説明

炎症および免疫関連の使用のための化合物

本発明は、免疫抑制薬として、または炎症状態、アレルギー性障害、および免疫障害を治療または予防するために有用な、誘導体テトラヒドロピリジンの誘導体を含む、特定の化合物またはその薬学的に許容される塩類に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2008年10月1日出願の米国仮特許出願第61/194,829号明細書の利益を主張するものであり、その全開示内容を参照により本願明細書に援用する。
【0002】
本発明は、免疫抑制のために、あるいは炎症状態および免疫障害を治療または予防するために、使用することが可能な生物学的に活性な化合物に関する。
【背景技術】
【0003】
炎症は、哺乳動物を侵入病原体から保護する機構である。しかし、一過性の炎症は、哺乳動物を感染から保護するために必要であるものの、制御されない炎症は、組織損傷を引き起こし、また多くの病気の根本原因となる。炎症は一般に、抗原がT細胞抗原受容体に結合することによって開始される。T細胞による抗原結合は、Ca2+−放出−活性化Ca2+チャネル(CRAC)等のカルシウムイオンチャネルを介して、細胞内へのカルシウム流入を開始する。カルシウムイオン流入は次には、これらの細胞の活性化およびサイトカイン産生を特徴とする炎症反応をもたらすシグナル伝達カスケードを開始する。
【0004】
インターロイキン2(IL−2)は、細胞内へのカルシウムイオン流入に応答して、T細胞により分泌されるサイトカインである。IL−2は、免疫系の多くの細胞に対する免疫作用を調節する。たとえば、T細胞増殖に必要なものは、細胞周期のG1期からS期への進行を推進する、強力なT細胞マイトジェンであり;これは、NK細胞の成長を刺激し;また、成長因子としてB細胞に作用し、また抗体合成を刺激する。
【0005】
IL−2は、免疫応答では有用であるが、様々な問題を引き起こすことがある。IL−2は、血管脳関門および脳内血管の内皮を損傷する。こうした作用は、IL−2療法中に認められる神経精神病学的副作用、たとえば、疲労、見当識障害および抑鬱症の、根本原因であり得る。IL−2はまた、ニューロンの電気生理学的挙動も変える。
【0006】
IL−2は、T細胞およびB細胞の両者に影響を与えるため、免疫応答の主要な中心的調節因子である。IL−2は、炎症反応、腫瘍監視および造血において、ある一定の役割を果たす。IL−2はまた、他のサイトカイン類の産生にも影響を及ぼし、IL−1、TNFαおよびTNF−βの分泌を誘導するとともに、末梢白血球におけるIFN−γ合成を刺激する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
IL−2を産生することができないT細胞は、不活性(アネルギー)になる。これによって、T細胞は、今後受けるかもしれないあらゆる抗原刺激に対して潜在的不活性になる。結果として、IL−2産生を阻害する作用物は、免疫抑制のために、あるいは炎症および免疫障害を治療または予防するために、使用することができる。このアプローチは、シクロスポリン、FK506、およびRS61443等の免疫抑制薬で、臨床的に検証されている。このように概念が証明されているにも拘わらず、IL−2産生を阻害する作用物は、まだ理想からほど遠い。その他の問題の中で特に、薬効の限界および望ましくない副作用(用量依存的腎毒性および高血圧を含む)が、それらの使用を妨げている。
【0008】
IL−2以外の炎症性サイトカイン類の過剰産生はまた、多くの自己免疫疾患に関与している。たとえば、喘息では、好酸球類の産生を増加するサイトカインであるインターロイキン5(IL−5)が増加する。IL−5の過剰産生は、アレルギー性炎症の特徴である、喘息患者の気管支粘膜における好酸球の蓄積と関連している。したがって、好酸球の蓄積を伴う喘息および他の炎症性障害に罹患している患者であれば、IL−5の産生を阻害する新薬の開発から利益を享受するであろう。
【0009】
インターロイキン4(IL−4)およびインターロイキン13(IL−13)は、炎症性腸疾患および喘息でみられる平滑筋の高収縮力のメディエータとして同定されている。したがって、喘息および炎症性腸疾患に罹患している患者であれば、IL−4およびIL−13の産生を阻害する新薬の開発から利益を享受するであろう。
【0010】
顆粒球マクロファージ−コロニー刺激因子(GM−CSF)は、顆粒球およびマクロファージ系細胞集団の成熟化の制御因子であり、また炎症性障害および自己免疫疾患における主要因として関連づけられてきた。抗−GM−CSF抗体遮断によって、自己免疫疾患が寛解することが証明されている。したがって、GM−CSFの産生を阻害する新薬の開発は、炎症性障害または自己免疫疾患に罹患している患者に有益であろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示は、一側面において、免疫抑制のために、あるいは炎症性障害、アレルギー性障害および自己免疫障害の治療または予防で、現在使用されている薬物の欠点の1つまたは複数を克服する新薬の継続的必要性に取り組む。このような薬剤の望ましい特性としては、現在治療不能であるかまたは十分に治療できない疾病または障害に対する効果、新しい作用機作、経口バイオアベイラビリティおよび/または副作用低減などが含まれる。したがって、CRACイオンチャネルの活性を阻害し、またIL−2、IL−4、IL−5、IL−13、GM−CSF、TNFα、およびIFN−γの産生を阻害する化合物を、本願明細書に開示する。これらの化合物は、免疫抑制のためおよび/または炎症状態および免疫障害を治療または予防するのに特に有用である。本願明細書に記載の化合物の特定の種類は、それらがCRACイオンチャネルの阻害(たとえば、調節されたICRAC電流で測定される)と、IL−2を含むサイトカイン類、低発生率のオフターゲット効果、および好ましい毒性プロフィールを結びつけると考えられる点で特に有利である。
【0012】
本発明は、式(I):
【化1】

(式中:
およびXのそれぞれが独立してN,CまたはNであり;
は、ヘテロアリールまたはS(O)N(Rであって、ヘテロアリールは、1〜3個のハロ、(C〜C)アルキル、(C〜C)アルケニル、(C〜C)アルキニル、ヘテロアリール、COR、COOR、CON(R、N(R、NRCON(R、NRCSN(R、OR、SR、CN、NO、またはNで置換されていてもよく;
は、(C〜C)アルキル、(C〜C)アルケニル、(C〜C)アルキニル、ヘテロアリール、ヘテロアリール(C〜C)アルキル、ヘテロアリール(C〜C)アルケニル、ヘテロアリール(C〜C)アルキニル、COR、COOR、CON(R、CSR、CSOR、CSN(Rであって、Rで表される各置換基は独立して、1〜3個のハロ、(C〜C)アルキル、(C〜C)アルケニル、(C〜C)アルキニル、COR、COOR、CON(R、N(R、NRCON(R、NRCSN(R、OR、SR、CN、NO、N、等で置換されていてもよく、
は、H、ハロ、(C〜C)アルキル、(C〜C)アルケニル、(C〜C)アルキニル、ハロ、COR、COOR、CON(R、N(R、NRCON(R、NRCSN(R、OR、SR、CN、NO、またはNであり;
は、H、(C〜C)アルキル、(C〜C)アルケニル、(C〜C)アルキニル、ヘテロアリール、ヘテロアリール(C〜C)アルキル、ヘテロアリール(C〜C)アルケニル、ヘテロアリール(C〜C)アルキニル、アリール、アリール(C〜C)アルキル、アリール(C〜C)アルケニル、アリール(C〜C)アルキニル、OR、またはCON(Rであり、
各Rは、独立してハロ、(C〜C)アルキル、(C〜C)アルケニル、(C〜C)アルキニル、ヘテロアリール、ヘテロアリール(C〜C)アルキル、ヘテロアリール(C〜C)アルケニル、ヘテロアリール(C〜C)アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アリール(C〜C)アルキル、アリール(C〜C)アルケニル、アリール(C〜C)アルキニル、(C〜C)ハロアルキル、COR、COOR、CON(R、N(R、NRCON(R、NRCSN(R、OR、SR、CN、NO、またはNであり;
各Rは、独立してH、(C〜C)アルキル、(C〜C)アルケニル、(C〜C)アルキニル、ヘテロアリール、ヘテロアリール(C〜C)アルキル、ヘテロアリール(C〜C)アルケニル、ヘテロアリール(C〜C)アルキニル、アリール、アリール(C〜C)アルキル、アリール(C〜C)アルケニル、またはアリール(C〜C)アルキニルであるか;あるいは同一原子または隣接した原子に結合している2個のR置換基は、一緒になってヘテロシクロアルキルまたはヘテロアリールを形成し;
Yは、CHまたはNであり;および
n=0〜5である)
で表される化合物、またはその薬学的に許容される塩を特徴とする。
【0013】
ある実施態様では、Rは、ピリジニル、チアゾリル、またはピラジニルであってもよく、それぞれが、(C〜C)アルキル、ハロ、CN、またはヘテロアリールで置換されていてもよい。代案では、Rは、S(O)N(Rであって、各Rは、独立して(C〜C)アルキルである。
【0014】
別の実施態様では、Rは、(C〜C)アルキルであり;RおよびRはHであり;かつ/またはnは2であり、またRは、ハロである。またさらなる実施態様では、XおよびXはCである;XはNであり、XはNである;XはCであり、XはNである;またはXはNであり、XはCである。
【0015】
他の実施態様において、Yは、有利にはCである。
【0016】
本願明細書に例示される個々の化合物および基は、総じて、異なる部類または類似した部類の化合物でこれまで得られなかった特に望ましい特性を有する。これらの特性としては、下記の1つまたは複数が含まれる:化合物の分解に対する抵抗性を提供する、より高い化学的安定性;所期の投与方法で望ましくない、遺伝毒性フラグメントを結果としてもたらす、可能性がある代謝を排除すること;より長いインビボ半減期;改良された代謝的安定性;および時間依存的または濃度依存的薬剤損失という結果に終わる可能性がある、CYP誘導(それらは全て、言い換えれば薬効を減少させる)の減少または排除。
【0017】
代表的な化合物を本願明細書に提供する。他の側面において、薬学的に許容される担体および本発明の化合物を含む医薬組成物を開示する。本組成物は、1つまたは複数の追加的治療薬、たとえば、免疫抑制薬、抗炎症薬およびそれらの好適な混合物をさらに含んでもよい。他の追加的治療薬としては、ステロイド類、非ステロイド系非ステロイド系抗炎症薬、抗ヒスタミン薬、鎮痛薬、およびそれらの好適な混合物などが挙げられる。
【0018】
本願明細書に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、クラスレート、またはプロドラッグは、特に有用な阻害性免疫細胞(たとえば、T細胞および/またはB細胞)活性化(たとえば、抗原に応答した活性化)である。特に、これらの化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、クラスレート、またはプロドラッグは、免疫細胞活性化を制御するある種のサイトカイン類の産生を阻害することができる。たとえば、本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、クラスレート、またはプロドラッグは、IL−2、IL−4、IL−5、IL−13、GM−CSF、TNFα、IFN−γまたはそれらの組合せの産生を阻害することができる。さらに本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、クラスレート、またはプロドラッグは、免疫細胞の活性化に関与する1つまたは複数のイオンチャネル、たとえばCRACイオンチャネルを調節することができる。
【0019】
本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、クラスレート、またはプロドラッグは、免疫抑制に、あるいは炎症状態、アレルギー性障害、および免疫障害の治療または予防に、特に有用である。
【0020】
本発明はまた、本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、クラスレート、またはプロドラッグ;および薬学的に許容される担体または媒体を含む医薬組成物も包含する。これらの組成物は、追加的薬剤をさらに含んでもよい。これらの組成物は、免疫抑制ならびに炎症状態、アレルギー性障害および免疫障害の治療または予防に有用である。
【0021】
本発明はさらに、本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、クラスレート、またはプロドラッグ、あるいは本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、クラスレート、またはプロドラッグを含む医薬組成物の有効量を、それを必要としている対象に投与することを含む、炎症状態、アレルギー性障害、および免疫障害を治療または予防する方法を包含する。こうした方法はまた、追加的薬剤を、別々にまたは本発明の化合物あるいはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、クラスレート、またはプロドラッグとの併合組成物で、対象に投与することも含んでもよい。
【0022】
本発明はさらに、本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、クラスレート、またはプロドラッグ、または本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、クラスレート、またはプロドラッグを含む医薬組成物の有効量を、それを必要としている対象に投与することを含む、対象の免疫系を阻害する方法を包含する。こうした方法はまた、追加的薬剤を、別々にまたは本発明の化合物あるいはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、クラスレート、またはプロドラッグとの併合組成物で、対象に投与することも含んでもよい。
【0023】
本発明はさらに、インビボまたはインビトロで、T細胞および/またはB細胞の増殖を阻害することを含む、抑制性免疫細胞活性化を阻害する方法であって、本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、クラスレート、またはプロドラッグあるいは本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、クラスレート、またはプロドラッグを含む医薬組成物の有効量を細胞に投与することを含む方法を包含する。
【0024】
本発明はさらに、本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、クラスレート、またはプロドラッグあるいは本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、クラスレート、またはプロドラッグを含む医薬組成物の有効量を細胞に投与することを含む、インビボまたはインビトロで、細胞内でのサイトカイン産生(たとえば、IL−2、IL−4、IL−5、IL−13、GM−CSF、TNFα、および/またはIFN−γ産生)を阻害する方法を包含する。
【0025】
本発明はさらに、本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、クラスレート、またはプロドラッグあるいは本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、クラスレート、またはプロドラッグを含む医薬組成物の有効量を投与することを含む、インビボまたはインビトロで、イオンチャネル活性(たとえば、CRAC)を調節する方法を包含する。
【0026】
本発明の方法は全て、本発明の化合物単独で、または他の薬剤、たとえば他の免疫抑制薬、抗炎症薬、アレルギー性障害の治療薬、または免疫障害の治療薬等と組み合わせて、実行することが可能である。
【0027】
ある実施態様では、以下の化合物が式(I)から明確に除外される:
【化2】


【化3】


【化4】


【化5】


【化6】


【化7】


【化8】

【発明を実施するための形態】
【0028】
本願明細書で使用されるとき、用語「芳香環」または「アリール」は、単環または多環の芳香環あるいは炭素原子および水素原子を含む環状ラジカルを意味する。好適なアリール基の例としては、フェニル、トリル、アントラセニル、フルオレニル、インデニル、アズレニル、およびナフチル、ならびに、5,6,7,8-テトラヒドロナフチル等のベンゾ縮合炭素環部分が挙げられるが、その限りではない。アリール基は非置換であってもよく、または1つまたは複数の置換基(アルキル(好ましくは、低級アルキル、または1つまたは複数のハロで置換されたアルキル)、ヒドロキシ、アルコキシ(好ましくは、低級アルコキシ)、アルキルチオ、シアノ、ハロ、アミノ、およびニトロを含むが、その限りではない)で置換されていてもよい。ある実施態様では、アリール基は単環式環であって、その環は6個の炭素原子を含む。
【0029】
本願明細書で使用されるとき、用語「アルキル」は、1〜10個の炭素原子を一般に有する飽和した直鎖または分枝状の非環状炭化水素を意味する。代表的な飽和直鎖アルキル類としては、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニルおよびn−デシル等が挙げられ;一方、飽和分枝アルキル類としては、イソプロピル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、イソペンチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、2−メチルヘキシル、3−メチルヘキシル、4−メチルヘキシル、5−メチルヘキシル、2,3−ジメチルブチル、2,3−ジメチルペンチル、2,4−ジメチルペンチル、2,3−ジメチルヘキシル、2,4−ジメチルヘキシル、2,5−ジメチルヘキシル、2,2−ジメチルペンチル、2,2−ジメチルヘキシル、3,3−ジメチルペンチル、3,3−ジメチルヘキシル、4,4−ジメチルヘキシル、2−エチルペンチル、3−エチルペンチル、2−エチルヘキシル、3−エチルヘキシル、4−エチルヘキシル、2−メチル−2−エチルペンチル、2−メチル−3−エチルペンチル、2−メチル−4−エチルペンチル、2−メチル−2−エチルヘキシル、2−メチル−3−エチルヘキシル、2−メチル−4−エチルヘキシル、2,2−ジエチルペンチル、3,3−ジエチルヘキシル、2,2−ジエチルヘキシル、3,3−ジエチルヘキシル等が挙げられる。本発明の化合物に含まれるアルキル基は、1つまたは複数の置換基、たとえばアミノ、アルキルアミノ、アルコキシ、アルキルチオ、オキソ、ハロ、アシル、ニトロ、ヒドロキシル、シアノ、アリール、アルキルアリール、アリールオキシ、アリールチオ、アリールアミノ、カルボシクリル、カルボシクリルオキシ、カルボシクリルチオ、カルボシクリルアミノ、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルオキシ、ヘテロシクリルアミノ、ヘテロシクリルチオ等で、置換されていてもよい。加えて、アルキル部分のあらゆる炭素は、酸素(=O)、イオウ(=S)、または窒素(=NR23、ここで、R23は、−H、アルキル、アセチル、またはアラルキルである)で置換されていてもよい。低級アルキルは一般に、本発明の化合物に好ましい。
【0030】
用語アルキレンは、2つの部分(たとえば、{−CH−}、−{CHCH−}、
【化9】


等(式中、大括弧は、結合点を示す)への2つの結合点を有するアルキル基を指す。アルキレン基は、アルキル基と同様に、置換されていても非置換であってもよい。
【0031】
アラルキル基は、アルキレンリンカーを介して別の部分に結合されているアリール基を指す。アラルキル基は、アリール基および/またはアルキル基と同様に、置換されていても非置換であってもよい。
【0032】
用語「アルコキシ」は、本願明細書で使用されるとき、酸素原子を介して別の部分に連結されているアルキル基を指す。アルコキシ基は、アルキル基と同様に、置換されていても非置換であってもよい。
【0033】
用語「アルコキシアルコキシ」は、本願明細書で使用されるとき、アルキル部分が別のアルコキシ基で置換されているアルコキシ基を指す。
【0034】
用語「アルキルスルファニル」は、本願明細書で使用されるとき、二価イオウ原子を介して他の部分に連結されているアルキル基を指す。アルキルスルファニル基は、アルキル基と同様に、置換されていても非置換であってもよい。
【0035】
用語「アルキルアミノ」は、本願明細書で使用されるとき、窒素に結合している1個の水素原子が、アルキル基で置き換えられているアミノ基を指す。用語「ジアルキルアミノ」は、本願明細書で使用されるとき、窒素に結合している2個の水素原子がアルキル基で置き換えられているアミノ基を指し、そのアルキル基は同一であっても異なっていてもよい。アルキルアミノ基およびジアルキルアミノ基は、アルキル基と同様に、置換されていても非置換であってもよい。
【0036】
本願明細書で使用されるとき、用語「アルケニル」は、2〜10個の炭素原子を一般に有し、また少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有する、直鎖または分枝状の、炭化水素基を意味する。代表的な直鎖および分枝状のアルケニルとしては、ビニル、アリル、1−ブテニル、2−ブテニル、イソブチレニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−メチル−1−ブテニル、1−メチル−2−ブテニル、2,3−ジメチル−2−ブテニル、1−ヘキセニル、2−ヘキセニル、3−ヘキセニル、1−ヘプテニル、2−ヘプテニル、3−ヘプテニル、1−オクテニル、2−オクテニル、3−オクテニル、1−ノネニル、2−ノネニル、3−ノネニル、1−デセニル、2−デセニル、3−デセニル等が挙げられる。アルケニル基は、アルキル基と同様に、置換されていても非置換であってもよい。
【0037】
本願明細書で使用されるとき、用語「アルキニル」は、2〜10個の炭素原子を一般に有し、また少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を有する、直鎖または分枝状の、炭化水素基を意味する。代表的な直鎖および分枝状のアルキニル類としては、アセチレニル、プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、1−ペンチニル、2−ペンチニル、3−メチル−1−ブチニル、4−ペンチニル、−1−ヘキシニル、2−ヘキシニル、5−ヘキシニル、1−ヘプチニル、2−ヘプチニル、6−ヘプチニル、1−オクチニル、2−オクチニル、7−オクチニル、1−ノニニル、2−ノニニル、8−ノニニル、1−デシニル、2−デシニル、9−デシニル等が挙げられる。アルキニル基は、置換されていても非置換であってもよい。
【0038】
本願明細書で使用されるとき、用語「シクロアルキル」は、3〜10個の炭素原子を一般に有する、飽和した単環式または多環式のアルキル基を意味する。代表的なシクロアルキル類としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、アダマンチル、デカヒドロナフチル、オクタヒドロペンタレン、ビシクロ[1,1,1]ペンタニル等が挙げられる。シクロアルキル基は、アルキル基と同様に、置換されていても非置換であってもよい。
【0039】
本願明細書で使用されるとき、用語「シクロアルケニル」は、環状系に少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有し、また5〜10個の炭素原子を一般に有する、環状の非芳香族アルケニル基を意味する。代表的なシクロアルケニル類としては、シクロペンテニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキセニル、シクロヘキサジエニル、シクロヘプテニル、シクロヘプタジエニル、シクロヘプタトリエニル、シクロオクテニル、シクロオクタジエニル、シクロオクタトリエニル、シクロオクタテトラエニル、シクロノネニル、シクロノナジエニル、シクロデセニル、シクロデカジエニル等が挙げられる。シクロアルケニル基は、アルキル基と同様に、置換されていても非置換であってもよい。
【0040】
本願明細書で使用されるとき、用語「複素環」または「ヘテロシクリル」は、飽和環または不飽和非芳香環のいずれかである、単環または多環の複素環(3〜14員を一般に有する)。3員複素環は、3個以下のヘテロ原子を含むことができ、また4員〜14員の複素環は、1〜約8個のヘテロ原子を含むことができる。各ヘテロ原子は、四級化されていてもよい、窒素;酸素;ならびにスルホキシドおよびスルホンを含むイオウ;から独立して選択される。複素環は、任意のヘテロ原子または炭素原子を介して、結合され得る。代表的な複素環としては、モルホリニル、チオモルホリニル、ピロリジノニル、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、ヒダントイニル、バレロラクタミル、オキシラニル、オキセタニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロピリンジニル、テトラヒドロピリミジニル、テトラヒドロチオフェニル、テトラヒドロチオピラニル等が挙げられる。ヘテロ原子は、当業者に周知の保護基で置換されていてもよく、たとえば、窒素上の水素が、tert−ブトキシカルボニル基で置換されていてもよい。さらに、ヘテロシクリルは、1つまたは複数の置換基(ハロゲン原子、アルキル基、またはアリール基を含むが、その限りではない)で置換されていてもよい。本定義では、このような置換された複素環基の安定した異性体のみを意図する。
【0041】
本願明細書で使用されるとき、用語「芳香族複素環」または「ヘテロアリール」は、炭素原子環員および1つまたは複数のヘテロ原子環員(たとえば、酸素、イオウまたは窒素等)を含む、単環または多環の芳香族複素環(またはそのラジカル)を意味する。一般に、芳香族複素環は、少なくとも1つの環員が、酸素、イオウ、および窒素から選択されるヘテロ原子である、5〜約14環員を有する。別の実施態様では、芳香族複素環は5員環または6員環であり、また1〜約4個のヘテロ原子を含んでもよい。別の実施態様では、芳香族複素環系は、7〜14環員を有し、また1〜約7個のヘテロ原子を含んでもよい。代表的なヘテロアリール類としては、ピリジル、フリル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、イミダゾリル、インドリジニル、チアゾリル、イソキサゾリル、ピラゾリル、イソチアゾリル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、トリアゾリル、ピリジニル、チアジアゾリル、ピラジニル、キノリル、イソキノリル、インダゾリル、ベンゾキサゾリル、ベンゾフリル、ベンゾチアゾリル、インドリジニル、イミダゾピリジニル、イソチアゾリル、テトラゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾキサジアゾリル、インドリル、テトラヒドロインドリル、アザインドリル、イミダゾピリジル、キニザオリニル、プリニル、ピロロ[2,3]ピリミジル、ピラゾロ[3,4]ピリミジル、ベンゾ(b)チエニル等が挙げられる。これらのヘテロアリール基は、1つまたは複数の置換基で置換されていてもよい。
【0042】
ヘテロアラルキル基は、アルキレンリンカーを介して別の部分に結合されているヘテロアリール基を指す。ヘテロアラルキル基は、置換されていても非置換であってもよい。
【0043】
本願明細書で使用されるとき、用語「ハロゲン」または「ハロ」は、−F、−Cl、−Br、または−Iを意味する。
【0044】
本願明細書で使用されるとき、用語「ハロアルキル」は、1つまたは複数の−Hがハロ基で置き換えられているアルキル基を意味する。ハロアルキル基の例としては、−CF、−CHF、−CCl、−CHCHBr、−CHCH(CHCHBr)CH、−CHICH等が挙げられる。
【0045】
本願明細書で使用されるとき、用語「ハロアルコキシ」は、1つまたは複数の−Hがハロ基で置き換えられているアルコキシ基を意味する。ハロアルコキシ基の例としては、−OCFおよび−OCHFなどが挙げられる。
【0046】
本願明細書で使用されるとき、用語「リンカー」は、連続した配列または一連の原子を形成するように連結され、それが2つの他の部分を共有的に連結するように連結する、1〜6個の原子を有するジラジカルを意味する。たとえば、連続した結合に指定数の原子を有する、本願明細書に記載の化合物のリンカーは、連続鎖を形成するように連結した少なくともその数の原子を有するが、そのように連結していないさらなる原子(たとえば、分枝または環系内に含まれる原子)も含んでもよい。リンカーの原子は、飽和または不飽和の共有結合で結合されていてもよい。リンカーとしては、1つまたは複数の(たとえば、1〜3(たとえば、1または2)個の)炭素原子が、O、S、またはNで置換されていてもよく、また2個以上(たとえば、2〜3(たとえば、2または3)個の)隣接した原子が、リンカー(単環、多環および/または縮合であってもよく、また飽和、不飽和、または芳香族であってもよい)内に炭素環部分または複素環部分を形成するように結合していてもよい、アルキリデン、アルケニリデン、アルキニリデンおよびシクロアルキリデン(たとえば低級アルキリデン、シクロアルキリデン、アルキルシクロアルキリデンおよびアルキル−置換アルキリデン等)リンカーが挙げられるが、その限りではない。本発明の化合物で有用な具体的なリンカーの例としては、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルキルアミノアルキル、シクロアルキル、アルキルシクロアルキル、およびアルキル置換アルキルシクロアルキルのジラジカル(これらのリンカーのいずれかの1つまたは複数の炭素原子が、O、S、またはNで置き換えられていてもよい)などが挙げられる(この限りではない)。
【0047】
本願明細書で使用されるとき、用語「対象」、「患者」および「動物」は、互換的に使用され、牛、猿、馬、羊、豚、鶏、七面鳥、ウズラ、猫、犬、マウス、ラット、兎、モルモット、またはヒトを含むが、その限りではない。好ましい対象、患者、または動物は、ヒトである。
【0048】
本願明細書で使用されるとき、用語「低級」は、4個以下の炭素原子を有する基を指す。たとえば、「低級アルキル」は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基を指し、「低級アルケニル」または「低級アルキニル」は、それぞれ、2〜4個の炭素原子を有するアルケニルまたはアルキニルを指す。低級アルコキシまたは低級アルキルスルファニルは、1〜4個の炭素原子を有するアルコキシまたはアルキルスルファニルを指す。低級置換基は、一般に好ましい。
【0049】
特定の置換基、たとえばアルキル置換基等が、所与の構造または部分に多回出現する場合、その置換基の同一性は、いずれの場合にも独立しており、構造または部分におけるその置換基の他の出現と同一であっても異なってもよい。さらに、本発明の具体的な実施態様および代表的な化合物における個々の置換基は、このような個々の置換基が好ましいと明確に示されていないか、または他の置換基との組み合わせで明確に示されていなくても、本発明の化合物における他のこのような置換基との組み合わせが好ましい。
【0050】
本発明の化合物は、それらの化学構造および/または化学名によって、本願明細書で明確に規定される。化合物が、化学構造および化学名の両者で言及され、かつ化学構造と化学名が矛盾する場合、化学構造が、化合物の同一性の決定要因である。
【0051】
アルキル、アルコキシ、アルキルスルファニル、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルキレン、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクリル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、およびヘテロアリールアルキル基に好適な置換基は、本発明の安定した化合物を形成する任意の置換基を含む。アルキル、アルコキシ、アルキルスルファニル、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルキレン、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクリル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、およびヘテロアリールアルキルに関する置換基の例としては、アルキル、アルコキシ、アルキルスルファニル、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、ハロアルキル、−C(O)NR1314、−NR15C(O)R16、ハロ、−OR15、シアノ、ニトロ、ハロアルコキシ、−C(O)R15、−NR1314、−SR15、−C(O)OR15、−OC(O)R15、−NR15C(O)NR1314、−OC(O)NR1314、−NR15C(O)OR16、−S(O)pR15、または−S(O)pNR1314が挙げられ、式中、R13およびR14は、各出現ごとに、独立して、H、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアルケニル、置換されていてもよいアルキニル、置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよいシクロアルケニル、置換されていてもよいヘテロシクリル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいアラルキル、または置換されていてもよいヘテロアラルキルであり;あるいはR13およびR14は、それらが結合されている窒素と一緒になって、置換されていてもよいヘテロシクリルまたは置換されていてもよいヘテロアリールを形成し;またR15およびR16は各出現ごとに、独立して、H、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアルケニル、置換されていてもよいアルキニル、置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよいシクロアルケニル、置換されていてもよいヘテロシクリル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいアラルキル、または置換されていてもよいヘテロアラルキルである。
【0052】
加えて、アルキル、シクロアルキル、アルキレン、ヘテロシクリル、およびアルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、アラルキルまたはヘテロアラルキル基の任意の飽和部分もまた、=O、=S、または=N−R15で置換されていてもよい。
【0053】
ヘテロシクリル、ヘテロアリール、またはヘテロアラルキル基が窒素原子を含むとき、置換されていても非置換であってもよい。ヘテロアリール基の芳香環における窒素原子が置換基を有するとき、その窒素は第4級窒素であってもよい。
【0054】
本発明によって想定される置換基および変数の選択および組合せは、安定した化合物の形成をもたらすもののみである。用語「安定した」は、本願明細書で使用されるとき、製造を可能にする十分な安定性を有し、また本願明細書に詳述されている目的(たとえば、対象への治療的投与または予防的投与)に有用であるために十分な期間、化合物の完全性を維持する、化合物を指す。一般に、こうした化合物は、過剰な水分が存在しない、40℃以下の温度で、少なくとも1週間、安定している。こうした選択および組合せは、当業者に明白になり、過度の実験をせずに決定することが可能である。
【0055】
他に指示がない限り、反応性官能基(限定されることなく、カルボキシ、ヒドロキシ、およびアミノ部分等)を含む本発明の化合物はまた、それらの保護された誘導体も含む。「保護された誘導体」は、反応部位が、1つまたは複数の保護基でブロックされている化合物である。カルボキシ部分に好適な保護基としては、ベンジル、tert−ブチル等が挙げられる。アミノ基およびアミド基に好適な保護基としては、アセチル、tert−ブトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル等が挙げられる。ヒドロキシに好適な保護基としては、ベンジル等が挙げられる。他の好適な保護基は当業者に周知であり、またT. W. Greene, Protecting Groups in Organic Synthesis,John Wiley & Sons,Inc.1981(その全教示内容を参照により本願明細書に援用する)に見られるものを包含する。
【0056】
本願明細書で使用されるとき、用語「本発明の化合物(類)」および類似の用語は、式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、クラスレート、またはプロドラッグを指し、またそれらの保護された誘導体も含む。
【0057】
本願明細書で使用され、かつ他に指示がなければ、用語「プロドラッグ」は、本発明の化合物を提供するための生物学的条件下(インビトロまたはインビボ)で、加水分解できる、酸化できる、または他の方法で反応できる、化合物の誘導体を意味する。プロドラッグは、生物学的条件下で、こうした反応で活性になれるに過ぎないが、未反応の形で活性を有することもある。本発明で意図されるプロドラッグの例としては、生加水分解性部分を含む本発明の化合物の類縁体または誘導体、たとえば生加水分解性アミド類、生加水分解性エステル類、生加水分解性カルバメート類、生加水分解性カーボネート類、生加水分解性ウレイド類、および生加水分解性ホスフェート類縁体等が挙げられるが、その限りではない。プロドラッグの他の例としては、−NO、−NO、−ONO、または−ONO部分を含む本発明の化合物の誘導体が挙げられる。プロドラッグは一般に、周知の方法、たとえば、BURGER’S MEDICINAL CHEMISTRY AND DRUG DISCOVERY(1995)172−178,949−982(Manfred E.Wolff ed.,5th ed)に記載の方法等を使用して調製することができ、その全教示内容を、参照により本願明細書に援用する。
【0058】
本願明細書で使用され、かつ他に指示がなければ、用語「生加水分解性アミド」、「生加水分解性エステル」「生加水分解性カルバメート」、「生加水分解性カーボネート」、「生加水分解性ウレイド」および「生加水分解性ホスフェート類縁体」は、それぞれ、1)化合物の生物学的活性を破壊せず、またインビボで、取り込み、作用持続期間、または作用開始等の有利な特性を化合物に付与するか;または2)それ自身は生物学的に不活性であるが、インビボで生物学的に活性な化合物に変換されるかのいずれかである、アミド、エステル、カルバメート、カーボネート、ウレイド、またはホスフェート類縁体を意味する。生加水分解性アミド類の例としては、低級アルキルアミド類、α−アミノ酸アミド類、アルコキシアシルアミド類、およびアルキルアミノアルキルカルボニルアミド類などが挙げられるが、その限りではない。生加水分解性エステル類の例としては、低級アルキルエステル類、アルコキシアシルオキシエステル類、アルキルアシルアミノアルキルエステル類、およびコリンエステル類等が挙げられるが、その限りではない。生加水分解性カルバメート類の例としては、低級アルキルアミン類、置換エチレンジアミン類、アミノ酸類、ヒドロキシアルキルアミン類、複素環式アミン類および芳香族複素環式アミン類、ならびにポリエーテルアミン類が挙げられるが、その限りではない。
【0059】
本願明細書で使用されるとき、用語「薬学的に許容される塩」は、本発明の化合物の1つの酸性基と塩基性基から形成される塩である。例示的塩としては、硫酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、硫酸水素塩、リン酸塩、過リン酸塩、イソニコチン酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、酸性クエン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、酒石酸水素塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチシン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルカロン酸塩(glucaronate)、糖酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、およびパモ酸塩(すなわち、1,1’-メチレン-ビス-(2-ヒドロキシ-3-ナフトエ酸塩))塩が挙げられるが、その限りではない。用語「薬学的に許容される塩」はまた、カルボン酸官能基等の酸性官能基を有する本発明の化合物および薬学的に許容される無機塩基または有機塩基から調製される塩も指す。好適な塩基としては、ナトリウム、カリウム、およびリチウム等のアルカリ金属類の水酸化物;カルシウムおよびマグネシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物;アルミニウムおよび亜鉛等の他の金属の水酸化物;アンモニア、および有機アミン類、たとえば非置換またはヒドロキシ置換されたモノ−、ジ−またはトリアルキルアミン等;ジシクロヘキシルアミン;トリブチルアミン;ピリジン;N−メチル、N−エチルアミン;ジエチルアミン;トリエチルアミン;モノ−、ビス−、またはトリス−(2−ヒドロキシ−低級アルキルアミン類)、たとえばモノ−、ビス−、またはトリス−(2−ヒドロキシエチル)−アミン、2−ヒドロキシ−tert−ブチルアミン、またはトリス−(ヒドロキシメチル)メチルアミン、N,N−ジ−低級アルキル−N−(ヒドロキシ低級アルキル)−アミン類、たとえばN,N−ジメチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−アミン、またはトリ−(2−ヒドロキシエチル)アミン;N−メチル−D−グルカミン;およびアミノ酸類、たとえばアルギニン、リシン等が挙げられるが、その限りではない。用語「薬学的に許容される塩」はまた、アミノ官能基等の塩基性官能基を有する本発明の化合物、および薬学的に許容される無機酸または有機酸から調製される塩も指す。好適な酸類としては、硫酸水素塩、クエン酸、酢酸、シュウ酸、塩酸、臭化水素、ヨウ化水素、硝酸、リン酸、イソニコチン酸、乳酸、サリチル酸、酒石酸、アスコルビン酸、コハク酸、マレイン酸、ベシル酸、フマル酸、グルコン酸、グルカロン酸、糖酸、ギ酸、安息香酸、グルタミン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、およびp−トルエンスルホン酸が挙げられるが、その限りではない。
【0060】
本願明細書に開示される化合物が、命名されているかまたは構造により表現されているとき、化合物の溶媒和物(たとえば、水和物)またはその薬学的に許容される塩もまた含まれることを理解されたい。「溶媒和物」は、結晶化の間に、溶媒分子が結晶格子中に組み込まれた結晶形を指す。溶媒和物は、水または非水溶媒、たとえばエタノール、イソプロパノール、DMSO、酢酸、エタノールアミン、およびEtOAc等を含んでもよい。水が、結晶格子中に組み込まれる溶媒分子である溶媒和物は、一般に「水和物」と呼ばれる。水和物は、非共有分子間力により結合された、化学量論量または非化学量論量の水を含む。
【0061】
本願明細書に開示される化合物が、命名されているかまたは構造により表現されているとき、化合物は、その溶媒和物を含め、結晶形、非結晶形またはそれらの混合物で存在してもよいことを理解されたい。化合物または溶媒和物はまた、多形性(すなわち、異なることなる結晶形で生じる能力)を示してもよい。これらの異なる結晶形は一般に、「多形」として知られる。命名されているかまたは構造により表現されているとき、本願明細書に開示される化合物および溶媒和物(たとえば、水和物)は、その全ての多形も含むことを理解されたい。本願明細書で使用されるとき、用語「多形」は、本発明の化合物の固体結晶形またはその混成物を意味する。同一化合物の異なる多形は、異なる物理的特性、化学的特性および/または分光学的特性を示すことがある。異なる物理的特性としては、安定性(たとえば、熱または光に対する)、圧縮性および密度(製剤および製品製造で重要)、および溶出速度(バイオアベイラビリティに影響を及ぼすことがある)が挙げられるが、その限りではない。安定性の差は、化学反応性(たとえば、剤形が、ある多形から成るとき、別の多形から成るときよりも速く変色するような示差的酸化等)、または機械的性質(たとえば、速度論的に好ましい多形が熱力学的により安定した多形に変わるにつれて、錠剤が保存中に崩壊する)またはその両方(たとえば、ある多形の錠剤は、多湿で、より分解しやすい)の変化に起因する可能性がある。多形の異なる物理的性質は、それらの加工性に影響を及ぼす可能性がある。たとえば、ある多形は、たとえば、その粒子の形状または粒度分布が原因で、別の多形より、溶媒和物を形成しやすかったり、あるいは不純物の濾過や洗浄が困難であったりするかもしれない。加えて、ある多形は、ある一定の条件下で、別の多形に自然に変わることもある。
【0062】
本願明細書に開示される化合物が命名されているかまたは構造で表現されているとき、その化合物のクラスレート類(「包接化合物」)またはその薬学的に許容される塩類、溶媒和物または多形も含むことを理解されたい。本願明細書で使用されるとき、用語「クラスレート」は、ゲスト分子(たとえば、溶媒または水)が中に捕捉された空間(たとえば、チャネル)を含む結晶格子状の、本発明の化合物またはその塩を意味する。
【0063】
本願明細書で使用されるとき、用語「喘息」は、可逆性気道閉塞、気道炎症、および様々な刺激に対する気道反応性亢進を特徴とする、肺の疾病、障害または異常を意味する。
【0064】
「免疫抑制」は、免疫機能低下につながる、免疫系の何らかの構成要素の機能障害を意味する。この機能障害は、リンパ球機能の全血アッセイ、リンパ球増殖の検出およびT細胞表面抗原の発現評価を含む従来の任意の方法で測定することが可能である。抗ヒツジ赤血球細胞(SRBC)一次(IgM)抗体応答アッセイ(通常、プラークアッセイと呼ばれる)は、具体的な一方法である。本方法および他の方法は、Luster,M.I.,Portier,C.,Pait,D.G.,White,K.L.,Jr.,Gennings,C.,Munson,A.E.,and Rosenthal,G.J.(1992).“Risk Assessment in Immunotoxicology I:Sensitivity and Predictability of Immune Tests.”Fundam.Appl.Toxicol.,18,200-210に記述されている。T細胞依存性免疫原に対する免疫応答を測定することは、もう一つの特に有用なアッセイである(Dean,J.H.,House,R.V.,and Luster,M.I.(2001).“Immunotoxicology:Effects of,and Responses to,Drugs and Chemicals.”In Principles and Methods of Toxicology:Fourth Edition(A.W.Hayes,Ed.),pp.1415−1450,Taylor & Francis,Philadelphia,Pennsylvania)。
【0065】
本発明の化合物を使用して、免疫障害を有する対象を治療することができる。本願明細書で使用されるとき、用語「免疫障害」および同様の用語は、自己免疫障害を含む、動物の免疫系によって引き起こされる疾病、障害または異常を意味する。免疫障害は、免疫構成要素を有する疾病、障害または異常および実質的にまたは完全に免疫系介在性のものを含む。自己免疫障害は、動物自身の免疫系が誤って自己を攻撃し、それによって動物自身の体の細胞、組織、および/または器官を標的にするものである。たとえば、自己免疫反応は、多発性硬化症では神経系に、またクローン病では腸に向けられる。全身性エリテマトーデス(狼瘡)等の他の自己免疫障害では、冒される組織および器官が、同一疾病を有する個体間で異なることがある。ある狼瘡の患者は皮膚および関節が冒される可能性があり、他の患者は皮膚、腎臓、および肺が冒される可能性がある。最後に、免疫系によるある特定の組織への損傷は、I型糖尿病における膵臓のインスリン産生細胞の破壊と同様に、永久的になることもある。本発明の化合物および方法を使用して改善することが可能な具体的な自己免疫障害としては、神経系の自己免疫障害(たとえば、多発性硬化症、重症筋無力症、ギラン・バレー等の自己免疫神経障害、および自己免疫性ブドウ膜炎)、血液の自己免疫障害(たとえば、自己免疫性溶血性貧血、悪性貧血、および自己免疫性血小板減少症)、血管の自己免疫障害(たとえば、側頭動脈炎、抗リン脂質抗体症候群、ヴェーゲナー肉腫等の血管炎、およびベーチェット病)、皮膚の自己免疫障害(たとえば、乾癬、疱疹状皮膚炎、尋常性天疱瘡、および白斑)、胃腸管系の自己免疫障害(たとえば、クローン病、潰瘍性大腸炎、原発性胆汁性肝硬変、および自己免疫性肝炎)、内分泌腺の自己免疫障害(たとえば、I型または免疫介在性の糖尿病、グレーブス病、橋本甲状腺炎、自己免疫性卵巣炎および精巣炎、ならびに副腎の自己免疫障害);および多臓器の自己免疫障害(結合組織および骨格筋系疾患を含む)(たとえば、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、強皮症、多発性筋炎、皮膚筋炎、強直性脊椎炎等の脊椎関節症、およびシェーグレン症候群)等が挙げられるが、その限りではない。加えて、その他の免疫系介在性疾患、たとえば移植片対宿主病およびアレルギー性障害等も、本願明細書における免疫障害の定義に含まれる。多くの免疫障害が炎症に起因するため、免疫障害と考えられる障害と炎症性障害との間には若干の重複がある。本発明の目的では、このような重複する障害の場合には、免疫障害または炎症性障害のいずれと考えてもよい。本願明細書で、「免疫障害の治療」は、本発明の化合物または組成物を、免疫障害、そのような疾患の症状またはそのような疾患に対する素因を有する対象に、自己免疫障害、その症状、またはそれに対する素因を、治癒、軽減、変化させるか、これに影響を与えるか、またはこれを予防する目的で投与することを指す。
【0066】
本願明細書で使用されるとき、用語「アレルギー性障害」は、通常は無害の物質に対するアレルギー応答に関連した疾患、異常または障害を意味する。これらの物質は、環境中に存在することもあり(屋内の空気汚染物質および空中アレルゲン等)、あるいは非環境的(皮膚科学的アレルギーまたは食物アレルギーを引き起こす物等)のこともある。アレルゲンは、吸入、経口摂取、皮膚との接触または注入(虫刺されを含む)を含む、多数の経路を通して体内に入ることができる。多くのアレルギー性障害は、アレルギー抗体IgEを生成する素因である、アトピーと関連している。IgEは、体内のどこでもマスト細胞を感作することができるため、アトピーの個体は、複数の臓器で疾患が発現することが多い。本発明の目的では、アレルギー性障害は、感作アレルゲンに再暴露されると生じ、次には炎症性メディエータの放出を引き起こす、あらゆる過敏症を含む。アレルギー性障害としては、アレルギー性鼻炎(たとえば、枯草熱)、副鼻腔炎、鼻副鼻腔炎、慢性または再発性の中耳炎、薬物反応、虫刺され反応、ラテックス反応、結膜炎、蕁麻疹、アナフィラキシーおよびアナフィラキシー様反応、アトピー性皮膚炎、喘息、および食物アレルギーが挙げられるが、その限りではない。
【0067】
本発明の化合物を使用して、炎症性障害を有する対象を治療または予防することができる。本願明細書で使用されるとき、「炎症性障害」は、体組織の炎症または炎症性成分を有することを特徴とする、疾病、障害または異常を意味する。これらは、局所炎症反応および全身性炎症を含む。このような炎症性障害の例としては:皮膚移植片拒絶反応を含む移植拒絶反応;関節炎、関節リウマチ、変形性関節炎および骨吸収増加関連の骨疾患を含む、関節の慢性炎症性障害;回腸炎、潰瘍性大腸炎、バレット症候群、およびクローン病等の、炎症性腸疾患;喘息、成人呼吸促迫症候群、および慢性閉塞性気道疾患等の炎症性肺障害;角膜ジストロフィ、トラコーマ、回旋糸状虫症、ブドウ膜炎、交感性眼炎および眼内炎を含む眼の炎症性障害;歯肉炎および歯周病を含む歯肉の慢性炎症性障害;結核;ライ病;尿毒症の合併症、糸球体腎炎およびネフローゼを含む、腎臓の炎症性疾患;硬化性皮膚炎、乾癬および湿疹を含む、皮膚の炎症性障害;神経系の慢性脱髄疾患、多発性硬化症、AIDS関連の神経変性およびアルツハイマー病、感染性髄膜炎、脳脊髄炎、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症およびウイルス性または自己免疫性の脳炎を含む、中枢神経系の炎症性疾患;自己免疫障害、免疫複合体血管炎、全身性の狼瘡およびエリテマトーデス;全身性エリテマトーデス(SLE);および心筋症、虚血性心疾患高コレステロール血症、アテローム性動脈硬化症)等の、心臓の炎症性疾患;ならびに子癇前症を含む、顕著な炎症性成分を伴う様々な他の疾患;慢性肝不全、脳および脊髄の外傷、癌)等が挙げられる。また、グラム陽性ショックまたはグラム陰性ショック、出血性ショックまたはアナフィラキシー性ショック、あるいは炎症促進性サイトカイン類に応答して癌の化学療法により誘発されるショック、たとえば、炎症促進性サイトカイン類に関連したショックによって例示される、体の全身性炎症もあり得る。このようなショックは、たとえば、癌の化学療法で使用される化学療法剤によって誘発されることがある。本願明細書で、「炎症性障害の治療」は、本発明の化合物または組成物を、炎症性障害、このような障害の症状、またはこのような障害に対する素因を有する対象に、炎症性障害、その症状、またはそれに対する素因を、治癒、軽減、または変化させるか、あるいはこれに影響を与えるか、またはこれを予防する目的で投与することを指す。
【0068】
「有効量」は、化合物が対象に投与されたときに有益な結果が達成される化合物の量、あるいはインビボまたはインビトロで所望の活性を有する化合物の量である。炎症性障害および自己免疫障害の場合、有益な臨床成績は、治療が欠如している場合と比較した、疾患または障害関連の症状の程度または重症度の低減および/または対象の寿命延長および/または生活の質の向上を含む。対象に投与される化合物の正確な量は、疾患または異常のタイプおよび重症度、ならびに対象の特徴、たとえば全身的健康状態、年令、性別、体重および薬物に対する耐容性等によって異なるであろう。またこれは、炎症性障害または自己免疫障害の程度、重症度およびタイプ、または求められる免疫抑制の程度によっても異なるであろう。当業者は、上記要因および他の要因に応じて、好適な薬用量を決定することができるであろう。本願明細書に開示される化合物の有効量は一般に、1日当たり約1mg/m〜約10g/mの範囲であり、好ましくは1日当たり10mg/m〜約1g/mの範囲である。
【0069】
本発明の化合物は、1つまたは複数のキラル中心および/または二重結合を含んでもよく、したがって、二重結合異性体(すなわち、幾何異性体)、エナンチオマー、またはジアステレオマー等の立体異性体として存在する。本発明によれば、本発明の化合物を含め、本願明細書に記載の化学構造は、対応する化合物のエナンチオマーおよび立体異性体の全てを包含する、すなわち、立体異性体的に純粋な状態(たとえば、幾何学的に純粋、エナンチオマー的に純粋、またはジアステレオマー的に純粋)と、エナンチオマー異性体、ジアステレオマー異性体、および幾何異性体の混合物の両方を包含する。場合によっては、あるエナンチオマー、ジアステレオマー、または幾何異性体が、他に比べて優れた活性または改良された毒性または速度論的プロフィールを有するであろう。そのような場合、本発明の化合物のこのようなエナンチオマー類、ジアステレオマー類、および幾何異性体が好ましい。
【0070】
用語「IL−2の産生を阻害する」および同様の用語は、IL−2を産生および/または分泌することができる細胞(たとえば、Tリンパ球)で、IL−2合成を阻害すること(たとえば、転写(mRNA発現)、または翻訳(蛋白質発現)を阻害することによる)および/またはIL−2分泌を阻害することを意味する。同様に、用語「IL−4、IL−5、IL−13、GM−CSF、TNFαまたはIFN−γの産生を阻害すること」は、これらのサイトカイン類を産生および/または分泌することができる細胞で、合成を阻害すること(たとえば、転写、または翻訳を阻害することによる)および/または分泌を阻害すること意味する。
【0071】
本願明細書で使用されるとき、ラセミ混合物は、分子中の全てのキラル中心に関して、あるエナンチオマー約50%および対応するエナンチオマー約50%を意味する。本発明は、本発明の化合物のエナンチオマー的に純粋な混合物、エナンチオマー的に濃縮された混合物、ジアステレオマー的に純粋な混合物、ジアステレオマー的に濃縮された混合物、およびラセミ混合物を全て包含する。
【0072】
エナンチオマー混合物およびジアステレオマー混合物は一般に、キラル相ガスクロマトグラフィ、キラル相高速液体クロマトグラフィ、化合物のキラル塩錯体としての結晶化、またはキラル溶媒中での化合物の結晶化等の周知の方法で、それらの成分のエナンチオマーまたは立体異性体に分割することができる。エナンチオマー類およびジアステレオマー類はまた、周知の不斉合成法により、ジアステレオマー的にまたはエナンチオマー的に純粋な中間体、試薬および触媒からも得ることができる。
【0073】
患者に、たとえば、獣医学的使用または家畜の改良のために非ヒト動物に、あるいは臨床使用のためにヒトに、投与するとき、本発明の化合物は一般に、単離された形で、または医薬組成物中で単離された形として投与される。本願明細書で使用されるとき、「単離された」は、本発明の化合物が、(a)植物または細胞、好ましくは細菌培養物等の天然起源、または(b)合成有機化学反応混合物のいずれの他成分からも分離されていることを意味する。好ましくは、本発明の化合物は、従来の技術で精製される。本願明細書で使用されるとき、「精製される」は、単離されたとき、その単離物が、単離物の重量で少なくとも95%、好ましくは少なくとも98%の、まさに本発明の化合物を含むことを意味する。
【0074】
結果として安定した構造をもたらす置換基の選択および組合せのみを意図する。このような選択および組合せは、当業者に明白になり、過度の実験をせずに決定することが可能である。
【0075】
本発明は、以下の詳細な説明、および本発明の非限定的実施態様を例示することを目的とする説明に役立つ実施例を参照することにより、さらに十分に理解することができる。
【0076】
具体的な実施態様
本発明は、免疫抑制に、あるいは炎症状態、免疫障害、およびアレルギー性障害を治療または予防するのに特に有用な化合物および医薬組成物に関する。
【0077】
本発明は、免疫抑制に、あるいは炎症状態、免疫障害、およびアレルギー性障害を治療または予防するのに特に有用な化合物および医薬組成物に関する。本発明の実施態様は、発明の概要に上述した化合物、たとえば、式(I)で表されるものを含む。
【0078】
本願明細書に開示される全ての特徴、具体的な実施態様および個々の置換基は、任意の組合せで組み合わせることが可能である。本明細書に開示される各特徴、実施態様または置換基は、同一、等価、または類似の目的にかなう代替の特徴、実施態様または置換基で置き換えることが可能である。化合物の場合、本願明細書に開示の化学式における変数の具体的な値(たとえば、本願明細書に開示の代表的な化合物で表示される値)は、結果として安定した構造をもたらす任意の組合せで組み合わせることが可能である。さらに、あるタイプの化学構造における置換基の具体的な値は(好ましいか否かに関わらない)、同一または異なるタイプの化学構造における他の置換基の値(好ましいか否かに関わらない)と組み合わせることが可能である。このように、特に明記されない限り、開示されている各特徴、実施態様または置換基は、一連の包括的な等価または類似の特徴、実施態様または置換基の一例に過ぎない。
【0079】
代表的な化合物
以下の実施例の記載に従って製造される代表的な本発明の化合物を、下表1に示す。
【0080】
【表1】

【0081】
【表2】

【0082】
【表3】

【0083】
【表4】

【0084】
【表5】

【0085】
【表6】

【0086】
【表7】

【0087】
【表8】

【0088】
【表9】

【0089】
【表10】

【0090】
【表11】

【0091】
作用機作
抗原に応答したT−リンパ球の活性化は、カルシウムイオン振動に依存する。T−リンパ球におけるカルシウムイオン振動は、T細胞抗原受容体の刺激により誘発され、また貯蔵作動性(stored−operated)Ca2+−放出−活性化Ca2+(CRAC)チャネルを介したカルシウムイオン流入を伴う。チャネルの詳細な電気生理学的プロフィールは存在するが、Orai1/CRACM1(Vig,Science(2006),312:1220−3,Feske,Nature(2006),441:179−85)と名付けられた、最近の細孔形成単位同定まで、CRACイオンチャネルの分子構造は同定されていなかった。したがって、CRACイオンチャネルの阻害は、ICRAC電流の抑制を測定することにより測定することが可能である。T細胞におけるカルシウムイオン振動は、T細胞活性化に不可欠な幾つかの転写因子(たとえば、NFAT、Oct/OapおよびNFκB等)の活性化に関与している(Lewis,Biochemical Society Transactions(2003),31:925−929、その全教示内容を、参照により本願明細書に援用する)。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、本発明の化合物はCRACイオンチャネルの活性を阻害するため、免疫細胞活性化を阻害すると考えられる。
【0092】
治療および予防の方法
本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、クラスレート、およびそのプロドラッグ、あるいは本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、クラスレート、およびそのプロドラッグを含む医薬組成物の有効量が、免疫抑制を必要としている患者、あるいは炎症状態、免疫障害、またはアレルギー性障害の治療または予防を必要としている患者に投与される。このような患者は、治療を受けたことがなくてもよく、従来の治療法に対して部分的応答または無応答を経験してもよい。
【0093】
対象における個々の炎症状態、免疫障害、またはアレルギー性障害の応答性は、直接(たとえば、本発明の化合物の投与後に、炎症性サイトカイン類(たとえばIL−2、IL−4、IL−5、IL−13、GM−CSF、TNFα、IFN−γ等)の血中濃度を測定することによる)測定することができ、あるいは疾患の病因および進行に関する知識に基づいて推測することもできる。本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩類、溶媒和物、クラスレート類、およびそのプロドラッグ類は、ヒトで使用する前に、所望の治療活性または予防活性に関して、インビトロまたはインビボでアッセイすることができる。たとえば、炎症状態、免疫障害またはアレルギー性障害の既知の動物モデルを使用して、発明の化合物の安全性および有効性を証明することができる。
【0094】
医薬組成物および剤形
本発明の医薬組成物および剤形は、1つまたは複数の有効成分を相対量で含み、また所与の医薬組成物または剤形を免疫抑制のために使用したりあるいは炎症状態、免疫障害、およびアレルギー性障害を治療または予防するために使用したりすることができるような方法で処方される。好ましい医薬組成物および剤形は、本発明の化合物、またはその薬学的に許容されるプロドラッグ、塩、溶媒和物、またはクラスレートを、場合により1つまたは複数の追加的な活性物質との組み合わせで含む。
【0095】
本発明の単一投与剤形は、患者への経口投与、粘膜(たとえば、経鼻、舌下、経膣、頬側、または直腸)投与、非経口(たとえば、皮下、静脈内、ボーラス注入、筋肉内、または動脈内)投与、または経皮投与に好適である。剤形の例としては:錠剤;カプレット剤;軟弾性ゼラチンカプセル剤等の、カプセル剤;カシェー剤;トローチ剤;薬用ドロップ;分散剤;坐剤;軟膏剤;パップ剤(湿布剤);ペースト剤;散剤;包帯材;クリーム剤;硬膏剤;液剤;パッチ;エアロゾル(たとえば、鼻内噴霧または吸入器);ゲル類;懸濁液(たとえば、水性または非水性液体懸濁液、水中油型乳剤、または油中水型液体乳剤)、液剤およびエリキシル剤を含む、患者への経口投与または粘膜投与に好適な液体剤形;患者への非経口投与に好適な液体剤形;および再構成して、患者に非経口投与するのに好適な液体剤形を提供することができる無菌固体(たとえば、結晶性固体または非晶質固体)が挙げられるが、その限りではない。
【0096】
本発明の剤形の組成物、形状、およびタイプは、一般にそれらの用途に応じて異なる。たとえば、粘膜投与に好適な剤形は、同一適応症の治療に使用される経口剤形より少量の有効成分を含有することがある。本発明のこの態様は、当業者に容易に明白になるであろう。たとえば、Remington’s Pharmaceutical Sciences(1990)18th ed., Mack Publishing,Easton PAを参照されたい。
【0097】
代表的な医薬組成物および剤形は、1つまたは複数の賦形剤を含有する。好適な賦形剤は薬学の技術に熟練した者に周知であり、また好適な賦形剤の非限定的例を本願明細書で提供する。ある特定の賦形剤が、医薬組成物または剤形に組み入れるのに好適か否かは、その剤形を患者に投与する方法を含むがその限りではない、当該技術分野で周知の様々な要因に左右される。たとえば、錠剤等の経口用剤形は、非経口剤形で使用するのに適さない賦形剤を含んでもよい。
【0098】
ある特定の賦形剤の適合性はまた、その剤形中の具体的な有効成分によっても左右される。たとえば、幾つかの有効成分の分解は、乳糖等の若干の賦形剤によって、または水に暴露されたときに、加速されることがある。第一級または第二級アミン類(たとえば、N−デスメチルベンラファキシンおよびN,N−ジデスメチルベンラファキシン)を含む有効成分は、このような加速された分解を特に受けやすい。結果として、本発明は、乳糖を、含むとしても僅かしか含まない、医薬組成物および剤形を包含する。本願明細書で使用されるとき、用語「無乳糖」は、乳糖が存在するとしても、その量が、有効成分の分解速度を実質的に高めるには不十分であることを意味する。本発明の無乳糖組成物は、当該技術分野で周知の賦形剤を含んでもよく、また、たとえば、米国薬局方(U.S.Pharmacopeia)(USP)SP(XXI)/NF(XVI)に記載されている。概して、無乳糖組成物は、有効成分、バインダー/フィラー、および潤滑剤を、薬学的に適合しかつ薬学的に許容される量で含む。好ましい無乳糖剤形は、有効成分、微結晶性セルロース、前ゼラチン化澱粉、およびステアリン酸マグネシウムを含む。
【0099】
水は、一部の化合物の分解を促進することがあるため、本発明はさらに、有効成分を含む無水の医薬組成物および剤形を包含する。たとえば、水(たとえば、5%)の添加は、有効期限または経時的な製剤安定性等の特徴を決定するために、長期保存をシミュレートする手段として、薬学技術で広く受け入れられている。たとえば、Jens T.Carstensen(1995)Drug Stability:Principles & Practice,2d Ed.,Marcel Dekker,NY,NY,379−80を参照されたい。事実上、水および熱は、一部の化合物の分解を加速する。このように、一般に、製剤の製造、取扱、包装、保存、輸送および使用の間に、水分および/または湿気に出会うため、水が製剤に及ぼす影響が大変重要なことがある。
【0100】
本発明の無水の医薬組成物および剤形は、無水または低含水量の成分および低水分条件または低湿度条件を使用して調製することができる。製造、包装、および/または保存中に、水分および/または湿気とのかなりの接触が予想されるのであれば、乳糖および第一級アミンまたは第二級アミンを含む少なくとも1つの有効成分を含む医薬組成物および剤形は、好ましくは無水である。
【0101】
無水の医薬組成物は、その無水性が維持されるように調製および保存されるべきである。したがって、無水の組成物は、水への暴露が防止されることが知られている材料を使用して、好適な処方キットに含められるように包装されることが好ましい。好適な包装の例としては、密閉ホイル、プラスチック、一回量容器(たとえば、バイアル)、ブリスターパック、およびストリップパックが挙げられるが、その限りではない。
【0102】
本発明はさらに、有効成分が分解される速度を低減する1つまたは複数の化合物を含む医薬組成物および剤形を包含する。本願明細書で「安定剤」と呼ばれるこのような化合物としては、アスコルビン酸、pH緩衝剤、または塩緩衝剤等の酸化防止剤が挙げられるが、その限りではない。
【0103】
剤形中の有効成分の量および具体的なタイプは、限定されるものではないが、賦形剤の量およびタイプと同様、患者への投与経路等の因子によって異なる可能性がある。しかし、本発明の代表的な剤形は、本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、クラスレート、またはプロドラッグを、約1〜約1000mgの量で、好ましくは約50〜約500mgの量で、最も好ましくは約75〜約350mgの量で、含む。本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、クラスレート、またはプロドラッグの一般的な総日用量は、1日当たり約1〜約5000mgの範囲であってもよく、好ましくは1日当たり約50〜約1500mgの量、より好ましくは1日当たり約75〜約1000mgの量であってもよい。所与の患者に好適な用量および剤形を決定することは、当該技術分野の技術の範囲内である。
【0104】
経口剤形
経口投与に好適な本発明の医薬組成物は、限定されるものではないが、錠剤(たとえば、チュアブル錠)、カプレット剤、カプセル剤、および液剤(たとえば、香味シロップ)等の、別個の剤形として提供することができる。このような剤形は、所定の量の有効成分を含有し、当業者に周知の調剤方法で調製することが可能である。一般的に、Remington’s Pharmaceutical Sciences(1990)18th ed.,Mack Publishing,Easton PAを参照されたい。
【0105】
本発明の代表的な経口剤形は、従来の調剤配合技術に従って、混合状態の有効成分を、少なくとも1つの賦形剤と組み合わせることにより調製される。賦形剤は、投与に望ましい剤形に応じて多種多様な形態であってもよい。たとえば、経口液剤またはエアロゾル剤形で使用するのに好適な賦形剤としては、水、グリコール類、油類、アルコール類、香味剤、保存料、および着色剤が挙げられるが、その限りではない。固体の経口剤形(たとえば、散剤、錠剤、カプセル剤、およびカプレット剤)で使用するのに好適な賦形剤の例としては、澱粉、糖類、微結晶性セルロース、希釈剤、造粒剤、潤滑剤、バインダー、および崩壊剤が挙げられるが、その限りではない。
【0106】
錠剤およびカプセル剤は、投与しやすいため、最も好都合な一回量経口剤形であり、その場合、固体の賦形剤が使用される。必要に応じて、標準的な水性技術または非水技術で錠剤をコーティングすることができる。このような剤形は、調剤方法のいずれで調製してもよい。概して、医薬組成物および剤形は、有効成分と、液体担体、微粉化した固体担体、またはその両者とを一様かつ本質的に混合し、次いで、必要に応じて生成物を所望の体裁に成形することにより調製される。
【0107】
たとえば、錠剤は、圧縮または成形によって調製することができる。圧縮錠剤は、粉末または顆粒等の自由に流動する状態の有効成分を、場合により賦形剤と混合して、適当な機械内で圧縮することにより、調製することができる。湿性錠は、不活性な希釈液で湿らせた粉末合物の混合物を適当な機械内で成形することによって製造することができる。
【0108】
本発明の経口剤形で使用することができる賦形剤の例としては、バインダー、フィラー、崩壊剤、および潤滑剤が挙げられるが、その限りではない。医薬組成物および剤形での使用に好適なバインダーとしては、コーンスターチ、馬鈴薯澱粉、または他の澱粉、ゼラチン、天然ゴムおよび合成ゴムたとえばアカシア、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸、他のアルギン酸塩、トラガント末、グアーガム、セルロースおよびその誘導体(たとえば、エチルセルロース、酢酸セルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム)、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、前ゼラチン化澱粉、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、(たとえば、No.2208、No.2906、No.2910)、微結晶性セルロース、およびそれらの混合物が挙げられるが、その限りではない。
【0109】
微結晶性セルロースの好適な形態としては、AVICEL−PH−101、AVICEL−PH−103 AVICEL RC−581、AVICEL−PH−105(FMC Corporation,American Viscose Division,Avicel Sales,Marcus Hook,PAから入手可能)として販売されている材料、およびそれらの混合物が挙げられるが、その限りではない。具体的なバインダーは、微結晶性セルロースと、AVICEL RC−581として販売されているカルボキシメチルセルロースナトリウムとの混合物である。好適な無水または低水分賦形剤または添加物としては、AVICEL−PH−103JおよびStarch 1500 LMが挙げられる。
【0110】
本願明細書に開示されている医薬組成物および剤形での使用に好適なフィラーの例としては、タルク、炭酸カルシウム(たとえば、顆粒または粉末)、微結晶性セルロース、粉末セルロース、デキストレート類、カオリン、マンニトール、ケイ酸、ソルビトール、澱粉、前ゼラチン化澱粉、およびそれらの混合物が挙げられるが、その限りではない。本発明の医薬組成物中のバインダーまたはフィラーは一般に、医薬組成物または剤形の約50〜約99重量パーセントで存在する。
【0111】
崩壊剤は、水性環境に暴露されたとき崩壊する錠剤を提供するために、本発明の組成物で使用される。崩壊剤を余りにも多く含有する錠剤は、保存中に崩壊する可能性があり、余りにも少量を含有するものは、所望の速度または所望の条件で崩壊しない可能性がある。このように、有効成分の放出を害するように変えるほど多過ぎもせず少な過ぎもしない十分量の崩壊剤を使用して、本発明の固体の経口剤形を形成すべきである。使用される崩壊剤の量は、製剤のタイプに基づいて変化し、当業者に容易に理解される。代表的な医薬組成物は、約0.5〜約15重量パーセントの崩壊剤、好ましくは約1〜約5重量パーセントの崩壊剤を含む。
【0112】
本発明の医薬組成物および剤形で使用することができる崩壊剤としては、アガーアガー、アルギン酸、炭酸カルシウム、微結晶性セルロース、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ポラクリリンカリウム、グリコン酸澱粉ナトリウム、馬鈴薯またはタピオカ澱粉、他の澱粉類、前ゼラチン化澱粉、その他の澱粉、クレイ、他のアルギン類、他のセルロース類、ゴム類、およびそれらの混合物が挙げられるが、その限りではない。
【0113】
本発明の医薬組成物および剤形で使用することができる潤滑剤としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、鉱油、軽油、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコール、他のグリコール類、ステアリン酸、ラウリル硫酸ナトリウム、タルク、水添植物油(たとえば、落花生油、綿実油、ヒマワリ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、および大豆油)、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸エチル、ラウリン酸エチル、寒天、およびそれらの混合物が挙げられるが、その限りではない。補足的な潤滑剤としては、たとえば、サイロイドシリカゲル(AEROSIL200,Baltimore,MDのW.R.Grace Co.製)、合成シリカの凝固エアロゾル(Plano,TXのDegussa Co.から販売)、CAB−O−SIL(Boston,MAのCabot Co.から販売されている発熱性二酸化ケイ素製品)、およびそれらの混合物が挙げられる。使用されるとしても、潤滑剤は一般に、組み込まれる医薬組成物または剤形の約1重量パーセント未満の量で使用される。
【0114】
放出制御剤形
本発明の有効成分は、当業者に周知の除法手段または送達デバイスで投与することができる。例として、米国特許第3,845,770号明細書;米国特許第3,916,899号明細書;米国特許第3,536,809号明細書;米国特許第3,598,123号明細書;米国特許第4,008,719号明細書、米国特許第5,674,533号明細書、米国特許第5,059,595号明細書、米国特許第5,591,767号明細書、米国特許第5,120,548号明細書、米国特許第5,073,543号明細書、米国特許第5,639,476号明細書、米国特許第5,354,556号明細書、および米国特許第5,733,566号明細書(それぞれ、参照により本願明細書に援用する)に記載されているものが挙げられるが、その限りではない。様々な比率で所望の放出プロフィールを提供するための、たとえば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、他のポリマーマトリックス、ゲル、浸透膜、浸透システム、多層コーティング、微粒子、リポソーム、ミクロスフェア、またはそれらの組合せを使用し、このような剤形を使用して、1つまたは複数の有効成分の緩徐なまたは制御された放出を提供することができる。本願明細書に記載のものを含め、当業者に周知の好適な放出制御製剤は、本発明の有効成分と共に使用するために容易に選択することができる。本発明はこのように、放出制御に適した錠剤、カプセル剤、ジェルキャップ剤、およびカプレット剤等の、これに限定されない、経口投与に好適な単一投与剤形を包含する。
【0115】
全ての放出制御医薬品は、非制御対応物で達成されるもの以上に薬物療法を改良するという共通の目的を有する。理想的には、最適に設計された放出制御製剤の医療における使用は、最小限の薬物を最小限の時間使用して異常を治癒または制御することを特徴とする。放出制御製剤の利点としては、薬剤の活性延長、投与頻度の減少、および患者の服薬遵守増進などがある。加えて、放出制御製剤を使用して、作用発現時期または他の特徴、たとえば薬物血中濃度に影響を与えることができ、したがって副(たとえば、有害)作用の発生に影響を与えることができる。
【0116】
ほとんどの放出制御製剤は、所望の治療効果を速やかにもたらす薬剤(有効成分)の量を最初に放出し、このレベルの治療効果または予防効果を長期間にわたって維持する薬量を徐々にかつ持続的に放出するように設計されている。体内でこの一定の薬剤レベルを維持するためには、代謝されて体外に排出される薬剤の量を補う速度で、薬剤を剤形から放出させなければならない。有効成分の放出制御は、pH、温度、酵素、水、または他の生理学的条件または化合物を含むがその限りではない様々な条件で刺激することができる。
【0117】
本発明のある特定の徐放製剤は、微結晶性セルロースをさらに含み、ヒドロキシプロピルメチル−セルロースを含んでもよい、エチルセルロースとヒドロキシプロピルメチルセルロースとの混合物でコーティングされた球状体中に、本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、クラスレート、またはプロドラッグの治療有効量または予防有効量を含む。このような徐放製剤は、米国特許第6,274,171号明細書(その全教示内容を、参照により本願明細書に援用する)に従って調製することができる。
【0118】
本発明のある特定の放出制御製剤は、本発明の化合物を約6〜約40重量%、微結晶性セルロース、NFを約50〜約94重量%含み、また場合によりヒドロキシプロピルメチルセルロース、USPを約0.25〜約1重量%含んでもよく、球状体はエチルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースからなる塗膜でコーティングされている。
【0119】
非経口剤形
非経口剤形は、皮下、静脈内(ボーラス注入を含む)、筋肉内、および動脈内を含むがその限りではない様々な経路で、患者へのこれらの投与は一般に、汚染物質に対する患者の自然防護を回避するため、非経口剤形は、無菌であるかまたは患者への投与前に滅菌できることが好ましい。非経口剤形の例としては、注入の準備が整っている液剤、薬学的に許容される注入用媒体に溶解または懸濁する準備が整っている乾燥製品、注入の準備が整っている懸濁剤、および乳剤が挙げられるが、その限りではない。
【0120】
本発明の非経口剤形を提供するために使用できる好適な媒体は、当業者に周知である。例として:USP注射用水;塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、デキストロース注射液、デキストロースおよび塩化ナトリウム注射液、ならびに乳酸リンゲル注射液等の、これらに限定されない、水性媒体;エチルアルコール、ポリエチレングリコール、およびポリプロピレングリコール等の、これらに限定されない、水混和性媒体;および、トウモロコシ油、綿実油、落花生油、ゴマ油、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピルおよび安息香酸ベンジル等の、これらに限定されない、非水性媒体;が挙げられるが、その限りではない。
【0121】
本願明細書に開示の1つまたは複数の有効成分の溶解性を高める化合物も、本発明の非経口剤形に組み入れることができる。
【0122】
経皮剤形、局所剤形および経粘膜剤形
本発明の経皮剤形、局所剤形、および経粘膜剤形としては、点眼液、スプレー剤、エアロゾル剤、クリーム剤、ローション剤、軟膏剤、ゲル剤、液剤、乳剤、懸濁剤、または当業者に周知の他の剤形が挙げられるが、その限りではない。たとえば、Remington’s Pharmaceutical Sciences(1980 & 1990)16th and 18th eds.,Mack Publishing,Easton PAおよびIntroduction to Pharmaceutical Dosage Forms(1985)4th ed.,Lea & Febiger,Philadelphiaを参照されたい。口腔内の粘膜組織の治療に好適な剤形は、口腔洗浄液または経口ゲル剤として調剤することができる。さらに、経皮剤形としては、「リザーバ型」パッチまたは「マトリックス型」パッチがあり、これらは皮膚に適用して一定時間装着し、所望の量の有効成分を浸透させることができる。
【0123】
本発明に包含される経皮剤形、局所剤形、および粘膜剤形を提供するために使用することができる好適な賦形剤(たとえば、担体および希釈剤)および他の材料は、調剤技術における熟練者に周知であり、また所与の医薬組成物または剤形が適用される個々の組織によって異なる。このことを念頭において、代表的な賦形剤として、ローション剤、チンキ剤、クリーム剤、乳剤、ゲル剤、または軟膏剤を形成するための、非毒性であり、薬学的に許容される、水、アセトン、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタン−1,3−ジオール、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、鉱油およびそれらの混合物が挙げられるが、その限りではない。必要に応じて、保湿剤または湿潤剤も医薬組成物および剤形に添加することができる。このような追加成分の例は、当該技術分野で周知である。たとえば、Remington’s Pharmaceutical Sciences(1980 & 1990)16th and 18th eds.,Mack Publishing,Easton PAを参照されたい。
【0124】
治療すべき具体的な組織に応じて、本発明の有効成分による治療前に、治療と併せて、または治療後に、追加成分を使用してもよい。たとえば、浸透促進剤を使用して、組織への有効成分送達を助けることができる。好適な浸透促進剤としては:アセトン;エタノール、オレイル、およびテトラヒドロフリル等の、様々なアルコール類;ジメチルスルホキシド等の、アルキルスルホキシド類;ジメチルアセトアミド;ジメチルホルムアミド;ポリエチレングリコール;ポリビニルピロリドン等の、ピロリドン類;コリドングレード(Kollidongrade)(ポビドン、ポリビドン);尿素;および様々な水溶性または不溶性の糖エステル類、たとえばTween80(ポリソルベート80)およびSpan60(モノステアリン酸ソルビタン)等;が挙げられるが、その限りではない。
【0125】
医薬組成物または剤形のpH、または医薬組成物または剤形が適用される組織のpHを調整して、1つまたは複数の有効成分の送達も改善することができる。同様に、溶媒担体の極性、そのイオン強度、または浸透圧を調整して、送達を改善することができる。ステアリン酸等の化合物を医薬組成物または剤形に添加して、送達を改善すべく1つまたは複数の有効成分の親水性または親油性を有利に変えることもできる。これに関して、ステアリン酸は、製剤の脂質媒体、乳化剤、または界面活性剤の役割、および送達促進剤または浸透促進剤の役割を果たす。有効成分の異なる塩類、水和物または溶媒和物を使用して、結果として生じる組成物の性質をさらに調整することができる。
【0126】
併用療法
免疫抑制、あるいは炎症状態および免疫障害の治療または予防を必要としている患者における、免疫抑制方法あるいは炎症状態および免疫障害の治療方法または予防方法はさらに、本発明の化合物を投与される患者に、1つまたは複数の他の有効な薬剤の有効量を投与することを含む。このような有効な薬剤は、免疫抑制あるいは炎症状態または免疫障害に従来使用されていたものを含んでもよい。こうした他の有効な薬剤は、本発明の化合物と併用投与したときに、他の利益を提供するものであってもよい。たとえば、他の治療薬は、限定されるものではないが、ステロイド薬、非ステロイド系抗炎症薬、抗ヒスタミン薬、鎮痛薬、免疫抑制薬およびそれらの好適な混合物を含んでもよい。このような併用療法では、本発明の化合物および他の薬剤の両方を、従来の方法で対象(たとえば、ヒト、男性または女性)に投与する。薬剤は、1つの剤形で投与することも、別々の剤形で投与することも可能である。他の治療薬の有効量および剤形は、当業者に周知である。他の治療薬の最適有効量の範囲を決定することは、十分に当業者の権限の範囲内である。
【0127】
別の治療薬が対象に投与される本発明の一実施態様では、本発明の化合物の有効量は、他の治療薬が投与されないときの、その有効量より少ない。別の実施態様では、従来の薬剤の有効量は、本発明の化合物が投与されないときの、その有効量より少ない。このようにして、いずれかの薬剤の高用量に関連した望ましくない副作用を最小限に抑えることが可能である。他の潜在的な利点(改良された投与計画改善および/または薬剤コスト削減を含むが、その限りではない)は、当業者に明白になるであろう。
【0128】
自己免疫および炎症状態に関連した一実施態様では、他の治療薬は、ステロイド薬であっても非ステロイド系抗炎症薬であってもよい。特に有用な非ステロイド系抗炎症薬としては、アスピリン、イブプロフェン、ジクロフェナク、ナプロキセン、ベノキサプロフェン、フルルビプロフェン、フェノプロフェン、フルブフェン、ケトプロフェン、インドプロフェン、ピロプロフェン、カルプロフェン、オキサプロジン、プラモプロフェン、ムロプロフェン、トリオキサプロフェン、スプロフェン、アミノプロフェン、チアプロフェン酸、フルプロフェン、ブクロキシ酸、インドメタシン、スリンダク、トルメチン、ゾメピラク、チオピナク、ジドメタシン、アセメタシン、フェンチアザク、クリダナク、オキシピナク、メフェナム酸、メクロフェナム酸、フルフェナム酸、ニフルム酸、トルフェナム酸、ジフルリサル、フルフェニサル、ピロキシカム、スドキシカム、イソキシカム;アスピリン、サリチル酸ナトリウム、トリサリチル酸コリンマグネシウム、サルサラート、ジフルニサル、サリチルサリチル酸、スルファサラジン、およびオルサラジンを含む、サリチル酸誘導体;アセトアミノフェンおよびフェナセチンを含む、パラアミノフェノール誘導体;インドメタシン、スリンダクおよびエトドラクを含む、インドールおよびインデン酢酸類;トルメチン、ジクロフェナク、およびケトロラクを含む、ヘテロアリール酢酸類;メフェナム酸、およびメクロフェナム酸を含む、アントラニル酸類(フェナム酸塩類);オキシカム類(ピロキシカム、テノキシカム)、およびピラゾリジンジオン類(フェニルブタゾン、オキシフェンタルタゾン)を含むエノール酸類;およびナブメトンを含む、アルカノン類、ならびにその薬学的に許容される塩類およびそれらの混合物が挙げられるが、その限りではない。NSAIDのより詳細な記述については、Goodman & Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics 617−57中のPaul A. Insel,Analgesic−Antipyretic and Antiinflammatory Agents and Drugs Employed in the Treatment of Gout,(Perry B. Molinhoff and Raymond W.Ruddon eds.,9th ed 1996)およびGlen R.Hanson,Analgesic,Antipyretic and Anti−Inflammatory Drugs in Remington:The Science and Practice of Pharmacy Vol II 1196−1221(A.R. Gennaro ed. 19th ed.1995)(いずれもその全内容を参照により本願明細書に援用する)を参照されたい。
【0129】
アレルギー性障害との特別な関連で、他の治療薬は抗ヒスタミン薬であってもよい。有用な抗ヒスタミン薬としては、ロラタジン、セチリジン、フェキソフェナジン、デスロラタジン、ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン、クロルシクリジン、ピリラミン、プロメタジン、テルフェナジン、ドキセピン、カルビノキサミン、クレマスチン、トリペレナミン、ブロムフェニラミン、ヒドロキシジン、シクリジン、メクリジン、シプロヘプタジン、フェニンダミン、アクリバスチン、アゼラスチン、レボカバスチン、およびそれらの混合物が挙げられるが、その限りではない。抗ヒスタミン薬のより詳細な記述については、Goodman & Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics(2001)651−57,10th ed)を参照されたい。
【0130】
免疫抑制薬としては、糖質コルチコイド類、副腎皮質ステロイド薬(プレドニゾンまたはソルメドール等)、T細胞遮断薬(シクロスポリンAおよびFK506等)、プリン類縁体(アザチオプリン(イムラン)等)、ピリミジン類縁体(シトシンアラビノシド)、アルキル化剤(ナイトロジェンマスタード、フェニルアラニンマスタード、ブスルファン、およびシクロホスファミド等)、葉酸アンタゴニスト(アミノプテリンおよびメトトレキサート等)、抗生剤(ラパマイシン、アクチノマイシンD、マイトマイシンC、ピュロマイシン、およびcクロラムフェニコール等)、ヒトIgG、抗iリンパ球グロブリン(ALG)、および抗体類(抗CD3(OKT3)、抗CD4(OKT4)、抗CD5、抗CD7、抗IL−2受容体、抗α/βTCR、抗ICAM−1、抗CD20(リツキサン)、抗IL−12およびイムノトキシンに対する抗体)が挙げられる。
【0131】
当業者は、前述および他の有用な併用療法を理解し、正しく評価するであろう。このような併用療法の潜在的な利点としては、異なる薬効プロフィール、個々の有効成分をそれぞれ少量使用して、有毒な有効成分を最小限に抑えられること、薬効の相乗的改善、投与しやすさまたは使用しやすさの改善および/または化合物の調製または製剤の総費用低減が挙げられる。
【0132】
他の実施態様
本発明の化合物は、研究道具として(たとえば、他の潜在的CRACインヒビター、またはIL−2、IL−4、IL−5、IL−13、GM−CSF、TNFα、および/またはIFN−γインヒビターを評価するための陽性対照として)使用することが可能である。本発明の化合物および組成物の、こうした使用および他の使用ならびに実施態様は、当業者に明白になるであろう。
【0133】
本発明の化合物の調製を詳述している以下の実施例を参照することにより、本発明はさらに明確に規定される。材料および方法の両方に対する多くの変更を、本発明の目的および関心から逸脱することなく実施できることは、当業者に明白になるであろう。以下の実施例は、本発明の理解を助けるために述べるものであって、本願明細書に記載および請求する本発明を具体的に限定するものと解釈してはならない。当業者の権限の範囲内である、現在知られているかまたは今後開発される全ての等価物の代用を含め、本発明のこのような変形は、製剤の変更または実験計画の些細な変更は、本願明細書に組み入れられる本発明の範囲内であると考えるものとする。
【実施例】
【0134】
実験論拠
いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、本発明の化合物はCRACイオンチャネルを阻害し、それによってIL−2ならびに炎症反応および免疫応答と関連のある他の重要なサイトカイン類の産生を阻害すると考えられる。以下の実施例は、こうした特性を示すものである。
【0135】
材料および一般的方法
以下で使用される試薬および溶媒は、Aldrich Chemical Co.(Milwaukee,Wisconsin,USA)等から市販されている。H−NMRおよび13C−NMRスペクトルは、Varian 300MHz NMR分光計で記録した。有意ピークを、以下の順で示す:δ(ppm):化学シフト、多重度(s,一重線;d,二重線;t,三重線;q,四重線;m,多重線;brs,広い一重線)、ヘルツ(Hz)による結合定数および陽子数。
【0136】
マニュアルパッチクランプ実験は、室温(21〜25℃)で、密封した全細胞構成で実施した。パッチピペットは、ホウケイ酸塩ガラス毛細管から作り、標準細胞内液の充填後、2〜4MΩの抵抗を有していた。コンピューターベースのパッチクランプ増幅装置(EPC−10,HEKA,Lambrecht,Germany)で、高分解能電流記録を得た。細胞内の陰イオンとしてグルタミン酸塩を用いたとき、外液と内液との間の液間電位差が10mVになるように、全ての電圧を補正した。電流を2.9kHzでフィルタリングし、10μs間隔でデジタル化した。容量性電流および直列抵抗を測定し、EPC−10の自動キャパシタンス補償を使用して各ランプ電圧前に補正した。
【0137】
オートパッチクランプ実験は、室温(21〜25℃)で、QPatch 16(Sophion Bioscience,Ballerup,Denmark)を用いて、実施した。ギガ絶縁全細胞構成を確立した直後、細胞膜電位を0mVで固定した。次いで、−100〜+100mVの電圧範囲にわたり持続時間50msのランプ電圧を、0.33Hzで刺激した。電流を2.9kHzでフィルタリングし、200μs間隔でデジタル化した。容量性電流および直列抵抗を測定し、自動キャパシタンス補償を使用して各ランプ電圧前に補正した。
【0138】
実施例1:本発明の代表的な例示化合物の合成
ピリジルボロン酸類の基本的鈴木カップリング:
【化10】


N−(5−ブロモピラジン−2−イル)−2,6−ジフルオロベンズアミド(20g,63.7mmol)、4−メチルピリジン−3−イルボロン酸(8.27g,60.6mmol)およびパラジウム(3.19g,4.5mmol)の溶液を、THF 368mlに溶解し、約50℃に加温した。DI水73mlを、それに溶解した炭酸カリウムと共に反応混合物に加え、その反応混合物を油浴中で加熱還流した。反応混合物を6時間還流させると、溶液は暗赤褐色/褐色に変わった。反応を冷却し、THFを蒸発させた。酢酸エチルおよび水を加え、勢いよく撹拌した。生成物16.16g(82%)が溶液からクラッシュし、これを濾過した。この生成物は、塩化メチレンメタノール混合物に溶けやすい。僅かな不純物が、次のステップに持ち込まれた。
【0139】
テトラヒドロピリジン合成のための基本手順:
【化11】


2,6−ジフルオロ−N−(5−(4−メチルピリジン−3−イル)ピラジン−2−イル)ベンズアミド(16.1g,49.38mmol)を、塩化メチレン(0.15M)およびベンジルブロミド(11.75ml,98.8mmol)に溶解した。この反応を一晩、撹拌した。溶媒の90%を除去し、勢いよく撹拌しながら酢酸エチルを加えた。固体を濾過し、酢酸エチルで数回洗浄してベンジルブロミドを除去した。次いで、1−ベンジル−3−(5−(2,6−ジフルオロベンズアミド)ピラジン−2−イル)−4−メチルピリジニウムブロミドを、イソプロパノール/塩化メチレンおよび水素化ホウ素ナトリウム(7.5g,19.7mmol)に溶解した。この反応を36時間、撹拌した。水および塩化メチレンと混合した後、残留物をカラムクロマトグラフィで精製した。純粋なテトラヒドロピリジン4.9gが単離された。
【0140】
第三級ベンジルアミンからのチアゾール合成:
【化12】


N−(5−(1−ベンジル−4−メチル−1,2,5,6−テトラヒドロピリジン−3−イル)ピラジン−2−イル)−2,6−ジフルオロベンズアミド(4.9g)をジクロロメタンに溶解し、氷浴中で0℃に冷却した。シアン酸ブロミド(1.6g,12mmol)を加え、20分間撹拌し、炭酸水素ナトリウム溶液で反応停止し、カラムクロマトグラフィで酢酸エチル/ヘキサン溶出を用いて精製した。純粋なシアナミド3.3g(収率80%)が単離された。
【0141】
N−(5−(1−シアノ−4−メチル−1,2,5,6−テトラヒドロピリジン−3−イル)ピラジン−2−イル)−2,6−ジフルオロベンズアミドを、メタノール(50ml)中で撹拌し、硫化アンモニウム(5.06g,37.2mmol)を加えた。この反応を室温で24時間、撹拌した。反応溶液を約50%まで濃縮し、次いで冷却して濾過した。チオ尿素3.6g(収率100%)が単離された。
【0142】
チオ尿素(600mg,1.54mmol)をマイクロ波バイアルに加え、続いてイソプロパノール10mlを加えた。クロロアセトン(600mg,6.48mmol)を加え、バイアルに蓋をした。次いで温度80℃に30分間加熱し、そして冷却した。この反応を、炭酸水素ナトリウム溶液で停止し、ジクロロメタンで抽出した。溶媒を蒸発させ、残留物をシリカゲルカラムに負荷し、酢酸エチル/ヘキサンで溶出した。次いで、溶媒を蒸発させ、イソプロパノール10mlを加えた。このスラリに、エーテル中HClを加えた。撹拌する間に固体が液状になり、次いで撹拌する間に液体から徐々に晶出した。固体を濾過し、高真空で乾燥させた。純粋な生成物510mgが単離された。収率72%。
【0143】
例1
2,6−ジフルオロ−N−(5−(4−メチル−1−(4−メチルチアゾール−2−イル)−1,2,5,6−テトラヒドロピリジン−3−イル)ピラジン−2−イル)ベンズアミドヒドロクロリド
【化13】


H NMR(300 MHz,DMSO d6)11.75(s,1H),9.44(s,1H),8.53(s,1H),7.58−7.66(m,1H),7.26(t,J=6.0Hz,2H),6.66(s,1H),4.40(s,2H),3.80−3.82(m,2H),2.47−2.49(m,2H),2.25(s,3H),1.89(s,2H)ppm。ESMS計算値(C2120ClFOS)463.1;測定値:428.2(M−Cl)。
【0144】
例2
N−(5−(1−(N,N−ジメチルスルファモイル)−4−メチル−1,2,5,6−テトラヒドロピリジン−3−イル)ピラジン−2−イル)−2,6−ジフルオロベンズアミド
【化14】

【0145】
手順:
N−(5−(1−ベンジル−4−メチル−1,2,5,6−テトラヒドロピリジン−3−イル)ピラジン−2−イル)−2,6−ジフルオロベンズアミドを、テトラヒドロピリジン合成のための基本手順に前述した通りに製造した。室温で、このベンジルアミン(1.25g,2.97mmol)の塩化メチレン溶液に、クロロギ酸1−クロロエチル(1.2ml)を加えた。この反応混合物を2時間撹拌し、続いてメタノール(10ml)を加えた。塩化メチレンの大部分が除去されるまで反応を減圧蒸留し、次いでより多くのメタノールを加えて1時間、還流させた。次いで、メタノールを蒸発させ、酢酸エチルを加え、勢いよく撹拌した。この混合物を濾過すると、純粋な生成物(718mg,73%)が白色固体として残った。
【0146】
2,6−ジフルオロ−N−(5−(4−メチル−1,2,5,6−テトラヒドロピリジン−3−イル)ピラジン−2−イル)ベンズアミド(100mg,0.305mmol)を、塩化ジメチルスルファモイル(65.5μl,0.609mmol)およびトリエチルアミン(694μl,1.5mmol)と共に、室温で3時間撹拌した。反応を、飽和炭酸水素ナトリウム溶液で停止し、塩化メチレン層を分離してフラッシュカラムに負荷した。これを、塩化メチレン/酢酸エチル溶出により精製した。N−(5−(1−(N,N−ジメチルスルファモイル)−4−メチル−1,2,5,6−テトラヒドロピリジン−3−イル)ピラジン−2−イル)−2,6−ジフルオロベンズアミド60mg(収率45%)が純粋に単離された。
H NMR(300 MHz,CDCl)9.66(s,1H),8.37(s,1H),8.21(d,J=1.2Hz,1H),7.46−7.53(m,1H),7.05(t,J=6.3Hz,2H),4.07−4.08(m,2H),2.86(s,6H),2.35−2.38(m,2H),1.82(s,3H),3.97(t,J=4.2Hz,2H),2.49−2.50(m,2H),1.82(s,3H),ppm ESMS計算値。(C2318O)432.2;測定値:433.2(M+H)ESMS計算値。(C1921S)437.1;測定値:438.2(M+H)。
【0147】
例3
N−(4−(1−(3−クロロピラジン−2−イル)−4−メチル−1,2,5,6−テトラヒドロピリジン−3−イル)フェニル)−3−フルオロイソニコチンアミド
【化15】

【0148】
4−メチル−5−(4−ニトロフェニル)−1,2,3,6−テトラヒドロピリジン(218mg)、DMSO(4ml)溶液に、KF60mgおよび2,3−ジクロロピラジン148mgを加え、この混合物を撹拌して120℃で1時間加熱した。反応を水で停止した。生成物をEtOAcで抽出し、有機層を水で洗浄した。溶媒を除去した後、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(ヘキサン/EtOAc)に付し、2−クロロ−3−(4−メチル−3−(4−ニトロフェニル)−5,6−ジヒドロピリジン−1(2H)−イル)ピラジン250mgを得た。
【0149】
2−クロロ−3−(4−メチル−3−(4−ニトロフェニル)−5,6−ジヒドロピリジン−1(2H)−イル)ピラジン330mgを、EtOH/DCM(1:1)20mlに溶解し;この溶液にSnCl 300mgを加え;この混合物を120℃で2時間、還流させた。反応溶液を、シリカゲル漏斗で濾過した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィで精製して、4−(1−(3−クロロピラジン−2−イル)−4−メチル−1,2,5,6−テトラヒドロピリジン−3−イル)アニリン280mgを得た。
【0150】
4−(1−(3−クロロピラジン−2−イル)−4−メチル−1,2,5,6−テトラヒドロピリジン−3−イル)アニリン150mg、3−フルオロイソニコチン酸71mg、およびEDC 110mgを、DMFに溶解し、室温で1時間、撹拌した。反応を水で停止し、EtOAcで抽出し、有機層を水で洗浄した。溶媒を除去した後、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(ヘキサン/EtOAc)に付し、N−(4−(1−(3−クロロピラジン−2−イル)−4−メチル−1,2,5,6−テトラヒドロピリジン−3−イル)フェニル)−3−フルオロイソニコチンアミド195mgを得た。
H NMR(300 MHz,CDCl)δ 8.67(d,J=1.8Hz,1H),8.65(d,J=3.6Hz,1H),8.38(d,J=10.2Hz,1H),8.08(d,J=1.8Hz,1H),8.05(dd,J=3.6,4.5Hz,1H),7.84(d,J=1.8Hz,1H),7.65(d,J=6.3Hz,2H),7.28−7.26(m,2H),4.10(d,J=1.5Hz,2H),3.72(t,J=4.2,2H),2.43−2.39(m,2H),1.69(s,3H)ppm。ESMS計算値。(C2219ClFNO)423.13;測定値:423.2(M+H)。
【0151】
例4
N−(4−(1−(3−クロロピラジン−2−イル)−4−メチル−1,2,5,6−テトラヒドロピリジン−3−イル)フェニル)−3−メチルイソニコチンアミド
【化16】

【0152】
手順:
カップリング手順は、N−(4−(1−(3−クロロピラジン−2−イル)−4−メチル−1,2,5,6−テトラヒドロピリジン−3−イル)フェニル)−3−フルオロイソニコチンアミドの合成で使用したものと同じである。
H NMR(300 MHz,CDCl)δ 8.57−8.59(m,2H),8.08(d,J=1.8Hz,1H),7.85(d,J=2.1Hz,1H),7.61(d,J=6.3Hz,2H),7.5(s,1H),7.37(d,J=3.6Hz,1H),7.27−7.26(m,2H),4.10−4.09(m,2H),3.72(t,J=4.2Hz,2H),2.51(s,3H),2.42−2.38(m,2H),1.69(s,3H)pp。ESMS計算値。(C2322ClNO)419.2;測定値:420.1(M+H)。
【0153】
例5
【化17】

【0154】
手順:
4−(4−メチル−1−(チアゾール−2−イル)−1,2,5,6−テトラヒドロピリジン−3−イル)アニリン(510mg,1.88mmol)を、トリエチルアミン(786μl,5.64mmol)と共に、塩化メチレン(5ml)に溶解した。2,4,6−トリフルオロベンゾイルクロリド(475.3mg)を、反応をほぼ室温に保ちながら、室温で徐々に加えた。反応を、炭酸水素ナトリウム溶液で停止し、塩化メチレンで希釈した。これを、カラムクロマトグラフィで塩化メチレンメタノールを使用して、精製した。固体をアセトン中でトリチウム化し、純粋な2,4,6−トリフルオロ−N−(4−(4−メチル−1−(チアゾール−2−イル)−1,2,5,6−テトラヒドロピリジン−3−イル)フェニル)ベンズアミドを生じた。この固体をエタノールに加え、エーテル中過剰の塩化水素を加えながら、勢いよく撹拌した。溶液が淡黄色の透き通った溶液に変わり、次いで白色固体として溶液から生じた(600mg,収率74.4%)。
【0155】
2,4,6−トリフルオロ−N−(4−(4−メチル−1−(チアゾール−2−イル)−1,2,5,6−テトラヒドロピリジン−3−イル)フェニル)ベンズアミド:
【化18】


H NMR(400 MHz,CDCl)δ 7.67(s,1H),7.62(d,J=8.5,1H),7.24(d,J=8.5,1H),7.21(d,J=3.6,1H),6.78(t,J=8.2,2H),6.55(d,J=3.6,0H),4.09−4.04(m,1H),3.74(t,J=5.8,1H),2.36(t,J=5.5,2H),1.67(s,3H)。ppmESMS計算値。(C2218OS)429.1;測定値:430.1(M+H)。
【0156】
2,4,6−トリフルオロ−N−(4−(4−メチル−1−(チアゾール−2−イル)−1,2,5,6−テトラヒドロピリジン−3−イル)フェニル)ベンズアミドヒドロクロリド:
【化19】


H NMR(400 MHz,DMSO)δ 10.93(s,1H),7.72(d,J=8.5,2H),7.42(d,J=2.9,1H),7.40(dd,J=7.4,8.3,2H),7.31(d,J=8.4,2H),7.06(d,J=4.1,1H),4.21(s,2H),3.77(t,J=5.7,2H),2.39(s,2H),1.69(s,3H)ppm。ESMS計算値。(C2219ClFOS)465.09;測定値:430.1(M−Cl)。
【0157】
2,4,6−トリフルオロ−N−(5−(1−(3−フルオロピリジン−2−イル)−4−メチル−1,2,5,6−テトラヒドロピリジン−3−イル)ピラジン−2−イル)ベンズアミドヒドロクロリド:
【化20】


H NMR(400 MHz,DMSO)δ 11.75(s,0H),9.41(s,1H),8.49(s,1H),8.01(d,J=5.1,1H),7.82−7.61(m,1H),7.40(t,J=8.7,2H),7.02−6.90(m,1H),4.39(s,2H),3.74(s,2H),2.43(s,2H),1.85(s,3H)ppm。ESMS計算値。(C2218ClFO)479.1;測定値:444.2(M−Cl)。
下表に挙げる他の化合物は、同様の方法で合成される。
【0158】
実施例2:IL−2産生の阻害
Jurkat細胞を、96ウェルプレートに置き(1%FBS培地中に、1ウェル当たり50万個の細胞)、次いで本発明の試験化合物を異なる濃度で加えた。10分後、細胞をPHA(最終濃度2.5μg/mL)で活性化し、5%CO雰囲気、37℃で20時間、インキュベートした。最終容量は200μLであった。インキュベーション後、細胞を遠心分離して上澄を採取し、IL−2産生に関するアッセイ前に−70℃で保存した。市販のELISAキット(IL−2 Eli−pair,Diaclone Research,Besancon,France)を使用して、IL−2の産生を検出し、これから容量反応曲線を得た。非刺激対照に対して、刺激を阻害した後の最大IL−2産生の50%における濃度として、IC50値を算出した。
【0159】
他のサイトカイン類、たとえばIL−4、IL−5、IL−13、GM−CSF、TNFα、およびIFN−γ等の阻害は、各サイトカイン用の市販のELISAキットを使用して、同様の方法で試験することができる。
【0160】
実施例3:RBL細胞、Jurkat細胞、CRACM1/STIM1−CHOK1、および一次T細胞におけるICRAC電流阻害のマニュアルパッチクランプ試験
概して、全細胞パッチクランプ法は、本発明の化合物が、ICRACを媒介するチャネルに及ぼす作用を検査するために使用される。このような実験では、最初の70ランプ電圧以内、または140秒以内に、パッチした細胞に関するベースラインICRAC測定が確定される。次いで、細胞に試験化合物を灌流させ、化合物がICRACに与える作用を、少なくともさらに440〜500秒間、測定する。ICRACを調節する(たとえば、阻害する)化合物が、CRACイオンチャネル活性を調節するために本発明で有用な化合物である。
【0161】
1)RBLおよびJurkat細胞
細胞
ラット好塩基球性白血病細胞(RBL−2H3)を、95%空気/5%COの雰囲気中、10%ウシ胎仔血清を追加したDMEM培地中で成長させる。使用の1〜3日前に、細胞をカバーグラス上に播種する。
【0162】
Jurkat T細胞は、95%空気/5%COの雰囲気中、10%ウシ胎仔血清を追加したRPMI培地で成長させる。細胞は、各実験の直前に、遠心分離で回収して記録チャンバに移す。
【0163】
記録条件
個々の細胞の膜電流は、全細胞構成でマニュアルパッチクランプ法を使用して記録する。
【0164】
細胞内ピペット溶液
細胞内ピペット溶液は、Cs−グルタミン酸100mM;CsCl 20mM;NaCl 8mM;MgCl 3mM;D−ミオイノシトール 1,4,5−トリスリン酸(InsP3) 0.02mM;CsBAPTA 10mM;HEPES10mM;を含有し、CsOHでpH=7.2に調整される。実験が実施される前に、この溶液を氷上保存および遮光する。
【0165】
細胞外溶液
細胞外溶液は、NaCl 140mM;KCl 5.4mM;CsCl 10mM;CaCl 10mM;MgCl 1mM;HEPES 10mM;グルコース 5.5mM;を含み、NaOHでpH=7.4に調整される。
【0166】
化合物処理
各化合物は、DMSOを使用して、10mMストック液から順次希釈する。最終DMSO濃度は、常に0.1%に保つ。
【0167】
実験手順
CRAC電流は、−100mV〜+100mVの間で50msecランプ電圧を使用して測定する。ランプ電圧は、最初の70スウィープの間は、2秒毎に刺激し、次いで実験の残り時間は、5秒毎に刺激する。膜電位は、試験ランプ間で0mVに保持する。一般的な実験では、50〜100秒以内にピーク内向き電流が発生する。いったんICRAC電流が安定化されたら、少なくとも500秒間、細胞外溶液中の試験化合物を細胞に灌流する。
【0168】
データ解析
Heka PatchMasterソフトウェアを用いたオフライン解析を使用して、ICRAC膜電流を、細胞の基礎的バックグラウンド電流と分離する。一般的な記録では、全細胞が確立した6〜12秒後に、InsP3刺激ICRAC電流が発生し始める。したがって、最初の1〜4ランプ電圧は、ICRACがないときの基礎膜電流を表し、その平均値がその後の全トレースから減算される。次いで、各ランプトレースについて、−80mVにおける電流値を測定し、時間に対してプロットする。結果として得られる電流と時間のデータを、Microsoft Excelスプレッドシートにエクスポートする。各細胞における%ICRAC阻害は、化合物灌流直前の電流量を、化合物を細胞に440〜500秒間灌流した後の電流量と比較することにより算出される。各化合物に関するIC50値およびHill係数は、個々のデータポイント全てを、シングルサイトHillの式に当てはめることによって推定される。
【0169】
2)Stim1およびCracM1、CracM2またはCracM3のいずれかを過剰発現するCho−K1細胞
細胞
TRExTM−CHO細胞に、ヒトStim1(N末端にmycエピトープタグが付いたpCDNA4/TO/myc−HisTMAにおける組換えDNA)およびCracM1、CracM2またはCracM3(N末端にHAエピトープタグが付いたpCDNA3.1における組換えDNA)のいずれかを形質移入する。抗生剤中で2〜3週間、形質移入細胞を成長させることにより、安定的に発現する細胞を選択する。個々の細胞クローンを、連続希釈により単離する。全長ヒトStim1 cDNA、CracM1 cDNA、CracM2 cDNA、CracM3 cDNA、TRExTM−CHO細胞、pCDNA4/TO/myc−HisTMAおよびpCDNA3.1は、Invitrogen(Carlsbad,CA)から購入した。全ての細胞クローンを、95%空気/CO 5%の雰囲気中、10%ウシ胎仔血清、ペニシリン100U/ml、ストレプトマイシン100μg/ml、ZeocinTM(200μg/ml)、Geneticin(500μg/ml)およびブラストシジン(10μg/ml)を加えたHam’s F−12培地中で成長させる。Stim1発現を、ドキシサイクリン(1μg/ml)で16〜20時間誘導した。各実験の直前に、細胞を、0.25%トリプシン/0.02%EDTAの溶液で組織培養プレートから取り、記録チャンバに移した。
【0170】
細胞内ピペット溶液
細胞内ピペット溶液は、Cs−グルタミン酸 90mM;NaCl 8mM;MgCl 23mM;CsCl 20mM;CsBAPTA 20mM;HEPES 10mM;InsP30.02mM;を含み、CsOHでpH=7.2に調整される。実験が実施される前に、この溶液を氷上保存および遮光する。
【0171】
細胞外溶液
細胞外溶液は、NaCl 120mM;KCl 5.4mM;CsCl 10mM;CaCl 2mM;MgCl 1mM;HEPES 10mM;グルコース 5.5mM;を含み、NaOHでpH=7.4に調整される。
【0172】
パッチクランプ記録およびデータ解析
実験手順およびデータ解析は、Rbl−2H3細胞およびJurkat細胞に関する上記手順と全く同じである。
【0173】
3)一次T細胞
一次T細胞の調製
一次T細胞は、RosetteSep(登録商法) ヒトT細胞濃縮カクテル100μLを全血2mLに加えることにより、ヒト全血試料から得られる。この混合物を室温で20分間インキュベートし、次いで等量の2%FBS含有PBSで希釈する。この混合物を、RosetteSep(登録商法) DM−L密度培地の上に重層し、次いで室温で、1200gで20分間遠心分離する。濃縮T細胞を血漿/密度培地界面から回収し、次いで2%FBS含有PBSで2回洗浄し、RBL細胞に関して記述した手順に従ってパッチクランプ実験で使用する。
【0174】
【表12】

【0175】
【表13】

【0176】
【表14】

【0177】
実施例4:ICRACの阻害のオートパッチクランプ試験
1)Rbl−2H3細胞。
細胞
RBL−2H3を、95%空気/5%COの雰囲気中、10%ウシ胎仔血清、ペニシリン100U/mlおよびストレプトマイシン100Ug/mlを追加したDMEM培地で成長させる。細胞は、175cm組織培養フラスコ内でコンフルエントに成長させる。実験日に、細胞を0.25%トリプシン/0.02%EDTAで回収し、5×10細胞/mlの密度で細胞外溶液に再懸濁する。
【0178】
細胞内溶液
細胞内溶液は、Cs−グルタミン酸90mM;NaCl 8mM;MgCl 3mM;CsCl 20mM;CsBAPTA 20mM;HEPES 10mM;InsP3 0.02mM;を含み、CsOHでpH=7.2に調節される。
【0179】
細胞外溶液
細胞外溶液は、NMDGCl 120mM;KCl 5.4mM;CsCl 10mM;CaCl 10mM;MgCl 1mM;HEPES 10mM;グルコース 5.5mM;を含み、HClでpH=7.4に調整される。
【0180】
実験手順
CRAC電流は、−100mV〜+100mVの間で50msecランプ電圧を使用して測定する。ランプ電圧を、3秒毎に少なくとも570秒間、刺激する。最大ICRAC電流を、少なくとも135秒間、発生させておく。次いで、細胞外溶液で希釈した化合物を、30秒ずらして2回加える。細胞を化合物と共に435秒間インキュベートした後、実験の終わりに標準を加える。標準液は、Ca2+を含まない細胞外溶液である。
【0181】
データ解析
Qpatchソフトウェアを用いたオフライン解析を使用して、各ランプトレースの−80mVにおける電流値を時間に対してプロットする。次いで、結果として得られる電流と時間のデータを、Microsoft Excelスプレッドシートにエクスポートする。ICRAC膜電流を、最初の1〜3トレースの間に平均膜電流値を減算するか、または実験の終わりに標準液で得られる平均膜電流値のいずれかによって、細胞基礎的バックグラウンド電流と分離する。各細胞における%ICRAC阻害は、最初の化合物添加直前の電流量を、化合物を細胞に少なくとも400秒間灌流した後の電流量と比較することにより算出される。
【0182】
2)Stim1およびCracM1、CracM2またはCracM3のいずれかを過剰発現するCho−K1細胞
細胞
組換えヒトStim1およびCracM1、CracM2またはCracM3細胞を安定的に発現するTRExTM−CHO細胞の産生は、上述されている。細胞は、175cm組織培養フラスコ内でコンフルエントに成長させる。実験日に、細胞を0.25%トリプシン/0.02%EDTAで回収し、5〜15×10細胞/mlの密度で細胞外溶液に再懸濁する。
【0183】
細胞内溶液
細胞内溶液Cs−グルタミン 90mM;NaCl 8mM;MgCl 3mM;CsCl 20mM;CsBAPTA 20mM;HEPES 10mM;InsP3 0.02mM;を含み、CsOHでpH=7.2に調節される。
【0184】
細胞外溶液
細胞外溶液は、NMDGCl 120mM;KCl 5.4mM;CsCl 10mM;CaCl 1mM;MgCl 1mM;HEPES 10mM;グルコース 5.5mM;;を含み、NaOHでpH=7.4に調整される。
【0185】
実験手順およびデータ解析
実験手順およびデータ解析は、Rbl−2H3細胞に関する上記手順と全く同じである。
【0186】
実施例5:一次ヒトPBMCにおける複数サイトカインの阻害
ヒト末梢血単核細胞(PBMCs)は、フィコール(Ficoll)密度勾配で分離することによって、ヘパリン化ヒト血液から調製した。
【0187】
本発明の化合物、またはサイトカイン産生の既知の阻害剤であるシクロスポリンA(CsA)が、様々な濃度で存在する条件下で、PBMCをフィトヘマグルチニン(PHA)で刺激する。サイトカイン産生は、製造業者の指示書に従って、市販のヒトELISAアッセイキット(Cell Science,Inc.から)を使用して測定される。
【0188】
あるいは、10% FCSを1〜2×10/mlで含むPBMCを、化合物またはDMSOを含むまたは含まない(最大濃度:0.1%)、それぞれ5μg/mlの抗CD3(クローンUCHT1)および抗CD28(クローンANC28.1/5D10)でプレコートして刺激する。細胞培養を、37℃、5%COでインキュベートする。複数サイトカイン類を測定するために、48〜72時間のインキュベーション後に、培養上澄の試料を採取する。BioRad BioPlexアッセイを使用し、製造業者の指示書に従って、上澄に存在するサイトカイン類を定量化する。
【0189】
本発明の化合物は、一次ヒトPBM細胞において、IL−2、IL−4、IL−5、IL−13、GM−CSF、IFN−γおよびTNF−αの強力な阻害剤であると予想される。加えて、本発明の化合物は、抗炎症性サイトカイン、IL−10を阻害しないと予想される。
【0190】
実施例6:細胞における脱顆粒の阻害
手順:
アッセイが実施される前日に、96ウェルプレートでコンフルエンスに成長させておいたRBL細胞を、37℃で少なくとも2時間、インキュベートする。各ウェル内の培地を、2μLg/mLのDNP IgEを含有する用時調製培地100μLに換える。
【0191】
翌日、細胞をPRS(2.6mMグルコースおよび0.1%BSA)で1回洗浄し、PRS 160μLを各ウェルに添加する。試験化合物を、所望の濃度の10Xの溶液20μLで、ウェルに加え、37℃で20〜40分間インキュベートする。10Xのマウス抗IgE(10μL/mL)20μLを加える。最大脱顆粒は、抗IgEの添加後15〜40分の間に発生する。
【0192】
本発明の化合物は、脱顆粒を阻害すると予想される。
【0193】
実施例7:T細胞における走化性の阻害
T細胞単離
ヘパリン化全血(ブタ2例、ヒト1例)のアリコート20mlを、Ficoll Hypaqueで密度勾配遠心分離に付した。リンパ球および単球を含有する末梢血単核細胞(PBMC)を表すバッフィーコート層を1回洗浄して不完全RPMI 1640 12mlに再懸濁し、次いでゼラチン被覆したT75培養フラスコ内に37℃で1時間置く。単球が枯渇した末梢血リンパ球(PBL)を表す非接着性細胞を、完全RPMI培地に再懸濁し、温培地で平衡化しておいた緩く充填された活性ナイロンウールカラムに入れる。37℃で1時間後、カラムを追加の培地で洗浄することにより、非接着性T細胞集団を溶出させる。T細胞調製物を遠心分離し、不完全RPMI 5mlに再懸濁し、血球計を使用して計数する。
【0194】
細胞遊走アッセイ:
各T細胞調製物のアリコートを、Calcien AM(TefLabs)で標識し、1.83mM CaClおよび0.8mM MgClを含有するHEPES緩衝Hank’s Balanced Salt Solution(HHBSS)(pH7.4)に、2.4×10/mlの濃度で懸濁する。次いで、0、20nM、200nMまたは2000nMの化合物1、あるいは20nM EDTAを含有する等量のHHBSSを加え、細胞を37℃で30分間インキュベートする。細胞懸濁液のアリコート50μl(60,000細胞)を、HHBSS中に10ng/mlMIP−1αを含有するウェル上に固定されているNeuroprobe ChemoTx 96ウェル走化性ユニットの膜(孔径5μm)上に置く。T細胞を、37℃で2時間遊走させ、その後、膜の先端面を拭いて細胞を除去する。次いで走化性ユニットをCytoFluor 4000(PerSeptive BioSystems)内に置き、各ウェルの蛍光を測定する(励起波長および発光波長は、それぞれ、450nmおよび530nm)。各ウェル内の遊走細胞数は、膜を固定する前に走化性ユニットの下方ウェル内に置いた標識細胞の連続2倍希釈の蛍光測定から作成した標準曲線から決定する。
【0195】
本発明の化合物は、T細胞の走化性を阻害すると予想される。
【0196】
本願明細書に引用した全ての出版物、特許出願、特許および他の資料は、その全内容を参照により本願明細書に援用する。矛盾する場合には、定義を含む、本明細書が支配する。加えて、材料、方法、および実施例は一例に過ぎず、多少なりとも限定することを意図するものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
【化1】


【化2】


【化3】


【化4】


【化5】


【化6】


からなる群から選択される化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
薬学的に許容される担体および請求項1に記載の化合物を含む、医薬組成物。
【請求項3】
免疫抑制薬、抗炎症薬、ステロイド類、非ステロイド系抗炎症薬、抗ヒスタミン薬、鎮痛薬、およびそれらの好適な混合物からなる群から選択される1つまたは複数の追加的な治療薬をさらに含む、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
請求項1の化合物を免疫細胞に投与することを含む、抑制性免疫細胞活性化の方法。
【請求項5】
細胞に請求項1の化合物を投与することを含む、サイトカイン産生を阻害する方法。
【請求項6】
サイトカインが、IL−2、IL−4、IL−5、IL−13、GM−CSF、IFN−γ、TNFα、およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
細胞におけるイオンチャネルを調節する方法であって、イオンチャネルが免疫細胞活性化に関与しており、細胞に請求項1に記載の化合物を投与することを含む、前記方法。
【請求項8】
イオンチャネルがCa2+−放出−活性化Ca2+チャネル(CRAC)である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
T細胞および/またはB細胞に請求項1に記載の化合物を投与することを含む、抗原に応答した、T細胞および/またはB細胞増殖を阻害する方法。
【請求項10】
対象に、請求項1の化合物の有効量を投与することを含む、それを必要としている対象における免疫障害を治療または予防する方法。
【請求項11】
障害が、多発性硬化症、重症筋無力症、ギラン・バレー、自己免疫性ブドウ膜炎、自己免疫溶血性貧血、悪性貧血、自己免疫血小板減少症、側頭動脈炎、抗リン脂質抗体症候群、ヴェーゲナー肉腫等の血管炎、ベーチェット病、乾癬、疱疹状皮膚炎、尋常性天疱瘡、白斑、クローン病、潰瘍性大腸炎、原発性胆汁性肝硬変、自己免疫肝炎、I型または免疫介在性の糖尿病、グレーブス病、橋本甲状腺炎、自己免疫性卵巣炎および精巣炎、副腎の自己免疫障害、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、強皮症、多発性筋炎、皮膚筋炎、強直性脊椎炎、およびシェーグレン症候群からなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
対象に、請求項1の化合物の有効量を投与することを含む、それを必要としている対象における炎症状態を治療または予防する方法。
【請求項13】
障害が、移植拒絶反応、皮膚移植片拒絶反応、関節炎、関節リウマチ、変形性関節炎および骨吸収増加関連の骨疾患;炎症性腸疾患、回腸炎、潰瘍性大腸炎、バレット症候群、クローン病;喘息、成人呼吸促迫症候群、慢性閉塞性気道疾患;角膜ジストロフィ、トラコーマ、回旋糸状虫症、ブドウ膜炎、交感性眼炎、眼内炎;歯肉炎、歯周病;結核;ライ病;尿毒症の合併症、糸球体腎炎、ネフローゼ;硬化性皮膚炎、乾癬、湿疹;神経系の慢性脱髄疾患、多発性硬化症、AIDS関連の神経変性、アルツハイマー病、感染性髄膜炎、脳脊髄炎、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、ウイルス性または自己免疫性の脳炎、自己免疫障害、免疫複合体血管炎、全身性の狼瘡およびエリテマトーデス;全身性エリテマトーデス(SLE);心筋症、虚血性心疾患高コレステロール血症、アテローム性動脈硬化症、子癇前症;慢性肝不全、脳および脊髄外傷、および癌からなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
対象に、請求項1に記載の化合物の有効量を投与することを含む、それを必要としている対象の免疫系を抑制する方法。
【請求項15】
対象に、請求項1に記載の化合物の有効量を投与することを含む、それを必要としている対象におけるアレルギー性障害を治療または予防する方法。
【請求項16】
障害が、アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎、鼻副鼻腔炎、慢性中耳炎、再発性中耳炎、薬物反応、虫刺され反応、ラテックス反応、結膜炎、蕁麻疹、アナフィラキシー反応、アナフィラキシー様反応、アトピー性皮膚炎、喘息、または食物アレルギーである、請求項15に記載の方法。

【公表番号】特表2012−504603(P2012−504603A)
【公表日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−530047(P2011−530047)
【出願日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際出願番号】PCT/US2009/005406
【国際公開番号】WO2010/039236
【国際公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(504151848)シンタ ファーマシューティカルズ コーポレーション (72)
【Fターム(参考)】