説明

炭化水素オキシケイ素化合物の製造方法

本発明の対象は、一般式(1)HmSi(OR)n(OR′)oR′′p4-m-n-o-p の少なくとも1種の単位を有する、炭化水素オキシ基を有するケイ素化合物(A)を、
一般式(2)Hm+nSi(OR′)oR′′p4-m-n-o-pの少なくとも1種の単位を有するケイ素化合物(B)と、一般式(3)ROHのアルコールとの、担体材料に結合されたNi、Pd、Ptから選択される金属である触媒(K)の存在での反応により製造する方法であり、その際に形成される基OR 1molあたり多くとも1リットルの溶剤が使用され、かつ上記式中、R、R′、R′′、X、m、n、o及びpは請求項1に示した意味を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、担体材料上の金属触媒の存在でのSiH−ケイ素化合物とアルコールとの反応による炭化水素オキシケイ素化合物の製造方法に関する。
【0002】
技術水準からは、アルコキシシロキサンの多様な製造方法が知られている。
【0003】
例えば、特開平(JP-A)09-040681号公報によれば、カチオン交換樹脂の存在でのアルコキシシランの加水分解は、ケイ素原子2〜5個を有するアルコキシシロキサンの混合物をもたらす。
酸の存在での線状又は環状のシロキサンとジアルコキシシランとの平衡化によるα,ω−ジアルコキシオリゴシロキサンへの経路は、例えば特開平(JP-A)09-012720 号公報に記載されている。
1,3−ジメトキシ−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンへの、相応するα,ω−ジクロロジシロキサンから出発してアンモノリシス、加水分解、メタノールとのエステル化を経る費用のかかる経路は、特開平(JP-A)08-325277号公報に記載されている。
前記の方法は、シロキサンの混合物が得られ、これらから一定の化合物、特にそれぞれのジシロキサンが、費用をかけて不経済に単離されなければならないという欠点を有する。
【0004】
原子価の全て又は一部がアルコキシ基により占められているシラン及びシロキサンは、塩基性、酸性又は金属含有の触媒の存在での相応するSiH−化合物とアルコールとの反応により水素の遊離下に製造されうる。その際に、Siに結合した水素原子は、それぞれのアルコールのアルコキシ基と、ガス状水素の遊離下に交換される。前記触媒の中には、所望のSiH−交換反応を促進するだけでなく、シロキサン骨格の平衡化又は転位のような望ましくない副反応も引き起こす代表例が存在する。これらの強塩基性(例えば金属アルコラート)又は酸性の触媒は、特に塩基不相溶性もしくは酸不相溶性の官能基の存在の場合の目的に合った反応に適していないので、選択反応を可能にする代案が探索された。
【0005】
そのような方法の1つの選択肢は、次の明細書に例示的に示されている:
米国特許(US)第2967171号明細書には、SiH−シラン及びSiH−シロキサンとアルコールとの脱水素縮合(Dehydrokondensation)による、Siに結合したHとアルコキシ基との交換が記載されている。触媒としてヘキサクロロ白金酸が利用される、なぜなら、飽和系のみが使用されることができ、かつ目的生成物への塩化物イオンもしくは塩素含有化合物の連行は排除できないからである。
【0006】
白金化合物及び有機酸の組合せが、欧州特許出願公開(EP-A)第475440号明細書においてはSiH−シロキサンと少なくとも4個の炭素原子を有する脂肪族アルコールとの脱水素縮合用の触媒として利用される。目的生成物への有機酸の連行は排除されることができない。
【0007】
独国特許出願公開(DE-A)第1248048号明細書には、触媒としてのヒドロキシルアミンの使用が記載されている。しかしまたここでも、目的生成物への有機成分の連行の危険が示されている。
【0008】
SiH単位とアルコールとの脱水素縮合用の触媒系は欧州特許(EP)第1627892号明細書に記載されている。これは、ホウ素化合物(例えばトリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン)及び相乗作用する金属塩少なくとも1種の混合物である。目的生成物への金属化合物又は含ホウ素化合物の痕跡物の連行はそれゆえ排除できず、その結果、この経路は特に半導体純度のアルコキシシロキサンの製造に適していない。
【0009】
ポリグリコールアルコールとポリ(メチル水素)シロキサンとの脱水素カップリングは、Zhang, Ruzhi; Zhang, Zhengcheng; Amine, Khalil; West, Robert ( Organosilicon Research Center, Department of Chemistry, University of Wisconsin-Madison, Madison, WI, 53706, USA) Silicon Chemistry (2005), 2(5/6), 271-277 )によれば、Rh(PRh33Cl及びPd2(dba)3を用いて、分枝を形成することなく触媒されることができる。
【0010】
水素化亜鉛は、H. MimounによりJournal of Organic Chemistry (1999), 64(7), 2582-2589に、とりわけアルデヒド、ケトン及びエステルのヒドロシリル化用の触媒として記載されており、しかしまたアルコールの脱水素シリル化に使用されることができる。NaBH4及び亜鉛カルボキシラートからの水素化亜鉛の製造及びそれらの取り扱いは、費用がかかり、かつ安全工学的に要求が厳しい。
【0011】
前記の全ての方法は、目的生成物の単離の際に目的生成物への(助)触媒痕跡物の連行が行わうれるという欠点を有し、その結果、これらの方法から入手可能な生成物は、不純物が妨害する用途における、例えば半導体分野におけるCVD前駆物質としての使用のために、制約されてのみ適している。部分的には、前記触媒は、購入により入手可能ではなく、かつ費用をかけてより高価に合成されなければならない。前記プロセスにおける再循環性又は再利用性はたいてい不可能である。
【0012】
L.H.Sommer及びJ.E.Lyons(Journal of the American Chemical Society 91, 7061 (1969))は、一部が担体材料上に固定された不均一系触媒(例えば活性炭上のパラジウム、ルテニウム及びロジウム)での光学活性なシランとアルコールとの脱水素縮合を記載する。それらの反応を、しかしながら彼らは専ら無極性溶剤の存在で実施した、それというのも、彼らが極性溶剤により当該の触媒の表面が被毒されるという指摘をしたからである。
【0013】
これらの欠点が生じず、かつできるだけ購入により入手可能な単純な触媒を用いて反応可能である方法を見出すという課題が存在していた。
【0014】
本発明の対象は、一般式(1)
mSi(OR)n(OR′)oR′′p4-m-n-o-p (1)
で示される少なくとも1種の単位を有する、炭化水素オキシ基を有するケイ素化合物(A)を、
一般式(2)
m+nSi(OR′)oR′′p4-m-n-o-p (2)
で示される少なくとも1種の単位を有するケイ素化合物(B)を、一般式(3)
ROH (3)
で示されるアルコールと、担体材料に結合されたNi、Pd、Ptから選択される金属である触媒(K)の存在で反応させることによって、
製造する方法であり、その際に形成される基OR 1molあたり多くとも1リットルの溶剤が使用され、かつ上記式中、
Rは、炭素原子1〜18個を有する一価の炭化水素基を表し、前記基はOH基、ハロゲン原子、シリル基、シロキシ基、−CN、−COOR1、−OCOOR2、−CONR34、−OCONR56、−NR7CONR89、−SO2−R10、−OSO2−R11、−OP(OR12)(OR13)により置換されていてよく、その際に前記炭素鎖は隣接していない−(CO)−、−O−、−S−又は−NR14−基により中断されていてよい;
R′、R′′はそれぞれ、炭素原子1〜18個を有する一価の炭化水素基を表し、前記基はハロゲン原子、シリル基、シロキシ基、−CN、−COOR1、−OCOOR2、−CONR34、−OCONR56、−NR7CONR89、−SO2−R10、−OSO2−R11、−OP(OR12)(OR13)により置換されていてよく、その際に前記炭素鎖は隣接していない−(CO)−、−O−、−S−又は−NR14−基により中断されていてよい;
1〜R14はそれぞれ、炭素原子1〜18個を有する一価の炭化水素基を表し、前記基はハロゲン原子により置換されていてよく、
Xは、化学結合を表し、前記結合を介してケイ素原子を有する基が結合されており、
mは0、1、2又は3の値を表し、
nは1、2又は3の値を表し、
m+nは1、2又は3の値を表し、
oは0、1、2又は3の値を表し、
pは0、1、2又は3の値を表し、かつ
m+n+o+pは1、2、3又は4の値を表す。
【0015】
意外なことに、担体材料上のNi、Pd、Ptの存在でのSiH化合物とアルコールとの反応が、完全な不在までの本質的により少ない割合の無極性溶剤で、温和な条件ですら迅速かつ自発的に進行し、かつ水素脱離下に定量的に相応するアルコキシシロキサン(アルコキシシラン)をもたらし、かつそれにより経済性が空時収率の増加により改善されることが見出された。本発明による方法のさらなる利点は、不溶性の不均一系触媒が容易にかつ完全にろ過、沈降、遠心分離によるか又は場合により目的生成物の留去により分離され、かつ必要に応じて再び使用されることができることにある。それにより、本発明による方法は、例えば半導体工業においてCVD前駆物質として使用される特に純粋なアルコキシシロキサン(アルコキシシラン)の費用のかからない製造が運命づけられている。さらなる利点は、収率を低下させ、かつ廃棄に環境負荷がかかる副産物を発生させる副反応の最も大規模の回避である。
【0016】
m+n+o+p=4、すなわち4−m−n−o−p=0である場合には、ケイ素化合物(A)及び(B)は、モノシランである。
【0017】
m+n+o+p=1、2又は3である場合には、ケイ素化合物(A)及び(B)中で、一般式(1)及び(2)の単位中で化学結合Xを介して、ケイ素原子を有する基が結合されている。
【0018】
炭化水素基Rは、線状、環状、分枝鎖状、芳香族、飽和又は不飽和であってよい。好ましくは、炭化水素基Rは炭素原子1〜6個を有し、特に好ましくは、アルキル基、アルキルアリール基、アリールアルキル基及びフェニル基である。特に好ましいアルキル基は、メチル及びエチルである。好ましくは、炭化水素基Rは、付加的なOH基を有しないか又は1〜6個の付加的なOH基、特に1、2又は3個のOH基を有する。1個の炭素原子上にOH基が1個のみ存在する。
【0019】
一価の炭化水素基R′、R′′及びR1〜R14は、線状、環状、分枝鎖状、芳香族、飽和又は不飽和であってよい。好ましくは、炭化水素基R′、R′′及びR1〜R14は、炭素原子1〜6個を有し、特に好ましくは、アルキル基、ビニル基、アリル基及びフェニル基である。特に好ましいアルキル基は、メチル及びエチルである。
【0020】
化学結合Xを介して結合した基は、好ましくは多価の炭化水素基RCであり、前記基はケイ素化合物(A)の場合に一般式(1)の1種又はそれ以上の単位もしくはケイ素化合物(B)の場合に一般式(2)の1種又はそれ以上の単位、特に好ましくは一般式(1)もしくは(2)の0又は1種の単位を有する。好ましくは、炭化水素基RCは2、3又は4価である。炭化水素基RCは、好ましくは1〜50個、特に1〜18個、特に好ましくは1〜6個、例えば1、2、3又は4個の炭素原子を有する。化学結合Xは、この場合にSi−C結合である。
【0021】
化学結合Xを介して結合した基は、好ましくは一価又は多価の炭化水素基RCSiであり、前記基はSi−C結合を介して結合したケイ素原子を有する。ケイ素化合物(A)及び(B)は、基RCSi及び一般式(1)もしくは(2)の1種又はそれ以上の単位からなっていてよい。好ましくは、炭化水素基RCSiは2、3又は4価である。基RCSiは、好ましくは1〜50個、特に1〜18個、特に好ましくは1〜6個、例えば1、2、3又は4個の炭素原子を有する。基RCSiは、好ましくは1〜10個、特に好ましくは1〜6個、例えば1、2、3又は4個のケイ素原子を有する。化学結合Xは、この場合にSi−C結合である。
【0022】
化学結合Xを介して結合した基は、好ましくは一価又は多価の(ポリ)シラン基RSiであり、前記基はSi−Si結合を介して結合したケイ素原子を有する。ケイ素化合物(A)及び(B)は、基RSi及び一般式(1)もしくは(2)の1種又はそれ以上の単位からなっていてよい。好ましくは、炭化水素基RSiは2、3又は4価である。基RSiは、好ましくは1〜50個、特に1〜18個、特に好ましくは1〜6個、例えば1、2、3又は4個のケイ素原子を有する。基RSiは、好ましくは1〜10個、特に好ましくは1〜6個、例えば1、2、3又は4個のケイ素原子を有する。化学結合Xは、この場合にSi−Si結合である。
【0023】
化学結合Xを介して結合した基は、好ましくは一価又は多価の(ポリ)シロキサン基ROSiであり、前記基は、Si−O−Si結合を介して結合したケイ素原子を有する。(ポリ)シロキサン基ROSiは、一般式(4)、(5)、(6)及び/又は(7)
(X′)b(R′′′)cSi (4)
(X′)d(R′′′)eSiO1/2 (5)
(X′)f(R′′′)gSiO2/2 (6)
X′SiO3/2 (7)
で示される単位により一般式(1)もしくは(2)の単位に結合されていてよく、上記式中、
X′は基−O−を意味し、
R′′′はR′′の意味を有し、
bは1、2、3又は4の値を有し、
cは0、1、2又は3の値を有し、
b+cは4の値を有し、
dは1、2又は3の値を有し、
eは0、1又は2の値を有し、
d+eは3の値を有し、
fは1又は2の値を有し、
gは0又は1の値を有し、かつ
d+eは2の値を有する。
【0024】
化学結合Xは、X′と一緒になってこの場合にSi−O−Si結合を形成する。
【0025】
(ポリ)シロキサン基ROSiは、さらに好ましくは一般式(8)、(9)、(10)及び(11)
R′′′3SiO1/2 (8)
R′′′2SiO2/2 (9)
R′′′SiO3/2 (10)
SiO4/2 (11)
で示される1000個までの別の単位を有してよく、上記式中、
R′′′は前記の意味を有する。
【0026】
ケイ素化合物(A)及び(B)は、基ROSi及び一般式(1)もしくは(2)の1種又はそれ以上の単位からなっていてよい。基ROSiは、一般式(4)〜(11)の単位を好ましくは1〜1000個、特に1〜200個、特に好ましくは1〜10個、例えば1、2、3又は4個有する。
【0027】
ケイ素化合物(A)及び(B)は、線状、環状又は分枝鎖状であってよい。
【0028】
炭化水素基RがさらにOH基を有する場合には、2個又はそれ以上のケイ素化合物(A)は、基Rを介して結合又は架橋されていてよい。
【0029】
好ましくは、一般式(12)〜(15)
(RO)h−SiR′′4-h (12)
RO−[SiR′′2−O−]z−R (13)
[RO−SiR′′2−O]y−Si−R′′4-y (14)
[RVR′′2SiO1/2a[(R{O−CH2CH(RIV)}rO)R′′SiO2/2k[SiR′′22/2l[SiHR′′O2/2m (15)
で示されるケイ素化合物(A)が製造され、上記式中、
IVは、水素原子又はメチル基を表し、
Vは、メチル基、エチル基、ビニル基、アリル基又はフェニル基を表し、
hは1又は2の値を表し、
zは1〜20の値を表し、
yは1、2、3又は4の値を表し、
aは0〜2の値を表し、
rは0〜20の値を表し、
kは1〜20の値を表し、
lは0〜200の値を表し、
mは0〜100の値を表し、かつ
a+k+l+mは少なくとも4の値を表し、かつ
R及びR′′は前記の意味を有する。
【0030】
一般式(13)及び(15)のケイ素化合物(A)の混合物中で、z、a、r、k、l、mは平均値を表してよく、ひいては小数位を有する数であってもよい。
【0031】
一般式(15)中で、単位[(R{O−CH2CH(RIV)}rO)R′′SiO2/2kが存在してよく、その際に基RIVは専ら水素原子又はメチル基を表すか、又は基RIVが混ざって水素原子又はメチル基を表す。水素原子0〜100%の水素原子/メチル基の全ての混合比が可能である。
【0032】
本発明による方法を用いて得ることができる多様なケイ素化合物(A)は、次の例に反映されうる:
(tBuO)HSi(OEt)2、MeO−Si(n−Bu)3、(MeOSiMe22−CH−CH−(SiMe2OMe)2、(MeO)3Si−O−CH2CH2−O−Si(OMe)3、(EtO)3Si−O−CH2CH(CH3)−O−Si(OEt)3、PhO−SiPh(OMe)2、n−シクロヘキシル−O−SiMe(OEt)2、HO−CH2CH2−O−SiMe2(O−CH2CH2−O−CH2CH2−O−CH2CH2−OMe)、HO−CH2−SiMe2−O−SiMe2−CH2−O−SiMe2−O−SiMe2−O−CH2−SiMe2−O−SiMe2−CH2−OH、
Me−CH2CH2O−CH2CH2O−CH2CH2O−CH2CH2O−SiMe2O−SiMe2O−SiMe2O−SiMe2O−SiMe2−CH=CH2
tBuOSi(OEt)2−CH2−Si(OEt)2H、(EtO)3Si−O−CH2CH(CH3)−O−Si(OEt)3MeO−SiMe2−O−SiMe2−OMe、(MeO−SiMeO)4、(EtO−SiMeO)5
(Me2SiO)3(Si(tBuO)MeO)、(MeO−SiMe2−O)4Si、(MeO−SiMe2−O)3SiMe、(PhO−SiMe2−O)3SiPh、
Me3Si−O−SiMe2−O−CH2CH2−O−CH2CH2−O−CH2CH2−CH2CH2OMe、
MeO−SiMe2O−(SiMe2O)35−SiMe2−OMe、
Me3SiO−(SiHMeO)35−(Si(OEt)MeO)20−SiMe3
Me3SiO−(SiMe2O)220(Si(O−iPr)MeO)5−SiMe3
2C=CH−CH2−O−CH2CH2−O−SiMe2O−(SiMe2O)140(SiHMeO)5−SiMe2−O−CH2CH2−O−CH2−CH=CH2
(EtO)3Si−O−(SiMe2O)495−Si(OEt)3
[Me3SiO1/24[SiMeO3/27.5[SiMe(OEt)O1/24[SiMeHO2/21
[(EtO)3SiO1/26[(EtO)2SiO2/24.6[HSi(OEt)O2/21.4[HSiO3/22.2[SiO4/21
2C=CH−SiMe2O−(SiMe2O)440(Si[O−(CH2CH2O)3−Me]MeO)14−SiMe2−CH=CH2
Me3SiO−(SiMe(CH=CH2)O)4.9−(SiMe2O)12−(Si[O−(CH29−CH=CH2]MeO)8.3−SiMe3
Me3SiO−(SiMeCH2CH2CF3O)15.2(Si[O−n−ドデシル]MeO)7−SiMe32C=CH−SiMe2O−
(SiMe{OCH2CH2CH2OCH2CH2OCH2CH2OCH2CH2OMe}O)6(Si(OEt)MeO)2−SiMe2−CH=CH2
【0033】
本発明による方法の特殊性は、一般式(3)のアルコールとの脱水素縮合反応に関連しないケイ素化合物(B)の分子部分が、ケイ素化合物(A)への反応により通例変化されないか又は非本質的にのみ変化されることである。分子骨格の考えられる変化は、本質的には、加水分解反応により生じるシラノール基の縮合反応のような副次的な副反応を制限する。そのために必要な水は、例えば反応成分により反応へ持ち込まれることができる。それに応じて、ケイ素化合物(B)中に含まれる一般式(2)の単位のみが、化学量論及び反応条件に応じて完全に又は部分的に一般式(1)の単位へ変換される。ケイ素化合物(A)は、それに応じて本質的には本発明によるプロセスにおいて一般式(2)の単位から形成される一般式(1)の単位がケイ素化合物(B)とは相違する。
【0034】
ケイ素化合物(B)の例は次のとおりである:
HSi(n−Bu)3、H2Si(OEt)2、(HSiMe22−CH−CH−(SiMe2H)2、HSi(OMe)3、HSi(OEt)3、HSiPh(OMe)2、HSiMe(OEt)2、HSiMe2(O−CH2CH2−O−CH2CH2−O−CH2CH2−OMe)、
H−SiMe2O−SiMe2O−SiMe2O−SiMe2O−SiMe2−CH=CH2
HSi(OEt)2−CH2−Si(OEt)2H、HSi(OEt)2−O−CH2CH(CH3)−O−Si(OEt)2
H−SiMe2−O−SiMe2−H、(H−SiMeO)4、(H−SiMeO)5、(Me2SiO)3(SiHMeO)、(H−SiMe2−O)4Si、(H−SiMe2−O)3SiMe、(H−SiMe2−O)3SiPh、
Me3Si−O−SiMe2−H、
H−SiMe2O−(SiMe2O)35−SiMe2−H、Me3SiO−(SiHMeO)55−SiMe3
Me3SiO−(SiMe2O)220(SiHMeO)5−SiMe3
H−SiMe2O−(SiMe2O)140(SiHMeO)5−SiMe2−H
HSi(OEt)2−O−(SiMe2O)495−Si(OEt)2−H
[Me3SiO1/24[SiMeO3/27.5[SiMe(OEt)O1/22[SiMeHO2/26
[HSi(OEt)21/26[HSi(OEt)O2/25[HSiO3/22.2[SiO4/21
2C=CH−SiMe2O−(SiMe2O)440(SiHMeO)14−SiMe2−CH=CH2
Me3SiO−(SiMe(CH=CH2)O)4.9−(SiMe2O)12−(SiHMeO)8.3−SiMe3
Me3SiO−(SiMeCH2CH2CF3O)15.2(SiHMeO)7−SiMe3
2C=CH−SiMe2O−(SiMe{OCH2CH2CH2OCH2CH2OCH2CH2OCH2CH2OMe}O)6(SiHMeO)2−SiMe2−CH=CH2
【0035】
ケイ素化合物(A)及び(B)の例の場合の小数位を有する数は、ケイ素化合物(A)又は(B)の混合物の平均値を意味する。
【0036】
一般式(3)のアルコールの例は次のとおりである:
メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−2−プロパノール、2−メチル−1−プロパノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、1,2−エタンジオール、1−メチル−1,2−エタンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、2−ブチン−1,4−ジオール、3−ヘキシン−2,5−ジオール、ヒドロキシピバル酸ネオペンチルグリコールエステル、ネオペンチルグリコール、Poly-THF-1000(登録商標)(BASF)(=H[OCH2CH2CH2CH2nOH)、1−エチニル−1−シクロヘキサノール、2−メチル−3−ブチン−2−オール、4−エチル−1−オクチン−3−オール、2−クロロエタノール、プロパルギルアルコール、t−アミルアルコール、N−(2−ヒドロキシエチル)−2−ピロリドン、1,4−ブタンジオール、2,4−ブタンジオール、2−エチルヘキサノール、フルフリルアルコール、グリセリン、1,3−プロパンジオール、10−ウンデセン−1−オール、1−ドデカノール、1−オクタデカノール、アリルアルコール、PEG単位を平均3個有するアリル−PEG−OH、メタクリル酸(2−ヒドロキシ−1−エチル)エステル、乳酸エチルエステル、HO−CH2−SiMe2−O−SiMe2−CH2−OH、HO−CH2CH2CH2−SiMe2−O−SiMe2−CH2CH2CH2−OH。
【0037】
触媒(K)として、本発明による方法の場合に、担体材料上に固定された金属Ni、Pd、Ptが使用される。
【0038】
担体材料として、これまで技術水準によりこのために使用される原則的に全ての無機又は有機のポリマー、例えばSiO2、Al23、礬土、活性炭、ゼオライト又は有機樹脂が適している。好ましくは、触媒−担体材料は、活性炭又はAl23であり、その際に触媒(K)としてパラジウム/活性炭、パラジウム/Al23及びニッケル/活性炭、特にパラジウム/活性炭が好ましい。使用される触媒は、市販製品であるか、もしくは有機金属化学において通常の方法により製造されることができる。担体材料上に結合された金属の濃度は、好ましくは少なくとも0.01質量%、特に好ましくは少なくとも0.1質量%、特に少なくとも1質量%及び多くとも30質量%、特に好ましくは多くとも10質量%及び特に多くとも6質量%の範囲内である。より高い金属濃度を有する触媒(K)は、ブリードし、かつケイ素化合物(A)を金属成分で汚染しうる(これは特にケイ素化合物(A)が蒸留されることができない場合にあてはまる)、より低い金属濃度を有する触媒(K)の場合に、低下された比活性に基づいてより高い質量割合の触媒が必要であり、それにより、後処理はより費用をかけた形となりうる及び/又は触媒(K)上でのケイ素化合物(A)の吸着による損失が生じうる。
【0039】
触媒(K)は、特定の割合の水を含有することができる。前記触媒が乾燥していればしているほど、これらは通例、特に空気中で又は有機材料と接触して、より反応性になる。それから生じる、自然発火までまねきうる、望ましくない反応を、特に純粋な触媒(K)の取り扱いの際に抑制するために、固体触媒は部分的に特定の含水量を有して製造される。水の割合は、触媒(K)の製造に由来してよく、又は故意に添加されることができる。好ましくは、本発明による方法において、望ましくない副反応をまねかないが、しかし触媒(K)の安全な取り扱いを保証するのに十分である水の割合を有する触媒(K)が使用される。含水量は好ましくは担体材料として活性炭を有する触媒(K)の場合に、少なくとも0.1質量%、特に好ましくは少なくとも1質量%、特に少なくとも10質量%及び多くとも90質量%、特に好ましくは多くとも70質量%、特に多くとも60質量%である。
【0040】
触媒(K)は、固体として直接、又は双方の反応相手であるケイ素化合物(B)又は一般式(3)のアルコールの一方又は目的生成物である成分(A)又は適した溶剤に懸濁されて、反応へ導入されることができる。
【0041】
好ましくは、担体材料に結合された触媒(K)は、反応の終わった後に又は本発明による方法の終了時にろ過、デカンテーション又は遠心分離により除去され、かつ場合により新たに使用されるか又は再循環される。
【0042】
使用される触媒の量は、ケイ素化合物(B)中に存在している一般式(2)の単位の数に依存する。好ましくは、触媒(K)は、金属元素として計算して及びケイ素化合物(B)の全質量を基準として計算して、少なくとも10ppm、特に好ましくは少なくとも20ppm、特に少なくとも50ppm及び多くとも10000ppm、特に好ましくは多くとも1000ppm及び特に多くとも700ppmの量で使用される。反応速度又は経済性に関して最適な濃度は単純な予備試験において、例えばケイ素化合物(B)の部分量が一般式(3)のアルコールと共に装入され、かつ明らかに確認可能な水素発生が始まるまで触媒(K)が添加されることによって、算出されることができる。
【0043】
使用される一般式(3)のアルコールの量は、ケイ素化合物(B)中に存在している一般式(2)の単位の数及び所望の反応度に依存する。完全転化が望ましい場合には、一般式(3)のアルコールは、ケイ素化合物(B)中に含まれる一般式(2)の単位に対して等モルで又は過剰量で使用される。
【0044】
好ましくは、一般式(3)のアルコールの使用される量は、ケイ素化合物(B)中で変換されるべき一般式(2)の単位中のnで示されるSiに結合された水素原子1molを基準として、OH少なくとも1mol、及び多くとも4mol、特に好ましくは多くとも3mol及び特に多くとも2molである。不完全転化が望ましい、すなわちm>0の場合には、例えばより少ない割合のアルコールも使用されることができる。
【0045】
本発明による方法は好ましくは、少なくとも−10℃、特に好ましくは少なくとも+10℃、特に好ましくは少なくとも+20℃及び高くとも+200℃、特に好ましくは高くとも+120℃、特に高くとも+100℃の温度で実施される。最も低沸点の成分の沸点が、できるだけ迅速な反応のために所望の反応温度を下回る場合には、反応は高められた圧力下に実施されることができる。発熱反応の場合に、利用可能でない反応熱を冷却(ジャケット冷却又は蒸発冷却)により導出することは有意義でありうる。
【0046】
本発明による方法は、好ましくは少なくとも10hPa、特に好ましくは少なくとも100hPa及び多くとも4000hPa、特に好ましくは多くとも2000hPaの絶対圧力下に実施される。特に、本発明による方法は、周囲大気の圧力で実施される。反応中に形成される水素は、その際に完全に又は部分的に圧力発生のために利用されることができる。技術的な理由から、反応の際に生じる水素を反応中に逃がすことは場合により有利である。
【0047】
反応相手であるケイ素化合物(B)、一般式(3)のアルコール及び触媒(K)が混合される場合に、本発明による方法の場合に前記の温度範囲内で通例自発的に所望の反応が水素発生下に始まる。安全面の理由から、故に、全量を混合するのではなくて、双方の反応相手の一方を触媒(K)と共に装入し、かつ他方の反応相手をガス発生が制御されることができるような速度で計量供給することが有利でありうる。選択的に、触媒(K)が装入され、かつ双方の反応相手の混合物が計量供給されることができるか又は各反応相手が別個に、しかし並行して計量供給されることができる。単に、ケイ素化合物(B)中に存在している一般式(2)の単位の一部又はケイ素化合物(B)の一部のみが反応されるべき場合には、好ましくはケイ素化合物(B)は触媒(K)と共に装入され、かつ一般式(3)を有するアルコールが計量供給される。運動論的作用に基づいて不活性にのみ、例えば立体障害、不完全な混和性のために反応する反応混合物の場合には、触媒(K)を含めた全ての反応相手の全量を混合し、かつ所望の反応度が達成されるまで反応させることも可能である。混合物の反応度は、ガス発生に基づいて、例えば遊離された水素量の容量測定により、又は反応混合物の常用の分析方法、例えば水素含量滴定、ガスクロマトグラフィー、赤外分光法、ラマン分光法、NMR分光法を用いて、追跡されることができる。反応の際の一般式(3)の全てのアルコール及び/又は一般式(2)の全ての単位の完全転化は、ガス発生の終了で容易に識別されうる。
【0048】
原則的に、本発明による方法の場合に異なるケイ素化合物(B)の混合物及び/又は一般式(3)のアルコールの混合物が使用されることができる。
【0049】
本発明による方法によれば、成分(B)と一般式(3)の異なるアルコールとの連続した反応により混合されたケイ素化合物(A)も得ることができ、その際にケイ素化合物(A)中のそれぞれの基Rの割合が、一般式(3)のアルコール対一般式(2)の単位の化学量論比を通じて調節されることができる。例えば、一般式(2)の全ての単位30%がまず最初にアルコール1と反応され、引き続き一般式(2)の単位の残りの70%がアルコール2と反応されることができる。
【0050】
原則的に、本発明による方法の場合に、ケイ素化合物(2)と一般式(3)のアルコールとの反応は、触媒(K)の失活及び/又は分離、反応混合物からの前記アルコール及び/又はケイ素化合物(B)及び/又はケイ素化合物(A)の分離により完全転化が達成される前に中断することが可能である。固体触媒(K)の分離は、固体分離に常用の方法、例えばろ過、沈降、遠心分離により行われることができる。ケイ素化合物(A)及び(B)及び一般式(3)のアルコールの分離は、固体である場合に、触媒(K)と一緒に、そのために記載された方法によるか又は一般式(3)のアルコールの分離のための蒸留、抽出、吸着又は捕捉試薬、例えばクロロシラン又はヘキサメチルジシラザンとの反応により、行われることができる。
【0051】
反応混合物は、好ましくは所望の転化率の達成後に、触媒(K)及び/又はなお存在している他のケイ素化合物(A)、(B)の分離下に後処理され、かつ特に好ましくはケイ素化合物(A)は、望ましくない副成分の分離により、例えば揮発性成分の加熱又は蒸留により精製される。反応混合物は、しかしまた後処理せずに直接、それらのさらなる加工又は使用に供給されることができる。
【0052】
好ましくは、形成される基OR 1molあたり溶剤多くとも0.5リットル、特に好ましくは多くとも0.1リットル、特に多くとも0.01リットル、特に好ましくは多くとも0.001リットルが使用される。
【0053】
溶剤、例えば脂肪族及び芳香族の炭化水素、例えばn−ペンタン、n−ヘプタン、イソオクタン、アルカン混合物、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、p−キシレン及びm−キシレン;塩素化炭化水素、例えばジクロロメタン、トリクロロメタン、クロロベンゼン;エーテル、例えばジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル;シリコーン油、例えばヘキサメチルジシロキサン、20℃で2〜100mPasの粘度を有するトリメチルシリル末端基を有するポリジメチルシロキサン);シロキサン環状物、例えばオクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン;並びに溶剤混合物は、本発明による方法の場合に例えば難混和性又は不混和性の反応相手の相溶化(Vermittlung)のため又は粘度の低下のために使用されることができるが、しかし好ましくは20℃で粘度>100mPasを有するポリマー及び/又はモル質量>75g/molを有するアルコールの場合のみに存在している。特に好ましくは、本発明による方法の場合に溶剤は使用されない。
【0054】
原則的に、前記方法は、バッチ操作、セミバッチ操作又は連続操作で実施されることができる。特に連続法の場合に、触媒(K)を固定床として使用し、かつ反応相手の混合物をガス状、液体又は溶解された形でその上を導通することが考えられる。
【0055】
前記の式の前記の全ての符号は、それらの意味をそれぞれ互いに独立して有する。全ての式中で、ケイ素原子は四価である。
【0056】
次の実施例において、それぞれ他に示されない場合には、全ての量及び百分率の記載は質量を基準とし、全ての圧力は0.10MPa (abs.)であり、かつ全ての温度は20℃である。
【実施例】
【0057】
例1a
1,3−ジメトキシ−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンの製造
還流冷却器、KPG撹拌機及び温度計を備えた500ml四つ口フラスコ中で、活性炭上の5%パラジウム、無水2.12g(Sigma-Aldrich Corp.、USAから購入により入手可能)をメタノール150g中に懸濁させた。この混合物を、油浴中で50℃に加熱した。引き続き、この温度で1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン212.5gを2.5時間かけて撹拌しながら計量供給した。SiH官能性シロキサンの最初の一滴の添加後に、自発的な水素発生が始まった。添加の終了後に15分間、後反応させ、黒色沈殿を加圧ヌッチェによりろ別し、無色透明なろ液を35cm充填塔で蒸留した。ガスクロマトグラフィー分析によれば主にメタノールからなっていた前留分の後で、沸騰温度139℃で、ガスクロマトグラフィー分析によれば99%の純度を有する1,3−ジメトキシ−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン248.9g(これは理論の81%である)を蒸留した。全塩素含量を灰化及びクーロメトリーを用いて決定し、これは3ppmの検出限界未満であった。生成物はそれゆえ半導体用途における使用に適している。
【0058】
例1b
1,3−ジメトキシ−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンの製造
例1aを繰り返したが、触媒として水54.9質量%を含有する活性炭上の5%パラジウム2.12gを使用した(Johnson & Matthey、UKからPd on Charcoal Type 87Lとして購入により入手可能)。目的生成物を理論の85%の収率で蒸留により単離した。その純度はガスクロマトグラフィー分析によれば99.4%であった。全塩素含量を、灰化及びクーロメトリーを用いて決定し、これは3ppmの検出限界未満であった。生成物はそれゆえ同様に半導体用途における使用に適している。
【0059】
例2
テトラキス−(1,1−ジメチル−1−メトキシシロキシ)シランの製造
還流冷却器、KPG撹拌機及び温度計を備えた500ml四つ口フラスコ中で、活性炭上の5%パラジウム、無水0.75g(Sigma-Aldrich Corp.、USAから購入により入手可能)を、メタノール87.8g中に懸濁させた。この混合物を油浴中で50℃に加熱した。引き続き、この温度でテトラキス−(1,1−ジメチルシロキシ)シラン150gを3時間かけて撹拌しながら計量供給した。SiH官能性シロキサンの最初の一滴の添加後に、自発的な水素発生が始まった。添加の終了後に15分間、後反応させ、黒色沈殿を加圧ヌッチェによりろ別し、無色透明のろ液を35cm充填塔で蒸留した。ガスクロマトグラフィー分析によれば主にメタノールからなっていた前留分の後で、沸騰温度120℃で12hPaで純粋なテトラキス−(1,1−ジメチル−1−メトキシシロキシ)シラン26.7gを蒸留した。
【0060】
例3
トリ−n−ブチルメトキシシランの製造
還流冷却器、KPG撹拌機及び温度計を備えた500ml四つ口フラスコ中で、活性炭上の5%パラジウム、無水1.2g(Sigma-Aldrich Corp.、USAから購入により入手可能)をメタノール23.7g中に懸濁させた。引き続き、室温でトリ−n−ブチルシラン124g(有機化学において常用の方法によりトリクロロシラン及びn−ブチルマグネシウムクロリドから製造)を1時間かけて撹拌しながら計量供給した。SiH官能性シロキサンの最初の一滴の添加後に、自発的な水素発生が始まった。反応混合物の温度はその際に最大35℃に上昇した。添加の終了後に、接続された気泡計数器でガス発生がもはや確認できなくなるまで後反応させ、黒色沈殿を加圧ヌッチェによりろ別し、無色透明のろ液を20cmビグリューカラムで蒸留した。ガスクロマトグラフィー分析によれば主にメタノールからなっていた前留分の後で、沸騰温度112℃で10hPaで99.5面積%のGC純度を有するトリブチルメトキシシラン134gを蒸留した。
【0061】
例4
H−シロキサンであるポリメチル(H)シロキサンと2−エチルヘキサン−1−オールとの反応生成物の製造
還流冷却器、磁石撹拌機及び温度計を備えた100ml三つ口フラスコ中で、平均式:[Me3SiO1/22[MeSiHO]55のメチル−H−ポリシロキサン20gを活性炭上の5%パラジウム、無水0.1g(Fluka/Aldrichから購入により入手可能)と混合した。引き続き、混合物を70℃に油浴中で加熱した。撹拌しながら、1分かけて2−エチルヘキサン−1−オール2.1gを計量供給した。混合物を、100℃で8h撹拌し、その後冷却し、ろ過した。無色透明のろ液の100℃/10mbarでの加熱後に、ポリシロキサンが得られ、1H−及び29Si−NMRによれば次の平均式に割り当てられた:
[Me3SiO1/22[MeSiHO]54[MeSi(O−CH2CH(CH2CH3)−CH2CH2CH2CH3)O]1、パラジウム含量は0.5ppmの検出限界未満であり、全塩素含量は3ppmの検出限界未満であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
mSi(OR)n(OR′)oR′′p4-m-n-o-p (1)
で示される少なくとも1種の単位を有する炭化水素オキシ基を有するケイ素化合物(A)の製造方法であって、一般式(2)
m+nSi(OR′)oR′′p4-m-n-o-p (2)
で示される少なくとも1種の単位を有するケイ素化合物(B)を、一般式(3)
ROH (3)
で示されるアルコールと、
担体材料に結合されたNi、Pd、Ptから選択される金属である触媒(K)の存在で反応させ、その際に、形成される基OR 1molあたり多くとも1リットルの溶剤が使用され、かつ上記式中、
Rは、非置換又はOH基、ハロゲン原子、シリル基、シロキシ基、−CN、−COOR1、−OCOOR2、−CONR34、−OCONR56、−NR7CONR89、−SO2−R10、−OSO2−R11、−OP(OR12)(OR13)により置換された、炭素原子1〜18個を有する一価の炭化水素基を表し、その際に前記炭素鎖は、隣接していない−(CO)−、−O−、−S−又は−NR14−基により中断されていてよく;
R′、R′′はそれぞれ、非置換又はハロゲン原子、シリル基、シロキシ基、−CN、−COOR1、−OCOOR2、−CONR34、−OCONR56、−NRCONR89、−SO2−R10、−OSO2−R11、−OP(OR12)(OR13)により置換された、炭素原子1〜18個を有する一価の炭化水素基を表し、その際に前記炭素鎖は、隣接していない−(CO)−、−O−、−S−又は−NR14−基により中断されていてよく;
1〜R14はそれぞれ、ハロゲン原子により置換されていてよい炭素原子1〜18個を有する一価の炭化水素基を表し、
Xは、化学結合を表し、前記結合を介してケイ素原子を有する基が結合されており、
mは、0、1、2又は3の値を表し、
nは、1、2又は3の値を表し、
m+nは、1、2又は3の値を表し、
oは、0、1、2又は3の値を表し、
pは、0、1、2又は3の値を表し、かつ
m+n+o+pは、1、2、3又は4の値を表す、炭化水素オキシ基を有するケイ素化合物(A)の製造方法。
【請求項2】
炭化水素基Rが炭素原子1〜6個を有し、かつ付加的なOH基を有しない、請求項1記載の方法。
【請求項3】
化学結合Xを介して結合した基が、ケイ素化合物(A)の場合に一般式(1)の1種又はそれ以上の単位もしくはケイ素化合物(B)の場合に一般式(2)の1種又はそれ以上の単位を有する多価の炭化水素基RCである、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
化学結合Xを介して結合した基が、Si−C結合を介して結合したケイ素原子を有する一価又は多価の炭化水素基RCSiである、請求項1又は2記載の方法。
【請求項5】
化学結合Xを介して結合した基が、Si−Si結合を介して結合したケイ素原子を有する一価又は多価の(ポリ)シラン基RSiである、請求項1又は2記載の方法。
【請求項6】
化学結合Xを介して結合した基が、Si−O−Si結合を介して結合したケイ素原子を有する一価又は多価の(ポリ)シロキサン基ROSiである、請求項1又は2記載の方法。
【請求項7】
一般式(12)〜(15)
(RO)h−SiR′′4-h (12)、
RO−[SiR′′2−O−]z−R (13)、
[RO−SiR′′2−O]ySi−R′′4-y (14)、
[RVR′′2SiO1/2a[(R{O−CH2CH(RIV)}rO)R′′SiO2/2k[SiR′′22/2l[SiHR′′O2/2m (15)
から選択されるケイ素化合物(A)が製造され、上記式中、
IVは、水素原子又はメチル基を表し、
Vは、メチル基、エチル基、ビニル基、アリル基又はフェニル基を表し、
hは、1又は2の値を表し、
zは、1〜20の値を表し、
yは、1、2、3又は4の値を表し、
aは、0〜2の値を表し、
rは、0〜20の値を表し、
kは、1〜20の値を表し、
lは、0〜200の値を表し、
mは、0〜100の値を表し、かつ
a+k+l+mは、少なくとも4の値を表し、かつ
R及びR′′は前記の意味を有する、請求項1又は2記載の方法。
【請求項8】
触媒−担体材料がSiO2、Al23、礬土、活性炭、ゼオライト及び有機樹脂から選択される、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
−10℃〜+200℃の温度である、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
バッチ操作、セミバッチ操作又は連続操作で実施する、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。

【公表番号】特表2012−522738(P2012−522738A)
【公表日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−502564(P2012−502564)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【国際出願番号】PCT/EP2010/053582
【国際公開番号】WO2010/112350
【国際公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(390008969)ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト (417)
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】