説明

炎症性疾患および免疫調節不全疾患、感染性疾患、病的血管新生およびがんの免疫療法および検出のための方法および組成物

【課題】少なくとも2つの異なるマーカーを標的化する多特異的アンタゴニストを用いる、炎症性疾患および免疫調節性疾患の免疫治療のための方法および組成物を提供する。
【解決手段】異なる標的としては、(i)先天的免疫系の炎症促進性エフェクターと、(ii)凝固因子と、(iii)炎症性障害または免疫調節不全障害と特異的に関連する標的、病的血管新生もしくはがんと特異的に関連する標的、または感染性疾患と特異的に関連する標的が挙げられる。多特異的アンタゴニストは、治療されている疾患細胞または状態に関連する少なくとも1つの結合特異性、免疫系の成分、凝固の調節因子、または炎症促進性サイトカインに対する少なくとも1つの特異性を含有する。多特異的アンタゴニストは、先天的な免疫系の炎症促進性エフェクターまたは凝固因子によって生成されるか悪化されるか、そうでなければそれらに関与する種々の疾患の治療において用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2004年12月8日に提出された米国仮特許出願第60/634,076
号の利点を請求する。
【0002】
[発明の分野]
本発明は一般に、少なくとも2つの異なるマーカーを標的化する多特異的アンタゴニス
トを用いる、炎症性疾患および免疫調節不全疾患の免疫療法のための方法および組成物に
関する。このマーカーは、リンパ球、マクロファージ、単球または樹状細胞(DC)に対
する抗原および/またはレセプターである。本発明は詳細には、細胞およびそれらのレセ
プターに結合して、これらの細胞およびそれらのレセプターによって生じるかもしくは悪
化され、またはそうでなければそれに関与する種々の疾患の治療を果たすための特異的な
抗体および抗体異種コンジュゲートを用いて、免疫標的細胞および免疫プロセシング細胞
に対するレセプターを調節するための方法および組成物に関する。このような疾患として
はさらに詳細には、急性および慢性の炎症性障害、自己免疫疾患、敗血症および敗血性シ
ョック、神経障害、移植片対宿主病、急性呼吸窮迫症候群、肉芽腫性疾患、巨細胞性動脈
炎、座瘡、汎発性血管内凝固(DIC)、移植片拒絶、喘息、悪液質、心筋虚血、および
アテローム性動脈硬化症が挙げられる。本方法および組成物はまた、病的血管新生および
がんを治療するのに有用である。本方法および組成物は、がんレセプターまたはがん関連
抗原に関する二次治療剤を含み得る。方法および組成物はまた、この疾患の改良された診
断/検出について記載される。
【背景技術】
【0003】
免疫系は、先天的免疫系、および適応性または後天性の免疫系の両方を含む。多くの宿
主細胞が、好中球、Tリンパ球およびBリンパ球、マクロファージおよび単球、樹状細胞
および形質細胞のような、先天性および適応性の免疫の過程に関与する。それらは、通常
、協調して機能し、詳細には、先天性および外因性の有害物(noxient)の認識お
よび処理に寄与する特定の要因およびサイトカインの調節において互いに影響し、そして
これらの系は、脊椎動物、哺乳動物およびヒト生物体の発達の数百万年にわたって進化し
てきた。
【0004】
免疫療法の主要な目的は、悪性細胞または侵入する微生物のような先天性の有害物また
は外来の有害物に対して、患者の免疫系を開発または増強することである。この免疫系は
、原発性の異常、例えば、がんおよび特定の自己免疫および免疫調節不全疾患に関してよ
りも、微生物のような外因性の有害物に対する認識および応答に関して、さらに研究され
ている。なぜなら、詳細には後者は、遺伝的成分および環境的成分の両方を有し得るから
である。微生物、例えば、細菌、真菌、寄生生物およびウイルスに対する防御は、特定の
生物体に対して先天性であって、免疫系は、これらの微生物の生化学的なパターンを認識
して、その微生物に対する事前の曝露の必要なしにそれらを攻撃するように応答するよう
にプログラムされている。この先天的免疫系としては、直接の呑食および破壊によって侵
入している微生物を根絶し得る、例えば、好中球、ナチュラルキラー細胞、および単球/
マクロファージが挙げられる。
【0005】
この先天性の免疫応答はしばしば、より特異的な適応性免疫系が特定の抗体およびT細
胞を導くことができるまで侵入する外来の有害物を制御する、非特異的な応答と呼ばれる
(Modlin et al.,N Engl J Med 1999,340:183
4−1835;Das,Crit Care 2000;4;290−296を参照のこ
と)。非特異的な免疫応答は、リンパ系および食細胞を包含する。このリンパ系は、リン
パ球およびマクロファージを含む。マクロファージは、外来の粒子を呑食し、殺傷しそし
て処理し得る。食細胞としては、好中球およびマクロファージが挙げられ、これはやはり
、砕片を摂取し、分解して処理する、そして補体および抗体のレセプターを有する。要す
るに、先天的免疫系は、遺伝性の特徴のおかげで特定の抗原に対する防御のラインを提供
する。
【0006】
対照的に、適応性または後天性の免疫系は、高度に発達し、そしてその応答は極めて特
異的である。これは、適応性の系と呼ばれる。なぜなら、病原体での感染に対する適応と
して固体の寿命の間に生じるからである。適応性の免疫は、ワクチン(抗原)に応答して
、または抗体を投与することによって、人工的に獲得されてもよく、または感染によって
自然に獲得され得る。後天性の免疫は、抗体が生成される場合に能動的であり得、または
別の供給源から作成された外因性の抗体が注射される場合に、受動的であり得る。
【0007】
適応性の免疫系は、所与の抗原に特異的な抗体を生成する。抗体が防御を提供する最も
簡単でかつ最も直接的な方法は、それらに対する結合によるものであり、そしてそれによ
って、それらが感染するかまたは破壊し得る細胞に対する接近をブロックする。これは中
和として既知である。しかし、抗体による結合は、細胞の外側で増殖する細菌の複製を停
止させるには十分ではない。この場合、抗体の1つの役割は、食細胞が細菌を摂取して破
壊することを可能にすることである。これは、オプソニン化として既知である。抗体の第
三の機能は、補体として既知の血漿タンパク質の系を活性化することである。多くの場合
、この適応性免疫系は、同じ病原体との再感染に対して一生にわたる防御免疫を付与する
。なぜなら適応性免疫系は、それに対して提示された抗原の「記憶(memory)」を
有するからである。
【0008】
抗体媒介性免疫は、体液性免疫と呼ばれ、B細胞およびそれが産生する抗体によって調
節される。細胞媒介性免疫はT細胞によって制御される。体液性および細胞媒介性免疫の
両方とも、侵入する生物体から宿主を防御することに関与する。この相互作用によって、
外来の生物体の有効な殺傷または制御が生じ得る。しかし、時には、この相互作用は、不
安定であり得る。これらの場合には、疾患を生じ得る調節不全が存在する。時には、この
疾患は、敗血性ショックおよび特定の自己免疫障害などを伴って、生命を脅かす。
【0009】
Bリンパ球およびTリンパ球は、特定の免疫応答の重要な成分である。B細胞は、適応
性免疫を媒介する抗原特異的細胞のクローンを生じさせる抗原によって活性化される。ほ
とんどのクローンは抗体を分泌する形質細胞に分化するが、2〜3のクローンは、形質細
胞に復帰する記憶細胞を形成する。その後の再感染の際、記憶細胞は、一次応答よりも短
い期間で高レベルの抗体を生じる。形質細胞によって分泌される抗体は、免疫において複
数の役割、例えば、外来物質を結合および中和すること、オプソニン(IgG)として機
能して食作用を生じること、いくつかの生物体の代謝および成長に直接影響すること、補
体を活性化する抗原−抗体反応に関与すること、食作用および膜攻撃複合体を生じること
、ならびに/またはT細胞および他のキラー細胞を活性化する抗原−抗体反応に関与する
ことを果たし得る。
【0010】
Tリンパ球は、ヘルパー細胞およびサプレッサー細胞の両方として機能する。ヘルパー
T細胞は、抗原特異的なB細胞およびエフェクターT細胞が増殖および分化するように誘
導する。サプレッサーT細胞は、ヘルパーT細胞と相互作用して、免疫応答を妨げるかも
しくは継続しているものを抑制するか、またはエフェクターT細胞を調節する。細胞傷害
性T細胞は標的細胞に結合することによって抗原を破壊する。遅延型の過敏反応では、T
細胞は、抗原を破壊しないが、マクロファージ、好中球および他の細胞を攻撃して、抗原
を破壊して処分する。
【0011】
T細胞は、細胞内病原体の存在を検出し得る。なぜなら感染した細胞は、病原体タンパ
ク質由来のペプチドフラグメントをその表面に提示するからである。これらの外来のペプ
チドは、主要組織適合複合体(MHC)分子と呼ばれる、特殊な宿主細胞糖タンパク質に
よって細胞表面に送達される。MHC分子に対して結合した、そして細胞表面に提示され
た、小ペプチドフラグメントとしての抗原の認識は、T細胞の最も典型的な特徴の1つで
ある。MHCクラスIおよびMHCクラスIIとして既知の2つの異なるクラスのMHC
分子があり、これはペプチドを種々の細胞区画から、感染した細胞の表面に送達する。細
胞質ゾル由来のペプチドは、有核細胞の大部分で発現されるMHCクラスI分子に結合さ
れ、そしてCD8+T細胞によって認識される。MHCクラスII分子は対照的に、CD
4+T細胞に提示される飲食運動されるタンパク質抗原をサンプリングするためにリソソ
ームに移動する(Bryant and Ploegh,Curr Opin Immu
nol 2004;16:96−102)。
【0012】
CD8+T細胞は、細胞傷害性T細胞に分化して細胞を殺傷する。CD4+T細胞は、
2つのタイプのエフェクターT細胞に分化する。マクロファージ小胞の内側に多数蓄積す
る病原体は、TH1細胞の分化を刺激する傾向があり、この細胞が、マクロファージを活
性化し、そしてB細胞がIgG抗体を作成するように誘導し、IgG抗体は食細胞による
取り込みの際に細胞外病原体をオプソニン化するのに有効である。細胞外抗原は、TH
細胞の産生を刺激する傾向があり、TH2細胞がナイーブな抗原特異的B細胞を活性化す
ることによって体液性免疫応答を開始し、とりわけ、IgM抗体を生成する。
【0013】
先天的免疫系と適応性の免疫系とは、免疫物質を生成し得る特定の細胞を活性化するこ
とによって、例えば、白血球のリンパ系のT細胞およびB細胞を活性化することによって
、適応性免疫系と相互作用し得るかまたは適応性免疫系を誘発し得る種々の分子を、先天
的免疫系の細胞が発現し得るという点で、相互作用する。初期に誘導されたが、非適応性
の応答は、二つの主要な理由で重要である。第一に、それらは、適応性免疫応答が組み込
まれ得るまで、病原体を撃退し得るか、またはより高頻度には制御し得る。第二に、これ
らの初期の応答は、いくつかの方法で適応性の応答に影響する。例えば、先天性の免疫応
答は、感染の局所部位に対する新規な食細胞の補充を含むその後の事象において顕著な影
響を有する、サイトカインおよび他の炎症性メディエーターを生成する。これらのメディ
エーターの別の影響は、局所の血管の内皮細胞に対する接着分子の発現を誘導することで
あり、接着分子は、循環中の単球および好中球の表面に結合して、血管の外側および組織
の内側へのこれらの細胞の遊走の速度を大きく増大する。これらの事象は全て、外来物質
を隔離、破壊および除去するように局所部位での防御的応答の一部を形成する先天性な免
疫系の特徴である、炎症の条件で含まれる。この後に修復が続く。炎症は、急性および慢
性の形態に分けられる。
【0014】
免疫系は、非特異的な組織耐性物質を介して連絡する。これらは、ウイルス、内毒素お
よび特定の細菌に応答して生成されるタンパク質であるインターフェロンを含む。インタ
ーフェロンは、ウイルスの複製を阻害し、特定の宿主防御応答を活性化する。感染された
細胞は、インターフェロンを産生し、これが感染した細胞を他の隣接する細胞に結合させ
、それらに抗ウイルスタンパク質およびウイルスの遺伝子転写およびタンパク質合成を妨
害する酵素を産生させる。インターフェロンは、正常な細胞成長に影響し、そして細胞媒
介性免疫を抑制し得る。
【0015】
補体は、別の非特異的な組織耐性物質であって、血漿タンパク質および膜タンパク質を
含み、このタンパク質が特異的および非特異的な防御を媒介する。補体は、2つの経路、
特異的な防御に関連する古典的な経路、および特異的な抗体の非存在下で活性化され、従
って非特異的である別の経路を有する。古典的な経路では、抗原−抗体複合体は、C1が
IgM、そしてある程度はIgGのような抗体のFcと相互作用する場合に認識され、最
終的には、多くの機構のうちの1つとして、走化性因子、血管メディエーターおよび呼吸
バーストを食細胞中で肥満細胞に放出させる。重要な補体因子としてはC3aおよびC5
aが挙げられ、これによって肥満細胞は走化性因子、例えば、ヒスタミンおよびセロトニ
ンを放出し、これが食細胞、抗体および補体などを誘引する。他の重要な補体因子は、外
来の細胞の食作用を増強するC3bおよびC5b、ならびに外来の細胞の溶解を誘導する
(膜攻撃複合体)C8およびC9である。
【0016】
がん細胞は、補体活性化を回避することによって、特に、膜結合した補体調節タンパク
質、例えば、CD55(分解促進因子)、CD46(膜補因子タンパク質)およびCD5
9(タンパク質)の発現によって免疫サーベイランスを回避し得、そしてがん細胞の膜上
のこれらのタンパク質の過剰発現は、補体活性化からこれらのがんを防御すると考えられ
る(Brasoveanu et al.,Lab Invest 1996;74:3
3−42;Jarvis et al.Int J Cancer 1997;71:1
049−1055;Yu et al.,Clin Exp Immunol 1999
;115:13−18;Murray et al.,Gynecol Oncol 2
000;76:176−182;Donin et al.,Clin Exp Imm
unol 2003;131:254−263)。CD46、CD55およびCD59に
対する中和抗体の使用による補体媒介性溶解に対する影響の受け易さを増大するための試
みは行われているがうまくいっていない(Varsano et al.,Clin E
xp Immunol 1998;113:173−182 Junnikkala e
t al.,J Immunol 2000;164:6075−608l;Maenp
aa et al.,Am J Pathol 1996;148:1139−1162
;Gorter Lab Invest 1996;74:1039−1049)。後者
の研究では、CD46およびCD55抗体は、CD59抗体と対照的に、有効ではない。
このことは、他の標的、または複数の補体調節タンパク質に対する、または補体調節タン
パク質および免疫の他のメディエーターの両方に対する抗体の使用が必要であり得ること
を示唆する。この一般的な失敗はFishelson et al.(Mol Immu
nol 2003:40:109−123)の推測、および抗がん補体固定抗体と組み合
わせた膜補体調節タンパク質に対する抗体を用いるがん患者の治療は治療有効性を改善す
るという他の研究からの示唆と矛盾し、そのため、がん患者においてこのようなストラテ
ジーが最高に実現され得る方法を解明する必要性が残る。
【0017】
Gelderman et al.(Mol Immunol 2003;40:13
−23)は、膜結合した補体調節タンパク質(mCRP)が、同系のラットの結腸直腸が
んモデルにおいて免疫療法的mAbによる補体活性化を阻害することを報告した。腫瘍抗
原およびmCRPに対するmAbの使用は、腫瘍細胞上のmCRPの観察された効果を克
服するが、このアプローチを支持する直接の証拠はない。CD55に対する、そして腫瘍
抗原(G250またはEpCAM)に対する二重特異的な抗体を用いるさらに他の試みは
、親の抗腫瘍抗体の使用に比較してC3沈着において2〜13倍の増大を示したインビト
ロの研究に基づいて、Gelderman et al.(Lab Invest 20
02;82:483−493;Eur J Immunol 2002;32:128−
135)によって示唆されている。しかし、細胞殺傷の増強に関する結果は報告されてい
ない。Jurianz et al.(Immunopharmacology 199
9;42:209−218)はまた、インビトロにおける抗HER2抗体での腫瘍の併用
治療が、膜−補体−調節性タンパク質の抗体−中和での事前治療によって増強され得るこ
とを示唆したが、ここでもやはりインビボの結果は示されなかった。Sier et a
l.(Int J Cancer 2004;109:900−908)は近年、腎細胞
癌(Mab G250)の上で発現される抗原およびCD55に対して作成された二重特
異的な抗体が、βグルカンが投与された場合、球状の腎癌細胞の殺傷を増強したことを報
告し、これによってCR3プライミングβ−グルカンの存在が必須であることが示唆され
た。
【0018】
先天性免疫応答に関与する別の細胞である好中球はまた、砕片を摂取し、分解して、処
分する。好中球は補体および抗体のレセプターを有する。補体−レセプター架橋および抗
体によって、外来の有害物は、呑食および殺傷のために食細胞に捕獲されて提示され得る

【0019】
マクロファージは、外来の抗原物質を継続的に検索する先天性の系の一部である白血球
である。先天性の免疫応答の一部として、マクロファージは外来の粒子を呑食し、殺傷し
、そして処分する。しかし、それらはまた、体液性または細胞媒介性の免疫応答に関与す
る、B細胞およびT細胞への提示のために抗原を処理もする。
【0020】
樹状細胞は、先天性および適応性の免疫系が連絡する主要な手段の1つである(Rei
s e Sousa,Curr Opin Immunol 2004;16:21−2
5)。これらの細胞は、微生物分子またはシグナルに対する反応によって適応性免疫応答
を先鋭にすると考えられる。樹状細胞は、抗原を捕獲し、処理して、提示し、これによっ
てCD4+およびCD8+ナイーブなTリンパ球を活性化して、一次免疫応答の誘導をも
たらし、そしてMHCクラスI、MHCクラスIIおよびアクセサリー分子、例えば、C
D40、CD54、CD80、CD86およびT細胞活性化サイトカインの発現から、そ
の刺激能力を駆動する(Steinman,J Exp Hematol 1996;2
4:859−862;Banchereau and Steinman,Nature
1998;392:245−252)。これらの特性によって、がんおよび感染性疾患
の免疫療法のための樹状細胞候補物が作成され(Nestle,Oncogene 20
00;19:673−679;Fong and Engleman,Annu Rev
Immunol 2000;18:245−273;Lindquist and P
isa,Med Oncol 2002;19:197−211)、そしてウイルスおよ
び腫瘍に対する強力な免疫を生じる抗原特異的な細胞傷害性T細胞を誘導することが示さ
れている(Kono et al.,Clin Cancer Res 2002;8:
394−40)。
【0021】
また先天性および適応性の免疫系の相互作用に重要なのはNK細胞であって、これは、
リンパ球として出現するが、先天的免疫系の一部のように挙動する。NK細胞は、腫瘍細
胞の殺傷に、そして本質的にはウイルス感染に対する応答に関与している(Lanier
,Curr Opin Immunol 2003;15:308−314;Caray
annopoulos and Yokoyama,Curr Opin Immuno
l 2004;16:26−33)。先天的免疫系のさらに別の重要な機構は、感染の存
在に対して哺乳動物宿主の他の細胞を変更するサイトカインメディエーターの活性化であ
り、その重要な成分は転写因子NF−κBである(Li and Verma,Nat
Rev Immunol 2002;2:725−734)。
【0022】
初期に言及されたとおり、免疫系は、過剰反応し得、それによってアレルギーまたは自
己免疫疾患が生じる。これはまた、抑制されるか、欠損されるか、または破壊され得、そ
れによって疾患および死亡が生じる。免疫系が「自己」と「非自己」との間を識別できな
い場合、これは、身体の細胞および組織に接着して破壊し、自己免疫疾患、例えば、若年
性糖尿病、多発性硬化症、重症筋無力症、全身性エリテマトーデス、リウマチ関節炎およ
び免疫血小板減少性紫斑病を生じる。免疫不全疾患は、免疫系の1つ以上の部分の欠失ま
たは不全から生じ、そして正常な免疫系を有する個体に通常は影響しない疾患に対してそ
の個体を感受性にさせる。免疫不全疾患の例は、重症複合免疫不全疾患(SCID)およ
び後天性免疫不全疾患(AIDS)である。後者は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)か
ら生じ、そして前者は、酵素または他の遺伝性欠損、例えば、アデノシンデアミナーゼ欠
損から生じる。
【0023】
免疫応答ならびに免疫、自己免疫障害および免疫不全障害の種々の態様の包括的記述は
、その全てが引用することにより本明細書の一部をなすものとする、Janeway e
t al ,IMMUNOBIOLOGY:THE IMMUNE SYSTEM IN
HEALTH AND DISEASE,Current Biology Publ
ications,1999;the Medical Encyclopedia o
f Medline Plus(nlm.nih.gov/medlineplus/e
ncyclopedia.html);そしてインターネットのサイトであるslic2
.wsu.edu:82:hurlbert/microl01/pages/hapl
5.htmlに提供される。
【0024】
がんに対する免疫療法の適用は、抗腫瘍反応性T細胞の養子免疫伝達およびワクチンの
使用、ならびに調節性細胞を阻害することによって腫瘍自己抗原に対する耐性を破壊する
こと、および種々のサイトカインおよびいわゆる免疫増強分子の使用によってT細胞免疫
を高めることのような、免疫系に関わるかまたは開拓するための多数のアプローチを含む
(Antonia et al.,Curr Opin Immunol 2004;1
6:130−136)。樹状細胞ワクチンも記載されている。腫瘍細胞抗原/レセプター
を標的化することによって患者に投与される抗体の直接および間接的な(宿主エフェクタ
ー細胞によって媒介される)作用は現在、リンパ腫および白血病の治療におけるCD20
およびCD52に対する抗体;多様な固形腫瘍の治療における、抗上皮細胞成長因子レセ
プター(EGFR)、抗HER2/neu改変体;そして特定の固形腫瘍の治療のための
抗血管内皮増殖因子(VEGF)によって例証されるように、がん治療の全構成に入って
いる。単独で与えられた場合活性であるが、これらのほとんどは、他の治療様式、例えば
、薬物および放射線と組み合わされた場合、抗腫瘍効果の増強を示した。細胞傷害性薬物
または同位元素を送達するためにこれらの腫瘍標的抗体を用いることは、免疫療法のさら
に別の方法であって、臨床段階にはいっている。がん免疫療法のこれらおよび他の方法は
、引用することにより本明細書の一部をなすものとする、Huber and Woel
fel,J Cancer Res Clin Oncol 2004;130:367
−374に概説されている。しかし、せいぜいこれらのアプローチは、患者の一部におけ
る腫瘍の減少および生存の改善を示すだけであり、患者のほとんどは、再発して、これに
よってその疾患を制御するためには他の治療介入および異なるストラテジーが必要になる

【0025】
敗血症は、我々の社会にとって大きな医学的および経済的な負担であり、アメリカで毎
年約700,000人が罹患し、毎年200,000例を超える死者が生じ、そして1年
に約167億ドルの費用がかかっている(Angus et al.,Crit Car
e Med 2001;29:1303−1310;Martin et al.,N
Engl J Med 2003;348:1546−1554)。敗血症の定義は難し
く、歴史的には、感染に対する全身的な宿主反応として規定された。敗血症の臨床的定義
の考察は、全身性炎症反応症候群(SIRS)、敗血症自体、重篤な敗血症、敗血性ショ
ックおよび多臓器不全症候群(MODS)を包含し、Riedmann et al.,
J Clin Invest 2003;112:460−467に含まれる。敗血症は
、侵入する微生物に対する宿主の絶大な反応によって生じるということ、そしてその患者
は、侵入する微生物よりもこの応答によって危険にさらされるということが共通の観念で
あり、免疫および炎症性応答の抑制は治療の初期の目標であった。
【0026】
免疫抑制の、または炎症促進性サイトカインを中和することの、多くのかつ多様な方法
は、敗血症および敗血性ショックを有する患者の抗炎症性のストラテジーでは臨床上成功
していないことが証明されている。(Riedmann,et al.,上記で引用;V
an Amersfoort et al(Clin Microbiol Rev 2
003;16:379−414)、例えば、一般的な免疫抑制、非ステロイド性抗炎症性
薬物の使用、TNF−α抗体(インフリキシマブ)またはTNF−R:Fc融合タンパク
質(エターネルセプト)、IL−1(インターロイキン−1)レセプターアンタゴニスト
、または高用量のコルチコステロイド。しかし、成体での敗血症の治療における成功は、
PROWESS研究(Human Activated Protein C Worl
dwide Evaluation in Severe Sepsis(Bernar
d et al.,N Engl J Med 2001;344:699−709))
であって、ここでは、プラセボ群(30.8%)においてよりも低い死亡率(24.7%
)が示されている。この活性化されたプロテインC因子はおそらく、血栓症および炎症の
両方を阻害するが、線維素溶解が助長される。Van Amersfoort et a
l.は、その概説(前出)において、以下のように述べている。「補体および凝固因子を
含む多数の他の標的のブロックまたは調節、好中球結合、およびNO放出は、動物におい
ては見込みがあるが、これらの治療アプローチがヒトで有効であるか否かはまだ確認され
ていない(Although the blocking or modulation
of a number of other targets including
complement and coagulation factors,neutr
ophil adherence,and NO release,are promi
sing in animals,it remains to be determi
ned whether these therapeutic approaches
will be effective in humans)」。これは、Abrah
amによる概説,「Why immunomodulatory therapies
have not worked in sepsis」(Intensive Car
e Med 1999;25:556−566)においてさらに強調される。
【0027】
敗血症における免疫系は、感染または外傷後早期の激しい炎症促進性応答を有し、これ
が器官損傷をもたらすと考えられる、しかし侵入する微生物を効率的に殺傷することに先
天的免疫系はしばしば失敗するとも考えられる(Riedmann and Ward,
Expert Opin Biol Ther 2003;3:339−350)。敗血
症と組み合わせて、マクロファージ遊走阻害性因子(MIF)のいくつかの研究があり、
ある程度の見込みが示されている。例えば、MIFの遮断またはMIF遺伝子の標的化破
壊はマウスにおける敗血性ショックのモデルで生存を有意に改善した(Calandra
et al.,Nature Med 2000;6:164−170)、そして証拠
のいくつかの系列は、敗血性の患者における治療介入のための潜在的な標的としてMIF
を指摘している(Riedmann et al.,上記で引用)。Bucala et
al.(米国特許第6,645,493号B1)は、抗MIF抗体が、種々の形態の敗
血症、炎症性疾患、急性呼吸器病症候群、肉芽腫性疾患、慢性感染、移植片拒絶、悪液質
、喘息、ウイルス感染、寄生生物感染、マラリアおよび細菌感染を含む、サイトカイン媒
介性毒性によって生じる状態または疾患を治療するために治療上有効であり得ると主張し
、これは、引用文献を含むその全体を引用することにより本明細書の一部をなすものとす
る。抗LPS(リポポリサッカライド)抗体単独の使用は同様に、敗血性ショックを有す
る患者の治療において入り交じった結果であった(Astiz and Rackow,
Lancet 1998;351:1501−1505;Van Amersfoort
et al.,Clin Microbiol Rev 2003;16:379−4
14)。
【0028】
LPSおよびMIFの両方とも敗血症および敗血性ショックの治療において標的として
探究されているが、抗体によってLPSまたはMIF単独を標的化するアプローチは、特
に進行型および重篤型では、敗血症の多様な徴候を制御するには十分ではなかった。同様
に、敗血症および他のサイトカイン媒介性毒性反応の治療のための抗体の標的としての、
IL−1、IL−6(インターロイキン6)、IL−8(インターロイキン8)などのよ
うなサイトカインの使用は、この疾患の意味のある制御に十分であることは証明されてい
ない。従って、敗血症における内因性の応答に関与するサイトカインカスケードのさらな
る標的を発見する必要性に加えて、MIFまたはリポポリサッカライド(LPS)のよう
な少なくとも1つのサイトカインまたは原因物質を標的化する二機能的および多機能的な
抗体は、特に炎症性応答または免疫応答に従事する宿主細胞(またはそのレセプター)、
例えば、T細胞、マクロファージ、または樹状細胞への結合と組み合わせた場合、有利で
あることが、今や発見されてきている。CD74のようなMHCクラスII不変鎖標的に
対する抗体は、Bucala et al.(US 2003/0013122 A1)
によって、MIF調節性疾患を治療することについて提唱され、そしてHansen e
t al.(US 2004/0115193 A1)は、免疫調節不全疾患、自己免疫
疾患、器官移植片拒絶、および移植片対宿主病を治療するための少なくとも1つのCD7
4抗体を提唱した。Hansen et al.は、このような疾患の治療のためのリン
パ球およびマクロファージのような宿主細胞に対する抗原/レセプターと反応する他の抗
体と抗CD74との融合タンパク質の使用を記載している。しかし、CD74以外の標的
との組み合わせは、示唆されておらず、その開示は免疫療法の異なる方法に集中している
。同様の標的はまた、アテローム斑を治療するために有用である(Burger−Ken
tischer et al.,Circulation 2002;105:1561
−1566)。
【0029】
感染、自己免疫、器官移植、炎症、および移植片対宿主病(および他の免疫調節性疾患
)の治療において、有害物もしく微生物を殺傷もしくは排除するか、または外来の移植片
もしくは免疫原に対する宿主免疫応答、または「自己」に対する抗体の宿主の産生を抑制
するなどのために多様でかつ相対的に非特異的な細胞傷害性物質を用いる。しかし、これ
らは通常、リンパ様のそして造血系の他の部分に影響して、骨髄(造血系)および他の正
常な宿主細胞に対して毒性の影響を生じる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
従って、がん、ならびに敗血症および敗血性ショック、炎症、アテローム性動脈硬化症
、悪液質、移植片対宿主、および他の免疫調節不全障害を含む、多様な免疫疾患の改善さ
れた、さらに選択性の療法の必要性が存在する。本発明は、上記で示される問題の1つ以
上の影響を克服するかまたは少なくとも軽減することに向けられる。
【課題を解決するための手段】
【0031】
本発明は、種々の炎症性および免疫調節不全疾患、感染性疾患、病的血管新生およびが
んの治療において多特異的アンタゴニストを用いる新規でかつ十分耐えられる方法を提供
する。この多特異的アンタゴニストは、これらの条件に関連する唯一の標的と特異的に反
応する物質よりも有効である。本発明は、少なくとも2つの異なる標的と特異的に反応す
る多特異的アンタゴニストを提供する。この標的は、(A)先天的免疫系の炎症促進性エ
フェクター、(B)凝固因子、(C)補体因子および補体調節タンパク質、ならびに(D
)炎症性障害もしくは免疫調節不全障害と特異的に関連する標的、または病的血管新生も
しくはがんと特異的に関連する標的、からなる群より選択され、後者の標的は(A)でも
、(B)でも、(C)でもない。この標的の少なくとも1つは(A)、(B)または(C
)である。この多特異的アンタゴニストが、単一の多特異的抗体を含む場合は、CD74
はこのアンタゴニストの標的として排除される。さらに、この多特異的アンタゴニストが
、別個の抗体の組み合わせを含む場合、抗体の1つがB細胞抗原を標的化し、かつもう一
方の抗体がT細胞、形質細胞、マクロファージまたは炎症性サイトカインを標的化する組
み合わせが排除される。抗体の1つがCD20を標的化し、かつもう一方の抗体がC3b
またはCD40を標的化する、別個の抗体の組み合わせも排除される。
【0032】
「特異的に反応する」という用語は、抗原に対する抗体または抗体フラグメントの結合
だけでなく、その同族のリガンドに対するレセプターの結合も包含する。例えば、先天的
免疫系の炎症促進性エフェクターのレセプターは、その炎症促進性のエフェクター同族リ
ガンドと「特異的に反応し」、従って本発明の範囲内におさまる。いくつかの実施形態で
は、多特異的アンタゴニストは、2つの別個の抗体の組み合わせである。他の実施形態で
は、これは多特異的抗体、詳細には融合タンパク質である。
【0033】
一実施形態では、多特異的アンタゴニストが、別個の抗体の組み合わせを含む場合、こ
の抗体のうちの1つがCD19、CD20、CD21、CD22、CD23またはCD8
0を標的化し、かつもう一方の抗体が補体因子を標的化する組み合わせが排除される。さ
らに詳細には、多特異的アンタゴニストが、別個の抗体の組み合わせを含む場合、この抗
体のうちの1つがCD19、CD20、CD21、CD22、CD23またはCD80を
標的化し、かつもう一方の抗体がC3bまたはCD40を標的化する組み合わせが排除さ
れる。
【0034】
先天的免疫系の炎症促進性エフェクターは、炎症促進性エフェクターサイトカイン、炎
症促進性エフェクターケモカイン、または炎症促進性エフェクターレセプターであっても
よい。適切な炎症促進性エフェクターサイトカインとしては、MIF、HMGB−I(高
移動度群ボックスタンパク質1)、TNF−α、IL−1、IL−4(インターロイキン
4)、IL−5(インターロイキン5)、IL−6、IL−8、IL−12(インターロ
イキン12)、IL−15(インターロイキン15)、IL−17(インターロイキン1
7)、およびIL−18(インターロイキン18)が挙げられる。炎症促進性エフェクタ
ーケモカインの例としては、CCL19、CCL21、IL−8、MCP−1、RANT
ES、MIP−1A、MIP−1B、ENA−78、MCP−1、IP−10、GROB
およびエオタキシン(Eotaxin)が挙げられる。炎症促進性エフェクターレセプタ
ーとしてはIL−4R(インターロイキン4レセプター)、IL−6R(インターロイキ
ン6レセプター)、IL−13R(インターロイキン−13レセプター)、IL−15R
(インターロイキン−15レセプター)、IL−17R(インターロイキン−17レセプ
ター)およびIL−18R(インターロイキン−18レセプター)が挙げられる。
【0035】
多特異的アンタゴニストはまた、少なくとも1つの凝固因子、詳細には組織因子(TF
)またはトロンビンと特異的に反応し得る。他の実施形態では、多特異的アンタゴニスト
は、少なくとも1つの補体因子または補体調節タンパク質と特異的に反応する。好ましい
実施形態では、その補体因子は、C3、C5、C3a、C3bおよびC5aからなる群よ
り選択される。これらの実施形態では、標的の組み合わせは好ましくは、上記アンタゴニ
ストが、別個の抗体の組み合わせである場合、他の抗体がCD19、CD20、CD21
、CD22、CD23またはCD80を標的化する組み合わせを含まない。このアンタゴ
ニストが補体調節タンパク質と特異的に反応する場合、この補体調節タンパク質は好まし
くは、CD46、CD55、CD59およびmCRPからなる群より選択される。
【0036】
一実施形態では、多特異的アンタゴニストは、特異性が異なる2つ以上の抗体であって
、その各々が、先天的免疫系の異なる炎症促進性エフェクターと特異的に反応する、抗体
を含む。あるいは、この多特異的アンタゴニストは、特異性の異なる2つ以上の抗体であ
って、その各々が異なる凝固因子と特異的に反応する抗体を含む。別の実施形態では、こ
の多特異的アンタゴニストは、特異性の異なる2つ以上の抗体であって、その各々が異な
る補体因子または補体調節タンパク質と特異的に反応する抗体を含む。さらに他の実施形
態では、この2つ以上の抗体は、先天的免疫系の少なくとも1つの炎症促進性エフェクタ
ーと、そして少なくとも1つの凝固因子と、または先天的免疫系の少なくとも1つの炎症
促進性エフェクターと、そして少なくとも1つの補体因子または補体調節タンパク質と、
または少なくとも1つの補体因子もしくは補体調節タンパク質と、そして少なくとも1つ
の凝固因子とそれぞれ特異的に反応する。あるいは、この多特異的アンタゴニストは、先
天的免疫系の2つ以上の炎症促進性エフェクターと、または2つ以上の凝固因子と、また
は2つ以上の補体因子もしくは補体調節タンパク質と特異的に反応し得る。
【0037】
2つ以上の抗体は、先天的免疫系の同じ炎症促進性エフェクターの2つ以上のエピトー
プ、または同じ凝固因子の2つ以上のエピトープ、または同じ補体因子もしくは補体調節
タンパク質の2つ以上のエピトープと特異的に反応し得る。任意のこれらの実施形態では
、多特異的アンタゴニストはさらに、炎症性もしくは免疫調節不全障害と特異的に関連す
る標的、または病的血管新生もしくはがんと特異的に関連する標的と反応し得、この標的
は、上記で規定されるように、(A)、(B)または(C)標的ではない。他の実施形態
では、多特異的アンタゴニストは、炎症性もしくは免疫調節不全障害と特異的に関連する
標的、または病的血管新生もしくはがんと特異的に関連する標的、及び上記のような1つ
以上の(A)、(B)または(C)と特異的に関連する標的と反応する。病的血管新生の
有用な標的の例は、Flt−1である。
【0038】
本発明の任意の実施形態では、多特異的アンタゴニストは、多特異的抗体であってもよ
く、ここでこの抗体の異なるアームが、本明細書に説明された条件下で、異なる標的と反
応する。このような多特異的構築物はまた、Rossi(特許出願WO04094613
A2)に記載されているように、抗原標的に対する結合を増強するために、同じ抗原エピ
トープに対して任意のまたは全ての結合アームにおいて多価性を有してもよい。
【0039】
あるいは、多特異的アンタゴニストは、少なくとも1つの可溶性レセプターを、または
少なくとも1つの炎症促進性エフェクターレセプターの少なくとも1つの細胞外ドメイン
を含んでもよい。一実施形態では、このアンタゴニストは、少なくとも1つの抗体に融合
された少なくとも1つの可溶性レセプター、または炎症促進性エフェクターレセプターの
少なくとも1つの細胞外ドメインを含む。
【0040】
多特異的アンタゴニストは、炎症促進性エフェクターレセプターと反応的である少なく
とも1つの分子を含んでもよい。この分子は好ましくは、炎症促進性エフェクターレセプ
ターの天然のアンタゴニスト、またはこのレセプターと特異的に相互作用するアンタゴニ
ストのフラグメントもしくは変異体である。一実施形態では、この天然のアンタゴニスト
は、天然のIL−1レセプターアンタゴニスト、またはこのアンタゴニストのフラグメン
トもしくは変異体である。
【0041】
この多特異的アンタゴニストはさらに、樹状細胞、顆粒球、単球、マクロファージ、N
K細胞、血小板、または内皮細胞を標的化し得る。いくつかの実施形態では、この多特異
的アンタゴニストは、適応性免疫系の少なくとも1つの抗原またはレセプターと特異的に
反応する。他の実施形態では、この多特異的アンタゴニストは、がん細胞レセプターまた
はがん関連抗原、例えば、B細胞系列の抗原(CD19、CD20、CD21、CD22
、CD23、など)、VEGFR、EGFR、がん胎児性抗原(CEA)、胎盤成長因子
(PLGF)、テナスシン(tenascin)、HER−2/neu、EGP−1、EGP−2、
CD25、CD30、CD33、CD38、CD40、CD45、CD52、CD74、
CD80、CD138、NCA66、MUCl、MUC2、MUC3、MUC4、MUC
16、IL−6、α−フェトプロテイン(AFP)、A33、CA125、結腸特異的抗
原−p(CSAp)、葉酸レセプター、HLA−DR、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(HC
G)、Ia、EL−2、インスリン様成長因子(ILGF)およびILGFレセプター、
KS−1、Le(y)、MAGE、壊死抗原、PAM−4、前立腺酸性フォスファターゼ
(PAP)、Pr1、前立腺特異的抗原(PSA)、PSMA、S100、T101、T
AC、TAG72、TRAILレセプター、および炭酸脱水酵素IXと特異的に反応する
。増殖性骨髄細胞を標的化するFlt−3も特定のがんを同定および治療するのに有用で
ある。あるいは、多特異的アンタゴニストは、C5a、第H因子、FHL−1、LPS、
IFNγもしくはB7のような標的と、またはCD2、CD4、CD14、CD18、C
D11a、CD19、CD20、CD22、CD23、CD25、CD29、CD38、
CD40L、CD52、CD64、CD83、CD147もしくはCD154のような標
的と特異的に反応し得る。
【0042】
多特異的アンタゴニストは、単一の活性成分を含んでもよいし、または複数の活性成分
を含んでもよい。単一の活性成分を含む実施形態は、定義によれば2つ以上の活性成分を
含む抗体の混合物は包含しない。2つ以上の活性成分を含む多特異的アンタゴニストとし
てはまた、先天的免疫系の成分、適応性免疫系の成分、凝固、感染性因子、またはがん細
胞に影響する二次治療剤を挙げてもよい。
【0043】
多特異的アンタゴニストは、感染性疾患、急性呼吸窮迫症候群、敗血症または敗血性シ
ョック、移植片対宿主病または移植片拒絶、アテローム性動脈硬化症、喘息、座瘡、巨細
胞性動脈炎、肉芽腫性疾患、神経障害、悪液質、血液凝固障害、例えば、汎発性血管内凝
固(DIC)または心筋虚血のような特定の疾患および状態と関連する、標的またはマー
カーと特異的に反応し得る。
【0044】
多特異的アンタゴニストは、炎症性または免疫調節不全障害、病的血管新生もしくはが
ん、および感染性疾患のような状態を治療するのに有用である。治療は、この状態のうち
の1つを有すると診断されている患者に対して、多特異的アンタゴニストの治療上有効な
量を投与する工程を含む。一実施形態では、この炎症性または免疫調節不全障害は、自己
免疫疾患ではない。多特異的アンタゴニストは、敗血症または敗血性ショック、感染性疾
患(細菌、ウイルス、真菌または寄生生物)、神経障害、移植片対宿主病または移植片拒
絶、急性呼吸窮迫症候群、肉芽腫性疾患、喘息、アテローム性動脈硬化症、座瘡、巨細胞
性動脈炎、血液凝固障害、例えば、汎発性血管内凝固(DIC)または悪液質を治療する
ために用いられ得る。他の実施形態では、この状態は、自己免疫疾患、特にクラスIII
の自己免疫疾患である。
【0045】
多特異的アンタゴニストはまた、病的血管新生またはがんを治療するために用いられ得
る。がんは、造血系のがん、例えば、白血病、リンパ腫、または骨髄腫などであってもよ
い。あるいは、がんは、固形腫瘍、例えば、癌腫、黒色腫、肉腫、神経膠腫などであって
もよい。
【0046】
多特異的アンタゴニストは、治療剤、例えば、放射性核種、免疫調節物質、ホルモン、
ホルモンアンタゴニスト、酵素、酵素インヒビター、オリゴヌクレオチド、光活性治療剤
、細胞毒性剤、抗体、血管新生インヒビター、およびそれらの組み合わせを含む免疫コン
ジュゲートであってもよい。治療剤がオリゴヌクレオチドである場合、アンチセンスオリ
ゴヌクレオチドであってもよい。
【0047】
他の実施形態では、治療剤は、細胞毒性物質、例えば、薬物または毒素である。薬物は
、抗有糸分裂性、アルキル化、代謝拮抗、血管新生阻害、アポトーシス性、アルカロイド
、プロテアソームインヒビターおよび抗生物質製剤およびそれらの組み合わせからなる群
より選択される薬学的特性を保有し得る。特定の実施形態では、この薬物は、ナイトロジ
ェン・マスタード、ゲムシタビン、エチレンイミン誘導体、アルキルスルホナート、ニト
ロソウレア、トリアゼン(triazene)、葉酸類似体、アントラサイクリン、SN
−38、タキサン(taxane)、COX−2インヒビター、ピリミジン類似体(例え
ば、5−フルオロウラシル)、プリン類似体、抗生物質、酵素、酵素インヒビター、プロ
テアソームインヒビター、エピポドフィロトキシン、白金配位錯体、ビンカ・アルカロイ
ド、置換ウレア、メチルヒドラジン誘導体、副腎皮質抑制剤、ホルモンアンタゴニスト、
エンドスタチン、タキソール、カンプトテシン、ドキソルビシンおよびそれらの類似体、
代謝拮抗剤、アルキル化剤、抗有糸分裂剤、血管新生阻害剤、アポトーシス剤、メトトレ
キサート、CPT−11およびそれらの組み合わせからなる群より選択される。毒素は、
動物、植物および微生物供給源からなる群より選択される供給源由来であってもよく、そ
して好ましくは、リシン、アブリン、α溶血毒、サポリン、リボヌクレアーゼ(RNas
e)、DNaseI、ブドウ球菌性(Staphylococcal)エンテロトキシン
A、ヨウシュヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、ゲロニン、ジフテリア毒素、シュードモ
ナス外毒素およびシュードモナス内毒素からなる群より選択される。
【0048】
他の実施形態では、この治療剤は、免疫調節剤、例えば、サイトカイン、幹細胞増殖因
子、リンホトキシン、造血因子、コロニー刺激因子(CSF)、インターフェロン(IF
N)、幹細胞増殖因子、エリスロポエチン、トロンボポエチンおよびそれらの組み合わせ
である。リンホトキシンは、腫瘍壊死因子(TNF)であってもよく、造血因子は、イン
ターロイキン(IL)であってもよく、コロニー刺激因子は、顆粒球コロニー刺激因子(
G−CSF)または顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)であっても
よく、このインターフェロンは、インターフェロンα、βまたはγであってもよく、そし
て幹細胞成長因子は、S1因子であってもよい。好ましくは、この免疫調節因子は、IL
−1、IL−2、IL−3、IL−6、IL−10、IL−12、IL−17、IL−1
8、IL−21、インターフェロン−γ、TNF−α、またはその組み合わせを含む。
【0049】
あるいは、治療剤は、放射性核種である。好ましくは、この放射性核種は、60〜70
0keVのエネルギーを有し、好ましくは、32P、33P、47Sc、125I、131I、86Y、
90Y、186Re、188Re、189Re、64Cu、67Cu、67Ga、111In、111Ag、142
r、153Sm、161Tb、166Dy、166Ho、177Lu、198Au、211At、212Pb、212
Bi、213Bi、223Raおよび225Ac、ならびにそれらの組み合わせからなる群より選
択される。
【0050】
他の実施形態では、治療剤は、光活性治療剤、例えば、色原体およびまたは色素である
。治療剤はまた、酵素であってもよい。この酵素は好ましくは、リンゴ酸脱水素酵素、ブ
ドウ球菌のヌクレアーゼ、δ−V−ステロイドイソメラーゼ、酵母アルコールデヒドロゲ
ナーゼ、α−グリセロホスフェートデヒドロゲナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、
西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、アスパラギナーゼ、グルコース
オキシダーゼ、βガラクトシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グル
コース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、グルコアミラーゼおよびアセチルコリンエステラ
ーゼを含む群から選択される。
【0051】
多特異的アンタゴニストは、診断/検出物質を含んでもよい。この診断/検出物質は、
診断用放射性核種、造影剤、蛍光標識および光活性物質からなる群より選択され得る。
【0052】
本発明はまた、炎症性または免疫調節不全障害、病的血管新生もしくはがん、および感
染性疾患から選択される条件を診断または検出する方法を提供し、この方法は、本発明に
よる多特異的アンタゴニストの診断上有効な量を、このような状態を有すると疑われてい
る患者に対して投与する工程と;標的部位で多特異的アンタゴニストが融合することを可
能にする工程と;多特異的抗体が循環して血流から除去されることを待つか、またはクリ
アリング剤を用いる工程と;検出手段を用いてこのような部位で、標識された多特異的ア
ンタゴニストの上昇したレベルを検出することによって、標識された多特異的アンタゴニ
ストの付着の部位を位置決めする工程とを含む。
【0053】
炎症性または免疫調節不全障害、病的血管新生もしくはがん、および感染性疾患から選
択される状態を診断または検出する別の方法は、ハプテン結合部位を含む、本発明による
多特異的アンタゴニストの診断上有効な量を、このような状態を有すると疑われている患
者に対して投与する工程と;標的部位で多特異的アンタゴニストが融合することを可能に
する工程と;血流から除去するために多特異的抗体が循環することを待つ工程と;診断物
質/検出物質で標識されたハプテンをこの被験体に投与する工程と;多特異的アンタゴニ
ストのハプテン結合部位に対して標識されたハプテンが結合することを可能にする工程と
;検出手段を用いてこのような部位で、標識されたハプテンに結合された多特異的アンタ
ゴニストの上昇したレベルを検出することによって、多特異的アンタゴニストの付着の部
位を位置決めする工程とを包含する。
【0054】
本発明はまた、炎症性または免疫調節不全障害、病的血管新生もしくはがん、および感
染性疾患から選択される状態を治療する方法を提供し、この方法は、ハプテン結合部位を
含む、本発明による多特異的アンタゴニストの治療上有効な量を、このような状態を有す
ると疑われている患者に対して投与する工程と;標的部位で多特異的アンタゴニストが融
合することを可能にする工程と;血流から除去するために多特異的抗体が循環することを
待つ工程と;治療剤を含むハプテンを被験体に投与する工程と;多特異的アンタゴニスト
のハプテン結合部位に対してハプテンがこの治療剤とともに結合することを可能にする工
程とを含む。
【発明を実施するための形態】
【0055】
定義
以下の説明において、及び引用することにより本明細書の一部をなすものとする文書で
は、多数の用語が広範に用いられる。以下の定義は、本発明の理解を容易にするために示
される。
【0056】
構造遺伝子とは、メッセンジャーRNA(mRNA)に転写され、次いで特定のポリペ
プチドに特有のアミノ酸配列に翻訳されるDNA配列である。
【0057】
プロモーターとは、構造遺伝子の転写を指示するDNA配列である。代表的には、プロ
モーターは、構造遺伝子の転写開始部位に近位である、遺伝子の5’領域に位置する。プ
ロモーターが誘導性プロモーターであるならば、転写の速度は、誘導性物質に応答して増
大する。対照的に、転写の速度は、プロモーターが構成的プロモーターである場合には誘
導性物質によっては調節されない。
【0058】
単離されたDNA分子とは、生物体のゲノムDNAに組み込まれていないDNAのフラ
グメントである。例えば、クローニングされた抗体遺伝子は、哺乳動物細胞のゲノムDN
Aから分離されているDNAフラグメントである。単離されたDNA分子の別の例は、生
物体のゲノムDNAに組み込まれていない化学的に合成されたDNA分子である。
【0059】
エンハンサーとは、転写の開始部位に対するエンハンサーの距離にも方向にもかかわら
ず、転写の有効性を増大し得るDNA調節性エレメントである。
【0060】
相補的DNA(cDNA)とは、逆転写酵素によってmRNAのテンプレートから形成
される一本鎖DNA分子である。代表的には、mRNAの一部に相補的であるプライマー
を逆転写の開始に使用する。当業者はまた、このような一本鎖DNA分子およびその相補
的なDNA鎖からなる二本鎖DNA分子を指すためにもこの「cDNA」という用語を用
いる。
【0061】
発現という用語は、遺伝子産物の生合成を指す。例えば、構造遺伝子の場合、発現とは
、mRNAへの構造遺伝子の転写、および1つ以上のポリペプチドへのmRNAの翻訳を
包含する。
【0062】
クローニングベクターとは、宿主細胞において自立的に複製し得る能力を有する、プラ
スミド、コスミドまたはバクテリオファージのようなDNA分子である。クローニングベ
クターは代表的には、1または少数の制限エンドヌクレアーゼ認識部位であって、そこで
外来DNA配列が、ベクターの必須の生物学的な機能の損失なしで検出可能な様式で挿入
され得る部位と、クローニングベクターで形質転換された細胞の同定および選択における
使用に適切であるマーカー遺伝子とを含む。マーカー遺伝子としては代表的には、テトラ
サイクリン耐性またはアンピシリン耐性を提供する遺伝子が挙げられる。
【0063】
発現ベクターとは、宿主細胞中で発現される遺伝子を含むDNA分子である。代表的に
は、遺伝子発現は、構成プロモーターまたは誘導性プロモーター、組織特異的調節性エレ
メントおよびエンハンサーを含む、特定の調節性エレメントの制御下におかれる。このよ
うな遺伝子は、調節性エレメントに対して「作動可能に連結される」と言われる。
【0064】
組み換え宿主は、クローニングベクターまたは発現ベクターのいずれかを含む任意の原
核生物細胞または真核生物細胞であり得る。この用語はまた、宿主細胞の染色体またはゲ
ノム中にクローニングされた遺伝子(単数または複数)を含むように遺伝子操作されてい
る原核生物または真核生物細胞を含む。
【0065】
本明細書において用いる場合、抗体とは、裸の抗体およびコンジュゲートされた抗体お
よび抗体フラグメントを包含し、これは単一特異性であっても多特異的であってもよい。
これは、組み換え抗体、例えば、キメラ抗体、ヒト化抗体および融合タンパク質を含む。
【0066】
キメラ抗体とは、げっ歯類の抗体に由来する可変のドメインおよび相補性決定領域を含
む組み換えタンパク質であるが、残りの抗体分子は、ヒト抗体に由来する。
【0067】
ヒト化抗体とは、モノクローナル抗体のマウス相補性決定領域が、マウス免疫グロブリ
ンの重鎖および軽鎖の可変鎖からヒト可変領域ドメインに転移されている組み換えタンパ
ク質である。ヒト化マウス抗体(CDR移植片)は、ヒトIgGのFRへ移植されたマウ
スCDRを有する。CDR移植されたヒト可変鎖は、ヒト抗体の定常領域に融合されて、
インタクトなヒト化IgGが得られる。
【0068】
ヒト抗体とは、ヒトから単離されて次いで培養物中で増殖されるか、またはヒト抗体を
産生することによって抗原刺激に応答するように免疫系が変更されている動物を用いて作
成される抗体である。
【0069】
抗体フラグメントとは、F(ab’)2、F(ab)2、Fab’、Fab、Fv、sF
vなどのようなインタクトな抗体の一部である。構造にかかわらず、抗体フラグメントは
、全長抗体によって認識される同じ抗原と結合する。例えば、抗CD20モノクローナル
抗体フラグメントは、CD20のエピトープと結合する。「抗体フラグメント」という用
語はまた、特定の抗原に結合して複合体を形成することによって抗体のように作用する任
意の合成または遺伝子操作されたタンパク質を包含する。例えば、抗体フラグメントとし
ては、重鎖および軽鎖の可変領域からなる「Fv」フラグメントのような、可変領域から
なる単離されたフラグメント、軽鎖および重鎖の可変領域がペプチドリンカーによって接
続されている組み換え単鎖ポリペプチド分子(「scFvタンパク質」)、および超可変
領域を模倣するアミノ酸残基からなる最小認識単位が挙げられる。
【0070】
野性型抗体の制限されたタンパク質分解によって生成される抗体フラグメントは、タン
パク質分解性抗体フラグメントと呼ばれる。これらとしては、限定はしないが、以下が挙
げられる。
【0071】
F(ab’)2フラグメントは、タンパク質分解性酵素、例えば、ペプシンまたはフィ
シンに対する抗体の制限された曝露によって抗体から放出される。F(ab’)2フラグ
メントは、2つの「アーム(arm)」であって、その各々が共通の抗原に向かって、そ
して特異的に結合する可変領域を含む、アームを含む。この2つのFab’分子は、重鎖
のヒンジ領域における鎖間ジスルフィド結合によって結合される;Fab’分子は、同じ
(二価)または異なる(二重特異的な)エピトープに対して向けられ得る。
【0072】
Fab’フラグメントは、Fabを含む単一の抗結合ドメイン、およびヒンジ領域を通
じて重鎖のさらなる一部を含む。
【0073】
Fab’−SHフラグメントは代表的には、F(ab’)2フラグメントから生成され
、これは、F(ab’)2フラグメントにおけるH鎖の間のジスルフィド結合によってお
互いに保持される。温和な還元剤、例えば、非限定的な例として、βメルカプトエチルア
ミンでの処理は、ジスルフィド結合を破壊し、そして2つのFab’フラグメントが、1
つのF(ab’)2フラグメントから遊離される。Fab’−SHフラグメントは、一価
でかつ単一特異的である。
【0074】
Fabフラグメント(すなわち、抗原結合ドメインを含み、そして軽鎖およびジスルフ
ィド結合によって架橋された重鎖の一部を含む抗体フラグメント)は、インタクトな抗体
のパパイン消化によって生成される。好都合な方法は、酵素が容易に除去でき、消化が終
わるように、樹脂に固定されたパパインを使用することである。Fabフラグメントは、
F(ab’)2フラグメントに存在するH鎖の間にジスルフィド結合(単数または複数)
を有さない。
【0075】
単鎖抗体は、抗体フラグメントの1タイプである。単鎖抗体という用語は、しばしば、
「scFv」または「sFv」と略される。これらの抗体フラグメントは、分子遺伝学お
よび組み換えDNA技術を用いて生成される。単鎖抗体は、相互作用して抗原結合部位を
形成するVHおよびVLドメインの両方を含むポリペプチド鎖からなる。このVHおよびV
Lドメインは通常、10〜25のアミノ酸残基のペプチドによって結合される。「単鎖抗
体」という用語は、さらに、2つの単鎖抗体(各々が異なるエピトープに向けられ得る)
がジスルフィド結合によって一緒に結合される、ジスルフィド結合されたFv(dsFv
)と;異なる特異性の2つの別個のscFvsがペプチドリンカーで接続される二重特異
的sFvと;二重特異性抗体(第一のsFvのVHドメインが第二のsFvのVLドメイン
と会合し、かつ第一のsFvのVLドメインが第二のsFvのVHドメインと会合する場合
に形成される二量体化sFv;二重特異性抗体の2つの抗原結合領域は、同じまたは異な
るエピトープへ向けられてもよい)と;三重特異性抗体(triabody)(二重特異性抗体と同
様の方式で形成されるが、3つの抗原結合ドメインが単一の複合体中で作成される三量体
化sFv;3つの抗原結合ドメインは、同じまたは異なるエピトープに向けられてもよい
)を含むが、これらには限定されない。従って、scFV、二重特異性抗体または三重特
異性抗体を作製する場合、定常領域は用いられず、ヒト化可変領域がリンカーと結合され
る。
【0076】
相補性決定領域ペプチドまたはCDRペプチドは、抗体フラグメントの別の形態である
。CDRペプチド(「最小認識単位」としても既知)とは、単一の相補性決定領域(CD
R)に対応するペプチドであって、目的の抗体のCDRをコードする遺伝子を構築するこ
とによって調製され得る。このような遺伝子は、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応を用いて
抗体産生細胞のRNAから可変領域を合成することによって、調製される。例えば、La
rrick et al.,Methods:A Companion to Meth
ods in Enzymology 2:106,1991を参照のこと。
【0077】
システイン修飾抗体では、システインアミノ酸を遺伝子操作によって抗体の表面上に挿
入するかまたは置換して、これを用いて、この抗体を、例えば、ジスルフィド架橋を介し
て別の分子にコンジュゲートする。抗体についてのシステイン置換または挿入が記載され
ている(例えば、米国特許第5,219,996号を参照のこと)。抗体の部位特異的な
コンジュゲートにおける使用のためにIgG抗体の定常領域にCys残基を導入するため
の方法は、Stimmel et al.(J Biol.Chem 275:3304
45−30450,2000)によって記載されている。
【0078】
本明細書において用いる場合、治療剤とは、治療のために有用なコンジュゲートを生成
するために抗体部分にコンジュゲートされた、分子または原子である。これらは、甲状腺
新生物において131Iと、がん、自己免疫疾患、移植片対宿主病において種々の細胞毒性
薬物と、そして器官移植について誘導された免疫抑制においてなどのように、抗体に対し
てコンジュゲートしなくなった場合に活性にされ得る。治療剤の例としては、治療用放射
性核種、ホウ素化合物、免疫調節剤、ホルモン、ホルモンアンタゴニスト、酵素、オリゴ
ヌクレオチド、酵素インヒビター、光活性治療剤、細胞毒性剤、および血管新生インヒビ
ター、ならびにそれらの組み合わせが挙げられ、そしてこれらは、米国公開出願第200
40057902号に記載されている。好ましい治療的放射性同位体としては、80〜5
00keVのkeV範囲を有するβ、αおよびオージェエミッターが挙げられる。例示的
な治療的放射性同位体としては、225Ac、177Lu、198Au、32P、125I、131I、90
Y、186Re、188Re、67Cu、67Ga、111In、および211Atが挙げられる。
【0079】
診断/検出物質とは、本発明による多特異的アンタゴニスト、すなわち、抗体または抗
体フラグメントまたはサブフラグメントにコンジュゲートされて投与され、そして抗原を
含有する細胞を位置決めすることによって疾患を診断するのに有用である分子または原子
である。有用な診断/検出物質としては、限定はしないが、放射性同位体、色素(例えば
、ビオチン−ストレプトアビジン複合体を有するもの)、造影剤、蛍光化合物、または磁
気共鳴画像化(MRI)のためのそして超音波およびコンピューター断層撮影法のための
、分子および造影剤(例えば、常磁性イオン)が挙げられる。
【0080】
裸の抗体は、治療剤とコンジュゲートされていない抗体である。裸の抗体としては、ポ
リクローナル抗体およびモノクローナル抗体の両方、ならびに特定の組み換え抗体、例え
ば、キメラ抗体およびヒト化抗体が挙げられる。
【0081】
コンジュゲートされた抗体とは、診断物質または治療剤とコンジュゲートされた抗体ま
たは抗体フラグメントである。
【0082】
多特異的な抗体とは、異なる構造である少なくとも2つの標的、例えば、同じ抗原上の
2つの異なる抗原、2つの異なるエピトープ、あるいはハプテンおよび/または抗原もし
くはエピトープに対して同時に結合され得る抗体である。結合アームの2つ以上が、同じ
抗原の同じまたは異なるエピトープに向かってもよく、これによって、多価特異性(multi
specificity)に加えて多価性(multivalency)が構築される。
【0083】
二重特異的な抗体とは、異なる構造である2つの標的に対して同時に結合し得る抗体ま
たは抗体フラグメント構築物である。
【0084】
融合タンパク質とは、組み換えにより生成された抗原結合分子であって、同じまたは異
なる特異性を有する2つ以上の異なる単鎖抗体または抗体フラグメントセグメントが結合
される分子である。種々の二重特異的な融合タンパク質が分子操作を用いて生成され得る
。一形態では、二重特異的な融合タンパク質は一価であって、これは、例えば、ある抗原
について単独の結合部位を有するscFvおよび第二の抗原について単独の結合部位を有
するFabフラグメントから構成される。別の形態では、二重特異的融合タンパク質は、
二価であって、例えば、ある抗原について2つの結合部位を有するIgGおよび第二の抗
原について2つの結合部位を有する2つのscFvから構成される。
【0085】
感染性疾患とは、微生物または寄生生物によって生じる疾患である。
【0086】
微生物とは、ウイルス、細菌、リケッチア、マイコプラズマ、真菌などの微生物である

【0087】
寄生生物とは、感染性であって、一般に顕微鏡でしか見えない、または極めて小さく、
多細胞の無脊椎動物、原生動物、またはそれらの卵子もしくは若年型であり、これは抗体
誘導性クリアランスに対して、または溶解性もしくは食細胞性の破壊に対して感受性であ
る。
【0088】
多特異的アンタゴニスト
本発明は、少なくとも2つの異なる標的と特異的に反応する多特異的アンタゴニストを
提供する。異なる標的としては、先天的免疫系の炎症促進性エフェクター、凝固因子、補
体因子および補体調節タンパク質、及び炎症性または免疫調節不全障害と特異的に関連す
る標的、感染性病原体と特異的に関連する標的、または病的血管新生もしくはがんと特異
的に関連する標的が挙げられ、この後者のクラスの標的は免疫系の炎症促進性エフェクタ
ーでも凝固因子でもない。多特異的アンタゴニストが、炎症性もしくは免疫調節不全障害
と、病的血管新生もしくはがんと、または感染性疾患と関連する標的と特異的に反応する
場合、これはまた、免疫系の少なくとも1つの炎症促進性エフェクター、少なくとも1つ
の凝固因子、または少なくとも1つの補体因子もしくは補体調節タンパク質と特異的に結
合する。従って、多特異的アンタゴニストは、異常細胞、病的血管新生もしくはがん、ま
たは感染性疾患に関連する少なくとも1つの結合特異性、および免疫系の成分、例えば、
B細胞、T細胞、好中球、単球およびマクロファージ、および樹状細胞のレセプターもし
くは抗原、または凝固の調節因子、例えば、トロンビンもしくは組織因子、または炎症促
進性サイトカイン、例えば、IL−1、IL−6、IL−10、HMGB−IおよびMI
Fに対する少なくとも1つの特異性を含む。
【0089】
多特異的アンタゴニストが単一の多特異的な抗体を含むならば、CD74は、このよう
なアンタゴニストの標的として排除される。さらに、多特異的アンタゴニストが別個の抗
体の組み合わせを含む場合、成分の1つがB細胞抗原を標的化し、そして他の成分がT細
胞、形質細胞、マクロファージまたは炎症性サイトカインを標的化する組み合わせが排除
される。
【0090】
本発明は、多特異的タンパク質および抗体、ならびにそのフラグメントを含む組成物に
関するとともに、複数の別個のタンパク質もしくは抗体、またはそのフラグメントの組み
合わせを含む組成物に関する。従って、一実施形態では、この多特異的アンタゴニストは
、抗体融合タンパク質または異種コンジュゲートである。別の実施形態では、この多特異
的アンタゴニストは、異なる標的に結合する少なくとも2つの別個の抗体を含む抗体混合
物である。この実施形態では、2つ以上の抗体または抗体コンジュゲートは、同時にまた
は連続して与えられる。この多特異的アンタゴニストは、裸であってもよいが、また診断
用画像化剤(例えば、同位体、放射線学的造影剤)に対して、または放射性核種、ホウ素
化合物、免疫調節剤、ホルモン、ホルモンアンタゴニスト、酵素、オリゴヌクレオチド、
酵素インヒビター、光反応性治療剤、細胞傷害性物質、血管新生インヒビター、およびそ
れらの組み合わせを含む治療剤にコンジュゲートされていてもよい。標的に対する多特異
的アンタゴニストの結合は、ダウンレギュレートされてもよいし、そうでなければ免疫細
胞機能に影響してもよいが、多特異的アンタゴニストはまた、免疫細胞機能に直接影響し
ない他の標的に結合してもよい。例えば、CD66またはCEACAM6(例えば、NC
A90またはNCA95)に対するような、抗顆粒球抗体は、感染した組織で顆粒球を標
的化するために用いられてもよく、そしてまたCEACAM6を発現するがんを標的化す
るために用いられてもよい。
【0091】
一実施形態では、治療剤はオリゴヌクレオチドである。例えば、このオリゴヌクレオチ
ドは、アンチセンスオリゴヌクレオチドであっても、または二本鎖の干渉RNA(RNA
i)分子であってもよい。このオリゴヌクレオチドは、bcl−2またはp53のような
がん遺伝子に対するものでもよい。bcl−2発現を阻害するアンチセンス分子は、米国
特許第5,734,033号に記載されている。これは、本発明の多特異的アンタゴニス
トの治療剤部分にコンジュゲートされるか、または本発明の多特異的アンタゴニストの治
療剤部分を形成し得る。あるいは、このオリゴヌクレオチドは、本発明の多特異的アンタ
ゴニストと同時にまたは連続して投与されてもよい。
【0092】
別の実施形態では、この治療剤は、付加されたホウ素であり、そして治療には、治療剤
の局在化後に熱中性子または熱外中性子での照射を要する。この治療剤はまた、光活性治
療剤、特に色素原または色素であるものであってもよい。
【0093】
好ましい実施形態では、この治療剤は細胞傷害性物質、例えば、薬物または毒素である
。また好ましくは、薬物は、窒素、マスタード、エチレンイミン誘導体、アルキルスルホ
ネート、ニトロソウレア、ゲムシタビン、トリアゼン(triazene)、葉酸類似体、アントラ
サイクリン、タキサン(taxane)、COX−2インヒビター、ピリミジン類似体、プリン類
似体、抗生物質、酵素、酵素インヒビター、エピポドフィロトキシン、白金配位錯体、ビ
ンカ・アルカロイド、置換ウレア、メチルヒドラジン誘導体、副腎皮質抑制剤、ホルモン
アンタゴニスト、エンドスタチン、タキソール、SN−38、カンプトテシン、ドキソル
ビシンおよびそれらの類似体、代謝拮抗剤、アルキル化剤、抗有糸分裂剤、血管新生阻害
剤、アポトーシス剤、メトトレキサート、CPT−11およびそれらの組み合わせからな
る群より選択される。
【0094】
別の好ましい実施形態では、この治療剤は、動物、植物および微生物供給源からなる群
より選択される供給源由来の毒素である。好ましい毒素としては、リシン、アブリン、α
溶血毒、サポリン、リボヌクレアーゼ(RNase)、DNaseI、ブドウ球菌エンテ
ロトキシンA、ヨウシュヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、ゲロニン、ジフテリア毒素、
シュードモナス外毒素およびシュードモナス内毒素が挙げられる。
【0095】
この治療剤は、免疫調節剤、例えば、サイトカイン、幹細胞増殖因子、リンホトキシン
、造血因子、コロニー刺激因子(CSF)、インターフェロン(IFN)、幹細胞増殖因
子、エリスロポエチン、トロンボポエチンおよびそれらの組み合わせであってもよい。こ
のようなリンホトキシンは、腫瘍壊死因子(TNF)である。造血因子は、インターロイ
キン(IL)であってもよく、コロニー刺激因子は、顆粒球コロニー刺激因子(G−CS
F)または顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)であってもよく、こ
のインターフェロンは、インターフェロンα、βまたはγであってもよく、そして幹細胞
成長因子は、S1因子であってもよい。あるいは、この免疫調節物質は、IL−1、IL
−2、IL−3、IL−6、IL−10、IL−12、IL−17、IL−18、IL−
21、インターフェロン−γ、TNF−α、またはその組み合わせを含んでもよい。
【0096】
好ましい治療的な放射性核種としては、80〜500keVのkeV範囲を有するβ、
αおよびオージェエミッターが挙げられる。例示的な治療的放射性同位体としては、32
33P、47Sc、125I、131I、86Y、90Y、186Re、188Re、189Re、64Cu、67
Cu、67Ga、111In、111Ag、142Pr、153Sm、161Tb、166Dy、166Ho、177
Lu、198Au、211At、212Pb、212Bi、213Bi、223Raおよび225Ac、ならび
にそれらの組み合わせが挙げられる。例示的な光活性治療剤は、色素原およびまたは色素
を含む群から選択される。
【0097】
さらに好ましくは、この治療剤は、リンゴ酸脱水素酵素、ブドウ球菌のヌクレアーゼ、
δ−V−ステロイドイソメラーゼ、酵母アルコールデヒドロゲナーゼ、α−グリセロホス
フェートデヒドロゲナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、西洋ワサビペルオキシダー
ゼ、アルカリホスファターゼ、アスパラギナーゼ、グルコースオキシダーゼ、βガラクト
シダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコース−6−リン酸デヒド
ロゲナーゼ、グルコアミラーゼおよびアセチルコリンエステラーゼを含む群から選択され
る酵素である。
【0098】
多特異的アンタゴニストは、少なくとも1つの炎症促進性エフェクターサイトカイン、
炎症促進性エフェクターケモカインまたは炎症促進性エフェクターレセプターに対して特
異的に結合し得る。多特異的アンタゴニストが結合し得る炎症促進性エフェクターサイト
カインとしては、限定はしないがMIF、HMGB−I、TNF−α(腫瘍壊死因子α)
、IL−1、IL−4、IL−5、IL−6、IL−8、IL−12、IL−15、IL
−17、およびIL−18が挙げられる。炎症促進性エフェクターケモカインの例として
は、限定はしないが、CCL19、CCL21、IL−8、MCP−1(単球走化性タン
パク質1)、RANTES、MIP−1A(マクロファージ炎症性タンパク質1A)、M
IP−1B(マクロファージ炎症性タンパク質1B)、ENA−78(上皮好中球活性化
ペプチド78)、IP−10、GROB(GROβ)およびエオタキシン(Eotaxin)が
挙げられる。炎症促進性エフェクターレセプターとしては、限定はしないが、IL−4R
、IL−6R、IL−13R、IL−15R、IL−17RおよびIL−18Rが挙げら
れる。多特異的アンタゴニストはまた、少なくとも1つの凝固因子、例えば、組織因子ま
たはトロンビンと特異的に反応し得る。このリンホカイン/サイトカインは、免疫細胞上
のそれらのレセプターを反応して活性化を果たし、そして抗体は、リンホカイン/サイト
カインを中和することによって活性化をブロックし得る。あるいは、抗体は、リンホカイ
ン/サイトカインレセプターと反応して活性化をブロックし得る。
【0099】
多特異的アンタゴニストが特異的に結合する異なる標的は、エフェクターおよび凝固因
子の同じまたは異なるクラスに由来し得る。例えば、このアンタゴニストが特異的に結合
する2つ以上の異なる標的は、同じクラスのエフェクターまたは凝固因子、例えば、2つ
以上の異なる炎症促進性エフェクターサイトカイン、2つ以上の異なる炎症促進性エフェ
クターケモカイン、2つ以上の異なる炎症促進性エフェクターレセプター、または2つ以
上の凝固因子から選択され得る。あるいは、2つ以上の異なる標的は、異なるクラスのエ
フェクターおよび凝固因子から選択されてもよい。例えば、ある標的は、先天的免疫系の
炎症促進性エフェクターであってもよく、そしてある標的は凝固因子であってもよい。ま
たは、このアンタゴニストは、2つの異なるクラスの炎症促進性エフェクター、例えば、
少なくとも1つの炎症促進性エフェクターサイトカンおよび少なくとも1つの炎症促進性
エフェクターケモカイン、少なくとも1つの炎症促進性エフェクターサイトカインおよび
少なくとも1つの炎症促進性エフェクターレセプター、または少なくとも1つの炎症促進
性エフェクターケモカインおよび少なくとも1つの炎症促進性エフェクターレセプターと
特異的に反応し得る。多特異的アンタゴニストが特異的に反応する2つの異なる標的が、
先天的免疫系の同じ炎症促進性エフェクターの2つ以上のエピトープ、または同じ凝固因
子の2つ以上のエピトープであるという場合もあり得る。
【0100】
従って、「2つの異なる標的」とは、2つの異なる抗原を指しても、または同じ抗原の
2つの異なるエピトープを指してもよい。複数の抗体は、同じ抗原に対して用いられても
よく、これによって価数が増大する。例えば、MIFまたはHMGB−Iを標的化する場
合、詳細には敗血症、いくつかのがんおよびアテローム斑の治療について、標的の2つの
同一のエピトープに対して結合する2つの抗体は、異なる抗原、例えばHLAクラスII
不変鎖抗原、例えばCD74に対する1つ以上の結合アームを有する別の抗体と融合され
得る。これらは、2つの異なる抗原に結合する二重特異的抗体または二機能性の抗体、例
えば、MIFおよびCD74に対する抗体;HMGB−IおよびCD74に対する抗体の
例である。三価特異的抗体および多特異的融合タンパク質も作成されて用いられてもよく
、これによって3つ以上の抗原またはレセプター分子を標的化する。これらは、各々の抗
原またはエピトープに対する単一の結合アームを有してもよく、または2つ以上の結合ア
ームを有してもよく、これによって多価性が得られる。
【0101】
炎症促進性エフェクターレセプターが標的化される場合、好ましい実施形態では、この
実際の標的は、炎症促進性エフェクターレセプターの細胞外ドメインであってもよい。炎
症促進性エフェクターレセプターのこの細胞外ドメインは、抗体に融合されてもよい。さ
らに詳細には、この炎症促進性エフェクターは、抗体に融合される可溶性レセプターまた
はレセプターリガンドであってもよい。別の実施形態では、この多特異的アンタゴニスト
は、炎症促進性エフェクターレセプターと反応性である少なくとも1つの分子を含んでも
よい。この分子は、この炎症促進性エフェクターレセプターの天然のアンタゴニスト、ま
たはレセプターと特異的に相互作用するこのアンタゴニストのフラグメントもしくは変異
体であってもよい。好ましい実施形態では、この天然のアンタゴニストは、天然のIL−
1レセプターアンタゴニスト、またはこのアンタゴニストのフラグメントもしくは変異体
である。
【0102】
多特異的アンタゴニストが特異的に結合する少なくとも2つの異なる標的のうちの1つ
は、免疫系の炎症促進性エフェクターでも凝固因子でもない標的であり得る。この場合、
多特異的アンタゴニストはまた、免疫系の少なくとも1つの炎症促進性エフェクター、ま
たは少なくとも1つの凝固因子と特異的に結合する。一実施形態では、この少なくとも1
つの他の標的は、適応性免疫系の抗原またはレセプターである。他の実施形態では、この
多特異的アンタゴニストの少なくとも1つの他の標的は、先天的免疫系の細胞、例えば、
顆粒球、単球、マクロファージ、樹状細胞、およびNK細胞を標的化する。他の標的とし
ては、血小板および内皮細胞が挙げられる。標的のさらに別の群は、C5a、LPS、I
FNγおよびB7からなる群である。適切な標的のさらなる群としては、CD2、CD4
、CD14、CD18、CD11a、CD20、CD22、CD23、CD25、CD2
9、CD38、CD40L、CD52、CD64、CD83、CD147、およびCD1
54が挙げられる。CDは、免疫細胞上の標的であって、抗体によってブロックされて免
疫細胞応答を予防し得る。CD83は詳細には、活性な樹状細胞のマーカーとして有用で
ある(Cao et al.,Biochem J.,Aug.23,2004(Epu
b ahead of print);Zinser et al.,J.Exp Me
d.200(3):345−51(2004))。
【0103】
特定の標的は、特別な目的のもの、例えば、MIF、HMGB−I、TNF−α、補体
因子および補体調節タンパク質、および凝固因子である。MIFは、先天的免疫系におけ
る、またはその中心的なサイトカインであり、そして炎症性応答の制御において重要な部
分を果たす。マクロファージ遊走阻止因子(MIF)として既知のタンパク質である、マ
クロファージの無作為な遊走を阻害するTリンパ球由来因子としてもともと記載されてい
たのは、ほぼ30年間にわたって、不可解なサイトカインであった。近年では、脳下垂体
前葉の生成物としてのMIFの発見、ならびに生物活性の組み換えMIFタンパク質のク
ローニングおよび発現によって、インビボにおけるその重要な生物学的役割の定義が導か
れている。MIFは、糖質コルチコイドによって刺激されているマクロファージおよびT
リンパ球から放出されるという固有の特性を有する。一旦放出されれば、MIFは、イン
ビトロにおけるLPS刺激単球による、TNF−α、IL−Iβ、IL−6およびIL−
8産生に対する糖質コルチコイドの阻害性の影響を克服し、そしてインビボにおける致死
性内毒素血症に対するステロイドの防御的効果を抑制する。MIFはまた、IL−2およ
びIFN−γ産生を回復することによって、インビトロにおけるT細胞増殖の糖質コルチ
コイド阻害に拮抗する。MIFは、糖質コルチコイドの阻害性の効果に対抗して調節する
ことができ、それによって炎症および免疫の宿主制御に重要な役割を果たすことが同定さ
れた最初のメディエーターである。MIFは詳細には、がん、病的血管新生および敗血症
または敗血性ショックを治療するのに有用である。
【0104】
核および細胞質のタンパク質に結合するDNAであるHMGB−Iは、IL−Iβ、T
NFまたはLPSによって活性化されている単球およびマクロファージによって放出され
る炎症促進性サイトカインである。そのBボックスドメインを介して、これは、DCの表
現型成熟を誘導する。これはまた、炎症促進性サイトカインIL−1α、IL−6、IL
−8、IL−12、TNF−αおよびRANTESの分泌の増大を生じる。壊死性の細胞
によって放出されるHMGB−Iは、組織または細胞の損傷のシグナルであり得、これは
、DCによって検出された場合、免疫応答を誘導およびまたは増強する。Palumbo
et al.は、HMBG1が中胚葉性血管芽細胞の遊走および増殖を誘導することを
報告する(J Cell Biol,164:441−449(2004))。
【0105】
HMGB−Iは、TNFおよびIL−Iβに関して有意に遅れた動態を示す内毒素誘発
性の致死性の後期メディエーターである。TNFおよびIL−Iβ単独のような特定の早
期炎症性メディエーターを標的化する実験的な治療剤は、臨床的には有効性は示されてい
ないが、本発明による多特異的アンタゴニストは、初期および後期の両方の炎症性メディ
エーターを標的化することによって応答を改善し得る。
【0106】
HMGB−Iを標的化する多特異的アンタゴニストは、関節炎、詳細にはコラーゲン誘
発性関節炎において特に有用である。HMGB−Iを含む多特異的アンタゴニストはまた
、敗血症および/または敗血性ショックを治療するのに有用である。Yang et a
l.,PNAS USA 101:296−301(2004);Kokkola et
al.,Arthritis Rheum,48:2052−8(2003);Czu
ra et al.,J Infect Dis,187 Suppl 2:S391−
6(2003);Treutiger et al.,J Intern Med,25
4:375−85(2003)。
【0107】
TNF−αは、全身性の炎症および急性期の応答に関与する重要なサイトカインである
。TNF−αは、刺激された単球、線維芽細胞および内皮細胞によって放出される。マク
ロファージ、T細胞およびBリンパ球、顆粒球、平滑筋細胞、好酸球、軟骨細胞、骨芽細
胞、肥満細胞、グリア細胞およびケラチノサイトはまた、刺激後にTNFαを生じる。そ
の放出は、例えば感染による損傷の経過において、いくつかの他のメディエーター、例え
ば、インターロイキン1および細菌の内毒素によって刺激される。それは、一般にはイン
ターロイキン1およびインターロイキン6と一緒に、種々の器官系に対する多数の作用を
有する。TNF−αの作用の1つは、食欲抑制であり;それによって、悪液質を治療する
ための多特異的アンタゴニストは好ましくはTNF−αを標的化する。これはまた、肝臓
の急性期反応を刺激し、C反応性タンパク質および多数の他のメディエーターの増大をも
たらす。これはまた、敗血症または敗血性ショックを治療する場合に有用な標的である。
【0108】
補体系は、細胞レセプターによってしばしば活性化される血清糖タンパク質のタンパク
質分解性切断に関与する複雑なカスケードである。「補体カスケード」は、構成的で、か
つ非特異的であるが、機能するためには活性化されなければならない。補体活性化は、一
方向性の順序の酵素的および生化学的反応を生じる。このカスケードでは、特異的な補体
タンパク質C5は、2つの高度に活性な炎症性副産物C5aおよびC5bを形成し、これ
が一緒に白血球を活性化する。これが次に、傷害性のサイトカイン、炎症性酵素および細
胞接着分子を含む、多数の他の炎症性副産物を惹起する。まとめると、これらの副産物は
、多くの炎症性疾患でみられる組織の破壊をもたらし得る。このカスケードは最終的に、
炎症性応答、食細胞走化性、およびオプソニン化および細胞溶解の誘発を生じる。
【0109】
補体系は、2つの異なる経路、古典的経路および代替経路を介して活性化され得る。ほ
とんどの補体成分は番号付けされる(例えば、C1、C2、C3など)が、いくつかは「
因子(factor)」と呼ばれる。いくつかの成分は、その機能を活性化するためには酵素的に
切断されなければならない;その他は単に組み合わさって活性である複合体を形成する。
古典的経路の活性成分としては、C1q、C1r、C1s、C2a、C2b、C3a、C
3b、C4a、およびC4bが挙げられる。代替の経路の活性な成分としては.C3a、
C3b、第B因子、第Ba因子、第Bb因子、第D因子およびプロペルジンが挙げられる
。各々の経路の最後の段階は、同じであって、膜攻撃複合体への成分のアセンブリに関与
する。膜攻撃複合体の活性成分としては、C5a、C5b、C6、C7、C8、およびC
9nが挙げられる。
【0110】
補体系の任意のこれらの成分は本発明による多特異的アンタゴニストによって標的化さ
れ得るが、特定の補体成分が好ましい。C3a、C4aおよびC5aは、肥満細胞に、ヒ
スタミンおよびセロトニンのような走化性因子を放出させ、これが食細胞、抗体および補
体などを誘引する。これらは、本発明による好ましい標的の一群を形成する。好ましい標
的の別の群としては、C3b、C4bおよびC5bが挙げられ、これが外来細胞の食作用
を増強する。標的の別の好ましい群は、これらの二つの群についての先行の成分であり、
すなわち、C3、C4およびC5、C5b、C6、C7、C8およびC9が、外来細胞の
溶解を誘導し(膜攻撃複合体)、そして標的のさらに別の好ましい群を形成する。
【0111】
補体C5aはC3aと同様に、アナフィラトキシンである。これは、炎症を媒介し、そ
して、抗菌プロテアーゼおよび酸素ラジカルの好中球の放出の誘導の走化性誘引物質であ
る。従ってC5aおよびその前任者C5は、特に好ましい標的である。C5を標的化する
ことによって、C5aが影響されるだけでなく、C5bも影響され、これが膜攻撃複合体
のアセンブリを開始する。従ってC5は、別の好ましい標的である。C3bおよびそれに
先行するC3はまた、C3bに依存する古典的および代替的な補体経路の両方として、好
ましい標的である。3つのタンパク質が、この因子、C1インヒビター、プロテインHお
よび第I因子のレベルに影響し、そしてこれらはまた、本発明による好ましい標的である
。補体調節タンパク質、例えば、CD46、CD55およびCD59は、多特異的アンタ
ゴニストが結合する標的であり得る。
【0112】
凝固因子はまた、本発明による好ましい標的、詳細には組織因子(TF)およびトロン
ビンである。TFはまた、組織トロンボプラスチン、CD142、第III凝固因子、ま
たは第III因子としても既知である。TFは膜内在性レセプター、糖タンパク質および
サイトカインレセプタースーパーファミリーのメンバーである。TFのリガンド結合細胞
外ドメインは、2型サイトカインレセプターのメンバーとしてTFの分類と一致する特徴
を有する2つの構造的モジュールからなる。TFは血液凝固プロテアーゼカスケードに関
与して、TFの細胞外ドメインと循環中の凝固因子、セリンプロテアーゼ第VII因子ま
たは第VIIa因子との間で高親和性の複合体を形成することによって、外因性および内
因性の両方の血液凝固カスケードを開始する。次いで、これらの酵素的に活性な複合体は
、第IX因子および第X因子を活性化して、トロンビン生成および血餅形成をもたらす。
【0113】
TFは、単球、マクロファージおよび血管内皮細胞を含む種々の細胞タイプによって発
現され、そしてIL−1、TNF−αまたは細菌のリポポリサッカライドによって誘導さ
れる。プロテインキナーゼCは、内皮細胞TF発現のサイトカイン活性化に関与する。エ
ンドトキシンおよびサイトカインによるTFの誘導は、グラム陰性の敗血症を有する患者
でみられる、播種性血管内凝固症候群の開始の重要な機構である。TFはまた、炎症、が
ん、脳機能、免疫応答および腫瘍関連血管新生を含む種々の非止血性機能に関与すると考
えられる。従って、TFを標的化する多特異的アンタゴニストは、血液凝固障害の治療に
おいてだけでなく、敗血症、がん、病的血管新生、ならびに本発明による他の免疫および
炎症性の機能不全疾患の治療においても有用である。凝固経路とサイトカインネットワー
クとの間の複雑な相互作用は、いくつかのサイトカインが種々の細胞におけるTF発現に
影響する能力によって、そしてレセプターに対するリガンド結合の影響によって示唆され
る。リガンド結合(第VIIa因子)は、細胞内カルシウムシグナルを与えることが報告
され、これによってTFが真のレセプターであることが示される。
【0114】
トロンビンは、凝固因子II(プロトロンビン)の活性化型である。これは、フィブリ
ノーゲンをフィブリンに変換する。トロンビンはマクロファージの強力な走化性因子であ
って、それらのサイトカイン産生およびアラキドン酸代謝を変更し得る。これは敗血症を
伴う血液凝固障害では特に重要である。多くの研究によって、敗血症患者における、また
は動物モデルでのLPS投与後のいずれかにおける凝固系の活性化が実証されている。3
0年を超える研究にもかかわらず、LPS誘発性肝毒性の機構は、十分に理解されていな
いままである。それらは細胞性メディエーターと体液のメディエーターとの間の複雑かつ
連続的な相互作用に関与することがいまや明らかである。同じ期間に、グラム陰性の全身
性の敗血症およびその続発症は、大きな健康上の懸念になり、LPSまたは種々の炎症性
メディエーターに対するモノクローナル抗体を用いる試みは、本明細書においていずれか
に注記されているとおり、治療上失敗しか生じていない。トロンビンおよび少なくとも1
つの他の標的を標的化する本発明による多特異的アンタゴニストは、敗血症治療における
臨床的な失敗に取り組む。
【0115】
他の実施形態では、多特異的アンタゴニストは、MHCクラスI、MHCクラスIIま
たはアクセサリー分子、例えば、CD40、CD54、CD80またはCD86に結合す
る。この多特異的アンタゴニストはまた、T細胞活性化サイトカインに、またはサイトカ
インメディエーター、例えば、NF−κBに結合し得る。
【0116】
特定の実施形態では、少なくとも2つの異なる標的のうち1つが、がん細胞レセプター
またはがん関連抗原であってもよく、詳細には、B細胞系列の抗原(CD19、CD20
、CD21、CD22、CD23、など)、VEGFR、EGFR、がん胎児性抗原(C
EA)、胎盤成長因子(PLGF)、テナスシン(tenascin)、HER−2/neu、EG
P−1、EGP−2、CD25、CD30、CD33、CD38、CD40、CD45、
CD52、CD74、CD80、CD138、NCA66、CEACAM6(がん胎児性
抗原関連細胞接着分子6)、MUCl、MUC2、MUC3、MUC4、MUC16、I
L−6、α−フェトプロテイン(AFP)、A3、CA125、結腸特異的抗原−p(C
SAp)、葉酸レセプター、HLA−DR、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG)、Ia
、EL−2、インスリン様成長因子(ILGF)およびILGFレセプター、KS−1、
Le(y)、MAGE、壊死抗原、PAM−4、前立腺酸性フォスファターゼ(PAP)
、Pr1、前立腺特異的抗原(PSA)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、S100、
T101、TAC、TAG72、TRAILレセプター、および炭酸脱水酵素IXからな
る群より選択されるものである。
【0117】
敗血症および免疫機能不全および他の免疫障害に関連する標的としては、MIF、IL
−1、IL−6、IL−8、CD74、CD83、およびC5aRが挙げられる。抗体お
よびC5aRに対するインヒビターは、敗血症を有するげっ歯類(Huber−Lang
et al.,FASEB J 2002;16:1567−1574;Riedem
ann et al.,J Clin Invest 2002;110:101−10
8)ならびにサルでの敗血性ショックおよび成人呼吸窮迫症候群(Hangen et
al.,J Surg Res 1989;46:195−199;Stevens e
t al.,J Clin Invest 1986;77:1812−1816)にお
いて生存を改善することが見出されている。従って、敗血症については、少なくとも2つ
の異なる標的のうちの1つが好ましくは、LPS/C5aのような、感染に関連している
標的である。他の好ましい標的としては、その各々が敗血症または敗血性ショックに関連
するHMGB−I、TF、CD14、VEGF、およびIL−6が挙げられる。好ましい
多特異的アンタゴニストは、MIF/TF、およびHMGB−I/TFのようなHMGB
−I、TFおよびMIF由来の2つ以上の標的を標的化するアンタゴニストである。
【0118】
さらに他の実施形態では、少なくとも2つの異なる標的のうちの1つが、MIFのよう
な、移植片対宿主病または移植片拒絶に関連する標的であってもよい(Lo et al
.,Bone Marrow Transplant,30(6):375−80(20
02))。この少なくとも2つの異なる標的のうちの1つはまた、IL−8のように急性
呼吸窮迫症候群と(Bouros et al.,PMC Pulm Med,4(1)
:6(2004)、MIFのようにアテローム性動脈硬化症または再狭窄と(Chen
et al.,Arterioscler Thromb Vasc Biol,24(
4):709−14(2004)、IL−18のように喘息と(Hata et al.
,Int Immunol,Oct.11,2004、印刷前にEpub(電子公開))
、TNFαのように肉芽腫症と(Ulbricht et al.,Arthritis
Rheum,50(8):2717−8(2004)、カルバミル化EPO(エリスロ
ポエチン)のように神経障害と(Leist et al.,Science 305(
5681):164−5(2004)、またはIL−6およびTNF−αのように悪液質
と、関連する標的であってもよい。
【0119】
他の標的としては、C5a、LPS、IFN−γ、B7;CD2、CD4、CD14、
CD18、CD11a、CD11b、CD11c、CD14、CD18、CD27、CD
29、CD38、CD40L、CD52、CD64、CD83、CD147、CD154
が挙げられる。LPSを含む、特定の微生物抗原による単核球の活性化は、CD18、C
D11b、またはCD11cに対する抗体によってある程度まで阻害され得、これによっ
てβ2−インテグリンにかかわる(Cuzzola et al.,J Immunol
2000;164:5871−5876;Medvedev et al、J Imm
unol 1998;160:4535−4542)。CD83は、中程度および大きい
サイズの動脈、主に大動脈弓の頭蓋外枝または大動脈自体に影響する全身性の脈管炎であ
る、巨細胞性動脈炎(GCA)においてある役割を果たし、これが血管狭窄症および引き
続く組織虚血、ならびに重篤な合併症である失明、脳卒中および大動脈弓症候群を生じる
ことが見出されている(Weyand and Goronzy、N Engl J M
ed 2003;349:160−169;Hunder and Valente、I
n:Inflammatory Diseases of Blood Vessels
.G.S.Hoffman and C.M.Weyand、eds、Marcel D
ekker、New York、2002;255−265)。CD83に対する抗体は
、ヒトGCAのSCIDマウスモデルにおける脈管炎を抑止することが見出され(Ma−
Krupa et al.,J Exp Med 2004;199:173−183)
、これによって、活性化された場合にCD83を発現する樹状細胞が、GCAにおける重
要な抗原処理細胞であるということがこれらの研究者らに示唆された。これらの研究では
、彼らは、マウス抗CD83モノクローナル抗体(Mab)(Research Dia
gnosticsのIgGIクローンHB15e)を用いた。TNFファミリーのメンバ
ーであるCD154は、CD4−陽性Tリンパ球の表面上で発現され、そしてCD154
に対するヒト化モノクローナル抗体は、活発な全身性エリテマトーデス(SLE)を有す
る患者において有意な臨床的利点を生じたということが報告されている(Grammar
et al、J Clin Invest 2003;112:1506−1520)
。この抗体は他の自己免疫疾患で有用であり得ることも示唆される(Kelsoe,J
Clin Invest 2003;112:1480−1482)。実際に、この抗体
はまた、難治性の免疫性血小板減少症を有する患者において有効であることも報告された
(Kuwana et al.,Blood 2004;103:1229−1236)

【0120】
関節リウマチでは、組み換えインターロイキン−1レセプターアンタゴニスト、IL−
1Raまたはアナキンラ(anakinra)(Kineret(登録商標))が、活性
を示す(Cohen et al.,Ann Rheum Dis 2004;63:1
062−8;Cohen,Rheum Dis Clin North Am 2004
;30:365−80)。メトトレキサートでの同時の治療が必要なこれらの患者の治療
における改善は、抗炎症促進性エフェクターサイトカインまたは抗炎症促進性エフェクタ
ーケモカイン(上記に列挙されるような)のうちの1つ以上とアナキンラを組み合わせる
ことである。実際、関節リウマチのための抗体治療の概説において、Taylor(Cu
rr Opin Pharmacol 2003;3:323−328)は、TNFに加
えて、IL−1、IL−6、IL−8、IL−15、IL−17およびIL−18などの
サイトカインに対する他の抗体が有用であることを示唆している。
【0121】
いくつかのさらに好ましい標的組み合わせとしては以下が挙げられる。
【表1】

上記の各々において、多特異的とは、さらなる標的、例えば、第三の標的およびさらな
る標的を含み得る。これは、好ましい組み合わせの例の列挙であるが、網羅的であること
は意図しない。
【0122】
多特異的アンタゴニストは、少なくとも2つの別個の抗体および/またはレセプターま
たは異なる標的に結合するそれらのリガンドを含む混合物であってもよいが、1つの好ま
しい実施形態では、このアンタゴニストは、少なくとも二重特異的である抗体であり、こ
の抗体の異なるアームは、少なくとも2つの異なる標的と特異的に反応し、この標的は、
先天的免疫系の炎症促進因子エフェクター、凝固因子、補体因子および補体調節タンパク
質、ならびに炎症性または免疫調節不全障害と特異的に関連する標的、病的血管新生もし
くはがんと特異的に関連する標的、または感染性疾患と特異的に関連する標的からなる群
より選択される。
【0123】
多特異的アンタゴニストが少なくとも二重特異性である抗体である場合、特定の利点が
存在し、これには血液からの急速なクリアランスが挙げられる。例えば、二重特異性抗体
は、レポーターに対して、またはその標的分子、例えば、LPS、IL−1、IL−10
、IL−6、MIF、HMGBI、TNF、IFN、組織因子、トロンビン、CD14、
CD27、およびCD134に結合し得る。これらの多くは、レセプターとしておよび可
溶性型としての両方で、血液中に存在する。二重特異的な抗体による結合は、血液からの
急速なクリアランスを生じ、次いで、細胞、詳細にはリソソームによる輸送および分解の
ために、マクロファージのような別の細胞に対して融合タンパク質の第二のアームによる
標的化を生じる。これは、第二の標的化アームがマクロファージおよび樹状細胞によって
発現される、CD74のようなインターナライズする抗原に対する場合に特に有効である
。これは、Hansenの発明米国特許第6,458,933号と一致するが、そこでは
、炎症性サイトカインおよび他の免疫調節分子および免疫調節不全疾患のレセプター、な
らびにこれらのがんの免疫療法のためのがん抗原に集中している。
【0124】
多特異的アンタゴニストは、単独の活性成分を含んでもよいし、または複数の活性成分
を含んでもよい。例えば、多特異的アンタゴニストが複数の別個の抗体を含む場合、これ
らは、複数の活性な成分を構成する。あるいは、多特異的アンタゴニストは、単独の活性
成分、例えば、多特異的抗体であってもよく、これは可溶性レセプターに融合された少な
くとも2つの異なる標的または単一特異的もしくは多特異的な抗体と特異的に反応する。
多特異的アンタゴニストはまた、下に記載されるような他の二次的な治療モダリティとと
もにパッケージされてもよい。活性成分は、1つ以上の不活性成分、例えば、担体または
希釈剤と、その成分が組み合わされる方式を説明する説明書とともにパッケージされても
よい。全ての成分は、キット成分の組み合わせおよび投与に関する説明書とともにキット
形式で一緒に都合よくパッケージされる。この成分および物質はまた、別々にパッケージ
されて供給されてもよい。
【0125】
がんの治療のための好ましい多特異的アンタゴニストとしては、CD55に、そして上
記のがん抗原のいずれかに対する抗体、CD46にそして上記のがん抗原のいずれかに対
する抗体、CD59にそして上記のがん抗原のいずれかに対する抗体、MIFにそして上
記のがん抗原のいずれかに対する抗体、NF−κBにそして上記のがん抗原のいずれかに
対する抗体、ならびにIL−6にそしてIL−6以外の上記のがん抗原のいずれかに対す
る抗体が挙げられる。がんを治療するためのこれらの多特異的アンタゴニストは、一緒に
または別々に与えられる、抗体の組み合わせまたは融合タンパク質であってもよい。
【0126】
多特異的アンタゴニストは、1つ以上の二次治療剤と組み合わせて用いられ得る。この
二次治療剤は、先天的免疫系の成分に影響するものであってもよい。あるいは、これは、
適応性免疫系の成分に影響し得る。この二次治療剤はまた、細胞傷害性薬物のような、凝
固、がん、または自己免疫疾患に影響する成分であってもよい。
【0127】
診断または治療物質を有する多特異的アンタゴニストは、薬学的に許容可能な注射ビヒ
クル、好ましくはリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)における、生理学的なpHおよび濃
度でのヒトまたは哺乳動物の治療および診断用途のためのキットとして提供され得る。調
製は好ましくは、特にヒトにおける使用を意図する場合、無菌である。このようなキット
の選択的な構成要素としては、安定化剤、緩衝液、標識試薬、放射性同位体、常磁性化合
物、クリアランス向上のための第二の抗体、および従来のシリンジ、カラム、バイアルな
どが挙げられる。
【0128】
モノクローナル抗体、ヒト化抗体、霊長類抗体およびヒト抗体の生成
入手可能な抗原に対するげっ歯類モノクローナル抗体は、当業者に既知の方法によって
得ることができる。一般には、例えば、Kohler and Milstein,Na
ture 256:495(1975)、ならびにColigan et al.(ed
s.),CURRENT PROTOCOLS IN IMMUNOLOGY,VOL.
1,2.5.1−2.6.7(John Wiley & Sons 1991)[「C
oligan」]を参照のこと。要するに、モノクローナル抗体は、抗原を含む組成物を
マウスに注射するステップと、血清サンプルを取り出して抗体産生の存在を検証するステ
ップと、脾臓を取り出してBリンパ球を得るステップと、このBリンパ球を骨髄細胞と融
合してハイブリドーマを生成するステップと、このハイブリドーマをクローニングするス
テップと、注射された抗原に対する抗体を生成する陽性クローンを選択するステップと、
抗原に対する抗体を生じるクローンを培養するステップと、ハイブリドーマ培養物から抗
体を単離するステップとによって得ることができる。
【0129】
モノクローナル抗体は、種々の周知の技術によって、ハイブリドーマ培養物から単離お
よび精製され得る。このような単離技術としては、Protein−A Sepharo
seによるアフィニティークロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィーおよびイ
オン交換クロマトグラフィーが挙げられる。例えば、Coligan at pages
2.7.1−2.7.12 and pages 2.9.1− 2.9.3.を参照
のこと。また、Baines et al.,「Purification of Im
munoglobulin G(IgG)」METHODS IN MOLECULAR
BIOLOGY,VOL.10,pages 79−104(The Humana
Press,Inc.1992)も参照のこと。
【0130】
抗体の産生のための十分特徴付けられた抗原の適切な量は、標準的な技術を用いて得る
ことができる。例としては、CD22は、Tedder et al.の米国特許第5,
484,892号(1996)に記載される沈殿された抗体を用いてBリンパ球タンパク
質から免疫沈降され得る。あるいは、抗原タンパク質は、目的の抗原を過剰産生する、ト
ランスフェクトされた培養された細胞から得ることができる。これらのタンパク質の各々
をコードするDNA分子を含む発現ベクターは、公開されたヌクレオチド配列を用いて構
築され得る。例えば、Wilson et al.,J.Exp.Med.173:13
7(1991);Wilson et al.,J.Immunol.150:5013
(1993)を参照のこと。目的の抗原をコードするDNA分子は、長いオリゴヌクレオ
チドを交互にプライミングすることを用いてDNA分子を合成することによって得ること
ができる。例えば、Ausubel et al.,(eds.),CURRENT P
ROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY,pages 8.2.
8 to 8.2.13(1990)[「Ausubel」]を参照のこと。また、Wo
snick et al.,Gene 60:115(1987);およびAusube
l et al(eds.),SHORT PROTOCOLS IN MOLECUL
AR BIOLOGY,3rd Edition,pages8−8 to 8−9(J
ohn Wiley & Sons,Inc.1995)も参照のこと。ポリメラーゼ連
鎖反応を用いる確立された技術によって、1.8キロダルトンの長さ程度の大きさの遺伝
子を合成する能力が得られる。Adang et al.,Plant Molec.B
iol.21:1131(1993);Bambot et al.,PCR Meth
ods and Applications 2:266(1993);Dillon
et al.,「Use of the Polymerase Chain Reac
tion for the Rapid Construction of Synth
etic Genes」METHODS IN MOLECULAR BIOLOGY,
Vol.15:PCR PROTOCOLS:CURRENT METHODS AND
APPLICATIONS,White(ed.)、pages 263−268(H
umana Press,Inc.1993)。
【0131】
別の実施形態では、本発明の抗体は、ヒト抗体の可変領域がげっ歯類抗体の可変領域に
よって置き換えられているキメラ抗体である。キメラ抗体の利点としては、免疫原性の低
下およびインビボ安定性の増大が挙げられる。
【0132】
キメラ抗体を構築するための技術は、当業者に周知である。例えば、Leung et
al.,Hybridoma 13:469(1994)は、LL2モノクローナル抗
体のVκおよびVHドメインをコードするDNA配列を、それぞれヒトκおよびIgG1
常領域ドメインと組み合わせることによってLL2キメラを生成した方法を記載している
。この刊行物はまた、LL2の軽鎖および重鎖の可変領域、それぞれ、VκおよびVH
ヌクレオチド配列も提供する。
【0133】
別の実施形態では、本発明の抗体は、人間ではない霊長類の抗体である。ヒヒにおいて
治療上有用な抗体を惹起させるための一般的技術は、例えば、Goldenberg t
e alの国際特許公開No.WO91/11465(1991)に、そしてLosma
n et al.のInt J Cancer 46:310(1990)に見出され得
る。
【0134】
さらに別の実施形態では、本発明の抗体は、「ヒト化」モノクローナル抗体である。す
なわち、マウス相補性決定領域(CDR)は、マウス免疫グロブリンの重鎖および軽鎖の
可変鎖からヒト可変ドメインへ移され、その後に、マウスの対応物のフレームワーク領域
におけるいくつかのヒト残基の置換が続く。本発明によるヒト化モノクローナル抗体は、
治療法における使用に適切である。マウス免疫グロブリン可変ドメインをクローニングす
るための一般的技術は、例えば、Orlandi et al.,Proc Nat’l
Acad Sci USA 86:3833(1989)の刊行物によって記載される
。ヒト化モノクローナル抗体を生成するための技術は、例えば、Jones et al
.,Nature 321:522(1986),Riechmann et al.,
Nature 332:323(1988)、Verhoeyen et al.,Sc
ience 239:1534(1988)、Carter et al.,Proc.
Nat’l Acad.Sci.USA 89:4285(1992),Sandhu,
Crit Rev Biotech.12:437(1992)、およびSinger
et al.,J Immun 150:2844(1993)によって記載される。L
eung et al.,Mol Immunol 32:1413(1995)の刊行
物は、ヒト化LL2抗体の構築物を記載する。
【0135】
別の実施形態では、本発明の抗体は、ヒトモノクローナル抗体である。このような抗体
は、抗原のチャレンジに応答して特異的なヒト抗体を生成するように「設計されている(e
ngineered)」トランスジェニックマウスから得られる。この技術では、ヒトの重鎖および
軽鎖の遺伝子座のエレメントが、内因性の重鎖および軽鎖の遺伝子座の標的化された分裂
を含む胚性幹細胞株由来のマウスの株に導入される。このトランスジェニックマウスは、
ヒト抗原に特異的であるヒト抗体を合成し得、このマウスを用いて、ヒト抗体分泌ハイブ
リドーマを生成し得る。トランスジェニックマウスからヒト抗体を得るための方法は、G
reen et al.,Nature Genet 7:13(1994)、Lonb
erg et al.,Nature 368:856(1994),およびTaylo
r et al.,Int Immun 6:579(1994)によって記載されてい
る。
【0136】
完全なヒト抗体はまた、その全てが当分野で既知である遺伝的または染色体トランスフ
ェクション法、そしてファージディスプレイ技術によって構築され得る。例えば、免疫さ
れていないドナー由来の免疫グロブリン可変ドメイン遺伝子レパートリーからの、インビ
トロにおける、ヒト抗体およびそのフラグメントの産生については、McCaffert
y et al.,Nature 348:552−553(1990)を参照のこと。
この技術では、抗体可変ドメイン遺伝子は、糸状バクテリオファージのメジャーまたはマ
イナーのいずれかのコートタンパク質遺伝子にインフレームでクローニングされ、ファー
ジ粒子の表面上の機能的な抗体フラグメントとして提示される。糸状粒子は、ファージゲ
ノムの一本鎖DNAコピーを含むので、抗体の機能的特性に基づく選択によってまた、そ
れらの特性を示す抗体をコードする遺伝子の選択が生じる。この方法では、このファージ
は、B細胞の特性のいくつかを模倣する。ファージディスプレイは、種々の形式で行うこ
とが可能で、それらの概説については、例えば、Johnson and Chiswe
ll,Current Opinion in Structural Biology
,3:5564−571(1993)を参照のこと。
【0137】
異種間の抗体が本発明において用いられ得るが、宿主から免疫応答を誘導する抗体自体
の確率を減らすために同種間の抗体を用いることが好ましい。本発明の特定の実施形態で
は、ヒト抗体が用いられる。ヒト被験体における使用のために完全ヒト抗体を作成するた
めの方法としては、その全体が引用することにより本明細書の一部をなすものとする、米
国特許第5,969,108号に記載のような、大きいヒト抗体ライブラリーから抗原特
異的な抗体を選択するためのファージディスプレイ技術の使用が挙げられる。計画的なヒ
ト抗体ライブラリーからヒト抗体を作成するための他のファージディスプレイ方法は、そ
の全体が引用することにより本明細書の一部をなすものとする、米国特許第6,300,
064号に記載される。また以下も参照のこと:Marks,et al「By−Pas
sing Immunization:Building High Affinity
Human Antibodies by Chain Shuffling」(Bi
o/Technology,vol.10:p.779−783.(1992)),Ho
ogenboom,et al.「Building Antibodies From
Their Genes.」(Rev Fr Transfus Hemobiol,
vol.36:p.19−47(1993));Griffiths,et al「Is
olation of High Affinity Human Antibodie
s Directly from Large Synthetic Repertoi
res」、EMBO J,vol.13:p.3245−3260(1994));Wi
nter and Milstein「Man−Made Antibodies.」(
Nature,vol.349:p.293−299(1991));De Kruif
,et al.,「Selection and Application of Hu
man Single Chain Fv Antibody Fragments f
rom a Semi−synthetic Phage Antibody Disp
lay Library with Designed CDR3 Regions」,
(J Mol Biol,vol.248,pp.97−105(1995))ならびに
Barbas et al.,「Semisynthetic combinatori
al antibody libraries:A chemical solutio
n to the diversity problem」,(Proc Natl A
cad Sd USA,vol.89,pp.4457−4461(1992))。完全
ヒト抗体を作成するための他の方法としては、ヒト抗体レパートリーの大きい部分をコー
ドするトランスジェニックマウスを用いる、いわゆる「ゼノマウス(xenomouse)」技術の
使用が挙げられる。これらの方法は、例えば、Abgenix(Fremont CA)
およびMedarex(Princeton NJ)によって商業的に提供される。また
、米国特許第6,075,181号;Lonberg,「Transgenic App
roaches to Human Monoclonal Antibodies.」
Handbook of Experimental Pharmacology 11
3(1994):49−101;Lonberg et al.,「Human Ant
ibodies from Transgenic Mice.」Internal R
eview of Immunology 13(1995):65−93を参照のこと

【0138】
多特異的抗体の産生
本発明による多特異的アンタゴニストは、多特異的抗体または抗体フラグメント、特に
二重特異的抗体(bsAb)または二重特異的抗体フラグメント(bsFab)であって
もよい。これらの多特異的アンタゴニストは、少なくとも2つの異なる標的に特異的に結
合するアームを有し、この標的は、先天的免疫系の炎症促進性エフェクター、凝固因子、
および炎症性もしくは免疫機能不全障害と特異的に関連する標的、または病的血管新生と
特異的に関連する標的からなる群より選択され、この後者の標的は、免疫系の炎症促進性
エフェクターでも、凝固因子でも、またはがん細胞レセプターでも、またはがん関連抗原
でもない。
【0139】
本発明は、プレターゲティングストラテジーを使用し得、ここで多特異的抗体またはフ
ラグメントの1つのアームが標的化可能なコンジュゲートに結合する。アビジンまたはス
トレプトアビジンおよびビオチンに基づくプレターゲティングストラテジーは、「Det
ection and Therapy of Lesions with Bioti
n/Avidin Conjugates.」と題されたGoldenbergの米国特
許第5,525,338号に記載されるように用いられ得る。アビジン/ストレプトアビ
ジン系は、高度に多用途であり、そしていくつかの構成で用いられている。抗体は、第一
の標的化物質とともに用いられるストレプトアビジンまたはビオチンとカップリングされ
得る。この後に、それぞれ、ビオチンとまたはアビジン/ストレプトアビジンとコンジュ
ゲートされている治療物質が時には続く。別の構成は、ビオチンコンジュゲートされた抗
体を最初に標的化する3ステップアプローチに依存し、その後にストレプトアビジン/ア
ビジンによる架橋が続き、次いでビオチンコンジュゲートされた治療剤が与えられる。抗
体および他の種に対するビオチンおよびアビジン/ストレプトアビジンコンジュゲートの
説明は、当分野において周知である。例えば、Griffiths et al.,米国
特許第5,846,741号;Griffiths et al.,米国特許第5,96
5,115号、およびGriffiths et al.,米国特許第6,120,76
8号を参照のこと。アビジン−ビオチン系は、極めて高い親和性を有し、臨床的な経験に
よって、約20〜30%の患者がアビジンに対して抗体応答をマウントし、そして最大7
0%までがストレプトアビジンに対する抗体を生成することが示されている。従って、低
分子量ハプテンがより好ましい。
【0140】
本実施形態では、多特異的アンタゴニストは、治療剤がコンジュゲートされるかまたは
融合される低分子量ハプテンに特異的なアームを含む多特異的抗体である。この場合、抗
体は細胞をプレターゲティングし、付着した治療剤を有する低分子量ハプテンは、抗体が
標的に結合された後に投与される。認識可能なハプテンの例としては、限定はしないが、
キレート剤、例えば、DTPA、DOTA、フルオレセイン・イソチオシアネート、ビタ
ミンB12および特定の抗体が惹起され得る他の部分が挙げられる。引き続いて注射され
るハプテンは、異なる診断剤または治療剤を担持し得る。各々が同じハプテンを認識する
アームを含む、2つ以上の多特異的抗体も用いられてもよい。多特異的抗体の使用および
多特異的抗体の組み合わせは、腫瘍および他の疾患組織における抗原不均一性を克服する
のに特に有効である。
【0141】
疾患標的に対する治療剤の局在化のためのハプテン−治療物質コンジュゲートの使用は
、いくつかの異なる利点を有する。同じハプテンがいくつかの異なる治療物質に結合され
てもよい。さらに、1つの治療物質に対する免疫応答が見られなければならず、これは、
ベクターを標的化する開発された非免疫原性抗体がハプテン−治療物質に基づく系におい
て用いられる能力を破壊しない。これによってまた、任意の標的化抗体および治療剤の組
み合わせとともに用いられ得る一般的な標的系の使用が可能になる。ハプテン認識系を用
いることにおいて、設計する化学者は、ハプテンがどのように治療物質に結合されるかを
制御し、そして特定の細胞外もしくは細胞内酵素に対する不安定性、またはわずかに低い
pHのような特定のセットの状態に対する不安定性のような特徴を組み込むことができる

【0142】
担体部分は、先天的免疫系の炎症促進性エフェクター、凝固因子、あるいは先天的免疫
系の炎症促進性エフェクターでも凝固因子でもない炎症性もしくは免疫機能不全障害と特
異的に関連する標的、または病的血管新生と特異的に関連する標的に対してコンジュゲー
トされる。標的可能なコンジュゲートに特異的に結合する少なくとも1つのアームを有す
る多特異的な抗体およびフラグメントの使用によって、各々の適用について、新規な多特
異的抗体を生じることなく、種々の治療適用を行うことが可能になる。
【0143】
MAbは、当業者に既知のmAbを作製する標準的な方法によって任意のハプテンまた
は薬物に対して惹起され得る。例えば、免疫原性刺激因子またはアジュバント、例えば、
キーホール・リンペット・ヘモシアニンに対して、HSG(ヒスタミン−スクシニル−グ
リシン)のようなハプテンを結合して、免疫応答性の動物にこのコンジュゲートを注射す
ることが可能である。複数の注射がしばしば使用される。このようなアプローチは、HS
Gのような該当のハプテンに対するわずかに異なる特異性を有するいくつかの異なる抗体
をもたらし得ることが理解されるべきである。MAbは、HSG構造の異なる小部分、ま
たは異なる構成を認識し得る。単にHSG分子自体よりもわずかに多く認識するMAb、
例えば、リジンのεアミノ基に結合された場合にのみHSG部分を認識するMAbも得る
ことができるが、必要に応じて、HSGは、後者の免疫原性タンパク質上のεリジルアミ
ノ基に対する結合によってKLH(例えば)に最初に結合された。排他的であることは望
まないが、これらの一般的な手順および結果は、当分野で周知である。次いで、これらの
免疫された動物から抗体を産生する脾臓細胞の単離、そして抗ハプテン抗体を分泌するハ
イブリドーマを生成するためのそれらの骨髄細胞株への引き続く融合については周知であ
る。Kohler G.およびMilstein C、Eur J Immunol 6
:511−9(1976);Kohler G.et al.,Eur J Immun
ol 6:292−5(1976);ならびにKohler G.and Milste
in C,Nature 256:495−7(1975)を参照のこと。
【0144】
多特異的標的タンパク質は、周知の反応によって、種々の特異性を有する抗体から化学
的に調製され得る。代表的には、1つのMAbは、架橋剤との反応によって活性化され、
後に、第一のMAbのリジン、還元されたシステインまたは酸化された炭水化物残基で反
応するように選択される。精製後、活性化された第一のMAbは、第二のMAbと混合さ
れ、次いでこれが元の架橋剤の第二の官能基と;最も顕著には、第二のMAbのリジン、
還元されたシステインまたは酸化された炭水化物残基を介して、特異的に反応する。多特
異的な標的タンパク質はまた、クアドローマ技術によって体細胞性に調製され得る。この
クアドローマ技術は、二重特異的抗体の両方のアームを発現する細胞株が生成されて、培
養物中で増殖されて、bsMAbを分泌する技術である。最終的にbsMAbはまた、分
子生物学の現代の技術によって好都合に生成され得る。例えば、Colman,A.,B
iochem Soc Symp 63:141−147(1998);米国特許第5,
827,690号;および公開米国出願第20020006379号を参照のこと。
【0145】
本発明は、抗体および抗体フラグメントを包含する。抗体は一般に、二価であるか、ま
たは頻度は低いが多価であり、そしてこの二価性が、細胞表面に対する抗体の付着の強度
を増強する。しかし、この抗体の二価性は時には、標的細胞が抗原性調節を受けるように
誘導し、それによって細胞が細胞傷害性物質、エフェクター細胞および細胞−抗体相互作
用に関与する補体を回避し得る方法が得られる。このような改変を防止する手段としては
、単価抗体または抗体フラグメントが用いられ得る。単価抗体は完全な、機能的な免疫グ
ロブリン分子であって、ここでは軽鎖の一方のみが抗原に結合する。このような抗体を調
製する一つの方法は、米国特許第4,841,025に開示される。
【0146】
単価性は、抗体フラグメントを用いることによって達成され得る。これらの実施形態に
おいて有用な例示的な単価抗体フラグメントは、Fv、Fab、Fab’などである。単
価抗体フラグメントであって、代表的には、約25kD(Fv)〜約50kD(Fab,
Fab’)に及ぶ分子量を示すフラグメントは、抗体全体よりも小さく、従って、一般に
は、より大きく標的部位に浸透し得る。さらに、単価結合は、標的表面で結合する担体の
制限がより少なくなり(二価抗体の使用の間に生じ、これが強力に結合して、標的細胞部
位に結合して、それによって標的組織の副層にさらに出て行くために障壁を作成する)、
それによって、標的の均質性が改善される。さらに、分子が小さいほど、レシピエントか
らより急速に排出され、それによって、投与された低分子コンジュゲートの免疫原性が減
少する。抗体全体のコンジュゲートと比較して標的に局在する単価フラグメントコンジュ
ゲートの投与された用量の割合はより低い。しかし、減少された免疫原性によって、単価
フラグメントコンジュゲートで投与される最初の用量は大きくなり得る。さらに、単価抗
体フラグメントは一般には、標的細胞上に二価抗体または抗体全体がある限り、標的細胞
上には存在しない。
【0147】
この抗体フラグメントは、抗体の抗原結合部分、例えば、F(ab’)2、F(ab)
2、Fab’、Fabなどである。この抗体フラグメントは、インタクトな抗体によって
認識される同じ抗原に結合する。例えば、抗CD22モノクローナル抗体フラグメントは
、CD22のエピトープに結合する。本発明のbsAbとしては、限定はしないが、Ig
G×IgG、IgG×F(ab’)2、IgG×Fab’、IgG×scFv、F(ab
’)2×F(ab’)2、Fab’×F(ab’)2、Fab’×Fab’、Fab’×s
cFvおよびscFv×scFv bsMabが挙げられる。また、scFv×IgG×
scFvおよびFab’×IgG×Fab’、scFv×F(ab’)2×scFvおよ
びFab’×F(ab’)2×Fab’のような種も含まれる。
【0148】
上で注記されたとおり、「抗体フラグメント」という用語はまた、特定の抗原に結合し
て複合体を形成することによって抗体のように機能する任意の合成または遺伝子操作され
たタンパク質を含む。例えば、抗体フラグメントとしては、単離されたフラグメント、重
鎖および軽鎖の可変領域からなる、「Fv」フラグメント、軽鎖および重鎖の可変領域が
ペプチドリンカーによって接続される組み換え単鎖ポリペプチド分子(「sFvタンパク
質」)、および超可変領域を模倣するアミノ酸残基からなる最小認識単位が挙げられる。
【0149】
融合タンパク質の生成
多特異的アンタゴニストを生成するための別の方法は、2つ以上の異なる単鎖抗体また
は必要な多特異性を有する抗体フラグメントセグメントを連結する組み換え融合タンパク
質を操作することである。例えば、Coloma et al.,Nature Bio
tech 15:159−163,1997を参照のこと。例えば、種々の二重特異性融
合タンパク質は、分子操作を用いて生成され得る。1つの形態では、二重特異性融合タン
パク質は、単価であって、これは、例えば、一つの抗原について単一の結合部位を有する
scFv、および第二の抗原について単一の結合部位を有するFabフラグメントからな
る。別の形態では、この二重特異性融合タンパク質は二価であって、これは例えば、1つ
の抗原について2つの結合部位を有するIgGおよび第二の抗原について2つの結合部位
を有する2つのscFvからなる。
【0150】
機能的な二重特異性単鎖抗体(bscAb)はまた、二重特異性抗体とも呼ばれ、組み
換え方法を用いて哺乳動物細胞において生成され得る。例えば、Mack et al.
,Proc Natl Acad Sci,92:7021−7025,1995を参照
のこと。例えば、bscAbは、組み換え方法を用いて、グリシン−セリンリンカーを介
して2つの単鎖Fvフラグメントを連結することによって生成される。目的の2つの抗体
のV軽鎖(VL)ドメインおよびV重鎖(VH)ドメインは、標準的なPCR法を用いて単
離される。次に各々のハイブリドーマから得られるこのVLおよびVHのcDNAを連結し
て、2段階の融合PCRにおいて単鎖フラグメントを形成する。この第一のPCR工程は
、(Gly4−Serl)3リンカーを導入し、そして第二の工程は、VLおよびVHアン
プリコンを連結する。次いで、各々の単鎖分子を細菌の発現ベクターにクローニングする
。増幅後、単鎖分子の1つを切り出して、目的の第二の単鎖分子を含む、他のベクターに
サブクローニングする。得られたbscAbフラグメントを、真核生物の発現ベクターに
サブクローニングする。機能的なタンパク質発現は、チャイニーズハムスター卵母細胞に
このベクターを移入することによって得ることができる。組み換え方法を用いて種々の融
合タンパク質を生成してもよい。
【0151】
免疫コンジュゲートの産生
本発明の任意の多特異的アンタゴニストは、1つ以上の治療剤または診断/検出物質と
コンジュゲートされ得る。一般には、1つの治療物質または診断/検出物質は、各々の抗
体、その融合タンパク質またはフラグメントに結合されるが、2つ以上の治療物質および
/または診断/検出物質が、同じ抗体または抗体フラグメントに結合されてもよい。Fc
領域が存在しない場合(例えば、免疫コンジュゲートの抗体成分として用いられる抗体が
抗体フラグメントである場合)、全長抗体または抗体フラグメントの軽鎖可変領域に炭水
化物部分を導入することが可能である。例えば、Leung et al.,J Imm
unol 154:5919(1995);Hansen et al.,米国特許第5
,443,953号(1995),Leung et al.,米国特許第6,254,
868号を参照のこと。治療物質または診断/検出物質に結合するために、操作された炭
水化物部分を用いる。
【0152】
抗体の炭水化物部分を介して抗体成分にペプチドを結合するための方法は、当業者に周
知である。例えば、Shih et al.,Int J Cancer 41:832
(1988);Shih et al.,Int J Cancer 46:1101(
1990);およびShih et al.,米国特許第5,057,313号を参照の
こと。この一般的な方法は、少なくとも1つの遊離アミン官能基を有し、そして複数のペ
プチドを有する担体ポリマーとの、酸化された炭水化物部分を有する抗体成分の反応を包
含する。この反応によって、最初のSchiff塩基(イミン)結合が生じ、これが、二
級アミンへの還元によって安定化されて、最終的なコンジュゲートが形成され得る。
【0153】
治療物質または診断/検出物質は、ジスルフィド結合形成を介して還元された抗体成分
のヒンジ領域に結合され得る。代替として、このような物質は、N−スクシニル3−(2
−ピリジルジチオ)プロピオナート(SPDP)のような、異種二官能性架橋を用いて抗
体成分に結合され得る。Yu et al.,Int J Cancer 56:244
(1994)。このようなコンジュゲートのための一般的な技術は、当分野で周知である
。例えば、Wong,CHEMISTRY OF PROTEIN CONJUGATI
ON AND CROSS−LINKING(CRC Press 1991);Upe
slacis et al.,「Modification of Antibodie
s by Chemical Methods」,in MONOCLONAL ANT
IBODIES:PRINCIPLES AND APPLICATIONS,Birc
h et al.(eds.),pages 187−230(Wiley−Liss,
Inc.1995);Price,「Production and Characte
rization of Synthetic Peptide−Derived An
tibodies」,MONOCLONAL ANTIBODIES:PRODUCTI
ON,ENGINEERING AND CLINICAL APPLICATION,
Ritter et al.(eds.),pages 60−84(Cambridg
e University Press 1995)を参照のこと。あるいは、治療物質
または診断/検出物質は、抗体のFc領域における炭水化物部分を介してコンジュゲート
され得る。この炭水化物基は、チオール基に結合される同じ物質の負荷を増大するために
用いられてもよく、またはこの炭水化物部分は、異なるペプチドに結合するために用いら
れてもよい。
【0154】
脂肪乳剤に対する抗体のカップリング
ポリ(エチレングリコール)修飾ホスファチジルエタノールアミン(PEG−PE)で
安定化された、長期循環のミクロン未満の脂肪乳剤を、本発明の抗体の薬物担体として用
いてもよい。このエマルジョンは、2つの主な部分からなる。油状のコア、例えば、乳化
剤、例えば、リン脂質で安定化されたトリグリセリド。リン脂質の乳化に劣る特性は、ポ
リソルベート80のような生体適合性の共乳化剤を添加することによって増強され得る。
好ましい実施形態では、この抗体は、ポリ(エチレングリコール)ベースの、異種二官能
性カップリング剤、ポリ(エチレングリコール)−ビニルスルホン−N−ヒドロキシ−ス
クシンイミジルエステル(NHS−PEG−VS)と脂肪乳剤小球の表面に対してコンジ
ュゲートされる。
【0155】
ミクロン未満の脂肪乳剤を、上記のように調製して、特徴付ける。Lundberg,
J Pharm Sci,83:72(1993);Lundberg et al.,
Int J Pharm,134:119(1996)。脂肪乳剤の基礎的な組成物はト
リオレインである。DPPC:ポリソルベート80,2:1:0.4(w/w)。指示さ
れる場合、PEG−DPPEを、DPPCで計算された2〜8モル%の量で脂質混合物に
添加する。
【0156】
カップリング手順は、NHS−PEG−VSのNHSエステル基とジステアロイルホス
ファチジル−エタノールアミン(DSPE)のアミノ基との反応で開始する。25μモル
のNHS−PEG−VSを、23μモルのDSPEおよび50μモルのトリエチルアミン
と、1mlのクロロホルム中で、40℃で6時間反応させて、ポリ(エチレングリコール
)鎖(DSPE−PEG−VS)の遠位端でビニルスルホン基を有するホスファチジル−
エタノールアミンのポリ(エチレングリコール)誘導体を生成する。抗体コンジュゲート
のために、DSPE−PEG−VSが、2モル%のDPPCの脂肪乳剤に含まれる。この
成分を−20℃でストック溶液からバイアルに分散させ、その溶媒をエバポレートさせて
、減圧下で乾燥させる。リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)を添加して、その混合物を5
0℃に加熱して、30秒間ボルテックスして、MSEプローブ超音波処理機で1分間超音
波処理する。エマルジョンは4℃で保管してもよく、そして好ましくは24時間以内にコ
ンジュゲートに用いる。
【0157】
エマルジョン小球に対する抗体のカップリングは、この小球の表面上の遠位PEG末端
のビニルスルホン基と、抗体上の遊離チオール基との間の反応を介して行なわれる。ビニ
ルスルホンは、チオール基に対する選択的カップリングのための魅力的な誘導体である。
ほぼ中性のpHでは、VSは、チオール基を含有するタンパク質に対して15〜20分の
半減期でカップリングする。VSの反応性は、マレイミドの反応性よりもわずかに小さい
が、VS基は、水中でより安定であって、安定な結合はチオール基との反応から生じる。
【0158】
コンジュゲート前に、50mMの2−メルカプトエタノールによって4℃で10分間、
0.2MのTris緩衝液(pH8.7)中で抗体を還元する。還元された抗体を、Se
phadex G−25スピンカラムで過剰の2−メルカプトエタノールから分離して、
50mMの酢酸ナトリウム緩衝化0.9%生理食塩水(pH5.3)中で平衡にする。こ
の生成物を、280nmでその吸光度を測定すること(そして1mg/ml抗体溶液で1
.4であると仮定する)によって、または125I標識抗体の定量によって、タンパク質濃
度についてアッセイする。チオール基は、343nmの吸光度の変化によるAldrit
hiol(登録商標)、そして標準としてシステインを用いて決定される。
【0159】
カップリング反応を、アルゴン下で、室温で一晩、HEPES緩衝化生理食塩水(pH
7.4)中で行う。過剰のビニルスルホン基を2mMの2−メルカプトエタノールを用い
て30分間クエンチして、過剰の2−メルカプトエタノールおよび抗体を、Sephar
ose CL48カラム上のゲルクロマトグラフィーによって除去する。この免疫コンジ
ュゲートを、カラムの空隙容量付近で収集して、0.45μmの滅菌フィルターを通過さ
せることによって滅菌して、4℃で保管する。
【0160】
カップリング効率は、125I標識抗体を用いて算出する。エマルジョンの回復は、平行
実験における[14C]DPPCの測定値から見積もる。表面が移植されたDSPE−PE
G−VSのVS基に対する還元LL2のコンジュゲートは、85%近い代表的な効率で極
めて再現性である。
【0161】
単一および多様なレジメンにおける多特異的アンタゴニストの治療用途
本発明は、先天的免疫系または適応性(後天的)免疫系の免疫応答に関与する種々の宿
主細胞に対して結合するための特定の抗体および抗体異種コンジュゲートを有することに
よって、そしてアゴニストもしくはアンタゴニスト作用によって重要な細胞およびレセプ
ターの作用を調節することによって、多様な急性および慢性の炎症性および免疫調節不全
疾患、ならびに特定のがんの治療に関する。特に有利なのは、これらの細胞/レセプター
を標的化する二機能性および多機能性(二重特異性または多特異的)抗体、ならびに疾患
の細胞/組織の標的分子の使用である。引用することにより本明細書の一部をなすものと
する、Hansenの米国特許第6,458,933号を参照のこと。Hansenは、
病原体(感染性生物体およびがん)の宿主をクリアリングすること、治療物質または診断
物質、自己抗体、または抗移植片抗体に集中しているが、本発明は、免疫に関与する適切
な宿主細胞および疾患の細胞によって発現される標的細胞/レセプターを標的化すること
によって、特定の疾患に対する宿主免疫の変更を可能にする。
【0162】
多特異的アンタゴニストは、薬学的に有用な組成物を調製するために既知の方法に従っ
て処方され、ここで治療タンパク質は、薬学的に許容可能な担体との混合物に含有される
。組成物は、「薬学的に許容可能な担体」と言われ、その投与は、レシピエントの患者に
よって耐容され得る。滅菌リン酸緩衝化生理食塩水は、薬学的に許容可能な担体の1例で
ある。他の適切な担体は、当業者に周知である。例えば、REMINGTON’S PH
ARMACEUTICAL SCIENCES,19th Ed(1995)および後の
版を参照のこと。
【0163】
治療目的のために、多特異的アンタゴニストを、単独で、またはリポソームとコンジュ
ゲートして、患者に、薬学的に許容可能な担体中で治療上有効な量で投与する。これに関
しては、「治療上有効な量」とは、生理学的に有意である量である。ある物質は、その存
在がレシピエントの患者の生理学において検出可能な変化を生じる場合に、生理学的に有
意である。本発明の文脈では、ある物質は、その存在が標的化された細胞の不活性化また
は殺傷を生じる場合に、生理学的に重要である。
【0164】
裸の多特異的アンタゴニストでの治療を用いる場合、これは単に、このような治療の必
要な被験体にこのアンタゴニストを投与すること、およびその標的に対してこのアンタゴ
ニストが結合するために十分な時間を置くことを伴う。治療が、ハプテン結合部位を含む
多特異的アンタゴニストを含む場合、この被験体は、最初に多特異的アンタゴニストを投
与され、次いでアンタゴニストが局在するために、そして未結合のアンタゴニストが被験
体の血流から排出されるのに十分な時間待った後に、治療物質を含む担体分子が、被験体
に投与されて、多特異的アンタゴニストのハプテン結合部位に結合する。あるいは、クリ
アリング剤は、アンタゴニストが標的に結合された後に投与され得る。このようなプレタ
ーゲティング方法は、例えば、Gautherot et al.,Cancer,80
(12Suppl):2618−23(1997);Karacay et al.,B
ioconjug Chem,11:842−54(2000);Sharkey et
al.,Cancer Res,63:354−63(2003);Sharkey
et al.,Clin Can Res,9(10 Pt 2):3897S−913
S;ならびに米国特許出願第20030232011号A1および米国特許出願第200
40241158号A1に詳細に記載される。二次的な治療剤が治療レジメンの一部を形
成する場合、これは、多特異的アンタゴニストが投与される前、同時または後に投与され
得る。
【0165】
本明細書に記載される多特異的アンタゴニストは、自己免疫疾患の治療に、詳細にはク
ラスIII自己免疫疾患の治療に有用であり、この自己免疫疾患としては、免疫媒介性血
小板減少症、例えば、急性特発性血小板減少性紫斑病および慢性特発性血小板減少性紫斑
病、皮膚筋炎、シデナム舞踏病、重症筋無力症、全身性エリテマトーデス、狼瘡腎炎、リ
ューマチ熱、多腺性症候群、類天疱瘡、真性糖尿病、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、
連鎖球菌感染後腎炎、結節性紅斑、高安動脈炎、アディソン病、関節リウマチ、多発性硬
化症、サルコイドーシス(類肉腫症)、潰瘍性大腸炎、多形性紅斑、IgA腎症、結節性
多発性動脈炎、強直性脊椎炎、グッドパスチャー症候群、バージャー病(thromboangitis
ubiterans)、シェーグレン症候群、原発性胆汁性肝硬変症、橋本甲状腺炎、甲状腺中毒
症、強皮症、慢性活動性肝炎、多発筋炎/皮膚筋炎、多発性軟骨炎、尋常性天疱瘡(pamph
igus vulgaris)、ヴェグナー肉芽腫症、膜性腎症、筋萎縮性側索硬化症、脊髄癆、巨細胞
性動脈炎/多発筋痛、悪性貧血、急速進行性糸球体腎炎、および線維化性肺胞炎が挙げら
れる。
【0166】
多特異的アンタゴニストはまた、自己免疫疾患以外の炎症性または免疫調節不全障害を
治療するのに有用である。本発明による組成物で治療され得るこれらの他の炎症性または
免疫調節不全障害の例としては、敗血症または敗血性ショック、感染病、神経障害、移植
片対宿主病、移植片拒絶、急性呼吸窮迫症候群、肉芽腫性疾患、喘息、座瘡、汎発性血管
内凝固症候群(DIC)、およびアテローム性動脈硬化症が挙げられる。
【0167】
自己免疫疾患を含む、炎症性および免疫調節不全障害の治療における使用に加えて、治
療組成物はまた、病的血管新生およびがんを治療するのに有用である。がんとしては、造
血性のがん、例えば、白血病、リンパ腫および骨髄腫、ならびに固形癌、例えば、癌腫、
黒色腫、神経膠腫などの両方が挙げられる。白血病としては、骨髄性白血病、例えば、A
MLおよびCML、リンパ性白血病、例えば、ALLおよびCLL、ならびにT細胞白血
病が挙げられる。リンパ腫としては、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫およびT細
胞リンパ腫が挙げられる。この治療組成物はまた、がん、感染およびいくつかの自己免疫
疾患を伴い得る悪液質を治療するのに有用である。特には、本発明による多特異的アンタ
ゴニストとしては好ましくは、この実施形態における標的としてのIL−6またはTNF
−αが挙げられる。
【0168】
多特異的アンタゴニストはまた、感染性疾患に関連する炎症を治療するのに用いられる
ことがあり、この感染性疾患としては、ウイルス感染、細菌感染、寄生生物感染および真
菌感染が挙げられる。例示的なウイルスとしては、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ヘ
ルペスウイルス、サイトメガロウイルス、狂犬病ウイルス、インフルエンザウイルス、B
型肝炎ウイルス、センダイウイルス、ネコ白血病ウイルス、レオウイルス、ポリオウイル
ス、ヒト血清パルボ様ウイルス、シミアンウイルス40、呼吸器合胞体ウイルス、マウス
乳がんウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、デングウイルス、風疹ウイルス、麻疹ウイルス
、アデノウイルス、ヒトT細胞白血病ウイルス、エプスタイン・バーウイルス、マウス白
血病ウイルス、ムンプスウイルス、水疱性口内炎ウイルス、シンドビスウイルス、リンパ
球性脈絡髄膜炎ウイルス、疣ウイルス、ブルー・タングウイルスが挙げられる。例示的な
細菌としては、Anthrax bacillus、Streptococcus ag
alactiae、Legionella pneumophilia、Strepto
coccus pyogenes、Escherichia coli、Neisser
ia gonorrhoeae、Neisseria meningitidis、Pn
eumococcus、Hemophilis influenzae B、Trepo
nema pallidum、ライム病スピロヘータ、Pseudomonas aer
uginosa、Mycobacterium leprae、Brucella ab
ortus、Mycobacterium tuberculosisおよび破傷風毒素
が挙げられる。例示的な原生動物は、Plasmodium falciparum、P
lasmodium vivax、Toxoplasma gondii、Trypan
osoma rangeli、Trypanosoma cruzi、Trypanos
oma rhodesiensei、Trypanosoma brucei、Schi
stosoma mansoni、Schistosoma japanicum、Ba
besia bovis、Elmeria tenella、Onchocerca v
olvulus、Leishmania tropica、Trichinella s
piralis、Onchocerca volvulus、Theileria pa
rva、Taenia hydatigena、Taenia ovis、Taenia
saginata、Echinococcus granulosusまたはMeso
cestoides cortiである。例示的なマイコプラズマは、Mycoplas
ma arthritidis、Mycoplasma hyorhinis、Myco
plasma orale、Mycoplasma arginini、Acholep
lasma laidlawii、Mycoplasma salivarum、および
Mycoplasma pneumoniaeである。この真菌は、小胞子菌(Micr
osporum)、白癬菌(Trichophyton)、表皮菌(Epidermop
hyton)の種、Ssporothrix schenckii、Cyrptococ
cus neoformans、Coccidioides immitis、Hist
oplasma capsulatum、Blastomyces dermatiti
dis、またはCandida albicans由来であり得る。例示的な菌類として
は、小胞子菌、白癬菌、表皮菌(Epidermophyton)の種、Ssporot
hrix schenckii、Cyrptococcus neoformans、C
occidioides immitis、Histoplasma capsulat
um、Blastomyces dermatitidis、またはCandida a
lbicansが挙げられる。例示的な寄生生物としては、マラリア寄生生物、スピロヘ
ータなどが挙げられ、これには蠕虫が含まれる。本発明における使用のために抗体が開発
され得る代表的な疾患を引き起こす感染性生物体の列挙は、Davis et al.,
MICROBIOLOGY(Harper & Row,New York,1973お
よびその後)の第二版およびその後の版に含有され、そして当業者に周知である。これら
の実施形態では、多特異的抗体は好ましくは、微生物または寄生生物に関連する抗原を標
的化する。
【0169】
敗血症および敗血性ショックは、抗し難い炎症および免疫応答によって特徴付けられ、
これが、本発明による多特異的アンタゴニストでの治療に特に感受性にする。本発明によ
るこれらの条件の治療は、異なる機構を介して、そして好ましくは、この免疫調節不全、
炎症性疾患の病原性に関与する2つ以上の標的分子に対して機能するアンタゴニストまた
はアゴニストメディエーターまたは抗体の融合タンパク質を投与することによって作用す
る物質を組み合わせることを要する。Van Amersfoort et al.(前
出)によって提唱されるように、「炎症促進性応答と抗炎症促進性応答との間のバランス
を回復するようにある試みが行われなければならない」。本発明は、少なくとも2つの異
なる標的に特異的な多特異的アンタゴニストを用いることによって、バランスを回復して
、敗血症を有する患者におけるTNFまたはIL−1のような炎症促進性サイトカインを
中和する、単独の物質の使用を上回る明らかな改良技術を提供し、この標的は、先天的免
疫系の炎症促進性エフェクター、凝固因子、および敗血症または敗血性ショックと特異的
に関連する標的からなる群より選択される。
【0170】
敗血症または敗血性ショックの治療のための一実施形態では、種々の抗炎症性因子が、
活性プロテインCと、そして抗凝固因子と組み合わされて、そしてこの複数の物質による
治療の少なくとも1つの成分は、補体経路アンタゴニストを含む、炎症または凝固の少な
くとも1つの標的レセプターまたはメディエーターに対するアゴニストまたはアンタゴニ
スト抗体である。重篤な敗血症および敗血性ショックを有する患者を治療するために用い
られる選択された抗炎症性物質および免疫調節性物質の列挙は、Bochud and
Calandra(Brit Med J 2003;326:262−266)に見出
され、そしていくつかの敗血症および敗血性ショックのほとんどのこれらの免疫調節性治
療の臨床的トライアルは、Vincent et al.,Clin Infect D
is 2002;34:1084−93に概説される。
【0171】
敗血症および敗血性ショックの治療において有用な特に好ましい物質は、標的の1つと
して、MIF、LPS、TNF−α、C5aレセプター(C5aR)、TLR2またはH
MGB−Iを標的化する多特異的アンタゴニストである。他の標的はまた、これらから、
そして他の炎症促進性サイトカインまたはレセプター、例えば、インターロイキンIL−
1、TSST−1(毒素性ショック症候群毒素1)、NCA−90、NCA−95、およ
びHLA−DRから選択されてもよい。いくつかの敗血症または敗血性ショックの治療の
ための物質または融合タンパク質の好ましい組み合わせとしては、MIFとC5aレセプ
ター(C5aR)、MIFとIL−6、LPSとMIF、TNF−αとHMGB−I、T
LR2(トール様レセプター−2)とLPS、TLR2とIL−6、TLR2とC5aR
を標的化する組み合わせが挙げられる。抗−MIF/抗−NCA−90または抗−MIF
/抗−HLA−DRの多特異的アンタゴニストを用いて、毒素性ショックの初期の証拠を
有する患者においてMIFを中和する血液/感染性の沈着における顆粒球を標的化しても
よい。好ましくは、これらは、ヒト化抗体またはヒト抗体構築物である。これらは、利用
可能な抗体から当業者によって、容易に組み合わされるかまたは構築される。例えば、T
2.5Mabは、TLR2細胞外ドメインを用いてTLR2negマウスを免疫すること
によってTLR−2に対するアンタゴニストとして開発され、そしてこの抗体は、TNF
−αのような炎症性メディエーターの遊離を阻害して、マウスにおいて致死性のショック
様の症候群を妨げる(Meng et al.,J Clin Invest 2004
;113:1473−1481)。好ましい実施形態では、組み換え活性化プロテインC
は、抗体混合物および融合タンパク質と組み合わせて二次的な治療剤として用いられる。
【0172】
補体調節性因子、例えば、CD46、CDS55および/またはCD59および腫瘍関
連抗原の両方を標的化する多特異的アンタゴニスト、そしてさらに詳細には少なくとも二
重特異性の抗体であって、1つのアームが補体調節性因子を標的化し、そして第二のアー
ムが腫瘍関連抗原を標的化する抗体が、これらの抗原の1つだけを標的化する抗体よりも
がんを治療するのに有効であるということが本発明によってみいだされている。さらに、
Sier et al.(前出)の教示に反して、βグルカンの使用は、抗がん抗体単独
の使用を上回る多特異的アンタゴニストのような改善された有効性についてインビボで必
須ではないこと、そしてがんおよび補体調節タンパク質(例えば、CD55)を標的化す
る二重特異性抗体は、特に、補体調節タンパク質の高い発現を有する(これによって、抗
体による補体媒介性細胞傷害性をブロックする)腫瘍に対して、それ自体で用いられる抗
体よりもがん細胞殺傷を増大することが発見されている。
【0173】
中和抗体について別の好ましい補体関連標的は、補体の別の経路に関与する補体因子H
(およびその改変体FHL−1)である。なぜなら特に第H因子は、いくつかのがんで過
剰発現され得るからである(Ajona et al.,Cancer Res 200
4;64:6310−6318,およびそこに引用される参考文献)。従って、多特異的
アンタゴニスト、および詳細には、補体因子Hおよび因子FHL−1に対する多特異的抗
体の使用は、特に重要である。補体因子Hおよびその改変体FHL−1に対する多特異的
アンタゴニストはさらに、CD55、CD46および/またはCD59、ならびに他の補
体因子を標的化し得る。これらの多特異的アンタゴニストおよび腫瘍関連抗原およびレセ
プターに対して標的化することは、腫瘍細胞に対する補体抗体の特異的な標的化を増強し
て、単独の抗原またはエピトープを標的化する抗体の使用を上回る利点を提供することが
見出されている。これは、現在までに公開された文献における矛盾を克服している。
【0174】
悪性でない状態では、異なるアプローチが存在する。これは、血管内皮に対する炎症性
細胞の接着を媒介し得る、補体由来アナフィラトキシンC5aまたは補体レセプター3(
CR3、CD18/11b)を含む他の補体レセプターまたは因子での中和または妨害を
含む。このような状況では、CD46、CD55および/またはCD59の発現の増大は
、補体媒介性免疫を緩和するために、そしてまた、器官移植片拒絶におけるような超急性
拒絶を減弱するために所望される。従って、このような補体調節性因子のアゴニストの使
用は有利である。
【0175】
アテローム性動脈硬化症の治療において有用な特に好ましい物質は、MIF、低分子量
リポタンパク質(LDL)およびCEACAM6(例えば、NCA−90)を標的化する
多特異的アンタゴニストである。他の標的はまた、これらから、そして他の炎症促進性サ
イトカインから選択されてもよい。アテローム性動脈硬化症の治療のための物質または融
合タンパク質の好ましい組み合わせは、MIFと低分子量リポタンパク質修飾エピトープ
、NCA−90とMIF、NCA−90と低分子量リポタンパク質(LDL)エピトープ
、またはLDLとCD83を標的化する。これらは、市販の抗体から当業者によって容易
に組み合わされるかまたは構築される。例えば、Mab MDA2、プロトタイプMab
は、酸化の豊富なアテローム性動脈硬化病変内で(Tsimikas et al.,J
Nucl Cardiol 1999;6:81−90に記載されるように)、マロン
ジアルデヒド溶解エピトープ(例えば、マロンジアルデヒド修飾LDL中)を認識する。
【0176】
敗血症およびアテローム性動脈硬化症に加えて、MIFは、アテローム性動脈硬化症を
有するウサギで発現されることが報告され(Lin et al.,Circulati
on Res 2000;87:1202−1208)、このことは、これがこの状態で
は重要なサイトカインであることを示す。MIFが関与している他の疾患としては、糸球
体腎炎、動脈炎、遅延型過敏症、胃炎および急性心筋虚血が挙げられる(Yu et a
l.によって概説される、J Histochem Cytochem 2003;62
5−631)。従って、MIFを標的化する多特異的アンタゴニストはこれらの任意の状
態を治療するのに有用である。
【0177】
米国で500,000例ほどの多くの個体が毎年敗血症を発症し、集団の加齢化ととも
に発症する数は増えている。最高の抗生物質療法および心肺のサポート、そして炎症およ
び敗血症の凝固の理解の進歩にもかかわらず、これらの症例の半分ほどが死に至る。感染
の間、炎症促進性サイトカインが放出されて活性化される。これらとしては、TNFα、
IL−1およびIL−6が挙げられる。IL−4およびIL−10を含む抗炎症性メディ
エーターは、重篤な敗血症における炎症促進性サイトカインを調節するのには不十分であ
るようである。
【0178】
敗血症の応答の顕著な特徴としては、制御されない炎症および凝固が挙げられる。血管
内皮の損傷は、内毒素、組織因子、壊死性細胞または羊水のいずれで生じても誘発性の事
象であって、誘発性の事象になる。この内皮の損傷によって、組織因子の遊離がもたらさ
れ、これが凝固系を活性化して、過剰なトロンビン生成を生じる。その後の血餅形成は、
微小血管内皮の機能不全をもたらし、そしてそのままにされれば、低酸素症、臓器機能不
全および続発性の器官不全を生じる。
【0179】
内皮の損傷およびプロトロンビン環境へのシフトによって、トロンビン、すなわち、ト
ロンボモジュリンおよびプロテインC、すなわち、内皮のプロテインCレセプター(EP
CR)について発現の減少および内皮レセプターの機能障害がもたらされる。トロンボモ
ジュリンおよびEPCRの両方ともプロテインCをその活性化型APCに変化させるのに
必要である。従って、トロンビン形成、血餅増加およびプロテインC活性化の調節の主な
システムは失われる。
【0180】
重篤な敗血症を有するほぼ全ての患者がプロテインCを欠く。低いプロテインCレベル
は、ショックおよび予後不良を伴い、これにはICU滞在、人工呼吸器依存および死亡が
挙げられる。重篤な敗血症において外因的に活性化プロテインCを供給することで、ある
患者では炎症の調節および凝固の応答が回復され、良好な生存率の利点がもたらされる。
しかし、凝血促進応答を軽減し、敗血性の器官損傷を妨げる新規な治療モダリティの明白
な必要性が存在する。
【0181】
敗血症前の凝血促進応答のブロック開始は、非ヒト霊長類において死亡を減少すること
が確認されている。外部の凝固の開始をブロックするために有効なストラテジーは、TF
に対するモノクローナル抗体、天然のTF経路インヒビター、およびFVIIaの不活性
類似体の使用を含む。ヒヒでの近年の研究では、敗血症の発現時にFVIIaiを有する
TF−VIIa複合体のブロックは、敗血症誘発性多臓器損傷を減弱し、そして肺および
腎臓を劇的に保護したということが実証された。補体活性化産物、特にアナフィラトキシ
ンを阻害するアンタゴニストはまた、敗血症死亡を減少する見込みがある。C3a、C4
aおよびC5aは、敗血症の間に出現し、そして上昇したアナフィラトキシン血漿レベル
は、多臓器不全の発生と高度に相関する。敗血症では、補体は、凝血促進活性を直接促進
するか、またはサイトカイン産生を間接的に誘導し得る。インビトロのC5aおよび補体
の末端複合体C5b−9は、内皮細胞および単球上での組織因子発現を誘導し、そして血
小板の表面上でのC5b−9のアセンブリは、プロトロンビナーゼ活性を刺激することが
示されている。本発明は、凝固因子、炎症促進性サイトカイン、および補体活性化産物の
うちの2つ以上を標的化する多特異的アンタゴニストを提供することによって、敗血症を
治療するための改善された治療剤を提供する。
【0182】
さらなる薬学的方法が、治療適用において抗体の作用期間を制御するために使用され得
る。徐放性調製物は、複合体に対するポリマーの使用を経て調製されてもよいし、または
抗体を吸収してもよい。例えば、生体適合性ポリマーとしては、ポリ(エチレン−コ−ビ
ニルアセテート)のマトリックス、およびステアリン酸二量体およびセバシン酸のポリア
ンヒドリドコポリマーのマトリックスが挙げられる。Sherwood et al.,
Bio/Technology 10:1446(1992)。このようなマトリックス
からの抗体の放出の速度は、タンパク質の分子量、マトリックス内の抗体の量、および分
散した粒子のサイズに依存する。Saltzman et al.,Biophys J
55:163(1989);Sherwood et al,supra。他の固体剤
形は、REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES,1
9th ed.(1995)に記載される。
【0183】
本発明による多特異的アンタゴニストは、炎症および他の免疫調節不全疾患(血管内凝
固および心筋虚血を含む)の生成に関与する種々の免疫または他の宿主細胞に結合する。
それらはまた、がんの治療または防止のためのがんに対する宿主の免疫応答を増強するた
めに用いられてもよい。さらに、炎症促進性サイトカインを中和する、LPSのような、
微生物毒素を中和するため、そして凝固の異常を克服するために、組成物および治療方法
が提供される。この方法は、重篤な敗血症、敗血性ショックおよび種々の他の免疫調節不
全疾患をもたらすカスケードに関与する種々の因子に対する適切な抗体組成物および融合
タンパク質を用いる。
【0184】
一般には、投与された抗体の用量は、患者の年齢、体重、身長、性別、全身の医学的状
態および既往歴のような要因に依存して変化する。代表的には、約1pg/kg〜10m
g/kg(患者の体重あたりの物質の量)の範囲である用量の抗体成分、免疫コンジュゲ
ートまたは融合タンパク質をレシピエントに提供することが所望されるが、それより低い
かまたは高い用量も状況によっては投与されてもよい。これらの用量は、必要に応じて繰
り返されてもよい。
【0185】
患者(ヒトまたは家畜)に対する抗体の投与は、静脈内、動脈内、腹腔内、筋肉内、皮
下、胸膜内、くも膜下腔内、局所カテーテルを通じた灌流によって、または直接の病巣内
注射によってであってもよい;これはまた、喘息のような特定の疾患における、吸入、エ
アロゾル、または経鼻適用を含んでもよい。注射によって治療タンパク質を投与する場合
、投与は、連続的注入によっても、または単回もしくは複数回のボーラスによってもよい
。静脈内注射は、急速に分布する抗体では循環が完全であるおかげで有用な投与方式とな
る。
【0186】
コンジュゲートされていない多特異的抗体および抗体フラグメント、ならびにコンジュ
ゲートされていない抗体および抗体フラグメントの混合物が本発明による治療のための好
ましい一次的な治療組成物であるが、このような治療の有効性は、本明細書に記載される
他の治療を多特異的アンタゴニストに追加することによって増強され得る。このような多
様式のレジメンでは、補充的な治療組成物は、多特異的アンタゴニストの投与の前、同時
または後に投与され得る。例えば、Mクラスの自己免疫疾患の多様な治療は、T細胞、形
質細胞またはマクロファージに対して標的化される治療剤、例えば、T細胞エピトープに
対する抗体、さらに詳細にはCD4およびCD5エピトープに対する抗体の同時投与を含
み得る。γグロブリンも、同時投与されてもよい。ある場合には、副腎皮質ステロイドの
ような免疫抑制薬物、そしてまた可能性としては細胞傷害性薬物を同時投与することが所
望され得る。この場合、従来の治療において用いられる用量に比較した場合、副腎皮質ス
テロイドおよび細胞傷害性薬物の用量が低くてもよく、これによってこれらの治療剤の負
の副作用が軽減される。治療されるべき疾患ががんである場合、種々の化学療法薬物、免
疫療法において用いられる裸の抗体、および放射線(外部または内部)の使用が、本発明
による治療と組み合されてもよい。同様に、感染および/または敗血症または敗血性ショ
ックが治療されている場合、抗菌性薬物を、多特異的アンタゴニストと組み合わせて用い
てもよい。
【0187】
別の実施形態では、治療に用いられる多特異的アンタゴニストは、薬物、毒素、酵素、
オリゴヌクレオチド、ホルモン、ホルモンアンタゴニスト、免疫調節剤、ホウ素化合物ま
たは治療用放射性同位体にコンジュゲートされる。多特異的アンタゴニストが別の抗体の
混合物を含む場合、抗体の1つだけがコンジュゲートされてもよいし、または抗体の2つ
以上がコンジュゲートされてもよい。さらに好ましい実施形態では、治療剤がコンジュゲ
ートまたは融合される低分子量ハプテンに特異的であるアームを含む抗体が用いられる。
この場合、この抗体は、B細胞をプレターゲティングし、そして結合された治療剤を有す
る低分子量ハプテンは、抗体がB細胞標的に結合された後に投与される。認識可能なハプ
テンの例としては、限定はしないが、キレート剤、例えば、DTPAおよびDOTA、フ
ルオレセイン・イソチオシアネート、ビタミンB12および特定の抗体が惹起され得る他
の部分が挙げられ、これにはまたペプチドおよびオリゴヌクレオチドも含む。好ましいペ
プチドは、ヒスタミン−スクシニル−グリシン(HSG)である。
【0188】
治療上有用な免疫コンジュゲートは、抗体融合タンパク質に対して光活性物質または色
素をコンジュゲートすることによって得ることができる。フルオレセイン組成物、例えば
、蛍光色素および他の色素原、または色素、例えば、可視光に感受性のポルフィリンは、
病変に対して適切な光を向けることにより病変を検出し、治療するために用いられている
。治療では、これは、光放射、光線療法または光線力学療法と名づけられている(Jor
i et al.(eds.),PHOTODYNAMIC THERAPY OF T
UMORS AND OTHER DISEASES(Libreria Proget
to 1985);van den Bergh,Chem Britain 22:4
30(1986))。さらに、モノクローナル抗体は、光線療法を行うために光活性化色
素とカップリングされている。Mew et al.,J Immunol 130:1
473(1983);idem.,Cancer Res 45:4380(1985)
;Oseroff et al.,Proc Natl Acad Sci USA 8
3:8744(1986);idem.,Photochem Photobiol 4
6:83(1987);Hasan et al.,Prog Clin Biol R
es 288:471(1989);Tatsuta et al.,Lasers S
urg Med 9:422(1989);Pelegrin et al.,Canc
er 67:2529(1991)。従って、本発明は、光活性物質または色素を含む免
疫コンジュゲートの治療的用途を意図する。
【0189】
B細胞、形質細胞および/またはT細胞に作用することが知られている薬物は、多特異
的アンタゴニストにコンジュゲートされても、または多特異的アンタゴニストと組み合わ
せて別の成分として投与されても、本発明によれば特に有用である。これらとしては、5
−フルオロウラシル、ゲムシタビン、メトトレキセート、ドキソルビシン、フェニルブチ
ラート、ブリオスタチン、シクロホスファミド、エトポシド、ブレオマイシン、ドキソル
ビシン、カルムスチン、ビンクリスチン、ダカルバジン、プロカルバジン、タキソール、
プラチナ誘導体、デキサメタゾン、ロイコボリン、プレドニゾン、マイタンシノイド、例
えばDM1、カリケアマイシン、ラパマイシン、レフルノミド、FK506、イムラン、
フルダラビン、アザチオピン(azathiopine)、ミコフェノレート、カンプトテシン(例
えば、CPT−11、SN38)、プロテアソームインヒビター(例えば、Velcad
e(登録商標))およびシクロスポリンが挙げられる。B細胞上およびT細胞上の両方で
作用するイムラン、ドキソルビシン、メトトレキサートおよびフルダラビンのような薬物
が特に好ましい。本発明に従って適切に使用される毒素の例は、リシン、アブリン、リボ
ヌクレアーゼ、DNase I、Staphylococcusエンテロトキシン−A、
ヨウシュヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、ゲロニン、ジフテリア毒素、Pseudom
onas外毒素、Pseudomonas内毒素およびRNAse、例えば、オンコナー
ゼである。例えば、Pastan et al.,Cell 47:641(1986)
およびGoldenberg,CA−A Cancer Journal for Cl
inicians 44:43(1994)を参照のこと。他の適切な薬物および毒素が
当業者に既知である。
【0190】
多特異的アンタゴニストの診断用途
本発明による多特異的アンタゴニストはまた、種々の状態の診断または検出において有
用である。本出願の状況では、「診断」または「検出」という用語は、交換可能に用いら
れ得る。診断とは通常、組織特異的な組織学的状態を規定することをいうが、検出は、特
定の抗原を含有する組織、病変または生物体を認識および位置決めする。これらの実施形
態では、多特異的アンタゴニストは、診断/検出物質にコンジュゲートされる。この構築
物および診断/検出物質の投与は、WO 04094613および米国特許公開出願第2
004 0057902号に記載されている。
【0191】
診断/検出物質は、分子または原子であって、これは、多特異的アンタゴニストに対し
てコンジュゲートされて投与されてもよく、そして本発明による疾患または状態の部位に
位置する細胞上の抗原に対する結合によって、診断または検出において有用である。有用
な診断/検出物質としては、限定はしないが、放射性同位体、色素(例えば、ビオチン−
ストレプトアビジン複合体を有する)、放射線不透過物質(例えば、ヨウ素、バリウム、
ガリウムおよびタリウムの化合物など)、造影剤、蛍光化合物または分子および磁気共鳴
画像(MRI)の造影剤(例えば常磁性イオン)、ならびにX線、超音波およびコンピュ
ーター断層撮影法(CT)が挙げられる。
【0192】
好ましくは、診断/検出物質は、核画像化、内視鏡および血管内検出のための放射性同
位体、磁気共鳴画像化におけるまたは超音波検査における使用のための造影剤、X線およ
びコンピューター断層撮影のための放射線不透過および造影剤、ならびに内視鏡的蛍光透
視を含む蛍光透視のための蛍光化合物からなる群より選択される。抗体に対してコンジュ
ゲートされるか、または二重特異性、プレターゲティング法において用いられる蛍光物質
および放射性物質は、詳細には、γ−エミッター、β−エミッターおよびポジトロンエミ
ッターで、Goldenbergの米国特許第5,716,595号および同第6,09
6,289号に開示されるように、悪性腫瘍のような、細胞の疾患の組織または塊に関連
する標的抗原の内視鏡的な、術中のまたは血管内の検出のために特に有用である。内視鏡
適用は、胃腸管を画像化するためにも用いられる経口挿入カメラを含む、結腸のような、
内視鏡を可能にする構造に展開される場合に用いられ得る。
【0193】
本発明による多特異的アンタゴニストは、疾患の組織を検出するために有用な1つ以上
の放射性同位体を含み得る。特に有用な診断用の放射性核種としては、限定はしないが、
110In、111In、177Lu、18F、52Fe、62Cu、64Cu、67Cu、67Ga、68Ga
86Y、90Y、89Zr、94mTc、94Tc、99mTc、120I、123I、124I、125I、131
I、154-158Gd、32P、11C、13N、15O、186Re、188Re、51Mn、52mMn、55
o、72As、75Br、76Br、82mRb、83Sr、または他のγ−エミッター、β−エミ
ッターもしくはポジトロンエミッターであって、好ましくは20〜5,000keVの範
囲、より好ましくは25〜4,000keVの範囲、そしてさらにそれより好ましくは2
5〜1,000keVの範囲、そしてなおそれより好ましくは、70〜700keVの範
囲の崩壊エネルギーを有するものが挙げられる。ポジトロンエミッショントモグラフィー
のために有用な放射性核種としては以下が挙げられるが、これらには限定されない。18
51Mn、52mMn、52Fe、55Co、62Cu、64Cu、68Ga、72As、75Br、76
r、82mRb、83Sr、86Y、89Zr、94mTc、110In、120I、および124I。有用な
ポジトロンを放射する放射性核種の総崩壊エネルギーは、好ましくは、2,000keV
未満、さらに好ましくは1,000keV未満、そして最も好ましくは700keV未満
である。γ線検出を利用する診断/検出物質として有用な放射性核種としては、以下が挙
げられるが、これらには限定されない。51Cr、57Co、58Co、59Fe、67Cu、67
a、75Se、97Ru、99mTc、111In、114mIn、123I、125I、131I、169Yb、19
7Hg、および201Tl。有用なγ線照射放射性核種の崩壊エネルギーは好ましくは20〜
2000keV、より好ましくは60〜600keV、そして最も好ましくは100〜3
00keVである。放射性同位体は、多特異的アンタゴニストに対して直接または中間の
官能基を用いることによって間接的に結合され得る。
【0194】
放射性標識MAbを用いる診断画像化の方法は周知である。免疫シンチグラフィーの技
術では、例えば、抗体を、γ線を放射する放射性同位体で標識して患者に導入する。γカ
メラを用いて、γ線放射する放射性同位体の位置および分布を検出する。例えば、Sri
vastava(eds.),RADIOLABELED MONOCLONAL AN
TIBODIES FOR IMAGING AND THERAPY(Plenum
Press 1988),Chase,「Medical Applications
of Radioisotopes」,REMINGTON’S PHARMACEUT
ICAL SCIENCES,18th Edition,Gennaro et al
.(eds.),pp.624−652(Mack Publishing Co.,1
990)およびBrown,「Clinical Use of Monoclonal
Antibodies」,in BIOTECHNOLOGY AND PHARMA
CY pp.227−49,Pezzuto et al.(eds.)(Chapma
n & Hall 1993)を参照のこと。患者に送達された放射線量は、検出および
正確な測定を可能にする最小の半減期、身体中の最小保持時間、および同位体の最小量の
最良の組み合わせについて同位体の選択を通じて、できるだけ低レベルに維持される。
【0195】
金属はまた、磁気共鳴画像化技術のための物質を含む、診断/検出物質において有用で
ある。これらの金属としては、以下が挙げられるが、これらには限定されない。ガドリニ
ウム、マンガン、鉄、クロム、銅、コバルト、ニッケル、ジスプロシウム、レニウム、ユ
ーロピウム、テルビウム、ホルミウムおよびネオジミウム。抗体成分に放射性金属、常磁
性イオンまたは他の検出可能部分を装着(load)するためには、これを長いテールを有す
る試薬と反応させて、ここにイオンに結合するためのキレート基の多価性を結合する必要
があり得る。このようなテールは、ポリマー、例えば、ポリリジン、ポリサッカライドま
たはペンダント基を有する他の誘導体化されるかまたは誘導体化可能な鎖であってもよく
、ここにキレート基、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリア
ミン五酢酸(DTPA)、テトラアザシクロドデカン−N,N’,N”,N”’−四酢酸
(DOTA)、p−ブロモアセトアミド−ベンジル−テトラエチルアミン四酢酸(TET
A)、またはNOTAまたは他の適切なペプチド、ポルフィリン、ポリアミン、クラウン
エーテル、ビスチオセミカルバゾン、ポリオキシムなどのこの目的に有用であることが既
知である基が結合され得る。キレートは、標準的な化学的方法を用いて抗体に結合される
。このキレートは、免疫反応性の損失が最小で、凝集および/または内部架橋が最小であ
って、分子に対する結合の形成を可能にする基によって抗体に通常は結合される。他のさ
らによくあるものではない、抗体に対してキレートをコンジュゲートするための方法およ
び試薬は、1989年4月25日発行の「Antibody Conjugates」と
題されたHawthorneの米国特許第4,824,659号に開示される。特に有用
な金属キレートの組み合わせとしては、放射線イメージングのための、60〜4,000
keVの一般的エネルギー範囲における診断用同位体、例えば、125I、131I、123I、1
24I、62Cu、64Cu、18F、111In、67Ga、68Ga、99mTc、94mTc、11C、13
N、15O、76Brとともに用いられる、2−ベンジル−DTPAおよびそのモノメチルお
よびシクロヘキシル類似体が挙げられる。同じキレートは、マンガン、鉄およびガドリニ
ウムのような非放射性金属と複合体化された場合、本発明の抗体とともに用いられるとき
、MRIに有用である。NOTA、DOTAおよびTETAのような大環状キレートは、
種々の金属および放射性金属とともに、最も詳細には、それぞれガリウム、イットリウム
および銅の放射性核種とともに用いられる。このような金属キレート複合体は、目的の金
属に対して環のサイズを調整することによって極めて安定にされ得る。RAITのための
223Raのような、安定に結合する核種のための目的である、大環状ポリエーテルのよう
な他の環型のキレートは、本発明に包含される。
【0196】
造影剤としては、磁気共鳴画像化における使用のための造影剤、ならびにCTの造影剤
および超音波造影剤が挙げられる。本発明による検出および診断において安定な常磁性イ
オンとしては、クロム(III)、マンガン(II)、鉄(III)、鉄(II)、コバ
ルト(II)、ニッケル(II)、銅(II)、ネオジム(III)、サマリウム(II
I)、イッテルビウム(III)、ガドリニウム(III)、バナジウム(II)、テル
ビウム(III)、ジスプロシウム(III)、ホルミウム(III)およびエルビウム
(III)が挙げられる。好ましい常磁性磁気画像化剤としては、例えば、非放射性金属
、例えば、本発明の抗体とともに用いられる場合、2−ベンジル−DTPAおよびそのモ
ノメチルおよびシクロヘキシル類似体を含む金属キレート組み合わせと複合体化されたマ
ンガン、鉄およびガドリニウムが挙げられ、ここでガドリニウムが特に好ましい。米国特
許第6,331,175号は、MRI技術およびMRI造影剤にコンジュゲートされた抗
体の調製を記載する。好ましい超音波造影剤は、超音波画像における使用のために2つ以
上の画像造影剤を含んでもよい。好ましい実施形態では、この造影剤はリポソームである
。好ましくは、リポソームは、リポソームの外面に共有結合された二価DTPAペプチド
を含む。好ましくはこのリポソームはガス充填される。
【0197】
X線画像化のような他の状況で有用なイオンとしては、限定はしないが、ランタン(I
II)、金(III)、鉛(II)、および特にビスマス(III)が挙げられる。蛍光
標識としては、ローダミン、フルオレセインおよびレノグラフィン(renographin)が挙げ
られる。ローダミンおよびフルオレセインはしばしば、イソチオシアネート中間体を介し
て結合される。
【0198】
放射線不透過物質および造影剤は、X線およびコンピューター断層撮影を強化するため
に用いられ、そしてこれには、ヨウ素化合物、バリウム化合物、ガリウム化合物、タリウ
ム化合物などが挙げられる。特定の化合物としては、バリウム、ジアトリゾエート、エチ
オダイズド油(ethiodized oil)、クエン酸ガリウム、イオカルム酸、イオセタム酸、ヨ
ーダミド、ヨージパミド、ヨードキサム酸、イオグラミド(iogulamide)、イオヘキソー
ル、イオパミドール、イオパノ酸、イオプロセム酸、イオセファム酸、イオセル酸、イオ
スルアミドメグルミン(iosulamide meglumine)、イオセメト酸(iosemetic acid)、イ
オタズル(iotasul)、イオテトル酸、イオタラム酸、イオトロクス酸、イオキサグル酸
、イオキソトリゾ酸、イポダート、メグルミン、メトリザミド、メトリゾアート、プロピ
リオドンおよび塩化第一タリウムが挙げられる。
【0199】
本発明の多特異的アンタゴニストはまた、蛍光化合物で標識されてもよい。蛍光標識M
Abの存在は、適切な波長の光に対して抗体を曝すことおよび得られた蛍光を検出するこ
とによって決定される。蛍光標識化合物としては、フルオレセイン・イソチオシアネート
、ローダミン、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o−フタルデ
ヒドおよびフルオレスカミンが挙げられる。
【0200】
治療モダリティにおけるように、診断のための多特異的アンタゴニストの投与は、静脈
内、動脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、胸膜内、くも膜下腔内、局所カテーテルを通じた灌
流、または直接の病巣内注射によって哺乳動物において達成され得る。注射によって抗体
を投与する場合、投与は、連続注入によっても、または単独もしくは複数のボーラスによ
ってもよい。診断はさらに、既知の技術で、結合したタンパク質を検出する工程を要する
。単独の多特異的アンタゴニストは、同時に治療および診断/検出のために用いられ得る

【0201】
診断および検出の目的のために、多特異的アンタゴニストを、患者に対して、診断上有
効な量で、薬学的に許容可能な担体中で投与する。これに関して、「診断上有効な量」と
は、一旦アンタゴニストが局在して、過剰のアンタゴニストが血流から排除されれば、検
出に関連する装置によって検出され得る量である。
【0202】
本発明は、このように一般に記載され、以下の実施例を参照してさらに容易に理解され
るが、この実施例は、例として提供され、本発明を限定することは意図しない。この実施
例によって、本発明による多特異的アンタゴニストが動物モデルにおいて敗血性ショック
を妨ぐことができ、そしてがん関連悪液質、自己免疫疾患、およびアテローム斑を有する
患者における徴候および症状を改善することが実証される。
【実施例1】
【0203】
敗血性ショックの治療
JRは、72歳の白人男性であって、種々の細胞傷害性薬物、副腎皮質、そしてRit
uxan(登録商標)で過去に治療されている非ホジキンリンパ腫の既往歴を有し、そし
て長期の抗生物質治療を要する、安定なリンパ腫および過去のいくつかの感染の既往歴を
示している。彼の診療医によって、高温(40.7℃)、悪寒、呼吸困難、動悸、動揺、
ある程度の混乱および四肢の冷感と診断された後、彼は救急部門に入院させられる。検査
によって、頻脈(>90/分)、高血圧(95/60mm Hg)が特に立位でみられ、
そして尿排泄量の減少(800mL/日)および肺炎の徴候が明らかである。試験によっ
て、低酸素圧およびアシドーシスが示され、血液カウントでは感染は検出されないが、代
わりに、好中球減少(3,500WBC/mL、10%バンドで)、48,000の血小
板、6g/dLのHgが示され、胸部X線によって、全身性の肺炎が明らかになり、血液
試験は、腎機能の低下を示し、異常な血清クレアチニン(3mg/dL)およびBUNレ
ベルを伴い、そして血清乳酸の上昇によって、組織の低灌流が示される。血液培養によっ
て、S.aureusおよびグラム陰性細菌の存在が明らかになり、これによって敗血症
の診断が支持される。患者を、重篤な敗血症および敗血性ショックについて集中治療室で
治療し、これには一般的な対症療法(酸素)、循環血液量を回復する液体注入による血行
動態サポート(500mLの0.9%塩化ナトリウムおよび乳酸リンゲル溶液であって、
最初の2〜3時間にわたって最大2Lまで)、ドーパミンによる昇圧補助療法(Intr
opin、3mcg/kg/分、iv)、およびシプロフロキサシン(Cipro)の1
2時間ごとの400mgのIVによる抗生物質療法を含む。患者はまた、ドロテコギン・
α(drotecogin alfa)(活性化プロテインC)を24microg/k
g/時間で、全部で96時間にわたって与えられる。入院の5日後、患者は安定している
が、徴候も症状も有意な改善は示さず、わずかに尿排泄が良くなり、血圧のわずかな上昇
、および39.3℃への温度のわずかな低下のみが示される。次いで患者には、300m
gの抗MIFおよび400mgの抗LPS抗体からなる、2つのヒト化モノクローナル抗
体の組み合わせが、3週間にわたって毎週2回連続して、両方とも4時間にわたる緩徐な
注入によって与えられる。2週間の間、この患者が示す錯乱は少なくなり、体温のさらな
る低下、頻脈の減少、呼吸困難および肺炎の軽減が、理学的検査および胸部x線の両方に
よって示される。三週目の終わりに、彼の腎機能試験によってまた、いくつかの改善(B
UNおよび血清クレアチニン値)が示され、そして彼は集中治療室から感染病病棟に戻り
、対症療法を調節される。2ヵ月後、この患者は、活性プロテインCおよび抗MIFおよ
び抗LPS抗体の反復サイクル、ならびに広範なスペクトルの抗生物質の反復コースを受
け、次いで、さらなる改善を示し、その結果彼は、退院可能になり、そして実際に正常な
精神機能、および肺炎の全体的な80%を超える減少、および38.5℃の熱、そして約
80%の正常な尿排泄量になる。
【実施例2】
【0204】
全身性エリテマトーデス(SLE)の治療
S.R.は、32歳齢のアフリカ系アメリカ人女性であって、5年前に、彼女が、糸球
体腎炎(WHOの3級)、漿膜炎、多発性関節炎および脈管の発疹(vasculitic rash)
を示した時に、SLEと診断された。彼女は、持続性の疾患のせいで、副腎皮質ステロイ
ド(1日あたり15〜60mgの範囲)およびヒドロキシクロロキン(200mg/日)
、そして後の時点ではまた、アザチオプリン(100mg/日)およびシクロホスファミ
ドのコースによって、以前に治療を受けた。数年間にわたって、彼女は、多発性関節炎、
こん睡状態、皮膚発疹および漿膜炎を示す、SLEの悪化を経験している。彼女は、現在
、持続性の活動性の疾患を示し、従来の治療に対しては非応答性であるが、毎日40mg
のプレドニゾンが維持されている。彼女にはヒト化抗CD22モノクローナル抗体、エプ
ラツズマブ(epratuzumab)をi.v.で400mg、1時間にわたって与え、続いて2
週間各々を1回繰り返す。三番目の注入の4週後、彼女の循環するBリンパ球は、治療前
にベースラインから40%まで減少されるが、彼女のHgレベルは8g/dLから10g
/dLに上昇している。彼女の発疹および多発性関節炎は、ある程度の改善を示すが、彼
女は、さらなる治療を要する。彼女の抗CD22抗体治療の8週後、彼女には、抗CD8
3および抗TNFα抗体の組み換え異種コンジュゲートからなる二重特異性抗体融合タン
パク質の1コースを、毎週500mgのi.v.の用量で4週間与える。2ヵ月後の評価
の時点で、彼女は、全ての器官系において、ほとんどBILAG CおよびD状況に対し
て、顕著な改善を有し、そして彼女のプレドニゾン用量は1日あたり7.5mgまで漸減
され得る。3ヶ月の追跡時には、彼女の器官の症状のほとんどが安定なままで、彼女は、
悪化なしにこの低用量のプレドニゾンを続ける。
【実施例3】
【0205】
非ホジキンリンパ腫(NHL)の治療
SLは、66歳齢の白人男性であって、CHOPおよびリツキシマブでの治療後に再発
されたびまん性大細胞NHLの既往歴があり、現在は、発熱、肺および縦隔の浸潤物、頸
のリンパ節および腋窩リンパ節の拡張、ならびに吸引および細胞学に基づく骨髄障害の証
拠を示している。彼は、2つのヒト化抗体であって、1つはTNFαに対するもの、そし
てもう1つはMIFに対するものであって、各々が同じ日に連続して与えられる抗体を、
各々について3〜4時間の注入にわたって、各々450mgの用量で、6週間毎週注入さ
れる。最後の注入の24時間後、彼の試験によって、彼はこの治療に対して大きな毒性を
有さないこと、そして彼の頸のリンパ節および腋窩リンパ節のある程度の明らかな軟化が
示される。8週間の次の追跡試験では、ほぼ全ての彼の頸のリンパ節そして約半分のこれ
らの腋窩リンパ節が消失し、そして彼の胸部X線およびCTスキャンによって、彼の肺お
よび縦隔の浸潤物の約60%収縮という証拠が示される。約4ヵ月後、彼の試験によって
、彼のリンパ節および肺の障害は安定であるが、骨髄障害の増大および彼のHgの8g/
dLへの低下が示唆されることが明らかになる。次いで、彼に、MIFに対するそしてI
L−6に対する融合されたヒト化抗体からなる二重特異性抗体を与え、これは、緩徐なi
.v.注入あたり500mgの用量で3週間にわたって毎週2回与えた。3ヶ月の評価の
時点で、彼のHgは、11g/dLへの上昇を示し、骨髄吸引物中でNHL細胞の顕著な
減少があり、そして明白なリンパ節も放射線学的試験によって胸部で可視の疾患もない。
患者の応答はさらに6ヶ月にわたって安定なままである。
【実施例4】
【0206】
がん関連悪液質の治療
NRは、58歳齢のアフリカ系アメリカ男性であって、重度の喫煙歴ならびに左肺にそ
して両側の傍大動脈および傍気管支リンパ節に罹患している手術不能な非小細胞性肺がん
の既往歴を有する。彼は、併用化学療法を受け、これは、骨髄毒性、および全ての測定可
能な容積の40%未満である、ある程度のわずかな腫瘍収縮の証拠を示している。彼は、
かなりの体重減少を示し、ほぼ2mの身長で現在の体重は68kgであり、がん関連の悪
液質に罹患している。彼は、IL−6およびTNFαの両方を標的化するヒト化二重特異
性融合抗体構築物を毎週600mgの用量で8週間にわたって毎週注入される。最後の3
週間の間、彼の食欲は改善して、彼は、治療後7週間で75kgまで体重増加を示し、筋
肉がさらに強くなり、そして全般的に活力が改善され、次に、彼が悪性疾患の進行を示し
始めたとき、次の2ヶ月間にわたって75kg〜80kgで安定なままである。彼のサイ
クルの化学療法以外では、抗体療法の間に副腎皮質ステロイドは与えられず、彼は、悪液
質についてこの治療に対して応答したとみなされる。
【実施例5】
【0207】
腎細胞癌の治療
JRは、45歳例の白人女性であって、彼女の左腎臓に塊を、そして左側の傍動脈リン
パ節の障害、そして左肺上部に3×4cmの疾患病巣を示している。彼女は、左腎臓の完
全な切除を受け、隣接するリンパ節の排除を受けている。6週後、彼女には、IL−2サ
イトカインと融合されたヒト化IL−6抗体の7週毎週のi.v.注入を、500mg(
抗体タンパク質)の用量で与え、これを後に4ヶ月繰り返す。最後の治療後3ヶ月の彼女
の追跡試験では、彼女の試験によって、彼女の肺転移の60%低下が明らかになり、新規
な疾患はどこにも証明されない。
【実施例6】
【0208】
腎癌の治療
PSは、70歳齢の白人女性であって、直腸腺癌(T3N2)の直腸腸間膜全摘出およ
びアジュバント化学放射線療法(連続的な注入の5−フルオロウラシルおよび細分された
1.8Gyの用量、5週半の期間にわたって1週あたり5日間、総線量45Gyの外放射
線療法)の既往歴を有する。彼女には、術後化学療法を行っておらず、6ヵ月後に、肝臓
の右葉下部に2〜4cmの直径に及ぶ3つの転移を、そして16.4ng/mLの血清C
EA力価を示す。原発性直腸癌は、免疫組織学によって評価され、そしてCD59および
CEACAM6の両方の高い発現を示す。次いで、彼女は、組み換え的に融合されたヒト
化抗CD59抗体およびヒト化抗CEACAM6抗体からなる二重特異性抗体の350m
gを、投与され、これは、8週間にわたって毎週1回、5週間の期間にわたって、平行し
てフルオロウラシルの連続注入を与えられる。最後の抗体注入後2ヶ月の追跡時点で、患
者の血液CEA力価は、12ng/mLまで低下し、ただし肝臓の転移のサイズではCT
スキャンによる変化はない。さらに3ヶ月後、血液CEAは7ng/mlであり、そして
CTスキャンによって最小の肝臓転移が消失し、他の2つは約50%まで縮小している。
この疾患は、さらに2ヶ月間安定なままであって、その時点で血液のCEAレベルは、1
0ng/mLまで上昇するが、肝臓転移のサイズではまだ変化はない。
【0209】
このように、本発明による炎症および免疫調節不全疾患およびがんの免疫療法の方法お
よび組成物が記載されている。多くの改変およびバリエーションが、本明細書において記
載および例示された技術および構造に対して、本発明の趣旨および範囲から逸脱すること
なくなされ得る。従って、本明細書に記載される組成物および方法は、例示のみであって
、本発明の範囲に基づいて限定されないことが理解されるべきである。
【0210】
上記の全ての文書、参考文献および引用文献であって、その参考文献を含むものの内容
は、引用することによりその全体が本明細書の一部をなすものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの異なる標的と特異的に反応する多特異的アンタゴニストであって、該
標的が、(A)先天的免疫系の炎症促進性エフェクターと、(B)凝固因子と、(C)補
体因子および補体調節タンパク質と、(D)炎症性障害または免疫調節不全障害と特異的
に関連する標的、または病的血管新生もしくはがんと特異的に関連する標的であって、後
者の標的が(A)でも、(B)でも、(C)でもない標的とからなる群より選択され、
(i)前記標的の少なくとも1つが(A)、(B)または(C)であり、
(ii)前記多特異的アンタゴニストが、単一の多特異的抗体を含む場合は、CD74
が前記アンタゴニストの標的として排除され、そして
(iii)前記多特異的アンタゴニストが、別個の抗体の組み合わせを含む場合、前記
抗体の1つがB細胞抗原を標的化し、かつもう一方の抗体がT細胞、形質細胞、マクロフ
ァージまたは炎症性サイトカインを標的化する組み合わせが排除され、前記抗体の1つが
CD20を標的化し、かつもう一方の抗体がC3bまたはCD40を標的化する組み合わ
せも排除される、多特異的アンタゴニスト。
【請求項2】
2つの別個の抗体の組み合わせである、請求項1に記載の多特異的アンタゴニスト。
【請求項3】
多特異的抗体である、請求項1に記載の多特異的アンタゴニスト。
【請求項4】
融合タンパク質である、請求項1に記載の多特異的アンタゴニスト。
【請求項5】
前記2つの異なる標的の1つが標的(D)である、請求項1に記載の多特異的アンタゴ
ニスト。
【請求項6】
前記アンタゴニストが、(A)、(B)および(C)の標的の群からの少なくとも2つ
の異なる標的と特異的に反応する、請求項1に記載の多特異的アンタゴニスト。
【請求項7】
前記アンタゴニストがさらに、標的(D)と特異的に反応する、請求項6に記載の多特
異的アンタゴニスト。
【請求項8】
前記多特異的アンタゴニストが、別個の抗体の組み合わせを含む場合、前記抗体のうち
の1つがCD19、CD20、CD21、CD22、CD23またはCD80を標的化し
、もう一方の抗体が補体因子を標的化する組み合わせが排除される、請求項1に記載の多
特異的アンタゴニスト。
【請求項9】
前記多特異的アンタゴニストが、別個の抗体の組み合わせを含む場合、前記抗体のうち
の1つがCD19、CD20、CD21、CD22、CD23またはCD80を標的化し
、もう一方の抗体がC3bまたはCD40を標的化する組み合わせが排除される、請求項
1に記載の多特異的アンタゴニスト。
【請求項10】
前記アンタゴニストが、少なくとも1つの炎症促進性エフェクターサイトカインと特異
的に反応する、請求項1に記載の多特異的アンタゴニスト。
【請求項11】
前記アンタゴニストが、少なくとも1つの炎症促進性エフェクターケモカインと特異的
に反応する、請求項1に記載の多特異的アンタゴニスト。
【請求項12】
前記アンタゴニストが、少なくとも1つの炎症促進性エフェクターレセプターと特異的
に反応する、請求項1に記載の多特異的アンタゴニスト。
【請求項13】
前記アンタゴニストが、炎症促進性エフェクターレセプターを含む、請求項1に記載の
多特異的アンタゴニスト。
【請求項14】
前記アンタゴニストが、少なくとも1つの凝固因子と特異的に反応する、請求項1に記
載の多特異的アンタゴニスト。
【請求項15】
前記アンタゴニストが、少なくとも1つの補体因子と特異的に反応する、請求項1に記
載の多特異的アンタゴニスト。
【請求項16】
前記アンタゴニストが、少なくとも1つの補体調節タンパク質と特異的に反応する、請
求項1に記載の多特異的アンタゴニスト。
【請求項17】
前記標的のうちの1つが、C3、C5、C3a、C3bおよびC5aからなる群より選
択される補体因子であり、前記アンタゴニストが、別個の抗体の組み合わせである場合、
前記抗体のもう一方がCD19、CD20、CD21、CD22、CD23またはCD8
0を標的化する標的の組み合わせが排除される、請求項1に記載の多特異的アンタゴニス
ト。
【請求項18】
前記アンタゴニストが、先天的免疫系の2つの異なる炎症促進性エフェクターと特異的
に反応する、請求項1に記載の多特異的アンタゴニスト。
【請求項19】
前記アンタゴニストが、2つの異なる凝固因子と特異的に反応する、請求項1に記載の
多特異的アンタゴニスト。
【請求項20】
前記アンタゴニストが、2つの異なる補体因子または補体調節タンパク質と特異的に反
応する、請求項1に記載の多特異的アンタゴニスト。
【請求項21】
前記アンタゴニストが、先天的免疫系の少なくとも1つの炎症促進性エフェクターと、
少なくとも1つの凝固因子と特異的に反応する、請求項1に記載の多特異的アンタゴニス
ト。
【請求項22】
前記アンタゴニストが、先天的免疫系の少なくとも1つの炎症促進性エフェクターと、
少なくとも1つの補体因子または補体調節タンパク質と特異的に反応する、請求項1に記
載の多特異的アンタゴニスト。
【請求項23】
前記アンタゴニストが、少なくとも1つの凝固因子と、少なくとも1つの補体因子また
は補体調節タンパク質と特異的に反応する、請求項1に記載の多特異的アンタゴニスト。
【請求項24】
前記アンタゴニストが、少なくとも1つの可溶性レセプターを含む、請求項1に記載の
多特異的アンタゴニスト。
【請求項25】
前記アンタゴニストが、少なくとも1つの抗体に融合された少なくとも1つの可溶性レ
セプターを含む、請求項1に記載の多特異的アンタゴニスト。
【請求項26】
前記アンタゴニストが、少なくとも1つの炎症促進性エフェクターレセプターの細胞外
ドメインを含む、請求項1に記載の多特異的アンタゴニスト。
【請求項27】
前記アンタゴニストが、炎症促進性エフェクターレセプターと反応性である少なくとも
1つの分子を含む、請求項1に記載の多特異的アンタゴニスト。
【請求項28】
前記分子が、前記炎症促進性エフェクターレセプターの天然のアンタゴニスト、または
前記レセプターと特異的に相互作用する前記アンタゴニストのフラグメントもしくは変異
体である、請求項27に記載の多特異的アンタゴニスト。
【請求項29】
樹状細胞、顆粒球、単球、マクロファージ、NK細胞、血小板、または内皮細胞を標的
化する、請求項1に記載の多特異的アンタゴニスト。
【請求項30】
適応的免疫系の抗原またはレセプターを標的化する、請求項1に記載の多特異的アンタ
ゴニスト。
【請求項31】
がん細胞レセプターまたはがん関連抗原を標的化する、請求項1に記載の多特異的アン
タゴニスト。
【請求項32】
前記アンタゴニストが、少なくとも二重特異的である抗体を含み、前記抗体の少なくと
も1つのアームが前記炎症促進性エフェクターと特異的に反応する、請求項1に記載の多
特異的アンタゴニスト。
【請求項33】
前記アンタゴニストが、少なくとも二重特異的である抗体を含み、前記抗体の少なくと
も1つのアームが前記凝固因子と特異的に反応する、請求項1に記載の多特異的アンタゴ
ニスト。
【請求項34】
前記アンタゴニストが、少なくとも二重特異的である抗体を含み、前記抗体の少なくと
も1つのアームが前記補体因子または補体調節タンパク質と特異的に反応する、請求項1
に記載の多特異的アンタゴニスト。
【請求項35】
前記アンタゴニストが、少なくとも二重特異的である抗体を含み、前記抗体の少なくと
も1つのアームが前記凝固因子と特異的に反応し、少なくとも1つのアームが前記炎症促
進性エフェクターと反応する、請求項1に記載の多特異的アンタゴニスト。
【請求項36】
前記アンタゴニストが、少なくとも二重特異的である抗体を含み、前記抗体の少なくと
も1つのアームが前記補体因子または補体調節タンパク質と特異的に反応し、少なくとも
1つのアームが前記炎症促進性エフェクターと反応する、請求項1に記載の多特異的アン
タゴニスト。
【請求項37】
前記アンタゴニストが、少なくとも二重特異的である抗体を含み、前記抗体の少なくと
も1つのアームが前記凝固因子と特異的に反応し、少なくとも1つのアームが先天的免疫
系の炎症促進性エフェクターでも凝固因子でもない前記標的と反応する、請求項1に記載
の多特異的アンタゴニスト。
【請求項38】
前記アンタゴニストが、少なくとも二重特異的である抗体を含み、前記抗体の少なくと
も1つのアームが前記補体因子または補体調節タンパク質と特異的に反応し、少なくとも
1つのアームが前記凝固因子と反応する、請求項1に記載の多特異的アンタゴニスト。
【請求項39】
前記アンタゴニストが、少なくとも二重特異的である抗体を含み、前記抗体の少なくと
も1つのアームが少なくとも1つの標的(A)、(B)または(C)と特異的に反応し、
少なくとも1つのアームが標的(D)と反応する、請求項1に記載の多特異的アンタゴニ
スト。
【請求項40】
前記アンタゴニストが、単一の活性成分を含む、請求項1に記載の多特異的アンタゴニ
スト。
【請求項41】
先天的免疫系の成分に作用する二次的な治療剤をさらに含む、請求項1に記載の多特異
的アンタゴニスト。
【請求項42】
凝固に作用する二次的な治療剤をさらに含む、請求項1に記載の多特異的アンタゴニス
ト。
【請求項43】
適応免疫系の成分に作用する二次的な治療剤をさらに含む、請求項1に記載の多特異的
アンタゴニスト。
【請求項44】
(A)、(B)または(C)の標的の2つ以上のエピトープと特異的に反応する、請求
項1に記載の多特異的アンタゴニスト。
【請求項45】
前記少なくとも1つの他の標的が、感染性疾患、急性呼吸窮迫症候群、敗血症または敗
血性ショック、移植片対宿主病または移植片拒絶、アテローム性動脈硬化症、喘息、肉芽
腫性疾患、神経障害、悪液質、血液凝固障害、座瘡、巨細胞性動脈炎または心筋虚血に関
連する、請求項1に記載の多特異的アンタゴニスト。
【請求項46】
炎症性障害または免疫調節不全障害、病的血管新生もしくはがん、または感染性疾患か
ら選択される状態を治療する方法であって、請求項1に記載の多特異的アンタゴニストの
治療上有効な量を、このような状態を有すると診断されている患者に対して投与する工程
を含む方法。
【請求項47】
前記状態が自己免疫疾患でない、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記状態が自己免疫疾患である、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
前記状態がクラスIIIの自己免疫疾患である、請求項46に記載の方法。
【請求項50】
前記状態が、敗血症または敗血性ショック、感染性疾患、神経障害、移植片対宿主病ま
たは移植片拒絶、急性呼吸窮迫症候群、肉芽腫性疾患、喘息、アテローム性動脈硬化症、
悪液質、病的血管新生、がん、血液凝固障害、座瘡、巨細胞性動脈炎または心筋虚血であ
る、請求項46に記載の方法。
【請求項51】
前記アンタゴニストが、診断物質/検出物質を含む、請求項1に記載の多特異的アンタ
ゴニスト。
【請求項52】
前記診断物質/検出物質が、診断用放射性核種、造影剤、蛍光標識および光活性物質か
らなる群より選択される、請求項51に記載の多特異的アンタゴニスト。
【請求項53】
前記アンタゴニストが、治療剤を含む免疫コンジュゲートである、請求項1に記載の多
特異的アンタゴニスト。
【請求項54】
前記治療剤が、放射性核種、ホウ素、免疫調節物質、ホルモン、ホルモンアンタゴニス
ト、酵素、酵素インヒビター、オリゴヌクレオチド、光活性治療剤、細胞毒性剤、抗体、
血管新生インヒビター、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項5
3に記載の多特異的アンタゴニスト。
【請求項55】
炎症性または免疫調節不全障害、病的血管新生もしくはがん、および感染性疾患から選
択される状態を診断または検出する方法であって、請求項57に記載の多特異的アンタゴ
ニストの診断上有効な量を、このような状態を有すると疑われている患者に対して投与す
る工程と;標的部位で多特異的アンタゴニストを融合させる工程と;多特異的抗体が循環
して血流から除去されることを待つか、またはクリアリング剤を用いる工程と;検出手段
を用いてこのような部位で、前記標識された多特異的アンタゴニストの上昇したレベルを
検出することによって、前記標識された多特異的アンタゴニストの付着の部位を位置決め
する工程とを含む方法。
【請求項56】
炎症性または免疫調節不全障害、病的血管新生もしくはがん、および感染性疾患から選
択される状態を診断または検出する方法であって、ハプテン結合部位を含む、請求項1に
記載の多特異的アンタゴニストの診断上有効な量を、このような状態を有すると疑われて
いる患者に対して投与する工程と;標的部位で多特異的アンタゴニストを融合させる工程
と;多特異的抗体が循環して血流から除去されることを待つか、またはクリアリング剤を
用いる工程と;診断物質/検出物質で標識されたハプテンを前記被験体に投与する工程と
;前記多特異的アンタゴニストのハプテン結合部位に対して前記標識されたハプテンを結
合させる工程と;検出手段を用いてこのような部位で、前記標識されたハプテンに結合さ
れた前記多特異的アンタゴニストの上昇したレベルを検出することによって、前記多特異
的アンタゴニストの付着の部位を位置決めする工程とを含む方法。
【請求項57】
炎症性または免疫調節不全障害、病的血管新生もしくはがん、および感染性疾患から選
択される状態を治療する方法であって、ハプテン結合部位を含む、請求項1に記載の多特
異的アンタゴニストの治療上有効な量を、このような状態を有すると疑われている患者に
対して投与する工程と;標的部位で多特異的アンタゴニストを融合させる工程と;多特異
的抗体が循環して血流から除去されることを待つか、またはクリアリング剤を投与する工
程と;治療剤を含むハプテンを前記被験体に投与する工程と;前記多特異的アンタゴニス
トのハプテン結合部位に対して前記ハプテンが前記治療剤とともに結合することを可能に
する工程とを含む方法。
【請求項58】
少なくとも2つの異なる標的と特異的に反応する多特異的アンタゴニストの使用であっ
て、前記標的が、(A)先天的免疫系の炎症促進性エフェクターと、(B)凝固因子と、
(C)補体因子および補体調節タンパク質と、(D)炎症性障害または免疫調節不全障害
と特異的に関連する標的、または病的血管新生もしくはがんと特異的に関連する標的であ
って、前記後者の標的が(A)でも、(B)でも、(C)でもない標的とからなる群から
選択され、ここで(i)前記標的の少なくとも1つが(A)、(B)または(C)であり
、(ii)前記多特異的アンタゴニストが、単一の多特異的抗体を含む場合は、CD74
が前記アンタゴニストの標的として排除され、そして(iii)前記多特異的アンタゴニ
ストが、別個の抗体の組み合わせを含む場合、前記抗体の1つがB細胞抗原を標的化し、
かつもう一方の抗体がT細胞、形質細胞、マクロファージまたは炎症性サイトカインを標
的化する組み合わせが排除され、前記抗体の1つがCD20を標的化し、かつもう一方の
抗体がC3bまたはCD40を標的化する組み合わせも排除され、
炎症性または免疫調節不全障害、病的血管新生もしくはがん、および感染性疾患である
状態の治療のための医薬であって、前記医薬が前記多特異的アンタゴニストの治療上有効
な量を含む医薬の製造における使用。
【請求項59】
前記状態が自己免疫疾患ではない、請求項58に記載の使用。
【請求項60】
前記状態が自己免疫疾患である、請求項58に記載の使用。
【請求項61】
前記状態がクラスIII自己免疫疾患である、請求項58に記載の使用。
【請求項62】
前記状態が、敗血症または敗血性ショック、感染性疾患、神経障害、移植片対宿主病ま
たは移植片拒絶、急性呼吸窮迫症候群、肉芽腫性疾患、喘息、アテローム性動脈硬化症、
悪液質、病的血管新生、がん、血液凝固障害、座瘡、巨細胞性動脈炎または心筋虚血であ
る、請求項58に記載の使用。
【請求項63】
前記多特異的アンタゴニストが、治療剤を含む免疫コンジュゲートである、請求項58
に記載の使用。
【請求項64】
前記治療剤が、放射性核種、ホウ素、免疫調節物質、ホルモン、ホルモンアンタゴニス
ト、酵素、酵素インヒビター、オリゴヌクレオチド、光活性治療剤、細胞毒性剤、抗体、
血管新生インヒビター、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項6
3に記載の使用。
【請求項65】
ハプテン結合部位を含み、少なくとも2つの異なる標的と特異的に反応する多特異的ア
ンタゴニストの使用であって、前記標的が、(A)先天的免疫系の炎症促進性エフェクタ
ーと、(B)凝固因子と、(C)補体因子および補体調節タンパク質と、(D)炎症性障
害または免疫調節不全障害と特異的に関連する標的、または病的血管新生もしくはがんと
特異的に関連する標的であって、前記後者の標的が(A)でも、(B)でもまたは(C)
でもない標的とからなる群より選択され、ここで(i)前記標的の少なくとも1つが(A
)、(B)または(C)であり、(ii)前記多特異的アンタゴニストが、単一の多特異
的抗体を含む場合は、CD74が前記アンタゴニストの標的として排除され、そして(i
ii)前記多特異的アンタゴニストが、別個の抗体の組み合わせを含む場合、前記抗体の
1つがB細胞抗原を標的化し、かつもう一方の抗体がT細胞、形質細胞、マクロファージ
または炎症性サイトカインを標的化する組み合わせが排除され、そして前記抗体の1つが
CD20を標的化し、かつもう一方の抗体がC3bまたはCD40を標的化する組み合わ
せも排除され、
炎症性または免疫調節不全障害、病的血管新生もしくはがん、および感染性疾患である
状態の治療のための医薬であって、前記医薬が前記多特異的アンタゴニストの治療上有効
な量を含む医薬の製造における使用。
【請求項66】
前記多特異的アンタゴニストが、標的部位で融合することを可能にさせ;次いで、循環
している多特異的抗体を血流から除去させるか、またはクリアリング剤を投与し;次いで
、治療剤を含むハプテンを前記被験体に投与して、前記多特異的アンタゴニストのハプテ
ン結合部位に対する結合を可能にさせる、請求項63に記載の使用。
【請求項67】
前記治療剤が、放射性核種、ホウ素、免疫調節物質、ホルモン、ホルモンアンタゴニス
ト、酵素、酵素インヒビター、オリゴヌクレオチド、光活性治療剤、細胞毒性剤、抗体、
血管新生インヒビター、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項6
6に記載の使用。
【請求項68】
前記状態が自己免疫疾患ではない、請求項66に記載の使用。
【請求項69】
前記状態が自己免疫疾患である、請求項66に記載の使用。
【請求項70】
前記状態がクラスIII自己免疫疾患である、請求項66に記載の使用。
【請求項71】
前記状態が、敗血症または敗血性ショック、感染性疾患、神経障害、移植片対宿主病ま
たは移植片拒絶、急性呼吸窮迫症候群、肉芽腫性疾患、喘息、アテローム性動脈硬化症、
悪液質、病的血管新生、がん、血液凝固障害、座瘡、巨細胞性動脈炎または心筋虚血であ
る、請求項66に記載の使用。
【請求項72】
少なくとも2つの異なる標的と特異的に反応する多特異的アンタゴニストの使用であっ
て、前記標的が、(A)先天的免疫系の炎症促進性エフェクターと、(B)凝固因子と、
(C)補体因子および補体調節タンパク質と、(D)炎症性障害または免疫調節不全障害
と特異的に関連する標的、または病的血管新生もしくはがんと特異的に関連する標的であ
って、前記後者の標的が(A)でも、(B)でも、(C)でもない標的とからなる群から
選択され、ここで(i)前記標的の少なくとも1つが(A)、(B)または(C)であり
、(ii)前記多特異的アンタゴニストが、単一の多特異的抗体を含む場合は、CD74
が前記アンタゴニストの標的として排除され、そして(iii)前記多特異的アンタゴニ
ストが、別個の抗体の組み合わせを含む場合、前記抗体の1つがB細胞抗原を標的化し、
かつもう一方の抗体がT細胞、形質細胞、マクロファージまたは炎症性サイトカインを標
的化する組み合わせが排除され、前記抗体の1つがCD20を標的化し、かつもう一方の
抗体がC3bまたはCD40を標的化する組み合わせも排除され、
炎症性または免疫調節不全障害、病的血管新生もしくはがん、または感染性疾患である
状態の検出のための物質であって、前記物質が診断/検出物質の診断上有効な量で標識さ
れている物質の製造における使用。
【請求項73】
前記診断/検出が、診断用放射性核種、造影剤、蛍光標識および光活性物質からなる群
より選択される、請求項72に記載の使用。
【請求項74】
前記多特異的アンタゴニストが、標的部位で融合することを可能にさせ;次いで、循環
している多特異的抗体を血流から除去させるか、またはクリアリング剤を投与し;次いで
、前記標識された物質の上昇したレベルを、検出手段を用いて融合の部位で検出する、請
求項73に記載の使用。
【請求項75】
ハプテン結合部位を含み、少なくとも2つの異なる標的と特異的に反応する多特異的ア
ンタゴニストの使用であって、前記標的が、(A)先天的免疫系の炎症促進性エフェクタ
ーと、(B)凝固因子と、(C)補体因子および補体調節タンパク質と、(D)炎症性障
害または免疫調節不全障害と特異的に関連する標的、または病的血管新生もしくはがんと
特異的に関連する標的であって、前記後者の標的が(A)でも、(B)でも、(C)でも
ない標的とからなる群から選択され、ここで(i)前記標的の少なくとも1つが(A)、
(B)または(C)であり、(ii)前記多特異的アンタゴニストが、単一の多特異的抗
体を含む場合は、CD74が前記アンタゴニストの標的として排除され、そして(iii
)前記多特異的アンタゴニストが、別個の抗体の組み合わせを含む場合、前記抗体の1つ
がB細胞抗原を標的化し、もう一方の抗体がT細胞、形質細胞、マクロファージまたは炎
症性サイトカインを標的化する組み合わせが排除され、そして前記抗体の1つがCD20
を標的化し、かつもう一方の抗体がC3bまたはCD40を標的化する組み合わせも排除
され、
炎症性または免疫調節不全障害、病的血管新生もしくはがん、または感染性疾患である
状態の検出のための物質であって、前記物質が前記多特異的アンタゴニストの診断上有効
な量を含む物質の製造における使用。
【請求項76】
前記多特異的アンタゴニストが、標的部位で融合することを可能にさせ;次いで、循環
している多特異的抗体を血流から除去させるか、またはクリアリング剤を投与し;次いで
、診断/検出物質で標識されたハプテンを前記被験体に投与して、前記多特異的アンタゴ
ニストのハプテン結合部位に対する結合を可能し、次いで前記標識された多特異的アンタ
ゴニストの上昇したレベルが、融合部位で検出手段によって検出される、請求項75に記
載の使用。
【請求項77】
前記診断/検出物質が、診断用放射性核種、造影剤、蛍光標識、および光活性物質から
なる群より選択される、請求項76に記載の使用。

【公開番号】特開2013−79240(P2013−79240A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−248395(P2012−248395)
【出願日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【分割の表示】特願2007−545628(P2007−545628)の分割
【原出願日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(504149971)イミューノメディクス、インコーポレイテッド (48)
【氏名又は名称原語表記】IMMUNOMEDICS, INC.
【Fターム(参考)】