説明

炎症性及び血液循環疾患の治療及び予防活性を示す、竹抽出物並びにそれから分離された化合物を含有する組成物

本発明は炎症性疾患及び血液循環疾患の治療及びに予防のための竹抽出物を含む組成物に関する。竹抽出物はNO生成の抑制による強力な抗炎症活性及び、エラスターゼ活性の抑制、血管内皮細胞創傷の治癒、uPA発現の活性化及びPAI−1発現の抑制、コレステロール沈着の低減及びネオインチマ形成の抑制による血液循環改善活性を有する。従って、これは炎症性及び血液循環疾患の治療及び予防のための治療剤または健康機能食品として使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は炎症性及び血液循環疾患の治療及び予防活性を示す竹抽出物及びそれから分離された化合物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
血液循環障害は沈着されたコレステロール、血管上の増加された血栓、及び血管の弾性力減少に基因する血流障害によって現われる。血液循環障害の代表例は手又は足のしびれ、首と肩のひきつり、記憶喪失、無気力、集中力低下、眩暈及び慢性疲労などであり、これらはしばしば正常な生活に混乱を与える。血液循環障害の一例である、高脂血症は血液脂質パラメータが血液内に増加する状態である。この状態は血液内に非正常的に高濃度の脂肪が存在する。循環血液中の脂質成分は総コレステロール、低密度リポタンパク質、極低密度リポタンパク質又は中性脂肪(トリグリセリド)である。
【0003】
炎症は、例えば、バクテリア、カビ、ウイルス、種々のアレルゲンのような外部汚染物質の侵入によって、これらに対する炎症性反応及び生物物理学的工程を含んで、生じる。炎症反応の特有の兆候は酵素活性の増大、炎症媒介物質の放出、体液浸潤、細胞移動、組織破壊の一連の複合的な生理的反応に加えて、紅斑、浮腫、発熱、痛みなどの外的症候である。
【0004】
これら炎症性反応の因子である、NO(一酸化窒素)は、最終生成物(即ち、NO)を形成するためにL−アルギニン(L-arginine)に作用する、NOS(一酸化窒素シンターゼ)とシトルリン(citrulline)によって、中間体(ヒドロキシアルギニン)を経て、形成される。この物質(NO)は小さな分子量を有しており、血管系に作用して血管拡張、血小板凝集及び接着、神経伝達、及び消化器官運動を誘発し、神経伝達、血液凝固、血圧調節及び癌細胞などに対する免疫などのような代謝経路及び生理的反応を調節する重要な役割を果たすことが見出されている。これは遊離基構造であるために毒性が強く、大気中で安定化された最終産物、即ち、NOとNOに変換される傾向がある(Snyder S. H., et al, Scientific American, May pp28-35, 1992)。
【0005】
NOSはカルシウムイオン又はカルモジュリン(calmodulin)依存性によってcNOS(構成上のNOS)とiNOS(誘導性のNOS)とに分類されるが、カルシウムイオン又はカルモジュリン依存性のcNOSは主に脳、上皮細胞、好酸球、胃腸粘膜細胞に存在し、カルシウムイオン又はカルモジュリン非依存性のiNOSは主にマクロファージ細胞、肝細胞、癌細胞などに存在し、幾つかの要因、例えば、IL−1β、IFN−γ、TNF−αなどのサイトカイン、又は細菌性LPSのようなエンドトキシンによって誘発される(Dinerman, J. L., et al, Circ. Res., 73, pp217-222, 1993)。iNOSの発現はCOX−2発現と密に関係しており、したがって、生成されたNOはCOX−2発現に影響を与えることもある(Robert C., et al., J. Immunol., 165, pp1582-1587, 2000; Daniela S., et al., Proc. Nat’l. Acad. Sci. USA, 90, pp7240-7244, 1993)。
【0006】
さらに、iNOSに基因するNO生成と動脈硬化、関節炎、胃炎、大膓炎、腎臓炎、肝炎、癌又は退行性疾患のような種々の炎症性疾患との相互関係に対する数多くの報告がある(Gobert A. P. et al., J. Immunol. 168(12), pp6002-6006, 2002; Dijkstra G. et al., Scand. J. Gastroenterol., 37(5) pp546-554, 2002; Sakac V. and Sakac M. Med. Pregl., 53, pp463-474, 2000; Albrecht E. W. et al., Am. J. Transplant, 29(5), pp448-453, 2002; Ramachandran A. et al., Free Radical Biol. Med., 33(11), pp1465-1474, 2002; Sartor L. et al., Biochemical Pharmacol., 64, pp229-237, 2002; Sadowska Krowicka H. et al., Proc. Soc. Exp. Biol. Med., 217(3), pp351-357 1998; Lo A. H. et al., Carcinogenesis, 23(6) pp983-991, 2002)。
【0007】
したがって、iNOSに起因するNO生成を強力に阻害する抑制剤を見つけて、上記記載の種々の炎症性疾患の治療及び予防する医薬品、健康機能食品、食品添加剤を開発するための研究が行なわれてきた。
【0008】
タケ科(Bambusaceae)又はイネ科(Poaceae)に属する竹は、韓国及び日本を含むアジア諸国に分布している。全世界に分布している竹の種類は約1259種に達している。その中でも、タケ科に属する代表的なものは、マダケ(Phyllostachys bambusoides SIEB.Et Zucc)、クロチク(Phyllostachys nigra MUNRO)、ハチク(Phyllostachys nigra MUNRO var.henonis STAPF)及びモウソウチク(Phyllostachys pubescens MAZEL ex H.de LEH)であり、イネ科に属する代表的なものは、ジダケ(Sasa borealis Makino)、コウライザサ(Sasa coreana Nakai)、ミヤコザサ(Sasa japonica Makino)、チシマザサ(Sasa borealis var.gracilis)、チマキザサ(Sasa palmata Nakai)、イノコログサ(Setaria viridis BEAUV)及びアジアイネ(Oryza sativa L)である。
【0009】
竹抽出物の用途に対する幾つかの報告、例えば、ミヤコザサからの葉抽出物の製造方法及びその抗菌活性を用いた食品保存剤としての用途を開示する韓国公開特許第10-2001-69130号;抗癌活性を持つ竹から分離された多糖体を開示する米国特許出願第3418311号、がある。
【0010】
しかし、竹抽出物及びそこから分離された化合物の炎症性又は血液循環疾患の治療効果については、上で引用したどの文献にも報告又は開示されていない。この開示は参考のためにここに組み込まれている。
【0011】
幾つかの生化学的実験を通じて、竹抽出物及びそれから分離された化合物の炎症又は血液循環疾患の治療又は予防効果を調べて、確認するために、 本発明者らは、幾つかの生化学的実験、即ち、生体内でLPS活性化されたマクロファージ細胞によって誘導されるNO又はPLA2生成抑制、 血管内で血栓溶解活性、血流量の調節及び細胞の成長に重要な役割を果たすu−PA、eNOS及びVEGFのような幾つかの遺伝子の発現に対する効果に加えて、細胞毒性テスト、LDL受容体欠損マウス及び正常マウスを用いた動物モデルテストを鋭意遂行し、最終的に、竹抽出物及びそこから分離された化合物が炎症性又は血液循環疾患に対する治療及び予防活性を有していることを確認し、本発明を完成した。
【0012】
これら及び本発明の他の目的は以下に提供する本発明の詳細な開示から明らかになるだろう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、 NOの過剰生成によって引き起こされる炎症性疾患の治療又は予防のために有効な量の竹抽出物又はそこから分離された化合物を有効成分として含有する医薬組成物を提供する。
【0014】
本発明は、 血液循環疾患の治療又は予防のために有効な量の竹抽出物又はそこから分離された化合物を含有する医薬組成物を提供する。
【0015】
本発明は炎症性疾患及び血液循環疾患を治療及び予防する医薬組成物の製造のための上記竹抽出物又はそこから分離された化合物の用途も提供する。
【0016】
本発明は上記竹抽出物又はそこから分離された化合物を含有する、血液循環疾患及びNO生成の抑制による炎症性疾患の予防及び緩和のための健康機能食品も提供する。
【0017】
したがって、本発明の目的は竹の粗抽出物、極性溶媒可溶性抽出物又は非極性溶媒可溶竹抽出物を有効成分として含有する、心血管疾患の治療及び予防用医薬組成物を提供することである。
【0018】
本発明の目的は竹の粗抽出物、極性溶媒可溶性抽出物又は非極性溶媒可溶性抽出物を有効成分として含有する、エラスターゼ活性抑制、血管無い内皮細胞の創傷治癒、u−PA発現活性、PAI−1発現抑制、コレステロール沈着低減及びネオインチマ(neointima)形成抑制による血液循環疾患を治療又は予防用医薬組成物を提供することである。
【0019】
本発明の目的は竹の粗抽出物、極性溶媒可溶性抽出物又は非極性溶媒可溶竹抽出物を有効成分として含有する、NO生成及びホスホリパーゼA2発現の抑制による炎症の治療及び予防用医薬組成物を提供することである。
【0020】
ここに記載された「粗抽出物」は水、メタノール、エタノールのような低級アルコール、好ましくはメタノールなど、又はこれらの混合物で植物性素材を抽出することによって製造される抽出物を含む。
【0021】
ここに記載された用語「極性溶媒可溶性抽出物」は極性溶媒、例えば、水、メタノール、エタノールのような低級アルコール、好ましくはブタノールなど、又はこれらの混合物で上記粗抽出物を抽出することによって製造することができる。
【0022】
ここに記載された用語「非極性溶媒可溶性抽出物」は非極性溶媒、例えば、ヘキサン、酢酸エチル又はジクロロメタン、好ましくは酢酸エチルで上記粗抽出物を抽出することによって製造することができる。
【0023】
したがって、本発明の他の目的は竹抽出物から分離されたトリシンとp−クマル酸を有効成分として含有する、心血管疾患の治療又は予防のための医薬組成物を提供することである。
【0024】
本発明の目的は竹抽出物から分離されたトリシンとp−クマル酸を有効成分として含有する、エラスターゼ活性抑制、血管内皮細胞の創傷治癒及びVEGF、u−PA及びeNOS遺伝子発現の増加による血液循環疾患の治療及び予防のための医薬組成物を提供することである。
【0025】
本発明の他の目的は竹抽出物から分離トリシンとp−クマル酸を有効成分として含有する、NO生成抑制による炎症の治療又は予防のための医薬組成物を提供することである。
【0026】
ここに記載された用語「竹(Bamboo Plant)」とはタケ科(Bambusaceae)又はイネ科(Poraceae)に属する竹の茎又は葉を含む。タケ科に属する好ましい竹は、マダケ、クロチク、ハチク及びモウソウチクであり、より好ましくは、ハチクである。イネ科に属する好ましい竹は、ジダケ、コウライザサ、ミヤコザサ、チシマザサ、チマキザサ、イノコログサ及びアジアイネであり、より好ましくは、ジダケである。
【0027】
ここに記載された用語「uPA」はウロキナーゼ型プラスミノゲン活性因子遺伝子(繊維素溶解因子)、「PLA2」はホスホリパーゼA2遺伝子、「VEGF」は血管内皮増殖因子遺伝子(vascular endothelial growth factor gene)、「eNOS」は内皮窒素酸化シンターゼ遺伝子(endothelial nitrous oxide synthase gene)、「PAI−1」は1型プラスミノゲン活性化阻害剤遺伝子(plasminogen activator inhibitor 1 gene)である。
【0028】
本発明の目的はヒト又は哺乳類でNO生成及びPLA2発現の抑制による炎症性疾患の治療及び予防のための治療薬製造用の、竹の粗抽出物、極性溶媒可溶性抽出物又は非極性溶媒可溶性抽出物の用途を提供することである。
【0029】
本発明の目的はヒト又は哺乳類でエラスターゼ活性抑制、血管内皮細胞の創傷治癒、uPA発現活性及びPAI−1発現抑制、コレステロール沈着低減及びネオインチマ(neointima)形成抑制による血液循環疾患の予防及び治療のための治療薬製造用の、竹の粗抽出物、極性溶媒可溶性抽出物又は非極性溶媒可溶竹抽出物の用途を提供することである。
【0030】
本発明の目的は哺乳類において、竹の粗抽出物、極性溶媒可溶性抽出物又は非極性溶媒可溶竹抽出物の有効量を、薬学的に許容しうる担体と共に上記哺乳類に投与することを含む、NO生成抑制による炎症性疾患の治療及び予防方法を提供することである。
【0031】
本発明の目的は哺乳類において、竹の粗抽出物、極性溶媒可溶性抽出物又は非極性溶媒可溶竹抽出物の有効量を、薬学的に許容しうる担体と共に上記哺乳類に投与することを含む、エラスターゼ活性抑制及び血管内皮細胞の創傷治癒、コレステロール沈着低減及びネオインチマ(neointima)形成抑制による血液循環疾患の治療及び予防方法を提供することである。
【0032】
本発明の他の目的は上記記載の抽出物又は化合物に加えて栄養学的に許容しうる添加剤を含有する、血液循環疾患及びNO生成及びPLA発現抑制による炎症性疾患の予防及び緩和のための健康機能食品を提供することである。
【0033】
ここに記載された用語「心血管疾患」とは高血圧、心臓病、脳卒中、末梢血管疾患、高脂血症、動脈硬化、狭窄症、血栓症又は心筋硬塞などのような種々の心血管疾患を含む。
【0034】
ここに記載された用語「炎症性疾患」とは動脈硬化、関節炎、胃炎、大膓炎、腎炎、肝炎、癌又は多様な退行性疾患などのような種々の炎症性疾患を含む。
【0035】
本発明の医薬組成物は組成物の全重量に対して上記抽出物又は化合物を約0.1〜70重量%を含むことができる。
【0036】
本発明の健康機能食品は組成物の全重量に対して上記抽出物又は化合物を0.01〜80重量%、好ましくは1〜60重量%を含む。
【0037】
上記健康機能食品は健康機能食品、健康飲料などに含有でき、粉末、顆粒、錠剤、そしゃく錠、カプセル、飲料などとして使用することができる。
【0038】
本発明の竹から分離された抽出物及び化合物を下記好適な実施態様にしたがって製造することができる。
【課題を解決するための手段】
【0039】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0040】
本発明の竹抽出物は下記詳細な手順によって製造することができる。
【0041】
本発明のハチク(Phyllostachys nigra MUNRO var.henonis STAPF)又はジダケ(Sasa borealis Makino)抽出物は下記によって製造することができる;
ハチク又はジダケを乾燥し、切り、砕いて乾燥重量の5〜25倍、好ましくはおよそ10倍容量の蒸留水、メタノール、エタノール、ブタノール等のよな低級アルコール、又はその混合物、好ましくはメタノールと混合し;溶液は20〜100℃、好ましくは60〜100 の温度範囲で、1〜24時間、熱水で処理し、熱水、冷水、還流抽出、又は超音波抽出の抽出方法で、1回〜5回、好ましくは2回〜3回、繰り返して処理し;残渣は濾過して上清を得、これをロータリー・エバポレータで20〜100℃、好ましくは50〜70℃の温度範囲で濃縮した後、真空凍結乾燥、熱風乾燥又は噴射乾燥で乾燥して水、低級アルコール又はその混合溶液に可溶性のハチク又はジダケの乾燥抽出粉末を得た。
【0042】
さらに、本発明の極性溶媒可溶性抽出物と非極性溶媒可溶性抽出物は下記手順によって製造することが出来る;上記ステップによって製造された粗抽出物を水に懸濁した後、酢酸エチル、クロロホルム、ヘキサンなどのような非極性溶媒の1〜100倍、 好ましくは1〜5倍容量と混合し;非極性溶媒可溶層を集めると、本発明の非極性溶媒可溶性抽出物が得られ、残りの極性溶媒可溶層を集めるとは水、低級アルコール又はその混合物に可溶性の本発明の極性溶媒可溶性抽出物が得られる。また、上記記載の方法は、より強力な分画物又は化合物を分別又は分離するために、当該技術分野で周知のような従来方法、例えば、文献(Harborne J. B. Phytochemical methods: A guide to modern techniques of plant analysis, 3rd Ed. pp6-7, 1998)に開示された方法によって、改変又は更なるステップを追加することができる 。
【0043】
幾つかの生化学的実験を通じて、上記竹抽出物が炎症及び血液循環に対して効果があるかを調べて、抽出物と非極性溶媒可溶性抽出物が炎症の主要原因であるNO生成を抑制、及び血液循環を改善する重要な役割を果たしているか否かを確認した。その結果、粗抽出物、極性溶媒可溶性抽出物及び非極性溶媒可溶性抽出物がNOの生成、iNOS遺伝子の発現、エラスターゼの活性及びPAI−1遺伝子の発現を抑制してuPA遺伝子発現を促進し、in vivoで創傷治癒を、in vitroで血管形成の活性化及びコレステロール沈着及びネオインチマ形成の抑制を示すことが確認された。
【0044】
本発明の他の態様によれば、上記製造法で製造されたハチク又はジダケの粗抽出物、極性溶媒可溶性抽出物又は非極性溶媒可溶性抽出物を含有する、NO生成抑制による炎症の治療及び予防のための医薬組成物が提供される。
【0045】
本発明の他の態様は、上記製造法で製造された抽出物を含む医薬組成物を炎症又は血液循環疾患の治療のためにヒトを含む哺乳類に投与することを含む治療方法及び予防方法を提供することである。
【0046】
NO生成の抑制による炎症の治療及び予防、血液循環の改善するための本発明の組成物は、組成物全重量に対して上記抽出物を0.1〜70重量%を含むことができる。
【0047】
本発明の組成物は、さらに、当該技術分野で周知の使用方法に従って通常の担体、賦形剤又は希釈剤を含むことができる。上記担体は使用法及び応用方法によって適当な物質として使用されることが好ましいが、それに限定されるものではない。適当な希釈剤は、Remington’s Pharmaceutical Science(Mack Publishing Co. Easton PA)に記載されている。
【0048】
以下の製剤方法及び添加剤は単に例示的なものであり、本発明を制限するものではない。
【0049】
本発明に係る組成物は薬学的に許容しうる担体、賦形剤又は希釈剤、例えば、乳糖、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリトリトール、マルチトール、澱粉、アカシアゴム、アルギネート、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、ポリビニールピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、ステアリン酸マグネシウム又は鉱物油を含む医薬組成物として提供することができる。剤形はさらに充填剤、抗凝集剤、平滑剤、湿潤剤、香料、乳化剤、保存剤などのを含むことができる。本発明の組成物は当該技術分野で周知の手順を採用して、患者に投与した後、有効成分の迅速、持続又は遅延された放出を提供できるように製剤化することができる。
【0050】
例えば、本発明の組成物は注射剤を生産するために通常的に使用されるオイル、プロピレングリコール又は他の溶媒に溶解することができる。適した担体の例は、生理食塩水、ポリエチレングリコール、エタノール、植物油、ミリスチン酸イソプロピルなどを含むが、これらに制限されない。局所投与のために、本発明の抽出物を軟膏剤又はクリームの形態で製剤化することができる。
【0051】
本組成物を含有する医薬製剤は経口投与形態(散剤、錠剤、カプセル剤、ソフトカプセル剤、水性薬剤、シロップ剤、エリキシル丸剤、粉剤、香粉、顆粒)、又は局所製剤(クリーム剤、軟膏剤、ローション剤、ゲル剤、香膏、パッチ剤、糊剤、散布液、エーロゾル剤など)、又は注射可能な製剤(溶液剤、懸濁剤、乳剤)などのあらゆる形態で製造することができる。
【0052】
薬学的投与形態で、本発明の組成物は薬学的に許溶しうる塩の形態で使用することができ、また、単独又は適当な組み合わせで、他の薬学的活性成分と併用するようにして、使用することができる。
【0053】
本発明の抽出物又は化合物の好ましい投与量は投与対象の健康状態及び体重、重症度、薬剤形態、投与経路及び期間によって変わり、また、当業者によって選択することもできる。しかし、所望の効果を得るために、本発明の抽出物又は化合物を 一般に、1日に、10g/kg範囲内、好ましくは1〜3g/kgで投与することが推奨される。投与は1日当り、1度又は数回に分けて投与することができる。組成物の点から見て、本発明の抽出物の量は組成物の全重量に対して0.01〜70重量%、好ましくは0.5〜50重量%で存在しなければならない。
【0054】
本発明の医薬組成物は種々経路を介して哺乳類(ラット、マウス、家畜又はヒト)などの対象動物に投与することができる。投与のすべて方式は、例えば、経口、直腸内又は静脈、筋肉、皮下、皮内、鞘内、硬膜外、又は脳室内注射の投与によってなされ得ることが予想される。
【0055】
ここに記載された用語「健康機能食品」とは栄養補助食品(dietary supplement)、機能性食品(nutraceuticals)、食品又は食品添加物を含む。
【0056】
また、本発明は上記記載の抽出物 0.01〜80重量%、アミノ酸 0.001〜5重量%、ビタミン 0.001〜2重量%、糖 0.001〜20重量%、有機酸 0.001〜10重量%、適量の甘味料及び香辛料を加えて、炎症及び血液循環の予防及び改善用健康機能食品飲料の組成物を提供する。
【0057】
上記記載の竹抽出物は炎症及び血液循環の予防及び改善用食品及び飲料に加えることができる。
【0058】
健康機能食品の開発のために、例えば、本発明の上記抽出物を含む食品組成物の例は、種々の食品、飲料、ガム、ビタミン複合体、健康増進食品などであり、パウダー、顆粒、錠剤、そしょく錠、カプセル又は飲料などのとして使用することができる。
【0059】
また、本発明の抽出物は調整粉乳、 成長期用調整粉乳、成長期用調整食品などのように、幼児及び乳児食品に添加して、アレルギー性疾患及び非アレルギー性炎症性疾患の予防及び改善させることができる。
【0060】
上記記載の組成物は食品、添加剤又は飲料に添加することができ、食品又は飲料内の上記記載の抽出物の量は一般に健康機能食品組成物用食品の全重量の約0.1〜80w/w%、好ましくは1〜50w/w%、及び健康飲料組成物100mLを基準にして、1〜30g、好ましくは3〜10gでありうる。
【0061】
本発明の健康飲料組成物が指示された割合で、必須成分として上記抽出物を含有する場合には、他の液体成分には特別な制限はなく、通常の飲料のような種々の香味剤(deodorant)又は天然炭水化物などを他の組成物として含有することができる。上記天然炭水化物の例は、ブドウ糖、果糖などのような単糖類、マルトース、蔗糖などのような二糖類、デキストリン、シクロデキストリンなどのような通常の糖、及びキシリトール、エリトリトールなどのような糖アルコールである。上記されたもの以外の他の香味剤として、天然香味剤(例;タウマチン、ステビア抽出物、例えば、レバウディオサイドA(levaudioside A)、グリチルリチンなど)及び合成香味剤(サッカリン、アスパルテームなどのような)を有利に使用することができる。上記天然炭水化物の量は一般に本発明の飲料組成物100ml当たり、 約1〜20g、好ましくは5〜12gの範囲である。
【0062】
上記組成物以外の他の成分は、種々の営養剤、ビタミン、鉱物又は電解質、合成風味剤、着色剤及び増進剤(チーズ、チョコレートなど)、ペクチン酸及びその塩、アルギン酸及びその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に使われる炭化剤などがある。上記のもの以外の他の成分は、天然果汁製造用果汁、果汁飲料及び野菜飲料が挙げられ、このような成分は独立的に又は組み合わせで使用することができる。この成分の比率はそれほど重要ではないが、一般に、本発明の組成物100w/w%当たり、約0〜20w/w%の範囲である。上記説明された抽出物を含む食品の例は、種々の食品、飲料、ガム、ビタミン複合体、健康増進用食品などである。
【0063】
本発明の組成物は、さらに、クエン酸、フマル酸、アジピン酸、乳酸、リンゴ酸のような有機酸;ホスフェート、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、酸性ピロリン酸、ポリホスフェートのようなリン酸塩;ポリフェノール、カテキン、α−トコフェロール、ローズマリー抽出物、ビタミンC、緑茶抽出物、甘草抽出物、キトサン、タンニン酸、フィチン酸などのような天然抗酸化剤を一つ以上含んでいてもよい。。
【0064】
上記竹抽出物は20〜90%の高濃縮液体、粉末、又は顆粒形態とすることができる。
【0065】
同様に、上記竹抽出物は、さらに、乳糖、カゼイン、デキストロース、ブドウ糖、蔗糖及びソルビトールを1つ以上含むことができる。
【0066】
本発明の抽出物は毒性及び副作用がなく、したがって、安全に使用することができる。
【0067】
本発明の精神と範囲から逸脱することなく、本発明の組成物、用途及び製法において種々の様々な変更及び変形することができることは当業者にとって自明であろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0068】
本発明の上記及び他の目的、特性及び他の長所は添付図面とともに下記の詳細な記述からより明らかに理解することができる。
【0069】
図1と及びは、トリシン及びp−クマル酸のHPLC分析のデータを示す。図1は標準群、図2は本発明の竹抽出物である。
【0070】
図3及び4は、竹粗抽出物及びそこから分離された分画物の各濃度のNO抑制効果を示す。図3は50μg/mL濃度処理群について、図4は100μg/mL濃度処理群についてである。
A:粗抽出物
B:n−ヘキサン可溶性抽出物
C:ジクロロメタン可溶性抽出物
D:n−ブタノール可溶性抽出物
E:酢酸エチル可溶性抽出物
F:水溶性抽出物
【0071】
図5はHUVECにおける竹抽出物、トリシン及びp−クマル酸の細胞毒性を示す。ここで、グラフ線上に記載された数字は処理サンプル濃度(μg/mL)を意味する。
【0072】
図6はHUVECにおける竹抽出物の細胞増殖効果を示す。
【0073】
図7〜9は、HUVECの完全培地でのmRNA発現に対する竹抽出物、トリシン及びp−クマルの効果を示す。図7はVEGF遺伝子発現、図8はu−PA遺伝子発現、図9はeNOS遺伝子発現に対する効果であり、ここで、グラフ線上に記載された数字は処理サンプル濃度(μg/mL)を意味する。
【0074】
図10〜12は、in vitroでHUVECを用いる創傷治癒試験による本発明の竹抽出物の創傷治癒効果を示す。図10は対照群、図11は10μg/mLの竹抽出物処理群、図12は50μg/mLの竹抽出物処理群である。
【0075】
図13〜15は、 in vitroでHUVECを用いる血管形成試験による本発明の竹抽出物の血管形成効果を示す。図13は対照群、図14は10μg/mLの竹抽出物処理群 、図15は100μg/mLの竹抽出物処理群である。
【0076】
図16は、高農度のコレステロール食餌により誘導された動脈硬化ネズミにおける竹抽出物16週間(50及び100mg/kg)及び20週間(500mg/kg)処理群及び非処理群の体重変化を示す。
【0077】
図17及び18は、高農度のコレステロール食餌により誘導された動脈硬化マウスにおける竹抽出物16週間(50と100mg/kg)及び20週間(500mg/kg)処理群と非処理群の、オイルレッドO染色された(oil red O stained)大動脈弁損傷部位(aortic valve lesion areas)のコンピュータ関連画像分析による形態計測を示す。
【0078】
図17は、大動脈弁損傷の凍結切片のオイルレッドO染色された写真を示し、ここで、左写真は対照群、中央写真はロバスタチン処理の陽性対対照群、右写真は竹抽出物処理の写真である。図18は、コンピュータ関連画像分析による大動脈弁損傷部位の形態計測の結果を示す。
【実施例】
【0079】
本発明の精神と範囲から逸脱することなく、本発明の組成物、用途及び製法において種々の様々な変更及び変形することができることは当業者にとって自明であろう。
【0080】
本発明は下記実施例によってさらに詳しく説明される。しかし、本発明はいかなる方法によってもこれら実施例に制限されるものではないと理解できるだろう。
【0081】
下記参照例、実施例及び実験例はその範囲を制限することなく、本発明をさらに説明するために示されている。
【0082】
[実施例1] 竹粗抽出物の製造
ジダケ、コウライザサ、ミヤコザサ、チシマザサ、チマキザサ(Sasa palmata Nakai)、ハチク、マダケ、クロチク及びモウソウチクの竹を洗浄し、室温で10日間乾燥した。
【0083】
乾燥した竹の葉及び茎10kgを小さく切り、70%エタノール100mLと混合し、その混合物を80℃で7時間、3度繰り返して加熱した。そして、抽出物を濾紙(ワットマン社製、米国)で濾過した。濾液を集め、55〜65℃で、ロータリー・エバポレータ(N−1000、Eyela社、日本)によって減圧濃縮し、凍結乾燥器(速度仕様 3000、Bio−Rad、米国)で乾燥して、それぞれ竹の乾燥粗抽出物出を得た(表1参照)。
【0084】
【表1】

【0085】
[実施例2] Phyllostachys nigraの極性溶媒及び非極性溶媒可溶性抽出物の製造
2−1.n−ヘキサン可溶性抽出物の製造
実施例1で製造したPhyllostachys nigraの粗抽出物50gを1リットルの蒸留水に懸濁し、その懸濁液をn−ヘキサン1リットルと激しく混合してn−ヘキサン可溶性分画と水−可溶性分画とに分けた。n−ヘキサン可溶性分画を集め、残余溶液はn−ヘキサン抽出を再び遂行した。上記過程を3度繰り返した。
n−ヘキサン可溶性分画を真空内で蒸発してPhyllostachys nigraのn−ヘキサン可溶性抽出物9.1gを得た。
【0086】
2−2.ジクロロメタン可溶性抽出物の製造
実施例2−1で製造されたPhyllostachys nigraの水−可溶性分画を同一量のジクロロメタンと激しく混合してジクロロメタン可溶性分画と水−可溶性分画とに分けた。ジクロロメタン可溶性分画を集め、残余溶液はジクロロメタン抽出を再び遂行した。上記過程を3度繰り返した。
ジクロロメタン可溶性分画を真空内で蒸発してPhyllostachys nigraのジクロロメタン可溶性抽出物4.6gを得た。
【0087】
2−3.酢酸エチル可溶性抽出物の製造
実施例2−2で製造したPhyllostachys nigraの水−可溶性分画を同一量の酢酸エチルと激しく混合して酢酸エチル可溶性分画と水−可溶性分画とに分けた。酢酸エチル可溶性分画を集め、残余溶液は酢酸エチル抽出を再び遂行した。上記過程を3度繰り返した。
酢酸エチル可溶性分画を真空内で蒸発してPhyllostachys nigraの酢酸エチル可溶性抽出物4.3gを得た。
【0088】
2−4.n−ブタノール及び水−可溶性抽出物の製造
実施例2−3で製造したPhyllostachys nigraの水−可溶性分画を同一量のn−ブタノールと激しく混合してn−ブタノール可溶性分画と水−可溶性分画とに分けた。n−ブタノール可溶性分画を集め、残余溶液はn−ブタノール抽出を再び遂行した。上記過程を3度繰り返した。
n−ブタノール可溶性分画及び水−可溶性分画をそれぞれ真空内で蒸発してPhyllostachys nigraのn−ブタノール可溶性抽出物7.1g及び水−可溶性抽出物25.1gを得た。
【0089】
[実施例3] Sasa borealisの極性溶媒及び非極性溶媒可溶性抽出物の製造(1)
表2に示されるように、上記実施例2に開示された同一の方法によって、極性溶媒可溶性抽出物及び非極性可溶性抽出物を製造した。
【0090】
【表2】

【0091】
[実施例4] Sasa borealis の極性溶媒及び非極性溶媒可溶性抽出物の製造(2)
実施例1で製造したジダケの茎からの乾燥抽出物を下記のように分画した。
実施例1で得た粗抽出物100gを精製水1000mLに懸濁した。クロロホルム1000mlを分液漏斗中でこれに加え、混合物を激しく振ってクロロホルム可溶性層と水可溶性層とに分けた。クロロホルム可溶性分画を集め、残余溶液はクロロホルム抽出を再び遂行した。
上記過程を3度繰り返してクロロホルム可溶性構成要素を分離し、クロロホルム可溶性分画を集め、減圧下で乾燥してクロロホルム可溶性分画17.8gを得た。
上記水可溶性分画を同一量の酢酸エチルと混合した後、酢酸エチル可溶性層と水−可溶性層とに分けた。上記分画工程を3度繰り返した。
上記酢酸エチル可溶性層をロータリー・エバポレータにより濃縮し、減圧下で乾燥して酢酸エチル可溶性抽出物 15.4gを得た。
最終的に、さらに、水−可溶性層を下記実験のサンプルとして使用するために得た。
【0092】
[実施例5] トリシンとp−クマル酸の分離
実施例4で製造した酢酸エチル可溶性分画10gをシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付してトリシンとp−クマル酸とを分離した。
10gの酢酸エチル分画をシリカゲルカラムに載せ、カラムを直線濃度勾配を含む混合溶媒クロロホルム:アセトン(100:1〜1:1)で溶出して7個のサブ−分画を得た。7個の分画中、4番目の分画をメタノールを用いて再結晶し、26mgの黄色の結晶を分離した。
上記で得た黄色の結晶をTLCプレート(シリカゲル60 F254プレート、層の厚さ0.2mm、20×20、Merck社製、ドイツ)と展開溶媒としてクロロホルム:メタノール混合物(20:1)を使用して薄層クロマトグフィーを遂行した。TLC結果、Rは0.4(溶媒系;CHCl:MeOH=20:1)であり、結晶はアニスアルデヒド− HSOで黄斑として、365nmUV光(Power wave−XS、Bio−Tek社製、米国)で暗褐斑として検出されることが示された。
NMR分光法(H:300MHz、13C:75MHz、DRX300、Bruker、ドイツ)によるH及び13C−NMRデータの結果、黄色結晶がトリシン化合物であることが確認でき、トリシンの分光学的データは下記のように示された。
【0093】
トリシン:C1714
H-NMR (300MHz, d6-DMSO): δ 12.96 (5-OH, 1H, s), 7.33(H-2',H-6', 2H, s), 6.97(H-3, 1H, s), 6.56(H-8, 1H, d, J=2.0Hz), 6.21(H-6, 1H, d, J=2.0Hz), 3.89(-OCH, 6H, s).
13C-NMR (75MHz, d6-DMSO): δ 182.66(C-4), 164.96(C-2), 164.53(C-7), 162.26(C-5), 158.21(C-9), 149.07(C-3',5'), 140.74(C-4'), 121.30(C-1'), 105.32(C-3), 104.61(C-2',6'), 104.46(C-10), 99.69(C-6), 95.04(C-8), 57.26(-OCH)
【0094】
7個の分画中、7番目の分画は分取HPLCを遂行してフェニルプロパノイド化合物 4.2mgを得て、分離されたフェニルプロパノイド化合物がp−クマル酸誘導体であることを下記に示されるNMR分光法(H:300MHz、DRX 300、Bruker社製、ドイツ)によるH−NMRスペクトルによって確認し、HPLC分析の保持時間をシグマ社から購入した標準品であるp−クマル酸と比較した(図1及び2参照)。
【0095】
p−クマル酸:C
H-NMR (300MHz, d6-DMSO): δ 7.5 (H-2, H-6, 2H, d., J=8.4Hz), 7.48(H-γ, 1H, d., J=16.2Hz, 6.79(H-3, H-5, 2H, d., J=8.4Hz), 6.285(H-β, 1H, d., J=16.2Hz).
【0096】
[実施例6] トリシン及びp−クマル酸の含量分析
ジダケ、コウライザサ、ミヤコザサ、チシマザサ、チマキザサ、ハチク、マダケ、クロチク又はモウソウチクの葉及び茎抽出物10gを用いてHPLC(Hitachi社製、L−7000モデル)を利用して植物の異なる部分のトリシン及びp−クマル酸の含量を分析した。HPLC分析は表3に示される条件下で遂行した。
【0097】
【表3】

【0098】
種々の竹葉抽出物及び竹茎抽出物中のトリシンとp−クマル酸の含量を表4と5にそれぞれ示した。
【0099】
【表4】

【0100】
【表5】

【0101】
[参照例1] 細胞培養及び試薬
1−1.細胞培養
ネズミのマクロファージ細胞株であるRAW264.7細胞(ATCC、Rockville、Maryland、米国)を2.0mMのL−アルギニン、100μg/mLのペニシリン−ストレプトマイシン及び10%ウシ胎仔血清(FBS)が補給されたDMEM(Gibco BRL社製、米国)培地を用いて、37 、5% CO及び95%空気条件の加湿インキュベーターで培養した。
培地は1週につき4回、10mLの新しいDMEMに交換し、継代培養は一週につき2回行った。
HUVEC(ヒト臍帯静脈内皮細胞)を20%FBS、100倍の抗生物質及び200倍ECGFが補給されたEGM−2培地(Clonctics社)中で0.2%ゼラチン被覆プレート(MTT社)上で培養し、3〜5回継代培養した細胞を下記実験に使用した。
【0102】
1−2.試薬及び機器
本実験に使用した遠心分離機(Hanil Centrifuge社製、韓国)、核磁気共鳴分光器(NMR Spectrscopy)(H;300MHz、13C;75MHz、DRX 300、Bruker社製、ドイツ)及びUV分光器(model;Power wave−XS、Bio−Tek社製、米国)は韓国基礎科学研究院(韓国)保有の装備を使用し、カラムクロマトグラフィー用吸着剤としてはシリカゲル60H(230〜400メッシュ、Merck社製、ドイツ)を使用し、薄層クロマトグラフィー(TLC)用プレートとしてはシリカゲル60F254プレート(層の厚さ0.2mm、20×20cm、Art.5554、Merck社製、ドイツ)を使用した。展開剤としてアニスアルデヒド−硫酸試薬を使用し、すべての有機溶媒はDuksan Chemical社(韓国)から購入した。
【0103】
[実験例1] 動物モデル試験
1−1.実験動物
血管保護及び血液循環改善に対する竹抽出物の効能を評価するために動脈硬化モデルマウスを実験に用いた。
Jackson社(米国)から手に入れた6週令の雄性LDL受容体欠損マウス(B6.129S7−Ldlrtm1Her)を1週間前から次第に増加する脂質飼料を与えることによって実験環境に順応させた。即ち、正常飼料対高脂質飼料の比率は次第に増加された(7:3(2日)、5:5(4日)、3:7(6日))。実験中、ケージ環境は温度23±2℃、相対湿度55±10%を保持し、12時間人工照明下に、5匹未満のマウスを各マウス用ケージで飲水(消毒精製水)と正常脂質飼料(Harlan 2018S、Indianapolis社製、米国)を自由に供給しながら飼育した。8週後、高脂質飼料(Harlan TD88051、アテローム硬化性食餌、全脂質含量約15.8%;コレステロールレベル1.25%、及びコール酸ナトリウム0.5%、約4kcal/g、及びkcalの35%は脂肪からで、およその脂質の半分はカカオバターから由来し、半分は固形飼料から由来した)のみを供給した。
【0104】
1−2.分類及び投与期間
高脂質飼料に適応された8週令の雄性LDL受容体欠損マウスを各群が6匹のマウスよりなる、2つの用量投与群及び1つの高用量群に分けた。陰性対照群として注射用蒸留水を用い、陽性対対照群として動脈硬化治療剤として広く使われているロバスタチンを4mg/kg体重で投与した。竹抽出物を2つの容量群にそれぞれ50及び100mg/kg体重を投与し、1つの高容量群に500mg/kg体重を20週間投与した。投与は、毎日2回、体重測定後に、強制経口投与した(表6参照)。
【0105】
【表6】

【0106】
1−3.実験動物
血管保護及び血液循環改善に対する竹抽出物の効能を評価するために動脈硬化モデルマウスを実験に用いた。
Jackson社(米国)から手に入れた6週令の雄性C57BL/J6マウスを1週間前から次第に増加する脂質飼料を投与することによって実験環境に順応させた。即ち、正常飼料対高脂質飼料の比率は次第に増加された(7:3(2日)、5:5(4日)、3:7(6日))。実験中、ケージ環境は温度23±2℃、相対湿度55±10%を保持し、12時間人工照明下に、5匹未満のマウスを各マウス用ケージで飲水(消毒精製水)と正常脂質飼料(Harlan TD88051、アテローム硬化性食餌、全脂質含量約15.8%;コレステロールレベル1.25%、及びコール酸ナトリウム0.5%、約4kcal/g、及びkcalの35%は脂肪からで、およその脂質の半分はカカオバターから由来し、半分は固形飼料から由来した)のみを供給した。
【0107】
1−4.分類及び投与期間
高脂質飼料に適応された8週令の雄性C57BL/J6マウスを各群が6匹のマウスよりなる、2つの用量投与群に分けた陰性対照群として注射用蒸留水をい、竹抽出物を2つの容量群にそれぞれ50及び100mg/kg体重を6ヶ月投与した。投与は毎日2回、体重測定後に強制経口投与した(表7参照)。
【0108】
【表7】

【0109】
[実験例2] NO生産に関する竹抽出物及びそこから分離された化合物の効果
炎症因子中の一つである一酸化窒素(NO)に対する、竹抽出物及びそこから分離された化合物の抑制効果をテストするために、本発明の抽出物又は化合物で処理した細胞におけるNOの増加を測定した。
RAW264.7細胞(1×10細胞/ml)の200μlを96ウェルプレートの各ウェルに播種し、10%FBSが含まれたDMEM培地で3時間培養した。新しいDMEM培地に交換して、1μg/ml濃度のLPS、及び実施例1〜5で製造した竹抽出物又はトリシンの50μg/ml又は100μg/mlで処理した。これを5%CO培養器中で、37℃で20時間培養した。
各ウェルの細胞培養上清100μlを新しい96ウェルプレートに移し、グリース試薬(0.1%のN−(1−ナフチル)エチレンジアミン二塩酸、5%HPO水溶液中の1%スルファニルアミド)100μLずつを加えて10分間室温で培養した。これをELISAリーダ(Power wave−XS、Bio−Tek社製、米国)を使用して540又は550nmで吸光度を測定した。
その結果は、下記の表8及び図2に示すように、竹抽出物100μg/mL及び50μg/mLで処理した群は、それぞれ90%及び50%の割合でNO生成を抑制した。即ち、竹抽出物処理群は対照群に比べて濃度依存的に効果的に抑制した。そして、非極性可溶性溶媒抽出物は極性可溶性溶媒抽出物より高いNO抑制率を示した。
【0110】
【表8】

【0111】
非極性有機溶媒から活性成分を探索中に、我々は実施例5から製造されたトリシンが、無毒性の濃度である25、12.5及び6.5μg/mLで濃度で強力なNO抑制率を示すことを見出した(表9参照)。
【0112】
【表9】

【0113】
[実験例2] エラスターゼ活性に関する竹抽出物の効果
血管における竹抽出物の効果を確認するために、本発明の竹抽出物を、血管の張力及び弾力の保持を管理するエラスチン蛋白質を分解するエラスターゼ酵素で処理した。
実施例1〜5で製造した竹抽出物及び分画を各20、2及び0.2mg/mlに希釈して96ウェルプレートに50μlずつ添加した。市販のエラスターゼ(Molecula probes社)を0.15U/mlの濃度でそこに添加し、エラスチン蛋白質も50μg/mlの濃度で添加した。酵素活性を測定するために、ELISAリーダで吸光度を検出した。
表10に示すように、P.nigra及びS.borealisの竹抽出物は2mg/mlの濃度でエラスターゼ活性を抑制し、竹抽出物のジクロロメタン、酢酸エチル及びn−ブタノール分画がより強力なエラスターゼ−抑制活性を示した。
【0114】
【表10】

【0115】
[実験例3] 血管内皮壁の創傷治癒に関する竹抽出物の効果
3−1.生体内での創傷治癒試験
血管内皮細胞(HUVEC)を0.2%ゼラチン被覆12−ウェルプレート上で密集成長させ、原創傷縁(original wound edge)を作るために細胞摩擦片(cell scraper)を使用してスクラッチングした。細胞を竹抽出物10μg/ml又は50μg/mlで処理した後、5%COインキュベーターで培養した。細胞の移動程度を写真で
観察した。
その結果、図10〜12からわかるように、竹抽出物10〜50μg/mLで処理したHUVECの移動が対照群に比べて顕著に増加しており、竹抽出物が血管内皮細胞の創傷回復効果を示したことが確認された。
【0116】
3−2.生体内での管形成試験
24ウェルプレートのそれぞれのウェルに培地で1:2希釈されたマトリゲル(matrigel)200μLを塗布して37℃で少なくても30分間培養して、重合化し、100細胞/ウェルのHUVECを播種した。
細胞を竹粗抽出物10μg/ml又は50μg/mlで処理し、5%Coインキュベーターで培養した。HUVECの形態学的変化を顕微鏡で定期的に観察した後、写真を撮った。
図13〜15に示すように、竹抽出物10〜50μg/mLで処理したHUVECの管形成が対照群に比べて顕著に増加しているが観察され、竹抽出物が強力な血液循環を改善する潜在能力を有していることが確認された。
【0117】
[実験例4] 遺伝子発現に関する竹抽出物及びトリシン化合物の効果
遺伝子発現に対する抑制効果を調べるために、本発明の抽出物又は化合物を細胞に処理して、そこから抽出したRNAをRT−PCRに用いて遺伝子発現量を評価した。
【0118】
4−1.iNOS遺伝子発現に関する竹抽出物の効果
竹抽出物のiNOS遺伝子発現に対する効果を観察するために、1×10個のRAW264.7細胞株をLPS及び種々濃度(0.032〜65μg/mL)の本発明のPhyllostachys nigra又はSasa borealisの粗抽出物、又はクルクミンで処理し、24時間培養した。下記逆転写ポリメラーゼ連鎖反応に使用するために、トリゾール試薬(Gibco BRL)を利用して通常的な抽出方法でRNAを抽出した。
RT−PCRはこの分野でよく知られている、RT反応(25℃で10分、48℃で30分、95℃で5分、4℃で10分;1サイクル)と二次的PCR(50℃で2分、95℃で10分、95℃で15秒、60℃で1分;40サイクル)方法によって遂行した。
内部対照群として、18SリボゾームRNAを用いた。
表11に示すように、リアルタイム遺伝子発現分析を通じて、iNOS遺伝子の発現を90%抑制する濃度がクルクミン 4μg/mL、 Phyllostachys nigra 62.5μg/mL、 Sasa borealis 65μg/mLであることが知られた。
【0119】
【表11】

【0120】
上記表11の結果を基にiNOS遺伝子発現に対する各試料のIC50を計算して表12に示した。
【0121】
【表12】

【0122】
4−2.PLA2遺伝子発現に関する竹抽出物の効果
炎症反応に関与する炎症性因子であるPLA2酵素に対する竹抽出物の効果を観察するために、1×10個のRAW264.7細胞株をLPSと本発明の竹抽出物の種々濃度(0.032μg/mL〜65μg/mL)で処理し、24時間培養した。下記逆転写ポリメラーゼ連鎖反応に使用するために、トリゾール試薬(Gibco BRL)を利用して通常的な方法でRNAを抽出した。
分光分析器で測定された抽出されたRNAのOD260/OD280値は1.7以上であり、変性アガロースゲル電気泳動を遂行してRNAの純度を確認した。RT−PCRはこの分野でよく知られている、RT反応(25℃で10分、48℃で30分、95℃で5分、4℃で10分;1サイクル)と二次的PCR(50℃で2分、95℃で10分、95℃で15秒、60℃で1分;40サイクル)方法によって遂行した。
内部対照群として、18SリボゾームRNAを用いた。
表13からわかるように、竹抽出物が対照群と比較したとき、PLA2遺伝子の発現を濃度依存的に抑制することが確認された。
【0123】
【表13】

【0124】
4−3.u−PA、PAI−1遺伝子発現に関する竹抽出物の効果
上記実験例4−1に記載された方法によってRNA抽出及びRT−PCRを遂行した。
表14及び15はその結果であり、Phyllostachys nigra及びSasa borealis抽出物が血栓溶解に関係しているu−PA(ウロキナーゼ型プラスミノゲン活性化因子)遺伝子の発現を増加し、一方プラスミノゲン活性化因子の活性を抑制するPAI−1遺伝子の発現を低減していることが確認された。
【0125】
【表14】

【0126】
【表15】

【0127】
4−4.VEGF、u−PA及びeNOS遺伝子発現に関するトリシンの効果
RNAをRneasyミニキット(cat#74103、Qiagen社)により製造会社の使用説明書に従い、HUVEC細胞から分離した。RT−PCR反応は定量的PCR方法(SDS7700、Applied biosystems社製、米国)を用いることで遂行した。
逆転写(RT)で得た5μLのcDNAを96ウェルプレートのそれぞれのウェルに分注した後、5.6mM のMgCl、1×PCR緩衝液、2mMのdNTP、0.05%ゼラチン、1μMの標的遺伝子プライマー1対又は0.16μMの管理遺伝子プライマー、0.5μMの標的遺伝子プローブ又は0.025μMの管理遺伝子プローブ、1.25UのTaqポリメラーゼを含む混合物を、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(50℃で2分、95℃で10分、95℃で15秒、60℃で1分;40サイクル)のためにそこに加えた。
結果として、最終cT値を読んで計算した。
表16及び図7〜9の結果、HUVECに対するトリシン化合物処理がVEGF(血管内皮細胞増殖因子)、u−PA遺伝子の発現を増加し、萎縮状態の血管の拡張に影響を与えるNOSの発現を増加した。
【0128】
【表16】

【0129】
[実験例5] LDL欠損マウスにおける一般症状及び体重変化に関する竹抽出物の効果
LDL欠損マウスにおける一般症状及び体重の変化に対する効果を調べるために、一般症状の変化は治療期間中に1日1回以上毎日観察し、体重変化は群分け時、試験物質投与直前及び実験終了後、マウス屠殺直前に測定した。その結果、死亡したマウスもなく、特異な外観変化及び異状行動などのような臨床症状も観察できなかった(図16参照)。さらに、試験期間中に体重の変化は観察されず、各群でマウス体重の平均値が約2.00±0.6gずつ増加した。
【0130】
[実験例6] LDL欠損マウスにおける血中脂質変化に関する竹抽出物の効果
LDL欠損マウスおける血中脂質の変化に対する竹抽出物の効果を評価するために、下記方法を遂行した。
実験の終わりに、全てのマウスを0.12%のアバーティン(avertin)で麻酔し、眼窩下静脈叢からへパリーン処理済みの毛細管を利用して採血した。それから、遠心分離(11,000g、10分間)して血漿を分離し、使用前に、−70℃に保管した。血中脂質値はTC(総コレステロール)、HDL−C(高密度リポプロテインコレステロール )、及びTG(トリグリセリド)などの3つのカテゴリに分けて分析した(生命工学研究院実験動物室)。
表17で見られるように、その結果は、50、100及び500μg/mLの竹抽出物で処理されたサンプル処理群でTC(総コレステロール)、HDL−C(高密度リポプロテインコレステロール )及びTG(トリグリセリド)の全ての値が対照群に比べて濃度依存的に減少することを示した。
【0131】
【表17】

【0132】
[実験例7] C57BL/6Jマウスにおける血中脂質変化に関する竹抽出物の効果
C57BL/6Jマウスにおける血中脂質の変化に対する竹抽出物の効果を観察するために、下記の方法を遂行した。
実験の終わりに、全てのマウスを0.12%のアバーティンで麻酔し、眼窩下静脈叢からへパリーン処理済み毛細管を利用して採血した。それから、遠心分離(11,000g、10分間)して血漿を分離し、使用前に、−70℃に保管した。 血中脂質値はTC(総コレステロール)、HDL−C(高密度リポプロテインコレステロール)、及びTG(トリグリセリド)などの3つのカテゴリに分けて分析した(生命工学研究院実験動物室)。
表17で見られるように、その結果は、50、100μg/mLの竹抽出物の処理群でTC、HDL−C及びTGの全ての値が対照群に比べて濃度依存的に減少することを示した。
【0133】
【表18】

【0134】
[実験例8] LDL欠損マウスにおける動脈硬化症に対する竹抽出物の抑制効果
LDL欠損マウスにおける血管壁動脈硬症の発生及び病変進行を観察するために、下記の方法を遂行した。
実験の終わりに、採血した心臓を0.1M のリン酸緩衝液(pH7.4)に溶かした4%パラ−ホルムアルデヒドで固定し、残余の血液を除去して、10%中性ホルマリンで固定した。それから、OCT化合物に包埋して0.6μmの厚さに切り、オイルレッドOで染色し、Harrisヘマトキシリンで染色程度を数えて病変を観察した。
病変領域の算出は3番目頚椎血管と大動脈弁膜と間に形成された病変染色を遂行し、病変の写真を撮った後、コンピュータによる形態計測(TDI microscope Image Analyzer、米国)で算出して、各対照群との比較を遂行した。
その結果、処理群が対照群に比べて動脈硬化症の形成を約17%抑制する効果を示し、さらに、陽性対照群として使用したロバスタチンは約47%の抑制効果を示して、新生内膜(neointima)の形成を抑制した(図17及び18参照)。
【0135】
[実験例9] 細胞毒性試験及び細胞増殖試験
実施例5のトリシン化合物の細胞毒性は改変したMTT方法(J. Immunological Methods, 119, pp203-210, 1989)を用いて試験した。
平底96−ウェルマイクロタイタータプレート(Nunc,スウェーデン)に200μlのHUVEC(2×10細胞/ml)を入れて、製造されたトリシンを種々濃度で処理し、37 で、24時間、培養した。
各ウェルに50μLのMTT溶液(1mg/mL)を加えて、37 で、4時間、培養した後、上清を除去した。
ホルマザン結晶を検出するために、100μLのDMSOをさらに、各ウェルに加えて、マイクロプレートリーダ(Power wave−XS, Bio−Tek、米国)を使用して550nmの吸光度で発色程度を測定した。
その結果、本発明のトリシン化合物は5μg/mlで51%の強い細胞毒性を示した。しかし、竹抽出物又はp−クマル酸は細胞毒性がなかった(図5参照)。
竹抽出物の細胞増殖試験は、細胞増殖 ELISA BrdU 比色キット(Roche)を用いて遂行した。 HUVEC細胞を96ウェルプレートに5×10細胞/ウェルで接種した。細胞の三つ揃いプレートをELISA Readerを利用して測定した。
その結果として、竹抽出物は濃度依存的に強い細胞増殖を高めた。
【0136】
[実験例10] 動物毒性試験
方法(1)
ICRマウス(平均体重 25±5g)及びSprague−Dawleyラット(235±10g、Jung−Ang Lab Animal社)での急性毒性実験は実施例1の抽出物を用いて遂行した。10匹のマウス又はラットからなる4つの群に、試験飼料又は溶媒(0.2mL、腹腔内)をそれぞれ、250mg/kg、500mg/kg、1000mg/kg及び5000mg/kgで腹膜組織内に経口投与し、2週間観察した。
【0137】
方法(2)
ICRマウス及びSprague−Dawleyラットでの急性毒性実験は実施例1の抽出物を用いて遂行した。10匹のマウス又はラットからなる4つの群に、試験飼料又は溶媒(0.2mL、腹腔内)をそれぞれ、25mg/kg、250mg/kg、500mg/kg及び725mg/kgで腹腔内に投与し、24時間観察した。
【0138】
結果
各群間又はどちらの性間において、死亡、臨床徴候、体重の変化、総体の発見物に対する上記処理関連結果はなかった。これらの結果は、本発明で製造された抽出物が強力、且つに安全な物質であることを示唆する。
【0139】
以下に、製剤方法及び成分の種類やを説明するが、それらは本発明を制限するものではない。代表的な製剤例を下記のように説明する。
【0140】
散剤の製造
実施例1の乾燥粉末 50mg
乳糖 100mg
タルク 10mg
上記成分を混合して散剤を製剤し、シール・パッケージに充填した。
【0141】
錠剤の製造
実施例1の乾燥粉末 50mg
コーンスターチ 100mg
乳糖 100mg
ステアリン酸マグネシウム 2mg
上記成分を混合して錠剤を製剤し、打錠した。
【0142】
カプセルの製造
実施例1の乾燥粉末 50mg
コーンスターチ 100mg
乳糖 100mg
ステアリン酸マグネシウム 2mg
通常のゼラチン製剤方法によって、上記成分を混合して錠剤を製剤し、ゼラチンカプセルに充填した。
【0143】
注射剤の製造
実施例1の乾燥粉末 50mg
注射用蒸留水 適量
PHコントローラー 適量
通常の注射剤製剤方法によって、上記活性成分を溶解し、pH7.5に調節した。全ての成分を2mlアンプルに充填し、滅菌して注射剤を製剤した。
【0144】
液剤の製造
実施例1の抽出物 0.1〜80g
白糖 5〜10g
クエン酸 0.05〜0.3%
カラメル 0.005〜0.02%
ビタミンC 0.1〜1%
蒸留水 79〜94%
COガス 0.5〜0.82%
上記活性成分を 常法の液剤製剤法によって溶かし、全ての成分を充填し、滅菌して液剤を製剤した。
【0145】
健康機能食品の製造
実施例1の抽出物 1000mg
ビタミン混合物 適量
ビタミンAアセテート 70mg
ビタミンE 1.0mg
ビタミンB 0.13mg
ビタミンB 0.15mg
ビタミンB 0.5mg
ビタミンB12 0.2mg
ビタミンC 10mg
ビオチン 10mg
ニコチン酸アミド 1.7mg
葉酸 50mg
パントテン酸カルシウム 0.5mg
ミネラル混合物 適量
硫酸鉄 1.75mg
酸化亜鉛 0.82mg
炭酸マグネシウム 25.3mg
リン酸カリウム 15mg
リン酸二カルシウム 55mg
クエン酸カリウム 90mg
炭酸カルシウム 100mg
塩化マグネシウム 24.8mg
上記のビタミン及びミネラル混合物の組成比は種々の方式で混合可能である。このような多様性は本発明の精神と範囲から逸脱しない。
【0146】
健康飲料の製造
実施例1の抽出物 1000mg
クエン酸 1000mg
オリゴ糖 100g
アプリコット濃度 2g
タウリン 1g
蒸留水 900mL
通常の健康飲料製造方法によって、上記活性成分を溶かし、混合し、85℃で1時間攪拌し、濾過した後、全ての成分を1000mlアンプルに充填し、滅菌して健康飲料組成物を製造した。
【0147】
発明がこのように記載され、同様のことが様々な形で変えられることは自明であろう。このような改変は本発明の精神及び範囲から逸脱しなく、この技術分野で熟練した者にとって自明であるはずの全ての改変は、下記クレーム内に含まれることを意図している。
【産業上の利用可能性】
【0148】
本発明に記述されたように、竹抽出物及びそれから得られるトリシン化合物はNO生成及びPLA発現の抑制による強力な抗炎症活性を有し、エラスターゼ活性の抑制及び血管内皮細胞の創傷治癒、uPA発現の活性化及びPAI−1発現抑制、そして、コレステロール沈着の低減及びネオインチマ形成の抑制による血液循環改善活性を有する。したがって、これは炎症及び血液循環疾患の治療及び予防のための治療剤又は健康機能食品として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0149】
【図1】図1は標準p−クマル酸及びトリシンのHPLC分析データを示す。
【図2】図2は本発明のp−クマル酸及びトリシンのHPLC分析データを示す。
【図3】図3はの竹粗抽出物及びそこから分離された分画物(50μg/ml濃度で処理)のNO抑制効果を示す。
【図4】図34の竹粗抽出物及びそこから分離された分画物(100μg/ml濃度で処理)のNO抑制効果を示す。
【図5】図5はHUVECにおける竹抽出物、トリシン及びp−クマル酸の細胞毒性を示す。
【図6】図6はHUVECにおける竹抽出物の細胞増殖効果を示す。
【図7】図7は竹抽出物、トリシン及びp−クマル酸のVEGF遺伝子発現に対する効果を示す。
【図8】図8は竹抽出物、トリシン及びp−クマル酸のu−PA遺伝子発現に対する効果を示す。
【図9】図9は竹抽出物、トリシン及びp−クマル酸のeNOS遺伝子発現に対する効果を示す。
【図10】図10は血管内皮壁の創傷治癒に対する対照の効果を示す。
【図11】図11は血管内皮壁の創傷治癒に対する竹抽出物(10μg/ml)の効果を示す。
【図12】図12は血管内皮壁の創傷治癒に対する竹抽出物(50μg/ml)の効果を示す。
【図13】図13は血管形成に対する対照の効果を示す。
【図14】図14は血管形成に対する竹抽出物(10μg/ml)の効果を示す。
【図15】図15は血管形成に対する竹抽出物(100μg/ml)の効果を示す。
【図16】図16は動脈硬化マウスにおける竹抽出物処理群及び非処理群の体重変化を示す。
【図17】図17は動脈硬化マウスにおける竹抽出物処理群及び非処理群のオイルレッドO染色された大動脈弁損傷部位の写真を示す。
【図18】図18は動脈硬化マウスにおける竹抽出物処理群及び非処理群のオイルレッドO染色された大動脈弁損傷部位のコンピュータ関連画像分析による形態計測の結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
竹の粗抽出物又は非極性溶媒可溶性抽出物を有効性分として含有する心血管系疾患の治療及び予防のための医薬組成物。
【請求項2】
竹の粗抽出物又は非極性溶媒可溶性抽出物を有効性分として含有する血液循環疾患の治療及び予防のための医薬組成物。
【請求項3】
竹の粗抽出物又は非極性溶媒可溶性抽出物を有効性分として含有する炎症性疾患の治療及び予防のための医薬組成物。
【請求項4】
上記粗抽出物が水、低級アルコール及びこれらの混合物からなる群より選択される溶媒で抽出される、請求項1〜3のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項5】
上記非極性溶媒可溶性抽出物がヘキサン、酢酸エチル、クロロホルム及びジクロロメタンからなる群より選択される非極性溶媒で抽出される、請求項1〜3のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項6】
上記竹がササ属(Sasa genus)又はマダケ属(Phyllostachys genus)に属する、請求項1〜5のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項7】
上記竹が、ジダケ(Sasa borealis Makino)、コウライザサ(Sasa coreana Nakai)、ミヤコザサ(Sasa japonica Makino)、チシマザサ(Sasa borealis var.gracilis)及びチマキザサ(Sasa palmata Nakai)からなる群より選択されるものである、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
上記竹が、マダケ(Phyllostachys bambusoides SIEB.Et Zucc)、クロチク(Phyllostachys nigra MUNRO)、ハチク(Phyllostachys nigra MUNRO var.henonis STAPF)及びモウソウチク(Phyllostachyspubescens MAZEL ex H.de LEH)からなる群より選択されるものである、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項9】
竹から分離されたトリシン又はp−クマル酸及びその薬学的に許容しうる塩を有効性分として含有する心血管系疾患の治療及び予防のための医薬組成物。
【請求項10】
竹から分離されたトリシン又はp−クマル酸及びその薬学的に許容しうる塩を有効性分として含有する血液循環疾患の治療及び予防のための医薬組成物。
【請求項11】
竹から分離されたトリシン又はp−クマル酸及びその薬学的に許容しうる塩を有効性分として含有する炎症性疾患の治療及び予防のための医薬組成物。
【請求項12】
上記竹が、マダケ(Phyllostachysbambusoides SIEB.Et Zucc)、クロチク(Phyllostachys nigra MUNRO)、ハチク(Phyllostachys nigra MUNRO var.henonis STAPF)、モウソウチク(Phyllostachys pubescens MAZEL ex H.de LEH)又はジダケ(Sasa borealis Makino)、コウライザサ(Sasa coreana Nakai)、ミヤコザサ(Sasa japonica Makino)、チシマザサ(Sasa borealis var.gracilis)、チマキザサ(Sasa palmata Nakai)、イノコログサ(Setaria viridis BEAUV)及びアジアイネ(Oryza sativa L)からなる群より選択される少なくとも1つである、請求項9〜11のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項13】
上記竹が、ハチク(Phyllostachys nigra MUNRO var.henonis STAPF)又はジダケ(Sasa borealis Makino)である請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
心血管系疾患が、高血圧、心臓病、脳卒中、末梢血管疾患、血栓症、狭窄症、高脂血症、動脈硬化、又は心筋梗塞などの種々心血管系疾患を含有している、請求項1又は9に記載の医薬組成物。
【請求項15】
炎症性疾患が、関節炎、動脈硬化、胃炎、大腸炎、腎臓炎、肝炎、癌又は退行性疾患を含有している、請求項3又は11に記載の医薬組成物。
【請求項16】
請求項1に記載の竹粗抽出物又は非極性可溶性抽出物、又は請求項9に記載のトリシン又はp−クマル酸化合物を、食品学的に許容しうる添加物と共に含有する、心血管系疾患の予防及び治療のための健康機能食品。
【請求項17】
請求項2に記載の竹の粗抽出物又は非極性溶媒可溶性抽出物、又は請求項10に記載のトリシン又はp−クマル酸を、食品学的に許容しる添加物と共に含有する、血液循環疾患の予防及び治療のための健康機能食品。
【請求項18】
請求項3に記載の竹の粗抽出物又は非極性溶媒可溶性抽出物、又は請求項11に記載のトリシン又はp−クマル酸を、食品学的に許容しうる添加物と共に含有する、炎症性疾患の予防及び治療のための健康機能食品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図16】
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【図18】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図17】
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【公表番号】特表2006−515007(P2006−515007A)
【公表日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−518459(P2005−518459)
【出願日】平成16年3月27日(2004.3.27)
【国際出願番号】PCT/KR2004/000708
【国際公開番号】WO2004/098624
【国際公開日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(505219794)ユニジェン インク. (8)
【Fターム(参考)】