説明

炎症を治療するための方法

【課題】IL-20によって誘導される炎症を治療方法の提供。
【解決手段】炎症および関連疾患を治療するために、IL-20に対するアンタゴニストが投与される。アンタゴニストは、IL-20に結合する抗体またはIL-20に結合するその受容体もしくは可溶性受容体でもよい。このような疾患の例は、成人呼吸器疾患、乾癬、湿疹、接触性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、敗血症ショック、多臓器不全、炎症性肺損傷、細菌性肺炎、炎症性腸疾患、慢性関節リウマチ、喘息、潰瘍性大腸炎、およびクローン病である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
本明細書において言及された全ての参考文献の開示は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
炎症は、通常、外傷または微生物侵入に対する局所的な保護反応であり、有害な作用物質および損傷した組織を破壊、希釈、または遮断する。炎症は、急性の形では、疼痛、熱、赤み、腫脹、および機能喪失の古典的な徴候を特徴とする。微視的には、炎症は、透過性および血流の増加を伴う小動脈、毛細血管、および細静脈の拡張、血漿タンパク質を含む体液の滲出、ならびに炎症部位への白血球遊走を含む複雑な一連の事象を伴う。
【0003】
炎症を特徴とする疾患は、ヒトにおける罹患および死亡の大きな原因である。一般的に、炎症は、宿主への異物、特に、微生物物質の侵入に対する防御反応として起こる。機械的外傷、毒素、および新形成に対する応答も炎症反応を引き起こすことがある。白血球の蓄積およびその後の活性化は、ほとんどの種類の炎症の発生における中心的な事象である。炎症の欠陥は宿主を傷つける。宿主組織が異物として異常認識されることによる、または炎症プロセスの長期化による過度の炎症は、糖尿病、動脈硬化症、白内障、再灌流傷害、および癌から、感染後症候群、例えば、感染性髄膜炎における感染後症候群、リウマチ熱、およびリウマチ性疾患、例えば、全身性エリテマトーデスおよび慢性関節リウマチまで非常に多岐にわたる炎症性疾患につながることがある。これらの様々な疾患プロセスにおいて炎症応答が中心的な役割を果たしているので、炎症応答の調節が、ヒト疾患の予防管理または治癒における主な要素となっている。
【0004】
炎症プロセスにおける重要なサイトカインはインターロイキン-8(IL-8)である。IL-8はケモカインである。IL-8は、走化性および顆粒酵素の放出という2つの作用に基づいて好中球のアゴニストとして特定された。IL-8は、好中球上にある2つの受容体に結合する。IL-8受容体はまた単球、好塩基球、および好酸球にも見出される。ヒト線維芽細胞では、サイトメガロウイルスはIL-8受容体の発現を誘導し、細胞がIL-8に曝露された時に迅速に複製することが示されている。IL-8は、好中球の強力な化学誘引物質である。初期の歯周病は好中球の流入を特徴とする。IL-8は、慢性関節リウマチ、乾癬、および特発性肺線維症を含む、いくつかの血管形成依存性の慢性炎症状態における強力な血管形成誘導物質である。さらに、IL-8は、ヒト肺癌における重要な血管形成活性源である。また、IL-8発現は、一部の黒色腫細胞株の実験的転移活性と相関関係がある。従って、炎症性疾患を治療する有効な方法は、IL-8を阻害する薬剤の投与であろう。
【発明の概要】
【0005】
発明の説明
本発明は、IL-20が役割を果たしている炎症を治療するための方法であって、炎症の治療を必要とする哺乳動物に、IL-20に対するアンタゴニストまたはIL-20受容体に対するアンタゴニストを投与する工程を含む方法を提供することによって、この必要性に応える。IL-20に対するアンタゴニストは、IL-20に結合する抗体、抗体断片、または単鎖抗体、IL-20に結合する可溶性受容体でもよい。IL-20受容体に対するアンタゴニストは、IL-20受容体に結合する抗体、抗体断片、単鎖抗体、または低分子でもよい。IL-20をコードするmRNAに結合するアンチセンスヌクレオチドもアンタゴニストとして使用することができる。本発明者らは、IL-20がIL-8をアップレギュレートすることを示した。IL-8が大きな役割を果たし、IL-8の減少が有益なものとなる炎症性疾患は、成人呼吸器疾患(ARD)、敗血症ショック、多臓器不全、炎症性肺損傷、例えば、喘息または気管支炎、細菌性肺炎、乾癬、ならびに炎症性腸疾患、例えば、潰瘍性大腸炎およびクローン病、湿疹、アトピー性皮膚炎、および接触性皮膚炎である。従って、IL-20に対するアンタゴニストを用いて、これらの疾患を治療することができる。
【0006】
本明細書において言及された全ての参考文献の開示は、その全体が参照により組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】IL-20可溶性受容体の代表的な数の態様の模式図である。
【図2】IL-20可溶性受容体の代表的な数の態様の模式図である。
【図3】IL-20可溶性受容体の代表的な数の態様の模式図である。
【図4】IL-20可溶性受容体の代表的な数の態様の模式図である。
【図5】IL-20可溶性受容体の代表的な数の態様の模式図である。
【図6】IL-20可溶性受容体の代表的な数の態様の模式図である。
【図7】IL-20可溶性受容体の代表的な数の態様の模式図である。
【図8】IL-20可溶性受容体の代表的な数の態様の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
定義
本発明を詳細に説明する前に、以下の用語を定義することが本発明の理解に役立つかもしれない。
【0009】
「アミノ末端」および「カルボキシル末端」という用語は、ポリペプチドの中の位置を示すために本明細書において用いられる。文脈に沿っていれば、これらの用語は、ポリペプチドの特定の配列または部分に関して、近傍または相対位置を示すために用いられる。例えば、ポリペプチドの中の参照配列に対してカルボキシル末端側にある特定の配列は、参照配列のカルボキシル末端の近位にあるが、必ずしも、完全ポリペプチドのカルボキシル末端にあるとは限らない。
【0010】
「相補物/抗相補物対」という用語は、非共有結合により結合した安定な対を適切な条件下で形成する同一でない部分を示す。例えば、ビオチンおよびアビジン(またはストレプトアビジン)は相補物/抗相補物対の模範的なメンバーである。他の例示的な相補物/抗相補物対には、受容体/リガンド対、抗体/抗原(またはハプテンもしくはエピトープ)対、センス/アンチセンスポリヌクレオチド対などが含まれる。相補物/抗相補物対が後で解離することが望ましい場合、相補物/抗相補物対は、好ましくは、<109M-1の結合親和性を有する。
【0011】
「ポリヌクレオチド分子の相補物」という用語は、参照配列と比較して相補的な塩基配列および逆方向を有するポリヌクレオチド分子である。例えば、配列5'ATGCACGGG3'は、5'CCCGTGCAT3'に相補的である。
【0012】
「コンティグ」という用語は、別のポリヌクレオチドと同一の配列または相補的な配列の連続領域を有するポリヌクレオチドを示す。連続配列は、ある特定のポリヌクレオチド配列領域と、そのポリヌクレオチドの全体において、または部分領域に沿って「重複する」と言われる。例えば、ポリヌクレオチド配列5'-ATGGCTTAGCTT-3'に対する代表的なコンティグは、5'-TAGCTTgagtct-3'および3'-gtcgacTACCGA-5'である。
【0013】
「縮重ヌクレオチド配列」という用語は、(ポリペプチドをコードする参照ポリヌクレオチド分子と比較して)1つまたは複数の縮重コドンを含むヌクレオチド配列を示す。縮重コドンは異なるヌクレオチドトリプレットを含むが、同じアミノ酸残基をコードする(すなわち、GAUおよびGACトリプレットはそれぞれAspをコードする)。
【0014】
「発現ベクター」という用語は、関心対象のポリペプチドをコードするセグメントが、その転写をもたらすさらなるセグメントに機能的に連結している、線状または環状のDNA分子を示すために用いられる。このようなさらなるセグメントはプロモーター配列およびターミネーター配列を含み、1つまたは複数の複製起点、1つまたは複数の選択マーカー、エンハンサー、ポリアデニル化シグナルなども含み得る。発現ベクターは、一般的に、プラスミドもしくはウイルスDNAに由来するか、または両方のエレメントを含んでもよい。
【0015】
「単離された」という用語はポリヌクレオチドに適用された時に、ポリヌクレオチドがその天然の遺伝子環境から取り出されており、従って、他の外来性コード配列または不必要なコード配列を含まず、遺伝子操作されたタンパク質産生系内での使用に適した形をしていることを示す。このような単離された分子は、その天然環境から分離された分子であり、cDNAおよびゲノムクローンを含む。本発明の単離されたDNA分子は、通常結合している他の遺伝子を含まないが、天然の5'非翻訳領域および3'非翻訳領域、例えば、プロモーターおよびターミネーターを含んでもよい。結合している領域の特定は当業者に明らかであろう(例えば、Dynan and Tijan, Nature 316:774-78(1985)を参照されたい)。
【0016】
「単離された」ポリペプチドまたはタンパク質は、天然環境以外の状態で、例えば、血液および動物組織から離れた状態で見られるポリペプチドまたはタンパク質である。単離されたポリペプチドは、好ましい形では、他のポリペプチド、特に、動物由来の他のポリペプチドを実質的に含まない。高度に精製された形をした、すなわち、純度が95%超、より好ましくは純度が99%超のポリペプチドを提供することが好ましい。これに関連して用いられる場合、「単離された」という用語は、別の物理的な形、例えば、二量体またはグリコシル化型もしくは誘導体化型をした同じポリペプチドの存在を排除しない。
【0017】
「機能的に連結された」という用語はDNAセグメントについて言及している場合、セグメントが、意図されたように協調して機能するように、例えば、転写がプロモーターにおいて開始し、コードセグメントを通ってターミネーターまで進むように並べられていることを示す。
【0018】
「ポリヌクレオチド」は、5'末端から3'末端に読み取られる、デオキシリボヌクレオチド塩基またはリボヌクレオチド塩基からなる一本鎖ポリマーまたは二本鎖ポリマーである。ポリヌクレオチドはRNAおよびDNAを含み、天然供給源から単離されてもよく、インビトロで合成されてもよく、天然分子および合成分子の組み合わせから調製されてもよい。ポリヌクレオチドのサイズは、塩基対(「bp」と略す)、ヌクレオチド(「nt」)、またはキロベース(「kb」)で表される。文脈に沿っていれば、最後の2つの用語は、一本鎖または二本鎖のポリヌクレオチドについて述べていることがある。この用語が二本鎖分子に適用された場合には全長を示すために用いられ、「塩基対」という用語と同等であると理解されるだろう。二本鎖ポリヌクレオチドの2本の鎖は長さがわずかに異なってもよく、酵素的切断の結果として、その末端は付着末端でもよく、従って、二本鎖ポリヌクレオチド分子内の全てのヌクレオチドは対形成しなくてもよいことが当業者に理解されるだろう。このような対形成しない末端は、一般的に、長さが20ヌクレオチドを超えない。
【0019】
「ポリペプチド」は、天然または合成にかかわらずペプチド結合でつながっているアミノ酸残基からなるポリマーである。通常、約10アミノ酸残基未満のポリペプチドが「ペプチド」と呼ばれる。
【0020】
「プロモーター」という用語は、RNAポリメラーゼを結合し、転写を開始するDNA配列を含有する遺伝子の部分を示すために、当技術分野において認められた意味で本明細書において用いられる。通常、プロモーター配列は遺伝子の5'非コード領域に見られるが、常に遺伝子の5'非コード領域に見られるとは限らない。
【0021】
「タンパク質」は、1本または複数本のポリペプチド鎖を含む高分子である。タンパク質はまた炭水化物基などの非ペプチド成分を含んでもよい。タンパク質が産生される細胞によって、炭水化物および他の非ペプチド置換基がタンパク質に付加されることがあり、細胞型によって異なる。タンパク質は、本明細書ではアミノ酸バックボーン構造の点で定義される。一般的に、炭水化物基などの置換基は特定されないが、それにもかかわらず存在してもよい。
【0022】
「受容体」という用語は、生理活性分子(すなわち、リガンド)に結合し、細胞に対するリガンドの効果を媒介する細胞関連タンパク質を示す。膜結合型受容体は、細胞外リガンド結合ドメイン、および典型的にはシグナル伝達に関与する細胞内エフェクタードメインを含む多ドメイン構造を特徴とする。リガンドと受容体が結合すると受容体内でコンホメーション変化が起こり、これにより、エフェクタードメインと細胞内の他の分子が相互作用する。次に、この相互作用は細胞代謝の変化につながる。受容体-リガンド相互作用と結びついている代謝事象には、遺伝子転写、リン酸化、脱リン酸、サイクリックAMP産生の増加、細胞カルシウムの動員、膜脂質の動員、細胞接着、イノシトール脂質の加水分解、およびリン脂質の加水分解が含まれる。一般的に、受容体は、膜結合型、サイトゾル型、または核型、単量体(例えば、甲状腺刺激ホルモン受容体、βアドレナリン受容体)または多量体(例えば、PDGF受容体、成長ホルモン受容体、IL-3受容体、GM-CSF受容体、G-CSF受容体、エリスロポエチン受容体、およびIL-6受容体)でもよい。
【0023】
「分泌シグナル配列」という用語は、大きなポリペプチドの成分として、大きなポリペプチドが合成された細胞の分泌経路に、大きなポリペプチドを誘導するポリペプチド(「分泌ペプチド」)をコードするDNA配列を示す。大きなポリペプチドは、通常、分泌経路を通過する間に分泌ペプチドが除去されるように切断される。
【0024】
不正確な分析方法(例えば、ゲル電気泳動)によって求められたポリマーの分子量および長さは近似値であることが理解されるだろう。このような値が「約」Xまたは「およそ」Xで表されている時に、言及された値Xは±10%の精度であると理解されるだろう。
【0025】
序論
本発明は、IL-20が開始または拡大または維持において役割を果たしている炎症および炎症性疾患の治療であって、IL-20に対するアンタゴニストを罹患個体に投与することによる治療に関する。このアンタゴニストは、IL-20に対する抗体、IL-20に結合する可溶性受容体、IL-20受容体のIL-20RAサブユニットまたはIL-20RBサブユニットのいずれかに結合するアンチセンス分子または抗体でもよい。
【0026】
IL-20は定義されており、IL-20を産生する方法およびIL-20に対する抗体は、国際特許出願PCT US98/25228、1998年11月25日に公開された公開番号WO99/27103、ならびに1999年5月17日に出願された米国特許出願第09/313,458号に記載されている。ヒトIL-20のポリヌクレオチドおよびポリペプチドはSEQ ID NO:1-4で表され、マウスIL-20のポリヌクレオチドおよびポリペプチドはSEQ ID NO:5-9で表される。
【0027】
IL-20受容体は発見されており、「IL-20RA」と呼ばれる(正式にはZcytor7と呼ばれる)ポリペプチドおよび「IL-20RB」と呼ばれるポリペプチドからなるヘテロ二量体である。IL-20RAポリペプチド、これをコードする核酸、IL-20RAに対する抗体、およびこれを産生する方法は、1999年8月31日に発行された米国特許第5,945,511号に開示される。SEQ ID NO:10-12は、IL-20RAのポリヌクレオチドおよびポリペプチドである。ヒトIL-20RAの細胞外ドメインは、SEQ ID NO:12、55、63、および65からなる群より選択されるポリペプチドからなり、完全長受容体サブユニットはSEQ ID NO:11からなる。マウスIL-20RAの細胞外ドメインはSEQ ID NO:38であり、マウスIL-20RAの全体はSEQ ID NO:37である。
【0028】
IL-20RBの細胞外ドメイン(SEQ ID NO:13-14、ならびに変異体SEQ ID NO:18および19)は、SEQ ID NO:15、59、61、67、68、および69からなる群より選択されるポリペプチドからなる。好ましくは、IL-20RAポリペプチドの細胞外ドメインおよびIL-20RBポリペプチドの細胞外ドメインは一緒に共有結合している。好ましい態様では、これらの2つの細胞外サブユニットポリペプチドが一緒になって可溶性受容体を形成し、Igの重鎖と軽鎖との間でジスルフィド結合が形成されるように、一方の細胞外サブユニットポリペプチドは、そのカルボキシ末端と免疫グロブリンの重鎖定常領域が融合しており、他方の細胞外サブユニットは、そのカルボキシ末端と免疫グロブリン(Ig)の軽鎖定常領域が融合している。別の方法では、ペプチドリンカーがポリペプチドの2つのカルボキシ末端に融合して、共有結合した可溶性受容体を形成してもよい。
【0029】
SEQ ID NO:22および23は、実施例5に示した手順に従って作製された、IL-20RA細胞外ドメインが変異ヒト免疫グロブリンγ1定常領域と融合している構築物である。SEQ ID NO:62は、シグナル配列の無い予測成熟配列である。SEQ ID NO:20および21は、実施例5の手順に従って作製された、IL-20RB細胞外ドメインが野生型ヒト免疫グロブリンκ軽鎖定常領域と融合している構築物である。SEQ ID NO:60は、シグナル配列の無い予測成熟配列である。図1は、実施例5によって作製されたヘテロ四量体を示す。
【0030】
SEQ ID NO:52および53は、実施例12に示した手順に従って作製された、IL-20RA細胞外ドメインが変異ヒト免疫グロブリンγ1定常領域と融合している構築物である。SEQ ID NO:54は、シグナル配列の無い予測成熟配列である。SEQ ID NO:56および57は、実施例12の手順に従って作製された、IL-20RB細胞外ドメインが野生型ヒト免疫グロブリンκ軽鎖定常領域と融合している構築物である。SEQ ID NO:58は、シグナル配列の無い予測成熟配列である。得られたヘテロ四量体は、実施例5によって作製されたものとほぼ同一であり、主な違いは、細胞外ドメインとIg定常領域の始まりとの間にポリペプチドリンカー、図1の22が無いことである。以下、「受容体の細胞外ドメイン」という用語は、受容体の細胞外ドメインまたはそのリガンドとの結合に必要な細胞外ドメインの一部を意味し、この場合、リガンドはIL-20である。
【0031】
得られる可溶性受容体がIL-20に結合できるような多くのやり方で、IL-20RA細胞外ドメインとIL-20RB細胞外ドメインとを一緒に連結することができる。図1〜8は代表的な数の本発明の態様を例示する。図面のそれぞれにある共通の要素を同じ数字で示した。図1は、下記の実施例5に従って作製された本発明の態様を表す。10と指定した可溶性受容体構築物は、12および14と指定した2つのIL-20結合部位ポリペプチド鎖からなる。それぞれの結合部位は、16と指定したIL-20RA細胞外ドメインおよび18と指定したIL-20RB細胞外ドメインからなる。
【0032】
IL-20RAの細胞外ドメイン16は、SEQ ID NO:72のリンカー22を介して、ヒト免疫グロブリンγ1重鎖定常領域の重鎖定常ドメイン1(CH1)20と連結される。次いで、ヒンジ領域23を介して、CH1ドメイン20はCH2ドメイン24と連結される。ヒンジ領域25を介して、CH2ドメイン24はCH3ドメイン26と連結される。
【0033】
図1の構築物とSEQ ID NO:22を比較すると、IL-20RAの細胞外ドメイン16は、SEQ ID NO:22のアミノ酸残基36のバリンからアミノ酸残基249のグルタミンまで及んでいる。ポリペプチドリンカー22は、SEQ ID NO:22のアミノ酸残基250のグリシンからアミノ酸残基264のセリンまで及んでいる。図1のCH1ドメイン22は、SEQ ID NO:22のアミノ酸残基265のアラニンからアミノ酸残基362のバリンまで及んでいる。図1のヒンジ領域23は、SEQ ID NO:22のアミノ酸残基363のグルタミン酸からアミノ酸残基377のプロリンまで及んでいる。鎖12および14は、ジスルフィド結合28および30によって一緒にジスルフィド結合している。ジスルフィド結合は、重鎖間で、2本の重鎖それぞれのSEQ ID NO:22の位置373および376にあるシステイン残基によって形成される。
【0034】
IL-20RBの細胞外ドメイン18は、ポリペプチドSEQ ID NO:72のポリペプチドリンカー32を介して、図1のヒトκ軽鎖(CL)の定常領域34と連結される。IL-20RBの細胞外ドメイン18は、SEQ ID NO:20のアミノ酸残基30のバリンからアミノ酸残基230のアラニンまで及んでいる。ポリペプチドリンカー32は、SEQ ID NO:20のアミノ酸残基231のグリシンからアミノ酸残基245のセリンまで及んでいる。κ軽鎖定常領域34は、SEQ ID NO:20のアミノ酸残基246のアルギニンから最後のアミノ酸残基352のシステインまで及んでいる。SEQ ID NO:20の位置352にあるシステインは、SEQ ID NO:22の位置367にあるシステインと共に、図1のジスルフィド結合36を形成する。従って、軽鎖定常34は、ジスルフィド結合36によってヒンジ領域23と連結される。このように、IL-20RAの細胞外ドメイン16はIL-20RBの細胞外ドメイン18と連結して、可溶性受容体を形成する。
【0035】
SEQ ID NO:22の位置373および376にあるシステイン残基が異なるアミノ酸残基に変化したら、2つのIL-20結合ポリペプチド12および14は一緒にジスルフィド結合を形成せず、ヒンジ領域27を有する図2に示した構築物を形成するだろう。
【0036】
図3は、本発明の非常に簡単な可溶性受容体38を示す。ここで、IL-20RAの細胞外ドメイン16は、ポリペプチドリンカー40によって、IL-20RBの細胞外ドメイン18と接続している。ポリペプチドリンカーはIL-20RAの細胞外ドメイン16のアミノ末端から延びており、IL-20RBの細胞外ドメイン18のカルボキシル末端と接続している。ポリペプチドリンカーは、長さが100〜240アミノ酸、好ましくは、長さが約170アミノ酸残基でなければならない。適切なリンカーはグリシン残基およびセリン残基からなる。可能性のあるリンカーは、SEQ ID NO:72の複数の単位、好ましくは、約12個の単位であろう。
【0037】
図4は、図3のように、リンカー40によって、IL-20RAの細胞外ドメイン16がIL-20RBの細胞外ドメイン18と連結している態様を示す。IL-20RAの細胞外ドメイン16は、図1のように、ポリペプチドリンカー42によって、CH1ドメイン20と連結される。ポリペプチドリンカー42は長さが約30アミノ酸残基でなければならない。理想的なリンカーは、SEQ ID NO:72のようなグリシンおよびセリン、ならびに図1のヒンジ配列23からなる。
【0038】
図5は、別の可能性のある本発明の態様を示す。この態様において、約15アミノ酸残基からなるポリペプチドリンカー44、例えば、SEQ ID NO:72は、IL-20RBの細胞外ドメイン18のカルボキシル末端と、IL-20RAの細胞外ドメイン16のアミノ末端を連結する。約30アミノ酸残基からなるポリペプチドリンカー46は、IL-20RAの細胞外ドメイン16のカルボキシ末端からCH2ドメインまで及んでいる。リンカー46のカルボキシル末端は、好ましくは、SEQ ID NO:22のアミノ酸残基363のグルタミン酸からアミノ酸残基377のプロリンまで及ぶヒンジ領からなる。それにもかかわらず、ジスルフィド結合が形成できるように、ポリペプチドリンカー46は、理想的には、そのカルボキシル末端に少なくとも1個のシステイン残基を有する。
【0039】
図6の可溶性IL-20受容体は、図1のCH3ドメイン26が図6の態様に存在しないことを除けば図1のものと同一である。CH3領域はSEQ ID NO:22のアミノ酸残基488のグリシンから始まり、最後の残基594まで及ぶ。
【0040】
図7は、CH2およびCH3ドメインが両方とも存在しないことを除けば図1の構築物と同一の可溶性IL-20受容体構築物を示す。CH2ドメインおよびCH3ドメインは、SEQ ID NO:22のアミノ酸残基378のアラニンからポリペプチド配列の末端まで及んでいる。
【0041】
図8は、IL-20RAである16およびIL-20RBが両方とも、それぞれのカルボキシル末端にポリペプチドリンカー48が融合している構築物を示す。それぞれのポリペプチドリンカーは発現された時に、システインが2つのジスルフィド結合50および52を形成するように、2個のシステイン残基を有する。この場合、ポリペプチドリンカーは図1のヒンジ領域23からなる。ヒンジ領域は、SEQ ID NO:22のアミノ酸残基363のグルタミンからアミノ酸残基377まで及ぶ。
【0042】
本発明の別の局面において、IL-20RAの細胞外ドメインおよびIL-20RBの細胞外ドメインからなる可溶性受容体を産生するための方法であって、以下の工程:(a)第1の分泌シグナル配列と機能的に連結された転写プロモーターの下流に、かつ正しい読み枠で、IL-20RAの細胞外部分をコードするDNAおよび免疫グロブリン軽鎖定常領域をコードするDNAが続く第1のDNA配列を、宿主細胞に導入する工程;(b)第2の分泌シグナルと機能的に連結された転写プロモーターの下流に、かつ正しい読み枠で、IL-20RBの細胞外部分をコードするDNA配列、ならびにCH1、CH2、CH3、およびCH4からなる群より選択される免疫グロブリン重鎖定常領域ドメインをコードするDNA配列が続く第2のDNA構築物を、宿主細胞に導入する工程;(C)IL-20RAの細胞外ドメインおよびIL-20RBの細胞外ドメインからなる融合タンパク質の分泌を可能にする生理学的条件下で、適切な増殖培地中で宿主細胞を増殖させる工程;ならびに(d)宿主細胞からポリペプチドを単離する工程を含む方法が提供される。1つの態様において、第2のDNA配列はさらに免疫グロブリン重鎖ヒンジ領域をコードし、ここで、ヒンジ領域は重鎖定常領域ドメインとつながっている。別の態様において、第2のDNA配列はさらに免疫グロブリン可変領域をコードし、免疫グロブリン可変領域は、その上流かつ正しい読み枠で免疫グロブリン重鎖定常領域とつながっている。
【0043】
代わりの態様において、IL-20RAの細胞外ドメインおよびIL-20RBの細胞外ドメインからなる可溶性受容体を産生するための方法であって、以下の工程:(a)第1の分泌シグナル配列と機能的に連結された転写プロモーターの下流に、かつ正しい読み枠で、IL-20RBの細胞外部分をコードするDNAおよび免疫グロブリン軽鎖定常領域をコードするDNAが続く第1のDNA配列を、宿主細胞に導入する工程;(b)第2の分泌シグナルと機能的に連結された転写プロモーターの下流に、かつ正しい読み枠で、IL-20RAの細胞外部分をコードするDNA配列、ならびにCH1、CH2、CH3、およびCH4からなる群より選択される免疫グロブリン重鎖定常領域ドメインをコードするDNA配列が続く第2のDNA構築物を、宿主細胞に導入する工程;(C)IL-20RAの細胞外ドメインおよびIL-20RBの細胞外ドメインからなる二量体化したヘテロ二量体融合タンパク質の分泌を可能にする生理学的条件下で、適切な増殖培地中で宿主細胞を増殖させる工程;ならびに(d)二量体化したポリペプチドを宿主細胞から単離する工程を含む方法が提供される。1つの態様において、第2のDNA配列はさらに免疫グロブリン重鎖ヒンジ領域をコードし、ここで、ヒンジ領域は重鎖定常領域ドメインとつながっている。別の態様において、第2のDNA配列はさらに免疫グロブリン可変領域をコードし、免疫グロブリン可変領域は、その上流かつ正しい読み枠で免疫グロブリン重鎖定常領域とつながっている(米国特許第5,843,725号を参照されたい)。
【0044】
本明細書で使用する、「抗体」という用語は、ポリクローナル抗体、アフィニティ精製されたポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ならびに抗原結合断片、例えば、F(ab') 2およびFabタンパク質分解断片を含む。遺伝子操作されたインタクトな抗体または断片、例えば、キメラ抗体、Fv断片、単鎖抗体など、ならびに合成の抗原結合ペプチドおよびポリペプチドも含まれる。非ヒト抗体は、非ヒトCDRをヒトフレームワークおよび定常領域に接ぎ合わせるか、非ヒト可変ドメイン全体を組み込むことによってヒト化することができる(任意に、露出している残基の置換によって、非ヒト可変ドメイン全体をヒト様表面で「覆い隠す」ことによってヒト化することができ、この結果「べニア」抗体(veneered antibody)となる)。場合によっては、ヒト化抗体は、適切な結合特性を高めるために、ヒト可変領域フレームワークドメイン内に非ヒト残基を保持してもよい。抗体をヒト化することによって、生物学的半減期を延ばすことができ、ヒトへの投与の際の有害な免疫反応の可能性が少なくなる。抗体の結合親和性は、例えば、スキャッチャード分析によって、当業者により容易に決定することができる。当業者に公知の様々なアッセイを用いて、タンパク質またはペプチドに結合する抗体を検出することができる。例示的なアッセイは、Antibodies: A Laboratory Manual, Harlow and Lane (Eds.)(Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1988)において詳述されている。このようなアッセイの代表例には、同時免疫電気泳動(concurrent immunoelectrophoresis)、ラジオイムノアッセイ、放射性免疫沈降、酵素結合免疫測定法(ELISA)、ドットブロットまたはウエスタンブロットアッセイ、阻害アッセイまたは競合アッセイ、およびサンドイッチアッセイが含まれる。
【0045】
本発明者らは、IL-20がIL-8をアップレギュレートすることを示した。IL-8が大きな役割を果たし、IL-8の減少が有益なものとなる炎症性疾患は、成人呼吸器疾患(ARD)、敗血症ショック、多臓器不全、炎症性肺損傷、例えば、喘息または気管支炎、細菌性肺炎、乾癬、ならびに炎症性腸疾患、例えば、潰瘍性大腸炎およびクローン病、湿疹、アトピー性皮膚炎、および接触性皮膚炎である。従って、IL-20に対するアンタゴニストを用いて、これらの疾患を治療することができる。
【0046】
IL-20、その受容体の生物学的特性、および乾癬におけるその役割
2つのオーファンクラスIIサイトカイン受容体がIL-20受容体サブユニットとして特定された。これらは両方とも皮膚において発現している。どちらのIL-20受容体サブユニットもリガンド結合に必要であり、このため、これらの役割は、他の4つの既知のクラスIIサイトカイン受容体にあるサブユニットの役割とは異なる。IL-20RAおよびIL-20RBはまた、皮膚以外に、卵巣、副腎、精巣、唾液腺、筋肉、肺、腎臓、心臓を含む多くのヒト組織においても同時発現し、さらに少ない程度で小腸でも同時発現している。このことは、IL-20が作用するためのさらなる標的組織を示唆している。さらに、本発明者らは、胃、甲状腺、膵臓、子宮、脳、および前立腺を含む、いくつかのヒト組織においてIL-20RA mRNAを検出したが、IL-20RB mRNAを検出しなかった。このことは、IL-20RAが、他のクラスII受容体サブユニットのパートナーとなり得ることを示唆している。本発明者らは、IL-20ヘテロ二量体受容体は他のクラスIIサイトカイン受容体と構造が似ており、本発明者らがIL-20リガンドの活性を証明した皮膚において発現していると結論付けた。
【0047】
2つの証拠から、IL-20およびその受容体の役割は乾癬に関与していることが分かっている。この複遺伝子性の皮膚病は、ケラチノサイト増殖の増大、ケラチノサイト分化の変化、皮膚への免疫細胞の浸潤を特徴とする。IL-20が乾癬において役割を果たしているという第1の証拠は、トランスジェニックマウスにおいて観察された角質増殖と表皮肥厚がヒト乾癬異常に似ていることである。トノフィラメント数の減少は角質化の欠損に関連すると考えられ、ヒト乾癬の顕著な特徴である。ミトコンドリア内の封入体が、マウスにおける化学的に誘導された過形成皮膚状態および天然の過形成皮膚状態の両方において見出されている。封入体の原因およびミトコンドリア機能への影響はあったとしても不明である。本発明者らは、IL-20トランスジェニックマウスは、ヒト乾癬において観察される特徴の多くを示すと結論付けた。
【0048】
IL-20受容体と乾癬を結び付ける第2の証拠は、正常皮膚と比較してヒト乾癬皮膚では、IL-20RA mRNAおよびIL-20RB mRNAが両方とも著しくアップレギュレートされることである。IL-20受容体サブユニットは両方とも表皮全体にわたってケラチノサイトにおいて発現し、免疫細胞および内皮細胞の一部においても発現している。本発明者らは、活性化IL-20受容体の発現増大が、内皮細胞と免疫細胞とケラチノサイトとの相互作用を変化させ、これが、ケラチノサイト増殖および分化の調節不全につながった可能性があると提唱する。
【0049】
新規サイトカインの機能の理解における重要な段階は、そのコグネイト受容体の特定および特徴付けである。本発明者らは、新規インターロイキンを単離するために構造に基づくアプローチを首尾良く使用しており、最終的に、その受容体の単離につながった。IL-20は、ヒトケラチノサイトHaCaT細胞株においてシグナル伝達を刺激する。このことは、この新規リガンドが皮膚において直接作用することを裏付けている。さらに、ケラチノサイトにおいて活性があり、皮膚における増殖シグナルおよび炎症促進シグナルと関係があることが知られているタンパク質であるIL-1β、EGF、およびTNF-αは、IL-20に対する応答を増強する。IL-20受容体を発現するHaCaT細胞およびBHK細胞の両方において、IL-20はSTAT3を介してシグナル伝達を行う。
【0050】
乾癬を治療するための、IL-20に対するアンタゴニストの使用
前記の議論および下記の実施例において示されるように、IL-20は乾癬の病理にも関与する。本発明は、特に、IL-20に対するアンタゴニストを投与することによって乾癬を治療するための方法である。IL-20に対するアンタゴニストは、IL-20に結合する可溶性受容体、またはIL-20もしくはIL-20受容体のいずれかに結合する抗体、単鎖抗体、もしくは抗体断片でもよい。従って、アンタゴニストは、IL-20受容体の活性化を阻止する。
【0051】
乾癬は、最もよく見られる皮膚病の1つであり、世界人口の1〜2パーセントにまで罹患する。乾癬は、銀色の雲母状の板状鱗屑で覆われた、境界の極めて明瞭な紅斑性の丘疹および丸みのあるプラークを特徴とする慢性炎症性皮膚障害である。乾癬の皮膚病変は、そう痒性が様々である。外傷領域は乾癬病変を発症することが多い。さらに、感染、ストレス、および薬物療法、例えば、リチウム、β遮断薬、および抗マラリア剤を含む他の外的要因が乾癬を悪化させることがある。
【0052】
最も一般的な種類の乾癬はプラーク型と呼ばれる。プラーク型乾癬患者には安定した、ゆっくりと増殖するプラークがあり、基本的には長期間、不変のままである。プラーク乾癬が発症する最も一般的な領域は、肘、膝、殿裂、および頭皮である。合併症は対称的になる傾向がある。逆位乾癬(inverse psoriasis)は、腋窩、鼡径部、乳腺下領域、および臍を含む間擦領域において発症し、頭皮、手掌、および足底においても発症する傾向がある。個々の病変は、境界の極めて明瞭なプラークであるが、その位置のために湿っていることがある。プラーク型乾癬は一般的にゆっくりと発症し、遅進性の経過をたどる。まれに自然に寛解する。
【0053】
発疹性乾癬(eruptive psoriasis)(滴状乾癬)は小児および若年成人においてよく見られる。これは、乾癬のない個体または慢性プラーク乾癬のある患者において急性発症する。患者は、鱗屑のある多くの小さな紅斑性丘疹を、往々にしてβ溶血性連鎖球菌による上気道感染後に呈する。乾癬患者はまた膿疱性病変も発症することがある。これらは手掌および足底に限局されるか、または全身性のこともあり、発熱、倦怠感、下痢、および関節痛と関連することもある。
【0054】
全乾癬患者のうち約半分には爪合併症があり、点状のくぼみ、爪肥厚、または爪下角質増殖として現われる。乾癬患者の約5〜10パーセントには随伴性の膝愁訴があり、これらは、爪合併症のある患者において最もよく見られる。一部には、古典的な慢性関節リウマチが同時に起こるが、多くは、乾癬に関連する5つの型:(1)1つまたは数個の小さな関節に限定される疾患(症例の70パーセント);(2)血清反応陰性慢性関節リウマチ様疾患;(3)遠位指節間関節の合併症;(4)「破壊性関節炎」の発症を伴う重篤な破壊型関節炎;および(5)脊椎に限定される疾患の1つに分類される関節疾患がある。
【0055】
IL-20に対するアンタゴニストを投与することによって、乾癬を治療することができる。好ましいアンタゴニストは、IL-20に対する可溶性受容体、またはIL-20受容体もしくはIL-20に結合する抗体、抗体断片、もしくは単鎖抗体である。IL-20に対するアンタゴニストは単独で投与されてもよく、または他の確立した療法、例えば、潤滑剤、角質溶解薬、局所コルチコステロイド、局所ビタミンD誘導体、アントラリン、全身代謝拮抗物質、例えば、メトトレキセート、ソラレン-紫外線療法(PUVA)、エトレチナート、イソトレチノイン、シクロスポリン、および局所ビタミンD3誘導体カルシポトリオールと組み合わせて投与されてもよい。アンタゴニスト、特に、IL-20またはIL-20受容体に結合する可溶性受容体または抗体は、個体に、皮下投与、静脈内投与、またはIL-20アンタゴニストを含有するクリームもしくは経皮パッチを用いて経皮投与することができる。皮下投与されるのであれば、アンタゴニストは、1つまたは複数の乾癬プラークに注入することができる。経皮投与されるのであれば、アンタゴニストは、IL-20に対するアンタゴニストを含有するクリームを用いてプラークに直接投与することができる。
【0056】
肺の炎症状態を治療するための、IL-20に対するアンタゴニストの使用
IL-20に対するアンタゴニストは、喘息、気管支炎、もしくは嚢胞性線維症、または他の炎症性肺疾患を有する人間に、これらの疾患を治療するために投与することができる。アンタゴニストは、静脈内投与、皮下投与、気管支洗浄を含む任意の適切な方法によって、およびIL-20に対するアンタゴニストを含有する吸入剤を用いることによって投与することができる。
【0057】
IL-20に対するアンタゴニストの投与
有効な療法に必要な、IL-20に対するアンタゴニストの量は、投与手段、標的部位、患者の生理学的状態、および投与される他の薬物療法を含む多くの異なる要因に依存する。従って、治療投与量は、安全性および効力を最適化するように設定すべきである。典型的には、インビトロで用いられる投与量は、これらの試薬のインビボ投与に有用な量の有用な指導を与え得る。さらに、特定の障害の治療のための有効量の動物試験はヒトへの投与量を予測するものである。投与方法には、経口投与、静脈内投与、腹腔投与、筋肉内投与、経皮投与、またはネブライザーもしくはアトマイザーによるスプレーの形での肺もしくは気管への投与が含まれる。薬学的に許容される担体は、いくつかの例を挙げてみると、水、食塩水、緩衝液を含む。投与量範囲は、通常、1μg〜1000μg/体重キログラム/日から予想される。平均的な成人へのIL-20可溶性受容体の投与量は、週2回、皮下注射として与えられる約25mgであろう。IL-20に結合する抗体の投与量は、週2回与えられる約25mgであろう。IL-20RAおよびIL-20RBサブユニットに結合する抗体の混合物は、成人の場合、週2回与えられる約25mgであろう。乾癬治療の場合、乾癬病変部位に注射することができる。IL-20に対するアンタゴニストの皮下投与または静脈内投与の場合、抗体または可溶性受容体はリン酸緩衝食塩水に溶解されてもよい。また、乾癬などの皮膚病では、軟膏または経皮パッチを介してIL-20に対するアンタゴニストを投与することができる。用量は、当技術分野において通常の知識を有する医師によって決定できるように、これより高くても低くてもよい。薬物製剤および投与量範囲の完全な議論については、Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th Ed., (Mack Publishing Co., Easton, Penn., 1996)、およびGoodman and Gilman's: The Pharmacological Bases of Therapeutics, 9th Ed.(Pergamon Press 1996)を参照されたい。
【0058】
本発明は、以下の非限定的な実施例によってさらに説明される。
【実施例】
【0059】
実施例1
IL-20によるIL-8のアップレギュレーション
方法:
継代数2の正常ヒト表皮新生児ケラチノサイト(NHEK)(Clonetics)をプレートし、12ウェル組織培養プレートにおいてコンフルエントになるまで増殖させた。KGM(ケラチノサイト増殖培地)はCloneticsから購入した。細胞がコンフルエントになったら、増殖因子を含まないKGM培地=KBM(ケラチノサイト基本培地)を用いて洗浄した。KBM中で、細胞から血清を72時間欠乏させた後に、試験化合物を添加した。1I.U./mLのトロンビンおよび25nMトリプシンを正の対照として使用した。1mLの培地/ウェルを添加した。負の対照としてKBMのみを使用した。
【0060】
IL-20をKBM培地中で作り上げ、第1の実験では618ng/mL〜2.5μg/ml、第2の実験では3ng/mL〜2.5μg/mLの様々な濃度で添加した。
【0061】
細胞を、37℃、5%CO2で48時間インキュベートした。上清を除去し、-80℃で数日間凍結させた後に、IL-8およびGM-CSFレベルをアッセイした。ヒトIL-8 Immunoassayキット#D8050(RandD Systems, Inc.)およびヒトGM-CSF Immunoassayキット#HSGMO(RandD Systems, Inc.)を用いて、製造業者の説明書に従って、サイトカイン産生を確かめた。
【0062】
結果
結果から、IL-8およびGM-CSFの発現がIL-20によって誘導されたことが分かった。
【0063】
実施例2
IL-20RBのクローニング
IL-20RBコード領域のクローニング
1999年3月8日に出願された国際特許出願PCT/US99/03735(公開番号WO99/46379)からの配列に基づいて、2つのPCRプライマーを設計した。SEQ ID NO:16は、ATG(Met1)コドンとEcoRI制限部位を含有し、SEQ ID NO:17は、停止コドン(TAG)とXhoI制限部位を含有する。テンプレートとしてヒトケラチノサイト(HaCaT)cDNAライブラリーDNAを用いて、プライマーとしてSEQ ID NO:16およびSEQ ID NO:17を用いて、PCR増幅を行った。PCR反応は以下の通り行った。94℃1分のインキュベーションに続いて、94℃30秒および68℃2分からなる30サイクル、この後にさらに68℃4分。反応物は4℃で保管した。PCR産物を1%アガロースゲル上で流し、1kb DNAバンドを観察した。PCR産物をゲルから切断し、QIAquick Gel Extraction Kit(Qiagen)を用いて、DNAを精製した。精製されたDNAをEcoRIおよびXhoIで消化し、pZPベクターにクローニングし、これをpZP7Nと呼んだ。pZPプラスミドは、マウスメタロチオネイン-1プロモーター、ヒトtPAリーダーペプチド、コード配列挿入用の複数の制限部位、Glu-Gluタグ、およびヒト成長ホルモンターミネーターを有する発現カセットを含む哺乳動物発現ベクターである。このプラスミドはまた、大腸菌複製起点、SV40プロモーター、エンハンサー、および複製起点を有する哺乳動物選択マーカー発現単位、ならびにDHFR遺伝子、ならびにSV40ターミネーターも有する。いくつかのIL-20RB-pZP7Nクローンを配列決定した。これらは全て、PCT/US99/03735にあるIL-20RBの配列と比較して3個の非保存的変異:(配列IL-20RB-pZP7N)、146 Pro (CCC)--Thr(ACC)、148 His (CAT)--Asp(GAT)、および171 Thr(ACG)--Arg(AGG)を含有する。
【0064】
IL-20RB-pZP7Nクローンにおける3個の置換を確認するために、テンプレートとして3種類のcDNA供給源、胎児皮膚マラソン(marathon)cDNA、HaCaT cDNAライブラリーDNA、および前立腺平滑筋cDNAライブラリーDNAを用いて、PCR増幅を行った。PCR産物をゲル精製し、配列決定した。3つのPCR産物のそれぞれの配列は、IL-20RB-pZP7Nクローンのものと一致していた。IL-20RBはSEQ ID NO:13および14であり、成熟細胞外ドメインはSEQ ID NO:15である。
【0065】
実施例3
IL-20とIL-20RB/IL-20RAヘテロ二量体との結合
細胞ベースの結合アッセイを用いて、IL-20がIL-20RA-IL-20RBヘテロ二量体に結合することを確認した。
【0066】
既知のオーファンクラスIIサイトカイン受容体(IL-20RAおよびIL-20RBを含む)を含有する発現ベクターを様々に組み合わせてCOS細胞に一過的にトランスフェクトし、次いで、ビオチン標識IL-20タンパク質に結合する能力についてアッセイした。結果から、IL-20RB-IL-20RAヘテロ二量体はIL-20受容体であることが分かる。使用した手順を以下で説明する。
【0067】
以下の通り12ウェル組織培養プレート中で、COS細胞トランスフェクションを行った。92μl無血清ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)(500ml DMEMの中に、55mgピルビン酸ナトリウム、146mg L-グルタミン、5mgトランスフェリン、2.5mgインシュリン、1μgセレン、および5mgフェチュイン)の中に5μlリポフェクタミンを含有する培地と、0.5μg DNAを混合し、室温で30分間インキュベートし、次いで、400μl無血清DMEM培地に添加した。次いで、この500μl混合物を1.5x105COS細胞/ウェルに添加し、37℃で5時間インキュベートした。500μlの20%胎仔ウシ血清(FBS)DMEM培地を添加し、一晩インキュベートした。
【0068】
このアッセイは「分泌トラップ」(Davis, S., et al, Cell 87: 1161-1169 (1996)の改良法であり、以下の通りに行った。細胞をPBS/1%ウシ血清アルブミン(BSA)でリンスし、TNB(0.1M Tris-HCl、0.15M NaClおよび0.5%ブロッキング試薬(NEN Renaissance TSA-Direct Kit Cat# NEL701)を含む水)で1時間ブロックした。この後に、3μg/mlビオチン化IL-20タンパク質を含むTNBと1時間インキュベートした。細胞をPBS/1%BSAで洗浄し、1:300に希釈したストレプトアビジン-HRP(NENキット)を含むTNBと、さらに数時間インキュベートした。もう1回洗浄した後に、細胞を、1.8%ホルムアルデヒドを含むリン酸緩衝食塩水(PBS)で15分間固定した。
【0069】
次いで、細胞を、TNT(0.1M Tris-HCL、0.15M NaCl、および0.05%Tween-20を含む水)で洗浄した。希釈緩衝液(NENキット)で1:50に希釈したフルオレセインチラミド試薬と5分間インキュベートした後に、陽性結合シグナルが検出された。細胞をTNTで洗浄し、TNTで1:5に希釈したVectashield Mounting Media(Vector Labs)を用いて保存し、倒立蛍光顕微鏡によってFITCフィルターを用いて視覚化した。
【0070】
実施例4
IL-20による炎症性サイトカインのアップレギュレーション
細胞処理
ヒトケラチノサイト細胞株であるHaCaTを、T-75組織培養フラスコ中で、コンフルエントになった数日後まで37℃で増殖させた。この時点で、正常増殖培地(DMEM+10%FBS)を除去し、無血清培地と交換した。次いで、細胞を37℃で2日間インキュベートした。次いで、DMEMを除去し、処理1回につき4個の細胞フラスコを、以下のそれぞれの条件:5ng/mLの組換えヒト(rh)IL-1α、20ng/mLのrhIL-1α、5ng/mLのrhIL-1α+1μg/mLのIL-20、1μg/mLのIL-20、または10ng/mLのrhIL-10の1つを用いて37℃で4時間、処理した。
【0071】
RNA単離
サイトカイン処理後に、培地を除去し、チオシアン酸グアニジン溶液を用いて細胞を溶解した。塩化セシウム勾配上で一晩回転させることによって、細胞溶解産物から総RNAを単離した。翌日、RNAペレットをTE/SDS溶液に再懸濁し、エタノール沈殿させた。次いで、分光光度計を用いてRNAを定量した後に、Clontech's Atlas(商標) cDNA Expression Arrays User ManualのSection V.B(バージョンPT3140-1/PR9X390、11/5/99に公開)に従って、DNase処理を行った。RNA試料の品質は、スペクトル測定値に基づく純度計算によって、およびアガロースゲル上での視覚化によって確認した。RNA試料のゲノム汚染は、βアクチン遺伝子のPCR分析によって除外した。
【0072】
プローブ合成
ポリA+濃縮、プローブ合成、およびAtlas(商標)アレイとのハイブリダイゼーションのためのClontechプロトコールに従った(前記、およびAtlas(商標) Pure Total RNA Labeling System User Manual、PT3231-1/PR96157、6/22/99公開を参照されたい)。簡単に述べると、ストレプトアビジンでコーティングされた磁気ビーズ(Clontech, Paolo Alto, CAによる)および磁気粒子分離器を用いて、50mgの総RNAからポリA+RNAを単離した。次いで、RT-PCRによって、ポリA+RNAをalpha32P-dATPで標識した。Atlas(商標)ヒトサイトカイン/受容体アレイ(Cat.#7744-1)上にある268の遺伝子に特異的なClontech CDSプライマーを反応に使用した。カラムクロマトグラフィーを用いて標識プローブを単離し、シンチレーション液中でカウントした。
【0073】
アレイ膜ハイブリダイゼーション
Atlas(商標)アレイを、連続撹拌しながら、Clontech ExpressHyb+100mg/mL熱変性サケ精子DNAと68℃で少なくとも30分間プレハイブリダイズさせた。次いで、膜を、連続撹拌しながら、1.9x106CPM/mL(合計1.14x107CPM)と68℃で一晩ハイブリダイズさせた。翌日、膜を、68℃の2XSSC、1%SDSで30分間、4回、洗浄し、68℃の0.1XSSC、0.5%SDSで30分間、1回、洗浄し、その後に最後に、室温の2XSSCで5分間、1回、洗浄した。次いで、アレイ膜をKodakプラスチックポーチに入れ、密封し、ホスフォイメージャースクリーンに室温で一晩、曝露した。翌日、ホスフォスクリーンをホスフォイメージャーでスキャンし、Clontech's Atlaslmage(商標)1.0ソフトウェアを用いて分析した。
【0074】
結果
IL-20によってアップレギュレートされる遺伝子
1.腫瘍壊死因子(TNF)がIL-20によって1.9〜2.4倍にアップレギュレートされた。
2.胎盤増殖因子1および2(PLGF)がIL-20によって1.9〜2.0倍にアップレギュレートされた。
3.凝固因子II受容体がIL-20によって2.0〜2.5倍にアップレギュレートされた。
4.カルシトニン受容体がIL-20によって2.2〜2.3倍にアップレギュレートされた。
5.TNF誘導性ヒアルロン酸結合タンパク質TSG-6がIL-20によって2.1〜2.2倍にアップレギュレートされた。
6.血管内皮増殖因子(VEGF)受容体-1前駆体、チロシン-プロテインキナーゼ受容体(FLT-1)(SFLT)がIL-20によって2.1〜2.7倍にアップレギュレートされた。
7.MRP-8(マクロファージ中のカルシウム結合タンパク質、MIF関連)がIL-20によって2.9〜4.1倍にアップレギュレートされた。
8.MRP-14(マクロファージ中のカルシウム結合タンパク質、MIF関連)がIL-20によって3.0〜3.8倍にアップレギュレートされた。
9.リラキシンH2がIL-20によって3.14倍にアップレギュレートされた。
10.トランスフォーミング成長因子β(TGFβ)受容体III 300kDaがIL-20によって2.4〜3.6倍にアップレギュレートされた。
【0075】
IL-20+IL-1処理により相乗作用を示す遺伝子
1.骨形成タンパク質2aが、IL-20処理単独で1.8倍に、IL-1処理単独で2.5倍に、ならびにIL-20処理およびIL-1処理合わせて8.2倍にアップレギュレートされた。
2.MRP-8が、IL-20処理単独で2.9倍に、IL-1処理単独で10.7倍に、ならびにIL-20処理およびIL-1処理合わせて18.0倍にアップレギュレートされた。
3.赤血球分化タンパク質(EDF)が、IL-20処理単独で1.9倍に、IL-1処理単独で9.7倍に、ならびにIL-20処理およびIL-1処理合わせて19.0倍にアップレギュレートされた。
4.MRP-14(マクロファージ内のカルシウム結合タンパク質、MTF関連)が、IL-20処理単独で3.0倍に、IL-1処理単独で12.2倍に、ならびにIL-20処理およびIL-1処理合わせて20.3倍にアップレギュレートされた。
5.ヘパリン結合EGF様増殖因子が、IL-20処理単独で2.0倍に、IL-1処理単独で14倍に、ならびにIL-20処理およびIL-1処理合わせて25.0倍にアップレギュレートされた。
6.βトロンボグロブリン様タンパク質が、IL-20処理単独で1.5倍に、IL-1処理単独で15倍に、ならびにIL-20処理およびIL-1処理合わせて27倍にアップレギュレートされた。
7.脳由来神経栄養因子(BDNF)が、IL-20処理単独で1.7倍に、IL-1処理単独で25倍に、ならびにIL-20処理およびIL-1処理合わせて48倍にアップレギュレートされた。
8.単球走化性活性化因子MCAFが、IL-20処理単独で1.3倍に、IL-1処理単独で32倍に、ならびにIL-20処理およびIL-1処理合わせて56倍にアップレギュレートされた。
【0076】
実施例5
IL-20RA/RB受容体-Ig融合ヘテロ四量体
発現ベクターpEZE3を用いて、組換えIL-20受容体-Ig融合タンパク質を発現させた。プラスミドpEZE3はpDC312に由来する。pDC312は、Immunex Corporationからの使用許諾を通じて入手した。プラスミドpDC312およびpEZE3は、WO97/25420に記載のEASEセグメントを含有する。発現ベクターにEASEセグメントが存在すると、安定細胞プールにおける組換えタンパク質の発現を2〜8倍に改善することができる。
【0077】
プラスミドpEZE3は、哺乳動物細胞、好ましくは、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞において3種類までのタンパク質を発現するのに使用することができるトリシストロニック発現ベクターである。pEZE3発現単位は、サイトメガロウイルス(CMV)エンハンサー/プロモーター、アデノウイルストリパータイト(tripartite)リーダー配列、第1の組換えタンパク質のコード領域挿入用のマルチクローニングサイト、ポリオウイルス2型配列内リボソーム進入部位、第2の組換えタンパク質のコード領域挿入用の第2のマルチクローニングサイト、脳心筋炎ウイルス配列内リボソーム進入部位、マウスジヒドロ葉酸レダクターゼのコードセグメント、およびSV40転写ターミネーターを含有する。さらに、pEZE3は、大腸菌複製起点および細菌βラクタマーゼ遺伝子を含有する。
【0078】
IL-20受容体-Ig融合タンパク質は、ヒトIL-20RBの細胞外ドメインと、野生型ヒト免疫グロブリンκ軽鎖定常領域が融合した2本の鎖、およびヒトIL-20RAタンパク質細胞外ドメインと、変異ヒト免疫グロブリンγ1定常領域が融合した2本の鎖からなるジスルフィド結合ヘテロ四量体である。ヒト免疫グロブリンγ1定常領域は、FcγRI結合およびC1q補体結合を弱めるアミノ酸置換を含有する。
【0079】
ヒトIL-20RB細胞外ドメインヒト免疫グロブリンκ軽鎖定常領域融合構築物はオーバーラップPCRにより作製した。IL-20RBをコードするセグメントはアミノ酸1〜230からなる。IL-20RセグメントのPCR増幅に使用したテンプレートは、下記の実施例12に記載のように作製したIL-20RBヒトκ軽鎖定常領域発現構築物であった。オリゴヌクレオチドプライマーSEQ ID NO:24およびSEQ ID NO:25を用いて、IL-20RBセグメントを増幅した。野生型ヒト免疫グロブリンκ軽鎖定常領域の全体を使用した。野生型ヒト免疫グロブリンκ軽鎖定常領域セグメントのPCR増幅に使用したテンプレートは、実施例12に記載のように作製したIL-20RBヒトκ軽鎖定常領域発現構築物であった。オリゴヌクレオチドプライマーSEQ ID NO:26およびSEQ ID NO:27を用いて、野生型ヒト免疫グロブリンκ軽鎖定常領域を増幅した。オリゴヌクレオチドSEQ ID NO:24およびSEQ ID NO:27を用いて、2つのタンパク質コードドメインをオーバーラップPCRによって連結した。2つのタンパク質ドメイン間に、(Gly4Ser) 3 (SEQ ID NO:72)ペプチドリンカーを挿入した。(Gly4Ser) 3ペプチドリンカーは、PCRプライマーSEQ ID NO:26およびSEQ ID NO:25の上にコードされた。得られたIL-20RB細胞外ドメイン/κ軽鎖定常領域融合構築物を、SEQ ID NO:20および21に示した。シグナル配列の無い予測成熟ポリペプチドはSEQ ID NO:60である。実際に使用したIL-20RB細胞外ドメインの部分は、SEQ ID NO:61のアミノ酸配列からなった。N末端配列決定によって予測アミノ酸配列を得た。
【0080】
ヒトIL-20RA細胞外ドメインヒト免疫グロブリンγ1重鎖定常領域融合構築物は、4つの別々のDNA断片のオーバーラップPCRによって作製した。これらのDNA断片はそれぞれ別々のPCR増幅反応によって作製した。第1の断片は、最適化tPA(組織プラスミノゲンアクチベーター)シグナル配列を含有した。オリゴヌクレオチドプライマーSEQ ID NO:28およびSEQ ID NO:29を使用し、以前に作製された社内の発現ベクターをテンプレートとして用いて、tPAシグナル配列を増幅した。第2の断片は、SEQ ID NO:11のアミノ酸30-243からなるIL-20RA細胞外ドメインコード領域を含有した。オリゴヌクレオチドプライマーSEQ ID NO:30およびSEQ ID NO:31を使用して、以前に作製されたIL-20RAクローンをテンプレートとして用いて、このIL-20RAセグメントを増幅した。
【0081】
2つのセグメントからヒトγ1重鎖定常領域を作製した。オリゴヌクレオチドプライマーSEQ ID NO:32およびSEQ ID NO:33を使用し、野生型ヒトγ1重鎖定常領域のクローンをテンプレートとして用いて、CH1ドメインを含有する第1のセグメントを増幅した。オリゴヌクレオチドプライマーSEQ ID NO:34およびSEQ ID NO:35を使用して、ヒト免疫グロブリンγ1重鎖定常領域の残りのヒンジ、CH2、およびCH3ドメインを含有する第2のセグメントをPCR増幅によって作製した。このPCR増幅に使用したテンプレートは、実施例12に記載のFcγRI結合およびC1q補体結合を弱めるアミノ酸置換用のコドンを含有する、以前に作製されたヒトγ1Fc構築物に由来した。
【0082】
オリゴヌクレオチドSEQ ID NO:28およびSEQ ID NO:35を用いて、4つのタンパク質コードドメインをオーバーラップPCRによって連結した。IL-20RAとCH1タンパク質ドメインの間に(Gly4Ser) 3ペプチドリンカーを挿入した。(Gly4Ser) 3ペプチドリンカーは、PCRプライマーSEQ ID NO:32およびSEQ ID NO:31の上にコードされた。IL-20RA細胞外ドメイン/ドメインヒト免疫グロブリンγ1重鎖定常領域融合タンパク質およびDNA配列を、SEQ ID NO:22および23に示した。シグナル配列の無い予測成熟ポリペプチドはSEQ ID NO:62である。実際に使用したIL-20RB細胞外ドメインの部分は、SEQ ID NO:63からなった。
【0083】
IL-20RB細胞外ドメインヒト免疫グロブリンκ軽鎖定常領域融合をコードするセグメントは、第2のMCSにクローニングしたのに対して、ヒトIL-20RA細胞外ドメインヒト免疫グロブリンγ1重鎖定常領域融合をコードするセグメントは、pEZE3の第1のMCSにクローニングした。このプラスミドを用いて、CHO細胞をトランスフェクトした。ヒポキサンチンまたはチミジンを含まない培地中で細胞を選択し、メトトレキセートを用いてトランスジーンを増幅した。タンパク質の存在は、抗ヒトγ1重鎖定常領域および抗ヒトκ軽鎖抗体を用いたウェスタンブロッティングによってアッセイした。N末端配列決定によって、最適化tPAリーダーは完全に切断されなかったことが明らかになった。観察された質量から、ポリペプチド配列の最初の残基はピログルタミン酸であり、N末端配列は、pyroEEIHAELRRFRRVPCVSGG(SEQ ID NO:64)であるらしく、下線の部分はtPAリーダーの残存物であることが分かった。
【0084】
実施例6
IL-20トランスジェニック表現型
ヒトIL-20およびマウスIL-20を両方とも、様々なプロモーターを用いてトランスジェニックマウスにおいて過剰発現させた。循環濃度のタンパク質を実現する試みの中で、最初に、ヒトIL-20を発現させる肝臓特異的マウスアルブミンプロモーターを使用した。後の研究は、主に、発現を表皮および他の重層扁平上皮に標的化するケラチン14(K14)プロモーター;広範囲の発現パターンを生じさせるマウスメタロチオネイン-1プロモーター;ならびにリンパ系列の細胞において発現を動かすEμLCKプロモーターを用いて行った。おそらく、これらのプロモーターは全て循環濃度のIL-20を生じさせるという理由で、4つ全ての場合において類似の結果が得られた。
【0085】
全ての場合において、IL-20トランスジーンを発現するトランスジェニック仔は非トランスジェニック同腹仔より小さく、光沢のある外観と、ぴんと張った、しわのある皮膚を有し、生後数日以内に死んだ。仔の胃の中には乳があり、これは、乳を吸うことができたことを示している。これらのマウスは、膨張した四肢、尾、鼻孔、および口の領域を有し、移動困難を示した。さらに、これらのマウスは虚弱であり、目に見える脂肪組織が無く、耳および足指の発達が遅延していた。肝臓における低発現レベル(細胞1個につき100個未満のmRNA分子)は、新生児致死および皮膚異常に十分であった。目に見える表現型の無いトランスジェニックマウスはトランスジーンを発現しなかったか、検出可能なレベルでトランスジーンを発現しなかったか、またはモザイクであった。
【0086】
IL-20トランスジェニックマウスの皮膚の組織分析は、非トランスジェニック同腹仔と比較して肥厚した表皮、角質増殖、および緻密な角質層を示した。時折、血清細胞痂皮(serocellular crust)(痂皮)が観察された。トランスジェニックマウスからの皮膚の電子顕微鏡(EM)分析は、ミトコンドリア内のリポイド封入体、斑状のケラトヒアリン顆粒、および比較的少ないトノフィラメントを示し、これらは、ヒト乾癬皮膚およびマウス皮膚病モデルにおいて観察されたものに似ている。さらに、トランスジェニックマウスの多くにはアポトーシス胸腺リンパ球があった。病理組織学的分析によって他の異常は検出されなかった。これらの組織学的結果およびEM結果は、観察されたひどい皮膚変化を裏付け、展開するものである。
【0087】
実施例7
IL-20受容体に対するIL-20の特異性および親和性
IL-20受容体に対するIL-20の特異性および親和性を、IL-20RA、IL-20RB、または両受容体サブユニットで安定にトランスフェクトされたBHK細胞を用いて確かめた。放射標識リガンドを用いた結合アッセイによって、IL-20は、IL-20RAおよびIL-20RBの両方を発現するBHKトランスフェクタントに結合するが、トランスフェクトされていない細胞にも、一方の受容体サブユニットのみを発現するトランスフェクタントにも結合しないことが証明された。125I標識IL-20の結合は、100倍過剰な非標識IL-20の存在下では無くなったが、100倍過剰な非関連サイトカインIL-21の存在下では無くならなかった。IL-20とIL-20RA/IL-20RBヘテロ二量体受容体との結合親和性(kD)は約1.5nMと求められた。
【0088】
実施例8
IL-20受容体の活性化
IL-20結合によって受容体が活性化するかどうか確かめるために、因子依存性プレB細胞株BaF3にIL-20RAおよびIL-20RBを同時導入し、様々な濃度のIL-20で処理した。IL-20は用量依存的に増殖を刺激し、1.1pMで検出可能なシグナルを生じ、最大半量応答は3.4pMであった。本発明者らは、BaF3細胞における最大半量増殖応答のためのIL-20濃度が、BHK細胞における最大半量結合親和性の1/1000であると指摘する。この大きな差異の考えられる説明には、異なる細胞株が用いられたこと、受容体発現レベルが異なること、アッセイ出力が異なることが含まれる。IL-20はまた、IL-20RAおよびIL-20RBを天然に発現する生物学的に関連するヒトケラチノサイト細胞株HaCaTにおいてシグナル伝達を刺激した。従って、IL-20は、サイトカインについて予想される濃度でヘテロ二量体IL-20RA/IL-20RB受容体に結合し、活性化する。負の対照は、トランスフェクトされていないBaF3を含む。
【0089】
実施例9
IL-20RAおよびIL-20RBの発現分析
IL-20RAおよびIL-20RBの発現パターンを確かめるために、様々なヒト組織に対してRT-PCR分析を行った。両受容体サブユニットとも皮膚および精巣において最も高く発現していた。重大な結果は、IL-20RAおよびIL-20RBが両方とも皮膚において発現していたことである。皮膚では、これらはIL-20誘導性応答を媒介することが示されている。IL-20RAおよびIL-20RBは両方とも、単球、肺、卵巣、筋肉、精巣、副腎、心臓、唾液腺、および胎盤においても発現していた。IL-20RAはまた、脳、腎臓、肝臓、結腸、小腸、胃、甲状腺、膵臓、子宮、および前立腺でも発現しているのに対して、IL-20RBは発現していない。
【0090】
実施例10
IL-20RA mRNAおよびIL-20RB mRNAは乾癬においてアップレギュレートされる
インサイチューハイブリダイゼーションを用いて、IL-20受容体発現が乾癬において変化するかどうか確かめた。2つの受容体サブユニットmRNAに特異的なプローブを用いて、4人の乾癬患者および3人の非罹患患者からの皮膚試料をアッセイした。4つの乾癬皮膚試料は全て、ケラチノサイトにおけるIL-20RA mRNAおよびIL-20RB mRNAレベルが高かったが、正常皮膚試料は、どちらの受容体サブユニットmRNAレベルも検出できなかった。乾癬皮膚における陽性シグナルは単核免疫細胞および血管の一部にある内皮細胞でも観察された。従って、IL-20RAおよびIL-20RBは両方とも、ケラチノサイト、免疫細胞、および内皮細胞において発現しており、これらの主な細胞型は乾癬において相互作用していると考えられる。
【0091】
実施例11
マウスIL-20RAのクローニング
ヒトIL-20RAをコードする完全長cDNA断片を含む異種間ハイブリダイゼーションプローブを作製した。ヒトIL-20RA cDNAがマウス配列に特異的にハイブリダイズできることを証明するために、マウスゲノムDNAのサザンブロットおよびマウスRNAのノザンブロットを行った。ノザンブロット結果から、マウスIL-20RA RNAは、15日目および17日目のマウス胚、ならびに心臓、脳、肺、肝臓、腎臓、精巣、脾臓、胸腺、肝臓、胃、および小腸に存在することが分かった。
【0092】
ヒトIL-20RA完全長DNAハイブリダイゼーションプローブを用いて、マウスゲノムライブラリーをスクリーニングした。このライブラリーは、Clontech(Palo Alto, CA)から入手し、マウスゲノムDNAのMboI部分消化物から作製し、ラムダバクテリオファージEMBL3 SP6/T7のBamHI部位にクローニングされた。陽性バクテリオファージをプラーク精製し、Promega's Wizard Lamda Preps DNA Purification Systemを用いて、バクテリオファージDNAを調製した。陽性バクテリオファージから、2個のゲノム制限酵素断片である5.7kb EcoRI 断片および8.0kb SacI断片を作製し、pBluescriptにサブクローニングした。DNA配列分析から、マウスオルソログからヒトIL-20RAまで3個のエキソンが存在することが明らかになった。
【0093】
PCR増幅によって完全長マウスIL-20RA配列を作製するために、5'UTRに由来するPCRプライマー、SEQ ID NO:40、および3'UTRに由来するPCRプライマー、SEQ ID NO:41を設計した。マウス胚15日目+17日目のcDNAを、PCR増幅用のテンプレートとして使用した。PCR産物をサブクローニングし、確認のために配列決定した。マウス配列はSEQ ID NO:36および37である。成熟細胞外ドメインはSEQ ID NO:38からなる。
【0094】
実施例12
IL-20受容体ヘテロ四量体の構築
分泌型hIL-20RA/hIL-20Bヘテロ二量体を発現するベクターを構築した。この構築物では、hIL-20RAの細胞外ドメインを、IgGガンマ1(IgGγ1)の重鎖と融合したのに対して、IL-20RBの細胞外部分をヒトカッパ軽鎖(ヒトκ軽鎖)と融合した。
【0095】
IgGγ1およびヒトκ軽鎖融合ベクターの構築
5'EcoRI部位および3'NheI部位を有する受容体の細胞外部分をクローニングして、N末端細胞外ドメイン-C末端IgGγ1融合を得ることができるように、IgGγ1重鎖をZem229R哺乳動物発現ベクター(ATCC寄託番号69447)にクローニングした。この構築物に使用したIgGγ1断片は、テンプレートとしてClontechヒト胎児肝臓cDNAライブラリーからIgGγ1配列を単離するようにPCRを用いて作製した。SEQ ID NO:42およびSEQ ID NO:43を用いたPCR反応は、以下の通り行った。94℃60秒、53℃60秒、および72℃120秒の40サイクル、ならびに72℃7分。PCR産物をアガロースゲル電気泳動によって分離し、QiaQuick(商標)(Qiagen Inc., Valencia, CA)ゲル抽出キットを用いて精製した。単離された990bpのDNA断片を、MluIおよびEcoRI(Boerhinger-Mannheim)によって消化し、QiaQuick(商標)ゲル抽出キットを用いて抽出し、MluI/EcoRIリンカーを含むオリゴSEQ ID NO:44およびSEQ ID NO:45と共に、本明細書に開示された標準的な分子生物学法を用いてMluIおよびEcoRIによって前もって消化されたZem228Rに連結した。この一般的なクローニングベクターを、ベクター#76hIgGgamma1w/Ch1#786Zem229R(ベクター#76)と呼んだ。IgGγ1重鎖と融合したhIL-20RAの細胞外ドメインのポリヌクレオチド配列をSEQ ID NO:52に示し、対応するポリペプチド配列をSEQ ID NO:53に示した。シグナル配列の無い成熟ポリペプチドはSEQ ID NO:54からなる。使用したIL-20RA細胞外ドメインの部分はSEQ ID NO:55からなった。
【0096】
5'EcoRI部位および3'KpnI部位を有する受容体の細胞外部分をクローニングして、N末端細胞外ドメイン-C末端ヒトκ軽鎖融合を得ることができるように、ヒトκ軽鎖をZem228R哺乳動物発現ベクター(ATCC寄託番号69446)にクローニングした。この構築物に使用したヒトκ軽鎖断片は、前記で使用したもの同じClontech hFetal Liver cDNAライブラリーからヒトκ軽鎖配列を単離するようにPCRを用いて作製した。PCR反応は、オリゴSEQ ID NO:46およびSEQ ID NO:47を用いて行った。PCR産物をアガロースゲル電気泳動によって分離し、QiaQuick(商標)(Qiagen)ゲル抽出キットを用いて精製した。単離された315bpのDNA断片を、MluIおよびEcoRI(Boerhinger-Mannheim)によって消化し、QiaQuick(商標)ゲル抽出キットを用いて抽出し、前記のMluI/EcoRIリンカーを使用して、本明細書に開示された標準的な分子生物学法を用いてMluIおよびEcoRIによって前もって消化されたZem228Rに連結した。この一般的なクローニングベクターを、ベクター#77hκlight#774Zem228R(ベクター#77)と呼んだ。ヒトκ軽鎖と融合したIL-20RBの細胞外部分のポリヌクレオチド配列をSEQ ID NO:56に示し、対応するポリペプチド配列をSEQ ID NO:57に示した。シグナル配列の無い成熟ポリペプチドはSEQ ID NO:58からなる。実際に使用したIL-20RB細胞外ドメインの部分はSEQ ID NO:59からなった。
【0097】
融合ベクター構築物へのhIL-20RA細胞外ドメインおよびIL-20RB細胞外ドメインの挿入
前記の構築ベクターを用いて、IgGγ1と融合したヒトIL-20RAを有する構築物を作製した。この構築は、以下に記載の条件下:94℃60秒、57℃60秒、および72℃120秒の30サイクル;ならびに72℃7分で、オリゴSEQ ID NO:48およびSEQ ID NO:49を用いて、hIL-20RA/IgGベクター#102からヒトIL-20RA受容体を得るようにPCRを使用することによって行った。得られたPCR産物をEcoRIおよびNheIによって消化し、本明細書に記載のようにゲル精製し、EcoRIおよびNheIによって前もって消化され、バンド精製されたベクター#76(前記)に連結した。得られたベクターを配列決定して、ヒトIL-20Rα/IgGγ1融合(hIL-20RA/Ch1 IgG)が正しいことを確認した。hIL-20RA/Ch1 IgGγ1#1825 Zem229Rベクターをベクター#195と呼んだ。このように得られたIL-20RA/Ch1 IgGγ1配列を、SEQ ID NO:52および53に示した。N末端配列決定から、SEQ ID NO:54の予測成熟ポリペプチド配列が存在することが分かった。
【0098】
κ軽鎖と融合したIL-20RBを有する別の構築物も構築した。IL-20RB/ヒトκ軽鎖の構築は、前記のように、オリゴSEQ ID NO:50およびSEQ ID NO:51を用いてDR1/7N-4からPCRを行い、得られたバンドをEcoRIおよびKpnIにより消化し、次いで、この産物を、EcoRIおよびKpnIによって前もって消化され、バンド精製されたVec#77(前記)に連結することによって行った。得られたベクターを配列決定して、IL-20RB/ヒトκ軽鎖融合(IL-20RB/κ軽鎖)が正しいことを確認した。このIL-20RB//κ軽鎖構築物をSEQ ID NO:56および57に示した。得られたポリペプチドのN末端配列決定から、SEQ ID NO:58からなる予測成熟アミノ酸配列が存在することが分かった。SEQ ID NO:59は、使用したIL-20RB細胞外ドメインの成熟部分である。
【0099】
ヒトIL-20RA受容体およびヒトIL-20RB受容体の同時発現
リポフェクタミン(商標)試薬(Gibco/BRL)を用いて、製造業者の説明書に従って、前記の約16μgのベクター#194および#195をそれぞれBHK-570細胞(ATCC番号CRL-10314)に同時導入した。トランスフェクトされた細胞を、1μMメトトレキセート(MTX)(Sigma, St. Louis, MO)を含有するDMEM+5%FBS(Gibco/BRL)中で10日間、0.5mg/ml G418(Gibco/BRL)を含有するDMEM+5%FBS(Gibco/BRL)中で10日間、選択した。得られたトランスフェクタントプールを、10μM MTXおよび0.5mg/ml G418の中で10日間、再選択した。
【0100】
得られた二重選択細胞プールを用いて、タンパク質を生成した。このプールの3箇所の工場(Nunk, Denmark)を用いて、8Lの無血清ならし培地を作製した。このならし培地を1mlプロテインAカラムに通し、(10)750マイクロリットル画分中に溶出した。最大濃度であると見出された、これらの画分のうち4個をプールし、PBSに対して透析した(10kD MWカットオフ)。最後に、透析された材料をBCA(Pierce)で分析し、濃度が317μg/mlであると見出された。この8L精製から合計951μgを得た。
【0101】
実施例13
HaCaTケラチノサイト細胞株においてIL-20結合はSTAT3を活性化する
IL-20は、IL-20受容体の両サブユニットでトランスフェクトされた細胞株に結合する。しかしながら、これらの細胞株は正常レベルと比較してIL-20受容体を過剰発現し、IL-20の生理学的役割との関係は不明である。内因性IL-20RAおよびIL-20RBを発現するヒトHaCaTケラチノサイト細胞株を用いて、生物学的に関連する細胞型においてIL-20シグナル伝達を調べた。HaCaT細胞に、細胞内シグナル伝達の検出を可能にするレポーター構築物を含有する組換えアデノウイルスに感染させた。この構築物は、血清応答エレメント(SRE)ならびにトランスダクションエレメントのシグナルトランスデューサ―およびアクチベーター(signal transducers and activators of transduction element)(STAT)からなるプロモーター/エンハンサー配列によって駆動されるホタルルシフェラーゼ遺伝子からなる。このアッセイ系は生産的なリガンド-受容体相互作用を検出し、受容体活性化に関与する、可能性のある下流シグナル伝達成分を示す。IL-20のみで処理するとルシフェラーゼ活性が用量依存的に増大し、最大半量応答は約2.3nMで生じた。この後に、SREエレメントのみ、またはSTATエレメントのみを含有するアデノウイルスベクターを用いてルシフェラーゼレポーターアッセイを行うと、STATのみで、検出可能なレポーター活性化が生じた。
【0102】
他のサイトカインがIL-20と協調作用するかどうか確かめるために、HaCaT細胞を、IL-20単独で、または一回の最大用量以下のEGF、IL-1β、またはTNFαと組み合わせて処理した。これらの3種類のタンパク質がそれぞれ存在すると、IL-20処理によってルシフェラーゼ活性が用量依存的に増大した。IL-20とIL-1βとの組み合わせによって、IL-20のみの約1/5である約0.5nMで最大半量応答が得られた。さらに、レポーター遺伝子の活性化は、単独で必要とされるIL-20用量の1/10以下の用量である0.1nM IL-20で検出可能である。
【0103】
IL-20RA、IL-20RB、または両受容体サブユニットでトランスフェクトされたBHK細胞を用いて、STAT-ルシフェラーゼのIL-20刺激に受容体対形成が必要であるかどうか確かめた。結合アッセイと同様に、両受容体サブユニットでトランスフェクトされた細胞しかIL-20に応答せず、5.7pMの最大半量応答で応答した。本発明者らは、BHK細胞における最大半量応答のためのIL-20濃度は、HaCaT細胞における最大半量応答のためのIL-20濃度の1/400であると指摘する。BHK IL-20受容体トランスフェクタントの方が受容体レベルが高いために、BHK細胞における最大半量応答に必要なIL-20濃度はHaCaT細胞と比較して低くなった可能性が高い。
【0104】
核移行アッセイを用いて、IL-20作用に関与するSTATタンパク質を特定した。内因性IL-20受容体を有するHaCaT細胞ならびにIL-20RAおよびIL-20RBでトランスフェクトされたBHK細胞を両方ともIL-20タンパク質で処理し、細胞質から核へのSTAT3およびSTAT1転写因子の移行を免疫蛍光法によってアッセイした。
【0105】
刺激されていないHaCaT細胞では、STAT3染色は主にサイトゾルにあった。HaCaT細胞をIL-20で処理すると、STAT3は核に明瞭に蓄積した。漸増濃度のIL-20に応答してSTAT3の核移行が起こり、最大半量IL-20濃度は7nMであった。STAT3移行とは対照的に、IL-20で処理したHaCaT細胞は、STAT1の検出可能な核蓄積を示さなかった。
【0106】
IL-20RAおよびIL-20RBでトランスフェクトされたBHK細胞を用いて、IL-20受容体がSTAT3核移行のIL-20刺激に必要なことを確かめた。IL-20受容体を欠くBHK細胞では、IL-20処理後に、STAT3はサイトゾルに残った。対照的に、IL-20受容体でトランスフェクトされたBHK細胞では、STAT3はIL-20に応答して核に移行した。さらに、IL-20処理にもIL-20受容体発現にも関係なく、STAT1はサイトゾルに残った。本発明者らは、IL-20を介したSTAT3活性化にはIL-20受容体が必要であると結論付けている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
SEQ ID NO:1、2、3、4、5、6、7、8、および9からなる群より選択されるアミノ酸配列からなるIL-20ポリペプチドが役割を果たしている疾患に罹患している哺乳動物を治療するための方法であって、
該IL-20ポリペプチドのアンタゴニストを該個体に投与する工程
を含む、方法。
【請求項2】
前記アンタゴニストが、
前記IL-20ポリペプチドに結合する抗体、抗体断片、または単鎖抗体、
前記IL-20ポリペプチドに結合する可溶性受容体、および
IL-20の可溶性受容体に結合する抗体、抗体断片、または単鎖抗体
からなる群より選択され、
該可溶性受容体が、IL-20RAサブユニットおよびIL-20RBサブユニットからなる、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記可溶性受容体が、IL-20RAの細胞外ドメインおよびIL-20RBの細胞外ドメインからなる、請求項2記載の方法。
【請求項4】
IL-20RAの細胞外ドメインが免疫グロブリン(Ig)分子の重鎖定常領域と融合し、かつIL-20RBの細胞外ドメインがIg分子の軽鎖定常領域と融合している、請求項3記載の方法。
【請求項5】
IL-20受容体に結合する抗体、抗体断片、または単鎖抗体が、IL-20RAサブユニットに結合する、請求項2記載の方法。
【請求項6】
IL-20受容体に結合する抗体、抗体断片、または単鎖抗体が、IL-20RBサブユニットに結合する、請求項2記載の方法。
【請求項7】
IL-20ポリペプチドが役割を果たしている疾患が、乾癬、湿疹、アトピー性皮膚炎、および接触性皮膚炎からなる群より選択される皮膚病である、請求項1記載の方法。
【請求項8】
IL-20ポリペプチドが役割を果たしている疾患が、成人呼吸器疾患、喘息、気管支炎、および肺炎からなる群より選択される炎症肺である、請求項1記載の方法。
【請求項9】
細胞におけるIL-8発現を促進するための方法であって、細胞とIL-20とを接触させる工程を含む、方法。
【請求項10】
個体におけるIL-8発現を増大させるための方法であって、該個体にIL-20を投与する工程を含む、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−25737(P2012−25737A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−133929(P2011−133929)
【出願日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【分割の表示】特願2001−547170(P2001−547170)の分割
【原出願日】平成12年12月22日(2000.12.22)
【出願人】(505222646)ザイモジェネティクス, インコーポレイテッド (72)
【Fターム(参考)】