説明

炭化ケイ素デバイス用のエッジ終端構造およびエッジ終端構造を含む炭化ケイ素デバイスの製造方法

【課題】炭化ケイ素デバイスの改善されたエッジ終端構造を提供する。
【解決手段】炭化ケイ素半導体デバイス用のエッジ終端構造は、少なくとも炭化ケイ素ベース接合を部分的に取り囲んで、炭化ケイ素層中において、所定間隔で配置された複数の同心円のフローティングガードリング34を有すると共に、フローティングガードリング上に設けられた絶縁層、及びフローティングガードリング同士の間でかつ炭化ケイ素層の表面の近くに設けられた炭化ケイ素表面電荷補償領域38を有する。炭化ケイ素層上に窒化ケイ素層56が設けられ、窒化ケイ素層上に有機保護層66が設けられる。酸化膜層が窒化ケイ素層と炭化ケイ素層の表面との間に存在してもよい。エッジ終端構造の形成・製造方法を開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロエレクトロニクスデバイスに関し、より詳細には、炭化ケイ素デバイスのためのエッジ終端に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願は、米国特許出願第11/268,789(発明の名称「MULTIPLE FLOATING GUARD RING EDGE TERMINATION FOR SILICON CARBIDE DEVICES AND METHOD OF FABRICATING SILICON CARBIDE DEVICES INCORPORATING SAME」出願日2005年11月8日)の一部継続出願である。これは、米国特許出願番号第10/731,860(出願日2003年12月9日)であり、米国仮特許出願番号第60/440,193(発明の名称「MULTIPLE FLOATING GUARD RING EDGE TERMINATION FOR SILICON CARBIDE DEVICES AND METHODS OF FABRICATING SILICON CARBIDE DEVICES INCORPORATING SAME」出願日2003年1月15日)の優先権を主張する。上記米国特許出願及び仮特許出願の開示内容は、本願明細書に全て組込まれるものとする。
【0003】
例えば、約600Vから約2.5kVの間の電圧を取り扱うことができる高電圧炭化ケイ素(SiC)ショットキーダイオードは、同様な定格電圧で製造されたシリコンPINダイオードと競合することが予想される。かかるダイオードは、その活性面積に応じて約100アンペア以上もの電流を取り扱うことができる。高電圧ショットキーダイオードは、特に電力の調整、配電及び制御の分野においていくつかの重要な用途を有する。
【0004】
かかる用途におけるSiCショットキーダイオードの重要な特性は、そのスイッチング速度である。シリコンベースのPINデバイスは、一般的に比較的低速な(不十分な)スイッチング速度を示す。シリコンPINダイオードは、その電圧定格によっては、約20kHzの最大スイッチング速度を有することもある。対照的に、炭化ケイ素ベースのデバイスは、理論的にはシリコンよりずっと高速な、例えば約100倍を超える良好なスイッチング速度で動作できる。炭化ケイ素デバイスは、シリコンデバイスに比べてより高い電流密度を取り扱うことが可能なこともある。
【0005】
従来のSiCショットキーダイオード構造は、その上にドリフト領域として機能するnエピタキシャル層が形成されるn型SiC基板を有する。このデバイスは、典型的にはn層上に直接形成されたショットキーコンタクトを含む。このショットキーコンタクトを取り囲んで、一般的にイオン注入によって形成されるp型JTE(junction termination extension;接合終端延長)領域が存在する。注入物は、アルミニウム、ホウ素、又は他の適切な任意のp型ドーパントとすることができる。JTE領域の目的は、エッジ部で集中する電界を低下させ、又は防止することにあり、空乏領域(depletion region)を減らし、又はデバイスの表面と相互作用しないようにすることにある。表面効果が、空乏領域を不均一に広がらせることもあり、デバイスのブレークダウン電圧に悪影響を及ぼすこともある。他の終端技術には、表面効果によってさらに強い影響を受けることもあるガードリング(guard ring)及びフローティングフィールドリング(floating field ring)が含まれる。チャネルストップ領域を、窒素やリンなどのn型ドーパントの注入によって形成して、空乏領域がデバイスのエッジに伸びないようにすることもできる。
【0006】
SiCショットキーダイオードの従来の終端については、非特許文献1に説明されている。SiCショットキーバリアダイオードのためのp型エピタキシガードリング終端については、非特許文献2に説明されている。さらに、終端技術については、“SiC Semiconductor Device Comprising A PN Junction with A Voltage Absorbing Edge”という名称の特許文献1に説明されている。
【0007】
前記で簡潔に説明したように、接合終端延長(JTE)、MFGR(multiple floating guard ring;多重フローティングガードリング)及びFP(field plate;フィールドプレート)は、高電圧炭化ケイ素デバイス中における一般的に使用される終端スキームである。JTEは、非常に効果的なエッジ終端であるが、活性ドーピング濃度と接合深さの積を厳格に制御する必要もある。さらに、フォトリソグラフィステップ及び注入ステップが追加される結果として、追加の製造コストがかかってしまうこともある。
【0008】
FPは、デバイスのエッジ終端についての従来の技術でもあり、費用対効果が良いこともある。従来のFPデバイスにおいては、高電界が、金属フィールドプレート下の酸化物層によって維持・支持される。この技術は、シリコンデバイスについてうまく機能し、ここでは、半導体中の最高電界は比較的低くなっている。しかし、SiCデバイスにおいては、ブロッキング状態(blocking state)における電界は、非常に高い(約2MV/cm)こともあり、酸化膜と半導体の境界面(oxide−semiconductor interface)において2.5倍になる。これにより、非常に高い酸化膜電界が引き起こされ、長期信頼性問題がもたらされる。したがって、FPは、SiCデバイス中で使用するのには適していないこともある。
【0009】
JTEに追加した多重フローティングガードリングが、JTEの注入ドーズ変動に対する感受性を低下させる技術として提案されている。Kinoshitaらは、かかる技術が注入ドーズ変動に対する感受性を低下させたことを報告している(例えば、非特許文献3参照)。しかし、ガードリングが、JTEの内部エッジにもJTEの外側にも追加されるので、終端のために利用される面積は、JTEだけの面積のほぼ3倍にまで増大された。
【0010】
MFGRは、JTEに比べて少ない製造ステップを使用することができるので、エッジ終端の費用対効果の良い方法にもなり得る。しかし、MFGRは、酸化膜と半導体の境界面における表面電荷の影響を非常に受けやすいこともある。図1A乃至Dは、理想的なMFGR終端の理想的な電界プロファイルを示す図である。図1Aは、従来のMFGRデバイスを示しており、p型SiCガードリングの同士の間隔は、説明を簡単にするために一定として示している。ブロッキング状態において、空乏領域は、主要接合(main junction)から出発して横方向にも垂直方向にも広がる。この空乏領域が、第1のガードリング(Guard Ring;GR)まで連通した後に、第1のガードリングの電位は、主要接合の電位に固定される。この時、ガードリングの連通側は、少量の正孔をn領域に注入する。失われた電荷は、ガードリングの外側エッジからのn電荷の空乏化によって置き換えられる。この連通及び電荷注入は、空乏領域が最後のガードリングに到達するまで継続される。ガードリングの間の空乏化したn電荷量は、(一定間隔のMFGRでは)同じなので、各ガードリングのxフィールドのピークは、図1Bに示すように、すべてのガードリングについて同じである。しかし、図1Cに示すように、n電荷の空乏化の量がすべてのガードリングについて異なるので、ピークyフィールドは、すべてのガードリングについて異なっている。最高のyフィールド値が主要接合の位置に存在し、後続のガードリングは、yフィールドのレベルを低下させている。xフィールドとyフィールドのベクトルの和が、図1Dに示され、これは、(図1A中において丸で囲まれた)主要接合の下部コーナーにおいて最高の電界を示す。したがって、等間隔のMFGR終端が使用される場合に、ブレークダウンは、主要接合の丸で囲まれた下部エッジにおいて生じることが予想される。各フローティングガードリングが、同じ電界を維持することが望ましい場合には、ガードリングの間の間隔を変化させることもできる。主要接合と最も内側のガードリングの間の間隔を最小にし、最も外側のガードリングにおける間隔を最大にすることができる。
【0011】
MFGR終端スキームに伴う1つのクリティカルな可能性のある課題は、MFGR終端スキームが酸化膜と半導体の境界面における電荷の影響を非常に受けやすいことである。MOSトランジスタのMOS(metal−oxide−semiconductor;金属酸化膜半導体)ゲート領域における正味の電荷は、非常に低く(小さく)なる可能性がある。しかし、フィールド酸化膜は、一般的に熱成長ゲート酸化膜に比べるとしばしば低品質になることがあり、プラズマ処理ステップは、より高密度(高い)の酸化膜電荷をもたらすこともある。大量の正電荷が、酸化膜と半導体の境界面に存在する場合に、低濃度ドープのn層の表面は、n領域へと変化し、このn領域がこれらの等電位線を圧縮させる。これにより、酸化膜と半導体の境界面において非常に高い・強い電界がもたらされ、したがって、フローティングガードリングの有効性が低下し、この高い・強い電界により、デバイスについてのブロッキング電圧の低下がもたらされ得る。さらに、この電荷は、たいていは正電荷であるが、酸化膜と半導体の境界面に向かって、又は境界面から遠ざかるように移動する可能性があり、経時(time dependent)ブレークダウン電圧のウォークアウト(walk out)、すなわち、ブレークダウンウォークアウトを引き起こす。ブレークダウンウォークアウトは、ブレークダウン電圧が、第一の値から出発し、時間とバイアスと共に増大する現象のことを意味する。フィールド酸化膜は、一般的に堆積させられるので、この問題は炭化ケイ素デバイスにおいてはさらに大きくなることさえあり得る。堆積酸化膜は、一般的に熱成長層の特性に比べて劣った特性を有し、炭化ケイ素デバイス中における酸化膜‐半導体境界面は、シリコンデバイスの電荷密度に比べて非常に高い電荷密度を有する。
【0012】
各ガードリング上にオフセットフィールドプレート(Offset Field Plate)を配置することが提案されている(非特許文献4参照)。かかる構造が、図2に示されている。図2に示すように、n型半導体層10は、その中に形成された主要接合12と、一連のフローティングガードリング14を有する。酸化膜16が、半導体層10上に設けられ、開口部がこの酸化膜層16中に設けられている。オフセットフィールドプレート18が、この開口部中に設けられて、フローティングガードリング14に接触し、酸化膜層16上に延在している。
【0013】
Yilmazらは、各ガードリングが維持・支持する電圧を均一に分布させることができ、境界面の近くの等電位線を広げることによって寄生電荷に対する感度を低下させることができることを実証した。シリコンデバイス中のドリフト層のドーピング濃度は、一般的に低く、ガードリングは、ガードリング同士の間にかなり大きな間隔を有することができるので、この技術は、シリコンデバイスにおいては比較的簡単に適用することができる。しかし、炭化ケイ素デバイスにおいては、ドリフト層中のドーピング濃度は、同じブロッキング能力を持つシリコンデバイスのドーピング濃度に比べて100倍以上になる可能性があり、各ガードリングが維持する電界は、シリコンデバイスの電界の10倍以上にもなり得る。したがって、ガードリングは、シリコンデバイスに比べてずっと近づけて配置する必要があることもあり、必要となり得るフィールド酸化膜厚は、シリコンデバイス中で使用される膜厚に比べてずっと厚くなることもある。このオフセットフィールドプレートフローティングガードリング構造は、別々に各ガードリングに接触する各フィールドプレートを有し、ガードリングのエッジは、次のガードリングのエッジとオーバーラップすべきではないので、炭化ケイ素デバイスでは、フォトリソグラフィなどの従来の製造技術を用いてかかる要件を達成することは難しいこともある。このような要件を満たすためには、各ガードリングは拡大する必要があり得るが、ガードリングの位置合わせ許容範囲は、0.25μmより小さくすべきである。かかる位置合わせ要件は、たとえ不可能でないとしても、SiCでは従来のコンタクト露光装置を用いて達成することは困難なこともある。必要となり得る酸化膜の厚みのために、ステップカバー(step coverage)が、このオフセットフィールドプレート‐フローティングガードリング構造に伴う別の問題になることもある。さらに、酸化膜が電界又は電圧を維持・支持しているので、フィールドプレート設計においては、酸化膜の品質が、容認できる結果を達成する際に重要なこともある。炭化ケイ素デバイス中の酸化膜は、一般的にシリコンデバイス中で使用可能な(存在する)酸化膜に比べて低品質を有する。したがって、このオフセットフィールドプレート‐フローティングガードリング構造は、炭化ケイ素デバイスでは、実用的でないこともある。
【0014】
従来のガードリングベースSiCショットキーデバイスは、さらに炭化ケイ素の表面の陽極酸化にさらされ、陽極酸化は、リバースブロッキング状態(blocking state)中でガードリングを通して大きな電流フローを伴うこともあり得る。陽極酸化プロセスにおいて、炭化ケイ素表面上のポリイミド保護層内に含有された酸素は、酸化ケイ素を形成する高電界によって生じる電流の存在下で炭化ケイ素基板と反応し得る。炭化ケイ素表面の陽極酸化は、炭化ケイ素表面上に粗悪な品質の酸化物層をもたらし、酸化物層は、エッジ終端の有効性を減少させる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】国際公開第97/08754号パンフレット
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Singh et al.,“Planar Terminations in 4H−SiC Schottky Diodes With Low Leakage And High Yields,“ISPSD‘97,pp.157−16
【非特許文献2】Ueno et al.,“The Guard−Ring Termination for High−Voltage SiC Schottky Barrier Diode,”IEEE Electron Device Letters, Vol.16,No.7,July,1995,pp.331−332
【非特許文献3】Kinoshita et al.,“Guard Ring Assisted RESURF:A New Termination Structure Providing Stable and High Breakdown Voltage for SiC Power Devices,”Tech.Digest of ISPSD ‘02,pp.253−256
【非特許文献4】Yilmaz,“Optimization and Surface Charge Sensitivity of High Voltage Blocking Structures with Shallow Junctions,”IEEE Transactions on Electron Devices,Vol.38,No.3,July 1991,pp.1666−1675
【非特許文献5】Appels et al.,”High−voltage thin layer devices (RESURF devices),”IEDM Tech.Dig.,1979,pp.238−241
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、上述したような問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、半導体デバイスについての改善されたエッジ終端を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明のいくつかの実施形態では、炭化ケイ素ベースの接合を少なくとも部分的に囲む炭化ケイ素層において、間隔をおいて設けられた、複数の同心円のフローティングガードリングを有する炭化ケイ素半導体デバイスのためのエッジ終端構造を提供する。絶縁層がフローティングガードリング上に設けられ、炭化ケイ素表面電荷補償領域が、フローリングガードリング間に設けられ、絶縁層に近接している。窒化ケイ素層は、炭化ケイ素層上に設けられ、有機保護層は、窒化ケイ素層上に設けられる。
【0019】
エッジ終端構造は、さらに、炭化ケイ素層と窒化ケイ素層との間に酸化物層を含んでも良い。窒化ケイ素層は、約500Åから約1μmの厚さを有する。
【0020】
有機保護層は、ポリイミドを含有し、窒化ケイ素層よりも高い水分含量を有してもよい。
【0021】
フローティングガードリングは、炭化ケイ素層中に第一の深さで延び、表面電荷補償領域は、炭化ケイ素層中に第二の深さだけ延びることができる。第2の深さは、第1の深さより短い。表面電荷補償領域は、ガードリングより低濃度にドーピングされ得る。
【0022】
いくつかの実施形態において、表面電荷補償領域は、フローティングガードリングのうちの隣接するフローティングガードリング間で完全に延びる(フローティングガードリング間をつなぐように延びる)ことがきる。他の実施形態においては、表面電荷補償領域は、フローティングガードリングのうち隣接するフローティングガードリング間で延びるが、隣接するフローティングガードリング同士の間では完全に延びない(フローティングガードリング間をつなぐように延びない)こともある。
【0023】
表面電荷補償領域は、炭化ケイ素層上に第2の炭化ケイ素層を含んでもよい。表面電荷補償領域は、酸化膜層に近接した表面電荷補償領域の表面が、酸化膜層の表面電荷によって部分的に空乏化し、逆バイアスがデバイスに印加された場合には、完全に空乏化するようなドーパント濃度を有することができる。
【0024】
表面電荷補償領域は、約1×1012から約7×1012cm−2のドーズ電荷を有することができる。
【0025】
本発明のさらなる実施形態によると、炭化ケイ素半導体デバイス用のエッジ終端構造は、炭化ケイ素ベース接合を少なくとも部分的に囲み、炭化ケイ素層中に間隔をおいて設けられた複数の同心円のフローティングガードリングと、フローティングガードリング上に設けられた絶縁層と、フローティングガードリングと近接した絶縁層の間に設けられた炭化ケイ素表面電荷補償領域とを含む。絶縁層は炭化ケイ素層上に水分障壁部を設けることができ、水分障壁部上に環境保護層を設けることができる。
【0026】
エッジ終端構造は、さらに、炭化ケイ素層と水分障壁層の間に表面パッシベーション層を設けることができる。表面パッシベーション層は、熱酸化物のような酸化物を有することができる。水分障壁層は、窒化ケイ素を有することができる。環境保護層は、ポリイミドを有することができる。
【0027】
本発明のさらなる実施形態によると、炭化ケイ素半導体デバイスのためのエッジ終端構造は、炭化ケイ素ベース接合を少なくとも部分的に囲む炭化ケイ素中で、間隔をもって配置された複数の同心円のフローティングガードリングを有し、炭化ケイ素層の表面上に保護層が設けられ、炭化ケイ素表面電荷補償領域が、フローティングガードリング間および炭化ケイ素層の表面上に設けられている。炭化ケイ素半導体デバイスは、このデバイスが、350時間、窒素下で、続いて、168時間、空気下で、10kHzにおいて、0Vから600Vの間の逆バイアス電圧にさらされる場合に、実質的に陽極酸化しない表面を含有する。
【0028】
本発明のいくつかの実施形態によると、炭化ケイ素半導体デバイスのエッジ終端構造の製造方法は、少なくとも一部が炭化ケイ素ベース半導体接合を囲み、炭化ケイ素層の表面において間隔をおいて設置された複数の同心円のフローティングガードリングを形成するステップと、炭化ケイ素層表面においてフローティングガードリング同士の間に炭化ケイ素表面電荷補償領域を形成するステップと、炭化ケイ素層表面に窒化ケイ素層を形成するステップと、窒化ケイ素層に有機保護層を形成するステップを有する。
【0029】
前記方法は、さらに、炭化ケイ素層と窒化ケイ素層との間に酸化層を形成するステップを有してもよい。窒化ケイ素層は、約500Åから約1μmの厚さを有してもよい。有機保護層は、ポリイミドを含有し得る。
【0030】
本発明の利点及び/又は特徴、並びにこれらが実現される方法については、本発明の以下の詳細な説明を、好ましい例示の実施形態を示す添付図面と併せ考察することにより、さらに簡単に明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1A】従来のMFGR構造及びその理想的な電界プロファイルを示す図である。
【図1B】従来のMFGR構造及びその理想的な電界プロファイルを示す図である。
【図1C】従来のMFGR構造及びその理想的な電界プロファイルを示す図である。
【図1D】従来のMFGR構造及びその理想的な電界プロファイルを示す図である。
【図2】オフセットフィールドプレートを有するMFGR構造を示す図である。
【図3】本発明の実施形態によるエッジ終端構造の断面図である。
【図4】本発明の他の実施形態によるエッジ終端構造の断面図である。
【図5A】本発明の実施形態によるエッジ終端構造の可能な動作を示す断面図である。
【図5B】本発明の実施形態によるエッジ終端構造の可能な動作を示す断面図である。
【図6A】本発明の実施形態によるエッジ終端構造の製造方法を示す断面図である。
【図6B】本発明の実施形態によるエッジ終端構造の製造方法を示す断面図である。
【図6C】本発明の実施形態によるエッジ終端構造の製造方法を示す断面図である。
【図6D】本発明の実施形態によるエッジ終端構造の製造方法を示す断面図である。
【図6E】本発明の実施形態によるエッジ終端構造の製造方法を示す断面図である。
【図6F】本発明の実施形態によるエッジ終端構造の製造方法を示す断面図である。
【図6G】本発明の実施形態によるエッジ終端構造の製造方法を示す断面図である。
【図6H】本発明の実施形態によるエッジ終端構造の製造方法を示す断面図である。
【図6I】本発明の実施形態によるエッジ終端構造の製造方法を示す断面図である。
【図6J】本発明の実施形態によるエッジ終端構造の製造方法を示す断面図である。
【図7A】ウェハ上に設けられた、4重ガードリングの終端構造を有するショットキーデバイスについてのブレークダウン電圧の分布プロットを示す図である。
【図7B】ウェハ上に設けられた、6重ガードリングの終端構造を有するショットキーデバイスについてのブレークダウン電圧の分布プロットを示す図である。
【図7C】ウェハ上に設けられた、8重ガードリングの終端構造を有するショットキーデバイスについてのブレークダウン電圧の分布プロットを示す図である。
【図7D】ウェハ上に設けられた最後のガードリング終端構造においてJTEを備えた8重ガードリングを有するショットキーデバイスについてのブレークダウン電圧の分布プロットを示す図である。
【図7E】非特許文献3で説明された終端構造と同様の、ウェハ上に設けられた、ガードリング及びJTEの終端構造を有するショットキーデバイスについてのブレークダウン電圧の分布プロットを示す図である。
【図7F】ウェハ上に電荷補償層終端構造が設けられた、1.75μmガードリングを有するショットキーデバイスについてのブレークダウン電圧の分布プロットを示す図である。
【図7G】ウェハ上に電荷補償層終端構造が設けられた、2.0μmガードリングを有するショットキーデバイスについてのブレークダウン電圧の分布プロットを示す図である。
【図7H】ウェハ上に設けられた、JTE終端構造を有するショットキーデバイスについてのブレークダウン電圧の分布プロットを示す図である。
【図8A】ウェハ上に設けられた、4重ガードリングの終端構造を有するショットキーデバイスについてのブレークダウン電圧の分布プロットを示す図である。
【図8B】ウェハ上に設けられた、6重ガードリングの終端構造を有するショットキーデバイスについてのブレークダウン電圧の分布プロットを示す図である。
【図8C】ウェハ上に設けられた、8重ガードリングの終端構造を有するショットキーデバイスについてのブレークダウン電圧の分布プロットを示す図である。
【図8D】ウェハ上に設けられた最後のガードリング終端構造においてJTEを備えた8重ガードリングを有するショットキーデバイスについてのブレークダウン電圧の分布プロットを示す図である。
【図8E】非特許文献3で説明された終端構造と同様の、ウェハ上に設けられた、ガードリング及びJTEの終端構造を有するショットキーデバイスについてのブレークダウン電圧の分布プロットを示す図である。
【図8F】ウェハ上に電荷補償層終端構造が設けられた、1.75μmガードリングを有するショットキーデバイスについてのブレークダウン電圧の分布プロットを示す図である。
【図8G】ウェハ上に電荷補償層終端構造が設けられた、2.0μmガードリングを有するショットキーデバイスについてのブレークダウン電圧の分布プロットを示す図である。
【図8H】ウェハ上に設けられた、JTE終端構造を有するショットキーデバイスについてのブレークダウン電圧の分布プロットを示す図である。
【図9A】ウェハ上に設けられた、4重ガードリングの終端構造を有するショットキーデバイスについてのブレークダウン電圧の分布プロットを示す図である。
【図9B】ウェハ上に設けられた、6重ガードリングの終端構造を有するショットキーデバイスについてのブレークダウン電圧の分布プロットを示す図である。
【図9C】ウェハ上に設けられた、8重ガードリングの終端構造を有するショットキーデバイスについてのブレークダウン電圧の分布プロットを示す図である。
【図9D】ウェハ上に設けられた最後のガードリング終端構造においてJTEを備えた8重ガードリングを有するショットキーデバイスについてのブレークダウン電圧の分布プロットを示す図である。
【図9E】非特許文献3で説明された終端構造と同様の、ウェハ上に設けられた、ガードリング及びJTEの終端構造を有するショットキーデバイスについてのブレークダウン電圧の分布プロットを示す図である。
【図9F】ウェハ上に電荷補償層終端構造が設けられた、1.75μmガードリングを有するショットキーデバイスについてのブレークダウン電圧の分布プロットを示す図である。
【図9G】ウェハ上に電荷補償層終端構造が設けられた、2.0μmガードリングを有するショットキーデバイスについてのブレークダウン電圧の分布プロットを示す図である。
【図9H】ウェハ上に設けられた、JTE終端構造を有するショットキーデバイスについてのブレークダウン電圧の分布プロットを示す図である。
【図10A】ウェハ上に設けられた、4重ガードリングの終端構造を有するショットキーデバイスについてのブレークダウン電圧の分布プロットを示す図である。
【図10B】ウェハ上に設けられた、6重ガードリングの終端構造を有するショットキーデバイスについてのブレークダウン電圧の分布プロットを示す図である。
【図10C】ウェハ上に設けられた、8重ガードリングの終端構造を有するショットキーデバイスについてのブレークダウン電圧の分布プロットを示す図である。
【図10D】ウェハ上に設けられた最後のガードリング終端構造においてJTEを備えた8重ガードリングを有するショットキーデバイスについてのブレークダウン電圧の分布プロットを示す図である。
【図10E】非特許文献3で説明された終端構造と同様の、ウェハ上に設けられた、ガードリング及びJTEの終端構造を有するショットキーデバイスについてのブレークダウン電圧の分布プロットを示す図である。
【図10F】ウェハ上に電荷補償層終端構造が設けられた、1.75μmガードリングを有するショットキーデバイスについてのブレークダウン電圧の分布プロットを示す図である。
【図10G】ウェハ上に電荷補償層終端構造が設けられた、2.0μmガードリングを有するショットキーデバイスについてのブレークダウン電圧の分布プロットを示す図である。
【図10H】ウェハ上に設けられた、JTE終端構造を有するショットキーデバイスについてのブレークダウン電圧の分布プロットを示す図である。
【図11A】ウェハ上に設けられた、4重ガードリングの終端構造を有するショットキーデバイスについてのブレークダウン電圧の分布プロットを示す図である。
【図11B】ウェハ上に設けられた、6重ガードリングの終端構造を有するショットキーデバイスについてのブレークダウン電圧の分布プロットを示す図である。
【図11C】ウェハ上に設けられた、8重ガードリングの終端構造を有するショットキーデバイスについてのブレークダウン電圧の分布プロットを示す図である。
【図11D】ウェハ上に設けられた最後のガードリング終端構造においてJTEを備えた8重ガードリングを有するショットキーデバイスについてのブレークダウン電圧の分布プロットを示す図である。
【図11E】非特許文献3で説明された終端構造と同様の、ウェハ上に設けられた、ガードリング及びJTEの終端構造を有するショットキーデバイスについてのブレークダウン電圧の分布プロットを示す図である。
【図11F】ウェハ上に電荷補償層終端構造が設けられた、1.75μmガードリングを有するショットキーデバイスについてのブレークダウン電圧の分布プロットを示す図である。
【図11G】ウェハ上に電荷補償層終端構造が設けられた、2.0μmガードリングを有するショットキーデバイスについてのブレークダウン電圧の分布プロットを示す図である。
【図11H】ウェハ上に設けられた、JTE終端構造を有するショットキーデバイスについてのブレークダウン電圧の分布プロットを示す図である。
【図12A】ウェハ上に設けられた、4重ガードリングの終端構造を有するショットキーデバイスについてのブレークダウン電圧の分布プロットを示す図である。
【図12B】ウェハ上に設けられた、6重ガードリングの終端構造を有するショットキーデバイスについてのブレークダウン電圧の分布プロットを示す図である。
【図12C】ウェハ上に設けられた、8重ガードリングの終端構造を有するショットキーデバイスについてのブレークダウン電圧の分布プロットを示す図である。
【図12D】ウェハ上に設けられた最後のガードリング終端構造においてJTEを備えた8重ガードリングを有するショットキーデバイスについてのブレークダウン電圧の分布プロットを示す図である。
【図12E】非特許文献3で説明された終端構造と同様の、ウェハ上に設けられた、ガードリング及びJTEの終端構造を有するショットキーデバイスについてのブレークダウン電圧の分布プロットを示す図である。
【図12F】ウェハ上に電荷補償層終端構造が設けられた、1.75μmガードリングを有するショットキーデバイスについてのブレークダウン電圧の分布プロットを示す図である。
【図12G】ウェハ上に電荷補償層終端構造が設けられた、2.0μmガードリングを有するショットキーデバイスについてのブレークダウン電圧の分布プロットを示す図である。
【図12H】ウェハ上に設けられた、JTE終端構造を有するショットキーデバイスについてのブレークダウン電圧の分布プロットを示す図である。
【図13】炭化ケイ素表面の陽極酸化を示す4H−SiCショットキーダイオードの断面TEM解析図である。
【図14】本発明の実施形態によるエッジ終端を有するSiCショットキーダイオードの断面図である。
【図15】本発明のさらなる実施形態によるエッジ終端を有するSiCショットキーダイオードの断面図である。
【図16A】顕著な陽極酸化を示す従来のSiCショットキーダイオードのエッジ終端構造の平面写真を示す図である。
【図16B】減少した陽極酸化を示している本発明の実施形態によるSiCショットキーダイオードのエッジ終端構造を示す平面写真を示す図である。
【図16C】著しく減少した陽極酸化を示している本発明のさらなる実施形態によるSiCショットキーダイオードのエッジ終端構造の平面写真を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の実施形態を、以下に、本発明の実施形態が示されている添付図面を参照し、より詳細に説明する。しかしながら、本発明は、多くの異なる形態・態様で実施することができ、ここに説明する実施形態に限定されるものと解釈すべきではない。この開示は、完全及び十分に当業者に対して本発明の範囲を伝える。同様の番号は、全体を通して同様の要素を示している。
【0033】
第一、第二などの用語が、様々な要素を表現するために本明細書で使われているが、これらの要素は、これらの用語によって限定されるべきではない。これらの用語は、ある要素を他の要素と区別するためにのみ使われる。例えば、第一の要素は、第二の要素と称されてもよく、同様に、第二の要素は、本発明の範囲内において、第一の要素と称されてもよい。本明細書で使用されているように、「および/また」という用語は、1つ以上の関連し記載された項目の任意及び全ての組み合わせを含む。
【0034】
本明細書で使われる用語は、特定の実施形態の説明のためだけに用いられるものであり、本発明の限定を意図するものではない。本明細書で使われるように、文脈から明らかに別のものであると示されていない限り、単数形「a」「an」及び「the」は、同様に複数形を含有することを意図する。本明細書で「comprises」「comprising」(〜から成る)「含む(includes/including)」という用語は、規定された特徴、正数、ステップ、操作、要素、及び/又は成分の存在を明確に述べるが、それに関しての一つ以上の他の特徴、正数、ステップ、操作、要素、及び/又は群を排除しない。
【0035】
他の定義がない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、本発明が属する技術分野における当業者によって普通に用いられるのと同じ意味を有する。本明細書で使われる用語は、明細書及び従来技術の文脈でそれらの意味と矛盾しない意味を有するように解釈されるべきであり、明確に定義されていなければ、理想的な又は非常に形式的な意味に解釈するべきではない。
【0036】
添付の図面に示すように、層又は領域のサイズは、図示の目的のために誇張されており、一般的な構造又は本発明を例示するために用いられている。さらに、本発明の様々な態様は、基板又は他の層上に形成される層に関して説明されている。当業者には理解されるように、別の層又は基板上に形成される層については、追加の層が介在しうる。この明細書では、介在する層なしに別の層又は基板上に形成される層は、基板上に「直接」形成される層又は基板上に「直接」形成されている層を意味している。
【0037】
下記により詳細に記載されているように、本発明の実施形態では、P−Nデバイス、ショットキーデバイス、PiNデバイス、又は同じような他の半導体デバイスなどの半導体デバイスの改善されたエッジ終端を提供することができる。本発明の特定の実施形態は、炭化ケイ素(SiC)デバイスについてのエッジ終端を提供している。例えば、本発明の実施形態は、SiCショットキーダイオード、接合バリアショットキー(JBS)ダイオード、PiNダイオード、サイリスタ、トランジスタその他のSiCデバイスのためのエッジ終端として利用することができる。本発明の実施形態は、酸化膜と半導体の表面電荷に対する多重フローティングガードリング終端の感度を低下させることができる。特定の実施形態においては、薄いp型層などの表面電荷補償層が、多重フローティングガードリングに追加して設けられる。表面電荷補償層を利用して、この炭化ケイ素デバイス中の酸化膜と半導体の境界面における電荷の影響を少なくとも部分的に中和する。
【0038】
図3は、本発明の特定の実施形態を示す炭化ケイ素半導体デバイス20の断面図である。図3に示すように、低濃度にドーピングしたn型炭化ケイ素層などの炭化ケイ素層30は、その中に、例えば、p型炭化ケイ素の主要接合32、及びp型炭化ケイ素フローティングガードリングなどの複数のフローティングガードリング34を備えている。炭化ケイ素層30は、n4H−SiC基板上に成長し得る。酸化物層などの絶縁層26は、炭化ケイ素層30上に設けられる。この絶縁層26は、堆積させられた酸化膜又は成長された酸化膜からなってもよく、当業者に知られている技術を利用して製造することができる。本発明の特定の実施形態においては、この絶縁層26はSiOなどの酸化物、Siなどの窒化物、酸化物‐窒化物‐酸化物構造及び/又は窒化酸化物、あるいはポリイミド層などの有機膜とすることができる。
【0039】
さらに図3に示されるように、p型炭化ケイ素などの炭化ケイ素の薄い領域が、間隔をおいて配置されたフローティングガードリング34同士の間に設けられて、等電位線を拡散させて、この表面電界を低下させ、したがって、表面電荷補償領域又は表面電荷補償層36を形成する。図3に示すように、表面電荷補償領域36のそれぞれは、2つの隣接したフローティングガードリング34のうち第1のフローティングガードリングに近接し接触しており、これら2つの隣接したフローティングガードリング34のうちのこの第1のフローティングガードリングから第2のフローティングガードリングに向かって延びることができる。或いは、炭化ケイ素の2つ以上の薄い領域を、隣接するフローティングガードリング34同士の間に設けることができ、これら2つ以上の薄い領域は、フローティングガードリング34のそれぞれ一方から他方に向かって延びることができる。本発明の他の実施形態においては、表面電荷補償領域36は、サイズ、ドーピング、形状、又は隣接するフローティングガードリング34に対する位置が同じである必要はない。表面電荷補償領域36は、例えば、p型炭化ケイ素層として設けることができる。
【0040】
p型炭化ケイ素表面電荷補償領域がn型炭化ケイ素層30中に設けられる、図3に示す構造では、表面電荷補償領域又は表面電荷補償層36のドーズ電荷(密度×深さ=ドーズ)は、約1×1012から約1×1013cm−2のはずである。酸化膜と半導体の境界面は、約1×1012cm−2から約2×1012cm−2の正電荷を有することが予想される。表面電荷補償領域36の表面は、一般的にこの正の表面電荷によって空乏化することになり、表面電荷補償領域36中の空乏領域内の負電荷は、この酸化物境界面電荷から発生するEフィールド線を終端し、この正の境界面電荷の悪影響を中和(相殺)することになる。さらに、表面電荷補償領域36における電荷量は十分に小さく、その結果、これらの領域は、(このデバイスのブロッキング電圧より小さい)低電圧において完全に空乏化することができ、これは、フローティングガードリングが適切に機能するために必要となることもある。したがって、表面電荷補償領域36により、この多重フローティングガード終端では、酸化膜電荷の変化に対する感度を下げるか、まったく感じなくさせる。したがって、本発明の実施形態による表面電荷補償領域36の動作は、RESURF原理(例えば、非特許文献5参照)を利用したJTE終端とは非常に異なるように機能することができる。その理由は、本明細書中で説明している表面電荷補償領域36の機能が、酸化物の電荷に対して補償する一方、従来のJTEにおいてはp層を使用して、ドリフト層の空乏領域中の電荷を垂直方向に終端し、その結果、横方向の電界が低下及び/又は最少化されるからである。
【0041】
図3に示された構造は、酸化物電荷を補償するのに有効であるが、炭化ケイ素デバイス中に設けられるフローティングガードリング間の小さな間隔により、フォトリソグラフィのために必要となり得る厳しい位置合わせ許容範囲のためにかかるデバイスの製造が困難になってしまうこともある。したがって、図4に示すように、炭化ケイ素デバイスにおいては、すべてのガードリングを接続する1つのパターンにすべての表面電荷補償p層を統合することがより実用的になり得る。したがって、図4に示すように、炭化ケイ素デバイス20’は、隣接するフローティングガードリング34同士の間に設けられた表面電荷補償層38を有するように構成されている。炭化ケイ素デバイス20’においては、表面電荷補償層38は、p型炭化ケイ素層として示されている。p型炭化ケイ素層38は、約1×1012から約1×1013cm−2の総電荷を有することができ、これは図3に示す総電荷と同じである。p型炭化ケイ素層38中のこの電荷は、正の酸化物電荷を中和することになり、したがって、このデバイスが、酸化物と半導体の表面電荷から影響を受けないようになる。
【0042】
表面電荷補償領域36/表面電荷補償層38は、いくつかの実施形態においては、約0.1μmから約2μmの厚さを有することができる。さらに、表面電荷補償領域36が隣接フローティングガードリングを接続しない本発明の実施形態においては、約0.1μmから約2μmのギャップを設けることができる。
【0043】
本発明の特定の実施形態においては、フローティングガードリング34は、同じ間隔で配置されても良く、異なる間隔又は同じ間隔と異なる間隔の組合せで配置されても良い。さらに、フローティングガードリング34は、炭化ケイ素層中に約0.1μmから約2μm延びることができる。いくつかのケースにおいては、ガードリング34は、炭化ケイ素層中に約0.1μmから約1μm延びることができる。ガードリング34は、約0.1μmから約10μmの間隔を有することができる。さらに、本発明のいくつかの実施形態においては、約1個から約100個のガードリング34を設けることができる。フローティングガードリング34は、デバイスの主要接合から約2μmから約1mmの深さに延びることができる。フローティングガードリング34は、約1×1018cm−3から約1×1020cm−3のドーパント濃度を有することができる。いくつかの実施形態において、フローティングガードリング34は、約1×1019cm−3から約1×1020cm−3のドーパント濃度を有することができる。
【0044】
本発明のいくつかの実施形態によるデバイスの製造では、p型層38又はp型領域36は、ガードリング34の形成前又は形成後に形成することができる。かかる領域36又は層38は、例えば、イオン注入、又は当業者に知られている他の技術によって設けることができる。或いは、p型層及び/又はp型領域はSiCのエピタキシャル成長層又はSiCの堆積層としてもよく、層30上に形成される。所定領域では、所望の表面電荷補償領域及び/又は所望の層を設けるためにパターン化処理されてもよい。この場合、ガードリングは、SiC層の形成前又はSiC層の形成後に形成されてもよい。注入されたp型ドーパントは、1300℃又はそれより高い温度でアニーリングすることによって活性化されてもよい。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態による終端部の動作(operation)が、図5A及び図5Bに示されている。小さな逆バイアスが印加された場合に、表面電荷補償層(SCCL)38のニュートラルな部分(すなわち、層38の、酸化物電荷によって空乏化していない部分)は、空乏化し始め、図5Aに示すように空乏領域50を形成する。SCCL38は完全には空乏化しないので、すべてのフローティングガードリングは、この時点では、電気的に接続されており、SCCL38の、最も外側のフローティングガードリングから外に延びる部分は、図5Aに示すように、この空乏領域を広げることにより、早期のブレークダウンを防止する。高い逆バイアスの電荷を印加すると、SSCL38は完全に空乏化し、フローティングガードリングは電気的に隔離されるようになる。しかし、フローティングガードリングは、依然としてキャパシタンス(図5Aに示されているC1、C2、C3及びC4を参照)によって互いに結合されている。デバイスに印加される電圧は、フローティングガードリング間のキャパシタンスに応じて分割される。
【0046】
例えば、図5Aにおいて、V1が主要接合32と第1のガードリング34の間の電圧であり、V2が第1のガードリング34と第2のガードリング34の間の電圧であり、V3が第2のガードリングと第3のガードリングの間の電圧であり、V4が第3のフローティングガードリングとn層30の間の電圧であるとすると、V1=((1/C1)/(1/C1+1/C2+1/C3+1/C4))×合計電圧(Total Voltage)となり、式中でこの合計電圧は、V1+V2+V3+V4である。各ガードリングの電位は、キャパシタンス比と印加された逆バイアス電圧によって決定され、この場合に、電位は、各フローティングガードリング下の、垂直方向の空乏層の幅(大きさ)を決定する。各ガードリングの電位は、フローティングガードリングが、主要接合に近づくにつれて増大する。この結果、図5Bに示すように、滑らかに広がった空乏領域50’が得られる。
【0047】
本発明の開示を考慮すれば当業者に理解されるように、本発明の実施形態は、P−N主要接合に関して説明されているが、本発明の実施形態によるエッジ終端技術は、ショットキー接合など、他のデバイスタイプ及び/又は接合タイプに利用することもできる。
【0048】
図6A乃至図6Jを参照して、本発明の実施形態によるエッジ終端構造の製造方法を以下に説明する。図6Aに示すように、炭化ケイ素層30には、その中に接合32と、所定の間隔をおいた同心円フローティングガードリング34が形成されている。かかる領域は、例えば、イオン注入によって炭化ケイ素基板及び/又はエピタキシャル層中に形成することができる。
【0049】
図6Bに示すように、炭化ケイ素層上にマスク層100を形成し、パターン形成することができ、これらは、接合32及びガードリング34領域に対応したものにする。マスク層100は、従来のマスク材料からなることもでき、また、例えば、当業者に知られている従来のフォトリソグラフィ技術又は他の技術を使用してパターン形成することができる。マスク層100は、接合32及びガードリング34に隣接した窓(ウィンドウ)を形成する。窓(ウィンドウ)は、隣接したガードリング同士の間で部分的又は完全に延びることができ、及び/又はガードリング34及び接合32の間で部分的又は完全に延びることができる。
【0050】
図6Cは、マスク層100をイオン注入マスクとして使用したイオン注入を用いた、表面電荷補償領域36の形成を示している。形成後、マスク層100は除去され(図6D)、その後、絶縁層26が形成される(図6E)。絶縁層26は、例えば、熱酸化及び/又は酸化物を堆積させることによって形成される。
【0051】
図6Fは、本発明のさらなる実施形態による、エッジ終端構造の製造方法を示している。図6Fに示すように、炭化ケイ素層30の上に、薄い炭化ケイ素層120が形成されている。炭化ケイ素層120は、注入層及び/又はエピタキシャル層でもよく、またその表面電荷補償領域及び/又は表面電荷補償層に関して前述したような厚さ及びドーピングレベルを有することもできる。
【0052】
図6Gは、マスク層140の形成及びパターン形成を示す図である。マスク層140は、従来のマスキング技術を利用して形成することができ、表面電荷補償領域に対応している。マスク中の窓(ウィンドウ)は、接合32及び/又はガードリング34に対応する。マスク層140をイオン注入マスクとして利用して、イオンが炭化ケイ素層30中に注入されて、接合32及び/又はガードリング34が設けられる(図6H)。次いで、マスク層140を除去し(図6I)、絶縁層26を形成する(図6J)。絶縁層26は、例えば、熱酸化及び/又は酸化膜を堆積させることによって形成される。
【0053】
本発明の実施形態は、特定の製造工程、特定のマスクパターンなどに関して説明してきたが、本発明の開示を考慮すれば当業者には理解されるように、本発明の教示から得られることを維持しつつ、他の工程、工程シーケンス、マスクパターンなどを利用することもできる。例えば、ガードリング及び表面電荷補償領域の注入の異なるシーケンスを使用することもできる。さらに、このデバイスの特定の製造工程が、製造するデバイスに依存することもある。したがって、例えば、トランジスタの製造は、ダイオードの製造とは異なる製造ステップを有することもある。したがって、本発明の実施形態は、特定の製造工程だけに限定されるものとして解釈すべきではなく、本明細書中で説明するようなエッジ終端構造を提供する構造工程を包含することもできる。
【0054】
(実施例)
以下の実施例は、本発明の特定の実施形態を説明するためのものであり、本発明を限定する実施形態として解釈すべきではない。
【0055】
1.58mmの活性面積を有するショットキーダイオードが、本発明の実施形態による接合終端技術を利用して製造された。様々な接合終端構成が、以下の表1において示されている。表1において、これらのデバイスは、ガードリング(GR)数と、接合終端延長部(JTE)が存在したかどうかと、存在した場合にはそのJTEがどこに配置されていたかと、電荷補償層(p層)がそのデバイス中に存在したかどうかによって識別される。表1の1ゾーンJTEは、1つのドーピングレベルJTEを有するデバイスを意味している。これらのデバイスの様々な物理特性及び電気特性もまた、表1に示されている。表1において、BVは、ブレークダウン電圧を意味し、製造された6枚のウェハのうちの1枚のウェハ上のデバイスについての平均(AVE)及び最大(MAX)のブレークダウン電圧が示されている。
【0056】
【表1】

【0057】
6枚のウェハは、ウェハ1については約7.1e15、ウェハ2については約7.7e15、ウェハ3については約6.25e15、ウェハ4については約6.3e15、ウェハ5については約5.3e15、及びウェハ6については約5.5e15のドーピング濃度で製造した。p層デバイスの注入はすべて、フォトレジストマスクを用いて室温で実施した。しかし、他の注入温度も利用することが可能であった。ホウ素が、すべてのデバイスについてのドーパントとして使用された。図7A乃至図12Hは、表1に示した6つのウェハについての様々な終端タイプを有するデバイスについての分布プロットである。表1を参照すると、低濃度にドーピングされたp層が、電荷補償層のない同様なガードリングデバイスと比較して改善されていることがわかる。
【0058】
図7A乃至図12Hは、表1のデバイス間におけるブレークダウン電圧分布を示している。図7A、図8A、図9A、図10A、図11A及び図12Aは、6つの別々のウェハ上に設けられた4重ガードリング終端構造を有するショットキーデバイスについてのブレークダウン電圧の分布図である。図7B、図8B、図9B、図10B、図11B及び図12Bは、6つの別々のウェハ上に設けられた6重ガードリング終端構造を有するショットキーデバイスについてのブレークダウン電圧の分布図である。図7C、図8C、図9C、図10C、図11C及び図12Cは、6つの別々のウェハ上に設けられた8重ガードリング終端構造を有するショットキーデバイスについてのブレークダウン電圧の分布図である。図7D、図8D、図9D、図10D、図11D及び図12Dは、6枚の別々のウェハ上に設けられた、最後のガードリングにJTEを有する8重ガードリング終端構造を有するショットキーデバイスについてのブレークダウン電圧の分布プロットである。図7E、図8E、図9E、図10E、図11E及び図12Eは、非特許文献3中で説明された終端構造と同様の、6つの別々のウェハ上に設けられた、ガードリング及びJTEの終端構造を有するショットキーデバイスについてのブレークダウン電圧の分布図である。図7F、図8F、図9F、図10F、図11F及び図12Fは、6つの別々のウェハ上に設けられた、電荷補償を伴う1.75μmガードリングの終端構造を有するショットキーデバイスについてのブレークダウン電圧の分布図である。図7G、図8G、図9G、図10G、図11G及び図12Gは、6つの別々のウェハ上に設けられた、電荷補償層を伴う2.0μmガードリングの終端構造を有するショットキーデバイスについてのブレークダウン電圧の分布プロットである。図7H、図8H、図9H、図10H、図11H及び図12Hは、6枚の別々のウェハ上に設けられたJTE終端構造を有するショットキーデバイスについてのブレークダウン電圧の分布図である。
【0059】
上述したように、従来のガードリングベースのSiCショットキーデバイスは、炭化ケイ素の表面の陽極酸化にさらされ、陽極酸化は、リバースブロッキング状態(blocking state)中においてガードリングを通っている大きな電流フローを伴うこともある。従来のSiCショットキーダイオードにおいて、ポリイミドなどの有機保護層は、SiC基板の表面上に形成され、エッジ終端構造を有するSiCデバイスに対する環境保護層及び/又は物理保護層を設けることができる。しかし残念なことに、ポリイミド保護層は、大量の水分を含有し、かつ/又は吸収することがある。
【0060】
陽極酸化プロセスにおいて、炭化ケイ素表面上のポリイミド層内で水分に含まれている酸素は、酸化ケイ素がもたらす高電界によって生じる電流の存在下で炭化ケイ素基板と反応し、酸化ケイ素を形成する。炭化ケイ素表面の陽極酸化は、炭化ケイ素表面上に粗悪な品質の酸化物層をもたらし、この酸化物層は、エッジ終端の有効性を減ずる可能性がある。図13は、デバイスの断面の透過電子顕微鏡(TEM)画像であり、炭化ケイ素ショットキーデバイス表面での陽極酸化の例を示している。図13に示すように、小さなボイド(void)43及び固体材料45は、ガードリングに近接した炭化ケイ素層30の表面で形成される。固体材料のエネルギー分散型X線(EDX)解析は、固体材料がケイ素(silicon)および酸素を含むことを示し、そのことから、炭化ケイ素表面の陽極酸化を強く示唆している。
【0061】
本発明の一部の実施形態は、SiCデバイスにおけるピーク表面段階を減弱し得るエッジ終端構造を提供する。ピーク表面電界を弱めると、陽極酸化が減少する。しかし、減少した表面電界を用いても、炭化ケイ素デバイス表面には、いくらかの陽極酸化が存在しており、この陽極酸化は、デバイス性能に悪影響を及ぼし得る。
【0062】
陽極酸化の発生を減少させるためには、有機保護層中に含有された、及び/又は吸収された水分が炭化ケイ素中のケイ素と反応しないようにする、及び/又はできる限り避けるために炭化ケイ素表面上に水分障壁層を設けることが望ましい。例えば、図14に示すように、本発明のいくつかの実施形態では、デバイス構造50は、炭化ケイ素層30(例えば、低濃度ドープのn型炭化ケイ素層であり、その上にn型炭化ケイ素層30を有するショットキー接合を形成するショットキーコンタクト52を有している。)と、複数のフローティングガードリング34(例えば、ショットキー接合を囲むp型炭化ケイ素フローティングガードリングである。)とから成る。JBSグリッド(図示せず)は、ショットキーコンタクト52の真下に設けられる。p型炭化ケイ素のような炭化ケイ素の薄い領域38が、間隔をおいて配置されたフローティングガードリング34の間に設けられ、表面領域を減じるために等電位線を拡散させ、したがって、前記で詳細に論じられたように表面電荷領域又は表面電荷補償層36が設けられる。p型炭化ケイ素の薄い領域38は、図15に示すように完全に、隣接するガードリング34の間まで延びることができる。また、例えば図3に関して論じられているように、炭化ケイ素の薄い領域38は、隣接するガードリング34の間で部分的にしか伸びないこともある。
【0063】
有機保護層66は、ポリイミドを含有し、デバイス構造50の上に形成され得る。有機保護層66は、ショットキーコンタクト52に至るまで、及び/又は部分的にショットキーコンタクト52上に延びることができ、有機保護層は、フローティングガードリング34及びp型炭化ケイ素領域38を含有するエッジ終端構造を横切って延びることができる。加えて、水分障壁(moisture barrier)56は、炭化ケイ素層30と保護層66との間に設けられる。水分障壁(moisture barrier)56は、例えば、窒化ケイ素(SiN)の薄層を含むことができ、水分障壁(moisture barrier)56は、例えば、反応性スパッタ及び/又はプラズマ化学気相成長法(PECVD)によって形成することができる。水分障壁(moisture barrier)56は、有機保護層66の水分がガードリング34の近くに到達することを減少する、及び/又はできるだけ回避することができる。その間、ガードリング34は、高電圧を維持し、高電圧中では、リーク電流が流れる。したがって、炭化ケイ素層30の表面の陽極酸化は、減少及び/又は抑制される。1つ以上の保護層は、例えば、2006年1月10日に出願された、同時係属中の本出願の米国特許出願第11/328,550号、“Environmentally Robust Passivation Structures for High−Voltage Silicon Carbide Semiconductor Devices”に記述されているように形成され得る。なお、この米国特許出願の開示内容は、本明細書に組み込まれるものとする。
【0064】
窒化ケイ素水分障壁層56は、約500Åから約1μmの厚さを有する。特定の実施形態において、このSiN水分障壁層56は、ショットキーコンタクト52を有する炭化ケイ素層30の表面の全体を覆って堆積される。ポリイミド保護層66は、従来のフォトリソグラフィ技術を使ってこの窒化ケイ素層56上に堆積及びパターン形成され、窒化ケイ素層56は、パターン形成されたポリイミド保護層66をエッチングマスクとして用いて選択的にエッチングされ得る。
【0065】
図15は、本発明のさらなる実施形態を示している。図15に示すように、デバイス構造60は、図14に示したデバイス構造50に類似している。すなわち、デバイス構造60は、低濃度ドープのn型炭化ケイ素層30と、複数のフローティングガードリング34とを有する。低濃度ドープのn型炭化ケイ素層30は、その上にショットキー接合を形成するショットキーコンタクト52を有し、複数のガードリング34は、ショットキー接合を取り囲むSiC層30中において、例えば、p型炭化ケイ素フローティングガードリングである。p型炭化ケイ素の薄い領域38は、所定間隔をもって設けられたフローティングガードリング34同士の間に設けられ、有機保護層66は、デバイス構造60の表面に形成される。水分障壁層56は、有機保護層66と炭化ケイ素30との間に設けられる。
【0066】
さらに、デバイス構造60は、炭化ケイ素層30と水分障壁層56との間に表面パッシベーション層(surface passivation layer)58を有する。表面パッシベーション層58は、例えば、熱酸化物のような高品質の酸化物層を含むことができ、熱酸化物層は、水分障壁層56の形成前に形成される。パッシベーション層58は、炭化ケイ素層30の表面の高品質表面パッシベーションを提供し、例えば、炭化ケイ素層30における又は隣接の界面状態密度(界面準位密度)を小さくする。熱酸化物パッシベーション層58は、約5nmから100nmの厚さを有することができる。
【0067】
図16Aは、隣接したガードリング同士の間に薄いp型炭化ケイ素領域38を含まない従来のSiCショットキーダイオードのエッジ終端構造の平面写真(plan view photograph)を示している。図16Aに示されたデバイスは、ポリイミド保護層を有し、環境試験が施され、試験中、デバイスの陽極は接地されており、ダイオードの陰極における電圧サイクルは、518時間、10kHzの周波数で0Vから600Vで行われた。テストの始めの350時間、デバイスは、不活性窒素(N)雰囲気中で電圧サイクル(voltage−cycled)された。試験の残りの168時間、雰囲気は空気であり、大量の水分を含有していた。この写真は、電圧サイクルした後のガードリング付近における顕著な陽極酸化を示している。
【0068】
図16Bは、隣接したガードリング34同士の間に薄いp型炭化ケイ素領域38を有するSiCショットキーダイオードのエッジ終端構造の平面写真を示しており、このエッジ終端構造は、水分障壁層を有していない。図16Bのデバイスは、窒素中で350時間、空気中で168時間、100V/600Vのサイクルが施された。電圧サイクル後、図16Bのデバイスはいくらかの陽極酸化を示しているが、図16Aに示されたデバイスより少なく、陽極酸化は、ガードリング34中の減少されたピーク電荷領域に起因している。
【0069】
図16Cは、隣接したガードリング34同士の間に薄いp型炭化ケイ素領域38を有するSiCショットキーダイオードのエッジ終端構造の平面写真であり、このエッジ終端構造は、炭化ケイ素層30の表面上に水分障壁層56を有している。図16Cに示されたデバイスも、窒素中で350時間及び空気中で168時間、100V/600Vのサイクルが施された。試験後、図16Cに示されたデバイスの陽極酸化は、著しく減少した。200倍の倍率で光学顕微鏡を用いて陽極酸化の検出を行ったが、その兆候は検出されなかった。
【0070】
ショットキーダイオードは、本発明の典型的な実施形態として記載されているが、例えばPINダイオード、サイリスタ、JFETなどの高リバースブロッキング電圧を維持・支持する他のタイプのデバイス構造も、本発明の実施形態によるエッジ終端構造を使用することができる。
【0071】
図面及び明細書において、本発明の典型的な好ましい実施形態が開示されている。特定の用語が使用されているが、これらの用語は、一般的な記述的な意味で使用されているにすぎず、限定するものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲に記述されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化ケイ素半導体デバイスのためのエッジ終端構造であって、
炭化ケイ素ベースの半導体接合を少なくとも部分的に取り囲み、炭化ケイ素層中において間隔をもって配置された複数の同心円のフローティングガードリングと、
前記フローティングガードリング間で、前記炭化ケイ素層の表面に隣接する炭化ケイ素表面電荷補償領域と、
前記炭化ケイ素層上の窒化ケイ素層と、
前記窒化ケイ素上の有機保護層と
を備えることを特徴とするエッジ終端構造。
【請求項2】
前記炭化ケイ素層と前記窒化ケイ素層との間の前記炭化ケイ素層の表面上の酸化物層をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のエッジ終端構造。
【請求項3】
前記窒化ケイ素層は、約500Åから約1μmの厚さを有することを特徴とする請求項1に記載のエッジ終端構造。
【請求項4】
前記有機保護層は、ポリイミドを含むことを特徴とする請求項1に記載のエッジ終端構造。
【請求項5】
前記有機保護層は、前記窒化ケイ素層よりも高い水分含量を有することを特徴とする請求項1に記載のエッジ終端構造。
【請求項6】
前記フローティングガードリングは、前記炭化ケイ素中に第1の深さで延び、前記表面電荷補償領域は、前記炭化ケイ素層中に第2の深さで延び、前記第2の深さは、前記第1の深さより小さいことを特徴とする請求項1に記載のエッジ終端構造。
【請求項7】
前記表面電荷補償領域は、前記フローティングガードリングより低濃度にドーピングされていることを特徴とする請求項1に記載のエッジ終端構造。
【請求項8】
前記表面電荷補償領域は、前記フローティングガードリングのうちの隣接するフローティングガードリング間に完全に延びていることを特徴とする請求項1に記載のエッジ終端構造。
【請求項9】
前記表面電荷補償領域は、前記フローティングガードリングのうちの隣接するフローティングガードリング間に延びているが、2つの隣接するフローティングガードリング間に完全には延びていないことを特徴とする請求項1に記載のエッジ終端構造。
【請求項10】
前記表面電荷補償領域は、前記炭化ケイ素上の第2の炭化ケイ素層を備えていることを特徴とする請求項1に記載のエッジ終端構造。
【請求項11】
前記表面電荷補償領域は、前記酸化物層に隣接する前記表面電荷補償領域の表面が、前記酸化物層の表面電荷によって部分的に空乏化し、逆バイアスが前記デバイスに印加された場合には完全に空乏化するようなドーパント濃度を有することを特徴とする請求項1に記載のエッジ終端構造。
【請求項12】
前記表面電荷補償領域は、約1×1012から約7×1012cm−2のドーズ電荷を有することを特徴とする請求項1に記載のエッジ終端構造。
【請求項13】
炭化ケイ素半導体デバイスのためのエッジ終端構造であって、
炭化ケイ素ベースの半導体接合の少なくとも一部分を取り囲み、炭化ケイ素層中において間隔をもって配置された複数の同心円のフローティングガードリングと、
前記フローティングガードリング間で、前記炭化ケイ素層の表面に隣接する炭化ケイ素表面電荷補償領域と、
前記炭化ケイ素層上の水分障壁層と、
前記水分障壁層上の環境保護層とを備え、前記水分障壁層及び前記環境保護層は、異なる物質を含むことを特徴とするエッジ終端構造。
【請求項14】
前記炭化ケイ素層と前記水分障壁層との間の表面パッシベーション層をさらに備え、前記表面パッシベーション層及び前記水分障壁層は、異なる物質を含むことを特徴とする請求項13に記載のエッジ終端構造。
【請求項15】
前記表面パッシベーション層は、酸化物を含むことを特徴とする請求項14に記載のエッジ終端構造。
【請求項16】
前記酸化物は、熱酸化物を含むことを特徴とする請求項15に記載のエッジ終端構造。
【請求項17】
前記水分障壁層は、窒化ケイ素を含むことを特徴とする請求項13に記載のエッジ終端構造。
【請求項18】
前記環境保護層は、ポリイミドを含むことを特徴とする請求項13に記載のエッジ終端構造。
【請求項19】
炭化ケイ素半導体デバイスのためのエッジ終端構造であって、
炭化ケイ素ベースの半導体接合の少なくとも一部分を取り囲み、炭化ケイ素層の表面において間隔をもって配置された複数の同心円のフローティングガードリングと、
前記炭化ケイ素層の前記表面上の保護層と、
前記炭化ケイ素層の前記表面における前記フローティングガードリングの間の炭化ケイ素表面電荷補償領域とを備え、
前記炭化ケイ素層の前記表面は、前記デバイスが350時間、窒素下で、続いて168時間、空気中で、10kHzにおいて0Vから600Vの間でサイクルされた逆バイアス電圧にさらされる場合に、実質的に陽極酸化しないことを特徴とするエッジ終端構造。
【請求項20】
炭化ケイ素半導体デバイスのためのエッジ終端構造の製造方法であって、
炭化ケイ素ベースの半導体接合の少なくとも一部分を取り囲み、炭化ケイ素層の表面において間隔をもって配置された複数の同心円のフローティングガードリングを形成すること、
前記炭化ケイ素層の前記表面において前記フローティングガードリングの間に炭化ケイ素表面電荷補償領域を形成すること、
前記フローティングガードリング上に窒化ケイ素層を形成すること、および、
前記窒化ケイ素層上に有機保護層を形成すること
を含むことを特徴とするエッジ終端構造の製造方法。
【請求項21】
前記窒化ケイ素層を形成することの前に、前記炭化ケイ素層上に酸化物層を形成することを特徴とする請求項20に記載のエッジ終端構造の製造方法。
【請求項22】
前記窒化ケイ素層は、約500Åから約1μmの厚さを有することを特徴とする請求項20に記載のエッジ終端構造の製造方法。
【請求項23】
前記有機保護層は、ポリイミドを含むことを特徴とする請求項20に記載のエッジ終端構造の製造方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図6E】
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【図6F】
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【図6G】
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【図6H】
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【図6I】
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【図6J】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図7E】
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【図7F】
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【図7G】
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【図7H】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図8E】
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【図8F】
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【図8G】
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【図8H】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図9E】
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【図9F】
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【図9G】
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【図9H】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【図10E】
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【図10F】
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【図10G】
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【図10H】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図11D】
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【図11E】
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【図11F】
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【図11G】
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【図11H】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図12D】
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【図12E】
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【図12F】
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【図12G】
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【図12H】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16A】
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【図16B】
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【図16C】
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【公開番号】特開2013−62518(P2013−62518A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−232939(P2012−232939)
【出願日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【分割の表示】特願2008−550361(P2008−550361)の分割
【原出願日】平成19年1月8日(2007.1.8)
【出願人】(592054856)クリー インコーポレイテッド (468)
【氏名又は名称原語表記】CREE INC.
【Fターム(参考)】