説明

炎症性疾患および状態を処置するためのシクロスポリン誘導体

本発明は、炎症性疾患および/または状態、例えば哺乳動物の眼におけるアレルギー性結膜炎、ブドウ膜炎または水晶体過敏性眼内炎の処置のための方法を提供し、上記方法は、処置を必要とする上記哺乳動物に、式(I)


(式中、Rは、S−Alk−R(式中、Alkはアルキレン連結基、好ましくはメチレンもしくはポリメチレン連結基またはポリアルケニレン連結基、例えばCからCアルケニレニル連結基であり、Rは、水素または非置換もしくは置換ヒドロカルビル基である)である)で表される化合物からなる群から選択される、治療上効果的な量の新規シクロスポリンA誘導体を投与することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(相互参照)
本出願は、2009年5月27日出願の米国仮特許出願第61/181,382号の利益を主張し、その開示全体は、このように具体的に参照することにより、本明細書に組み込まれる。
【0002】
(技術分野)
本発明は、眼および/または皮膚の疾患を含む炎症性疾患および状態の構成要素として炎症を有する、そのような眼および/または皮膚の疾患および状態を、シクロスポリン誘導体で処置するための方法に関する。特に、本発明は、ある特定の新規シクロスポリン誘導体を使用した、アレルギー性結膜炎、水分欠乏性ドライアイ状態、水晶体過敏性眼内炎およびブドウ膜炎の処置のための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(関連技術の説明)
炎症は、病原体、損傷した細胞、または刺激物質等の有害な刺激に対する、血管組織の複雑な生物学的反応である。炎症は、害を及ぼす刺激を除去するとともに組織の治癒プロセスを開始しようとする、生物の保護作用である。
【0004】
炎症がない場合、創傷および感染症は治癒せず、組織の進行性の破壊により、生物の生存に悪影響が及ぼされる。しかしながら、チェックされずに進行する炎症はまた、花粉症、アテローム性動脈硬化、および関節リウマチ等の疾患のホストへとつながり得る。そのため、炎症は、通常身体によりしっかりと制御される。
【0005】
炎症は、急性または慢性のいずれかに分類することができる。急性炎症は、有害な刺激に対する身体の初期の反応であり、血液から損傷組織への血漿および白血球の移動の増加により達成される。局所血管系、免疫系、および損傷組織内の様々な細胞に至るまで生物学的事象のカスケードが伝播し、炎症反応を成熟させる。慢性炎症として知られる長期の炎症は、炎症部位に存在する細胞の種類を大きく変化させることになるが、これは炎症プロセスからの組織の同時の破壊および治癒を特徴とする。
【0006】
急性炎症は、血漿および白血球による組織浸潤に起因する典型的な炎症徴候、つまり腫脹、赤み、痛み、熱および機能喪失を特徴とする。急性炎症は、害を及ぼす刺激が存在する限り生じ、一旦刺激が取り除かれる、破壊される、または瘢痕化により囲まれると停止する。
急性炎症のプロセスは、損傷組織への局所的血管により開始し、この血管は、血漿タンパク質および白血球を周囲組織へ滲出させるように変化する。組織への流体流の増加は、リンパ系がそれを補う能力を有していないため、炎症に関連した特徴的な腫脹を引き起こし、またその領域への血流の増加は、赤みを帯びた色および熱の上昇を引き起こす。血管はまた、血管を構成する内皮および基底膜を通して白血球を流出させるように変化する。組織内では、細胞は走化性勾配に従い移動して損傷部位に到達し、そこで細胞は、刺激を取り除いて組織を修復しようと試みることができる。
【0007】
一方、血漿由来炎症メディエーターとして知られる化学物質からなるいくつかの生物学的カスケード系は、炎症反応を伝播し成熟化させるように並行して作用する。これらの生物学的カスケード系は、補体系、凝固系および線維素溶解系を含む。
【0008】
最後に、炎症反応の下方制御が急性炎症を決定付ける。害を及ぼす刺激の除去により、プロセスを伝播するためには一定の刺激を必要とする炎症メカニズムの反応が停止する。さらに、多くの炎症メディエーターは半減期が短く、組織内で速やかに分解され、一旦刺激が除去されると、炎症反応の速やかな停止を補助する。
【0009】
慢性炎症は、同時活動性炎症、組織破壊、および修復の試みを特徴とする病態である。慢性炎症は、上述した急性炎症の典型的徴候を特徴としない。その代わりに、慢性的に炎症を起こした組織は、単核免疫細胞(単球、マクロファージ、リンパ球、および血漿細胞)の浸潤、組織破壊、および線維症の血管形成を含む治癒の試みを特徴とする。
【0010】
内因性の原因は、持続性急性炎症を含む。内因性の原因は多様であり、細菌感染、シリカ等の化学物質に対する長期の暴露、タバコの煙、または関節リウマチ等の自己免疫反応を含む。
急性炎症において、刺激の除去により、炎症を起こした組織への単球(適切に活性化されるとマクロファージとなる)の動員が停止し、既存のマクロファージがリンパ管を介して組織から出る。しかしながら、慢性的に炎症を起こした組織においては、刺激が持続し、したがって単球の動員が維持され、既存のマクロファージは所定の場所に繋ぎ止められ、マクロファージの増殖が刺激される。
【0011】
滲出性構成要素は、フィブリンおよび免疫グロブリン(抗体)等の重要なタンパク質を含有する血漿流体の、炎症を起こした組織への移動に関与する。この移動は、血漿の正味の損失をもたらす、血管の化学的に誘導された膨張および透過性の増加により達成される。組織への流体の集積が増加すると、浮腫が引き起こされる。
【0012】
急性炎症は、血管拡張、透過性の増加、および血流の停滞を含む、様々な炎症メディエーターの作用により誘導される顕著な血管の変化を特徴とする。血管拡張は、まず細動脈レベルで生じ、毛細血管レベルに進行し、存在血液量の正味の増加をもたらし、赤みおよび炎症の熱を引き起こす。血管透過性の増加は、血漿の組織中への移動をもたらし、血液中の細胞濃度の増加に起因する鬱血、つまり細胞で充填された拡張した血管を特徴とする状態が生じる。鬱血は、白血球を内皮に沿って移動させるが、これは組織中への白血球の動員にとって重要なプロセスである。通常の流動血液は、血管の周縁部に沿ったせん断力が血液中の細胞を血管の中央部に移動させるため、これを妨げる。
【0013】
炎症に関連した異常は、様々な人間の疾患の根底にある、多数の無関係な障害の群を含む。免疫系は、多くの場合、免疫性障害に関与し、アレルギー反応およびいくつかのミオパシーの両方において実証され、多くの免疫系障害は、異常な炎症をもたらす。炎症プロセスにおける病因を有する非免疫性疾患は、癌、アテローム性動脈硬化、および虚血性心疾患を含むと考えられている。
【0014】
多種多様なタンパク質が炎症に関与し、それらのいずれも、そのタンパク質の正常な機能および発現を低下させる、またはその他の様式で脱制御する遺伝子変異を受けやすい。
【0015】
炎症に関連する障害の例には、以下が含まれる。
喘息
自己免疫性疾患
慢性炎症
慢性前立腺炎
糸球体腎炎
過敏症
炎症性腸疾患
骨盤内炎症性疾患
再かん流傷害
関節リウマチ
移植片拒絶反応
脈管炎
【0016】
炎症反応は、組織への不必要な損傷を防止するために、必要とされなくなった場合は能動的に終了されなければばらない。それが行われないと、慢性炎症、細胞破壊、および炎症を起こした組織の治癒の試みがもたらされる。炎症を終了させるために使用される1つの内在メカニズムは、生体内での炎症メディエーターの短い半減期である。炎症メディエーターは、非機能的構成要素まで破壊されるまでに、その標的に影響する時間枠が限られているため、その採用を伝播するためには一定の炎症刺激が必要である。
【0017】
炎症を終了させるように機能する能動的メカニズムは、以下を含む。
マクロファージからのTGF−β
抗炎症性リポキシン
炎症性分子、例えばロイコトリエンの阻害。
【0018】
炎症性構成要素を有する眼の特異的な疾患および状態は、アレルギー性角膜炎、水晶体過敏性眼内炎およびブドウ膜炎を含む。これらの疾患および状態は、眼の後眼房および前眼房の両方ならびに硝子体において、眼のいたるところに位置し得る。
【0019】
ブドウ膜の炎症であるブドウ膜炎は、アメリカ合衆国における視力障害の約10%を占めている。水晶体過敏性眼内炎は、人間の自己免疫性疾患である。
【0020】
全ブドウ膜炎は、眼のブドウ膜(血管)層全体の炎症を指す。後部ブドウ膜炎は、一般に脈絡網膜炎を指し、前部ブドウ膜炎は、虹彩毛様体炎を指す。これらの炎症の炎症産物(すなわち、細胞、フィブリン、過剰タンパク質)は、眼の流体空間内、すなわち、前眼房、後眼房および硝子体空間内に一般に見られるとともに、炎症反応に密に関与する組織に浸潤する。ブドウ膜炎は、眼に対する手術または外傷後に;自己免疫性傷害、すなわち関節リウマチ、ベーチェット病、強直性脊椎炎、サルコイドーシスの構成要素として、孤立した免疫媒介性眼傷害、すなわち既知の病因に関連していない扁平部炎、虹彩毛様体炎等として;および、抗体−抗原複合体をブドウ膜組織内に堆積させるある特定の全身性疾患後に生じ得る。これらの傷害は、一緒になって、非伝染性ブドウ膜炎を表す。
【0021】
シクロスポリンは、関節炎(例えば関節リウマチ、慢性進行性関節炎(arthritis chronica progrediente)および変形性関節炎)およびリウマチ性疾患等の自己免疫性構成要素を含む炎症状態を処置するために使用されている。シクロスポリンが提案されている、または適用されている具体的な自己免疫性疾患は、自己免疫性血液疾患(例えば、溶血性貧血、再生不良性貧血、赤芽球癆および特発性血小板減少症を含む)、全身性紅斑性狼瘡、多発性軟骨炎、スクレロドーマ(sclerodoma)、ウェーゲナー肉芽腫、皮膚筋炎、慢性活動性肝炎、重症筋無力症、乾癬、スティーブンス・ジョンソン症候群、特発性スプルー(idiopathic sprue)、自己免疫性炎症性腸疾患(例えば、潰瘍性大腸炎およびクローン病を含む)、内分泌性眼球突出症、グレーブス病、サルコイドーシス、多発性硬化症、原発性胆汁性肝硬変、若年性糖尿病(I型糖尿病)、ブドウ膜炎(前部および後部)、乾性角結膜炎および春季カタル、間質性肺線維症、乾癬性関節炎ならびに糸球体腎炎(例えば、特発性ネフローゼ症候群または微小変化ネフロパシーを含む、ネフローゼ症候群を有するものおよび有さないもの)を含む。(米国特許第6,346,511号を参照されたい。)
【0022】
したがって、炎症性疾患および状態の処置に有用な化合物を開発することが望ましいことが理解される。本明細書に開示される化合物は、様々な炎症性疾患および状態を処置するために使用することができることが判明した。
【0023】
そのような化合物は、PCT出願第98−379455号、第98−379456号および第98−379457号に記載の、メチルチオ置換シクロスポリンAおよび他のアルキルチオ置換シクロスポリンA誘導体を含み、これらは、経口的、非経口的、経直腸的または吸引により投与されると、ある特定のレトロウイルス、特にAIDS(後天性免疫不全症候群)およびARC(AIDS関連症候群)に対し活性であることが判明した。さらに、これらの化合物は、概して、非常に弱い免疫抑制作用しか有さず、非細胞毒性的および非細胞増殖抑制的濃度において抗レトロウイルス活性を示すことが判明した。これらの化合物は、レトロウイルスに対して活性な他の薬剤(例えば、逆転写酵素、プロテアーゼ、インテグラーゼ、HIV複製およびヌクレオカプシド)との相乗作用を有することが主張されている。(米国特許第5,944,299号、第5,977,067号、第5,965,527号および第5,948,755号も参照されたい。)
【0024】
これらの化合物はまた、米国特許第6,350,442号および第6,254,860号において、眼の疾患および状態の処置における使用が主張されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
したがって、本発明の1つの目的は、その構成要素として炎症を有する疾患および状態を含む、炎症性疾患および状態を、シクロスポリン誘導体で処置することである。
【0026】
本発明の別の目的は、アレルギー性結膜炎等の眼の疾患および状態を処置するためのシクロスポリンA誘導体を提供することである。
【0027】
本発明の1つの目的は、その構成要素として炎症を有する眼の疾患および状態を含む、眼の疾患および状態を、シクロスポリン誘導体で処置することである。
【0028】
本発明の別の目的は、その構成要素として炎症を有する皮膚の疾患および状態を含む、皮膚の疾患および状態を、シクロスポリン誘導体で処置することである。
【0029】
本発明の別の目的は、乾癬および皮膚炎等の皮膚の状態を処置することである。
本発明の別の目的は、本明細書を読むことにより明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0030】
本発明は、哺乳動物、例えば人間の炎症性疾患、傷害または状態、例えば眼の炎症性疾患、傷害または状態、例えばアレルギー性結膜炎、ブドウ膜炎、または水晶体過敏性眼内炎を処置するための方法であって、下記式のシクロスポリンA誘導体からなる群から選択される、治療上効果的な量の化合物を、それを必要とする患者に投与する、例えばそのような患者の眼に局所的または全体的に投与するステップを含む方法を提供する。本発明は、好ましくは、眼の疾患または状態を、シクロスポリンA誘導体からなる群から選択される、治療上効果的な量の化合物で処置するための方法を提供する。本発明の方法(複数を含む)において利用されるシクロスポリンA誘導体は、式
【化1】


(式中、Rは、S−Alk−R(式中、Alkは、アルキレン連結基、好ましくはメチレンもしくはポリメチレン連結基、例えばCからCポリメチレン連結基、またはポリアルケニレン連結基、例えばCからCアルケニレニル連結基であり、Rは、水素または非置換もしくは置換ヒドロカルビル基である)で表される。好ましくは、Rは、窒素含有ヒドロカルビル基、例えば、2個または3個の窒素原子を有する多窒素含有ヒドロカルビル基、すなわちアミジンまたはグアニジン含有ヒドロカルビル基である。特に、Rは、次の式の基からなる群から選択され得る:Rは、−N=C(NR)(NR)、または
−NR[(NR)C=NR]、すなわちグアニジン、または−N=C(R)(NR10)、すなわちアミジンであり、R−R10は、H、Alk、Arもしくは(CH)nAr(式中、Arは、アリール基であり、nは、1から13の整数である)であるか、または、RおよびR、もしくはRおよびR、もしくはRおよびR、もしくはRおよびR、もしくはRおよびR10、もしくはRおよびRは、一緒になって、−(CH−(式中、xは、2から5の整数である)、例えばCH−CH−もしくは−CH−CH−CH−であってもよい。
【0031】
は、ヒドロキシル、低級アルキルおよびヒドロキシル置換低級アルキルからなる群から選択され得る。
【0032】
例えば、Rは、−S(CHN=C(NHであってもよく、Rは、−CHCH(CH、−CHC(OH)(CH、−CH(CHまたは−CH(CH)CHCHであってもよい。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明は、例えば罹患した眼に対する、下記式
【化2】


(式中、RおよびRは、上に定義された通りである)により表されるシクロスポリン誘導体の局所適用による、関連した炎症性構成要素を有する目の疾患および状態を含む炎症性疾患および状態の治療のための方法を提供する。特に、Rは、S−Alk−R(式中、Alkは、アルキレン連結基、好ましくはメチレンもしくはポリメチレン連結基、例えばCからCポリメチレン連結基、またはポリアルケニレン連結基、例えばCからCアルケニレニル連結基)であり、Rは、ヒドロキシル、低級アルキルおよびヒドロキシル置換低級アルキルからなる群から選択される。
【0034】
本発明の第1の態様において、Rは、−N=C(NR)(NR)もしくは−NR[(NR)C=NR]、すなわちグアニジン、または−N=C(R)(NR10)、すなわちアミジンであり、R−R10は、H、Alk、Arもしくは(CH)nAr(式中、Arは、アリール基であり、nは、1から13の整数である)であるか、または、RおよびR、もしくはRおよびR、もしくはRおよびR、もしくはRおよびR、もしくはRおよびR10、もしくはRおよびRは、一緒になって、
−(CH−(式中、xは、2から5の整数である)、例えば−CH−CH−もしくは −CH−CH−CH−であってもよい。
【0035】
本発明の第2の態様において、Rは、水素原子または式(Ia):
−S−Alk−R11 (Ia)
(式中、
Alk−R11は、メチル基を表し、あるいは、
Alkは、C−C直鎖もしくは分岐状アルキレン基またはC−Cシクロアルキレン基を表し、
11は、
水素原子またはヒドロキシル、カルボキシルもしくはアルキルオキシカルボニル基、または−NR1213基(式中、同一または異なるR12およびR13は、水素原子またはフェニル、アルキル、C−CアルケニルもしくはC−Cシクロアルキル基を表し、前記基は、ハロゲン原子、アルキルオキシ、アルキルオキシカルボニル、アミノ、アルキルアミノおよびジアルキルアミノ基から選択される基で任意選択で置換され;あるいは、
12およびR13は、ベンジルまたは飽和もしくは不飽和ヘテロ環式基を表し、前記ヘテロ環式基は、5個から6個の環員および1個から3個のヘテロ原子を含有し;
あるいは、R12およびR13は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、飽和または不飽和4員から6員ヘテロ環を形成し、前記ヘテロ環は、窒素、酸素および硫黄から選択される追加的ヘテロ原子を有し、前記飽和または不飽和ヘテロ環は、アルキル、フェニルまたはベンジル基で任意選択で置換されている)を表す)の基を表し、あるいは、Rは、式(Ib):−N(R14)−(CH−NR1213(式中、R12およびR13は、上に定義された通りであり、R14は、水素原子またはアルキル基であり、nは、2から4の範囲の整数である)の基であり、
は、ヒドロキシル、低級アルキルおよびヒドロキシル置換低級アルキル
(ただしRが水素原子である場合、Rはアルキルブチル基ではなく、上で定義されたアルキル部分または基は、直鎖または分岐状であり、1個から4個の炭素原子を含有する)、または薬学的に許容されるその塩である。
【0036】
本発明のこの第2の態様のシクロスポリンA誘導体において、通常シクロスポリンAの1位に存在するトランスブテン部分は、R15で置き換えられていてもよく、R15は、式
−CHCHCHCH−R16(Ic)または−CHSR17(Id)基を表し、式中、R16は、アルキルチオ、アミノアルキルチオ、アルキルアミノアルキルチオ、ジアルキルアミノアルキルチオ、ジアルキルアミノアルキルチオ、ピリミジニルチオ、チアゾリルチオ、N−アルキルイミダゾリルチオ、ヒドロキシアルキルフェニルチオ、ヒドロキシアルキルフェニルオキシ、ニトロフェニルアミノまたは2−オキソピリミジン−1−イル基を表し、R17は、アルキル基を表す。
【0037】
本発明はまた、哺乳動物、例えば人間の炎症性疾患、傷害または状態、例えば眼の炎症性疾患、傷害または状態、例えばアレルギー性結膜炎、ブドウ膜炎、または水晶体過敏性眼内炎の処置であって、上記シクロスポリンA誘導体からなる群から選択される、治療上効果的な量の化合物を、それを必要とする患者に投与する、例えばそのような患者の眼に局所的または全体的に投与するステップを含む処置における局所適用のための薬学的組成物を提供する。
【0038】
本発明の説明および請求のために、以下の用語は以下の意味を有するものとする。
【0039】
「アルキル」は、直鎖、分岐状または環式飽和脂肪族炭化水素を指す。好ましくは、アルキル基は、1個から12個の炭素を有する。より好ましくは、アルキルは、1個から7個の炭素、最も好ましくは1個から4個の炭素の低級アルキルである。典型的なアルキル基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル等を含む。アルキル基は、ヒドロキシル、シアノ、アルコキシ、=O、=S、NO、ハロゲン、ジメチルアミノおよびSHからなる群から選択される1個以上の置換基で任意選択で置換されていてもよい。
【0040】
「アルケニル」は、少なくとも1つの炭素環二重結合を含有する、直鎖、分岐状または環式不飽和炭化水素基を指す。好ましくは、アルケニル基は、2個から12個の炭素を有する。より好ましくは、アルケニルは、2個から7個の炭素、最も好ましくは2個から4個の炭素の低級アルキルである。アルケニル基は、ヒドロキシル、シアノ、アルコキシ、O、S、NO、ハロゲン、ジメチルアミノおよびSHからなる群から選択される1個以上の置換基で任意選択で置換されていてもよい。
【0041】
「アリール」は、共役π電子系を有する少なくとも1個の環を有する芳香族基を指し、炭素環式アリール、ヘテロ環式アリールおよびビアリール基を含む。アリール基は、ハロゲン、トリハロメチル、ヒドロキシル、SH、OH、NO、アミン、チオエーテル、シアノ、アルコキシ、アルキルおよびアミノからなる群から選択される1個以上の置換基で任意選択で置換されていてもよい。
【0042】
「アルカリル」は、アリール基に共有結合したアルキルを指す。好ましくは、アルキルは、低級アルキルである。
「アルコキシ」は、「O−アルキル」基を指す。
【0043】
「tBoc」は、t−ブチルオキシカルボニル保護基を指す。
「炭素環式アリール」は、環原子が炭素であるアリール基を指す。
【0044】
「ヘテロ環式アリール」は、環原子として1個から3個のヘテロ原子を有し、環原子の残りは炭素であるアリール基を指す。ヘテロ原子は、酸素、硫黄および窒素を含む。
【0045】
本発明の方法において使用されるシクロスポリンA誘導体は、以下のように調製される:
、RおよびRが水素であり、Rが水素、アルキル、置換アルキルまたはアリールである化合物は、式(I)(式中、Xは、脱離基であり、Pは、保護基である)の化合物を、式(II)の化合物と、メタノール等の好適な溶媒中で反応させ、式(III)の化合物を得ることにより調製され得る。式Iの化合物において、保護基の典型的な例は、X=塩素、MeS、MeSO2、1−イミダゾリル、特に1−ピラゾリルである場合である。保護基Pは、好ましくは、tert−ブチルオキシカルボニル基(tBoc)基である。
【0046】
【化3】

【0047】
式(III)の化合物は、様々な条件下で脱保護され、式(IV)の化合物を提供し得る。例えば、P=tert−ブチルオキシカルボニル基(tBoc)である場合、これは、メタンスルホン酸等の酸を使用して、酸性条件下で除去され得る。
【0048】
式(V)(式中、Rは、水素、アルキル、置換アルキルまたはアリールであり、Rは、アルキル、置換アルキルまたはアリールである)の化合物は、式(VI)(式中、Xは、脱離基であり、Pは、保護基である)の化合物を、式(II)の化合物と、メタノール等の適切な溶媒中で反応させ、式(VII)の化合物を得ることにより調製され得る。
【0049】
式(VI)の化合物において、保護基の典型的な例は、X=塩素、MeS、MeSO2、1−イミダゾリル、特に1−ピラゾリルである場合である。保護基Pは、好ましくは、tert−ブチルオキシカルボニル基(tBoc)基である。
【0050】
【化4】

【0051】
例えば、WO/2003/051797において、N,N′−ジ−tBoc−N−メチル−1H−ピラゾール−1−カルボキサミジンを使用して、非関連化学ファミリーのN−メチルグアニジンが調製されている。
【0052】
本発明の他の化合物は、適切な場合には、合成方法に適合する好適な保護基による関連した合成方法を使用して、同様の様式で作製され得る。
【0053】
式(X)(式中、Rは、−N=C(R)−NR10(アミジン)(式中、Rは、水素、アルキル、置換アルキルもしくはアリールであり、RおよびR10は、アルキル、置換アルキルもしくはアリールであってもよく、または、RおよびR10は、環を形成し得る)である)の化合物は、式(VIII)の化合物を、式(IX)の化合物と反応させ、式(X)の化合物を得ることにより調製され得る。
【0054】
11は、好ましくは、低級アルキルであり、化合物(VIII)の典型例は、ジメチルホルムアミドジメチルアセタール(DMF.DMA)およびジメチルアセトアミドジメチルアセタール(DMA.DMA)である。
【0055】
【化5】

【0056】
以下は、上述の一般手順による本発明のある特定の化合物の調製の具体例である。
3−[(2−アミノエチルチオ]−シクロスポリンAのグアニジンおよびアミジン類似体
実施例A
3−[(2−グアニジル)−エチルチオ]−シクロスポリンA(III)

【0057】
3−[(2−アミノエチルチオ]−シクロスポリンA*−(I))(200mg、0.16mmol)のメタノール(20mL)中の溶液に、ジ−tBoc−ピラゾールカルボキサミジン(250mg、0.8mmol)を添加し、試薬を互いに18時間撹拌した。この後、ジ−Tt−ピラゾールカルボキサミジン(100mg、0.32mmol)をさらに添加し、反応物をさらに3時間撹拌した。次いで、反応物を真空下で減量し、ジクロロメタン中に再溶解し、0.5Mクエン酸で洗浄し、有機層をMgSO上で乾燥させ、真空下で減量した。次いで生成物を、ジエチルエーテルで溶離する10g SPEカートリッジ上でクロマトグラフィーカラムにより精製し、90mg(40%)の所望の生成物(II)を単離した。
【0058】
合成されるグアニジンおよびアミジンの例の第1の要素として、また最終生成物(III)の特性決定において予測される困難に起因して、この段階でジ−tBoc保護グアニジン(II)を十分かつ徹底的に特性決定し、次いでこの材料を酸加水分解により遊離グアニジン(III)に用いることを決定した。次いで、3−[(2−アミノエチルチオ]−シクロスポリンAから作製されたこのグアニジンおよびアミジンサブクラスにおける続く類似体を、主にMSにより特性決定した。
【0059】
化合物(II)は、H、13C、DEPT NMRにより分析し、続いて一連の2−D NMR実験、HMQC、HMBCおよびDEPT−HMQCにより分析した。
【0060】
3−[(2−グアニジル)−エチルチオ]側鎖は、1Dおよび2D NMRにより確認した。分析は、Bruker DRX500分光器において、CDCl溶液中300Kで行った。
【0061】
【化6】


H NMR主要共鳴:
δ=1.50、1.51ppm(2つの一重項、2×Boc、18H、6×CH3)
δ=5.89ppm、(一重項、サルコシン、1H)
2Dスペクトル
【0062】
H検出異核多重量子コヒーレンス(HMQC)、異核多重結合異核間多結合相関(HMBC)および編集後の異核種単一量子コヒーレンス(DEPT−HSQC)実験を使用して、結合性および帰属を行って3−[(2−グアニジル)−エチルチオ]側鎖の存在を確認することができる。
H(3)から2’(多重項、H 2.84ppm、2H)。
2’から3’(多重項、H 3.67ppm、2H)。
3’からNH 4’(三重項JHH 5.8Hz、H 8.67ppm、1H)。
【0063】
ジ−tBoc保護3−[(2−グアニジル)−エチルチオ]−シクロスポリンA(II)(21mg、0.0138mmol)のジクロロメタン(0.3mL)中の溶液に、トリフルオロ酢酸(0.3mL)を添加し、溶液を室温で1時間撹拌した。溶液を濃縮すると、生成物(III)が白色固体として得られた(20mg、100%)。
【0064】
MS(E)による分析は、提案された構造と一致する1320.2(M+H)の質量を示した。
実施例B.
3−[(2−N,N−ジメチルホルムアミジニル)−1−チオエチル]−シクロスポリンA(III)
【0065】
【化7】

【0066】
3−(1−チオエチルアミン)シクロスポリンA(0.64g、0.5mmol)およびN,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタールのTHF20mL中の混合溶液を、2時間還流した。真空下で溶媒を除去した後、溶離液としてメチレン/メタノール(10:1)を使用して、残渣をシリカゲルカラムに供すると、純粋な生成物300mgが得られた(収率:45.0%)。
【0067】
MS(E+)は、提案された構造と一致する1332.82(M+H)の質量を示した。
【0068】
他の方法は、出発材料および中間体等を調製する方法と同様、当技術分野における化学者に明らかである。
【0069】
本発明によれば、シクロスポリンA誘導体は、例えば罹患した眼に、任意の有効濃度で適用することができる。上記シクロスポリンA誘導体が局所的眼科組成物として眼に適用される場合、組成物は、0.01重量パーセントから飽和濃度(例えば、20重量パーセント超)の、薬学的に許容される賦形剤中の上記シクロスポリンA誘導体を含み得る。0.01重量パーセントから50重量パーセント、好ましくは0.1重量パーセントから20重量パーセントの、薬学的に許容される賦形剤中のシクロスポリンA誘導体が使用されてもよい。そのような薬学的に許容される賦形剤は、例えば、動物油、植物油、適切な有機もしくは水性溶媒、人工涙液、天然もしくは合成ポリマー、または、シクロスポリンA誘導体を封入する適切な膜である。
【0070】
これらの薬学的に許容される賦形剤の具体例は、オリーブ油、落花生油、ヒマシ油、鉱物油、石油ゼリー、ジメチルスルホキシド、クレモホール、Miglyol182(Dynamit Nobel Kay−Fries Chemical Company、Mont Vale、N.J.から市販されている)、アルコール(例えば、エタノール、n−プロピルアルコール、もしくはイソ−プロピルアルコール)、リポソームもしくはリポソーム様生成物、またはシリコーン流体である。好ましい賦形剤は、ジメチルスルホキシドおよびオリーブ油である。任意の好適な賦形剤の少なくとも2つの混合物が使用されてもよい。
【0071】
本発明の実践において有利に使用され得る人工涙液の例は、等張食塩水、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびヒドロキシエチルセルロース等のセルロースエーテル、ポリビニルアルコール、ならびに利用可能な人工涙溶液である。
【0072】
有用なポリマー賦形剤の例は、ポリオキシエチル化ヒマシ油である。
本発明の実践において有利に使用され得る薬学的に許容される膜の例は、ミクロドン、人工脂質膜、ポリビニルアルコール、またはメチルセルロースである。
【0073】
シクロスポリンA誘導体は、効果的な量の誘導体を含有する点眼薬(溶液もしくは懸濁液)または眼軟膏として、有利に局所投与される。本発明の実践において、0.01重量パーセントから50重量パーセント、好ましくは0.1重量パーセントから20重量パーセントの濃度のシクロスポリンA誘導体が使用される。
【0074】
本発明の方法によれば、シクロスポリンA誘導体のうちの少なくとも1つが、必要とされる処置の程度を提供するのに必要な任意の量で局所投与される。例えば、効果的な量のシクロスポリンA誘導体、例えば0.01重量パーセントから50重量パーセント、好ましくは0.1重量パーセントから20重量パーセントのシクロスポリンA誘導体を含有する5マイクロリットルから1ミリリットルの溶液、懸濁液、または軟膏が、有利に使用される。
【0075】
本発明の実践により、数々の利点がもたらされる。本発明の方法は、全身性の前の反応の活性化を局所的に防止し得るという点で有利である。患者の涙欠乏眼に対するシクロスポリンA誘導体の局所投与は、眼内の涙産生を増加させる。したがって、そのような処置は、さらに、角膜瘢痕、角膜潰瘍、角膜もしくは結膜の炎症、糸状角膜炎、粘液膿性排出物および角膜の脈管化等の、涙欠乏およびKCSにより悪化した角膜および結膜傷害を矯正するように機能する。さらに、シクロスポリンA誘導体は、免疫反応ならびに肉芽形成および新血管形成を直接減少させる。
【0076】
実施例1
この実施例は、ジャーカットT細胞機能の調節における、本発明の方法において利用されたシクロスポリン類似体の、シクロスポリンAに対する相対的効能を比較する。
【0077】
A.T細胞増殖の阻害
この実験において、10μMで48時間の%生存細胞を、WSTアッセイ(水溶性テトラゾリウム)により決定する。
【表1】

【0078】
この実験の結果は、本発明の方法において利用されたシクロスポリン類似体が、シクロスポリンAと同程度またはそれ以上に良好であることを示している。
【0079】
B.T細胞アポトーシスの阻害
10μM化合物濃度で24時間のインキュベーション期間でのアポトーシスT細胞のパーセンテージ(%)を決定する。
【表2】

【0080】
この場合も、化合物CsA−A1は、シクロスポリンAよりも驚異的に大きな効果を示している。
【0081】
C.T細胞によるIL−2産生の抑制
【0082】
10μM化合物濃度で24時間のインキュベーション期間でのIL−2産生のパーセンテージ(%)阻害を決定する。
【表3】

【0083】
驚くべきことに、この実験においては、化合物CsA−A1は、シクロスポリンAと比較して同等の有効性を示している。
【0084】
実施例1に記載の実験の結果、CsA−A1をさらなる研究に選択した。
【0085】
実施例2
この実施例は、眼炎症の生体内モデルにおける、本発明の方法において利用された最も好ましいシクロスポリンA誘導体であるCsA−A1の、シクロスポリンAに対する相対的効能を比較する。
【0086】
A.ラットEIUモデル:急性眼内炎
ラットの足裏部にLPS(100μg/ラット.)を注射した。以下の群のそれぞれにおいて、5匹のラットを処置した。局所ビヒクルは、Restasisビヒクルであった。
【0087】
全身性ビヒクルは、以下の通りであった。
【表4】

【0088】
【表5】

【0089】
血液および房水の試料は、LPS注射から24時間後に収集および分析した。細胞の組織学もまた記録した。結果を図1Aに示す。図1AからEにおいて観察され得るように、この実験において、CsA−A1は、局所的および/または全身的に適用された場合、急性眼内炎の阻害においてシクロスポリンAと同様の効能を示した。
【0090】
この実施例は、眼炎症の生体内モデルにおける、本発明の方法において利用された最も好ましいシクロスポリンA誘導体であるCsA−A1の、シクロスポリンAに対する相対的効能を比較する。
【0091】
B.ラットEAUモデル:慢性眼内炎
ラットをR16(RIBP抗原性ペプチド、100μg/ラット)で免疫化した。次いで、ラットにAlzet Pumpを装着し、以下の試験試料を5mg/kg/日で送達するか、または試験試料を1日1回、10mg/kgで腹腔内注射した。以下の群のそれぞれにおいて、5匹のラットを処置した。ビヒクルは以下の通りであった。
【0092】
【表6】

【0093】
生体内蛍光光度分析を、免疫化後9日、12日および14日目に行った。14日目に水性試料および眼球を収集して分析した。
【0094】
結果を図2に示す。図2Aから2KEにおいて観察され得るように、この実験において、CsA−A1は、腹腔内注射により適用された場合、急性眼内炎の阻害においてシクロスポリンAと同様の効能を示した。しかしながら、ビヒクルに対するより低い溶解度の結果として、Alzet Pumpにより適用された場合はより効果的でないようであった。
【0095】
ラットEAUモデルは、自己免疫媒介炎症状態を示す。実際に、ブドウ膜炎は、若年性関節リウマチ(MS)、炎症性関節炎、乾癬性関節炎、多発性硬化症(MS)、炎症性腸疾患および全身性紅斑性狼瘡に先行するか、それらを伴うか、またはそれらの後に発現する。これらの慢性炎症状態の病因は、明確に理解されていないが、証拠は、例えば、それぞれ、ブドウ膜および/または網膜抗原、ブドウ膜炎に罹患した患者の中枢神経系または関節の構成要素内のミエリンタンパク質、MSおよびRA等の罹患組織内に存在する自己反応性T細胞および自己抗原を認識する抗体が慢性炎症性反応することを示唆している。いかなる場合においても、遺伝的素因(例えば、HLAをエンコードする遺伝子における変異)における環境因子(例えば、ウイルスまたは細菌感染)は、自己寛容性を破壊し、疾患の発症を誘引する。この概念は、自己免疫媒介疾患のEAUおよび他のモデルにおいて例証される。S−抗原または光受容体間レチノイド結合タンパク質(IRBP)を含むブドウ膜または網膜抗原で免疫化されたLewisラットは、後部ブドウ膜炎に罹患した患者と比較して、類似した臨床学的および組織学的疾患プロファイルを示す。II型コラーゲンで免疫化された遺伝的に感受性の強い系統は、関節リウマチに罹患した患者との組織学的および臨床学的類似性を示す。同様に、ミエリンペプチドでの免疫化は、CNSの白質路内のミエリン損失および麻痺を含むMSの免疫病原性を模倣し、これらのマウスはまた、ブドウ膜炎を発症する。
【0096】
本発明のさらなる目的は、本発明に寄与する追加的特徴および本発明からもたらされる利点とともに、本発明の以下の実施例から明らかとなる。
【0097】
上記説明は、本発明の実践に使用され得る具体的方法および組成物の詳細を示し、企図される最良の形態を表している。したがって、文章中において上記がいかに詳細に示され得るとしても、本発明の全体的な範囲を制限するものとして解釈されるべきではなく、本発明の境界は、添付の特許請求の範囲の法的な解釈に準拠するものとする。特に、本発明の方法は、上記式の特定のシクロスポリンA誘導体の使用とともに説明されたが、本発明の方法において使用され得る新規シクロスポリン誘導体は、さらに、3−置換イミノアルキルチオシクロスポリンA誘導体、好ましくは3−置換ジアミノイミノアルキルチオシクロスポリンA誘導体、例えば((R)−(ジアミノ)イミノアルキルチオ−Sar)−(4’−ヒドロキシ−MeLeu)シクロスポリンA、((R)−(アルキル)(ジアルキルアミノ)イミノアルキルチオ−Sar)−(4’−ヒドロキシ−MeLeu)−シクロスポリンA、((R)−(アルキル)(ジアルキルアミノ)イミノアルキルチオ−Sar)−シクロスポリンA誘導体および((R)−(ジアミノ)イミノアルキルチオ−Sar)−シクロスポリンA誘導体を含む。
【0098】
本発明は、以下のように要約することができる。
1.哺乳動物の炎症性疾患、障害または状態の処置のための方法であって、それを必要とする患者に、以下の式:
【化8】


(式中、Rは、S−Alk−R(式中、Alkは、アルキレン連結基であり、Rは、水素または非置換もしくは置換ヒドロカルビル基である)である)で表される化合物からなる群から選択される、治療上効果的な量のシクロスポリンA誘導体を投与するステップを含む方法。
2.Alkは、メチレンまたはCからCアルケニレニル連結基である、1に記載の方法。
3.Rは、メチレンまたはCからCポリメチレン連結基である、1に記載の方法。
4.Rは、CからCアルケニレニル連結基である、1に記載の方法。
5.Rは、−N=C(NR)(NR)もしくは−NRC(NR)(C=NR)であり、R−Rは、H、Alk、Arもしくは(CH)nAr(式中、Arは、アリール基であり、nは、1から13の整数である)であるか、または、RおよびRもしくはRおよびRもしくはRおよびRもしくはRおよびRは、一緒になって、−CH−CH−もしくは−CH−CH−CH−であってもよい、1に記載の方法。
6.上記シクロスポリンA誘導体は、3−置換ジアミノイミノアルキルチオシクロスポリンA誘導体である、1に記載の方法。
7.上記シクロスポリンA誘導体は、((R)−(ジアミノ)イミノアルキルチオ−Sar)−(4’−ヒドロキシ−MeLeu)シクロスポリンA誘導体、((R)−(アルキル)(ジアルキルアミノ)イミノアルキルチオ−Sar)−(4’−ヒドロキシ−MeLeu)−シクロスポリンA、((R)−(アルキル)(ジアルキルアミノ)イミノアルキルチオ−Sar)−シクロスポリンA誘導体および((R)−(ジアミノ)イミノアルキルチオ−Sar)−シクロスポリンA誘導体からなる群から選択される、1に記載の方法。
8.上記シクロスポリンA誘導体は、1に記載の化合物の群から選択され、Rは、−S(CHN=C(NHであり、Rは、−CHCH(CH、−CHC(OH)(CH、−CH(CHまたは−CH(CH)CHCHである、1に記載の方法。
9.化合物は、0.1重量%から20重量%の化合物および薬学的に許容される賦形剤を含む組成物として投与される、1に記載の方法。
10.薬学的に許容される賦形剤は、動物油および植物油からなる群から選択される、9に記載の方法。
11.薬学的に許容される賦形剤は、オリーブ油、落花生油、ヒマシ油、鉱物油、石油ゼリー、ジメチルスルホキシド、アルコール、シリコーン流体およびこれらの混合物からなる群から選択される、9に記載の方法。
12.Rは、水素原子または式(Ia):
−S−Alk−R11(Ia)
(式中、
Alk−R11は、メチル基を表し、あるいは、
Alkは、C−C直鎖もしくは分岐状アルキレン基またはC−Cシクロアルキレン基を表し、
11は、
水素原子またはヒドロキシル、カルボキシルもしくはアルキルオキシカルボニル基、または
−NR1213基(式中、同一または異なるR12およびR13は、水素原子またはフェニル、アルキル、C−CアルケニルもしくはC−Cシクロアルキル基を表し、当該基は、ハロゲン原子、アルキルオキシ、アルキルオキシカルボニル、アミノ、アルキルアミノおよびジアルキルアミノ基から選択される基で任意選択で置換され;あるいは、
12およびR13は、ベンジルまたは飽和もしくは不飽和ヘテロ環式基を表し、当該ヘテロ環式基は、5個から6個の環員および1個から3個のヘテロ原子を含有し;
あるいは、R12およびR13は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、飽和または不飽和4員から6員ヘテロ環を形成し、当該ヘテロ環は、窒素、酸素および硫黄から選択される追加的ヘテロ原子を有し、上記飽和または不飽和ヘテロ環は、アルキル、フェニルまたはベンジル基で任意選択で置換されている)を表す)の基を表し、あるいは、Rは、式(Ib):−N(R14)−(CH−NR1213(式中、R12およびR13は、上に定義された通りであり、R14は、水素原子またはアルキル基であり、nは、2から4の範囲の整数である)の基であり、
は、ヒドロキシル、低級アルキルおよびヒドロキシル置換低級アルキル
(ただしRが水素原子である場合、Rはアルキルブチル基ではなく、上で定義されたアルキル部分または基は、直鎖または分岐状であり、1個から4個の炭素原子を含有する)、または薬学的に許容されるその塩である、1に記載の方法。
13.式のシクロスポリンA誘導体において、通常シクロスポリンAの1位に存在するトランスブテン部分は、R15で置き換えられており、R15は、式
−CHCHCHCH−R16(Ic)または−CHSR17(Id)の基を表し、式中、R16は、アルキルチオ、アミノアルキルチオ、アルキルアミノアルキルチオ、ジアルキルアミノアルキルチオ、ピリミジニルチオ、チアゾリルチオ、N−アルキルイミダゾリルチオ、ヒドロキシアルキルフェニルチオ、ヒドロキシアルキルフェニルオキシ、ニトロフェニルアミノまたは2−オキソピリミジン−1−イル基を表し、R17は、アルキル基を表す、12に記載の方法。
14.Rは、
ヒドロキシル基、
カルボキシル基、
アルキルオキシカルボニル基、
−NR1213基(式中、同一または異なるR12およびR13は、水素原子またはアルキル、C−Cアルケニル、C−Cシクロアルキルもしくは任意選択で置換されたフェニル基(当該フェニル基は、ハロゲン原子、またはアルキルオキシ、アルキルオキシカルボニル、アミノ、アルキルアミノもしくはジアルキルアミノ基で置換されていてもよい)を表し、あるいは、ベンジルまたはヘテロシクリル基(当該ヘテロシクリル基は、飽和または不飽和であってもよく、5個または6個の環員および1個から3個のヘテロ原子を含有する)を表し;あるいは、R12およびR13は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、4個から6個の環員を含有する飽和または不飽和ヘテロ環を形成し、当該ヘテロ環は、窒素、酸素および硫黄から選択される追加的ヘテロ原子を任意選択で含有してもよく、上記飽和または不飽和ヘテロ環は、アルキル、フェニルまたはベンジル基で任意選択で置換されている)、あるいは、
式−N(R14)−(CH−NR1213(式中、R12およびR13は、上に定義された通りであり、R14は、水素原子またはアルキル基を表し、nは、2から4の整数である)の基
(上に定義されたアルキル部分または基は、直鎖または分岐状であり、1個から4個の炭素原子を含有する)、
あるいは、薬学的に許容されるその塩である、12に記載の方法。
15.Alkは、C−C直鎖または分岐状アルキレン基を表し、
Rは、
ヒドロキシル基、または
−−NR1213基(式中、同一または異なるR12およびR13は、水素原子またはアルキル、Cアルケニルもしくは任意選択で置換されたフェニル基(当該フェニル基は、ハロゲン原子またはアルキルオキシ、アルキルオキシカルボニル、アミノ、アルキルアミノもしくはジアルキルアミノ基で置換されていてもよい)を表し、またはベンジル基を表し;あるいは、R12およびR13は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、4個から6個の環員を含有する飽和または不飽和ヘテロ環を形成し、当該ヘテロ環は、窒素、酸素および硫黄から選択される追加的ヘテロ原子を任意選択で含有してもよく、上記飽和または不飽和ヘテロ環は、アルキル基で任意選択で置換されている)、
あるいは、薬学的に許容されるその塩を表す、14に記載の方法。
16.Alkは、C2−6直鎖または分岐状アルキレン基を表し、
Rは、ヒドロキシル基、または−−NR1213基(式中、同一または異なるR12およびR13は、水素原子またはアルキル、アリル、フェニルもしくはベンジル基を表し、あるいは、R12およびR13は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、アゼチジニル、ピペリジル、ピペラジニル、N−メチルピペラジニル、N−フェニルピペラジニル、N−ベンジルピペラジニル、モルホリノ、テトラヒドロピリジル、メチルテトラヒドロピリジル、およびフェニルテトラヒドロピリジルから選択されるヘテロ環を形成する)、
あるいは、薬学的に許容されるその塩を表す、14に記載の方法。
17.シクロスポリンA誘導体は、[(R)−2−(N,N−ジメチル−アミノ)エチルチオ−Sar]−[4’−ヒドロキシ−MeLeu]−シクロスポリンA、
[(R)−2−(1−ピペリジル)−エチルチオ−Sar]−[4’−ヒドロキシ−MeLeu]−シクロスポリンA、
[(R)−2−(N−メチル−N−t−ブチルアミノ)エチルチオ−Sar]−[4’−ヒドロキシ−MeLeu]−シクロスポリンA、
[(R)−2−(ヒドロキシ)−エチルチオ−Sar]−[4’−ヒドロキシ−MeLeu]−シクロスポリンA、
[(R)−2−(N,N−ジエチル−アミノ)エチルチオ−Sar]−[4’−ヒドロキシ−MeLeu]−シクロスポリンA、
[(R)−2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルチオ−Sar]−シクロスポリンA、
[(R)−2−(1−ピペリジル)エチルチオ−Sar]−シクロスポリンA、
[(R)−2−(N−メチル−N−i−プロピルアミノ)エチルチオ−Sar]−シクロスポリンAおよび
[(R)−2−(N−メチル−N−t−ブチルアミノ)エチルチオ−Sar]−シクロスポリンA、ならびに薬学的に許容されるそれらの塩からなる群から選択される、16に記載の方法。
18.シクロスポリンA誘導体は、(R)−(ジエチルアミノエチルチオ−Sar)シクロスポリンAである、16に記載の方法。
19.眼の炎症性疾患、皮膚炎症性疾患、炎症性リウマチ性疾患、炎症性腸疾患、神経炎症性疾患ならびに自己免疫性血液疾患および障害からなる群から選択される炎症性疾患を処置する方法であって、上記シクロスポリンA誘導体が、式:
【化9】


(式中、Rは、S−Alk−R(式中、Alkはアルキレンまたはアルキレニル連結基であり、Rは、
−N=C(NR)(NR)または−NR[(NR)C=NR]、または−N=C(R)(NR10)であり、R−R710は、H、Alk、Arもしくは(CH)nAr(式中、Arは、アリール基であり、nは、1から13の整数である)であるか、または、RおよびR、もしくはRおよびR、もしくはRおよびR、もしくはRおよびR、もしくはRおよびR10、もしくはRおよびRは、一緒になって、−(CH−(式中、xは、2から5の整数である)であってもよく、Rは、ヒドロキシル、低級アルキルおよびヒドロキシル置換低級アルキルからなる群から選択される)で表される化合物からなる群から選択される、方法。
20.Rは、メチレンまたはCからCポリメチレン連結基である、19に記載の方法。
21.Rは、CからCアルケニレニル連結基である、19に記載の方法。
22.Rは、−N=C(NR)(NR)もしくは−NRC(NR)(C=NR)であり、R−Rは、H、Alk、Arもしくは(CH)nAr(式中、Arは、アリール基であり、nは、1から13の整数である)であるか、または、RおよびRもしくはRおよびRもしくはRおよびRもしくはRおよびRは、一緒になって、−CH−CH−もしくは−CH−CH−CH−であってもよい、19に記載の方法。
23.上記シクロスポリンA誘導体は、3−置換ジアミノイミノアルキルチオシクロスポリンA誘導体である、19に記載の方法。
24.上記シクロスポリンA誘導体は、((R)−(ジアミノ)イミノアルキルチオ−Sar)−(4’−ヒドロキシ−MeLeu)シクロスポリンA誘導体、((R)−(アルキル)(ジアルキルアミノ)イミノアルキルチオ−Sar)−(4’−ヒドロキシ−MeLeu)−シクロスポリンA、((R)−(アルキル)(ジアルキルアミノ)イミノアルキルチオ−Sar)−シクロスポリンA誘導体および((R)−(ジアミノ)イミノアルキルチオ−Sar)−シクロスポリンA誘導体からなる群から選択される、19に記載の方法。
25.Rは、水素原子または式(Ia):
−S−Alk−R11(Ia)
(式中、
Alk−R11は、メチル基を表し、あるいは、
Alkは、C−C直鎖もしくは分岐状アルキレン基またはC−Cシクロアルキレン基を表し、
11は、
水素原子またはヒドロキシル、カルボキシルもしくはアルキルオキシカルボニル基、または
−NR1213基(式中、同一または異なるR12およびR13は、水素原子またはフェニル、アルキル、C−CアルケニルもしくはC−Cシクロアルキル基を表し、当該基は、ハロゲン原子、アルキルオキシ、アルキルオキシカルボニル、アミノ、アルキルアミノおよびジアルキルアミノ基から選択される基で任意選択で置換され;あるいは、
12およびR13は、ベンジルまたは飽和もしくは不飽和ヘテロ環式基を表し、当該ヘテロ環式基は、5個から6個の環員および1個から3個のヘテロ原子を含有し;
あるいは、R12およびR13は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、飽和または不飽和4員から6員ヘテロ環を形成し、当該ヘテロ環は、窒素、酸素および硫黄から選択される追加的ヘテロ原子を有し、上記飽和または不飽和ヘテロ環は、アルキル、フェニルまたはベンジル基で任意選択で置換されている)を表す)の基を表し、あるいは、Rは、式(Ib):−N(R14)−(CH−NR1213(式中、R12およびR13は、上に定義された通りであり、R14は、水素原子またはアルキル基であり、nは、2から4の範囲の整数である)の基であり、
は、ヒドロキシル、低級アルキルおよびヒドロキシル置換低級アルキル
(ただしRが水素原子である場合、Rはアルキルブチル基ではなく、上で定義されたアルキル部分または基は、直鎖または分岐状であり、1個から4個の炭素原子を含有する)、または薬学的に許容されるその塩である、19に記載の方法。
26.式のシクロスポリンA誘導体において、通常シクロスポリンAの1位に存在するトランスブテン部分は、R15で置き換えられており、R15は、式
−CHCHCHCH−R16(Ic)または−CHSR17(Id)基を表し、式中、R16は、アルキルチオ、アミノアルキルチオ、アルキルアミノアルキルチオ、ジアルキルアミノアルキルチオ、ジアルキルアミノアルキルチオ、ピリミジニルチオ、チアゾリルチオ、N−アルキルイミダゾリルチオ、ヒドロキシアルキルフェニルチオ、ヒドロキシアルキルフェニルオキシ、ニトロフェニルアミノまたは2−オキソピリミジン−1−イル基を表し、R17は、アルキル基を表す、25に記載の方法。
27.Rは、
ヒドロキシル基、
カルボキシル基、
アルキルオキシカルボニル基、
−NR1213基(式中、同一または異なるR12およびR13は、水素原子またはアルキル、C−Cアルケニル、C−Cシクロアルキルもしくは任意選択で置換されたフェニル基(当該フェニル基は、ハロゲン原子、またはアルキルオキシ、アルキルオキシカルボニル、アミノ、アルキルアミノもしくはジアルキルアミノ基で置換されていてもよい)を表し、あるいは、ベンジルまたはヘテロシクリル基(当該ヘテロシクリル基は、飽和または不飽和であってもよく、5個または6個の環員および1個から3個のヘテロ原子を含有する)を表し;あるいは、R12およびR13は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、4個から6個の環員を含有する飽和または不飽和ヘテロ環を形成し、当該ヘテロ環は、窒素、酸素および硫黄から選択される追加的ヘテロ原子を任意選択で含有してもよく、上記飽和または不飽和ヘテロ環は、アルキル、フェニルまたはベンジル基で任意選択で置換されている)、あるいは、
式−N(R14)−(CH−NR1213(式中、R12およびR13は、上に定義された通りであり、R14は、水素原子またはアルキル基を表し、nは、2から4の整数である)の基
(上に定義されたアルキル部分または基は、直鎖または分岐状であり、1個から4個の炭素原子を含有する)、
あるいは、薬学的に許容されるその塩である、25に記載の方法。
28.Alkは、C−C直鎖または分岐状アルキレン基を表し、
Rは、ヒドロキシル基、または−−NR1213基(式中、同一または異なるR12およびR13は、水素原子またはアルキル、Cアルケニルもしくは任意選択で置換されたフェニル基(当該フェニル基は、ハロゲン原子またはアルキルオキシ、アルキルオキシカルボニル、アミノ、アルキルアミノもしくはジアルキルアミノ基で置換されていてもよい)を表し、またはベンジル基を表し;あるいは、R12およびR13は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、4個から6個の環員を含有する飽和または不飽和ヘテロ環を形成し、当該ヘテロ環は、窒素、酸素および硫黄から選択される追加的ヘテロ原子を任意選択で含有してもよく、上記飽和または不飽和ヘテロ環は、アルキル基で任意選択で置換されている)、
あるいは、薬学的に許容されるその塩を表す、27に記載の方法。
29.Alkは、C2−6直鎖または分岐状アルキレン基を表し、
Rは、ヒドロキシル基、または−−NR1213基(式中、同一または異なるR12およびR13は、水素原子またはアルキル、アリル、フェニルもしくはベンジル基を表し、あるいは、R12およびR13は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、アゼチジニル、ピペリジル、ピペラジニル、N−メチルピペラジニル、N−フェニルピペラジニル、N−ベンジルピペラジニル、モルホリノ、テトラヒドロピリジル、メチルテトラヒドロピリジル、およびフェニルテトラヒドロピリジルから選択されるヘテロ環を形成する)、
あるいは、薬学的に許容されるその塩を表す、27に記載の方法。
30.シクロスポリンA誘導体は、
[(R)−2−(N,N−ジメチル−アミノ)エチルチオ−Sar]−[4’−ヒドロキシ−MeLeu]−シクロスポリンA、
[(R)−2−(1−ピペリジル)−エチルチオ−Sar]−[4’−ヒドロキシ−MeLeu]−シクロスポリンA、
[(R)−2−(N−メチル−N−t−ブチルアミノ)エチルチオ−Sar]−[4’−ヒドロキシ−MeLeu]−シクロスポリンA、
[(R)−2−(ヒドロキシ)−エチルチオ−Sar]−[4’−ヒドロキシ−MeLeu]−シクロスポリンA、
[(R)−2−(N,N−ジエチル−アミノ)エチルチオ−Sar]−[4’−ヒドロキシ−MeLeu]−シクロスポリンA、
[(R)−2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルチオ−Sar]−シクロスポリンA、
[(R)−2−(1−ピペリジル)エチルチオ−Sar]−シクロスポリンA、
[(R)−2−(N−メチル−N−i−プロピルアミノ)エチルチオ−Sar]−シクロスポリンAおよび
[(R)−2−(N−メチル−N−t−ブチルアミノ)エチルチオ−Sar]−シクロスポリンA、ならびに薬学的に許容されるそれらの塩からなる群から選択される、29に記載の方法。
31.シクロスポリンA誘導体は、(R)−(ジエチルアミノエチルチオ−Sar)シクロスポリンAである、30に記載の方法。
32.上記眼の炎症性疾患は、乾性角結膜炎、春季カタル、アレルギー性結膜炎、またはブドウ膜炎である、19に記載の方法。
33.上記皮膚炎症性疾患は、乾癬またはアトピー性皮膚炎である、19に記載の方法。
34.上記炎症性リウマチ性疾患は、関節リウマチ、強皮症、全身性紅斑性狼瘡、ウェーゲナー肉芽腫、多発性筋炎、皮膚筋炎、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、ライター症候群または若年性関節リウマチである、19に記載の方法。
35.上記炎症性腸疾患は、潰瘍性大腸炎またはクローン病である、19に記載の方法。
36.上記神経炎症性疾患は、多発性硬化症である、19に記載の方法。
37.上記自己免疫性血液疾患は、溶血性貧血、再生不良性貧血、赤芽球癆、または特発性血小板減少症である、19に記載の方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物の炎症状態の処置のための方法であって、それを必要とする患者に、以下の式:
【化1】


[式中、Rは、S−Alk−R(ここで、Alkは、アルキレン連結基であり、Rは、水素または非置換もしくは置換ヒドロカルビル基である)である]で表される、治療上効果的な量のシクロスポリンA誘導体を投与することを含む方法。
【請求項2】
AlkがメチレンまたはCからCアルケニレニル連結基である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
がメチレンまたはCからCポリメチレン連結基である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
がCからCアルケニレニル連結基である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
Rが−N=C(NR)(NR)もしくは−NRC(NR)(C=NR)であり、R−RがH、Alk、Arもしくは(CH)nAr(ここで、Arは、アリール基であり、nは、1から13の整数である)であるか、または、RおよびRもしくはRおよびRもしくはRおよびRもしくはRおよびRは、一緒になって、−CH−CH−もしくは−CH−CH−CH−であってもよい、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記シクロスポリンA誘導体が3−置換ジアミノイミノアルキルチオシクロスポリンA誘導体である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記シクロスポリンA誘導体が((R)−(ジアミノ)イミノアルキルチオ−Sar)−(4’−ヒドロキシ−MeLeu)シクロスポリンA誘導体、((R)−(アルキル)(ジアルキルアミノ)イミノアルキルチオ−Sar)−(4’−ヒドロキシ−MeLeu)−シクロスポリンA、((R)−(アルキル)(ジアルキルアミノ)イミノアルキルチオ−Sar)−シクロスポリンA誘導体および((R)−(ジアミノ)イミノアルキルチオ−Sar)−シクロスポリンA誘導体からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記シクロスポリンA誘導体が請求項1に記載の化合物の群から選択され、ここでRが、−S(CHN=C(NHであり、Rが、−CHCH(CH、−CHC(OH)(CH、−CH(CHまたは−CH(CH)CHCHである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
が、水素原子または式(Ia):
−S−Alk−R11(Ia)
(式中、
Alk−R11は、メチル基を表し、あるいは、
Alkは、C−C直鎖もしくは分岐状アルキレン基またはC−Cシクロアルキレン基を表し、
11は、
水素原子またはヒドロキシル、カルボキシルもしくはアルキルオキシカルボニル基、または
−NR1213基(式中、同一または異なるR12およびR13は、水素原子またはフェニル、アルキル、C−CアルケニルもしくはC−Cシクロアルキル基を表し、前記基は、ハロゲン原子、アルキルオキシ、アルキルオキシカルボニル、アミノ、アルキルアミノおよびジアルキルアミノ基から選択される基で任意選択で置換され;あるいは、
12およびR13は、ベンジルまたは飽和もしくは不飽和ヘテロ環式基を表し、前記ヘテロ環式基は、5個から6個の環員および1個から3個のヘテロ原子を含有し;
あるいは、R12およびR13は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、飽和または不飽和4員から6員ヘテロ環を形成し、前記ヘテロ環は、窒素、酸素および硫黄から選択される追加的ヘテロ原子を有し、前記飽和または不飽和ヘテロ環は、アルキル、フェニルまたはベンジル基で任意選択で置換されている)を表す)の基を表し、あるいは、Rは、式(Ib):−N(R14)−(CH−NR1213(式中、R12およびR13は、上に定義された通りであり、R14は、水素原子またはアルキル基であり、nは、2から4の範囲の整数である)の基であり、
は、ヒドロキシル、低級アルキルおよびヒドロキシル置換低級アルキル
(ただしRが水素原子である場合、Rはアルキルブチル基ではなく、上に定義されたアルキル部分または基は、直鎖または分岐状であり、1個から4個の炭素原子を含有する)、または薬学的に許容されるその塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
式のシクロスポリンA誘導体において、通常シクロスポリンAの1位に存在するトランスブテン部分は、R15で置き換えられており、R15が、式
−CHCHCHCH−R16(Ic)または−CHSR17(Id)の基であり、式中、R16は、アルキルチオ、アミノアルキルチオ、アルキルアミノアルキルチオ、ジアルキルアミノアルキルチオ、ピリミジニルチオ、チアゾリルチオ、N−アルキルイミダゾリルチオ、ヒドロキシアルキルフェニルチオ、ヒドロキシアルキルフェニルオキシ、ニトロフェニルアミノまたは2−オキソピリミジン−1−イル基を表し、R17は、アルキル基を表す、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
Rが、
ヒドロキシル基、
カルボキシル基、
アルキルオキシカルボニル基、
−NR1213基(ここで、R12およびR13は、同一または異なり、水素原子またはアルキル、C−Cアルケニル、C−Cシクロアルキルもしくは任意選択で置換されたフェニル基(前記フェニル基は、ハロゲン原子、またはアルキルオキシ、アルキルオキシカルボニル、アミノ、アルキルアミノもしくはジアルキルアミノ基で置換されていてもよい)を表し、あるいは、ベンジルまたはヘテロシクリル基(前記ヘテロシクリル基は、飽和または不飽和であってもよく、5個または6個の環員および1個から3個のヘテロ原子を含有する)を表し;あるいは、R12およびR13は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、4個から6個の環員を含有する飽和または不飽和ヘテロ環を形成し、前記ヘテロ環は、窒素、酸素および硫黄から選択される追加的ヘテロ原子を任意選択で含有してもよく、前記飽和または不飽和ヘテロ環は、アルキル、フェニルまたはベンジル基で任意選択で置換されている)、あるいは、
式:−N(R14)−(CH−NR1213(式中、R12およびR13は、上に定義された通りであり、R14は、水素原子またはアルキル基を表し、nは、2から4の整数である)の基であり、
ここで、上記のアルキル部分または基は、直鎖または分岐状であり、1個から4個の炭素原子を含有する、
あるいは、薬学的に許容されるその塩である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
Alkが、C−C直鎖または分岐状アルキレン基を表し、
Rが、
ヒドロキシル基、または
−−NR1213基(ここで、R12およびR13は、同一または異なり、水素原子またはアルキル、Cアルケニルもしくは任意選択で置換されたフェニル基(前記フェニル基は、ハロゲン原子またはアルキルオキシ、アルキルオキシカルボニル、アミノ、アルキルアミノもしくはジアルキルアミノ基で置換されていてもよい)を表し、またはベンジル基を表し;あるいは、R12およびR13は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、4個から6個の環員を含有する飽和または不飽和ヘテロ環を形成し、前記ヘテロ環は、窒素、酸素および硫黄から選択される追加的ヘテロ原子を任意選択で含有してもよく、前記飽和または不飽和ヘテロ環は、アルキル基で任意選択で置換されている)であり、
あるいは、薬学的に許容されるその塩を表す、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
Alkが、C2−6直鎖または分岐状アルキレン基を表し、
Rが、ヒドロキシル基、または−−NR1213基(ここで、同一または異なるR12およびR13は、水素原子またはアルキル、アリル、フェニルもしくはベンジル基を表し、あるいは、R12およびR13は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、アゼチジニル、ピペリジル、ピペラジニル、N−メチルピペラジニル、N−フェニルピペラジニル、N−ベンジルピペラジニル、モルホリノ、テトラヒドロピリジル、メチルテトラヒドロピリジル、およびフェニルテトラヒドロピリジルから選択されるヘテロ環を形成する)であり、
あるいは、薬学的に許容されるその塩を表す、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
シクロスポリンA誘導体が、[(R)−2−(N,N−ジメチル−アミノ)エチルチオ−Sar]−[4’−ヒドロキシ−MeLeu]−シクロスポリンA、
[(R)−2−(1−ピペリジル)−エチルチオ−Sar]−[4’−ヒドロキシ−MeLeu]−シクロスポリンA、
[(R)−2−(N−メチル−N−t−ブチルアミノ)エチルチオ−Sar]−[4’−ヒドロキシ−MeLeu]−シクロスポリンA、
[(R)−2−(ヒドロキシ)−エチルチオ−Sar]−[4’−ヒドロキシ−MeLeu]−シクロスポリンA、
[(R)−2−(N,N−ジエチル−アミノ)エチルチオ−Sar]−[4’−ヒドロキシ−MeLeu]−シクロスポリンA、
[(R)−2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルチオ−Sar]−シクロスポリンA、
[(R)−2−(1−ピペリジル)エチルチオ−Sar]−シクロスポリンA、
[(R)−2−(N−メチル−N−i−プロピルアミノ)エチルチオ−Sar]−シクロスポリンAおよび
[(R)−2−(N−メチル−N−t−ブチルアミノ)エチルチオ−Sar]−シクロスポリンA、ならびに薬学的に許容されるそれらの塩からなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
シクロスポリンA誘導体が(R)−(ジエチルアミノエチルチオ−Sar)シクロスポリンAである、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記炎症状態が、眼の炎症性疾患、皮膚炎症性疾患、炎症性リウマチ性疾患、炎症性腸疾患、神経炎症性疾患および自己免疫性血液疾患からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記眼の炎症性疾患が乾性角結膜炎、春季カタル、アレルギー性結膜炎、またはブドウ膜炎である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記皮膚炎症性疾患が乾癬またはアトピー性皮膚炎である、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記炎症性リウマチ性疾患が関節リウマチ、強皮症、全身性紅斑性狼瘡、ウェーゲナー肉芽腫、多発性筋炎、皮膚筋炎、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、ライター症候群または若年性関節リウマチである、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記炎症性腸疾患が潰瘍性大腸炎またはクローン病である、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記神経炎症性疾患が多発性硬化症である、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
前記自己免疫性血液疾患が溶血性貧血、再生不良性貧血、赤芽球癆、または特発性血小板減少症である、請求項16に記載の方法。

【公表番号】特表2012−528163(P2012−528163A)
【公表日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−513144(P2012−513144)
【出願日】平成22年5月21日(2010.5.21)
【国際出願番号】PCT/US2010/035807
【国際公開番号】WO2010/138423
【国際公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(591018268)アラーガン、インコーポレイテッド (293)
【氏名又は名称原語表記】ALLERGAN,INCORPORATED
【Fターム(参考)】