説明

炎症及び疼痛の処置用の化合物

本発明は、2-Nハロ-4-メチルスルホニル-酪酸、例えば2-Nクロロ-4-メチルスルホニル-酪酸の化合物、又はその医薬として許容される塩、若しくはその溶媒和物に関する。更に、本発明は、それを必要とする対象に、2-Nハロ-4-メチルスルホニル-酪酸を投与することにより、炎症、又は炎症に関連する障害、ウイルス感染、疼痛、又は皮膚状態(skin condition)を処置する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2-Nハロ-4-メチルスルホニル-酪酸、例えば2-Nクロロ-4-メチルスルホニル-酪酸の新規化合物、及びその医薬として許容される塩に関する。また、本発明は、当該化合物を、細菌、ウイルス、真菌疾患;炎症又は炎症に関連する障害;疼痛;及び皮膚状態(skin condition)を処置するために使用する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
人体は、様々な感染源による多種多様な感染に晒されている。ウイルス感染には、一般的な風邪という形で、事実上誰もが毎年罹患する。風邪に関連する咳やくしゃみは単に厄介なだけであるが、他の一般的なウイルス感染は、より深刻な問題となる可能性がある。例えば、インフルエンザは、米国人の入院及び死亡の原因の代表例である。
【0003】
ストレプトコッカス等の細菌の感染は、多くの深刻な術後合併症を引き起こす。ストレプトコッカスの感染は、食中毒の主要な原因であって、毒素性ショック症候群(TSS)、肺炎、骨感染(骨髄炎)、授乳期間の母親の乳腺炎、心内膜炎(心臓の内側の感染)、及び菌血症(血液の感染)等の、生命を脅かす疾患の原因となる場合もある。スタフィロコッカス感染は健康な者に対しては、典型的には深刻な症状に発展しないが、高齢者、新生児、並びに糖尿病、癌、肺疾患、腎疾患、又はHIV/AIDS等の慢性疾患に罹患した者等、免疫系が弱っている者においては、殊更に危険である。
【0004】
免疫系が弱っている者は、真菌感染の危険がある。真菌の感染は、100万人以上の人々に、副鼻腔感染、水虫、及びイースト菌感染症を引き起こす。
【0005】
一般的な用語「疼痛」は、本明細書中で使用されるとき、全ての種類の疼痛、例えば、外傷に起因する外傷的疼痛、術後疼痛、炎症性の疼痛;癌、AIDS、関節炎、ヘルペス、片頭痛等の疾患に関連する疼痛;糖尿病性神経障害、灼熱痛、腕神経叢裂離、後頭神経痛、線維筋痛、痛風、及び他の種類の神経痛性、神経障害性、及び特発性の疼痛症候群;様々な重症度の疼痛、即ち軽度、中度、及び重度の疼痛;急性及び慢性の疼痛;並びに特定の器官の疼痛、例えば眼球及び角膜の疼痛、骨の疼痛、心臓の疼痛、皮膚/灼熱痛、内臓(腎臓、胆嚢等)、関節、歯及び筋肉の疼痛等を表す。
【0006】
結合組織は、絶え間無くストレス及び外傷に晒される。急性又は慢性の衝撃及び様々な変性疾患の自然な進行は、全て、関節領域、例えば首、背中、腕、臀部、踵、及び足等に、疼痛を伴う炎症を生じる。これらの苦痛は、一般的であり、しばしば消耗性である。
【0007】
現代の疼痛の治療として、オピオイド麻薬性鎮痛薬、例えばモルヒネ及びフェンタニル、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDS)、例えばアスピリン、イブプロフェン、及びシクロオキシゲナーゼ阻害剤、又はイオンチャンネルブロッカー、例えばリドカイン及びノバカイン等の使用が挙げられる。これらの治療のいずれも、例えば耐性、依存性、便秘、呼吸抑制及び鎮静(オピオイド)等を引き起こすという限界を有する。NSAIDSは、消化器に対する副作用を有し、そして出血時間を増大させるので、深刻な疼痛の処置においては有効ではない。
【0008】
炎症は、外傷による生組織の局所反応であって、様々な内在及び外在要因により引き起こされ得る。外在要因として、物理的、化学的、及び生物学的要素が挙げられる。内在要因として、炎症媒介物質、抗原、及び抗体が挙げられる。内在要因は、しばしば外因性ダメージの影響下で生じる。炎症反応は、しばしば細胞膜の構造及び浸透性の変化を伴う。組織及び器官のレベルでは、炎症は疼痛、腫脹、発赤、発熱、及び場合によっては機能の喪失として現れる。
【0009】
炎症は、様々な外在及び内在因子の影響を受ける。内在要因、即ち媒介物質、抗原及びオートゲン(autogen)等は、炎症反応の性質及び種類、特に損傷領域におけるその経過を規定する。組織ダメージが媒介物質の産生に限られている場合は、急性型の炎症が起こる。抗原、抗体、及び自己抗原(autoantigen)の相互作用を通じて、当該プロセスに免疫応答が関与している場合、長期炎症プロセスが起こる場合がある。様々な外在因子、例えば感染、損傷、放射線照射等も、生化学的応答を開始させる細胞膜の破壊により、分子レベルで炎症プロセスの経過に影響を及ぼす。
【0010】
アスピリン等の非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDS)は、炎症プロセスの特定のリンクをブロックすることが出来るが、これらの薬物は、ダメージを受けた細胞膜を安定化することは出来ないため、炎症プロセスに対する影響は限定的且つ不十分である。
【0011】
細菌性、ウイルス性、真菌性の疾患;炎症性、又は炎症関連性の障害;疼痛;皮膚状態を処置するための組成物及び方法について、需要が存在する。当該組成物は、経済的であって、製造が容易であるべきで、そして、当該方法は、効果的であって、顕著な副作用を有しないものであるべきである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、2-Nハロ-4-メチルスルホニル-酪酸(例えば2-Nクロロ-4-メチルスルホニル-酪酸、2-Nフルオロ-4-メチルスルホニル-酪酸、2-Nブロモ-4-メチルスルホニル-酪酸等)の化合物、又はその医薬として許容される塩、若しくは溶媒和物に関する。また、本発明は、前記化合物及び医薬として許容される担体を含有する医薬組成物にも関する。
【0013】
また、本発明は、炎症若しくは炎症に関連する障害、細菌感染、疼痛、又は皮膚状態を処置する方法にも関する。当該方法は、それを必要とする対象に、2-Nハロ-4-メチルスルホニル-酪酸を投与する工程を含む。前記有効成分を含有する組成物は、局所、経口、及び非経口(静脈内、筋肉内、皮下又は直腸等)投与等の、任意の許容される投与方法により適用することが出来る。局所投与及び経口投与が好ましい。
【0014】
2-Nクロロ-4-メチルスルホニル-酪酸は、以下:(a)メチオニン、ハロゲン化剤(次亜塩素酸塩等)、及び水非混和性有機溶媒を混合し、これを0〜30℃の温度で反応させる工程、(b)水相を取り除く工程、及び(c)有機溶媒中の化合物を取得する工程を含む方法により調製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1A】図1Aは、マススペクトロメトリーの結果を示す。
【図1B】図1Bは、2-Nクロロ-4-メチルスルホニル-酪酸の理論上の分解(fragmentation)経路を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は:
【化1】

[式中、
X=F、Cl、又はBr]
で表される、2-Nハロ-4-メチルスルホニル-酪酸の新規化合物に関する。
【0017】
また、本発明は、2-Nホロ-4-メチルスルホニル-酪酸の、医薬として許容される塩又はその溶媒和物にも関する。
【0018】
本明細書中で使用されるとき、「医薬として許容される塩」という用語は、本願化合物の所望の生物学的活性を保持しつつ、望ましくない毒性の作用を生じない塩を指す。医薬として許容される塩は、様々な結晶多形や、様々な塩のアモルファス形態等を形成する。医薬として許容される塩として、金属性又は有機性の対イオンの塩、例えば限定されないが;アルカリ土類金属、例えばマグネシウム又はカルシウムの塩;及びアンモニウム又はテトラアルキルアンモニウム、即ちNX4+(ここでXはC1-4)の塩等が挙げられる。
【0019】
本明細書中で使用されるとき、「溶媒和物」という用語は、前記化合物を、許容される共溶媒(co-solvent)と、所定の比率で組み合わせた、付加複合体(addition complex)を指す。共溶媒として、限定されないが、酢酸エチル、乳酸ラウリル、乳酸ミリスチル、乳酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、メタノール、エタノール、1-プロパノール、イソプロパノール、1-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチレン、グリコール、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルアセタミド、ピリジン、ジオキサン、及びジエチルエーテルが挙げられる。
【0020】
2-Nハロ-4-メチルスルホニル-酪酸は、以下:(a)メチオニン、水非混和性有機溶媒、及びハロゲン化剤(次亜塩素酸塩等)を混合し、これを0〜30℃の温度で反応させる工程、(b)水相を取り除く工程、及び(c)有機溶媒中の化合物を取得する工程を含む方法により調製することができる。
【0021】
メチオニンは、L-メチオニン、D-メチオニン、又はそれらの混合物であることができる。
【0022】
本発明に有用なハロゲン化剤として、フッ素化剤、塩素化剤、及び臭素化剤が挙げられる。ハロゲン化剤の例として、次亜塩素酸、クロラミンT、塩素ガス、臭化水素、三臭化リン、五臭化リン、及び1-クロロメチル-4-フルオロ-1,4-ジアゾニアビシクロ[2.2.2]オクタンbis-(テトラフルオロホウ酸塩)が挙げられる。好ましい塩素化剤は、次亜塩素酸塩(次亜塩素酸ナトリウム等)である。
【0023】
本発明において有用な水非混和性有機溶媒は、好ましくは、極性が約0.1〜7.5であって、本質的にプロトン性である、例えば酢酸エチル、ミネラルオイル、ヘキサン、ヘプタン、塩化メチレン、n-ブタノール、又は脂肪酸エステル、例えば乳酸ラウリル等の、半極性又は無極性溶媒である。好ましい有機溶媒は、酢酸エチル及び乳酸ラウリルである。
【0024】
工程(a)の反応は、0℃〜常温、例えば0〜35℃、好ましくは0〜30℃、そしてより好ましくは0〜25℃の温度で実施される。当該反応は、塩基性の条件、例えばpH7.1〜14、好ましくはpH7.5〜7.9の条件下で実施される。
【0025】
一つの態様において、メチオニンは、固体の形態をとり、水非混和性有機溶媒及び水性ハロゲン化剤と混合される。当該混合は、任意で、不活性ガス、例えばアルゴン中で実施される。例えば、固体メチオニンは、まず水非混和性有機溶媒と混合され、続いて、この懸濁物を高速で攪拌し、水性ハロゲン化剤を添加する。反応時間は1分以上であって、典型的には、30分〜24時間である。
【0026】
他の態様において、ハロゲン化剤の水溶液は、メチオニン(固体状態又は水溶液状態)に添加され、十分に混合される。反応時間は、典型的には、1分〜1時間、例えば2、5、10、15、30分間、又はそれらの間のいずれかの時間(例えば2〜30分)実施される。当該反応は、任意で、不活性ガス、例えばアルゴン中で実施される。反応産物の2-Nハロ-4-メチルスルホニル-酪酸は、加水分解及び酸化を受けるため、水中では安定ではない。メチオニン/ハロゲン化剤の反応の後、当該反応産物は、水非混和性有機溶媒により抽出される。
【0027】
混合工程(a)は、機械的混合、例えばインペラスターラー、せん断混合、ローター混合等により実施することが出来る。
【0028】
工程(a)の反応が完遂した後、水-有機溶媒混合物を落ち着かせる(settle)。デキャンテーションやピペッティング等の当業者に知られる任意の方法で有機相を水相から分離し、反応性産物2-Nハロ-4-メチルスルホニル-酪酸を含有する有機溶媒抽出物が取得される。有機溶媒抽出物中の何らかの不溶性残留物は、濾過、デキャンテーション、遠心分離、又は当業者に知られる任意の手段により、必要に応じて除去される。当該反応性産物は、有機溶媒中、室温(22〜28℃)で、少なくとも1ヶ月、好ましくは3ヶ月、より好ましくは6ヶ月、又は1年間、安定である。
【0029】
典型的な反応において、1〜10gのメチオニン、及び20〜200mlの3〜12%(例えば6%)の次亜塩素酸塩が使用される。典型的な抽出において、約100〜1000ml又はそれ以上の水非混和性有機溶媒が使用される。上記薬剤の量は、スケールアップやスケールダウンが可能である。
【0030】
一つの態様において、前記水非混和性有機溶媒は、酢酸エチルである。水相を除去した後、反応性産物は、任意で、酢酸エチルに乳酸エステル溶媒又は脂肪酸エステル溶媒を添加し、混合し、酢酸エチル溶媒を除去して、乳酸エステル溶媒又は脂肪酸エステル溶媒中の産物2-Nクロロ-4-メチルスルホニル-酪酸を取得する。本発明に有用な乳酸エステル溶媒又は脂肪酸エステル溶媒として、限定されないが、乳酸ラウリル、乳酸ミリスチル、乳酸セチル、又はミリスチン酸イソプロピル等が挙げられる。例えば、高純度の乳酸ラウリルを前記有機相に添加し、当該有機相を、硫酸ナトリウムの存在下で脱水する。当該混合物を濾過して硫酸ナトリウムを除去し、更に、公知の旋回蒸発技術を使用して、酢酸エチルを除去する。得られた溶液は、乳酸ラウリルの安定化媒体中に、2-Nクロロ-4-メチルスルホニル-酪酸からなる。2-Nクロロ-4-メチルスルホニル-酪酸の同一性は、注入マススペクトロメトリー、核磁気共鳴スペクトロメトリー(NMR)により確認され、更に、フーリエ変換赤外分光スペクトロメトリー(FTIR)、紫外分光スペクトロメトリー(UV)、及び液体クロマトグラフィーマススペクトロメトリー(LC-MS)により、更に特定される。
【0031】
一般的に、塩素化炭化水素は不安定で、半減期は非常に短い(Na and Olson, Environ Sci Technol. 41:3220-3225, 2007)。塩素化アルファアミノ酸は水中及び空気中で不安定で、加水分解及び酸化により劣化する。これらの塩素化炭化水素の不安定な特性は、2-Nハロ-4-メチルスルホニル-酪酸でも同様であって、その単離及び特徴付けを困難にする。加えて、2-Nハロ-4-メチルスルホニル-酪酸のスルホン部分が、還元的メカニズムにより分解される場合もある。出願人らは、2-Nハロ-4-メチルスルホニル-酪酸の不安定性を実証した。水性媒体中で前記反応を終了させ;その後直ちに(即ち5分以内に)当該反応溶液を-80℃で瞬間凍結し、当該凍結反応溶液を凍結乾燥に供した。凍結乾燥の後、当該材料を不活性ガスで包み、密封した。得られた生産物は、白色のライオケーキ(lyocake)であった。水又は空気に晒されると、当該白色のライオケーキは即座に酸化により劣化し、ケーキ全体が煉瓦色に変じ、硫黄のような臭いのガスを発する。
【0032】
出願人らは、製剤中に乳酸ラウリルを含有させると、乳酸ラウリルが、2-Nハロ-4-メチルスルホニル-酪酸の水への曝露を防御することにより、2-Nハロ-4-メチルスルホニル-酪酸が安定化することを見出した。出願人らは、役1〜15%、又は約1〜5%、又は約5〜10%、又は約5〜15%(例えば約10%w/w)の乳酸ラウリルが、2-Nハロ-4-メチルスルホニル-酪酸の、所望の安定性及び溶解性を提供することを見出した。本明細書中で使用されるとき、「約」という用語は、記載されている数値の±15%以内を表す。乳酸ラウリルの品質は、医薬製品及び美容製品の範囲内での人体への使用が可能な程度とする。好ましくは、乳酸ラウリルの純度は、90%以上、好ましくは95%以上であって;当該高純度は、加水分解及び酸化の原因因子の存在を減少させる。
【0033】
また、本発明は、1つ以上の医薬として許容される担体、及び2-Nハロ-4-メチルスルホニル-酪酸、又はその医薬として許容される塩若しくは溶媒和物を含有する医薬組成物を提供する。一般的に、前記医薬組成物中の有効成分2-Nハロ-4-メチルスルホニル-酪酸の量は、0.001〜10%、又は0.01〜5%、又は0.1〜2%、又は0.2〜2%、又は0.1〜1%、又は0.2〜1%、又は0.5%〜2%(w/w)である。
【0034】
前記医薬として許容される担体は、公知の基準を使用して、当業者が選択することが出来る。医薬として許容される担体として、限定されないが、非水性ベース溶液、懸濁物、エマルジョン、マイクロエマルジョン、ミセル溶液、ゲル、及び軟膏が挙げられる。当該医薬として許容される担体として、限定されないが、生理食塩水及び電解質溶液;イオン性及び非イオン性浸透圧性薬剤、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、グリセロール、及びデキストロース等;pH調整剤及び緩衝剤、例えば、水酸化物、ヒドロニウム、リン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩及びホウ酸塩等;抗酸化剤、例えば亜硫酸水素、亜硫酸、メタ重亜硫酸、チオ亜硫酸、アスコルビン酸、アセチルシステイン、システイン、グルタチオン、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、トコフェロール及びパルミチン酸アスコルビルの、塩、酸及び/又は塩基;界面活性剤、例えばレシチン、リン脂質、限定されないが、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、及びホスファチジルイノシトール;ポロキサマー及びプロキサミン、ポリソルベート、例えばポリソルベート80、ポリソルベート60、及びポリソルベート20、ポリエーテル、例えばポリエチレングリコール、及びポリプロピレングリコール;ポリビニル、例えばポリビニルアルコール及びポビドン;セルロース誘導体、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、及びヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びそれらの塩;石油誘導体、例えばミネラルオイル、及び白色ワセリン;脂肪、例えばラノリン、ピーナッツ油、パーム油、大豆油;モノ、ジ及びトリグリセリド;アクリル酸のポリマー、例えばカルボキシポリメチレンゲル、及び多糖類、例えばデキストラン、及びグリコサミノグリカン、例えばヒアルロン酸ナトリウム等が挙げられる。そのような医薬として許容される担体は、周知の保存料、例えば、限定されないが、塩化ベンザルコニウム、エチレンジアミン四酢酸及びその塩、塩化ベンゼトニウム、クロールヘキシジン、クロロブタノール、メチルパラベン、チメロサール、及びフェニルエチルアルコール等を使用して、細菌のコンタミネーションから保護されてもよく、又は単発若しくは複数回の使用のための、非保存(non-preserved)製剤として製剤化されてもよい。
【0035】
有効成分2-Nハロ-4-メチルスルホニル-酪酸を含有する局所製剤は、ゲル、クリーム、ローション、液体、エマルジョン、軟膏、スプレー、溶液、及び懸濁物の形態であることが出来る。前記局所製剤中の不活性成分として、限定されないが、乳酸ラウリル(皮膚軟化剤/浸透剤)、シリコーンエラストマー(レオロジー/テクスチャー調整剤)、カプリル/カプリントリグリセリド(皮膚軟化剤)、オクチサレート(octisalate)(皮膚軟化剤/UVフィルター)、シリコーン液(皮膚軟化剤/希釈剤)、スクアレン(皮膚軟化剤)、ヒマワリ油(皮膚軟化剤)、及びシリコーンジオキシド(増粘剤)等が挙げられる。
【0036】
出願人らは、2-Nハロ-4-メチルスルホニル-酪酸、又はその医薬として許容される塩若しくは溶媒和物(有効成分)が、様々な疾患又は障害の処置に有用であることを見出した。前記有効成分は、そのまま使用されてもよく、又は追加の医薬として許容される担体を含有する医薬組成物の形態で投与されてもよい。一つの態様において、前記有効成分は、任意の許容される担体、例えばクリーム、ゲル、ローション又は他の種類の前記有効成分を安定化させ、かつ局所適用によりその有効成分を疾患部位に送達させることが出来る懸濁物等の中に包摂される。他の態様において、前記医薬組成物は、錠剤、カプセル、顆粒、細粒、粉末、シロップ、坐薬、注射剤等の投与形態であってもよい。上記医薬組成物は、公知の方法により調製できる。
【0037】
一つの態様において、本発明は、炎症又は炎症関連障害の処置方法を提供する。「炎症」という用語は、一般に、免疫細胞の流入を特徴とし、損傷又は感染に対する応答として起こる、組織の局所反応を指す。前記方法は、炎症に関連する症状を減少又は緩和する。本発明は、好ましくは、急性又は慢性の腫脹、疼痛、発赤、発熱、又は場合によっては機能の喪失を特徴とする、炎症の局所的な兆候を処置する方法を提供する。本発明は、急性の損傷又は慢性の炎症性障害により引き起こされる関節及び軟組織の兆候性の炎症、例えば限定されないが、関節炎(変形性関節炎及び関節リウマチ)、腱炎、滑液胞炎、痛風性関節炎、リウマチ性多発筋痛、並びにアトピー性及び接触性皮膚炎等を処置するのに有用である。
【0038】
他の態様において、本発明は、疼痛の原因に関わらず、疼痛の症状を軽減する方法を提供する。本方法により処置することが出来る「疼痛」として、外傷の疼痛、神経障害痛、器官の疼痛、及び疾患に関連する疼痛が挙げられる。外傷の疼痛として、外傷に起因する疼痛、術後痛、及び炎症痛が挙げられる。神経障害の疼痛として、神経障害性、及び特発性の疼痛症候群、及び神経障害、例えば糖尿病性の神経障害、灼熱痛、腕神経叢裂離、後頭神経痛、線維筋痛、痛風に関連する疼痛、及び他の種類の神経痛が挙げられる。器官の疼痛として、眼球、角膜、骨、心臓、皮膚/灼熱痛、内臓(腎臓、胆嚢等)、関節、歯及び筋肉の疼痛が挙げられる。疾患に関連する疼痛として、癌、AIDS、関節炎、ヘルペス及び片頭痛に関連する疼痛が挙げられる。本発明は、様々な重症度、即ち軽度、中度及び重度の疼痛;急性及び慢性の疼痛を低減する。一つの態様において、本発明は、炎症性関節炎又は変形性関節炎、例えば関節リウマチ及び骨関節炎等に由来する疼痛の処置に効果的である。他の態様において、本発明は、関節痛、筋肉痛、腱痛、及び灼熱痛の処置に効果的である。
【0039】
他の態様において、本発明は、スタフィロコッカス感染等の細菌性疾患を処置する方法を提供する。
【0040】
他の態様において、本発明は、インフルエンザ感染等の、ウイルス性疾患を処置する方法を提供する。
【0041】
他の態様において、本発明は、水虫、酵母感染、及び真菌感染により引き起こされる副鼻腔感染症を処置する方法を提供する。
【0042】
他の態様において、本発明は、熱又は日照による皮膚のダメージ、皮膚の染み、又はいぼ等の皮膚の病態を処置する方法を提供する。
【0043】
他の態様において、本発明は、損傷を処置する方法を提供する。損傷部位の半閉時間(half-closure time)が、本処置により改善する。
【0044】
本発明の方法は、処置を必要とする対象を同定する工程、及び当該対象に有効量の2-Nハロ-4-メチルスルホニル-酪酸、例えば2-Nクロロ-4-メチルスルホニル-酪酸又はその医薬として許容される塩を投与する工程を含む。本明細書中で使用されるとき、「有効量」という用語は、病理的状態を改善し、又は疾患の症状を低減することにより、疾患を処置するのに有効な量である。
【0045】
本発明の医薬組成物は、局所、経口、非経口(静脈内、筋肉内、皮下又は直腸内)投与、及び他の全身的な投与経路等の、許容される全身的投与手段のいずれかにより、適用することが出来る。有効成分は、先ず血漿に到達し、それから標的組織に分配される。前記組成物の用量は、損傷の程度、及び各患者の応答の個性に基づいて様々であり得る。局所投与及び経口投与は、本発明において、好ましい投与経路である。全身投与において、送達される有効成分の血漿中の濃度は、化合物により様々であってもよいが;一般に、1x10-10〜1x10-4モル/リットル、及び好ましくは1x10-8〜1x10-5モル/リットルである。
【0046】
好ましい態様において、前記組成物は、罹患部位に局所適用され、当該部位に擦り込まれる。前記化合物は、医学的問題及び疾患の病理が慢性であるか急性であるかに依存して、少なくとも1日に1回又は2回、好ましくは1日に3〜4回局所適用される。一般に、局所組成物は、約0.001〜1%、又は好ましくは約0.01〜1%、又は好ましくは約0.03〜0.3%(w/w)、又は好ましくは約0.05〜0.3%の有効成分を含有する。例えば、前記局所組成物は、約0.05、0.1、又は0.2%(w/w)の有効成分を含有する。罹患部位に依存して、典型的には、1回の投与あたり、1〜10の局所製剤が、患者に適用される。一般に、有効成分は、患者に対して、0.05〜50、好ましくは0.1〜10mg/投与の濃度で提供される。当該有効成分は、皮膚を透過し、不快部位に送達される。
【0047】
当業者は、様々な種類の送達メカニズムも同様に、本発明に適していることを認識するであろう。
【0048】
以下の実施例は、本発明を更に例示するものである。これらの実施例は、本発明を例示することのみを意図するものであって、本発明を限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0049】
実施例1.反応性産物の調製
DL-メチオニン(0.50g)を、125mL三角フラスコ中に量り取った。水を添加して、透明な溶液を得た。亜塩酸ナトリウム(CLOROX(登録商標)漂白剤、10 mL)をフラスコに加え、短時間旋回させ、室温で静置した。30分後、当該溶液を分液漏斗に移し、酢酸エチル(50mL)を添加した。当該混合物を約15分間攪拌し、相分離後、下の水相を流出させた。CHRYSTAPHYL(登録商標)(乳酸ラウリル、50 mL)を当該漏斗に加え、得られた均一な溶液を、大量のNa2SO4が入った三角フラスコに流し込んだ。数分間断続的に旋回させた後、当該溶媒を上流フラスコ内に濾過し、そして、酢酸エチル溶媒を、真空下で除去した(TBath <30℃)。最終的には、体積は50mLにまで減少した。得られた産物は、2-Nクロロ-4-メチルスルホニル-酪酸の、乳酸ラウリル溶媒中の半粘着性透明溶液である。当該透明な液体を、適切な容器に移し、室温で保存した。
【0050】
本実施例により調製された2-Nクロロ-4-メチルスルホニル-酪酸の乳酸ラウリル溶液の計算上の量は、約10〜15mg/mLである。この計算は、内部標準(実施例2)に基づくもので、内部標準及び2-Nクロロ-4-メチルスルホニル-酪酸のイオン化反応は等しいと過程している。
【0051】
実施例2.2-Nクロロ-4-メチルスルホニル-酪酸としての反応性産物の同定
実施例1の反応性産物を、注入マススペクトロメトリーにより解析した。注入溶媒としてメタノールを使用し、エレクトロスプレー注入技術により、マススペクトロメーターに注入した。
【0052】
装置及び試薬:
メタノール(HPLCグレード又はこれと同等)
エタノール(HPLCグレード又はこれと同等)
高性能液体クロマトグラフィー(HP 1100モデル)又はこれと同等の装置
【0053】
移動層調製
移動層ボトル中に、750mLのメタノール及び250mLのエタノールを添加し、真空下でソニケーションすることにより脱気した。
【0054】
装置対象(IC)の調製
移動層の一部をHPLCバイアルに入れて、これを対照試料とする。
【0055】
陰性対照(NC)の調製
陰性対照は、1mLの高純度乳酸ラウリル液(Chrystaphyl(登録商標))と4mL酢酸エチルをガラスバイアル中で混合して調製した。
【0056】
システム適正標準(SSS)
システム適正標準は、2-Nクロロ-4-メチルスルホニル-酪酸と4mLの酢酸エチルをガラスバイアル中で混合して調製した。当該溶液を十分に混合し、アンバーHPLC解析バイアルに分注し、密封した。
【0057】
内部標準ストック溶液
内部標準(IS=メチオニンスルホン)を、適切な定量用ガラス器具中で、25μg/mL DMSO溶液に調製した。
【0058】
試験試料(TS)
試験試料は、1mLの実施例1で得られた産物と4mLの酢酸エチルを、ガラスバイアル中で混合することにより調製された。続いて、10μlのISを、当該試験溶液中に添加した。当該溶液を十分に混合し、アンバーHPLC解析バイアルに分注し、密封した。
【0059】
前記試験試料は、注入マススペクトロメトリーにより解析した。解析は、HPLC-MS-SIM、単一イオンモニタリングを備えたHPLC-MS、及び全イオンスキャンパラメーターを用い、以下の条件下で行った:
方法識別者(Method Identifier): OLTSIMNL (et al)
解析カラム(適用可能な場合): PHENOMENEX(登録商標)Luna 5μ Silica (2) 100A
250 X 4.60 mm 5μ
【0060】
全イオンのスペクトルは、75〜375AMUの範囲で収集された。結果を図1に示す。X軸は、質量とチャージの比率(分子量に直接関連する)を示し、Y軸は、シグナルの強度を示す。
【0061】
試験試料のマススペクトル解析は、分子量140、192、176及び156(シグナルの強い順)の主要なイオンピークを示す。また、図1は、2-Nクロロ-4-メチルスルホニル-酪酸(分子量215.7)の、理論上の断片化(分子量192、176、156、及び140の構造の形成)を示す。単離された断片化パターンは、2-Nクロロ-4-メチルスルホニル-酪酸の方法特異的パラメーター及び断片化の結果である。
【0062】
実施例3.反応性産物の調製
DL-メチオニン(約1.50g)を、攪拌棒の入った三角フラスコ中に量り取った。150mLの試薬グレード酢酸エチルをフラスコに加え、迅速に攪拌し、この懸濁物に、30mLの亜塩酸ナトリウム(CLOROX(登録商標)漂白剤)を添加した。当該フラスコに栓をして、室温で18時間攪拌を続けた。
【0063】
当外混合物を分液漏斗に移し、水相を流出させ、そして有機相に、150mLの高純度乳酸ラウリル(CHRYSTAPHYL(登録商標)Chemic Laboratories) (150 mL)を添加した。得られた均一な溶液を、20〜50gの硫酸ナトリウム(Na2S04)の存在下で乾燥させ、数分間断続的に旋回した後、溶媒を蒸留フラスコ中に濾過し、当該フラスコをRotavapに取り付け(T Bath = 30-35℃; 14-18 torr; 2 h)、そして酢酸エチルの一部を蒸発により除去した。残留物の透明な液体(〜140mL)を適切な容器に入れて密封し、室温で保存した。
【0064】
実施例4.NMRの結果
実施例3の第一段落に記載した手順を使用して、均一にラベルしたメ13Cチオニン(純度97〜99%)を、D8酢酸エチル(EtoAC)(純度99.5%)中で反応させた。約0.1%のu-13C 2-Nクロロ-4-メチルスルホニル-酪酸を含有する約1gのd8酢酸エチルを、400mHz、試料温度25℃で、1H NMRを使用して評価した。加えて、同一の試験試料を、100mHz、試料温度25℃で、13C NMRを使用して評価した。
【0065】
前記実験の結果、以下のピークが認められた:
1H NMR (ETOAC-d8, 400 MHz): 1.78 (1H), 2.56 (β, 2H), 3.42 (α, 2H), 3.93 (α, 1H) 13C NMR (EToAC-d8, 100 MHz): δ 18.0, 39.68, 39.77, 48.7, 49.0, 59.0, 171.0
【0066】
1H NMR及び13C NMRの結果を組み合わせることにより、2-Nクロロ-4-メチルスルホニル-酪酸の、スルホン、末端メチル、及びカルボキシル部分が確認される。
【0067】
実施例5.2-Nクロロ-4-メチルスルホニル-酪酸の抗炎症活性
2-Nクロロ-4-メチルスルホニル-酪酸(実施例1において調製した有効成分)、インドメタシン(陽性対照)、及びビヒクル(乳酸ラウリル)を含有する試験化合物の、アラキドン酸の局所適用による耳腫脹誘導モデルマウスにおける抗炎症活性を評価した。
【0068】
体重が22±2gの雄のICRマウスを、実験に使用した。アラキドン酸(20μLアセトン中2mg)を、試験動物の右耳の前面及び後面に局所適用した。ビヒクル中の有効成分、又はビヒクル(乳酸ラウリル)を、アラキドン酸の適用の30分前、及び15分後に、それぞれ適用した。同様に、ビヒクル中のインドメタシン陽性対照を、3mg/耳又はビヒクル(乳酸ラウリル)で、アラキドン酸の適用の30分前、及び15分後に、それぞれ適用した。そして、炎症の指標として、アラキドン酸適用の60、90、及び120分後の耳の浮腫の誘導を、Dyerモデルマイクロメーターゲージを使用して測定した。有意な活性は、ビヒクル処理群に対して30%以上、アラキドン酸により誘導される耳の腫脹を減少(阻害)させるものとする。表1に結果を示す。
【0069】
【表1】

【0070】
上記結果に基づき、乳酸ラウリル中の有効成分の局所投与は、アラキドン酸適用の60、90及び120分後の時点での測定で、乳酸ラウリルビヒクル群と比較して、耳の腫脹の有意な減少(33、31及び34%)を示した。
【0071】
実施例6.ゲル製剤
下記は、2-Nクロロ-4-メチルスルホニル-酪酸(有効成分)を含有するゲル製剤を例示する。
【表2】

【0072】
上記ゲル製剤は、ベセルにシリコーンエラストマーを加え、続いてカプリル/カプロントリグリセリド、オクチサレート(octisalate)、有効成分(乳酸ラウリル中)、シリコーン流体、スクアレン及びヒマワリ油を添加し、これを均一になるまで混合することにより調製される。シリル化シリカ(Silica silylate)を添加し、これを再び均一になるまで混合する。そして、当該ゲルをチューブに充填し、チューブに蓋をする。ゲルの外見は黄色味がかった透明で、粘り気がある。
【0073】
実施例7.感染の処置
実施例3で得た産物又は実施例6のゲル製剤を、1日に1回〜3回、スタフィロコッカス感染を起こした対象に局所適用する。当該処置の期間は、1週間から3ヶ月である。感染の症状を、処置の後に評価する。
【0074】
実施例8.疼痛の処置
実施例3で得た産物又は実施例6のゲル製剤を、関節痛(joint pain)、関節痛(arthritic pain)、背部痛、膝痛、股関節痛、虫咬痛(bug bite pain)、又は灼熱痛を有する異なる患者に局所適用する。当該患者における、前記産物の適用後の即座の疼痛の緩和を評価する。
【0075】
実施例9.創傷(wound)又は損傷(injury)の処置
実施例3で得た産物又は実施例6のゲル製剤を、火傷、サンフェイスブロッチ(sun face blotch)、皮膚の日焼け、又はいぼを生じた患者に、1日1回〜3回局所適用する。処置の期間は、3日〜3ヶ月である。前記産物の適用後の患者の症状を評価する。
【0076】
実施例10.マウスの創傷の処置
雄のCD-1マウスをヘキソバルビタール(90mg/kg、IP)で麻酔し、各動物の肩及び背中の領域を剃毛する。鋭いパンチ孔(ID 12mm)を空け、皮筋層及び結合組織を含む皮膚を除去する。乳酸ラウリル中の2-Nクロロ-4-メチルスルホニル-酪酸及び乳酸ラウリルビヒクル対照を、それぞれ局所的に、皮膚の損傷後直ちに適用し、これを1日4回(3時間置き)、10日間行う。陽性対照のマイトマイシンを10μg/マウス、及びビヒクル対照を、それぞれ皮膚の損傷後直ちに適用し、これを1日1回、10日間行う。1、3、5、7、9及び11日目に、透明なプラスチックのシートに創傷部位を写し取り、Image - ProPlus (Media Cybernetics, Version 4.5.29)を使用して測定する。創傷の閉口パーセント(%)を計算し、Graph-Prism (Graph Software USA)を使用した線形回帰により、創傷半閉口期(CT50)を分析する。
【0077】
実施例11.膝痛の処置
目的:標準的なNSAID療法の一時的中止後の変形性関節症に関連する軽度から中度の膝痛を有する患者における、2-Nクロロ-4-メチルスルホニル-酪酸ゲルの効果を調査する。
【0078】
製剤:本実施例において使用されるゲル製剤は、0.1又は0.2%の2-Nクロロ-4-メチルスルホニル-酪酸を含有するゲル製剤(実施例6)である。プラシーボは、前記有効成分を含有しない同一のゲルである。
【0079】
方法:無作為化、二重盲検、プラシーボ対照、並行処置、多施設、第二相臨床活性研究。
【0080】
少なくとも2ヶ月間の標準的なNSAIDの安定な投与によりコントロールされていた、疼痛を伴う膝の変形性関節症を有する患者の、NSAIDの使用を、7日間停止させる。続いて、患者を、1:1:1の割合(0.1%活性ゲル、0.2%活性ゲル、プラシーボ)で無作為化する。全150人の患者を登録し、7日間の処置後、8、10、14及び21日の時点でフォローアップする。
【0081】
前記活性ゲル又はプラシーボを、1日に3回、7日間、全部で21回、覚醒中4〜6時間ごとに、障害を有する膝に適用する。
【0082】
患者の処置は7日間行われ、更に14日間フォローアップされる。NSAIDは、10日目を経過した後に再開されてもよい。
【0083】
評価の基準
安全性:
・研究期間中の不都合な事象(AE)
・登録(-7日、NSAID治療の停止時)、ベースライン(1日、処理開始時)、10日及び21日の時点における、物理的実験
・登録(-7日、NSAID治療の停止時)、ベースライン(1日、処理開始時)、2、4、8、10、14及び21日の時点における、生存兆候
・ベースライン(1日)、8日及び14日の時点における、臨床検査測定
【0084】
臨床的活性
第一の臨床的活性のパラメーターは、VAS及びWestern Ontario及びMcMaster University (WOMAC)スケールにより定量化される、適用部位における疼痛の測定である。膝の腫脹、圧痛及び炎症に対する処置の効果が記録され、処置後のそれらの低減又は消滅も記録される。
【0085】
実験の指標:
第一の臨床的活性の指標は:
ベースライン(1日)から8日目までの、以下のWOMAC機能不全インデックスである。
-Pain(スケール0〜20)
-Stiffness(スケール0〜8)
-Physical function(0〜68)
【0086】
第二の臨床的活性の指標は:
・ベースライン(1日)から8日目までの、VAS疼痛スケール(1〜100)
・その日のベースライン(処理前1)から30分後(処理後2)までの変化を測定することによる、2日目及び3日目における1日以内のVAS疼痛スケールの変化
・ベースライン(1日)と、1日目の最初の適用後30分及び60分後との間の、腫脹、圧痛及び炎症の調査者による評価の変化
・ベースライン(1日)と、8日目との間の、腫脹、圧痛及び炎症の調査者による評価の変化
・OLT1171ゲル又はプラシーボゲルの局所適用後に疼痛が軽減又は消滅する時間
・救急薬の使用(APAP)
【0087】
本発明、及び本発明に係る製剤を製造及び使用する手段及びプロセスは、これらに関連する当業者のいずれも、当該製剤を製造及び使用することが出来る程度に、完全な、明確な、簡潔な、及び正確な用語をもって、本明細書中に記載されている。上記記載は、本発明の好ましい態様を記載するものであって、請求項記載の本発明の範囲から逸脱すること無く、変更することが可能であるものと理解されたい。発明と認める対象を特に指摘し、かつ明確に主張するために、本願明細書に「特許請求の範囲」を添付する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
【化1】

[式中、
X=F、Cl、又はBr]
で表される2-Nハロ-4-メチルスルホニル-酪酸、又はその医薬として許容される塩、若しくはその溶媒和物。
【請求項2】
XがClである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
請求項1に記載の化合物及び医薬として許容される担体を含有する、医薬組成物。
【請求項4】
前記医薬として許容される担体が、5〜15%(w/w)の乳酸ラウリルを含有する、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
ゲルの形態で、前記化合物を0.03〜0.3%(w/w)含有する、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項6】
請求項1に記載の化合物を調製する方法であって、以下の:
(a)メチオニン、水非混和性有機溶媒、及びハロゲン化剤を混合し、これを0〜30℃の温度で反応させる工程;
(b)水相を取り除く工程;及び
(c)有機溶媒中の化合物を取得する工程;
を含む、前記方法。
【請求項7】
前記水非混和性有機溶媒が、酢酸エチル、ヘキサン、ヘプタン、塩化メチレン、ミネラルオイル、又は脂肪酸エステルである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ハロゲン化剤が次亜塩素酸塩である、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記メチオニンが、D-メチオニン、L-メチオニン、又はそれらの混合物である、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
請求項2に記載の化合物を調製する方法であって、以下:
(a)メチオニン、酢酸エチル、及び次亜塩素酸塩水溶液を混合し、これを0〜30℃の温度で反応させる工程;
(b)水相を取り除く工程;
(c)酢酸エチル中の化合物を取得する工程;
(d)当該酢酸エチル溶液に、乳酸エステル溶媒又は脂肪酸エステル溶媒を加え、これを混合する工程;
(e)酢酸エチル溶媒を除去する工程;並びに
(f)乳酸エステル溶媒中又は脂肪酸エステル溶媒中の化合物を取得する工程;
を含む、前記方法。
【請求項11】
前記乳酸エステル溶媒が、乳酸ラウリル、乳酸ミリスチル、又は乳酸セチルである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記脂肪酸エステル溶媒が、ミリスチン酸イソプロピルである、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
炎症を処置する方法であって、以下:
炎症が生じた対象を同定する工程、及び
炎症の処置に有効な量の、請求項1に記載の化合物を対象に投与する工程
を含む、前記方法。
【請求項14】
急性又は慢性の腫脹、疼痛又は発赤を特徴とする炎症の局所的な発現の症状を低減又は緩和する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記炎症が、関節又は軟組織の炎症である、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
疼痛を処置する方法であって、以下:
疼痛が生じた対象を同定する工程、及び
疼痛の処置に有効な量の、請求項1に記載の化合物を対象に投与する工程
を含む、前記方法。
【請求項17】
前記疼痛が、関節リウマチに由来する疼痛、変形性関節症に由来する疼痛、関節痛、筋肉痛、腱の疼痛、又は灼熱痛(burn pain)である、請求項16に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【公表番号】特表2012−520888(P2012−520888A)
【公表日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−500894(P2012−500894)
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【国際出願番号】PCT/US2010/027501
【国際公開番号】WO2010/107807
【国際公開日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【出願人】(508285271)オラテック インダストリーズ リミティド ライアビリティ カンパニー (2)
【Fターム(参考)】