説明

炭化フッ素系樹脂およびその製造方法、固相フルオラス触媒、固相フルオラス合成反応並びに有機反応用反応場

【課題】高い耐酸性・耐塩基性および機械的強度を有し、さらに炭化水素系溶媒と簡単に分離することができる炭化フッ素系樹脂およびその製造方法、固相フルオラス触媒、固相フルオラス合成反応並びに有機反応用反応場の提供。
【解決手段】炭化フッ素系樹脂は、高分子幹鎖と、これに結合されたペルフルオロアルキル基よりなる置換基により形成される側鎖とよりなることを特徴とする。この炭化フッ素系樹脂においては、高分子幹鎖が巨大網状樹脂よりなることが好ましく、この炭化フッ素系樹脂はスチレン系単量体を用いた樹脂系あるいは、アクリル系単量体を用いた樹脂系が、挙げられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば固相フルオラス触媒の触媒担持物質や固相の有機反応用反応場などに用いられる炭化フッ素系樹脂、およびその製造方法、固相フルオラス触媒、固相フルオラス合成反応並びに有機反応用反応場に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、フルオラス合成はグリーンケミストリーにおける一手法として活発に研究が進められている。フルオラス合成とは、炭化水素系溶媒と毒性のほとんどないフルオラス溶媒からなるフルオラス二相系システム(FBS)を利用する手法であって、フルオラス触媒を含むフルオラス触媒相は、触媒を有機相へ浸出させることなく回収することができ、回収されたフルオラス触媒溶液は次の反応のフルオラス触媒相として再利用することができるという利点がある。
【0003】
一方、フルオラス溶媒が不要であるという利点などから、固相フルオラス触媒の開発が望まれており、具体的には例えば炭化フッ素系シリカゲルを用い、これにフッ素系化合物よりなる触媒を担持させたものを固相フルオラス触媒として用いて種々の合成反応を行うことが特許文献1〜3に開示されている。
【0004】
しかしながら、このような炭化フッ素系シリカゲルを用いた固相フルオラス触媒は、耐酸性・耐塩基性、特に耐塩基性が極めて低く、限定された有機合成反応にしか適用することができない、という問題があった。
また、この炭化フッ素系シリカゲルを用いた固相フルオラス触媒は、脆いために機械的強度が低く、反応系において撹拌などの応力を受けると、破砕されてしまうという欠点も有している。
【0005】
【特許文献1】特開2005−095823号公報
【特許文献2】特開2004−243247号公報
【特許文献3】特開2002−338539号公報
【特許文献4】国際公開第99/41259号パンフレット
【非特許文献1】「Tetrahedron Letter」 Vol.44 No.49 p.8791−8795
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような事情を考慮してなされたものであって、その第1の目的は、高い耐酸性・耐塩基性を有する炭化フッ素系樹脂およびその製造方法を提供することにある。
本発明の第2の目的は、高い耐酸性・耐塩基性および機械的強度を有する炭化フッ素系樹脂およびその製造方法を提供することにある。
本発明の第3の目的は、高い耐酸性・耐塩基性および機械的強度を有し、さらに炭化水素系溶媒と簡単に分離することができる炭化フッ素系樹脂およびその製造方法、固相フルオラス触媒、固相フルオラス合成反応並びに有機反応用反応場を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の炭化フッ素系樹脂は、高分子幹鎖と、これに結合されたペルフルオロアルキル基よりなる置換基により形成される側鎖とよりなることを特徴とする。
この炭化フッ素系樹脂においては、高分子幹鎖が巨大網状樹脂よりなることが好ましい。
【0008】
本発明の炭化フッ素系樹脂は、下記一般式(1)に示される繰り返し単位よりなる構成とすることができる。
【化1】


〔上記一般式(1)において、l、mおよびnは、整数である。〕
【0009】
また、本発明の炭化フッ素系樹脂は、下記一般式(2)に示される繰り返し単位よりなる構成とすることができる。
【化2】


〔上記一般式(2)において、o、pおよびqは、整数である。〕
【0010】
本発明の炭化フッ素系樹脂の製造方法は、上記の炭化フッ素系樹脂を製造する方法であって、
下記反応式(A)に示される反応工程を経て下記式(a)に示される炭化フッ素系単量体を得、当該炭化フッ素系単量体と、架橋剤とを重合反応させる工程を含むことを特徴とする。
【化3】


【化4】

【0011】
本発明の炭化フッ素系樹脂の製造方法においては、架橋剤がジビニルベンゼンであることが好ましい。
【0012】
本発明の炭化フッ素系樹脂の製造方法は、上記の炭化フッ素系樹脂を製造する方法であって、
下記式(b)に示される炭化フッ素系単量体を得、当該炭化フッ素系単量体と、架橋剤とを重合反応させる工程を含むことを特徴とする。
【化5】

【0013】
本発明の炭化フッ素系樹脂の製造方法においては、架橋剤がエチレングリコールジメタクリレートであることが好ましい。
【0014】
また、本発明の炭化フッ素系樹脂の製造方法においては、前記重合反応を懸濁重合により進行させることにより、巨大網状樹脂による微粒子形状の炭化フッ素系樹脂を得る構成とすることができる。
【0015】
本発明の固相フルオラス触媒は、フッ素系化合物よりなる触媒作用物質が、炭化フッ素系樹脂に固定されていることを特徴とする。
【0016】
本発明の固相フルオラス触媒は、フッ素系化合物よりなる触媒作用物質が、上記の炭化フッ素系樹脂に固定されていることを特徴とする。
【0017】
本発明の固相フルオラス触媒においては、触媒作用物質が、フッ素系ルイス酸触媒であることが好ましい。
【0018】
本発明の固相フルオラス合成反応は、上記の固相フルオラス触媒を用いて有機合成反応を行うことを特徴とする。
【0019】
本発明の有機反応用反応場は、上記一般式(1)に示される繰り返し単位よりなる炭化フッ素系樹脂よりなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の炭化フッ素系樹脂によれば、高い耐酸性・耐塩基性を得ることができる。
炭化フッ素系シリカゲルではSi−O−Si結合が酸およびアルカリに弱く切れやすいため、炭化フッ素鎖がシリカゲルから脱落しやすい。特に、アルカリには担体のシリカゲル自体も溶解する。一方、本発明の炭化フッ素系樹脂、特に一般式(1)の樹脂には高い耐酸性・耐塩基性が得られ、それは、その高分子側鎖が−CH−C(CFCF−なる構造を持つためにHFの脱離が抑制されているからであり、その結果、耐酸性、耐塩基性に優れたものとなる。
【0021】
また、本発明の炭化フッ素系樹脂の高分子幹鎖が巨大網状樹脂よりなるものである場合は、表面積が大きく、フッ素系ルイス酸などの触媒や炭化フッ素系基質が保持されやすいという性質が得られると共に、その高い架橋度によって高い機械的強度を得ることができる。
【0022】
本発明の固相フルオラス触媒によれば、高い耐酸性・耐塩基性および機械的強度を有し、さらに炭化水素系溶媒と簡単に分離することができ、各種の有機合成反応に好適に用いることができる。
【0023】
本発明の有機反応用反応場によれば、炭化フッ素系置換基、例えば、ペルフルオロアルキル基またはポリフルオロアルキル基をタグとして持つ反応基質(原料物質)を用いることにより、多段階反応を濾過という簡単な精製操作により連続して目的とする反応を行うことができる。この反応によれば、従来の固相反応とは異なり、固相への固定化を容易に、かつ可逆的に行うことができる。しかも、フルオラス合成反応と異なり、高価で蒸気圧の高い炭化フッ素系溶媒を使用する必要がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明について具体的に説明する。
【0025】
図1は、本発明の固相フルオラス合成反応を模式的に示す説明図である。
この固相フルオラス合成反応は、水や非極性・低極性の有機溶媒などからなる液相と、本発明の固相フルオラス触媒10からなる固相とによって形成される有機合成反応系において、反応基質から有機合成反応によって生成物が得られるものである。この有機合成反応は、液相/固相界面において行われる。
【0026】
この固相フルオラス合成反応に用いられる本発明の固相フルオラス触媒10は、フッ素系化合物よりなる触媒作用物質12が炭化フッ素系樹脂11に固定化された状態を有するもので、水や非極性・低極性の有機溶媒に不溶であり、従って、有機合成反応後に濾過操作を行うという簡単な作業によって液相から分離でき、例えば6回以上の繰り返し使用が可能なものである。
【0027】
固相フルオラス触媒10を構成する炭化フッ素系樹脂11は、後記に詳述するが、高分子幹鎖11Aと、これに化学結合されたペルフルオロアルキル基よりなる置換基(以下、「担持用CF系置換基」ともいう。)11Bにより形成される側鎖とよりなるものであり、また、触媒作用物質12は、ペルフルオロアルキル基よりなる置換基(以下、「吸着用CF系置換基」ともいう。)12Aを有するものである。そして、炭化フッ素系樹脂11の担持用CF系置換基11Bと触媒作用物質12の吸着用CF置換基12Aとの物理吸着による疎水結合が形成されることにより、固定化されている。
【0028】
固相フルオラス合成反応において実施される有機合成反応としては、エステル化反応、ディールス−アルダー反応、アセタール化反応、アルコールのアシル化反応、アルドール型反応、アリル化反応、フリーデル−クラフツ型反応、マンニッヒ型反応、バイヤー−ビリガー反応、グリコシル化反応、またはエン反応などを挙げることができる。
【0029】
有機合成反応がエステル化反応である場合の具体的な反応例を、下記反応式(X)に示す。この有機合成反応においては、固相フルオラス触媒10としてハフニウム塩(Hf[N(SO281724)を用い、シクロヘキサノールと無水酢酸とのエステル化が行われている。
【化6】

【0030】
液相を構成する媒体としては、フッ素系ルイス酸を含むペルフルオロアルキル基をもつ化合物の分配係数が低い水や非極性・低極性の有機溶媒などが挙げられる。液相を構成する媒体への分配係数が大きいと、担持用CF系置換基11Bと吸着用CF系置換基12Aとの疎水結合が解除されて触媒作用物質12が当該媒体に溶出してしまう。
非極性・低極性の有機溶媒の具体例としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、石油エーテルなどを挙げることができ、特にヘキサンが好ましい。
【0031】
媒体の使用量は、固相フルオラス触媒10に対して質量比で1以上が好ましく、より好ましくは質量比で2〜1000である。
また、有機合成反応系における固相フルオラス触媒10の添加量は、反応基質に対して通常0.0001〜10倍モルであることが好ましく、より好ましくは0.01〜2倍モルである。
また、有機合成反応温度は、実施される有機合成反応の種類や用いられる固相フルオラス触媒10の種類などによって異なるが、例えば130〜200℃とすることができる。さらに、有機合成反応時間は、実施される有機合成反応の種類や用いられる固相フルオラス触媒10の種類、添加量、有機合成反応温度などにより異なるが、好ましくは数分〜72時間である。
【0032】
〔固相フルオラス触媒の製造方法〕
このような固相フルオラス触媒は、例えば、触媒作用物質を、エタノール、アセトニトリルなどの有機媒体、またはペルフルオロヘプタン、ペルフルオロオクタン、ペルフルオロメチルシクロヘキサン、ペルフルオロデカリンなどのフッ素系溶媒に溶解させた触媒形成溶液中に、炭化フッ素系樹脂を添加し、有機媒体またはフッ素系溶媒を減圧下で留去し、減圧下で乾燥することにより、得ることができる。
【0033】
ここに、炭化フッ素系樹脂およびフッ素系ルイス酸触媒の質量比は、炭化フッ素系樹脂:フッ素系ルイス酸触媒が好ましくは100:1以上、より好ましくは3:1程度である。
【0034】
〔炭化フッ素系樹脂〕
固相フルオラス触媒10を構成する炭化フッ素系樹脂11は、高分子幹鎖11Aと、これに化学結合された担持用CF系置換基11Bにより形成される側鎖とよりなるものであり、高分子幹鎖11Aは、巨大網状樹脂(Macroreticular resin)(以下、「MR型樹脂」ともいう。)よりなることが好ましい。そして、炭化フッ素系樹脂11全体としてMR型樹脂による、多数の細孔が形成された多孔質の微粒子(以下、「多孔質ビーズ」という。)の形状を有することが好ましい。
【0035】
炭化フッ素系樹脂11が多孔質ビーズよりなることによって、当該炭化フッ素系樹脂11が高い機械的強度を有して浸透圧衝撃性の高いものとなるので繰り返し使用性の高い固相フルオラス触媒10が得られる。また、多孔質ビーズの表面のポアサイズ(マクロポア)が大きいので、高い可逆的吸着性が得られ、従って、有機物による汚染・劣化に強いものとなる。また、多孔質ビーズの孔の径が大きいため液相を構成する溶媒が極性溶媒であっても多孔質ビーズ内部に侵入することができるので、反応基質が多孔質ビーズの表面拡散だけでなく溶媒中を自由に移動して多孔質ビーズ内部まで円滑にまたは迅速に到達でき、一般に固相合成反応は反応基質の拡散速度が律速であるところ、本発明のMR型固相フルオラス触媒10について高い反応基質の拡散速度が得られ、結局、高い触媒効率が得られる。
【0036】
MR型樹脂は、後記に詳述するように、これを重合するときに添加する架橋剤の量を調整することによって得ることができ、架橋剤の添加量が少ないとゲル型樹脂が得られてしまう。このようなゲル型樹脂による炭化フッ素系樹脂を有する固相フルオラス触媒は、使用時に膨潤させる工程が必要であって、利便性に欠ける。
【0037】
また、担持用CF系置換基11Bは、ペルフルオロアルキル基であって、例えば炭素数1〜30、好ましくは4〜20、より好ましくは6〜15、特に好ましくは8〜15の炭化水素基の水素原子を全てフッ素原子に置換したものであって、具体的には−C49,−C511,−C613,−C715,−C817,−C919,−C1021,−C1123,−C1225,−C1327,−C1429,−CH2CH249,−CH2CH2511,−CH2CH2613,−CH2CH2715,−CH2CH2CC817,−C64613,−C63(C6132,−CH2CH2N(C8172,−CH2CH2OC613,−CH2CH2Si(CH2CH26133などを挙げることができる。
【0038】
ここに、多孔質ビーズを固相フルオラス触媒の触媒担持物質として用いる場合には、当該多孔質ビーズの平均粒径が170〜190μmであることが好ましい。
また例えば、多孔質ビーズを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)およびガスクロマトグラフィー(GPC)のカラムの炭化フッ素系充填剤として用いる場合には、当該多孔質ビーズの平均粒径は5〜120μmであることが好ましい。
【0039】
また、この炭化フッ素系多孔質ビーズを固相フルオラス合成反応に用いる場合は、この多孔質ビーズに形成された細孔の大きさが10〜100nmであることが好ましい。
多孔質ビーズの細孔は、後述する炭化フッ素系樹脂の製造方法において添加される希釈剤が重合後、除去されることにより、その存在していた部位により形成されるので、この細孔の大きさは、希釈剤の極性の大きさを調整することにより、制御することができる。例えば用いる希釈剤を極性の大きなものとするに従ってポリマーの溶解性は低くなるので、形成される細孔の大きさが大きくなる。
【0040】
〔炭化フッ素系樹脂の製造方法〕
このような炭化フッ素系樹脂10は、種々の重合反応によって炭化フッ素系単量体および架橋剤とを重合させることによって製造することができる。
この重合反応としては、既知の種々の重合反応方法を適用することができ、具体的には懸濁重合、乳化重合、ソープフリー重合、分散重合、およびシード重合などが挙げられるが、MR型樹脂内部まで高い均一性で細孔が形成された多孔質ビーズを形成させることができること、および、生成物からの分散安定剤の除去が容易でない乳化重合などと比して生成物を熱湯で洗浄することにより容易に分散安定剤の除去を行うことができることなどから、懸濁重合を適用することが好ましい。
【0041】
ここに、懸濁重合法とは、分散安定剤を溶解させた水系媒体中において、モノマー(炭化フッ素系単量体)を、機械的剪断力により液滴として懸濁させ、この液滴中において重合反応を進行させることにより、ポリマー(炭化フッ素系樹脂)を得る方法である。
【0042】
炭化フッ素系樹脂の合成に係る重合反応として懸濁重合を適用した場合、得られる多孔質ビーズの平均粒径は130〜230μmとすることができる。
多孔質ビーズの粒径は、液滴を構成する単量体溶液の添加量、粘度、分散安定剤の種類および濃度、水層および有機層の比率、撹拌翼や反応容器の形状や種類、撹拌速度などを調整することによって制御することができる。
【0043】
〔炭化フッ素系単量体〕
炭化フッ素系樹脂を製造するための炭化フッ素系単量体としては、下記一般式(3)に示されるような化合物を用いる。
【化7】

【0044】
上記一般式(3)中、Rは、上記式(a)、式(b)などに示されるラジカル重合性を有する置換基であり、Rfは、ペルフルオロアルキル基である。
炭化フッ素系単量体を構成する基Rは、架橋剤と共に重合されることによって高分子幹鎖を形成するものである。
炭化フッ素系単量体を構成する基Rfとしては、上記の担持用CF系置換基11Bの具体例と同じものを挙げることができる。
【0045】
〔架橋剤〕
炭化フッ素系樹脂を製造するための架橋剤としては、従来公知の種々の架橋剤を用いることができ、具体的にはジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、ジビニルトルエン、ジビニルナフタレン、ジビニルフェノール、ジビニルピリジン、フタル酸ジアリル、フマル酸ジアリル、N,N’−メチレンジメタクリルアミド、ジエチレングリコールメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、メタクリル酸ビニル、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートなどが挙げられ、特に、ジビニルベンゼン、エチレングチコールジメタクリレートを用いることが好ましい。
また、架橋剤としては、3官能架橋剤を用いてもよい。
この架橋剤の割合は、炭化フッ素系樹脂を製造するための炭化フッ素系単量体および架橋剤よりなる組成物全体に対して20質量%以上であることが好ましく、より好ましくは30質量%以上である。
架橋剤の割合が20質量%以上であると、得られる炭化フッ素系樹脂が高い機械的強度を持つものとなり、その結果、これを用いて製造した固相フルオラス触媒を有機合成反応系に何度も用いることができる。
【0046】
〔分散安定剤〕
重合反応に用いる分散安定剤としては、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ゼラチン、ベントナイト、塩などを用いることができる。これらは、1種または2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0047】
〔希釈剤〕
重合反応に用いる希釈剤としては、不活性有機溶媒であって、水に不溶であり、かつ炭化フッ素系単量体を溶解することができるものを用いる。具体的には、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、ニトロベンゼン、クロロベンゼン、クロロトルエン、メトキシベンゼン、ジエチルベンゼン、ジフェニル、ドデシルベンゼンなどの芳香族炭化水素類;芳香族エステル類;ブタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、ドデカンなどの飽和脂肪族炭化水素;グリコール類;イソアミルアルコールなどのアルコール類などを挙げることができる。これらは、1種または2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0048】
〔ラジカル重合開始剤〕
重合反応に用いるラジカル重合開始剤としては、従来公知の種々のものを用いることができ、具体的には、例えば2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)、過酸化ベンゾイル(BPO)などを挙げることができる。これらは、1種または2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0049】
〔スチレン系単量体を用いた炭化フッ素系樹脂〕
炭化フッ素系単量体としてスチレン系のものを用いた炭化フッ素系樹脂の製造に係る反応を下記反応式(A’)および反応式(B)に示す。
この反応式(A’)においては、出発原料であるペルフルオロ(2−メチル−2−ペンテン)〔2〕およびp−(クロロメチル)スチレン〔1〕を、フッ化カリウム、ヨウ化カリウム、18−クラウン−6−エーテルの存在下に、非プロトン性極性溶媒であるジメチルアセトアミド(DMA)中において反応させることにより、p−[3,3,4,4,5,5,5−ヘプタフルオロ−2,2−ビス(トリフルオロメチル)ペンチル]スチレン〔3〕が合成される。
また、反応式(B)においては、p−[3,3,4,4,5,5,5−ヘプタフルオロ−2,2−ビス(トリフルオロメチル)ペンチル]スチレン〔3〕とp−ジビニルベンゼン〔4〕を2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN),ドデカン、トルエンおよびポリビニルアルコールの存在下、60℃で24時間懸濁共重合させることにより、フルオラスポリスチレン〔FPS〕が合成される。
【化8】


【化9】



〔上記反応式(B)中、l、mおよびnは整数である。〕
【0050】
〔アクリル系単量体を用いた炭化フッ素系樹脂〕
炭化フッ素系単量体としてアクリル系のものを用いた炭化フッ素系樹脂の製造に係る反応を下記反応式(C)に示す。
この反応式(C)においては、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロデシルアクリレート〔11〕とエチレングリコールジメタクリレート〔12〕を、ジエチルベンゼン、過酸化ベンゾイルおよびポリビニルアルコールの存在下、70℃で2時間,90℃で3時間の重合反応条件で懸濁共重合させることにより、フルオラスポリアクリル酸〔FPA〕が重合される。
【化10】



〔上記反応式(C)中、o、pおよびqは整数である。〕
【0051】
〔触媒作用物質〕
固相フルオラス触媒10を構成するフッ素系化合物よりなる触媒作用物質12としては、例えばポリフルオロアルキル基をもつルイス酸、ルイス塩基、および金属錯体などを挙げることができ、この中でも、ポリフルオロアルキル基をもつルイス酸(フッ素系ルイス酸)が好適に用いられる。
この理由としては、フッ素系ルイス酸触媒は非常に炭素数が多く、長鎖状の吸着用CF系置換基12Aを有しているため、炭化フッ素系樹脂11への強い固定化が可能であり、また、この吸着用CF系置換基12Aが炭化水素基を経由せずに直接スルフォニル基に結合したスルフォニルアミド構造をもつことから非常に強いルイス酸性を有するからである。
【0052】
触媒作用物質12における触媒作用を発揮する先端部分に結合された吸着用CF系置換基12Aは、例えば炭素数が好ましくは4〜20、より好ましくは5〜18、さらに好ましくは6〜16、特に好ましくは7〜14であり、炭素骨格中にヘテロ原子を含む炭化水素基の水素原子を全てフッ素原子に置換したものや、あるいは、炭素数が好ましくは4〜20、より好ましくは5〜18、さらに好ましくは6〜16、特に好ましくは7〜14であり、炭素骨格中にヘテロ原子を含まず炭化水素基の水素原子を全てフッ素原子に置換したものなどよりなる。
吸着用CF系置換基12Aの炭素骨格の長さは、この吸着用CF系置換基12Aと物理吸着される炭化フッ素系樹脂11の担持用CF系置換基11Bの組成、固相フルオラス触媒10が適用される有機合成反応の種類や反応基質の種類に応じて調整することが好ましい。
【0053】
炭素骨格中に酸素原子、窒素原子などのヘテロ原子を含む吸着用CF系置換基の具体例としては、−C24OC25、−C24OC49、−CF2CHFCF2OC49、−C48N(C492、−CF2CF2OCF(CF3)CF2OCF=CF2、−CF2CF2OCF(CF3)CF2OCF(CF3)CF2OCF=CF2、−CF2CF2OCF(CF3)CF2OCHFCF3、−CF2CF2OCF(CF3)CF2OCF(CF3)CF2OCHFCF3、−CF2CF2O−CF(CF3)−CF2−OCF(CF3)−CF2OCF2CF3、−CF2CF2OCF(CF3)CF2OCFClCF3、−CF2CF2OCF(CF3)CF2OCFClCF2Clなどが挙げられる。
【0054】
また、炭素骨格中にヘテロ原子を含まない吸着用CF系置換基の具体例としては、トリフルオロメチル基、ペルフルオロエチル基、ペルフルオロプロピル基、ペルフルオロブチル基、ペルフルオロペンチル基、ペルフルオロヘキシル基、ペルフルオロヘプチル基、ペルフルオロクチル基、ペルフルオロノニル基、ペルフルオロデシル基、ペルフルオロウンデシル基、ペルフルオロドデシル基、ペルフルオロトリデシル基、ペルフルオロテトラデシル基、ペルフルオロペンタデシル基、ペルフルオロヘキサデシル基などが挙げられる。
【0055】
固相フルオラス触媒を構成するフッ素系ルイス酸触媒としては、例えば特開2005−95823号公報に開示されているようなものを挙げることができ、好ましくは具体的には式(M[N(SO28172)に表される化合物が挙げられる。ただし、Mは、希土類を含む遷移金属、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、鉛、アンチモンおよびビスマスから選ばれた元素であり、rは、Mの原子価と同数の整数を表す。より具体的には、フッ素系ルイス酸触媒としては、ハフニウム(IV)ビス(ペルフルオロオクタンスルフォニル)アミド(Hf[N(SO281724)、イットリウム(III)ビス(ペルフルオロオクタンスルフォニル)アミド(Y[N(SO281723)などを好適に挙げることができる。
【0056】
このような炭化フッ素系樹脂によれば、高い耐酸性・耐塩基性、機械的強度を得ることができると共に、繰り返し使用性の高い固相フルオラス触媒を得ることができる。
【0057】
以上、本発明について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
【実施例】
【0058】
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0059】
<実施例1>
〔炭化フッ素系単量体の合成〕
アリーン冷却器と撹拌子を取り付けた10mLナスフラスコよりなる反応装置を用い、この装置内をアルゴンで置換し、フッ化カリウム(スプレードライ)2.40g(41.3mmol)と、乳鉢ですりつぶしたヨウ化カリウム0.36g(2.2mmol)を入れ十分に減圧加熱し、アルゴン置換を行い、放冷後、アリーン冷却器に通水した。次いで、18−クラウン−6−エーテル0.15g(0.57mmol)を加え再びアルゴン置換を行った。さらに、撹拌しながらジメチルアセトアミド(DMA)13mL、ペルフルオロ(2−メチル−2−ペンテン)〔2〕16.8g(56.0mmol)、p−(クロロメチル)スチレン〔1〕5.17g(33.9mmo1)をこの順にゆっくりと加えた。そして、反応系内を60℃に加熱し、24時間反応させ、冷却後、温度の上昇に注意しながら水を添加し、その後、エーテル抽出を行い、エーテル層を無水硫酸ナトリウムにより一晩乾燥させ、濾過、濃縮後、粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液ヘキサン)により単離精製し、p−[3,3,4,4,5,5,5−ヘプタフルオロ−2,2−ビス(トリフルオロメチル)ペンチル]スチレン〔3〕を得た。この合成反応を下記反応式(A’)に示す。
【化11】

【0060】
〔炭化フッ素系樹脂の合成〕
アリーン冷却器と撹拌子を取り付けた10mLナスフラスコよりなる反応装置を用い、この反応装置にラジカル重合開始剤(2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル):AIBN)5.3mg(0.032mmol)を入れてアルゴン置換し、トルエン159.6mg(1.73mmol)、架橋剤(ジビニルベンゼン:DVB)130.0mg(0.996mmol)、p−[3,3,4,4,5,5,5−ヘプタフルオロ−2,2−ビス(トリフルオロメチル)ペンチル]スチレン〔3〕743.0mg(1.70mmol)を加えてAIBNが溶解するまで撹拌し、予め調製しておいた0.6%ポリビニルアルコール(PVA)水溶液5.6mL加え、液滴が目的の大きさになるまで徐々に撹拌速度を1300rpmに上げた。そして、室温から1時間かけて90℃まで昇温させ、液滴の白濁を確認した後、撹拌速度を400rpmにして12時間撹拌し、その後、緩やかに撹拌しながら、室温まで放冷した。そして、樹脂を吸引濾過により濾別し、熱湯で10回、冷水で2回、アセトンで5回、ベンゼンで5回洗浄することにより、ビーズ状のフルオラスポリスチレン(FPS)を得た。この合成反応を下記反応式(B)に示す。また、得られたビーズ状のFPSの走査型電子顕微鏡(SEM)による観察を行ったところ、表面、および破砕面に多数の孔が形成されていることが確認された。
【化12】

【0061】
<実施例2>
〔フッ素系ルイス酸触媒の合成例1:ハフニウム(IV)ビス(ペルフルオロオクタンスルフォニル)アミド(Hf[N(SO281724)の合成〕
エタノールおよびドライアイスによって乾燥させた後−78℃に冷却した反応装置に、液体アンモニア130mLを入れてアルゴン置換を行い、そこにペルフルオロ−1−オクタンスルフォニルフルオライド(C817SO2F)36・7g〔5〕を撹拌下、徐々に加え、1.5時間−78℃で撹拌し、次いで、室温で1.5時間還流加熱し、1mol/Lの硫酸をpHが2になるまで加えた。その後、ジイソプロピルエーテル100mLを加えてエーテル抽出を行い、有機層を無水硫酸ナトリウム(Na2SO4)によって濃縮乾燥後、80℃/0.01mmHgの環境下で16時間乾燥(昇華)させ、ペルフルオロオクタンスルフォニルアミド(C817SO2NH2)(以下、「アミド〔6〕」ともいう。)を収率94%で得た。この反応を下記反応式(D)に示す。
【化13】

【0062】
乾燥させた反応装置に、上記のアミド〔6〕34.4gを入れてアルゴン置換を行い、トリエチルアミン(NEt3)60mLおよびペルフルオロ−1−オクタンスルフォニルフルオライド(C817SO2F)〔5〕36.0gを加え23時間還流加熱し、その後、室温に戻し、2相分離を確認後、上相のトリエチルアミン(NEt3)を除去し、10%塩酸水溶液を酸性になるまで加え、その後、生成固体を70℃/0.01mmHgの環境下で6時間乾燥させ、トリエチルアンモニウムビス(ペルフルオロオクタンスルフォニル)イミド((C817SO22NHNEt3)(以下、「トリエチルアミン塩〔7〕」ともいう。)を得た。この反応を下記反応式(E)に示す。
【化14】

【0063】
反応装置にトリエチルアミン塩〔7〕70gを入れ、エタノール612mLおよび水68mLよりなる混合溶媒に溶解させ、イオン交換樹脂によってH型に交換し、その溶出液を白色固体を得るまで減圧して濃縮し、その後、120℃/0.01mmHgで昇華させ、ビス(ペルフルオロオクタンスルフォニル)イミド((C817SO22NH)(以下、「イミド〔8〕」ともいう。)を収率62%で得た。この反応を下記反応式(F)に示す。
【化15】

【0064】
このイミド〔8〕5.9gおよびスズ酢酸エステル532.3mgを、1,2−ジクロロエタン15mLおよびアセトニトリル5mLの混合溶媒に溶解させ、50℃で15時間撹拌し、その後、室温まで冷却し、ペルフルオロデカン20mLを添加した。ペルフルオロデカン相を80℃/0.01mmHgの環境下で濃縮乾燥し、スズ(IV)ビス(ペルフルオロオクタンスルフォニル)アミド(Sn[N(SO281724)(以下、「特定のスズ塩触媒作用物質」ともいう。)を収率96%で得た。
【0065】
〔固相フルオラス触媒の調製例1〕
この特定のスズ塩触媒作用物質100mgをエタノール4mLに溶解し、上記のFPS300mgを加え、室温で1時間撹拌を継続し、溶媒を減圧下留去した後、固体を水で洗浄し、80℃、0.2kPaで5時間真空乾燥して、固相フルオラス触媒〔1〕を調製した。
【0066】
<実施例3>
〔フッ素系ルイス酸触媒の合成例2:ハフニウム(IV)ビス(ペルフルオロオクタンスルフォニル)アミド(Hf[N(SO281724)の合成〕
実施例1と同様にしてイミド〔8〕を得、このイミド〔8〕5.9gおよび塩化ハフニウム0.5gを、無水メタノール10mLに溶解させ、80℃/0.1mmHgの環境下で16時間濃縮乾燥させ、ハフニウム(IV)ビス(ペルフルオロオクタンスルフォニル)アミド(Hf[N(SO281724)(以下、「特定のハフニウム塩触媒作用物質」ともいう。)を収率97%で得た。
【0067】
〔固相フルオラス触媒の調製例2〕
この特定のハフニウム塩触媒作用物質100mgをエタノール4mLに溶解し、上記のFPS300mgを加え、室温で1時間撹拌を継続し、溶媒を減圧下留去した後、固体を水で洗浄し、80℃、0.2kPaで5時間真空乾燥して、固相フルオラス触媒〔2〕を調製した。
【0068】
<実施例4>
〔フッ素系ルイス酸触媒の合成例3:イットリウム(III)ビス(ペルフルオロオクタンスルフォニル)アミド(Y[N(SO281723)の合成〕
実施例1と同様にしてイミド〔8〕を得、このイミド〔8〕1gに塩化ハフニウムの代わりに酸化イットリウム(Y23)68mgを用いてイットリウム(III)ビス(ペルフルオロオクタンスルフォニル)アミド(Y[N(SO281723)(以下、「特定のイットリウム塩触媒作用物質」ともいう。)を得た。
【0069】
〔固相フルオラス触媒の調製例3〕
この特定のイットリウム塩触媒作用物質100mgをエタノール4mLに溶解し、上記のFPS300mgを加え、室温で1時間撹拌を継続し、溶媒を減圧下留去した後、固体を水で洗浄し、80℃、0.2kPaで5時間真空乾燥して、固相フルオラス触媒〔3〕を調製した。
【0070】
<実施例5>
〔エステル化合成反応〕
反応装置に固相フルオラス触媒〔2〕(Hf[N(SO281724)246mgを入れ、アルゴン置換した。この反応装置に1,2−ジクロロエタン0.5mLを添加し、次いで、シクロヘキサノール30.0mg(0.300mmol)、無水酢酸30.6mg(0.300mmol)を添加した。さらに、内標準としてドデカン5.11mg(0.0300mmol)を加えた。そして、反応容器を振盪し、40時間反応させ、この反応容器にヘキサンを2mL加え、その後、反応系から固相フルオラス触媒〔2〕を濾別し、この濾別した固相フルオラス触媒〔2〕をヘキサン2mLで3回洗浄した(以上の操作を「特定の合成操作」という。)。反応系における合成物をガスクロマトグラフによって定量分析したところ、その収率は80%であった。この反応を下記反応式(X)に示す。
さらにこの特定の合成操作を行い、2回目の反応系における合成物の収率を測定したところ、79%であった。また、3回目、4回目、5回目および6回目と同様に反応系における合成物の収率を測定したところ、それぞれ99,95,90,99%であって、リサイクル性が得られることが確認された。
【化16】

【0071】
<比較例1>
実施例4と同様にして、反応装置に特定のハフニウム塩触媒作用物質(Hf[N(SO281724)61.5mg、無水酢酸30.6mg、シクロヘキサノール30.0mg、および1,2−ジクロロエタン0.5mLを加え、さらに内標準としてドデカン5.11mgを加え、室温で40時間撹拌した。反応終了後、上相の1,2−ジクロロエタン相をガスクロマトグラフにて定量分析した結果、収率は48%であった。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の炭化フッ素系樹脂は、例えば固相フルオラス触媒の触媒担持物質、固相の有機反応用反応場、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)およびガスクロマトグラフィー(GPC)のカラムの炭化フッ素系充填剤などに好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の固相フルオラス合成反応を模式的に示す説明図である。
【符号の説明】
【0074】
10 固相フルオラス触媒
11 炭化フッ素系樹脂
11A 高分子幹鎖
11B 担持用CF系置換基
12 触媒作用物質
12A 吸着用CF系置換基

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子幹鎖と、これに結合されたペルフルオロアルキル基よりなる置換基により形成される側鎖とよりなることを特徴とする炭化フッ素系樹脂。
【請求項2】
高分子幹鎖が巨大網状樹脂よりなることを特徴とする請求項1に記載の炭化フッ素系樹脂。
【請求項3】
下記一般式(1)に示される繰り返し単位よりなることを特徴とする請求項2に記載の炭化フッ素系樹脂。
【化1】


〔上記一般式(1)において、l、mおよびnは、整数である。〕
【請求項4】
下記一般式(2)に示される繰り返し単位よりなることを特徴とする請求項2に記載の炭化フッ素系樹脂。
【化2】



〔上記一般式(2)において、o、pおよびqは、整数である。〕
【請求項5】
請求項3に記載の炭化フッ素系樹脂を製造する方法であって、
下記反応式(A)に示される反応工程を経て下記式(a)に示される炭化フッ素系単量体を得、当該炭化フッ素系単量体と、架橋剤とを重合反応させる工程を含むことを特徴とする炭化フッ素系樹脂の製造方法。
【化3】



【化4】

【請求項6】
架橋剤がジビニルベンゼンであることを特徴とする請求項5に記載の炭化フッ素系樹脂の製造方法。
【請求項7】
請求項4に記載の炭化フッ素系樹脂を製造する方法であって、
下記式(b)に示される炭化フッ素系単量体と、架橋剤とを重合反応させる工程を含むことを特徴とする炭化フッ素系樹脂の製造方法。
【化5】


【請求項8】
架橋剤がエチレングリコールジメタクリレートであることを特徴とする請求項7に記載の炭化フッ素系樹脂の製造方法。
【請求項9】
前記重合反応を懸濁重合により進行させることにより、巨大網状樹脂による微粒子形状の炭化フッ素系樹脂を得ることを特徴とする請求項5〜請求項8のいずれかに記載の炭化フッ素系樹脂の製造方法。
【請求項10】
フッ素系化合物よりなる触媒作用物質が、炭化フッ素系樹脂に固定されていることを特徴とする固相フルオラス触媒。
【請求項11】
フッ素系化合物よりなる触媒作用物質が、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の炭化フッ素系樹脂に固定されていることを特徴とする固相フルオラス触媒。
【請求項12】
触媒作用物質が、フッ素系ルイス酸触媒であることを特徴とする請求項10または請求項11に記載の固相フルオラス触媒。
【請求項13】
請求項10〜請求項12のいずれかに記載の固相フルオラス触媒を用いて有機合成反応を行うことを特徴とする固相フルオラス合成反応。
【請求項14】
請求項3に記載の炭化フッ素系樹脂よりなることを特徴とする有機反応用反応場。

【図1】
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【公開番号】特開2008−138077(P2008−138077A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−325528(P2006−325528)
【出願日】平成18年12月1日(2006.12.1)
【出願人】(803000115)学校法人東京理科大学 (545)
【Fターム(参考)】