説明

炭化水素燃料の調製のための方法

本発明は炭化水素燃料の調製のための方法を提供し、これは固体の複合金属シアン化物触媒の存在下、150℃〜200℃の範囲の温度で、2〜6時間、脂肪酸グリセリドとアルコールとを接触させること、上記の反応混合物から触媒を分離して所望の炭化水素燃料を得ることを含む。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
発明の分野
本発明は、炭化水素燃料の調製のための方法に関する。より具体的には、炭化水素燃料を製造するための効率的な方法に関し、これは、固体の複合金属シアン化物触媒(double metal cyanide catalyst)の存在下で、脂肪酸グリセリドとアルコールとを接触させることを含む。
【0002】
本発明において用いる固体の複合金属シアン化物触媒は、本発明者等の同時係属中のインド出願 2723/DEL/2005 に記載され、開示されている。
【0003】
発明の背景
近年、石油ベースの燃料の代替物への関心が再び高まっている。代替燃料は、技術的に容認でき、経済的に競争に耐え、環境的に受け入れられ、かつ入手しやすいことが必要とされる。これらの燃料についての必要性は、主に、地球環境の保全と、従来の炭化水素ベースの燃料の長期供給に関する問題に起因する。様々な考えられる源の中で、トリグリセリド(植物油/植物性油)に由来するディーゼル燃料が、見込みある代替物である。トリグリセリドはディーゼルエンジンに燃料を供給することができるが、その粘性と低い低温フロー特性は、種々の誘導体の研究をもたらしている。バイオディーゼルとして知られるトリグリセリドとメタノールから誘導される脂肪酸メチルエステルが、最も注目を集めている。植物油は種々の源から幅広く入手できる。炭化水素ベースの燃料とは異なり、植物油の硫黄含有量はゼロに近く、従って、硫酸により引き起こされる環境へのダメージを低減する。
【0004】
バイオディーゼルを用いることの主な利点は、その再生可能性、良質の排ガス排出、その生分解性であり、および存在する全ての有機炭素はその起源が光合成であることを考えると、大気中のCO2の濃度の上昇に寄与することなく、従って、温室効果に寄与することもない。トリグリセリドのエステル交換のためのいくつかの方法が開発されている。すなわち、(1)塩基触媒によるグリセリドのアルコールを用いるエステル交換(触媒−アルカリ金属アルコキシドおよびアルカリ金属水酸化物、並びに炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウム)、(2)直接の酸触媒によるアルコールによるエステル化(触媒−ブレンステッド酸、好ましくは、スルホン酸および硫酸)、および(3)酸触媒反応を用いた油の脂肪酸、続くアルキルエステルへの変換である。しかしながら、前者のルート(すなわち塩基触媒による反応)が最も経済的で、実際に数カ国においてバイオディーゼル製造について実施されている(J. Braz. Chem. Soc. Vol. 9, No. 1, Year 1998, pages 199-210;J. Am. Oil. Chem. Soc. Vol. 77, No. 12, Year 2000, pages 1263 - 1266;Fuel Vol. 77, No. 12, year 1998, pages 1389 - 1391;Bioresource Tech. Vol. 92, Year 2004, pages 55 - 64;Bioresource Tech. Vol. 92, Year 2004, pages 297 - 305;Renewable Sustainable Energy Rev. Vol. 9, Year 2005, pages 363 - 378)。アルカリ金属アルコキシド(メタノリシスのためのCH3ONa)は最も活性な触媒である。というのは、これらは低いモル濃度(0.5モル%)で用いた場合でも短い反応時間(30分)で非常に高い収率(>98%)の脂肪酸アルキルエステルを与えるためである(J. Food Composition and Analysis Year 2000, Vol. 13, pages 337 - 343)。しかしながら、これらは高品質の油を必要とし、かつ水が存在しないことを必要とし、このことは、アルカリ金属アルコキシドを典型的な工業プロセスには適当でないものとしている(J. Braz. Chem. Soc. VoL 9, No. 1, Year 1998, pages 199-210)。アルカリ金属水酸化物(NaOHおよびKOH)は金属アルコキシドよりは安価であるが、触媒濃度を高めることが必要とされる(1〜2モル%)。NaOHは後者としてはKOHよりも優れており、他のアルカリ水酸化物は、バイオ燃料よりも鹸化生成物をより多くもたらす。
【0005】
近年では、リパーゼを用いる酵素エステル交換がバイオ燃料製造に関してより注目を集めるようになっている。というのは、副生成物として生じるグリセロールを容易に回収することができ、脂肪酸エステルの精製を比較的行いやすいためである。しかしながら、この系を商業化することの主な障害は、リパーゼ製造のコストである(J. MoI. Catal. B: Enzymatic Vol. 17, Year 2002, pages 133 - 142)。
【0006】
ヒマワリ油および大豆油からの脂肪酸メチルエステルの合成における固定化リパーゼの使用を、Soumanou および Bornscheuer および Watanabe 等が報告している(Enzy. Microbiol. Tech. Vol. 33, Year 2003, page 97;J. MoI. Catal. B: Enzymatic Vol. 17, Year 2002, pages 151 - 155)。彼らは、固定化酵素が少なくとも120時間、5回のバッチラン中に活性を有意に失うことなく活性であることを見出している。研究した種々のリパーゼの中でも、蛍光菌(Pseudomonas fluorescens)(アマノAK)が、最も高い油の変換を示した。Khare および Nakajima(Food Chem. Vol. 68, Year 2000, pages 153 - 157)も、固定化リパーゼ酵素の使用を報告している。
【0007】
バイオ燃料の商業化を遅らせている主なファクタはコストである。固体触媒による均一系触媒の置き換えは、均一系触媒に付きものである処理コストを引き下げる。Leclercq 等(J. Am. Oil. Chem. Soc. Vol. 78, Year 2001, page 1161)は、Cs−交換NaX、および市販のハイドロタルサイト(KW2200)触媒の存在下での菜種油のエステル交換を研究している。275という高いメタノール対油の比、およびメタノールリフラックスでの22時間の反応時間で、ハイドロタルサイトについては34%の変換が得られるのに対し、Cs交換NaXは70%の変換を与えた。ETS−4およびETS−10触媒は、220℃、1.5時間の反応時間で、それぞれ85.7%および52.7%の変換を与えた(US Patent No. 5,508,457)。Suppes 等(J. Am. Oil. Chem. Soc. Vol. 78, Year 2001, page 139)は、触媒として炭酸カルシウム岩を用いて、240℃で78%の、160℃で>95%の変換を達成した。最近では、Suppes 等が、メタノールによる大豆油のエステル交換におけるNa、KおよびCs交換されたゼオライトX、ETS−10、NaOxを取り込んだNaX(NaX occluded with NaOx)、およびアジ化ナトリウムの使用を報告している(Appl. Catal. A: Gen. VoL 257, Year 2004, page 213)。Furuta 等(Catal. Commun. Vol. 5, Year 2004, pages 721 - 723)は、大豆油とメタノールからの、200〜300℃における、硫酸化スズと酸化ジルコニウムの固体の超強酸触媒を用いての、90%を超えるオイルコンバージョンによる、バイオディーゼル製造を記載している。固定されたスズ錯体の、イオン液体中での植物油のアルコリシスのための使用は、Abreu 等(J. MoI. Catal. A: Chem. Vol. 227, Year 2005, pages 263 - 267;J. MoI. Catal. A: Chem. Vol. 209, Year 2004, pages 29-33)により報告されている。Kim 等は、植物油のメタノリシスについての不均一系塩基触媒(Na/NaOH/Al23)の使用を報告している。
【0008】
US Patent No. 5,713,965 は、短鎖アルコールとのトリグリセリドのエステル交換による、有機溶媒、例えばアルカン、アレーン、塩素化溶媒、または石油エーテルの存在下での、ムコール・ミーハイ(Mucor miehei)またはカンジダ・アンタークチカ(Candida Antarctica)由来のリパーゼ触媒を用いるバイオディーゼル、滑剤、並びに燃料および滑剤添加物の製造を記載している。WO 00Z05327 Al、WO 02Z28811 Al、WO 2004Z048311 Al、WO 2005Z021697 Al および WO 2005Z016560 Al 並びに US Patents 5,578,090;6,855,838; 6,822,105;6,768,015;6,712,867;6,642,399;6,399,800;6,398,707;6,015,440 は、リパーゼ触媒または金属イオン触媒のいずれかを用いる脂肪酸アルキルエステルの製造を教示している。Patent No. WO 2004/085583 Al は、超強酸(ultrastrong-acid)特性を有する固体酸触媒の存在下、短時間、常圧付近での脂肪のメタノールとエタノールとのエステル交換を記載している。
【0009】
純粋な大豆油またはココナッツ油からのディーゼルの製造は経済的でないため、より安価な代替の原料油、例えば動物性脂肪、使用済み調理油、ホホバおよびジャトロファ等の野生植物の種からの油を用いることが望ましい。動物性脂肪と使用済み油は、多量の遊離脂肪酸(FFA)含有量を有している。FFAはアルカリベースのエステス交換触媒により鹸化するが、低い収率、生成物の分離の困難さ、および製造コストの上昇につながる。これらの場合に、2つの工程プロセスが一般的にディーゼル調製において用いられ、ここで、第1の工程において、酸触媒が遊離脂肪酸をメチルエステルにエステル化し、第2の工程において塩基触媒がトリグリセリドをエステル交換する。このことを単一の工程で行うことを可能にする効率的な固体触媒が非常に望まれる。
【0010】
本発明は、上記した欠点の殆どを取り除く方法に関する。これは炭化水素燃料(ディーゼルオイル)の製造に関し、穏やかな条件において、新規の固体の再利用可能な複合金属シアン化物触媒を用いて、植物油または脂肪の、C1〜C5アルコールとの反応を含む。原料油はトリグリセリドであるか、脂肪酸とグリセリドの混合物である。複合金属シアン化物触媒の金属の1種はZn2+であり、他方は遷移金属イオン、好ましくはFeである。シアノ架橋を通じて結合している活性部位におけるZnとFeの共存は、脂肪酸を含む原料油を、単一の工程において脂肪酸アルキルエステルに効率的に変換する。触媒は、遠心分離または単純なろ過により容易に分離することができ、再利用することができる。最も重要なことは、触媒は高効率であり、少量のみが(油の〜1重量%)反応を行うのに必要とされる。本方法は原子効率的(atom-efficient)であり、温度と圧力等の反応条件は穏やかである。従来の塩基触媒とは異なり、本発明の触媒は、油中の水不純物の存在下でもより効率的である。従って、本発明の触媒と共に用いる必要がある油の品質についての制限がない。
【0011】
本発明の目的
本発明の主な目的は、効率的な、再利用可能な不均一系触媒を提供すること、および高収率での炭化水素燃料の調製方法を提供することである。
【0012】
他の目的は、かなりの量の脂肪酸を含む使用済み油または油または脂肪からの炭化水素燃料の製造のための単一工程の方法を提供することである。
【0013】
本発明のさらに他の目的は、穏やかな条件および短い反応時間において、植物油または脂肪の、C1〜C5アルコールとのエステル交換により燃料を製造することである。
【0014】
発明の概要
従って、本発明は、炭化水素燃料の調製のための方法を提供し、これは、固体の複合金属シアン化物触媒の存在下、150〜200℃の範囲の温度で2〜6時間、脂肪酸グリセリドとアルコールとを接触させること、上記の反応混合物を20〜35℃の範囲の温度にまで冷却すること、上記の反応混合物をろ過して触媒を分離すること、残ったろ液から未反応のアルコールを真空蒸留により取り除いて所望の炭化水素燃料を得ることを含む。
【0015】
本発明の実施形態において、用いる脂肪酸グリセリドのアルコールに対するモル比は、1:6〜1:12の範囲にある。
【0016】
他の実施形態において、用いる固体の複合金属シアン化物触媒の濃度は、脂肪酸グリセリドの1〜2重量%である。
【0017】
さらに他の実施形態において、用いる固体の複合金属シアン化物触媒は分子式:
Zn32(CN)n(ROH).xZnCl2.yH2
(式中、Rはターシャリーブチル、Mは遷移金属イオンであり、xは0〜0.5の間で変化し、yは3〜5の間で変化し、nは10または12である)
を有する。
【0018】
他の実施形態において、用いる遷移金属イオンはFeまたはCoである。
【0019】
他の実施形態において、得られる炭化水素燃料は、脂肪酸メチルエステルである。
【0020】
他の実施形態において、得られる炭化水素燃料は、ディーゼル油である。
【0021】
他の実施形態において、用いる脂肪酸グリセリドの源は、植物油または動物性脂肪である。
【0022】
他の実施形態において、用いる植物油は、ココナッツ油、ヒマワリ油、大豆油、からし油、オリーブ油、綿実油、菜種油、マーガリン油、ホホバ油、ジャトロファ油、およびこれらの混合物から成る群から選択される。
【0023】
他の実施形態において、用いるアルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、およびこれらの混合物から成る群から選択される。
【0024】
他の実施形態において、用いる固体の複合金属シアン化物錯体触媒は反応混合物から容易に分離でき、活性を有意に失うことなく、数回のリサイクル試験において再利用可能である。
【0025】
さらに他の実施形態において、油または脂肪の得られる炭化水素燃料への変換モル%は、単離されるグリセロール収率に基づいて90〜95モル%の範囲にあり、燃料選択性は95%を超える。
【0026】
発明の詳細な説明
本発明に至る研究において、複合金属シアン化物触媒は高効率であり、さらなる再利用のために生成物から容易に分離することができることを見出した。従来技術の触媒、鉱酸、アルカリ塩基およびリパーゼは、触媒分離にさらなる費用を必要とする。容易に分離できる触媒系、例えば本発明の触媒が有利であり、経済的で、かつ環境に優しい方法を導く。従って、本発明の固体触媒は効率的であるばかりでなく、従来技術の方法の特徴である触媒回収の面倒なプロセスを回避する。本発明の触媒系は、いかなる追加の溶媒も用いることなく効率的である。
【0027】
固体の複合金属シアン化物触媒は、分子式:
Zn32(CN)n(ROH).xZnCl2.yH2
(式中、Rはターシャリーブチルであり、xは0〜0.5の間で変化し、yは3〜5の間で変化し、nは10または12である)
を有する。本触媒は、表1に示す物理化学的特性を有する。
【表1】

【0028】
本発明の触媒は、例1に記載するように、ZnCl2水溶液、K4Fe(CN)6水溶液、tert−ブタノールに溶解したトリブロックコポリマーであるポリ(エチレングリコール)−ブロック−ポリ(プロピレングリコール)−ブロック−ポリ(エチレングリコール)(EO20−PO70−EC20:約5800の分子量)を、周囲温度(25〜40℃)で反応させ、170〜200℃で活性化することにより調製する。
【0029】
さらに他の実施形態において、反応混合物中の上記触媒の濃度は油の1〜2重量%である。
【0030】
本発明の方法の特徴は、鹸化を省くことである。触媒が固体であり、反応が不均一な条件下で行われ、生成物燃料が液体であり、固体触媒を生成物から遠心分離/ろ過によりさらなる再利用のために容易に分離することができることが本発明の方法の他の特徴である。さらに他の特徴において、反応をいかなる溶媒も用いずに行う。
【0031】
本発明を例と共に以下に示すが、これは実例であるにすぎず、いかなる方法においても本発明の範囲を限定するものと解釈すべきでない。
【0032】
例1
この例は、本発明のFe−Zn複合金属シアン化物触媒の調製を示す。典型的な触媒調製において、K4[Fe(CN)6](0.01モル)を2重蒸留水(40ml)に溶解させた(溶液−1)。ZnCl2(0.1モル)を、蒸留水(100ml)およびターシャリーブタノール(20ml)の混合物に溶解させた(溶液−2)。ポリ(エチレングリコール)−ブロック−ポリ(プロピレングリコール)−ブロック−ポリ(エチレングリコール)(EO20−PO70−EC20:約5800の分子量)(15g)を、2mlの蒸留水と40mlのターシャリーブタノールの混合物に溶解させた(溶液−3)。溶液−2を溶液−1に、60分に渡って50℃で激しく撹拌しながら加えた。白色沈殿が添加中に生じた。続いて溶液−3を上記の混合物に5分間に渡って加え、撹拌をさらに1時間続けた。生じた固体ケークをろ過し、蒸留水(500ml)で洗浄し、25℃で2〜3日間乾燥した。この材料を、反応に用いる前に180〜200℃で4時間活性化させた。
【0033】
例2
この例は、ココナッツ油とメタノールからの脂肪酸メチルエステル(ディーゼル油)の調製を記載する。典型的な反応において、ココナッツ油(5g)、メタノール(油:メタノールのモル比=1:6)、および複合金属シアン化物Fe−Zn触媒(50mg;油の1重量%)を、テフロン(登録商標)ライナーを有する100mlのステンレス鋼オートクレーブに入れた。オートクレーブを閉じ、回転合成反応器(Hiro Co., Japan, Mode- KH 02;rotating speed = 30 rpm)内に置き、反応を自生圧力(autogeneous pressure)において170℃で4時間行った。その後、25℃にまで冷却した。
【0034】
まず、触媒を遠心分離/ろ過によって、反応混合物から除去した。続いて真空蒸留によって、反応混合物中の未反応のアルコールを除去した。石油エーテル(Pet ether)(60ml)とメタノール(20ml)とを加えて、反応混合物からグリセロール副生成物を分離した。グリセロール副生成物を含むメタノール相を分離した。グリセロール分離のこのプロセスを2〜3回繰り返した。グリセロールを真空下でメタノールを留去することにより単離した。その後、エーテル部分を留去して、エステル化生成物を得た。エステル化生成物(100mg)の部分を、ガスクロマトグラフィーによる分析のためにジクロロメタン(1g)で希釈した。生成物をGC−MSにて同定した。
【0035】
例3
この例は、ヒマワリ油とメタノールからの脂肪酸メチルエステル(ディーゼル油)の調製を示す。典型的な反応において、ヒマワリ油(5g)、メタノール(油:メタノールのモル比=1:6)、および複合金属シアン化物Fe−Zn触媒(50mg:油の1重量%)を、テフロンライナーを有する100mlのステンレス鋼オートクレーブ中に入れた。オートクレーブを閉じ、回転合成反応器(Hiro Co., Japan, Mode- KH 02;rotating speed = 30 rpm)内に置き、反応を自生圧力において170℃で4時間行った。その後、25℃にまで冷却した。生成物を真空下での蒸留により単離した。
【0036】
例4
この例は、大豆油とメタノールからの脂肪酸メチルエステル(ディーゼル油)の調製を記載する。典型的な反応において、大豆油(5g)、メタノール(油:メタノールのモル比=1:6)、および複合金属シアン化物Fe−Zn触媒(50mg:油の1重量%)を、テフロンライナーを有する100mlのステンレス鋼オートクレーブ中に入れた。オートクレーブを閉じ、回転合成反応器(Hiro Co., Japan, Mode- KH 02;rotating speed = 30 rpm)内に置き、反応を自生圧力において170℃で4時間行った。その後、25℃にまで冷却した。生成物を真空下での蒸留により単離した。
【0037】
例5
この例は、マーガリン油とメタノールからの脂肪酸メチルエステル(ディーゼル油)の調製を記載する。典型的な反応において、マーガリン油(5g)、メタノール(油:メタノールのモル比=1:6)、および複合金属シアン化物Fe−Zn触媒(50mg:油の1重量%)を、テフロンライナーを有する100mlのステンレス鋼オートクレーブ中に入れた。オートクレーブを回転合成反応器(Hiro Co., Japan, Mode- KH 02;rotating speed = 30 rpm)内に置き、反応を自生圧力において170℃で4時間行った。その後、25℃にまで冷却した。生成物を真空下での蒸留により単離した。
【0038】
例6
この例は、使用済み/調理済みマーガリン油とメタノールからの脂肪酸メチルエステル(ディーゼル油)の調製を記載する。典型的な反応において、使用済み/調理済みマーガリン油(5g)、メタノール(油:メタノールのモル比=1:6)、および複合金属シアン化物Fe−Zn触媒(50mg:油の1重量%)を、テフロンライナーを有する100mlのステンレス鋼オートクレーブ中に入れた。オートクレーブを回転合成反応器(Hiro Co., Japan, Mode- KH 02;rotating speed = 30 rpm)内に置き、反応を自生圧力において170℃で4時間行った。その後、25℃にまで冷却した。生成物を真空下での蒸留により単離した。
【0039】
例7
この例は、ココナッツ油とブタノールからの脂肪酸アルキルエステル(炭化水素燃料)の調製を記載する。典型的な反応において、マーガリン油(5g)、ブタノール(油:アルコールのモル比=1:6)、および複合金属シアン化物Fe−Zn触媒(50mg:油の1重量%)を、テフロンライナーを有する100mlのステンレス鋼オートクレーブ中に入れた。オートクレーブを回転合成反応器(Hiro Co., Japan, Mode- KH 02;rotating speed = 30 rpm)内に置き、反応を自生圧力において170℃で4時間行った。その後、25℃にまで冷却した。生成物を真空下での蒸留により単離した。
【0040】
例8
この例は、ヒマワリ油とブタノールからの炭化水素燃料の調製を記載する。典型的な反応において、ヒマワリ油(5g)、ブタノール(油:アルコールのモル比=1:6)、および複合金属シアン化物Fe−Zn触媒(50mg:油の1重量%)を、テフロンライナーを有する100mlのステンレス鋼オートクレーブ中に入れた。オートクレーブを閉じ、回転合成反応器(Hiro Co., Japan, Mode- KH 02;rotating speed = 30 rpm)内に置き、反応を自生圧力において170℃で4時間行った。その後、25℃にまで冷却した。生成物を真空下での蒸留により単離した。
【0041】
例9
この例は、マーガリン油とプロパノールまたはブタノールからの炭化水素燃料の調製を示す。典型的な反応において、マーガリン油(5g)、プロパノールまたはブタノール(油:アルコールのモル比=1:6)、および複合金属シアン化物Fe−Zn触媒(50mg:油の1重量%)を、テフロンライナーを有する100mlのステンレス鋼オートクレーブ中に入れた。オートクレーブを閉じ、回転合成反応器(Hiro Co., Japan, Mode- KH 02;rotating speed = 30 rpm)内に置き、反応を自生圧力において170℃で4時間行った。その後、25℃にまで冷却した。生成物を真空下での蒸留により単離した。
【0042】
表2は、例2〜9において示した触媒活性研究の結果を示す。
【表2】

【0043】
利点
1.本方法は、炭化水素燃料についての高い選択性を伴う高い変換という組み合わされた独特な利点を有する。
【0044】
2.本触媒は生成混合物から容易に分離することができ、鹸化に関する問題に直面しない。
【0045】
3.本発明の触媒は、植物油または脂肪とC1〜C5アルコールからの炭化水素燃料の調製について非常に効率的である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体の複合金属シアン化物触媒の存在下、150〜200℃の範囲の温度で2〜6時間、脂肪酸グリセリドとアルコールとを接触させること、前記反応混合物を20〜35℃の範囲の温度にまで冷却すること、前記反応混合物をろ過して触媒を分離すること、生じたろ液から真空蒸留により未反応のアルコールを除去して所望の炭化水素燃料を得ることを含む、炭化水素燃料の調製のための方法。
【請求項2】
用いる前記脂肪酸グリセリドの前記アルコールに対するモル比が、1:6〜1:12の範囲内にある請求項1に記載の方法。
【請求項3】
用いる前記固体の複合金属シアン化物触媒の濃度が、前記脂肪酸グリセリドの1〜2重量%である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
用いる前記固体の複合金属シアン化物触媒が、分子式:
Zn32(CN)n(ROH).xZnCl2.yH2
(式中、Rはターシャリーブチル、Mは遷移金属イオンであり、xは0〜0.5の間で変化し、yは3〜5の間で変化し、nは10または12である)
を有する請求項1に記載の方法。
【請求項5】
用いる前記遷移金属イオンが、Fe、CoおよびCrから選択される請求項4に記載の方法。
【請求項6】
得られる前記炭化水素燃料が、C9〜C23脂肪酸アルキルエステルである請求項1に記載の方法。
【請求項7】
得られる前記炭化水素燃料がディーゼル油である請求項1に記載の方法。
【請求項8】
用いる前記脂肪酸グリセリドの源が、植物油または動物性脂肪である請求項1に記載の方法。
【請求項9】
用いる前記植物油が、ココナッツ油、ヒマワリ油、大豆油、からし油、オリーブ油、綿実油、菜種油、マーガリン油、ホホバ油、ジャトロファ油、およびこれらの混合物から成る群から選択される請求項8に記載の方法。
【請求項10】
用いる前記アルコールが、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、およびこれらの混合物から成る群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項11】
用いる前記固体の複合金属シアン化物錯体触媒を前記反応混合物から容易に分離でき、活性の有意な低下を伴うことなく数回のリサイクル実験において再利用可能である請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記油または脂肪の、得られる炭化水素燃料への変換モル%が、単離されるグリセロール収率に基づいて90〜95モル%の範囲にあり、燃料選択性が95%を超える請求項1に記載の方法。

【公表番号】特表2009−511701(P2009−511701A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−535195(P2008−535195)
【出願日】平成18年10月3日(2006.10.3)
【国際出願番号】PCT/IN2006/000394
【国際公開番号】WO2007/043063
【国際公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(596020691)カウンスィル オブ サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ (42)
【氏名又は名称原語表記】COUNCIL OF SCIENTIFIC & INDUSTRIAL RESEARCH
【Fターム(参考)】