説明

炭入り紙糸

【課題】炭の機能を付加した糸を提供する。また、産業廃棄物として処分されている梅の種を有効に活用することにより、環境に配慮した循環型社会に貢献する商品を提供する。
【解決手段】炭の粉末を紙料の繊維と混合して紙に抄き込むことにより得られる紙糸用原紙を細長くテープ状にスリットし、そのテープを撚って、紙糸にする。炭の粉末には、梅の果実に含まれる種の炭化物の粉末が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は炭入り紙糸に関し、布製品などに用いることができる炭入り紙糸に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紙を細長くテープ状にスリットし、撚った紙糸や、紙糸を用いた織物や編物が種々提案されている。例えば、特許文献1には紙糸用原紙が開示されている。また、特許文献2には、ケナフ繊維を含む紙からケナフ糸を製造することが開示されている。
【0003】
また、炭の消臭等の機能を付与する紙が種々提案されている。例えば、特許文献3、4には、竹炭微粉末を含有する和紙が開示されている。
【特許文献1】特開2003−301397号公報
【特許文献2】特開2006−274531号公報
【特許文献3】特開2002−69895号公報
【特許文献4】特開2005−307385号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、紙糸については、炭の機能を付加しようとする提案はされていない。
【0005】
一方、従来、梅の果実を食品に加工する際、外皮と果肉は食品として利用されるが、種は食品として利用されない。梅の種を資源として活用する例としては、和歌山県みなべ町で収穫された「南高うめ」の種(廃棄物)を備長炭の窯で炭化したものを含有する梅炭クレープ紙(商品名)を挙げることができるが、梅の種のほとんどは産業廃棄物として処分されている。そのため、梅の種の有効な利用を拡大することが望まれている。
【0006】
本発明は上記実情に鑑み、第1に、炭の機能を付加した糸を提供し、第2に、産業廃棄物として処分されている梅の種を有効に活用することにより、環境に配慮した循環型社会に貢献する商品を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために、以下のように構成した紙糸を提供する。
【0008】
紙糸は、紙を細くテープ状にスリットし、撚ったものである。前記紙は、炭の粉末を紙料の繊維と混合して紙に抄き込むことにより得られる紙糸用原紙である。
【0009】
上記構成において、紙糸用原紙に含有される炭の粉末は、紙料の繊維上に均一に分散、固着され、消臭等の炭の機能・作用を発揮することができる。
【0010】
したがって、紙糸に、消臭等の炭の機能を付加することができる。
【0011】
紙糸用原紙には、木炭、竹炭、ヤシガラ活性炭などの炭の粉末を含有させることもできる。
【0012】
好ましくは、前記炭の粉末は、梅の果実に含まれる種の炭化物の粉末である。
【0013】
この場合、産業廃棄物として捨てられている梅の種を、資源として再生し活用することができる。
【0014】
また、本発明は上記構成の紙糸を含む布製品を提供する。
【0015】
この場合、炭の機能を付加した衣料品等の布製品を提供することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、紙糸に、消臭等の炭の機能を付加することができる。また、本発明の梅の種の炭化物の粉末を紙料の繊維と混合して紙に抄き込むことにより得られる紙糸用原紙を細長くテープ状にスリットし、撚った紙糸は、産業廃棄物として処分されている梅の種を有効に活用することにより、環境に配慮した循環型社会に貢献する商品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態として、実施例について説明する。
【0018】
本発明の紙糸は、炭の粉末を紙料の繊維と混合して紙に抄き込むことにより得られる紙糸用原紙を細長くテープ状にスリットし、撚って糸にしたものである。
【0019】
具体的には、次のようにして製造する。
【0020】
まず、紙糸用原紙を準備する。例えば、梅の種の炭の粉末を含有する和紙(例えば、美濃紙)を準備する。
【0021】
梅の種の炭は、通常の炭焼きと同様に、梅の種を蒸し焼きにして作り、これを平均粒径10μm程度の粉末にする。通常の炭焼きと異なる方法で梅の種の炭化物を作製し粉末にしてもよい。梅の種の炭以外の炭の粉末、例えば、木炭、竹炭、ヤシガラ活性炭などの炭の粉末を用いてもよい。
【0022】
炭の粉末を、マニラ麻やケナフ(洋麻)などの麻パルプを原料とする紙料に混合し、紙に抄き込む。紙料には、葦、楮(こうぞ)の白皮、ミツマタ、ガンピなどの靭皮繊維を原料としてもよい。また、針葉樹や広葉樹の木材パルプを原料とすることも可能である。紙糸用原紙の厚さは、例えば0.02〜0.05mm程度になるようにする。
【0023】
炭の粉末をパルプに混合する重量割合は、1%〜15%程度が好ましい。すなわち、炭の粉末とパルプとの重量比が、1:99〜15:85程度が好ましい。炭の粉末を和紙パルプに混合する重量割合が1%以上であると、消臭等の炭の機能を十分に得ることができる。炭の粉末をパルプに混合する重量割合が15%以下であると、繊維間に炭の粉末が確実に保持される。
【0024】
次いで、準備した紙糸用原紙を、例えば幅1〜5mm程度に細長くテープ状にスリット加工し、そのテープを撚って紙糸にする。このようにして作った紙糸は、洋服や衣料などに用いることができる。バスマットやカーペットなどに用いる紙糸については、紙糸用原紙の幅を広めに(例えば、幅10mm程度に)細長くテープ状にスリット加工し、そのテープを撚り、太い紙糸を作るようにしてもよい。
【0025】
紙糸に含まれる炭の粉末は、紙料の繊維上に均一に分散、固着され、消臭、防カビ、抗菌、調湿、遠赤外線、マイナスイオン発生、電磁波遮蔽等の炭の機能・作用を発揮することができる。
【0026】
作製した紙糸は、織物や編物に用いることができる。例えば、デニム生地の横糸に、紙糸を用いる。あるいは、紙糸を他の糸と組み合わせて複合糸にした状態で、織物や編物に用いてもよい。
【0027】
紙糸を含む織物や編物を、衣料やタオル、バスマット、スリッパ、便座カバー等のなどの布製品に用いると、紙糸中の炭により、消臭、防カビ、抗菌、調湿、遠赤外線、マイナスイオン発生、電磁波遮蔽などの機能を、布製品に付加することができる。
【0028】
炭の粉末は、紙料の繊維上に均一に分散、固着されており、しかも紙糸は撚って作製されている。そのため、布製品の洗濯を繰り返しても、炭の粉末の大部分は紙糸中に保持され、炭の機能を維持することができる。
【0029】
紙糸には、木炭、竹炭、ヤシガラ活性炭などの炭の粉末を含有させることもできるが、そのためには、木を伐採するなど、環境に対して負荷を与えることになる。これに対して、梅の種の炭の粉末は、産業廃棄物として捨てられているもの(梅の種)を資源として再生し活用することができ、自然環境に優しいため、特に好適である。また、梅の種は硬いため、良質な炭の粉末を得ることができる。
【0030】
以上に説明した紙糸は、糸に、炭の機能を付加することができる。特に紙糸に梅の種の炭の粉末を用いると、産業廃棄物として処分されている梅の種を有効に活用することにより、環境に配慮した循環型社会に貢献する商品を提供することができる。
【0031】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形を加えて実施することが可能である。
【0032】
例えば、実施例の数値は好適な一例であり、これに限定するものではない。また、何らかの製品の副産物であって産業廃棄物となる副産物を利用し、その炭化物を梅の種の炭の代わりに用いてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙を細くテープ状にスリットし、撚った紙糸において、
前記紙は、炭の粉末を紙料の繊維と混合して紙に抄き込むことにより得られる紙糸用原紙であることを特徴とする、炭入り紙糸。
【請求項2】
前記炭の粉末は、梅の果実に含まれる種の炭化物の粉末であることを特徴とする、請求項1に記載の炭入り紙糸。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の炭入り紙糸を含むことを特徴とする布製品。

【公開番号】特開2009−167578(P2009−167578A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−10410(P2008−10410)
【出願日】平成20年1月21日(2008.1.21)
【出願人】(505355243)山陽製紙株式会社 (6)
【Fターム(参考)】