説明

炭化水素の浸透に対するエチレン重合体のバリア特性を改善するための方法および改善されたバリア特性を有するプラスチック製燃料タンク

本発明は、液体燃料または鉱油の中に含まれる炭化水素の浸透に対するエチレン単独重合体組成物またはエチレン共重合体組成物のバリア特性を改善するための方法に関する。当該エチレン単独重合体またはエチレン共重合体は、重合体の総重量に対して算出して100〜10000ppmの量の少なくとも1つの立体障害アミン化合物を含む。当該エチレン単独重合体またはエチレン共重合体から作製されている中空体の少なくとも1つの表面は、フッ素化にかけられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素の浸透に対するエチレン単独重合体またはエチレン共重合体のバリア特性の改善のための新しい方法に関する。このような炭化水素は液体燃料および鉱油の中に含まれ、このため、改善されたバリア特性は自動車産業にとっては非常に重要である。なぜなら、プラスチック製燃料タンクは、燃焼エンジンによって駆動される自動推進車両に具えられているからである。
【0002】
また、本発明は、液体燃料の中に含まれる炭化水素の浸透に対して安定化されたエチレン単独重合体組成物またはエチレン共重合体組成物を使用して製造される、燃焼エンジンによって駆動される自動推進車両用のプラスチック製燃料タンク(PFT)などの液体燃料の輸送および保存用のプラスチック製物品および部品にも関する。
【背景技術】
【0003】
特許文献1に記載される当該技術分野で一般的な実務によれば、通常、プラスチック製のこのような物品の内面は、いずれかの利用可能なフッ素化剤を用いた、主に元素状フッ素によるフッ素化にかけられるが、しかしながら、このようなフッ素化は、フッ素化のさらなる改変によっては何とも改善が困難である、少なくとも必要以上に製造原価を上昇させないでは改善できない特定のバリアレベルしか達成しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許出願公開第42 12 969号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
エチレン単独重合体組成物またはエチレン共重合体組成物から作製された中空体であって、液体燃料の保存および輸送用のプラスチック製物品および部品を製造するために、少なくとも1つの表面上でフッ素化にかけられている中空体の、液体燃料の中に含まれる炭化水素の浸透に対するバリア特性を改善する方法を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、驚くべきことに、この目的は、重合体の総重量に対して算出して100〜10000ppmの範囲の量の少なくとも1つの立体障害アミン化合物を含むエチレン単独重合体またはエチレン共重合体から作製されている中空体の少なくとも1つの表面をフッ素化にかける方法によって、本発明に従って達成されるということを見出した。
【0007】
上記問題の別の解決策は、少なくとも1つの立体障害アミン化合物を含むエチレン単独重合体組成物またはエチレン共重合体組成物から、ブロー成形技術により、暖房用油のタンクまたは化学薬品の保存または輸送用容器、とりわけ燃焼エンジンによって駆動される自動推進車両用のプラスチック製燃料容器などの液体燃料の保存および輸送用のプラスチック製物品および部品を調製し、少なくとも1つの表面をフッ素化にかけることである。本発明の好ましい実施形態では、プラスチック製のブロー成形された中空の物品の内面は、フッ素化にかけられる。
【0008】
上記問題の別の解決策は、フッ素化にかけられるエチレン単独重合体組成物またはエチレン共重合体組成物のバリア特性を改善するための、少なくとも1つの立体障害アミン化合物の使用である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
当該エチレン単独重合体またはエチレン共重合体用の適切な立体障害アミン化合物は、好ましくは立体障害アミンそれ自体であるが、しかしながら、それらのN−ヒドロキシ−またはN−オキシル誘導体も有用である可能性があり、これらに加えて、アミン窒素に隣接した炭素上に1つの水素も残らないようにアミン窒素に隣接した炭素上で置換されている他の第二級アミンを含めた立体障害アミンなどの他の安定剤が加えられてもよい。4位かまたはアミン窒素上かのいずれかで置換された2,2,6,6−テトラメチルピペリジンの誘導体、ならびにキノリンの誘導体およびジフェニルアミンの誘導体が好ましい。
【0010】
上述の意味でいくつかの好ましいアミン化合物は以下のものである:
2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、
2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−オール、
2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−オン、
酢酸2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル、
2−エチルヘキサン酸2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル、
ステアリン酸2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル、
安息香酸2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル、
4−tert−ブチル安息香酸2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル、
コハク酸ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)、
アジピン酸ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)、
n−ブチルマロン酸ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)、
フタル酸ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)、
イソフタル酸ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)、
テレフタル酸ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)、
ヘキサヒドロテレフタル酸ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)、
N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アジピンアミド、
N−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)カプロラクタム、
N−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)ドデシルスクシンイミド、
2,4,6−トリス−[N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)]−s−トリアジン、
4,4’−エチレンビス(2,2,6,6−テトラメチルピペラジン−3−オン)および
トリス(2,2,6,6−テトラメチル−1−オキシルピペリジン−4−イル)ホスファイト
ならびにこれらのN−ヒドロキシおよびN−オキシル誘導体。
【0011】
とりわけ、本発明のエチレン単独重合体組成物またはエチレン共重合体組成物は、立体障害アミン化合物として、Chimassorb(登録商標) 944またはTinuvin(登録商標) 770のいずれかを立体障害アミン化合物として含む。しかしながら、より好ましい実施形態では、当該エチレン単独重合体またはエチレン共重合体は、これらと他の立体障害アミン化合物との組み合わせを含む。最も好ましい実施形態では、当該エチレン単独重合体またはエチレン共重合体は、Chimassorb 944およびTinuvin 770の互いとの組み合わせを含む。
【0012】
当該重合体の中に2つの異なる立体障害アミン化合物の組み合わせとして存在する立体障害アミン化合物の全量は、各単独の安定剤の各単独量の和として定義され、ここで、相手に対する単独の安定剤の単独量の比は重量基準で1:0.2〜1:5、好ましくは1:0.5〜1:2の範囲にある。
【0013】
立体障害アミン化合物Chimassorb 944は、以下の化学式:
【化1】

を有すると理解され、これはポリ[[6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ]1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)イミノ]−1,6−ヘキサンジイル[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)イミノ]]と表され、式中nは2〜20の範囲の整数である。
【0014】
立体障害アミン化合物Tinuvin 770は以下の化学組成:
【化2】

を有し、セバシン酸ビス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)とも表される。
【0015】
炭化水素を含む鉱油または化学物質または液体燃料の輸送および/もしくは保存用のプラスチック製物品および部品が、単独でまたは組み合わせて立体障害アミンを含むこのような重合体を使用して製造され、そして少なくとも1つの表面上でフッ素化にかけられる場合、その炭化水素を含む鉱油または化学物質または液体燃料の輸送および/もしくは保存用のプラスチック製物品および部品は、改善されたバリア特性を有するということを、また本発明者らは見出した。2つの立体障害アミンChimasorb 944およびTinuvin 770の組み合わせを、安定化された重合体の総重量に対して算出して200〜5000ppm、より好ましくは400〜3000ppmの量で加えることにより安定化された好ましいエチレン単独重合体組成物またはエチレン共重合体組成物が、フッ素化と組み合わせて最適の改善のために使用される。
【0016】
本発明の好ましい実施形態で使用されるエチレン単独重合体組成物またはエチレン共重合体組成物は、立体障害アミンそれ自体の組み合わせを含むか、またはそれら立体障害アミンのN−ヒドロキシまたはN−オキシル誘導体を含む。
【0017】
用語「エチレン単独重合体組成物またはエチレン共重合体組成物」は、適切な重合触媒の存在下での、低圧条件下での重合によって調製された、エチレンを主成分として含む重合体を表すと理解される。オレフィンの重合のための一般的な触媒は、チタン系のZiegler触媒またはクロム系のPhilips触媒である。これらの触媒は、世界規模での生産プラントにおいて、重合体の製造のために世界中で使用されている。他の適切な触媒は、ジルコニウム系のメタロセン触媒であり、この触媒は、最近の20年のうちに開発されてきており、しかも現在、世界中で多くの刊行物に記載されている。
【0018】
エチレンに対するコモノマーとして、1−プロペン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテンおよび1−デセンなどの3〜10個の炭素原子を含む他の同族体オレフィンが適切である。このコモノマーは、反応混合物の中に存在する単量体の総重量に対して算出して1〜8重量%、好ましくは2〜7重量%の量で、エチレンの重合の際に存在してもよい。
【0019】
重合は重合反応器の中で行われ、この際、撹拌された容器またはループ型反応器の中でのスラリー重合または撹拌された床反応器または流動床反応器の中での気相重合などの様々な技術が可能である。
【0020】
押出およびブロー成形の分野における使用のために、当該ポリエチレンは、好ましくは1〜25g/10分、特に2〜20g/10分のメルトフローレート MFR(190/21.6)を有し、射出成形の分野における使用のために、0.1〜100g/10分、特に0.2〜10g/10分のMFR(190/2.16)が好ましい。
【0021】
本発明に係る使用に特に適しているのは、0.930〜0.970g/cm、特に0.940〜0.960g/cmの密度を有するエチレン単独重合体またはエチレン共重合体であり、用いられる重合体が、例えばPFTを製造するために通常使用されるHDPEであることが特に有利である。
【0022】
当該ポリエチレンは、通常、熱安定化および製造過程での安定化のためのさらなる物質を含む。これらの物質は、本発明に従って使用される耐RME性安定剤と組み合わせて使用されてもよいが、熱安定化および製造過程での安定化のためのさらなる物質としては、立体障害フェノール(これは、ヘテロ元素として窒素および/または硫黄も含有してよい)、ラクトン(これは、ヘテロ元素として窒素および/または硫黄も含有してよい)、亜リン酸の有機エステル(例えば、トリアルキルホスファイト)(これは、ヘテロ元素として窒素および/または硫黄も含有してよい)、ならびにアルカリ金属およびアルカリ土類金属のステアリン酸塩が挙げられる。立体障害フェノールの分類からの安定剤の例は、ベンゼンプロパン酸3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ−2,2−ビス[[3−[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]−1−オキソプロポキシ]−メチル]−1,3−プロパンジイルエステル(チバ・アディティブズ・ゲーエムベーハー(Ciba Additives GmbH)製のIRGANOX 1010)、ベンゼンプロパン酸3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシルオクタデシルエステル(チバ・アディティブズ・ゲーエムベーハー(Ciba Additives GmbH)製のIRGANOX 1076)、4−[[4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イル]アミノ]−2,6−ビス(1,1−ジメチルエチル)フェノール(チバ・アディティブズ・ゲーエムベーハー(Ciba Additives GmbH)製のIRGANOX 565)、およびN,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナムアミド)(チバ・アディティブズ・ゲーエムベーハー(Ciba Additives GmbH)製のIRGANOX 109)である。ラクトンの分類からの安定剤の例は、5,7−ジ−t−ブチル−3−(3,4−ジメチルフェニル)−3H−ベンゾフラン−2−オンなどのベンゾフラン−2−オンである。有機ホスファイトの分類からの安定剤の例は、2,4−ビス(1,1−ジメチルエチル)フェノールホスファイト(チバ・アディティブズ・ゲーエムベーハー(Ciba Additives GmbH)製のIRGANOX 16)および亜リン酸[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジイルビス−、−テトラキス[2,4−ビス(1,1−ジメチルエチル)フェニル]エステルである。
【0023】
当該重合体への安定剤の組み込みは、例えば、顆粒状のベース材料の製造の際、または例えば押出、射出成形もしくはブロー成形によって行うことができる成形のための準備における溶融操作の際に行うことができる。
【0024】
本発明に従って使用されるエチレン単独重合体組成物またはエチレン共重合体組成物は、炭化水素を含む液体燃料の、またとりわけいくらかの量のバイオディーゼルを含む液体燃料用の輸送および保存用のプラスチック製物品および部品の製造に極めて適している。なぜなら、本発明に従って使用されるエチレン単独重合体組成物またはエチレン共重合体組成物は、フッ素化された場合、同じくフッ素化された場合の本発明の立体障害アミン化合物を含まない他のエチレン単独重合体またはエチレン共重合体と比較して、炭化水素の浸透に対する改善されたバリア特性を有するからである。これに関して、プラスチック製物品および部品は、液体燃料に長期間曝されるすべてのプラスチック部品、とりわけ暖房用油のタンク、化学薬品の保存または輸送用容器、プラスチック製燃料タンクを意味するが、パイプおよび供給ライン、瓶、キャニスター(小容器)、ドラム(円筒形容器)などの部品も意図される。また、これまでに記載されたプラスチック製物品および部品は、本発明のエチレン単独重合体またはエチレン共重合体を含む少なくとも1つの層が存在する、例えば共押出技術によって調製される多層材料を含んでもよい。
【0025】
フッ素化は、好ましくは元素状フッ素によって行われるが、しかしながら、このフッ素は、窒素または任意の希ガスなどの不活性ガスと混合され、この際、酸素も20体積%までの少量で存在してもよい。フッ素は、この際、このガス混合物の全量に対して算出して、0.5〜10体積%の量で存在する。好ましくは、当該プラスチック製物品の内面は、1〜20barの圧力下で、−20〜−190℃、好ましくは−20〜−100℃のガス温度でガス混合物を導入し、10秒〜10分、好ましくは20秒〜8分の時間にわたってそのガスをブロー成形品の内部に維持することにより、ブロー成形または射出成形のいずれかによる熱成形工程の後にフッ素化にかけられる。当該エチレン単独重合体またはエチレン共重合体から作製されている中空体の内面の温度は、この際、フッ素化ガスの温度よりも高い。なぜなら、反応エンタルピーは主にこのフッ素化ガス混合物によって取り除かれるからである。
【0026】
本発明のとりわけ有利な実施形態は、ブロー成形プロセスと一体化されたフッ素化である。これによって、とりわけフッ素化ガスの冷温がこの中空の物品の内面で付加的な冷却効果をもたらし、これにより製造プロセス全体を短縮することに役立つ。
【実施例】
【0027】
(I)測定方法:
[dl/g]で表されるI.V.=ISO1628(130℃で、0.001g/ml デカリン)による固有粘度;
[g/cm]で表される密度 ISO 1183
[g/10分]で表されるHLMFR(高荷重メルトフローレート(High Load Melt Flow Rate)、ISO 1133に従って190℃においてかつ21.6kgの荷重のもとで測定)
5体積%のメタノールをさらに含むイソオクタンおよびトルエン(1:1)の混合物で満たされた瓶(500ml)の、特定の時間後の質量減少によるバリア特性
Chimassorb(登録商標) 944は、チバ社(Ciba Inc.)から購入し、Tinuvin(登録商標) 770 DFは同じくチバ社(Ciba Inc.)から購入した。
Irganox(登録商標) 1010およびIrgafos(登録商標) 168は、チバ社(Ciba Inc.)から購入した。
【0028】
(II)実験の部:
クロム系Phillips触媒の存在下で気相プロセスで製造された、6g/10分のHLMFR(190℃/21.6kg)および0.946g/cmの密度を有する高分子量ポリエチレンを、表2に示す安定剤で処理した。実施例1(比較)の重合体を除いてすべての重合体を、400ppmのIrganox 1010および1100ppmのIrgafos 168を用いてさらに安定化した。この粉末をペレット化し、添加剤付与(additivation)のためのドージングシステム(dosing system)を具えたZSK53押出機(クルップ・ヴェルナー・ウント・フライダラー/コペリオン(Krupp Werner & Pfleiderer/Coperion)、1970)の中で安定化した。
【0029】
【表1】

【0030】
【表2】

【0031】
実施例1〜4に従って調製したペレットから、平面状の底部を有する瓶を、ブロー成形ツールの中でのブロー成形によって調製した。これらの瓶は、500mlの容積を有していた。これらの瓶は、10barの内圧で、195℃という溶融温度で調製され、各々、1mmの肉厚を有していた。90〜100℃の範囲の壁温度で、圧力を2barに低下させ、フッ素化ガスを10barの圧力下で導入した。
【0032】
フッ素化ガスとして、−100℃という温度を有する、1体積%のF、2.6体積%のOおよび96.4体積%のNの混合物を用いた。60秒の接触時間の後、窒素によってこのフッ素化ガスを取り除いた。すべての瓶に、3体積%というメタノール含量を有する市販のスーパーフュエル(super fuel)450mLを満たした。これらの瓶を気密に閉じ、それらの正確な重量を記録した。その後、加熱チャンバーの中で、50℃という温度で10日間、20日間、40日間および60日間にわたって、これらの瓶を保存した。各時間の後、これらの瓶の正確な重量を再度測定し、各瓶の記録した重量と比較した。結果を、以下の表3に示す。
【0033】
【表3】

【0034】
上記の浸透試験の結果を考慮すると、当該エチレン重合体中の立体障害アミン化合物の存在は、フッ素化処理と組み合わせて、バリア特性を著しく改善するということがはっきりと明らかとなる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素の浸透に対するエチレン単独重合体組成物またはエチレン共重合体組成物のバリア特性の改善のための方法であって、前記エチレン単独重合体またはエチレン共重合体は、前記重合体の総重量に対して算出して100〜10000ppmの量の少なくとも1つの立体障害アミン化合物を含み、前記エチレン単独重合体またはエチレン共重合体から作製されている中空体の少なくとも1つの表面はフッ素化にかけられる、方法。
【請求項2】
前記立体障害アミン化合物の量は、前記重合体の総重量に対して算出して200〜5000ppmの範囲にある、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記立体障害アミン化合物の量は、安定化された前記重合体の総重量に対して算出して400〜3000ppmの範囲にある、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記エチレン単独重合体組成物またはエチレン共重合体組成物は、前記立体障害アミン化合物またはそれらのN−ヒドロキシ−またはN−オキシル誘導体を含む、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記エチレン単独重合体組成物またはエチレン共重合体組成物は、少なくとも2つの立体障害アミン化合物またはそれらのN−ヒドロキシ−もしくはN−オキシル誘導体の組み合わせを含む、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記立体障害アミン化合物のうちの少なくとも1つは、化学式:
【化1】

(式中、nは2〜20の範囲の整数である)を有する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記立体障害アミン化合物のうちの少なくとも1つは、化学式:
【化2】

を有する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記重合体は、アミン窒素に隣接した炭素上に1つの水素も残らないようにアミン窒素に隣接した炭素上で置換されているすべての第二級アミンを含めた立体障害アミンなどの他の安定剤をさらに含み、この際、4位かまたはアミン窒素上かのいずれかで置換された2,2,6,6−テトラメチルピペリジンの誘導体、ならびにキノリンの誘導体およびジフェニルアミンの誘導体が好ましい、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記重合体によって作製されている中空体の内面は、5〜20barの圧力下で、−20〜−190℃の温度で10秒〜10分の時間にわたって、フッ素および窒素または希ガスまたは酸素を含むガス混合物によるフッ素化にかけられる、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記ガス混合物は、0.5〜10体積%の量のフッ素、および任意に10体積%までの量の酸素を含む、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
エチレン単独重合体組成物またはエチレン共重合体組成物から作製されている中空体を、このような中空体の少なくとも1つの表面のフッ素化による処理後に前記中空体の中に含まれる炭化水素の浸透に対して改善するための、立体障害アミン化合物の使用であって、少なくとも1つの立体障害アミン化合物は、化学式:
【化3】

(式中、nは2〜20の範囲の整数を表す)を有するか、または少なくとも1つの立体障害アミン化合物は、化学式:
【化4】

を有する、使用。
【請求項12】
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の方法によって製造される、植物油エステルなどのバイオディーゼル、またはメタノールを含む液体燃料の輸送および保存用のプラスチック製物品および部品、好ましくは自動推進車両用のプラスチック製燃料タンクまたは暖房用油のタンクまたは化学薬品の保存または輸送用容器。

【公表番号】特表2012−529539(P2012−529539A)
【公表日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−513502(P2012−513502)
【出願日】平成22年5月29日(2010.5.29)
【国際出願番号】PCT/EP2010/003287
【国際公開番号】WO2010/142390
【国際公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(500289758)バーゼル・ポリオレフィン・ゲーエムベーハー (118)
【Fターム(参考)】