説明

炎症性疾患治療のための製剤と方法

本発明者は、有効量のポロクサマーを含む医薬組成物の局所的投与により、炎症を防止し組織の虚血の症候を治療するための新規な組成物および方法を開発した。炎症や虚血は末梢および心臓血管疾患に関連したものを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炎症性疾患および組織虚血の治療のための製剤形態および方法に関する。本発明は、特に非イオン性ポリマーの医薬組成物の局所投与を通して、炎症および虚血を緩和することに関する。
【背景技術】
【0002】
炎症は、いくつかの血管系疾患と関連する心血管系危険因子と血管機能不全及び障害を結び付ける主要な発病メカニズムとして最近明らかとなった。このことは、大動脈における脂質の蓄積によって特徴づけられる進行性疾患であるアテローム性動脈硬化によって例証される。炎症性メディエーターの血中濃度を高めるインターロイキン(IL)-6、IL-8、IL-1β、(単球走化性蛋白質1(MCP-1))、腫瘍壊死因子(TNF-α)、および、炎症代理マーカー(例えば可溶性血管内皮細胞接着分子‐1(VCAM-1))は、アテローム硬化性リスクの尺度として提唱されて来ている。アテローム硬化性リスクのマーカーには、IL-6による肝臓刺激作用の生成物である高感度C反応性タンパク質(hs-CRP)および血清アミロイドA(SAA)を含む。明白な病変発生と関係していないマクロおよび微小血管系の領域は、酸化的ストレスおよび内皮細胞活性化によって特徴づけられる炎症性表現型とみなされる。
【0003】
アテローム性動脈硬化において主に関与する細胞は、単球、マクロファージ、活性化血管内皮、Tリンパ球、血小板および平滑筋細胞を含む。喫煙、高血圧、アテローム誘発性のリポ蛋白および高血糖によって誘発される血管壁への傷害は、内膜下空間に単球の遊走を促進する化学走化性因子と同様に血管内皮細胞に単球付着を促進する白血球可溶性接着分子の分泌をもたらす。次いで、コレステロールリポ蛋白質を取り入れるマクロファージへのこれらの単球の形質転換は、脂肪線条の開始をもたらす。マクロファージ、肥満細胞および活性T細胞の誘引と蓄積は、アテローム性動脈硬化症の発展を助長する。冠動脈疾患(CAD)および末梢血管疾患(PVD)を含む心血管疾患(CVD)は、アテローム性動脈硬化へと続く。
【0004】
心臓および脳の外側の血管疾患を表す末梢血管系疾患(PVD)は、最も一般的に下肢に供給する動脈に影響を及ぼす。末梢動脈疾患(PAD)は、PVDの一例であり、また冠状動脈疾患(CAD)および頚動脈疾患と類似の疾病である。PAD(別名:末梢動脈血管閉塞性疾患「PAOD)において、脂肪性沈着物は動脈壁に沿って積み重なり、主として脚部に至っている動脈の循環血液に影響を及ぼす。血液を脚および腕の筋肉に運ぶす血管が狭くなることが、下肢の筋および皮膚の潅流の減少を左右する腸骨動脈大腿膝下動脈に沿った一つまたは複数の狭窄や閉塞を伴うPADの典型的な原因であり、このようにして進行性の組織虚血が起こる。
【0005】
虚血とは、身体の器官または組織への血液供給の不足を表す医学用語である。虚血は概して組織に酸素の豊富な血液を供給する動脈が狭くなる、あるいは障害物があることから生じる。高度のおよび長期間にわたる虚血は、患部組織(梗塞形成)の死につながる。休息により緩和される運動の間の下肢痛、筋痙攣、運動間の麻痺または疲労感として認められる間欠性跛行は、本疾患の初期において生ずる。PAD患者のおよそ3分の1から半分は、間欠性跛行症(IC)(歩くことまたは激しい活動により生ずる一方または両方の足における痛みと古典的に定義される)を被り、連続的な活動では消滅せず、休息または歩く速度を落とすことにより和らぐ。
【0006】
冠動脈疾患(CAD)とは、心虚血をもたらす心臓(心筋)の筋肉組織に酸素を豊富に含んだ血液を供給する血管の疾患のことである。冠状動脈の一つ以上が狭くなること、あるいは閉塞が、心虚血をもたらす。増加した肉体的活動または他のストレスによって、心臓が必要とする血液供給の不全に起因する一過性虚血は、狭心症または胸痛をもたらす。血流の高度のまたは完全な閉塞は、心筋梗塞(心臓発作)と一般に称される心筋の死をもたらし得る。心臓病は、アメリカ合衆国における主な死亡原因である。今日、心虚血は、医薬品の使用および心臓の酸素必要量を減少させるための馴化により、あるいは薬物、血管形成、または心臓への血流改善のためのバイパス手術により、治療されている。
【0007】
症候的なICをもつ患者が利用できる現在ある治療方法の選択肢は、主として運動、ペントキシフィリンおよびシロスタゾールである。シロスタゾール(Pletal(登録商標))は、細胞内サイクリックAMPレベルを増加させ、プロスタグランジンI2の放出を促進するType IIIホスホジエステラーゼ阻害剤である。
【0008】
100mgを1日2回という推奨された投薬量で、シロスタゾールはピーク歩行時間を向上させることが示されている。しかしながら、本血管拡張薬物は原疾患の生物学的な改善とはならず、症状は薬物投与終了で元に戻るという特徴を有する。それに加えて、本作用薬を評価している臨床試験において、頭痛、動悸および胃腸障害などの副作用の高発生率が認められる。
【0009】
治療するPADへの新規の取り組みは、血管新生蛋白の送達または血管新生作用薬をコードしている遺伝子によって小血管の成長を活性化することを含む。前者の取り組みは、組換えにより製造された成長因子の送達を使用しているが、時には作用薬の一回量の使用により、急性の手足および冠状動脈虚血の様々な動物モデルにおける血管新生反応を誘発する効力を有することが示されている(Takeshita S, et al. J Clin Invest (1994) 93:662-70; Harada K, et al. Am J Physiol (1996) 270: H1791-802; Lazarous DF, et al. Circulation (1996) 94:1074-82)。血管新生蛋白は臨床試験において人間に投与されたが、これらの治験は効果についてまずますの証拠を示したのみである。テストされる因子の短時間の半減期と相まって、投与を制限する潜在的全身毒性は、これらの治験における有効性を限定し得た(Yancopoulos GD, et al. Nature (2000) 407: 242-248; Post MJ and Simons M. Drug Discovery Today (2001) 6: 769-770参照)。
【0010】
心血管疾患を含む炎症性疾患治療のための治療形態における最近の進歩にもかかわらず、望ましくない副作用なしに、冒された患者の症状の重篤度を軽減し、生活の質を向上することに効果的である組成物と方法をさらに確認する必要性が残っている。さらに、心血管疾患の治療のために、血管拡張または脈管形成を活性化する薬物は、炎症のような根本的発症のメカニズムに影響を及ぼさずにアテローム性動脈硬化の症状を改善し得る間接的作用が考慮されるかも知れない。しかしながら、コルチコステロイドのような抗炎症剤は、深刻な副作用を有する。選択的に炎症を抑制するのであるが、COZX-2阻害剤は最近多くの個体において限定的な副作用を有することが示された。必要とされているものは、より高い安全マージンを有する炎症の抑制のための組成物とおよび方法である。
【発明の開示】
【0011】
本発明者は、患部における一定のポロクサマー製剤の局所血管外投与により、組織虚血を呈している症状および疾患の炎症反応の治療に対する新規の取り組み方を開発した。一実施形態において、ポロクサマーは筋肉内、血管内および/または嚢内(intracapsular)注射によって、血管外組織への蓄積のために局所的に投与される。
【0012】
一実施形態において、組織虚血は末梢血管疾患を伴っており、ポロクサマーは複数の筋肉内蓄積注射(depot injection)によって局所的に送達される。他の一つの実施形態において、筋肉内投与後の血管外組織における長期間にわたる滞留および放出のために、ポリマーは局所的に蓄積注射(デポー注射)で投与される、。
【0013】
本発明の一実施形態では、組成物および方法は、ポロクサマーの血管外組織からの長期間にわたる放出を目的とした筋肉内、血管内および/または嚢内注射によって蓄積する上記のような方法によるポロクサマー-188の局所投与により、炎症部位におけるIL-6 および/またはIL-8および/またはMCP-1がメディエートする炎症の制御に対して提供される。血管外区画にポリマーを蓄積させることによって、身体におけるポリマーの半減期および効果的な存在を、持続効果を得ることができるように、大きく延長することができる
本発明の一実施形態では、ポロクサマー188は、心筋に直接注射または圧力誘発性管外遊出によって投与され、それにより冠動脈疾患の治療において長期間にわたる放出のための蓄積を可能にしている。一実施形態において、ポロクサマー188を含む薬物は、冠状静脈洞へ流れ出ている静脈に置かれているバルーンカテーテルにより、心臓組織への薬物の管外遊出(extravasation)となるための十分な圧力での退行性静脈への注入によって送達するために製造されている。冠状静脈洞へ流れ出ている静脈は、大心臓静脈(GCV)、中心臓静脈(MCV)、左室(PVLV)の後静脈、前室間静脈(AIV)およびそれらの側枝部からなるグループから選択される。
【0014】
本発明の一実施形態では、ポロクサマー188は、アテローム硬化、滑液包炎、滑膜炎、腱炎、関節周囲障害、関節リウマチ、脊椎関節症、強皮症(全身性硬化症)、シェーグレン症候群、多発性筋炎、皮膚筋炎、全身性脈管炎、リウマチ性多筋痛、側頭動脈炎、特発性結合線維組織増殖症候群、乾癬、心膜炎および関節炎が特徴である全身性疾患を含む炎症の治療のために投与される。
【0015】
本発明の他の一つの実施形態において、ポロクサマー188は、術後、急性損傷および外科的インプラント(関節、胸部、その他)が関与する炎症を含み、炎症を誘発している傷害の治療のために投与される。一実施形態において、ポロクサマーは外科的プロテーゼ(補てつ物)の埋め込みとともに投与される。あるいは、ポロクサマーが人工的プロテーゼから徐々に放出されるように多量のポロクサマーを含む人工的プロテーゼが、製造される。
【0016】
本発明のもう一つの実施形態におけるポロクサマー188は、腹膜炎、外耳炎、膀胱炎、慢性全腸炎(別名:クローン病)、粘膜炎(放射線または化学療法後)、胸膜炎、膣炎、腱鞘炎、結膜炎および鼻炎/静脈洞炎において患部への局所投与による炎症の治療のために投与される。
【0017】
本発明の他の一つの実施形態において、ポロクサマー188は、乾癬、蕁麻疹および血管性浮腫、薬物感受性発疹、掻痒、腫瘍結節性および萎縮性疾患、アトピー性疾患、接触性皮膚炎を含む皮膚炎、脂漏性皮膚炎、慢性皮膚炎、湿疹、光線過敏症、丘疹鱗屑性疾患(papulosquamous disease)、斑点模様状紅斑(figurate erythemas)、黄斑(macular)、丘疹性水泡症(papular vesiculobullous)および膿疱性疾患などの炎症性の皮膚症状を有する患部への局所投与による炎症治療に用いられる。
【0018】
本発明の一実施形態では、ポロクサマー188は尿酸ナトリウム結晶によって誘発されるIL-8の産生阻害による痛風治療において使用される。
【0019】
一実施形態では、四肢末梢、心筋、および腎血管疾患と関連する腎臓において、脳血管疾患、創傷癒合、虚血と関連する偽関節骨折、大腿骨の頭の虚血壊死、糖尿病性神経障害、勃起性機能障害、腸間膜虚血および腹腔交通枝虚血を伴う虚血と関連する炎症および虚血症候の治療を提供するポロクサマー製剤を開示する。製剤は、たとえば四肢末梢および心筋の虚血の場合、筋肉注射による送達によって局所に投与される。
【0020】
一実施形態において、ポロクサマー188および製薬的に許容可能な担体の有効量を含む製剤は、罹患組織への局所投与による炎症の治療のための医薬組成物である。罹患組織への投与は、たとえば炎症のおよび/または虚血の症候が下方のふくらはぎにおいて感じられる大腿筋への投与を含み、患部に隣接しているか、または至っている比較的通常の組織への投与を含む。
【0021】
一実施形態において、本発明は、例えば、虚血を含み、末梢血管疾患の一つ以上の徴候を少なくする四肢のような筋における炎症の治療のために、医薬組成物を提供する。更なる実施形態では、新規に定義された輪状投薬パターン(ring dosing pattern)による組成が、複数の個々の投与において組成物が蓄積する。たとえば四肢においては、注射のパターンは、一連の製剤の蓄積が、患部の周囲を輪状に囲んでおり、このようにして近位より遠位へ、また比較的非虚血的な部位からより顕著な虚血部位へ広げるようなものである(例えば、注射パターンは、酸素を豊富に含んだ血液(虚血領域より上に)が良好に潅流する筋肉組織に始まり、潅流不全および酸素を豊富に含んだ血液の適切な供給が不十分な組織にも良好に続くことになる)。
【0022】
一実施形態において、末梢血管系疾患の症候となる炎症のポロクサマー188を含む製剤の局所の筋肉内投与を含む治療法が提供される。局所筋肉内投与は、罹患組織を潅流する孤立した局所組織血管樹の部分に製剤を導入し、圧力によって血管系から遊出する筋への注射、または血管系へのアプローチによって効果をもたらすことができる。血管系外にある場合、ポリマーはこのように長期に渡り薬効を発揮し続ける組織内残留物である。
【0023】
一実施形態において、ポロクサマーは0.1〜100%の濃度の製剤の形態で存在する。他の一つの実施形態において、ポロクサマーは20% w/vの濃度の製剤の形態で存在する。
【0024】
一実施形態において、非イオン性ポリマーは剥片と成り得る固形状の物理的形状を有するポロクサマーのような、およそ80%以上の親水性成分と950〜4000ダルトンの疎水性分子量(hydrophobic molecular weight)を有しているポロクサマーである。一実施形態において、ポロクサマーはポロクサマー188である。
【0025】
一実施形態において、ポロクサマーはポロクサマー188のコポリマー構造、物理的形状および界面活性剤特性を有しており、およそ0.1〜20% w/vの濃度の剤形で存在する。
【0026】
他の一つの実施形態において、ポロクサマー188はおよそ1〜15%の濃度で存在する。
【0027】
一実施形態において、製剤は50 mg/ml (5%) w/v濃度のポロクサマー188の水溶液を含んでおり、さらに一つ以上の薬理学的賦形剤を含有し得る。
【0028】
本発明の一実施形態では、ポロクサマーを含む組成は、貯蔵のために凍結乾燥されており、投与前に水を加えて元に戻される。
【0029】
一実施形態において、ポリマーは一組の個別の注射器に包装されており、ポリマーが長期間各々の蓄積部位の組織内残留物となるように、単回注射により、例えばポリマーの複数の蓄積場所からの送達のために皮膚を通して筋肉組織内に投与される量を各々の注射器に有している。一実施形態において、ポロクサマーの蓄積部位のために望ましい生体内分布領域および望ましい滞留時間のみならず注射器または単位用量も投与場所の解剖学に基づいて決定される。
【0030】
本発明の目的のためには、「蓄積(デポー、depot)」はポロクサマーの視覚的に観察できる量に限らず、長時間の間、例えば、血管内投与によって提供される期間を上回る期間、局所的により高い濃度で組織に存在する量である。一実施形態において、皮膚を通した単一刺入に使用されるセットのそれぞれの注射器は約1〜10 mlを含むようにあらかじめ包装されている。他の一つの実施形態において、皮膚を通した単回刺入に使用されるセットのそれぞれの注射器は約0.5〜5mlを含むようにあらかじめ包装されている。各注射器におけるポロクサマー溶液は、単一蓄積部位すなわち、穿刺跡に沿った複数の部位の間欠的蓄積、または針を抜きながら基本的に継続的に一定量を蓄積するいずれにおいても送達され得る。一実施形態において、ポロクサマー188の組織への蓄積投与は、ポロクサマーの総量0.24〜13グラムが送達されるように提供される。
【0031】
一実施形態において、ポロクサマーの水溶液で構成されている注射器が提供される。該注射器は組織虚血や炎症を治療するポロクサマーや炎症の蓄積送達(depot delivery)に適切である。一実施形態において、ポロクサマーは0.1〜100%の濃度で蓄積する。他の一つの実施形態において、各注射器は、0.1〜25% w/vの水溶液のほぼ1から4mlを含む。
【0032】
一実施形態において、ポロクサマーは約80%以上の親水性物質を含み、950〜4000ダルトンの疎水性分子量を有する。一実施形態において、ポロクサマーはポロクサマー188のコポリマー構造、物理的形状および界面活性剤特性を有しており、好ましくはおよそ0.1〜20% w/vの濃度で存在する。
【0033】
一実施形態において注射器は、注射器あたりおよそ2mlで包装され、また夫々複数の蓄積注射用のあらかじめ充填された1本の注射器使用のためにの完全なセットとしてあらかじめ包装されている。一実施形態において、注射器は注射器あたりおよそ1mlで包装され、また夫々複数の蓄積注射用のあらかじめ充填された1本の注射器使用のための完全なセットとしてあらかじめ包装されている。一回の処置で筋へ送達する複数の注射に関与する一実施形態において、各注射器は末梢血管または心血管疾患を治療するポロクサマーの筋肉内蓄積送達に適しており、1人の患者を治療する一回の処置に使用される約12から42のあらかじめ充填された個々の注射器を包含した注射器セットが提供される。
【0034】
一実施形態において、ポリマーはおよそ5%のポロクサマー溶液である。1つの好適実施形態において、ポロクサマーは以下の剤形で提供されるポロクサマー188である。5% w/v のポロクサマー188の滅菌溶液、5 mMのトリス塩酸 pH 8.0および0.9% w/v塩化ナトリウム注射(米国薬局方)。一実施形態において、2〜5mlの1型硼珪酸ガラス注射器は、滅菌したポロクサマー製剤で予め充填され、25ゲージの3インチ脊髄用注射器を使用して送達される。
【0035】
一実施形態において、一組の12〜42の個々の注射器と投与説明書を包含するキットが提供される。別の実施形態では、キットはポロクサマーを再構成するための適切な希釈液と共に複数の投与投与に対して十分な量の凍結乾燥されたポロクサマーのビンを包含して提供される。キットは、投与部位に適している一組の充填されていない注射器を包含する場合もあればそうでない場合もある。
【0036】
一実施形態において、大量滅菌溶液は製剤のリットルあたり、50グラムのポロクサマー188、0.28グラムの米国薬局方トリス塩基、0.44グラムのトリス塩酸、および9グラムの米国薬局方NaClが、水に溶解されて含有されているものが生産される。
【0037】
本発明の一実施形態において、製剤配合および方法は、IL-6、IL-8、MCP-1のうちの少なくとも1つによって少なくとも部分的にメディエートされる炎症の抑制のために提供される。
【0038】
一実施形態において、炎症は間欠跛行の徴候に関係しており、ポロクサマーは冒された四肢にポロクサマー188水溶液の複数の筋肉注射によって投与される。さらなる実施形態において、複数の注射は、流量ありから流量なし(flow to no flow pattern)のパターンで、周りを囲む連続した注射によって行われる。
【0039】
更に別の実施形態では、血管外ポリマー蓄積の抗炎症効果は、虚血組織における新しい側副脈管の成長および成熟を活性化することができる一つ以上のさらに別の作用薬と組み合わせられる。
【0040】
本発明は、以下の詳細によってさらに別に教示され例証される。
【0041】
好適実施形態のの以下の詳細な説明を図面とともに考慮すれば本発明のより良い理解を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
本発明に至る理論は、組織虚血を患っている患者における血管新生Del-1蛋白のin situでの産生のためのDel-1遺伝子の送達のための医薬製剤を開発する努力から始まった。これらの努力の間に、本発明者は意外にも一定のポロクサマーが炎症誘発性サイトカイン(proinflammatory cytokines)およびケモカインに関して示差的効果を有することを発見した。
【0043】
ポロクサマー188処理は、血管内皮細胞からいくつかの炎症性メディエーター(IL-6、IL-8および単球化学誘引物質蛋白-1(MCP-1))の示差的な放出をもたらすことが見出された。具体的には、ポロクサマー188が血管内皮細胞のIL-6およびIL-8の放出を抑制する性状を有することが見出された。ポロクサマー188は、また、骨格筋筋細胞からMCP-1の放出を抑制することが見いだされた。ポロクサマー以外の化合物で処理されるとき、培養ヒト血管内皮細胞(HUVEC)は、正常酸素および低酸素の両条件下で長期にわたり培地中でIL-6およびIL-8をだんだんと多く放出する。ポロクサマー235は、対照と比較してHUVEC細胞からのIL-6およびIL-8産生を劇的に増加させた。これに対して、正常酸素または低酸素条件下であっても、ポロクサマー188はHUVEC細胞によるIL-6およびIL-8の産生を選択的に抑制することが見出された。
【0044】
IL-6およびIL-8は、抗炎症性サイトカイン(IL-4、IL-10、IL-1 1、IL-13を含む)および内因性のサイトカイン阻害剤(IL-1受容体拮抗剤[ IL-1ra ]、IL-18結合蛋白質およびIL-1とTNFに対する可溶受容器)と一般的には機能的に同等である炎症誘発性サイトカイン(インターロイキン1 [ IL-1 ]、IL6、IL-8、IL-12、IL-15、IL-18および腫瘍壊死因子-α[ TNF ])の一つである。このバランスの平衡状態が崩れると、炎症仲介性の疾患となる。
【0045】
当初、B細胞分化因子として同定されたインターロイキン6(IL-6)は、現在、免疫応答および炎症だけでなく造血、肝臓および神経の再生における重要な調節因子であることが知られている。IL-6はBリンパ球増殖および好中球産生を活性化し、Tリンパ球、マクロファージ、単球、血管内皮細胞および線維芽細胞を含む多くの細胞によって産生される。増加したIL-6レベルは、リウマチ様関節炎(RA)、若年性全身性慢性関節炎(JCA)、骨粗鬆症、乾癬、炎症性大腸疾患、多発性硬化症および悪性腫瘍の各種のタイプを含むいくつかの疾患に関連している。(Heinrich PC, et al. Biochem J. 374 (Pt 1) (2003)1 -20)
IL-8は、全ての知られているタイプの遊走性免疫細胞に対して走化性である。IL-8は、好中球顆粒球の特異的活性化物質としての役割において異なっており、類がない。IL-8は、マクロファージ、線維芽細胞、血管内皮細胞、角質細胞、黒色素細胞、肝細胞、軟骨細胞およびいくつかの腫瘍細胞株によって産生される。過剰量のIL-8が滑液において見いだされるので、IL-8は、IL-1およびIL-6と共に慢性多発性関節炎の病因に関与すると考えられている。IL-8による好中球活性化は、細胞が毛細血管から出て周囲の組織に入ることができる関節の毛細血管への細胞の遊走を高め得る。IL-8の産生の減少は、血管壁への好中球および単球(IL-8走化性を介する)の遊走を減少させ、結果的にアテローム性動脈硬化疾患進行の基礎原因である慢性炎症過程を沈静化すると期待されている。IL-8は尿酸ナトリウム結晶によって誘発され、本発明の一実施形態に示したように、ポロクサマー188は痛風の療法において使用される。
【0046】
単球走化性蛋白質-1(MCP-1)は、免疫調節機能を示し、単球のDC(樹状細胞)への分化の調節によってTh1サブセット分化に関与し得る走化性ケモカインである。当初は単球特異性化学誘引物質と同定されたが、MCP-1は現在、単球と同様に、活性化T細胞、NK細胞および好塩基球を誘引することが明らかにされた。MCP-1は、リウマチ様関節炎および気管支喘息を含む単核細胞浸潤によって特徴づけられる疾患の病因に関与していると予測されている(Omata N, et al. J Immunol. 169(9) (2002) 4861-6)。MCP-1は、また、損傷後の筋に高度に発現し、外傷を受けた筋の損傷/回復において役割を果たすと推測されてきた(Summan M, et al. J Interferon Cytokine Res. 23(5) (2003) 237-45)。
【0047】
本発明の一実施形態では、組成物および方法は、ポロクサマーの血管外組織からの長期間にわたる放出を目的とした筋肉内、血管内および/または嚢内注射によって蓄積するような方法によるポロクサマー-188の局所投与により、炎症部位におけるIL-6および/またはIL-8および/またはMCP-1が介在する炎症の制御のために提供される。血管外区画にポリマーを蓄積させることによって、身体におけるポリマーの半減期および効果的存在が、持続効果を得ることができるように大きく延長される
炎症性メディエーターの血中濃度を高めるインターロイキン(IL)-6、IL-8、IL-1β、単球走化性蛋白質1(MCP-1)、腫瘍壊死因子(TNF-α)、および、炎症代理マーカー(例えば可溶性血管接着分子‐1(VCAM-1))は、アテローム硬化性リスクの尺度となると提唱されている。ポロクサマー188は選択的にこれらの重大な意味を持つ炎症誘発性サイトカインのいくつかに選択的な影響を及ぼす。末梢血管系の増大する内皮構成成分によるIL-6の産生の減少は、肝臓においてCRP誘発IL-6放出を減少させると期待されている。
【0048】
IL-8様サイトカインGRO(成長調節サイトカイン)はまた、ポロクサマー188処理によって示差的に調節されるように思われ、本効果についての研究は進行中である。GRO(別名メラノーマ成長刺激活性(MGSA))は、GRO-アルファ(別名好中球活性化ペプチド-3)、GRO-βおよびGRO-γを含むケモカインに関連したファミリーを示している。3つのGRO遺伝子は、組織特異的な様式で発現される。主に細胞活性化の後で単球において見いだされるのであるが、それらは線維芽細胞、血管内皮細胞、滑膜細胞およびいくつかの腫瘍細胞系においても見出される。GROは、炎症性および成長調節特性を有し、好中球に対する強力な走化性物質である。GRO蛋白は、機能的にIL-8に関連があり、同じ受容体と結合する。
【0049】
本発明の一実施形態では、ポロクサマー188は、アテローム硬化、滑液包炎、腱炎、滑膜炎、関節周囲障害(perarticular disorders)、関節リウマチ、脊椎関節症(spondyloarthropathies)、強皮症(全身性硬化症)、シェーグレン症候群、多発性筋炎、皮膚筋炎、全身性脈管炎、リウマチ性多筋痛(polymyalgia rheumatica)、側頭動脈炎、特発性結合線維組織増殖症候群(idiopathic multifocal fibrosclerosis)、乾癬、心膜炎および関節炎を特徴とする全身性疾患を含む炎症の治療に対して投与される。
【0050】
最終的に関節炎要素を含み得る全身性疾患は、自己免疫肝炎、原発性胆汁性肝硬変症(primary biliary cirrhosis)、ホイップル病、膵臓関節炎症候群、血友病、ヘモグロビン異常症(hemoglobinopathies)、低ガンマグロブリン血症、小児脂肪便病(セリアック病)、血色素沈着症(ヘモクロマトーシス)、真性糖尿病、甲状腺障害、副甲状腺障害、先端巨大症、高リポ蛋白血症、ページェット病および肥厚性骨関節症を含む。
【0051】
本発明の他の一つの実施形態において、ポロクサマー188は、術後、急性損傷および外科的インプラント(関節、胸部、その他)を含む外科手術に関連した炎症を含み、炎症を誘発している傷害の治療に対して投与される。一実施例において、ポロクサマー188は、インプラントから漏出あるいは徐々に流出するポロクサマーのような胸部人工的プロテーゼ(インプラント)を満たしている、瘢痕化、炎症細胞の流入、被包形成およびインプラントの硬化をもたらす炎症性反応を抑制する液体を構成し、または中に含まれる。ここで開示される動物実験は、そのポロクサマー188が炎症性のおよび異物反応の両方を抑制することができることを開示する。
【0052】
本発明のもう一つの実施形態におけるポロクサマー188は、腹膜炎、外耳炎、膀胱炎、慢性全腸炎(別名、クローン病)、粘膜炎(放射線または化学療法後)、胸膜炎、膣炎(vaginitis)、腱鞘炎、結膜炎および鼻炎/静脈洞炎において冒されている場所への局所投与による炎症の治療のために投与される。
【0053】
本発明の他の一つの実施形態において、ポロクサマー188は、乾癬、蕁麻疹および血管性浮腫、薬物感受性発疹、掻痒、腫瘍結節性および萎縮性疾患、アトピー性疾患、接触性皮膚炎を含む皮膚炎、脂漏性皮膚炎、慢性皮膚炎、湿疹、光線過敏症、丘疹鱗屑性疾患(papulosquamous disease)、斑点模様状紅斑(figurate erythemas)、黄斑(macular)、丘疹性水泡症(papular vesiculobullous)および膿疱性疾患などの炎症性の皮膚症状を有する患部への局所投与による炎症治療に用いられる。
【0054】
本発明の一実施形態では、ポロクサマー188は尿酸ナトリウム結晶によって誘発されるIL-8の産生阻害による痛風治療において使用される。
【0055】
一実施形態において、ポロクサマー製剤は、四肢末梢、心筋、腎血管疾患と関連する腎臓における炎症と虚血の症状の治療、脳血管疾患、創傷癒合、虚血と関連する偽関節骨折、大腿骨の頭の虚血壊死、糖尿病性神経障害、勃起性機能障害、腸間膜虚血および腹腔交通枝虚血を伴う虚血の治療を提供することが示される。製剤は、たとえば四肢末梢および心筋の虚血の場合、筋肉注射による送達によって局所に投与される。
【0056】
研究の背景:治療的脈管形成のためのDel-1の開発は、蛋白および遺伝子ベースのストラテジーの両方を用いる血管新生成長因子を用いるインハウスの前臨床研究からの結果に基づいていた。Del-1(Developmentally regulated Endothelial Locus-1;胎生期血管内皮細胞産生蛋白)は、血管樹の胎生発育の間、発現される蛋白を活性化している血管内皮細胞である(Hidai C, et al. Genes Dev (1998 Jan l) 12(l): 21-33)。出生後に、Del-1は、また、脈管形成部位で発現する。Del-1は、αvβ3インテグリン受容体に結合することを介して仲介される内皮および血管平滑筋細胞の付着および遊走を支持する。
【0057】
Del-1蛋白の反復的な筋内注射は、ネズミ後肢虚血モデルにおける、血管潅流を増加させることが示された。プラスミドベクターを用いる遺伝子ベースのDel1送達は、ウィルス・プラットフォームを用いることにより起こり得る公知の有害な効果を回避すると同時に、血管新生成長因子に対する全身暴露の結果として生じる減少に対し、相対的に持続的局所濃度を高める目的で開発された。
【0058】
リコンビナントマウスDel-1蛋白および製剤化Del-1プラスミドを用いた前臨床研究の結果は、好ましいことにbFGFおよびVEGF165で得られる結果に匹敵した。インハウスでの研究は、プラスミドDNA上にコードされたDel-1遺伝子の製剤配合の重要成分として、非イオン性ポリマーであるポロクサマー188の選択のために提供された。ポロクサマー製剤は、生理食塩水中でDNAの発現を増加させる化合物を提供するためのかなりの研究の後に開発された。後肢虚血マウスモデルにおける製剤化Del-1プラスミドの注射は、毛細血管密度を増加し、製剤化した空ベクターと比較してトレッドミル実行時間(treadmill run time)を増加させることが示された。後肢虚血のウサギモデルにおける、Del-1プラスミドの注射は、製剤化した空ベクターと比較して側副脈管形成およびCD-31発現を増加させることが示された。前臨床動物実験において製剤化したヒト(h)Del-1プラスミドに直接起因する毒性はなかった。プラスミドDNAの発現を増加させることにおいてポロクサマーは、生理食塩水より有意に良好であったが、前臨床の動物実験の結果は、ポロクサマーに起因する側副脈管形成、または増加した運動耐容性に関する有意な効果を示唆しなかった。
【0059】
前臨床動物実験における安全性および有効性に基づいて、最大耐性用量を決定することを目的として、ヒトの第I相段階的用量増加試験が計画された。該試験において、27名のPADを伴っているヒト被験者に、Del-1を調製したポロクサマー188を最高28回の筋注注射を1回の処置において片脚に投与した。治験製剤(VLTS-589)は、生理的食塩水中のDel-1をコードするプラスミドDNA 1 mg/ml、ポロクサマー188(Spectrum Chemical、ポリクサマー188、NF) 50 mg/ml w/v、トリス 0.28 mg/ml w/v およびトリス塩酸 0.44 mg/mlから成る。26名の被験者に対して、治験実験計画書に従って治験を完了した。被験者に送達された投与量は、VLTS-589の3mg(単回注射)から最高84mg(28回の注射)の範囲であった。10名の被験者が、VLTS-589 84mgの最高用量を投与された。VLTS-589を投与された被験者に、治験薬に関連した重篤な有害事象は観察されなかった。図11に示すような肯定的な安全結果および投与量の増加に伴う有効性の増加を支持する傾向に基づいて、臨床第II相試験を開始した。
【0060】
第IIa相二重盲検プラシーボ対照臨床試験は、PADで105人の被験者における「プラシーボ」と比較してVLTS-589の安全性および有効性を決定することを目的としていた。「プラシーボ」はVLTS-589に対する同一のポリマー製剤であるが、プラスミドDNAが欠如している。このように、「プラシーボ」は本質的に5%ポロクサマー188の薬学的に許容し得る水溶液であった。一回の処置において両下肢に左右対称に21×2mLの筋注注射を行うVLTS-589治療またはプラシーボ投与を受けるように無作為化した。VLTS-589の投与は、84mg(各脚において42mg)であった。
【0061】
二重盲検治験期間の判定における暗号の公開にあたって驚くべきことに、非イオン性ポリマー、この場合はポロクサマー188、が、かなりの患者数において間欠跛行の痛みを含んでいるPADのある症候を緩解することができることが発見され、評価された。非イオン性ポリマーを使用することにより、PVDの一つ以上の症候を改善する能力は、本疾患の医療における重要な意義を持つ進歩を示すものである。特に、患者のかなりの数は、ピーク歩行時間および足関節上腕血圧比(ABI)を増加させることができた。改善されたABIによって明らかとなった組織内還流の増加と同様に歩行時間の増加は、新しい血管の発生を刺激し得、その結果、ポリマー治療によって始まった効果を拡大し、疾患の虚血の発現を緩解する。
【0062】
ポロクサマーの効果の機序に対する諸研究は、心血管および他の疾患における炎症に関する、発明者による情報の統合を考慮して行われた。現在注目すべきことに、ポロクサマー188が選択的に一定の炎症性メディエーターの合成を抑制し、この特性はもう一つのポロクサマー(ポロクサマー235(Pluronic P85))とかなり異なるということが発見されている。このように、炎症性の要素を有している様々な疾患の治療に対して、本発明は新規の様式を提供するものである。
【0063】
高コレステロール血症動物において、炎症の全身性マーカーの上昇、小動脈細静脈の弛緩能力障害、および毛細血管後小静脈における血球動員の増加は、内皮細胞活性化に(直接または間接的に)関連していることはほぼ確実であって、大動脈における病変発生のずっと前に観察される(Singh U and Jialal J. Ann. N.Y. Acad. Sci. 1031 (2004) 195-203; Stokes KY and Granger DN. J. Physiol. 562.3 (2004) 647-553)。血管内皮細胞機能障害の発現は、血管内皮細胞における超酸化物と一酸化窒素(NO)間の酸化的ストレスおよび平衡異常との関連があると思われる。内皮の酸化的ストレスは、主に動脈において超酸化物を発生しているNAD(P)H酸化酵素の活性化に起因する。
【0064】
血管内皮細胞により増加したVCAM発現は、アテローム性動脈硬化症形成、すなわち、血管壁への白血球の動員にとって重要なステップを仲介する。このことは循環白血球刺激のみならず、血小板活性化に導く。活性化された血小板は、血小板-単球凝集塊の形成により、またケモカインの蓄積により、プラークを覆っている血管内皮細胞の上への白血球の動員をさらに助ける。単球は、活性酸素種の生成を通して低密度リポタンパク質(LDL)のような脂質の過酸化を促進する。内皮細胞下スペースへの単球の走化性および侵入機構は、単球走化性蛋白質-1(MCP-1)、IL-8および新しく報告されたケモカインであるフラクタリンによって促進される。肝臓における受容体を活性化する単球および血管内皮細胞によってIL6(メッセンジャー・サイトカイン)が分泌され、C反応性蛋白(CRP)の産生を導く。CRPは、おそらく酸化したリン脂質と結合することによって、炎症部位に蓄積する血漿へ自由に輸送される。CRPが関与する提唱された粥腫形成の機構は、主に培養内皮細胞モデルに基づくものである。提唱された機構は、一酸化窒素(NO)およびプロスタサイクリンの産生障害、およびエンドセリン-1、各種の細胞接着分子、MCP-1およびIL-8の産生増加を含む。CRPは、また、単球接着および走化性を促進することが示された。炎症因子および細胞の多くは、血管平滑筋細胞(VSMC)の遊走を誘発し、その後病巣において線維性被膜を形成するために増殖する。
【0065】
上昇した血液コレステロール値への微小血管系の応答に関する研究により、いくつかの血管床の小動脈細静脈および毛細血管後小静脈における内皮細胞活性化と対応している変化が明らかになた(Gaixthier TW, et al. Atheroscler. Thromb. Vase. Biol. 15 (1995) 1652-1659)。これらの変化は、大動脈におけるアテローム性動脈硬化性プラークの出現を実際よりかなり早くする。血管機能不全が小動脈細静脈および小静脈細静脈の間で異なっていることが明らかにされる一方で、酸化的ストレスは血管系を通して血管内皮細胞に生じると思われる。活性酸素種(ROS)情報伝達機構およびNOの超酸化物に仲介された不活性化は、コレステロール過剰血を伴う微小循環における改変された内皮細胞依存性過程に頻繁に関係している(Harrison DG and Ohara Y. Am. J. Cardiol. 75 (1995) 75-8 IB)。NOは、隣接した平滑筋細胞中でcGMP生成を活性化し、その結果弛緩する。高コレステロール血症における欠陥のある内皮NO依存性血管弛緩応答の起こりえる結果は、異なる組織における血流量調節の異常である。最終的には減少した毛細管流に導くNO依存の機構を介し、小静脈細静脈は隣接した小動脈細静脈の直径を減少させることによって高コレステロール血症に応答すると思われる。毛細血管および全体的な組織内還流における減少も好中球依存性であると思われる(Nellore K and Harris NR. Microcirculation 9 (20O2) 477-485)。
【0066】
最近、微小循環が、大血管の疾患をもたらす重要な炎症シグナルの源泉であると推測されており、それがアテローム動脈硬化性患者において検出される循環炎症代理マーカーの生産に貢献し得る(Rattazzi M, et al. J. Hypertension 21 (2O03) 1787-1803)。高コレステロール血症に対する微小血管の応答作用の調節における免疫細胞由来のサイトカインの関与に結びつけられる、いくつかの血管床の小静脈細静脈における血管内皮細胞、白血球および血小板の活性化に対する証拠は、このような可能性を支持する。
【0067】
内皮細胞活性化が高コレステロール血症に全身炎症反応を生じる場合における律速因子であり、この炎症性表現型が血管系を通しての血管内皮細胞によると考えられる場合、この応答への大動脈および微小血管系中の血管内皮細胞の相対的な寄与は、各血管コンパートメントの内皮表面積を計算して考慮されるできである。
【0068】
70kgの人において、アテローム硬化を起こしやすい大動脈と関連する内皮表面積は156 cm2と見積もられるが、より大きな血管については集合的に3,333 cm2である。その一方で、報告された表面積推定値は、小動脈細静脈に対して361 ,337 cm2であり、小静脈細静脈に対して879,989 cm2である(Wolinsky, H. Circulation Research 47 (1980) 301-311)。このように、微小血管系は表面積において大血管系の少なくとも300倍あると推定される領域を提供している。総合すると、本情報は、高コレステロール血症において慢性内皮細胞傷害が生ずる微小循環をアテローム硬化の進行を助ける慢性炎症過程の総合的に貢献するものとして、示すものである。
【0069】
本発明者は、ピーク歩行時間の観察された改善に対するポリクサマー188の潜在的な有利な効果は血管系皮細胞及び骨格筋細胞そのものにより仲介されたかもしれないと考え、これら細胞型に関するポリクサマー188及び他の化学物質の潜在的な直接効果を考慮した。科学文献を精査すると固形組織内へのポロクサマー注射に関する情報の欠如が明らかとなった。ポロクサマーは、多剤耐性腫瘍への化学療法の注射可能な送達媒体として明らかに報告されており、ポロクサマー235(BASFプルロニックP85)は、細胞からアデノシンおよびATPの放出を引き起こすことが報告されている(Kabanov AV et al. J Control Release 91(1-2) (2003) 7583; Batrakova EV, et al. Br J Cancer 85(12) (2001) 1987-1997)。ポロクサマー235は、以下の相関名(correlative nomenclature)および構造上の特性を有する:BASF Pluronic名:P85; BASF平均分子量:4600D; POPユニットの平均数:39.7; POEユニットの平均数:52.3;重量% POE:〜50%; POPの分子量:2400;分子式:HO-(C2H4O)27 -(C3H6O)39- (C2H4O)27-H。
【0070】
アデノシンおよびATPは血管拡張性であることが示されており、最近、アデノシンは血管新生作用があることが示された(Biaggioni I. Clin Pharmacol Ther 75 (2004) 137-39; Hein TW, et al. J Pharmacol Exp Ther 291 (1999) 655-64; Montesinos MC, et al. Am J Path 164 (2004) 1887-92; Adair TH. Hypertension 44 (2004) 1-30)。アデノシンおよびATPの両者ともに、血管内皮細胞へ影響を与え、生物学的事象を観察させる。血管内皮細胞はアテローム硬化症の進行において重要な役割を果たすことが繰り返し示されている。
【0071】
この理由から、正常酸素および低酸素(5% O2)の条件下で、ヒト血管内皮細胞(HUVEC)およびヒト骨格筋筋芽細胞(HSMM)におけるポロクサマーのin vitroの効果を決定するための研究がなされた。アデノシン、サイトカイン、成長因子またはこれらの生物学的に関連した分子の組み合わせの産生を、ポロクサマー188(〜BASFプルロニックF-68)、ポロクサマー235(〜BASFプルロニックP85)、シロスタゾール、Del-1蛋白、または培地単独のいずれかに曝露した後に測定した。アデノシンの生成のモニターは、HPLCによって行った。正常酸素および低酸素条件の下でのポロクサマー188、ポリクサマー235、シロスタゾールおよびHUVECsのDel-1蛋白の効果を、培地単独の場合と比較すると、ポリクサマー235が他の処理よりも高い上清中のアデノシンレベルを導いた。アデノシンのこの増加したレベルは、ポリクサマー235に暴露された低酸素および正常酸素細胞の両方において長期にわたり認められた。ポロクサマー188は培地への中間レベルの放出を示すが、シロスタゾールおよびDel-1蛋白は、これらの研究においてアデノシン産生の促進が最少であることがわかった。このように、当初の研究では、ポリクサマー235ほどポロクサマー188が細胞にアデノシン放出を引き起こさないと結論された。それが潜在的に有用な効果の一助となるかもしれないが、おそらくポロクサマー188が機能する唯一の機構ではないだろう。
【0072】
ある種のポロクサマーは、免疫学的であると思われる効果を有することが報告された。たとえば、ポロクサマー188は好中球の走化性による炎症性部位への遊走と接着を抑制することが報告された(Lane TA, Lamkin GE. Blood. 1986 Aug;68(2): 351-4)。異なるポロクサマーであるIL-8、CRL-1072はヒト・マクロファージの抗抗酸菌活性を高めることが報告された。CRL1072は、各3,500Da鎖のポリオキシプロピレン(POP)および各200Da鎖のPODの平均分子質量を有する高度に疎水性のポリクサマーであり、結果的に〜10%ポリオキシエチレン(POE)である。CRL1072は、ポロクサマー331(〜BASFプルロニックLI01)の分子的に純粋なアナログとなるように設計されているようである。CRL-1072で処理されたヒト・マクロファージが、用量依存的方法において、インターロイキン8(IL-8)、腫瘍壊死因子-アルファ(TNF-アルファ)および顆粒球-大食細胞コロニー刺激因子(GM-CSF)を合成することも見いだされた(Jagannath C, Pai S, Actor JK, and Hunter RL. J Interferon Cytokine Res. 1999 Jan; 19(l): 67-76)。
【0073】
興味深いことに、ポロクサマー-407(別名プルロニックF127)の腹腔内注射は、アテローム性動脈硬化症を誘発し、この疾患に対する1つの動物モデルの基本を形成する。しかしながら、それは脂質障害に起因し、血管内皮細胞およびマクロファージに対する直接効果に起因しないことが最近報告された。研究により、培養液中のヒト臍帯静脈血管内皮細胞とポロクサマー407とのインキュベーションが、細胞増殖にも0〜40マイクロMの濃度範囲を超えるインターロイキン6およびインターロイキン8産生にも影響を与えないことが示された(Johnston TP, et al. Mediators Inflamm. 2003 Jun; 12(3): 147-55)。
【0074】
末梢虚血の症候軽減における筋肉内ポロクサマーの観察した効果に対する炎症性要素のについて認識された潜在的能力に基づき、各種の細胞型における40以上のサイトカインおよび成長因子の生成に対するモニターを、蛋白質マクロアレイを使用して行い、結果を液相ELISAにより確認した。驚くべきことに、内皮および骨格の筋細胞に対する効果において、ポロクサマー188はポリクサマー235とは顕著な差異があることが見いだされた。
【0075】
蛋白質マクロアレイおよびELISA:ヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC-ヒト臍帯静脈血管内皮細胞、Cambrex、Cat # CC2617)は、EBM-2(内皮細胞基礎培地-2、Cambrex、Cat # CC-1.3 56)およびEGM完全培地-2(EGM-2、Cambrex、Cat # CC-4176)中で増殖させる。ヒト骨格筋筋芽細胞(HSMM-Human骨格筋筋芽細胞、Cambrex、Cat # CC-2580T25)は、T75培養瓶中、SkBM-2(骨格筋筋芽細胞基礎培地-2、Cambrex、Cat # CC-3246)およびSkGM完全培地(SkGM-2 BulletKit、Cambrex、Cat # CC-3245)中で70〜90%の細胞密度で増殖させる。
【0076】
HUVECおよびHSMM細胞は、購入時から2倍になった第4世代の後にトリプシン処理によって回収する。細胞を適切な完全培地に懸濁し、ウエルにつき10-6細胞密度で、60 x 15培養皿中に播き24時間インキュベートする。細胞にはEBM(HUVEC細胞)を供給し、0.5%FCSを含むSkBM(HSMM細胞)培地で細胞増殖停止まで24時間培養する。24時間後、細胞を10μM/L EHNA(エリスロ-9-(2-ハイドロキシ-3-ノニール)アデニン、Sigma、Cat #e 114、イノシンへのアデノシンの分解を防ぐため)、10μM/Lジピリダモール(Sigma, Cat # D9766、細胞のアデノシン取込みを抑制するため)(1μM/L ヨードツベルシジン(A.G Scientific社、Cat # 11005、AMPにアデノシンの組み込みを防ぐため)で処理する。
【0077】
試験液は培地中で以下の終濃度となるように設計される。すなわち、5% w/vポロクサマー188; 5% w/vポリクサマー235; 100nM(5.2ng/ml最終的)ヒトdel-1蛋白; 20pg/mlアデノシン(Sigma, Cat #4036);および、10 μM(3.69 μg/ml最終)シロスタゾール(Sigma、Cat #C-0737、DMSOに溶解したストック)。試験液を、培地のみが入っているシャーレに加え対照とした。1セットの平板は密閉チャンバー内において、5%O2、5%CO2および90%N2のような低酸素条件下でインキュベートする。正常酸素条件は、5%のCO2を添加した実質的に通常の空気である。細胞を約2、6、12、24および48時間培養し、細胞および上清は分析のために各時間点で別々に収集し、−80℃で保存する。
【0078】
上清を回収した後、細胞をPBSで1回洗浄し、1mlの溶解緩衝液(Lysis Buffer)(Promega Lysis Buffer、Cat # E1941とProtease Inhibitor Cocktail(Calbiochem Cat # 539134))の添加により溶解させた。細胞は、溶解緩衝液中にこすり落とし、ピペッティングにより粉砕し、−80℃で凍らせるために微量遠心分離管に移した。溶解し、10,000rpmの微量遠心器で2分間遠心分離した後、上清を−20℃で保管するために凍結用バイアルへ移した。
【0079】
アデノシン分析は、島津VPシステムおよび2×20mmのHiggins Analytical Phalanx C18ガード・カートリッジを使用して、25μlの分注量を分析するために液体クロマトグラフィーによって行った。移動層は水(A)およびメタノール(B)中の0.1%トリフルオロ酢酸であり、勾配は0.5分の洗浄後の2分間で0-75%(B)であり、流速は400μl/分であった。Applied Biosystems/MDS SCIEX API 3000質量分析計を、TurboIonSprayインターフェースと共に400℃で、陽性イオン・イオン化モードにおいて使用した。ジフェンヒドラミンに対して256.2/167.2、またデキストロメトルファンに対して272.1/215.2と同様に、Q1/Q3イオンは、268.1/136.2であった。
【0080】
アデノシンレセプターA2AおよびA2bは標準的手法に従って、Novex垂直ゲル装置およびNovexプレキャスト10%トリス-グリシン・ゲル(Novex #EC6075)を使用してウエスタンブロットにより評価した。アフィニティ精製したウサギ抗イヌA2a受容体Ab(A2aR)またはアフィニティ精製したウサギ抗ヒトA2bR IgG(一次性抗体Alpha Diagnostics International)をヤギ抗ウサギIgG(H+L)-HRP(2次抗体Alpha Diagnostics International)と共に使用した。ECL試薬は、Amersham(RPN2106)から入手した。
【0081】
蛋白質マクロアレイは、RAYBIOヒト・サイトカイン抗体アレイIII(Cat No. H0108009)上清分析および細胞溶解液分析(Cat. No. H0109809)のためのヒト・サイトカイン抗体アレイ3.1を含む市販のキットを使用して行った。両配列は、ENA-78、GCSF、GM-CSF、GRO、GRO-alpha、1-309、IL-1アルファ、IL-1ベータ、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-10(IL-12p40p70)IL-13、IL-15、IFN-ガンマ、MCP-1、MCP-2、MCP-3、MCSF、MDC、MIG、MIP-1デルタ、ランテス、SCF、SDF-1、TARC、TGF-ベータ1、TNF-アルファ、TNF-ベータ、EGF、IGF-1、アンギオゲニン、オンコスタチンM、トロンボポエチン、VEGF7PDGFTBB、およびレプチンをテストする。検出は、ビオチン結合抗サイトカインおよびHRP結合ストレプトアビジンを介して行った。結成を含む馴化培地(conditioned medium)を必要とする場合、対照として血清を用いた。
【0082】
IL-8(R&D Systems, Cat #D8000C)、ヒトVEGF (R&D Systems, Cat #DVE00)(human IL-6 (R&D Systems, Cat #D6050))およびヒトMCP-1 (BioSource International, Cat #KHC1011)を検出するためにELISAキットを使用した。検定は、HUVECから2、6、12、24時間で、またHSMM細胞から12、24、48時間で回収した馴化培地および細胞培養物について行った。
【0083】
正常酸素または低酸素症(5%のO2)条件下でインキュベートし、ポロクサマー188、Del1蛋白(デル1)、シロスタゾール(CST)、ポリクサマー235またはアデノシンのいずれかに暴露されたHUVECまたはHSMM細胞株からの細胞培養上清サンプルを比較した。対照として、普通培地または正常酸素または低酸素条件下で0.5%のウシ胎児血清を含んでいる培地のいずれかで細胞を維持した。
【0084】
ポロクサマー188によるIL-8およびIL-6の選択的阻害:このアッセイシステムによってスクリーニングされる42のサイトカインについての固相蛋白質マクロアレイ(RayBiotech, Inc., Norcross, Georgia)を使用して、培養上清から得られる定性的な結果は、4つのサイトカイン、MCP-1、IL-6、IL-8およびIL-8様サイトカインGRO(成長調整サイトカイン)について視覚的にも数的にも相違を示した。蛋白質マクロアレイ分析を用いたHUVEC細胞において、ポロクサマー188はポリクサマー235と比較すると、正常酸素条件および低酸素条件下での24時間の培養の間、HUVECsからのIL-6およびIL-8の放出を抑制すると思われた。デンシトメトリーによる走査によると、IL-6がポリクサマー235によって劇的に活性化され、ポロクサマー188、Del-1、CSTおよびアデノシンを含む全ての処置群で、ポロクサマー188だけは正常酸素および低酸素条件の下でIL-6の発現を減少させた。同様に、IL-8は、ポリクサマー235処置によって劇的に増加した。HUVECsからのMCP-1放出の分析により、ポロクサマー188およびポリクサマー235の両者ともに正常酸素および低酸素条件下で類似した結果をもたらした。陰性対照(Ctrl 0.5)、Del-1蛋白、シロスタゾール(CST)およびアデノシン処置は、正常酸素および低酸素条件下で、HUVECから培地へのIL-6、IL-8およびMCP-1の放出に関して類似のパターンを示した。
【0085】
蛋白質マクロアレイ分析を使用したHSMM細胞において、全ての処置においてIL-6放出は、アッセイシステムの信頼度閾値(〜8,000ユニット)よりも低かった。正常酸素および低酸素条件下での全ての処置群の上清のIL-8レベルは、似ていた。しかしながら、HSMM培養上清中のMCP-1レベルは、ポロクサマー188グループにおいて正常酸素および低酸素条件下で他の処置より低かった。マクロアレイの結果は、さらなる注目がMCP-1、IL-6およびIL-8に向けられ、特に捕捉ELISAの使用に向けられた。
【0086】
結果の信頼度を増加させるために、蛋白質マクロアレイによる定性的結果は、異なる単クローン抗体を使用した定量的ELISAによって確認した。図1Aおよび1Bに示すように、正常酸素(1A)および低酸素(1B)条件下での培養から各時間点で試料を採取したとき、処理されていない、あるいはDel-1、CSTまたはアデノシンで処理したHUVEC細胞は、類似したレベルのIL-を産生した。HUVECのポロクサマー188による処置は、正常酸素および低酸素条件下で24時間にわたりインキュベーションした上清中に放出されるIL-6レベルを減少させた。同様に、図2A及び2Bに示されるように、HUVECsのポロクサマー188処置は、正常酸素および低酸素条件下で24時間にわたりインキュベーションした上清中に放出されるIL-8レベルを減少させた。図3Aに示すようにの差はMCP1については明確ではなかったが、ポリクサマー235処理が他の処置または対象群のレベルに対してわずかに低い結果を示したという例外が認められた。これらの諸結果において最も注目に値すべきことは、ポロクサマー188は劇的にIL-6およびIL-8の産生を減少させたが、ポリクサマー235は、IL-6およびIL-8レベルを増加させたことである。
【0087】
ヒト骨格筋筋芽細胞における各種処置の効果
筋芽細胞は、インキュベーション条件の処置に関係なく、認識可能なレベルのIL-6またはIL-8を産生しないと思われた。IL-6レベルは、検定システムの検出限界レベルにあった。マクロアレイ分析と同様に、正常酸素および低酸素条件の両方に対するあとのサンプリング間のMCP-1放出は、ポロクサマー188以外の全ての処置で最も高かった。特に興味深いのは、HUVEC細胞に対してはポロクサマー188は他の処置と比べてもほとんど特異的な効果を有しないが、HSMM細胞に対してはポロクサマー188処置は、図3Aおよび3Bに表わされるマクロアレイデータが示すように、正常酸素および低酸素条件の下でMCP-1産生を激的に減少させたことである。この結果は、マクロアレイ検定および捕捉ELISAにおいて得られた。
【0088】
P85およびP188間の特異的アデノシン応答:文献に報告されている結果を確認すると、ポリクサマー235は他の処置に対比して上清におけるアデノシンレベルをより高くさせる。アデノシンのこの増加したレベルは、図4Aに示すごとくポリクサマー235に暴露された正常酸素細胞において長期にわたり認められた。これらの研究において、シロスタゾールおよびDel-1蛋白は、アデノシン産生の促進性が最少であることと思われた。一方、ポロクサマー188は培地に放出されるレベルにおいて中間の傾向を示した。低酸素細胞においても類似した結果が得られた。
【0089】
炎症治療のための送達スキーム
一実施形態において、IL-6やIL-8によってメディエートされる炎症は、筋肉内、血管内および/または嚢内注射による血管外組織での蓄積のためのポロクサマー188局所投与により炎症性部位において調節される。血管外区画にポリマーを蓄積させることによって、身体におけるポリマーの半減期および効果的存在は、持続効果を得ることができるように大いに延長される。局所筋肉内投与は筋肉への直接注射、あるいは局所組織血管樹の孤立した部分へ製剤が導入され、罹患組織を潅流させ、圧力によって血管系から筋肉組織へ浸出させる血管系へのアプローチによって効果が得られる。
【0090】
他の実施形態において、非イオン性ポリマーを含む製剤の局所心筋内投与を含む冠状動脈疾患の炎症の治療の方法および化合物を提供する。局所筋肉内投与は筋肉への直接注射、あるいは局所組織血管樹の孤立した部分へ製剤が導入され、罹患組織を潅流させ、圧力によって血管系から筋肉組織へ浸出させる血管系へのアプローチによって効果が得られるPVDと同様に化合物は通常の血液供給通路と反対方向の静脈内投与であることを意味する「逆行注入」または「逆灌流」によって送達させることができる。心臓の逆行注入または灌流のために、バルーン閉塞カテーテルを経静脈的に冠状静脈洞へ通す。冠状静脈洞からさらに、大心臓静脈(GCV)、中心臓静脈(MCV)、左心室(PVLV)の後静脈、前室間静脈(AIV)、またはそれらのあらゆる側枝部を含む静脈洞の支流にカテーテルを進めることができる。この送達形態は、本来心筋手術の間に薬物、心臓保護作用薬または心臓麻痺の送達のために報告された(Kar et al. Heart Lung 21 (1992) 14859; Herity et al. Catheter Cardiovasc Interv 51 (2000) 358-63)。マーカータンパク質LacZおよびルシフェラーゼをコードしている裸のプラスミドDNAの逆行性送達は、国際公開公報00/15285においてWolffによって記載されている。非イオン性ポリマーを用いて調製されるプラスミドDNAの逆行性送達は、Valentis 国際公開公報02/061040に記載されている。
【0091】
血管外ポリマー蓄積の抗炎症効果は、虚血組織における新しい側副脈管の成長および成熟を活性化することができる一つ以上のさらに別の作用薬と組み合わせることもできる。作用薬とは、生物学的因子と同様に小さな分子刺激薬を意味し、それらをコードする蛋白および遺伝子を含む。脈管形成に関係している作用薬は、内皮細胞成長因子のように直接作用し得、または新しい血管の成長における細胞の動員または細胞内信号伝達系の刺激作用を通じ、間接的に作用し得る。
【0092】
公知の生物学的血管新生因子は、例えば以下のものを含む。アンギオゲニン、アンジオポイエチンおよびアンジオポイエチン様因子、Del-1、E26形質転換特異因子(ET 1および2)、上皮成長因子(EGF)、エリスロポイエチン(EPO)、フィブリン・フラグメントE、線維芽細胞成長因子:酸性(aFGF)および塩基性(bFGF)、アクチビン結合タンパク質、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)(肝細胞成長因子(HGF)/散乱因子(SF))インスリン様成長因子1Aおよび2、インターロイキン-8(IL-8)、角化細胞成長因子(FGF7)、レプチン、ミッドカイン、神経成長因子ベータ、神経ペプチドY、胎盤成長因子、血小板由来内皮細胞成長因子(PD-ECGF)、血小板由来成長因子〜BB(PDGF-BB)、プレイオトロフィン(PTN)、プログラニュリン、プロリフェリン、ストローマ細胞由来因子-1(SDF-1)、形質転換成長因子-アルファ(TGF)、形質転換成長因子-β(TGF)、腫瘍壊死因子-アルファ(TNF-alpha)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)/血管透過性因子(VPF)および血管初期応答遺伝子(VERGE)。これら諸因子は、組換え型または分離した蛋白質として、あるいはそれらをコードしている遺伝子として提供されてもよい。
【0093】
さらに別の作用薬がポリマー製剤に加えられる場合、該作用薬が直ちに脈管形成を刺激するか、またはポリマーが組織内残留物として存続し、より長い期間脈管形成を活性化し、その結果持続する改善と各々の投与に由来する長期にわたる利益をもたらす間、上記作用薬が脈管形成を刺激し、脈管形成の一連の増幅的段階反応を開始させることを意図している。
【0094】
ポロクサマー製剤:用語「ブロックコポリマー」は、各構成ポリマーの断片または「ブロック」において配列される2つ以上の異なるポリマー(「コポリマー」)から構成されるポリマーを意味する。ポロクサマーおよびポロキサミンは、ブロックコポリマーである。「ポロクサマー」という語は、酸化ポリプロピレンおよび酸化ポリエチレンから成るあらゆるジまたはトリブロックポリマーを意味する。酸化ポリプロピレン(POPまたはポリオキシプロピレンは、化学式(C3H6O)X、それゆえ、58のサブユニットmw)は疎水性物質である。酸化ポリエチレン(POEまたはポリオキシエチレンは、化学式(C2H4O)X、それゆえ、44のサブユニットmw)は親水性である。ポロクサマーの一般化学名は、ポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレン・ブロックコポリマーである。CAS番号は、9003-11-6である。ポロクサマーは、総分子量、ポリオキシエチレンに対するポリオキシプロピレンの比率、界面活性剤特性および未希釈溶液における物理的形状が異なっている。物理的形状は、親水性成分に対する疎水性成分の相対的な割合によって主に決定される液体(L)、ペースト(P)、および薄片になり得る固体(F)を含む。
【0095】
プルロニック(登録商標)は、商標である:ポロクサマーは、BASFによって製造されている。ヨーロッパにおいてBASFが製造した医薬品グレードのポロクサマーは、標章Lutrolで販売されている。ポロクサマーは、下記にある図2の一般的な化学式および構造に従って、2つの親水エチレンオキシド(PEまたはPEO)ブロック間に挟まれている疎水性物質プロピレンオキサイド(POまたはPPO)ブロックであるトリブロックポリマーである。リバースポロクサマー(たとえばBASF「reverse Pluronic(登録商標)」)は、以下に示す図6の一般的な化学式および構造を有する二つのPO(別名PPO)部分の間に、中央のEO(別名PEO)部分を有する。
【化1】

【0096】

ポロクサマーの命名法においては、一般名「ポロクサマー」の後に続く数字は、最初の2桁に100を掛けるとポリオキシプロピレン(「POP」)の近似の分子量(「mw」)に等しく、第3の桁に10をかけるとポリオキシエチレン(「POE」)の近似の重量%である。このように、ポロクサマー188は約1800の平均POP mwおよび80%の平均POE %を有する。ポロクサマー188(別名F68)に対して、ポロクサマー命名法に従って計算すると、POPグループの平均数は次のように導き出される。1800 ÷ 58(C3H6Oのmw)= 31 POP単位。総mw = 1800 ÷(20/100)= 9000。平均数のPOEは、次のように導き出される。(総近似のmw - mw POP) C 44(C2H4Oのmw)は、(9000-1800)=7200 ÷ 44 = 163。したがって、ポロクサマー188(別名F68)に対する化学式はHO-(C2H4O)82-(C3H6O)31-(C2H4O)82-H.である。
【0097】
あるいは化学式HO-(C2H4O)x-(C3H6O)y-(C2H4O)x-Hから、平均分子量、POEの割合およびPOEとPOPの単位数は、知られている変数に従い導き出すことができる。このように、総mwおよび% POEが知られている場合、化学式を次のように導き出すことができる。
【0098】
POEグループの平均的な数字は、次のように導き出される。(総近似のmw-18(末端水酸基および水素グループのmw))x wt% POE)= mw POE ÷ 44 =POEグループの数字、したがって、F68に対しては、((8400-18) x 80%) = 6705.6÷44= 152.4(÷2=76)。
【0099】
平均的若干のPOPグループは、次のように導き出されることができる:((総近似値 mw - 18) - mw POE) = mw POP ÷ 58.それゆえ、F68については、((8400-18)〜6705.6 = 1676.4÷58 = 30。ポロクサマー188、別名F68に対する化学式は、以下の通りである。HO-(C2H4O)76-(C3H6O)30-(C2H4O)76-H。
【0100】
BASF命名法において、ポロクサマーの物理的形状を説明している文字(液体「L」、ペースト「P」または薄片になり得る「F」)には、ポロクサマー格子のy軸を段階的に上昇するPOPの分子量を任意に示す最初の数、また%POEを示している第2の数が続く。PLURONIC (登録商標) F68は、ポロクサマー188のためのBASFの商標である。BASFは、F68の平均mwを8400とするが、F68NFグレードについては8600の平均mwとし、POE値 = 80 (x 2)でありPOP = 27としている。したがって、18 + 7040 +1566 = 8624のmwの結果となるHO-(C2H4O)80-(C3H6O)27- (C2H4O)80-Hの化学式が得られ、そしてそれはPOP mw = 1566, POE % = 81.6%である。BASFまたはSpectrum Chemicalsから得られる市販のN.F.グレードF68は、81.8 ± 1.9%の重量パーセントのポリオキシエチレンおよび0.026 ± 0.008 mEq/gの不飽和画分を伴う7,680〜9,510 Daの平均分子量範囲を有する。ポリオキシプロピレン構成要素の分子量は、1750である。
【0101】
実際には、ポロクサマーは、典型的には、以下の工程で合成される。すなわち、プロピレングリコールの2つの水酸基へのプロピレンオキサイドの調節された付加、そしてそれに続く親水性基の間の疎水性物質を挟むエチレンオキサイドの付加により、所望の分子量の疎水性物質が生成され、その結果、決められた平均分子量および親水性基のトータル平均パーセントを有する疎水性物質により特徴付けられる相対的に限定された範囲の分子量を有する分子集団が生成される工程で合成される。たとえば、BASF(LUTROL(登録商標)F68, CAS No: 9003-11-6)またはSpectrum Chemicalsから得られる市販のUSP/N.F.グレードF68は、81.8 ± 1.9%の重量パーセントのポリオキシエチレンおよび0.026 ± 0.008 mEq/gの不飽和画分を伴う7,680-9,510 Daの平均分子量範囲を有する。ポリオキシプロピレン構成要素の分子量は、1750である。
【0102】
EOおよびPOの比率および重量が表界面活性剤ファミリー内で異なるので、図5に再現したようにBASFはコポリマー構造、物理的形状および界面活性剤の特性の間の関係図式表示を提供するためにPLURONIC(登録商標)格子を開発した。PLURONIC(登録商標)界面活性剤格子の上で、疎水性物質(プロピレンオキサイド)の分子量範囲は、各分子に存在している親水性物質(エチレンオキシド)の重量パーセントに対して図面上にプロットされる。PLURONIC(登録商標)格子上の場所により定義されるポロクサマー化学種は、それらの総分子量および相対的な疎水性の機能である共通の特性を有することを期待できる。ここで用いられている「特性を有している」特定のポロクサマーとは、名をつけられたポロクサマーと類似のコポリマー構造、物理的形状および界面活性剤の特性を示すそれらのポロクサマーを意味する。
【0103】
図5に複写によりで示されるPLURONIC(登録商標)格子はPLURONIC(登録商標)シリーズの各種の生成物を識別するために、文字と数字の組み合わせの使用を明確にする。アルファベットの表示は、生成物の物理的形状を説明する。液体に対して「L」、ペーストに対して「P」、固体の形態に対して「F」である。数の表示において、最初の桁(3桁数における2桁)に300を掛けたものは、疎水性物質の近似の分子量(Gridの左にある垂直軸)を示す。最後の桁に10を掛けたものは、分子中のおおよそのエチレンオキシド含有量を示し、水平軸から読みとられる。図7は、いくつかのポロクサマーの分子量の範囲、コポリマー成分の割合および近似の化学式を、一般名(ポロクサマー)および対応するBASFの商標により示す。
【0104】
ここで使用されるように、「ポロキサミン」という語は、POE-POP単位がアミンにより別のPOE-POP単位に連結し、一般的構造(POEn - POPm)2 -N‐C2H4 - N - (POPm - POEn)2を有するポリ(オキシエチレン)-ポリ(オキシプロピレン)(POE-POP)を示す。BASFによって生産されるTETRONIC(登録商標)およびTETRONIC R非イオン性界面活性剤は、典型的なポロキサミンである。それらのアミン基によって、ポロキサミンは、たとえば、非プロトン化される場合、負に荷電しているDNAを濃縮するために十分な電荷を有するとは考えられないが、正電荷を有することができ、それゆえ本発明の目的のための非イオン性ポリマーのグループ内に含まれる。
【0105】
ポロキサミンは、アルコキシル化アミン化学物質ファミリーに含まれ、わずかに異なる化学構造を有する。疎水性の中央は、等しい長さの2つの疎水性PPO鎖とそれそれに続く親水性PEO鎖を有する2つの三級アミノ基から成る。ポロキサミンはポロクサマーより巨大であるが、トリブロックポリマーといることができる。BASF Tetronic(登録商標)タイプのポロキサミンは、1,2-エタンジアミンという化学名を有し、、(POEn - POPm)2 -N - C2H4 -N - (POPm - POEn)2で表わされる化学式を有するポリマーであり、CAS番号は11111-34-5である。Reverse Tetronics(登録商標)は、(POPn−POEm)2-N-C2H4-N-(POEm -POPn)2で表わされる化学式およびCAS番号26316-40-5を有する。
【0106】
ポロクサマーは、食品添加物、消泡剤、帯電防止剤、解乳化剤、洗浄剤、湿潤剤、ゲル化剤、乳化剤、分散剤および染色均一化剤に長く使用されている比較的非毒性の表面活性化合物である。(メルク/インデックス(第12版)化合物 7722。ポリクサマー参照)。薬学的用途におけるポロクサマーは経口用、局所用および非経口的製剤のための分散および湿潤剤として使用されている(2004年1月、BASE7 Lutrol(登録商標) F69 技術情報「医薬品業界のためのポロクサマー188」参照)。上記の例において賦形剤として使用されたポロクサマーは有効成分であると考慮されなかった。
【0107】
塞栓または血栓を治療するためのエチレンオキシドおよびプロピレンオキサイドコポリマーの使用について報告されている(米国特許第3,641,240号を参照)。静脈注射によるポロクサマー、特にポロクサマー188、の単独、あるいは他の化合物と組み合わせての使用は、限定されないが、各種の血液疾患の治療において血液供給を容易にし、Robert Hunterに認められているいくつかの特許登録の対象になっている。(例えばアメリカ合衆特許番号4,897,263および5,089,260を参照)。これらの発明の全ての背後にある概念は、「有効量」の界面活性ポロクサマーが微小血管系および冠状血管抵抗性における巨大分子および細胞の接着を含む病理学的疎水的相互作用を減少することによって血液供給を改善し得ることである。
【0108】
ポロクサマーは代謝されずに、およそ2時間の推定された半減期で迅速に血液から除かれることが報告されている(米国特許RE No.36,665を参照)。この出願は、血液供給が疎水的相互作用により減少すると述べられているバルーン血管形成術を含み、再灌流における心筋傷害の治療、移植のための臓器の保存、鎌状赤血球クリーゼの治療のため、また血管における遮断物を除去することに対する侵襲的技法を含む静脈注射のポロクサマー投与による急速な介入に関連している(例えば合衆国特許No.5,030,448を参照)。
【0109】
第2相臨床試験は、心臓発作の数、特に最初の発作の後に続くかもしれない第2の発作を減少する目的で、GMPグレードのポロクサマー188(商品名RheothRX)の能力を決定するために、Burroughs WellcomeおよびCytrxによって行われた。最初の45人の登録患者が、無作為抽出され、プラシーボまたはポロクサマー188の低用量投与方法(1時間の間に150mg/kg/h、そしてそれから47時間の間に15mg/kg/h)を受けた。コンピュータで計算し、70kgの患者に対して10.5グラムの負荷投与量とし、それに続く全量がポロクサマー60グラムにする49グラムとした。この投与量が安全委員会により安全であると決定された場合、最終的な69名の患者はプラシーボまたは高用量ポロクサマー188投与方法(1時間にわたり300 mg/kg/h、そしてそれから、47時間にわたり30 mg/kg/h)を受けた。コンピュータで計算し、70kgの患者に対して21グラムの負荷投与量とし、それに続く全量がポロクサマー120グラムになる98.7グラムとした。イヌモデルを用いた冠状動脈閉塞の90分および再灌流の72時間という先の研究において、4時間注入または生理食塩水のプラシーボと比較して48時間ポロクサマー188注入が、心筋梗塞の大きさにおいて優れた縮小を示したので、ポロクサマー188の48時間注入を選択した。Schaer et al. Circulation 94 (1996) 298。
【0110】
第3相臨床試験において患者を無作為抽出し、対照群(n = 963)またはRheothRx投与群とした。RheothRxを投与する患者は、1時間のボーラス投与(投与計画A、n = 844)のみ、低用量(0.5mg/mLの目標血清中濃度)(投与計画Y、n = 490)の11時間の追加注入、または低用量(投与計画B、n = 483)の23時間の追加を受けるように割り当てた。3種の高用量(1時間のボーラス投与+47時間の低用量注入、1時間のボーラス投与+高用量(24時間の1.0mg/mlの目標血清中濃度)または1時間のボーラス投与+48時間高用量)は、高率な腎機能異常(8.8%)のため中止した。さらに、腎機能異常は、対照患者(1.0%)と比較して、低用量(投与計画A(3.1%); Y(2.7%);およびB(4.1%))で観察された。35日における死亡、心臓性ショックまたは再梗塞の複数の結果に有意差はなかった(全てのRheothRx(13.6%); 対照(12.7%))。ほぼ3000人の患者におけるデータの集合的分析は、RheothRxは何人かの患者においては腎毒性と関係していたが、死亡率に対する効果はなかったことを示した。Circulation. 96 (1997)192。
【0111】
第III相試験におけるクレアチニンの一時的な上昇は、以前から腎疾患を有する高齢患者にみられた。Burroughs Wellcome治験において知られる可逆性腎毒性のために、鎌状赤血球クリーゼ治療のための高用量のIV投与の第III相試験を続ける前にCytRxの毒性の原因を調査することにした。臨床前研究は、毒性がポロクサマー188の低分子量の画分に起因することを示し、このため、この画分および高分子量画分を除くための「精製」工程を開発した。腎疾患の動物モデルは、ヒトとの関連は不明であるが、低および高分子量画分を有しない生成物が毒性を誘発しないことを示した。CytRxの「精製した」製品の名前はFlocor(商標)であり、微小血管血液供給を高め、炎症を抑制し、溶解剤(lytic agent)の存在下に血栓溶解を促進するのに有用であると報告されている。
【0112】
鎌状赤血球クリーゼの治療のためのRheothRXによる更なる臨床治験において、約127人の患者の第III相臨床開発の間、CytRxは精製されたポロクサマー188を使用した。米国医師会雑誌Vol 286 No.17(2001年11月7日)2099-2106で報告されているように、ポロクサマーは緩衝食塩水中、150mg/ml(15%)の濃度で調製され、1時間に100mg/kg、そしてその後47時間30mg/kgの用量で静注によりで与えられた。70kgの患者に対して、これは7グラムとそれに続く、全量105.7グラムの精製されたポロクサマーとなる98.7グラムの負荷投与量である。
【0113】
その一方で、本発明の好適実施形態において、複数の筋肉注射による血管外蓄積送達が提供されるが、前記の治験において使用したよりかなり低い急速トータル全身投与量(acute total body dose)である。たとえば、1注射あたり1から6%までのポロクサマー濃度で2mlを12〜42回注射を行うとき、、全用量は、12回の注射×2ml/注射 x 10mg/ml(1%)=240mg、すなわち合計0.24gとなる。この範囲のトータル最高投与量は、2ml/注射×42回の注射×60mg/ml(6%)=5.04グラム(総量)と計算される。15%の濃度を利用する場合、計算された用量は150mg/ml×2ml/注射× 42注射=12.6グラム(総量)である。Cytrx治験において急速注射によって毒性を生じると仮定される低分子量成分の相対量は、次のように計算される。0.24グラム= 低分子量物質の0.0082グラム;5.04グラム= 低分子量物質の0.174グラム;および12.6グラム= 低分子量物質の0.428グラム。Cytrx治験において大用量の物質を送達する場合、精製された物質であっても、0.233グラムの低分子量成分が、精製されたポロクサマーを使用するCytrx治験における21.2グラムという最低用量中にも含まれていたであろう。
【0114】
ポロクサマー188を含むポロクサマーについて、電気穿孔法を含む傷害、心臓ショック(Padanilam JT, et al. Annals of NYAS, (1994) Vol. 720, pp. 1 1 1-123), 及び神経毒 (Marks JD, et al., Soc Neurosci Abs 24(1): 462, 1998.)の後の細胞膜のシールによる創傷修復の促進が研究された(Lee RC, et al. Proc. Natl. Acad. Sci (1992) 89(10): 4524-4528)。
【0115】
高濃度における特定のポロクサマーは、ポリマーヒドロゲルを形成する。そのようなヒドロゲルは、薬物送達のテストにより持続放出を示した。ポロクサマーゲル製剤は、ゲルが投与部位からウイルス製剤の移動を制限することを期待し、in vivoでウイルスベクターを用いての血管組織への遺伝子の送達に使用された(Feldman et al. Gene Therapy (1997) 4, 189-198; Van Belle et al. Human Gene Therapy (1998) 9, 1013-1024; Hammond et al., US Patent No. 6,100,242)。
【0116】
DNA送達のための親水性タイプのポロクサマー集積体(concentration)を形成する非ゲルの使用は、Cytrx 国際公開公報95/10265において開示された。負に荷電したDNA分子とイオン相互作用を形成し、その結果DNAを遺伝子送達のために粒子に凝縮させる陽イオン性または正に荷電するポロクサマーが開発された。(例えば Kabanov et al US 5,656,611 and US 6,353,055を参照)。筋への核酸の送達のための集積体を形成している非ゲル親水性タイプポロクサマーの使用は、国際公開公報0l/65911に教示されている。
【0117】
図5は、筋にプラスミドDNAの送達を増加させるために決められたポロクサマーの化学的性質を示す。ポロクサマーの有効な「F」グループは、図5の上で、円で囲まれており、ポロクサマー108(PLURONIC(登録商標) F38)、ポロクサマー188(PLURONIC(登録商標)F68)、ポロクサマー237(PLURONIC(登録商標)F87)、ポロクサマー238(PLURONIC(登録商標)F88)、ポロクサマー-338(PLURONIC(登録商標)F108NF)およびポロクサマー407(PLURONIC(登録商標)F127)に代表されるポロクサマーを含む。液体状態ポロクサマー124(PLURONIC(登録商標)L44NF)およびポロクサマー401(PLURONIC(登録商標)L121)は、また、遺伝子発現を増加させることが見いだされた(Valentis 国際公開公報01/65911および国際公開公報02/061040参照)。特に、これらのポロクサマーは、骨格筋および心筋における血管形成トランスジーンの同時の発現とともにプラスミドDNAの送達を増加させることがValentisによって示された。
【0118】
本発見を考慮すると、現在では、追加の血管新生生物学的作用薬がない場合、この効果は、脈管形成を誘発し、および/または持続的な改善を促進するのに十分な脈管を増加させる活性によって、部分的に説明できる。本発明者は現在驚くべきことに、PAD患者の冒された四肢の筋に投与する時、ポロクサマーそれ自体が過渡期の間欠性跛行の症候を改善することができ、ピーク歩行時間(PWT)および足関節上腕血圧比(ABI)に対する長期改善効果があることを見出した。本発明者は、また、驚くべきことに、ポロクサマー188は特に血管内皮細胞および筋芽細胞における炎症性のサイトカインIL-6およびIL-8の産生を選択的に減少させる特性を有することを見いだした。ポロクサマー188は、さらに筋芽細胞細胞におけるMCP-1産生を減少させる特異的効果を有する。
【0119】
前臨床研究:ポロクサマーで調製される空のプラスミドに対比したヒトDel-1プラスミドの前臨床薬理学は、マウスおよびウサギ動物モデルにおいて評価された。これらのプラスミドは、水溶液中の同じ非イオンポリマー(5%のポロクサマー188)を用いて調製された。注射7日後のCD-1マウスの正常酸素筋における毛細血管:筋原線維比に対する調製hDel-1プラスミドの効果は、調製されたhDel-1プラスミドの単一筋肉内10μg投与(筋注)が毛細血管:筋原線維比をおよそ60%(p<0.01)増加させるというものであった。調製Del-1プラスミドをヒトおよびネズミを用いて同等の効果が観察された。この結果は、ポロクサマーに起因する顕著なな効果を示唆しなかった。
【0120】
調製hDel-1プラスミドと調整VEGF165プラスミドおよび空のプラスミドの効果を、ネズミ後肢虚血モデルを用いて調べた。大腿動脈の結紮によってCD-1マウスの後肢に両側性虚血を引き起こさせた。対照群には大腿動脈結紮なしで疑似手術を施した。大腿動脈の結紮後すぐに、マウスに、脛骨前面(10μg)、腓腹筋(20μg)および四頭筋(40μg)に分けて、後肢ごとに調整された70μgのhDel-1プラスミドの筋肉注射を施した。VEGFの過剰発現が虚血組織における側副枝形成増加を導き得ることが示唆されたので、調製したhVEGF165プラスミドを比較のために含めた。運動耐容性(exercise tolerance)は、術後4週間を通じて1週間の間隔で決定された。調製対照プラスミドと比較して、調整hDel1およびhVEGF165プラスミドの両方が運動耐容性を増加させたが(p<0.05)、調製hDel-1プラスミドの効果は、VEGFと差がなかった。この結果は、ポロクサマーに起因する顕著な効果を示唆しなかった。
【0121】
外科的後肢モデルを用いた治験もまた、ニュージーランド・ウサギを用いて行った。ポロクサマー、調製hDel-1、VEGFまたは対照プラスミドは、ニュージーランド・ウサギの大腿動脈の外科的切除の3〜4日後に、内側大腿に注射した(5mgのプラスミド用量は、10の注射部位(0.5mL/部位)に分けた)。血管撮影は、手術の直後および1ヵ月後に再度行った。中大腿部をおおう数多くの新しい側副脈管交差への結果は、空のプラスミドと比較して実験の1ヶ月経過にわたる側副脈管発達において、調製hDel-1およびVEGFプラスミドが2倍以上引き起こすことを示した(p<0.01)。この結果は、ポロクサマーに起因する顕著な効果を示唆しなかった。
【0122】
ヒトPADにおける治療:アテローム硬化症は、下肢の慢性動脈性閉塞性疾患の最も一般的な原因であって、間欠跛行(虚血痛)から潰瘍および壊疽まで変化するる臨床症状を導き得る。アテローム性動脈硬化の過程の結果として生ずる動脈狭窄または閉塞は、運動または休息の間に下肢への血液供給および組織内還流を減少させる。症状の変動範囲は、障害の広がりおよび利用できる側副循環により決まる重篤度として生じる。浅大腿および膝窩動脈は、アテローム性動脈硬化が進行する血管の好発部位である。2つの腸骨動脈への遠位大動脈およびその分岐は、関連する次の好発部位である。
【0123】
PADは、年間医療支出のかなり大きな部分を占める。さらに、実際の医療費の金額のみならず、PADが障害、作業/賃金の減少および生活様式の制限の主な原因である(Rosenfield K,およびIsner JM (1998):Comprehensive Cardiology Medicine. J Topol, ed. Lippincott-Raven Publishers, Philadelphia 3109-3134.)。PADがアメリカ合衆国における50才以上の20人の1人、すなわちおよそ800万〜1200万人を冒していると見積もられており、一般に、女性よりも男性に多いと診断されている(Creager, MA. Cardiol Rev. 9 (2001) 238-245)。下肢血管系の範囲内のPADの場所および分布に関係なく、跛行症状がふくらはぎの筋に最も高い頻度で下肢における安静時血行力学計測における変化として、限局して現れる。通常、ICをもつ患者は、疾患重症度および心血管リスクの増加に関連がある低値である0.4〜0.9のABIを有する(Greenland P, et al. Circulation (2000) 101: E16-22)。血液供給が休息時の組織の代謝要求を満たさない場合、血管狭窄が増すにつれて、危機的な四肢の虚血(CEI)が発症する。安静時痛、非治癒性の潰瘍および壊疽が現れ、切断しなければならなくなるかもしれない。
【0124】
ICやPAD患者の治療管理についての原則は、最近のいくつかの総説および科学的な報告の主題であった(See e.g. Weitz JI, et al. Circulation (1996) 94:3026-49; Hiatt WR. N Engl J Med (2001) 344: 160821)。ほとんどの患者は、主として下肢症状を軽減し、機能的歩行能力および生活の質を向上し、病勢悪化を防ぎ、四肢組織を維持する治療を受ける。危険因子の管理、生活様式への介入および症候的な軽減を提供する医薬品による薬物治療は、生活の機能と質を改善し、進行型終端点(例えば安静時痛、非治癒性の潰瘍、壊疽および心臓死)の進行を遅らせるために中心的役割を果たしている。禁煙、抗血小板療法の施設およびスタチン療法を実施する能力は、ICの患者における治療の重要なゴールを示す。ひどい症状および定義可能な近位の流入疾患のある患者に対する外科的または経皮的血管再建術は、大動脈回腸動脈疾患に対して永続的な治療を提供する可能性がある。下鼠径疾患は、たとえ広範囲であるとしても、跛行に対する外科的処置をほとんど正当化しない。表在性大腿動脈疾患および跛行を有する選択された患者は、外科的療法または経皮的動脈内血栓溶解を考慮されるかもしれないが、これらの手技は多数例において成功していない。同様に脛腓骨の循環に苦しめられている遠位疾患の患者において、危険な四肢虚血を経験していない限り、一次性の下膝窩血管形成または手術には限られた役割しかない。このように、重症虚血肢疾患の治療は、IC患者における主な医療となっているである。
【0125】
ヒト第1相臨床試験は、促進剤ポロクサマー188の生理的食塩水における血管新生蛋白Del-1(国民医薬品集[NF])50 mg/mlおよび賦形剤0.28 mg/ml トリス-(ハイドロキシメチル)-アミノメタン(米国薬局方(USP)(トリス(米国薬局方)))および0.44 mg/ml 塩酸トリス-(ハイドロキシメチル)アミノメタン(トリス塩酸)をコードする1 mg/mlプラスミドを含む製剤(VLT-589)の安全性をテストするために実施された。製造のために、医薬物質(Del-1プラスミド)および、促進剤(ポロクサマー)は、インライン混合過程および0.2μmアブソリュートフィルターを末端まで用いた無菌フィルターを使用して無菌的に混合した。バイアルは、充填され無菌条件下で凍結乾燥した。凍結乾燥の後で、製剤を2〜8℃に保存した。VLTS-589は、滅菌した15mLのガラス製バイアル中の白色からわずかに黄色の滅菌された凍結乾燥粉末として、20mm灰色密栓で栓をしアルミニウム・フリップ・オフ・キャップでシールされて供給された。
【0126】
ポロクサマーは、製剤の一部として投与されたDel-1をコードするプラスミドからのDel-1蛋白の発現増加を「促進する」ので、「促進剤」と考えられた。トリス、トリス塩酸および生理食塩水は、薬学的に許容し得る賦形剤と考えられた。用語「賦形剤」は、pHや等張化のような特性を調節することによって製品の送達および生体適合性を改善するように作用し得るが、意図された量では治療効果を発揮することを目的としない成分を故意に治療用製品に加えられた成分を意味する。多くの他の適切な賦形剤は、薬剤分野における当業者に知られている。
【0127】
臨床治験においては、おおよそ計算された化学組成を有しているポロクサマー188を使用した:HO(CH2CH20)80(CH(CH3)CH2O)27(CH2CH20)80H。医薬製品は、使用するまで凍結乾燥された。使用の際に、凍結乾燥された製剤(NaClを含まない)は、滅菌した0.9%の塩化ナトリウムで注射用に再構成された。
【0128】
段階的用量増加治験実験計画による治験は27人の患者を含み、該患者は当初0.85より少ないか等しいABIを示した。評価については事前調査を行い、30および90日に運動耐容性を調べ、血管撮影(評価前および30日)を用いてABIおよび血管を調べた。製剤は、1回の投与時に注射の数を増すことによって、合計84mgのプラスミドDNAを3mgの段階的用量増加の周囲を囲む輪状パターンで投与された。このように、最初のコホート集団は、一本の3mlの注射を投与された。第2のコホート集団は、各3mlの2本の注射を投与された。第3のコホート集団は、完全な輪状に各3mlの4本の注射を投与された、第4のコホート集団はそれぞれ3つの輪状に4本の注射を計12本投与された。第5のコホート集団はそれぞれ5つの輪状に4本の注射を計20本投与された。最後の第6のコホート集団は、1本の足に7つの輪状に4本の注射を合計28本の注射により、合計84mgのプラスミドDNAの投与を受けた。追加されたコホート集団は、輪状の円周の周囲を囲むパターンの代わりに脚の後面を下方に、縦方向をなぞるパターンで、同じ用量を投与された。
【0129】
脚の場合、大腿動脈が膝窩動脈に供給する大腿動脈の通る経路の近くで始まり下方に向かっている輪状のパターンで脚に送達される製剤は、蓄積部位のパターンが動脈閉塞領域の上に始まり、臨床的に関連した虚血領域に向かって肢を縦に続いて下がる「流量ありから流量なし」で投与される。脚の脈管の構造は、図8に示す。注射剤は視覚的に図9に示されるように針が筋肉組織から除去されるに従い注射筒内の量が段階的に徐々に押し出される角度で送達される。この方法による経験は、0.5ccの筋注注射剤が容積においておよそ3立方センチメートルの組織の領域を治療することを示唆する。図10に、本発明に従った注射の輪状パターンを図示する。
【0130】
脚の場合、流量ありから流量なしの投与治療計画を提供するために、注射は膝より上と下の両方に行われる。図10に示されるように、5つの周囲を囲む輪状パターンまでの投与量の増大により90日目の運動耐容性の改善に向かう傾向が認められた。
【0131】
臨床第II相試験:安全性に関する第I相試験の後に、第II相試験二重盲検「プラシーボ」対照臨床試験が、ポロクサマー製剤のみ(「プラシーボ」)をDel-1をコードするプラスミドDNAを含む製剤と比較して実施された。二重盲検試験は潜在的なおよび市場に出された薬物の臨床試験であり、治験責任医師も被検者もどの被検者が有効成分で治療されるか、だれがプラシーボを投与されるか知らない。プラシーボは、不活性物質または投薬形態の外観、風味および匂いが、作用物質または投薬形態と同一であると一般に定義される。プラシーボは、生物学的検定または臨床試験における陰性対照として用いられる。
【0132】
第II相試験、多施設二重盲検プラシーボ対照臨床試験は、1つの処置の間、指標(より症候的な)下肢への2mLずつの21本の筋肉内(IM)注射および、両側性下肢への2mLずつ20本の注射として投与されるVLTS-589(84mgまたは84mL)またはプラシーボ(84mL)の一回の処置を受ける、主に続発性の下鼠径末梢動脈疾患のIC被検者を必要とした。活性薬物(プラスミドをコードしているDel-1)の添加は例外として、プラシーボの組成および製造は(VLTS-589)製剤と同一だった。プラシーボは、滅菌した15-mLのガラス製バイアル中の白色からわずかに黄色の滅菌された凍結乾燥粉末として、20mm灰色密栓で栓をしアルミニウム・フリップ・オフ・キャップでシールされて供給された。
【0133】
臨床主要評価項目(Clinical Endpoints):主要評価項目の対象は、以下の通りであった。1)下鼠径末梢動脈疾患に主に続発する間欠跛行(IC)を有する被検者において、下肢に両側で投与されるVLTS-5 89のIM注射の安全性および忍容性をプラシーボと比較して評価するため、および2)プラシーボを投与されている被検者と比較してVLTS589を投与されている被検者の投与前の数値から90日目までのピーク歩行時間(PWT)における変化を評価するため。副次的評価項目は、以下の通りである:1)投与前の数値から30日目、180日目および365日目へのプラシーボと比較したVLTS-589によるPWTにおける変化、2)投与前の数値からプラシーボと比較して30日目、90日目、180日目および365日目へのVLTS589による安静時足関節上腕血圧比におけるパーセントおよび変化の絶対値、3)投与前の数値からプラシーボと比較して30日目、90日目、180日目および365日目への跛行発症時間(COT)におけるパーセント変化;および4)投与前の数値から30日目、180日目および365日目へのプラシーボと比較したVLTS-589によるCOTにおける絶対的な変化。
【0134】
治験被検者:両足におけるABIが0.8よりも小さいか等しい両側性疾患の100人の患者を登録し、均等に無作為抽出した。被検者は治験の課程の間、外来患者として取り扱われた。VLTS-589投与の間、被検者は、全身性または局所治療に関連した毒性の徴候についてモニターされた。安全性評価は、AEの報告、臨床検査の評価、生命徴候の測定、生理学的検査、心電図および併用薬を含めた。全ての被検者が90日目の通院を完了したあと、有効性および有害事象データについて中間解析を行った。
【0135】
足関節上腕インデックスまたは足趾/上腕インデックス:ABIは足首の収縮期血圧腕を腕の収縮期血圧によって除した比率である。これは、被検者がトレッドミル試験前に少なくとも10分間背臥した後に行われる。5〜7MHzのドップラー超音波機器を使用してABIは足関節部と両腕における上腕収縮期血圧における足背と後脛骨収縮期血圧を測定することによって得られる。各下肢のABIは、各下肢において、2回の足関節部の高い方の読み取り値を、2回の腕の読み取り地の高い方で割ることによって計算される。1.3に等しいかそれ以上のABI(石灰化動脈硬化)をもつ被検者に対して、足の母指における足趾-上腕収縮期インデックス(TBI)が認められた。TBIは母趾の収縮期血圧腕を上腕収縮期血圧によって除した比率である。この場合、被検者としての資格のためにTBIは0.7より小さいか等しくなければならない。
【0136】
統計的方法:分析において、2つの個体群を、以下のように定義する:1)あらゆる治験薬を投与された全ての被検者と定義される安全性解析対象群、および2)少なくとも1回のVLTS-589後またはプラシーボ投与を受ける全ての被検者よりなる有効性解析対象群。連続型変数は、平均値、標準偏差、中央値、最低値および最高値を使用してまとめられた。カテゴリ変数は、頻度数および百分率を使用してまとめられた。有効性の評価は、VLTS-589とプラシーボ対照群の間で有効性評価基準を比較することによって行われた。全ての比較は、0.05のα-値による両側検定により行った。帰無仮説は、VLTS-589およびプラシーボの間に相違がないということであった。
【0137】
主要評価項目を使用して、被検者100名の大きさのサンプルが治験のために用いられた。投与前の数値から90日目までのPWTにおける変化における2.5分の標準偏差および1.5分の臨床的有意差を標本の大きさを計算するために使用した。この標準偏差は、前の治験における主要有効評価項目に基づくものである。2.5分の標準偏差を仮定すると、0.05の有意水準の独立した標本に対する両側t検定において、VLTS-589腕およびプラシーボの間で少なくとも1.5分の相違を検出するための80%の統計的検出力を有するためには、治療群につき45人の完了した被検者を必要とする(nQuery Advisor(版4.0))。比較すると、観察された相違は、TRAFFIC研究における1.17分(Lederman RJ 他、間欠跛行に対するリコンビナント線維芽細胞成長因子-2による間欠跛行(TRAFFIC研究)に対する治療的血管新生:無作為化された治験、Lancet (2002) 359 : 2053-8)であり、さらに先のシロスタゾール治験における2.00分(Dawson DL、ほか、シロスタゾールは間欠跛行の治療における薬効を有する:多施設、無作為化された、前向き二重盲式治験からの結果、Circulation (1998) 98:678-86)であった。2つの観察された相違の平均は、約1.5分である。
【0138】
一次有効分析:一次有効変数は、投与前の数値から第90日目へのピーク歩行時間(PWT)における変化である。投与前の数値(ベースライン)は、2つの的確なGardnerの治験実験計画書の運動負荷試験(ETT)の平均として定義した。治療効果は、VLTS-589治療群およびプラシーボ治療群の間で一次有効変数における相違を比較することによって評価した。一次解析は、主要変数に関するVLTS-589およびプラシーボの効果を比較するために、共分散(ANCOVA)分析に基づいた。一次モデルは、共変量として基礎値による治療および集中したところに起因する主作用を含んだ。ANCOVA手法の適用性はコードの非盲検化の前後に確かめられた。モデル仮定条件がパラメータ分析、データの固有変換または等級に対して満たされない場合:ANCOVAは、PWTの投与前の数値および部位について調整して適用された。2本の治療回帰直線の並列度が評価された。未変換のANCOVA分析は、また、目的を支持するために行われた。プラシーボへのVLTS589の比較のためのp値、および治療効果間の相違に対する95%の信頼区間(CI)が提供された。各治療群内の投与前の数値と90日目の間のPWTの相違に対して、群間に対応のある検定のp値および95%のCI間隔が提供された。一次解析が、測定値に対して行われた。さらに、数分の歩行に対しては、略式の統計学が提供された。
【0139】
評価項目の分析:符号解読の後のデータの分析は、Del-1を用いた調製された薬物が末梢動脈性疾患の間欠跛行形態患者における、第II相試験臨床治験の主要評価項目を満たさなかったことを示した。治験における主要有効評価項目である90日後の運動耐容性における改善は、統計的有意差を満たさなかった。しかしながら、驚くべきことに、そのDel-1およびプラシーボ群が投与前の数値から運動耐容性および足関節上腕血圧比(ABI)において統計学的に有意な改善を示すことが認められた。両群における改善は、事実上同一であった。
【0140】
90日目の評価:90日目の評価において、51人の患者のポロクサマー(プラシーボ)群は、運動耐容性において、投与前の数値から34%の有意な増加を示し(p<0.00001)、49人の患者のポロクサマープラスDel-1群は、運動耐容性において、投与前の数値から、32%の有意な増加を示した(p=0.0001)。重要なことに、足関節上腕血圧比(血流量の臨床的指標)における変化もまた、両群において統計学的に有意であった。ポロクサマーを投与されているグループにおいて、足関節上腕血圧比の0.059の増加があった(p=0.00072)。ポロクサマープラスDel-1を投与されている群については、足関節上腕血圧比の0.048の増加があった(p=0.00665)。患者の個人情報および副次的評価項目の結果は、事実上同一であった。
【0141】
臨床第II相試験におけるポロクサマーの運動耐容性に対する統計学的に有意な効果は、使用したDel-1遺伝子の送達賦形薬として使用されたポロクサマーが、明らかにこの治験における患者の運動耐容性の一助となることを示した。180日の評価を完了した患者に対する予備データは運動耐容性における変化を示し、ABIは6ヵ月にわたって増加し続けた。
【0142】
180日目の評価:上に示したように、90日目にはポロクサマー単独対ポロクサマープラスDel-1の処置群の間に有意差がなかった。しかしながら、運動耐容性および足関節上腕血圧比(ABI)において、投与前の数値と比較して両群における有意な改善が認められた。臨床治験の主要な成果は90日における安全性とPWTの変化(ΔPWT)であり、その一方で副次項目は180日のΔPWT、90および180日のABIおよび生活の質計測(QOL)を含んでいた。
【0143】
180日の経過観察では、平均PWTおよびABIは、下記の群(表1)の間において差がなく、両方の処置群において、投与前の数値と比較して増加した。
【表1】

【0144】

さらに、群間の有意差なしで、両群はQOL計測に対する投与前の数値において有意な改善を示した。重篤有害事象は、両群において類似していた。データ分析の結論は、ポロクサマー入りのDel-1およびポロクサマー単独の筋肉内送達において、90および180日に投与前の数値と比較してPWTおよびABIが有意な改善となったことである。両群においてプラシーボ効果よりむしろポロクサマーの治療効果を支持しており、Del-1プラスミドと関連する成果測定には差がなかった。
【0145】
蓄積送達(depot delivery):ポロクサマー製剤は、梗塞形成および鎌形赤血球血管閉塞クリーゼを含む急性血管閉塞クリーゼの間、血液中の疎水的相互作用を減少するために利用された。ポロクサマーの役割は血液粘度を下げ、RBCの凝集を減少させ、そしてRBCと血管壁間の摩擦を減少させることであり、これにより虚血組織における微小血管血液供給を増加させる。組織への取込みは、最小であることが報告されており、高度に血管が新生した組織に主として集中した。GibbsとHageman, The Annals of Pharmacology 38 (Feb 2004) 320を参照。低濃度では血漿蛋白に対する効果をほとんど有さず、全身的に補体を活性化するのに十分でなく、結果的に走化性を補うために好中球を非応答性にするという定められた基礎に対して、血管閉塞クリーゼにおいては目的用量を必要とする。アメリカ合衆特許番号5,089,260を参照。さらに、ポリマーはm報告されたおよそ2時間の半減期で迅速に排出され、投与量の90%が3時間で排出される。これらの理由から、緩衝食塩液中に150mg/mLまたは15%の濃度で調製されるポリマーは、ポロクサマーの投与総量が105.7グラムとなるように、100mg/kg(70kgの人において7グラムになると計算される)のIVボーラス投与により、まず大量負荷投与法で投与され、続いて30/mg/kg/時の47時間連続点滴(70kgの人において98.7グラムになる計算される)が行われる。Ann. Pharmacother. 3S (2004) 320-4。
【0146】
その一方で、本発明の好適実施形態において、複数の筋肉注射による血管外蓄積送達が提供されるが、前記の治験において使用したよりかなり低い急速合計投与量で提供される。
【0147】
本発明の一実施形態において、2.1グラムの合計IM(筋注)用量を5%溶液(50mg/ml)42mlの筋肉注射で、21回の注射に分けて各脚に送達した。他の実施形態においては、複数の筋肉注射による血管外蓄積送達は、4.2グラムの総筋注用量である5%溶液(50mg/mL)84mLを42本注射、すなわち各脚の流量ありから流量なしの下向きのパターンで、それぞれの脚につき一連の同心円状の輪状に21本の注射に分けて筋肉内注射で送達されることにより提供される。
【0148】
したがって、この実施形態において、ポロクサマー188の供与量は、血管閉塞クリーゼにおける先の静脈注射の投与よりおよそ25〜50倍低い。しかしながら、ポロクサマーが筋中の血管外スペースに蓄積投与によって送達されるので、ポロクサマーは長期に渡り組織内に残留し、末梢虚血性疾患のいくつかの臨床的指標を驚くほど改善する。
【0149】
脈管形成におけるポロクサマーの動物実験:ヒト第II相試験臨床治験と同時に、生理食塩水、ポロクサマーまたはポロクサマープラスDel-1をコードするプラスミドのいずれのかを2種類の用量レベルで筋肉注射し、様々な形態的評価項目を評価するために、動物実験を実施した。正常ニュージランドホワイト種ウサギをテスト種に使用した。注射部位は、背側腰部の集合筋肉組織であった。できる限り人間におけるVLTS-589の適用を模倣するために、注射が行われた。血管内皮細胞を同定するために染色された切片とともにH&E染色切片の(内因性アルカリホスファターゼの検出およびPECAM(CD 31)抗原の発現を介した)評価を可能にするために組織を回収した。
【0150】
H&E染色のために組織を回収し、10%の中性緩衝ホルマリンで固定し、プロトコールに従って標識した。切片は、HCS Laboratories (Evanston, WA)によって調製された。病理学者は、初期評価および類別配列決定(grading sequense)の間、治療群の帰属を知らなかった。筋切片の組織学的評価により、広範囲にわたる脈管の密集が観察されたが、首尾一貫したパターンは、ポロクサマーのみおよびポロクサマープラスプラスミドDNA群における脈管密度の明白な上昇であり、筋肉注射部位における個々の筋肉繊維を示す局所的に豊富な筋内膜および間質毛細管とともに認められた。この変化は、通常の非注射部位または生理食塩水注射部位と簡単に区別できた。
【0151】
ポロクサマー投薬された動物において、脈管の密度の局所的増加は予想されず、ポリマーが細胞周囲血管の存在を促進させるいくらかの刺激を提供または促進することを示唆する。まれに見る、極めて小さな単核細胞炎症細胞蓄積以外の、組織毒性の組織学的証拠はなかった。
【0152】
マウス試験におけるポロクサマーの炎症抑制:マウスの下腹部皮下に置かれたマトリゲル(Matrigel)にFGF(陽性対照群)、生理食塩水(陰性対照群)、Del-1蛋白(既知の血管新生剤)またはポロクサマー188のいずれかを取り込ませる初期の研究は、面白い結果をもたらした。マトリゲル基礎膜マトリックス(Matrigel Basement Membrane Matrix)(BD Biosciences)は、Engelbreth - Holm - Swarm(EHS) マウス肉腫から抽出される可溶化された基底膜調製物である。その主要構成要素は、ラミニン、続いてコラーゲンIV、ヘパラン硫酸プロテオグリカン、エンタクチンおよびニドゲンである。マトリゲル脈管形成モデルにおいて、ポロクサマー188が、陰性対照群として線維芽細胞成長因子(FGF(陽性対照群))、Del-1蛋白または生理食塩水のような他の既知の血管新生剤と比較された。
【0153】
この脈管形成モデルは、FGFに対して多数の新しい脈管の成長、Del-1に対してわずかから中等度の血管成長、そしてPI88および生理食塩水に対してわずかな薄板状パターンを示した。該システムについての経験を積んだ後、蛋白による用量反応が顕著であるとすれば、使用されるDel-1の量を確かめてマトリゲルに対するPI88の比率を改めるために滴定しなければならないことに気づいた。研究の第1ラウンドにおいて、マトリゲルに加えられる5%のPI88濃度がマトリゲルの重合を抑制することがほぼ確実であったことは、注目された。In vitroでの滴定による研究は、マトリゲルに1%または2%のPI88を混ぜ合わせたとき、マトリゲルの重合が正常であることを示した。3%のPI88濃度で、マトリゲルはクランピング重合を受け、5%でそれはほとんど完全に抑制された。したがって、in vivo実験での反復におけるマトリゲルおよびポロクサマー濃度は、最初の濃度は、十分な重合をもたらしたものと同様だったが、それでも、5%のPI88の終末濃度(臨床治験においてテストされる濃度)を与えるように改められた。
【0154】
マトリゲルインプラントは、マウスの下部腹の/鼠蹊部皮下に置かれて、4〜7日後に、回収された。10%の中性緩衝ホルマリン中での固定に続き、インプラントを、パラフィンに包埋し、H&Eで染色した。種々の濃度のDel-1蛋白、ポロクサマー188とDel-1蛋白、FGF蛋白、ポロクサマー188(種々の比率)または生理食塩水とポロクサマーをを処方したインプラントの組織学的検査は、3つの顕著な形態学的パターンを明らかにした。
【0155】
これらの中で最初のものは、置換されているマトリゲル・マトリックスで高い細胞充実度によって特徴づけられるパターンであって、間葉系細胞、微小血管および種々の数の炎症細胞によって置き換えられ、浸潤された。浸潤細胞は、孤立したマトリゲルの島または小柱(trabeculae)の存在をもたらし、時には、分散に、間葉系細胞の病巣を孤立させた。このパターンは、200μg/mlの濃度で、FGFもしくはDel-1蛋白のいずれかを含むマトリゲルに特有であった。Del-1の細胞性応答は、Del-1応答はわずかに弱くFGFインプラントより多くの好中球を含むという点でFGFとわずかに異なった。200μg/ml未満のDel-1の濃度は、相当少ない細胞性応答を示した。
【0156】
第2の反応は、マトリゲル・マトリックスの幅広いシートが保存され、そして末梢応答がほとんどなく、著しい細胞充実度の減少によって特徴づけられるパターンであった。細胞性応答が存在していたことは、マトリックスの部分を囲んだ変わりやすく厚い線維性被膜によって特徴づけられた。間葉系細胞のまれに見る個々の集塊は、時折マトリックスの範囲内に含まれた。同様に、炎症細胞はマトリックス内、またはその周囲にまれにあった。ポロクサマー188が単独の構成要素として、またはDel-1とともに調製される場合のどちらでも、このパターンは存在した(Del-1の添加はわずかに細胞充実度を高めるが、変化は軽度だった)。このパターンは、炎症性、新生血管および繊維性の組織反応の減少を含み、実質的な抗炎症効果を示しているポロクサマー188と一致していた。
【0157】
反応の第3のパターンは、薄層をなすパターンの形成によって特徴づけられた。このパターンにおける、マトリゲルにおける成層は、マトリゲル・マトリックスのシートの間で紡錘細胞(線維芽細胞に類似している)の浸潤によって形成された。これは、しばしば第1のインプラントを囲んでいる変わりやすく厚い線維性被膜の存在を伴った。混合炎症細胞の小さな集塊は、少しの末梢部位に存在したが、頻発するものではなかった。この薄層をなすパターンは、生理食塩水で調製されるマトリゲルに限定していた。
【0158】
要するに、ポロクサマー188は低い固有の抗原性を有している異物の埋め込みを囲んでいる被包形成と同様に異種蛋白の両方によって引き起こされる炎症性反応を抑制した。
【0159】
本発明の前述した開示と説明は、例示及び解説であり、例示されたシステム詳細の場合と同様に、大きさ、形および物質における各種の変更は、本願発明の精神から離れることなく行われることが可能である。本発明は、一つの要素の詳述は、一つ以上をカバーし、2つの要素の詳述は2以上をカバーするというような、歴史的な推定の情報提供に依存した専門用語を使用して権利を主張する。
【図面の簡単な説明】
【0160】
【図1A】ELISAによる各種の処理における正常酸素HUVEC細胞によるIL-6産生の結果を示す図である。
【図1B】ELISAによる各種処理における低酸素HUVEC細胞によるIL-6産生の結果を示す図である。
【図2A】ELISAによる各種の処理における正常酸素HUVEC細胞によるIL-8産生の結果を示す図である。
【図2B】ELISAによる各種の処理における低酸素HUVEC細胞によるIL-8産生の結果を示す図である。
【図3A】タンパク質マクロアレイによる各種処理における低酸素HUVEC細胞によるMCP-1産生の結果を示す図である。
【図3B】タンパク質マクロアレイによる各種処理における低酸素HSMM細胞によるMCP-1産生の結果を示す図である。
【図4A】ELISAによる各種処理における正常酸素HUVEC細胞によるアデノシン産生の結果を示す図である。
【図4B】ELISAによる各種処理における低酸素HUVEC細胞によるアデノシン産生の結果を示す図である。
【図5】ポロクサマーおよびリバースポロクサマーの特性を示す格子を示す図である。
【図6】ポロクサマーおよびリバースポロクサマーの化学構造を示す図である。
【図7】筋への送達に有用なポロクサマーの特性を示す図である。
【図8】下肢の構造を示す図である。
【図9】筋への注射針による投与を示す図である。
【図10】注射針による筋への輪状投薬パターンを示す図である。
【図11】安全性に関する第I相試験の運動耐容性の結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効量のポロクサマーを含む組成物を患部組織に局所蓄積投与することを含む組織の炎症の症状を治療する方法。
【請求項2】
ポロクサマーが、約0.1〜100%の濃度で投与される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
ポロクサマーが、約80%以上の親水性成分および950〜4000ダルトンの疎水性分子量を有する、請求項2記載の方法。
【請求項4】
ポロクサマーが、ポロクサマー188のコポリマー構造、物理的形態および界面活性剤特性を有する、請求項3記載の方法。
【請求項5】
ポロクサマーが、約0.1〜20% w/vの濃度で投与される、請求項3記載の方法。
【請求項6】
ポロクサマー188が約1〜15%の濃度で投与される、請求項5記載の方法。
【請求項7】
組成物が、本質的に水性生理食塩水溶液中50mg/ml w/vのポロクサマー188、0.28mg/ml w/vのトリス、及び0.44mg/mlのトリス塩酸からなる、請求項6記載の方法。
【請求項8】
組成物が、筋肉内、血管内および/または嚢内注射により血管外の組織に局所的に蓄積投与される、請求項1記載の方法。
【請求項9】
筋肉内注射が、複数の注射を含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
組織の炎症が、末梢血管、心血管、脳血管及び腎血管疾患における組織虚血と関連している、請求項1記載の方法。
【請求項11】
組成物が、さらに1つ以上の生物学的作用薬であって、患部組織において新しい側副血管の成長と成熟を刺激し得る生物学的作用薬を含む、請求項1記載の方法。
【請求項12】
組成物が保存のために凍結乾燥され、投与前に水により元に戻される、請求項1記載の方法。
【請求項13】
炎症過程により冒された患部組織中に有効量のポロクサマーを局所投与することを含む、少なくと1つの炎症性サイトカインの局所的産生を減少させる方法。
【請求項14】
ポロクサマーが、ポロクサマー188のコポリマー構造、物理的形態および界面活性剤特性を有する、請求項13記載の方法。
【請求項15】
有効量のポロクサマーを組織に局所投与することを含む少なくとも1つの炎症性メディエーターの局所的産生を減少させる方法であって、ポロクサマーが約80%以上の親水性成分および950〜4000ダルトンの疎水性分子量を有するものである方法。
【請求項16】
ポロクサマーが、約0.1〜約20% w/vの濃度で水溶液中に存在する、請求項15記載の方法。
【請求項17】
ポロクサマーが、ポロクサマー188のコポリマー構造、物理的形態および界面活性剤特性を有する、請求項16記載の方法。
【請求項18】
炎症性メディエーターが、IL-6、IL-8、MCP-1及びGROの少なくとも1つである、請求項15記載の方法。
【請求項19】
ポロクサマー188が、約1〜15%の濃度で存在する、請求項17記載の方法。
【請求項20】
ポロクサマー188が、約50mg/ml(5%)w/vの濃度で存在する、請求項19記載の方法。
【請求項21】
水溶液がさらに1つ以上の薬理学的賦形剤を含む請求項16記載の方法。
【請求項22】
薬理学的賦形剤が、NaCl、トリス、トリス塩酸及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項21記載の方法。
【請求項23】
局所的投与が筋肉内、血管内および/または嚢内注射による血管外の組織への蓄積のためのものである、請求項15記載の方法。
【請求項24】
筋肉内注射が複数の注射を含む、請求項23記載の方法。
【請求項25】
複数の注射が1つ以上の円周上の輪状パターンで送達される、請求項24記載の方法。
【請求項26】
水溶液が、さらに虚血組織において新しい側副血管の成長および/または成熟を刺激し得る1つ以上の作用薬を含む、請求項15記載の方法。
【請求項27】
ポロクサマーが、外科手術のプロテーゼの埋め込みと同時に投与される、請求項15記載の方法。
【請求項28】
プロテーゼが多量のポロクサマーを含み、それによりポロクサマーが徐々にプロテーゼから放出される、請求項27記載の方法。
【請求項29】
IL-6、IL-8、MCP-1及びGROの少なくとも1つによりメディエートされる炎症を阻害するための医薬を製造するための、ポロクサマー188の使用。
【請求項30】
医薬が、乾癬、蕁麻疹、血管性浮腫、薬物感受性発疹、掻痒、腫瘍結節性およびアトピー性疾患、接触性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、慢性皮膚炎、湿疹、光線過敏症、丘疹鱗屑性疾患、斑点模様状紅斑ならびに黄斑、丘疹性水泡症および膿疱性疾患からなる群から選択される炎症性皮膚症状の治療のために皮下または皮内に局所的に投与される、請求項29記載の使用。
【請求項31】
医薬が筋肉内、血管内および/または嚢内注射により血管外の組織に局所的に蓄積投与される、請求項29記載の使用。
【請求項32】
末梢血管疾患または心血管疾患の治療のための、請求項29記載の使用。
【請求項33】
筋肉内注射による、組織虚血の治療のための蓄積医薬の製造のための水溶液形態のプロクサマーの使用。
【請求項34】
末梢血管疾患または心血管疾患の治療のための、請求項33記載の使用。
【請求項35】
医薬が間欠性跛行の治療のために製造される、請求項33または34に記載の使用。
【請求項36】
医薬がさらに虚血組織において新しい側副血管の成長および/または成熟を刺激し得る少なくとも1つの作用薬を含む、請求項33〜35のいずれか1項に記載の使用。
【請求項37】
医薬が複数の蓄積送達のために製造される、請求項33〜36のいずれか1項に記載の使用。
【請求項38】
虚血組織が肢であり、複数の蓄積送達が肢の周囲の1つ以上の円周上の輪状パターンで送達される複数の筋肉内注射を含む、請求項36記載の使用。
【請求項39】
医薬が1〜5g、好ましくは4.2gの総量での使用のために製造される、請求項33〜38のいずれか1項に記載の使用。
【請求項40】
医薬が12〜42の個々の注射部位を通しての総量の送達のために製造される、請求項33記載の使用。
【請求項41】
ポリクサマーが、約80%以上の親水性成分および950〜4000ダルトンの疎水性分子量を有する、請求項33〜40のいずれか1項に記載の使用。
【請求項42】
ポリクサマーが、約0.1〜約20% w/vの濃度で水溶液中に存在する、請求項33〜41のいずれか1項に記載の使用。
【請求項43】
ポロクサマーが、ポロクサマー188のコポリマー構造、物理的形態および界面活性剤特性を有する、請求項42記載の使用。
【請求項44】
ポロクサマーが、約1〜20% w/v、好ましくは約1〜6%の濃度で製剤中に存在する、請求項43記載の使用。
【請求項45】
プロクサマー188が、約50mg/ml(5%)w/vの濃度で存在する、請求項44記載の使用。
【請求項46】
水溶液がさらに少なくとも1つの薬理学的な賦形剤を含み、好ましくは該薬理学的な賦形剤がNaCl、トリス、トリス塩酸およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項33〜45のいずれか1項に記載の使用。
【請求項47】
医薬が間欠性跛行の治療のために製造される、請求項33〜44のいずれか1項に記載の使用。
【請求項48】
医薬がさらに虚血組織において新しい側副血管の成長および/または成熟を刺激し得る少なくとも1つの作用薬を含む、請求項33〜47のいずれか1項に記載の使用。
【請求項49】
0.24〜13gの総量のプロクサマーが送達される、請求項33〜48のいずれか1項に記載の使用。
【請求項50】
アテローム硬化、滑液包炎、滑膜炎、腱炎、関節周囲障害、関節リウマチ、骨関節炎、脊椎関節症、強皮症、シェーグレン症候群、多発性筋炎、皮膚筋炎、全身性脈管炎、リウマチ性多筋痛、乾癬、側頭動脈炎、特発性結合線維組織増殖症候群、心膜炎、ならびに全身性疾患を伴う通風および関節炎の治療において局所投与により炎症を防止するための医薬の製造のためのプロクサマー188の使用。
【請求項51】
手術、急性損傷及び外科的インプラントに関連した炎症を防止するための医薬の製造のためのプロクサマー188の使用。
【請求項52】
腹膜炎、慢性皮膚炎、湿疹、外耳炎、膀胱炎、慢性全腸炎、粘膜炎、胸膜炎、膣炎、結膜炎および鼻炎/静脈洞炎の患部への局所投与による炎症の防止のための医薬の製造のためのプロクサマー188の使用。
【請求項53】
組織の血管新生を刺激するための医薬の製造のためのプロクサマーの使用であって、ポロクサマーがポロクサマー108、ポロクサマー124、ポロクサマー188、ポロクサマー237、ポロクサマー238、ポロクサマー338、ポロクサマー401、ポロクサマー407及びこれらの組み合わせから選択されるポロクサマーのコポリマー構造、物理的形態および界面活性剤特性を有する、上記使用。
【請求項54】
医薬が筋肉内、血管内および/または嚢内注射による血管外の組織への局所的な蓄積投与のために製造される、請求項53記載の使用。
【請求項55】
医薬がさらに虚血組織における新しい側副血管の成長と成熟を刺激し得る1つ以上の作用薬を含む、請求項53または54に記載の使用。
【請求項56】
医薬が医薬的に許容できる担体を含み、血行再建を必要とする部位の血管外の組織への直接投与のために製造される、請求項53〜55のいずれか1項に記載の使用。
【請求項57】
血管外のスペースが筋肉、例えば骨格筋または心筋である、請求項56記載の使用。
【請求項58】
心臓組織における炎症および/または虚血を治療するための医薬の製造のためのプロクサマー188の使用であって、医薬が静脈中に置かれたバルーンカテーテルを通しての退行性静脈への注入による送達のために製され、医薬が心臓組織へ管外遊出させるのに十分な圧力で冠状静脈洞に流れ出る、上記使用。
【請求項59】
冠状静脈洞へ流れ出る静脈が大心臓静脈(GCV)、中心臓静脈(MCV)、左室(PVLV)の後静脈、前室間静脈(AIV)およびそれらの側枝部からなる群から選択される請求項58記載の使用。
【請求項60】
プロクサマー水溶液を含む注射器であって、組織の虚血および/または炎症を治療するためのプロクサマーを蓄積送達するのに適した注射器。
【請求項61】
注射器が、約1〜4mlの0.1〜20% w/vの濃度のプロクサマーの水溶液を含む請求項60記載の注射器。
【請求項62】
プロクサマーが、約80%以上の親水性成分および950〜4000ダルトンの疎水性分子量を有する、請求項60または61に記載の注射器。
【請求項63】
ポロクサマーが、ポロクサマー188のコポリマー構造、物理的形態および界面活性剤特性を有する、請求項60〜62のいずれか1項に記載の注射器。
【請求項64】
プロクサマー188が、約0.1〜20% w/v、好ましくは約1〜6% w/vの濃度で存在する、請求項63記載の注射器。
【請求項65】
プロクサマー188が5% w/vの濃度で存在し、好ましくはプロクサマー188が5mMのトリス塩酸pH8.0および0.9% w/vの塩化ナトリウムの無菌溶液中に存在する、請求項64記載の注射器。
【請求項66】
末梢血管または心血管疾患の治療のためのポロクサマーの筋肉内への蓄積送達に適した、請求項60〜65のいずれか1項に記載の注射器。
【請求項67】
請求項60〜66のいずれか1項に記載の個々の注射器の複数を含む、組織の虚血または炎症の治療に適したキット。
【請求項68】
請求項60〜66のいずれか1項に記載の個々の注射器の12〜42のセットを含む、請求項67記載のキット。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2008−514640(P2008−514640A)
【公表日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−533755(P2007−533755)
【出願日】平成17年9月27日(2005.9.27)
【国際出願番号】PCT/US2005/034790
【国際公開番号】WO2006/037031
【国際公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【出願人】(500190971)バレンティス,インコーポレイティド (1)
【Fターム(参考)】