説明

炎症を検出するための量子ドットを用いた装置および方法

内表面に1つまたは複数のバイオマーカーが付着するように適合された毛細管と、毛細管内のバイオマーカーとコンジュゲートした量子ドットを励起するための光源と、1つまたは複数の所定の波長範囲のそれぞれがバイオマーカーのうちのただ1つのみと相関しており、該1つまたは複数の所定の波長範囲における量子ドットによって発光された蛍光エネルギーを検出および定量化するための検出システムとを含む、炎症状態を示すバイオマーカーを検出するための装置および方法を開示する。また、量子ドットの蛍光強度を安定化させる方法も開示する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
背景
炎症性腸疾患(IBD)は、潰瘍性大腸炎(UC)およびクローン病(CD)という2つの慢性の関連する炎症状態を含む。さらに、腸管以外の臓器も、IBDの基礎炎症に関係することがあるため、IBDは多臓器疾患となる可能性がある。世界中で、400万人(100万人の米国人を含む)もがIBDの一疾患型に罹患している。米国単独で、IBDによって、毎年およそ152,000人が入院している。米国におけるIBD患者の治療にかかる年間の医療費は、20億ドルを超えると推定されている。生産性の低下を加味すると、全体の経済的負担は、30億ドル近くになると推定される。
【0002】
炎症性腸疾患は、局部組織形成の構造および機能における重度の障害、ならびに好中球およびリンパ球ならびに炎症誘発性細胞の存在増加に特徴づけられる複合型の多因子続発症である。さらに、上皮、内皮、間葉、脂肪組織および神経細胞のすべてが、炎症過程の結果として生じる広範囲の損傷を示す場合がある。エフェクター、調節性および免疫性の機能は、リンパ系細胞と異常な相互作用を行い、炎症性疾患の病因にさらに寄与する。心臓疾患、関節炎、喘息、アレルギー、感染、および糖尿病はすべて、慢性炎症の要素を有している。また、炎症性疾患は、例えば、卒中、心血管疾患、急性冠症候群、急性心筋梗塞、心膜炎、歯周疾患、癌、アルツハイマー病、および炎症性腸疾患を非限定的に含む。炎症性疾患は、自己免疫疾患のように多数の器官系にも影響する可能性がある。
【0003】
炎症は、IBDの急性期および慢性期両方の病因に有意に寄与する。IBDの診断が容易であることはめったになく、診察、および内視鏡検査中の生検を含んだ侵襲的検査の多くのプロセスを含む。これらの専門的な研究をもってしても、人がどの種類のIBDに罹患しているかを判定するのは困難な場合が多く、「分類不能大腸炎」という診断に繋がったり、疾患管理をより困難にする。UCは、結腸直腸癌を発症させる有意なリスクを有するが、依然としてCDから区別するのは困難である。特にUCは、一般集団よりも35%高い、結腸直腸癌を発症させるリスクと関連づけられるため、適切な診断を行うことは良好な患者の治療に不可欠である。
【0004】
IBDに対する医学的特効薬はないが、炎症を鎮静化し、下痢、腹痛、および直腸出血の症候を緩和することが可能な有効な医学的治療を利用可能である。この疾患では悪化と一時的な回復との繰り返しが起こる傾向があるため、炎症を軽減し、臨床上の続発症の発症を予防するのに必要な医学的治療を提供するためには、患者の継続的な観察が不可欠である。
【0005】
UCをCDから見分けるのに臨床で用いられている現行の非侵襲的検査は、血清中の核周囲型抗好中球細胞質抗体(p-ANCA)および抗サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)抗体(ASCA)等の抗体の存在に基づくものであり、特異性が70%未満である。主として侵襲的な生検が、特定の疾患の存在を確認するのに用いられている。
【0006】
したがって、炎症性マーカーを、迅速、費用効果的、かつ高感度で定量化する技術への、いまだ満たされていない要望がある。このような定量化によって、鑑別診断が可能となるばかりではなく、炎症性疾患の療法に対する反応の評価も可能となる。より具体的には、非IBD症候をIBD症候から見分け、UCをCDから正確に見分け、疾患の進行、一時的な回復、または再発を観察することが可能な非侵襲的診断ツールが長年要望されている。特に、低レベルの炎症性マーカーを判定し、これらのマーカーを検出する能力を、炎症性疾患、炎症性疾患に対する療法への反応、および癌への進行を予測する判断材料として利用する技術が要望されている。
【0007】
さらに、貴重な情報の損失を避けるため、保管または画像診断中、量子ドットとして量子ドットから発光される蛍光の強度の経時的な安定性を向上させることが要望されている。
【発明の概要】
【0008】
概要
本発明は、炎症状態を示すバイオマーカーを検出するための装置を含む。該装置は、内表面に1つまたは複数のバイオマーカーが付着するように適合された毛細管と、毛細管内のバイオマーカーとコンジュゲートした量子ドットを励起するための光源と、1つまたは複数の所定の波長範囲のそれぞれがバイオマーカーのうちのただ1つのみと相関しており、該1つまたは複数の所定の波長範囲における量子ドットによって発光された蛍光エネルギーを検出および定量化するための検出システムとを含む。
【0009】
装置の一態様において、毛細管は、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ酢酸ビニル、およびポリスチレン管からなる群より選択される少なくとも1つの材料を含む。皮下注射針が、試料を毛細管に供給するために、毛細管の端部に接続され得る。毛細管は、外部からガラス毛細管によって支持してもよい。
【0010】
別の態様において、装置は、多数の毛細管を保持するように適合された液体処理ユニットと、各毛細管中に含まれる試料を光源に曝露し、かつ検出システムで視覚化できるように、各毛細管を連続して位置合わせするための機械的位置合わせシステムとをさらに含む。
【0011】
別の態様において、毛細管は、約100ナノリットル〜約1マイクロリットルの範囲の体積を有する。
【0012】
装置の別の態様において、光源は、LED、レーザダイオード、あるいは複数のLEDまたはレーザダイオードを有するアレイを含む。LEDの1つまたは複数は、紫外線LEDであり得る。光源は、1つまたは複数のLEDを毛細管上に合焦させるためのレンズをさらに含み得る。
【0013】
装置の別の態様において、検出システムは広帯域フィルタを含む。さらに別の態様において、検出システムは光検出器を含む。光検出器は、少なくとも1つの光電子増倍管に連結された分光器、アバランシェフォトダイオード検出器、またはCCDカメラであり得る。検出システムは、光検出器により検出可能な量子ドットによって発光された蛍光エネルギーの量を増大させるための、毛細管の少なくとも一部の周囲に配置された鏡を含み得る。鏡は、球面鏡、円筒鏡、および放物面鏡からなる群より選択可能である。
【0014】
装置の別の態様において、毛細管は、約1.5マイクロリットル未満の体積を有するポリメチルメタクリレート(PMMA)毛細管であり、光源は紫外線LEDを含み、検出システムはCCDカメラを含む。さらに別の態様において、検出システムは、量子ドットによって発光されたエネルギーをCCDカメラに合焦させる球面鏡を含む。一変形例において、光源の第1のLEDは、毛細管の端部に向けられ、CCDカメラは、毛細管の壁部を通じて発光されたエネルギーを検出する。さらに、光源の第2のLEDを、毛細管の反対の端部に向けることが可能である。別の変形例においては、光源の少なくとも1つのLEDが、毛細管の壁部に隣接して配置され、CCDカメラが、毛細管の端部を通じて発光されたエネルギーを検出する。
【0015】
装置の別の態様において、バイオマーカーは、ミエロペルオキシダーゼ(MPO)、IL-1α、TNFα、核周囲型抗好中球細胞質抗体(p-ANCA)、抗サッカロマイセス・セレビシエ抗体(ASCA)、アンジオテンシン変換酵素、ラクトフェリン、C反応性タンパク質(CRP)、およびカルプロテクチンからなる群より選択される。
【0016】
別の態様において、装置は、毛細管に含まれる生体試料中のバイオマーカーを検出する組成物をさらに含み、該組成物は、量子ドットと、バイオマーカーに特異的に結合する抗体とを含む少なくとも1つのコンジュゲートを含む。該抗体は、基体表面に結合可能である。
【0017】
本発明はまた、炎症状態を示すバイオマーカーを含む可能性のある試料を、抗体で被覆された毛細管に供する工程、量子ドットと、バイオマーカーに特異的に結合する抗体とを含むコンジュゲートに、試料を接触させる工程、光源により量子ドットを励起する工程、量子ドットからの蛍光発光を検出する工程、および蛍光発光と試料中のバイオマーカーの濃度との相関関係を示す工程を含む、試料中のバイオマーカーを検出することにより被験体の炎症状態を診断する方法を提供する。
【0018】
診断方法の一態様において、バイオマーカーは、酵素、接着分子、サイトカイン、タンパク質、脂質メディエータ、免疫反応メディエータ、および成長因子からなる群より選択される。
【0019】
方法の別の態様において、バイオマーカーは、ミエロペルオキシダーゼ(MPO)、IL-1α、TNFα、核周囲型抗好中球細胞質抗体(p-ANCA)、抗サッカロマイセス・セレビシエ抗体(ASCA)、アンジオテンシン変換酵素、ラクトフェリン、C反応性タンパク質(CRP)、およびカルプロテクチンからなる群より選択される。
【0020】
一態様において、毛細管は、NaOHを用いて官能化されている。あるいは、毛細管は、血漿または紫外線光を用いて官能化されている。
【0021】
診断方法の別の態様において、炎症状態は、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、卒中、心筋炎、心血管疾患、急性冠症候群、急性心筋梗塞、心膜炎、歯周疾患、癌、アルツハイマー病、および自己免疫疾患からなる群より選択される少なくとも1つの炎症性疾患を含む。
【0022】
また、本発明は、量子ドットを蛍光安定化媒体に曝露する工程を含む、量子ドットの蛍光を経時的に安定化させる方法をさらに含む。
【0023】
安定化方法の一態様において、蛍光安定化媒体は、低いイオン強度を有する溶液である。
【0024】
安定化方法の他の態様において、蛍光安定化媒体は、約7.0以上のpHを有する溶液であるか、約8.0以上のpHを有する溶液である。
【0025】
安定化方法の別の態様において、蛍光安定化媒体は、水溶性フリーラジカルクエンチャーを含む。さらに別の態様において、蛍光安定化媒体は、TrisProおよび一定量の水溶性ビタミンEを含む。一変形例において、ビタミンEの量は、媒体の少なくとも約0.001%である。
【0026】
別の態様において、量子ドットのそれぞれは、CdSeコアおよびZnS保護層を含む。
【図面の簡単な説明】
【0027】
本発明を説明するために、本発明のいくつかの態様を図面に示すが、本発明は、図面に示される態様通りの構成や手段に限定されるものではない。
【図1】導波管(waveguide)モードにおいて試料からの量子ドット(QD)蛍光を検出する装置を示す模式図である。
【図2】炎症性腸疾患を検出および診断するための方法の概略フローチャートである。
【図3】QDコンジュゲートを抗原に結合させるプロセスを示す模式図である。
【図4】サンドイッチ量子結合免疫吸着アッセイ(QLISA)プロセスを示す模式図である。
【図5】競合QLISAプロセスを示す模式図である。
【図6A】導波管モードにおいてQD結合試料からの蛍光を検出する装置を示す模式図である。
【図6B】導波管モードにおいてQD結合試料からの蛍光を検出する装置を示す模式図である。
【図7】稼働中の図6Bの装置を示す写真である。
【図8】側面照射(side illumination)モードにおいてLED光源への露光により試料から蛍光を発光させる装置を示す模式図である。
【図9】側面照射モードにおいて合焦LED光源への露光により試料から蛍光を発光させる装置を示す模式図である。
【図10】図8または図9のような装置からの処理前画像データの、強度情報が取得可能な処理後画像への変換を示す模式図である。
【図11A】QD結合試料からの蛍光を検出するための別の装置を示す模式図である。
【図11B】QD結合試料からの蛍光を検出するための別の装置を示す模式図である。
【図11C】QD結合試料からの蛍光を検出するための別の装置を示す模式図である。
【図11D】QD結合試料からの蛍光を検出するための別の装置を示す模式図である。
【図12】試料中のバイオマーカー(MPO)の濃度と蛍光発光の強度との相関関係を示すグラフである。
【図13】MPOの濃度と蛍光発光の強度との相関関係を示して、検出閾値を判定するグラフである。
【図14】対照試料と比較した場合の、動物試料中の蛍光発光の強度とMPOの濃度との相関関係を示すグラフである。
【図15】本発明の一態様における診断プロトコルのプロセスフローチャートである。
【図16】図16Aおよび図19Bは、PMMA毛細管内のQDから蛍光信号を収集する装置の構成の模式イメージ図である。
【図17】図17A〜図17Fは、ブロッキングの効果を示す、毛細管の光学顕微鏡写真である。
【図18】図18Aおよび図18Bは、洗浄バッファー中の界面活性剤の効果を示す、DB-Abで処理したPMMA毛細管の光学顕微鏡写真である。
【図19】図19Aおよび図19Bは、本発明のQLISA法の一態様のMPOに対する感度、および0.3nMのMPO試料と対照とを比較したPMMA毛細管の代表的な画像を示す。
【図20】本発明の装置の側面照射構成と導波管構成とで得られたQD溶液の蛍光強度の比較である。
【図21】図21A〜図21Cは、側面照射で得られた様々なMPO濃度の蛍光強度の比較である。
【図22】動物のMPOスパイク糞便試料からの蛍光強度を示す。
【図23】MMP-13への非特異的結合からの干渉を示すグラフである。
【図24】疾患時系列と量子ドットに結合しているMPOの蛍光強度とを比較するグラフである。
【図25】多数のPMMA管に対する液体処理ユニットを示す模式図である。
【図26】多数のPMMA管に対する例示的な液体処理ユニットを示す写真である。
【図27】図25または図26のような液体処理ユニットで使用するための液体槽の設計を示す模式図である。
【図28】図28A〜図28Dは、モールドを用いたマルチ試料ホルダーの作製を示すグラフィックスである。
【図29】図29Aおよび図29Bは、QDの蛍光強度およびQDの安定性への保管バッファーの、ある一定の期間にわたる効果を示す比較である。
【図30】ヒトのラクトフェリンスパイク糞便試料からの蛍光強度を示す。
【図31】サンプリングマニホールドの一態様の模式図である。
【図32】着脱可能なマルチ毛細管ホルダーの一態様の模式図である。
【図33】図33Aおよび図33Bは、QD蛍光強度を安定化させるのに用いたバッファー媒体および水溶性ビタミンEの分子構造を示す。
【図34】図34Aおよび図34Bは、それぞれビタミンEがない場合とある場合との溶液中のQDの蛍光強度の経時的な減衰を、pHの関数として比較するグラフである。
【図35】図35Aおよび図35Bは、それぞれビタミンEがない場合とある場合との溶液中のQDの蛍光強度の経時的な減衰を、pHの関数として比較するグラフである。
【図36】図36Aおよび図36Bは、Ocean Nanotech製QDおよびInvitrogen製QDの各々に関して、QDの蛍光強度の経時的な減衰を、6.5pHでのビタミンE濃度の関数として比較するグラフである。
【図37】図37Aおよび図37Bは、Ocean Nanotech製QDおよびInvitrogen製QDの各々に関して、QDの蛍光強度の経時的な減衰を、7.5pHでのビタミンE濃度の関数として比較するグラフである。
【図38】図38Aおよび図38Bは、Ocean Nanotech製QDおよびInvitrogen製QDの各々に関して、QDの蛍光強度の経時的な減衰を、8.5pHでのビタミンE濃度の関数として比較するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
詳細な説明
本発明は、生体試料中のミエロペルオキシダーゼ(MPO)を検出するための簡単で安価な量子ドットベースの免疫学的アッセイの開発を開示する。略語QLISAは、量子結合免疫吸着アッセイ(Quantum−Linked ImmunoSorbent Assay)を表す。好ましい一態様において、検出方法は、サンドイッチアッセイを実施するための基体として、ポリメチルメタクリレート(PMMA)細管を利用する。高出力(80mW)および低出力(10mW)両方のUV-LEDを、導波管照射モードまたは側面照射モードのいずれかにおいて検出感度を最大化する効率について、検査した。本明細書において記載される結果は、導波管モードおよび側面照射モードのいずれも、15ng/mlまでの低いMPOを検出するのに用いることが可能であるが、側面照射モードで高出力LEDを用いることで、期待以上に感度を向上させ、データ取得を簡単にすることが示される。センサーの態様における検査プロトコルおよびロバスト性を、MPOをスパイクした動物の糞便試料で評価した。結果は、糞便試料に用いられた場合、捕捉抗体およびレポーター抗体の感度が犠牲にされないことを示している。さらに、量子ドットの蛍光安定性に対する環境のイオン強度の作用を評価した。その結果、特に、長い撮像時間が必要な場合に、該作用がアッセイに影響を与えることが分かった。注目すべきことに、撮像中のバッファーをグリセロール等の非極性または低極性の物質で置換した場合、2時間という比較的短い時間の後であっても、強度における損失を有意に最小化しながら、量子ドットの蛍光強度が増大した。
【0029】
概して、本発明は、非IBD症候をIBD症候から見分け、UCをCDから区別するのに十分な感度で、炎症性疾患、特に炎症性腸疾患を示すバイオマーカーを検出および定量化するための装置および方法に関する。本発明に係る装置は、1つまたは複数のバイオマーカーが量子ドットとコンジュゲートしている試料を保持し、かつ量子ドットを励起するための光源と、該量子ドットを検出および定量化するための検出システムとを提供する。本発明に係る装置を用いた方法は、試料を採取する工程、試料中のバイオマーカーに量子ドットをコンジュゲートする工程、光源で量子ドットを励起する工程、量子ドットからの発光を検出する工程、および検出された発光とバイオマーカーの濃度との間の相関関係に基づいて、試料中のバイオマーカーの濃度を判定する工程を含む。
【0030】
一態様において、炎症状態を示すバイオマーカーを検出するための装置が提供される。この装置は、内表面に1つまたは複数のバイオマーカーが付着するように適合された毛細管を含む。装置は、毛細管内のバイオマーカーとコンジュゲートした量子ドットを励起するための光源と、1つまたは複数の所定の波長範囲のそれぞれがバイオマーカーのうちのただ1つのみと相関しており、該1つまたは複数の所定の波長範囲における量子ドットによって発光された蛍光エネルギーを検出および定量化するための検出システムとをさらに含む。
【0031】
別の態様において、試料中のバイオマーカーを検出することによって、炎症状態を診断する方法が提供される。この方法は、炎症状態を示すバイオマーカーを含む可能性のある試料を、抗体で被覆された毛細管に供する工程を含む。方法は、量子ドットと、バイオマーカーに特異的に結合する抗体とを含むコンジュゲートに、試料を接触させる工程、光源で量子ドットを励起する工程、量子ドットからの蛍光発光を検出する工程、および蛍光発光と試料中のバイオマーカーの濃度との相関関係を示す工程をさらに含む。
【0032】
図1は、炎症性疾患に対する生化学および免疫学マーカーを迅速に同定し測定する方法の一部として、試料からのQD蛍光を検出する装置の一態様を示す。図1に示すような装置または図6A〜図9、図11A〜図11D、および図16A〜図16Bに示すような装置は、図2に概略的に示され、図15により具体的に示されるような、非限定的に炎症性腸疾患(IBD)を含む炎症性疾患の存在を検出する診断方法、例えば、IBDが潰瘍性大腸炎(UC)またはクローン病(CD)のどちらに特徴づけられるかを診断する診断方法において用いることが可能である。
【0033】
生物感知ナノ粒子で炎症を量的に評価する方法は、2007年7月11日に出願された同一出願人によるPCT出願番号PCT/US2007/015748に詳細に記載され、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。ナノ粒子は、バイオマーカーであるタンパク質またはバイオマーカーをコードする核酸に特異的に結合する標的部分とコンジュゲートした量子ドットを含む(バイオマーカーの調節不全が炎症性疾患に関連する)。
【0034】
特に、本明細書において開示される方法は、ナノレベルのバイオマーカーを検出する手段として、量子ドットとコンジュゲートしたモノクローナル抗体を用いる。本明細書において用いられる場合、該方法は、当技術分野において酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)として公知の技術と区別して、「量子結合免疫吸着アッセイ」(QLISA)と総称される。QLISAは、ELISAと比較して、本明細書において記載されるような利点を有する。
【0035】
本明細書において記載されるいずれの装置も、抗体で被覆された特別仕様のマイクロカラムおよび迅速かつ簡単な検出のために即時に使用可能な試薬を有する単一アッセイを含む検査キットとして提供可能である。アッセイは、MPO、IL-1α、TNFα、カルプロテクチン、ラクトフェリン、フィブロネクチン、ASCAm p-ANCA、および/または他のマーカーを含み得、特にIBDの様々な疾患型の指標として便試料中に見出され得るものである。装置および方法は、ピコモル濃度またはナノモル濃度で、単一マーカーを順番に、または多数のマーカーを同時に検出するように適合可能である。検査キットは、QLISA、すなわち、量子ドット固定化および蛍光を用いて、生体試料(例えば、液体および便試料)中の炎症性バイオマーカーを測定するように適合される。検査キットは、診療所において診療現場におけるスクリーニング装置として用いたり、診断ラボにおける一連の検査の一部として用いたりすることが可能である。
【0036】
本アプローチは、炎症性腸疾患(IBD)の炎症性腸症候群(IBS)からの鑑別診断をもたらし、潰瘍性大腸炎(UC)をクローン病(CD)から区別するための、利用可能なバイオマーカー(ミエロペルオキシダーゼ-MPO、p-ANCA、ASCA)の組み合わせの使用に基づく。
【0037】
定義
本明細書において用いられる場合、以下の各用語は本セクションにおいて、それぞれに関連づけられた意味を有する。
【0038】
英文明細書における冠詞「1つの(a)」および「1つの(an)」は、その冠詞がかかる文法上の対象が1つ、または1つより多い(すなわち少なくとも1つである)ことを意味する。例えば、「1つの要素(an element)」は、1つの要素または1つより多い要素を意味する。
【0039】
用語「約」および「およそ」は、当業者であれば理解できるものであり、用いられる文脈上である程度変化する。
【0040】
用語「抗体」は、抗原上の特定のエピトープに特異的に結合可能な免疫グロブリン分子を意味する。抗体は、天然供給源に由来する、または組換え体の供給源に由来するインタクトな免疫グロブリンであってもよく、インタクトな免疫グロブリンの免疫反応部位であってもよい。典型的に、抗体は、免疫グロブリン分子の四量体である。本発明における抗体は、例えば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、細胞内部の抗体(「細胞内抗体」)、Fv、FabおよびF(ab)2と、単鎖抗体(scFv)、ラクダ抗体、ならびにヒト化抗体とを含む種々の形態で存在し得る。
【0041】
「抗原」または「Ag」は、免疫反応を引き起こす分子を意味する。この免疫反応は、抗体産生または特定の免疫適格細胞の活性化のいずれかまたは両方を含み得る。当業者であれば、事実上すべてのタンパク質またはペプチドを含む任意のポリマーが、抗原として機能可能であることが理解できると考えられる。また、抗原は、組換えDNAまたはゲノムDNAに由来する場合もある。したがって、当業者であれば、免疫反応を引き出すタンパク質をコードするヌクレオチド配列または部分ヌクレオチド配列を含む任意のDNAが、本明細書において用いられる用語であるところの「抗原」をコードすることが理解できると考えられる。また、当業者であれば、抗原が、かならずしも遺伝子の全長ヌクレオチド配列でコードされる必要がないことが理解できると考えられる。本発明が、1つより多い遺伝子の部分ヌクレオチド配列の使用を非限定的に含み、これらのヌクレオチド配列が、望ましい免疫反応を引き出す様々な組み合わせで構成されることがすぐに分かる。さらに、当業者であれば、抗原が、「遺伝子」でコードされる必要がまったくないことが理解できると考えられる。抗原が、産生され、合成され、または生体試料に由来する場合があることがすぐに分かる。このような生体試料は、組織試料、腫瘍試料、細胞、または生体液を非限定的に含む場合がある。
【0042】
「生体試料」は、バイオマーカーの発現を検出可能な生体から得られた細胞、組織、または体液を含む任意の試料を意味する。このような生体試料は、例えば、ヒトの患者から得られた「身体試料」を含む。
【0043】
「身体試料」は、血液、リンパ液、尿、女性器系統の体液、生検材料、羊水、糞便試料、便試料、および塗抹標本を非限定的に含む。本明細書において、自然状態で液体である試料は、「体液」と称される。身体試料は、例えば、一領域を擦ったり綿棒でぬぐったりすること、または針で体液を吸引することを含む種々の技術によって、患者から得られ得る。様々な身体試料を採取する方法は当技術分野において周知である。
【0044】
用語「調節不全」は、リスクを保有すると思われる個体から得られた生体試料中に存在し検出されたバイオマーカーを、リスクを保有しない1つまたは複数の通常の個体から得られた試料中のバイオマーカーと比較した場合の、過剰発現または過小発現を意味する。いくつかの例において、バイオマーカー発現レベルを、リスクを保有しない1つより多い個体から得られた平均値と比較する。他の例において、バイオマーカー発現レベルを、リスクを保有しない1つの通常の試料から得られた試料中で評価されたバイオマーカーレベルと比較する。さらに他の例において、リスクを保有すると思われる個体中のバイオマーカー発現レベルを、異なる時間の同一個体から得られた試料中のバイオマーカー発現レベルと比較する。
【0045】
用語「ペプチド」、「ポリペプチド」、および「タンパク質」は、互換可能に用いられ、ペプチド結合によって共有結合しているアミノ酸残基を含む化合物を意味する。タンパク質またはペプチドは、少なくとも2つのアミノ酸を含んでいなくてはならず、タンパク質配列またはペプチド配列を含み得るアミノ酸の最大数は限定されない。ポリペプチドは、相互にペプチド結合している2つ以上のアミノ酸を含む任意のペプチドまたはタンパク質を含む。本明細書において用いられる場合、この用語は、当技術分野においてペプチド、オリゴペプチド、およびオリゴマー等として一般的に称される短鎖、ならびに多くの種類があり、当技術分野においてタンパク質として一般的に称される長鎖との両方を意味する。とりわけ、「ポリペプチド」は、例えば、生物活性断片、実質的に、相同ポリペプチド、オリゴペプチド、ホモダイマー、ヘテロダイマー、ポリペプチド変異体、修飾ポリペプチド、誘導体、類似体、融合タンパク質を含む。ポリペプチドは、天然ペプチド、組換えペプチド、合成ペプチド、またはその組み合わせを含む。
【0046】
用語「量子ドット」(QD)は、3つの空間方向すべてにおける伝導帯電子、価電子帯正孔、または励起子(伝導帯電子と価電子帯正孔との結合対)の動きを閉じ込める半導体ナノ構造体を意味する。閉じ込めは、静電ポテンシャル(外部電極、ドーピング、ひずみ、不純物によって発生する)、異なる半導体材料間のインターフェースの存在(例えば、コアシェルナノ結晶システムにおける)、半導体表面の存在(例えば半導体ナノ結晶)、またはこれらの組み合わせによる場合がある。量子ドットは、離散量子化エネルギースペクトルを有する。対応する波動関数は、量子ドット内で空間的に局所化されるが、結晶格子の多くの期間にわたって拡大する。量子ドットは、小さい有限数(1〜100オーダー)の伝導帯電子、価電子帯正孔、または励起子、すなわち、有限数の電気素量を含む。肉眼で即座に気付くことのできる小さい励起子量子ドットの光学特徴の1つに、彩色がある。量子ドットを形成する材料が、固有のエネルギーシグネチャを規定するが、彩色に関してより重要なのはサイズである。ドットが大きいほど、蛍光が赤くなる(スペクトルの赤い端部により近づく)。ドットが小さいほど、蛍光が青くなる(スペクトルの青い端部により近づく)。彩色は、量子ドットのエネルギーレベルに直接関連する。量に関して言えば、蛍光のエネルギー(したがって、色)を決定するバンドギャップエネルギーは、量子ドットのサイズの二乗に反比例する。
【0047】
用語「コンジュゲート」は、ある分子が別の分子に物理的または化学的に連結することを意味する。
【0048】
用語「特異的結合」は、ある細胞表面分子または特徴を認識し、結合するが、試料中の他の分子または特徴を実質的に認識せず、結合しない、抗体等の分子の作用を意味する。
【0049】
用語「変異体」は、参照核酸配列または参照ペプチド配列とそれぞれ配列が異なるが、参照分子の本質的な特性は保持している核酸配列またはペプチド配列を意味する。核酸変異体の配列における変化は、参照核酸にコードされるペプチドのアミノ酸配列を変更しない場合もあり、またはアミノ酸置換、付加、欠失、融合、および切断をもたらす場合もある。ペプチド変異体の配列における変化は、典型的に、限定されるか保存的であり、参照ペプチドの配列と変異体の配列は、全体として非常に似ており、多くの領域において同一である。変異体および参照ペプチドは、1つまたは複数の置換、付加、欠失の任意の組み合わせによって、アミノ酸配列が異なる場合がある。核酸またはペプチドの変異体は、対立遺伝子変異体等、天然に存在する場合もあり、または天然に存在しないと知られている変異体である場合もある。核酸およびペプチドの天然に存在しない変異体は、突然変異誘発技術または直接の合成によって生成される。
【0050】
用語「炎症状態」は、一般的に、初期の有益な免疫反応後の哺乳動物における炎症の継続した存在を意味する。炎症状態は、慢性創傷、関節炎、アテローム性動脈硬化症、ならびに炎症性疾患、例えば、自己免疫疾患、卒中、心血管疾患、急性冠症候群、急性心筋梗塞、心膜炎、歯周疾患、炎症性疾患とつながりのある癌、アルツハイマー病、および炎症性腸疾患を非限定的に含む。
【0051】
「バイオマーカー」は、通常のまたは健康な細胞、組織、または生体液と比較して、組織、細胞、または体液における発現レベルが調節不全である任意の遺伝子、タンパク質、または代謝物質を意味する。一態様において、本発明の方法に従って測定しようとするバイオマーカーは、個体における炎症性疾患の存在および進行に選択的に応答する。
【0052】
「炎症性疾患の存在および進行に選択的に応答」とは、対象となるバイオマーカーが、個体における炎症性疾患の発症および以降の進行に応じて、特異的に過剰発現または過小発現することを意図する。このバイオマーカーは、臨床の疾患とは見なされない他の疾患または他の状態の間は、調節不全とならない。したがって、本発明の方法においてバイオマーカーのレベルを測定することで、炎症性疾患に罹患している個体から採取した試料と炎症性疾患に罹患していない個体から採取した試料との間の区別が可能となる。
【0053】
疾患と相関するバイオマーカー
特定のバイオマーカーが、特定の疾患に関連づけられるように設計可能である。疾患に特異的なバイオマーカーは、特定の疾患に応じて調節不全となるが、臨床の疾患と見なされない他の疾患または他の状態の間は、調節不全とならないバイオマーカーである。バイオマーカーと疾患との間の疾患に特異的な関連づけを利用するのに、本発明に係る装置および方法を用いて、特定のバイオマーカーを検出可能であり、その特定のバイオマーカーを、それぞれに関連づけられた疾患と相関させて、疾患の存在を示すことが可能である。特に、IBD、UC、またはCD等の疾患に関連づけられた、疾患に特異的なバイオマーカーを用いて、これらの特定の炎症性疾患のうちの1つを検出可能である。
【0054】
一態様において、測定しようとするバイオマーカーは、個体における炎症性疾患の存在および進行に選択的に応答する。つまり、対象となるバイオマーカーは、個体における炎症性疾患の発症および以降の進行に応じて、特異的に過剰発現または過小発現する。本明細書において開示される方法において疾患に特異的なバイオマーカーのレベルを測定することで、炎症性疾患に罹患している個体から採取した試料と炎症性疾患に罹患していない個体から採取した試料との間の区別、およびUCに罹患している個体とCDに罹患している個体との間の区別が可能となる。
【0055】
本発明の一局面において、炎症性腸疾患は、潰瘍性大腸炎である。本発明の別の局面において、炎症性腸疾患は、クローン病である。さらに、本発明の方法においてバイオマーカーのレベルを測定すれば、医者がIBDの異なる疾患型、具体的にはUCをCDから見分けることが可能になるであろう。
【0056】
本発明によって測定可能なバイオマーカーは、炎症性疾患の間に調節不全を示すタンパク質ならびにその変異体および断片を含む。本発明において有用なバイオマーカーである核酸は、バイオマーカーをコードする任意の核酸配列の全配列または部分配列、あるいはこのような配列の相補体を含むDNAおよびRNAの両方を含むと考えられるべきである。同様に、バイオマーカーであるタンパク質は、バイオマーカーである任意のタンパク質またはポリペプチドのアミノ酸全配列または部分配列を含むと考えられるべきである。
【0057】
非限定の例として、核周囲型抗好中球細胞質抗体(pANCA)に陽性であるが、抗サッカロマイセス・セレビシエ抗体(ASCA)に陰性である、IBDに罹患している患者から得られた血清試料は、潰瘍性大腸炎を示し、ASCAに陽性であるが、pANCAに陰性である血清試料は、クローン病を示す。本発明において有用なバイオマーカーは、ミエロペルオキシダーゼ(MPO)、IL-1α、およびTNFαを含む。本発明において有用な他のバイオマーカーは、核周囲型抗好中球細胞質抗体(p-ANCA)、抗サッカロマイセス・セレビシエ抗体(ASCA)、アンジオテンシン変換酵素、ラクトフェリン、C反応性タンパク質、フィブロネクチン、ラクトフェリン、およびカルプロテクチンを非限定的に含む。さらなるバイオマーカーは、酵素、接着分子、サイトカイン、タンパク質、脂質メディエータ、および成長因子を含み得る。
【0058】
一態様において、本発明のバイオマーカーの生物活性は、IBDの発症および進行に予測可能に応答するバイオマーカーの能力である。一局面において、バイオマーカーは、UCの発症および進行に応答する。別の局面において、バイオマーカーは、CDの発症および進行に応答する。
【0059】
本発明の方法では、身体試料中の少なくとも1つのバイオマーカーを検出することが必要であるが、2つ以上のバイオマーカーを用いて本発明の方法を実施し得る。したがって、一態様において、2つ以上のバイオマーカーが用いられる。本発明の一局面において、2つ以上の補助バイオマーカーが用いられる。多数のバイオマーカーの同時検出は、量子ドットの各サイズに関連づけられた異なる波長発光によって各バイオマーカーが検出可能となるように、異なるサイズの量子ドットを異なる対応するバイオマーカーとコンジュゲートすることによって達成可能である。
【0060】
本明細書においてバイオマーカーに言及するのに用いられる場合、用語「補助」は、身体試料中のバイオマーカーの組み合わせを検出することにより、1つのバイオマーカーのみが用いられた場合に同定されたであろう確率よりも高い確率で、炎症性疾患に罹患している患者の同定がうまくいくことを意味するように意図される。本発明の一態様において、2つのバイオマーカーを用いることにより、1つのバイオマーカーが用いられた場合よりも、IBDに罹患している患者をより正確に識別し得る。本発明の一局面において、潰瘍性大腸炎を診断するのに、2つ以上のバイオマーカーが用いられ得る。本発明の別の局面において、クローン病に罹患している患者を識別するのに2つ以上のバイオマーカーが用いられる。
【0061】
したがって、少なくとも2つのバイオマーカーが用いられる場合、違ったバイオマーカーであるタンパク質に向けられた少なくとも2つの抗体を用いて、本明細書において開示される免疫細胞化学による方法が実施される。抗体は、同時にまたは順番に身体試料と接触し得る。
【0062】
本発明は、炎症性腸疾患の診断を受けた、または炎症性腸疾患を発症させるリスクのある任意の被験体に対して実施され得る。被験体は、好ましくは哺乳動物であり、より好ましくはヒトである。
【0063】
バイオマーカーとQDコンジュゲートとの結合
試料中のバイオマーカーの濃度を測定する一方法において、QDをバイオマーカーにコンジュゲートし、次いで、蛍光によってQDの存在を検出し、定量化する。QDのバイオマーカーへのコンジュゲートは、対象となるバイオマーカーに特異的に結合する能力に基づいて選択される標的部分等の媒介物にQDをコンジュゲートすることによって行われる。
【0064】
QDコンジュゲートは、蛍光特性により検出可能な少なくとも1つの量子ドット(すなわち、半導体ナノ結晶)を含む。量子ドットは、インビトロおよびインビボにおける、非常に敏感で非アイソトープの生体分子レポーターである。QDは、量子収量および光安定性が大きいために、生物分子の魅力的な蛍光タグである。このように、QDは、従来の蛍光体として用いられる有機色素に固有の多くの制限を克服するものである。QDの直径は2nm〜10nmの範囲にあり、カドミウムおよびセレン等の材料のおよそ500〜1000個の原子を含み、広い吸収スペクトルおよび狭い発光スペクトルで蛍光を発する。
【0065】
コアと、キャップと、親水性連結基とを含む水溶性発光QDは、当技術分野において周知であり、市販されている(例えば、Quantum Dot Corp. Hayward, CA; Invitrogen, Carlsbad, CA; U.S. Patent No. 7,192,785; U.S. Patent No. 6,815,064)。コアは、ナノ粒子サイズの半導体を含む。IIBVIB、IIIBVB、またはIVB--IVB半導体の任意のコアを用いることが可能であり、コアは、キャップと組み合わせられた際に、発光が生じるようでなくてはならない。
【0066】
キャップまたはシェルは、コアの半導体と異なり、コアに結合してコア上表面層を形成する半導体である。キャップは、ある半導体コアと組み合わせられた際に、発光が生じるようでなくてはならない。最も広く用いられている市販のQDのうちの2つは、CdSeまたはCdTeのコア、およびZnSのシェルを備え、405nm〜805nmの範囲の発光を有する。
【0067】
連結基は、任意の安定した物理的または化学的結合等により、QDのキャップ表面に連結可能な任意の有機基を指す。一態様において、連結基は、QDの発光性を失わせることなく、QDを水溶性にすることが可能である。したがって、連結基は、親水性部分を含む。一局面において、連結基は、共有結合によってキャップに連結され得、親水性部分を露出させるように、キャップに連結される。適切な親水性連結基は、例えば、カルボン酸またはその塩、スルホン酸またはその塩、スルファミン酸またはその塩、アミノ置換基、四級アンモニウム塩、およびヒドロキシを含む。別の局面において、QDは、シェルの方向に内側を向いた疎水性部位および外側を向いた親水性部位を含むポリマー層でシェルをキャップすることにより、水溶性となり得る。親水性層は、タンパク質および抗体またはオリゴヌクレオチドとさらにコンジュゲートされるように、-COOH基および-NH2基等の官能基を含むように修飾可能である。この点に関して、ChanとNie (1998年, (Science 281 :2016-8))、Igorら(2005年, (Nature Materials 4:435-46))、Alivisatosら(2005年, (Annu. Rev. Biomed. Eng. 7:55-76))、およびJaiswalら(2003年, (Nature Biotech. 21 :47-51))の記載があり、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0068】
QDは、標的部分とコンジュゲート可能である。標的部分は、対象となるバイオマーカーに特異的に結合し、対象となるバイオマーカーに特異的に結合するのであれば、抗体、ペプチド模倣物、ポリペプチドまたはアプタマー、核酸または任意の他の分子を含み得る。標的部分が抗体を含む場合、抗体は、好ましくは、炎症性疾患の発症および進行のあいだ調節不全となるバイオマーカーに特異的に結合する。一態様において、抗体は、炎症性腸疾患の発症および進行によって調節不全となるバイオマーカーに特異的に結合する。別の態様において、抗体は、潰瘍性大腸炎の発症および進行によって調節不全となるバイオマーカーに特異的に結合する。さらに別の態様において、抗体は、クローン病の発症および進行のあいだ調節不全となるバイオマーカーに特異的に結合する。本発明において対象となるバイオマーカーは、MPOあるいはIL-1αまたはTNFα等の炎症に関するサイトカインを非限定的に含む。
【0069】
別の態様において、QDは、核酸結合部分を含む標的部分とコンジュゲートされ得る。核酸結合部分は、DNA結合タンパク質等の、核酸に結合する任意の核酸、タンパク質、またはペプチドを含み得る。好適な核酸は、ステム・ループ構造を含む一本鎖オリゴヌクレオチドであり、親水性連結基は、一本鎖オリゴヌクレオチドの一方の端部に連結する。
【0070】
抗体または核酸は、任意の安定した物理的または化学的結合等により、直接的または間接的の任意の適切な手段で、QDに連結可能である。量子ドットのコンジュゲートは、Jaiswalら(2003年(Nature Biotechnol. 21 :47-51))に記載の、参照により本明細書に組み入れられる、受動吸着、多価キレート、または従来の共有結合形成を非限定的に含む種々の戦略により達成され得る。
【0071】
共有結合形成は、実施が最も簡単であるため、コンジュゲートに広く用いられている。抗体または核酸は、直接的、または1つまたは複数の共有結合を通じて間接的に連結基に連結する。抗体が、間接的に連結される場合、連結は、好ましくは、「リンカー」を用いて、すなわち、抗体または核酸を水溶性QDの連結基に結合させるのに用いることが可能な任意の適切な手段を用いて行われる。リンカーは、水溶性QDを非水溶性にするものであってはならず、QDの発光に悪影響を与えてはならない。また、リンカーは、連結した抗体または核酸の機能に悪影響を与えてはならない。コンジュゲートがインビボで用いられる場合、リンカーは、望ましくは、生物学的に適合している。中間体クロスリンカー等のクロスリンカーは、抗体をQDの連結基に結合させるのに用いることが可能である。エチル-3-(ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDAC)は、中間体クロスリンカーの一例である。本発明において用いるための中間体クロスリンカーの他の例は、当技術分野において公知である。例えば、Bioconjugate Techniques (Academic Press, New York, (1996))を参照のこと。
【0072】
一態様において、QD上のアミン基が、クロスリンカー分子を含むマレイミド基で処理される。これらの「活性化された」QDは、抗体分子全体と直接コンジュゲートされ得る。しかし、直接コンジュゲートは、対象となる抗原への抗体のアクセスを制限する立体障害が起こり得る。短いリンカーが立体障害の問題を起こし得る、または、そうでない場合でも標的部分の機能に影響する例において、例えば、当技術分野において周知の手順を用いて、約10個の原子〜約20個の原子のスペーサーを付加することにより、リンカーの長さを伸ばすことが可能である。1つの可能なリンカーは、親水性であり、標識オリゴヌクレオチドを調製するのに広く用いられている、活性化されたポリエチレングリコールである。
【0073】
ストレプトアビジン-ビオチン反応により、ビオチン化されたタンパク質/生体分子をストレプトアビジン被覆QDに連結する別のコンジュゲート方法を提供する。
【0074】
当業者であれば、生体試料中の対象となる1つより多い抗原またはタンパク質を検出することが望ましいと理解できると考えられる。したがって、特定の態様において、2つの違った抗原またはタンパク質に向けられた少なくとも2つの抗体が用いられる。1つより多い抗体が用いられる場合、これらの抗体は、個別の抗体試薬として順番に、または抗体カクテルとして同時に単一試料に添加し得る。あるいは、個別の抗体を、同一の源からの別々の試料にそれぞれ添加して、結果として得られるデータを蓄積し得る。
【0075】
量子ドットは、ヘテロバイオ官能性クロスリンカー4-(マレイミドメチル)-1-シクロヘキサンカルボン酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(SMCC)を用いて、抗体断片とコンジュゲートされる。市販の量子ドット(Invitrogen Corporation, Carlsbad, CA)は、その表面に-NH2基を備える。これらのアミノ基は、クロスリンカーSMCCと反応して、QD表面上にマレイミド基を生成する。対象となる抗体は、DTT(ジチオトレイトール)によって還元され、二硫化物結合が分解して、チオール(-SH)基が生成される。最終的なコンジュゲートは、活性化されたQD上のマレイミド基と抗体上のチオール基との間に形成された共有結合に基づいていた。抗体とQDとの間のコンジュゲート比率は、1:4であり、コンジュゲート手順終了時の反応の典型的な収量は500μl〜800μlのいずれかである。
【0076】
表1は、上記に概略を示した手順を用いて、抗体とコンジュゲートしたQDの一覧を示す。
【0077】
(表1)様々な抗体とコンジュゲートした異なる色のQD

【0078】
QDを蛍光体として用いた検出
本明細書において上記開示した内容によると、当業者であれば、対象となるタンパク質、核酸、または生体分子を同定または検出するのに、当技術分野において利用可能な任意の方法をどのように利用するかが理解できると考えられる。対象となる分子を検出する方法は、バイオマーカーであるタンパク質または核酸の量または存在を判定する任意の方法を含む。
【0079】
一態様において、対象となるバイオマーカーをタンパク質レベルで検出する。この方法は、QD-抗体コンジュゲートに試料を接触させて、コンジュゲートの抗体をバイオマーカーであるタンパク質に特異的に結合させる工程、およびコンジュゲートが試料中のタンパク質に結合していることを示す蛍光を検出する工程を含む。
【0080】
別の態様において、対象となる標的分子を核酸レベルで検出する。この方法は、QD-コンジュゲートに試料を接触させて、コンジュゲートの標的部分を核酸に特異的に結合させる工程、およびコンジュゲートが試料中の核酸に結合していることを示す残留蛍光を検出する工程を含む。好ましくは、コンジュゲートの標的部分は核酸である。あるいは、コンジュゲートの標的部分は、DNA結合タンパク質等の、核酸に結合するタンパク質またはその断片である。
【0081】
用語「プローブ」は、特定の意図された標的分子、例えば、標的分子によりコードされるまたは標的分子に対応するヌクレオチド転写物またはタンパク質に選択的に結合可能な任意の分子を意味する。プローブは、当業者によって合成されてもよく、適切な生物学的調製により得られてもよい。本発明において意図されるように、プローブは、特定のサイズのQDとコンジュゲートされ得る。プローブとして用いることが可能な分子の例は、RNA、DNA、タンパク質、抗体、および有機分子を非限定的に含む。
【0082】
また、本発明は、試料中の2つ以上の異なる標的分子および/またはある標的分子の2つ以上の領域を同時に検出する方法を提供する。方法は、QDコンジュゲートのセットを用いることを含み、セット内の各コンジュゲートは、試料中の異なる標的分子または標的分子の異なる領域に特異的に結合する標的部分に連結される、異なるサイズのQDまたは異なる組成のQDである。一態様において、コンジュゲートのQDのサイズは、2nm〜6.5nmの範囲にあり、このサイズは、青から赤の範囲の発光を可能にする。特定の色発光に対応するQDサイズは、当技術分野において周知である。このサイズの範囲内なら、異なるサイズのQDが単一波長で励起可能であり、異なるサイズのQD間の発光の相違が検出可能である限り、任意の様々なQDサイズを用いることが可能である。別の態様において、異なるサイズのQDが、狭く均整のとれた発光ピークを有するキャッピング層を有する。同様に、異なる組成または構成のQDが、特定の色発光に関して変化する。組成が異なるQDが単一波長で励起可能であり、異なる組成のQD間の発光の相違が検出可能である限り、任意の様々なQD組成を用いることが可能である。試料中の異なるバイオマーカーの検出は、コンジュゲートのセットを構成する、組成が異なるQDまたは異なるサイズのQDによって発生される多色発光によって行われる。この方法により、1つまたは複数の単一タンパク質の異なる機能ドメインを、例えば、見分けることが可能となる。
【0083】
したがって、本発明は、試料中の2つ以上の異なるバイオマーカーおよび/またはあるバイオマーカーの2つ以上の領域を同時に検出する方法を提供する。方法は、水溶性QDと抗体とのコンジュゲート2つ以上に試料を接触させる工程を含み、2つ以上のコンジュゲートは、異なるサイズまたは組成のQD、および試料中の異なる分子またはある標的分子の異なる領域に特異的に結合する抗体をそれぞれ含む。方法は、発光を検出する工程をさらに含み、ある色の発光の検出は、コンジュゲートが試料中の分子に結合していることを示す。
【0084】
診断アッセイ
本発明は、IBD、UC、およびCDを含む任意の炎症性疾患の検出を行う様々な診断アッセイに非限定的に適用される。本発明は、以下の手順で、IBD等の炎症性疾患を検出するのに用いることが可能である。検査しようとする試料を患者から取り出し、ある病態に関連づけられたバイオマーカーに特異的に結合する標的部分とコンジュゲートされた水溶性QDに試料を接触させ、発光を検出する。発光の検出は、IBD等のある病態の存在を示す。これらの場合、試料は、細胞または組織の生検材料、あるいは血液、血清、尿、または便試料等の体液であり得る。
【0085】
バイオマーカーは、ある疾患に関連づけられたタンパク質、核酸、または酵素であり得、その検出は、ある病態の存在を示す。病態の検出は、タンパク質の過剰産生または過小産生の検出のように定量的である場合もあり、タンパク質の非野生型(変異または切除)形態の検出のように定性的である場合もある。定量測定に関して、好ましくは、QDの発光コンジュゲートが、適切な標準のセットと比較される。適切な標準のセットは、例えば、本発明のQDコンジュゲートを、様々な所定の濃度の検出済のバイオマーカーと接触させたものを含む。当業者であれば、例えば、試料中のタンパク質の量の推定は、本明細書のいずれかにおいて詳細に記載されるように、試料の発光と適切な標準の発光とを比較することによって決定可能であることが理解できると考えられる。
【0086】
検査装置
IBD、UC、CD、または他の炎症性疾患を示す抗原を検出する量子ドットを用いて、1つまたは複数の量子結合免疫吸着アッセイ(QLISA)法を実施する装置が提供される。装置は、診療所で用いるためのキット、または診断ラボ用の設備の形態で提供可能である。装置は、IBD、UC、CD、または他の炎症性疾患に対するバイオマーカーの発現を特異的に検出する少なくとも1つの試薬、(例えば、抗体、核酸プローブ、等)を含んだ任意の製造物(例えば、パッケージまたは容器)を含む。
【0087】
QLISA技術は、ホースラディッシュペルオキシダーゼ媒介化学発光ベースの酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)ではなく、望ましい抗原または抗体を検出および定量化するための蛍光ナノ粒子(量子ドット)とコンジュゲートされた抗体を利用する。したがって、ピコモル濃度でMPOを検出するのに必要な試料の体積は、50μL(96ウェルプートELISAセット)から、約1μL〜約5μLの範囲まで減少する。MPOを捕捉する抗体は、従来のELISAまたは他の免疫学的アッセイ技術で用いられてきた非特異的結合方法とは異なり、基体に共有結合する。実験装置は、溶液および動物試料中でピコモル濃度でMPOを検出することが可能であると分かった。
【0088】
一態様において、装置は、少なくとも2つの違ったバイオマーカーの発現を特異的に検出する抗体等の少なくとも2つの試薬を含む。各抗体は、個別の試薬として、あるいは、異なる対象となるバイオマーカーに向けられた抗体のすべてを含む抗体カクテルとして、装置に提供され得る。また、任意のまたはすべての試薬が、封止容器等の、外部環境から保護する容器に入った状態で提供され得る。
【0089】
陽性対照および/または陰性対照は、本発明に従って用いられる試薬の活性を有効にし、使用を正すために装置に含まれ得る。対照は、対象となるバイオマーカーの存在に関して陽性または陰性のいずれかが分かっている、ガラススライド等の上に固定された組織片や細胞等の試料を含み得る。対照の設計および使用は、当業者の通常の能力内で標準かつ順当なものである。
【0090】
さらに、当業者であれば本発明の方法における任意のまたはすべての工程が、手動または自動で行われ得ることが理解できると考えられる。したがって、身体試料の調製工程、試料の染色工程、およびバイオマーカー発現の検出工程は、自動化され得る。
【0091】
一態様において、炎症性腸疾患のロバスト、高感度、かつ特異的で、早期の検出を可能とする非侵襲的な測定技術を用いて、糞便中のミエロペルオキシダーゼ(MPO)、インターロイキン1α(IL-1α)、腫瘍壊死因子(TNF-α)、カルプロテクチン、ラクトフェリン、フィブロネクチン、抗サッカロマイセス・セレビシエ(ASCA)、核周囲型抗好中球細胞質抗体(pANCA)を測定するために装置またはキットが提供される。装置は、QD固定化および蛍光検出を用いて、生体液内の炎症性バイオマーカーを測定可能にする。
【0092】
図1に概略的に示される一態様によると、装置は、分析しようとする試料を保持する毛細管と;毛細管に接続され、毛細管に試料を導入する針と;試料中の抗原に結合されたQDコンジュゲートに励起エネルギーを与える、焦点レンズを有するまたは有さないLED等の光源と;信号対雑音比を向上させる光学検出器および広帯域フィルタを含む検出システムとを含む。一態様において、光源は、紫外線LEDである。あるいは、LEDの代わりに、1つまたは複数のレーザダイオードを用いることが可能である。別の態様において、光源は、バイオレットレーザである。さらに別の態様において、光源は、ブルーレーザである。
【0093】
毛細管ベースのアッセイは、従来の96ウェルプート方法と比較して、分析物の必要量が少ないこと、およびそれに伴って、必要となる試薬の体積が小さいことを含む利点を提供可能である。ナノ流体処理システムの複数の開発を合わせることにより、毛細管ベースのマイクロリアクタおよびセンサーをハイスループット環境で用いることが可能となった。しかし、毛細管の形状が円筒状であることに由来して、(比色定量アッセイまたは蛍光定量アッセイに対して)光を適切にカップリングおよび集光する能力にはいくつかの解決すべき問題が存在するため、毛細管ベースのアッセイ検出の最終的な感度が制限されていた。これらの問題のいくつかは、より高出力かつより高感度の光学系により解決可能であり、先行技術は、これらの解決すべき問題に対して、非常に高価な特別仕様の光学システムおよび/または電気化学的器具を用いて、フェムトモルレベルの検出感度を毛細管アッセイで達成可能にすることにより、アプローチしていた。本明細書において開示される進歩は、ミエロペルオキシダーゼ(MPO)を感度100pMかつ総体積約1μLおよび約5μl以下で検出することが可能な、安価な毛細管ベースのアッセイの設計および実施である。
【0094】
自立式毛細管は、フルスケールのラボオンチップ式装置の開発と比較して、製造および処理の簡易性にすぐれている。毛細管ベースの方法は、微量の爆薬を検出する免疫センサーとして、ハイスループットの自動ゲノム分析システムとして、例えば血漿中のパクリタキセルを測定する薬剤アッセイとして、マウスに肝炎を起こすヘリコバクター・ヘパティカス(helicobacter hepaticus)の検出のために、既に用いられている。上記の例は、主として、蛍光スペクトル観測と組み合わせた免疫学的アッセイである。様々な生体分子および生化学の検出に用いられる免疫学的アッセイは、抗原とその抗体との間の相互作用に基づき、抗体と抗原との相互作用に依存した高い特異性を有している。この特異性により、1つの毛細管中の多数の分析物を検出するアッセイの開発が可能となる。酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)は、信号増幅力とともに抗原-抗体の特異性および化学作用に基づいた一般的に行われているバイオアッセイである。従来のELISA技術の検出は、比色滴定および蛍光の両方を用いることが可能であるが、主として化学発光によって達成される。
【0095】
蛍光ベースのELISAは、多重化(multiplexing)により、1つより多い抗原または抗体を検出する能力を有する。多重化は多数のマーカーを検出する有利な方法ではあるが、発光帯域において漏れ込み(bleed through)が生じること、多数の励起および発光フィルタ対が必要であること、蛍光体の蛍光寿命が短いこと、高出力光源が必要であることのために、これまで、ELISA方法の解決すべき問題であった。高度化されたフローサイトメトリーシステム(FACS)において、このような漏れ込みはソフトウェアで補われているが、複雑なデータ分析および高価器具が必要となる。量子ドット(QD)の最近の開発により、これらの半導体ナノ結晶特有の光学特性による光退色が有意に減少可能となっている。これらの特性は、発光極大に関わらない単一の励起極大、およびいかなる漏れ込みもない多重化が可能となる狭い発光スペクトルを含む。量子ドット(QD)は、生物学、特に、シグナル伝達経路を追跡し理解する生細胞イメージングにおいて有意に適用されることが見出だされている。市販されているQDは、ポンドあたりに基づくと高価であるが、程々に高感度なCCDカメラまたは光子計数器と組み合わせたナノリットルからマイクロリットルの体積で反応を行う能力により、費用効果の高いアッセイが製造可能となり、アッセイを実施するのに必要なQDの量が少ないために、単位質量あたりの原材料コストが低く保たれる。
【0096】
ガラスベースの毛細管およびポリマーベースの毛細管の両方が、免疫学的アッセイを実施するのに用いられている。具体的には、溶融シリカ、ポリスチレン、ポリメチルペンテン、およびポリメチルメタクリレートが、0.5〜5μLの範囲の体積のバイオマーカーを推定する毛細管バイオセンサーの作製に用いられている。365nmに至るまで光を伝達可能な、ポリカーボネートを含む任意の透明ポリマー材料を、毛細管作製に用いることが可能である。ポリマー毛細管は、抗体または抗原を固定化する適切な基体を提供する表面上に、即座に利用可能な官能基があるため、特に対象となる。また、光化学的な方法を用いて、ポリマー材料を官能化可能である。いくつかの戦略が、主として蛍光体の励起、次いで放出された光子の収集に重点を置いた毛細管における固相免疫学的アッセイによる、低濃度の抗原を検出するために考案されてきた。このようなアプローチの1つでは、出射信号を収集するのにポリマー/液体インターフェースのインターフェースにおけるエバネセント場を有効活用している。この特定の方法では、毛細管材料が導波管として機能することが必要となる。PMMAの優れた光学特性により、PMMA毛細管を導波管として使用し、分子の光学特性を測定するセンサーを作製することが可能となる。
【0097】
本明細書において開示される装置を用いたQLISA法の1つでは、ピコグラムからナノグラムという低いレベルで、抗原を捕捉し、分析することが可能である。図3を参照して、一態様において、方法は、未処理のポリメチルメタクリレート(PMMA)毛細管を供する工程、毛細管を抗原で被覆する工程、疾患に特異的ではない抗原をブロッキングする工程、および疾患に特異的なコンジュゲートを残りの抗原に結合させる工程を含む。別の態様において、方法は、PMMA毛細管を官能化する工程、毛細管内で測定したい抗原に特異的な適切なポリクローナル抗体をコンジュゲートする工程、抗原に特異的な量子ドットタグ付き二次抗体に抗体-抗原複合体を反応させる工程、量子ドットを励起する光源に毛細管を曝露する工程、および量子ドットの蛍光を測定することにより、抗原の濃度を判定する工程を含む。特に、未処理のPMMA管は、抗原で被覆され、非特異的な抗原は、当技術分野において周知のように免疫グロブリン等の抗体でブロッキングされ、特異的な抗原は、量子ドットにコンジュゲートされた抗体に結合される。図6A〜図9、図11A〜図11D、および図16A〜図16Bの様々な構成に概略的に示すように、励起光子は、毛細管の一端または両端あるいは側壁を通じて直接提供可能であり、放出された光子は、直接または光ファイバーケーブルを介して、分光器またはCCDカメラに収集可能である。あるいは、光電子増倍管(PMT)、アバランシェフォトダイオード検出器(APD)、Multi-Pixel Photon Counter(MPPC)を非限定的に含む別の光学発光検出器も、用いることが可能である。
【0098】
装置は、ピコモル量の分析物を検出するための蛍光プローブとしてQDを用いた、低コストPMMAマイクロ毛細管バイオセンサーを含む。PMMAは、その光学特性および抗体固定化用に表面を選択的に官能化する能力のために、好適な毛細管材料である。毛細管の寸法が、内径(ID)250μm、長さ2.5cmの場合、約1μlの体積が許容される。このような毛細管は、市販されている。単一のUV光で異なる波長の発光を生じさせるQDを励起する能力と組み合わせた高量子収量のQDにより、レポータープローブの選択が導かれる。本明細書において記載される安価な毛細管ベースの免疫蛍光アッセイが、胃腸管のものを含む炎症性疾患で過剰発現する炎症性マーカーであるミエロペルオキシダーゼの濃度を検出し、推定するのに用いられた。
【0099】
ピコモル量の分析物を検出するための蛍光プローブとしてのQDと組み合わせたPMMAマイクロ毛細管バイオセンサーの使用は、ミエロペルオキシダーゼ(MPO)の検出に有効であることが示されている。PMMAの選択は、その光学特性および抗体固定化用に表面を選択的に官能化する能力に基づいたものであった。毛細管の寸法が、内径(ID)250μm、長さ2.5cmの場合、体積が〜1μlまでの使用が可能であり、これらの毛細管は、市販されている。単一のUV光で異なる波長の発光を生じさせるQDを励起する能力と組み合わせた高量子収量のQDにより、レポータープローブの選択が導かれる。本明細書において記載される安価な毛細管ベースの免疫蛍光アッセイは、胃腸管のものを含む炎症性疾患で過剰発現する炎症性マーカーであるミエロペルオキシダーゼの濃度を検出し、推定するのに有用であることが分かった。したがって、低コストで、ロバストな免疫蛍光センサーが開発される。該センサーは、1〜2μLの分析物で作動し、ナノモル以下の濃度を検出することが可能である。本明細書において記載される毛細管免疫学的アッセイの方法および設計は、感度に関してさらなる改善が可能であるが、多くの臨床的応用に対して、本明細書において示される感度は、疾患の個体から健康な個体を見分けるのに十分である。感度を上げるための改善は、化学作用による最適化アプローチとより精巧な光学系との両方で可能である。しかし、本開示の焦点は、先行技術のいずれよりも実質的に進歩した低コストで設置が簡単なアッセイにある。
【0100】
図6Aおよび図6Bに示すように、検査装置は、QDコンジュゲートでタグ付けされた試料を含有するための毛細管と、量子ドットを励起するLED光源と、量子ドットによって発光された蛍光を集中させる球面鏡または平面鏡と、蛍光信号を検出および測定する光学検出システムとを含む。あるいは、円筒または放物面形状の反射器または鏡を用いて、量子ドットからの蛍光発光集中させることが可能である。光学検出システムは、信号の質を向上させる広帯域フィルタを含むことが可能であり、求められる感度に応じて、フォトダイオードベースの検出器、1つまたは複数の光電子増倍管を備えた分光器、CCDカメラ、または他の光学検出システムを利用可能である。一態様において、QD強度は、QDバイオコンジュゲートのフェムトモルオーダーの濃度を判定可能な標準の蛍光量計(Fluoromax 3)を用いて測定される。図7は、作動中の装置の写真を示す。
【0101】
図8は、毛細管の周囲に配置された複数のLEDを含む光源を示し、図9は、毛細管の周囲に配置されたレンズによって合焦される複数のLEDを含む光源を示す。レンズを有するまたは有さない多数のLEDを用いることにより、毛細管の単位体積あたりの供給電力をより高めて、量子ドットによって発光される蛍光の強度が増大可能となる。図8および図9に概略的に示すような装置の例示的な一態様において、装置全体が、約1インチ角の寸法を有する。図10は、図8のような構成によって得られる処理前画像、およびQD蛍光強度を判定することが可能な処理後画像を示す。
【0102】
図11A〜図11Dは、QLISA分析法を実施する装置の様々な構成を示す。図11Aにおいて、毛細管は、微調整装置によって、一方の端部が適所に保持されており、LED光源が、該管の反対の端部に設けられている。球面鏡は、少なくとも管の一部の周囲に設けられて、量子ドットの蛍光発光をCCDベースの光学検出システムに集中させる。図11Bにおいて、第1のLEDが管の一方の端部に設けられ、第2のLEDが該管の反対の端部に設けられて、励起エネルギーひいては量子ドットの蛍光発光を増強可能なように、微調整装置が管の端部から離れて配置される。図11Cにおいて、LED光源が、毛細管に隣接して設けられて、量子ドットに励起エネルギーを提供し、CCDベースの検出システムが、管の一方の端部からの蛍光発光を測定する。図11Dにおいて、少なくとももう1つのLED光源を追加することにより、図11Cの構成が強化される。一態様において、装置の構成は、測定毎に1つの毛細管を用いる。
【0103】
QLISA法
図2は、IBDを診断するための例示的なQLISA法を示す。糞便試料が、検査装置に提供される。閾値検査として、MPOおよび/またはカルプロテクチン(および/またはラクトフェリン)の有無を検出して、患者が過敏性腸症候群(IBS)または炎症性腸疾患(IBD)のいずれに罹患しているかを判定することができる。IBDを示す試料に対して、MPOおよび/またはカルプロテクチン(および/またはラクトフェリン)の量を定量化して、状態の重篤度を判定することができる。IBD状態がクローン病(CD)または潰瘍性大腸炎(UC)のいずれであるかをさらに診断するために、ASCA(CDを示す)およびpANCA(UCを示す)を測定するのに装置を用いることが可能である。図2のフローチャートは、検出工程と測定工程とが順番に行われることを示すが、各抗原が本明細書において記載されるように異なる波長QDコンジュゲートでタグ付けされるのであれば、QLISA法は、MPO、カルプロテクチン、ラクトフェリン、ASCA、pANCA、および任意の様々な他の抗原の存在および濃度の同時検出に適用可能である。
【0104】
抗原を検出するのに必要な試料の量は、ELISA等の既存の方法が50〜100マイクロリットルを必要とするのに対して、QLISAを用いた場合では、100ナノリットル〜1.5マイクロリットルの範囲である。1マイクロリットルの動物の糞便試料において、ELISAが1.25〜62.5ピコモルの濃度を検出可能であるのに対して、QLISAを用いた実験では、100ピコモル〜10ナノモルという低濃度の抗原が検出可能であることが示された。一次固定化毛細管で開始する場合、QLISA分析は、およそ3時間で行うことが可能である。一態様において、抗体で被覆された特別仕様のマイクロカラム(容量0.025μl)および迅速かつ簡単な検出のために即時に使用可能な試薬を有する単一アッセイ(IBDに対する糞便試料中のMPOおよび他のマーカー)を含む検査キットが提供される。
【0105】
本明細書において、例示的な手順が、MPO抗体に関して記載される。なお、カルプロテクチン、ラクトフェリン、p-ANCA、およびASCAを非限定的に含む他の選択されたバイオマーカーに関しても、実質的に同一の手順を用いることが可能である。
【0106】
QLISAを用いた固定化アッセイは、サンドイッチアッセイまたは競合アッセイに基づいて望ましいバイオマーカーのナノスケールの量を検出する検査装置またはキットで実施可能である。図4に示すようなサンドイッチQLISAアッセイにおいては、試料が2つの抗体間に挟まれる。MPOに対するモノクローナル抗体は、一次抗MPO抗体とQDコンジュゲート抗MPOモノクローナル抗体との間に、MPO(抗原)を挟むのに用いられる。この方法は、簡単、迅速であり、診療現場における業務に供されている。本方法の利点は、生体試料中に存在するMPOを精製する必要がなく、混合物中に存在する非コンジュゲートQDは、MPOに結合せず、洗浄中に除去されることにある。この検出方法が最小限のMPO結合しか必要としないため、アッセイは、フェムトモルからピコモルのレベルでMPOを検出するのに最適化可能である。適切に官能化されたポリスチレン(PS)、ポリビニルアセテート(PVA)、またはポリ塩化ビニル(PVC)基体を用いることが可能である。一態様においては、ポリスチレン毛細管が用いられ、毛細管の内壁が、MPOに特異的な非コンジュゲート一次モノクローナル抗体で被覆される。MPOを含有する可能性のある試料が、毛細管へ注入され、次いで、毛細管が洗浄されて、カラム上の抗体に連結しなかった過剰のいかなるMPOをも除去する。QD-MPO抗体コンジュゲートが、カラムを通過し、毛細管と相互作用可能となる。結合は、既に固定化されているMPOとQD-MPO抗体コンジュゲートとの間に生じる。毛細管を再洗浄して、非コンジュゲートQDを除去する。
【0107】
図5に示すような競合QLISAアッセイにおいては、試料を、抗体と結合している公知の抗原と競合させる。競合アッセイにおいては、一次抗体が、ポリ塩化ビニル(PVC)毛細管の表面を被覆している。非標識MPOを含有する可能性のある試料が、毛細管へ注入され、MPOが一次抗体に結合する。次いで、QDコンジュゲートMPOが添加され、毛細管を被覆しているまだ利用可能な一次抗体に結合する。QDコンジュゲートは、非標識MPOによって未だ占領されていない結合部位であればどこでも、一次抗体に結合する。したがって、試料中に存在する非標識MPOが多ければ多いほど、カラム内で結合しているコンジュゲートMPOの量が少なくなる。
【0108】
また、毛細管を官能化する化学作用が実現可能な平面PMMAウェルプートを調製することによって量子ドットの利点を利用した、表面調製および固定化の方法が提供される。これらのウェルプートは、従来のELISAリーダーで読み取り可能である。本明細書において記載される針と毛細管とを有する装置においてウェルプートは必ずしも有用であるとは限らないが、他の適用においてはより簡単に平面基体の使用へと変更可能である。
【0109】
ELISA測定および他の同様の診断技術の当業者であれば、サンドイッチアッセイや競合アッセイの技術を熟知していると考えられる。したがって、さらなる詳細な説明は必要でないと思われる。本明細書において示されるようなQLISA装置を用いることにより、QDコンジュゲートは、疾患活性指数と容易に相関しうる抗原発現を確実に検出し、測定することが可能である。これらのアッセイは、IDSだけではなく、移植拒絶反応(サイトカイン検出)、心臓疾患(MPO、CRP)、および関節リウマチを非限定的に含む、バイオマーカーの定量化を必要とする種々の状態にとって、価値があり、有用である。
【0110】
本明細書において記載されるように、量子ドットは、MPO、IL-1α、TNFα、ラクトフェリン、カルプロテクチン、および非特異的な抗体を非限定的に含む抗体とコンジュゲート可能である。さらに、大腸炎疾患活性は、MPO単独の発現、またはMPO、IL-1α、およびTNFαの組み合わせの発現と相関しうる。発現は、QDコンジュゲートの蛍光強度によって測定可能であり、その発現は、大腸炎のDSSモデルにおける疾患活性指数と相関していた。特に、抗体で被覆されたマイクロ毛細管に対して、検量線が作成可能である。
【0111】
IDSに対するバイオマーカーを定量化する実験研究を行った。選択されたバイオマーカーは、対応するQDコンジュゲートで可視化し、その発現を簡単な画像定量化技術を用いて定量化した。結果は、炎症が悪化するのにつれてバイオマーカーの強度が増大することを示した。MPOの定量化された強度と臨床のパラメータに基づく疾患活性指数との間には、図12に示すような優れた相関関係が得られた。他のバイオマーカーに対しても、同様の相関関係を得ることが可能である。
【0112】
図13を参照すると、MPOは、溶液中100ピコモルレベルの低濃度でうまく捕捉されていた。濃度が分かっているMPOを、PMMA毛細管の表面に固定化されたポリクローナル抗体によって捕捉した。MPOに対するモノクローナル抗体を、QD(λem=605nm)とコンジュゲートし、捕捉されているMPOと反応させた。シリンジポンプを用いて、毛細管内で、過剰の抗体を洗浄し、非特異的な結合を阻害するように表面をブロッキングした。次いで、単色CCDカメラを用いて、毛細管を撮像し、MPO濃度の関数として平均強度を求めた。
【0113】
図13は、蛍光強度の増大を、MPO濃度の関数として示す。80mW/cm2UVLEDを光源として用いた場合、MPOの最低検出可能濃度は95%信頼区間で100ピコモルレベルのであることが分かった。最低検出可能濃度は、信号対雑音比を増大させる工程を実施することにより、さらに低くすることができる。特に、現行の光学システムでMPOを捕捉するQLISAアッセイの解像度は、およそ10ピコモルレベルであることが分かっている。光学システムの向上により、解像度をさらに上げることが可能である。解像度が高ければ高いほど、感度が最も重要である状況において、例えば癌の早期検出においてQLISA法が有効になる。
【0114】
他のタンパク質への非特異的な結合の存在下でMPOを検出するQLISAプロトコルの能力を、動物試料を用いて示した。図14は、IBDが疑われる疾患に罹患している動物の糞便からのスパイク試料におけるMPOの濃度を示す。対照試料と10nmのMPOスパイク試料との間の統計的に有意な差は、開発したプロトコルを動物試料に用いることが可能であることを示す。同様に、官能化量子ドットは、組織中のミエロペルオキシダーゼ(MPO)、インターロイキンlα(IL-1α)、および腫瘍壊死因子-α(TNF-α)の存在を単独または組み合わせで量的に評価するのに用いられており、大腸炎のデキストラン硫酸モデルにおける臨床の疾患活性とバイオマーカー発現との相関関係を示した。
【0115】
実験結果
MPOを検出するためのアプローチの1つに、図15のフローチャートに示すサンドイッチアッセイがある(なお、フローチャートに示すようなMPOの検出は、ラクトフェリンの検出で補足可能である)。つまり、ポリクローナルMPO抗体(pAb)が、PMMA毛細管(捕捉抗体)の内表面に固定化される。対象となる試料由来のMPOは、このpAbによって捕捉され、表面上に固定化される。QD-mAb複合体を追加することで、蛍光によるMPO検出が可能となる。
【0116】
PMMA表面の即座に利用可能な官能基およびPMMAの優れた光学特性に起因して、高感度なアッセイでの使用にPMMA毛細管(pCAP)を選択した。本明細書において開示される実験で用いられた毛細管は、Paradigm Optics Inc.から得られた。PMMA毛細管は、外径500ミクロン、内径250ミクロンであった。毛細管は、実験によって官能化の前または後に、長さ3cmに切断され、特別仕様のバネ搭載ホルダーを用いて、伸ばした状態で保持された。ホルダーにより、PMMA毛細管の通常の傾向である「曲がり」をなくした。
【0117】
PMMA毛細管の官能化は、公知の方法に従い、毛細管の内壁上でメタクリレートのアルカリ性エステル加水分解によって行った。つまり、60℃の1N NaOHを蠕動ポンプ(100μL/分)を用いて1時間PMMA毛細管に通し、1×PBSバッファー(pH7.4)で洗浄した。本工程により、PMMA毛細管の表面上のアクリル酸エステル基が加水分解され、COOHで終端することになる。これは、MPO抗体を毛細管の内壁に共有結合させるのにきわめて重要である。ウサギ抗ヒトポリクローナルMPO抗体を、ABD Serotec, Raleigh, NC, USAより購入した。次いで、官能化PMMA毛細管を、EDC/NHS (104.7mM EDC 21.7mM NHS)で5時間処理し、100nMの濃度でMPO捕捉抗体を投入した。PMMA毛細管の内表面上へのポリクローナルMPO抗体の最適な固定化は、4℃で16時間インキュベーションを行うことによって達成された。次いで、固定化されていない抗体を、pHが7.4の1×PBS中0.1%Tweenおよび0.03%アジ化ナトリウム(Sigma Aldrichより購入)含有バッファーで洗浄することにより、毛細管から除去した。その後、1×PBSバッファー中2%FBS含有ブロッキングバッファーを毛細管内へ導入して、タンパク質の非特異的結合を減少させ、過剰のブロッキングバッファーを、同一の洗浄バッファーで洗浄することにより取り去った。次いで、望ましい分析物である1μLの純粋MPOまたは適切に調製された動物試料を、Hamilton septum adapterを用いてpAb固定化毛細管内へ導入し、1時間室温でpAbと相互作用させ、洗浄バッファーを流量50μL/分で注入した。アミン末端にQD(λem=605nm、Invitrogenより入手)をコンジュゲートさせたモノクローナル抗ヒトミエロペルオキシダーゼ抗体(mAb)は、レポーター分子として用いた。QDのmAbへのコンジュゲートは、Invitrogenによって与えられたプロトコルに従って行った。MPOおよびmAbの両方を、Lee Biosolutions Inc.より購入した。次いで、濃度100nMのQDコンジュゲートmAb(QD-Ab)を、PMMA毛細管内へ導入し、室温で1時間インキュベートし、洗浄バッファーで洗浄した。毛細管からのQD-Ab強度を、図16Bに示しかつ以下に詳細に記載する光学セットで取得した。蛍光顕微鏡(Leica DMRX upright fluorescence microscope)を用いて、プロセスの様々な工程で毛細管をいくつか撮像し、固定化条件および反応条件を評価、最適化した。濃度が分かっているMPO溶液を用いて、検量線を作成して、最低検出限界(LDL)を評価し、アッセイの感度を確定した。毛細管内の液体の量を、毛細管内の液体プラグの長さを制限することにより、1〜2μLに限定した。次いで、QLISAアッセイを行い、溶液中および動物の糞便試料中でのMPO検出の感度および選択性を判定した。図15は、QLISAプロトコルに含まれる様々な工程をまとめて示す。
【0118】
光学システムの光学検出および最適化
毛細管を導波管として用いる実験(図16A)用に、PMMA毛細管(pCAP)を、より大きなガラス毛細管に挿入した。その際、円筒鏡を用いて、拡散蛍光を集光した。Nichia Corporationより入手した定格光強度10mWおよび80mWのUV-LEDを、励起源として用い、バンドパスフィルタ(600±20nm)を検出側に用いて、励起源からのいかなるUV信号をも除去した。非球面レンズ(f=6mm)は、UV光をスポットサイズ〜1.5mmに集光する目的を果たし、レンズホルダーの前に搭載したセパレーターで、毛細管をレンズの焦点面に位置させた(実験の構成に関わらない)。実験によっては3軸手動位置決め器を用いて、鏡またはUV源を配置した。様々な構成を、検査し、図16Aおよび図16Bに示すようなシステムの能力を評価した。比較的高濃度(>1nM)のMPOを含有する毛細管または非コンジュゲートQD溶液による検量実験を、単色CCDカメラ(COHU4900)で撮像した。1stVision Incorporatedより購入したfirewire単色CCDカメラ(Stingray, AVT-FS-033B)が、MPO濃度が1nMであるすべての毛細管で用いられた。フレーム取り込み装置(VCE-Pro, PCMCIA, Imprex Inc.)を用いて、BMP画像(640×480px)を収集した。CCDから収集した画像を分析し、QD-MPO-抗体の蛍光強度に基づいて、MPOの濃度の定量化が結果として得られた。毛細管の内壁間に位置する30×15画素ウィンドウ内の画素の平均強度値を、ImageJを用いて得た。
【0119】
信号対雑音比の最適化後、PMMA毛細管中のQLISAプロトコルの最低検出限界(LDL)を、溶液中MPO(0.1〜10nM)を捕捉することで判定し、得られた値を、検出のアッセイ感度とした。図16Aに示すように、λmax=375nmの単一低出力LED(LPLED)を導波管モードで用いた。抗体固定化工程を、100nMのpAbで行った。より高濃度のpAbを用いた場合、MPO検出の感度レベルにいかなる有意な上昇も示されなかった。すべての実験で用いたQD-Abの最高濃度は、100nMであった。ブロッキング工程に関わりなく、この濃度で非特異的結合が最大になると考えられる。
【0120】
図19Aは、溶液中のMPOの濃度と、低出力LED(10mW)を励起光源として毛細管を導波管モードで用いて得られた蛍光強度との間の非直線的な関係を示す。5つのPMMA毛細管を、各MPO濃度で用いた。300pMまでのMPOの検出が可能であるが、1nM未満の濃度では、システムの解像度が低下する。解像度の損失に関わらず、これらの低濃度で得られた強度値は、統計的に有意なレベルで対照よりも優れていた(〜100pMの対照および〜300pMの対照それぞれと比較して、t-検定のp値は、0.05および0.0065である)。
【0121】
図19Bは、0.3nMのMPOを検出するのに用いられたPMMA毛細管および対照PMMA毛細管の代表的なCCD画像を示す。QD蛍光の平均強度を、毛細管内の明るいバンドの画像分析により計算した。これら明るいバンドの上下にある暗い領域は、ガラス毛細管のUV吸収を表す。ガラス毛細管は、円筒鏡の焦点面にPMMA毛細管を配置させるのに用いた。
【0122】
より低濃度での解像度の損失は、主として、光学ハードウェア、すなわち最大積分時間(シャッター速度)が16msのアナログカメラであるCCDカメラにおける制限のためであると考えられる。さらに、このような低濃度では、蛍光測定は、QD範囲のいかなる異質性に対しても感度がより高くなる。また、PMMA毛細管は、ガラス毛細管ほど硬くはないため、鏡の焦点面および励起源に対する完璧な位置合わせが、非常に困難となる。この問題を解決するために、本発明者らは、撮像中、PMMA毛細管の支持体としてより大きなガラス毛細管を用いた。ガラス毛細管からの干渉を最小化するため、PMMA毛細管を、励起源の方向へ僅かに突出させたままにした。このアプローチはラボでは困難を伴いつつも効果があったが、商業的な実用化には、光学システム中に毛細管を手動で配置するのに必要な時間を短縮する、よりロバストな構成が必要となり得るはずである。しかし、商業的なセットアップに向けて導波管アプローチを最適化しようとするよりも、量子ドットに基づいたサイズ可変でより費用効果的な光学免疫センサーを開示する。特に、実験の結果は、従来研究に基づいて当業者が選択するであろう導波管アプローチが、最適ではなく、量子ドットの能力をうまく活用していないことを示す。さらに、低出力LED自体が、固有の蛍光を有し、さらなる感度損失を生じさせている。したがって、側面照射モードまたは構成(図16B)および高出力LED(HPLED)により、導波管モードでLPLEDを用いることの問題を実質的に回避し、アッセイの感度が向上することが分かった。さらに、側面照射モードは、光学位置合わせに関して時間がかかるという問題を最小化し、おそらくは解決するように最適化可能である。
【0123】
図20は、高出力LED(80mW)をUV励起源として用いた、導波管モードと比較した場合の励起モード、すなわち側面照射の効果を示す。PMMA毛細管に、濃度が分かっているQD溶液を投入し、液体プラグの総体積〜1μLで両モードで撮像した。濃度100ピコモルの(0.1nM)未満では差異が減少するものの、側面照射の利点が明らかに分かった。
【0124】
開示されたシステムにおいてPMMA毛細管を導波管として用いることによる検出感度の損失は、いくつかの要因に帰することができる:1)導波管モードにおいて光学的な位置ずれがあり、カップリング効率を低下させたこと;2)経路長さが不十分であり、蛍光体積を減少させたこと;そして最も重要な点であるが、3)PMMA/溶液インターフェースで利用可能なQDが少ししかないこと(エバネセント場の侵入深さが、表面から30〜300nmであるため、その範囲にあるQDのみが励起される)。
【0125】
一方、側面照射では、体積〜50nL(ビーム径=1mm)のほとんどすべてのQDが励起されることになる。これは、比較的高濃度(>100pM)の場合の、2つの照射モード間の強度で観測された差異の主たる理由となり得る。濃度が50pM範囲に近づくにつれ、強度の差異は、実質的にゼロとなる。これは、導波管として機能している毛細管が単一分子スペクトル観測に対する完璧な解決法となり得るにもかかわらず、簡易性および濃度がより高い場合のより優れた性能のために、側面照射がより良い選択となることを示している。単一分子よりも高くはあるが、これらの濃度レベルはいまだナノモル検出範囲にあり、人間の疾患のバイオマーカーに関連づけることが可能である。
【0126】
MPOおよびアッセイ最適化に適用されるQLISAプロトコルの特異性
図17A〜図17Cは、様々な濃度のMPOを用いてQLISAプロトコルを完全に実施した後の毛細管の光学顕微鏡写真を示す。図17A〜図17Fは、毛細管から均質な蛍光があること、そして最も重要なことには、QDの濃度が増加しても、明るいスポット(凝集物を示す)がないことを示す。図17A〜図17Cは、最適な濃度のブロッキング剤を用いたことによる効果を示す。図17D〜図17Fは、500nMのMPOを捕捉した際にブロッキングされなかったPMMA毛細管、および調製の間ブロッキングされなかった対照試料を示す。より低濃度のMPOでも同様の反応が観察されるが、本例では、可視化が簡単であるため、ブロッキングバッファー添加前後の500nMのMPO画像のみを示す。
【0127】
PMMA毛細管の官能化では、Qd-Abの非特異的結合に寄与し得る空き部位が残るため、ブロッキング剤の非存在下でより高いQD強度の領域(図17D)が生じると考えられている。生物学上部分のほとんどが、いかなるpHにおいても荷電種であるため、標的種は、標的分子とセンサー基体との間の電荷間相互作用を介して、基体に結合すると考えられる。これらの電荷間相互作用とは異なり、抗体間相互作用は非常に特異的であるため、バイオセンサー作製には、この非特異的結合を阻害する工程が必ず含まれる。NaOHによる毛細管の官能化により、PMMA表面はCOOHで終端し、これは、次いで、pAbを毛細管の内壁に共有結合させるのに用いられる。ブロッキングバッファーに加えられたウシ胎児血清(FBS)は、非特異的にPMMA毛細管の内表面の空き部位に結合し、MPOが相互作用可能なpAb部位を残す。あるいは、毛細管を、血漿または紫外線光を用いて官能化可能である。
【0128】
非特異的結合に関連する問題は、PMMA毛細管特有のものではない。免疫センサーに用いられるホウケイ酸塩または溶融シリカ毛細管も、同様の問題を示している。アッセイに用いられるタンパク質と酵素との非特異的結合は、洗浄工程中に界面活性剤を用いることで、さらに減少可能である。図18Aおよび図18Bは、QLISAプロトコルにおける信号対雑音比を向上させる洗浄バッファーの効果を示す。図18Aの明るい蛍光スポットは、PMMA毛細管内壁へのQd-Abの非特異的結合に対応し、これらのスポットは、洗浄バッファー組成に界面活性剤が含まれた場合には消失した(図18B)。PMMA毛細管へのQd-Abの非特異的結合は、明るいスポットを生じさせる(図18A)。これらのスポットは、Tween(0.1%)含有洗浄バッファーでの洗浄後に消失した(図18B)。
【0129】
MPO検出限界を、以下のように判定した。図21Aは、側面照射を用いてピコモル濃度でMPOを検出するアッセイの性能を示す。毛細管上の様々な位置の蛍光強度を、トランスレーションステージ上に搭載した励起源を移動させて、収集した。これにより、毛細管を伸ばして配置した状態に保つ特別仕様のバネ搭載試料ホルダーに搭載された個々の毛細管から統計的に信頼できるデータを迅速に収集することが可能となる。
【0130】
代表的なCCD画像(図21B、100pMのMPOに結合された毛細管)は、信号対雑音比の向上、およびデータ取得方法の信頼性を向上するスポットフリーな画像を示す。これらの画像を、毛細管上の様々な位置で取り込んだ結果、蛍光信号の均一性が示された。CCD画像中に現れるバンドは、UV-LEDの構造自体の結果である。図21Cは、両システムにおける蛍光強度の変化をMPO濃度の関数としてまとめて示す。図には、側面照射方法が優れていることが明らかに示されている。対照毛細管の強度、すなわちバッファーで充填されるがQDを含有しない毛細管の強度を、PMMA毛細管の強度から差し引いて、図21Cに用いられるデータを得た。
【0131】
QLISAプロトコルに従って、動物の糞便試料中のMPOを検出した。検査にMatrix Metalloproteinase (MMP-13)を添加して、偽陽性の状態をシミュレートした。MMP-13は、炎症の場合に発現し得るマーカーであり、非特異的結合により、MPOに関する偽陽性の結果を導き出し得る。本発明の結果では、高レベルのMMP-13(1nM)による干渉が可能であることが示されたが、図23に示すように、MPOの強度自体の10%未満であった。したがって、プロトコルの特異性が90%より上だと予想される。QLISAプロトコルの特異性をさらに確立するため、この種の研究をIBDパネルの他のキーとなるマーカーでも行わなければならない。
【0132】
動物試料
ヒト炎症性腸疾患(IBD)に類似した症候を有する動物の糞便試料中に、ミエロペルオキシダーゼ(MPO)が存在することが分かっている。当技術分野において以前に確立されたプロトコルに従って、糞便試料からMPOを抽出した。つまり、重さを計った糞便試料を、12mMのEDTA、1%ウシ胎児血清(FBS)、プロテアーゼ阻害剤(0.2mMのAEBSF、1.4μMのE-64、13μMのベスタチン、0.09μMのロイペプチン、0.03μMのアプロチニン、0.1mMのEDTAからなる)、20%グリセロールおよび0.05%Tween20を補充した抽出バッファー(1×PBS、pH7.4)で、15分間4℃で消化した。消化工程後、安定した懸濁液が得られるまで、5000RPMで均質化した。均質化試料の消化を4℃で15分間継続し、4℃で30分間14000RPMで遠心分離した。遠心分離した試料から分離した上清を、本明細書において開示されるデータに用いた。1.0nMのMPOを糞便抽出物に添加して、スパイク実験を行った。
【0133】
開発されたMPOバイオアッセイの有効化における次工程では、臨床用試料をシミュレートする、より複雑なシステムにおいて、その性能を検査した。動物の糞便試料中に存在する、生物学的に関連のある様々な部分の存在は、サンドイッチアッセイの開発における主たる懸念事項であった。というのも、アッセイ全体が、抗原に対するポリクローナル抗体(捕捉抗体)およびモノクローナル抗体(レポーター分子)の特異性および交差反応性に左右されるからである。したがって、QLISAプロトコルの感度は、pAb/MPO/QD-Abサンドイッチにおける感度および相互の特異性に依存する。センサー基体と分析物との間の非特異的な相互作用を最小化するために化学作用最適化工程を行ったが、プロトコルおよび装置ロバスト性を、抗原の溶液よりも実際の試料で評価することは必須である。
【0134】
本明細書において開示されるQLISAプロトコルを、スパイクした動物の糞便試料で検査し、生体試料中のMPOを微量レベルで検出する能力を評価した。疾患のないマウスからの糞便試料を採取し、上記に記載されたように調製した。得られた抽出物は、対照としての目的を果たし、溶液(1.0nM)中のMPOを、糞便試料からの抽出物(スパイク)に添加した。糞便試料抽出物を、抽出物中の最終的なMPOの濃度がそれぞれ1nM、0.5nM、および0.1nMとなるようにスパイクした。1nMの外来MPOを含む抽出物を得るために、10μLの外来MPO(10nM)を、90μLの糞便抽出物等に添加した。マウスモデルにおいて、疾患惹起前、動物の糞便にはMPOが含まれていない。次いで、スパイク糞便抽出物から得られたMPOの強度値を、MPO溶液からの強度と比較した。これは、偽陽性または偽陰性の結果を導き出し得る、未知の可変要素(主として非特異的結合)からの影響を理解し、同定するのに適切なテストベッドとして機能した。図22は、動物から採取した糞便試料からの蛍光強度データを、溶液中のMPOからのデータ(標準曲線)とともに示す。スパイク糞便試料は、溶液中のMPOと同様の反応を示し、抗原/抗体複合体の特異性およびQLISAプロトコルのロバスト性を示す。いかなるMPOも含有しない糞便試料から得られた強度値は、本質的に、MPO溶液セットの対照PMMA毛細管と同一であり、捕捉抗体および/またはmAbとの間に非特異的相互作用がないことを示す。この点を、2つのデータが同一であることを示すp>0.994というt-検定の結果により、さらに確認した。動物のMPOスパイクデータは、完全疾患モデルにおいてQLISAバイオアッセイプロトコルが糞便中のMPOの存在、および臨床の疾患活性指数とのその相関関係を定量化するという予測を肯定する。
【0135】
潰瘍性大腸炎をシミュレートする動物モデルに関して、QLISAプロトコルを検査した。特に、QLISAプロトコルを、動物の糞便試料で検査し、生体試料中のMPOを微量レベルで検出する能力を評価した。マウスにおけるMPOレベルは、該動物内でDSS(デキストラン硫酸ナトリウム)によって炎症が惹起された後、実質的に上昇することが分かっている。したがって、我々の研究では、図24に示すように、7日目および0日目の糞便試料中のMPOレベルを比較した。0日目では、疾患を惹起するDSS給餌がまだ開始されていないため、動物は健康であるが、7日目では、臨床的な症候から疾患は明らかである。MPOレベル(QLISAプロトコルにより推定される)は、7日目では、0日目のほぼ2倍となっていることが分かる。これらの結果は、疾患の被験体と健康な被験体との間のMPOの差異に関して公開済みの研究と一致する。したがって、本発明者らは、生体試料中のMPOを検出し、疾患のMPOレベル(7日目)を健康なMPOレベル(0日目)から区別するQLISAアッセイの能力を確立した。
【0136】
液体処理ユニットおよびマルチ毛細管ホルダー
一態様において、簡素化された試料調製および測定プロセスが、多数の試料の同時処理およびエラーの最小化を可能とする。したがって、12個の直列な毛細管を有するユニットにおいて、QLISAプロトコルに従ってMPO(10nM)を捕捉する液体処理ユニットが提供される。さらに、12個の毛細管からの蛍光信号が、単一パスにおける光学リーダーで収集可能となるように、毛細管に対して、自動化機械的位置合わせシステムが提供される。さらに、溶液および動物試料中のMPOを検出するシステムの感度が増強され、単一毛細管システムと比較される。マルチ試料システムは、液体を処理する特別仕様ではない構成要素、QDを励起する長寿命(>10,000時間)の安価で高出力のUV-LED、およびモジュール式検出システムを含む。
【0137】
MPOを捕捉し、検出するのに、18ゲージ針に取り付けられた捕捉抗体固定化PMMA毛細管が用いられる。この構成は、技術を商業化へ素早く移行させるのを容易にする。コンピュータ制御の測定蠕動ポンプは、液体を毛細管から出し入れする。それぞれの最大移動距離が約6〜8インチである2つのリニアステージ(XZ平面)を有する位置決め器が、液体槽に対して毛細管の端部を位置決めするのに用いられる。
【0138】
図25に概略的に示すように、多数のPMMA毛細管を保持する液体処理ユニットを、複数の試料において同時にQLISAプロトコルを処理するのに用いることが可能である。図26は、12個の着脱式PMMA毛細管を有する液体処理ユニットの例示的なプロトタイプを示す。光学システムは、図6Aおよび図6Bに関して上記に記載されたものと同一である。本システムにおいて、Nichia Inc.より入手したUV-LED(80mW、λmax=405nm)が励起源として機能し、円筒鏡(f=6.48mm)が、蛍光信号を単色CCDカメラ上に集光、合焦させるのに用いられる。プロトタイプに用いられるPMMA毛細管は、液体導管および光子を励起する導波管として機能し、励起源に対して90度の角度での蛍光発光信号の収集を可能にする。
【0139】
各毛細管を特定の目的のために設計可能である。例えば、図27に示す態様において、12個の毛細管すべての目的を概略的に示す。より具体的には、液体処理ユニットは、3つの標準液用毛細管(異なる分かっている濃度、例えば、0.1nM、1nM、および10nMのMPO)、試料を分析する重複品を有する3つのタイター毛細管、対照用の2つの毛細管(MPOなしでプロトコルを実施)、ならびにスペアとしての1つの毛細管からなる12個の直列な毛細管を有する。MPO捕捉および検出の間の流量、温度、およびインキュベーション時間等のパラメータは、抗原を捕捉するのに必要な最も短い時間を識別するように最適化可能である。捕捉反応の最後に、毛細管をマニホールドから外し、上記の光学システムを用いて蛍光強度を測定可能である。
【0140】
液体槽間の毛細管の移送は、手動で実行可能であり、自動化されていてもよい。毛細管の自動化機械的位置合わせによって、12個の毛細管からの蛍光信号が、単一パスにおける光学システムによって収集可能となる。多数の試料を同時に処理するように適合された自動化QLISA法は、「自動化マイクロリットル免疫吸着分析」(AMISA)と称されている。毛細管を集光光学系の焦点面および励起源の焦点面の両方での位置合わせに関するフィードバック機構が必要である。
【0141】
QLISAプロセスで用いられる使い捨てMPO捕捉基体が、捕捉抗体の固定化のために開発されている。つまり、内径(ID)600μmのガラス毛細管に取り付けられた、水酸化ナトリウム処理PMMA毛細管(内径(ID)250μm、外経(OD)500μm)が、MPO捕捉基体として機能する。ガラス毛細管は、PMMA毛細管の機械的支持体として機能する。次いで、ガラス/PMMA複合構造体を、管状シャフトの端部処理後に18ゲージ針のハブに連結する。ハブ端部のフランジは、液体処理ユニットのポートで、構造体の胴部への連結を容易にする。
【0142】
典型的に、毛細管の力は、十分な溶液を毛細管に取り込むのに十分である。しかし、毛細管から溶液を出すように、ハブに正圧を設定可能である。毛細管の力だけでは不十分だと分かった場合、ハブに陰圧をかけることで、液体が毛細管内の所定のレベルまで確実に引き寄せられるようになる。4方向電磁弁および蠕動ポンプを用いて、ハブで圧力を循環させ、MPO捕捉部位に新鮮な試薬を提供する。96ウェルプートは、洗浄バッファー、ブロッキング剤、捕捉抗体および検出抗体、ならびに試料に対する液体槽として機能する。液体処理ユニットは、XZ軸リニアステージの組み合わせを用いて、試料を通じて自動的に循環可能である。
【0143】
励起源は、Nichia Incより入手した高出力UV-LED、強制冷却システム、および合焦光学系を含む。市販されている電子ドライバおよび冷却システムが、LED源システムに用いられ、短焦点距離溶融シリカまたは石英の平凸レンズが、LEDからのUV光を焦点させるのに用いられる。ガラス/PMMA複合構造に取り込まれたQD溶液からの蛍光発光は、毛細管の端部と光源との間の距離、および円筒鏡の光学軸における毛細管の配置を判定するのに用いられる。毛細管上に合焦されるCCDカメラは、信号収集装置として機能する。画像分析用のCustom Matlabルーチンを用いて、蛍光信号の強度を、分析し、計算する。フィードバック制御機構搭載のリニアステージにより、液体処理ユニットに取り付けられた12個の毛細管セットからデータを取得するタスクが遂行される。Labviewより市販されている動作制御パッケージが、鏡の焦点面においてリニアステージおよび個々の毛細管の配置を制御するのに用いられる。
【0144】
複数の毛細管を同時に処理するキャスタブルマルチ毛細管ホルダーを設計した。図28A〜図28Dに示すように、3つの毛細管を同時に処理するように適合されたマルチ毛細管ホルダーの一態様をマスキングするために、モールドを供する。マルチ毛細管ホルダーを用いることにより、処理を少なくすることが可能であり、三重化された実験を並行して実行可能である。
【0145】
図示するように、マルチ毛細管ホルダーは、毛細管を充填する1つの入口および毛細管を連結可能な多数の出口を含む。入口は、ポンプに標準流体継ぎ手を介して連結、あるいは21ゲージまたは26ゲージ針に接着可能である。入口として針付きのホルダーを用いた場合、手間のかからないルアーロック型コネクタが利用可能となるという利点がある。図28A〜図28Cは、ホルダー製造のために作製されたシリコーン製マスターモールドを示す。
【0146】
入口および出口の各々は、好ましくは、ガラス毛細管と一体形成される。マスターモールドは、図28Aおよび図28Bに示すように高くした部分を有し、ホルダーが、図28Cに示すように浮き彫りで形成可能である。次いで、多数の毛細管をホルダーの凹部に配置し、エポキシを注入してホルダーおよびホルダーを図28Dに示すように本接合する。
【0147】
図31は、ステンレス鋼スリーブでそれぞれ支持される複数の毛細管を保持するサンプリングマニホールドの例示的なさらなる態様を示す。図32は、毛細管を配置して、同時に、毛細管の一方の端部の共通の空気ヘッダを介して薬剤供給が可能となる着脱可能なマルチ毛細管ホルダーを示す。
【0148】
マイクロ環境の変更による量子ドット安定性の向上
特に試料の検査が迅速に完了しない場合等の多くの例において、保管および撮像の間、量子ドットの蛍光を安定化させること、すなわち、量子ドットの蛍光強度の低下を軽減することが重要である。本明細書において記載される研究に基づくと、QDの蛍光の経時的な劣化は、機構の組み合わせの結果であることが分かる。開示されるように、QD蛍光強度の減衰を最小化する、あるいはいくつかの例においては経時的に蛍光強度を増大させる1つまたは複数の特徴を有する、蛍光を安定化させる様々な解決法が案出可能である。
【0149】
例えば、高イオン強度の媒体溶液に量子ドットを継続的に曝露することにより、ある一定の期間にわたって蛍光が損失し続けることになる。さらに、蛍光の損失は、溶液のイオン強度だけではなくpHにも依存する。市販されている量子ドットのいくつかは、pHが8.0より高い溶液中でより高い安定性を示し、弱い酸性条件下(pH7.0未満)では急速に強度が低下する。これらのQDでは、強度損失速度は、pHが下がると増加する。他の市販されているQDでは、およそpH7.5付近で、蛍光の損失が最大となることが分かる。また、蛍光の劣化は、蛍光安定化媒体への曝露なしに検査したすべてのQDで検出されたが、蛍光損失の速度および量は、構造が同一であると考えられているQDを検査する場合であっても、市販されているどのQDが検査されたかに応じて、ある程度変化し得る。
【0150】
以下に記載するように、本明細書において開示される方法は、QDが典型的に保管されているバッファー溶液または媒体を、イオン強度が低いかまたはゼロである適切な液体で置換えること、あるいは、QDが保管されている液体にビタミンE等の酸化防止剤を添加して条件を整えることにより、量子ドットの局所環境を変更することにより行われる。酸化防止特性を有する他の公知の物質を、溶液または媒体中のQDの蛍光を安定化させるのに用いることが可能である。該公知の物質は、フェノール酸化防止剤(立体障害型または非立体障害型)、NOR薬剤、ラクトン、ヒドロキシルアミン、酸化防止酵素(スーパーオキシドジスムターゼ、またはフリーラジカルダメージをクエンチ可能な種等)、およびCibaにより市販されているもの等の他の当技術分野において公知の酸化防止剤を非限定的に含む。本明細書において記載されるビタミンEと同様に、用いられる酸化防止剤は、QD含有媒体に分散可能となるように、水溶性でなくてはならない。異なる酸化防止剤により、蛍光の損失が減少し、安定化のさらなる手段を提供し得る。
【0151】
本明細書におけるすべての研究は、CdSeコアおよびZnS保護層を有するCdSe/ZnS量子ドットで行った。検査した量子ドットは、Ocean Nanotech LLC (「Ocean Nanotech」)およびInvitrogen Corporation (「Invitrogen」)により製造されたものを含む。両方の製造業者が、ポリエチレングリコールを保護基として用いている。しかし、これら2つの製造業者によって供給されたQDの光学特性等の特性に観察された差異、および蛍光強度の減衰に関連するデータに基づくと、2つのQD群間に独自の差異があることが分かる。安定性に関して現在行われている研究は、フリーラジカル消去剤の使用を継続し、屈折率が変化する非極性のポリマーシステムおよび、その量子ドットからの蛍光の損失を低下させる効果を調査している。
【0152】
図29Aおよび図29Bは、QD蛍光信号の強度および安定性へのイオン強度の経時的な影響を比較している。本実験において、溶液(0.5nM)中のMPOを用い、QDの強度に対するイオン強度の影響を、洗浄バッファーをグリセロールで置換えて調査した。同様に非極性または低極性の他のバッファーを用いてもよいことが分かる。保管バッファー(トリス緩衝生理食塩水、TBS)がグリセロールで置換えられた時、蛍光強度の増大が観察された(図29A)。
【0153】
QDの光安定性ひいては蛍光収量は、その局所環境、特に局所環境のイオン強度に大きく依存する。この効果は、光学金属イオンセンサーおよび細胞内pHセンサーを製作するのに利用されている。したがって、グリセロール等の非イオン性溶液でバッファーを置換えた場合、2つの可能な手段により、図29Aで観察されるように、信号対雑音比が増大する。第1に、グリセロールにより、そのままではQDを不安定化させることになるイオンが、システムから奪われるため、QDの最大の達成可能な量子収量を達成することができる。第2に、グリセロールの屈折率(1.398)は、保管バッファーの屈折率(〜1.33)よりもPMMAの屈折率(1.491)に近いため、より多くの光子が毛細管の壁内に閉じ込められ、拡散が最小となる。予想されたように、グリセロールを有するPMMA毛細管は、強度の著しい増大を示した。これは、光子結合の増加、および量子ドットの蛍光自体を安定化させるその役割の組み合わせ効果のためであると考えられている。QDの局所環境のイオン強度が、2つの液体間の蛍光強度における差異の原因となる理由であると証明するため、保管バッファーを用いた場合とグリセロールを用いた場合とのPMMA毛細管の画像からの蛍光強度を、2時間にわたって収集し、比較した。
【0154】
図29Bは、QD蛍光の安定性へのイオン強度の影響を2時間にわたって比較したものである。QDを高イオン強度環境(トリス緩衝生理食塩水、TBS)に曝露した場合、信号強度の一定の低下が観察され、強度における損失がほぼ50%となった。しかし、毛細管内の洗浄バッファーをグリセロールで置換えることにより、信号強度の損失が最小限となる(約50%の損失に対して約15%の損失)。両方の環境において、最初の60分間に信号強度の早い減衰が生じる。本実験は、5分毎に画像を収集することによって行われ、QDは、画像取得モードの短い時間のみ励起された。これによって、QDまたはPMMA毛細管が実験の間励起源によって加熱されなかったことが確実となった。保管バッファーの置換えにより、図29Bに示すようにアッセイの信頼性に重大な利点を提供する。
【0155】
別の実験では、水溶性ビタミンE(D-α-トコフェロールポリエチレングリコール1000スクシネート、Chemical Abstracts Services照合番号9002-94-4、化学式を図33Bに示す)を、水ベースのバッファー剤(1,3-ビス[トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ]プロパン(「TrisPro」)、化学式を図33Aに示す)に溶解し、蛍光減衰への経時的な影響を測定した。ビタミンEの水溶性は、10ミリリットルあたり約1グラム、すなわち約10%である。約6〜約9.5の範囲のpHを有する溶液を検査した。pHが約6.5、約7.5、および約8.5である溶液について、本明細書においてデータを提示する。
【0156】
図34Aおよび図34Bは、ビタミンEを含まない溶液および約0.01%のビタミンEを含む溶液中のInvitrogen製QDにおける蛍光強度の経時的な減衰を比較している。2つのグラフではY軸目盛りが異なり、図34Aでは約0.25〜1.0の範囲にあるのに対して、図34Bでは約0.91〜1.00という非常に狭い範囲にある。検査した3つのpHレベルすべてに関して、非ビタミンE媒体と比較した場合、ビタミンE媒体中の蛍光強度の減衰が劇的に軽減されたことが分かる。特に、pHが6.5の場合、240分後、ビタミンE溶液中のQDの蛍光は、約8%のみの低下であったが、非ビタミンE溶液では約60%低下した。同様に、pHが7.5の場合、240分の時点で、ビタミンE溶液中の蛍光強度は、約5%のみの低下が観察されたが、非ビタミンE溶液では60%を超えて低下した。pHが8.5の場合、240分後、非ビタミンE溶液中の蛍光強度のおよそ40%の低下が、ビタミンE溶液中である場合、約7%のみの低下に軽減された。
【0157】
さらに、蛍光強度の減衰は、非ビタミンE溶液中で急速であり、QDは最初の50分間でその強度が約40%〜約55%失われた。50分後、ビタミンE溶液中の蛍光強度は、溶液のpHに関係なく、元の強度の約97%より上に維持された。さらに、約125分間ビタミンE溶液中で、蛍光の減衰が安定化することが示され、蛍光強度が僅かに増大すらしたが、非ビタミンE溶液、特に、pH6.5およびpH7.5の溶液では、測定が行われていた間、蛍光強度は継続して劣化した。同一の濃度のビタミンEの場合のビタミンの存在への反応の量は、バッファー溶液のpHに依存して変化した。特に、非ビタミンE溶液中、pHが7.5に維持されたQDにおいて蛍光の劣化が最も大きく、pHが8.5に維持されたQDにおいて最も小さかった。0.01%ビタミンE溶液中、pHが7.5に維持されたQDにおいて失った蛍光強度の量が最も小さく、pHが6.5に維持されたQDにおいて最も大きかった。
【0158】
図35Aおよび図35Bは、ビタミンEを含まない媒体および約0.01%のビタミンEを含む媒体中のOcean Nanotech製QDにおける蛍光強度の経時的な変化を比較している。pHが6.5の場合、240分後、非ビタミンE溶液中の蛍光強度は、約35%低下したが、ビタミンE溶液中の強度は、同一の時間にわたり実際には約50%増大した。pHが7.5の場合、非ビタミンE溶液中の蛍光強度は、240分後、ほぼ50%低下したが、ビタミンE溶液中の強度は、同一の時間にわたりほぼ一定のままであった。pHが8.5の場合、240分後、非ビタミンE溶液中の蛍光強度は、20%よりも大幅に低下したが、ビタミンE溶液中の強度は、同一の時間にわたり約20%増大した。Invitrogen製QDと同様に、同一の濃度のビタミンEの存在への反応の量は、バッファー溶液のpHに依存して変化した。特に、非ビタミンE溶液中、pHが7.5に維持されたQDにおいて蛍光の劣化が最も大きく、pHが8.5に維持されたQDにおいて最も小さく、Invitrogen製QDと同様の結果が得られた。しかし、0.01%ビタミンE溶液中、pHが6.5に維持されたQDにおいて蛍光強度の増大が最も大きく、pHが7.5に維持されたQDにおいて増大が最も小さく(およそゼロ)、Invitrogen製QDとは異なる結果であった。Invitrogen製QDとOcean Nanotech製QDとの間の様々なpHレベルにおけるビタミンEへの反応が異なる原因は、現在調査中である。
【0159】
ビタミンEが約0.001%という閾値濃度以上であるならば、ビタミンE溶液中の2つの種類のQDのそれぞれにおける蛍光の変化は、ビタミンEの濃度に関わらず比較的一致していた。なお、濃度がより低い方がより有効となる可能性もあるが、検査は行わなかったため、ビタミンE濃度の絶対最小閾値ははっきりとは分からない。3つの異なるpHレベルならびに4つの非ゼロビタミンE濃度(約0.05%、約0.01%、約0.005%、および約0.001%)および対照としての0%ビタミンEで、溶液中の蛍光QDの強度を経時的に測定した。
【0160】
図36Aに示すように、pHが6.5の媒体中のOcean Nanotech製QDにおいて、240分後、ビタミンE溶液では蛍光強度が約30%〜約50%増大したが、非ビタミンE溶液では強度がほぼ40%低下した。ビタミンE濃度が約0.05%、約0.005%、および約0.001%の場合もすべて同様に蛍光強度の向上に有効であったが、濃度が約0.01%の場合、強度の増大が最も大きくなった。図36Bに示すように、pHが6.5の媒体中のInvitrogen製QDにおいて、240分後、約0.001%のビタミンE溶液では蛍光強度がほぼ同一のままであり、他のビタミンE溶液では約15%も増大したが、非ビタミンE溶液では30%近く低下した。
【0161】
図37Aに示すように、pHが7.5のバッファー中のOcean Nanotech製QDにおいて、240分後、0.001%ビタミンE溶液では蛍光強度が約20%未満低下し、0.005%ビタミンE溶液では約10%未満低下し、より高濃度のビタミンE溶液ではほぼ同一のままであったが、非ビタミンE溶液では強度がほぼ50%低下した。図37Bに示すように、pHが7.5のバッファー中のInvitrogen製QDにおいて、240分後、ビタミンE溶液では蛍光強度が約5%〜約15%低下したが、非ビタミンE溶液ではほぼ70%低下した。したがって、全体的に、両方の製造業者のQDが、pHが7.5の溶液中では、pHが6.5の溶液と比較すると有意に劣るが、両方のpHレベルで、0.001%ほどのビタミンEでさえも劇的に蛍光強度の劣化を軽減し、pHが6.5の溶液で蛍光強度が増大する場合もあった。
【0162】
図38Aに示すように、pHが8.5のバッファー中のOcean Nanotech製QDにおいて、240分後、ビタミンE溶液では蛍光強度がほぼ同一から約30%の増大まで変化した。特に、強度は初期に低下したが、0.001%ビタミンE溶液中では元来のレベルまで回復し、0.05%ビタミンE溶液では約30%増大し、0.01%および0.005%ビタミンE溶液では約15%増大した。一方、蛍光強度は、非ビタミンE溶液では20%よりも大幅に低下した。図38Bに示すように、pHが8.5のバッファー中のInvitrogen製QDにおいて、240分後、すべての溶液で蛍光強度が低下したが、非ビタミンE溶液よりもビタミンE溶液の方が低下幅が小さかった。特に、0.005%ビタミンE溶液では強度が約15%低下し、0.001%および0.05%ビタミンE溶液では約20%低下し、0.01%ビタミンE溶液では30%よりも大幅に低下し、非ビタミンE溶液ではほぼ40%低下した。したがって、ビタミンEは、Invitrogen製QDに対しては、pHが8.5の溶液中で蛍光強度の劣化を改善し、Ocean Nanotech製QDに対しては、蛍光強度の増大を起こすことが可能であった。
【0163】
QLISAプロトコルのさらなるバイオマーカーに対する展開
IBDをIBSから見分けるのに利用可能な現行の検査(QDまたはQLISAプロトコルを用いない)は、カルプロテクチンおよびラクトフェリンELISAを含む。カルプロテクチンは、IBDをIBSから区別する89%の感度および96%の特異性を有する。ラクトフェリンは、IBDをIBSから区別するための信頼できるマーカーであるとされている(90%の特異性および87〜92%の感度)。潰瘍性大腸炎(UC)とクローン病(CD)とを見分けるためのより特異的な検査は、血清中の核周囲型抗好中球細胞質抗体(p-ANCA)および抗サッカロマイセス・セレビシエ抗体(ASCA)等の抗体の存在に基づくものであり、特異性が70%未満である。ラクトフェリンおよびミエロペルオキシダーゼ(MPO)の存在および割合は、IBDを伝染性下痢から区別するのに十分な程度異なっているように見える。したがって、MPOの早期検出は、IBDをIBDから区別し、IBDを伝染性下痢から区別することを容易にし得る。糞便試料中でミエロペルオキシダーゼを検出する、現行で最善の利用可能な方法は、放射活性標識である。本方法は、時間がかかり、高価な標識化装置を必要とし、患者を被曝の危険に晒し得る。放射性標識化は、唯一の信頼できる定量アッセイとしての、IBSおよび膠原繊維性大腸炎における炎症を検出するMPOの2006年の研究に用いられた。したがって、ユーザフレンドリ、迅速、かつ安価な検出アッセイが必要とされている。現行の免疫学的アッセイは、ラボでの調製時間に24時間が必要であるが、QLISA検査は、3時間未満で行うことが可能である。
【0164】
MPO、ラクトフェリン、およびカルプロテクチンのヒト試料においてQLISA法を実施し、関連する基準を含み、ほぼ自動的に、これらのマーカーを同時に三重に測定可能な検査キットを開発するための検査を継続中である。検査キットは、特異的抗体または抗原、検査を実施するための特別な試薬(例えば、官能化QD、洗浄バッファー)、および光学リーダーを備えた官能化毛細管を含む。
【0165】
ラクトフェリンおよびカルプロテクチンの両方が、本明細書において開示されるMPOおよびQLISAプロトコルと同様の抗原であり、同様のプロトコルが、捕捉抗体およびレポーター抗体に合わせた適切な最適化工程によって、糞便試料中のラクトフェリンおよびカルプロテクチンの検出に即座に適用されると考えられる。ラクトフェリンおよびカルプロテクチンを判定するQLISAプロトコルの感度および特異性が、溶液およびヒト試料の両方で評価される。ラクトフェリンおよびカルプロテクチンの両方が、重要な予測価値を有しており、MPO検出とこれらを組み合わせることにより、より正確な初期診断および経過観察が可能となる。3つすべての測定の必要性は、通常の試験において得られる最小限の試料で3つすべてを測定できるマイクロ毛細管アッセイとしてQLISAが重要であるということを強調するものである。
【0166】
図30は、ヒトから採取した糞便試料からの蛍光強度データを、溶液中のラクトフェリンからのデータ(標準曲線値)とともに示す。スパイク糞便試料は、溶液中のラクトフェリンと同様の反応を示し、抗原/抗体複合体の特異性およびQLISAプロトコルのロバスト性を示す。いかなるラクトフェリンも含有しない糞便試料から得られた強度値は、本質的に、ラクトフェリン溶液セットの対照PMMA毛細管と同一であり、捕捉抗体および/またはmAbの間に非特異的相互作用がないことを示す。ラクトフェリンスパイクデータは、完全疾患モデルにおいてQLISAバイオアッセイプロトコルが糞便中のラクトフェリンの存在および、および臨床の疾患活性指数とのその相関関係を定量化するという予測を肯定する。
【0167】
マルチ試料ホルダーユニットは、QLISAプロトコルに従ってMPO(1nM)およびラクトフェリン(1nM)の捕捉を容易にする自動化液体処理を含むように改良されている。ユニットは、3つのMPO標準液用毛細管、3つのMPO用タイター毛細管、3つのラクトフェリン標準液用毛細管、3つのラクトフェリン用タイター毛細管、対照用の2つの毛細管(MPOおよびラクトフェリンなしでプロトコルを実施)、ならびにブランク用の1つの毛細管からなる15個の直列なポートを有する。液体は毛細管を自動で流されるが、液体槽間の毛細管の移送は、手動で行われる。MPOおよびラクトフェリン捕捉および検出の間の流量、温度、およびインキュベーション時間等のパラメータは、抗原を捕捉するのに必要な最も短い時間を識別するように詳細に調査され得る。捕捉反応の最後に、毛細管をマニホールドから外し、初年度予算の間に設計された光学リーダーを用いて蛍光強度を測定する。
【0168】
最後に、キットで糞便試料中のMPOおよびラクトフェリンを測定することにより、臨床医がIBDをIBSおよび伝染性下痢から区別し、治療への疾患の反応を経過観察し、炎症の療法の一時的な回復、再発、または継続を観察することが可能となる。潰瘍性大腸炎(UC)をクローン病(CD)から区別するためのさらなるマーカーを測定可能である。
【0169】
特に、キットを用いた検査により、糞便試料中に存在するラクトフェリンの量を推定して、IBDをIBSから区別することが可能である。ラクトフェリンは、90%の精度でIBDをIBSから区別することが示されている。健康な個体におけるラクトフェリンの濃度は、3.15+/-1.6μg/gであり、IBD患者における同濃度は、1126.29+/-431.21μg/gであると推定された。糞便試料中のラクトフェリンの定量化は、MPOで用いたものと同様のQLISサンドイッチアッセイ法によって行われる。ポリクローナルヒツジ抗ヒト抗体が、糞便試料中のラクトフェリンを捕捉する一次抗体として用いられ、QDコンジュゲートされたマウス抗ヒトラクトフェリンモノクローナル抗体が、二次抗体として用いられる。MPO、ラクトフェリン、およびカルプロテクチンが、IBDの場合の炎症の度合いを評価する標的バイオマーカーとして選択される。MPOの検出および定量化を網羅的に検討したが、同一の戦略が、ラクトフェリンおよびカルプロテクチン等の同様の抗原にも適用されると考えられる。
【0170】
マイクロリットルの体積でピコモル量を検出する量子ドットの蛍光強度に基づくポリマーベースの毛細管アッセイが開発されている。検査の結果、炎症状態の場合過剰発現される抗原であるミエロペルオキシダーゼ(MPO)に関するQLISA装置およびプロトコルが提供された。導波管として毛細管を用いるかまたは側面照射を用いる励起量子ドットの2つの異なるモードが利用可能であることが分かった。但し、側面照射は、光学上の位置合わせに関する問題を解決し、ハイスループットバイオアッセイにより適していることが分かっている。実験の結果は、ポリマー毛細管が光学免疫センサーの作製に適しており、費用効果的なバイオセンサーが特別仕様ではない構成要素で作製可能であることを示す。開示された装置は、MPO(〜15ng/mL)に対する最低検出限界が100pMである。毛細管内のQDの安定性は、その局所環境のイオン強度によって影響されることが分かり、バッファーをグリセロール等の非極性の溶液で置換えることにより、安定性が向上した。
【0171】
特にELISAと比較した場合の、MPOを検出および定量化するQLISA法および装置の利点は、以下の通りである。第1に、ピコモル濃度でMPOを検出するのに必要な試料の体積が、50μL(96ウェルプートELISAセット)から約1μL〜約5μLまで減少する。第2に、MPOを取り込む抗体が、従来のELISAまたは他の免疫学的アッセイ技術で用いられてきた非特異的結合方法とは異なり、基体に共有結合する。これにより、操作者のエラーを最小化し、ELISAに匹敵する感度および解像度を達成するロバストなシステムが生成される。第3に、ポリメチルメタクリレート(PMMA)毛細管が、ウェルプートの代わりに用いられる。ウェルプート上の液体処理は、通常、診断ラボにとっては理想的であるが、病院や小さい臨床ラボにとってはコスト的に利用が難しいロボット式システムによって行われる。一方、PMMA毛細管システムは、液体処理する特別仕様ではない構成要素、QDを励起する長寿命(>10,000時間)の安価で高出力のUV-LED、および全世界の郊外の小型ラボや外来設備用に小型化可能な高い適合力を有する設計が結果として得られるモジュール式検出システムを利用する。第4に、従来の方法(ELISA)における多重化は、調査のもと、各抗原に励起フィルタと発光フィルタとの特有の組み合わせが必要であるが、QLISA法では、複数のQDを励起し、1つの試料中の多数の抗体を検出するのに単一の励起源を用いることが可能である。
【0172】
利用可能なバイオアッセイの対抗関係の表を以下に示す。

【0173】
本発明を特定の態様を参照して開示したが、当業者であれば、本発明の他の態様および変形例を、発明の真の精神および特許請求の範囲から逸脱することなしに考案し得ることは明白である。添付の特許請求の範囲は、このようなすべての態様および均等な変形例を包括すると解釈されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内表面に1つまたは複数のバイオマーカーが付着するように適合された毛細管と、
毛細管内のバイオマーカーとコンジュゲートした量子ドットを励起するための光源と、
1つまたは複数の所定の波長範囲のそれぞれがバイオマーカーのうちのただ1つのみと相関しており、該1つまたは複数の所定の波長範囲における量子ドットによって発光された蛍光エネルギーを検出および定量化するための検出システムと
を含む、炎症状態を示すバイオマーカーを検出するための装置。
【請求項2】
毛細管が、透明なポリマー材料を含む、請求項1記載の装置。
【請求項3】
毛細管が、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ酢酸ビニル、ポリカーボネート、およびポリスチレンからなる群より選択される少なくとも1つの材料を含む、請求項1記載の装置。
【請求項4】
試料を毛細管に供給するための、該毛細管の端部に接続された皮下注射針
をさらに含む、請求項3記載の装置。
【請求項5】
毛細管が、外部からガラス毛細管によって支持されている、請求項3記載の装置。
【請求項6】
毛細管が、外部からステンレス鋼毛細管によって支持されている、請求項3記載の装置。
【請求項7】
多数の毛細管を保持するように適合された液体処理ユニットと、
各毛細管中に含まれる試料を光源に曝露し、かつ検出システムで視覚化できるように、各毛細管を連続して位置合わせするための機械的位置合わせシステムと
をさらに含む、請求項1記載の装置。
【請求項8】
毛細管が、約100ナノリットル〜約1マイクロリットルの範囲の体積を有する、請求項1記載の装置。
【請求項9】
光源がLEDを含む、請求項1記載の装置。
【請求項10】
LEDが紫外線LEDである、請求項9記載の装置。
【請求項11】
光源が、複数のLEDを有するアレイを含む、請求項9記載の装置。
【請求項12】
光源が、LEDを毛細管上に合焦させるためのレンズをさらに含む、請求項9記載の装置。
【請求項13】
光源が1つまたは複数のレーザダイオードを含む、請求項1記載の装置。
【請求項14】
検出システムが広帯域フィルタを含む、請求項1記載の装置。
【請求項15】
検出システムが光検出器を含む、請求項1記載の装置。
【請求項16】
光検出器が、少なくとも1つの光電子増倍管に連結された分光器である、請求項15記載の装置。
【請求項17】
光検出器がCCDカメラである、請求項15記載の装置。
【請求項18】
光検出器がアバランシェフォトダイオード検出器である、請求項15記載の装置。
【請求項19】
検出システムが、毛細管から光検出器へと光を伝達するための光ファイバーをさらに含む、請求項15記載の装置。
【請求項20】
検出システムが、
光検出器により検出可能な量子ドットによって発光された蛍光エネルギーの量を増大させるための、毛細管の少なくとも一部の周囲に配置された鏡
を含む、請求項15記載の装置。
【請求項21】
鏡が、球面鏡、円筒鏡、および放物面鏡からなる群より選択される、請求項20記載の装置。
【請求項22】
毛細管が、約1.5マイクロリットル未満の体積を有するポリメチルメタクリレート(PMMA)毛細管であり、光源が紫外線LEDを含み、かつ検出システムがCCDカメラを含む、請求項1記載の装置。
【請求項23】
検出システムが、量子ドットによって発光されたエネルギーをCCDカメラに合焦させるための球面鏡をさらに含む、請求項22記載の装置。
【請求項24】
光源の第1のLEDが毛細管の端部に向けられ、かつCCDカメラが、該毛細管の壁部を通じて発光されたエネルギーを検出する、請求項22記載の装置。
【請求項25】
毛細管の反対の端部に向けられた、光源の第2のLEDをさらに含む、請求項24記載の装置。
【請求項26】
光源の少なくとも1つのLEDが、毛細管の壁部に隣接して配置され、かつCCDカメラが、毛細管の端部を通じて発光されたエネルギーを検出する、請求項22記載の装置。
【請求項27】
バイオマーカーが、ミエロペルオキシダーゼ(MPO)、IL-1α、TNFα、核周囲型抗好中球細胞質抗体(p-ANCA)、抗サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)抗体(ASCA)、アンジオテンシン変換酵素、ラクトフェリン、C反応性タンパク質(CRP)、およびカルプロテクチンからなる群より選択される、請求項1記載の装置。
【請求項28】
毛細管に含まれる生体試料中のバイオマーカーを検出するための組成物をさらに含む装置であって、
該組成物が、量子ドットと、バイオマーカーに特異的に結合する抗体とを含む少なくとも1つのコンジュゲートを含む、
請求項1記載の装置。
【請求項29】
抗体が基体表面に結合している、請求項28記載の装置。
【請求項30】
毛細管が、NaOHを用いて官能化されている、請求項1記載の装置。
【請求項31】
毛細管が、血漿を用いて官能化されている、請求項1記載の装置。
【請求項32】
毛細管が、紫外線光を用いて官能化されている、請求項1記載の装置。
【請求項33】
炎症状態を示すバイオマーカーを含む可能性のある試料を、抗体で被覆された毛細管に供する工程、
量子ドットと、バイオマーカーに特異的に結合する抗体とを含むコンジュゲートに、試料を接触させる工程、
光源により量子ドットを励起する工程、
量子ドットからの蛍光発光を検出する工程、および
蛍光発光と試料中のバイオマーカーの濃度との相関関係を示す工程
を含む、試料中のバイオマーカーを検出することにより被験体の炎症状態を診断する方法。
【請求項34】
バイオマーカーが、酵素、接着分子、サイトカイン、タンパク質、脂質メディエータ、免疫反応メディエータ、および成長因子からなる群より選択される、請求項33記載の方法。
【請求項35】
バイオマーカーが、ミエロペルオキシダーゼ(MPO)、IL-1α、TNFα、核周囲型抗好中球細胞質抗体(p-ANCA)、抗サッカロマイセス・セレビシエ抗体(ASCA)、アンジオテンシン変換酵素、ラクトフェリン、C反応性タンパク質(CRP)、およびカルプロテクチンからなる群より選択される、請求項33記載の方法。
【請求項36】
炎症状態が、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、卒中、心筋炎、心血管疾患、急性冠症候群、急性心筋梗塞、心膜炎、歯周疾患、癌、アルツハイマー病、および自己免疫疾患からなる群より選択される少なくとも1つの炎症性疾患を含む、請求項33記載の方法。
【請求項37】
量子ドットを蛍光安定化媒体に曝露する工程を含む、量子ドットの蛍光を経時的に安定化させる方法。
【請求項38】
蛍光安定化媒体が、低いイオン強度を有する溶液である、請求項37記載の方法。
【請求項39】
蛍光安定化媒体が、約7.0以上のpHを有する溶液である、請求項37記載の方法。
【請求項40】
溶液が、約8.0以上のpHを有する、請求項39記載の方法。
【請求項41】
蛍光安定化媒体が、水溶性フリーラジカルクエンチャーを含む、請求項37記載の方法。
【請求項42】
蛍光安定化媒体が、TrisProおよび一定量の水溶性ビタミンEを含む、請求項37記載の方法。
【請求項43】
ビタミンEの量が、前記媒体の少なくとも約0.001%である、請求項41記載の方法。
【請求項44】
量子ドットのそれぞれが、CdSeコアおよびZnS保護層を含む、請求項37記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図11D】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【公表番号】特表2012−515927(P2012−515927A)
【公表日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−548139(P2011−548139)
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【国際出願番号】PCT/US2010/021821
【国際公開番号】WO2010/085658
【国際公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(598072065)ドレクセル・ユニバーシティー (11)
【出願人】(511178555)フィラデルフィア ヘルス アンド エデュケイション コーポレイション ドゥーイング ビジネス アズ ドレクセル ユニバーシティー カレッジ オブ メディシン (1)
【Fターム(参考)】