説明

炎症性皮膚疾患を処置するための1−アミノ−アルキルシクロヘキサン誘導体

本発明は、炎症性皮膚疾患に苦しむ個体の処置であって、その個体に有効量の1-アミノ-アルキルシクロヘキサン誘導体を投与することを含む処置に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炎症性皮膚疾患に苦しむ個体の処置であって、その個体に有効量の1-アミノ-アルキルシクロヘキサン誘導体を投与することを含む処置に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、ざ瘡、酒さ、湿疹、アトピー性皮膚炎、乾癬及び脂性肌を含む炎症性皮膚疾患に苦しむ患者を処置する方法に関する。
【0003】
ざ瘡は最も一般的な皮膚疾患である。疫学的データは、最大80%の人々が罹患し得ることを示唆している。男性と女性はほぼ等しくざ瘡を発生させ、この疾患の発症は典型的には10〜14歳で起こり、20〜25歳までに消失する。一部の患者では、40代又は50代までざ瘡が持続する(持続性ざ瘡)。ざ瘡の臨床スペクトルは、偶発的炎症性(occasional inflamed)膿疱性丘疹を伴う軽度な症状発現(例えば数個の面皰(ざ瘡病変)から、より重症な症例では「臨床的(clinical)」ざ瘡まで)から、顔面又は体幹上部での重度の炎症及び膿瘍形成にまで及ぶ。毛包破裂(follicular rupture)が続発して、それが膿瘍、フィステル及び炎症の全身徴候(集簇性ざ瘡)を含む異物反応につながることもある。
【0004】
アンドロゲンによって調節されると考えられる皮脂産生量の増加が、ざ瘡(脂漏)発生の主原因の一つであると思われる。ざ瘡を発生させるもう一つの必要条件は、過角化につながる毛包角化障害である。毛包過角化の原因となる因子には、次に挙げるものが含まれる:限局性毛包リノール酸欠乏、面皰形成性の皮脂構成要素、皮脂の脂質組成の変化、細菌の代謝産物及び炎症の媒介物質。
【0005】
プロピオニバクテリウム(プロピオニバクテリウム・アクネス(Propionibacterium acnes))は毛包中の優占細菌である。これらの細菌は微好気的条件又は嫌気的条件を好み、皮脂産生量の多い領域で優先的にコロニーを形成する。ざ瘡を持つ11〜20歳には、ざ瘡を持たない11〜20歳と比較して、4log高いプロピオニバクテリウム濃度が見いだされる。細菌リパーゼは刺激性及び炎症誘発性の遊離酸、並びに潜在的に炎症誘発性である他の細菌代謝産物、例えばプロテアーゼ、ヒアルロニダーゼ及び走化性因子を遊離させる。プロピオニバクテリウムの代謝産物は、毛包及び毛包周囲の炎症、特に走化性物質によるものを誘導する。他の免疫学的因子及び炎症性因子もざ瘡の発生と経過に役割を果たす(例えばToll様受容体2、IL-1、IL-8、LTB4、PPARα)。
【0006】
ざ瘡に利用することができる外用(topical)処置選択肢及び全身処置選択肢はいくつかある。ざ瘡の外用処置には、次に挙げるものが含まれる:毛包角化を正常化するレチノイド;毛包内のプロピオニバクテリウム・アクネス(Propionibacterium acnes)(P. acnes)を減少させる抗細菌剤であるベンゾイルペルオキシド(BPO);及び抗細菌作用を持つ外用抗生物質。ざ瘡の全身処置選択肢には抗生物質が含まれる。全身処置選択肢には女性患者のためのホルモンも含まれる。
【0007】
酒さは、主として顔面皮膚の、一般的な慢性皮膚炎症性疾患である。これは30代及び40代によく見られ、40歳及び50歳で頂点に達する。酒さの原因はまだ突き止められていない。顔面血管反応性、真皮結合組織の構造又は組成、毛嚢脂腺構造、微生物のコロニー形成、及び酒さトリガー因子に対する皮膚の応答を変化させる因子の組合せは、それぞれに、主要な病理発生機序であると見られている。重要なトリガー因子は、なかんずく、高温又は低温、日光、風、温かい飲み物、香辛料入りの食品、アルコール、運動、情動、並びに潮紅及び発赤をもたらす局所刺激物(topical irritant)のようである。初期の酒さは、主に頬の、持続的紅斑及び毛細血管拡張を特徴とし、しばしば丘疹及び膿疱性丘疹が続発する。後期になると、結合組織及び皮脂腺のびまん性過形成が起こり得る。これは、鼻の肥大、いわゆる鼻瘤を引き起こし得る。酒さは段階的に起こり、眼を冒して眼瞼炎及び結膜炎を好発し得る。酒さは顔面以外の部分、例えば耳介後部、並びに首、胸、背中及び頭皮などにも生じ得る。酒さの臨床的外観はざ瘡に似ていることもあるが、ざ瘡とは対照的に、酒さは原発性毛包疾患ではない。
【0008】
ざ瘡に使用される、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、及びミノサイクリンなどの経口テトラサイクリン抗生物質、並びにメトロニダゾールなどの外用抗生物質は、酒さにとっての処置選択肢でもあり、丘疹、膿疱、炎症及び多少の発赤を軽減するために使用される。
【0009】
湿疹は、アトピー性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎及び職業性皮膚炎など、さまざまな炎症皮膚状態を包含する一般用語である。
【0010】
アトピー性皮膚炎は、典型的には乳児期初期(early infancy)に始まるそう痒症である(ただし成人発症型の異型も認知されている)。アトピー性皮膚炎はそう痒、湿疹性病変、乾燥(乾燥皮膚)、及び苔癬化(皮膚の肥厚及び皮膚紋理(skin markings)の増加)を特徴とする。
【0011】
アトピー性皮膚炎は、欠陥のある皮膚障壁、先天性免疫系の欠陥、並びにアレルゲン及び微生物抗原に対する増強された免疫学的応答をもたらす遺伝的感受性遺伝子間の複雑な相互作用によって起こる。障壁の機能障害は、角化膜遺伝子(フィラグリン(fillagrin)及びロリクリン)のダウンレギュレーション、低下したセラミドレベル、増大した内在性タンパク質分解酵素レベル、及び強化された経表皮水分喪失によって引き起こされる。障壁のかく乱は、石鹸及び洗剤によっても、且つ/又はチリダニ及び黄色ブドウ球菌(Staphyllococcus aureus)由来の外因性プロテアーゼへの曝露によっても起こり得る。これは、アトピー性皮膚における一定の内在性プロテアーゼインヒビターの欠如によって悪化する。これらの表皮変化は、皮膚へのアレルゲン吸収及び微生物コロニー形成が増加する一因になると思われる。現在考えられているのは、微生物のスーパー抗原が大きな役割を果たすというものであり、それらは、かく乱された障壁を通して、より容易に生きた皮膚層中に浸透し、ところどころにマクロファージ(occasional macrophages)を伴うT細胞(主に、抗原との以前の遭遇を示唆する活性化メモリーT細胞マクロファージ)の流入を誘導することができる。
【0012】
そう痒は、アトピー性皮膚炎の顕著な特徴であり、アレルゲン、湿度の変化、発汗、及び低濃度の刺激物への曝露後に、皮膚の反応性亢進及び掻破行動として顕在化する。そう痒の機序はよくわかっていないが、炎症細胞が重要な役割を果たすと考えられている。かゆみ-掻破サイクル(itch-scratch cycle)がある。反復的な掻破行動は前頭前皮質及び眼窩前頭皮質中の大脳皮質野を活性化する。これは、掻破行動の快楽的及び強迫的構成要素の説明になり、内在性オピオイドの放出と関連づけることができる。アトピー性皮膚炎における反復的な掻破行動は神経ペプチド及びオピエートの分泌を引き起こし、それが手に負えないかゆみ-掻破サイクルをさらに増強し得る。
【0013】
乾癬は、病理発生過程が不明なポリジーン遺伝性多因子(polygenetic hereditary multifactor)炎症性皮膚疾患であり、これは、いくつかの環境因子の影響を受け得る。表皮の成長及び分化の複雑な変化、並びに複数の生化学的異常、免疫学的異常、及び血管異常につながる強い遺伝的基礎、及びよくわかっていない神経系機能との関係がある。乾癬の病理発生過程はかなり複雑で、局所的因子と全身的因子が関わっている。今のところ、この異常な表皮過剰増殖は、Tリンパ球による自己免疫反応に続く二次的現象と見なされている。また、ストレプトコッカス属に対する免疫学的反応も役割を果たし得ると報告されている。病変部の皮膚における表皮増殖は、静止したG0集団から動員される細胞周期中の細胞(cycling cells)が増加していることを特徴とする。古いデータとは対照的に、乾癬病変部における細胞周期時間は基本的に正常である。特に、基底上コンパートメントは、正常な皮膚では発現しないか発現が制限されている分子の発現を特徴とする。初代ケラチノサイト培養物では、乾癬プラーク由来のCD4+ Tリンパ球からの可溶性因子が、乾癬CD29+ ケラチン10亜集団の増殖を促進するのに対し、正常な被検者から得たCD29+ ケラチン10ケラチノサイトは、同じT細胞クローンからの可溶性因子に対してそのような成長応答を示すことができなかった。これは、乾癬プラークに由来する表皮細胞の亜集団が乾癬プラークのTリンパ球クローンに対して異常な応答をすることを示唆している。
【0014】
脂性肌は、皮脂腺による過剰な皮脂産生に起因する。過剰な皮脂産生は、妊娠及び閉経、遺伝、食事制限、経口避妊薬、化粧品の使用又は湿気及び暑い気候又はパーキンソン病などの疾患時に、ホルモン不均衡によって引き起こされ得る。
【0015】
過剰な皮脂は表面の油性をもたらし、毛孔を塞ぎ、皮膚上に住む細菌(P. acnes)に栄養を与え、ざ瘡が再発する一因になる。
【0016】
伝染性膿痂疹は学童に好発する表在性細菌皮膚感染症である。ラグビーやレスリングのような密接に接触するスポーツをする人々も、年齢に関係なく、罹患しやすい。膿痂疹は成人ではそれほど一般的ではない。これは接触伝染性が高く、「school sores(とびひ)」とも呼ばれている。これは主として黄色ブドウ球菌及び化膿性レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)によって起こる。膿痂疹は一般に、乾燥した血清から形成される蜂蜜色の痂皮として現れ、腕、脚、又は顔面に見いだされることが多い。感染は病巣又は鼻腔内保菌者との直接的接触によって拡散する。潜伏期間は1〜3日である。空気中の乾燥したレンサ球菌は無傷の皮膚に対して感染性がない。掻破行動によって病巣の拡散が起こり得る。適正衛生規範(Good hygiene practices)が膿痂疹の拡散を防止するのに役立ち得る。
【0017】
伝染性膿痂疹のサブタイプに水疱性膿痂疹及び膿瘡がある。水疱性膿痂疹は主として乳児及び2歳未満の小児を冒す。これは、痛みを伴わない体液の充満した水疱を−通常は体幹、腕及び脚に−引き起こす。水疱を取り囲む皮膚は通常、赤くて痒いが、触痛はない(not sore)。破裂して黄色い外皮(crust)を持つ痂皮を形成する水疱は大きい場合も小さい場合もあり、他のタイプの膿痂疹による糜爛(sores)よりも長期間持続し得る。膿瘡は、より深刻な形態の膿痂疹であり、感染が皮膚の第二層である真皮まで、より深く浸透する。その徴候及び症状には、次に挙げるものが含まれる:
・痛みを伴う体液又は膿が充満した糜爛であって、通常は脚及び足に生じ、深部潰瘍に変わるもの、
・糜爛を覆う硬くて厚い灰黄色の外皮、
・患部における腫大したリンパ腺、
・外皮が後退した後に、ピンヘッドから1ペニー硬貨までのサイズの小さな孔が現れる、
・潰瘍が治癒した後も残る瘢痕。
【0018】
伝染性膿痂疹及びそのサブタイプの処置には、外用又は経口抗生物質が通常、処方される。軽度の症例は、フシジン酸、ムピロシン、クロラムフェニコール、クリオキノール又はネオスポリンなどの殺菌軟膏で処置することができる。より重度の症例は、ジクロキサシリン、フルクロキサシリン又はエリスロマイシンなどの経口抗生物質を必要とする。或いは、アモキシシリンとクラブラン酸カリウムの併用、セファロスポリン類(第1世代)及び他の多くの薬剤を、抗生物質処置として使用することもできる。上述の医薬は、任意の医薬上許容される塩、光学異性体、ジアステレオマー、エナンチオマー、水和物及び医薬上許容されるそれらの塩の形態で使用することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
炎症性皮膚疾患に利用することができる処置にはさまざまな欠点が付随する。
【0020】
レチノイドは、ざ瘡に利用することができる処置選択肢の一つである。レチノイドによる処置後の臨床的改善は典型的には数週間を要し、レチノイドは催奇形性を持つことが知られている。レチノイドは刺激物にもなり得る。BPOでは作用の発現が極めて迅速であり、P. acnesに対する抵抗性は報告されていないが、BPOは漂白剤であり、したがって衣服及び寝具の漂白が起こり得る。さらにまた、BPOは潜在的刺激物であり、突然変異原として作用し得る。現在使用されている外用抗生物質の数は、高い抵抗性率をもたらしている。したがって、ざ瘡及び他の炎症性皮膚疾患のための改良された処置が必要とされている。
【0021】
ネラメキサン(1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンとも呼ばれている)などの1-アミノ-アルキルシクロヘキサン誘導体は、さまざまな疾患の治療に、とりわけアルツハイマー病及び神経障害性痛を含む一定の神経疾患の治療に、有用であることが見いだされている。ネラメキサンなどの1-アミノ-アルキルシクロヘキサン誘導体は、米国特許第6,034,134号及び同第6,071,966号に詳しく開示されており、これらの特許の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0022】
WO 2007/062815には、ネラメキサンを含む放出調節剤形が糖尿病性神経障害性痛、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、過敏性腸症候群、食欲障害、肥満、過食症、自閉症、注意欠陥症候群、注意欠陥多動障害、双極性障害、耳鳴り、真菌症、及び乾癬を含むさまざまな状態の処置に役立ち得ることも開示されている。
【0023】
驚いたことに、ネラメキサンなどの1-アミノ-アルキルシクロヘキサン誘導体は炎症性皮膚疾患の処置にも適していることが、ここに見いだされた。
【0024】
ネラメキサンなどの1-アミノ-アルキルシクロヘキサン誘導体が脂腺細胞に及ぼす有益な影響は、ざ瘡、酒さ、湿疹、アトピー性皮膚炎、乾癬及び脂性肌を含む炎症性皮膚疾患の効果的な処置にも貢献する。脂腺細胞の増殖及び/又は分化に及ぼす影響、したがって脂質産生量を低下させる能力は、皮脂分泌の調節を可能にする。総合的な皮脂調節に加えて、皮脂の組成も、患部毛包の病態生理学的表現型の正常化につながる影響を受け得る。
【0025】
炎症性皮膚疾患を持つ患者は、しばしば皮膚障壁機能障害を示す。ネラメキサンなどの1-アミノ-アルキルシクロヘキサン誘導体は、皮膚障壁機能を改善し、皮膚の恒常性にとって良い効果をもたらす障壁回復の遅延を阻止し得る。
【0026】
本発明は、炎症性皮膚疾患の処置を必要とする対象におけるざ瘡、酒さ、湿疹、アトピー性皮膚炎、乾癬及び脂性肌などの炎症性皮膚疾患を処置する方法であって、その個体に、有効量の1-アミノ-アルキルシクロヘキサン誘導体(例えばネラメキサン又は医薬上許容されるその塩、例えばメシル酸ネラメキサン)を投与することを含む方法に関する。
【0027】
また、本発明は、伝染性膿痂疹などの炎症性皮膚疾患を処置する方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明のさらにもう一つの態様は、メシル酸ネラメキサンが約5mg〜約150mg/日の範囲で投与されるか、メシル酸ネラメキサンが約5mg〜約100mg/日の範囲で投与されるか、メシル酸ネラメキサンが約5mg〜約75mg/日の範囲で投与されるか、メシル酸ネラメキサンが約50mg/日で投与されるか、メシル酸ネラメキサンが、例えば経口製剤として、約75mg/日で投与される、上述の方法に関する。
【0029】
本発明のさらにもう一つの態様は、1-アミノ-アルキルシクロヘキサン誘導体(例えばネラメキサン又は医薬上許容されるその塩、例えばメシル酸ネラメキサン)が1日1回、1日2回(b.i.d.)、又は1日3回投与される、上述の方法に関する。
【0030】
本発明のさらにもう一つの態様は、1-アミノ-アルキルシクロヘキサン誘導体(例えばネラメキサン又は医薬上許容されるその塩、例えばメシル酸ネラメキサン)が即放性製剤として投与される、上述の方法に関する。
【0031】
本発明のさらにもう一つの態様は、1-アミノ-アルキルシクロヘキサン誘導体(例えばネラメキサン又は医薬上許容されるその塩、例えばメシル酸ネラメキサン)が放出調節性剤として投与される、上述の方法に関する。
【0032】
本発明のさらにもう一つの態様は、1-アミノ-アルキルシクロヘキサン誘導体(例えばネラメキサン又は医薬上許容されるその塩、例えばメシル酸ネラメキサン)が、外用リンスオフ(rinse-off)又はリーブオン(leave-on)製剤などの外用製剤として投与される、上述の方法に関する。
【0033】
本発明のさらにもう一つの態様は、1-アミノ-アルキルシクロヘキサン誘導体(例えばネラメキサン又は医薬上許容されるその塩、例えばメシル酸ネラメキサン)が製剤の0.1〜99重量%で投与される、上述の方法に関する。
【0034】
本発明のさらにもう一つの態様は、1-アミノ-アルキルシクロヘキサン誘導体(例えばネラメキサン又は医薬上許容されるその塩、例えばメシル酸ネラメキサン)が経口製剤として投与される、上述の方法に関する。
【0035】
本発明のさらにもう一つの態様は、1-アミノ-アルキルシクロヘキサン誘導体(例えばネラメキサン又は医薬上許容されるその塩、例えばメシル酸ネラメキサン)が全身性に投与される、上述の方法に関する。
【0036】
本発明のさらにもう一つの態様は、炎症性皮膚疾患の処置を必要とする対象における炎症性皮膚疾患を処置する方法であって、その個体に、有効量の1-アミノ-アルキルシクロヘキサン誘導体(例えばネラメキサン又は医薬上許容されるその塩、例えばメシル酸ネラメキサン)と、炎症性皮膚疾患の処置又は予防に有効であることが示されている追加の医薬剤(例えば抗微生物剤、抗生物質、レチノイド又はステロイド)とを投与することを含む方法に関する。
【0037】
本発明のさらにもう一つの態様は、ざ瘡の処置を必要とする対象におけるざ瘡を処置する方法であって、その個体に、有効量の1-アミノ-アルキルシクロヘキサン誘導体(例えばネラメキサン又は医薬上許容されるその塩、例えばメシル酸ネラメキサン)と、炎症性皮膚疾患の処置又は予防に有効であることが示されている追加の医薬剤(例えば抗微生物剤、抗生物質、レチノイド又はステロイド)とを投与することを含む方法に関する。
【0038】
本発明のさらにもう一つの態様は、ざ瘡の処置を必要とする対象におけるざ瘡を処置する方法であって、その個体に、有効量の1-アミノ-アルキルシクロヘキサン誘導体(例えばネラメキサン又は医薬上許容されるその塩、例えばメシル酸ネラメキサン)と、ざ瘡の処置又は予防に有効であることが示されている追加の医薬剤(例えば抗微生物剤、抗生物質、レチノイド、ステロイド、又は他の非特異的薬剤)とを投与することを含む方法に関する。
【0039】
本発明のさらにもう一つの態様は、1-アミノ-アルキルシクロヘキサン誘導体(例えばネラメキサン又は医薬上許容されるその塩、例えばメシル酸ネラメキサン)と追加の医薬剤(例えば抗微生物剤、抗生物質、レチノイド又はステロイド)とが協同的に(conjointly)投与される、上述の方法に関する。
【0040】
本発明のさらにもう一つの態様は、1-アミノ-アルキルシクロヘキサン誘導体(例えばネラメキサン又は医薬上許容されるその塩、例えばメシル酸ネラメキサン)と追加の医薬剤(例えば抗微生物剤、抗生物質、レチノイド又はステロイド)とが単一の製剤として投与される、上述の方法に関する。
【0041】
本発明のさらにもう一つの態様は、1-アミノ-アルキルシクロヘキサン誘導体(例えばネラメキサン又は医薬上許容されるその塩、例えばメシル酸ネラメキサン)と追加の医薬剤(例えば抗微生物剤、抗生物質、レチノイド又はステロイド)とが、外用リンスオフ又はリーブオン製剤などの外用製剤として投与される、上述の方法に関する。
【0042】
本発明のさらにもう一つの態様は、1-アミノ-アルキルシクロヘキサン誘導体(例えばネラメキサン又は医薬上許容されるその塩、例えばメシル酸ネラメキサン)と追加の医薬剤(例えば抗微生物剤、抗生物質、レチノイド又はステロイド)とが全身性に投与される、上述の方法に関する。
【0043】
本発明のさらにもう一つの態様は、1-アミノ-アルキルシクロヘキサン誘導体(例えばネラメキサン又は医薬上許容されるその塩、例えばメシル酸ネラメキサン)と追加の医薬剤(例えば抗微生物剤、抗生物質、レチノイド又はステロイド)とが経口製剤として投与される、上述の方法に関する。
【0044】
本発明のさらにもう一つの態様は、ざ瘡、酒さ、湿疹、アトピー性皮膚炎、乾癬、及び脂性肌などの炎症性皮膚疾患を処置するための、1-アミノ-アルキルシクロヘキサン誘導体(例えばネラメキサン又は医薬上許容されるその塩、例えばメシル酸ネラメキサン)に関する。
【0045】
本発明のさらにもう一つの態様は、伝染性膿痂疹などの炎症性皮膚疾患を処置するための、1-アミノ-アルキルシクロヘキサン誘導体(例えばネラメキサン又は医薬上許容されるその塩、例えばメシル酸ネラメキサン)に関する。
【0046】
本発明のさらにもう一つの態様は、炎症性皮膚疾患を処置するための医薬を製造するための、1-アミノ-アルキルシクロヘキサン誘導体(例えばネラメキサン又は医薬上許容されるその塩、例えばメシル酸ネラメキサン)の使用に関する。
【0047】
本発明のさらにもう一つの態様は、メシル酸ネラメキサンが約5mg〜約150mg/日の範囲で投与されるか、メシル酸ネラメキサンが約5mg〜約100mg/日の範囲で投与されるか、メシル酸ネラメキサンが約5mg〜約75mg/日の範囲で投与されるか、メシル酸ネラメキサンが約50mg/日で投与されるか、メシル酸ネラメキサンが、例えば経口製剤として、約75mg/日で投与される、上に定義した誘導体又は使用に関する。
【0048】
本発明のさらにもう一つの態様は、1-アミノ-アルキルシクロヘキサン誘導体(例えばネラメキサン又は医薬上許容されるその塩、例えばメシル酸ネラメキサン)が1日1回、1日2回(b.i.d.)、又は1日3回投与される、上に定義した誘導体又は使用に関する。
【0049】
本発明のさらにもう一つの態様は、1-アミノ-アルキルシクロヘキサン誘導体(例えばネラメキサン又は医薬上許容されるその塩、例えばメシル酸ネラメキサン)が即放性製剤又は放出調節製剤として投与される、上に定義した誘導体又は使用に関する。
【0050】
本発明のさらにもう一つの態様は、1-アミノ-アルキルシクロヘキサン誘導体(例えばネラメキサン又は医薬上許容されるその塩、例えばメシル酸ネラメキサン)が外用リンスオフ又はリーブオン製剤などの外用製剤として投与される、上に定義した誘導体又は使用に関する。
【0051】
本発明のさらにもう一つの態様は、1-アミノ-アルキルシクロヘキサン誘導体(例えばネラメキサン又は医薬上許容されるその塩、例えばメシル酸ネラメキサン)が製剤の0.1〜99重量%で投与される、上に定義した誘導体又は使用に関する。
【0052】
本発明のさらにもう一つの態様は、1-アミノ-アルキルシクロヘキサン誘導体(例えばネラメキサン又は医薬上許容されるその塩、例えばメシル酸ネラメキサン)が経口製剤として投与される、上に定義した誘導体又は使用に関する。
【0053】
本発明のさらにもう一つの態様は、1-アミノ-アルキルシクロヘキサン誘導体(例えばネラメキサン又は医薬上許容されるその塩、例えばメシル酸ネラメキサン)が全身性に投与される、上に定義した誘導体又は使用に関する。
【0054】
本発明のさらにもう一つの態様は、炎症性皮膚疾患の処置又は予防に有効であることが示されている少なくとも一つの追加の医薬剤(例えば抗微生物剤、抗生物質、レチノイド又はステロイド)が投与される、上に定義した誘導体又は使用に関する。
【0055】
本発明のさらにもう一つの態様は、1-アミノ-アルキルシクロヘキサン誘導体(例えばネラメキサン又は医薬上許容されるその塩、例えばメシル酸ネラメキサン)と追加の医薬剤(例えば抗微生物剤、抗生物質、レチノイド又はステロイド)が協同的に投与される、上に定義した誘導体又は使用に関する。
【0056】
本発明のさらにもう一つの態様は、1-アミノ-アルキルシクロヘキサン誘導体(例えばネラメキサン又は医薬上許容されるその塩、例えばメシル酸ネラメキサン)と追加の医薬剤(例えば抗微生物剤、抗生物質、レチノイド又はステロイド)とが単一の製剤として投与される、上に定義した誘導体又は使用に関する。
【0057】
本発明のさらにもう一つの態様は、1-アミノ-アルキルシクロヘキサン誘導体(例えばネラメキサン又は医薬上許容されるその塩、例えばメシル酸ネラメキサン)と追加の医薬剤(例えば抗微生物剤、抗生物質、レチノイド又はステロイド)とが外用リンスオフ又はリーブオン製剤などの外用製剤として投与される、上に定義した誘導体又は使用に関する。
【0058】
本発明のさらにもう一つの態様は、1-アミノ-アルキルシクロヘキサン誘導体(例えばネラメキサン又は医薬上許容されるその塩、例えばメシル酸ネラメキサン)と追加の医薬剤(例えば抗微生物剤、抗生物質、レチノイド又はステロイド)とが経口製剤として投与される、上に定義した誘導体又は使用に関する。
【0059】
本発明のさらにもう一つの態様は、1-アミノ-アルキルシクロヘキサン誘導体(例えばネラメキサン又は医薬上許容されるその塩、例えばメシル酸ネラメキサン)と追加の医薬剤(例えば抗微生物剤、抗生物質、レチノイド又はステロイド)とが全身性に投与される、上に定義した誘導体又は使用に関する。
【0060】
本発明のさらにもう一つの態様は、治療有効量の1-アミノ-アルキルシクロヘキサン誘導体(例えばネラメキサン又は医薬上許容されるその塩、例えばメシル酸ネラメキサン)と、場合によっては、少なくとも一つの医薬上許容される担体又は賦形剤とを含む、炎症性皮膚疾患を処置するための医薬組成物に関する。
【0061】
本発明のさらにもう一つの態様は、即放性又は放出調節製剤中に治療有効量の1-アミノ-アルキルシクロヘキサン誘導体(例えばネラメキサン又は医薬上許容されるその塩、例えばメシル酸ネラメキサン)を含む、炎症性皮膚疾患を処置するための医薬組成物に関する。
【0062】
本発明のさらにもう一つの態様は、外用製剤中に治療有効量の1-アミノ-アルキルシクロヘキサン誘導体(例えばネラメキサン又は医薬上許容されるその塩、例えばメシル酸ネラメキサン)を含む医薬組成物に関する。
【0063】
本発明のさらにもう一つの態様は、外用製剤中に治療有効量の1-アミノ-アルキルシクロヘキサン誘導体(例えばネラメキサン又は医薬上許容されるその塩、例えばメシル酸ネラメキサン)を含む炎症性皮膚疾患を処置するための医薬組成物に関する。
【0064】
本発明のさらにもう一つの態様は、経口製剤中に治療有効量の1-アミノ-アルキルシクロヘキサン誘導体(例えばネラメキサン又は医薬上許容されるその塩、例えばメシル酸ネラメキサン)を含む炎症性皮膚疾患を処置するための医薬組成物に関する。
【0065】
本発明のさらにもう一つの態様は、炎症性皮膚疾患の処置に有効であることが示されている少なくとも一つの追加の医薬剤(例えば抗微生物剤、抗生物質、レチノイド又はステロイド)と組み合わされた治療有効量の1-アミノ-アルキルシクロヘキサン誘導体(例えばネラメキサン又は医薬上許容されるその塩、例えばメシル酸ネラメキサン)と、場合によっては、少なくとも一つの医薬上許容される担体又は賦形剤とを含む、医薬組成物に関する。
【0066】
本発明のさらにもう一つの態様は、炎症性皮膚疾患の処置又は予防に有効であることが示されている少なくとも一つの追加の医薬剤(例えば抗微生物剤、抗生物質、レチノイド又はステロイド)と組み合わされた治療有効量の1-アミノ-アルキルシクロヘキサン誘導体(例えばネラメキサン又は医薬上許容されるその塩、例えばメシル酸ネラメキサン)と、場合によっては、少なくとも一つの医薬上許容される担体又は賦形剤とを含む、医薬組成物に関する。
【0067】
本発明のさらにもう一つの態様は、ざ瘡の処置又は予防に有効であることが示されている少なくとも一つの追加の医薬剤(例えば抗微生物剤、抗生物質、レチノイド、ステロイド、又は他の非特異的薬剤)と組み合わされた治療有効量の1-アミノ-アルキルシクロヘキサン誘導体(例えばネラメキサン又は医薬上許容されるその塩、例えばメシル酸ネラメキサン)と、場合によっては、少なくとも一つの医薬上許容される担体又は賦形剤とを含む、医薬組成物に関する。
【0068】
本発明のさらにもう一つの態様は、炎症性皮膚疾患の処置に有効であることが示されている少なくとも一つの追加の医薬剤(例えば抗微生物剤、抗生物質、レチノイド又はステロイド)と組み合わされた治療有効量の1-アミノ-アルキルシクロヘキサン誘導体(例えばネラメキサン又は医薬上許容されるその塩、例えばメシル酸ネラメキサン)と、場合によっては、少なくとも一つの医薬上許容される担体又は賦形剤とを含む、外用製剤又は経口製剤の形態である医薬組成物に関する。
【0069】
本発明のさらにもう一つの態様は、炎症性皮膚疾患の処置又は予防に有効であることが示されている少なくとも一つの追加の医薬剤(例えば抗微生物剤、抗生物質、レチノイド又はステロイド)と組み合わされた治療有効量の1-アミノ-アルキルシクロヘキサン誘導体(例えばネラメキサン又は医薬上許容されるその塩、例えばメシル酸ネラメキサン)と、場合によっては、少なくとも一つの医薬上許容される担体又は賦形剤とを含む、外用製剤又は経口製剤の形態である医薬組成物に関する。
【0070】
本発明のさらにもう一つの態様は、ざ瘡の処置又は予防に有効であることが示されている少なくとも一つの追加の医薬剤(例えば抗微生物剤、抗生物質、レチノイド又はステロイド)と組み合わされた治療有効量の1-アミノ-アルキルシクロヘキサン誘導体(例えばネラメキサン又は医薬上許容されるその塩、例えばメシル酸ネラメキサン)と、場合によっては、少なくとも一つの医薬上許容される担体又は賦形剤とを含む、外用製剤又は経口製剤の形態である医薬組成物に関する。
【0071】
本発明のさらにもう一つの態様は、皮脂の分泌を減少させ且つ/又は皮脂の組成を調節するための1-アミノ-アルキルシクロヘキサン誘導体(例えばネラメキサン又は医薬上許容されるその塩、例えばメシル酸ネラメキサン)に関する。
【0072】
本発明のさらにもう一つの態様は、皮脂の分泌を減少させ且つ/又は皮脂の組成を調節するための医薬を製造するための、1-アミノ-アルキルシクロヘキサン誘導体(例えばネラメキサン又は医薬上許容されるその塩、例えばメシル酸ネラメキサン)の使用に関する。
【0073】
本発明のさらにもう一つの態様は、1-アミノ-アルキルシクロヘキサン誘導体(例えばネラメキサン又は医薬上許容されるその塩、例えばメシル酸ネラメキサン)が外用リンスオフ又はリーブオン製剤などの外用製剤として投与される、上に定義した誘導体又は使用に関する。
【0074】
本発明のさらにもう一つの態様は、皮脂の分泌を減少させ且つ/又は皮脂の組成を調節する必要がある対象における皮脂の分泌を減少させ且つ/又は皮脂の組成を調節する方法であって、その個体に、有効量の1-アミノ-アルキルシクロヘキサン誘導体(例えばネラメキサン又は医薬上許容されるその塩、例えばメシル酸ネラメキサン)を投与することを含む方法に関する。
【0075】
本発明のさらにもう一つの態様は、1-アミノ-アルキルシクロヘキサン誘導体(例えばネラメキサン又は医薬上許容されるその塩、例えばメシル酸ネラメキサン)が外用リンスオフ又はリーブオン製剤などの外用製剤として投与される、上述の方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】接触過敏症マウスモデルにおけるネラメキサンの効果を示す図である。
【図2】接触過敏症マウスモデルにおけるネラメキサンの効果を示す図である。
【図3】接触過敏症マウスモデルにおけるネラメキサンの効果を示す図である。
【図4】皮膚炎マウスモデルにおけるネラメキサンの効果を示す図である。
【図5】皮膚炎マウスモデルにおけるネラメキサンの効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0077】
本明細書で使用する炎症性皮膚疾患という用語は、ざ瘡、湿疹、アトピー性皮膚炎、酒さ、乾癬及び脂性肌を包含する。
【0078】
本明細書で使用する炎症性皮膚疾患という用語は伝染性膿痂疹も包含する。
【0079】
本明細書で使用する伝染性膿痂疹という用語は水疱性膿痂疹及び膿瘡を包含する。
【0080】
本明細書で使用するざ瘡という用語は尋常性ざ瘡、持続性ざ瘡、及び臨床的ざ瘡を包含する。
【0081】
本明細書で使用する酒さという用語は、酒さの持続性浮腫、集簇性酒さ(rosacea conglobata)、劇症酒さ(rosacea fulminans)、眼科的酒さ(ophthalmic rosacea)、ルポイド(lupoid)酒さ又は肉芽腫性酒さ、ステロイド酒さ(steroid rosacea)、グラム陰性菌酒さ(gram-negative rosacea)、ハロゲン酒さ(halogen rosacea)、酒さにおける腫瘤、紅斑末梢血管拡張性酒さ(erythematotelangiectatic rosacea)、丘疹膿疱性 酒さ、腫瘤性酒さ(phymatous rosacea)及び眼性酒さ(ocular rosacea)を包含する。
【0082】
本明細書で使用する湿疹という用語は、アトピー性湿疹、刺激物接触皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、職業性皮膚炎、乾燥性湿疹、脂漏性皮膚炎、異汗症(syshidrosis)、円板状湿疹、静脈性疾患(venous eczama)、疱疹状皮膚炎、神経皮膚炎、及び自己湿疹化を包含する。
【0083】
本明細書で使用する乾癬という用語は尋常性乾癬、プラーク乾癬(plaque psoriasis)、屈曲部乾癬(flexural psoriasis)、倒置乾癬(inverse psoriasis)、滴状乾癬、膿疱性乾癬、爪乾癬、乾癬性紅皮症及び乾癬性関節炎を包含する。
【0084】
本明細書で使用する抗微生物剤という用語は、外用抗微生物剤、例えばBPO、トリクロサン、クロルヘキシジン、サリチル酸、硫黄、レゾルシノール、並びにそれらの光学異性体、ジアステレオマー、エナンチオマー、水和物、それらの医薬上許容される塩、及び混合物を包含する。
【0085】
本明細書で使用する抗生物質という用語は、外用抗生物質及び経口抗生物質を包含する。
【0086】
本明細書で使用する外用抗生物質という用語は、エリスロマイシン、クリンダマイシン、テトラサイクリン、メトロニダゾール、並びにそれらの光学異性体、ジアステレオマー、エナンチオマー、水和物、それらの医薬上許容される塩、及び混合物を包含する。
【0087】
本明細書で使用する経口抗生物質という用語は、エリスロマイシン、テトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、リメサイクリン、トリメトプリム、並びにそれらの光学異性体、ジアステレオマー、エナンチオマー、水和物、それらの医薬上許容される塩、及び混合物を包含する。
【0088】
本明細書で使用するレチノイドという用語は、外用レチノイド及び経口レチノイド、例えばイソトレチノイン、並びにその光学異性体、ジアステレオマー、エナンチオマー、水和物、及びその医薬上許容される塩を包含する。
【0089】
本明細書で使用する外用レチノイドという用語は、レチノール、トレチノイン、イソトレチノイン、モトレチニド、アダパレン、タザロテン、並びにその光学異性体、ジアステレオマー、エナンチオマー、水和物、それらの医薬上許容される塩、及び混合物を包含する。
【0090】
本明細書で使用するステロイドという用語はスピロノラクトン、ドロスピレノン、シプロテロン、酢酸シプロテロン、並びにその光学異性体、ジアステレオマー、エナンチオマー、水和物、それらの医薬上許容される塩、及び混合物を包含する。
【0091】
本明細書で使用する「対象」という用語は、動物及びヒトを含む哺乳動物を包含する。
【0092】
1-アミノ-アルキルシクロヘキサン誘導体という用語は、本明細書では、1-アミノ-アルキルシクロヘキサン又は1-アミノ-アルキルシクロヘキサンから誘導される化合物、例えば1-アミノ-アルキルシクロヘキサンの医薬上許容される塩を示すために使用される。
【0093】
本発明の1-アミノ-アルキルシクロヘキサン誘導体は、一般式(I):
【化1】

[式中、R*は-(CH2)n-(CR6R7)m-NR8R9であり、
n+m=0、1、又は2であり、
R1〜R7は、水素及びC1-6アルキルからなる群より独立して選択され、R8及びR9は、水素及びC1-6アルキルからなる群より独立して選択されるか、全体として低級アルキレン-(CH2)x-(式中、xは2〜5(両端を含む)である)を表す]
並びにその光学異性体、エナンチオマー、水和物、及び医薬上許容される塩によって表すことができる。
【0094】
本発明に従って使用される1-アミノ-アルキルシクロヘキサンの限定でない例には、次に挙げるものが含まれる:
1-アミノ-1,3,5-トリメチルシクロヘキサン、
1-アミノ-1(trans),3(trans),5-トリメチルシクロヘキサン、
1-アミノ-1(cis),3(cis),5-トリメチルシクロヘキサン、
1-アミノ-1,3,3,5-テトラメチルシクロヘキサン、
1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン(ネラメキサン)、
1-アミノ-1,3,5,5-テトラメチル-3-エチルシクロヘキサン、
1-アミノ-1,5,5-トリメチル-3,3-ジエチルシクロヘキサン、
1-アミノ-1,5,5-トリメチル-cis-3-エチルシクロヘキサン、
1-アミノ-(1S,5S)cis-3-エチル-1,5,5-トリメチルシクロヘキサン、
1-アミノ-1,5,5-トリメチル-trans-3-エチルシクロヘキサン、
1-アミノ-(1R,5S)trans-3-エチル-1,5,5-トリメチルシクロヘキサン、
1-アミノ-1-エチル-3,3,5,5-テトラメチルシクロヘキサン、
1-アミノ-1-プロピル-3,3,5,5-テトラメチルシクロヘキサン、
N-メチル-1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン、
N-エチル-1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチル-シクロヘキサン、
N-(1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキシル) ピロリジン、
3,3,5,5-テトラメチルシクロヘキシルメチルアミン、
1-アミノ-1-プロピル-3,3,5,5-テトラメチルシクロヘキサン、
1-アミノ-1,3,3,5(trans)-テトラメチルシクロヘキサン(アキシャルアミノ基)、
3-プロピル-1,3,5,5-テトラメチルシクロヘキシルアミン半水和物、
1-アミノ-1,3,5,5-テトラメチル-3-エチルシクロヘキサン、
1-アミノ-1,3,5-トリメチルシクロヘキサン、
1-アミノ-1,3-ジメチル-3-プロピルシクロヘキサン、
1-アミノ-1,3(trans),5(trans)-トリメチル-3(cis)-プロピルシクロヘキサン、
1-アミノ-1,3-ジメチル-3-エチルシクロヘキサン、
1-アミノ-1,3,3-トリメチルシクロヘキサン、
cis-3-エチル-1(trans)-3(trans)-5-トリメチルシクロヘキサミン、
1-アミノ-1,3(trans)-ジメチルシクロヘキサン、
1,3,3-トリメチル-5,5-ジプロピルシクロヘキシルアミン、
1-アミノ-1-メチル-3(trans)-プロピルシクロヘキサン、
1-メチル-3(cis)-プロピルシクロヘキシルアミン、
1-アミノ-1-メチル-3(trans)-エチルシクロヘキサン、
1-アミノ-1,3,3-トリメチル-5(cis)-エチルシクロヘキサン、
1-アミノ-1,3,3-トリメチル-5(trans)-エチルシクロヘキサン、
cis-3-プロピル-1,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミン、
trans-3-プロピル-1,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミン、
N-エチル-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキシルアミン、
N-メチル-1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン、
1-アミノ-1-メチルシクロヘキサン、
N,N-ジメチル-1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン、
2-(3,3,5,5-テトラメチルシクロヘキシル)エチルアミン、
2-メチル-1-(3,3,5,5-テトラメチルシクロヘキシル)プロピル-2-アミン、
2-(1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキシル-l)-エチルアミン半水和物、
N-(1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキシル)-ピロリジン、
1-アミノ-1,3(trans),5(trans)-トリメチルシクロヘキサン、
1-アミノ-1,3(cis),5(cis)-トリメチルシクロヘキサン、
1-アミノ-(1R,5S)trans-5-エチル-1,3,3-トリメチルシクロヘキサン、
1-アミノ-(1S,5S)cis-5-エチル-1,3,3-トリメチルシクロヘキサン、
1-アミノ-1,5,5-トリメチル-3(cis)-イソプロピル-シクロヘキサン、
1-アミノ-1,5,5-トリメチル-3(trans)-イソプロピル-シクロヘキサン、
1-アミノ-1-メチル-3(cis)-エチル-シクロヘキサン、
1-アミノ-1-メチル-3(cis)-メチル-シクロヘキサン、
1-アミノ-5,5-ジエチル-1,3,3-トリメチル-シクロヘキサン、
1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン、
1-アミノ-1,5,5-トリメチル-3,3-ジエチルシクロヘキサン、
1-アミノ-1-エチル-3,3,5,5-テトラメチルシクロヘキサン、
N-エチル-1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン、
N-(1,3,5-トリメチルシクロヘキシル)ピロリジン又はピペリジン、
N-[1,3(trans),5(trans)-トリメチルシクロヘキシル]ピロリジン又はピペリジン、
N-[1,3(cis),5(cis)-トリメチルシクロヘキシル]ピロリジン又はピペリジン、
N-(1,3,3,5-テトラメチルシクロヘキシル)ピロリジン又はピペリジン、
N-(1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキシル)ピロリジン又はピペリジン、
N-(1,3,5,5-テトラメチル-3-エチルシクロヘキシル)ピロリジン又はピペリジン、
N-(1,5,5-トリメチル-3,3-ジエチルシクロヘキシル)ピロリジン又はピペリジン、
N-(1,3,3-トリメチル-cis-5-エチルシクロヘキシル)ピロリジン又はピペリジン、
N-[(1S,5S)cis-5-エチル-1,3,3-トリメチルシクロヘキシル]ピロリジン又はピペリジン、
N-(1,3,3-トリメチル-trans-5-エチルシクロヘキシル)ピロリジン又はピペリジン、
N-[(1R,5S)trans-5-エチル,3,3-トリメチルシクロヘキシル]ピロリジン又はピペリジン、
N-(1-エチル-3,3,5,5-テトラメチルシクロヘキシル)ピロリジン又はピペリジン、
N-(1-プロピル-3,3,5,5-テトラメチルシクロヘキシル)ピロリジン又はピペリジン、
N-(1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキシル)ピロリジン、
並びにその光学異性体、ジアステレオマー、エナンチオマー、水和物、それらの医薬上許容される塩、及び混合物。
【0095】
1-アミノ-アルキルシクロヘキサン誘導体(例えばネラメキサン、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン)は、米国特許第6,034,134号及び同第6,071,966号に開示されている。1-アミノ-アルキルシクロヘキサン誘導体(例えばネラメキサン)は、医薬上許容される塩、溶媒和物、異性体、コンジュゲート、及びプロドラッグのいずれの形態でも、本発明に従って使用することができ、本明細書における1-アミノ-アルキルシクロヘキサン誘導体(例えばネラメキサン)への言及はいずれも、そのような塩、溶媒和物、異性体、コンジュゲート、及びプロドラッグへの言及でもあると理解すべきである。
【0096】
医薬上許容される塩には、酸付加塩、例えば塩酸、メチルスルホン酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、過塩素酸、硫酸、硝酸、リン酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、炭酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、シクロヘキサンスルファミン酸、サリチル酸、p-アミノサリチル酸、2-フェノキシ安息香酸、及び2-アセトキシ安息香酸を使って製造されるものが含まれるが、これらに限るわけではない。これらの塩(又は他の類似する塩)は全て、従来の手段によって製造することができる。塩の性質は、それが無毒性であり、且つ所望の薬学的活性を実質的に妨害しない限り、決定的な問題ではない。
【0097】
「類似体」又は「誘導体」という用語は、本明細書では、従来の薬学的意味で、基準分子(例えばネラメキサン)に構造的に似ているが、基準分子の一つ以上の特定置換基を代替置換基で置き換えることによって基準分子に構造的に類似する分子が生じるように、標的を絞った制御された方法で修飾された分子を指すために用いられる。改善された特質又は偏った特質(例えば、特異的標的受容体タイプにおける力価及び/又は選択性の向上、哺乳動物の障壁、例えば細胞膜を貫通する能力の増大、副作用の低減など)を持ち得る、既知化合物のわずかに修飾された異形を同定するために行われる、類似体の合成及びスクリーニング(例えば構造解析及び/又は生化学的解析を使用するもの)は、薬化学においては周知のドラッグデザインアプローチである。
【0098】
「処置する」という用語は、本明細書では、対象における疾患の少なくとも1つの症状を軽減又は緩和することを意味するために用いられる。本発明において、「処置する」という用語は、発症を阻止すること、発症を遅延させること(すなわち疾患の臨床症状発現前の期間)、及び/又は疾患が進行若しくは悪化するリスクを低下させることも表す。
【0099】
用量又は量に適用される「治療(的に)有効」という用語は、それを必要とする哺乳動物への投与後に所望の活性をもたらすのに十分な化合物又は医薬組成物の分量を指す。
【0100】
本発明の組成物に関連して使用される「医薬上許容される」という表現は、哺乳動物(例えばヒト)に投与された場合に生理学的に認容でき、不都合な反応を典型的には生じない、当該組成物の分子的実体及び他の成分を指す。「医薬上許容される」という用語は、哺乳動物(特にヒト)における使用に関して、連邦政府若しくは州政府の規制当局によって承認されていること、又は米国薬局方若しくは他の広く認識されている薬局方に記載されていることも意味する。
【0101】
本発明の医薬組成物に適用される「担体」という用語は、活性化合物(例えばネラメキサン)と一緒に投与される希釈剤、賦形剤、又は媒体(vehicle)を指す。そのような医薬担体は、水、食塩溶液、デキストロース水溶液、グリセロール水溶液、及び油(石油、動物、植物又は合成由来のもの、例えばラッカセイ油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油などを含む)などの液体であることができる。適切な医薬担体は、例えばA.R.Gennaro編「Remington's Pharmaceutical Sciences」第20版に記載されている。
【0102】
「約」又は「およそ」という用語は、所与の値又は範囲の20%以内、或いは10%以内(5%以内を含む)を意味する。或いは、とりわけ生物系では、「約」という用語は、所与の値の約1log(すなわち一桁)以内(2分の1〜2倍以内を含む)を意味する。
【0103】
医薬製剤及び投与
本発明の方法と併せて、治療有効量の1-アミノ-アルキルシクロヘキサン誘導体(例えばネラメキサン)を含む医薬組成物も提供される。本発明の組成物は担体又は賦形剤(全て医薬上許容されるもの)をさらに含み得る。本組成物は1日1回投与用、1日2回投与用、又は1日3回投与用に製剤化することができる。
【0104】
本発明の活性成分(例えばメシル酸ネラメキサンなどのネラメキサン)又は組成物は、上述した障害の少なくとも一つを処置するために使用することができ、その場合、処置は、本明細書に開示する特定の投与(例えば1日1回投与、1日2回投与、又は1日3回投与)に適合するか、そのような投与に合わせて適切に準備される。この目的のために、添付文書及び/又は患者向け医薬品情報は、対応する情報を含む。
【0105】
本発明の活性成分(例えばメシル酸ネラメキサンなどのネラメキサン)又は組成物は、上述した障害の少なくとも一つを処置するための医薬の製造に使用することができ、その場合、医薬は、本明細書に開示する特定の投与(例えば1日1回投与、1日2回投与、又は1日3回投与)に適合するか、そのような投与に合わせて適切に製造される。この目的のために、添付文書及び/又は患者向け医薬品情報は、対応する情報を含む。
【0106】
本発明によれば、1-アミノ-アルキルシクロヘキサン誘導体(例えばネラメキサン)の剤形は、下記のとおり、固形、半固形、又は液状製剤であることができる。
【0107】
本発明の1-アミノ-アルキルシクロヘキサン誘導体(例えばネラメキサン)は、従来の医薬上許容される無毒性の担体を含有する投薬単位製剤として、経口投与、外用投与、非経口投与、又は粘膜(例えば口腔粘膜、吸入、又は直腸)投与することができる。小児対象に投与するためのもう一つの実施形態では、1-アミノ-アルキルシクロヘキサン誘導体を、フレーバ付の液体(例えばペパーミントフレーバ)として製剤化することができる。本発明の1-アミノ-アルキルシクロヘキサン誘導体は、カプセル剤、錠剤などの形態で、若しくは液状製剤として経口的に投与するか、軟膏、クリーム剤、ゲル剤、ヒドロゲル剤などの半固形物として外用的に投与することができる(A.R. Gennaro編「Remington's Pharmaceutical Sciences」第20版を参照されたい)。
【0108】
錠剤又はカプセル剤の形態で経口投与するには、本発明の1-アミノ-アルキルシクロヘキサン誘導体(例えばネラメキサン)を、無毒性の医薬上許容される賦形剤、例えば結合剤(例えばアルファ化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン又はヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤(例えばラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、ソルビトール並びに他の還元糖及び非還元糖、微結晶セルロース、硫酸カルシウム、又はリン酸水素カルシウム);潤滑剤(例えばステアリン酸マグネシウム、タルク、又はシリカ、ステアリン酸(steric acid)、フマル酸ステアリルナトリウム、ベヘン酸グリセリル、ステアリン酸カルシウムなど);崩壊剤(例えばバレイショデンプン又はグリコール酸デンプンナトリウム);又は湿潤剤(例えばラウリル硫酸ナトリウム)、着色剤及び着香剤(flavoring agent)、ゼラチン、甘味剤、天然ゴム及び合成ゴム(例えばアラビアゴム、トラガカント又はアルギナート)、緩衝塩、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ロウなどと組み合わせることができる。
【0109】
錠剤は、例えばアラビアゴム、ゼラチン、滑石、二酸化チタンなどを含有し得る濃縮糖溶液でコーティングすることができる。或いは、易揮発性有機溶媒又は有機溶媒の混合物に溶解するポリマーで錠剤をコーティングすることができる。特定の実施形態では、ネラメキサンが即放性(IR)剤形又は放出調節(MR)剤形に製剤化される。即放性固形剤形は、短期間、例えば60分以下で、活性成分の大半又は全てを放出させて、薬物の迅速な吸収を可能にする(ネラメキサンなどの1-アミノ-アルキルシクロヘキサンの即放性製剤は米国特許出願公開第2006/0002999号及び同第2006/0198884号に開示されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる)。放出調節固形経口剤形は、長期間にわたって治療的に有効な血漿中レベルを維持し、且つ/又は活性成分の他の薬物動態特性を修飾する目的で、同様に長期間にわたって起こる活性成分の徐放を可能にする(ネラメキサンの放出調節製剤は米国特許出願公開第2007/0141148号に開示されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる)。
【0110】
軟ゼラチンカプセル剤を製剤化するには、本発明の1-アミノ-アルキルシクロヘキサン誘導体(例えばネラメキサン)を、例えば植物油又はポリエチレングリコールと混合することができる。硬ゼラチンカプセル剤は、上述の錠剤用賦形剤、例えばラクトース、サッカロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン(例えばバレイショデンプン、トウモロコシデンプン又はアミロペクチン)、セルロース誘導体又はゼラチンを使った、活性物質の顆粒を含有し得る。液状又は半固形の薬物も硬ゼラチンカプセルに充填することができる。
【0111】
本発明の1-アミノ-アルキルシクロヘキサン誘導体(例えばネラメキサン)は、マイクロスフェア又はマイクロカプセル(例えばポリグリコール酸/乳酸(PGLA)から作製されるもの)の中に導入することもできる(例えば米国特許第5,814,344号、同第5,100,669号及び同第4,849,222号、PCT公開番号WO95/11010及び同WO93/07861を参照されたい)。薬物の放出制御を達成するには生体適合性ポリマーを使用することができ、これには、例えばポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸とポリグリコール酸のコポリマー、ポリイプシロンカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリヒドロピラン、ポリシアノアクリレート、及びヒドロゲルの架橋又は両親媒性ブロックコポリマーが含まれる。
【0112】
半固形又は液状である本発明の1-アミノ-アルキルシクロヘキサン誘導体の製剤も使用することができる。1-アミノ-アルキルシクロヘキサン誘導体(例えばネラメキサン)は、その製剤の0.1〜99重量%を構成することができ、より具体的に述べると、注射用製剤の場合は0.5〜20重量%、経口投与に適した製剤の場合は0.2〜50重量%を構成することができる。
【0113】
外用投与に適した半固形型又は液状型である本発明の1-アミノ-アルキルシクロヘキサン誘導体の製剤も使用することができる。
【0114】
或いは、外用投与に適した乾燥物(固形物)である本発明の1-アミノ-アルキルシクロヘキサン誘導体の製剤を使用することもできる。
【0115】
そのような製剤には、ゲル剤、クリーム剤、軟膏、ヒドロゲル剤、ペースト剤、乳剤、噴霧剤、溶液剤、ローション剤などが含まれる。
【0116】
そのような製剤には、粉末剤、オレオゲル剤(oleogels)、懸濁剤、水中油型乳剤、油中水型乳剤、多層乳剤、マイクロエマルション及びナノエマルション、自己乳化系、
水性及び非水性溶液、貼付剤、又は経皮システムも含まれる。上記の製剤の組合せも使用することができる。
【0117】
1-アミノ-アルキルシクロヘキサン誘導体(例えばネラメキサン)は、製剤の0.1〜99重量%、より具体的には製剤の0.5%〜50重量%、又は製剤の1%〜25重量%、又は製剤の2%〜20重量%を構成し得る。
【0118】
本発明の一実施形態では、1-アミノ-アルキルシクロヘキサン誘導体(例えばネラメキサン)が放出調節製剤として投与される。放出調節剤形は、患者のコンプライアンスを改善する手段になり、薬物有害反応の発生を減少させることによって効果的且つ安全な治療を保証する手段にもなる。即放性剤形と比較して、放出調節剤形は、投与後の薬理作用を引き延ばすために使用することができ、また、投薬間隔全体にわたる血漿中濃度の変動性を低減することによって急激なピークを排除又は低減するために使用することができる。
【0119】
放出調節剤形は薬物でコーティングされたコア又は薬物を含有するコアを含み得る。その場合、コア部は放出調節ポリマーでコーティングされ、その内部に薬物が分散される。放出調節ポリマーは徐々に崩壊し、時間をかけて薬物を放出する。こうして、組成物の最外層は、組成物が水性環境、すなわち消化管にばく露された時に、コーティング層を横切る薬物の拡散を効果的に減速することによって調節する。薬物の正味の拡散速度は、主として、コーティング層又はマトリックスに浸透する胃液の能力と、薬物自体の溶解性とに依存する。
【0120】
本発明のもう一つの実施形態では、1-アミノ-アルキルシクロヘキサン誘導体(例えばネラメキサン)が、経口液状製剤に製剤化される。経口投与用の液状調製物は、例えば溶液剤、シロップ剤、乳剤又は懸濁剤の形態をとるか、使用前に水若しくは他の適切な媒体で再構成するための乾燥品として提示することができる。経口投与用の調製物は活性化合物の放出制御又は放出延期が起こるように適切に製剤化することができる。1-アミノ-アルキルシクロヘキサン(例えばネラメキサン)の経口液状製剤はPCT国際出願第PCT/US2004/037026号に記載されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0121】
液状での経口投与には、本発明の1-アミノ-アルキルシクロヘキサン誘導体(例えばネラメキサン)を、無毒性の医薬上許容される不活性担体(例えばエタノール、グリセロール、水)、懸濁化剤(例えばソルビトールシロップ、セルロース誘導体又は水素化食用脂)、乳化剤(例えばレシチン又はアラビアゴム)、非水性媒体(例えばアーモンド油、油状エステル、エチルアルコール又は分画植物油)、保存剤(例えばメチル若しくはプロピル-p-ヒドロキシベンゾエート又はソルビン酸)などと組み合わせることができる。剤形を安定化するために、酸化防止剤(例えばBHA、BHT、没食子酸プロピル、アスコルビン酸ナトリウム、クエン酸)などの安定剤も加えることができる。例えば、溶液剤は約0.2重量%〜約20重量%のネラメキサンを含有し、残りは糖並びにエタノール、水、グリセロール及びプロピレングリコールの混合物であることができる。場合によっては、そのような液状製剤は、着色剤、着香剤、甘味剤、及びカルボキシメチル-セルロースなどの増粘剤、又は他の賦形剤を含有してもよい。
【0122】
もう一つの実施形態では、治療有効量の1-アミノ-アルキルシクロヘキサン誘導体(例えばネラメキサン)が、保存剤、甘味剤、可溶化剤、及び溶媒を含有する経口溶液剤として投与される。経口溶液剤は、一つ以上の緩衝剤、香料(flavoring)、又は追加の賦形剤を含み得る。さらにもう一つの実施形態では、ペパーミント又は他の香料が、ネラメキサン誘導体経口液状製剤に加えられる。
【0123】
吸入による投与の場合は、本発明の1-アミノ-アルキルシクロヘキサン誘導体(例えばネラメキサン)を、適切な噴射剤、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、又は他の適切な気体を使って、加圧容器又は噴霧器から、エアロゾルスプレー提示の形で、都合よく送達することができる。加圧エアロゾルの場合、投薬単位は、計測された量を送達するためのバルブを設けることによって決定することができる。化合物とラクトース又はデンプンなどの適切な粉末基剤との粉末混合物を含有する、吸入器用又は吹入器(insufflator)用の、例えばゼラチン製のカプセル及びカートリッジを製剤化することができる。
【0124】
注射による非経口適用のための溶液剤は、活性物質の医薬上許容される水溶性塩の水溶液として、例えば約0.5重量%〜約10重量%の濃度で製造することができる。これらの溶液剤は、安定剤及び/又は緩衝剤も含有することができ、さまざまな投薬単位アンプルに入れて、都合よく提供することができる。
【0125】
本発明の製剤は、非経口的に、すなわち静脈内(i.v.)、脳室内(i.c.v.)、皮下(s.c.)、腹腔内(i.p.)、筋肉内(i.m.)、真皮下(s.d.)、又は皮内(i.d.)投与により、例えばボーラス注射又は持続注入による直接的注射で、送達することができる。注射用製剤は、単位剤形で、例えばアンプルに入れて、又は保存剤を添加して多用量容器に入れて、提示することができる。或いは、活性成分は、使用前に適切な媒体、例えば滅菌パイロジェンフリー水で再構成するための粉末の形態であってもよい。
【0126】
本発明は、1-アミノ-アルキルシクロヘキサン誘導体(例えばネラメキサン)と、場合によっては、さらなる製剤成分とを含有する一つ以上の容器を含む、医薬パック又は医薬キットも提供する。ある特定の実施形態では、ネラメキサンが、2ティスプーン容量(2 teaspoon capacity)のシリンジ(dosage KORC(登録商標))を使って投与するための経口溶液剤(2mg/ml)として提供される。各経口シリンジは測定用のハッチマークを持ち、シリンジの右側(先端を下にした場合)にtsp単位を表す線、左側にml単位を表す線が引かれている。
【0127】
至適治療有効量は、薬物を投与する際の厳密な投与様式、その投与が目的とする適応症、関与する対象(例えば体重、健康状態、年齢、性別など)、並びに担当する医師又は獣医師の好み及び経験を考慮して、実験的に決定することができる。
【0128】
直腸適用のための投薬単位は溶液剤又は懸濁剤であるか、中性脂肪基剤と混合されたネラメキサンを含む坐剤若しくは停留浣腸剤、又は植物油若しくはパラフィン油と混合された活性物質を含むゼラチン直腸カプセル剤の形態に製造することができる。
【0129】
本発明の組成物の毒性及び治療有効性は、実験動物において、標準的な薬学的手順により、例えばLD50(集団の50%にとって致死的な用量)及びED50(集団の50%において治療的に有効な用量)を決定することなどによって、決定することができる。治療効果と毒性効果との用量比が治療係数であり、これは比LD50/ED50として表すことができる。大きい治療係数を示す組成物は好ましい。
【0130】
ヒトの治療的処置における本発明の活性化合物の適切な1日量は、経口投与の場合で約0.01〜10mg/kg体重、非経口投与の場合で0.001〜10mg/kg体重である。例えば成人の場合、ネラメキサン(例えばメシル酸ネラメキサン)の適切な1日量は、1日あたり約5mg〜約150mg、例えば1日あたり約5mg〜約120mg、約5mg〜約100mg、又は約5mg〜約75mg、又は約5mg〜約50mgの範囲内、例えば25mg又は37.5mg又は50mgである。例えば1日量は、体重90kgまでは50mg/日、又は体重≧90kgの患者については75mg/日など、体重に合わせて調節することができる。等モル量の、他の医薬上許容される塩、溶媒和物、異性体、コンジュゲート、プロドラッグ又は誘導体、例えば塩酸ネラメキサンも、適切である。4〜14歳の小児対象には、ネラメキサン(例えばメシル酸ネラメキサン)を、経口液状剤形として、約0.5mg/日から、10mg/日の最大用量までの用量で投与することができる。
【0131】
本明細書に示す1日量は、例えば1投与単位又は2投与単位として、1日に1回、2回、又は3回、投与することができる。したがって、1投薬単位あたりの適切な用量は、1日に投与される投薬単位の数で1日量を(例えば等しく)分割した量になり、したがって典型的には、1日量にほぼ等しいか、その2分の1、3分の1、4分の1又は6分の1になる。したがって、投薬単位あたりの投薬量は、本明細書に示す各1日投薬量から算出することができる。例えば5mgという1日量は、選択した投与レジメンに応じて、1投与単位あたり例えば約5mg、2.5mg、1.67mg、1.25mg及び0.83mgの用量を与えると理解することができる。同様に、1日あたり150mgの投薬量は、対応する投与レジメンに合わせて、1投与単位あたり約150mg、75mg、50mg、37.5mg、及び25mgの投薬量に相当する。
【0132】
処置継続期間は、短期間、例えば数週間(例えば8〜14週間)であってもよいし、さらなる投与はもはや必要ないと担当医が考えるまで、長期間にわたってもよい。
【0133】
本発明の1-アミノ-アルキルシクロヘキサン誘導体(例えばネラメキサン)は、単剤療法として投与するか、又は炎症性皮膚疾患の処置に処方されるもう一つの薬剤と組み合わせて投与することができる。
【0134】
活性成分に適用される「組合せ」という用語は、本明細書においては、二つの活性剤を含む単一の医薬組成物(製剤)(例えばネラメキサンなどの1-アミノ-アルキルシクロヘキサン誘導体と、炎症性皮膚疾患の処置に処方されるもう一つの薬剤とを含む医薬組成物)を規定するか、又はそれぞれが一つの活性剤を含む二つの別個の医薬組成物(例えばネラメキサンなどの1-アミノ-アルキルシクロヘキサン誘導体を含む医薬組成物と、炎症性皮膚疾患の処置に処方されるもう一つの薬剤を含むもう一つの医薬組成物)であって、協同的に投与されるものを規定するために用いられる。
【0135】
本発明に関して、「協同的(conjoint)投与」という用語は、ネラメキサンなどの1-アミノ-アルキルシクロヘキサン誘導体と、1つ以上の追加活性剤(例えば炎症性皮膚疾患の処置に処方されるもう一つの薬剤、例えば抗微生物剤、抗生物質、レチノイド又はステロイド)とを、一つの組成物として同時に投与するか、又は異なる組成物として同時に投与するか、又は逐次的に投与することを指すために用いられる。ただし、逐次的投与が「協同的」であるとみなされるには、ネラメキサンなどの1-アミノ-アルキルシクロヘキサン誘導体と1つ以上の追加の活性剤とが、哺乳動物における炎症性皮膚疾患の処置にとって有益な効果がまだ生じ得るような時間間隔で投与されなければならない。
【0136】
代表的製剤の例
よく使用される溶媒、補助剤及び担体を利用して、活性成分を錠剤、コート錠、カプセル剤、点滴液、坐剤、注射及び注入調製物、ゲル剤、クリーム剤、軟膏などに加工し、経口経路、直腸経路、非経口経路、外用経路、及び他の経路で、治療的に適用することができる。経口投与に適した錠剤は、従来の製錠技法によって製造することができる。以下の例は、例示のために記載するに過ぎず、これを限定であると解釈してはならない。
【0137】
製剤例1:メシル酸ネラメキサン即放性錠剤
以下の表に、活性構成要素、コーティング剤、及び他の賦形剤を含む、投薬量12.5、25.0、37.5、及び50.0mgのネラメキサン即放性錠剤の構成を示す。
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【0138】
以下の表に、ネラメキサン外用製剤の構成を示す。
【0139】
製剤例2:
【表5】

【表6】

【表7】

【0140】
製剤例3:
【表8】

【表9】

【表10】

【0141】
製剤例4:
【表11】

【表12】

【表13】

【0142】
製剤例5:
【表14】

【表15】

【表16】

【表17】

【実施例】
【0143】
以下に実施例を挙げて本発明を例示するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
【0144】
実施例1:接触過敏症マウスモデルにおけるネラメキサンの効果
ハプテンを皮膚上に適用することによって誘導される接触過敏症モデル(CHS)は、遅延型過敏反応のモデルとして役立つ(Schwarzら, 2004, The Journal of Immunology, 172:1036-1043)。抗原特異的Tリンパ球が誘導され、それを養子移入実験で証明することができる。感作に成功したマウスでのみ耳介腫脹が誘導されることから、その応答は免疫応答であって、毒性反応ではないことが示される。陰性対照、すなわち感作されていないマウスは、その耳にハプテンを初めて適用した時に耳介腫脹の応答を示さない。薬物による感作の抑制は各物質の免疫抑制活性を示し得るので、CHSモデルは薬物を免疫抑制特性に関してスクリーニングするために利用される。
【0145】
耳介腫脹応答(チャレンジ(challenge))は免疫応答(Tリンパ球が基本的媒介物質である)も反映しているのではあるが、耳介腫脹応答は、最終的には、抗原特異的Tリンパ球が誘導する炎症性サイトカインによって媒介される。したがって、この免疫反応のチャレンジは、抗炎症性薬によって抑制することもできる。したがって、CHSモデルは抗炎症特性を測定するために利用され、免疫抑制特性を持つ物質と抗炎症特性を持つ物質の弁別も可能である。
【0146】
ネラメキサンを、免疫反応及び/又は炎症反応に影響を及ぼすその効力について試験する。
【0147】
材料と方法
動物
この試験にはC57BL/6N雄マウス(6〜8週齢、約20g)を使用する。
【0148】
試験の開始前に動物を5日間馴化させる。照明周期、温度及び湿度を自動制御する。照明周期は12時間である。毎日のモニタリングにより、温度及び湿度はそれぞれ21℃±1℃及び50±5%の標的範囲内に留まっていることが示される。メッシュトップ(mesh top)を持つポリプロピレンケージ(Ebeco、タイプM-3)に動物を収容する(ケージ1つにつき最大7匹のマウスを収容する)。ケージ、敷料、及び水筒は定期的に、すなわち7日ごとに交換する。動物には標準飼料(ベンダー)を自由に摂取させる。動物は家事用(domestic quality)水道水を自由に摂取することができる。
【0149】
薬物
メシル酸ネラメキサンをNaCl溶液で希釈して、注射ごとに新しく調製し、用量レベルは薬物動態パイロット試験によって決定する。パイロット試験に基づき、感作の1時間前に5mg/kgの用量を使用し、次いで、感作の1時間後及び3時間後に用量3.2mg/kgの注射を使用する。
【0150】
処置
到着時に、全ての動物をランダムに処置群に割り当てて、処置群がケージングシステム全体に均等に分布するようにする。
【0151】
処置群及び動物数を表18に示すように配置する。
【表18】

用量は遊離塩基/酸を指し、遊離塩基から塩型への換算計数は1.57である。
【0152】
動物には、スチール製投与カニューレを使って、投与溶液を200μl mlという一定の投与体積で腹腔内(i.p.)に注射する。各動物に投与される体積は、投与時におけるその動物の体重により、それぞれの日に決定する。
【0153】
50μlのジニトロフルオロベンゼン(DNFB、Sigma Corp.、ミズーリ州セントルイス)溶液(アセトン:オリーブ油4:1中、0.5%)を、剃毛した背中に、0日目に塗布することによって、マウスを感作する。5日目に、20μlの0.3%DNFBを左耳に適用する。誘発の24時間後に耳介腫脹をバネ荷重型マイクロメーター(spring-loaded micrometer)で定量化する。接触過敏(CHS)を、媒体で処置した耳の厚さと比較した、ハプテンチャレンジした耳の腫脹の量として決定し、cm×10-3(平均±SD)の単位で表す。陽性対照については、剃毛した皮膚を通して50μlの0.5%DNFBで、動物を感作する。チャレンジは5日後に左耳に行う(0.3%DNFB、20μl)。耳の厚さを24時間後に測定する(cm×10-3)。陰性対照については、マウスに20μlの0.3%DNFBをチャレンジし、24時間後に耳の厚さを測定する(cm×10-3)。
【0154】
データの評価
一元配置ANOVA(陰性対照群を除く)とそれに続く事後検定(post-hoc test)としてのダネット法を使って、感作の結果を解析する。結果を図1〜3に示す。
【0155】
結果
ネラメキサンは免疫応答の誘導に対して影響を持たないようであるが、チャレンジ前後にネラメキサンを投与すると、耳介腫脹応答が有意に減少する。これらの結果は、ネラメキサンは抗炎症特性を発揮し得るが免疫抑制特性は発揮しないこと、及びネラメキサンはざ瘡、酒さ、湿疹、アトピー性皮膚炎、乾癬及び脂性肌などの炎症性皮膚疾患の処置に役立ち得ることを示す。
【0156】
実施例2:皮膚炎マウスモデルにおけるネラメキサンの効果
抗炎症特性についてさらに調べるために、刺激物皮膚炎マウスモデルを使用する。クロトン油による耳介腫脹応答の誘導は毒性反応である。この応答は、感作リンパ球には依存しない濃度依存的現象である。抗炎症性物質はこの耳介腫脹応答を一定程度減少させることが示されている。
【0157】
ネラメキサンをその抗炎症特性について試験する。
【0158】
動物
この試験にはC57BL/6N雄マウス(6〜8週齢、約20g)を使用する。
【0159】
試験の開始前に動物を5日間馴化させる。照明周期、温度及び湿度を自動制御する。照明周期は12時間である。毎日のモニタリングにより、温度及び湿度はそれぞれ21℃±1℃及び50±5%の標的範囲内に留まっていることが示される。メッシュトップを持つポリプロピレンケージ(Ebeco、タイプM-3)に動物を収容する(ケージ1つにつき最大7匹のマウスを収容する)。ケージ、敷料、及び水筒は定期的に、すなわち7日ごとに交換する。動物には標準飼料(ベンダー)を自由に摂取させる。動物は家事用水道水を自由に摂取することができる。
【0160】
薬物
メシル酸ネラメキサンをNaCl溶液で希釈して、注射ごとに新しく調製し、用量レベルは薬物動態パイロット試験によって決定する。パイロット試験に基づき、感作の1時間前に5mg/kgの用量を使用し、次いで、感作の1時間後及び3時間後に用量3.2mg/kgの注射を使用する。
【0161】
処置
到着時に、全ての動物をランダムに処置群に割り当てて、処置群がケージングシステム全体に均等に分布するようにする。
【0162】
処置群及び動物数を表19に示すように配置する。
【表19】

用量は遊離塩基/酸を指し、遊離塩基から塩型への換算計数は1.57である。
【0163】
動物には、スチール製投与カニューレを使って、投与溶液を200μl mlという一定の投与体積で腹腔内(i.p.)に注射する。各動物に投与される体積は、投与時におけるその動物の体重により、それぞれの日に決定する。
【0164】
動物には、スチール製投与カニューレを使って、投与溶液を200μl mlという一定の投与体積で腹腔内(i.p.)に注射する。各動物に投与される体積は、投与時におけるその動物の体重により、それぞれの日に決定する。
【0165】
20μlの1%クロトン油/アセトンを左耳に適用する。耳介腫脹を7時間後及び24時間後に測定する。耳介腫脹をバネ荷重型マイクロメーターで定量化する。刺激物反応を、媒体(アセトン)で処置した耳の厚さと比較した、刺激物で処置した耳の腫脹の量として決定し、cm×10-3の単位で表す。もう一つの群はネラメキサン(上述のとおり)及びクロトン油で処置する。
【0166】
データの評価
スチューデントの検定(処置群と陽性対照群の比較)を使って感作の結果を解析する。結果を図4〜5に示す。
【0167】
結果
ネラメキサンは、クロトン油によって誘導される耳介腫脹応答をある程度減少させ、ネラメキサンがざ瘡、酒さ、湿疹、アトピー性皮膚炎、乾癬及び脂性肌などの炎症性皮膚疾患の処置に役立ち得ることを示す。
【0168】
実施例3:プロピオニバクテリウム・アクネスに対するネラメキサンの抗微生物特性
特定の微生物集団(すなわちプロピオニバクテリウム・アクネス)に対するネラメキサンの効力を決定するために、log減少アッセイ(log reduction assay)を行う。
【0169】
チオグリコレート液体培地(FTM)への接種によって微生物を準備する。次に微生物を35.2±2.5℃で24時間インキュベートする。微生物懸濁液を1mLあたり約107〜108コロニー形成単位(CFU)に調節して、これを保存用懸濁液とする。さらに保存用懸濁液の1:10希釈液をPBSを使って調製することにより、1mLあたり約105〜106CFUの濃度にする。
【0170】
メシル酸ネラメキサン(1グラム)を9.0mLのDI水に希釈して、10%溶液を調製する(1:10希釈)。次に、5mLを11mLのDI水に移して、3.125%溶液を調製する。次に、この溶液に微生物を接種し、30秒、1分、及び5分の時間間隔で試験する。
【0171】
各希釈液のうち1mLを、5%ヒツジ血を含むトリプティックソイ(tryptic soy)寒天上に、二つ一組にして、塗抹接種(spread plate)する。そのプレートを35.2±2.5℃で最低48時間は嫌気的にインキュベートする。同じ手順をリン酸緩衝食塩水対照でも繰り返す。インキュベーション期間後に、全てのプレートを計数して、各時点で残っている微生物の数を決定する。
【0172】
対照及び製品について各微生物の濃度を各時間間隔について算出する。出発接種物と比較した微生物個体数の変化(減少又は増加)を決定するために、log減少値を算出する。最低所要殺菌濃度を初期接種物からの3logの減少と定義する。結果を表20に示す。
【表20】

【0173】
結果
log減少実験で測定された活性によれば、ネラメキサンは、プロピオニバクテリウム・アクネスに対して抗微生物活性を示す。これらの結果は、ネラメキサンがざ瘡、酒さ、湿疹、アトピー性皮膚炎、乾癬及び脂性肌などの炎症性皮膚疾患の処置に役立ち得ることを示す。
【0174】
実施例4:外用ネラメキサン製剤の局所認容性
この試験の目的は、外用製剤中のメシル酸ネラメキサンの局所認容性を、さまざまな用量レベルで、ミニブタへの14日間の連日皮膚処置後に評価することである。
【0175】
試験は、4頭の雌ゲッチンゲンSPFミニブタ(Ellegaard Goettingen Minipigs Apsから入手)で行う。各動物の背中に5ヶ所の適用部位(25cm2)を設けて印を付け、毎日8時間投薬する。各試験部位は試験全体を通して同じ試験項目又はプラセボに使用する。試験群は、次に挙げる濃度のメシル酸ネラメキサンで処置する:0、0.5、2.5、5.0及び10.0%(w/w)。
【0176】
各処置の開始2〜4時間後に臨床徴候を記録し、処置前に局所皮膚反応(紅斑、浮腫)を評価する。体重を毎週(及び1日目と剖検時に)記録する。肉眼的剖検は全ての動物で行うが、巨視的変化は認められないので、皮膚適用部位だけを収集してから、巨視的及び顕微鏡的に組織病理学的評価を行う。
【0177】
動物の臨床徴候及び体重増加に関して試験項目関連変化は認められない。さらにまた、試験項目関連真皮(dermal skin)反応も試験全体を通して観察されない。皮膚適用部位の組織病理学的評価の結果からは、無処置の皮膚試料との比較で、巨視的又は顕微鏡的な処置関連所見は見いだされない。
【0178】
結論として、外用製剤として用量レベルが0.5%、2.5%、5%及び10%であるメシル酸ネラメキサンによるゲッチンゲンミニブタの皮膚処置は、試験項目関連変化をもたらさない。この試験の条件下で、ネラメキサン外用製剤は良好な局所(外用)認容性を示す。
【0179】
実施例5:関連細菌に対するネラメキサンの抗微生物力価(anti-microbial potency)−寒天希釈法によるMIC値及びMBC値の決定
ざ瘡関連細菌に対するネラメキサンの抗微生物力価を評価するために、次に挙げる細菌に対する最小発育阻止濃度(MIC)及び最小殺菌濃度(MBC)を確定する:
1.表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis) ATCC 12228
2.プロピオニバクテリウム・アクネス ATCC 11828
3.プロピオニバクテリウム・グラヌローサム(Propionibacterium granulosum) ATCC 11829
4.プロピオニバクテリウム・アビダム(Propionibacterium avidum) ATCC 25577
【0180】
手順
DIN 58940に基づき、寒天希釈法を使って、試料のMICを決定する。直径5.5cmのペトリ皿に、2.5mlの新しく調製したミュラー-ヒントン寒天(Merck社、カタログ番号1.05437)又はウィルキンス-チャルグレン寒天(Oxoid社、カタログ番号CM643)(50℃で液体状態に維持し、そこにさまざまな濃度の試料希釈液を50.0体積%の量で加えておいたもの)を注ぎ込む。
【0181】
試験溶液及び寒天プレートの調製
異なる試験化合物について、次に挙げる濃度範囲を試験する:
【表21】

【0182】
出発試料希釈液を調製するために、各試料溶液の12.5%、3.12%懸濁液を、精製水で調製する。これらの保存溶液から、さらなる希釈液を精製水で調製する。全ての試験化合物をpH5.5に調節する。試験製品番号1については、pH6.0及びpH7.4に調節した別の希釈液も調製する。
【0183】
寒天希釈試験の実行
接種のために、1μlの各病原菌懸濁液を各寒天プレートの中心に置く。乾燥後に、接種したプレートを36.0±2.0℃でインキュベートする。インキュベーション期間の長さの根拠は、並行して培養される各成長対照である。
【表22】

【0184】
病原菌番号1〜3(嫌気性)及び病原菌番号4(好気性)について、コロンビア血液寒天で継代培養物を調製することにより、全ての試験微生物の純粋性及び同一性をチェックする。次に、ATB/APIを使った生化学的プロファイルの決定によって、病原菌を同定する。
【0185】
各細菌の別々のコロニー数個を、滅菌食塩溶液に、マクファーランド標準液1.0(約108cfu/ml)に相当する濁度に達するまで接種することにより、試験微生物懸濁液を調製する。その後、試験微生物懸濁液をさらに食塩溶液で1:10に希釈し、スパイラルプレーターを用いる表面塗抹法によって微生物数(表21参照)を決定する。
【0186】
寒天プレートを表22に記載する条件下でインキュベートしてから評価する。記載のMIC値は、巨視的に目に見える成長が起こらない最も低い活性物質濃度を表す。ごくわずかなほとんど目に見えない成長又は少数の小さいコロニーは阻止と評価する。
【表23】

【0187】
最小殺菌濃度(MBC)の決定
最小殺菌濃度の決定の陰性試験は全て、残存病原菌の確認の根拠であり、接種された寒天セグメントを切断してミュラー-ヒントンブイヨン(病原菌1)又はウィルキンス-チャルグレンブイヨン(病原菌2〜4)に入れる。36.0±2.0℃で十分なインキュベーション期間(試験化合物なしの対照から判断する)の後、試験物を微生物成長(=濁度)について手作業でチェックし、最小殺菌濃度を決定する。MBCは目立った濁度がない濃度を示す。非特異的汚染を除外するために、成長した病原菌をチェックして同定する。
【0188】
データの評価
次に挙げる結果を要約して表にする:
a)最小発育阻止濃度(MIC)*の結果
b)最小殺菌濃度(MBC)の結果
*MICは、巨視的成長が起こらない濃度である。ほとんど目に見えないごくわずかな成長又は少数の単一コロニーは考慮しない。対照は、それぞれに良好な、発達した成長を持たなければならない。無菌対照の寒天プレートでは成長があってはならない。
【0189】
個々の試験化合物についての結果を表23〜30に示す。これらの表では、試験した病原菌について決定されたMIC値及びMBC値が、最後の列に要約されている。
【0190】
細菌の成長は、二つ一組のプレートについて、+(すなわち成長)又は−(すなわち成長なし)で示され、+ -は両方のプレートでの弱い成長を示すか、一方のプレートでの成長と他方のプレートでの成長なしとを示す。試験化合物を一切含有しないそれぞれの対照プレートでは、全ての細菌が適当な成長を示す。使用した希釈剤(精製水)の影響は認められない。対照プレートにおいて汚染は認められない。
【0191】
【表24】

【表25】

【表26】

【表27】

【表28】

【表29】

【表30】

【表31】

【0192】
結果
表31に、この試験で確定された全試験化合物のMIC値及びMBC値を要約する。一般に、使用した方法で決定される値は、1/2〜2倍の範囲(by a factor of 2)で変動し得る(1:2希釈の場合)とみなす必要がある。
【表32】

【0193】
ネラメキサンは、試験した全てのざ瘡関連細菌に関して、抗微生物活性を示す。このアッセイに関する限り、皮膚相当のpH5.5では、確定されたMIC値及びMBC値が、異なる細菌株で同程度である。したがってネラメキサンは試験した全ての細菌に対して類似する効力を示す。
【0194】
この抗細菌活性に対する明白なpHの効果もない。pH6.0及びpH7.4で確定されたMIC値及びMBC値は、pH5.5で確定された値と同じ範囲内にある。同じ事が、ネラメキサン-HClで得られるMIC値及びMBC値にも当てはまる。表皮ブドウ球菌を除けば、これらの値とメチル酸ネラメキサンで得られるものとの相違は最大でも2倍である。これらのデータは、活性物質の塩型は、ネラメキサンの抗微生物活性に対してわずかな影響しかもたないことを証明している。
【0195】
したがって、観察されたざ瘡関連細菌に対する抗細菌活性は、ネラメキサンそのものの特性である。
【0196】
実施例6:関連細菌に対するネラメキサンの抗微生物力価−定量的懸濁液アッセイにおける殺菌活性の決定
ネラメキサンの抗微生物力価をさらに評価するために、定量的懸濁液アッセイ(quantitative suspension assay)を行う。
【0197】
手順
1.0mlの細菌試験懸濁液(微生物数:1.5〜5.0×108cfu/ml)と1.0mlの蒸留水とを、8.0mlの製品試験溶液に加える。ストップウォッチを始動させる。曝露時間の終了時に、0.1mlの試験混合物を50mlのすすぎ液に加える(=試験中和混合物、TNM、100)。500μlのTNMを9.0mlのトリプトン-NaClにピペッティングすること(濾過前にTNMの10-2希釈液に相当)又は50μlのTNMを9.0mlのトリプトン-NaClにピペッティングすること(濾過前にTNMの10-3希釈液に相当)により、TNMの希釈液を2つ調製する。TNM(二つ一組)と各希釈液とを、メンブレンフィルタ(0.45μm)を装着したメンブレンフィルタ装置に移し、直ちに濾過する。次に、フィルタを150mlの蒸留水で洗浄する。メンブレンを寒天プレートに移す。適当な条件下でのインキュベーション後に、コロニーを計数し、記録する。
【0198】
メシル酸ネラメキサンを4つの異なる濃度(w/w 0.1%、0.5%、2.0%、5.0%)で試験して、プロピオニバクテリウム・アクネス(ATCC 11828)に対するその殺菌活性を評価する。ネラメキサンの濃度の効果に加えて、細菌との接触時間の関連性も、4つの異なるインキュベーション時間(5分、30分、6時間、24時間)で評価する。
【0199】
所望のインキュベーション時間後に、メンブレン濾過により、アッセイからの試験化合物の完全な排除を確保する。1.5〜5.0×108cfu/mlの範囲の微生物数を持つ細菌懸濁液を使用する。全てのアッセイを5.5という皮膚相当のpHで行う。
【0200】
読出しは、アッセイにおける細菌数の減少であり、log減少値として表される。この細菌数の減少は細菌を殺す化合物の能力と相関し、したがってそのMBC値と相関する。表面消毒には>5logの減少(>5-fold log reduction)が必要であり、手指消毒化合物には>3logの減少(>3-fold log reduction)が必要である。
【0201】
経過
メシル酸ネラメキサンに関する結果の要約を表32に示す。
【表33】

【0202】
このアッセイでは、24時間の接触時間後に、0.5%の濃度で、プロピオニバクテリウム・アクネスが効率よく排除される。6時間の接触後でさえ、著しいlog減少(2.6)が得られる。2.0%溶液の場合、>5logの減少(>5-fold log-reduction)というこのアッセイでの最大減少は、わずか30分のインキュベーション後に達成される。5%溶液では、4.33のlog減少が、わずか5分間のインキュベーション後に得られた。
【0203】
これらのデータは、ネラメキサンが、懸濁液中で、ざ瘡に関連するプロピオニバクテリウム・アクネス細菌を効率よく排除することを裏付けている。濃度によっては、この抗微生物活性を示すのに、短いインキュベーション時間しか必要でない。
【0204】
実施例7:化膿性レンサ球菌及び黄色ブドウ球菌に対する抗微生物力価−寒天希釈法によるMIC値の決定
アトピー性皮膚炎及び限局性皮膚感染症(「膿痂疹」)に関連する細菌株に対するネラメキサンの抗微生物力価を評価するために、次に挙げる細菌に対する最小発育阻止濃度(MIC)を確定する:
5.黄色ブドウ球菌 ATCC 6538
6.化膿性レンサ球菌 ATCC 12344
【0205】
黄色ブドウ球菌による感染はアトピー性皮膚炎では極めて一般的な合併症であるが、限局性皮膚感染症(「膿痂疹」)でも同じ細菌株が、化膿性レンサ球菌と共に関与する。
【0206】
手順
DIN 58940に基づき、寒天希釈法を使って、試料のMICを決定する。直径5.5cmのペトリ皿に、2.5mlの新しく調製したミュラー-ヒントン寒天(Merck社、カタログ番号1.05437)pH5.5(50℃で液体状態に維持し、そこにさまざまな濃度の試料希釈液を50.0体積%の量で加えておいたもの)を注ぎ込む。
【0207】
試験溶液及び寒天プレートの調製
メシル酸ネラメキサンを6.25〜1×10-2%の濃度範囲で試験する。全ての試験溶液をpH5.5に調節する。
【0208】
寒天希釈試験の実行
接種のために、1μlの各病原菌懸濁液を各寒天プレートの中心に置く。乾燥後に、接種したプレートを36.0±2.0℃でインキュベートする。インキュベーション期間の長さの根拠は、並行して培養される各成長対照である。
【表34】

【0209】
各細菌の別々のコロニー数個を、滅菌食塩溶液に、マクファーランド標準液1.0(約108cfu/ml)に相当する濁度に達するまで接種することにより、試験微生物懸濁液を調製する。その後、試験微生物懸濁液をさらに食塩溶液で1:10に希釈し、スパイラルプレーターを用いる表面塗抹法によって微生物数(表33参照)を決定する。
【0210】
寒天プレートを表34に記載する条件下でインキュベートしてから評価する。記載のMIC値は、巨視的に目に見える成長が起こらない最も低い活性物質濃度を表す。ごくわずかなほとんど目に見えない成長又は少数の小さいコロニーは阻止と評価する。
【表35】

【0211】
データの評価及び結果
個々の試験化合物に関する結果を表35に示す。細菌の成長は、二つ一組のプレートについて、+(すなわち成長)又は−(すなわち成長なし)で示され、+ -は両方のプレートでの弱い成長を示すか、一方のプレートでの成長と他方のプレートでの成長なしとを示す。試験化合物を一切含有しないそれぞれの対照プレートでは、どちらの細菌も適当な成長を示す。使用した希釈剤(精製水)の影響は認められない。対照プレートにおいて汚染は認められない。一般に、使用した方法で決定される値は、1/2〜2倍の範囲(by a factor of 2)で変動し得る(1:2希釈の場合)とみなす必要がある。
【表36】

【0212】
ネラメキサンは、アトピー性皮膚炎及び皮膚疾患である伝染性膿痂疹に関連する黄色ブドウ球菌に関して抗細菌活性を示し、同様に伝染性膿痂疹に関与する化膿性レンサ球菌に対しては、より一層強く作用する。
【0213】
使用した寒天希釈アッセイは、試験化合物の抗細菌力を確定するための標準的アッセイである。上記の成長条件及び細菌の接種数により、試験化合物の抗細菌作用の過大評価が回避される。5.5という皮膚相当のpHを選択することにより、皮膚関連細菌感染症の処置にとって適切なデータの生成が、さらに助長される。したがって、得られたデータは、両細菌株に対するネラメキサンの治療的抗細菌力の決定にとって妥当である。
【0214】
したがって、これらのデータから、試験した細菌株が関与する感染症におけるネラメキサンの治療的使用を断言することができる。
【0215】
本発明は、本明細書に記載する具体的実施形態によってその範囲を限定されるものではない。実際、上述の説明から当業者には、本明細書に記載する実施形態の他に、本発明のさまざまな変更実施形態が明白になるだろう。そのような変更実施形態は添付の特許請求の範囲に包含されるものとする。
【0216】
本明細書で言及する特許、特許出願、刊行物、試験方法、文献、及び他の資料は全て、参照により本明細書に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炎症性皮膚疾患を処置又は予防するためのネラメキサン及び医薬上許容されるその塩から選択される1-アミノ-アルキルシクロヘキサン誘導体。
【請求項2】
炎症性皮膚疾患を処置又は予防するための医薬を製造するための、ネラメキサン及び医薬上許容されるその塩から選択される1-アミノ-アルキルシクロヘキサン誘導体の使用。
【請求項3】
1-アミノ-アルキルシクロヘキサン誘導体がメシル酸ネラメキサンである、請求項1又は2に記載の誘導体/使用。
【請求項4】
メシル酸ネラメキサンが約5mg〜約150mg/日の範囲、又は約5mg〜約100mg/日の範囲、又は約5mg〜約75mg/日の範囲で投与される、請求項3に記載の誘導体/使用。
【請求項5】
メシル酸ネラメキサンが約50mg/日で投与される、請求項3に記載の誘導体/使用。
【請求項6】
メシル酸ネラメキサンが約75mg/日で投与される、請求項3に記載の誘導体/使用。
【請求項7】
1-アミノ-アルキルシクロヘキサン誘導体が1日1回、1日2回(b.i.d.)、又は1日3回投与される、請求項1又は2に記載の誘導体/使用。
【請求項8】
1-アミノ-アルキルシクロヘキサン誘導体が外用製剤として投与される、請求項1〜3又は7のいずれか一項に記載の誘導体/使用。
【請求項9】
1-アミノ-アルキルシクロヘキサン誘導体が製剤の0.1〜99重量%で投与される、請求項8に記載の誘導体/使用。
【請求項10】
1-アミノ-アルキルシクロヘキサン誘導体が経口製剤として投与される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の誘導体/使用。
【請求項11】
炎症性皮膚疾患が乾癬ではない、請求項1〜10のいずれか一項に記載の誘導体/使用。
【請求項12】
炎症性皮膚疾患がざ瘡、酒さ、湿疹、アトピー性皮膚炎、及び脂性肌から選択される、請求項1〜11のいずれか一項に記載の誘導体/使用。
【請求項13】
炎症性皮膚疾患がざ瘡である、請求項12に記載の誘導体/使用。
【請求項14】
炎症性皮膚疾患がアトピー性皮膚炎である、請求項12に記載の誘導体/使用。
【請求項15】
炎症性皮膚疾患が伝染性膿痂疹である、請求項12に記載の誘導体/使用。
【請求項16】
炎症性皮膚疾患がざ瘡、酒さ、湿疹、アトピー性皮膚炎、乾癬、及び脂性肌から選択される、請求項8に記載の誘導体/使用。
【請求項17】
炎症性皮膚疾患の処置又は予防に有効であることが示されている追加の医薬剤と組み合わされた治療有効量のネラメキサン及び医薬上許容されるその塩から選択される1-アミノ-アルキルシクロヘキサン誘導体と、場合によっては、少なくとも一つの医薬上許容される担体又は賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項18】
1-アミノ-アルキルシクロヘキサン誘導体がメシル酸ネラメキサンである、請求項17に記載の医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−509288(P2012−509288A)
【公表日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−536795(P2011−536795)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【国際出願番号】PCT/EP2009/009153
【国際公開番号】WO2010/069597
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(397045220)メルツ・ファルマ・ゲゼルシヤフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンデイトゲゼルシヤフト・アウフ・アクティーン (31)
【Fターム(参考)】