説明

炭化処理システム

【課題】熱交換器を利用して乾燥機へ供給する乾燥用ガスの温度を調節する炭化処理システムを提供すること。
【解決手段】水分を含んだ原料を乾燥用ガスにより乾燥させる乾燥機1と、乾燥機1により乾燥させた原料を炭化する炭化炉2と、炭化炉2から排出される排ガスを燃焼処理する二次燃焼炉3と、二次燃焼炉3から排出される高温の燃焼排ガスを冷却する冷却塔4と、乾燥機1との間で循環する乾燥用ガスを冷却塔4による冷却後の燃焼排ガスによって加熱する熱交換器5とを備え、乾燥機1から排出される乾燥用ガスの温度を検出する排出部温度検出手段T1と、冷却塔4を制御するコントローラ30を有し、コントローラ30が、排出部温度検出手段T1により検出される温度がほぼ一定になるように冷却塔4を制御するようにした炭化処理システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機性廃棄物である原料を加熱して炭化物を生成する炭化処理システムに関し、炭化炉へ供給する原料を乾燥させるための乾燥用ガス(熱風)の温度制御を行う炭化処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
畜舎から排出される畜糞尿などの有機性廃棄物については、その有効利用を図るため炭化物にすることが考えられ、近年、様々な炭化処理システムが提案されている。図3は、下記特許文献1に記載された炭化処理システムを示すブロック図である。この炭化処理システム100は、下水処理場での下水処理に伴って発生する下水汚泥(原料)を炭化処理して活性炭化物を製造するための炭化炉101が設けられ、その炭化炉101には、ガスタービンに発電機が連結されたガスタービン発電機102が組み合わせられている。炭化炉101では、乾燥機103から搬出された原料が、炭化炉101での加熱によって炭化される。
【0003】
その炭化炉101へと送られる原料は、遠心分離機等で脱水されて脱水ケーキとなり、それが乾燥機103を介して原料として投入される。その乾燥機103は、脱水ケーキが加熱空気(乾燥用ガス)で乾燥されるが、この乾燥用ガスは、熱交換器105において炭化排ガスの熱で加熱され、供給管111を介して乾燥機103へと送られる。また、乾燥機103に送られた乾燥用ガスは、戻し管112によって熱交換器105へと戻されて循環するようになっている。そして、供給管111には流量調整弁121が設けられ、戻し管112を流れる乾燥用ガスの温度に応じて流量調整が行われる。また、排気管113から分岐した循環用配管114が炭化炉101に接続され、排気管113を流れる排ガスの温度に応じ流量調節弁122によって、炭化炉101へ戻される排ガスの流量調整が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−125265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
こうした従来の炭化処理システムは、熱交換器105を設け、乾燥機103で使用する乾燥熱源を炭化排ガスから熱交換によって得ているが、熱交換器105により熱を回収する乾燥用ガスの温度は使用条件等によって安定しない。一方で、原料の水分量は季節などによって変化するものの、炭化炉101に対して乾燥状態を安定させた原料を供給することが望まれる。従来は、乾燥機103内のバーナーの火力を調節して乾燥用ガスの温度制御が行われていた。そのため、水分量の多い原料に対しは、バーナーに使用する燃料の消費量が多くなってしまい、コストの面で問題があった。
【0006】
一方、バーナーの消費燃料を少なくするには、バーナーの火力を一定にし、熱交換器105から回収する乾燥用ガスの温度に応じ、乾燥機103への原料投入量を調節することが考えられる。原料の水分が少なければ熱交換器105で加熱された乾燥用ガスでも十分に乾燥するが、乾燥が速いため乾燥機103からの原料排出量が多くなってしまう。こうした場合、炭化炉101は処理スピードを一定して運転しているため、乾燥機103から排出される原料が増加すると、原料が供給過剰になってしまう。そこで、乾燥後の原料を炭化炉101の処理スピードに合わせて供給するため、原料を一時的に蓄えるバッファタンクを設けたり、原料をラインから一旦取り除くなど、設備投資や煩雑な作業を増やすといった問題が生じる。
【0007】
そこで、本発明は、かかる課題を解決すべく、熱交換器を利用して乾燥機へ供給する乾燥用ガスの温度を調節する炭化処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の炭化処理システムは、水分を含んだ原料を乾燥用ガスにより乾燥させる乾燥機と、前記乾燥機により乾燥させた原料を炭化する炭化炉と、前記炭化炉から排出される排ガスを燃焼処理する二次燃焼炉と、前記二次燃焼炉から排出される高温の燃焼排ガスを冷却する冷却塔と、前記乾燥機との間で循環する乾燥用ガスを前記冷却塔による冷却後の燃焼排ガスによって加熱する熱交換器とを備えたものであって、前記乾燥機から排出される乾燥用ガスの温度を検出する排出部温度検出手段と、前記冷却塔を制御するコントローラとを有し、前記コントローラは、前記排出部温度検出手段により検出される温度がほぼ一定になるように前記冷却塔を制御するようにしたものであることを特徴とする。
【0009】
本発明の炭化処理システムは、前記熱交換器から前記乾燥機へ供給される乾燥用ガスの温度を検出する供給部温度検出手段を有し、前記コントローラが、前記排出部温度検出手段により検出される温度がほぼ一定になるように、当該供給部温度検出手段で検出される温度を所定温度にすべく前記冷却塔を制御するようにしたものであることが好ましい。
本発明の炭化処理システムは、前記熱交換器へ送り込まれる燃焼排ガスの温度を検出する熱交換器前温度検出手段を有し、前記コントローラが、前記排出部温度検出手段により検出される温度がほぼ一定になるように、当該熱交換器前温度検出手段で検出される温度を所定温度にすべく前記冷却塔を制御するようにしたものであることが好ましい。
【0010】
本発明の炭化処理システムは、前記コントローラが、前記熱交換器前温度検出手段により検出される温度が前記熱交換器の保護のために定められた設定温度を超えないように、前記冷却塔を制御するようにしたものであることが好ましい。
本発明の炭化処理システムは、前記コントローラが、前記熱交換器前温度検出手段による検出に基づいて前記設定温度を超えたことを確認した場合に、警告手段を動作させるようにしたものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、乾燥機から排出される乾燥用ガスの温度がほぼ一定の値となるように、コントローラが冷却塔を制御する。それにより、熱交換器へ送られる燃焼排ガスの温度調整を行い、更に熱交換器において燃焼排ガスとの熱交換によって加熱される乾燥用ガスの温度を、乾燥機に投入される原料の水分量に応じて調整することができる。このようにして、原料の水分変化に対する乾燥用ガスの温度を、バーナーによって調整するのではなく、熱交換器での加熱による調整で行うため、消費燃料を抑えることができる。また、乾燥用ガスの温度調整によって乾燥状態を一定にした一定量の原料を安定して炭化炉へ供給することができ、過剰乾燥を防止し、バッファタンクや原料を一旦排除するなどの煩わしい作業を必要としない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施形態の炭化処理システムを示すブロック図である。
【図2】図1の炭化処理システムを構成する乾燥用ガスの温度管理部を示すブロック図である。
【図3】従来の炭化処理システムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明に係る炭化処理システムの一実施形態について、図を示しながら以下に説明する。図1は、炭化処理システムを示したブロック図である。
本発明に係る炭化処理システム10は、図示するように、水分を含んだ原料を乾燥用ガスにより乾燥させる乾燥機1を有し、その乾燥機1により乾燥させた原料を炭化する炭化炉2が設けられている。炭化炉2には、そこから排出される排ガスを燃焼処理する二次燃焼炉3が接続されている。
【0014】
燃焼処理された高温の燃焼排ガスは、そのままでは熱交換器5へは供給できないため、二次燃焼炉3の下流側に設けられた冷却塔4を介して熱交換器5に接続されている。そして、熱交換器5の下流側には、燃焼排ガスの熱で外気を加熱する外気予熱器6や、外気予熱器6を通った燃焼排ガスを冷却する最終冷却塔7が順に設けられている。
【0015】
本実施形態の炭化処理システム10は、炭化物を生成するための原料として畜糞などが用いられるが、畜糞には水分が多く含まれている。そこで、炭化炉2へ投入する前に乾燥機1で乾燥が行われる。乾燥機1では、例えば畜糞に含まれる65%程度の水分を10%程度にまで乾燥させるようにしている。乾燥機1の乾燥用ガスは、熱交換器5を通る燃焼排ガスとの熱交換によって加熱されるが、そのため乾燥機1と熱交換器5とは、乾燥処理後の乾燥用ガスが流れる往路側配管11と、加熱された乾燥処理前の乾燥用ガスが流れる復路側配管12によって接続され、両者の間を乾燥用ガスが循環するようになっている。
なお、往路側配管11には、乾燥機1で使用された乾燥用ガスの一部を炭化炉2へと供給するための配管17が設けられているが、システム上不要であれば、これは省略してもよい。復路側配管12には、熱交換器5により加熱されて乾燥した乾燥用ガスの一部(原料の乾燥により発生したガスに相当する量)を二次燃焼炉3へ供給するための配管18が設けられている。
【0016】
乾燥機1を通って乾燥された原料は、コンベアによって炭化炉2へと送られるようになっている。炭化炉2としては、例えば本出願人が提案した多段スクリュー炭化炉などを挙げることができる。多段スクリュー炭化炉では、炉体内で複数のスクリューコンベアが加熱され、ホッパから投入された原料が、スクリューコンベア内を一定のスピードで搬送される。そして、原料がスクリューコンベア内で加熱・熱分解されることによって炭化物が生成される。
【0017】
次に、こうした炭化炉2には、排出される排ガスを燃焼処理するための二次燃焼炉3が接続されている。排ガスに含まれるダイオキシンの除去や、乾燥排ガスに含まれる臭気を取り除く必要があるからである。そのため、二次燃焼炉3には排ガスを燃焼させるためのバーナーが設けられ、排ガスを800℃以上の温度で燃焼するよう構成されている。
そして、この二次燃焼炉3には、燃焼処理した燃焼排ガスを所定温度にまで冷却する冷却塔4が接続されている。なお、冷却する所定温度は、下流側に配置された熱交換器5の耐熱性および飛散灰の付着防止を考慮して750℃以下、可能であれば700℃以下であることが望ましい。
【0018】
冷却塔4は、燃焼排ガスが流れる配管に冷却水を噴霧する水噴霧冷却装置が設けられている。また、冷却塔4には、その更に下流側に位置する外気予熱器6を通って冷やされた低温燃焼排ガスを、高温の燃焼排ガスへ加える還流用配管15が接続されている。冷却塔4では、還流用配管15を通して送られる低温燃焼排ガスの流量を基本的に一定とし、後述する温度センサに基づいた水噴霧冷却装置の制御によって燃焼排ガスの温度調整が行われるようになっている。
【0019】
ところで、還流用配管15を通した低温燃焼排ガスの供給は、燃焼排ガスの冷却効果を有し噴霧量の減少に寄与する他、熱交換器5へ送り込まれる燃焼排ガスの流量を増加させている。これは、乾燥機1において乾燥効果を上げるためには所定量の乾燥用ガスが要求されるため、そうした低温の乾燥用ガスと高温の燃焼排ガスとの間で効率良く熱交換を行うには、熱交換器5を流れる両者の流量バランスをとることが有効だからである。従って、冷却塔4へ送られる低温燃焼排ガスの流量は、熱交換器5を流れる乾燥用ガスの流量に応じて設定される。
【0020】
熱交換器5は、高温の燃焼排ガスと乾燥機1からの乾燥空気との間で熱交換を行い、乾燥処理後の温度の下がった乾燥用ガスを所定の温度に加熱して再び乾燥機1へと送り込むためのものである。そして、この熱交換器5の下流側には、外気予熱器6が接続されている。外気予熱器6は、取り入れた外気と熱交換器5からの燃焼排ガスとの間で熱交換を行うものである。外気予熱器6には、炭化炉2及び二次燃焼炉3へと配管13が接続され、120℃程度に加熱された外気が燃焼用空気として炭化炉2及び二次燃焼炉3へ供給できるようになっている。
【0021】
また、外気予熱器6には最終冷却塔7が接続され、両者を繋ぐ配管が分岐して還流用配管15となっている。最終冷却塔7は、燃焼排ガスが噴霧される冷却水によって概ね200℃以下にまで冷やされるようになっている。そして、最終冷却塔7の下流側にある不図示のバグフィルタを通って燃焼・冷却・集塵されたガスが煙突から排気されるようになっている。
【0022】
続いて、図2は、図1の炭化処理システムを構成する乾燥用ガスの温度管理部を示すブロック図である。この温度管理部20は、乾燥機1と熱交換器5との間で循環する乾燥用ガスが、乾燥機1の出口でほぼ温度一定になるようにしたものである。すなわち、熱交換器5と乾燥機1との間で循環する乾燥用ガスは、乾燥機1で原料の乾燥を行い、水蒸気を含んだ状態で再び熱交換器5へと送られており、そうした乾燥機1からの排出される乾燥用ガスの温度がほぼ一定になるようにしたものである。
【0023】
乾燥機1では、原料の水分を10%程度にして炭化炉2へ送り込むように乾燥を行っているが、そのため水分量が多い場合には、それに応じて乾燥用ガスの熱量を増加させ、逆に水分量が少ない場合には乾燥用ガスの熱量を減少させる必要がある。そして、熱量調整を適切に行った乾燥用ガスを乾燥機1へ送り込むことにより、乾燥機1から排出される原料の乾燥状態を安定させることができ、その際、乾燥機1から排出される乾燥用ガスは、乾燥対象物である原料と同様に温度がほぼ安定することになるからである。
【0024】
乾燥機1の乾燥用ガスは、熱交換器5によって燃焼排ガスとの間で熱交換を行い、所定の熱量を受け取って乾燥機1へと送り込まれている。温度管理部20では、この乾燥機1から排出される乾燥用ガスの温度(以下、「乾燥機排出温度」という)(T1℃)が一定になるようにするため、乾燥機1へ供給される乾燥用ガスの温度(以下、「乾燥機供給温度」という)(T2℃)を調整するようにしている。そのため熱交換器5に流入する燃焼排ガスの温度を制御することにより、熱交換を行った乾燥用ガスの乾燥機供給温度(T2℃)を適温にするよう構成されている。
【0025】
温度管理部20は、温度センサT1などの温度検出に基づいて水噴霧冷却装置41を制御するコントローラ30が設けられている。このコントローラ30は、図1に示す炭化処理システム10全体を制御するものであるが、温度管理部20の専用コントローラとして設けてもよい。温度管理部20には、乾燥機1の往路側配管11と復路側配管12に、乾燥用ガスの乾燥機排出温度(T1℃)や乾燥機供給温度(T2℃)を検出する温度センサT1,T2が設けられている。更に、二次燃焼炉3を通過した後の燃焼排ガスの温度を検出するための温度センサT3,T4,T5が設けられ、温度センサT3は冷却塔4へ送り込まれる温度、温度センサT4は熱交換器5へ供給される温度、T5は外気予熱器6を通過した温度を検出するものである。
【0026】
熱交換器5で乾燥用ガスと熱交換する燃焼排ガスの温度(以下、「放熱温度」という)(T4℃)は、熱交換器5の上流で燃焼排ガスを冷却する冷却塔4の制御によって調整が行われる。その冷却塔4には水噴霧冷却装置41が設置されており、その噴霧量Qによって燃焼排ガスの温度調整が行われるようになっている。なお、前述したように、還流用配管15を通して加えられる低温燃焼排ガスによっても燃焼排ガスは冷やされるが、低温燃焼排ガスは流量一定になっているため、放熱温度(T4℃)の制御は水噴霧冷却装置41によって行われることとなる。
【0027】
本実施形態では、温度センサT1によって検出される乾燥機排出温度(T1℃)が例えば200℃で安定するように、乾燥用ガスの乾燥機供給温度(T2℃)を調整するよう設定されている。その乾燥機供給温度(T2℃)は、65%程度の水分を含む所定量の原料を乾燥機1に投入した場合に、それが10%程度にまで乾燥させることができる温度であり、例えば420℃に設定されている。従って、T1で検出する乾燥機排出温度(T1℃)が200℃より低くなれば、乾燥用ガスの乾燥機供給温度(T2℃)を上昇させ、逆に200℃を超えてしまうような場合には乾燥機供給温度(T2℃)を下げるようにコントロールするようになっている。
【0028】
更にこうした温度制御は、熱交換器5入口側の温度センサT4で検出される燃焼排ガスの放熱温度(T4℃)を調整することによって行われ、その放熱温度(T4℃)は冷却塔4によってコントロールされるようになっている。すなわち、冷却塔4の水噴霧冷却装置41がコントローラ30によって制御され、T1で検出する乾燥機排出温度(T1℃)が200℃より低くなれば、水噴霧冷却装置41の噴霧量Qを減少して乾燥用ガスの乾燥機供給温度(T2℃)を上昇させ、逆に200℃を超えてしまうような場合には噴霧量Qを増加させて乾燥機供給温度(T2℃)を下げるようになっている。
【0029】
なお、本実施形態の温度管理部20は、乾燥機排出温度(T1℃)がほぼ一定になるように乾燥機供給温度(T2℃)を所定温度に制御するものであるが、コントローラ30によって行う水噴霧冷却装置41の制御は、温度センサT2によって検出される乾燥機供給温度(T2℃)のように、温度制御を行う当該位置の直接的な情報に基づいて水噴霧冷却装置41を制御する他、乾燥機供給温度(T2℃)が所定温度になるように、温度センサT4によって検出される間接的な情報である放熱温度(T4℃)に基づいて制御することも考えられる。更には、温度センサT3やT5の検出温度に基づいて水噴霧冷却装置41を制御することも可能である。
【0030】
ところで、熱交換器5へは放熱温度(T4℃)が750℃以下になるように燃焼排ガスを送り込まなければならない(可能であれば700℃以下)。コントローラ30は、乾燥機排出温度(T1℃)がほぼ一定になるようにしつつも、放熱温度(T4℃)が750℃を超えないように水噴霧冷却装置41を制御するようにしている。なお、温度センサT2〜T5で検出される温度は、乾燥用ガスの乾燥機供給温度(T2℃)が420℃で設定される場合の例であれば、温度センサT3の場所で825℃程度、温度センサT4で検出する放熱温度(T4℃)が725℃、そして温度センサT5の場所では350℃程度である。
【0031】
温度管理部20では、放熱温度(T4℃)が750℃を超えるような場合、或いは750℃手前の所定の閾値を超えた場合には、熱交換器5の故障などを防止するため、コントローラ30が不図示の警報ランプや警報ブザーを動作させたり、炭化処理システム10の稼働を停止させるようになっている。
【0032】
続いて、こうした構成の炭化処理システム10によれば、次のような炭化処理が行われる。
運転開始時は、熱交換器5によって乾燥用ガスを加熱できないため、乾燥機1のバーナーを使用したり、水分が多いまま供給した原料を炭化炉2内で時間をかけて炭化させるなどする。その後、燃焼排ガスが熱交換器5を流れて運転が安定することにより、乾燥機1との間で循環する乾燥用ガスが熱交換器5で加熱される。乾燥用ガスは、乾燥機1で熱が奪われて200℃程度で熱交換器5へと送られ、その熱交換器5では燃焼排ガスから熱を受け取り、420℃程度にまで加熱された乾燥用ガスが乾燥機1へと戻され、循環が繰り返される。
【0033】
乾燥機1に投入された畜糞などの原料は、熱交換器5で加熱された乾燥用ガスによって乾燥処理が行われる。原料は、季節などによって水分量に変化はあるが、例えば65%程から10%程度にまで水分を除去した乾燥状態で炭化炉2へと送り込まれる。炭化炉2内では、原料が加熱および熱分解されることで炭化物となり、不図示の冷却装置を通って炭化製品として回収される。
【0034】
一方、炭化炉2内で発生した排ガスは二次燃焼炉3へと送り込まれ、バーナーによって800℃以上の高温で燃焼され、ダイオキシン等の有害物質の無害化や臭気の除去が行われる。そうした燃焼処理の後、高温の燃焼排ガスは冷却塔4へと送られ、そこでは燃焼排ガスに対し、還流用配管15を通して送られる一定量の低温燃焼排ガスが加わえられて温度を下げる他、冷却水を噴霧した冷却が行われる。この冷却塔4における冷却によって、燃焼排ガスは熱交換器5へ供給可能な温度、すなわち750℃好ましくは700℃を上限としつつ、乾燥機1に送り込む乾燥用ガスを適切な温度に加熱する温度に調整される。
【0035】
乾燥機1へは、前述したように、例えば乾燥機供給温度(T2℃)を420℃程度に加熱された乾燥用ガスが供給され、内部の原料を乾燥し、そこで発生した水蒸気等を含んだ乾燥用ガスが往路側配管11へと排出されて熱交換器5へと流れる。このとき乾燥用ガスの乾燥機排出温度(T1℃)が温度センサT1によって検出され、その検出信号に基づいてコントローラ30による温度制御が行われる。
【0036】
乾燥機1に投入された原料の水分量が多い場合には、乾燥用ガスの乾燥機排出温度(T1℃)が低下するため、乾燥機供給温度(T2℃)を上昇させるべく、水噴霧冷却装置41の噴霧量Qを減少させて燃焼排ガスの放熱温度(T4℃)が上がるようにする。よって、熱交換器5では、温度上昇した燃焼排ガスとの熱交換によって乾燥用ガスが加熱され、水分量の上昇に対応した熱量の乾燥用ガスが乾燥機1へと送られることとなる。なお、このとき放熱温度(T4℃)が750℃を超えてしまう場合、或いは所定の閾値を超えてしまう場合には、コントローラ30によって警報ランプなどを動作させた警告が行われる。
【0037】
一方、乾燥機1に投入された原料の水分量が少ない場合には、乾燥用ガスの乾燥機排出温度(T1℃)が上昇するため、乾燥機供給温度(T2℃)を下降させるべく、水噴霧冷却装置41の噴霧量Qを増加させて燃焼排ガスの放熱温度(T4℃)が下がるようにする。よって、熱交換器5では、温度の下がった燃焼排ガスとの熱交換によって乾燥用ガスが加熱され、水分量の上昇に対応した熱量の乾燥用ガスが乾燥機1へと送られる。
【0038】
以上に説明したように、炭化処理システム10によれば、乾燥用ガスの乾燥機排出温度(T1℃)がほぼ一定になるように乾燥機供給温度(T2℃)を調整するようにしたので、乾燥機1へ投入する原料の水分量が変化したとしても安定した乾燥状態の原料を炭化炉2へ供給することができるようになった。そして、このような乾燥用ガスの温度調整を冷却塔4の水噴霧冷却装置41を制御することで実現しているため、原料の水分変化に対してバーナーの火力調整を行うことがなく、燃料消費量を抑えることが可能になった。また、乾燥用ガスの温度調整によって乾燥状態を一定にした一定量の原料を安定して炭化炉2へ供給することができ、バッファタンクによる設備の追加や、原料を一旦排除する作業を必要としないものとすることができた。
【0039】
そして、こうした炭化処理システム10では、原料の水分量が少ない場合には乾燥用ガスの乾燥機供給温度(T2℃)を抑えるので、原料の過剰乾燥を防止することができる。また、その場合には、熱交換器5へ送られる燃焼排ガスの放熱温度(T4℃)を低くするため、高温熱負荷が減った熱交換器5の寿命を長くすることができる。一方で、原料の水分が多い場合には燃焼排ガスの放熱温度(T4℃)が高くなるが、温度センサT4による検出温度に基づいてコントローラ30が警報し、或いはシステムの稼働停止させることで熱交換器5の故障や動作不良を防止することができる。
【0040】
また、冷却塔4へは還流用配管15から低温燃焼排ガスが送られ、熱交換器5を流れる燃焼排ガスの流量が増加している。そのため、熱交換を行う乾燥用ガスとの流量バランスが取られ、熱交換器5を大型化しなくとも、放熱側の燃焼排ガスと受熱側の乾燥用ガスとの熱交換効率が向上する。そして、冷却塔4では低温燃焼排ガスで燃焼排ガスの温度を下げているため、噴霧水の使用量を大幅に減らすことができる。噴霧水の冷却では消費される蒸発潜熱分の熱量が利用されることなく熱量ロスとなってしまうが、低温排ガスによって燃焼排ガスを予備冷却する方法をとることで熱量ロスを抑えることができる。
【0041】
なお、本発明の炭化処理システムについての実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0042】
1 乾燥機
2 炭化炉
3 二次燃焼炉
4 冷却塔
5 熱交換器
6 外気予熱器
7 最終冷却塔
10 炭化処理システム
20 温度管理部
11 往路側配管
12 復路側配管
15 還流用配管
30 コントローラ
41 水噴霧冷却装置
T1,T2,T3,T4,T5 温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分を含んだ原料を乾燥用ガスにより乾燥させる乾燥機と、前記乾燥機により乾燥させた原料を炭化する炭化炉と、前記炭化炉から排出される排ガスを燃焼処理する二次燃焼炉と、前記二次燃焼炉から排出される高温の燃焼排ガスを冷却する冷却塔と、前記乾燥機との間で循環する乾燥用ガスを前記冷却塔による冷却後の燃焼排ガスによって加熱する熱交換器とを備えた炭化処理システムにおいて、
前記乾燥機から排出される乾燥用ガスの温度を検出する排出部温度検出手段と、前記冷却塔を制御するコントローラとを有し、前記コントローラは、前記排出部温度検出手段により検出される温度がほぼ一定になるように前記冷却塔を制御するようにしたものであることを特徴とする炭化処理システム。
【請求項2】
請求項1に記載する炭化処理システムにおいて、
前記熱交換器から前記乾燥機へ供給される乾燥用ガスの温度を検出する供給部温度検出手段を有し、前記コントローラは、前記排出部温度検出手段により検出される温度がほぼ一定になるように、当該供給部温度検出手段で検出される温度を所定温度にすべく前記冷却塔を制御するようにしたものであることを特徴とする炭化処理システム。
【請求項3】
請求項1に記載する炭化処理システムにおいて、
前記熱交換器へ送り込まれる燃焼排ガスの温度を検出する熱交換器前温度検出手段を有し、前記コントローラは、前記排出部温度検出手段により検出される温度がほぼ一定になるように、当該熱交換器前温度検出手段で検出される温度を所定温度にすべく前記冷却塔を制御するようにしたものであることを特徴とする炭化処理システム。
【請求項4】
請求項3に記載する炭化処理システムにおいて、
前記コントローラは、前記熱交換器前温度検出手段により検出される温度が、前記熱交換器の保護のために定められた設定温度を超えないように、前記冷却塔を制御するようにしたものであることを特徴とする炭化処理システム。
【請求項5】
請求項4に記載する炭化処理システムにおいて、
前記コントローラは、前記熱交換器前温度検出手段による検出に基づいて前記設定温度を超えたことを確認した場合に、警告手段を動作させるようにしたものであることを特徴とする炭化処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−111480(P2011−111480A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−267057(P2009−267057)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【出願人】(000004617)日本車輌製造株式会社 (722)
【Fターム(参考)】