説明

炭化水素を短接触時間接触分解するための向上されたFCC反応器およびライザーの設計

本発明は、短接触時間流動接触分解(FCC)反応器の向上された設計および運転に関し、上部内部ライザーおよび下部内部ライザーは、互いに流体連通し、FCC反応器の希薄相領域からの蒸気を連行するための向上された解放域を提供する。詳細な好ましい実施形態には、内部中央ライザー、ライザーの終端装置、サイクロン分離装置、およびコーク低減バッフル系に対する先行技術に勝る向上、並びに新規な反応器の設計を利用する付随される向上された流動接触分解方法が含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、短接触時間流動接触分解(FCC)反応器の向上された設計および運転に関する。より詳しくは、本発明は、FCC反応器の内部中央ライザー、ライザー終端装置、サイクロン分離装置、およびコーク低減バッフル系の向上された設計、並びに新規な反応器の設計を利用する付随される向上された流動接触分解方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子量石油原料を、流動接触分解などの接触プロセスによって、より価値のある生成物へ転化することは、石油プロセスにとって重要である。流動接触分解プロセスにおいては、より高分子量の原料は、流動触媒粒子と、流動接触分解装置のライザー反応器中で接触される。原料および触媒の間の接触は、所望の生成物のタイプに従って制御される。原料の接触分解においては、反応器の条件(温度および触媒循環速度など)は、制御されて、所望の生成物が最大化され、あまり望ましくない生成物(軽質ガスおよびコークなど)の形成が最小化される。
【0003】
種々雑多な流動接触分解反応器ライザーおよび反応器槽の設計が、過去用いられている。しかし、分解活性が顕著に向上されたゼオライト分解触媒の進展と共に、最新の流動接触分解反応器は、短接触時間分解の形態を利用する。この形態により、触媒、および流動接触分解装置の原料ストリームが接触している時間は、限定されて、あまり価値がない生成物(軽質炭化水素ガスなど)をもたらす過剰な分解量並びに分解触媒上へのコーク析出の増大が最小化される。短接触時間ライザー反応器の設計は、石油化学工業に対しては、比較的新しいが、これは、最新の分解触媒の使用と相まって、炭化水素の分解生成物および収率を最適化する能力から、工業的に広範に採用および使用されている。短接触時間流動接触分解反応器ライザーの設計に対するこれらの設計の一つは、特許文献1(Tammeraら)で例証される。
【0004】
殆どの短接触時間流動接触分解の形態は、反応器ライザー分解の形態を利用する。その際、触媒は、流動接触分解装置の原料ストリームと反応器ライザー内で接触され、触媒および炭化水素反応生成物は、触媒および炭化水素の混合物が反応器ライザーを出た直後に分離され、流動接触分解反応器に入る。多くの異なる流動接触分解反応器の設計が用いられているものの、殆どのものは、反応器内の機械サイクロンを用いて、触媒が、炭化水素反応器生成物から、できるだけ迅速かつ効率的に分離される。この迅速な分離プロセスは、触媒および炭化水素の間の後ライザー反応を最小にすること、並びに分解炭化水素生成物を、更なる処理のために、廃触媒(再生触媒を反応プロセスに再注入して戻す前に、再生される)から分離する物理的手段を提供することの両利点を有する。
【0005】
触媒技術の実質的な進展は、短接触時間処理のために設計される殆どの従来の流動接触分解反応器をもたらしている。即ち、分解反応は、実質的に、反応器ライザー内での反応に限定され、引続いて炭化水素が触媒から最速に分離されて、炭化水素原料材および/または反応生成物の不必要な反応または「過分解」が防止ことが望まれる。従って、最新の流動接触分解装置は、炭化水素/触媒ストリームが反応器ライザーを出た後に、迅速な炭化水素/触媒分離機構を組み込む。機械サイクロン(上記に議論される)は、一般に、流動接触分解プロセスにおいて触媒/油をバルク分離するのに利用される最も普通の方法である。
【0006】
特許文献1(Tammeraら)はまた、短接触時間流動接触分解反応器ライザーの設計における普通の特徴を、反応器ライザーと一次サイクロンとの間の「間隙」または「分離域」が、通常、反応器の設計に与えられるという点で例証する。これはまた、この先行技術を例証する現出願の図1に例証される。この間隙は、ライザーと一次サイクロンとの間に、「負圧」反応器の設計で組込まれる。その際、一次サイクロンは、FCC反応器の希薄相に関して、より低圧(または負圧)で運転される。この間隙はまた、一次サイクロンと二次サイクロンとの間に、「正圧」反応器の設計で組込まれることができる。その際、一次サイクロンは、FCC反応器の希薄相に関して、より高圧(または正圧)で運転される。この間隙または「解放域」は、FCCからの炭化水素蒸気およびスチームを、サイクロンを経て除去することを可能にするのに利用される。
【0007】
特許文献2(Haddadら)は、ライザーが間隙なしにサイクロンへ取り付けられるFCCライザー/サイクロンの配置を例証する。この発明においては、ライザー内の触媒のいくらかは、一次サイクロンの前に分離される。加えて、この設計により、炭化水素のいくらかはまた、この第一の分離の触媒に随伴される。これは、制御されない触媒/炭化水素の接触時間をもたらし、炭化水素原料物質の過分解をもたらしうる。加えて、炭化水素の実質的な部分は、反応器の希薄相に入り、恐らくは反応器ライザーに再度入り、やはり炭化水素原料物質の過分解をもたらす。
【0008】
特許文献3(Cartmell)は、Haddadの引例に類似の配置を例証する。その際、反応器ライザー内の触媒および炭化水素の少なくとも実質的な部分は、反応器の希薄相へ除去されることを可能にされる。Haddadの設計に類似して、FCC反応器の希薄相における、この制御されない触媒/炭化水素の接触時間は、炭化水素原料物質の望ましくない過分解をもたらす。
【0009】
特許文献4(Terryら)は、解放域が反応器ライザー内に提供される反応器ライザーの配置を例証する。しかし、Terryの発明においては、ライザーの底部部分は、断面積が増大して、反応ストリームの「すべり速度」が減少される。これには、「すべり速度増大手段」、および更に「速度減少手段」が続く。これらの要件は、ライザー内の滞留を増大し、ファウリングに付されうる更なる機器類をもたらす傾向がある。これらの要件はまた、反応器ライザーにおける流速を減少し、引続いて反応器ライザーにおける流速を増大する効果を有する。反応器ライザーにおけるこれらの交互する速度は、反応器、ライザー、および/またはサイクロンにおける望ましくない圧力変動をもたらしうる。加えて、ライザーにおける反応ストリームの速度全体の減少は、ライザーからの触媒もれ、およびライザーの解放域を通って反応器の希釈域への炭化水素原料のロスをもたらしうる。
【0010】
特許文献5(Krambeckら)(本明細書においては、「Krambeck」として引用される)および特許文献6(Kamら)(本明細書においては、「Kam」として引用される)(両特許は、本明細書においては、まとめて、Krambeck/Kam特許として引用される)は、本発明に類似の、FCC反応器内の解放域を特徴とする。Mobil Oil Corporationへ譲渡されたこれらの二つの特許は、類似の設計に基づき、類似の欠点を有する。これらの設計による一つの主な欠点は、それらは、ライザーの下部部分とライザーの上部部分との間に非常に高い同心性がない限り、適切に運転されることができないことである。特に、Kam特許においては、「ライザーの二つの部分は、最大同心性が10%であるように配列されなければならない」と述べられる(Kam(特許文献6)の第6欄、第9〜10行を参照されたい)。Kamに説明されるように、ライザーの二つの部分が、「相互に、実質的に同心関係」で保持されない場合には、触媒および炭化水素の実質的な逆混合が生じるであろう(Kam(特許文献6)の第6欄、第2〜8行を参照されたい)。Krambeck/Kamの設計による問題は、FCC反応器における高い温度(典型的には、約950〜1250゜F)、および結果としての反応器要素の実質的な熱膨張により、あるとすれば、この同心度を運転条件下で保持することが困難であることである。この問題に対処するために、Krambeck/Kam特許は、この問題に対処する三つの方法を試みた。
【0011】
この同心性の問題が、Krambeck/Kamの設計によって対処された第一の最も簡単な方法は、上部および下部ライザーの同心性を保持するのに、「機械スペーサー」を用いることによることである。これは、特許文献6(Kamら)に例証される。その際、「三つ以上のスペーサー45が、ライザーの二つの部位の間に提供されて、二つの部位が同心に保持され、相互に等距離だけ分離される」(Kam(特許文献6)の第9欄、第37〜40行、および図1の要素45を参照されたい)。しかし、この設計には多数の問題がある。第一の結果的としての問題は、これらのスペーサーが、環状の流れ断面を絞り、反応器の希薄相から流入するベントガスに対して、より高い圧力損失および不均等な流れパターンがもたらされることである。第二の結果としての問題は、これが、腐食物質の状態を、スペーサーとライザーとの間にもたらすことである。これは、特に、設計にとって問題である。何故なら、ライザー内部は、耐腐食耐火物またはコーティングで被覆されて、ライザーを通って移動する高速の触媒、並びにFCC反応器の希薄相から環状部に入る随伴触媒によって引起される磨耗から保護されることが望ましいからである。このスペーサーの設計は、触媒に露出される領域および機械接触磨耗を残し、それにより設計の機械的な信頼性が減少される。第三の結果としての問題、およびスペーサーの設計の恐らくは最も実質的な欠点は、上部および下部ライザーが、スペーサーを経て、相互に機械的な力を伝えることである。これは、相互に異なる方向にあるこれらの要素の熱膨張の誘起により、実質的に望ましくない機械力(下部内部ライザーから上部内部ライザー並びに取付けられたサイクロンの形態へ放散される)が生じうる。これは、関連要素の機械的な過剰設計、並びに装置の信頼性の減少をもたらす。技術的に必要なことは、上部および下部ライザーアセンブリの間のスペーサーまたは機械的接触点に頼らない設計である。
【0012】
第二の方法(この偏心の問題は、Krambeck/Kamの設計によって対処される)は、「トリクルバルブ」を、ライザーと一次サイクロンとの間の導管内に、並びに一次サイクロンと二次サイクロンとの間の導管内に設置することによることである。これらは、特許文献5(Krambeckら)の図1に要素27、27A、41、および41Aとして、並びに特許文献6(Kamら)に要素22および38として見ることができる。これらのトリクルバルブを用いることは、不安定な流れおよび圧力サージ(Krambeck/Kamの設計の使用を伴うことができる)を補正することであると思われる。この設計から生じる問題は、それが、解放域をライザー内に設置することによって排除されることを試みつつある主要な問題の一つを再起する結果となることである。問題は、本技術においては、開口または間隙が、導管内に、Krambeck/Kamの設計におけるトリクルバルブと同じ一般的な位置に設置され、いずれも、触媒(固体)および炭化水素(蒸気)の多量の逆混合、並びに過剰なコーキングの傾向があることである。技術的に必要とされることは、触媒および炭化水素を、FCC反応器の希薄相の部位へ流入させるか、またはそれから放出するのに、サイクロン導管内の二次開口に依存しない設計である。
【0013】
最後に、第三の方法は、この偏心性の問題はKrmbeck/Kamの設計によって対処されたが、これは、ライザーと一次サイクロンとの間の導管内の開口(または「間隙」)に異存する。これは、特許文献5(Krambeckら)の図1に要素28および38として示される。この設計は、再度、同じ問題をもたらす。これは、上欄で解決され、および議論されるように望まれる。
【0014】
また、次の点が特記されるべきである。即ち、恐らくは部分的に、上記に確認されかつ議論されるKrambeck/Kamの設計の欠点により、解放域を、反応器ライザー内に組込む設計(Krambeck/Kamの引用に示される)は、Mobil Oil Corporationによって、決して商業的に実行されなかった点である。
【0015】
工業的に必要とされることは、向上されたFCC反応器の設計である。これは、反応器ライザー内の実質的に全ての炭化水素原料および触媒が、効率的かつ制御された分離のために、サイクロン系へ送られ、実質的な原料変動または機器類を、反応器ライザー内に付与せず、一方系全体の機械設計を向上することを確実にすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許第5,190,650号明細書
【特許文献2】米国特許第4,606,814号明細書
【特許文献3】米国特許第4,394,349号明細書
【特許文献4】米国特許第5,368,721号明細書
【特許文献5】米国特許第4,579,716号明細書
【特許文献6】米国特許第4,588,588号明細書
【特許文献7】米国特許第3,702,886号明細書
【特許文献8】米国特許第3,770,614号明細書
【特許文献9】米国特許第3,709,979号明細書
【特許文献10】米国特許第3,832,449号明細書
【特許文献11】米国特許第3,948,758号明細書
【特許文献12】米国特許第4,076,842号明細書
【特許文献13】米国特許第4,016,245号明細書
【特許文献14】米国特許第4,440,871号明細書
【特許文献15】米国特許第4,310,440号明細書
【特許文献16】欧州特許出願公開第A−229,295号明細書
【特許文献17】米国特許第4,254,297号明細書
【特許文献18】米国特許第4,500,651号明細書
【特許文献19】米国特許第4,229,424号明細書
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】「Atlas of Zeolite Structure Types」(W.H.MeierおよびD.H.Olson編、Butterworth−Heineman、第三版、1992年)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0018】
向上されたFCC反応器の機械設計、および該機械設計を利用して、重質炭化水素を、より価値があるより低分子量の炭化水素に転化するための向上された流動接触分解プロセス。
【0019】
本発明の好ましい実施形態は、流動接触分解反応器槽であって、流動接触分解反応器槽は、
a)その一部は流動接触分解反応器槽内に配置され、その下端は流動接触分解反応器槽のシェルへ取付けられる下部内部反応器ライザー、および
b)流動接触分解反応器槽内に配置され、その下端は円筒形スリーブへ接続される円錐部位で終わる上部内部反応器ライザー
を含み、上部内部反応器ライザーの上部部位は、反応器槽の希薄相部位と流体連通せず、少なくとも二つのライザー出口部が上部内部反応器ライザーの上部部位へ機械的に接続され、
下部内部反応器ライザーの上端は、上部内部反応器ライザー、および反応器槽の希薄相部位と流体連通し;下部内部反応器ライザーは、上部内部反応器ライザーへ機械的に接続されず;上部内部反応器ライザーの円錐部位の最大直径は、下部内部反応器ライザーの上端の直径より大きく;上部内部反応器ライザーの円筒形スリーブは、下部内部反応器ライザーの上端の直径より大きな直径を有し;上部内部反応器ライザーの円筒形スリーブの少なくとも一部は、下部内部反応器ライザーの上端の少なくとも一部と重なり;上部内部反応器ライザーの円筒形スリーブおよび下部内部反応器ライザーの上端の重なり部分の領域には、円筒形スリーブと下部内部反応器ライザーの上端との間の偏心を制約する機械的手段が全く配置されない。
【0020】
流動接触分解反応器槽のより好ましい実施形態においては、上部内部反応器ライザーの円筒形スリーブ、および下部内部反応器ライザーの上端の重なり部分の長さは、流動接触分解反応器槽が運転(高温)状態にある場合には、約6〜約36インチである。更により好ましい実施形態においては、上部内部反応器ライザーの円錐部位と上部内部反応器ライザーの軸との間の鋭角は、約5゜〜約25゜である。流動接触分解反応器槽の更に他の好ましい実施形態においては、ライザー部位は、下部内部反応器ライザーの頂部から円錐部位の底部まで測定される移行長さを含んでなり、この移行長さは、流動接触分解反応器槽が運転(高温)状態にある場合には、約6〜約36インチである。
【0021】
本発明の他の好ましい実施形態は、上記の流動接触分解反応器槽を利用する流動接触分解方法であって、方法の工程は、
a)重質炭化水素原料を、外部流動接触分解反応器ライザーの部位へ接続される一つ以上の原料ノズルを通して注入し、外部流動接触分解反応器ライザーの部位は、流動接触分解反応器槽の内側に配置される下部内部反応器ライザーと流体連通している工程、
b)重質炭化水素原料を、外部流動接触分解反応器ライザーにおいて、高温流動触媒と接触させる工程、
c)重質炭化水素原料および高温流動触媒の少なくとも一部を、下部内部反応器ライザーを通して送る工程、
d)重質炭化水素原料および高温流動触媒の少なくとも一部を、下部内部反応器ライザーから上部内部反応器ライザーへ送る工程、および
e)流動接触分解生成物ストリームおよび廃触媒ストリームを、流動接触分解反応器槽から回収する工程
を含み、重質炭化水素原料の少なくとも一部は、より低分子量の炭化水素化合物に接触分解され、これは、流動接触分解生成物ストリームとして回収される。
【0022】
流動接触分解方法のより好ましい実施形態においては、上部内部反応器ライザーの円筒形スリーブと下部内部反応器ライザーの上端との間の空隙を通る炭化水素含有蒸気の速度は、約10〜約30ft/秒である。更により好ましい実施形態においては、方法は、上部内部反応器ライザーの円筒形スリーブと下部内部反応器ライザーの上端との間の偏心は、運転(高温)状態で10%超であり、ライザーから流動接触分解反応器槽の希薄相領域までの触媒ロスは、実質的に全くない(1wt%未満)。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】先行技術の典型的な短接触時間FCC反応器ライザー/サイクロンの配置を図示する。
【図2】本発明の内部上部ライザーおよび下部ライザーの設計の実施形態を、表示の一次サイクロンの一つと結合して図示する。
【図3−A】本発明の上部ライザーおよび下部ライザーの関係の実施形態について、断面の概略立面図を図示する。
【図3−B】本発明の上部ライザーおよび下部ライザーの接続の実施形態について、断面の概略平面図を図示する。
【図4】本発明の内部上部ライザーおよび下部ライザーの設計の実施形態を、一次サイクロンの一つと結合して図示し、本発明のいくつかの要素の好ましい配置および寸法が図示される。
【図5】本発明の好ましい実施形態を図示し、コーキング防止バッフルは、一次サイクロンの入口下に配置される。この図面はまた、本発明の一実施形態を、一次/二次サイクロンの三つ組みで終わる単一のライザーの形態で示す。
【図6−A】先行技術の低温流動試験装置(実施例に記載される)について、一般的な概略形態を示す。
【図6−B】先行技術の低温流動試験装置(実施例に記載される)の写真を示す。
【図7−A】本発明の実施形態の低温流動試験装置(実施例に記載される)について、一般的な概略形態を示す。
【図7−B】本発明の実施形態の低温流動試験装置(実施例に記載される)の写真を示す。
【図8−A】先行技術の低温流動試験および本発明の低温流動試験について、解放域からの固体漏れ(触媒)の量をライザー速度の関数として比較する。
【図8−B】先行技術の低温流動試験および本発明の低温流動試験について、解放域からのガス漏れ(炭化水素)の量をライザー速度の関数として比較する。
【図9−A】先行技術の低温流動試験および本発明の低温流動試験について、解放域からの固体漏れ(触媒)の量をライザー流束速度の関数として比較する。
【図9−B】先行技術の低温流動試験および本発明の低温流動試験について、解放域からのガス漏れ(炭化水素)の量をライザー流束速度の関数として比較する。
【図10−A】先行技術の低温流動試験および本発明の低温流動試験について、解放域からの固体漏れ(触媒)の量をベント速度の関数として比較する。
【図10−B】先行技術の低温流動試験および本発明の低温流動試験について、解放域からのガス漏れ(炭化水素)の量をベント速度の関数として比較する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、新規な流動接触分解(FCC)反応器の設計に関する。これは、FCC装置の機械的信頼性およびプロセス性能の両方を向上する。本明細書の設計は、反応器内部に対する熱応力の低減、より狭い設計間隙、プロセス収率の向上、および維持コストの低減を可能にする。この向上された反応器の設計はまた、実質的に、反応器の設計および建設の単純性を向上し、設置に必要とされる現場作業の量が実質的に低減され、建設コスト全体が実質的に低減され、設置されるべき反応器の内部機器に必要とされる装置全体の中断時間が実質的に低減される。
【0025】
典型的には、流動接触分解(FCC)反応器の好ましい最新の設計および運転は、短接触時間反応器ライザーの設計を利用して、高分子量の炭化水素からなる重質炭化水素原料(または「FCC原料」)が、より低分子量のより価値がある炭化水素燃料生成物へ接触分解される。短接触時間のFCC反応プロセスにおいては、炭化水素原料は、高度に制御された反応条件および時間の下に、高活性流動触媒と接触される。炭化水素原料および触媒は、「反応器ライザー」において、分解条件下に接触されること、およびこれらの反応は、実質的に、炭化水素および触媒が反応器ライザーを通って移動する際に互いに接触している短い時間内に起こることが好ましい。炭化水素原料/触媒ストリームが接触している時間は、反応器ライザーにおいて、良好に制御されることができることから、触媒および炭化水素原料(ここでは、「分解炭化水素生成物」)は、できるだけ迅速かつ完全に分離されて、望ましくない分解反応(または「過分解」)が回避されることが望ましい。一般に、FCC反応においては、液体生成物(特に、ガソリン燃料、ジェット燃料、またはディーゼル燃料で用いられる炭化水素生成物など)を最大にし、一方固体(「コーク」)および「軽質ガス」(典型的には、C以下の軽質炭化水素であり、これは、凡その大気条件でガスである)の製造を最小にすることが望まれる。
【0026】
いかなる従来のFCC原料も、本発明の反応器の設計で用いることができる。これらの原料には、典型的には、約430°F〜約1050°F(220〜565℃)で沸騰する重質炭化水素原料が含まれる。ガス油、1050°F(565℃)超で沸騰する物質を含む重質炭化水素油;重質および抜頭石油原油;石油常圧蒸留ボトム;石油減圧蒸留ボトム;ピッチ、アスファルト、ビチューメン、他の重質炭化水素残渣;タールサンド油;シェール油;石炭液化プロセスから誘導される液体生成物;およびそれらの混合物などである。FCC原料はまた、リサイクル炭化水素も含んでもよい。軽質または重質サイクル油などである。本プロセスで用いるのに好ましい原料は、約650°F(343℃)超で沸騰する減圧ガス油である。
【0027】
図1は、先行技術の短接触時間FCC反応器、特に反応器ライザーおよび機械的サイクロン(「サイクロン」))の配置について、典型的な商業的実施形態の概略図である。本明細書においては、FCC反応器(1)は、内部反応器ライザー(5)を有する。内部反応器ライザーは、反応器の底部から入ってもよいか(実線で示される)、または反応器の側部に入ってもよい(点線で示される)。いずれも、本明細書の「内部ライザー」とみなされ、本発明は、いずれかの内部ライザーの設計により作動するであろう。典型的には、ライザーは、連続的な管状設計からなり、ライザーからの出口のみが、機械的サイクロンへ流体連通される。FCC反応器ライザーの設計においては、流動触媒(10)は、内部ライザー(5)において、少なくとも一種の重質炭化水素原料ストリーム(15)と接触される。ここでは、炭化水素原料ストリームと触媒との間の接触の条件および時間は、正確に制御されることができて、分解炭化水素生成物および廃触媒を含む反応生成物ストリームが製造される。典型的には、所望の反応は、数秒内に起こるであろう。分解炭化水素生成物および廃触媒が、迅速かつ効率的に互いに分離されない場合には、望ましくない引続く反応または過分解が、起こる傾向があり、あまり望ましくない分解炭化水素生成物組成物および/または収率がもたらされるであろう。結果としての反応全体は、望ましくないコークおよび軽質ガスの製造を増大する傾向があろう。
【0028】
従って、分解炭化水素生成物および廃触媒を含む実質的に全ての生成物ストリームを取り込み、迅速に、ストリーム成分を分離することが望まれる。分解炭化水素生成物および廃触媒を分離する好ましい方法は、機械的サイクロンを用いることによる。図1は、二段サイクロン配置のFCC反応器を示す。ここでは、内部ライザー(5)は、一次サイクロン(20)へ流体連通される。簡単のために、一組の一次サイクロン(20)および一組の二次サイクロン(30)のみが、図1に示される。しかし、実際には、二段サイクロンFCC反応器は、通常、約2〜8組の一次/二次サイクロンを含んでなる。
【0029】
図1に引続いて、示される形態は、「直結サイクロン」の設計である。何故なら、実質的に全ての分解炭化水素生成物は、内部反応器ライザー(5)から一次サイクロン(20)へ、更に二次サイクロン(30)へ送られ、次いで生成物として回収されることができるからである。この直結サイクロンの設計においては、FCC反応器(1)の希薄相領域(40)に解放されるいかなる炭化水素をも最小にすることが望まれる。加えて、実質的に全ての廃触媒は、内部ライザー(5)から一次サイクロン(20)へ通り、そこで廃触媒は、迅速かつ効率的に分解炭化水素生成物からストリッピングされ、その後分離された廃触媒は、一次サイクロンのディップレグ(25)を経て、FCC反応器(1)の稠密相(42)へ戻される。この方法においては、分解炭化水素生成物は、高度に時間制御された効率的な方法(接触分解反応時間が非常に正確に制御されることを可能にする)で、廃触媒から分離される。更に、図1の生成物ストリームに続いて、分解炭化水素生成物に残存するいかなる廃触媒も実質的に全てが、更に、二次サイクロン(30)で分離され、分離された廃触媒は、二次サイクロンディップレグ(35)を経て、FCC反応器(1)の稠密相(42)へ戻される。FCCのオーバーヘッド炭化水素生成物ストリームは、二次サイクロンの蒸気出口から収集され、反応器のオーバーヘッドライン(45)を経て回収される。
【0030】
議論されるように、一般に、分解炭化水素生成物および廃触媒を、所望の反応時間に従って、できるだけ完全かつ迅速に分離することが望ましい。従って、1)希薄相へ移行する分解炭化水素生成物の量を最小にすること、同様に2)廃触媒を反応器の希薄相領域へ戻す前に、廃触媒からの分解炭化水素生成物の分離を最大にすることがいずれも望まれる。これは、FCC反応器において廃触媒と接触して残される炭化水素が、制御されない条件下で分解し続け、プロセスからの望ましくない生成物の増大がもたらされるという事実による。
【0031】
図1に戻って、FCC反応器(1)はまた、ストリッピング領域(50)を含んでなる。必要ではないものの、ストリッピング領域は、典型的には、FCC反応器中の移行域の下に配置され、ストリッピング領域は、トレーまたはシェッド(55)を含んでなる。ストリッピング域中には、ストリッピングガス(60)(通常、スチームを含む)が、注入され、ストリッピングガスは、廃触媒上に残存してもよい揮発性炭化水素の除去を促進する。ストリッパー域におけるトレーまたはシェッド(55)は、廃触媒とストリッピングガスとの間の接触を最大にするのに資する。廃触媒は、廃触媒ライン(65)を経て除去され、それは、接触分解プロセスで再使用するために再生されることができる。ストリッピングガスおよびストリッピングされた揮発性炭化水素は、FCC反応器(1)中に、反応器の希薄相(40)へ上昇して移行し、そこでそれらは、流動接触分解プロセスからの分解炭化水素生成物と共に除去されることができる。
【0032】
ここで、先行技術の直結サイクロンの設計においては、解放域(70)は、通常、ライザー(5)と一次サイクロン(20)との間の導管中に提供されることが注目されるべきである。或いは、この解放域(70)は、一次サイクロン(20)と二次サイクロン(30)との間の導管中に提供されることができる(この別形態は、図1には示されない)。解放域の目的は、反応器の希薄相領域(40)中の蒸気相成分(残存する揮発性炭化水素およびストリッピングガスなど)が、FCC反応器(1)から除去されることを可能することである。しかし、サイクロンの近傍に配置される解放域に付随する欠点があり、従って本発明の形態において達成されることができるという利点がある。これらの欠点および利点は、本発明が以下に詳細に議論される際に、更に議論されるであろう。
【0033】
本発明の好ましい実施形態は、図2に示される。図2は、本発明のFCC反応器の一部のみを示す。ここでは、内部ライザー(210)は、上部(215)および下部(220)の両ライザーに分けられる。上部ライザー(215)は、上部円錐型部位(225)を含んでなり、円錐の大きい方の端部で、円筒形スリーブ(230)へ接続される。これは、下部ライザー(220)の周囲に同心状に収まり、その一部に重なる。更に、上部ライザーは、上部ライザーの移行導管(240)によって、FCC反応器の一次サイクロン(235)へ機械的に接続され、一次および二次サイクロンに付随する導管にある先行技術の設計の解放域は、排除されている(即ち、上部ライザー移行導管と一次サイクロンとの間の接続部(245)には間隙が存在しない)ことを理解できる。上部ライザー/円錐部位(215/225/230)は、下部ライザー部位(220)と流体連通し、二つの部位は、他方と機械的に接触していないことが注目されるべきである。
【0034】
図3−Aは、本設計の上部および下部ライザーアセンブリの間のこの接合部をより詳細に示し、接合部における本発明の上部ライザーと下部ライザーとの間の正面断面を図示する。図3−Aは、上部ライザー(215)、およびその付随する上部円錐部位(225)およびスリーブ(230)、並びに下部ライザー(220)の相対的な位置を図示する。
【0035】
本明細書で用いられる用語「環状間隙領域」(平方インチ)とは、環(または、ライザーが円形でない場合には他の形状)によって定められる断面積として定義される。これは、下部ライザーの軸に直交する平面で測定され、平面は、低温かつ同心位置で、下部ライザーの上部表面に位置される。この環の外側部分は、平面との交点におけるスリーブ(230)の内壁によって定められる。この環の内側部分は、平面との交点における下部ライザー(220)の外壁によって定められる。これは、図3−Bに図示され、環状間隙の領域は、スリーブ(230)の内壁と下部ライザー(220)の外壁との間の、下部ライザーの軸に直交する平面にある陰影領域(301)として示される。
【0036】
本明細書で用いられる用語「環状間隙」は、平面との交点におけるスリーブ(230)の内壁と下部ライザー(220)の外壁との間の距離(インチ)である。これは、低温かつ同心位置で、平面内で測定される。「環状間隙」は、図3−Bの寸法(C)として図示される。スリーブおよび下部ライザーが円形断面ではない場合には、環状間隙は、低温かつ同心位置で、スリーブ(230)の内壁と下部ライザー(220)の外壁との間の最大寸法である。本発明の好ましい実施形態においては、環状間隙は、少なくとも約1インチである。より好ましい実施形態においては、環状間隙は、約1インチ〜約4インチであり、更により好ましくは環状間隙は、約1.5インチ〜約3インチである。最も好ましい実施形態においては、環状間隙は、約1インチ〜約4インチであり、FCC反応器の運転条件によって大きさを決められて、ベント速度が、通常の運転条件で、本明細書で特定される範囲内へ維持される。本明細書で用いられる用語「通常の運転条件」とは、FCC反応器の設計の炭化水素原料速度の75〜110%として定義される。
【0037】
図3−Aに示される本発明に戻って、この形態は、円錐(225)およびスリーブ(230)配列を有する上部ライザー部位(215)によって重ねられる下部ライザー部位(220)を有するものとして定義される。その際、スリーブ壁は、実質的に、下部ライザー壁(220)に平行である。実験的な試験は、寸法の好ましい選択について指針を提供するのに行われた。これは、本明細書で更に議論されるであろう。好ましい実施形態においては、図3−Aの寸法(A)として示される「重なり」の長さは、装置が低温である場合には、少なくとも6インチであるべきである。重なりの長さは、好ましくは約6〜約36インチ、より好ましくは約9〜約24インチであり、更により好ましくは、装置が高温(即ち、運転)条件である場合に、約9〜約15インチである。
【0038】
本発明者による低温流動実験において予期せず発見されている一項目は、本発明の解放域の設計における「移行」長さを含むことの利点である。本明細書の「背景技術」の節で論じられるKrambeckおよびKamの特許の設計による重要な問題の一つは、移行長さが、その設計に組み込まれなかったこと、およびいくつかの場合に、円錐および下部反応器ライザーが重なっていてもよいことであると考えられる。予想外に発見されたことは、いくつかの移行長さが、適切な運転のために、本発明の設計に必要とされることである。これは、特に、本発明が非同心(または偏心)形態で運転される場合に重要である。本明細書で用いられる用語「移行長さ」は、図3−Aに、寸法(B)として図示され、上部ライザー(215)の軸(D)に沿って測定されて、下部ライザー(220)の頂部面と、円錐(225)およびスリーブ(230)の交差点との間の距離であると定義される。加えて、図3−Aで理解できるように、「移行長さ」寸法(B)および「重なり」寸法(A)の合計は、スリーブ(230)の全高に等しい。
【0039】
加えて、他の重要な発見は、本発明の解放域の設計におけるかなり浅い円錐角を組み込むことの利点である。本明細書で用いられる用語「円錐角」は、図3−Aに、角度アルファ(α)として図示され、円錐(225)と上部ライザー壁(215)との間の鋭角として定義される。これらの二つの設計態様(即ち、移行長さおよび円錐角)の範囲における自由度は、本発明の成功運転について、ある程度互いに左右される傾向があることが注目されるべきである。これは、更に議論されるであろう。
【0040】
いかなる特定の理論にも抑制されることを望むものではないものの、先行技術のKrambeckおよびKamの特許の欠点は、移行長さ並びに円錐角の重要性であると考えられる。これらの引用から理解できるように、移行長さまたは円錐角のいずれについても言及がない。KrambeckおよびKamの特許の図面は、いかなる移行長さもその設計に組み込まれなかったこと、および円錐角は、基本的に約45°であったことを意味すると思われる(特許文献5(Krambeckら)の図1、並びに特許文献6(Kamら)の図1を参照されたい)。発明者が本明細書で確認していることは、移行長さおよび高度に角度付けられた円錐は、KrambeckおよびKamの特許によって全く示されないこと、先行技術の設計は、上部および下部ライザーの偏心に顕著に敏感であることである。KamおよびKrambeckの特許で議論されて理解できるように、これはまた、その設計のその試験で経験された。特に、偏心が、約10%超である場合(特許文献6(Kamら)において議論される)には、破壊的なフローパターンが、解放域の領域で起こり、炭化水素および触媒の両方の逆混合の実質量が、FCC反応器に引き起こされる。
【0041】
本明細書で用いられる用語「逆混合」とは、炭化水素(これはまた、「蒸気」と呼ばれる)または触媒(これはまた、「固体」と呼ばれる)の量が、ライザー解放域、またはサイクロン配置における他の解放域/ベントから、FCC反応器の希薄相領域中に流出することを意味することが注目されるべきである。また、本明細書で用いられる用語「偏心」または「E」は、次式によって定義される:
偏心「E」=(S/S−1)×100
[式中:
S=運転状態(非同心位置を含む)で、図3−Aの寸法(C)として示される最大環寸法、および
=低温および同心状態で、図3−Aの寸法(C)として示される「環状間隙」
である]
【0042】
理解できるように、円形ライザーに関して、偏心は、上部および下部ライザーが、完全に同心である場合には0%であり、上部および下部ライザーが、完全に偏心(即ち、接触している)している場合には100%である。偏心のこの定義は、特許文献6(Kamら)に引用されるものと同じである。
【0043】
上記の議論を続けて、偏心が、約10%超である場合に経験されるこの流れの破壊は、触媒を、上部ライザー部位の円錐に突入する下部ライザー部位から上方に移動することによって、ある程度引き起こされると考えられる。移動する触媒は、次いで、運動量を失い、容易に、ライザー解放域から降下することができる。加えて、解放域に入る反応器の希薄相領域からのベントガスおよび随伴触媒のフローパターンは、急激な円錐壁角度によってその方向を激しく変更され、再度、解放域の領域における低および/または接線速度(従って、ベントガスの「シールの解除」)が引き起こされ、再度、触媒および炭化水素が、解放領域からFCC反応器の希薄相域に流出することが可能とされると考えられる。先行技術のこの設計および運転は、偏心が約10%超である場合には、激しい逆混合をもたらすばかりでなく、ライザー設備への触媒の激しい衝突(軽減されない限り激しい腐食損傷をもたらすであろう)をもたらすことが注目されるべきである。
【0044】
本発明の利点を確認し、定量化するために、低温流動試験を行った。これは、類似の先行技術および本発明の形態について、本明細書の実施例で議論される。低温流動試験のモデルは、1)先行技術の解放域(反応器ライザーと一次サイクロンとの間に配置される)を利用する短接触時間FCC内部ライザー反応器プロセス(図1、8−A、および8−Bで示されるものに類似する)、および2)本発明の分けられた上部ライザーおよび下部ライザーの形態、並びに密閉されたライザー/サイクロンの配置を利用する短接触時間FCC内部ライザー反応器プロセス(図2、3−A、3−B、4、9−A、および9−Bに示されるものに類似する)を用いて作成された。これらの低温流動試験においては、本発明の設計は、本明細書の図1に図示される最も近い商業的先行技術(Krambeck/Kamの設計ではない)に比較された。何故なら、Krambeck/Kamの設計は、本明細書の「背景技術」並びに「発明を実施するための形態」の節で議論される理由により、商業的に用いられないか、または実行不可能であるからである。
【0045】
これらの低温流動試験は、発明者が、ロスを物理的条件下に可視化し、測定することを可能にするだけでなく、発明者が、本発明の設計を「非整列」条件下に運転することを可能にして、本発明が、真に、先行技術のKrambeckおよびKamの設計に付随される非整列の問題を是正したことが試験された。先行技術の低温流動試験の一般的な概略形態は、図6−Aに示され、一方先行技術の形態の実際の低温流動装置は、図6−Bの写真に示される。本発明の低温流動試験の一般的な概略形態は、図7−Aに示され、一方本発明の実施形態の実際の低温流動装置は、図7−Bの写真に示される。低温流動試験を行われた条件の詳細は、実施例に詳述され、結果が、本明細書に要約される。
【0046】
図8−Aおよび8−Bは、先行技術および本発明の両方を「整列」条件下に、並びに本発明を「非整列」条件下に、異なるライザー速度で試験した結果を示す。図8−Aは、解放域からの固体漏れ(触媒)の量を、ライザー速度の関数として示し、一方図8−Bは、解放域からのガス漏れ(炭化水素)の量を、ライザー速度の関数として示す。先ず、図8−Aにおいては、本発明の「整列形態」においては、固体漏れが、約5桁の大きさまたはスタガリング>99.999%で減少したことが理解できる(実施例のグラフは、指数尺度であることに注目されたい)。
【0047】
更により意外にも、本発明は、殆ど、整列および非整列の場合の間に触媒ロスの差を示さなかった。低温流動試験の全てにおいて、「非整列」試験の場合は、偏心100%の最も過酷な非整列条件で運転されたことが、本明細書において注目されるべきである(即ち、下部ライザーは、実際には、上部ライザーのスリーブと接触していた)。
【0048】
驚くほどではないが、非常に重要なことには、図8−Bに示されるように、本発明の整列された場合のガス漏れ速度は、先行技術のガス漏れ速度の約1〜2%であった。加えて、本発明は、一般に、ガス漏れを非整列条件で最小にするのに、良好またはより良好に性能を発揮した。
【0049】
図9−Aおよび9−Bは、先行技術および本発明の両方を「整列」条件下に、並びに本発明を「非整列」条件下に、異なるライザー流束速度で試験した結果を示す。ライザー流束速度は、ライザーを通る触媒の質量流速の尺度である。図9−Aは、解放域からの固体漏れ(触媒)の量を、ライザー流束速度の関数として示し、一方図9−Bは、解放域からのガス漏れ(炭化水素)の量を、ライザー流束速度の関数として示す。図9−Aおよび9−Bから、固体およびガスの両漏れを軽減する向上された性能の類似の程度が、ライザー流束速度の関数として測定された場合に、先行技術と比較された本発明の性能によって示されることが理解できる。加えて、「整列」および「非整列」の両条件(即ち、非整列条件化下100%の偏心)での本発明の性能は、かなり類似し、および両条件において、先行技術より顕著に向上された。
【0050】
本明細書の実施例の低温流動実験からの最後の図面は、本明細書の図10−Aおよび10−Bに示される。図10−Aおよび10−Bは、先行技術および本発明の両方を「整列」条件下に、並びに本発明を「非整列」条件下に、異なるベント速度で試験した結果を示す。図10−Aには、解放域からの固体漏れ(触媒)の量が、ベント速度の関数として示され、一方図10−Bには、解放域からのガス漏れ(炭化水素)量が、ライザー流束速度の関数として示される。「ベント速度」(または「ベントガス速度」)は、解放域を囲周する領域から移動するガスである「ベントガス」の速度であり、それが、解放域を通って、一次サイクロンの導管(先行技術の場合)またはライザー(本発明の場合)に移動する際の速度で計算される。ベント速度は、試験設備へのベントガスの容積流速として測定される。これは、環状間隙領域の断面積(図3−Bの領域(301)として示される)で除される。
【0051】
図10−Aおよび10−Bは、再度、異なるベント速度および触媒質量流量速度(「Ug」)においてさえ、先行技術を超える本発明の実質的な向上を示す。図10−Aで理解できるように、殆どのベント速度において、本発明からの固体漏れ速度は、殆どの条件下で、先行技術の固体漏れ速度の約1%未満である。また、実質的な向上が、図10−Bのガス漏れ速度に示される。また、予期外に発見されたことは、約10ft/秒以上のベントガス速度では、漏れ速度は、実質的に向上されたことである。これは、約15ft/秒以上のベントガス速度のデータから、更により明白である。また、図10−Aおよび10−Bから理解できるように、より高いライザー触媒流束速度(特に、約40lb/ft−s超)は、固体およびガスの両漏れ速度の低減の向上をもたらした。
【0052】
これらの予想外の結果に基づいて、本発明の好ましい実施形態においては、「移行長さ」(図3−Aに示される)は、装置が高温(即ち、運転)状態である場合に、好ましくは約6〜約36インチ、より好ましくは約6〜約24インチである。本発明の好ましい実施形態においては、円錐部位の角度(図3−Aの円錐角(α)で示される)は、ライザーの軸から5°〜25°、より好ましくは約5°〜20°、更により好ましくは約5°〜15°であるべきである。上記の寸法に沿って、角度の選択は、それがライザー壁の腐食および触媒の流動性に影響をおよぼすことから重要である。また、特定の実施形態に対して、重なりの長さおよび移行領域の長さは、設計要素によってもよいことが注目されるべきである。限定されることなく、ライザーの直径、原料ストリームの速度、触媒の速度、運転温度、運転圧力、および反応器の過酷度などである。加えて、より小さな円錐角は、より短い移行長さと組合せて利用されることができて、性能が向上される。当業者は、工業的に利用可能な手段をモデル化することに基づいて、特定の用途に対する本発明の適切な幾何学的配置を設計してもよい。
【0053】
加えて、いくつかの場合においては、本発明の上部および下部ライザーの部位において、同じ全表面蒸気速度を維持することが望ましくてもよい。本発明の好ましい実施形態においては、上部ライザー部位は、下部ライザー部位より大きな内径(または断面が円形ではない場合には、断面積)を有して、更なるスチーム、炭化水素、または他の物質が、環状間隙を通って、上部ライザー部位に流動することが可能にされる。本発明の環状間隙の断面積は、環状間隙内のベント速度が、約10超ft/秒、更により好ましくは約15超ft/秒であるように設計されるべきである。本発明のベント速度の好ましい範囲は、約5〜約35ft/秒、より好ましくは約10〜約30ft/秒、最も好ましくは約15〜約25ft/秒である。この計算は、環状間隙に入るストリッピングスチームの予想される流速に基づくべきである。
【0054】
本発明の運転条件において、ライザーは、反応器の希薄相領域と類似の圧力で運転される。それ自体、環状間隙は、反応器の希薄相領域からの揮発性炭化水素およびスチームが、ライザーに入り、反応器サイクロンを通って除去されることを可能にするように制御される。先に議論されるように、適切な運転条件下では、炭化水素原料ストリームおよび/または触媒は、事実上全く、反応器ライザーから、本発明のライザーの環状間隙の領域を経て反応器の希薄相領域へ移動しないであろうことが、予期せず発見されている。
【0055】
図1に示される直結サイクロンの先行技術の形態に関して、本発明の他の重要な利点は、先行技術の解放域は現場設置するのに困難であることである。先行技術の最終的な設計は、しばしば、最適の機械的およびプロセスの設計の間で妥協しなければならず、設置または運転のいずれかにとって、最適に効果的ではない設計がもたらされる。本発明の分けられたライザーの利点は、これらの解放域の製造および設置を取り巻く問題、並びに先行技術に付随する運転上の欠陥が解決されることである。
【0056】
先行技術が、適切な取付け、装置の設置、および維持を得る際にもたらす問題、並びに適切な環状間隙を維持する際の困難性は、図1の先行技術の概略図を引用して図示することができる。付随される装置が付される高温によって、内部ライザー(5)は、熱膨張することが可能となり、独立に、一次サイクロン(20)から移動するに違いない。一次サイクロン(20)は、FCC反応器(1)の頂部に取付けられ、内部反応器ライザー(5)は、FCC反応器(1)の底部に取付けられることから、これらの要素は、反対方向で移動する傾向がある。これは、更に、反応器ライザーの全ての膨脹が熱クリアランスを考慮されなければならないという事実によって悪化される。これらの大きな長さおよび高い熱膨張(FCC反応器は、一般に、約950〜1250°Fで作動する)により、解放域(70)の過度の間隙は、設計によって対処されなければならない。これは、反応器ライザーからの分解炭化水素生成物および廃触媒の不十分な捕捉および制御の一因であり、解放域(70)の領域における過度のコーキング、並びに結果としての機械的な妥協をもたらしうる。
【0057】
加えて、解放域(70)の領域の一次サイクロン入口導管におけるこの重なり、およびこの設計に必要とされる密な三次元許容性は、FCC反応器の内部の多くが、現場で取付けられ、設置されることを必要とする。これは、直接、全コストを増大し、並びに補修および改造のための反応器の中断時間を長くする。
【0058】
全く対称的に、本発明は、上部ライザーが、一次および二次サイクロンと組合せて、FCC反応器の頂部へ接続される設計である。この設計においては、これらの付随される要素は、同時に移動することから、実質的により少ない現場取付けが、先行技術の直結サイクロンの設計と比較して、本設計の反応器内部を設置するのに必要とされる。本発明においては、全ての上部ライザー、一次サイクロン、および二次サイクロンの配置は、FCC反応器のヘッド(頂部)へ予め取り付けられることができる。旧FCC反応器のヘッドは、除去され、新規規設計の要素は、先行技術と比較して、非常に僅かな現場作業で「そこに下げられる」ことができる。この新規な設計は、現場の組立時間、その上既存のFCC装置の運転中断時間の両方を節約することができ、かなりの節約がもたらされる。
【0059】
議論されるように、本発明は、反応器ライザー、一次サイクロン、および二次サイクロンが、モジュラー方式で一緒に設置されることを可能とする。換言すれば、解放域(および付随するサイクロンおよびライザーに付随する現場取付け)は、本発明においては、反応器ライザーと一次サイクロンとの間、または一次サイクロンと二次サイクロンとの間に必要とされない。結果として、ライザー出口と一次サイクロンとの間の導管部位は、ここで、固定されることができる。図4は、本発明のライザー出口/一次サイクロン入口の接続の好ましい実施形態を図示する。図4は、本発明の上部ライザー(215)および上部ライザー出口(415)、並びに一次サイクロン(235)および一次サイクロン入口(425)の好ましい実施形態を示す。好ましい実施形態においては、ライザー反応器出口の高さ「R」は、一次サイクロン入口の高さ「L」の約1.0〜約2.0倍である。より好ましい実施形態においては、ライザー反応器出口の高さ「R」は、一次サイクロン入口の高さ「L」の約1.5〜約2.0倍である。
【0060】
図4に戻って、本発明のより好ましい実施形態においては、ライザー出口(415)の頂部から円錐(225)の底部までの上部ライザーの高さ(「U」)は、一次サイクロン入口の高さ(「L」)の約3〜約6倍である。最も好ましい実施形態においては、高さ(「U」)は、一次サイクロン入口の高さ(「L」)の約3〜約5倍である。更に他の好ましい実施形態においては、上部反応器ライザー(215)を一次サイクロン(235)へ接続する導管の長さ(図4において「W」で示される)は、一次サイクロン入口の高さ(「L」)の約1.5〜約3倍である。より好ましくは、上部反応器ライザー(215)を一次サイクロン(235)へ接続する導管の長さ(図4において「W」で示される)は、一次サイクロン入口の高さ(「L」)の約1.5〜約2.5倍である。長さ「W」は、上部反応器ライザー(215)の外部直径から一次サイクロン(235)の外部直径まで導管の中心線に沿った線上にある反応器ライザーの軸に直交する面で測定されるものであることが、注目されるべきである。
【0061】
本発明の他の好ましい実施形態においては、コーキング防止バッフルが、FCC反応器において、一次サイクロン入口の下に設置される。本明細書の図5は、本発明のこの実施形態を示し、コーキング防止バッフルが、FCC反応器において、一次サイクロン入口の下に設置される。好ましい実施形態においては、コーキング防止バッフルの頂部は、一次サイクロン入口の頂部から、一次サイクロン入口の高さ(図4に、寸法「L」として示される)の少なくとも2倍の距離にある。図5は、FCC反応器の設計を図示し、本発明の多くの実施形態が組み込まれる。図5は、単一の上部ライザー(見えないが、図5に示されるアセンブリの中央に配置される)に取付けられた三つの一次サイクロン(235)および三つの二次サイクロン(515)を有する設計を図示する。図5から理解できるように、コーキング防止バッフル(520)は、一次サイクロン入口(425)の下に配置される。先行技術の典型的な直結サイクロンの設計(図1の先行技術に図示される)においては、コーキング防止バッフルは、一次サイクロンの上に配置される(典型的なコーキング防止バッフルは、図1には図示されない)。これは、コーキング防止バッフルの設置および維持、並びに関連する要素(即ち、ライザー、サイクロン、支持具等)の点検を、非常に困難にする。図5から理解できるように、本発明のこの実施形態の設計は、設置および点検の際に人がこの部位の中を立って歩くのに、十分な上方空間をコーキング防止バッフルの上に可能にする。加えて、この設計は、多くの重要な点検箇所(内部ライザーの頂部、一次および二次サイクロンおよび接続導管、並びにライザー/サイクロンアセンブリのための支持具など)へのより大きな進入路を提供する。
【0062】
コーキング防止バッフルを本発明の他の態様と組合せて低くする利点のいくつかは、次の通りである。第一に、図5で理解できるように、実質的には、全ての反応器上部ライザー、一次サイクロン、二次サイクロン、支持具、およびコーキング防止バッフルは、FCC反応器に設置するための単一の装置として、予め組み立てられることができる。先に議論されるように、本新規設計は、現場取付けおよび設置、並びに装置の中断時間の実質量を低減する。本新規「モジュラー」反応器の設計は、予め組み立てられて、「組込」設置のための新規反応器シェルへ取付けられることができ、時間およびコストが節約される。サイクロン導管中の解放域を省くことが、必要とされる現場取付の量を低減することは、先に特記された。同様に、コーキング防止バッフルを、一次サイクロンの上から本設計の一次サイクロンの下へ移動することによって、設置に必要とされる多くの現場作業が省かれる。下部コーキング防止バッフルは、コーキング防止バッフルの頂部並びに付随される重要な要素領域(規則的な間隔で立入りおよび点検を必要とする)へのより大きな進入路を提供する。加えて、下部コーキング防止バッフルの配置は、炭化水素の流出へ暴露され、コーク形成がもたらされる槽内部の容積を低減し、それにより装置のターンアラウンド(保全間隔)中の脱コーキングに付随される時間およびコストが低減される。これはまた、コークの選択性を向上し、プロセス収率の向上がもたらされる(より価値のある生成物の製造に好都合である)。
【0063】
本発明の好ましい実施形態においては、本発明のコーキング防止バッフルには、コーキング防止バッフルを通る孔および/または管が含まれ、スチームが、バッフル装置の下で、内部ライザー周りの同心域へ効果的に分配される。これは、理想的には、スチーム/凝縮液を、中央のライザーの開放間隙に隣接して配置する。この設計の目的は、コーク形成が、環状間隙を囲周する領域に蓄積するのを防止することである。スチームは、複数の開いたスチーム分配孔および/または管(510)によって導入される。これは、図5の中央近くに配置されて示される(部分的に見えない)。装置の上の運転圧力は、通常、バッフルの下より高い。これは、複雑な放出マニホールドおよび/または導管系の導入を必要とすることなく、スチームを分配する簡単な手段を提供することができる。
【0064】
本発明の一部として、上記の装置の実施形態は、上に定義される重質炭化水素原料を流動接触分解するためのプロセスで利用される。このプロセスにおいては、重質炭化水素原料は、短接触時間FCC反応器へ送られる。重質炭化水素原料は、一つ以上の原料ノズルを通して、反応器ライザーに注入される。この反応器ライザー内で、重質炭化水素原料は、接触分解触媒と分解条件下に接触され、それによりその上に析出される炭素を含む廃触媒粒子、およびより低沸点の生成物ストリームがもたらされる。分解条件は、従来のものであり、これには、典型的には、温度約932°F〜約1040°F(500℃〜560℃)、好ましくは約977°F〜約1004°F(525〜540℃);炭化水素分圧約10〜50psia(70〜345kPa)、好ましくは約20〜40psia(140〜275kPa);および触媒/原料比(wt/wt)約3〜8、好ましくは約5〜6(その際、触媒重量は、触媒組成物の全重量である)が含まれるであろう。スチームは、原料と共に、反応域に同時に導入されてもよい。スチームは、原料の約5wt%以下を含んでもよい。好ましくは、反応域におけるFCC原料の滞留時間は、約5秒未満、より好ましくは約3〜5秒、更により好ましくは約2〜3秒である。
【0065】
本明細書で用いるのに適切な触媒は、大細孔モレキュラーシーブ、または少なくとも一種の大細孔モレキュラーシーブ触媒および少なくとも一種の中細孔モレキュラーシーブ触媒の混合物のいずれかを含む分解触媒である。本明細書で用いるのに適切な大細孔モレキュラーシーブは、平均細孔直径0.7nm超を有するいかなるモレキュラーシーブ触媒でもあることができる。これは、典型的には、炭化水素原料を接触的に「分解」するのに用いられる。本明細書で用いられる大細孔モレキュラーシーブおよび中細孔モレキュラーシーブはいずれも、結晶質四面体骨格の酸化物成分を有するモレキュラーシーブから選択されることが好ましい。好ましくは、結晶質四面体骨格の酸化物成分は、ゼオライト、テクトシリケート、四面体アルミノホスフェート(ALPO)、および四面体シリコアルミノホスフェート(SAPO)からなる群から選択される。より好ましくは、大細孔および中細孔の両触媒の結晶質骨格の酸化物成分は、ゼオライトである。分解触媒が、少なくとも一種の大細孔モレキュラーシーブ触媒および少なくとも一種の中細孔モレキュラーシーブの混合物を含む場合には、大細孔成分は、典型的には、接触分解反応からの一次生成物を、清浄生成物(燃料用ナフサおよび化学原料材用オレフィンなど)へ触媒的に分解するのに用いられることが特記されるべきである。
【0066】
商業的FCCプロセス装置で典型的に用いられる大細孔モレキュラーシーブはまた、本明細書で用いるのに適切である。用いられるFCC装置は、商業的には一般に、大細孔ゼオライト(USYまたはREYなど)を含む従来の分解触媒を用いる。本発明に従って用いられることができる更なる大細孔モレキュラーシーブには、天然および合成の両大細孔ゼオライトが含まれる。天然大細孔ゼオライトの限定しない例には、グメリナイト、チャバザイト、ダチアルダイト、クリノプチロライト、フォージャサイト、ヒューランダイト、アナルサイト、レビナイト、エリオナイト、ソーダライト、カンクリナイト、ネフェリン、ラズライト、スコレサイト、ナトロライト、オフレタイト、メソライト、モルデナイト、ブリューステライト、およびフェリエライトが含まれる。合成大細孔ゼオライトの限定しない例は、ゼオライトX、Y、A、L、ZK−4、ZK−5、B、E、F、H、J、M、Q、T、W、Z、アルファおよびベータ、オメガ、REY、およびUSYゼオライトである。本明細書で用いられる大細孔モレキュラーシーブは、大細孔ゼオライトから選択されることが好ましい。本明細書で用いられるより好ましい大細孔ゼオライトは、フォージャサイトであり、特にはゼオライトY、USY、およびREYである。
【0067】
本明細書で用いるのに適切な中細孔サイズモレキュラーシーブには、中細孔ゼオライトおよびシリコアルミノホスフェート(SAPO)の両方が含まれる。本発明を実施する際に用いるのに適切な中細孔ゼオライトは、非特許文献1に記載される。これは、本明細書に引用して含まれる。中細孔サイズゼオライトは、一般に、平均細孔直径約0.7nm未満、典型的には約0.5〜約0.7nmを有し、これには、例えば、MFI、MFS、MEL、MTW、EUO、MTT、HEU、FER、およびTON構造タイプのゼオライト(ゼオライト命名法のIUPAC委員会)が含まれる。これらの中細孔サイズゼオライトの限定しない例には、ZSM−5、ZSM−12、ZSM−22、ZSM−23、ZSM−34、ZSM−35、ZSM−38、ZSM−48、ZSM−50、シリカライト、およびシリカライト2が含まれる。本発明で用いるのに最も好ましい中細孔ゼオライトは、ZSM−5である。これは、特許文献7および特許文献8に記載される。ZSM−11は特許文献9に;ZSM−12は特許文献10に;ZSM−21およびZSM−38は特許文献11に;ZSM−23は特許文献12に;およびZSM−35は特許文献13に記載される。上記されるように、SAPO(SAPO−11、SAPO−34、SAPO−41、およびSAPO−42などであり、これは特許文献14に記載される)はまた、本明細書で用いられることができる。本明細書で用いられることができる他の中細孔モレキュラーシーブの限定しない例は、クロモシリケート;ガリウムシリケート;鉄シリケート;アルミニウムホスフェート(ALPO)(ALPO−11などであり、これは特許文献15に記載される);チタンアルミノシリケート(TASO)(TASO−45などであり、これは特許文献16に記載される);ホウ素シリケート(特許文献17に記載される);チタンアルミノホスフェート(TAPO)(TAPO−11などであり、これは特許文献18に記載される);および鉄アルミノシリケートである。全ての上記特許は、本明細書に引用して含まれる。
【0068】
本明細書で用いられる中細孔サイズゼオライトにはまた、「結晶質混合物」が含まれることができる。これは、ゼオライトの合成中に結晶または結晶質領域内で生じる欠陥の結果であると考えられる。ZSM−5およびZSM−11の結晶質混合物の例は、特許文献19に開示される。これは、本明細書に引用して含まれる。結晶質混合物は、それ自体、中細孔サイズゼオライトであり、ゼオライトの物理的混合物と混同されるべきではない。その際、異なるゼオライトの結晶子の異なる結晶は、物理的に、同じ触媒組成物または熱水反応混合物中に物理的に存在する。
【0069】
本発明の大細孔および中細孔触媒は、典型的には、無機酸化物の母材成分中に存在するであろう。これは、触媒成分を一緒に結合し、そのために触媒生成物は、粒子間および反応器壁の衝突に耐えるのに十分に堅い。無機酸化物の母材は、無機酸化物のゾルまたはゲルから作製されることができる。これは、乾燥されて、触媒成分が一緒に「接着」される。好ましくは、無機酸化物の母材は、ケイ素およびアルミニウムの酸化物を含んでなるであろう。また、異なるアルミナ相が、無機酸化物の母材中に組込まれることが好ましい。アルミニウムオキシヒドロキシド−γ−アルミナ、ベーマイト、ダイアスポア、および遷移アルミナ(α−アルミナ、β−アルミナ、γ−アルミナ、δ−アルミナ、ε−アルミナ、κ−アルミナ、およびρ−アルミナなど)の種が用いられることができる。好ましくは、アルミナ種は、アルミニウムトリヒドロキシドである。ギブサイト、バイヤライト、ノルドストランダイト、またはドイエライトなどである。母材物質はまた、亜リン酸またはアルミニウムホスフェートを含んでもよい。大細孔触媒および中細孔触媒が、前記無機酸化物の母材中に、同じまたは異なる触媒粒子で存在することは、本発明の範囲内である。
【0070】
上記されるように、重質炭化水素原料と分解触媒との接触は、炭素をその上に析出して含む廃触媒粒子およびより低沸点の生成物ストリームをもたらす。廃触媒粒子の大部分、好ましくはその実質的に全ては、FCC反応器のストリッピング域へ送られる。ストリッピング域は、典型的には、触媒粒子の稠密床(または「稠密相」)を含み、そこで揮発性物質のストリッピングが、スチームなどのストリッピング剤を用いることによって起こるであろう。また、ストリッピング域より上に空間が存在するであろう。そこでは、触媒密度は実質的に低く、その空間はときに「希薄相」と呼ばれる。
【0071】
ストリッピングされた触媒粒子の大部分、好ましくはその実質的に全ては、続いて、再生域へ送られ、そこで廃触媒粒子は、酸素含有ガス(好ましくは空気)の存在下に廃触媒粒子からのコークを燃焼することによって再生され、それにより再生触媒粒子が製造される。この再生工程は、触媒活性を回復し、同時に触媒を、温度約1202°F(650℃)〜約1382°F(750℃)へ加熱する。高温の再生触媒粒子の大部分、好ましくはその実質的に全ては、次いで、FCC反応域へリサイクルされ、そこでそれらは、注入されたFCC原料に接触する。
【0072】
先に記述されるように、重質炭化水素原料と分解触媒との接触はまた、FCC反応器のオーバーヘッド生成物ストリームをもたらす。本発明の好ましい実施形態においては、FCC反応器のオーバーヘッド生成物ストリームの少なくとも一部は、更に、液体燃料生成物を製造する際に用いるのに、少なくともナフサストリームおよび留出油ストリームに分離される。
【0073】
次の実施例は、例証目的のためにのみ示され、いかなる意味においても、本発明を限定するものとして理解されるものではない。
【実施例】
【0074】
本実施例においては、現発明および先行技術について、広範な低温流動試験を行った。この試験は、先行技術(分離域は、ライザーと一次導管との間の導管内にある)、および本発明の構成の好ましい実施形態の両方について、縮尺寸法で、および炭化水素およびスチームの代わりに空気を用いる運転条件で、透視プレキシグラス型を運転することからなる。ベントを通って流出するガスを、ヘリウムトレーサーおよびプローブにより測定した。ベントを通って流出する触媒を、収集して秤量した。先行技術の設計の低温流動試験装置の組立て図を図6−Aに示し、一方用いられたこの低温流動試験装置の写真を、図6−Bに示す。本発明の好ましい実施形態の低温流動試験装置の組立て図を、図7−Aに示し、一方用いられたこの低温流動試験装置の写真を、図7−Bに示す。
【0075】
次の点が注目されるべきである。即ち、これらの低温流動試験においては、本発明の設計を、本明細書の図1に例証される最も近い商業的な先行技術に比較したことであり、Krambeck/Kamでないことである。何故なら、Krambeck/Kamの設計は、本明細書の「背景技術」並びに「発明を実施するための形態」の節で議論される理由で、商業的に用いられないか、または実行可能でないからである。しかし、また、本実施例に記載される低温流動試験においては、現発明の新しい設計を、厳格な非整列位置で試験したことが注目されるべきであり、現発明は、上部および下部ライザーが非整列位置にある場合には、先行技術のKrambeck/Kamの設計の欠点を克服することが発見された。これらの実験は、解放域がライザーと一次導管との間の導管内にある先行技術の設計に比較して、本発明について、炭化水素ロスの実質的な減少(ヘリウムトレーサーを測定することによって示される)および触媒ロスの実質的な減少を示した。本実施例の試験からの比較データ(図8−A、8−B、9−A、9−B、10−A、および10−Bに示される)は、先行技術に比較して、本発明のプロセス結果の実質的かつ驚くべき向上を例証する。
【0076】
低温流動試験を、先行技術および本発明の形態に対して行なった。これは、本発明者が、実際条件下のロスを可視化し、測定することを可能にするだけでなく、本発明者が、本発明の設計を、「非整列」条件下に運転することを可能にして、本問題が、真に、先行技術のKrmbeckおよびKamの設計の伴う非整列の問題を除いたことが試験された。先行技術の低温流動試験に対する一般的な概略形態を、図6−Aに示し、一方先行技術の形態に対する実際の低温流動装置を、図6−Bの写真に示す。本発明の低温流動試験に対する一般的な概略形態を、図6−Aに示し、一方本発明の実施形態に対する実際の低温流動装置を、図6−Bの写真に示す。
【0077】
先行技術の形態の縮尺型に対する低温流動試験装置を、図6−Aに概略示す。装置は、先行技術の解放域(620)によって一次サイクロン取入口(615)へ接続されたライザー(610)からなる。解放域は、完全に、気密性のプレキシガラスハウジング(625)に囲包された。触媒は、空気(630)により流動化され、ライザー(610)に入った。ヘリウムトレーサー(635)が、ライザーに注入され、ヘリウムトレーサーの量が、プレキシガラスハウジングの内側(640)で監視されて、解放域(620)からの漏れ量が定量された。試験中、空気(645)が、プレキシガラス領域に、測定流速で圧入された。これは、低温流動試験において「ベントガス」として機能した。解放域から失われた触媒は、プレキシガラス筐体から、開口(650)を経て収集され、定量された。
【0078】
類似の配置においては、本発明の好ましい形態の縮尺型の低温流動試験装置を、図7−Aに概略示す。装置は、本発明の解放域形態(720)によって上部ライザー(715)へ接続された下部ライザー(710)からなる。解放域は、完全に、気密性のプレキシガラスハウジング(725)に囲包された。触媒は、空気(730)により流動化され、ライザー(710)に入った。ヘリウムトレーサー(735)が、下部ライザーに注入され、ヘリウムトレーサーの量が、プレキシガラスハウジングの内側(740)で監視されて、解放域(720)からの漏れ量が定量された。試験中、空気(745)が、プレキシガラス領域に、測定流速で圧入された。これは、低温流動試験において「ベントガス」として機能した。解放域から失われた触媒は、プレキシガラス筐体から、開口(750)を経て収集され、定量された。
【0079】
先行技術および本発明の両模擬の低温流動実験形態については、ライザーは、直径8インチであった。両模擬について、ライザーは、頂部の90゜のエルボーで終わり、ベントの位置は、上記される二つの形態の間の重要な相違であった。低温流動実験においては、いくつかの重要な指標が、典型的な商業的運転条件を反映して変動された。触媒流束は、50〜105lb/ft−秒で変動された。ライザー速度は、40〜68ft/秒で変動された。ベント速度は、0〜20ft/秒で変動された。本発明の低温流動模擬については、円錐体の角度は、18゜へ設定され、移行長さは12インチであり、重なりは12インチであり、上部ライザーの直径は下部ライザーの直径と同じ8インチであり、ライザーベントの間隙は、2インチであった。本発明が非整列状態で模擬された場合には、偏心性は、100%であり、そのために下部ライザーの外径は、スリーブの内径と接触した。
【0080】
図8−Aおよび8−Bは、先行技術および本発明の両方を「整列」条件下に、並びに本発明を「非整列」条件下に、異なるライザー速度で試験した結果を示す。図8−Aは、解放域からの固体漏れ(触媒)の量を、ライザー速度の関数として示し、一方図8−Bは、解放域からのガス漏れ(炭化水素)の量を、ライザー速度の関数として示す。先ず、図8−Aにおいては、本発明の「整列形態」においては、固体漏れが、約5桁の大きさまたはスタガリング>99.999%で減少したことが理解できる(指数尺度のグラフ)。更により意外にも、本発明は、殆ど、整列および非整列の場合の間に触媒ロスの差を示さなかった。驚くほどではないが、非常に重要なことには、図8−Bに示されるように、本発明の整列された場合のガス漏れ速度は、凡そ、先行技術のガス漏れ速度の約1〜2%であった。加えて、本発明は、ガス漏れを非整列条件で最小にするのに、良好またはより良好に性能を発揮した。
【0081】
図9−Aおよび9−Bは、先行技術および本発明の両方を「整列」条件下に、並びに本発明を「非整列」条件下に、異なるライザー流束速度で試験した結果を示す。ライザー流束速度は、ライザーを通る触媒の質量流速の尺度である。図9−Aは、解放域からの固体漏れ(触媒)の量を、ライザー流束速度の関数として示し、一方図9−Bは、解放域からのガス漏れ(炭化水素)の量を、ライザー流束速度の関数として示す。図9−Aおよび9−Bから、固体およびガスの両漏れを軽減する向上された性能の類似の程度が、ライザー流束速度の関数として測定された場合に、先行技術と比較された本発明の性能によって示されることが理解できる。加えて、「整列」および「非整列」の両条件における本発明の性能は、かなり類似し、および両条件において、先行技術より顕著に向上された。
【0082】
実施例2の低温流動実験からの最後の図面を、本明細書の図10−Aおよび10−Bに示す。図10−Aおよび10−Bは、先行技術および本発明の両方を「整列」条件下に、並びに本発明を「非整列」条件下に、異なるベント速度で試験した結果を示す。図10−Aには、解放域からの固体漏れ(触媒)の量が、ベント速度の関数として示され、一方図10−Bには、解放域からのガス漏れ(炭化水素)の量が、ライザー流束速度の関数として示される。「ベント速度」(または「ベントガス速度」)は、解放域を囲周する領域から移動するガスである「ベントガス」の速度であり、それが、解放域を通って、一次サイクロン導管(先行技術の場合)またはライザー(本発明の場合)に移動する際の速度として計算される。ベント速度は、試験設備へのベントガスの容積流速として測定される。これは、環状間隙領域の断面積(図3−Aの領域(301)として示される)で除される。
【0083】
再度、図10−Aおよび10−Bは、異なるベント速度および触媒質量流束速度(「U」)においてさえ、先行技術を超える本発明の実質的な向上を示す。再度、図10−Aで理解できるように、殆どのベント速度において、本発明からの固体漏れ速度は、殆どの条件下で、先行技術の固体漏れ速度の約1%未満である。また、実質的な向上が、図10−Bのガス漏れ速度に示される。また、予想外に発見されたことは、約10ft/秒以上のベントガス速度では、漏れ速度は、実質的に向上されたことである。これは、約15ft/秒以上のベントガス速度のデータから、更により明白である。また、図10−Aおよび10−Bから理解できるように、より高いライザー流束速度(特に約40lb超/ft−秒)は、固体およびガスの両漏れ速度の低減の向上をもたらした。
【0084】
これらの実験の結果は、現発明が、先行技術に比較して、触媒ロスを実質量低減したことを示した。実験はまた、炭化水素のロスが、本発明においては、先行技術の形態におけるより実質的に低いことを示した。更なる動的モデル化の検討は、これらの結果としてのより低い炭化水素ロスが、軽質ガス選択性を向上することを示す。これは、本発明の重要な経済的態様である。
【0085】
動的モデル化の検討は、この結果としてのより低い炭化水素ロスが、軽質ガス選択性を(反応器の希薄相におけるより少ない熱分解により)向上することを示す。これは、本発明の重要な経済的態様である。動的モデルに基づいて、希薄相への炭化水素漏れの10%の低減は、C収率の1〜3容量%の低減をもたらす。典型的な運転条件下では、これは、FCC装置が、一定原料速度で、ガソリン収率を約1%増大し、結果として、ボトム収率を約1%減少することを可能にするであろう。石油工業における典型的な経済シナリオについては、この変化は、相当の経済的信用をもたらすであろう。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動接触分解反応器槽であって、
a)その一部が前記流動接触分解反応器槽内に配置され、その下端が、前記流動接触分解反応器槽のシェルへ取付けられる下部内部反応器ライザー、および
b)前記流動接触分解反応器槽内に配置され、その下端が、円筒形スリーブに接続された円錐部位内で終わる上部内部反応器ライザー
を含み、
前記上部内部反応器ライザーの上部部位は、前記反応器槽の希薄相部位とは流体連通せず、少なくとも二つのライザー出口部が、前記上部内部反応器ライザーの前記上部部位と機械的に接続され、
前記下部内部反応器ライザーの上端は、前記上部内部反応器ライザーおよび前記反応器槽の前記希薄相部位と流体連通し;
前記下部内部反応器ライザーは、前記上部内部反応器ライザーと機械的に接続されず;
前記上部内部反応器ライザーの前記円錐部位の最大直径は、前記下部内部反応器ライザーの上端の直径より大きく;
前記上部内部反応器ライザーの前記円筒形スリーブは、前記下部内部反応器ライザーの上端の直径より大きな直径を有し;
前記上部内部反応器ライザーの前記円筒形スリーブの少なくとも一部は、前記下部内部反応器ライザーの上端の少なくとも一部と重なり;
前記上部内部反応器ライザーの前記円筒形スリーブおよび前記下部内部反応器ライザーの上端の重なり部分の領域には、前記円筒形スリーブと前記下部内部反応器ライザーの上端の間の偏心を制約する機械的手段が全く配置されない
ことを特徴とする流動接触分解反応器槽。
【請求項2】
前記ライザー出口部はそれぞれ、一次機械的サイクロンの入口部へ、第一の導管によって機械的に接続され、
前記一次機械的サイクロンは、触媒粒子を炭化水素蒸気から遠心分離するように設計され、
前記第一の導管には、前記第一の導管の第一の端部のライザー出口部および前記第一の導管の第二の端部の一次機械的サイクロン入口部を除いて、開口が全く存在しない
ことを特徴とする請求項1に記載の流動接触分解反応器槽。
【請求項3】
前記少なくとも一つの一次機械的サイクロンは、第二の機械的サイクロンが触媒粒子を炭化水素蒸気から遠心分離するように設計される第二の機械的サイクロン入口部へ、第二の導管によって物理的に接続される蒸気出口部を有し、
前記第二の導管には、前記第二の導管の第一の端部の一次機械的サイクロン出口部および前記第二の導管の第二の端部の第二の機械的サイクロン入口部を除いて、開口が全く存在しない
ことを特徴とする請求項2に記載の流動接触分解反応器槽。
【請求項4】
前記上部内部反応器ライザーの円筒形スリーブと前記下部内部反応器ライザーの上端の重なり部分の長さは、前記流動接触分解反応器槽が運転(高温)状態にある場合には、6〜36インチであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の流動接触分解反応器槽。
【請求項5】
前記上部内部反応器ライザーの前記円錐部位と、前記上部内部反応器ライザーの軸の間の鋭角は、5゜〜25゜であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の流動接触分解反応器槽。
【請求項6】
前記下部内部反応器ライザーの頂部から、前記円錐部位の底部まで測定された移行長さは、前記流動接触分解反応器槽が運転(高温)状態にある場合には、6〜36インチであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の流動接触分解反応器槽。
【請求項7】
前記下部内部反応器ライザーと、前記上部反応器ライザーの前記円筒形スリーブの間には、1〜4インチの環状間隔が存在することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の流動接触分解反応器槽。
【請求項8】
前記流動接触分解反応器槽の上部部位を、前記流動接触分解反応器槽の下部部位から実質的に分離する、実質的に水平に差し込まれたコーキング防止バッフル板を更に含み、前記コーキング防止バッフルは、前記流動接触分解反応器槽内で、前記一次機械的サイクロン入口部より下の高さに配置され;
前記コーキング防止バッフルは、前記上部内部反応器ライザー部位、少なくとも一つの前記一次サイクロン、少なくとも一つの前記二次サイクロンまたはそれらの組み合わせと機械的に接続され;
前記コーキング防止バッフル板は、前記反応器槽の内壁に対して可動自在である
ことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の流動接触分解反応器槽。
【請求項9】
前記コーキング防止バッフル板は、複数の蒸気移行孔および/または開口パイプを含んでなり、
前記蒸気移行孔および/または開口パイプは、前記コーキング防止バッフル板を貫通し、
前記蒸気移行孔および/または開口パイプは、前記上部内部反応器ライザーに実質的に隣接して配置される
ことを特徴とする請求項8に記載の流動接触分解反応器槽。
【請求項10】
前記上部内部反応器ライザーの前記円筒形スリーブと、前記下部内部反応器ライザーの上端の間の前記偏心は、高温状態で10%超であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の流動接触分解反応器槽。
【請求項11】
前記上部内部反応器ライザーの前記円筒形スリーブと、前記下部内部反応器ライザーの上端の間の前記偏心は、高温状態で20%超であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の流動接触分解反応器槽。
【請求項12】
前記円錐部位の上の前記上部内部反応器ライザーの内径の少なくとも一部は、前記下部内部反応器ライザーの内径の少なくとも一部より大きいことを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の流動接触分解反応器槽。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載の流動接触分解反応器槽を利用する流動接触分解方法であって、前記方法の工程は、
a)重質炭化水素原料を、前記外部流動接触分解反応器ライザーの部位へ接続される一つ以上の原料ノズルを通して注入する工程であって、前記外部流動接触分解反応器ライザーの前記部位は、前記流動接触分解反応器槽の内側に配置される前記下部内部反応器ライザーと流体連通している工程、
b)前記重質炭化水素原料を、前記外部流動接触分解反応器ライザーにおいて、高温流動触媒と接触させる工程、
c)前記重質炭化水素原料および高温流動触媒の少なくとも一部を、前記下部内部反応器ライザーを通して送る工程、
d)前記重質炭化水素原料および前記高温流動触媒の少なくとも一部を、前記下部内部反応器ライザーから前記上部内部反応器ライザーへ送る工程、および
e)流動接触分解生成物ストリームおよび廃触媒ストリームを、前記流動接触分解反応器槽から回収する工程
を含み、
前記重質炭化水素原料の少なくとも一部は、より低分子量の炭化水素化合物に接触分解され、これは、前記流動接触分解生成物ストリームとして回収される
ことを特徴とする流動接触分解方法。
【請求項14】
炭化水素含有蒸気を、前記流動接触分解反応器槽の前記希薄相部位から前記上部内部反応器ライザーに流す工程を更に含み、
前記炭化水素含有蒸気は、前記下部内部反応器ライザーと前記上部内部反応器ライザー部位の前記円筒形スリーブの間の環状空隙を通過し、
前記環状空隙を通る炭化水素含有蒸気の速度は、10ft/秒〜30ft/秒である
ことを特徴とする請求項13に記載の流動接触分解方法。
【請求項15】
前記外部流動接触分解反応器ライザー、前記下部内部反応器ライザーおよび前記上部内部反応器ライザーにおける、前記重質炭化水素原料と前記高温流動触媒の混合物の合計滞留時間は、5秒未満であることを特徴とする請求項13〜14のいずれかに記載の流動接触分解方法。

【図1】
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【図2】
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【図3−A】
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【図3−B】
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【図4】
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【図5】
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【図6−A】
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【図6−B】
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【図7−A】
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【図7−B】
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【図8−A】
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【図8−B】
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【図9−A】
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【図9−B】
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【図10−A】
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【図10−B】
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【公表番号】特表2011−528721(P2011−528721A)
【公表日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−509475(P2011−509475)
【出願日】平成21年5月12日(2009.5.12)
【国際出願番号】PCT/US2009/002929
【国際公開番号】WO2009/151522
【国際公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(390023630)エクソンモービル リサーチ アンド エンジニアリング カンパニー (442)
【氏名又は名称原語表記】EXXON RESEARCH AND ENGINEERING COMPANY
【Fターム(参考)】