説明

炎症性サイトカインの抑制剤

【課題】炎症性疾患の新規治療薬の提供。
【解決手段】ヒト末梢血単核球画分でマウスを免疫し、得られた抗体のサイトカイン産生制御効果について検討したところ、PBMCによるIFNγ産生を単独で強く抑制する抗CD36抗体を見出した。他のサイトカイン産生に対する効果についても検討したところ、上記抗CD36抗体は代表的な炎症性サイトカインの産生を確実に抑制することが明らかになった。さらに上記抗CD36抗体に抗炎症性サイトカイン産生促進能があることを確認した。本発明の抗体は、主要な炎症性サイトカインの産生を抑制することにより、または抗炎症性サイトカインの産生を促進することにより、炎症性疾患治療を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CD36結合能を有する物質の利用に関し、特に、CD36結合能を有する物質を利用した炎症性サイトカイン産生抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
炎症は、生体が刺激に応答して呈する複雑な一連の反応である。炎症は、本来は生体の防御システムのひとつであり、外因性因子によって引き起こされる。例えば、細菌やウイルス等の病原性微生物、外傷や放射線等の物理的因子、酸やアルカリ、金属等の化学的因子などは炎症を誘引する。しかし炎症は必ずしも外因性因子によるものばかりではなく、内因性の原因によって炎症が起こる場合もある。例えば、自己に対する自己抗体によって生じる免疫複合体は、自己免疫疾患を引き起こす。
【0003】
炎症性疾患の多くは、生体内における炎症性サイトカインの制御異常が関連している。炎症性サイトカインは、炎症を促進するサイトカインの総称であり、TNFα、IL-1α、IL-1β、IL-6、IFNγ、IL-8、IL-10、IL-12、IL-15、IL-18、TNFα、GM-CSFなどが炎症性サイトカインに分類される。炎症性サイトカインは各種刺激によって血球から産生されるが、一方、炎症を抑制する活性を有する抗炎症性サイトカイン(IL-10、IL-4、TGFβ等)も血球から産生される。通常は、炎症性サイトカインと抗炎症性サイトカインは互いの産生量を適宜調節するため、生体内における炎症反応は過剰になることなく正常範囲内に制御されている。
【0004】
全身性炎症反応症候群(Sytemic Inflammatory Response Syndrome, SIRS)は、感染、火傷、外傷、浸襲性の大きい手術などが誘引となって引き起こされる炎症性疾患の一群である。SIRSでは、血液中の炎症性サイトカインの異常上昇が特徴的に観察される(高サイトカイン血症)。重症例では、自己破壊的な全身性炎症が発生し血栓形成が誘導される。そのため短期間に複数の臓器が機能不全に陥り、最悪の場合は死に至る。
【0005】
敗血症はSIRSの一疾患である。米国では、敗血症は心臓疾患以外のICUにおける死亡原因の最上位に位置づけられているほど、重篤な疾患として認識されている。しかし残念なことに、敗血症の有効な治療法はいまだ確立されていない。現時点での敗血症の臨床上の治療法としては、エンドトキシン吸着による血液浄化や、抗血栓凝固活性を持つ活性化プロテインCの投与など、限られた治療が適用されているに過ぎない。
【0006】
また、関節リウマチも、炎症性疾患の代表例である。関節リウマチは、免疫の異常によって関節や筋肉に強い炎症を生じ、腫れや痛み、熱を伴う自己免疫性疾患のひとつである。一般に、関節リウマチは進行性であり、症状の進行に伴い関節の変形や骨破壊などの障害が起き、完治は困難である。患者数は人口の0.5-1.0%に上り、日本では約70万人の患者がいると推定されている。関節リウマチ発症の機序は不明であるが、炎症を起こした関節では滑膜が肥厚する(パンヌス形成)。パンヌス内では様々な炎症性サイトカインが産生され、この炎症性サイトカインは炎症を悪化させるだけでなく、骨破壊を促進する。
【0007】
一部の炎症性疾患は、炎症性サイトカイン効果を抑制することによって治療することが可能である。実際、関節リウマチは、すでに抗TNFα抗体(レミケード)、可溶性TNFα受容体(エンブレル)による治療が臨床上実用化されており、また、抗IL-6受容体抗体(トシリズマブ)の有効性も報告されている。また潰瘍性大腸炎のクローン病に対しては、IFNγに対する中和抗体(fontolizumab)を用いた臨床試験が行なわれ、有効性が示されている。しかしながら、サイトカインをターゲットにした上述の治療戦略は、すでに分泌されたサイトカインをブロックする方法であって、炎症性サイトカイン産生細胞の活動を抑制しているのではない。
【0008】
また乾癬やクローン病については、IL-10の炎症性サイトカイン産生抑制作用による抗炎症効果を期待して、IL-10投与の臨床試験が実施されている。一定の成果が認められる一方で、外因性IL-10の多量投与がかえって炎症を悪化させる恐れがあることも報告されている。このように、抗炎症性サイトカイン投与による炎症性疾患治療は、必ずしも容易ではない。
【0009】
ところで、本発明者等によって、細胞接着分子であるインテグリンβ3(CD61)に対する抗体が単球・マクロファージによる炎症性サイトカインの産生を著しく抑制することが明らかにされている(特許文献1)。一方、抗CD36抗体と炎症性サイトカイン産生との関係については、Janciauskieneらによる報告がある。単球のTNFα産生量およびIL-6産生量は抗CD36抗体単独では影響されないが、一方、単球活性化能を有するC-36によって活性化された単球に抗CD36抗体を投与した場合は、単球のIL-6産生量は低下し、逆にTNFα産生量は3倍以上に上昇した(非特許文献1)。
【特許文献1】WO2005/068504
【非特許文献1】Janciauskiene S., et al., Atherosclerosis. 2001 Sep;158(1):41-51.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記状況に鑑みてなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、敗血症を含む炎症性疾患の新規治療薬の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決すべく、本発明者らは炎症性疾患治療薬の候補物質を鋭意探索した。本発明者等は炎症性疾患とサイトカインの関係に注目し、内在的に炎症性サイトカインの産生を制御する機能抗体を取得することを思いついた。そこで、ヒト末梢血単核球画分(PBMC)でマウスを免疫し、得られた抗体のサイトカイン産生制御効果について検討したところ、PBMCによるIFNγ産生を単独で強く抑制する抗CD36抗体を見出した。加えて、他のサイトカイン産生に対する効果についても検討したところ、上記抗CD36抗体は代表的な炎症性サイトカインの産生を確実に抑制することが明らかになった。Janciauskieneらによる報告では、抗CD36抗体単独の炎症性サイトカイン産生抑制効果は全く観察されていない。むしろ、Janciauskieneらによる報告では、C-36で活性された単球のTNFα産生量は抗CD36抗体の添加により増加している。これらを考慮すると、単独で炎症性サイトカイン産生抑制効果を有する抗CD36抗体の存在は、全く予想外であった。さらに本発明者等は、抗CD36抗体に抗炎症性サイトカイン産生促進能があることを初めて見出した。本発明の抗体によって主要な炎症性サイトカインの産生を抑制することにより、または抗炎症性サイトカインの産生を促進することにより、新規メカニズムの炎症性疾患治療が可能になると考えられる。すなわち、本発明は抗CD36抗体を用いた炎症性疾患の治療に関し、より具体的には、以下の発明を提供するものである。
(1) 抗CD36抗体を含む、抗炎症性サイトカイン産生促進剤、
(2) CD36がヒトCD36である、上記(1)に記載の抗炎症性サイトカイン産生促進剤、
(3) 抗炎症性サイトカインがIL-10、TGFβからなる群より選択される少なくとも1つである上記(1)または(2)に記載の抗炎症性サイトカイン産生促進剤、
(4) 重鎖可変領域が下記(a)または(b)のいずれかである、抗CD36抗体
(a)配列番号:1、配列番号:9、配列番号:16、配列番号:22、配列番号:30のいずれかに記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域
(b)配列番号:1、配列番号:9、配列番号:16、配列番号:22、配列番号:30のいずれかに記載のアミノ酸配列に、1または複数のアミノ酸が置換、欠失、付加または挿入したアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、
(5) 軽鎖可変領域が下記(a)または(b)のいずれかである、抗CD36抗体
(a)配列番号:2、配列番号:10、配列番号:17、配列番号:23、配列番号:31のいずれかに記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域
(b)配列番号:2、配列番号:10、配列番号:17、配列番号:23、配列番号:31のいずれかに記載のアミノ酸配列に、1または複数のアミノ酸が置換、欠失、付加または挿入したアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
(6) 重鎖CDR1が下記(a)または(b)のいずれかである、抗CD36抗体
(a)配列番号:3、配列番号:11、配列番号:24、配列番号:32のいずれかに記載のアミノ酸配列を含むCDR1
(b)配列番号:3、配列番号:11、配列番号:24、配列番号:32のいずれかに記載のアミノ酸配列に、1または複数のアミノ酸が置換、欠失、付加または挿入したアミノ酸配列からなるCDR1、
(7) 重鎖CDR2が下記(a)または(b)のいずれかである、抗CD36抗体
(a)配列番号:4、配列番号:12、配列番号:18、配列番号:25、配列番号:33のいずれかに記載のアミノ酸配列を含むCDR2
(b)配列番号:4、配列番号:12、配列番号:18、配列番号:25、配列番号:33のいずれかに記載のアミノ酸配列に、1または複数のアミノ酸が置換、欠失、付加または挿入したアミノ酸配列からなるCDR2、
(8) 重鎖CDR3が下記(a)または(b)のいずれかである、抗CD36抗体
(a)配列番号:5、配列番号:13、配列番号:19、配列番号:26、配列番号:34のいずれかに記載のアミノ酸配列を含むCDR3
(b)配列番号:5、配列番号:13、配列番号:19、配列番号:26、配列番号:34のいずれかに記載のアミノ酸配列に、1または複数のアミノ酸が置換、欠失、付加または挿入したアミノ酸配列からなるCDR3、
(9) 軽鎖CDR1が下記(a)または(b)のいずれかである、抗CD36抗体
(a)配列番号:6、配列番号:20、配列番号:27、配列番号:35のいずれかに記載のアミノ酸配列を含むCDR1
(b)配列番号:6、配列番号:20、配列番号:27、配列番号:35のいずれかに記載のアミノ酸配列に、1または複数のアミノ酸が置換、欠失、付加または挿入したアミノ酸配列からなるCDR1、
(10) 軽鎖CDR2が下記(a)または(b)のいずれかである、抗CD36抗体
(a)配列番号:7、配列番号:14、配列番号:28のいずれかに記載のアミノ酸配列を含むCDR2
(b)配列番号:7、配列番号:14、配列番号:28のいずれかに記載のアミノ酸配列に、1または複数のアミノ酸が置換、欠失、付加または挿入したアミノ酸配列からなるCDR2、
(11) 軽鎖CDR3が下記(a)または(b)のいずれかである、抗CD36抗体
(a)配列番号:8、配列番号:15、配列番号:21、配列番号:29、配列番号:36のいずれかに記載のアミノ酸配列を含むCDR3
(b)配列番号:8、配列番号:15、配列番号:21、配列番号:29、配列番号:36のいずれかに記載のアミノ酸配列に、1または複数のアミノ酸が置換、欠失、付加または挿入したアミノ酸配列からなるCDR3、
(12) 上記(4)から(11)のいずれかに記載の抗CD36抗体と競合してCD36と結合する、抗CD36抗体、
(13) 上記(4)から(11)のいずれかに記載の抗CD36抗体が認識するCD36の領域を認識する、抗CD36抗体、
(14) 抗CD36抗体が上記(4)から(13)のいずれかに記載された抗CD36抗体である、上記(1)から(3)のいずれかに記載の抗炎症性サイトカイン産生促進剤、
(15) 上記(4)から(13)のいずれかに記載された抗CD36抗体を含む、炎症性サイトカイン産生抑制剤、
(16) 炎症性サイトカインがIFNγ、IL-1α、IL-1β、TNFα、IL-6、IL-8、IL-10、IL-12、IL-15、IL-18、GM-CSFからなる群より選択される少なくとも1つである、上記(15)記載の炎症性サイトカイン産生抑制剤、
(17) 上記(1)、(2)、(3)、若しくは(14)のいずれかに記載の抗炎症性サイトカイン産生促進剤または上記(15)若しくは(16)に記載の炎症性サイトカイン産生抑制剤を含む、炎症性疾患治療用医薬品、
(18) 炎症性疾患が、敗血症、全身性炎症反応症候群、関節リウマチ、潰瘍性大腸炎、クローン病、リウマチ様脊椎炎、変形性関節炎、痛風性関節炎、炎症性腸疾患、ギランバレー症候群、強皮症、繊維症、皮膚炎、乾癬、血管性浮腫、湿疹様皮膚炎、高増殖性皮膚疾患(hyperproliferative skin disease)、皮膚の炎症状態(inflammatory skin condition)、糸球体腎炎、腎炎、血管炎症、アテローム動脈硬化症、脈管炎、静脈炎、動脈炎、大動脈炎、PTCA後再狭窄、バイパス手術後再狭窄、移植拒絶反応(同種腎臓移植拒絶、同種心臓移植拒絶、これらに伴う脈管障害等)、アナフィラキシー、血栓症、虚血/再灌流傷害、自己免疫疾患からなる群より選ばれるいずれか1以上の疾患である、(17)記載の炎症性疾患治療用医薬品、
(19) 抗CD36抗体を用いることを特徴とする、炎症性疾患の治療方法、
(20) 炎症性疾患治療薬の製造のための、抗CD36抗体の使用。
【発明の効果】
【0012】
本発明によって、炎症性疾患の新規治療薬が提供された。本発明は抗CD36抗体の炎症性サイトカインの産生抑制効果を利用し、従来の炎症性疾患治療薬にはない新規メカニズムの治療薬である。本発明の治療薬は、抗炎症性サイトカイン投与等の従来治療法では困難であった症例にも有効に奏する可能性があると考えられ、炎症性疾患治療方法の新たな選択肢として期待される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、抗CD36抗体を利用した炎症性疾患の治療に関する。CD36は、血小板の第四番目の糖タンパク質として発見され、その後、内皮細胞、単球、分化初期の赤血球、さらには一部のヒト腫瘍細胞株上に発現することが確認された。リガンドの種類は多様であり、トロンボスポンジン-1、type I / type IVコラーゲン、陰イオンリン脂質、長鎖脂肪酸、酸化LDL、エラスターゼの内因性インヒビターであるα1-antitrypsin、マラリアが感染した赤血球などが知られる。(Dale E. Greenwalt et al. / Blood 80(1992) 1105-1115,Valerie A. Fadok et al. / Journal of Immunology(1998) 6250-6257,)。CD36は2回膜貫通型の構造を持ち、スカベンジャー受容体ファミリーBクラスに分類される。CD36は、ヒト、マウス、ラット、アカゲザル、ウシ等で存在が確認されている。またCD36は、FAT、SCARB、GP88、glycoprotein IV (gpIV)、glycoprotein IIIV (gpIIIb)の別名でも知られている。
【0014】
CD36の機能は多岐にわたる。CD36は細胞接着分子として血小板の凝集や血小板と単球の接着に寄与するほか、長鎖脂肪酸の輸送に関与する。また、修飾されたLDL(酸化、アセチル化)を認識するスカベンジャーレセプターとして機能し、マクロファージによるLDLの取り込みにも関与する。さらにCD36は、αVβ3(CD61)やトロンボスポンジンと複合体を形成し、アポトーシス細胞のクリアランスに寄与している。(Dale E. Greenwalt et al. / Blood 80(1992) 1105-1115,Valerie A. Fadok et al. / Journal of Immunology(1998) 6250-6257)。CD36のリガンドであるα1-antitrypsinのC末端断片(C-36)は、CD36を介して単球によるLDL取り込みを促進させるだけでなく、炎症性サイトカインの産生を亢進させる活性を有する。C-36によって活性化された単球のIL-6産生が、CD36に対する抗体でブロックされることが報告されている (S.Janciauskiene et al./ Atherosclerosis 158 (2001) 41-51)。
【0015】
抗CD36抗体は、CD36を抗原として公知方法により調製することができる。すなわち、CD36を適当な免疫動物に免疫し、抗体価の上昇を確認したところで抗体を回収する。抗体はポリクローナル抗体としても良いが、モノクローナル抗体とすることによって特異性に優れた抗体を選択することが可能となる。モノクローナル抗体の調製方法も公知である。一般的には、免疫動物から回収した抗体産生細胞を適当な融合パートナーと細胞融合させることによってハイブリドーマとし、該ハイブリドーマから産生される抗体の活性を指標としてスクリーニングを行えばよい(Gulfre G.,Nature 266.550-552,1977)。本発明においてCD36の由来は特に問わないが、好ましくはヒト由来のCD36である。抗原として使用するCD36は、CD36産生細胞から天然のCD36を調製してもよいし、CD36遺伝子を適当な細胞に形質転換して遺伝子工学技術によって調製してもよい。あるいは、CD36配列情報をもとに合成することも可能である。
【0016】
多くの哺乳類において、抗体はIgG、IgM、IgA、IgD、IgEの5クラスに分類される。いずれのクラスの抗体にも、2本の重鎖(H鎖)および2本の軽鎖(L鎖)がS-S結合と非共有結合によって連結されたY字型の基本構造が存在する。重鎖および軽鎖は、それぞれ定常領域と可変領域からなる。可変領域は、3つのCDR(complementarity determining region:相補性決定部位)と4つのフレームワークで構成される。CDRは、抗原分子と相補的な立体構造を形成し抗体の特異性を決定する部位である。重鎖および軽鎖のそれぞれの可変領域に、4つのFR(Framework region:枠組み構造領域)に挟まれて3つのCDRがモザイク状に存在する(E. A. Kabat et al.,「免疫学的観点におけるタンパク質の配列(Sequences of proteins of immunological interest)」,vol I,第5版,NIH publication (1991))。基本的にはこれら6つのCDRによって構成される立体構造により抗原との特異性が決定されるが、必ずしも6箇所すべてのCDRがすべての抗原−抗体結合に関与するとは限らない。また、FRのアミノ酸残基が抗原との結合に関与する場合もある。FRのアミノ酸配列は良く保存されているのに対して、CDRのアミノ酸配列の変異性は高く、超可変領域(hyper variable region)とも呼ばれる。3つのCDRは、アミノ末端側からCDR1、CDR2、CDR3と呼ばれている。
【0017】
本発明者等は、炎症性サイトカイン産生を単独で抑制できる抗CD36抗体として、クローン1−3、1−36、2−6、2−66、および4−62を見出した。したがって本発明は、炎症性サイトカイン産生を抑制する抗CD36抗体も提供する。本発明者等は、上記抗CD36抗体について、重鎖可変領域(VH)、軽鎖可変領域(VL)、重鎖のCDR1-3、軽鎖のCDR1-3の配列をそれぞれ決定した。
【0018】
クローン1−3の重鎖可変領域のアミノ酸配列を配列番号:1に、軽鎖可変領域のアミノ酸配列を配列番号:2に、重鎖CDR1のアミノ酸配列を配列番号:3に、重鎖CDR2のアミノ酸配列を配列番号:4に、重鎖CDR3のアミノ酸配列を配列番号:5に、軽鎖CDR1のアミノ酸配列を配列番号:6に、軽鎖CDR2のアミノ酸配列を配列番号:7に、軽鎖CDR3のアミノ酸配列を配列番号:8に示す。上記重鎖CDR1-3の重鎖可変領域における位置を説明すると、CDR1は配列番号:1の第50位から第54位、CDR2は配列番号:1の第69位から第85位、CDR3は配列番号:1の第118位から第126位に相当する。上記軽鎖CDR1-3の軽鎖可変領域における位置を説明すると、CDR1は配列番号:2の第44位から第54位、CDR2は配列番号:2の第70位から第76位、CDR3は配列番号:2の第109位から第117位に相当する。
【0019】
また同様に、クローン1−36の重鎖可変領域のアミノ酸配列を配列番号:9に、軽鎖可変領域のアミノ酸配列を配列番号:10に、重鎖CDR1のアミノ酸配列を配列番号:11に、重鎖CDR2のアミノ酸配列を配列番号:12に、重鎖CDR3のアミノ酸配列を配列番号:13に示す。クローン1−36の軽鎖CDR1のアミノ酸配列は、クローン1−3の軽鎖CDR1アミノ酸配列と同一である(配列番号:6)。クローン1−36の軽鎖CDR2のアミノ酸配列を配列番号:14に、軽鎖CDR3のアミノ酸配列を配列番号:15に示す。上記重鎖CDR1-3の重鎖可変領域における位置を説明すると、CDR1は配列番号:9の第50位から54位、CDR2は配列番号:9の第69位から85位、CDR3は配列番号:9の第118位から126位に相当する。上記軽鎖CDR1-3の軽鎖可変領域における位置を説明すると、CDR1は配列番号:10の第44位から第54位、CDR2は配列番号:10の第70位から第76位、CDR3は配列番号:10の第109位から第117位に相当する。
【0020】
クローン2−6の重鎖可変領域のアミノ酸配列を配列番号:16に、軽鎖可変領域のアミノ酸配列を配列番号:17に示す。クローン2−6の重鎖CDR1のアミノ酸配列は、クローン1−36の重鎖CDR1アミノ酸配列と同一である(配列番号:11)。クローン2−6の重鎖CDR2のアミノ酸配列を配列番号:18に、重鎖CDR3のアミノ酸配列を配列番号:19に、軽鎖CDR1のアミノ酸配列を配列番号:20に示す。クローン2−6の軽鎖CDR2のアミノ酸配列は、クローン1−3の軽鎖CDR2アミノ酸配列と同一である(配列番号:7)。クローン2−6の軽鎖CDR3のアミノ酸配列を配列番号:21に示す。上記重鎖CDR1-3の重鎖可変領域における位置を説明すると、CDR1は配列番号:16の第50位から第54位、CDR2は配列番号:16の第69位から第85位、CDR3は配列番号:16の第118位から第131位に相当する。上記軽鎖CDR1-3の軽鎖可変領域における位置を説明すると、CDR1は配列番号:17の第44位から第54位、CDR2は配列番号:17の第70位から第76位、CDR3は配列番号:17の第109位から第117位に相当する。
【0021】
クローン2−66の重鎖可変領域のアミノ酸配列を配列番号:22に、軽鎖可変領域のアミノ酸配列を配列番号:23に、重鎖CDR1のアミノ酸配列を配列番号:24に、重鎖CDR2のアミノ酸配列を配列番号:25に、重鎖CDR3のアミノ酸配列を配列番号:26に、軽鎖CDR1のアミノ酸配列を配列番号:27に、軽鎖CDR2のアミノ酸配列を配列番号:28に、軽鎖CDR3のアミノ酸配列を配列番号:29に示す。上記重鎖CDR1-3の重鎖可変領域における位置を説明すると、CDR1は配列番号:22の第48位から第52位、CDR2は配列番号:22の第67位から第83位、CDR3は配列番号:22の第116位から第125位に相当する。上記軽鎖CDR1-3の軽鎖可変領域における位置を説明すると、CDR1は配列番号:23の第43位から第58位、CDR2は配列番号:23の第74位から第80位、CDR3は配列番号:23の第113位から第121位に相当する。
【0022】
クローン4−62の重鎖可変領域のアミノ酸配列を配列番号:30に、軽鎖可変領域のアミノ酸配列を配列番号:31に、重鎖CDR1のアミノ酸配列を配列番号:32に、重鎖CDR2のアミノ酸配列を配列番号:33に、重鎖CDR3のアミノ酸配列を配列番号:34に、軽鎖CDR1のアミノ酸配列を配列番号:35に示す。クローン4−62の軽鎖CDR2のアミノ酸配列は、クローン2−66の軽鎖CDR2のアミノ酸配列と同一である(配列番号:28)。クローン4−62の軽鎖CDR3のアミノ酸配列を配列番号:36に示す。上記重鎖CDR1-3の重鎖可変領域における位置を説明すると、CDR1は配列番号:30の第50位から第54位、CDR2は配列番号:30の第69位から第85位、CDR3は配列番号:30の第118位から第129位に相当する。上記軽鎖CDR1-3の軽鎖可変領域における位置を説明すると、CDR1は配列番号:31の第43位から第58位、CDR2は配列番号:31の第74位から第80位、CDR3は配列番号:31の第113位から第121位に相当する。
【0023】
本発明の抗体における可変領域またはCDRは、上記記載のアミノ酸配列と完全に同一のもののみならず、炎症性サイトカイン産生抑制活性を維持する限り上記記載のアミノ酸配列に変異を含んでいてもよい。すなわち、本発明において、前記可変領域またはCDR領域の配列を1個または数個改変したアミノ酸配列を可変領域またはCDR領域として含む抗体も、炎症性サイトカイン産生抑制活性を維持する限り、本発明の抗体に包含される。可変領域またはCDR領域のアミノ酸配列の中で変換するアミノ酸は、好ましくは全体の可変領域またはCDRの30%以下であり、更に好ましくは全体の20%以下であり、更に好ましくは全体の10%以下、最も好ましくは5%以下である。あるいは、改変された可変領域またはCDR領域のアミノ酸配列は、上記配列番号に記載されたアミノ酸配列全体に対し、70%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上の相同性を有する。
【0024】
また、上記可変領域またはCDRを有する本発明の抗CD36抗体が認識するCD36の構造(エピトープ)を認識する抗CD36抗体は、上記本発明の抗CD36抗体と同様の活性を有するものと期待できる。したがって、本発明はこのような抗体も包含する。このような抗体は、公知手法により調製することができる。まず、公知手法により本発明の抗CD36抗体が認識するCD36の構造を決定する。例えば、CD36の公知アミノ酸配列の一部であるペプチドのセットを作製し、該ペプチドセットの中から本発明の抗CD36抗体が認識するペプチドを、ペプチドアレイ等の手法でスクリーニングすることにより、本発明の抗CD36抗体が認識するCD36の構造を決定することが可能である。決定したエピトープを有するペプチドを用いて動物を免疫し、該動物から抗体を調製することにより、上記可変領域またはCDRを有する抗CD36抗体と同様の活性を有する抗CD36抗体を得ることが可能である。
【0025】
本発明の抗体は、炎症性サイトカイン産生抑制活性を有し、可変領域またはCDRが上述の特徴を有する限り、IgG、IgM、IgA、IgD、IgEのいずれのクラスであってもよい。さらにこれらのサブクラスについても特に問わない。例えば、IgGにはIgG1〜IgG4のサブクラスの存在が知られるが、いずれのサブクラスであってもよい。
【0026】
また、本発明の抗体は、天然のイムノグロブリン本来の構造でもよく、または、構造を人工的に改変された抗体であってもよい。構造を人工的に改変された抗体の例として、Fab、F(ab´)2、ScFvを挙げることができるがこれらに限定されない。本発明の抗体の由来も、炎症性サイトカイン産生抑制活性を有し、可変領域またはCDRが上述の特徴を有する限り、特に限定されない。本発明の抗体の由来として、例えば、ヒト、サル、げっ歯類(マウス、ラット、モルモット等)、ウサギ、ブタ、ヤギ、ウマ、ウシ、ロバ、イヌ、ネコ、等を挙げることができる。あるいは、本発明の抗体は、その構造の一部として異なる動物種に由来する抗体部分を含んでいてもよい。すなわち本発明の抗体は、定常領域がヒト由来であるキメラ抗体、定常領域およびFRがヒト由来であるヒト化抗体でもよい。
【0027】
このような人工的に改変された抗体は、上記可変領域またはCDRをコードする塩基配列を持ったcDNAを用い、当業者の技術常識の方法により作製することができる。上記可変領域またはCDRをコードする塩基配列を持ったcDNAは、上述した公知手法により抗CD36モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを作製し、クローニングすることができる。具体的には、可変領域遺伝子のシグナル配列と定常領域側の塩基配列を利用してPCRを行い、増幅生成物を適当なクローニングベクターに挿入し、可変領域遺伝子のライブラリーとする。上記CDRに相当する配列をプローブとし、前記可変領域のライブラリーをスクリーニングする。このようにして得られた軽鎖と重鎖の可変領域遺伝子を適当なリンカーで連結してファージに組み込み、1本鎖抗体(いわゆるscFV)として発現させることができる。または該可変領域を抗体発現用の公知ベクターに組み込み、定常領域をコードする遺伝子と連結して完全なイムノグロブリン分子を発現させることも可能である。抗体発現ベクターとしては、例えばSV40 virus basedベクター、EB virus basedベクター、BPV(パピローマウイルス) basedベクターなどを用いることができるが、特にこれらに限定されない。
【0028】
上記のように作製した抗体の炎症性サイトカイン産生抑制活性は、当業者にとって周知の手段によって確認することができる。例えば、抗CD36抗体存在下で炎症性サイトカイン産生細胞を培養し、該細胞の炎症性サイトカイン産生量を炎症性サイトカインに対する抗体を用いたELISA法等で測定し、抗CD36抗体非存在の場合の産生量と比較すればよい。具体的には、実施例の方法を参考として、抗CD36抗体の抗炎症性サイトカイン産生促進能を確認することができる。
【0029】
また本発明者らによって、抗CD36抗体に抗炎症性サイトカイン産生促進能があることが初めて明らかになった。抗CD36抗体の抗炎症性サイトカイン産生促進能の確認も、上記炎症性サイトカイン産生抑制活性の確認と同様の方法で行うことができる。すなわち、抗CD36抗体存在下で抗炎症性サイトカイン産生細胞を培養し、該細胞の抗炎症性サイトカイン産生量を抗炎症性サイトカインに対する抗体を用いたELISA法等で測定し、抗CD36抗体非存在の場合の産生量と比較すればよい。具体的には、実施例の方法を参考として、抗CD36抗体の抗炎症性サイトカイン産生促進能を確認することができる。
【0030】
本発明の抗CD36抗体は、炎症性サイトカイン産生抑制効果または抗炎症性サイトカイン産生促進効果を利用して、炎症性疾患の治療薬の製造に使用することができる。本発明における炎症性疾患として、例えば、敗血症、全身性炎症反応症候群、関節リウマチ、潰瘍性大腸炎、クローン病、リウマチ様脊椎炎、変形性関節炎、痛風性関節炎、炎症性腸疾患、ギランバレー症候群、強皮症、繊維症、皮膚炎、乾癬、血管性浮腫、湿疹様皮膚炎、高増殖性皮膚疾患(hyperproliferative skin disease)、皮膚の炎症状態(inflammatory skin condition)、糸球体腎炎、腎炎、血管炎症、アテローム動脈硬化症、脈管炎、静脈炎、動脈炎、大動脈炎、PTCA後再狭窄、バイパス手術後再狭窄、移植拒絶反応(同種腎臓移植拒絶、同種心臓移植拒絶、これらに伴う脈管障害等)、アナフィラキシー、血栓症、虚血/再灌流傷害、自己免疫疾患を挙げることができるが、これらに限定されない。上記治療薬は、対象疾患の種類、炎症の発症部位、患者の年齢、症状等に応じ、適切な投与経路および剤形を選択し、公知製剤技術によって本発明の抗CD36抗体を製剤化して製造することができる。製剤化にあたっては、性状および品質を確保する等の目的に応じ、薬学的に許容されうる賦形剤、安定剤、保存剤、緩衝剤、懸濁化剤、乳化剤、溶解補助剤、等の適当な添加剤を適宜加えることができる。例えば、ポリソルベート80、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、無水クエン酸などと配合して注射剤として製剤化することができる。生理食塩水またはブドウ糖液注射液によって用時調製としてもよい。投与量は、疾患の種類、患者の年齢、体重等の要素に応じて調整することができる。例えば、静注の1回投与量として0.00001mg/kg〜10000mg/kgであるが、これに限られるものではない。
【実施例】
【0031】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に制限されるものではない。
(1)抗体の調製
Open biosystemsより購入したCD36遺伝子(MHS1011-74914)をPCR法によって増幅し、得られたPCR産物を動物培養細胞発現ベクターpcDNA3.1(Invitrogen)にクローニングした(pcDNA-CD36)。pcDNA-CD36をリポフェクトアミン2000(Invitrogen)を用いてヒト培養細胞293Tに一過性に導入し、その結果得られたCD36発現細胞を抗原として、Balb/Cマウスに免疫した。免疫されたマウスのリンパ節から回収したリンパ球を、ミエローマP3U1と細胞融合させ、15% FCS(Equitech)、penicillin / streptomycin (Invitrogen) とHAT solution (Invitrogen)を含むRPMI培地(sigma)に播種し、10日後に各クローンの細胞上清をサンプリングした。フローサイトメトリーによりCD36発現株と反応する細胞上清を選択し、抗CD36抗体を産生するハイブリドーマを得た。得られたハイブリドーマについて、limiting dilution法を用いて単クローン化し、Isostrip kit (Roche)を用いてアイソタイプを決定した。Hybridoma SFM培地(GIBCO)で大量培養した後、protein A affinity chromatography (GE healthcare)を用いて精製した。
【0032】
(2)抗体の配列決定
抗CD36抗体産生ハイブリドーマから、RNeasy Mini kit(Qiagen)でtotal RNAを回収し、Ready-To-Go You-Prime First-Strand Beads(Qiagen)とオリゴdTプライマーを用いてcDNAを作製した。得られたハイブリドーマのcDNAをテンプレートとし、H鎖、L鎖のVariable regionのクローニング用プライマー(Biotechnology 1991 88-89参照)でVariable regionをクローニングし、配列を決定した。
【0033】
(3)抗CD36抗体による末梢血単核細胞(PBMC)のサイトカイン産生への影響
まず実験に用いるPBMCを調製した。健常人からヘパリン採血した血液を、RPMI培地(シグマR8340)で2倍に希釈したのち、HISTOPAQUE-1077(シグマ)に重層した。800gによる遠心を30分間行なった後、中間層(白血球画分)を取り出し、溶血用緩衝液(150mM NH4Cl, 1mM KHCO3, 0.1mM Na2EDTA,pH7.2-7.4)で氷上5分間処理し、赤血球を除いた画分をPBMC(Peripheral Blood Mononuclear Cell)とした。
マウス抗ヒトCD36モノクローナル抗体(クローン1-3, 1-36, 2-6, 2-66, 4-62)によるPBMCのサイトカイン産生に与える影響を調べるため、96ウェルプレート上にて、2 x 105cells/wellのPBMCに対して100ng/mlのpolyI:C(ウイルス2本鎖RNA類似物)で刺激するとともに、1 μg/mlの抗CD36抗体あるいは抗CD61抗体(clone: #33、MBL)を添加した。対照として1 μg/mlのmouse Isotype control (IgG1 M075-3, IgG2a M076-3, IgG2b M077-3, MBLを混合したもの)、抗体添加なし(-)を用いた。上記マウス抗ヒトCD36モノクローナル抗体(クローン1-3, 1-36, 2-6, 2-66, 4-62)のアイソタイプは、クローン1-3および 1-36がIgG2b、クローン2-6および 2-66がIgG1、クローン4-62はIgG2aである。
培地は、10%血清(Equitech,USA)とStreptomycin/Penicillin (Gibco) を含むRPMI培地を使用した。37℃、5% CO2存在下で48時間培養した後、培養上清を回収し、各種サイトカインの量を市販のELISAキットを用いて測定した。測定キットは、IFNγ(IM-1743, MBL)、TNFα(IM-1121, MBL)、IL-1β(IM-3582、MBL)、IL-10(IM-1987, MBL)を用いた。
【0034】
結果を図1に示す。今回使用した抗CD36抗体は5種類とも別クローンにも関わらず、炎症性サイトカインのIFNγの産生(図1a)を著しく抑制した。さらに他の炎症性サイトカインであるIL-1β(図1b)、そしてTNFα(図1c)の産生を抗CD36抗体は抑制することが判明した。
また、抗CD61抗体である#33は、炎症性サイトカインの産生を促進する一方で、抗炎症性サイトカインのIL-10の産生を促進することが知られている。抗CD36抗体によるPBMCからのIL-10産生に与える影響を調べたところ、#33同様にIL-10の産生を促進していることが明らかになった(図1d)。
一方、同じくCD61の周辺分子であるCD51に対する抗体について、抗炎症性効果を検討した。#33のアイソタイプがIgG2aであることから、対照として、Iso2a:Isotype control IgG2aを使用した。抗CD51抗体(clone: AMF7, IMMUNOTECH)は、抗CD36抗体様の抗炎症性活性は認められなかった(図2-a, b, c,d)。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】炎症性サイトカインまたは抗炎症性サイトカインの産生に対する抗CD36抗体(クローン1-3、1-36、2-6、2-66、4-62)の効果を示すグラフである。a:IFNγ、b:IL-1β、c:TNFα、d:IL-10。グラフ中、#33は抗CD61抗体、Isotype mixはIgG1 M075-3, IgG2a M076-3, IgG2b M077-3, MBLを混合したもの、(-)は抗体添加なし、を意味する。
【図2】炎症性サイトカインまたは抗炎症性サイトカインの産生に対する抗CD51抗体の影響を検討した結果のグラフである。a:IFNγ、b:IL-1β、c:TNFα、d:IL-10。グラフ中、NoAbは抗体添加なし、を意味する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗CD36抗体を含む、抗炎症性サイトカイン産生促進剤。
【請求項2】
CD36がヒトCD36である、請求項1に記載の抗炎症性サイトカイン産生促進剤。
【請求項3】
抗炎症性サイトカインがIL-10、TGFβからなる群より選択される少なくとも1つである請求項1または2に記載の抗炎症性サイトカイン産生促進剤。
【請求項4】
重鎖可変領域が下記(a)または(b)のいずれかである、抗CD36抗体。
(a)配列番号:1、配列番号:9、配列番号:16、配列番号:22、配列番号:30のいずれかに記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域
(b)配列番号:1、配列番号:9、配列番号:16、配列番号:22、配列番号:30のいずれかに記載のアミノ酸配列に、1または複数のアミノ酸が置換、欠失、付加または挿入したアミノ酸配列からなる重鎖可変領域
【請求項5】
軽鎖可変領域が下記(a)または(b)のいずれかである、抗CD36抗体。
(a)配列番号:2、配列番号:10、配列番号:17、配列番号:23、配列番号:31のいずれかに記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域
(b)配列番号:2、配列番号:10、配列番号:17、配列番号:23、配列番号:31のいずれかに記載のアミノ酸配列に、1または複数のアミノ酸が置換、欠失、付加または挿入したアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域
【請求項6】
重鎖CDR1が下記(a)または(b)のいずれかである、抗CD36抗体。
(a)配列番号:3、配列番号:11、配列番号:24、配列番号:32のいずれかに記載のアミノ酸配列を含むCDR1
(b)配列番号:3、配列番号:11、配列番号:24、配列番号:32のいずれかに記載のアミノ酸配列に、1または複数のアミノ酸が置換、欠失、付加または挿入したアミノ酸配列からなるCDR1
【請求項7】
重鎖CDR2が下記(a)または(b)のいずれかである、抗CD36抗体。
(a)配列番号:4、配列番号:12、配列番号:18、配列番号:25、配列番号:33のいずれかに記載のアミノ酸配列を含むCDR2
(b)配列番号:4、配列番号:12、配列番号:18、配列番号:25、配列番号:33のいずれかに記載のアミノ酸配列に、1または複数のアミノ酸が置換、欠失、付加または挿入したアミノ酸配列からなるCDR2
【請求項8】
重鎖CDR3が下記(a)または(b)のいずれかである、抗CD36抗体。
(a)配列番号:5、配列番号:13、配列番号:19、配列番号:26、配列番号:34のいずれかに記載のアミノ酸配列を含むCDR3
(b)配列番号:5、配列番号:13、配列番号:19、配列番号:26、配列番号:34のいずれかに記載のアミノ酸配列に、1または複数のアミノ酸が置換、欠失、付加または挿入したアミノ酸配列からなるCDR3
【請求項9】
軽鎖CDR1が下記(a)または(b)のいずれかである、抗CD36抗体。
(a)配列番号:6、配列番号:20、配列番号:27、配列番号:35のいずれかに記載のアミノ酸配列を含むCDR1
(b)配列番号:6、配列番号:20、配列番号:27、配列番号:35のいずれかに記載のアミノ酸配列に、1または複数のアミノ酸が置換、欠失、付加または挿入したアミノ酸配列からなるCDR1
【請求項10】
軽鎖CDR2が下記(a)または(b)のいずれかである、抗CD36抗体。
(a)配列番号:7、配列番号:14、配列番号:28のいずれかに記載のアミノ酸配列を含むCDR2
(b)配列番号:7、配列番号:14、配列番号:28のいずれかに記載のアミノ酸配列に、1または複数のアミノ酸が置換、欠失、付加または挿入したアミノ酸配列からなるCDR2
【請求項11】
軽鎖CDR3が下記(a)または(b)のいずれかである、抗CD36抗体。
(a)配列番号:8、配列番号:15、配列番号:21、配列番号:29、配列番号:36のいずれかに記載のアミノ酸配列を含むCDR3
(b)配列番号:8、配列番号:15、配列番号:21、配列番号:29、配列番号:36のいずれかに記載のアミノ酸配列に、1または複数のアミノ酸が置換、欠失、付加または挿入したアミノ酸配列からなるCDR3
【請求項12】
請求項4から11のいずれかに記載の抗CD36抗体と競合してCD36と結合する、抗CD36抗体。
【請求項13】
請求項4から11のいずれかに記載の抗CD36抗体が認識するCD36の領域を認識する、抗CD36抗体。
【請求項14】
抗CD36抗体が請求項4から13のいずれかに記載された抗CD36抗体である、請求項1から3のいずれかに記載の抗炎症性サイトカイン産生促進剤。
【請求項15】
請求項4から13のいずれかに記載された抗CD36抗体を含む、炎症性サイトカイン産生抑制剤。
【請求項16】
炎症性サイトカインがIFNγ、IL-1α、IL-1β、TNFα、IL-6、IL-8、IL-10、IL-12、IL-15、IL-18、GM-CSFからなる群より選択される少なくとも1つである、請求項15記載の炎症性サイトカイン産生抑制剤。
【請求項17】
請求項1、2、3、若しくは14のいずれかに記載の抗炎症性サイトカイン産生促進剤または請求項15若しくは16に記載の炎症性サイトカイン産生抑制剤を含む、炎症性疾患治療用医薬品。
【請求項18】
炎症性疾患が、敗血症、全身性炎症反応症候群、関節リウマチ、潰瘍性大腸炎、クローン病、リウマチ様脊椎炎、変形性関節炎、痛風性関節炎、炎症性腸疾患、ギランバレー症候群、強皮症、繊維症、皮膚炎、乾癬、血管性浮腫、湿疹様皮膚炎、高増殖性皮膚疾患(hyperproliferative skin disease)、皮膚の炎症状態(inflammatory skin condition)、糸球体腎炎、腎炎、血管炎症、アテローム動脈硬化症、脈管炎、静脈炎、動脈炎、大動脈炎、PTCA後再狭窄、バイパス手術後再狭窄、移植拒絶反応(同種腎臓移植拒絶、同種心臓移植拒絶、これらに伴う脈管障害等)、アナフィラキシー、血栓症、虚血/再灌流傷害、自己免疫疾患からなる群より選ばれるいずれか1以上の疾患である、請求項17記載の炎症性疾患治療用医薬品。
【請求項19】
抗CD36抗体を用いることを特徴とする、炎症性疾患の治療方法。
【請求項20】
炎症性疾患治療薬の製造のための、抗CD36抗体の使用。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−235447(P2010−235447A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−197773(P2007−197773)
【出願日】平成19年7月30日(2007.7.30)
【出願人】(390004097)株式会社医学生物学研究所 (41)
【出願人】(591063394)財団法人 東京都医学研究機構 (69)
【Fターム(参考)】