説明

炎症性腸疾患の治療

本発明は、炎症性腸疾患の治療、特にG タンパク質結合レセプターの活性を調節する能力を有する環状ペプチドおよびペプチド疑似化合物による該疾患の治療の方法に関する。該化合物は、好ましくは、C5a レセプターのアンタゴニストとして作用し、多形核白血球およびマクロファージ上のC5aレセプターに対し作用する。発明の方法における使用に特に好ましい化合物を開示する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明の分野
本発明は、炎症性腸疾患の治療に関し、特に、G タンパク質結合レセプターの活性を調節する能力を有する新規環状ペプチドおよびペプチド疑似(peptidomimetic)化合物によるその症状の治療に関する。該化合物は、好ましくは、C5a レセプターのアンタゴニストとして作用し、多形核白血球およびマクロファージ上のC5aレセプターに対し作用する。
【0002】
発明の背景
本明細書で引用する引用文献(特許または特許出願を含む)は全て引用により本明細書に含める。何れかの引用文献が従来技術を構成するとは認めがたい。引用文献の考察には著者の主張が述べられており、出願人は、該引用文献の正確さおよび適切さを変更する権利を留保する。多くの従来技術の刊行物を本明細書で引用しているが、これらの引用文献が、オーストラリアまたは何れか他の国において通常の一般的な知識の一部を形成するとは認めがたいことは明かであろう。
【0003】
G タンパク質結合レセプターは、人体全体にあり、それには、既知の細胞性レセプター型がおよそ60%含まれ、非常に広範の内因性リガンドのため細胞膜を通した情報伝達を仲介する。それらは、以下に限らないが、心臓血管、中枢神経系および末梢神経系、生殖、代謝、消化、免疫、炎症、および成長異常、ならびに他の細胞調節および増殖異常に関係する多様で多くの生理学的および病態生理学的過程に関係する。G タンパク質結合レセプターの機能を選択的に調節する薬剤は重要な治療に応用される。これらのレセプターは、情報伝達における重要な役割のため、ますます重要な薬物標的として認識されるようになってきている(G protein-coupled Receptors, IBC Biomedical Library Series, 1996)。
【0004】
最も集中的に研究されたG タンパク質結合レセプターの1つに、C5aのレセプターが有る。C5aは、既知の、最も強力な走化性薬剤の1つであり;創傷部位に好中球およびマクロファージを補充し;それらの形態を変え;顆粒消失を誘導し;カルシウム動員、血管透過(浮腫)および好中球接着を増加し;平滑筋と接触し;ヒスタミン、TNF-α、IL-1、IL-6、IL-8、プロスタグランジンおよびロイコトリエンを含む炎症性仲介物、およびリソソーム酵素の放出を刺激し;酸素ラジカルの形成を促進し;そして抗体産生を促進する(Gerard and Gerard, 1994)。
【0005】
C5aの炎症(pro-inflammatory)作用を制限する薬剤は、慢性炎症、およびそれに付随する痛みおよび組織傷害を抑制する可能性を有する。これらの理由のため、C5aをそのレセプターに結合させない分子は、補体活性化による生ずる慢性炎症性疾患の治療に有用である。その化合物が、種々の上記の炎症性仲介物から上流に作用するため、および多くのこれらの化合物形成を阻害するため、それらは、炎症性徴候を緩和または予防する点でより効能を有し得る。
【0006】
我々の先の出願、出願番号PCT/AU98/00490において、我々は、ヒトC5aのC末端の幾つかの類似体の三次元構造について記載しており、この情報を用い、ヒトC5aレセプター(C5aR)に結合し、C5aのアゴニストまたはアンタゴニストの何れかとして作用する、新規化合物を設計した。推定アンタゴニストは、レセプター結合およびアンタゴニスト活性のためにC末端アルギニンおよびC末端カルボン酸の両方を必要とし得る(Konteatis et al, 1994)。一般的に、末端のカルボン酸の基は、C5aRに対する高親和性結合またはアンタゴニスト活性の何れにも必要であるわけではないという事実を我々は示した。その代わりとして、従来の認識されていない構造的特長、ターンコンホメーションが、好中球におけるヒトC5aレセプターに対する高親和性結合で鍵となり認識される特徴であることが判った。2002年10月17日出願の我々の国際出願、出願番号PCT/AU02/01427に記載のように、我々は、これらの発見に更に改良を加え、C5aレセプターとの相互作用のため疎水性アレイ中に疎水性基をアセンブルすることができる、より強固に束縛した構造鋳型を設計した。その後、我々は、このクラスの好ましい化合物が心臓および肺の繊維症を抑制し得ることを発見し、これは、2003年4月7日出願の我々の国際出願、出願番号PCT/AU03/00415に記載している。これらの明細書の開示は全て、引用により本明細書に含める。
【0007】
炎症性腸疾患(IBD)は、小腸および大腸の両方に影響する深刻で、慢性、再発性、炎症性の一群の疾患であり、それらは、比較的現在の治療に対して抵抗性がある(resistant)。IBDは、現在の治療オプションでは不十分である、未知の起源の慢性の再発性の炎症を自然に生ずることを特徴とする(van Deventer, 2002で概説されている)。ヒトおよび実験動物の両方での疾患の大規模な研究にもかかわらず、病因のその正確な機構は依然として不明である。免疫性および炎症性仲介物の宿主は、生命維持に不可欠なアミン、キニン、アラキドン酸代謝物、フリーラジカル、一酸化窒素、種々の炎症性サイトカイン、および補体タンパク質を含むと考えられている(Nielsen et al, 1996)。
【0008】
IBDの現在の治療は、1以上のこれらの炎症性仲介物を標的とする。IBDのための薬物開発の最近の進歩には、インターロイキン、インターフェロンおよび腫瘍壊死因子α(TNF-α)のような、炎症性サイトカインを阻害するための、モノクローナル抗体の使用が含まれる。特に、抗-TNF-α抗体CDP571およびインフリキシマブはクローン病を治療すべく臨床的に使用されており、幾分成功をしている。しかしながら、これらの新規タンパク質による治療は、生産のコスト、不安定性、低いバイオアベイラビリティー、投与経路の制限、および免疫原性のような主要な欠点を有している。
【0009】
IBDの幾つかの主要な型が知られており、クローン病(局所的な腸疾患)および潰瘍性大腸炎は、これらの異常で最もよくあるものである。その病因の性質のため、C5a アンタゴニストによる治療が利点となりそうな、小腸および大腸の自己免疫のおよび免疫性-仲介疾患が多くある。これらは、リンパ球性-形質球性類腸炎、腹腔の疾患、コラーゲン性大腸炎、リンパ球性大腸炎およびエオシン好性全腸炎を含む。他のあまりないIBDの型には、不定型の大腸炎、感染性大腸炎(ウイルス性、細菌性または原生動物性、例えば、アメーバによる大腸炎)、偽膜性大腸炎(壊死性大腸炎)、および虚血性の炎症性腸疾患が含まれる。これらの病状は、ヒトおよび多くの動物種属で診断されてきた。
【0010】
1999年において、米国だけでおよそ170万人が、衰弱性のこの疾患を有すると診断された。IBDの満足のいく治療は、まだ対処されていない医療上のニーズである。現存の治療薬剤では、該疾患の減少および手術の必要性の回避が成功していないためである。全潰瘍性大腸炎患者の40%までが典型的に、大腸の一部の切除または完全な人工肛門形成(full colostomy)の何れかを含む手術を受けている。手術はクローン病には効かないが、全患者の75%は一生のうちで少なくとも一度は手術を受け、これらの患者の90%までが更なる手術が必要となる。炎症性腸疾患の治療が成功し得る治療製剤は、患者の生活の質を相当に改善し得、その一方、侵入性の外科的手順に関する数百万ドルの保健医療費が節約できる可能性がある。
【0011】
これらの病状において、多くの炎症性仲介物により生ずる慢性炎症が病因と関係している。補体系は、これらの炎症性仲介物の1つであると認められている。補体産物のレベルが、IBDで、患者の大腸において増加することがわかったためである(Neilsen et al. 1996)。突発性大腸炎としても知られる潰瘍性大腸炎は、炎症を起こし、潰瘍化する結腸および直腸の炎症により特徴付けられる; その原因は不明であるが、大腸上皮およびE. coli株0119 B14に対する抗体は時折存在する。その重篤度は変化し、患者は頻繁に再発する。局所的な腸炎または局所的な回腸炎とも呼ばれているクローン病は、腸壁の炎症、肥大化および潰瘍により特徴付けられ、その腸壁は通常、回腸の端部分において浮腫性粘膜または肥大化軟組織、腸間膜性浸潤、肥大化腸壁、および時折、炎症性部分、膿瘍、または膨張し液体が満ちたループ(distended fluid filled loops)を伴う。合併症には、瘻孔、壁内洞管(intramural sinus tract)、膿瘍、穿孔(perforation)、毒性のある巨大結腸症、腸閉塞、または水腎症が含まれ、回腸または結腸での腺癌の危険性が増大する。
【0012】
これらの両方の症状では、長期のベッドでの療養がしばしば必要であり、酷い場合には、冒された腸部分は外科的に除去しなければならないことがあり、オストミーバッグ(ostomy bag)の使用が必要となる。利用可能な唯一の治療薬剤は、プレドニゾロンのようなコルチコステロイド、Remicade (インフリキシマブ)のような腫瘍壊死因子に対するモノクローナル抗体、メトトレキサート、アザチオプリン、シクロスポリン、タクロリムス(tacrolimus)およびミコフェノール酸モフェチル(mycophenolate mofetil)のような免疫抑制剤、またはサルファサラジン(sulphasalazine)のような他の抗炎症性製剤である。これらの薬剤、特にステロイドは、効果が限られており、深刻な副作用があり得る。ブデソニドのようなコルチコステロイド誘導体、インターロイキン10およびインターロイキン11のようなサイトカインのアンタゴニストおよびアゴニスト、およびニコチン性レセプターアゴニストを含む他の種々の薬剤は、種々の臨床試験の段階にある。我々の知識では、これらC5aレセプターを標的とする承認されたかまたは実験中の薬剤、および特に小分子薬剤はない。
【0013】
それ故、注射で投与する必要がなく、リーズナブルなコストで生産できる有効で、非毒性の薬剤が当分野で非常に必要とされている。
【0014】
発明の要約
IBDにおける補体関与の知識が欠如しているため、我々は、大腸炎の動物モデルにおける特定の補体インヒビターの可能性ある抑制効果を試験した。我々は、C5a レセプターの特定のインヒビターは、ラットにおいて、トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)-誘発大腸炎での損傷の徴候を改善できることをこの度初めて示す。このモデルは、IBDの病因を調査するのに広範囲に使用されている(Morris et al, 1989)。我々は、C3aおよびC5aの両方によるアンタゴニストに対する強力な保護効果を発見した。それは、IBDの仲介物としての補体に関する大きな役割であって従来明かとされていない該役割を示唆している。
【0015】
これは、IBDのモデルで、病状の調節に補体系のインヒビターを使用するケースで最初の報告である。
【0016】
それ故、補体は、炎症性腸疾患における治療的介入のための可能性ある標的となる。
【0017】
第一の態様では、本発明は、炎症性腸疾患(IBD)の治療の必要のある対象にG タンパク質-結合レセプターのインヒビターを有効量投与する工程を含む、該治療の方法を提供する。
【0018】
好ましくは、該インヒビターは、
a)G タンパク質-結合レセプターのアンタゴニストであり、
b)実質的にアゴニスト活性はなく、そして
c)式 Iの環状ペプチドまたはペプチド疑似化合物である、
化合物である、
【化1】


ここで、AはH、アルキル、アリール、NH2、NH-アルキル、N(アルキル)2、NH-アリール、NH-アシル、NH-ベンゾイル、NHSO3、NHSO2-アルキル、NHSO2-アリール、OH、O-アルキル、またはO-アリールであり;
Bはアルキル、アリール、フェニル、ベンジル、ナフチルまたはインドール基、またはL-フェニルアラニンまたはL-フェニルグリシンのようなD-またはL-アミノ酸の側鎖であるが、グリシン、D-フェニルアラニン、L-ホモフェニルアラニン、L-トリプトファン、L-ホモトリプトファン、L-チロシン、またはL-ホモチロシンの側鎖ではなく;
Cはグリシン、アラニン、ロイシン、バリン、プロリン、ヒドロキシプロリン、またはチオプロリンのようなD-、L-またはホモ-アミノの側鎖のような小さな置換基であるが、 好ましくは、イソロイシン、フェニルアラニン、またはシクロヘキシルアラニンのような大きな(bulky)置換基ではなく、;
Dは、D-ロイシン、D-ホモロイシン、D-シクロヘキシルアラニン、D-ホモシクロヘキシルアラニン、D-バリン、D-ノルロイシン、D-ホモ-ノルロイシン、D-フェニルアラニン、D-テトラヒドロイソキノリン、D-グルタミン、D-グルタミン酸、またはD-チロシンのような中性D-アミノ酸の側鎖であるが、好ましくは、グリシンまたはD-アラニンの側鎖のような小さな置換基、D-トリプトファンのような大きな平面的(bulky planar)側鎖、またはD-アルギニンまたはD-リシンのような大きな荷電性(bulky charged)側鎖ではなく;
Eは、L-フェニルアラニン、L-トリプトファンおよびL-ホモトリプトファンからなる群から選択されるアミノ酸の側鎖のような大きな置換基であるか、またはL-1-ナフチルまたはL-3-ベンゾチエニルアラニンであるが、D-トリプトファン、L-N-メチルトリプトファン、L-ホモフェニルアラニン、L-2-ナフチルL-テトラヒドロイソキノリン、L-シクロヘキシルアラニン、D-ロイシン、L-フルオレニルアラニン、またはL-ヒスチジンの側鎖ではなく;
FはL-アルギニン、L-ホモアルギニン、L-シトルリン、またはL-カナバニンの側鎖、またはそれらのバイオイソスター(bioisostere)であり、すなわち、末端グアニジンまたは尿素基が保持されている側鎖であるが、炭素バックボーンは、異なる構造を有する基で置換され、それによって側鎖は、親基と同じ方法で標的タンパク質と全体的に反応し;そして
Xは-(CH2)nNH-または(CH2)n-S-(ここでnは1から4、好ましくは、2または3の整数である);-(CH2)2O-;-(CH2)3O-;-(CH2)3-;-(CH2)4-;-CH2COCHRNH-;または-CH2CHCOCHRNH-(ここで、Rは通常または通常でないアミノ酸の側鎖である)である。
【0019】
Cでは、ヒドロキシプロリンおよびチオプロリンのシス型およびトランス型の両方を使用し得る。
【0020】
好ましくは、Aは、アセトアミド基、アミノメチル基、または置換または非置換のスルフォンアミド基である。
【0021】
好ましくは、Aは、置換スルフォンアミドである場合、置換基は、1から6、好ましくは1から4の炭素原子のアルキル鎖、またはフェニルもしくはトルイル基である。
【0022】
特に好ましい実施態様では、化合物はC5aRに対するアンタゴニスト活性を有しており、C5aアゴニスト活性は有していない。
【0023】
化合物は、好ましくは、以下に限らないが、ヒト多形核白血球およびヒトマクロファージを含む、ヒトおよび哺乳類細胞上のC5aレセプターのアンタゴニストである。該化合物は、好ましくは、C5aレセプターに強力におよび選択的に結合し、より好ましくは僅かなマイクロモル(sub-micromolar)濃度で強力なアンタゴニスト活性を有する。またより好ましくは、該化合物は、レセプター親和性IC50<25μMおよびアンタゴニスト効力IC50<1μMを有する。
【0024】
最も好ましくは、化合物は、国際特許出願番号PCT/AU02/01427に記載された化合物1、化合物33、化合物60または化合物45である。
【0025】
第二の態様では、本発明は炎症性腸疾患の治療のための医薬の製造における上記のような化合物の使用を提供する。
【0026】
インヒビターは、IBDの治療のための1以上の他の薬剤と共に使用し得、その薬剤には、以下に限らないが、プレドニゾロンおよびブデソニドのようなコルチコステロイド、インフリキシマブ(Remicade; Johnson & Johnson)、メトトレキサートまたはアザチオプリンのような他の免疫抑制剤、サルファサラジン、Colazal(バルサラジド(balsalazide))などのような抗炎症性製剤、およびプロバイオティックスが含まれる。
【0027】
我々は、C3aインヒビター、SB 290157、がまた、動物モデル系におけるIBDの病状を調節できることを本明細書で示し、この病状の治療においてC5a インヒビターおよびC3a インヒビターの組合せが有用となることが予想される。
【0028】
本発明の組成物は、経口的、非経口的、吸入的、鼻腔内的、経直腸的(大腸内的(intra-colonic))または経皮的使用用に製剤化され得るが、経口的または経直腸的製剤が好ましい。任意の所望の経路による投与に適当な製剤は、標準的方法、例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Vol. II, 2000 (20th edition), A.R. Gennaro (ed), Williams & Wilkins, Pennsylvaniaのような既知のテキストブックを参照することにより調製され得る。
【0029】
好ましい製剤には、大腸において、炎症の局所的な領域において、吸収を促進する腸溶性カプセル、または浣腸のような経直腸的(大腸内的)剤形が含まれる。
【0030】
本発明の方法は、炎症性腸疾患の任意の型の治療に適用可能であり、その型には、以下に限らないが、クローン病(局所的腸疾患);潰瘍性大腸炎;リンパ球性-形質球性類腸炎、腹腔疾患、コラーゲン性大腸炎、リンパ球性大腸炎およびエオシン好性全腸炎のような小腸および大腸の自己免疫および免疫-仲介疾患;不定型(indeterminate)大腸炎、感染性大腸炎(ウイルス性、細菌性または原生動物性、例えば、アメーバー性大腸炎)、偽膜性大腸炎(壊死性大腸炎)、および虚血性の炎症性腸疾患が含まれる。
【0031】
本発明は、何れかの特定の動物または種の治療に制限されるものでは全くないが、本発明の方法はヒトの治療に有用であり、また、獣医的な治療、特にネコおよびイヌのようなコンパニオン・アニマル、ウシ、ウマおよびヒツジのような家畜、ヒト以外の霊長類、広範なウシ科、ネコ科、有蹄動物、イヌ科を含む動物園の動物の治療に有用であろうと特に予想される。例えば、ネコ科および特にイヌ科は、ヒトにおけるIBDに幾分類似の種々の炎症性腸疾患を患う。これらには、全腸炎、イヌの形質細胞性-リンパ球性大腸炎、プロトセカ属性(protothecal)大腸炎、および組織球性潰瘍性大腸炎が含まれる。
【0032】
該化合物は、任意の適当な用量でおよび任意の適当な経路により投与され得る。経口または直腸投与が好ましい。これらの経路はより便利がよく受け入れやすいからである。本発明の化合物の全てとは言えないまでもその殆どは、消化管、血液、肺または細胞内酵素のような代謝酵素の存在下で安定であろうと予想される。その安定性は、当業者に既知の通常の方法により容易に試験され得る。
【0033】
有効な用量は、治療する病状の特性、および各治療において年齢、体重、および健康状態に依存する。これは、担当する医師または獣医師の考えしだいであろう。適当な用量レベルは、当分野に既知の方法を用い、トライアル・アンド・エラー実験により容易に決定し得る。
【0034】
図面の簡単な説明
図1は8日間にわたる死亡率への影響を示す。pre = 治療前; post = 治療後
図2は摂食量への影響を示す。摂食した食物の量を24h[A]または8日[B]の何れかの後、測定した。データは平均±SEM(n = 4-12)を示す。*P < 0.05 薬物-処置ラット対大腸炎対照。pre = 治療前; post = 治療後
図3は体重への影響を示す。TNBS 投与後の体重の変化を[A]24hまたは[B]8日の何れかの後、測定した。データは平均±SEM(n = 4-12)を示す。*P < 0.05 薬物-処置ラット対大腸炎対照。 pre = 治療前; post = 治療後.
図4は臨床的な肉眼によるスコアを要約したものである。大腸は、[A]24hまたは[B]8日の何れかにおいて、0-13のスケールで肉眼により損傷をスコアした。データは平均±SEM(n = 4-12)を示す。*P < 0.05 薬物-処置ラット対大腸炎対照。 pre = 治療前; post = 治療後.
図5は大腸ミエロペルオキシダーゼ(MPO)レベルへの影響を示す。ラットの大腸におけるMPOのレベルを[A]24hまたは[B]8日の何れかで測定した。データは平均±SEM (n = 4-12)を示す。*P < 0.05 薬物-処置ラット対大腸炎対照。 pre = 治療前; post = 治療後
図6は24hおよび8日の研究における大腸浮腫レベルへの影響を示す。[A]24h;[B]8日。データは平均± SEM (n = 4-12)を示す。*P < 0.05 薬物-処置ラット対大腸炎対照。 pre = 治療前; post = 治療後.
図7は8日後の血清および大腸のTNF-αレベルへの影響を示す。データは平均±SEM(n = 4-12)を示す。[A]血清;[B]大腸組織。*P < 0.05 薬物-処置ラット対大腸炎対照。 pre = 治療前; post = 治療後.
図8はヘマトキシリンおよびエオシンで染色した8日の研究におけるラットの大腸の切片を示す(x 40倍)。画像は各研究対象群のうちの典型および代表的なものである。
[A]未処置の上皮および粘膜層(ML)を有する、生理食塩水注射し偽処置した(sham-operated)ラット;
[B]炎症性細胞(IC)浸潤、浮腫(E)、およびML構造の完全破壊(矢印で示す)を含む、広範囲の損傷を有するTNBS薬物-フリーの大腸炎対照ラット;
[C]IC浸潤およびEを有するが、MLは未処置である、TNBS C5aアンタゴニスト(10 mg/kg/日、経口)処置後ラット;および
[D]IC浸潤、E、広範囲の出血(H)およびMLの糜爛(矢印で示す)を有するTNBSプレドニゾロン(1 mg/kg/日、SC)処置後ラット
【0035】
発明の詳細な説明
この発明は、本明細書に記載の特定の材料および方法に限られるものでないことは明らかに理解される。これらは、変化し得るためである。また、本明細書で使用する用語は特定の実施態様のみを記載することを意図していることが理解され、本発明の範囲を限定することを目的とするものではなく、それは、特許請求の範囲によってのみ制限される。
【0036】
特許請求の範囲においておよび本発明の前述の記載において、用語または必要な意味を表すために文脈上、他が必要な場合を除き、「含む(comprise)」という語または「含む(comprises)」または「含んでいる(comprising)」のような変形型は、包括的な意味で使用し、すなわち、記載する特徴の存在を特定するために使用するが、本発明の種々の態様において更なる特徴の存在または付加を排除するものではない。
【0037】
本明細書で使用するとき、単数形「ある(a)」、「ある(an)」、および「その(the)」は、文脈上、他を示さない限り、複数形をも示す。そのため、例えば、「酵素(an enzyme)」という言及には複数形のその酵素をも含み、「アミノ酸(an amino acid)」という言及には1以上のアミノ酸を示す。特記しない限り、本明細書で使用する技術用語および科学用語は、本発明が属する当業者が通常理解すると同じ意味を有する。本明細書に記載の材料および方法と類似または均等の任意の材料および方法を用い、本発明を実施または試験し得、その好ましい材料および方法は以下に記載する。
【0038】
本明細書で使用する略語は以下の通りである:
Cit シトルリン
dCha D-シクロヘキシルアミン
DPhe D-フェニルアラニン
IBD 炎症性腸疾患
ip 腹腔内
iv 静脈内
LPS リポ多糖類
MPO ミエロペルオキシダーゼ
PMN 多形核顆粒球
PMSF フェニルメチルスルホニルフルオリド
Pr 経直腸的
sc 皮下的
TNBS トリニトロベンゼンスルホン酸
TNF-α 腫瘍壊死因子-α
本明細書では、通常、一文字表記および三文字表記のコードを用い、アミノ酸を表す。
【0039】
この明細書の目的のため、用語「アルキル」は、直鎖状、分枝状、または環状の、1から6、好ましくは1から4炭素の置換または非置換のアルキル鎖を意味する。最も好ましくは、アルキル基はメチル基である。用語「アシル」は、1から6、好ましくは1から4炭素原子の置換または非置換のアシルを意味する。最も好ましくは、アシル基はアセチルである。用語「アリール」は、置換または非置換のホモ環またはヘテロ環アリール基を意味すると理解され、その環は好ましくは5から6員環である。
【0040】
「通常」アミノ酸は、グリシン、ロイシン、イソロイシン、バリン、アラニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、システイン、メチオニン、アルギニン、リジン、プロリン、セリン、トレオニンおよびヒスチジンからなる群から選択されるL-アミノ酸である。
【0041】
「希な」アミノ酸には、以下に限らないが、D-アミノ酸、ホモ-アミノ酸、N-アルキル アミノ酸、デヒドロアミノ酸、フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファン以外の芳香族性 アミノ酸、オルト-、メタ-またはパラ-アミノ安息香酸、オルニチン、シトルリン、カナバニン、ノルロイシン、γ-グルタミン酸、アミノ酪酸、L-フルオレニルアラニン、L-3-ベンゾチエニルアラニン、およびα,α 二置換アミノ酸が含まれる。
【0042】
一般的に、用語「治療する」、「治療」などは、対象、組織または細胞に影響し、望ましい薬理学的および/または生理学的効果を得ることを意味するのに使用する。その効果は、疾患またはその徴候または症状の完全なまたは部分的な阻止という点で予防であり得る。
【0043】
本明細書で使用の「治療をする」とは、脊椎動物、哺乳類、特にヒトの疾患のあらゆる治療または予防を意味し、疾患にかかりやすいかもしれないが、まだその疾患を有するとは診断されていない患者において疾患が生ずるのを予防すること;疾患を抑制すること、すなわち、その進行を停止させること;または疾患の影響を緩和または改善すること、すなわち、疾患の影響を緩解すること、を含む。
【0044】
本発明は、疾患の改善に有用な種々の医薬組成物の使用を含む。本発明のある実施態様による医薬組成物は、式 Iの化合物、類似体、それらの誘導体または塩、および1以上の医薬的作用剤(pharmaceutically-active agents)、または式 Iの化合物および1以上の医薬的作用剤を、対象への投与に適当な形態に組み合わせた混合物(combination)(担体、賦形剤および添加物または補助剤を用いる)を提供することにより調製される。
【0045】
しばしば用いられる担体または補助剤には、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、ラクトース、マンニトールおよび他の糖、タルク、乳タンパク質、ゼラチン、デンプン、ビタミン、セルロースおよびその誘導体、動物油および植物油、ポリエチレングリコール、および滅菌水、アルコール、グリセリンおよび多価アルコールのような溶媒が含まれる。静脈のビヒクルには、液体および栄養素の補充物が含まれる。保存料には、抗菌剤、抗酸化剤、キレート化剤および不活性ガスが含まれる。他の医薬的に許容される担体には、例えば、Remington's pharmaceutical Sciences, 20th ed. Williams & Wilkins (2000) and The British National Formulary 43rd ed. (British Medical Association and Royal pharmaceutical Society of Great Britain, 2002; http://bnf.rhn.net)に記載のような塩、保存料、緩衝剤などを含む水溶液、非毒性賦形剤が含まれる(その参考文献の内容は引用により本明細書に加える)。医薬組成物の種々のコンポーネントのpHおよび正確な濃度は、当分野に通常の技術により調整される。Goodman and Gilman's The Pharmacological Basis for Therapeutics (7th ed., 1985)参照。
【0046】
医薬組成物は、好ましくは、用量単位で調製および投与される。固体用量単位には、錠剤、カプセルおよび坐薬が含まれる。化合物の機能、投与方法、異常の性質および重篤度、対象の年齢および体重に依存する患者の治療の場合、種々の日用量が用いられ得る。しかしながら、特定の状況下では、より高いまたはより低い日用量が適当となり得る。その日用量の投与は、各用量単位あるいは幾種かのより少量の用量単位型での単回投与により、およびまた、特定の間隔での、細かく別けた用量の複数回投与(multiple administration)により、それら両方により行われ得る。
【0047】
本発明による医薬組成物は、治療的に有効な量で局所的または全身的に投与され得る。この使用に有効な量は、もちろん、疾患の重篤度および患者の体重および全身状態に依存する。典型的に、インビトロで使用する用量により、医薬組成物のイン・シトゥ投与に有用な量での有用な教示(guidance)が得られ得、動物モデルを使用し、細胞毒性の副作用の処置に有効な用量を決定し得る。例えば、Langer, Science, 249: 1527, (1990)に、種々の検討が為されている。経口的使用用の製剤は、固いゼラチンカプセル型であり得、その有効成分は、不活性固体希釈剤、例えば炭酸カルシウム、リン酸カルシウムまたはカオリンと混合する。それらはまた、柔らかいゼラチンカプセル型であり得、その有効成分は、水またはピーナッツ油、液体パラフィンまたはオリーブオイルのような油媒体と混合する。
【0048】
水性懸濁液は、通常、水性懸濁液の製造に適する賦形剤との混合物中に有効物質を含む。その賦形剤は、カルボキシルメチル・セルロース・ナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴムおよびアカシアゴムのような懸濁剤;分散剤または湿潤剤であり得、それらは、(a) レシチンのような天然に生ずるホスファチド;(b)脂肪酸とアルキレン・オキシドとの縮合生成物、例えば、ステアリン酸ポリオキシエチレン;(c)長鎖脂肪族アルコールとエチレン・オキシドとの縮合生成物、例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノール;(d)ポリオキシエチレン・ソルビトール・モノオレエートのような脂肪酸およびヘキシトールから得られる部分的なエステルとエチレン・オキシドとの縮合生成物、または(e)脂肪酸およびヘキシトール無水物、例えば、ポリオキシエチレン・ソルビタン・モノオレエートから得られる部分的なエステルとエチレン・オキシドとの縮合生成物であり得る。
【0049】
医薬組成物は、滅菌した注射可能な水性または油性の懸濁液型であり得る。この懸濁液は、上記のような適当な分散剤または湿潤剤および懸濁剤を用いる既知の方法により製剤し得る。滅菌注射可能製剤はまた、例えば、1,3-ブタンジオール中の溶液のような非毒性の非経口的に許容される希釈液または溶媒中の、滅菌注射可能溶液または懸濁液であり得る。用いられ得、許容されるビヒクルおよび溶媒は、水、リンゲル液、および等張性塩化ナトリウム溶液である。加えて、滅菌、固定油が、通常、溶媒または懸濁媒体として用いられる。この目的のため、合成モノ-またはジグリセリドを含む何れかの刺激性の低い固定油を用い得る。更に、オレイン酸のような脂肪酸は、注射可能な製剤中に使用し得る。
【0050】
式Iの化合物はまた、小さな1枚膜ベシクル(small unilamellar vesicle)、大きな1枚膜ベシクル(large unilamellar vesicle)、および多重層ベシクル(multilamellar vesicle)のようなリポソーム輸送システム型で投与され得る。リポソームは、コレステロール、ステアリルアミン、またはホスファチジルコリンのような種々のリン脂質から形成され得る。
【0051】
本発明の式 Iの化合物の用量レベルは、通常、体重kgあたり約0.5mgから約20mgのオーダー、好ましくは1日あたり体重kgあたり約0.5mgから約10mgの間の用量範囲である(1日あたり患者あたり約0.5gから約3g)。単一用量を作成するための担体物質と組合せ得る有効成分の量は、治療する宿主および特定の投与形態により変化する。例えば、ヒトへの経口投与を目的とする製剤は、担体物質を適当なおよび通常の量(その量は全組成物の約5から95%の範囲で変わり得る)を含み、有効化合物を約5mgから1g含み得る。用量単位型は、一般的に、有効成分を約5mgから500mgの範囲で含むであろう。
【0052】
しかし、任意の特定の患者での特定の用量レベルは、用いる特定化合物の活性、年齢、体重、身体全体の健康、性別、食習慣、投与時間、投与経路、排泄の速度、薬物の組合せおよび治療を行う特定の疾患の重篤度を含む種々の因子に依存するであろうと理解される。
【0053】
加えて、幾つかの本発明の化合物は水または通常の有機溶媒とともに溶媒和化合物を形成し得る。その溶媒和化合物は、本発明の範囲内に含まれる。
【0054】
本発明の化合物は、更に他の治療化合物と組み合わされて、効力のある組合せを提供し得る。その組合せには、本発明の式 Iの化合物の活性が喪失しない限り、医薬的に有効な製剤の、任意の化学的融和性の組合せが含まれることを意図する。
【0055】
本発明は、以下の一般的な方法および実験例のみに言及して記載する。
【0056】
一般的な方法
ペプチド合成
式 Iの環状ペプチド化合物は、先の我々の出願、出願番号PCT/AU98/00490およびPCT/AU02/01427に詳細に記載する方法により調製される。他の合成方法は、オーストラリア仮出願番号2003902743に記載している。これらの明細書の開示は全て引用により本明細書に含める。本発明は、化合物 AcF-[OPdChaWR] (PMX53)(その相当する直鎖状ペプチドはAc-Phe-Orn-Pro-dCha-Trp-Argである)に関して特に開示しているが、本発明はその化合物に限定しないことが明らかに理解されるだろう。
【0057】
国際特許出願、出願番号PCT/AU98/00490に開示の化合物1-6、17、20、28、30、31、36および44、およびオーストラリア仮出願、出願番号PCT/AU02/01427で最初に開示した化合物10-12、14、15、25、33、35、40、45、48、52、58、60、66および68-70は、ヒト好中球のC5aレセプターに対して測定できるほどのアンタゴニスト効力(IC50 < 1 μM)を有する。PMX53およびPCT/AU02/01427の化合物33、45および60は最も好ましい。
【0058】
今までのところ、試験した式 Iの化合物は全て、およそ同様の薬理学的活性を有しているが、各化合物の物理化学的性質、効力およびバイオアベイラビリティーは、特定の置換基によって幾分変化することが判った。
【0059】
下記の一般的試験は、G タンパク質結合レセプター、および特にC5aレセプターの候補インヒビターの最初のスクリーニングに使用し得る。
【0060】
薬物調製および製剤
ヒトC5aレセプターアンタゴニストAcF-[OPdChaWR](AcPhe[Orn-Pro-D-シクロヘキシルアラニン-Trp-Arg])を上記のように合成し、逆相HPLCで精製し、そして質量分析およびプロトンNMR分光法で十分に特性解析した。C5aアンタゴニストを経口投与用にオリーブオイル中(10 mg/mL)に調製し、およびSC投与用に30% ポリエチレングリコール溶液中(0.6 mg/mL)に調製した。C3aアンタゴニストSB 290157(Ph2CHCH2OCH2CO-Arg-OH)は先に詳細に記載している(Ames at al, 2001)。それを合成し、逆相HPLCで精製し、質量分光法およびNMR分光法で特性解析した。それを、IP注射用に50% プロピレングリコール溶液中(30 mg/kg)に調製した。グルココルチコステロイド、プレドニゾロン(Sigma、U.S.A.)をSC投与用に30% ポリエチレングリコール溶液中に調製した。TNF-αインヒビターインフリキシマブ(Remicade(登録商標))をIV投与用の指示書通りに滅菌生理食塩水中(3 mg/mL)に調製した。TNBS-誘発大腸炎を有するラットにおけるプロピレングリコールまたはポリエチレングリコールでは、抗-炎症性効果は観察されなかった。
【0061】
レセプター-結合アッセイ
アッセイは、50 mM HEPES、1 mM CaCl2、5 mM MgCl2、0.5% ウシ血清アルブミン、0.1% バシトラシンおよび100 μM フェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)の緩衝液を用い、先に記載した(Sanderson et al, 1995)ように単離した新しいヒトPMNで行う。4℃で行ったアッセイでは、緩衝液、非標識ヒト組み換えC5a (Sigma)またはペプチド、Hunter/Bolton標識125I-C5a(〜20pM)(New England Nuclear, MA)およびPMN(0.2 x 106)を、最終体積200μL/ウェルのMillipore Multiscreenアッセイプレート(HV 0.45)に連続的に加える。4℃で60分間のインキュベーション後、サンプルを濾過し、プレートを緩衝液で一度洗浄する。フィルターを乾燥させ、穴を開け、LKBガンマカウンターでカウントする。非特異的な結合は、全結合の10-15%を典型的に生ずる1mM ペプチドまたは100 nM C5aの包含により評価した。
【0062】
データは、非線形回帰およびDunnett事後試験による統計値を用い分析する。
【0063】
アンタゴニスト作用のミエロペルオキシダーゼ放出アッセイ
細胞は、先に記載(Sanderson et al, 1995)のように単離し、サイトカラシン Bと共にインキュベーションする(5μg/mL、15分間、37℃)。0.15% ゼラチンおよびペプチドを含むハンクス平衡塩溶液を96ウェルプレートに追加し(全体積100 μL/ウェル)、その後、25μL 細胞(4x106/mL)を加える。C5aに対抗する、それぞれのペプチドの能力を評価するために、それぞれのペプチドと共に細胞を5分間37℃でインキュベーションし、その後、C5a (100 nM)を添加し、更に5分間インキュベーションする。次いで、リン酸ナトリウム50 μL(0.1M、pH 6.8)を各ウェルに添加し、そのプレートを室温に冷却し、等量のジメトキシベンジジン (5.7 mg/mL)およびH2O2(0.51%)の新しい混合物25 μLを各ウェルに添加する。反応は、2%アジドナトリウムを加え10分で終了する。吸光度は、コントロール値(ペプチドなし)で校正したBioscan 450プレートリーダーで、450 nmで測定し、非線形回帰により分析する。
【実施例】
【0064】
実施例 1
炎症性腸疾患に対するPMX53の効果
IBDにおける補体関与の知識が現在、欠如しているため、我々はラットのトリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)-誘発大腸炎におけるPMX53(AcF-[OPdChaWR])よる可能な抑制効果を試験することを目的とした。比較のため、我々はまた、C3aアンタゴニスト SB 290157 (Ames et, 2001)、コルチコステロイドプレドニゾロン、およびTNF-α抗体インフリキシマブの効率を試験した。
【0065】
ラットのトリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)-誘発大腸炎における損傷の徴候を改善する能力に関しPMX53 (AcF-[OPdChaWR])を試験した。このモデルは、IBDの病因を調査するため広範囲に使用されている(Morris et al, 1989)。オスWistarラット (250-300g)に24時間餌を与えず、その後、ケタミン(80 mg/kg i.p.)およびキシラジン(xylazine)(8 mg/kg i.p.)で麻酔した。次いで、1.7 mmの外径のポリエチレンカテーテルを大腸内に肛門から8cmまで挿入した。次いで、漏れを防止するため30分間、頭を下にした体勢のまま、250μL エタノール (100%)と共に120mg/kg TNBS (50mg/mL 溶液)をラットに注入した。偽処置ラット(大腸炎を有していないラット)は、生理食塩水のみまたは250μL エタノールおよび生理食塩水の何れかを受けた。次いで、ラットを観察しながら回収した。
【0066】
各実験の完了時に、ゾラザパム(zolazapam)(50 mg/kg、IP)およびキシラジン(12 mg/kg, IP)でラットを麻酔し、血液を回収し、後のTNF-α濃度測定まで血清を-20℃で保存した。大腸を解剖し、末端の8-cmを生理食塩水で洗浄し、以下に開示のような0-13のスケールを用い、独立したブラインドした観察者により臨床的に肉眼的により損傷をスコアした(Bobin-Dubigeon et al, 2001)。次いで、冒された大腸の切片を回収し、重さを量り、24時間、80℃のオーブンに置いた。次いで、再び重さを量り、大腸浮腫の測定として乾燥重量に対する湿重量の比(wet-to-dry weight ratio)を測定した(Rachmilewitz et al., 1989)。冒された大腸の別の切片をまた回収し、1 mL リン酸緩衝生理食塩水でホモジナイズし、20秒間超音波をかけ、遠心分離した(14 000 x g、10分)。次いで、その得られた上清は、後のTNF-α測定まで保存(-20℃)するか、またはミエロペルオキシダーゼ(MPO)レベルの測定のためのアッセイに直ぐさま使用するか何れかであった。端的には、そのアッセイでは、20 μL サブストレート (o-ジアニシジン、2.85 mg/mL、Sigma、U.S.A.;および0.85% 水素ペルオキシダーゼ(hydrogen peroxidase))を、リン酸緩衝生理食塩水中の1:40希釈の上清に加えた。次いで、24時間のサンプルではサブストレートを添加して5分後、そして8日のサンプルでは添加して15分後に450 nMで吸光度を測定した。大腸MPO含有量の結果を吸光度 ユニット/g 組織に変換した。大腸の更なる切片を回収し、組織病理学分析のため10% ホルマリン中で保存した。固定化大腸サンプルをパラフィンワックス中に包埋させ、切片はヘマトキシリンおよびエオシン染色を用い染色し、写真を撮り、および独立した観察者によりブラインド法で試験した。組織および血清TNF-αレベルを、希釈していないサンプルを用いる、先に記載(Arumugam et al, 2002)のような酵素結合免疫吸着検定法を用い、保存サンプルで測定した。次いで、大腸のTNF-α含有率の結果をpg TNF-α/g 組織に変換した。
【0067】
この研究のために2つの時間枠を選択した。すなわち、短期間枠(24時間)および長期間枠(8-日)である。その研究の期間中、体重および食べた餌の量の両方を毎日測定した。24時間の研究では、全ての薬物治療をTNBSの注入の2日前に開始した(予防)。PMX53-、プレドニゾロン-およびそれらの組合せ-処置ラットを一日一度処置し、C3aアンタゴニスト-処置ラットには一日二度投与した。TNBS注入の2日前のある時、抗-TNF-αモノクローナル抗体、インフリキシマブ、で処置したラットに静脈で投与したこともある。以下の治療したグループを24時間モデルに用いた:
(a) PMX53 (オリーブオイル中、10mg/kg、経口),
(b) PMX53 (30% ポリエチレングリコール中、0.3mg/kg、皮下的)、
(c) C3a アンタゴニスト (30 mg/kg、1日2回(bid)、IP)、
(d) プレドニゾロン (80% ポリエチレングリコール中、1mg/kg、皮下的)、
(e) PMX53 (オリーブオイル中、10mg/kg、経口)、およびプレドニゾロン (80% ポリエチレングリコール中、1mg/kg、皮下的)の組合せ、および
(f) インフリキシマブ (生理食塩水中、1mg/kg、静脈内)。
【0068】
8-日の研究では、薬物-処置ラットは、大腸炎誘発前(2日前; 予防)または大腸炎誘発後(24時間後;改善(reverse))の両方で処置した。以下の治療したグループを8-日の研究に用いた:
(a) PMX53 (オリーブオイル中、10mg/kg、経口、誘発前および誘発後の両方)、
(b) PMX53 (30% ポリエチレングリコール中、0.3mg/kg、皮下的、誘発前のみ)、
(c) PMX53 (オリーブオイル中、1mg/kg、経口、誘発後のみ)、
(d) プレドニゾロン (80% ポリエチレングリコール中、1mg/kg、皮下的、誘発前および誘発後の両方)、
(e) PMX53 (オリーブオイル中、10mg/kg、経口)およびプレドニゾロン (80% ポリエチレングリコール中、1mg/kg、皮下的)(誘発前のみ)の組合せ、および
(f) インフリキシマブ (生理食塩水中、1mg/kg、静脈内、誘発前のみ)。
【0069】
次いで、大腸を、ブラインド条件の下、1-14のスケールで以下のように肉眼でスコアした:
潰瘍化 下痢 癒着
0-損傷なし 0-なし 0-なし
1-病巣の充血 1-軽い 1-軽い
2-充血および腸の肥大化 2-酷い 2-酷い
3-1部位での潰瘍化
4-2部位での潰瘍化
5->1cmの潰瘍化
6-10->2cmの潰瘍化;
1 cm増える毎にスコアが増す。
【0070】
多くのパラメーターの結果を図1〜7に要約する。すべての実験結果を平均±標準誤差(SEM)として表す。データ分析はGraphPad Prism 3.0 software (GraphPad Software, Inc. USA)を用い行った。一元配置分散分析を用い、その後、Dunnett試験後比較分析(Dunnett comparison post-test analysis)を用い、統計学的な比較を薬物-処置グループと大腸炎対照動物との間で行った。統計学的有意性をP < 0.05で評価した。
【0071】
死亡率
図 1に示すように、薬物-フリーのラットにおける大腸炎の誘発により、TNBS 投与後最初の2日で、死亡率は高くなり、39%となった。プレドニゾロン後処置を除くすべての薬物治療により、薬物-フリーの大腸炎対照ラット(n = 13)と比較すると死亡率(n = 8-16)は低下した。死亡なしは、偽処置した動物(n = 4)で記録した。誘発前(10 mg/kg/日 経口および0.3 mg/kg/日 SC)または誘発後24時間後(1または10 mg/kg/日 経口)の何れかにC5aアンタゴニストで処置したラットでは、生存率は改善し、死亡率は20%以下となった。コルチコステロイドプレドニゾロン(1 mg/kg/日 SC)で前処置したラットでは、死亡率は同様に減少し、11%となった;しかしながら、プレドニゾロンによる後処置では、死亡率の減少において有意な効果はなかった。インフリキシマブ前処置(3 mg/kg IV)により、死亡率は20%に減少し、それは、C5a アンタゴニスト(10mg/kg 経口または0.3mg/kg SC)またはプレドニゾロン前処置ほどは効果はなかった。C5a アンタゴニスト (10 mg/kg/日 経口)およびプレドニゾロン (1 mg/kg/日 SC)の組合せにより前治療したラットでは、または0.3mg/kg SCのC5a アンタゴニストで前処置したラットでは死亡は見られなかった。
【0072】
摂食:
薬物治療24時間後、薬物-フリーの大腸炎対照ラットと比較すると食べ物の消費で有意な改善は見られなかった。8日後、プレドニゾロン後処置ラットを除く全ての薬物-処置ラットは、薬物-フリーの大腸炎対照ラットよりも食べ物を顕著に多く食べた。図 2Aに示すように、大腸炎誘発により、24時間後、偽処置したラットと比較すると全てのTNBS-投与ラットで食べ物の消費が減少した。24時間を超えると、薬物治療により摂取が顕著に改善することはなかった。
【0073】
8日を超えると、図 2Bに示すように、薬物-フリーのラットはまた、偽処置したラットほどは食べ物をたべなかった。誘発前(10 mg/kg/日 経口および0.3 mg/kg/日 SC)または誘発後24時間後(1または10 mg/kg/日 経口)の何れかでC5a アンタゴニストで処置したラットは、大腸炎対照ラットよりも顕著に多く食べ、8日目で偽処置したラットと同程度の量の食物を消費した(P < 0.05;)。プレドニゾロン (1 mg/kg/日 SC)で前処置したラットはまた、8日後、大腸炎対照ラットよりも顕著に多くの食物を食べた(P < 0.05);しかしながら、この薬物で後処置したラットは食物の消費は改善されなかった(P > 0.05)。インフリキシマブ(3 mg/kg IV)で前処置したラットはまた、8日後、薬物-フリーのラットよりも顕著に多くの食物を食べ、それは、C5a アンタゴニスト (10 mg/kg/日 経口)およびプレドニゾロン (1 mg/kg/日 SC)の組合せで前処置したラットと同様であった(P < 0.05)。
【0074】
体重
体重減少における顕著な減少は、薬物-フリーの大腸炎対照ラットと比較すると薬物治療後24時間後では、見られなかった。8日後、C5a アンタゴニストで処置したラットのみが、薬物-フリーの大腸炎対照ラットと比較すると顕著に体重が重かった。TNBSを受けた全てのラットで、図3Aに示すように、偽処置したラットと比較すると誘発後24時間で相当に体重減少した。薬物治療は、24時間を超えるとこの体重減少に顕著に影響を与えることはなかった。
【0075】
8-日の研究期間の間、図 3Bに示すように、薬物-フリーのラットでは、体重は減り続け、8日目での平均体重減少は-21 ± 8 g (n = 8)であった。大腸炎誘発前(10 mg/kg/日 経口および0.3 mg/kg/日 SC)または誘発後24時間後(1または10 mg/kg/日 経口)の何れかにおいてC5a アンタゴニストで処置したラットでは、8日間で実質的に体重が増えており、大腸炎対照ラットと比較すると顕著に体重が増えていた(P < 0.05)。対照的に、プレドニゾロン(1 mg/kg/日 SC)で前処置または後処置の何れかをしたラット、またはC5a アンタゴニスト (10 mg/kg/日 経口)およびプレドニゾロン (1 mg/kg/日 SC)の組合せで前処置したラットは、8日間で体重は減少しており、8日目で大腸炎対照ラットと比較すると有意な差はなかった(P > 0.05)。インフリキシマブ (3 mg/kg IV)で前処置したラットは日8で僅かな体重増加のみがあった;しかしながら、これらのレベルは大腸炎対照ラットよりも有意に高くはなかった(P > 0.05)。
【0076】
肉眼によるスコア
大腸は、先に確立されたスコアリングシステム(Bobin-Dubigeon et al, 2001)を用い、ブラインド法で、独立した観察者により、出血および潰瘍化の徴候を肉眼で検査した。24時間後、インフリキシマブを除く全ての薬物治療により、薬物-フリーの大腸炎対照ラットと比較すると肉眼によるスコアに顕著な改善が得られた。8日後、プレドニゾロン後処置を除く全ての薬物治療により、薬物-フリーの大腸炎対照ラットと比較すると肉眼によるスコアに顕著な改善が得られた。偽処置した動物では肉眼で明らかな損傷は見られなかった。
【0077】
図 4Aに示すように、24時間後、全てのTNBS-処置ラットの大腸では、広範囲の出血、浮腫および初期の潰瘍形成を有していることが見られた。癒着は観察されず、下痢は最小限であった。薬物-フリーのラットでは、肉眼による平均的なスコアは24時間では7.2 ± 0.5 (n = 12)であった。24時間の研究で、何れの薬物によるラットの前処置によって、肉眼によるスコアは減少し、有意な改善がインフリキシマブを除く全ての治療グループで見られた(P < 0.05)。図 4Bに示すように、8日後、TNBS-処置ラットの大腸は24時間のときよりも相当に酷い損傷を有していた。これは、病状が進行していたことを示す。大腸ではあまり出血はなかったが、潰瘍形成は広範囲であり、癒着および下痢は通常程度であった。大腸炎対照ラットは、8日目に11.5 ± 0.8 (n = 12)の肉眼による平均スコアを有していた。誘発前(10 mg/kg/日 経口および0.3 mg/kg/日 SC)または誘発後24時間後(1または10 mg/kg/日 経口)の何れかにおいてC5a アンタゴニストで処置したラットでは、大腸炎対照ラットと比較すると肉眼によるスコアが顕著に改善しており、プレドニゾロン前-処置ラット(1 mg/kg/日、SC)と同様であった(P < 0.05)。インフリキシマブ (3 mg/kg IV)で前処置したラットではまた、日8で、スコアが顕著に減少した(P < 0.05)。プレドニゾロン (1 mg/kg/日、SC)で後処置したラットでは、8日目での肉眼によるスコアは全く改善しなかった(P > 0.05)。
【0078】
大腸 MPO
24時間後、C5a アンタゴニストまたはC5a アンタゴニストおよびプレドニゾロンの組合せの何れかで処置したラットのみが、薬物-フリーの大腸炎対照ラットと比較すると大腸 MPO レベルで有意な改善があった。8日後、プレドニゾロン後処置を除く全ての薬物治療により、薬物-フリーの大腸炎対照ラットと比較すると大腸MPOレベルにおいて有意な改善があった。図 5Aに示すように、薬物-フリーのラットの大腸におけるMPOのレベルは、24時間で、偽処置したラットよりも実質的に高くなった。この酵素のレベルは、24時間後、全ての薬物-処置ラットにおいて減少し、C5a アンタゴニスト(10 mg/kg/日 経口または0.3 mg/kg/日 SC)またはC5a アンタゴニスト (10 mg/kg/日 経口)およびプレドニゾロン (1 mg/kg/日 SC)の組合せの何れかで前処置したラットで有意な改善があった(P < 0.05)。
【0079】
図 5Bに示すように、8日後、TNBS-投与したラットにおける大腸のMPOのレベルは、24時間のときと比較すると更に減少した。誘発前(10 mg/kg/日 経口および0.3 mg/kg/日 SC)または誘発後24時間後(1および10 mg/kg/日 経口)の何れかでC5a アンタゴニストで処置したラットにおいて、またはC5a アンタゴニスト (10 mg/kg/日 経口)およびプレドニゾロン (1 mg/kg/日 SC)の組合せで前処置したラットにおいて、大腸のMPOのレベルは、8日後、偽処置した動物のレベルと同様のレベルに減少した(P < 0.05)。プレドニゾロン (1 mg/kg/日 SC)またはインフリキシマブ (3 mg/kg IV)の何れかで前処置したラットはまた、8日後、大腸のMPOレベルは有意に減少したが、改善の程度は、C5a アンタゴニストで処置したラットほどではなかった(P < 0.05)。プレドニゾロン (1 mg/kg/日 SC)で後処置したラットでは、大腸のMPOレベルで改善は全く見られなかった(P > 0.05)。
【0080】
大腸の浮腫:
乾燥重量に対する湿重量の比により測定される大腸の浮腫は、24時間または8日の何れかで測定した。その結果を図 6に示す。24時間および8日の両方の後、C5a アンタゴニスト、またはC5a アンタゴニストおよびプレドニゾロンの組合せの何れかで処置したラットのみで、薬物-フリーの大腸炎対照ラットと比較すると、大腸の乾燥重量に対する湿重量の比において有意な改善があった。図 6Aに示すように、TNBS-投与したラットの大腸の乾燥重量に対する湿重量の比は、24時間後、偽処置したラットと比較すると相当に増大し、これは浮腫を示す。この時点において、C5a アンタゴニスト (10 mg/kg/日 経口または0.3 mg/kg/日 SC)またはC5a アンタゴニスト (10 mg/kg/日 経口)およびプレドニゾロン (1 mg/kg/日 SC)の組合せで前処置したラットのみで、大腸炎対照ラットと比較すると乾燥重量に対する湿重量の比に有意な減少があった(P < 0.05)。C3a アンタゴニストは顕著な効果を有していなかった。
【0081】
図 6Bに示すように、8日後、TNBS-投与したラットにおける大腸の浮腫のレベルはまた、偽処置したラットよりも相当に高かったが、24時間のときに見られたレベルよりも低かった。誘発前(10 mg/kg/日 経口および0.3 mg/kg/日 SC)または誘発後24時間後(1および10 mg/kg/日 経口)の何れかにおいてC5a アンタゴニストで処置したラット、ならびにこの8日の時間枠でC5a アンタゴニスト (10 mg/kg/日 経口)およびプレドニゾロン (1 mg/kg/日 SC)の組合せで前処置したラットにおいて、乾燥重量に対する湿重量の比に有意な減少があった(P < 0.05)。プレドニゾロン (1 mg/kg/日 SC)による後処置は浮腫の減少に効果はなかった。その一方、プレドニゾロン (1 mg/kg/日 SC)およびインフリキシマブ (3 mg/kg IV)前処置ラットでは大腸炎対照ラットと比較すると有意な減少はなかった(P > 0.05)。
【0082】
血清および組織TNF-αレベル
次いで、8日後、血清または大腸組織の何れかのTNF-αレベルを測定した。その結果を図 7に示す。薬物-フリーの大腸炎対照動物においてTNF-αの血清レベルが増加し、全ての薬物治療によりこれらのレベルは顕著に減少した。プレドニゾロン後処置を除く全ての薬物治療により、薬物-フリーの大腸炎対照ラットと比較すると大腸のTNF-αレベルは顕著に改善した。血清TNF-αおよび大腸組織TNF-αのレベルは24時間後、偽処置したラットと比較するとTNBS-処置ラットでは増加しなかった。図 7Aに示すように、8日後、大腸炎対照ラットの血清TNF-αレベルは、偽処置したラットと比較すると増加した。全ての薬物-処置ラットは、偽処置したラットに類似の血清TNF-αレベルを有しており、これらのレベルは大腸炎対照レベルと比較すると有意に減少した(P < 0.05)。図 7Bに示す大腸組織ホモジネートTNF-αレベルはまた、偽処置した動物と比較すると薬物-フリーのラットにおいて増加した。全ての薬物-処置ラットでは、顕著な低下はなかった(P > 0.05)プレドニゾロン後処置ラット(1 mg/kg/日 SC)を除いて、大腸炎対照ラットと比較するとこのサイトカインの組織レベルは顕著に低下した(P < 0.05)。
【0083】
組織病理
大腸の染色した切片を、ブラインド法で、独立した観察者により病状の徴候について試験した。TNBS投与後24時間で、大腸の切片では急性の炎症の徴候が見られた。軽いケースでは、腸の粘膜下組織層に浮腫があり、主に好中球による粘膜および粘膜下組織中への浸潤があった。より酷いケースでは、大腸の粘膜の細胞のネクローシス、およびより酷い浮腫および炎症性細胞の浸潤があった。この短時間の時間枠では、薬物-フリーの大腸炎対照ラットと比較すると薬物-処置ラットの大腸の切片で注目すべき改善は見られなかった。
【0084】
TNBSチャレンジ後の8日目には、冒された粘膜が繊維組織に置き換わることによる治癒の証拠があった。冒された組織でPMN 浸潤があった。別々の潰瘍が同定された場合、周囲の粘膜は正常であるように思われたが、炎症性細胞および軽い浮腫からなる粘膜下組織で炎症が広がった。8日後、薬物-フリーの大腸炎対照ラットの大腸の切片では最も酷い病状が見られた(図 8B)。比較において、偽処置したラットの大腸の切片では、損傷の徴候は最小となった(図 8A)。8日後、C5a アンタゴニスト、プレドニゾロン、インフリキシマブまたはC5a アンタゴニスト/プレドニゾロンの組合せの何れかで前処置した全てのラットの大腸の切片では、薬物-フリーのラットと比較すると病状で改善が見られた。8日後、C5a アンタゴニスト (10 mg/kg/日 PO)で後処置したラットの大腸切片ではまた、疾患の病状に改善が見られ、これは、薬物-フリーのラットの切片と比較すると潰瘍形成、浮腫、炎症性細胞浸潤はあまりなく、穿孔はなく、粘膜の層はそのままであることにより示される(図 8C)。対照的に、プレドニゾロン (1 mg/kg/日 SC)で後処置したラットの大腸の切片では、薬物-フリーのラットと比較すると疾患の病状に改善は見られなかった(図 8D)。
【0085】
24時間での研究では、PMX53-処置ラットでは大腸の肉眼によるスコアは顕著に低く、体重および摂食量が増えた。大腸浮腫、好中球蓄積のレベルおよび大腸TNF-αレベルがまた顕著に減少した。IBDの治療で現在使用されているプレドニゾロンおよびインフリキシマブとの比較において、PMX53-処置ラットでは、測定したパラメーターで相当な阻害が見られた。これらの結果からわかることは、IBDの短時間、24時間モデルで、PMX53による炎症性タンパク質C5aの遮断により、疾患の病状は、プレドニゾロンまたはインフリキシマブにより達成される程度にまで少なくとも顕著に改善されることである。
【0086】
8-日の研究では、PMX53前処置ラットおよび後処置ラットは体重が顕著に減り、大腸炎対照動物と比較すると顕著により多くの食物を食べた。これらのラットではまた、大腸の肉眼によるスコア、大腸浮腫、好中球蓄積および大腸TNF-αレベルは有意に低かった。最も重要なことに、PMX53-処置ラットではまた、大腸炎対照ラットと比較すると死亡率は低かった。比較において、プレドニゾロン前処置ラットのみで、疾患の測定パラメーターで幾分改善が見られた。しかしながら、インフリキシマブ-処置ラットではまた、疾患のパラメーターは、PMX53-処置ラットで観察されるパラメーターよりも有意に低かった。
【0087】
組織学的に、PMX53で処置したラットの大腸の切片では、炎症性細胞の蓄積および出血の減少が見られた。これは図 8に示す。驚くべきことに、これらの結果からわかることは、PMX53による炎症性タンパク質 C5aの遮断により、慢性大腸炎のラットモデルにおいて疾患の病状を予防および改善(reverse)の両方が行われることである。病状の改善(reversal)のこの効果は、プレドニゾロンで処置したラットでは見られなかった。
【0088】
要約すると、これらの研究で、補体系のインヒビターはIBDの確立されたモデルにおいて有利な効果があることを初めて示した。PMX53により見られる改善は、プレドニゾロンまたはインフリキシマブによる改善で見られるものよりも良好であった。これが示すのは、PMX53がIBDの臨床的治療において有用となることである。
【0089】
実施例 2
動物モデルにおける更なる研究
【0090】
8-日の時間枠を更なる動物の研究に用いる。これにより、最も重要で臨床的に関連する病状が提供されるからである。全ての薬物を大腸炎誘発後24時間で投与(改善治療)し、次いで、研究期間の間は毎日投与する。PMX53は、経直腸的(p.r.)投与により、ミネラルオイル中、用量0.1、0.3、1および10 mg/kgで投与する。PMX53はまた、腸溶性カプセル中、0.1、0.3、1および10 mg/kgで経口的に投与する。
【0091】
PMX53の類似物はまた、オリーブオイル溶媒中、0.1-10 mg/kgの範囲の種々の用量で試験し、PMX53と比較した有効性を評価する。最初の例では、以下の類似物を試験する:
PMX205: ヒドロ桂皮酸-[OPdChaWR]
PMX73: AcF-[OPdPheWR]
PMX201: AcF-[OPdChaWCitrulline]
これらの化合物を、8日研究において、0.3、1、3および10 mg/kg/日、後処置で投与する。
【0092】
TNBSモデル系の他に、ネコ科および特にイヌ科が、ヒトのIBDと幾分類似する種々の炎症性腸疾患を患う(Tams,1993; German et al, 2003)。これらには、全腸炎、イヌ科の形質細胞性-リンパ球性大腸炎、プロトセカ属性大腸炎、および組織球(histocytic)潰瘍性大腸炎が含まれる。PMX53およびその類似物をまた、これらの状況下で試験する。
【0093】
実施例 3
臨床的効力の評価
動物モデルにおいて有効であることが判った化合物のヒトにおける臨床的効力を、標準的な臨床的試験方法を用い測定する。
【0094】
例えば、軽いクローン疾患から中程度のクローン疾患を有する患者の治療における、無作為化し、プラシーボ-調節したフェーズII試験では、典型的に、試験化合物を少なくとも2用量レベル用いる。クローン病活動指標(Crohn's Disease Activity Index)(CDAI)、特に疾患の活動を測定するべく設計された標準化されたツール、における70ポイントを超える減少は、効力を示す主要評価項目である。疾患の回復は副次的評価項目である。プラシーボのレシピエントよりも試験化合物のレシピエントのほうが顕著に、炎症性腸疾患の急性悪化における徴候の消散と一致したCDAIスコアを有していることが判れば、治療効果の利点が認められる。
【0095】
潰瘍性大腸炎の場合、試験化合物による治療効果は、先に治療されていないか、または標準的な医療をも受けているかどちらかの、進行中の潰瘍性大腸炎の徴候を有する患者で評価する。その評価項目は、大腸炎活動指標(colitis activity index)(CAI)スコアの変化において反映さるような、潰瘍性大腸炎の徴候および徴候における完全な回復または有意な改善の誘発である。CAIスコアは排便回数、直腸出血、大腸の内視鏡による様子を評価し、そのスコアには医師による総合的な評価が含まれる。
【0096】
各病状につき、試験化合物の副作用(adverse effect)および忍容性プロファイルもまたモニターする。
【0097】
考察
環状ペプチドには、薬物候補としての環状ペプチドを超える幾つかの重要な利点がある(Fairlie et al 1995, Fairlie et al, 1998, Tyndall and Fairlie, 2001)。この明細書に記載の環状化合物は、ヒトの血液または血漿、ヒトまたはラットの胃液中、またはペプシン、トリプシンおよびキモトリプシンのような消化酵素の存在下での、37℃で少なくとも数時間のタンパク質分解に対して安定である。対照的に、L-アミノ酸からなる短い直鎖状ペプチドは、これらの条件下で直ちに分解され数分以内にコンポーネントのアミノ酸となる。第二の利点は環状および非ペプチド性分子により形成される束縛された単一のコンホメーションにあり、これは、レセプター結合に必要な構造以外に溶液中で複数の構造となるのに十分にフレキシブルである非環状または直鎖状のペプチドとは対照的である。第三に本発明で記載される化合物のような環状化合物は、通常、より脂質可溶性であり、あまり経口的に投与され得ない非環式ペプチドよりも、薬物として、より薬理学的に生物利用可能である。第四に、環状分子の血漿半減期は、通常、ペプチドよりも長くなる。
【0098】
IBDのモデルには、典型的に、炎症剤またはハプテナイジング(haptenising)剤の大腸内的投与が含まれる。本明細書で用いるTNBS-誘発大腸炎モデルは単純であり、信頼性のあるモデルであり、それは、IBDの治療用の種々の候補薬物の効力を試験するのに広く使用されている。
【0099】
TNBS投与24時間後、ラット大腸では広範囲の出血、浮腫および炎症性細胞の浸潤が見られることを我々は発見した。しかしながら、この急性のモデルでは、薬物-フリーの、大腸炎を生じているラットと比較した薬物に関する何れかの重要な治療効果を検出することは難しいことが判った。対照的に、大腸炎誘発後8日では、ラットの大腸では、24時間で見られるよりも相当に酷い損傷が見られ、種々の薬物の効果の比較が容易になった。8日に見られる損傷の増大により、初めの薬剤が代謝された後でさえ、病状が進行し続けていることが確認できる。この慢性モデルでは、ラットの死亡の実質的な割合、および血清および大腸組織におけるTNF-αレベルの上昇が、生存したラットで観察された。8日の実験ではまた、誘発後の薬物治療を含め得、薬物が治療に用いられるかどうかを決定し、そして恐らくその進行性の疾患を改善し得た。
【0100】
我々は、24時間および8-日の時間枠の両方を用い、C3aおよびC5a レセプターの新規に開発した二つのアンタゴニストの効力とステロイドプレドニゾロンおよびTNF-αインヒビターインフリキシマブの効力とを比較した。試験した全ての薬物は、測定したパラメーターの幾つかまたは全てにおける減少で効果があった。しかしながら、C5a アンタゴニストが他の薬物よりも優れていること判った。
【0101】
プレドニゾロンのようなコルチコステロイドは、IBDの治療において通常処方される治療である。それは、遺伝的レベルで作用する強力な薬物であり、サイトカインのような種々の炎症性仲介物および免疫性経路のダウンレギュレーションを生ずる。その非特異的作用のため、コルチコステロイドには深刻な副作用が多くあり、患者、特に慢性治療では注意して使用しなければならい。我々の研究では、プレドニゾロン前処置は、予測されたように、多数の測定パラメーターでの減少で効果があった。しかしながら、プレドニゾロン-処置ラットでは相当に体重が減った。これは、異化作用、ステロイド治療による主要な副作用によるものであった。ステロイドは大腸炎治療で広く用いられるが、大腸炎の誘発後24時間でステロイドで治療したラットでは明らかな治療効果は見られなかったことに興味が引かれる。ステロイドの効果が生ずるまでの時間のため、疾患の病状におけるプレドニゾロンの何れかの明かな効果は非常に遅くなり得る。また、効果の喪失は、疾患の病状と関連する自然な治癒過程を阻害するステロイド治療の傾向により生じ得る。
【0102】
炎症性サイトカインTNF-αは、IBDの病状の主な要因であると考えられている。薬物開発における最近の進歩により、このサイトカインの効果を阻害する種々の抗体が作成されている(Muller, 2002)。これらの抗体の1つ、インフリキシマブ、は、IBDの病状の軽減に有効であると報告されており、今現在、種々の国々においてIBDの治療に利用され得る。その抗体に基づく治療には、病院における搬送の問題があり、他の薬物治療よりも顕著に高額である(Valle et el, 2001)。
【0103】
IBDの動物モデルにおけるインフリキシマブの効力については、我々が知るところでは、従来述べられていない。それ故、我々は、この化合物をC5aおよびC3a レセプターアンタゴニストの比較用薬物として用いた。インフリキシマブによるラットの前処置により、損傷の重篤度は軽減されたが、C5a アンタゴニストまたはプレドニゾロンほどには効果はなかった。インフリキシマブは、24時間の研究でのラットよりも8日間処置したラットでより効果があった。血清および大腸組織TNF-αレベルでの検出可能な増加は8-日の研究でのみ見られたため、この化合物によるTNF-α阻害の効果は、疾患の急性段階で最少となると予測された。
【0104】
異常な補体活性はIBDの病状において重要であると思われたが、これに関し、今日までに限定的にしか証明されていない。この研究では、我々はC3a アンタゴニスト SB 290157の効力を試験した。この化合物は、最近、ヒト C3a レセプターのアンタゴニストであると報告されており、種々のインビトロおよびインビボのアッセイにおいて活性があると報告されている(Mollnes et al, 2002;Ames et al, 2001)。我々は、このアンタゴニストは24時間の研究における幾つかの測定パラメーターの低減に効果的であることを見出した。最も重要なことに、大腸炎対照ラットと比較すると肉眼による損傷の程度は軽くなった。我々の研究で選択した用法・用量(30 mg/kg i.p. 一日二度)は、先のインビボでの研究で使用したものと同じであった。そして、この高用量は、この化合物により治療効果を得るのに必要であるように思われる(Ames et al, 2001)。一日に二度の動物の腹腔内への注射の必要のため、その薬物は8-日のモデルでは評価されなかった。24時間後のSB 290157により見られる阻害効果にもかかわらず、更なる研究を、TNBS-誘発大腸炎におけるC3aの正確な役割を同定するためにより長い時間、行う必要があるだろう。
【0105】
環状ペプチド C5a アンタゴニスト PMX53 (AcF-[OPdChaWR])は、この研究に使用の薬剤で最も効果があった。経口的にまたはSCの何れかでのC5a アンタゴニストによるラットの前処置で、測定した全ての疾患マーカーが有意に減少したことが判った。大腸炎後24時間で経口的に処置したラットではまた、全ての疾患マーカーで重要な減少があったことが判った。このC5a アンタゴニストは、ヒト、ラットおよびイヌにおけるC5a レセプターに特異的であり(Woodruff et al, 2001)、他の関連するヒトレセプターにおけるC5a レセプターに特異的である(Finch et al, 1999)ことがわかった。特に、PMX53はC3a レセプターには結合せず(Finch et al, 1999)、細胞膜傷害複合体の形成に効果はない(Arumugam et al, 2003)。少なくとも24時間の研究では、C3a アンタゴニストを超えるC5a アンタゴニストで見られる効力の増大は、インビボでC3aと比較したときの、C5aのより高い効能およびより高い炎症性活性と一致する。
【0106】
インフリキシマブと比較した、C5a アンタゴニストのより高い効力は、炎症性カスケードにおけるC5aの中心的な役割により説明され得る。C5aは、TNF-αの放出を誘導するばかりでなく、多くの他の炎症性サイトカインおよび種々の仲介物(IBDに関与するとも報告されている)をも誘導することが知られる(Haynes et al, 2002; Mollnes et al, 2002)。このC5a アンタゴニストはまた、多くのこれらの仲介物の形成を阻止することが知られている(Finch et al, 1999; Haynes et al, 2002)(TNF-αのみを阻害するインフリキシマブに対する効力よりも優れていることがこれによって明白であろう)。我々は、ヒトC5aレセプターのアンタゴニストがまた、ラットモデルにおけるIBDの治療によく効きそして有効であることを、この度示した。
【0107】
ラットをC5a アンタゴニストおよびプレドニゾロンの組合せで前処置すると、疾患マーカーにおいて、C5a アンタゴニスト単独の場合よりもより減少することはなかった。これは、炎症性仲介物の共通のダウンストリームレギュレーションを示唆する。
【0108】
要約すると、この研究では、ラットのTNBS-誘発大腸炎の病因における補体コンポーネントC3aおよびC5a、および特にC5aの重要な役割を示している。それ故、補体は、ヒトのIBDの進行において中枢的な役割を有し得る。これは、抗-補体に基づく治療の開発を促進するだろう。経口的に作用するヒトC5a アンタゴニスト AcF-[OPdChaWR]のよく効く治療効果、およびプレドニゾロンおよびインフリキシマブと比較したより高い効力により、ヒトIBD治療におけるC5a アンタゴニストの使用での役割が支持される。
【0109】
本発明は、明らかとするため、および理解のために発明を詳細に記載しているが、明細書の開示の発明概念の範囲から出発することなく、本明細書に記載の実施態様および方法に種々の修飾および変化を加えることが可能であり得ることは、当業者には明かであろう。
【0110】
本明細書に引用の参考文献を以下のページに列挙する。それらは引用により本明細書に含める。
【0111】
引用文献

Ames RS, Lee D, Foley JJ, Jurewicz AJ, Tornetta MA, Bautsch W, Settmacher B, Klos A, Erhard KF, Cousins RD, Sulpizio AC, Hieble JP, McCafferty G, Ward KW, Adams JL, Bondinell WE, Underwood DC, Osborn RR, Badger AM, Sarau HM. J Immunol. 2001,166(10):6341-8.

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Tyndall, J. D. A.; Fairlie, D. P. Curr. Med. Chem. 2001, 8, 893-907.
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】図1は8日間にわたる死亡率への影響を示す。
【図2】図2は摂食量への影響を示す。
【図3】図3は体重への影響を示す。
【図4】図4は臨床的な肉眼によるスコアを要約したものである。
【図5】図5は大腸ミエロペルオキシダーゼ(MPO)レベルへの影響を示す。
【図6】図6は24hおよび8日の研究における大腸浮腫レベルへの影響を示す。
【図7】図7は8日後の血清および大腸のTNF-αレベルへの影響を示す。
【図8】図8はヘマトキシリンおよびエオシンで染色した8日の研究におけるラットの大腸の切片を示す(x 40倍)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炎症性腸疾患の治療の必要のある対象に、G タンパク質-結合レセプターのインヒビターを有効量投与する工程を含む、該治療の方法。
【請求項2】
インヒビターは、
(a)G タンパク質-結合レセプターのアンタゴニストであり、
(b)実質的にアゴニスト活性はなく、そして
(c)式 Iの環状ペプチドまたはペプチド疑似化合物である、
化合物である、
【化1】


ここで、AはH、アルキル、アリール、NH2、NH-アルキル、N(アルキル)2、NH-アリール、NH-アシル、NH-ベンゾイル、NHSO3、NHSO2-アルキル、NHSO2-アリール、OH、O-アルキル、またはO-アリールであり;
Bはアルキル、アリール、フェニル、ベンジル、ナフチルまたはインドール基、またはD-またはL-アミノ酸の側鎖であるが、グリシン、D-フェニルアラニン、L-ホモフェニルアラニン、L-トリプトファン、L-ホモトリプトファン、L-チロシン、またはL-ホモチロシンの側鎖ではなく;
CはD-、L-またはホモ-アミノ酸の側鎖であるが、イソロイシン、フェニルアラニン、またはシクロヘキシルアラニンの側鎖ではなく;
Dは中性D-アミノ酸の側鎖であるが、グリシンまたはD-アラニンの側鎖、大きな平面的側鎖、または大きな荷電性側鎖ではなく;
Eは大きな置換基であるが、D-トリプトファン、L-N-メチルトリプトファン、L-ホモフェニルアラニン、L-2-ナフチルL-テトラヒドロイソキノリン、L-シクロヘキシルアラニン、D-ロイシン、L-フルオレニルアラニン、またはL-ヒスチジンの側鎖ではなく;
FはL-アルギニン、L-ホモアルギニン、L-シトルリン、またはL-カナバニンの側鎖、またはそれらのバイオイソスターであり;および
Xは-(CH2)nNH-または(CH2)n-S-(ここで、nは1から4の整数である);-(CH2)2O-;-(CH2)3O-;-(CH2)3-;-(CH2)4-;-CH2COCHRNH-;またはCH2 CHCOCHRNH-(ここで、Rは通常または通常でないアミノ酸の側鎖である)である、
請求項1の方法。
【請求項3】
nが2または3である、請求項2の方法。
【請求項4】
Aはアセトアミド基、アミノメチル基、または置換または非置換スルフォンアミド基である、請求項2または請求項3の方法。
【請求項5】
Aは置換スルフォンアミドであり、置換基は1から6の炭素原子のアルキル鎖、またはフェニルまたはトルイル基である、請求項3の方法。
【請求項6】
置換基が1から4の炭素原子のアルキル鎖である、請求項5の方法。
【請求項7】
BがL-フェニルアラニンまたはL-フェニルグリシンの側鎖である、請求項2から6の何れかの方法。
【請求項8】
Cがグリシン、アラニン、ロイシン、バリン、プロリン、ヒドロキシプロリン、またはチオプロリンの側鎖である、請求項2から7の何れかの方法。
【請求項9】
DがD-ロイシン、D-ホモロイシン、D-シクロヘキシルアラニン、D-ホモシクロヘキシルアラニン、D-バリン、D-ノルロイシン、D-ホモ-ノルロイシン、D-フェニルアラニン、D-テトラヒドロイソキノリン、D-グルタミン、D-グルタミン酸、またはD-チロシンの側鎖である、請求項2から8の何れかの方法。
【請求項10】
EがL-フェニルアラニン、L-トリプトファンおよびL-ホモトリプトファンからなる群から選択されるアミノ酸の側鎖であるか、またはL-1-ナフチルまたはL-3-ベンゾチエニルアラニンである、請求項2から9の何れかの方法。
【請求項11】
インヒビターが、C5aRに対してはアンタゴニスト活性を有し、C5aアゴニスト活性は有していない化合物である、請求項1から10の何れかの方法。
【請求項12】
インヒビターは、僅かなマイクロモル濃度で強力なアンタゴニスト作用を有する、請求項 1から11の何れかの方法。
【請求項13】
化合物が、レセプター親和性IC50<25μMおよびアンタゴニスト効力IC50<1μMを有する、請求項1から12の何れかの方法。
【請求項14】
化合物が、PCT/AU02/01427に記載の化合物1から6、10から15、17、19、20、22、25、26、28、30、31、33から37、39から45、47から50、52から58および60から70からなる群から選択される、請求項1から13の何れかの方法。
【請求項15】
化合物が、PCT/AU02/01427に記載のPMX53(化合物 1)、化合物 33、化合物 60または化合物 45である、請求項14の方法。
【請求項16】
インヒビターが、炎症性腸疾患の治療用の1以上の他の薬剤と共に使用される、請求項 1から15の何れかの方法。
【請求項17】
他の薬剤がインフリキシマブであるか、またはC3aのインヒビターである、請求項16の方法。
【請求項18】
治療が、炎症性腸疾患の急性の再発の予防または緩和である、請求項1から17の何れかの方法。
【請求項19】
治療が、炎症性腸疾患の原発性の発生の予防または緩和である、請求項1から17の何れかの方法。
【請求項20】
炎症性腸疾患が、潰瘍性大腸炎、クローン病、リンパ球性-形質球性類腸炎、腹腔の疾患、コラーゲン性大腸炎、リンパ球性大腸炎およびエオシン好性の全腸炎、不定型大腸炎、感染性大腸炎、偽膜性大腸炎(壊死性大腸炎)、および虚血性炎症性腸疾患からなる群から選択される、請求項1から19の何れかの方法。
【請求項21】
炎症性腸疾患が潰瘍性大腸炎である、請求項1から19の何れかの方法。
【請求項22】
炎症性腸疾患がクローン病である、請求項1から19の何れかの方法。
【請求項23】
炎症性腸疾患が全腸炎、イヌ科の形質細胞性-リンパ球性大腸炎、プロトセカ属性大腸炎、および組織球潰瘍性大腸炎からなる群から選択される、請求項1から19の何れかの方法。
【請求項24】
インヒビターが、腸溶性カプセルでまたは経直腸的に投与される、請求項1から21の何れかの方法。
【請求項25】
炎症性腸疾患の治療用の医薬の製造における、請求項1から15の何れかの化合物の使用。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炎症性腸疾患の治療の必要のある対象に、G タンパク質-結合レセプターのインヒビターを有効量投与する工程を含む、該治療の方法、ここで、該インヒビターは、
(a)G タンパク質-結合レセプターのアンタゴニストであり、
(b)実質的にアゴニスト活性はなく、そして
(c)式 Iの環状ペプチドまたはペプチド疑似化合物である、
化合物である、
【化1】


ここで、AはH、アルキル、アリール、NH2、NH-アルキル、N(アルキル)2、NH-アリール、NH-アシル、NH-ベンゾイル、NHSO3、NHSO2-アルキル、NHSO2-アリール、OH、O-アルキル、またはO-アリールであり;
Bはアルキル、アリール、フェニル、ベンジル、ナフチルまたはインドール基、またはD-またはL-アミノ酸の側鎖であるが、グリシン、D-フェニルアラニン、L-ホモフェニルアラニン、L-トリプトファン、L-ホモトリプトファン、L-チロシン、またはL-ホモチロシンの側鎖ではなく;
CはD-、L-またはホモ-アミノ酸の側鎖であるが、イソロイシン、フェニルアラニン、またはシクロヘキシルアラニンの側鎖ではなく;
Dは中性D-アミノ酸の側鎖であるが、グリシンまたはD-アラニンの側鎖、大きな平面的側鎖、または大きな荷電性側鎖ではなく;
Eは大きな置換基であるが、D-トリプトファン、L-N-メチルトリプトファン、L-ホモフェニルアラニン、L-2-ナフチルL-テトラヒドロイソキノリン、L-シクロヘキシルアラニン、D-ロイシン、L-フルオレニルアラニン、またはL-ヒスチジンの側鎖ではなく;
FはL-アルギニン、L-ホモアルギニン、L-シトルリン、またはL-カナバニンの側鎖、またはそれらのバイオイソスターであり;および
Xは-(CH2)nNH-または(CH2)n-S-(ここで、nは1から4の整数である);-(CH2)2O-;-(CH2)3O-;-(CH2)3-;-(CH2)4-;-CH2COCHRNH-;またはCH2 CHCOCHRNH-(ここで、Rは通常または通常でないアミノ酸の側鎖である)である。
【請求項2】
nが2または3である、請求項1の方法。
【請求項3】
Aはアセトアミド基、アミノメチル基、または置換または非置換スルフォンアミド基である、請求項1または請求項2の方法。
【請求項4】
Aは置換スルフォンアミドであり、置換基は1から6の炭素原子のアルキル鎖、またはフェニルまたはトルイル基である、請求項2の方法。
【請求項5】
置換基が1から4の炭素原子のアルキル鎖である、請求項4の方法。
【請求項6】
BがL-フェニルアラニンまたはL-フェニルグリシンの側鎖である、請求項1から5の何れかの方法。
【請求項7】
Cがグリシン、アラニン、ロイシン、バリン、プロリン、ヒドロキシプロリン、またはチオプロリンの側鎖である、請求項 1から6の何れかの方法。
【請求項8】
DがD-ロイシン、D-ホモロイシン、D-シクロヘキシルアラニン、D-ホモシクロヘキシルアラニン、D-バリン、D-ノルロイシン、D-ホモ-ノルロイシン、D-フェニルアラニン、D-テトラヒドロイソキノリン、D-グルタミン、D-グルタミン酸、またはD-チロシンの側鎖である、請求項 1から7の何れかの方法。
【請求項9】
EがL-フェニルアラニン、L-トリプトファンおよびL-ホモトリプトファンからなる群から選択されるアミノ酸の側鎖であるか、またはL-1-ナフチルまたはL-3-ベンゾチエニルアラニンである、請求項 1から8の何れかの方法。
【請求項10】
インヒビターが、C5aRに対してはアンタゴニスト活性を有し、C5aアゴニスト活性は有していない化合物である、請求項 1から9の何れかの方法。
【請求項11】
インヒビターは、僅かなマイクロモル濃度で強力なアンタゴニスト作用を有する、請求項 1から10の何れかの方法。
【請求項12】
化合物が、レセプター親和性IC50<25μMおよびアンタゴニスト効力IC50<1μMを有する、請求項 1から11の何れかの方法。
【請求項13】
化合物が、PCT/AU02/01427に記載の化合物1から6、10から15、17、19、20、22、25、26、28、30、31、33から37、39から45、47から50、52から58および60から70からなる群から選択される、請求項1から12の何れかの方法。
【請求項14】
化合物が、PCT/AU02/01427に記載のPMX53(化合物 1)、化合物 33、化合物 60または化合物 45である、請求項13の方法。
【請求項15】
インヒビターが、炎症性腸疾患の治療用の1以上の他の薬剤と共に使用される、請求項 1から14の何れかの方法。
【請求項16】
他の薬剤がインフリキシマブであるか、またはC3aのインヒビターである、請求項15の方法。
【請求項17】
治療が、炎症性腸疾患の急性の再発の予防または緩和である、請求項1から16の何れかの方法。
【請求項18】
治療が、炎症性腸疾患の原発性の発生の予防または緩和である、請求項 1から16の何れかの方法。
【請求項19】
炎症性腸疾患が、潰瘍性大腸炎、クローン病、リンパ球性-形質球性類腸炎、腹腔の疾患、コラーゲン性大腸炎、リンパ球性大腸炎およびエオシン好性の全腸炎、不定型大腸炎、感染性大腸炎、偽膜性大腸炎(壊死性大腸炎)、および虚血性炎症性腸疾患からなる群から選択される、請求項 1から18の何れかの方法。
【請求項20】
炎症性腸疾患が潰瘍性大腸炎である、請求項 1から18の何れかの方法。
【請求項21】
炎症性腸疾患がクローン病である、請求項 1から18の何れかの方法。
【請求項22】
炎症性腸疾患が全腸炎、イヌ科の形質細胞性-リンパ球性大腸炎、プロトセカ属性大腸炎、および組織球潰瘍性大腸炎からなる群から選択される、請求項 1から18の何れかの方法。
【請求項23】
インヒビターが、腸溶性カプセルでまたは経直腸的に投与される、請求項 1から20の何れかの方法。
【請求項24】
炎症性腸疾患の治療用の医薬の製造における、請求項 1から14の何れかの化合物の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2006−505621(P2006−505621A)
【公表日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−501247(P2005−501247)
【出願日】平成15年10月15日(2003.10.15)
【国際出願番号】PCT/AU2003/001365
【国際公開番号】WO2004/035078
【国際公開日】平成16年4月29日(2004.4.29)
【出願人】(500020760)ザ・ユニバーシティ・オブ・クイーンズランド (20)
【Fターム(参考)】