説明

炎症性腸疾患の治療用製剤及び方法

炎症性腸疾患を治療するための方法及び製剤を開示する。該方法及び製剤は、非限定的に、4−アミノサリチル酸及び/又は5−アミノサリチル酸の有効濃度を腸の患部にデリバリーするための方法及び製剤を包含する。該方法及び製剤は、患部又は目的部位への薬物デリバリーを可能にする調節放出要素を含む。本発明によって治療可能な、疾患及び状態は、クローン病及び潰瘍性大腸炎を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国仮特許出願第60/499,365号(2003年9月3日出願)の優先権の恩典を主張する、該特許出願はその全体で本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、炎症性腸疾患の治療用製剤及び方法に関する。該方法及び製剤は、非限定的に、腸の患部に有効濃度の4−アミノサリチル酸及び/又は5−アミノサリチル酸をデリバリーするための方法及び製剤を包含する。該方法及び製剤は、患部への薬物デリバリーを考慮して、慣用的放出要素及び/又は調節放出要素を含むことができる。本発明の方法及び製剤によって治療可能な疾患及び状態は、クローン病と潰瘍性大腸炎を包含する。
【0003】
胃腸状態は、重大な世界的規模の健康問題を惹起する。その種類が、クローン病と潰瘍性大腸炎を含めた、ある範囲の疾患を包含する炎症性腸疾患には、合衆国において毎年ほぼ百万人が罹っている。
【0004】
腸の最も一般的な、2つの炎症状態、潰瘍性大腸炎(UC)とクローン病(CD)は、集約的に炎症性腸疾患(IBD)として知られる。これらの状態は、近位消化管(胃及び上部小腸)ではなく遠位消化管(下部小腸、大腸及び直腸)の疾患である。2つの疾患のうち、潰瘍性大腸炎が主として大腸を冒すのに対して、クローン病は遠位小腸をも冒す。
【0005】
異なる状態であっても、UCとCDの両方を治療するために、同じ薬物が共通して用いられる。これらの治療に共通して用いられる薬物は、ステロイド(例えば、ブデソニド及び他のコルチコステロイドと、例えばプレドニゾン及びヒドロコルチゾンのような副腎ステロイド)、例えばインターロイキン−10のようなサイトカイン、抗生物質、例えばアザチオプリン、6−メルカプトプリン、メトトレキセート、サイクロスポリン及び抗腫瘍壊死因子(TNF)剤(例えば、溶解性TNF受容体及び、TNFに対して誘導された抗体)のような免疫調節剤、及びさらに亜鉛のような抗炎症剤を包含する。IBDのために最も一般的に処方される作用剤は、スルファサラジン(サリチル−アゾ−スルファピリジン若しくは「SASP」)及び関連5−アミノサリチル酸(「5−ASA」)製品を包含する。
【0006】
SASPが下部消化管内で結腸細菌によって分解されて、スルファピリジン(「SP」)と5−ASAを生じることは認められており、このうちの5−ASAが主要な活性成分であると考えられる。結腸内で放出される5−ASAは吸収され難く、局所的に作用するように思われる。
【0007】
SPは大規模に吸収されて、種々な副作用を付随するので、研究者らは、IBDの治療法として5−ASAを単独で用いることを提案している。実際に、5−ASA若しくはメサラミンは、現在、IBDの一般的治療法として確立されており、この目的のために広く処方されて、用いられている。しかし、5−ASA療法はまだ、以下で詳述する副作用を包含する問題を有している。さらに、5−ASAは、その作用部位及び作用機序に関連して、低い反応及び寛解速度と、高い再発率として表わされる、最大とは言えない効力を有する。
【0008】
5−ASAの投与は、そのデリバリーに関連した幾つかの併発症によって、妨げられる。例えば、該化合物は胃液中で不安定であり、小腸からのその大規模な吸収と代謝は、治療効果を挙げる部位であり、デリバリーの好ましい部位である、消化管の遠位におけるその有効性を減ずる。理想的には、該化合物は遠位消化管に達するべきであるが、そこでは吸収されない。近位からの吸収は、吸収された薬物に関連した副作用と、該薬物の全身効果を生じる。
【0009】
既存の経口5−ASAに基づく療法は、2つの主要なカテゴリーに分類される。1つは、調節放出製剤(MR)に基づく薬物投与形の使用を含み、他方はプロドラッグに基づくものである。投与形に基づくアプローチに関しては、種々な調節放出形が開発されており、記載されている。持続/持続放出製剤と遅延放出製剤の両方は、上部消化管における5−ASA放出を制限して、その放出を遠位消化管に集中させるという意図で開発されている。
【0010】
例えば、持続放出製剤(PENTASA(登録商標))が認可されて、長年用いられている。PENTASA(登録商標)は、5−ASAを連続的に放出する、約50%は小腸で放出し、50%は大腸で放出する、そしてその認可されたラベル形で20〜30%の全身吸収を報告している。この吸収は、遠位消化管からの何らかの低レベルの吸収の他に、この製剤の近位放出と吸収特徴を表している。(PENTASA(登録商標)に関するPDRデータシート参照)。米国特許第4,496,553号、第4,880,794号、第4,980,173号及び第5,041,431号は全て、5−ASA又はその塩若しくはエステルの持続放出形に関する。
【0011】
米国特許第5,840,332号は、薬物含有コア上の水不溶性被膜中に埋封された粒状水不溶性物質の封入によって、腸における5−ASAの望ましい放出位置に達するGIデリバリー系を述べている。米国特許第6,004,581号は、特に小腸及び大腸への、5−ASAの調節かつ標的放出を可能にする、多粒状の球状顆粒含有製剤を述べている。しかし、これらのケースの全てにおいて、最大局所効力を制限し、そして5−ASAの全身吸収に関連した重大な副作用を生じる近位放出の根本的な問題は、克服されていない。
【0012】
望ましい放出を達成するための、他のアプローチは、pH依存性被膜に基づいている。例えば、腸溶性被覆商品、ASACOL(登録商標)は、7を超えるpH値で溶解するpH依存性アクリル系バリヤー被膜に基づいて、遠位5−ASAデリバリーを達成している。この種の製剤の、他の例は、米国特許第5,541,170号と第5,541,171号に記載されており、これらの特許は、胃腸条件下(pH7未満)では不溶性であるが、結腸(7を超えるpH)では溶解性である被膜によって、大腸へのデリバリーを達成する、5−ASA又はその塩若しくはエステルの固体投与形を述べている。
【0013】
これらのような製剤の欠点は、局所的な消化管pHが人によってかなり異なり、また食物の存在又は他の条件によっても影響されうることである。実際に、IBDのような疾患は、それ自体で、腸のpHを変化させることが可能である。ASACOL(登録商標)の添付文書は、全身吸収が28%程度であると述べている。吸収は一般に小腸においてのみ生じるので、比較的高い全身吸収は、ASACOL(登録商標)の放出部位にかなりの変動性があることを意味する。
【0014】
一般に、腸の特定の位置に5−ASA放出の目標を定めるためのpH依存性系は、多くの理由から信頼することができない。例えば、早期放出とそれに伴う全身吸収は、臨界トリガpH(critical triggering pH)以上の近位腸pHに起因する可能性がある。或いは、患部から遠位における臨界pHの発生に起因して、不完全な又は最小の放出が生じる可能性がある。Nugent et al., Gut 48 pages 571-577 (2001)は、pH依存性の遠位消化管デリバリー・アプローチの潜在的な問題を再検討して、腸pHの被験者間の変化の存在を指摘している。これらの問題は、5−ASAのデリバリーの目標を遠位消化管に定めることの改良の提案を生じている。
【0015】
米国特許第5,716,648号は、pH依存性の溶解性被膜に基づくばかりでなく、「正常以下の腸pH」を有する患者を補正しようと試みて、pH調節性アルカリ性物質をも含む経口組成物を述べている。他のアプローチには、結腸によって酵素分解される糖含有ポリマーを含む、非pH依存性の結腸薬物デリバリー系に一般的に関する米国特許第5,866,619号に記載されるアプローチが包含される。他の例は、米国特許第6,506,407号によって提供される、この特許は、腸内菌による酵素分解時に有機酸を生じる糖基質を包含するpH依存性外部被膜を含み、該有機酸がその後に酸溶解性内部被膜を溶解する結腸特異的な薬物放出系を一般的に述べている。
【0016】
さらに他の例は、被膜破損の影響を減ずるための多重pH依存性被膜の使用を述べている米国特許出願第2002/0098235号に記載されている。米国特許出願第2001/0055616号は、非ゲル形成性の薬物含有ポリマーマトリックス・コアからの放出のターゲットを定めるためにpH依存性腸溶性被膜を用いる、腸管状態を治療するためのペレット製剤を述べている。米国特許出願第2001/0036473号は、腸及び結腸デリバリーのためのヒドロキシプロピルメチルセルロース・カプセル上のpH依存性被膜を述べている。そして、米国特許出願第2001/0026807号は、結腸デリバリーを達成するための澱粉カプセル上の、pH依存性物質、酸化還元−感受性物質及び細菌分解を受け易い物質を含む、種々な被膜を述べている。
【0017】
これらの資料中の提案された改良の記載にも拘らず、被験者間での腸pHの可変性の害を受けない結腸5−ASAデリバリー系は、まだ商業的に入手可能ではない。このように、5−ASAデリバリーの特有の困難性は、商業的に受容可能な方法でなお解決すべきである。
【0018】
5−ASAに関連するが、5−ASAよりも安定である化合物は、パラ−アミノサリチル酸としても知られる4−ASAである。5−ASAと同様に、4−ASAはIBDの治療に効果的である、但し、4−ASAはこのような用途のために経口形で今までは認可されていない。4−ASAは、ある一定のヨーロッパの国では直腸浣腸剤としての使用に関して認可されている、即ち、NorgineによるQUADRAS(登録商標)。
【0019】
4−ASAは、結核(TB)の治療法として、1940年代から経口製剤として用いられている。パラ−アミノサリチル酸は、IBDの治療において5−ASAを凌駕するある一定の利点を有する。パラ−アミノサリチル酸は、その高い水性安定性の他に、伝えられるところでは、腎毒性が無いことを示しており、TBの治療における広範囲な経験と8g程度の一日量での使用はその安全性を実証している(Ginsberg et al., Gastroenterology 102, 448-452, 1998)。
【0020】
TBに用いるための認可された形として、4−ASAは、一般に、胃の中での薬物の分解を最小にするために、腸溶性製剤として提示されている。TBに用いるための4−ASAの調節放出経口投与形も、記載されている。4−ASAの吸収はTB治療に重要であるので、このような製剤は4−ASA吸収を最大にするように設計されている。
【0021】
5−ASAによる事情とは異なり、TBに用いるための4−ASAの調節放出経口投与形はまだ広く記載されてはいない。米国特許第5,716,648号は、IBDの治療における4−ASAの経口製剤を記載している。しかし、この資料は、特に、正常以下の消化管pHに対処するためのpH調節性アルカリ性物質を含む経口薬剤組成物に関するものである。
【0022】
調節放出5−ASA製品によってIBDをターゲッティングする他に、自己ターゲッティングするプロドラッグによって、IBDがターゲッティングされている。例えば、アゾ結合によって連結されている2分子の5−ASA(5,5’−アゾ−ビスサリチル酸)から形成されるオルサラジンは、自然に結腸をターゲッティングする。これは胃の条件中で安定であり、したがって胃をバイパスすることができ、該消化管から完全な状態で最少に吸収される(2.4%)。しかし、これは、結腸細菌の作用によって、結腸中で2分子の5−ASAに迅速に転化される。この機序は、5−ASAを所望の作用部位に本質的にデリバリーする。オルサラジンの市販形、DIPENTUM(登録商標)は、単純な非調節放出粉末充填カプセルである。
【0023】
この製剤に伴う問題は、投与量全体が結腸に入った直後に腸内酵素の作用に暴露されることである。したがって、結腸に入った直後に、オルサラジンの全てが切断されて、5−ASAになって、ボラス投与量を与えて、近位結腸に高濃度部位を生じることになる。かなり実質的に(約20%)吸収された後に、次に、該ボラス投与量の残部は、それが何処に向けられるかに関して何ら制御されることなく、結腸全体に拡散されるに任される。
【0024】
オルサラジンは結腸に自己ターゲッティングするので、オルサラジン又は他のビス−アゾASAプロドラッグ形の調節放出形は今まで殆ど重視されていなかった。米国特許出願第2002/0192282号は、オルサラジンを含めた、種々な薬物を結腸に放出するための多層状薬剤製剤を述べており、これはpH依存性の外部被膜層を包含している。このような製剤に伴う問題は、他のpH依存性製剤に関して上述したものである:即ち、該消化管のpHは潜在的に変動性であるので、これらの系は、遠位消化管のpH値が臨界値未満であるために、患部に適当に放出することができない。
【0025】
米国特許第4,374,932号は、胃及び小腸における5,5’−アゾ−ビスサリチル酸存在の吸収を回避するように設計された、5,5’−アゾ−ビスサリチル酸の薬物デリバリー系を述べており、二酸系の5,5’−アゾ−ビスサリチル酸とアニオン交換樹脂とのイオン交換複合体を用いている。しかし、慣用的な粉末カプセル剤からのオルサラジンの吸収は、2.4%のみの吸収を既に生じているに過ぎないので、この製剤は重要な治療利益を与えていない。
【0026】
上記を考慮すると、胃腸管の患部に治療的に有効な濃度で4−ASA及び/又は5−ASAをデリバリーするために用いることができる方法及び薬剤製剤の必要性は、当該技術分野に依然として残っている。本発明は、当該技術分野で確認されたこの問題を解決して、該方法と製剤を提供する。
【0027】
本発明は、炎症性腸疾患を治療するための方法と製剤を提供することで有利である。
【0028】
本発明は、胃腸管の患部に有効濃度の4−ASA及び/又は5−ASAを最少の全身吸収でデリバリーするという利点を有する。
【0029】
本発明は、とりわけ、4,4’−アゾ−ビスサリチル酸二ナトリウムに関する。本発明はまた、4,4’−アゾ−ビスサリチル酸、又はその製薬的に受容される塩と、少なくとも1種類の製薬的に受容される賦形剤を含む薬剤組成物に関する。幾つかの実施態様では、該その製薬的に受容される塩とは4,4’−アゾ−ビスサリチル酸二ナトリウムを含む。幾つかの実施態様では、該製薬的に受容される賦形剤は、キャリヤー、充填剤、増量剤、結合剤、保湿剤、崩壊剤、溶解遅延剤、吸収促進剤、湿潤剤、吸収剤、滑沢剤、安定剤、着色剤、緩衝剤、分散剤、保存剤、有機酸及び有機塩基から選択される。
【0030】
本発明はまた、4−アミノサリチル酸、5−アミノサリチル酸、それらの製薬的に受容される塩及びそれらのプロドラッグから選択されるサリチレート及び/又はサリチル酸と、少なくとも1種類の製薬的に受容される賦形剤を含み、調節放出薬剤組成物として製剤化される薬剤組成物であって、周囲pHに依存して、放出の遅延を示す薬剤組成物に関する。
【0031】
該薬剤組成物は、米国薬局方II型装置(パドル)において37℃及び50rpm、0.01N HCl中で2時間試験し、続いて、試験の残りに関してはpH6.8緩衝剤中で試験した場合に、下記溶解プロフィル:1時間(0.01N HCl中):約0〜約10%薬物放出;2時間(0.01N HCl中):約0〜約10%薬物放出;1時間(pH6.8中):約10〜約35%薬物放出;2時間(pH6.8中):約20〜約65%薬物放出;4時間(pH6.8中):約55〜約95%薬物放出;6時間(pH6.8中):約90〜約100%薬物放出;及び12時間(pH6.8中):約90%以上の薬物放出を示す。幾つかの実施態様では、該組成物は、米国薬局方II型装置(パドル)において37℃及び50rpm、0.01N HCl中で2時間試験し、続いて、試験の残りに関してはpH6.8緩衝剤中で試験した場合に、下記溶解プロフィル:1時間(0.01N HCl中):約0〜約5%薬物放出;2時間(0.01N HCl中):約0〜約5%薬物放出;1時間(pH6.8中):約15〜約30%薬物放出;2時間(pH6.8中):約25〜約60%薬物放出;4時間(pH6.8中):約60〜約90%薬物放出;6時間(pH6.8中):約90〜約100%薬物放出;及び12時間(pH6.8中):約95%以上の薬物放出を示す。
【0032】
本発明はまた、4−アミノサリチル酸、5−アミノサリチル酸、それらの製薬的に受容される塩及びそれらのプロドラッグから選択されるサリチレート及び/又はサリチル酸と、少なくとも1種類の製薬的に受容される賦形剤を含み、調節放出薬剤組成物として製剤化される薬剤組成物であって、周囲pHに依存しない薬物放出プロフィルを示す薬剤組成物にも関する。
【0033】
該組成物が、試験のために米国薬局方II型装置(パドル)において37℃及び50rpm、pH6.8緩衝剤中で試験した場合に、下記溶解プロフィル:1時間:約10%以下の薬物放出;2時間:約0〜約35%薬物放出;3時間:約10〜約60%薬物放出;4時間:約20〜約60%薬物放出;6時間:約40〜約80%薬物放出;及び12時間:約75〜約100%薬物放出を示すことが可能である。幾つかの実施態様では、該組成物は、試験のために米国薬局方II型装置(パドル)において37℃及び50rpm、pH6.8緩衝剤中で試験した場合に、下記溶解プロフィル:1時間:約5%以下の薬物放出;2時間:約0〜約25%薬物放出;3時間:約15〜約30%薬物放出;4時間:約40〜約50%薬物放出;6時間:約60〜約75%薬物放出;及び12時間:約90〜約100%薬物放出を示す。
【0034】
本発明の調節放出組成物は、即時放出コアと半透性膜を含むことができる。幾つかの実施態様では、本発明の調節放出組成物は、調節放出マトリックス・コアと半透性膜を含むことができる。幾つかの実施態様では、サリチレート及び/又はサリチル酸は、4−アミノサリチル酸及び5−アミノサリチル酸、又はそれらの少なくとも1種類の製薬的に受容される塩若しくはエステルから選択される。幾つかの実施態様では、該組成物は、4−アミノサリチル酸及び5−アミノサリチル酸、又はそれらの少なくとも1種類の製薬的に受容される塩若しくはエステルを含む。幾つかの実施態様では、該サリチレート及び/又はサリチル酸は、5,5’−アゾ−ビスサリチル酸、4,5’−アゾ−ビスサリチル酸、4,4’−アゾ−ビスサリチル酸、及びそれらの製薬的に受容される塩から選択される。
【0035】
本発明はまた、炎症性腸疾患の治療方法であって、このような治療を必要とする対象に有効量の4,4’−アゾ−ビスサリチル酸を投与することを含む方法を包含する。該方法は、調節放出製剤中で4,4’−アゾ−ビスサリチル酸を投与することを含むことができる。幾つかの実施態様では、調節放出製剤は、遅延放出及び持続放出特性を有する放出プロフィルを示す。
【0036】
本発明の上記及び他の目的、特徴及び利点は、本発明の種々な実施態様についての以下のより具体的な説明から明らかになるであろう。上記の一般的説明と、以下のより詳細な説明の両方が例示的かつ説明的であるに過ぎず、特許請求される本発明を制限するものではないことを理解すべきである。
【0037】
本発明は、炎症性腸疾患を治療するための製剤及び方法に関する。「炎症性腸疾患」なる用語は、非限定的に、潰瘍性大腸炎とクローン病を包含する。本発明による治療又は予防に対して考えられる他の疾患は、非潰瘍性大腸炎と、結腸及び/又は直腸の癌腫、ポリープ及び/又は嚢胞を包含する。これらの疾患の全ては、本明細書で用いる「炎症性腸疾患」なる用語の範囲内に入るが、本発明は、上記メンバーの各々を包含することを必要としない。したがって、例えば、本発明は、他のメンバーの全てを除外して、クローン病の治療を目的とすることができる;又は他のメンバーの全てを除外して、潰瘍性大腸炎の治療を目的とすることができる;或いは、いずれの他の、単独の疾患若しくは状態を又は疾患若しくは状態の組み合わせを除外して、単独の疾患若しくは状態に又は疾患若しくは状態の組み合わせを目的とすることができる。
【0038】
本発明の製剤及び方法は、腸管の所望の部位又は患部、例えば遠位小腸及び/又は結腸に有効濃度の4−ASA及び/又は5−ASAをデリバリーすることを可能にする。本発明は、遅延−及び/又は持続−放出特徴を示す製剤を含めて、4−ASA及び/又は5−ASAの調節放出製剤を包含する。
【0039】
他の実施態様では、製剤は、4−ASA及び/又は5−ASAの「プロドラッグ」を含む。本明細書で用いる限り、「プロドラッグ」なる用語は、投与後のある時点で活性剤を生じる、いずれの化合物又は組成物をも意味する。したがって、例えば、4−ASAのプロドラッグは、4−ASAを生じるプロドラッグであり;5−ASAのプロドラッグ若しくは5−ASAプロドラッグは、5−ASAを生じるプロドラッグである。該プロドラッグ自体が不活性である必要性はなく−場合によっては、該プロドラッグが活性であることができ、さらになお、異なる活性剤を生じることも可能である。また、プロドラッグが1つのみの活性剤を生じる必要性はなく−プロドラッグは2つ以上の活性剤を生じることができ、生じる活性剤は同じものでも、異なるものでもよい。本発明によって有用なプロドラッグの例は、非限定的に、結腸中で5−ASAを生じるスルファサラジンと、アゾ結合によって連結された2分子の5−ASA、即ち、5,5’−アゾ−ビスサリチル酸を含み、2分子の5−ASAを生じるオルサラジンを包含する。
【0040】
上記で考察したオルサラジンは、胃の条件下で安定であり、完全な状態で該消化管から最少に吸収される(2.4%)という利点を有する。オルサラジンは、結腸において結腸細菌の作用によって2分子の5−ASAに迅速に転化される。これは、結腸においてスルファサラジンから5−ASAが形成されるのと同じ機構である。
【0041】
本発明の調節放出製剤は、例えばオルサラジンの放出を、オルサラジンからの5−ASAの切断が緩慢な、制御された形式で生じるように、調節することを目的とする。この新しいアプローチの利点は、このアプローチが結腸細菌の作用と低い一般的酸化還元電位とによるオルサラジンから5−ASAへの迅速でかつ大規模な転化を減じることである。DIPENTUM(登録商標)(オルサラジンの商業的に入手可能な形)は、遠位消化管に高い局部濃度を生じて、5−ASA又はそのアセチル化形の全身吸収(約20%)を生じるが、本発明の調節放出製剤は、該プロドラッグが、転化を受けて、それによって活性部分を形成するようになる速度を調節することによって、これらの問題を克服して、より安全で、より有効な形を提供する。
【0042】
本発明は、オルサラジンの他に、米国特許第4,591,584号に記載されている4,5’−アゾ−ビスサリチル酸の使用にも関する、4,5’−アゾ−ビスサリチル酸は遠位消化管中で4−ASAと5−ASAの両方に転化される。IBDの治療薬として今までに記載されていない4,4’−アゾ−ビスサリチル酸も本発明の範囲内に包含される。この形は、排他的に4−ASAに転化され、非調節放出形と調節放出形の両方で投与することができる。5,5’−アゾ−ビス、5,4’−アゾ−ビス、4,4’−アゾ−ビス、及びこれらの組み合わせの調節放出製剤も、本発明の範囲内である。実際に、発明者は、4−ASA及び/又は5−ASAを生じる、いずれのプロドラッグの使用も明らかに考慮している。
【0043】
これに関して、薬物デリバリーのための治療用アゾ化合物に関する米国特許第6,602,915号に言及する。この特許は、アゾ連結4−ASAのポリマー及びアゾ連結5−ASAのポリマーを含めた、アゾ化合物のポリマーに一般的に関する。このようなポリマーの使用と、それらを含有する製剤は、本発明の範囲内である。
【0044】
バルサラジドは、5−ASAの商業的に入手可能なプロドラッグであり、結腸において切断されて、5−ASAを、殆ど吸収されない不活性部分、4−アミノベンゾイル−β−アラニンと共に放出する。米国特許第6,458,776号は、結腸内でのアゾ結合の還元時に、5−ASAと非吸収性抗生物質の両方を放出する、5−ASAの誘導体を述べている。これらのプロドラッグ化合物も本発明の範囲内であり、本発明によって調節放出製剤として製剤化することができる。
【0045】
実際に、本発明は、本明細書に記載するいずれの特定のアゾ−ビス化合物にも限定されない。本発明は、4−ASA及び/又は5−ASAのいずれかを生じる、任意のアゾ−ビス化合物の使用及び製剤に及ぶ。任意のこのようなアゾ−ビス化合物の調節放出製剤が具体的に考えられる。したがって、本発明に関連して本明細書で用いる限り、「薬物」なる用語は、本発明によってIBD又は他の疾患の治療に有用な化合物を意味し、非限定的に、SASP、5−ASA及び/又は4−ASAを包含する;「プロドラッグ」なる用語は、このような薬物を生じる、いずれの化合物をも意味し、非限定的に、オルサラジン、バルサラジン及び/又は、このような薬物(単数又は複数)を生じる、任意の他のアゾ含有化合物を包含する。
【0046】
本明細書で用いる限り、「調節放出」製剤又は投与形は、該製剤から薬物の所望の放出を達成する薬剤製剤を包含する。調節放出製剤は、有効成分が目的ターゲットに暴露される形式を調節するように設計することができる。例えば、薬物のデリバリーを、盲腸から始まり、上行結腸、横行結腸及び下行結腸を連続的に通って、S字結腸で終わる遠位大腸中で完全に集中させるように設計することができる。或いは、例えば、活性剤のデリバリーを、十二指腸から始まり、回腸で終わる近位小腸中に集中させるように設計することができる。さらに他の実施態様では、調節放出製剤は、活性剤を十二指腸内で放出し始め、横行結腸内でそれらの放出を終了するように設計することができる。可能性と組み合わせは無数にあり、これらの実施例に限定されないことは明らかである。
【0047】
「調節放出」なる用語は、「持続放出」及び「遅延放出」製剤、並びに持続放出と遅延放出の両方の特徴を有する製剤を包含する。「持続放出」製剤は、薬物が所望の部位に放出される又はターゲッティングされる期間を延長することができる。「遅延放出」製剤は、薬剤学的に活性な化合物の放出を指定期間遅延させるように設計することができる。このような製剤を本明細書では、「遅延放出」又は「遅延開始」製剤若しくは投与形と呼ぶ。本発明の調節放出製剤は、遅延放出と持続放出の両方を示す製剤、例えば、一定期間後に又は物理化学的変化が生じた後に初めて放出を開始して、その後持続した時間にわたって放出を続ける製剤を包含する。
【0048】
本明細書で用いる限り、「即時放出」製剤なる用語は、有効成分の約50%より多くが約2時間未満に放出されるような製剤を表すことを意味する。このような製剤はまた、本明細書では、「慣用的製剤」とも呼ばれる。
【0049】
本発明の製剤は、あらゆる形のIBDの治療に一般的であり、したがって、それらの中身を遠位小腸と大腸の両方にターゲッティングする製剤を包含するように意図される。本発明の範囲内の他の製剤は、特定の疾患を治療するためにより具体的に設計されている製剤を包含する。例えば、潰瘍性大腸炎を治療するための製剤は、その中身を結腸に完全にデリバリーするように設計することができる。
【0050】
本発明の製剤は、多重単位又は単一単位製剤として存在することができる。本明細書で用いる「多重単位(multi-unit)」なる用語は、複数個の個別の若しくは凝集した粒子、ビーズ、ペレット、顆粒、錠剤又はこれらの混合物を、それらのサイズ、形状又は形態学に関係なく、意味する。単一単位製剤は、例えば、錠剤、キャプレット及びピルを包含する。
【0051】
本発明の方法と製剤は、調節放出性と即時放出性を示す成分のあらゆる可能な組み合わせを包含するように意図される。例えば、本発明の製剤及び/又は方法は、持続放出性と即時放出性を、又は遅延放出性と即時放出性の両方を、又は持続放出性と遅延放出性の両方を、又は3性質の全ての組み合わせを示す成分を含有することができる。例えば、即時放出性成分と持続放出性成分の両方を含む多粒子状製剤をカプセル内で組み合わせることができ、このカプセルを次に腸溶性被膜で被覆して、遅延放出効果を与えることができる。或いは、例えば、遅延−及び持続−放出キャプレットは、溶解に遅延を生じるように腸溶性被膜で被覆されたキャプレットとして結合剤で一緒に維持された、複数個の個別持続放出性粒子を含むことができる。
【0052】
放出に遅延又は延期を生じるような、放出速度の調節はかなり多くの方法で達成することができる。機序は腸内の局部pHに依存することも依存しないことも可能であり、そして、局部酵素活性に基づいて、所望の効果を得ることもできる。調節放出製剤の例は、当該技術分野で知られており、例えば、米国特許第3,845,770号;第3,916,899号;第3,536,809号;第3,598,123号;第4,008,719号;第5,674,533号;第5,059,595号;第5,591,767号;第5,120,548号;第5,073,543号;第5,639,476号;第5,354,556号;及び第5,733,566号に記載されている。
【0053】
使用に適した、幾つかの調節放出投与形を以下で説明する。このような投与形のより詳細な考察は、例えば、The Handbook of Pharmaceutical Controlled Release Technology, D. L. Wise (ed.), Marcel Decker, Inc., New York (2000)に、及びTreatise on Controlled Drug Delivery ; Fundamentals, Optimization, and Applications, A. Kydonieus (ed.), Marcel Decker, Inc., New York, (1992)にも見出すことができ、これらの各々の関連する内容は、このために、本明細書に援用される。調節放出製剤の例は、非限定的に、膜調節系、マトリックス系、浸透圧系及びイオン交換系を包含する。これらの全ては、上記で暗示したような、単一単位若しくは多重単位投与形の形態であることができる。
【0054】
膜調節持続放出投与形では、半透性膜が、問題の活性物質を含有する製剤を囲むことができる。半透性膜は、水と溶質の両方に対して多かれ少なかれ透過性である膜を包含する。この膜は水不溶性及び/又は水溶性ポリマーを包含することができ、pH依存性及び/又はpH非依存性の溶解性特徴を示すことができる。これらのタイプのポリマーは以下で詳述する。一般に、例えば、膜の組成によって判断することができる、ポリマー膜の特徴が、該投与形からの放出の性質を決定する。
【0055】
マトリックスに基づく投与形
【0056】
マトリックス型系は、水溶性ポリマー(例えば、親水性ポリマー)又は水不溶性ポリマー(例えば、疎水性ポリマー)のいずれかを混合した、問題の活性物質を含む。一般に、調節放出投与形に用いられるポリマーの性質は、放出の機序に影響を及ぼす。例えば、親水性ポリマーを含有する投与形からの有効成分の放出は、表面拡散及び/又は侵食の両方を介して進行することができる。製薬的系からの放出機序は当業者に周知である。マトリックス型系はモノリシック単位又は多重単位であることも可能であり、水溶性及び/又は水不溶性ポリマー膜(この例は上述したものである)で被覆することができる。
【0057】
本発明のマトリックス製剤は、例えば、直接圧縮成形又は湿式造粒を用いることによって製造することができる。次に、本発明によって、上述したような機能性被膜を塗布することができる。さらに、機能性被膜を塗布する前に、バリヤー又はシーラント層をマトリックス錠剤コア上に塗布することができる。該バリヤー又はシーラント層は、有効成分と相互作用する可能性がある機能性被膜から有効成分を分離するという目的を果たすことができる、又は水分が有効成分に接触するのを防止することができる。バリヤーとシーラントについての詳細は、以下に記載する。
【0058】
本発明による、マトリックスに基づく投与形では、典型的に1種類以上の水溶性ポリマー及び/又は1種類以上の水不溶性ポリマーを含むポリマー・マトリックス内に、薬物及び/又はプロドラッグと任意の製薬的に受容される賦形剤(単数又は複数)が分散されている。該投与形から拡散及び/又は侵食によって薬物が放出されうる。Wise と Kydonieusは、このようなマトリックス系を詳細に述べている。
【0059】
適当な水溶性ポリマーは、非限定的に、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、又はポリエチレングリコール、及び/又はこれらの混合物を包含する。
【0060】
適当な水不溶性ポリマーはさらに、非限定的に、エチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、三酢酸セルロース、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(メタクリル酸エチル)、ポリ(メタクリル酸ブチル)、ポリ(メタクリル酸イソブチル)、及びポリ(メタクリル酸ヘキシル)、ポリ(メタクリル酸イソデシル)、ポリ(メタクリル酸ラウリル)、ポリ(メタクリル酸フェニル)、ポリ(アクリル酸メチル)、ポリ(アクリル酸イソプロピル)、ポリ(アクリル酸イソブチル)、ポリ(アクリル酸オクタデシル)、ポリ(エチレン)、低密度ポリ(エチレン)、高密度ポリ(エチレン)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(テレフタル酸エチレン)、ポリ(ビニルイソブチルエーテル)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(塩化ビニル)、又はポリウレタン、及び/又はこれらの混合物を包含する。
【0061】
適当な製薬的に受容される賦形剤は、非限定的に、キャリヤー(例えば、クエン酸ナトリウムとリン酸二カルシウム);充填剤若しくは増量剤(例えば、ステアレート、シリカ、石膏、澱粉、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、タルク及びケイ酸);結合剤(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース及びアラビアゴム);保湿剤(例えば、グリセロ−ル);崩壊剤(例えば、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモ及びタピオカ澱粉、アルギン酸、ある一定のシリケート、EXPLOTABTM、クロスポビドン及び炭酸ナトリウム);溶解遅延剤(例えば、パラフィン);吸収促進剤(例えば、第4級アンモニウム化合物);湿潤剤(例えば、セチルアルコールとグリセロール・モノステアレート);吸収剤(例えば、カオリンとベントナイト粘土);滑剤(例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール及びラウリル硫酸ナトリウム);安定剤(例えば、フマル酸);着色剤;緩衝剤;分散剤;保存剤;有機酸;及び有機塩基を包含する。上記賦形剤は例としてのみ挙げたのであり、あらゆる可能な選択を網羅するという意味ではない。さらに、多くの賦形剤は2つ以上の役割若しくは機能を有することができる、又は2つ以上のグループに分類されることが可能である;該分類は単なる説明に過ぎず、特定の賦形剤の如何なる使用をも制限することは意図しない。
【0062】
1例では、マトリックスに基づく投与形は、薬物若しくはプロドラッグ、充填剤(例えば、澱粉、ラクトース又は微結晶セルロース(AVICELTM));結合剤/制御放出ポリマー(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース又はポリビニルピロリドン);崩壊剤(例えば、EXPLOTABTM、クロスポビドン又は澱粉);滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム又はステアリン酸);界面活性剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム又はポリソルベート);及びグライダント(例えば、コロイド状二酸化ケイ素(AEROSILTM)又はタルク)を含むことができる。
【0063】
本発明の製剤におけるポリマーの量と種類、及び水溶性ポリマーの水不溶性ポリマーに対する比率は一般に、以下で説明するように、薬物又はプロドラッグの望ましい放出プロフィルを達成するように選択される。例えば、水溶性ポリマーの量に比べて水不溶性ポリマーの量を増加させることによって、薬物の放出を遅延させる又は緩慢にすることができる。このことは、一部は、ポリマー・マトリックスの不透性上昇のためであり、場合によっては、胃腸管を通過中の侵食速度低下のためである。
【0064】
マトリックスに基づく投与形は、当然、例えば半透性又は選択的透過性膜のような拡散制御膜で被覆することができる。実際に、本明細書に記載する製剤成分の多くは、例えば、即時放出コアと拡散制御膜との組み合わせ、又はマトリックス・コアと拡散制御膜との組み合わせのように、組み合わせて用いることができる。
【0065】
浸透圧ポンプ投与形
【0066】
他の実施態様では、本発明の調節放出製剤を浸透圧ポンプ投与形として提供する。浸透圧ポンプ投与形においては、薬物若しくはプロドラッグと、任意に1種類以上の浸透性賦形剤を含有するコアが、典型的には、少なくとも1つのオリフィスを有する選択的透過性膜によって覆われる。該選択的透過性膜は一般に水には透過性であるが、薬物には不透過性である。この系が体液に暴露されると、水が選択的透過性膜を通って、薬物と任意の浸透性賦形剤を含有するコア中に入る。浸透圧は投与形内で上昇する。その結果、薬物は、選択的透過性膜を横切る浸透圧を等しくしようとして、オリフィス(単数又は複数)を通って放出される。
【0067】
より複雑なポンプでは、投与形はコア内に2つの内部区画を含有することができる。第1区画は薬物を含有し、第2区画はポリマーを含有する、該ポリマーは水性流体と接触すると膨潤する。摂取後に、このポリマーは膨潤して、薬物含有区画に入って、薬物が占める容積を縮小して、それによって薬物を持続した時間にわたって制御された速度でデバイスから押し出す。このような投与形は、ゼロ次放出プロフィルが望ましい場合に、しばしば用いられる。
【0068】
浸透圧ポンプは当該技術分野で周知である。例えば、米国特許第4,088,864号、第4,200,098号及び第5,573,776号(これらの各々は、このために本明細書に援用される)は浸透圧ポンプ及びそれらの製造方法を記載している。本発明の浸透圧ポンプは、浸透活性剤(osmotically active agent)と組み合わせた、浸透的に活性な薬物(osmotically active drug)又は浸透的に不活性な薬物(osmotically inactive drug)の錠剤を圧縮成形し、次に、該錠剤を選択的透過性膜で被覆することによって形成することができる、該膜は外部水性流体には透過性であるが、薬物及び/又は浸透剤に対しては不透過性である。
【0069】
選択的透過性膜壁に、1つ以上のデリバリー・オリフィスを穿孔することができる。或いは、該壁に浸出性孔形成物質を組み込むことによって、該壁に1つ以上のオリフィスを形成することができる。操作において、外部水性流体は該選択的透過性膜壁を通って吸収されて、薬物と接触して、該薬物の溶液又は懸濁液を形成する。次に、新鮮な流体が選択的透過性膜を通って吸収されるにつれて、この薬物溶液又は懸濁液はオリフィスからポンプ排出される。
【0070】
選択的透過性膜のための典型的な物質は、浸透膜及び逆浸透膜に有用であると当技術分野において知られた選択的透過性ポリマー、例えばセルロース・アシレート(cellulose acylate)、セルロース・ジアシレート(cellulose diacylate)、セルロース・トリアシレート(cellulose triacylate)、酢酸セルロース、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、酢酸寒天(agar acetate)、三酢酸アミロース、酢酸βグルカン、アセトアルデヒド・ジメチルアセテート(acetaldehyde dimethyl acetate)、酢酸セルロース・エチルカルバメート(cellulose acetate ethyl carbamate)、ポリアミド、ポリウレタン、スルホン化ポリスチレン、酢酸フタル酸セルロース、酢酸セルロース・メチルカルバメート、酢酸コハク酸セルロース、酢酸セルロース・ジメチルアミノアセテート、酢酸セルロース・エチルカルバメート、酢酸セルロース・クロルアセテート、ジパルミチン酸セルロース、ジオクタン酸セルロース、ジカプリル酸セルロース、セルロース・ジペンタネート(cellulose dipentanate)、酢酸吉草酸セルロース、酢酸コハク酸セルロース、プロピオン酸コハク酸セルロース、メチルセルロース、酢酸p−トルエンスルホン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、軽度に架橋したポリスチレン誘導体、架橋ポリ(スチレンスルホン酸ナトリウム)、ポリ(ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロリド)、酢酸セルロース、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース及び/又はこれらの混合物を包含する。
【0071】
ポンプに用いることができる浸透剤は、投与後にデバイスに侵入する流体中に典型的に溶解して、外部流体に対して選択的透過性膜を横切る浸透圧勾配を生じる。適当な浸透剤は、非限定的に、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム、塩化リチウム、硫酸カリウム、炭酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、硫酸リチウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、D−マンニトール、尿素、ソルビトール、イノシトール、ラフィノース、スクロース、グルコース、例えばセルロースポリマーのような親水性ポリマー及び/又はこれらの混合物を包含する。
【0072】
上述したように、浸透圧ポンプ投与形は、膨潤性ポリマーを含有する第2区画を含有することができる。適当な膨潤性ポリマーは、典型的に、水及び/又は水性生体流体と相互作用し、該水及び/又は該流体はこれらのポリマーを平衡状態になるまで膨潤又は膨張させる。受容されるポリマーは水及び/又は水性生体流体中で膨潤して、このような吸収された流体のかなりの部分をそれらのポリマー構造中に保持して、投与形内の静水圧を高める能力を示す。該ポリマーは非常に高度に膨潤又は膨張して、通常、2〜50倍の体積増加を示す。ポリマーは架橋されていなくても、架橋されていてもよい。1実施態様では、該膨潤性ポリマーは親水性ポリマーである。
【0073】
適当なポリマーは、非限定的に、30,000〜5,000,000の分子量を有するポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート);κ−カラゲナン;10,000〜360,000の分子量を有するポリビニルピロリドン;アニオン性及びカチオン性ヒドロゲル;高分子電解質錯体;低量のアセテートを有し、グリオキサール、ホルムアルデヒド若しくはグルタルアルデヒドによって架橋され、200〜30,000の重合度を有するポリ(ビニルアルコール);メチルセルロース、架橋寒天及びカルボキシメチルセルロースを含む混合物;スチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン若しくはイソブチレンによって微粉状無水マレイン酸の分散系を形成することによって製造される水不溶性、水膨潤性コポリマー;N−ビニルラクタムの水膨潤性ポリマー;及び/又は上記いずれかの混合物を包含する。
【0074】
本明細書で用いる“オリフィス”なる用語は、投与形から薬物を放出するために適した手段及び方法を含む。この表現は、機械的手段によって選択的透過性膜に穿孔されている、1つ以上の開口又はオリフィスを包含する。或いは、該選択的透過性膜に例えばゼラチンプラグのような侵食性要素を組み込むことによっても、オリフィスを形成することができる。このような場合には、該選択的透過性膜の孔は、薬物の通過のための“通路”を形成する。このような“通路”製剤は、例えば、米国特許第3,845,770号及び第3,916,899号に記載されており、これらの特許の関連する開示はこのために本明細書に援用される。
【0075】
本発明によって有用な浸透圧ポンプは、既知技術によって製造することができる。例えば、薬物とその他の成分を一緒に粉砕して、所望の寸法(例えば、第1区画に対応する)を有する固体にプレスすることができる。次に、膨潤性ポリマーを形成して、薬物と接触させて配置し、両方を選択的浸透剤で囲む。必要に応じて、薬物成分とポリマー成分とを一緒にプレスしてから、選択的透過性膜を適用することができる。該選択的透過性膜は任意の適当な方法によって、例えば、成形、吹き付け又は浸漬によって適用することができる。
【0076】
膜調節投与形
【0077】
本発明の調節放出製剤はさらに、膜調節製剤(membrane-modified formulation)として提供することもできる。本発明の膜調節製剤は、モノリシック(例えば、錠剤)型又は多重単位(例えば、ペレット)型であることができる迅速放出コア(rapid release core)を用意して、該コアを膜で被覆することによって製造することができる。次に、膜調節コアを機能性被膜でさらに被覆することができる。膜調節コアと機能性被膜との間に、バリヤー又はシーラントを適用することができる。膜調節投与形の詳細は以下に記載する。
【0078】
例えば、薬物又はプロドラッグは、多粒子状膜調節製剤として提供することができる。薬物又はプロドラッグを約0.4〜約1.1mm又は約0.85〜約1mmの範囲内の平均直径を有するノンパレイル・シード(nonpareil seed)に塗布することによって、該化合物を活性コアに形成することができる。薬物又はプロドラッグを、付加的な賦形剤の有無に拘わらず、不活性コア上に塗布することができ、溶液又は懸濁液から流動床コーター(例えば、Wurster coating)又はパン・コーティング系を用いて吹き付けることができる。或いは、薬物又はプロドラッグをコア上に結合させるために結合剤を用いて、これらを粉末として、不活性コア上に塗布することができる。コアを適当な可塑剤(以下で説明)及び必要に応じて、任意の他の加工助剤と共に押出成形することによって、活性コアを形成することもできる。
【0079】
本発明の調節放出製剤は、薬物含有コアに膜コーティング(membrane coating)として塗布される、少なくとも1種類のポリマー物質を含む。適当な水溶性ポリマーは、非限定的に、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース又はポリエチレングリコール及び/又はこれらの混合物を包含する。
【0080】
適当な水不溶性ポリマーは、非限定的に、エチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、三酢酸セルロース、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)及びポリ(ヘキシルメタクリレート)、ポリ(イソデシルメタクリレート)、ポリ(ラウリルメタクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリレート)、ポリ(イソブチルアクリレート)、ポリ(オクタデシルアクリレート)、ポリ(エチレン)、低密度ポリ(エチレン)、高密度ポリ(エチレン)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ビニルイソブチルエーテル)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(塩化ビニル)、ポリウレタン、及び/又はこれらの混合物を包含する。
【0081】
EUDRAGITTMポリマー(Rohm Pharmaから入手可能)は、アクリレート及び/又はメタクリレートに基づくポリマー・ラッカー物質である。有効成分及び水に対して自由に透過性である適当なポリマーは、EUDRAGITTMRLである。有効成分及び水に対して弱透過性である適当なポリマーは、EUDRAGITTMRSである。有効成分及び水に対して弱透過性であり、pH依存性の透過性を示す、他の適当なポリマーは、非限定的に、EUDRAGITTML、EUDRAGITTMS及びEUDRAGITTMEを包含する。
【0082】
EUDRAGITTMRL及びRSは、低含量の第4級アンモニウム基を有する、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルのコポリマーを含むアクリル樹脂である。該アンモニウム基は塩として存在して、該ラッカー・フィルムの透過性をもたらす。EUDRAGITTMRL及びRSは、それぞれ、pHに関係なく、自由透過性(RL)及び弱透過性(RS)である。該ポリマー類は、水中及び消化液中で、pH非依存的に膨潤する。膨潤した状態で、これらのポリマーは水及び溶解した活性化合物に対して透過性である。
【0083】
EUDRAGITTMLは、メタクリル酸とメタクリル酸メチルエステルとから合成されるアニオンポリマーである。これは、酸及び純粋な水中に不溶性である。これは、中性〜弱アルカリ性条件では、溶解性になる。EUDRAGITTMLの透過性は、pH依存性である。pH5.0を超えると、該ポリマーはますます透過性になる。
【0084】
膜調節投与形を含む1実施態様では、ポリマー物質は、メタクリル酸コポリマー、アンモニオメタクリレートコポリマー又はこれらの混合物を含む。例えばEUDRAGITTMS及びEUDRAGITTML(Rohm Pharma)のようなメタクリル酸コポリマーは、本発明の調節放出製剤への使用に特に適している。これらのポリマーは胃耐性(gastroresistant)で、腸溶性のポリマーである。それらのポリマーフィルムは純粋な水及び希薄な酸に不溶性である。これらのポリマーは、それらのカルボン酸含量に依存して、高いpHで溶解する。EUDRAGITTMS及びEUDRAGITTMLはポリマー・コーティング中に単独成分として、又は任意の比率で組み合わせて用いることができる。これらのポリマーの組み合わせを用いることによって、該ポリマー物質は、EUDRAGITTML及びEUDRAGITTMSが別々に溶解性であるpHの間のpHにおいて溶解性を示すことができる。
【0085】
膜コーティングは、主要な割合(即ち、総ポリマー含量の50%超過)の1種類以上の製薬的に受容される水溶性ポリマーと、任意に、より小さい割合(即ち、総ポリマー含量の50%未満)の1種類以上の製薬的に受容される水不溶性ポリマーを含むポリマー物質を含むことができる。或いは、膜コーティングは、主要な割合(即ち、総ポリマー含量の50%超過)の1種類以上の製薬的に受容される水不溶性ポリマーと、任意に、より小さい割合(即ち、総ポリマー含量の50%未満)の1種類以上の製薬的に受容される水溶性ポリマーを含むポリマー物質を含むことができる。
【0086】
例えばEudragit RS及びEudragit RL(Rohm Pharma)のような、アンモニオメタクリレート・コポリマーは、本発明の調節放出製剤への使用に適している。これらのポリマーは、純粋な水、希薄な酸、緩衝溶液又は全生理的pH範囲にわたる消化液中に不溶性である。該ポリマーは、水中及び消化液中でpH非依存的に膨潤する。次に、膨潤した状態で、これらのポリマーは水及び溶解した活性物質に対して透過性である。ポリマーの透過性は、ポリマー中のエチルアクリレート(EA)基、メチルメタクリレート(MMA)基及びトリメチルアンモニオエチルメタクリレートクロリド(TAMCl)基の比率に依存する。1:2:0.2のEA:MMA:TAMCl比率を有するポリマー(EUDRAGITTMRL)は、1:2:0.1の比率を有するポリマー(EudragitRS)よりも大きく透過性である。Eudragit RLのポリマーは、高透過性の不溶性ポリマーである。Eudragit RSのポリマーは、低透過性の不溶性フィルムである。
【0087】
アンモニオメタクリレート・コポリマーは、任意の所望の比率で組み合わせることができる。例えば、Eudragit RS:Edragit RLの比率(90:10)を用いることができる。さらに、薬物又はプロドラッグの放出を遅延させるように、これらの比率を調節することができる。例えば、Eudragit RS:Eudragit RLの比率は、約100:0〜約80:20、約100:0〜約90:10又はこれらの中間の任意の比率であることができる。このような製剤では、低透過性ポリマーEudragit RSが一般にポリマー物質の大部分を占めることになる。
【0088】
薬物又はプロドラッグの放出を望ましく遅延させるために、ポリマー物質中でアンモニオメタクリレート・コポリマーに、メタクリル酸コポリマーを組み合わせることができる。約99:1から約20:80までの範囲内のアンモニオメタクリレート・コポリマー(例えば、Eudragit RS)の、メタクリル酸コポリマーに対する比率を用いることができる。該2種類のポリマーを一緒にして、同じポリマー物質にすることができる、又はコアに塗布する別々のコート(coat)として提供することもできる。
【0089】
上記Eudragitポリマーの他に、多くの他の、このようなコポリマーを用いて、薬物放出を制御することができる。これらには、メタクリレート・エステル・コポリマー(例えば、Eudragit NE30D)が包含される。Eudragitポリマーに関するさらなる情報は、“Chemistry and Application Properties of Polymethacrylate Coating Systems,”in Aqueous Polymeric Coatings for Pharmaceutical Dosage Forms(ed.James McGinity,Marcel Dekker Inc.,New York,pg 109-114)に見い出すことができる。
【0090】
該塗膜物質はさらに、該ポリマー物質の透過性を高めるために、1種類以上の溶解性賦形剤を含むことができる。溶解性賦形剤は、溶解性ポリマー、界面活性剤、アルカリ金属塩、有機酸、糖、及び糖アルコールの中から適当に選択される。このような溶解性賦形剤は、非限定的に、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、塩化ナトリウム、例えばラウリル硫酸ナトリウム及びポリソルベートのような界面活性剤、例えば酢酸、アジピン酸、クエン酸、フマル酸、グルタル酸、リンゴ酸、コハク酸及び酒石酸のような有機酸、例えばデキストロース、フルクトース、グルコース、ラクトース及びスクロースのような糖、例えばラクチトール、マルチトール、マンニトール、ソルビトール及びキシリトールのような糖アルコール、キサンタンガム、デキストリン、並びにマルトデキストリンを包含する。幾つかの実施態様では、ポリビニルピロリドン、マンニトール及び/又はポリエチレングリコールを溶解性賦形剤として用いることができる。溶解性賦形剤(単数又は複数)は、ポリマーの総乾燥重量に基づいて、約0.5重量%〜約80重量%の量で用いることができる。
【0091】
他の実施態様では、ポリマー物質は、胃腸液にも不溶性である、1種類以上の水不溶性ポリマーと、1種類以上の水溶性孔形成化合物を含む。例えば、該水不溶性ポリマーは、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル及び/又はポリビニルアルコールのターポリマーを含むことができる。適当な水溶性孔形成化合物は、非限定的に、サッカロース、塩化ナトリウム、塩化カリウム、ポリビニルピロリドン及び/又はポリエチレングリコールを包含する。孔形成化合物は、水不溶性ポリマー全体にわたって均一に又はランダムに分布することができる。典型的には、孔形成化合物は、それぞれ水不溶性ポリマーの約1〜約10部に対して、約1部〜約35部を占める。
【0092】
このような投与形が溶解媒質(例えば、消化液)に接触すると、ポリマー物質中の孔形成化合物は溶解して、多孔質構造を生じて、これを通して薬物が拡散する。このような製剤は、米国特許第4,557,925号にさらに詳述されており、この特許の関連する部分はこのために本明細書に援用される。該多孔質膜は、胃での放出を防止するために、本明細書に記載するように、腸溶性被膜でさらに被覆することもできる。
【0093】
例えば、孔形成調節放出投与形は、薬物又はプロドラッグ;例えば澱粉、ラクトース又は微結晶セルロース(AVICELTM)のような充填剤;例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース又はポリビニルピロリドンのような結合剤/調節放出ポリマー;例えばEXPLOTABTM、クロスポビドン又は澱粉のような崩壊剤;例えばステアリン酸マグネシウム又はステアリン酸のような滑剤;例えばラウリル硫酸ナトリウム又はポリソルベートのような界面活性剤;及び例えばコロイド状二酸化ケイ素(AEROSILTM)又はタルクのようなグライダントを含むことができる。
【0094】
ポリマー物質はさらに、例えば充填剤、可塑剤及び/又は消泡剤のような、1種類以上の補助剤を含むことができる。代表的な充填剤は、タルク、ヒュームドシリカ(fumed silica)、グリセリルモノステアレート、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、カオリン、コロイド状シリカ、石膏、微粉状シリカ、及び三ケイ酸マグネシウムを包含する。充填剤の使用量は、ポリマーの総乾燥重量に基づいて、典型的に約0.5〜約300重量%の範囲であり、約0.5〜約100重量%の範囲であることができる。1実施態様では、タルクが充填剤である。
【0095】
塗膜、及び機能性被膜も同様に、ポリマーの加工を改良する物質を含むこともできる。このような物質は、一般に、可塑剤と呼ばれ、例えば、アジペート、アゼレート、ベンゾエート、シトレート、イソエブケート(isoebucate)、フタレート、セバケート、ステアレート及びグリコールを包含する。代表的な可塑剤は、アセチル化モノグリセリド、ブチルフタリルブチルグリコレート、ジブチルタルトレート、ジエチルフタレート、ジメチルフタレート、エチルフタリルエチルグリコレート、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリアセチンシトレート、トリアセチン、トリプロピノイン(tripropinoin)、ジアセチン、ジブチルフタレート、アセチルモノグリセリド、ポリエチレングリコール、ひまし油、トリエチルシトレート、多価アルコール、酢酸エステル、グリセロールトリアセテート、アセチルトリエチルシトレート、ジベンジルフタレート、ジヘキシルフタレート、ブチルオクチルフタレート、ジイソノニルフタレート、ブチルオクチルフタレート、ジオクチルアゼレート、エポキシド化タレート(epoxidised tallate)、トリイソオクチルトリメリテート、ジエチルヘキシルフタレート、ジ−n−オクチルフタレート、ジ−i−オクチルフタレート、ジ−i−デシルフタレート、ジ−n−ウンデシルフタレート、ジ−n−トリデシルフタレート、トリ−2−エチルヘキシルトリメリテート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート、ジ−2−エチルヘキシルアゼレート(di-2-ethylhexylazelate)、ジブチルセバケート、グリセリルモノカプリレート、及びグリセリルモノカプレートを包含する。1実施態様では、可塑剤はジブチルセバケートである。ポリマー物質中の可塑剤の使用量は、乾燥ポリマーの重量に基づいて、典型的に約0.5〜約50%の範囲であり、例えば、約0.5、1、2、5、10、20、30、40又は50%である。
【0096】
消泡剤を含めることもできる。1実施態様では、消泡剤はシメチコンである。消泡剤の使用量は、典型的に、最終製剤の約0%〜約0.5%を占める。
【0097】
膜調節製剤中のポリマーの使用量は典型的に、薬物のデリバリー量、薬物デリバリーの速度及び位置、薬物放出の遅延時間並びに製剤中の多粒子のサイズを含めた、望ましい薬物デリバリー特性が得られるように調節される。ポリマーの塗布量(the amount of polymer applied)は典型的に、コアに約0.5〜約100%の増量(weight gain)を生じる。1実施態様では、ポリマー物質による増量は約2〜約70%の範囲である。
【0098】
コポリマー、充填剤、可塑剤と、任意の賦形剤及び加工助剤を含めた、ポリマー物質の全固体成分の組み合わせは、典型的に、コアに約0.5〜約450%の増量を与える。1実施態様では、この増量は約2〜約160%である。
【0099】
ポリマー物質は、任意の既知方法によって、例えば、流動床コーター(例えば、Wurster coating)又はパン・コーティング系を用いる吹き付けによって塗布することができる。ポリマー物質の塗布後に、塗布されたコアを通常、乾燥又は硬化させる。硬化は、安定な放出速度を与えるために充分な時間、多粒子が制御された温度に保持されることを意味する。硬化は、例えばオーブン内で又は流動床乾燥器内で行なうことができる。硬化は、室温を超える任意の温度で行なうことができる。
【0100】
シーラント又はバリヤーをポリマー被膜に塗布することもできる。ポリマー物質を塗布する前のコアに、シーラント又はバリヤー層を付加することもできる。シーラント又はバリヤー層は、薬物又はプロドラッグの放出を調節するようには意図されない。適当なシーラント又はバリヤーは、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、及びキサンタンガムのような、浸透性又は溶解性の作用剤である。
【0101】
該シーラント又はバリヤー層の加工性を改良するために、他の作用剤を加えることができる。このような作用剤は、タルク、コロイド状シリカ、ポリビニルアルコール、二酸化チタン、微粉状シリカ、ヒュームドシリカ、グリセロールモノステアレート、三ケイ酸マグネシウム及びステアリン酸マグネシウム、又はこれらの混合物を包含する。該シーラント又はバリヤー層は、溶液(例えば、水性)又は懸濁液から、例えば流動床コーター(例えば、Wurster coating)又はパン・コーティング系のような、任意の既知手段を用いて塗布することができる。適当なシーラント又はバリヤーは、例えば、OPADRY WHITE Y−1−7000及びOPADRY OY/B/28920WHITEを包含し、これらの各々は、Colorcon Limited,Englandから入手可能である。
【0102】
本発明はまた、上記で定義したような多粒子状薬物又はプロドラッグを、キャプレット、カプセル剤、投与前の懸濁液用粒子、サシェ又は錠剤の形態で含有する経口投与形を提供する。投与形が錠剤の形態である場合には、錠剤は、崩壊する錠剤、迅速に溶解する錠剤、起沸性錠剤、迅速に溶融する錠剤及び/又はミニ錠剤であることができる。投与形は、例えば球状、キューブ形状、楕円形(oval)又は長円形(ellipsoidal)のような、薬物の経口投与に適した、任意の形状であることができる。投与形は、多粒子から任意の既知方法で製造することができ、付加的な製薬的に受容される賦形剤を含むことができる。
【0103】
非限定的に、マトリックスに基づく形、浸透圧ポンプに基づく形、軟質ゼラチンカプセル及び/又は膜調節形を含めた、さらにモノリシック及び/又は多重単位投与形の形態をとりうる、上述した特定の投与形の全ては、機能性被膜を有することができる。このような被膜は一般的に、薬物の放出を所定の期間遅延させるという目的を果たす。例えば、このような被膜は、投与形を胃酸又は消化液にさらさないで、胃を通過させることができる。したがって、このような被膜は、例えば上部腸のような、胃腸管中の望ましい点に達したときに溶解する又は侵食されることができる。
【0104】
このような機能性被膜は、pH依存性又はpH非依存性のいずれの溶解プロフィルも示すことができる。pH非依存性プロフィルを有する被膜は、一般に、所定の期間後に侵食されるか又は溶解し、該期間は一般に該被膜の厚さに直接比例する。他方では、pH依存性プロフィルを有する被膜は、胃の酸性pH中に在る間はそれらの完全性を維持することができるが、より塩基性の上部腸に入ると迅速に侵食されるか又は溶解する。
【0105】
したがって、マトリックスに基づく製剤、浸透圧ポンプに基づく製剤又は膜調節製剤を、薬物の放出を遅延させる機能性被膜でさらに被覆することができる。例えば、膜調節製剤を、上部腸に達するまで該膜調節製剤の暴露を遅延させる腸溶性被膜で被覆することができる。酸性の胃を出て、より塩基性の腸に入ると、腸溶性被膜は溶解する。その結果、膜調節製剤は胃腸液に暴露され、本発明によって、薬物又はプロドラッグを持続にわたって(over an extended period)放出する。例えばこれらのような、機能性被膜の例は当業者に知られている。
【0106】
製剤におけるポリマーの厚さ、ポリマーの量と種類、及び調節放出製剤における水溶性ポリマーの、水不溶性ポリマーに対する比率は、一般に、薬物又はプロドラッグの所望の放出プロフィルを達成するように選択される。例えば、水溶性ポリマーに対して水不溶性ポリマーの量を高めることによって、薬物の放出を遅延させる又は緩慢にすることができる。
【0107】
本発明による即時放出製剤は、米国薬局方(USP)1型装置(バスケット)又は米国薬局方(USP)2型装置(パドル)によって37℃及び50rpm以上において、pH6.8以上のリン酸塩緩衝液中で測定期間にわたって測定したときに、下記溶解プロフィルを示すことができる:約45%以上が約1時間以内に放出され、約80%以上が約2時間以内に放出され、約100%以上が約3時間以内に放出される。
【0108】
本発明の方法と製剤は、さらに、薬物若しくはプロドラッグ又はその製薬的に受容される塩を含むpH非依存性調節放出製剤であって、米国薬局方(USP)1型装置(バスケット)又は米国薬局方(USP)2型装置(パドル)によって37℃及び50rpm以上において、pH6.8以上のリン酸塩緩衝液中で測定期間にわたって測定したときに、in vitroで約1時間未満に、約30%以下、約20%未満又は約10%未満の薬物若しくはプロドラッグを放出し;約4時間以上で、約60%以下、約50%未満又は約40%未満を放出し;そして約12時間以上で、約70%以上、約80%より多く、又は約90%より多くを放出する製剤を提供する。
【0109】
より詳しくは、本発明によるpH非依存性調節放出製剤は、米国薬局方(USP)1型装置(バスケット)又は米国薬局方(USP)2型装置(パドル)によって37℃及び50rpm以上において、pH6.8以上のリン酸塩緩衝液中で測定期間にわたって測定したときに、下記時間枠(windows)内に入る溶解プロフィル:1時間:約20%以下;2時間:約0〜約35%;3時間:約10〜約60%;4時間:約20〜約60%;6時間:約40〜約80%;及び12時間:約75%以上を示すことができる。他の実施態様では、溶解プロフィルは下記時間枠:1時間:約5%以下;2時間:約0〜約25%;3時間:約15〜約30%;4時間:約40〜約50%;6時間:約60〜約75%;及び12時間:約90%以上に入ることができる。本発明の製剤がこれらの溶解時間枠の1つ以上に入りうることを注目のこと。
【0110】
本発明によるpH依存性調節放出製剤でありうる製剤は、米国薬局方(USP)1型装置(バスケット)又は米国薬局方(USP)2型装置(パドル)によって37℃及び50rpm以上において、0.01〜0.1N HCl中で2時間、続いて、pH6.8以上のリン酸塩緩衝液中で残りの測定期間にわたって測定したときに、以下の溶解時間枠:1時間(酸中)、約0〜約10%放出;2時間(酸中)、約0〜約10%放出;1時間(緩衝液中)、約10〜約35%放出;2時間(緩衝液中)、約20〜約65%放出;4時間(緩衝液中)、約55〜約95%放出;6時間(緩衝液中)、約90%以上放出;及び12時間(緩衝液中)、約90%以上放出の1つ以上の範囲内に入る溶解プロフィルを示すことができる。他の実施態様では、本発明の製剤は、下記溶解時間枠:1時間(酸中)、約0〜約5%放出;2時間(酸中)、約0〜約5%放出;1時間(緩衝液中)、約15〜約30%放出;2時間(緩衝液中)、約25〜約60%放出;4時間(緩衝液中)、約60〜約90%放出;6時間(緩衝液中)、約90%以上放出;及び12時間(緩衝液中)、約95%以上放出:の1つ以上の範囲内に入る溶解プロフィルを示すことができる。この場合にも、本発明の製剤が上記溶解時間枠の1つ以上の範囲内に入りうることに注目すべきである。
【0111】
本発明は、先行技術における欠陥と問題を、炎症性腸疾患とそれらの症状を軽減し、予防し、及び/又は管理するための新しく、かつ有効な製剤及び方法を提供することによって克服する。炎症性腸疾患を軽減し、予防し、及び/又は管理するための方法は、このような軽減、予防及び/又は管理を必要とする対象に、有効量の薬物若しくはプロドラッグ又はその製薬的に受容される塩を投与することを含む。炎症性腸疾患は1つ以上の腸状態を付随することが可能である。したがって、本発明はさらに、このような腸状態を該薬物又はプロドラッグの使用によって直接又は間接的に軽減する、予防する及び/又は管理するために用いることができる。本発明によって治療、予防及び/又は管理することができる腸状態の例は、非限定的に、炎症性腸疾患(IBD)、潰瘍性大腸炎、肉芽腫性腸炎、クローン病、小腸及び大腸の感染性疾患、幽門痙攣、腹部痙攣、機能性胃腸障害、軽度赤痢、憩室炎、急性全腸炎、神経原性腸障害(脾結腸曲症候群及び過敏結腸を包含する)、痙攣性結腸炎、嚢胞、ポリープ及び癌、及び/又は上記状態のいずれかの症状を包含する。当業者は、本発明から利益を受けることができる、炎症性腸疾患を生じる他の種類の腸状態に熟知しているであろう。
【0112】
本明細書で用いる限り、「製薬的に受容される塩」なる用語は、対象によって生理的に許容される塩を包含する。このような塩は、無機酸及び/又は有機酸から製造することができる。適当な無機酸の例は、非限定的に、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、硫酸、及びリン酸を包含する。有機酸は、脂肪族酸、芳香族酸、カルボン酸及び/又はスルホン酸でありうる。適当な有機酸は、非限定的に、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、ショウノウスルホン酸、クエン酸、フマル酸、グルコン酸、乳酸、リンゴ酸、粘液酸、酒石酸、パラ−トルエンスルホン酸、グリコール酸、グルクロン酸、マレイン酸、フロ酸、グルタミン酸、安息香酸、アントラニル酸、サリチル酸、フェニル酢酸、マンデル酸、パモ酸(pamoic acid)、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、パントテン酸、ベンゼンスルホン酸(ベシラート)、ステアリン酸、スルファニル酸、アルギニン酸、ガラクツロン酸等を包含する。
【0113】
本発明によると、薬物若しくはプロドラッグ又はその製薬的に受容される塩を、少なくとも1つの全身副作用を最小にしながら、その治療効果を最大にするやり方で、製剤化及び/又は投与する。
【0114】
本発明はまた、炎症性腸疾患を治療するための方法及び製剤であって、前記対象に有効量の薬物若しくはプロドラッグ又はその製薬的に受容される塩を少なくとも1種類の付加的な薬剤学的に活性な化合物と組み合わせて投与することを含む方法及び製剤を提供する。該薬物又はプロドラッグと組み合わせて用いることができる、他の薬剤学的活性化合物の例は、非限定的に、ステロイド(例えば、ブデソニド及び他のコルチコステロイドと、例えばプレドニゾン及びヒドロコルチゾンのような副腎ステロイド)、例えばインターロイキン−10のようなサイトカイン、抗生物質、例えばアザチオプリン、6−メルカプトプリン、メトトレキセート、サイクロスポリンのような免疫調節剤、及び例えば溶解性TNFレセプターとTNFに対して産生された抗体(antibodies raised to TNF)のような抗腫瘍壊死因子(TNF)性作用剤、並びに例えば亜鉛のような抗炎症剤を包含する。
【0115】
薬物若しくはプロドラッグ又はその製薬的に受容される塩は、該薬剤学的活性化合物の1つ以上と一緒に投与することができる。薬物若しくはプロドラッグ又はその製薬的に受容される塩と、少なくとも1種類の他の薬剤学的活性化合物とが同じ投与形に含有されるように、組み合わせを投与することができる。或いは、薬物若しくはプロドラッグ又はその製薬的に受容される塩と、少なくとも1種類の他の薬剤学的活性化合物とが別々の投与形に含有されて、同時に又は連続的に投与されるように、組み合わせを投与することができる。
【0116】
本発明によって用いる薬物若しくはプロドラッグは、任意の方法によって得ることができる。このような方法の例は、例えば、米国特許第4,591,584号、第4,559,330号及び第6,602,915号に記載されており、これらの特許の各々はこのために本明細書に援用される。これらの特許に記載されたプロトコールの改変並びに他の合成ルートは、当業者に周知であり、本発明によって用いることができる。
【0117】
本明細書に記載する製薬的に受容される製剤は、本発明によって用いるための薬剤製剤の形態で提供することができる。このような製剤は任意に、1種類以上の製薬的に受容される賦形剤を含む。適当な賦形剤の例は、当業者に知られており、例えば、Handbook of Pharmaceutical Excipients (Kibbe (ed.), 3rd Edition (2000), American Pharmaceutical Association, Washington, D.C.),とRemington : The Science and Practice of Pharmacy (Gennaro (ed.),20th edition (2000), Mack Publishing, Inc., Easton, PA)(以下では「Remington」と呼ぶ)に記載されており、これらの両方ともが、賦形剤と投与形に関するそれらの開示のために、本明細書に援用される。適当な賦形剤は、非限定的に、澱粉、糖、微結晶セルロース、希釈剤、造粒剤(granulating agent)、滑剤、結合剤、崩壊剤、湿潤剤、乳化剤、着色剤、離型剤、コーティング剤、甘味剤、フレーバー剤(flavoring agent)、芳香剤、保存剤、可塑剤、ゲル化剤、増粘剤、硬化剤(hardener)、硬化剤(setting agent)、懸濁化剤、界面活性剤、保湿剤、キャリヤー、安定剤、酸化防止剤、及びこれらの組み合わせを包含する。
【0118】
経口投与に適した製剤は、非限定的に、カプセル剤、カシェ(cachet)、ピル、錠剤、トローチ剤(フレーバー入り基剤、通常は、スクロース及びアラビアゴム又はトラガカントを用いる)、粉末、顆粒、溶液、水性若しくは非水性液体中の懸濁液、水中油滴若しくは油性液体中水滴エマルジョン、エリキシル剤、シロップ、芳香製剤(pastilles)(例えば、ゼラチン及びグリセリン、又はスクロース及びアラビアゴムのような不活性基剤を用いる)、うがい薬(mouth washes)、ペースト等を包含し、これらの各々は、1回以上の投与量で治療量の薬物を与えるように、所定量の薬物若しくはプロドラッグ又はその製薬的に受容される塩を含有する。
【0119】
経口投与のための投与形(カプセル剤、錠剤、ピル、粉末、顆粒等)の製造において、薬物若しくはプロドラッグ又はその製薬的に受容される塩に、製薬的に受容される賦形剤を混合することができる。適当な賦形剤は、非限定的に、例えばクエン酸ナトリウム若しくはリン酸二カルシウムのようなキャリヤー;例えば澱粉、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール若しくはケイ酸のような、充填剤若しくは増量剤;例えばヒドロキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース若しくはアラビアゴムのような結合剤;例えばグリセロールのような保湿剤;例えば寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモ若しくはタピオカ澱粉、アルギン酸、ある種のシリケート、若しくは炭酸ナトリウムのような崩壊剤;例えばパラフィンのような溶解遅延剤;例えば第4級アンモニウム化合物のような吸収促進剤;例えばセチルアルコール若しくはグリセロール・モノステアレートのような湿潤剤;例えばカオリン及びベントナイト粘土のような吸収剤;例えばタルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール及びラウリル硫酸ナトリウムのような滑剤;着色剤;緩衝剤;分散剤;保存剤;及び希釈剤を包含する。
【0120】
上記賦形剤は例としてのみ挙げるのであり、全ての可能な選択を包含する意味ではない。固体製剤は、例えばラクトース若しくは乳糖、高分子量ポリエチレングリコール等のような賦形剤を用いて、軟質及び硬質充填ゼラチンカプセル中の充填剤として用いることもできる。これらの投与形のいずれも、場合によっては、刻み目を入れるか、又は例えば腸溶性被膜及び放出速度を調節するための被膜のような、被膜及びシェル付きで製造することができ、これらの例は製薬的製剤化分野(pharmaceutical-formulating art)で周知である。
【0121】
このような被膜は、カルボキシメチルセルロース・ナトリウム、酢酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、エチルセルロース、ゼラチン、製薬的グラッセ(pharmaceutical glaze)、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メタクリル酸コポリマー、メチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリ酢酸フタル酸ビニル(polyvinyl acetate phthalate)、シェラク、スクロース、二酸化チタン、ワックス又はゼインを含むことができる。1実施態様では、コーティング物質はヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む。コーティング物質はさらに、例えばタルクのような粘着防止剤(anti-adhesives);可塑剤(選択したコーティング物質の種類に依存する)、例えばひまし油、ジアセチル化モノグリセリド、ジブチルセバケート、ジエチルフタレート、グリセリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリアセチン、トリエチルシトレート;例えば二酸化チタンのような不透明剤;及び/又は着色剤及び/又は顔料を含むことができる。塗布工程は、例えばGLATTTM、ACCELACOTATM及び/又はHICOATERTM装置のような多孔パン系(perforated pan system)を用いることによるような、任意の適当な手段によって行なうことができる。
【0122】
錠剤は、任意の適当な方法によって形成することができる、このような方法の例は当業者に知られている。例えば、成分を適当な装置内で混合することによって乾式造粒又は湿式造粒してから、錠剤化することができる。錠剤化すべき成分の顆粒も、適当なスプレー/流動化又は押出成形/球状化(spheronization)方法を用いて製造することができる。
【0123】
口腔内で迅速に溶解する及び/又は迅速に溶融する錠剤として作用するように、錠剤を適当な賦形剤と共に製剤化することができる。さらに、錠剤は、チュアブル又は起沸性投与形の形態であることもできる。起沸性投与形では、該錠剤を崩壊させ、溶解し、及び/又は分散させる適当な液体に、該錠剤を加えることができる。
【0124】
高速で錠剤を製造するために装置を用いる工業的規模での製造を促進するために、適当な硬度と破砕性を有するように、錠剤を設計することができる。さらに、錠剤を任意の種類の容器にパックする又は充填することができる。他の性質の中でも、錠剤の硬度は錠剤の形状によって影響される可能性があることに注目すべきである。本発明によって、錠剤の種々の形状を用いることができる。錠剤は円形、扁球状、長円形、又は任意の他の形状であることができる。錠剤の形状も崩壊速度に影響を及ぼす可能性がある。
【0125】
本発明の製剤のいずれも、軟質及び硬質ゼラチンカプセルに封入することができ、該カプセルは上記賦形剤のいずれも含むことができる。例えば、カプセル化投与形は、例えばラクトース及び微結晶のような充填剤;例えばコロイド状二酸化ケイ素及びタルクのようなグライダント;例えばステアリン酸マグネシウムのような滑剤;並びに例えば澱粉(例えば、トウモロコシ澱粉)のような崩壊剤を含むことができる。カプセル充填装置を用いて、カプセル封入すべき成分を一緒に粉砕し、ふるいにかけ、混合し、一緒にパックしてから、カプセルに供給することができる。滑剤は約0.5重量%〜2.0重量%の量で存在することができる。
【0126】
薬物若しくはプロドラッグ又はその製薬的に受容される塩を含む、本発明の製剤は、経口投与のための液体投与形に製剤化することができる。適当な製剤は、エマルジョン、ミクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ及びエリキシル剤を包含しうる。薬物又はプロドラッグは、イオン交換樹脂複合体、ミクロカプセル化粒子、リポソーム粒子、又はポリマー被覆粒子若しくは顆粒として製剤化することができる。これらの製剤は、任意に、例えば、水又は他の溶媒のような、当該技術分野で一般的に用いられる希釈剤、可溶化剤及び乳化剤を含む。乳化剤は、非限定的に、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、油、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、ソルビタンの脂肪酸エステル、及びこれらの混合物を包含する。さらに、本発明の製剤は、例えば、湿潤剤、乳化剤と懸濁化剤、甘味剤、フレーバー剤、着色剤、芳香剤及び保存剤のようなアジュバントを含むことができる。適当な懸濁化剤は、非限定的に、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレン・ソルビトールとソルビタンエステル、微結晶セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天及びトラガカント、並びにこれらの混合物を包含する。液体製剤は、そのままデリバーすることができるか、又は例えば硬質若しくは軟質カプセル入りで供給することができる。
【0127】
存在する懸濁化剤の量は、用いる特定の懸濁化剤、及び懸濁化剤として作用するか若しくは製剤の粘度に顕著に寄与する能力を有する他の成分の有無に応じて変化する。懸濁液はさらに、その味を改良する成分、例えば甘味剤;苦味遮蔽剤、例えば塩化ナトリウム;味遮蔽フレーバー、例えばコントラマルム(contramarum);フレーバー強化剤、例えばグルタミン酸一ナトリウム;及びフレーバー剤を含有することもできる。甘味剤の例は、バルク甘味料(bulk sweetener)、例えばスクロース、水素化グルコース・シロップ、糖アルコール ソルビトールとキシリトール;及び甘味剤、例えばシクラミン酸ナトリウム、サッカリン・ナトリウム、アスパルテーム及びグリシルリジン酸アンモニウムを包含する。液体製剤はさらに、所望のpHを維持するために、必要に応じて、1種類以上の緩衝剤を含むことができる。
【0128】
本発明の液体製剤は、軟質ゼラチン・カプセルに充填することもできる。該液体は、溶液、懸濁液、エマルジョン、ミクロエマルジョン、沈殿、又は薬剤学的活性化合物を含有する、任意の他の望ましい液体媒質を含むことができる。該液体は、放出時の薬剤学的活性化合物の溶解性を改良するように設計することができるか、又は放出時に薬物含有エマルジョン若しくは分散相を形成するように設計することができる。このような方法の例は、当該技術分野で周知である。軟質ゼラチン・カプセルは必要に応じて機能性被膜で被覆することができる。このような機能性被膜は、一般に、薬物の放出を所定期間にわたって遅延させるという目的を果たす。例えば、このような被膜は、投与形を胃酸又は消化液にさらすことなく胃を通過させることができる。したがって、このような被膜は、例えば上部腸のような胃腸管中の所望の箇所に達すると溶解する又は侵食されることができる。
【0129】
直腸投与のためには、本発明の製剤は座薬として提供されることができる。座薬は、1種類以上の非刺激性賦形剤、例えばポリエチレングリコール、座薬ワックス又はサリチレートを含むことができる。このような賦形剤は、所望の物理的性質に基づいて選択することができる。例えば、室温では固体であるが体温では液体である化合物は、直腸内で溶融して、活性化合物を放出する。或いは、該製剤を直腸デリバリーのために浣腸剤として提供することができる。
【0130】
投与される投与量並びに投与回数は、用いる特定の投与形及び投与経路に依存して変化する。投与量及び投与回数は、個々の対象の年齢、体重及び反応によっても変化する。典型的な投与計画(dosing regimen)は、資格のある医師によって、過度の実験なしに容易に決定することができる。臨床医又は治療する医師が、個々の対象の反応に関連して、療法を中断、調節又は停止するべき方法及び時を知るであろうことも注目される。
【0131】
一般に、本発明による製剤のいずれかによって炎症性腸疾患及び/又は、同疾患をもたらす腸状態を緩和、予防及び/又は管理するための総一日量は、約250mg〜約8000mg、又は約500mg〜約8000mg、又は約1000mg〜約6000mg、又は約2000mg〜約4000mgの量である。プロドラッグは、同等の投与量をデリバリーするように製剤化すべきである。単回経口投与量は、約100mg、250mg、500mg、750mg、1000mg、1500mg、2000mg若しくは3000mg、又は中間のいずれかの量を含有するように製剤化することができる。
【0132】
薬物及び/若しくはプロドラッグ又はその製薬的に受容される塩を含有する薬剤製剤は、毎日単回量で又は分割量で、1、2、3、4、5若しくはそれ以上の回数で投与することができる。或いは、投与量を2日、3日、4日、5日、6日、7日毎に又はそれ以上の日数毎に1回以上の回数でデリバリーすることができる。1実施態様では、該薬剤製剤を1日1回投与する。
【0133】
下記実施例を参照することによって、本発明をさらに説明する。本発明の目的及び範囲から逸脱せずに、物質及び方法の両方に対して多くの改変を行なうことができることは、当業者に明らかであろう。
【0134】
【実施例】
【0135】
実施例1:炎症性腸疾患に対する4,4‘−アゾ−ビスサリチル酸二ナトリウムの効果
【0136】
対象は、軽度〜中程度の潰瘍性大腸炎又はクローン病を有すると診断される。該対象は、2g/日の4,4‘−アゾ−ビスサリチル酸二ナトリウムの毎日投与を受ける。該対象は12週間治療される。該対象は毎日日記を付けて、排便の回数及び質を記録する。治療の効果は、糞便中血液、粘液及び便意切迫性(urgency)の臨床症状を等級化することによって評価する。さらに、S字結腸鏡評価及びバイオプシーを行なって、S字結腸鏡検査の等級及び直腸バイオプシー標本の組織学的炎症の程度に基づいて、治療効果を評価する。自発的な副作用報告に基づいて、安全性を評価する。
【0137】
実施例2:Methocel Premium(湿式造粒方法)を用いた4−アミノサリチル酸ナトリウムの調節放出マトリックス錠剤製剤
【0138】
下記目標溶解プロフィルを達成するマトリックス錠剤に、4−アミノサリチル酸ナトリウムを製剤化する。
【0139】
目標溶解プロフィル
【0140】
機能性被膜を有さないマトリックス錠剤
【表1】

【0141】
機能性被膜(pH非依存性A型)を有するマトリックス錠剤
【表2】

【0142】
機能性被膜(pH非依存性B型)を有するマトリックス錠剤
【表3】

【0143】
機能性被膜(pH依存性)を有するマトリックス錠剤
【表4】

【0144】
マトリックス錠剤製剤
【0145】
非被覆マトリックス錠剤製剤と加工の詳細は以下に記載する。
【0146】
組成
【表5】

【表6】

【0147】
Methocel等級は、変化することが可能である、或いは、実施例リストからの適当な制御放出ポリマーでありうる。
【0148】
方法−湿式造粒法(上記組成を用いる)
【0149】
1.成分を秤量する
【0150】
2.有効成分、Avicelの50%及びラクトースの50%を適当なミキサー(例えば、プラネタリ・ミキサー(Hobart)、高剪断ミキサー(Diosna/Fielder))に入れる。
【0151】
3.成分を15分間混合して、均質な混合物を製造する。
【0152】
4.該混合物に造粒用流体(ナトリウム/PVP溶液)を加えながら、混合を続ける。
【0153】
5.適当な造粒終点に達するまで、成分を混合する(必要に応じて、さらにIPAを加えて、適当な顆粒を製造する)。
【0154】
6.許容される水分レベル(<約1%)及びIPAレベル(<約0.5%)が得られるまで、顆粒を乾燥させる(オーブン又は流動化装置を用いる)。赤外線モイスチャー・バランス(infrared moisture balance)を用いて、含水量を確かめることができ、有機溶媒のためには、ガス・クロマトグラフを用いることができる。
【0155】
7.適当なサイズのスクリーン(100〜500ミクロン)を装備した、適当な粉砕装置(例えば、Co-Mill又はFitzpatrickミル)に、乾燥顆粒を通す。
【0156】
8.顆粒をブレンダーに入れて、コロイド状二酸化ケイ素と、ラクトースとAvicelとの残部を加える。
【0157】
9.該混合物を15分間ブレンドする。
【0158】
10.ステアリン酸を加えて、さらに5分間混合する。
【0159】
11.適当な製錠機上で、該混合物を楕円形錠剤(目標重量1000mg)に圧縮成形する。
【0160】
或いは、4−アミノサリチル酸ナトリウムをIPA(又はこれに代わりうる溶媒)中に溶解することができ、PVPを該乾燥ブレンド中に混合することができる(造粒の前に)。
【0161】
マトリックス錠剤の機能性被膜
【0162】
上記マトリックス錠剤製剤は、機能性被膜で被覆することができる。これはpH依存性でも、pH非依存性でもよい。両タイプの被膜の例は以下に示す。
【0163】
pH非依存性被膜
【0164】
上記マトリックス錠剤を被覆するために用いることができる、2種類のpH非依存性ポリマー系を説明する。(これらはマトリックス系に用いるとして記載されているが、これらの被膜が、即時放出系の被膜を含めた非マトリックス系に使用可能であることに注目のこと)。
【0165】
組成−ポリマー系A
【表7】

【0166】
方法
【0167】
1.錠剤を適当なコーティング機(例えば、Glatt、Acelacota)に装填する。
【0168】
2.ポリマー・コーティング溶液を錠剤上にスプレーする。
【0169】
3.必要量のポリマー・コーティング溶液が塗布されたときに、錠剤をコーティング機で乾燥させる。
【0170】
組成−ポリマー系B
【表8】

【0171】
方法
【0172】
1.錠剤を適当なコーティング機(例えば、Glatt、Acelacota)に装填する。
【0173】
2.ポリマー・コーティング溶液を錠剤上にスプレーする。
【0174】
3.必要量のポリマー・コーティング溶液が塗布されたならば、錠剤をコーティング機で乾燥させる。
【0175】
pH依存性被膜
【表9】

【0176】
1.錠剤を適当なコーティング機(例えば、Glatt、Acelacota)に装填する。
【0177】
2.ポリマー・コーティング溶液を錠剤上にスプレーする。
【0178】
3.必要量のポリマー・コーティング溶液が塗布されたならば、錠剤をコーティング機で乾燥させる。
実施例3:膜調節錠剤を用いる4−アミノサリチル酸ナトリウムの調節放出製剤
【0179】
4−アミノサリチル酸ナトリウムを膜調節錠剤として製剤化して、下記溶解プロフィルを得る。
【0180】
目標溶解プロフィル
【0181】
機能性被膜を有さない膜調節錠剤
【表10】

【0182】
機能性被膜(pH非依存性A型)を有する膜調節錠剤
【表11】

【0183】
機能性被膜(pH非依存性B型)を有する膜調節錠剤
【表12】

【0184】
機能性被膜(pH依存性)を有する膜調節錠剤
【表13】

【0185】
これらの実施例の各々において、生成物は、拡散制御膜で被覆した即時放出錠剤コアを含む。これらの実施例の製剤及び製造方法を以下に記載する。
【0186】
即時放出コア製剤
【0187】
組成
【表14】

【0188】
方法
【0189】
オプション 1:
【0190】
1.適当なはかりを用いて、成分を秤量する。
【0191】
2.4−アミノサリチル酸ナトリウム、Avicel、及びラクトースを適当な造粒機(例えば、高剪断ミキサー−Diosna/Fielder)に入れる。
【0192】
3.均質なブレンドが得られるまで、混合する。
【0193】
4.PVPを水中に溶解して、該粉末ブレンドに徐々に加える。
【0194】
5.結合剤溶液の全てを該粉末ブレンドに加えたならば、適当な造粒が達成されるまで、混合を続ける。
【0195】
6.顆粒を流動化乾燥機又はトレー・ドライヤー(tray drier)中で、適当な乾燥が達成されるまで、乾燥させる。赤外線モイスチャー・バランスを用いて、水分含量を確認することができ、有機溶媒に対しては、ガス・クロマトグラフを用いることができる。
【0196】
7.次に、乾燥顆粒を粉砕する。
【0197】
8.該乾燥顆粒を適当なブレンダー(V又はY型ブレンダー)に入れて、滑剤を加えて、5分間混合する。
【0198】
9.該混合物を適当な製錠機で圧縮成形して、錠剤(800mg、重量)にする。
【0199】
オプション 2:
【0200】
或いは、該方法の工程2に、ラクトースとAvicelとの50%を用いることができる。乾燥顆粒が得られたならば、ラクトースとAvicelとの残りの50%を該ミキサーに加えて、10分間混合する。次に、オプション1に関して述べた方法の工程9に進む。
【0201】
オプション 3:
【0202】
他の代替手段では、有効成分、ラクトース、Avicel、及びPVPを乾式造粒する、即ち、ローラー・コンパクターを用いて、乾式造粒機中に押し込むことができる。次に、ローラー圧縮成形物質を適当なスクリーンに通して、顆粒を得る。次に、方法の工程9におけるように、これらの顆粒に滑剤(即ち、ステアリン酸)を混合することができる。
【0203】
拡散制御膜被覆製剤
【0204】
組成
【表15】

【0205】
ポリマー=ポリ塩化ビニルとポリ酢酸ビニルとポリビニルアルコールとのターポリマー(ターポリマーPVC/PVAc/PVOH)
【0206】
溶媒は加工中に除去される。
【0207】
方法
【0208】
1.錠剤を適当なコーティング機(例えば、Glatt、Acelacota)に装填する。
【0209】
2.ポリマー・コーティング溶液を錠剤上にスプレーする。
【0210】
3.必要量のポリマー・コーティング溶液が塗布されたならば、錠剤をコーティング機で乾燥させる。
【0211】
膜調節錠剤の機能性被膜
【0212】
上記の選択的透過性膜錠剤製剤(即ち、拡散制御膜被覆錠剤)はさらに機能性被膜で被覆することができる。これはpH依存性でも、pH非依存性でもよい。両タイプの被膜の例は以下に記載する。
【0213】
pH依存性被膜
【0214】
組成
【表16】

【0215】
方法
【0216】
1.錠剤を適当なコーティング機(例えば、Glatt、Acelacota)に装填する。
【0217】
2.ポリマー・コーティング溶液を錠剤上にスプレーする。
【0218】
3.必要量のポリマー・コーティング溶液が塗布されたならば、錠剤をコーティング機で乾燥させる。
【0219】
pH非依存性被膜系
【0220】
上記錠剤の被覆に用いるための、両タイプのpH非依存性ポリマー系を説明する。
【0221】
組成−ポリマー系A
【表17】

【0222】
1.錠剤を適当なコーティング機(例えば、Glatt、Acelacota)に装填する。
【0223】
2.ポリマー・コーティング溶液を錠剤上にスプレーする。
【0224】
3.必要量のポリマー・コーティング溶液が塗布されたならば、錠剤をコーティング機で乾燥させる。
【0225】
組成−ポリマー系B
【表18】

【0226】
1.錠剤を適当なコーティング機(例えば、Glatt、Acelacota)に装填する。
【0227】
2.ポリマー・コーティング溶液を錠剤上にスプレーする。
【0228】
3.必要量のポリマー・コーティング溶液が塗布されたならば、錠剤をコーティング機で乾燥させる。
【0229】
実施例4:調節放出4,4‘−アゾ−ビス−サリチル酸二ナトリウム膜調節錠剤製剤
【0230】
4,4‘−アゾ−ビス−サリチル酸二ナトリウムを、拡散制御膜を用いて、下記目標溶解プロフィルを有する調節放出錠剤として製剤化する。
【0231】
目標溶解プロフィル
【0232】
機能性被膜を有さない膜調節錠剤
【表19】

【0233】
機能性被膜(pH非依存性A型)を有する膜調節錠剤
【表20】

【0234】
機能性被膜(pH非依存性B型)を有する膜調節錠剤
【表21】

【0235】
機能性被膜(pH依存性)を有する膜調節錠剤
【表22】

【0236】
即時放出コア製剤
【0237】
組成
【表23】

【0238】
方法
【0239】
オプション 1:
【0240】
1.適当なはかりを用いて、成分を秤量する。
【0241】
2.4−アミノサリチル酸ナトリウム、Avicel、及びラクトースを適当な造粒機(例えば、高剪断ミキサー−Diosna/Fielder)に入れる。
【0242】
3.均質なブレンドが得られるまで、混合する。
【0243】
4.PVPを水中に溶解して、該粉末ブレンドに徐々に加える。
【0244】
5.結合剤溶液の全てを該粉末ブレンドに加えたならば、適当な造粒が達成されるまで、混合を続ける。
【0245】
6.顆粒を流動化乾燥機又はトレー・ドライヤー中で、適当な乾燥が達成されるまで、乾燥させる。
【0246】
7.次に、乾燥顆粒を粉砕する。
【0247】
8.該乾燥顆粒を適当なブレンダー(V又はY型ブレンダー)に入れて、滑剤を加えて、5分間混合する。
【0248】
9.該混合物を適当な製錠機で圧縮成形して、錠剤(800mg、重量)にする。
【0249】
オプション 2:
【0250】
或いは、該方法の工程2に、ラクトースとAvicelとの50%を用いることができる。乾燥顆粒が得られたならば、ラクトースとAvicelとの残りの50%を該ミキサーに加えて、10分間混合する。次に、オプション1に関して述べた方法の工程9に進む。
【0251】
オプション 3:
【0252】
他の代替手段では、有効成分、ラクトース、Avicel、及びPVPを乾式造粒する、即ち、ローラー・コンパクターを用いて、乾式造粒機中に押し込むことができる。次に、ローラー圧縮成形物質を適当なスクリーンに通して、顆粒を得る。次に、方法の工程9におけるように、これらの顆粒に滑剤(即ち、ステアリン酸)を混合することができる。
【0253】
拡散制御膜被覆製剤
【0254】
組成
【表24】

【0255】
ポリマー=ポリ塩化ビニルとポリ酢酸ビニルとポリビニルアルコールとのターポリマー(ターポリマーPVC/PVAc/PVOH)
【0256】
溶媒は加工中に除去される。
【0257】
方法
【0258】
1.錠剤を適当なコーティング機(例えば、Glatt、Acelacota)に装填する。
【0259】
2.ポリマー・コーティング溶液を錠剤上にスプレーする。
【0260】
3.必要量のポリマー・コーティング溶液が塗布されたならば、錠剤をコーティング機で乾燥させる。
【0261】
膜調節錠剤の機能性被膜
【0262】
上記の選択的透過性膜錠剤製剤(即ち、拡散制御膜錠剤)はさらに機能性被膜で被覆することができる。これはpH依存性でも、pH非依存性でもよい。両タイプの被膜の例は以下に記載する。
【0263】
pH依存性被膜
【0264】
組成
【表25】

【0265】
方法
【0266】
1.錠剤を適当なコーティング機(例えば、Glatt、Acelacota)に装填する。
【0267】
2.ポリマー・コーティング溶液を錠剤上にスプレーする。
【0268】
3.必要量のポリマー・コーティング溶液が塗布されたならば、錠剤をコーティング機で乾燥させる。
【0269】
pH非依存性被膜系
【0270】
上記錠剤の被覆に用いるための、両タイプのpH非依存性ポリマー系を説明する。
【0271】
組成−ポリマー系A
【表26】

【0272】
方法
【0273】
1.錠剤を適当なコーティング機(例えば、Glatt、Acelacota)に装填する。
【0274】
2.ポリマー・コーティング溶液を錠剤上にスプレーする。
【0275】
3.必要量のポリマー・コーティング溶液が塗布されたならば、錠剤をコーティング機で乾燥させる。
【0276】
組成−ポリマー系B
【表27】

【0277】
方法
【0278】
1.錠剤を適当なコーティング機(例えば、Glatt、Acelacota)に装填する。
【0279】
2.ポリマー・コーティング溶液を錠剤上にスプレーする。
【0280】
3.必要量のポリマー・コーティング溶液が塗布されたならば、錠剤をコーティング機で乾燥させる。
【0281】
実施例5:種々なレベルでMETHOCEL PREMIUMを用いた、4,4‘−アゾ−ビス−サリチル酸二ナトリウムの調節放出製剤
【0282】
4,4‘−アゾ−ビス−サリチル酸二ナトリウムを、下記目標溶解プロフィルを達成するように、マトリックス錠剤として製剤化する。
【0283】
目標溶解プロフィル
【0284】
機能性被膜を有さないマトリックス錠剤
【表28】

【0285】
機能性被膜(pH非依存性A型)を有するマトリックス錠剤
【表29】

【0286】
機能性被膜(pH非依存性B型)を有するマトリックス錠剤
【表30】

【0287】
機能性被膜(pH依存性)を有するマトリックス錠剤
【表31】

【0288】
マトリックス錠剤製剤
【0289】
非被覆マトリックス錠剤製剤と加工の詳細は、以下に記載する。
【0290】
組成
【表32】

【0291】
Methocel等級は、変化することが可能である、或いは、実施例リストからの適当な制御放出ポリマーでありうる。
【0292】
方法−湿式造粒法(上記組成を用いる)
【0293】
1.成分を秤量する
【0294】
2.有効成分、Avicelの50%及びラクトースの50%を適当なミキサー(例えば、プラネタリ・ミキサー(Hobart)、高剪断ミキサー(Diosna/Fielder))に入れる。
【0295】
3.成分を15分間混合して、均質な混合物を製造する。
【0296】
4.該混合物に造粒用流体(ナトリウム/PVP溶液)を加えながら、混合を続ける。
【0297】
5.適当な造粒終点に達するまで、成分を混合する(必要に応じて、さらにIPAを加えて、適当な顆粒を製造する)。
【0298】
6.許容される水分レベル(<約1%)及びIPAレベル(<約0.5%)が得られるまで、顆粒を乾燥させる(オーブン又は流動化装置を用いる)。
【0299】
7.適当なサイズのスクリーン(100〜500ミクロン)を装備した、適当な粉砕装置(例えば、Co-Mill又はFitzpatrickミル)に、乾燥顆粒を通す。
【0300】
8.顆粒をブレンダーに入れて、コロイド状二酸化ケイ素と、ラクトースとAvicelとの残部を加える。
【0301】
9.該混合物を15分間ブレンドする。
【0302】
10.ステアリン酸を加えて、さらに5分間混合する。
【0303】
11.適当な製錠機上で、該混合物を錠剤(目標重量1000mg)に圧縮成形する。
【0304】
或いは、4,4’−アゾ−ビスサリチル酸二ナトリウムをIPA(又はこれに代わりうる溶媒)中に溶解することができ、PVPを該乾燥ブレンド中に混合することができる(造粒の前に)。
【0305】
マトリックス錠剤の機能性被膜
【0306】
上記マトリックス錠剤製剤は、機能性被膜で被覆することができる。これはpH依存性でも、pH非依存性でもよい。両タイプの被膜の例は以下に示す。
【0307】
pH非依存性被膜
【0308】
上記マトリックス錠剤の被覆に用いるための、2種類のpH非依存性ポリマー系を説明する。
【0309】
組成−ポリマー系A
【表33】

【0310】
方法
【0311】
1.錠剤を適当なコーティング機(例えば、Glatt、Acelacota)に装填する。
【0312】
2.ポリマー・コーティング溶液を錠剤上にスプレーする。
【0313】
3.必要量のポリマー・コーティング溶液が塗布されたときに、錠剤をコーティング機で乾燥させる。
【0314】
組成−ポリマー系B
【表34】

【0315】
方法
【0316】
1.錠剤を適当なコーティング機(例えば、Glatt、Acelacota)に装填する。
【0317】
2.ポリマー・コーティング溶液を錠剤上にスプレーする。
【0318】
3.必要量のポリマー・コーティング溶液が塗布されたならば、錠剤をコーティング機で乾燥させる。
【0319】
組成−pH依存性被膜
【表35】

【0320】
方法
【0321】
1.錠剤を適当なコーティング機(例えば、Glatt、Acelacota)に装填する。
【0322】
2.ポリマー・コーティング溶液を錠剤上にスプレーする。
【0323】
3.必要量のポリマー・コーティング溶液が塗布されたならば、錠剤をコーティング機で乾燥させる。
【0324】
実施例6:4,4’−アゾ−ビス−サリチル酸二ナトリウム製剤
【0325】
4,4’−アゾ−ビス−サリチル酸二ナトリウムを下記製剤中にも組み入れる。
【0326】
即時放出錠剤製剤
【0327】
1.機能性被膜を有さない即時放出錠剤製剤
【0328】
2.機能性被膜−pH依存性を有する即時放出錠剤製剤
【0329】
3.機能性被膜−pH非依存性を有する即時放出錠剤製剤
【0330】
多粒子状製剤
【0331】
1.即時放出多粒子状製剤(機能性被膜を有さない)
【0332】
2.機能性被膜−pH依存性を有する遅延放出多粒子状製剤
【0333】
3.機能性被膜−pH非依存性を有する遅延放出多粒子状製剤
【0334】
4.制御放出多粒子状製剤
【0335】
5.遅延放出/調節放出多粒子状製剤
【0336】
機能性被膜を有さない即時放出錠剤製剤
【0337】
即時放出錠剤製剤と製造方法を説明する。
【0338】
組成(即時放出錠剤製剤)
【表36】

【0339】
加工中に除去される。
【0340】
湿式造粒方法(上記処方を用いる)
【0341】
1.成分を秤量する。
【0342】
2.PVPをIPA中に溶解する。
【0343】
3.4−ASA−4ASAアゾ−ナトリウム塩、Avicelの50%及びラクトースの50%を適当なミキサー(例えば、プラネタリ・ミキサー(Hobart)、高剪断ミキサー(Diosna/Fielder))中で一緒にする。
【0344】
4.成分を15分間混合して、均質な混合物を製造する。
【0345】
5.混合を続けて、該混合物に造粒用流体(PVP溶液)を加える。
【0346】
6.適当な造粒終点に達するまで、混合を続ける(そして必要に応じて、さらにIPAを加えて、適当な顆粒を製造する)。
【0347】
7.許容される水分レベル(<約1%)及びIPAレベル(<約0.5%)が得られるまで、顆粒を乾燥させる(オーブン又は流動化装置を用いる)。
【0348】
8.適当なサイズのスクリーン(100〜500ミクロン)を装備した、適当な粉砕装置(例えば、Co-Mill又はFitzpatrickミル)に、乾燥顆粒を通す。
【0349】
9.顆粒をブレンダーに入れて、コロイド状二酸化ケイ素、澱粉グリコール酸ナトリウム、及びラクトースとAvicelとの残部を加える。
【0350】
10.該混合物を15分間混合する。
【0351】
11.ステアリン酸を加えて、この組み合わせをさらに5分間混合する。
【0352】
12.適当な製錠機上で、該混合物を錠剤(目標重量500/1000mg)に圧縮成形する。
【0353】
4,4’−アゾ−ビス−サリチル酸二ナトリウムの調節放出多粒子状製剤
【0354】
A.機能性被膜を有さない即時放出薬物負荷多粒子
【0355】
即時放出製剤のための多粒子状投与形と製造方法を以下に記載する。
【0356】
組成(即時放出多粒子)
【表37】

【0357】
1.4,4’−アゾ−ビス−サリチル酸二ナトリウム、結合剤、グライダント及び粘着防止剤を適当な溶媒中に溶解/懸濁させる。
【0358】
2.次に、該溶液/懸濁液を、適当な流動化コーティング機(例えば、Glatt)を用いて、糖スフェア(sugar spheres)上にスプレーする。
【0359】
3.溶液・懸濁液の全てがノンパレイル・シード上に塗布されたならば、該薬物負荷即時放出多粒子を流動化コーティング機で乾燥させる。
【0360】
上記の即時放出多粒子と錠剤を、種々な調節放出ポリマーの組み合わせで被覆して、以下で説明する、幾つかの異なる種類の調節放出多粒子を製造する。
【0361】
B.ポリマー系Aを用いた、4,4’−アゾ−ビス−サリチル酸二ナトリウムの調節放出錠剤及び/又は多粒子状製剤
【0362】
組成−ポリマー系A
【表38】

【0363】
方法
【0364】
1.薬物負荷即時放出多粒子又は錠剤を適当な流動化コーティング機(例えば、Glatt、Acelacota)に装填する。
【0365】
2.ポリマー・コーティング溶液を該薬物負荷即時放出多粒子上にスプレーする。
【0366】
3.必要量のポリマー・コーティング溶液が塗布されたならば、該生成物を流動化コーティング機で乾燥させる。
【0367】
4.多粒子状生成物に関しては、自動化カプセル封入機を用いて、カプセル当り4,4’−アゾ−ビス−サリチル酸二ナトリウムの250mg投与量を得るために充分な、被覆多粒子を硬質ゼラチン・カプセル中に装填する。
【0368】
即時放出錠剤をこの系で被覆して、機能性被膜−pH非依存性を有する即時放出錠剤製剤を得て、遅延放出錠剤を得ることができる。さらに、即時放出多粒子をこの系で被覆して、機能性被膜−pH非依存性を有する遅延放出多粒子状錠剤を得ることができる。
【0369】
ポリマー系Bを用いた、4,4’−アゾ−ビス−サリチル酸二ナトリウム塩の調節放出錠剤及び/又は多粒子状製剤
【0370】
組成−ポリマー系B
【表39】

【0371】
製造方法−4,4’−アゾ−ビス−サリチル酸二ナトリウムの調節放出
多粒子及び/又は錠剤製剤
【0372】
方法
【0373】
1.薬物負荷即時放出多粒子及び/又は錠剤を適当な流動化コーティング機(例えば、Glatt)に装填する。
【0374】
2.ポリマー・コーティング溶液を該薬物負荷即時放出多粒子及び/又は錠剤上にスプレーする。
【0375】
3.必要量のポリマー・コーティング溶液が塗布されたならば、該生成物を流動化コーティング機で乾燥させる。
【0376】
4.多粒子状生成物の場合には、自動化カプセル封入機を用いて、カプセル当り4,4’−アゾ−ビス−サリチル酸二ナトリウムの250mg投与量を得るために充分な、生成物を硬質ゼラチン・カプセル中に封入する。
【0377】
この方法で製造する場合に、これは、制御放出多粒子状製剤になる。
【0378】
ポリマー溶液Cを用いた、4,4’−アゾ−ビス−サリチル酸二ナトリウムの調節放出錠剤及び/又は多粒子状製剤
【0379】
組成−ポリマーC配合物(pH依存性)
【表40】

【0380】
方法
【0381】
1.即時放出錠剤又は多粒子を適当なコーティング機(例えば、Glatt又はAcelacota)に装填する。
【0382】
2.ポリマー・コーティング溶液を該錠剤又は多粒子上にスプレーする。
【0383】
3.必要量のポリマー・コーティング溶液が塗布されたならば、該生成物をコーティング機で乾燥させる。
【0384】
この方法で製造する場合に、これは、機能性被膜−pH依存性を有する遅延放出多粒子状製剤又は機能性被膜−pH依存性を有する遅延放出錠剤製剤になる。
【0385】
遅延放出/調節放出多粒子状製剤
【0386】
最終の製剤オプションは、遅延放出/調節放出錠剤及び/又は多粒子状製剤である。これは、即時放出多粒子及び/又は錠剤をポリマーA製剤で被覆し、続いて、pH非依存性ポリマーB配合物又はpH依存性ポリマーC配合物で被覆することによって製造される。
【0387】
実施例7:バイオ試験
【0388】
3種類の調節放出製剤の相対的生体適合性を即時放出基準形と比較して、評価するために、オープンラベル、単回量、4回処置、4期間、平衡、無作為化、クロスオーバー試験を設計する。調節放出製剤は次のように製造する:(a)A型機能性被膜を有する4−ASAの膜調節製剤(実施例3参照);(b)B型機能性被膜を有する4−ASAの膜調節製剤(実施例3参照);及び(c)膜調節製剤として製剤化した5,5−アゾ−ビス−サリチル酸(実施例3、A型被膜参照)。
【0389】
16人の健康な被験者に、4つの場合の各々で、各投与間に少なくとも7日間のウォッシュアウト期間を置いて投薬する。各処置期間において投薬前に少なくとも4時間は、被験者は、水以外の食物及び飲み物を絶食させる。投薬時の150mlの水を除いて、投薬前1時間及び投薬後1時間、水を禁止する。48時間までの期間にわたって、各投薬の直前及び直後に、一定の時間間隔で静脈血液サンプルを得る。さらに、投薬後48時間の期間にわたって、尿を回収する。血漿及び尿中の4−ASA及びn−アセチル化4−ASA(N−Ac−4−ASA)の濃度を、イソクラチック・システム(isocratic system)を用いたHPLC及び300nmにおけるUV検出によって測定する。個々の血漿濃度曲線を作成して、Tmax、Cmax及びAUCを含めた、個別、平均及び相対的薬物動態パラメータを算出する。
【0390】
実施例8:調節放出4−ASAによる潰瘍性大腸炎とクローン病の治療
【0391】
実施例3による調節放出製剤を製造する。対象は、軽度から中程度までの潰瘍性大腸炎又はクローン病を有すると診断される。該対象は、調節放出形で4−ASA又はその製薬的に受容される塩 4g/日の1日1回投与を受ける。或いは、該対象は、4,4’−アゾ−ビス−サリチル酸 2g/日を投与されることができる。対象は12週間治療される。対象は日記をつけて、排便の回数と質を記録する。糞便血液、粘液及び切迫性の臨床症状を等級化することによって、治療効果を評価する。さらに、S字結腸鏡評価及びバイオプシーを行なって、S字結腸鏡検査及び直腸バイオプシー標本における組織学的炎症度を等級化することに基づいて、治療効力を評価する。自発的副作用報告に基づいて、安全性を評価する。
【0392】
この実施例の製剤は、潰瘍性大腸炎とクローン病の両方における、状態の治療と、疾患症状からの寛解の維持との両方に関する効力を実証する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
4,4’−アゾ−ビスサリチル酸二ナトリウム。
【請求項2】
4,4’−アゾ−ビスサリチル酸又はその製薬的に受容される塩と、少なくとも1種類の製薬的に受容される賦形剤を含む薬剤組成物。
【請求項3】
該その製薬的に受容される塩が4,4’−アゾ−ビスサリチル酸二ナトリウムを含む、請求項2記載の組成物。
【請求項4】
該少なくとも1種類の製薬的に受容される賦形剤が、キャリヤー、充填剤、増量剤、結合剤、保湿剤、崩壊剤、溶解遅延剤、吸収促進剤、湿潤剤、吸収剤、滑沢剤、安定剤、着色剤、緩衝剤、分散剤、保存剤、有機酸及び有機塩基から選択される、請求項2記載の組成物。
【請求項5】
4−アミノサリチル酸、5−アミノサリチル酸、それらの製薬的に受容される塩及びそれらのプロドラッグから選択されるサリチレート及び/又はサリチル酸と、少なくとも1種類の製薬的に受容される賦形剤を含み、調節放出薬剤組成物として製剤化される薬剤組成物であって、周囲pHに依存して、放出の遅延を示す薬剤組成物。
【請求項6】
該組成物が、米国薬局方II型装置(パドル)において37℃及び50rpm、0.01N HCl中で2時間試験し、続いて、試験の残りに関してはpH6.8緩衝剤中で試験した場合に、下記溶解プロフィル:
1時間(0.01N HCl中):約0〜約10%薬物放出;
2時間(0.01N HCl中):約0〜約10%薬物放出;
1時間(pH6.8中):約10〜約35%薬物放出;
2時間(pH6.8中):約20〜約65%薬物放出;
4時間(pH6.8中):約55〜約95%薬物放出;
6時間(pH6.8中):約90〜約100%薬物放出;及び
12時間(pH6.8中):約90%以上の薬物放出
を示す、請求項5記載の薬剤組成物。
【請求項7】
該組成物が、米国薬局方II型装置(パドル)において37℃及び50rpm、0.01N HCl中で2時間試験し、続いて、試験の残りに関してはpH6.8緩衝剤中で試験した場合に、下記溶解プロフィル:
1時間(0.01N HCl中):約0〜約5%薬物放出;
2時間(0.01N HCl中):約0〜約5%薬物放出;
1時間(pH6.8中):約15〜約30%薬物放出;
2時間(pH6.8中):約25〜約60%薬物放出;
4時間(pH6.8中):約60〜約90%薬物放出;
6時間(pH6.8中):約90〜約100%薬物放出;及び
12時間(pH6.8中):約95%以上の薬物放出
を示す、請求項6記載の薬剤組成物。
【請求項8】
4−アミノサリチル酸、5−アミノサリチル酸、それらの製薬的に受容される塩及びそれらのプロドラッグから選択されるサリチレート及び/又はサリチル酸と、少なくとも1種類の製薬的に受容される賦形剤を含み、調節放出薬剤組成物として製剤化される薬剤組成物であって、周囲pHに依存しない薬物放出プロフィルを示す薬剤組成物。
【請求項9】
該組成物が、試験のために米国薬局方II型装置(パドル)において37℃及び50rpm、pH6.8緩衝剤中で試験した場合に、下記溶解プロフィル:
1時間:約10%以下の薬物放出;
2時間:約0〜約35%薬物放出;
3時間:約10〜約60%薬物放出;
4時間:約20〜約60%薬物放出;
6時間:約40〜約80%薬物放出;及び
12時間:約75〜約100%薬物放出
を示す、請求項6記載の薬剤組成物。
【請求項10】
該組成物が、試験のために米国薬局方II型装置(パドル)において37℃及び50rpm、pH6.8緩衝剤中で試験した場合に、下記溶解プロフィル:
1時間:約5%以下の薬物放出;
2時間:約0〜約25%薬物放出;
3時間:約15〜約30%薬物放出;
4時間:約40〜約50%薬物放出;
6時間:約60〜約75%薬物放出;及び
12時間:約90〜約100%薬物放出
を示す、請求項9記載の薬剤組成物。
【請求項11】
該調節放出組成物が、即時放出コアと半透性膜を含む、請求項8記載の薬剤組成物。
【請求項12】
該調節放出組成物が、調節放出マトリックス・コアと半透性膜を含む、請求項8記載の薬剤組成物。
【請求項13】
該サリチレート及び/又はサリチル酸が、4−アミノサリチル酸及び5−アミノサリチル酸、又はそれらの少なくとも1種類の製薬的に受容される塩若しくはエステルから選択される、請求項8記載の組成物。
【請求項14】
4−アミノサリチル酸及び5−アミノサリチル酸、又はそれらの少なくとも1種類の製薬的に受容される塩若しくはエステルを含む、請求項13記載の組成物。
【請求項15】
該サリチレート及び/又はサリチル酸が、5,5’−アゾ−ビスサリチル酸、4,5’−アゾ−ビスサリチル酸、4,4’−アゾ−ビスサリチル酸、及びそれらの製薬的に受容される塩から選択される、請求項8記載の組成物。
【請求項16】
炎症性腸疾患の治療方法であって、このような治療を必要とする対象に、有効量の4,4’−アゾ−ビスサリチル酸を投与することを含む方法。
【請求項17】
4,4’−アゾ−ビスサリチル酸を調節放出製剤中で投与する、請求項16記載の方法。
【請求項18】
調節放出製剤が、遅延放出性及び持続放出性を有する放出プロフィルを示す、請求項17記載の方法。

【公表番号】特表2007−504212(P2007−504212A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−525214(P2006−525214)
【出願日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【国際出願番号】PCT/IB2004/003059
【国際公開番号】WO2005/021009
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(506377248)エイジーアイ・セラピューティクス・リサーチ・リミテッド (8)
【Fターム(参考)】