説明

炎症及び肥満症における血清アミロイドAタンパク質

本発明は、急性期血清アミロイドタンパク質A(A−SAA)が肥満症及び特定の異常状態のバイオマーカーであることの発見に関する。従って、本発明は、被験者の肥満症又は異常状態を診断する方法を提供する。また、本発明は、被験者の肥満症又は異常状態の進行度を監視する方法も提供する。本発明は、肥満度又は異常状態の治療であって、それを必要とする患者の活性SAA1及び/又はSAA2のレベルを減少させることを含む治療にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
米国国立衛生研究所から助成された米国政府国債(助成金番号、HL/DK62093及びHL/DK57835)を有用して本発明の開発中において実施された研究の一部である。米国政府は、本発明の特定の権利を所有する。本発明は、急性期血清アミロイドタンパク質A(A−SAA)が肥満症及び特定の異常状態のバイオマーカーであることの発見に関連する。
【0002】
従って、本発明は、被験者の肥満症又は異常状態を診断する方法であって、血清アミロイドAタンパク質1(SAA1)及び/又は血清アミロイドAタンパク質2(SAA2)のレベルを測定することと、これらの測定されたレベルとSAA1及び/又はSAA2の許容される正常レベルとを各々比較することと、を含み、被験者の測定レベルと正常レベルとの差は、被験者の肥満症又は肥満状態の存在を示す方法を提供する。また、本発明は、被験者の肥満症又は異常状態の進行度を監視する方法であって、異なる2時点において被験者の血清アミロイドAタンパク質1(SAA1)及び/又は血清アミロイドAタンパク質2(SAA2)のレベルを測定することと、これら2時点の測定レベルを比較して、SAA1及び/又はSAA2の経時レベルの差を求めることと、を含み、経時レベルの差は、患者の肥満症又は肥満状態の進行度又は退行度を示す方法を提供する。本発明は、肥満度又は異常状態を治療することに関連し、それを必要とする患者の活性SAA1及び/又はSAA2のレベルを減少させることを含む。
【背景技術】
【0003】
現在、10億人を超えるアメリカ人が過体重又は肥満として分類され、米国だけでも年間少なくとも300,000人が肥満により死亡している。肥満症は、遺伝的要素が強い慢性疾患と考えられる。更に、肥満症は、限定されるものではないが、高血圧、2型糖尿病、心疾患、脳卒中、胆嚢疾患及び数種の癌等の症状を発症するリスクを高めるおそれがある。
【0004】
低悪性度の慢性炎症が肥満症に関連している多くの証拠が存在し、この慢性炎症状態には、肥満症、2型糖尿病、異脂肪血症、及びアテローム性動脈硬化症等を含むメタボリック症候群の重要な媒介因子であり得る(Xu Hら, J Clin Invest 112:1821−1830 (2003);Weisberg SPら、J CIm Invest 112:1796−1808 (2003);Lehrke Mら、Nat Med 10:126−127 (2004);Reaven P, J Insur Med 36:132−142 (2004);Yudkin JS, IntJObes RelatMetab Disordll Suppl 3: S25−28 (2003);Schmidt MIら、Clin Chem Lab Med 41:1120−1130 (2003)、全て引用することにより本願明細書の一部とする)。実際、肥満症における機能不全に陥った大量の脂肪組織は、従来、腫瘍壊死因子α(TNFα)、インターロイキン−6(IL−6)及び単球走化性タンパク質−1(MCP−1)を含む炎症性因子、並びに易血栓性因子プラスミノーゲンアクチベーター阻害剤−1(PAI−1)とみなされるいくつかの因子の供給源である。
【0005】
他方、C反応性タンパク質(CRP)、α−1アンチトリプシン、α1−アンチキモトリプシン、α1−アンチマクログロブリン、フィブリノーゲン、プロトロンビン、因子VIII、フォン・ウィルブランド因子、プラスミノーゲン及び血清アミロイドAタンパク質(SAA)等の急性期タンパク質は、急性炎症及び外傷に応答して血清中で劇増加するが、慢性炎症はこれら急性期反応物の多くの血中レベルにおいて軽度の増加しか示さない。しかしながら、集団研究では、これらいくつかの急性期反応物の血中レベルは心血管リスクの指標となる。
【0006】
急性期タンパク質のうち、SAAは、慢性炎症及び急性炎症に実質的に関連し、主要な脊椎動物において保存されている4つの遺伝子(SAA1〜4)からなる多重遺伝子タンパク質ファミリーである(Sellar GCら、Genomics 19:221−227 (1994)参照)。ヒトでは、これら4つの遺伝子のうち3つ(SAA1、2及び4)だけが発現する(Kluve−Beckerman Bら、DNA Cell Biol 10:651−661 (1991)参照)。急性炎症の刺激に応答し、血漿中のSAA1及びSAA2のレベルは、約5〜6時間の間に約1000倍もの増殖を示すことがあるが(Cabana VGら、J Lipid Res 30:39−49 (1989))、SAA4はわずかに調節されるのみである(Whitehead ASら、J Biol Chem 267:3862−3867 (1992))。従って、SAA1及びSAA2は、急性期SAA(A−SAA)と総称され、SAA4は構造SAA(C−SAA)と呼ばれる。
【0007】
SAAは炎症に関与し、リポ多糖類(LPS)、腫瘍壊死因子−α(TNFα)、インターロイキン(IL)−1、IL−6及びIL−8等の多くの炎症性の刺激によって生じる(Hagihara Kら、Biochem Biophys Res Commun 314:363−369 (2004);Bopst Mら、Eur J Immunol 28:4130−4137 (1998)参照)。更に、SAAは、好中球におけるTNFα、IL−6及びIL−8の遺伝子の発現又は放出を刺激するタンパク質である(Furlaneto CJら、Biochem Biophys Res Commun 268:405−408 (2000);Hatanaka Eら、Immunol Lett 91:33−37 (2004);Ribeiro FPら、Mediators Inflamm 12:173−178 (2003)参照)。
【0008】
従って、本発明は、肥満症の被験者及びそれに関連する異常状態を診断、監視、及び治療するためのSAA1及び/又はSAA2のレベルに焦点を合わせる方法及び組成物を提供する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、急性期血清アミロイドタンパク質A(A−SAA)が肥満症及び特定の異常状態のバイオマーカーであることの発見に関連する。従って、本発明は、被験者の肥満症を診断する方法であって、血清アミロイドAタンパク質1(SAA1)及び/又は血清アミロイドAタンパク質2(SAA2)のレベルを測定することと、これらの測定されたレベルとSAA1及び/又はSAA2の許容される正常レベルとを各々比較することと、を含み、被験者の測定レベルと正常レベルとの差は、被験者の肥満症を示す方法を提供する。
【0010】
また、本発明は、被験者の異常状態を診断する方法であって、血清アミロイドAタンパク質1(SAA1)及び/又は血清アミロイドAタンパク質2(SAA2)のレベルを測定することと、これらの測定されたレベルとSAA1及び/又はSAA2の許容される正常レベルとを各々比較することと、を含み、被験者の測定レベルと正常レベルとの差は、被験者の異常状態の存在を示す方法を提供する。
【0011】
また、本発明は、被験者の肥満症又は異常状態の進行度を監視する方法であって、異なる2時点において被験者の血清アミロイドAタンパク質1(SAA1)及び/又は血清アミロイドAタンパク質2(SAA2)のレベルを測定することと、これら2時点の測定レベルを比較して、SAA1及び/又はSAA2の経時レベルの差を求めることと、を含み、経時レベルの差は、患者の肥満症又は肥満状態の進行度又は退行度を示す方法を提供する。
【0012】
本発明は、肥満度及び/又は異常状態を治療することに関連し、それを必要とする患者の活性SAA1及び/又はSAA2のレベルを減少させることを含む。
【0013】
また、本発明は、様々な診断及び本願明細書に記載される治療方法に使用できる抗体等の組成物に関連する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
血清アミロイドA(SAAは、急性期タンパク質の一種であり、血清中のレベルは、急性炎症及び急性外傷に応答して激増する。肝臓は、過剰肝臓発現が報告されているが、SAA産生の主要源である。本願において、発明者らは、ヒトの急性期SAA(A−SAA)、つまりSAA1及びSAA2は、脂肪組織中で主に発現することを開示及び教示している。ヒトの脂肪組織特異的発現は、A−SAAが肝臓で主に発現するマウスと極めて異なる。更に、本願明細書で記述されるような相対的に極めて豊富なヒト脂肪組織中のA−SAA mRNAは、脂肪細胞が、肝臓、筋肉、免疫系の細胞、及び血管系への全身的な影響を与える炎症要因の重要源であるのみならず、局所的な脂肪代謝への重要な影響であるという進化概念を支持している。
【0015】
従って、本発明は、被験者の肥満症を診断する方法であって、血清アミロイドAタンパク質1(SAA1)及び/又は血清アミロイドAタンパク質2(SAA2)のレベルを測定することと、これらの測定されたレベルとSAA1及び/又はSAA2の許容される正常レベルとを各々比較することと、を含み、被験者の測定レベルと正常レベルとの差は、被験者の肥満症の存在を示す方法を提供する。本願明細書で用いられる「急性期血清アミロイドAタンパク質(A−SAA)」という用語は、SAA1及びSAA2の組合せを意味する。例えば、A−SAAに結合する抗体とは、SAA1及びSAA2の双方に結合し、その2種類のタンパク質を区別しないことを指す。本願明細書で用いられる「患者」及び「被験者」という用語は同義である。特に、被験者は、哺乳類、例えば、限定されるものではないが、マウス、ラット、イヌ、ウマ、又はネコであってよい。具体的に、被験者はヒト又は非ヒト霊長類である。
【0016】
本願明細書において「診断」とは、他の試験の結果、又は単に被験者が肥満症等の異常状態に罹患している可能性の有無を確認することを意味する。他方、用いられる「試験」は、患者又は医療従事者が、患者が異常状態に実質的に罹患していることを示さない場合のスクリーニング方法を指し、今後患者が疾病又は症状を発症する可能性又は確率の評価も意味する。従って、本発明の方法は、診断又はスクリーニングに用いてもよい。診断及び試験はいずれも、患者の肥満状態又は肥満症の「段階を判定する」ために用いることができる。本願明細書において用いられる「段階を判定する」とは、異常状態又は肥満症が、様々な重症度に、任意又は合理的に分類可能であることを指す。この分類は、限定されるものではないが、体重、BMI、血圧、例えばA−SAA、インスリン等のバイオマーカーの数値といった分離可能な定量特性に基づくものであってもよいし、或いは分離可能な定性特性に基づいてもよい。「段階を判定する」とは、疾病の進行を含んでも含まなくてもよい。
【0017】
上記のように、本発明は、被験者の肥満症を診断又は試験する方法に関し、本願明細書において用いられる「肥満症」は、被験者が過体重又は肥満であること、又は、被験者のSAA1及び/又はSAA2が正常レベルよりも高いことを意味する。つまり、ある個体は、過体重及び肥満症の診断に用いられる体格指数(BMI)の評価による過体重に分類される。BMIは、各個体の体重(キログラム)を各個の身長(メートル)の二乗で除算して求められる。BMIを用い、米国立心臓・肺・血液研究所(NHLBI)は6つの体重分類を開発しているが、これを下表1に示す。明確にするため、本願明細書における「肥満症」は、限定されるものではないが、BMIの評価によって過体重及び肥満クラス1〜3体重分類に属する被験者を含む。肥満症は炎症性肥満症又は非炎症性肥満症であり得る。
【表1】

【0018】
診断及びスクリーニング方法は、SAA1及びSAA2からなる群から選択される少なくとも1種類のバイオマーカーのレベルを測定することを含む。本発明の特定の一実施形態では、少なくともSAA1が測定される。本発明の別の特定の実施形態では、少なくともSAA2が測定される。更に別の特定の実施形態では、少なくともA−SAA(SAA1及びSAA2)が測定される。出願者らは、SAA1及びSAA2は、肥満症、限定されるものではないが、糖尿病、高血圧症、高脂血症、高コレステロール血症、炎症及びアテローム性動脈硬化症を含む疾病又はメタボリック症のマーカーであることを見出した。本願明細書において用いられる「異常状態」は、健康な個体には通常存在しない、被験者の疾病、メタボリック症又は症状を意味する。また、本願明細書において用いられる異常状態のバイオマーカーは、検出可能なレベルと正常個体に相関している、又は相関している可能性のある化合物、分子、イオン又は他の化学的な存在を指す。個体レベルでの異常状態の他、バイオマーカーはまた、器官、組織又は細胞の改変状態を判定するためにも使用することができる。異常状態の例としては、限定されるものではないが、関節リウマチ(RA)、原発性胆汁性肝硬変、慢性活動性肝炎、感染(急性又は慢性敗血症)、進行癌、糖尿病性腎症、クローン病、潰瘍性大腸炎、膵炎、喘息、アレルギー性鼻炎等の炎症状態が挙げられる。
【0019】
所与のバイオマーカーの「正常レベル」は、後にスクリーニング又は診断される被験者と同じ被験者を含む、既知の健康被験者においてバイオマーカーのレベルを測定することによって評価することができる。また、正常レベルは集団サンプルで評価してもよく、この場合、集団サンプルは一人の患者からの複数のサンプル又は複数の被験者からの少なくとも1種類のサンプルを平均化することを意図する。集団サンプルに関して、バイオマーカーの正常レベルは、限定されるものではないが、性別、年齢、体重、BMI、人種、地理的立地、空腹状態、妊娠状態又は妊娠後、月経周期、患者の健康状態、アルコール又は薬剤の摂取、カフェイン又はニコチンの摂取及び日内周期を含む、集団の特性に従って分類しても、しなくてもよい。
【0020】
被験者を診断又はスクリーニングするためには、所与のサンプル中のSAA1及び/又はSAA2のレベルを測定する。本願明細書において、サンプルは、対象とするバイオマーカーを含有すると疑われるいずれの環境であってもよい。従って、サンプルは、限定されるものではないが、溶液、細胞、体液、組織又はその一部、及び器官又はその一部を含む。動物細胞の例としては、限定されるものではないが、例えば、ウシ、ウマ、ブタ、イヌ、ネコ、ヒト及び非ヒト霊長類等の哺乳類細胞が挙げられる。本発明の範囲はアッセイされる細胞種によって限定されない。アッセイされるサンプル又は体液の例としては、限定されるものではないが、血液、血漿、血清、尿、唾液、乳汁、精液血漿、滑液、間質液、脳脊髄液、リンパ液、胆汁、羊水、脂肪組織及び肝臓組織が挙げられる。特定の一実施形態では、アッセイされるサンプルは血清である。本発明の方法の範囲はアッセイされるサンプル種によって限定されない。
【0021】
サンプルはそれらの天然環境から除去されてもされなくてもよい。従って、アッセイされるサンプルの一部は、サンプルの残りの部分から、又はサンプルを含有し得る被験者から分離する又は取り出す必要はない。例えば、被験者の血液を、患者から血液を取り出さずに、SAA1及び/又はSAA2に関してアッセイしてもよい。勿論、サンプルは、その天然環境から除去してもよい。例えば、サンプルは、免疫組織化学(IHC)的技術で使用できる組織切片であってよく、また、本発明の抗体を標準的なIHC技術において使用してもよく、この場合、抗体をサンプルと接触させ、バイオマーカーと抗体の結合を、標準的な免疫組織化学技術を用いて検出する。更に、サンプルをアッセイ前に処理してもよい。例えば、サンプルを希釈又は濃縮してもよい。サンプルを精製してもよいし、かつ/又はサンプルに内部標準等の少なくとも1種類の化合物を加えてもよい。サンプルはまた、本発明の方法の前に、又は本発明の方法と組み合わせて物理的に改変させるか(例えば、遠心分離、アフィニティー分離)、又は化学的に改変させてもよい(例えば、酸、塩基又はバッファーの添加、加熱)。処理はまた、アッセイ前にサンプルを凍結させる、かつ/又は保存することも含む。
【0022】
本発明の範囲は、所与のバイオマーカーのレベルを測定する方法によって限定されない。例えば、SAA1及び/又はSAA2の「レベル」は、限定されるものではないが、タンパク質レベル、核酸レベル、例えば、mRNA又はcDNAレベル、受容体結合及びタンパク質活性が挙げられる。タンパク質を測定してSAA1及び/又はSAA2レベルを評価する場合、これらのタンパク質は無傷なタンパク質でも変性タンパク質でも、又は更には部分的に消化されたタンパク質であってもよい。タンパク質レベルは、限定されるものではないが、いくつか例を挙げると、分光法及びELISA、ウエスタンブロット法及び他のイムノアッセイ等の当技術分野で周知の標準的技術を用いてアッセイすることができる。使用可能なイムノアッセイとしては、限定されるものではないが、ラジオイムノアッセイ、「サンドイッチ」イムノアッセイ、免疫沈降アッセイ、沈降素反応、ゲル拡散法沈降素反応、免疫拡散法アッセイ、凝集アッセイ、補体結合アッセイ、免疫放射線アッセイ、蛍光イムノアッセイ、Aタンパク質イムノアッセイ等の技術を用いた競合的アッセイ系及び非競合的アッセイ系が含まれる。このようなアッセイは当技術分野で周知のものであり、タンパク質レベルをアッセイするには慣例である(引用することにより本願明細書の一部とされ、Ausubelら編, 1994, Current Protocols in Molecular Biology, Vol. 1, John Wiley & Sons. Inc., New York参照)。
【0023】
ELISAでは、最初にバイオマーカーと結合する捕捉分子は標識とコンジュゲートさせる必要はなく、実際には、標識された、その後の検出分子(捕捉分子を認識できる)をウェル中に加えてもよい。当業者ならば、検出されるシグナルを増強するように改変されたパラメーター並びに当技術分野で周知のELISAの他の変形形態について知識を有すると考えられる。本願明細書において用いられる「捕捉分子」は、限定されるものではないが、バイオマーカーと特異的に結合することによりバイオマーカーを固定する抗体又は受容体等の分子を意味する。更に、バイオマーカーは、そのバイオマーカー又はバイオマーカー−捕捉分子複合体がサンプルの残りの部分から分離する、又は分離できる場合に「固定」される。捕捉分子がウェル又は他の表面に被覆される場合、対象とするバイオマーカーをウェルに加えた後に検出分子を加えればよい。本願明細書において用いられる検出分子は、標識を含む、抗体又は受容体等の分子を意味する。特定の実施形態では、本発明の方法は、捕捉抗体及びSAA1若しくはSAA2を検出するための検出抗体の使用を含む。
【0024】
捕捉されたSAA1及び/又はSAA2タンパク質、すなわちタンパク質レベルを、標識捕捉分子又は標識検出分子の使用によって検出することができる。本願明細書において、標識は、検出可能なシグナルを有する、或いは有するようになる、又は生成し得る化学的な化合物又はイオンを意味するものとする。本発明の標識は、捕捉分子若しくは検出分子、対象とするバイオマーカー、又は標識及び/又は捕捉分子若しくは検出分子が結合される表面とコンジュゲートさせることもできる。標識の例としては、限定されるものではないが、例えば、H及び32P等、放射線計量装置で測定可能な放射性標識;目視可能又は分光光度計で測定可能な顔料、色素又は他の色素体;スピン標識アナライザーで測定可能なスピン標識;及び、出力シグナルが適切な分子付加物の励起によって生成される場合、光による励起によって可視化されるか、又は蛍光計若しくは画像システムで測定可能である蛍光標識(蛍光プローブ)が挙げられる。標識の更なる例としては、限定されるものではないが、リン光色素、タンデム色素及び粒子が挙げられる。標識は、シグナル化合物の化学修飾によって出力シグナルが生成される場合の化学発光物質;金属含有物質;又は無色の基質からの有色生成物の形成等、シグナルの酵素依存的二次生成が起こる場合の酵素であり得る。また、「標識」という用語は、コンジュゲート分子が、基質と共加えた場合に検出可能なシグナルを生成するように、コンジュゲートした分子と特異的に結合することができる「タグ」又はハプテンも含む。例えば、ビオチンを標識として用い、このビオチン標識と結合させるためにセイヨウワサビペルオキシターゼ(HRP)のアビジン又はストレプトアビジンコンジュゲートを使用することができ、次に、比色定量基質(例えば、テトラメチルベンジジン(TMB))、又はAmplex Red試薬(Molecular Probes, Inc.)等の蛍光基質を用いてHRPの存在を検出することができる。多くの標識が当業者に周知であり、限定されるものではないが、粒子、蛍光プローブ、ハプテン、酵素及びそれらの比色定量基質、蛍光基質及び化学発光基質、並びに引用することにより本願明細書の一部とされる、RICHARD P. HAUGLAND, MOLECULAR PROBES HANDBOOK OF FLUORESCENT PROBES及びRESEARCH PRODUCTS 第9版, CD−ROM, (September 2002)に記載されている他の標識が挙げられる。
【0025】
本発明の蛍光プローブは、280nmを超える領域に吸収極大を示し、標識試薬と共有結合させてもそのスペクトル特性を保持する化学部分である。本発明の蛍光プローブとしては、限定されるものではないが、
ピレン(引用することにより本願明細書の一部とされる、米国特許第5,132,432号明細書に開示されている対応する誘導体化合物を含む)、アントラセン、ナフタレン、アクリジン、スチルベン、インドール又はベンズインドール、オキサゾール又はベンズオキサゾール、チアゾール又はベンゾチアゾール、A−アミノ−7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾール(NBD)、シアニン(引用することにより本願明細書の一部とされる、米国特許出願第09/968,401号明細書及び同第09/969,853号明細書の対応する化合物を含む)、カルボシアニン(引用することにより本願明細書の一部とされる、米国特許出願第09/557,275号明細書;同第09/969,853号明細書及び同第09/968,401号明細書;米国特許第4,981,977号明細書;同第5,268,486号明細書;同第5,569,587号明細書;同第5,569,766号明細書;同第5,486,616号明細書;同第5,627,027号明細書;同第5,808,044号明細書;同第5,877,310号明細書;同第6,002,003号明細書;同第6,004,536号明細書;同第6,008,373号明細書;同第6,043,025号明細書;同第6,127,134号明細書;同第6,130,094号明細書;同第6,133,445号明細書;及び国際公開第02/26891号パンフレット、同第97/40104号パンフレット、同第99/51702号パンフレット、同第01/21624号パンフレット;欧州特許第1065250号パフレットの対応する化合物を含む)、カルボスチリル、ポルフィリン、サリチル酸塩、アントラニル酸塩、アズレン、ペリレン、ピリジン、キノリン、ボラポリアザインダセン(引用することにより本願明細書の一部とされる、米国特許第4,774,339号明細書;同第5,187,288号明細書;同第5,248,782号明細書;同第5,274,113号明細書;及び同第5,433,896号明細書に開示されている対応する化合物を含む)、キサンテン(引用することにより本願明細書の一部とされる、米国特許第6,162,931号明細書;同第6,130,101号明細書;同第6,229,055号明細書;同第6,339,392号明細書;同第5,451,343号明細書及び米国特許出願第09/922,333号明細書に開示されている対応する化合物を含む)、オキサジン(引用することにより本願明細書の一部とされる、米国特許第4,714,763号明細書に開示されている対応する化合物を含む)、又はベンズオキサジン、カルバジン(引用することにより本願明細書の一部とされる、米国特許第4,810,636号明細書に開示されている対応する化合物を含む)、フェナレノン、クマリン(引用することにより本願明細書の一部とされる、米国特許第5,696,157号明細書;同第5,459,276号明細書;同第5,501,980号明細書及び同第5,830,912号明細書に開示されている対応する化合物を含む)、ベンゾフラン(引用することにより本願明細書の一部とされる、米国特許第4,603,209号明細書及び同第4,849,362号明細書に開示されている対応する化合物を含む)、並びにベンズフェナレノン(引用することにより本願明細書の一部とされる、米国特許第4,812,409号明細書に開示されている対応する化合物を含む)及びその誘導体が挙げられる。本願明細書において、オキサジンとしては、レゾルフィン(引用することにより本願明細書の一部とされる、米国特許第5,242,805号明細書に開示されている対応する化合物を含む)、アミノオキサジノン、ジアミノオキサジン、及びそれらのベンゾ置換類似体が挙げられる。
【0026】
蛍光プローブがキサンテンである場合、蛍光プローブは所望により、フルオレセイン、ロードール(引用することにより本願明細書の一部とされる、米国特許第5,227,487号明細書及び同第5,442,045号明細書に開示されている対応する化合物を含む)、又はローダミン(引用することにより本願明細書の一部とされる、米国特許第5,798,276号明細書;同第5,846,737号明細書;米国特許出願第09/129,015号明細書に開示されている対応する化合物を含む)であってもよい。本願明細書において、フルオレセインとしては、ベンゾ又はジベンゾフルオレセイン、セミナフトフルオレセイン、又はナフトフルオレセインが挙げられる。同様に、本願明細書において、ロードールとしては、セミナフトローダフルオル(引用することにより本願明細書の一部とされる、米国特許第4,945,171号明細書に開示されている対応する化合物を含む)が挙げられる。或いは、蛍光プローブは、キサンテンの9位における共有単結合である結合を介して結合したキサンテンである。特定のキサンテンとしては、9位に結合した3H−キサンテン−6−オール−3−オンの誘導体、9位に結合した6−アミノ−3H−キサンテン−3−オンの誘導体、又は9位に結合した6−アミノ−3H−キサンテン−3−イミン誘導体の誘導体が挙げられる。
【0027】
本発明の特定の蛍光プローブとしては、キサンテン(ロードール、ローダミン、フルオレセイン及びその誘導体)、クマリン、シアニン、ピレン、オキサジン及びボラポリアザインダセンが挙げられる。蛍光プローブの更に特定の例としては、限定されるものではないが、スルホン化キサンテン、フッ素化キサンテン、スルホン化クマリン、フッ素化クマリン及びスルホン化シアニンが挙げられる。標識試薬と結合された蛍光プローブの選択により、標識試薬及び免役標識された複合体の吸収及び蛍光放射特性が決定される。蛍光プローブ標識の物理的特性としては、スペクトル特性(吸収、放射及びストークスシフト)、蛍光強度、寿命、偏光及び光退色速度が挙げられ、これらは全て各蛍光プローブを識別するために使用することができる。
【0028】
一般に、蛍光プローブは、限定されるものではないがハロゲン、ニトロ、シアノ、アルキル、ペルフルオロアルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリールアルキル、アシル、アリール又はヘテロアリール環系、ベンゾ、又は当技術分野で周知の蛍光プローブ上に一般に存在する他の置換基を含む、様々な置換基によって任意に1回又は複数回置換されていてもよい、1又は複数の芳香族又は複素芳香環を含む。
【0029】
本発明の一態様では、蛍光プローブは480nmを超える領域に吸収極大を有する。特に有用な実施形態では、蛍光プローブは488nm〜514nm又はその付近(アルゴンイオンレーザー励起源の出力による励起に特に適する)又は546nm付近(水銀アーク灯による励起に特に適する)で吸収される。
【0030】
また、多くの蛍光プローブが発色団としても働き得るので、記載されている蛍光プローブは本発明の好ましい発色団でもある。
【0031】
蛍光プローブの他、酵素も標識として使用することができる。酵素は、検出可能なシグナルの増幅が得られ、アッセイによる感受性が高いことから望ましい標識である。酵素自体は検出可能なシグナルを生成しないが、例えば、基質を変換して、蛍光シグナル、比色定量シグナル又は発光シグナル等の検出可能なシグナルを生成することにより、シグナルを生成することができる。標識試薬上の酵素は、検出可能なシグナルへ変換される複数の基質をもたらすので、酵素は検出可能なシグナルを増幅する。サンプル中に存在する標的量が少ない場合、又は酵素に匹敵する、若しくは酵素よりも強いシグナルが得られる蛍光プローブがない場合には酵素が有利である。酵素基質は、好ましい測定可能な生成物、例えば、比色定量物、蛍光又は化学発光を生じるように選択する。このような基質は当技術分野で広く用いられており、その多くがMOLECULAR PROBES HANDBOOKに記載されている。
【0032】
特定の実施形態では、比色定量基質又は蛍光基質と酵素の組合せとして、セイヨウワサビペルオキシダーゼ等のオキシドレダクターゼと特徴的な色を生じる3,3’−ジアミノベンジジン(DAB)及び3−アミノ−9−エチルカルバゾール(AEC)(それぞれ褐色及び赤色)等の基質を用いる。検出可能な生成物を生じる他の比色定量オキシドレダクターゼ基質としては、限定されるものではないが、2,2−アジノ−ビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)(ABTS)、o−フェニレンジアミン(OPD)、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)、o−ジアニシジン、5−アミノサリチル酸、4−クロロ−1−ナフトールが挙げられる。蛍光基質としては、限定されるものではないが、ホモバニリン酸又は4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル酢酸、還元フェノキサジン及び還元ベンゾチアジンアジン(anプレックス(登録商標)レッド試薬及びその変異体(米国特許第4,384,042号明細書)を含む)及び還元ジヒドロキサンテン(ジヒドロフルオレセイン(引用することにより本願明細書の一部とされる米国特許第6,162,931号明細書)を含む)及びジヒドロローダミン(ジヒドロローダミン123を含む)が挙げられる。チラミド(引用することにより本願明細書の一部とされる、米国特許第5,196,306号明細書;同第5,583,001号明細書及び同第5,731,158号明細書)であるペルオキシダーゼ基質は、酵素作用の前に本質的に検出可能であるが、チラミドシグナル増幅(TSA)として記載されているプロセスにおけるペルオキシダーゼの作用によって「適切な位置に固定される」という点で、ユニークなペルオキシダーゼ基質種であると言える。これらの基質は、次に行われる顕微鏡、フローサイトメトリー、光学走査及び蛍光測定法による基質検出のために、細胞、組織又はアレイであるサンプル中の標的を標識するために広く用いられている。
【0033】
別の比色定量(場合によっては蛍光)基質と酵素の組合せとしては、酸性ホスファターゼ、アルカリ性ホスファターゼ又はこのようなホスファターゼの組換え体等のホスファターゼ酵素を、5−ブロモ−6−クロロ−3−インドリルホスフェート(BCIP)、6−クロロ−3−インドリルホスフェート、5−ブロモ−6−クロロ−3−インドリルホスフェート、p−ニトロフェニルホスフェート、又はo−ニトロフェニルホスフェート等の比色定量基質と、或いは4−メチルウンベリフェリルホスフェート、6,8−ジフルオロ−7−ヒドロキシ−4−メチルクマリニルホスフェート(DiFMUP、引用することにより本願明細書の一部とされる米国特許第5,830,912号明細書)、フルオレセインジホスフェート、3−O−メチルフルオレセインホスフェート、レゾルフィンホスフェート、9H−(1,3−ジクロロ−9,9−ジメチルアクリジン−2−オン−7−イル)ホスフェート(DDAOホスフェート)、又はELF 97、ELF 39若しくは関連のホスフェート(引用することにより本願明細書の一部とされる米国特許第5,316,906号明細書及び同第5,443,986号明細書)等の蛍光基質と組み合わせて用いる。
【0034】
グリコシダーゼ、特にβ−ガラクトシダーゼ、β−グルクロニダーゼ及びβ−グルコシダーゼが更に好適な酵素である。適当な比色定量基質としては、限定されるものではないが、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルβ−D−ガラクトピラノシド(X−gal)及び類似のインドリルガラクトシド、グルコシド、及びグルクロニド、o−ニトロフェニルβ−D−ガラクトピラノシド(ONPG)及びp−ニトロフェニルβ−D−ガラクトピラノシドが挙げられる。好ましい蛍光基質としては、レゾルフィン(resorufm)β−D−ガラクトピラノシド、フルオレセインジガラクトシド(FDG)、フルオレセインジグルクロニド及びそれらの構造変異体(引用することにより本願明細書の一部とされる、米国特許第5,208,148号明細書;同第5,242,805号明細書;同第5,362,628号明細書;同第5,576,424号明細書及び同第5,773,236号明細書)、A−メチルウンベリフェリルβ−D−ガラクトピラノシド、カルボキシウンベリフェリルβ−D−ガラクトピラノシド及びフッ素化クマリンβ−D−ガラクトピラノシド(引用することにより本願明細書の一部とされる米国特許第5,830,912号明細書)が挙げられる。
【0035】
更なる酵素としては、限定されるものではないが、コリンエステラーゼ及びペプチダーゼ等のヒドロラーゼ、グルコースオキシダーゼ及びシトクロムオキシダーゼ等のオキシダーゼ、並びに好適な基質が既知であるレダクターゼが挙げられる。
【0036】
本発明の特定の実施形態は、限定されるものではないが、天然型及び組換え型のルシフェラーゼとエクオリン等、化学発光シグナルを生成するための酵素とそれらの好適な基質を含む。更に、好適なジオキセタン、ルミノール、イソルミノール及びアクリジニウムを含有するもの等、ホスファターゼ、グリコシダーゼ及びオキシダーゼに対する化学発光生成基質が有用である。
【0037】
更なる実施形態は、ビオチン等のハプテンを含む。ビオチンは酵素系に作用して検出可能なシグナルを更に増幅することができ、かつ、単離するためのアフィニティークロマトグラフィーで使用されるタグとしても機能可能であることから有用である。検出目的では、ビオチンに対して親和性を有するアビジン−HRP等の酵素コンジュゲートが用いられる。その後、ペルオキシダーゼ基質を加えて検出可能なシグナルを生成させる。
【0038】
またハプテンには、ホルモン、天然及び合成薬物、汚染物質、アレルゲン、エフェクター分子、増殖因子、ケモカイン、サイトカイン、リンホカイン、アミノ酸、ペプチド、化学中間体、ヌクレオチド等も含まれる。
【0039】
蛍光タンパク質はまた、本発明の標識試薬の標識としても使用される。蛍光タンパク質の例としては、緑色蛍光タンパク質(GFP)及びフィコビリタンパク質及びその誘導体が挙げられる。これらの蛍光タンパク質、特にフィコビリタンパク質は、タンデム色素で標識された標識試薬を作出するのに特に有用である。これらのタンデム色素は、蛍光タンパク質と、放射スペクトルが蛍光タンパク質の吸収スペクトルの波長からさらにシフトされる大きなストークスシフトを得るための蛍光プローブとを含む。これらのタンデム色素は、放射蛍光光が最大限に至適化された場合、言い換えれば、放射光が蛍光タンパク質によってほとんど又は全く再吸収されない場合に、サンプル中の少量の標的を検出するのに特に有意である。機能させるためには、蛍光タンパク質と蛍光プローブがエネルギー移動対として働き、蛍光タンパク質が、蛍光プローブが吸収する波長で放射し、蛍光プローブが、蛍光タンパク質単独で得られることができた波長よりも蛍光タンパク質から遠波長で放射する。特に有用な組合せは、引用することにより本願明細書の一部とされる米国特許第4,520,110号明細書;同第4,859,582号明細書;同第5,055,556号明細書で開示されているフィコビリタンパク質と、米国特許第5,798,276号明細書に開示されているスルホローダミン蛍光プローブ、又は引用することにより本願明細書の一部とされる米国特許出願第09/968/401号明細書及び同第09/969/853号明細書に開示されているスルホン化シアニン、
又は引用することにより本願明細書の一部とされる米国特許第6,130,101号明細書に開示されているスルホン化キサンテン誘導体、及び引用することにより本願明細書の一部とされる米国特許第4,542,104号明細書に開示されている組合せである。或いは、蛍光プローブはエネルギー供与体として作用し、蛍光タンパク質はエネルギー受容体である。
【0040】
一実施形態において、標識は、フルオレセイン、クマリン、ローダミン、5−TMRIA(テトラメチルローダミン−5−ヨードアセトアミド)、(9−(2(又は4)−(N−(2−マレイミジルエチル)−スルホンアミドイル)−4(又は2)−スルホフェニル)−2,3,6,7,12,13,16,17−オクタヒドロ−(1H,5H,11H,15H−キサンテノ、(2,3,4−ij:5,6,7−i’j’)ジキノリジン−18−イウム塩)(テキサス州Red(登録商標))、2−(5−(l−(6−(N−(2−マレイミジルエチル)−アミノ)−6−オキソヘキシル)−1,3−ジヒドロ−3,3−ジメチル−5−スルホ−2H−インドール−2−イリデン)−1,3−プロピルジエニル)−1−エチル−3,3−ジメチル−5−スルホ−3H−インドールイウム塩(Cy(商標)3)、N,N’−ジメチル−N−(ヨードアセチル)−N’−(7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾール−4−イル)エチレンジアミン(IANBDアミド)、6−アクリロイル−2−ジメチルアミノナフタレン(アクリロダン)ピレン、6−アミノ−2,3−ジヒドロ−2−(2−((ヨードアセチル)アミノ)エチル)−1,3−ジオキソ−1H−ベンズ(デ)イソキノリン−5,8−ジスルホン酸塩(ルシファーイエロー)、2−(5−(1−(6−(N−(2−マレイミジルエチル)−アミノ)−6−オキソヘキシル)−1,3−ジヒドロ−3,3−ジメチル−5−スルホ−2H−インドール−2−イリデン)−1,3−ペンタジエニル)−1−エチル−3,3−ジメチル−5−スルホ−3H−インドールイウム塩(Cy(商標)5))、4−(5−(4−ジメチルアミノフェニル)オキサゾール−2−イル)フェニル−N−(2−ブロモアセトアミドエチル)スルホンアミド(Dapoxyl(登録商標)(2−ブロモアセトアミドエチル)スルホンアミド))、(N−(4,4−ジフルオロ−1,3,5,7−テトラメチル−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インダセン−2−イル)ヨードアセトアミド(BODIPY(登録商標)507/545 IA)、(N−(4,4−ジフルオロ−5,7−ジフェニル−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インダセン−3−プロピオニル)−N’−ヨードアセチルエチレンジアミン(BODIPY 530/550 IA)、5−((((2−ヨードアセチル)アミノ)エチル)アミノ)ナフタレン−1−スルホン酸(1,5−IAEDANS)、及びカルボキシ−X−ローダミン、5/6−ヨードアセトアミド(XRIA 5,6)からなる群から選択される蛍光プローブである。標識の別の例は、BODIPY−FL−ヒドラジドである。他の発光標識には、通常、フェナントロリン等のジイミン配位子を有する錯体のルテニウム[Ru(II)]、レニウム[Re(I)]、又はオスミウム[Os(II)]のみならず、ユウロピウム(Eu3+)及びテルビウム(Tb3+)等のランタニドの金属配位錯体が含まれる。
【0041】
免疫沈降プロトコールは一般に、タンパク質ホスファターゼ及び/又はプロテアーゼ阻害剤(例えば、EDTA、PMSF、アプロチニン、バナジウム酸ナトリウム)を添加したRIPAバッファー(1%NP−40又はTriton X−100、1%デオキシコール酸ナトリウム、0.1%SDS、0.15M NaCl、0.01Mリン酸ナトリウムpH7.2、1%Trasylol)等の溶解バッファー中で細胞集団を溶解すること、その細胞溶解液に対象抗体を加えること、4℃で一定期間(例えば、1〜4時間)インキュベートすること、その細胞溶解液にAタンパク質及び/又はGタンパク質セファロースビーズを加えること、4℃で約1時間又はそれ以上インキュベートすること、それらのビーズを溶解バッファー中で洗浄すること、及びそれらのビーズをSDS/サンプルバッファー中に再懸濁させることを含む。対象抗体の、特定の抗原を免疫沈降させる能力は、例えば、ウエスタンブロット解析によりアッセイすることができる。当業者ならば、抗体とバイオマーカーとの結合を増強する、及び、バックグラウンド結合を引き下げるように改変できるパラメーターについて知識があると考えられる。
【0042】
ウエスタンブロット解析は一般に、タンパク質サンプルを調製すること、ポリアクリルアミドゲル(例えば、バイオマーカーの分子量に応じて8%〜20%SDS−PAGE)中でタンパク質サンプルの電気泳動を行うこと、そのタンパク質サンプルをポリアクリルアミドゲルから、ニトロセルロース、PVDF又はナイロン等のメンブランに移すこと、メンブランをブロッキングバッファー、例えば3%BSA又は脱脂乳を含むPBS中でブロッキングすること、メンブランを洗浄バッファー(例えば、PBS−Tween 20)中で洗浄すること、メンブランをブロッキングバッファーで希釈した一次抗体でブロッキングすること、メンブランを洗浄バッファー中で洗浄すること、メンブランを、ブロッキングバッファーで希釈した、酵素基質、例えば、セイヨウワサビペルオキシダーゼ若しくはアルカリ性ホスファターゼ又は放射性分子(例えば、32P又は125I)とコンジュゲートした二次抗体(一次抗体、例えば、抗ヒト抗体を認識する)でブロッキングすること、メンブランを洗浄バッファー中で洗浄すること、及び抗原の存在を検出することを含む。当業者ならば、検出されるシグナルを増強する、及び、バックグラウンドノイズを引き下げるように改変可能なパラメーターについて知識があると考えられる。
【0043】
次に、捕捉分子とバイオマーカーとの結合を検出するための検出分子の使用は、限定されるものではないが、本願明細書に記載されているように、放射性同位元素、及びセイヨウワサビペルオキシダーゼ又はアルカリ性ホスファターゼ等の酵素を含んでもよい。更に、例えば捕捉分子がビーズ又は粒子に結合されている場合には、結合したバイオマーカーを検出及び測定する方法として、フローサイトメトリー(FACS)もまた含んでもよい。
【0044】
また、SAA1及び/又はSAA2のレベルは、限定されるものではないが、PCR、RT−PCR、ノーザンブロット法、サザンブロット法及びアレイ等の当技術分野で周知の標準的技術を用いて関連する核酸のレベルを測定することによりアッセイしてもよい。このようなブロット法及びアレイ技術は当技術分野で周知であり、一般に、標識される相補的核酸とハイブリダイズさせる対象核酸、又はその逆を含む。核酸の標識としては、限定されるものではないが、放射性同位元素及び本願明細書に記載されている他の標識が挙げられる。
【0045】
タンパク質活性は当技術分野で用いられている通りに用いられ、タンパク質の添加又は除去に対する下流応答を直接的又は間接的に示す。従って、タンパク質活性は、限定されるものではないが、例えば、SAA1及び/又はSAA2等のバイオマーカーによって、又はバイオマーカーの受容体への結合によって引き起こされる細胞応答又は生理応答、並びに更なる下流の作用を含む。ホルミルペプチド受容体様1/リポキシンA4受容体(FPRL 1/LXA4R)は、好中球における、SAAに媒介されるIL−8産生に必要であると考えられる(引用することにより本願明細書の一部とされる、He Rら、Blood 101:1572−1581 (2003))。更に、SAAは核因子κB(NFKB)及びマイトジェン活性化タンパク質(MAP)キナーゼERK1/2及びp38(両者とも炎症情報伝達経路において重要な分子である)を活性化する。更に、A−SAAは分泌性ホスホリパーゼA2(sPLA2)の活性を増強する(また、Pruzanski Wら、Biochem J. 1995 JuI 15;309 (Pt 2): 461−4も参照)。従って、SAA1及び/又はSAA2レベルの測定は、限定されるものではないが、例えば、リパーゼ、キナーゼ、炎症性サイトカイン等の酵素のレベル又は活性、並びに例えば、SAA1及び/若しくはSAA2によって活性化又は不活性化されることが知られている、或いはSAA1/SAA2受容体経路に関与することが知られているNFKBのような活性化された核転写因子等の他のエフェクター分子のレベルの測定を含む。
【0046】
SAA1及び/又はSAA2のレベルが測定されれば、これらの測定レベルをSAA1及び/又はSAA2の正常レベルと比較して、SAA1及び/又はSAA2の測定レベルと正常レベルとの差を求める。SAA1及び/又はSAA2の正常レベルと測定レベルとの差は、その被験者が肥満であるか、又は健常な被験者よりも肥満になる確率が高い(又は低い)ことを示すと考えられる。更にまた、SAA1及び/又はSAA2の測定レベルと正常レベルとの差は、肥満症の程度、又は健常な被験者と比較した場合の、肥満となる確率値を示すと考えられる。
【0047】
同様に、SAA1及び/又はSAA2の正常レベルと測定レベルのと差は、その被験者がある特定の異常状態を有するか、又は健常な被験者よりも異常状態を生じる確率が高い(又は低い)ことを示し得る。更にまた、SAA1及び/又はSAA2の測定レベルと正常レベルとの差は、異常の程度、又は健常な被験者と比較した場合の、異常状態を生じる確率値を示し得る。
【0048】
SAA1及び/又はSAA2の測定レベルと正常レベルとの差は、相対量であっても絶対量であってもよい。当然ながら、この差はゼロに相当する場合もあり、その場合には患者が正常であること、又はバイオマーカーのレベルが過去のアッセイから変化していないことを示す。この差は、更なる測定又は操作を行わない、単に、例えば、測定蛍光値、放射線測定レベル、測定密度、質量値等であってもよい。或いは、この差は、限定されるものではないが、標品を含む別の化合物の測定レベルに対する抗原の測定レベルの百分率又は比率として表してもよい。この差は負の値である場合もあり、その場合には測定されたバイオマーカーの量が正常レベルよりも低いか、又は過去の測定から低下していることを示す。また、この差は正の値である場合もあり、その場合には測定された抗原の量が正常レベルよりも高いか、又は過去の測定から増加していることを示す。この差はまた、異なる時点において測定された抗原に対するそれ自体の差又は比率として表してもよい。この差はまた、生データが操作されるアルゴリズムに用いて測定してもよい。
【0049】
更に、A−SAAはまた、血管内皮細胞及び単球における炎症性サイトカインの産生を直接刺激することから、A−SAAがヒト好中球においてインターロイキン8(IL−8)及びTNFαの産生を誘発するという報告を拡大適用して、SAAが炎症性アジポサイトカインであることが確認される。従って、本発明はまた、特定の病態の指標ともなるA−SAA及び更なるバイオマーカーのレベルを測定することを含む診断又はスクリーニング法も提供する。一実施形態において、例えば、本発明は、SAA1及び/又はSAA2のレベルを測定すること、また、限定されるものではないが、IL−6、IL−8、MCP−1、PAI−1、TNFα及びRANTESを含む更なるバイオマーカーのレベルを測定することを含む、肥満症又は関連の異常状態に関して被験者を診断又はスクリーニングする方法を提供する。
【0050】
興味深いところでは、肥満症は、SAAが一成分であるHDLが低いことに関連性があるという点が注目される
(Chan DCら、Am J Cardiovasc Drugs 4:227−246 (2004);Avenell Aら、J Hum Nutr Diet 17:293−316 (2004);Wagh Aら、Expert Rev Cardiovasc Ther 2:213−228 (2004)、全て引用することにより本願明細書の一部とされる)。SAAとHDLとの相互作用はHDLの分解を促進するので、本発明は、肥満症における脂肪由来A−SAAの増加が、肥満症と低HDLと高い心血管疾患リスクとの間の機械的連結子であり得ることを教示する。
【0051】
A−SAAは血管内皮細胞及び単球由来細胞からの数種のサイトカインの産生を刺激するが、このことはA−SAAが炎症性応答の媒介因子であることを示す。血管内皮細胞及び単球に対するA−SAAの炎症作用により、A−SAAが肥満症と心血管疾患の間の連結子であることが確認される。マウスでは、アテローム性動脈硬化症の亢進は、血漿リポタンパク質に依存しない高脂肪・高コレステロール食によって誘発される血清A−SAAレベルに関連しているが、このことはSAAがアテローム性動脈硬化症を直接誘発し得るということを示す(引用することにより本願明細書の一部とされる、Lewis KEら、Circulation 110:540−545 (2004))。女性虚血症候群評価(WISE)の研究において、Johnsonらは、A−SAAは、C反応性タンパク質(CRP)に比べ、血管造影的冠動脈疾患に独立して関連し、3年心血管事象を高く予測することを見出している(引用することにより本願明細書の一部とされる、Johnson BDら、Circulation 109:726−732 (2004))。
【0052】
従って、本発明は、被験者の異常状態を診断又は検査する方法であって、血清アミロイドAタンパク質1(SAA1)及び/又は血清アミロイドAタンパク質2(SAA2)のレベルを測定することと、これらの測定されたレベルとSAA1及び/又はSAA2の許容される正常レベルとを各々比較することと、を含み、被験者の測定レベルと正常レベルとの差は、被験者の肥満症又は異常状態の存在を示す方法を提供する。
【0053】
診断又はスクリーニングされる異常状態は、必ずというわけではないが、多くの場合、被験者の肥満症と関連している。従って、診断又はスクリーニングされる異常状態は、必ずというわけではないが、肥満の被験者に存在する可能性がある。本発明の方法を用いて診断又はスクリーニングすることができる異常状態の例としては、限定されるものではないが、糖尿病、高血圧症、異脂肪血症、高コレステロール血症、炎症及びアテローム性動脈硬化症が挙げられる。(Haslam DWら. Lancet. 366(9492): 1197−209 (2005)及びShaw DIら. Proc Nutr Soc. 64(3): 349−57 (2005)参照。)
他の異常状態としては、限定されるものではないが、関節リウマチ(RA)、原発性胆汁性肝硬変、慢性活動性肝炎、感染(急性又は慢性敗血症)、進行癌、糖尿病性腎症、クローン病、潰瘍性大腸炎、膵炎、喘息、アレルギー性鼻炎等の炎症状態が挙げられる。スクリーニング、診断又は処置可能な他の異常状態としては、肥満症に関連する症状である「メタボリック症候群」がある。(引用することにより本願明細書の一部とされる、Dandonaら、Circulation, 111(11): 1448−54 (2005)参照。)
【0054】
異常状態を診断又はスクリーニングする特定の一実施形態では、少なくともSAA1が測定される。異常状態を診断又はスクリーニングする別の特定の実施形態では、少なくともSAA2が測定される。異常状態を診断又はスクリーニングする更に別の特定の実施形態では、少なくともA−SAA(SAA1及びSAA2)が測定される。
【0055】
また、本発明は、被験者の肥満症又は異常状態の進行度を監視する方法であって、異なる2時点において被験者の血清アミロイドAタンパク質1(SAA1)及び/又は血清アミロイドAタンパク質2(SAA2)のレベルを測定することと、これら2時点の測定レベルを比較して、SAA1及び/又はSAA2の経時レベルの差を求めることと、を含み、経時レベルの差は、患者の肥満症又は肥満状態の進行度又は退行度を示す方法を提供する。本願明細書で用いられる「進行度を監視する」という語句は、被験者の異常状態を定期的に検査し、本発明の方法を用いて被験者のSAA1及び/又はSAA2のレベルを分析して個体の異常状態が進行(悪化)している、退化(改善)している、又は無変化状態(変化を検出できない)のままかどうかを判定することを意味する。監視する方法は、異常状態の治療と共に用いて治療効果を監視してもよい。従って、「進行度を監視する」は、SAA1及び/又はSAA2のレベルを定期的に測定し、被験者のSAA1及び/又はSAA2の経時レベルの差と、異常状態の進行、退行、又は無変化状態とを相互に関連付けることによって、治療計画の効果を評価することを指す。監視は、サンプルが採取された2時点又はそれ以上の時点において行ってもよく、所与の被験者のある特定の時点においてのSAA1及び/又はSAA2のレベルを、1又は複数の時点においての同一被験者のSAA1及び/又はSAA2のレベルと各々比較してもよい。
【0056】
また、本発明は、肥満症又は肥満症に関連する異常状態を治療する方法を提供する。本願明細書で用いられる「治療」という用語は、計画された処置によって、被験者の肥満症又は異常状態の1又は複数の原因、症状、又は有害作用が改善することを意味する。更に、「治療する」という用語は、治療を行うことを指すのに用いられる。治療とは、被験者を治療することができるがその必要はなく、つまり、被験者の異常状態の原因を除去、或いは症状及び/又は有害作用を完全に除去することである。従って、治療は、被験者を治療して、症状、例えば、限定されるものではないが、高血圧、疲労感、頭痛、視覚障害、悪心、吐き気、動脈疾患、及び不整脈等を改善することを含んでもよい。また、本発明は、肥満症に関連する異常状態の進行度を予防する方法を提供する。
【0057】
また、本発明は、肥満症及び/又は異常状態を治療することに関連し、それを必要とする患者にSAA1及び/又はSAA2のレベルを減少させることができる化合物を被験者に投与することを含む。SAA1及び/又はSAA2に関連して用いられる活性レベルは、SAA1及び/又はSAA2の活性中のSAA1及び/又はSAA2レベルの量を指す。従って、SAA1及び/又はSAA2の活性レベルを減少させる方法は、限定されるものではないが、SAA1及び/又はSAA2の量を除去或いは減少させる、又は分子が受容体と結合できない、或いは被験者の生化学的経路を活性化できないようにSAA1及び/又はSAA2と結合させることを含む。また、活性レベルの低下は、SAA1及び/又はSAA2受容体を、SAA1及び/又はSAA2をそれらの受容体と結合させない化合物と結合させることを含む。一実施形態において、その方法は、被験者のSAA1の活性レベルを減少させることを含む。別の実施形態において、その方法は、被験者のSAA2の活性レベルを減少させることを含む。更なる別の実施形態において、その方法は、被験者のA−SAAの活性レベルを減少させることを含む。特定の一実施形態において、投与される化合物は、PPARγアゴニスト、例えば、限定されるものではないが、ロジグリタゾンである。本願明細書で用いられる「投与する」及び「投与すること」という用語は、少なくとも1種類の化合物を被験者に導入することを意味する。投与とは、治療が目的である場合、治療される肥満症の発現、診断、或いは異常状態の診断時又は診断後に、物質が与えられることである。この物質を治療目的で投与することによって、任意の症状を改善、又は発症による更なる症状の予防を改善する。異常状態の発症を予防する目的で投与(「予防投与」)が行われる場合、可視或いは検出可能な症状、又は異常状態を示す前に、物質は与えられる。物質の予防投与によって、後に発症する症状を改善、又は、危険性がある或いはないと考えられる被験者において症状を全く発症させないように予防する。組成物の投与経路は、限定されるものではないが、局所、経皮、鼻腔、膣、直腸、経口、皮下静脈内、動脈内、筋肉内、骨内、腹腔内、硬膜外、及び髄腔内を含む。
【0058】
更に、肥満症又は異常状態を治療又は予防する方法は、SAAl及び/又はSAA2のレベルを減少させる化合物に加えて1又は複数の物質を併用することにも関連する。「併用投与する」という用語は、少なくとも2種類の化合物の生物活性又は効果を示す期間が重複する時間枠において、それらの化合物が投与されることを指す。従って、この用語は、本発明の化合物の同一時間にわたる投与のみならず連続投与も含む。更に、化合物の投与と同様、1種類以上の物質の併用投与を、治療及び又は予防目的で行うことができる。1種類以上の物質が併用投与される場合、2種類以上の投与経路が同一である必要はない。本発明の範囲は、併用投与される可能性のある物質の同定によって限定されない。例えば、ロジグリタゾンを、別の薬理学的な活性物質、例えば、限定されるものではないが、交感神経遮断薬又は他のαアドレナリンアゴニスト、αアドレナリン受容体アンタゴニスト、β1及びβ2アドレナリンアンタゴニスト(ベータ受容体遮断薬)ACE阻害剤(アンギオテンシン変換酵素阻害剤)、血管拡張剤、カルシウムチャンネル遮断薬、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤、及びインスリン等と併用投与してもよい。併用してもよい更なる薬剤は、限定されるものではないが、抗生物質を含む。
【0059】
また、本発明は、SAA1、SAA2、及び/又はA−SAAに対して特異的である抗体を提供する。抗原としてKLHにコンジュゲートされるSAA1−特異性ペプチドN’−AISDARENIQRFFG−C’及びSAA2−特異性ペプチドN’−VISNARENIQRLTG−3’を使用して、本発明者らは、SAA1及びSAA2−特異性ペプチドポリクローナル抗体を作製した。イソフォーム特異性抗原は、SAA1又はSAA2のいずれかを検知するが、双方を検知しない。本願明細書で用いられる「抗体」という用語は、フラグメント源又はフラグメントの作製方法に関わらず、免疫グロブリン分子及びその機能性フラグメントを意味する。本願明細書で用いられる免疫グロブリンの「機能性フラグメント」は、結合標的に特異的に結合する免疫グロブリン分子の部分である。従って、本願明細書で用いられる「抗体」という用語は、限定されるものではないが、IgG、IgM、IgA、IgD、IgE、及びIgYを含む、イソ型の抗体等の抗体を全て包含する。全ての抗体は、モノクローナル又はポリクローナルであってよく、ヒト化又はキメラ化であってよい。本願明細書で用いられる「モノクローナル抗体」という用語は、限定されるものではないが、ハイブリドーマ技術によって作製される抗体である。更に、「モノクローナル抗体」という用語は、任意の成熟核、原核、又はファージクローンを含む単一クローンに由来する抗体を意味し、その作製方法は言及されない。また、「抗体」という用語は、免疫グロブリンの機能性フラグメントを包含し、限定されるものではないが、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)フラグメント、及びFdフラグメントを含む。また、抗体は、単鎖抗体、単鎖Fv(scFv)、ジスルフィド結合されたFv等のV及び又はVの少なくとも一部を含む免疫グロブリンのフラグメントを包含する。
【0060】
本発明の抗体は、単一特異性、二重特異性、三重特異性、又は更にそれを超える多重特異性であってもよい。更に、これらの抗体は、一価、二価、三価、又は更にそれらを超える多価であってもよい。更に、本発明の抗体は、限定されるものではないが、鳥類及び哺乳類を含む動物由来のものであってもよい。特定の実施形態では、抗体はヒト、ネズミ、ラット、ヒツジ、ウサギ、ヤギ、モルモット、ウマ、又はニワトリの抗体である。本願明細書において「ヒト」抗体としては、ヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を有する抗体を含み、また、引用することにより本願明細書の一部とされる米国特許第5,939,598号明細書に記載されているように、ヒト免疫グロブリンライブラリーから、又は1又は複数のヒト免疫グロブリンに対してトランスジェニックで、かつ、内因性の免疫グロブリンを発現しない動物から単離された抗体を含む。
【0061】
本発明の抗体は、それらが認識する、又は特異的に結合するポリペプチドのエピトープ又は部分に関して記載又は明示することができる。或いは、抗体は、抗原自体がSAA受容体等の別の分子と結合している場合、抗原のコンフォメーション、例えばSAA1又はSAA2等の抗原の特定のコンフォメーションと結合する能力に基づいて記載することもできる。
【0062】
また、本発明の抗体を、抗原との結合親和性のみならず交差反応性に関して説明又は特定してもよい。本発明における結合親和性の具体例には、限定されるものではないが、5×10−2M、10−2M、5×10−3M、10−3M、5×10−4M、10−44M、5×10−5M、10−5M、5×10−6M、10−6M、5×10−7M、10−7M、5×10−8M、10−8M、5×10−9M、10−9M、5×10−10M、10−10M、5×10−11M、10−11M、5×10−12M、10−12M、5×10−13M、10−13M、5×10−14M、10−14M、5×10−15M、又は10−15M未満の解離定数が挙げられる。
【0063】
また、本発明の抗体としては例えば、いずれかの分子種を抗体と共有結合させることによって(ただし、共有結合は、抗体が抗イディオタイプ応答を生じるのを妨げないように)改変されている誘導体も含む。抗体修飾の例としては、限定されるものではないが、グリコシル化、アセチル化、ペグ化、リン酸化、アミド化、既知の保護/遮断基による誘導体化、タンパク質分解切断、細胞リガンド又は他のタンパク質との結合等が挙げられる。多くの化学修飾はいずれも、限定されるものではないが、特異的化学切断、アセチル化、ホルミル化、ツニカマイシンの代謝合成等を含む既知の技術によって行うことができる。更に、誘導体は1又は複数の非天然アミノ酸を含み得る。
【0064】
本発明の一実施形態では、抗体はSAA1に対して特異的である。更に特定の実施形態では、SAA1に対して特異性を有する抗体は、SAA2に対しては検出可能な結合親和性を持たない。逆に、本発明はまた、SAA2に対して特異的な抗体も提供する。更に特定の実施形態では、SAA2に対して特異性を有する抗体は、SAA1に対しては検出可能な結合親和性を持たない。最後に、本発明は、A−SAAに対して特異性を有する抗体を提供する。
【0065】
本発明の抗体は、当技術分野で周知の好適ないずれの方法によって作製してもよい。SAA1及び/又はSAA2に対するポリクローナル抗体を、当技術分野で周知の様々な手法によって作製することができる。例えば、SAA1及び/又はSAA2は、限定されるものではないが、ウサギ、マウス、ラットを含む様々な宿主動物に投与して、抗原に特異的なポリクローナル抗体を含有する血清の産生を誘発することができる。宿主種に応じ、様々なアジュバントを用いて免疫応答を増強することができ、限定されるものではないが、フロイントの(完全及び不完全)アジュバント、水酸化アルミニウム等の無機ゲル、リゾレシチン等の界面活性物質、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油性エマルション、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノール、並びにBCG(カルメットゲラン菌)及びジフテリア菌等の潜在的に有用なヒトアジュバントが挙げられる。このようなアジュバントも当技術分野で周知である。
【0066】
モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ、組換え体及びファージディスプレー技術、又はその組合せを含む、当技術分野で周知の多様な技術を用いて作製することができる。例えば、モノクローナル抗体は、当技術分野で周知であり、例えば、(Harlowら、Antibodies: A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press, 第2版, 1988);Hammerlingら、in: Monoclonal Antibodies and T−Cell Hybridomas 563−681 (Elsevier, N.Y., 1981)(双方とも、引用することにより本願明細書の一部とされる)で教示されているものを含むハイブリドーマ法を用いて作製することができる。
【0067】
ハイブリドーマ法を用いて特定の抗体を作製及びスクリーニングする方法は当技術分野で慣例かつ周知である。非限定的な例では、マウスを、SAA1及び/又はSAA2を含む融合タンパク質で免疫化する。免疫応答を検出したら、マウス脾臓を採取し、脾細胞を単離する。次に、これらの脾細胞を周知の技術によって好適な骨髄腫細胞、例えば、ATCCから入手可能な細胞系統SP20由来の細胞と融合させる。ハイブリドーマは制限希釈によって選択及びクローニングする。次に、これらのハイブリドーマクローンを当技術分野で周知の方法により、本発明のバイオマーカーと結合できる抗体を分泌する細胞に関してアッセイすることができる。一般に高レベルの抗体を含む腹水は、マウスを陽性ハイブリドーマクローンで免疫化することにより作製することができる。
【0068】
本発明の抗体はまた、当技術分野で周知の様々なファージディスプレーを用いて作製することができる。ファージディスプレー法では、機能性抗体ドメインを、コードするポリヌクレオチド配列を有するファージ粒子の表面に提示する。特定の実施形態では、このようなファージを用いて、レパートリー又はコンビナトリアル抗体ライブラリーから発現した抗原結合ドメインを提示する。対象抗原と結合する抗原結合ドメインを発現するファージは、標識抗原、又は固相表面若しくはビーズに結合又は捕捉された抗原を用いる等して、対象抗原を用いて選択又は同定することができる。これらの方法に用いられるファージは、一般に、限定されるものではないが、ファージ遺伝子III又は遺伝子VIIIタンパク質のいずれかと組換え融合されたFab、Fv又はジスルフィド結合で安定化されたFv抗体ドメインを有するファージから発現したfd及びM13結合ドメインを含む、繊維状ファージである。本発明の抗体を作製するために使用可能なファージディスプレー法の例としては、Brinkmanら、J. Immunol.Methods 182:41−50 (1995);Amesら、J. Immunol Methods 184:177−186 (1995);Kettleboroughら、Eur. J. Immunol.24:952−958 (1994);Persicら、Gene 187 9−18 (1997);Burtonら、Advances in Immunology 57:191−280 (1994);国際出願第PCT/GB91/01134号パンフレット;国際公開第90/02809号パンフレット;同第91/10737号パンフレット;同第92/01047号パンフレット;同第92/18619号パンフレット;同第93/11236号パンフレット;同第95/15982号パンフレット;同第95/20401号パンフレット;及び米国特許第5,698,426号明細書;同第5,223,409号明細書;同第5,403,484号明細書;同第5,580,717号明細書;同第5,427,908号明細書;同第5,750,753号明細書;同第5,821,047号明細書;同第5,571,698号明細書;同第5,427,908号明細書;同第5,516,637号明細書;同第5,780,225号明細書;同第5,658,727号明細書;同第5,733,743号明細書及び同第5,969,108号明細書(全て、引用することにより本願明細書の一部とされる)に開示されているものが挙げられる。
【0069】
特定のエピトープ、例えば、SAA1及び/又はSAA2を認識する抗体フラグメントは周知の技術により作製することができる。例えば、本発明のFab及びF(ab’)フラグメントは、パパイン(Fabフラグメントの作製のため)又はペプシン(F(ab’)フラグメントの作製のため)等の酵素を用いた免疫グロブリン分子のタンパク質分解切断によって作製することができる。F(ab’)フラグメントは、可変領域と軽鎖定常領域と重鎖CH1ドメインを含む。
【0070】
組換え技術等の他の方法を用いてFab’及びF(ab’)フラグメントを作製することもでき、このような方法は国際公開第92/22324号パンフレット;
Mullinaxら、BioTechniques 12(6): 864−869 (1992);Sawaiら、AJRI 34:26−34 (1995);及びBetterら、Science 240: 1041−1043 (1988)(これらは引用することにより本願明細書の一部とされる)に開示されている。ファージの選択後、例えば、そのファージ由来の抗体コード領域を単離し、これを用いてヒト抗体を含む完全抗体、又は他の所望の抗原結合フラグメントを作製し、哺乳類細胞、昆虫細胞、植物細胞、酵母及び細菌を含む所望の宿主で発現させることができる。
【0071】
scFv等の多種のフラグメントを作製するために使用可能な技術の例としては、米国特許第4,946,778号明細書及び同第5,258,498号明細書;Hustonら、Methods in Enzymology 203:46−88 (1991);Shuら、Proc. Nat’lAcad.Sci (USA) 90:7995−7999 (1993);並びにSkerraら、Science 240:1038−1040 (1988)(全て、引用することにより本願明細書の一部とされる)に開示されているものが挙げられる。ヒトの抗体のin vivo使用及びin vitro検出アッセイを含むいくつかの使用では、キメラ、ヒト化又はヒト抗体を用いるのが好ましい場合がある。キメラ抗体は、ネズミモノクローナル抗体に由来する可変領域とヒト免疫グロブリン定常領域とを有する抗体等、種々の抗体部分が異なる動物種に由来している分子である。キメラ抗体を作製する方法は当技術分野で周知である。例えば、Morrison, Science 229:1202 (1985);Oiら、BioTechniques 4:214 (1986);Gilliesら、J. Immunol. Methods 125:191− 202(1989);米国特許第5,807,715号明細書;同第4,816,567号明細書;及び同第4,816,397号明細書(全て、引用することにより本願明細書の一部とされる)参照。ヒト化抗体は、非ヒト種由来の1又は複数の相補性決定領域(CDR)とヒト免疫グロブリン分子由来のフレームワーク領域とを有する、所望の抗原と結合する非ヒト種抗体由来の抗体分子である。多くの場合、ヒトフレームワーク領域内のフレームワーク残基は、抗原結合を改変、好ましくは改善するためにCDR供与抗体由来の対応する残基で置換される。これらのフレームワーク置換は、例えば、抗原結合にとって重要なフレームワーク残基を同定するためにCDRとフレームワーク残基の相互作用のモデリングを行う、及び特定の位置において異常なフレームワーク残基を同定するために配列比較を行う等、当技術分野で周知の方法によって同定される(米国特許第5,585,089号明細書;Riechmannら、Nature 332:323 (1988)(双方とも、引用することにより本願明細書の一部とされる)参照。)。抗体は、例えば、CDRグラフト(欧州特許第239,400号明細書;国際公開第91/09967号パンフレット;米国特許第5,225,539号明細書;同第5,530,101号明細書;及び同第5,585,089号明細書)、ベニヤリング又はリサーフェイジング(欧州特許第592,106号明細書;欧州特許第519,596号明細書;Padlan, Molecular Immunology 28(4/5): 489−498 (1991);Studnickaら、Protein Engineering 7(6): 805−814 (1994); Roguska. et al, Proc. Nat’l. Acad. ScL 91:969−913 (1994))、並びにチェーンシャッフリング(米国特許第5,565,332号明細書)(全て、引用することにより本願明細書の一部とされる)を含む、当技術分野で周知の様々な技術を用いてヒト化することができる。
【0072】
完全なヒト抗体がヒト患者の治療的処置又は診断に特に望ましい場合もある。ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン配列に由来する抗体ライブラリーを用いた上記のファージディスプレー法を含む当技術分野で周知の様々な方法によって作製することができる。米国特許第4,444,887号明細書及び同第4,716,111号明細書;並びに国際公開第98/46645号パンフレット、同第98/50433号パンフレット、同第98/24893号パンフレット、同第98/16654号パンフレット、同第96/34096号パンフレット、同第96/33735号パンフレット、及び同第91/10741号パンフレット(各々、引用することにより本願明細書の一部とされる)も参照。
【0073】
また、ヒト抗体は、機能的な内因性免疫グロブリンは発現できないが、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現できるトランスジェニックマウスを用いて作製することもできる。例えば、ヒト重鎖及び軽鎖免疫グロブリン遺伝子複合体をマウス胚幹細胞に無作為に導入するか、又は相同組換えにより導入することができる。或いは、ヒト重鎖及び軽鎖遺伝子に加えて、ヒト可変領域、定常領域及び多様性領域をマウス胚幹細胞に導入してもよい。マウス重鎖及び軽鎖免疫グロブリン遺伝子は、相同組換えによるヒト免疫グロブリン遺伝子座の導入とは別に、又は同時に非機能的にすることができる。特に、JH領域の同形接合欠如は内因性の抗体産生を妨げる。これらの改変された胚幹細胞を増殖させ、胚盤胞のマイクロインジェクションを行い、キメラマウスを作出する。次に、これらのキメラマウスを交配させ、ヒト抗体を発現する同形接合性の後代を作出する。これらのトランスジェニックマウスを常法にて、SAA1及び/又はSAA2等の選択した抗原で免疫化する。抗原に対するモノクローナル抗体は、免疫化されたトランスジェニックマウスから通常のハイブリドーマ法を用いて得ることができる。トランスジェニックが保持するヒト免疫グロブリン導入遺伝子はB細胞の分化時に再配列を起こし、続いて、クラススイッチングと体細胞突然変異が起こる。従って、このような技術を用いると、治療上有用なIgG、IgA、IgM及びIgE抗体を作製することができる。ヒト抗体を作製するためのこの技術の総説としては、引用することにより本願明細書の一部とされる、Lonberg and Huszar, Int. Rev. Immunol.13:65−93 (1995)を参照。ヒト抗体及びヒトモノクローナル抗体を作製するためのこの技術、並びにこのような抗体を作製するプロトコールに関する詳述としては、例えば、国際公開第98/24893号パンフレット;同第92/01047号パンフレット;同第96/34096号パンフレット;同第96/33735号パンフレット;欧州特許第0598877号明細書;米国特許第5,413,923号明細書;同第5,625,126号明細書;同第5,633,425号明細書;同第5,569,825号明細書;同第5,661,016号明細書;同第5,545,806号明細書;同第5,814,318号明細書;同第5,885,793号明細書;同第5,916,771号明細書;及び同第5,939,598号明細書(引用することにより本願明細書の一部とされる)を参照。
【0074】
ヒト抗体を作製するための更に別のアプローチでは、ガイデッド・セレクション(guided selection)と呼ばれる技術を用いる。ガイデッド・セレクションでは、選択された非ヒトモノクローナル抗体、例えば、マウス抗体を用い、同じエピトープを認識する完全ヒト抗体の選択を導く。(引用することにより本願明細書の一部とされる、Jespersら、Biotechnology 12:899−903 (1988))
【0075】
また、本発明は、本願明細書に記載される方法を実施するためのキットを提供する。本発明のキットは、本発明の実施に有用である1又は複数の試薬を含有する1又は複数の容器を含んでもよい。本発明のキットは、本発明の方法を実施するのに有用な1又は複数のバッファー又はバッファー塩を含有する容器を含んでもよい。本発明のキットは、酵素基質を含有する容器を含んでもよい。例えば、本発明のキットは、酵素活性、つまり、ワサビペルオキシダーゼまたはアルカリ性ホスファターゼを検知するのに有用な1又は複数の基質を含んでもよい。
【0076】
本発明のキットは、周知の濃度の抗原ストックを含有する容器を含んでもよい。例えば、周知の濃度のストックを使用して、検量線を作成してもよい。次いで、検量線を使用して、サンプル中の抗原の量を測定してもよい。
【0077】
本発明のキットは、本発明の方法を実施するのに使用できる1又は複数のコンピュータプログラムを含んでもよい。例えば、対象とするバイオマーカーに結合する抗体の検出レベルの結果からサンプル中のSAA1及び/又はSAA2の濃度を計算するコンピュータプログラムを提供してもよい。このようなコンピュータプログラムは、市販の機器、例えば、市販のマイクロプレートリーダーと互換性があってよい。サンプル中の抗原濃度を測定する場合、周知の標準濃度のストックを、様々に希釈して、マイクロプレートの様々なウェルにアプライしてもよい。本発明のプログラムは、マイクロプレートリーダーから出力値を読み込み、ウェルで観察される光学密度から検量線を作成し、レベルの読み込み値と抗原の周知の量を含有するウェルの光学密度の読み込み値とを比較し、サンプル中に存在する抗原の量を測定することができる。
【実施例】
【0078】
ヒト被験者
ヒトでの研究は全て、各施設の治験審査委員会によって認可されたものであり、各参加者からは参加意志のインフォームド・コンセントを書面で得た。全員から一晩絶食後の血液サンプルを採取し、血清を使用するまで約−800℃で保存した。被験者は全て、プロトコールに特に記載がない限り、病歴、健康診断及び臨床検査によれば健康であった。急性炎症の臨床的又は試験的証拠を示した被験者はいなかった。
【0079】
統計分析
結果は平均値±SEMで示す。図面の凡例に示されているように、必要に応じてスチューデントの片側又は両側t検定を行った。差は、p<0.05で有意であるとみなされた。アーミッシュ被験者の近縁性を制御するために、SOLAR(引用することにより本願明細書の一部とされる、Almasy Lら、Am J Hum Genet 62: 1198−1211 (1998))において実施されるような分散成分分析を用いて、アーミッシュ134名という大きなセットにおけるBMI値とSAAレベルの間の相関を評価した。
【0080】
方法
【0081】
体格指数(BMI)と血清SAAレベルの試験
本試験に用いたヒト被験者は、引用することにより本願明細書の一部とされる、Hsueh WCら,Diabetes Care 23:595−601 (2000)及びPollin TIら、Atherosclerosis 173:89−96 (2004)に従前に記載されているようなアーミッシュ家系糖尿病研究の一環であった。まず、BMIの差が少なくとも3kg/mである、性別及び年齢(5歳以内)が合致する非糖尿病の兄弟姉妹ペア(38名)からの血漿サンプルでSAAレベルを測定した。次に、これら38名を、BMIが17.0〜41.8kg/mの範囲である134名の非糖尿病者からなる拡張セットに含めた。一晩絶食後、血液サンプルを前腕前部の静脈から採血した。BMIは、体重(kg)を身長(m)の二乗で除算して求めた。
【0082】
体重減少試験
24名の定着した過体重又は肥満(BMI33±2kg/m、平均値±SEM)の、閉経後(57±1歳)の女性について5か月の食事療法減量プログラムの前後で試験を行った。介入としては、外来患者低カロリー食プログラム(350kcal/日減)と有酸素運動トレーニングの組合せからなった。脂肪量は、二重X線吸収骨塩定量(モデルDPX−L; Lunar Radiation, Madison, WI)により、1.3z DPX−L拡張分析プログラムを用いて測定した。血清SAAの空腹時レベルを、0時点と5か月の減量プログラム後に測定した。
【0083】
ロジグリタゾン試験
8名の非糖尿病健常被験者(44.7±3.2歳、BMI30.8±1.1kg/m、平均値±SEM)を動員し、ロジグリタゾン(4mg/日)で4週間処置した後、8mg/日で8週間処置した。介入中毎週、空腹時血液を採取した。血清SAAのレベルを、0時点と12週間のロジグリタゾン処置後に測定した。同時点に、本願明細書の他所に記載されているSAA分泌のin vitro試験のため、局所麻酔下で腹部皮下脂肪生検を採取した。
【0084】
RNA分析
マイクロアレイ分析のため、メリーランド大学で治験審査委員会(IRB)により認可されたプロトコールにて、BMI25、28、33及び44の4名の被験者から、ヒト大網脂肪及び皮下脂肪を外科的に得た。約4%アルブミンと約200nMアデノシンを含有するKreb Ringer重炭酸バッファー(KRB−A)中にて、引用することにより本願明細書の一部とされるHonnor RCら、J Biol Chem 260:15122−15129 (1985)に記載されるようなコラゲナーゼ消化によって、単離脂肪細胞及び間質細胞を得た。約200xgで1〜2分遠心分離した後、浮遊している脂肪細胞の下の媒体(間質血管細胞(SVC)を含有する)を取り出し、約800xgで約5分遠心分離した。ペレットとなった細胞をKRB−Aに再懸濁させ、同じ手順を用いて3回洗浄した。浮遊脂肪細胞を浮上分離により数回洗浄した。引用することにより本願明細書の一部とされるFried SKら、J Clin Invest 92:2191− 2198 (1993)に従前に記載されているようなChomzczynski及びSacchiの方法を用いて脂肪細胞及びSVC画分からRNAを抽出した。ノーザン分析のため、ヒト脂肪組織及び肝臓検体をNational Disease Research Interchange (Philadelphia, PA)から購入し、トリゾール(Invitrogen, Carlsbad, CA)を製造業者の使用説明書に従って用い、全RNAを調製した。他のRNAは全てClontech(Palo Alto, CA)から購入した。
【0085】
RT−PCR試験
半定量的RT−PCR分析のため、Advantageキット(Clontech, Palo Alto, CA)を用い、約1μgの全RNA、ポリTプライマー及びMMLV逆転写酵素を含有する反応液中で逆転写を行った。PCRは、一般に、約94℃で約30秒、約55℃で約30秒、及び約72℃で約1分の約28サイクルからなる条件下で行った。分画した脂肪細胞におけるヒトA−SAAの発現を検出するため、プライマー5’−GAGAGAAGCC AATTAC ATCGGC−3’及び5’−AGTATTTCTCAGGCAGGCCAGC−S’を用いた。対照として、ヒトβ−アクチンを、プライマー5’−TTAATGTCACGCACGATTTCC−3’及び5’−AGACCTTCAACACCCCAGCCA−3’を用いて増幅した(引用することにより本願明細書の一部とされる、Xu Hら、JClin lnvest 112:1821−1830 (2003)参照)。RT−PCR産物を約1%アガロースゲル上で電泳動にかけ、臭化エチジウムで染色し、 UV透視法により可視化した。
【0086】
ノーザンブロット法
ノーザン分析のため、全RNA約15μgを各レーンに流した。C57BLマウスのRNAからマウス・マルチティッシュブロットを作製した(引用することにより本願明細書の一部とされる、Yang RZら、Biochem Biophys Res Commun 310:927−935 (2003)参照)。
BC020795のヌクレオチド1〜536に相当するヒトSAA2 cDNA及びU60438のヌクレオチド1〜565に相当するネズミSAA2 cDNAを、ノーザン分析用のプローブとして用いた。これらのプローブはSAA1配列と約97%(ヒト)及び約95%(マウス)同一であったことから、用いたハイブリダイゼーション及び洗浄条件下でSAA1及びSAA2の双方とハイブリダイズした。これらのプローブを32P−dCTPでランダム標識し、約65℃にてRapid−hybバッファー(Amersham)中でハイブリダイゼーションを行った。ブロットを約65℃、約0.5×SSC/1%SDSで2回洗浄した(ストリンジェント洗浄)。
【0087】
脂肪器官培養からのSAAの分泌
脂肪器官培養は、引用することにより本願明細書の一部とされるFried SKら、J Lipid Res 30:1917−1923 (1989)に従前に記載されている手順に従った。無菌フード内で、組織を約5〜10mg片に細断し、温生理食塩水で洗浄した。ロジグリタゾンで処置したヒトからの脂肪生検の急性研究では、引用することにより本願明細書の一部とされるRussell CDら、Am J Physiol 275: E507−515 (1998)に従前に記載されているように、脂肪片をM199〜1%BSA(約100mg/ml)中で約3時間インキュベートし、培養培地を回収し、分析まで約−80℃で保存した。脂肪SAAの産生に対するロジグリタゾンの直接的作用に関する研究では、約5%CO2雰囲気下、約37℃、ゲンタマイシン(約10mg/L)を含むM199〜l%BSA(約300〜500mg組織/15ml培地)中、ホルモンの不在下、約25nMデキサメタゾン(American Pharmaceutical Partners, Schaumburg, IL)及び約7nMインスリン(Novo Nordisk, Princeton, NJ)又はこれらのホルモンとロジグリタゾン(1μM, GlaxoSmithKline, Philadelphia, PA)の組合せにて脂肪組織片を培養した。培養培地を毎日交換し、2日目の細胞馴化培地でSAAをアッセイした。
【0088】
細胞培養条件
一次ヒト冠動脈内皮細胞(HCAEC)をCambrex (Walkersville, MD)から購入し、EGM−2 BulletKitを添加した内皮細胞基本培地−2(EBM−2)で培養した。試験は継代培養3回〜5回の間で行った。RAW264細胞(ATCC5 Manassas, VA)を、約10%ウシ胎児血清を添加したRPMI培地で増殖させた。これらの細胞を6ウェル組織培養プレートに集密度約75%で播種し、集密度約90〜95%まで増殖させた。増殖培地を、添加物を含まない培地(HCAECにはEBM−2基本培地、また、RAW264にはRPMI1640)に置き換えた。培地交換から約1時間後、細胞を組換えヒトSAA(Peprotech, Rocky Hill, NJ)で処理した。この市販の調製物の内毒素レベルはタンパク質1μgにつき約0.1ng未満である。この細胞馴化培地をSAA処理から約8時間後に、約2,000xgで約5分の遠心分離により回収し、サイトカイン分析に使用するまで冷凍した。
【0089】
サイトカイン分析
酵素免疫測定法(ELISA)キットを製造業者の使用説明書に従って用いて、ヒトSAA(BioSource, Camarillo, CA)及びPAI−1(American Diagnostica, Greenwich, CT)を2回測定した。このSAA ELISAキットは、A−SAA(SAA1及びSAA2)のみを検出し、SAA4は検出しない。アッセイ内変動係数及びアッセイ間変動係数は、それぞれ約5%及び約8%である。ヒトMCP−1、IL−6、及びIL−8と、マウスTNFα、IL−6、RANTES及びMCP1は、メリーランド大学サイトカイン研究室で、サイトカイン・マルチプレックス試薬(Upstate Biotechnology, Inc., Lake Placid, NY)を用い、Luminex 100 (Luminex Corporation, Austin, TX.)を用いて分析した。全てのサンプルを2回測定した。
【0090】
本発明をその特定の実施形態に関して記載してきたが、さらなる改変が可能であると理解され、本願は下記の本発明の変形形態、使用及び変更のいずれをも包含するものとする。一般に、本発明の原理は、本発明が属する技術分野で周知の又は通例の実施に含まれるような、また、以上に示される本質的な特徴に当てはまり得るような、また、添付の特許請求の範囲に従うような本開示からの逸脱も含む。
【0091】
結果
【0092】
急性期SAAはヒト脂肪組織で選択的に発現される。脂肪細胞で優先的に発現される遺伝子を同定するため、ヒト脂肪組織を脂肪細胞画分と間質血管細胞(SVC)画分に分画し、約29,000種の遺伝子転写物を含むヒトU133A遺伝子チップにてマイクロアレイ分析(Affymetrix)を行った。予備的なデータ分析では、約800の遺伝子がSVCよりも脂肪細胞で優先的に発現された(3倍超)。これらのうち、急性期SAA(A−SAA)は、脂肪細胞において最も豊富な10の遺伝子の1種であった。RT−PCR分析により、ヒト脂肪細胞においてはA−SAAの高い発現が確認されたが、SVCでは確認されず、皮下脂肪層と大網脂肪層の間では発現に有意な差はなかった(図1A)。ヒトSAA1とSAA2はcDNAレベルで約97%同一であることから、SAA2をノーザン分析によるA−SAA(SAA1及びSAA2)遺伝子発現のプローブとして用いた。図1B(左上のパネル)は、A−SAAがヒト脂肪組織で選択的かつ豊富に発現するが、肝臓では発現がはるかに低いことを示す。肝臓組織よりも脂肪でA−SAA発現が高い点(約15倍)は、脂肪組織と肝臓組織の更なる検体を含む、独立したノーザンブロットでも確認された(図1B、右上のパネル)。これに対してマウスでは、マウスSAA1 cDNAと約95%同一であるマウスSAA2 cDNAプローブを用いたノーザンブロット分析が示したところでは、A−SAAは主として肝臓で発現し、脂肪組織では発現しない。更に、イソ型特異的PCRプライマーを用いたRT−PCR分析では、ヒト脂肪組織においてSAA1とSAA2はほぼ同等の発現を示すことが明らかになった。これらの研究は、ヒトにおいてA−SAAが主として脂肪組織、より具体的には、脂肪細胞で発現することを示す。
【0093】
ヒトにおいて、血清A−SAAは体格指数(BMI)と共に増加し、体重減少後に減少する。血清A−SAAレベルと体脂肪量の直接的相関は、年齢及び性別が合致するが、BMIが異なる(3kg/m超)非糖尿病の兄弟姉妹19組において血漿中のA−SAAレベルを測定することにより確認された。両側t検定は、肥満兄弟姉妹において有意に高いA−SAAレベル(p=0.044)と、BMIとSAA差間の正のスペアマン相関を(r=0.54、p=0.017)を示した。BMIが一定の範囲にわたる134名の非糖尿病男女の拡大セットにおいては、BMIは順変換SAAレベルの有意な予測因子であった(p=0.025、年齢、性別及び家族構成に関して調整)。被験者を低体重(BMI<25kg/m)、過体重(25kg/m<BMI<30kg/m)及び肥満(BMI>30kg/m)に分類した場合、肥満群の血清SAAレベル(分析時は順変換、表示時は逆変換)は、低体重群より約43%高かった(p=0.013、年齢、性別及び家族構成に関して調整)。低カロリー食と運動によって8.7±5.1kg(−10±2%)体重減少し、BMIの低下が約4kg/m(33.0+4.1kg/m〜29.0+3.8kg/m(平均値+S.D.)である別の24名の女性群では、24名の女性のうち19名で血清A−SAAの著しい減少が見られ、SAAは平均約27%低下した(図3A、p<0.01)。更に、血清SAA濃度の変化は体脂肪量の変化と相関しており(図3B、r=0.55、p<0.01)、及び脂肪を含まない体重の変化とは相関していなかった(r=0.23、p=0.3)。
【0094】
ロジグリタゾンは血清SAAを低下させ、脂肪のSAA産生を抑制する。PPARγアゴニストであるロジグリタゾンはA−SAAを調節することができた。12週間の間、被験者の体重又は脂肪量には統計学的に有意な差は無かったが、血清A−SAAレベルは、全ての被験者で処置後に大きく低下した(p<0.05)(図4)。更に、ロジグリタゾンの投与を受けたこれらの同じ患者からのA−SAAの脂肪組織分泌は有意に低下した(図4)。従って、本発明は、必要とする被験者にロジグリタゾンを投与することを含む、血清A−SAAレベルを低下させる方法を提供する。
【0095】
ロジグリタゾンは脂肪組織と直接相互作用することによって脂肪のA−SAA分泌を阻害することが示された。ロジグリタゾンで処置されていないヒト被験者から脂肪生検を採取し、ex vivoで培養し、培養培地においてA−SAAの低い基礎レベルが検出された。デキサメタゾン(25nM)及びインスリン(7nM)を含有する培地で組織を培養すると、ホルモン非存在下で培養した場合に比べて高いA−SAA産生が得られた(図5)。しかしながら、ロジグリタゾンを添加すると、この培地における、A−SAA分泌のインスリン/デキサメタゾン刺激は約70%低下した。
【0096】
SAAは炎症性サイトカインである。本明細書に記載の方法の結果、肥満症と炎症の間の関連性を示し、A−SAAが、肥満症に関連する炎症に関与する炎症性メディエーターであることが確認される。一次ヒト冠動脈血管内皮細胞(HCVEC)及びマウス単球細胞系統RAW264をビヒクル(PBS)、及び低濃度(0.47μg/ml)又は高濃度(2.3μg/ml)のSAAで約8時間処理し、その細胞馴化培地をサイトカイン産生に関してアッセイした。図6Aに示されるように、培養培地にA−SAAを添加すると、HCVEC細胞においてはIL−6、IL−8、MCP−1、及びプラスミノーゲンアクチベーター阻害剤−1(PAI−1)の放出、また、RAW264細胞においてはIL−6、IL−8、TNFα及びRANTEの放出が用量依存的に著しくに促進された。ヒト組換えA−SAAにLPSの混入の有無を調べるため、組換えA−SAAにおいて可能性のある内毒素の最大混入量より約15倍高い濃度である1ng/mlのLPSを用いたところ、いずれの細胞培養においてもサイトカイン分泌は促進されなかった。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1A】A−SAA mRNAの組織限定発現を示す。図1Aは、ヒト大網(O)及び皮下(S)脂肪組織から分画された間質血管細胞(SVC)及び脂肪細胞(FC)におけるSAA及びβ−アクチン遺伝子発現のRT−PCR分析を表す。図1B及び図1Cは、ヒト及びマウスそれぞれのマルチプルティッシュノーザンブロットの分析結果を表す。全てのノーザン分析について、示された組織の全RNA約15μgをナイロンメンブランにブロットし、放射性標識ヒト(図1B)又はネズミ(図1C)SAA2 cDNAプローブとハイブリダイズさせた。RNAの存在は、臭化エチジウム染色によって可視化した。
【図1B】A−SAA mRNAの組織限定発現を示す。図1Aは、ヒト大網(O)及び皮下(S)脂肪組織から分画された間質血管細胞(SVC)及び脂肪細胞(FC)におけるSAA及びβ−アクチン遺伝子発現のRT−PCR分析を表す。図1B及び図1Cは、ヒト及びマウスそれぞれのマルチプルティッシュノーザンブロットの分析結果を表す。全てのノーザン分析について、示された組織の全RNA約15μgをナイロンメンブランにブロットし、放射性標識ヒト(図1B)又はネズミ(図1C)SAA2 cDNAプローブとハイブリダイズさせた。RNAの存在は、臭化エチジウム染色によって可視化した。
【図1C】A−SAA mRNAの組織限定発現を示す。図1Aは、ヒト大網(O)及び皮下(S)脂肪組織から分画された間質血管細胞(SVC)及び脂肪細胞(FC)におけるSAA及びβ−アクチン遺伝子発現のRT−PCR分析を表す。図1B及び図1Cは、ヒト及びマウスそれぞれのマルチプルティッシュノーザンブロットの分析結果を表す。全てのノーザン分析について、示された組織の全RNA約15μgをナイロンメンブランにブロットし、放射性標識ヒト(図1B)又はネズミ(図1C)SAA2 cDNAプローブとハイブリダイズさせた。RNAの存在は、臭化エチジウム染色によって可視化した。
【図2】急性−SAAは体格指数(BMI)と正の相関があることを示す。低体重(BMI<25kg/m、n=54)、過体重(BMI25〜30kg/m、n=49)及び肥満(BMI>30kg/m、n=31)群に分類した健常なヒト被験者の血漿中のSAAレベルを測定した。データは、年齢、性別及び家族構成に関して調整した平均値+SEM(分析時は順変換、表示時は逆変換)として表す。*低体重群に対してp=0.013
【図3A】食事療法及び運動による体重減少に伴う血清A−SAAの低下を示す。図3Aは、食事療法及び運動による体重減少の前後での血清A−SAAレベルを示す。データは、平均値+SEM、n=24として表される。対数変換後、両側t検定を行った。**p<0.01。図3Bは、体重減少前後の、血清A−SAAレベルの変化と体脂肪量の変化の間の相関関係を表す。R=0.55、p<0.01、n=24。
【図3B】食事療法及び運動による体重減少に伴う血清A−SAAの低下を示す。図3Aは、食事療法及び運動による体重減少の前後での血清A−SAAレベルを示す。データは、平均値+SEM、n=24として表される。対数変換後、両側t検定を行った。**p<0.01。図3Bは、体重減少前後の、血清A−SAAレベルの変化と体脂肪量の変化の間の相関関係を表す。R=0.55、p<0.01、n=24。
【図4】ヒトの血清A−SAAレベル及び脂肪A−SAA産生に対するロジグリタゾンの効果を示す。A−SAAの血清A−SAA(n=8)及び脂肪分泌(n=7)は、非糖尿病ヒト被験者において、3か月のロジグリタゾン処置の前後にex vivoで測定した。データをプロットし、各レベルを線でつなぐ。血清A−SAA及び各個体からのSAAの脂肪分泌(各パネルの同じ記号は両試験の同じ個体を表す)は、ロジグリタゾンにより有意に低下した(対数変換後の両側t検定(両比較ともP<0.01))。
【図5】in vitroにおける脂肪組織のA−SAA産生を直接抑制することによるロジグリタゾンの効果を示す。脂肪組織は、細胞培養培地199(基本培地)又はインスリン(Ins、7nM)及びデキサメタゾン(Dex、5nM)を含む培地中、ロジグリタゾン(Rosi、1μM)の存在又は不在下で約48時間インキュベートした。SAAの産生を24〜48時間測定し、組織重に対して補正した。データは平均値+SEM、n=3で表す。**P<0.01、対数変換後の片側t検定。
【図6A】炎症性サイトカインの媒介因子としてのA−SAAの効果を示す。ヒト冠動脈血管内皮細胞(HCVEC)(図6A)及びマウス単球RAW264(図6B)を、血清フリー培地中で約8時間、ビヒクル(リン酸緩衝生理食塩水、白い棒)、低濃度のSAA(0.47μg/ml、斜線の棒)又は高濃度のSAA(2.34μg/ml、黒い棒)で処置した。細胞を含まない上清を、Luminexによりサイトカインに関してアッセイした。データは、3〜4回の独立した実験の平均値+SEMとして表されている。SAA処置群と対照の間には、統計学的に有意であること(*p<0.05;**P<0.01、片側t検定)が観察された。
【図6B】炎症性サイトカインの媒介因子としてのA−SAAの効果を示す。ヒト冠動脈血管内皮細胞(HCVEC)(図6A)及びマウス単球RAW264(図6B)を、血清フリー培地中で約8時間、ビヒクル(リン酸緩衝生理食塩水、白い棒)、低濃度のSAA(0.47μg/ml、斜線の棒)又は高濃度のSAA(2.34μg/ml、黒い棒)で処置した。細胞を含まない上清を、Luminexによりサイトカインに関してアッセイした。データは、3〜4回の独立した実験の平均値+SEMとして表されている。SAA処置群と対照の間には、統計学的に有意であること(*p<0.05;**P<0.01、片側t検定)が観察された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肥満症を診断する方法であって、
a)血清アミロイドA1(SAA1)及び血清アミロイドA2(SAA2)からなる群から選択される少なくとも1種類のバイオマーカーのサンプル中のレベルを測定することと、
b)前記少なくとも1種類のバイオマーカーの測定レベルと前記少なくとも1種類のバイオマーカーの正常レベルとを比較することと、
c)前記少なくとも1種類のバイオマーカーの測定レベルと前記少なくとも1種類のバイオマーカーの正常レベルとの差を求めることと、を含み、
前記少なくとも1種類のバイオマーカーの測定レベルと前記少なくとも1種類のバイオマーカーの正常レベルとの差が、肥満症を示す方法。
【請求項2】
前記少なくとも1種類のバイオマーカーがSAA1である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1種類のバイオマーカーがSAA2である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
SAA1及びSAA2の双方が測定される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記サンプルが、全血、プラズマ、血清、大網脂肪組織、皮下脂肪組織、及び肝組織からなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記サンプルが血清である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記SAA1及びSAA2を測定することは、核酸を測定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記SAA1及びSAA2を測定することは、ポリペプチドを測定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記SAA1及びSAA2を測定することは、タンパク質活性を測定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記肥満症が、炎症性又は非炎症性のいずれかの肥満症である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
異常状態を診断する方法であって、
a)被験者からの血清アミロイドA1(SAA1)及び血清アミロイドA2(SAA2)からなる群から選択される少なくとも1種類のバイオマーカーのレベルを測定することと、
b)前記少なくとも1種類のバイオマーカーの測定レベルと前記少なくとも1種類のバイオマーカーの正常レベルとを比較することと、
c)前記少なくとも1種類のバイオマーカーの測定レベルと前記少なくとも1種類のバイオマーカーの正常レベルとの差を求めることと、を含み、
前記少なくとも1種類のバイオマーカーの測定レベルと前記少なくとも1種類のバイオマーカーの正常レベルとの差が、異常状態の存在を示す方法。
【請求項12】
前記異常状態が、糖尿病、高血圧、異脂肪血症、アテローム性動脈硬化症、高コレステロール血症炎症、及び感染症からなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1種類のバイオマーカーがSAA1である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも1種類のバイオマーカーがSAA2である、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
SAA1及びSAA2の双方が測定される、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記サンプルが、全血、プラズマ、血清、大網脂肪組織、皮下脂肪組織、及び肝組織からなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記サンプルが血清である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記SAA1及びSAA2を測定することは、核酸を測定することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記SAA1及びSAA2を測定することは、ポリペプチドを測定することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
前記SAA1及びSAA2を測定することは、タンパク質活性を測定することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項21】
病状の進行度を監視する方法であって、
a)血清アミロイドA1(SAA1)及び血清アミロイドA2(SAA2)からなる群から選択される少なくとも1種類のバイオマーカーのレベルを第1の時点及び第2の時点において測定することと、
b)前記少なくとも1種類のバイオマーカーの前記第1の時点の測定レベルと前記少なくとも1種類のバイオマーカーの前記第2の時点の測定レベルとを比較することと、
c)前記少なくとも1種類のバイオマーカーの前記第1の時点の測定レベルと前記第2の時点の測定レベルとの差を求めることと、を含み、
前記少なくとも1種類のバイオマーカーの前記第1の時点の測定レベルと前記第2の時点の測定レベルとの差が、異常状態の進行度を示す方法。
【請求項22】
前記少なくとも1種類のバイオマーカーがSAA1である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記少なくとも1種類のバイオマーカーがSAA2である、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
SAA1及びSAA2の双方が測定される、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記サンプルが、全血、プラズマ、血清、大網脂肪組織、皮下脂肪組織、及び肝組織からなる群から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記サンプルが血清である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記SAA1及びSAA2を測定することは、核酸を測定することを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項28】
前記SAA1及びSAA2を測定することは、ポリペプチドを測定することを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項29】
前記SAA1及びSAA2を測定することは、タンパク質活性を測定することを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項30】
肥満症の治療を必要とする患者の前記肥満症を治療する方法であって、血清アミロイドA1(SAA1)及び血清アミロイドA2(SAA2)からなる群から選択される少なくとも1種類のポリペプチドの前記患者における活性レベルを減少させることを含む方法。
【請求項31】
前記少なくとも1種類のバイオマーカーがSAA1である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記少なくとも1種類のバイオマーカーがSAA2である、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
SAA1及びSAA2の双方の活性レベルが減少する、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
異常状態の治療を必要とする患者の前記異常状態を治療する方法であって、血清アミロイドA1(SAA1)及び血清アミロイドA2(SAA2)からなる群から選択される少なくとも1種類のポリペプチドの前記患者における活性レベルを減少させることを含む方法。
【請求項35】
前記少なくとも1種類のバイオマーカーがSAA1である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記少なくとも1種類のバイオマーカーがSAA2である、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
SAA1及びSAA2の双方の活性レベルが減少する、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
前記異常状態が、糖尿病、高血圧、異脂肪血症、アテローム性動脈硬化症、及び高コレステロール血症炎症からなる群から選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項39】
異常状態を治療されている被験者の前記異常状態を治療するための治療計画の効果を評価する方法であって、
a)血清アミロイドA1(SAA1)及び血清アミロイドA2(SAA2)からなる群から選択される少なくとも1種類のバイオマーカーのレベルを第1の時点及び第2の時点において測定することと、
b)前記少なくとも1種類のバイオマーカーの前記第1の時点の測定レベルと前記少なくとも1種類のバイオマーカーの前記第2の時点の測定レベルとを比較することと、
c)前記少なくとも1種類のバイオマーカーの前記第1の時点の測定レベルと前記第2の時点の測定レベルとの差を求めることと、を含み、
前記少なくとも1種類のバイオマーカーの前記第1の時点の測定レベルと前記第2の時点の測定レベルとの差が、前記治療の効果を示す方法。
【請求項40】
前記異常状態が、糖尿病、高血圧、異脂肪血症、アテローム性動脈硬化症、及び高コレステロール血症炎症からなる群から選択される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
肥満症の段階を判定する方法であって、
a)血清アミロイドA1(SAA1)及び血清アミロイドA2(SAA2)からなる群から選択される少なくとも1種類のバイオマーカーのサンプル中のレベルを測定することと、
b)前記少なくとも1種類のバイオマーカーの測定レベルが属する前記少なくとも1種類のバイオマーカーの予め段階判定されたレベルを判定することと、を含み、
前記バイオマーカーの予め段階判定されたレベルが、肥満症の段階を分類するために用いられる方法。
【請求項42】
前記肥満症の段階が、炎症性又は非炎症性のいずれかの肥満症である、請求項41に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【公表番号】特表2008−523394(P2008−523394A)
【公表日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−545654(P2007−545654)
【出願日】平成17年12月9日(2005.12.9)
【国際出願番号】PCT/US2005/044578
【国際公開番号】WO2006/063213
【国際公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願人】(507188924)ユニヴァーシティー オブ メリーランド, バルティモア (1)
【Fターム(参考)】