炭化水素原料を精製する方法
炭化水素を含む原料を軽質炭化水素生成物を含む組成物に変換するプロセスが、本明細書中に記載される。燃料生成物として適切であり得る、バイオマスからのテルペンを含む組成物を生産および精製するプロセスおよび方法もまた、記載される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(相互参照)
本願は、米国仮特許出願第60/973,394号(2007年9月18日出願)および同第61/085,780(2008年8月1日出願)に基づく利益を主張し、これらの出願は、参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
炭素ベースの化石燃料(例えば、石炭、石油および天然ガス)は、有限かつ再生不能な資源である。現在の消費率において、化石燃料の供給は予測し得る未来において使い尽されるであろう。一方で、化石燃料を燃やすことは、大気中の二酸化炭素の濃度の上昇をもたらし、その濃度の上昇は、地球規模の気候変動を引き起こしたと考えられる。
【0003】
バイオ燃料は、いくつかの理由から、化石燃料の実行可能な代替である。バイオ燃料は、バイオマス(最近の、生物由来の材料)から生産される再生可能なエネルギー源である。バイオ燃料もまた炭素ベースであるが、それらは、燃料消費の間に放出される二酸化炭素が生物の新しい成長を通して再吸収されるので大気の二酸化炭素レベルにおける顕著な純増加を引き起こさない。
【0004】
輸送関連のガソリン消費は、全ての液体化石燃料の使用の大部分を占めるので、ガソリンを液体バイオ燃料で補完または置換することは、我々の化石燃料への依存および二酸化炭素生産を減少させると期待される。現在、利用可能な液体バイオ燃料としては、エタノールおよび脂質が挙げられる。エタノールは、代表的に、炭水化物(例えば、糖およびデンプン)が豊富な作物から生産される。複合糖質(例えば、セルロースおよびヘミセルロース)もまた、糖へと分解され得、次いで微生物によってエタノールに変換され得る。脂質ベースのバイオ燃料(バイオディーゼルともいう)は、野菜(例えば、トウモロコシ、大豆、ヒマワリ、およびモロコシ)由来の植物油である。
【0005】
しかし、エタノールおよび脂質ベースのバイオ燃料を使用することのエネルギー利益は、疑問視されてきた。エタノールは、ガソリンよりも低いエネルギー含量を有し、より多くのエタノールが同じエネルギー出力を提供するために必要とされる。より重要なことには、エタノール生産および脂質生産の両方は、現在、化石燃料によって推進されている。例えば、エタノールを生産するためのエネルギーは、農業機械および灌漑を運転すること、作物を輸送および粉砕すること、殺虫剤および肥料を生産することならびに発酵させることならびにエタノールを蒸留することを含む。エタノール生産のためのエネルギー入力がエタノールの燃焼からのエネルギー出力を上回り得るという懸念が、存在している。さらに、幅広い生産ならびにエタノールおよびバイオディーゼルの使用は、いずれも既存の燃料配給基盤を使用する輸送に適していないので、新しい配給パイプラインを建設することを必要とする。さらに、作物ベースの燃料(例えば、エタノールおよび伝統的なバイオディーゼル)の任意の大規模開発は、食物の生産と同じ資源について競合し、そして究極的に、耕地の量によって制限される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、再生可能な供給源から燃料を生産すること、および既存のバイオ燃料の欠点を克服することに対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
セスキテルペンをクラッキングするための接触クラッキング方法が、本明細書中に開示され、上記方法は、セスキテルペンを含む原料と触媒組成物とを接触クラッキングの条件下で接触させる工程を含む。上記セスキテルペンは、例えば、クパレンまたはファルネセンであり得る。上記方法は、50重量%よりも多くのトルエンと、2重量%未満のベンゼンと、20重量%未満のキシレンと、シクロヘキサンおよびシクロペンタンの30重量%よりも多くの組合せとを含む混合物を生産する工程を含み得る。別の例において、上記方法は、15重量%よりも多くのトルエンと10重量%よりも多くのパラフィンとを含む混合物を生産する工程を含む。いくつかの例において、上記クラッキングの条件は、上記原料を350℃よりも高くに加熱する工程を含み、そして上記方法は、75重量%よりも多くが90よりも大きいオクタン価を有する成分を含む混合物を生産する工程を含む。また、記載される混合物は、約15重量%〜約20重量%のトルエンと約10重量%〜約15重量%のパラフィンとを含み得る。混合物はまた、50重量%よりも多くの芳香族炭化水素を含み得る。
【0008】
別の態様において、接触クラッキング方法は、ジテルペンをクラッキングするために提供され、上記方法は、ジテルペンを含む原料と触媒組成物とを接触クラッキングの条件下で接触させる工程を含む。1つの例において、上記ジテルペンは、フィトールである。上記方法は、55重量%よりも多くのC5〜C9パラフィンを含む混合物を生産する工程を含むことができ、上記パラフィンの70重量%よりも多くは、モノメチルパラフィンである。いくつかの例において、クラッキングの条件は、上記原料を350℃よりも高くに加熱する工程を含み、そして上記方法は、75重量%よりも多くが90よりも大きいオクタン価を有する成分を含む混合物を生産する工程を含む。いくつかの例において、上記混合物は、40重量%よりも多くのメチルブタンを含む。上記混合物はまた、1重量%未満のC4パラフィンを含み得る。
【0009】
なお別の態様において、接触クラッキング方法は、トリテルペンをクラッキングするために本明細書中に提供され、上記方法は、トリテルペンを含む原料と触媒組成物とを接触クラッキングの条件下で接触させる工程を含む。上記トリテルペンは、スクアレンであり得る。
【0010】
テトラテルペンをクラッキングするための接触クラッキング方法もまた、提供され、上記方法は、トリテルペンを含む原料と触媒組成物とを接触クラッキングの条件下で接触させる工程を含む。上記テトラテルペンは、カロテンであり得る。
【0011】
1つの態様において、接触クラッキング方法は、少なくとも3種のテルペンを含む混合物をクラッキングするために本明細書中に提供され、上記方法は、少なくとも3種のテルペンを含む混合物を含む原料と触媒組成物とを接触クラッキングの条件下で接触させる工程を含む。上記少なくとも3種のテルペンは、セスキテルペンであり得る。1つの例において、上記原料は、ジンジャー油を含む。上記方法は、15重量%よりも多くのナフテンと、20重量%よりも多くのパラフィンと、5重量%よりも多くのキシレンと、5重量%よりも多くのトルエンとを含む混合物を生産し得る。上記混合物はまた、以下からなる群より選択される異なるサイズの少なくとも3種のテルペンを含み得る:モノテルペン、セスキテルペン、ジテルペン、トリテルペン、およびテトラテルペン。方法は、藻類からの少なくとも3種のテルペンを含む上記混合物を抽出する工程をさらに含む。
【0012】
別の態様において、接触クラッキング方法は、藻類からの油をクラッキングするために提供され、上記方法は、テルペンを含む原料を形成するために藻類からの油を抽出する工程;テルペンを含む原料と触媒組成物とを接触クラッキングの条件下で接触させる工程を含む。いくつかの例において、上記方法は、油を抽出する前に上記藻類を遺伝的に改変する工程をさらに含む。上記藻類を遺伝的に改変する工程は、藻類を遺伝的に改変しない場合と比較して、増大した量のテルペンを生産し得る。いくつかの例において、上記方法は、上記原料を接触させる前に上記藻類からの油と燃料成分とを混合する工程をさらに含む。例えば、燃料成分は、以下からなる群より選択される:化石燃料、石油、燃料混合のための混合物、ガソリン、ディーゼル、ジェット燃料、およびそれらの任意の組合せ。上記テルペンは、例えば、セスキテルペン、ジテルペン、トリテルペン、テトラテルペン、クパレン、ファルネセン、フィトール、スクアレン、またはカロテンであり得る。
【0013】
いくつかの例において、接触クラッキング方法は、上記原料を約100℃〜1000℃の間まで加熱することを含むクラッキングの条件を含む。さらなる例において、上記接触クラッキングの条件は、上記原料を約180℃〜580℃の温度または約200℃〜400℃の温度または約350℃と400との間の温度まで加熱することを含む。
【0014】
いくつかの例において、接触クラッキング方法は、原料とモレキュラーシーブを含む触媒組成物とを接触させる工程を含む。上記モレキュラーシーブは、6Åよりも大きい孔径を有する大きい孔のモレキュラーシーブであり得、かつ/または10〜15Åのケージ径を有し得る。いくつかの例において、上記大きい孔のモレキュラーシーブは、12員環ゼオライト(例えば、β型、L型、Y型、LZY−72、Valfor CP811BL−25、ELZ−L、またはT−4546)である。他の例において、上記モレキュラーシーブは、10員環ゼオライト(例えば、ZSM−5ゼオライト)である。いくつかの例において、上記触媒組成物は、1よりも多くのモレキュラーシーブを含む。例えば、上記触媒組成物は、上記モレキュラーシーブとは異なるサイズであり得る第2のモレキュラーシーブをさらに含み得る。
【0015】
1つの態様において、精製の方法が、本明細書中に記載され、その方法は、流通反応装置中でスクアレンを含む原料をクラッキングする工程;クラッキング生成物を蒸留する工程;および約85〜125の間のオクタン価を有する燃料生成物を得る工程を含む。いくつかの例において、上記オクタン価は、90よりも大きいものである。
【0016】
燃料生成物を作製するための方法もまた、本明細書中に提供され、その方法は、遺伝的に改変された光合成する非維管束生物から原料を得る工程;および上記原料と触媒組成物とを接触クラッキングの条件下で接触させ、それによって燃料生成物を作製する工程を含み、上記触媒組成物は、6Åよりも大きい孔径を有する大きい孔のモレキュラーシーブを含む。上記クラッキングは、420℃までの温度にて起こり得る。上記触媒組成物は、12員環ゼオライトであり得る。上記燃料生成物は、約85〜125の間のオクタン価を有し得るか、または90よりも大きいオクタン価を有し得る。いくつかの例において、上記方法は、燃料成分を上記燃料生成物に添加する工程をさらに含み、上記燃料成分は、エタノール、ジェット燃料、ディーゼル、バイオディーゼル、またはガソリンである。いくつかの例において、上記方法は、燃料添加剤を上記燃料生成物に添加する工程をさらに含む。
【0017】
1つの態様において、藻類から抽出された油と接触クラッキング組成物とを含む組成物が、提供される。テルペンと接触クラッキング組成物とを含む組成物もまた、提供され、上記テルペンは、以下からなる群より選択され得る:モノテルペン、セスキテルペン、ジテルペン、トリテルペン、テトラテルペン、クパレン、ファルネセン、スクアレン、ジンゲロン(zingerene)、およびカロテン。本明細書中に記載される他の組成物としては、ジンジャー油と接触クラッキング組成物とを含む組成物およびフィトールと接触クラッキング組成物とを含む組成物が挙げられる。上記接触クラッキング組成物は、モレキュラーシーブである。いくつかの例において、上記モレキュラーシーブは、6Åよりも大きい孔径および/または10〜15Åのケージ径を有する大きい孔のモレキュラーシーブである。いくつかの例において、上記大きい孔のモレキュラーシーブは、12員環ゼオライト(例えば、β型、L型、Y型、LZY−72、Valfor CP811BL−25、ELZ−L、またはT−4546)である。他の例において、上記モレキュラーシーブは、10員環ゼオライト(例えば、ZSM−5ゼオライト)である。
【0018】
(参照による援用)
本明細書中で言及された全ての刊行物、特許、および特許出願は、それぞれ個々の刊行物、特許、または特許出願が参考として援用されることが明確かつ個別に示された場合と同程度で、参考として援用される。
【0019】
本発明の多くの新規な特徴は、添付の特許請求の範囲に具体的に示される。本発明の例となる特徴および利点のより良い理解は、本発明の多くの原理が利用される例示的な実施形態を示す以下の詳細な説明および添付の図面を参照することによって得られる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1A】触媒反応を行い、そして生成物の分布を評価するためのパルス反応器を示す。
【図1B】運転中のパルス反応器を示す概略図である。
【図1C】異なる温度に対して得られるクパレン由来の種々のクラッキング生成物を要約する。
【図2A】SN27触媒を使用した種々の反応温度におけるクパレンのクラッキング生成物を示す。
【図2B】LZY−72触媒を使用した種々の反応温度におけるクパレンのクラッキング生成物を示す。
【図2C】200℃の温度においてLZY−72によって触媒されたクパレンのクラッキング生成物の定量化を要約する。
【図2D】250℃の温度においてLZY−72によって触媒されたクパレンのクラッキング生成物の定量化を要約する。
【図2E】300℃の温度においてLZY−72によって触媒されたクパレンのクラッキング生成物の定量化を要約する。
【図3A】ゼオライトβ触媒を使用した種々の反応温度におけるクパレンのクラッキング生成物を示す。
【図3B】200℃の温度においてゼオライトβによって触媒されたクパレンのクラッキング生成物の定量化を要約する。
【図3C】250℃の温度においてゼオライトβによって触媒されたクパレンのクラッキング生成物の定量化を要約する。
【図4】ELZ−Lゼオライト触媒を使用した種々の反応温度におけるクパレンのクラッキング生成物を示す。
【図5A】藻類から抽出された油をクラッキングするために使用された例示的なパルス反応器の設定を示す。
【図5B】粗海藻油のクラッキングから生じる生成物を示す。
【図5C】精製された海藻油のクラッキングから生じる生成物を示す。
【図5D】粗海藻油および精製された海藻油の両方からのクラッキングされた生成物と87オクタン、89オクタン、および91オクタンの石油ガソリンとの比較を示す。
【図6A】LZY−72ゼオライト触媒を使用した種々の反応温度におけるファルネセンのクラッキング生成物を示す。
【図6B】ファルネセンクラッキング生成物の混合オクタン価を示す。
【図7】LZY−72ゼオライト触媒を使用した種々の反応温度におけるショウガ精油のクラッキング生成物を示す。
【図8A】LZY−72ゼオライト触媒を使用した種々の反応温度におけるスクアレンのクラッキング生成物を示す。
【図8B】スクアレンクラッキング生成物の混合オクタン価を示す。
【図9A】LZY−72ゼオライト触媒を使用した種々の反応温度におけるフィトールのクラッキング生成物を示す。
【図9B】フィトールクラッキングのパラフィン生成物の間の炭素分布および分枝の程度を示す。
【図9C】フィトールクラッキングのパラフィン生成物の間の炭素分布および分枝の程度を示す。
【図9D】フィトールクラッキング生成物の混合オクタン価を示す。
【図10A】市販のガソリンサンプルの炭化水素成分と比較して、市販の供給源および藻類の供給源の両方からのフィトールのクラッキング生成物のクラッキング生成物を示す。
【図10B】市販のガソリンサンプルと比較して、フィトールクラッキング生成物の混合オクタン価を示す。
【図11A】ニッケル/LZY−72ゼオライト触媒を使用した種々の反応温度におけるフィトールのクラッキング生成物および水素化分解生成物を示す。
【図11B】フィトール水素化分解生成物の混合オクタン価を示す。
【図12A】ラージスケールのクラッキング方法に適する装置を模式的に示す。
【図12B】スクアレンのクラッキングから生じる気体生成物および液体生成物の組成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
炭化水素混合物を精製することは、燃料生成物を生産するのに炭化水素混合物の種類、形状、およびサイズを最適化するために行われ得る。燃料産業における代表的な精製方法としては、蒸留、分留、抽出、溶剤抽出、水素化処理、異性化、二量体化、アルキル化、およびクラッキングが挙げられるが、これらに限定されない。クラッキング方法は、代表的に、例えば、炭素−炭素結合を切断することによって炭化水素をより小さい炭化水素へと分解する方法いう。複雑な有機分子(例えば、イソプレノイドまたは重質炭化水素は、前駆体中の炭素−炭素結合を分解することによってより単純な分子(例えば、軽質炭化水素)へとクラッキングされ得る。クラッキングは、一般に、高温、触媒、またはそれらの組合せを使用することよって行われる。例えば、クラッキングする方法としては、熱クラッキング、流動接触クラッキング、サーモフォア接触クラッキング、接触クラッキング、水蒸気クラッキング、および水素化分解が挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
接触クラッキング方法は、触媒(代表的には酸触媒(例えば、シリカ−アルミナ触媒またはゼオライト))の存在下における有機分子の開裂を含む。触媒は、反対の電荷のイオン対(通常、カルボカチオンおよび非常に不安定なヒドリドアニオン)を生産する結合の不均等(非対称)分解を促進する。炭素に局在化したフリーラジカルおよびカチオンは、高度に不安定であり、かつ鎖転位のプロセス(例えば、β位におけるC−C開裂ならびにまた分子内の水素転移またはヒドリド転移および分子外の水素転移またはヒドリド転移)を受ける。両方の型のプロセスにおいて、対応する反応中間体(ラジカル、イオン)は、持続的に再生され、したがって、その反応は、自己伝播性の連鎖機構によって進行し得る。次いで、その反応の連鎖は、最終的にラジカルまたはイオンの再結合によって終結し得る。
【0023】
1つの実施形態において、上記接触クラッキング方法および接触クラッキングの条件は、有機分子とモレキュラーシーブ(例えば、ゼオライト)とを接触させることを含む。接触クラッキングの条件はまた、有機分子を加熱(例えば、100〜1000℃)する工程を含み得る。1つの実施形態において、クラッキングの条件は、原料を約100℃〜1000℃の間まで加熱する工程を含む。さらに、接触クラッキングの条件は、原料を約180℃〜580℃まで加熱する工程を含む。なお別の実施形態において、接触クラッキングの条件は、上記原料を約200℃〜400℃の温度または約350℃〜400℃の温度まで加熱する工程を含む。接触クラッキングの条件は、原料をC−C結合の開裂が触媒の存在下で促進される温度まで加熱する工程を含み得る。
【0024】
1つの態様において、接触クラッキング方法は、テルペンをクラッキングする工程について開示され、上記プロセスは、上記テルペンを含む原料と触媒組成物とを接触クラッキングの条件下で接触させる工程を含む。
【0025】
テルペンは、種々の光合成生物によって主に生産される炭化水素の広く、多様なクラスである。テルペンが、例えば、炭素骨格の酸化または転位によって化学的に改変される場合、生じる化合物は、一般に、テルペノイドまたはイソプレノイドと称される。テルペノイドまたはイソプレノイドは、一般に、ヘテロ原子を含む。本明細書中で言及される場合、用語テルペンは、テルペノイドまたはイソプレノイドを記載するために使用され得る。
【0026】
テルペンは、多くの型の植物および花の精油の主要な成分であり得る。精油は、食品のための天然香料添加剤として、香水中の芳香、ならびに伝統医学および代替医療(例えば、アロマテラピー)におけるように広範に使用される。天然のテルペンの合成バリエーションおよび誘導体もまた、香水および食品添加剤に使用される香料において使用される種々の香りを大きく広げる。
【0027】
テルペンは、5個の炭素の炭化水素であるイソプレン(2−メチル−ブタ−l,3−ジエン)の複数の単位を含む生合成炭化水素の多様なクラスである。上記イソプレン単位は、一緒に連結して、非環状(分枝状に配置した炭素原子または直鎖状に配置した炭素原子を含む)の骨組みまたは環状の骨組みを形成し得る。これらの間で、ヘミテルペンは、1つのイソプレン単位(例えば、イソプレン)からなり、モノテルペンは、2個のイソプレン残基からなり、そしてモノテルペンとしては、例えば、リモネンおよびミルセンが挙げられ;セスキテルペンは、3個のイソプレン残基からなり、そしてセスキテルペンとしては、非環状セスキテルペン(例えば、ファルネセン)および環状セスキテルペン(例えば、クパレン、クルクメン、ジンギベレンおよびビサボレン);そしてジテルペンは、4個のイソプレン残基からなり、そしてジテルペンとしては、例えば、センブレン、タキサジエンが挙げられ;トリテルペンは、6個のイソプレン残基からなり、そしてトリテルペンとしては、例えば、スクアレンが挙げられ、そしてテトラテルペンは、8個のイソプレン残基からなり、そしてテトラテルペンとしては、例えば、カロテン、非環状リコピン、単環状γ−カロテン、および二環状α−カロテンおよび二環状β−カロテンが挙げられる。イソプレノイドのサイズとは、イソプレノイドの骨組みの炭素原子の総数をいい、そしてイソプレノイドのサイズは、代表的に、5の倍数である。表1は、精製に適した基質または原料である例示的なテルペンを示す。
【表1−1】
【表1−2】
【表1−3】
【0028】
いくつかの実施形態において、上記炭化水素は、ポリエン構造を有する。本明細書中で使用される場合、「ポリエン」とは、炭素原子が単結合および二重結合によって直鎖状に連結されている炭素ベースの主骨格を有する炭化水素をいう。上記炭素ベースの主骨格とは、炭化水素構造の最も長い直鎖をいい、そして少なくとも2つの二重結合を含む。上記骨格を形成する1個以上の炭素原子は、アルキル基、特に、メチル基によってさらに置換され得る。上記ポリエンは、EおよびZ(それぞれ、シスおよびトランス)の両方の幾何異性体を示し得る。いくつかの実施形態において、上記ポリエンは、炭素ベースの骨格の一方または両方に末端環状構造(例えば、シクロヘキセニルまたは置換シクロヘキセニル)を含む。
【0029】
1つの実施形態において、上記ポリエン構造は、少なくとも1個の「第四級オレフィン炭素」を含み、その第四級オレフィン炭素とは、それぞれ、C=C結合およびC−C結合を介して上記ポリエン骨格の2個の隣接する炭素原子に連結されるポリエン骨格の炭素原子をいう。上記第四級オレフィン炭素はさらに、アルキル置換基(例えば、メチル)に連結される。代表的な第四級オレフィン炭素は、以下に示される:
【化1】
【0030】
第四級オレフィン炭素は、典型的に、イソプレン誘導体(例えば、テルペン)中に存在する。考察されるように、イソプレン残基は、生物系における共通の構造モチーフである。イソプレンの多くの生物学的誘導体(例えば、カロテノイド)は、複数のイソプレン残基の鎖伸長生成物である。
【0031】
したがって、いくつかの実施形態において、上記ポリエン鎖は、イソプレン残基の2個以上の繰り返し単位を含み、イソプレノイドを提供する。イソプレン残基の3個の繰り返し単位を有するポリエン骨格セグメントの例示的な構造は、以下に示され、第四級オレフィン炭素は、円の中に示される。
【化2】
【0032】
どのようにイソプレン単位が連結されるかに依存して、上記ポリエン鎖は、上記イソプレン残基の代替配列を含み得る。以下に示されるように、上記ポリエンセグメントは、共役構造を提供する交互のC−C結合およびC=C結合を含む。共役骨格セグメントの例示的な構造は、以下に示され、上記第四級オレフィン炭素は、円の中に示される:
【化3】
【0033】
1つの態様において、セスキテルペンをクラッキングするための接触クラッキング方法は、上記セスキテルペンを含む原料と触媒組成物とを接触クラッキングの条件下で接触させる工程を含む。セスキテルペンは、有機分子の混合物の一部であり得るか、または75%よりも多くセスキテルペンを含む混合物であり得る。セスキテルペンは、3個のイソプレン単位を含む任意の有機分子である。セスキテルペンは、3個のイソプレン単位からなり、かつC15分子であるテルペンのクラスである。モノテルペンと同様に、セスキテルペンは、非環状であり得るか、または環を含み得、多くの固有の組合せを含む。生物化学的改変(例えば、酸化または転位)は、セスキテルペノイドとして公知であるセスキテルペンを生産する。本開示の目的のために、用語セスキテルペンは、セスキテルペノイドまたは3個のイソプレン単位およびさらなる原子(例えば、酸素)を含む他の有機分子を含む。セスキテルペンとしては、例えば、クパレン、ファルネセン、およびジンギベレンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
セスキテルペンは、反応器中でセスキテルペンまたはセスキテルペンを含む混合物を加熱することによって本明細書中に記載されるプロセスを使用してクラッキングされ得る。例えば、上記反応器は、パルス反応器、押し出し流れ反応器、または連続流通反応装置であり得るが、これらに限定されない。触媒(例えば、ゼオライト触媒)は、所望の雰囲気および触媒が得られるまで、気体によって前処理され得る。例えば、ヘリウム(不活性雰囲気)、水素(還元雰囲気)、または酸素(酸化雰囲気)は、反応器中で触媒を前処理するために使用され得る。触媒の任意の前処理の後、上記反応器は、所望の反応温度(例えば、上記クラッキングの条件の温度)に維持され得る。パルス反応器を使用する例示的な実施形態において、少量の上記セスキテルペンは、上記触媒上に上記反応器を通してパルスされる。上記反応のために使用される温度および触媒に依存して、クラッキング反応からの異なる生成物が、生産され得る。任意に、上記反応が進行した後、その反応生成物は、例えば、ガスクロマトグラフィーおよび/または質量分析(GC/MS)によって同定され得る。他の原子同定技術もまた、当業者に明らかであろうとおりに使用され得る。
【0035】
触媒組成物は、酸性触媒、例えば、モレキュラーシーブを含み得る。モレキュラーシーブは、気体および液体に対する吸着剤としてか、または有機分子を捕捉するために使用され得る正確かつ均一なサイズの孔を有する材料である。上記孔を通過するのに十分小さい分子は吸着されるが、より大きい分子は吸着されない。上記モレキュラーシーブは、それが分子レベルで機能するという点で、通常のフィルターとは異なる。例えば、水分子は、通過するのに十分小さいものであり得るが、より大きい分子は、通過しない。1つの実施形態において、上記モレキュラーシーブは、ゼオライトである。ゼオライトは、アルミノケイ酸、アルミノリン酸、アルミノケイリン酸(aluminosilicophosphate)、もしくは細孔性構造またはメソ孔構造を有する他の酸化物である。
【0036】
クラッキング触媒(例えば、ゼオライト)は、典型的に、多数のブレンステッド酸部位を提供する。そのような酸性条件下において、バイオマスポリエンの上記第四級オレフィン炭素は、第三級カルベニウムイオンへと変換され得る(スキームIVに示される)。本明細書中で使用される場合、「第三級カルベニウムイオン」(または、単に「カルベニウムイオン」)とは、3個の他の炭素に連結される三価カルボカチオンをいう。
【化4】
【0037】
第三級カルベニウムイオンは、炭素−炭素結合開裂を誘導する反応中間体であると考えられる。スキームVに示されるように、上記カルベニウムイオンのβ位における炭素−炭素結合が断裂する場合、その結合の電子は、そのカルベニウムイオンを中和する。
【化5】
【0038】
さらに、上記反応性カルベニウムイオンはまた、異性化およびオリゴマー形成を引き起こし得る。したがって、第四級オレフィン炭素から生じる上記カルベニウム中間体は、上記ポリエンベースの原料を種々の生成物に変換する上で重要な役割を果たす。
【0039】
本明細書中でさらに詳細に考察されるように、ゼオライトは、クラッキング方法のために幅広く使用され、そしてそれらは、特に、形状選択性に起因して燃料の生産に有用である(N.Y.Chenら、Shape Selective Catalysis in Industrial Applications,Marcel Dekker、New York、1996)。形状選択性とは、ゼオライトの正確に規定される孔構造から生じるゼオライトの特性をいい、それは、かなり狭く規定される分子量および分子構造の生成物をもたらす。
【0040】
代表的に、触媒的な開裂は、上記ポリエン構造のより短いセグメントである低級オレフィンまたは低級アルカンを生産する。実際の構造および開裂点に依存して、上記低級オレフィンは、ポリエンの短い非環状鎖であり得るか、または環状構造(例えば、シクロヘキセニル)を含み得る。種々の実施形態において、上記低級オレフィンは、3〜15個の炭素、さらに代表的には、3〜12個の炭素を含む。
【0041】
石油製油所プロセスにおける接触クラッキングに適した任意の触媒は、原料と組み合わせて使用され得る。市販のクラッキング触媒としては、酸処理した中性アルミノケイ酸、非晶質の合成シリカ−アルミナの組合せ、および結晶性の合成シリカ−アルミナ(ゼオライト)が挙げられるが、最も幅広く使用される市販の接触クラッキング触媒は、ゼオライトである。
【0042】
ゼオライトは、アルミノケイ酸、アルミノリン酸、アルミノケイリン酸、またはモレキュラーシーブとして公知である細孔性固体のファミリーの他の酸化物メンバーである。用語モレキュラーシーブとは、これらの材料の特定の性質(例えば、一次的にサイズ排除プロセスに基づいて分子を選択的に分別する能力)をいう。これは、分子寸法の非常に規則的な孔構造に起因する。ゼオライトの孔に進入し得る分子種またはイオン種の最大サイズは、トンネルの直径によって制御される。1500種よりも多いゼオライト型が合成されており、そして48種の天然に存在するゼオライトが公知である。代表的に使用されるゼオライトは、フォージャサイトファミリーからのもの(例えば、X−ゼオライト、Y−ゼオライト)、ペンタジル(pentasil)(例えば、ZSM−5)または他のゼオライト(例えば、ゼオライトβおよびゼオライトL)である。そのようなゼオライト触媒およびそれらの生産は、当業者の知識の範囲内である。
【0043】
ゼオライトの水素形態(イオン交換によって調製される)は、強力な固体酸であり、そして多くの酸触媒反応(例えば、異性化、アルキル化、およびクラッキング)を促進し得る。より明確には、ゼオライトは、炭化水素にそれらの構造または反応性を変化させる(例えば、第四級オレフィン炭素からカルベニウム中間体へと変換すること)小さい空間の中に炭化水素を閉じ込める。
【0044】
上記ゼオライト触媒の孔径は、上記触媒反応を制御すること(動力学的および化学的の両方)において重要であり得る。したがって、適切なゼオライト触媒を選択することにおいて、クラッキングされる上記炭化水素のサイズが、考慮される必要がある。さらに、上記孔径は、所与の炭化水素原料のクラッキング方法の選択性に影響し得る。酸クラッキング触媒の他の可能な型としては、無機酸および有機酸が挙げられる。
【0045】
接触クラッキングの間、上記炭化水素からの中間体カチオンは、他のクラッキング方法においてよりも反応性が低く、かつより安定であり得る。これは、上記カチオンが触媒の活性部位に蓄積することを許容し得、それは、コークスとして一般的に公知である炭素質生成物の沈着物を生じ得る。そのような沈着物は、触媒活性を保存するために除去(例えば、燃焼を制御することによって)される必要があり得る。
【0046】
接触クラッキングに加えて、他の工業的なクラッキング方法(例えば、熱クラッキング、水素クラッキング、および水蒸気クラッキングの条件)もまた、ポリエン構造中の炭素−炭素開裂を生じ得る。これらのクラッキング方法は、必ずしもカルベニウム中間体を含まない;代替的に、炭素−炭素結合開裂は、低級オレフィンを生産する上記ポリエン骨格を無差別に生じ得る。
【0047】
本明細書中に記載されるようなプロセスは、テルペン(例えば、セスキテルペン)とゼオライト触媒組成物とを接触させる工程を含み得る。1つの実施形態において、上記ゼオライトは、6Å未満の孔径を有する10員環ゼオライトである。例示的な10員環ゼオライトは、ZSM−5である。1つの実施形態において、上記ゼオライトは、SN27である。
【0048】
別の実施形態において、方法は、テルペンと大きい孔のモレキュラーシーブとを接触させる工程を含む。例えば、上記大きい孔のモレキュラーシーブは、6Åよりも大きい孔径を有する分子サイズを有する。1つの例において、大きい孔のモレキュラーシーブは、10〜15Åのケージ径を有する。上記大きい孔のモレキュラーシーブは、12員環ゼオライトまたは12員環ゼオライトよりも大きいゼオライトであり得る。1つの実施形態において、上記12員環ゼオライトは、β型ゼオライト、L型ゼオライト、またはY型ゼオライトである。本明細書中に記載されるプロセスに有用なゼオライトの例としては、LZY−72、Valfor CP811BL−25、ELZ−L、およびT−4546が挙げられるが、これらに限定されない。触媒組成物は、使用前にアンモニウム交換を介してその完全にプロトン化した形態へと変換され得る。1つの実施形態において、ニッケルを含む材料は、ニッケルカチオンによる20%および80%の理論上のプロトン置換が生じるように、プロトン化したゼオライトをNi(II)アセテート水溶液と交換することによって調製され得る。別の実施形態において、触媒組成物は、イオン交換されて、加熱においてアンモニアの排除を伴ってプロトン形態へ変換し得る上記ゼオライトのアンモニウム形態を生じ得る。ゼオライトのプロトン形態は、触媒反応のための強力な固体酸として作用する。
【0049】
テルペン(例えば、セスキテルペン)をクラッキングするための接触クラッキング方法はまた、上記テルペンと上記触媒組成物及び第2の触媒組成物とを接触させる工程を含み得る。上記第2の触媒組成物は、第1の触媒組成物と同じかまたは異なるものであり得る。例えば、12員環ゼオライトが第1の触媒組成物として利用される場合、10員環ゼオライトまたは12員環ゼオライトが第2の触媒組成物として使用され得る。これは、種々の手段(例えば、炭化水素の混合物をクラッキングする場合)において有用であり得、上記炭化水素は、異なるサイズであり得る。別の例において、第1の触媒と同じ型またはサイズである第2の触媒組成物は、上記第1の触媒組成物を使用してクラッキングしなかった任意の残りのより大きい炭化水素または原料をクラッキングするために使用され得る。
【0050】
1つの態様において、接触クラッキング方法は、クパレンをクラッキングすることについて開示される。クレパンは、セスキテルペンである。1つの実施形態において、クラッキングは、クパレンを含む原料を接触クラッキングの条件下で触媒組成物と接触させることによって達成される。クレパンは、反応器(例えば、パルス反応器または押し出し流れ反応器)中でクラッキングされ得る。上記反応器は、上記反応器およびクパレンを接触クラッキング温度(例えば、100〜1000℃、180〜510℃、200〜400℃または350〜400℃)まで加熱する工程を含む接触クラッキングの条件を提供し得る。例えば、クパレンは、上記触媒組成物を含む反応器を通って流れ得、上記反応器は、接触クラッキングの条件温度まで加熱される。上記触媒組成物と接触するクレパンは、元のC15クパレン分子よりも小さい炭化水素へとクラッキングされる。触媒の例としては、本明細書中に記載される触媒(例えば、SN27(ZSM−5型)、ELZ−L(ゼオライト−L型)、およびLZY−72(ゼオライト−Y型))が挙げられる。
【0051】
クレパンは、約275℃の沸点を有し、そしてガスクロマトグラフィカラムとの反応後のその存在を測定するために温度の調節を必要とし得る。1つの実施形態において、調節は、クパレンの分析が不正確な質量分析に寄与しないように、上記カラムに対して行われ得る。
【0052】
1つの実施形態において、クパレンは、キャリアーガス(例えば、ヘリウム)と一緒に触媒組成物を含む反応器を通過する。クパレンを含む原料は、液相または気相中にあり得る。
【0053】
1つの実施形態において、クパレンは、本明細書中に提供されるプロセスにおいて、上記クパレンと大きい孔のモレキュラーシーブ(例えば、β型ゼオライト、L型ゼオライト、またはY型ゼオライト)とを接触させることによってクラッキングされる。クパレンはより大きい炭化水素(C15)であるので、大きい孔のモレキュラーシーブはクパレン分子をより小さい炭化水素へとクラッキングするより高度の変換を提供し得る。
【0054】
いくつかの実施形態において、クパレンをクラッキングする方法は、50重量%よりも多くのトルエンと、2重量%未満のベンゼンと、20重量%未満のキシレンと、シクロヘキサンおよびシクロペンタンの30重量%よりも多くの組合せとを含む混合物を生産する。別の実施形態において、クパレンをクラッキングする方法は、50%、60%、または70%よりも多いトルエンを含む混合物を生産する。トルエンは、高いオクタン価を有する炭化水素であり、したがって、燃料組成物の有用な成分であり得る。1つの実施形態において、上記クパレンのクラッキングされた生成物は、ベースの燃料に混合または添加されて、燃料生成物を生産する。
【0055】
1つの態様において、接触クラッキング方法は、ファルネセンをクラッキングすることについて開示される。ファルネセンは、3個のイソプレン単位を有するセスキテルペンのファミリーである。1つの実施形態において、ファルネセンは、本明細書中に記載されるような触媒組成物を使用してクラッキングされる。例えば、ファルネセンは、12員環ゼオライト触媒(例えば、LZY−72)を使用してクラッキングされ得る。1つの実施形態において、ファルネセンを含む原料が、クラッキングされる。上記原料は、50重量%、60重量%、70重量%、80重量%、または90重量%よりも多いファルネセンを含み得る。原料はまた、他の分子および炭化水素(例えば、ビサボレンおよびクルクメン)を含み得る。1つの実施形態において、ファルネセンは、約200〜約500℃の温度を包含するクラッキングの条件下でクラッキングされる。例えば、ファルネセンは、350℃付近でクラッキングされ得る。
【0056】
ファルネセンをクラッキングするプロセスは、15重量%よりも多くのトルエンおよび10%よりも多くのパラフィンを含む混合物を生産する工程を含み得る。1つの実施形態において、上記混合物は、約15重量%〜約20重量%のトルエンおよび約10重量%〜約15重量%のパラフィンを含む。別の実施形態において、上記混合物は、50重量%よりも多くの芳香族炭化水素を含む。1つの実施形態において、ファルネセンのクラッキング由来の混合物の50、60、70、75、または80重量%より多くが、90よりも高いオクタン価を有する炭化水素を含み得る。混合物は、燃料生成物として使用され得るか、燃料生成物と混合され得るか、または燃料生成物を生産するために精製され得る。高いオクタン価の混合物または燃料生成物は、燃料生成物としてか、または、例えば、化石燃料ベースの燃料に混合するための燃料生成物として使用され得る。
【0057】
別の態様において、接触クラッキング方法が、少なくとも3種のセスキテルペンを含む混合物をクラッキングすることについて本明細書中に記載され、上記方法は、少なくとも3種のセスキテルペンを含む混合物を含む原料と触媒組成物とを接触クラッキングの条件下で接触させる工程を含む。セスキテルペンの混合物は、燃料生成物または添加剤(例えば、ジェット燃料、ガソリン、またはディーゼル)を生産するために適切な配列の炭化水素へとクラッキングし得る。また、セスキテルペンの混合物をクラッキングすることによって、上記クラッキング生成物の多様性は、完全な燃料の創出を許容し得る。別の実施形態において、全てかまたはほとんど全てが1つの型であるセスキテルペンを含む混合物をクラッキングする方法もまた、完全な燃料を生産するために使用され得る。
【0058】
例として、少なくとも3種のセスキテルペンを含む混合物は、ジンジャー油であり得る。ジンジャー油は、分子を含み得、その分子としては、ジンギベレン、β−セスキフェランドレン、ビサボレン、ファルネセン、β−フェランドレン(phelladrene)、シネオール、クルクメン、およびシトラールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0059】
ジンジャー油は、ジンジャー油からジンゲロールを除去するために二酸化炭素を添加する工程を含む方法によってクラッキングされ得る。完全にプロトン化した触媒(例えば、LZY−72のような12員環ゼオライト)は、接触クラッキングの条件下でジンジャー油と接触して、クラッキング方法およびセスキテルペンの炭素−炭素結合の開裂を開始するために使用され得る。
【0060】
ジンジャー油をクラッキングする方法の実施形態において、上記方法は、15重量%よりも多くのナフテンと、20重量%よりも多くのパラフィンと、5重量%よりも多くのキシレンと、5重量%よりも多くのトルエンとを含む混合物を生産する。上記混合物のパラフィンの多くは、高オクタン価を有し得る分枝状パラフィンであり得る。ジンジャー油の高オクタン価の多くの成分は、燃料生成物(例えば、ガソリンまたはガソリン添加剤)として使用され得る。
【0061】
1つの態様において、ジンゲロンと、15重量%よりも多くのナフテンと、20重量%よりも多くのパラフィンと、5重量%よりも多くのキシレンと、5重量%よりも多くのトルエンとを含む組成物が、本明細書中に開示される。ジンゲロンは、ジンゲロールを加熱することの生成物であり、そして上記組成物中に微量で存在し得る。
【0062】
別の態様において、トリテルペンをクラッキングするための接触クラッキング方法が開示され、上記方法は、上記トリテルペンを含む原料と触媒組成物とを接触クラッキングの条件下で接触させる工程を含む。トリテルペンは、6個のイソプレン単位を含むC30テルペンである。方法における使用のためのトリテルペンの非限定的な例は、スクアレンである。スクアレンは、最初は主としてサメ肝油から商業目的のために得られた天然有機化合物であるが、同様に植物源も存在し、その植物源としては、アマランス種子、米ぬか、コムギ胚芽、およびオリーブが挙げられる。最も高等な生物は、スクアレンを生産し、その生物としては、人が挙げられる。スクアレンは、炭化水素およびトリテルペンである。スクアレンはまた、遺伝的に改変された生物から産生され得、ここで、スクアレンを天然に生産しない生物は、スクアレンを生産するために改変されか、またはスクアレンを天然に生産する生物は、スクアレンを上方制御するために改変される。例えば、藻類細胞は、MVA経路またはMEP経路を通してスクアレンを生産する酵素を生産するように形質転換され得るが、そして上記藻類細胞から生産されるスクアレンは、本明細書中に記載される方法を使用してクラッキングされ得る。
【0063】
1つの実施形態において、スクアレンをクラッキングする方法は、上記スクアレンと触媒組成物(例えば、プロトン化した12員環ゼオライト)とを接触クラッキングの条件下で接触させる工程を含み得る。
【0064】
スクアレンをクラッキングすることの別の例において、精製する方法は、流通反応装置中でスクアレンを含む原料をクラッキングする工程;クラッキング生成物を蒸留する工程;および約85〜125の間のオクタン価を有する燃料生成物を得る工程を含む。1つの実施形態において、上記燃料生成物のオクタン価は、90よりも大きい。スクアレンは、当業者に公知であるような任意の適切な反応器中でクラッキングされ得る。1つの例において、スクアレンは、液体のバッチが一定でプログラム可能な速度にてその反応器に供給されることを可能にするポンプを備える管型反応器中でクラッキングされる。上記ポンプはまた、キャリアガスまたは上記反応器へ供給されるのに必要である他の気体(例えば、ヘリウムおよび窒素)の流れを可能にし得る。上記の例において、上記管型反応器は、触媒組成物を充填され得、そしてクラッキングされる上記原料が、上記触媒組成物上に供給される。上記反応器における接触クラッキングの条件は、使用者によって決定されるような適切な温度(例えば、300〜500℃)に設定され得る。クラッキングからの反応生成物は、例えば、凝縮デバイスによって上記反応器のアウトプットにおいて収集され得る。次いで、クラッキング生成物は、本明細書中に記載されるように同定され得る。さらに、分留(例えば、蒸留)は、上記クラッキング生成物をさらに精製するために行われ得る。
【0065】
なお別の態様において、接触クラッキング方法が、ジテルペンをクラッキングするために本明細書中に開示され、上記方法は、上記ジテルペンを含む原料と触媒組成物とを接触クラッキングの条件下で接触させる工程を含む。ジテルペンは、4個のイソプレン単位を含むC20テルペンである。非限定的な例として、フィトールは、クラッキングされる原料中に存在し得る。フィトールは、クロロフィルの分解の間に生産される天然のテルペンアルコールである。フィトールは、本明細書中に記載されるようにクラッキング方法のために植物生物から抽出され得る。1つの実施形態において、生物は、フィトール生産を上方制御するために遺伝的に改変される。例えば、藻類細胞は、フィトール、上記細胞中のクロロフィルの量、および/または上記細胞中のクロロフィルの分解を上方制御するために遺伝的に改変され得る。
【0066】
フィトールは、ゼオライト触媒(例えば、Y型ゼオライト、L型ゼオライト、またはβ型ゼオライト)を使用して触媒的にクラッキングされ得る。1つの実施形態において、約350℃の温度の条件下でフィトールをクラッキングすることは、測定不能な量か、または1重量%未満のベンゼンのクラッキング生成物を生産する。燃料生成物(例えば、ガソリン)を生産する場合、レギュレーションに起因するベンゼンの生産を回避することが、好ましくあり得る。フィトールクラッキング生成物の分析は、本明細書中で先に記載されるように(例えば、GC/MSによって)行われ得る。
【0067】
1つの実施形態において、フィトールをクラッキングする方法は、55重量%よりも多いC5〜C9パラフィンを含む混合物を生産する工程を含み、70重量%よりも多いパラフィンは、モノメチルパラフィンである。別の実施形態において、上記方法は、75重量%よりも多くが90よりも大きいオクタン価を有する成分を含む混合物を生産する工程を含む。
【0068】
1つの実施形態において、フィトールをクラッキングする方法は、油からフィトールを抽出する工程をさらに含む。例えば、海藻油(algal oil)からフィトールを抽出するために有機溶媒を使用する。
【0069】
フィトールをクラッキングするための方法はまた、フィトールと触媒組成物および水素供給源とを水素化分解の条件下で接触させることによってフィトールを水素化分解する工程を含み得る。例えば、上記触媒組成物は、ニッケルイオン交換ゼオライト触媒(例えば、Ni/LZY−72)を含み得る。水素化分解の条件は、100〜1000℃の温度を含み得る。さらなる実施形態において、上記温度は、200〜500℃である。1つの例において、フィトールは、水素と一緒に25μlのパルスでパルス反応器を通して流される。
【0070】
1つの態様において、テルペンと接触クラッキング組成物とを含む組成物が、開示される。上記組成物は、本明細書中に記載されるプロセスまたは方法を行うために利用され得る。例えば、上記組成物は、上記テルペンを組成物または燃料生成物へとクラッキングするための反応物であり得る。上記組成物は、上記テルペンを軽質炭化水素へと反応させ、そして分解するための上記組成物のために、接触クラッキングの条件(例えば、反応器中の)に供され得る。
【0071】
1つの実施形態において、上記テルペンは、以下からなる群より選択される:モノテルペン、セスキテルペン、ジテルペン、トリテルペン、テトラテルペン、クパレン、ファルネセン、スクアレン、ジンゲロン、およびカロテン。上記テルペンは、より小さい炭化水素への接触クラッキングに適する任意のテルペンであり得、そのテルペンとしては、本明細書中に記載されるものが挙げられる。
【0072】
1つの態様において、藻類から抽出される油および接触クラッキング組成物を含む組成物が、開示される。他の態様において、ジンジャー油と接触クラッキング組成物とを含む組成物、フィトールと接触クラッキング組成物とを含む組成物、またはスクアレンと接触クラッキング組成物とを含む組成物が、開示される。例示的に、接触クラッキング組成物としては、本明細書中に記載されるものが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、上記接触クラッキング組成物は、モレキュラーシーブであり得る。別の例において、上記モレキュラーシーブは、6Åよりも大きい孔径を有する大きい孔のモレキュラーシーブである。大きい孔のモレキュラーシーブは、10〜15Åのケージ径を有し得、かつ/または12員環ゼオライトであり得る。例示的な大きい孔のモレキュラーシーブとしては、β型ゼオライト、L型ゼオライト、またはY型ゼオライト(例えば、LZY−72、Valfor CP811BL−25、ELZ−L、またはT−4546)が挙げられるが、これらに限定されない。他の例において、上記モレキュラーシーブは、10員環ゼオライト(例えば、ZSM−5ゼオライト)である。
【0073】
(バイオマス原料)
特定の実施形態において、精製(例えば、クラッキング)に適したバイオマス原料およびそのバイオマス原料を軽質炭化水素または転位した炭化水素へと変換する方法に適したバイオマス原料が、記載される。バイオマス原料は、遺伝的に改変された生物学的供給源(例えば、藻類および細菌)から抽出される炭化水素を含み得る。代表的に、油のクラッキングは、軽質炭化水素または転位した炭化水素を生成し、これらは、燃料(例えば、ガソリン、ディーゼル燃料またはジェット燃料)、燃料添加剤およびプラスチック、樹脂、繊維、エラストマー、潤滑剤、ゲルなどへとさらに加工するための石油化学製品として適する。
【0074】
より明確には、特定のバイオマス炭化水素は、クラッキングおよび変質を含む1つ以上の精製方法を受け得る原料として選択され得る。特定の実施形態において、上記バイオマス炭化水素は、炭素−炭素結合の開裂を経てより小さい分子の炭化水素へと分解またはクラッキングされる。他の実施形態において、上記バイオマス炭化水素は、特定の構造を有する炭化水素(例えば、分枝状炭化水素)、高オクタン価(例えば、90よりも大きい)を有する炭化水素などを形成するために変更(例えば、アルキル化または異性化によって)される。有利なことには、これらのバイオマス原料は、既存の石油精製方法に適合することができ、そして生産された上記軽質炭化水素または転位した炭化水素は、石油を精製するために既存の基盤設備を使用してさらに加工または分配され得る。
【0075】
いくつかの例において、バイオマス原料は、精製前に化石燃料ベースの原料または石油ベースの原料とブレンドまたは混合される。例えば、藻類から抽出された原料は、原油とブレンドされ得、次いで、上記混合物を触媒的にクラッキングするために触媒組成物と接触され得る。精製の他の方法(例えば、分留)は、バイオマス原料が石油ベースの原料とブレンドまたは混合された後に行われ得る。いくつかの例において、上記石油ベースの原料は、バイオマス原料とブレンドする前に既に精製されている。例えば、上記石油ベースの原料は、ガソリン、ディーゼル、またはジェット燃料であり得る。他の例において、上記石油ベースの原料は、燃料混合のための混合物(例えば、別の炭化水素混合物とブレンドされる場合に適切な燃料生成物をもたらし得る炭化水素混合物)である。燃料混合のための混合物もしくは上記バイオマス原料またはその両方は、精製前に燃料生成物として適切であり得る。別の例において、燃料混合のための混合物もしくは上記バイオマス原料またはその両方は、精製前に燃料生成物として適切ではない。
【0076】
本明細書中で使用される場合、「バイオマス炭化水素」または「バイオマス原料」とは、最近50年内に生きていた生物学的生物から得られた1種以上の有機化合物をいうことができ、そして優勢に炭素および水素を含み、かつ必要に応じてヘテロ原子(例えば、酸素、窒素および硫黄)を含み得る。6億年前までの植物から生ずる化石ベースの原油とは異なり、本明細書中に記載される炭化水素は、生きているか、または直近まで生きていた生物に由来する。そのような再生可能な生物学的供給源としては、天然に存在する生物および遺伝的に改変された生物が挙げられる。特定の実施形態において、そのような生物は、藻類または細菌を含む。いくつかの例において、上記バイオマス炭化水素は、約5〜80個の炭素、10〜50個の炭素、10〜40個の炭素、10〜60個の炭素、15〜40個の炭素、15〜60個の炭素、20〜40個の炭素などを有し得る。他の例において、上記炭化水素は、5個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、または40個の炭素を有する。上記炭化水素分子の炭素は、共有結合性の一重、二重または三重の炭素−炭素結合を介して連結され、そして代表的に、直鎖状、分枝状、環状の立体配置またはそれらの組合せに配置される。
【0077】
いくつかの例において、バイオマス炭化水素は、テルペン、イソプレノイド、脂質、アルキルエステル、アルカノイド、およびフェニルプロパノイドの形態を採る。テルペンは、ヘテロ原子および純粋な炭化水素を含む任意のテルペノイドまたはイソプレノイドをいい得る。本明細書中に記載されるバイオマス炭化水素は、工業的精製所において原料として使用され得る。通常の原料と同様に、上記バイオマス炭化水素は、クラッキングまたは変化し得る。いくつかの実施形態において、上記バイオマス炭化水素は、上記炭化水素原料よりも少ない炭素を有する炭化水素(本明細書中に記載される通り)をいう軽質炭化水素へと分解する。軽質炭化水素は、例えば、精製されたバイオマス原料の生成物であり得る。代表的に、軽質炭化水素は、20個よりも少ない炭素、または15個よりも少ない炭素、または12個よりも少ない炭素、または10個よりも少ない炭素、または8個よりも少ない炭素を有する。上記軽質炭化水素は、環状または非環状の、飽和または不飽和であり得る。飽和した非環状炭化水素はまた、パラフィンと称される。飽和した環状炭化水素はまた、ナフテンと称される。不飽和の炭化水素はまた、オレフィンと称される。不飽和の炭化水素はまた、芳香族であり得る。例示的な軽質炭化水素としては、C2〜C20オレフィン、C6〜C20芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレンなど)、C6〜C20ナフテン(例えば、置換されたシクロペンタンおよびシクロヘキサンまたは非置換のシクロペンタンおよびシクロヘキサン)、C1〜C20パラフィンなどが挙げられる。蒸留範囲に依存して、上記軽質炭化水素は、ガソリン生成物、ディーゼル、灯油、またはジェット燃料として適する留分を含み得る。
【0078】
特定の化学構造的特徴は、クラッキング方法において特定の利点を提供し得る。例えば、上記バイオマス炭化水素は、クラッキング(例えば、接触クラッキング、水蒸気クラッキング、熱クラッキングまたは水素化分解)の条件下で反応中間体へと変換され得る特異的に置換およびプロトン化された炭素中心を有し得る。これらの反応中間体は、さらなる炭素−炭素結合開裂を促し、そして軽質炭化水素を生産する。分枝状炭化水素は、効果(例えば、電気的安定化および立体加速(これらの両方は、置換された炭素中心と関連する))に起因する炭素−炭素開裂に対して特に感受性である。例えば、Ruchardt C.ら.Angew.Chem.Ed.Engl.18,429−440(1980)を参照のこと。
【0079】
他の実施形態において、上記バイオマス原料は、6個よりも少ないイソプレン残基を有するテルペンである低次イソプレノイドである。これらの低次イソプレノイドは、高オクタン燃料または高オクタン燃料添加剤として適切である高度に分枝した炭化水素構造を生産するために特に有用である。
【0080】
特に、低次イソプレノイドとしては、モノテルペン(2個のイソプレン残基を有するCl0テルペン)、セスキテルペン(3個のイソプレン残基を有するCl5テルペン)、ジテルペン(4個のイソプレン残基を有するC20テルペン)およびトリテルペン(6個のイソプレン残基を有するC30テルペン)が挙げられる。上記イソプレン残基は、直鎖状立体配置または環状立体配置に配置される。上記低次テルペンまたはイソプレノイドの特定の例としては、リモネン、クパレン、ミルセン、ファルネセン、ゲラニオール、テルピネオール、ファルネソール、フィトール、スクアレンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0081】
これらの低次イソプレノイドは、分枝状の炭素中心(環状炭素および非環状炭素の両方を含む)を含む。したがって、それらは、クラッキング、異性化、および/または代表的に製油所の操作において用いられる他の公知である方法によって高オクタン価および他の所望の特性を有するガソリン領域留分中の炭化水素を生産するのに適した前駆体である。
【0082】
本明細書中で使用される場合、「オクタン価」とは、イソオクタン(2,2,4−トリメチルペンタン)と、高度に分枝したC8炭化水素とおよびn−ヘプタン(直鎖C7炭化水素)との混合物と比較した、火花点火エンジン燃料のノック耐性(アンチノックの評価)をいう。より明確には、内燃エンジンにおいて、ガソリンと空気との混合物は、点火前に圧縮される。上記圧縮された混合物は、円滑に燃えるよりも早まって燃焼する傾向を有する。早期点火(または自己着火)は、1つ以上のシリンダーにおけるラットリング(rattling)音またはピンギング(pinging)音によって特徴付けられるノックをもたらす。上記ノックは、ピーク出力の減少をもたらす。代表的に、高度に分枝した炭化水素は、直鎖状の炭化水素よりもノックに対してより良好な耐性を有する。
【0083】
したがって、オクタン価は、ノックに対するガソリンの耐性の定量的尺度である。上記オクタン価は、ガソリンの特徴をイソオクタン(オクタン価100、最小限のノック)およびヘプタン(オクタン価0、かなりのノック)と比較することによって決定される。これら2つの成分の線形組合せ(linear combination)は、代表的に、特定のガソリンのオクタン価を測定するために使用される。したがって、91のオクタン価を有するガソリンは、91%のイソオクタンと9%のヘプタンとの混合物と同じノックを有する。本明細書中で使用される場合、高オクタン価とは、80以上のオクタン価、より代表的には、90以上のオクタン価をいう。
【0084】
ベースのガソリン混合原料または直留ガソリンは、代表的に、60と70との間のオクタン価を有する。分枝状炭化水素(置換ナフテン(例えば、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン)、および芳香族化合物が挙げられる)は、90よりも高い(90+)オクタン価を有する。90+のオクタン価を有する炭化水素は、燃料のオクタン価を高めるために燃料への添加剤として使用され得る。これらの添加剤はまた、「オクタンブースター」とも称される。代表的なオクタンブースターとしては、例えば、高オクタン価の芳香族炭化水素(例えば、トルエン(オクタン価124))、アルコール(例えば、エタノール(オクタン価115))およびメタノール(オクタン価113)、および有機金属(例えば、四エチル鉛)などが挙げられる。
【0085】
適切なクラッキングの条件下で、上記低次イソプレノイドは、より短いもの(例えば、C12よりも小さいもの)および分枝状炭化水素まで分解され得る。高オクタン燃料として適切な留分としては、例えば、分枝状C8炭化水素、環状C5〜C7炭化水素、および芳香族炭化水素(例えば、トルエンおよびキシレン)が挙げられる。所望の留分は、蒸留によって単離され得る。
【0086】
上記イソプレノイドとは別に、他のクラスのバイオマス炭化水素は、脂質および窒素含有炭化水素を含む。脂質とは、一般に、脂肪酸、それらの誘導体およびステロールをいう。遊離脂肪酸は、代表的に、カルボン酸によって終結する長い炭化水素鎖を含む。上記炭化水素鎖は、飽和であっても不飽和であってもよく、そして代表的に、長さが12〜24個の炭素(例えば、C12〜C24)の範囲である。脂肪酸誘導体としては、脂肪酸のエステルが挙げられる。例えば、グリセリド(例えば、植物油)は、1つ以上の脂肪酸基を伴うグリセロール(プロパン−1,2,3−トリオール)のコア構造を有する脂質である。さらなる脂肪酸誘導体としては、植物油のエステル交換反応生成物であるアルキルエステルが挙げられる。代表的に、メタノールは、脂肪酸のメチルエステルを生産するために使用され得る。アルカロイドおよびフェニルプロパノイドは、植物由来の窒素含有炭化水素である。それらは、代表的に、アミノ酸誘導体であり、そして細胞代謝経路に基づいて構築される。
【0087】
考察されるように、上記バイオマス炭化水素は、天然に存在する生物および遺伝的に改変された生物を含む再生可能な生物学的供給源に由来する。炭化水素は、植物、真菌、藻類、細菌などを含む多数の天然に存在する生物(真核生物または原核生物)中に存在する。本明細書中に記載されるバイオマス炭化水素は、生きているか、または直近まで生きていた生物(バイオマス)の両方から得られ得る。
【0088】
特に、本明細書中に記載されるポリエンは、植物および藻類、真菌の数種の型および数種の細菌のような数種の他の光合成生物において天然に存在する有機色素として存在する。カロテノイド(例えば、α−カロテン、β−カロテン(β,β−カロテン)、およびリコピン(γ,γ−カロテン))は、公知のイソプレノイドである。
【0089】
藻類が、エネルギー生産を光合成に依存し、そして高含量のカロテンを蓄積し得るので、藻類は、生物学的な炭化水素の生産に特に適したバイオマスのための供給源を代表する(例えば、海藻のDunaliella salina)。作物とは異なり、藻類の栽培は、耕地を専有せず、かつ灌漑システムを必要としない。さらに、藻類は、カロテンの生合成生産を増大させるために遺伝的に操作され得る種々の微生物である。
【0090】
カロテノイド(例えば、カロテン)は、収穫池(harvesting pond)で成長した藻類から生産され得る。藻類の型に依存して、上記池は、淡水または鹹水を含み得る。上記藻類は、収穫および乾燥される。カロテノイドは、乾燥された藻類から有機溶媒を使用して抽出され得る。代表的に、低沸点溶媒が、使用される。上記溶媒は、抽出されたカロテン濃縮される場合、(例えば、蒸留および凝縮を介して)再利用され得る。例示的な溶媒としては、ヘキサン、二硫化硫黄、石油エーテル、アセトンおよびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0091】
1つの態様において、接触クラッキング方法が、藻類からの油をクラッキングするために提供され、上記方法は、テルペンを含む原料を形成するために藻類からの油を抽出する工程;上記セスキテルペンを含む原料と触媒組成物とを接触クラッキングの条件下で接触させる工程を含む。1つの実施形態において、上記藻類からの油は、テルペン(例えば、天然に存在するテルペン(例えば、カロテノイド))を含む。別の実施形態において、上記藻類からの油は、セスキテルペン(例えば、クパレンまたはファルネセン)を含む。
【0092】
海藻油は、種々の様式で方法に供され得る。例えば、藻類は、収穫および乾燥され得、次いで油が、溶解された細胞または破壊された細胞から抽出される。上記細胞は、化学的に破壊され得るか、または機械力が、細胞壁を破壊するために使用され得る。油は、有機溶媒(例えば、ヘキサン)を使用して上記藻類から抽出され得る。藻類から油を抽出する他の方法はまた、当業者に明らかであるように、本発明の方法と一緒に使用され得る。
【0093】
1つの実施形態において、上記藻類からの油は、鎖長C10よりも長く、かつ藻類において天然に存在するものよりも大きい炭化水素およびテルペンを含む。異なる種の藻類は、異なる炭化水素の混合物を含む油を産生し得る。いくつかの実施形態において、上記藻類からの油は、1種よりも多くの藻類からの油の混合物である。いくつかの実施形態において、上記藻類からの油は、増大した量のテルペンを含む。いくつかの実施形態において、上記藻類からの油は、上記藻類によって天然に生産されないテルペンを含む。
【0094】
いくつかの例において、本明細書中の方法はまた、上記原料を接触させる前に藻類からの油と燃料成分とを混合する工程を含む。例えば、海藻油と原油とのブレンドは、本明細書中に記載される方法において提供され得、そして触媒組成物と接触し得る。別の例において、海藻油と精製された燃料(例えば、ガソリン)とのブレンドは、触媒組成物と接触し得る。例えば、上記燃料成分は、以下からなる群より選択されるが、これらに限定されない:化石燃料、石油、燃料混合のための混合物、ガソリン、ディーゼル、ジェット燃料、およびそれらの任意の組合せ。
【0095】
1つの実施形態において、方法は、油を抽出する前に上記藻類を遺伝的に改変する工程を含む。例えば、上記藻類の葉緑体または核は、テルペンの生産を促進する酵素を産生するように形質転換され得る。上記テルペンは、上記藻類において天然に存在し得るか、または上記藻類とは異なり得る。1つの実施形態において、上記藻類は、上記藻類において天然に存在するテルペンの生産を上方制御するために遺伝的に改変される。この様式において、上記藻類からの油は、方法(例えば、本明細書中に記載される方法)において接触クラッキングの条件下でクラッキングされ得るテルペンのより多い量を含む。別の実施形態において、上記藻類は、上記藻類において天然に存在しないテルペンの生産を上方制御するために遺伝的に改変される。例えば、MVA経路またはMEP経路を通してテルペンを産生する酵素をコードする遺伝子は、上記藻類の葉緑体または核に挿入され得る。上記酵素は、上記生物において天然に存在しないテルペンを産生するように構成される。この手段において、上記生物は、燃料生成物の生産において有用であり得る大きい炭化水素の測定可能な量を含むように設計され得る。例えば、上記藻類は、遺伝的に改変しない藻類と比較して、増大した量のセスキテルペンを生産するように遺伝的に改変され得る。セスキテルペンを産生する酵素をコードする遺伝子形質転換は、上記藻類に挿入され得る。1つの実施形態において、上記セスキテルペンは、クパレンである。別の実施形態において、上記セスキテルペンは、ファルネセンである。なお別の実施形態において、上記セスキテルペンは、ジンギベレンである。藻類はまた、任意のサイズのテルペン(例えば、モノテルペン、ジテルペン、トリテルペンなど)を産生するように遺伝的に改変され得る。遺伝的に改変された藻類から産生され得るテルペンの例としては、フィトールおよびスクアレンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0096】
1つの態様において、接触クラッキング方法が、藻類からの油をクラッキングするために本明細書中に開示され、上記方法は、クパレンを含む原料を形成するために藻類からの油を抽出する工程;および上記クパレンを含む原料と触媒組成物とを接触クラッキングの条件下で接触させる工程を含む。1つの実施形態において、上記方法は、油を抽出する前に上記藻類を遺伝的に改変する工程をさらに含む。例えば、上記藻類を遺伝的に改変する工程は、遺伝的に改変しない藻類と比較して増大した量のクパレンを生産し得る。
【0097】
藻類からの油のクラッキングは、本明細書中に記載されるように、任意の上記触媒組成物を使用して行われ得る。1つの実施形態において、海藻油は、ゼオライトβ触媒を使用してクラッキングされる。クラッキングのための反応器は、上記触媒組成物を通して上記油を流すためにポンプまたはシリンジポンプによって供給され得る。1つの実施形態において、上記油は、キャリアガス(例えば、ヘリウム)を含む反応器に注入される。上記反応のクラッキング生成物は、当該分野で公知である任意の適切な方法によって同定され得、その方法としては、ガスクロマトグラフィーまたは液体クロマトグラフィーおよび質量分析が挙げられるが、これらに限定されない。
【0098】
1つの実施形態において、粗藻類からの油は、クラッキング方法が行われる前に精製され得る。例えば、上記粗海藻油は、RBD(精製(refining)脱色(bleaching)脱臭(deodorizing))方法に供され得る。別の例において、上記粗海藻油は、所望の成分へと分留(例えば、蒸留によって)され得る。分留は、使用者によって予め決定され得るか、または粗海藻油を所望のサイズ、組成、または形状の炭化水素成分へと分留するように設定され得る。
【0099】
1つの態様において、トリグリセリドと25重量%未満のパラフィンとを含む組成物が、記載され、上記パラフィンは、C11〜C13パラフィンを含む。海藻の酵素またはそのフラグメントは、微量または相当量で上記組成物中に存在し得る。上記組成物は、燃料生成物(例えば、ジェット燃料、ガソリン、またはディーゼル)と類似し得る。1つの実施形態において、上記組成物は、藻類からの油をクラッキングする工程を含む方法を行うことに由来する。1つの実施形態において、上記組成物は、化石燃料ベースのガソリンよりも少ないパラフィンを含む。上記組成物はまた、化石燃料ベースのガソリン中に存在するよりも大きいパラフィン(例えば、C11〜C13パラフィン)を含み得る。
【0100】
1つの実施形態において、上記組成物は、藻類からの油をクラッキングする工程を含む方法を行うことに由来し、上記組成物は、低級アルカンを含む。1つの実施形態において、上記低級アルカンは、ガソリン留分を含む。
【0101】
本明細書中に記載される組成物は、クラッキング方法から産生され得、テルペンを含むバイオマス材料が、クラッキングされている。例えば、上に記載される流通反応装置は、上記組成物を産生する方法を行うために使用され得る。トリグリセリドは、光合成生物中に存在し、そして脂肪酸を含む。
【0102】
上記バイオマス原料は、工業規模および実験室規模で精製するのに適切である。慣習的に、上記精製方法は、広い範囲の炭化水素を含む原油を、特定の長さまたは構造によって特徴付けられる代表的に炭化水素である有用な物質の留分に変換する。上記留分は、直接蒸留法または、より効率的に、長い炭化水素をより短い炭化水素にクラッキングすることにより得られ得る。原油を物理的に変換することに加えて、特定の精製方法はまた、クラッキングされた炭化水素をより所望の構造へと化学的に変換し得る。例えば、アルキル化方法は、高オクタン燃料または高オクタン燃料添加剤として適切である高度に分枝した炭化水素を提供し得る。例えば、Petroleum Refining Technology and Economics、Gary J.ら、Taylor & Francis Group(第5版)を参照のこと。
【0103】
上記バイオマス原料は、原油と同様の様式で精製され得る。したがって、特定の実施形態は、バイオマス原料を1種以上の軽質炭化水素に変換する方法を記載する。有利なことには、軽質炭化水素留分の所望の仕様に依存して、特定の構造的特徴を有する生物学的炭化水素は、合理的な設計および操作を通して天然の供給源または生合成経路の遺伝的に改変された生物から選択および取得され得る。例えば、高オクタンガソリン生成物は代表的に、約3〜12個の炭素を含み、そして構造的特性(例えば、炭素骨格の枝分かれ(例えば、分枝状炭化水素))、ナフテン性(naphenic)(例えば、環状の非芳香族構造)または芳香族性によって生じる、直鎖状パラフィンよりも「小型」である分子である。これらの仕様に基づいて、適切な炭素骨格特性(例えば、カロテノイド)を有する生物学的炭化水素は、例えば、接触クラッキングを通して所望の留分を生産するように選択され得る。
【0104】
一般的にいうと、上記精製方法は、クラッキング(例えば、接触クラッキング、熱クラッキング、水蒸気クラッキングおよび水素化分解)および異性化、変質または化学変換を含む。
【0105】
1つの実施形態は、接触クラッキング方法に適した組成物を提供し、上記組成物は、バイオマス原料とクラッキング触媒とを含む。特定の実施形態において、上記バイオマス原料は、ポリエン鎖構造を有する少なくとも1種の炭化水素を含み、上記ポリエン鎖構造は、1種以上の第四級オレフィン炭素を含む。いくつかの例において、上記バイオマス原料は、専ら藻類起源である。他の例において、上記バイオマス原料は、藻類からのトリグリセリドを含む。
【0106】
流動接触クラッキング(FCC)は、重質炭化水素をより有用なガソリンおよびより軽質な生成物へと変換するために最も幅広く使用される製油所のプロセスのうちの1つである。図1は、バイオマス原料をクラッキングするのに適切である標準的なFCC方法を概略的に示す。上記原料は、加熱され、そして「上昇管」(垂直または上方に傾斜した管)の基部に噴霧され、予熱された原料は、流動化されたゼオライト触媒と約1230〜1400°F(665〜760℃)にて接触する。熱い触媒は、上記原料を気化し、そして高分子量の炭化水素をより軽質な成分へと分解するクラッキング反応を触媒し、そのより軽質な成分としては、LPG(液化石油ガス(例えば、C3〜C4オレフィン)、および非環状炭化水素または環状炭化水素(C5〜C12)が挙げられる。上記触媒−炭化水素混合物は、わずか数秒で上昇管を通して上方に流れ、次いで上記混合物は、サイクロ(登録商標)ンを介して分離される。触媒を含まない炭化水素は、より重質な燃料からより軽質な炭化水素生成物(例えば、C3〜C12炭化水素)を分離するために分留装置(fractioner)に送られる。上記より軽質な炭化水素(その炭化水素の多くは、ガソリン生成物として適切である)は、上記より重質な燃料よりも大きい揮発性である。上記より重質な燃料は、200℃〜350℃の間で大気圧にて分留するディーゼルおよびジェット燃料を含む。
【0107】
上記上昇管を移動する間に、上記クラッキング触媒は、上記触媒にコークスを沈着させる反応によって「費やされ」、そしてクラッキング触媒は、活性および選択性が大きく減少する。コークス形成の過程は、それが気体生成物のH/C(水素 対 炭素)比をよりガソリンに適した範囲まで増大させるので、全ての方法にとって重要である。上記「費やされ」た触媒は、クラッキングされた炭化水素の蒸気から離脱し、そしてストリッパー(示さない)に送られ、そのストリッパーは、触媒の孔に残留する炭化水素を除去するために蒸気と接触する。次いで、上記「費やされ」た触媒は、流動床再生器に流れ、その流動床再生器において、空気(または、いくつかの場合において、酸素を加えた空気)が、上記コークスを焼き尽くして触媒活性を回復させ、そしてまた次の反応サイクルのための必要な熱を提供するために使用される。次いで、「回復された」触媒は、上昇管の基部に流れ、上記サイクルを繰り返す。
【0108】
類似する型のクラッキング方法もまた、生物学的に誘導される原料について想定されるが、特定の実施形態において、より温和な条件が用いられ、その主要な目的は、必ずしも炭素を除去することまたは上記生成物のH/C比を増大させることなく全体の分子量を減少させることである。サーモフォア接触クラッキングとして公知である方法が、使用され得る。
【0109】
1つの実施形態において、上記バイオマス原料は、少なくとも1種の炭化水素化合物を含む。特定の実施形態において、カルベニウムイオンは、生物学的に誘導される原料に対する上記触媒の作用に起因して形成され、その作用は、上記カルベニウムイオンのβ位における炭素−炭素結合の断裂(例えば、β開裂)を誘導すると考えられる。他の実施形態において、アルコキシド型の中間体が、上記第四級オレフィン炭素において形成され得、その中間体もまた、β開裂を生じる。
【0110】
さらなる実施形態は、バイオマス原料とクラッキング触媒とを接触クラッキングの条件下で接触させる工程を含む炭化水素をクラッキングするための方法を提供し、上記バイオマス原料は、ポリエン構造を有する少なくとも1種の炭化水素を含み、上記ポリエン構造は、1種以上の第四級オレフィン炭素を含む。
【0111】
スキームVIは、生物学的供給源からのβ−カロテン(3,7,12,16−テトラメチル−1,18−ビス(2,6,6−トリメチル−1−シクロヘキセニル)−オクタデカ−1,3,5,7,9,11,13,15,17−ノネン)のクラッキングを示す。示されるように、β−カロテンは、ゼオライト触媒(Z)と接触し,それによって、第四級オレフィン炭素が、カルベニウムイオンへと変換される。カルベニウム中間体は、上記カルベニウムイオンのβ位にてC−C結合の断裂を受ける。低級オレフィン(1):3−メチル−1−ビス(2,6,6−トリメチル−1−シクロヘキセニル)−1−ブテンが、生産される。さらなるクラッキングは、さらなるクラッキング方法を受け得る低級オレフィン(2):3,8−ジメチル−1,3,5,7,9−ペンタデセンを生産する。他のより低級なテルペン(例えば、モノテルペン(例えば、ミルセン(3)))もまた、クラッキングするおよび可能な転位において生産され得る。
【化6】
【0112】
生産された低級オレフィンは、ブレンドまたは改質を通して燃料添加剤として直接的に使用され得る。それらはまた、多くのガソリン生成物を生産するためにさらに加工され得る。上記低級オレフィンはまた、石油化学プロセスにおいて直接的に使用され得る。
【0113】
別の実施形態において、上記バイオマス原料は、少なくとも一種の低次イソプレノイド(例えば、モノテルペンおよびセスキテルペン)を含む。
【0114】
他の実施形態において、上記バイオマス原料は、低級アルカンを生産するために水素化分解に供される。上記水素化分解法は、飽和であり、かつより短いアルカンを生産する。代表的に、上記クラッキング方法は、高い分圧の水素ガスの存在下で行われる。水素化分解は、通常、ナフテンおよびアルカンを生産するために炭化水素鎖を転位および破壊することならびに水素を芳香族化合物およびオレフィンに付加することを可能にする、二機能性触媒によって促進される。
【0115】
他の実施形態において、上記バイオマス原料は、低級オレフィンを生産するために熱クラッキングに供される。熱クラッキングは、高い温度(約800℃)および圧力(約700kPa)において行われる。熱エネルギーは、代表的に、炭素−炭素結合の等方性分解を生じ、そしてより小さいオレフィンを生産する。等方性分解はラジカルを産生するので、付加反応または脱離反応を含む多くの化学反応が熱クラッキングの間に行われ得る。
【0116】
他の実施形態において、バイオマス原料は、低級オレフィンを生産するために水蒸気クラッキングに供される。水蒸気クラッキングは、バイオマス原料を蒸気で希釈することによって行われ得、そして炉において短時間に加熱(約850℃)され得る。上記反応において生産される生成物は、送りの組成物、水蒸気に対する炭化水素の比ならびにクラッキング温度および炉滞留時間に依存する。代表的に、低級オレフィンが、生産される。
【0117】
本明細書中に記載されるバイオマス炭化水素は、1種以上のゼオライト触媒の存在下でより軽質な炭化水素へとクラッキングされ得る。実施例に示されるように、上記クラッキング方法は、代表的に、温度依存性の生成物分布を生じる。さらに、クラッキングされる炭化水素の構造に依存して、生成物分布は、高オクタン価の軽質炭化水素に有利であり得る。さらに、触媒の型は、クラッキングされた生成物の性質および分布を決定することにおいて重要な役割を果たす。
【0118】
記載されるように、低次テルペン(例えば、クパレン、ファルネセン、ジンジャー油、フィトール、およびスクアレン)は、接触クラッキングの条件に供され得る。クラッキング生成物としては、代表的に、パラフィン(例えば、C4〜C9)、ナフテン(例えば、C5〜C9)、芳香族化合物(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン)が挙げられる。上記クラッキング生成物の間で、分枝状の炭素中心を有する炭化水素(例えば、分枝状パラフィン)、ナフテンおよび芳香族化合物は、高オクタン価(例えば、91よりも高い)を伴う傾向にある。
【0119】
特定の実施形態において、高オクタン価を有するクラッキング生成物は、200℃〜500℃の範囲の温度にて60%を超える収率で生産される。所望の生成物に依存して、最適な温度範囲は、経験的に確立され得、その温度範囲において、高オクタン価の生成物(例えば、ベンゼン以外の芳香族化合物、ナフテン)は、最大化され、そして低オクタン価(例えば、直鎖状パラフィン)の生成物は、最小化される。代表的に、上記温度は、200℃〜350℃、または350℃〜450℃の範囲であり得る。
【0120】
したがって、上記クラッキング生成物は、高い収率で生産され、そして所望および/または種々の構造的特徴のクラッキング生成物であり、そのクラッキング生成物は、それらが燃料、燃料添加剤として使用されること可能にするか、または石油化学製品として直接的に使用することを可能にする。したがって、本明細書中に記載されるバイオマス炭化水素は、有用な物質へと精製するのに適切であり、そして精製する方法において化石燃料を置換または補充するために使用され得る。
【0121】
1つの態様において、燃料生成物を作製するための方法が、本明細書中に開示され、その方法は、遺伝的に改変された光合成する非維管束生物から原料を得る工程;および上記原料と触媒組成物とを接触クラッキングの条件下で接触させ、それによって燃料生成物を作製する工程を含み、上記触媒組成物は、6Åよりも大きい孔径を有する大きい孔のモレキュラーシーブを含む。例えば、上記原料は、遺伝的に改変された藻類であり得る。上記藻類は、テルペンの生産を上方制御する手段を含む種々の手段で遺伝的に改変され得る。1つの実施形態において、遺伝的改変は、上記生物において天然に存在しない炭化水素またはテルペンを産生する生物を可能にする。接触クラッキングの条件は、本明細書中に記載される条件であり得る。例えば、上記クラッキングは、420℃までの温度において起こり得る。遺伝的に改変された光合成する非維管束生物との接触における触媒組成物はまた、本明細書中に記載される任意の触媒組成物、または当業者に公知である、接触クラッキングの条件下での使用について明らかであるか、もしくは予想される組成物であり得る。いくつかの例において、大きい孔のモレキュラーシーブは、12員環ゼオライトである。
【0122】
本明細書中に記載される方法またはプロセスから生産される燃料生成物は、約85と125との間のオクタン価を有し得る。燃料生成物はまた、90よりも大きいオクタン価を有し得る。
【0123】
いくつかの例において、プロセスまたは方法は、燃料成分を上記燃料生成物に添加する工程をさらに含み得、上記燃料成分は、混合燃料(例えば、エタノール、ジェット燃料、ディーゼル、バイオディーゼル、またはガソリン)である。例えば、上記燃料生成物は、上記燃料生成物と上記燃料成分とを含む混合物の約5〜95%であり得る。別の実施形態において、燃料添加剤(例えば、MTBE、界面活性剤、および酸化剤)は、上記燃料生成物に添加され得る。
【0124】
(組成物および生成物)
テルペンからの生成物をもたらす組成物および方法ならびにバイオマス由来のテルペンからの生成物をもたらす組成物および方法が、本明細書中に提供される。生成物の例としては、燃料生成物、芳香生成物、および殺虫剤生成物が挙げられるが、これらに限定されない。生成物は、分子に蓄えられたエネルギーを放出する任意の物質であり得る。1つの実施形態において、生成物は、有機分子である。別の実施形態において、生成物は、炭化水素である。いくつかの例において、生成物は、水素を含まない。いくつかの例において、生成物は、酸素を含まない。いくつかの例において、生成物は、抗体またはタンパク質を含まない。いくつかの例において、生成物は、脂肪酸を含まない。
【0125】
燃料生成物の例は、石油化学製品およびそれらの前駆体ならびに石油化学工業において有用であり得る全ての他の物質が挙げられる。燃料生成物としては、例えば、石油生成物、および石油の前駆体、ならびに石油化学製品およびその前駆体が挙げられる。上記燃料生成物は、石油生成物および石油化学製品を含む、石油化学工業において有用な物質、または材料を産生するために使用され得る。上記燃料または燃料生成物は、燃焼器(例えば、ボイラー、窯炉、乾燥機または炉)において使用され得る。燃焼器の他の例は、内燃エンジン(例えば、乗物のエンジンまたは発電機)であり、その内燃エンジンとしては、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、ジェットエンジン、およびその他が挙げられる。燃料生成物はまた、プラスチック、樹脂、繊維、エラストマー、潤滑剤、およびゲルを生産するために使用され得る。
【0126】
本明細書中で企図するされる生成物の例としては、水素分子および炭素分子ならびにときとして1つ以上のヘテロ原子からなり得る炭化水素生成物および炭化水素誘導体が挙げられ、上記ヘテロ原子は、水素または炭素ではない任意の原子である。ヘテロ原子の例としては、窒素、酸素、硫黄、およびリンが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの生成物は、炭化水素が豊富であり、上記生成物の少なくとも50重量%、60重量%、70重量%、80重量%、90重量%、95重量%、99重量%は、炭素および水素で構成される。1つの実施形態において、生成物は、100重量%が炭素および水素の原子である。
【0127】
燃料生成物(例えば、炭化水素)は、慣習的に、原油もしくは石油に由来する前駆体または生成物(例えば、液化石油ガス、ナフサ(リグロイン)、ガソリン、灯油、ディーゼル、潤滑油、高比重ガス、コークス、アスファルト、タール、および蝋であるが、これらに限定されない)であり得る。例えば、燃料生成物としては、加熱(例えば、調理におけるもの)またはプラスチックの作製に使用され得る小さいアルカン(例えば、1〜約4個の炭素(例えば、メタン、エタン、プロパン、またはブタン))であり得る。燃料生成物はまた、約5個〜約9個の炭素原子の炭素骨格を有する分子(例えば、ナフサもしくはリグロイン、またはそれらの前駆体)を含み得る。他の燃料生成物は、ガソリンまたはモーター燃料として使用される約5個〜約12個の炭素原子またはシクロアルカンであり得る。約10個〜約18個の炭素の分子および芳香族化合物(例えば、灯油、またはその前駆体)もまた、燃料生成物であり得る。燃料生成物は、12個よりも多い炭素を有する分子、またはそれらの前駆体(例えば、潤滑油に使用される)を含み得る。他の燃料生成物としては、代表的に、約20個〜約70個の炭素のアルカン、シクロアルカン、および芳香族化合物を含む、高比重ガスもしくは燃料油、またはそれらの前駆体が挙げられる。燃料生成物はまた、原油からの他の残留物(例えば、コークス、アスファルト、タール、および蝋)およびその前駆体を含む、一般に、約70個以上の炭素を有する複数の環を含む。
【0128】
種々の燃料生成物は、多くの方法によってエンドユーザーのための最終生成物へとさらに精製され得る。精製は、分留によって生じ得る。例えば、燃料生成物の混合物(例えば、異なる種々の鎖長を有する異なる炭化水素の混合物)は、分留によって種々の成分へと分離され得る。
【0129】
上記燃料生成物はまた、例えば、触媒(例えば、白金または白金−レニウムミックス)を使用することによって一体化工程においてそれらを組み合わせることによって精製され得る。上記一体化プロセスは、代表的に、水素ガス(クラッキングにおいて使用され得る副生成物)を生産する。
【0130】
上記燃料生成物はまた、炭化水素をより小さい分子へと変化させるか、または転位するか、または再構築することによって精製され得る。当業者に公知である触媒的に改質する方法において生じる多くの化学反応が存在する。一般に、接触改質は、触媒および高い分圧の水素の存在下で行われる。1つの一般的な方法は、アルキル化である。例えば、プロピレンおよびブチレンは、触媒(例えば、フッ化水素酸または硫酸)と混合される。
【0131】
上記燃料生成物はまた、最終生成物を得るために混合物中にブレンドされるか、または組み合わせられ得る。例えば、上記燃料生成物は、種々の等級のガソリンを形成するために、添加剤、種々の重量および等級の潤滑油、種々の等級の灯油、ジェット燃料、ディーゼル燃料、暖房用オイル、およびプラスチックおよび他のポリマーを作製するための化学物質と一緒かまたはそれらを伴わずにブレンドされ得る。本明細書中に記載される燃料生成物の組成物は、他の手段によって生産される燃料生成物と組み合わせられるか、またはブレンドされ得る。
【0132】
生産された生成物は、天然に生産され得るか、または形質転換された宿主細胞および生物によって非天然的に(形質転換の結果として)生産され得る。上記生成物はまた、天然に存在しない新規分子であり得る。例えば、藻類において天然に生産される生成物は、テルペン(例えば、カロテノイド(例えば、β−カロテン))であり得る。藻類によって天然に生産されない生成物の例としては、ネイティブではないテルペン(例えば、リモネン)が挙げられ得る。
【0133】
いくつかの例において、本明細書中で企図される生成物(例えば、燃料生成物)は、無機炭素供給源に由来する1種以上の炭素を含む。1つの実施形態において、本明細書中に記載される生成物の炭素の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または99%は、無機炭素供給源に由来する。無機炭素供給源の例としては、二酸化炭素、炭酸塩、炭素水素塩、および炭酸が挙げられるが、これらに限定されない。上記生成物は、光合成の間に固定された無機炭素供給源からの炭素を有する有機分子であり得る。
【0134】
本明細書中の生成物は、その炭素同位体分布(CID)によって記載され得る。分子レベルにおいて、CIDは、天然に存在する炭素同位体(例えば、12C、13C、または14C)である分子内の単一炭素原子の統計的な可能性である。バルクレベルの生成物において、CIDは、少なくとも1個の炭素原子を含む化合物中の天然に存在する炭素同位体(例えば、12C、13C、または14C)の相対的存在量であり得る。各々の化石燃料のCIがその供給源に基づいて異なり得ることが注目されているので、CID(fos)(例えば、化石燃料(例えば、石油、天然ガス、および石炭)中の炭素のCID)は、CID(atm)(例えば、現在の大気の二酸化炭素における炭素のCID)と区別可能である。さらに、CID(photo−atm)とは、無機炭素の実質的に全ての供給源は大気中の二酸化炭素であった近況における光合成によって作られる炭素ベースの化合物のCIDをいう。CID(photo−fos)とは、無機炭素の実質的に全ての供給源は化石燃料(例えば、石炭、天然ガス、および/または石油)の燃焼によって生産される二酸化炭素であった近況において光合成によって作られる炭素ベースの化合物のCIDをいう。
【0135】
正確な分布はまた、1)分子を生産した光合成生物の型、および2)無機炭素の供給源の特徴である。これらの同位体分布は、光合成的に誘導される燃料生成物の組成物を規定するために使用され得る。
【0136】
炭素同位体は、異なる化合物の間および内部で不規則に分布し、そして同位体の分布は、炭素の変換にかかわる物理的プロセス、化学的プロセス、および代謝的プロセスについての情報を明らかにし得る。光合成生物組織中のCに対するCの全体の存在量は、一般に、大気の二酸化炭素の炭素よりも少なく、このことは、炭素同位体の区別が二酸化炭素の光合成的なバイオマスへの組み込みにおいて生じることを示す。
【0137】
いくつかの燃料生成物は、ときとして、精製の後に、バイオマスから生産され得、その燃料生成物は、既存の石油化学製品と同じ(例えば、同じ構造)である。燃料生成物のいくつかは、既存の石油化学製品と同じでない可能性がある。1つの実施形態において、燃料生成物または組成物は、炭素同位体分布を除いて、既存の石油化学と同一である。例えば、化石燃料の石油化学製品は、−32%o未満のδ13C分布を有さないと考えられる一方で、本明細書中に記載される燃料生成物は、−32%o未満、−35%o未満、−40%o未満、−45%o未満、−50%o未満、−55%o未満、または−60%o未満のδ13C分布を有し得る。別の実施形態において、燃料生成物または組成物は、既存の化石燃料石油化学と類似するが同じではなく、そして−32%o未満、−35%o未満、−40%o未満、−45%o未満、−50%o未満、−55%o未満、または−60%o未満のδ13C分布を有する。しかし、分子は、従来の石油化学の製品または精製において存在することができないが、それは、これらの産業においてなおも有用であり得る。例えば、ガソリンの沸点範囲にあり、そしてガソリンまたは添加剤として使用され得る炭化水素が、生産され得るが、上記炭化水素は、ガソリン中に通常生じない。燃料生成物は、水素分子と炭素分子とを含む組成物であり得、水素分子と炭素分子は、上記組成物の原子量の少なくとも80%であり、そして上記組成物のδ13C分布は、−32%o未満である。本明細書中に記載されるいくつかの燃料生成物のために、水素分子および炭素分子は、上記組成物の原子量の少なくとも90%である。例えば、バイオディーゼルまたは脂肪酸メチルエステル(90重量%未満の水素分子および炭素分子を有する)は、上記組成物の一部ではない可能性がある。さらに他の組成物において、上記水素分子および炭素分子は、上記組成物の原子量の少なくとも95%または99%である。なお他の組成物において、上記水素分子および炭素分子は、上記組成物の原子量の100%である。いくつかの例において、上記組成物は、液体である。他の例において、上記組成物は、燃料添加剤または燃料生成物である。
【0138】
水素分子と炭素分子とを含む組成物を含む燃料生成物もまた、本明細書中に記載され、水素分子および炭素分子は、上記組成物の原子量の少なくとも80%であり、そして上記組成物のδ13C分布は、−32%o未満であり、かつその組成物は、燃料成分である。いくつかの実施形態において、上記組成物のδ13C分布は、約−35%o未満、−40%o未満、−45%o未満、−50%o未満、−55%o未満、または−60%o未満である。いくつかの例において、上記燃料成分は、化石燃料、ガソリン、ディーゼル、エタノール、ジェット燃料、またはそれらの任意の組合せであり得る混合燃料である。さらに他の例において、上記混合燃料は、−32%oよりも大きいδ13C分布を有する。本明細書中に記載されるいくつかの燃料生成物について、上記燃料成分は、MTBE、抗酸化剤、静電防止剤、腐食防止剤、およびそれらの任意の組合せであり得る燃料添加剤である。本明細書中に記載される燃料生成物は、記載される燃料生成物と燃料成分とをブレンドすることによって産生される生成物であり得る。いくつかの例において、上記燃料生成物は、−32%oよりも大きいδ13C分布を有する。他の例において、上記燃料生成物は、−32%o未満のδ13C分布を有する。例えば、生物から抽出された組成物は、本明細書中に記載される燃料生成物を産生するために精製(例えば、クラッキング)する前に燃料成分とブレンドされ得る。燃料成分は、記載されるように、化石燃料、または燃料生成物を産生するための混合ブレンドであり得る。例えば、燃料混合ための混合物は、燃料生成物を産生するために別の炭化水素混合物とブレンドするのに適切である炭化水素混合物であり得る。例えば、低級アルカンの混合物は、燃料の型に適する特定のオクタン価を有することができないが、しかし、その混合物は、燃料生成物を産生するために高オクタン混合物とブレンドされ得る。1つの例において、−32%o未満のδ13C分布を有する組成物は、燃料生成物を作製するために、燃料混合のための炭化水素混合物と混合される。いくつかの例において、上記組成物または燃料成分は、単独では燃料生成物として適切ではないが、しかし、組み合わせられる場合に、それらは、燃料生成物を構成する。他の例において、上記組成物もしくは上記燃料成分またはその両方のいずれも、燃料生成物として適切である。なお他の例において、上記燃料成分は、既存の石油線物(例えば、ガソリンまたはジェット燃料)である。なお他の例において、上記燃料成分は、再生可能な資源(例えば、バイオエタノール、バイオディーゼル、バイオガソリンなど)に由来する。
【0139】
上記バイオマス原料は、高オクタン炭化水素生成物を生産するのに適切である。したがって、1つの実施形態は、燃料生成物を形成する方法を記載し、上記方法は、バイオマス原料をクラッキングすることによって80以上のオクタン価を有する4〜12個の炭素を有する1種以上の軽質炭化水素を形成する工程、および80以上のオクタン価を有する1種以上の軽質炭化水素と80未満のオクタン価を有する炭化水素とをブレンドする工程を含む。代表的に、80未満のオクタン価を有する炭化水素は、原油を精製することに由来する化石燃料である。特定の実施形態において、上記バイオマス原料は、ポリエン構造を有する少なくとも1種の炭化水素を含み、上記ポリエン構造は、1種以上の第四級オレフィン炭素を含む。別の実施形態において、上記バイオマス原料は、本明細書中で規定されるように、少なくとも1種の低次イソプレノイドを含む。
【0140】
上記バイオマス原料は、上記軽質炭化水素生成物は、その元の原料を同定し得るか、または遡り得るようなクラッキングまたは変更された軽質炭化水素生成物において保存される明確な特徴を与えるように、改変または標識され得る。例えば、炭素同位体は、その生合成の過程においてバイオマス炭化水素へと導入され得る。上記炭素同位体は、生産される炭化水素原料においてマーカーとして機能する。上記標識された炭化水素原料は、炭素同位体によって標識された軽質炭化水素生成物を生産するために本明細書中に記載される精製方法に供され得る。上記同位体は、単独または他の標識されていない生成物との組合せのいずれかで、上記標識された生成物がそれらのバイオマス原料に遡り得るような上記標識された生成物の同定を可能にする。
【0141】
(バイオマス炭化水素生成物)
本明細書中に記載される任意の生成物は、上記生成物の生物による生産をもたらすようにその生物を形質転換することによって調製され得る。上記生物は、形質転換前または形質転換後において光合成し得る。
【0142】
(生物)
本明細書中の組成物および方法を使用して形質転換され得る生物の例としては、維管束生物および非維管束生物が挙げられる。上記生物は、原核生物または真核生物であり得る。上記生物は、単細胞または多細胞であり得る。
【0143】
光合成する非維管束生物の例としては、蘇苔類(例えば、ゼニゴケ類またはツノゴケ類)が挙げられる。いくつかの例において、上記生物は、ラン藻類である。いくつかの例において、上記生物は、藻類(例えば、大型藻類(macroalgae)または微細藻類)である。上記藻類は、単細胞または多細胞の藻類であり得る。いくつかの例において、上記生物は、紅色植物類、緑藻植物、不等毛植物、黄緑藻植物、灰色藻、クロララクニオン藻、ユーグレナ藻、ハプト藻、クリプト藻、渦鞭毛藻、または植物プランクトンである。
【0144】
例えば、微細藻類のChlamydomonas reinhardtiiは、リモネンを生産するようにリモネンシンターゼをコードするベクターによって形質転換され得る。別の実施形態において、上記微細藻類は、リモネン生産を改良するために、リモネンシンターゼをコードする1つ以上のベクターによって形質転換され得る。
【0145】
上記方法は、微細藻類(C.reinhardtii)を使用して例示され得る。本発明の方法にしたがってポリペプチドまたはタンパク質複合体を発現するための微細藻類の使用は、商業的なもの(Cyanotech Corp.;Kailua−Kona HI)を含む微細藻類の大きい集団が成長し得る利点を提供し、したがって、大量の所望の生成物の生産および、必要に応じて、大量の所望の生成物の単離を可能にする。しかし、例えば、任意の植物の葉緑体における機能的な哺乳動物ポリペプチド(タンパク質複合体を含む)を発現する能力は、そのような植物の作物の生産を可能にし、したがって、大量のポリペプチドを都合よく生産する能力を可能にする。したがって、上記方法は、例えば、大型藻類(例えば、海藻(marine algae)および海藻(seaweed))、ならびに土壌で成長する植物を含む葉緑体を有する任意の植物を使用して実施され得る。
【0146】
用語「植物」は、色素体(特に、葉緑体)を含む真核細胞生物(任意の発育段階における任意のそのような生物を含む)、または植物の切断片、植物細胞、植物細胞培養物、植物器官、植物の種子、および小植物を含む植物の部分をいうために本明細書中で広く使用される。植物細胞は、上記植物の構造的ユニットおよび生理学的ユニットであり、それは、プロトプラストおよび細胞壁を含む。植物細胞は、単離された単一細胞または培養細胞の形態にあり得るか、あるいはより高度に組織化されたユニットの部分(例えば、植物組織、植物器官、または植物)であり得る。したがって、植物細胞は、プロトプラスト、配偶子産生細胞、または植物全体へと再生し得る細胞もしくは細胞のコレクションであり得る。そのようなものとして、複数の植物細胞を含み、かつ植物全体へと再生し得る種子は、本開示の目的ための植物細胞と見なされる。植物組織または植物器官は、種子、プロトプラスト、カルス、または構造的ユニットまたは機能的ユニットへと組織化される植物細胞の任意の他の群であり得る。植物の特に有用な部分としては、収穫可能な部分および子孫の植物の繁殖に有用な部分が挙げられる。植物の収穫可能な部分は、植物の任意の有用な部分(例えば、花、花粉、実生、塊茎、葉、茎、果実、種子、根など)であり得る。繁殖に有用な植物の部分としては、例えば、種子、果実、切断片、実生、塊茎、台木などが挙げられる。
【0147】
本明細書中に記載される方法は、安定に組み込まれたポリヌクレオチドを含むように遺伝的に改変される葉緑体を含む植物を産生し得る(HagerおよびBock,Appl.Microbiol.Biotechnol.54:302−310、2000)。したがって、方法は、1つ以上の異種ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む1つ以上の葉緑体を含むトランスジェニック(トランスプラストミック(transplastomic))植物(例えば、C.reinhardtii)をさらに提供し得、上記異種ポリペプチドは、機能的なタンパク質複合体を形成することに特異的に関連し得るポリペプチドを含む。本明細書中に記載される光合成生物は、生成物を産生するように改変される少なくとも1つの宿主細胞を含み得る。
【0148】
(発現ベクターおよび宿主細胞の形質転換)
本明細書中の生物/宿主細胞は、生成物の生産を改変する(例えば、生成物の生産を増大させる)ように発現ベクターによって形質転換され得る。上記生成物は、上記生物によって天然に生産されても天然に生産されなくてもよい。
【0149】
上記発現ベクターは、1つ以上の同種ヌクレオチド配列もしくは異種ヌクレオチド配列(宿主生物または異なる生物に由来する)および/または1つ以上の自己ヌクレオチド配列(同じ生物に由来する)および/または同種ポリペプチドもしくは異種ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列をコードし得る。藻類宿主細胞中に形質転換され得る異種ヌクレオチド配列の例としては、細菌、真菌、植物、光合成細菌または他の藻類からの遺伝子が挙げられる。藻類宿主細胞中に形質転換され得る自己ヌクレオチド配列の例としては、イソプレノイド合成遺伝子、内在性プロモーターおよびpsbA遺伝子、atpA遺伝子、またはrbcL遺伝子からの5’UTRが挙げられる。いくつかの例において、異種配列は、2つの自己配列または同種配列によって隣接される。同種配列は、宿主細胞中の配列に対して少なくとも50%、60%、70%、80%、または90%の相同性を有する配列である。いくつかの例において、同種配列は、2つの自己配列によって隣接される。第1および第2の同種配列は、異種配列の宿主生物のゲノム中への組換えを可能にする。第1および第2の同種配列は、少なくとも100、200、300、400、または500のヌクレオチド長であり得る。
【0150】
上記発現ベクターは、形質転換される生物における発現に偏ったコドンであるヌクレオチド配列を含み得る。当業者は、所与のアミノ酸を特定するためのヌクレオチドコドンの使用において、特定の宿主細胞によって示される「コドンバイアス」を認識する。理論に束縛されることなく、宿主細胞の好ましいコドンを使用することによって、翻訳の速度は、より大きくなり得る。したがって、宿主細胞における改良された発現のための遺伝子を合成する場合、そのコドンの使用頻度が宿主細胞の好ましいコドンの使用頻度に近づくように遺伝子を設計することが、望まれ得る。上記コドンは、概してA/Tが豊富であり得る(例えば、第3のヌクレオチド位置のコドンにおいてA/Tが豊富である)。代表的に、上記A/Tが豊富なコドンバイアスが、藻類に対して使用される。いくつかの実施形態において、第3のヌクレオチド位置のコドンの少なくとも50%が、AまたはTである。他の実施形態において、第3のヌクレオチド位置のコドンの少なくとも60%、70%、80%、90%、または99%が、AまたはTである。
【0151】
遺伝的に操作された系統の藻類の構築に対する1つのアプローチは、目的の遺伝子を(代表的に、前駆体を燃料生成物または燃料生成物の前駆体に変換し得る酵素)をコードする核酸による形質転換を含む。いくつかの実施形態において、形質転換は、核酸を宿主藻類細胞の任意の色素体(例えば、葉緑体)に導入し得る。形質転換された細胞は、典型的に、外来核酸の導入後に選択培地上に蒔かれる。本方法はまた、スクリーニングのためのいくつかの工程を含み得る。最初に、一次形質転換体のスクリーニングが、代表的に、クローンが外来核酸の適切な挿入を有することを決定するために行われる。適切な組み込みを示すクローンは、遺伝的な安定性を確実にするためにパッチされ(patched)、そして再スクリーニングされ得る。そのような方法論は、形質転換体が目的の遺伝子を含むことを確実にする。多くの例において、そのようなスクリーニングは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって行われる;しかし、当該分野で公知である任意の他の適切な技術が、利用され得る。PCRの多くの異なる方法が、当該分野で公知である(例えば、ネステッドPCR、リアルタイムPCR)。特定の例は、本明細書中に記載される実施例において利用される;しかし、当業者は、他のPCR技術が記載される特定のプロトコルを置換し得ることを認識する。外来核酸の適切な組み込みを有するクローンに対するスクリーニング後、代表的に、クローンは、コードされるタンパク質の存在についてスクリーニングされる。タンパク質発現スクリーニングは、代表的に、ウェスタンブロット分析および/または酵素活性アッセイによって行われる。
【0152】
本発明の方法において有用な組換え核酸分子が、ベクター中に含まれ得る。さらに、上記方法が第2(またはそれ以上)の組換え核酸分子を使用して行われる場合、上記第2の組換え核酸分子もまた、ベクター中に含まれ得る(必要ではないが、ベクターは、第1の組換え核酸分子を含むベクターと同じベクターであり得る)。上記ベクターは、ポリヌクレオチドを葉緑体に導入するのに有用な任意のベクターであり得、そして好ましくは、葉緑体ゲノムDNAとの相同組換えを受けるのに十分である葉緑体ゲノムDNAのヌクレオチド配列(例えば、葉緑体ゲノムDNAの実質的に隣接する約400〜1500以上のヌクレオチドを含むヌクレオチド配列)を含む。葉緑体ベクターおよびベクターとして使用するための葉緑体ゲノムの領域を選択するための方法は、周知である(例えば、Bock、J.Mol.Biol.312:425−438,2001を参照のこと;StaubおよびMaliga,Plant Cell 4:39−45,1992もまた参照のこと;Kavanaghら.,Genetics 152:1111−1122,1999(これらの各々は、参照により本明細書に援用される))。
【0153】
いくつかの例において、そのようなベクターは、プロモーターを含む。プロモーターは、任意の供給源(例えば、ウイルス、細菌、真菌、原生生物、動物)に由来し得る。本明細書で企図されるプロモーターは、光合成生物(光合成する非維管束生物、および光合成する維管束生物(例えば、藻類、顕花植物))に特異的であり得る。本明細書中で使用される場合、用語「光合成する非維管束生物」とは、任意の巨視的な生物または微視的な生物をいい、その生物としては、維管束系(例えば、高等植物において見出される)を有さない、藻類、ラン藻類および光合成細菌が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの例において、上記の核酸は、光合成生物(例えば、藻類)のプロモーターを含むベクター中に挿入される。上記プロモーターは、葉緑体および/または他の色素体における発現のためのプロモーターであり得る。いくつかの例において、上記核酸は、葉緑体ベースである。本明細書中の任意の核酸を葉緑体へ挿入するために企図されるプロモーターの例としては、米国特許出願第2004/0014174号に開示されるプロモーターが挙げられる。上記プロモーターは、構成的プロモーターまたは誘導性プロモーターであり得る。プロモーターは、代表的に、必要な核酸配列を転写の開始部位(例えば、TATAエレメント)の近傍に含む。
【0154】
C.reinhardtiiの葉緑体ゲノム全体は、URL「biology.duke.edu/chlamy genome/−クロロ.html」(「view complete genome as text file」のリンクおよび「maps of the chloroplast genome」のリンクを参照のこと)(これらの各々は、参照により本明細書に援用される)にてワールドワイドウェブ上で一般に公開されている(J.Maul、J.W.Lilly、およびD.B.Stern、未公開の結果;2002年1月28日改訂;GenBank Ace.No.AF396929として公開されている)。一般に、葉緑体ゲノムDNAのヌクレオチド配列は、それが制御配列またはコード配列、特に、相同組換え事象に起因して分裂する場合に葉緑体(例えば、葉緑体ゲノムの複製に対して)または葉緑体を含む植物細胞に対して有害作用をもたらす遺伝子を含む遺伝子の一部ではないように選択される。この点において、C.reinhardtiiの葉緑体ゲノム配列を含むウェブサイトはまた、葉緑体ゲノムのコード領域および非コード領域を示す地図も提供し、したがって、ベクターを構築するのに有用な配列の選択を容易にする。例えば、葉緑体ベクターであるp322は、約143.1kbの位置におけるEco(Eco RI)部位から約148.5kbの位置におけるXho(Xho I)部位まで伸びるクローンである(ワールドワイドウェブ、URL「biology.duke.edu/chlamy genome/クロロ.htmr」において「maps of thechloroplast genome」のリンク、および「140−150kb」のリンクをクリック;また、ワールドワイドウェブ上で直接アクセス可能であるURL「biology.duke.edu/chlam−y/クロロ/chlorol40.html」を参照のこと)。
【0155】
本明細書中の方法またはプロセスの実施において利用されるベクターはまた、上記ベクターにおいて所望の特徴を与える1つ以上のさらなるヌクレオチド配列を含むことができ、そのヌクレオチド配列としては、例えば、ベクターの操作を容易にするクローニング部位、ベクターの複製またはその中に含まれるヌクレオチド配列の転写を指揮する調節エレメント、選択可能なマーカーをコードする配列などの配列が挙げられる。そのようなものとして、上記ベクターは、例えば、1つ以上のクローニング部位(例えば、マルチクローニング部位)を含むことができ、そのクローニング部位は、必要ではないが、異種ポリヌクレオチドが上記ベクター中に挿入され得、かつ所望のエレメントに作動可能に連結され得るように配置され得る。上記ベクターはまた、原核生物の複製起点(ori)(例えば、E.coliのoriまたはコスミドのori)を含むことができ、したがって、所望のように、原核生物宿主細胞、および植物葉緑体における上記ベクターの継代を可能にする。
【0156】
調節エレメントとは、その用語が本明細書中で使用される場合、それが作動可能に連結されるポリヌクレオチドの転写もしくは翻訳またはポリペプチドの局在化を調節するヌクレオチド配列を広くいう。例としては、RBS、プロモーター、エンハンサー、転写終結因子、開始(initiation)(開始(start))コドン、イントロン切除および正しい読み枠の維持のためのスプライシングシグナル、終止コドン(アンバーコドンまたはオーカーコドン)、IRESが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、細胞区画化シグナル(cell compartmentalization signal)(例えば、ポリペプチドにサイトゾル、核、葉緑体膜または細胞膜を標的させる配列)が、挙げられる。そのようなシグナルは、当該分野で周知であり、そして幅広く報告されている(例えば、米国特許第5,776,689号を参照のこと)。
【0157】
本明細書中の任意の発現ベクターは、調節性制御配列(regulatory control sequence)をさらに含み得る。調節性制御配列は、例えば、プロモーター、オペレーター、リプレッサー、エンハンサー、転写終結配列、翻訳を調節する配列、または宿主細胞と適合し、そして核酸分子の発現を制御する他の調節性制御配列を含み得る。いくつかの場合において、調節性制御配列は、転写の開始、伸長、および/もしくは終結を制御し得るか、モジュレートし得るか、またはもたらし得る転写制御配列を含む。例えば、調節性制御配列は、生物において遺伝子もしくは遺伝子産物の転写および翻訳の速度および/または効率を増大させることができ、上記遺伝子または遺伝子産物の発現は、上方制御され、本明細書中に記載される生成物の増大した生産を(直接的か、または間接的に)もたらす。上記調節性制御配列はまた、遺伝子または遺伝子産物の安定性を増大させることによって生成物の生産の増大をもたらし得る。
【0158】
調節性制御配列は、自己または異種性であり得、そして異種性の場合、相同的であり得る。上記調節性制御配列は、産物の発現および生産を促進する酵素である1種以上のポリペプチドをコードし得る。例えば、異種の調節性制御配列は、同じ属の生物の別の種(例えば、別の藻類種)に由来し得、そして藻類中のシンターゼをコードする。別の例において、自己の調節性制御配列は、発現ベクターが発現されるべき生物に由来し得る。
【0159】
用途に依存して、誘導性の発現または構成的な発現をもたらす調節性制御配列が、使用され得る。藻類の調節性制御配列が、使用され得、そしてそれは、核、ウイルス、 染色体外、ミトコンドリア、または葉緑体の起源のものであり得る。
【0160】
適切な調節性制御配列は、発現されるべきヌクレオチド配列と天然に結合しているもの(例えば、天然において藻類由来のヌクレオチド配列と作動可能に連結される藻類プロモーター)を含む。適切な調節性制御配列は、発現されるべき核酸分子と天然に結合していない調節性制御配列(例えば、別の生物種または藻類種のヌクレオチド配列に作動可能に連結される1つの種の藻類プロモーター)を含む。後者の調節性制御配列は、同じ種(例えば、自己)内の別の遺伝子の発現を制御する配列であり得るか、または異なる生物または種(例えば、異種)に由来し得る。
【0161】
推定上の調節性制御配列が適切か否かを決定するために、その推定上の調節性制御配列は、代表的に、容易に検出可能なシグナルを産生するタンパク質をコードする核酸分子に連結される。次いで、その構築物は、標準的な技術によって藻類または他の生物に導入され得、そしてその発現は、モニターされる。例えば、上記核酸分子が、優性の検出可能なマーカーをコードする場合、使用されるべき藻類または生物は、上記マーカーが耐性を提供する化合物の存在下で成長する能力について試験される。
【0162】
いくつかの場合において、調節性制御配列は、プロモーター(例えば、光合成する非維管束生物におけるヌクレオチド配列の発現に適しているプロモーター)である。例えば、上記プロモーターは、例えば、米国特許出願第2006/0234368号および同第2004/0014174号、ならびにHallmann、Transgenic Plant J.1:81−98(2007)に開示される通り、藻類プロモーターであり得る。上記プロモーターは、葉緑体特異的プロモーターまたは核プロモーターであり得る。上記プロモーターは、EF1−α遺伝子プロモーターまたはDプロモーターであり得る。いくつかの実施形態において、上記シンターゼは、EF1−α遺伝子プロモーターに作動可能に連結される。他の実施形態において、上記シンターゼは、Dプロモーターに作動可能に連結される。
【0163】
本明細書中の調節性制御配列は、例えば、コード領域および非コード領域、5’非翻訳領域(例えば、コード領域から上流の領域)、および3’非翻訳領域(例えば、コード領域から下流の領域)を含む種々の位置において見出され得る。したがって、いくつかの例において、自己ヌクレオチド配列または異種ヌクレオチド配列は、1つ以上の3’もしくは5’非翻訳領域、1つ以上のイントロン、または1つ以上のエクソンを含み得る。
【0164】
例えば、いくつかの実施形態において、調節性制御配列は、Cyclotella crypticaアセチル−CoAカルボキシラーゼの5’非翻訳調節性制御配列、またはCyclotella crypticaのアセチル−CoAカルボキシラーゼの3‘非翻訳調節性制御配列を含み得る(米国特許第5,661,017号)。
【0165】
調節性制御配列はまた、キメラポリペプチドまたは融合ポリペプチド(例えば、異種ヌクレオチド配列および異種タンパク質の発現を促進するタンパク質AB、またはSAA)をコードし得る。他の調節性制御配列としては、異種配列の翻訳を促進し得る自己イントロン配列を含む。
【0166】
本明細書中の任意の発現ベクターにおいて使用される調節性制御配列は、誘導性であり得る。誘導性の調節性制御配列(例えば、プロモーター)は、例えば、光によって誘導され得る。調節性制御配列はまた、自己調節可能であり得る。自己調節可能な調節性制御配列の例としては、例えば、内因性のATPレベルまたは上記生物によって産生される生成物によって自己調節されるものが挙げられる。いくつかの例において、上記調節性制御配列は、外来因子によって誘導され得る。他の誘導性エレメントは、当該分野で周知であり、そして本明細書中の使用に適合し得る。
【0167】
本明細書中に記載される調節性制御配列の種々の組成物は、本明細書中に記載される他の特徴によって具現化することができ、そしてそれにと組み合わせられ得る。いくつかの場合において、発現ベクターは、本明細書中に記載される生成物の生産をもたらす、例えば、上方制御するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結される1つ以上の調節性制御配列を含む。いくつかの場合において、発現ベクターは、生成物の生産をもたらす、例えば、上方制御するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結される1つ以上の調節性制御配列を含む。
【0168】
ベクターまたは他の組換え核酸分子は、レポーターポリペプチドまたは他の選択可能なマーカーをコードするヌクレオチド配列を含み得る。用語「レポーター」または「選択可能なマーカー」とは、検出可能な表現型を与えるポリヌクレオチド(またはコードされたポリペプチド)をいう。レポーターは、一般に、検出可能なポリペプチド、例えば、緑色蛍光タンパク質または酵素(例えば、ルシフェラーゼ)をコードし、緑色蛍光タンパク質または酵素は、適切な因子(それぞれ、光の特定の波長またはルシフェリン)と接触した場合に、肉眼または適切な計測手段によって検出され得るシグナルを発生する(Giacomin、Plant Sd.116:59−72、1996;Scikantha、J.Bacteriol.178:121、1996;Gerdes,FEBS Lett.389:44−47、1996;Jefferson、EMBO J.6:3901−3907、1997、fl−グルクロニダーゼもまた参照のこと)。選択可能なマーカーは、一般に、細胞において存在または発現する場合に上記マーカーを含む細胞に対して選択的な優位性(または不利益)(例えば、そうでなければ上記細胞を殺す因子の存在下で成長する能力)を提供する分子である。
【0169】
選択可能なマーカーは、上記マーカーを発現する原核細胞もしくは植物細胞またはその両方を得るための手段を提供し得る、したがって、ベクターの構成成分として有用であり得る(例えば、Bock、前出、2001を参照こと)。選択可能なマーカーの例はとしては、代謝拮抗剤耐性を与えるマーカー(例えば、メトトレキサートに対する耐性を与えるジヒドロ葉酸レダクターゼ(Reiss、Plant Physiol.(Life Sci.Adv.)13:143−149、1994));ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(アミノグリコシドのネオマイシン、カナマイシンおよびパロモマイシン(paromycin)に対する耐性を与える(Herrera−Estrella、EMBO J.2:987−995、1983))、hygro(ハイグロマイシンに対する耐性を与える(Marsh、Gene 32:481−485、1984))、trpB(トリプトファンの代わりにインドールを利用することを細胞に可能させる);hisD(ヒスチジンの代わりにヒスチノールを利用することを細胞に可能させる(Hartman、Proc.Natl.Acad.Sci.、USA 85:8047、1988));マンノース−6−ホスフェートイソメラーゼ(マンノースを利用することを細胞に可能にさせる(WO 94/20627));オルニチンデカルボキシラーゼ(オルニチンデカルボキシラーゼインヒビター(2−(ジフルオロメチル)−DL−オルニチン)に対する耐性を与える(DFMO;McConlogue、1987、In:Current Communications in Molecular Biology、Cold Spring Harbor Laboratory編));およびAspergillus terreus由来のデアミナーゼ(Blasticidin Sに対する耐性を与える(Tamura、Biosci.Biotechnol Biochem.59:2336−2338、1995))が挙げられるが、これらに限定されない。さらなる選択可能なマーカーとしては、除草剤耐性を与えるマーカー(例えば、ホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼ遺伝子(ホスフィノトリシンに対する耐性を与える(Whiteら、Nucl Acids Res.18:1062、1990;Spencerら、Theor.Appl.Genet.79:625−631、1990))、変異体EPSPV−シンターゼ(グリフォセート耐性を与える(Hincheeら、バイオテクノロジー 91:915−922、1998))、変異体アセト乳酸シンターゼ(イミダゾリン耐性またはスルホニル尿素耐性を与える(Leeら、EMBO J.7:1241−1248、1988))、変異体psbA(アトラジンに対する耐性を与える(Smedaら、Plant Physiol.103:911−917、1993))、または変異体プロトポルフィリノーゲンオキシダーゼ(米国特許第5,767,373号を参照のこと)、あるいは除草剤(例えば、グルホシネート)に対する耐性を与える他のマーカー)が挙げられる。選択可能なマーカーとしては、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)または真核細胞に対するネオマイシン耐性およびテトラサイクリン;原核生物(例えば、E.coli)に対するアンピシリン耐性;ならびに植物におけるブレオマイシン耐性、ゲンタマイシン耐性、グリフォセート耐性、ハイグロマイシン耐性、カナマイシン耐性、メトトレキサート耐性、フレオマイシン耐性、ホスフィノトリシン耐性、スペクチノマイシン耐性、ストレプトマイシン耐性、スルホンアミド耐性およびスルホニル尿素耐性を与えるポリヌクレオチドが挙げられる(例えば、Maligaら、Methods in Plant Molecular Biology、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1995、39ページを参照のこと)。
【0170】
レポーター遺伝子は、高等植物の葉緑体において首尾よく使用されており、そして高レベルの組換えタンパク質発現が、報告されている。さらに、レポーター遺伝子は、C.reinhardtiiの葉緑体において使用されているが、ほとんどの場合において、非常に低い量のタンパク質が、生産された。レポーター遺伝子は、多くの生物学的生命体において遺伝子発現をモニターする能力を大きく上昇させる。高等植物の葉緑体において、β−グルクロニダーゼ(uidA、StaubおよびMaliga、EMBO J.12:601−606、1993)、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(nptll、Carrerら、Mol.Gen.Genet.241:49−56、1993)、アデノシル−3−アデニルトランスフェラーゼ(aadA、SvabおよびMaliga、Proc.Natl.Acad.Sci、USA 90:913−917、1993)、およびオワンクラゲGFP(Sidorovら、Plant J.19:209−216、1999)が、レポーター遺伝子として使用されている(Heifetz、Biochemie 82:655−666、2000)。これらの遺伝子の各々は、それらを葉緑体遺伝子発現の有用なレポーターにする特質(例えば、分析の容易さ、感度、またはインサイチュで発現を試験する能力)を有する。これらの研究に基づいて、他の異種タンパク質は、高等植物の葉緑体において発現されている(例えば、昆虫、草食動物に対する耐性を与えるBacillus thuringiensis Cry毒素(Kotaら、Proc.Natl.Acad.Sci、USA 96:1840−1845、1999)、または有望な生物製剤であるヒトソマトトロピン(Staubら、Nat.Biotechnol.18:333−338、2000))。いくつかのレポーター遺伝子は、真核生物の緑色藻類(C.reinhardtii)の葉緑体において発現されており、そのレポーター遺伝子としては、aadA(Goldschmidt−Clermont、Nucl.Acids Res.19:4083−4089 1991;ZergesおよびRochaix、Mol.Cell Biol.14:5268−5277、1994)、uidA(Sakamotoら、Proc.Natl.Acad.Sci、USA 90:477−501、19933、Ishikuraら、J.Biosci.Bioeng.87:307−314 1999)、ウミシイタケルシフェラーゼ(Minkoら、Mol.Gen.Genet.262:421−425、1999)およびAcinetobacter baumanii由来のアミノグリコシドホスホトランスフェラーゼであるaphA6(BatemanおよびPurton、Mol.Gen.Genet 263:404−410、2000)が挙げられる。
【0171】
いくつかの例において、上記ベクターは、E.coliまたはS.cerevisiaeの複製起点のようなエレメントを含む。適切な選択可能なマーカーと組み合わされるそのような特徴は、標的宿主細胞と細菌細胞および/または酵母細胞との間に「シャトルされる(shuttled)」ベクターを可能にする。二次宿主中でシャトルベクターを継代する能力は、上記ベクターのより都合よい操作の特徴を可能にする。例えば、ベクターおよび推定上の挿入された目的とするポリヌクレオチドを含む反応混合物は、日常的な方法を使用して原核生物宿主細胞(例えば、E.coli)へと形質転換され、増幅され、収集され、そして目的の挿入物または構築物を含むベクターを同定するために試験され得る。所望される場合、上記ベクターは、例えば、挿入されたポリヌクレオチドの部位特異的突然変異誘発を行い、次いで、変異した目的のポリヌクレオチドを有するベクターを再び増幅および選択することによってさらに操作され得る。次いで、シャトルベクターが、植物細胞葉緑体中に導入され得、目的のポリペプチドが、発現され得、そして必要に応じて、方法にしたがって単離され得る。
【0172】
ポリヌクレオチドまたは組換え核酸分子は、当該分野で公知である任意の方法を使用して植物葉緑体中に導入され得る。ポリヌクレオチドは、当該分野で公知である種々の方法によって細胞中に導入することができ、そしてある程度、特定の宿主細胞に基づいて選択され得る。例えば、上記ポリヌクレオチドは、遺伝子直接導入法(例えば、エレクトロポレーションまたはパーティクルガンを使用する微粒子銃媒介性(遺伝子銃)の形質転換)、または「ガラスビーズ法(glass bead method)」)を使用するか、あるいは花粉媒介性形質転換、リポソーム媒介性形質転換、傷害もしくは酵素的分解された未熟胚を使用する形質転換、または傷害もしくは酵素的分解された胚形成カルスによって植物細胞中に導入され得る(Potrykus、Ann.Rev.Plant.Physiol.Plant Mol.Biol.42:205−225、1991)。
【0173】
色素体形質転換は、ポリヌクレオチドを植物細胞葉緑体中に導入するための日常的かつ周知である方法である(米国特許第5,451,513号、同第5,545,817号、および同第5,545,818号;WO 95/16783;McBrideら、Proc.Natl.Acad.Sci、USA 91:7301−7305、1994を参照のこと)。いくつかの実施形態において、葉緑体形質転換は、所望のヌクレオチド配列に隣接する葉緑体DNAの領域を導入することを含み、標的葉緑体ゲノム中への外来DNAの相同組換えを可能にする。いくつかの例において、葉緑体ゲノムDNAの1〜1.5kbのフランキングヌクレオチド配列が、使用され得る。この方法を使用して、葉緑体の16S rRNAおよびrps12遺伝子における点突然変異(スペクチノマイシンおよびストレプトマイシンに対する耐性を与える)は、形質転換のための選択可能なマーカーとして利用され得(Svabら、Proc.Natl.Acad.Sci.、USA 87:8526−8530、1990)、そして標的とする葉の100回の照射につき約1回の頻度で安定な同質細胞質の形質転換体を生じ得る。
【0174】
微粒子銃媒介性の形質転換はまた、ポリヌクレオチドを植物細胞葉緑体中に導入するために使用され得る(Kleinら、Nature 327:70−73、1987)。この方法は、塩化カルシウム、スペルミジンまたはポリエチレングリコールによる沈殿によって所望のポリヌクレオチドによってコーティングされる微粒子銃(例えば、金またはタングステン)を利用する。上記微粒子銃の粒子は、デバイス(例えば、BIOLISTIC PD−1000パーティクルガン(BioRad;Hercules Calif.))を使用して植物組織へと高速に加速される。遺伝子銃法を使用する形質転換のための方法は、当該分野で周知である(例えば;Christou、Trends in Plant Science 1:423−431、1996を参照のこと)。微粒子銃媒介性の形質転換は、例えば、種々のトランスジェニック植物種を産生するために使用されており、その植物種としては、ワタ、タバコ、トウモロコシ、雑種ポプラおよびパパイヤが挙げられる。重要な穀類作物(例えば、コムギ、カラスムギ、オオムギ、モロコシおよびコメ)もまた、微粒子銃媒介性の送達を使用して形質転換されている(Duanら、Nature Biotech.14:494−498、1996;Shimamoto、Cutr.Opin.Biotech.5:158−162、1994)。ほとんどの双子葉植物の形質転換は、上記の方法によって可能となる。単子葉植物の形質転換もまた、例えば、上に記載される遺伝子銃方法、プロトプラスト形質転換、部分的に透過処理された細胞のエレクトロポレーション、ガラス繊維を使用するDNAの導入、ガラスビーズ撹拌法(glass bead agitation method)などを使用して形質転換され得る。
【0175】
形質転換の頻度は、劣性のrRNAまたはr−タンパク質の抗生物質耐性遺伝子を優性の選択可能なマーカーによって置換することによって増大し得、そのマーカーとしては、細菌のaadA遺伝子が挙げられるが、これに限定されない(SvabおよびMaliga、Proc.Natl,Acad.Sci、USA 90:913−917、1993)。形質転換後の約15〜20回の細胞分裂サイクルは、一般に、ホモプラスティディック(homoplastidic)段階に到達するために必要とされる。葉緑体がそのゲノムの複数のコピーを含み得ることは、当業者にとって明らかであり、したがって、用語「同質細胞質」または「ホモプラスミー」とは、目的とする特定の遺伝子座の全てのコピーが実質的に同一である状態をいう。色素体発現(遺伝子が各々の植物細胞に存在する環状色素体ゲノムの数千のコピーの全てに相同組換えすることによって挿入される)は、全ての可溶性植物タンパク質の10%を容易に上回り得る発現レベルを許容するために、核によって発現された遺伝子を超える莫大なコピー数の利点を利用する。
【0176】
いくつかの例において、方法は、組換え核酸分子を葉緑体に導入することによって行うことができ、上記組換え核酸分子は、少なくとも1つポリペプチド(例えば、1、2、3、4以上)をコードする第1のポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、第2、第3、第4、第5、第6、第7、第8、第9、第10および/またはそれ以降のポリペプチドに作動可能に連結される。例えば、炭化水素精製経路におけるいくつかの酵素は、上記経路における1つの酵素によって生産される生成物が、一旦生産されると、上記経路における次の酵素に非常に近接しているように、直接的または間接的に連結され得る。
【0177】
葉緑体の形質転換のために、本明細書中の主要な利点は、選択可能なマーカーおよび1種以上の目的とする遺伝子の両方を含む組換え核酸構築物の利用であり得る。代表的に、葉緑体の形質転換は、2つの構築物による同時形質転換によって行われる:第一の構築物は、選択可能なマーカーを含み、そして第2の構築物は目的とする遺伝子を含む。そのような形質転換体のスクリーニングは、複数の理由のために労力および時間を浪費している。第1に、いくつかの形質転換された生物を成長させるために必要とされる時間が、冗長である。第2に、形質転換体は、選択可能なマーカーの存在および目的の遺伝子の両方の存在をスクリーニングされなければならない。代表的に、目的の遺伝子に対する二次スクリーニングは、サザンブロットによって行われる(例えば、PCT/US2007/072465を参照のこと)。
【0178】
葉緑体において、遺伝子発現の調節は、一般に、転写後に生じ、そしてしばしば、翻訳開始の間に生じる。この調節は、葉緑体の翻訳装置および核にコードされる制御因子に依存する(BarkanおよびGoldschmidt−Clermont、Biochemie 82:559−572、2000;Zerges、Biochemie 82:583−601、2000を参照のこと)。上記葉緑体の翻訳装置は、一般に、細菌におけるものと類似し;葉緑体は、70Sリボソームを含み;5’キャップを欠き、そして一般に、3’ポリアデニル化テイルを含まないmRNAを有し(Harrisら、Microbiol.Rev.58:700−754,1994);そして翻訳は、選択的因子(例えば、クロラムフェニコール)によって葉緑体および細菌において阻害される。
【0179】
本明細書中に記載されるいくつかの方法は、コード配列に対するリボソーム結合配列(RBS)の適切な位置決めを利用する。RBSのそのような配置は植物葉緑体における頑強な翻訳を生じること(米国特許出願公開第2004/0014174号(参照により本明細書に援用される)を参照のこと)、およびポリペプチドはそのポリペプチが、代表的に、核遺伝子から発現されるポリペプチドによって横切られる細胞区画を通過せず、したがって、特定の翻訳後修飾(例えば、グリコシル化)に供されないこと(葉緑体においてポリペプチドを発現する利点)が、先に記載されている。そのようなものとして、本発明のいくつかの方法によって生産されるポリペプチドおよびタンパク質複合体は、そのような翻訳後修飾を伴わずに生産されると予想され得る。
【0180】
コードするポリヌクレオチドの1つ以上のコドンは、葉緑体および/または核のコドン利用を反映するように偏向され得る。大部分のアミノ酸は、2つ以上の異なる(縮重)コドンによってコードされ、そして種々の生物が他のコドンよりもむしろ特定のコドンを利用することは、十分に認識される。葉緑体においても利用されるそのような優先的なコドン利用は、本明細書中で「葉緑体コドン利用」と称される。Chlamydomonas reinhardtiiのコドンバイアスが、報告されている。米国特許出願公開第2004/0014174号を参照のこと。C.reinhardtiiにおける発現に偏る、イソプレノイド生合成酵素をコードする核酸の例は、表5〜8に提供される。ネイティブの配列(上記配列が単離された生物におけるもの)に対する同一性の%は、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%以上であり得る。いくつかのベクターは、表5に提供される1種以上の核酸および/またはその核酸に対して約70%の同一性を有する核酸を含む。
【0181】
「偏る(biased)」は、コドンに関して使用される場合、ポリヌクレオチド中のコドンの配列が、上記コドンが標的(その偏りは、例えば、藻類細胞、葉緑体についてのものである)において優先的に使用されるものであるように変更されていることを意味する。葉緑体コドン利用に偏るポリヌクレオチドは、それらが葉緑体コドン利用に偏るように1つ以上のコドンを変更するために、新規に合成され得るか、または日常的な組換えDNA技術(例えば、部位特異的変異誘発法による)を使用して遺伝的に改変され得る。葉緑体コドンバイアスは、タバコと比較して、例えば、藻類葉緑体を含む異なる植物において多様に歪められ得る。一般に、選択された葉緑体コドンバイアスは、上記核酸によって形質転換される植物の葉緑体コドン利用を反映する。例えば、C.reinhardtiiが宿主である場合、上記葉緑体コドン利用は、藻類葉緑体コドン利用を反映するように偏る(第3のコドン位置において約74.6%のATバイアス)。
【0182】
本明細書中に記載される任意の生成物は、生物を形質転換して上記生成物のそのような生物による生産をもたらすことによって調製され得る。生物は、形質転換事象が形質転換された生物の光合成能力を破壊するか、または消失させる(例えば、外来核酸が光合成に必要とされるタンパク質をコードする遺伝子に挿入される)としても、光合成生物であるとみなされる。
【0183】
(改変されるべき経路)
本明細書中の発現ベクターは、本明細書中に記載される生成物の中間体、生成物、前駆体、および誘導体の生産を促進するポリペプチドをコードし得る。例えば、上記発現ベクターは、イソプレノイド経路において中間体、生成物、前駆体、および誘導体の生産を促進するポリペプチドをコードし得る。
【0184】
イソプレノイド、またはテルペノイドは、テルペンに関連する有機化合物の群である。テルペンは、代表的に、イソプレン単位に由来する。イソプレン単位は、5個の炭素の単位(C5)である。テルペンは、イソプレン単位の数によって分類される(例えば、ヘミテルペン(C5)、モノテルペン(C10)、セスキテルペン(C15)、ジテルペン(C20)、トリテルペン(C30)、テトラテルペン(C40)、およびポリテルペン(Cn(「n」は45以上である)))。テルペンは、テルペンの誘導体(例えば、イソプレノイド)を形成するように、改変(例えば、酸化、メチル基の除去など)され得る炭化水素または転位したその炭素骨格である。イソプレノイドは、同じく他のステロイドおよび脂質も含む。
【0185】
テルペン前駆体は、2つの経路によって産生されると考えられる。メバロン酸経路、またはHMG−CoAレダクターゼ経路は、ジメチルアリルピロリン酸(DMAPP)およびイソペンチルピロリン酸(IPP)(テルペンに対する通常のC5前駆体)を産生する。非メバロン酸経路は、DMAPPおよびIPPを形成する代替経路である。DMAPPおよびIPPは、より高次のイソプレンが形成されるゲラニル−ジホスフェート(GPP)、または他の前駆体(例えば、ファルネシル−ジホスフェート(FPP)、ゲラニルゲラニル−ジホスフェート(GGPP))を形成するように縮合され得る。
【0186】
本明細書中の発現ベクターは、例えば、チオラーゼ、HMG−CoAシンターゼ、HMG−CoAレダクターゼ、メバロン酸キナーゼ、ホスホメバロン酸キナーゼ、およびメバロン酸−5−ピロリン酸デカルボキシラーゼのようなメバロン酸経路において役割を有するポリペプチドをコードし得る。他の実施形態において、上記ポリペプチドは、非メバロン酸経路における酵素である(例えば、DOXPシンターゼ、DOXPレダクターゼ、4−ジホスファチジル−2−C−メチル−D−エリスリトールシンターゼ、4−ジホスファチジル−2−C−メチル−D−エリスリトールキナーゼ、2−C−メチル−D−エリスリトール2,4,−シクロジホスフェートシンターゼ、HMB−PPシンターゼ、HMB−PPレダクターゼ、またはDOXPレダクトイソメラーゼ)。
【0187】
他の例において、発現ベクターは、例えば、シンターゼをコードする配列のような、イソプレノイド経路におけるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み得る。上記シンターゼは、C10シンターゼ、C15シンターゼ、C20シンターゼ、C30シンターゼ、またはC40シンターゼであり得る。いくつかの実施形態において、上記シンターゼは、ボトリオコッセンシンターゼ、リモネンシンターゼ、1,8シネオールシンターゼ、α−ピネンシンターゼ、カンフェンシンターゼ、(+)−サビネンシンターゼ、ミルセンシンターゼ、アビエタジエンシンターゼ、タキサジエンシンターゼ、ファルネシルピロリン酸シンターゼ、アモルファジエンシンターゼ、(E)−α−ビサボレンシンターゼ、ジアポフィトエンシンターゼ、またはジアポフィトエンデサチュラーゼである。シンターゼおよびそれらの配列の例は、表2に記載される。
【0188】
【表2−1】
【表2−2】
【0189】
上記シンターゼはまた、β−カリオフィレンシンターゼ、ゲルマクレンAシンターゼ、8−エピセドロールシンターゼ、バレンセンシンターゼ、(+)−δ−カジネンシンターゼ、ゲルマクレンCシンターゼ、(E)−β−ファメセン(famesene)シンターゼ、カスベン(casbene)シンターゼ、ベチスピラジエン(vetispiradiene)シンターゼ、5−エピ−アリストロケンシンターゼ、アリストロケンシンターゼ、α−フムレン、(E,E)−α−ファルネセンシンターゼ、(−)−β−ピネンシンターゼ、γ−テルピネンシンターゼ、リモネンシクラーゼ、リナロールシンターゼ、(+)−ボルニルジホスフェートシンターゼ、レボピマラジエン(levopimaradiene)シンターゼ、イソピマラジエンシンターゼ、(E)−γ−ビサボレンシンターゼ、コパリルピロリン酸シンターゼ、カウレンシンターゼ、ロンギホレンシンターゼ、γ−フムレンシンターゼ、6−セリネンシンターゼ、β−フェランドレンシンターゼ、テルピノレンシンターゼ、(+)−3−カレンシンターゼ、syn−コパリルジホスフェートシンターゼ、α−テルピネオールシンターゼ、syn−ピマラ−7,15−ジエンシンターゼ、ent−サンダラコピマラジエンシンターゼ、スターナー(sterner)−13−エンシンターゼ、E−β−オシメン、S−リナロールシンターゼ、ゲラニオールシンターゼ、γ−テルピネンシンターゼ、リナロールシンターゼ、E−β−オシメンシンターゼ、エピ−セドロールシンターゼ、α−ジンギベレンシンターゼ、グアイアジエンシンターゼ、カスカリラジエンシンターゼ、シス−ムウロラジエンシンターゼ、アフィジコラン−16b−オールシンターゼ、エリザベタトリエン(elizabethatriene)シンターゼ、サンダロール(sandalol)シンターゼ、パチュロールシンターゼ、ジンザノールシンターゼ、セドロールシンターゼ、スカレオール(scareol)シンターゼ、コパロールシンターゼ、またはマノオールシンターゼであり得る。
【0190】
本明細書中に記載される方法のために利用される経路は、サイトゾル、色素体(例えば、葉緑体)またはその両方に存在する酵素を含み得る。特定の実施形態の酵素をコードする外来の核酸は、コードされる酵素がサイトゾルまたは色素体あるいはその両方において活性であるように宿主細胞中に導入され得る。いくつかの実施形態において、1つの細胞内区画(例えば、サイトゾル)に存在する天然に存在する酵素は、宿主細胞の形質転換後に、異なる細胞内の場所(例えば、葉緑体)、または天然に存在する場所および天然に存在しない場所の両方において発現され得る。
【0191】
この概念を例示し、そして単なる例として、光合成する非維管束微細藻類種は、イソプレノイド(例えば、リモネン(特殊化学工業および石油化学工業において価値の高い分子))を生産するために遺伝的に操作され得る。リモネンは、水素原子および炭素原子のみから構成される純粋な炭化水素であるモノテルペンである。リモネンは、種Chlamydomonas rheinhardiiにおいて天然に生産されない。これらの微細藻類におけるリモネンの生産は、異種酵素リモネンシンターゼを発現するように微細藻類を操作することによって達成され得る。リモネンシンターゼは、テルペン前駆体のゲラニルピロリン酸をリモネンへと変換し得る。リモネンとは異なり、ゲラニルピロリン酸は、微細藻類の葉緑体において天然に存在する。リモネンシンターゼの発現は、リモネンシンターゼをコードする異種遺伝子を微細藻類の葉緑体ゲノムへ挿入することによって達成され得る。次いで、微細藻類の改変された系統は、リモネン遺伝子が全ての子孫の葉緑体ゲノムにおいて安定に維持されることを確実にするために同質細胞質にされる。微細藻類は、挿入された遺伝子が葉緑体ゲノムの全てのコピーにおいて存在する場合、遺伝子に対して同質細胞質である。葉緑体がそのゲノムの複数のコピーを含み得ることは、当業者に明らかであり、したがって、用語「同質細胞質」または「ホモプラスミー」とは、目的の特定の遺伝子座の全てのコピーが実質的に同一である状態をいう。色素体発現(遺伝子が各々の植物細胞に存在する環状色素体ゲノムの数千のコピーの全てに相同組換えすることによって挿入される)は、全ての可溶性植物タンパク質の10%を容易に上回り得る発現レベルを許容するために、核によって発現された遺伝子を超える莫大なコピー数の利点を利用する。
【0192】
(発現)
葉緑体は、光合成生物の増殖性オルガネラであり、そしておよび多くの量のタンパク質合成の部位である。本明細書中の任意の発現ベクターは、葉緑体発現に選択的に適合され得る。高等植物からの多くの葉緑体プロモーターは、KungおよびLin,Nucleic Acids Res.13:7543−7549(1985)に記載されている。遺伝子産物は、葉緑体において発現ベクターから発現され得る。発現ベクターによってコードされる遺伝子産物はまた、葉緑体標的化配列によって葉緑体を標的とし得る。例えば、発現ベクターまたは発現ベクターによってコードされる遺伝子産物に葉緑体を標的させることは、調節性制御配列および燃料分子の生産を許容または改良するタンパク質またはペプチドをコードする配列によって提供される効果をさらに上昇させ得る。
【0193】
本明細書中に記載される葉緑体標的化の種々の組合せは、具現化され得、そして本明細書中に記載される他の特徴と組み合わせられ得る。例えば、テルペンシンターゼをコードするヌクレオチド配列は、葉緑体標的化配列をコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結され得る。宿主細胞は、葉緑体を標的させられたリモネンシンターゼをコードする発現ベクターによって形質転換され得、したがって、リモネンシンターゼをコードするが葉緑体標的化配列をコードしない発現ベクターによって形質転換された宿主細胞と比較して、より多くのリモネンシンターゼを生産し得る。増大したリモネンシンターゼ発現は、より少なく生産する宿主細胞と比較して、より多くのリモネンを生産し得る。
【0194】
なお別の例において、上記生物によって天然に生産される前駆体を基質として使用することにより上記生物によって天然に生産されない生成物(例えば、燃料生成物、芳香生成物、殺虫剤生成物)を生産する酵素をコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクターは、葉緑体を標的とする。酵素に葉緑体を標的とさせることによって、上記生成物の生産は、宿主細胞と比較して増大し得、上記酵素は、発現されるが、葉緑体を標的としない。理論に束縛されることなく、これは、葉緑体において生産される増大した前駆体に起因し得、したがって、より多くの生成物は、導入されたヌクレオチド配列によってコードされる酵素によって生産され得る。
【0195】
(方法)
生成物(例えば、燃料生成物、芳香生成物、殺虫剤生成物)は、本明細書中の核酸の1つ以上によって形質転換される非維管束生物を成長させる工程/培養する工程を含む方法によって生産され得る。本明細書中の方法は、生物を形質転換する工程をさらに含み得る。形質転換は、当該分野で公知であるか、または本明細書中に記載される任意の方法を使用して起こり得る。本明細書中の方法は、上記生物によって生産される生成物を収集する工程をさらに含み得る。
【0196】
本明細書中の方法は、無機炭素の供給源(例えば、煙道ガス)を生物に提供する工程をさらに含み得る。いくつかの例において、上記無機炭素供給源は、上記生成物(例えば、燃料生成物)を作製するのに必要な炭素の全てを提供する。上記成長させる工程/培養する工程は、好ましくは、適切な培地(例えば、ミネラルおよび/またはビタミンを有するもの)において生じる。
【0197】
関係するなお異なる別の態様において、生成物(例えば、燃料生成物、芳香生成物、殺虫剤生成物)を生産するための方法は、発現ベクターによって光合成生物を形質転換する工程、上記生物を成長させる工程;および上記生物からの生成物を収集する工程を含む。上記発現ベクターは、代表的に、本明細書中に記載される発現ベクターであり、そして上記光合成生物による分子の生産を増大させる強化、または可能にする強化のいずれかによって、さらなる生合成能力を生物に付加するか、上記生物内の既存の生合成経路を改変するために特異的に使用される。
【0198】
本明細書中の方法は、生成物(例えば、燃料、芳香、および殺虫剤)を産生するのに有用である遺伝子を選択する工程、そのような遺伝子によって光合成生物の細胞を形質転換する工程、および上記生成物が生産されることを可能にするのに適した条件下でそのような生物を成長させる工程を含む。本明細書中の使用のための生物は、従来の発酵バイオリアクターにおいて培養され得、発酵バイオリアクターとしては、バッチ、供給バッチ、細胞の再利用、および連続発酵槽が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、それらは、光バイオリアクターによって成長し得る(例えば、米国特許出願公開第20050260553号;米国特許第5,958,761号;米国特許第6,083,740号を参照のこと)。培養はまた、振盪フラスコ、試験管、マイクロタイターディッシュ、およびペトリ皿において行われ得る。培養は、上記組換え細胞に適した温度、pHおよび酸素含量において行われる。そのような培養条件は、当業者において周知である。
【0199】
宿主生物はまた、陸地(例えば、埋立地)において成長し得る。いくつかの場合において、宿主生物は、CO2を産生するエタノール生産プラントまたは他の施設または領域(例えば、都市、高速道路など)の近傍で成長する。そのようなものとして、本明細書中の方法は、炭素クレジットをエタノールプラントまたは他の施設あるいはCO2を産生する領域に販売するためのビジネス方法を企図する一方で、その方法は、上記エタノール生産プラントの近傍で本明細書中に記載される改変された生物の1種以上を成長させることによって燃料を作製する。
【0200】
さらに、上記生物は、屋外の開放水域(例えば、池、大洋、海、川、ウォーターベッド(waterbed)、沢水、浅瀬、湖、溜池など)において成長し得る。水において成長する場合、上記生物は、レゴ様(lego−like)粒子からなるハロー様(halo like)物体に含まれ得る。ハロー物体は、上記藻類を取り囲み、そしてその藻類を屋外の日光にその藻類が維持する間に地中の水からの養分を保持することを可能にする。
【0201】
いくつかの例において、生物は、容器中で成長し得、各容器が1または2あるいは多数の生物を含む。上記容器は、水に浮かぶように構成され得る。例えば、容器は、空気と水との組合せによって満たされて上記容器および上記宿主生物を浮いた状態にし得る。したがって、淡水において成長するのに適する宿主生物は、塩水(例えば、大洋)において成長でき、そして逆もまた同様である。この機構は、上記容器に対する任意の損傷が存在する場合、上記生物の自動的な死を可能にする。
【0202】
いくつかの例において、複数の容器は、上に記載されるハロー様構造内に含まれ得る。例えば、100個、1,000個、10,000個、100,000個、または1,000,000個までの容器が、1平方メートルのハロー様構造中に配置され得る。
【0203】
いくつかの実施形態において、上記生成物(例えば、燃料生成物、芳香生成物、殺虫剤生成物)は、上記生物を収穫することによって収集される。次いで、上記生成物は、上記生物から抽出され得る。
【0204】
いくつかの実施形態において、上記生成物(例えば、燃料生成物、芳香生成物、殺虫剤生成物)の発現は、誘導性である。上記生成物は、発現されるように誘導され得る。発現は、光によって誘導可能である。なお他の実施形態において、上記生成物の生産は、自動調節可能である。上記生成物葉、フィードバックループを形成し得、上記生成物(例えば、燃料生成物、芳香生成物、殺虫剤生成物)が特定のレベルに到達する場合、上記生成物の発現は、阻害され得る。他の実施形態において、上記生物の代謝産物のレベルは、上記生成物の発現を阻害する。例えば、上記生物によって生産される内在性ATPは、上記産物を発現するための増大したエネルギー生産の結果として、上記産物の発現を阻害するフィードバックループを形成し得る。なお別の実施形態において、上記生成物の生産は、例えば、光または外来因子によって誘導可能であり得る。例えば、上記宿主生物において生成物の生産を達成するための発現ベクターは、外来因子によって活性化または不活性化される誘導性の調節性制御配列を含み得る。
【0205】
本明細書中に記載される方法は、本明細書中に記載される任意の燃料生成物を作製する新規の遺伝子/発現ベクターをスクリーニングするための方法に関連し得る。そのような方法は、(1)核酸の候補発現ベクターを光合成生物中に挿入する工程、(2)それらから生産される推定上の燃料生成物を収集する工程、(3)上記推定上の燃料生成物の特徴を決定するため、およびその燃料生成物が燃料生成物として使用され得るか否かを決定するために質量分析器に上記推定上の燃料生成物を適用する工程を含む。いくつかの実施形態において、工程(2)は、公知の燃料生成物、および候補発現ベクターが候補発現ベクターを有さない光合成生物と比較して上記燃料生成物の生産を増大させるか否かということを収集する工程を含み得る。
【0206】
本開示は、以下の実施例においてさらに例示されるが、いずれかの手段に限定されると解釈されるべきではない。示されるデータをもたらすための実験的手順はは、以下でより詳細に考察される。本開示は、例示的な様式で記載されており、そしてそれは、使用される用語法が限定ではなく記述としての性質を意図していることが理解される。
【実施例】
【0207】
(実施例1)
上記セスキテルペン、クパレンのクラッキングを、本明細書中に提供される上記方法によって達成した。この例において、10員環モレキュラーシーブ触媒組成物を、クパレンの接触クラッキングを実施するために選択した。ゼオライトは、約27/1のSiO2/Al2O3のZSM−5型ゼオライトの比較的高いアルミナ含量を有するSN27として公知であるZSM−5材料であった。この材料は、使用する前にアンモニウムカチオンによって交換し、次いでパルス反応器中で約500℃においてか焼することによって上記プロトン形態に変換した。
【0208】
パルス反応器を、本明細書中に記載される生物に由来する炭化水素の触媒反応を研究するために構築した。設計基準は、信頼性のある結果をもたらすために必要である反応物の量を最小化し、そして上記生成物および生成物の分布の評価を可能にすることを含む。図1Aに示すように、上記パルス反応器10は、30cmの長い石英管20から構築され、1000℃よりも高い温度に耐え得る。上記石英管は、その各末端に気体入口24および気体出口28を備える。触媒サンプル(示さない)を支持するために使用されるフリットディスク30を中央に有する。石英ウール40を、上記触媒を保持するために上記反応器において上記触媒の上端および下端に配置する。上記上端のOリングコネクター44は、シリンジ注入ポート50を許容し、そして上記下端に別のOリング接続部60は、取り外し可能なU字トラップ70を接続するために使用する、必要に応じて、さらなる管80を、上記Oリングにおける上記生成物の凝縮を妨げるために上記Oリング接続部60に取り付け得る。主要な管20を管状炉に配置し得、そして温度制御器(示さない)を取り付ける。図1Bは、運転中の上記パルス反応器を示す概略図である。簡潔に言うと、キャリアガスの流出量を、代表的に、圧力調節器および流量調節器を通して提供する。キャリアガスの流れは、上記シリンジ注入ポートを通過し、上記管を下り、上記触媒サンプル上を通過し、そして上記トラップに入る。上記キャリアガスは、上記炭化水素反応物を上記触媒に運び、そして必要に応じて特定の反応雰囲気を提供する。例えば、上記キャリアガスは、ヘリウムまたは窒素(不活性雰囲気)、水素(還元雰囲気)、あるいは酸素(酸化雰囲気)であり得る。上記触媒サンプルを、反応物のパルスの導入前に上記任意の所望の雰囲気、および任意の温度で前処理し得る。上記反応器を、炉の中で所望の反応温度にし、そして少量の上記炭化水素反応物を、反応温度でこの「パルス」を上記触媒に運ぶ流れる蒸気に注入する。反応生成物を収集するために、上記下端のU管トラップ70を、液体窒素を備える冷却トラップに浸す。上記触媒反応の生成物を、上記U字管トラップにおいて凍結し、そして上記U字管トラップを取り外し、溶媒(例えば、メタノール)によってそのU字管トラップを洗浄することによって回収され得る。次いで、上記生成物は、生成物種の定量的測定のためにGC/MSそして/または定量的測定のためにFID検出器を備えるGCによって分析され得る。上記GCシステムおよびGC/MSシステムの両方において、プロフィールをプログラムする同一のカラム温度を有する同一のクロマトグラフィーカラムが、使用される。これらは、50m PONAキャピラリーカラムであり、そしてスプリット注入器が、両方のデバイスにおいて使用される。
【0209】
クレパンは、高い沸点(約275℃)を有し、したがって分析のためにクロマトグラフィー手順の調節を必要とし得るようなC15分子である。GC/MSシステムを、クラッキング生成物の分析のために使用した。
【0210】
クパレンクラッキングの接触クラッキングについての実験を、SN27の完全にプロトン化した形態において行った。上記クラッキングの条件は、500℃であり、そして上記クパレンを、25μLパルスでヘリウムキャリアガス(100cc/分)と一緒にパルス反応器に提供した。クパレンのクラッキング生成物への変換は、100%に近いものであり、そして主な生成物は、トルエン、ベンゼン、キシレン、エチルベンゼン、およびより重質な芳香族化合物であった。いくつかの芳香族化合物(例えば、ベンゼンおよびキシレン)を回避するために、クラッキングをまた、より低い温度のクラッキングの条件下(450℃、400℃、350℃、および300℃)で行った。異なる温度について得られた種々のクラッキング生成物の概要を、図1Cに示す。
【0211】
(実施例2)
LZY−72は、しばしばクラッキング触媒として使用されるUnion Carbide Y型ゼオライトである。この実施例において使用する触媒組成物を、概してナトリウム形態であるLZY−72ベースによって開始し、上記ベースを、NH4NO3水溶液でイオン交換し、上記ゼオライトのアンモニウム形態を生じた。加熱において、上記アンモニウムゼオライトは、アンモニアの排除によって上記プロトン形態に変換する。上記ゼオライトのプロトンは、強力な固体酸として作用する。Y型ゼオライトは、約13Åの自由な直径を有する大きく球状の3次元の孔ネットワーク開口する約8.6Åの口径を有する。
【0212】
第2の触媒、すなわちSN27は、ドイツのVAW−AGによって製造されたZSM−5ゼオライトベース材料である。これは27/1のSiO2/Al2O3比を有する。このゼオライトはナトリウム型でも供給され、類似のアンモニウム交換手順と、それに次ぐ加熱工程を用いて、それを強酸に変換した。ZSM−5ゼオライトは、約5.5Åの孔径を有するおおまかに円筒形状である2次元チャネル系により特徴付けられる。
【0213】
セスキテルペンのクラッキング、この実施例では、クパレンのクラッキングは、クパレンを上記SN27触媒と接触させることで実行し、上記プロセスの結果生じた生成物を図2Aに要約した。図2Aに示すように、高いクパレン転化率が高温(450〜500℃)で得られ、トルエンが主成分であり、より少量のベンゼン、キシレン類、およびエチル−メチルベンゼンが付随していた。
【0214】
上記LZY−72触媒を用い、クパレンを、図2Bで要約されるように、はるかに低い温度にて、高オクタン価成分へとクラッキングした。LZY−72触媒を用いたクパレンのクラッキングからの全ての生成物中の主成分はトルエンであった。キシレンおよびベンゼン誘導体はより高温にて選択的に生成され、これは上記SN27触媒に対する上記結果に類似した。低い温度では、シクロペンタンおよびシクロヘキサンの誘導体が、非常に少ないベンゼンを伴うかなりの量で生成され、これは混合に適し得るかまたは燃料生成物として適し得る高オクタン燃料生成物または燃料成分であることを示した。図2C、図2D、および図2Eは、各々200C、250C、および300Cでの上記LZY−72ゼオライトを用いたクパレンのクラッキングからの組成物を示す。括弧内の数字は様々な成分についてのオクタン価の範囲を示す。
【0215】
クパレンのクラッキングからの上記生成物の水素−炭素(H/C)比もまた観察した。反応物のクパレンは、C15H22であり、H/C比は1.47である。クパレンを正確にその2つの基本環にクラッキングした場合、上記生成物は、54.5%のトリメチルシクロペンテン、C8H14、および45.5%のトルエン、C7H8であり、この混合物は上記親分子と同一のH/C比1.47を有するはずである。しかし、本実施例のクラッキング生成混合物は、トリメチルシクロペンテンの代わりに、トリメチルシクロペンタン類およびジメチルシクロヘキサン類を含む。上記飽和ナフテン類は上記不飽和ナフテン類よりも高いH/C比を有するので、発明者らは上記反応物よりも、生成物全体は、より高いH/C含有量を含むと予想するかもしれない。結果、上記反応物は水素の追加を必要とするであろう。しかしながら、図2Bに示す実際の生成物の測定されたH/C比は1.43であり、これは水素の追加無しで可能である。なぜならば、実際のトルエン重量分率(62.1%)は45.5%を超過しているからである。従って、クラッキング生成物は、例えば、ガソリンまたはジェット燃料等の燃焼燃料生成物に適切である高オクタン生成物を含む。
【0216】
また、さらなるクパレンは、殆どの温度で、上記SN27触媒と比較して、LZY−52触媒を用いてより少ない芳香族化合物を伴ってクラッキングした。この差は、孔サイズにおける差に由来し得る。SN27は約5.5Åの孔径を有し、孔構造は芳香環を許容することは公知であるが、クパレンのサイズおよび形状は、上記孔に適合するには僅かに大き過ぎる場合がある。SN27を用いる接触クラッキングのために高温が必要であるようにみえるが、上記選択性は高温で悪影響を被る。約8.6Åの孔を有するLZY−52は上記クパレン分子をより良く収容することが可能であるようである。
【0217】
上記実施例の別の例において、上記生成物中には測定出来ないアルキルシクロペンテン類またはアルキルシクロヘキセン類が存在し、これらは、ガソリン等の燃料生成物中では所望され得ない。このような不飽和化合物は、場合によっては許容できるが、ガソリン中の大部分において反応性に困難を来たし得る。ベンゼン、すなわちガソリン等の燃料生成物中の別の所望されない分子もまた、一部の例において、測定可能な量では存在しなかった。
【0218】
(実施例3)
ゼオライトβをPQ Catalysts(現在は、Zeolyst Internationalの一部である)から得た。この材料は、Valfor CP811BL−25として公知である。これは、約25のSiO2/Al2O3比を有し、酸性の(十分にプロトン化した)形態で供給された。上記ゼオライトβを、粉末をペレットに入れ、すり鉢および乳棒で砕き、篩にかけることで大きさがばらばらの粉末を20〜40メッシュの粒子に変換して、その後、そのパルス反応器に充填した。
【0219】
実施例2において証明されたゼオライトYに類似して、ゼオライトβは、12員環の、3次元孔系を有する。ゼオライトYとは異なり、ゼオライトβは、はるかに高いSiO2/Al2O3比において合成可能である。これはより低密度のプロトン部位を生じるが、各々個々の部位は、一般的に、ゼオライトβにおいてより強い。
【0220】
クパレンをクラッキングするプロセスを、接触クラッキングの条件において、パルス反応器中で実行し、上記クパレンをゼオライトβと接触させた。高クパレン転化率が、200℃程度の温度での条件において観察され、トルエンは、200℃から500℃までの用いられる全ての温度において主生成物であった。図3Aは、ゼオライトβ(Valfour CP811BL−25)触媒を用いるクパレンクラッキングおよびそれから得られる生成物の温度感受性を詳述する。図3Bおよび3Cは、200および250℃にてゼオライトβ(Valfour CP811BL−25)触媒を用いるクパレンクラッキングの生成物の詳細を示す。括弧内の数字は、種のオクタン価を示す。異なる異性体が異なるオクタン価を有する場合には、範囲が示される。
【0221】
(実施例4)
ELZ−Lゼオライトのアンモニウム形態(Linde Molecular Sieve)を、カリウム形態で出発して調製した。上記ゼオライトの10gのカリウム形態を、10gの酢酸アンモニウムを含む50ccの水溶液中でスラリー状にした。混合物を暖め、一晩攪拌し、次いで、その溶液を濾過し、このプロセスを2度繰り返した。この材料を使用前に125℃で一晩乾燥させた。微小天秤脱離実験は、500℃での乾燥の後、材料が強いプロトン含有物であることを示した。
【0222】
クパレンのクラッキングを、パルス反応器において実行し、上記クパレンをELZ−Z触媒組成物と接触させた。上記クラッキング生成物をGCおよびGC/MSによって分析した。クロマトグラムは、特により低温にて様々なクラッキング生成物を示した。上記クロマトグラムの最も広いピーク面積の少なくとも1%を有するピークのみを分析した。無視したピークは、各々約0.3%、クロマトグラムでの全てのピークの総数の面積に相当する。保持したピークを、NIST MS指紋データベースを用いたライブラリ検索によって同定した。
【0223】
ELZ−L触媒を用いたクパレンのクラッキングは、図4に示すように、試験された全ての温度にて、主にトルエンおよびナフテン類(環状アルカン類)を生成した。より高いクラッキング温度は、ナフテン類および一部のトルエンを犠牲にして、キシレン類(ジメチルベンゼン)および他のベンゼン誘導体(トリメチルベンゼン、エチルベンゼン、メチルイソプロピルベンゼン)の生成を向上させた。生成物の1%未満はベンゼンであった。オレフィンが、250℃および490℃でのみ、各々、クラッキング生成物の1%および9%を構成した。かなりの量のナフタレン類(C10+芳香族化合物)または酸素化物(酸素含有分子)は生成されなかった。
【0224】
ELZ−L触媒は、実施例2および実施例3において示されるLZY−72およびゼオライトβ触媒に類似したクラッキング生成物を生じた。特に、LZY−72およびELZ−Lはトルエンおよびナフテン類の類似した量を生成した。しかしながら、LZY−72触媒は、対応する温度にて、ELZ−Lよりも、より多くのキシレンおよびベンゼンを生成したが、LZY−72はまた、250℃および300℃にて、より良いクパレンの転化率を有した。ゼオライトβは、400℃およびそれ以下の温度にて、ELZ−Lよりも、よりトルエンを生成した。LZY−72と同様に、ゼオライトβもまた、同程度の温度にて、ELZ−Lよりも、よりキシレンおよびベンゼンを生成した。ゼオライトβもまた、400℃およびそれ以上の温度にて、ナフタレン類を生成し、その一方で、LZY−72もELZ−Lも、いずれの温度でも、著しい量のナフタレンを生成しなかった。ゼオライトβと比較して、ELZ−Lは300℃またはそれ未満の温度にてクパレンの乏しい転化率しか示さなかった。
【0225】
ゼオライトβ、LZY−72、およびELZ−Lでのクパレンのクラッキングは、本実施例ならびに実施例2および実施例3において証明されるように、30%以上、通常は、50%かそれ以上の実質的な量のトルエンを生成した。高温(450+℃)にて、キシレン類は、約20%にて、二番目の最も豊富な生成物であった。クラッキング温度を200℃〜300℃に低下すると、LZY−72およびELZ−L触媒を用いて、約30%のナフテン類を生成した。適度な温度はまた、ベンゼンおよびオレフィンの生成を低減させた。クパレンのクラッキングのための大きな孔モレキュラーシーブの3つ全ては、クパレンを高オクタン燃料生成物、成分、または添加物にクラッキングするための最適な候補であると思われる。
【0226】
(実施例5)
藻類から抽出された油を、図5Aに示すような設定を用いて、パルス反応器内でクラッキングした。未使用のゼオライトβ触媒を、本明細書に記載されるように用いて、各々をクラッキングの実験に供し、使用の前に乾燥させた。上記クラッキングの実験を、500℃、450℃、400℃、350℃、および300℃で実行した。上記クラッキング生成物をGC/MSによって分析した。保持時間とNIST MS指紋データベースを用いたライブラリ検索との組み合わせによってピークを同定した。MS指紋またはGC保持時間によって同定され得なかったピークを不明の要素として表示した。
【0227】
油をCO2を介して藻類から抽出し、第1の粗サンプルを準備した。粗藻類油の一部をRBDプロセスによって精製し、第2の精製されたサンプルを準備した。各サンプルを、500℃、450℃、400℃、および350℃のクラッキング条件温度でクラッキングした。
【0228】
上記粗藻類油を、本明細書に記載のプロセスを用いて、図5Bに示すように、約等量のパラフィン類、オレフィン類、C8−C14芳香族化合物、およびナフタレン類までクラッキングし、ここで0.1gの粗藻類油を、様々な温度にて、0.1gのゼオライトβと接触させてクラッキングした。C4−C13パラフィン類およびナフタレン類は、平均して19%の生成物となり、他方で、ナフテン類およびオレフィン類は平均して16%となった。メチルブタンは全ての温度にて主生成物であり、生成物の約9%を構成した。パラフィン、ナフテン、およびオレフィン生成は、クラッキング温度が上昇するにつれて減少した。ベンゼン、トルエン、キシレン、およびC9−C14芳香族化合物含有量はクラッキング温度と共に上昇した。ナフタレン生成は400℃でピークを迎えた。中間構造物の酸素化物は全ての温度にて生成物の1%未満であった。結果として、水が重要な反応生成物と予期されたが、しかし、水はこれらの特定の手順を用いて定量化されなかった。350℃にて不明の要素が、18個のピークを同定できなかったことで生じ、各々は総濃度に対して0.1%〜0.5%の間で相当した。
【0229】
図5Bはまた、標準のガソリンスタンドから取られた87、89、および91オクタンガソリンの成分を示す。石油のガソリンと比較して、粗藻類抽出からの生成物は、著しく少ないパラフィン類およびさらなるナフタレン類を含有した。ガソリンもまた、観察された、クラッキングした藻類油生成物よりも、より小さい分子を有する傾向があった。例えば、ガソリン中のパラフィン類はC4−C10であったが、クラッキング生成物中のパラフィンはC13まで及んだ。この傾向は、ナフテン類、オレフィン類、およびC8−C14芳香族化合物にも当てはまった。
【0230】
藻類油の第2のサンプルを、実施例のプロセスによってクラッキングし、ここで第2のサンプルを、0.1gのゼオライトβに対して0.1gの第2のサンプルをクラッキングする前に、RBDプロセスによって精製した。図5Cは、パラフィン類が、精製した藻類油の主なクラッキング生成物であり、全ての温度に亘って平均して20%であったことを示す。オレフィン類、C8−C14芳香族化合物、およびナフタレン類は全て平均して約18%であった。ベンゼンは全ての温度に亘って生成物の2.5%であり、最大では400℃で3.8%であった。精製した油をクラッキングしたことから酸素化物は同定されなかったが、水がほぼ確実に存在していた。平均してピークの1%未満が同定されなかった。ナフテン含有量は温度の上昇と共に減少し、他方でC8−C14芳香族種が上昇した。
【0231】
精製した藻類油からのクラッキング生成物は粗油クラッキング生成物と類似した。また、トルエンおよびキシレン含有量は、実施例のガソリンサンプルと比較してより低かった。図5Dは、粗藻類油および精製した藻類油の両方からのクラッキングした生成物と、87、89、および91のオクタンの石油のガソリンとを比較する。平均して、藻類油サンプルをクラッキングすることによって得られた2組の生成物間には著しい差はなく、RBD精製がクラッキング生成物を上昇させないことを示す。一部の例において、クラッキング生成物は、適切なガソリン生成物を生成するために、従来の分別精製を必要とする場合がある。他の例において、クラッキング生成物は燃料生成物、成分、または添加物として用いられてもよい。
【0232】
(実施例6)
ファルネセンと、前述のクパレンのクラッキングの実施例において用いた同じアンモニア交換された形態であったLZY−72と接触させることによって、ファルネセン、セスキテルペンをクラッキングした。この材料は、前処理プロセスの間、500℃で加熱して、酸性の(プロトン化された)形態に変換する。
【0233】
上記クラッキング生成物をGC/MSによって分析した。クロマトグラムは、特により低い温度において、様々なクラッキング生成物のために非常に複雑となる傾向があった。上記クロマトグラムの最も広いピークの面積の少なくとも1%の面積を有するピークのみをこのレポートについて分析した。より小さなピークは、各々約0.3%、クロマトグラムでの全てのピークの総数の面積に相当した。保持したピークを、保持時間とNIST MS指紋データベースを用いたライブラリ検索との組み合わせによって同定した。MS指紋またはGC保持時間によって同定され得なかったピークを不明の要素として表示した。
【0234】
2mLの濃縮されたファルネセンを収集するまで25μLを分取GCカラムに繰り返し注入することによって、ファルネセンを61%まで濃縮し、その濃縮されたファルネセンの組成を表3に示す。
【表3】
【0235】
上記濃縮されたファルネセンを、LZY−72触媒に対してクラッキングした。
【0236】
総体では、LZY−72触媒を用いてファルネセンをクラッキングすると、60%の芳香族分子、25%のナフテン類、および13%のパラフィン類を生成した。クラッキングは、図6Aに示すように、200℃から300℃では主にナフテン類、より高温では芳香族化合物を生成した。メチルおよびジメチルシクロヘキサンは、200℃から300℃のクラッキング条件にては、主要なナフテン類であり、全てのナフテン類の各々21%および17%を構成する。図6Aに示すように、ナフテン生成物はクラッキング温度の上昇と共に減少した。キシレン、C9−C10芳香族化合物、ナフタレン、およびベンゼンの含有量はクラッキング温度と共に上昇した。トリメチルベンゼンは、主要なC9−C10芳香族分子であり、全ての温度に亘って、平均してC9−C10芳香族分子の63%であった。ベンゼンは400℃で全ての生成物の1.5%に達し、ファルネセンを490℃でクラッキングする場合、3%でピークとなった。トルエンおよびパラフィン類を、全ての温度にて比較的一貫して生成し、各々、平均して17%および12%であった。中間構造体の酸素化物は全ての温度における生成物の2%未満であった。目立った量のオレフィン類は検出されなかった。485℃での不明の要素の上昇は、4個のピークを同定できなかったことで生じ、各々は総濃度に対して1%〜3%の間で相当した。
【0237】
クラッキング温度が上昇するにつれて、ファルネセンが芳香族生成物にクラッキングする上昇傾向は、他のセスキテルペンのクラッキングの実施例において見られる傾向と一致する。一般に、LZY−72を用いてクラッキングしたセスキテルペン類は、クラッキング温度が上昇すると、ナフテン類を犠牲にしてさらにキシレン類およびベンゼンを生成した。
【0238】
図6Bはファルネセンのクラッキング生成物中に見出された種についてのリサーチおよびモーター混合オクタン価の平均を示す。91+カラムは、メチルブタン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、およびベンゼンを除く芳香族分子を含む。全ての他のナフテン類およびパラフィン類は、ベースの石油のガソリン混合原料または直留ガソリンにさらに類似するオクタン価を有し、これらは、60と70との間のオクタン価を有する。
【0239】
350+℃にてファルネセンをクラッキングすると、高混合オクタン価(例えば90より高い)を有する75%より良い生成物が生成した。350+℃でのファルネセンのクラッキングからの高オクタン生成物は、混合物全体が高オクタン価を有し得ることを示す。本実施例によって示されるように、ファルネセンをクラッキングするプロセスと、それから由来する組成物は、有用な燃料生成物、成分、または添加物であり得、上記組成物は、ベースの石油のガソリン供給原料(オクタン価60〜80)およびより高オクタン混合供給原料(オクタン価91+)に類似する。
【0240】
(実施例7)
セスキテルペン類の混合物をクラッキングする例示的なプロセスを本実施例において実行した。ショウガ油は約80%のセスキテルペン類を含有する。ジンギベレンはショウガ油の36%を構成される。2番目の多い成分は、16%で、βセスキフェランドレンである。クルクメン、ファルネセン、およびビサボレンもまた、各々約10%で存在する。本実施例においてクラッキングしたショウガ油は、ジンゲロールの量を最小限にするために二酸化炭素を用いて得て、その結果、そのショウガ油の約6%を占めた。
【0241】
ショウガ精油のクラッキングのために用いるLZY−72触媒は、上述のクパレンのクラッキングの実施例において用いた同様のアンモニア交換された形態であった。この材料は、500℃にて前処理プロセスの間、加熱すると、酸性の(プロトン化された)形態に変換する。
【0242】
接触クラッキング条件下で、パルス反応器において上述の実施例の方法と同様に、かつショウガ油を触媒組成物と接触させて、ショウガ油をクラッキングした。約半分のショウガ油はパラフィン類およびナフテン類にクラッキングした。より高いクラッキング温度は、ナフテン類および一部のパラフィン類を犠牲にして芳香族化合物の生成を向上させた。従って、ベンゼンの生成は200℃〜250℃にてゼロから、485℃にて約5%上昇した。オレフィン類は200℃にて、1.5%のクラッキング生成物に達し、より高い温度では検出されなかった。酸素化物はいずれのクラッキング生成物においても確認されなかった。図7は、セスキテルペン類、本実施例においては、ショウガ油の混合物をクラッキングするプロセスからの、クラッキング生成物の組成を示す。ショウガ精油をクラッキングすると、様々なナフテン類、パラフィン類、キシレン類、およびベンゼン誘導体を300℃にて生じた。パラフィン類の多くは分枝し、高オクタン価を提供した。
【0243】
(実施例8)
スクアレンは例示的なトリテルペンである。本明細書に記載されるプロセスを、スクアレンをクラッキングするために利用した。スクアレンのクラッキングのために用いるLZY−72触媒は、上述のクパレンおよびファルネセンのクラッキングの実施例において用いたのと同じアンモニウム交換された形態であった。この材料は、500℃にて前処理プロセスの間加熱すると酸性の(プロトン化された)形態に変換する。上記クラッキング生成物をGC/MSによって分析した。クロマトグラムは特により低い温度において、様々なクラッキング生成物のために非常に複雑となる傾向があった。上記クロマトグラムの最も広いピークの面積の少なくとも1%の面積を有するピークのみをこのレポートのために分析した。
【0244】
上記クラッキング生成物を図8Aに示し、上述のクラッキングの実施例において観察されたものに類似する生成物、すなわち、より低い温度にてより多くのナフテン、およびより高い温度にてより多くの芳香族化合物を示した。さらに、GC/MSの結果は、高い温度(>450℃)にて、相当の量のベンゼンのみ、および無視できる量の酸素化物およびオレフィン類を示した。
【0245】
上記クラッキング生成物のオクタン価を図8Bに示し、この図は上記生成物の平均混合オクタン価を示す。より高い温度でのより高い混合オクタン価は、上記生成物のより高い芳香族の濃度を示す。より低い温度でのより低いオクタン価のより高い濃度は、低いオクタン価の環式化合物に由来する。
【0246】
(実施例9)
フィトールは、光合成生物においてしばしば見出されるジテルペンである。フィトールは、クロロフィルの分解による生成物であり得る。図9Aは、パラフィン類がフィトールの主なクラッキング生成物であり、全ての温度に亘って平均して62%であったことを示す。ナフテン類は、200℃で24%から490℃で1%に減少した。上記クラッキング生成物の芳香族の含有量は、全ての生成物の7%から42%まで、温度と共に上昇した。ベンゼンおよびナフタレンの濃度は、490℃にて、全ての生成物に対して、各々3%および2%に達する。フィトールをクラッキングすることからはオレフィン類も酸素化物も同定されなかった。
【0247】
図9Bおよび図9Cは、パラフィン類中の、炭素分布および分枝の程度を各々示す。低いクラッキング温度は、C6−C8パラフィン類(例えばメチルペタンおよびメチルヘプタン)の生成を好み、他方で、より高い温度は主にメチルブタンを生成する。図9Cに示すように、フィトールをクラッキングすることによって生成したパラフィン類の多くはモノメチルであるが、直鎖パラフィンおよびジメチルパラフィンが生成する傾向が、各々200℃および490℃で存在した。
【0248】
多くのフィトールのクラッキング生成物のオクタン混合価は、ファルネセン由来のものと類似した。図9Dは、リサーチおよびモーター混合オクタン価の平均に従って分子をグループ化している。91+のカラムにおける高オクタン価の分子は、芳香種、メチルブタン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサンからなる。
【0249】
(実施例10)
藻類フィトールのクラッキングに用いるLZY−72触媒は、上述の実施例において用いたのと同様のアンモニウム交換された形態であった。クラッキングを、350℃の単一の温度でのみ行い、この温度が選択された理由は、これらの条件が殆どまたは全くベンゼンを生成しないことを保証すると想定されるからである。クラッキング生成物を、上述の実施例において検討したように、GC/MSによって分析した。その後、クラッキングしたフィトールの組成物を、オクラホマ州はタルサにある小売店のガソリンスタンドで購入した、87、89、および91品質等級のガソリンのサンプルと比較した。
【0250】
6個のサンプルを調査し、この実施例において報告した:藻類由来のフィトールの単一のパルスの生成物;フィトールを藻類から抽出し、これを「藻類フィトール抽出物」と呼ぶ;市販の仕入れ先(Sigma−Aldrich)からのフィトールの単一のパルスの生成物を「市販のフィトール」と呼ぶ;1/2ccの生成物サンプルに収集され、ガラス製のバイアルに封入された市販のフィトールの複数のパルスの生成物を、「市販のフィトールのバイアル」と呼ぶ;87オクタンガソリンのサンプル;89オクタンガソリンのサンプル;および91オクタンガソリンのサンプル。
【0251】
フィトールのサンプルを、本明細書に記載のLZY−72触媒に接触させて、パルス反応器内でクラッキングした。上記フィトールのクラッキング生成物を図10Aに示し、上記ガソリンのサンプルの分析結果と比較した。フィトールからのクラッキング生成物は、小売店のガソリンのサンプルとは対照的にC4炭化水素を示さなかった。C5−C9パラフィン類は、小売店のガソリンよりもフィトール生成物がより高かった。より低い濃度のトルエン、酸素化物(上記ガソリンのサンプルは5%のエタノールを含む)、およびベンゼンが上記フィトール生成物中に観察された。
【0252】
350℃でクラッキングしたフィトール生成物とガソリンのサンプルとのオクタン範囲の比較を図10Bに示す。市販のフィトールのバイアルは他のものと著しく異なる唯一のサンプルである。それは、主に、そのより低いエタノール、ベンゼン、およびトルエンの濃度の結果として、より低い91+オクタン成分を示す。これは、クラッキング温度を450℃に調節することによって修正可能であり得る。上記バイアル中のより大きなサンプルと単一のパルスのサンプルとの差は、生成物の分布を変えることができる触媒失活のためであり得る。
【0253】
(実施例11)
他の実施例について用いるLZY−72触媒をNiを用いて部分的にイオン交換し、水素化分解触媒として用いることができるNi/LZY−72を生成した。上記イオン交換の手順は次の通りである。10.0gのLZY−72のアンモニウム形態を50gの水中でスラリー化し、2.4gの酢酸Ni(II)四水和物を加えた。その混合物を室温で一晩攪拌し、次いでその溶液を濾過し、固体を一晩125℃で乾燥させた。これらなどの触媒は、プロトンが存在するため、ニッケル活性およびクラッキング活性のために、両方の水素化活性を有する。パルス実験については、0.5gのこの触媒をパルス反応器中に配置して、使用前の1時間、300℃にて、水素の流れの下で活性化させた。水素化分解法を、250℃、300℃、350℃、400℃、450℃、および500℃にて、水素の流れの中で25μlのパルスのフィトールを用いて行った。生成物を、液体窒素中で捕捉させ、次いで、GC/MSシステムでの分析の前に、メタノールを用いてトラップから洗浄した。水素化分解フィトールの水素化分解生成物を図11Aに示す。生成物のオクタン価を図11Bに示した。
【0254】
(実施例12)
本実施例は、テルペンから由来する燃料生成物のマクロスケール調製を記載する。手短に言えば、スクアレンは、管型反応器を用いて首尾良くクラッキングされ、1.37ガロン(約5.18リットル)の液体生成物を生成した。この未加工の液体生成物から、0.95ガロン(約3.59リットル)の最も軽い材料を蒸留し、ASTMガソリン分析のために送り、上記生成物が91.5のオクタン価を有することを示した。
【0255】
クラッキングのプロセスを、フード内に設置された大型の炉および管型反応器を有する施設内で実行した。この装置の簡略化した概略を図12Aに示す。3つの領域を有する炉100は、上側領域110、各々6インチ(約15.24センチメートル)長および600幅(W)である下側領域120、および、12インチ(約30.48センチメートル)長および1180幅(W)である中間領域130を含む。独立した熱電対140、150、および160は、各領域の温度をそれぞれ測定する。2フィート(約60.96センチメートル)長の管型反応器170は、3つの領域を有する炉100内に垂直に取り付けられている。管型反応器170の触媒領域190に軸方向に挿入された熱電対180は、触媒床の中心において温度を測定する。LabViewベースのコントロールプログラムは、炉を等温条件にし、上記測定した触媒温度を設定点にする。同様のプログラムはまた、流量、温度、および圧力を含む全ての測定したシステムパラメータを記録することを可能にする。ISCOポンプ200は、液体供給装置205の500ccまでの量を、一定したプログラム可能な量で反応器170に供給する。流量制御された気体210(この場合は窒素)を反応器170に共に供給可能である。クラッキングの大部分は、約12gのゼオライトβ(T−4546)の押出し成形物(extrudate)(Sued Chemie)が詰められた外径(OD)1インチ(約2.54センチメートル)の管型反応器を用いて行ったが、500ccのスクアレン反応物を使用する実験の最初の3つは、約57gのゼオライトβ(T−4546)で満たされた外径3/4インチ(約1.90センチメートル)の反応器を用いて実行した。図12Aに示すように、液体および気体の流れは管型反応器170の底から入り、ガラスビーズ(直径3mm)が詰められた予熱領域220を介してそれらが流れると混合される。18インチ(約45.72センチメートル)長の触媒床230は、ガラスビーズ床の上に座しており、2つは金属スクリーン240によって隔てられている。上側から移動した反応器の生成物は、約8℃に維持されたらせん状の同心管の熱交換器250へ流れる。冷却された生成物は上記熱交換器を出て、瞬間(instantaneous)液体サンプル(「ラインサンプル」として公知である)を回収可能にするバルブ構成260を通過して、次いで生成物は冷却された分離器270に入る。凝縮されていない気体の生成物は少量の流れが取り出される位置まで進み、気体分析用に設けてあるミクロ−GC280まで回り、次いで、背圧調整器290、湿式気体流量計300、および通気口310に進む。背圧調整器は、全ての実験に対して約5psig(約34.47kPa)に設定した。
【0256】
本実施例の実験は、質量約112gの未使用の触媒を用いて反応器を満たすことで開始する。次いで上記反応器を炉に取り付け、380℃から400℃にて一晩、窒素流下で加熱し、反応の前に触媒を乾燥させた。翌朝、500ccのスクアレンをISCOポンプに入れ、次いで、外径1”の反応器を用いた場合、窒素およびスクアレンの流量を各々2SLM(standard liter per minute)および4cc/minに設定し、または、外径3/4”の反応器を用いた場合、窒素およびスクアレンの流量を1SLMおよび2cc/minに設定した。通常、反応温度は、スクアレンの第1の500ccについて、380℃に設定した。上記温度を、スクアレンの第2の500ccの量について、430℃まで上昇させ、第1の500ccの実験の間に生じた触媒活性における損失をオフセットした。適切な条件が確立された初期の実験を含み、2つのみを380℃から450℃の温度とした以外、全ての実験を300℃から450℃の反応器温度で実行した。回収リザーバ(液体生成物を含む)を定期的に排出し、ラインサンプルを定期的に採り、可能な限り迅速にGCによって分析し、反応物の完全な変換を保証した。
【0257】
約112gの触媒を用いて、1”直径の反応器を用いる場合、いったん第2の500ccのスクアレンを処理し(総量1000ccまたは855g)、上記反応器を冷却してその触媒を取り除き、取り替えた。3つの実験を、57gの触媒を用いて3/4”直径の反応器で達成した場合、500ccのスクアレンをクラッキングした後、上記触媒を取り替えた。なお、いずれの反応器についても、入れられた触媒に対する処理されたスクアレンとの比が同等に近くなるようにした。
【0258】
触媒の一定量が反応器から取り除かれると、触媒の非常に少量のサンプルを微量天秤システムに用いてコークス含有量を決定し、次いで、使用済み触媒の残渣を水平管炉に配置して、4時間、575℃で、80/20 Ar/O2中で燃焼させることで再生した。燃焼した触媒を次いで微量天秤システムでn−プロピルアミン熱脱離分析に供し、ゼオライト触媒の構造的完全性に直接に相関する触媒プロトン含有量を測定した。n−プロピルアミン熱脱離分析の結果を、未使用の触媒と比較して、上記触媒が依然として構造的に正常であり、触媒活性であることを保証した。再生の完全な1サイクルの後、触媒に対して著しい破損を検出しなかった。しかし、スクアレンを用いた全ての実験には、再生されたものではなく未使用の触媒を用いた。総計で、8,5Lまたは約7268gのスクアレンを処理し、1.37ガロン(約5.18リットル)または約4410gのクラッキングした液体生成物を回収した。
【0259】
7268gの供給した総スクアレンからの生成物の内訳の合計を表4に示す。
【表4】
【0260】
ミクロ−GCから、気体生成物の詳細な分析を経時的に統合して、各気体生成物の総量を計上し、合計して、凝結した生成物ではなく気体生成物の総重量を得た。収集した液体の総重量を4410gと記録した。コークスを使用済み触媒において約12重量%と決定し、この値は、112gの触媒で13.44gを生成したことになり、合計では8.5回の各々の量の触媒を用いたので、114gとなる。供給した7268gからこれらの数字を減算して、行方不明の分は508gとなる。図12Bの最後のカラムは、実際に収集し、さらなる分析に用いる総生成物の百分率を示す。行方不明の材料はサンプリング手順および液体ラインを満たすのに帰したと考えるのが最も尤もらしい。
【0261】
液体生成物の模擬蒸留は、58%の液体生成物がガソリン留分(例えば、220℃未満の沸点)であることを示した。それゆえ、クラッキングした液体生成物をASTM試験の前に蒸留した。ASTM分析のために1ガロン(約3.78リットル)の生成物を収集するにはその生成物を275℃まで沸騰させる必要があったが、この温度は220℃のガソリンのカットをゆうに超えており、このことは、液体のより多くがガソリンの範囲内であったことを示唆した模擬蒸留からは予期していないものであった。しかしながら、試験に必要とされる最小量としてのガソリンを収集するためにこれを行った。ASTMサンプルはガソリン沸点範囲に最も近い3070gのクラッキング生成物を含んだ。1340gの液体はガソリン試験をするには重すぎるので残され、これを「液体の残油」と呼ぶ。ASTM試験は、サンプルのリサーチオクタン価は98.5であり、モーターオクタンは84.6であり、ポンプで提供された通常のオクタン価である(R+M)/2に対して91.5の値を生じた。表5は、様々な留分となって回収したスクアレンの割合を示す。蒸気組成の詳細な分析は実行した3回の実験の平均である。上記詳細な液体組成は、プールした液体クラッキング生成物からの少量のサンプルのGC/MS分析に由来した。
【表5】
【0262】
図12Bは、スクアレンをクラッキングすることが本実施例の流通反応装置中にある場合に得た組成物を示す。気体生成物の詳細な分析を表6に示す。イソブタンおよびイソペンタンは各々122および100の混合リサーチオクタン価を有するので、表6に記載のイソブタンおよびイソペンタンの量を液体生成物中に含む場合に得られる液体生成物のオクタン価に対する相応の推量を計算できた。リサーチオクタン価は約100.8であり、モーターオクタン価は88.8であり、(R+M)/2=94.8を生じた。なお、イソブタン(変換したスクアレン中5.02%を占める)およびイソペンタン(変換したスクアレン中2.24%を占める)を回収し、ASTM分析のために回収したサンプルに加えると、ASTM分析用に回収したサンプルに変換したスクアレンの収率は、7.26%増えて52.67%となることになる。気相の全てのC4+成分を回収し、ASTM分析のために回収したサンプルに加えると、収率は22.5%増え、67.91%となり、そして、C4およびC5オレフィンについての混合オクタン価は約109から176の範囲であるので、それゆえ、オクタン価におけるさらなる著しい改善を、場合によっては、100オクタンを超えて、実現できる。
【表6】
【0263】
蒸留して、サンプル中の重質のクラッキング生成物の量を最小化した後に、ASTMサンプルを試験のために送った。試験の結果を表7に示し、この表は2004年からの必要標準を含むカラムも含んでいる。上記生成物の多くの性質は、小売店のガソリンに対するASTM標準に適合する。例えば、リサーチオクタン(RON)およびモーターオクタン価(MON)は各々96.5および84.6であり、すなわち(R+M)/2は91.5であり、これらの全ては、ガソリンについて要求される最小値である91RONおよび82MONに適合する。表7中の太字はサンプルが合格しなかった試験を示す。大雑把に言って、このASTMサンプルは蒸留結果に関連した試験のみに不合格となった。これらの不合格は予期されたものであり、というのも、ガソリン沸点の範囲外の物質を、1ガロン(約3.78リットル)という最小のサンプル量を得るために含む必要があったからである。ASTM蒸留結果は、実行した蒸留によって、最も高い沸点の成分(例えばアントラセン)のみが取り除かれたが、さらなる重質の成分(例えば、ナフタレンおよび多置換のベンゼン類)を残したことを示す。これは260℃の最終沸点を導き、この温度は、小売店のガソリンについて許容限度よりも35℃高かった。ドライバビリティー指数は、10%、50%、および90%のサンプルが回収される温度から計算され、それは、その燃料が、出発時、アイドリング時、および運転時にどの程度首尾良く機能するかを評価する。期待されるように、上記サンプルのドライバビリティー指数は許容限度を超え、というのも蒸留曲線は特定の沸点を超えたからである。本実施例はASTM試験のために、スクアレンからの1ガロンの液体生成物を実証した。
【表7−1】
【表7−2】
【技術分野】
【0001】
(相互参照)
本願は、米国仮特許出願第60/973,394号(2007年9月18日出願)および同第61/085,780(2008年8月1日出願)に基づく利益を主張し、これらの出願は、参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
炭素ベースの化石燃料(例えば、石炭、石油および天然ガス)は、有限かつ再生不能な資源である。現在の消費率において、化石燃料の供給は予測し得る未来において使い尽されるであろう。一方で、化石燃料を燃やすことは、大気中の二酸化炭素の濃度の上昇をもたらし、その濃度の上昇は、地球規模の気候変動を引き起こしたと考えられる。
【0003】
バイオ燃料は、いくつかの理由から、化石燃料の実行可能な代替である。バイオ燃料は、バイオマス(最近の、生物由来の材料)から生産される再生可能なエネルギー源である。バイオ燃料もまた炭素ベースであるが、それらは、燃料消費の間に放出される二酸化炭素が生物の新しい成長を通して再吸収されるので大気の二酸化炭素レベルにおける顕著な純増加を引き起こさない。
【0004】
輸送関連のガソリン消費は、全ての液体化石燃料の使用の大部分を占めるので、ガソリンを液体バイオ燃料で補完または置換することは、我々の化石燃料への依存および二酸化炭素生産を減少させると期待される。現在、利用可能な液体バイオ燃料としては、エタノールおよび脂質が挙げられる。エタノールは、代表的に、炭水化物(例えば、糖およびデンプン)が豊富な作物から生産される。複合糖質(例えば、セルロースおよびヘミセルロース)もまた、糖へと分解され得、次いで微生物によってエタノールに変換され得る。脂質ベースのバイオ燃料(バイオディーゼルともいう)は、野菜(例えば、トウモロコシ、大豆、ヒマワリ、およびモロコシ)由来の植物油である。
【0005】
しかし、エタノールおよび脂質ベースのバイオ燃料を使用することのエネルギー利益は、疑問視されてきた。エタノールは、ガソリンよりも低いエネルギー含量を有し、より多くのエタノールが同じエネルギー出力を提供するために必要とされる。より重要なことには、エタノール生産および脂質生産の両方は、現在、化石燃料によって推進されている。例えば、エタノールを生産するためのエネルギーは、農業機械および灌漑を運転すること、作物を輸送および粉砕すること、殺虫剤および肥料を生産することならびに発酵させることならびにエタノールを蒸留することを含む。エタノール生産のためのエネルギー入力がエタノールの燃焼からのエネルギー出力を上回り得るという懸念が、存在している。さらに、幅広い生産ならびにエタノールおよびバイオディーゼルの使用は、いずれも既存の燃料配給基盤を使用する輸送に適していないので、新しい配給パイプラインを建設することを必要とする。さらに、作物ベースの燃料(例えば、エタノールおよび伝統的なバイオディーゼル)の任意の大規模開発は、食物の生産と同じ資源について競合し、そして究極的に、耕地の量によって制限される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、再生可能な供給源から燃料を生産すること、および既存のバイオ燃料の欠点を克服することに対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
セスキテルペンをクラッキングするための接触クラッキング方法が、本明細書中に開示され、上記方法は、セスキテルペンを含む原料と触媒組成物とを接触クラッキングの条件下で接触させる工程を含む。上記セスキテルペンは、例えば、クパレンまたはファルネセンであり得る。上記方法は、50重量%よりも多くのトルエンと、2重量%未満のベンゼンと、20重量%未満のキシレンと、シクロヘキサンおよびシクロペンタンの30重量%よりも多くの組合せとを含む混合物を生産する工程を含み得る。別の例において、上記方法は、15重量%よりも多くのトルエンと10重量%よりも多くのパラフィンとを含む混合物を生産する工程を含む。いくつかの例において、上記クラッキングの条件は、上記原料を350℃よりも高くに加熱する工程を含み、そして上記方法は、75重量%よりも多くが90よりも大きいオクタン価を有する成分を含む混合物を生産する工程を含む。また、記載される混合物は、約15重量%〜約20重量%のトルエンと約10重量%〜約15重量%のパラフィンとを含み得る。混合物はまた、50重量%よりも多くの芳香族炭化水素を含み得る。
【0008】
別の態様において、接触クラッキング方法は、ジテルペンをクラッキングするために提供され、上記方法は、ジテルペンを含む原料と触媒組成物とを接触クラッキングの条件下で接触させる工程を含む。1つの例において、上記ジテルペンは、フィトールである。上記方法は、55重量%よりも多くのC5〜C9パラフィンを含む混合物を生産する工程を含むことができ、上記パラフィンの70重量%よりも多くは、モノメチルパラフィンである。いくつかの例において、クラッキングの条件は、上記原料を350℃よりも高くに加熱する工程を含み、そして上記方法は、75重量%よりも多くが90よりも大きいオクタン価を有する成分を含む混合物を生産する工程を含む。いくつかの例において、上記混合物は、40重量%よりも多くのメチルブタンを含む。上記混合物はまた、1重量%未満のC4パラフィンを含み得る。
【0009】
なお別の態様において、接触クラッキング方法は、トリテルペンをクラッキングするために本明細書中に提供され、上記方法は、トリテルペンを含む原料と触媒組成物とを接触クラッキングの条件下で接触させる工程を含む。上記トリテルペンは、スクアレンであり得る。
【0010】
テトラテルペンをクラッキングするための接触クラッキング方法もまた、提供され、上記方法は、トリテルペンを含む原料と触媒組成物とを接触クラッキングの条件下で接触させる工程を含む。上記テトラテルペンは、カロテンであり得る。
【0011】
1つの態様において、接触クラッキング方法は、少なくとも3種のテルペンを含む混合物をクラッキングするために本明細書中に提供され、上記方法は、少なくとも3種のテルペンを含む混合物を含む原料と触媒組成物とを接触クラッキングの条件下で接触させる工程を含む。上記少なくとも3種のテルペンは、セスキテルペンであり得る。1つの例において、上記原料は、ジンジャー油を含む。上記方法は、15重量%よりも多くのナフテンと、20重量%よりも多くのパラフィンと、5重量%よりも多くのキシレンと、5重量%よりも多くのトルエンとを含む混合物を生産し得る。上記混合物はまた、以下からなる群より選択される異なるサイズの少なくとも3種のテルペンを含み得る:モノテルペン、セスキテルペン、ジテルペン、トリテルペン、およびテトラテルペン。方法は、藻類からの少なくとも3種のテルペンを含む上記混合物を抽出する工程をさらに含む。
【0012】
別の態様において、接触クラッキング方法は、藻類からの油をクラッキングするために提供され、上記方法は、テルペンを含む原料を形成するために藻類からの油を抽出する工程;テルペンを含む原料と触媒組成物とを接触クラッキングの条件下で接触させる工程を含む。いくつかの例において、上記方法は、油を抽出する前に上記藻類を遺伝的に改変する工程をさらに含む。上記藻類を遺伝的に改変する工程は、藻類を遺伝的に改変しない場合と比較して、増大した量のテルペンを生産し得る。いくつかの例において、上記方法は、上記原料を接触させる前に上記藻類からの油と燃料成分とを混合する工程をさらに含む。例えば、燃料成分は、以下からなる群より選択される:化石燃料、石油、燃料混合のための混合物、ガソリン、ディーゼル、ジェット燃料、およびそれらの任意の組合せ。上記テルペンは、例えば、セスキテルペン、ジテルペン、トリテルペン、テトラテルペン、クパレン、ファルネセン、フィトール、スクアレン、またはカロテンであり得る。
【0013】
いくつかの例において、接触クラッキング方法は、上記原料を約100℃〜1000℃の間まで加熱することを含むクラッキングの条件を含む。さらなる例において、上記接触クラッキングの条件は、上記原料を約180℃〜580℃の温度または約200℃〜400℃の温度または約350℃と400との間の温度まで加熱することを含む。
【0014】
いくつかの例において、接触クラッキング方法は、原料とモレキュラーシーブを含む触媒組成物とを接触させる工程を含む。上記モレキュラーシーブは、6Åよりも大きい孔径を有する大きい孔のモレキュラーシーブであり得、かつ/または10〜15Åのケージ径を有し得る。いくつかの例において、上記大きい孔のモレキュラーシーブは、12員環ゼオライト(例えば、β型、L型、Y型、LZY−72、Valfor CP811BL−25、ELZ−L、またはT−4546)である。他の例において、上記モレキュラーシーブは、10員環ゼオライト(例えば、ZSM−5ゼオライト)である。いくつかの例において、上記触媒組成物は、1よりも多くのモレキュラーシーブを含む。例えば、上記触媒組成物は、上記モレキュラーシーブとは異なるサイズであり得る第2のモレキュラーシーブをさらに含み得る。
【0015】
1つの態様において、精製の方法が、本明細書中に記載され、その方法は、流通反応装置中でスクアレンを含む原料をクラッキングする工程;クラッキング生成物を蒸留する工程;および約85〜125の間のオクタン価を有する燃料生成物を得る工程を含む。いくつかの例において、上記オクタン価は、90よりも大きいものである。
【0016】
燃料生成物を作製するための方法もまた、本明細書中に提供され、その方法は、遺伝的に改変された光合成する非維管束生物から原料を得る工程;および上記原料と触媒組成物とを接触クラッキングの条件下で接触させ、それによって燃料生成物を作製する工程を含み、上記触媒組成物は、6Åよりも大きい孔径を有する大きい孔のモレキュラーシーブを含む。上記クラッキングは、420℃までの温度にて起こり得る。上記触媒組成物は、12員環ゼオライトであり得る。上記燃料生成物は、約85〜125の間のオクタン価を有し得るか、または90よりも大きいオクタン価を有し得る。いくつかの例において、上記方法は、燃料成分を上記燃料生成物に添加する工程をさらに含み、上記燃料成分は、エタノール、ジェット燃料、ディーゼル、バイオディーゼル、またはガソリンである。いくつかの例において、上記方法は、燃料添加剤を上記燃料生成物に添加する工程をさらに含む。
【0017】
1つの態様において、藻類から抽出された油と接触クラッキング組成物とを含む組成物が、提供される。テルペンと接触クラッキング組成物とを含む組成物もまた、提供され、上記テルペンは、以下からなる群より選択され得る:モノテルペン、セスキテルペン、ジテルペン、トリテルペン、テトラテルペン、クパレン、ファルネセン、スクアレン、ジンゲロン(zingerene)、およびカロテン。本明細書中に記載される他の組成物としては、ジンジャー油と接触クラッキング組成物とを含む組成物およびフィトールと接触クラッキング組成物とを含む組成物が挙げられる。上記接触クラッキング組成物は、モレキュラーシーブである。いくつかの例において、上記モレキュラーシーブは、6Åよりも大きい孔径および/または10〜15Åのケージ径を有する大きい孔のモレキュラーシーブである。いくつかの例において、上記大きい孔のモレキュラーシーブは、12員環ゼオライト(例えば、β型、L型、Y型、LZY−72、Valfor CP811BL−25、ELZ−L、またはT−4546)である。他の例において、上記モレキュラーシーブは、10員環ゼオライト(例えば、ZSM−5ゼオライト)である。
【0018】
(参照による援用)
本明細書中で言及された全ての刊行物、特許、および特許出願は、それぞれ個々の刊行物、特許、または特許出願が参考として援用されることが明確かつ個別に示された場合と同程度で、参考として援用される。
【0019】
本発明の多くの新規な特徴は、添付の特許請求の範囲に具体的に示される。本発明の例となる特徴および利点のより良い理解は、本発明の多くの原理が利用される例示的な実施形態を示す以下の詳細な説明および添付の図面を参照することによって得られる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1A】触媒反応を行い、そして生成物の分布を評価するためのパルス反応器を示す。
【図1B】運転中のパルス反応器を示す概略図である。
【図1C】異なる温度に対して得られるクパレン由来の種々のクラッキング生成物を要約する。
【図2A】SN27触媒を使用した種々の反応温度におけるクパレンのクラッキング生成物を示す。
【図2B】LZY−72触媒を使用した種々の反応温度におけるクパレンのクラッキング生成物を示す。
【図2C】200℃の温度においてLZY−72によって触媒されたクパレンのクラッキング生成物の定量化を要約する。
【図2D】250℃の温度においてLZY−72によって触媒されたクパレンのクラッキング生成物の定量化を要約する。
【図2E】300℃の温度においてLZY−72によって触媒されたクパレンのクラッキング生成物の定量化を要約する。
【図3A】ゼオライトβ触媒を使用した種々の反応温度におけるクパレンのクラッキング生成物を示す。
【図3B】200℃の温度においてゼオライトβによって触媒されたクパレンのクラッキング生成物の定量化を要約する。
【図3C】250℃の温度においてゼオライトβによって触媒されたクパレンのクラッキング生成物の定量化を要約する。
【図4】ELZ−Lゼオライト触媒を使用した種々の反応温度におけるクパレンのクラッキング生成物を示す。
【図5A】藻類から抽出された油をクラッキングするために使用された例示的なパルス反応器の設定を示す。
【図5B】粗海藻油のクラッキングから生じる生成物を示す。
【図5C】精製された海藻油のクラッキングから生じる生成物を示す。
【図5D】粗海藻油および精製された海藻油の両方からのクラッキングされた生成物と87オクタン、89オクタン、および91オクタンの石油ガソリンとの比較を示す。
【図6A】LZY−72ゼオライト触媒を使用した種々の反応温度におけるファルネセンのクラッキング生成物を示す。
【図6B】ファルネセンクラッキング生成物の混合オクタン価を示す。
【図7】LZY−72ゼオライト触媒を使用した種々の反応温度におけるショウガ精油のクラッキング生成物を示す。
【図8A】LZY−72ゼオライト触媒を使用した種々の反応温度におけるスクアレンのクラッキング生成物を示す。
【図8B】スクアレンクラッキング生成物の混合オクタン価を示す。
【図9A】LZY−72ゼオライト触媒を使用した種々の反応温度におけるフィトールのクラッキング生成物を示す。
【図9B】フィトールクラッキングのパラフィン生成物の間の炭素分布および分枝の程度を示す。
【図9C】フィトールクラッキングのパラフィン生成物の間の炭素分布および分枝の程度を示す。
【図9D】フィトールクラッキング生成物の混合オクタン価を示す。
【図10A】市販のガソリンサンプルの炭化水素成分と比較して、市販の供給源および藻類の供給源の両方からのフィトールのクラッキング生成物のクラッキング生成物を示す。
【図10B】市販のガソリンサンプルと比較して、フィトールクラッキング生成物の混合オクタン価を示す。
【図11A】ニッケル/LZY−72ゼオライト触媒を使用した種々の反応温度におけるフィトールのクラッキング生成物および水素化分解生成物を示す。
【図11B】フィトール水素化分解生成物の混合オクタン価を示す。
【図12A】ラージスケールのクラッキング方法に適する装置を模式的に示す。
【図12B】スクアレンのクラッキングから生じる気体生成物および液体生成物の組成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
炭化水素混合物を精製することは、燃料生成物を生産するのに炭化水素混合物の種類、形状、およびサイズを最適化するために行われ得る。燃料産業における代表的な精製方法としては、蒸留、分留、抽出、溶剤抽出、水素化処理、異性化、二量体化、アルキル化、およびクラッキングが挙げられるが、これらに限定されない。クラッキング方法は、代表的に、例えば、炭素−炭素結合を切断することによって炭化水素をより小さい炭化水素へと分解する方法いう。複雑な有機分子(例えば、イソプレノイドまたは重質炭化水素は、前駆体中の炭素−炭素結合を分解することによってより単純な分子(例えば、軽質炭化水素)へとクラッキングされ得る。クラッキングは、一般に、高温、触媒、またはそれらの組合せを使用することよって行われる。例えば、クラッキングする方法としては、熱クラッキング、流動接触クラッキング、サーモフォア接触クラッキング、接触クラッキング、水蒸気クラッキング、および水素化分解が挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
接触クラッキング方法は、触媒(代表的には酸触媒(例えば、シリカ−アルミナ触媒またはゼオライト))の存在下における有機分子の開裂を含む。触媒は、反対の電荷のイオン対(通常、カルボカチオンおよび非常に不安定なヒドリドアニオン)を生産する結合の不均等(非対称)分解を促進する。炭素に局在化したフリーラジカルおよびカチオンは、高度に不安定であり、かつ鎖転位のプロセス(例えば、β位におけるC−C開裂ならびにまた分子内の水素転移またはヒドリド転移および分子外の水素転移またはヒドリド転移)を受ける。両方の型のプロセスにおいて、対応する反応中間体(ラジカル、イオン)は、持続的に再生され、したがって、その反応は、自己伝播性の連鎖機構によって進行し得る。次いで、その反応の連鎖は、最終的にラジカルまたはイオンの再結合によって終結し得る。
【0023】
1つの実施形態において、上記接触クラッキング方法および接触クラッキングの条件は、有機分子とモレキュラーシーブ(例えば、ゼオライト)とを接触させることを含む。接触クラッキングの条件はまた、有機分子を加熱(例えば、100〜1000℃)する工程を含み得る。1つの実施形態において、クラッキングの条件は、原料を約100℃〜1000℃の間まで加熱する工程を含む。さらに、接触クラッキングの条件は、原料を約180℃〜580℃まで加熱する工程を含む。なお別の実施形態において、接触クラッキングの条件は、上記原料を約200℃〜400℃の温度または約350℃〜400℃の温度まで加熱する工程を含む。接触クラッキングの条件は、原料をC−C結合の開裂が触媒の存在下で促進される温度まで加熱する工程を含み得る。
【0024】
1つの態様において、接触クラッキング方法は、テルペンをクラッキングする工程について開示され、上記プロセスは、上記テルペンを含む原料と触媒組成物とを接触クラッキングの条件下で接触させる工程を含む。
【0025】
テルペンは、種々の光合成生物によって主に生産される炭化水素の広く、多様なクラスである。テルペンが、例えば、炭素骨格の酸化または転位によって化学的に改変される場合、生じる化合物は、一般に、テルペノイドまたはイソプレノイドと称される。テルペノイドまたはイソプレノイドは、一般に、ヘテロ原子を含む。本明細書中で言及される場合、用語テルペンは、テルペノイドまたはイソプレノイドを記載するために使用され得る。
【0026】
テルペンは、多くの型の植物および花の精油の主要な成分であり得る。精油は、食品のための天然香料添加剤として、香水中の芳香、ならびに伝統医学および代替医療(例えば、アロマテラピー)におけるように広範に使用される。天然のテルペンの合成バリエーションおよび誘導体もまた、香水および食品添加剤に使用される香料において使用される種々の香りを大きく広げる。
【0027】
テルペンは、5個の炭素の炭化水素であるイソプレン(2−メチル−ブタ−l,3−ジエン)の複数の単位を含む生合成炭化水素の多様なクラスである。上記イソプレン単位は、一緒に連結して、非環状(分枝状に配置した炭素原子または直鎖状に配置した炭素原子を含む)の骨組みまたは環状の骨組みを形成し得る。これらの間で、ヘミテルペンは、1つのイソプレン単位(例えば、イソプレン)からなり、モノテルペンは、2個のイソプレン残基からなり、そしてモノテルペンとしては、例えば、リモネンおよびミルセンが挙げられ;セスキテルペンは、3個のイソプレン残基からなり、そしてセスキテルペンとしては、非環状セスキテルペン(例えば、ファルネセン)および環状セスキテルペン(例えば、クパレン、クルクメン、ジンギベレンおよびビサボレン);そしてジテルペンは、4個のイソプレン残基からなり、そしてジテルペンとしては、例えば、センブレン、タキサジエンが挙げられ;トリテルペンは、6個のイソプレン残基からなり、そしてトリテルペンとしては、例えば、スクアレンが挙げられ、そしてテトラテルペンは、8個のイソプレン残基からなり、そしてテトラテルペンとしては、例えば、カロテン、非環状リコピン、単環状γ−カロテン、および二環状α−カロテンおよび二環状β−カロテンが挙げられる。イソプレノイドのサイズとは、イソプレノイドの骨組みの炭素原子の総数をいい、そしてイソプレノイドのサイズは、代表的に、5の倍数である。表1は、精製に適した基質または原料である例示的なテルペンを示す。
【表1−1】
【表1−2】
【表1−3】
【0028】
いくつかの実施形態において、上記炭化水素は、ポリエン構造を有する。本明細書中で使用される場合、「ポリエン」とは、炭素原子が単結合および二重結合によって直鎖状に連結されている炭素ベースの主骨格を有する炭化水素をいう。上記炭素ベースの主骨格とは、炭化水素構造の最も長い直鎖をいい、そして少なくとも2つの二重結合を含む。上記骨格を形成する1個以上の炭素原子は、アルキル基、特に、メチル基によってさらに置換され得る。上記ポリエンは、EおよびZ(それぞれ、シスおよびトランス)の両方の幾何異性体を示し得る。いくつかの実施形態において、上記ポリエンは、炭素ベースの骨格の一方または両方に末端環状構造(例えば、シクロヘキセニルまたは置換シクロヘキセニル)を含む。
【0029】
1つの実施形態において、上記ポリエン構造は、少なくとも1個の「第四級オレフィン炭素」を含み、その第四級オレフィン炭素とは、それぞれ、C=C結合およびC−C結合を介して上記ポリエン骨格の2個の隣接する炭素原子に連結されるポリエン骨格の炭素原子をいう。上記第四級オレフィン炭素はさらに、アルキル置換基(例えば、メチル)に連結される。代表的な第四級オレフィン炭素は、以下に示される:
【化1】
【0030】
第四級オレフィン炭素は、典型的に、イソプレン誘導体(例えば、テルペン)中に存在する。考察されるように、イソプレン残基は、生物系における共通の構造モチーフである。イソプレンの多くの生物学的誘導体(例えば、カロテノイド)は、複数のイソプレン残基の鎖伸長生成物である。
【0031】
したがって、いくつかの実施形態において、上記ポリエン鎖は、イソプレン残基の2個以上の繰り返し単位を含み、イソプレノイドを提供する。イソプレン残基の3個の繰り返し単位を有するポリエン骨格セグメントの例示的な構造は、以下に示され、第四級オレフィン炭素は、円の中に示される。
【化2】
【0032】
どのようにイソプレン単位が連結されるかに依存して、上記ポリエン鎖は、上記イソプレン残基の代替配列を含み得る。以下に示されるように、上記ポリエンセグメントは、共役構造を提供する交互のC−C結合およびC=C結合を含む。共役骨格セグメントの例示的な構造は、以下に示され、上記第四級オレフィン炭素は、円の中に示される:
【化3】
【0033】
1つの態様において、セスキテルペンをクラッキングするための接触クラッキング方法は、上記セスキテルペンを含む原料と触媒組成物とを接触クラッキングの条件下で接触させる工程を含む。セスキテルペンは、有機分子の混合物の一部であり得るか、または75%よりも多くセスキテルペンを含む混合物であり得る。セスキテルペンは、3個のイソプレン単位を含む任意の有機分子である。セスキテルペンは、3個のイソプレン単位からなり、かつC15分子であるテルペンのクラスである。モノテルペンと同様に、セスキテルペンは、非環状であり得るか、または環を含み得、多くの固有の組合せを含む。生物化学的改変(例えば、酸化または転位)は、セスキテルペノイドとして公知であるセスキテルペンを生産する。本開示の目的のために、用語セスキテルペンは、セスキテルペノイドまたは3個のイソプレン単位およびさらなる原子(例えば、酸素)を含む他の有機分子を含む。セスキテルペンとしては、例えば、クパレン、ファルネセン、およびジンギベレンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
セスキテルペンは、反応器中でセスキテルペンまたはセスキテルペンを含む混合物を加熱することによって本明細書中に記載されるプロセスを使用してクラッキングされ得る。例えば、上記反応器は、パルス反応器、押し出し流れ反応器、または連続流通反応装置であり得るが、これらに限定されない。触媒(例えば、ゼオライト触媒)は、所望の雰囲気および触媒が得られるまで、気体によって前処理され得る。例えば、ヘリウム(不活性雰囲気)、水素(還元雰囲気)、または酸素(酸化雰囲気)は、反応器中で触媒を前処理するために使用され得る。触媒の任意の前処理の後、上記反応器は、所望の反応温度(例えば、上記クラッキングの条件の温度)に維持され得る。パルス反応器を使用する例示的な実施形態において、少量の上記セスキテルペンは、上記触媒上に上記反応器を通してパルスされる。上記反応のために使用される温度および触媒に依存して、クラッキング反応からの異なる生成物が、生産され得る。任意に、上記反応が進行した後、その反応生成物は、例えば、ガスクロマトグラフィーおよび/または質量分析(GC/MS)によって同定され得る。他の原子同定技術もまた、当業者に明らかであろうとおりに使用され得る。
【0035】
触媒組成物は、酸性触媒、例えば、モレキュラーシーブを含み得る。モレキュラーシーブは、気体および液体に対する吸着剤としてか、または有機分子を捕捉するために使用され得る正確かつ均一なサイズの孔を有する材料である。上記孔を通過するのに十分小さい分子は吸着されるが、より大きい分子は吸着されない。上記モレキュラーシーブは、それが分子レベルで機能するという点で、通常のフィルターとは異なる。例えば、水分子は、通過するのに十分小さいものであり得るが、より大きい分子は、通過しない。1つの実施形態において、上記モレキュラーシーブは、ゼオライトである。ゼオライトは、アルミノケイ酸、アルミノリン酸、アルミノケイリン酸(aluminosilicophosphate)、もしくは細孔性構造またはメソ孔構造を有する他の酸化物である。
【0036】
クラッキング触媒(例えば、ゼオライト)は、典型的に、多数のブレンステッド酸部位を提供する。そのような酸性条件下において、バイオマスポリエンの上記第四級オレフィン炭素は、第三級カルベニウムイオンへと変換され得る(スキームIVに示される)。本明細書中で使用される場合、「第三級カルベニウムイオン」(または、単に「カルベニウムイオン」)とは、3個の他の炭素に連結される三価カルボカチオンをいう。
【化4】
【0037】
第三級カルベニウムイオンは、炭素−炭素結合開裂を誘導する反応中間体であると考えられる。スキームVに示されるように、上記カルベニウムイオンのβ位における炭素−炭素結合が断裂する場合、その結合の電子は、そのカルベニウムイオンを中和する。
【化5】
【0038】
さらに、上記反応性カルベニウムイオンはまた、異性化およびオリゴマー形成を引き起こし得る。したがって、第四級オレフィン炭素から生じる上記カルベニウム中間体は、上記ポリエンベースの原料を種々の生成物に変換する上で重要な役割を果たす。
【0039】
本明細書中でさらに詳細に考察されるように、ゼオライトは、クラッキング方法のために幅広く使用され、そしてそれらは、特に、形状選択性に起因して燃料の生産に有用である(N.Y.Chenら、Shape Selective Catalysis in Industrial Applications,Marcel Dekker、New York、1996)。形状選択性とは、ゼオライトの正確に規定される孔構造から生じるゼオライトの特性をいい、それは、かなり狭く規定される分子量および分子構造の生成物をもたらす。
【0040】
代表的に、触媒的な開裂は、上記ポリエン構造のより短いセグメントである低級オレフィンまたは低級アルカンを生産する。実際の構造および開裂点に依存して、上記低級オレフィンは、ポリエンの短い非環状鎖であり得るか、または環状構造(例えば、シクロヘキセニル)を含み得る。種々の実施形態において、上記低級オレフィンは、3〜15個の炭素、さらに代表的には、3〜12個の炭素を含む。
【0041】
石油製油所プロセスにおける接触クラッキングに適した任意の触媒は、原料と組み合わせて使用され得る。市販のクラッキング触媒としては、酸処理した中性アルミノケイ酸、非晶質の合成シリカ−アルミナの組合せ、および結晶性の合成シリカ−アルミナ(ゼオライト)が挙げられるが、最も幅広く使用される市販の接触クラッキング触媒は、ゼオライトである。
【0042】
ゼオライトは、アルミノケイ酸、アルミノリン酸、アルミノケイリン酸、またはモレキュラーシーブとして公知である細孔性固体のファミリーの他の酸化物メンバーである。用語モレキュラーシーブとは、これらの材料の特定の性質(例えば、一次的にサイズ排除プロセスに基づいて分子を選択的に分別する能力)をいう。これは、分子寸法の非常に規則的な孔構造に起因する。ゼオライトの孔に進入し得る分子種またはイオン種の最大サイズは、トンネルの直径によって制御される。1500種よりも多いゼオライト型が合成されており、そして48種の天然に存在するゼオライトが公知である。代表的に使用されるゼオライトは、フォージャサイトファミリーからのもの(例えば、X−ゼオライト、Y−ゼオライト)、ペンタジル(pentasil)(例えば、ZSM−5)または他のゼオライト(例えば、ゼオライトβおよびゼオライトL)である。そのようなゼオライト触媒およびそれらの生産は、当業者の知識の範囲内である。
【0043】
ゼオライトの水素形態(イオン交換によって調製される)は、強力な固体酸であり、そして多くの酸触媒反応(例えば、異性化、アルキル化、およびクラッキング)を促進し得る。より明確には、ゼオライトは、炭化水素にそれらの構造または反応性を変化させる(例えば、第四級オレフィン炭素からカルベニウム中間体へと変換すること)小さい空間の中に炭化水素を閉じ込める。
【0044】
上記ゼオライト触媒の孔径は、上記触媒反応を制御すること(動力学的および化学的の両方)において重要であり得る。したがって、適切なゼオライト触媒を選択することにおいて、クラッキングされる上記炭化水素のサイズが、考慮される必要がある。さらに、上記孔径は、所与の炭化水素原料のクラッキング方法の選択性に影響し得る。酸クラッキング触媒の他の可能な型としては、無機酸および有機酸が挙げられる。
【0045】
接触クラッキングの間、上記炭化水素からの中間体カチオンは、他のクラッキング方法においてよりも反応性が低く、かつより安定であり得る。これは、上記カチオンが触媒の活性部位に蓄積することを許容し得、それは、コークスとして一般的に公知である炭素質生成物の沈着物を生じ得る。そのような沈着物は、触媒活性を保存するために除去(例えば、燃焼を制御することによって)される必要があり得る。
【0046】
接触クラッキングに加えて、他の工業的なクラッキング方法(例えば、熱クラッキング、水素クラッキング、および水蒸気クラッキングの条件)もまた、ポリエン構造中の炭素−炭素開裂を生じ得る。これらのクラッキング方法は、必ずしもカルベニウム中間体を含まない;代替的に、炭素−炭素結合開裂は、低級オレフィンを生産する上記ポリエン骨格を無差別に生じ得る。
【0047】
本明細書中に記載されるようなプロセスは、テルペン(例えば、セスキテルペン)とゼオライト触媒組成物とを接触させる工程を含み得る。1つの実施形態において、上記ゼオライトは、6Å未満の孔径を有する10員環ゼオライトである。例示的な10員環ゼオライトは、ZSM−5である。1つの実施形態において、上記ゼオライトは、SN27である。
【0048】
別の実施形態において、方法は、テルペンと大きい孔のモレキュラーシーブとを接触させる工程を含む。例えば、上記大きい孔のモレキュラーシーブは、6Åよりも大きい孔径を有する分子サイズを有する。1つの例において、大きい孔のモレキュラーシーブは、10〜15Åのケージ径を有する。上記大きい孔のモレキュラーシーブは、12員環ゼオライトまたは12員環ゼオライトよりも大きいゼオライトであり得る。1つの実施形態において、上記12員環ゼオライトは、β型ゼオライト、L型ゼオライト、またはY型ゼオライトである。本明細書中に記載されるプロセスに有用なゼオライトの例としては、LZY−72、Valfor CP811BL−25、ELZ−L、およびT−4546が挙げられるが、これらに限定されない。触媒組成物は、使用前にアンモニウム交換を介してその完全にプロトン化した形態へと変換され得る。1つの実施形態において、ニッケルを含む材料は、ニッケルカチオンによる20%および80%の理論上のプロトン置換が生じるように、プロトン化したゼオライトをNi(II)アセテート水溶液と交換することによって調製され得る。別の実施形態において、触媒組成物は、イオン交換されて、加熱においてアンモニアの排除を伴ってプロトン形態へ変換し得る上記ゼオライトのアンモニウム形態を生じ得る。ゼオライトのプロトン形態は、触媒反応のための強力な固体酸として作用する。
【0049】
テルペン(例えば、セスキテルペン)をクラッキングするための接触クラッキング方法はまた、上記テルペンと上記触媒組成物及び第2の触媒組成物とを接触させる工程を含み得る。上記第2の触媒組成物は、第1の触媒組成物と同じかまたは異なるものであり得る。例えば、12員環ゼオライトが第1の触媒組成物として利用される場合、10員環ゼオライトまたは12員環ゼオライトが第2の触媒組成物として使用され得る。これは、種々の手段(例えば、炭化水素の混合物をクラッキングする場合)において有用であり得、上記炭化水素は、異なるサイズであり得る。別の例において、第1の触媒と同じ型またはサイズである第2の触媒組成物は、上記第1の触媒組成物を使用してクラッキングしなかった任意の残りのより大きい炭化水素または原料をクラッキングするために使用され得る。
【0050】
1つの態様において、接触クラッキング方法は、クパレンをクラッキングすることについて開示される。クレパンは、セスキテルペンである。1つの実施形態において、クラッキングは、クパレンを含む原料を接触クラッキングの条件下で触媒組成物と接触させることによって達成される。クレパンは、反応器(例えば、パルス反応器または押し出し流れ反応器)中でクラッキングされ得る。上記反応器は、上記反応器およびクパレンを接触クラッキング温度(例えば、100〜1000℃、180〜510℃、200〜400℃または350〜400℃)まで加熱する工程を含む接触クラッキングの条件を提供し得る。例えば、クパレンは、上記触媒組成物を含む反応器を通って流れ得、上記反応器は、接触クラッキングの条件温度まで加熱される。上記触媒組成物と接触するクレパンは、元のC15クパレン分子よりも小さい炭化水素へとクラッキングされる。触媒の例としては、本明細書中に記載される触媒(例えば、SN27(ZSM−5型)、ELZ−L(ゼオライト−L型)、およびLZY−72(ゼオライト−Y型))が挙げられる。
【0051】
クレパンは、約275℃の沸点を有し、そしてガスクロマトグラフィカラムとの反応後のその存在を測定するために温度の調節を必要とし得る。1つの実施形態において、調節は、クパレンの分析が不正確な質量分析に寄与しないように、上記カラムに対して行われ得る。
【0052】
1つの実施形態において、クパレンは、キャリアーガス(例えば、ヘリウム)と一緒に触媒組成物を含む反応器を通過する。クパレンを含む原料は、液相または気相中にあり得る。
【0053】
1つの実施形態において、クパレンは、本明細書中に提供されるプロセスにおいて、上記クパレンと大きい孔のモレキュラーシーブ(例えば、β型ゼオライト、L型ゼオライト、またはY型ゼオライト)とを接触させることによってクラッキングされる。クパレンはより大きい炭化水素(C15)であるので、大きい孔のモレキュラーシーブはクパレン分子をより小さい炭化水素へとクラッキングするより高度の変換を提供し得る。
【0054】
いくつかの実施形態において、クパレンをクラッキングする方法は、50重量%よりも多くのトルエンと、2重量%未満のベンゼンと、20重量%未満のキシレンと、シクロヘキサンおよびシクロペンタンの30重量%よりも多くの組合せとを含む混合物を生産する。別の実施形態において、クパレンをクラッキングする方法は、50%、60%、または70%よりも多いトルエンを含む混合物を生産する。トルエンは、高いオクタン価を有する炭化水素であり、したがって、燃料組成物の有用な成分であり得る。1つの実施形態において、上記クパレンのクラッキングされた生成物は、ベースの燃料に混合または添加されて、燃料生成物を生産する。
【0055】
1つの態様において、接触クラッキング方法は、ファルネセンをクラッキングすることについて開示される。ファルネセンは、3個のイソプレン単位を有するセスキテルペンのファミリーである。1つの実施形態において、ファルネセンは、本明細書中に記載されるような触媒組成物を使用してクラッキングされる。例えば、ファルネセンは、12員環ゼオライト触媒(例えば、LZY−72)を使用してクラッキングされ得る。1つの実施形態において、ファルネセンを含む原料が、クラッキングされる。上記原料は、50重量%、60重量%、70重量%、80重量%、または90重量%よりも多いファルネセンを含み得る。原料はまた、他の分子および炭化水素(例えば、ビサボレンおよびクルクメン)を含み得る。1つの実施形態において、ファルネセンは、約200〜約500℃の温度を包含するクラッキングの条件下でクラッキングされる。例えば、ファルネセンは、350℃付近でクラッキングされ得る。
【0056】
ファルネセンをクラッキングするプロセスは、15重量%よりも多くのトルエンおよび10%よりも多くのパラフィンを含む混合物を生産する工程を含み得る。1つの実施形態において、上記混合物は、約15重量%〜約20重量%のトルエンおよび約10重量%〜約15重量%のパラフィンを含む。別の実施形態において、上記混合物は、50重量%よりも多くの芳香族炭化水素を含む。1つの実施形態において、ファルネセンのクラッキング由来の混合物の50、60、70、75、または80重量%より多くが、90よりも高いオクタン価を有する炭化水素を含み得る。混合物は、燃料生成物として使用され得るか、燃料生成物と混合され得るか、または燃料生成物を生産するために精製され得る。高いオクタン価の混合物または燃料生成物は、燃料生成物としてか、または、例えば、化石燃料ベースの燃料に混合するための燃料生成物として使用され得る。
【0057】
別の態様において、接触クラッキング方法が、少なくとも3種のセスキテルペンを含む混合物をクラッキングすることについて本明細書中に記載され、上記方法は、少なくとも3種のセスキテルペンを含む混合物を含む原料と触媒組成物とを接触クラッキングの条件下で接触させる工程を含む。セスキテルペンの混合物は、燃料生成物または添加剤(例えば、ジェット燃料、ガソリン、またはディーゼル)を生産するために適切な配列の炭化水素へとクラッキングし得る。また、セスキテルペンの混合物をクラッキングすることによって、上記クラッキング生成物の多様性は、完全な燃料の創出を許容し得る。別の実施形態において、全てかまたはほとんど全てが1つの型であるセスキテルペンを含む混合物をクラッキングする方法もまた、完全な燃料を生産するために使用され得る。
【0058】
例として、少なくとも3種のセスキテルペンを含む混合物は、ジンジャー油であり得る。ジンジャー油は、分子を含み得、その分子としては、ジンギベレン、β−セスキフェランドレン、ビサボレン、ファルネセン、β−フェランドレン(phelladrene)、シネオール、クルクメン、およびシトラールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0059】
ジンジャー油は、ジンジャー油からジンゲロールを除去するために二酸化炭素を添加する工程を含む方法によってクラッキングされ得る。完全にプロトン化した触媒(例えば、LZY−72のような12員環ゼオライト)は、接触クラッキングの条件下でジンジャー油と接触して、クラッキング方法およびセスキテルペンの炭素−炭素結合の開裂を開始するために使用され得る。
【0060】
ジンジャー油をクラッキングする方法の実施形態において、上記方法は、15重量%よりも多くのナフテンと、20重量%よりも多くのパラフィンと、5重量%よりも多くのキシレンと、5重量%よりも多くのトルエンとを含む混合物を生産する。上記混合物のパラフィンの多くは、高オクタン価を有し得る分枝状パラフィンであり得る。ジンジャー油の高オクタン価の多くの成分は、燃料生成物(例えば、ガソリンまたはガソリン添加剤)として使用され得る。
【0061】
1つの態様において、ジンゲロンと、15重量%よりも多くのナフテンと、20重量%よりも多くのパラフィンと、5重量%よりも多くのキシレンと、5重量%よりも多くのトルエンとを含む組成物が、本明細書中に開示される。ジンゲロンは、ジンゲロールを加熱することの生成物であり、そして上記組成物中に微量で存在し得る。
【0062】
別の態様において、トリテルペンをクラッキングするための接触クラッキング方法が開示され、上記方法は、上記トリテルペンを含む原料と触媒組成物とを接触クラッキングの条件下で接触させる工程を含む。トリテルペンは、6個のイソプレン単位を含むC30テルペンである。方法における使用のためのトリテルペンの非限定的な例は、スクアレンである。スクアレンは、最初は主としてサメ肝油から商業目的のために得られた天然有機化合物であるが、同様に植物源も存在し、その植物源としては、アマランス種子、米ぬか、コムギ胚芽、およびオリーブが挙げられる。最も高等な生物は、スクアレンを生産し、その生物としては、人が挙げられる。スクアレンは、炭化水素およびトリテルペンである。スクアレンはまた、遺伝的に改変された生物から産生され得、ここで、スクアレンを天然に生産しない生物は、スクアレンを生産するために改変されか、またはスクアレンを天然に生産する生物は、スクアレンを上方制御するために改変される。例えば、藻類細胞は、MVA経路またはMEP経路を通してスクアレンを生産する酵素を生産するように形質転換され得るが、そして上記藻類細胞から生産されるスクアレンは、本明細書中に記載される方法を使用してクラッキングされ得る。
【0063】
1つの実施形態において、スクアレンをクラッキングする方法は、上記スクアレンと触媒組成物(例えば、プロトン化した12員環ゼオライト)とを接触クラッキングの条件下で接触させる工程を含み得る。
【0064】
スクアレンをクラッキングすることの別の例において、精製する方法は、流通反応装置中でスクアレンを含む原料をクラッキングする工程;クラッキング生成物を蒸留する工程;および約85〜125の間のオクタン価を有する燃料生成物を得る工程を含む。1つの実施形態において、上記燃料生成物のオクタン価は、90よりも大きい。スクアレンは、当業者に公知であるような任意の適切な反応器中でクラッキングされ得る。1つの例において、スクアレンは、液体のバッチが一定でプログラム可能な速度にてその反応器に供給されることを可能にするポンプを備える管型反応器中でクラッキングされる。上記ポンプはまた、キャリアガスまたは上記反応器へ供給されるのに必要である他の気体(例えば、ヘリウムおよび窒素)の流れを可能にし得る。上記の例において、上記管型反応器は、触媒組成物を充填され得、そしてクラッキングされる上記原料が、上記触媒組成物上に供給される。上記反応器における接触クラッキングの条件は、使用者によって決定されるような適切な温度(例えば、300〜500℃)に設定され得る。クラッキングからの反応生成物は、例えば、凝縮デバイスによって上記反応器のアウトプットにおいて収集され得る。次いで、クラッキング生成物は、本明細書中に記載されるように同定され得る。さらに、分留(例えば、蒸留)は、上記クラッキング生成物をさらに精製するために行われ得る。
【0065】
なお別の態様において、接触クラッキング方法が、ジテルペンをクラッキングするために本明細書中に開示され、上記方法は、上記ジテルペンを含む原料と触媒組成物とを接触クラッキングの条件下で接触させる工程を含む。ジテルペンは、4個のイソプレン単位を含むC20テルペンである。非限定的な例として、フィトールは、クラッキングされる原料中に存在し得る。フィトールは、クロロフィルの分解の間に生産される天然のテルペンアルコールである。フィトールは、本明細書中に記載されるようにクラッキング方法のために植物生物から抽出され得る。1つの実施形態において、生物は、フィトール生産を上方制御するために遺伝的に改変される。例えば、藻類細胞は、フィトール、上記細胞中のクロロフィルの量、および/または上記細胞中のクロロフィルの分解を上方制御するために遺伝的に改変され得る。
【0066】
フィトールは、ゼオライト触媒(例えば、Y型ゼオライト、L型ゼオライト、またはβ型ゼオライト)を使用して触媒的にクラッキングされ得る。1つの実施形態において、約350℃の温度の条件下でフィトールをクラッキングすることは、測定不能な量か、または1重量%未満のベンゼンのクラッキング生成物を生産する。燃料生成物(例えば、ガソリン)を生産する場合、レギュレーションに起因するベンゼンの生産を回避することが、好ましくあり得る。フィトールクラッキング生成物の分析は、本明細書中で先に記載されるように(例えば、GC/MSによって)行われ得る。
【0067】
1つの実施形態において、フィトールをクラッキングする方法は、55重量%よりも多いC5〜C9パラフィンを含む混合物を生産する工程を含み、70重量%よりも多いパラフィンは、モノメチルパラフィンである。別の実施形態において、上記方法は、75重量%よりも多くが90よりも大きいオクタン価を有する成分を含む混合物を生産する工程を含む。
【0068】
1つの実施形態において、フィトールをクラッキングする方法は、油からフィトールを抽出する工程をさらに含む。例えば、海藻油(algal oil)からフィトールを抽出するために有機溶媒を使用する。
【0069】
フィトールをクラッキングするための方法はまた、フィトールと触媒組成物および水素供給源とを水素化分解の条件下で接触させることによってフィトールを水素化分解する工程を含み得る。例えば、上記触媒組成物は、ニッケルイオン交換ゼオライト触媒(例えば、Ni/LZY−72)を含み得る。水素化分解の条件は、100〜1000℃の温度を含み得る。さらなる実施形態において、上記温度は、200〜500℃である。1つの例において、フィトールは、水素と一緒に25μlのパルスでパルス反応器を通して流される。
【0070】
1つの態様において、テルペンと接触クラッキング組成物とを含む組成物が、開示される。上記組成物は、本明細書中に記載されるプロセスまたは方法を行うために利用され得る。例えば、上記組成物は、上記テルペンを組成物または燃料生成物へとクラッキングするための反応物であり得る。上記組成物は、上記テルペンを軽質炭化水素へと反応させ、そして分解するための上記組成物のために、接触クラッキングの条件(例えば、反応器中の)に供され得る。
【0071】
1つの実施形態において、上記テルペンは、以下からなる群より選択される:モノテルペン、セスキテルペン、ジテルペン、トリテルペン、テトラテルペン、クパレン、ファルネセン、スクアレン、ジンゲロン、およびカロテン。上記テルペンは、より小さい炭化水素への接触クラッキングに適する任意のテルペンであり得、そのテルペンとしては、本明細書中に記載されるものが挙げられる。
【0072】
1つの態様において、藻類から抽出される油および接触クラッキング組成物を含む組成物が、開示される。他の態様において、ジンジャー油と接触クラッキング組成物とを含む組成物、フィトールと接触クラッキング組成物とを含む組成物、またはスクアレンと接触クラッキング組成物とを含む組成物が、開示される。例示的に、接触クラッキング組成物としては、本明細書中に記載されるものが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、上記接触クラッキング組成物は、モレキュラーシーブであり得る。別の例において、上記モレキュラーシーブは、6Åよりも大きい孔径を有する大きい孔のモレキュラーシーブである。大きい孔のモレキュラーシーブは、10〜15Åのケージ径を有し得、かつ/または12員環ゼオライトであり得る。例示的な大きい孔のモレキュラーシーブとしては、β型ゼオライト、L型ゼオライト、またはY型ゼオライト(例えば、LZY−72、Valfor CP811BL−25、ELZ−L、またはT−4546)が挙げられるが、これらに限定されない。他の例において、上記モレキュラーシーブは、10員環ゼオライト(例えば、ZSM−5ゼオライト)である。
【0073】
(バイオマス原料)
特定の実施形態において、精製(例えば、クラッキング)に適したバイオマス原料およびそのバイオマス原料を軽質炭化水素または転位した炭化水素へと変換する方法に適したバイオマス原料が、記載される。バイオマス原料は、遺伝的に改変された生物学的供給源(例えば、藻類および細菌)から抽出される炭化水素を含み得る。代表的に、油のクラッキングは、軽質炭化水素または転位した炭化水素を生成し、これらは、燃料(例えば、ガソリン、ディーゼル燃料またはジェット燃料)、燃料添加剤およびプラスチック、樹脂、繊維、エラストマー、潤滑剤、ゲルなどへとさらに加工するための石油化学製品として適する。
【0074】
より明確には、特定のバイオマス炭化水素は、クラッキングおよび変質を含む1つ以上の精製方法を受け得る原料として選択され得る。特定の実施形態において、上記バイオマス炭化水素は、炭素−炭素結合の開裂を経てより小さい分子の炭化水素へと分解またはクラッキングされる。他の実施形態において、上記バイオマス炭化水素は、特定の構造を有する炭化水素(例えば、分枝状炭化水素)、高オクタン価(例えば、90よりも大きい)を有する炭化水素などを形成するために変更(例えば、アルキル化または異性化によって)される。有利なことには、これらのバイオマス原料は、既存の石油精製方法に適合することができ、そして生産された上記軽質炭化水素または転位した炭化水素は、石油を精製するために既存の基盤設備を使用してさらに加工または分配され得る。
【0075】
いくつかの例において、バイオマス原料は、精製前に化石燃料ベースの原料または石油ベースの原料とブレンドまたは混合される。例えば、藻類から抽出された原料は、原油とブレンドされ得、次いで、上記混合物を触媒的にクラッキングするために触媒組成物と接触され得る。精製の他の方法(例えば、分留)は、バイオマス原料が石油ベースの原料とブレンドまたは混合された後に行われ得る。いくつかの例において、上記石油ベースの原料は、バイオマス原料とブレンドする前に既に精製されている。例えば、上記石油ベースの原料は、ガソリン、ディーゼル、またはジェット燃料であり得る。他の例において、上記石油ベースの原料は、燃料混合のための混合物(例えば、別の炭化水素混合物とブレンドされる場合に適切な燃料生成物をもたらし得る炭化水素混合物)である。燃料混合のための混合物もしくは上記バイオマス原料またはその両方は、精製前に燃料生成物として適切であり得る。別の例において、燃料混合のための混合物もしくは上記バイオマス原料またはその両方は、精製前に燃料生成物として適切ではない。
【0076】
本明細書中で使用される場合、「バイオマス炭化水素」または「バイオマス原料」とは、最近50年内に生きていた生物学的生物から得られた1種以上の有機化合物をいうことができ、そして優勢に炭素および水素を含み、かつ必要に応じてヘテロ原子(例えば、酸素、窒素および硫黄)を含み得る。6億年前までの植物から生ずる化石ベースの原油とは異なり、本明細書中に記載される炭化水素は、生きているか、または直近まで生きていた生物に由来する。そのような再生可能な生物学的供給源としては、天然に存在する生物および遺伝的に改変された生物が挙げられる。特定の実施形態において、そのような生物は、藻類または細菌を含む。いくつかの例において、上記バイオマス炭化水素は、約5〜80個の炭素、10〜50個の炭素、10〜40個の炭素、10〜60個の炭素、15〜40個の炭素、15〜60個の炭素、20〜40個の炭素などを有し得る。他の例において、上記炭化水素は、5個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、または40個の炭素を有する。上記炭化水素分子の炭素は、共有結合性の一重、二重または三重の炭素−炭素結合を介して連結され、そして代表的に、直鎖状、分枝状、環状の立体配置またはそれらの組合せに配置される。
【0077】
いくつかの例において、バイオマス炭化水素は、テルペン、イソプレノイド、脂質、アルキルエステル、アルカノイド、およびフェニルプロパノイドの形態を採る。テルペンは、ヘテロ原子および純粋な炭化水素を含む任意のテルペノイドまたはイソプレノイドをいい得る。本明細書中に記載されるバイオマス炭化水素は、工業的精製所において原料として使用され得る。通常の原料と同様に、上記バイオマス炭化水素は、クラッキングまたは変化し得る。いくつかの実施形態において、上記バイオマス炭化水素は、上記炭化水素原料よりも少ない炭素を有する炭化水素(本明細書中に記載される通り)をいう軽質炭化水素へと分解する。軽質炭化水素は、例えば、精製されたバイオマス原料の生成物であり得る。代表的に、軽質炭化水素は、20個よりも少ない炭素、または15個よりも少ない炭素、または12個よりも少ない炭素、または10個よりも少ない炭素、または8個よりも少ない炭素を有する。上記軽質炭化水素は、環状または非環状の、飽和または不飽和であり得る。飽和した非環状炭化水素はまた、パラフィンと称される。飽和した環状炭化水素はまた、ナフテンと称される。不飽和の炭化水素はまた、オレフィンと称される。不飽和の炭化水素はまた、芳香族であり得る。例示的な軽質炭化水素としては、C2〜C20オレフィン、C6〜C20芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレンなど)、C6〜C20ナフテン(例えば、置換されたシクロペンタンおよびシクロヘキサンまたは非置換のシクロペンタンおよびシクロヘキサン)、C1〜C20パラフィンなどが挙げられる。蒸留範囲に依存して、上記軽質炭化水素は、ガソリン生成物、ディーゼル、灯油、またはジェット燃料として適する留分を含み得る。
【0078】
特定の化学構造的特徴は、クラッキング方法において特定の利点を提供し得る。例えば、上記バイオマス炭化水素は、クラッキング(例えば、接触クラッキング、水蒸気クラッキング、熱クラッキングまたは水素化分解)の条件下で反応中間体へと変換され得る特異的に置換およびプロトン化された炭素中心を有し得る。これらの反応中間体は、さらなる炭素−炭素結合開裂を促し、そして軽質炭化水素を生産する。分枝状炭化水素は、効果(例えば、電気的安定化および立体加速(これらの両方は、置換された炭素中心と関連する))に起因する炭素−炭素開裂に対して特に感受性である。例えば、Ruchardt C.ら.Angew.Chem.Ed.Engl.18,429−440(1980)を参照のこと。
【0079】
他の実施形態において、上記バイオマス原料は、6個よりも少ないイソプレン残基を有するテルペンである低次イソプレノイドである。これらの低次イソプレノイドは、高オクタン燃料または高オクタン燃料添加剤として適切である高度に分枝した炭化水素構造を生産するために特に有用である。
【0080】
特に、低次イソプレノイドとしては、モノテルペン(2個のイソプレン残基を有するCl0テルペン)、セスキテルペン(3個のイソプレン残基を有するCl5テルペン)、ジテルペン(4個のイソプレン残基を有するC20テルペン)およびトリテルペン(6個のイソプレン残基を有するC30テルペン)が挙げられる。上記イソプレン残基は、直鎖状立体配置または環状立体配置に配置される。上記低次テルペンまたはイソプレノイドの特定の例としては、リモネン、クパレン、ミルセン、ファルネセン、ゲラニオール、テルピネオール、ファルネソール、フィトール、スクアレンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0081】
これらの低次イソプレノイドは、分枝状の炭素中心(環状炭素および非環状炭素の両方を含む)を含む。したがって、それらは、クラッキング、異性化、および/または代表的に製油所の操作において用いられる他の公知である方法によって高オクタン価および他の所望の特性を有するガソリン領域留分中の炭化水素を生産するのに適した前駆体である。
【0082】
本明細書中で使用される場合、「オクタン価」とは、イソオクタン(2,2,4−トリメチルペンタン)と、高度に分枝したC8炭化水素とおよびn−ヘプタン(直鎖C7炭化水素)との混合物と比較した、火花点火エンジン燃料のノック耐性(アンチノックの評価)をいう。より明確には、内燃エンジンにおいて、ガソリンと空気との混合物は、点火前に圧縮される。上記圧縮された混合物は、円滑に燃えるよりも早まって燃焼する傾向を有する。早期点火(または自己着火)は、1つ以上のシリンダーにおけるラットリング(rattling)音またはピンギング(pinging)音によって特徴付けられるノックをもたらす。上記ノックは、ピーク出力の減少をもたらす。代表的に、高度に分枝した炭化水素は、直鎖状の炭化水素よりもノックに対してより良好な耐性を有する。
【0083】
したがって、オクタン価は、ノックに対するガソリンの耐性の定量的尺度である。上記オクタン価は、ガソリンの特徴をイソオクタン(オクタン価100、最小限のノック)およびヘプタン(オクタン価0、かなりのノック)と比較することによって決定される。これら2つの成分の線形組合せ(linear combination)は、代表的に、特定のガソリンのオクタン価を測定するために使用される。したがって、91のオクタン価を有するガソリンは、91%のイソオクタンと9%のヘプタンとの混合物と同じノックを有する。本明細書中で使用される場合、高オクタン価とは、80以上のオクタン価、より代表的には、90以上のオクタン価をいう。
【0084】
ベースのガソリン混合原料または直留ガソリンは、代表的に、60と70との間のオクタン価を有する。分枝状炭化水素(置換ナフテン(例えば、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン)、および芳香族化合物が挙げられる)は、90よりも高い(90+)オクタン価を有する。90+のオクタン価を有する炭化水素は、燃料のオクタン価を高めるために燃料への添加剤として使用され得る。これらの添加剤はまた、「オクタンブースター」とも称される。代表的なオクタンブースターとしては、例えば、高オクタン価の芳香族炭化水素(例えば、トルエン(オクタン価124))、アルコール(例えば、エタノール(オクタン価115))およびメタノール(オクタン価113)、および有機金属(例えば、四エチル鉛)などが挙げられる。
【0085】
適切なクラッキングの条件下で、上記低次イソプレノイドは、より短いもの(例えば、C12よりも小さいもの)および分枝状炭化水素まで分解され得る。高オクタン燃料として適切な留分としては、例えば、分枝状C8炭化水素、環状C5〜C7炭化水素、および芳香族炭化水素(例えば、トルエンおよびキシレン)が挙げられる。所望の留分は、蒸留によって単離され得る。
【0086】
上記イソプレノイドとは別に、他のクラスのバイオマス炭化水素は、脂質および窒素含有炭化水素を含む。脂質とは、一般に、脂肪酸、それらの誘導体およびステロールをいう。遊離脂肪酸は、代表的に、カルボン酸によって終結する長い炭化水素鎖を含む。上記炭化水素鎖は、飽和であっても不飽和であってもよく、そして代表的に、長さが12〜24個の炭素(例えば、C12〜C24)の範囲である。脂肪酸誘導体としては、脂肪酸のエステルが挙げられる。例えば、グリセリド(例えば、植物油)は、1つ以上の脂肪酸基を伴うグリセロール(プロパン−1,2,3−トリオール)のコア構造を有する脂質である。さらなる脂肪酸誘導体としては、植物油のエステル交換反応生成物であるアルキルエステルが挙げられる。代表的に、メタノールは、脂肪酸のメチルエステルを生産するために使用され得る。アルカロイドおよびフェニルプロパノイドは、植物由来の窒素含有炭化水素である。それらは、代表的に、アミノ酸誘導体であり、そして細胞代謝経路に基づいて構築される。
【0087】
考察されるように、上記バイオマス炭化水素は、天然に存在する生物および遺伝的に改変された生物を含む再生可能な生物学的供給源に由来する。炭化水素は、植物、真菌、藻類、細菌などを含む多数の天然に存在する生物(真核生物または原核生物)中に存在する。本明細書中に記載されるバイオマス炭化水素は、生きているか、または直近まで生きていた生物(バイオマス)の両方から得られ得る。
【0088】
特に、本明細書中に記載されるポリエンは、植物および藻類、真菌の数種の型および数種の細菌のような数種の他の光合成生物において天然に存在する有機色素として存在する。カロテノイド(例えば、α−カロテン、β−カロテン(β,β−カロテン)、およびリコピン(γ,γ−カロテン))は、公知のイソプレノイドである。
【0089】
藻類が、エネルギー生産を光合成に依存し、そして高含量のカロテンを蓄積し得るので、藻類は、生物学的な炭化水素の生産に特に適したバイオマスのための供給源を代表する(例えば、海藻のDunaliella salina)。作物とは異なり、藻類の栽培は、耕地を専有せず、かつ灌漑システムを必要としない。さらに、藻類は、カロテンの生合成生産を増大させるために遺伝的に操作され得る種々の微生物である。
【0090】
カロテノイド(例えば、カロテン)は、収穫池(harvesting pond)で成長した藻類から生産され得る。藻類の型に依存して、上記池は、淡水または鹹水を含み得る。上記藻類は、収穫および乾燥される。カロテノイドは、乾燥された藻類から有機溶媒を使用して抽出され得る。代表的に、低沸点溶媒が、使用される。上記溶媒は、抽出されたカロテン濃縮される場合、(例えば、蒸留および凝縮を介して)再利用され得る。例示的な溶媒としては、ヘキサン、二硫化硫黄、石油エーテル、アセトンおよびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0091】
1つの態様において、接触クラッキング方法が、藻類からの油をクラッキングするために提供され、上記方法は、テルペンを含む原料を形成するために藻類からの油を抽出する工程;上記セスキテルペンを含む原料と触媒組成物とを接触クラッキングの条件下で接触させる工程を含む。1つの実施形態において、上記藻類からの油は、テルペン(例えば、天然に存在するテルペン(例えば、カロテノイド))を含む。別の実施形態において、上記藻類からの油は、セスキテルペン(例えば、クパレンまたはファルネセン)を含む。
【0092】
海藻油は、種々の様式で方法に供され得る。例えば、藻類は、収穫および乾燥され得、次いで油が、溶解された細胞または破壊された細胞から抽出される。上記細胞は、化学的に破壊され得るか、または機械力が、細胞壁を破壊するために使用され得る。油は、有機溶媒(例えば、ヘキサン)を使用して上記藻類から抽出され得る。藻類から油を抽出する他の方法はまた、当業者に明らかであるように、本発明の方法と一緒に使用され得る。
【0093】
1つの実施形態において、上記藻類からの油は、鎖長C10よりも長く、かつ藻類において天然に存在するものよりも大きい炭化水素およびテルペンを含む。異なる種の藻類は、異なる炭化水素の混合物を含む油を産生し得る。いくつかの実施形態において、上記藻類からの油は、1種よりも多くの藻類からの油の混合物である。いくつかの実施形態において、上記藻類からの油は、増大した量のテルペンを含む。いくつかの実施形態において、上記藻類からの油は、上記藻類によって天然に生産されないテルペンを含む。
【0094】
いくつかの例において、本明細書中の方法はまた、上記原料を接触させる前に藻類からの油と燃料成分とを混合する工程を含む。例えば、海藻油と原油とのブレンドは、本明細書中に記載される方法において提供され得、そして触媒組成物と接触し得る。別の例において、海藻油と精製された燃料(例えば、ガソリン)とのブレンドは、触媒組成物と接触し得る。例えば、上記燃料成分は、以下からなる群より選択されるが、これらに限定されない:化石燃料、石油、燃料混合のための混合物、ガソリン、ディーゼル、ジェット燃料、およびそれらの任意の組合せ。
【0095】
1つの実施形態において、方法は、油を抽出する前に上記藻類を遺伝的に改変する工程を含む。例えば、上記藻類の葉緑体または核は、テルペンの生産を促進する酵素を産生するように形質転換され得る。上記テルペンは、上記藻類において天然に存在し得るか、または上記藻類とは異なり得る。1つの実施形態において、上記藻類は、上記藻類において天然に存在するテルペンの生産を上方制御するために遺伝的に改変される。この様式において、上記藻類からの油は、方法(例えば、本明細書中に記載される方法)において接触クラッキングの条件下でクラッキングされ得るテルペンのより多い量を含む。別の実施形態において、上記藻類は、上記藻類において天然に存在しないテルペンの生産を上方制御するために遺伝的に改変される。例えば、MVA経路またはMEP経路を通してテルペンを産生する酵素をコードする遺伝子は、上記藻類の葉緑体または核に挿入され得る。上記酵素は、上記生物において天然に存在しないテルペンを産生するように構成される。この手段において、上記生物は、燃料生成物の生産において有用であり得る大きい炭化水素の測定可能な量を含むように設計され得る。例えば、上記藻類は、遺伝的に改変しない藻類と比較して、増大した量のセスキテルペンを生産するように遺伝的に改変され得る。セスキテルペンを産生する酵素をコードする遺伝子形質転換は、上記藻類に挿入され得る。1つの実施形態において、上記セスキテルペンは、クパレンである。別の実施形態において、上記セスキテルペンは、ファルネセンである。なお別の実施形態において、上記セスキテルペンは、ジンギベレンである。藻類はまた、任意のサイズのテルペン(例えば、モノテルペン、ジテルペン、トリテルペンなど)を産生するように遺伝的に改変され得る。遺伝的に改変された藻類から産生され得るテルペンの例としては、フィトールおよびスクアレンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0096】
1つの態様において、接触クラッキング方法が、藻類からの油をクラッキングするために本明細書中に開示され、上記方法は、クパレンを含む原料を形成するために藻類からの油を抽出する工程;および上記クパレンを含む原料と触媒組成物とを接触クラッキングの条件下で接触させる工程を含む。1つの実施形態において、上記方法は、油を抽出する前に上記藻類を遺伝的に改変する工程をさらに含む。例えば、上記藻類を遺伝的に改変する工程は、遺伝的に改変しない藻類と比較して増大した量のクパレンを生産し得る。
【0097】
藻類からの油のクラッキングは、本明細書中に記載されるように、任意の上記触媒組成物を使用して行われ得る。1つの実施形態において、海藻油は、ゼオライトβ触媒を使用してクラッキングされる。クラッキングのための反応器は、上記触媒組成物を通して上記油を流すためにポンプまたはシリンジポンプによって供給され得る。1つの実施形態において、上記油は、キャリアガス(例えば、ヘリウム)を含む反応器に注入される。上記反応のクラッキング生成物は、当該分野で公知である任意の適切な方法によって同定され得、その方法としては、ガスクロマトグラフィーまたは液体クロマトグラフィーおよび質量分析が挙げられるが、これらに限定されない。
【0098】
1つの実施形態において、粗藻類からの油は、クラッキング方法が行われる前に精製され得る。例えば、上記粗海藻油は、RBD(精製(refining)脱色(bleaching)脱臭(deodorizing))方法に供され得る。別の例において、上記粗海藻油は、所望の成分へと分留(例えば、蒸留によって)され得る。分留は、使用者によって予め決定され得るか、または粗海藻油を所望のサイズ、組成、または形状の炭化水素成分へと分留するように設定され得る。
【0099】
1つの態様において、トリグリセリドと25重量%未満のパラフィンとを含む組成物が、記載され、上記パラフィンは、C11〜C13パラフィンを含む。海藻の酵素またはそのフラグメントは、微量または相当量で上記組成物中に存在し得る。上記組成物は、燃料生成物(例えば、ジェット燃料、ガソリン、またはディーゼル)と類似し得る。1つの実施形態において、上記組成物は、藻類からの油をクラッキングする工程を含む方法を行うことに由来する。1つの実施形態において、上記組成物は、化石燃料ベースのガソリンよりも少ないパラフィンを含む。上記組成物はまた、化石燃料ベースのガソリン中に存在するよりも大きいパラフィン(例えば、C11〜C13パラフィン)を含み得る。
【0100】
1つの実施形態において、上記組成物は、藻類からの油をクラッキングする工程を含む方法を行うことに由来し、上記組成物は、低級アルカンを含む。1つの実施形態において、上記低級アルカンは、ガソリン留分を含む。
【0101】
本明細書中に記載される組成物は、クラッキング方法から産生され得、テルペンを含むバイオマス材料が、クラッキングされている。例えば、上に記載される流通反応装置は、上記組成物を産生する方法を行うために使用され得る。トリグリセリドは、光合成生物中に存在し、そして脂肪酸を含む。
【0102】
上記バイオマス原料は、工業規模および実験室規模で精製するのに適切である。慣習的に、上記精製方法は、広い範囲の炭化水素を含む原油を、特定の長さまたは構造によって特徴付けられる代表的に炭化水素である有用な物質の留分に変換する。上記留分は、直接蒸留法または、より効率的に、長い炭化水素をより短い炭化水素にクラッキングすることにより得られ得る。原油を物理的に変換することに加えて、特定の精製方法はまた、クラッキングされた炭化水素をより所望の構造へと化学的に変換し得る。例えば、アルキル化方法は、高オクタン燃料または高オクタン燃料添加剤として適切である高度に分枝した炭化水素を提供し得る。例えば、Petroleum Refining Technology and Economics、Gary J.ら、Taylor & Francis Group(第5版)を参照のこと。
【0103】
上記バイオマス原料は、原油と同様の様式で精製され得る。したがって、特定の実施形態は、バイオマス原料を1種以上の軽質炭化水素に変換する方法を記載する。有利なことには、軽質炭化水素留分の所望の仕様に依存して、特定の構造的特徴を有する生物学的炭化水素は、合理的な設計および操作を通して天然の供給源または生合成経路の遺伝的に改変された生物から選択および取得され得る。例えば、高オクタンガソリン生成物は代表的に、約3〜12個の炭素を含み、そして構造的特性(例えば、炭素骨格の枝分かれ(例えば、分枝状炭化水素))、ナフテン性(naphenic)(例えば、環状の非芳香族構造)または芳香族性によって生じる、直鎖状パラフィンよりも「小型」である分子である。これらの仕様に基づいて、適切な炭素骨格特性(例えば、カロテノイド)を有する生物学的炭化水素は、例えば、接触クラッキングを通して所望の留分を生産するように選択され得る。
【0104】
一般的にいうと、上記精製方法は、クラッキング(例えば、接触クラッキング、熱クラッキング、水蒸気クラッキングおよび水素化分解)および異性化、変質または化学変換を含む。
【0105】
1つの実施形態は、接触クラッキング方法に適した組成物を提供し、上記組成物は、バイオマス原料とクラッキング触媒とを含む。特定の実施形態において、上記バイオマス原料は、ポリエン鎖構造を有する少なくとも1種の炭化水素を含み、上記ポリエン鎖構造は、1種以上の第四級オレフィン炭素を含む。いくつかの例において、上記バイオマス原料は、専ら藻類起源である。他の例において、上記バイオマス原料は、藻類からのトリグリセリドを含む。
【0106】
流動接触クラッキング(FCC)は、重質炭化水素をより有用なガソリンおよびより軽質な生成物へと変換するために最も幅広く使用される製油所のプロセスのうちの1つである。図1は、バイオマス原料をクラッキングするのに適切である標準的なFCC方法を概略的に示す。上記原料は、加熱され、そして「上昇管」(垂直または上方に傾斜した管)の基部に噴霧され、予熱された原料は、流動化されたゼオライト触媒と約1230〜1400°F(665〜760℃)にて接触する。熱い触媒は、上記原料を気化し、そして高分子量の炭化水素をより軽質な成分へと分解するクラッキング反応を触媒し、そのより軽質な成分としては、LPG(液化石油ガス(例えば、C3〜C4オレフィン)、および非環状炭化水素または環状炭化水素(C5〜C12)が挙げられる。上記触媒−炭化水素混合物は、わずか数秒で上昇管を通して上方に流れ、次いで上記混合物は、サイクロ(登録商標)ンを介して分離される。触媒を含まない炭化水素は、より重質な燃料からより軽質な炭化水素生成物(例えば、C3〜C12炭化水素)を分離するために分留装置(fractioner)に送られる。上記より軽質な炭化水素(その炭化水素の多くは、ガソリン生成物として適切である)は、上記より重質な燃料よりも大きい揮発性である。上記より重質な燃料は、200℃〜350℃の間で大気圧にて分留するディーゼルおよびジェット燃料を含む。
【0107】
上記上昇管を移動する間に、上記クラッキング触媒は、上記触媒にコークスを沈着させる反応によって「費やされ」、そしてクラッキング触媒は、活性および選択性が大きく減少する。コークス形成の過程は、それが気体生成物のH/C(水素 対 炭素)比をよりガソリンに適した範囲まで増大させるので、全ての方法にとって重要である。上記「費やされ」た触媒は、クラッキングされた炭化水素の蒸気から離脱し、そしてストリッパー(示さない)に送られ、そのストリッパーは、触媒の孔に残留する炭化水素を除去するために蒸気と接触する。次いで、上記「費やされ」た触媒は、流動床再生器に流れ、その流動床再生器において、空気(または、いくつかの場合において、酸素を加えた空気)が、上記コークスを焼き尽くして触媒活性を回復させ、そしてまた次の反応サイクルのための必要な熱を提供するために使用される。次いで、「回復された」触媒は、上昇管の基部に流れ、上記サイクルを繰り返す。
【0108】
類似する型のクラッキング方法もまた、生物学的に誘導される原料について想定されるが、特定の実施形態において、より温和な条件が用いられ、その主要な目的は、必ずしも炭素を除去することまたは上記生成物のH/C比を増大させることなく全体の分子量を減少させることである。サーモフォア接触クラッキングとして公知である方法が、使用され得る。
【0109】
1つの実施形態において、上記バイオマス原料は、少なくとも1種の炭化水素化合物を含む。特定の実施形態において、カルベニウムイオンは、生物学的に誘導される原料に対する上記触媒の作用に起因して形成され、その作用は、上記カルベニウムイオンのβ位における炭素−炭素結合の断裂(例えば、β開裂)を誘導すると考えられる。他の実施形態において、アルコキシド型の中間体が、上記第四級オレフィン炭素において形成され得、その中間体もまた、β開裂を生じる。
【0110】
さらなる実施形態は、バイオマス原料とクラッキング触媒とを接触クラッキングの条件下で接触させる工程を含む炭化水素をクラッキングするための方法を提供し、上記バイオマス原料は、ポリエン構造を有する少なくとも1種の炭化水素を含み、上記ポリエン構造は、1種以上の第四級オレフィン炭素を含む。
【0111】
スキームVIは、生物学的供給源からのβ−カロテン(3,7,12,16−テトラメチル−1,18−ビス(2,6,6−トリメチル−1−シクロヘキセニル)−オクタデカ−1,3,5,7,9,11,13,15,17−ノネン)のクラッキングを示す。示されるように、β−カロテンは、ゼオライト触媒(Z)と接触し,それによって、第四級オレフィン炭素が、カルベニウムイオンへと変換される。カルベニウム中間体は、上記カルベニウムイオンのβ位にてC−C結合の断裂を受ける。低級オレフィン(1):3−メチル−1−ビス(2,6,6−トリメチル−1−シクロヘキセニル)−1−ブテンが、生産される。さらなるクラッキングは、さらなるクラッキング方法を受け得る低級オレフィン(2):3,8−ジメチル−1,3,5,7,9−ペンタデセンを生産する。他のより低級なテルペン(例えば、モノテルペン(例えば、ミルセン(3)))もまた、クラッキングするおよび可能な転位において生産され得る。
【化6】
【0112】
生産された低級オレフィンは、ブレンドまたは改質を通して燃料添加剤として直接的に使用され得る。それらはまた、多くのガソリン生成物を生産するためにさらに加工され得る。上記低級オレフィンはまた、石油化学プロセスにおいて直接的に使用され得る。
【0113】
別の実施形態において、上記バイオマス原料は、少なくとも一種の低次イソプレノイド(例えば、モノテルペンおよびセスキテルペン)を含む。
【0114】
他の実施形態において、上記バイオマス原料は、低級アルカンを生産するために水素化分解に供される。上記水素化分解法は、飽和であり、かつより短いアルカンを生産する。代表的に、上記クラッキング方法は、高い分圧の水素ガスの存在下で行われる。水素化分解は、通常、ナフテンおよびアルカンを生産するために炭化水素鎖を転位および破壊することならびに水素を芳香族化合物およびオレフィンに付加することを可能にする、二機能性触媒によって促進される。
【0115】
他の実施形態において、上記バイオマス原料は、低級オレフィンを生産するために熱クラッキングに供される。熱クラッキングは、高い温度(約800℃)および圧力(約700kPa)において行われる。熱エネルギーは、代表的に、炭素−炭素結合の等方性分解を生じ、そしてより小さいオレフィンを生産する。等方性分解はラジカルを産生するので、付加反応または脱離反応を含む多くの化学反応が熱クラッキングの間に行われ得る。
【0116】
他の実施形態において、バイオマス原料は、低級オレフィンを生産するために水蒸気クラッキングに供される。水蒸気クラッキングは、バイオマス原料を蒸気で希釈することによって行われ得、そして炉において短時間に加熱(約850℃)され得る。上記反応において生産される生成物は、送りの組成物、水蒸気に対する炭化水素の比ならびにクラッキング温度および炉滞留時間に依存する。代表的に、低級オレフィンが、生産される。
【0117】
本明細書中に記載されるバイオマス炭化水素は、1種以上のゼオライト触媒の存在下でより軽質な炭化水素へとクラッキングされ得る。実施例に示されるように、上記クラッキング方法は、代表的に、温度依存性の生成物分布を生じる。さらに、クラッキングされる炭化水素の構造に依存して、生成物分布は、高オクタン価の軽質炭化水素に有利であり得る。さらに、触媒の型は、クラッキングされた生成物の性質および分布を決定することにおいて重要な役割を果たす。
【0118】
記載されるように、低次テルペン(例えば、クパレン、ファルネセン、ジンジャー油、フィトール、およびスクアレン)は、接触クラッキングの条件に供され得る。クラッキング生成物としては、代表的に、パラフィン(例えば、C4〜C9)、ナフテン(例えば、C5〜C9)、芳香族化合物(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン)が挙げられる。上記クラッキング生成物の間で、分枝状の炭素中心を有する炭化水素(例えば、分枝状パラフィン)、ナフテンおよび芳香族化合物は、高オクタン価(例えば、91よりも高い)を伴う傾向にある。
【0119】
特定の実施形態において、高オクタン価を有するクラッキング生成物は、200℃〜500℃の範囲の温度にて60%を超える収率で生産される。所望の生成物に依存して、最適な温度範囲は、経験的に確立され得、その温度範囲において、高オクタン価の生成物(例えば、ベンゼン以外の芳香族化合物、ナフテン)は、最大化され、そして低オクタン価(例えば、直鎖状パラフィン)の生成物は、最小化される。代表的に、上記温度は、200℃〜350℃、または350℃〜450℃の範囲であり得る。
【0120】
したがって、上記クラッキング生成物は、高い収率で生産され、そして所望および/または種々の構造的特徴のクラッキング生成物であり、そのクラッキング生成物は、それらが燃料、燃料添加剤として使用されること可能にするか、または石油化学製品として直接的に使用することを可能にする。したがって、本明細書中に記載されるバイオマス炭化水素は、有用な物質へと精製するのに適切であり、そして精製する方法において化石燃料を置換または補充するために使用され得る。
【0121】
1つの態様において、燃料生成物を作製するための方法が、本明細書中に開示され、その方法は、遺伝的に改変された光合成する非維管束生物から原料を得る工程;および上記原料と触媒組成物とを接触クラッキングの条件下で接触させ、それによって燃料生成物を作製する工程を含み、上記触媒組成物は、6Åよりも大きい孔径を有する大きい孔のモレキュラーシーブを含む。例えば、上記原料は、遺伝的に改変された藻類であり得る。上記藻類は、テルペンの生産を上方制御する手段を含む種々の手段で遺伝的に改変され得る。1つの実施形態において、遺伝的改変は、上記生物において天然に存在しない炭化水素またはテルペンを産生する生物を可能にする。接触クラッキングの条件は、本明細書中に記載される条件であり得る。例えば、上記クラッキングは、420℃までの温度において起こり得る。遺伝的に改変された光合成する非維管束生物との接触における触媒組成物はまた、本明細書中に記載される任意の触媒組成物、または当業者に公知である、接触クラッキングの条件下での使用について明らかであるか、もしくは予想される組成物であり得る。いくつかの例において、大きい孔のモレキュラーシーブは、12員環ゼオライトである。
【0122】
本明細書中に記載される方法またはプロセスから生産される燃料生成物は、約85と125との間のオクタン価を有し得る。燃料生成物はまた、90よりも大きいオクタン価を有し得る。
【0123】
いくつかの例において、プロセスまたは方法は、燃料成分を上記燃料生成物に添加する工程をさらに含み得、上記燃料成分は、混合燃料(例えば、エタノール、ジェット燃料、ディーゼル、バイオディーゼル、またはガソリン)である。例えば、上記燃料生成物は、上記燃料生成物と上記燃料成分とを含む混合物の約5〜95%であり得る。別の実施形態において、燃料添加剤(例えば、MTBE、界面活性剤、および酸化剤)は、上記燃料生成物に添加され得る。
【0124】
(組成物および生成物)
テルペンからの生成物をもたらす組成物および方法ならびにバイオマス由来のテルペンからの生成物をもたらす組成物および方法が、本明細書中に提供される。生成物の例としては、燃料生成物、芳香生成物、および殺虫剤生成物が挙げられるが、これらに限定されない。生成物は、分子に蓄えられたエネルギーを放出する任意の物質であり得る。1つの実施形態において、生成物は、有機分子である。別の実施形態において、生成物は、炭化水素である。いくつかの例において、生成物は、水素を含まない。いくつかの例において、生成物は、酸素を含まない。いくつかの例において、生成物は、抗体またはタンパク質を含まない。いくつかの例において、生成物は、脂肪酸を含まない。
【0125】
燃料生成物の例は、石油化学製品およびそれらの前駆体ならびに石油化学工業において有用であり得る全ての他の物質が挙げられる。燃料生成物としては、例えば、石油生成物、および石油の前駆体、ならびに石油化学製品およびその前駆体が挙げられる。上記燃料生成物は、石油生成物および石油化学製品を含む、石油化学工業において有用な物質、または材料を産生するために使用され得る。上記燃料または燃料生成物は、燃焼器(例えば、ボイラー、窯炉、乾燥機または炉)において使用され得る。燃焼器の他の例は、内燃エンジン(例えば、乗物のエンジンまたは発電機)であり、その内燃エンジンとしては、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、ジェットエンジン、およびその他が挙げられる。燃料生成物はまた、プラスチック、樹脂、繊維、エラストマー、潤滑剤、およびゲルを生産するために使用され得る。
【0126】
本明細書中で企図するされる生成物の例としては、水素分子および炭素分子ならびにときとして1つ以上のヘテロ原子からなり得る炭化水素生成物および炭化水素誘導体が挙げられ、上記ヘテロ原子は、水素または炭素ではない任意の原子である。ヘテロ原子の例としては、窒素、酸素、硫黄、およびリンが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの生成物は、炭化水素が豊富であり、上記生成物の少なくとも50重量%、60重量%、70重量%、80重量%、90重量%、95重量%、99重量%は、炭素および水素で構成される。1つの実施形態において、生成物は、100重量%が炭素および水素の原子である。
【0127】
燃料生成物(例えば、炭化水素)は、慣習的に、原油もしくは石油に由来する前駆体または生成物(例えば、液化石油ガス、ナフサ(リグロイン)、ガソリン、灯油、ディーゼル、潤滑油、高比重ガス、コークス、アスファルト、タール、および蝋であるが、これらに限定されない)であり得る。例えば、燃料生成物としては、加熱(例えば、調理におけるもの)またはプラスチックの作製に使用され得る小さいアルカン(例えば、1〜約4個の炭素(例えば、メタン、エタン、プロパン、またはブタン))であり得る。燃料生成物はまた、約5個〜約9個の炭素原子の炭素骨格を有する分子(例えば、ナフサもしくはリグロイン、またはそれらの前駆体)を含み得る。他の燃料生成物は、ガソリンまたはモーター燃料として使用される約5個〜約12個の炭素原子またはシクロアルカンであり得る。約10個〜約18個の炭素の分子および芳香族化合物(例えば、灯油、またはその前駆体)もまた、燃料生成物であり得る。燃料生成物は、12個よりも多い炭素を有する分子、またはそれらの前駆体(例えば、潤滑油に使用される)を含み得る。他の燃料生成物としては、代表的に、約20個〜約70個の炭素のアルカン、シクロアルカン、および芳香族化合物を含む、高比重ガスもしくは燃料油、またはそれらの前駆体が挙げられる。燃料生成物はまた、原油からの他の残留物(例えば、コークス、アスファルト、タール、および蝋)およびその前駆体を含む、一般に、約70個以上の炭素を有する複数の環を含む。
【0128】
種々の燃料生成物は、多くの方法によってエンドユーザーのための最終生成物へとさらに精製され得る。精製は、分留によって生じ得る。例えば、燃料生成物の混合物(例えば、異なる種々の鎖長を有する異なる炭化水素の混合物)は、分留によって種々の成分へと分離され得る。
【0129】
上記燃料生成物はまた、例えば、触媒(例えば、白金または白金−レニウムミックス)を使用することによって一体化工程においてそれらを組み合わせることによって精製され得る。上記一体化プロセスは、代表的に、水素ガス(クラッキングにおいて使用され得る副生成物)を生産する。
【0130】
上記燃料生成物はまた、炭化水素をより小さい分子へと変化させるか、または転位するか、または再構築することによって精製され得る。当業者に公知である触媒的に改質する方法において生じる多くの化学反応が存在する。一般に、接触改質は、触媒および高い分圧の水素の存在下で行われる。1つの一般的な方法は、アルキル化である。例えば、プロピレンおよびブチレンは、触媒(例えば、フッ化水素酸または硫酸)と混合される。
【0131】
上記燃料生成物はまた、最終生成物を得るために混合物中にブレンドされるか、または組み合わせられ得る。例えば、上記燃料生成物は、種々の等級のガソリンを形成するために、添加剤、種々の重量および等級の潤滑油、種々の等級の灯油、ジェット燃料、ディーゼル燃料、暖房用オイル、およびプラスチックおよび他のポリマーを作製するための化学物質と一緒かまたはそれらを伴わずにブレンドされ得る。本明細書中に記載される燃料生成物の組成物は、他の手段によって生産される燃料生成物と組み合わせられるか、またはブレンドされ得る。
【0132】
生産された生成物は、天然に生産され得るか、または形質転換された宿主細胞および生物によって非天然的に(形質転換の結果として)生産され得る。上記生成物はまた、天然に存在しない新規分子であり得る。例えば、藻類において天然に生産される生成物は、テルペン(例えば、カロテノイド(例えば、β−カロテン))であり得る。藻類によって天然に生産されない生成物の例としては、ネイティブではないテルペン(例えば、リモネン)が挙げられ得る。
【0133】
いくつかの例において、本明細書中で企図される生成物(例えば、燃料生成物)は、無機炭素供給源に由来する1種以上の炭素を含む。1つの実施形態において、本明細書中に記載される生成物の炭素の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または99%は、無機炭素供給源に由来する。無機炭素供給源の例としては、二酸化炭素、炭酸塩、炭素水素塩、および炭酸が挙げられるが、これらに限定されない。上記生成物は、光合成の間に固定された無機炭素供給源からの炭素を有する有機分子であり得る。
【0134】
本明細書中の生成物は、その炭素同位体分布(CID)によって記載され得る。分子レベルにおいて、CIDは、天然に存在する炭素同位体(例えば、12C、13C、または14C)である分子内の単一炭素原子の統計的な可能性である。バルクレベルの生成物において、CIDは、少なくとも1個の炭素原子を含む化合物中の天然に存在する炭素同位体(例えば、12C、13C、または14C)の相対的存在量であり得る。各々の化石燃料のCIがその供給源に基づいて異なり得ることが注目されているので、CID(fos)(例えば、化石燃料(例えば、石油、天然ガス、および石炭)中の炭素のCID)は、CID(atm)(例えば、現在の大気の二酸化炭素における炭素のCID)と区別可能である。さらに、CID(photo−atm)とは、無機炭素の実質的に全ての供給源は大気中の二酸化炭素であった近況における光合成によって作られる炭素ベースの化合物のCIDをいう。CID(photo−fos)とは、無機炭素の実質的に全ての供給源は化石燃料(例えば、石炭、天然ガス、および/または石油)の燃焼によって生産される二酸化炭素であった近況において光合成によって作られる炭素ベースの化合物のCIDをいう。
【0135】
正確な分布はまた、1)分子を生産した光合成生物の型、および2)無機炭素の供給源の特徴である。これらの同位体分布は、光合成的に誘導される燃料生成物の組成物を規定するために使用され得る。
【0136】
炭素同位体は、異なる化合物の間および内部で不規則に分布し、そして同位体の分布は、炭素の変換にかかわる物理的プロセス、化学的プロセス、および代謝的プロセスについての情報を明らかにし得る。光合成生物組織中のCに対するCの全体の存在量は、一般に、大気の二酸化炭素の炭素よりも少なく、このことは、炭素同位体の区別が二酸化炭素の光合成的なバイオマスへの組み込みにおいて生じることを示す。
【0137】
いくつかの燃料生成物は、ときとして、精製の後に、バイオマスから生産され得、その燃料生成物は、既存の石油化学製品と同じ(例えば、同じ構造)である。燃料生成物のいくつかは、既存の石油化学製品と同じでない可能性がある。1つの実施形態において、燃料生成物または組成物は、炭素同位体分布を除いて、既存の石油化学と同一である。例えば、化石燃料の石油化学製品は、−32%o未満のδ13C分布を有さないと考えられる一方で、本明細書中に記載される燃料生成物は、−32%o未満、−35%o未満、−40%o未満、−45%o未満、−50%o未満、−55%o未満、または−60%o未満のδ13C分布を有し得る。別の実施形態において、燃料生成物または組成物は、既存の化石燃料石油化学と類似するが同じではなく、そして−32%o未満、−35%o未満、−40%o未満、−45%o未満、−50%o未満、−55%o未満、または−60%o未満のδ13C分布を有する。しかし、分子は、従来の石油化学の製品または精製において存在することができないが、それは、これらの産業においてなおも有用であり得る。例えば、ガソリンの沸点範囲にあり、そしてガソリンまたは添加剤として使用され得る炭化水素が、生産され得るが、上記炭化水素は、ガソリン中に通常生じない。燃料生成物は、水素分子と炭素分子とを含む組成物であり得、水素分子と炭素分子は、上記組成物の原子量の少なくとも80%であり、そして上記組成物のδ13C分布は、−32%o未満である。本明細書中に記載されるいくつかの燃料生成物のために、水素分子および炭素分子は、上記組成物の原子量の少なくとも90%である。例えば、バイオディーゼルまたは脂肪酸メチルエステル(90重量%未満の水素分子および炭素分子を有する)は、上記組成物の一部ではない可能性がある。さらに他の組成物において、上記水素分子および炭素分子は、上記組成物の原子量の少なくとも95%または99%である。なお他の組成物において、上記水素分子および炭素分子は、上記組成物の原子量の100%である。いくつかの例において、上記組成物は、液体である。他の例において、上記組成物は、燃料添加剤または燃料生成物である。
【0138】
水素分子と炭素分子とを含む組成物を含む燃料生成物もまた、本明細書中に記載され、水素分子および炭素分子は、上記組成物の原子量の少なくとも80%であり、そして上記組成物のδ13C分布は、−32%o未満であり、かつその組成物は、燃料成分である。いくつかの実施形態において、上記組成物のδ13C分布は、約−35%o未満、−40%o未満、−45%o未満、−50%o未満、−55%o未満、または−60%o未満である。いくつかの例において、上記燃料成分は、化石燃料、ガソリン、ディーゼル、エタノール、ジェット燃料、またはそれらの任意の組合せであり得る混合燃料である。さらに他の例において、上記混合燃料は、−32%oよりも大きいδ13C分布を有する。本明細書中に記載されるいくつかの燃料生成物について、上記燃料成分は、MTBE、抗酸化剤、静電防止剤、腐食防止剤、およびそれらの任意の組合せであり得る燃料添加剤である。本明細書中に記載される燃料生成物は、記載される燃料生成物と燃料成分とをブレンドすることによって産生される生成物であり得る。いくつかの例において、上記燃料生成物は、−32%oよりも大きいδ13C分布を有する。他の例において、上記燃料生成物は、−32%o未満のδ13C分布を有する。例えば、生物から抽出された組成物は、本明細書中に記載される燃料生成物を産生するために精製(例えば、クラッキング)する前に燃料成分とブレンドされ得る。燃料成分は、記載されるように、化石燃料、または燃料生成物を産生するための混合ブレンドであり得る。例えば、燃料混合ための混合物は、燃料生成物を産生するために別の炭化水素混合物とブレンドするのに適切である炭化水素混合物であり得る。例えば、低級アルカンの混合物は、燃料の型に適する特定のオクタン価を有することができないが、しかし、その混合物は、燃料生成物を産生するために高オクタン混合物とブレンドされ得る。1つの例において、−32%o未満のδ13C分布を有する組成物は、燃料生成物を作製するために、燃料混合のための炭化水素混合物と混合される。いくつかの例において、上記組成物または燃料成分は、単独では燃料生成物として適切ではないが、しかし、組み合わせられる場合に、それらは、燃料生成物を構成する。他の例において、上記組成物もしくは上記燃料成分またはその両方のいずれも、燃料生成物として適切である。なお他の例において、上記燃料成分は、既存の石油線物(例えば、ガソリンまたはジェット燃料)である。なお他の例において、上記燃料成分は、再生可能な資源(例えば、バイオエタノール、バイオディーゼル、バイオガソリンなど)に由来する。
【0139】
上記バイオマス原料は、高オクタン炭化水素生成物を生産するのに適切である。したがって、1つの実施形態は、燃料生成物を形成する方法を記載し、上記方法は、バイオマス原料をクラッキングすることによって80以上のオクタン価を有する4〜12個の炭素を有する1種以上の軽質炭化水素を形成する工程、および80以上のオクタン価を有する1種以上の軽質炭化水素と80未満のオクタン価を有する炭化水素とをブレンドする工程を含む。代表的に、80未満のオクタン価を有する炭化水素は、原油を精製することに由来する化石燃料である。特定の実施形態において、上記バイオマス原料は、ポリエン構造を有する少なくとも1種の炭化水素を含み、上記ポリエン構造は、1種以上の第四級オレフィン炭素を含む。別の実施形態において、上記バイオマス原料は、本明細書中で規定されるように、少なくとも1種の低次イソプレノイドを含む。
【0140】
上記バイオマス原料は、上記軽質炭化水素生成物は、その元の原料を同定し得るか、または遡り得るようなクラッキングまたは変更された軽質炭化水素生成物において保存される明確な特徴を与えるように、改変または標識され得る。例えば、炭素同位体は、その生合成の過程においてバイオマス炭化水素へと導入され得る。上記炭素同位体は、生産される炭化水素原料においてマーカーとして機能する。上記標識された炭化水素原料は、炭素同位体によって標識された軽質炭化水素生成物を生産するために本明細書中に記載される精製方法に供され得る。上記同位体は、単独または他の標識されていない生成物との組合せのいずれかで、上記標識された生成物がそれらのバイオマス原料に遡り得るような上記標識された生成物の同定を可能にする。
【0141】
(バイオマス炭化水素生成物)
本明細書中に記載される任意の生成物は、上記生成物の生物による生産をもたらすようにその生物を形質転換することによって調製され得る。上記生物は、形質転換前または形質転換後において光合成し得る。
【0142】
(生物)
本明細書中の組成物および方法を使用して形質転換され得る生物の例としては、維管束生物および非維管束生物が挙げられる。上記生物は、原核生物または真核生物であり得る。上記生物は、単細胞または多細胞であり得る。
【0143】
光合成する非維管束生物の例としては、蘇苔類(例えば、ゼニゴケ類またはツノゴケ類)が挙げられる。いくつかの例において、上記生物は、ラン藻類である。いくつかの例において、上記生物は、藻類(例えば、大型藻類(macroalgae)または微細藻類)である。上記藻類は、単細胞または多細胞の藻類であり得る。いくつかの例において、上記生物は、紅色植物類、緑藻植物、不等毛植物、黄緑藻植物、灰色藻、クロララクニオン藻、ユーグレナ藻、ハプト藻、クリプト藻、渦鞭毛藻、または植物プランクトンである。
【0144】
例えば、微細藻類のChlamydomonas reinhardtiiは、リモネンを生産するようにリモネンシンターゼをコードするベクターによって形質転換され得る。別の実施形態において、上記微細藻類は、リモネン生産を改良するために、リモネンシンターゼをコードする1つ以上のベクターによって形質転換され得る。
【0145】
上記方法は、微細藻類(C.reinhardtii)を使用して例示され得る。本発明の方法にしたがってポリペプチドまたはタンパク質複合体を発現するための微細藻類の使用は、商業的なもの(Cyanotech Corp.;Kailua−Kona HI)を含む微細藻類の大きい集団が成長し得る利点を提供し、したがって、大量の所望の生成物の生産および、必要に応じて、大量の所望の生成物の単離を可能にする。しかし、例えば、任意の植物の葉緑体における機能的な哺乳動物ポリペプチド(タンパク質複合体を含む)を発現する能力は、そのような植物の作物の生産を可能にし、したがって、大量のポリペプチドを都合よく生産する能力を可能にする。したがって、上記方法は、例えば、大型藻類(例えば、海藻(marine algae)および海藻(seaweed))、ならびに土壌で成長する植物を含む葉緑体を有する任意の植物を使用して実施され得る。
【0146】
用語「植物」は、色素体(特に、葉緑体)を含む真核細胞生物(任意の発育段階における任意のそのような生物を含む)、または植物の切断片、植物細胞、植物細胞培養物、植物器官、植物の種子、および小植物を含む植物の部分をいうために本明細書中で広く使用される。植物細胞は、上記植物の構造的ユニットおよび生理学的ユニットであり、それは、プロトプラストおよび細胞壁を含む。植物細胞は、単離された単一細胞または培養細胞の形態にあり得るか、あるいはより高度に組織化されたユニットの部分(例えば、植物組織、植物器官、または植物)であり得る。したがって、植物細胞は、プロトプラスト、配偶子産生細胞、または植物全体へと再生し得る細胞もしくは細胞のコレクションであり得る。そのようなものとして、複数の植物細胞を含み、かつ植物全体へと再生し得る種子は、本開示の目的ための植物細胞と見なされる。植物組織または植物器官は、種子、プロトプラスト、カルス、または構造的ユニットまたは機能的ユニットへと組織化される植物細胞の任意の他の群であり得る。植物の特に有用な部分としては、収穫可能な部分および子孫の植物の繁殖に有用な部分が挙げられる。植物の収穫可能な部分は、植物の任意の有用な部分(例えば、花、花粉、実生、塊茎、葉、茎、果実、種子、根など)であり得る。繁殖に有用な植物の部分としては、例えば、種子、果実、切断片、実生、塊茎、台木などが挙げられる。
【0147】
本明細書中に記載される方法は、安定に組み込まれたポリヌクレオチドを含むように遺伝的に改変される葉緑体を含む植物を産生し得る(HagerおよびBock,Appl.Microbiol.Biotechnol.54:302−310、2000)。したがって、方法は、1つ以上の異種ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む1つ以上の葉緑体を含むトランスジェニック(トランスプラストミック(transplastomic))植物(例えば、C.reinhardtii)をさらに提供し得、上記異種ポリペプチドは、機能的なタンパク質複合体を形成することに特異的に関連し得るポリペプチドを含む。本明細書中に記載される光合成生物は、生成物を産生するように改変される少なくとも1つの宿主細胞を含み得る。
【0148】
(発現ベクターおよび宿主細胞の形質転換)
本明細書中の生物/宿主細胞は、生成物の生産を改変する(例えば、生成物の生産を増大させる)ように発現ベクターによって形質転換され得る。上記生成物は、上記生物によって天然に生産されても天然に生産されなくてもよい。
【0149】
上記発現ベクターは、1つ以上の同種ヌクレオチド配列もしくは異種ヌクレオチド配列(宿主生物または異なる生物に由来する)および/または1つ以上の自己ヌクレオチド配列(同じ生物に由来する)および/または同種ポリペプチドもしくは異種ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列をコードし得る。藻類宿主細胞中に形質転換され得る異種ヌクレオチド配列の例としては、細菌、真菌、植物、光合成細菌または他の藻類からの遺伝子が挙げられる。藻類宿主細胞中に形質転換され得る自己ヌクレオチド配列の例としては、イソプレノイド合成遺伝子、内在性プロモーターおよびpsbA遺伝子、atpA遺伝子、またはrbcL遺伝子からの5’UTRが挙げられる。いくつかの例において、異種配列は、2つの自己配列または同種配列によって隣接される。同種配列は、宿主細胞中の配列に対して少なくとも50%、60%、70%、80%、または90%の相同性を有する配列である。いくつかの例において、同種配列は、2つの自己配列によって隣接される。第1および第2の同種配列は、異種配列の宿主生物のゲノム中への組換えを可能にする。第1および第2の同種配列は、少なくとも100、200、300、400、または500のヌクレオチド長であり得る。
【0150】
上記発現ベクターは、形質転換される生物における発現に偏ったコドンであるヌクレオチド配列を含み得る。当業者は、所与のアミノ酸を特定するためのヌクレオチドコドンの使用において、特定の宿主細胞によって示される「コドンバイアス」を認識する。理論に束縛されることなく、宿主細胞の好ましいコドンを使用することによって、翻訳の速度は、より大きくなり得る。したがって、宿主細胞における改良された発現のための遺伝子を合成する場合、そのコドンの使用頻度が宿主細胞の好ましいコドンの使用頻度に近づくように遺伝子を設計することが、望まれ得る。上記コドンは、概してA/Tが豊富であり得る(例えば、第3のヌクレオチド位置のコドンにおいてA/Tが豊富である)。代表的に、上記A/Tが豊富なコドンバイアスが、藻類に対して使用される。いくつかの実施形態において、第3のヌクレオチド位置のコドンの少なくとも50%が、AまたはTである。他の実施形態において、第3のヌクレオチド位置のコドンの少なくとも60%、70%、80%、90%、または99%が、AまたはTである。
【0151】
遺伝的に操作された系統の藻類の構築に対する1つのアプローチは、目的の遺伝子を(代表的に、前駆体を燃料生成物または燃料生成物の前駆体に変換し得る酵素)をコードする核酸による形質転換を含む。いくつかの実施形態において、形質転換は、核酸を宿主藻類細胞の任意の色素体(例えば、葉緑体)に導入し得る。形質転換された細胞は、典型的に、外来核酸の導入後に選択培地上に蒔かれる。本方法はまた、スクリーニングのためのいくつかの工程を含み得る。最初に、一次形質転換体のスクリーニングが、代表的に、クローンが外来核酸の適切な挿入を有することを決定するために行われる。適切な組み込みを示すクローンは、遺伝的な安定性を確実にするためにパッチされ(patched)、そして再スクリーニングされ得る。そのような方法論は、形質転換体が目的の遺伝子を含むことを確実にする。多くの例において、そのようなスクリーニングは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって行われる;しかし、当該分野で公知である任意の他の適切な技術が、利用され得る。PCRの多くの異なる方法が、当該分野で公知である(例えば、ネステッドPCR、リアルタイムPCR)。特定の例は、本明細書中に記載される実施例において利用される;しかし、当業者は、他のPCR技術が記載される特定のプロトコルを置換し得ることを認識する。外来核酸の適切な組み込みを有するクローンに対するスクリーニング後、代表的に、クローンは、コードされるタンパク質の存在についてスクリーニングされる。タンパク質発現スクリーニングは、代表的に、ウェスタンブロット分析および/または酵素活性アッセイによって行われる。
【0152】
本発明の方法において有用な組換え核酸分子が、ベクター中に含まれ得る。さらに、上記方法が第2(またはそれ以上)の組換え核酸分子を使用して行われる場合、上記第2の組換え核酸分子もまた、ベクター中に含まれ得る(必要ではないが、ベクターは、第1の組換え核酸分子を含むベクターと同じベクターであり得る)。上記ベクターは、ポリヌクレオチドを葉緑体に導入するのに有用な任意のベクターであり得、そして好ましくは、葉緑体ゲノムDNAとの相同組換えを受けるのに十分である葉緑体ゲノムDNAのヌクレオチド配列(例えば、葉緑体ゲノムDNAの実質的に隣接する約400〜1500以上のヌクレオチドを含むヌクレオチド配列)を含む。葉緑体ベクターおよびベクターとして使用するための葉緑体ゲノムの領域を選択するための方法は、周知である(例えば、Bock、J.Mol.Biol.312:425−438,2001を参照のこと;StaubおよびMaliga,Plant Cell 4:39−45,1992もまた参照のこと;Kavanaghら.,Genetics 152:1111−1122,1999(これらの各々は、参照により本明細書に援用される))。
【0153】
いくつかの例において、そのようなベクターは、プロモーターを含む。プロモーターは、任意の供給源(例えば、ウイルス、細菌、真菌、原生生物、動物)に由来し得る。本明細書で企図されるプロモーターは、光合成生物(光合成する非維管束生物、および光合成する維管束生物(例えば、藻類、顕花植物))に特異的であり得る。本明細書中で使用される場合、用語「光合成する非維管束生物」とは、任意の巨視的な生物または微視的な生物をいい、その生物としては、維管束系(例えば、高等植物において見出される)を有さない、藻類、ラン藻類および光合成細菌が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの例において、上記の核酸は、光合成生物(例えば、藻類)のプロモーターを含むベクター中に挿入される。上記プロモーターは、葉緑体および/または他の色素体における発現のためのプロモーターであり得る。いくつかの例において、上記核酸は、葉緑体ベースである。本明細書中の任意の核酸を葉緑体へ挿入するために企図されるプロモーターの例としては、米国特許出願第2004/0014174号に開示されるプロモーターが挙げられる。上記プロモーターは、構成的プロモーターまたは誘導性プロモーターであり得る。プロモーターは、代表的に、必要な核酸配列を転写の開始部位(例えば、TATAエレメント)の近傍に含む。
【0154】
C.reinhardtiiの葉緑体ゲノム全体は、URL「biology.duke.edu/chlamy genome/−クロロ.html」(「view complete genome as text file」のリンクおよび「maps of the chloroplast genome」のリンクを参照のこと)(これらの各々は、参照により本明細書に援用される)にてワールドワイドウェブ上で一般に公開されている(J.Maul、J.W.Lilly、およびD.B.Stern、未公開の結果;2002年1月28日改訂;GenBank Ace.No.AF396929として公開されている)。一般に、葉緑体ゲノムDNAのヌクレオチド配列は、それが制御配列またはコード配列、特に、相同組換え事象に起因して分裂する場合に葉緑体(例えば、葉緑体ゲノムの複製に対して)または葉緑体を含む植物細胞に対して有害作用をもたらす遺伝子を含む遺伝子の一部ではないように選択される。この点において、C.reinhardtiiの葉緑体ゲノム配列を含むウェブサイトはまた、葉緑体ゲノムのコード領域および非コード領域を示す地図も提供し、したがって、ベクターを構築するのに有用な配列の選択を容易にする。例えば、葉緑体ベクターであるp322は、約143.1kbの位置におけるEco(Eco RI)部位から約148.5kbの位置におけるXho(Xho I)部位まで伸びるクローンである(ワールドワイドウェブ、URL「biology.duke.edu/chlamy genome/クロロ.htmr」において「maps of thechloroplast genome」のリンク、および「140−150kb」のリンクをクリック;また、ワールドワイドウェブ上で直接アクセス可能であるURL「biology.duke.edu/chlam−y/クロロ/chlorol40.html」を参照のこと)。
【0155】
本明細書中の方法またはプロセスの実施において利用されるベクターはまた、上記ベクターにおいて所望の特徴を与える1つ以上のさらなるヌクレオチド配列を含むことができ、そのヌクレオチド配列としては、例えば、ベクターの操作を容易にするクローニング部位、ベクターの複製またはその中に含まれるヌクレオチド配列の転写を指揮する調節エレメント、選択可能なマーカーをコードする配列などの配列が挙げられる。そのようなものとして、上記ベクターは、例えば、1つ以上のクローニング部位(例えば、マルチクローニング部位)を含むことができ、そのクローニング部位は、必要ではないが、異種ポリヌクレオチドが上記ベクター中に挿入され得、かつ所望のエレメントに作動可能に連結され得るように配置され得る。上記ベクターはまた、原核生物の複製起点(ori)(例えば、E.coliのoriまたはコスミドのori)を含むことができ、したがって、所望のように、原核生物宿主細胞、および植物葉緑体における上記ベクターの継代を可能にする。
【0156】
調節エレメントとは、その用語が本明細書中で使用される場合、それが作動可能に連結されるポリヌクレオチドの転写もしくは翻訳またはポリペプチドの局在化を調節するヌクレオチド配列を広くいう。例としては、RBS、プロモーター、エンハンサー、転写終結因子、開始(initiation)(開始(start))コドン、イントロン切除および正しい読み枠の維持のためのスプライシングシグナル、終止コドン(アンバーコドンまたはオーカーコドン)、IRESが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、細胞区画化シグナル(cell compartmentalization signal)(例えば、ポリペプチドにサイトゾル、核、葉緑体膜または細胞膜を標的させる配列)が、挙げられる。そのようなシグナルは、当該分野で周知であり、そして幅広く報告されている(例えば、米国特許第5,776,689号を参照のこと)。
【0157】
本明細書中の任意の発現ベクターは、調節性制御配列(regulatory control sequence)をさらに含み得る。調節性制御配列は、例えば、プロモーター、オペレーター、リプレッサー、エンハンサー、転写終結配列、翻訳を調節する配列、または宿主細胞と適合し、そして核酸分子の発現を制御する他の調節性制御配列を含み得る。いくつかの場合において、調節性制御配列は、転写の開始、伸長、および/もしくは終結を制御し得るか、モジュレートし得るか、またはもたらし得る転写制御配列を含む。例えば、調節性制御配列は、生物において遺伝子もしくは遺伝子産物の転写および翻訳の速度および/または効率を増大させることができ、上記遺伝子または遺伝子産物の発現は、上方制御され、本明細書中に記載される生成物の増大した生産を(直接的か、または間接的に)もたらす。上記調節性制御配列はまた、遺伝子または遺伝子産物の安定性を増大させることによって生成物の生産の増大をもたらし得る。
【0158】
調節性制御配列は、自己または異種性であり得、そして異種性の場合、相同的であり得る。上記調節性制御配列は、産物の発現および生産を促進する酵素である1種以上のポリペプチドをコードし得る。例えば、異種の調節性制御配列は、同じ属の生物の別の種(例えば、別の藻類種)に由来し得、そして藻類中のシンターゼをコードする。別の例において、自己の調節性制御配列は、発現ベクターが発現されるべき生物に由来し得る。
【0159】
用途に依存して、誘導性の発現または構成的な発現をもたらす調節性制御配列が、使用され得る。藻類の調節性制御配列が、使用され得、そしてそれは、核、ウイルス、 染色体外、ミトコンドリア、または葉緑体の起源のものであり得る。
【0160】
適切な調節性制御配列は、発現されるべきヌクレオチド配列と天然に結合しているもの(例えば、天然において藻類由来のヌクレオチド配列と作動可能に連結される藻類プロモーター)を含む。適切な調節性制御配列は、発現されるべき核酸分子と天然に結合していない調節性制御配列(例えば、別の生物種または藻類種のヌクレオチド配列に作動可能に連結される1つの種の藻類プロモーター)を含む。後者の調節性制御配列は、同じ種(例えば、自己)内の別の遺伝子の発現を制御する配列であり得るか、または異なる生物または種(例えば、異種)に由来し得る。
【0161】
推定上の調節性制御配列が適切か否かを決定するために、その推定上の調節性制御配列は、代表的に、容易に検出可能なシグナルを産生するタンパク質をコードする核酸分子に連結される。次いで、その構築物は、標準的な技術によって藻類または他の生物に導入され得、そしてその発現は、モニターされる。例えば、上記核酸分子が、優性の検出可能なマーカーをコードする場合、使用されるべき藻類または生物は、上記マーカーが耐性を提供する化合物の存在下で成長する能力について試験される。
【0162】
いくつかの場合において、調節性制御配列は、プロモーター(例えば、光合成する非維管束生物におけるヌクレオチド配列の発現に適しているプロモーター)である。例えば、上記プロモーターは、例えば、米国特許出願第2006/0234368号および同第2004/0014174号、ならびにHallmann、Transgenic Plant J.1:81−98(2007)に開示される通り、藻類プロモーターであり得る。上記プロモーターは、葉緑体特異的プロモーターまたは核プロモーターであり得る。上記プロモーターは、EF1−α遺伝子プロモーターまたはDプロモーターであり得る。いくつかの実施形態において、上記シンターゼは、EF1−α遺伝子プロモーターに作動可能に連結される。他の実施形態において、上記シンターゼは、Dプロモーターに作動可能に連結される。
【0163】
本明細書中の調節性制御配列は、例えば、コード領域および非コード領域、5’非翻訳領域(例えば、コード領域から上流の領域)、および3’非翻訳領域(例えば、コード領域から下流の領域)を含む種々の位置において見出され得る。したがって、いくつかの例において、自己ヌクレオチド配列または異種ヌクレオチド配列は、1つ以上の3’もしくは5’非翻訳領域、1つ以上のイントロン、または1つ以上のエクソンを含み得る。
【0164】
例えば、いくつかの実施形態において、調節性制御配列は、Cyclotella crypticaアセチル−CoAカルボキシラーゼの5’非翻訳調節性制御配列、またはCyclotella crypticaのアセチル−CoAカルボキシラーゼの3‘非翻訳調節性制御配列を含み得る(米国特許第5,661,017号)。
【0165】
調節性制御配列はまた、キメラポリペプチドまたは融合ポリペプチド(例えば、異種ヌクレオチド配列および異種タンパク質の発現を促進するタンパク質AB、またはSAA)をコードし得る。他の調節性制御配列としては、異種配列の翻訳を促進し得る自己イントロン配列を含む。
【0166】
本明細書中の任意の発現ベクターにおいて使用される調節性制御配列は、誘導性であり得る。誘導性の調節性制御配列(例えば、プロモーター)は、例えば、光によって誘導され得る。調節性制御配列はまた、自己調節可能であり得る。自己調節可能な調節性制御配列の例としては、例えば、内因性のATPレベルまたは上記生物によって産生される生成物によって自己調節されるものが挙げられる。いくつかの例において、上記調節性制御配列は、外来因子によって誘導され得る。他の誘導性エレメントは、当該分野で周知であり、そして本明細書中の使用に適合し得る。
【0167】
本明細書中に記載される調節性制御配列の種々の組成物は、本明細書中に記載される他の特徴によって具現化することができ、そしてそれにと組み合わせられ得る。いくつかの場合において、発現ベクターは、本明細書中に記載される生成物の生産をもたらす、例えば、上方制御するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結される1つ以上の調節性制御配列を含む。いくつかの場合において、発現ベクターは、生成物の生産をもたらす、例えば、上方制御するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結される1つ以上の調節性制御配列を含む。
【0168】
ベクターまたは他の組換え核酸分子は、レポーターポリペプチドまたは他の選択可能なマーカーをコードするヌクレオチド配列を含み得る。用語「レポーター」または「選択可能なマーカー」とは、検出可能な表現型を与えるポリヌクレオチド(またはコードされたポリペプチド)をいう。レポーターは、一般に、検出可能なポリペプチド、例えば、緑色蛍光タンパク質または酵素(例えば、ルシフェラーゼ)をコードし、緑色蛍光タンパク質または酵素は、適切な因子(それぞれ、光の特定の波長またはルシフェリン)と接触した場合に、肉眼または適切な計測手段によって検出され得るシグナルを発生する(Giacomin、Plant Sd.116:59−72、1996;Scikantha、J.Bacteriol.178:121、1996;Gerdes,FEBS Lett.389:44−47、1996;Jefferson、EMBO J.6:3901−3907、1997、fl−グルクロニダーゼもまた参照のこと)。選択可能なマーカーは、一般に、細胞において存在または発現する場合に上記マーカーを含む細胞に対して選択的な優位性(または不利益)(例えば、そうでなければ上記細胞を殺す因子の存在下で成長する能力)を提供する分子である。
【0169】
選択可能なマーカーは、上記マーカーを発現する原核細胞もしくは植物細胞またはその両方を得るための手段を提供し得る、したがって、ベクターの構成成分として有用であり得る(例えば、Bock、前出、2001を参照こと)。選択可能なマーカーの例はとしては、代謝拮抗剤耐性を与えるマーカー(例えば、メトトレキサートに対する耐性を与えるジヒドロ葉酸レダクターゼ(Reiss、Plant Physiol.(Life Sci.Adv.)13:143−149、1994));ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(アミノグリコシドのネオマイシン、カナマイシンおよびパロモマイシン(paromycin)に対する耐性を与える(Herrera−Estrella、EMBO J.2:987−995、1983))、hygro(ハイグロマイシンに対する耐性を与える(Marsh、Gene 32:481−485、1984))、trpB(トリプトファンの代わりにインドールを利用することを細胞に可能させる);hisD(ヒスチジンの代わりにヒスチノールを利用することを細胞に可能させる(Hartman、Proc.Natl.Acad.Sci.、USA 85:8047、1988));マンノース−6−ホスフェートイソメラーゼ(マンノースを利用することを細胞に可能にさせる(WO 94/20627));オルニチンデカルボキシラーゼ(オルニチンデカルボキシラーゼインヒビター(2−(ジフルオロメチル)−DL−オルニチン)に対する耐性を与える(DFMO;McConlogue、1987、In:Current Communications in Molecular Biology、Cold Spring Harbor Laboratory編));およびAspergillus terreus由来のデアミナーゼ(Blasticidin Sに対する耐性を与える(Tamura、Biosci.Biotechnol Biochem.59:2336−2338、1995))が挙げられるが、これらに限定されない。さらなる選択可能なマーカーとしては、除草剤耐性を与えるマーカー(例えば、ホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼ遺伝子(ホスフィノトリシンに対する耐性を与える(Whiteら、Nucl Acids Res.18:1062、1990;Spencerら、Theor.Appl.Genet.79:625−631、1990))、変異体EPSPV−シンターゼ(グリフォセート耐性を与える(Hincheeら、バイオテクノロジー 91:915−922、1998))、変異体アセト乳酸シンターゼ(イミダゾリン耐性またはスルホニル尿素耐性を与える(Leeら、EMBO J.7:1241−1248、1988))、変異体psbA(アトラジンに対する耐性を与える(Smedaら、Plant Physiol.103:911−917、1993))、または変異体プロトポルフィリノーゲンオキシダーゼ(米国特許第5,767,373号を参照のこと)、あるいは除草剤(例えば、グルホシネート)に対する耐性を与える他のマーカー)が挙げられる。選択可能なマーカーとしては、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)または真核細胞に対するネオマイシン耐性およびテトラサイクリン;原核生物(例えば、E.coli)に対するアンピシリン耐性;ならびに植物におけるブレオマイシン耐性、ゲンタマイシン耐性、グリフォセート耐性、ハイグロマイシン耐性、カナマイシン耐性、メトトレキサート耐性、フレオマイシン耐性、ホスフィノトリシン耐性、スペクチノマイシン耐性、ストレプトマイシン耐性、スルホンアミド耐性およびスルホニル尿素耐性を与えるポリヌクレオチドが挙げられる(例えば、Maligaら、Methods in Plant Molecular Biology、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1995、39ページを参照のこと)。
【0170】
レポーター遺伝子は、高等植物の葉緑体において首尾よく使用されており、そして高レベルの組換えタンパク質発現が、報告されている。さらに、レポーター遺伝子は、C.reinhardtiiの葉緑体において使用されているが、ほとんどの場合において、非常に低い量のタンパク質が、生産された。レポーター遺伝子は、多くの生物学的生命体において遺伝子発現をモニターする能力を大きく上昇させる。高等植物の葉緑体において、β−グルクロニダーゼ(uidA、StaubおよびMaliga、EMBO J.12:601−606、1993)、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(nptll、Carrerら、Mol.Gen.Genet.241:49−56、1993)、アデノシル−3−アデニルトランスフェラーゼ(aadA、SvabおよびMaliga、Proc.Natl.Acad.Sci、USA 90:913−917、1993)、およびオワンクラゲGFP(Sidorovら、Plant J.19:209−216、1999)が、レポーター遺伝子として使用されている(Heifetz、Biochemie 82:655−666、2000)。これらの遺伝子の各々は、それらを葉緑体遺伝子発現の有用なレポーターにする特質(例えば、分析の容易さ、感度、またはインサイチュで発現を試験する能力)を有する。これらの研究に基づいて、他の異種タンパク質は、高等植物の葉緑体において発現されている(例えば、昆虫、草食動物に対する耐性を与えるBacillus thuringiensis Cry毒素(Kotaら、Proc.Natl.Acad.Sci、USA 96:1840−1845、1999)、または有望な生物製剤であるヒトソマトトロピン(Staubら、Nat.Biotechnol.18:333−338、2000))。いくつかのレポーター遺伝子は、真核生物の緑色藻類(C.reinhardtii)の葉緑体において発現されており、そのレポーター遺伝子としては、aadA(Goldschmidt−Clermont、Nucl.Acids Res.19:4083−4089 1991;ZergesおよびRochaix、Mol.Cell Biol.14:5268−5277、1994)、uidA(Sakamotoら、Proc.Natl.Acad.Sci、USA 90:477−501、19933、Ishikuraら、J.Biosci.Bioeng.87:307−314 1999)、ウミシイタケルシフェラーゼ(Minkoら、Mol.Gen.Genet.262:421−425、1999)およびAcinetobacter baumanii由来のアミノグリコシドホスホトランスフェラーゼであるaphA6(BatemanおよびPurton、Mol.Gen.Genet 263:404−410、2000)が挙げられる。
【0171】
いくつかの例において、上記ベクターは、E.coliまたはS.cerevisiaeの複製起点のようなエレメントを含む。適切な選択可能なマーカーと組み合わされるそのような特徴は、標的宿主細胞と細菌細胞および/または酵母細胞との間に「シャトルされる(shuttled)」ベクターを可能にする。二次宿主中でシャトルベクターを継代する能力は、上記ベクターのより都合よい操作の特徴を可能にする。例えば、ベクターおよび推定上の挿入された目的とするポリヌクレオチドを含む反応混合物は、日常的な方法を使用して原核生物宿主細胞(例えば、E.coli)へと形質転換され、増幅され、収集され、そして目的の挿入物または構築物を含むベクターを同定するために試験され得る。所望される場合、上記ベクターは、例えば、挿入されたポリヌクレオチドの部位特異的突然変異誘発を行い、次いで、変異した目的のポリヌクレオチドを有するベクターを再び増幅および選択することによってさらに操作され得る。次いで、シャトルベクターが、植物細胞葉緑体中に導入され得、目的のポリペプチドが、発現され得、そして必要に応じて、方法にしたがって単離され得る。
【0172】
ポリヌクレオチドまたは組換え核酸分子は、当該分野で公知である任意の方法を使用して植物葉緑体中に導入され得る。ポリヌクレオチドは、当該分野で公知である種々の方法によって細胞中に導入することができ、そしてある程度、特定の宿主細胞に基づいて選択され得る。例えば、上記ポリヌクレオチドは、遺伝子直接導入法(例えば、エレクトロポレーションまたはパーティクルガンを使用する微粒子銃媒介性(遺伝子銃)の形質転換)、または「ガラスビーズ法(glass bead method)」)を使用するか、あるいは花粉媒介性形質転換、リポソーム媒介性形質転換、傷害もしくは酵素的分解された未熟胚を使用する形質転換、または傷害もしくは酵素的分解された胚形成カルスによって植物細胞中に導入され得る(Potrykus、Ann.Rev.Plant.Physiol.Plant Mol.Biol.42:205−225、1991)。
【0173】
色素体形質転換は、ポリヌクレオチドを植物細胞葉緑体中に導入するための日常的かつ周知である方法である(米国特許第5,451,513号、同第5,545,817号、および同第5,545,818号;WO 95/16783;McBrideら、Proc.Natl.Acad.Sci、USA 91:7301−7305、1994を参照のこと)。いくつかの実施形態において、葉緑体形質転換は、所望のヌクレオチド配列に隣接する葉緑体DNAの領域を導入することを含み、標的葉緑体ゲノム中への外来DNAの相同組換えを可能にする。いくつかの例において、葉緑体ゲノムDNAの1〜1.5kbのフランキングヌクレオチド配列が、使用され得る。この方法を使用して、葉緑体の16S rRNAおよびrps12遺伝子における点突然変異(スペクチノマイシンおよびストレプトマイシンに対する耐性を与える)は、形質転換のための選択可能なマーカーとして利用され得(Svabら、Proc.Natl.Acad.Sci.、USA 87:8526−8530、1990)、そして標的とする葉の100回の照射につき約1回の頻度で安定な同質細胞質の形質転換体を生じ得る。
【0174】
微粒子銃媒介性の形質転換はまた、ポリヌクレオチドを植物細胞葉緑体中に導入するために使用され得る(Kleinら、Nature 327:70−73、1987)。この方法は、塩化カルシウム、スペルミジンまたはポリエチレングリコールによる沈殿によって所望のポリヌクレオチドによってコーティングされる微粒子銃(例えば、金またはタングステン)を利用する。上記微粒子銃の粒子は、デバイス(例えば、BIOLISTIC PD−1000パーティクルガン(BioRad;Hercules Calif.))を使用して植物組織へと高速に加速される。遺伝子銃法を使用する形質転換のための方法は、当該分野で周知である(例えば;Christou、Trends in Plant Science 1:423−431、1996を参照のこと)。微粒子銃媒介性の形質転換は、例えば、種々のトランスジェニック植物種を産生するために使用されており、その植物種としては、ワタ、タバコ、トウモロコシ、雑種ポプラおよびパパイヤが挙げられる。重要な穀類作物(例えば、コムギ、カラスムギ、オオムギ、モロコシおよびコメ)もまた、微粒子銃媒介性の送達を使用して形質転換されている(Duanら、Nature Biotech.14:494−498、1996;Shimamoto、Cutr.Opin.Biotech.5:158−162、1994)。ほとんどの双子葉植物の形質転換は、上記の方法によって可能となる。単子葉植物の形質転換もまた、例えば、上に記載される遺伝子銃方法、プロトプラスト形質転換、部分的に透過処理された細胞のエレクトロポレーション、ガラス繊維を使用するDNAの導入、ガラスビーズ撹拌法(glass bead agitation method)などを使用して形質転換され得る。
【0175】
形質転換の頻度は、劣性のrRNAまたはr−タンパク質の抗生物質耐性遺伝子を優性の選択可能なマーカーによって置換することによって増大し得、そのマーカーとしては、細菌のaadA遺伝子が挙げられるが、これに限定されない(SvabおよびMaliga、Proc.Natl,Acad.Sci、USA 90:913−917、1993)。形質転換後の約15〜20回の細胞分裂サイクルは、一般に、ホモプラスティディック(homoplastidic)段階に到達するために必要とされる。葉緑体がそのゲノムの複数のコピーを含み得ることは、当業者にとって明らかであり、したがって、用語「同質細胞質」または「ホモプラスミー」とは、目的とする特定の遺伝子座の全てのコピーが実質的に同一である状態をいう。色素体発現(遺伝子が各々の植物細胞に存在する環状色素体ゲノムの数千のコピーの全てに相同組換えすることによって挿入される)は、全ての可溶性植物タンパク質の10%を容易に上回り得る発現レベルを許容するために、核によって発現された遺伝子を超える莫大なコピー数の利点を利用する。
【0176】
いくつかの例において、方法は、組換え核酸分子を葉緑体に導入することによって行うことができ、上記組換え核酸分子は、少なくとも1つポリペプチド(例えば、1、2、3、4以上)をコードする第1のポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、第2、第3、第4、第5、第6、第7、第8、第9、第10および/またはそれ以降のポリペプチドに作動可能に連結される。例えば、炭化水素精製経路におけるいくつかの酵素は、上記経路における1つの酵素によって生産される生成物が、一旦生産されると、上記経路における次の酵素に非常に近接しているように、直接的または間接的に連結され得る。
【0177】
葉緑体の形質転換のために、本明細書中の主要な利点は、選択可能なマーカーおよび1種以上の目的とする遺伝子の両方を含む組換え核酸構築物の利用であり得る。代表的に、葉緑体の形質転換は、2つの構築物による同時形質転換によって行われる:第一の構築物は、選択可能なマーカーを含み、そして第2の構築物は目的とする遺伝子を含む。そのような形質転換体のスクリーニングは、複数の理由のために労力および時間を浪費している。第1に、いくつかの形質転換された生物を成長させるために必要とされる時間が、冗長である。第2に、形質転換体は、選択可能なマーカーの存在および目的の遺伝子の両方の存在をスクリーニングされなければならない。代表的に、目的の遺伝子に対する二次スクリーニングは、サザンブロットによって行われる(例えば、PCT/US2007/072465を参照のこと)。
【0178】
葉緑体において、遺伝子発現の調節は、一般に、転写後に生じ、そしてしばしば、翻訳開始の間に生じる。この調節は、葉緑体の翻訳装置および核にコードされる制御因子に依存する(BarkanおよびGoldschmidt−Clermont、Biochemie 82:559−572、2000;Zerges、Biochemie 82:583−601、2000を参照のこと)。上記葉緑体の翻訳装置は、一般に、細菌におけるものと類似し;葉緑体は、70Sリボソームを含み;5’キャップを欠き、そして一般に、3’ポリアデニル化テイルを含まないmRNAを有し(Harrisら、Microbiol.Rev.58:700−754,1994);そして翻訳は、選択的因子(例えば、クロラムフェニコール)によって葉緑体および細菌において阻害される。
【0179】
本明細書中に記載されるいくつかの方法は、コード配列に対するリボソーム結合配列(RBS)の適切な位置決めを利用する。RBSのそのような配置は植物葉緑体における頑強な翻訳を生じること(米国特許出願公開第2004/0014174号(参照により本明細書に援用される)を参照のこと)、およびポリペプチドはそのポリペプチが、代表的に、核遺伝子から発現されるポリペプチドによって横切られる細胞区画を通過せず、したがって、特定の翻訳後修飾(例えば、グリコシル化)に供されないこと(葉緑体においてポリペプチドを発現する利点)が、先に記載されている。そのようなものとして、本発明のいくつかの方法によって生産されるポリペプチドおよびタンパク質複合体は、そのような翻訳後修飾を伴わずに生産されると予想され得る。
【0180】
コードするポリヌクレオチドの1つ以上のコドンは、葉緑体および/または核のコドン利用を反映するように偏向され得る。大部分のアミノ酸は、2つ以上の異なる(縮重)コドンによってコードされ、そして種々の生物が他のコドンよりもむしろ特定のコドンを利用することは、十分に認識される。葉緑体においても利用されるそのような優先的なコドン利用は、本明細書中で「葉緑体コドン利用」と称される。Chlamydomonas reinhardtiiのコドンバイアスが、報告されている。米国特許出願公開第2004/0014174号を参照のこと。C.reinhardtiiにおける発現に偏る、イソプレノイド生合成酵素をコードする核酸の例は、表5〜8に提供される。ネイティブの配列(上記配列が単離された生物におけるもの)に対する同一性の%は、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%以上であり得る。いくつかのベクターは、表5に提供される1種以上の核酸および/またはその核酸に対して約70%の同一性を有する核酸を含む。
【0181】
「偏る(biased)」は、コドンに関して使用される場合、ポリヌクレオチド中のコドンの配列が、上記コドンが標的(その偏りは、例えば、藻類細胞、葉緑体についてのものである)において優先的に使用されるものであるように変更されていることを意味する。葉緑体コドン利用に偏るポリヌクレオチドは、それらが葉緑体コドン利用に偏るように1つ以上のコドンを変更するために、新規に合成され得るか、または日常的な組換えDNA技術(例えば、部位特異的変異誘発法による)を使用して遺伝的に改変され得る。葉緑体コドンバイアスは、タバコと比較して、例えば、藻類葉緑体を含む異なる植物において多様に歪められ得る。一般に、選択された葉緑体コドンバイアスは、上記核酸によって形質転換される植物の葉緑体コドン利用を反映する。例えば、C.reinhardtiiが宿主である場合、上記葉緑体コドン利用は、藻類葉緑体コドン利用を反映するように偏る(第3のコドン位置において約74.6%のATバイアス)。
【0182】
本明細書中に記載される任意の生成物は、生物を形質転換して上記生成物のそのような生物による生産をもたらすことによって調製され得る。生物は、形質転換事象が形質転換された生物の光合成能力を破壊するか、または消失させる(例えば、外来核酸が光合成に必要とされるタンパク質をコードする遺伝子に挿入される)としても、光合成生物であるとみなされる。
【0183】
(改変されるべき経路)
本明細書中の発現ベクターは、本明細書中に記載される生成物の中間体、生成物、前駆体、および誘導体の生産を促進するポリペプチドをコードし得る。例えば、上記発現ベクターは、イソプレノイド経路において中間体、生成物、前駆体、および誘導体の生産を促進するポリペプチドをコードし得る。
【0184】
イソプレノイド、またはテルペノイドは、テルペンに関連する有機化合物の群である。テルペンは、代表的に、イソプレン単位に由来する。イソプレン単位は、5個の炭素の単位(C5)である。テルペンは、イソプレン単位の数によって分類される(例えば、ヘミテルペン(C5)、モノテルペン(C10)、セスキテルペン(C15)、ジテルペン(C20)、トリテルペン(C30)、テトラテルペン(C40)、およびポリテルペン(Cn(「n」は45以上である)))。テルペンは、テルペンの誘導体(例えば、イソプレノイド)を形成するように、改変(例えば、酸化、メチル基の除去など)され得る炭化水素または転位したその炭素骨格である。イソプレノイドは、同じく他のステロイドおよび脂質も含む。
【0185】
テルペン前駆体は、2つの経路によって産生されると考えられる。メバロン酸経路、またはHMG−CoAレダクターゼ経路は、ジメチルアリルピロリン酸(DMAPP)およびイソペンチルピロリン酸(IPP)(テルペンに対する通常のC5前駆体)を産生する。非メバロン酸経路は、DMAPPおよびIPPを形成する代替経路である。DMAPPおよびIPPは、より高次のイソプレンが形成されるゲラニル−ジホスフェート(GPP)、または他の前駆体(例えば、ファルネシル−ジホスフェート(FPP)、ゲラニルゲラニル−ジホスフェート(GGPP))を形成するように縮合され得る。
【0186】
本明細書中の発現ベクターは、例えば、チオラーゼ、HMG−CoAシンターゼ、HMG−CoAレダクターゼ、メバロン酸キナーゼ、ホスホメバロン酸キナーゼ、およびメバロン酸−5−ピロリン酸デカルボキシラーゼのようなメバロン酸経路において役割を有するポリペプチドをコードし得る。他の実施形態において、上記ポリペプチドは、非メバロン酸経路における酵素である(例えば、DOXPシンターゼ、DOXPレダクターゼ、4−ジホスファチジル−2−C−メチル−D−エリスリトールシンターゼ、4−ジホスファチジル−2−C−メチル−D−エリスリトールキナーゼ、2−C−メチル−D−エリスリトール2,4,−シクロジホスフェートシンターゼ、HMB−PPシンターゼ、HMB−PPレダクターゼ、またはDOXPレダクトイソメラーゼ)。
【0187】
他の例において、発現ベクターは、例えば、シンターゼをコードする配列のような、イソプレノイド経路におけるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み得る。上記シンターゼは、C10シンターゼ、C15シンターゼ、C20シンターゼ、C30シンターゼ、またはC40シンターゼであり得る。いくつかの実施形態において、上記シンターゼは、ボトリオコッセンシンターゼ、リモネンシンターゼ、1,8シネオールシンターゼ、α−ピネンシンターゼ、カンフェンシンターゼ、(+)−サビネンシンターゼ、ミルセンシンターゼ、アビエタジエンシンターゼ、タキサジエンシンターゼ、ファルネシルピロリン酸シンターゼ、アモルファジエンシンターゼ、(E)−α−ビサボレンシンターゼ、ジアポフィトエンシンターゼ、またはジアポフィトエンデサチュラーゼである。シンターゼおよびそれらの配列の例は、表2に記載される。
【0188】
【表2−1】
【表2−2】
【0189】
上記シンターゼはまた、β−カリオフィレンシンターゼ、ゲルマクレンAシンターゼ、8−エピセドロールシンターゼ、バレンセンシンターゼ、(+)−δ−カジネンシンターゼ、ゲルマクレンCシンターゼ、(E)−β−ファメセン(famesene)シンターゼ、カスベン(casbene)シンターゼ、ベチスピラジエン(vetispiradiene)シンターゼ、5−エピ−アリストロケンシンターゼ、アリストロケンシンターゼ、α−フムレン、(E,E)−α−ファルネセンシンターゼ、(−)−β−ピネンシンターゼ、γ−テルピネンシンターゼ、リモネンシクラーゼ、リナロールシンターゼ、(+)−ボルニルジホスフェートシンターゼ、レボピマラジエン(levopimaradiene)シンターゼ、イソピマラジエンシンターゼ、(E)−γ−ビサボレンシンターゼ、コパリルピロリン酸シンターゼ、カウレンシンターゼ、ロンギホレンシンターゼ、γ−フムレンシンターゼ、6−セリネンシンターゼ、β−フェランドレンシンターゼ、テルピノレンシンターゼ、(+)−3−カレンシンターゼ、syn−コパリルジホスフェートシンターゼ、α−テルピネオールシンターゼ、syn−ピマラ−7,15−ジエンシンターゼ、ent−サンダラコピマラジエンシンターゼ、スターナー(sterner)−13−エンシンターゼ、E−β−オシメン、S−リナロールシンターゼ、ゲラニオールシンターゼ、γ−テルピネンシンターゼ、リナロールシンターゼ、E−β−オシメンシンターゼ、エピ−セドロールシンターゼ、α−ジンギベレンシンターゼ、グアイアジエンシンターゼ、カスカリラジエンシンターゼ、シス−ムウロラジエンシンターゼ、アフィジコラン−16b−オールシンターゼ、エリザベタトリエン(elizabethatriene)シンターゼ、サンダロール(sandalol)シンターゼ、パチュロールシンターゼ、ジンザノールシンターゼ、セドロールシンターゼ、スカレオール(scareol)シンターゼ、コパロールシンターゼ、またはマノオールシンターゼであり得る。
【0190】
本明細書中に記載される方法のために利用される経路は、サイトゾル、色素体(例えば、葉緑体)またはその両方に存在する酵素を含み得る。特定の実施形態の酵素をコードする外来の核酸は、コードされる酵素がサイトゾルまたは色素体あるいはその両方において活性であるように宿主細胞中に導入され得る。いくつかの実施形態において、1つの細胞内区画(例えば、サイトゾル)に存在する天然に存在する酵素は、宿主細胞の形質転換後に、異なる細胞内の場所(例えば、葉緑体)、または天然に存在する場所および天然に存在しない場所の両方において発現され得る。
【0191】
この概念を例示し、そして単なる例として、光合成する非維管束微細藻類種は、イソプレノイド(例えば、リモネン(特殊化学工業および石油化学工業において価値の高い分子))を生産するために遺伝的に操作され得る。リモネンは、水素原子および炭素原子のみから構成される純粋な炭化水素であるモノテルペンである。リモネンは、種Chlamydomonas rheinhardiiにおいて天然に生産されない。これらの微細藻類におけるリモネンの生産は、異種酵素リモネンシンターゼを発現するように微細藻類を操作することによって達成され得る。リモネンシンターゼは、テルペン前駆体のゲラニルピロリン酸をリモネンへと変換し得る。リモネンとは異なり、ゲラニルピロリン酸は、微細藻類の葉緑体において天然に存在する。リモネンシンターゼの発現は、リモネンシンターゼをコードする異種遺伝子を微細藻類の葉緑体ゲノムへ挿入することによって達成され得る。次いで、微細藻類の改変された系統は、リモネン遺伝子が全ての子孫の葉緑体ゲノムにおいて安定に維持されることを確実にするために同質細胞質にされる。微細藻類は、挿入された遺伝子が葉緑体ゲノムの全てのコピーにおいて存在する場合、遺伝子に対して同質細胞質である。葉緑体がそのゲノムの複数のコピーを含み得ることは、当業者に明らかであり、したがって、用語「同質細胞質」または「ホモプラスミー」とは、目的の特定の遺伝子座の全てのコピーが実質的に同一である状態をいう。色素体発現(遺伝子が各々の植物細胞に存在する環状色素体ゲノムの数千のコピーの全てに相同組換えすることによって挿入される)は、全ての可溶性植物タンパク質の10%を容易に上回り得る発現レベルを許容するために、核によって発現された遺伝子を超える莫大なコピー数の利点を利用する。
【0192】
(発現)
葉緑体は、光合成生物の増殖性オルガネラであり、そしておよび多くの量のタンパク質合成の部位である。本明細書中の任意の発現ベクターは、葉緑体発現に選択的に適合され得る。高等植物からの多くの葉緑体プロモーターは、KungおよびLin,Nucleic Acids Res.13:7543−7549(1985)に記載されている。遺伝子産物は、葉緑体において発現ベクターから発現され得る。発現ベクターによってコードされる遺伝子産物はまた、葉緑体標的化配列によって葉緑体を標的とし得る。例えば、発現ベクターまたは発現ベクターによってコードされる遺伝子産物に葉緑体を標的させることは、調節性制御配列および燃料分子の生産を許容または改良するタンパク質またはペプチドをコードする配列によって提供される効果をさらに上昇させ得る。
【0193】
本明細書中に記載される葉緑体標的化の種々の組合せは、具現化され得、そして本明細書中に記載される他の特徴と組み合わせられ得る。例えば、テルペンシンターゼをコードするヌクレオチド配列は、葉緑体標的化配列をコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結され得る。宿主細胞は、葉緑体を標的させられたリモネンシンターゼをコードする発現ベクターによって形質転換され得、したがって、リモネンシンターゼをコードするが葉緑体標的化配列をコードしない発現ベクターによって形質転換された宿主細胞と比較して、より多くのリモネンシンターゼを生産し得る。増大したリモネンシンターゼ発現は、より少なく生産する宿主細胞と比較して、より多くのリモネンを生産し得る。
【0194】
なお別の例において、上記生物によって天然に生産される前駆体を基質として使用することにより上記生物によって天然に生産されない生成物(例えば、燃料生成物、芳香生成物、殺虫剤生成物)を生産する酵素をコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクターは、葉緑体を標的とする。酵素に葉緑体を標的とさせることによって、上記生成物の生産は、宿主細胞と比較して増大し得、上記酵素は、発現されるが、葉緑体を標的としない。理論に束縛されることなく、これは、葉緑体において生産される増大した前駆体に起因し得、したがって、より多くの生成物は、導入されたヌクレオチド配列によってコードされる酵素によって生産され得る。
【0195】
(方法)
生成物(例えば、燃料生成物、芳香生成物、殺虫剤生成物)は、本明細書中の核酸の1つ以上によって形質転換される非維管束生物を成長させる工程/培養する工程を含む方法によって生産され得る。本明細書中の方法は、生物を形質転換する工程をさらに含み得る。形質転換は、当該分野で公知であるか、または本明細書中に記載される任意の方法を使用して起こり得る。本明細書中の方法は、上記生物によって生産される生成物を収集する工程をさらに含み得る。
【0196】
本明細書中の方法は、無機炭素の供給源(例えば、煙道ガス)を生物に提供する工程をさらに含み得る。いくつかの例において、上記無機炭素供給源は、上記生成物(例えば、燃料生成物)を作製するのに必要な炭素の全てを提供する。上記成長させる工程/培養する工程は、好ましくは、適切な培地(例えば、ミネラルおよび/またはビタミンを有するもの)において生じる。
【0197】
関係するなお異なる別の態様において、生成物(例えば、燃料生成物、芳香生成物、殺虫剤生成物)を生産するための方法は、発現ベクターによって光合成生物を形質転換する工程、上記生物を成長させる工程;および上記生物からの生成物を収集する工程を含む。上記発現ベクターは、代表的に、本明細書中に記載される発現ベクターであり、そして上記光合成生物による分子の生産を増大させる強化、または可能にする強化のいずれかによって、さらなる生合成能力を生物に付加するか、上記生物内の既存の生合成経路を改変するために特異的に使用される。
【0198】
本明細書中の方法は、生成物(例えば、燃料、芳香、および殺虫剤)を産生するのに有用である遺伝子を選択する工程、そのような遺伝子によって光合成生物の細胞を形質転換する工程、および上記生成物が生産されることを可能にするのに適した条件下でそのような生物を成長させる工程を含む。本明細書中の使用のための生物は、従来の発酵バイオリアクターにおいて培養され得、発酵バイオリアクターとしては、バッチ、供給バッチ、細胞の再利用、および連続発酵槽が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、それらは、光バイオリアクターによって成長し得る(例えば、米国特許出願公開第20050260553号;米国特許第5,958,761号;米国特許第6,083,740号を参照のこと)。培養はまた、振盪フラスコ、試験管、マイクロタイターディッシュ、およびペトリ皿において行われ得る。培養は、上記組換え細胞に適した温度、pHおよび酸素含量において行われる。そのような培養条件は、当業者において周知である。
【0199】
宿主生物はまた、陸地(例えば、埋立地)において成長し得る。いくつかの場合において、宿主生物は、CO2を産生するエタノール生産プラントまたは他の施設または領域(例えば、都市、高速道路など)の近傍で成長する。そのようなものとして、本明細書中の方法は、炭素クレジットをエタノールプラントまたは他の施設あるいはCO2を産生する領域に販売するためのビジネス方法を企図する一方で、その方法は、上記エタノール生産プラントの近傍で本明細書中に記載される改変された生物の1種以上を成長させることによって燃料を作製する。
【0200】
さらに、上記生物は、屋外の開放水域(例えば、池、大洋、海、川、ウォーターベッド(waterbed)、沢水、浅瀬、湖、溜池など)において成長し得る。水において成長する場合、上記生物は、レゴ様(lego−like)粒子からなるハロー様(halo like)物体に含まれ得る。ハロー物体は、上記藻類を取り囲み、そしてその藻類を屋外の日光にその藻類が維持する間に地中の水からの養分を保持することを可能にする。
【0201】
いくつかの例において、生物は、容器中で成長し得、各容器が1または2あるいは多数の生物を含む。上記容器は、水に浮かぶように構成され得る。例えば、容器は、空気と水との組合せによって満たされて上記容器および上記宿主生物を浮いた状態にし得る。したがって、淡水において成長するのに適する宿主生物は、塩水(例えば、大洋)において成長でき、そして逆もまた同様である。この機構は、上記容器に対する任意の損傷が存在する場合、上記生物の自動的な死を可能にする。
【0202】
いくつかの例において、複数の容器は、上に記載されるハロー様構造内に含まれ得る。例えば、100個、1,000個、10,000個、100,000個、または1,000,000個までの容器が、1平方メートルのハロー様構造中に配置され得る。
【0203】
いくつかの実施形態において、上記生成物(例えば、燃料生成物、芳香生成物、殺虫剤生成物)は、上記生物を収穫することによって収集される。次いで、上記生成物は、上記生物から抽出され得る。
【0204】
いくつかの実施形態において、上記生成物(例えば、燃料生成物、芳香生成物、殺虫剤生成物)の発現は、誘導性である。上記生成物は、発現されるように誘導され得る。発現は、光によって誘導可能である。なお他の実施形態において、上記生成物の生産は、自動調節可能である。上記生成物葉、フィードバックループを形成し得、上記生成物(例えば、燃料生成物、芳香生成物、殺虫剤生成物)が特定のレベルに到達する場合、上記生成物の発現は、阻害され得る。他の実施形態において、上記生物の代謝産物のレベルは、上記生成物の発現を阻害する。例えば、上記生物によって生産される内在性ATPは、上記産物を発現するための増大したエネルギー生産の結果として、上記産物の発現を阻害するフィードバックループを形成し得る。なお別の実施形態において、上記生成物の生産は、例えば、光または外来因子によって誘導可能であり得る。例えば、上記宿主生物において生成物の生産を達成するための発現ベクターは、外来因子によって活性化または不活性化される誘導性の調節性制御配列を含み得る。
【0205】
本明細書中に記載される方法は、本明細書中に記載される任意の燃料生成物を作製する新規の遺伝子/発現ベクターをスクリーニングするための方法に関連し得る。そのような方法は、(1)核酸の候補発現ベクターを光合成生物中に挿入する工程、(2)それらから生産される推定上の燃料生成物を収集する工程、(3)上記推定上の燃料生成物の特徴を決定するため、およびその燃料生成物が燃料生成物として使用され得るか否かを決定するために質量分析器に上記推定上の燃料生成物を適用する工程を含む。いくつかの実施形態において、工程(2)は、公知の燃料生成物、および候補発現ベクターが候補発現ベクターを有さない光合成生物と比較して上記燃料生成物の生産を増大させるか否かということを収集する工程を含み得る。
【0206】
本開示は、以下の実施例においてさらに例示されるが、いずれかの手段に限定されると解釈されるべきではない。示されるデータをもたらすための実験的手順はは、以下でより詳細に考察される。本開示は、例示的な様式で記載されており、そしてそれは、使用される用語法が限定ではなく記述としての性質を意図していることが理解される。
【実施例】
【0207】
(実施例1)
上記セスキテルペン、クパレンのクラッキングを、本明細書中に提供される上記方法によって達成した。この例において、10員環モレキュラーシーブ触媒組成物を、クパレンの接触クラッキングを実施するために選択した。ゼオライトは、約27/1のSiO2/Al2O3のZSM−5型ゼオライトの比較的高いアルミナ含量を有するSN27として公知であるZSM−5材料であった。この材料は、使用する前にアンモニウムカチオンによって交換し、次いでパルス反応器中で約500℃においてか焼することによって上記プロトン形態に変換した。
【0208】
パルス反応器を、本明細書中に記載される生物に由来する炭化水素の触媒反応を研究するために構築した。設計基準は、信頼性のある結果をもたらすために必要である反応物の量を最小化し、そして上記生成物および生成物の分布の評価を可能にすることを含む。図1Aに示すように、上記パルス反応器10は、30cmの長い石英管20から構築され、1000℃よりも高い温度に耐え得る。上記石英管は、その各末端に気体入口24および気体出口28を備える。触媒サンプル(示さない)を支持するために使用されるフリットディスク30を中央に有する。石英ウール40を、上記触媒を保持するために上記反応器において上記触媒の上端および下端に配置する。上記上端のOリングコネクター44は、シリンジ注入ポート50を許容し、そして上記下端に別のOリング接続部60は、取り外し可能なU字トラップ70を接続するために使用する、必要に応じて、さらなる管80を、上記Oリングにおける上記生成物の凝縮を妨げるために上記Oリング接続部60に取り付け得る。主要な管20を管状炉に配置し得、そして温度制御器(示さない)を取り付ける。図1Bは、運転中の上記パルス反応器を示す概略図である。簡潔に言うと、キャリアガスの流出量を、代表的に、圧力調節器および流量調節器を通して提供する。キャリアガスの流れは、上記シリンジ注入ポートを通過し、上記管を下り、上記触媒サンプル上を通過し、そして上記トラップに入る。上記キャリアガスは、上記炭化水素反応物を上記触媒に運び、そして必要に応じて特定の反応雰囲気を提供する。例えば、上記キャリアガスは、ヘリウムまたは窒素(不活性雰囲気)、水素(還元雰囲気)、あるいは酸素(酸化雰囲気)であり得る。上記触媒サンプルを、反応物のパルスの導入前に上記任意の所望の雰囲気、および任意の温度で前処理し得る。上記反応器を、炉の中で所望の反応温度にし、そして少量の上記炭化水素反応物を、反応温度でこの「パルス」を上記触媒に運ぶ流れる蒸気に注入する。反応生成物を収集するために、上記下端のU管トラップ70を、液体窒素を備える冷却トラップに浸す。上記触媒反応の生成物を、上記U字管トラップにおいて凍結し、そして上記U字管トラップを取り外し、溶媒(例えば、メタノール)によってそのU字管トラップを洗浄することによって回収され得る。次いで、上記生成物は、生成物種の定量的測定のためにGC/MSそして/または定量的測定のためにFID検出器を備えるGCによって分析され得る。上記GCシステムおよびGC/MSシステムの両方において、プロフィールをプログラムする同一のカラム温度を有する同一のクロマトグラフィーカラムが、使用される。これらは、50m PONAキャピラリーカラムであり、そしてスプリット注入器が、両方のデバイスにおいて使用される。
【0209】
クレパンは、高い沸点(約275℃)を有し、したがって分析のためにクロマトグラフィー手順の調節を必要とし得るようなC15分子である。GC/MSシステムを、クラッキング生成物の分析のために使用した。
【0210】
クパレンクラッキングの接触クラッキングについての実験を、SN27の完全にプロトン化した形態において行った。上記クラッキングの条件は、500℃であり、そして上記クパレンを、25μLパルスでヘリウムキャリアガス(100cc/分)と一緒にパルス反応器に提供した。クパレンのクラッキング生成物への変換は、100%に近いものであり、そして主な生成物は、トルエン、ベンゼン、キシレン、エチルベンゼン、およびより重質な芳香族化合物であった。いくつかの芳香族化合物(例えば、ベンゼンおよびキシレン)を回避するために、クラッキングをまた、より低い温度のクラッキングの条件下(450℃、400℃、350℃、および300℃)で行った。異なる温度について得られた種々のクラッキング生成物の概要を、図1Cに示す。
【0211】
(実施例2)
LZY−72は、しばしばクラッキング触媒として使用されるUnion Carbide Y型ゼオライトである。この実施例において使用する触媒組成物を、概してナトリウム形態であるLZY−72ベースによって開始し、上記ベースを、NH4NO3水溶液でイオン交換し、上記ゼオライトのアンモニウム形態を生じた。加熱において、上記アンモニウムゼオライトは、アンモニアの排除によって上記プロトン形態に変換する。上記ゼオライトのプロトンは、強力な固体酸として作用する。Y型ゼオライトは、約13Åの自由な直径を有する大きく球状の3次元の孔ネットワーク開口する約8.6Åの口径を有する。
【0212】
第2の触媒、すなわちSN27は、ドイツのVAW−AGによって製造されたZSM−5ゼオライトベース材料である。これは27/1のSiO2/Al2O3比を有する。このゼオライトはナトリウム型でも供給され、類似のアンモニウム交換手順と、それに次ぐ加熱工程を用いて、それを強酸に変換した。ZSM−5ゼオライトは、約5.5Åの孔径を有するおおまかに円筒形状である2次元チャネル系により特徴付けられる。
【0213】
セスキテルペンのクラッキング、この実施例では、クパレンのクラッキングは、クパレンを上記SN27触媒と接触させることで実行し、上記プロセスの結果生じた生成物を図2Aに要約した。図2Aに示すように、高いクパレン転化率が高温(450〜500℃)で得られ、トルエンが主成分であり、より少量のベンゼン、キシレン類、およびエチル−メチルベンゼンが付随していた。
【0214】
上記LZY−72触媒を用い、クパレンを、図2Bで要約されるように、はるかに低い温度にて、高オクタン価成分へとクラッキングした。LZY−72触媒を用いたクパレンのクラッキングからの全ての生成物中の主成分はトルエンであった。キシレンおよびベンゼン誘導体はより高温にて選択的に生成され、これは上記SN27触媒に対する上記結果に類似した。低い温度では、シクロペンタンおよびシクロヘキサンの誘導体が、非常に少ないベンゼンを伴うかなりの量で生成され、これは混合に適し得るかまたは燃料生成物として適し得る高オクタン燃料生成物または燃料成分であることを示した。図2C、図2D、および図2Eは、各々200C、250C、および300Cでの上記LZY−72ゼオライトを用いたクパレンのクラッキングからの組成物を示す。括弧内の数字は様々な成分についてのオクタン価の範囲を示す。
【0215】
クパレンのクラッキングからの上記生成物の水素−炭素(H/C)比もまた観察した。反応物のクパレンは、C15H22であり、H/C比は1.47である。クパレンを正確にその2つの基本環にクラッキングした場合、上記生成物は、54.5%のトリメチルシクロペンテン、C8H14、および45.5%のトルエン、C7H8であり、この混合物は上記親分子と同一のH/C比1.47を有するはずである。しかし、本実施例のクラッキング生成混合物は、トリメチルシクロペンテンの代わりに、トリメチルシクロペンタン類およびジメチルシクロヘキサン類を含む。上記飽和ナフテン類は上記不飽和ナフテン類よりも高いH/C比を有するので、発明者らは上記反応物よりも、生成物全体は、より高いH/C含有量を含むと予想するかもしれない。結果、上記反応物は水素の追加を必要とするであろう。しかしながら、図2Bに示す実際の生成物の測定されたH/C比は1.43であり、これは水素の追加無しで可能である。なぜならば、実際のトルエン重量分率(62.1%)は45.5%を超過しているからである。従って、クラッキング生成物は、例えば、ガソリンまたはジェット燃料等の燃焼燃料生成物に適切である高オクタン生成物を含む。
【0216】
また、さらなるクパレンは、殆どの温度で、上記SN27触媒と比較して、LZY−52触媒を用いてより少ない芳香族化合物を伴ってクラッキングした。この差は、孔サイズにおける差に由来し得る。SN27は約5.5Åの孔径を有し、孔構造は芳香環を許容することは公知であるが、クパレンのサイズおよび形状は、上記孔に適合するには僅かに大き過ぎる場合がある。SN27を用いる接触クラッキングのために高温が必要であるようにみえるが、上記選択性は高温で悪影響を被る。約8.6Åの孔を有するLZY−52は上記クパレン分子をより良く収容することが可能であるようである。
【0217】
上記実施例の別の例において、上記生成物中には測定出来ないアルキルシクロペンテン類またはアルキルシクロヘキセン類が存在し、これらは、ガソリン等の燃料生成物中では所望され得ない。このような不飽和化合物は、場合によっては許容できるが、ガソリン中の大部分において反応性に困難を来たし得る。ベンゼン、すなわちガソリン等の燃料生成物中の別の所望されない分子もまた、一部の例において、測定可能な量では存在しなかった。
【0218】
(実施例3)
ゼオライトβをPQ Catalysts(現在は、Zeolyst Internationalの一部である)から得た。この材料は、Valfor CP811BL−25として公知である。これは、約25のSiO2/Al2O3比を有し、酸性の(十分にプロトン化した)形態で供給された。上記ゼオライトβを、粉末をペレットに入れ、すり鉢および乳棒で砕き、篩にかけることで大きさがばらばらの粉末を20〜40メッシュの粒子に変換して、その後、そのパルス反応器に充填した。
【0219】
実施例2において証明されたゼオライトYに類似して、ゼオライトβは、12員環の、3次元孔系を有する。ゼオライトYとは異なり、ゼオライトβは、はるかに高いSiO2/Al2O3比において合成可能である。これはより低密度のプロトン部位を生じるが、各々個々の部位は、一般的に、ゼオライトβにおいてより強い。
【0220】
クパレンをクラッキングするプロセスを、接触クラッキングの条件において、パルス反応器中で実行し、上記クパレンをゼオライトβと接触させた。高クパレン転化率が、200℃程度の温度での条件において観察され、トルエンは、200℃から500℃までの用いられる全ての温度において主生成物であった。図3Aは、ゼオライトβ(Valfour CP811BL−25)触媒を用いるクパレンクラッキングおよびそれから得られる生成物の温度感受性を詳述する。図3Bおよび3Cは、200および250℃にてゼオライトβ(Valfour CP811BL−25)触媒を用いるクパレンクラッキングの生成物の詳細を示す。括弧内の数字は、種のオクタン価を示す。異なる異性体が異なるオクタン価を有する場合には、範囲が示される。
【0221】
(実施例4)
ELZ−Lゼオライトのアンモニウム形態(Linde Molecular Sieve)を、カリウム形態で出発して調製した。上記ゼオライトの10gのカリウム形態を、10gの酢酸アンモニウムを含む50ccの水溶液中でスラリー状にした。混合物を暖め、一晩攪拌し、次いで、その溶液を濾過し、このプロセスを2度繰り返した。この材料を使用前に125℃で一晩乾燥させた。微小天秤脱離実験は、500℃での乾燥の後、材料が強いプロトン含有物であることを示した。
【0222】
クパレンのクラッキングを、パルス反応器において実行し、上記クパレンをELZ−Z触媒組成物と接触させた。上記クラッキング生成物をGCおよびGC/MSによって分析した。クロマトグラムは、特により低温にて様々なクラッキング生成物を示した。上記クロマトグラムの最も広いピーク面積の少なくとも1%を有するピークのみを分析した。無視したピークは、各々約0.3%、クロマトグラムでの全てのピークの総数の面積に相当する。保持したピークを、NIST MS指紋データベースを用いたライブラリ検索によって同定した。
【0223】
ELZ−L触媒を用いたクパレンのクラッキングは、図4に示すように、試験された全ての温度にて、主にトルエンおよびナフテン類(環状アルカン類)を生成した。より高いクラッキング温度は、ナフテン類および一部のトルエンを犠牲にして、キシレン類(ジメチルベンゼン)および他のベンゼン誘導体(トリメチルベンゼン、エチルベンゼン、メチルイソプロピルベンゼン)の生成を向上させた。生成物の1%未満はベンゼンであった。オレフィンが、250℃および490℃でのみ、各々、クラッキング生成物の1%および9%を構成した。かなりの量のナフタレン類(C10+芳香族化合物)または酸素化物(酸素含有分子)は生成されなかった。
【0224】
ELZ−L触媒は、実施例2および実施例3において示されるLZY−72およびゼオライトβ触媒に類似したクラッキング生成物を生じた。特に、LZY−72およびELZ−Lはトルエンおよびナフテン類の類似した量を生成した。しかしながら、LZY−72触媒は、対応する温度にて、ELZ−Lよりも、より多くのキシレンおよびベンゼンを生成したが、LZY−72はまた、250℃および300℃にて、より良いクパレンの転化率を有した。ゼオライトβは、400℃およびそれ以下の温度にて、ELZ−Lよりも、よりトルエンを生成した。LZY−72と同様に、ゼオライトβもまた、同程度の温度にて、ELZ−Lよりも、よりキシレンおよびベンゼンを生成した。ゼオライトβもまた、400℃およびそれ以上の温度にて、ナフタレン類を生成し、その一方で、LZY−72もELZ−Lも、いずれの温度でも、著しい量のナフタレンを生成しなかった。ゼオライトβと比較して、ELZ−Lは300℃またはそれ未満の温度にてクパレンの乏しい転化率しか示さなかった。
【0225】
ゼオライトβ、LZY−72、およびELZ−Lでのクパレンのクラッキングは、本実施例ならびに実施例2および実施例3において証明されるように、30%以上、通常は、50%かそれ以上の実質的な量のトルエンを生成した。高温(450+℃)にて、キシレン類は、約20%にて、二番目の最も豊富な生成物であった。クラッキング温度を200℃〜300℃に低下すると、LZY−72およびELZ−L触媒を用いて、約30%のナフテン類を生成した。適度な温度はまた、ベンゼンおよびオレフィンの生成を低減させた。クパレンのクラッキングのための大きな孔モレキュラーシーブの3つ全ては、クパレンを高オクタン燃料生成物、成分、または添加物にクラッキングするための最適な候補であると思われる。
【0226】
(実施例5)
藻類から抽出された油を、図5Aに示すような設定を用いて、パルス反応器内でクラッキングした。未使用のゼオライトβ触媒を、本明細書に記載されるように用いて、各々をクラッキングの実験に供し、使用の前に乾燥させた。上記クラッキングの実験を、500℃、450℃、400℃、350℃、および300℃で実行した。上記クラッキング生成物をGC/MSによって分析した。保持時間とNIST MS指紋データベースを用いたライブラリ検索との組み合わせによってピークを同定した。MS指紋またはGC保持時間によって同定され得なかったピークを不明の要素として表示した。
【0227】
油をCO2を介して藻類から抽出し、第1の粗サンプルを準備した。粗藻類油の一部をRBDプロセスによって精製し、第2の精製されたサンプルを準備した。各サンプルを、500℃、450℃、400℃、および350℃のクラッキング条件温度でクラッキングした。
【0228】
上記粗藻類油を、本明細書に記載のプロセスを用いて、図5Bに示すように、約等量のパラフィン類、オレフィン類、C8−C14芳香族化合物、およびナフタレン類までクラッキングし、ここで0.1gの粗藻類油を、様々な温度にて、0.1gのゼオライトβと接触させてクラッキングした。C4−C13パラフィン類およびナフタレン類は、平均して19%の生成物となり、他方で、ナフテン類およびオレフィン類は平均して16%となった。メチルブタンは全ての温度にて主生成物であり、生成物の約9%を構成した。パラフィン、ナフテン、およびオレフィン生成は、クラッキング温度が上昇するにつれて減少した。ベンゼン、トルエン、キシレン、およびC9−C14芳香族化合物含有量はクラッキング温度と共に上昇した。ナフタレン生成は400℃でピークを迎えた。中間構造物の酸素化物は全ての温度にて生成物の1%未満であった。結果として、水が重要な反応生成物と予期されたが、しかし、水はこれらの特定の手順を用いて定量化されなかった。350℃にて不明の要素が、18個のピークを同定できなかったことで生じ、各々は総濃度に対して0.1%〜0.5%の間で相当した。
【0229】
図5Bはまた、標準のガソリンスタンドから取られた87、89、および91オクタンガソリンの成分を示す。石油のガソリンと比較して、粗藻類抽出からの生成物は、著しく少ないパラフィン類およびさらなるナフタレン類を含有した。ガソリンもまた、観察された、クラッキングした藻類油生成物よりも、より小さい分子を有する傾向があった。例えば、ガソリン中のパラフィン類はC4−C10であったが、クラッキング生成物中のパラフィンはC13まで及んだ。この傾向は、ナフテン類、オレフィン類、およびC8−C14芳香族化合物にも当てはまった。
【0230】
藻類油の第2のサンプルを、実施例のプロセスによってクラッキングし、ここで第2のサンプルを、0.1gのゼオライトβに対して0.1gの第2のサンプルをクラッキングする前に、RBDプロセスによって精製した。図5Cは、パラフィン類が、精製した藻類油の主なクラッキング生成物であり、全ての温度に亘って平均して20%であったことを示す。オレフィン類、C8−C14芳香族化合物、およびナフタレン類は全て平均して約18%であった。ベンゼンは全ての温度に亘って生成物の2.5%であり、最大では400℃で3.8%であった。精製した油をクラッキングしたことから酸素化物は同定されなかったが、水がほぼ確実に存在していた。平均してピークの1%未満が同定されなかった。ナフテン含有量は温度の上昇と共に減少し、他方でC8−C14芳香族種が上昇した。
【0231】
精製した藻類油からのクラッキング生成物は粗油クラッキング生成物と類似した。また、トルエンおよびキシレン含有量は、実施例のガソリンサンプルと比較してより低かった。図5Dは、粗藻類油および精製した藻類油の両方からのクラッキングした生成物と、87、89、および91のオクタンの石油のガソリンとを比較する。平均して、藻類油サンプルをクラッキングすることによって得られた2組の生成物間には著しい差はなく、RBD精製がクラッキング生成物を上昇させないことを示す。一部の例において、クラッキング生成物は、適切なガソリン生成物を生成するために、従来の分別精製を必要とする場合がある。他の例において、クラッキング生成物は燃料生成物、成分、または添加物として用いられてもよい。
【0232】
(実施例6)
ファルネセンと、前述のクパレンのクラッキングの実施例において用いた同じアンモニア交換された形態であったLZY−72と接触させることによって、ファルネセン、セスキテルペンをクラッキングした。この材料は、前処理プロセスの間、500℃で加熱して、酸性の(プロトン化された)形態に変換する。
【0233】
上記クラッキング生成物をGC/MSによって分析した。クロマトグラムは、特により低い温度において、様々なクラッキング生成物のために非常に複雑となる傾向があった。上記クロマトグラムの最も広いピークの面積の少なくとも1%の面積を有するピークのみをこのレポートについて分析した。より小さなピークは、各々約0.3%、クロマトグラムでの全てのピークの総数の面積に相当した。保持したピークを、保持時間とNIST MS指紋データベースを用いたライブラリ検索との組み合わせによって同定した。MS指紋またはGC保持時間によって同定され得なかったピークを不明の要素として表示した。
【0234】
2mLの濃縮されたファルネセンを収集するまで25μLを分取GCカラムに繰り返し注入することによって、ファルネセンを61%まで濃縮し、その濃縮されたファルネセンの組成を表3に示す。
【表3】
【0235】
上記濃縮されたファルネセンを、LZY−72触媒に対してクラッキングした。
【0236】
総体では、LZY−72触媒を用いてファルネセンをクラッキングすると、60%の芳香族分子、25%のナフテン類、および13%のパラフィン類を生成した。クラッキングは、図6Aに示すように、200℃から300℃では主にナフテン類、より高温では芳香族化合物を生成した。メチルおよびジメチルシクロヘキサンは、200℃から300℃のクラッキング条件にては、主要なナフテン類であり、全てのナフテン類の各々21%および17%を構成する。図6Aに示すように、ナフテン生成物はクラッキング温度の上昇と共に減少した。キシレン、C9−C10芳香族化合物、ナフタレン、およびベンゼンの含有量はクラッキング温度と共に上昇した。トリメチルベンゼンは、主要なC9−C10芳香族分子であり、全ての温度に亘って、平均してC9−C10芳香族分子の63%であった。ベンゼンは400℃で全ての生成物の1.5%に達し、ファルネセンを490℃でクラッキングする場合、3%でピークとなった。トルエンおよびパラフィン類を、全ての温度にて比較的一貫して生成し、各々、平均して17%および12%であった。中間構造体の酸素化物は全ての温度における生成物の2%未満であった。目立った量のオレフィン類は検出されなかった。485℃での不明の要素の上昇は、4個のピークを同定できなかったことで生じ、各々は総濃度に対して1%〜3%の間で相当した。
【0237】
クラッキング温度が上昇するにつれて、ファルネセンが芳香族生成物にクラッキングする上昇傾向は、他のセスキテルペンのクラッキングの実施例において見られる傾向と一致する。一般に、LZY−72を用いてクラッキングしたセスキテルペン類は、クラッキング温度が上昇すると、ナフテン類を犠牲にしてさらにキシレン類およびベンゼンを生成した。
【0238】
図6Bはファルネセンのクラッキング生成物中に見出された種についてのリサーチおよびモーター混合オクタン価の平均を示す。91+カラムは、メチルブタン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、およびベンゼンを除く芳香族分子を含む。全ての他のナフテン類およびパラフィン類は、ベースの石油のガソリン混合原料または直留ガソリンにさらに類似するオクタン価を有し、これらは、60と70との間のオクタン価を有する。
【0239】
350+℃にてファルネセンをクラッキングすると、高混合オクタン価(例えば90より高い)を有する75%より良い生成物が生成した。350+℃でのファルネセンのクラッキングからの高オクタン生成物は、混合物全体が高オクタン価を有し得ることを示す。本実施例によって示されるように、ファルネセンをクラッキングするプロセスと、それから由来する組成物は、有用な燃料生成物、成分、または添加物であり得、上記組成物は、ベースの石油のガソリン供給原料(オクタン価60〜80)およびより高オクタン混合供給原料(オクタン価91+)に類似する。
【0240】
(実施例7)
セスキテルペン類の混合物をクラッキングする例示的なプロセスを本実施例において実行した。ショウガ油は約80%のセスキテルペン類を含有する。ジンギベレンはショウガ油の36%を構成される。2番目の多い成分は、16%で、βセスキフェランドレンである。クルクメン、ファルネセン、およびビサボレンもまた、各々約10%で存在する。本実施例においてクラッキングしたショウガ油は、ジンゲロールの量を最小限にするために二酸化炭素を用いて得て、その結果、そのショウガ油の約6%を占めた。
【0241】
ショウガ精油のクラッキングのために用いるLZY−72触媒は、上述のクパレンのクラッキングの実施例において用いた同様のアンモニア交換された形態であった。この材料は、500℃にて前処理プロセスの間、加熱すると、酸性の(プロトン化された)形態に変換する。
【0242】
接触クラッキング条件下で、パルス反応器において上述の実施例の方法と同様に、かつショウガ油を触媒組成物と接触させて、ショウガ油をクラッキングした。約半分のショウガ油はパラフィン類およびナフテン類にクラッキングした。より高いクラッキング温度は、ナフテン類および一部のパラフィン類を犠牲にして芳香族化合物の生成を向上させた。従って、ベンゼンの生成は200℃〜250℃にてゼロから、485℃にて約5%上昇した。オレフィン類は200℃にて、1.5%のクラッキング生成物に達し、より高い温度では検出されなかった。酸素化物はいずれのクラッキング生成物においても確認されなかった。図7は、セスキテルペン類、本実施例においては、ショウガ油の混合物をクラッキングするプロセスからの、クラッキング生成物の組成を示す。ショウガ精油をクラッキングすると、様々なナフテン類、パラフィン類、キシレン類、およびベンゼン誘導体を300℃にて生じた。パラフィン類の多くは分枝し、高オクタン価を提供した。
【0243】
(実施例8)
スクアレンは例示的なトリテルペンである。本明細書に記載されるプロセスを、スクアレンをクラッキングするために利用した。スクアレンのクラッキングのために用いるLZY−72触媒は、上述のクパレンおよびファルネセンのクラッキングの実施例において用いたのと同じアンモニウム交換された形態であった。この材料は、500℃にて前処理プロセスの間加熱すると酸性の(プロトン化された)形態に変換する。上記クラッキング生成物をGC/MSによって分析した。クロマトグラムは特により低い温度において、様々なクラッキング生成物のために非常に複雑となる傾向があった。上記クロマトグラムの最も広いピークの面積の少なくとも1%の面積を有するピークのみをこのレポートのために分析した。
【0244】
上記クラッキング生成物を図8Aに示し、上述のクラッキングの実施例において観察されたものに類似する生成物、すなわち、より低い温度にてより多くのナフテン、およびより高い温度にてより多くの芳香族化合物を示した。さらに、GC/MSの結果は、高い温度(>450℃)にて、相当の量のベンゼンのみ、および無視できる量の酸素化物およびオレフィン類を示した。
【0245】
上記クラッキング生成物のオクタン価を図8Bに示し、この図は上記生成物の平均混合オクタン価を示す。より高い温度でのより高い混合オクタン価は、上記生成物のより高い芳香族の濃度を示す。より低い温度でのより低いオクタン価のより高い濃度は、低いオクタン価の環式化合物に由来する。
【0246】
(実施例9)
フィトールは、光合成生物においてしばしば見出されるジテルペンである。フィトールは、クロロフィルの分解による生成物であり得る。図9Aは、パラフィン類がフィトールの主なクラッキング生成物であり、全ての温度に亘って平均して62%であったことを示す。ナフテン類は、200℃で24%から490℃で1%に減少した。上記クラッキング生成物の芳香族の含有量は、全ての生成物の7%から42%まで、温度と共に上昇した。ベンゼンおよびナフタレンの濃度は、490℃にて、全ての生成物に対して、各々3%および2%に達する。フィトールをクラッキングすることからはオレフィン類も酸素化物も同定されなかった。
【0247】
図9Bおよび図9Cは、パラフィン類中の、炭素分布および分枝の程度を各々示す。低いクラッキング温度は、C6−C8パラフィン類(例えばメチルペタンおよびメチルヘプタン)の生成を好み、他方で、より高い温度は主にメチルブタンを生成する。図9Cに示すように、フィトールをクラッキングすることによって生成したパラフィン類の多くはモノメチルであるが、直鎖パラフィンおよびジメチルパラフィンが生成する傾向が、各々200℃および490℃で存在した。
【0248】
多くのフィトールのクラッキング生成物のオクタン混合価は、ファルネセン由来のものと類似した。図9Dは、リサーチおよびモーター混合オクタン価の平均に従って分子をグループ化している。91+のカラムにおける高オクタン価の分子は、芳香種、メチルブタン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサンからなる。
【0249】
(実施例10)
藻類フィトールのクラッキングに用いるLZY−72触媒は、上述の実施例において用いたのと同様のアンモニウム交換された形態であった。クラッキングを、350℃の単一の温度でのみ行い、この温度が選択された理由は、これらの条件が殆どまたは全くベンゼンを生成しないことを保証すると想定されるからである。クラッキング生成物を、上述の実施例において検討したように、GC/MSによって分析した。その後、クラッキングしたフィトールの組成物を、オクラホマ州はタルサにある小売店のガソリンスタンドで購入した、87、89、および91品質等級のガソリンのサンプルと比較した。
【0250】
6個のサンプルを調査し、この実施例において報告した:藻類由来のフィトールの単一のパルスの生成物;フィトールを藻類から抽出し、これを「藻類フィトール抽出物」と呼ぶ;市販の仕入れ先(Sigma−Aldrich)からのフィトールの単一のパルスの生成物を「市販のフィトール」と呼ぶ;1/2ccの生成物サンプルに収集され、ガラス製のバイアルに封入された市販のフィトールの複数のパルスの生成物を、「市販のフィトールのバイアル」と呼ぶ;87オクタンガソリンのサンプル;89オクタンガソリンのサンプル;および91オクタンガソリンのサンプル。
【0251】
フィトールのサンプルを、本明細書に記載のLZY−72触媒に接触させて、パルス反応器内でクラッキングした。上記フィトールのクラッキング生成物を図10Aに示し、上記ガソリンのサンプルの分析結果と比較した。フィトールからのクラッキング生成物は、小売店のガソリンのサンプルとは対照的にC4炭化水素を示さなかった。C5−C9パラフィン類は、小売店のガソリンよりもフィトール生成物がより高かった。より低い濃度のトルエン、酸素化物(上記ガソリンのサンプルは5%のエタノールを含む)、およびベンゼンが上記フィトール生成物中に観察された。
【0252】
350℃でクラッキングしたフィトール生成物とガソリンのサンプルとのオクタン範囲の比較を図10Bに示す。市販のフィトールのバイアルは他のものと著しく異なる唯一のサンプルである。それは、主に、そのより低いエタノール、ベンゼン、およびトルエンの濃度の結果として、より低い91+オクタン成分を示す。これは、クラッキング温度を450℃に調節することによって修正可能であり得る。上記バイアル中のより大きなサンプルと単一のパルスのサンプルとの差は、生成物の分布を変えることができる触媒失活のためであり得る。
【0253】
(実施例11)
他の実施例について用いるLZY−72触媒をNiを用いて部分的にイオン交換し、水素化分解触媒として用いることができるNi/LZY−72を生成した。上記イオン交換の手順は次の通りである。10.0gのLZY−72のアンモニウム形態を50gの水中でスラリー化し、2.4gの酢酸Ni(II)四水和物を加えた。その混合物を室温で一晩攪拌し、次いでその溶液を濾過し、固体を一晩125℃で乾燥させた。これらなどの触媒は、プロトンが存在するため、ニッケル活性およびクラッキング活性のために、両方の水素化活性を有する。パルス実験については、0.5gのこの触媒をパルス反応器中に配置して、使用前の1時間、300℃にて、水素の流れの下で活性化させた。水素化分解法を、250℃、300℃、350℃、400℃、450℃、および500℃にて、水素の流れの中で25μlのパルスのフィトールを用いて行った。生成物を、液体窒素中で捕捉させ、次いで、GC/MSシステムでの分析の前に、メタノールを用いてトラップから洗浄した。水素化分解フィトールの水素化分解生成物を図11Aに示す。生成物のオクタン価を図11Bに示した。
【0254】
(実施例12)
本実施例は、テルペンから由来する燃料生成物のマクロスケール調製を記載する。手短に言えば、スクアレンは、管型反応器を用いて首尾良くクラッキングされ、1.37ガロン(約5.18リットル)の液体生成物を生成した。この未加工の液体生成物から、0.95ガロン(約3.59リットル)の最も軽い材料を蒸留し、ASTMガソリン分析のために送り、上記生成物が91.5のオクタン価を有することを示した。
【0255】
クラッキングのプロセスを、フード内に設置された大型の炉および管型反応器を有する施設内で実行した。この装置の簡略化した概略を図12Aに示す。3つの領域を有する炉100は、上側領域110、各々6インチ(約15.24センチメートル)長および600幅(W)である下側領域120、および、12インチ(約30.48センチメートル)長および1180幅(W)である中間領域130を含む。独立した熱電対140、150、および160は、各領域の温度をそれぞれ測定する。2フィート(約60.96センチメートル)長の管型反応器170は、3つの領域を有する炉100内に垂直に取り付けられている。管型反応器170の触媒領域190に軸方向に挿入された熱電対180は、触媒床の中心において温度を測定する。LabViewベースのコントロールプログラムは、炉を等温条件にし、上記測定した触媒温度を設定点にする。同様のプログラムはまた、流量、温度、および圧力を含む全ての測定したシステムパラメータを記録することを可能にする。ISCOポンプ200は、液体供給装置205の500ccまでの量を、一定したプログラム可能な量で反応器170に供給する。流量制御された気体210(この場合は窒素)を反応器170に共に供給可能である。クラッキングの大部分は、約12gのゼオライトβ(T−4546)の押出し成形物(extrudate)(Sued Chemie)が詰められた外径(OD)1インチ(約2.54センチメートル)の管型反応器を用いて行ったが、500ccのスクアレン反応物を使用する実験の最初の3つは、約57gのゼオライトβ(T−4546)で満たされた外径3/4インチ(約1.90センチメートル)の反応器を用いて実行した。図12Aに示すように、液体および気体の流れは管型反応器170の底から入り、ガラスビーズ(直径3mm)が詰められた予熱領域220を介してそれらが流れると混合される。18インチ(約45.72センチメートル)長の触媒床230は、ガラスビーズ床の上に座しており、2つは金属スクリーン240によって隔てられている。上側から移動した反応器の生成物は、約8℃に維持されたらせん状の同心管の熱交換器250へ流れる。冷却された生成物は上記熱交換器を出て、瞬間(instantaneous)液体サンプル(「ラインサンプル」として公知である)を回収可能にするバルブ構成260を通過して、次いで生成物は冷却された分離器270に入る。凝縮されていない気体の生成物は少量の流れが取り出される位置まで進み、気体分析用に設けてあるミクロ−GC280まで回り、次いで、背圧調整器290、湿式気体流量計300、および通気口310に進む。背圧調整器は、全ての実験に対して約5psig(約34.47kPa)に設定した。
【0256】
本実施例の実験は、質量約112gの未使用の触媒を用いて反応器を満たすことで開始する。次いで上記反応器を炉に取り付け、380℃から400℃にて一晩、窒素流下で加熱し、反応の前に触媒を乾燥させた。翌朝、500ccのスクアレンをISCOポンプに入れ、次いで、外径1”の反応器を用いた場合、窒素およびスクアレンの流量を各々2SLM(standard liter per minute)および4cc/minに設定し、または、外径3/4”の反応器を用いた場合、窒素およびスクアレンの流量を1SLMおよび2cc/minに設定した。通常、反応温度は、スクアレンの第1の500ccについて、380℃に設定した。上記温度を、スクアレンの第2の500ccの量について、430℃まで上昇させ、第1の500ccの実験の間に生じた触媒活性における損失をオフセットした。適切な条件が確立された初期の実験を含み、2つのみを380℃から450℃の温度とした以外、全ての実験を300℃から450℃の反応器温度で実行した。回収リザーバ(液体生成物を含む)を定期的に排出し、ラインサンプルを定期的に採り、可能な限り迅速にGCによって分析し、反応物の完全な変換を保証した。
【0257】
約112gの触媒を用いて、1”直径の反応器を用いる場合、いったん第2の500ccのスクアレンを処理し(総量1000ccまたは855g)、上記反応器を冷却してその触媒を取り除き、取り替えた。3つの実験を、57gの触媒を用いて3/4”直径の反応器で達成した場合、500ccのスクアレンをクラッキングした後、上記触媒を取り替えた。なお、いずれの反応器についても、入れられた触媒に対する処理されたスクアレンとの比が同等に近くなるようにした。
【0258】
触媒の一定量が反応器から取り除かれると、触媒の非常に少量のサンプルを微量天秤システムに用いてコークス含有量を決定し、次いで、使用済み触媒の残渣を水平管炉に配置して、4時間、575℃で、80/20 Ar/O2中で燃焼させることで再生した。燃焼した触媒を次いで微量天秤システムでn−プロピルアミン熱脱離分析に供し、ゼオライト触媒の構造的完全性に直接に相関する触媒プロトン含有量を測定した。n−プロピルアミン熱脱離分析の結果を、未使用の触媒と比較して、上記触媒が依然として構造的に正常であり、触媒活性であることを保証した。再生の完全な1サイクルの後、触媒に対して著しい破損を検出しなかった。しかし、スクアレンを用いた全ての実験には、再生されたものではなく未使用の触媒を用いた。総計で、8,5Lまたは約7268gのスクアレンを処理し、1.37ガロン(約5.18リットル)または約4410gのクラッキングした液体生成物を回収した。
【0259】
7268gの供給した総スクアレンからの生成物の内訳の合計を表4に示す。
【表4】
【0260】
ミクロ−GCから、気体生成物の詳細な分析を経時的に統合して、各気体生成物の総量を計上し、合計して、凝結した生成物ではなく気体生成物の総重量を得た。収集した液体の総重量を4410gと記録した。コークスを使用済み触媒において約12重量%と決定し、この値は、112gの触媒で13.44gを生成したことになり、合計では8.5回の各々の量の触媒を用いたので、114gとなる。供給した7268gからこれらの数字を減算して、行方不明の分は508gとなる。図12Bの最後のカラムは、実際に収集し、さらなる分析に用いる総生成物の百分率を示す。行方不明の材料はサンプリング手順および液体ラインを満たすのに帰したと考えるのが最も尤もらしい。
【0261】
液体生成物の模擬蒸留は、58%の液体生成物がガソリン留分(例えば、220℃未満の沸点)であることを示した。それゆえ、クラッキングした液体生成物をASTM試験の前に蒸留した。ASTM分析のために1ガロン(約3.78リットル)の生成物を収集するにはその生成物を275℃まで沸騰させる必要があったが、この温度は220℃のガソリンのカットをゆうに超えており、このことは、液体のより多くがガソリンの範囲内であったことを示唆した模擬蒸留からは予期していないものであった。しかしながら、試験に必要とされる最小量としてのガソリンを収集するためにこれを行った。ASTMサンプルはガソリン沸点範囲に最も近い3070gのクラッキング生成物を含んだ。1340gの液体はガソリン試験をするには重すぎるので残され、これを「液体の残油」と呼ぶ。ASTM試験は、サンプルのリサーチオクタン価は98.5であり、モーターオクタンは84.6であり、ポンプで提供された通常のオクタン価である(R+M)/2に対して91.5の値を生じた。表5は、様々な留分となって回収したスクアレンの割合を示す。蒸気組成の詳細な分析は実行した3回の実験の平均である。上記詳細な液体組成は、プールした液体クラッキング生成物からの少量のサンプルのGC/MS分析に由来した。
【表5】
【0262】
図12Bは、スクアレンをクラッキングすることが本実施例の流通反応装置中にある場合に得た組成物を示す。気体生成物の詳細な分析を表6に示す。イソブタンおよびイソペンタンは各々122および100の混合リサーチオクタン価を有するので、表6に記載のイソブタンおよびイソペンタンの量を液体生成物中に含む場合に得られる液体生成物のオクタン価に対する相応の推量を計算できた。リサーチオクタン価は約100.8であり、モーターオクタン価は88.8であり、(R+M)/2=94.8を生じた。なお、イソブタン(変換したスクアレン中5.02%を占める)およびイソペンタン(変換したスクアレン中2.24%を占める)を回収し、ASTM分析のために回収したサンプルに加えると、ASTM分析用に回収したサンプルに変換したスクアレンの収率は、7.26%増えて52.67%となることになる。気相の全てのC4+成分を回収し、ASTM分析のために回収したサンプルに加えると、収率は22.5%増え、67.91%となり、そして、C4およびC5オレフィンについての混合オクタン価は約109から176の範囲であるので、それゆえ、オクタン価におけるさらなる著しい改善を、場合によっては、100オクタンを超えて、実現できる。
【表6】
【0263】
蒸留して、サンプル中の重質のクラッキング生成物の量を最小化した後に、ASTMサンプルを試験のために送った。試験の結果を表7に示し、この表は2004年からの必要標準を含むカラムも含んでいる。上記生成物の多くの性質は、小売店のガソリンに対するASTM標準に適合する。例えば、リサーチオクタン(RON)およびモーターオクタン価(MON)は各々96.5および84.6であり、すなわち(R+M)/2は91.5であり、これらの全ては、ガソリンについて要求される最小値である91RONおよび82MONに適合する。表7中の太字はサンプルが合格しなかった試験を示す。大雑把に言って、このASTMサンプルは蒸留結果に関連した試験のみに不合格となった。これらの不合格は予期されたものであり、というのも、ガソリン沸点の範囲外の物質を、1ガロン(約3.78リットル)という最小のサンプル量を得るために含む必要があったからである。ASTM蒸留結果は、実行した蒸留によって、最も高い沸点の成分(例えばアントラセン)のみが取り除かれたが、さらなる重質の成分(例えば、ナフタレンおよび多置換のベンゼン類)を残したことを示す。これは260℃の最終沸点を導き、この温度は、小売店のガソリンについて許容限度よりも35℃高かった。ドライバビリティー指数は、10%、50%、および90%のサンプルが回収される温度から計算され、それは、その燃料が、出発時、アイドリング時、および運転時にどの程度首尾良く機能するかを評価する。期待されるように、上記サンプルのドライバビリティー指数は許容限度を超え、というのも蒸留曲線は特定の沸点を超えたからである。本実施例はASTM試験のために、スクアレンからの1ガロンの液体生成物を実証した。
【表7−1】
【表7−2】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セスキテルペンをクラッキングするための接触クラッキング方法であって、前記セスキテルペンを含む原料と触媒組成物とを接触クラッキングの条件下で接触させる工程を含む、方法。
【請求項2】
前記セスキテルペンはクパレンである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法は、50重量%よりも多くのトルエンと、2重量%未満のベンゼンと、20重量%未満のキシレンと、シクロヘキサンおよびシクロペンタンの30重量%よりも多くの組合せとを含む混合物を生産する工程を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記セスキテルペンはファルネセンである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記方法は、15重量%よりも多くのトルエンと10重量%よりも多くのパラフィンとを含む混合物を生産する工程を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記クラッキングの条件は、前記原料を350℃よりも高くに加熱する工程を含み、前記方法は、75重量%よりも多くが90よりも大きいオクタン価を有する成分を含む混合物を生産する工程を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記混合物は、約15重量%〜約20重量%のトルエンと約10重量%〜約15重量%のパラフィンとを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記混合物は、50重量%よりも多くの芳香族炭化水素を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
ジテルペンをクラッキングするための接触クラッキング方法であって、前記ジテルペンを含む原料と触媒組成物とを接触クラッキングの条件下で接触させる工程を含む、方法。
【請求項10】
前記ジテルペンはフィトールである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記方法は、55重量%よりも多くのC5〜C9パラフィンを含む混合物を生産する工程を含み、前記パラフィンの70重量%よりも多くは、モノメチルパラフィンである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記クラッキングの条件は、前記原料を350℃よりも高くに加熱する工程を含み、前記方法は、75重量%よりも多くが90よりも大きいオクタン価を有する成分を含む混合物を生産する工程を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記混合物は、40重量%よりも多くのメチルブタンを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記方法は、1重量%未満のC4パラフィンを含む混合物を生産する工程を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
トリテルペンをクラッキングするための接触クラッキング方法であって、前記トリテルペンを含む原料と接触組成物とを接触クラッキング条件下で接触させる工程を含む、方法。
【請求項16】
前記トリテルペンはスクアレンである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
テトラテルペンをクラッキングするための接触クラッキング方法であって、前記テトラテルペンを含む原料と接触組成物とを接触クラッキング条件下で接触させる工程を含む、方法。
【請求項18】
前記テトラテルペンはカロテンである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
少なくとも3種のテルペンを含む混合物をクラッキングするための接触クラッキング方法であって、前記少なくとも3種のテルペンを含む混合物を含む原料と触媒組成物とを接触クラッキング条件下で接触させる工程を含む、方法。
【請求項20】
前記少なくとも3種のテルペンはセスキテルペンである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記原料はジンジャー油を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記方法は、15重量%よりも多くのナフテンと、20重量%よりも多くのパラフィンと、5重量%よりも多くのキシレンと、5重量%よりも多くのトルエンとを含む混合物を生産する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記混合物は、モノテルペン、セスキテルペン、ジテルペン、トリテルペン、およびテトラテルペンからなる群より選択される異なるサイズの少なくとも3種のテルペンを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
藻類からの少なくとも3種のテルペンを含む前記混合物を抽出する工程をさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
藻類からの油をクラッキングするための接触クラッキング方法であって、テルペンを含む原料を形成するために藻類からの油を抽出する工程;前記テルペンを含む原料と触媒組成物とを接触クラッキングの条件下で接触させる工程を含む、方法。
【請求項26】
前記油を抽出する工程の前に前記藻類を遺伝的に改変する工程をさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記藻類を遺伝的に改変する工程は、藻類を遺伝的に改変しない場合と比較して、増大した量のテルペンを生産する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記原料を接触させる前に前記藻類からの油と燃料成分とを混合する工程をさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記燃料成分は、化石燃料、石油、燃料混合のための混合物、ガソリン、ディーゼル、ジェット燃料、およびそれらの任意の組合せからなる群より選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記テルペンは、セスキテルペンである、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
前記セスキテルペンは、クパレンである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記セスキテルペンは、ファルネセンである、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記テルペンは、ジテルペンである、請求項25に記載の方法。
【請求項34】
前記ジテルペンは、フィトールである、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記テルペンは、トリテルペンである、請求項25に記載の方法。
【請求項36】
前記トリテルペンは、スクアレンである、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記テルペンは、テトラテルペンである、請求項25に記載の方法。
【請求項38】
前記テトラテルペンは、カロテンである、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記クラッキングの方法は、前記原料を約100℃〜1000℃の間まで加熱することを含む、請求項1、9、15、17、19、または25に記載の方法。
【請求項40】
前記接触クラッキングの条件は、前記原料を約180℃〜580℃の温度まで加熱することを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記接触クラッキングの条件は、前記原料を約200℃〜400℃の温度まで加熱することを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記接触クラッキングの条件は、前記原料を約350℃〜400℃の温度まで加熱することを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記触媒組成物はモレキュラーシーブを含む、請求項1、9、15、17、19、または25に記載の方法。
【請求項44】
前記モレキュラーシーブは、6Åよりも大きい孔径を有する大きい孔のモレキュラーシーブである、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記大きい孔のモレキュラーシーブは10〜15Åのケージ径を有する、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記大きい孔のモレキュラーシーブは12員環ゼオライトである、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
前記大きい孔のモレキュラーシーブはβ型、L型、またはY型のゼオライトである、請求項44に記載の方法。
【請求項48】
前記大きい孔のモレキュラーシーブはLZY−72、Valfor CP811BL−25、ELZ−L、またはT−4546である、請求項44に記載の方法。
【請求項49】
前記モレキュラーシーブは、10員環ゼオライトである、請求項43に記載の方法。
【請求項50】
前記モレキュラーシーブは、ZSM−5ゼオライトである、請求項43に記載の方法。
【請求項51】
前記触媒組成物は、第2のモレキュラーシーブをさらに含む、請求項43に記載の方法。
【請求項52】
前記第2のモレキュラーシーブは前記モレキュラーシーブとは異なるサイズである、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
精製の方法であって、流通反応装置中でスクアレンを含む原料をクラッキングする工程;クラッキング生成物を蒸留する工程;および約85〜125の間のオクタン価を有する燃料生成物を得る工程を含む、方法。
【請求項54】
前記オクタン価は、90よりも大きい、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
燃料生成物を作製するための方法であって、遺伝的に改変された光合成する非維管束生物から原料を得る工程;および前記原料と触媒組成物とを接触クラッキングの条件下で接触させ、それによって燃料生成物を作製する工程を含み、前記触媒組成物は、6Åよりも大きい孔径を有する大きい孔のモレキュラーシーブを含む、方法。
【請求項56】
前記クラッキングは420℃までの温度にて起こる、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記触媒組成物は、12員環ゼオライトである、請求項55に記載の方法。
【請求項58】
前記燃料生成物は、約85〜125の間のオクタン価を有する、請求項55に記載の方法。
【請求項59】
前記燃料生成物は、90よりも大きいオクタン価を有する、請求項55に記載の方法。
【請求項60】
燃料成分を前記燃料生成物に添加する工程をさらに含み、前記燃料成分は、エタノール、ジェット燃料、ディーゼル、バイオディーゼル、またはガソリンである、請求項55に記載の方法。
【請求項61】
燃料添加剤を前記燃料生成物に添加する工程をさらに含む、請求項55に記載の方法。
【請求項62】
藻類から抽出された油と接触クラッキング組成物とを含む組成物。
【請求項63】
テルペンと接触クラッキング組成物とを含む組成物。
【請求項64】
前記テルペンは、モノテルペン、セスキテルペン、ジテルペン、トリテルペン、テトラテルペン、クパレン、ファルネセン、スクアレン、ジンゲロン、およびカロテンからなる群より選択される、請求項63に記載の組成物。
【請求項65】
ジンジャー油と接触クラッキング組成物とを含む組成物。
【請求項66】
フィトールと接触クラッキング組成物とを含む組成物。
【請求項67】
前記接触クラッキング組成物は、モレキュラーシーブである、請求項62、63、65、または66に記載の組成物。
【請求項68】
前記モレキュラーシーブは、6Åよりも大きい孔径を有する大きい孔のモレキュラーシーブである、請求項67に記載の組成物。
【請求項69】
前記大きい孔のモレキュラーシーブは、10〜15Åのケージ径を有する、請求項68に記載の組成物。
【請求項70】
前記大きい孔のモレキュラーシーブは、12員環ゼオライトである、請求項68に記載の組成物。
【請求項71】
前記大きい孔のモレキュラーシーブは、β型、L型、またはY型のゼオライトである、請求項68に記載の組成物。
【請求項72】
前記大きい孔のモレキュラーシーブは、LZY−72、Valfor CP811BL−25、ELZ−L、またはT−4546である、請求項68に記載の組成物。
【請求項73】
前記モレキュラーシーブは10員環ゼオライトである、請求項67に記載の組成物。
【請求項74】
前記モレキュラーシーブはZSM−5ゼオライトである、請求項67に記載の組成物。
【請求項1】
セスキテルペンをクラッキングするための接触クラッキング方法であって、前記セスキテルペンを含む原料と触媒組成物とを接触クラッキングの条件下で接触させる工程を含む、方法。
【請求項2】
前記セスキテルペンはクパレンである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法は、50重量%よりも多くのトルエンと、2重量%未満のベンゼンと、20重量%未満のキシレンと、シクロヘキサンおよびシクロペンタンの30重量%よりも多くの組合せとを含む混合物を生産する工程を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記セスキテルペンはファルネセンである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記方法は、15重量%よりも多くのトルエンと10重量%よりも多くのパラフィンとを含む混合物を生産する工程を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記クラッキングの条件は、前記原料を350℃よりも高くに加熱する工程を含み、前記方法は、75重量%よりも多くが90よりも大きいオクタン価を有する成分を含む混合物を生産する工程を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記混合物は、約15重量%〜約20重量%のトルエンと約10重量%〜約15重量%のパラフィンとを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記混合物は、50重量%よりも多くの芳香族炭化水素を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
ジテルペンをクラッキングするための接触クラッキング方法であって、前記ジテルペンを含む原料と触媒組成物とを接触クラッキングの条件下で接触させる工程を含む、方法。
【請求項10】
前記ジテルペンはフィトールである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記方法は、55重量%よりも多くのC5〜C9パラフィンを含む混合物を生産する工程を含み、前記パラフィンの70重量%よりも多くは、モノメチルパラフィンである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記クラッキングの条件は、前記原料を350℃よりも高くに加熱する工程を含み、前記方法は、75重量%よりも多くが90よりも大きいオクタン価を有する成分を含む混合物を生産する工程を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記混合物は、40重量%よりも多くのメチルブタンを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記方法は、1重量%未満のC4パラフィンを含む混合物を生産する工程を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
トリテルペンをクラッキングするための接触クラッキング方法であって、前記トリテルペンを含む原料と接触組成物とを接触クラッキング条件下で接触させる工程を含む、方法。
【請求項16】
前記トリテルペンはスクアレンである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
テトラテルペンをクラッキングするための接触クラッキング方法であって、前記テトラテルペンを含む原料と接触組成物とを接触クラッキング条件下で接触させる工程を含む、方法。
【請求項18】
前記テトラテルペンはカロテンである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
少なくとも3種のテルペンを含む混合物をクラッキングするための接触クラッキング方法であって、前記少なくとも3種のテルペンを含む混合物を含む原料と触媒組成物とを接触クラッキング条件下で接触させる工程を含む、方法。
【請求項20】
前記少なくとも3種のテルペンはセスキテルペンである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記原料はジンジャー油を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記方法は、15重量%よりも多くのナフテンと、20重量%よりも多くのパラフィンと、5重量%よりも多くのキシレンと、5重量%よりも多くのトルエンとを含む混合物を生産する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記混合物は、モノテルペン、セスキテルペン、ジテルペン、トリテルペン、およびテトラテルペンからなる群より選択される異なるサイズの少なくとも3種のテルペンを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
藻類からの少なくとも3種のテルペンを含む前記混合物を抽出する工程をさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
藻類からの油をクラッキングするための接触クラッキング方法であって、テルペンを含む原料を形成するために藻類からの油を抽出する工程;前記テルペンを含む原料と触媒組成物とを接触クラッキングの条件下で接触させる工程を含む、方法。
【請求項26】
前記油を抽出する工程の前に前記藻類を遺伝的に改変する工程をさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記藻類を遺伝的に改変する工程は、藻類を遺伝的に改変しない場合と比較して、増大した量のテルペンを生産する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記原料を接触させる前に前記藻類からの油と燃料成分とを混合する工程をさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記燃料成分は、化石燃料、石油、燃料混合のための混合物、ガソリン、ディーゼル、ジェット燃料、およびそれらの任意の組合せからなる群より選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記テルペンは、セスキテルペンである、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
前記セスキテルペンは、クパレンである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記セスキテルペンは、ファルネセンである、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記テルペンは、ジテルペンである、請求項25に記載の方法。
【請求項34】
前記ジテルペンは、フィトールである、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記テルペンは、トリテルペンである、請求項25に記載の方法。
【請求項36】
前記トリテルペンは、スクアレンである、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記テルペンは、テトラテルペンである、請求項25に記載の方法。
【請求項38】
前記テトラテルペンは、カロテンである、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記クラッキングの方法は、前記原料を約100℃〜1000℃の間まで加熱することを含む、請求項1、9、15、17、19、または25に記載の方法。
【請求項40】
前記接触クラッキングの条件は、前記原料を約180℃〜580℃の温度まで加熱することを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記接触クラッキングの条件は、前記原料を約200℃〜400℃の温度まで加熱することを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記接触クラッキングの条件は、前記原料を約350℃〜400℃の温度まで加熱することを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記触媒組成物はモレキュラーシーブを含む、請求項1、9、15、17、19、または25に記載の方法。
【請求項44】
前記モレキュラーシーブは、6Åよりも大きい孔径を有する大きい孔のモレキュラーシーブである、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記大きい孔のモレキュラーシーブは10〜15Åのケージ径を有する、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記大きい孔のモレキュラーシーブは12員環ゼオライトである、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
前記大きい孔のモレキュラーシーブはβ型、L型、またはY型のゼオライトである、請求項44に記載の方法。
【請求項48】
前記大きい孔のモレキュラーシーブはLZY−72、Valfor CP811BL−25、ELZ−L、またはT−4546である、請求項44に記載の方法。
【請求項49】
前記モレキュラーシーブは、10員環ゼオライトである、請求項43に記載の方法。
【請求項50】
前記モレキュラーシーブは、ZSM−5ゼオライトである、請求項43に記載の方法。
【請求項51】
前記触媒組成物は、第2のモレキュラーシーブをさらに含む、請求項43に記載の方法。
【請求項52】
前記第2のモレキュラーシーブは前記モレキュラーシーブとは異なるサイズである、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
精製の方法であって、流通反応装置中でスクアレンを含む原料をクラッキングする工程;クラッキング生成物を蒸留する工程;および約85〜125の間のオクタン価を有する燃料生成物を得る工程を含む、方法。
【請求項54】
前記オクタン価は、90よりも大きい、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
燃料生成物を作製するための方法であって、遺伝的に改変された光合成する非維管束生物から原料を得る工程;および前記原料と触媒組成物とを接触クラッキングの条件下で接触させ、それによって燃料生成物を作製する工程を含み、前記触媒組成物は、6Åよりも大きい孔径を有する大きい孔のモレキュラーシーブを含む、方法。
【請求項56】
前記クラッキングは420℃までの温度にて起こる、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記触媒組成物は、12員環ゼオライトである、請求項55に記載の方法。
【請求項58】
前記燃料生成物は、約85〜125の間のオクタン価を有する、請求項55に記載の方法。
【請求項59】
前記燃料生成物は、90よりも大きいオクタン価を有する、請求項55に記載の方法。
【請求項60】
燃料成分を前記燃料生成物に添加する工程をさらに含み、前記燃料成分は、エタノール、ジェット燃料、ディーゼル、バイオディーゼル、またはガソリンである、請求項55に記載の方法。
【請求項61】
燃料添加剤を前記燃料生成物に添加する工程をさらに含む、請求項55に記載の方法。
【請求項62】
藻類から抽出された油と接触クラッキング組成物とを含む組成物。
【請求項63】
テルペンと接触クラッキング組成物とを含む組成物。
【請求項64】
前記テルペンは、モノテルペン、セスキテルペン、ジテルペン、トリテルペン、テトラテルペン、クパレン、ファルネセン、スクアレン、ジンゲロン、およびカロテンからなる群より選択される、請求項63に記載の組成物。
【請求項65】
ジンジャー油と接触クラッキング組成物とを含む組成物。
【請求項66】
フィトールと接触クラッキング組成物とを含む組成物。
【請求項67】
前記接触クラッキング組成物は、モレキュラーシーブである、請求項62、63、65、または66に記載の組成物。
【請求項68】
前記モレキュラーシーブは、6Åよりも大きい孔径を有する大きい孔のモレキュラーシーブである、請求項67に記載の組成物。
【請求項69】
前記大きい孔のモレキュラーシーブは、10〜15Åのケージ径を有する、請求項68に記載の組成物。
【請求項70】
前記大きい孔のモレキュラーシーブは、12員環ゼオライトである、請求項68に記載の組成物。
【請求項71】
前記大きい孔のモレキュラーシーブは、β型、L型、またはY型のゼオライトである、請求項68に記載の組成物。
【請求項72】
前記大きい孔のモレキュラーシーブは、LZY−72、Valfor CP811BL−25、ELZ−L、またはT−4546である、請求項68に記載の組成物。
【請求項73】
前記モレキュラーシーブは10員環ゼオライトである、請求項67に記載の組成物。
【請求項74】
前記モレキュラーシーブはZSM−5ゼオライトである、請求項67に記載の組成物。
【図1A】
【図12A】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図12B】
【図12A】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図12B】
【公表番号】特表2010−539300(P2010−539300A)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−525111(P2010−525111)
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【国際出願番号】PCT/US2008/076716
【国際公開番号】WO2009/039201
【国際公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(509328308)サファイア エナジー,インコーポレイティド (5)
【出願人】(510073187)ザ ユニバーシティ オブ タルサ (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【国際出願番号】PCT/US2008/076716
【国際公開番号】WO2009/039201
【国際公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(509328308)サファイア エナジー,インコーポレイティド (5)
【出願人】(510073187)ザ ユニバーシティ オブ タルサ (1)
【Fターム(参考)】
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