説明

炎症及びアポトーシスに関係する方法及び試薬

本発明は、他の実施態様の中でもとりわけ、 腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)及び/又は腫瘍壊死因子アルファ受容体(TNFR)を含有するタンパク質複合体に関する。好ましくは、本複合体は、NF-κB活性化キナーゼ (NAK)、RasGAP3、TRCP1、及びTRCP2から成る群より選択される少なくとも1つのポリペプチドを含む。さらに本発明は、本複合体の安定性及び活性を調節するための化合物を特定する検定法も提供する。さらに、アポトーシス及び炎症を調節したり、TNF-α関連疾患を治療する方法も提供されている。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その明細書全文を引用をもってここに援用することとする、2002年8月1日出願の米国仮出願第60/400410号に基づく優先権を主張するものである。
【0002】
背景
腫瘍壊死因子α(TNF-α)は、主にマクロファージにより産生される炎症誘発性サイトカインである。TNF-αの多面発現性作用には、炎症、細胞増殖、分化、及びアポトーシスがある (Tracey et al.,
(1993) Annu. Rev. Cell Biol. 9:317-313; Baud et al., (2001) Trends in Cell
Biol. 11:372-377)。これらの作用は、TNF-αが、大半の種類の細胞上に発現するその受容体(即ちTNFR)に結合することにより、惹起される (Baglioni et
al., 1985; Beutler et al., 1985; Kull et al., 1985; Tsujimoto et al., 1985;
Aggarwal et al., 1985; Israel et al., 1986)。これらの受容体は、TNF-αに対する細胞応答のために細胞内シグナルを提供する(Engelmann et
al., 1990a)。
【0003】
TNF-α及びTNFRは、炎症性応答において役割を果たす。一方では、TNF-αは免疫を刺激して、感染性物質に対する抵抗及び腫瘍に対する抵抗をもたらす(Vilcek, et al.,
(1991) J. Biol. Chem. 266:7313-7316)。他方では、TNF-αは、リウマチ性関節炎、移植片拒絶、及び移植片対宿主疾患などの数多くの自己免疫疾患への関与が示唆されている(Beutler, et al.,
(1998) Blood Cells Mol. Dis. 24:216-230; Beutler, (1999) J. Rheumatol.
26(Suppl) 57:16-21)。
【0004】
TNF-α及びTNFRは、アポトーシス、即ちプログラムされた細胞死で、別の役割を果たす。アポトーシスは、多細胞生物の正常な発生及び恒常性に必須な生理学的プロセスである (H. Steller,
(1995) Science 267:1445-1449)。アポトーシスの乱れは、癌、神経変性性異常、及び後天性免疫不全症候群を含め、いくつかのヒトの疾患の病理発生に寄与している(C.B. Thompson,
(1995) Science 267:1456-1462)。
【0005】
TNF-αリガンド及び受容体の効果は様々であり、哺乳動物系の生物学的プロセスにおいて、正常及び異常の両方の数多くの機能に影響を与えている。従って、正常及び疾患の状態の両方で生物活性に影響する、このような受容体及びリガンドを含むタンパク質複合体を特定及び特徴付けする必要が明らかにあるのである。
【0006】
簡単な概要
いくつかの局面では、本発明は、TNF-αポリペプチドと、TNFRポリペプチドと、NF-κB活性化キナーゼ (NAK)、RasGAP3、TRCP1、及びTRCP2から成る群より選択される少なくとも1つのポリペプチドとを含む単離された、精製された、又は組換えのタンパク質複合体を提供する。NAKはまた、TBK1 (TANK結合キナーゼ)又はT2K (TRAF2関連キナーゼ)としても知られる。いくつかの実施態様では、前記の単離された、精製された、又は組換えのタンパク質複合体は、さらに、TRADD、TRAF2、及びTRAP2から成る群より選択される少なくとも1つのポリペプチドを含む。
【0007】
いくつかの局面では、本発明は、TNFRポリペプチドと、NF-κB 活性化キナーゼ (NAK)、RasGAP3、TRCP1、及びTRCP2から成る群より選択される少なくとも1つのポリペプチドとを含む単離された、精製された、又は組換えのタンパク質複合体を提供するものである。いくつかの実施態様では、前記の単離された、精製された、又は組換えのタンパク質複合体は、さらに、TNF-α、TRADD、TRAF2、及びTRAP2から成る群より選択される少なくとも1つのポリペプチドを含む。
【0008】
ある具体的な実施態様では、本発明のタンパク質複合体は、TNF-αポリペプチド、TNFRポリペプチド、NAKポリペプチド、RasGAP3ポリペプチド、TRCP1ポリペプチド、TRCP2ポリペプチド、TRADDポリペプチド、TRAF2ポリペプチド、及びTRAP2ポリペプチドを含む。例えば、本複合体のTNFRポリペプチドはTNFR1又はTNFR2ポリペプチドであってよい。
【0009】
いくつかの実施態様では、本発明の複合体のポリペプチドのうちの一つ以上は、フラグメント、融合タンパク質、標識されたタンパク質などのバリアントであり、そして好ましくは前記バリアントは機能的バリアントであるとよい。
【0010】
更なる局面では、本発明は、ここに開示された複合体の一つ以上のポリペプチド構成成分をコードする一つ以上の組換え核酸を含むホスト細胞を提供する。いくつかの実施態様では、前記ホスト細胞は、第一の核酸、第二の核酸及び第三の核酸を含み、但し前記第一の核酸は、TNFRポリペプチドをコードする組換え核酸を含み、前記第二の核酸は、TNF-αポリペプチドをコードする組換え核酸を含み、そして前記第三の核酸は、 NAK、RasGAP3、TRCP1、及びTRCP2から成る群より選択されるポリペプチドをコードする組換え核酸を含む。いくつかの実施態様では、前記ホスト細胞は、第一の核酸及び第二の核酸を含み、但し前記第一の核酸は、TNFRポリペプチドをコードする組換え核酸を含み、そして前記第二の核酸は、NAK、RasGAP3、TRCP1、及びTRCP2から成る群より選択されるポリペプチドをコードする組換え核酸を含む。
【0011】
いくつかの局面では、本発明は、ここで開示されたタンパク質複合体の安定性を阻害又は増強する検査化合物を特定するための検定法を提供するものである。いくつかの実施態様では、検定法は、TNF-αと、TNFRと、NAK、RasGAP3、TRCP1、及びTRCP2から成る群より選択される少なくとも1つのポリペプチドと、検査化合物とを含む反応混合液を形成するステップと;前記複合体中のTNF-α又はTNFRの存在を検出するステップとを含む。検査化合物の存在下での複合体中のTNF-α又はTNFRの存在が、検査化合物の非存在下での複合体中のTNF-α又はTNFRの存在 に比較して変化していることは、前記検査化合物が前記複合体の安定性を増強又は阻害することを示す。
【0012】
いくつかの実施態様では、本発明の検定法は、以下の2つのステップ:(i)TNF-αと、TNFRと、NAK、RasGAP3、TRCP1、及びTRCP2から成る群より選択される少なくとも1つのポリペプチドと、検査化合物とを含む反応混合液を形成するステップと;(ii)TNF-α又はTNFRと、NAK、RasGAP3、TRCP1、及びTRCP2から成る群より選択されるポリペプチドとの間の結合を検出するステップと、を含む。検査化合物の存在下でのTNF-α又はTNFRと、NAK、RasGAP3、TRCP1、及びTRCP2から成る群より選択されるポリペプチドとの間の結合が、検査化合物の非存在下でのTNF-α又はTNFRと、NAK、RasGAP3、TRCP1、及びTRCP2から成る群より選択されるポリペプチドとの間の結合に比較して変化していることは、前記検査化合物が前記複合体の安定性を増強又は阻害することを示す。いくつかの実施態様では、本発明の検定法は、以下の2つのステップ:(i)TNFRと、NAK、RasGAP3、TRCP1、及びTRCP2から成る群より選択される少なくとも1つのポリペプチドと、検査化合物とを含む反応混合液を形成するステップと;(ii)TNFRと、NAK、RasGAP3、TRCP1、及びTRCP2から成る群より選択されるポリペプチドとの間の結合を検出するステップと、を含む。選択的には、前記反応混合液がTNF-αを含有してもよい。検査化合物の存在下でのTNFRと、NAK、RasGAP3、TRCP1、及びTRCP2から成る群より選択されるポリペプチドとの間の結合が、検査化合物の非存在下でのTNFRと、NAK、RasGAP3、TRCP1、及びTRCP2から成る群より選択されるポリペプチドとの間の結合に比較して変化していることは、前記検査化合物が前記複合体の安定性を増強又は阻害することを示す。
【0013】
更なる実施態様では、検査化合物スクリーニング検定法は:(i)TNFRと、NAK、RasGAP3、TRCP1、及びTRCP2から成る群より選択されるポリペプチドとを含むタンパク質複合体を形成するステップと;(ii)前記タンパク質複合体を検査化合物に接触させるステップと;(iii)一つ以上の活性に対する前記検査化合物の効果を判定するステップとを含む。前記タンパク質複合体はさらにTNF-αを含んでいてもよい。このような活性は、タンパク質複合体のレベルの変化;前記複合体中のTNFR又はTNF-αポリペプチドのレベルの変化;前記複合体のシグナル伝達酵素活性の変化;又は、TNFR又はTNF-αポリペプチドと、NAK、RasGAP3、TRCP1、及びTRCP2から成る群より選択されるポリペプチドとの間の相互作用の変化、から成る群より選択される。
【0014】
更なる実施態様では、本発明は:(例えばTNFRポリペプチド部分を含む)第一の融合タンパク質及び(例えばNAK、RasGAP3、TRCP1、及びTRCP2から成る群より選択されるポリペプチドの部分を含む)第二の融合タンパク質を含む二種ハイブリッド検定系を、前記二種ハイブリッド検定が、前記(例えばTNFRポリペプチドを含む)第一の融合タンパク質と、前記(例えばNAK、RasGAP3、TRCP1、及びTRCP2から成る群より選択されるポリペプチドを含む)第二の融合タンパク質との間の相互作用に対して感受性があるような条件下で、提供するステップと;検査化合物の存在下及び非存在下における、前記融合タンパク質間の相互作用のレベルを測定するステップと;前記融合タンパク質の相互作用のレベルを比較するステップと、を含むスクリーニング検定法を提供するものである。相互作用レベルの低下は、融合たんぱく質間(例えばTNFRポリペプチドと、NAK、RasGAP3、TRCP1、及びTRCP2から成る群より選択されるポリペプチドとの間)の相互作用を阻害するであろう化合物の指標である。本発明のこの検定法は、複合体(例えばTNF-α、TNFR、NAK、RasGAP3、TRCP1、及びTRCP2から成る複合体)のうちのいずれの2つのタンパク質にも用いることができる。
【0015】
更なる局面では、本発明は、例えばTNF-α、TNFR、NAK、RasGAP3、TRCP1、及びTRCP2から成る群より選択されるポリペプチドなど、ここで開示された複合体のポリペプチドのエピトープに対して特異的に免疫反応性の抗体又はそのフラグメントを提供するものである。好ましくは、前記抗体は、TNF-α又はTNFRと、NAK、RasGAP3、TRCP1、及びTRCP2から成る群より選択されるポリペプチドとの間の相互作用の形成を妨害するとよい。
【0016】
いくつかの局面では、本発明は、第一のタンパク質、第二のタンパク質及び第三のタンパク質を含むタンパク質複合体を細胞内で調節する方法であって、但し前記第一のタンパク質はTNF-αであり、前記第二のタンパク質はTNFRであり、そして前記第三のタンパク質は、NAK、RasGAP3、TRCP1、及びTRCP2から成る群より選択される、方法を提供するものである。いくつかの局面では、本発明は、第一のタンパク質及び第二のタンパク質を含むタンパク質複合体を細胞内で調節する方法であって、前記第一のタンパク質はTNF-α又はTNFRであり、そして前記第二のタンパク質は、NAK、RasGAP3、TRCP1、及びTRCP2から成る群より選択される、方法を提供するものである。本方法は、前記タンパク質複合体を調節することのできる化合物を前記細胞に投与するステップを含む。
【0017】
本発明の更なる局面は、NAK、RasGAP3、TRCP1、及びTRCP2から成る群より選択されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを細胞にトランスフェクトするステップと;前記細胞をTNF-α又はTNFRポリペプチドに接触させるステップと、それによりタンパク質複合体を形成させるステップと、を含む、機能的複合体を作製する方法に関する。
【0018】
本発明の更なる局面は、TNF-α又はTNFRと、NAK、RasGAP3、TRCP1、及びTRCP2から成る群より選択されるポリペプチドとの間の相互作用を阻害する化合物を有効量、投与することにより、TNF-α関連障害を治療する方法に関する。
【0019】
本発明の他の局面は、炎症又はアポトーシスの候補モジュレータである検査化合物を特定する方法に関する。このような方法は:(i)TRCP1もしくはTRCP2ポリペプチド又はそのバリアント・ポリペプチドと、検査化合物とを含む混合液を形成するステップと;(ii)TRCP1 もしくはTRCP2ポリペプチド又はそのバリアントと、前記検査化合物との間の相互作用を測定するステップと、を含み、但し、TRCP1もしくはTRCP2ポリペプチド 又はその機能的バリアントと相互作用する検査化合物は、炎症又はアポトーシスの候補モジュレータである。このような方法において、前記第一のステップ(i)は、前記混合液をin vitroで形成するステップを含んでもよく、あるいは、TRCP1もしくはTRCP2ポリペプチド又はそのバリアントを発現する細胞を検査化合物に接触させるステップを含んでもよい。
【0020】
従って、本発明の更なる局面は、TRCP1又はTRCP2を調節する治療用組成物を有効量、投与することにより、炎症性又はアポトーシス性成分を含むTNF-α関連疾患を治療する方法に関する。
【0021】
本発明の前記実施態様及び実際、他の実施態様、及びそれらの特徴及び性質は、当該の明細書、図面及び以下の請求の範囲から明白となるであろう。また請求項のすべてを、本概要の項へのこの言及をもって、ここに援用しておく。
【0022】
詳細な説明
I. 概観
腫瘍壊死因子α(TNF-α)は、自己免疫応答、細胞増殖、分化及びアポトーシスを含め、幅広い細胞応答に関与しているリンパ球、マクロファージ及びいくつか他の細胞種により主に産生されるサイトカインである。TNF-αは、細胞表面上のそれらの標的受容体に結合して、より大きなTNF受容体スーパーファミリの一部であるTNFR1及びTNFR2などのTNF受容体の三量体化/凝集を引き起こす3量体サイトカインの一ファミリに属する。TNF-αのその受容体との相互作用や、その後の複合体形成は、細胞内のシグナル伝達応答に関与しており、このような応答には、アポトーシスにつながるカスパーゼ・カスケードの活性化、又は、その後に慢性及び急性の炎症性応答に関与する遺伝子の転写活性化を引き起こす転写因子AP-1及びNF-κBの活性化、がある。また、後者の遺伝子、主にNF-κBに依存的なもの、のいくつかは、特定の状況又は細胞種では、アポトーシスを抑制する働きをする。
【0023】
II. 定義
便宜上、本明細書、実施例、及び付属の請求の範囲で用いられたいくつかの用語をここに集める。他に定義しない限り、ここで用いられた技術用語及び科学用語はすべて、本発明が属する当業の当業者が通常理解するのと同じ意味を有する。
【0024】
冠詞「一つの(原語:a)」及び「一つの(原語:an)」は、ここでは、当該冠詞の文法上の目的語の一つ又は2つ以上(即ち少なくとも1つ)を言うために用いられている。例えば、「一つの要素」とは、一つの要素又は2つ以上の要素を意味する。
【0025】
用語「結合する」は、2つの分子間の直接的又は間接的な結合を言う。直接的な結合には、例えば、生理条件下での共有、静電的、疎水性、イオン性及び/又は水素結合相互作用が含まれよう。間接的な結合には、例えば、ある複合体の一部であるが、直接的な相互作用を持たない2つのタンパク質がある。
【0026】
「細胞」、「ホスト細胞」又は「組換えホスト細胞」はここでは交換可能に用いられた用語である。このような用語は、特定の対象細胞だけでなく、このような細胞の後代又は潜在的後代も言うものであると、理解されている。突然変異又は環境による影響が原因で、いくつかの改変が後の世代に起きることがあるため、このような後代が実際には親細胞と同一ではないこともあるが、それでも尚、ここで用いられるこの用語の範囲に包含される。
【0027】
「キメラタンパク質」又は「融合タンパク質」とは、あるポリペプチドをコードする第一のアミノ酸配列の第二のアミノ酸配列との融合体であり、この場合、前記第一及び第二アミノ酸配列は、天然では、単一のポリペプチド鎖の一部として生ずるものではない。
【0028】
文言「保存的アミノ酸置換」とは、特定の共通の性質に基づいたアミノ酸のグループ分けを言う。個々のアミノ酸の間の共通の性質を定義する機能的な方法の一つは、同種生物の相当するタンパク質間のアミノ酸変化の正規化後の頻度を分析することである(Schulz, G. E.
and R. H. Schirmer., Principles of Protein Structure, Springer-Verlag)。このような分析に基づくと、ある一つのグループ中のアミノ酸が互いに優先的に交換するため、全体的タンパク質構造へのそれらの影響において互いに最も似るようなアミノ酸のグループを定義できよう (Schulz, G. E.
and R. H. Schirmer., Principles of Protein Structure, Springer-Verlag)。この態様で定義されたアミノ酸グループの例には:
(i)Glu 及びAsp、Lys、Arg 及びHisから成る電荷を持つグループ、
(ii)Lys、Arg及びHisから成る正の電荷を持つグループ、
(iii)Glu 及びAspから成る負の電荷を持つグループ、
(iv) Phe、Tyr 及びTrpから成る芳香族のグループ、
(v)His 及びTrpから成る窒素環グループ、
(vi)Val、Leu 及びIleから成る大型の脂肪族非極性グループ、
(vii)Met 及びCysから成る僅かに極性のグループ、
(viii)Ser、Thr、Asp、Asn、Gly、Ala、Glu、Gln及びProから成る、小さな残基のグループ、
(ix)Val、Leu、Ile、Met 及びCysから成る脂肪族のグループ、及び
(x) Ser及びThrから成る小さな水酸基のグループ、
がある。
【0029】
上に紹介したグループに加え、各アミノ酸残基はそれ自体のグループを形成してもよく、そして個別のアミノ酸により形成されたグループは、当業で通常用いられているそのアミノ酸を表す一文字及び/又は三文字略語で簡単に言及される場合がある。
【0030】
用語「化合物」、「検査化合物」及び「分子」はここでは交換可能に用いられており、限定はしないが、ペプチド、核酸、糖、低有機分子、天然産物抽出物ライブラリ、及びいずれか他の分子(限定はしないが、化学物質、金属、及び有機金属化合物を含む)を包含するものと、意図されている。
【0031】
「保存残基」とは、ある範囲の同様なタンパク質にわたって比較的に一様なアミノ酸である。しばしば保存残基は、上で「保存的アミノ酸置換」に関して解説したように、類似のアミノ酸に置換されている点のみで異なるであろう。
【0032】
用語「ドメイン」は、ここで用いられる場合、あるタンパク質のうちで、特定の構造を含む、及び/又は、特定の機能を果たす一領域を言う。
【0033】
「相同性」又は「同一性」又は「類似性」は、2つのペプチド間又は2つの核酸分子間の配列類似性を言う。相同性及び同一性は、比較を目的としてアライメントしてもよい欠く配列中の一箇所を比較することにより、それぞれ決定することができる。比較された配列中で同等な位置が、同じ塩基又はアミノ酸で占められていた場合、それらの分子はその位置において同一であることになる。同等な部位が同じ又は類似のアミノ酸残基(例えば立体及び/又は電子上の性質で類似)で占められている場合、それらの分子を、その位置において相同(類似)であると言及することができる。相同性/類似性又は同一性のパーセンテージによる表現とは、比較された配列に共通の位置にある同一又は類似のアミノ酸の数の関数を言う。「無関係の」又は「非相同な」配列は、本発明の配列に対し、40%未満の同一性、好ましくは25%未満の同一性を有するものである。2つの配列を比較する際、残基(アミノ酸又は核酸)が存在しないことも、あるいは、余分な残基が存在することも、同一性及び相同性/類似性を低下させる。
【0034】
用語「相同性」は、類似の機能又はモチーフを持つ遺伝子又はタンパク質を同定するために用いられている、数学に基づいた配列類似性の比較を言う。本発明の核酸及びタンパク質配列を「クエリー配列」として用いて、例えば他のファミリ・メンバ、関連する配列又は相同体を明らかにするなどのために、公共のデータベースに対する検索をしてもよい。このような検索は、Altschul, et al.
(1990) J Mol. Biol. 215:403-10のNBLAST 及び XBLAST プログラム(バージョン2.0を用いて行うことができる。BLASTヌクレオチド検索を、NBLASTプログラムを用い、スコア=100、ワード長=12にして行うと、本発明の核酸分子に相同なヌクレオチド配列を得ることができる。BLASTタンパク質検索を、XBLASTプログラムを用い、スコア=50、ワード長=3にして行うと、本発明のタンパク質分子に相同なアミノ酸配列を得ることができる。比較のために、ギャップのあるアライメントをするには、ギャップドBLAST をAltschul et al.,
(1997) Nucleic Acids Res. 25(17):3389-3402に解説されたように用いることができる。BLAST 及びギャップド BLASTプログラムを用いる場合、 各プログラム(例えば XBLAST 及びBLAST) のデフォルト・パラメータを用いることができる。http://www.ncbi.nlm.nih.gov. を参照されたい。
【0035】
ここで用いる場合の「同一性」とは、配列の対合が最大になるように、即ち、ギャップ及び挿入を考慮に入れて、2つ以上の配列中をアライメントしたときに、これら配列の相当する位置にある同一のヌクレオチド又はアミノ酸残基のパーセンテージを意味する。同一性は、限定はしないが、 (Computational Molecular
Biology, Lesk, A. M., ed., Oxford University Press, New York, 1988;
Biocomputing: Informatics and Genome Projects, Smith, D. W., ed., Academic
Press, New York, 1993; Computer Analysis of Sequence Data, Part I, Griffin, A.
M., and Griffin, H. G., eds., Humana Press, New Jersey, 1994; Sequence Analysis
in Molecular Biology, von Heinje, G., Academic Press, 1987; and Sequence
Analysis Primer, Gribskov, M. and Devereux, J., eds., M Stockton Press, New
York, 1991; and Carillo, H., and Lipman, D., SIAM J. Applied Math., 48: 1073
(1988)に解説されたものを含め、公知の方法により容易に計算することができる。同一性を決定する方法は、検査対象の配列間の対合が最も大きくなるようにデザインされている。さらに、同一性を決定する方法は、公共で利用可能なコンピュータ・プログラムでコーディングされている。2つの配列間の同一性を決定するコンピュータ・プログラム法には、限定はしないが、GCGプログラム・パッケージ (Devereux, J.,
et al., Nucleic Acids Research 12(1): 387 (1984))、BLASTP、BLASTN、及びFASTA (Altschul,
S. F. et al., J. Molec. Biol. 215: 403-410 (1990) and Altschul et al. Nuc.
Acids Res. 25: 3389-3402 (1997))、がある。BLAST XプログラムはNCBI 及び他の供給源(BLAST Manual, Altschul, S., et al., NCBI NLM
NIH Bethesda, Md. 20894; Altschul, S., et al., J. Mol. Biol. 215: 403-410
(1990)から公的に入手可能である。公知のスミス・ウォーターマン・アルゴリズムも、同一性を決定するために用いてよい。
【0036】
用語「含む」は、ここでは、文言「限定はしないが、含む」を意味すると共に、該文言と交換可能に用いられている。
【0037】
当該のタンパク質及びタンパク質複合体に関して、ここで用いられる用語「単離された」とは、当該のタンパク質又は複合体中に通常存在するであろう、例えば当該タンパク質又は複合体が内因性で見られる細胞ミリュー内などの、混入タンパク質を実質的に含まないタンパク質又はタンパク質複合体の製剤を言う。このように、単離されたタンパク質複合体は、例えばそのモジュレータをスクリーニング中など、単離物中の当該複合体を通常、「汚染」又はその研究に干渉するであろう細胞内成分から単離されたものである。しかしながら、このような「単離された」複合体は、当該のタンパク質又はタンパク質複合体によるその調節を調査中のある他のタンパク質を取り込んでいてもよいと考えられる。
【0038】
DNA又はRNAなどの核酸に関してここで用いる場合の用語「単離された」は、天然では生じない形の分子を言う。さらに「単離された核酸」とは、天然ではフラグメントとして生じず、また、天然状態では見られないであろう核酸フラグメントも包含するものと、意図されている。
【0039】
ここで用いる場合の用語「核酸」とは、デオキシリボ核酸(DNA)、及び適当な場合にはリボ核酸(RNA)などのポリヌクレオチドを言う。この用語は、さらに、均等物として、ヌクレオチド類似体から作製されたRNA又はDNAの類似体や、解説中の実施態様に該当する場合、一本鎖(例えばセンス又はアンチセンス)及び二本鎖ポリヌクレオチドも包含するものと、理解されねばならない。
【0040】
用語「又は(原語:or)は、そうでないと文脈が明らかに示さない限り、ここでは用語「及び/又は」を意味し、そしてこの用語と交換可能に用いられている。
【0041】
用語「タンパク質」及び「ポリペプチド」はここでは交換可能に用いられている。
【0042】
用語「精製されたタンパク質」とは、細胞又は細胞ライセート中で当該タンパク質に通常伴う他のタンパク質から、好ましくは単離された、又はそうでなくとも実質的に含まないような、一タンパク質又は複数のタンパク質の製剤を言う。用語「他の細胞内タンパク質を実質的に含まない」(ここでは「他の混入タンパク質を実質的に含まない」と言及されている)は、(乾燥重量で)20%未満の混入タンパク質を含む成分タンパク質のそれぞれの個別製剤を包含するものと定義されており、そして好ましくは5%未満の混入タンパク質を含むとよい。成分タンパク質のそれぞれの機能的な形は、付属の実施例で解説するように、クローニングされた遺伝子を用いることにより、精製された製剤として調製することができる。「精製された」とは、再構成されたタンパク質混合物を作製するために用いられる成分タンパク質製剤を言う場合、示した分子が、例えば他のタンパク質など、他の生物学的な巨大分子(特に、精製された製剤として、又は、当該の再構成された混合物中のそれらの機能、のいずれかにおいて、成分タンパク質の特徴を実質的に覆う、減衰する、混乱させる、又は変化させると思われる他のタンパク質)の実質的な非存在下で存在することを意味する。ここで用いられる場合の用語「精製された」とは、存在する同じ種類の生物学的巨大分子のうちで好ましくは乾燥重量で少なくとも80%、より好ましくは重量で85%の範囲、より好ましくは重量で95-99%、そして最も好ましくは重量で少なくとも99.8%、を意味する。(しかし、水、緩衝液、及び他の低分子、特に分子量が5000未満の分子、は存在してもよい)。用語「純粋な」は、ここで用いられる場合、好ましくは、直前の「精製された」と同じ数値上の限定を有する。
【0043】
用語「組換え核酸」には、天然では一緒に存在しない少なくとも2つの配列を含むあらゆる核酸が包含される。組換え核酸は、例えば分子生物学の方法を用いるなどしてin vitroで生じさせても、あるいは、相同もしくは非相同組換えにより新規な染色体位置に核酸を挿入するなどにより、in vivoで生じさせてもよい。
【0044】
用語「組換えタンパク質」とは、組換えDNA技術により作製された本発明のタンパク質を言い、この場合、発現タンパク質をコードするDNAは一般に、適した発現ベクタ内に挿入され、この発現ベクタをその後、ホスト細胞を形質転換させるために用いて、当該の異種タンパク質を産生させる。さらに、組換えタンパク質をコードする組換え遺伝子に関する文言「由来とする」は、「組換えタンパク質」の意味の中に、天然タンパク質のアミノ酸配列、又は、天然で生じるタンパク質の置換及び欠失を含む変異により生じたそれに類似のアミノ酸配列、を有するようなタンパク質も包含するものと、意図されている。
【0045】
ここで用いられる場合の「低分子」とは、約5kD未満、そして最も好ましくは約2.5kD未満の分子量を有する組成物を言うものと、意図されている。低分子は核酸、ペプチド、ポリペプチド、ペプチドミメティック、糖、脂質又は他の有機(炭素を含有する)又は無機の分子であってよい。多くの製薬企業が、本発明の検定法のいずれかでスクリーニングすることのできる、低分子、しばしば真菌、細菌、又は藻類抽出物のアレイを含む化学的及び/又は生物学的混合物の広汎なライブラリを有する。
【0046】
ここで用いる場合の用語「特異的にハイブリダイズする」とは、本発明の核酸プローブ/プライマが、標的配列又はそれに相補的な配列又はその天然発生変異型の少なくとも12、15、20、25、30、35、40、45、50又は100個の連続したヌクレオチドにハイブリダイズできる能力であって、その結果、それが、標的遺伝子以外の細胞内核酸(例えばmRNA又はゲノムDNA)へのバックグラウンド・ハイブリダイゼーションが15%未満、好ましくは10%未満、そしてより好ましくは5%未満であるような能力を言う。多種のハイブリダイゼーション条件を用いて特異的ハイブリダイゼーションを検出してよく、またそのストリンジェンシーは、当該ハイブリダイゼーション検定法の洗浄段階により、主に決定される。一般的には、高温及び低塩濃度ではストリンジェンシーが高くなり、低温及び高塩濃度ではストリンジェンシーが低くなる。ストリンジェンシーの低いハイブリダイゼーションは、例えば約2.0×SSCで50℃で洗浄すると達成され、高いストリンジェンシーは、約0.2×SSCで50℃で達成される。ストリンジェンシーの更なる解説を以下に行う。
【0047】
ポリペプチドに用いる場合、「実質的な配列同一性」は、2つのペプチド配列を、例えばプログラムGAP又はBESTFITなどにより、デフォルト・ギャップを用いて最適にアライメントした場合に、少なくとも90パーセントの配列同一性、好ましくは少なくとも95%の配列同一性、より好ましくは少なくとも99パーセント又はそれ以上の配列同一性がその間にあることを意味する。好ましくは、同一でない残基位置は、保存的アミノ酸置換により異なっているとよい。例えば、電荷又は極性など、類似の化学的性質を有するアミノ酸の置換は、タンパク質の性質に影響を及ぼさないであろう。例には、アスパラギンの代わりのグルタミンや、又はアスパラギン酸の代わりのグルタミン酸、がある。
【0048】
用語「腫瘍壊死因子アルファ受容体」又は「TNFR」には、TNFR1、TNFR2、及びその機能フラグメント及び類似体が含まれる。用語TNFRには、さらに、TNF-αに結合すると、このような結合が伝達されて細胞内シグナル伝達経路に影響するようなあらゆるポリペプチドが含まれる。
【0049】
例えばTNF-α、TNFR、TRCP1又はTRCP2のバリアントなど、ポリペプチドの「バリアント」には、当該バリアントが、天然タンパク質のアミノ酸配列の少なくとも一部分か、又は、該天然タンパク質に実質的配列同一性のあるアミノ酸配列の少なくとも一部分、を有する限りにおいて、キメラタンパク質、融合タンパク質、変異タンパク質、類似であるが非同一な配列を有するタンパク質、タンパク質フラグメント、ミメティック等、が含まれる。「機能的バリアント」には、天然タンパク質の少なくとも1つの機能の残ったバリアントが含まれる。ここで用いる場合の用語「腫瘍壊死因子アルファ」又は「TNF-α」は、TNF-αの機能的バリアントを包含するものである。
【0050】
III. タンパク質複合体
いくつかの実施態様では、本発明は、新規なタンパク質複合体の発見に関する。いくつかの実施態様では、本発明のタンパク質複合体は、TNF-αポリペプチドと、TNFRポリペプチドと、NAK、RasGAP3、TRCP1、及びTRCP2から成る群より選択される少なくとも1つのポリペプチドと、を含む。選択的には、このようなタンパク質複合体は、さらに、TRADD、TRAF2、及びTRAP2から成る群より選択される少なくとも1つのポリペプチドか、又は、TRAF1、RIP、RAIDD、又はFADDなど、TNF-α又はTNFRと複合体を形成することが知られているポリペプチドを含む。
【0051】
ある具体的な実施態様では、本発明のタンパク質複合体は、TNF-α、TNFR1、NAK、TRAF2、及びTRADDのポリペプチドを含む。
【0052】
別の具体的な実施態様では、本発明のタンパク質複合体は、TNF-αポリペプチド、TNFRポリペプチド、NAKポリペプチド、RasGAP3ポリペプチド、TRCP1ポリペプチド、TRCP2ポリペプチド、TRADDポリペプチド、TRAF2ポリペプチド、及びTRAP2ポリペプチドを含む。例えば、当該の複合体のTNFRポリペプチドは、TNFR1又はTNFR2ポリペプチドであってよい。
【0053】
更なる実施態様では、本発明のタンパク質複合体は、TNFRと、NAK、RasGAP3、TRCP1、及びTRCP2から成る群より選択される少なくとも1つのポリペプチドとを含む。選択的には、このようなタンパク質複合体は、さらに、TRADD、TRAF2、及びTRAP2から成る群より選択される少なくとも1つのポリペプチドか、又は、TRAF1、RIP、RAIDD、又はFADDなど、TNFRと複合体を形成することが知られているポリペプチドを含む。
【0054】
さらに本発明は、TNF-α、TNFR、NAK、RasGAP3、TRCP1、及びTRCP2から成る群より選択されるいずれか2つのポリペプチドを含むタンパク質複合体も考察する。選択的には、このようなタンパク質複合体は、さらに、TRADD、TRAF2、及びTRAP2から成る群より選択される少なくとも1つのポリペプチドか、又は、TRAF1、RIP、RAIDD、又はFADDなど、TNFRと複合体を形成することが知られているポリペプチド、を含む。
【0055】
選択的には、複合体のポリペプチドのうちの一つ以上は、そのポリペプチドのバリアントであり、好ましくはそのポリペプチドの機能的バリアントであるとよい。例えば、ある実施態様では、本発明のタンパク質複合体は、TNF-α 及びNAKを含み、但しこの場合、TNF-α及び/又はNAKは、TNF-α及び/又はNAKのバリアントに代表されよう。
【0056】
本発明の複合体を、例えば単離された複合体、組換え複合体、精製された複合体等として、基本的な形で得てよい。ある実施態様では、本発明は、本複合体を含む細胞からの抽出などで調製されたタンパク質複合体を提供するものである。細胞からの抽出は、当業で公知の数多くある方法のいずれで行ってもよい。例えば、遠心分離、ゲル濾過、イオン交換クロマトグラフィ等、一連の従来のタンパク質精製ステップにより、細胞から複合体を抽出してもよく、また一般的には、複合体を解離させないような精製ステップ及び条件を選択することが好ましいであろう。細胞からの抽出を、親和性精製によって行ってもよい。例えば、所望の複合体中のタンパク質の一つ以上を、ヘキサヒスチジン・タグ、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)・タグ等の親和性精製タグを含む融合タンパク質として発現させてもよい。次にこの複合体を、適した親和性精製法(例えば、ヘキサヒスチジン・タグの場合はニッケル又は同樹脂に接触させる、GSTタグの場合はグルタチオン樹脂に接触させる、など)により精製してよい。別の好適な形では、本発明は、E. coliなどの細胞で発現させた組換えポリペプチドを精製し、この複合体をinvitroで再構成することなどにより調製されたタンパク質複合体を提供するものである。いくつかの実施態様では、ある一つの複合体の構成ポリペプチドの一つ以上を、細胞の内因性遺伝子から発現させる。いくつかの実施態様では、複合体は、構成ポリペプチドのうちの一つ以上が組換え核酸から発現したような組換え複合体である。
【0057】
いくつかの実施態様では、本発明は、複合体中の少なくとも1つのポリペプチドが標識されているような標識されたタンパク質複合体も包含する。最も好ましくは、該標識は、限定はしないが、放射性同位体、蛍光化合物、酵素、及び酵素コファクタから成る群より選択される検出可能な標識である。別の実施態様では、該標識は、当該ポリペプチドの精製、単離、又は検出を容易にする標識である。該標識は、ポリヒスチジン、FLAG、Glu-Glu、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ (GST)、チオレドキシン、プロテインA、プロテインG、及び免疫グロブリン重鎖定常領域であってよい。ある好適な実施態様では、前記の標識されたタンパク質はTNF-αである。別の好適な実施態様では、前記の標識されたタンパク質はTNFRである。
【0058】
ある実施態様では、本発明は、融合タンパク質を含むタンパク質複合体を考察するものであり、但しこの場合、前記融合タンパク質は、前記融合タンパク質の精製、単離、又は検出を容易にするドメインを含む。該融合ドメインは、例えば、ポリヒスチジン、FLAG、Glu-Glu、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ (GST)、チオレドキシン、プロテインA、プロテインG、及び免疫グロブリン重鎖定常領域から成る群より選択できよう。好適な融合ドメインはFLAGである。いくつかの実施態様では、本複合体は、TNF-α融合タンパク質を含む。いくつかの実施態様では、本複合体は、TNFR融合タンパク質を含む。いくつかの実施態様では、本複合体は、TNF-α融合タンパク質及びTNFR融合タンパク質を含む。
【0059】
上述したように、いくつかの実施態様では、本発明のタンパク質複合体は、当該複合体中のいずれかのポリペプチドの成分の少なくとも1つのフラグメントを含む。いくつかの実施態様では、本複合体は、TNF-αポリペプチドの一フラグメントと、完全長TNFRポリペプチドと、NAK、RasGAP3、TRCP1及びTRCP2から成る群より選択される完全長ポリペプチドとを含む。いくつかの実施態様では、本複合体は、TNF-αポリペプチドの一フラグメントと、TNFRポリペプチドの一フラグメントと、NAK、RasGAP3、TRCP1、及びTRCP2から成る群より選択される完全長ポリペプチドとを含む。いくつかの実施態様では、本複合体は、完全長TNF-αポリペプチドと、TNFRポリペプチドの一フラグメントと、NAK、RasGAP3、TRCP1、及びTRCP2から成る群より選択されるポリペプチドの一フラグメントとを含む。いくつかの実施態様では、本複合体は、完全長TNF-αポリペプチドと、完全長TNFRポリペプチドと、NAK、RasGAP3、TRCP1、及びTRCP2から成る群より選択されるポリペプチドの一フラグメントとを含む。いくつかの実施態様では、本複合体は、TNF-αポリペプチドの一フラグメントと、TNFRポリペプチドの完全長と、NAK、RasGAP3、TRCP1、及びTRCP2から成る群より選択されるポリペプチドの一フラグメントとを含む。いくつかの実施態様では、本複合体は、TNF-αポリペプチドの一フラグメントと、TNFRポリペプチドの一フラグメントと、NAK、RasGAP3、TRCP1、及びTRCP2から成る群より選択されるポリペプチドの一フラグメントとを含む。
【0060】
好適な実施態様では、上記のポリペプチドのいずれかの一フラグメントは、例えば、本複合体の少なくとも1つの他のポリペプチドとの結合能の残った機能的フラグメントである。TNFR1の機能的フラグメントの一例は、TNFR1のカルボキシル末端に向かってほぼ80アミノ酸の、TNFR1の細胞内デス・ドメイン(DD)を包含するフラグメントである。機能的フラグメントの更なる一例は、NAKのアミノ末端にあるほぼ235アミノ酸の、NAKのセリン/スレオニン・プロテインキナーゼ触媒ドメイン(S TKc)を包含するフラグメントである。いくつかの実施態様では、本複合体中の一フラグメントは、1)アミノ末端にあるほぼ100個のアミノ酸であるプロテイン・キナーゼC保存領域2ドメイン(C2);2)中央の領域のほぼ320個のアミノ酸であるRasGAPドメイン;3)カルボキシル末端にむかってほぼ100個のアミノ酸のプレクストリン(原語:pleckstrin)相同ドメイン(PH);4)カルボキシル末端に向かってほぼ35個のアミノ酸であるBTKドメイン、から成る群より選択されるRasGAP3の一ドメインを包含するものである。
【0061】
いくつかの実施態様では、本発明の複合体は水溶性の形(「可溶性の複合体」)である。例えば、可溶性は、TNFRの可溶性の細胞質側部分と、NAK、RasGAP3、TRCP1、及びTRCP2から成る群より選択される少なくとも1つのポリペプチドとを含んでいてよい。選択的には、このようなタンパク質複合体は、さらに、TRADD、TRAF2、及びTRAP2から成る群より選択される少なくとも1つのポリペプチドか、又は、例えば TRAF1、RIP、RAIDD、又はFADDなど、TNFRと複合体を形成することが知られているタンパク質を含む。いくつかの実施態様では、本複合体は、水不溶性又は膜結合型である。例えば、膜貫通ドメインを有するタンパク質(例えば完全長TNFR)を含む複合体は、一般的に非水溶性であろう。不溶性の複合体は、例えば、脂質、界面活性剤及び/又は他の成分を含む脂質ミセル、界面活性剤ミセル、又は、混合ミセルとして調製できよう。不溶性の複合体を、細胞から膜画分として調製してもよい。膜画分は粗膜画分であってよく、この場合、膜部分は、例えば遠心分離又は濾過により、細胞の可溶性部分から簡単に分離される。膜画分を、例えば複合体のタンパク質のうちの一つ以上に存在する親和性タグを狙った親和性精製などにより、さらに精製してもよい。複合体が脂質二重層内に存在する場合、該脂質二重層は、例えばベシクル(選択的には逆転した、即ち通常は細胞の外側にある面が、ベシクルの内部に向かうように逆転した)であっても、あるいは平面状の二重層であってもよい。複合体がTNFRを含むような実施態様では、当該のTNFRは、好ましくは、TNFR1又はそのバリアント(例えば可溶性の細胞質側部分、DDドメイン等)であるとよい。
【0062】
いくつかの実施態様では、本発明は、機能的タンパク質複合体を作製するための更なる方法も提供する。好適な実施態様では、このような方法は、(i)細胞に、NAK、RasGAP3、TRCP1、及びTRCP2から成る群より選択されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドをトランスフェクトするステップと;(ii)前記細胞をTNF-αポリペプチドに接触させるステップと;(iii)それによりタンパク質複合体を形成するステップと、を含む。
【0063】
IV. タンパク質複合体のポリペプチド
いくつかの局面では、本発明の複合体は、TNF-α、TNFR、NAK、RasGAP3、TRCP1、TRCP2、TRADD、TRAF2、及びTRAP2から成る群より選択されるポリペプチドと、ここで解説された付加的な成分と、それらのバリアント・ポリペプチドとを含む。いくつかの実施態様では、バリアント・ポリペプチドは、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、及び19番のいずれかに記載されたアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一であるアミノ酸配列を有する。他の実施態様では、該バリアント・ポリペプチドは、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、及び19番のいずれかに記載されたアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、99% 又は 100% 同一であるアミノ酸配列を有する。本複合体の好適なポリペプチドは、天然ヒトNAK、RasGAP3、TRCP1、及びTRCP2配列(配列番号13、15、17、及び19番)である。
【0064】
いくつかの局面では、タンパク質複合体は、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、及び19番のいずれかに記載されたポリペプチドのアゴニスト又はアンタゴニストであるバリアント・ポリペプチドを含む。これらのポリペプチドのバリアントは、機能後進性又は構成的活性を有するものでも、あるいは代替的には、タンパク質複合体のTNF-α依存的形成を妨げるよう作用するものであってもよい。例えば、一箇所以上のドメインを欠損する切断型はドミナント・ネガティブ効果を有するであろう。
【0065】
いくつかの局面では、タンパク質複合体は、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、及び19番のいずれかに記載された完全長ポリペプチドを由来とするバリアント・ポリペプチドを含む。これらのポリペプチドの単離されたペプチジル部分は、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、及び20番のいずれかに記載された(このようなポリペプチドをコードする)核酸の相当するフラグメントから組換えにより生ずるポリペプチドをスクリーニングすることにより、得ることができる。加えて、フラグメントは、従来のメリフィールド固相f-Moc又はt-Boc化学法など、当業で公知の技術を用いて化学合成することもできる。例えば、本タンパク質のいずれか一つを、フラグメントに重複のない,所望の長さのフラグメントに任意で分割することも、あるいは、好ましくは、所望の長さの重複フラグメントに分割することもできる。該フラグメントを、(組換え又は化学合成により)作製し、TNFR タンパク質複合体の形成のアゴニスト又はアンタゴニストのいずれかとして機能することのできるペプチジル・フラグメントを特定するために検査することができる。
【0066】
いくつかの局面では、タンパク質複合体は、一個以上の融合ドメインを含有するバリアント・ポリペプチドを含む。このような融合ドメインのよく知られた例には、例えば、アフィニティ・クロマトグラフィによる当該融合ポリペプチドの単離に特に有用なポリヒスチジン、Glu-Glu、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ (GST)、チオレドキシン、プロテインA、プロテインG、及び免疫グロブリン重鎖定常領域(Fc)、マルトース結合タンパク質 (MBP)、がある。親和性精製を目的とする場合、グルタチオン-、アミラーゼ-、及びニッケル-もしくはコバルト-結合樹脂など、アフィニティ・クロマトグラフィのための関係するマトリックスを用いる。このようなマトリックスの多くは、(HISσ)融合相手と用いると有用なファルマシアGST精製系及びQIAexpressTM系(キアジェン社)など、「キット」の形で得ることができる。
【0067】
当業で公知のもう一つの融合ドメインは緑色蛍光タンパク質(GFP)である。この融合相手は、本発明の融合ポリペプチドを、蛍光顕微鏡法又はフローサイトメトリにより特定可能にする蛍光性の「タグ」として役立つ。GFPタグは、本発明の融合ポリペプチドの細胞レベル下局在を評価したり、あるいは、本タンパク質複合体を成す少なくとも2つのポリペプチドであって、そのうちの一つのポリペプチドをGFPに融合することになる少なくとも2つのポリペプチドの同時局在を評価する場合に、有用である。GFPタグはまた、蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)などのフローサイトメトリ法により、本発明の融合ポリペプチドを発現している細胞を単離するためにも、有用である。
【0068】
融合ドメインにはさらに、対する特異抗体を入手できる通常は短いペプチド配列である「エピトープ・タグ」もある。対する特異モノクローナル抗体を容易に入手できる公知のエピトープ・タグには、FLAG、インフルエンザウィルス・ヘマグルチニン(HA)、及びc-mycタグがある。
【0069】
いくつかの場合では、融合ドメインは、関連するプロテアーゼに本発明の融合ポリペプチドを部分的に消化させて、そこから組換えポリペプチドを切り離せるようにする、Xa因子又はスロンビンなどのプロテアーゼ開裂部位を有する。こうして切り離されたポリペプチドを、次のクロマトグラフィによる分離で融合相手から単離することができる。
【0070】
いくつかの実施態様では、本複合体の組換えタンパク質は、例えばSambrook, et
al., Molecular Cloning. A
Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Press, 1989); Current Protocols In
Molecular Biology Eds. Ausubel et al.; and Current Protocols In Protein
Science Eds. Coligan et al.などに解説された標準的なプロトコルを用い、当業者が適宜、調製できよう。
【0071】
いくつかの実施態様では、ある複合体のポリペプチドのバリアントを、天然ポリペプチド配列の一箇所以上の保存的置換を行うことにより、作製してもよい。例えば、ロイシンをイソロイシン又はバリンに、アスパラギン酸をグルタミン酸に、スレオニンをセリンにする単独の置換や、あるいは、あるアミノ酸を構造上関連するアミノ酸にする類似の置換(即ち保存的変異)をしても、その結果できる分子の対生物活性には大きな影響を及ぼさないであろうと予測することは妥当である。保存的置換とは、側鎖で関連する一ファミリのアミノ酸内で起きるものである。遺伝子にコードされたアミノ酸は4つのファミリに分類することができる:(1)酸性=アスパラギン酸、グルタミン酸;(2)塩基性=リジン、アルギニン、ヒスチジン;(3)非極性=アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン;及び(4)無電荷の極性=グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、スレオニン、チロシン。フェニルアラニン、トリプトファン、及びチロシンは、ときに芳香族アミノ酸とまとめて分類されることがある。同様に、アミノ酸のレパートリーは、(1)酸性=アスパラギン酸、グルタミン酸;(2)塩基性=リジン、アルギニン、ヒスチジン;(3)脂肪族=グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニン、但しセリン及びスレオニンは選択的には別に脂肪族ヒドロキシルとして分類される(4)芳香族=フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン;(5)アミド=アスパラギン、グルタミン;及び(6)硫黄含有=システイン及びメチオニン、にグループ分けすることができる(例えばBiochemistry, 2nd
ed., Ed. by L. Stryer, W.H. Freeman and Co., 1981を参照されたい)。あるポリペプチドのアミノ酸配列の変化の結果、機能的相同体が生じるかどうかは、そのバリアント・ポリペプチドが、野生型タンパク質と同様な態様で細胞内で応答を生じられるかという能力を評価することにより、容易に判定することができる。例えば、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、及び19番のいずれかに記載されたポリペプチドのこのようなバリアント型を、当該タンパク質複合体中の別のポリペプチドへの結合能などについて、評価することができる。2箇所以上の置換があったポリペプチドも、同様な態様で容易に検査することができる。
【0072】
いくつかの実施態様では、本発明は、さらに、本ポリペプチドの一揃いのコンビナトリアル変異型や、切断変異型を作製する方法も考察するところであり、また本発明のタンパク質複合体を形成する上で機能的な潜在的バリアント配列(例えば相同体)を特定するために、特に有用である。このようなコンビナトリアル・ライブラリをスクリーニングする目的は、例えば、アゴニスト又はアンタゴニストとして作用できる、あるいは代替的には、全体的に新規な活性を持つ、相同体を作製することである。天然発生型ポリペプチドに対して選択的効力を有するような、コンビナトリアル法由来の相同体を作製することができる。このようなタンパク質は、組換えDNAコンストラクトから発現させると、ここで解説された検定プロトコルで用いることができる。同様な態様で、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、及び19番のいずれかに記載された通りの本ポリペプチドの相同体も、本コンビナトリアル法により、本発明のタンパク質複合体において相当する野生型タンパク質が果たす能力に干渉できるという点でアンタゴニストとして作用させるために作製することができる。
【0073】
他の形の変異誘発を用いてもコンビナトリアル・ライブラリを作製することができる。例えば、本タンパク質の相同体(アゴニスト及びアンタゴニスト型の両方)を作製し、例えばアラニン・スキャンニング変異誘発法等 (Ruf et al.,
(1994) Biochemistry 33:1565-1572; Wang et al., (1994) J. Biol. Chem.
269:3095-3099; Balint et al., (1993) Gene 137:109-118; Grodberg et al., (1993)
Eur. J. Biochem. 218:597-601; Nagashima et al., (1993) J. Biol. Chem.
268:2888-2892; Lowman et al., (1991) Biochemistry 30:10832-10838; and
Cunningham et al., (1989) Science 244:1081-1085)、リンカ・スキャンニング変異誘発法(Gustin et al.,
(1993) Virology 193:653-660; Brown et al., (1992) Mol. Cell Biol. 12:2644-2652;
McKnight et al., (1982) Science 232:316);飽和変異誘発法 (Meyers et al., (1986)
Science 232:613);PCR変異誘発法 (Leung et al.,
(1989) Method Cell Mol. Biol. 1:11-19); 又は、化学的変異誘発法等. (Miller et al., (1992) A Short Course in Bacterial
Genetics, CSHL Press, Cold Spring Harbor, NY; and Greener et al., (1994)
Strategies in Mol. Biol. 7:32-34)を含むランダム変異誘発法を用いたスクリーニングにより、ライブラリから単離することができる。リンカ・スキャンニング変異誘発法、特にコンビナトリアル条件でのもの、は、切断型(対生物活性のある)本タンパク質を特定するための魅力的な方法である。
【0074】
点変異及び切断により作製されたコンビナトリアル・ライブラリの遺伝子産物をスクリーニングしたり、そしてある特定の性質を有する遺伝子産物についてcDNAライブラリをスクリーニングするためには、幅広い技術が当業で公知である。このような技術は、概して、本タンパク質の相同体のコンビナトリアル変異誘発により作製された遺伝子ライブラリを高速スクリーニングするために適合させることができるであろう。大型の遺伝子ライブラリをスクリーニングするために最も広く用いられている技術は、典型的には、遺伝子ライブラリを複製可能な発現ベクタ内にクローニングするステップと、その結果得られるベクタのライブラリで適した細胞を形質転換させるステップと、所望の活性を検出すると、その産物が検出された遺伝子をコードするベクタを比較的に容易に単離できるような条件下で、コンビナトリアル遺伝子を発現させるステップと、を含む。
【0075】
いくつかの実施態様では、本発明は、本物のタンパク質の別の細胞内の相手への結合を模倣できるような、ミメティックであるバリアント、例えばペプチド又は非ペプチド化合物、を作製するためのポリペプチドの還元もさらに提供する。上に解説した通りのこのような変異誘発技術は、例えば本発明のタンパク質複合体の集合などに関与するタンパク質対タンパク質相互作用に参与するポリペプチドの決定基をマッピングするためにも、特に有用である。実例を挙げると、あるポリペプチド(NAKなど)のうちで、相互作用性タンパク質(例えばTNFR又はTNF-α)の分子認識に関与する重要な残基を決定することができ、これを用いて、TNFRに結合してNAK結合を阻害することで、当該タンパク質複合体の集合又はシグナル伝達活性を阻害する働きをするようなNAKポリペプチド由来ペプチド・ミメティックを作製することができる。例えばスキャンニング変異誘発法を用いて、あるポリペプチドのうちで、別のポリペプチドへの結合に関与するアミノ酸残基をマッピングすると、結合に関与する残基を模倣するペプチドミメティック化合物を作製することができる。例えば、このような残基の非加水分解性ペプチド類似体は、ベンゾジアゼピン(例えばFreidinger et
al., in Peptides: Chemistry and Biology, G.R. Marshall ed., ESCOM Publisher:
Leiden, Netherlands, 1988を参照されたい)、アゼピン (例えばHuffman et al.,
in Peptides: Chemistry and Biology, G.R. Marshall ed., ESCOM Publisher: Leiden,
Netherlands, 1988を参照されたい)、置換ガンマ・ラクタム環 (Garvey et al.,
in Peptides: Chemistry and Biology, G.R. Marshall ed., ESCOM Publisher: Leiden,
Netherlands, 1988)、ケト-メチレンシュードペプチド (Ewenson et al.,
(1986) J. Med. Chem. 29:295; and Ewenson et al., in Peptides: Structure and Function
(Proceedings of the 9th American Peptide Symposium) Pierce Chemical Co.
Rockland, IL, 1985)、b-ターン・ジペプチド・コア (Nagai et al.,
(1985) Tetrahedron Lett. 26:647; and Sato et al., (1986) J. Chem. Soc. Perkin
Trans. 1:1231)、及びb-アミノアルコール (Gordon et al.,
(1985) Biochem Biophys Res. Commun. 126:419; and Dann et al., (1986) Biochem
Biophys Res. Commun. 134:71)を用いて作製することができる。
【0076】
V. 核酸
いくつかの局面では、本発明の複合体は、TNF-α、TNFR、NAK、RasGAP3、TRCP1、TRCP2、TRADD、TRAF2、TRAP2から成る群より選択される核酸にコードされたポリペプチドと、ここで解説された付加的な成分とを含む。核酸には、さらに、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、及び20番のバリアントを含む核酸も包含されるものと、理解されている。バリアント・ヌクレオチド配列には、対立遺伝子バリアントなど、一箇所以上のヌクレオチド置換、追加又は欠失で異なるような配列が含まれ、従って、遺伝子暗号の縮重を原因とするなど、当該のコーディング配列のヌクレオチド配列とは異なるコーディング配列も含まれよう。いくつかの実施態様では、バリアント核酸には、さらに、配列番号 2、4、6、8、10、12、14、16、18、及び20番のいずれかで指定されたコーディング配列のヌクレオチド配列に対してストリンジェンシーの高い条件下でハイブリダイズすることとなる配列も含まれよう。当業者であれば、DNAのハイブリダイゼーションを促進する適したストリンジェントな条件は変更可能であることを容易に理解されよう。例えば、ハイブリダイゼーションを約45℃の6.0×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム (SSC) で行った後、50℃の2.0×SSCで洗浄を行うことができる。例えば、この洗浄ステップでの塩濃度は、低ストリンジェンシーの50℃の約2.0× SSC から、高ストリンジェンシーの50℃の約0.2×SSCまでで、選択することができる。加えて、洗浄ステップでの温度は、約22℃の室温の低ストリンジェンシー条件から、約65℃の高ストリンジェンシー条件まで、上昇させることができる。温度及び塩の両方を変更してもよく、あるいは、一方の可変項を変更しつつ、他方の温度又は塩濃度を一定に維持してもよい。ある実施態様では、本発明は、室温の6×SSCという低ストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、室温の2×SSCで洗浄するといった核酸を提供する。
【0077】
遺伝子暗号の縮重のために配列番号 2、4、6、8、10、12、14、16、18、及び20番とは異なるような単離された核酸も、本発明の範囲内にある。例えば、数多くのアミノ酸が、2つ以上の三重項で指定されている。同じアミノ酸を特定するコドン、即ち同義語(例えばCAU 及び CACはヒスチジンを表す同義語である)により、本タンパク質のアミノ酸配列に影響しないような「サイレント」な変異が起きることがある。しかしながら、本タンパク質のアミノ酸配列の変化に確かにつながるDNA配列多型も、哺乳動物細胞間には存在すると予測される。当業者であれば、ある特定のタンパク質をコードする核酸の一箇所以上のヌクレオチド(最高ヌクレオチドの約3乃至5%)には、これらの違いが、天然の対立遺伝子のばらつきのために、ある一つの種の個体間に存在する場合があることは理解されよう。このようなヌクレオチドのばらつき及びその結果のアミノ酸多型はすべて、本発明の範囲内にある。
【0078】
V. ホスト細胞
ある実施態様では、本発明は、本発明のタンパク質複合体又はそのバリアントのうちのいずれか3つのポリペプチドをコードする少なくとも3つの核酸を含むホスト細胞を提供する。ある実施態様では、第一の核酸は、TNF-αポリペプチドをコードする組換え核酸を含み、この場合、第二の核酸は、TNFRポリペプチドをコードする組換え核酸を含み、そして第三の核酸は、NAK、RasGAP3、TRCP1、及びTRCP2から成る群より選択されるポリペプチドをコードする組換え核酸を含む。ある実施態様では、前記第二の核酸は、TNFR1ポリペプチドをコードする。別の実施態様では、前記第二の核酸はTNFR2ポリペプチドをコードする。ある実施態様では、前記第三の核酸は、NAKポリペプチドをコードする。別の実施態様では、前記第三の核酸は、RasGAP3ポリペプチドをコードする。別の実施態様では、前記第三の核酸はTRCP1ポリペプチドをコードする。別の実施態様では、前記第三の核酸は、TRCP2ポリペプチドをコードする。
【0079】
いくつかの局面では、本発明は、本発明のタンパク質複合体又はそのバリアントのうちのいずれか2つのポリペプチドをコードする少なくとも2つの組換え核酸を含むホスト細胞を提供するものである。ある実施態様では、前記第一の核酸は、TNFRポリペプチドをコードする組換え核酸を含み、この場合、前記第二の核酸は、NAK、RasGAP3、TRCP1、及びTRCP2から成る群より選択されるポリペプチドをコードする組換え核酸を含む。ある実施態様では、前記第一の核酸は、TNFR1ポリペプチドをコードする。別の実施態様では、前記第一の核酸は、TNFR2ポリペプチドをコードする。ある実施態様では、前記第二の核酸は、NAKポリペプチドをコードする。別の実施態様では、前記第二の核酸は、RasGAP3ポリペプチドをコードする。別の実施態様では、前記第二の核酸は、TRCP1ポリペプチドをコードする。別の実施態様では、前記第二の核酸は、TRCP2ポリペプチドをコードする。
【0080】
更なる局面では、本発明は、TRCP1、TRCP2又はそのバリアントをコードする組換え核酸を含むホスト細胞を提供するものである。いくつかの実施態様では、ホスト細胞を、例えば、あるタンパク質又はタンパク質複合体の精製、作製又は研究のために用いてよい。選択的には、ホスト細胞を、例えば、下に解説したものなどの検定プロトコルで化合物を検査するために用いてよい。
【0081】
いくつかの実施態様では、本発明の複合体のポリペプチドの組換え発現を、別々に行ってもよく、またそれらから複合体を形成させてもよい。別の実施態様では、本発明の複合体のこのようなポリペプチドの組換え発現を同じ細胞中で行わせ、そこから複合体を形成させてもよい。
【0082】
組換え発現に適したホスト細胞には、E. coli.、クロストリジウム種、シュードモナス種などの細菌、酵母、植物細胞、昆虫細胞(例えば Sf9) 及び哺乳動物細胞、例えば線維芽細胞、リンパ球、U937細胞(又は他の前単球系)及びチャイニーズ・ハムスター卵巣細胞(CHO細胞)、がある。
【0083】
ホスト細胞発現を目的とした場合、当該の組換え核酸を、発現コンストラクト中で一つ以上の調節配列に作動上連結させてもよい。調節ヌクレオチド配列は一般に、発現に用いるホスト細胞に適したものであろう。多種のホスト細胞用に、多種の適した発現ベクタ及び適した調節配列が当業で公知である。典型的には、前記の一つ以上の調節ヌクレオチド配列には、限定はしないが、プロモータ配列、リーダもしくはシグナル配列、リボゾーム結合部位、転写開始及び終了配列、翻訳開始及び終了配列、並びにエンハンサ又はアクチベータ配列、が含まれよう。当業で公知の構成的又は誘導性プロモータは、本発明の考察するところである。当該のプロモータは、天然発生型プロモータでも、又は、二種以上のプロモータの配列を組み合わせたハイブリッド・プロモータでもよい。発現コンストラクトは、細胞中で、プラスミドなどのエピソーム上にあってもよく、あるいは、発現コンストラクトを染色体中に挿入してもよい。ある好適な実施態様では、発現ベクタは、形質転換したホスト細胞の選抜が可能なように、選択マーカ遺伝子を含有する。選択マーカ遺伝子は当業で公知であり、用いるホスト細胞に応じて様々であろう。
【0084】
さらに発現ベクタは、本発明の組換えポリペプチドが前記融合ドメインを持つ融合ポリペプチドとして発現するように、(典型的には発現ベクタにより提供される)融合ドメインを含有してもよい。融合ドメインの主な利点は、それらが、前記融合ポリペプチドの特定及び/又は精製に役立ち、また、タンパク質発現レベル及び全体的収率を高める点である。
【0085】
VII. 抗体及びその用途
本発明の別の局面は、TNF-α、TNFR、NAK、RasGAP3、TRCP1、及びTRCP2、TRADD、TRAF2、及びTRAP2から成る群より選択されるポリペプチド、又は、 例えばTRAF1、RIP、RAIDD、又はFADDなど、TNF-αと複合体を形成することが公知のタンパク質、のエピトープと特異的に免疫反応性の単離された抗体に関し、この場合、前記抗体は、本発明の複合体の形成を妨害する。NAKポリペプチド由来の免疫原を用いることにより(例えばそのcDNA配列に基づき)、抗タンパク質/抗ペプチド抗血清又はモノクローナル抗体を、標準的プロトコルにより、作製することができる(例えば Harlow and Lane
(Cold Spring Harbor Press: 1988)編集のAntibodies: A Laboratory Manual を参照されたい)。
【0086】
ある実施態様では、本発明の抗体は、TNF-αとNAKとの間の相互作用の形成を妨害するものである。別の実施態様では、本発明の抗体は、TNF-αとRasGAP3との間の相互作用の形成を妨害するものである。別の実施態様では、本発明の抗体は、TNF-αとTRCP1との間の相互作用の形成を妨害するものである。別の実施態様では、本発明の抗体は、TNF-αとTRCP2との間の相互作用の形成を妨害するものである。
【0087】
ある実施態様では、本発明の抗体はモノクローナル抗体である。別の実施態様では、本発明の抗体はFabフラグメントである。ある実施態様では、本発明の抗体は、検出可能な標識で標識されている。
【0088】
マウス、ハムスター又はウサギなどの哺乳動物は、免疫原性型の本ペプチド(例えばNAKポリペプチド 、又は、抗体応答を惹起できる抗原性フラグメント、あるいは、上に解説した通りの融合タンパク質)で免疫することができる。タンパク質又はペプチドに免疫原性をもたらす技術には、担体への結合や、又は、当業で公知の他の技術がある。あるポリペプチドの免疫原性部分を、アジュバントの存在下で投与することができる。免疫化の進行は、血漿又は血清中の抗体価を検出することにより、観察することができる。標準的なELISA又は他の免疫検定法を、抗原としての免疫原と一緒に用いて、抗体のレベルを評価することができる。ある好適な実施態様では、本抗体は、配列番号14、16、18、及び20番に記載されたポリペプチドの抗原性決定基に対して免疫特異性である。
【0089】
本発明は、デス・ドメイン(DD)に特異的であり、かつ好ましくは該DDドメインがTNFRポリペプチドの一部であるような抗体を考察する。より具体的な実施態様では、該DDドメインは、配列番号3番に記載されたTNFR1のカルボキシル末端に向かってほぼ80個のアミノ酸長の領域である。
【0090】
本ポリペプチドの抗原性製剤による動物の免疫処置に続き、抗血清を得、そして必要に応じ、ポリクローナル抗体をこの血清から単離することができる。モノクローナル抗体を作製するには、抗体産生細胞(リンパ球)を、免疫後の動物から採集し、標準的な体細胞融合法により、骨髄腫細胞などの不死化細胞と融合させて、ハイブリドーマ細胞を生じさせることができる。このような技術は当業で公知であり、その中には、例えば、ハイブリドーマ技術(最初にKohler and
Milstein (1975) Nature, 256: 495-497により開発されたもの)、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術 (Kozbar et al.,
(1983) Immunology Today, 4: 72)、及び、ヒトモノクローナル抗体を産生させるEBV-ハイブリドーマ技術 (Cole et al., (1985) Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R.
Liss, Inc. pp. 77-96)、がある。ハイブリドーマ細胞を、本発明のポリペプチドに対して特異的に反応性の抗体を産生しているかについて免疫化学的にスクリーニングし、モノクローナル抗体を、このようなハイブリドーマ細胞を含む培養物から単離することができる。ある実施態様では、抗NAK抗体は、配列番号14番を有する核酸にコードされたタンパク質に対して特異的に反応する。
【0091】
ここで用いられる抗体という用語は、本ポリペプチドの一つに対しても特異的に免疫反応性の、そのフラグメントも包含するものと、意図されている。 抗体を、常法を用いてフラグメント化し、該フラグメントを、全抗体に関して上述したのと同じ態様で、実用性についてスクリーニングすることができる。例えば、F(ab)2フラグメントは抗体をペプシンで処理すると生じさせることができる。その結果得られるF(ab)2
フラグメントを処理してジスルフィド架橋を減らすことで、Fabフラグメントを作製できる。
【0092】
本発明の抗体は、さらに、本抗体の少なくとも1つのCDR領域によりもたらされた、本ポリペプチドの一つに対する親和性を有するような、二重特異的、一本鎖及びキメラ及びヒト化分子も包含するものと、意図されている。好適な実施態様では、本抗体は、さらに、それに結合された、検出可能な標識(例えば、該標識は放射性同位体、蛍光化合物、酵素又は酵素コファクタであってよい)を含む。
【0093】
VIII. 薬物スクリーニング検定
いくつかの実施態様では、本発明は、本発明のタンパク質複合体の安定性を阻害又は増強する検査化合物を特定するための検定法を提供するものである。ある局面では、本検定法は、本発明のタンパク質複合体中の一つのポリペプチドと別のポリペプチドとの相互作用を阻害又は増強する検査化合物を検出するものである。
【0094】
いくつかの実施態様では、本検定法は、例えば他の細胞内成分へ結合する、カスパーゼ、リパーゼ、キナーゼ、及びホスファターゼなどの酵素を活性化する、NF-κB転写活性を活性化するなど、本タンパク質複合体のシグナル伝達活性を調節する検査化合物を検出するものである。
【0095】
多種の検定フォーマットが充分であり、そして本開示を鑑みれば、ここで明示はされていないものも、当業者の想到されるところであろう。検定フォーマットは、タンパク質複合体の組成、酵素活性などの条件に近似し、また数多くの様々な形で作製してよく、その中には、例えば精製済みタンパク質又は細胞ライセートなど無細胞系ベースの検定法や、インタクト細胞を用いる細胞ベースの検定法がある。簡単な結合検定法を用いて、複合体中のあるポリペプチドと別のポリペプチドとの間の相互作用を阻害又は増強する化合物を検出したり、複合体の基質への結合を阻害又は増強する化合物を検出することができる。検査対象の化合物は、例えば、細菌、酵母又は他の生物(天然産物)に産生させることも、化学的に作製(例えばペプチド・ミメティックを含む低分子)することも、あるいは組換えにより作製することもできる。
【0096】
数多くの実施態様では、候補化合物とのインキュベーション後に細胞を操作し、本発明のタンパク質複合体の活性について、検定する。いくつかの実施態様では、タンパク質複合体の活性に関するバイオアッセイには、アポトーシス検定法(例えばカスパーゼ及びTUNEL検定法)及びNF-κB活性検定法(例えばNF-κBルシフェラーゼ又はGFPレポータ遺伝子検定法)、が含まれよう。
【0097】
アポトーシス検定法の例(例えばカスパーゼ及びTUNEL検定法)は、Chaisson et al.,
(2002) J. Clin. Invest. 110:193-202.に解説された通りに行ってもよい。細胞を候補化合物と一緒にインキュベートするか、又は、未処理のままとする。次に細胞ライセートを蛍光発生性カスパーゼ-3基質であるDEVD-AMC (米国カリフォルニア州サンディエゴ、アレキシス社)と一緒に1時間、インキュベートする。蛍光を、360nmの励起波長及び460nmの放出波長で、蛍光プレート・リーダ(米国コネチカット州メリデン、パッカード・インスツルメント社)を用いて定量する。TUNEL検定法の場合、アポトーシス性の核を、PODインシツー細胞死検出キット(ロシュ・ダイアグノスティック社)を用い、メーカの指示に従って検出する。陽性の核を各スライド毎に30視野(×400)で計数した。
【0098】
NF-κBルシフェラーゼ又はGFPレポータ遺伝子検定の例は、Shona et al.,
(2002) FEBS Letters. 515: 119-126に解説された通りに行ってよい。簡単に説明すると、細胞にNF-κBルシフェラーゼ・レポータ遺伝子をトランスフェクトする。その後トランスフェクトした細胞を候補化合物と一緒にインキュベートする。次に、NF-κBで刺激されたルシフェラーゼ活性を、該化合物で処理された細胞又は該化合物のない細胞で測定する。代替的には、細胞にNF-κB-GFPレポータ遺伝子(ストラータジーン社)をトランスフェクトすることができる。次に、このトランスフェクトされた細胞を候補化合物と一緒にインキュベートする。その後、NF-κBで刺激された遺伝子活性を、蛍光/可視光顕微鏡装置又はFACS分析でGFPの発現を測定することにより、観察する。
【0099】
いくつかの実施態様では、本発明は、本複合体のポリペプチドと、本複合体の一種以上の相互作用性ポリペプチドとを含む再構成されたタンパク質製剤を提供するものである。本発明の検定法には、標識されたin vitroタンパク質対タンパク質間結合検定法、タンパク質結合を調べるイムノアッセイ等がある。さらに精製済みのタンパク質は、三次元結晶構造の判定にも用いてよく、さらにこれを分子間相互作用のモデリングに用いることができる。
【0100】
本検定法のいくつかの実施態様では、本複合体の成分ポリペプチドは、本検定を支持するために選択された細胞にとって内因性であってもよい。代替的には、該成分ポリペプチドのいくつか又は全部は、外因性源を由来とすることができる。例えば、融合タンパク質を、細胞内に、(例えば発現ベクタの使用を通じて)組換え技術や、当該融合タンパク質自体又は融合タンパク質をコードするmRNAをマイクロ注射することにより、導入することができる。
【0101】
検定法の更なる実施態様では、本検定を支援するために細胞培養技術の利点を活かし、複合体を全細胞中で産生させることができる。例えば、下に解説するように、複合体を哺乳動物及び酵母細胞を含む真核細胞培養系で構成することができる。インタクト細胞で本検定を行うことの利点には、細胞内に化合物を進入させることができることを含め、化合物の治療上の用途に必要であろう環境により近い環境で機能的な化合物を検出できる点がある。さらに、下に紹介する例など、本検定法のin vivo実施態様のいくつかは、候補化合物の高スループットの分析に適合するものである。
【0102】
本検定法のいくつかのin vitro実施態様では、再構成された複合体は、少なくとも半精製済みのタンパク質の再構成された混合物を含む。半精製済みの、とは、再構成された混合物中に用いられたタンパク質が、他の細胞内タンパク質から既に分離されていることを意味する。例えば、細胞ライセートとは対照的に、複合体形成に関与するタンパク質は、混合物中に、当該混合物中の他のすべてのタンパク質に対して少なくとも50%の純度で存在し、そしてより好ましくは90乃至95%の純度で存在する。本方法のいくつかの実施態様では、再構成されたタンパク質混合物は、この再構成された混合物が、複合体の集合及び/又は解離を測定する能力に干渉又は変化させかねない他のタンパク質(例えば細胞由来のもの)を実質的に欠くように、高度に精製済みのタンパク質を混合することで得られる。
【0103】
いくつかの実施態様では、候補化合物の存在下及び非存在下での検定は、反応体を含有するために適したいずれかの容器内で行うことができる。例には、微量定量プレート、試験管、及びマイクロ遠心管、がある。
【0104】
いくつかの実施態様では、検査化合物を、本発明の複合体の集合、安定性又は機能に干渉する能力に基づいて検出するような薬物スクリーニング検定法を作製することができる。ある例示的な結合検定法では、対象の化合物を、TNF-αポリペプチドと、TNFRポリペプチドと、NAK、RasGAP3、TRCP1、及びTRCP2から成る群より選択される少なくとも1つのポリペプチドとを含む混合物に接触させる。複合体の検出及び定量は、2種の成分ポリペプチド間の相互作用を阻害(又は増強)する上での化合物の効験を判定する手段となる。当該化合物の効験は、多種の濃度の当該検査化合物を用いて得られたデータから用量応答曲線を作製することにより、評価することができる。さらに、コントロール検定を行って、比較のための基線を提供することもできる。このコントロール検定においては、複合体の形成は、検査化合物の非存在下で定量される。
【0105】
いくつかの実施態様では、複合体中の2種のポリペプチド間、又は、当該複合体と基質ポリペプチドとの間、の結合を、その多くが上に実質的に解説されている多種の技術により、検出してもよい。例えば、複合体の形成における調節は、例えば検出可能に標識されたタンパク質(例えば放射性標識された、蛍光標識された、又は酵素標識された)を用いて、イムノアッセイ、又はクロマトグラフィ検出法により、定量することができる。バイアコア・インターナショナルAB社(スウェーデン、ウプサラ)から市販のものなど、表面プラズモン共鳴系を用いて、タンパク質対タンパク質間の相互作用を検出してもよい。
【0106】
いくつかの実施態様では、複合体のポリペプチド中の一つを固定化することで、このポリペプチドのうちの一つで複合体を形成していない形から当該複合体を容易に分離できるようにすると共に、当該検定の自動化に対応することができる。ある例示的な実施態様では、当該タンパク質を不溶性のマトリックスに結合できるようにするドメインを加えた融合タンパク質を提供することができる。例えば、GST-NAK融合タンパク質をグルタチオン・セファロース・ビーズ(ミズーリ州セントルイス、シグマ・ケミカルズ社)又はグルタチオン誘導体化微量定量プレートに吸着させた後、これらを潜在的相互作用性タンパク質(例えば35Sで標識されたTNFRポリペプチド)に配合し、当該検査化合物を、複合体形成を誘導する条件下でインキュベートすることができる。インキュベート後、ビーズを洗浄して、結合しなかった相互作用性タンパク質を取り除き、マトリックス・ビーズに結合した放射性標識を直接判定する(例えばビーズをシンチレーション剤中に配置するなど)か、あるいは、例えば微量定量プレートを用いた場合など、複合体を解離させた後で上清中で判定する。代替的には、結合しなかったタンパク質を洗い落とした後で、複合体をマトリックスから解離させ、SDS-PAGEゲルで分離し、マトリックスに結合した画分中に見られる相互作用性ポリペプチドのレベルを、このゲルから、標準的な電気泳動技術を用いて定量することができる。
【0107】
更なる実施態様では、複合体に結合する化合物を、固定化複合体を用いて特定してもよい。例示的な実施態様では、複合体が不溶性にマトリックスに結合できるようにするドメインを加えた、複合体の融合タンパク質を提供することができる。例えば、GST-TNF-α 融合タンパク質の成分を含む複合体を、グルタチオン・セファロース・ビーズ(ミズーリ州セントルイス、シグマ・ケミカル社)又はグルタチオン誘導体化微量定量プレートに吸着させた後、これらに潜在的な標識済み結合性化合物に配合し、結合を誘導する条件下でインキュベートすることができる。インキュベート後、ビーズを洗浄して結合しなかった化合物を取り除き、マトリックス・ビーズに結合した標識を直接判定する(例えばビーズをシンチレーション剤中に配置するなど)か、あるいは、結合した化合物を解離させた後に上清中で判定する。
【0108】
さらに別の実施態様では、二種ハイブリッド検定(ここでは相互作用トラップ検定とも言及)を、複合体中のいずれか二種のポリペプチドの相互作用を検出し(さらに米国特許第5,283,317号;Zervos et al.,
(1993) Cell 72:223-232; Madura et al., (1993) J. Biol. Chem. 268:12046-12054;
Bartel et al., (1993)
Biotechniques 14:920-924; and Iwabuchi et al,. (1993) Oncogene
8:1693-1696を参照されたい)、前記タンパク質間の相互の結合を阻害又は増強する検査化合物を検出するために、用いることができる。この検定法には、酵母細胞(好適)、哺乳動物細胞又は細菌細胞種などのホスト細胞を提供するステップが含まれる。当該ホスト細胞は、ベイトタンパク質に用いられた転写アクチベータのDNA結合ドメインに対する結合部位を有するレポータ遺伝子を含有するため、該レポータ遺伝子は、遺伝子が転写上活性化したときに検出可能な遺伝子産物を発現する。ホスト細胞内で発現可能であると共に、「ベイト」融合タンパク質をコードする第一のキメラ遺伝子を提供する。ホスト細胞内で発現可能であると共に、「フィッシュ」融合タンパク質をコードする第二のキメラ遺伝子も提供する。ある実施態様では、第一及び第二のキメラ遺伝子の両方を、プラスミドの形でホスト細胞内に導入する。しかしながら、好ましくは、第一のキメラ遺伝子がホスト細胞の染色体内に存在し、第二のキメラ遺伝子が、プラスミドの一部として、ホスト細胞内に導入されるとよい。
【0109】
好ましくは、第一のハイブリッドタンパク質のDNA結合ドメインと、第二のハイブリッドタンパク質の転写活性化ドメインとが、分離可能なDNA結合ドメイン及び転写活性化ドメインを有する転写アクチベータを由来とするとよい。例えば、これらの分離したDNA結合ドメイン及び転写活性化ドメインは、酵母GAL4タンパク質に見られることが公知であり、また酵母GCN4 及びADR1タンパク質にも見られることも公知である。転写に関与する数多くの他のタンパク質も、分離可能な結合ドメイン及び転写活性化ドメインを有するため、本発明で有用であり、その中には例えばLexA及びVP16タンパク質がある。ACE1、lcI、lacリプレッサ、jun又はfosのドメインなど、他の(実質的に)転写不活性なDNA結合ドメインが本コンストラクトで有用と思われる。別の実施態様では、DNA結合ドメイン及び転写活性化ドメインは異なるタンパク質由来であってよい。LexA DNA結合ドメインの使用はいくつかの利点を提供する。例えば、酵母においては、LexA成分は、何の活性化機能も含有せず、また酵母遺伝子の転写に対して何の既知の効果も有さない。加えて、LexAを使用すると、相互作用レベルの検定の感受性をコントロールできるようになる(例えば、 BrentらのPCT公報 WO94/10300を参照されたい)。
【0110】
いくつかの実施態様では、本発明は、複合体の安定性を阻害又は増強する検査化合物を特定するための二種ハイブリッド検定法を提供する。実例を挙げると、TNFRポリペプチドを含む第一の融合タンパク質(即ち「ベイト」タンパク質)と、NAK、RasGAP3、TRCP1、及びTRCP2から成る群より選択されるポリペプチドを含む第二の融合タンパク質(即ち「フィッシュ」タンパク質)とをホスト細胞内に導入する。前記ベイト及びフィッシュ融合タンパク質が、レポータ遺伝子を活性化させるために充分な量発現するような条件下に細胞を置く。複合体のうちのこれら2つの融合ポリペプチドが相互作用すると、レポータ遺伝子の発現により、検出可能なシグナルが生ずる。従って、検査化合物の存在下及び検査化合物の非存在下でこれら二者の融合タンパク質の相互作用レベルを、各場合のレポータ遺伝子の発現レベルを検出することにより、評価することができる。多種のレポータ遺伝子を本発明の方法に従って用いてよく、その中には、例えば、酵素シグナル、蛍光シグナル、リン光性シグナル及び薬物耐性から成る群より選択される検出可能なシグナルなどを生ずるレポータ遺伝子がある。
【0111】
化合物及び天然抽出物のライブラリを検査する多くの薬物スクリーニング・プログラムでは、ある一定の期間で調査される化合物数を最大にするためには、高スループットの検定が好ましい。精製済み又は半精製済みのタンパク質又はライセートなどで展開してもよい、無細胞系で行われる本発明の検定法がしばしば、「一次」スクリーニングとして好適であるが、それはなぜなら、それらは、検査化合物により媒介された標的分子の変化を急速に発展させ、また比較的容易に検出できるように作製できるからである。さらに、検査化合物の細胞毒性の影響及び/又は生物学的利用能を、in vitro系では概ね無視することができ、当該検定では、その代わりに、他のタンパク質との結合親和性の変化や、又は、標的分子の酵素上の性質での変化として現れるような、標的分子に対する薬物の作用に主に焦点を当てる。
【0112】
いくつかの実施態様では、タンパク質複合体の活性には、限定はしないが、タンパク質複合体形成が含まれ、該形成は、免疫沈降法と同時免疫沈降したタンパク質の分析、又は、同時に精製されたタンパク質の親和性精製及び分析により、評価できよう。蛍光共鳴エネルギ移動(FRET)ベースの検定法を用いても、複合体形成を判定できよう。適した発光及び励起スペクトルが相互に近くに来ている蛍光分子は、FRETを示すことができる。蛍光分子は、当該分子の一方(ドナー分子)の発光スペクトルが、他方(アクセプタ分子)の励起スペクトルと重なるように選択する。該ドナー分子は、ドナーの励起スペクトル内の適した輝度の光線により励起される。こうしてドナーは、吸収したエネルギを蛍光として放出する。それが生ずる蛍光エネルギは、アクセプタ分子により消される。FRETは、ドナーからの蛍光シグナルの輝度の減少、その励起状態の寿命の減少、及び/又は、アクセプタに特徴的なより長い波長(低エネルギ)での蛍光の再発光として現れる。蛍光タンパク質が物理的に離れると、FRET効果は減衰又は消失する(米国特許第5,981,200号)。
【0113】
例えばシアン蛍光タンパク質は、ほぼ425 - 450 nm 波長の光で励起され、450 - 500 nmの範囲の光を放出する。黄色蛍光タンパク質は、ほぼ500 - 525 nmの光で励起され、525 - 500 nmの光を放出する。これら二者のタンパク質が溶液中にあると、このシアン及び黄色の蛍光を別々に観察できよう。しかしながら、これら二者のタンパク質を互いに近づけると、その蛍光特性はFRETにより変化するであろう。CFPの放出する青みがかった光は、YFPにより吸収され、黄色の光として再放出されることとなる。このことは、これらのタンパク質を450nmの波長の光で刺激すると、シアンの発光は大きく減少し、この波長では通常刺激されない黄色の光は、大きく増加することを意味する。FRETは、典型的には、ドナーの励起範囲の光による刺激に応答した発光のスペクトルを測定し、ドナーの発光と、アクセプタの発光との間の比を計算することにより、観察されている。ドナー:アクセプタ発光比が高い場合、FRETは発生しておらず、これら二者の蛍光タンパク質は近い位置にない。ドナー:アクセプタ発光比が低い場合、FRETが発生しており、これら二者の発光タンパク質は近い位置にある。この態様で、第一及び第二のポリペプチド間の相互作用を測定できよう。
【0114】
FRETの発生により、さらに、ドナー蛍光成分の蛍光寿命が減少する。蛍光寿命でのこのような変化は、蛍光寿命撮像技術(FLIM)と呼ばれる技術を用いて測定することができる (Verveer et al.,
(2000) Science 290: 1567-1570; Squire et al., (1999) J. Microsc. 193:
36; Verveer et al., (2000) Biophys. J. 78: 2127)。FLIMデータを分析する包括的分析技術が開発されている。これらのアルゴリズムは、ドナー蛍光成分は、それぞれが異なる蛍光寿命で限られた数の状態でしか存在しないという理解を用いている。各状態の定量的マップはピクセル毎に作製することができる。
【0115】
FRETベースの検定法を行うには、複合体のうちのあるポリペプチド(例えばTNFR)と、対象の相互作用性タンパク質(例えばNAK)の両者を蛍光標識する。適した蛍光標識は、本明細書を鑑みつつ、当業で公知である。例を下に紹介するが、具体的に論じてはいない適した標識も、当業者に入手可能である。蛍光標識付けは、クラゲ、サンゴ及び他の腔腸動物から単離された蛍光タンパク質などの蛍光タンパク質を持つ融合タンパク質としてポリペプチドを発現させることにより、達成できよう。蛍光タンパク質の例には、エクオリア-ヴィクトリア(原語:Aequoria victoria)の緑色蛍光タンパク質(GFP)の数多くのバリアントがある。バリアントは、より明るくても、暗くても、あるいは異なる励起及び/又は発光スペクトルを有していてもよい。いくつかのバリアントは、もはや緑色には見えず、青色、シアン、黄色又は赤色(それぞれBFP、CFP、YFP及びRFPと呼ばれる)に見えるように変更されている。蛍光タンパク質は、例えばペプチド結合(例えば融合タンパク質としての発現)、化学的架橋及びビオチン-ストレプトアビジン結合などを含め、多種の共有結合的及び非共有結合的結合を通じて、ポリペプチドに安定に付着させられよう。蛍光タンパク質の例については、米国特許第5,625,048号;第5,777,079号;第6,066,476号;第6,124,128号;Prasher et al. (1992)
Gene, 111:229-233; Heim et al. (1994) Proc. Natl. Acad. Sci., USA,
91:12501-04; Ward et al. (1982)
Photochem. Photobiol., 35:803-808 ; Levine et al. (1982) Comp. Biochem.
Physiol., 72B:77-85; Tersikh et al. (2000) Science 290: 1585-88を参照されたい。
【0116】
FRETベースの検定法は細胞ベースの検定法で用いても、無細胞検定で用いてもよい。FRETベースの検定法は、蛍光活性化セル・ソーティング法や、微量定量アレイの蛍光スキャンニングを含む高スループットのスクリーニング法に適合している。
【0117】
一般的には、スクリーニング検定法が結合検定法(タンパク質対タンパク質間結合、化合物対タンパク質間結合等に関係なく)である場合、分子の一つ以上を標識に接合してよく、この標識に、直接的又は間接的に検出可能なシグナルを提供させることができる。多様な標識には、放射性同位体、蛍光体、化学発光体、酵素、特異的結合分子、粒子、例えば磁気粒子等がある。特異的結合分子には、ビオチン及びストレプトアビジン、ジゴキシン及びアンチジゴキシン等の対がある。特異的結合メンバの場合、相補的なメンバには、通常、公知の手法に従って、検出に役立つ分子で標識することになるであろう。
【0118】
多種の他の試薬を当該のスクリーニング検定に含めてよい。これらには、塩類、アルブミン等の中性タンパク質、洗剤等、最適なタンパク質対タンパク質間結合を容易にし、及び/又は、非特異的もしくはバックグラウンドの相互作用を減らすために用いられている試薬がある。プロテアーゼ阻害剤、ヌクレアーゼ阻害剤、抗微生物性化合物等、当該検定の効率を高める試薬を用いてよい。必要な結合を行わせる順序で、成分の混合物を加える。インキュベーションは、典型的には4℃乃至40℃のいずれかの適した温度で行われる。インキュベーション時間は、最適な活性が得られるように選択されるが、高速の高スループットスクリーニングが容易にできるように至適化してもよい。
【0119】
いくつかの実施態様では、本発明は、TRCP1又はTRCP2など、本複合体のうちの単一のポリペプチドを狙った複合体独立的検定法を提供するものである。このような検定法は、炎症又はアポトーシスの候補調節物質である検査化合物を特定するステップを含む。
【0120】
ある例示的な実施態様では、TRCP1又はTRCP2に結合する化合物を、固定化TRCP1又はTRCP2ポリペプチドを用いて特定してもよい。ある実施態様では、タンパク質を不溶性のマトリックスに結合可能にするドメインを加えたTRCP1 又はTRCP2の融合タンパク質を提供することができる。例えば、GSTタンパク質に融合させたTRCP1又はTRCP2を、グルタチオン・セファロース・ビーズ(ミズーリ州セントルイス、シグマ・ケミカル社)又はグルタチオン誘導体化微量定量プレートに吸着させ、その後これらを潜在的標識済み結合性化合物と配合し、結合を誘導する条件下でインキュベートすることができる。インキュベート後、ビーズを洗浄して未結合の化合物を取り除き、マトリックスビーズに結合した標識を、直接判定するか、又は、結合化合物を解離させた後に上清中で判定する。
【0121】
いくつかの実施態様では、標識に、直接又は間接的に検出可能なシグナルを提供させることができる。多種の標識には、放射性同位体、蛍光体、化学発光体、酵素、特異的結合性分子、粒子、例えば磁気粒子等がある。特異的結合性分子には、ビオチン及びストレプトアビジン、ジゴキシン及びアンチジゴキシンなどの対がある。特異的結合性メンバの場合、相補的なメンバには、通常、公知の手法に従って、検出に役立つ分子で標識することになるであろう。いくつかの実施態様では、このような方法は、当該混合物をin vitroで形成するステップを含む。いくつかの実施態様では、このような方法は、混合物をin vivoで形成することによる細胞ベースの検定を含む。いくつかの実施態様では、本方法はTRCP1 もしくはTRCP2ポリペプチド又はそのバリアントを発現する細胞を、検査化合物に接触させるステップを含む。
【0122】
いくつかの実施態様では、検定は、例えば精製済みのタンパク質又は細胞ライセートなど無細胞系をベースにしたり、インタクト細胞を用いた細胞ベースの検定である。簡単な結合検定法を用いて、TRCP1又はTRCP2ポリペプチドと相互作用する化合物を検出することができる。検査対象の化合物は、例えば、細菌、酵母又は他の生物(天然産物)に産生させることも、化学的に作製(例えばペプチド・ミメティックを含む低分子)することも、あるいは組換えにより作製することもできる。
【0123】
選択的には、これらの検定法から特定された検査化合物を、TNF-α関連疾患を治療するために用いてもよい。
【0124】
IX. 治療の方法
いくつかの実施態様では、本発明は、本タンパク質複合体を用いてTNF-α関連疾患を治療する方法に関する。これらの方法は、哺乳動物、より具体的にはヒト、の治療的処置を特に狙いとしている。
【0125】
いくつかの局面では、TNF-α関連疾患を治療する方法は、TNF-α又は TNFRの、NAK、RasGAP3、TRCP1、及びTRCP2から成る群より選択されるポリペプチドとの相互作用を阻害する化合物を有効量、投与するステップを含む。
【0126】
好ましくは、このような方法は、ここに定義した通りの低分子、抗体、又はペプチドの投与を含む。
【0127】
いくつかの局面では、炎症性又はアポトーシス性成分を含むTNF-α関連疾患を治療する方法は、TRCP1を調節する治療用組成物を有効量、投与するステップを含む。
【0128】
いくつかの局面では、炎症性又はアポトーシス性成分を含むTNF-α関連疾患を治療する方法は、TRCP2を調節する治療用組成物を有効量、投与するステップを含む。
【0129】
本タンパク質複合体のポリペプチドをコードする核酸の使用、好ましくはNAK、RasGAP3、TRCP1、及びTRCP2ポリペプチドをコードする核酸の使用という点で、遺伝子治療も応用できる。
【0130】
ここで用いられる場合の用語「TNF-α関連疾患とは、TNF-α(及び好ましくはTNFRを通じて)により媒介されるあらゆる疾患を言う。この方法で治療してもよいTNF-α関連疾患の例には、炎症性又はアポトーシス性成分を有する疾患がある。TNF-αがアポトーシス細胞の死、細胞増殖、分化、炎症、腫瘍発生、ウィルス複製、ウィルス感染、細菌感染、寄生生物感染、免疫異常、自己免疫病理、移植片対宿主性病理に関与していることが知られている。TNF-α関連異常のいくつかの例には、癌、リウマチ性関節炎、クローン病、喘息、敗血症性ショック、過敏性腸疾患、出血性熱、及び、癌患者にしばしば見られる組織消耗性異常である悪液質、がある(例えばMacEwan DJ.,
(2002) Cellular Signaling, 14:477-492を参照されたい)。
【0131】
例示
以上、本発明を概略的に解説したところで、以下の実施例を参照されれば、より容易に理解されよう。以下の実施例は単に本発明の特定の局面及び実施例を描写する目的で含まれたのであり、本発明を限定することは意図していない。
【0132】
実施例1:
本実施例では、TNF-α受容体複合体中のタンパク質の、図1に示した通りのプロテオーム法を用いた特定を解説する。
【0133】
骨髄単球性白血病細胞(U937細胞)をFLAGタグ付きTNF-αと一緒に、又はなしでインキュベートした。次に細胞を溶解させ、その細胞ライセートを、セファロース・ビーズに結合させた抗FLAG抗体(M2)で免疫沈降させた。免疫沈降した複合体を洗浄した後、FLAGペプチドで溶離させた。溶離するタンパク質収量を増加させるために、該ビーズをさらに8 M 尿素で溶離させた。溶離したタンパク質を4-12% SDS-PAGEゲルで分離し、銀染色で明視化した。非処理細胞に比較して、TNF-α処理細胞でレベルの増加したタンパク質バンドをゲルから切り出した。次にこのゲル切片をトリプシンで処理し、その結果得られたトリプシン・ペプチドをマイクロキャピラリ・逆相カラム上で分離し、フィニガンLcQイオン・トラップ質量分析装置内に直接溶離させた。ペプチドを該イオン・トラップでさらにフラグメント化し、スペクトルを集めた。そのスペクトルの配列を、SEQUESTソフトウェアを用いてデータベース検索することにより、得た。例えばTNF-α、TNF-α受容体、TRADD、TRAF2、TRAP2、NAK、RasGAP3、TRCP1、及びTRCP2など、いくつかのタンパク質をこの方法でTNF-α受容体複合体中に特定した。TNF-α受容体は TRADD、TRAF2又はTRAP2などのタンパク質と結合することが公知であるが、TNF-α受容体とNAK、RasGAP3、TRCP1、又はTRCP2との結合については前に解説されていない。TNF-α受容体複合体中にTRADDが存在することを、抗TRADD抗体を用いたウェスタン・ブロット法により更に確認した。
【0134】
実施例2:
この実施例では、図22に示すようなTNFR1とNAK、TRAF2、又はTRADDとの時間依存的なリガンド誘導性結合を解説する。
【0135】
骨髄単球性白血病細胞(U937細胞)をFLAGタグ付きTNF-αと一緒に2、5、10、20、又は30分間インキュベートするか、又は未処理のままとした。細胞を0.5% Tritonで溶解させ、その細胞ライセートを、セファロース・ビーズに結合させた抗FLAG抗体(M2)で免疫沈降させた。免疫沈降した複合体を洗浄し、タンパク質試料緩衝液で溶離させた後、4-12% SDS-PAGEゲルで分離した。NAKがTNF-α受容体複合体中に存在することを、ウェスタン・ブロット法で検出した。同様に、細胞ライセートを抗TNFR1抗体で免疫沈降させた。次に、TNF-α受容体とNAK、TRAF2、又はTRADDとの結合を抗NAK、TRAF2、又はTRADD抗体を用いたウェスタン・ブロット法で検出した。
【0136】
引用による援用
ここで言及されたすべての公開文献及び特許は、それぞれ個々の公開文献又は特許が具体的かつ個別に、引用をもって援用されることを示したのと同じように、それらの全文を引用をもってここに援用されたものである。矛盾がある場合、ここでの定義を含め本出願を上位とする。
【0137】
均等物
以上、本発明の具体的な実施態様を論じてきたが、上記の明細書は例示的なものであり、限定的ではない。本発明の数多くの変更が、本明細書及び下記の請求の範囲を検討されれば、当業者には明白であろう。本発明の全範囲は、均等物の全範囲と併せた請求の範囲と、このような変更と併せた本明細書を参照することで、判断されねばならない。
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】図1は、TNF-αリガンドの添加により誘導されるTNF-α受容体複合体の形成を示す。A.TNF-α受容体複合体中のタンパク質を、SDS-PAGEゲルで分離し、銀染色で明視化する。 B.TNF-α受容体複合体中のタンパク質TRADDの存在を、ウェスタン・ブロット法で確認する。
【図2】図2は、腫瘍壊死因子α(TNF-α)のアミノ酸配列(配列番号1番)を示す。
【図3】図3は、TNF-αをコードするcDNA配列(配列番号2番)を示す。
【図4】図4は、TNF-α受容体1(TNFR1)のアミノ酸配列(配列番号3番)を示す。
【図5】図5は、TNFR1をコードするcDNA配列(配列番号4番)を示す。
【図6】図6は、TNF-α受容体2(TNFR2)のアミノ酸配列(配列番号5番)を示す。
【図7】図7は、TNFR2をコードするcDNA配列(配列番号6番)を示す。
【図8】図8は、TNF-α受容体複合体中で特定されるタンパク質であるTRADDのアミノ酸配列(配列番号7番)を示す。
【図9】図9は、TRADDをコードするcDNA配列(配列番号8番)を示す。
【図10】図10は、TNF-α受容体複合体中で特定されるタンパク質であるTRAF2のアミノ酸配列(配列番号9番)を示す。
【図11】図11は、TRAF2をコードするcDNA配列(配列番号10番)を示す。
【図12】図12は、TNF-α受容体複合体中で特定されるタンパク質であるTRAP2のアミノ酸配列(配列番号11番)を示す。
【図13】図13は、TRAP2をコードするcDNA配列(配列番号12番)を示す。
【図14】図14は、TNF-α受容体複合体中で特定されるタンパク質であるNAK(TBK又はT2Kとも言及される)のアミノ酸配列(配列番号13番)を示す。
【図15】図15は、NAK(TBK又はT2Kとも言及される)をコードするcDNA配列(配列番号14番)を示す。
【図16】図16は、TNF-α受容体複合体中で特定されるタンパク質であるRasGAP3のアミノ酸配列(配列番号15番)を示す。
【図17】図17は、RasGAP3をコードするcDNA配列(配列番号16番)を示す。
【図18】図18は、TNF-α受容体複合体中で特定されるタンパク質であるTRCP1(KIAA0143とも言及される)のアミノ酸配列(配列番号17番)を示す。
【図19】図19は、TRCP1(KIAA0143とも言及される)をコードするcDNA配列(配列番号18番)を示す。
【図20】図20は、TNF-α受容体複合体中で特定されるタンパク質であるTRCP2(FLJ20758と類似)のアミノ酸配列(配列番号19番)を示す。
【図21】図21は、TRCP2をコードするcDNA配列(配列番号20番)を示す。
【図22】図22は、NAK、TRAF2、及びTRADD のTNFR1上へのTNF-α依存的動員を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)ポリペプチド又はその機能的バリアントと;
(ii)TNF-α受容体(TNFR)ポリペプチド又はその機能的バリアントと;
(iii)NF-κB活性化キナーゼ(NAK)、RasGAP3、TRCP1、TRCP2 及びこれらの機能的バリアントから成る群より選択される少なくとも1つのポリペプチドと
を含む、単離された、精製された、又は組換えのタンパク質複合体。
【請求項2】
前記TNFRポリペプチドがTNFR1又はTNFR2ポリペプチドである、請求項1に記載の複合体。
【請求項3】
TNF-αポリペプチド、TNFRポリペプチド及びNAKポリペプチドを含む、請求項1に記載の複合体。
【請求項4】
TNF-αポリペプチド、TNFRポリペプチド及びRasGAP3ポリペプチドを含む、請求項1に記載の複合体。
【請求項5】
TNF-αポリペプチド、TNFRポリペプチド及びTRCP1ポリペプチドを含む、請求項1に記載の複合体。
【請求項6】
TNF-αポリペプチド、TNFRポリペプチド及びTRCP2ポリペプチドを含む、請求項1に記載の複合体。
【請求項7】
TNF-αポリペプチド、NAKポリペプチド及びTNFR1ポリペプチドを含む、請求項1に記載の複合体。
【請求項8】
TRADD、TRAF2、TRAP2及びこれらの機能的バリアントから成る群より選択される少なくとも1つのポリペプチドをさらに含む、請求項1乃至7のいずれか一つに記載の複合体。
【請求項9】
TNF-αポリペプチド、NAKポリペプチド、TNFR1ポリペプチド、TRAF2ポリペプチド及びTRADDポリペプチドを含む、請求項8に記載の複合体。
【請求項10】
TNF-αポリペプチド、TNFRポリペプチド、NAKポリペプチド、RasGAP3ポリペプチド、TRCP1ポリペプチド、TRCP2ポリペプチド、TRADDポリペプチド、TRAF2ポリペプチド、及びTRAP2ポリペプチドを含む、請求項8に記載の複合体。
【請求項11】
前記TNF-αが融合タンパク質である、請求項1に記載の複合体。
【請求項12】
前記TNFRが融合タンパク質である、請求項1に記載の複合体。
【請求項13】
前記融合タンパク質が、前記融合タンパク質の精製、単離、又は検出を容易にするドメインを含む、請求項11又は12に記載の複合体。
【請求項14】
前記融合タンパク質が:親和性タグ、放射性核種、酵素、及び蛍光体から成る群より選択されるドメインを含む、請求項11又は12に記載の複合体。
【請求項15】
前記ドメインが、ポリヒスチジン、FLAG、Glu-Glu、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ (GST)、チオレドキシン、プロテインA、プロテインG、及び免疫グロブリン重鎖定常領域から成る群より選択される、請求項13に記載の複合体。
【請求項16】
前記ドメインがFLAGである、請求項13に記載の複合体。
【請求項17】
(i)TNF-α受容体(TNFR)ポリペプチド又はその機能的バリアントと;
(ii)NF-κB活性化キナーゼ(NAK)、RasGAP3、TRCP1、TRCP2 及びこれらの機能的バリアントから成る群より選択される少なくとも1つのポリペプチドと
を含む、単離された、精製された、又は組換えのタンパク質複合体。
【請求項18】
TNFRポリペプチド及びNAKポリペプチドを含む、請求項17に記載の複合体。
【請求項19】
TNFRポリペプチド及びRasGAP3ポリペプチドを含む、請求項17に記載の複合体。
【請求項20】
TNFRポリペプチド及びTRCP1ポリペプチドを含む、請求項17に記載の複合体。
【請求項21】
TNFRポリペプチド及びTRCP2ポリペプチドを含む、請求項17に記載の複合体。
【請求項22】
前記TNFRポリペプチドがTNFR1ポリペプチド 又はTNFR2ポリペプチドである、請求項17に記載の複合体。
【請求項23】
TNF-α、TRADD、TRAF2、及びTRAP2から成る群より選択される少なくとも1つのポリペプチドをさらに含む、請求項17乃至22のいずれか一つに記載の複合体。
【請求項24】
TNF-αポリペプチド、TNFRポリペプチド、NAKポリペプチド、RasGAP3ポリペプチド、TRCP1ポリペプチド、TRCP2ポリペプチド、TRADDポリペプチド、TRAF2ポリペプチド、及びTRAP2ポリペプチドを含む、請求項23に記載の複合体。
【請求項25】
前記TNFRポリペプチドが融合タンパク質である、請求項17に記載の複合体。
【請求項26】
前記融合タンパク質が、前記融合タンパク質の精製、単離、又は検出を容易にするドメインを含む、請求項25に記載の複合体。
【請求項27】
前記融合タンパク質が:親和性タグ、放射性核種、酵素、及び蛍光体から成る群より選択されるドメインを含む、請求項25に記載の複合体。
【請求項28】
前記ドメインが、ポリヒスチジン、FLAG、Glu-Glu、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ (GST)、チオレドキシン、プロテインA、プロテインG、及び免疫グロブリン重鎖定常領域から成る群より選択される、請求項26に記載の複合体。
【請求項29】
前記複合体中の少なくとも1つのタンパク質が標識されている、請求項1及び17のいずれか一つに記載のタンパク質複合体。
【請求項30】
前記標識が検出可能な標識である、請求項29に記載のタンパク質複合体。
【請求項31】
前記標識が、ポリヒスチジン、FLAG、Glu-Glu、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ (GST)、チオレドキシン、プロテインA、プロテインG、及び免疫グロブリン重鎖定常領域から成る群より選択される、請求項29に記載のタンパク質複合体。
【請求項32】
2つ又は3つのポリペプチドを含む単離されたタンパク質複合体であって、前記タンパク質複合体が、
(i)TNF-αポリペプチドの一フラグメントと、TNFRポリペプチドと、NAK, RasGAP3,
TRCP1、及びTRCP2から成る群より選択されるポリペプチドとの複合体;
(ii)TNF-αポリペプチドの一フラグメントと、TNFRポリペプチドの一フラグメントと、NAK、RasGAP3、TRCP1、及びTRCP2から成る群より選択されるポリペプチドとの複合体;
(iii)TNF-αポリペプチドと、TNFRポリペプチドと、NAK、RasGAP3、TRCP1、及びTRCP2から成る群より選択されるポリペプチドの一フラグメントとの複合体;
(iv)TNF-αポリペプチドと、TNFRポリペプチドの一フラグメントと、NAK、RasGAP3、TRCP1、及びTRCP2から成る群より選択されるポリペプチドの一フラグメントとの複合体;
(v)TNF-αポリペプチドの一フラグメントと、TNFRポリペプチドと、NAK、RasGAP3、TRCP1、及びTRCP2から成る群より選択されるポリペプチドの一フラグメントとの複合体;
(vi)TNF-αポリペプチドの一フラグメントと、TNFRポリペプチドの一フラグメントと、NAK、RasGAP3、TRCP1、及びTRCP2から成る群より選択されるポリペプチドの一フラグメントとの複合体;
(vii)TNFRポリペプチドの一フラグメントと、 NAK、RasGAP3、TRCP1、及びTRCP2から成る群より選択されるポリペプチドとの複合体;
(viii)TNFRポリペプチドと、NAK、RasGAP3、TRCP1、及びTRCP2から成る群より選択されるポリペプチドの一フラグメントとの複合体;及び
(ix)TNFRポリペプチドの一フラグメントと、NAK、RasGAP3、TRCP1、及びTRCP2から成る群より選択されるポリペプチドの一フラグメントとの複合体、
から成る群より選択される、単離されたタンパク質複合体。
【請求項33】
第一の核酸、第二の核酸及び第三の核酸を含むホスト細胞であって、但し前記第一の核酸が、TNF-αポリペプチドをコードする組換え核酸を含み、前記第二の核酸が、TNFRポリペプチドをコードする組換え核酸を含み、そして前記第三の核酸が、 NAK、RasGAP3、TRCP1、及びTRCP2から成る群より選択されるポリペプチドをコードする組換え核酸を含む、ホスト細胞。
【請求項34】
前記第一の核酸が、TNF-αポリペプチドをコードする組換え核酸を含み、前記第二の核酸が、TNFR1ポリペプチドをコードする組換え核酸を含み、そして前記第三の核酸が、 NAKポリペプチドをコードする組換え核酸を含む、請求項33に記載のホスト細胞。
【請求項35】
第一の核酸及び第二の核酸を含むホスト細胞であって、前記第一の核酸が、TNFRをコードする組換え核酸を含み、そして前記第二の核酸が、NAK、RasGAP3、TRCP1、及びTRCP2から成る群より選択されるポリペプチドをコードする組換え核酸を含む、ホスト細胞。
【請求項36】
前記第一の核酸が、TNFR1ポリペプチドをコードする組換え核酸を含み、そして前記第二の核酸が、NAKポリペプチドをコードする組換え核酸を含む、請求項35に記載のホスト細胞。
【請求項37】
複合体の安定性を阻害又は増強する検査化合物を特定するための検定法であって、前記検定法が、
(a)(i)TNF-αと、
(ii)TNFRポリペプチドと、
(iii)NAK、RasGAP3、TRCP1、及びTRCP2から成る群より選択される少なくとも1つのポリペプチドと、
(iv)検査化合物と
を含む反応混合液を形成するステップと;
(b)複合体中のTNFα又はTNFRの存在を検出するステップと
を含み、
但し、検査化合物の存在下での複合体中のTNF-α又はTNFRの存在が、検査化合物の非存在下での複合体中のTNF-α又はTNFRの存在 に比較したときに変化していることは、前記検査化合物が前記複合体の安定性を増強又は阻害することを示す、
検定法。
【請求項38】
複合体の安定性を阻害又は増強する検査化合物を特定するための検定法であって、前記検定法が、
(a)(i)TNF-αポリペプチドと、
(ii)TNFRポリペプチドと、
(iii)NAK、RasGAP3、TRCP1、及びTRCP2から成る群より選択される少なくとも1つのポリペプチドと、
(iv)検査化合物と
を含む反応混合液を形成するステップと;
(b)TNFRと、NAK、RasGAP3、TRCP1、及びTRCP2から成る群より選択されるポリペプチドとの間の結合を検出するステップと
を含み、
但し、検査化合物の存在下でのTNFRと、NAK、RasGAP3、TRCP1、及びTRCP2から成る群より選択されるポリペプチドとの間の結合が、検査化合物の非存在下でのTNFRと、NAK、RasGAP3、TRCP1、及びTRCP2から成る群より選択されるポリペプチドとの間の結合に比較したときに変化していることは、前記検査化合物が前記複合体の安定性を増強又は阻害することを示す、
検定法。
【請求項39】
複合体の安定性を阻害又は増強する検査化合物を特定するための検定法であって、前記検定法が、
(a)(i)TNFRポリペプチドと、
(ii)NAK、RasGAP3、TRCP1、及びTRCP2から成る群より選択される少なくとも1つのポリペプチドと、
(iii)検査化合物と
を含む反応混合液を形成するステップと;
(b)TNFRと、NAK、RasGAP3、TRCP1、及びTRCP2から成る群より選択されるポリペプチドとの間の結合を検出するステップと
を含み、
但し、検査化合物の存在下でのTNFRと、NAK、RasGAP3、TRCP1、及びTRCP2から成る群より選択されるポリペプチドとの間の結合が、検査化合物の非存在下でのTNFRと、NAK、RasGAP3、TRCP1、及びTRCP2から成る群より選択されるポリペプチドとの間の結合に比較して変化していることは、前記検査化合物が前記複合体の安定性を増強又は阻害することを示す、検定法。
【請求項40】
複合体の活性を調節する検査化合物を特定する方法であって、
(a)(i)TNF-αポリペプチドと;
(ii)TNFRポリペプチドと;
(iii)NAK、RasGAP3、TRCP1、及びTRCP2から成る群より選択されるポリペプチドと
を含むタンパク質複合体を形成するステップと、
(b)前記タンパク質複合体を検査化合物に接触させるステップと、
(c)(i)前記タンパク質複合体のレベルの変化、
(ii)前記タンパク質複合体中のTNF-α又はTNFRポリペプチドのレベルの変化、
(iii)前記複合体のシグナル伝達酵素活性の変化、又は
(iv)TNF-α 又はTNFRポリペプチドと、NAK、RasGAP3、TRCP1、及びTRCP2から成る群より選択されるポリペプチドとの間の相互作用の変化、
から成る群より選択される一種以上の活性に及ぼされる前記検査化合物の効果を判定するステップと
を含む、方法。
【請求項41】
複合体の安定性を阻害又は増強する化合物を特定するためのスクリーニング検定法であって、
(i)TNFRポリペプチド部分を含む第一の融合タンパク質と、NAK、RasGAP3、TRCP1、及びTRCP2から成る群より選択されるポリペプチドの部分を含む第二の融合タンパク質とを含む二種ハイブリッド検定系を、前記二種ハイブリッド検定が、前記TNFRポリペプチドと、NAK、RasGAP3、TRCP1、及びTRCP2から成る群より選択されるポリペプチドとの間の相互作用に対して感受性があるような条件下で、提供するステップと;
(ii)検査化合物の存在下及び非存在下における、前記融合タンパク質間の相互作用のレベルを測定するステップと;
(iii)前記融合タンパク質間の相互作用のレベルを比較するステップと
を含み、
但し相互作用レベルの低下は、TNFRポリペプチドと、NAK、RasGAP3、TRCP1、及びTRCP2から成る群より選択されるポリペプチドとの間の相互作用を阻害するであろう化合物の指標である、
スクリーニング検定法。
【請求項42】
TNF-α、TNFR、NAK、RasGAP3、TRCP1、及びTRCP2から成る群より選択されるポリペプチドのエピトープに対して特異的に免疫反応性の単離された抗体又はそのフラグメントであって、前記抗体が、TNF-αと、NAK、RasGAP3、TRCP1、及びTRCP2から成る群より選択されるポリペプチドとの間の相互作用の形成を妨害する、
抗体又はそのフラグメント。
【請求項43】
TNF-α、TNFR、NAK、RasGAP3、TRCP1、及びTRCP2から成る群より選択されるポリペプチドのエピトープに対して特異的に免疫反応性の単離された抗体又はそのフラグメントであって、前記抗体が、TNFRと、NAK、RasGAP3、TRCP1、及びTRCP2から成る群より選択されるポリペプチドとの間の相互作用の形成を妨害する、
抗体又はそのフラグメント。
【請求項44】
少なくとも第一のタンパク質と第二のタンパク質とを含むタンパク質複合体を細胞内で調節する方法であって、前記第一のタンパク質がTNFRであり、そして前記第二のタンパク質が、NAK、RasGAP3、TRCP1、及びTRCP2から成る群より選択され、前記方法が、前記タンパク質複合体を調節することのできる化合物を前記細胞に投与するステップを含む、方法。
【請求項45】
前記タンパク質複合体がTNF-αをさらに含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
(i)NAK、RasGAP3、TRCP1、及びTRCP2から成る群より選択されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを細胞にトランスフェクトするステップと;
(ii)前記細胞をTNF-αポリペプチドに接触させるステップと;
(iii)それにより複合体を形成させるステップと
を含む、機能的複合体を作製する方法。
【請求項47】
TNFRポリペプチドをさらに含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
TNF-α又はTNFRと、NAK、RasGAP3、TRCP1、及びTRCP2から成る群より選択されるポリペプチドとの間の相互作用を阻害する化合物を有効量、投与することにより、TNF-α関連障害を治療する方法。
【請求項49】
前記化合物が、低分子、抗体、及びペプチドから成る群より選択される、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
炎症又はアポトーシスの候補モジュレータである検査化合物を特定する方法であって、
(i)TRCP1ポリペプチド又はそのバリアント・ポリペプチドと、検査化合物とを含む混合液を形成するステップと;
(ii)TRCP1ポリペプチド又はそのバリアントと、前記検査化合物との間の相互作用を測定するステップと
を含み、但し、TRCP1又はその機能的バリアントと相互作用する検査化合物が、炎症又はアポトーシスの候補モジュレータである、方法。
【請求項51】
ステップ(i)が、前記混合液をin vitroで形成するステップを含む、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
ステップ(i)が、TRCP1ポリペプチド又はそのバリアントを発現する細胞を検査化合物に接触させるステップを含む、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
炎症又はアポトーシスの候補モジュレータである検査化合物を特定する方法であって、
(i)TRCP2ポリペプチド又はそのバリアント・ポリペプチドと、検査化合物とを含む混合液を形成するステップと;
(ii)TRCP2ポリペプチド又はそのバリアントと、前記検査化合物との間の相互作用を測定するステップと
を含み、但し、TRCP2ポリペプチド又はその機能的バリアントと相互作用する検査化合物が、炎症又はアポトーシスの候補モジュレータである、方法。
【請求項54】
ステップ(i)が、前記混合液をin vitroで形成するステップを含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
ステップ(i)が、TRCP2ポリペプチド又はそのバリアントを発現する細胞を検査化合物に接触させるステップを含む、請求項53に記載の方法。
【請求項56】
TRCP1を調節する治療用組成物を有効量、投与することにより、炎症性又はアポトーシス性成分を含むTNF-α関連疾患を治療する方法。
【請求項57】
TRCP2を調節する治療用組成物を有効量、投与することにより、炎症性又はアポトーシス性成分を含むTNF-α関連疾患を治療する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公表番号】特表2006−509724(P2006−509724A)
【公表日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−526400(P2004−526400)
【出願日】平成15年8月1日(2003.8.1)
【国際出願番号】PCT/US2003/024340
【国際公開番号】WO2004/012673
【国際公開日】平成16年2月12日(2004.2.12)
【出願人】(591011502)ワイス (573)
【氏名又は名称原語表記】Wyeth
【Fターム(参考)】