説明

炎症を低減させるための新規揮発性麻酔薬製剤およびその使用法

本発明は、創傷または炎症部位に揮発性麻酔薬を送達することによって、そのような創傷の処置または炎症の処置を必要とする被検体における炎症または創傷を処置する方法を提供する。


【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
発明の背景
炎症は、そのような刺激によって影響を受ける哺乳動物系の構造および機能に及ぼす障害性の刺激の影響を最小限にするために役立つ、哺乳動物における生命保護機構である。炎症プロセスの単純化された記述において、体の白血球、化学物質(炎症性メディエータ)、および血漿は、細菌、ウイルス、および他の有害な刺激などの外来物質によって影響を受ける部分に急行する。この動員は、哺乳動物を感染症および損傷から保護するために役立つが、これはまた生理学的続発症に至る事象のカスケードを誘発しうる。
【0002】
炎症は急性かもしれないし、慢性かもしれない。急性型の炎症は数分から数日間持続しうる。数ヶ月から数年持続しうる慢性型の炎症は、罹患部分の細胞に影響を及ぼして変化させうる。炎症は、たとえば創傷治癒において極めて重要な役割を果たす。しかし時に、体の長期間の炎症応答が慢性的な創傷を引き起こすか、または外来物質の非存在下であっても起こって、自身の組織に損傷を引き起こしうる。また時には、この保護機構の長期間の/持続的な応答によって、機能的または美容的性質の不快感が起こる。これらの状況では、炎症を含むまたは逆転させる方法を使用しなければならない場合がある。
【0003】
炎症は、広範囲の急性および慢性疾患の主要なメディエーターであると考えられている。そのようなねらいを誤った炎症は、関節炎、腱炎、滑液包炎、および類似の状態などの多くの疾患に存在する。炎症は、自己免疫障害の一部として臓器に影響を及ぼしうる。症状のタイプは影響を受ける臓器に依存する。例には、心臓の炎症(心筋炎、これは胸痛または体液貯留を引き起こしうる)、肺に空気を送る細管の炎症(細気管支炎、これは喘息発作と類似の息切れを引き起こしうる)、腎臓の炎症(腎炎、これは高血圧症または腎不全を引き起こしうる)、大腸の炎症(大腸炎、これは痙攣および下痢を引き起こしうる)、眼の炎症(虹彩炎またはブドウ膜炎、これは疼痛または視力低下を引き起こしうる)、筋肉の炎症(多発筋炎、これは痛みまたは虚弱を引き起こしうる)、および血管の炎症(血管炎、これは発疹、頭痛、または内部臓器損傷を引き起こしうる)が含まれる。多くの臓器が非常に少ない疼痛感受性神経を有することから、疼痛は、これらの炎症症候群の主な症状ではない可能性がある。臓器炎症の処置は、可能であれば炎症の原因に向けられるべきである。
【0004】
炎症は、体の防御システムの必要な一部であるが、過剰な、長期間の、または誤った方向性の炎症によって、消耗性でありうる慢性炎症が起こりうる。現在の処置選択肢は限られており、これには非ステロイド性抗炎症剤(NSAIDs)およびコルチコステロイドを主に含む抗炎症剤が含まれるが、これらの化合物の慢性的な投与はしばしば、患者において問題を引き起こす。医療の専門家は、これらの化合物より良好な安全性および副作用プロフィールを有するいかなる代替物も持っていない。
【0005】
揮発性麻酔薬は、全身麻酔薬として何十年ものあいだ安全に用いられている。鎮痛を生じるほかに、揮発性麻酔薬は他の受容体にも影響を及ぼして、吸入によって投与した場合およびインビトロで、抗炎症特性および筋弛緩特性を有することが示されている。揮発性麻酔薬は、インビボおよびインビトロ炎症モデルのいずれにおいてもサイトカインの産生および放出を低減させること、ならびにリポ多糖類(LPS)によって誘導される前炎症性サイトカインの産生をダウンレギュレートすることが示されている。加えて、揮発性麻酔薬は、好中球機能を阻害して、炎症が寛解するまでの時間を低減させることが示されている。しかし、揮発性麻酔薬を炎症の局所処置に用いた場合には成功を収めていない。
【0006】
炎症の処置において用いられうる改善された製剤が当技術分野において必要である。同様に、ねらいを誤ったまたは長期間の炎症を処置するための改善された方法が当技術分野において必要である。本発明は、これらのニーズを満たす。
【発明の概要】
【0007】
本発明には、創傷を処置するために有効な量で水溶液に溶解した揮発性麻酔薬の一定量を含む薬学的に許容される組成物であって、溶液が、揮発性麻酔薬の揮発性を低減させるために有効な量の少なくとも1つの抽出溶媒を含み、溶液が乳剤の成分であり、組成物が薬学的に許容される賦形剤をさらに含む、前記組成物が含まれる。
【0008】
本明細書において開示されるこのおよび他の態様において、少なくとも1つの抽出溶媒は、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルイソソルビド、エタノール、プロパノール、PEG-400、PEG-300、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、およびイソプロパノールからなる群より選択される。好ましくは、少なくとも1つの抽出溶媒は溶液の約0.1%から約75%を含み、組成物は無菌的である。
【0009】
本明細書において開示されるこのおよび他の態様において、組成物は、表面、くも膜下、硬膜外、経皮、表面、経口、関節内、粘膜、口腔、直腸、膣、筋肉内、膀胱内、および皮下からなる群より選択される経路によって投与するために調剤される。
【0010】
好ましくは、揮発性麻酔薬は、イソフルラン、ハロタン、エンフルラン、セボフルラン、デスフルラン、メトキシフルラン、キセノン、およびその混合物からなる群より選択され、より好ましくは揮発性麻酔薬はイソフルランである。
【0011】
好ましくは、乳剤は脂質を含み、脂質は、ダイズ油、オリーブ油、落花生油、ヒマシ油、トウモロコシ油、またはゴマ油を含む。乳剤は乳化剤をさらに含んでもよい。
【0012】
加えて、揮発性麻酔薬は好ましくは、懸濁剤、クリーム、ペースト、オイル、ローション、ゲル、フォーム、ハイドロゲル、軟膏、リポソーム、乳剤、液晶乳剤、およびナノ乳剤の剤形である。
【0013】
組成物は抗生物質をさらに含んでもよい。
【0014】
本明細書において開示されるこのおよび他の態様において、溶液は、水、食塩水溶液、および人工脳脊髄液からなる群より選択される少なくとも1つの構成成分を含む。
【0015】
さらに、揮発性麻酔薬乳剤の一定量を含む薬学的に許容される組成物が本発明に含まれる。
【0016】
同様に、創傷を処置するために有効な量で溶液中に溶解した揮発性麻酔薬の一定量を含む薬学的に許容される組成物であって、溶液が揮発性麻酔薬の揮発性を低減させるために有効な量の少なくとも1つの抽出溶媒をさらに含み、組成物が可溶化剤をさらに含み、組成物が薬学的に許容される賦形剤をさらに含む、前記組成物も含まれる。
【0017】
加えて、微小液滴懸濁液の一定量を含む薬学的に許容される組成物であって、微小液滴懸濁剤がリン脂質の安定化層に取り囲まれた揮発性麻酔薬の球体を含み、組成物が薬学的に許容される賦形剤をさらに含む、前記組成物が含まれる。1つの局面において、微小液滴の直径は、約200オングストロームから約10,000オングストロームの範囲である。もう1つの局面において、微小液滴は、超音波処理、ホモジナイゼーション、微小流動化、または高剪断を伴う他のプロセスによって産生され、揮発性麻酔薬の体積対リン脂質層の重量比は少なくとも1.0 ml/gであり、組成物は少なくとも3%w/vの揮発性麻酔薬を含む。
【0018】
同様に、創傷を処置するために有効な量で水溶液に溶解した揮発性麻酔薬の一定量を含む薬学的に許容される組成物であって、溶液が乳剤の成分であり、組成物が薬学的に許容される賦形剤をさらに含む、前記組成物が含まれる。
【0019】
本発明にはさらに、溶液が揮発性麻酔薬の揮発性を低減させるために有効な量の少なくとも1つの抽出溶媒をさらに含み、溶液が乳剤の成分であり、投与が吸入によらない、創傷を処置するために有効な量で溶液中に溶解される揮発性麻酔薬を被検体の創傷に表面投与する段階を含む、それを必要とする被検体における創傷を処置する方法が含まれる。投与は静脈内経路による投与であるか、または静脈内経路によらない投与である。さらに、投与は、表面、経皮、くも膜下、硬膜外、粘膜、筋肉内、皮下、経口、直腸、膣、口腔、関節内、または膀胱内である。
【0020】
同様に、溶液が、揮発性麻酔薬の揮発性を低減するために有効な量の少なくとも1つの抽出溶媒をさらに含み、組成物が可溶化剤をさらに含み、投与経路が吸入経路ではない、創傷を処置するために有効な量で溶液中に溶解される揮発性麻酔薬を被検体の創傷に表面投与する段階を含む、それを必要とする被検体における創傷を処置する方法が含まれる。
【0021】
加えて、溶液が乳剤の成分であり、投与経路が吸入ではなく、投与経路が静脈内でない、請求項67記載の方法である、創傷を処置するために有効な量で溶液中に溶解した揮発性麻酔薬を被検体の創傷に表面投与する段階を含む、それを必要とする被検体における創傷を処置する方法が含まれる。
【0022】
さらに、投与経路が吸入ではない、創傷を処置するために有効な量の揮発性麻酔薬を含むリポソーム懸濁液を被検体の創傷に表面投与する段階を含む、それを必要とする被検体における創傷を処置する方法が含まれる。
【0023】
同様に、溶液が、揮発性麻酔薬の揮発性を低減するために有効な量の少なくとも1つの抽出溶媒をさらに含み、投与経路が吸入ではない、炎症を処置または低減するために有効な量で溶液中に溶解した揮発性麻酔薬を被検体に表面投与する段階を含む、それを必要とする被検体における炎症を処置または低減させる方法が本発明に含まれる。好ましくは、炎症は、関節炎、腱炎、滑液包炎、大腸炎、炎症性腸疾患、虹彩炎、多発筋炎、間質性膀胱炎、炎症性慢性前立腺炎、炎症性乳癌(IBC)、または血管炎に関連する。ある態様において、炎症性腸疾患は、潰瘍性大腸炎またはクローン病である。
【0024】
本発明にはまた、投与経路が吸入ではない、リン脂質の安定化層によって取り囲まれる揮発性麻酔薬の球体を含む微小液滴懸濁液を、創傷を処置するために有効な量で被検体の創傷に表面投与する段階を含む、それを必要とする被検体における炎症を処置または低減させる方法が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
本発明を例証する目的のために、本発明のある態様を図面に描写する。しかし、本発明は、図面に描写された態様の正確な配置および器具に限定されない。
【図1】調剤された揮発性麻酔薬を被検体の罹患部分に送達するための組成物を作製する全般的方法を表すフローチャートを例証する。
【発明を実施するための形態】
【0026】
発明の詳細な説明
本発明は、本発明の組成物および方法が、創傷、自己免疫疾患、または炎症を伴うもしくは炎症による他の任意の病的状態に関連する炎症を処置または低減するために有用であるという発見に関する。1つの局面において、本発明の組成物および方法は、被検体における炎症を低減または消失させるために、およびそれによって炎症を伴う疾患または状態からの回復において助けとなるように用いられてもよい。もう1つの局面において、本発明には、本発明の組成物が、吸入以外の投与経路によって被検体に投与される、そのような処置を必要とする被検体における炎症を処置または低減する方法が含まれる。もう1つの局面において、投与経路は静脈内投与を含む。なおもう1つの局面において、投与経路は静脈内投与を含まない。
【0027】
本発明の組成物および方法は、関節炎、腱炎、滑膜包炎、大腸炎、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎およびクローン病が含まれる)、虹彩炎、多発筋炎、間質性膀胱炎、炎症性慢性前立腺炎、炎症性乳癌(IBC)、および血管炎が含まれるがこれらに限定されるわけではない疾患または状態に関連する急性または慢性炎症を低減するために用いられてもよい。
【0028】
本発明は、投与経路が吸入によらない、ヒト、動物患者、またはマウスもしくはラットなどの実験動物などの、そのような処置を必要とする被検体における体の標的部分(関節、臓器、組織、軟骨が含まれるがこれらに限定されるわけではない)における創傷を処置するためおよび炎症を低減または消失させるために、揮発性麻酔薬を含む組成物を提供し、ならびに揮発性麻酔薬を含む組成物を投与する方法を提供する。
【0029】
1つの態様において、本発明は、溶液中で調剤された揮発性麻酔薬を含む組成物を提供する。もう1つの態様において、本発明は、薬学的に許容される抽出溶媒、たとえば、しかしこれに限定されないDMSOをさらに含む溶液中で調剤された揮発性麻酔薬を含む組成物を提供する。
【0030】
1つの態様において、本発明は、乳剤の成分である溶液中で調剤された揮発性麻酔薬を含む組成物を提供する。もう1つの態様において、本発明は、薬学的に許容される抽出溶媒を含み、なおかつ乳剤の成分である溶液中で調剤された揮発性麻酔薬を含む組成物を提供する。
【0031】
1つの態様において、本発明は、リポソームの成分である溶液中で調剤された揮発性麻酔薬を含む組成物を提供する。もう1つの態様において、本発明は、薬学的に許容される抽出溶媒、たとえば、しかしこれに限定されないDMSOを含み、なおかつリポソームの成分である溶液中で調剤された揮発性麻酔薬を含む組成物を提供する。
【0032】
許容される抽出溶媒には、ビヒクルおよび機能的成分が含まれてもよいがこれらに限定されるわけではない。ビヒクルの例には、ポリエチレングリコール300、およびポリエチレングリコール400が含まれるがこれらに限定されるわけではない。機能的成分の例には、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジカプリロカプリン酸ポリプロピレングリコール、およびDMSOが含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0033】
1つの局面において、揮発性麻酔薬を含む本発明の組成物に抽出溶媒が存在すると、物理的特徴、薬理学的特性、および/または組成物の使用しやすさの改善が含まれる、実質的な利点を提供しうる。抽出溶媒は、非共沸様式で揮発性麻酔薬(非制限的な例において、イソフルラン)と相互作用して、揮発性麻酔薬の気化または蒸発を効果的に低減させうる。揮発性を低減させるこの効果は、揮発性減弱効果(VAE)と呼ばれることがある。このようにして、揮発性麻酔薬組成物の貯蔵寿命、耐久性、および/または使用の容易さが改善されうる。
【0034】
1つの局面において、揮発性麻酔薬の薬物動態は抽出溶媒の存在によって変更されうる。たとえば、いかなる理論にもしばられたくはないが、抽出溶媒は、ある態様において、貯留される揮発性麻酔薬の量および/または貯留期間が、調剤されていない純粋な揮発性麻酔薬を適用する場合と比較して増強されるように、揮発性麻酔薬の貯蔵所として機能しうる。よって、抽出溶媒は、揮発性麻酔薬をより効果的に特定の作用部位に送達させる。同様に、揮発性麻酔薬組成物が抽出溶媒を含有するある態様において、抽出溶媒は、揮発性麻酔薬の作用部位への吸収を速度および/または程度に関して促進しうる。加えて、抽出溶媒の存在は、ビヒクルによって与えられる揮発性減弱効果(VAE)に対して相加的または相乗的関与を有しうる。この局面において、製剤は揮発性麻酔薬の貯留を促進しうるが、調剤していなければ、室温であってもその高い揮発性の性質により作用部位から急速に漏出する傾向があるであろう。
【0035】
1つの局面において、製剤が乳剤またはリポソームの成分である場合、乳剤またはリポソームは、特定の領域に揮発性麻酔薬をより効率的に貯留するために揮発性麻酔薬のための貯蔵所として機能しうる、および/または作用部位に揮発性麻酔薬を送達するために役立ちうる。なおもう1つの局面において、揮発性麻酔薬の送達は、徐放性として調整されてもよい。これにより、繰り返し投与の必要性がなくなるかまたは低減されうる、および/または所望の定常状態薬物レベルが達成されうる。組成物中の揮発性麻酔薬の揮発性が低減されると、揮発性麻酔薬組成物の取り扱いの容易さもまた改善するであろう。これによって、本発明の組成物の製造および包装が容易となりうる。揮発性の低減はまた、患者、医療職員または包装施設職員が揮発性麻酔薬を吸入する可能性を回避するであろう。さらに、抽出溶媒の存在による溶液中の揮発性麻酔薬の気化の低減はまた、医療施設での火災および/または曝露のリスクの可能性に関するいかなる懸念も低減させうる。
【0036】
1つの局面において、本発明は、吸入以外の投与経路によって被検体の罹患部分に本発明の組成物の治療的有効量を投与する段階を含む、それを必要とする被検体における創傷、自己免疫疾患、または炎症を伴うもしくは炎症により生じる任意の他の疾患もしくは状態に関連する炎症を低減させる方法に関する。揮発性麻酔薬は、炎症を低減させるために有効な量で抽出溶媒を含む溶液中に溶解される。好ましい揮発性麻酔薬は、薬学的に許容される溶液中に溶解したハロゲン化エーテル揮発性麻酔薬である。1つの態様において、揮発性麻酔薬は、乳剤またはリポソームの成分である。
【0037】
方法は好ましくは、組成物中の揮発性麻酔薬の表面、皮下、経皮、経口、直腸内、粘膜、膣、口腔、直腸、関節内、および膀胱内送達を含む。同様に好ましい投与経路には、くも膜下、硬膜外、および筋肉内が含まれる。いくつかの態様において、揮発性麻酔薬は、乳剤またはリポソームの成分である。加えて、投与量は、創傷治癒、自己免疫疾患、または炎症を伴うもしくは炎症により生じる他の任意の疾患もしくは状態を助けるために有効な量である。
【0038】
ある態様において、溶液中の揮発性麻酔薬は、手術または他の医学技法の前などの、創傷が作製される前に被検体の特異的部位に送達される。揮発性麻酔薬は、イソフルラン、ハロタン、エンフルラン、セボフルラン、デスフルラン、メトキシフルラン、キセノンおよびその混合物からなる群より選択されるハロゲン化揮発性麻酔薬であってもよい。これらの物質の多くはラセミ混合物である。いくつかの態様において、ラセミ混合物が用いられる。他の態様において、物質のd-異性体またはl-異性体のみが用いられる(たとえば、米国特許第5,114,715号;第5,114,714号、および第5,283,372号を参照されたい)。ある態様において、イソフルランが用いられる。イソフルラン液剤などの溶液は、約5 ng/ml溶液から約100 ng/ml溶液の濃度で調製されてもよい。溶液は、溶液中に約1%から約99%v/v、約5%から約70%v/v、または約50%v/v、または約25%v/v、または約10%v/vの揮発性麻酔薬を含んでもよい。揮発性麻酔薬はイソフルランであってもよく、および/または溶液はポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール300、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジカプリロカプリン酸ポリプロピレングリコール、水、食塩水、または人工脳脊髄液を含んでもよい。ある態様において、溶液は、抽出溶媒をさらに含んでもよい乳剤の成分であってもよい。他の態様において、溶液は、抽出溶媒をさらに含んでもよいリポソームの成分であってもよい。罹患部分に表面投与する場合、いくつかの場合において、しかし必ずしも全ての場合ではないが、たとえば製剤中に活性物質約5 mcg/mlから約2,000,000 mcg/mlの範囲であってもよい臨床有効量を達成することが望ましい。他の態様において、表面投与の場合、いくつかの場合において、しかし必ずしも全ての場合ではないが、適用部分1平方センチメートルあたり溶液約2マイクロリットルから約50マイクロリットルの範囲であってもよい臨床有効量を達成することが望ましい。もう1つの態様において、揮発性麻酔薬製剤は、経口または直腸内投与されてもよい。もう1つの態様において、経口または直腸内投与される製剤は、揮発性麻酔薬を特異的部位、たとえば大腸に送達してもよい。なおもう1つの態様において、経口または直腸内投与される製剤は、数分から数時間の範囲の期間にわたって徐放様式で揮発性麻酔薬を放出してもよい。活性物質の送達は、持続的、周期的、1回事象であってもよく、または別々の機会に周期的および持続的の両方で、活性物質を被検体に投与してもよい。
【0039】
好ましくは、溶液は、自己免疫疾患または他の任意の病的状態に関連する炎症の低減を必要とする創傷または他の作用部位への投与が意図されることから、揮発性麻酔薬を含む溶液は無菌的である。これは、全ての開始材料が確実に無菌的であることによって、および投与するまでそれらを無菌状態で維持することによって達成されてもよい。これは、様々なタイプの注入について行われているように、抗菌フィルターを組み入れることによって達成されてもよい(たとえば、米国特許第5,695,490号を参照されたい)。基礎となる溶液に関して、溶液の性質は、重要ではないと考えられ、ポリエチレングリコール400(または同種のもの)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、生理食塩液、または人工脳脊髄液などの天然の体液を模倣するように調剤された溶液さえも含む溶液が企図される。
【0040】
本発明のなおもう1つの局面は、本発明の揮発性麻酔薬溶液を含む密封容器を伴う。容器の内部は無菌的であってもよい。容器は、たとえばシリンジ、プラスチックバッグ、折り畳み可能なプラスチックバッグ、ガラスボトル、ガラスアンプル、またはプラスチックボトルであってもよい。容器はそれ自身が、創傷包帯であるかまたは創傷包帯の一部であってもよい。本発明のもう1つの局面において、たとえば適用しやすさ、単位用量形状、および優れた容器閉鎖適合性プロフィールなどの多くの利点を提供する容器が企図される。この容器は、揮発性麻酔薬溶液が破砕可能な密封アンプルに含有される容器であってもよい。アンプルは保護カバーの中に入っており、そこに圧をかけてアンプルを破砕して、保護カバー中でアンプルにキャップをする火打ち石型のチップを通して、揮発性麻酔薬溶液をパーコレーションによって放出する。そのような包装形状を使用する場合、揮発性麻酔薬が漏出して貯蔵寿命期間内での溶液組成の変化を引き起こさないように、アンプルの上部空き高を可能な限り少なくする、または理想的にはなくすように注意を払う。
【0041】
本発明は、溶液中で調剤された揮発性麻酔薬を含む改善された揮発性麻酔薬組成物を提供することによって、当技術分野における制限を克服する。いくつかの態様において、溶液は薬学的に許容される抽出溶媒をさらに含む。抽出溶媒の存在は、溶液から放出される麻酔薬蒸気の低減(たとえば、任意の起こりうる蒸気の引火性および/または患者もしくは医療職員による吸入に関連するリスクの低減)、組成物の貯蔵寿命または耐久性の改善、および/または揮発性麻酔薬組成物の薬物動態の改善が含まれる、揮発性麻酔薬組成物に対して何らかの利点を提供しうる。たとえば、抽出溶媒は、揮発性麻酔薬(たとえば、イソフルラン)と非共沸様式で相互作用して、揮発性麻酔薬の気化または蒸発を効果的に低減しうる(すなわち、揮発性減弱効果、VAE)。このようにして、溶液中の揮発性麻酔薬の貯蔵寿命および/または耐久性は改善されうる。加えて、揮発性麻酔薬の薬物動態は、揮発性麻酔薬と非共沸様式で相互作用して揮発性麻酔薬の気化または蒸発を効果的に低減しうる抽出溶媒によって変更されうる。そのような相互作用は、存在する場合そして存在すれば、ビヒクルによって与えられるVAEをさらに増強するであろう。たとえば、いかなる理論にもしばられたくはないが、ある態様において、抽出溶媒は、揮発性麻酔薬をより効果的に特定の領域に維持するための、および/または揮発性麻酔薬の作用部位への送達を助けるための、揮発性麻酔薬の貯蔵所として機能しうる。様々な態様において、揮発性麻酔薬溶液中に抽出溶媒が存在することにより、超音波処理器を用いることなく、投与前に溶液を混合できるであろう。
【0042】
本発明はまた、炎症のそのような低減を必要とする被検体において炎症を低減させるためにそのような揮発性麻酔薬組成物を用いる方法も提供する。具体的に、揮発性麻酔薬などの物質は、全身麻酔を得る場合には吸入によって送達されているが、炎症を低減または阻害する場合には、揮発性麻酔薬を溶液中で調剤して限局的または局所的(たとえば、経口、関節内、経皮、表面、粘膜、口腔、直腸、または膣等)に送達してもよい。一般的に、方法は、ある態様において溶液、乳剤、またはリポソームの成分であってもよい溶液での揮発性麻酔薬を、炎症を低減するために有効な量で被検体に送達する段階を伴ってもよい。本発明を、慢性または急性炎症を管理するために用いてもよい。他の態様において、揮発性麻酔薬は、手術または他の医学的技法の前、あいだ、または後に被検体の少なくとも一部を処置するために被検体に送達されてもよい。
【0043】
抽出溶媒
本発明の揮発性麻酔薬組成物は、揮発性麻酔薬と共に抽出溶媒などの溶媒を含有してもよい。本明細書において用いられるように、「抽出溶媒」という句は、本発明の組成物において揮発性麻酔薬と相互作用して、麻酔薬と化学的に反応することなく揮発性麻酔薬の揮発性を低減しうる溶媒を指す。この句にはまた、透過性または浸透性などの、しかしこれらに限定されない特性に影響を及ぼしうるビヒクルおよび機能的成分が含まれる、必ずしも抽出しない化合物が含まれる。
【0044】
ある抽出溶媒は、揮発性麻酔薬と非共沸様式で相互作用する。それにもかかわらず、本明細書において用いられる「抽出溶媒」という用語には、溶液からの揮発性麻酔薬の蒸気圧または蒸発が低減される限り、揮発性麻酔薬と相互作用して共沸または偽共沸溶液を形成する何らかの化合物、またはその混合物が含まれてもよい。抽出溶媒はまた、類似の条件下で純粋な揮発性麻酔薬を適用した場合と比較して、所定の温度で所定の表面から麻酔薬の所定の量が漏出するために要する時間が増加して、それによって吸収されない部分が完全に蒸発する前に適用部位に揮発性麻酔薬が接触する時間が認識可能に増加するように、揮発性麻酔薬の揮発性を減弱させると予想される。もう1つの態様において、本発明の製剤は、この抽出溶媒が関心対象組織への揮発性麻酔薬の透過性を増強して、このように意図される薬理学的転帰の達成または増強にとって好都合であるように、抽出溶媒を含有してもよい。例として、しかしこれらに限定されないが、上記の関心対象組織は、意図される薬理学的転帰に直接または間接的に関係するまたは関係すると考えられる皮膚または他の任意の組織であってもよい。本発明に適用される場合の透過性の増強は、(a)関心対象組織に送達される揮発性麻酔薬の量、および/または(b)関心対象組織への送達速度(すなわち、急速な送達)、および/または(c)関心対象組織における揮発性麻酔薬の滞留時間、の増加を指す。滞留時間の増加は、関心対象組織からの揮発性麻酔薬の消失の遅れを指す。
【0045】
以下に記述されるように、化学的クラスのみならず個々の例として、様々な抽出溶媒が本発明と共に用いるために想像される。本発明において企図される化学的クラスは、脂肪アルコール、脂肪酸、脂肪アミン、脂肪酸エステル、ポリオール、テルペン、エステル、エーテル、アルコキシル化アミド、ポリプロピレングリコールエーテル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびポリプロピレングリコールエーテルを含む。本発明において企図される個々の成分の選択される例は、ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール300、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、Labrasol、オレオイルマクロゴールグリセリド(Labrafil M 1944)、リノレオイルマクロゴールグリセリド(Labrafil M2125)、ラウロイルマクロゴールグリセリド(Labrafil M 2130)、ジカプリロカプリン酸プロピレングリコール、モノカプリル酸プロピレングリコール(Capryol 90、Capryol PGMC)、モノラウリン酸ポリプロピレングリコール(Lauroglycol 90、Lauroglycol FCC)、ポリグリセリル-3-ジオレエート、Peceol、イソステアリン酸イソステアリル、ジペラルゴン酸プロピレングリコール、ポリグリセリル-3-ジオレエート、ジペラルゴン酸プロピレングリコール、ミリスチン酸オクチルドデシル、セバシン酸ジエチル、アジピン酸ジイソプロピル、オレイン酸エチル、イソステアリン酸グリセリル、イソステアリン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリルアルコール、イソステアリン酸、オレイルアルコール、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、オリーブ油、落花生油、ダイズ油、ヒマシ油、トウモロコシ油、綿実油、ハッカ油、ベニバナ油、ゴマ油、ダイズ油、硬化ダイズ油、硬化植物油、中鎖トリグリセリドヤシ油、パーム油、液体ラノリン、DMSO、NMP等を含む。
【0046】
抽出溶媒の正確な濃度は、経験的に決定されてもよく、用いられる特異的揮発性麻酔薬に従って変化しうる。ある態様において、抽出溶媒は、組成物における揮発性麻酔薬の揮発性を低減させるために有効な量で組成物に存在するであろう。投与した場合にほとんどまたは全く毒性が起こらない抽出溶媒の濃度を選択するように、特に注意を払うべきである。ある抽出溶媒は、様々な分離技法(たとえば、抽出蒸留)において用いられる特性を示しうるが、本発明の態様に従う抽出溶媒は、特に揮発性麻酔薬を「抽出する」のではなくて揮発性を低減させるために、好ましくは揮発性麻酔薬を含む薬理学的混合物または溶液に含められると理解されるであろう。
【0047】
麻酔薬組成物に抽出溶媒を含めることは、投与前に溶液を混合する容易さを増加させうる。たとえば、ある態様において、最終製剤が自己乳化型薬物送達系(SEDDS)であるように選択される場合、投与前に混合することが望ましいであろう。ある態様において、抽出溶媒を揮発性麻酔薬組成物に含める場合には、投与前の麻酔薬溶液の超音波処理は不要である。この長所は、手術室のように、超音波処理器の存在が騒々しいまたはそのために集中できない状況(たとえば、慢性投与)、および超音波処理器の騒音を除去することが、疼痛を軽減するために慢性的または間欠的に揮発性麻酔薬組成物を投与される意識のある患者にとって、改善された環境を作りうる状況でも、特に有用でありうる。超音波処理器または他の類似のデバイスが必要でなくなることはまた、本発明に従う揮発性麻酔薬組成物の投与に関連する費用を低減するために特に有用でありうる。超音波処理器の存在に関連するかさを低減させることは、患者の可動性を有利に改善しうる。たとえば、患者が鎮痛のためにポンプを介して麻酔薬組成物の繰り返し投与を受けうる状況では、装置の量を低減することにより、患者がさらに超音波処理器を動かす必要がないため、可動性を改善しうる。ある態様において、抽出溶媒を揮発性麻酔薬組成物に含める場合には、投与前の麻酔薬溶液の超音波処理が必要である。
【0048】
抽出溶媒は当技術分野において公知であり、主成分の蒸気圧を遅らせて、それによってそのような溶媒が存在しない場合には全く起こらないであろう効率的分離を可能にすることにより、類似の沸点を有する化合物を分離するための抽出蒸留において典型的に用いられる。たとえば、米国特許第5,230,778号は、ジメチルホルムアミドなどの抽出溶媒を用いての抽出蒸留によるイソフルランの精製を記載している。米国特許第5,336,429号は、電子部品の洗浄用、ならびにイソフルランおよび低級アルコールまたはエステルを含む金属の脱脂用の溶媒を記載しているが、これらの組成物は、実質的に一定の沸点を有する共沸混合物として記載されている。これに対して、本発明は、創傷を処置するおよび/または炎症を減損させるための薬学的調製物を提供する。創傷および炎症を処置するための本発明の組成物および方法のさらなる局面は、揮発性麻酔薬によって与えられる鎮痛活性である。
【0049】
米国特許第5,230,778号に記載のアセトンなどの、当技術分野において公知の特定の抽出溶媒は、非常に毒性が高く、より高濃度で薬学的調製物に含めることが制限されうる。
【0050】
ある態様において、抽出溶媒は、麻酔薬との共沸混合物として相互作用して、麻酔薬の揮発性を低減させうる。たとえば、エタノールは、米国特許第5,230,778号において記載されるように、揮発性麻酔薬と共沸様式で相互作用しうる。
【0051】
抽出溶媒の様々な濃度を本発明と共に用いてもよい。たとえば、揮発性麻酔薬を含む本発明の組成物は、約0.1%〜99%、0.1%〜60%、5%〜50%、10%〜40%、5%〜25%、10%〜30%、10%〜25%、25%〜50%、10%〜75%、25%〜75%、10%〜65%、25%〜 65%、10%〜60%、25%〜60%、0.1 %、1 %、5%、10%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、またはそこから導き出せる任意の範囲の抽出溶媒を含んでもよい。
【0052】
ある態様において、抽出溶媒は、ポリエチレングリコール400(PEG 400)またはポリエチレングリコール300(PEG 300)である。他の態様において、ビヒクルは、オリーブ油、または落花生油、または液体ラノリン、またはジエチレングリコールモノエチルエーテルである。
【0053】
ある態様において、抽出溶媒は、ジエチレングリコールモノエチルエーテルである。他の態様において、機能的成分は、オレイン酸エチル、イソステアリン酸グリセリル、イソステアリン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリルアルコール、イソステアリン酸、またはオレイルアルコールである。
【0054】
ある態様において、抽出溶媒は、ジメチルスルホキシド(DMSO)またはN-メチル-2-ピロリドン(NMP)である。他の態様において、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、またはジメチルイソソルビドなどの抽出溶媒を用いてもよい。アセトンを用いる場合、起こりうるいかなる毒性も最小限にするために適切な用量を選ぶように注意すべきである。
【0055】
他の抽出溶媒には、PEG-400、PEG-300、およびジエチレングリコールモノエチルエーテルが含まれる。
【0056】
様々な態様において、エタノール、プロパノール、またはイソプロパノールなどの医学的に許容されるアルコールを用いてもよいと想像される。これらの態様において、用いられるアルコールの濃度は、神経近傍への溶液の注射が原因で刺激または神経細胞死がほとんどまたは全く起こらないように、溶液中で十分に希薄である。
【0057】
1つの抽出溶媒または多数の抽出溶媒が、本発明の麻酔薬組成物に存在してもよい。たとえば、ある態様において、揮発性麻酔薬を含む組成物中に単一の抽出溶媒(たとえば、DMSO、NMP、またはPEG 400)だけが存在する。他の態様において、揮発性麻酔薬を含む組成物中に、2つ、3つ、4つ、またはそれより多くの抽出溶媒が存在してもよい。ある態様において、本発明の麻酔薬組成物中に単一の揮発性麻酔薬(たとえば、イソフルラン)だけが存在し;他の態様において、本発明の麻酔薬組成物中に2つ、3つ、4つ、またはそれより多くの揮発性麻酔薬が存在してもよい。ある態様において、本発明の麻酔薬組成物中に単一の抽出溶媒(たとえば、ジエチレングリコールモノエチルエーテル)だけが存在する。他の態様において、本発明の揮発性麻酔薬中に2つ、3つ、4つ、またはそれより多くの抽出溶媒が存在してもよい。
【0058】
N-メチルピロリドン:
N-メチル-2-ピロリドン(NMP)は、本発明に従う揮発性麻酔薬組成物に含まれてもよい溶媒である。NMPは、5員ラクタム構造を有する化学化合物である。これは、水ならびに酢酸エチル、クロロホルム、ベンゼン、および低級アルコールまたはケトンが含まれる溶媒と混和性の澄明からわずかに黄色の液体である。NMPはまた、化学名である1-メチル-2-ピロリドンまたはN-メチル-2-ピロリドンおよびm-ピロールと呼ばれる。NMPは、双極性非プロトン性溶媒のクラスに属し、これには、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、およびジメチルスルホキシドが含まれる。その良好な溶解性特性のために、NMPは、特にポリマーの分野で、広範な化学物質を溶解するために用いられてきた。NMPはまた、織物、樹脂、および金属コーティングされたプラスチックの表面処理用の溶媒として、または塗装剥離剤としても用いられる。
【0059】
NMPは、ある薬学的製剤において難溶性薬剤の溶解性を改善するために医療産業において用いられている。たとえば、NMPは、獣医学において様々な薬物と共に用いられている。NMPを用いることによる薬物の溶解度の改善のみならず、ヒト用の表面および経皮薬学的製品におけるその適用性を主張するいくつかの特許が発行されている。
【0060】
NMPの相対的非毒性特性により、NMPは、本発明と共に溶媒として用いるために特に適している。NMPは、都合のよい毒性プロフィールを有し、それにより様々な表面、経皮、および非経口投与剤形において用いるための適した候補物質となっている。NMPは、International Specialty Products(ISP; New Jersey, USA)が販売する商標Pharmasolve のN-メチル-2-ピロリドンとしてGMP等級で入手可能である。
【0061】
ジメチルスルホキシド(DMSO):
ジメチルスルホキシド(DMSO)は、本発明のある態様において溶媒として用いられる。DMSOは、式(CH3)2SOを有する。DMSOは、極性および非極性化合物の両方を溶解し、広範な有機溶媒のみならず水と混和性である、極性非プロトン性溶媒である
【0062】
DMSOは、相対的に非毒性の化合物であり、このため本発明における溶媒として用いるために特に適している。DMSOの毒性が相対的にないことは十分に確立されており、DMSOを医学目的で用いる可能性は、University of Oregon Medical SchoolチームのStanley Jacob氏によって確立され、彼はDMSOが、皮膚および他の膜を損傷することなく透過して、他の化合物を生体系へ運びうることを発見した。DMSOはまた、凍結保護剤として、および抗炎症剤としても用いられている。ジメチルスルホキシドは、炭水化物、ポリマー、ペプチドが含まれる様々な有機物質のみならず、多くの無機塩およびガスを溶解する。
【0063】
様々な態様において、揮発性麻酔薬を含む組成物中の、たとえば約0.1%から約10%という低濃度のDMSOは、投与前に組成物の超音波処理の必要をなくすために十分でありうると想像される。揮発性麻酔薬を含む組成物中のたとえば約10%から約75%またはそれより高いより高濃度のDMSOは、送達される揮発性麻酔薬の速度および/または程度の増加を可能にするような様式で、揮発性麻酔薬の薬物動態を変更するのに十分でありうる。
【0064】
揮発性麻酔薬
一般的に、記載の組成物および方法と共に用いるために適したハロゲン化エーテル麻酔薬または揮発性麻酔薬には、大抵は室温で液体であるが、容易にガス状になることができるか、または室温ですでにガス状であり、有意な副作用を起こすことなく炎症を低減させうる物質が含まれる。たとえば、体による代謝が最小限であるか、そうでなくても不活性である揮発性麻酔薬を選択することが望ましいであろう。このようにして、肝および腎毒性が最小限となりうる。同様に、揮発性麻酔薬は、短い半減期を有するか、または滴定性を促進するために迅速に作用することが望ましいであろう(すなわち、被検体は自身が経験する炎症の量に関して送達量を容易に調節してもよい)。耐性(オピオイドまたは局所揮発性麻酔薬とは異なり)または依存性(オピオイドのように)を生じない活性物質ガスも同様に望ましいであろう。
【0065】
本発明の組成物および方法において有用な揮発性麻酔薬には、ハロゲン化エーテル化合物、イソフルラン、セボフルラン、ハロタン、エンフルラン、デスフルラン、メトキシフルラン、およびジエチルエーテルが含まれる。ある態様において、キセノンも同様に本発明と共に用いてもよい。1つの物質または物質の混合物は、本明細書において記載される方法と共に用いるために特に適しているであろう。
【0066】
様々な態様において、ガス状揮発性麻酔薬を本発明と共に用いてもよい。たとえば、ガス状揮発性麻酔薬を、本発明に従う溶液に溶解して、経皮、表面、粘膜、口腔、直腸、経口、関節内、または膣などの、限局的または局所技法で投与してもよい。重要なことは、ガス状揮発性麻酔薬は、吸入によって投与されない。1つの態様において、投与経路は静脈内である。もう1つの態様において、投与経路は静脈内ではない。ハロゲン化麻酔薬以外のガス状揮発性麻酔薬が企図され、例には、キセノン、酸化窒素、シクロプロパンおよびエーテルが含まれ、その全てを様々な態様において、ラセミ混合物型でまたはd-異性体もしくはl-異性体型で用いてもよい。様々な態様において、他の生物活性ガス(たとえば、酸化窒素)を本発明に従って被検体に溶液中で送達してもよい。
【0067】
複数の揮発性麻酔薬を一度に投与してもよく、および異なる揮発性麻酔薬を1回の処置サイクルを通して様々な時点で投与してもよい。たとえば、2、3、4、またはそれより多くの揮発性麻酔薬を、被検体に同時にまたは繰り返し投与してもよい。化合物を被検体に繰り返し投与する場合、化合物の投与期間は、約1〜60秒、1〜60分、1〜24時間、1〜7日、1〜6週間もしくはそれより長く、またはその中で導き出せる任意の範囲であってもよい。いくつかの例において、その物理的および生理学的特性に応じて、揮発性麻酔薬の送達を行うことが望ましいであろう。ある臨床でのシナリオにおいて、急性炎症を処置するためには作用持続がより短い物質が望ましい場合があるが、作用持続がより長い物質は、慢性炎症応用にとってより適している場合がある。
【0068】
抗生物質
本発明の組成物および方法において有用な抗生物質には、公知の抗生物質のみならず、現在まだ開発されていない抗生物質が含まれる。非制限的な例には、アミカシン、アミノグリコシド、アモキシシリン、アンピシリン、アジスロマイシン、バカンピシリン、カンジシジン、カルベニシリン、セファクロル、セファドロキシル、セファマンドール、セファゾリン、セフジニル、セフジトレン、セフェピム、セフォニシド、セフォペラゾン、セフォタキシム、セフォテタン、セフォキシチン、セフポドキシム、セフプロジル、セフタジジム、セフチブテン、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフロキシム、セファレキシン、セファロスポリン、セファピリン、セフラジン、シプロフロキサシン、クラリスロマイシン、クリンダマイシン、クロトリマゾール、クロキサシリン、クリスチシリン、クプリミキシン、ペンチド(Pentids)、ペルマペン(Permapen)、ファイゼルペン(Pfizerpen)、ファイゼルペン-AS、ワイシリン(Wycillin)、デメクロサイクリン、ジクロキサシリン、ジリスロマイシン、ドキシサイクリン、エノキサシン、エリスロマイシン、フルクロキサシリン、フルオロキノロン、ガチフロキサシン、ゲミフロキサシン、ゲンタマイシン、ハロプロジン、ヨードクロロヒドロキシキン、カナマイシン、ケトライド、レボフロキサシン、リポペプチド、ロメフロキサシン、マクロライド、メトロニダゾール、メズロシリン、ミノサイクリン、モキシフロキサシン、ナフシリン、ネオマイシン、ネチルマイシン、ノルフロキサシン、ナイスタチン、オフロキサシン、オキサシリン、オキシテトラサイクリン、パロモマイシン、ペニシリンG、ペニシリンV、ペニシリン、ピペラシリン、ピバンピシリン、ピブメシリナム、ロキシスロマイシン、スパルフロキサシン、ストレプトマイシン、スルファメチゾール、スルファメトキサゾール、スルフイソキサゾール、スルホンアミド、テリスロマイシン、テトラサイクリン、チカルシリン、トブラマイシン、トルナフテート、トリメトプリム-スルファメトキサゾール、トロバフロキサシン、およびバンコマイシンが含まれる。
【0069】
乳剤
当業者に理解されるように、乳剤は、2つまたはそれより多くの不混和性の液体(すなわち、多数の相を含有する)の混合物からなり、乳剤は、1つまたは本質的に1つのみの相を含有する溶液とは異なる。液体(分散相)の1つは、他の相(連続相)に分散される。乳剤の1つの型において、連続液体相が水の液滴を取り囲む(たとえば、油中水型乳剤)。乳剤のもう1つの型において、油は連続水相内に分散している(たとえば、水中油型乳剤)。同様に、乳化は、乳剤を調製する工程である。
【0070】
ある態様において、本発明の揮発性麻酔薬は、ダイズ油乳剤などの脂質乳剤が含まれるがこれらに限定されるわけではない油中水型または水中油型乳剤などの乳剤の成分である。たとえば、抽出溶媒を含む溶液中に溶解した揮発性麻酔薬を含む揮発性麻酔薬組成物はまた、脂質乳剤または水中油型乳剤も含んでもよい。様々な態様において、本発明の乳剤は、抽出溶媒をさらに含んでもよい溶液に溶解した揮発性麻酔薬を含む水溶液を含有してもよい。たとえば脂質乳剤などの油中水型または水中油型乳剤を揮発性麻酔薬組成物に含めることを用いて、たとえば揮発性麻酔薬組成物の安定性に都合のよい影響を及ぼしてもよく、および/または麻酔薬の薬物動態を変更してもよい。たとえば、脂質組成物、脂質乳剤、油中水型乳剤、および/または水中油型乳剤は、本発明の揮発性麻酔薬組成物の経皮、表面、粘膜、口腔、直腸、経口、関節内、または膣送達にとって有用でありうる。イソフルランのある乳剤は、以前に静脈内(da Silva Telles et al., 2004, Rev. Bras. Anaestesiol Campianas 54(5):2004)、または硬膜外投与(Chai et al., 2008, British J Anesthesia 100:109-115; Chai et al., 2006, Anesthesiology 105:A743)のために、いずれも麻酔の導入用に調製されている。
【0071】
ある態様において、本発明の乳剤は、揮発性麻酔薬と水とを含み、乳化剤をさらに含んでもよい。本発明の乳剤にはまた、乳剤のサイズより小さい平均液滴サイズを有する乳剤であるナノ乳剤が含まれるがこれらに限定されるわけではない。ナノ乳剤は時にマイクロ乳剤およびサブマイクロ乳剤と呼ばれる。しばしば、ナノ乳剤の物理的外観は、乳剤のしばしば乳状の外観ではなく、平均液滴サイズが小さいためにむしろ透明である。本発明の乳剤にはまた、たとえば米国特許出願第20070149624号および第20050238677号、米国特許第5,183,585号および国際特許出願WO 05108383において開示される乳剤などの液晶乳剤が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0072】
ある態様において、本発明の乳剤は、脂質成分を有してもよい。様々な態様において、脂質成分は、乳剤の約1%から99%、約5%から約75%、約10%から約60%、約20%から約50%、または約30%から約40%v/vの範囲の量を含んでもよい。様々な態様において、乳剤の脂質成分は、ダイズ油、長鎖トリグリセリド、ヒマシ油、トウモロコシ油、綿実油、オリーブ油、落花生油、ハッカ油、ベニバナ油、ゴマ油、ダイズ油、硬化ダイズ油、硬化植物油、中鎖トリグリセリドヤシ油、パーム核油および誘導体、中鎖(C8/C10)モノおよびジグリセリド、d-αトコフェロール、ダイズ脂肪酸、またはその組み合わせであってもよい。ある態様において、乳剤の脂質成分はダイズ油である。本発明の揮発性麻酔薬組成物の産生にとって有用でありうる市販の脂質組成物には、Intralipid(登録商標)、Liposyn(登録商標)、およびNutrilipid(登録商標)が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0073】
他の態様において、乳剤は乳化剤をさらに含む。乳化剤は、乳剤を安定化させる物質である。乳化剤はまたエマルジェント(emulgent)として知られることがある。乳化剤はまた、界面活性剤であってもよい。様々な態様において、乳化剤は、卵リン脂質、精製卵リン脂質、ポリオキシル35ヒマシ油(Cremophor EL)、ポリオキシル40硬化ヒマシ油(Cremophor RH 40)、ポリオキシル60硬化ヒマシ油(Cremophor RH 60)、ポリソルベート20、ポリソルベート80、コハク酸d-α-トコフェリルポリエチレングリコール1000、Solutol HS-15、プロピレングリコール、またはその組み合わせであってもよい。様々な濃度の乳化剤を本発明と共に用いてもよい。たとえば、揮発性麻酔薬を含む本発明の組成物は、約0.1%〜99%、0.1%〜60%、5%〜50%、10%〜40%、5%〜25%、10%〜30%、10%〜25%、25%〜50%、10%〜75%、25%〜75%、10%〜65%、25%〜65%、10%〜60%、25%〜60%、0.1%、1%、5%、10%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、またはその中で導き出せる任意の範囲の乳化剤を含んでもよい。
【0074】
他の態様において、本発明の乳剤は、パーフルオロカーボン成分を有する。様々な態様において、パーフルオロカーボン成分は、乳剤の約0.1%から99%、約5%から約75%、約10%から約60%、約20%から約50%、または約30%から約40%v/vの範囲の量を含んでもよい。様々な態様において、パーフルオロカーボンは、限られた毒性および大量のガス捕捉能により、さらなる利点を提供しうる。1つの態様において、本発明の乳剤は、揮発性麻酔薬、パーフルオロカーボン、水、および乳化剤を含む。パーフルオロカーボン、具体的にパーフルオロ-n-オクタンは、網膜剥離の症例において房水の代わりに眼にそれを点眼することによって臨床で用いられてきた(Chang, 1992, S. Intl. Ophthalmol. Clinic 32:153-163を参照されたい)。
【0075】
リポソームおよび微小液滴
様々な態様において、本発明の揮発性麻酔薬は、リポソーム懸濁液の成分であってもよい。リポソーム(たとえば、マルチラメラ、ユニラメラ、および/または多小胞リポソーム)は、壁が、リン脂質と、哺乳動物の細胞膜を構成する分子と物理的および/または化学的特性が類似の分子との1つまたは複数の層を含む、顕微鏡的球形の液体充填構造である。非制限的な例によって、リポソームは、コレステロール、ステアリルアミン、またはホスファチジルコリンなどの、様々な天然の膜成分から(例えば、その各々の全体が参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第5,120,561号および第6,007,838号を参照されたい)、またはDOPE(ジオレオイルホスファチジル-エタノールアミン)のような純粋な界面活性剤成分から形成されてもよい。リポソームは、水性または脂質分画または双方のいずれかにおいて、ペイロードとして広範な材料を組み入れるように調剤されてもよい。一般的に、親油性の活性物質を二重層に溶解すると、両親媒性の物質はリン脂質膜に会合するようになり、および親水性物質は水性の封入体積中で溶液で存在する(Artmann et al., 1990, Drug Res. 40 (II) 12:1363-1365;その全体が参照により本明細書に組み入れられる)。
【0076】
薬物担体として有用な、または表面投与での使用にとって有用なリポソームは、非毒性であり、産業界において入手可能である(Gehring et al., 1990, Drug Res. 40 (II)12:1368-1371;その全体が参照により本明細書に組み入れられる)。リポソームは、アジドチミジン(AZT)の抗腫瘍および抗ウイルス誘導体のような親油性薬物の担体として用いられている(Kamps, et al., 1996, Biochim. Biophys. Acta. 1278:183-190)。インスリンもまた、リポソームを介して送達されている(Muramatsu et al., 1999, Drug Dev. Ind. Pharm. 25:1099-1105)。薬物担体として医学的に用いる場合、リポソームを注射してもよく、それらを脂質によって修飾すると、その表面はより親水性になり、よってそれらの存続能が増加しうる。ポリエチレングリコール修飾リポソームは、ドキソルビシンのような親水性(水溶性)抗癌剤のための担体として用いられている。ミトキサントロンおよびその他のリポソーム誘導体は、外来侵入者としてそれらを認識する貪食細胞に蓄積する傾向があることから、免疫系の貪食細胞に影響を及ぼす疾患を処置するために特に有効である(Rentsch et al., 1997, Br. J. Cancer 75:986-992)。リポソームはまた、欠陥遺伝子によって引き起こされる疾患を処置するために、細胞に正常遺伝子を運ぶためにも用いられている(Guo et al., 2000, Biosci. Rep. 20:419-432)。組成を変えることができるためにリポソームの用途が広いことにより、ワクチン、タンパク質、ヌクレオチド、プラスミド、薬物、化粧品、または本発明の揮発性麻酔薬を体に送達するためにリポソームを用いることができる。
【0077】
本発明のリポソーム組成物は、本明細書において記載される方法および詳細な説明に従って、任意の範囲のリポソームおよび揮発性麻酔薬成分を含んでもよい。非制限的な例として、本発明の組成物のリポソーム成分には、0.1%から99.9%リポソーム成分、またはより好ましくは0.1%から50%リポソーム成分、およびさらにより好ましくは0.1%から30%リポソーム成分が含まれてもよい。様々な態様において、本発明のリポソームは、コレステロール、ステアリルアミン、ホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン、またはその組み合わせを含む。
【0078】
様々な態様において、本発明の揮発性麻酔薬はまた、微小液滴の成分であってもよい。本発明の微小液滴は、適した脂質の単層で覆われた、直径約200オングストロームから約10,000オングストロームの範囲である有機液相薬物の球体からなる。好ましい脂質はリン脂質であり、これは生体膜の天然の構成成分であり、そのため生物学的に適合性である。微小液滴を調製するために有用な化合物には、ホスファチジルコリン(レシチン)、スフィンゴミエリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ジホスファチジルグリセロールおよびホスファチジルグリセロールが含まれる。
【0079】
微小液滴は、プローブまたはバス超音波処理が含まれる超音波処理、ホモジナイゼーション、微小流動化、または高強度機械的撹拌によって調製されてもよい。本発明の微小液滴の好ましい調製法は、プローブ超音波処理器による超音波処理である。または、微小液滴を、バス超音波処理器によって調製してもよい。小規模調製物の場合、直径1.0 cmの試験管を、水を満たしたバス超音波処理器において試験管クランプを用いて吊す。微小液滴の成分を最初に振とう、ボルテックス混合、ポリトロンまたは他の方法によっておおよそ混合する。次に、懸濁液をバス超音波処理器に導入して、1〜2時間超音波処理する。調製を大規模で行う場合、試験管を省略して、微小液滴の成分をバス超音波処理器に直接導入することが可能である。微小液滴はまた、高強度機械的撹拌によって産生してもよい。有用な方法には、ワーリングブレンダー、ポリトロン、および市販の塗料振とう機などの高振動数シェーカーが含まれる。微小液滴の調製において有用な他の材料および方法は当技術分野において公知であり、米国特許第4,622,219号、第4,725,442号、および第5,091,188号、Haynes et al.(1989, J. Contr. Rel. 9:1-12)、ならびにHaynes et al.(1985, Anesthesiology 63:490-499)において記載され、そのすべては、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0080】
投薬
投与される揮発性麻酔薬の量は、所望の特定の適応に依存する。たとえば、投与は、処置が意図される炎症のタイプに依存するであろう。例として、急性炎症に対して慢性炎症を低減するために揮発性麻酔薬の送達を意図する場合、用量は異なりうる。同様に、被検体を麻酔するために揮発性麻酔薬組成物を用いる場合(表面、粘膜、口腔、経口、関節内、直腸、または膣が含まれる、全身または局所)、用量は異なりうる。被検体の身体的特徴もまた、適当な用量を決定する上で重要でありうる。体重、年齢等などの特徴は重要な要因でありうる。たとえば、揮発性麻酔薬は、揮発性麻酔薬イソフルランの場合に証明されているように、年齢と共に効力が増加しうる。
【0081】
多くの揮発性麻酔薬の溶解度が、揮発性麻酔薬および/または溶液の温度によって影響を受けうることから、揮発性麻酔薬の温度もまた、適当な用量を選択する場合の要因であると考えられるであろう。たとえば、温度の上昇は、溶解度を増加させ、このように揮発性麻酔薬組成物の効力を増加させうる。この特性は、ある揮発性麻酔薬について証明されている。特定の用量はまた、選んだ投与計画にも依存しうる。たとえば、揮発性麻酔薬組成物を持続的または周期的に送達してもよい。逆に、揮発性麻酔薬組成物を、1回事象として1回投与として投与してもよい。
【0082】
揮発性麻酔薬(たとえば、ハロゲン化揮発性麻酔薬化合物)は、選択される揮発性麻酔薬および所望の効果に応じて、約250から約50,000ナノグラム/cm2標的作用部位の範囲の濃度に至る量で適用されてもよい。ある態様において、ハロゲン化揮発性麻酔薬または揮発性麻酔薬は、約5から約5,000,000ナノグラム/cm2標的作用部位の濃度を達成するように投与されてもよい。用量範囲は、選択される化合物および患者の多様性に応じて変化するが、約0.01から約10,000ナノグラム/cm2標的作用部位などの低用量は、軽度から中等度の炎症を処置するために適しているが、重度の炎症を処置するためには、約10,000ナノグラム/cm2標的作用部位から約500,000ナノグラム/cm2標的作用部位またはそれより多い量などの高用量が適していることは一般的に真実である。当然、用量は1回(たとえば、軽度の炎症が1回発生したために)、繰り返し(たとえば、中等度または慢性炎症のため)、または連続的に(たとえば、重度の炎症のために)与えられてもよい。これらの投与計画の組み合わせも同様に用いてもよい。たとえば、重度の炎症に罹っている被検体は、周期的に追加の投与を行いながら持続的投与を必要としうる。
【0083】
揮発性麻酔薬(たとえば、揮発性麻酔薬、イソルフラン等)を、水、食塩水、または人工CSF溶液などの溶液中で混合する態様において、揮発性麻酔薬の濃度は変化してもよい。たとえば、溶液は、約1から約99%、約10から約75%、約10から約50%、約20から約50%、30から約50%、約1から約45%、約1から約40%、約1から約35%、約1から約30%、約1から約25%、約1から約20%、約1から約15%、約1から約10%、約1から約5%、約0.5から約5%、約0.1から約5%、約0.1から約2.5%、約0.5から約2.5%、またはその中で導きだせる任意の範囲の体積比で揮発性麻酔薬を含有してもよい。これらの態様において、揮発性麻酔薬は、揮発性麻酔薬、たとえばイソフルランであってもよく、溶液は、水、食塩水、人工脳脊髄液(ACSF)、または他の液体であってもよい。
【0084】
本発明の組成物の投与および送達様式を、たとえば量、濃度、投与回数、および投与のタイミングを変動させることによって、炎症の低減を達成するように調節してもよい。
【0085】
揮発性麻酔薬溶液はまた、界面活性剤、PVP、ポリマー、抗菌剤、保存剤等などの1つまたは複数の添加剤を含有してもよい。ある態様において、本発明の揮発性麻酔薬組成物は、約0.1〜90%のイソフルラン、メトキシフルラン、またはセボフルランなどの揮発性麻酔薬、0.1〜99%のNMPまたはDMSOなどの抽出溶媒、0.1〜99%の食塩水、および0〜50%の他の添加剤(たとえば、グリセロール、界面活性剤、PVP等)を含んでもよい。いくつかの態様において、投与前に最終希釈に供されてもよい濃縮製剤を産生することが望ましいであろう。
【0086】
様々な態様において、イソフルランなどの約10%揮発性麻酔薬溶液を用いてもよく、創傷の処置および/または炎症レベルの減損を達成するために、この溶液を一度に、持続的に、および/または繰り返し投与してもよい。創傷および炎症を処置するための本発明の組成物および方法のさらなる局面は、揮発性麻酔薬の鎮痛活性である。このように、揮発性麻酔薬の10%v/v溶液を用いて創傷を処置してもよい。より高濃度および/またはより長い投与期間の揮発性麻酔薬を、様々な態様において必要に応じて用いてもよい。
【0087】
活性物質の送達法
本発明の揮発性麻酔薬は、表面送達されてもよい。いくつかの態様において、表面送達のために用いてもよい揮発性麻酔薬の特異的濃度には、約100から約500,000ナノグラム/cm2標的作用部位、約100から約250,000ナノグラム/cm2標的作用部位、約100から約100,000ナノグラム/cm2標的作用部位、約100から約50,000ナノグラム/cm2標的作用部位、約100から約25,000ナノグラム/cm2標的作用部位、または約100から約10,000ナノグラム/cm2標的作用部位が含まれる。用いられる揮発性麻酔薬の特異的濃度は、所望の効果に応じて変動してもよく、様々な態様において、揮発性麻酔薬組成物は効果に関して滴定され;このように、用いられるまたは組織において達成される揮発性麻酔薬の濃度は、特異的な所望の結果および/または揮発性麻酔薬に対する感受性などの患者の特定の特徴に依存して変動しうる。
【0088】
ある態様において、本発明の組成物および方法は、炎症を減らすために用いられてもよい。いくつかの態様において、炎症を低減するために用いられてもよい揮発性麻酔薬の特異的濃度には、約100から約500,000ナノグラム/cm2標的作用部位、約100から約250,000ナノグラム/cm2標的作用部位、約100から約100,000ナノグラム/cm2標的作用部位、約100から約50,000ナノグラム/cm2標的作用部位、約100から約25,000ナノグラム/cm2標的作用部位、または約100から約10,000ナノグラム/cm2標的作用部位が含まれる。
【0089】
本発明の薬学的組成物は、アプリケータの助けを借りて、処置を受ける被検体に投薬されてもよい。用いられるアプリケータは、処置される特異的医学的状態、薬学的組成物の量および物理的状態、ならびに当業者の選択に依存しうる。
【0090】
本発明の薬学的組成物は、説明材料と共に、被検体に、または被検体に組成物を投薬する担当の医療職員に提供されてもよい。説明材料には、キットの中の本発明の実践において用いられる組成物および/または化合物の有用性を伝達するために用いられてもよい刊行物、記録、ダイアグラム、または他の任意の表現媒体が含まれる。キットの説明材料は、たとえば本発明の実践において用いられる化合物および/または組成物を含有する容器に貼付されてもよく、または化合物および/または組成物を含有する容器と共に運送されてもよい。または、レシピエントが説明材料と化合物とを連携して用いることを意図して、説明材料を容器とは別に運送してもよい。説明材料の配達は、たとえばキットの有用性を伝達する刊行物もしくは他の表現媒体の物理的配達であってもよく、または電子伝達によって、たとえば電子メールなどのコンピューターによって、もしくはウェブサイトからのダウンロードによって達成されてもよい。
【0091】
罹患領域への企図される他の投与経路には:注射、注入、持続的注入、標的細胞を直接浸す局所灌流、カテーテルを介して、ナノ粒子送達を介して、静脈内、筋肉内、皮膚、皮下、経皮、または表面投与(たとえば、担体ビヒクルにおいて、表面制御放出パッチ、創傷包帯において、ハイドロコロイド、フォーム、ハイドロゲル、クリーム、α−ゲル、ローション、軟膏、液晶乳剤(LCE)、および/または微小乳剤)が含まれる。適切な生物学的担体または薬学的に許容される賦形剤を用いてもよい。投与される化合物は、様々な態様において、ラセミ体であってもよく、異性体として精製されてもよく、または異性体として純粋であってもよい。
【0092】
経口投与
経口投与にとって適した本発明の実践において用いられる薬学的組成物の製剤は、各々が、活性成分の既定量を含有する、錠剤、硬または軟カプセル、カシェ剤、トローチ、またはロゼンジが含まれるがこれらに限定されるわけではない個別の固体投与単位の剤形で調製、包装、または販売されてもよい。経口投与にとって適した他の製剤には、粉末もしくは顆粒製剤、水性もしくは油性懸濁液、水性もしくは油性液剤、または乳剤が含まれるがこれらに限定されるわけではない。本明細書において用いられるように、「油性の」液体は、水より低い極性特徴を示す炭素含有液体分子を含む。
【0093】
活性成分を含む錠剤は、たとえば任意で1つまたは複数の追加の成分と共に活性成分を圧縮または成形することによって作製されてもよい。圧縮錠は、粉末または顆粒調製物などの自由に流動する形状の活性成分を、任意で1つまたは複数の結合剤、潤滑剤、賦形剤、表面活性剤、および分散剤と混合して、適した装置において圧縮することによって調製されてもよい。成形錠は、活性成分、薬学的に許容される担体、および混合物を湿らせるために少なくとも十分な液体、の混合物を、適した装置において成形することによって作製されてもよい。
【0094】
錠剤の製造において用いられる薬学的に許容される賦形剤には、不活性希釈剤、造粒および崩壊剤、結合剤、ならびに潤滑剤が含まれるがこれらに限定されるわけではない。公知の分散剤には、ジャガイモデンプンおよびデンプングリコール酸ナトリウムが含まれるがこれらに限定されるわけではない。公知の表面活性剤には、ラウリル硫酸ナトリウムが含まれるがこれらに限定されるわけではない。公知の希釈剤には、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、微結晶性セルロース、リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、およびリン酸ナトリウムが含まれるがこれらに限定されるわけではない。公知の造粒および崩壊剤には、コーンスターチおよびアルギン酸が含まれるがこれらに限定されるわけではない。公知の結合剤には、ゼラチン、アカシア、α化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースが含まれるがこれらに限定されるわけではない。公知の潤滑剤には、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、シリカ、およびタルクが含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0095】
錠剤は、非コーティングであってもよく、または被検体の消化管での分解を遅らせて、それによって活性成分の持続的な放出および吸収を提供するために公知の方法を用いてコーティングしてもよい。例として、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルなどの材料を用いて錠剤をコーティングしてもよい。さらに例として、米国特許第4,256,108号、第4,160,452号、および第4,265,874号に記載される方法を用いて、錠剤をコーティングして、浸透圧制御放出錠を形成してもよい。錠剤はさらに、薬学的に洗練された味のよい調製物を提供するために、甘味料、香料、着色剤、保存剤、またはこれらのいくつかの組み合わせを含んでもよい。
【0096】
活性成分を含む硬カプセルを、ゼラチンなどの生理的に分解可能な組成物を用いて作製してもよい。そのような硬カプセルは活性成分を含み、さらにたとえば炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、またはカオリンなどの不活性固体希釈剤が含まれる追加の成分を含んでもよい。
【0097】
活性成分を含む軟ゼラチンカプセルは、ゼラチンなどの生理的に分解可能な組成物を用いて作製されてもよい。そのような軟カプセルは活性成分を含むが、活性成分を水、または落花生油、流動パラフィン、もしくはオリーブ油などの油性媒体と混合してもよい。
【0098】
経口投与にとって適した本発明の実践において用いられる薬学的組成物の液体製剤は、液体剤形、または使用前に水もしくはもう1つの適したビヒクルによって溶解されることが意図される乾燥品の剤形のいずれかで調製、包装、および販売されてもよい。
【0099】
液体懸濁剤は、水または油性ビヒクル中での活性成分の懸濁を達成するために慣用の方法を用いて調製されてもよい。水性ビヒクルには、たとえば水および等張食塩水が含まれる。油性ビヒクルには、たとえばアーモンド油、油性エステル、エチルアルコール、落花生油、オリーブ油、ゴマ油、またはヤシ油などの植物油、分留植物油、および流動パラフィンなどの鉱油が含まれる。液体懸濁剤はさらに、懸濁剤、分散剤、または湿潤剤、乳化剤、粘滑剤、保存剤、緩衝剤、塩、香料、着色剤、および甘味料が含まれるがこれらに限定されるわけではない1つまたは複数の追加の成分を含んでもよい。油性懸濁剤は、濃化剤をさらに含んでもよい。公知の懸濁剤には、ソルビトールシロップ、硬化食用脂肪、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム、アカシアゴム、およびカルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロース誘導体が含まれるがこれらに限定されるわけではない。公知の分散剤または湿潤剤には、レシチンなどの天然に存在するホスファチド、アルキレンオキサイドと脂肪酸との、長鎖脂肪族アルコールとの、脂肪酸およびヘキシトールに由来する部分エステルとの、または脂肪酸および無水ヘキシトールに由来する部分エステルとの縮合産物(たとえば、それぞれ、ステアリン酸ポリオキシエチレン、ヘプタデカエチレンオキシセタノール、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビトール、およびモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン)が含まれるがこれらに限定されるわけではない。公知の乳化剤には、レシチンおよびアカシアが含まれるがこれらに限定されるわけではない。公知の保存剤には、メチル、エチル、またはn-プロピルパラヒドロキシ安息香酸、アスコルビン酸、およびソルビン酸が含まれるがこれらに限定されるわけではない。公知の甘味料には、たとえばグリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール、スクロース、およびサッカリンが含まれる。油性懸濁液のための公知の濃化剤には、たとえば蜜ロウ、固形パラフィン、およびセチルアルコールが含まれる。
【0100】
本発明の実践において用いられる薬学的調製物の粉末および顆粒製剤は、公知の方法を用いて調製されてもよい。そのような製剤は被検体に直接投与されてもよく、たとえば錠剤を形成するために、カプセル剤に充填するために、または水性もしくは油性ビヒクルをそれに添加することによって水性もしくは油性の懸濁液もしくは溶液を調製するために用いられてもよい。これらの製剤の各々は、1つまたは複数の分散剤または湿潤剤、懸濁剤、および保存剤をさらに含んでもよい。増量剤および甘味料、着香料、または着色剤などの追加の賦形剤も同様に、これらの製剤に含まれてもよい。
【0101】
本発明の実践において用いられる薬学的組成物はまた、水中油型乳剤または油中水型乳剤の剤形で、調製、包装、または販売されてもよい。油相は、オリーブ油もしくは落花生油などの植物油、流動パラフィンなどの鉱油、またはこれらの組み合わせであってもよい。そのような組成物は、アカシアゴムまたはトラガカントゴムなどの天然に存在するゴム、ダイズまたはレシチンホスファチドなどの天然に存在するホスファチド、モノオレイン酸ソルビタンなどの脂肪酸と無水ヘキシトールとの組み合わせに由来するエステルまたは部分エステル、およびモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンなどのそのような部分エステルとエチレンオキサイドとの縮合産物などの1つまたは複数の乳化剤をさらに含んでもよい。
【0102】
化学組成物を材料に浸透させるまたはコーティングする方法は当技術分野において公知であり、これには、表面に化学組成物を沈着または結合させる方法、材料の合成の際に材料の構造に化学組成物を組み入れる方法(たとえば、生理学的に分解可能な材料によって)、および吸収材料に水性または油性の溶液または懸濁液を吸収させて、その後に乾燥を行うまたは行わない方法が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0103】
非経口投与
非経口投与に関して、本発明の化合物は、注射または注入のために、たとえば静脈内、筋肉内、または皮下注射もしくは注入のために、またはボーラス用量での投与および/または持続的注入のために調剤されてもよい。任意で、懸濁剤、安定化剤、および/または分散剤などの他の調剤物質を含有する油性または水性ビヒクル中の懸濁剤、液剤、または乳剤を用いてもよい。
【0104】
非経口投与にとって適した薬学的組成物の製剤は、滅菌水または滅菌等張食塩水などの薬学的に許容される担体と混合した活性成分を含む。そのような製剤は、ボーラス投与にとって、または持続的投与にとって適した剤形で調製、包装、または販売されてもよい。注射可能な製剤は、破砕可能なもしくはそれ以外のアンプルなどの単位用量剤形で、または保存剤を含有する多用量容器で調製、包装、または販売されてもよい。非経口投与のための製剤には、油性または水性ビヒクル中での懸濁剤、液剤、乳剤、ペースト剤、および埋め込み可能な徐放性または生体分解性製剤が含まれるがこれらに限定されるわけではない。そのような製剤は、懸濁剤、安定化剤、または分散剤が含まれるがこれらに限定されるわけではない1つまたは複数の追加の成分をさらに含んでもよい。非経口投与のための製剤の1つの態様において、活性成分は、適したビヒクル(たとえば、滅菌発熱物質不含水)に溶解して、溶解した組成物を非経口投与する乾燥型(たとえば、粉末または顆粒型)で提供される。
【0105】
薬学的組成物は、滅菌の注射可能な水性または油性の懸濁剤または液剤の剤形で調製、包装、または販売されてもよい。この懸濁剤または液剤は、公知の技術分野に従って調剤されてもよく、活性成分のほかに、本明細書において記載される分散剤、湿潤剤、または懸濁剤などの追加の成分を含んでもよい。そのような滅菌注射用製剤は、たとえば水または1,3-ブタンジオールなどの非毒性の非経口投与で許容される希釈剤または溶媒を用いて調製されてもよい。他の許容される希釈剤および溶媒には、リンゲル液、等張塩化ナトリウム液、合成モノまたはジグリセリドなどの固定油が含まれるがこれらに限定されるわけではない。他の通常の非経口投与可能な製剤には、微結晶型の、リポソーム調製物中での、または生体分解性のポリマー系の成分として、活性成分を含む製剤が含まれる。徐放性製剤または埋め込みのための組成物は、乳剤、イオン交換樹脂、難溶性ポリマー、または難溶性の塩などの、薬学的に許容されるポリマーまたは疎水性材料を含んでもよい。
【0106】
経粘膜投与
経粘膜投与は、粘膜組織に適用するために適した任意のタイプの製剤または用量単位を用いて行われる。たとえば、選択された活性物質を、口腔用貼付剤またはパッチで口腔粘膜に投与してもよく、固体投与剤形を舌下に置くことによって舌下投与してもよく、液滴もしくは点鼻スプレー、非エアロゾル液体製剤、もしくはドライパウダーとして鼻腔に投与してもよく、直腸内もしくはその近傍に置いてもよく(「経直腸」製剤)、または坐剤、軟膏等として尿道に投与してもよい。
【0107】
経尿道投与
経尿道投与に関して、製剤は、活性物質と、水、シリコン、ロウ、ワセリン、ポリエチレングリコール(「PEG」)、プロピレングリコール(「PG」)、リポソーム、マンニトールおよびラクトースなどの糖、および/または様々な他の材料などの1つまたは複数の選択される担体または賦形剤とを含有する尿道投与剤形を含んでもよい。経尿道透過性増強剤を投与剤形に含めてもよい。適した透過性増強剤の例には、ジメチルスルホキシド(「DMSO」)、ジメチルホルムアミド(「DMF」)、N,N-ジメチルアセトアミド(「DMA」)、デシルメチルスルホキシド(「C10 MSO」)、モノラウリン酸ポリエチレングリコール(「PEGML」)、モノラウリン酸グリセロール、レシチン、1-置換アザシクロヘプタン-2-オン、特に1-n-ドデシル-シクラザシクロヘプタン-2-オン(Nelson Research & Development Co., Irvine, Calif.から商品名Azone(商標)として入手可能)、SEPA(商標)(Macrochem Co., Lexington, Mass.から入手可能)、たとえばTergitol(商標)、Nonoxynol-9(商標)およびTWEEN-80(商標)が含まれる先に考察した界面活性剤、ならびにエタノールなどの低級アルカノールが含まれる。
【0108】
経直腸投与
経直腸投与剤形には、直腸坐剤、クリーム、軟膏、および液体製剤(浣腸)が含まれてもよい。経直腸送達のための坐剤、クリーム、軟膏、または液体製剤は、選択された活性物質の治療的有効量と、経直腸薬物投与にとって適した1つまたは複数の慣用の非毒性担体とを含む。本発明の経直腸投与剤形は、慣用のプロセスを用いて製造されてもよい。経直腸投与単位は、急速に、または数時間かけて崩壊するように加工されてもよい。完全に崩壊するまでの時間は、約10分から約6時間の範囲であってもよく、たとえば約3時間未満であってもよい。
【0109】
膣または膣周囲投与
膣または膣周囲投与剤形には、膣坐剤、クリーム、軟膏、液剤、ペッサリー、タンポン、ゲル、ペースト、フォーム、またはスプレーが含まれてもよい。膣または膣周囲送達のための坐剤、クリーム、軟膏、液剤、ペッサリー、タンポン、ゲル、ペースト、フォーム、またはスプレーは、選択された活性物質の治療的有効量と、膣または膣周囲薬物投与にとって適した1つまたは複数の慣用の非毒性担体とを含む。本発明の膣または膣周囲剤形は、Remington: The Science and Practice of Pharmacy、前記において開示される慣用のプロセスを用いて製造されてもよい(同様に、米国特許第6,515,198号、第6,500,822号、第6,417,186号、第6,416,779号、第6,376,500号、第6,355,641号、第6,258,819号、第6,172,062号、および第6,086,909号において改作された薬物製剤も参照されたい)。膣または膣周囲投与単位は、急速にまたは数時間かけて崩壊するように加工されてもよい。完全に崩壊するまでの時間は、約10分から約6時間の範囲であってもよく、たとえば約3時間未満であってもよい。
【0110】
表面製剤
表面製剤は、体表面への適用にとって適した任意の剤形であってもよく、たとえば軟膏、クリーム、ゲル、ローション、液剤、ペースト等を含んでもよく、および/またはリポソーム、ミセル、および/またはミクロスフェアを含有するように調製されてもよい。ある態様において、本明細書における表面製剤は、軟膏、クリーム、およびゲルである。
【0111】
経皮投与
当業者に公知である経皮的化合物投与は、化合物の経皮的通過を介しての患者の全身循環への薬学的化合物の送達を伴う。表面投与はまた、経皮パッチまたはイオントフォレーシス装置などの経皮投与を用いることを伴ってもよい。他の成分も同様に経皮パッチに組み入れられてもよい。たとえば、組成物および/または経皮パッチは、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、クロロクレゾール、塩化ベンザルコニウム等が含まれるがこれらに限定されるわけではない1つまたは複数の保存剤または静菌剤と共に調剤されてもよい。化合物および組成物の表面投与のための投与剤形には、クリーム、スプレー、ローション、ゲル、軟膏、点眼液、点鼻液、点耳液等が含まれてもよい。そのような投与剤形において、白色のなめらかで均一で不透明なクリームまたはローションを形成するために、本発明の組成物を、たとえば保存剤としての1%または2%(wt/wt)ベンジルアルコール、乳化ロウ、グリセリン、パルミチン酸イソプロピル、乳酸、精製水、およびソルビトール溶液と混合してもよい。加えて、組成物は、ポリエチレングリコール400を含有してもよい。それらを、たとえば保存剤として2%ベンジルアルコール(wt/wt)、白色ワセリン、乳化ロウ、およびtenox II(ブチルヒドロキシアニソール、没食子酸プロピル、クエン酸、プロピレングリコール)と混合して軟膏を形成してもよい。包帯材料の織物のパッドまたはロール、たとえばガーゼに、液剤、ローション、クリーム、軟膏、または他のそのような剤形の組成物を浸透させてもよく、それらもまた表面投与のために用いられてもよい。組成物はまた、組成物を浸透させて、不透過性の裏打ち剤に積層した樹脂様クロスリンク剤を有するアクリル酸に基づくポリマー接着剤の1つなどの経皮システムを用いて表面投与されてもよい。
【0112】
適した皮膚接触接着材料の例には、ポリエチレン、ポリシロキサン、ポリイソブチレン、ポリアクリレート、ポリウレタン等が含まれるがこれらに限定されるわけではない。または、薬物含有貯蔵所および皮膚接触接着剤は、接着剤が貯蔵所の下にある異なる別個の層であり、この場合、貯蔵所は、先に記載したポリマーマトリクスであってもよく、液体もしくはハイドロゲル貯蔵所であってもよく、または他の何らかの形状であってもよい。
【0113】
くも膜下投与
くも膜下投与のために利用される1つの一般的なシステムは、Medtronic, Inc.から入手可能なAPTくも膜下処置システムである。APTくも膜下処置システムは、クモ膜下腔に薬剤を直接送達するために腹部の皮膚の下に外科的に留置された小さいポンプを用いる。薬剤は、外科的に設置される、カテーテルと呼ばれる細い管を通って送達される。次に薬剤を、下位尿路障害に関連する知覚および運動シグナルの伝達に関係する脊髄の細胞に直接投与してもよい。
【0114】
膀胱内投与
膀胱内投与という用語は、本明細書において、薬物を膀胱に直接送達することを意味するためにその慣用の意味で用いられる。適した膀胱内投与法は、たとえば米国特許第6,207,180号、および第6,039,967号において見いだされるであろう。
【0115】
さらなる投与剤形
本発明のさらなる投与剤形には、米国特許第6,340,475号、第6,488,962号、第6,451,808号、第5,972,389号、第5,582,837号、および第5,007,790号に記載される投与剤形が含まれる。本発明のさらなる投与剤形にはまた、米国特許出願第20030147952号、第20030104062号、第20030104053号、第20030044466号、第20030039688号、および第20020051820号において記載される投与剤形が含まれる。本発明のさらなる投与剤形にはまた、PCT出願番号WO 03/35041、WO 03/35040、WO 03/35029、WO 03/35177、WO 03/35039、WO 02/96404、WO 02/32416、WO 01/97783、WO 01/56544、WO 01/32217、WO 98/55107、WO 98/11879、WO 97/47285、WO 93/18755、およびWO 90/11757に記載される投与剤形が含まれる。
【0116】
溶液
ハロゲン化エーテル揮発性麻酔薬を選択した後、これを溶液に溶解してもよい。溶液は、水、食塩水等などの水性溶液であってもよい。いくつかの変化形において、他の液体および溶液も適切でありうる。
【0117】
食塩水の様々な製剤が当技術分野において公知であり、本発明と共に用いられてもよい。たとえば、食塩水は、乳酸加リンゲル液、酢酸加リンゲル液、リン酸緩衝生理食塩液(PBS)、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩液(D-PBS)、トリス緩衝生理食塩液(TBS)、ハンクス緩衝塩類溶液(HBSS)、または標準クエン酸生理食塩液(SSC)であってもよい。
【0118】
本発明の食塩水は、ある態様において、「生理食塩液」(すなわち、約0.9%w/v NaClの溶液)である。生理食塩液は血液と比較して浸透圧がわずかに高い。しかし、様々な態様において、食塩水は、ヒト患者などの被検体の体において等張でありうる。生理食塩液(NS)はしばしば、口から液体を摂取することができず、重度の脱水を発症している患者のための静脈内点滴(IV)において用いられることが多い。ある態様において、「半生理食塩液」(すなわち、約0.45% NaCl)、または「4分の1生理食塩液」(すなわち、約0.22%NaCl)を本発明と共に用いてもよい。任意で、約5%デキストロースまたは約4.5 g/dLグルコースを食塩水に含めてもよい。様々な態様において、1つまたは複数の塩、緩衝液、アミノ酸、および/または抗菌剤を食塩水に含めてもよい。
【0119】
様々な態様において、保存剤または安定化剤を組成物または溶液に含めてもよい。たとえば、微生物の作用の防止は、パラベン(たとえば、メチルパラベン、プロピルパラベン)、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、EDTA、メタ重亜硫酸塩、ベンジルアルコール、チメロサール、またはその組み合わせが含まれるがこれらに限定されるわけではない様々な抗菌剤および抗真菌剤などの保存剤によってもたらされてもよい。用いるために適した含まれてもよい物質には、滅菌水溶液または分散液、および滅菌溶液または分散液の即時調製のための滅菌粉末が含まれる(その全体が具体的に参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第5,466,468号)。全ての場合において、組成物は好ましくは無菌的であり、容易な注射可能性を促進するために流体でなければならない。溶液は好ましくは、製造および貯蔵条件下で安定であり、細菌および真菌などの微生物の混入作用に対して保護されなければならない。含まれてもよい安定化剤の例には、緩衝剤、グリシンおよびリジンなどのアミノ酸、デキストロース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、ラクトース、スクロース、マルトース、ソルビトール、マンニトール等などの炭水化物が含まれる。適当な安定化剤または保存剤を、所望の投与経路に従って選択してもよい。粒子フィルターまたは微生物フィルターを用いてもよく、それらは所望の投与経路に従って必要でありうる。
【0120】
溶液中の化合物の重量範囲は変動してもよい。たとえば、様々な態様において、組成物は、約1〜5重量%揮発性麻酔薬、約1〜5重量%保存剤/安定化剤、約1〜5重量%NaCl、および約85%〜97%水を含んでもよい。揮発性麻酔薬対水の比率は、炎症の所望の低減を達成するために必要であれば変動させてもよい。
【0121】
溶液および/または組成物を、投与前に滅菌してもよい。滅菌法は当技術分野において周知であり、これには、加熱、煮沸、加圧、濾過、消毒化学物質への曝露(たとえば、塩素処理後に脱塩素または溶液から塩素の除去)、通気、オートクレーヴ処理等が含まれる。
【0122】
活性物質ガスを、任意の方法で溶液に調剤してもよい。たとえば、これを溶液中にたとえば気化器を用いて通気してもよく、または撹拌もしくは超音波処理によって溶解してもよい。ある態様において、ハロゲン化エーテルなどの揮発性麻酔薬または揮発性麻酔薬を液体型で測定して、溶液に直接混合してもよい。当然、揮発性麻酔薬を溶液に溶解する他の適した方法も同様に用いてもよい。ハロゲン化エーテル揮発性麻酔薬を溶解した後、これを炎症の低減を必要とする被検体に投与してもよい。ある態様において、揮発性麻酔薬を、密封真空容器中で溶液と混合して、合わせた溶液を次に3〜5分間機械的に撹拌して、使用するまで熱的中性超音波処理器内で保持する。
【0123】
ある態様において、本発明の溶液は、ダイズ油乳剤などの脂質乳剤が含まれる、油中水型または水中油型乳剤などの乳剤の成分であってもよい。ある態様において、食塩水、人工CSF、または患者自身のCSFを、単独でまたは乳剤の構成成分として、本発明に従う揮発性麻酔薬のくも膜下または硬膜外投与のために用いてもよい。イソフルランのある乳剤が、これまでに静脈内(da Silvaa Telles, et al., 2004, Rev. Bras. Anaestesiol Campianas 54(5):2004)、または硬膜外投与(Chai et al. 2008, British J Anesthesia 100:109-115)のために調製されている。
【0124】
本発明の薬学的組成物は、薬学的に許容される担体に溶解または分散された、1つもしくは複数の揮発性麻酔薬もしくは生物活性ガスの有効量または追加の物質を含む。「薬学的または薬理学的に許容される」という句は、たとえばヒトなどの動物に適切に投与した場合に、有害反応、アレルギー反応、または他の望ましくない反応を生じない分子実体および組成物を指す。溶液中の少なくとも1つの揮発性麻酔薬もしくは生物活性ガスまたは追加の活性成分を含有する薬学的組成物の調製は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、"Remington: The Science and Practice of Pharmacy," 20th Edition (2000)によって例証されるように、本開示に照らして当業者に公知であろう。その上、動物(たとえば、ヒト)での投与に関して、調製物は、FDA Office of Biological Standardsが要件とする無菌性、発熱性、一般的安全性、および純度標準を満たすべきであると理解されるであろう。
【0125】
様々な態様において、本発明の組成物はさらにシクロデキストリンを含む。シクロデキストリンは、一連のオリゴ糖環を形成するように連結されたグルコース単位で構成される一般的なクラスの分子である(Challa et al., 2005, AAPS PharmSciTech 6:E329-E357を参照されたい)。天然において、シクロデキストリングリコシルトランスフェラーゼ(CGTアーゼ)によるデンプンの酵素的消化は、環構造中に6、7、および8個のアンヒドログルコース単位を含むシクロデキストリン(それぞれ、α-、β-、およびγ-シクロデキストリン)の混合物を生じる。商業的に、シクロデキストリンは同じくデンプンから産生されるが、異なるより特異的な酵素が用いられる。シクロデキストリンは、シサプリド、クロラムフェニコール、デキサメタゾン、デキストロメトラファン、ジフェンヒドラミン、ヒドロコルチゾン、イトラコナゾール、およびニトログリセリンの送達を促進するために製剤において使用されている(Welliver and McDonough, 2007, Sci World J, 7:364-371)。様々な態様において、本発明のシクロデキストリンは、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリン、α-デキストリン、またはその組み合わせである。ある態様において、シクロデキストリンは可溶化剤として用いられてもよい。
【0126】
様々な他の態様において、本発明の組成物は、血漿から精製されたヒト血清アルブミン、または組み換え型ヒト血清アルブミンを含んでもよい。ある態様において、ヒト血清アルブミンは可溶化剤として用いられてもよい。他の態様において、本発明の組成物は、プロピレングリコールを含んでもよい。他の態様において、本発明の組成物は、パーフルオロオクチルブロミドを含んでもよい。他の態様において、本発明の組成物は、パーフルオロカーボンを含んでもよい。ある態様において、パーフルオロカーボンは、可溶化剤として用いられてもよい。
【0127】
様々な態様において、保存剤または安定化剤を組成物または溶液に含めてもよい。たとえば、微生物の作用の予防は、パラベン(たとえば、メチルパラベン、プロピルパラベン)、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、EDTA、メタ重亜硫酸塩、ベンジルアルコール、チメロサール、またはその組み合わせが含まれるがこれらに限定されるわけではない様々な抗菌剤および抗真菌剤などの保存剤によってもたらされてもよい。用いるために適した含めてもよい物質には、滅菌水溶液または分散液、および滅菌溶液または分散液の即時調製のための滅菌粉末が含まれる(その全体が具体的に参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第5,466,468号)。全ての場合において、組成物は、好ましくは無菌的であり、容易な注入可能性を促進するために流体でなければならない。溶液は好ましくは、製造および貯蔵条件で安定であり、細菌および真菌などの微生物の混入作用に対して保護されなければならない。含めてもよい安定化剤の例には、緩衝液、グリシンおよびリジンなどのアミノ酸、デキストロース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、ラクトース、スクロース、マルトース、ソルビトール、マンニトール等などの炭水化物が含まれる。所望の投与経路に従って、適切な安定化剤または保存剤を選択してもよい。粒子フィルターまたは微生物フィルターを用いてもよく、それらは所望の投与経路に従って必要であってもよい。
【0128】
薬学的組成物および治療
処置法における本発明の組成物の投与は、当技術分野において公知の方法を用いて、多数の異なる方法で達成されてもよい。そのような方法には、液剤、懸濁剤、クリーム、ペースト、オイル、ローション、ゲル、フォーム、ハイドロゲル、軟膏、リポソーム、乳剤、液晶乳剤、およびナノ乳剤を表面投与する段階が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0129】
本発明の治療的および予防的方法は、このように、本発明の薬学的組成物を用いることを包含する。本明細書において記載される薬学的組成物の製剤は、薬理学の技術分野において公知のまたはその後開発される任意の方法によって調製されてもよい。一般的に、そのような調製法には、活性成分を担体または1つもしくは複数の他の付属成分と会合させる段階、およびその後必要であればまたは望ましければ、産物を所望の1回用量単位または多数回用量単位に成形または包装する段階が含まれる。たとえば、単位用量容器は、揮発性麻酔薬溶液が、粉砕可能な密封アンプルに含有されて保護カバーに封入され、これに圧をかけてアンプルを粉砕すると、保護カバーにおいてアンプルにキャップをしている火打ち石型のチップを通して、揮発性麻酔薬溶液をパーコレーションによって放出する容器であってもよい。そのような包装形状を使用する場合、揮発性麻酔薬が漏出しないように、および貯蔵寿命のあいだ溶液の組成に変化を引き起こさないように、アンプルの上部空き高が可能な限り少ないように、または理想的にはないように注意すべきである。
【0130】
本明細書において提供される薬学的組成物の記載は原則的に、ヒトに倫理的に投与するために適した薬学的組成物に向けられているが、そのような組成物は全般的に、哺乳動物が含まれる全ての種の動物への投与にとって適していることは当業者によって理解されるであろう。ヒトに投与するために適した薬学的組成物を、様々な動物への投与に適するように改変することは十分に理解されており、当業者の獣医薬理学者は、そのような改変を、たとえあったとしても単なる通常の実験によって設計および行うであろう。本発明の薬学的組成物の投与が企図される被検体には、ヒトおよび他の霊長類、非ヒト霊長類、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ネコ、およびイヌなどの商業的に重要な哺乳動物が含まれる哺乳動物が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0131】
本発明の方法において有用である薬学的組成物は、眼、口腔、直腸、関節内、膣、表面、鼻腔内、口腔、静脈内、筋肉内、または他の投与経路にとって適した製剤で調製、包装、または販売されてもよい。
【0132】
本発明の薬学的組成物は、1回単位用量でまたは複数の1回単位用量としてバルクで調製、包装、または販売されてもよい。単位用量は、活性成分の既定量を含む薬学的組成物の個別の量である。活性成分の量は一般的に、被検体に投与されるであろう活性成分の用量、またはたとえばそのような用量の2分の1もしくは3分の1などのそのような用量の簡便な分画に等しい。
【0133】
本発明の薬学的組成物における活性成分、薬学的に許容される担体、および任意の追加の成分の相対量は、処置される被検体の同一性、体格、および状態に依存して、ならびにさらに組成物が投与される経路に依存して変動するであろう。例として、組成物は、0.1%から100%(w/w)活性成分を含んでもよい。
【0134】
活性成分のほかに、本発明の薬学的組成物は、1つまたは複数の追加の薬学的活性成分をさらに含んでもよい。そのような追加の薬学的活性物質の1つの非制限的な例は、抗生物質などの抗菌剤である。
【0135】
本発明の薬学的組成物の制御放出または徐放性製剤は、慣用の技術を用いて作製されてもよい。
【0136】
表面投与にとって適した薬学的組成物の製剤は、滅菌水または滅菌等張食塩水などの薬学的に許容される担体と共に活性成分を含む。そのような製剤は、ボーラス投与または持続的投与にとって適した剤形で調製、包装、または販売されてもよい。製剤は、粉砕可能なもしくはそれ以外のアンプルなどの単位用量剤形、または保存剤を含有する多用量容器で調製、包装、または販売されてもよい。表面投与のための製剤には、懸濁剤、液剤、油性もしくは水性のビヒクル、溶液、懸濁液中の乳剤、クリーム、ペースト、オイル、ローション、ゲル、フォーム、ハイドロゲル、軟膏、リポソーム、乳剤、液晶乳剤、ナノ乳剤、埋め込み可能な徐放性または生体分解性製剤が含まれるがこれらに限定されるわけではない。そのような製剤はさらに、懸濁剤、安定化剤、または分散剤が含まれるがこれらに限定されるわけではない1つまたは複数の追加の成分を含んでもよい。
【0137】
薬学的組成物は、滅菌の水溶性または油性の懸濁剤または液剤の剤形で調製、包装、または販売されてもよい。この懸濁剤または液剤は、公知の技術分野に従って調剤されてもよく、活性成分のほかに、本明細書において記載される分散剤、湿潤剤、または懸濁剤などの追加の成分を含んでもよい。そのような滅菌製剤は、たとえば水または1,3-ブタンジオールなどの非毒性の非経口投与許容性の希釈剤または溶媒を用いて調製されてもよい。他の許容される希釈剤および溶媒には、リンゲル液、等張塩化ナトリウム溶液、および合成モノもしくはジグリセリドなどの固定油が含まれるがこれらに限定されるわけではない。有用である他の製剤には、リポソーム調製物においてまたは生体分解性のポリマー系の成分として、活性成分を含む製剤が含まれる。徐放性または埋め込みのための組成物は、乳剤、イオン交換樹脂、難溶性ポリマーまたは難溶性の塩などの薬学的に許容されるポリマーまたは疎水性材料を含んでもよい。
【0138】
いくつかの態様において、本発明の薬学的組成物は、患者に対する送達経路によらず、粉砕可能なアンプルに含有されてもよい。
【0139】
定義
本明細書において用いられるように、以下の用語の各々は、この章におけるそれに関連する意味を有する。
【0140】
特に定義されなければ、本明細書において用いられる全ての科学技術用語は一般的に、本発明が属する当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。一般的に、本明細書において用いられる命名法、ならびに細胞培養、分子遺伝子学、有機化学、およびペプチド化学における実験技法は、当技術分野において周知であり、一般的に用いられる。
【0141】
冠詞「1つの」および「1つの(an)」は、本明細書において、冠詞の文法上の目的語の1つまたは1つより多く(すなわち、少なくとも1つ)を指すために用いられる。例として、「1つの要素」は1つの要素または1つより多くの要素を意味する。
【0142】
本明細書を通して、「約」という用語は、装置、値を決定するために使用される方法の誤差の固有の変動、または試験被検体のあいだに存在する変動が、値に含まれることを示すために用いられる。
【0143】
本明細書において用いられる「または」という用語は、代替物のみを指すことを明白に示している場合または代替物が相互に排他的である場合を除き、「および/または」を意味するが、本開示は代替物のみを指す定義と「および/または」を指す定義を支持する。
【0144】
本明細書において用いられる「阻害する」、「低減する」、または「予防する」、「減損する」という用語およびこれらの用語の変化形には、完全なまたは実質的に完全な阻害が含まれる任意の測定可能な減少が含まれる。
【0145】
本明細書および/または特許請求の範囲において用いられる「有効な」という用語は、所望の、予想される、または意図される結果を成就するために適切であることを意味する。
【0146】
本明細書において用いられる「抽出溶媒」という句は、揮発性麻酔薬と化学的に反応することなく揮発性麻酔薬の揮発性を低減するために、および/または関心対象組織への揮発性麻酔薬の透過性を増強するために、溶液中で揮発性麻酔薬と相互作用してもよい、意図される薬理学的転帰の達成または増強にとって都合がよい溶媒を指す。抽出溶媒はまた、透過性または浸透性などの、しかしこれらに限定されない特性に影響を及ぼしうるビヒクルおよび機能的成分が含まれる、必ずしも抽出しない化合物を含む。
【0147】
本明細書において用いられる「増強された透過性」という用語は、以下の増加を指す:(a)関心対象組織に送達される揮発性麻酔薬の量、および/または(b)関心対象組織への送達速度(すなわち、急速な送達)、および/または(c)関心対象組織における揮発性麻酔薬の滞留時間。滞留時間の増加は、関心対象組織からの揮発性麻酔薬の消失の遅れを指す。
【0148】
本明細書において用いられるように、「含む」(ならびに「含む(comprise)」および「含む(comprises)」などの含むの任意の形)、「有する」(ならびに「有する(have)」および「有する(has)」などの有するの任意の形)、「含まれる」(ならびに「含まれる(includes)」および「含まれる(include)」などの含まれるの任意の形)、または「含有する」(ならびに「含有する(contains)」および「含有する(contain)」などの含有するの任意の形)は、包括的であるか、または制限がなく、追加の列挙されていない要素または方法段階を除外しない。
【0149】
本明細書において用いられる「創傷」という用語は、組織損傷を示す被検体の体の表面上の部分、領域、もしくは部位、または体の内部を意味するために用いられる。本発明の組成物および方法を用いて処置されうる創傷には、手術によって引き起こされた創傷および外傷によって引き起こされた創傷が含まれる任意の創傷が含まれる。本発明の組成物および方法によって処置されうる創傷には、病変、膿瘍、切開、裂傷、擦過傷、穿刺、貫通、熱傷、または他のタイプの組織損傷が含まれるがこれらに限定されるわけではない。本発明の組成物および方法を用いて処置されうる創傷には、本発明の組成物および方法に曝露されうる患者の表面上の、または体の内部の任意の創傷が含まれる。非制限的な例として、本発明の方法によって処置されうる部分、領域、および部位には、外部組織(たとえば、皮膚、粘膜等)、内部組織(たとえば、筋肉、粘膜、筋膜、脂肪組織、腱、および結合組織等)、および内部臓器(たとえば、肺、肝臓等)が含まれるがこれらに限定されるわけではない。本発明の組成物および方法に対する曝露を通常受けないであろう多くの部分、領域、および部位が、たとえば外科的切開または外傷性裂傷などの創傷が被検体の体に導入された後に、本発明の組成物および方法に対する曝露を受けるようになりうると理解されるべきである。非制限的な例として、そのような部分、領域、または部位には、外傷性創傷、外科的創傷、および熱傷が含まれてもよい。
【0150】
本明細書において用いられる「表面」という用語は、皮膚およびその下の組織への本発明の組成物の投与のみならず、粘膜およびその下の組織への投与を指す。
【0151】
本明細書において用いられる「処置する」または「処置」という用語は、徴候/症状または徴候/症状の起源の軽減(すなわち、「減損」)および/または消失を指す。いくつかの非制限的な例として、創傷の徴候/症状(たとえば、炎症)を軽減することによって、創傷を処置してもよい。創傷の徴候/症状はまた、創傷の徴候/症状(たとえば、炎症)を完全に消失させることによって処置されてもよい。さらなる例として、創傷は、治癒プロセスを助ける(たとえば、加速する)ことによって処置されてもよい。
【0152】
本明細書において用いられる「追加の成分」には、以下の1つまたは複数が含まれるがこれらに限定されるわけではない:賦形剤;表面活性剤;分散剤;不活性希釈剤;造粒剤および崩壊剤;結合剤;潤滑剤;甘味料;香料;着色剤;保存剤;ゼラチンなどの生理的に分解する組成物;水性ビヒクルおよび溶媒;油性ビヒクルおよび溶媒;懸濁剤;分散剤または湿潤剤;乳化剤;粘滑剤;緩衝剤;塩;濃化剤;増量剤;乳化剤;抗酸化剤;抗生物質;抗真菌剤;安定化剤;および薬学的に許容されるポリマーまたは疎水性材料。本発明の実践において用いられる薬学的組成物に含まれてもよい他の「追加の成分」は、当技術分野において公知であり、たとえば参照により本明細書に組み入れられる、Remington's Pharmaceutical Sciences(Genaro, Ed., Mack Publishing Co., 1985, Easton, PA)に記載される。
【0153】
本開示を通して、本発明の様々な局面が範囲の形式で表されることがある。範囲形式での記載は、単に便宜および簡略のためになされていると理解されるべきであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない制限として解釈されてはならない。したがって、範囲の記載は、可能性がある全ての下位範囲のみならず、その範囲内の個々の数値を具体的に開示していると考えるべきである。たとえば、1から6などの範囲の記載は、1から3、1から4、1から5、2から4、2から6、3から6等などの下位範囲のみならず、その範囲内の個々のおよび部分的な数値、たとえば1、2、3、4、5、5.5および6を具体的に開示していると考えるべきである。このことは範囲の広さによらず適用される。
【0154】
本明細書を通して考察されるいかなる態様も本発明の任意の方法または組成物に関して実行されてもよく、およびその逆も当てはまると企図される。さらに、本発明の方法を達成するために、本発明の組成物を用いてもよい。
【0155】
本発明の他の目的、特色、および利点は、本明細書の詳細な説明から明らかとなるであろう。しかし、この詳細な説明から当業者には本発明の精神および範囲に含まれる様々な変化および改変が明らかとなるであろうことから、詳細な説明および特異的実施例は、本発明の特異的態様を示しているが、例として与えられるに過ぎないと理解されるべきである。
【実施例】
【0156】
実験実施例
本発明を、以下の実験実施例を参照してさらに詳細に説明する。これらの実施例は例示目的で提供されるに過ぎず、それ以外であると明記されている場合を除き、制限的でないと解釈される。このように、本発明は、以下の実施例に制限されると決して解釈されてはならず、むしろ本明細書において提供される教示の結果として明らかになるであろう任意のおよび全ての変化形を包含すると解釈されるべきである。
【0157】
実施例1:イソフルランおよびセボフルランの創傷への投与
本試験は、創傷を処置するために揮発性麻酔薬の表面適用の有効性を評価するために設計される。試験を、切開創傷動物モデルおよび熱傷創傷動物モデルの双方を用いて、創傷に直接適用された揮発性麻酔薬イソフルランおよびセボフルランを用いて(1)1ヶ月から(3)ヶ月間行う。被検動物は、ラットである。
【0158】
切開創傷動物モデルにおいて、各ラットを麻酔して、2カ所の長い切開部をラットの背部に作製する。次に、切開部を縫合する。熱傷創傷動物モデルにおいて、各ラットを麻酔して、2カ所の熱傷をラットの背部に作製する。各ラットに関して、創傷の1つを本明細書のどこかで記載された本発明の組成物および方法を用いて処置し、他の創傷を無処置のままとする。
【0159】
本明細書において詳述されるラットの3つのコホートの各群において、創傷の処置におけるおよび炎症の低減における揮発性麻酔薬の表面投与の効能を評価するために、熱傷および切開モデルの双方に関して、炎症の程度および創傷治癒の進行を30〜90日間にわたってモニターする。第一のコホートにおいて、保存剤を含まない生理食塩液を、創傷の偽処置として用いる。第二のコホートにおいて、イソフルランを用いて創傷を処置する。第三のコホートにおいて、セボフルランを用いて創傷を処置する。
【0160】
実施例2:食塩水に溶解したイソフルランの調製
イソフルランを以下の方法(「通気」法とも呼ばれる)を用いて食塩水に溶解した。500 ml改変アーレンマイヤーフラスコ(2つの入口および液相に1つのカテーテル)を用いて模擬気化装置を作成した。フラスコに0.9%生理食塩液を部分的に充填し、ストッパーをつけたガラスピペットをイソフルランを注入するために液相の底に挿入した。第二の出口ピペットは閉鎖容器からのガスを排出させた。酸素中の2%イソフルラン溶液を2 L/分でピペットを通して注入して、約10分間の通気後0.9%食塩水を飽和させた。
【0161】
実施例3:人工脳脊髄液に溶解したイソフルラン
ACSFに溶解したイソフルランを以下の方法によって調製した。イソフルランを閉鎖真空容器において、以下の組成(単位 mM)を有する脳脊髄液(pH 7.4)に近似する緩衝塩溶液と10〜50%の体積比で混合した:NaCl、120;KCl、3;NaHCO3、25;CaCl2、2.5;MgCl2、0.5;グルコース、12。合わせた溶液を機械的に3〜5分間撹拌して、使用するまで熱的中性超音波処理器において保持した。
【0162】
実施例4:抽出溶媒を含む麻酔薬組成物の調製
以下の溶液を調製した。イソフルランを得た。NMPをSigma-Aldrich Chemical companyから得た。イソフルラン40 mlをNMP 60 mlに添加することによって、40%(v/v)イソフルラン-NMP溶液を作製した。イソフルラン40 mlをエタノール60 mlに添加することによって、40%(v/v)イソフルラン-エタノール溶液を作製した。
【0163】
イソフルランおよびNMPの様々な濃度を有する食塩水組成物を、上記のNMP-イソフルラン溶液を以下のように食塩水と混合することによって作製した。

【0164】
イソフルラン-エタノールの様々な濃度を有する対照組成物を、上記のイソフルラン-エタノール組成物を以下のように食塩水と混合することによって作製した。

【0165】
組成物の安定性を決定するために、以下の実験を行ってもよい。各試料を、試料5 mlを含有する2つの容器に分割する。試料の1つにキャップをする。他の試料にはキャップをしない。経時的に(1時間、6時間、24時間等)試料を検査して、イソフルランが溶液から分離したか否かを調べる。さらに、各溶液中のイソフルランの濃度を各時点で決定してもよい。キャップをしていない試料を、キャップをした試料と比較して、溶液の安定性を決定してもよい。さらに、イソフルラン-NMP組成物を対照組成物と比較してもよい。麻酔薬組成物は全ての濃度で混和可能なままであろうと予想される。
【0166】
実施例5:乳剤を含む麻酔薬組成物の調製
テフロンストッパーを備えた気密性のガラスボトルにおいて、液体イソフルランを30%Intralipid(登録商標)(Sigma-Aldrich)に添加することによって、乳化イソフルラン溶液を室温(20℃)で調製する。次にバイブレーターにおいて、ボトルに50 Hzの振動を30分間与える(たとえば、Zhou et al, 2006, Anesth Analg 102:129- 34; Taheri et al., 1991, Anesth Analg 1991;72:627-34を参照されたい)。
【0167】

【0168】
組成物の安定性を決定するために、以下の実験を行う。各試料を、試料5 mlを含有する2つの容器に分割する。試料の1つにキャップをする。他の試料にはキャップをしない。経時的に(1時間、6時間、24時間等)試料を検査して、イソフルランが溶液から分離したか否か、または脂質相が水相から分離したか否かを調べる。さらに、各溶液中のイソフルランの濃度を各時点で決定してもよい。キャップをしていない試料を、キャップをした試料と比較して、溶液の安定性を決定してもよい。麻酔薬組成物は全ての濃度で分離しないと予想される。
【0169】
当業者は、イソフルランの乳剤を、本明細書において記載される方法の変化形を用いて、10%(w/v)Intralipid(登録商標)または20%(w/v)Intralipid(登録商標)などの他の乳剤調製物が含まれる他の脂質を用いて作製してもよいことを認識するであろう。本発明の揮発性麻酔薬組成物の産生にとって有用でありうる他の市販の脂質組成物には、Liposyn(登録商標)(B. Braun)およびNutrilipid(登録商標)(B. Braun)が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0170】
当業者はまた、デスフルラン、セボフルラン、イソフルラン、エンフルラン、メトキシフルラン、およびハロタンの乳剤を、本明細書において記載される方法の変化形を用いて産生してもよいことを認識するであろう。
【0171】
実施例6:抽出溶媒および乳剤を含む麻酔薬組成物の調製
以下の溶液および乳剤を調製する。イソフルランを得る。NMPをSigma-Aldrich Chemical companyから得る。イソフルラン40 mlをNMP 60 mlに添加することによって40%(v/v)イソフルラン-NMP溶液を作製する(実施例4と同様に)。
【0172】
上記のNMP-イソフルラン溶液を、以下のようにテフロンストッパーを備えた気密性ボトルにおいて、室温(20℃)で30%Intralipid(Sigma-Aldrich)と共に混合することによって、イソフルランおよびNMPの様々な濃度を有する乳剤組成物を調製する。

【0173】
混合後、バイブレーターにおいてボトルに50 Hzの振動を30分間与える。組成物の安定性を決定するために、以下の実験を行う。各試料を、試料5 mlを含有する2つの容器に分割する。試料の1つにキャップをする。他の試料にはキャップをしない。経時的に(1時間、6時間、24時間等)試料を検査して、イソフルランが溶液から分離したか否か、または脂質相が水相から分離したか否かを調べる。さらに、各溶液中のイソフルランの濃度を各時点で決定してもよい。キャップをしていない試料を、キャップをした試料と比較して、溶液の安定性を決定してもよい。麻酔薬組成物は全ての濃度で分離しないであろうと予想される。
【0174】
当業者は、本明細書において記載される方法の変化形を用いて、10%(w/v)Intralipid(登録商標)または20%(w/v)Intralipid(登録商標)などの他の乳剤調製物が含まれる他の脂質を用いて、イソフルランの乳剤を作製してもよいことを認識するであろう。本発明の揮発性麻酔薬組成物の産生にとって有用でありうる他の市販の脂質組成物には、Liposyn(登録商標)(B. Braun)およびNutrilipid(登録商標)(B. Braun)が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0175】
当業者はまた、デスフルラン、セボフルラン、イソフルラン、エンフルラン、メトキシフルラン、およびハロタンの乳剤を、本明細書において記載される方法の変化形を用いて産生してもよいことを認識するであろう。
【0176】
実施例7:イソフルラン製剤の安定性
以下の実施例において、記載の組成物におけるイソフルランの安定性を2つの方法で決定した。第一に、組成物を、肉眼レベルで相分離の有無に関して調べた。第二に組成物のイソフルラン含有量を、キャップをせずに放置した場合に組成物に残っているイソフルランの重量を経時的に測定することによって決定した。簡単に説明すると、ガラスバイアルに組成物ビヒクル5〜10 mlを満たして重量を測定した。それらの1つにビヒクルのみ(すなわち、イソフルランなし)を入れて、対照とした。他のバイアルには、様々な量のイソフルランを入れた。それらをフードの中でキャップをせずに放置した。経時的にバイアルの重量を測定して、イソフルランが組成物に留まっているかまたは蒸発してしまったか否かを調べた。ビヒクル対照において経時的に蒸発した量を、イソフルラン含有組成物において蒸発した量から差し引いた。
【0177】
イソフルランの純粋型は、揮発性麻酔薬である。イソフルランの揮発性を評価するために、2つのバイアルに純粋型イソフルランの表記の量を入れた。バイアルを化学物質換気フードの中に入れてキャップをせずに放置した。バイアルの重量を表記の時間に測定して、蒸発したイソフルランの量を決定した。以下の表に示されるように、イソフルラン0.7893 gが3時間以内に蒸発したが、イソフルラン3.4825 gが完全に蒸発するにはおよそ8時間を要した。イソフルランのこれらの量は、以下の実施例においてイソフルラン組成物を調製するために用いられたイソフルランの量と類似である。

【0178】
実施例8:NMPによるイソフルラン溶液(v/v)の調製
純粋なイソフルランUSP(Forane)液を、表記の濃度でNMP(Sigma-Aldrich)と混合した。混合物を激しくボルテックス撹拌して、均一なイソフルラン-NMP溶液を調製した。溶液中のNMPの量を低減させるために、食塩水(0.9%NaCl)を混合物に添加した。

【0179】
上記の表から示されるように。10%および40%のイソフルランをNMPと混合すると、得られた溶液は澄明であるように見えた。その上、NMPを添加すると、実施例7と比較してイソフルランの揮発性は低減された。
【0180】
実施例9:Intralipidにおける乳化イソフルラン(v/v)の調製
純粋なイソフルランUSP(Forane)液を、20%または30%Intralipid(Baxter)と表記の濃度で混合する。混合物を激しくボルテックス撹拌して30分間超音波処理して、均一なイソフルラン-Intralipid乳剤を調製した。

【0181】
表記の量のイソフルランを有するIntralipid乳剤は、均一で均質であるように見えた。その上、Intralipidは、実施例7と比較してイソフルランの揮発性を低減させた。
【0182】
当業者は、本明細書において記載される方法の変化形を用いて、10%(w/v)Intralipidなどの他の乳剤調製物が含まれる他の脂質を用いてイソフルランの乳剤を作製してもよいと認識するであろう。本発明の揮発性麻酔薬組成物の産生にとって有用でありうる他の市販の脂質組成物には、Liposyn(登録商標)(B. Braun)およびNutrilipid(登録商標)(B. Braun)が含まれるがこれらに限定されるわけではない。当業者はまた、デスフルラン、セボフルラン、イソフルラン、エンフルラン、メトキシフルラン、およびハロタンの乳剤を、本明細書において記載される方法の変化形を用いて産生してもよいことを認識するであろう。
【0183】
実施例10:IntralipidおよびNMPにおける乳化イソフルラン(v/v)の調製
純粋なイソフルランUSP(Forane)液をNMP(Sigma-Aldrich)と表記の濃度で混合する。NMP-イソフルラン溶液を20%または30%Intralipid(Baxter)に添加した。混合物を激しくボルテックス撹拌して30分間超音波処理して、均一なイソフルラン-NMP-Intralipid乳剤を調製した。

【0184】
NMPの存在下で表記の量のイソフルランを有するIntralipid乳剤は、均一で一様であるように見えた。NMPの存在下では、Intralipidは、実施例7と比較してNMPが存在しない場合より多くのイソフルランを保持することが可能であった。加えて、IntralipidとNMPの組み合わせは、実施例7と比較してイソフルランの揮発性を低減させた。
【0185】
当業者は、本明細書において記載される方法の変化形を用いて、10%(w/v)Intralipidなどの他の乳剤調製物が含まれる他の脂質を用いてイソフルランの乳剤を作製してもよいと認識するであろう。本発明の揮発性麻酔薬組成物の産生にとって有用でありうる他の市販の脂質組成物には、Liposyn(登録商標)(B. Braun)およびNutrilipid(登録商標)(B. Braun)が含まれるがこれらに限定されるわけではない。当業者はまた、デスフルラン、セボフルラン、イソフルラン、エンフルラン、メトキシフルラン、およびハロタンの乳剤を、本明細書において記載される方法の変化形を用いて産生してもよいことを認識するであろう。
【0186】
実施例11:ポリソルベート80(Tween 80)に基づく乳化イソフルランの調製
イソフルランを全量10 mlでTween 80(3%v/v)に添加した。混合物を激しくボルテックス撹拌して、30分間超音波処理して、均一なイソフルラン乳剤を調製した。いくつかの場合において、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC)を製剤に含めた。第一にDMPC(0.3%または0.6%)をTween 80(3%v/v)に溶解した後、イソフルランをTween-DMPC混合物に添加して、その後30分間超音波処理を行った。

【0187】
Tween 80に基づく乳剤は均一であるように思われた。DMPCを添加すると、同じ量のTween 80が、DMPCなしの場合より多くのイソフルランを保持することができた。その上、イソフルランをTween 80またはTween 80 DMPCと組み合わせると、実施例7と比較して、イソフルランの揮発性が低減した。
【0188】
実施例12:プロピレングリコールによるイソフルラン溶液(v/v)の調製
純粋なイソフルランUSP(Forane)液をプロピレングリコール(Sigma-Aldrich)と共に表記の濃度で混合した。混合物を激しくボルテックス撹拌して、均一なイソフルラン-プロピレングリコール溶液を調製した。

【0189】
8%、10%、および30%イソフルランをプロピレングリコールと混合すると、得られた溶液は澄明であるように思われた。その上、プロピレングリコールは、実施例7と比較してイソフルランの揮発性を低減させた。
【0190】
実施例13:Cremophor ELに基づく乳化イソフルランの調製
イソフルランをCremophor EL(10%v/v)の水溶液に全量10 mlとなるように加えた。混合物を激しくボルテックス撹拌して30分間超音波処理し、均一なイソフルラン乳剤を調製した。

【0191】
イソフルランの表記の量を有するCremophor ELに基づく乳剤は、乳状に見えた。その上、Cremophor ELに基づく乳剤は、実施例7と比較してイソフルランの揮発性を低減させた。
【0192】
実施例14:ジメチルスルホキシド(DMSO)によるイソフルラン溶液(v/v)の調製
純粋なイソフルランUSP(Forane)液を表記の濃度でDMSO(BDH)と混合した。混合物を激しくボルテックス撹拌して、均一なイソフルラン-DMSO溶液を調製した。DMSOを含有するイソフルラン溶液は澄明に見えた。

【0193】
実施例15:パーフルオロオクチルブロミドにおけるイソフルラン溶液(v/v)の調製
純粋なイソフルランUSP(Forane)液をパーフルオロオクチルブロミド(Acros Organics)と表記の濃度で混合した。混合物を激しくボルテックス撹拌して、均一なイソフルラン-パーフルオロオクチルブロミド溶液を調製した。パーフルオロオクチルブロミドを含有するイソフルラン溶液は澄明に見えた。

【0194】
実施例16:PEG 400におけるイソフルラン溶液(v/v)の調製
イソフルラン(2 ml)をバイアルにおいてPEG-400(2 ml)と混合して、内容物を振とうして澄明な溶液を得た。得られた溶液の揮発性を、Exetech Heavy Duty Differential Pressure Manometer Model 407910を用いて純粋なイソフルランの揮発性と比較した。約39℃まで加熱すると、蒸気圧の少なくとも3倍低減が観察された。
【0195】
実施例17:PEG 300におけるイソフルラン溶液(v/v)の調製
イソフルラン(2 ml)をバイアルにおいてPEG-300(2 ml)と混合して、内容物を振とうして澄明な溶液を得た。得られた溶液の揮発性をExetech Heavy Duty Differential Pressure Manometer Model 407910を用いて純粋なイソフルランの揮発性と比較した。約39℃まで加熱すると、蒸気圧の少なくとも3倍低減が観察された。
【0196】
実施例18:ジエチレングリコールモノエチルエーテルにおけるイソフルラン溶液(v/v)の調製
イソフルラン(2 ml)をバイアルにおいてジエチレングリコールモノエチルエーテル(2 ml)と混合して、内容物を振とうして澄明な溶液を得た。得られた溶液の揮発性を、Exetech Heavy Duty Differential Pressure Manometer Model 407910を用いて純粋なイソフルランの揮発性と比較した。約39℃まで加熱すると、蒸気圧の少なくとも3倍低減が観察された。
【0197】
本明細書において引用された各々およびあらゆる特許、特許出願、および刊行物の開示は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0198】
本明細書において開示および請求される組成物および方法は全て、本開示に照らして過度の実験を行うことなく作製および実行されうる。本発明の組成物および方法を、好ましい態様に関して説明してきたが、本発明の概念、精神、および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載の組成物および方法、ならびに方法の段階または一連の段階に変更を加えてもよいことは、当業者に明らかであろう。より具体的に、化学的および生理的の両方で関連するある物質を本明細書において記載される物質の代わりに用いてもよく、それでも同じまたは類似の結果が達成されることは明らかであろう。当業者に明らかであるそのような類似の置換および改変は全て、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の精神、範囲、および概念に含まれると思われる。
【0199】
本発明は、特異的態様を参照して開示してきたが、当業者であれば、本発明の真の精神および範囲から逸脱することなく、本発明の他の態様および変化形を考案しうることは明らかである。添付の特許請求の範囲は、そのような態様および等価の変化形を全て含めると解釈されると意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
創傷を処置するために有効な量で水溶液に溶解した揮発性麻酔薬の一定量を含む薬学的に許容される組成物であって、溶液が揮発性麻酔薬の揮発性を低減させるために有効な量の少なくとも1つの抽出溶媒をさらに含み、溶液が乳剤の成分であり、組成物が薬学的に許容される賦形剤さらに含む、前記組成物。
【請求項2】
少なくとも1つの抽出溶媒が、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルイソソルビド、エタノール、プロパノール、PEG-400、PEG-300、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、およびイソプロパノールからなる群より選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
少なくとも1つの抽出溶媒が溶液の約0.1%から約75%を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
無菌的である、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
表面、くも膜下、硬膜外、経皮、表面、経口、関節内、粘膜、口腔、直腸、膣、筋肉内、膀胱内、および皮下からなる群より選択される経路による投与のために調剤される、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
揮発性麻酔薬が、イソフルラン、ハロタン、エンフルラン、セボフルラン、デスフルラン、メトキシフルラン、キセノン、およびその混合物からなる群より選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
揮発性麻酔薬がイソフルランである、請求項6記載の組成物。
【請求項8】
乳剤が脂質を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項9】
脂質がダイズ油、オリーブ油、落花生油、ヒマシ油、トウモロコシ油、またはゴマ油を含む、請求項8記載の組成物。
【請求項10】
乳剤が乳化剤をさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項11】
揮発性麻酔薬が、懸濁剤、クリーム、ペースト、オイル、ローション、ゲル、フォーム、ハイドロゲル、軟膏、リポソーム、乳剤、液晶乳剤、およびナノ乳剤の剤形である、請求項1記載の組成物。
【請求項12】
抗生物質をさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項13】
溶液が水、食塩水溶液、および人工脳脊髄液からなる群より選択される少なくとも1つの構成成分を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項14】
揮発性麻酔薬乳剤の一定量を含む薬学的に許容される組成物。
【請求項15】
薬学的に許容される賦形剤をさらに含む、請求項14記載の組成物。
【請求項16】
薬学的に許容される賦形剤をさらに含む、揮発性麻酔薬を含むリポソーム懸濁液の一定量を含む薬学的に許容される組成物。
【請求項17】
表面、くも膜下、硬膜外、経皮、表面、経口、関節内、粘膜、口腔、直腸、膣、筋肉内、膀胱内、および皮下からなる群より選択される投与経路のために調剤される、請求項16記載の組成物。
【請求項18】
創傷を処置するために有効な量で溶液中に溶解される揮発性麻酔薬の一定量を含む薬学的に許容される組成物であって、溶液が揮発性麻酔薬の揮発性を低減させるために有効な量の少なくとも1つの抽出溶媒をさらに含み、組成物が可溶化剤をさらに含み、組成物が薬学的に許容される賦形剤をさらに含む、前記組成物。
【請求項19】
表面、くも膜下、硬膜外、経皮、表面、経口、関節内、粘膜、口腔、直腸、膣、筋肉内、膀胱内、および皮下からなる群より選択される投与経路のために調剤される、請求項18記載の組成物。
【請求項20】
溶液が、水、食塩水溶液、および人工脳脊髄液からなる群より選択される少なくとも1つの構成成分を含む、請求項18記載の組成物。
【請求項21】
微小液滴懸濁液の一定量を含む薬学的に許容される組成物であって、微小液滴懸濁液が、リン脂質の安定化層によって取り囲まれる揮発性麻酔薬の球体を含み、組成物が薬学的に許容される賦形剤をさらに含む、前記組成物。
【請求項22】
表面、くも膜下、硬膜外、経皮、表面、経口、関節内、粘膜、口腔、直腸、膣、筋肉内、膀胱内、および皮下からなる群より選択される投与経路のために調剤される、請求項21記載の組成物。
【請求項23】
微小液滴の直径が約200オングストロームから約10,000オングストロームまでの範囲である、請求項21記載の組成物。
【請求項24】
微小液滴が超音波処理、ホモジナイゼーション、微小流動化、または高剪断を伴う他のプロセスによって産生され、揮発性麻酔薬の体積対リン脂質層の重量比が少なくとも1.0 ml/gであり、かつ組成物が少なくとも3%w/vの揮発性麻酔薬を含有する、請求項21記載の組成物。
【請求項25】
創傷を処置するために有効な量で水溶液に溶解した揮発性麻酔薬の一定量を含む薬学的に許容される組成物であって、溶液が乳剤の成分であり、組成物が薬学的に許容される賦形剤をさらに含む、前記組成物。
【請求項26】
表面、くも膜下、硬膜外、経皮、表面、経口、関節内、粘膜、口腔、直腸、膣、筋肉内、および皮下からなる群より選択される投与経路のために調剤される、請求項25記載の組成物。
【請求項27】
創傷を処置するために有効な量で溶液中に溶解した揮発性麻酔薬を被検体の創傷に表面投与する段階を含む、それを必要とする被検体における創傷を処置する方法であって、溶液が、揮発性麻酔薬の揮発性を低減させるために有効な量の少なくとも1つの抽出溶媒をさらに含み、溶液が乳剤の成分であり、投与が吸入によらない、前記方法。
【請求項28】
投与が静脈内経路による、請求項27記載の方法。
【請求項29】
投与が静脈内経路によらない、請求項27記載の方法。
【請求項30】
投与が、表面、経皮、くも膜下、硬膜外、粘膜、筋肉内、皮下、経口、直腸、膣、口腔、関節内、または膀胱内である、請求項27記載の方法。
【請求項31】
少なくとも1つの抽出溶媒が、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルイソソルビド、エタノール、プロパノール、PEG-400、PEG-300、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、およびイソプロパノールからなる群より選択される、請求項27記載の方法。
【請求項32】
少なくとも1つの抽出溶媒が、溶液の約0.1%から約75%を含む、請求項27記載の方法。
【請求項33】
少なくとも1つの抽出溶媒が、溶液の約0.1%から約25%を含む、請求項32記載の方法。
【請求項34】
少なくとも1つの抽出溶媒が、溶液の約25%から約75%を含む、請求項32記載の方法。
【請求項35】
創傷の処置に、炎症の処置または縮小が含まれる、請求項27記載の方法。
【請求項36】
揮発性麻酔薬がハロゲン化エーテル麻酔薬である、請求項27記載の方法。
【請求項37】
揮発性麻酔薬が、イソフルラン、ハロタン、エンフルラン、セボフルラン、デスフルラン、メトキシフルラン、キセノン、およびその混合物からなる群より選択される、請求項27記載の方法。
【請求項38】
揮発性麻酔薬が、イソフルラン、セボフルラン、またはメトキシフルランである、請求項27記載の方法。
【請求項39】
溶液が約5 ng/mlから約100 ng/mlの範囲の量の揮発性麻酔薬を含む、請求項27記載の方法。
【請求項40】
溶液が、溶液中に約1%から約75%v/vの揮発性麻酔薬を含む、請求項27記載の方法。
【請求項41】
溶液が、溶液中に約5%から約50%v/vの揮発性麻酔薬を含む、請求項40記載の方法。
【請求項42】
揮発性麻酔薬の投与が持続的である、請求項27記載の方法。
【請求項43】
揮発性麻酔薬の投与が、別々の機会に、被検体に周期的にも投与され、持続的にも投与される、請求項27記載の方法。
【請求項44】
溶液が無菌的である、請求項27記載の方法。
【請求項45】
被検体がヒトである、請求項27記載の方法。
【請求項46】
少なくとも1つの抽出溶媒がDMSOであり、揮発性麻酔薬がイソフルランであり、溶液が水、食塩水、または人工脳脊髄液を含む、請求項27記載の方法。
【請求項47】
DMSOが溶液の約0.1%から約75%を含む、請求項46記載の方法。
【請求項48】
乳剤が脂質を含む、請求項27記載の方法。
【請求項49】
脂質が、乳剤の約1%から約99%、約5%から約75%、および約10%から約60%v/vの範囲の群から選択される量を含む、請求項48記載の方法。
【請求項50】
脂質が、ダイズ油、オリーブ油、落花生油、ヒマシ油、トウモロコシ油、またはゴマ油を含む、請求項48記載の方法。
【請求項51】
乳剤が乳化剤をさらに含む、請求項27記載の方法。
【請求項52】
溶液が抗生物質をさらに含む、請求項27記載の方法。
【請求項53】
創傷を処置するために有効な量の揮発性麻酔薬を含むリポソーム懸濁液を被検体の創傷に表面投与する段階を含む、それを必要とする被検体における創傷を処置する方法であって、投与経路が吸入によらない、前記方法。
【請求項54】
投与経路が静脈内である、請求項53記載の方法。
【請求項55】
投与経路が静脈内ではない、請求項53記載の方法。
【請求項56】
投与経路が、表面、経皮、くも膜下、硬膜外、粘膜、筋肉内、皮下、経口、直腸、膣、口腔、関節内、または膀胱内である、請求項53記載の方法。
【請求項57】
創傷を処置するために有効な量で溶液中に溶解した揮発性麻酔薬を被検体の創傷に表面投与する段階を含む、それを必要とする被検体における創傷を処置する方法であって、溶液が揮発性麻酔薬の揮発性を低減させるために有効な量の少なくとも1つの抽出溶媒をさらに含み、組成物が可溶化剤をさらに含み、投与経路が吸入によらない、前記方法。
【請求項58】
投与経路が静脈内である、請求項57記載の方法。
【請求項59】
投与経路が静脈内ではない、請求項57記載の方法。
【請求項60】
投与経路が、表面、経皮、くも膜下、硬膜外、粘膜、筋肉内、皮下、経口、直腸、膣、口腔、関節内、または膀胱内である、請求項57記載の方法。
【請求項61】
リン脂質の安定化層によって取り囲まれる揮発性麻酔薬の球体を含む微小液滴懸濁液を、創傷を処置するために有効な量で被検体の創傷に表面投与する段階を含む、それを必要とする被検体の創傷を処置する方法であって、投与経路が吸入ではない、前記方法。
【請求項62】
投与経路が静脈内である、請求項61記載の方法。
【請求項63】
投与経路が静脈内ではない、請求項61記載の方法。
【請求項64】
投与経路が、表面、経皮、くも膜下、硬膜外、粘膜、筋肉内、皮下、経口、直腸、膣、口腔、関節内、または膀胱内である、請求項61記載の方法。
【請求項65】
微小液滴が超音波処理、ホモジナイゼーション、微小流動化、または高剪断を伴う他のプロセスによって産生され、揮発性麻酔薬の体積対リン脂質層の重量比が少なくとも1.0 ml/gであり、組成物が少なくとも3%w/vの揮発性麻酔薬を含有する、請求項61記載の方法。
【請求項66】
創傷を処置するために有効な量で溶液中に溶解した揮発性麻酔薬を被検体の創傷に表面投与する段階を含む、それを必要とする被検体における創傷を処置する方法であって、溶液が乳剤の成分であり、投与経路が吸入ではない、前記方法。
【請求項67】
投与経路が静脈内である、請求項66記載の方法。
【請求項68】
投与経路が静脈内ではない、請求項67記載の方法。
【請求項69】
投与経路が表面、経皮、くも膜下、硬膜外、粘膜、筋肉内、皮下、経口、直腸、膣、口腔、関節内、または膀胱内である、請求項68記載の方法。
【請求項70】
揮発性麻酔薬乳剤を被検体の創傷に表面投与する段階を含む、それを必要とする被検体の創傷を処置する方法であって、投与経路が吸入ではない、前記方法。
【請求項71】
投与経路が静脈内である、請求項70記載の方法。
【請求項72】
投与経路が静脈内ではない、請求項70記載の方法。
【請求項73】
投与経路が表面、経皮、くも膜下、硬膜外、粘膜、筋肉内、皮下、経口、直腸、膣、口腔、関節内、または膀胱内である、請求項70記載の方法。
【請求項74】
創傷を処置するために有効な量で揮発性麻酔薬を含むリポソーム懸濁液を被検体の創傷に表面投与する段階を含む、それを必要とする被検体の創傷を処置する方法であって、投与経路が吸入ではない、前記方法。
【請求項75】
投与経路が静脈内である、請求項74記載の方法。
【請求項76】
投与経路が静脈内ではない、請求項74記載の方法。
【請求項77】
投与経路が、表面、経皮、くも膜下、硬膜外、粘膜、筋肉内、皮下、経口、直腸、膣、口腔、関節内、または膀胱内である、請求項74記載の方法。
【請求項78】
炎症を処置または低減するために有効な量で溶液に溶解した揮発性麻酔薬を被検体に表面投与する段階を含む、それを必要とする被検体における炎症を処置または低減する方法であって、溶液が揮発性麻酔薬の揮発性を低減するために有効な量の少なくとも1つの抽出溶媒をさらに含み、投与経路が吸入ではない、前記方法。
【請求項79】
投与経路が静脈内である、請求項78記載の方法。
【請求項80】
投与経路が静脈内ではない、請求項78記載の方法。
【請求項81】
投与経路が、表面、経皮、くも膜下、硬膜外、粘膜、筋肉内、皮下、経口、直腸、膣、口腔、関節内、または膀胱内である、請求項78記載の方法。
【請求項82】
炎症が、関節炎、腱炎、滑液包炎、大腸炎、炎症性腸疾患、虹彩炎、多発筋炎、間質性膀胱炎、炎症性慢性前立腺炎、炎症性乳癌(IBC)、または血管炎に関連する、請求項78記載の方法。
【請求項83】
炎症性腸疾患が潰瘍性大腸炎またはクローン病である、請求項82記載の方法。
【請求項84】
溶液が乳剤の成分である、請求項78記載の方法。
【請求項85】
溶液がリポソームを含む、請求項78記載の方法。
【請求項86】
少なくとも1つの抽出溶媒が、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルイソソルビド、エタノール、プロパノール、PEG-400、PEG-300、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、およびイソプロパノールからなる群より選択される、請求項78記載の方法。
【請求項87】
少なくとも1つの抽出溶媒が、溶液の約0.1%から約75%を含む、請求項78記載の方法。
【請求項88】
少なくとも1つの抽出溶媒が、溶液の約0.1%から約25%を含む、請求項78記載の方法。
【請求項89】
揮発性麻酔薬がハロゲン化エーテル麻酔薬である、請求項78記載の方法。
【請求項90】
揮発性麻酔薬が、イソフルラン、ハロタン、エンフルラン、セボフルラン、デスフルラン、メトキシフルラン、キセノン、およびその混合物からなる群より選択される、請求項78記載の方法。
【請求項91】
溶液が約5 ng/mlから約100 ng/mlの範囲の量の揮発性麻酔薬を含む、請求項78記載の方法。
【請求項92】
溶液が、溶液中に約1%から約75%v/vの揮発性麻酔薬を含む、請求項78記載の方法。
【請求項93】
揮発性麻酔薬の投与が持続的である、請求項78記載の方法。
【請求項94】
揮発性麻酔薬の投与が、別々の機会に、被検体に周期的にも投与され、持続的にも投与される、請求項78記載の方法。
【請求項95】
溶液が無菌的である、請求項78記載の方法。
【請求項96】
被検体がヒトである、請求項78記載の方法。
【請求項97】
少なくとも1つの抽出溶媒がDMSOであり、揮発性麻酔薬がイソフルランであり、溶液が、生理食塩液、または人工脳脊髄液を含む、請求項78記載の方法。
【請求項98】
DMSOが溶液の約0.1%から約75%を含む、請求項97記載の方法。
【請求項99】
乳剤が脂質を含む、請求項78記載の方法。
【請求項100】
脂質が、乳剤の約1%から約99%、約5%から約75%、および約10%から約60%v/vの範囲群から選択される量を含む、請求項99記載の方法。
【請求項101】
脂質が、ダイズ油、オリーブ油、落花生油、ヒマシ油、トウモロコシ油、またはゴマ油を含む、請求項99記載の方法。
【請求項102】
乳剤が乳化剤をさらに含む、請求項78記載の方法。
【請求項103】
溶液が抗生物質をさらに含む、請求項78記載の方法。
【請求項104】
リン脂質の安定化層に取り囲まれた揮発性麻酔薬の球体を含む微小液滴懸濁液を、創傷を処置するために有効な量で被検体の創傷に表面投与する段階を含む、それを必要とする被検体における炎症を処置または低減する方法であって、投与経路が吸入ではない、前記方法。
【請求項105】
投与経路が静脈内である、請求項104記載の方法。
【請求項106】
投与経路が静脈内ではない、請求項104記載の方法。
【請求項107】
投与経路が、表面、経皮、くも膜下、硬膜外、粘膜、筋肉内、皮下、経口、直腸、膣、口腔、関節内、または膀胱内である、請求項104記載の方法。
【請求項108】
微小液滴が、超音波処理、ホモジナイゼーション、微小流動化、または高剪断を伴う他のプロセスによって産生され、揮発性麻酔薬の体積対リン脂質層の重量比が少なくとも1.0 ml/gであり、組成物が少なくとも3%w/vの揮発性麻酔薬を含有する、請求項104記載の方法。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2012−526133(P2012−526133A)
【公表日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−509951(P2012−509951)
【出願日】平成22年5月5日(2010.5.5)
【国際出願番号】PCT/US2010/033746
【国際公開番号】WO2010/129686
【国際公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(511267675)ベイポジェニックス インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】