説明

炭化水素油の水素化処理触媒の再生方法

【課題】一層脱硫活性に優れた炭化水素油の水素化処理触媒を提供するために、使用済み水素化処理触媒の脱硫活性を一層十分に復活できる再生方法を提供すること。
【解決手段】炭化水素油の水素化処理に使用して活性の低下した使用済みの、周期律表第6族金属、周期律表第8族金属、及びリンを担持した水素化処理触媒を、
油分除去処理する工程、
400〜550℃で焼成する工程、
その焼成物に、有機物を、〔有機物〕/〔周期律表第8族金属〕のモル比率が0.2〜1.2となるように、前記有機物の溶液を用いて、担持させる工程、
及び担持後の焼成物を200℃以下で乾燥させる工程を含む炭化水素油の水素化処理触媒の再生方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素油の水素化処理触媒(以下、単に「水素化処理触媒」ともいう)を炭化水素油の水素化処理に使用して活性の低下した使用済み水素化処理触媒の再生方法に関する。より詳しくは、使用済み水素化処理触媒を従来の再生方法より一層優れた脱硫活性を有するように再生し得る水素化処理触媒の再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大気環境改善のために、石油製品(炭化水素油)の品質規制値が世界的に厳しくなる傾向にある。例えば、軽油中の硫黄化合物は、排ガス対策として期待されている酸化触媒、窒素酸化物(NOx)還元触媒、連続再生式ディーゼル排気微粒子除去フィルター等の後処理装置の耐久性に影響を及ぼす懸念があるため、軽油中の硫黄化合物の低減が要請されている。
【0003】
このような状況下で、炭化水素油中の硫黄化合物を大幅に低減する超深度脱硫技術の開発が重要視されている。炭化水素油中の硫黄化合物の低減化技術として通常、水素化脱硫の運転条件、例えば、反応温度、液空間速度等を過酷にすることが考えられる。しかし、反応温度を上げると、触媒上に炭素質が析出し触媒劣化が起こり、触媒活性が急速に低下する。また、液空間速度を低下させると、脱硫能は向上するものの精製処理能力が低下するため、設備規模を拡張する必要が生じる。
【0004】
従って、運転条件を過酷にすることなしに炭化水素油の超深度脱硫を達成し得る良い方法は、優れた脱硫活性を有する水素化処理触媒を開発することである。更には、開発された優れた脱硫活性を有する水素化処理触媒を炭化水素油の水素化処理に使用してその活性が低下した際の、該使用済み水素化処理触媒を、その優れた脱硫活性が十分復活するように再生し得る、使用済み水素化処理触媒の再生方法を開発することである。
【0005】
近年、活性金属の種類、活性金属の含浸方法、触媒担体の改良、触媒細孔構造制御、活性化法等について多くの検討が多方面において進められているが、優れた脱硫活性の水素化処理触媒の製造方法として、例えば、触媒担体に周期律表第6族金属及び第8族金属のいずれか1種以上と有機酸、及びリンを含有させた溶液を用いて上記金属とリンを担持させた後、200〜400℃で焼成し、次いで、これに上記担持金属に対して0.1〜2.0倍モル量の有機酸または多価アルコールを含浸させ、担持した活性金属の再分散化を行い、200℃以下で乾燥するか、或いはさらに400℃以上で焼成する水素化処理触媒の製造方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0006】
また、炭化水素油の水素化処理に使用して脱硫活性の低下した使用済みの水素化処理触媒の、その活性を復活させるための再生方法として、例えば、500℃の上限温度で使用済み水素化処理触媒を酸素含有ガスと接触させることにより該触媒を再生し、次いで該触媒を有機添加剤と接触させて該有機添加剤を触媒中に保持させて乾燥する使用済み水素化処理触媒の再生方法が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−136523号公報
【特許文献2】特表2003−503194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記の従来の水素化処理触媒の製造方法では、まだ満足できるような高活性の水素化処理触媒が得られず、また、上記の従来の使用済み水素化処理触媒の再生方法では、再生工程が複雑となるため設備の拡張を要する。したがって、経済性が低く、簡単かつ安価で使用済み水素化処理触媒の活性を復活させることが困難である。
本発明の目的は、上記従来の状況に鑑み、満足できるように一層脱硫活性に優れ、熱耐性を向上することによる長寿命な炭化水素油の水素化処理触媒を提供することであって、使用済み水素化処理触媒の脱硫活性を一層十分に復活させ得る使用済み水素化処理触媒の再生方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意研究した結果、一定の使用済み水素化処理触媒を、一定の手順に従って再生すると、一層十分に脱硫活性を復活させることができることを見出して、本発明を完成した。
【0010】
即ち、本発明は、上記目的を達成するために、次の使用済みの炭化水素油の水素化処理触媒の再生方法を提供する。
(1) 炭化水素油の水素化処理に使用して活性の低下した使用済みの、周期律表第6族金属、周期律表第8族金属、及びリンを担持した水素化処理触媒を、
油分除去処理する工程、
400〜550℃で焼成する工程、
その焼成物に、有機物を、〔有機物〕/〔周期律表第8族金属〕のモル比率が0.2〜1.2となるように、前記有機物の溶液を用いて、担持させる工程、
及び担持後の焼成物を200℃以下で乾燥させる工程を含むことを特徴とする炭化水素油の水素化処理触媒の再生方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の再生方法によれば、使用済み炭化水素油の水素化処理触媒の脱硫活性を一層十分に復活させることができ、以って本発明は、一層脱硫活性に優れた炭化水素油の水素化処理触媒を提供することができる。また、本発明方法で再生された水素化処理触媒を用いれば、過酷な運転条件を必要とせずに、炭化水素油中の硫黄化合物を高度に脱硫することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<触媒の製造方法>
まず、本発明の触媒の製造方法について詳細に説明する。
【0013】
本発明では、無機酸化物担体として、各種無機酸化物を用いることができるが、主成分がアルミナである無機酸化物が好ましい。
担体に用いるアルミナは、α−アルミナ、γ−アルミナ、δ−アルミナ、アルミナ水和物等の種々のアルミナを使用することができるが、多孔質で高比表面積であるアルミナが好ましく、中でもγ−アルミナが適している。アルミナの純度は、約98質量%以上、好ましくは約99質量%以上のものが適している。アルミナ中の不純物としては、SO2-、Cl-、Fe、NaO等が挙げられるが、これらの不純物はできるだけ少ないことが望ましく、不純物全量で2質量%以下、好ましくは1質量%以下で、成分毎では、SO2-<1.5質量%、Cl-、Fe、NaO<0.1質量%であることが好ましい。
【0014】
担体に用いるアルミナには、他の酸化物成分を添加することが好ましく、他の酸化物成分としては、ゼオライト、ボリア、シリカ及びジルコニアから選ばれる一種以上が好ましい。これらを複合化させることにより、脱硫活性点を形成する二硫化モリブデンの積層化が有利になる。このうちゼオライトは、好ましくは、コールカウンター法(1質量%NaCl水溶液、アパーチャ−30μm、超音波処理3分)での測定による平均粒子径が2.5〜6μm、更に好ましくは3〜4μmのものである。また、このゼオライトは、粒子径6μm以下のものがゼオライト全粒子に対して占める割合が、約70〜98%、好ましくは約75〜98%、より好ましくは約80〜98%のものが望ましい。
【0015】
このような特性のゼオライトは、担体の細孔直径を精密に制御する上で好ましい。担体の細孔直径を精密に制御することで、難脱硫性物質の細孔内拡散を容易にする。ゼオライトの平均粒子径や、粒子径6μm以下のものが占める割合が上記範囲であれば、無機酸化物担体を調製する過程でアルミナ水和物(アルミナ前駆体)とゼオライトの吸着水量や結晶性の違いから、強度を増すために無機酸化物担体を焼成する場合、アルミナ水和物とゼオライトの収縮率が異なり、無機酸化物担体の細孔として比較的大きなメゾあるいはマクロポアーが生じる傾向を抑制できる。また、大きな細孔のものが少なければ、比表面積の低下を抑制でき、残油を処理するような場合には触媒毒となるメタル成分の内部拡散を抑制でき、延いては脱硫、脱窒素及び分解活性の低下を抑制できる。
【0016】
本発明では、アルミナに添加する好ましいゼオライトとしては、フォージャサイトX型ゼオライト、フォージャサイトY型ゼオライト、βゼオライト、モルデナイト型ゼオライト、ZSM系ゼオライト(ZSM−4、5、8、11、12、20、21、23、34、35、38、46等がある)、MCM−41、MCM-22、MCM−48、SSZ−33、UTD−1、CIT−5、VPI−6、TS−1、TS−2等が使用でき、特にY型ゼオライト、安定化Yゼオライト、βゼオライト、ZSM系ゼオライトが好ましい。また、ゼオライトは、プロトン型が好ましい。
上記のボリア、シリカ、ジルコニアは、一般に、この種の触媒担体成分として使用されるものを使用することができる。
また、上記のゼオライト、ボリア、シリカ、及びジルコニアは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組合せて使用できる。
【0017】
これら他の酸化物成分の添加量は、一般に、無機酸化物担体中に、アルミナが65質量%より多く99.4質量%以下あるのに対し、他の酸化物成分が0.5質量%から25質量%未満であり、好ましくは、アルミナが70〜99質量%であるのに対し、他の酸化物成分が0.5〜20質量%であり、より好ましくは、アルミナが80〜98.5質量%であるのに対して、他の酸化物成分が0.5〜15質量%である。
これら他の酸化物成分の添加量が上記の範囲であれば、細孔直径の制御を好適に行うことができ、またブレンステッド酸点やルイス酸点を十分に付与でき、周期律表第6族金属、特にモリブデンを高分散できる。
【0018】
本発明では、脱硫活性を向上させるためなどリン原子が触媒ペレット内で均一に分散していることが好ましく、必要に応じて無機酸化物担体にリン酸化物を含有させることができる。無機酸化物担体にリン酸化物を含有させる方法は、特に限定されるものではなく、平衡吸着法、共沈法、混練法等により行うことができるが、脱硫活性の高い触媒が得られる点で、担体の原料のアルミナ水和物中にリン酸化物の原料を混練する混練法によることが好ましい。通常のアルミナ担体は、アルミナ水和物を熟成、洗浄、脱水乾燥、成型、乾燥、焼成等の一般的な工程により製造することができるが、リン酸化物の混練工程は、上記成型工程の前に行うことができる。具体的には、15〜90℃に加熱したアルミナ水和物に、15〜90℃に加熱したリン化合物水溶液をpH4〜10になるように調整しながら、混練、攪拌する。こうして得られたリン含有アルミナ水和物を沈殿させ、所望により、熟成させた後、洗浄する。得られた洗浄品を必要に応じて熟成した後、所望の形状に成型する。これを乾燥・焼成してリン含有アルミナ担体を得る。
【0019】
上記のように、無機酸化物担体中に予めリン酸化物を含有させる場合のリン酸化物の量は、後記する無機酸化物担体に後から担持させるリン酸化物との合計量が、触媒基準で0.5〜8質量%の範囲とすることが好ましい。また、リン含有無機酸化物担体中のリン酸化物の量は、触媒基準で0.1〜6質量%の範囲とすることが好ましい。リン酸化物の含有量が上記範囲であれば、脱硫活性向上効果が期待でき、また、例えば後述する活性金属の二硫化モリブデンが配置すべきアルミナ表面上の場所が狭くなることなく、その結果、二硫化モリブデンのシンタリング(凝集)が起こらず、二硫化モリブデン結晶のエッジ部の面積は減少せず、脱硫活性点であるCoMoS相、NiMoS相の絶対数が減少せず、触媒が高い脱硫活性を保有することができる。
また、無機酸化物担体中に含有させるリン酸化物の原料としては、種々の化合物を用いることができる。例えば、オルトリン酸、メタリン酸、ピロリン酸、三リン酸、四リン酸が挙げられるが、中でもオルトリン酸が好ましい。
【0020】
本発明で用いる無機酸化物担体は、400〜700℃で0.5〜10時間焼成して調製されたものが好ましい。400℃未満で0.5時間未満の焼成では十分な機械強度を得ることができず、700℃を超える高温度下で10時間を超える長時間の焼成を行っても、この効果が飽和するばかりでなく、焼き締めにより、無機酸化物担体の比表面積、細孔容積、平均細孔直径と言った特性を却って低下してしまう。
【0021】
無機酸化物担体の比表面積、細孔容積、平均細孔直径は、炭化水素油に対する水素化脱硫活性の高い触媒を得るために、比表面積230〜500m/g、好ましくは270〜500m/g、細孔容積0.5〜1ml/g、好ましくは0.55〜0.9ml/g、平均細孔直径40〜180Åであることが望ましい。その理由は次のとおりである。
【0022】
含浸溶液中で活性金属の周期律表第6族金属と周期律表第8族金属は錯体を形成していると考えられるため、無機酸化物担体の比表面積が230m/g以上であれば、含浸の際、錯体の嵩高さのために金属の高分散化が困難となり、その結果、得られる触媒を硫化処理しても、脱硫活性点であるCoMoS相、NiMoS相等の形成の精密な制御が困難になることを回避できると推測される。また、比表面積が500m/g以下であれば、細孔直径が極端に小さくならないため、触媒の細孔直径も小さくならず、好ましい。細孔直径が小さいと、硫黄化合物の触媒細孔内拡散が不十分となり、脱硫活性が低下する。
【0023】
細孔容積が0.5ml/g以上であれば、通常の含浸法で触媒を調製する場合、細孔容積内に入り込む溶媒が少量とならないため、好ましい。溶媒が少量であると、活性金属化合物の溶解性が悪くなり、金属の分散性が低下し低活性な触媒となる。活性金属化合物の溶解性を上げるためには、硝酸等の酸を多量に加える方法があるが、余り加えすぎると担体の低表面積化が起こり、脱硫性能低下の主原因となる。また、細孔容積が1ml/g以下であれば、比表面積が小さくならず、活性金属の分散性が良くなり、脱硫活性の高い触媒となるため、好ましい。
【0024】
平均細孔直径が40Å以上であれば、活性金属を担持した触媒の細孔直径も小さくならず、好ましい。触媒の細孔直径が小さいと、硫黄化合物の触媒細孔内への拡散が不十分となり、脱硫活性が低下する。平均細孔直径が180Å以下であれば、触媒の比表面積が小さくならず、好ましい。触媒の比表面積が小さいと、活性金属の分散性が悪くなり、脱硫活性の低い触媒となる。また、上記の平均細孔直径の条件を満たす細孔の有効数を多くするために、触媒の細孔分布、即ち平均細孔直径±15Åの細孔を有する細孔の割合は、20〜90%、好ましくは35〜85%とすることが望ましい。90%以下であれば、脱硫される化合物が特定の硫黄化合物に限定されず、満遍なく脱硫することができるため好ましい。一方、20%以上では、炭化水素油の脱硫に寄与しない細孔が増加せず、その結果、脱硫活性が大幅に低下することがないため好ましい。
【0025】
本発明では、まず、上記のような無機酸化物担体に、触媒基準、酸化物換算で、周期律表第6族金属(以下「6族金属」という)から選ばれた少なくとも1種を10〜40質量%、周期律表第8族金属(以下「8族金属」という)から選ばれた少なくとも1種を1〜15質量%、リンを0.5〜8質量%となるように担持させる。なお、本発明において、「周期律表第6族金属」とは、長周期型周期表における第6A族金属を意味し、「周期律表第8族金属」とは、長周期型周期表における第8族金属を意味する(「化学大辞典」,第1版,第3刷,株式会社東京化学同人,1994年4月1日,p.1079−1081)。
【0026】
担持させる6族金属は、モリブデン、タングステンが好ましく、より好ましくは、モリブデンである。6族金属の担持量は、触媒基準、酸化物換算で、10〜40質量%、好ましくは10〜30質量%である。10質量%以上であれば、6族金属に起因する効果を発現させるのに十分であり、好ましい。また、40質量%以下であれば、6族金属の含浸(担持)工程で6族金属化合物の凝集が生じず、6族金属の分散性が良くなり、また、効率的に分散する6族金属担持量の限度を超えず、触媒表面積が大幅に低下しない等により、触媒活性の向上がみられ、好ましい。
【0027】
担持させる8族金属は、コバルト、ニッケルが好ましい。8族金属の担持量は、触媒基準、酸化物換算で、1〜15質量%、好ましくは、3〜8質量%である。1質量%以上であれば、8族金属に帰属する活性点が十分に得られ、好ましい。また、15質量%以下であれば、8族金属の含有(担持)工程で8族金属化合物の凝集が生じず、8族金属の分散性が良くなることに加え、不活性なコバルト、ニッケル種等の8族金属種であるCo種、Ni種等の前駆体であるCoO種、NiO種等や担体の格子内に取り込まれたCoスピネル種、Niスピネル種等が生成しないと考えられるため、触媒能の向上が見られ、好ましい。また、8族金属としてコバルトとニッケルを使用するときは、〔Co〕/〔Ni+Co〕のモル比が0.6〜1の範囲、より好ましくは、0.7〜1の範囲になるように使用することが望ましい。この比が0.6以上では、Ni上でコーク前駆体が生成せず、触媒活性点がコークで被覆されず、その結果活性が低下しないため、好ましい。
【0028】
8族金属と6族金属の上記した含有量において、8族金属と6族金属の最適質量比は、好ましくは、酸化物換算で、〔8族金属〕/〔8族金属+6族金属〕の値で、0.1〜0.25である。この値が0.1以上であれば、脱硫の活性点と考えられるCoMoS相、NiMoS相等の生成が抑制されず、脱硫活性向上の度合いが高くなるため、好ましい。0.25以下であれば、上記の不活性なコバルト、ニッケル種等(Co種、Ni種等)の生成が抑制され、触媒活性が向上されるので好ましい。
【0029】
本発明では、無機酸化物担体への、6族金属、8族金属、及びリンの担持成分の担持は、一般に、これらの担持成分を含む原料化合物を含有する含浸溶液を調製し、それを、得られる触媒の担持成分の担持量が上記所定範囲となるように、担体に含浸させる含浸法により行われる。
【0030】
6族金属を担持させるに用いる6族金属を含む原料化合物としては、三酸化モリブデン、モリブドリン酸、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸等が挙げられ、好ましくは、三酸化モリブデン、モリブドリン酸である。これらの化合物の上記含浸溶液中への添加量は、得られる触媒の6族金属の担持量が上記所定範囲となる量とする。
【0031】
8族金属を担持させるに用いる8族金属を含む原料化合物としては、炭酸コバルト、炭酸ニッケル、硝酸コバルト6水和物、硝酸ニッケル6水和物等が挙げられる。好ましくは、炭酸コバルト、炭酸ニッケルである。これらの化合物の上記含浸溶液中への添加量は、得られる触媒の8族金属の担持量が上記所定範囲となる量とする。
【0032】
リンを担持させるのに用いるリンを含む原料化合物としては、オルトリン酸、メタリン酸、ピロリン酸、三リン酸、四リン酸等が挙げられ、中でもオルトリン酸が好ましい。これらの化合物の上記含浸溶液中への添加量は、得られる触媒のリンの担持量が上記所定の触媒基準、酸化物換算で0.5〜8質量%、好ましくは1〜8質量%の範囲となる量とする。触媒のリンの担持量が0.5質量%以上であれば、触媒表面上でヘテロポリ酸を形成し、なおかつヘテロポリ酸を形成しないリンは、アルミナ表面上に分散するため、予備硫化工程で高分散かつ多層な二硫化モリブデン気結晶が形成されて、上記脱硫活性点を十分に配置できると推測されるので好ましい。また、8質量%以下であれば、触媒表面上で6族金属が十分にヘテロポリ酸を形成し、且つヘテロポリ酸を形成しないリンはアルミナ表面に分散に予備硫化工程で高品質な脱硫活性点を被覆しないため、活性低下を引き起こさないため好ましい。
【0033】
本発明では、前記のとおり、担体としてリン酸化物を含有する無機酸化物担体も使用することができるが、担体としてリン酸化物を含有する無機酸化物担体を使用する場合は、無機酸化物担体中のリン含有量と、それに担持させたリンの担持量の合計が、上記所定の触媒基準、酸化物換算で0.5〜8質量%の範囲であることが好ましい。
【0034】
上記各担持成分の原料化合物を含有する含浸溶液の調製は、常法により行うことができる。各担持成分の原料化合物を溶解させるために用いる溶媒は、一般に水である。溶媒の使用量は、少なすぎれば、担体を十分に浸漬することができず、多すぎれば、溶解した活性金属の一部が担体上に担持しきれず、含浸溶液容器のへりなどに付着してしまい、所望の担持量が得られないため、担体100gに対して、50〜90gが好ましい。含浸溶液を調製する際の温度は、0℃を超え100℃以下でよく、この範囲であれば、溶媒に各担持成分の原料化合物を良好に溶解させることができる。
なお、上記の6族金属、8族金属の原料化合物などが含浸溶液に十分に溶解しない場合には、これらの化合物とともに酸〔硝酸、有機酸(クエン酸、リンゴ酸、酒石酸等)〕を使用してもよく、好ましくは有機酸の使用である。
【0035】
また、含浸溶液の無機酸化物担体への含浸も、常法により行うことができる。含浸条件は、種々の条件を採ることができるが、通常、含浸温度は、好ましくは0℃を超え100℃未満が適している。含浸時間は、15分〜3時間、好ましくは、20分〜2時間、更に好ましくは、30分〜1時間である。なお、温度が高すぎると、含浸操作中に乾燥が起こり、担持成分の分散度が偏ってしまう。また、含浸中は攪拌することが好ましい。
【0036】
含浸溶液を含浸させた無機酸化物担体は、一般に、常温〜約80℃、窒素気流中、空気気流中、あるいは真空中で、水分をある程度〔LOI(Loss on ignition)が50%以下となるように〕除去して乾燥させる。
【0037】
本発明では、上記のように一般に含浸法により6族金属、8族金属、及びリンの担持成分を担持せしめた無機酸化物担体を、一般に乾燥させた後、400〜550℃、好ましくは450〜500℃で焼成する。焼成時間は、焼成温度にもよるが、一般に、2〜10時間、好ましくは3〜5時間である。焼成温度が400℃未満では、6族金属、8族金属及びリンと無機酸化物担体との相互作用が小さく、水素化処理運転中に6族金属、8族金属がシンタリングすることが推察され、脱硫活性の低下を引き起こすと考えられるため、好ましくない。また、550℃を超える高温では、焼成時に6族金属、8族金属及びリンがシンタリングするため、所望の触媒性能を発揮することができない。また、焼成温度にもよるが、一般に、焼成時間が2時間以上であれば、6族金属、8族金属及びリンと無機酸化物担体との相互作用を最適にすることが可能である。また、10時間以下であれば、規模を拡張することなく、必要量の触媒製造が可能である。詳細は不明であるが、上記焼成工程を行うことで、触媒の熱耐性を向上することができ、その結果、長寿命な触媒が得られると考えられる。即ち、上記焼成工程を行わないと、触媒の最終組成物の熱に対する耐性を付与することができないため、実機の反応温度の変化による触媒劣化が大きく、長期運転が出来ないと推測される。
【0038】
上記、焼成物に担持させる有機物の炭素含有量は、触媒基準で、2〜10質量%、好ましくは2〜6質量%、より好ましくは、2〜4質量%である。
この炭素含有量が、2質量%以上では、触媒表面で8族金属が有機物と錯体化合物を十分に形成して、この場合、予備硫化工程において錯体化されていない6族金属が8族金属の硫化に先立って硫化されることにより、脱硫活性点(CoMoS相、NiMoS相等)が十分に形成されるので、不活性なコバルト、ニッケル種等の8族金属の金属種であるCo種、Ni種等、及び担体の格子内に取り込まれたCoスピネル種、Niスピネル種等が形成されないと推測されるため、好ましい。
10質量%以下では、触媒表面で8族金属が有機物と十分に錯体化合物を形成することができるが、一方、6族金属が有機物と錯体化合物を形成することはなく、また、余剰の有機物由来の炭素が触媒表面上に残ることはなく、好ましい。
6族金属が有機物と錯体化した場合は、活性化(硫化)の際に、6族金属の硫化が8族金属の硫化と同時に起こり、脱硫活性点(CoMoS相、NiMoS相等)が効率的に形成されず、延いては不活性なコバルト、ニッケル種等の8族金属の金属種であるCo種、Ni種等が形成されると推定される。
また、過剰な炭素は、触媒の被毒物質として硫化段階で脱硫活性点を被覆するため、活性低下の原因となる。
【0039】
上記焼成物に担持させる有機物としては、好ましくは有機酸、多価アルコール類が挙げられ、更に好ましくはカルボン酸が、より好ましくは多価カルボン酸、最も好ましくは、脂肪族多価カルボン酸が挙げられる。カルボン酸としては、例えばクエン酸、リンゴ酸、酒石酸、シュウ酸、コハク酸、グルタン酸、グルコン酸、アジピン酸、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、サリチル酸、マロン酸、等が挙げられ、中でもクエン酸が好ましく用いられる。これらの有機酸は、硫黄を実質的に含まない化合物を使用することが好ましい。これらの有機酸は、必要に応じて、1種用いることも、2種以上を混合して用いることもでき、多価アルコール類などの有機物を併用することもできる。また、多価アルコール類としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、トリエチレングリコール、トリブチレングリコール、テトラエチレングリコール類が挙げられ、中でもジエチレングリコールが好ましく用いられる。これらの多価アルコールは、必要に応じて、1種用いることも、2種以上を混合して用いることもできる。
【0040】
本発明では、上記のように担持成分を担持せしめた無機酸化物担体を焼成して得られた焼成物に、有機物を担持させて、しかる後200℃以下、好ましくは80〜200℃で乾燥する。この焼成物への有機物の担持は、有機物の溶液を用いて、有機物の担持量が、〔有機物〕/〔周期律表第8族金属〕のモル比率が0.2〜1.2、好ましくは0.6〜1.0、もっとも好ましくは0.6〜0.8となるように行われる。このモル比率が0.2以上であれば、触媒表面で8族金属が有機物と錯体化合物を十分に形成して、予備硫化工程において、8族金属に帰属する脱硫活性点が十分に得られるため好ましい。また、1.2以下であれば、触媒表面で8族金属が有機物と十分に錯体化合物を形成でき、一方で、過剰な有機物が6族金属と錯体化合物を形成することを抑制することができると考えられるため好ましい。
【0041】
上記焼成物への有機物の担持は、有機酸などの有機物の溶液を用いて、それを上記焼成物に含浸させて行われる。この有機物の含浸溶液の調製は、常法により行うことができる。有機物を溶解させるために用いる溶媒は、一般に水である。含浸溶液を調製する際の温度は、0℃を超え100℃以下が好ましい。
【0042】
また、上記焼成物への有機物の含浸溶液の含浸も、常法により行うことができる。含浸条件は、種々の条件を採ることができるが、通常、含浸温度は0℃を超え100℃未満が適しており、含浸時間は15分〜3時間が適している。含浸温度が上記範囲であれば、含浸中に乾燥が起こり、有機物の分散度が低下することがない。また、含浸時間が上記範囲であれば、上記焼成物中に有機物が均一となる。
【0043】
有機物の含浸溶液を含浸させて、有機物を担持させた上記焼成物は、一般に、常温〜約80℃、窒素気流中、空気気流中、あるいは真空中で、水分をある程度〔LOIが50%以下となるように〕除去し、その後、空気気流中、窒素気流中、あるいは真空中で200℃以下、好ましくは80〜200℃、更に好ましくは100〜150℃、5時間〜20時間の乾燥を行う。有機物を担持させた上記焼成物においては、担持させた有機物が、先に担持されている活性金属と錯体化すると考えられるが、乾燥を200℃以下の温度で行うと、この先に担持されている活性金属と錯体化している有機物が触媒表面上から脱離せず、その結果、得られる触媒を硫化処理したときに上記の活性点と考えられるCoMoS相、NiMoS相の形成の精密制御が容易になるため好ましい。ただし、真空中で乾燥を行う場合は、圧力760mmHg換算で上記の温度範囲になるようにして乾燥を行うことが好ましい。
【0044】
本発明により上記の如くして得られた水素化処理触媒は、優れた脱硫活性を有しており、過酷な運転条件を必要とせずに、炭化水素油中の硫黄化合物を高度に脱硫することができる。また、本発明により得られる水素化処理触媒は、一般に、比表面積が100〜450m/g、好ましくは150〜300m/g、細孔容積が0.3〜0.9ml/g、好ましくは0.3〜0.6ml/g、平均細孔直径が40〜200Å、好ましくは65〜140Åである。
【0045】
本発明により得られる触媒は、例えば、直留ナフサ、接触改質ナフサ、接触分解ナフサ、接触分解ガソリン、直留灯油、直留軽油、接触分解軽油、熱分解軽油、水素化処理軽油、脱硫処理軽油、減圧蒸留軽油(VGO)等の留分の水素化処理に好適に用いることができる。本発明により得られる触媒を、その水素化処理に好適に用い得る炭化水素油の代表的な性状例として、沸点範囲が30〜560℃、硫黄化合物濃度が5質量%以下のものが挙げられる。
【0046】
また、本発明により得られる触媒による上記のような炭化水素油の水素化処理は、一般に、水素分圧0.7〜8MPa、温度220〜420℃、液空間速度0.3〜10hr−1、水素/オイル比20〜1000m(normal)/klの条件により好適に行うことができる。
【0047】
<再生方法>
次に、本発明の触媒の再生方法について詳細に説明する。
本発明では、周期律表第6族金属、周期律表第8族金属、及びリンを担持した水素化処理触媒であれば、その製造由来や使用由来を問うことなく、種々の製造方法で製造され、また、種々の炭化水素油の水素化処理に用いられた、種々の使用済み水素化処理触媒の再生を行うことができる。本発明で再生対象とする使用済み触媒は、無機酸化物担体に周期律表第6族金属、周期律表第8族金属、及びリン以外の成分、例えば有機物ないし有機物由来の炭素を担持した触媒であっても良い。好ましくは、ゼオライトを含有した無機酸化物担体に周期律表第6族金属、周期律表第8族金属、及びリン以外に、有機物ないし有機物由来の炭素を担持した触媒である。更に好ましくは、ゼオライトを含有した無機酸化物担体に周期律表第6族金属、周期律表第8族金属、及びリン以外に、有機酸ないし有機酸由来の炭素を担持した触媒である。より好ましくは、ゼオライトを含有した無機酸化物担体に周期律表第6族金属、周期律表第8族金属、及びリン以外に、クエン酸ないしクエン酸由来の炭素を担持した触媒である。また、本発明では、例えば、上記本発明の製造方法により得られた触媒を軽油などの炭化水素油の水素化処理に用いた後の使用済み触媒の再生を好適に行うことができる。
【0048】
本発明では、まず、使用済み触媒を油分除去処理する。この油分除去処理は、一般に窒素、水蒸気、二酸化炭素、空気等を使用できる。例えば、使用済み触媒を加熱空気により300〜400℃で油分等の揮発分が除去される場合、加熱空気中の酸素濃度は、多くの処理条件によって、最適な濃度は異なるが、一般に21容量%以下、好ましくは、20容量%以下である。
【0049】
本発明では、上記のように油分除去処理された使用済み触媒を400〜550℃、好ましくは450〜500℃で焼成する。焼成時間は、焼成温度にもよるが、一般に、15分〜10時間、好ましくは30分〜9時間である。焼成温度が400℃未満では、触媒上に析出して炭素分を十分に除去できないため、活性を十分に回復させることができない。また、550℃を超える高温では、6族金属、8族金属がシンタリングしてしまうため、活性を十分に回復させることができない。また、焼成温度にもよるが、一般に、焼成時間が15分以上であれば、触媒上に析出した炭素を除去することが可能であり、また、10時間以下であれば、設備規模を拡張することなく、必要量の触媒再生が可能である。
【0050】
上記、使用済み触媒の焼成物に担持させる有機物の炭素含有量は、触媒基準で、2〜10質量%、好ましくは2〜6質量%、より好ましくは2〜4質量%である。
この炭素含有量が、2質量%以上では、触媒表面で8族金属が有機物と錯体化合物を十分に形成して、この場合、予備硫化工程において錯体化されていない6族金属が8族金属の硫化に先立って硫化されることにより、脱硫活性点(CoMoS相、NiMoS相等)が十分に形成されるので、不活性なコバルト、ニッケル種等の8族金属の金属種であるCo種、Ni種等、及び担体の格子内に取り込まれたCoスピネル種、Niスピネル種等が形成されないと推測されるため、好ましい。
10質量%以下では、触媒表面で8族金属が有機物と十分に錯体化合物を形成することができるが、一方、6族金属が有機物と錯体化合物を形成することはなく、また、余剰の有機物由来の炭素が触媒表面上に残ることはなく、好ましい。
6族金属が有機物と錯体化した場合は、活性化(硫化)の際に、6族金属の硫化が8族金属の硫化と同時に起こり、脱硫活性点(CoMoS相、NiMoS相等)が効率的に形成されず、延いては不活性なコバルト、ニッケル種等の8族金属の金属種であるCo種、Ni種等が形成されると推定される。
また、過剰な炭素は、触媒の被毒物質として硫化段階で脱硫活性点を被覆するため、活性低下の原因となる。
【0051】
上記使用済み触媒の焼成物に担持させる有機物としては、上記本発明の触媒の製造方法において6族金属等の担持成分を担持せしめた無機酸化物担体の焼成物に担持させる有機物と同様の有機物を用いることができる。触媒の製造時において有機物ないし、有機物に由来する炭素分を含む触媒の場合では、触媒製造時に用いた有機物と同一の有機物を添加することが好ましい。更に好ましくは、同一、且つ同量の有機物を添加することである。
即ち、上記使用済み触媒の焼成物に担持させる有機物としては、好ましくは有機酸、多価アルコール類が挙げられ、更に好ましくはカルボン酸が、より好ましくは多価カルボン酸、最も好ましくは、脂肪族多価カルボン酸が挙げられる。カルボン酸としては、例えばクエン酸、リンゴ酸、酒石酸、シュウ酸、コハク酸、グルタン酸、グルコン酸、アジピン酸、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、サリチル酸、マロン酸、等が挙げられ、中でもクエン酸が好ましく用いられる。これらの有機酸は、硫黄を実質的に含まない化合物を使用することが好ましい。これらの有機酸は、必要に応じて、1種用いることも、2種以上を混合して用いることもでき、多価アルコール類などの有機物を併用することもできる。
また、多価アルコール類としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、トリエチレングリコール、トリブチレングリコール、テトラエチレングリコール類が挙げられ、中でもジエチレングリコールが好ましく用いられる。これらの多価アルコールは、必要に応じて、1種用いることも、2種以上を混合して用いることもできる。
【0052】
本発明では、上記のように油分除去処理された使用済み触媒を焼成して得られた焼成物に、有機物を担持させて、しかる後200℃以下、好ましくは80〜200℃で乾燥する。この使用済み触媒の焼成物への有機物の担持は、有機物の溶液を用いて、有機物の担持量が、〔有機物〕/〔周期律表第8族金属〕のモル比率が0.2〜1.2、好ましくは0.6〜1.0、もっとも好ましくは0.6〜0.8となるように行われる。このモル比率が0.2以上であれば、触媒表面で8族金属が有機物と錯体化合物を十分に形成して、予備硫化工程において、8族金属に帰属する脱硫活性点が十分に得られるため好ましい。また、1.2以下であれば、触媒表面で8族金属が有機物と十分に錯体化合物を形成でき、一方で、過剰な有機物が6族金属と錯体化合物を形成することを抑制することができると考えられるため好ましい。
【0053】
上記使用済み触媒の焼成物への有機物の担持は、有機酸等の有機物の溶液を用いて、それを上記使用済み触媒の焼成物に含浸させて行われる。この有機物の含浸溶液の調製は、常法により行うことができる。有機物を溶解させるために用いる溶媒は、一般に水である。
【0054】
また、上記使用済み触媒の焼成物への有機物の含浸溶液の含浸も、常法により行うことができる。含浸条件は、種々の条件を採ることができるが、通常、含浸温度は0℃を超え100℃未満が適しており、含浸時間は15分から3時間が適している。含浸温度が上記範囲であれば、含浸中に乾燥が起こり、有機物の分散度が低下することがない。また、含浸時間が上記範囲であれば、上記焼成物中に有機物が均一となる。
【0055】
有機物の含浸溶液を含浸させて、有機物を担持させた上記使用済み触媒の焼成物は、上記本発明の触媒の製造方法において有機物を担持させた6族金属等の担持成分を担持せしめた無機酸化物担体の焼成物の場合と同様に、一般に、常温〜約80℃、窒素気流中、空気気流中、あるいは真空中で、水分をある程度〔LOIが50%以下となるように〕除去し、その後、空気気流中、窒素気流中、あるいは真空中で200℃以下、好ましくは80〜200℃、5時間〜20時間の乾燥を行う。有機物を担持させた上記使用済み触媒の焼成物においては、担持させた有機物が、使用済み触媒に担持されている活性金属と錯体化すると考えられるが、乾燥を200℃以下の温度で行うと、この使用済み触媒に担持されている活性金属と錯体化している有機物が触媒表面上から脱離せず、その結果、得られる触媒を硫化処理したときに上記の活性点と考えられるCoMoS相、NiMoS相の形成の精密制御が容易になるため好ましい。ただし、真空中で乾燥を行う場合は、圧力760mmHg換算で上記の温度範囲になるようにして乾燥を行うことが好ましい。
【0056】
本発明により上記の如くして再生された水素化処理触媒は、脱硫活性が十分に復活されており、過酷な運転条件を必要とせずに、炭化水素油中の硫黄化合物を高度に脱硫することができる。
【0057】
本発明により再生された触媒は、上記本発明の製造方法により製造された触媒と同様に、例えば、直留ナフサ、接触改質ナフサ、接触分解ナフサ、接触分解ガソリン、直留灯油、直留軽油、接触分解軽油、熱分解軽油、水素化処理軽油、脱硫処理軽油、減圧蒸留軽油(VGO)等の留分の水素化処理に好適に用いることができる。本発明により再生された触媒を、その水素化処理に好適に用い得る炭化水素油の代表的な性状例として、沸点範囲が30〜560℃、硫黄化合物濃度が5質量%以下のものが挙げられる。
【0058】
また、本発明により再生された触媒による上記のような炭化水素油の水素化処理は、一般に、水素分圧0.7〜20MPa、温度220〜420℃、液空間速度0.3〜10hr−1、水素/オイル比20〜1000m(normal)/klの条件により好適に行うことができる。
【実施例】
【0059】
以下、実施例、比較例を挙げて本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0060】
参考例1(製造例)
SiO/Alモル比6のSHYゼオライト粉末(平均粒子径3.5μm、粒子径6μm以下のものがゼオライト全粒子の87%)と、アルミナ水和物を混練、押出成形後、600℃で2時間焼成して直径1.5mmの柱状成形物のゼオライト-アルミナ複合担体(ゼオライト/アルミナ質量比:5/95、細孔容積0.79ml/g、比表面積311m/g、平均細孔直径93Å)を得た。
炭酸コバルト4.6g、リン酸2.2g、モリブドリン酸17.4gをイオン交換水25.6gに溶解させて攪拌して含浸溶液を得た。
上記含浸溶液を、ナス型フラスコ中で、上記ゼオライト-アルミナ複合体の無機酸化物担体30gに、常温にて1時間含浸させ、乾燥(風乾)後、マッフル炉で500℃にて4時間焼成を行って焼成物を得た。この焼成物に対して、有機物としてクエン酸を表1に記載した量含浸させて、マッフル炉で120℃、16時間乾燥させて触媒Aを得た。得られた触媒Aの化学組成を表1、物理性状を表2に示した。
【0061】
参考例2(製造例)
参考例1において、焼成物に、有機物としてクエン酸に換えて、表1に記載した量のジエチレングリコールを含浸させたこと以外は、参考例1と同様にして触媒Bを得た。得られた触媒Bの化学組成を表1、物理性状を表2に示した。
【0062】
参考例3(製造例)
参考例1において、焼成物にクエン酸を含浸させないこと以外は、参考例1と同様にして触媒aを得た。得られた触媒aの化学組成を表1、物理性状を表2に示した。
【0063】
【表1】

【0064】
【表2】

【0065】
《減圧軽油の水素化処理》
以上の参考例1〜3(製造例)で得た触媒の水素化脱硫活性を、原料油に下記性状の減圧軽油を用い、下記のようにして評価した。
即ち、はじめに、触媒を高圧流通式反応装置に充填して固定床式触媒床を形成し、下記の条件で前処理した。
次に、反応温度に加熱した原料油と水素含有ガスとの混合液体を、反応装置の上部より導入して、下記の条件で脱硫反応を進行させ、生成油とガスの混合液体を反応装置の下部より流出させ、気液分離器で生成油を分離した。
【0066】
《触媒の前処理条件》
水素分圧:4.9MPa
温度:290℃で15時間保持、次いで320℃で15時間維持のステップ昇温。
昇温速度は、25℃/h
【0067】
《反応条件》
反応温度:360℃
水素分圧:4.9MPa
液空間速度:0.66h−1
水素/油比:500Nm/kl
【0068】
《原料油性状》
油種:アラビアンライト減圧軽油
比重(15℃/4℃):0.9313g/cm
蒸留性状 :初留点368℃、50%点456℃、90%点510℃、終点549℃
硫黄分:2.9質量%
流動点:32.5℃
【0069】
《原料油性状の分析方法》
比重の分析:密度試験法 JIS K 2249
蒸留性状の分析:蒸留試験分析法 JIS K 2254
硫黄分の分析:硫黄分試験法 JIS K 2541
流動点の分析:流動点試験方法 JIS K 2269
【0070】
上記各触媒の脱硫活性を以下の方法で解析した。
上記反応条件で反応装置を運転し、20日を経過した時点で生成油を採取し、生成油中の硫黄分と原料油の硫黄分及び液空間速度から、脱硫反応速度定数(ks)を求めた。このks値の求め方を以下に示す。
生成油の硫黄分(Sp)の減少量に対して、1.5次の反応次数を得る反応速度式の定数を脱硫反応速度定数(ks)とする。尚、反応速度定数が高い程、脱硫活性が優れていることを示している。
脱硫反応速度定数=1/(1.5−1)×[1/(Sp)(1.5−1)−1/(Sf)(1
.5−1)]×(LHSV)
式中、Sf:原料油中の硫黄分(質量%)
Sp:反応生成油中の硫黄分(質量%)
LHSV:液空間速度(h-1)
脱硫相対活性(%)=各脱硫反応速度定数/参考例3の触媒aの脱硫反応速度定数×100
触媒A、B、aの評価結果として、生成油の硫黄分、脱硫反応速度定数、触媒aの反応速度定数を100とした場合の脱硫相対活性を表3に示した。
【0071】
【表3】

【0072】
実施例1(再生例)
国際公開番号 WO2004/054712の実施例1に従って次のようにして触媒イを製造した。
即ち、イオン交換水22.3gに、クエン酸第一コバルト10.27gとリン酸(85%水溶液)2.24gを投入し、80℃に加温して10分間攪拌した。次いで、モリブドリン酸17.61gを投入し溶解させ、同温度で15分間攪拌して含浸用の溶液を調製した。
ナス型フラスコ中に、参考例1で調製したのと同様のゼオライト-アルミナ複合体の無機酸化物担体30.0gを投入し、そこへ上記の含浸溶液の全量をピペットで添加し、約25℃で3時間浸漬した。その後、窒素気流中で風乾し、マッフル炉中、空気気流中・大気圧・120℃で約16時間乾燥させ、触媒イを得た。
【0073】
この触媒イを、炭化水素油の水素化処理に供し、その活性が許容されないレベルに低下するまで使用した。その後、空気雰囲気中において300℃、3時間処理することでこの使用済み触媒に残存している炭化水素油を除去した。この残存炭化水素油を除去した使用済み触媒上に析出している炭素を主成分とする不純物を、450℃で、4時間焼成して除去した後、この焼成物に表4に記載した量のクエン酸を含浸させて、マッフル炉で120℃、16時間乾燥させて再生触媒Cを得た。得られた再生触媒Cの化学組成を表4、物理性状を表5に示した。
【0074】
実施例2(再生例)
実施例1において、クエン酸に換えて、表4に記載した量のジエチレングリコールを含浸させたこと以外は、実施例1と同様にして再生触媒Dを得た。得られた再生触媒Dの化学組成を表4、物理性状を表5に示した。
【0075】
比較例1(再生例)
実施例1において、焼成物にクエン酸を含浸させないこと以外は、実施例1と同様にして再生触媒bを得た。得られた再生触媒bの化学組成を表4、物理性状を表5に示した。
【0076】
【表4】

【0077】
【表5】

【0078】
《減圧軽油の水素化処理》
以上の、触媒イと、実施例1、2(再生例)及び比較例1(再生例)で得た各再生触媒の水素化脱硫活性を、原料油として上記参考例1等(製造例)で得た触媒の評価に用いたものと同様の性状の減圧軽油を用い、上記参考例1等(製造例)で得た触媒の評価と同様にして評価した。その評価結果として、各触媒の生成油の硫黄分、脱硫反応速度定数、及び使用前の触媒イの反応速度定数を100とした場合の脱硫相対活性を表6に示した。
【0079】
【表6】

【0080】
参考例4(製造例)
炭酸コバルト4.54g、リン酸(85%水溶液)2.24g、モリブドリン酸17.70gをイオン交換水25.5gに溶解させて攪拌して含浸溶液を得た。
上記含浸溶液を、ナス型フラスコ中で、参考例1で調製したのと同様のゼオライト−アルミナ複合体の無機酸化物担体30.0gに、常温にて1時間含浸させ、乾燥(風乾)後、マッフル炉で500℃にて4時間焼成を行って焼成物を得た。この焼成物に対して、有機物としてクエン酸を表7に記載した量含浸させて、マッフル炉で120℃、16時間乾燥させて触媒Eを得た。得られた触媒Eの化学組成を表7、物理性状を表8に示した。
【0081】
参考例5(製造例)
SiO/Alモル比6のSHYゼオライト粉末(平均粒子径3.5μm、粒子径6μm以下のものがゼオライト全粒子の87%)とアルミナ水和物とオルトリン酸を混練し、押出成形後、600℃で2時間焼成して直径1/16インチの柱状成形物のリン酸化物−ゼオライト−アルミナ複合担体(リン酸化物/ゼオライト/アルミナ質量比:4.4/5/90.5、細孔容積0.66ml/g、比表面積374m/g、平均細孔直径61Å)を得た。
イオン交換水23.1gに、炭酸コバルト4.47g、モリブドリン酸16.53gを溶解させて攪拌して含浸溶液を得た。
上記含浸溶液を、ナス型フラスコ中で、上記リン酸化物−ゼオライト−アルミナ複合体の無機酸化物担体30.0gに、常温にて1時間含浸させ、乾燥(風乾)後、マッフル炉で500℃にて4時間焼成を行って焼成物を得た。この焼成物に対して、有機物としてクエン酸を表7に記載した量含浸させて、マッフル炉で120℃、16時間乾燥させて触媒Fを得た。得られた触媒Fの化学組成を表7、物理性状を表8に示した。
【0082】
参考例6(製造例)
シリカとアルミナ水和物とオルトリン酸を混練し、押出成形後、600℃で2時間焼成して直径1/16インチの柱状成形物のリン酸化物−シリカ−アルミナ複合担体(リン酸化物/シリカ/アルミナ質量比:4.4/5/90.5、細孔容積0.78ml/g、比表面積324m/g、平均細孔直径98Å)を得た。
イオン交換水27.3gに、炭酸コバルト4.31g、モリブドリン酸16.48gを溶解させて攪拌して含浸溶液を得た。
上記含浸溶液を、ナス型フラスコ中で、上記リン酸化物−シリカ−アルミナ複合体の無機酸化物担体30.0gに、常温にて1時間含浸させ、乾燥(風乾)後、マッフル炉で500℃にて4時間焼成を行って焼成物を得た。この焼成物に対して、有機物としてクエン酸を表7に記載した量含浸させて、マッフル炉で120℃、16時間乾燥させて触媒Gを得た。得られた触媒Gの化学組成を表7、物理性状を表8に示した。
【0083】
参考例7(製造例)
アルミナ水和物を混練し、押出成形後、600℃で2時間焼成して直径1/16インチの柱状成形物のγ−アルミナ担体(細孔容積0.85ml/g、比表面積249m/g、平均細孔直径100Å)を得た。
イオン交換水29.4gに、炭酸コバルト4.60g、リン酸(85%水溶液)2.16g、モリブドリン酸17.42gを溶解させて攪拌して含浸溶液を得た。
上記含浸溶液を、ナス型フラスコ中で、上記γ−アルミナの無機酸化物担体30.0gに、常温にて1時間含浸させ、乾燥(風乾)後、マッフル炉で500℃にて4時間焼成を行って焼成物を得た。この焼成物に対して、有機物としてクエン酸を表7に記載した量含浸させて、マッフル炉で120℃、16時間乾燥させて触媒Hを得た。得られた触媒Hの化学組成を表7、物理性状を表8に示した。
【0084】
参考例8(製造例)
シリカとアルミナ水和物とを混練し、押出成形後、600℃で2時間焼成して直径1/16インチの柱状成形物のシリカ−アルミナ複合担体(シリカ/アルミナ質量比:1/99、細孔容積0.70ml/g、比表面積359m/g、平均細孔直径70Å)を得た。
炭酸コバルト4.69g、リン酸(85%水溶液)2.32g、モリブドリン酸17.41gをイオン交換水24.2gに溶解させて攪拌して含浸溶液を得た。
上記含浸溶液を、ナス型フラスコ中で、上記シリカ−アルミナ複合体の無機酸化物担体30.0gに、常温にて1時間含浸させ、乾燥(風乾)後、マッフル炉で500℃にて4時間焼成を行って焼成物を得た。この焼成物に対して、有機物としてクエン酸を表7に記載した量含浸させて、マッフル炉で120℃、16時間乾燥させて触媒Iを得た。得られた触媒Iの化学組成を表7、物理性状を表8に示した。
【0085】
参考例9(製造例)
参考例4において、有機物としてクエン酸に換えて、表7に記載した量のジエチレングリコールを含浸させたこと以外は、参考例4と同様にして触媒Jを得た。得られた触媒Jの化学組成を表7、物理性状を表8に示した。
【0086】
参考例10(製造例)
参考例4において、焼成物にクエン酸を含浸させないこと以外は、参考例4と同様にして触媒cを得た。得られた触媒cの化学組成を表7、物理性状を表8に示した。
【0087】
参考例11(製造例)
参考例4において、焼成物に、有機物としてクエン酸に換えて、表7に記載した量のリン酸を含浸させたこと以外は、参考例4と同様にして触媒dを得た。得られた触媒dの化学組成を表7、物理性状を表8に示した。
【0088】
参考例12(製造例)
参考例4において、焼成物に、有機物としてクエン酸を表7に記載した量含浸させたこと以外は、参考例4と同様にして触媒eを得た。得られた触媒eの化学組成を表7、物理性状を表8に示した。
【0089】
参考例13(製造例)
参考例4において、焼成物に、有機物としてクエン酸を表7に記載した量含浸させたこと以外は、参考例4と同様にして触媒fを得た。得られた触媒fの化学組成を表7、物理性状を表8に示した。
【0090】
【表7】

【0091】
【表8】

【0092】
《直留軽油の水素化処理》
以上の参考例4〜13(製造例)で得た各触媒の水素化脱硫活性を、原料油に下記性状の直留軽油を用い、下記のようにして評価した。
即ち、はじめに、触媒を高圧流通式反応装置に充填して固定床式触媒床を形成し、下記の条件で前処理した。
次に、反応温度に加熱した原料油と水素含有ガスとの混合液体を、反応装置の上部より導入して、下記の条件で脱硫反応を進行させ、生成油とガスの混合液体を反応装置の下部より流出させ、気液分離器で生成油を分離した。
【0093】
《触媒の前処理条件》
触媒の硫化:原料油による液硫化を行った。
圧力(水素分圧):4.9MPa
雰囲気:水素及び原料油(液空間速度1.5hr−1、水素/オイル比200m(normal)/kl)
温度:常温約22℃で水素及び原料油を導入し、20℃/hrで昇温し、300℃にて24hr維持、次いで反応温度である340℃まで20℃/hrで昇温
【0094】
《水素化反応条件》
反応温度 :340℃
圧力(水素分圧) :4.9MPa
液空間速度 :1.0hr−1
水素/オイル比 :200m(normal)/kl
【0095】
《原料油性状》
油種 :中東系直留軽油
密度(15/4℃) :0.8588
蒸留性状 :初留点が230.0℃、50%点が310.0℃、90%点が355.0℃、終点が374.5℃
硫黄成分 :1.41質量%
窒素成分 :210質量ppm
動粘度(30℃) :6.191cSt
【0096】
上記各触媒の脱硫活性を以下の方法で解析した。
上記反応条件で反応装置を運転し、6日を経過した時点で生成油を採取し、生成油中の硫黄分と原料油の硫黄分及び液空間速度から、脱硫反応速度定数(ks)を求めた。このks値の求め方を以下に示す。
生成油の硫黄分(Sp)の減少量に対して、1.2次の反応次数を得る反応速度式の定数を脱硫反応速度定数(ks)とする。尚、反応速度定数が高い程、脱硫活性が優れていることを示している。
脱硫反応速度定数=1/(1.2−1)×[1/(Sp)(1.2−1)−1/(Sf
(1.2−1)]×(LHSV)
式中、Sf:原料油の硫黄分(質量%)
Sp:反応生成油中の硫黄分(質量%)
LHSV:液空間速度(h−1
脱硫相対活性(%)=各脱硫反応速度定数/参考例10の触媒cの脱硫反応速度定数×100
触媒E〜J、c〜fの評価結果として、生成油の硫黄分、脱硫反応速度定数、触媒cの反応速度定数を100とした場合の脱硫相対活性を表9に示した。
【0097】
【表9】

【0098】
実施例3(再生例)
実施例1と同様の再生触媒Cを用いた。
【0099】
実施例4(再生例)
イオン交換水20.2gに、クエン酸第一コバルト9.38g、モリブドリン酸16.35gを投入し、80℃に加温して10分間攪拌して含浸溶液を得た。
上記含浸溶液を、ナス型フラスコ中に、参考例5で調製したのと同様のリン酸化物−ゼオライト−アルミナ複合体の無機酸化物担体30.0gを投入し、そこへ上記の含浸溶液の全量をピペットで添加し、約25℃で3時間浸漬した。その後、窒素気流中で風乾し、マッフル炉中、空気気流中・大気圧・120℃で約16時間乾燥させた。
その後、実施例1と同様に使用、処理して再生触媒Kを得た。得られた再生触媒Kの化学組成を表10、物理性状を表11に示した。
【0100】
実施例5(再生例)
イオン交換水24.3gに、クエン酸第一コバルト9.67g、モリブドリン酸17.07gを投入し、80℃に加温して10分間攪拌して含浸溶液を得た。
上記含浸溶液を、ナス型フラスコ中に、参考例6で調製したのと同様のリン酸化物−シリカ−アルミナ複合体の無機酸化物担体30.0gを投入し、そこへ上記の含浸溶液の全量をピペットで添加し、約25℃で3時間浸漬した。その後、窒素気流中で風乾し、マッフル炉中、空気気流中・大気圧・120℃で約16時間乾燥させた。
その後、実施例1と同様に使用、処理して再生触媒Lを得た。得られた再生触媒Lの化学組成を表10、物理性状を表11に示した。
【0101】
実施例6(再生例)
イオン交換水26.5gに、クエン酸第一コバルト9.44gとリン酸(85%水溶液)1.90gを投入し、80℃に加温して10分間攪拌した。次いで、モリブドリン酸17.29gを投入し溶解させ、同温度で15分間攪拌して含浸用の溶液を調製した。
上記含浸溶液を、ナス型フラスコ中に、参考例7で調製したのと同様のγ−アルミナの無機酸化物担体30.0gを投入し、そこへ上記の含浸溶液の全量をピペットで添加し、約25℃で3時間浸漬した。その後、窒素気流中で風乾し、マッフル炉中、空気気流中・大気圧・120℃で約16時間乾燥させた。
その後、実施例1と同様に使用、処理して再生触媒Mを得た。得られた再生触媒Mの化学組成を表10、物理性状を表11に示した。
【0102】
実施例7(再生例)
実施例2と同様の再生触媒Dを用いた。
【0103】
比較例2(再生例)
比較例1と同様の再生触媒bを用いた。
【0104】
比較例3(再生例)
実施例1において、クエン酸に換えて、表10に記載した量のリン酸を含浸させたこと以外は、実施例1と同様にして再生触媒gを得た。得られた再生触媒gの化学組成を表10、物理性状を表11に示した。
【0105】
【表10】

【0106】
【表11】

【0107】
《直留軽油の水素化処理》
以上の実施例3〜7(再生例)及び比較例2、3(再生例)で得た触媒の水素化脱硫活性を原料油として上記参考例4等(製造例)で得た触媒の評価に用いたのと同様の性状の直留軽油を用い、上記参考例4等(製造例)で得た触媒の評価と同様にして評価した。その評価結果として、各触媒の生成油の硫黄分、脱硫反応速度定数、及び触媒bの反応速度定数を100とした場合の脱硫相対活性を表12に示した。
【0108】
【表12】

【0109】
《強制劣化試験》
参考例14
参考例4と同様の触媒Eを用いて、強制劣化試験を行った。上記参考例4等(製造例)で得た触媒の評価と同様にして直留軽油の水素化処理の評価をした後、反応温度を380℃に上昇し、4日間かけて触媒を強制劣化させ、再び反応温度を340℃に戻し水素化脱硫活性を評価した。
【0110】
参考例15
参考例5と同様の触媒Fを用いて、参考例14と同様に強制劣化試験を行った。
【0111】
参考例16
参考例10と同様の触媒cを用いて、参考例14と同様に強制劣化試験を行った。
【0112】
評価結果として、触媒E、F、cの強制劣化後の生成油の硫黄分、脱硫反応速度定数、及び触媒cの反応速度定数を100とした場合の脱硫相対活性を表13に示した。
強制劣化試験を行うことにより、触媒の熱に対する耐性、触媒寿命が評価できる。本発明の製造法による触媒E、Fを用いれば、熱履歴を受けた後であっても、高い脱硫活性を有していることから、熱耐性があり、長寿命な触媒であることが判断できる。
【0113】
【表13】

【0114】
以上の結果から明らかなように、本発明により製造した触媒は優れた脱硫活性を示し、かつ長期運転を可能にする触媒を提供する。また、本発明により再生した触媒は、優れた脱硫活性を示すものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素油の水素化処理に使用して活性の低下した使用済みの、周期律表第6族金属、周期律表第8族金属、及びリンを担持した水素化処理触媒を、
油分除去処理する工程、
400〜550℃で焼成する工程、
その焼成物に、有機物を、〔有機物〕/〔周期律表第8族金属〕のモル比率が0.2〜1.2となるように、前記有機物の溶液を用いて、担持させる工程、
及び担持後の焼成物を200℃以下で乾燥させる工程を含むことを特徴とする炭化水素油の水素化処理触媒の再生方法。

【公開番号】特開2013−17999(P2013−17999A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−196291(P2012−196291)
【出願日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【分割の表示】特願2008−116450(P2008−116450)の分割
【原出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【出願人】(000105567)コスモ石油株式会社 (443)
【出願人】(590000455)一般財団法人石油エネルギー技術センター (249)
【Fターム(参考)】