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炎症性疾患および自己免疫疾患の処置の組成物および方法
説明

炎症性疾患および自己免疫疾患の処置の組成物および方法

IL−2の免疫抑制改変体を含む免疫抑制分子、ならびに炎症性障害および自己免疫障害を処置するためのそのような分子の使用が、本明細書において記載される。炎症誘発性であり得るFOXP3CD25T細胞の成長/生存よりも、FOXP3調節性T細胞(T−reg細胞)の成長/生存を優先的に促進する、IL−2の免疫抑制変異性改変体が、本明細書において提供される。他のT細胞に対するT−regの比を増加させることによっておよび/またはFOXP3CD25T細胞を活性化せずに、T−regにおけるFOXP3発現を増加させることによって、これらの改変体は、望ましくない炎症を抑制するはずである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2009年1月21日に出願された米国仮特許出願番号61/146,111の優先権を主張し、上記米国仮特許出願は、その全容が参照によって本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
(背景)
IL−2は、IL−2結合に際して細胞内シグナル伝達事象を一緒に活性化するIL−2RβおよびIL−2Rγならびに他の2つの受容体サブユニットにIL−2を提示する役目をするCD25(IL−2Rα)の3つの膜貫通受容体サブユニットに結合する。IL−2Rβγによって伝えられるシグナルは、PI3−キナーゼ、Ras−MAP−キナーゼ、およびSTAT5経路のシグナルを含む。
【0003】
T細胞は、典型的に組織中に存在する低濃度のIL−2に応答するためにCD25の発現を必要とする。CD25を発現するT細胞は、自己免疫性炎症を抑制するのに不可欠であるCD4FOXP3調節性T細胞(T−reg細胞)およびCD25を発現するように活性化されたFOXP3T細胞の両方を含む。FOXP3CD25Tエフェクター細胞(T−eff)は、CD4細胞またはCD8細胞のいずれかであってもよく、これらの両方は、炎症誘発性(pro−inflammatory)となり得、自己免疫病、器官移植片拒絶、または移植片対宿主病の一因となり得る。IL−2刺激STAT5シグナル伝達は、正常なT−reg細胞の成長および生存にとってならびに高FOXP3発現にとって重大である。
【0004】
IL−2は3つのIL−2R鎖のそれぞれに対して低い親和性を有するため、IL−2Rβおよび/またはIL−2Rγに対する親和性のさらなる低下は、CD25に対する親和性の増加によって補うことができるかもしれない。CD25に対して170倍まで高い親和性を示すIL−2の変異性改変体が生成された(特許文献1;Raoら、Biochemistry 44巻、10696〜701頁(2005年))。これらの改変体は、細胞表面CD25と数日間結合して、IL−2依存性細胞株の成長を長期にわたって促進することが報告された。発明者らは、変異体が、持続的なT細胞成長を刺激し、したがって、ウイルス免疫療法の方法においておよびがんまたは他の過剰増殖障害を処置するのに有用であり得ることを報告する。高用量のIL−2(Proleukin)は、抗腫瘍免疫を誘発するためにがん患者に投与されるが、これは、望ましくない毒性と関連することが多い処置である。特許文献2は、低下した毒性を有すると述べられるIL−2改変体を記載する。該特許は、毒性が、IL−2RβおよびIL−2Rγのみを発現するナチュラルキラー(NK)細胞のIL−2誘発刺激に起因すると考える。そこに記載されるIL−2改変体は、それらが、NK細胞よりも、CD25T細胞を選択的に活性化するので、低下した毒性を有すると述べられた。さらに、IL−2改変体は、一般に免疫系を刺激することが有益である治療方法、たとえばがんまたは感染症の処置に有用であると述べられた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/0142106号明細書
【特許文献2】米国特許第6,955,807号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(概要)
炎症誘発性であり得るFOXP3CD25T細胞の成長/生存よりも、FOXP3調節性T細胞(T−reg細胞)の成長/生存を優先的に促進する、IL−2の免疫抑制変異性改変体が、本明細書において提供される。他のT細胞に対するT−regの比を増加させることによっておよび/またはFOXP3CD25T細胞を活性化せずに、T−regにおけるFOXP3発現を増加させることによって、これらの改変体は、望ましくない炎症を抑制するはずである。
【0007】
これらのIL−2改変体の特有の特性は、2組の変異から生じる。1組の変異は、IL−2受容体のシグナル伝達鎖(IL−2Rβ/CD122および/もしくはIL−2Rγ/CD132)に対する親和性の低下ならびに/またはIL−2受容体の一方もしくは両方のサブユニットからのシグナル伝達事象を誘発するための能力の低下をもたらす。変異の第2の組は、CD25(IL−2Rα)に対するより高い親和性を付与し、Raoら(米国特許出願公開第2005/0142106号)によって記載される変異を含んでいてもよい。
【0008】
本明細書において記載されるように、ある種のIL−2改変体は、T−reg細胞の生存、増殖、活性化、および/または機能を優先的に誘発するシグナル伝達事象を誘発する。ある実施形態では、IL−2改変体は、T−reg細胞において、STAT5リン酸化ならびに/またはIL−2Rの下流の1つもしくは複数のシグナル伝達分子、たとえばp38、ERK、SYK、およびLCKのリン酸化を刺激するための能力を保持する。他の実施形態では、IL−2改変体は、T−reg細胞の生存、増殖、活性化、および/または機能にとって重要である、FOXP3またはIL−10などのような、遺伝子またはタンパク質の転写またはタンパク質発現をT−reg細胞において刺激するための能力を保持する。他の実施形態では、IL−2改変体は、CD25T細胞の表面上のIL−2/IL−2R複合体のエンドサイトーシスを刺激するための能力の低下を示す。他の実施形態では、IL−2改変体は、AKTおよび/またはmTOR(哺乳類ラパマイシン標的)の非効率的なリン酸化、リン酸化の低下、リン酸化の欠如などのような、PI3−キナーゼシグナル伝達の非効率的な刺激、刺激の低下、または刺激の欠如を示す。他の実施形態では、IL−2改変体は、wt IL−2がSTAT5リン酸化および/またはT−reg細胞におけるIL−2Rの下流の1つもしくは複数のシグナル伝達分子のリン酸化を刺激する能力を保持し、さらに、FOXP3CD4細胞もしくはFOXP3CD8T細胞またはNK細胞におけるSTAT5、AKT、および/もしくはmTORまたはIL−2Rの下流の他のシグナル伝達分子の非効率的なリン酸化、リン酸化の低下、またはリン酸化の欠如を示す。他の実施形態では、IL−2改変体は、FOXP3CD4細胞もしくはFOXP3CD8T細胞またはNK細胞の生存、成長、活性化および/または機能を刺激するのに非効率的であるかまたは刺激することができない。
【0009】
炎症性障害または自己免疫障害を処置するための方法が提供される。方法は、治療有効量の1つまたは複数の免疫抑制IL−2改変体を被験体に投与するステップを含む。
【0010】
調節性T細胞の増殖、生存、成長、または活性化を促進するための方法がさらに提供される。方法は、FOXP3陽性(FOXP3)T細胞を免疫抑制IL−2改変体と接触させるステップを含む。
【0011】
炎症性障害または自己免疫の処置のための医薬の調製における免疫抑制IL−2改変体の使用もまた提供される。
【0012】
インビボにおいて治療薬の安定性および/または半減期を延長する、さらなるタンパク質配列または他の化学物質に結合体化されたIL−2改変体の組成物もまた提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、IL−2改変体の配列を示す図である。生殖系ヒトIL−2と異なる配列は、グレーで網掛けされていない。
【図2A】図2Aは、フローサイトメトリーデータおよびゲーティング戦略の例を示す図である。代表的なデータを図1A中に示す。ここで、9.5%のCD4細胞は、CD25FOXP3であり、9.9%のCD4細胞は、CD25FOXP3であり、6.7%のCD8細胞は、CD25FOXP3である。FOXP3CD8T細胞は、典型的に、非常にまれである。図2Bは、CD8CD25FOXP3T細胞の相対数を示す図である。図2Cは、CD4CD25FOXP3T細胞の相対数を示す図である。図2Dは、CD4CD25FOXP3T細胞の相対数を示す図である。図2Eは、CD25CD4T細胞の中のFOXP3/FOXP3細胞の比を示す図である。図2Fは、FOXP3CD4T細胞におけるIL−2媒介性FOXP3アップレギュレーションを示す図である。
【図2B】図2Aは、フローサイトメトリーデータおよびゲーティング戦略の例を示す図である。代表的なデータを図1A中に示す。ここで、9.5%のCD4細胞は、CD25FOXP3であり、9.9%のCD4細胞は、CD25FOXP3であり、6.7%のCD8細胞は、CD25FOXP3である。FOXP3CD8T細胞は、典型的に、非常にまれである。図2Bは、CD8CD25FOXP3T細胞の相対数を示す図である。図2Cは、CD4CD25FOXP3T細胞の相対数を示す図である。図2Dは、CD4CD25FOXP3T細胞の相対数を示す図である。図2Eは、CD25CD4T細胞の中のFOXP3/FOXP3細胞の比を示す図である。図2Fは、FOXP3CD4T細胞におけるIL−2媒介性FOXP3アップレギュレーションを示す図である。
【図2C】図2Aは、フローサイトメトリーデータおよびゲーティング戦略の例を示す図である。代表的なデータを図1A中に示す。ここで、9.5%のCD4細胞は、CD25FOXP3であり、9.9%のCD4細胞は、CD25FOXP3であり、6.7%のCD8細胞は、CD25FOXP3である。FOXP3CD8T細胞は、典型的に、非常にまれである。図2Bは、CD8CD25FOXP3T細胞の相対数を示す図である。図2Cは、CD4CD25FOXP3T細胞の相対数を示す図である。図2Dは、CD4CD25FOXP3T細胞の相対数を示す図である。図2Eは、CD25CD4T細胞の中のFOXP3/FOXP3細胞の比を示す図である。図2Fは、FOXP3CD4T細胞におけるIL−2媒介性FOXP3アップレギュレーションを示す図である。
【図2D】図2Aは、フローサイトメトリーデータおよびゲーティング戦略の例を示す図である。代表的なデータを図1A中に示す。ここで、9.5%のCD4細胞は、CD25FOXP3であり、9.9%のCD4細胞は、CD25FOXP3であり、6.7%のCD8細胞は、CD25FOXP3である。FOXP3CD8T細胞は、典型的に、非常にまれである。図2Bは、CD8CD25FOXP3T細胞の相対数を示す図である。図2Cは、CD4CD25FOXP3T細胞の相対数を示す図である。図2Dは、CD4CD25FOXP3T細胞の相対数を示す図である。図2Eは、CD25CD4T細胞の中のFOXP3/FOXP3細胞の比を示す図である。図2Fは、FOXP3CD4T細胞におけるIL−2媒介性FOXP3アップレギュレーションを示す図である。
【図2E】図2Aは、フローサイトメトリーデータおよびゲーティング戦略の例を示す図である。代表的なデータを図1A中に示す。ここで、9.5%のCD4細胞は、CD25FOXP3であり、9.9%のCD4細胞は、CD25FOXP3であり、6.7%のCD8細胞は、CD25FOXP3である。FOXP3CD8T細胞は、典型的に、非常にまれである。図2Bは、CD8CD25FOXP3T細胞の相対数を示す図である。図2Cは、CD4CD25FOXP3T細胞の相対数を示す図である。図2Dは、CD4CD25FOXP3T細胞の相対数を示す図である。図2Eは、CD25CD4T細胞の中のFOXP3/FOXP3細胞の比を示す図である。図2Fは、FOXP3CD4T細胞におけるIL−2媒介性FOXP3アップレギュレーションを示す図である。
【図2F】図2Aは、フローサイトメトリーデータおよびゲーティング戦略の例を示す図である。代表的なデータを図1A中に示す。ここで、9.5%のCD4細胞は、CD25FOXP3であり、9.9%のCD4細胞は、CD25FOXP3であり、6.7%のCD8細胞は、CD25FOXP3である。FOXP3CD8T細胞は、典型的に、非常にまれである。図2Bは、CD8CD25FOXP3T細胞の相対数を示す図である。図2Cは、CD4CD25FOXP3T細胞の相対数を示す図である。図2Dは、CD4CD25FOXP3T細胞の相対数を示す図である。図2Eは、CD25CD4T細胞の中のFOXP3/FOXP3細胞の比を示す図である。図2Fは、FOXP3CD4T細胞におけるIL−2媒介性FOXP3アップレギュレーションを示す図である。
【図3】図3は、IL−2ムテインが、T−regにおけるホスホ−STAT5を刺激するが、他のT細胞におけるシグナルの刺激に非効率的であることを示す図である。T細胞は、実施例3に記載されるようにIL−2を用いて刺激した。ホスホ−STAT5は、フローサイトメトリーによって測定し、ホスホ−AKTはELISA(MesoScale Discovery)によって測定した。略語は、以下のとおりである:T−reg、FOXP3CD4T細胞;CD4 T−eff、CD4CD25FOXP3「エフェクター」T細胞;CD8 T−eff、CD8CD25FOXP3「エフェクター」T細胞。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(好ましい実施形態の詳細な説明)
FOXP3調節性T細胞(T−reg細胞)は、正常な免疫恒常性および自己組織に対する免疫寛容を維持するのにならびに望ましくない炎症を抑制するのに不可欠である。T−reg細胞は、おそらく一時的な因子および環境因子によって調節されるであろう複数のメカニズムを通してそれらの抑制因子および調節機能を働かせる。現在の免疫抑制治療薬は、一般に、個々の炎症誘発性の経路を標的にし、そのため、部分的な効能を示すかまたは特異疾患に適用可能であることが多い。代替の免疫抑制様式は、天然の抑制細胞が炎症の部位に適切な抑制分子/活性を伝えることをより可能にするために、天然の抑制細胞の数および活性化状態の上昇を含んでいてもよい。
【0015】
T−reg細胞の増殖、生存、活性化、および/または機能を選択的に促進する治療剤が本明細書において記載される。「選択的に促進する」によって、治療剤が、T−reg細胞において活性を促進するが、非調節性T細胞において、活性を促進するための能力が限られているかまたはそれを欠くことが意味される。T−reg細胞の増殖、生存、活性化、および/または機能を選択的に促進する作用物質をスクリーニングするためのアッセイが本明細書においてさらに記載される。スクリーニングされてもよい作用物質は、小分子、ペプチド、ポリペプチド、抗体、たとえばモノクローナル抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、一価抗体、二価抗体、および多価抗体を含むタンパク質を含むが、これらに限定されない。
【0016】
ある実施形態では、作用物質は、IL−2改変体である。特に、IL−2改変体は、T−reg細胞の成長/生存のこれらの活性を促進するが、非調節性T細胞(FOXP3CD25)およびナチュラルキラー細胞の増殖、生存、活性化、および/または機能を促進するための能力が野生型IL−2と比較して低下している。ある実施形態では、そのようなIL−2改変体は、IL−2RサブユニットIL−2Rα(CD25)に対する親和性の上昇ならびにシグナル伝達サブユニットIL−2Rβおよび/またはIL−2Rγに対する親和性の低下の組み合わせを通して機能する。IL−2およびその改変体が、免疫賦活剤として、たとえば、がんまたは感染症を処置するための方法において、当技術分野において使用されてきたのに対して、本明細書において記載されるIL−2改変体は、免疫抑制作用物質として、たとえば、炎症性障害を処置するための方法において、特に有用である。
【0017】
IL−2改変体は、野生型IL−2に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%同一のアミノ酸の配列を含む。IL−2改変体は、野生型IL−2の機能的断片に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%同一のアミノ酸の配列をさらに含む。本明細書において使用されるように、「野生型IL−2」は、以下のアミノ酸配列を有するポリペプチドを意味するものとする:
【0018】
【化1】

ここで、Xは、C、S、A、またはV(配列番号1)である。
【0019】
改変体は、野生型IL−2アミノ酸配列内に1つまたは複数の置換、欠失、または挿入を含有していてもよい。残基は、一文字アミノ酸コード、その後に続くIL−2アミノ酸位置によって本明細書において示され、たとえば、K35は、配列番号1の35位のリシン残基である。置換は、一文字アミノ酸コード、その後に続くIL−2アミノ酸位置、その後に続く置換一文字アミノ酸コードによって本明細書において示され、たとえば、K35Aは、配列番号1の35位のリシン残基のアラニン残基との置換である。
【0020】
一態様では、本発明は、野生型IL−2よりもIL−2Rαに対する高い親和性を有する免疫抑制IL−2改変体を提供する。米国特許出願公開第2005/0142106号(その全体が参照によって本明細書において組み込まれる)は、野生型IL−2が有するよりも、IL−2Rαに対する高い親和性を有するIL−2改変体およびそのような改変体を作製し、かつスクリーニングするための方法を記載する。好ましいIL−2改変体は、IL−2Rαに接触するIL−2配列の位置か、またはIL−2Rαに接触する他の位置の方向づけを改変するIL−2配列の位置に1つまたは複数の変異を含み、IL−2Rαに対するより高い親和性がもたらされる。変異は、公開された結晶構造に基づいて、IL−2Rαに極めて接近していることが公知のエリア中にまたはその近くにあってもよい(Xinquan Wang、Mathias Rickert、K. Christopher Garcia. Science 310巻:1159頁 2005年)。IL−2Rαに接触すると考えられるIL−2残基は、K35、R38、F42、K43、F44、Y45、E61、E62、K64、P65、E68、V69、L72、およびY107を含む。
【0021】
IL−2Rαに対するより大きな親和性を有するIL−2改変体は、N29、N30、Y31、K35、T37、K48、E68、V69、N71、Q74、S75、またはK76における変化を含むことができる。好ましい改変体は、1つまたは複数の以下の変異を有するものを含む:N29S、N30S、N30D、Y31H、Y31S、K35R、T37A、K48E、V69A、N71R、およびQ74P。
【0022】
免疫抑制IL−2改変体はまた、IL−2Rを介して野生型IL−2によって活性化されるある種の経路を通してのシグナル伝達の改変を示し、T−regの優先的な増殖/生存/活性化をもたらす改変体をも含む。IL−2Rの活性化に際してリン酸化されることが公知の分子は、STAT5、p38、ERK、SYK、LCK、AKT、およびmTORを含む。野生型IL−2と比較して、免疫抑制IL−2改変体は、FOXP3T細胞において低下したPI3Kシグナル伝達能力を有することができ、これは、野生型IL−2と比較した、AKTおよび/またはmTORのリン酸化における低下によって測定することができる。そのような改変体は、IL−2RβもしくはIL−2Rγに接触する位置か、またはIL−2RβもしくはIL−2Rγに接触する他の位置の方向づけを改変する位置に変異を含んでいてもよい。IL−2Rβに接触すると考えられるIL−2残基は、L12、Q13、H16、L19、D20、M23、R81、D84、S87、N88、V91、I92、およびE95を含む。IL−2Rγに接触すると考えられるIL−2残基は、Q11、L18、Q22、E110、N119、T123、Q126、S127、I129、S130、およびT133を含む。ある実施形態では、IL−2改変体は、E15、H16、Q22、D84、N88、またはE95に変異を含む。そのような変異の例は、E15Q、H16N、Q22E、D84N、N88D、およびE95Qを含む。
【0023】
ある実施形態では、IL−2改変体は、変異の組み合わせを含む。変異の組み合わせを有するIL−2改変体の例は、図1に提供され、haWT(配列番号2)、haD(配列番号3)、haD.1(配列番号4)、haD.2(配列番号5)、haD.4(配列番号6)、haD.5(配列番号7)、haD.6(配列番号8)、haD.8(配列番号9)、およびhaD.11(配列番号10)dを含む。好ましい実施形態では、IL−2改変体は、FOXP3陽性調節性T細胞においてSTAT5リン酸化を刺激するが、野生型IL−2と比較して、FOXP3陰性T細胞において、STAT5およびAKTリン酸化を誘発する能力が低下している。そのような特性を有する好ましい改変体は、haD、haD.1、haD.2、haD.4、haD.5、haD.6、およびhaD.8を含む。
【0024】
IL−2改変体は、野生型IL−2配列と比較して、IL−2RβまたはIL−2Rγに対する親和性に対して効果を有していない1つまたは複数の変異をさらに含んでいてもよいが、IL−2改変体が、FOXP3を発現しない他のT細胞よりも、FOXP3T−regの優先的な増殖、生存、活性化、または機能を促進することを条件とする。好ましい実施形態では、そのような変異は、保存的変異である。
【0025】
IL−2改変体は、患者に投与された場合にIL−2改変体の血清半減期を増加させるための1つまたは複数の化合物を含んでいてもよい。そのような半減期を延長する分子は、水溶性ポリマー(たとえばポリエチレングリコール(PEG))、低密度リポタンパク質および高密度リポタンパク質、抗体Fc(単量体または二量体)、トランスサイレチン(TTR)、ならびにTGF−β潜伏関連ペプチド(TGF−β latency associated peptide)(LAP)を含む。PEG化TTRなどのような、血清半減期延長分子の組み合わせを含むIL−2改変体もまた企図される(米国特許出願公開第2003/0195154号)。
【0026】
(免疫抑制IL−2改変体を作製するための方法)
免疫抑制IL−2改変体は、免疫賦活IL−2改変体を産生するための米国特許第6,955,807号(参照によって本明細書において組み込まれる)において記載されるものを含む、当技術分野において公知の任意の適した方法を使用して産生することができる。そのような方法は、IL−2改変体をコードするDNA配列を構築するステップおよび適切に形質転換された宿主においてそれらの配列を発現するステップを含む。この方法は、本発明の組換え改変体を産生する。しかしながら、改変体はまた、化学合成または化学合成および組換えDNA技術の組み合わせによって産生されてもよい。バッチ式産生方法または灌流産生方法は、当技術分野において公知である。Freshey, R. I.(編)、「Animal Cell Culture: A Practical Approach」、第2版、1992年、IRL Press. Oxford、England;Mather, J. P.「Laboratory Scaleup of Cell Cultures (0.5−50 liters)」、Methods Cell Biolog 57巻:219〜527頁(1998年);Hu, W. S.およびAunins, J. G.、「Large−scale Mammalian Cell Culture」、Curr Opin Biotechnol 8巻:148〜153頁(1997年);Konstantinov, K. B.、Tsai, Y.、Moles, D.、Matanguihan, R.、「Control of long−term perfusion Chinese hamster ovary cell culture by glucose auxostat.」、Biotechnol Prog 12巻:100〜109頁(1996年)を参照されたい。
【0027】
改変体を産生するための組換え法の一実施形態では、DNA配列は、野生型IL−2をコードするDNA配列を単離または合成し、次いで、部位特異的変異誘発によって1つまたは複数のコドンを変化させることによって構築される。この技術は、周知である。たとえば、参照によって本明細書において組み込まれるMarkら、「Site−specific Mutagenesis Of The Human Fibroblast Interferon Gene」、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81巻、5662〜66頁(1984年);および米国特許第4,588,585号を参照されたい。
【0028】
IL−2改変体をコードするDNA配列を構築するための他の方法は、化学合成である。これは、たとえば、本明細書において記載される特性を示すIL−2改変体をコードするタンパク質配列の化学的手段によるペプチドの直接的な合成を含む。この方法は、IL2Rα、IL−2Rβ、またはIL−2RγとのIL−2の相互作用に影響を与える位置に天然アミノ酸および非天然アミノ酸を組み込んでいてもよい。その代わりに、所望のIL−2改変体をコードする遺伝子は、オリゴヌクレオチドシンセサイザーを使用して化学的手段によって合成されてもよい。そのようなオリゴヌクレオチドは、所望のIL−2改変体のアミノ酸配列に基づき、その中で組換え改変体が産生される宿主細胞において有利なコドンを好ましくは選択して設計される。この点に関して、遺伝子コードが縮重しており、アミノ酸が1つを超えるコドンによってコードされてもよいことが十分に認識される。たとえば、Phe(F)は、2つのコドン、TTCまたはTTTによってコードされ、Tyr(Y)は、TACまたはTATによってコードされ、his(H)は、CACまたはCATによってコードされる。Trp(W)は、単一のコドン、TGGによってコードされる。したがって、特定のIL−2改変体をコードする所与のDNA配列について、そのIL−2改変体をコードする多くのDNA縮重配列があるということが理解される。
【0029】
IL−2改変体をコードするDNA配列はまた、特定部位の変異誘発、化学合成、または他の方法によって調製されるかどうかに関わらず、シグナル配列をコードするDNA配列を含んでいてもよいし、または含んでいなくてもよい。そのようなシグナル配列は、存在する場合、IL−2改変体の発現のために選ばれた細胞によって認識されるシグナル配列であるべきである。それは、原核生物、真核生物、またはその2つの組み合わせであってもよい。それはまた、本来のIL−2のシグナル配列であってもよい。シグナル配列の包含は、IL−2改変体が作製される組換え細胞から、IL−2改変体を分泌することが所望されるかどうかに依存する。選ばれた細胞が原核生物である場合、DNA配列がシグナル配列をコードしないことが一般に好ましい。選ばれた細胞が真核生物である場合、シグナル配列がコードされること、最も好ましくは、野生型IL−2シグナル配列が使用されることが一般に好ましい。
【0030】
標準的な方法は、IL−2改変体をコードする遺伝子を合成するために適用されてもよい。たとえば、完全なアミノ酸配列は、逆翻訳遺伝子を構築するために使用されてもよい。IL−2改変体をコードするヌクレオチド配列を含有するDNAオリゴマーが合成されてもよい。たとえば、所望のポリペプチドの部分をコードするいくつかの小さなオリゴヌクレオチドが合成され、次いで、ライゲーションされてもよい。個々のオリゴヌクレオチドは、典型的に、相補的な組み立てのために5’または3’オーバーハングを含有する。
【0031】
一度、組み立てられたら(合成、特定部位の変異誘発、または他の方法によって)、IL−2改変体をコードするDNA配列は、発現ベクターの中に挿入され、所望の形質転換宿主におけるIL−2改変体の発現に適切な発現制御配列に作動可能に連結される。適切な組み立ては、ヌクレオチド配列決定、制限酵素マッピング、および適した宿主における生物学的に活性なポリペプチドの発現によって確認されてもよい。当技術分野において周知であるように、宿主においてトランスフェクトされた遺伝子の高い発現レベルを得るために、遺伝子は、選ばれた発現宿主において機能的な転写および翻訳発現制御配列に作動可能に連結されなければならない。発現制御配列および発現ベクターの選択は、宿主の選択に依存する。種々様々の発現宿主/ベクター組み合わせが使用されてもよい。
【0032】
細菌、真菌類(酵母を含む)、植物、昆虫、哺乳動物、または他の適切な動物細胞もしくは細胞株およびトランスジェニック動物またはトランスジェニック植物を含む、任意の適した宿主が、IL−2改変体を産生するために使用されてもよい。特に、これらの宿主は、E.coli、Pseudomonas、Bacillus、Streptomyces、真菌、酵母、Spodoptera frugiperda(Sf9)などのような昆虫細胞、組織培養における、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)およびNS/Oなどのようなマウス細胞、COS1、COS7、BSC1、BSC40、およびBNT10などのようなアフリカミドリザル細胞、およびヒト細胞などのような動物細胞、ならびに植物細胞の株などのような周知の真核生物および原核生物の宿主を含んでいてもよい。動物細胞発現については、培養物中のCHO細胞およびCOS7細胞、特にCHO細胞株CHO(DHFR−)またはHKB株が好ましい。
【0033】
もちろん、すべてのベクターおよび発現制御配列が機能して、本明細書において記載されるDNA配列を等しく十分に発現するとは限らないということを理解されたい。また、すべての宿主が同じ発現系で等しく十分に機能するとは限らない。しかしながら、当業者は、不必要な実験作業を用いずに、これらのベクター、発現制御配列、および宿主から選択を行ってもよい。たとえば、ベクターを選択する際に、ベクターはその中で複製しなければならないので、宿主は考慮されなければならない。ベクターコピー数、そのコピー数を制御する能力、および抗生物質マーカーなどのような、ベクターによってコードされる任意の他のタンパク質の発現もまた考慮されたい。たとえば、本発明における使用のための好ましいベクターは、IL−2改変体をコードするDNAのコピー数が増幅されることを可能にするものを含む。そのような増幅可能なベクターは、当技術分野において周知である。それらは、たとえば、DHFR増幅(たとえばKaufman、米国特許第4,470,461号、KaufmanおよびSharp、「Construction Of A Modular Dihydrafolate Reductase cDNA Gene: Analysis Of Signals Utilized For Efficient Expression」、Mol. Cell. Biol.、2巻、1304〜19頁(1982頁)を参照されたい)またはグルタミンシンテターゼ(「GS」)増幅(たとえば米国特許第5,122,464号および欧州特許出願公開第338,841号を参照されたい)によって増幅することができるベクターを含む。
【0034】
IL−2改変体は、改変体を産生するために使用される宿主生物に依存して、グリコシル化されても、グリコシル化されなくてもよい。細菌が宿主に選ばれる場合、産生されるIL−2改変体は、グリコシル化されない。他方、おそらく、本来のIL−2がグリコシル化されるのと同じ方法ではないが、真核細胞は、IL−2改変体をグリコシル化する。形質転換宿主によって産生されるIL−2改変体は、任意の適した方法によって精製することができる。IL−2を精製するための様々な方法が公知である。たとえばCurrent Protocols in Protein Science、2巻 編:John E. Coligan、Ben M. Dunn、Hidde L. Ploehg、David W. Speicher、Paul T. Wingfield、Unit 6.5 (Copyright 1997、John Wiley and Sons, Inc)を参照されたい。
【0035】
IL−2改変体の生物学的活性は、当技術分野において公知の任意の適した方法によってアッセイすることができる。そのようなアッセイは、下記の実施例において記載されるものを含む。
【0036】
(適応症)
疾患、障害、または状態は、T−reg選択的IL−2改変体の被験体への投与による処置が適用可能であってもよく、またはその投与によって予防されてもよい。そのような疾患、障害、および状態は、炎症、自己免疫疾患、腫瘍随伴性自己免疫疾患、軟骨の炎症、線維性疾患および/または骨分解、関節炎、関節リウマチ、若年性関節炎、若年性関節リウマチ、少関節型若年性関節リウマチ、多関節型若年性関節リウマチ、全身型若年性関節リウマチ、若年性強直性脊椎炎、若年性の腸疾患に基づく関節炎、若年性反応性関節炎、若年性ライター症候群(juvenile Reter’s Syndrome)、SEA症候群(血清陰性、腱付着部症、関節症症候群)、若年性皮膚筋炎、若年性乾癬性関節炎、若年性強皮症、若年性全身性エリテマトーデス、若年性血管炎、少関節型関節リウマチ、多関節型関節リウマチ、全身型関節リウマチ、強直性脊椎炎、腸疾患に基づく関節炎、反応性関節炎、ライター症候群、SEA症候群(血清陰性、腱付着部症、関節症症候群)、皮膚筋炎、乾癬性関節炎、強皮症、全身性エリテマトーデス、血管炎、脊髄炎(myolitis)、多発性筋炎(polymyolitis)、皮膚筋炎、変形性関節症、結節性多発動脈炎(polyarteritis nodossa)、ウェゲナー肉芽腫症、動脈炎、リウマチ性多発性筋痛(ploymyalgia rheumatica)、サルコイドーシス、強皮症、硬化症、原発性胆汁性硬化症、硬化性胆管炎、シェーグレン症候群、乾癬、プラーク乾癬、滴状乾癬、逆型乾癬、膿胞性乾癬、乾癬性紅皮症、皮膚炎、アトピー性皮膚炎、アテローム性動脈硬化症、狼瘡、スティル病、全身性エリテマトーデス(SLE)、重症筋無力症、炎症性腸疾患(IBD)、クローン病、潰瘍性大腸炎、セリアック病、多発性硬化症(multiple schlerosis)(MS)、喘息、COPD、ギラン−バレー疾患、I型糖尿病、甲状腺炎(たとえばグレーブス病)、アジソン病、レーノー現象、自己免疫性肝炎、GVHD、移植拒絶反応、ならびにその他同種のものを含むが、これらに限定されない。特定の実施形態では、治療有効量のT−reg選択的IL−2改変体を含む医薬組成物が提供される。
【0037】
用語「処置」は、障害の少なくとも1つの症状もしくは他の局面の軽減もしくは予防、疾患重症度の低下、およびその他同種のものを包含する。T−reg選択的IL−2改変体は、実用的な治療剤を構成するために、完全な治癒を達成する必要はなく、または疾患のすべての症状もしくは症状発現を取り除く必要もない。関係のある分野において認識されるように、治療剤として使用される薬物は、所与の疾患状態の重症度を低下させてもよいが、有用な治療剤と見なされるために、疾患のすべての症状発現を消失させる必要はない。同様に、予防的に施される処置は、実用的な予防薬を構成するために、状態の発症を予防するのに完全に有効である必要はない。単に疾患の影響を低下させること(たとえば、その症状の数値もしくは重症度を低下させることによって、または他の処置の有効性を増加させることによって、または他の有益な効果をもたらすことによって)、または被験体において疾患が生じるかもしくは悪化する可能性を減少させることは、十分である。本発明の一実施形態は、特定の障害の重症度を反映する指標のベースラインを超えた持続性の改善を誘発するのに十分な量かつ時間で、T−reg選択的IL−2改変体を患者に投与するステップを含む方法に関する。
【0038】
(医薬組成物)
いくつかの実施形態では、本発明は、薬学的に許容される希釈剤、キャリア、可溶化剤、乳化剤、防腐剤、および/または補助剤と一緒に、治療有効量の1つまたは複数の、本発明のT−reg選択的IL−2改変体を含む医薬組成物を提供する。さらに、本発明は、そのような医薬組成物を投与することによって患者を処置するための方法を提供する。用語「患者」は、ヒトおよび動物被験体を含む。
【0039】
ある実施形態では、許容される処方材料は、好ましくは、使用される投薬量および濃度でレシピエントに対して無毒である。ある実施形態では、医薬組成物は、たとえば、組成物のpH、容量オスモル濃度、粘性、透明性、色、等張性、匂い、無菌性、安定性、溶解速度もしくは放出速度、吸着、または浸透を改変する、維持する、または保存するための処方材料を含有していてもよい。そのような実施形態では、適した処方材料は、アミノ酸(グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、もしくはリシンなど);抗菌薬;酸化防止剤(アスコルビン酸、亜硫酸ナトリウム、もしくは亜硫酸水素ナトリウムなど);バッファー(ホウ酸塩、重炭酸塩、Tris−HCl、クエン酸塩、リン酸塩、もしくは他の有機酸など);充填剤(マンニトールもしくはグリシンなど);キレート剤(エチレンジアミン四酢酸(EDTA)など);錯化剤(カフェイン、ポリビニルピロリドン、ベータ−シクロデキストリン、もしくはヒドロキシプロピル−ベータ−シクロデキストリンなど);増量剤;単糖;二糖;および他の炭水化物(グルコース、スクロース、マンノース、もしくはデキストリンなど);タンパク質(血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリンなど);着色剤、矯味矯臭薬、および希釈剤;乳化剤;親水性ポリマー(ポリビニルピロリドンなど);低分子量ポリペプチド;塩形成対イオン(ナトリウムなど);防腐剤(塩化ベンザルコニウム、安息香酸、サリチル酸、チメロサール、フェネチルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロルヘキシジン、ソルビン酸、もしくは過酸化水素など);溶剤(グリセリン、プロピレングリコール、もしくはポリエチレングリコールなど);糖アルコール(マンニトールもしくはソルビトールなど);懸濁剤;界面活性剤もしくは湿潤剤(プルロニック、PEG、ソルビタンエステル、ポリソルベート20などのようなポリソルベート、ポリソルベート、トリトン、トロメタミン、レシチン、コレステロール、チロキサポール(tyloxapal)など);安定性促進剤(スクロースもしくはソルビトールなど);張性促進剤(アルカリ金属ハロゲン化物、好ましくは塩化ナトリウムもしくは塩化カリウム、マンニトールソルビトールなど);デリバリービヒクル;希釈剤;賦形剤ならびに/または医薬補助剤を含むが、これらに限定されない。REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES、第18版(A. R. Genrmo編)、1990年、Mack Publishing Companyを参照されたい。
【0040】
使用されることとなるT−reg選択的IL−2改変体含有医薬組成物の治療有効量は、たとえば、治療の状況および目的に依存する。当業者は、処置のための適切な投薬量レベルは、部分的に、送達される分子、T−reg選択的IL−2改変体が使用される適応症、投与のルート、ならびに患者のサイズ(体重、体表面、もしくは器官サイズ)および/または状態(年齢および健康状態)に依存して変わるということを十分に理解する。
【0041】
ある実施形態では、臨床医は、最適な治療効果を得るために、投薬量を用量設定し、かつ投与のルートを改変してもよい。典型的な投薬量は、上記に言及される因子に依存して、約0.1μg/kg〜約30mg/kg以上の範囲であってもよい。特定の実施形態では、投薬量は、0.1μg/kg〜約30mg/kg、任意選択で1μg/kg〜約30mg/kg、または10μg/kg〜約5mg/kgの範囲であってもよい。
【0042】
投薬頻度は、使用される処方物における特定のT−reg選択的IL−2改変体の薬物動態学的パラメーターに依存する。典型的に、所望の結果を達成する投薬量に達するまで、臨床医は、組成物を投与する。したがって、組成物は、ある期間にわたって、単一の用量としてもしくは2回以上の用量(これは、同じ量の所望の分子を含有していても、していなくてもよい)としてまたは移植デバイスもしくはカテーテルを介して継続的な注入剤として投与されてもよい。適切な投薬量のさらなる改善は、当業者らによってルーチン的に成され、彼らによってルーチン的に行なわれる作業の範囲内にある。
【0043】
医薬組成物の投与のルートは、たとえば、経口的な、静脈内、腹腔内、脳内(実質内)、脳室内、筋肉内、眼内、動脈内、門脈内、または病巣内ルートによる注射を通しての;徐放性系または移植デバイスによる、公知の方法に従う。ある実施形態では、組成物は、ボーラス注射によって、または継続的注入によって、または移植デバイスによって、投与されてもよい。
【0044】
(組み合わせ療法)
さらなる実施形態では、T−reg選択的IL−2改変体は、患者が罹患している状態を処置するのに有用な他の作用物質と組み合わせて投与される。そのような作用物質の例は、タンパク質性および非タンパク質性薬物の両方を含む。複数の治療薬が共投与(co−administer)される場合、投薬量は、関連技術において認識されるように、それに応じて調節されてもよい。「共投与」および組み合わせ療法は、同時の投与に限定されず、さらに、少なくとも1つの他の治療剤を患者に投与することを含む処置の経過の間にT−reg選択的IL−2改変体が少なくとも一度投与される処置レジメンを含む。
【0045】
ある実施形態では、T−reg選択的IL−2改変体は、PI3K/AKT/mTOR経路のインヒビター、たとえばラパマイシン(ラパミューン、シロリムス)と組み合わせて投与される。IL−2と組み合わせたこの経路のインヒビターは、T−regの豊富化に有利である。
【0046】
記載されている本発明、以下の実施例は、限定ではなく例証として提示される。
【実施例】
【0047】
(実施例)
(実施例1:IL−2変異体のパネル)
T−regではなく、FOXP3CD25「エフェクター」T細胞(T−eff)を刺激する能力が低下したIL−2改変体を生成する可能性を試験するために、IL−2Rβ鎖および/またはIL−2Rγ鎖と相互作用することが予測されるアミノ酸が改変された一連のIL−2変異体を生成した。これらの改変体はまた、CD25に対する高い親和性を付与した1組の以前に記載された変異を含有した(Raoら、Biochemistry 44巻、10696〜701頁(2005年)における改変体「2〜4」)。この一連の改変体を図1に示す。改変体haWTは、CD25に対する高い親和性に寄与する変異のみを含有した。改変体haD、haD.1、haD.2などはまた、IL−2Rβおよび/またはIL−2Rγとの相互作用を改変することが予測される変異を含有した。すべてのアッセイにおいて、改変体haD.11は、いかなるシグナルをも誘発することができず、いかなる細胞表現型をも改変することができず、そのため、IL−2Rシグナル伝達を伴わないCD25結合についての対照として役立った。すべてのIL−2改変体は、製造しやすさの改善のためにC125S変異を含有し、FLAGおよびHISタグ配列(DYKDDDDKGSSHHHHHH)(配列番号11)で終結した。
【0048】
いくつかのアッセイは、IL−2改変体がシグナル伝達事象およびT細胞成長を誘発する能力を評価するために使用した。これらは、
1.T細胞サブセットの成長および生存ならびにFOXP3発現の測定
2.細胞シグナル伝達(たとえばフローサイトメトリー法およびELISAベースの方法を使用する、リン酸化STAT5およびAKTの検出)
を検出するためのアッセイを含んだ。
【0049】
(実施例2:FOXP3細胞の豊富化および長期T細胞培養の間のFOXP3アップレギュレーションの保持)
全PBMCを、100ng/ml抗CD3(OKT3)を用いてウェル当たり4×10細胞で24ウェルプレート中で活性化した。培養の3日目に、細胞を3回洗浄し、3日間新鮮な培地中に置いた。次いで、細胞を洗浄し、10nMまたは100pMのIL−2改変体を有する96ウェル平底プレート中に接種した。3日後、細胞は、フローサイトメトリーによってカウントし、分析した(図2A)。
【0050】
期待されるように、CD8CD25T細胞は、WT IL−2および改変体haWTにとりわけ反応したが、変異IL−2Rβおよび/またはγ接触残基を含有したすべての改変体は、活性化CD8CD25T細胞の蓄積の促進で非常に非効率的であった(図2B)。同様の傾向は、CD4CD25FOXP3T細胞について観察された(図2C)。対照的に、FOXP3CD4T細胞の成長/生存は、WT IL−2に類似する程度までいくつかのIL−2改変体によって刺激された(図2D)。その結果として、CD4CD25T細胞の中のFOXP3T細胞に対するFOXP3T細胞の比は、IL−2Rβγ接触残基変異を有するいくつかのIL−2改変体によって増加した(図2E)。さらに、変異は、T−regにおいてIL−2刺激FOXP3アップレギュレーションを弱めなかった(図2F)。
【0051】
(実施例3:FOXP3T細胞においてシグナル伝達を低下させるが、T−regにおいてSTAT5シグナル伝達を刺激する変異)
IL−2改変体を、T細胞サブセットにおいて、AKTおよびSTAT5のリン酸化を刺激するそれらの能力についてスクリーニングした。いくつかのIL−2改変体は、刺激の10分後のFOXP3T細胞におけるSTAT5の刺激において、wt IL−2と同じくらい強力であったか、またはほぼ同じくらい強力であった。培地からIL−2を洗い流してから3時間後に、いくつかのIL−2改変体(haD、haD.1、haD.2、haD.4、haD.6、およびhaD.8)は、wt IL−2で見られたものよりも高いレベルで持続性のSTAT5シグナル伝達を刺激し続けた。対照的に、FOXP3T細胞について、10分間の刺激後、haD改変体に対するSTAT5およびAKTの反応は、wt IL−2またはhaWTによって刺激されたものに比べれば全く高くなかった。3時間後に、wt IL−2で見られたものに類似する弱いSTAT5およびAKTのシグナルが、T−effにおいて観察されたが、この後期の時点で、wt IL−2シグナル伝達は大幅に小さくなった。FOXP3T細胞において、AKTシグナル伝達は、IL−2によって通常刺激されない(Zeiser Rら、2008年 Blood 111巻:453頁)、したがって、全T細胞溶解物において観察されたホスホ−AKTシグナルは、T−effに起因し得る。
【0052】
方法:あらかじめ活性化させ(2〜3日間、抗CD3を用いて)、置いておいた(2〜5日間、新鮮な培地中で)T細胞を、37℃で10分間、1nM wtまたは変異体IL−2に曝露した。次いで、細胞は、染色し(10分の時点)または洗浄し、さらに3時間培養した(3時間の時点)。ELISAによってホスホ−AKTを測定するために、50μl培養物を、等容量の2×溶解緩衝液を追加することによって停止させ、溶解物は、製造業者のプロトコールに従って多重ELISAプレートを用いて、ホスホ−AKTについて測定した(MesoScale Discovery、Gaithersburg、Maryland)。フローサイトメトリーによってホスホ−STAT5を測定するために、50μl培養物は、1mlのFOXP3 Fix/Perm緩衝液(BioLegend、San Diego、CA)の追加によって停止させ、20分間25℃でインキュベーションし、そしてBioLegend FOXP3染色プロトコールに従い細胞表面マーカー、FOXP3およびホスホ−STAT5を染色した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体において炎症性障害を処置するための方法であって、治療有効量のIL−2改変体を炎症性障害の処置を必要とする被験体に投与するステップを含み、前記IL−2改変体は、
(a)配列番号1に少なくとも80%同一のアミノ酸の配列を含み、
(b)FOXP3陽性調節性T細胞においてSTAT5リン酸化を刺激し、および
(c)配列番号1として記載されるポリペプチドと比較して、FOXP3陰性T細胞においてSTAT5のリン酸化を誘発するための能力が低下している、方法。
【請求項2】
前記炎症性障害は、喘息、糖尿病、関節炎、アレルギー、器官移植片拒絶、および移植片対宿主病からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記IL−2改変体は、配列番号1に少なくとも90%同一のアミノ酸の配列を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記IL−2改変体は、配列番号1に少なくとも95%同一のアミノ酸の配列を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記IL−2改変体は、配列番号1として記載されるポリペプチドよりも、IL−2Rαに対する高い親和性を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記IL−2改変体は、インビトロにおいて、FOXP3陽性調節性T細胞の成長または生存を促進する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記IL−2改変体は、アミノ酸30、アミノ酸31、アミノ酸35、アミノ酸69、およびアミノ酸74からなる群より選択される位置に、配列番号1において記載されるポリペプチド配列において変異を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記30位の変異は、N30Sである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記31位の変異は、Y31Hである、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記35位の変異は、K35Rである、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記69位の変異は、V69Aである、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記74位の変異は、Q74Pである、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
前記IL−2改変体は、機能的IL−2受容体複合体を含むエクスビボFOXP3陽性T細胞においてSTAT5リン酸化を誘発するが、STAT5のリン酸化を誘発するための能力が低下している、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記IL−2改変体は、88位に、配列番号1において記載されるポリペプチド配列において変異を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記88位の変異は、N88Dである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記IL−2改変体は、インビボにおいて前記IL−2改変体の血清半減期を延長する化学物質またはポリペプチドに結合体化される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
FOXP3陽性調節性T細胞の成長または生存を促進するための方法であって、FOXP3陽性調節性T細胞をIL−2改変体と接触させるステップを含み、前記IL−2改変体は、
(a)配列番号1に少なくとも80%同一のアミノ酸の配列を含み、
(b)前記FOXP3陽性調節性T細胞においてSTAT5リン酸化を刺激し、および
(c)配列番号1として記載されるポリペプチドと比較して、FOXP3陰性T細胞においてSTAT5のリン酸化を誘発するための能力が低下している、方法。
【請求項18】
前記FOXP3陽性調節性T細胞は、インビトロにおいて接触させられる、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記IL−2改変体は、インビボにおいて前記IL−2改変体の血清半減期を延長する化学物質またはポリペプチドに結合体化される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
炎症性疾患の処置のための医薬の調製におけるIL−2改変体の使用であって、前記IL−2改変体は、
(a)配列番号1に少なくとも80%同一のアミノ酸の配列を含み、
(b)FOXP3陽性調節性T細胞においてSTAT5リン酸化を刺激し、および
(c)配列番号1として記載されるポリペプチドと比較して、FOXP3陰性T細胞においてSTAT5のリン酸化を誘発するための能力が低下している、使用。
【請求項21】
前記IL−2改変体は、インビボにおいて前記IL−2改変体の血清半減期を延長する化学物質またはポリペプチドに結合体化される、請求項20に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図2F】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−515778(P2012−515778A)
【公表日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−548074(P2011−548074)
【出願日】平成22年1月20日(2010.1.20)
【国際出願番号】PCT/US2010/021519
【国際公開番号】WO2010/085495
【国際公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(500203709)アムジェン インコーポレイテッド (76)
【Fターム(参考)】