説明

炭化水素井戸の掘削と運転のための管状要素およびそのねじ付き接続構造

本発明は、ねじ付き接続構造のための管状要素であって、その両端部(1;2)の一つに、ねじ付き端部が雄型か雌型かによって外周面または内周面に形成されるねじ領域(3;4)を有し、端部(1;2)は、終端面(7;8)で完結し、ねじ領域(3;4)は、管状要素の軸を通る縦断面で見たとき、少なくとも一部に、ねじ山の頂(35)、ねじの谷(36)、ロードフランク(30,40)、スタビングフランク(32,42)からなるねじ山(32;42)を有し、ねじ山の頂(35)の幅が終端面(7,8)の方向に減少するとともにねじの谷(36)が増加するねじ付き接続構造のための管状要素において、ロードフランク(30;40)および/またはスタビングフランク(32;42)の断面は、管状要素の軸(10)を通る縦断面で見たとき、中央部に変曲点(I)を備える連続曲線(34)を有し、断面は、ねじ山の頂近くが凸形で、ねじの谷近くが凹形であることを特徴とするねじ付き接続構造のための管状要素に関する。また、本発明は、ねじ付き接続構造に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素井戸の掘削と運転に使用される管状要素、より正確には、その管状要素の端部に関し、当該端部は、雄型または雌型であり、炭化水素井戸の掘削と運転に使用される他の要素の対応する端部と接続可能である。したがって、本発明は、2本の管状要素を締め付けによって接続した結果として生じるねじ付き接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
「炭化水素井戸の掘削と運転に使用される要素」という記述は、同型または非同型の他の要素に接続され、接続が完了した時点で、炭化水素井戸を掘削するためのストリング、または改修作業ライザー等のメンテナンス用または生産ライザー等の運転用または井戸の運転に用いられるケーシングストリングまたはチュービングストリングのいずれかを構成することを目的とする略管状のあらゆる要素を意味している。本発明は、特に、ドリルパイプ、重量ドリルパイプ、ドリルカラー、およびパイプおよび重量パイプを接続するツールジョイントとして知られる部品等のドリルストリングに使用される要素に適用されるものである。
【0003】
周知の方法で、ドリルストリングに使用される各要素は、一般的に、雄型のねじ領域を設けた端部および/または雌型のねじ領域を設けた端部を備え、その各端部は、他の要素の対応する端部との締め付けによって接続され、その組立品が接続構造を画定している。したがって、このように構成されたドリルストリングが掘削時に井戸の表面から回転駆動される。このため、要素同士は、離脱や過剰トルクを生じることなく井戸の掘削が実行されるように、十分な回転トルクを伝達出来るように、高トルクで締め付けられなくてはならない。
【0004】
従来の製品では、一般的に、締め付け対象の各要素に設けられた当接面同士を締め付けることによって締め付けトルク(make−up torque)が達成される。しかしながら、当接面の範囲は管の厚みが薄いので、締め付けトルクが高過ぎると、当接面の塑性の臨界閾値に急速に到達してしまう。
【0005】
このため、当接面が許容できない荷重の少なくとも一部または全てを当接面から取り除くことができるねじ切り部が開発されている。この目的は、先行技術文献の米国再発行特許第30,647号(US Re30647)および第34,467号(US Re34467)に記載されているように、自己締結式のねじ切り部を使用することによって達成された。この自己締結式のねじ山では、雄型端部のねじ山(歯ともいう)および雌型端部のねじ山(歯ともいう)のフランクは一定のリードを有するが、ねじ山の幅は可変である。
【0006】
より正確には、雄型端部のねじ山および雌型端部のねじ山の頂(または歯)の幅は、雄型端部または雌型端部からの距離が増大するに連れて次第に増加する。したがって、締め付け時に、雄型のねじ山と雌型のねじ山(または歯)が係止点に対応する位置において相互に係止することによって接続が完了する。
【0007】
更により正確には、雄型のねじ山(または歯)のフランクが対応する雌型のねじ山(または歯)のフランクに対して係止したとき、自己締結式ねじ切り部同士が係止する。係止位置に到達すると、相互に締め付けられた雄型および雌型のねじ領域は、対称面を有し、その対称面に沿って、雄型のねじ領域の端部に位置する雄型および雌型の歯の共通中間高さの幅が、雌型のねじ領域の端部に位置する雄型および雌型の歯の共通中間高さの幅に相当する。
【0008】
このため、フランク間の接触面の全て、即ち、従来技術の当接面によって構成される全表面積よりもはるかに大きい全表面積で締め付けトルクを支持することになる。
【0009】
雌型のねじ山と雄型のねじ山の連結を補強するため、雄型および雌型のねじ山(または歯)は鳩尾形の断面(dovetail profile)を有し、締め付け後に一方が他方の中に収まるように両者が強固に嵌合する。この鳩尾形の断面は、接続構造が大きな曲げまたは引張荷重を受けたときの雄型と雌型のねじ山の分離に相当するジャンプアウトのリスクが回避されることを意味する。より正確には、鳩尾形のねじ山の形状は、米国石油協会規格(API)5Bに規定された軸方向の幅がねじの谷からねじ山の頂に向かって減少する「台形の」ねじ山と比較して、またAPI7に規定された「三角形の」ねじ山と比較して、接続構造の半径方向剛性を増加する。
【0010】
しかしながら、鳩尾形の構成には幾つかの欠点がある。最初に、ねじ山のフランクがねじの谷を通る軸と負の角度(つまり、ねじ山が台形の場合に使用される角度と逆である)を成すため、接続構造が形成または分解されるときに雄型と雌型のねじ山同士が掴み合う(grabbing)リスクが増加する。
【0011】
次に、ねじ山の頂の幅がねじの谷の幅よりも大きいことが、疲労強度に関してある程度の脆弱性を示唆している。したがって、接続機構が繰返し曲げられる状態で機能するとき、雄型のねじ領域の端部のねじ山(または歯)のフランクが高いせん断応力を受け、雄型の歯が裂かれる可能性がある。同様に、接続機構が繰返し曲げられる状態で機能するとき、雌型のねじ領域の端部のねじ山(または歯)のフランクが高いせん断応力を受け、雌型の歯が裂かれる可能性がある。この疲労強度の脆弱性は、ねじ山の頂およびねじの谷に対するスタビングフランクおよびロードフランクの丸み付け半径が小さいほど一層増加する。実際、このような小さな丸み付け半径は応力が集中する要因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国再発行特許第30,647号
【特許文献2】米国再発行特許第34,467号
【特許文献3】米国特許第6254146号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
この問題を解決するため、特許文献3には3つの切子面(facet)を有するフランクが提案されている。このように、2つの切子面がねじ山の頂とねじの谷に対して所謂「正の」角度を成し、ねじ山の頂とねじの谷に対して所謂「負の」角度を成す方向に延びる真ん中の切子面を画定する。このため、ねじ山は略鳩尾形の断面を有し、フランクがより小さな半径によってねじ山の頂とねじの谷に接続される。しかしながら、この構成には、真ん中の切子面が隣接する切子面とで形成する鈍角の部分に重大な欠点がある。より正確には、真ん中の切子面が隣接する切子面と接続される小さな半径は応力集中の中心個所でもあり、締め付けおよび分解作業中に磨滅するリスクがある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
更に詳しくは、本発明は、ねじ付き接続構造のための管状要素であって、その端部の内の1つに、その端部が雄型か雌型かによって外周面または内周面に形成されるねじ領域を有し、前記端部が終端面で完結し、前記ねじ領域は、前記管状要素の軸を通る縦断面で見たとき、少なくともその一部で、ねじ山の頂、ねじの谷、ロードフランク、スタビングフランクを含むねじ山を有し、前記ねじ山の頂の幅が前記終端面の方向に減少するとともに前記ねじの谷の幅が増加するねじ付き接続構造のための管状要素において、前記ロードフランクおよび/または前記スタビングフランクの断面は、前記管状要素の前記軸を通る縦断面で見たとき、中央部に変曲点(I)を備える連続曲線を有し、前記断面は、前記ねじ山の頂近くが凸形で、前記ねじの谷近くが凹形であることを特徴とする。
【0015】
本発明の選択的で補足的または代替的な特徴が以下に記述される。
【0016】
前記両フランクの前記断面は、互いに接する2つの円弧によって形成される連続曲線である。
【0017】
前記両フランクの前記断面は、その先端部の1つに、前記ねじ山の頂および前記ねじの谷の夫々に曲率半径によって接続される線分を有する。
【0018】
前記線分は、前記ねじ山の頂および前記ねじの谷を通る軸線となす角度が30度〜60度の範囲内にある。
【0019】
前記線分と前記ねじ山の頂および前記ねじの谷を通る軸線となす前記角度は、45度に実質的に等しい。
【0020】
前記断面を前記ねじ山の頂および前記ねじの谷の夫々に接続する前記曲率半径は、0.5mm〜2.5mmの範囲内にある。
【0021】
前記断面を前記ねじ山の頂および前記ねじの谷の夫々に接続する前記曲率半径は、1mmに実質的に等しい。
【0022】
前記ねじ領域は、前記管状要素の前記軸と1度〜5度の範囲の角度を形成するテーパ状の母線を有し、任意のねじ山の前記スタビングフランクの半径方向の高さが当該ねじ山の前記ロードフランクの半径方向の高さよりも高い。
【0023】
前記線分の半径方向の高さは、前記スタビングフランクの前記半径方向の高さと前記ロードフランクの前記半径方向の高さの差の50%〜100%の範囲にある。
【0024】
前記線分の半径方向の高さは、前記スタビングフランクの前記半径方向の高さと前記ロードフランクの前記半径方向の高さの差に等しい。
【0025】
前記ねじ山の頂および前記ねじの谷は、前記管状要素の前記軸と平行である。
【0026】
また、本発明は、第1および第2の管状要素を備えるねじ付き接続構造であって、前記第1および第2の管状要素は、雄型端部および雌型端部を夫々備え、前記雄型端部は、その外周面に少なくとも1つのねじ領域を備え、終端面で完結し、前記雌型端部は、その内周面に少なくとも1つのねじ領域を備え、終端面で完結し、前記ねじ領域は、前記雌型のねじ領域の対応する部分との自己締結において連携可能な部分を有するねじ付き接続構造において、前記第1および第2の管状要素は前記発明に基づいている。
【0027】
他の特徴に基づいて、前記雄型のねじ領域の前記ねじ山の頂と前記雌型のねじ領域の前記ねじの谷との間に間隙hが設けられる。
【0028】
他の特徴に基づいて、前記雄型端部および前記雌型端部は、前記ねじ領域の一部が連携して自己締結するとき、締め付け接触するシール面を備える。
【0029】
他の特徴に基づいて、ねじ付き接続構造は、掘削要素のねじ付き接続構造である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
本発明の特徴及び利点が添付の図面を参照して更に詳細に説明される。
【0031】
図1は、自己締結領域の締め付けによって2つの管状要素を接続した結果として生じる接続構造の線図であり、接続構造は本発明に基づいている。
【0032】
図2は、図1の接続構造において連携して自己締結している状態の詳細線図である。
【0033】
図3は、本発明に係る接続構造の管状要素の雄型端部のねじ山の詳細図である。
【0034】
図4は、第1の特別な実施形態に係る接続構造の管状要素の雄型端部のねじ山の詳細図である。
【0035】
図5は、第2の特別な実施形態に係る接続構造の管状要素の雄型端部のねじ山の詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1に示すねじ付き接続構造は、周知の方法で、雄型端部1を備える回転軸10を有する第1の管状要素と、雌型端部2を備える回転軸10を有する第2の管状要素とを含んでいる。2つの端部1および2は、互いに当接せず、ねじ付き接続構造の軸10の半径方向に配向した終端面7,8で完結し、夫々、2つの管状要素が締め付けによって相互接続のために連携するねじ領域3および4を備えている。ねじ領域3および4は、周知のタイプであり、「自己締結式」といい(また、ねじ山の軸方向の幅および/またはねじ山同士の間隔が漸進的に変化する)、最終の係止位置に到達するまで漸進的な軸方向の締め付けが発生する。
【0037】
周知の方法で、図2から見て取れるように、「自己締結式のねじ領域」という用語は、ねじ領域が以下に詳述する特徴を含むことを意味している。雄型のねじ山(または歯)32のフランクは、雌型のねじ山(または歯)42のフランクと同様に一定のリードを有するとともに、ねじ山の幅が終端面7,8の方向に減少し、管状要素を接続する間に雄型のねじ山(または歯)32と雌型のねじ山(または歯)42が所定の位置で相互に係止して完了する。
【0038】
より正確には、雌型のねじ領域4のロードフランク40間のリードLFPbは、雌型のねじ領域のスタビングフランク41間のリードSFPbと同様に一定であり、特に、ロードフランク40間のリードは、スタビングフランク41間のリードよりも大きい。
【0039】
同様に、雄型のスタビングフランク31間のリードSFPpは、雄型のロードフランク30間のリードLFPpと同様に一定である。更に、雄型31および雌型41のスタビングフランク間の各リードSFPpおよびSFPbは、互いに等しく、また、同様に互いに等しい雄型30および雌型40のロードフランク間の各リードLFPpおよびLFPbよりも小さい。
【0040】
図2から見て取れて、当該技術において周知のように、雄型および雌型のねじ山(または歯)は、ねじ付き接続構造の軸を通る縦断面で見ると、接続後に一方が他方の中に強固に嵌合されるように概略の外観が鳩尾形の断面を有している。これによって、接続構造が大きな曲げまたは引張応力を受けたとき、雄型と雌型のねじ山の分離に相当する所謂「ジャンプアウト」のリスクを回避することが更に保証される。より正確には、形状が鳩尾形のねじ山は、ねじの谷からねじ山の頂に向かって減少する軸方向幅を有する一般的に「台形」と呼ばれるねじ山と比較して、接続構造の半径方向剛性が増加する。
【0041】
図3は、管状要素の軸10を通る縦断面で、本発明の一実施形態のねじ山32の図を示している。このねじ山は、管状要素の雄型端部1の一部である。本発明によれば、ロードフランク30および/またはスタビングフランク31の断面の中央部に変曲点(I)を備える連続曲線34を有し、この断面は、曲率半径によってねじ山の頂35およびねじの谷36に接続されている。「断面の中央部」という用語は、断面の端部を除く断面の大部分を意味することに留意すべきである。また、断面の中央部は、直線的ではないという意味で曲線ということに留意すべきである。したがって、所謂「曲線の」断面の中央部は、所謂「直線の」中央部の反対の意味と受け取るべきである。この曲線は、特異点を含まない点で連続であるため、その接線が常に決定される。これは、応力集中の中心個所となる角度のある点が存在しないことを意味している。また、フランクの断面は、曲率半径によってねじ山の頂35とねじの谷36に接続されている。
【0042】
より正確には、曲率半径が、フランクの断面と同様に、ねじ山の頂35およびねじの谷36に対して接線方向に接続されている。更に、曲線34は、変曲点(I)を備えている。これは、ねじ山の頂およびねじの谷に対する断面の接続構造が、尖ったタイプやその他タイプの角度のある点を含まずに成されることを意味している。更に、断面は、ねじ山の頂で凸形となり、ねじの谷で凹形となるため、接続構造の締め付け中および運転中の応力に対する抵抗が向上する。また、自己締結式のねじ付き接続構造では、2本の管状要素同士が確実に係止されるため、ねじ山同士の接触が非常に強く、特に、その接触がフランク上で発生していることが理解できる。このため、フランクが低い丸み付け半径等の形状脆弱性を有さないことが重要である。また、大きい曲率半径の方が小さい曲率半径よりも機械加工公差を守りやすいことに留意すべきである。
【0043】
本発明で規定したフランクの断面は、管状要素のロードフランクまたは当該管状要素のスタビングフランクのいずれかに適用され、またはその両方に適用されてもよいことに留意すべきである。しかしながら、スタビングフランクは締め付け作業時に最も応力を受けるため、少なくともスタビングフランクに本発明で規定されたフランクの断面を適用することが特に有益である。言い換えると、スタビングフランクが最も高い磨滅のリスクを負っている。しかしながら、ロードフランクに適用された本フランクの断面は、雄型端部が雌型端部からより容易に離脱できるようにしている。
【0044】
前記連続曲線が、多項式、楕円方程式、放物型方程式、または正弦曲線型の方程式に基づいてもよいことに留意すべきである。
【0045】
一例として、図5に記載の実施形態によれば、前記フランクの断面は、半径R1およびR2を有する互いに接する2つの円弧によって形成された連続曲線である。
【0046】
図4に示す他の実施形態によれば、前記フランクの断面の連続曲線は、曲率半径(r)によってねじ山の頂35およびねじの谷36に夫々接線方向に接続される線分33を各端部に備えている。したがって、2本の線分33は、各曲線34上で直線部分を構成している。その直線部分は、2本の管状要素を締め付けるとき、傾斜面として働く表面を提供するという利点を有している。
【0047】
線分33がねじ山の頂35となす角度およびねじの谷36となす角度は、30度〜60度の範囲が有利であり、45度に実質的に等しくすることが好ましい。
【0048】
また、曲率半径(r)は、0.5mm〜2.5mmの範囲が有利であり、1mmに実質的に等しくすることが好ましい。
【0049】
図2から見て取れるように、管状要素のねじ領域3および4は、締め付けの進行を促進するようにテーパ状の母線20に沿う配向が有利である。一般的に、このテーパ状の母線は、軸10と1度〜5度の範囲内の角度を成している。本事例では、テーパ状の母線はロードフランクの中間を通ると規定されている。このため、ねじ山のスタビングフランクの半径方向の高さhSFは、当該のねじ山のロードフランクの半径方向の高さhLFよりも高い。
【0050】
テーパ状のねじ切り部を使用する有利な一実施態様によれば、図3から見て取れるように、線分33の半径方向の高さhfrは、スタビングフランク半径方向の高さhSFとロードフランクの半径方向の高さhLFの差の50%〜100%の範囲にある。スタビングフランクの高さに必要な最小値は、締め付け中の雄型要素と雌型要素の接触を安定させるのに十分な平坦なベアリング面が線分33の個所で得られることを意味し、それがより効果的に応力を分散させている。必要な最大値は、許容フランクの断面、即ち、曲率が大き過ぎないフランクの断面に相当する。
【0051】
テーパ状のねじ切り部を使用する好適な一実施態様によれば、図3から見て取れるように、線分33の半径方向の高さhfrは、スタビングフランクの半径方向の高さhSFとロードフランクの半径方向の高さhLFの差に等しい。
【0052】
図2から見て取れるように、雄型と雌型のねじ領域のねじ山の頂およびねじの谷を、ねじ付き接続構造の軸10と平行にすると有利である。これにより機械加工が容易になる。
【0053】
以上詳述したように、接触は、主に雄型30と雌型40のロードフランク間、および雄型31と雌型41のスタビングフランク間で行われる。一方、締め付けの促進および磨滅のリスクを回避するため、雄型のねじ山の頂と雌型のねじの谷の間に間隙(h)が形成されてもよい。同様に、雄型のねじの谷と雌型のねじ山の頂の間にも間隙(h)が形成されてもよい。
【0054】
図1から見て取れるように、雄型端部の終端面7の近くに配置された2つのシール領域5、6によって、接続構造の内部と外部媒体の両方に対して流体がシールされる。
【0055】
ドリルビットの適切な運転を保証するため、および岩屑を地表に引き揚げるために、泥が井戸の底部へドリルストリング内を圧力下で移動することが知られている。接続構造の一定の掘削条件または運転条件下では、加圧ガスが発生する可能性がある。すると、当接面によってこれまでに形成されたシールはもはや保証されない。したがって、2本の要素間の接続構造での高圧に対応するより高いシーリングを保証することが必要である。このために、カタログ番号940に本出願人によって記述されたVAM(登録商標)TOP接続構造等の別のタイプの接続構造では、ねじ領域外の接続構造の雄型端部に、接続構造の雌型端部に形成されたシール面との半径方向の締め付けにおいて連携するよう意図されたシール面を設置することが知られている。
【0056】
シール領域5は、終端面7に向かって減少する直径を有する半径方向外側に向かってドーム状の面を有していてもよい。このドーム状の面の半径は、好ましくは30mm〜100mmである。ドーム状の面の半径が大き過ぎる(>150mm)と、円錐上に円錐が被さるような接触の欠点と同じ欠点が生じる。このドーム状の面の半径が小さ過ぎる(<30mm)と、接触幅が不十分になる。
【0057】
このドーム状の面に対向して、雌型端部2は、同様に雄型要素の終端面7の方向に減少する直径を有する半径方向内側に向かってドーム状のテーパ面を有する。テーパ面の先端の半角の正接は、0.025〜0.075、即ち、5%〜15%の範囲内のテーパである。テーパ面のテーパが小さ過ぎる(<5%)と、締め付けの際に磨滅するリスクが生じ、テーパが大き過ぎる(>15%)と、非常に厳しい機械加工公差が必要になる。
【0058】
本発明者は、テーパ状の面とドーム状の面の間のこのような接触領域が、非常に効果的な軸方向の接触幅を生じ、且つ効果的な接触領域に沿って接触圧の略半楕円分散を生じ、接触領域の端部の2つの狭い効果的な接触領域を有するテーパ状の2つの面の間にある接触領域とは対照的であることを発見した。
【0059】
なお、雄型端部および雌型端部のシール領域5および6は、雌型端部の終端面8に近接して配置されてもよいことに留意すべきである。
【0060】
本発明による接触領域の形状は、機械加工公差によって接続された要素同士の軸方向の位置決めにおいて変動があっても、優れて効果的な接触幅を維持出来ることを意味し、この効果的な接触領域が、放物線状の局所接触圧力曲線を保ちながら、ドーム状の面に沿って枢動する。
【0061】
このように、運転の際、即ち、ねじ付き接続構造が曲げられた状態で運転されるとき、本発明の主たる利点は、フランクの断面が、隣接するねじ山の頂およびねじの谷に丸み付け部分を介して接続され、その丸み付け部分がフランクの底部の応力集中係数を減じ、それによって接続構造の疲労挙動を改善することにある。
【0062】
本発明は、また、フランクの断面に角度のある点が存在せず、それによって、非常に高いヘルツ応力がかかるこれらの領域において、応力集中の要因を減少させるという利点を有する。このタイプの断面は、磨滅のリスクを制限するため、要素同士の締め付け中にも利益をもたらしている。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ねじ付き接続構造のための管状要素であって、その端部(1;2)の内の1つに、その端部が雄型か雌型かによって外周面または内周面に形成されるねじ領域(3;4)を有し、前記端部(1;2)が終端面(7,8)で完結し、前記ねじ領域(3;4)は、前記管状要素の軸を通る縦断面で見たとき、少なくともその一部で、ねじ山の頂(35,45)、ねじの谷(36,46)、ロードフランク(30,40)、スタビングフランク(32,42)を含むねじ山(32;42)を有し、前記ねじ山の頂(35,45)の幅が前記終端面(7,8)の方向に減少するとともに前記ねじの谷(36,46)の幅が増加するねじ付き接続構造のための管状要素において、
前記ロードフランク(30;40)および/または前記スタビングフランク(31;41)の断面は、前記管状要素の前記軸(10)を通る縦断面で見たとき、中央部に変曲点(I)を備える連続曲線(34)を有し、前記断面は、前記ねじ山の頂近くが凸形で、前記ねじの谷近くが凹形であることを特徴とするねじ付き接続構造のための管状要素。
【請求項2】
前記両フランクの前記断面は、互いに接する2つの円弧によって形成される連続曲線であることを特徴とする請求項1に記載のねじ付き接続構造のための管状要素。
【請求項3】
前記両フランクの前記断面は、その先端部の1つに、前記ねじ山の頂(35,45)および前記ねじの谷(36,46)の夫々に曲率半径(r)によって接続される線分(33)を有することを特徴とする請求項1に記載のねじ付き接続構造のための管状要素。
【請求項4】
前記線分(33)は、前記ねじ山の頂(35)および前記ねじの谷(36)を通る軸線となす角度(α)が30度〜60度の範囲内にあることを特徴とする請求項3に記載のねじ付き接続構造のための管状要素。
【請求項5】
前記角度(α)は、45度に実質的に等しいことを特徴とする請求項4に記載のねじ付き接続構造のための管状要素。
【請求項6】
前記断面を前記ねじ山の頂(35,45)および前記ねじの谷(36,46)の夫々に接続する前記曲率半径(r)は、0.5mm〜2.5mmの範囲内にあることを特徴とする請求項3から5のいずれかに記載のねじ付き接続構造のための管状要素。
【請求項7】
前記曲率半径(r)は、1mmに実質的に等しいことを特徴とする請求項6に記載のねじ付き接続構造のための管状要素。
【請求項8】
前記ねじ領域(3;4)は、前記管状要素の前記軸(10)と角度(β)を形成するテーパ状の母線(20)を有し、任意のねじ山(32,42)の前記スタビングフランクの半径方向の高さ(hSF)が当該ねじ山の前記ロードフランクの半径方向の高さ(hLF)よりも高くなるようにしたことを特徴とする請求項3から7のいずれかに記載のねじ付き接続構造のための管状要素。
【請求項9】
前記線分(33)の半径方向の高さ(hfr)は、前記スタビングフランクの前記半径方向の高さと前記ロードフランクの前記半径方向の高さ(hLF)の差の50%〜100%の範囲にあることを特徴とする請求項8に記載のねじ付き接続構造のための管状要素。
【請求項10】
前記線分(33)の半径方向の高さ(hfr)は、前記スタビングフランクの前記半径方向の高さ(hSF)と前記ロードフランクの前記半径方向の高さ(hLF)の差に等しいことを特徴とする請求項8または請求項9に記載のねじ付き接続構造のための管状要素。
【請求項11】
前記ねじ山の頂および前記ねじの谷は、前記管状要素の前記軸(10)と平行であることを特徴とする先行する請求項のいずれかに記載のねじ付き接続構造のための管状要素。
【請求項12】
第1および第2の管状要素を備えるねじ付き接続構造であって、前記第1および第2の管状要素は、雄型端部(1)および雌型端部(2)を夫々備え、前記雄型端部(1)は、その外周面に少なくとも1つのねじ領域(3)を備え、終端面(7)で完結し、前記雌型端部(2)は、その内周面に少なくとも1つのねじ領域(4)を備え、終端面(8)で完結し、前記ねじ領域(3)は、前記雌型のねじ領域(4)の対応する部分との自己締結において連携可能な部分を有するねじ付き接続構造において、前記第1および第2の管状要素が先行する請求項のいずれかに記載の管状要素であることを特徴とするねじ付き接続構造。
【請求項13】
前記雄型のねじ領域(3)の前記ねじ山の頂と前記雌型のねじ領域(4)の前記ねじの谷との間に間隙(h)が設けられることを特徴とする請求項12に記載のねじ付き接続構造。
【請求項14】
前記雄型端部(1)および前記雌型端部(2)は、前記ねじ領域(3,4)の一部が連携して自己締結するとき、締め付け接触するシール面(5,6)を備えることを特徴とする請求項12または13に記載のねじ付き接続構造。
【請求項15】
前記ねじ付き接続構造は、掘削要素のねじ付き接続構造であることを特徴とする請求項12から14のいずれかに記載のねじ付き接続構造。

【公表番号】特表2012−524183(P2012−524183A)
【公表日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−505079(P2012−505079)
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【国際出願番号】PCT/EP2010/002215
【国際公開番号】WO2010/118839
【国際公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(504255249)ヴァルレック・マンネスマン・オイル・アンド・ガス・フランス (30)
【氏名又は名称原語表記】VALLOUREC MANNESMANN OIL & GAS FRANCE
【出願人】(000002118)住友金属工業株式会社 (2,544)
【Fターム(参考)】