説明

炎症、虚血、および虫垂炎の診断およびモニタリング

本発明は、動物における炎症および/または虚血を診断およびモニタする方法およびキットを提供する。この方法は、動物の体液中に存在し、かつリン酸化タウ以外の翻訳後修飾タンパク質の量を測定する工程を含む。本発明はまた、動物における虫垂炎を診断する改良法およびキットを提供する。この方法は、o−ヒドロキシ馬尿酸と、動物の1つまたは複数の体液に存在する翻訳後修飾タンパク質などの一般的炎症のマーカとの量を測定する工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つまたは複数の翻訳後修飾タンパク質を測定することによって、炎症を診断および/またはモニタすること、ならびに虚血を診断および/またはモニタすることに関する。本発明は、o−ヒドロキシ馬尿酸(OHHA)と、ある種の翻訳後修飾タンパク質を含む一般的な炎症のマーカとを測定することによる虫垂炎の診断方法の改良にも関する。
【背景技術】
【0002】
炎症は、それを通して身体が様々な傷害、感染、およびストレスに応答するカスケード反応である。炎症反応は、ストレス応答、感染の回避、および傷の治癒に極めて重要である一方、身体にダメージを与える場合もある。実際に、炎症は多くの疾患および障害の発病過程における重要な要素である。さらに、癌などの多くの疾患において、炎症があることは予後がよくないことを示すものである。最後に、極端な場合には、適切に処置しなければ、生命に危険を及ぼす全身性反応が炎症によって引き起こされることがある。
【0003】
炎症を診断およびモニタする現行の方法は不十分なものであり、多くの場合、炎症は未治療のままか、または有効に治療されていない。この結果、患者に大きなダメージが与えられたり、または患者の生命が危険にさらされたりすることが起こり得る。炎症を診断およびモニタするための改良された方法が必要なことは明らかである。
【0004】
早期の心虚血の診断は困難である。クレアチン・キナーゼ・イソ酵素(CK−MB)、ミオグロビン、またはトロポニンなどの心臓における細胞壊死マーカは、一過性心筋虚血のマーカとして信用し得るものではなく、虚血発症後の最初の2から6時間以内に測定された場合には特に信用し得ない。カントス、エム シー(Kontos,M.C.)およびアール エル ジェシー(R.L.Jesse)、Am、J Cardiol、2000年、第85(5A)巻、32B〜39B頁;イシカワ、ワイ(Ishikawa,Y.)ら、Clin Chem、1997年、第43(3)巻、467〜75頁;ブローガン、ジー エックス ジュニア(Brogan,G.X.,Jr.)ら、Acad Emerg Med、1997年、第4(1)巻、6〜12頁;ヘッジス、ジェー アール(Hedges,J.R.)ら、Acad Emerg Med、1996年、第3(1)巻、27〜33頁。虚血症状の開始直後に患者を検査する場合には通常、心筋梗塞または心筋虚血の可能性を除外するために、より長時間の観測を必要とする。ゴメス、エム エー(Gomez,M.A.)ら、J Am Coll Cardiol、1996年、第28(1)巻、25〜33頁;ザレンスキ、アール ジェー(Zalenski,R.J.)ら、Arch Intern Med、1997年、第157(10)巻、1085〜91頁;ド ウインター、アール ジェー(de Winter,R.J.)ら、Ann Emerg Med、2000年、第35(2)巻、113〜20頁;ピーコック、ダブリュー アイ(Peacock,W.I.)ら、Ann Emerg Med、2000年、第35(3)巻、213〜20頁。
【0005】
心筋虚血を患う患者で、ヒト・アルブミンに対する外因性コバルト結合が低下していることを測定する新規の血液分析法が記載されている。バール−オール、ディー(Bar−Or,D.)、イー ラウ(E.Lau)、およびジェー ブイ ウィンクラー(J.V.Winkler)、J Emerg Med、2000年、第19(4)巻、311〜5頁。アルブミン−コバルト結合(ACB)分析は、ヒト・アルブミンのアミノ末端(N末端)に対する外因性コバルトの結合能を測定する。正常状態では、コバルトを含む遷移金属は、曝露されたアルブミンのN末端に強固に結合する。クバール、ジー(Kubal、G.)ら、Eur J Biochem、1994年、第220(3)巻、781〜7頁。ACB分析は、虚血状態によってアルブミンのN末端が変化して、遷移金属に対するその結合能が迅速に低下することがあるという観測に基づいている。ベレンシュタイン、イー(Berenshtein、E.)ら、J Mol Cell Cardiol、1997年、第29(11)巻、3025〜34頁;バール−オール、ディー(Bar−Or,D.)ら、Eur J Biochem、2001年、第268(1)巻、42〜7頁。虚血によって引き起こされるアルブミンの変化は、CK−MB、ミオグロビン、またはトロポニンのレベルに異常が検出され得る時間の何分間、または何時間か前に起こるであろうことが予測される。このような利点にもかかわらず、ACB分析は心虚血の可能性を除外するためのテストとしてのみに承認されており、心虚血の可能性を除外するだけではなく、これを診断することが可能な分析が強く望まれるものであろう。
【0006】
現在、脳虚血は臨床診断による。エノラーゼ、S−100ファミリーのタンパク質(例えば、S−100B)など、ある種の生化学マーカも記載されているが、臨床医によって利用可能な画像技術の方が信頼性が高く、かつ特異的である。信頼性があり、かつ特異的な脳虚血の生化学マーカは、この疾患の診断およびモニタリングに有用であろう。
【0007】
出生時低体重(LBW)は、世界中で胎児および新生児における罹患および死亡の主要原因となっている。LBWは、分娩時における体重が2500グラム未満であることを示すものとして一般に理解されており、新生児が、正期に出産したがその在胎齢にしては小さい(SGA)ことによって、在胎齢にふさわしい大きさ(AGA)だが早産したことによって、または早産であるとともにSGAであることによって起こり得る。したがって、LBWは疫学的に複雑かつ多因子性のものである。
【0008】
SGAは統計的に定義されるものであり、出生時体重が在胎齢の10パーセンタイルより少ないことを示す。したがって、定義により10%の新生児がSGAである。実際には、これらの新生児の中には、小さくても健康で、遺伝上の成長可能性を実現し、差し迫った危険にない新生児もいる。その一方で、他のSGA新生児には真性の成長障害があり、以下に論じるような様々な要因によって遺伝上の成長可能性を実現し得ないでいる。これらの新生児は、胎児発育不全(FGR)を患っているとされる。実際には、AGAであって、かつFGRを患っている幼児もいると推定される。すなわち、そのような幼児の体重は、遺伝的には80パーセンタイルとなるようにプログラムされているのに、実際には在胎齢の20パーセンタイルであるかもしれない。個体の「本来」の体重を先験的に知る方法がないことから、そのような幼児を同定することは、現実的には困難である。
【0009】
FGRは、胎児成長を直接的に減失させること、さらにこれに加えて、しばしば、胎児状態の悪化または関連の母性疾患(例えば、子癇前症)による意図的な早産を必要とすることの両方で、LBWを導く。LBWおよび/または早産による罹患は多様かつ重大であり、他に詳細に記述されている。さらに、最近のデータは、いわゆる「疾患の胎児起源」またはバーカー仮説、すなわち子宮内の環境が損なわれると成体時の健康に大きな影響があることを示唆している。FGRは、これらの様々な機構を介して、疾患による大きな苦しみの原因になっている。
【0010】
FGRによって困難になった妊娠では、しばしば胎児/新生児が危惧の焦点となるが、このような妊娠は、母親の健康を直接危険にする状態によって困難になっていることが多いことを想起することが重要である。特に、子癇前症は、その正確な病態生理学がいまだに明らかでないが、長い間にわたって、胎盤虚血によって引き起こされるものと思われている。子癇前症およびその合併症は、世界中で妊婦死亡率の主要原因となっている。
【0011】
FGRの鑑別診断は様々であり、染色体性、毒性、ウイルス性、および他の病因を含むが、大部分のケースにおいて胎盤機能不全(UPI)が病因となっている。UPIは、様々な母性疾患(高血圧、腎臓疾患、全身性紅斑性狼瘡、抗リン脂質症候群、血栓性因子など)、または妊娠合併症(胎盤早期剥離、子癇前症)に関連していることもあり、または特発性であることもある。何が病因であれ、根底にある共通した病態生理は、母親の循環系、胎児の循環系、またはその両方における胎盤血流量の減少(虚血)によるものと推定されている。
【0012】
おおまかな目安として、胎盤の重さと胎児の体重との間に直接的関係があることは公知であり、胎児の成長が胎盤からの資源によってある程度制御されているかもしれないことを示唆する。胎盤にはFGRに関連した病変が多数ある。これらは概して、母親および/または胎児の血流を損なうことが予想される病変である。母親および/または胎児における血流の減少(虚血)とFGRとの間の関連は、疾患中の妊娠における多量のドップラー・フロー・データによっても確証されている。多くの場合、このようなドップラー・フロー波形の異常は、胎盤病変の異常と高い相関性を示す。
【0013】
FGRの病態生理について多くのことが公知である一方、多くのことが理解されずに残っている。臨床の現場では、FGRを引き起こす様々な危険因子が認識されているが、それらの因子が有する積極的な予測価値および感度は限定されている。FGR胎児を、「SGAではあるが健康」な胎児から識別するのには、困難が伴いうる。この相違を認識することは、健全な妊娠に不要に介入するのを避けるために重要である。FGRによる影響を受けることが決定的な妊娠を早期に発見すれば、適切なフォローアップを行う助けになるかもしれない。分娩の時期決定も重要な問題であり、妊娠を進行させることの利益と、虚血環境で継続させることの不利益とのバランスをとらなければならない。最後に、さらに根本的なレベルでは、胎盤虚血を同定し、その重症度を定量化する臨床試験を可能にすることで、最終的には適切な治療または予防を行う助けになるかもしれない。
【0014】
虫垂炎の診断は医師にとって難題であることが多い。具体的には、虫垂炎は、他の多くの腹部障害および骨盤障害から識別することが極めて困難であり、さらには、完全に発達した様子を医師が見る機会はめったにない。徴候および症候が微妙であったり、非定型的であったりすれば誤診となることが多く、そして、診断が遅くなれば有害な結果を引き起こし得る。ジャーン(Jahn)ら、Eur.J.Surg.、第163巻、433〜443頁(1997年);アンダーソン(Andersson)ら、Eur.J.Surg.、第166巻、796〜802頁(2000年)。最近の多施設調査は、腹痛で救急病棟を訪れた患者を、延長した観察を行わずに虫垂炎と診察した場合、その初期診察が誤診である比率が約20%に達すると報告した。グラフ(Graff)ら、Acad.Emerg.Med.、第7巻、1244〜1255頁(2000年)。
【0015】
白血球数が高いことは非特異的な炎症のマーカとされるが、白血球数の高い値は、虫垂炎の疑いで初期臨床評価を行った際に一貫して有用であった数少ない臨床検査の1つであったことが、以前の報告で示唆されている。ベリー(Berry)ら、Ann.Surg.、第200巻、567〜575頁(1984年);アンダーソン(Andersson)ら、World J.Surg.、第23巻、133〜140頁(1999年)。臨床医は、ヘリカルまたはコントラスト・コンピュータ断層撮影(CT)などの確証的であるが高価な放射線イメージ試験を指示する前に、初期の白血球数結果および臨床評価の組合せに頼ることが多い。ストローマン(Stroman)ら、Am.J.Surg.、第178巻、485〜489頁(1999年);ピックース(Pickuth)ら、Eur.J.Surg.、第166巻、315〜319頁(2000年)。残念ながら、初期白血球数は急性虫垂炎に対する特異性が低く(38%から78%)、中適度の感度(52%から93%)を有するのみである。グッドマン(Goodman)ら、Am.Surg.、第61巻、257〜259頁(1995年);ボルトン(Bolton)ら、Br.J.Surg.、第62巻、906〜908頁(1975年);イングリッシュ(English)ら、Am.Surg.、第43巻、399〜402頁(1977年);フェルミューレン(Vermeulen)ら、Eur.J.Surg.、第161巻、483〜486頁(1995年);コールマン(Coleman)ら、Am.Surg.、第64巻、983−985頁(1998年);ドイホルム(Dueholm)ら、Dis.Colon Rectum、32巻、855〜859頁(1989年);ハーラン(Hallan)ら、Eur.J.Surg.、第163巻、533〜538頁(1997年)。このような限界があるにもかかわらず、白血球数は、臨床的な虫垂炎の疑いに対する評価を補助する臨床検査として最も広範に使用され続けている。アンダーソン(Andersson)ら、World J.Surg.、第23巻、133〜140頁(1999年)。ボルトン(Bolton)ら、Br.J.Surg.、第62巻、906〜908頁(1975年);フェルミューレン(Vermeulen)ら、Eur.J.Surg.、第161巻、483〜486頁(1995年);コールマン(Coleman)ら、Am Surg.、第64巻、983〜985頁(1998年);ハーラン(Hallan)ら、Eur.J.Surg.、第163巻、533〜538頁(1997年)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
米国特許第5,470,750号は、虫垂炎にかかっている疑いがあるヒト患者における尿中のσ−ヒドロキシ馬尿酸(o−ヒドロキシ馬尿酸、サリチル尿酸、N−(2−ヒドロキシルベンゾイル)グリシン)のレベルを決定することによって虫垂炎を検出する方法を記載している。σ−ヒドロキシ馬尿酸のレベルが閾値より高い場合には虫垂炎のある可能性が高いことを示し、σ−ヒドロキシ馬尿酸のレベルが閾値より低い場合には虫垂炎がない可能性が高いことを示す。σ−ヒドロキシ馬尿酸分析は、白血球数の上昇に比べて虫垂炎を診断する特異性がかなり高い(80.6%対67.9%、p<0.01;下記実施例9を参照)が、さらに特異性が高く、かつ診断精度がよい分析が望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、動物における炎症を診断またはモニタする方法を提供する。この方法は、動物の体液中に存在し、かつリン酸化タウ以外の翻訳後修飾タンパク質の量を測定する工程を含む。上記翻訳後修飾タンパク質の量が正常動物からの同一体液中におけるレベルと比較して有意に変化している場合には、炎症が存在する。一般的炎症および/または特定のタイプの炎症が診断またはモニタされ得る。
【0018】
本発明は虚血を診断またはモニタする方法も提供し、この方法は、動物の体液中に存在し、かつリン酸化タウ以外の翻訳後修飾タンパク質の量を測定する工程を含む。翻訳後修飾タンパク質は、器官または組織における虚血を診断およびモニタするために、器官特異的または組織特異的タンパク質(例えば心臓特異的タンパク質)でもよく、胎盤虚血を診断またはモニタするために、システイン化タンパク質および/または妊娠関連タンパク質でもよく、虚血を診断またはモニタするために、システイン化タンパク質(例えばシステイン化アルブミン)でもよく、虚血を診断またはモニタするために、体液のリン酸化タンパク質成分(例えばリン酸化アルブミン)でもよい。翻訳後修飾タンパク質の量が正常動物からの同一体液中におけるレベルと比較して有意に変化している場合には、虚血が存在する。
【0019】
本発明は多臓器不全を診断、モニタ、または予測する方法も提供し、この方法は、動物からの体液中に存在する翻訳後修飾タンパク質の量を測定する工程を含む。翻訳後修飾タンパク質の量が正常動物からの同一体液中におけるレベルと比較して有意に変化している場合には、多臓器不全が存在するか、または多臓器不全が発症することが予測され得る。
【0020】
本発明はさらに、リン酸化タウ以外の翻訳後修飾タンパク質を定量するためのキットを提供する。上記キットは1個または複数個の容器を備え、各容器は、翻訳後修飾タンパク質に特異的な結合パートナーと、上記翻訳後修飾タンパク質を定量するために上記結合パートナーをどのように使用するべきかを記載した取扱説明書とを保持する。
【0021】
本発明は、動物における虫垂炎を診断する改良法も提供する。この方法では、上記動物から、第1の体液と第2の体液とが取得される。第1の体液および上記第2の体液は、同じでもよいし異なってもよい。(i)動物の第1の体液中に存在するo−ヒドロキシ馬尿酸(OHHA)の量が、正常動物からの同じ体液中でのレベルと比較して有意に上昇しているかどうか、(ii)動物の第2の体液中に存在する一般的炎症のマーカの量が、正常動物からの同じ体液中でのレベルと比較して有意に変化しているかどうかが判定される。最後に、工程(i)および工程(ii)の結果が、虫垂炎の存在または不在と相関される。
【0022】
本発明はさらに、虫垂炎を診断するキットを提供する。第1の実施形態では、本発明はパーツ(A)および(B)を備えるキットを提供する。パーツ(A)は、動物の体液中に存在するOHHAの量が、正常動物からの同じ体液中でのレベルと比較して有意に上昇しているかどうかを判定するのに有用な試薬を保持する少なくとも1個の容器を備える。パーツ(B)は、動物の体液中に存在する一般的炎症のマーカの量が、正常動物からの同じ体液中でのレベルと比較して有意に変化しているかどうかを判定するのに有用な試薬を保持する少なくとも1個の容器を備える。
【0023】
本発明は、虫垂炎を診断する別のキットも提供する。上記キットは、動物の体液中に存在する一般的炎症のマーカの量が、正常動物からの同じ体液中でのレベルと比較して有意に変化しているかどうかを判定するのに有用な試薬を保持する少なくとも1個の容器を備える。上記キットはさらに、虫垂炎を診断するのに上記試薬をどのように使用するかを指示する取扱説明書を備える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本明細書において、「タンパク質」とは、タンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチド、ペプチド、および/または、これらのうちいずれかのフラグメントを意味する。また、本明細書において、特定のタンパク質の名称は、そのタンパク質、および/または、そのタンパク質のフラグメントを意味する。例えば、「アルブミン」とは、本明細書において、アルブミンの完全長タンパク質、および/またはアルブミンのフラグメントを意味し、「トロポニンI」は、トロポニンIの完全長タンパク質、および/またはトロポニンIのフラグメントを意味する。
【0025】
本明細書において、「翻訳後修飾」とは、ペプチド結合形成後に起こるタンパク質の任意の修飾を意味する。翻訳後修飾は、限定された数のアミノ酸のシステイン化、リン酸化、ニトロシル化、グリコシル化、アシル化、イソプレニル化、および除去を含む。好ましくは、システイン化およびリン酸化である。
【0026】
動物の任意の体液が、本発明の方法で使用され得る。適当な体液は、血液試料(例えば、全血、血清、または血漿)、尿、唾液、脳脊髄液、涙、精液、膣分泌液、羊水、および臍帯血を含む。また、洗浄液、組織ホモジネート、および細胞溶解液が使用され得るとともに、本明細書においては、「体液」はそのような試料も含む。体液は、任意の動物から取得されてもよい。好ましくは、動物は、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、およびヒトを含む哺乳動物である。最も好ましくは、動物はヒトである。
【0027】
A.炎症および虚血の診断およびモニタリング
本発明は、炎症および虚血を診断および/またはモニタするのに有用な方法を提供する。これらの方法は、動物の体液中に存在し、かつリン酸化タウ以外の1つまたは複数の翻訳後修飾タンパク質の量を測定する工程を含む。
【0028】
リン酸化タウを除外する理由は以下の通りである。タウは通常、ニューロンの軸索コンパートメントでの微小管の集合および安定性を促進するタンパク質である。異常にリン酸化されたタウがアルツハイマー病ならびに他の痴呆および脳障害で発見されており、異常にリン酸化されたタウはこれらの疾患の診断において有用なマーカであることが判明している。タウの異常なリン酸化には、リン酸化の増加(過リン酸化)と、正常なリン酸化部位以外の部位におけるリン酸化との両方がある。タウの異常なリン酸化の理由は特定されていない。ヘッセ(Hesse)ら、Neurosci.Lett.、第297(3)巻、187〜190頁(2001年)を参照のこと。様々なリン酸化形のすべてを含むタウは、例えば虚血によって引き起こされた中枢神経系損傷を診断するのに有用なマーカとしても提案されている。国際公開第00/14546号パンフレットを参照のこと。しかし、リン酸化タウのレベルが虚血性脳卒中を起こした患者で変化しなかったことが判明した。ヘッセ(Hesse)ら、Neurosci.Lett.、第297(3)巻、187〜190頁(2001年)を参照のこと。以上の理由で、リン酸化タウは炎症または虚血のマーカであるとは考えられず、炎症または虚血を診断またはモニタするためにリン酸化タウを本発明で使用すべきではない。
【0029】
B.翻訳後修飾されたタンパク質の測定
体液中に存在する翻訳後修飾タンパク質の量を測定するために、様々な方法のいずれも使用され得る。適当な技法は、質量分析、特定の翻訳後修飾を定量するための特異的分析、結合パートナー分析(例えば免疫学的検定)などを含む。好ましくは結合パートナー分析である。
【0030】
翻訳後修飾タンパク質の定量に質量分析(MS)が使用され得る。タンパク質の質量は、翻訳後修飾の数とタイプとに応じて異なるであろうし、異なった質量の異なったタンパク質の量がMSによって測定され得る。単一タンパク質における1個の翻訳後修飾、単一タンパク質の2個以上の翻訳後修飾、または2個以上のタンパク質の翻訳後修飾が定量され得る。事実、MSは、体液中に存在する翻訳後修飾タンパク質の多数もしくは全て、または体液中の単一タンパク質における翻訳後修飾の多数もしくは全てを同定または定量する方法を提供し、そのようなMSプロフィールは、炎症または虚血を診断およびモニタするのに有用であろう。
【0031】
当該技術分野で公知であるように、本発明の実施には様々なMS分析法が使用されてもよい。例えば、重要なタンパク質が、液体クロマトグラフィ、2次元ゲル電気泳動、またはアフィニティ・クロマトグラフィなどの適当な技法で体液から単離され得る。その後、タンパク質の翻訳後修飾されたものが、エレクトロスプレイ・イオン化MS(ESI−MS)、液体クロマトグラフィ・タンデムMS法(LC−MS)、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化MS(MALDI−MS)、MALDI飛行時間MS(MALDI−TOF−MS)などの任意のMS検出法で定量される。例えば、リム(Lim)ら、Analytical Biochemistry、第295巻、45〜56頁(2001年)を参照のこと。翻訳後修飾タンパク質は、純粋な組換えタンパク質の基準を用いて、同一体液中における対応する無修飾タンパク質との比率を用いて、または正常な対照からの同一タイプの体液中における同一タンパク質と比較されることによって、定量され得る。
【0032】
加えて、特定のタイプの翻訳後修飾を十分に引き出す分析が使用され得る。例えば、リン酸化タンパク質のために、その全開示が本願明細書で援用される米国特許出願公開第2002/0049307号に記載されている全てと同様にして、タンパク質上のリン酸基が標識(例えば放射性標識、同位体標識、蛍光標識、比色分析標識、またはアフィニティ標識)で選択的に(リン酸基がブロックされないまま残される方法で、保護基を用いて選択的にカルボキシル基をブロックすることによって)標識され、次いで測定され得る。タンパク質上のリン酸基は、その全開示が本願明細書に援用される国際公開第99/38012号パンフレットに記載されている全てと同様にして、求核試薬(例えばチオール、アミン、アミド、またはアルカノール、好ましくはp−メルカプトメチル安息香酸またはその誘導体)と反応されて付加物を形成し、これが(例えば免疫化学法、比色法、蛍光、または化学発光によって)測定され得る。最後に、その全開示が本願明細書に援用される国際公開第02/066988号パンフレットに記載されている全てと同様にして、(例えば水酸化物によるβ脱離によって)タンパク質からリン酸基が除去され、このタンパク質は、以前にリン酸化されたアミノ酸残基と選択的に反応する標識リン酸反応性基(例えばチオール基、アミン基、アミド基、イミド基、ヒドロキシルアミン基、ヒドラジド基、ヒドラジン基、亜硫酸基、スルフィン酸基、スルホンアミド基)を含む分子と反応され、この標識が測定され得る。
【0033】
結合パートナー分析は、結合パートナーを利用する分析である。「結合パートナー」は、翻訳後修飾タンパク質に特異的に結合することが可能な任意の物質である。「特異的に」とは、結合パートナーが、ある翻訳後修飾タンパク質に、他の翻訳後修飾タンパク質を含む他のタンパク質の存在下で選択的に結合することを意味する。例えば、結合パートナーは、翻訳後修飾タンパク質の翻訳後修飾を含む一部分に特異性を有してもよいし、翻訳後修飾タンパク質の翻訳後修飾を含まない一部分に特異性を有してもよいし、翻訳後修飾タンパク質の翻訳後修飾されたアミノ酸残基(例えばリン酸化セリン)に対する特異性を有してもよい。結合パートナーは、翻訳後修飾タンパク質に特異的に結合可能な抗体、アプタマー、レクチン、受容体、ならびに他のタンパク質および分子を含む。好ましくは、抗体およびアプタマー、ならびにこれらを利用する分析である。
【0034】
本発明における使用に適した抗体は、抗血清、ポリクローナル抗体、オムニクローナル抗体、モノクローナル抗体、二重特異性抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、Fabフラグメント、F(ab’)フラグメント、Fab発現ライブラリーによって生成されたフラグメント、これらのうちいずれかのエピトープ結合フラグメント、および相補性決定領域(CDR)を含む。抗体を作製する方法は周知である。様々な免疫学的検定フォーマットのいずれでも抗体が利用され得る。適切な免疫学的検定フォーマットは、ホモジニアス分析、ヘテロジーニアス分析、酵素免疫測定法(例えばELISA)、競合分析、免疫定量(サンドイッチ)分析、濁度分析(turbidimetric assays)、ネフェロ分析などを含む。様々な標識および検出方法が使用されてもよい。適当な標識は公知であり、酵素、放射性標識、蛍光標識、化学発光標識、生物発光性標識、比色分析標識、アフィニティ標識、金属コロイド標識、色素がその中に組み込まれているラテックスおよびシリカ粒子、ならびに色素粒子を含む。抗体を標識して翻訳後修飾タンパク質を定量することが可能であり、また、標識された2次もしくは3次抗体または他の抗体結合化合物(例えば、プロテインAまたはプロテインG)を使用して翻訳後修飾タンパク質を定量することも可能である。免疫学的検定は手動で行われてもよいし、自動分析装置を用いて行われてもよい。
【0035】
好ましくは酵素免疫測定法である。酵素免疫測定法は、例えば以下の通りに実施されてもよい。体液中の翻訳後修飾タンパク質における無修飾エピトープに特異的な抗体が固体表面に固定される。適当な固体表面は周知であり、ガラス、ガラスフィルタ、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン、ポリアクリルアミド、ニトロセルロース、アガロース、およびヒドロゲルを含む。固定された抗体に体液が接触される。洗浄後、抗体によって固体表面に結合された翻訳後修飾タンパク質は、2次抗体、または翻訳後修飾アミノ酸残基を含有するエピトープに特異的な抗体の混合物と反応される。2次抗体を標識して翻訳後修飾タンパク質を定量することが可能であり、また、2次抗体に結合可能な標識された3次抗体または他の化合物(例えば、プロテインAまたはストレプトアビジン)を用いて翻訳後修飾タンパク質を定量することも可能である。
【0036】
酵素免疫測定法のさらに他の方法が実施されることが可能であり、そのような方法では、翻訳後修飾アミノ酸を含有するエピトープに特異的な抗体が固体表面に固定される。洗浄後、固体表面に結合した翻訳後修飾タンパク質が、翻訳後修飾タンパク質にある無修飾エピトープに特異的な酵素標識抗体と反応されて定量される。
【0037】
別の代替法として、まず翻訳後修飾タンパク質が、体液の他の成分から例えばアフィニティ・クロマトグラフィによって分離され得る。アフィニティ・クロマトグラフィを行うために、翻訳後修飾アミノ酸残基を含有するエピトープに対する抗体は、固体表面(例えば、カラム内のビーズ)に固定され、体液中の翻訳後修飾タンパク質を結合するために用いられる。固体表面の洗浄後、翻訳後修飾タンパク質が溶出され、(例えば上述の方法のうちの1つによって、280nmにおける吸収を測定することによって、または別の方法によって)測定される。
【0038】
上述した分析のいずれにおいても、また、抗体を利用する他の分析においても、アプタマーは、抗体の代わりに、または抗体と共に用いられ得る。アプタマーは、タンパク質、ペプチド、タンパク質およびペプチドの誘導体、無機分子、ならびに他の非ヌクレオチド分子に対する特異性を有するオリゴヌクレオチドである。例えば、全開示が本願明細書に援用される国際公開第00/70329号パンフレット、国際公開第01/79562号パンフレット、国際公開第99/54506号パンフレット、および米国特許第5,756,291号を参照のこと。本発明における使用に適したアプタマーは、これらの引用文献に記載された方法を用いて調製され得る。簡潔には、ランダム配列を有するオリゴヌクレオチドの異種集団が合成され、このオリゴヌクレオチドの異種集団に翻訳後修飾タンパク質が混合される。このオリゴヌクレオチド集団に存在する配列の全てではなく、それらの一部と複合体が形成される。複合体が単離され、オリゴヌクレオチドが回収されて(例えばPCRによって)増幅される。この結果得られたオリゴヌクレオチドの混合物は、次のラウンドの複合体形成、単離、および増幅を行う出発物質として使用され得るとともに、この工程は通常、十分な特異性を有するアプタマーが得られるか、および/またはコンセンサス・アプタマー配列が同定されるまで何度か反復される。アプタマー用の適当な標識は、色素、酵素、放射性標識などを含む。
【0039】
リン酸化タンパク質を定量する分析では、リン酸化タンパク質の脱リン酸化を阻止するために、ホスファターゼ阻害剤またはホスファターゼ阻害剤のカクテルを使用することが好ましい。適当なホスファターゼ阻害剤は公知であるとともに、市販されている。例えば、ホスファターゼ阻害剤のカクテルは、シグマ社(Sigma)[ミズーリ州セントルイス所在]から購入可能である。分析を実施する前に体液をしばらく保存しなければならない場合、ホスファターゼ阻害剤の使用が特に重要である。
【0040】
システイン化タンパク質を直接測定する場合、還元剤または還元条件の使用を回避するべきである。しかし、還元剤または還元条件を用いてシステインをシステイン化タンパク質から遊離させ、遊離されたシステインを上述の方法のうちの任意の方法で定量することによって、システイン化タンパク質を定量することも可能である。
【0041】
ここまで記載された分析では、体液中の翻訳後修飾タンパク質の量が測定される。翻訳後修飾タンパク質を定量化する任意の方法が用いられてもよい。例えば、翻訳後修飾タンパク質の量は、量(例えばμg)でも濃度(例えばμM)でもよく、これらのうちどちらも、通常は1つまたは複数のスタンダード(例えば、分析されるタンパク質と同じ翻訳後修飾によって翻訳後修飾された精製組換えタンパク質)を参照することによって測定される。翻訳後修飾タンパク質の量は、同じ体液中における対応する無修飾タンパク質、または正常な対照から得た同じタイプの体液中における同一の翻訳後修飾タンパク質などの別の化合物と比較された比率または割合でもよい。一旦、体液中の翻訳後修飾タンパク質の量が測定されれば、その量が、正常動物からの同一体液中におけるレベルと比較して有意に変化しているかどうかが判定される。「有意に」とは、統計的に有意であることを意味し、統計的分析の適当な方法は当技術分野で周知である。
【0042】
C.炎症の診断およびモニタ
炎症は、それを通して身体が様々な傷害、感染、およびストレスに応答するカスケード反応である。炎症反応は侵襲のタイプ、規模、および位置によって異なる。多くの場合、炎症は、マクロファージおよび好中球などの炎症細胞の動員によって特徴付けられる。これらの細胞は、炎症性サイトカインの放出に関わる。これら炎症性サイトカインおよび他の分泌因子は、炎症細胞をさらに蓄積させる。この炎症カスケードの影響は、極めて局所的であることもあるし、また、極端な場合には生命に危険を及ぼす全身性反応を引き起こすこともある。局所的であれ、または広域であれ、炎症は患部の生化学経路を基本的に変える。
【0043】
詳細には、炎症過程の参加物質として、または局外物質として炎症領域に存在するタンパク質の翻訳後修飾が変化していること、そしてこのように翻訳後修飾が変化したタンパク質が炎症の有用なバイオマーカとなることが判明している。「変化」とは、1つまたは複数の翻訳後修飾のレベル、および/または翻訳後修飾のタイプにおけるいかなる変化も、また、いかなる変化の組合せも意味する。例えば、タンパク質は、初めて翻訳後修飾されてもよいし、特定の翻訳後修飾のレベルが増大、減少、または除去されてもよいし、追加の、または別のタイプの翻訳後修飾によって修飾されてもよい。
【0044】
1.一般的炎症の診断およびモニタリング
本発明の一実施形態では、動物における炎症の存在、不在、または程度が判定される。この実施形態は、特定のタイプの炎症を測定する本発明の実施形態と区別するために、本明細書において一般的炎症実施形態と呼ばれる。「特定のタイプの炎症」とは、特定の組織または器官における炎症(例えば心臓の炎症)、または特定の疾患、状態、もしくは障害で起こる炎症(例えば心筋梗塞、成人呼吸窮迫症候群、または自己免疫疾患に伴う炎症)を意味する。本発明の一般的炎症実施形態では、炎症の特定部位または原因を特定しないとともに、いかなる特異的疾患の診断も提供しない。しかし、炎症の存在、不在、または程度は、疾患の診断を決定、確認、もしくは除外、および/または疾患に対する治療方針の決定に重要であることがある。例えば、本発明の一般的炎症実施形態による炎症の存在、不在または程度の判定は、他の診断パラメータと併せて、多くの疾患を診断する際に非常に有用であり得る。本明細書において、「診断パラメータ」とは、(測定結果、観測結果および/または症候を含む)検査所見および臨床所見を意味する。
【0045】
本発明の一般的炎症実施形態はまた、炎症治療における有効性の判定を含む動物における炎症経過のモニタにも用いられ得る。これは、多数の疾患、特に敗血症などの広範囲の炎症が起こる疾患において極めて有用にちがいない。特定の治療が炎症の軽減に有効でないと判れば、治療は変更され得る。例えば、薬の用量が増加されることが可能であり、また、効果のない治療が別の治療に転換されることが可能である。本発明の方法はまた、薬剤の最小有効用量、および薬剤投与を必要とする最短の時間を決定するのに用いられ得る。これは、多くの抗炎症薬が、高用量および/または長期間使用された際に、深刻な有害副作用をもつことから重要である。最後に、本発明の方法のこの実施形態は、公知の治療と同様、炎症に対する新規かつ有望な治療の有効性をモニタするのに用いられ得る。
【0046】
一般的炎症を判定するために、体液中に存在する翻訳後修飾タンパク質の全て、翻訳後修飾タンパク質のサブセット、または翻訳後修飾された単一のタンパク質が測定される。本明細書において、一般的炎症の判定に利用される翻訳後修飾タンパク質のそれぞれを、「一般的炎症のタンパク質マーカ」と呼ぶ。好ましくは、一般的炎症は、体液の成分である1つまたは複数の翻訳後修飾タンパク質を測定することによって判定され、これらのタンパク質は、一般的炎症の好ましいタンパク質マーカである。好ましくは、血液は本質的に身体の全域と接触または情報伝達を行うことから、上記体液は血液である。血液のタンパク質成分は、アルブミンおよび免疫グロブリンを含む。血液試料は、好ましくは血清または血漿である。最も好ましい一般的炎症のタンパク質マーカは、翻訳後修飾アルブミンであり、好ましい翻訳後修飾は、リン酸化およびシステイン化である。
【0047】
2.特定のタイプの炎症の診断およびモニタリング
本発明はまた、特定のタイプの炎症を診断およびモニタするのに用いられ得る。詳細には、特定の器官または組織における炎症を診断および/またはモニタすることが可能であり、特定の疾患、状態、または障害に関連した(すなわち、これらに存在もしくは関与しているか、またはこれらを引き起こすか、もしくは悪化させる)炎症を診断および/またはモニタすることが可能である。これは、体液中に存在する1つまたは複数の翻訳後修飾された指標タンパク質の量を測定することによって実現される。本明細書において、「指標」タンパク質は、特定の組織もしくは器官からのタンパク質(「組織特異的」または「器官特異的」タンパク質)、または特定の疾患、状態、もしくは障害に関連したタンパク質(「疾患特異的」タンパク質)である。
【0048】
炎症は、本質的には身体中のどの器官または組織も苦しめ得る。さらに、炎症は、成人呼吸窮迫症候群(ARDS)、アレルギー、関節炎、喘息、自己免疫疾患(例えば多発性硬化症)、気管支炎、癌、心血管疾患、慢性閉塞性肺疾患、クローン病、嚢胞性繊維症、肺気腫、心内膜炎、胃炎、移植片対宿主疾患、感染(例えば、細菌性感染、ウイルス性感染、および寄生物感染)、炎症性腸疾患、傷害、虚血(心虚血、脳虚血、および胎盤虚血など)、多臓器不全症候群(多臓器不全)、腎炎、神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病およびパーキンソン病)、眼炎症、痛覚、膵炎、乾せん、敗血症、ショック、移植拒絶反応、外傷、潰瘍(例えば、胃腸潰瘍および潰瘍性大腸炎)、およびその他多数を含めた多数の疾患、障害、および状態に存在もしくは関与するか、またはこれらを引き起こすか、もしくは悪化させる。多くの適当な指標タンパク質が公知である。指標タンパク質の例の一部が以下に示される。
【0049】
1.心筋梗塞用:トロポニンI、トロポニンT、クレアチニン・ホスホキナーゼ(CPK)、そのMBイソ酵素(CPKMB)、およびミオグロビン。
2.脳虚血用:S100BおよびエノラーゼなどのS100タンパク質。
【0050】
3.アルツハイマー病用:β−アミロイド。
4.パーキンソン病用:α−シヌクレイン。
5.多発性硬化症用:β−アミロイドおよびミエリン塩基性タンパク質。
【0051】
6.C型肝炎用:アルブミンおよび肝臓酵素。
7.癌用:brcal、cea、psaなど。
8.慢性閉塞性肺疾患用:α1−アンチトリプシンおよびサーファクタント・タンパク質。
【0052】
9.喘息用:α1−アンチトリプシンおよびサーファクタント・タンパク質。
10.成人呼吸窮迫症候群用:サーファクタント・タンパク質およびエラスターゼ。
11.自己免疫疾患用:リウマトイド因子、膠原、およびエラスターゼ。
【0053】
12.多臓器不全用:アルブミンおよびエラスターゼ。
13.敗血症用:リポ多糖結合タンパク質。
14.子癇および子癇前症用:アンギオテンシンおよびエリスロポイエチン。
【0054】
特定のタイプの炎症の存在、不在、または程度は、疾患の診断を決定、確認、もしくは除外するために、また、治療方針を決定する際の貴重な情報を提供する。特定のタイプの炎症の存在、不在、または程度の判定結果のみを用いて特定の疾患を診断することも可能かもしれない。しかし、診断を行うには、他の診断パラメータも考慮することが、必須または望ましいであろう。例えば、追加診断パラメータを用いることで、診断における感度および/または特異性が向上するか、かつ/または信頼度が向上し得る。
【0055】
本発明のこの実施形態は、炎症に対する治療における有効性の判定を含む特定のタイプの炎症の経過をモニタするのに用いられ得る。特定の治療が炎症の軽減に有効でないと判れば、治療は変更され得る。例えば、薬の用量が増加されることが可能であり、また、効果のない治療が別の治療に転換されることが可能である。本発明の方法はまた、薬剤の最小有効用量、および薬剤投与を必要とする最短の時間を決定するのに用いられ得る。これは、多くの抗炎症薬が、高用量および/または長期間使用された際に、深刻な有害副作用をもつことから重要である。最後に、本発明の方法のこの実施形態は、公知の治療と同様、特定のタイプの炎症に対する新規かつ有望な治療の有効性をモニタするのに用いられ得る。
【0056】
3.リン酸化タンパク質の測定による炎症の診断およびモニタリング
一般的炎症および特定のタイプの炎症に関して、診断および/またはモニタするための好ましい翻訳後修飾はリン酸化である。炎症に特有な現象の多くは、細胞レベルおよび分子レベルでのシグナル伝達の増強に関連している。細胞シグナリングにおける重要な特性の1つはリン酸化である。酵素、タンパク質、ペプチド、および他の分子は、リン酸化経路または脱リン酸化経路によって活性化される。多くの場合、活性化事象がリン酸化を含むとき、対向的脱リン酸化工程が後に続くことによって、持続的な刺激とは相反してパルス状のシグナルが伝達される。ホスホリラーゼ/キナーゼとホスファターゼとの間にはバランスが存在する。分子レベルでは、炎症はキナーゼ側に傾いた不均衡として考えられ得る。炎症では、細胞内でキナーゼが発現され、細胞外膜でキナーゼが外在化または活性化され、そして、場合によってはホスファターゼが阻害されてキナーゼの活性が増強される。炎症過程の参加物質または局外物質として、炎症領域に存在するタンパク質は、キナーゼ活性の(膜結合型であろうと、循環性/可溶性であろうと)増強によってリン酸化の基質となる可能性があり、リン酸化タンパク質は炎症の有用なバイオマーカとなる。
【0057】
したがって、本発明の好ましい実施形態では、体液中に存在する1つまたは複数のリン酸化タンパク質の量を測定することによって、炎症が診断および/またはモニタされる。リン酸化タンパク質の量が、正常対照からの同一体液中におけるレベルと比較して有意に増加しているなら、患者は炎症を患っている。そのようなタンパク質は、最初に1つまたは複数の部位でリン酸化されていて、そのリン酸化の量が炎症によって引き起こされたキナーゼ活性増大の結果として増加したタンパク質であり得る。一般的炎症を診断および/またはモニタするために、体液中に存在するリン酸化タンパク質の全て、体液中に存在するリン酸化タンパク質の1つ、または体液中に存在するリン酸化タンパク質の何らかのサブセットが測定され得る。特定のタイプの炎症を診断および/またはモニタするために、1つまたは複数の体液中に存在する1つまたは複数のリン酸化された指標タンパク質が測定され得る。
【0058】
リン酸化タンパク質の定量のために、多くの方法が使用され得る(上記参照)。体液中に存在するリン酸化タンパク質は、好ましくは結合パートナー分析によって、最も好ましくは免疫学的検定によって定量される。多数の適切な免疫学的検定フォーマットが当技術分野で公知である。好ましくは、タンパク質のリン酸化セリン残基、リン酸化トレオニン残基、またはリン酸化チロシン残基を含む1つまたは複数のエピトープに対する抗体が利用される。好ましくは、タンパク質のリン酸化セリン残基、リン酸化トレオニン残基、および/またはリン酸化チロシン残基に対する抗体であって、そのようなリン酸化アミノ酸を含む任意のタンパク質と反応する抗体が利用される。より好ましくは、3タイプ全てのリン酸化アミノ酸残基に対する抗体が利用される。抗体を標識してリン酸化タンパク質を定量することが可能であり、また、標識された2次抗体または他の抗体結合化合物(例えばプロテインAまたはプロテインG)を用いてリン酸化タンパク質を定量することも可能である。多くの適当な標識は公知であり、酵素、ラジオ標識、同位体標識、蛍光標識、化学発光標識、比色分析標識、およびアフィニティ標識を含む。例えば、リン酸化アミノ酸残基に対する抗体は、その抗体がリン酸化タンパク質に結合するまで検出可能にならない標識で標識され得る(すなわち、ホモジニアス・イムノ分析)。
【0059】
上述のように、一般的炎症を診断および/またはモニタするために、体液中に存在するリン酸化タンパク質の全て、体液中に存在するリン酸化タンパク質の1つ、または体液中に存在するリン酸化タンパク質の何らかのサブセットが測定され得る。一般的炎症を判定する本発明の方法の第1の実施形態では、体液中に存在するリン酸化タンパク質の全てが測定される。好ましくは、体液は血清または血漿である。リン酸化タンパク質は体液の他の成分から分離せずに測定されてもよく、また、リン酸化タンパク質は、例えばアフィニティ・クロマトグラフィによって体液の他の成分から分離されてもよい。例えば、アフィニティ・クロマトグラフィは、流体中のリン酸化タンパク質を結合するのに使用される固体表面(例えば、カラム内のビーズ)に結合したリン酸化アミノ酸残基に対する抗体を用いて行われ得る。固体表面の洗浄後、リン酸化タンパク質は溶出され、(例えば上述の方法のうちの1つによって、280nmにおける吸収を測定することによって、または別の方法によって)測定される。
【0060】
一般的炎症を判定する本発明の方法の第2の好ましい実施形態では、体液中、好ましくは血清中または血漿中に存在するリン酸化タンパク質の1つ、好ましくはリン酸化アルブミンが測定される。本発明の前には、生体内でアルブミンがリン酸化されることは知られていなかった。したがって、炎症を診断および/またはモニタするためにリン酸化アルブミンの量が用いられ得ることは、かなり驚くべきことである。
【0061】
リン酸化アルブミンは、いくつかの方法で測定され得るが、好ましくは結合パートナー分析によって、最も好ましくは免疫学的検定によって測定される。多くの適切な免疫学的検定フォーマットが公知である。好ましくは酵素免疫測定法であり、体液中のアルブミンに特異的な抗体(すなわち、体液がヒト体液である場合には抗ヒト・アルブミン抗体、体液がイヌ体液である場合には抗イヌ・アルブミン抗体など)が固体表面に固定される。体液は、固定された抗体に接触される。洗浄後、抗アルブミン抗体によって固体表面に結合されたアルブミンは、リン酸化セリン残基、リン酸化トレオニン残基、および/またはリン酸化チロシン残基に特異的な2次抗体または抗体混合物と反応される。より好ましくは、3タイプ全てのリン酸化アミノ酸残基に対する抗体が利用される。2次抗体を標識してリン酸化アルブミンを定量することが可能であり、また、2次抗体に結合可能な標識された3次抗体または他の化合物(例えば、プロテインAまたはストレプトアビジン)を用いてリン酸化アルブミンを定量することも可能である。
【0062】
この酵素免疫測定法の他の方法が実施されることが可能であり、この方法では、リン酸化セリン残基、リン酸化トレオニン残基、および/またはリン酸化チロシン残基に特異的な抗体または抗体混合物が固体表面に固定され、洗浄後、リン酸化アルブミンを定量するために、固体表面に結合されたリン酸化タンパク質は、アルブミンに特異的な抗体と反応される。
【0063】
この酵素免疫測定法のさらに他の方法実施されることが可能であり、この方法では、リン酸化アルブミンに特異的な抗体(すなわち、アルブミンのリン酸化アミノ酸残基を含むエピトープに特異的な抗体)が固体表面に固定される。洗浄後、リン酸化アルブミンを定量するために、固体表面に結合されたリン酸化アルブミンは、アルブミンに特異的な酵素標識抗体と反応される。当然ながら、これら2つの抗体を逆にして、アルブミンに特異的な抗体を固体表面に固定し、リン酸化アルブミンに特異的な抗体を検出抗体として用いることも可能である。
【0064】
別の代替法として、まずアルブミンが、体液の他の成分から例えばアフィニティ・クロマトグラフィによって分離され得る。アフィニティ・クロマトグラフィを行うために、体液中に存在するアルブミンに特異的な抗体(例えば、リン酸化されたエピトープに特異的な抗体、および/またはリン酸化されていないエピトープに特異的な抗体)は、固体表面に結合され、アルブミンを結合するために用いられる。固体表面の洗浄後、アルブミンが溶出され、(例えばアルブミンに関する上記の方法の1つ、または別の方法によって)測定される。
【0065】
一般的炎症を判定する本発明の方法の第3の実施形態では、体液中に存在するリン酸化タンパク質のサブセットが測定される。リン酸化タンパク質の測定は、いくつかの方法で実施され得る。例えば、体液中に存在する他の成分から全てのリン酸化タンパク質を分離するために、アフィニティ・クロマトグラフィが実施され得る。別法として、体液中の全てのリン酸化タンパク質を捕捉するために、リン酸化セリン残基、リン酸化トレオニン残基、および/またはリン酸化チロシン残基に特異的な抗体が固体表面に固定されることにより、酵素免疫測定法が実施され得る。どちらの場合でも、選択されたタンパク質に特異的な抗体の反応混液を用いることにより、タンパク質のサブセットが測定され得る。
【0066】
特定のタイプの炎症を判定するために、体液中に存在する1つまたは複数の特定のリン酸化指標タンパク質が定量される。1つまたは複数のリン酸化指標タンパク質は、上記の1つまたは複数の方法で測定され得る。好ましくは、リン酸化指標タンパク質は、適切な抗体(例えば指標タンパク質(リン酸化されたエピトープ、および/またはリン酸化されていないエピトープ)に特異的な抗体、および/またはリン酸化セリン残基、リン酸化トレオニン残基、および/またはリン酸化チロシン残基に特異的な抗体)を用いて、好ましくは結合パートナー分析によって、より好ましくは免疫学的検定によって、最も好ましくは酵素免疫測定法によって測定される。
【0067】
4.システイン化タンパク質の測定による炎症の診断およびモニタリング
炎症を診断および/またはモニタするための別の好ましい翻訳後修飾は、システイン化である。炎症では、少なくとも以下の理由でシステイン化タンパク質のレベルが増大していると考えられている。
【0068】
まず、シスタチオニンβ−シンセターゼ(CBS)は、脳、肝臓、膵臓、腎臓、および胎盤を含む多くの器官および組織内に存在する。CBSは胎児組織にも存在する。これらの器官および組織、もしくはそれらの部分、または胎児組織における炎症では、CBSの阻害が引き起こされ、それによってホモシステインが蓄積され、その後、血流と、炎症を起こしていない領域とに流入する。このホモシステインは、炎症を起こしていない領域(例えば血液中、ならびに炎症を起こした器官および組織における炎症を起こしていない領域内)で、阻害されていないCBSによってプロセシングを受け、タンパク質をシステイン化する硫黄転移経路(transulphuration pathway)(図5を参照)を介してシスタチオニンおよびシステインとなる。
【0069】
加えて、炎症ではpHおよび酸素濃度が減少し、この結果、Cu(II)が通常結合しているタンパク質からCu(II)が遊離する。Cu(II)レベルは、血流中と、器官および組織内との両方で増大し、このため、炎症中におけるタンパク質のシステイン化は、Cu(II)レベルが増大したことによって、さらに増強されるはずである(図5を参照)。
【0070】
したがって、システイン化タンパク質は、アルブミンなどの血流中で循環するタンパク質を含むことが可能であり、そのような血流中で循環するタンパク質は一般的炎症のタンパク質マーカである。システイン化タンパク質はまた、炎症を起こした器官もしくは組織の炎症を起こしていない領域、または胎児で生成されたタンパク質を含むことが可能であり、したがって、特定のタイプの炎症の診断およびモニタリングに有用である。後者のタイプのシステイン化タンパク質は、システイン化された脳タンパク質(S100蛋白質など)、ならびにシステイン化された胎盤タンパク質および胎児のタンパク質(β−ヒト絨毛性ゴナドトロピン、α−フェトプロテイン、および妊娠関連タンパク質1Aなど)を含み得る。
【0071】
システイン化タンパク質は、上述した1つまたは複数の方法で測定され得る。好ましくは、システイン化タンパク質は、適切な抗体(例えばシステイン化タンパク質(システイン化されたエピトープおよび/またはシステイン化されていないエピトープ)に特異的な抗体)を用いて、好ましくは結合パートナー分析によって、より好ましくは免疫学的検定によって、最も好ましくは酵素免疫測定法によって測定される。
【0072】
5.炎症パネル
本発明の別の実施形態では、炎症の診断および/またはモニタリングを改善するために、および/または炎症のより完全なプロフィールを提供するために、2つ以上の翻訳後修飾タンパク質が定量される。例えば、一般的炎症の診断および/またはモニタリングを改善するために、1つまたは複数の体液中にある2つ以上の一般的炎症のタンパク質マーカが測定され得る。同様に、特定のタイプの炎症の診断および/またはモニタリングを改善すること、および/または複数の特定のタイプの炎症が動物に存在するかどうかを判定するために、1つまたは複数の体液中にある2つ以上の指標タンパク質の量が測定され得る。最後に、動物における炎症の存在、不在、または程度、ならびに炎症が存在する場合には、炎症、および/または炎症が関連した疾患の部位を判定(一般的炎症を判定)するために、1つまたは複数の体液中にある1つまたは複数の一般的炎症のタンパク質マーカと、1つまたは複数の体液中にある1つまたは複数の指標タンパク質とが測定され得る。
【0073】
翻訳後修飾タンパク質の定量は、上述した方法のいずれによっても実施され得る。例えば、質量分析は、1つまたは複数の体液中にある翻訳後修飾タンパク質を同定および定量することによって、炎症プロフィールを提供し得る。しかし、好ましくは、注目している翻訳後修飾タンパク質に特異的な結合パートナーのコレクションが提供される。そのようなコレクションは、それぞれが結合パートナーを保持する試験管のコレクションでもよいし、その各ウェルに結合パートナーを含有するマイクロタイター・プレートでもよいし、基質上における結合パートナーのアレイでもよい。その後、結合パートナーのコレクションは、炎症プロフィールを作成するために利用される。
【0074】
6.翻訳後修飾タンパク質のレベルと、他の診断パラメータとの併用による疾患の診断およびモニタリング
上述のように、本発明の一般的炎症実施形態は、炎症の特定部位および原因を特定せず、またいかなる特異的疾患の診断も提供しない。1つまたは複数の特定タイプの炎症が存在すると判定された場合でさえ、疾患の決定的な診断が得られないことが多い。病気を診断するには通常、一般的炎症および/または特定のタイプの炎症の存在、不在、または程度を、他の診断パラメータと併用する必要がある。例えば、動物の肺で炎症が起きているという判定は、肺炎症の原因となっている可能性があるいくつかの疾患のうちのいずれか1つであると診断するのに十分ではないかもしれない。例えば喘息を呼吸器感染症から識別するには、病歴、ならびに他の検査所見および臨床所見が必要な場合がある。
【0075】
D.虚血の診断およびモニタリング
本発明はまた、虚血を診断およびモニタする方法を提供する。本明細書において、虚血は、1つまたは複数の組織または器官における酸素濃度の低減であると定義される。虚血は、血流量の減少によって、または血液の酸素運搬能力の低減によって引き起こされ得る。例えば、虚血は、貧血(組織または器官における赤血球またはヘモグロビンの減少、さらにこれは組織または器官への動脈血流の減少もしくは遮断によって、または出血によって引き起こされ得る)、酸欠(吸気、血液、または組織における酸素が正常レベルより低い状態)、または血液酸素欠乏(吸気、血液、または組織における酸素の欠如、またはほとんど完全な無酸素状態)によって引き起こされ得る。
【0076】
虚血は、1つの組織または器官で起こることがあり、また、複数の組織および/または器官に影響を及ぼすことがある。特定のタイプの虚血は、心虚血、脳血管虚血、胎盤虚血、および腸虚血などを含む。
【0077】
上述のように、虚血では炎症が起こる。しかし、虚血部位における嫌気的代謝により、炎症のみの場合と比較して、異なったタイプおよび/または量の翻訳後修飾が虚血の結果として起こり得る。所望または必要に応じて、虚血は炎症と区別され得る。例えば、虚血でのみ存在する特定のタンパク質の翻訳後修飾を含む特定のエピトープに対する抗体、または虚血でのみ存在する特定のタンパク質の特定タイプの翻訳後修飾に対する抗体が使用され得る。別法としては、2つの状態を区別するために、いくつかの翻訳後修飾プロフィールが用いられ得る。
【0078】
1.一般的虚血
本発明の一実施形態では、動物体内のどこかに虚血が存在するか、存在しないか、またはその程度のみが判定される。この実施形態は、本発明の方法の特定のタイプの虚血を判定する実施形態と区別するために、一般的虚血実施形態と呼ばれる。「特定のタイプの虚血」とは、特定の組織または器官における虚血(例えば心虚血)を意味する。一般的虚血実施形態は、虚血のいかなる特定のタイプの診断を提供しないが、他の診断パラメータと併用して、特定のタイプの虚血を診断する際に極めて有用であろう。
【0079】
本発明の一般的虚血実施形態は、虚血治療における有効性の判定を含む動物における虚血のモニタに用いられ得る。特定の治療が虚血の軽減に有効でないと判れば、治療は変更され得る。例えば、薬の用量が増加されることが可能であり、また、効果のない治療が別の治療に転換されることが可能である。一般的虚血実施形態はまた、薬剤の最小有効用量、および薬剤または治療の投与を必要とする最短の時間を決定するのに用いられ得る。最後に、この実施形態は、公知の治療と同様、虚血に対する新規かつ有望な治療の有効性をモニタするのに用いられ得る。
【0080】
一般的虚血を判定するために、体液中に存在する翻訳後修飾タンパク質の全て、翻訳後修飾タンパク質のサブセット、または翻訳後修飾された単一のタンパク質が測定される。本明細書において、一般的虚血の判定に利用される翻訳後修飾タンパク質のそれぞれは、「虚血の一般的マーカ」と呼ばれる。好ましくは、一般的虚血は、体液の成分である1つまたは複数の翻訳後修飾タンパク質を測定することによって判定され、これらのタンパク質は虚血の好ましい一般的マーカである。好ましくは、血液は本質的に身体の全域と接触または情報伝達を行うことから、上記体液は血液である。血液試料は、好ましくは血清または血漿である。虚血の最も好ましい一般的マーカは、翻訳後修飾アルブミンであり、好ましい翻訳後修飾は、リン酸化およびシステイン化である。
【0081】
2.特定のタイプの虚血の診断およびモニタリング
本発明はまた、特定タイプの虚血を診断および/またはモニタするのに用いられ得る。詳細には、特定の器官または組織における虚血は、診断および/またはモニタされ得る。これは、1つまたは複数の体液中に存在する1つまたは複数の翻訳後修飾された組織特異的または器官特異的タンパク質の量を測定することによって実現される。
【0082】
特定の器官および組織の虚血を判定するのに適した器官特異的タンパク質および組織特異的タンパク質の一部の例が以下に示される。
15.心筋梗塞用:トロポニンI、トロポニンT、クレアチニン・ホスホキナーゼ(CPK)、そのMBイソ酵素(CPKMB)、およびミオグロビン。
【0083】
16.脳虚血用:S100BなどのS100タンパク質。
17.腸虚血用:アルブミン。
18.胎盤虚血用:β−ヒト絨毛性ゴナドトロピン、α−フェトプロテイン、妊娠関連タンパク質1A、エリスロポイエチン、アンギオテンシンなどの妊娠関連タンパク質、またはアルブミン。
【0084】
1つまたは複数の体液における1つまたは複数の翻訳後修飾された器官特異的または組織特異的タンパク質の存在、不在、および/またはレベルのみに基づいて、特定のタイプの虚血の確実な診断を行うことも可能かもしれない。しかし、診断を行うには、他の診断パラメータも考慮することが、必須または望ましいであろう。例えば、追加診断パラメータを用いることで、診断における感度および/または特異性が向上するか、かつ/または信頼度が向上し得る。
【0085】
本発明のこの実施形態は、虚血に対する治療における有効性の判定を含む特定のタイプの虚血をモニタするのに用いられ得る。特定の治療が虚血の軽減に有効でないと判れば、治療は変更され得る。例えば、薬の用量が増加されることが可能であり、また、効果のない治療が別の治療に転換されることが可能である。この実施形態はまた、薬剤の最小有効用量、および薬剤または治療の投与を必要とする最短の時間を決定するのに用いられ得る。最後に、この実施形態は、公知の治療と同様、特定のタイプの虚血に対する新規かつ有望な治療の有効性をモニタするのに用いられ得る。
【0086】
3.心虚血の早期診断
本発明は心虚血の早期診断に特に有用であることが判明している。「早期診断」とは、胸痛、息切れ、左腕の疼痛または刺痛などの心虚血症を示す症状の発現後における最初の数時間以内(24時間未満、特に12時間未満)に心虚血の存在または不在を確認することを意味する。心虚血の標準診断試験は、この時間枠内では決定的でないことが多く、また、信頼可能な初期バイオマーカも存在しない。本発明は、高感度で特異的な診断分析を提供し、これは心虚血の症状の発現後における最初の数時間以内における分析を含み、したがって、心虚血の早期診断を行うのに極めて有用なものに違いない。
【0087】
4.翻訳後修飾タンパク質に特性を変性する必要がない
例えば心虚血などによる細胞損傷の結果として、患者の血清中に存在する特定の翻訳後修飾された組織特異的および器官特異的タンパク質を検出する方法が記載されている。国際公開第02/16947号パンフレット、およびラブガー(Labugger)ら、Circulation、第102巻、1221〜1226頁(2000年)を参照のこと。詳細には、この方法を用いてリン酸化されたトロポニンIおよびトロポニンIの分解された形態のいくつかが、急性心筋梗塞を患う患者の血清中に見出されたことが報告されている。しかし、リン酸化されたトロポニンI、分解された形態にあるトロポニンI、並びに細胞損傷のマーカである組織特異的タンパク質および器官特異的タンパク質の検出を可能にするためには、これらのタンパク質を変性させる必要があった。
【0088】
したがって、本発明の方法を用いて、翻訳後修飾された器官特異的タンパク質および組織特異的タンパク質を、これらを変性させる必要性なく正確に定量し得ることは、かなり驚くべきことである。例えば、自然状態の(すなわち変性されていない)トロポニンIを用いてリン酸化されたトロポニンIを定量する分析が開発されたが、この分析は、心虚血を高特異性かつ高感度で診断することが可能である(実施例4を参照)。本発明の方法は、タンパク質変性に必要な工程および試薬が除かれていることから、当然ながら国際公開第02/16947号パンフレットおよびラブガー(Labugger)ら、Circulation、第102巻、1221〜1226頁(2000年)に記載された方法より、迅速、単純、かつ安価である。
【0089】
5.リン酸化タンパク質の測定による虚血の診断およびモニタリング
本発明の特に好ましい実施形態では、1つまたは複数のリン酸化タンパク質のレベルを定量することによって、虚血が診断および/またはモニタされる。虚血中のタンパク質のリン酸化は、
(i)特異的なキナーゼの作用を介した炎症;および
(ii)組織または器官の虚血領域もしくは虚血領域近傍における嫌気的代謝の結果として起こる非特異的な基質レベルでのリン酸化の結果として起こると考えられている。虚血領域にあるタンパク質の基質レベルでのリン酸化は、そのタンパク質の多量のリン酸化を引き起こし得るものであり、自然に増幅されるシグナルを生成し、特別に反応性の高い虚血分析を提供する。
【0090】
したがって、本発明の好ましい実施形態では、体液中に存在する1つまたは複数のリン酸化タンパク質の量を測定することによって、虚血が診断および/またはモニタされる。リン酸化タンパク質の量が正常対照からの同一体液中におけるレベルと比較して有意に増加しているなら、患者は虚血を患っている。そのようなタンパク質は、最初に1つまたは複数の部位でリン酸化されており、そのリン酸化の量が炎症によって引き起こされたキナーゼ活性増大と、虚血によって引き起こされた基質リン酸化との結果として増大したタンパク質であり得る。
【0091】
一般的虚血を診断および/またはモニタするために、体液中に存在するリン酸化タンパク質の全て、体液中に存在するリン酸化タンパク質の1つ、または体液中に存在するリン酸化タンパク質の何らかのサブセットが測定され得る。特定のタイプの虚血を診断および/またはモニタするために、1つまたは複数の体液中に存在する1つまたは複数のリン酸化された器官特異的または組織特異的タンパク質が測定され得る。好ましくは、1つまたは複数の体液における1つまたは複数の器官特異的または組織特異的タンパク質が定量される。
【0092】
リン酸化タンパク質の定量のために、多くの方法が使用され得る(上記参照)。体液中に存在するリン酸化タンパク質は、好ましくは結合パートナー分析によって、最も好ましくは免疫学的検定によって定量される(上記参照)。
【0093】
6.システイン化タンパク質の測定による虚血の診断およびモニタリング
本発明の別の好ましい実施形態では、体液中に存在する1つまたは複数のシステイン化タンパク質のレベルを定量することによって虚血が診断される。システイン化タンパク質は、上述した1つまたは複数の方法で測定され得る。システイン化タンパク質は、適切な抗体(例えばシステイン化タンパク質(システイン化されたエピトープおよび/またはシステイン化されていないエピトープ)に特異的な抗体)を用いて、好ましくは結合パートナー分析によって、より好ましくは免疫学的検定によって、最も好ましくは酵素免疫測定法によって測定される。
【0094】
虚血では、以下の理由でシステイン化タンパク質のレベルが増大していると考えられている。まず、シスタチオニンβ−シンセターゼ(CBS)は、脳、肝臓、膵臓、腎臓、および胎盤を含む多くの器官および組織内に存在する。CBSは胎児組織にも存在する。これらの器官および組織、もしくはそれらの部分、または胎児組織における虚血では、CBSの阻害が引き起こされ、それによってホモシステインが蓄積され、その後、血流と、虚血を起こしていない領域とに流入する。このホモシステインは、虚血を起こしていない領域(例えば血液中ならびに虚血を起こした器官および組織における虚血を起こしていない領域内)で、阻害されていないCBSによってプロセシングを受け、タンパク質をシステイン化する硫黄転移経路(図5を参照)を介してシスタチオニンおよびシステインとなる。したがって、システイン化タンパク質には、アルブミンなどの血流中で循環するタンパク質を含むことが可能であり、そのような血流中で循環するタンパク質は虚血の一般的マーカである。システイン化タンパク質はまた、虚血を起こした器官もしくは組織の虚血を起こしていない領域、または胎児で生成されたタンパク質を含むことが可能であり、したがって、特定のタイプの虚血の診断およびモニタリングに有用である。後者のタイプのシステイン化タンパク質は、システイン化された脳タンパク質(S100タンパク質など)、ならびにシステイン化された胎盤タンパク質および胎児のタンパク質(β−ヒト絨毛性ゴナドトロピン、α−フェトプロテイン、妊娠関連タンパク質1A、エリスロポイエチン、およびアンギオテンシンなど)を含み得る。
【0095】
システイン化タンパク質のレベルは、他の機構によっても虚血中に増大することがある。例えば、Cu(II)レベルは、血流中と、器官および組織内との両方の虚血で増大し、このため、虚血中におけるタンパク質のシステイン化が増強されるはずである(図5を参照)。最後に、血液中のホモシステインのレベルは、虚血イベントを引き起こす危険にある患者で通常上昇しており、これも血液タンパク質のシステイン化をさらに高いレベルに上げているかもしれない(図5を参照)。
【0096】
7.虚血パネル
本発明の別の実施形態では、虚血の診断および/またはモニタリングを改善するために、および/または虚血のより完全なプロフィールを提供するために、2つ以上の翻訳後修飾タンパク質が定量される。例えば、一般的虚血の診断および/またはモニタリングを改善するために、1つまたは複数の体液中にある2つ以上の虚血の一般的マーカが測定され得る。同様に、特定タイプの虚血の診断および/またはモニタリングを改善するため、および/または複数の特定タイプの虚血が動物に存在するかどうかを判定するために、1つまたは複数の体液中にある2つ以上の器官特異的または組織特異的タンパク質の量が測定され得る。最後に、動物に虚血が存在するか(一般的虚血の判定)、そして、虚血が存在する場合には虚血の部位を判定するために、1つまたは複数の体液中にある1つまたは複数の虚血の一般的マーカと、1つまたは複数の体液中にある1つまたは複数の器官特異的または組織特異的タンパク質とが測定され得る。
【0097】
翻訳後修飾タンパク質の定量は、上述した方法のいずれによっても実施され得る。例えば、質量分析を用いて、1つまたは複数の体液中にある翻訳後修飾タンパク質を同定および定量することによって、虚血プロフィールを提供することが可能であろう。しかし、好ましくは、注目している翻訳後修飾タンパク質に特異的な結合パートナーのコレクションが提供される。そのようなコレクションは、それぞれが結合パートナーを保持する試験管のコレクションでもよいし、その各ウェルに結合パートナーを含有するマイクロタイター・プレートでもよいし、基質上における結合パートナーのアレイでもよい。その後、結合パートナーのコレクションは、虚血プロフィールを作成するために利用される。
【0098】
8.翻訳後修飾タンパク質のレベルと、他の診断パラメータとの併用による虚血の診断およびモニタリング
より高い感度および/または特異性で、かつ/または自信をもって虚血を診断するために、翻訳後修飾タンパク質の存在、不在、またはレベルを、他の診断パラメータと併用することが望ましいであろう。自信をもって虚血を診断または除外するために、例えば、病歴ならびに他の検査所見および臨床所見が有用または必要であることがある。
【0099】
一例として、心筋虚血を診断するために、リン酸化トロポニンIのレベルの測定を、標準的な(リン酸化されていない)トロポニンIのレベルまたはCK−MBのレベルと併用することが望ましいことがある。別の例としては、心筋虚血を診断するために、リン酸化アルブミンのレベルまたはシステイン化アルブミンのレベルの測定を、標準的な(リン酸化されていない)トロポニンIのレベルまたはCK−MBのレベルと併用することが望ましいことがある。同様に、脳虚血の診断のために、リン酸化アルブミンのレベルまたはシステイン化アルブミンのレベルの測定を、脳虚血の標準的なマーカと併用することが望ましいことがある。
【0100】
E.虫垂炎の診断の改良法
本発明は、動物、好ましくはヒトにおける虫垂炎を診断する改良法をさらに提供する。この方法の第1工程は、体液中、好ましくは尿中のo−ヒドロキシ馬尿酸(OHHA)の量が、正常動物から得た同一体液におけるレベルと比較して有意に上昇しているかどうかを判定することである。
【0101】
この工程は、米国特許第5,470,750号および下記実施例9の記載に従って実施され得る。米国特許第5,470,750号の全開示は本願明細書に援用される。
米国特許第5,470,750号は、OHHAを測定するいくつかの方法を記載する。これらの方法は、発色化学反応を行い、続いて肉眼、蛍光、紫外線分光法、または可視分光法を用いてその色を検出/測定すること(「比色分析法」)を含む。米国特許第5,470,750号に開示されたOHHAの測定法は、質量分析、(薄層クロマトグラフィ、高速液体クロマトグラフィ、およびガス・クロマトグラフィを含む)様々なタイプのクロマトグラフィ、核磁気共鳴、酵素反応、および免疫学的検定をさらに含む。
【0102】
米国特許第5,470,750号の好ましい実施形態は、比色分析スクリーニング・テストである。このスクリーニング・テストを行うために、診断される動物から得られた尿が発色試薬に添加される。好ましくは、この発色試薬は、シリカまたは別の支持物質(Celite(登録商標)、粘土、アルミナ、および/または耐火レンガなど)に結合した第二鉄イオンである。鉄結合シリカは、以下の通りにして調製され得る。40グラムの硝酸酸化鉄六水和物を40mlの25%塩酸に溶解させ、15分間、超音波処理する。その後、100グラムのシリカを硝酸酸化鉄溶液に添加し、遊離して流動する粉末が得られるまでゆっくり撹拌する。スクリーニング・テストを行うために、鉄結合シリカ粉末に尿を添加して激しく混合した後、インキュベートして発色させる。液体の最上層が茶色、赤色、または紫色の場合、尿中のOHHA量が虫垂炎の閾値より多いことを示す。液体の最上層の色が正常尿の淡黄色か、またはピンクである場合、OHHAが存在しないか、または虫垂炎の閾値より少ない量で存在することを示す。色は比色チャートと比較するか、または試験サンプルと同時に検査したスタンダードによって発色した色と比較して判定するのが最良である。比色チャートは、このスクリーニング・テストにおいて、正常尿中で既知量の純粋なOHHAを使用し、その結果生じた色を写真に撮ることによって作成されてもよい。スタンダードは同様に、純粋、かつ正常尿中に希釈可能なOHHAの1つまたは複数の既知量を含み、試験サンプルと同時にスクリーニング・テストにかけられる。スタンダードは、虫垂炎の存在を示すOHHA量に相当する少なくとも1つの量の純粋なOHHAを含み、好ましくは、虫垂炎の不在(ネガティブ対照)を示す色と、虫垂炎の存在(ポジティブ対照)を示す色とを包含する範囲の色を生ずるであろういくつかの異なった量の純粋なOHHAを含むであろう。
【0103】
米国特許第5,470,750号はまた、比色分析スクリーニング・テストにおける陽性の結果(すなわち、虫垂炎の存在を示す色)を確認するのに使用可能な薄層クロマトグラフィ(TLC)法を記載する。この方法は、尿試料からのOHHAの抽出を含む。これは、尿を(例えばクエン酸、塩酸、またはイオン交換樹脂を用いて)酸性化し、酸性化された尿をC18結合シリカが充填されたカラムに通し、酢酸ナトリウム緩衝液(0.05M、pH6.0)またはメタノールでOHHAを溶出することによって実施され得る。その後、抽出されたOHHAはTLCにかけられるが、好ましくは、ガラス、金属、またはプラスチックの裏当ての上に支持された薄層シリカ・プレートを使用して、蛍光指示薬を用いずに行われる。TLCを行うために、抽出されたOHHAはプレート上に滴下され、プレートは、適当な移動相を用いて展開される(例えば、メタノールで抽出されたOHHAに用いる移動相は、1部の氷酢酸および99部の酢酸エチルである)。OHHAは、250〜300nmの紫外線を用いること(OHHAが虫垂炎の存在を示す閾値より多く存在する場合には、青色蛍光を発するスポットが生じる)によって、または硝酸酸化鉄のメタノール溶液中にプレートを浸漬もしくは噴霧すること(この場合、OHHAが虫垂炎の存在を示す閾値より多いなら、赤いスポットが生じる)によって検出され得る。プレートの展開は常に、虫垂炎の存在を示す閾値濃度の純粋なOHHAによる少なくとも1つのスタンダードと共に行われる。
【0104】
OHHA用の比色定量キットは、ディー エム アイ バイオサイエンス・インコーポレイティッド(DMI BioSciences Inc.)[コロラド州イングルウッド所在]から購入可能である(AppyTest(登録商標)分析キット)。このキットは米国特許第5,470,750号に包含され、上記スクリーニング・テストと、上述のTLC分析との両方を行うための装置、試薬、およびその他の材料を含む。
【0105】
しかし、最も好ましくは、体溶液中に存在するOHHAの量は、OHHAに特異的な結合パートナーを用いて、結合パートナー分析によって測定されるだろう。結合パートナー分析は、翻訳後修飾タンパク質を測定するために上述されたいかなる分析でもよく、好ましくは免疫学的検定、最も好ましくは酵素免疫測定法である。また、結合パートナーは、上述されたいずれの結合パートナーでもよく、OHHAに特異的な抗体またはアプタマーが好ましい。OHHAは小分子であることから、抗体を調製するために、免疫原性担体に結合させなければならないであろう。適当な免疫原性担体(キーホール・リンペット・ヘモシアニン(KLH)、アルブミン、ならびに他の高分子量蛋白質およびポリペプチドなど)、およびこれらに小分子を結合させる方法は、当技術分野で周知である。例えば米国特許第5,484,735号、およびこれに引用された文献を参照のこと。結合パートナー分析は、体液中に存在するOHHAの量の定量的尺度を与え、かつ体液中に存在するOHHAの量が正常動物からの同一体液中におけるレベルと比較して上昇しているかどうかをより正確に判定することを可能にすることから好ましい。
【0106】
背景技術で述べたように、総白血球数による方法には限界があるにもかかわらず、臨床的な虫垂炎の疑いに対する評価を補助する臨床検査として最も広範に使用され続けている。上述したOHHAの比色分析スクリーニング・テストは、白血球数の上昇に比べて虫垂炎を診断する特異性が高い(80.6%対67.9%、p<0.01;下記実施例9を参照)が、総白血球数またはOHHAレベルのみによる方法より特異性が高く、かつ診断精度のよい分析が望ましいであろう。本発明は、虫垂炎を診断するそのような分析を提供する。
【0107】
詳細には、診断される動物からの体液中に存在する一般的炎症のマーカの量を測定することによっても、OHHAアッセイの特異性と精度とを改善することが可能であると判明している。体液は、OHHAの測定に用いられた同一の体液でもよいし、第2の異なった体液でもよい。好ましくは、一般的炎症のマーカの測定用体液は、尿、血漿、または血清である。
【0108】
一般的炎症のマーカは、総白血球数、好中球カウント、好中球バンド・カウント、またはC反応性タンパク質レベルなどの一般的炎症の公知のマーカでもよい。これらのマーカを測定する方法は周知であり、分析室で日常的に行われている。また、これらの値の正常範囲、および炎症の存在を示す値も周知であるか、または経験的に測定され得る。一般的炎症の好ましいマーカは、総白血球数である。成人における総白血球数の正常範囲は5〜10x10/リットルであり、12x10/リットル以上の総白血球数は炎症の存在を示すものである。子供の正常範囲は年齢に応じて変化し、炎症を示す総白血球数も同様に変化する(下記実施例9を参照)。
【0109】
一般的炎症の別の好ましいマーカは、インターロイキン8(IL−8)などの炎症性サイトカインである。体液中のサイトカインの量は、翻訳後修飾タンパク質に関する上の記載と同様にして測定され得る。サイトカインは、好ましくは結合パートナー分析、最も好ましくは免疫学的検定を用いて測定される。好ましい結合パートナーは、サイトカインに特異的な抗体およびアプタマーである。診断される動物の体液中のサイトカインのレベルが正常対照からの同一体液中でのレベルと比較して有意に上昇しているかどうかを、上述の方法などの当技術分野で周知の標準的な統計的方法を用いて判定することが可能である。
【0110】
詳細には、虫垂炎を含む炎症および炎症性疾患を患う患者で、尿中のIL−8レベルが上昇していることが判明している。国際公開第01/11371号パンフレットを参照のこと。尿中のIL−8量は、翻訳後修飾タンパク質に関する上の記載と同様にして測定されてもよい。好ましくは、IL−8は結合パートナー分析を用いて測定される。結合パートナー分析は、好ましくは免疫学的検定、最も好ましくは酵素免疫測定法である。好ましくは、結合パートナーは、IL−8に特異的な抗体またはアプタマーである。国際公開第01/11371号パンフレットには、ELISA分析での測定によると、正常対照(20対照)の尿中に3〜43pg/mlのIL−8が含まれていたと報告されている。これと比較して、8人の虫垂炎患者は44〜430pg/mlのIL−8を有していた。これらのデータの統計的分析は報告されていないが、正常対照と比較して、8人の虫垂炎患者のうち少なくとも5人では、IL−8レベルが実質的に上昇していた(74〜430pg/ml)。
【0111】
一般的炎症の、第3の、そして特に好ましいマーカは、一般的炎症のタンパク質マーカである翻訳後修飾タンパク質である。これらのタンパク質が正常動物からの同一体液中のレベルと比較して有意に上昇しているかどうかを判定する方法も含めて、これらの翻訳後修飾タンパク質およびその測定に関しては上述されている。体液、好ましくは血液の成分である1つまたは複数の翻訳後修飾タンパク質が好ましい。血液のタンパク質成分は、アルブミンおよび免疫グロブリンを含む。血液試料は、好ましくは血清または血漿である。最も好ましい一般的炎症のタンパク質マーカは翻訳後修飾アルブミンであり、好ましい翻訳後修飾はリン酸化およびシステイン化である。
【0112】
しかし、患者がアスピリンを摂取した場合には、アスピリン(アセチルサリチル酸)がタンパク質をアセチル化することから、翻訳後修飾タンパク質としてアセチル化タンパク質を用いるべきではない。そのような場合には、アセチル化タンパク質のレベルが炎症の存在を正確に反映しないであろう。
【0113】
OHHA分析と、一般的炎症のマーカの分析とを併用した場合、一般的炎症のマーカの分析のみの使用、またはOHHA分析のみの使用と比較して特異性および診断精度が改善される。詳細には、OHHA分析の結果と、一般的炎症のマーカの分析の結果とが一致している場合、これによって特異性および精度が実質的に改善されることが判明している(例えば、実施例9を参照)。結果が一致しているとは、両方のテストが陽性であるか、または両方のテストが陰性であることを意味する。例えば、OHHAの量が正常対照におけるレベルと比較して有意に上昇しており、かつ一般的炎症のマーカの量も正常対照におけるレベルと比較して有意に変化している場合、虫垂炎が示される。同様に、OHHAの量が有意に上昇しておらず、かつ一般的炎症のマーカの量も有意に変化していない場合、虫垂炎は示されない。一方のテストが陽性であり、他方のテストが陰性である場合、診断するために別の情報が必要である。例えば、時間をおいて(例えば8〜12時間後)2つのテストが反復されてもよい。
【0114】
また、OHHA分析と、一般的炎症のマーカの分析とを併用する際には、上述されたOHHAの比色分析スクリーニング・テストのみを使用することも可能である(例えば、実施例9参照)。時間を要して煩雑なTLC確認試験の使用を省略することが可能である。したがって、好ましい実施形態において、本発明は、OHHAの比色分析スクリーニング・テストを一般的炎症のマーカの分析と併用して虫垂炎を診断する簡単かつ迅速な方法を提供する。
【0115】
別の好ましい実施形態では、本発明は、OHHAの結合パートナー分析と、一般的炎症のマーカの結合パートナー分析との組合せを提供する。好ましくは、一方または両方の結合パートナー分析は免疫学的検定である。
【0116】
F.キット
本発明はまた、翻訳後修飾タンパク質の量を測定するためのキット、および虫垂炎を診断するためのキットを提供する。これらのキットは、診断装置(例えば自動分析装置)での使用に合わせてフォーマットされたものでもよいし、自己完結的なものでもよい(例えばポイントオブケア診断用)。
【0117】
翻訳後修飾タンパク質の量を測定するためのキットは、分析を行うのに有用な試薬を保持する1つまたは複数の容器を含み、これらの容器は特に、翻訳後修飾タンパク質を定量するのに有用な結合パートナーを保持する容器を含む。キットの試薬を入れる適当な容器は、ボトル、バイアル、試験管、およびマイクロタイター・プレートを含む。また、試薬(例えば結合パートナー)は、基質、テスト・ストリップ(例えば、濾紙、ガラス、金属、プラスチック、またはゲルで作製されたもの)、および基質上の結合パートナーの分析を含む結合パートナー分析を行うのに適当な他の装置の表面または中に組み込まれ得る。翻訳後修飾タンパク質を定量する1つまたは複数の分析を行うための取扱説明書がキットと共に提供されよう(この取扱説明書は、例えば、試薬の一部または全てを保持する同一のパッケージ内に提供され得るか、または別の付属文書として提供され得る)。キットは、緩衝液、酵素基質、希釈剤、およびスタンダードなどの当技術分野で公知の他の物質を含んでもよく、これは、商業的観点からも、およびユーザの観点からも望ましい。最後に、キットは、分析実施用、体液の収集、希釈および/または測定用、および/または試薬希釈用の空容器などの容器を含んでもよい。
【0118】
虫垂炎を診断するためのキットは、虫垂炎の診断に有用な試薬を保持する1つまたは複数の容器を含み、これらの容器は特に、OHHAを分析するための試薬、および/または一般的炎症のマーカを分析するための試薬を含む。キットは、各パーツが分析の一つを行うための試薬および他の物質を提供する2パーツ・キットでもよい。別法として、2つの異なったキットが提供されてもよい。各分析を行うための取扱説明書がキットと共に提供され得る(この取扱説明書は、例えば2パーツ・キットを保持する同一のパッケージ内に提供され得るか、別々のキットを保持する各パッケージ内に提供され得るか、または別の付属文書として提供され得る)。試薬を入れる適当な容器は、ボトル、バイアル、試験管、およびマイクロタイター・プレートを含む。また、試薬(例えば結合パートナー)は、基質、(例えば、濾紙、ガラス、金属、プラスチック、またはゲルで作製された)テスト・ストリップ、および基質上の結合パートナーのアレイを含む結合パートナー分析を行うのに適当な他の装置の表面または中に組み込まれ得る。キットは、緩衝液、酵素基質、希釈剤、およびスタンダードなどの当技術分野で公知の他の物質を含んでもよく、これは、商業的観点からも、およびユーザの観点からしても望ましい。最後に、キットは、分析実施用、体液の収集、希釈および/または測定用、および/または試薬希釈用の空容器などの容器を含んでもよい。
【0119】
キットは、OHHA分析を行うために、発色物質(すなわち、OHHAと接触した際に発色反応を行うことが可能な物質)を保持する容器を含んでもよい。好ましくは、発色物質は第二鉄イオンを含む。最も好ましくは、発色物質はシリカに結合した第二鉄イオンである。そのようなキットは、体液収集用の容器(シリンジ、プラスチック、または紙コップなど)、体液を測定するための測定器(点滴器、ピペット、またはミクロピペットなど)、および比色チャートまたは既知量のOHHAを含むスタンダードを保持する容器をさらに含んでもよい。
【0120】
別法として、OHHA分析を行うためのキットは、OHHAに特異的な結合パートナーを保持する容器を含んでもよい。そのようなキットは、体液収集用の容器(シリンジ、プラスチック、または紙コップなど)、体液の容積を測定するための測定器(点滴器、ピペット、またはミクロピペットなど)、および既知量のOHHAを含有するスタンダードを含む緩衝液、酵素、酵素基質、および他の試薬を保持する容器をさらに含んでもよい。
【0121】
総白血球数、好中球数、好中球バンド・カウント、およびC反応性タンパク質などの一般的炎症のマーカを分析するためのキットおよび試薬は周知である。通常、そのようなキットおよび試薬は臨床検査室で既に利用可能であるが、特に2パーツ・キットの一部として提供されてもよい。
【0122】
一般的炎症のマーカがサイトカインまたは翻訳後修飾タンパク質である場合、キットはサイトカインまたは翻訳後修飾タンパク質に特異的な結合パートナーを保持する容器を含んでもよい。そのようなキットは、体液収集用の容器(シリンジ、プラスチック、または紙コップなど)、体液の容積を測定するための測定器(点滴器、ピペット、またはミクロピペットなど)、および既知量のサイトカインまたは翻訳後修飾タンパク質を含有するスタンダードを含む緩衝液、酵素、酵素基質、および他の試薬を保持する容器をさらに含んでもよい。
【実施例】
【0123】
以下の実施例は、本発明の実施形態を例示するものであり、本発明を限定するものではない。
実施例1:リン酸化アルブミンは、炎症および虚血のマーカである。
【0124】
ヒト・アルブミンに対するマウス・モノクローナル抗体(クローンHSA−11、シグマ社(Sigma)[ミズーリ州セントルイス(St.Louis)所在]、カタログ番号A−6684)を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、pH7.4で1μg/mlに希釈し、この溶液の100μlをELISAストリップ・ウェルの各ウェル(ヌンク社(Nunc)、F16 Maxisorp(商標)ストリップ、カタログ番号469914)に添加した。室温での一夜インキュベーション後、抗体溶液を吸引し、ストリップをペーパー・タオル上でブロッティングして乾燥させた。
【0125】
次に、4%ウシ血清アルブミン(BSA)を含有するPBSを200μl、各ウェルに添加した。室温で18〜24時間インキュベートした後、BSA溶液を吸引し、ストリップをペーパー・タオル上で乾燥させてブロッティングした。
【0126】
その後、各患者の血清または血漿50μlを、デュプリケート(duplicate)でウェルに添加した。バックグランドを測定するため、対照として、4%ウシ血清アルブミン(BSA)を含有するPBSを50μl、デュプリケートでウェルに添加した。穏やかに震動させながら室温で1時間インキュベートした後、試料を吸引し、ウェルを洗浄緩衝液(50mMトリス、pH7.9〜8.1、0.2% Tween20)で4回洗浄した(ウェルの上まで満たすことで1回の洗浄とした)。
【0127】
次に、4%BSAを含有するPBS中の1μg/mlのウサギ・ポリクローナル抗リンタンパク質抗体(ザイメッド・ラボラトリーズ社(Zymed Laboratories)、カタログ番号61−8300)を、4%BSAを含有するPBS中に1:10,000で希釈したホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ結合ヤギ抗ラビットIgG(HRP;ピアス社(Pierce)、カタログ番号314600)と混合し、この混合液を100μl、各ウェルに添加した。穏やかに震動させながら1時間インキュベートした後、ウェルを上述の洗浄緩衝液で4回洗浄し、各ウェルに100μlのTMB基質(ピアス社(Pierce)、カタログ番号N−301)を添加した。30分間インキュベートした後、100μlの停止液(0.18M HSO)を添加して反応を停止した。
【0128】
450nmおよび530nmにおける各ウェルの光学濃度(OD)を分光光度計プレート・リーダーで読み取った。450nmのODから530nmのODを引き、この数値からバックグランド(530nmのODから450nmのODを引いた)を引いた。結果を下記表1に示す。
【0129】
【表1】

バックグランドは0.0695であった。
【0130】
試料R260、R261、およびR262では、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)を抗凝血物質として用いた。試料R256およびR258では、ヘパリンを抗凝血物質として用いた。EDTAは、アルカリ性ホスファターゼを阻害することが公知であり、試料のリン酸化状態を「フリーズさせる」のに使用可能である(ホスファターゼ阻害剤は、リン酸化タンパク質およびリン酸化ペプチドの脱リン酸化を減少または阻止する)が、この分析でHRPを阻害することがある。
【0131】
ARDS=成人呼吸窮迫症候群。
後に、この患者はステロイド治療を受けていたことが判明した。
実施例2:リン酸化アルブミンは、炎症および虚血のマーカである。
【0132】
実施例1で記載された分析を、追加の血清および血漿試料を用いて反復した。結果を下記表2に示す。
【0133】
【表2】

AMI=急性心筋梗塞
CP=胸痛
PTCA=経皮血管形成術
CABG=冠状動脈バイパス移植。
【0134】
タリウム(放射性)の静脈内注入と、心臓に焦点を定めたカメラを用いた放射能分布の検出とを加えた通常のトレッドミル・テスト。運動によって虚血となる領域は灌流が悪く、他の領域や静止時と比較してタリウム・カウントが低い領域として観測される。
【0135】
10COPD=慢性閉塞性肺疾患。
11非Q=心電図でq波が観測されない。
実施例3:リン酸化されたトロポニンIは、心臓炎症および心虚血のマーカである。
【0136】
ヒト心臓トロポニンIに対するヤギ・モノクローナル抗体(C−19、サンタ・クルズ・バイオテクノロジー社(Santa Cruz Biotechnology)、カタログ番号sc−8118)を1μg/mlでリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、pH7.4に希釈し、この溶液100μlをELISAストリップ・ウェル(ヌンク社(Nunc)、F16 Maxisorpストリップ、カタログ番号469914)の各ウェルに添加した。室温での一夜インキュベーション後、抗体溶液を吸引し、ストリップをペーパー・タオル上でブロッティングして乾燥させた。
【0137】
次に、4%ウシ血清アルブミン(BSA)を含有するPBS200μlを、各ウェルに添加した。室温で18〜24時間インキュベートした後、BSA溶液を吸引し、ストリップをペーパー・タオル上でブロッティングして乾燥させた。
【0138】
その後、各患者の血清または血漿50μlを、デュプリケートでウェルに添加した。バックグランドを測定するため、対照として、4%ウシ血清アルブミン(BSA)を含有するPBSを50μl、デュプリケートでウェルに添加した。穏やかに震動させながら室温で45分間インキュベートした後、試料を吸引し、ウェルを洗浄緩衝液(50mMトリス、pH7.9〜8.1、0.2%Tween20)で4回洗浄した(ウェルの上まで満たすことで1回の洗浄とした)。
【0139】
次に、4%BSAを含有するPBS中の1μg/mlのウサギのポリクローナル抗リンタンパク質抗体(ザイメッド・ラボラトリーズ社(Zymed Laboratories)、カタログ番号61−8300)を、4%BSAを含有するPBS中に1:10000で希釈したホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ結合ヤギ抗ラビットIgG(HRP;ピアス社(Pierce)、カタログ番号314600)と混合し、この混合液を100μl、各ウェルに添加した。穏やかに震動させながら45分間インキュベートした後、ウェルを上述の洗浄緩衝液で4回洗浄し、各ウェルに100μlのTMB基質(ピアス社(Pierce)、カタログ番号N−301)を添加した。30分間インキュベートした後、100μlの停止液(0.18M HSO)を添加して反応を停止した。
【0140】
450nmおよび530nmにおける各ウェルの光学濃度(OD)を分光光度計プレート・リーダーで測定した。450nmのODから530nmのODを引き、この数値からバックグランド(530nmのODから450nmのODを引いた)を引いた。結果を下記表3に示す。
【0141】
【表3】

12患者は多血管性疾患を有する74歳の女性であった。患者は左前下行枝(LAD)ステントによるPTCAを受け、側枝咬合による合併症を起こしていた。患者は、バルーンのインフレーション中に胸痛、心室性律動不整、およびST変化(心電図におけるSTセグメントの変化)を引き起こした。
【0142】
実施例4:リン酸化されたトロポニンIは、心臓炎症および心虚血のマーカである。
米国では毎年、約600から800万人の人が胸痛または他の心臓症候(例えば、息切れ、および左腕の疼痛または刺痛)で病院の救急室(ER)を訪れる。残念ながら、ERから家に帰される300から400万人のうち約2〜5%が誤診されている。胸痛の誤診は救急医療過誤審判の主要原因である。
【0143】
入院する残りの300から400万人のうち、約60〜75%は心臓病にかかっていない。入院した各患者の最小コストは$3,000〜5,000であることから、毎年60億ドル以上の医療費がこれらの不要な入院のために浪費されていることを意味する。
【0144】
心電図(ECG)が診断をするのに十分特徴的でない場合、信頼可能な初期バイオマーカは存在しない。トロポニンIまたはトロポニンTのレベルは、症状の発現後における最初の6〜24時間の間は感度が低いことから信頼性が低い。CK−MBおよびミオグロビンは心臓に特異的なものではない。
【0145】
検査集団は、胸痛、または急性冠状動脈症候群(ACS)を示す症状で来院したER患者であった。症状の発現後に各患者から採取した最初の血液試料において、正常な心臓トロポニンI(cTnI)およびリン酸化された心臓トロポニンI(PO−cTnIまたはPO−Trop)を測定した。PO−cTnIは、ヒトcTnIに特異的なポリクローナル抗体(サンタ・クルズ・バイオテクノロジー社(Santa Cruz Biotechnology))を使用したことを除いては、実施例3の記載の通りに測定した(図6を参照)。レシーバー・オペレーティング・カーブ(receiver operating curve)(ROC)によって測定された閾値は0.114であった。cTnIは、デイド・ベーリング社(Dade Behring)のDimensionテスト(閾値−ROCによると0.59)を用いて測定した。ECGは、各患者から血液試料を採取した際に行った(閾値−STEMIすなわち「高リスク」(新規のST下降における一過性ST上昇>0.5mm))。ACSは冠動脈造影または医師診断によって診断した。
【0146】
患者集団および患者治療成績の詳細を表4に示す。
【0147】
【表4】

図7A〜7Sは、ACSの診断および除外を行うためのECG、cTnI、リン酸化cTnI(PO−cTnIまたはPO−Trop)、ならびにこれら3つのパラメータの組合せの感度および特異性を示して比較する。感度=真の陽性/(真の陽性+偽陰性)。特異性=真の陰性/(真の陰性+偽陽性)。図7A〜7Sにおいて、下記の略語は下記の意味を有する。Sens=感度;Spec=特異性;STEMI=ST上昇心筋梗塞;およびUA=不安定狭心症。
【0148】
図7Aは、デイド・ベーリング社(Dade Behring)のDimension cTnIテストがACSに低感度および高特異性を有することを示す。図7Bは、ACS開始後の最初の数時間において、ACSに対するcTnIテストの感度が非常に低いことを示す。図7Cは、ECGおよびcTnIテストの結果とを併用することによって、ACSを除外する感度の増大が実現したことを示す。図7Dは、ECGおよびcTnIテストの結果とを併用することによって、ACS開始後の初期数時間におけるACSを除外する感度が増大したことを示す。図7Eは、全ての患者(n=67)でのcTnIテストおよびPO−cTnIテストの感度および特異性の比較を示す。図7Fは、症状の発現後の最初の数時間におけるcTnIテストおよびPO−cTnIテストの感度の比較を示す(テストは最初の血液採取でのみ行ったので、患者数が異なる)。図7Gは、症状の発現後の最初の数時間におけるcTnIテストおよびPO−cTnIテストの特異性の比較を示す。図7Hは、ECG、cTnI、およびPO−cTnIの結果を併用することによって、ACS(全患者、n=67)を除外する感度が、各テスト単独またはECGおよびcTnIの併用と比較して増大したことを示す。図7Iは、ECG、cTnI、およびPO−cTnIの結果を併用することによって、症状の発現後の最初の数時間におけるACS(全患者、n=67)を除外する感度が、ECG結果およびcTnI結果の併用と比較して増大したことを示す。図7Jは、cTnIおよびPO−cTnIの結果を併用することによって、STEMIサブグループの患者(n=17)でACSに対する感度が増大したことを示す。図7Kは、UAかつ非STEMIサブグループの患者(n=21)で、PO−cTnIテストにおけるACSを除外する感度がはるかに大きく、ECG、cTnI、およびPO−cTnIの結果を併用することによって、ACSを除外する感度が増大したことを示す。図7Lは、UAおよび非STEMIサブグループの患者(n=21)で、ECG、cTnI、およびPO−cTnのI結果を併用することによって、ECGおよびcTnIの併用と比較して、症状の発現後の初期数時間におけるACSを除外する感度が増大したことを示す。図7Mは低リスクECGサブグループの患者(n=42)で、PO−cTnIテストにおけるACSを除外する感度が他より高く、cTnI、およびPO−cTnIの結果を併用することによって、ACSを除外する感度が増大したことを示す。図7Nは、UAサブグループの患者(n=10)で、PO−cTnIテストにおけるACSを除外する感度が100%であり、cTnIおよびPO−cTnIの結果を併用することによって、ACSを除外する感度の増大がないことを示す。図7Oは、症状の発現後の最初の数時間におけるECGおよびPO−cTnIのACSに対する特異性を示す。図7Pおよび7Qは、ECGのACSに対する低感度および高特異性を示す。図7Rは、全ての患者(n=67)でのECGおよびPO−cTnIのACSに対する感度および特異性の比較を示す。図7Sは、全ての患者(n=67)で、ECGと比較してPO−cTnIテストにおけるACSに対する感度がはるかに高いことを示す。
【0149】
図7A〜7Sに見られるように、PO−cTnIの測定は、cTnI、ECG、およびこれらの2つのパラメータの併用と比較して、特に症状の発現後、最初の12〜24時間の間で非常に高い感度を示す。PO−cTnIによって実現された特異性も非常に高かったが、cTnIまたはECGによって実現された特異性ほどは高くなかった。
【0150】
図8は、本発明のPO−cTnI分析と、ACB(商標)テスト(イスキミア・テクノロジー社(Ischemia Technologies)[コロラド州アルバダ(Arvada)所在])との感度および特異性の比較を示す。ACB(商標)テストの感度および特異性は、ウー(Wu)ら、Cardiovasc.Toxicol、第1巻、1〜5頁(2001年)、およびクリステンソン(Christenson)ら、Clin.Chem.、第47巻、464〜470頁(2001年)に報告されているものの加重(各検査における患者数で調整された)平均である。ACB(商標)テストは、米国食品医薬品局(Food And Drug Administration)(FDA)によって承認された心虚血を除外するための比色分析法である。アルブミンに対するコバルト結合の変化が測定される。図8に見られるように、本発明のPO−cTnI分析は、ACB(商標)テストで見られるものよりはるかに高い感度と、はるかに良い特異性との両方を示した。
【0151】
実施例5:胎盤虚血の診断およびモニタリング
アルブミンは最も多量に含まれている血漿タンパク質であるが、主に翻訳後修飾の結果として生じる様々な分子種の集合として存在している。高分離度質量分光分析法を用いてこれらの分子種を正確に可視化して、これらの分子種の相対量を定量することで、アルブミン・プロフィールを作成することが可能である。
【0152】
血漿試料を17人の妊娠女性から収集したが、これらの女性のうち、12人の妊娠は胎児発育不全(FGR)の影響を受けたものであった。検査対象は、母体胎児医学(MFM)の実践において合併症を伴う妊娠とされた患者の中から選択された。パイロット研究のための試験対象患者基準は以下の通りであった。すなわち、
超音波による推定胎児体重<在胎齢における10パーセンタイルであり、これに加えて、
・羊水指標(AFI)<8、または
・脈波ドップラー測定による心臓収縮期対弛緩期(S/D)の臍動脈血流速度比>3、または
・標準的な臨床規準で定義される子癇前症。
【0153】
この検査グループには12人の患者がいたが、このうち11人が単胎妊娠であり、1人が双生児妊娠であった。1人の双生児の妊娠を含んでいる対照グループには5人の患者がいた。検査グループにおける生下時の在胎齢は26.3〜38週の間で、平均在胎齢が30.2週であったが、これに対して、対照グループでは平均在胎齢が38週であった。平均生下時体重は、検査グループでは1016グラムであり、これに対して対照グループでは3114グラムであった。検査グループの出生時体重パーセンテージは平均<10%であったが、これに対して対照グループでは43%であった。12人の検査患者のうちの10人で臍動脈ドップラー血流検査の結果を得た。これらの結果はすべて異常であったが、2人の患者で拡張終期血流の逆流があり、6人で拡張終期血流の途絶があり、そして、2人がS/D比>3.0を有していた。12人の検査患者のうちの9人は、子癇前症を有していた。12人の検査患者のうちの2人は、HELLP症候群を有していた。
【0154】
正常患者から得た標本アルブミン・プロフィールを図1に示す。多数の分子種があることに留意されたし。各分子種を以下に同定する。
・天然アルブミン
・システイン化天然アルブミン(シスタチオニンβ−シンセターゼの阻害)
・C末端ロイシンを失った天然アルブミン(カルボキシペプチダーゼ活性の増大)
・N末端のアスパラギン酸−アラニンを失った天然アルブミン(N末端の環化)
・C末端ロイシンを失っており、かつシステイン化された天然アルブミン
・N末端のアスパラギン酸−アラニンを失っており、かつシステイン化された天然アルブミン
・糖化天然アルブミン−最大3箇所のグリケーション(高血糖ストレス関連)
・システイン化され、かつ糖化された天然アルブミン
・リン酸化天然アルブミン(表面キナーゼ活性の増大)
・C末端ロイシンを失っており、かつホモシステインを付加された天然アルブミン。
【0155】
7つの分子種のアルブミンが、胎盤虚血を起こした女性と正常妊娠の女性との間で相違を示すものとして同定された。示されたこれらの分子種それぞれの総アルブミン量の割合を計算した。検出された分子種とそれらの相対的な割合とに関する概要を下記に示す(表5)。
【0156】
表5:胎盤虚血のパイロット研究における、アルブミンの多様な分子種の相対的レベル
【0157】
【表5】

13Alb.=アルブミン
14+Cys=システイン化
15−Leu=C末端ロイシンを欠失
16−DA=N末端の2つのアミノ酸、アスパラギン酸およびアラニンを欠失
17+Homocys=ホモシステイン化
18PI=胎盤虚血
有意差があったかどうかを明らかにするために、これら2つのグループ(正常および胎盤虚血)を比較した。研究者のt検定による両側検定を用いた。これらのグループ相互における最も明白な相違が、天然アルブミン対システイン化アルブミンの比率であるのが見て取れた。図2を参照のこと。図2は、正常妊娠から胎盤虚血を伴う妊娠に向かって、システイン化が増大しているシフトの例を示す。システイン化型対天然型の完全な反転があることに留意されたし。胎盤虚血を伴った妊娠と比較した正常妊娠におけるシステイン化アルブミンのレベルの相違は、統計的に有意性が高いことが判明した(図3を参照)。
【0158】
これらのグループ間で最も明白な相違が天然アルブミン対システイン化アルブミンの比率であり、かつ相対的比率が分析されたことから、この大幅な相違が他のものの相対的な割合にも影響を及ぼしているかもしれないと推論した。この現象を最小化し、残りマーカにおける相違が本当に有意なものであったのかどうかを明らかにするため、システイン化アルブミンとそれらに対応する天然種を排除することによって、データを再度正規化した(図4を参照)。
【0159】
図3および図4は、これら2つのグループ(胎盤虚血対正常)相互の相違を示す1セットのボックス・プロットおよびp値を示す。7個の初期マーカの全てが有意であると示されたことに留意されたい。
【0160】
胎盤虚血における有意性の高いシステイン化アルブミンの増大は、以下の通りに説明され得る。末梢血管系疾患および虚血中における血漿中の銅、ホモシステイン、およびシステイン化アルブミンの公知の増加は、硫黄転移経路(図5)を通して一体化され得る。この経路の調節における重要酵素はシスタチオニンβ−シンセターゼ(CBS)である。この酵素は、ホモシステイン尿症で欠失しており、ヘム含有酵素であるので酸化還元センサーであるかもしれない。バネルジー、アール(Banerjee,R.)ら、Biochim Biophys Acta、2003年、第1647(1−2)巻、30〜5頁。酸化性条件下では、明らかにこの酵素の活性が促進される。対照的に、還元条件下では活性が低下する。この酵素が胎盤虚血(還元条件)中に阻害されるなら、それによって血漿ホモシステインのレベルの上昇が説明される。このホモシステインが次に、母親における酸化性条件下でシステインに変換され、この結果母体循環におけるシステイン化アルブミンのレベルの上昇がもたらされる。末梢血管系疾患の患者における血漿中の総ホモシステインと銅との間の相関関係が報告されているが(マンソール、エム エー(Mansoor,M.A.)ら、Clin Chem、2000年、第46(3)巻、385〜91頁)、胎盤虚血後にもこの関係があるかはまだ知られていない。これが実際にその通りなら、公知であるCu(I)とCu(II)との間の酸化還元フラックスそれ自体、または、銅および血漿アスコルビン酸からのフリー・ラジカルの生成(バールオール、ディー(Bar−Or,D.)ら、Biochem Biophys Res Commun、2001年、第284(3)巻、856〜62頁)さえも、硫黄転移経路を通る流れの方向に影響を及ぼし得る。このようにして、血漿中の遊離銅の増加のみでも血漿ホモシステインの逐次的増加、ならびに、それに続くシステインの変換、およびシステイン化アルブミンの生成を引き起こすかもしれない。硫黄転移経路によって、胎盤虚血を患う患者で観測されたシステイン化アルブミンのレベルの上昇が説明される。
【0161】
β−ヒト絨毛性ゴナドトロピン(βHCG)、α−フェトプロテイン(AFP)、および妊娠関連タンパク質1A(PAP 1A)などの胎盤特異的または胎児特異的な他のタンパク質のシステイン化と、アシル化、リン酸化、グリコシル化、およびニトロシル化などの他の翻訳後修飾とが分析される。上述したタンパク質は、母体血漿、羊水、および胎児臍静脈血漿から抽出され、注目している様々な分子種(アセチル化、リン酸化、糖化、システイン化、およびニトロシル化)の存在がLC ESI/MSによって分析される。詳細には、システイン化、リン酸化、およびニトロシル化経路が虚血および炎症に関連しており、システイン化、リン酸化および/または、ニトロシル化されたタンパク質(例えば、アルブミン、βHCG、AFP、およびPAP 1A)のレベルが虚血の程度を示すと予測される。
【0162】
実施例6:ELISAによる胎盤虚血の診断およびモニタリング
母親のシステイン化アルブミン・レベルの上昇は、ヒト血清アルブミンのシステイン化したシステイン残基を含有するペプチドに対して産生させた抗血清を用いる酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)を行うことによって、検出および定量化され得る。抗血清は以下の通りに作製される。ヒト血清アルブミンのアミノ酸28から41に対応するペプチドが合成される。遊離システインの存在下において、わずかにアルカリ性の環境でペプチドを加熱することによって、残基34のシステインのシステイン化が起こる。質量分析によるペプチド・システイン化の検証が行われ、その後、抗原が担体タンパク質に結合される。250μgの抗原による一次免疫が2頭のウサギに注射され、それに続いて100μgの追加注射が3回なされる。70日目に両方の動物から得た血清に、反応性抗体が含まれるか検査される。
【0163】
上述した方法で得られたウサギ抗血清と、抗ヒト血清アルブミン捕捉抗体とを用いて、システイン化アルブミンELISAが開発される。ELISAストリップ・ウェル・プレート上にコーティングされた抗ヒト血清アルブミン抗体を用いることで、患者の血漿および/または血清から得た母性血清アルブミンが捕捉される。ウェル中に存在するシステイン化アルブミンを定量するために、抗システイン化アルブミン抗血清およびホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ結合抗ウサギIgGの逐次インキュベーションが行われる。ELISAの検証および検出限界は、インビトロで生成された既知レベルのシステイン化アルブミンを用いることで測定される。
【0164】
ELISAに用いられる抗体は、1つの抗体がもう一方の抗体の結合部位を遮蔽しないことを確実にするために、適切に適合される。抗原部位がシステイン化部位から離れている捕獲抗体を選択することで、システイン化アルブミンを捕捉する確率が増大する。さらに、システイン残基34が抗体産生に選択されたが、別の残基が含まれてもよい。ヒト血清アルブミンのシステイン34は、天然タンパク質の上の唯一の遊離システインであるが、他のシステイン残基も虚血イベント中に曝露されるかもしれない。
【0165】
また、システイン化アルブミンのレベルは、葉酸による処理によって影響されることがある。葉酸はホモシステインをメチオニンに再メチル化し、これによってシステインの形成が回避されることが公知である。摂取された葉酸の量も考慮に入れられる。
【0166】
βHCG、AFP、およびPAP1Aなどの胎盤特異的または胎児特異的な他のタンパク質のシステイン化と、リン酸化、ニトロシル化などの他の翻訳後修飾とがELISAで分析される。システイン化、リン酸化、およびニトロシル化経路は虚血および炎症に関連しており、システイン化、リン酸化および/またはニトロシル化されたタンパク質(例えば、アルブミン、βHCG、AFP、およびPAP 1A)のレベルは、虚血の程度を示すはずである。
【0167】
実施例7:胎盤虚血を早期検出するための妊娠モニタリング
虚血バイオマーカの中には、FGRが臨床上明らかになる前にレベルが上昇するものもあると予想される。したがって、妊娠中の連続的試料採取のために、様々な危険因子を有する患者が正常妊娠の女性と共に選ばれる。
【0168】
FGRのリスクがある妊娠を同定するために、以下の試験対象患者基準が用いられる。すなわち、
・以前における重度子宮内発育遅延(IUGR)新生児(<5パーセンタイル)の妊娠;
・以前における胎児体重が<10パーセンタイルである子宮内胎児仮死(IUFD);
・中レベルまたは高レベルの抗カルジオリピンIgG;
・高血圧の有無にかかわらず、血清クレアチニン(SCr)が>1.5mg/dlである腎臓疾患;そして、
・未経産、かつ2番目の三半期におけるスクリーニングで母方α−フェトプロテイン(MSaFP)および/または母方ヒト絨毛性ゴナドトロピン((MShCG)>=3.0中央値倍数(MOM)。
【0169】
正常対照妊娠は、通常の超音波予定日判定のために来診した以下の臨床的特徴のいずれもない女性の中から選択される。すなわち、
超音波による推定胎児体重<在胎齢における10パーセンタイルであり、これに加えて、
・羊水指標(AFI)<8、または
・脈波ドップラー測定による心臓収縮期対弛緩期(S/D)の臍動脈血流速度比>3、または
・標準的な臨床規準で定義される子癇前症、および
以下に示す胎盤不全の他の危険因子がない:
・以前における重度IUGR新生児(<5パーセンタイル)の妊娠;
・以前における胎児体重<10パーセンタイルのIUFD;
・中レベルまたは高レベルの抗カルジオリピンIgG;
・高血圧の有無にかかわらず、SCr>1.5mg/dlである腎臓疾患;
・2番目の三半期におけるスクリーニングでMSaFPおよび/またはMShCG>=3.0 MOM;および
・同定されたプロトロンビン条件(プロテインS、プロテインC、またはアンチトロンビンIIIの欠乏、あるいは因子V、因子II、またはメチルテトラヒドロ葉酸環元酵素(MTHFR)の通常変異)。
【0170】
FGR新生児を分娩した対照妊娠は事後に除外される。
これらの規準を用いて、3つの集団が現れる。すなわち、FGR乳児を分娩する検査患者、AGA乳児を分娩する検査患者、およびAGA乳児を分娩する対照患者である。これらの3つの集団が別々に分析される。
【0171】
検査患者(リスクのある妊娠)および対照患者は妊娠16〜20週間で同定される。母親血清の試料(妊娠16〜20、24〜28、および32〜36週)および新生児静脈および動脈臍帯血の試料は、+/−2週間に在胎齢を合わせて収集される。検査患者および対照患者が臨床適応のために羊水穿刺を行う際には、1〜2ccアリコートの羊水も分析用に収集される。
【0172】
試料は、質量分析とELISAによって、少なくともシステイン化タンパク質、リン酸化タンパク質、およびニトロシル化タンパク質を含む翻訳後修飾タンパク質について分析される。
【0173】
実施例8:システイン化アルブミンは腸虚血マーカであり、かつ多臓器不全の初期マーカである。
ホモシステインは、メチオニンの代謝における中間体であり、硫黄転移経路におけるシステインの前駆体である(図5)。シスタチオニンβ−シンセターゼ(CBS)は、硫黄転移経路における主要調節酵素である(図5)。CBSは酸化還元センサーであり得る。明らかにCBSの活性は還元環境(↓pH、低O)で低下し、酸化性環境(↑pH、↑O)で上昇している。したがって、アシドーシスと低酸素濃度(すなわち、還元条件)とを特徴とする虚血イベント中では、CBSの活性が阻害されるはずであり、CBSの阻害は、虚血組織および高ホモシステイン血症で、血流中におけるホモシステインの蓄積を引き起こすはずである。この仮説を腸虚血および多臓器不全(MOF)のラット・モデルでテストした。
【0174】
10頭の対照グループ病原体不在オスSD系CDラットを、まずイソフルランによって、そして、それに続いてペントパルビトンナトリウム(sodium pentoparbitone)(60mg/kg体重)を静脈内注入するよって麻酔にかけた。各ラットの気管にポリエチレン・チューブのカニューレを挿入し、必要に応じて右頚静脈にもペントパルビトン(pentobarbitone)の追加投与用にポリエチレン・チューブのカニューレを挿入した。正中腹部切開を行って再縫合した。手術の2時間後に縫合を取り除き、スペンサー・ウェルズ(Spencer Wells)で固定することによって閉腹した。ラットはさらに1時間麻痺状態におき、その後、全採血して犠牲にした。
【0175】
10頭の実験グループ病原体不在オスSD系CDラットに、対照グループと同じ処理を行ったが、その際、腹部切開を縫合する前に小さな金属動脈クリップを上腸間膜動脈に配置した。金属クリップを2時間後に取り外し、腹部切開をスペンサー・ウェルズで閉腹した。これら実験グループ・ラットは、動脈クリップの除去1時間後に全採血して犠牲にした。
【0176】
血液をヘパリン化チューブ中に収集し、4℃、4000rpmで、10分間遠心して血漿を調製した。血漿試料はその後の分析用に−80℃で凍結した。
ホモシステイン・レベルは、IMMULITE2000分析器と、L−ホモシステイン定量測定用キットとを用いて測定した。
【0177】
総アルブミンは、ブロモクレゾールグリーン(BCG)分析(シグマ社(Sigma)[ミゼリー州セントルイス所在])を用いて測定した。簡潔には、血漿5μlとアルブミン試薬(BCG)1mlとを混合した。628nmにおける測定を、島津製作所(Shimadzu)製UV160U分光光度計を用いて、デュプリケートでアルブミン試薬なしのブランクとの比較において行った。
【0178】
アルブミンは、SwellGel(登録商標)Blue Albumin Removalキット(ピアス社(Pierce)[イリノイ州ロックフォード(Rockford)所在])を用いて単離した。簡潔には、血漿100μlを、水和したCibacron(登録商標)Blue樹脂を含んだカラムに添加した。カラムを結合/洗浄緩衝液でリンスし、1M NaClでアルブミンを溶出した。Microcon30フィルター(ミリポア社(Millipore)[マサチューセッツ州ベドフォード(Bedford)所在])を用い、蒸留水でリンスすることによって試料を脱塩した。
【0179】
アルブミンを分析するために、ウォーターズ社(Waters)製2794HPLCシステムを使用し、C−4 250mm分析用カラム、および水/トリフルオロ酢酸(TFA)アセトニトリル/TFA勾配系、ならびに+ESIのMicromassLCT質量分析計を用いてESI/MS法およびLC−MS法を行った。システイン化の割合は、この結果得られた質量スペクトログラムにおける全アルブミン種の血中濃度曲線下面積から計算された。
【0180】
実験グループ・ラットでは、血漿中のホモシステイン・レベルが対照グループ・ラットより2.5倍高かった(p=0.00000017)。ホモシステイン・レベルは、実験グループ・ラットでは8.5±1.5μMであり、対照グループ・ラットでは3.3±1.1μMであった。
【0181】
これら2つのグループのアルブミン・レベルには差がなかった。対照グループと実験グループにおけるアルブミン・レベルは、それぞれ24.3±2と23.1±1.9mg/mlであった。
【0182】
LC−MSおよびESI/MSによって、実験グループ・ラットのアルブミンの全てが様々なシステイン化分子種として存在する(すなわち、100%のアルブミンがシステイン化されている)ことが示された。対照グループでは、総アルブミンの51.15±8.77%のみがシステイン化されていた。対照グループ・ラットおよび実験グループ・ラットにおけるアルブミンの典型的なMSプロフィールを図9Aおよび9Bに示す。上腸間膜動脈の結紮は重度の腸虚血をもたらす。この結紮は、単独で、そして虚血腸の再潅流と組み合わせて、腸虚血のモデル、およびMOF誘導のモデルとして用いられている。
【0183】
この研究では、腸虚血および再潅流が血漿ホモシステイン・レベルの有意な増大に関連することが実証された。このホモシステインは、おそらく虚血腸で形成され、その後、体循環系に放出されたものである。酸化物質の存在下において正常な末梢循環中のホモシステインは、システインに代謝され、このシステインが次にシスチンに転換される(図5)。シスチンは、遊離チオールの存在下でタンパク質をシステイン化する。
【0184】
実験グループでは、アルブミンのシステイン化分子種の形成が確証的に示されている。アルブミン・システイン化の生理的重要性を過小評価するべきではない。例えば、ヒト・アルブミンにおけるCys34の遊離チオールは血漿抗酸化物質還元能の90%以上を提供する。これらの遊離チオール基がシステイン化によって酸化されると、酸化的ストレスに対処する血漿の緩衝能力が著しく低下して組織障害の原因となる。
【0185】
データは、システイン化アルブミンが腸虚血のバイオマーカであることを示す。さらに、システイン化アルブミンの量は、虚血傷害の重篤度の指標(すなわち、システイン化アルブミンの量が多いほど、虚血が重度である)としても有用であり得る。
【0186】
虚血イベント中において、中間体であるホモシステインのレベルが高いことは、担体タンパク質からの銅の遊離と併せて、観測される組織障害の原因となる。銅の存在はアシドーシス/虚血を起こした組織で一般的であるが、銅の存在下ではホモシステイン銅複合体が形成される。ホモシステイン銅複合体は、内皮細胞に対して有害であり、また、他の細胞系列に対しても潜在的に有害である。
【0187】
上述のように、上腸間膜動脈結紮モデルは、多臓器不全(MOF)のモデルとして認められており、ラットは、再潅流フェーズ後にMOFを発症する。したがって、システイン化アルブミンは、MOFの初期マーカでもあることが判明している。
【0188】
この結論は、ヒトMOF患者におけるホモシステイン・レベルが測定され、1.5倍から2.0倍の増大があることが見いだされたという事実によっても支持される。例えば、ある患者は、MOFを患っている間、16.7μMのホモシステイン・レベルを有した。この患者に集中治療を行い、そして患者がMOFから回復した後では、ホモシステイン・レベルが3.1μMにまで低下していた(正常ヒトのホモシステイン・レベルは5〜12μmである)。
【0189】
実施例9:虫垂炎診断の改良法
腹痛は救急科および医師の診療室で患者が訴えることの最も多い病訴の1つであり、かつ、虫垂炎は緊急の外科的介入を必要とする急性腹痛の最も一般的な原因である。グラフ(Graff)ら、Acad.Emerg.Med.、第7巻、1244〜1255頁(2000年);ベリー(Berry)ら、Ann.Surg.、第200巻、567〜575頁(1984年)。急性虫垂炎の疑いがある患者の初期臨床評価は通常、外科医ではなく、むしろ救急医師や家庭医が行う。急性虫垂炎の正しい診断は、臨床医の技術および経験に大きく依存している。スターンバッハ(Sternbach)ら、J.Emerg.Med.、第13巻、95〜96頁(1995年);ヘール(Hale)ら、Ann.Surg.、第225巻、252〜261頁(1997年)。徴候および症候が微妙で非定型的な場合には、誤診となることが多く、そして、診断が遅れれば治療成績の悪化につながり得る。ジャーン(Jahn)ら、Eur.J.Surg.、第163巻、433〜443頁(1997年);アンダーソン(Andersson)ら、Eur.J.Surg.、第166巻、798〜802頁(2000年)。最近の多施設調査では、腹痛で救急病棟を訪れた患者を、延長した観察を行わずに虫垂炎と診察した場合、その初期診察が誤診である比率が約20%に達すると報告された。グラフ(Graff)ら、Acad.Emerg.Med.、第7巻、1244〜1255頁(2000年)。急性虫垂炎の初期誤診率は、女性および子供で顕著に高くなっている。ロスロック(Rothrock)ら、J.Emerg.Med.、第13巻、1〜8頁(1995年);ロスロック(Rothrock)ら、Ann.Emerg.Med.、第36巻、39〜51頁(2000年)。
【0190】
o−ヒドロキシ馬尿酸(OHHA)は、ヒト尿の正常成分である。予備的な臨床知見は、尿中におけるOHHAの増加と急性虫垂炎との間に関連がある可能性を示唆する。急性腹痛に苦しむ救急科患者に対するこの前向きで非介入的な研究において、急性虫垂炎の疑いに対する初期臨床評価を行う際に、尿中OHHAの迅速かつ簡単なテスト(AppyTest(登録商標)分析、ディーエムアイ・バイオサイエンスインコーポレティッド(DMI BioSciences Inc.)[コロラド州イングルウッド(Englewood)所在])を単独で行った場合の診断価値と、初期白血球数と併用した場合の診断価値とを検討した。特異性および診断精度を向上させる単純な診断試験は、費用に敏感な医療環境において臨床医が急性虫垂炎の疑いのある患者を効率的かつ経済的に評価する補助となり得る。
【0191】
A.方法および材料
都市および郊外の教育提携がある3つの共同体付託病院、すなわちヘルスワン・スウェーディッシュ・メディカル・センター(HealthOne Swedish Medical Center)[コロラド州イングルウッド(Englewood)所在]、エクゼンプラ・セント・ヨゼフ病院(Exempla St.Joseph’s Hospital)[コロラド州デンバー(Denver)所在]、およびセンチュラ・ヘルス・ポーター・アドベンティスト病院(Centura Health Porter Adventist Hospital)[コロラド州デンバー(Denver)所在]で、虫垂炎の疑いのある急性腹痛で救急科に来院した患者を、この前向き研究に1日24時間連続的に登録した。各施設において施設内審査委員会承認を得て、全ての患者または患者の正式代表者からインフォームド・コンセントを得た。試験対象患者基準は以下の通りである。すなわち、いかなる年齢でもよく、症候に最近開始した腹痛が含まれ、かつ初期問診および身体検査で経験豊富な救急専門医によって急性虫垂炎の疑いがあると診断された患者である。患者の問診、試料の取り扱い、および研究に関連したすべてのデータ収集は、独立した臨床試験代表者の責任でなされた。病歴および身体検査データを含めた患者情報は、救急科における初期検査の間に、そして、いかなる診断試験結果が知られる前に、形式化されたデータ機器に記録した。
【0192】
除外規準は以下の通りであった。すなわち、以前の虫垂切除、病前腹部病態(例えば、外傷、膵炎、腸閉塞症、切迫流産、胃腸出血)、臨床的黄疸、転移癌、腹部外科手術の経歴もしくは先行3カ月以内における腹痛の病訴、または、研究の検査前>72時間に症候の開始を有する患者である。フェノール成分(例えばフェノチアジン)およびサリチル酸は、擬陽性のOHHA結果を引き起こし得る(アルチュール(Altschule)ら、Clin.Pharmacol.Ther.、第15巻、111〜117頁(1974年))。したがって、先行24時間以内にそれらの化合物を摂取した病歴を有する患者は除外した。抗生物質は腸内細菌に影響を与え得るので、先行24時間以内に経口抗生物質を摂取した患者は除外した。尿試料収集の12時間以上後まで外科的介入が遅延した患者はこの研究から除外した。OHHA分析結果を知らされず、かつ経験が豊富で完全に訓練された救急専門医および外科専門医が、治療のローカル・スタンダードに従って、全ての診断および処置決定を行った。臨床成果を記録するために、研究代表者は初期検査の7日以内に患者に電話問診を行い、それぞれの医療記録を再検討した。
【0193】
最初に救急科に来院した際に全患者の尿試料を収集して4℃で冷蔵した。尿試料は、白血球数試料を取得する時間の1時間以内に収集した。OHHAの比色分析(AppyTest(登録商標)分析キット、ディーエムアイ・バイオサイエンスインコーポレティッド(DMI BioSciences Inc.)[コロラド州イングルウッド(Englewood)所在])は、1〜7日以内に独立した臨床検査室(コロラド大学健康科学センター(University of Colorado Health Sciences Center)[コロラド州デンバー(Denver)所在])で、訓練された検査技師が盲検法によって行った。簡潔には、OHHA分析法は、15滴の尿を発色試薬に添加することと、30秒間混合することとからなり、ピンクから暗褐色または紫色(比色チャートと比較する)に色が変化した場合にテストが陽性であることを示す。再現精度が>95%となるOHHA分析の視覚検出閾値は、高速液体クロマトグラフィによって尿中OHHA濃度で40mg/Lに相当することが判明しており、この分析は、最長7日間まで4℃で冷蔵された尿試料において、許容可能な安定性、正当性、および再現精度を有する(データは示されていない)。決定的でない尿中OHHA結果は、OHHA分析比色チャートにない非標準的な色変化として定義され、そのような患者は研究から除外した。この研究の間、医師、医員、患者、臨床試験代表者、および治験依頼者の全員がOHHA分析結果を知らずにいた。患者が登録、診断、および治療された後に、独立した研究コーディネーターが症例記録表からの全診断結果および治療成績研究データを集録した。
【0194】
総白血球数の自動計数を、救急科来院中に各病院の臨床検査室で行った。白血球数の結果は、以下に示す年齢調整された閾値を超えた際に高いとみなされた。すなわち、≧18歳、12.0×10/L;11〜17歳、13.0×10/L;7〜10歳、13.5×10/L;4〜6歳、14.5×10/L;2〜3歳、15.5×10/Lである(2歳より幼い患者はいなかった)。この研究の目的においては、年齢調整された白血球数が増加していない場合、その白血球数は「正常である」とみなされた。白血球数が記録されていなかった患者は分析から除外した。
【0195】
OHHA分析結果および白血球数を併用した診断指標(特異性、感度、精度、および予測的価値)を、白血球数のみによる診断指標と比較し、論理演算子「AND」を用いて検査した。患者が、1)「陽性で一致している」結果−陽性のOHHA結果および高い白血球数、または2)「陰性で一致している」結果−陰性のOHHA結果および増加していない白血球数検査結果のどちらかを有した場合、テスト結果が一致しているとみなされた。
【0196】
急性虫垂炎の診断は、初期救急評価の後に外科的介入を受けた患者の組織病理学レポートによって確認した。虫垂周囲炎、すなわち虫垂周囲の組織における炎症が存在しても、虫垂の壁内部に炎症がない場合は、急性虫垂炎に関しては陰性であるとみなした。組織病理学検査を行った病理学者は、OHHA分析の結果を知らずにいた。登録された患者のうち、外科的介入が行われずに退院したすべての患者は、1〜7日後に連絡を取り、患者に急性虫垂炎の症候がなく、初期検査の後12時間以内にいかなる試験開腹もなされなかった場合、急性虫垂炎に関して陰性であるとみなされた。
【0197】
診断指標および95%信頼区間(CI)の標準的な計算はコンピュータ・プログラムで行った(Excel 2000(登録商標)、マイクロソフト・コーポレイション(Microsoft Corp)、およびS−PLUS(登録商標)、インサイトフル・コーポレイション(Insightful Corp))。OHHA分析および白血球数結果は、独立性のカイ2乗検定を用いて比較した。有用な2値変数に関連したOHHA分析のいかなる他の値も同定するために、ロジスティック回帰を用いた。統計的な有意性は0.05の信頼度に定めた。
【0198】
B.結果
適格であって、かつ7カ月の研究中に参加に同意した300人の患者のうち、36人の患者が以下の理由で分析から除外された。すなわち、18人はOHHA分析の結果が決定的でなく、8人の患者は初期臨床評価中に白血球数が取得されず、そして、10人の患者は他の欠損データがあった。さらに、外科的介入が尿OHHA分析後12時間以上後まで遅延した55人の患者が分析から除外され、この結果209人の患者が研究グループに残った。研究グループの209人の患者のうち、59人(28.2%)は救急科から直接移されて外科的介入が行われ、150人(71.8%)は帰宅が許された。帰宅を許された患者には、追跡調査の際に、急性虫垂炎と一致する症候を有した患者も、最初に救急科に来院した後に外科的診査を受けた患者もいなかった。人口統計的データ、および診断データを表6に示す。OHHA分析結果が決定的でなかったために研究から除外された18人の患者のうち、3人(16.7%)が虫垂炎にかかっていた。外科的介入が遅延した55人の患者のうち、35人(63.6%)が虫垂炎にかかっていた。
【0199】
外科的介入が即座に行われた患者の診断結果は以下の通りであった。すなわち、44人/59人(74.6%)は組織病理学で急性虫垂炎が確認され、8人/59人(13.6%)は正常な虫垂を有し、そして7人/59人(11.9%)は、亜急性虫垂周囲炎、炎症性リンパ様過形成、虫垂の癒着、臍ヘルニア、卵巣癌、メッケル憩室炎、および卵巣上体嚢胞を含めた他の外科的診断を有していた。急性虫垂炎であった44人の患者のうち、7人(15.9%)は、穿孔性虫垂炎を有することが組織病理学で確認された(表6)。
【0200】
急性虫垂炎であった44人の患者の平均年齢は28.3歳(7歳から65歳まで)であり、33人/44人(75.0%)が男性で、11人/44人(25.0%)が女性であった(表6)。虫垂炎罹患率は、男性で33人/82人(40.2%)、女性で11人/127人(8.7%)、>15歳の成人で31人/158人(19.6%)、そして≦15歳の子供で13人/51人(25.5%)であった。医師の記録によると、急性虫垂炎患者のうち、39人/44人(88.6%)に腹壁防御があり、27人/44人(61.4%)に反跳腹部圧痛があり、そして、41人/44人(93.2%)には、右下腹部にのみ局在した腹痛があった。
【0201】
【表6】

組織病理学による診断
全体的に見て、OHHA分析は、53人/209人(25.4%)の患者で陽性であり、156人/209人(74.6%)の患者で陰性であった。白血球数は、81人/209人(38.8%)の患者で高く、128人/209人(61.2%)で正常であった。OHHA分析および白血球数の診断指標を表7に示す。OHHA分析の特異性である80.6%(95%CI、73.6%〜86.2%;p<0.01)は、白血球数の特異性である67.9%(95%CI、60.1%〜74.8%)より有意に高かった。OHHAの感度である47.7%(95%CI、32.7%〜63.1%)は、白血球数の感度である63.6%(95%CI、47.7%〜77.2%)と有意に異なっていなかった。腹部外科手術によって別の外科的診断がなされて正常な虫垂の存在が明らかにされた7人の患者のうち、6人(85.7%)は陰性のOHHA分析結果を有していた。尿比重は198人の患者(94.7%)で記録された。尿比重<1.010であった26人の患者のうち、23人は急性虫垂炎に関しての真に陰性であり、2人は偽陰性であり、および1人は真に陽性であった。
【0202】
陽性OHHA分析「AND」高白血球数の両方の組合せを陽性結果とする分析は、白血球数のみによる場合の特異性である67.9%(95%CI、60.1%〜74.8%)より有意に高い92.1%(95%CI、86.6%〜95.6%;p<0.001)の特異性を有することを実証した(表7)。この同じ組合せのテスト結果は、診断精度においても、白血球数のみによる場合の67.0%(95%CI、60.1%〜73.2%)と比較して有意に高い78.9%(95%CI、72.7%〜84.1%;p=0.006)という値を示した(表7)。陽性OHHA分析「AND」高白血球数の両方の組合せによる感度は29.5%(95%CI、17.2%〜45.4%;p=0.001)であり、これは白血球数のみによる場合の感度である63.6%(95%CI、47.7%〜77.2%)より有意に低かった(表7)。OHHA分析、および陽性OHHA分析「AND」高白血球数の両方というテストの同じ組合せにおける診断指標を、以下のサブグループ、すなわち男性、女性、>15歳の患者、および≦15歳の患者に関して決定した。各サブグループにおける特異性および精度は、全体的な結果と有意に異なってはいなかった。
【0203】
2つのテストの結果の組合せは、127/209人(60.8%)の患者で、陽性または陰性で一致し、82人/209人(39.2%)の患者で一致しなかった。OHHAおよび白血球数の一致した結果は、白血球数のみの場合の特異性である67.9%(95%CI、60.1%〜74.8%)より有意に高い87.7%(95%CI、79.6%〜93.1%;p<0.001)の特異性を有することを実証した(表8)。OHHAおよび白血球数の一致した結果はまた、白血球数のみによる場合の診断精度である67.0%(95%CI、60.1%〜73.2%)と比較して有意に高い83.5%(95%CI、75.6%〜89.2%;p<0.001)の診断精度を有することを実証した(表8)。陰性で一致した結果、すなわち陰性OHHA分析および正常白血球数の組合せは、92.1%(95%CI、84.5%〜96.3%)の陰性予測的価値をもたらし、感度および予測的価値は白血球数のみによる場合と有意に異なってはいなかった。
【0204】
96人の患者からなるサブセットの分析では、OHHAの増大と、未成熟「バンド」好中性白血球が>10%であることの組合せによっても、虫垂炎の診断精度が改善されるであろうことが予備的に示された。
【0205】
目的は、各患者から請求された重要な変数を回帰方程式に含むこと、および虫垂炎との相関関係に効果がないか、あってもほとんどない変数を排除することであった。急性虫垂炎の変数と他の2値変数との間での独立性のカイ二乗検定は、有意である場合には、急性虫垂炎治療成績とは独立でない変数を示し得る。逆に、急性虫垂炎の変数と他の2値変数との間での独立性のカイ二乗検定は、有意でない場合には、OHHA治療成績から独立している変数を示唆し得るものであり、それによって、OHHAが予測に寄与する確立をさらに高める。2つの変数が相互に密接な関連を示す場合(例えば、食欲低下および吐き気、または吐き気および嘔吐)、モデルには1つのみが含まれた。この研究では、食欲低下、熱、吐き気、および嘔吐の変数は急性虫垂炎を予測する際にいかなる価値も持っていなかった。以前の報告と同様に、この研究も、白血球数、性別、不壁防御、反跳痛、および腹痛位置を、正しい診断の予測に最も有用な変数として同定した(アンダーソン(Andersson)ら、World J.Surg.、第23巻、133〜140頁(1999年))。この研究では、これらの有用な変数にOHHA分析結果を加えることで、残差対数尤度(逸脱)スコアが有意に低下した(114.51対120.75、p=0.013)。これは有用な変数の全てが考慮された場合、OHHA結果が正しい診断に寄与したことを示す。
【0206】
【表7】

白血球数と比較した場合
【0207】
【表8】

白血球数と比較した場合
C.考察
救急医および初期診療医は多数の腹痛患者の検査を行うが、それらの患者のうち、実際に虫垂炎にかかっている患者はごくわずかである。グラフ(Graff)ら、Acad.Emerg.Med.、第7巻、1244〜1255頁(2000年)。虫垂炎の疑いがある患者の初期評価における精度は、臨床医の技術、慎重な観測、および個人的な経験に依存している。スターンバック(Sternback)ら、J.Emerg.Med.、第13巻、95〜96頁(1995年);アンダーソン(Andersson)ら、World J.Surg.、第23巻、133〜140頁(1999年);ボルトン(Bolton)ら、Br.J.Surg.、第62巻、906〜908頁(1975年);フェルミューレン(Vermeulen)ら、Eur J.Surg.、第161巻、483〜486頁(1995年)。現在、急性虫垂炎の診断を確認するために利用可能な特異的な生化学マーカは存在しない。初期の臨床評価は、疼痛の病歴、腹部圧痛の発見、および炎症の非特異的なマーカの結果を統合したものに依存している。アンダーソン(Andersson)ら、Eur.J.Surg.、第166巻、798〜802頁(2000年)。虫垂炎の診断が遅れれば、罹患率および死亡率の増大となり得る。その結果、初期検査法を行った臨床医が、高価な放射線画像診断試験を指示したり、救急の外科診断を要請したり、または院内観測の延長の用意をしたりすることも多い。ストローマン(Stroman)ら、Am.J.Surg.、第178巻、485〜489頁(1999年);バクー(Bachoo)ら、Pediatr.Surg.Mt.、第17巻、125〜128頁(2001年)。ヘリカルCTおよびコントラストCT、ならびにおそらく超音波検査は、外科的介入の前に虫垂炎の診断を確認するのを補助するのに十分高い特異性と感度とを有するかもしれない。ストローマン(Stroman)ら、Am.J.Surg.、第178巻、485〜489頁(1999年);ピクース(Pickuth)ら、Eur.J.Surg.、第166巻、315〜319頁(2000年);フランキ(Franke)ら、World J.Surg.、第23巻、141〜146頁(1999年)。しかし、放射線学画像診断試験は、高価で、資源集約的で、かつ多くの臨床状況では容易に利用し得ないものであることから、腹痛の患者の日常的検査には推奨されない。ジャーン(Jahn)ら、Eur.J.Surg.、第163巻、433〜443頁(1997年);フランキ(Franke)ら、World J.Surg.、第23巻、141〜146頁(1999年);サルファチ(Sarfati)ら、Am.J.Surg.、第166巻、660〜664頁(1993年)。
【0208】
知る限りにおいては、この研究は、尿中OHHAレベルの上昇と、臨床における急性虫垂炎の疑いを評価する際の特異性および診断精度とを関連づけた初めての研究である。この研究の結果は、急性虫垂炎の疑いがある際に、尿中OHHAの閾値濃度を測定する単純かつ迅速な分析が、初期白血球数より有意に高い診断特異性を有することを示す。OHHA分析の特異性がより高いものであることは、単独においても、または初期白血球数と併用した場合でも実証された。
【0209】
実に多くの調査が、急性虫垂炎の疑いがある患者の初期臨床評価での診断補助として、総白血球を用いることを推奨している。アンダーソン(Andersson)ら、Eur.J.Surg.、第166巻、798〜802頁(2000年);アンダーソン(Andersson)ら、World J.Surg.、第23巻、133〜140頁(1999年);ドゥーホルム(Dueholm)ら、Dis.Colon Rectum、第32巻、855〜859頁(1989年);ハーラン(Hallan)ら、Eur.J.Surg.、第163巻、533〜538頁(1997年);グロンロース(Gronroos)ら、Clin.Chem.、第40巻、1757〜1760頁(1994年)。ある報告は、白血球数などの炎症変数には、臨床所見と同等に重要な診断情報が含まれるということさえ示唆している。アンダーソン(Andersson)ら、World J.Surg.、第23巻、133〜140頁(1999)。しかし、広く受け入れられているにもかかわらず、白血球数の擬陽性および偽陰性の両方による虫垂炎の誤診が広く報告されている。ボルトン(Bolton)ら、Br.J.Surg.、第62巻、906〜908頁(1975年);イングリッシュ(English)ら、Am.Surg.、第43巻、399〜402頁(1977年);コールマン(Coleman)ら、Am.Surg.、第64巻、983〜985頁(1998年)。虫垂炎に適合的な病歴、マックバーネー圧痛点における疼痛、および高白血球数からなる古典的な3主徴による診断の精度は、80%に満たないことが報告されている。グロンロース(Gronroos)ら、Clin.Chem、40巻、1757〜1760頁(1994年)。精度を向上させるために診断試験を併用することは、徴候および症候があいまいな疾患に対する有用なアプローチである。リン(Lin)、J.Biopharm.Stat.、第9(1)巻、81〜88頁(1999年);クライン(Kline)ら、JAMA、285巻、761〜768頁(2001年)。しかし、総白血球数を、C反応性タンパク質、ホスホリパーゼA2、好中球数、およびバンド好中球数などの他の実験室パラメータと併用した以前の調査では、急性虫垂炎に対する特異性の増大は報告されていない。グッドマン(Goodman)ら、Am.Surg.、第61巻、257〜259頁(1995年);ボルトン(Bolton)ら、Br.J.Surg.、第62巻、906〜908頁(1975年);ドゥーホルム(Dueholm)ら、Dis.Colon Rectum、第32巻、855〜859頁(1989年);ハーラン(Hallan)ら、Eur.J.Surg.、第163巻、533〜538頁(1997年);グロンロース(Gronroos)ら、Clin.Chem、第40巻、1757〜1760頁(1994年);オーステルハイス(Oosterhuis)ら、Eur.J.Surg.、第159巻、115〜119頁(1993年)。
【0210】
この研究結果は、(有意に高い特異性を有する)OHHA分析結果と、(より高い感度を有する)総白血球数と併用することで、急性虫垂炎の疑いに対する初期臨床評価の診断精度が改善されることを示す。陽性の尿中OHHA結果と高い初期白血球数との組合せは、白血球数のみの場合より有意に高い特異性と診断精度とをもたらした。陰性のOHHA分析結果と、陰性の白血球数との組合せには、92%という陰性の予測的価値があることを実証した。臨床上の見地から言って、臨床における虫垂炎の疑いを評価する補助に最も有用なテストの組合せは、一致した検査結果であることが判明した。この研究では、患者の大部分(60.8%)で一致した検査結果が得られた。OHHA分析の結果と白血球数の結果とが一致していないことは、虫垂炎の有無を判定するには診断テストをさらに行う必要があることを示す。
【0211】
この研究における性別サブグループおよび年齢別サブグループの全体的な有病率は、急性虫垂炎に関する最近の他の調査と同様であった。ヘール(Hale)ら、Ann.Surg.、第225巻、252〜261頁(1997年);アンダーソン(Andersson)ら、Eur.J.Surg.、第166巻、796〜802頁(2000年);グス(Guss)ら、Am.J.Emerg.Med.、第18巻、372〜375頁(2000年)。虫垂炎の疑いがある女性患者および小児科患者は、臨床的な評価がより困難であることを、いくつかの報告が示している。ロスロック(Rothrock)ら、J.Emerg.Med.、第13巻、1〜8頁(1995年);ロスロック(Rothrock)ら、Ann.Emerg.Med.、第36巻、39〜51頁(2000年);ボルグスタイン(Borgstein)ら、Surg.Enclosc、11巻、923〜927頁(1997年)。婦人科疾患を模擬する臨床症状のため、妊娠可能年齢の女性における虫垂炎の誤診率は、男性と比べて顕著に高いものとなっている。アンダーソン(Andersson)ら、Eur.J.Surg.、第166巻、796〜802頁(2000年);ロスロック(Rothrock)ら、J.Emerg.Med.、第13巻、1〜8頁(1995年);グス(Guss)ら、Am.J.Emerg.Med.、第18巻、372〜375頁(2000年);ボルグスタイン(Borgstein)ら、Surg.Endosc、11巻、923〜927頁(1997年)。さらに、女性では、手術による介入の遅れが、特に穿孔性虫垂の場合により長時間になっていることが示されている。ロスロック(Rothrock)ら、J.Emerg.Med.、第13巻、1〜8頁(1995年);グス(Guss)ら、Am.J.Emerg.Med.、第18巻、372〜375頁(2000年)。小児科患者も急性虫垂炎の誤診率が高く、診断の遅れがより長時間であり、さらに罹患率および死亡率も増大している。ロスロック(Rothrock)ら、Ann.Emerg.Surg.、第36巻、39〜51頁(2000年);バクー(Bachoo)ら、Pediatr.Surg.Int、17巻、125〜128頁(2001年)。この研究では、各性別サブグループおよび年齢別サブグループで、陽性OHHA結果および高白血球数の両方の組合せによって、全体の結果と統計的に匹敵する診断特異性および精度の増大が得られることが実証された。これらのテストの併用による特異性および精度の向上は、臨床上虫垂炎の疑いがある女性患者および小児科患者の初期評価に特に有用であると判明され得る。
【0212】
この研究の結果は、OHHA分析が単独で急性虫垂炎の確認試験となることを示唆するものではないが、初期白血球数と併用した際、OHHA分析によって有意に増大した診断価値を付加することが可能である。貢献的な診断試験は、臨床評価と統合される必要のある診断情報を提供する。アンダーソン(Andersson)ら、World J.Surg.、第23巻、133〜140頁(1999年)。OHHA分析および初期白血球数などの有意に診断精度を改善する貢献的試験を併用することによって、虫垂炎の疑いを臨床評価する際の擬陰性および擬陽性を減少させる補助とすることが可能である。虫垂炎の初期診断精度を改善する迅速で比較的安価なテストを用いることによって、放射線画像診断試験、外科診断、院内観測の延長、身体検査の反復、および連続的臨床試験などの他の診断介入の使用を費用対効果において最適化することが可能である。OHHA分析は、便利で非侵襲的な尿試料採取と、迅速な分析方法とを組み合わせたものであることから、高レベルの臨床妥当性が予期される。さらに、単純なOHHA分析法は、どんな病院でも、通院患者実験室でも、またはベッドサイドでも容易に行われ得る。
【0213】
この研究にはいくつかの制限がある。尿試料は、限られた人数の検査技師による標準化された分析を容易にするために、OHHA分析を行う前にバッチにまとめられた。収集後1時間以内に分析を完了させたならば、より忠実な結果が臨床利用に反映されたであろう。過度に薄い尿試料も、OHHA分析結果に影響を与えたかもしれないが、この研究は、そのようなサブセットの結果に対処するように設計されてはいなかった。データの示す傾向は、尿比重が≧1.010であれば、さらに信頼性の高い結果が得られると期待されるであろうことを示唆する。この研究では、OHHA分析および白血球数の結果と、同時になされた急性虫垂炎の外科診断、および外科的介入の遅延とによって除外したが、その多くが後で虫垂炎と診断された患者とを比較した。将来、連続的なOHHA結果と白血球数結果とを用いた研究を行えば、観測の延長が必要な患者にもこのテストが有用であるかどうかを判定するのに有用かもしれない。手術を受けなかった患者の急性虫垂炎が自発的に解消された事例が以前に記載されており(ボルトン(Bolton)ら、Br.J.Surg.、第62巻、906〜908頁(1975年))、結果には、そのような自発的解消も影響を与えているかもしれない。この研究は、初期臨床評価と共に用いた際にOHHA分析を評価するように設計されており、コントラストTCTおよびヘリカルCTなどの確認的放射線操作との比較を含んでいなかった。この研究における多くの患者は総白血球のみが計数され、識別的な白血球計数が指示されていなかったため、好中球数またはバンド好中球数とのいかなる比較も非実用的であった。炎症の他のマーカと併用した際に、OHHA分析によって急性虫垂炎の診断価値が改善されるかどうかを判定するには、さらなる研究を行う必要がある。
【0214】
この研究の結果は、尿中OHHAに増大があるかどうかの分析が、臨床上、急性虫垂炎の疑いがある患者に対して、血中総白血球より有意に高い特異性を有することを示す。高白血球数と陽性尿中OHHA分析との組合せは、白血球数のみの場合より有意に高い特異性および診断精度をもたらした。陰性のOHHA結果と正常な白血球数との併用によって、虫垂炎にかかっている確率が低い患者におけるヘルスケア資源の効率的かつ費用対効果に優れた使用が補助されるかもしれない。OHHA分析は、白血球数または他の炎症マーカと併用して初期診断精度を増強し、急性虫垂炎の疑いに対する初期臨床評価を補助することが可能な単純かつ非侵襲的なテストである。
【0215】
D.結論
急性虫垂炎の疑いがある患者の初期評価は、いまだに診断上の難問であり、総白血球数は、特異性が低いにもかかわらず臨床方針の決定を補助するのに頻繁に用いられている。急性虫垂炎の疑いがある209人の連続的な救急科患者において、尿中o−ヒドロキシ馬尿酸(OHHA)の新規な分析を、それ単独の場合と、白血球数と組み合わせた場合との診断特異性が、先を見越して調査された。即座に外科を受けた59人の患者のうち、44人に急性虫垂炎があることが組織病理学的に確認された。OHHA分析の特異性は、白血球数の特異性より有意に高いものであった(80.6%対67.9%、p<0.01)。陽性OHHA「および」高白血球数の組合せは、白血球数のみの場合より有意に高い特異性を示した(92.1%対67.9%、p<0.0001)。一致したテスト結果、すなわち陽性OHHAおよび高白血球数の組合せ、または陰性OHHAおよび正常白血球数の組合せは、白血球数のみの場合より有意に高い特異性および診断精度を有した(それぞれ87.7%対67.9%、および83.5%対67.0%、p<0.001)。陰性で一致したテスト結果は、92.1%の陰性の予測的価値を有した。単純かつ非侵襲的なOHHA分析は、急性虫垂炎に対する特異性が白血球数より有意に高く、OHHAおよび白血球数の一致した結果は、白血球数のみの場合より有意に高い特異性および診断精度を提供する。
【0216】
実施例10:システイン化アルブミンに対する抗体の調製
A.抗原としてのシステイン化HSA
システイン化ヒト血清アルブミン(HSA)は、1.5mmのHSA(シグマ・ケミカル・コーポレイション(Sigma Chemical Co.))を5mmのシスチン(シグマ・ケミカル・コーポレイション(Sigma Chemical Co.))と40℃で2時間インキュベートすることによって調製した。この結果得られた産物を一夜加水分解し、Centriconフィルターを通した(30,000kDaでカットオフ)後、質量分析(MS法)で分析した。MS分析法によって、少なくとも3分子種、すなわちシステイン化HSA、システイン化され、かつ糖化されたHSA、およびシステイン化され、かつ2重糖化されたHSAが形成されたことが示された。この溶液を凍結乾燥し、約700mgのシステイン化HSAを得た。システイン化HSAは、システイン化HSAに特異的な抗体を調製するための抗原として用いられ得る。
【0217】
B.抗原としてのシステイン化HSAペプチド
Cys34のどちらの側のHSA配列のアミノ酸も含むシステイン化ペプチドを調製した。上記実施例8の記載のように、Cys34は、HSA上でジスルフィド結合していない唯一のシステインである(すなわち、Cys34は遊離チオールを有してシステイン化され得る)。このシステイン化ペプチドの配列は、Ala Gln Tyr Leu Gln Gln Cys(Cys)Pro Phe Glu Asp His Val Lys[配列番号1]であった。この配列は、システイン化部位に架橋するエピトープに対して抗体が産生されるように、隣接残基数が制限されるように設計した。
【0218】
システイン化ペプチドをKLHに結合させ、この結果得られた結合体を抗システイン化HSA抗体の調製用抗原として用いた。抗体を調製するために、2頭のウサギに1、28、56、および70日目に100μgのシステイン化ペプチド−KLH結合体を注入した。各免疫処置の前にウサギから採血した。粗製抗血清をテストし、システイン化ペプチドに特異性を示すことが判明した。
【0219】
抗血清は、システイン化ペプチドを用いて、アフィニティ・クロマトグラフィで精製される。このカラムから溶出された抗体は、非システイン化ペプチドを用いてアフィニティ精製される。これら2回のアフィニティ・クロマトグラフィ精製によって、システイン化HSPと特異的に反応する抗体が濃縮され、無修飾のペプチドと反応する抗体は枯渇される。抗体集団が精製されていることを確認するために、この結果得られる調製物は、システイン化ペプチドおよび非システイン化ペプチドに対するELISAでテストされる。
【0220】
実施例を含む本発明の上記記述は、本発明の例示のみを目的とするものであり、本発明を限定するものではない。当業者ならば、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、上記記述に照らして多数の変形、修正、および改変を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0221】
【図1】正常なヒトのアルブミン・プロフィールを示す質量分析計のプリントアウト。
【図2A】正常妊娠におけるアルブミン・プロフィールを示す質量分析計のプリントアウト。
【図2B】胎盤虚血を起こした妊娠におけるアルブミン・プロフィールを示す質量分析計のプリントアウト。
【図3A】正常妊娠(1)および胎盤虚血を起こした妊娠(2)における、天然アルブミンの統計的分析比較を示すボックス・プロット。
【図3B】正常妊娠(1)および胎盤虚血を起こした妊娠(2)における、システイン化アルブミンの統計的分析比較を示すボックス・プロット。
【図3C】正常妊娠(1)および胎盤虚血を起こした妊娠(2)における、糖化アルブミンの統計的分析比較を示すボックス・プロット。
【図3D】正常妊娠(1)および胎盤虚血を起こした妊娠(2)における、システイン化され、かつ糖化されたアルブミンの統計的分析比較を示すボックス・プロット。
【図4A】正常妊娠(1)および胎盤虚血を起こした妊娠(2)におけるC末端ロイシンを欠失したアルブミンに関して、天然アルブミン、糖化アルブミン、システイン化アルブミン、およびシステイン化され、かつ糖化されたアルブミンを排除した後で、最正規化されたデータの統計的分析を示すボックス・プロット。
【図4B】正常妊娠(1)および胎盤虚血を起こした妊娠(2)におけるN末端2アミノ酸(アスパラギン酸およびアラニン)を欠失したアルブミンに関して、天然アルブミン、糖化アルブミン、システイン化アルブミン、およびシステイン化され、かつ糖化されたアルブミンを排除した後で、最正規化されたデータの統計的分析を示すボックス・プロット。
【図4C】正常妊娠(1)および胎盤虚血を起こした妊娠(2)におけるC末端ロイシンを欠失しているがホモシステインが付加されたアルブミンに関して、天然アルブミン、糖化アルブミン、システイン化アルブミン、およびシステイン化され、かつ糖化されたアルブミンを排除した後で、最正規化されたデータの統計的分析を示すボックス・プロット。
【図5】硫黄転移経路を示す図。
【図6】リン酸化された心臓トロポニンIの免疫学的検定を示す図。
【図7A】急性冠状動脈症候群を診断および/または除外するための、トロポニンIの分析、リン酸化されたトロポニンIの分析、心電図(ECG)、およびこれらの様々な組合せにおける感度および特異性を比較した棒グラフ。
【図7B】急性冠状動脈症候群を診断および/または除外するための、トロポニンIの分析、リン酸化されたトロポニンIの分析、心電図(ECG)、およびこれらの様々な組合せにおける感度および特異性を比較した棒グラフ。
【図7C】急性冠状動脈症候群を診断および/または除外するための、トロポニンIの分析、リン酸化されたトロポニンIの分析、心電図(ECG)、およびこれらの様々な組合せにおける感度および特異性を比較した棒グラフ。
【図7D】急性冠状動脈症候群を診断および/または除外するための、トロポニンIの分析、リン酸化されたトロポニンIの分析、心電図(ECG)、およびこれらの様々な組合せにおける感度および特異性を比較した棒グラフ。
【図7E】急性冠状動脈症候群を診断および/または除外するための、トロポニンIの分析、リン酸化されたトロポニンIの分析、心電図(ECG)、およびこれらの様々な組合せにおける感度および特異性を比較した棒グラフ。
【図7F】急性冠状動脈症候群を診断および/または除外するための、トロポニンIの分析、リン酸化されたトロポニンIの分析、心電図(ECG)、およびこれらの様々な組合せにおける感度および特異性を比較した棒グラフ。
【図7G】急性冠状動脈症候群を診断および/または除外するための、トロポニンIの分析、リン酸化されたトロポニンIの分析、心電図(ECG)、およびこれらの様々な組合せにおける感度および特異性を比較した棒グラフ。
【図7H】急性冠状動脈症候群を診断および/または除外するための、トロポニンIの分析、リン酸化されたトロポニンIの分析、心電図(ECG)、およびこれらの様々な組合せにおける感度および特異性を比較した棒グラフ。
【図7I】急性冠状動脈症候群を診断および/または除外するための、トロポニンIの分析、リン酸化されたトロポニンIの分析、心電図(ECG)、およびこれらの様々な組合せにおける感度および特異性を比較した棒グラフ。
【図7J】急性冠状動脈症候群を診断および/または除外するための、トロポニンIの分析、リン酸化されたトロポニンIの分析、心電図(ECG)、およびこれらの様々な組合せにおける感度および特異性を比較した棒グラフ。
【図7K】急性冠状動脈症候群を診断および/または除外するための、トロポニンIの分析、リン酸化されたトロポニンIの分析、心電図(ECG)、およびこれらの様々な組合せにおける感度および特異性を比較した棒グラフ。
【図7L】急性冠状動脈症候群を診断および/または除外するための、トロポニンIの分析、リン酸化されたトロポニンIの分析、心電図(ECG)、およびこれらの様々な組合せにおける感度および特異性を比較した棒グラフ。
【図7M】急性冠状動脈症候群を診断および/または除外するための、トロポニンIの分析、リン酸化されたトロポニンIの分析、心電図(ECG)、およびこれらの様々な組合せにおける感度および特異性を比較した棒グラフ。
【図7N】急性冠状動脈症候群を診断および/または除外するための、トロポニンIの分析、リン酸化されたトロポニンIの分析、心電図(ECG)、およびこれらの様々な組合せにおける感度および特異性を比較した棒グラフ。
【図7O】急性冠状動脈症候群を診断および/または除外するための、トロポニンIの分析、リン酸化されたトロポニンIの分析、心電図(ECG)、およびこれらの様々な組合せにおける感度および特異性を比較した棒グラフ。
【図7P】急性冠状動脈症候群を診断および/または除外するための、トロポニンIの分析、リン酸化されたトロポニンIの分析、心電図(ECG)、およびこれらの様々な組合せにおける感度および特異性を比較した棒グラフ。
【図7Q】急性冠状動脈症候群を診断および/または除外するための、トロポニンIの分析、リン酸化されたトロポニンIの分析、心電図(ECG)、およびこれらの様々な組合せにおける感度および特異性を比較した棒グラフ。
【図7R】急性冠状動脈症候群を診断および/または除外するための、トロポニンIの分析、リン酸化されたトロポニンIの分析、心電図(ECG)、およびこれらの様々な組合せにおける感度および特異性を比較した棒グラフ。
【図7S】急性冠状動脈症候群を診断および/または除外するための、トロポニンIの分析、リン酸化されたトロポニンIの分析、心電図(ECG)、およびこれらの様々な組合せにおける感度および特異性を比較した棒グラフ。
【図8】虚血を診断および/または除外するACB(商標)テストによるリン酸化されたトロポニンIの分析における感度および特異性を比較する棒グラフ。
【図9A】腸虚血後のラットにおけるアルブミン・プロフィールを示す質量分析計のプリントアウト。
【図9B】対照ラットにおけるアルブミン・プロフィールを示す質量分析計のプリントアウト。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)動物の体液中に存在し、かつリン酸化タウ以外の翻訳後修飾タンパク質の量を測定する工程、および
(b)炎症が存在するかどうかを判定するために、該翻訳後修飾タンパク質の量が正常動物からの同一体液中でのレベルと比較して有意に変化しているかどうかを判定する工程を含む動物における炎症を診断またはモニタする方法。
【請求項2】
前記体液が血清または血漿である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記タンパク質がリン酸化されている請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記タンパク質がシステイン化されている請求項1に記載の方法。
【請求項6】
1つまたは複数の体液における2つ以上の翻訳後修飾タンパク質の量が測定される請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記方法が敗血症に関連した炎症の診断またはモニタに用いられる請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記方法が呼吸器疾患に関連した炎症の診断またはモニタに用いられる請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記方法が、成人呼吸窮迫症候群または慢性閉塞性肺疾患に関連した炎症の診断またはモニタに用いられる請求項8に記載の方法。
【請求項10】
(a)動物の体液中に存在し、かつリン酸化タウ以外の一般的炎症のタンパク質マーカである翻訳後修飾タンパク質の量を測定する工程、および
(b)炎症が存在するかどうかを判定するために、該翻訳後修飾タンパク質の量が正常動物からの同一体液中におけるレベルと比較して有意に変化しているかどうかを判定する工程を含む動物における一般的炎症を診断またはモニタする方法。
【請求項11】
1つまたは複数の体液における2つ以上の翻訳後修飾タンパク質の量が測定される請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記体液が血清または血漿である請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記タンパク質がリン酸化されている請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記タンパク質がシステイン化されている請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記タンパク質がアルブミンである請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記アルブミンがリン酸化されている請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記アルブミンがシステイン化されている請求項15に記載の方法。
【請求項18】
(c)前記動物の体液中に存在し、かつリン酸化タウ以外の翻訳後修飾された指標タンパク質の量を測定する工程、および
(d)前記動物の器官もしくは組織に炎症が存在するかどうか、または炎症が疾患に関連するかどうかを判定するために、該翻訳後修飾された指標タンパク質の量が正常動物からの同一体液中におけるレベルと比較して有意に変化しているかどうかを判定する工程をさらに含む請求項10に記載の方法。
【請求項19】
前記体液が血清または血漿である請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記指標タンパク質がリン酸化されている請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記指標タンパク質がシステイン化されている請求項18に記載の方法。
【請求項22】
1つまたは複数の体液における2つ以上の翻訳後修飾された指標タンパク質の量が測定される請求項18に記載の方法。
【請求項23】
(a)動物の体液中に存在し、かつリン酸化タウ以外の翻訳後修飾された指標タンパク質の量を測定する工程、および
(b)炎症が存在するかどうかを判定するために、該翻訳後修飾された指標タンパク質の量が正常動物からの同一体液中におけるレベルと比較して有意に変化しているかどうかを判定する工程を含む動物における炎症を診断またはモニタする方法。
【請求項24】
前記体液が血清または血漿である請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記指標タンパク質がリン酸化されている請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記指標タンパク質がシステイン化されている請求項23に記載の方法。
【請求項27】
1つまたは複数の体液における2つ以上の翻訳後修飾された指標タンパク質の量が測定される請求項23に記載の方法。
【請求項28】
(a)動物の体液中に存在し、かつリン酸化タウ以外の翻訳後修飾された器官特異的または組織特異的タンパク質の量を測定する工程、および
(b)器官または組織に炎症が存在するかどうかを判定するために、該翻訳後修飾された器官特異的または組織特異的タンパク質の量が正常動物からの同一体液中におけるレベルと比較して有意に変化しているかどうかを判定する工程を含む動物における炎症を診断またはモニタする方法。
【請求項29】
前記体液が血清または血漿である請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記タンパク質がリン酸化されている請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記タンパク質がシステイン化されている請求項28に記載の方法。
【請求項32】
1つまたは複数の体液における2つ以上の翻訳後修飾された器官特異的または組織特異的タンパク質の量が測定される請求項28に記載の方法。
【請求項33】
(a)動物の体液中に存在し、かつリン酸化タウ以外の翻訳後修飾された疾患特異的タンパク質の量を測定する工程、および
(b)疾患に関連した炎症が存在するかどうかを判定するために、該翻訳後修飾タンパク質の量が正常動物からの同一体液中におけるレベルと比較して有意に変化しているかどうかを判定する工程を含む動物における炎症を診断またはモニタする方法。
【請求項34】
前記体液が血清または血漿である請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記タンパク質がリン酸化されている請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記タンパク質がシステイン化されている請求項33に記載の方法。
【請求項37】
1つまたは複数の体液における2つ以上の翻訳後修飾された疾患特異的タンパク質の量が測定される請求項33に記載の方法。
【請求項38】
前記翻訳後修飾タンパク質の量が結合パートナー分析で測定される請求項1から37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記結合パートナー分析が免疫学的検定である請求項38に記載の方法。
【請求項40】
請求項1から37のいずれか一項に記載の方法で、1つまたは複数の翻訳後修飾タンパク質の量を測定する工程、
1つまたは複数の追加診断パラメータを取得する工程、および
該1つまたは複数の翻訳後修飾タンパク質の量と、該追加診断パラメータとを用いて疾患を診断またはモニタする工程を含む疾患を診断またはモニタする方法。
【請求項41】
前記翻訳後修飾タンパク質の量が結合パートナー分析で測定される請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記結合パートナー分析が免疫学的検定である請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記結合パートナーが抗体またはアプタマーである請求項41に記載の方法。
【請求項44】
(a)動物の体液中に存在し、かつリン酸化タウ以外の翻訳後修飾された器官特異的または組織特異的タンパク質の量を、測定を行う前に該タンパク質を変性させずに測定する工程、および
(b)器官または組織に虚血が存在するかどうかを判定するために、該翻訳後修飾タンパク質の量が正常動物からの同一体液中におけるレベルと比較して有意に変化しているかどうかを判定する工程を含む動物の器官または組織における虚血を診断またはモニタする方法。
【請求項45】
前記体液が血清または血漿である請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記タンパク質がリン酸化されている請求項44に記載の方法。
【請求項47】
前記タンパク質がシステイン化されている請求項44に記載の方法。
【請求項48】
1つまたは複数の体液における2つ以上の翻訳後修飾された器官特異的または組織特異的タンパク質の量が測定される請求項44に記載の方法。
【請求項49】
前記動物からの体液中に存在する虚血の一般的なマーカである翻訳後修飾タンパク質の量を測定する工程をさらに含む請求項44に記載の方法。
【請求項50】
前記体液が血清または血漿である請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記タンパク質がリン酸化されている請求項49に記載の方法。
【請求項52】
前記タンパク質がシステイン化されている請求項49に記載の方法。
【請求項53】
前記タンパク質がアルブミンである請求項49に記載の方法。
【請求項54】
前記アルブミンがリン酸化されている請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記アルブミンがシステイン化されている請求項53に記載の方法。
【請求項56】
虚血が存在するかどうかを判定するために、虚血の一般的なマーカである2つ以上の翻訳後修飾タンパク質の量が測定される請求項49に記載の方法。
【請求項57】
前記翻訳後修飾タンパク質の量が結合パートナー分析で測定される請求項44から56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記結合パートナー分析が免疫学的検定である請求項57に記載の方法。
【請求項59】
虚血の1つまたは複数の追加診断パラメータを取得する工程、および
1つまたは複数の前記翻訳後修飾タンパク質の量と、該追加診断パラメータとを用いて虚血を診断またはモニタする工程をさらに含む請求項44から56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
前記翻訳後修飾タンパク質の量が結合パートナー分析で測定される請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記結合パートナー分析が免疫学的検定である請求項60に記載の方法。
【請求項62】
(a)動物の体液中に存在する翻訳後修飾された心臓特異的タンパク質の量を、測定を行う前に該タンパク質を変性させずに測定する工程、および
(b)虚血が存在するかどうかを判定するために、該翻訳後修飾された心臓特異的タンパク質の量が正常動物からの同一体液中におけるレベルと比較して有意に変化しているかどうかを判定する工程を含む動物における心虚血を診断またはモニタする方法。
【請求項63】
前記体液が血清または血漿である請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記タンパク質がリン酸化されている請求項62に記載の方法。
【請求項65】
前記タンパク質がシステイン化されている請求項62に記載の方法。
【請求項66】
前記タンパク質が翻訳後修飾された心臓トロポニンIである請求項62に記載の方法。
【請求項67】
前記タンパク質がリン酸化された心臓トロポニンIである請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記タンパク質がシステイン化された心臓トロポニンIである請求項66に記載の方法。
【請求項69】
前記タンパク質が翻訳後修飾された心臓トロポニンTである請求項62に記載の方法。
【請求項70】
前記タンパク質がリン酸化されたトロポニンTである請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記タンパク質がシステイン化された心臓トロポニンTである請求項69に記載の方法。
【請求項72】
1つまたは複数の体液における2つ以上の翻訳後修飾された心臓特異的タンパク質の量が測定される請求項62に記載の方法。
【請求項73】
体液中に存在する虚血の一般的なマーカである翻訳後修飾タンパク質の量も測定される請求項62に記載の方法。
【請求項74】
前記体液が血清または血漿である請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記タンパク質がリン酸化されている請求項73に記載の方法。
【請求項76】
前記タンパク質がシステイン化されている請求項73に記載の方法。
【請求項77】
前記タンパク質がアルブミンである請求項73に記載の方法。
【請求項78】
前記アルブミンがリン酸化されている請求項75に記載の方法。
【請求項79】
前記アルブミンがシステイン化されている請求項75に記載の方法。
【請求項80】
虚血の一般的なマーカである2つ以上の翻訳後修飾タンパク質の量が測定される請求項73に記載の方法。
【請求項81】
前記翻訳後修飾タンパク質の量が結合パートナー分析で測定される請求項62から80のいずれか一項に記載の方法。
【請求項82】
前記結合パートナー分析が免疫学的検定である請求項81に記載の方法。
【請求項83】
心虚血の1つまたは複数の追加診断パラメータを取得する工程、および
1つまたは複数の前記翻訳後修飾タンパク質の量と、該追加診断パラメータとを用いて虚血を診断またはモニタする工程をさらに含む請求項62から80のいずれか一項に記載の方法。
【請求項84】
前記追加診断パラメータが、心電図、心臓トロポニンIレベル、心臓トロポニンTレベル、またはこれらの組合せである請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記翻訳後修飾タンパク質の量が結合パートナー分析で測定される請求項83に記載の方法。
【請求項86】
前記結合パートナー分析が免疫学的検定である請求項85に記載の方法。
【請求項87】
心虚血を示す症状の発現後における最初の24時間以内に請求項62から80のいずれか一項に記載の方法の工程を実施する工程を含む動物における心虚血を早期診断する方法。
【請求項88】
請求項62から80のいずれか一項の方法の工程が、心虚血を示す症状の発現後における最初の12時間以内に実施される請求項87に記載の方法。
【請求項89】
前記翻訳後修飾タンパク質の量が結合パートナー分析で測定される請求項87に記載の方法。
【請求項90】
前記結合パートナー分析が免疫学的検定である請求項89に記載の方法。
【請求項91】
心虚血の1つまたは複数の追加診断パラメータを取得する工程、および
1つまたは複数の前記翻訳後修飾タンパク質の量と、該追加診断パラメータとを用いて虚血を診断またはモニタする工程をさらに含む請求項87に記載の方法。
【請求項92】
前記追加診断パラメータが、心電図、心臓トロポニンIレベル、心臓トロポニンTレベル、またはこれらの組合せである請求項91に記載の方法。
【請求項93】
前記翻訳後修飾タンパク質の量が結合パートナー分析で測定される請求項88に記載の方法。
【請求項94】
前記結合パートナー分析が免疫学的検定である請求項93に記載の方法。
【請求項95】
心虚血の1つまたは複数の追加診断パラメータを取得する工程、および
1つまたは複数の前記翻訳後修飾タンパク質の量と、該追加診断パラメータとを用いて心虚血を診断またはモニタする工程をさらに含む請求項88に記載の方法。
【請求項96】
前記追加診断パラメータが、心電図、心臓トロポニンIレベル、心臓トロポニンTレベル、またはこれらの組合せである請求項95に記載の方法。
【請求項97】
(a)動物の体液中に存在する翻訳後修飾された妊娠関連タンパク質の量を測定する工程、および
(b)虚血が存在するかどうかを判定するために、該翻訳後修飾タンパク質の量が妊娠中の正常動物からの同一体液中におけるレベルと比較して有意に変化しているかどうかを判定する工程を含む妊娠中の動物における胎盤虚血を診断またはモニタする方法。
【請求項98】
前記体液が母親の血清または血漿である請求項97に記載の方法。
【請求項99】
前記タンパク質がリン酸化されている請求項97に記載の方法。
【請求項100】
前記タンパク質がシステイン化されている請求項97に記載の方法。
【請求項101】
前記タンパク質が、翻訳後修飾されたβ−ヒト絨毛性ゴナドトロピン、α−フェトプロテイン、妊娠関連タンパク質1A、エリスロポイエチン、アンギオテンシン、またはこれらの組合せである請求項97に記載の方法。
【請求項102】
1つまたは複数の体液における2つ以上の翻訳後修飾された妊娠関連タンパク質の量が測定される請求項97に記載の方法。
【請求項103】
体液中に存在する虚血の一般的なマーカである翻訳後修飾タンパク質の量を測定する工程をさらに含む請求項97に記載の方法。
【請求項104】
前記体液が母親の血清または血漿である請求項103に記載の方法。
【請求項105】
前記タンパク質がリン酸化されている請求項103に記載の方法。
【請求項106】
前記タンパク質がシステイン化されている請求項103に記載の方法。
【請求項107】
前記タンパク質がアルブミンである請求項103に記載の方法。
【請求項108】
前記タンパク質がリン酸化されている請求項107に記載の方法。
【請求項109】
前記タンパク質がシステイン化されている請求項107に記載の方法。
【請求項110】
虚血の一般的なマーカである2つ以上の翻訳後修飾タンパク質の量が測定される請求項103に記載の方法。
【請求項111】
前記翻訳後修飾タンパク質の量が結合パートナー分析で測定される請求項97から110のいずれか一項に記載の方法。
【請求項112】
前記結合パートナー分析が免疫学的検定である請求項111に記載の方法。
【請求項113】
胎盤虚血の1つまたは複数の追加診断パラメータを取得する工程、および
1つまたは複数の前記翻訳後修飾タンパク質の量と、該追加診断パラメータとを用いて胎盤虚血を診断またはモニタする工程をさらに含む請求項97から110のいずれか一項に記載の方法。
【請求項114】
前記翻訳後修飾タンパク質の量が結合パートナー分析で測定される請求項113に記載の方法。
【請求項115】
前記結合パートナー分析が免疫学的検定である請求項114に記載の方法。
【請求項116】
(a)体液のリン酸化タンパク質成分の体液中に存在する量を測定する工程、および
(b)虚血が存在するかどうかを判定するために、該リン酸化タンパク質の量が正常動物からの同一体液中におけるレベルと比較して有意に変化しているかどうかを判定する工程を含む動物における虚血を診断またはモニタする方法。
【請求項117】
前記体液が血清または血漿である請求項116に記載の方法。
【請求項118】
前記リン酸化タンパク質がリン酸化アルブミンである請求項116に記載の方法。
【請求項119】
前記虚血が心虚血である請求項116に記載の方法。
【請求項120】
前記リン酸化タンパク質の量が結合パートナー分析で測定される請求項116に記載の方法。
【請求項121】
前記結合パートナー分析が免疫学的検定である請求項120に記載の方法。
【請求項122】
虚血の1つまたは複数の追加診断パラメータを取得する工程、および
前記リン酸化タンパク質の量と、該追加診断パラメータとを用いて該虚血を診断またはモニタする工程をさらに含む請求項116から121のいずれか一項に記載の方法。
【請求項123】
前記虚血が心虚血であり、かつ前記追加診断パラメータが心電図、心臓トロポニンIレベル、心臓トロポニンTレベル、またはこれらの組合せである請求項122に記載の方法。
【請求項124】
(a)リン酸化タンパク質の体液中に存在する量を測定する工程であって、該タンパク質のリン酸化の少なくとも一部が基質リン酸化によって生じている工程、および
(b)虚血が存在するかどうかを判定するために、該リン酸化タンパク質の量が正常動物からの同一体液中におけるレベルと比較して有意に変化しているかどうかを判定する工程を含む動物における虚血を診断またはモニタする方法。
【請求項125】
前記体液が血清または血漿である請求項124に記載の方法。
【請求項126】
前記リン酸化タンパク質がリン酸化アルブミンである請求項124に記載の方法。
【請求項127】
前記虚血が心虚血である請求項124に記載の方法。
【請求項128】
前記リン酸化タンパク質がトロポニンIである請求項127に記載の方法。
【請求項129】
前記リン酸化タンパク質がトロポニンTである請求項127に記載の方法。
【請求項130】
前記リン酸化タンパク質の量が結合パートナー分析で測定される請求項124に記載の方法。
【請求項131】
前記結合パートナー分析が免疫学的検定である請求項130に記載の方法。
【請求項132】
虚血の1つまたは複数の追加診断パラメータを取得する工程、および
前記リン酸化タンパク質の量と、該追加診断パラメータとを用いて該虚血を診断またはモニタする工程をさらに含む請求項124から131のいずれか一項に記載の方法。
【請求項133】
前記虚血が心虚血であり、かつ前記追加診断パラメータが心電図、心臓トロポニンIレベル、心臓トロポニンTレベル、またはこれらの組合せである請求項132に記載の方法。
【請求項134】
(a)動物の体液中に存在するシステイン化タンパク質の量を測定する工程、および
(b)虚血が存在するかどうかを判定するために、該システイン化タンパク質の量が正常動物からの同一体液中におけるレベルと比較して有意に変化しているかどうかを判定する工程を含む動物における虚血を診断またはモニタする方法。
【請求項135】
前記体液が血清または血漿である請求項134に記載の方法。
【請求項136】
前記システイン化タンパク質がシステイン化アルブミンである請求項134に記載の方法。
【請求項137】
前記虚血が心虚血である請求項134に記載の方法。
【請求項138】
前記虚血が腸虚血である請求項134に記載の方法。
【請求項139】
前記システイン化タンパク質の量が結合パートナー分析で測定される請求項134から138のいずれか一項に記載の方法。
【請求項140】
前記結合パートナー分析が免疫学的検定である請求項139に記載の方法。
【請求項141】
虚血の1つまたは複数の追加診断パラメータを取得する工程、および
前記システイン化タンパク質の量と、該追加診断パラメータとを用いて該虚血を診断またはモニタする工程をさらに含む請求項134から138のいずれか一項に記載の方法。
【請求項142】
前記システイン化タンパク質の量が結合パートナー分析で測定される請求項141に記載の方法。
【請求項143】
前記結合パートナー分析が免疫学的検定である請求項142に記載の方法。
【請求項144】
前記虚血が心虚血であり、かつ前記追加診断パラメータが心電図、心臓トロポニンIレベル、心臓トロポニンTレベル、またはこれらの組合せである請求項143に記載の方法。
【請求項145】
(a)妊娠中の動物の体液中に存在するシステイン化タンパク質の量を測定する工程、および
(b)胎盤虚血が存在するかどうかを判定するために、該システイン化タンパク質の量が妊娠中の正常動物からの同一体液中におけるレベルと比較して有意に変化しているかどうかを判定する工程を含む妊娠中の動物における胎盤虚血を診断またはモニタする方法。
【請求項146】
前記体液が母親の血清または血漿である請求項145に記載の方法。
【請求項147】
前記システイン化タンパク質がシステイン化アルブミンである請求項145に記載の方法。
【請求項148】
前記システイン化タンパク質の量が結合パートナー分析で測定される請求項145から147のいずれか一項に記載の方法。
【請求項149】
前記結合パートナー分析が免疫学的検定である請求項148に記載の方法。
【請求項150】
胎盤虚血の1つまたは複数の追加診断パラメータを取得する工程、および
前記システイン化タンパク質の量と、該追加診断パラメータとを用いて該胎盤虚血を診断またはモニタする工程をさらに含む請求項145から147のいずれか一項に記載の方法。
【請求項151】
前記システイン化タンパク質の量が結合パートナー分析で測定される請求項150に記載の方法。
【請求項152】
前記結合パートナー分析が免疫学的検定である請求項151に記載の方法。
【請求項153】
(a)動物の体液中に存在する翻訳後修飾タンパク質の量を測定する工程、および
(b)多臓器不全が存在するかどうか、または多臓器不全が発症するかどうかを判定するために、該翻訳後修飾タンパク質の量が正常動物からの同一体液中におけるレベルと比較して有意に変化しているかどうかを判定する工程を含む動物における多臓器不全を診断、モニタ、または予測する方法。
【請求項154】
前記体液が血清または血漿である請求項153に記載の方法。
【請求項155】
前記翻訳後修飾タンパク質が翻訳後修飾アルブミンである請求項153に記載の方法。
【請求項156】
前記翻訳後修飾タンパク質がシステイン化タンパク質である請求項153に記載の方法。
【請求項157】
前記システイン化タンパク質がシステイン化アルブミンである請求項156に記載の方法。
【請求項158】
前記翻訳後修飾タンパク質の量が結合パートナー分析で測定される請求項153から157のいずれか一項に記載の方法。
【請求項159】
前記結合パートナー分析が免疫学的検定である請求項158に記載の方法。
【請求項160】
多臓器不全の1つまたは複数の追加診断パラメータを取得する工程、および
前記翻訳後修飾タンパク質の量と、該追加診断パラメータとを用いて多臓器不全を診断、モニタ、または予測する工程をさらに含む請求項153から157のいずれか一項に記載の方法。
【請求項161】
前記翻訳後修飾タンパク質の量が結合パートナー分析で測定される請求項160に記載の方法。
【請求項162】
前記結合パートナー分析が免疫学的検定である請求項161に記載の方法。
【請求項163】
リン酸化アルブミンに特異的な結合パートナー。
【請求項164】
システイン化血液タンパク質に特異的な結合パートナー。
【請求項165】
システイン化アルブミンに特異的な請求項164に記載の結合パートナー。
【請求項166】
システイン化された器官特異的または組織特異的タンパク質に特異的な結合パートナー。
【請求項167】
システイン化された心臓特異的タンパク質に特異的な請求項166に記載の結合パートナー。
【請求項168】
システイン化トロポニンIに特異的な請求項167に記載の結合パートナー。
【請求項169】
システイン化トロポニンTに特異的な請求項167に記載の結合パートナー。
【請求項170】
翻訳後修飾された妊娠関連タンパク質に特異的な結合パートナー。
【請求項171】
システイン化された妊娠関連タンパク質に特異的な請求項170に記載の結合パートナー。
【請求項172】
システイン化β−ヒト絨毛性ゴナドトロピン、システイン化α−フェトプロテイン、システイン化された妊娠関連タンパク質1A、システイン化エリスロポイエチン、またはシステイン化アンギオテンシンに特異的な請求項171に記載の結合パートナー。
【請求項173】
リン酸化された妊娠関連タンパク質に特異的な請求項170に記載の結合パートナー。
【請求項174】
リン酸化β−ヒト絨毛性ゴナドトロピン、リン酸化α−フェトプロテイン、リン酸化された妊娠関連タンパク質1A、リン酸化エリスロポイエチン、またはリン酸化アンギオテンシンに特異的な請求項173に記載の結合パートナー。
【請求項175】
抗体である請求項165から174に記載の結合パートナー。
【請求項176】
アプタマーである請求項165から174に記載の結合パートナー。
【請求項177】
リン酸化タウ以外の翻訳後修飾タンパク質に特異的な結合パートナーを保持する容器、および
炎症を診断またはモニタするために、動物の体液中に存在する該翻訳後修飾タンパク質の量を測定するべく該結合パートナーが使用されることを指示する取扱説明書を含むキット。
【請求項178】
前記タンパク質が、一般的炎症を診断またはモニタするために使用され得る翻訳後修飾タンパク質である請求項177に記載のキット。
【請求項179】
前記翻訳後修飾タンパク質が翻訳後修飾アルブミンである請求項178に記載のキット。
【請求項180】
前記翻訳後修飾アルブミンがリン酸化アルブミンである請求項179に記載のキット。
【請求項181】
前記翻訳後修飾アルブミンがシステイン化アルブミンである請求項179に記載のキット。
【請求項182】
前記翻訳後修飾タンパク質が翻訳後修飾された指標タンパク質である請求項177に記載のキット。
【請求項183】
前記翻訳後修飾された指標タンパク質が翻訳後修飾された器官特異的または組織特異的タンパク質である請求項182に記載のキット。
【請求項184】
前記翻訳後修飾された指標タンパク質が翻訳後修飾された疾患特異的タンパク質である請求項182に記載のキット。
【請求項185】
前記翻訳後修飾タンパク質がリン酸化タンパク質である請求項177に記載のキット。
【請求項186】
前記翻訳後修飾タンパク質がシステイン化タンパク質である請求項177に記載のキット。
【請求項187】
リン酸化タウ以外の翻訳後修飾された1つまたは複数の追加タンパク質に特異的な1つまたは複数の追加結合パートナーを保持する1個または複数個の追加容器、および
炎症を診断またはモニタするために、動物の1つまたは複数の体液中に存在する翻訳後修飾された1つまたは複数の該追加タンパク質の量を測定するべく該追加結合パートナーが使用されることを指示する取扱説明書をさらに含む請求項177から186のいずれか一項に記載のキット。
【請求項188】
前記結合パートナーが抗体である請求項177から186のいずれか一項に記載のキット。
【請求項189】
前記結合パートナーが抗体である請求項187に記載のキット。
【請求項190】
前記結合パートナーがアプタマーである請求項177から186のいずれか一項に記載のキット。
【請求項191】
前記結合パートナーがアプタマーである請求項187に記載のキット。
【請求項192】
リン酸化タウ以外の翻訳後修飾された器官特異的または組織特異的タンパク質に特異的な結合パートナーを保持する容器、および
器官または組織の虚血を診断またはモニタするために、測定前に該タンパク質を変性させない方法で、動物の体液中に存在する該翻訳後修飾タンパク質の量を測定するべく該結合パートナーが使用されることを指示する取扱説明書を含むキット。
【請求項193】
前記翻訳後修飾タンパク質がリン酸化タンパク質である請求項192に記載のキット。
【請求項194】
前記翻訳後修飾タンパク質がシステイン化タンパク質である請求項192に記載のキット。
【請求項195】
前記翻訳後修飾タンパク質が翻訳後修飾された心臓特異的タンパク質である請求項192に記載のキット。
【請求項196】
前記翻訳後修飾された心臓特異的タンパク質が翻訳後修飾トロポニンIである請求項195に記載のキット。
【請求項197】
前記翻訳後修飾トロポニンIがリン酸化トロポニンIである請求項196に記載のキット。
【請求項198】
前記翻訳後修飾トロポニンIがシステイン化トロポニンIである請求項196に記載のキット。
【請求項199】
前記翻訳後修飾された心臓特異的タンパク質が翻訳後修飾トロポニンTである請求項195に記載のキット。
【請求項200】
前記翻訳後修飾トロポニンTがリン酸化トロポニンTである請求項199に記載のキット。
【請求項201】
前記翻訳後修飾トロポニンTがシステイン化トロポニンTである請求項199に記載のキット。
【請求項202】
翻訳後修飾された1つまたは複数の追加タンパク質に特異的な1つまたは複数の追加結合パートナーを保持する1個または複数個の追加容器、および
器官または組織の虚血を診断またはモニタするために、測定前に該タンパク質が変性されない方法で、動物の体液中に存在する翻訳後修飾された1つまたは複数の該追加タンパク質の量を測定するべく該追加結合パートナーが使用されることを指示する取扱説明書をさらに含む請求項192から201のいずれか一項に記載のキット。
【請求項203】
前記結合パートナーが抗体である請求項192から201のいずれか一項に記載のキット。
【請求項204】
前記結合パートナーが抗体である請求項202に記載のキット。
【請求項205】
前記結合パートナーがアプタマーである請求項192から201のいずれか一項に記載のキット。
【請求項206】
前記結合パートナーがアプタマーである請求項202に記載のキット。
【請求項207】
翻訳後修飾された妊娠関連タンパク質に特異的な結合パートナーを保持する容器、および
胎盤虚血を診断またはモニタするために、妊娠中の動物の体液中に存在する該翻訳後修飾タンパク質の量を測定するべく該結合パートナーが使用されることを指示する取扱説明書を含むキット。
【請求項208】
前記翻訳後修飾された妊娠関連タンパク質がシステイン化タンパク質である請求項207に記載のキット。
【請求項209】
前記翻訳後修飾された妊娠関連タンパク質がリン酸化タンパク質である請求項207に記載のキット。
【請求項210】
前記翻訳後修飾された妊娠関連タンパク質が、翻訳後修飾されたβ−ヒト絨毛性ゴナドトロピン、α−フェトプロテイン、妊娠関連タンパク質1A、エリスロポイエチン、アンギオテンシン、またはこれらの組合せである請求項207に記載のキット。
【請求項211】
前記翻訳後修飾された妊娠関連タンパク質が、システイン化修飾されたβ−ヒト絨毛性ゴナドトロピン、α−フェトプロテイン、妊娠関連タンパク質1A、エリスロポイエチン、アンギオテンシン、またはこれらの組合せである請求項210に記載のキット。
【請求項212】
前記翻訳後修飾された妊娠関連タンパク質が、リン酸化修飾されたβ−ヒト絨毛性ゴナドトロピン、α−フェトプロテイン、妊娠関連タンパク質1A、エリスロポイエチン、アンギオテンシン、またはこれらの組合せである請求項210に記載のキット。
【請求項213】
翻訳後修飾された1つまたは複数の追加タンパク質に特異的な1つまたは複数の追加結合パートナーを保持する1個または複数個の追加容器、および
胎盤虚血を診断またはモニタするために、妊娠中の動物の体液中に存在する翻訳後修飾された1つまたは複数の該追加タンパク質の量を測定するべく該追加結合パートナーが使用されることを指示する取扱説明書をさらに含む請求項207に記載のキット。
【請求項214】
前記結合パートナーが抗体である請求項207から213のいずれか一項に記載のキット。
【請求項215】
前記結合パートナーがアプタマーである請求項205から213のいずれか一項に記載のキット。
【請求項216】
体液のリン酸化タンパク質成分に特異的な結合パートナーを保持する容器、および
虚血を診断またはモニタするために、動物の体液中に存在するリン酸化タンパク質の量を測定するべく該結合パートナーが使用されることを指示する取扱説明書を含むキット。
【請求項217】
前記リン酸化タンパク質がリン酸化アルブミンである請求項216に記載のキット。
【請求項218】
翻訳後修飾された1つまたは複数の追加タンパク質に特異的な1つまたは複数の追加結合パートナーを保持する1個または複数個の追加容器、および
虚血を診断またはモニタするために、動物の体液中に存在する翻訳後修飾された1つまたは複数の該追加タンパク質の量を測定するべく該追加結合パートナーが使用されることを指示する取扱説明書をさらに含む請求項216に記載のキット。
【請求項219】
前記結合パートナーが抗体である請求項216、217、または218に記載のキット。
【請求項220】
前記結合パートナーがアプタマーである請求項216、217、または218に記載のキット。
【請求項221】
システイン化タンパク質に特異的な結合パートナーを保持する容器、および
虚血を診断またはモニタするために、動物の体液中に存在する該システイン化タンパク質の量を測定するべく該結合パートナーが使用されることを指示する取扱説明書を含むキット。
【請求項222】
前記システイン化タンパク質がシステイン化アルブミンである請求項221に記載のキット。
【請求項223】
翻訳後修飾された1つまたは複数の追加タンパク質に特異的な1つまたは複数の追加結合パートナーを保持する1個または複数個の追加容器、および
虚血を診断またはモニタするために、動物の体液中に存在する翻訳後修飾された1つまたは複数の該追加タンパク質の量を測定するべく該追加結合パートナーが使用されることを指示する取扱説明書をさらに含む請求項221に記載のキット。
【請求項224】
前記結合パートナーが抗体である請求項221、222、または223に記載のキット。
【請求項225】
前記結合パートナーがアプタマーである請求項221、222、または223に記載のキット。
【請求項226】
システイン化タンパク質に特異的な結合パートナーを保持する容器、および
胎盤虚血を診断またはモニタするために、妊娠中の動物の体液中に存在する該システイン化タンパク質の量を測定するべく該結合パートナーが使用されることを指示する取扱説明書を含むキット。
【請求項227】
前記システイン化タンパク質がシステイン化アルブミンである請求項226に記載のキット。
【請求項228】
翻訳後修飾された1つまたは複数の追加タンパク質に特異的な1つまたは複数の追加結合パートナーを保持する1個または複数個の追加容器、および
胎盤虚血を診断またはモニタするために、妊娠中の動物の体液中に存在する翻訳後修飾された1つまたは複数の該追加タンパク質の量を測定するべく該追加結合パートナーが使用されることを指示する取扱説明書をさらに含む請求項226に記載のキット。
【請求項229】
前記結合パートナーが抗体である請求項226、227、または228に記載のキット。
【請求項230】
前記結合パートナーがアプタマーである請求項226、227、または228に記載のキット。
【請求項231】
翻訳後修飾タンパク質に特異的な結合パートナーを保持する容器、および
多臓器不全を診断、モニタ、または予測するために、動物の体液中に存在する該翻訳後修飾タンパク質の量を測定するべく該結合パートナーが使用されることを指示する取扱説明書を含むキット。
【請求項232】
前記翻訳後修飾タンパク質がシステイン化タンパク質である請求項231に記載のキット。
【請求項233】
前記システイン化タンパク質がシステイン化アルブミンである請求項232に記載のキット。
【請求項234】
翻訳後修飾された1つまたは複数の追加タンパク質に特異的な1つまたは複数の追加結合パートナーを保持する1個または複数個の追加容器、および
多臓器不全を診断、モニタ、または予測するために、動物の体液中に存在する翻訳後修飾された1つまたは複数の該追加タンパク質の量を測定するべく該追加結合パートナーが使用されることを指示する取扱説明書をさらに含む請求項231に記載のキット。
【請求項235】
前記結合パートナーが抗体である請求項231から234のいずれか1項に記載のキット。
【請求項236】
前記結合パートナーがアプタマーである請求項231から234のいずれか一項に記載のキット。
【請求項237】
リン酸化タウ以外のリン酸化タンパク質に特異的な結合パートナーを保持する容器、および
ホスファターゼ阻害剤、またはホスファターゼ阻害剤の混合物を保持する容器を含むキット。
【請求項238】
翻訳後修飾された1つまたは複数の追加タンパク質に特異的な1つまたは複数の追加結合パートナーを保持する1個または複数個の追加容器をさらに含む請求項237に記載のキット。
【請求項239】
前記結合パートナーが抗体である請求項237または238に記載のキット。
【請求項240】
前記結合パートナーがアプタマーである請求項237または238に記載のキット。
【請求項241】
(a) 動物から第1の体液を取得し、さらに該動物から第2の体液を取得する工程であって、該第1の体液および該第2の体液が同じでもよいし、異なっていてもよい工程、
(b) 該動物の該第1の体液中に存在するo−ヒドロキシ馬尿酸(OHHA)の量が正常動物からの同じ体液中でのレベルと比較して有意に上昇しているかどうかを判定する工程、
(c) 該動物の該第2の体液中に存在する一般的炎症のマーカの量が正常動物からの同じ体液中でのレベルと比較して有意に変化しているかどうかを判定する工程、および
(d) 工程(b)および(c)で得られた結果を虫垂炎の存在または不在と相関させる工程を含む動物における虫垂炎を診断する方法。
【請求項242】
前記第1の体液が尿である請求項241に記載の方法。
【請求項243】
工程(b)が、
診断中の動物から得た尿の一部を、OHHAと接触した際に発色する発色試薬と混合する工程、
該尿および該発色試薬を、発色させるのに十分な時間インキュベートする工程、および
生じた色を、比色チャート、または既知量のOHHAを含むスタンダードによって生じた色と比較して、尿中に存在するOHHAの量が有意に上昇しているかどうかを判定する工程を含む請求項242に記載の方法。
【請求項244】
前記発色試薬がシリカに結合した第二鉄イオンである請求項243に記載の方法。
【請求項245】
工程(b)が結合パートナー分析を用いて実施される請求項241に記載の方法。
【請求項246】
工程(c)が結合パートナー分析を用いて実施される請求項241に記載の方法。
【請求項247】
前記第2の体液が尿である請求項241に記載の方法。
【請求項248】
前記一般的炎症のマーカがインターロイキン8である請求項247に記載の方法。
【請求項249】
前記第2の体液が血清または血漿である請求項241に記載の方法。
【請求項250】
前記一般的炎症のマーカが白血球数である請求項249に記載の方法。
【請求項251】
前記一般的炎症のマーカが好中球バンド数である請求項249に記載の方法。
【請求項252】
前記一般的炎症のマーカが翻訳後修飾タンパク質である請求項241に記載の方法。
【請求項253】
前記一般的炎症のマーカが翻訳後修飾タンパク質である請求項249に記載の方法。
【請求項254】
前記翻訳後修飾タンパク質がリン酸化アルブミンである請求項253に記載の方法。
【請求項255】
前記翻訳後修飾タンパク質がシステイン化アルブミンである請求項253に記載の方法。
【請求項256】
前記動物がヒトである請求項241から255のいずれか一項に記載の方法。
【請求項257】
動物の体液中に存在するo−ヒドロキシ馬尿酸(OHHA)の量が正常動物からの同じ体液中でのレベルと比較して有意に上昇しているかどうかを判定するのに有用な試薬を保持する少なくとも1個の容器を含むパーツ(A)、および
該動物の体液中に存在する一般的炎症のマーカの量が正常動物からの同じ体液中でのレベルと比較して有意に変化しているかどうかを判定するのに有用な試薬を保持する少なくとも1個の容器を含むパーツ(B)を含む虫垂炎を診断するためのキット。
【請求項258】
パーツ(A)が、OHHAと接触した際に発色する発色試薬を保持する容器を含む請求項257に記載のキット。
【請求項259】
前記発色試薬がシリカに結合した第二鉄イオンである請求項258に記載のキット。
【請求項260】
比色チャートをさらに含む請求項258または259に記載のキット。
【請求項261】
既知量のOHHAを含むスタンダードを保持する1個または複数個の容器をさらに含む請求項258または259に記載のキット。
【請求項262】
パーツ(A)が、OHHAに特異的な結合パートナーを保持する容器を含む請求項257に記載のキット。
【請求項263】
パーツ(B)が、翻訳後修飾タンパク質に特異的な結合パートナーを保持する容器を含む請求項257に記載のキット。
【請求項264】
前記翻訳後修飾タンパク質がリン酸化アルブミンである請求項263に記載のキット。
【請求項265】
前記翻訳後修飾タンパク質がシステイン化アルブミンである請求項263に記載のキット。
【請求項266】
パーツ(B)がサイトカインに特異的な結合パートナーを保持する容器を含む請求項257に記載のキット。
【請求項267】
前記サイトカインがインターロイキン8である請求項266に記載のキット。
【請求項268】
動物の体液中に存在する一般的炎症のマーカの量が正常動物からの同じ体液中でのレベルと比較して有意に変化しているかどうかを判定するのに有用な試薬を保持する少なくとも1個の容器、および
虫垂炎を診断するために該試薬がどのように使用されるかを指示する取扱説明書を含む虫垂炎を診断するためのキット。
【請求項269】
前記試薬が一般的炎症のマーカに特異的な結合パートナーである請求項268に記載のキット。
【請求項270】
翻訳後修飾タンパク質に特異的な結合パートナーを保持する容器を含む請求項269に記載のキット。
【請求項271】
前記翻訳後修飾タンパク質がリン酸化アルブミンである請求項270に記載のキット。
【請求項272】
前記翻訳後修飾タンパク質がシステイン化アルブミンである請求項270に記載のキット。
【請求項273】
サイトカインに特異的な結合パートナーを保持する容器を含む請求項269に記載のキット。
【請求項274】
前記サイトカインがインターロイキン8である請求項273に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図7F】
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【図7G】
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【図7H】
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【図7I】
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【図7J】
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【図7K】
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【図7L】
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【図7M】
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【図7N】
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【図7O】
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【図7Q】
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【図7S】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【公表番号】特表2006−517286(P2006−517286A)
【公表日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−501090(P2005−501090)
【出願日】平成15年10月2日(2003.10.2)
【国際出願番号】PCT/US2003/031468
【国際公開番号】WO2004/032711
【国際公開日】平成16年4月22日(2004.4.22)
【出願人】(502113644)ディーエムアイ バイオサイエンシズ インコーポレイテッド (14)
【氏名又は名称原語表記】DMI BIOSCIENCES,INC.
【Fターム(参考)】