊飯量の実測沸騰維持時間ta、tb、tcは、ta<tb=T1<tc、中炊飯量の実測沸騰維持時間td、te、tfは、td<te=T2<tf、大炊飯量の実測沸騰維持時間tg、th、tiは、tg<th=T3<tiとなっている。
【0050】
ここで、それぞれの炊飯量において、基準沸騰維持時間よりも実測沸騰維持時間が短い場合、すなわち上記ta、td、tgの場合においては、鍋7内の水が基準沸騰維持時間よりも早く枯渇していることから、ユーザーが水の量を基準水量線より少なくしている、すなわち、水分を減らして標準よりも硬めのご飯を所望していると考えられる。一方、基準沸騰維持時間よりも実測沸騰維持時間が長い場合、すなわち上記tc、tf、tiの場合においては、鍋7内の水が基準沸騰維持時間よりも長く存在していることから、ユーザーが水の量を標準水量線より多くしている、すなわち、水分を多くして基準よりも柔らかめのご飯を所望していると考えられる。なお、tb、te、thの場合には、実測沸騰維持時間が基準沸騰維持時間と略等しいことから、ユーザーは水の量を基準水量線に合わせて調節しており、標準の硬さのご飯を所望していると考えられる。
【0051】
また、これらの実測値(ta、tb、tc)、(td、te、tf)及び(tf、tg、th、ti)の大小の関係は、(ta、tb、tc)>(td、te、tf)>(tg、th、ti)となっている。
【0052】
さらに、これらの実測沸騰維持時間と炊飯回数との関係は、以下のようになる。なお、Kはあらかじめ規定された炊飯回数を示す。
(a)小炊飯量
小炊飯量時の実測沸騰維持時間と炊飯回数の関係は、
小炊飯量における実測沸騰維持時間がta、tb、tc・・・・、であって、ta<tb=T1<tcのとき、
ta、tb、tcにそれぞれ対応する炊飯回数をna〜ncとする、すなわち、
実測沸騰維持時間がtaである炊飯回数がna、実測沸騰維持時間がtbである炊飯回数がnb、実測沸騰維持時間がtcである炊飯回数がncとすると、小炊飯量における炊飯回数の合計は、
na+nb+nc=K (1)
となる。
(b)中炊飯量
中炊飯量時の実測沸騰維持時間と炊飯回数の関係は、
中炊飯量における実測沸騰維持時間がtd、te、tf、・・・・、であって、td<te=T2<tfのとき、
td、te、tfにそれぞれ対応する炊飯回数をnd〜nfとする、すなわち、
実測沸騰維持時間がtdである炊飯回数がnd、実測沸騰維持時間がteである炊飯回数がne、実測沸騰維持時間がtfである炊飯回数がnfとすると、
中炊飯量における炊飯回数の合計は、
nd+ne+nf=K (2)
となる。
(c)大炊飯量
大炊飯量時の実測沸騰維持時間と炊飯回数の関係は、
大炊飯量における実測沸騰維持時間がtg、th、ti、・・・・、であって、tg<th=T3<tiのとき、
tg、th、tiにそれぞれ対応する炊飯回数をng〜niとする、すなわち、
実測沸騰維持時間がtgである炊飯回数がng、実測沸騰維持時間がthである炊飯回数がnh、実測沸騰維持時間がtiである炊飯回数がniとすると、
大炊飯量における炊飯回数の合計は
ng+nh+ni=K (3)
となる。
【0053】
このとき、上記(a)〜(c)における炊飯回数に応じて、以下の方法で沸騰維持電力量の修正を行なう。
(a’)小炊飯量における沸騰維持電力量の修正
上記(1)のna+nb+nc=Kから、
na>1/2×Kのときは、ユーザーが水の量を基準水量線より少なくして、標準よりも硬めの炊き上がりにしようとする炊飯回数が基準回数の1/2を超えていることから、規定沸騰維持電力量P1を増加させることにより、水分量を標準より減少させ、硬めのご飯が炊き上がるように調整する。nc>1/2×Kのときは、ユーザーが水の量を基準水量線より多くして、標準よりも柔らかめの炊き上がりにしようとする炊飯回数が基準回数の1/2を超えていることから、規定沸騰維持電力量P1を減少させることにより、水分量を標準より増加させ、柔らかめのご飯が炊き上がるように調整する。これらの増加率及び減少率は、例えば、実測沸騰維持時間が規定沸騰維持時間より10%増加したときに、規定沸騰維持電力量を10%減少し、10%下回ったときには10%増加するように設定される。
【0054】
また、nb>1/2×Kのときは、ユーザーは標準の硬さのご飯が炊き上がるように水量を調節していることから、規定沸騰維持電力量P1の修正を行わない。
(b’)中炊飯量における沸騰維持電力量の修正
上記(2)のnd+ne+nf=Kから、
上記(a’)の場合と同様に、nd>1/2×Kのときは規定沸騰維持電力量P2を増加させることにより、水分量を標準より減少させ、硬めのご飯が炊き上がるように調整する。nf>1/2×Kのときは規定沸騰維持電力量P1を減少させることにより、水分量を標準より増加させ、柔らかめのご飯が炊き上がるように調整する。また、ne>1/2×Kのときは修正を行わない。
(c’)大炊飯量における沸騰維持電力量の修正
上記(3)のng+nh+ni=Kから、
上記(a’)、(b’)の場合と同様に、ng>1/2×Kのときは規定沸騰維持電力量P3を増加させ、ni>1/2×Kのときは規定沸騰維持電力量P3を減少させる。また、nh>1/2×Kのときは修正を行わない。
【0055】
この炊飯器によれば、数回の炊飯履歴からユーザーの好みの硬さに関する炊飯条件が把握でき、以後の炊飯はメーカー仕様の炊飯条件を修正してユーザーの好みの硬さの炊飯条件で炊飯することができる。基準回数を所定炊飯量の炊飯回数の半分にしてあるので、この基準回数を超える場合に炊飯条件を修正して、ユーザーの嗜好に合わせた炊飯が可能になる。したがって、ユーザーは炊飯時に加水量の調節を行わなくても、ユーザーの好みの炊飯が可能になる。以上の実施形態においては、炊飯量を判定し、炊飯量別で沸騰維持電力量を修正したが、炊飯量の判定を行わず、一定の炊飯量において沸騰維持電力量を修正してもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 炊飯器
2 炊飯器本体
5 加熱手段
5a 側部ヒータ
5b 底部ヒータ
7 鍋
13 圧力弁
15 ボール
18 圧力弁開放機構
24 制御装置
25 表示操作部
【技術分野】
【0001】
本発明は炊飯方法及び炊飯器に係り、さらに詳しくは所定回数の炊飯履歴からユーザーの好みの硬さを把握して、以後の炊飯をメーカー仕様の硬さの炊飯条件を修正してユーザーの好みの硬さで炊飯する炊飯方法及びこの方法を用いた炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気炊飯器(以下、炊飯器という)は一般家庭などにおいて既に必需品となっており、様々なタイプのものが製品化されている。この種の炊飯器は炊飯時に鍋内の圧力をほぼ常圧で炊飯するタイプのものと、所定圧力に昇圧して炊飯するタイプのものとに大別されている。近年、これらの炊飯器にはマイクロコンピュータが搭載されて、このマイクロコンピュータによって、様々な炊飯コース、例えば、白米・玄米などの米種に応じた米種炊飯コース、硬め・柔らかめなどを調節してお好みの炊飯ができるお好み炊飯コース、及びすしめしを炊飯するすしめし炊飯コースなどの炊飯コースが1台の炊飯器でできるようになっている。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、3段階の硬さ、やわらかめ、ふつう、かためで炊飯できる炊飯メニューを備えた常圧式の炊飯器が記載されている。
【0004】
この炊飯器は、炊飯中に発生する水蒸気を外へ逃がす蒸気口と、この蒸気口を開閉する蒸気口開閉装置と、炊き分けメニューをユーザーが選択できる炊飯シーケンス選択手段と、蒸気口開閉装置を制御するとともに一連の炊飯工程を実行する制御手段とを備えている。炊き分けメニューは、「やわらかめ」、「ふつう」、「かため」及びすし飯メニューなどとなっている。また、一連の炊飯工程は、吸水工程、昇温工程、炊き上げ工程、沸騰維持工程及び追い炊き工程となっている。この炊飯器は、炊飯時に鍋内の圧力が若干上昇するが、その上限圧力は1.01atmとなっている。
【0005】
この炊飯器は、炊飯シーケンス選択手段でふつうメニューが選択されると、吸水工程では蒸気口が閉成されて、この閉成状態が炊き上げ工程まで継続される。以降の沸騰維持工程及び追い炊き工程では、この蒸気口が所定時間間歇的に3回〜7回開閉されて、この炊飯メニューが実行される。また、他の炊飯メニューも同様の炊飯工程で炊飯されるようになっている。
【0006】
また、下記特許文献2には、5段階の硬さ、すなわち硬め、少し硬め、ふつう、少し柔らかめ、柔らかめで炊飯できる炊飯コースを備えた圧力式の炊飯器が記載されている。
【0007】
この炊飯器は、水と米とを含む炊飯物を入れる鍋と、この鍋を収容し鍋内の炊飯物を加熱する加熱手段を設けた炊飯器本体と、炊飯器本体の開口部を塞ぐ蓋体と、鍋内と外気とを連通又は遮断する圧力弁と、この圧力弁に付設されて圧力弁を強制的に開放させる圧力弁開放機構と、加熱手段の加熱量を制御するとともに圧力弁を炊飯中に強制的に所定単位時間で間歇的に開放させて一連の炊飯工程を実行する制御手段と、硬め、少し硬め、ふつう、少し柔らかめ、柔らかめなどを含む炊飯コース群からユーザーが任意の炊飯コースを選択できる選択手段とを備えている。
【0008】
この炊飯器において、炊飯コース選択手段で硬さ「ふつう炊飯コース」が選択されると、制御手段は、図11の炊飯工程を実行する。吸水工程Iでは、圧力弁を開放した状態で加熱手段への通電を行って鍋内の温度を所定の吸水温度で所定時間をかけて炊飯物に所定の水を吸水させる。この吸水工程が終了すると、立上加熱工程IIへ移行し、この立上加熱工程では、圧力弁を閉成させると同時に加熱手段へフルパワー通電を行い、鍋内を大気圧を超える圧力に昇圧して所定時間t1かけて鍋内を加熱・沸騰させる。この立上加熱工程が終了すると、制御手段は、沸騰維持工程IIIへ移行させる。この沸騰維持工程では、圧力弁開放機構を作動させて、圧力弁を強制的に所定の単位時間で複数回間歇的に開放させる。この圧力弁の開放時には鍋内の状態が加圧状態から一気に大気圧近傍まで低下して鍋内に圧力変動が起こり、この圧力変動が間歇的に複数回に亘って繰り返される。この間歇的な圧力弁の開放により、鍋内の圧力が大きく変動し、その度毎に鍋内に激しい沸騰現象、いわゆる突沸現象が生じて大量の泡が発生する。同時に鍋内の中央側の米粒が鍋内の側方へ移動し、或いは逆方向の移動を繰り返して鍋内の米粒が効率よく攪拌される。この沸騰維持工程が所定時間t2継続された後に、鍋底近傍に設置した鍋底センサが所定の鍋底温度を検出すると、制御手段は加熱手段への通電を停止して蒸らし工程IVへ移行させる。このとき、圧力弁の開放動作は行われない。所定時間が経過すると、圧力弁を開放させて加熱手段で再加熱が実行される。この再加熱が終了し、所定時間が経過するとこの炊飯コースの一連の炊飯工程を終了する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3536495号公報(段落〔0019〕〜〔0021〕、図4)
【特許文献2】特開2006−325705号公報(段落〔0075〕、図6、図7)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献1、2の炊飯器は、例えば硬さが「かため」、「ふつう」及び「やわらか」という3段階の炊飯条件に区分されている場合、ユーザーが炊飯時にこの中から所望の炊飯条件を選定することによって、選定された硬さのご飯が炊き上がる。しかし、この硬さの区分は、メーカーによって決定されているため、ユーザーの好みの硬さとは必ずしも合致しないことがある。すなわち、メーカーによって硬さが3段階「かため」、「ふつう」及び「やわらか」に区分されていても、これらの区分は、図12に示すように、それぞれ所定範囲を有し、硬さに幅があることから、その区分内でさらに細分化されうる。例えば、「かため」は、さらに細部化されて、例えば「ふつうのかため(2)」に対して、その前後の「ややかため(1)」及び「さらにかため(3)」などに区分され、同様にして、他の「ふつう」、「やわらか」もそれぞれ(1)〜(3)に区分される。さらに、これらの区分は際限なく細分化されうる。このようにユーザーの硬さに関する嗜好は、通常、際限なく細分化されうるため、メーカーはユーザーの嗜好調査を行い、その調査結果に基づいて最も平均的な区分を設定している。例えば、図12の「やわらか」に対しては(2)、「ふつう」及び「かため」に対してもそれぞれ(2)などに仕様を決定している。
【0011】
しかしながら、昨今、ユーザーの好みが個人化し、また年齢層、家族構成などによりさらに多様化しており、ユーザーの好みの硬さが、例えば図12のやわらか(3)、ふつう(1)及びかため(1)であると、上記のメーカーによる区分では対応できない。かといって、特定のユーザーの好みに合わせてメーカーによる区分を規定すると、他のユーザーの好みに適合しないことになる。
【0012】
そのため、個々のユーザーは炊飯時にメーカーの仕様を一応の目安にして、加える水の量、すなわち加水量を調節することによって、好みの硬さに調節して炊飯している。通常の炊飯時には、所定の炊飯量、例えば米3カップを炊飯する場合、この炊飯量に対応した水が鍋内の水量線Mまで加えられる。しかし、ユーザーは硬めの炊き上がりを所望するときには、図13に示すように、水量をこの水量線Mより少ないLとし、柔らかめにするときには水量を水量線Mより多くしたHとして、加水量の調節によって好みの硬さの炊飯を行っている。加水量の調節を行う際には、鍋内に表示された基準の水量線を見て、炊飯毎に目分量で調節しなければならないので、炊飯する人によって加水量が異なってしまう。しかも鍋内を覗き込んで調節しなければならないため、加水量を一定にするのが難しく、しかもその調節作業も面倒なものとなっている。
【0013】
本発明者らは、この実際の炊飯状況に鑑みて、この課題の解決法を検討した。その結果、ユーザーが加水量を調節すると、この加水量の増減が一連の炊飯工程において、沸騰維持工程の沸騰維持時間t2(図11参照)の長短になって現れることが判明した。すなわち、加水量を基準の水量線より多くすると炊き上がったご飯が柔らかめになるが、このとき沸騰維持時間t2は長くなっている。一方、加水量を基準の水量線より少なくすると炊き上がったご飯は硬めになるが、このとき、沸騰維持時間t2は短くなっている。この沸騰維持時間t2の長短は、加水量の増減に対応する一方で、沸騰維持電力量の増減に対応している。すなわち、沸騰維持時間が長いと沸騰維持電力量が多くなり、沸騰維持時間が短いと沸騰維持電力量が少なくなる。
【0014】
本発明者らは、これらの関係から、加水量を調節した炊飯が複数回実施されたときに、こられの履歴データに基づいて、メーカー仕様硬さに対応する沸騰維持電力量を修正すれば、基準の水量線に対する加水量の増減を行わなくても、ユーザーの好みの硬さに炊飯できることを見出して、本発明を完成させるに至ったものである。
【0015】
本発明は、上記の知見に基づいてなされたもので、本発明の目的は、メーカー仕様の硬さに関する炊飯条件をユーザーの好みの硬さの炊飯条件に修正し、好みの硬さで炊飯できる炊飯方法及び炊飯器を提供することにある。すなわち、メーカー仕様の加水量においてもユーザーの好みの炊飯ができる炊飯方法及び炊飯器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、鍋内に入れられた米に吸水させる吸水工程、吸水後に鍋内を一気に加熱して沸騰させる立上加熱工程、沸騰状態を維持して炊き上げる沸騰維持工程、炊き上がったご飯から余分な水分を除去する蒸らし工程などを含む一連の炊飯工程で、前記沸騰維持工程では、該沸騰維持工程における沸騰維持時間及び沸騰維持電力量を予め規定して炊飯する炊飯方法において、炊飯毎に、実際にかかった実測沸騰維持時間を算出すると共に炊飯回数を記憶し、所定期間の数回分の前記実測沸騰維持時間と前記規定沸騰維持時間とを比較して、前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間と略同じになる炊飯回数、前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間を超える炊飯回数及び前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間を下回る炊飯回数をそれぞれ算出して、前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間と略同じ炊飯回数が基準回数を超えるときには前記規定沸騰維持電力量を修正せず、前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間を超える炊飯回数が基準回数を超えるときには前記規定沸騰維持電力量を下方へ修正し、また、前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間を下回る炊飯回数が基準回数を超えるときには前記沸騰維持電力量を上方へ修正して、前記所定期間経過後は前記修正しない又は修正した沸騰維持電力量により炊飯を実行することを特徴とする。
【0017】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の炊飯方法において、前記沸騰維持工程では、炊飯量に対応して所定の沸騰維持時間及び該沸騰維持時間に対応する沸騰維持電力量を予め規定しておき、炊飯毎に、前記鍋内の炊飯量を判定して、この炊飯量に対応して実際にかかった炊飯量別の実測沸騰維持時間を算出すると共にこの炊飯量別の炊飯回数を記憶し、所定期間の数回分の前記炊飯量別の実測沸騰維持時間と前記炊飯量別の規定沸騰維持時間とを比較して、炊飯量別に、前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間と略同じになる炊飯回数、前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間を超える炊飯回数又は前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間を下回る炊飯回数を算出して、前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間と略同じになる炊飯回数が基準回数を超えるときに前記規定沸騰維持電力量を修正せず、前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間を超えるときの炊飯回数が基準回数を超えるときに前記規定沸騰維持電力量を下方へ修正し、また、前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間を下回るときの炊飯回数が基準回数を超えるときに前記沸騰維持電力量を上方へ修正して、前記所定期間経過後は前記修正しない又は修正した沸騰維持電力量により炊飯を実行することを特徴とする。
【0018】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の炊飯方法において、前記基準回数は、前記記憶された炊飯回数の半分を超える回数であることを特徴とする。
【0019】
請求項4に記載の発明は、米と水とを含む炊飯物を入れる鍋と、前記鍋内の炊飯物を加熱する加熱手段と、前記加熱手段を制御して前記鍋内の米に水を吸水させる吸水工程、吸水後に鍋内を一気に加熱して沸騰させる立上加熱工程、沸騰状態を維持して炊き上げる沸騰維持工程、炊き上ったご飯から余分な水分を除去する蒸らし工程などを含む一連の炊飯工程を実行する制御装置とを備えた炊飯器において、前記制御装置は、前記沸騰維持工程における沸騰維持時間及び沸騰維持電力量を予め規定して記憶した第1の記憶手段と、炊飯毎に実際にかかった実測沸騰維持時間を算出すると共に炊飯回数をカウントする時間・回数算出手段と、前記時間・回数算出手段の出力を記憶する第2の記憶手段と、前記第2の記憶手段に記憶された所定期間の数回分の前記実測沸騰維持時間と前記規定沸騰維持時間とを比較して前記規定沸騰維持電力量を修正する沸騰維持電力修正手段を備え、前記沸騰維持電力修正手段は、前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間と略同じになる炊飯回数、前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間を超える炊飯回数及び前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間を下回る炊飯回数を算出して、前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間と略同じ炊飯回数が基準回数を超えるときには前記規定沸騰維持電力量を修正せず、前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間を超える炊飯回数が基準回数を超えるときには前記規定沸騰維持電力量を下方へ修正し、また、前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間を下回る炊飯回数が基準回数を超えるときには前記沸騰維持電力量を上方へ修正して、前記所定期間経過後は前記修正しない又は修正した沸騰維持電力量により炊飯を実行することを特徴とする。
【0020】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の炊飯器において、前記制御装置は、前記鍋内の少なくても3段階の炊飯量を判定する量判定手段を備え、第1の記憶手段に炊飯量に対応して所定の沸騰維持時間及び前記規定沸騰維持時間に対応する沸騰維持電力量を規定して、炊飯毎に、前記鍋内の炊飯量を前記量判定手段で判定して、この炊飯量に対応して実際にかかった炊飯量別の実測沸騰維持時間を算出すると共にこの炊飯量別の炊飯回数を前記時間・回数算出手段で算出して前記第2の記憶手段に記憶し、沸騰維持電力修正手段は、前記第2の記憶手段に記憶された所定期間に記憶された数回分の前記炊飯量別の実測沸騰維持時間と前記炊飯量別の規定沸騰維持時間と比較して、炊飯量別毎に、前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間と略同じになる炊飯回数、前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間を超える炊飯回数及び前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間を下回る炊飯回数を算出して、前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間と略同じ炊飯回数が基準回数を超えるときには前記規定沸騰維持電力量を修正せず、前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間を超える炊飯回数が基準回数を超えるときには前記規定沸騰維持電力量を下方へ修正し、また、前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間を下回る炊飯回数が基準回数を超えるときには前記沸騰維持電力量を上方へ修正して、前記所定期間経過後は前記修正しない又は修正した沸騰維持電力量により炊飯を実行することを特徴とする。
【0021】
請求項6に記載の発明は、請求項4又は5に記載の炊飯器において、前記基準回数は、前記記憶された炊飯回数の半分を超える回数であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
請求項1の発明によれば、炊飯時に、ユーザーが米量に応じてご飯を好みの硬さに調整するために、鍋に加える水量を調節した時に、メーカーが数回の炊飯履歴からユーザーの好みの硬さに関する炊飯条件が把握でき、以後の炊飯をメーカー仕様の炊飯条件を修正してユーザーの好みの硬さの炊飯条件で炊飯できる。したがって、ユーザーは炊飯時に加水量をメーカー仕様に合わせても、ユーザーの好みの炊飯が可能になる。
【0023】
請求項2の発明によれば、炊飯量別に、数回の炊飯履歴からユーザーの好みの硬さに関する炊飯条件が把握でき、以後の炊飯をメーカー仕様の炊飯条件を修正してユーザーの好みの硬さの炊飯条件で炊飯できる。
【0024】
請求項3の発明によれば、基準回数を記憶されている炊飯回数の半分を超える回数にすることにより、より確実にユーザーの炊飯嗜好に合わせた炊飯が可能になる。
【0025】
請求項4の発明によれば、炊飯時に、ユーザーが米量に応じてご飯を好みの硬さに調整するため、鍋に加える水量を調節した時に、数回の炊飯履歴からユーザーの好みの硬さに関する炊飯条件を把握して、以後の炊飯をメーカー仕様の炊飯条件を修正してユーザーの好みの硬さの炊飯条件で炊飯できる炊飯器を提供できる。したがって、炊飯時に加水量をメーカー仕様に合わせても、ユーザーの好みの炊飯が可能になる。
【0026】
請求項5の発明によれば、炊飯量別に、数回の炊飯履歴からユーザーの好みの硬さに関する炊飯条件が把握でき、以後の炊飯をメーカー仕様の炊飯条件を修正してユーザーの好みの硬さの炊飯条件で炊飯できる炊飯器を提供できる。
【0027】
請求項6の発明によれば、基準回数を記憶されている炊飯回数の半分を超える回数にすることにより、より確実にユーザーの炊飯嗜好に合わせた炊飯が可能になる炊飯器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態に係る炊飯器の正面図である。
【図2】図1の炊飯器の縦断面図である。
【図3】図2の圧力弁及びこの圧力弁の開放機構部分を拡大した拡大断面図である。
【図4】炊飯器を制御する制御手段のブロック図である。
【図5】炊飯工程のフローチャート図である。
【図6】図5の沸騰維持工程のフローチャート図である。
【図7】図5の沸騰維持工程における炊飯量別の沸騰維持時間及び電力量を規定した規定表である。
【図8】小炊飯量の炊飯工程における鍋内の温度/圧力変化を示した曲線図である。
【図9】中炊飯量の炊飯工程における鍋内の温度/圧力変化を示した曲線図である。
【図10】大炊飯量の炊飯工程における鍋内の温度/圧力変化を示した曲線図である。
【図11】従来技術の炊飯器の炊飯工程における鍋内の温度/圧力変化を示した曲線図である。
【図12】硬さの区分を説明する説明図である。
【図13】従来技術の鍋の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。但し、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための炊飯方法及び炊飯器を例示するものであって、本発明をこれらに特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものにも等しく適応し得るものである。すなわち、以下の説明は、圧力式炊飯器となっているが、これに限定されるものでなく非圧力式の炊飯器にも適用できるものである。
【0030】
図1〜図4を参照して、本発明の実施形態に係る炊飯器の構造及び制御装置を説明する。なお、図1は本発明の実施形態に係る炊飯器の正面図、図2は図1の炊飯器の縦断面図、図3は図2の圧力弁開放機構を拡大した拡大断面図、図4は制御装置を構成するブロック図である。
【0031】
本発明の実施形態に係る炊飯器1は、図1及び図2に示すように、米と水とを含む炊飯物を入れる鍋7と、上方にこの鍋7が収容される開口部及び内部にこの鍋7を加熱し炊飯物を加熱する加熱手段5を有する炊飯器本体(以下、単に本体という)2と、この本体2の一側に枢支されて開口部を覆い閉塞状態に係止する蓋体10と、この蓋体10に装着されて鍋7内の内圧を調整する圧力弁13と、この圧力弁13を開放制御する圧力弁開放機構18と、各種の炊飯メニューを表示して選択する表示操作部25と、表示操作部で選択された炊飯メニューに基づいて加熱手段5及び圧力弁開放機構18を制御して鍋7内の炊飯物を所定温度に加熱して一連の炊飯工程を実行する制御装置24(図4参照)とを有している。
【0032】
本体2は、図2に示すように、有底箱状の外部ケース3と、この外部ケース3に収容される内部ケース4とからなり、外部ケース3と内部ケース4との間に隙間が形成されて、この隙間に制御装置24を構成する制御回路基板等(図示省略)が配設されている。内部ケース4には、深底の容器からなる鍋7が収容される。この鍋7は、アルミニウムとステンレスとのクラッド材で形成されている。また、この内部ケース4は、その底部4a及び側部4bにそれぞれ底部ヒータ5b及び側部ヒータ5aが設けられ、底部4aに鍋底温度を検知するサーミスタ等からなる鍋底温度センサ6が設けられている。底部ヒータ5bは環状に巻装した電磁誘導コイル(以下、単にIHコイルともいう)が使用されている。
【0033】
また、本体2には、図1に示すように、その正面に表示操作部25が設けられている。この表示操作部25には、図1に示すように、各種の炊飯選択メニュー及び時刻等が表示される表示パネル8と、この表示パネル8の左右及び下方に設けられた複数個のスイッチ操作釦3a〜3c、9とを備えている。これらのスイッチ操作釦は、炊飯器1を作動させる炊飯/スタート釦3a、炊飯コースを選択するメニュー選択釦3b、コース選択釦3c及び表示パネル8に表示されたメニュー等を選択・決定する十字シフトキー9などとなっている。
【0034】
蓋体10は、図2に示すように、鍋7の開口部を閉蓋する内蓋11と、本体2の開口部全体を覆う外蓋12等とで構成されている。この蓋体10は、一側がヒンジ機構Hにより本体2に枢支され、他側が係止機構21により本体2の係止部に係止されている。図2及び図3に示すように、内蓋11には、負圧弁17及び圧力弁13が設けられている。圧力弁13は圧力弁開放機構18によって開放される。圧力弁13は、所定径の弁孔14bが形成された弁座14aと、この弁孔14bを塞ぐように弁座14a上に載置される金属製のボール15と、このボール15の移動を規制することで弁座14a上にボール15を保持するカバー14cとで構成されている。また、圧力弁開放機構18は、電磁コイルが巻回されたシリンダ19aと、このシリンダ19a内から電磁コイルの励磁により入出しボール15を移動させるプランジャ19bと、プランジャ19bの先端に装着された作動棹20と、シリンダ19aの一端部と作動棹20との間に設けられたバネとで構成されている。
【0035】
圧力弁開放機構18は、制御装置24により制御される。すなわち、制御装置24からの指令に基づき、電磁コイルが励磁されるとプランジャ19bがバネの付勢力によりシリンダ19a内に引き込まれ、この引き込みにより、ボール15が弁孔14b上に戻り、弁孔14bがボール15で閉塞される。また、この閉塞状態において、電磁コイルへの励磁がストップされると、プランジャ19bがシリンダ19aから飛出してボール15に衝突し、ボール15が所定方向に押し出される。この押し出しにより、ボール15は弁孔14b上から移動して弁孔14bを強制的に開放させる。内蓋11には、鍋7内の蒸気圧力が所定圧力以上の異常圧力に上昇したときに、鍋7内の圧力を外部に逃がす安全弁16が設けられている。また、この内蓋11には、蒸気温度センサ23(図3参照)が取り付けられている。
【0036】
内蓋11と外蓋12とは、図2に示すように、その間に所定広さの隙間空間Sをあけて結合されている。外蓋12には、鍋7から排出される水分を含むおねばを一時貯留する貯留タンク22が着脱自在に装着されている。この貯留タンク22は、圧力弁13を介して放出される蒸気などを吐出させる吐出筒22aと、内部におねばを一時貯留する空間22bと、蒸気を外部へ逃す蒸気口22cと、タンク弁221とを有している。隙間空間S及び貯留タンク22の空間22bは、おねばを一時貯留する貯留部となっている。なお、おねばは粘り気のある糊状の汁であって、この糊状の汁は旨み成分を含んでおり、このおねばがそのまま鍋7外へ排出されてしまうとご飯が美味しく炊きあがらない。そこで、このおねばを貯留する貯留タンク22を設けて、この貯留タンク22におねばを一時貯留しておき、鍋7内の加熱が終了して鍋7内が負圧になったときにおねばを鍋7内に戻すことでご飯を美味しく炊きあげることができる。
【0037】
次に、図4を参照して所定の炊飯工程を実行するための制御装置24の構成を説明する。制御装置24は、図4に示すように、CPU、ROM、RAMなどが搭載された回路基板からなるハードウェアを備え、炊飯/スタート釦3a、メニュー選択釦3b、コース選択釦3c、及び鍋底温度センサ6、蒸気温度センサ23などにそれぞれ接続されて、これらの釦及びセンサの信号がCPUに入力されるようになっている。また、CPUには、所定時間を計時するタイマー及びROM、RAM(記憶手段)などが接続されている。この記憶手段には、一連の炊飯工程を実行する炊飯プログラム、沸騰維持工程における炊飯量別の規定沸騰維持時間及び規定沸騰維持電力量などが記憶されている。また、この記憶手段には、炊飯量別の実測沸騰維持時間及び炊飯回数なども記憶されるようになっている。なお、特許請求範囲の第1、第2の記憶手段は、この記憶手段を便宜上区別して表現したもので、実際の記憶手段は1個のメモリーなどで構成されている。このCPUは、圧力弁開閉制御手段、炊飯量判定手段、加熱制御手段、時間・回数算出手段、沸騰維持電力修正手段などを制御するようになっている。時間・回数算出手段は、炊飯毎に実際にかかった実測沸騰維持時間を算出すると共に炊飯回数をカウントするものであり、沸騰維持電力修正手段は、所定期間の数回分の実測沸騰維持時間と規定沸騰維持時間とを比較して規定沸騰維持電力量を修正するものとなっている。また、出力部(ドライバー)には、ヒータ5a、5bなどの加熱手段5、圧力弁開放機構18、及び表示器(表示パネル)8などが接続されている。ROMには、各種の炊飯コース、及びこの炊飯コースを実行するプログラムが収納されている。IHコイルは、インバータ回路に接続されて、この回路によってIHコイル5bが制御される。
【0038】
次に、図1〜図10を参照して、この炊飯器を用いた炊飯工程を説明する。なお、図5は炊飯工程のフローチャート図、図6は図5の沸騰維持工程のフローチャート図、図7は図5の沸騰維持工程における炊飯量別の沸騰維持時間及び電力量を規定した規定表、図8は小炊飯量の炊飯工程における鍋内の温度/圧力変化を示した曲線図、図9は中炊飯量の炊飯工程における鍋内の温度/圧力変化を示した曲線図、図10は大炊飯量の炊飯工程における鍋内の温度/圧力変化を示した曲線図である。
【0039】
まず、図1〜図5を参照して、炊飯器を用いた炊飯工程を説明する。
【0040】
初めに、鍋7に所定量の米とこの米量に対応する水が量を調節して入れられる。水量は鍋の内壁に記された米量に対応した基準水量線と同じか、又は基準水量線より上下させることにより調節される。この加水量の調節によって、ユーザーの好みの硬さに炊き上げることができる。次に、炊飯物を入れた鍋7を本体の内部ケース4内に収納して、蓋体10を閉めて炊飯セットする(図5ステップS1、以下同様とする)。続いて、表示操作部25を操作して炊飯コース等を設定し、炊飯をスタートする(S2)。この炊飯スタートにより、加熱手段5のコイル5bに高周波電流が流れ、鍋7に渦電流が生じることにより鍋が発熱して吸水工程Iが開始される(S3)。このとき、圧力弁13は開成されている。この吸水工程Iでは、鍋内が加熱されると共に吸水タイマー(図示せず)が所定の吸水時間の計時を開始し、同時に鍋底温度センサ6が鍋底温度を測定する。
【0041】
所定の吸水時間が経過すると、制御装置24は、立上加熱工程IIへ移行させて、ここで加熱手段5を全加熱量で加熱する(フルパワー加熱)と同時に圧力弁13を閉成する(S4)。圧力弁は、圧力弁解放機構19により、プランジャ19bがシリンダ19a内へ引き込まれ、ボール15が弁孔14bの上に戻った状態でボールの自重によって弁孔14bを塞がれて閉成され、鍋内は大気圧を超える圧力に昇圧される。なお、鍋内の圧力は、ボールの重さに応じて決定される。この立上加熱工程IIでは、炊飯量の判定が行われる(S5)。
【0042】
立上加熱工程IIで鍋7内が昇圧・沸騰し、蒸気センサ23が所定温度(例えば、75℃)を検出すると、制御装置は沸騰維持工程IIIへ移行させる(S6)。この沸騰維持工程IIIでは、圧力弁開放機構18を作動させて、圧力弁13を強制的に所定の単位時間で複数回間歇的に開放させる。この圧力弁13の間歇的な開放により、開放時には鍋内の状態が加圧状態から一気に大気圧近傍まで低下して鍋内に圧力変動が起こり、この圧力変動が間歇的に複数回に亘って繰り返される。この間歇的な圧力弁13の開放により、鍋内の圧力が大きく変動し、その度毎に鍋内に激しい沸騰現象、いわゆる突沸現象が生じて大量の泡が発生する。同時に鍋内の中央側の米粒が鍋内の側方へ或いは逆方向への移動を繰り返して鍋内の米粒が効率よく攪拌される。この攪拌により、米粒全体に十分な熱が加わり、加熱ムラがなくなる。この沸騰維持工程IIIにおいて、圧力弁13が強制的に複数回に亘り開放された後は、このような強制的な開放作動をさせずに残りの沸騰維持工程を継続する。この残りの沸騰維持工程では、圧力弁13は、その弁口を塞ぐボールの自重と鍋内圧力とのバランスによって略一定の加圧状態が維持されるように小刻みな開閉動作が繰り返される。
【0043】
沸騰維持工程が所定時間継続された後に、鍋底近傍に設置した鍋底センサが所定の鍋底温度(130℃)を検出すると、制御手段は加熱手段への通電を停止して蒸らし工程IVへ移行させる(S7)。このとき、圧力弁13の開放動作は行われない。蒸らし工程IVでは、所定時間が経過すると、圧力弁を開放させて加熱手段で再加熱を行い、この再加熱が終了すると、炊飯回数のカウントを行って(S8)、一回の炊飯工程を終了し、以後の炊飯では、同じ工程を繰り返して実行する。
【0044】
この炊飯工程では、炊飯量の大小に対応して、立上加熱工程II及び沸騰維持工程IIIの時間が変化する。具体的には、立上加熱工程II及び沸騰維持工程IIIの時間は、炊飯量が少ないときには立上加熱工程IIの時間が短くなり、沸騰維持工程IIIの時間が長くなる。一方、炊飯量が多くなると、立上加熱工程IIの時間が長くなり、沸騰維持工程IIIの時間は短くなる。図8は小炊飯量の炊飯工程における鍋内の温度/圧力変化を示し、立上加熱工程II及び沸騰維持工程IIIの時間はt11、t21である。図9は中炊飯量の炊飯工程における鍋内の温度/圧力変化を示し、立上加熱工程II及び沸騰維持工程IIIの時間はt12、t22である。図10は大炊飯量の炊飯工程における鍋内の温度/圧力変化を示し、立上加熱工程II及び沸騰維持工程IIIの時間はt13、t23となる。これらの関係は、t11<t12<t13、t21>t22>t23となっている。
【0045】
炊飯量の判定は、本実施形態においては立上加熱工程のみで行ったが、吸水工程及び/又は立上加熱工程で行うことができる。なお、この判定方法には、公知の手段を用いるので、説明を省略する。
【0046】
次に、主に図5〜図10を参照して、炊飯履歴から規定沸騰維持電力量を修正する方法を説明する。
【0047】
一回の炊飯は、図5に示す炊飯工程、すなわち吸水工程I、立上加熱工程II、沸騰維持工程III及び蒸らし工程IVを含む一連の炊飯工程で行う。以後の炊飯も同様の炊飯工程で実行するが、炊飯ごとに炊飯回数がカウントされており、この炊飯回数は、所定期間における炊飯履歴となる。そこで、この履歴データから、ユーザーのお好みの硬さに関する炊飯条件を把握して、以後の炊飯をメーカー仕様の炊飯条件を修正してユーザーお好みの硬さで炊飯する。
【0048】
メーカー仕様の硬さは、沸騰維持工程における沸騰維持時間及び沸騰維持電力量で規定されている。これらの沸騰維持時間及び沸騰維持電力量は、炊飯量、例えば、炊飯量を小、中及び大に対応して規定する。炊飯量を小(例えば、1カップ)、中(例えば、3カップ)及び大(例えば、5.5カップ)に対して、沸騰維持時間T1及び沸騰維持電力量P1、中炊飯量に対して沸騰維持時間T2及び沸騰維持電力量P2、大炊飯量に対して沸騰維持時間T3及び沸騰維持電力量P3を規定して、これらの規定値は、制御装置24の記憶手段に記憶される(図7参照)。これらのT1〜T3及びP1〜P3の関係は、T1>T2>T3、P1<P2<P3となっている。
【0049】
一方、実際の炊飯においては、ユーザーによって加水量が調整されており、加水量の大小によって実際にかかった沸騰維持時間が変化する。そこで、炊飯毎に炊飯回数のカウントを行うと共に、実際にかかった沸騰維持時間を計測する。これらの計測も炊飯量に対応して行う。小炊飯量に対しては、沸騰維持時間ta、tb、tc、・・・、を、中炊飯量に対しては沸騰維持時間td、te、tf、・・・、を、及び大炊飯量に対しては沸騰維持時間tg、th、ti、・・・をそれぞれ計測する。これらの計測値(実測値)は、規定値T1、T2、T3と所定の関係にある。すなわち、小炊飯量の実測沸騰維持時間ta、tb、tcは、ta<tb=T1<tc、中炊飯量の実測沸騰維持時間td、te、tfは、td<te=T2<tf、大炊飯量の実測沸騰維持時間tg、th、tiは、tg<th=T3<tiとなっている。
【0050】
ここで、それぞれの炊飯量において、基準沸騰維持時間よりも実測沸騰維持時間が短い場合、すなわち上記ta、td、tgの場合においては、鍋7内の水が基準沸騰維持時間よりも早く枯渇していることから、ユーザーが水の量を基準水量線より少なくしている、すなわち、水分を減らして標準よりも硬めのご飯を所望していると考えられる。一方、基準沸騰維持時間よりも実測沸騰維持時間が長い場合、すなわち上記tc、tf、tiの場合においては、鍋7内の水が基準沸騰維持時間よりも長く存在していることから、ユーザーが水の量を標準水量線より多くしている、すなわち、水分を多くして基準よりも柔らかめのご飯を所望していると考えられる。なお、tb、te、thの場合には、実測沸騰維持時間が基準沸騰維持時間と略等しいことから、ユーザーは水の量を基準水量線に合わせて調節しており、標準の硬さのご飯を所望していると考えられる。
【0051】
また、これらの実測値(ta、tb、tc)、(td、te、tf)及び(tf、tg、th、ti)の大小の関係は、(ta、tb、tc)>(td、te、tf)>(tg、th、ti)となっている。
【0052】
さらに、これらの実測沸騰維持時間と炊飯回数との関係は、以下のようになる。なお、Kはあらかじめ規定された炊飯回数を示す。
(a)小炊飯量
小炊飯量時の実測沸騰維持時間と炊飯回数の関係は、
小炊飯量における実測沸騰維持時間がta、tb、tc・・・・、であって、ta<tb=T1<tcのとき、
ta、tb、tcにそれぞれ対応する炊飯回数をna〜ncとする、すなわち、
実測沸騰維持時間がtaである炊飯回数がna、実測沸騰維持時間がtbである炊飯回数がnb、実測沸騰維持時間がtcである炊飯回数がncとすると、小炊飯量における炊飯回数の合計は、
na+nb+nc=K (1)
となる。
(b)中炊飯量
中炊飯量時の実測沸騰維持時間と炊飯回数の関係は、
中炊飯量における実測沸騰維持時間がtd、te、tf、・・・・、であって、td<te=T2<tfのとき、
td、te、tfにそれぞれ対応する炊飯回数をnd〜nfとする、すなわち、
実測沸騰維持時間がtdである炊飯回数がnd、実測沸騰維持時間がteである炊飯回数がne、実測沸騰維持時間がtfである炊飯回数がnfとすると、
中炊飯量における炊飯回数の合計は、
nd+ne+nf=K (2)
となる。
(c)大炊飯量
大炊飯量時の実測沸騰維持時間と炊飯回数の関係は、
大炊飯量における実測沸騰維持時間がtg、th、ti、・・・・、であって、tg<th=T3<tiのとき、
tg、th、tiにそれぞれ対応する炊飯回数をng〜niとする、すなわち、
実測沸騰維持時間がtgである炊飯回数がng、実測沸騰維持時間がthである炊飯回数がnh、実測沸騰維持時間がtiである炊飯回数がniとすると、
大炊飯量における炊飯回数の合計は
ng+nh+ni=K (3)
となる。
【0053】
このとき、上記(a)〜(c)における炊飯回数に応じて、以下の方法で沸騰維持電力量の修正を行なう。
(a’)小炊飯量における沸騰維持電力量の修正
上記(1)のna+nb+nc=Kから、
na>1/2×Kのときは、ユーザーが水の量を基準水量線より少なくして、標準よりも硬めの炊き上がりにしようとする炊飯回数が基準回数の1/2を超えていることから、規定沸騰維持電力量P1を増加させることにより、水分量を標準より減少させ、硬めのご飯が炊き上がるように調整する。nc>1/2×Kのときは、ユーザーが水の量を基準水量線より多くして、標準よりも柔らかめの炊き上がりにしようとする炊飯回数が基準回数の1/2を超えていることから、規定沸騰維持電力量P1を減少させることにより、水分量を標準より増加させ、柔らかめのご飯が炊き上がるように調整する。これらの増加率及び減少率は、例えば、実測沸騰維持時間が規定沸騰維持時間より10%増加したときに、規定沸騰維持電力量を10%減少し、10%下回ったときには10%増加するように設定される。
【0054】
また、nb>1/2×Kのときは、ユーザーは標準の硬さのご飯が炊き上がるように水量を調節していることから、規定沸騰維持電力量P1の修正を行わない。
(b’)中炊飯量における沸騰維持電力量の修正
上記(2)のnd+ne+nf=Kから、
上記(a’)の場合と同様に、nd>1/2×Kのときは規定沸騰維持電力量P2を増加させることにより、水分量を標準より減少させ、硬めのご飯が炊き上がるように調整する。nf>1/2×Kのときは規定沸騰維持電力量P1を減少させることにより、水分量を標準より増加させ、柔らかめのご飯が炊き上がるように調整する。また、ne>1/2×Kのときは修正を行わない。
(c’)大炊飯量における沸騰維持電力量の修正
上記(3)のng+nh+ni=Kから、
上記(a’)、(b’)の場合と同様に、ng>1/2×Kのときは規定沸騰維持電力量P3を増加させ、ni>1/2×Kのときは規定沸騰維持電力量P3を減少させる。また、nh>1/2×Kのときは修正を行わない。
【0055】
この炊飯器によれば、数回の炊飯履歴からユーザーの好みの硬さに関する炊飯条件が把握でき、以後の炊飯はメーカー仕様の炊飯条件を修正してユーザーの好みの硬さの炊飯条件で炊飯することができる。基準回数を所定炊飯量の炊飯回数の半分にしてあるので、この基準回数を超える場合に炊飯条件を修正して、ユーザーの嗜好に合わせた炊飯が可能になる。したがって、ユーザーは炊飯時に加水量の調節を行わなくても、ユーザーの好みの炊飯が可能になる。以上の実施形態においては、炊飯量を判定し、炊飯量別で沸騰維持電力量を修正したが、炊飯量の判定を行わず、一定の炊飯量において沸騰維持電力量を修正してもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 炊飯器
2 炊飯器本体
5 加熱手段
5a 側部ヒータ
5b 底部ヒータ
7 鍋
13 圧力弁
15 ボール
18 圧力弁開放機構
24 制御装置
25 表示操作部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍋内に入れられた米に吸水させる吸水工程、吸水後に鍋内を一気に加熱して沸騰させる立上加熱工程、沸騰状態を維持して炊き上げる沸騰維持工程、炊き上がったご飯から余分な水分を除去する蒸らし工程などを含む一連の炊飯工程で、前記沸騰維持工程では、該沸騰維持工程における沸騰維持時間及び沸騰維持電力量を予め規定して炊飯する炊飯方法において、
炊飯毎に、実際にかかった実測沸騰維持時間を算出すると共に炊飯回数を記憶し、
所定期間の数回分の前記実測沸騰維持時間と前記規定沸騰維持時間とを比較して、前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間と略同じになる炊飯回数、前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間を超える炊飯回数及び前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間を下回る炊飯回数をそれぞれ算出して、前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間と略同じ炊飯回数が基準回数を超えるときには前記規定沸騰維持電力量を修正せず、前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間を超える炊飯回数が基準回数を超えるときには前記規定沸騰維持電力量を下方へ修正し、また、前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間を下回る炊飯回数が基準回数を超えるときには前記沸騰維持電力量を上方へ修正して、前記所定期間経過後は前記修正しない又は修正した沸騰維持電力量により炊飯を実行することを特徴とする炊飯方法。
【請求項2】
前記沸騰維持工程では、少なくても3段階の炊飯量に対応して所定の沸騰維持時間及び該沸騰維持時間に対応する沸騰維持電力量を予め規定しておき、
炊飯毎に、前記鍋内の炊飯量を判定して、この炊飯量に対応して実際にかかった炊飯量別の実測沸騰維持時間を算出すると共にこの炊飯量別の炊飯回数を記憶し、
所定期間の数回分の前記炊飯量別の実測沸騰維持時間と前記炊飯量別の規定沸騰維持時間とを比較して、炊飯量別に、前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間と略同じになる炊飯回数、前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間を超える炊飯回数又は前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間を下回る炊飯回数を算出して、前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間と略同じになる炊飯回数が基準回数を超えるときに前記規定沸騰維持電力量を修正せず、前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間を超えるときの炊飯回数が基準回数を超えるときに前記規定沸騰維持電力量を下方へ修正し、また、前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間を下回るときの炊飯回数が基準回数を超えるときに前記沸騰維持電力量を上方へ修正して、前記所定期間経過後は前記修正しない又は修正した沸騰維持電力量により炊飯を実行することを特徴とする請求項1に記載の炊飯方法。
【請求項3】
前記基準回数は、前記記憶された炊飯回数の半分を超える回数であることを特徴とする請求項1又は2に記載の炊飯方法。
【請求項4】
米と水とを含む炊飯物を入れる鍋と、前記鍋内の炊飯物を加熱する加熱手段と、前記加熱手段を制御して前記鍋内の米に水を吸水させる吸水工程、吸水後に鍋内を一気に加熱して沸騰させる立上加熱工程、沸騰状態を維持して炊き上げる沸騰維持工程、炊き上ったご飯から余分な水分を除去する蒸らし工程などを含む一連の炊飯工程を実行する制御装置とを備えた炊飯器において、
前記制御装置は、前記沸騰維持工程における沸騰維持時間及び沸騰維持電力量を予め規定して記憶した第1の記憶手段と、炊飯毎に実際にかかった実測沸騰維持時間を算出すると共に炊飯回数をカウントする時間・回数算出手段と、前記時間・回数算出手段の出力を記憶する第2の記憶手段と、前記第2の記憶手段に記憶された所定期間の数回分の前記実測沸騰維持時間と前記規定沸騰維持時間とを比較して前記規定沸騰維持電力量を修正する沸騰維持電力修正手段を備え、
前記沸騰維持電力修正手段は、前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間と略同じになる炊飯回数、前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間を超える炊飯回数及び前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間を下回る炊飯回数を算出して、前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間と略同じ炊飯回数が基準回数を超えるときには前記規定沸騰維持電力量を修正せず、前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間を超える炊飯回数が基準回数を超えるときには前記規定沸騰維持電力量を下方へ修正し、また、前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間を下回る炊飯回数が基準回数を超えるときには前記沸騰維持電力量を上方へ修正して、前記所定期間経過後は前記修正しない又は修正した沸騰維持電力量により炊飯を実行する炊飯器。
【請求項5】
前記制御装置は、前記鍋内の少なくても3段階の炊飯量を判定する量判定手段を備え、第1の記憶手段に炊飯量に対応して所定の沸騰維持時間及び前記規定沸騰維持時間に対応する沸騰維持電力量を規定して、
炊飯毎に、前記鍋内の炊飯量を前記量判定手段で判定して、この炊飯量に対応して実際にかかった炊飯量別の実測沸騰維持時間を算出すると共にこの炊飯量別の炊飯回数を前記時間・回数算出手段で算出して前記第2の記憶手段に記憶し、沸騰維持電力修正手段は、前記第2の記憶手段に記憶された所定期間に記憶された数回分の前記炊飯量別の実測沸騰維持時間と前記炊飯量別の規定沸騰維持時間と比較して、炊飯量別毎に、前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間と略同じになる炊飯回数、前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間を超える炊飯回数及び前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間を下回る炊飯回数を算出して、前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間と略同じ炊飯回数が基準回数を超えるときには前記規定沸騰維持電力量を修正せず、前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間を超える炊飯回数が基準回数を超えるときには前記規定沸騰維持電力量を下方へ修正し、また、前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間を下回る炊飯回数が基準回数を超えるときには前記沸騰維持電力量を上方へ修正して、前記所定期間経過後は前記修正しない又は修正した沸騰維持電力量により炊飯を実行することを特徴とする請求項4に記載の炊飯器。
【請求項6】
前記基準回数は、前記記憶された炊飯回数の半分を超える回数であることを特徴とする請求項4又は5に記載の炊飯器。
【請求項1】
鍋内に入れられた米に吸水させる吸水工程、吸水後に鍋内を一気に加熱して沸騰させる立上加熱工程、沸騰状態を維持して炊き上げる沸騰維持工程、炊き上がったご飯から余分な水分を除去する蒸らし工程などを含む一連の炊飯工程で、前記沸騰維持工程では、該沸騰維持工程における沸騰維持時間及び沸騰維持電力量を予め規定して炊飯する炊飯方法において、
炊飯毎に、実際にかかった実測沸騰維持時間を算出すると共に炊飯回数を記憶し、
所定期間の数回分の前記実測沸騰維持時間と前記規定沸騰維持時間とを比較して、前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間と略同じになる炊飯回数、前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間を超える炊飯回数及び前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間を下回る炊飯回数をそれぞれ算出して、前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間と略同じ炊飯回数が基準回数を超えるときには前記規定沸騰維持電力量を修正せず、前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間を超える炊飯回数が基準回数を超えるときには前記規定沸騰維持電力量を下方へ修正し、また、前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間を下回る炊飯回数が基準回数を超えるときには前記沸騰維持電力量を上方へ修正して、前記所定期間経過後は前記修正しない又は修正した沸騰維持電力量により炊飯を実行することを特徴とする炊飯方法。
【請求項2】
前記沸騰維持工程では、少なくても3段階の炊飯量に対応して所定の沸騰維持時間及び該沸騰維持時間に対応する沸騰維持電力量を予め規定しておき、
炊飯毎に、前記鍋内の炊飯量を判定して、この炊飯量に対応して実際にかかった炊飯量別の実測沸騰維持時間を算出すると共にこの炊飯量別の炊飯回数を記憶し、
所定期間の数回分の前記炊飯量別の実測沸騰維持時間と前記炊飯量別の規定沸騰維持時間とを比較して、炊飯量別に、前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間と略同じになる炊飯回数、前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間を超える炊飯回数又は前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間を下回る炊飯回数を算出して、前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間と略同じになる炊飯回数が基準回数を超えるときに前記規定沸騰維持電力量を修正せず、前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間を超えるときの炊飯回数が基準回数を超えるときに前記規定沸騰維持電力量を下方へ修正し、また、前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間を下回るときの炊飯回数が基準回数を超えるときに前記沸騰維持電力量を上方へ修正して、前記所定期間経過後は前記修正しない又は修正した沸騰維持電力量により炊飯を実行することを特徴とする請求項1に記載の炊飯方法。
【請求項3】
前記基準回数は、前記記憶された炊飯回数の半分を超える回数であることを特徴とする請求項1又は2に記載の炊飯方法。
【請求項4】
米と水とを含む炊飯物を入れる鍋と、前記鍋内の炊飯物を加熱する加熱手段と、前記加熱手段を制御して前記鍋内の米に水を吸水させる吸水工程、吸水後に鍋内を一気に加熱して沸騰させる立上加熱工程、沸騰状態を維持して炊き上げる沸騰維持工程、炊き上ったご飯から余分な水分を除去する蒸らし工程などを含む一連の炊飯工程を実行する制御装置とを備えた炊飯器において、
前記制御装置は、前記沸騰維持工程における沸騰維持時間及び沸騰維持電力量を予め規定して記憶した第1の記憶手段と、炊飯毎に実際にかかった実測沸騰維持時間を算出すると共に炊飯回数をカウントする時間・回数算出手段と、前記時間・回数算出手段の出力を記憶する第2の記憶手段と、前記第2の記憶手段に記憶された所定期間の数回分の前記実測沸騰維持時間と前記規定沸騰維持時間とを比較して前記規定沸騰維持電力量を修正する沸騰維持電力修正手段を備え、
前記沸騰維持電力修正手段は、前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間と略同じになる炊飯回数、前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間を超える炊飯回数及び前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間を下回る炊飯回数を算出して、前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間と略同じ炊飯回数が基準回数を超えるときには前記規定沸騰維持電力量を修正せず、前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間を超える炊飯回数が基準回数を超えるときには前記規定沸騰維持電力量を下方へ修正し、また、前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間を下回る炊飯回数が基準回数を超えるときには前記沸騰維持電力量を上方へ修正して、前記所定期間経過後は前記修正しない又は修正した沸騰維持電力量により炊飯を実行する炊飯器。
【請求項5】
前記制御装置は、前記鍋内の少なくても3段階の炊飯量を判定する量判定手段を備え、第1の記憶手段に炊飯量に対応して所定の沸騰維持時間及び前記規定沸騰維持時間に対応する沸騰維持電力量を規定して、
炊飯毎に、前記鍋内の炊飯量を前記量判定手段で判定して、この炊飯量に対応して実際にかかった炊飯量別の実測沸騰維持時間を算出すると共にこの炊飯量別の炊飯回数を前記時間・回数算出手段で算出して前記第2の記憶手段に記憶し、沸騰維持電力修正手段は、前記第2の記憶手段に記憶された所定期間に記憶された数回分の前記炊飯量別の実測沸騰維持時間と前記炊飯量別の規定沸騰維持時間と比較して、炊飯量別毎に、前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間と略同じになる炊飯回数、前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間を超える炊飯回数及び前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間を下回る炊飯回数を算出して、前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間と略同じ炊飯回数が基準回数を超えるときには前記規定沸騰維持電力量を修正せず、前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間を超える炊飯回数が基準回数を超えるときには前記規定沸騰維持電力量を下方へ修正し、また、前記実測沸騰維持時間が前記規定沸騰維持時間を下回る炊飯回数が基準回数を超えるときには前記沸騰維持電力量を上方へ修正して、前記所定期間経過後は前記修正しない又は修正した沸騰維持電力量により炊飯を実行することを特徴とする請求項4に記載の炊飯器。
【請求項6】
前記基準回数は、前記記憶された炊飯回数の半分を超える回数であることを特徴とする請求項4又は5に記載の炊飯器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−239880(P2011−239880A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−113345(P2010−113345)
【出願日】平成22年5月17日(2010.5.17)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)三洋電機コンシューマエレクトロニクス株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月17日(2010.5.17)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)三洋電機コンシューマエレクトロニクス株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】
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