説明

炎症性疾患および疼痛の治療における、β−アミノアルコールの使用

治療上の使用のための、式(I)[式中、Rは、任意にRで置換されたアリールまたはヘテロアリールであり;Rは、H、アルキル、もしくはCHOHであるか、またはRとともに環の一部を形成し;Rは、H、アルキル、もしくはCHOHであるか、またはRとともに環の一部を形成し;Rは、H、アルキル、または(RまたはRとともに環の一部を形成する場合には)CHであり;Rは、アルキル、CF、OH、Oアルキル、OCOアルキル、CONH、CN、ハロゲン、NH、NO、NHCHO、NHCONH、NHSOMe、CONH、またはSOMeである]の化合物、またはその塩。
〔化1〕


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炎症性疾患および疼痛の治療におけるβ−アミノアルコールの使用に関する。
【0002】
(発明の背景)
免疫主導型の炎症性事象は、多くの慢性炎症性疾患の重大な原因であり、長期の炎症が、組織破壊を引き起こし、侵された臓器の広範な損傷および最終的な不全をもたらす。これらの疾患の原因は未知であり、したがって多くの場合、自己免疫性と呼ばれるが、これは、これらの疾患が、自己を攻撃する個体の免疫系に由来すると思われるためである。病状には、多臓器が関与するもの、例えば、全身性紅斑性狼瘡(SLE)および強皮症などが含まれる。他の種類の自己免疫疾患は、特定の組織または臓器、例えば、筋骨格組織(関節リウマチ、強直性脊椎炎)、消化管(クローン病および潰瘍性大腸炎)、中枢神経系(アルツハイマー病、多発性硬化症、運動ニューロン疾患、パーキンソン病および慢性疲労症候群)、膵β細胞(インスリン依存性糖尿病)、副腎(アジソン病)、腎臓(グッドパスチャー症候群、IgA腎症、間質性腎炎)、外分泌腺(シェーグレン症候群および自己免疫性膵炎)、ならびに皮膚(乾癬およびアトピー性皮膚炎)などに関与し得る。
【0003】
さらに、病因は大体分かってはいるが、その炎症が慢性的かつ間断のない慢性炎症性疾患が存在する。これらは、大規模な組織/臓器破壊を示し、例えば、変形性関節症、歯周病、糖尿病性腎症、慢性閉塞性肺疾患、動脈硬化症、移植片対宿主病、慢性骨盤内炎症性疾患、子宮内膜症、慢性肝炎、および結核などの病状を含む。これらの疾患では、組織破壊により、多くの場合、臓器機能が損傷し、生活の質の低下および臓器不全がもたらされる。これらの病状は、発展途上国において、疾病の主原因であり、現在の療法によっては十分に治療されていない。
【0004】
皮膚構造の炎症(皮膚炎)は、一般的な一連の病状であり、これには、光線性角化症、酒さ性ざ瘡、尋常性ざ瘡、アレルギー性接触皮膚炎、血管性浮腫、アトピー性皮膚炎、類天疱瘡、皮膚薬剤反応、多形性紅斑、紅斑性狼瘡、光線皮膚炎、乾癬、乾癬性関節炎、強皮症、および蕁麻疹が含まれる。これらの疾患は、多様な療法を用いて治療され、その多くは、非常に重篤な副作用を有する。
【0005】
免疫主導型病状のための現在の疾患修飾性治療薬(もしあれば)として、中和抗体、細胞毒、コルチコステロイド、免疫抑制剤、抗ヒスタミン剤、および抗ムスカリン剤が挙げられる。これらの治療薬は、多くの場合、投与経路の不便さおよび重篤な副作用に関係しており、このことが服薬遵守問題を引き起こす。さらに、ある特定の種類の薬物は、ある特定の種類の炎症性疾患にのみ有効であり、例えば、鼻炎用の抗ヒスタミン剤である。
【0006】
β−アミノアルコールは、治療において有用となり得る特性を有することが知られている。そのような他の化合物は知られているが、治療的有用性については、いかなる示唆も伴っていない。例えば、WO2005/069930を参照されたい。
【0007】
(発明の概要)
驚いたことに、ある特定の化合物は、サイトカインの阻害剤であり、抗炎症特性を有するばかりでなく、サイトカインが関与する疼痛状態において疼痛を軽減することが見出された。本発明によれば、哺乳動物における、炎症性疾患または疼痛、例えば、急性、慢性もしくは神経障害性の疼痛(癌、手術、関節炎、歯の手術、有痛性神経障害、外傷、筋骨格の傷害もしくは疾患、および内臓疾患に関係する疼痛を含むが、これらに限られない)、ならびに片頭痛などは、一般式(I)
【化1】

【0008】
[式中、
は、任意にRで置換されたアリールまたはヘテロアリールであり、
は、H、アルキル、もしくはCHOHであるか、またはRとともに環を形成し、
は、H、アルキル、もしくはCHOHであるか、またはRとともに環を形成し、
は、H、アルキル、または(RまたはRとともに環の一部を形成する場合には)CHであり、
は、アルキル、CF、OH、Oアルキル、OCOアルキル、CONH、CN、ハロゲン、NH、NO、NHCHO、NHCONH、NHSOMe、CONH、またはSOMeである]
の化合物、またはその塩を用いることによって治療することができる。
【0009】
(好ましい実施形態の説明)
本発明で用いるための、式(I)の化合物として、(これらだけに限られないが)新規な化合物、例えば、
1−(4−アミノ−3,5−ジクロロフェニル)−2−(1−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−2−イルアミノ)エタノン、
1−(3−クロロフェニル)−2−(1−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−2−イルアミノ)プロパン−1−オン、
1−(3−クロロフェニル)−2−(1−ヒドロキシ−2−プロパン−2−イルアミノ)プロパン−1−オン、
1−(3−クロロフェニル)−2−(1−ヒドロキシ−2−プロパン−2−イルアミノ)エタノン、
1−フェニル−2−(1−ヒドロキシ−2−プロパン−2−イルアミノ)プロパン−1−オン、
1−(2−クロロフェニル)−2−(1−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−2−イルアミノ)プロパン−1−オン、
1−(2−クロロフェニル)−2−(1−ヒドロキシ−2−プロパン−2−イルアミノ)プロパン−1−オン、
1−(2−クロロフェニル)−2−(1−ヒドロキシ−2−プロパン−2−イルアミノ)エタノン、
1−(3,4−ジクロロフェニル)−2−(1−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−2−イルアミノ)プロパン−1−オン、
1−(3,4−ジクロロフェニル)−2−(1−ヒドロキシ−2−プロパン−2−イルアミノ)プロパン−1−オン、
1−(3,4−ジクロロフェニル)−2−(1−ヒドロキシ−2−プロパン−2−イルアミノ)エタノン、
2−(1−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−2−イルアミノ)−1−(4−ヒドロキシ−3−ヒドロキシメチル−フェニル)ブタン−1−オン、
1−(4−ヒドロキシ−3−ヒドロキシメチル−フェニル)−2−(1−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−2−イルアミノ)エタノン、
1−(4−アミノ−フェニル)−2−(1−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−2−イルアミノ)ブタン−1−オン、
1−(3,5−ジメチルカルバモイル−フェニル)−2−(1−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−2−イルアミノ)プロパン−1−オン、
2−(1−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−2−イルアミノ)−1−(フェニル)エタノン、
1−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(1−ヒドロキシ−2−プロパン−2−イルアミノ)プロパン−1−オン、
1−(2,3−ジヒドロキシフェニル)−2−(1−ヒドロキシ−2−プロパン−2−イルアミノ)プロパン−1−オン、
1−(2,3,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(1−ヒドロキシ−2−プロパン−2−イルアミノ)プロパン−1−オン、
1−(5,6,7,8−テトラヒドロ−2−ナフチル)−2−(1−ヒドロキシ−2−ブタン−2−イルアミノ)エタノン、
1−(2,5−ジメトキシフェニル)−2−(1−ヒドロキシ−2−プロパン−2−イルアミノ)プロパン−1−オン、
1−(4−ヒドロキシ−3−ウレイルフェニル)−2−(1−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−2−イルアミノ)エタノン、
1−(4−アミノ−3,−シアノフェニル)−2−(1−ヒドロキシ−2−プロパン−2−イルアミノ)エタノン、
1−(2−クロロフェニル)−2−(1−ヒドロキシ−2−プロパン−2−イルアミノ)エタノン、
1−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(1−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−2−イルアミノ)エタノン、
1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(1−ヒドロキシ−2−プロパン−2−イルアミノ)エタノン、
1−(3,4−ジアセチルフェニル)−2−(1−ヒドロキシ−2−プロパン−2−イルアミノ)エタノン、
1−(3,4−ジクロロフェニル)−2−(1−ヒドロキシ−2−プロパン−2−イルアミノ)エタノン、
1−(3,4−ジクロロフェニル)−2−(1−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−2−イルアミノ)エタノン、
1−(2,5−ジメトキシフェニル)−2−(1−ヒドロキシ−2−プロパン−2−イルアミノ)プロパン−1−オン、
1−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(1−ヒドロキシ−2−プロパン−2−イルアミノ)ブタン−1−オン、
1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−2−(1−ヒドロキシ−2−プロパン−2−イルアミノ)エタノン、
1−(3−ヒドロキシフェニル)−2−(1−ヒドロキシ−2−プロパン−2−イルアミノ)エタノン、
1−(4−ニトロフェニル)−2−(1−ヒドロキシ−2−プロパン−2−イルアミノ)エタノン、
1−(3−ヒドロキシキノリン−5−イル)−2−(1−ヒドロキシ−2−プロパン−2−イルアミノ)エタノン、
1−(4−ヒドロキシ−3−メタンスルホンアミドフェニル)−2−(1−ヒドロキシ−2−プロパン−2−イルアミノ)エタノン、
1−(4−メタンスルホンアミドフェニル)−2−(1−ヒドロキシ−2−プロパン−2−イルアミノ)エタノン、
1−(2−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)−2−(1−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−2−イルアミノ)エタノン、
1−(2−フルオロフェニル)−2−(1−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−2−イルアミノ)エタノン、
1−(3−フルオロフェニル)−2−(1−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−2−イルアミノ)エタノン、
1−(4−フルオロフェニル)−2−(1−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−2−イルアミノ)エタノン、
1−(4−フルオロフェニル)−2−(1−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−2−イルアミノ)プロパン−1−オン、
1−(4−ブロモフェニル)−2−(1−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−2−イルアミノ)エタノン、
1−(4−ブロモフェニル)−2−(1−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−2−イルアミノ)プロパン−1−オン、
1−(3,5−ジ−tert−ブチルカルボニルオキシフェニル)−2−(1−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−2−イルアミノ)エタノン、
1−(3,5−ジヒドロキシフェニル)−2−(1−ヒドロキシ−2−プロパン−2−イルアミノ)エタノン、
1−(3,5−ジヒドロキシフェニル)−2−(1−ヒドロキシ−2−プロパン−2−イルアミノ)プロパン−1−オン、
1−(3−クロロ−4−アミノ−5−トリフルオロメチルフェニル)−2−(1−ヒドロキシ−2−プロパン−2−イルアミノ)プロパン−1−オン、
1−(2−ナフタレニル)−2−(1−ヒドロキシ−2−プロパン−2−イルアミノ)エタノン
が挙げられる。
【0010】
本発明は、化合物(I)の塩、例えば塩酸塩に関することが理解される。これらの化合物は、その代謝産物およびプロドラッグとして提供することもできる。これらの化合物はキラルであり、本発明は、(I)の実質的に単一のジアステレオマーおよびエナンチオマーを含む。アリール基およびヘテロアリール基は知られており、典型的には最大12個の原子を有する。
【0011】
本発明による式(I)の化合物は、多臓器(例えば、全身性紅斑性狼瘡(SLE)および強皮症など)、特定の組織または臓器(例えば、筋骨格組織(関節リウマチ、強直性脊椎炎))、消化管(クローン病および潰瘍性大腸炎)、中枢神経系(アルツハイマー病、多発性硬化症、運動ニューロン疾患、パーキンソン病、および慢性疲労症候群)、膵β細胞(インスリン依存性糖尿病)、副腎(アジソン病)、腎臓(グッドパスチャー症候群、IgA腎症、間質性腎炎)、外分泌腺(シェーグレン症候群および自己免疫性膵炎)、および皮膚(乾癬およびアトピー性皮膚炎)に関連する自己免疫疾患;慢性炎症性疾患(例えば、変形性関節症、歯周病、糖尿病性腎症、慢性閉塞性肺疾患、動脈硬化症、移植片対宿主病、慢性骨盤内炎症性疾患、子宮内膜症、慢性肝炎、および結核など);IgE媒介性(I型)過敏症(例えば、鼻炎、喘息、アナフィラキシー、皮膚炎、および眼の症状など)を含むが、これらに限られない、炎症性疾患を治療するのに用いられる。皮膚炎の病状としては、光線性角化症、酒さ性ざ瘡、尋常性ざ瘡、アレルギー性接触皮膚炎、血管性浮腫、アトピー性皮膚炎、類天疱瘡、皮膚薬剤反応、多形性紅斑、紅斑性狼瘡、光線皮膚炎、乾癬、乾癬性関節炎、強皮症、および蕁麻疹が挙げられる。眼の症状としては、加齢黄斑変性症、糖尿病性網膜症、脈絡膜新生血管膜、類嚢胞黄斑浮腫、網膜上膜、黄斑円孔、ドライアイ、およびブドウ膜炎が挙げられる。
【0012】
これらの化合物は、患者が、コルチコステロイド(例えば、コルチゾール、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、ジヒドロコルチゾン、フルドロコルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、デフラザコルト、フルニソリド、ベコナーゼ、メチルプレドニゾロン、トリアムシノロン、ベタメタゾン、およびデキサメタゾンを含む)、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)(例えば、アザルフィジン、金チオリンゴ酸塩、ブシラミン、クロラムブシル、シクロホスファミド、レフルノミド、メトトレキサート、ミゾリビン、ペニシラミン、およびスルファサラジンを含む)、免疫抑制剤(例えば、アザチオプリン、シクロスポリン、ミコフェノレートを含む)、COX阻害剤(例えば、アセクロフェナク、アセメタシン、アルクロフェナク(alcofenac)、アルミノプロフェン、アロキシプリン(aloxipirin)、アンフェナク、アミノフェナゾン、アントラフェニン(antraphenine)、アスピリン、アザプロパゾン、ベノリラート、ベノキサプロフェン、ベンジダミン、ブチブフェン、セレコキシブ、クロルテノキサジン(chlorthenoxacine)、コリンサリチラート、クロメタシン(chlometacin)、デキスケトプロフェン、ジクロフェナク、ジフルニサル、エモルファゾン、エピリゾール、エトドラク、フェクロブゾン、フェルビナク、フェンブフェン、フェンクロフェナク、フルルビプロフェン、グラフェニン、ヒドロキシルエチルサリチラート、イブプロフェン、インドメタシン、インドプロフェン、ケトプロフェン、ケトロラック、ラクチルフェネチジン、ロキソプロフェン、メフェナム酸、メタミゾール、モフェブタゾン、モフェゾラク、ナブメトン、ナプロキセン、ニフェナゾン、オキサメタシン、フェナセチン、ピペブゾン、プラノプロフェン、プロピフェナゾン、プロクアゾン、ロフェコキシブ、サリチルアミド、サルサレート、スリンダク、スプロフェン、チアラミド、チノリジン、トルフェナム酸、ゾメピラクを含む)、中和抗体(例えば、エタネルセプトおよびインフリキシマブを含む)、抗生物質(例えば、ドキシサイクリンおよびミノサイクリンを含む)から選択される治療剤もまた投与される場合か、またはこれらの治療剤と組み合わせて投与される場合に、本発明に従って用いることができる。
【0013】
式(I)の化合物は、動物モデルにおいて鎮痛活性を示す。これらの化合物の活性は、適切なin vivoアッセイを用いることによって判定することができる。
【0014】
本発明はまた、慢性、急性または神経障害性の疼痛を患っている患者(ヒト、および/あるいは、酪農、食肉もしくは毛皮業界において、またはペットして育てられる哺乳動物を含む)のための治療方法に関し、より具体的には、活性成分として式(I)の鎮痛剤の投与を伴う治療方法に関する。
【0015】
したがって、式(I)の化合物は、とりわけ、疼痛状態、例えば、急性および慢性の疼痛(ならびに(それだけに限らないが)癌、手術、関節炎、歯の手術、外傷、筋骨格の傷害または疾患、内臓疾患に関係する疼痛)、および片頭痛などの治療に用いることができる。さらに、有痛性の病状は、神経障害性(帯状疱疹後神経痛、糖尿病性神経障害、薬物誘発性神経障害、HIV媒介性神経障害、反射性交感神経性ジストロフィーまたは灼熱痛、線維筋痛症、筋筋膜痛、エントラップメントニューロパチー、幻肢痛、三叉神経痛であり得る。神経障害性の病状としては、脳卒中に関連する中枢痛、多発性硬化症、脊髄損傷、クモ膜炎、新生物、脊髄空洞症、パーキンソン病、およびてんかんが挙げられる。
【0016】
疼痛療法に用いられる別の薬物と組み合わせて式(I)の化合物を用いることは、多くの場合有利となる。そのような別の薬物は、オピエートまたは非オピエート(例えばバクロフェンなど)とすることができる。特に、神経障害性疼痛の治療に関しては、ギャバペンチンとの同時投与(coadministration)が好ましい。用いることのできる他の化合物としては、アセトアミノフェン、非ステロイド性抗炎症薬、麻薬性鎮痛薬、局所麻酔薬、NMDAアンタゴニスト、神経遮断薬、抗痙攣薬(anti-convulsant)、鎮痙薬(anti-spasmodic)、抗うつ薬、または筋弛緩薬が挙げられる。
【0017】
任意の適切な投与経路を用いることができる。例えば、経口、局所的、非経口、眼内、直腸、膣内、吸入、口腔、舌下、および鼻腔内の送達経路のいずれもが、適切となり得る。活性薬剤の用量は、病状の性質および程度、患者の年齢および状態、ならびに当業者に知られている他の要因に依存することになる。典型的な用量は、1.0〜100mgであり、1日当たり1回から3回投与される。
【0018】
本発明の化合物は、当業者によく知られているタイプの多段階合成経路によって調製することができる。そして、分子内に存在する官能基は、必要に応じて保護および脱保護することができることが想定される。合成は、置換アセトフェノンまたは類似体から始まり、これは、最初に臭素と反応することによってブロモ誘導体を生じ、次いでアミノアルコールと反応することによって目的の分子を生じる。最終化合物は、通常、沈殿によって単離され、これは、再結晶などの技法による精製を必要とする場合がある。
【0019】
以下の実施例は、本発明の化合物の調製を例示する。
【実施例】
【0020】
(実施例1)
1−(4−アミノ−3,5−ジクロロフェニル)−2−(1−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−2−イルアミノ)エタノン(3)
【化2】

【0021】
ブロモ−(4−アミノ−3,5−ジクロロ)アセトフェノン(2)
室温で、臭素(63ml、1.22mol)を、CHCl(3L ml)中の4−アミノ−3,5−ジクロロアセトフェノン(1)(250g、1.22mol)の混合物に加えた。この混合物を1時間攪拌し、次いでEtOH(500ml)を加えた。この混合物を0℃に冷却し、1時間撹拌した。沈殿物を濾過し、空気乾燥させた(4.7g、67%)。
H NMR(400MHz,DMSO):4.77(2H,s)、6.61(2H,bs)、7.86(2H,s);13C NMR(100MHz,DMSO):63.39、117.89、128.57、129.75、146.17、195.99。
【0022】
1−(4−アミノ−3,5−ジクロロフェニル)−2−(1−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−2−イルアミノ)エタノン(3)
2−アミノ−2−メチルプロパン−l−オール(180ml、2.49mol)を、クロロホルム(650ml)中のブロモ−(4−アミノ−3,5−ジクロロ)アセトフェノン(2)(237g、0.83mol)の混合物に加えた。この混合物を、室温で2時間攪拌し、次いで水(380ml)を加えた。この混合物を1時間撹拌し、次いで固体を濾過した。この固体を水(1L)を加えて粉砕することによって、所望の化合物(3)を得た(223g、91%)。
H NMR(400MHz,DMSO):0.94(6H,s)、3.18(2H,d J=4.4Hz)、3,93(2H,s)、4.55(1H,m)、6.40(2H,s)、7.84(2H,s);13C NMR(100MHz,DMSO):24.21、48.87、53.73、68.52、117.92、124.57、125.79、128.62、146.07、195.30;LC−MS:291、292、293(M+H)。
【0023】
(実施例2)
2−(1−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−2−イルアミノ)−1−(3−クロロフェニル)プロパン−l−オン(4)
【化3】

【0024】
ブロモ−3’−クロロプロピオフェノン
室温で、臭素(6.07ml、0.12mol)を、3’−クロロプロピオフェノン(20g、0.12mol)のクロロホルム(250ml)溶液に加えた。反応は、DCM中でのTLCによって追跡した。すべての出発材料が消費された時、混合物を重炭酸ナトリウムの飽和溶液で洗浄した。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、蒸発させた。クロロホルムからの再結晶により、所望の化合物を、60%の収率で、淡黄色固体として得た(18g、73mmol)。
H NMR(400MHz,CDCl):7.99(1H,m)、7.89(1H,m)、7.55(1H,m)、7.43(m)、5.21(1H,q J=6.5Hz)、1.9(3H,J=6.5Hz)。
【0025】
2−(1−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−2−イルアミノ)−1−(3−クロロフェニル)プロパン−l−オン(4)
2−アミノ−l−メチルプロパン−l−オール(14ml、0.15mol)を、α−ブロモ−3’−クロロプロピオフェノン(18g、73mmol)のクロロホルム(50ml)懸濁液に、2個のヨウ化ナトリウム結晶とともに加えた。反応溶液は、還流下で一晩加熱した。濾過後、有機相を、2MのHCl溶液で2回抽出した(2×100ml)。水相をDCMで洗浄し、炭酸ナトリウムで中和した。水層をDCMで抽出した。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、蒸発させた。クロロホルムからの再結晶により、所望の化合物を、55%の収率で、白色固体として得た(10.2g、40mmol)。
H NMR(400MHz,CDCl):7.57(1H,m)、7.27〜7.26(2H,m)、3.77〜3.74(1H,m)、3.37〜3.34(1H,m)、3.14〜3.11(1H,m)、1.37(3H,s)、1.04(3H,s)、0.76(3H,s)。13C NMR(100MHz,CHCl):16.23、22.69、27.06、49.85、53.41、69.33、95.91、124.52、126.62、128.04、129.34、134.05、144.11。LC−MS:256(M+H)。
【0026】
以下のアッセイは、本発明の有用性を例示する。
【0027】
β2作動性機能アッセイ
モルモット気管輪標本を、インドメタシンを含有するクレブス溶液中に懸濁した。15分間安定化させた後、この標本にカルバコールを用いて収縮を繰り返し、同時に漸増する累積用量の試験化合物(0.1nMから0.1μM)で処置した。それぞれの試験化合物についてのβ2作動性は、カルバコール刺激性の気管筋収縮の、その用量依存性阻害によって判定した。
【0028】
化合物(3)は、非常に劣っているβ2アゴニストであり、IC50は13μMであった。
【0029】
LPSマウスアッセイ
生後7週間のBalb C ByJマウス(24〜28g)に、腹腔内(5ml/kg)または経口(10ml/kg)投与のいずれかによって、ベヒクルまたは試験物質を投与した。30分後、これらの動物に、1mg/kgのLPSの腹腔内注射を行った。LPSを投与して2時間後、軽度のイソフルラン麻酔下で、眼窩後穿刺によって血液試料を、通常の管に採取した。試料を室温で凝血させ、次いで4℃で3分間、6000gで遠心分離した。血清は、使用するまで−20℃で保管した。血清TNFα濃度および血清IL−10濃度を、ELISA技法によって二連で分析した。
【0030】
化合物(3)は、TNFαに対する強い阻害作用およびIL−10に対する増強作用を有した。これらの作用は、β2作動性に起因するものではないようである。
【0031】
カラギーナン肢アッセイ(Carrageenan Paw Assay)
絶食させた(18時間)オスのWistarラット(105〜130g)を計量し、肢を脛骨足根骨関節まで水銀中に浸すことによって、水銀足容積測定装置での基礎測定値を、右後肢について測定した。引き続いて、ベヒクル、参照物質および試験物質を、強制経口投与(10ml/kg)によって投与した。処置から30分後に、0.9%生理食塩水中2%のカラギーナン0.1mlを、右後肢の足底部に注射した。カラギーナン投与から1、2、3、4、および5時間後に、足容積測定装置で右肢を再び測定した。
【0032】
化合物(3)は、カラギーナンの肢への注射によって誘発される炎症に対する用量依存性阻害作用を有した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療上の使用のための、式(I)
【化1】

[式中、
は、任意にRで置換されたアリールまたはヘテロアリールであり、
は、H、アルキル、もしくはCHOHであるか、またはRとともに環の一部を形成し、
は、H、アルキル、もしくはCHOHであるか、またはRとともに環の一部を形成し、
は、H、アルキル、または(RまたはRとともに環の一部を形成する場合には)CHであり、
は、アルキル、CF、OH、Oアルキル、OCOアルキル、CONH、CN、ハロゲン、NH、NO、NHCHO、NHCONH、NHSOMe、CONH、またはSOMeである]
の化合物、またはその塩。
【請求項2】
前記治療が、炎症性疾患または疼痛の治療である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
α−[(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)アミノ]−4−アミノ−3,5−ジクロロアセトフェノンである、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の化合物、および担体または希釈剤を含む、医薬組成物。
【請求項5】
炎症性疾患または疼痛の治療または予防のための、請求項1から3のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項6】
前記疾患が、慢性変性疾患、例えば、関節リウマチ、変形性関節症または骨粗鬆症などである、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
前記疾患が、慢性脱髄性疾患、例えば、多発性硬化症などである、請求項5に記載の使用。
【請求項8】
前記疾患が、呼吸器疾患、例えば、喘息または慢性閉塞性肺疾患などである、請求項5に記載の使用。
【請求項9】
前記疾患が、炎症性腸疾患(IBD)、例えば、潰瘍性大腸炎またはクローン病などである、請求項5に記載の使用。
【請求項10】
前記疾患が、皮膚疾患、例えば、乾癬、強皮症またはアトピー性皮膚炎などである、請求項5に記載の使用。
【請求項11】
前記疾患が、歯の疾患、例えば、歯周病または歯肉炎などである、請求項5に記載の使用。
【請求項12】
前記疾患が、糖尿病性腎症、ループス腎炎、IgA腎症または糸球体腎炎である、請求項5に記載の使用。
【請求項13】
前記疾患が全身性紅斑性狼瘡である、請求項5に記載の使用。
【請求項14】
前記疾患が移植片対宿主病である、請求項5に記載の使用。
【請求項15】
疼痛状態の治療または予防のための、請求項5に記載の使用。
【請求項16】
前記疼痛状態が、慢性疼痛、例えば、慢性背痛、悪性疼痛、慢性頭痛(片頭痛および群発性頭痛を含む)、または関節痛である、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
前記疼痛状態が、急性疼痛、例えば、術後痛、外傷後疼痛または急性疾患誘発性疼痛などである、請求項15に記載の使用。
【請求項18】
前記疼痛状態が神経障害性疼痛である、請求項15に記載の使用。
【請求項19】
前記疾患が眼病状である、請求項5に記載の使用。
【請求項20】
前記眼病状が加齢黄斑変性症である、請求項19に記載の使用。
【請求項21】
前記眼病状が糖尿病性網膜症である、請求項19に記載の使用。
【請求項22】
前記眼病状が、脈絡膜新生血管膜、類嚢胞黄斑浮腫、網膜上膜または黄斑円孔である、請求項19に記載の使用。
【請求項23】
前記眼病状がドライアイである、請求項19に記載の使用。
【請求項24】
前記眼病状がブドウ膜炎である、請求項19に記載の使用。
【請求項25】
治療の対象が、コルチコステロイド、細胞毒、抗生物質、免疫抑制剤、非ステロイド性抗炎症薬、麻薬性鎮痛薬、局所麻酔薬、NMDAアンタゴニスト、神経遮断薬、抗痙攣薬、鎮痙薬、抗うつ薬、および筋弛緩薬から選択される別の治療剤もまた投与される、請求項5から24のいずれか1項に記載の使用。
【請求項26】
化合物(I)および前記別の薬剤が組み合わせて提供される、請求項25に記載の使用。

【公表番号】特表2009−529519(P2009−529519A)
【公表日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−557826(P2008−557826)
【出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【国際出願番号】PCT/GB2007/000816
【国際公開番号】WO2007/102008
【国際公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(507303376)ソーセイ アールアンドディ リミテッド (16)
【Fターム(参考)】