説明

炎症を包含する疾患の診断及び治療に有用な同定方法及び化合物

本発明は、マスト細胞の安定化を結果的に生じる、特にマスト細胞の脱顆粒を阻害する作用物質、及び化合物を同定する方法に関する。加えて、本発明は、マスト細胞の脱顆粒及び/又はアレルギー性鼻炎を含む炎症を特徴とする容態を治療する上での組成物及びその使用方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、作用物質及び化合物がマスト細胞の脱顆粒の阻害を結果的に生じる、作用物質、及び化合物を同定する方法に関する。また、本発明は、その調節がマスト細胞の脱顆粒の阻害を結果的に生じる標的にも関する。加えて、本発明は、炎症を特徴とする容態を含む、マスト細胞の脱顆粒を特徴とする容態を治療する上での組成物、及びその使用のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
マスト細胞は、非常に種々のメディエーターを放出することによって、即時型過敏反応及び炎症反応における重要な役割を担っている。マスト細胞は、炎症性メディエーターの即時性放出及び遅延性放出を用いて、自然免疫及び獲得免疫の危険なシグナルに応答する、骨髄起源の組織ベースの炎症性細胞である。マスト細胞は、喘息などの疾患、アレルギー、アレルギー性鼻炎、蕁麻疹、血管浮腫、食物アレルギー、アレルギー性結膜炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、I型過敏反応、多発性硬化症、関節リウマチ、寄生虫感染症、湿疹、及び他の関連障害などのアレルギー性疾患の病態における重要な役割を担っている。活性化されると、マスト細胞は迅速に脱顆粒し、その特徴的な顆粒並びに種々の体液性メディエーター及び炎症誘発性メディエーターを放出する。マスト細胞及び好塩基球は両方とも、それらの表面に高親和性のIgE受容体(FcεRIとして公知)を有する。マスト細胞又は好塩基球におけるIgEに対する抗原の結合は、FcεRI受容体の架橋によって、マスト細胞又は好塩基球の活性化を結果的に生じる。
【0003】
マスト細胞は、完全かつ機能的なFcεRI受容体(αβγ2)を発現し、その凝集は、マスト細胞の活性化、顆粒のエキソサイトーシス、及びメディエーターの放出をもたらす。また、マスト細胞は、C3aR及びC5aR(CD88)を通じてC3a及びC5aなどの補体由来のアナフィラトキシンによって、又はTRKAを通じて神経成長因子によって、又はFcγRIを通じてIgGによって、又はT細胞若しくは単核食細胞に由来するサイトカインに対する反応によっても活性化され得る。
【0004】
マスト細胞の特徴的な特色は、細胞質を占有する濃い細胞質顆粒の存在である。ヒトにおいて、これらの顆粒は、格子構造又は巻物様構造を含む。マスト細胞は、皮膚、胸腺、リンパ組織、肺、鼻粘膜、結膜、子宮、膀胱、舌、滑膜、及び腸間膜の中に;大きな血管及び小さな血管の周りに;並びに消化管の漿膜下層及び粘膜下層の中に比較的豊富である。マスト細胞は、血管、神経、及び腺管を取り囲む、並びに上皮膜、漿膜、及び滑膜の下の疎性結合組織において主に生じる。一般に、マスト細胞は、柔組織においてわずかである。肺において、マスト細胞は、気管支気道結合組織において、及び末梢肺胞内空間においての両方で認められる。皮膚において、マスト細胞は、血管、毛包、皮脂腺、及び汗腺の近くで最大数で現れる。ヒト組織におけるマスト細胞は、分泌型プロテアーゼ含有量に従って2つの主要なサブタイプに分割され、キマーゼをともなう又はともなわないトリプターゼの存在に従って、MCT又はMCTCと呼ばれる。従って、MCTC細胞は、トリプターゼ及びキマーゼ、並びにカルボキシペプチダーゼ及びカテプシンGを含む。MCT細胞は、トリプターゼのみを含む。従って、トリプターゼ染色は、組織におけるすべてのマスト細胞を同定し、マスト細胞を可視化する主要な方法となっている。MCTC細胞は、皮膚及び小腸粘膜下において優勢である。MCT細胞は、正常な気道及び小腸粘膜において優勢である。MCT細胞は、末期免疫不全疾患患者の小腸において選択的に弱まるように見える。ヒトマスト細胞は、Kit+(幹細胞因子(SCF)に対する受容体に対して陽性)及びFcεRI+として特徴づけられる。該細胞は、それらの組織源、分化状態、及び培養条件に応じて、種々の膜受容体を発現する。ヒト安静時マスト細胞は、高親和性IgE受容体(FcεRI)及びFcγRIIb(CD32)を発現する。インビトロでインターフェロン(IFN)-γに対する曝露の後、該細胞は、IgGに対する高親和性IgE受容体を発現する(FcγRI、CD64)。また、マスト細胞は、C3a受容体及びC5a受容体も発現し得る。該細胞はとりわけ、サイトカイン受容体(IL‐3R、IL‐4R、IL‐5R、IL‐9R、IL‐10R、顆粒球‐マクロファージ、コロニー刺激因子[GM‐CSF]R、IFN‐γR)、ケモカイン受容体(CCR3、CCR5、CXCR2、CXCR4)、及び神経成長因子受容体に対して同様に陽性に染色し得る。
【0005】
マスト細胞によって産生されるメディエーターは、3つのカテゴリーに古典的に分類される:(1)あらかじめ形成されたメディエーター、(2)新たに合成された脂質メディエーター、及び(3)サイトカイン。これらのカテゴリーは、絶対的に排他的ではなく、少なくとも1つのサイトカイン、腫瘍壊死因子(TNF)‐アルファを有し、あらかじめ形成された及び新たに合成された分子としての両方を生じる。
【0006】
あらかじめ形成されたメディエーターは、分泌型顆粒内にパッケージされる。活性化時に、顆粒内容物は、数分以内に細胞外環境へと放出される。主要な顆粒成分には、ヒスタミン、セリンプロテアーゼ、カルボキシペプチダーゼA、及びプロテオグリカン(ヘパリン及び硫酸コンドロイチンE)を含む。ヒスタミンは、ヒスチジンから合成され、セロトニン(マウス及びラットにおけるマスト細胞顆粒中に存在)はトリプトファンから合成される。顆粒中のヒスタミン及びセロトニンは、ヘパリン及び硫酸コンドロイチンEのグルコサミノグリカン側鎖の酸性残基とのイオン結合で認められ、ナトリウムイオンとの交換によって細胞外液中のこれらのグリコサミノグリカンから解離する。細胞外空間への放出後、数分以内に代謝される。ヒスタミンは、平滑筋(収縮)、内皮細胞、神経終末、及び粘液分泌に及ぼす効果を有する。ヒスタミンは、N-メチルヒスタミン、メチルイミダゾール酢酸、及びイミダゾール酢酸へと迅速に分解される。ヘパリン及び硫酸コンドロイチンプロテオグリカンは、あらかじめ形成された分子の貯蔵を助けると考えられており、これらのプロテオグリカンから種々の速度で生理学的緩衝溶液において解離する。マスト細胞顆粒中のタンパク質のほとんどは、中性プロテアーゼから作られ、中性プロテアーゼは、中性pHでペプチド結合の切断を触媒する:トリプターゼ、キマーゼ、カルボキシペプチダーゼ、及びカテプシンG。トリプターゼは、すべてのマスト細胞集団で認められるが、キマーゼは、マスト細胞の亜集団MCTCにおいてのみ存在する。トリプターゼ及びキマーゼの生物学的役割は明らかではないが、いくつかの有望な生物学的機能がインビトロで示されている。トリプターゼは、フィブリノーゲンを分解し、高分子量キニノーゲンを破壊し、C3aを生じる。キマーゼは、アンギオテンシンIIを生じ、基底膜を分解し、IL‐1β前駆体を活性化する。
【0007】
新たに合成された主要な脂質メディエーターは、アラキドン酸から代謝され、プロスタグランジンD2及びロイコトリエンC4を含む。細胞脂質貯蔵からのアラキドン酸の遊離は、マスト細胞の活性化とともに生じる。アラキドン酸は、シクロオキシゲナーゼによってプロスタグランジンD2(PGD2)へと、リポキシゲナーゼによってロイコトリエン(LT)C4へと代謝される。LTC4の細胞外ペプチド分解プロセシングは、活性代謝産物LTD4及びLTE4を生じる。アラキドン酸からのこれらの代謝産物は、血管拡張、血小板凝集の阻害、並びに腸及び気管支の平滑筋の収縮を含む種々の生物学的機能を有する。PGD2及びLTC4、LTD4及びLTE4はすべて、気管支収縮剤である。また、LTC4、LTD4、及びLTE4は、脈管の透過性を亢進する。また、PGD2は、好中球化学誘引物質である。PAFは、アレルギー反応及び炎症反応においてマスト細胞から放出されるリン脂質メディエーターである。PAFは、活性化されたマスト細胞によって新たに合成される。インビトロでのPAFの生物学的活性には、血小板及び好中球の活性化、並びに回腸及び肺組織における平滑筋の収縮を含む。
【0008】
マスト細胞は、多量のサイトカインを合成及び分泌することができる。TNF‐アルファは、ヒトマスト細胞によって産生される主要なサイトカインであるように見える。TNF‐アルファは、マスト細胞の活性化後に貯蔵も合成もされるように見える。ヒトマスト細胞によって産生されると報告された他のサイトカインには、IgE合成へのB細胞アイソタイプスイッチと関連したインターロイキン13(IL‐13)、好酸球の動員及び活性化、並びに平滑筋細胞の収縮;TH2細胞分化及びIgE合成と関連したIL‐4;好酸球の発達及び生存に必須のIL‐3、GM‐CSF、及びIL‐5;並びにIL‐6、IL‐8、及びIL‐16を含む。また、ヒトマスト細胞は、マクロファージ炎症性タンパク質(MIP)‐1アルファなどのケモカインを産生することが記述されている。マスト細胞の活性化の際にマウス及びラットにおいて、以下のサイトカインmRNAが新たに転写される:TNF‐アルファ、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGF‐ベータ)、顆粒球マクロファージ‐コロニー刺激因子(GM‐CSF)、インターフェロンガンマ(IFN‐ガンマ)、IL‐1、‐2、‐3、‐4、‐5、‐6、‐10、及びMIP‐1アルファ、MIP‐1ベータ。
【0009】
マスト細胞の活性化の際に放出されるメディエーターは、喘息などの疾患、アレルギー、アレルギー性鼻炎、蕁麻疹、血管浮腫、食物アレルギー、アレルギー性結膜炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、I型過敏反応、多発性硬化症、関節リウマチ、寄生虫感染、及び湿疹などのアレルギー性疾患の病態生理の中枢である。IgE依存性機序を通じてのマスト細胞の活性化は、事象のカスケードを開始し、即時型過敏反応及び遅延相反応を結果的に生じる。即時型反応は、皮膚において紅斑、浮腫、及び掻痒として;上気道においてくしゃみ、鼻漏、及び粘液分泌として;肺において咳、気管支痙攣、浮腫、及び即時型息切れを結果として生じる粘液分泌として;並びに胃腸管において悪心、嘔吐、下痢症、及び痙攣として反映される。この反応は、ヒスタミンの遊離並びにPGD2及びLTC4の産生の提示と一致する。次に、反応にはしばしば、持続的な浮腫及び白血球の流入、先に列挙した追加的なマスト細胞由来の物質の発生及び放出に少なくとも一部よる遅延相反応が6〜24時間ともなう。ヒトにおいて、IL‐5及びIL‐13のようなサイトカインの産生は、慢性のアレルギー状態/喘息状態の展開の中枢であると考えられている。順に、動員された細胞は、細胞レベルで追加的な炎症性メディエーターを与える。肺において、遅延相反応は、持続的な喘息及び随伴する炎症の発生において主要な役割を担っていると考えられている。
【0010】
喘息は、気道の過剰反応性及び可逆的な気道の閉塞によって臨床的に認識されている。他の病理学的事象には、気道平滑筋細胞の狭窄、気道の浮腫を結果として生じる高い脈管透過性、杯細胞及び粘液腺からの粘液の過剰分泌、上皮裏層細胞からの除去、炎症細胞の流入を含む。また、運動誘発性喘息及びアスピリン感受性喘息も、望ましくないマスト細胞の脱顆粒と連関している。
【0011】
マスト細胞と、喘息、アレルギー性鼻炎、食物アレルギー、関節リウマチ、並びに他の障害及び容態などの炎症性疾患及び病理学的事象におけるマスト細胞の役割とに関する高い理解にもかかわらず、これらの容態についての、及びマスト細胞の脱顆粒の特定の調節についての改良されたかつ具体的な治療法についての必要性がなおもある。
【発明の概要】
【0012】
ラット好塩基球細胞株(RBL)及びヒトマスト細胞腫細胞株HMC1及びLAD2はしばしば、マスト細胞についてモデル系として用いられる。ラット細胞は、ヒト遺伝子を標的とするshRNAライブラリーをスクリーニングするのに適していない。TARGETSの同定のための腫瘍細胞株の使用は、このような細胞が、正常なヒトマスト細胞とは有意に異なる遺伝子発現特性を有するので好ましくない。このことは、偽陽性の及び偽陰性の結果をもたらし得る。本発明において、培養されたヒト初代マスト細胞を直接用いた。初代ヒトマスト細胞を用いる利点は、その遺伝子発現特性が、ヒト組織におけるマスト細胞の遺伝子発現特性と類似又は同一であることである。ヒト初代マスト細胞において同定されたTARGETSは、初代細胞からTARGETを発現する細胞株において薬剤発見目的のためにスクリーニングされ得る。ライブラリー(ここでは、アデノウイルスsiRNA発現ライブラリー又はアデノウイルス過剰発現ライブラリー)をスクリーニングするためのヒト初代マスト細胞の使用は新規である。喘息についての新規の標的のスクリーニングは、培養されたヒトマスト細胞についての乏しい形質導入方法、及び適切なノックインライブラリー又はノックダウンライブラリーの欠如によって妨害されてきた。適応したカプシドを有するアデノウイルスの使用によって、初代ヒトマスト細胞を効率よく形質導入することができる。このことを新薬の開発につながるような標的のmRNA配列に対して指向したsiRNAのアデノウイルス発現ライブラリーと組み合わせることで、マスト細胞の活性化のための新薬の開発につながるような調節因子をさがすことができる。ノックダウンアプローチ(siRNA発現コンストラクト)において、siRNA発現コンストラクトは、アンタゴニスト性化合物を模倣する。また、本発明は、マスト細胞の活性化の調節を結果的に生じる化合物の開発にも関する。好ましくは、該化合物は、マスト細胞の活性化と拮抗し、並びに/又はサイトカインの放出を阻害し、並びに/又はロイコトリエン及び/若しくはプロスタグランジンの放出を阻害する。
【0013】
本発明は、本明細書に開示されたTARGETSの発現及び/又は活性を阻害する作用物質が、マスト細胞における炎症性メディエーターの放出の抑制、特にヒスタミンの放出の抑制によって示されるように、マスト細胞の脱顆粒の阻害を結果として生じることができるという発見に基づいている。本発明はそれゆえ、マスト細胞の安定化に関与する経路に関与するTARGETS、マスト細胞の脱顆粒を阻害することのできる作用物質をスクリーニングする方法、並びにマスト細胞の脱顆粒及び/又は炎症と関連した疾患の予防及び/又は治療におけるこれらの作用物質の使用を提供する。
【0014】
本発明は、マスト細胞の脱顆粒を阻害する化合物を同定する方法であって、化合物を、同定されたTARGETS又はそのタンパク質ドメイン断片(配列番号20〜38)と、該TARGETS又はそのタンパク質ドメイン断片が化合物に結合できる条件下で接触させること、及びマスト細胞の脱顆粒と関連した化合物‐ポリペプチド特性を測定することを含む前記方法に関する。一態様において、特性は、マスト細胞からの炎症性メディエーターの放出である。
【0015】
特に、本発明は、マスト細胞の安定化に、特にマスト細胞の脱顆粒に関与するTARGETS、TARGETSの発現及び/又は活性を調節することのできる作用物質をスクリーニングする方法、並びにマスト細胞の脱顆粒を包含する疾患、特に炎症を包含する疾患の予防及び/又は治療におけるこれらの作用物質の使用を提供する。本発明は、マスト細胞の安定化に関与する又はそれに替わるものとして前記安定化と関連するTARGETSを提供する。本発明は、炎症及び炎症応答に関与する、特にマスト細胞と関連したTARGETSを提供する。本発明は、炎症を包含する疾患におけるこれらの標的に対して指向する作用物質の使用を提供する。
【0016】
本方法の態様には、同定されたTARGETSを用いた化合物のインビトロアッセイ、並びに、同定されたTARGET阻害に、炎症性メディエーター、例えば、ヒスタミン、プロテオグリカン、及びサイトカインの放出の変化を含む有効性の指標を観察することをともなう細胞アッセイを含む。本発明の別の態様は、マスト細胞の脱顆粒に関与する容態に罹患している、又はその疑いのある対象における、マスト細胞の脱顆粒を阻害することのできる作用物質を含む医薬組成物を投与することによる、前記容態の治療又は予防の方法である。
【0017】
本発明は、TARGET(類)を阻害する化合物を同定する方法であって、化合物がTARGET(類)と相互作用し得る又はTARGET(類)に影響し得る条件下で、化合物を、同定されたTARGETS又はそのタンパク質ドメイン断片(配列番号20〜38)と接触させること、炎症性メディエーターの発現又は放出を測定すること、及び細胞、特にマスト細胞からの炎症性メディエーターの発現又は放出を抑制する化合物を選択することを含む前記方法に関する。1つのこのような方法において、マスト細胞からのヒスタミンの放出が測定される。
【0018】
本発明は、マスト細胞を安定化することのできる、特にマスト細胞の脱顆粒を阻害することのできる化合物を同定する方法であって、化合物を、配列番号20〜38からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチド(以後、「TARGETS」)と、該ポリペプチドが該化合物に結合できる条件下で接触させること、及びマスト細胞の安定化と関連した化合物‐ポリペプチド特性を測定することを含む前記方法に関する。具体的な実施態様において、本発明は、マスト細胞から炎症性メディエーターの放出を調節することのできる化合物を同定する方法であって、化合物を、配列番号20〜38からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチド(以後、「TARGETS」)及びその断片と、該ポリペプチドが該化合物に結合できる条件下で接触させること、及びマスト細胞の安定化と関連した化合物‐ポリペプチド特性を測定することを含む前記方法に関する。具体的な実施態様において、測定された化合物‐ポリペプチド特性は、マスト細胞の脱顆粒の阻害に関するものである。具体的な実施態様において、測定された特性は、マスト細胞からの炎症性メディエーターの放出であり、特定の態様において、炎症性メディエーターはヒスタミンである。加えて、又はそれに替わるものとして、プロテアーゼ、トリプターゼ、カルボキシペプチダーゼ、カテプシンG、又はキマーゼの放出が測定され得る。
【0019】
本方法の態様には、配列番号20〜38によって説明されるアミノ酸配列を含むTARGETのポリペプチド又はその断片を用いた化合物のインビトロアッセイ、及び細胞アッセイを含み、この中で、TARGET阻害には、例えばTARGET発現レベル、TARGET酵素活性、マスト細胞の脱顆粒、マスト細胞からの炎症性メディエーター放出、並びに/又は炎症及び炎症応答に関する他の評価を含む有効性の指標を観察することをともなう。
【0020】
また、本発明は、
(1)アンチセンスポリヌクレオチド、リボザイム、及び低分子干渉RNA(siRNA)の群から選択されるポリヌクレオチドを含む発現阻害剤(この中で、該ポリヌクレオチドは、TARGETポリペプチドをコードする天然のポリヌクレオチド配列と相補的な又は前記ポリヌクレオチド配列から操作された核酸配列を含み、該ポリヌクレオチド配列は、配列番号1〜19からなる群から選択される配列を含む。)並びに
(2)マスト細胞の活性化及び/又は炎症を特徴とする疾患の治療又は予防において有用な、前記作用物質を含む医薬組成物にも関する。
【0021】
本発明の別の態様は、効果的なTARGET発現阻害量の発現阻害剤又は効果的なTARGET活性阻害量の活性阻害薬を含む医薬組成物を投与することによる、マスト細胞の活性化を特徴とする疾患又は容態、特に炎症を特徴とする前記疾患/容態に罹患している又はその疑いのある対象における前記疾患/容態の治療又は予防の方法である。
【0022】
本発明のさらなる態様は、対象におけるTARGET発現のレベルの指標の測定を含む、マスト細胞の活性化を特徴とする疾患、特に炎症を特徴とする前記疾患の診断のための方法である。特に、本発明は、アレルギー性疾患、アレルギー性気道疾患(例えば、喘息、鼻炎)、自己免疫疾患、移植片拒絶反応、クローン病、関節リウマチ、乾癬、若年性特発性関節炎、大腸炎、及び炎症性腸疾患の診断のための方法に関する。
【0023】
本発明の別の態様は、マスト細胞の脱顆粒を包含する疾患又は容態の治療に有用な、治療方法における本明細書に開示されたTARGETを阻害する作用物質の使用、医薬組成物、及びこのような組成物の製造に関する。特に、本方法は、マスト細胞の活性化を特徴とする疾患の治療におけるTARGETを阻害する作用物質の使用に関し、適切な容態には、喘息、アレルギー性疾患(例えば、アレルギー、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹、血管浮腫、食物アレルギー、アレルギー性結膜炎、アレルギー反応から結果として生じるアナフィラキシー)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、I型過敏反応、多発性硬化症、関節リウマチ、寄生虫感染、湿疹、及び粥状硬化を含むが、これらに限定されない。
【0024】
本発明の別の態様は、炎症を包含する疾患の治療に有用な、治療方法における本明細書に開示されたTARGETを阻害する作用物質の使用、医薬組成物、及びこのような組成物の製造に関する。特に、該疾患は、アレルギー性気道疾患(例えば、喘息、鼻炎)、自己免疫疾患、移植片拒絶反応、クローン病、関節リウマチ、乾癬、若年性特発性関節炎、大腸炎、及び炎症性腸疾患からなる群から選択される。
【0025】
他の目的及び利点は、下記の実例となる図とともにとられる後に続く説明に関する考慮から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、CD117及びFcεR1について陽性のマスト細胞を示す。
【0027】
【図2】図2は、初代マスト細胞の形質導入効率を示す。マスト細胞をAd5C20-空を用いて又はAD5C20-GFPを用いてのいずれかで形質導入した。GFPについて陽性の細胞の百分率をフローサイトメトリーによって決定した。初代マスト細胞は、70%以上の高率で形質導入することができる。
【0028】
【図3】図3は、ネガティブコントロール及びポジティブコントロールのAd5 shRNAを用いて得られた結果を示す。
【0029】
【図4】図4は、生物学的二つ組におけるSilenceSelect(登録商標)回収物のスクリーニング結果を示す。個々の複製物のヒスタミン値を互いに対してプロットする。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(発明の詳細な説明)
以下の用語は、下記に表された意味を有するよう意図され、本発明の明細書及び意図された範囲を理解する上で有用である。
【0031】
用語「作用物質」は、ポリペプチド、抗体、ポリヌクレオチド、化学物質の化合物、及び小分子を含む任意の分子を意味する。特に、用語作用物質には、試験化合物又は薬剤候補化合物などの化合物を含む。
【0032】
用語「アゴニスト」は、最も広範な意味でリガンドが結合する受容体を刺激するリガンドを指す。
【0033】
本明細書で使用する場合、用語「アンタゴニスト」は、受容体への結合の際に生物学的応答自体を誘発しないが、アゴニスト仲介性応答を遮断若しくは減弱させ、又はアゴニストの結合を防止若しくは低下させ、それによりアゴニスト仲介性応答を予防若しくは低下させる化合物を示すために用いられる。
【0034】
用語「アッセイ」は、作用物質の具体的な特性を測定するために用いられる任意のプロセスを意味する。「スクリーニングアッセイ」は、作用物質の集まりからその活性に基づいて作用物質を特徴付け又は選択するために用いられるプロセスを意味する。
【0035】
用語「結合親和性」は、2つ以上の化合物が、非共有結合関係において互いにどのように強く会合しているかを示す特性である。結合親和性は、定性的に(「強い」、「弱い」、「高い」、又は「低い」)又は定量的に(KDを測定することなど)特徴づけることができる。
【0036】
用語「担体」は、医薬組成物に媒介物、容積、及び/又は使用可能な形態を提供するために医薬組成物の製剤において用いられる非毒性材料を意味する。担体は、賦形剤、安定化剤、又は水性pH緩衝溶液など、このような材料の1つ以上を含み得る。生理学的に許容し得る担体の例には、リン酸、クエン酸、及び他の有機酸を含めた水性の又は固体の緩衝成分;アスコルビン酸を含めた抗酸化剤;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、又はリシンなどのアミノ酸;グルコース、マンノース、又はデキストリンを含む単糖、二糖、及び他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;マンニトール又はソルビトールなどの糖アルコール;ナトリウムなどの塩形成対イオン;並びに/あるいはTWEEN(登録商標)、ポリエチレングリコール(PEG)、及びPLURONICS(登録商標)などの非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0037】
用語「複合体」は、2つ以上の化合物が互いに結合し、接触し、又は会合する場合に作られる実体を意味する。
【0038】
用語「化合物」は、本発明のアッセイと関連して説明される「試験化合物」又は「薬剤候補化合物」の文脈で本明細書で用いられる。このように、これらの化合物は、合成的に、組換えで、又は天然源に由来する、有機化合物又は無機化合物を含む。
【0039】
化合物には、ポリヌクレオチド、脂質、又はホルモン類似体などの無機化合物又は有機化合物を含む。他の生体ポリマー有機試験化合物には、約2〜約40のアミノ酸を含むペプチド、及び約40〜約500のアミノ酸を含むより大きなポリペプチドを含み、これには、ポリペプチドリガンド、酵素、受容体、チャネル、抗体、又は抗体抱合体を含む。
【0040】
用語「容態」又は「疾患」は、症状(すなわち、病気)の明白な提示又は異常な臨床的指標(例えば、生化学的指標又は診断指標)の顕在化を意味する。あるいは、用語「疾患」は、遺伝的リスク若しくは環境的リスク又はこのような症状若しくは異常な臨床指標を発達させる傾向を指す。
【0041】
用語「接触する」又は「接触すること」は、インビトロの系であろうとインビボの系であろうと、少なくとも2つの部分を互いにまとめることを意味する。
【0042】
用語「ポリペプチドの誘導体」は、ポリペプチドの連続したアミノ酸残基のひと続きを含み、かつタンパク質、例えば、ポリペプチドの天然の形態のアミノ酸配列と比較してアミノ酸突然変異を有するポリペプチドの生物活性を保有する該ペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、タンパク質、及び酵素に関する。誘導体はさらに、ポリペプチドの天然の形態のアミノ酸配列と比較して、追加的な天然の、変化した、グリコシル化した、アシル化した、又は非天然のアミノ酸残基を含み得る。また、誘導体は、ポリペプチドの天然の形態のアミノ酸配列と比較して、1つ以上の非アミノ酸置換基又は異種性のアミノ酸置換基、例えば、アミノ酸配列に共有結合した又は非共有結合したリポーター分子又は他のリガンドを含み得る。
【0043】
用語「ポリヌクレオチドの誘導体」は、ポリヌクレオチドの核酸残基のひと続きを含むDNA分子、RNA分子、及びオリゴヌクレオチド、例えば、ポリヌクレオチドの天然の形態の核酸配列と比較して核酸の突然変異を有し得るポリヌクレオチドに関する。誘導体はさらに、PNA、ポリシロキサン、及び2'-O-(2-メトキシ) エチル-ホスホロチオアート、非天然核酸残基、又はメチル-、チオ-、スルファート、ベンゾイル-、フェニル-、アミノ-、プロピル-、クロロ-、及びメタノカルバヌクレオシドなどの1つ以上の核酸置換基、あるいはその検出を容易にするためのリポーター分子など、修飾された骨格を有する核酸を含み得る。
【0044】
用語「内在性の」は、哺乳類が天然に産生する材料を意味するものとする。用語「プロテアーゼ」、「キナーゼ」、「因子」、又は「受容体」に対する引用における内在性は、哺乳類(例えば、ヒトであって、これに限定されない。)によって天然に産生されるものを意味するものである。対照的に、この文脈における用語非内在性は、哺乳類(例えば、ヒトであって、これに限定されない。)によって天然には産生されないものを意味するものである。両用語は、インビボの系及びインビトロの系の両方を説明するために利用することができる。例えば、制限することなく、スクリーニングアプローチにおいて、内在性の又は非内在性のTARGETは、インビトロスクリーニングの系に関するものである。さらなる例としてかつ制限することなく、哺乳類のゲノムが非内在性TARGETを含むよう操作された場合、インビトロの系による候補化合物のスクリーニングは実現性がある。
【0045】
用語「発現可能な核酸」は、タンパク質性分子、RNA分子、又はDNA分子をコードする核酸を意味する。
【0046】
用語「発現」は、内在性発現及び形質導入による過剰発現の両方を含む。
【0047】
用語「発現阻害剤」は、細胞内で通常発現される具体的なポリペプチド又はタンパク質の転写、翻訳及び/又は発現を選択的に干渉するよう設計されたポリヌクレオチドを意味する。より特別には、「発現阻害剤」は、具体的なポリペプチド又はタンパク質をコードするポリリボヌクレオチド配列内の少なくとも約15〜30の、特に少なくとも17の連続したヌクレオチドと同一の又は相補的なヌクレオチド配列を含むDNA分子又はRNA分子を含む。典型的な発現阻害分子には、リボザイム、二本鎖siRNA分子、自己相補性一本鎖siRNA分子(shRNA)、遺伝的アンチセンスコンストラクト、及び修飾され安定化した骨格を有する合成RNAアンチセンス分子を含む。
【0048】
用語「ポリヌクレオチドの断片」は、完全な配列と実質的に類似しているが同一である必要のない活性を呈する連続した核酸残基のひと続きを含むオリゴヌクレオチドに関する。特定の態様において、「断片」は、該完全な配列の核酸配列の少なくとも5核酸残基(好ましくは、少なくとも10核酸残基、少なくとも15核酸残基、少なくとも20核酸残基、少なくとも25核酸残基、少なくとも40核酸残基、少なくとも50核酸残基、少なくとも60核酸残基、少なくとも70核酸残基、少なくとも80核酸残基、少なくとも90核酸残基、少なくとも100核酸残基、少なくとも125核酸残基、少なくとも150核酸残基、少なくとも175核酸残基、少なくとも200核酸残基、又は少なくとも250核酸残基)の核酸配列を含むオリゴヌクレオチドを指し得る。
【0049】
用語「ポリペプチドの断片」は、連続したアミノ酸残基のひと続きを含み、かつ完全な配列と実質的に類似だが同一である必要のない、機能的な、又は発現活性を呈するペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、タンパク質、モノマー、サブユニット、及び酵素に関する。特定の態様において、「断片」は、該完全な配列のアミノ酸配列の少なくとも5アミノ酸残基(好ましくは、少なくとも10アミノ酸残基、少なくとも15アミノ酸残基、少なくとも20アミノ酸残基、少なくとも25アミノ酸残基、少なくとも40アミノ酸残基、少なくとも50アミノ酸残基、少なくとも60アミノ酸残基、少なくとも70アミノ酸残基、少なくとも80アミノ酸残基、少なくとも90アミノ酸残基、少なくとも100アミノ酸残基、少なくとも125アミノ酸残基、少なくとも150アミノ酸残基、少なくとも175アミノ酸残基、少なくとも200アミノ酸残基、又は少なくとも250アミノ酸残基)のアミノ酸配列を含むペプチド又はポリペプチドを指し得る。
【0050】
用語「ハイブリダイゼーション」は、一本鎖の核酸が、塩基対形成を通じて相補鎖と結合する任意のプロセスを意味する。用語「ハイブリダイゼーション複合体」は、相補性塩基間の水素結合の形成によって2つの核酸配列間に形成された複合体を指す。ハイブリダイゼーション複合体は、溶液中で形成され得(例えば、C0t又はR0t)、又は溶液中に存在する1つの核酸配列と固相支持体(例えば、紙、メンブレン、フィルター、チップ、ピン、又はガラス)上に固定化された別の核酸配列の間に形成され得る。用語「ストリンジェントな条件」は、ポリヌクレオチドと要求されたポリヌクレオチドの間でハイブリダイゼーションを可能にする条件を指す。ストリンジェントな条件は、塩濃度、有機溶媒、例えばホルムアミドの濃度、温度、及び当技術分野で周知の他の条件によって規定することができる。特に、遠濃度を低下させること、ホルムアミドの濃度を増大させること、又はハイブリダイゼーション温度を上昇させることは、ストリンジェンシーを増すことができる。用語「標準的なハイブリダイゼーション条件」は、ハイブリダイゼーション及び洗浄の両方について5×SSC及び65℃と実質的に等価の塩条件及び温度条件を指す。しかしながら、当業者は、このような「標準的なハイブリダイゼーション条件」が、緩衝液中のナトリウム及びマグネシウムの濃度、核酸配列の長さ及び濃度、パーセントミスマッチ、パーセントホルムアミド、及びこれらの類するものによることを認識するであろう。また、ハイブリダイズする2つの配列が、RNA‐RNA、DNA‐DNA、又はRNA‐DNAであるかどうかも、「標準的なハイブリダイゼーション条件」の決定において重要である。このような標準的なハイブリダイゼーション条件は、周知の定則に従って当業者によって容易に決定され、この中で、ハイブリダイゼーションは、予測又は決定されたTm未満で典型的には10〜20NCであり、所望の場合、より高いストリンジェンシーの洗浄をともなう。
【0051】
用語「阻害する」又は「阻害すること」は、用語「応答」との関連性において、応答が、化合物の不在下とは対照的に、化合物の存在下で低下又は予防されることを意味する。
【0052】
用語「阻害」は、タンパク質又はポリペプチドの発現又は活性の不在又は最小化を結果的に生じるプロセスの低下、下方制御、又はプロセスに対する刺激の除去を指す。
【0053】
用語「誘導」は、タンパク質又はポリペプチドの発現又は活性を結果的に生じるプロセスの誘導、上方制御、又は刺激を指す。
【0054】
用語「リガンド」は、内在性の天然の受容体に特異的な、内在性の天然の、又は合成の非天然の分子を含む分子を意味する。
【0055】
用語「医薬として許容し得る塩」は、本明細書に開示されたTARGETSの発現または活性を阻害する化合物の非毒性の、無機の、及び有機の酸付加塩及び塩基付加塩を指す。これらの塩は、本発明において有用な化合物の最終的な単離及び精製の間にインサイツで調製することができる。
【0056】
用語「ポリペプチド」は、タンパク質(TARGETSなど)、タンパク質性分子、タンパク質の断片、モノマー、ポリマータンパク質のサブユニット又は部分、ペプチド、オリゴペプチド、及び酵素(キナーゼ、プロテアーゼ、GPCRなど)に関する。
【0057】
用語「ポリヌクレオチド」は、一本鎖又は二本鎖の形態における、及びセンス又はアンチセンスの向きにおけるポリ核酸、ストリンジェントな条件下で特定のポリ核酸とハイブリダイズする相補的なポリ核酸、その塩基対の少なくとも約60%で、より特別には、その塩基対の70%で共通であり、最も特別には90%、及び特定の実施態様においてはその塩基対の100%で相同であるポリヌクレオチドを意味する。ポリヌクレオチドには、ポリリボ核酸、ポリデオキシリボ核酸、及びそれらの合成類似体を含む。また、ポリヌクレオチドには、ペプチド核酸(PNA)、ポリシロキサン、及び2'-O-(2-メトキシ)エチルホスホロチオアートなどの修飾された骨格を有する核酸も含む。ポリヌクレオチドは、長さが変動し、約10〜約5000塩基、特に約100〜約4000塩基、より特別には約250〜約2500塩基に及ぶ配列によって説明される。1つのポリヌクレオチド実施態様は、長さ約10〜約30塩基を含む。ポリヌクレオチドの特定の実施態様は、約17〜約22ヌクレオチドのポリヌクレオチドであり、低分子干渉RNA(siRNA‐二本鎖siRNA分子又は自己相補的な一本鎖siRNA分子(shRNA))としてより普遍的に説明される。別の特定の実施態様は、ペプチド核酸(PNA)、ポリシロキサン、及び2'-O-(2-メトキシ)エチルホスホロチオアートなどの修飾された骨格を有する核酸、又は非天然の核酸残基、若しくはメチル-、チオ-、スルファート、ベンゾイル-、フェニル-、アミノ-、プロピル-、クロロ-、及びメタノカルバヌクレオシドなどの1つ以上の核酸置換基、若しくはその検出を容易にするリポーター分子を含む核酸である。本明細書のポリヌクレオチドは、特定の標的DNA配列の異なる鎖と「実質的に」相補的であるよう選択される。このことは、ポリヌクレオチドが、その個々の鎖とハイブリダイズするよう十分相補的でなければならないことを意味する。それゆえ、ポリヌクレオチド配列は、標的配列の実際の配列を反映する必要はない。例えば、非相補的なヌクレオチド断片は、ポリヌクレオチドの5'末端に結合し得、ポリヌクレオチドの配列の残りは前記鎖と相補的である。あるいは、非相補的な塩基又はより長い配列は、ポリヌクレオチドに散在することができ、但し、ポリヌクレオチド配列が、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするのに、又は伸長産物の合成のためのテンプレートを形成するのに十分な相補性を有することを条件とする。
【0058】
用語「予防すること(preventing)」又は「予防(prevention)」は、疾患を生じる作用物質に曝露され得る、又は疾患の発症の前に疾患に罹患しやすくし得る対象において、疾患又は障害を獲得又は発達させる危険の低下を指す。
【0059】
用語「予防(prophylaxis)」は、用語「予防(prevention)」と関連し、該用語に包含され、その目的が疾患を治療又は治癒させるよりもむしろ予防する(prevent)測定又は手順を指す。予防的(prophylactic)測定に関する制限のない例には、ワクチンの投与;例えば運動抑制による血栓症についての危険にある入院患者に対する低分子量ヘパリンの投与;及びマラリアが風土性である又はマラリアにかかる危険性が高い地理的領域への訪問の前のクロロキンなどの抗マラリア薬の投与を含み得る。
【0060】
用語「溶媒和物」は、本発明において有用な化合物と1つ以上の溶媒分子との物理的会合を意味する。この物理的会合には水素結合を含む。ある場合において、溶媒和物は、例えば、1つ以上の溶媒分子が結晶性固体の結晶格子に組み込まれる場合、単離することができるであろう。「溶媒和物」は、液相の溶媒和物及び単離可能な溶媒和物の両方を包含する。代表的な溶媒和物には、水和物、エタノラート(ethanolate)、及びメタノラート(methanolate)を含む。
【0061】
用語「対象」には、ヒト及び他の哺乳類を含む。
【0062】
「治療有効量」は、医師又は他の臨床家によって探究されている対象の生物学的応答又は医学的応答を誘発するであろう薬剤、化合物、発現阻害剤、又は医薬剤の量を意味する。
【0063】
任意の疾患又は障害の用語「治療すること」又は「治療」は、一実施態様において、疾患又は障害を寛解させること(すなわち、疾患を抑止すること、又はその臨床的症状の少なくとも1つの徴候、程度、若しくは重症度を低下させること)を指す。別の実施態様において、「治療すること」又は「治療」は、対象によって認識不可能かもしれない少なくとも1つの身体的パラメータを寛解させることを指す。さらに別の実施態様において、「治療すること」又は「治療」は、疾患又は障害を身体的に(例えば、認識可能な症状の安定化)、生理学的に(例えば、身体的パラメータの安定化)、又はその両方のいずれかで調節することを指す。さらなる実施態様において、「治療すること」又は「治療」は、疾患の進行を遅延させることに関する。
【0064】
また、用語「べクター」は、プラスミドに、及び組換えウイルスなどのウイルスベクター、又は組換えウイルスをコードする核酸に関する。
【0065】
用語「脊椎動物細胞」は、魚、鳥類、爬虫類、両生類、有袋類、及び哺乳類の種を含む、脊椎構造を有する動物由来の細胞を意味する。好ましい細胞は、哺乳類種由来であり、最も好ましい細胞はヒト細胞である。哺乳類細胞には、ネコ、イヌ、ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、マウス及びラットなどのブタネズミ、並びにウサギを含む。
【0066】
用語「TARGET」又は「TARGETS」は、本明細書に説明されたアッセイに従って同定されかつマスト細胞の活性化の調節に関与すると決定されたタンパク質を意味する。用語TARGET又はTARGETSは、スプライスバリアント、対立遺伝子バリアント、フレームエクソンにおける代替物、及び代替的な又は成熟前の終止部位又は開始部位などのバリアントを含み及びこれを企図し、これらには、表1に示されるようなそれらの公知の又は認識されたアイソフォーム又はバリアントを含む。
【0067】
用語「マスト細胞の活性化を特徴とする疾患」は、マスト細胞の活性化に応じてマスト細胞の脱顆粒を包含する、前記脱顆粒から少なくとも一部を結果として生じる、又は前記脱顆粒を含む疾患、特に、マスト細胞の脱顆粒が、マスト細胞からの炎症性メディエーターの放出を結果として生じる疾患を指す。前記用語には、喘息、アレルギー性疾患(例えば、アレルギー、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹、血管浮腫、食物アレルギー、アレルギー性結膜炎、アレルギー性反応から結果として生じるアナフィラキシー)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、I型過敏反応、多発性硬化症、関節リウマチ、寄生虫感染、湿疹、及び粥状硬化から選択される典型的な疾患を含むが、これらに限定されない。
【0068】
用語「炎症を特徴とする疾患」は、炎症を包含する、炎症から少なくとも一部を結果として生じる、又は炎症を含む疾患を指す。前記用語には、アレルギー性気道疾患(例えば、喘息、鼻炎)、自己免疫疾患、移植片拒絶反応、クローン病、関節リウマチ、乾癬、若年性特発性関節炎、大腸炎、及び炎症性腸疾患から選択される典型的な疾患を含むが、これらに限定されない。
【0069】
用語「炎症性メディエーター」は、炎症性反応又は炎症性応答を亢進し、開始し、又は促進するメディエーターを指し、以下から選択され得る:サイトカイン(例えば、TNFアルファ、IL3、IL4、IL5、IL13、GM‐CSF)、プロスタグランジン(例えば、PGD2)、ロイコトリエン(例えば、LTB4、LTC4、LTD4)、メタロプロテアーゼ、キマーゼ、トリプターゼ、増殖因子(例えば、VEGF)。
【0070】
(TARGETS)
本発明は、TARGETSが、炎症性メディエーター、特にヒスタミンのヒト初代マスト細胞からの放出における因子であり、それによりTARGETSの阻害が、マスト細胞の活性化後のヒスタミンの放出の抑制を結果として生じるという本発明者らの発見に基づいている。TARGETSは、TARGETSの阻害が、ヒスタミン及び他の炎症性メディエーターの放出の抑制を結果的に生じるよう、活性化に対するマスト細胞の応答に関与する因子又はタンパク質分子である。また、TARGETSは、他の細胞において、特に好塩基球及び形質細胞様樹状細胞における炎症及び/又は炎症性応答において役割を担い得る。
【0071】
下記の表1に列挙されたTARGETSは、本明細書において、マスト細胞からの炎症性メディエーター及び/又はサイトカインの放出を阻害する経路に関与するものとして同定され、それゆえ、これらのTARGETSの阻害剤は、マスト細胞の脱顆粒を阻害することができ、マスト細胞の脱顆粒を特徴とする疾患の予防及び/又は治療において使用される。これらのTARGETSは、マスト細胞を介した炎症性応答における一般的な役割を有すると提唱される。それゆえ、これらのTARGETSは、炎症を特徴とする疾患又は容態に関与する。
【0072】
それゆえ、一態様において、本発明は、化合物を配列番号20〜38のアミノ酸配列を含むポリペプチド又はその断片と、該ポリペプチドが化合物に結合できる条件下で接触させること、及びポリペプチドと化合物の間の複合体形成を検出することを含む、マスト細胞の安定化を促進する薬剤候補化合物をアッセイする方法に関する。特に、該方法は、マスト細胞の脱顆粒を阻害する作用物質を同定するために用いられる。特に該方法は、マスト細胞からの炎症性メディエーターの放出を阻害する薬剤候補化合物を同定するために用いられ得る。複合体形成を測定する1つの特定の手段は、該化合物の該ポリペプチドに対する結合親和性を決定することである。
【0073】
より特別には、本発明は、マスト細胞の脱顆粒を阻害する作用物質又は化合物を同定する方法に関し、該方法は下記を含む:
(a)哺乳類細胞の集団を、TARGETポリペプチド又はその断片に対する結合親和性を呈する1つ以上の化合物と接触させること、及び
(b)マスト細胞の脱顆粒と関連した化合物‐ポリペプチド特性を測定すること。
【0074】
本発明のさらなる態様において、該方法は、マスト細胞からの炎症性メディエーターの放出を阻害する化合物を同定するために用いられる。特に、ヒスタミン、プロテオグリカン、及び/又はサイトカインの放出の阻害がアッセイされ得る。
【0075】
さらなる態様において、本発明は、化合物を配列番号20〜38から選択されるアミノ酸配列又はその断片と、該化合物が、ポリペプチドの活性又は発現を調節することのできる条件下で接触させること、及びポリペプチドの活性又は発現を決定することを含む、マスト細胞の脱顆粒を阻害する薬剤候補化合物をアッセイする方法に関する。特に、該方法は、マスト細胞からの炎症性メディエーターの放出を抑制できる薬剤候補化合物を同定するのに用いられ得る。ポリペプチドの活性又は発現を測定する1つの特定の手段は、抗体などのポリペプチド結合剤を用いて該ポリペプチドの量を決定すること、又は生物学的測定若しくは生化学的測定において該ポリペプチドの活性、例えば、キナーゼポリペプチドの標的のリン酸化の量を決定することである。
【0076】
先に言及された化合物‐ポリペプチド特性は、TARGETの発現及び/又は活性に関し、当業者によって選択された測定可能な現象である。測定可能な特性は例えば、ポリペプチドTARGETのペプチドドメインに対する該化合物の結合親和性、疾患関連タンパク質の折りたたみ若しくは活性と関連した特性、又は、炎症の若しくは炎症性メディエーターの多くの生化学的マーカーレベルのうちの任意の1つのレベルであり得る。好ましい方法において、マスト細胞の脱顆粒は、マスト細胞からの炎症性メディエーターの放出、特にヒスタミン、プロテオグリカン、及び/又はサイトカインの放出を測定することによって測定される。
【0077】
追加的な態様において、本発明は、化合物を、配列番号1〜19から選択される核酸配列又はその断片を含む、TARGETポリペプチドをコードする核酸と、該核酸が化合物に結合できる又はそれに替わるものとして会合できる条件下で接触させること、及び核酸と化合物の間における複合体の形成を検出することを含む、マスト細胞の脱顆粒を阻害する薬剤候補化合物をアッセイする方法に関する。特に、該方法は、マスト細胞からの炎症性メディエーターの放出を抑制することのできる薬剤候補化合物を同定するために用いられ得る。複合体形成を測定する1つの特定の手段は、該化合物の該核酸に対する結合親和性、又は複合体の存在を、ヌクレアーゼに対する耐性によって又はゲル移動度アッセイによって決定することである。あるいは、複合体形成は、核酸の転写又は翻訳の阻害によって決定され得る。
【0078】
本発明の特定の実施態様において、TARGETポリペプチドは、表1に列挙された配列20〜38からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。本発明の実施態様において、TARGETポリペプチドをコードすることのできる核酸は、表1に列挙された配列1〜19からなる群から選択される核酸配列を含む。表1は、2つ以上の受入番号及び配列番号が示されている認識されたバリアント又はアイソフォームを含むTARGETの典型的なヒト核酸及びタンパク質配列を提供する。TARGET(S)のアイソフォーム又はバリアントには、フレームエクソンにおける代替物、選択的スプライシング又はスプライスバリアント、及び選択的又は成熟前終止バリアント(termination variant)を有する又は利用する核酸又はタンパク質を含む。
【表1】

【0079】
当業者の選択に応じて、本アッセイ方法は、一連の測定として機能するよう設計され得、その各々は、薬剤候補化合物が、実際にTARGETに作用していて、それによりマスト細胞の脱顆粒を阻害するかどうかを決定するよう設計される。例えば、TARGET又はその断片に対する化合物の結合親和性を決定するよう設計されたアッセイは、対象に投与される場合、試験化合物が、マスト細胞の脱顆粒を阻害するのに有用であるかどうかを確めるのに必要であるが十分ではない場合がある。それにもかかわらず、このような結合情報は、生化学的経路のさらに下方の異なる特性、例えば、炎症性メディエーターの放出の抑制を測定するであろうアッセイにおける使用のための1セットの試験化合物を同定する上で有用であろう。このような追加的なアッセイは、TARGETに対する結合親和性を有する試験化合物が、マスト細胞の脱顆粒を実際に阻害することを確認するために設計され得る。
【0080】
好適な対照は、偽陽性の読み取りへの備えを確実にするために常に所定の位置にあるべきである。本発明の特定の実施態様において、スクリーニング方法は、化合物を好適な対照と比較する追加的な工程を含む。一実施態様において、対照は、試験化合物と接触しなかった細胞又は試料であり得る。代替的な実施態様において、対照は、TARGETを発現しない細胞であり得;例えば、このような実施態様の一態様において、試験細胞は、TARGETを天然に発現し得、対照細胞は、TARGETの発現を阻害又は予防する作用物質、例えばsiRNAと接触し得る。あるいは、このような実施態様の別の態様において、その未変性状態における細胞は、TARGETを発現せず、試験細胞は、TARGETを発現するよう操作されており、それにより本実施態様において、対照は、形質転換されていない未変性細胞であり得る。また又はそれに替わるものとして、対照は、脱顆粒及び/又は炎症の公知のメディエーター、あるいはFcεR1、SYK、及び/又はBTKなどの公知のマスト細胞マーカーを利用し得る。典型的な対照が本明細書で説明されているが、このことは制限として取られるべきではなく;使用されている実験条件について適切な対照を選択することは当業者の範囲内である。
【0081】
これらの測定をする順番は、任意の順番で実施され得る本発明の実施にとって必須であると考えられていない。例えば、TARGETに対する化合物の結合親和性に関して何ら情報が知られていない1セットの化合物のスクリーニングアッセイが最初に実施され得る。あるいは、TARGETタンパク質ドメインに対する結合親和性を有するものとして同定された1セットの化合物、又はTARGETの阻害剤であると同定された1クラスの化合物がスクリーニングされ得る。しかしながら、マスト細胞の脱顆粒及び/又は炎症を特徴とする疾患における薬剤候補化合物の究極的な使用にとって本アッセイが意味のあるものとなるために、マスト細胞の安定化及び/又はマスト細胞の脱顆粒の阻害に関する測定が必要である。それにもかかわらず、対照を含めた確認試験、及び本発明のポリペプチドに対する結合親和性の測定は、任意の治療的又は診断的応用において有用な化合物を同定する上で有用である。
【0082】
当技術分野で認識された方法及びアッセイに基づいた類似のアプローチは、マスト細胞の脱顆粒又は炎症性疾患を特徴とする任意の種々の疾患におけるTARGETS及び化合物に関して適応可能であり得る。1つのアッセイ又はアッセイ類は、TARGETに対する結合親和性を有する試験化合物が、活性化後にマスト細胞の脱顆粒を阻害することを確認するよう設計され得る。1つのこのような方法において、マスト細胞の炎症性メディエーターの放出が測定される。
【0083】
本アッセイ方法は、モノマー、ポリマータンパク質の一部又はサブユニット、ペプチド、オリゴペプチド、及びそれらの酵素活性のある部分を含む、TARGETタンパク質又はその断片の1つ以上を用いて、インビトロで実施され得る。
【0084】
化合物とTARGET又はその断片との結合親和性は、表面プラズモン共鳴バイオセンサー(Biacore)を用いて、標識した化合物を用いた飽和結合分析によって(例えば、Scatchard及びLindnmo分析)、差次的紫外線分光光度計、蛍光偏光アッセイ、蛍光画像化プレートリーダー(FLIPR(登録商標))システム、蛍光共鳴エネルギー転移、及び生物発光共鳴エネルギー移動によってなど、当技術分野で公知の方法によって測定することができる。また、化合物の結合親和性は、解離定数(Kd)又はIC50又はEC50において表すことができる。IC50は、ポリペプチドに対する別のリガンドの結合の50%阻害に必要な化合物の濃度を表す。EC50は、TARGET機能を測定する任意のアッセイにおける最大効果の50%を得るのに必要な濃度を表す。解離定数Kdは、リガンドがポリペプチドにどれほど十分に結合しているかの測定結果であり、ポリペプチドにおける結合部位の実際に半分を飽和させるのに必要なリガンド濃度と等価である。高い親和性の結合を有する化合物は、低いKd、IC50、及びEC50を有し、すなわち、100nM〜1pMの範囲にあり;中程度〜低い親和性の結合は高いKd、IC50、及びEC50に関し、すなわちマイクルモル濃度の範囲にある。
【0085】
また、本アッセイ方法は、細胞アッセイにおいても実施され得る。TARGETを発現する宿主細胞は、内在性発現を有する細胞、又は例えば形質導入によってTARGETを過剰発現している細胞であることができる。ポリペプチドの内在性発現が、容易に測定することのできるベースラインを決定するのに十分ではない場合、TARGETを過剰発現する宿主細胞が使用され得る。過剰発現は、TARGET基質末端産物のレベルが、内在性発現による活性レベルよりも高いという利点を有する。従って、現に利用可能な技術を用いてこのようなレベルを測定することはより容易である。1つのこのような細胞アッセイにおいて、TARGETの生物学的活性は、マスト細胞からの炎症性メディエーターの放出を測定することによって測定され得る。
【0086】
マスト細胞の脱顆粒を阻害する化合物を同定する本方法の1つの実施態様は、TARGETポリペプチド又はその機能的断片若しくは誘導体を発現する哺乳類細胞の集団を培養すること;細胞の集団の活性化に関して細胞の該集団における第一レベルの炎症性メディエーター放出を決定すること(例えば、細胞表面IgEに対する抗原の結合による。);細胞の該集団を化合物又は化合物の混合物に曝露すること;該化合物又は該化合物の混合物への細胞の該集団の曝露と同じ活性化の後、前記曝露の間、又は前記曝露の後、細胞の該集団における第二レベルの炎症性メディエーター放出を決定すること;及び炎症性メディエーターの放出を抑制する化合物(類)を同定することを含む。具体的な実施態様において、細胞は、マスト細胞、好塩基球、又は形質細胞様樹状細胞である。さらなる実施態様において、細胞はマスト細胞である。具体的な実施態様において、細胞はヒト細胞である。
【0087】
マスト細胞からの炎症性メディエーターの放出は、本明細書に説明された方法など、当技術分野で公知の方法によって決定することができる。
【0088】
本発明者らは、「ノックダウン」ライブラリーを用いることによって、マスト細胞の脱顆粒の阻害に関与するTARGET遺伝子を同定した。この種類のライブラリーは、siRNA分子が組換えアデノウイルスによって細胞へと形質導入されたスクリーンであり、前記siRNA分子は、具体的な遺伝子の発現並びに細胞における相応の遺伝子産物の発現及び活性を阻害又は抑制する。ウイルスベクターにおける各siRNAは、具体的な天然遺伝子に相応する。ヒスタミンの放出の抑制によって測定されるように、マスト細胞の脱顆粒を阻害するsiRNAを同定することによって、具体的な遺伝子発現とマスト細胞の脱顆粒を阻害するための経路の間に直接的な相関を引くことができる。次に、ノックダウンライブラリー(本明細書で「TARGET」ポリペプチドと呼ばれるそのタンパク質発現産物)を用いて同定されるTARGET遺伝子は、マスト細胞を安定化させるために用いることのできる化合物を同定する本発明の方法において用いられる。実際、表2に列挙された配列(配列番号39〜83)を含むshRNA化合物は、これらのTARGET遺伝子の発現及び/又は活性を阻害し、ヒスタミンの放出を抑制し、IgEの活性化に応じてマスト細胞の脱顆粒をもたらす経路におけるTARGETSの役割を確認する。
【表2】


【0089】
本発明はさらに、マスト細胞の脱顆粒を阻害する化合物を同定する方法に関し、下記を含む:
(a)化合物を、配列番号20〜38からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドと接触させること;
(b)化合物のポリペプチドに対する結合親和性を決定すること;
(c)該ポリペプチドを発現する哺乳類細胞の集団を、少なくとも1つの中程度の結合親和性を呈する化合物と接触させること;及び
(d)マスト細胞の脱顆粒を阻害する化合物を同定すること。
【0090】
一態様において、アッセイ方法には、該ポリペプチドを発現する細胞を、マイクロモル濃度の範囲における結合親和性を呈する化合物と接触させることを含む。一態様において、呈される結合親和性は、少なくとも10マイクロモル濃度である。一態様において、結合親和性は、少なくとも1マイクロモル濃度である。一態様において、結合親和性は、少なくとも500ナノモル濃度である。
【0091】
アッセイ方法は、酵素活性を含むがこれに限定されないTARGETポリペプチドの特定の発現又は活性に基づき得る。従って、配列番号22〜24、26、27、29、30、又は37として同定される酵素TARGETについてのアッセイは、酵素活性又は酵素発現に基づき得る。配列番号22〜24として同定されるプロテアーゼTARGETについてのアッセイは、プロテアーゼの活性又は発現に基づき得る。配列番号26、27、29、30、又は37として同定されるキナーゼTARGETについてのアッセイは、キナーゼ標的のリン酸化を含むがこれに限定されないキナーゼの活性又は発現に基づき得る。配列番号20、25、28、34、又は35として同定されるGPCR TARGETについてのアッセイは、下流のメディエーター又は活性化因子を含む、GPCRの活性又は発現に基づき得る。配列番号21、31、32、33、36、又は38として同定されるイオンチャネルTARGETについてのアッセイは、イオンチャネルを開閉し、それにより膜を通じて又は細胞内で蛍光色素又はトレーサーの濃度を変化させる化合物の能力を測定する古典的なパッチクランプ、高処理量蛍光ベースの、又はトレーサーベースのアッセイを含む、当業者に周知の技術を用い得る。測定可能な現象、活性、又は特性は、当業者によって選択され(selected)又は選択され(chosen)得る。当業者は、当技術分野における当業者の知識及び専門的意見を用いて、多くのアッセイフォーマット、システム、又は設計のうちのいずれかから選択し得る。
【0092】
表1は、同定されたポリペプチドのクラスを含む、下記に説明されたHTRFアッセイにおける出願人のノックダウンライブラリーを用いて同定されたTARGETSを列挙する。TARGETSは、例えば、キナーゼ、プロテアーゼ、GPCR、及びイオンチャネルを含むポリペプチドクラスにおいて同定されている。化合物の存在下又は不在下で測定が実施されるキナーゼによる基質のリン酸化を測定することによる、キナーゼの活性を決定する具体的な方法は、当技術分野で周知である。
【0093】
プロテアーゼであるポリペプチドによる基質の切断を測定することによって化合物による阻害を決定する具体的な方法は、当技術分野で周知である。古典的には、蛍光基がペプチド配列を通じて消光剤に連結された基質が用いられ、前記ペプチド配列は、標的プロテアーゼによって切断することのできる基質である。リンカーの切断は、蛍光基及び消光剤を分離し、蛍光の増大を生じる。
【0094】
イオンチャネルは、膜タンパク質複合体であり、その機能は、生体膜を通過するイオンの拡散を容易にすることである。膜又は脂質二重層は、親水性のかつ帯電した分子に対して疎水性の低い誘電性遮蔽を構築する。イオンチャネルは、膜の疎水性の内部を通過する高い伝導性の親水性経路を提供する。イオンチャネルの活性は、古典的なパッチクランプを用いて測定することができる。また、高処理量蛍光ベースの又はトレーサーベースのアッセイも、イオンチャネルの活性を測定するために広範に利用可能である。これらの蛍光ベースのアッセイは、イオンチャネルを開閉のいずれかをし、それにより膜を通じての具体的な蛍光色素の濃度を変化させる能力に基づいて化合物をスクリーニングする。トレーサーベースのアッセイの場合、細胞内及び細胞外のトレーサーの濃度の変化は、放射能測定又は気相吸光分析(gas absorption specgtrometry)によって測定される。
【0095】
Gタンパク質共役受容体(GPCR)は、エフェクタータンパク質を活性化することができ、それにより細胞における第二のメッセンジャーレベルにおける変化を結果的に生じる。GPCRの活性は、このような第二のメッセンジャーの活性レベルを測定することによって測定することができる。細胞における2つの重要かつ有用な第二のメッセンジャーは、環状AMP(cAMP)及びCa2+である。活性レベルは、当業者に公知の方法によって、ELISA若しくは放射能技術のいずれかによって、又はCa2+と接触した場合に蛍光シグナル若しくは発光シグナルを生じる基質を用いることによって直接的に、あるいは、リポーター遺伝子分析によって間接的に測定することができる。1つ以上の二次メッセンジャーの活性レベルは、プロモーターによって制御されたリポーター遺伝子を用いて典型的に決定され得、この中で、プロモーターは、第二のメッセンジャーに対して応答する。このような目的のための当技術分野で公知の及び用いられるプロモーターは、細胞における環状AMPレベルに応答する環状AMP応答プロモーター、及び細胞における細胞質Ca2+レベルに対して感受性のあるNF‐AT応答プロモーターである。リポーター遺伝子は典型的に、容易に検出可能な遺伝子産物を有する。リポーター遺伝子は、宿主細胞において安定して感染させることができるか、又は一過性にトランスフェクトされることができるかのいずれかである。有用なリポーター遺伝子は、アルカリホスファターゼ、増強した緑色蛍光タンパク質、脱安定化した緑色蛍光タンパク質、ルシフェラーゼ、及びβ-ガラクトシダーゼである。
【0096】
ポリペプチドを発現する細胞は、ポリペプチドを天然に発現する細胞であり得、又は細胞は、先に説明したとおり、ポリペプチドを発現するようトランスフェクトされ得る。また、細胞は、ポリペプチドを過剰発現するよう形質導入され得、又はポリペプチドの非内在性形態を発現するようトランスフェクトされ得、これらは差次的にアッセイ又は評価することができる。
【0097】
1つの特定の実施態様において、本発明の方法はさらに、細胞の集団をポリペプチドのアゴニストと接触させる工程を含む。これは、細胞のある選択された集団におけるポリペプチドの発現が、その活性の適切な検出にとってあまりにも低い方法において有用である。アゴニストを用いることによって、ポリペプチドは惹起され、化合物がポリペプチドを阻害する場合、適切な読み出しを可能にし得る。類似の考え方は、炎症性メディエーターの放出の測定に適用する。特定の実施態様において、本方法において用いられる細胞は、哺乳類マスト細胞である。マスト細胞は、企図されるアッセイにおいて活性化され得る(例えば、マスト細胞におけるIgE受容体を、IgE及び抗IgEの組み合わせと架橋することによる。)。
【0098】
マスト細胞を安定化させる化合物を同定する方法は、下記を含む:
(a)化合物を、配列番号20〜38からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチド及びその断片と接触させること;及び
(b)マスト細胞の脱顆粒と関連した化合物‐ポリペプチド特性を測定すること。
【0099】
本発明の一実施態様において、該方法は、マスト細胞の脱顆粒を阻害する化合物を同定することに関する。
【0100】
本発明の一実施態様において、マスト細胞の安定化と関連した化合物‐ポリペプチド特性は、結合親和性である。
【0101】
本発明の一実施態様において、マスト細胞の安定化と関連した化合物‐ポリペプチド特性は、炎症性メディエーターの放出の抑制である。
【0102】
本発明の一実施態様において、マスト細胞の安定化と関連した化合物‐ポリペプチド特性は、該ポリペプチドの活性である。特に、一実施態様において、化合物は、該ポリペプチドの活性を阻害する。
【0103】
本発明の一実施態様において、マスト細胞の安定化と関連した化合物‐ポリペプチドの特性は、該ポリペプチドの発現である。特に、一実施態様において、化合物は、該ポリペプチドの発現を阻害する。
【0104】
本発明はさらに、マスト細胞を安定化させる化合物を同定する方法に関し、この中で、該化合物は、配列番号20〜38の群から選択されるアミノ酸と中程度の結合親和性を呈し、該方法は下記を含む:
a)化合物を、配列番号20〜38からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドを発現する哺乳類マスト細胞の集団と接触させ、この中で、細胞は活性化されていること;
b)該細胞からの炎症性メディエーターの放出を決定すること;及び
c)マスト細胞を安定化させる化合物を、細胞からの炎症性メディエーターの放出を抑制する化合物として同定すること。
【0105】
1つのこのような方法において、化合物は、少なくとも10マイクロモル濃度の配列番号20〜38の群から選択されるアミノ酸に対する結合親和性を呈する。一態様において、結合親和性は、少なくとも1マイクロモル濃度である。一態様において、結合親和性は、少なくとも500ナノモル濃度である。
【0106】
本発明はさらに、マスト細胞を安定化させる化合物を同定する方法に関し、該方法は下記を含む:
a)化合物を、配列番号20〜38からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドと接触させること;
b)化合物のポリペプチドに対する結合親和性を決定すること;
c)該ポリペプチドを発現する哺乳類細胞の集団を、少なくとも10マイクロモル濃度の結合親和性を呈する化合物と接触させること;及び
d)マスト細胞を安定化させる化合物を同定すること。
【0107】
本発明はさらに、マスト細胞を安定化させる化合物を同定する方法に関し、該方法は下記を含む:
a)化合物を、配列番号20〜38からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドと接触させること;
b)ポリペプチドの発現又は活性を阻害する化合物の能力を決定すること;
c)該ポリペプチドを発現する哺乳類細胞の集団を、ポリペプチドの発現又は活性を有意に阻害する化合物と接触させること;及び
d)マスト細胞を安定化させる化合物を同定すること。
【0108】
本発明の特定の態様において、先に説明した方法には、試験されるべき化合物を対照と比較する追加的な工程を含み、ここで、対照は、試験化合物と接触しなかった細胞の集団である。
【0109】
本発明の特定の態様において、先に説明した方法には、試験されるべき化合物を対照と比較する追加的な工程を含み、ここで、対照は、該ポリペプチドを発現しない細胞の集団である。
【0110】
高処理目的のために、抗体断片ライブラリー、ペプチドファージディプレイライブラリー、ペプチドライブラリー(例えば、LOPAP(商標)、Sigma Aldrich)、脂質ライブラリー(BioMol)、合成化合物ライブラリー(例えば、LOPAC(商標)、Sigma Aldrich、BioFocus DPI)、又は天然化合物ライブラリー(Specs、TimTec)などの化合物のライブラリーが用いられ得る。
【0111】
好ましい薬剤候補化合物は、低分子量化合物である。すなわち、500ダルトン以下の分子量を有する低分子量化合物は、生物システムにおいて良好な吸収及び透過を有するようであり、結果的に、500ダルトンを上回る分子量を有する化合物よりも成功する薬剤候補であるようにますます見える(Lipinskiらの文献(1997)Adv Drug Del Rev 23:3‐25)。ペプチドは、薬剤候補化合物の別の好ましいクラスを含む。ペプチドは、妊孕性ホルモン及び血小板凝集阻害剤など、商業的に価値のあるペプチドの複数の例がある。天然化合物は、薬剤候補化合物の別の好ましいクラスである。このような化合物は、天然源に認められており、天然源から抽出され、その後合成され得る。脂質は、薬剤候補化合物の別の好ましいクラスである。
【0112】
薬剤候補化合物の別の好ましいクラスは、抗体である。また、本発明は、TARGETSに対して指向する抗体を提供する。これらの抗体は、細胞内のTARGETSに結合するよう内在的に産生され得、組織に付加して、細胞の外側に存在するTARGETポリペプチドに結合し得る。これらの抗体は、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体であり得る。本発明には、キメラ抗体、一本鎖抗体、及びヒト化抗体、並びにFAb断片及びFAb発現ライブラリーの産物、並びにFv断片及びFv発現ライブラリーの産物を含む。
【0113】
ある実施態様において、ポリクローナル抗体は、本発明の実施において使用され得る。当業者は、ポリクローナル抗体を調製する方法を知っている。ポリクローナル抗体は、例えば免疫化剤及び所望の場合アジュバントの1回以上の注射によって、哺乳類において上昇することができる。典型的には、免疫化剤及び/又はアジュバントは、複数回の皮下注射又は腹腔内注射によって哺乳類において注射されるであろう。また、抗体は、未処置のTARGETタンパク質若しくはポリペプチドに対して、又は断片、抱合体を含む誘導体、若しくは細胞膜に移入されたTARGETなど、TARGETタンパク質若しくはポリペプチドの他のエピトープ、又はファージディスプレイライブラリーなどの抗体可変領域のライブラリーに対して生じ得る。
【0114】
免疫化されている哺乳類において免疫原性であることが公知のタンパク質に免疫化剤を抱合することは有用であり得る。このような免疫原性のタンパク質の例には、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシチログロブリン、及びダイズトリプシン阻害剤を含むが、これらに限定されない。採用され得るアジュバントの例には、フロイント完全アジュバント及びMPL‐TDMアジュバント(モノホスホリルリピドA、合成トレハロースジコリノミコラート)を含む。実験に相応である当業者は、免疫化プロトコールを選択し得る。
【0115】
いくつかの実施態様において、抗体は、モノクローナル抗体であり得る。モノクローナル抗体は、当技術分野で公知の方法を用いて調製され得る。本発明のモノクローナル抗体は、ヒト化されて、宿主が抗体に対する免疫応答を展開するのを防止し得る。「ヒト化抗体」は、相補性決定領域(CDR)並びに/又は軽鎖及び/若しくは重鎖可変ドメインフレームワークの他の部分が、非ヒト免疫グロブリンに由来するが、分子の残りの部分が、1つ以上のヒト免疫グロブリンに由来するものである。また、ヒト化抗体には、ドナー若しくはアクセプターの修飾されていない軽鎖若しくはキメラ軽鎖と会合したヒト化重鎖を特徴とする抗体、又はその逆も含む。抗体のヒト化は、当技術分野で公知の方法によって達成され得る(例えば、Mark及びPadlanの文献「実験薬理学のハンドブック第113巻「第4章モノクローナル抗体のヒト化」("Chapter 4. Humanization of Monoclonal Antibodies", The Handbook of Experimental Pharmacology Vol. 113")」((1994), Springer-Verlag, New York参照)。トランスジェニック動物を用いて、ヒト化抗体を発現し得る。
【0116】
また、ヒト化抗体は、ファージディスプレイライブラリーを含む、当技術分野で公知の種々の技術を用いて作製することができる(Hoogenboom及びWinterの文献((1991) J. Mol. Biol. 227:381-8);Marksらの文献((1991). J. Mol. Biol. 222:581-97))。また、Coleら及びBoernerらの技術も、ヒトモノクローナル抗体の調製に利用可能である(Coleらの文献「モノクローナル抗体及び癌治療法(Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy)」((1985), Alan R. Liss, p. 77);Boernerらの文献((1991). J. Immunol., 147(1):86-95))。
【0117】
一本鎖抗体の作製のための当技術分野で公知の技術は、TARGETSに対する一本鎖抗体を作製するのに適応させることができる。抗体は、一価の抗体であり得る。一価の抗体を調製する方法は当技術分野で周知である。例えば、1つの方法は、免疫グロブリン軽鎖及び修飾された重鎖の組換え発現を包含する。重鎖は、重鎖架橋を防止するよう、Fc領域における任意の地点で一般的に切断されている。あるいは;関連性のあるシステイン残基は、別のアミノ酸残基と置換され、又は欠失され、それにより架橋を防止する。
【0118】
二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる抗原に対する、及び好ましくは細胞表面のタンパク質又は受容体又は受容体サブユニットに対する結合特異性を有するモノクローナル抗体、好ましくはヒト抗体又はヒト化抗体である。1つのこのような実施態様において、結合特異性のうちの1つは、TARGETの1つのドメインに対するものであり;もう1つは、TARGETの別のドメインに対するものである。
【0119】
二重特異性抗体を作製する方法は、当技術分野で公知である。伝統的に、二重特異性抗体の組換え作製は、2つの免疫グロブリン重鎖/軽鎖対の同時発現に基づいており、ここで、2つの重鎖は異なる特異性を有する(Milstein及びCuelloの文献((1983) Nature 305:537-9))。免疫グロブリン重鎖及び軽鎖の無作為な分類のために、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は、10の異なる抗体分子の可能性のある混合物を生じ、そのうちたった1つが正確な二重特異性構造を有する。アフィニティクロマトグラフィー工程は通常、正確な分子の精製を達成する。類似の手順は、Trauneekerらの文献((1991) EMBO J. 10:3655-9)に開示されている。
【0120】
別の好ましい実施態様によると、アッセイ方法は、TARGETに対する結合親和性を有するものとして同定された薬剤候補化合物を用い、及び/又はTARGETに対するアンタゴニスト活性などの下方制御活性を有するものとして既に同定されている。
【0121】
炎症又は炎症性疾患のインビボ動物モデルは、インビボでのTARGET調節をさらに評価することを含む、本発明において同定された作用物質又は化合物をさらに又は追加的にスクリーニング、評価、及び/又は検証するために、当業者によって利用され得る。このような動物モデルには、潰瘍性大腸炎モデル、多発性硬化症モデル(EAE、リゾレシチン誘発性を含む。)、関節炎モデル、アレルギー性喘息モデル、気道炎症モデル、及び急性炎症モデルを含むが、これらに限定されない。
【0122】
本発明はさらに、該細胞を、配列番号1〜19からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む、ポリペプチドTARGET又はその部分をコードするヌクレオチド配列の少なくとも約15〜約30、特に少なくとも約17〜約30、最も特別には少なくとも17〜約25の連続したヌクレオチドを補完するポリヌクレオチド配列を含む発現阻害剤と接触させることを含む、マスト細胞を安定化させる方法に関する。
【0123】
本発明の別の態様は、マスト細胞を安定化させる方法であって、該細胞を、TARGETをコードするポリリボヌクレオチドの細胞における翻訳を阻害する発現阻害剤と接触させることを含む前記方法に関する。特定の実施態様は、作用物質をTARGET mRNAと対形成するよう機能する少なくとも1つのアンチセンス鎖を含むポリヌクレオチドを含み、それによりTARGETの発現を下方制御又は遮断する組成物に関する。阻害薬は好ましくは、アンチセンスポリヌクレオチド、リボザイム、及び低分子干渉RNA(siRNA)を含み、この中で、該作用物質は、配列番号20〜38のアミノ酸配列を含むポリペプチドの一部をコードする天然のポリヌクレオチド配列と相補的な、又は前記ポリヌクレオチド配列から操作された核酸配列を含む。好ましい実施態様において、発現阻害剤は、配列番号1〜19からなるポリヌクレオチド配列と相補的である。別の好ましい実施態様において、発現阻害剤は、配列番号39〜83からなる群から選択されるポリヌクレオチド配列と相補的である。
【0124】
本発明の実施態様は、発現阻害剤が、アンチセンスRNA、アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)、配列番号1〜19をコードするポリリボヌクレオチドを切断するリボザイム、低分子干渉RNA(siRNA)、好ましくはshRNAが、TARGETポリリボヌクレオチドのTARGETポリペプチドへの翻訳に干渉するよう、配列番号20〜38をコードするポリリボヌクレオチドの一部と十分に相補的なsiRNA、好ましくはshRNAからなる群から選択される方法に関する。好ましくは、発現阻害剤は、アンチセンスRNA、リボザイム、アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド、又は配列番号1〜19からなる群から選択されるヌクレオチド配列と相補的なsiRNA、好ましくはshRNAである。別の好ましい実施態様において、ヌクレオチド配列は、配列番号39〜83からなる群から選択されるポリヌクレオチドと相補的である。
【0125】
アンチセンス核酸を用いた遺伝子発現の下方制御は、翻訳レベル又は転写レベルで達成することができる。本発明のアンチセンス核酸は、好ましくは、TARGETをコードする核酸又は相応するメッセンジャーRNAのすべて又は一部と特異的にハイブリダイズすることのできる核酸断片である。加えて、主要転写産物のスプライシングを阻害することによってTARGETをコードすることのできる核酸配列の発現を減少させるアンチセンス核酸が設計され得る。アンチセンス配列の任意の長さは、TARGETSをコードする核酸の発現を下方制御又は遮断することができる限り、本発明の実施に好適である。好ましくは、アンチセンス配列は、長さ少なくとも約17ヌクレオチドである。アンチセンス核酸の調製及び使用、アンチセンスRNAをコードするDNA、並びにオリゴ及び遺伝的アンチセンスの使用は、当技術分野で公知である。
【0126】
発現阻害剤の一実施態様は、配列番号1〜19からなる群から選択された核酸に対するアンチセンスである核酸である。例えば、アンチセンス核酸(例えば、DNA)は、配列番号1〜19からなる群から選択される核酸の細胞での発現を阻害する遺伝子治療法として、インビトロで細胞に導入され得、又はインビボで対象に投与され得る。アンチセンスオリゴヌクレオチドは好ましくは、約15〜約100のヌクレオチドを含む配列を含み、より好ましくは、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、約17〜約30を含み、最も特別には約17〜約25を含む。アンチセンス核酸は、配列番号1〜19から選択される核酸配列と相補的な約10〜約30の連続したヌクレオチドから調製され得る。
【0127】
当業者は、TARGET発現の阻害及び/又はマスト細胞の脱顆粒の阻害に有効なアンチセンス核酸及びオリゴヌクレオチドについての選択プロセスを容易にしかつ簡素化するいくつかの任意の戦略を容易に利用することができる。mRNA分子におけるオリゴヌクレオチドと相補的配列との間の結合エネルギーの予測又は熱力学的指数の算出が利用され得る(Chiangらの文献((1991) J. Biol. Chem. 266:18162-18171);Stullらの文献((1992) Nucl. Acids Res. 20:3501-3508))。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、二次構造に基づいて選択され得る(Wickstromらの文献「癌及びエイズのアンチセンス核酸治療法についての見通し(Prospects for Antisense Nucleic Acid Therapy of Cancer and AIDS)」((1991) , Wickstrom編, Wiley-Liss, Inc., New York, pp. 7-24);Limaらの文献((1992) Biochem. 31:12055-12061))。Schmidt及びThompson(米国特許第6,416,951号)は、RNAをオリゴヌクレオチドとハイブリダイズし、挿入色素の存在下でハイブリダイズすることによるハイブリダイゼーションの動態をリアルタイムで測定すること、又は標識を組み込み、標識していないオリゴヌクレオチドの存在下で色素若しくは標識のシグナルの分光特性を測定することを含む、機能的アンチセンス剤を同定する方法を説明している。加えて、当業者によって認識さ得る種々の基準を利用する好適なアンチセンスオリゴヌクレオチド配列又はアンチセンス標的を推定する種々の任意のコンピュータプログラムが利用され得、前記基準には、例えば、自己相補性の欠如、ヘアピンループの不在、安定したホモ二量体の欠如、および二本鎖形成(kcal/molにおける予測されたエネルギーによって評価される安定性)を含む。このようなコンピュータプログラムの例は、容易に利用可能であり、当業者に公知であり、OLIGO 4プログラム又はOLIGO 6プログラム(Molecular Biology Insights, Inc., Cascade, CO)及びOligo Techプログラム(Oligo Therapeutics Inc., Wilsonville, OR)を含む。加えて、本発明に好適なアンチセンスオリゴヌクレオチドは、ハイブリダイゼーション条件下でオリゴヌクレオチドライブラリー又は核酸分子のライブラリーをスクリーニングすること、及び標的RNA又は核酸とハイブリダイズするものを選択することによって同定され得る(例えば、米国特許第6,500,615号参照)。また、Mishra及びToulmeは、標的を結合するオリゴヌクレオチドの選択的増幅に基づいた選択手順を開発した(Mishraらの文献((1994) Life Sciences 317:977-982))。また、オリゴヌクレオチドは、RNAse Hによる標的RNAの切断を仲介する能力によって、切断断片の選択及び特徴づけによって選択され得る(Hoらの文献((1996) Nucl Acids Res 24:1901-1907);Hoらの文献((1998) Nature Biotechnology 16:59-630))。また、RNA分子のGGGAモチーフに対するオリゴヌクレオチドの発生及びターゲティングも説明されている(米国特許第6,277,981号)。
【0128】
アンチセンス核酸は好ましくは、オリゴヌクレオチドであり、デオキシリボヌクレオチド、修飾されたデオキシリボヌクレオチド、又はその両方の何らかの組み合わせから完全になり得る。アンチセンス核酸は、合成オリゴヌクレオチドであることができる。オリゴヌクレオチドは、化学的に修飾され、所望の場合、安定性及び/又は選択性を改良し得る。オリゴヌクレオチドは、細胞内ヌクレアーゼによる分解を受けやすいので、修飾には、例えば、ホスホジエステル結合の遊離酸素を置き換えるための硫黄基の使用を含むことができる。この修飾は、ホスホロチオアート結合と呼ばれる。ホスホロチオアートアンチセンスオリゴヌクレオチドは、水溶性であり、多価陰イオン性であり、内在性ヌクレアーゼに対して耐性である。加えて、ホスホロチオアートアンチセンスオリゴヌクレオチドが、その標的部位とハイブリダイズする場合、RNA‐DNA二本鎖は、内在性酵素リボヌクレアーゼ(RNase)Hを活性化し、RNaseHは、ハイブリッド分子のmRNA成分を切断する。また、オリゴヌクレオチドは、1つ以上の置換糖部分も含み得る。特定のオリゴヌクレオチドは、以下のうちの1つを2'位で含む:OH、SH、SCH3、F、OCN、ヘテロシクロアルキル;ヘテロシクロアルカリル;アミノアルキルアミノ;ポリアルキルアミノ;置換シリル;RNA切断基;リポーター基;挿入剤;オリゴヌクレオチドの薬物動態特性を改良するための基;又はオリゴヌクレオチド及び類似の特性を有する他の置換基の薬力学的特性を改良するための基。また、類似の修飾は、オリゴヌクレオチド上の他の位置、特に3'末端ヌクレオチド上の糖の3'位、及び5'末端ヌクレオチドの5'位でなされ得る。
【0129】
加えて、ホスホラミダイト及びポリアミド(ペプチド)結合を有するアンチセンスオリゴヌクレオチドが合成できる。これらの分子は、ヌクレアーゼ分解に対して非常に耐性があるべきである。さらに、化学基は、糖部分の2'炭素及びピリミジンの5炭素(C‐5)に付加され、安定性を増強し、アンチセンスオリゴヌクレオチドのその標的部位への結合を容易にすることができる。修飾には、2'-デオキシ、O-ペントキシ、O-プロポキシ、O-メトキシ、フルオロ、メトキシエトキシホスホロチオアート、修飾された塩基、及び当業者に公知の他の修飾を含み得る。
【0130】
TARGETSのレベルを低下することのできる別の種類の発現阻害剤は、リボザイムである。リボザイムは、個別の触媒ドメイン及び基質結合ドメインを有する触媒性RNA分子(RNA酵素)である。基質結合配列は、ヌクレオチド相補性及びおそらくは、その標的配列との非水素結合相互作用によって組み合わさる。触媒部分は、特異的部位で標的RNAを切断する。リボザイムの基質ドメインは、指定されたmRNA配列に配向するよう操作することができる。リボザイムは相補性塩基対形成を通じて標的mRNAを認識した後、前記標的mRNAを結合する。一旦、正確な標的部位に結合すると、リボザイムは、酵素的に作用して、標的mRNAを切る。リボザイムによるmRNAの切断は、相応のポリペプチドの合成を扱う前記mRNAの能力を破壊する。一旦、リボザイムがその標的配列を切断すると、前記標的配列が放出され、他のmRNAにおいて反復して結合及び切断することができる。
【0131】
リボザイムの形態には、ハンマーヘッドモチーフ、ヘアピンモチーフ、デルタ型肝炎ウイルス、グループIイントロンモチーフ若しくは(RNA誘導配列と会合した)RNaseP RNAモチーフ又はパンカビVS RNAモチーフを含む。これらの触媒RNA分子が、真核生物プロモーターから細胞内で発現することができるので、ハンマーヘッド又はヘアピン構造を有するリボザイムは容易に調製される(Chenらの文献((1992) Nucleic Acids Res. 20:4581-9))。本発明のリボザイムは、適切なDNAベクターから真核細胞において発現することができる。所望の場合、リボザイムの活性は、第二のリボザイムによる主要転写産物からの放出によって増大し得る(Venturaらの文献((1993) Nucleic Acids Res. 21:3249-55))。
【0132】
リボザイムは、オリゴデオキシリボヌクレオチドを、転写後に標的mRNAとハイブリダイズする配列によって隣接されたリボザイム触媒ドメイン(20ヌクレオチド)と組み合わさることによって化学的に合成され得る。オリゴデオキシリボヌクレオチドは、基質結合配列をプライマーとして用いることによって増幅される。増幅産物は、真核生物発現ベクターへとクローニングされる。
【0133】
リボザイムは、DNA、RNA、又はウイルスベクターへと挿入された転写単位から発現する。リボザイム配列の転写は、真核生物RNAポリメラーゼI(pol(I)、RNAポリメラーゼII(pol II)、又はRNAポリメラーゼIII(pol III))についてのプロモーターから駆動される。pol IIプロモーター又はpol IIIプロモーターからの転写産物は、すべての細胞において高レベルで発現するであろうし;所与の細胞種類における所与のpol IIプロモーターのレベルは、近くの遺伝子調節配列によるであろう。また、原核生物RNAポリメラーゼプロモーターも使用され、但し、原核生物RNAポリメラーゼ酵素が、適切な細胞において発現するという条件付きである(Gao及びHuangの文献((1993) Nucleic Acids Res. 21:2867-72))。これらのプロモーターから発現したリボザイムが哺乳類細胞において機能することができることは示されている(Kashani-Sabetらの文献((1992) Antisense Res. Dev. 2:3-15))。
【0134】
特に好ましい阻害剤は、低分子干渉RNA(二本鎖siRNA分子、又は特定の実施態様においては自己相補性一本鎖siRNA分子(shRNA))である。siRNA、特にshRNAは、発現停止したRNAと配列において類似している二本鎖RNA(dsRNA)によって遺伝子サイレンシングの転写後プロセスを仲介する。本発明に従ったsiRNAは、配列番号1〜19からなる群から選択された配列の連続した17〜25のヌクレオチド配列と相補的な又は前記ヌクレオチド配列と類似した15〜30の、特に17〜30の、最も特定には17〜25のヌクレオチドのセンス鎖と、センス鎖に相補的な17〜25のヌクレオチドのアンチセンス鎖とを含む。典型的な配列は、配列番号39〜83と相補的な配列として説明されている。最も好ましいsiRNAは、互いに及び標的ポリヌクレオチド配列と100パーセント相補的なセンス鎖及びアンチセンス鎖を含む。好ましくは、siRNAはさらに、センス鎖及びアンチセンス鎖を連結するループ領域を含む。
【0135】
本発明に従った自己相補性一本鎖siRNA分子ポリヌクレオチドは、ループ領域リンカーによって接続されたセンス部分とアンチセンス部分とを含む。好ましくは、ループ領域配列は、4〜30ヌクレオチド長、より好ましくは5〜15ヌクレオチド長、最も好ましくは12ヌクレオチド長である。最も特定の実施態様において、リンカー配列は、
【化1】

である。自己相補性一本鎖siRNAは、ヘアピンループを形成し、通常のdsRNAよりも安定である。加えて、自己相補性一本鎖siRNAは、ベクターからより簡単に作製される。
【0136】
アンチセンスRNAに類似して、siRNAは、核酸分解に対する耐性を与え、又は活性を亢進し、又は細胞分布を亢進し、又は細胞の取り込みを亢進するよう修飾することができ、このような修飾は、修飾されたヌクレオシド間連結、修飾された核酸塩基、修飾された糖及び/又はsiRNAの1つ以上の部分若しくは抱合体への化学結合からなり得る。ヌクレオチド配列は、これらのsiRNA設計則に従わないヌクレオチド配列と比較して、TARGET配列の改良された減少を与えるsiRNA設計則に従って選択される(これらの法則及び、siRNAの調製の例に関する論議については、WO2004/094636、及びUS2003/0198627が引用により本明細書により組み込まれている。)。
【0137】
また、本発明は、マスト細胞を安定化させることのできる、特にマスト細胞の脱顆粒を阻害することのできるポリヌクレオチドを発現することのできるDNA発現ベクターを含み、発現阻害剤として先に説明された組成物、及び該組成物を用いる方法にも関する。
【0138】
これらの組成物及び方法の特定の態様は、TARGETと選択的に相互作用することのできる細胞内結合タンパク質をコードするポリヌクレオチドの誘導された発現による、TARGETの発現の下方制御又は遮断に関する。細胞内結合タンパク質には、発現する細胞においてポリペプチドと選択的に相互作用することのできる又は結合することのできる、及びポリペプチドの機能を中和することのできる任意のタンパク質を含む。好ましくは、細胞内結合タンパク質は、配列番号20〜38からなる群から選択されるTARGETのエピトープに対する結合親和性を有する中和抗体又は中和抗体の断片である。
【0139】
この組成物の特定の実施態様は、アンチセンスRNA、アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)、配列番号20〜38からなる群から選択されるTARGETをコードするポリヌクレオチドを切断するリボザイム、及び配列番号20〜38からなる群から選択されるTARGETをコードするポリリボヌクレオチドの一部と十分に類似しており、それによりsiRNAが、TARGETポリリボヌクレオチドのTARGETポリペプチドへの翻訳に干渉する低分子干渉RNA(siRNA)からなる群から選択される発現阻害剤を含む。
【0140】
発現阻害剤を発現するポリヌクレオチド、又は細胞においてTARGETポリペプチドを発現するポリヌクレオチドは、ベクター内に特に含まれる。ポリ核酸は、核酸配列の発現を可能にするシグナルに作用可能に連結され、好ましくは、一旦ベクターが細胞に導入されるとアンチセンス核酸を発現するであろう組換えベクターコンストラクトを利用する細胞へと導入される。アデノウイルスベクターシステム、レトロウイルスベクターシステム、アデノ随伴ウイルスベクターシステム、レンチウイルスベクターシステム、単純ヘルペスウイルスベクターシステム、又はセンダイウイルスベクターシステムを含む種々のウイルスベースのシステムが利用可能であり、すべて、発現阻害剤についてのポリヌクレオチド配列、又は標的細胞におけるTARGETポリペプチドを発現するポリヌクレオチドを導入及び発現するために用いられ得る。
【0141】
特に、本発明の方法において用いられるウイルスベクターは、複製欠損である。このような複製欠損ベクターは通常、感染した細胞におけるウイルスの複製に必要な少なくとも1つの領域をパックするであろう。これらの領域は、当業者に公知の任意の技術によって、(全体において又は一部において)除去されるか又は非機能的にされるかのいずれかであることができる。これらの技術には、(複製に)必須の領域に対する1つ以上の塩基の完全な除去、置換、部分的な欠失又は付加を含む。このような技術は、遺伝子操作の技術を用いて又は突然変異原性剤を用いた処理によって、インビトロで(単離されたDNAに関して)又はインサイツで実施され得る。好ましくは、複製欠損ウイルスは、ウイルス粒子をカプシド形成するのに必要な前記複製欠損ウイルスのゲノムの配列を保有する。
【0142】
好ましい実施態様において、ウイルスエレメントは、アデノウイルス由来である。好ましくはビヒクルには、アデノウイルスカプシドにパッケージされたアデノウイルスベクター、又はその機能的部分、誘導体、及び/若しくは類似体を含む。また、アデノウイルス生物学は、分子レベルで比較的周知である。アデノウイルスベクターについての多くのツールが、開発されており及び開発され続けており、従って、アデノウイルスカプシドを、本発明のライブラリーにおいて組み込むのに好ましいビヒクルにする。アデノウイルスは、広範な種々の細胞を感染させることができる。しかしながら、異なるアデノウイルス血清型は、細胞に対する異なる優先性を有する。好ましい実施態様において、本発明のアデノウイルスカプシドが入ることのできる標的細胞集団を組み合わせかつ広げるために、ビヒクルには、少なくとも2つのアデノウイルスに由来するアデノウイルス線維タンパク質を含む。好ましいアデノウイルス線維タンパク質配列は、血清型17、45、及び51である。これらのキメラベクターの技術又は構築及び発現は、US 2003/0180258及びUS 2004/0071660に開示されており、引用により本明細書により組み込まれている。
【0143】
好ましい実施態様において、アデノウイルス由来の核酸には、アデノウイルス後期タンパク質又はその機能的部分、誘導体、及び/若しくは類似体をコードする核酸を含む。アデノウイルス後期タンパク質、例えば、アデノウイルス線維タンパク質は、好ましくは、ビヒクルをある細胞に向けるために、又は細胞へのビヒクルの高い送達を誘導するために用いられ得る。好ましくは、アデノウイルスに由来する核酸は、本質的にすべてのアデノウイルス後期タンパク質をコードし、アデノウイルスカプシド全体又はその機能的部分、類似体、及び/若しくは誘導体の形成を可能にする。好ましくは、アデノウイルスに由来する核酸には、アデノウイルスE2A又はその機能的部分、誘導体、及び/若しくは類似体をコードする核酸を含む。好ましくは、アデノウイルスに由来する核酸には、細胞におけるアデノウイルス由来核酸の複製を少なくとも一部容易にする、少なくとも1つのE4領域タンパク質又はその機能的部分、誘導体、及び/若しくは類似体をコードする核酸を含む。本願の実施例において用いられるアデノウイルスベクターは、本治療方法発明において有用なベクターの典型である。
【0144】
本発明のある実施態様は、レトロウイルスベクターシステムを用いる。レトロウイルスは、分裂中の細胞に感染する組み込みウイルスであり、前記ウイルスの構築は、当技術分野で公知である。レトロウイルスベクターは、MoMuLV(「モロニーマウス白血病ウイルス」)MSV(「モロニーマウス肉腫ウイルス」)、HaSV(「ハーベイ肉腫ウイルス」);SNV(「脾壊死ウイルス」);RSV(「ラウス肉腫ウイルス」)、及びフレンドウイルスなど、異なる種類のレトロウイルスから構築することができる。また、レンチウイルスベクターシステムも、本発明の実施において使用され得る。
【0145】
本発明の他の実施態様において、アデノ随伴ウイルス(「AAV」)が利用される。AAVウイルスは、安定したかつ部位特異的な様式で、感染した細胞のゲノムへと組み込む比較的小さなサイズのDNAウイルスである。AAVウイルスは、細胞の増殖、形態、又は分化に何ら影響を誘導することなく、広範な細胞に感染することができ、かつヒトの病態に関与するようには見えない。
【0146】
ベクター構築において、本発明のポリヌクレオチド剤は、1つ以上の調節領域に連結され得る。適切な調節領域又は領域類の選択は、当業者のレベル内で慣例のことである。調節領域にはプロモーターを含み、エンハンサー、サプレッサーなどを含み得る。
【0147】
本発明の発現ベクターにおいて用いられ得るプロモーターには、構成的プロモーター及び制御的(誘導性)プロモーターの両方を含む。プロモーターは、宿主に応じて原核生物性又は真核生物性であってよい。本発明の実施の有用な原核生物性(バクテリオファージを含む。)プロモーターには、lacプロモーター、lacZプロモーター、T3プロモーター、T7プロモーター、ラムダPrプロモーター、P1プロモーター、及びtrpプロモーターがある。本発明の実施に有用な真核生物性(ウイルス性を含む。)プロモーターには、遍在性プロモーター(例えば、HPRT、ビメンチン、アクチン、チューブリン)、治療遺伝子プロモーター(例えば、MDR型、CFTR、第VIII因子)、組織特異性を呈し、かつトランスジェニック動物において利用されている動物転写制御領域、例えば、マスト細胞において活性のあるキマーゼ遺伝子制御領域(Liaoらの文献((1997), Journal of Biological Chemistry, 272,: 2969-2976))、リンパ球系細胞において活性のある免疫グロブリン遺伝子制御領域(Grosschedlらの文献((1984) Cell 38:647-58);Adamesらの文献((1985) Nature 318:533-8);Alexanderらの文献((1987) Mol. Cell. Biol. 7:1436-44))、精巣細胞、乳房細胞、リンパ球系細胞、及びマスト細胞において活性のあるマウス乳房腫瘍ウイルス制御領域(Lederらの文献((1986) Cell 45:485-95))、並びに骨髄系細胞において活性のあるベータ-グロブリン遺伝子制御領域(Mogramらの文献((1985) Nature 315:338-40);Kolliasらの文献((1986) Cell 46:89-94))を含む組織特異的プロモーターを含む。
【0148】
本発明の実施において有用であり得る他のプロモーターには、分裂中の細胞において優先的に活性化されるプロモーター、刺激に応答するプロモーター(例えば、ステロイドホルモン受容体、レチノイン酸受容体)、テトラサイクリン調節性転写修飾因子、サイトメガロウイルス最初期、レトロウイルス末端反復配列、メタロチオネイン、SV-40、E1a、及びMLPプロモーターを含む。本発明の実施において使用され得るさらなるプロモーターには、マスト細胞又は他の脱顆粒細胞において活性のある及び/又は発現するプロモーターを含む。
【0149】
追加的なベクターシステムには、患者へのポリヌクレオチド剤の導入を容易にする非ウイルス性システムを含む。例えば、所望の配列をコードするDNAベクターは、リポフェクションによってインビボで導入することができる。リポソーム仲介性トランスフェクションで遭遇する困難を制限するよう設計された合成陽イオン性脂質は、マーカーをコードする遺伝子のインビボトランスフェクション用のリポソームを調製するために使用することができる(Felgnerらの文献((1987) Proc. Natl. Acad Sci. USA 84:7413-7);Mackeyらの文献((1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:8027-31);Ulmerらの文献((1993) Science 259:1745-8参照))。陽イオン性脂質の使用は、負に帯電した核酸の封入を促進し得、また、負に帯電した細胞膜との融合も促進し得る(Felgner及びRingoldの文献((1989) Nature 337:387-8))。核酸の転移に特に有用な脂質化合物及び組成物は、国際特許公報WO 95/18863及びWO 96/17823において、並びに米国特許第5,459,127号において説明されている。インビボでの特異的臓器へ外来性遺伝子を導入するためのリポフェクションの使用は、ある実際上の利点を有し、特定の細胞種類に対して配向するトランスフェクションは、細胞の異種性を有する組織、例えば、膵臓、肝臓、腎臓、及び脳において特に有利であろう。脂質は、ターゲティングの目的のために、他の分子に化学的と共役し得る。標的にされたペプチド、例えば、ホルモン若しくは神経伝達物質、及びタンパク質、例えば、抗体、又は非ペプチド分子は、リポソームと化学的に共役し得る。また、他の分子は、インビボでの核酸のトランスフェクションを容易にするのに有用であり、例えば、陽イオン性オリゴペプチド(例えば、国際特許公報WO95/21931)、DNA結合タンパク質に由来するペプチド(例えば、国際特許公報WO96/25508)、又は陽イオン性ポリマー(例えば、国際特許公報WO95/21931)である。
【0150】
また、むき出しのDNAプラスミドとしてインビボでDNAベクターを導入することも可能である(米国特許第5,693,622号、第5,589,466号、及び第5,580,859号参照)。治療目的のためのむき出しのDNAベクターは、所望の宿主細胞へと、当技術分野で公知の方法、例えば、トランスフェクション、電気穿孔法、マイクロインジェクション、形質導入、細胞融合、DEAEデキストラン、リン酸カルシウム沈殿、遺伝子銃の使用、又はDNAベクター輸送体の使用によって導入することができる(例えば、Wilsonらの文献((1992) J. Biol. Chem. 267:963-7);Wu及びWuの文献((1988) J. Biol. Chem. 263:14621-4);Hartmutらの文献(1990年3月15日に出願されたカナダ国特許出願第2,012,311号;Williamsらの文献((1991). Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:2726-30)参照)。リポーター仲介性DNA送達アプローチも使用することができる(Curielらの文献((1992) Hum. Gene Ther. 3:147-54);Wu及びWuの文献((1987) J. Biol. Chem. 262:4429-32))。
【0151】
また、本発明は、TARGET阻害剤として同定された1つ以上の有効量の化合物、及び/又は先に説明された発現阻害剤を含む、生物学的に適合性のあるマスト細胞脱顆粒阻害組成物も提供する。
【0152】
生物学的に適合性のある組成物は、本発明の化合物、ポリヌクレオチド、ベクター、及び抗体が、活性形態で、例えば、生物活性を有効にできる形態で維持される、固体、液体、ゲル、又は他の形態であり得る組成物である。例えば、本発明の化合物は、TARGETに及ぼす逆性のアゴニスト活性又はアンタゴニスト活性を有するであろうし;核酸は、メッセージを複製、翻訳でき、又はTARGETの相補的mRNAとハイブリダイズすることができるであろうし;ベクターは、標的細胞をトランスフェクトして、先に説明したアンチセンス、抗体、リボザイム、又はsiRNAを発現することができるであろうし;抗体は、TARGETポリペプチドドメインを結合するであろう。
【0153】
特定の生物学的に適合性のある組成物は、例えば、塩イオンを含む、トリス緩衝液、リン酸緩衝液、又はHEPES緩衝液を用いて緩衝する水溶液である。通常、塩イオン濃度は、生理学的レベルに類似しているであろう。生物学的に適合性のある溶液には、安定化剤及び保存料を含み得る。より好ましい実施態様において、生物適合性のある組成物は、医薬として許容し得る組成物である。このような組成物は、局所的、経口、非経口、鼻内、皮下、及び眼内の経路による投与のために製剤することができる。非経口投与は、静脈内注射、筋肉内注射、動脈内注射又は注入の技術を含む。組成物は、標準的な周知の非毒性の生理学的に許容し得る担体、アジュバント、及びビヒクルを所望の通り含む薬用量単位製剤において非経口的に投与され得る。
【0154】
本組成物発明の特定の実施態様は、先に説明した治療有効量の発現阻害剤を、医薬として許容し得る担体との混合物で含む医薬組成物である。別の特定の実施態様は、マスト細胞の脱顆粒を包含する疾患若しくは容態の、又は容態に対する易罹患性の治療又は予防のための医薬組成物であって、有効量のTARGETアンタゴニスト若しくは逆性アゴニスト、その医薬として許容し得る塩、水和物、溶媒和物、又はプロドラッグを、医薬として許容し得る担体との混合物で含む前記医薬組成物である。さらなる特定の実施態様は、炎症を包含する疾患若しくは容態の、又は容態に対する易罹患性の治療又は予防のための医薬組成物であって、有効量のTARGETアンタゴニスト若しくは逆性アゴニスト、その医薬として許容し得る塩、水和物、溶媒和物、又はプロドラッグを、医薬として許容し得る担体との混合物で含む前記医薬組成物である。
【0155】
経口投与のための医薬組成物は、経口投与に適した薬用量で、当技術分野で周知の医薬として許容し得る担体を用いて製剤することができる。このような担体によって医薬組成物を錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル剤、液剤、ゲル、シロップ剤、スラリー、懸濁剤、及びこれらの類するものとして、患者による摂取のために製剤することができる。経口使用のための医薬組成物は、活性化合物を固体賦形剤と組み合わせること、結果として生じる混合物を任意に粉砕すること、及び所望の場合適切な徐剤を添加した後、顆粒混合物を加工して、錠剤又は糖衣錠中心を得ることによって調製することができる。適切な賦形剤は、ラクトース、スクロース、マンニトール、又はソルビトールを含めた糖類;トウモロコシ、コムギ、コメ、ジャガイモ、又は他の植物に由来するデンプン;メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、又はカルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース;アラビアゴム及びトラガカントゴムを含めたゴム;並びに、ゼラチン及びコラーゲンなどのタンパク質など、炭水化物又はタンパク質充填剤である。所望の場合、架橋したポリビニルピロリドン、アガー、アルギン酸、又はアルギン酸ナトリウムなどのその塩などの崩壊剤又は可溶化剤を添加してよい。糖衣錠中心は、濃縮糖溶液など、適切なコーティングとともに用いてよく、前記コーティングはまた、アラビアゴム、滑石、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール及び/又は二酸化チタン、ラッカー溶液、及び適切な有機溶媒又は溶媒混合物も含み得る。製品の同定のために、又は活性化合物の量、すなわち薬用量を特徴付けるために、染料又は色素を錠剤又は糖衣錠コーティングに添加してよい。
【0156】
経口で使用することのできる医薬調製物には、ゼラチンでできた押し込み型(push-fit)カプセル、並びにゼラチン及びグリセロール又はソルビトールなどのコーティングでできた軟質密封カプセルを含む。押し込み型カプセルは、ラクトース又はデンプンなどの充填剤又は結合剤、滑石又はステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、及び任意に安定化剤と混合した活性成分を含むことができる。軟質カプセルにおいて、活性化合物は、脂肪油、液体、又は安定化剤を有する若しくは有さない液体ポリエチレングリコールなどの適切な液体において溶解又は懸濁され得る。
【0157】
好ましい滅菌済みの注射可能な調製物は、非毒性の非経口的に許容し得る溶媒又は希釈剤における溶液又は懸濁液であることができる。医薬として許容し得る担体の例は、塩類溶液、緩衝塩類溶液、等張性塩類溶液(例えば、リン酸一ナトリウム若しくはリン酸二ナトリウム、ナトリウム、カリウム;塩化カルシウム若しくは塩化マグネシウム、又はこのような塩の混合物)、リンゲル溶液、デキストロース、水、滅菌水、グリセロール、エタノール、及びそれらの組み合わせであり、1,3-ブタンジオール及び滅菌済み固定油が、溶媒又は懸濁媒体として簡便に採用される。合成モノグリセリド又は合成ジグリセリドを含む刺激の強くない任意の固定油を採用することができる。また、オレイン酸などの脂肪酸も、注射可能物の調製における使用を提供する。
【0158】
本発明の作用物質又は組成物は、ポリマー担体、生分解性マトリックス若しくは生物模倣型マトリックスを用いた投与のために組み合され得、あるいは前記ポリマー、生分解性マトリックス若しくは生物模倣型マトリックスにおいて、又は足場において移入され得る。担体、マトリックス、又は足場は、組成物が組み込まれることができるであろう、かつ発現することができるであろう任意の材料であり得、細胞の添加と又は細胞の存在下で適合性であろう。生分解性材料の例には、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸(PLA)、ヒアルロン酸、腸線縫合材料、ゼラチン、セルロース、ニトロセルロース、コラーゲン、アルブミン、フィブリン、アルギン酸塩、綿、又は他の天然の生分解性材料を含むが、これらに限定されない。投与又は移入の前に、例えば、酸化エチレンによる処理によって又はガンマ照射若しくは電子線を用いた照射によって、マトリックス又は足場材料を滅菌することが好ましい。加えて、多くの他の材料が、下記を含むがこれらに限定されない足場又はフレームワーク構造を形成するのに用いられ得る:ナイロン(ポリアミド)、ダクロン(ポリエステル)、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリアクリラート、ポリビニル化合物(例えば、ポリビニルクロリド)、ポリカーボネート(PVC)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE、テフロン)、サーマノックス(thermanox)(TPX)、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリール酸(PGA)、及びポリ乳酸‐グリコール酸(PLGA)などのヒドロキシ酸のポリマー、ポリオルトエステル類、ポリ無水物類、ポリホスファゼン類、及び種々のポリヒドロキシアルカノアート類、並びにこれらの組み合わせ。適切なマトリックスには、ポリマーメッシュ若しくはポリマースポンジ、及びポリマーヒドロゲルを含む。特定の実施態様において、マトリックスは、経時的に、1年未満の期間、より特定には6ヶ月未満、最も特定には、2〜10週間にわたって生分解性である。ポリマー組成物及び製造方法は、分解速度を特定するために用いることができる。例えば、増大する量のポリ乳酸をポリグリコール酸と混合すると、分解時間が低下する。使用することのできるポリグリコール酸のメッシュは、例えば、外科的供給企業(例えば、Ethicon, N.J.)から商業的に得ることができる。一般に、これらのポリマーは、水、緩衝塩溶液、又は水性アルコール溶液などの、帯電した側鎖基又はその一価のイオン塩を有する水溶液において少なくとも部分的に可溶性である。
【0159】
また、組成物媒体は、ヒドロゲルでもあり得、これは、薬剤吸収スポンジとして作用することのできる親水性ポリアクリル酸ポリマーなど、任意の生体適合性、又は非細胞毒性のホモポリマー若しくはヘテロポリマーから調製される。これらのうちの1つもの、特にエチレン及び/又は酸化プロピレンから得られるものは、市販されている。ヒドロゲルは、例えば外科的介入の間に治療されるべき組織の表面に直接配置することができる。
【0160】
本発明の医薬組成物の実施態様は、本発明のポリヌクレオチド阻害剤をコードする複製欠損組換えウイルスベクターと、ポロキサマーなどのトランスフェクションエンハンサーとを含む。ポロキサマーの例は、ポロキサマー407であり、市販されており(BASF, Parsippany, N.J.)、非毒性の生体適合性ポリオールである。組換えウイルスを含浸したポロキサマーは、例えば外科的介入の間に治療されるべき組織の表面に直接配置してよい。ポロキサマーは、より低い粘度を有しながらも、ヒドロゲルと本質的に同じ利点を有する。
【0161】
また、活性のある発現阻害剤は、例えば、界面重合化によって調製されたマイクロカプセル、例えば、ヒドロキシメチルセルロース若しくはゼラチンマイクロカプセル及びポリ-(メチルメタクリラート)マイクロカプセルにおいてそれぞれ、コロイド状薬剤送達システム(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、ミクロエマルション、ナノ粒子、及びナノカプセル)において、又はマクロエマルションにおいて封入され得る。このような技術は、Remingtonの文献「医薬科学(Pharmaceutical Sciences)」((1980) 第16版, Osol, A.編)に開示されている。
【0162】
徐放性調製物が調製され得る。徐放性調製物の適切な例には、マトリックスが、成形された物品の形態にある、抗体を含む固体疎水性ポリマーの半透性マトリックス、例えば、フィルム又はマイクロカプセルを含む。徐放性マトリックスの例には、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリラート)、又はポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L-グルタミン酸とガンマ-エチル-L-グルタマートとのコポリマー、非分解性エチレン-ビニルアセタート、LUPRON DEPOT(商標)などの分解性乳酸-グリコール酸コポリマー(乳酸-グリコール酸コポリマー及び酢酸ロイプロリドから構成される注射可能なミクロスフェア)、及びポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸を含む。エチレン-ビニルアセタート及び乳酸-グリコール酸などのポリマーによって100日間超にわたる分子の放出が可能となる一方で、特定のヒドロゲルは、より短い期間タンパク質を放出する。封入された抗体が、長時間にわたって身体にとどまる場合、前記抗体は、37℃での湿気に対する曝露の結果として変性又は凝集し得、結果的に、生物学的活性の損失及び免疫原性の起こり得る変化を生じる。包含される機序に応じて安定化のために合理的な戦略を考案することができる。例えば、凝集機序が、チオ‐ジスルフィド交換を通じた分子間S-S結合形成であると発見される場合、安定化は、スルフヒドリル残基を修飾し、酸性溶液から凍結乾燥し、水分含有量を制御し、適切な添加剤を用い、及び具体的なポリマーマトリックス組成物を展開することによって達成され得る。
【0163】
先に規定したように、治療効果のある用量は、症状又は容態を寛解するタンパク質、ポリヌクレオチド、ペプチド、又はその抗体、アゴニスト、若しくはアンタゴニストの量を意味する。このような化合物の治療有効性及び毒性は、細胞培養又は実験動物における標準的な医薬手順、例えば、ED50(集団の50%において治療上有効である用量)及びLD50(集団の50%に対する致死的用量)によって決定することができる。治療効果に対して毒性である用量比は、治療指数であり、比LD50/ED50として表すことができる。高い治療指数を示す医薬組成物が好ましい。細胞培養アッセイ及び動物研究から得られたデータは、ヒトの使用のための薬用量範囲を処方する上で用いられる。このような化合物の薬用量は好ましくは、毒性をほとんど又は全く有さないED50を含む循環濃度の範囲内に収まる。薬用量は、採用される剤形、患者の感受性、及び投与の経路に応じて、この範囲内で変動する。
【0164】
任意の化合物について、治療有効用量は、細胞培養アッセイにおいて又は動物モデル、通常、マウス、ウサギ、イヌ、又はブタにおいてのいずれかで初期的に概算することができる。また、動物モデルは、所望の濃度範囲及び投与経路を達成するために用いられる。次に、このような情報は、ヒトにおける投与に有用な用量及び経路を決定するために用いることができる。実際の薬用量は、治療されるべき患者を考慮して個々の医師によって選択される。薬用量及び投与は、十分なレベルの活性部分を提供するために、又は所望の効果を維持するために調整される。考慮され得る追加的な因子には、患者の疾患状態の重症度、齢、体重、及び性別;食事、所望の治療期間、投与方法、投与の回数及び頻度、薬剤の組み合わせ、反応の感受性、及び治療法に対する耐性/応答を含む。長時間作用性医薬組成物は、特定の製剤の半減期及びクリアランス速度に応じて、3〜4日ごとに、毎週、又は2週間に1回投与され得る。
【0165】
本発明に従った医薬組成物は、種々の方法によって対象に投与され得る。前記医薬組成物は、標的組織に直接添加され得、陽イオン性脂質と複合体形成し得、リポソーム内に封入され得、又は当技術分野で公知の他の方法によって標的細胞に送達され得る。所望の組織への局在性投与は、直接注射、経皮的吸収、カテーテル、注入ポンプ、又はステントによって実施され得る。DNA、DNA/ビヒクル複合体、又は組換えウイルス粒子は、治療部位に局所投与される。送達の代替的な経路には、静脈内注射、筋肉内注射、皮下注射、エアロゾル吸入、経口送達(錠剤又は丸剤の形態)、局所送達、全身送達、眼内送達、腹腔内送達、及び/又はくも膜下腔内送達を含むが、これらに限定されない。リボザイム送達及び投与の例は、SullivanらのWO94/02595において提供される。
【0166】
本発明に従った抗体は、急速投与として1回送達され得、経時的に注入され得、又は急速投与として投与され得かつ経時的に注入され得る。当業者は、タンパク質に対するよりもむしろポリヌクレオチドに対する異なる製剤を採用し得る。同様に、ポリヌクレオチド又はポリペプチドの送達は、特定の細胞、容態、位置などに特異的であろう。
【0167】
先に論議されるように、組換えウイルスは、本発明において有用なポリヌクレオチド剤をコードするDNAを導入するために用いられ得る。本発明に従った組換えウイルスは一般的に、約104〜約1014pfuの用量の形態で製剤及び投与される。AAV及びアデノウイルスの場合、約106〜約1011pfuの用量が好ましくは用いられる。用語pfu(「プラーク形成単位」)は、ウイルス粒子の懸濁液の感染力に相応しており、適切な細胞培養物を感染させて、形成されるプラーク数を測定することによって決定される。ウイルス溶液のpfu力価を決定するための技術は、従来技術において十分に実証されている。
【0168】
一態様において、本発明は、マスト細胞の脱顆粒を包含する障害を予防及び/又は治療する方法を提供し、該方法は、対象に治療有効量の本明細書に開示された作用物質を投与することを含む。特定の実施態様において、作用物質は、発現阻害剤及び抗体から選択される。特定の実施態様において、障害は、喘息、アレルギー性疾患(例えば、アレルギー、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹、血管浮腫、食物アレルギー、アレルギー性結膜炎、アレルギー反応から結果として生じるアナフィラキシー)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、I型過敏反応、多発性硬化症、関節リウマチ、寄生虫感染、湿疹、及び粥状硬化から選択される。
【0169】
さらなる態様において、本発明は、炎症を特徴とする疾患を予防及び/又は治療する方法を提供し、該方法は、対象に、治療有効量の本明細書に開示された作用物質を投与することを含む。特定の実施態様において、作用物質は、発現阻害剤及び抗体から選択される。特定の実施態様において、疾患は、アレルギー性気道疾患(例えば、喘息、鼻炎)、自己免疫疾患、移植片拒絶反応、クローン病、関節リウマチ、乾癬、若年性特発性関節炎、大腸炎、及び炎症性腸疾患から選択される。
【0170】
本発明のさらなる態様は、マスト細胞の活性化を包含する疾患を治療又は予防する方法であって、該対象に治療有効量の本明細書に開示された作用物質を投与することを含む前記方法に関する。特定の実施態様において、作用物質は、発現阻害剤及び抗体から選択される。特定の実施態様において、障害は、喘息、アレルギー性疾患(例えば、アレルギー、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹、血管浮腫、食物アレルギー、アレルギー性結膜炎、アレルギー反応から結果として生じるアナフィラキシー)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、I型過敏反応、多発性硬化症、関節リウマチ、寄生虫感染、湿疹、及び粥状硬化から選択される。
【0171】
また、本発明は、マスト細胞の脱顆粒を包含する疾患を治療又は予防するための医薬品の調製のための先に説明した作用物質の使用にも関する。特定の実施態様において、疾患は、炎症を特徴とする。本発明の特定の実施態様において、疾患は、喘息、アレルギー性疾患(例えば、アレルギー、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹、血管浮腫、食物アレルギー、アレルギー性結膜炎、アレルギー反応から結果として生じるアナフィラキシー)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、I型過敏反応、多発性硬化症、関節リウマチ、寄生虫感染、湿疹、及び粥状硬化から選択される。特定の実施態様において、疾患は、アレルギー性気道疾患(例えば、喘息、鼻炎)、自己免疫疾患、移植片拒絶反応、クローン病、関節リウマチ、乾癬、若年性特発性関節炎、大腸炎、及び炎症性腸疾患から選択される。
【0172】
また、本発明は、マスト細胞の脱顆粒を包含する疾患を治療及び/又は予防する方法も提供し、該方法は、マスト細胞の脱顆粒を包含する疾患に罹患し又はその疑いのある対象に、本明細書に説明した医薬組成物又は化合物、特に、本明細書で同定されたTARGETの発現又は活性を阻害する治療有効量の作用物質を投与することを含む。一実施態様において、疾患は、炎症を特徴とする。特定の実施態様において、障害は、喘息、アレルギー性疾患(例えば、アレルギー、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹、血管浮腫、食物アレルギー、アレルギー性結膜炎、アレルギー反応から結果として生じるアナフィラキシー)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、I型過敏反応、多発性硬化症、関節リウマチ、寄生虫感染、湿疹、及び粥状硬化から選択される。特定の実施態様において、疾患は、アレルギー性気道疾患(例えば、喘息、鼻炎)、自己免疫疾患、移植片拒絶反応、クローン病、関節リウマチ、乾癬、若年性特発性関節炎、大腸炎、及び炎症性腸疾患から選択される。
【0173】
また、本発明は、マスト細胞の脱顆粒を包含する疾患の治療及び/又は予防における使用のための、先に説明した作用物質又は医薬組成物に関する。特定の実施態様において、疾患は、炎症を特徴とする。特定の実施態様において、障害は、喘息、アレルギー性疾患(例えば、アレルギー、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹、血管浮腫、食物アレルギー、アレルギー性結膜炎、アレルギー反応から結果として生じるアナフィラキシー)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、I型過敏反応、多発性硬化症、関節リウマチ、寄生虫感染、湿疹、及び粥状硬化から選択される。特定の実施態様において、疾患は、アレルギー性気道疾患(例えば、喘息、鼻炎)、自己免疫疾患、移植片拒絶反応、クローン病、関節リウマチ、乾癬、若年性特発性関節炎、大腸炎、及び炎症性腸疾患から選択される。
【0174】
本発明の作用物質又は医薬組成物の対象患者への投与には、自己投与及び別の人間による投与の両方を含む。患者は、既存の疾患若しくは医学的容態のための治療の必要にあり得、又はマスト細胞の脱顆粒を特徴とする疾患及び医学的容態についてのリスクを予防又は低下させるために予防的処置を望み得る。本発明の作用物質は、対象患者へ経口的に、経皮的に、吸入、注射を介して、鼻内に、直腸内に、又は徐放性製剤を介して送達され得る。
【0175】
本発明のなおも別の態様は、マスト細胞の脱顆粒を包含する病理学的容態を診断する方法であって、生物学的試料における配列番号20〜38からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドの量を決定すること、及び前記量を健常対象のポリペプチドの量と比較することを含む前記方法に関し、この中で、健常対象と比較したポリペプチドの量の増大は、病理学的容態の存在を示す。特定の実施態様において、障害は、喘息、アレルギー性疾患(例えば、アレルギー、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹、血管浮腫、食物アレルギー、アレルギー性結膜炎、アレルギー反応から結果として生じるアナフィラキシー)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、I型過敏反応、多発性硬化症、関節リウマチ、寄生虫感染、湿疹、及び粥状硬化から選択される。一実施態様において、疾患は炎症を特徴とする。特定の実施態様において、障害は、アレルギー性気道疾患(例えば、喘息、鼻炎)、自己免疫疾患、移植片拒絶反応、クローン病、関節リウマチ、乾癬、若年性特発性関節炎、大腸炎、及び炎症性腸疾患から選択される。
【0176】
本発明のなおも別の態様は、マスト細胞の脱顆粒を包含する病理学的容態を診断する方法であって、生物学的試料における配列番号20〜38からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドの活性を決定すること、及び前記活性を健常対象におけるポリペプチドの活性と比較することを含む前記方法に関し、この中で、健常対象と比較したポリペプチドの活性の増大は、病理学的容態の存在を示す。特定の実施態様において、障害は、喘息、アレルギー性疾患(例えば、アレルギー、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹、血管浮腫、食物アレルギー、アレルギー性結膜炎、アレルギー反応から結果として生じるアナフィラキシー)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、I型過敏反応、多発性硬化症、関節リウマチ、寄生虫感染、湿疹、及び粥状硬化から選択される。一実施態様において、疾患は炎症を特徴とする。さらなる実施態様において、疾患は、アレルギー性気道疾患(例えば、喘息、鼻炎)、自己免疫疾患、移植片拒絶反応、クローン病、関節リウマチ、乾癬、若年性特発性関節炎、大腸炎、及び炎症性腸疾患から選択される。
【0177】
本発明のなおも別の態様は、マスト細胞の脱顆粒を包含する病理学的容態を診断する方法であって、対象のゲノムDNA内に配列番号1〜19の遺伝子の少なくとも1つの核酸配列を決定すること;前記配列を、データベース及び/又は健常対象から得られた核酸配列と比較すること;並びに本明細書に開示された病理学的容態の発症又は蔓延と関連した任意の差を同定することを含む前記方法に関する。特定の実施態様において、障害は、喘息、アレルギー性疾患(例えば、アレルギー、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹、血管浮腫、食物アレルギー、アレルギー性結膜炎、アレルギー反応から結果として生じるアナフィラキシー)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、I型過敏反応、多発性硬化症、関節リウマチ、寄生虫感染、湿疹、及び粥状硬化から選択される。一実施態様において、疾患は炎症を特徴とする。さらなる実施態様において、疾患は、アレルギー性気道疾患(例えば、喘息、鼻炎)、自己免疫疾患、移植片拒絶反応、クローン病、関節リウマチ、乾癬、若年性特発性関節炎、大腸炎、及び炎症性腸疾患から選択される。
【0178】
本明細書に説明される方法において採用される本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドは、溶液中で遊離し得、固相支持体に固定され得、細胞表面に支持され得、又は細胞内に配置され得る。前記方法を実施するために、本発明のポリペプチド又は化合物のいずれかを固定化して、ポリペプチドの非複合体形態から複合体の分離を容易にすること、及びアッセイの自動化を適応させることが可能である。本発明のポリペプチドと化合物との相互作用(例えば、結合)は、反応体を含むのに適した任意の容器において達成することができる。このような容器の例には、マイクロタイタープレート、試験管、及び微量遠心管を含む。一実施態様において、ポリペプチドがマトリックスに結合できるドメインを付加する融合タンパク質を提供することができる。例えば、本発明のポリペプチドは、「His」タグ付けすることができ、その後、Ni‐NTAマイクロタイタープレートに吸着させることができるか、又は本発明のポリペプチドとのProtA融合体をIgGに吸着させることができ、これが次に細胞溶解物(例えば、(35)S標識済み)及び候補化合物と組み合わさり、混合物を複合体形成に好ましい条件下で(例えば、塩及びpHについての生理学的条件で)インキュベートされる。インキュベーション後、プレートを洗浄して、任意の結合していない標識を除去し、マトリックスを固定化する。放射能の量は、直接的に、又は複合体の解離後に上清中で、決定することができる。あるいは、複合体は、マトリックスから解離され、SDS‐PAGEによって分離することができ、本発明のタンパク質に対して結合しているタンパク質のレベルを、標準的な電気泳動技術を用いてゲルから定量する。
【0179】
また、マトリックス上にタンパク質を固定化する他の技術は、化合物を同定する方法において用いることができる。例えば、本発明のポリペプチド又は化合物は、ビオチン及びストレプトアビジンの抱合を利用して固定化することができる。本発明のビオチン化タンパク質分子は、当技術分野で周知の技術を用いてビオチン‐NHS(N-ヒドロキシ-スクシンイミド)から調製することができ、ストレプトアビジンでコーティングした96ウェルプレート(Pierce Chemical)のウェルにおいて固定化することができる。あるいは、本発明のポリペプチドと反応するが、化合物に対するポリペプチドの結合に干渉しない抗体は、プレートのウェルへと誘導体化することができ、本発明のポリペプチドは、抗体抱合によってウェルに捕捉することができる。先に説明したように、標識化した候補化合物の調製物を、本発明のポリペプチドの存在するプレートのウェルにおいてインキュベートし、ウェルに捕捉された複合体の量を定量化することができる。
【0180】
TARGETポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、配列番号1〜19として同定される。本発明者らは、本明細書に、これらの遺伝子を標的とするAd-siRNAを用いた哺乳類細胞のトランスフェクションが、ヒト初代マスト細胞の機能的活性を低下させることを示している。
【0181】
本明細書の参考文献の引用は、それらが本発明に対する先行技術であるということの承認として解釈されるべきではない。
【0182】
本発明は、以下の図及び実施例においてさらに説明される。
【実施例】
【0183】
(実験項)
(実施例1:臍帯血からのヒトマスト細胞の培養)
凍結した臍帯血単核細胞(CBMC)のバイアル(108個/バイアル)を、該細胞(Cambrex又はAllCellsから購入)とともに提供されたプロトコールに従って解凍する。細胞を37℃、5%CO2において、完全RPMI(500mL瓶のRPMI1640(InVitrogen)あたりに熱失活済みウシ胎児血清(ICN Biomedicals)(50mL);MEM非必須アミノ酸(InVitrogen)(5mL);L-グルタミン(200mM、100×)(5mL)(InVitrogen);ペニシリン/ストレプトマイシン(10000U:μg/mL)(5mL)(InVitrogen);ゲンタマイシン(10mg/mL)(0.5mL)(InVitrogen);2-メルカプトエタノール(0.5mL)(InVitrogen)を添加;以下のサイトカインを添加した:ヒト幹細胞因子(100ng/mL終濃度)(Peprotech);ヒトIL‐6(50ng/mL終濃度)(Peprotech);ヒトIL‐10(10ng/mL終濃度)(Peprotech))において増殖させる。サイトカインを有する培地は4℃で2週間まで保存され得る。
【0184】
典型的には、あらかじめ加温しておいた完全RPMI(サイトカイン類SCF、IL‐6、IL‐10を含む。)において細胞を1週間に1回通過させる。細胞を計数するために、Coulterカウンタバイアル(Beckman Coulter)において、50μLの細胞懸濁液を50μLの4%パラホルムアルデヒド溶液(PFA、4%)(Sigma)と混合することによって、一定分量の細胞を固定する。細胞を10mLのIsoton(Beckman Coulter)においてCoulter Counterにより、供給元によって推奨されるプロトコール及び以下の設定を用いて計数する:6μm超、希釈係数200×。細胞は各週この計数に基づいた1×106個/mLで培養において維持される。細胞を通過させるために、細胞を50mLのGreinerチューブ中に置き、次に、Eppendorf遠心分離機5810Rにおいて1000rpmで10分間スピンさせる。上清を廃棄し、細胞を、サイトカインを含む新鮮培地に再懸濁する。細胞を37℃、5%CO2でインキュベートする。典型的には、4〜10mLの容積の培養物をT25フラスコにおいて、10〜25mLをT75フラスコにおいて、及び25〜100mLをT175フラスコにおいて増殖させる。
【0185】
細胞を、培養の6〜12週間後、好ましくは8週間後にマスト細胞活性化実験に用いた。典型的には、マスト細胞の活性化の3〜8日前(好ましくは6日前)に、IgEを培養物に0.5〜5μg/mL(好ましくは2μg/mL;Biodesign)の終濃度で添加し、hIL-4を2〜25ng/mLの終濃度(好ましくは10ng/mL;Peprotech)で添加した。アデノウイルス感染を本実験で実施する場合、IgE及びhIL-4の添加は、ウイルスの添加と同日に実施してよいか又は実施しなくてよい。
【0186】
(実施例2:マスト細胞の特徴付け)
単核細胞の混合物のマスト細胞への成熟をモニターするために、典型的には培養の6〜12週間後に、トルイジンブルー染色を実施する。培養物の試料(200μL)をCytofunnel(ThermoShandon)に加え、製造元の説明書に従って、Cytospin4(Thermoshandon)において700rpmで7分間対象のガラスへとスピンする。その後、スライドを、100〜500μLの染色溶液をトルイジンブルー溶液(100mLの50%EthOH(Riedel-de Haen)含有水に溶解した0.2グラムのトルイジンブルーO(Sigma)及び1.92gのクエン酸一水和物(Calbiochem))とともに、室温(RT)でおよそ10分間染色する。スライドを、過剰量の鉱質除去した水を有する容器へと注意深く浸漬することによって1回洗浄する。次に、スライドは、細胞を脱水する一連の液浴に進む;エタノール70%浴、5分間;エタノール100%浴、5分間;キシレン浴、5分間。1滴のEukitt(O. Kindler GmbH & CO)をスライド上に添加し、カバーガラスで覆った。画像を高解像度顕微鏡(Zeiss, Axioplan 2撮像, 630倍)で撮影する。細胞が明確に顆粒である場合にのみ、前記細胞をさらなる特徴づけのために用いた。
【0187】
次に、細胞は、FACS分析によってFcεRI及びc‐kit(すなわち、SCF受容体)の両受容体の発現についてさらに特徴づけられ得る。それゆえ、一定分量の細胞(1mL〜106)を2μg/mLのIgE(精製済みヒトミエローマIgE Biodesign)のありで/なしで(o/n)インキュベートし、細胞をFACSチューブ(5mLポリスチレンFalconチューブ、Becton Dickson)に回収し、1500rpmで5分間スピンし(Eppendorf, 5810R)、0.5mLの洗浄緩衝液(5%BSA(Sigma)含有PBS(InVitrogen))で1回洗浄した後、細胞を1500rpmで5分間スピンさせる。一定分量(0.1mL)を1:20に希釈した抗体(FITC抗ヒトIgE(イプシロン鎖、DAKO、APC抗ヒトCD117、BD、及びアイソタイプ対照))とともに氷上で30分間インキュベートする。細胞を0.5mLの洗浄緩衝液で2回洗浄する。細胞を1%パラホルムアルデヒド含有250μL洗浄緩衝液に取る。試料を、Becton Dickinson製FACSCaliburを用いる標準的なFACS分析によって分析する。図1に示した結果は、CD117(c‐kit)及びFcイプシロン受容体Iに対するマスト細胞の陽性を示す。
【0188】
(実施例3:アデノウイルスによるHMCの形質導入)
臍帯血由来のヒト培養マスト細胞は、実施例1及び実施例2において説明されるように、6〜12週間の培養後に用い得る。典型的には、培養物中の細胞の90%超は、本明細書で説明されるような培養後にマスト細胞表現型を有する。マスト細胞(96ウェルプレートにおいて1ウェルあたり75,000個で蒔種)を感染効率1000〜2000でアデノウイルスAd5C20Att01/A010800-AcGFP及びAd5C20Att01/A010800-空で感染させる。感染3日後、細胞をFACSチューブに回収し、実施例2にあるような洗浄緩衝液を用いて1回洗浄し、Becton Dickinson製FACSCaliburを用いる蛍光タンパク質発現についての標準的なFACS分析によって分析した。Ad5C20Att01/A010800-AcGFPに感染した試料を、ネガティブコントロール試料Ad5C20Att01/A010800-空と比較する。図2に示す結果は、細胞1個あたり2000ウイルス粒子を用いて、ヒトマスト細胞が、カプシドC20を有するアデノウイルスベクターによって効率よく形質導入できることを明確に示す、58±11%(n=19)AcGFP陽性細胞。
【0189】
(実施例4:脱顆粒アッセイ(ヒスタミン))
ヒトマスト細胞によって産生されたメディエーターは、3つのカテゴリーに古典的に分類される:(1)あらかじめ形成されたメディエーター、(2)新たに合成された脂質メディエーター、及び(3)サイトカイン。あらかじめ形成されたメディエーターの放出に及ぼす効果を研究するために、典型的にはヒスタミンアッセイは、抗IgE刺激など、マスト細胞の刺激の際に実施される。例えば、放出されたヒスタミンレベルを決定するために、成熟したヒトマスト細胞培養物(例えば、実施例1参照)をIgE(2μg/mL)及びIL‐4(10ng/mL)で6日間刺激する。次に、1500ng/mLの濃度で抗IgE抗体を含み、37℃であらかじめ加温しておいた完全RPMI(SCF、IL‐6及びIL‐10を含む。)を用いて細胞を刺激し又は偽刺激する(無添加)。細胞を37℃、5%CO2で1時間インキュベートした後、試料の上清を回収する(50μL)。残りの細胞を0.5%トリトンX‐100溶液を用いて溶解し、上清中に存在するヒスタミン及び残りの細胞を測定した。ヒスタミンレベルを決定し、ヒスタミンの放出を以下の等式を用いて算出した:放出したヒスタミンの%=上清中のヒスタミン/細胞中に存在する総ヒスタミン(細胞+上清)×100%。
【0190】
ヒスタミンの検出のために、Cisbio製HTRFヒスタミンアッセイを製造元の推奨に従って実施した。アッセイは、アシル化及び検出の2工程プロトコールを有する。アシル化及び検出は両方とも、単一の384低容積プレートにおいて実施することができる。HTRF(均一時間分解蛍光(homogeneous time resolved fluorescence))は、TR‐FRET(時間分解蛍光共鳴エネルギー転移)化学に基づいた技術である。HTRFシグナルは、蛍光比を算出して化合物の干渉及び試料の消光を補償するために用いられる2つの異なる波長(620nm及び665nm)で検出される。
【0191】
HTRF比を等式:(665nm/620nm)×10000を用いて算出する。デルタFは、日ごとのデータの比較に用い、アッセイ間の再現性を大きく改良する。ネガティブコントロール(抗IgEなし)は、内部アッセイ対照として用いた。算出は、以下の式に従って実施する:DFP(ΔF%):(標準物質又は試料HTRF比−HTRF比ネガティブコントロール)/(HTRF比ネガティブコントロール)×100。
【0192】
HTRFアッセイを用いて、マスト細胞のshRNAの発現を仲介する4224の異なる組換えアデノウイルスの整列した回収物をスクリーニングする。これらのshRNAは、RNA干渉(RNAi)として公知の機序によって、相同的配列を含む遺伝子の発現レベルの低下を生じる。4224のAd-shRNAは、整列した回収物標的においておよそ1990の異なる転写産物を含んでいた。平均して、いずれの転写産物も、2〜3の独立したAd-shRNAによって標的とされる。
スクリーニングの上で、Ad-shRNA対照ウイルスを利用した。対照ウイルスには、2セットのネガティブコントロールウイルス:shRNAコンストラクトを含まないAd5-空、及びヒト細胞において発現しない遺伝子であるルシフェラーゼを標的とするshRNAコンストラクトをコードするAd5-Luc_v13を、ヒトFcεR1を標的とするshRNAをコードするポジティブコントロールウイルスAd5-FCER1G v5とともに含む。対照ウイルスの性能に関する代表的な例を図3に示す。図4において、ヒスタミン放出アッセイにおけるSilenceSelect回収物のスクリーニングにおいて得られたデータ地点を示す。
【0193】
これらの実験から、本明細書に開示されたTARGETSの阻害は、ヒトマスト細胞からのヒスタミンの放出の阻害を結果的に生じることが示される。
【0194】
(実施例5:独立した再増殖材料を用いた初代的中物の再スクリーニング)
HTRFアッセイにおいて同定されたAd‐shRNAの結果を確認するために、以下のアプローチを取り得る。ShRNA的中物を発現する新たな一定分量のウイルスを作製した。用量設定された一定分量の既に増殖された対照ウイルスluc_v13を各プレート上で用いて、プレートあたりの的中物喚起(hitcalling)を可能にする。再スクリーニングを96ウェルフォーマットにおいて実施した。
【0195】
96ウェルのV底プレートのウェルあたり100μLの刺激培地における5E+04細胞を蒔種する。ウイルスストックを、以下の計算につき刺激培地における力価及び感染効率に従って希釈する。
【数1】

【0196】
ウェルあたり80μLの希釈したウイルスを添加し、すなわち、ウェルあたり合計180μLに細胞がある。
【0197】
次に、細胞を5〜6日間感染及び刺激させておく。6日目にプレートを1100rpmで5分間スピンさせ、ウイルス上清を取り出す。細胞を100μLのcbmcアッセイ緩衝液(サイトカインを有さずかつ4%FCSを含むcbmc培地である。)で洗浄し、プレートを1100rpmでスピンさせる。洗浄物の除去後、細胞を150μLの1500ng/mL抗IgE(DAKO)含有cbmcアッセイ緩衝液培地の添加によって1時間刺激する。プレートを1100rpmで5分間スピンさせ、140μLの上清を第二のV底プレートに転移させる。第二のスピンの後、125μLの上清を取り出し、ELISA(IBL internationalから入手、カタログ番号RE59221)を用いるヒスタミン決定のために−20℃で保存する。
【0198】
(ヒスタミンElisa‐96ウェルフォーマット)
本アッセイは、競合原理及びマイクロタイタープレート分離に基づいている。試料に存在する未知量の抗原及び固定量の酵素標識した抗原は、ウェル上にコーティングされた抗体の結合部位について競合する。インキュベーション後、競合反応を停止させるためにウェルを洗浄する。TMB基質溶液を添加すると、抗原の濃度は、測定された光学密度に反比例する。標準物質の測定されたOD値を用いて、未知の試料を算出する較正曲線を構築する。
【0199】
ELISAは、製造元のプロトコールに従って実施する。簡潔には、25μLの上清又は標準物質をアシル化する。細胞の各バッチについての先行検査結果に基づいて、試料をアッセイ緩衝液で適切に希釈し(通常1:3)、抗ウサギIgコーティングしたマイクロタイタープレートにおいてヒスタミン抗血清及びヒスタミン‐ペルオキシダーゼ抱合体とともにインキュベートする。結合していない試薬を洗い流し、結合したヒスタミン‐ペルオキシダーゼをTMB基質を用いて発色させる。反応を硫酸の添加によって停止させ、シグナルをThermoMax(Molecular Devices)マイクロプレートリーダーを用いて450nmで検出する。高いOD値は、試料中の低い量のヒスタミンを表す。
【0200】
標的Ad-siRNAの質的制御を以下の通り実施した:標的Ad-siRNAを96ウェルプレートにおいてPERC6.E2A細胞(Crucell, ライデン、オランダ)の誘導体を用いて増殖させた後、標的Ad-siRNAウイルスによってコードされるsiRNAを配列決定する。PERC6.E2A細胞を180μLのPER.E2A培地において40,000個/ウェルの密度で96ウェルプレートに蒔種する。次に、細胞を10%CO2加湿インキュベーターにおいて39℃で一晩インキュベートする。翌日、細胞を、標的Ad-siRNAを含むSilenceSelect(登録商標)ストック由来の1μLの粗細胞溶解物で感染させる。細胞病理効果の出現(典型的には感染7日後、細胞の膨潤及び丸みを帯びることによって明らかとなる)まで、細胞を34℃、10%CO2でさらにインキュベートする。上清を回収し、1mg/mLのプロテイナーゼK(Roche Molecular Biochemicals、カタログ番号745 723)及び0.45%Tween‐20(Roche Molecular Biochemicals、カタログ番号1335465)を補充したMgCl2を有する4μLの溶解緩衝液(1×Expand High Fidelity緩衝液)を滅菌済みPCRチューブにおける12μLの粗溶解物に添加することによって、ウイルス粗溶解物をプロテイナーゼKで処理する。これらのチューブを55℃で2時間インキュベートした後、95℃での15分間の失活工程に続く。PCR反応のために、1μLの溶解物を、MgCl2を有する5μLの10×Expand High Fidelity緩衝液、0.5μLのdNTP混合物(各dNTPにつき10mM)、1μLの「順方向プライマー」(10mMストック、配列:
【化2】

、1μLの「逆方向プライマー」(10mMストック、配列:
【化3】

、0.2μLのExpand High Fidelity DNAポリメラーゼ(3.5U/μL、Roche Molecular Biochemicals)、及び41.3μLのH2Oから構成されるPCRマスター混合物に添加する。PCRをPE Biosystems GeneAmp PCRシステム9700において以下の通り実施する:PCR混合物(合計50μL)を95℃で5分間インキュベートし;各周期を95℃で15秒間、55℃で30秒間、68℃で4分間実施し、35周期反復する。68℃における最終インキュベーションを7分間実施する。配列決定分析のために、標的アデノウイルスによって発現したsiRNAコンストラクトを、pIPspAdapt6-U6プラスミドのSapI部位を隣接するベクター配列と相補的なプライマーを用いるPCRによって増幅する。PCR断片の配列を決定し、期待された配列と比較する。すべての配列は、期待された配列と同一であることが認められる。
【0201】
(実施例6.毒性アッセイ)
検証アッセイのために、ウイルスストックを追加的な実験を実施するのに十分な材料を有するよう再増殖した。再増殖したウイルスの平均力価及び配列を使用前に決定した。
【0202】
Promega製CellTiter‐Blue(登録商標)細胞生存率アッセイを毒性アッセイとして用いた。CellTiter‐Blue(登録商標)細胞生存率アッセイは、多重ウェルプレートに存在する生細胞数を概算するための均一な蛍光定量法を提供する。前記アッセイは、指標色素レサズリンを用いて、細胞の生存率の指標である細胞の代謝能を測定する。生細胞は、レサズリンをレゾルフィンに還元する能力を保有し、レゾルフィンは非常に蛍光性であり、CytofluorII(PerSeptive Biosystems)を用いて530/590nmで測定した。標準曲線は、d0における公知の密度に対して細胞を用量設定することによって生じた。
【0203】
(実施例7.オンターゲット(On-target)アッセイ)
オンターゲットアッセイのために、スクリーニング及び再スクリーニングと類似した方法を、先に説明したとおり用いた。各標的について、5個の追加のウイルスコンストラクトを持ち込み、標的特異性を決定した。ヒスタミン放出アッセイを再スクリーニングにより実施した(実施例5参照)が、例外は、対照ウイルス(luc_v13)をオンターゲットウイルスとともに再増殖させたことであった。
【0204】
(実施例8:IL‐13放出アッセイ/MTSデータを用いたスクリーニング)
代替として、IL‐13をヒトマスト細胞からのIgE依存性サイトカイン放出についての指標分子として用いて、スクリーニングを実施し得る。ヒトマスト細胞(実施例1において説明されるとおり培養された)を7.5×104個/150μLの密度で96ウェルV底プレートに蒔種し得る。マスト細胞は、IgE及びhIL‐4を補充した完全RPMIにおいて(培養方法において説明されるとおり)蒔種され得る。
【0205】
ノックダウンウイルスを30μLで細胞に添加する。使用され得るライブラリーの典型的な力価は、5.0E+09Vp/mL(Vp=ウイルス粒子)である。ウイルスは、6日間放置される。感染6日間後、細胞を1000rpmで10分間スピンダウンさせる。上清を廃棄し、細胞ペレットを抗IgE(DAKO, 069(501))を1500ng/mLの濃度で含む100μLの培地に再懸濁する。次に、細胞を37℃、5%CO2で6時間インキュベートする。6時間のインキュベーションの後、細胞を1000rpmで10分間スピンダウンさせ、80μLの上清を96ウェルのV底プレートに回収し、さらなる使用まで−20℃で保存する。
【0206】
必要な場合、上清を解凍し、IL‐13 ELISAアッセイにおいて測定し得る。本アッセイのために、IL‐13 ELISAキット(CLB、オランダ)を基本的に製造元の推奨に従って用い得る。簡潔には、50μLの希釈緩衝液(キットとともに供給)を、抗IgEによる刺激の6時間後に細胞から採取した80μLの上清に添加し、混合した。この混合物のうち、100μLを、キットとともに供給されたマニュアルに従って実施されるIL‐13 ELISAにおいて用いた。IL‐13の基礎レベルは、抗IgEによる6時間の刺激の際に生じる。ヒトマスト細胞におけるhIL‐13の産生を調節する的中物が同定され得る。
【0207】
必要な場合、細胞ペレットを、IL‐13放出アッセイにおける生マスト細胞の数を決定するために用いることができ、CellTiter 96(登録商標)AQueous非放射性細胞増殖アッセイ(MTSアッセイ、カタログ番号G5421、Promega)を用い得る。本アッセイにおいて、代謝活性のある細胞における脱水素酵素の酵素活性を測定する。本アッセイは、キットにおいて提供されるプロトコールに従って実施する。IL‐13の測定(上述参照)のために上清(80μL)を取った後、追加的な量の新鮮培地を細胞(30μL)に添加して、本アッセイに用いることのできる最終容積(50μL)を得る。組み合わせたMTS/PMS(フェナジンメトスルファート)溶液(10μL)を細胞に添加した後、37℃、5%CO2で1時間インキュベートする。代謝活性のある細胞におけるMTSの水性の可溶性ホルマザンへの変換を、490nmの吸光度の量によって測定し、これは、測定された試料における生細胞数に正比例する。
【0208】
これらの吸収値を用いて、以下の式に従って、未処理のマスト細胞を基準(=100%生細胞)として、すべての試料における生細胞の百分率を算出した:
%生マスト細胞=(A490試料/A490未処理のマスト細胞二つ組の平均値)×100
【0209】
(実施例9:追加的なサイトカインの放出)
先の実施例9において測定されたIL‐13以外の他のサイトカインを測定するために、実施例9のような抗IgEによる刺激の6時間後に細胞からピペッティングされる上清をアッセイに用いて、IgE依存性マスト細胞刺激の際のTNFアルファ、TSLP、及び/又はIL‐25の放出を決定し得る。上清中のTNFアルファ、TSLP、及び/又はIL‐25のレベルを、製造元の推奨に従って、TNFアルファELISA(e-Bioscience又は他の供給元)を用いて決定し得る。
【0210】
(実施例10:アラキドン酸産物(LTC)を決定するアッセイ)
ヒトマスト細胞によって産生されたメディエーターは古典的に、3つのカテゴリーに分類される:(1)あらかじめ形成されたメディエーター、(2)新たに合成された脂質メディエーター、及び(3)サイトカイン。主な新たに合成された脂質メディエーターは、アラキドン酸から代謝され、プロスタグランジンD2及びロイコトリエンC4を含む。アラキドン酸の細胞脂質貯蔵からの遊離は、マスト細胞の活性化とともに生じる。新たに合成されたメディエーターの放出に及ぼす効果を研究するために、プロスタグランジンD2及び/又はロイコトリエンC4の放出は、マスト細胞の刺激(例えば、抗IgE刺激)の際に決定することができる。例えば、放出されたロイコトリエンC4レベルを決定するために、成熟ヒトマスト細胞培養物(例えば、実施例1参照)を、IgE(2μg/mL)及びIL‐4(10ng/mL)を用いて6日間刺激し得る。次に、細胞を、抗IgE抗体又は偽刺激(無添加)を用いて刺激する。細胞を37℃5%CO2で1〜6時間インキュベートした後、試料の上清を回収する。LTC4レベルを決定するのに用いたアッセイは、ACE(商標)競合的酵素イムノアッセイ(Cayman Chemical)であった。アッセイは、LTC4と、限定された量のLTC4抗血清のためのLTC4-アセチルコリンエステラーゼ(AChE)抱合体(LTC4トレーサー)の間の競合に基づいている。LTC4の濃度が変動する一方で、LTC4トレーサーの濃度は一定に保持されるので、LTC4抗血清に結合することのできるLTC4トレーサーの量は、ウェルにおけるLTC4の濃度に反比例するであろう。この抗体‐LTC4複合体は、ウェルにあらかじめ付着したマウスモノクローナル抗ウサギ抗体に結合する。次に、プレートを洗浄して、任意の結合していない試薬を除去した後、エルマン試薬(AChEに対する基質を含有)をウェルに添加する。この酵素反応の産物は、明瞭な黄色を有し、412nmで強く吸収する。分光光度的に決定されるこの色の強度は、ウェルに結合したLTC4トレーサーの量に比例し、このことは、インキュベーション中のウェルに存在する遊離LTC4の量に反比例する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスト細胞を安定化させる化合物を同定する方法であって:
(a)化合物を、配列番号20〜38、及びその断片からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドと接触させること;及び
(b)マスト細胞活性と関連した化合物‐ポリペプチド特性を測定すること
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記ポリペプチドが、インビトロでの無細胞調製物中にある、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ポリペプチドが、哺乳類細胞に存在する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記特性が、前記化合物の前記ポリペプチドに対する結合親和性である、請求項2記載の方法。
【請求項5】
前記方法が、マスト細胞の脱顆粒を阻害する化合物を同定するために用いられる、請求項1〜4のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
下記の工程:
c)前記ポリペプチドを発現する哺乳類細胞の集団を、少なくとも10マイクロモル濃度の結合親和性を呈する化合物と接触させる工程;及び
d)マスト細胞を安定化させる化合物を同定する工程
をさらに含む、請求項4記載の方法。
【請求項7】
前記特性が、マスト細胞からの炎症性メディエーターの放出である、請求項1又は3記載の方法。
【請求項8】
前記特性が、前記ポリペプチドの活性である、請求項1〜3のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
前記特性が、前記ポリペプチドの発現である、請求項1又は3記載の方法。
【請求項10】
下記の工程:
c)前記ポリペプチドを発現する哺乳類細胞の集団を、前記ポリペプチドの発現又は活性を有意に阻害する化合物と接触させる工程;及び
d)マスト細胞を安定化させる化合物を同定する工程
をさらに含む、請求項8又は9記載の方法。
【請求項11】
試験されるべき化合物を対照と比較する工程をさらに含む、請求項1〜10のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
前記対照が、前記ポリペプチドが前記化合物と接触されていない場合のものである、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記化合物を対照と比較する工程をさらに含み、前記対照が、前記ポリペプチドを発現しない哺乳類細胞の集団である、請求項6又は10記載の方法。
【請求項14】
前記化合物が、市販のスクリーニングライブラリーの化合物、及び配列番号20〜38からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドに対する結合親和性を有する化合物からなる群から選択される、請求項1〜13のいずれか一項記載の方法。
【請求項15】
前記化合物が、ファージディスプレイライブラリー又は抗体断片ライブラリーにおけるペプチドである、請求項1記載の方法。
【請求項16】
アンチセンスポリヌクレオチド、リボザイム、及び低分子干渉RNA(siRNA)からなる群から選択される、マスト細胞を安定化させる上で有効な作用物質であって、配列番号1〜19からなる群から選択される核酸配列の約17〜約30の連続したヌクレオチドの天然ポリヌクレオチド配列と相補的な又は前記天然ポリヌクレオチド配列から操作された核酸配列を含む、前記作用物質。
【請求項17】
哺乳類細胞におけるベクターが前記作用物質を発現する、請求項16記載の作用物質。
【請求項18】
マスト細胞の脱顆粒を阻害する、請求項16記載の作用物質。
【請求項19】
前記ベクターが、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レンチウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、又はセンダイウイルスベクターである、請求項17記載の作用物質。
【請求項20】
前記アンチセンスポリヌクレオチド及び前記siRNAが、センス鎖と相補的な17〜25のヌクレオチドのアンチセンス鎖を含み、該センス鎖が、配列番号1〜19からなる群から選択される核酸配列の17〜25の連続したヌクレオチドから選択される、請求項16記載の作用物質。
【請求項21】
前記siRNAが、前記センス鎖をさらに含む、請求項20記載の作用物質。
【請求項22】
前記センス鎖が、配列番号39〜83からなる群から選択される、請求項21記載の作用物質。
【請求項23】
前記siRNAが、前記センス及び前記アンチセンス鎖を接続するループ領域をさらに含む、請求項20記載の作用物質。
【請求項24】
前記ループ領域が、
【化1】

からなる群から選択される核酸配列を含む、請求項23記載の作用物質。
【請求項25】
前記作用物質が、配列番号39〜83からなる群から選択される核酸配列と相補的な核酸配列を含むアンチセンスポリヌクレオチド、リボザイム、又はsiRNAである、請求項16〜24のいずれか一項記載の作用物質。
【請求項26】
治療有効量の請求項16〜25のいずれか一項記載の作用物質を、医薬として許容し得る担体との混合物において含む、医薬組成物。
【請求項27】
マスト細胞の脱顆粒を包含する疾患の治療及び/又は予防における使用のための、請求項16〜25のいずれか一項記載の作用物質。
【請求項28】
炎症を包含する疾患の治療及び/又は予防における使用のための、請求項16〜25のいずれか一項記載の作用物質。
【請求項29】
前記疾患が、アレルギー性気道疾患(例えば、喘息、鼻炎)、自己免疫疾患、移植片拒絶反応、クローン病、関節リウマチ、乾癬、若年性特発性関節炎、大腸炎、及び炎症性腸疾患から選択される、請求項27又は28記載の作用物質。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−518181(P2012−518181A)
【公表日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−550561(P2011−550561)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際出願番号】PCT/EP2010/052028
【国際公開番号】WO2010/094732
【国際公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(504064364)ガラパゴス・ナムローゼ・フェンノートシャップ (27)
【氏名又は名称原語表記】Galapagos N.V.
【Fターム(参考)】