説明

炭化水素留分におけるフィルター通過性添加剤の効率を向上させる化合物の使用、およびその化合物を含み共同作用を有する組成物

【課題】n−パラフィンの結晶化開始温度がゼロに近い、および/または炭素数18以上のn−パラフィンを4重量%以上含有する新しい種類の炭化水素留分に従来のフィルター通過性添加剤を適用可能にする化合物の使用を提供する。
【解決手段】本発明の使用は、炭化水素留分における、フィルター通過性添加剤の効率を向上させる化合物としてのホモポリマーの使用であって、前記炭化水素留分は、沸点が150〜450℃、結晶化開始温度が−5℃以上、前記ホモポリマーは、C3〜12カルボン酸と、炭素数16以上の鎖を含む脂肪族アルコールとのオレフィン性エステルのホモポリマーであり、前記フィルター通過性添加剤は、エチレンと、C3〜5カルボン酸とC1〜10モノアルコールとのビニルエステルとの、コポリマーおよび/またはターポリマーに基づくものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パラフィンの結晶化開始温度が−5℃以上の炭化水素留分において、フィルターを通過させるために従来用いられているフィルター通過性添加剤の効率を向上させるための物質の使用に関し、この物質により、上記炭化水素留分のフィルター通過可能限界温度(limiting filterability temperature)および流動温度を低温にする。
【0002】
本発明は、さらに、炭化水素留分への標準的なフィルター通過性添加剤と、この添加剤に対する効率向上剤とを含む添加剤組成物、ならびにこれらのフィルター通過性添加剤とその効率向上剤とを含む燃焼油、油および燃料油に関する。
【背景技術】
【0003】
石油業界は、長い間、燃料のフィルター通過性を低温で促進させる添加剤を開発してきた。LFT(フィルター通過可能限界温度)添加剤と称されるこの添加剤は、形成されたパラフィンの結晶サイズを制限する役割を果たし、これらのパラフィンが内燃機関または暖房装置内に配置されたフィルターを通過できるようにしている。当業者に極めて広く知られているこの種類の添加剤は、従来ディーゼル燃料または灯油として使用される中間留分に標準的に加えられている。
【0004】
従来技術には、公知のフィルター通過性添加剤(特に、エチレンと酢酸ビニルとのポリマー、エチレンと酢酸ビニルとプロピオン酸ビニルとのポリマー)と共同作用し、炭化水素留分のフィルター通過可能限界温度および流動温度を低温にすることができる生成物の使用が記載されている。
【0005】
つまり、特許文献1には、177〜400℃の蒸留留分に由来する中間留分が記載されており、この中間留分は、酢酸ビニル単位を10〜30重量%有し、分子量1000〜3000のエチレンコポリマー90〜10重量%と、分子量760〜100000のポリラウリルアクリレートおよび/またはポリラウリルメタクリレート10〜90重量%とを添加剤として含んでいる。ここで、これらのポリアクリレートは、NF60105規格により測定される流動点温度を悪化させることなく、NF EN116規格に従い測定されるフィルター通過性を向上させ、他方、上記エチレンと酢酸ビニルとのコポリマーは流動性を向上している。
【0006】
原油および重質留分のパイプラインでの輸送に関して、特許文献2の発明者らは、これらの流動性の向上、特に、パイプライン内で凝固し得る低温度での、これら生産物の流動性を向上させるという課題を達成した。前記発明者らは、沸点が350℃超で軟化点が35℃超のパラフィンを5〜20重量%含有した炭化水素組成物の流動性を向上させるために、炭化水素組成物に以下の高分子混合物を10ppmから2重量%加えることを提案している。すなわち、この高分子混合物は、炭素数3〜5のカルボン酸と炭素数14〜30のアルコールとのオレフィン性エステルを含む、分子量1000〜1000000のオレフィン系ポリマーと、酢酸ビニル単位を1〜40%、好ましくは14〜24%含む平均分子量20000〜60000のエチレン酢酸ビニルコポリマーとからなり、上記オレフィン性エステルと上記エチレン酢酸ビニルコポリマーとの高分子モル比が0.1:1〜10:1である混合物である。
【0007】
特許文献3の発明者は、120〜480℃の沸点の中間留分に3%未満で存在するパラフィンの結晶サイズを制御するために、炭素原子14〜16個のアルキル鎖を含むアクリル酸またはメタクリル酸のオレフィン性エステルの分子量1000〜200000のホモポリマーと、数平均分子量4000未満のエチレン酢酸ビニルコポリマーを、上記オレフィン性エステルと上記エチレン酢酸ビニルコポリマーとを高分子モル比0.1:1〜20:1として上記中間留分に対して加えることを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第3275427号明細書
【特許文献2】米国特許第3726653号明細書
【特許文献3】米国特許第4153422号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、中間留分の原料の種類が多様化するにつれて、このような原料の混合物から生じるディーゼル燃料および燃料油などの現在の中間留分は、以前に生産されていた中間留分とは異なる組成物を含んでいる。フィルター通過性添加剤、特に、エチレンと酢酸ビニルとのコポリマーおよび/またはエチレンとプロピオン酸ビニルとのコポリマーに基づくフィルター通過性添加剤は、このような以前に生産されていた中間留分用に開発されてきた。さらに、2000年以降の規格変更、最近では2005年の規格変更により、製油業者は、エンジンのディーゼル燃料として使用する留分と、暖房装置に用いる家庭用燃料油として使用する留分とを区別して配合を行っている。
【0010】
使用される留分は、一般的に、炭化水素の直留から生じる留分よりも複雑な精製作業により生じ、熱分解法、水素化分解法、接触分解法およびビスブレーキング法に由来してもよい。ディーゼル燃料の需要の増大により、製油業者は、上述した分解法およびビスブレーキング法に由来する、重質パラフィン、すなわち炭素原子18個以上のパラフィンが多く含まれた最も重質なカットなど、利用が困難なカットをディーゼル燃料の原料として利用したいという傾向がある。さらに、フィッシャー・トロプシュ法による合成留分(synthetic distillates)など、ガスを変換させることで生じる合成留分や、植物由来のバイオマスまたは動物由来のバイオマスを処理することにより生じる留分(特にNexBTLや、植物油または動物油のエステルを含む留分など)が市場に登場しており、炭素原子約18個以上のパラフィン鎖を含んだ燃料基材および/または家庭用燃料油基材として、使用できる製品の新ラインを形成している。
【0011】
そして、昔からの基材と上述の新しい原料とを組合せて得られる留分のフィルター通過性は、従来のフィルター通過性添加剤を加えて向上させるのが困難であることが判明している。なぜなら、この留分の組成物中には、炭素原子18個以上のノルマルパラフィンが顕著に存在するだけでなく、さらには、これらのノルマルパラフィンの分子量分布が複雑だからである。実際、上述した新しい留分の組合せにおいて、パラフィンの分子量分布が不連続なため既知のフィルター通過性添加剤が適さないことは明らかである。さらに、通常精製されるものよりもパラフィンが遥かに豊富に含まれた新しい原油が市場に登場し始めており、この新しい原油を直留した留分のフィルター通過性を、従来のフィルター通過性添加剤を加えて向上させることは、前述の場合と同じく困難である。
【0012】
つまり、従来技術の上記文献の著者は、アルキレンビニルエステルポリマーとビニルポリエステルとの組合せを用いることにより、従来の種類の留分の流動点およびフィルター通過性を向上させるという課題の大部分を解決している。しかしながら、パラフィンの結晶化開始温度がゼロに近い、および/または炭素原子が18個以上含まれるノルマルパラフィンを4%以上含有する新しい炭化水素留分に係る特定の課題を解決することについては何の解決策も示していない。
【0013】
したがって、フィルター通過性添加剤を、上述した新しい種類の留分にも適用できるようにする必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
よって、本発明は、パラフィンが極めて多く含まれる原油からの炭化水素の直留により生じる留分だけでなく、製油作業の最も重質なカットから生じる炭化水素、すなわち熱分解法、水素化分解法、接触分解法およびビスブレーキング法から生じる炭化水素に由来する留分や、フィッシャー・トロプシュ法による合成留分など、ガスを変換させることで生じる合成留分、植物系バイオマスまたは動物系バイオマスを処理することにより生じる留分、特にNexBTLや、植物油のエステルおよび/または動物油のエステルを含む留分などを1種でまたは2種以上混合した物に適用する。
【0015】
出願人が選択した解決手段の1つは、中間留分に加えられた従来のフィルター通過性添加剤に対し、当該フィルター通過性添加剤の効率を向上させる物質として他のポリマーを加えることで共同作用をもたらし、中間留分のフィルター通過可能限界温度に係る当該フィルター通過性添加剤の活動を向上させることである。
【0016】
この目的のため提供される本発明は、炭化水素留分における、フィルター通過性添加剤の効率を向上させる化合物としてのホモポリマーの使用であって、前記炭化水素留分は、150〜450℃の沸点を有し、示差走査熱量分析で測定される結晶化開始温度が−5℃以上、好ましくは−5℃から+10℃であり、前記フィルター通過性添加剤は、エチレンと、炭素原子3〜5個のカルボン酸と炭素原子1〜10個を含むモノアルコールとのビニルエステルとの、コポリマーおよび/またはターポリマーに基づくものであり、前記ホモポリマーは、炭素原子3〜12個のカルボン酸と、炭素原子16個以上の鎖を含み任意でオレフィン性二重結合を有する脂肪族アルコールとのオレフィン性エステルから得られるホモポリマーである。
【0017】
好ましくは、上記炭化水素留分は、炭素数18以上のn−パラフィンを、4重量%以上含有している。
【0018】
好ましくは、上記炭化水素留分は、炭素数24以上のn−パラフィンを0.7重量%以上、好ましくは、C24〜C40n−パラフィンを0.7〜2重量%含有する混合物を含んでいる。
【0019】
一実施形態によると、上記フィルター通過性向上添加剤は、エステル単位を20%以上含有するエチレンコポリマーである。
【0020】
好ましくは、上記フィルター通過性添加剤は、エチレンと酢酸ビニルとのコポリマー、エチレンとプロピオン酸ビニルとのコポリマー、エチレンとバーサチック酸ビニルとのコポリマー、エチレンと(アルキル)アクリレートとのコポリマー、およびエチレンと(アルキル)メタクリレートとのコポリマーのうち1種、またはこれらの混合物から選択され、上記エステル単位を20〜40重量%含んでいる。
【0021】
好ましい一実施形態によると、上記エステル単位は、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、(アルキル)アクリレート、および/または(アルキル)メタクリレートであり、これらのアルキル基は炭素原子を1〜7個含んでいる。
【0022】
一実施形態によると、上記ホモポリマーは、炭素原子1〜7個のアルキル基で任意で置換されているアクリル酸と、炭素原子を16個以上、好ましくは炭素原子を18〜50個含むアルコールとのオレフィン性エステルの重合によって得られたものであり、5000〜20000、好ましくは10000〜19000の重量平均分子量Mwを有している。
【0023】
特定の一実施形態によると、上記ホモポリマーは、炭素原子18〜40個の炭化水素側鎖を含むポリアクリレートである。
【0024】
特定の一実施形態によると、上記炭化水素留分は150〜450℃の沸点を有し、且つ、直留からの留分、真空蒸留による留分、水素化処理された留分、真空蒸留による留分を接触分解および/もしくは水素化分解して生じる留分、ARDS(常圧残渣脱硫)型の変換法および/もしくはビスブレーキング法から生じる留分、フィッシャー・トロプシュ反応留分に由来する留分、植物系バイオマスおよび/もしくは動物系バイオマスのBTL(バイオマス・トゥ・リキッド)変換から生じる留分、ならびに植物油のアルキルエステルもしくは動物油のアルキルエステルを含有する留分のうちの1種、またはこれらの組合せから選択される。
【0025】
他の目的として、本発明は、エチレンと、炭素原子3〜5個のカルボン酸と炭素原子1〜10個を含むモノアルコールとのビニルエステルとの、コポリマーおよび/またはターポリマーを含むフィルター通過性添加剤(A)と、炭素原子3〜12個のカルボン酸と、炭素原子を16個以上含む脂肪族アルコールとのオレフィン性エステルのホモポリマー(B)との混合物を含む組成物であって、前記(A)および(B)は、沸点が150〜450℃であり示差走査熱量分析で測定される結晶化開始温度が−5℃以上、好ましくは−5℃から+10℃である炭化水素留分の、NF EN116規格に従い測定されるフィルター通過性温度LFTに関して共同効果を生じる割合で含まれる、組成物に関する。
【0026】
他の目的として、本発明は、エチレンと、炭素原子3〜5個のカルボン酸と炭素原子を1〜10個含むモノアルコールとのビニルエステルとの、コポリマーおよび/またはターポリマーを含む少なくとも1つのフィルター通過性添加剤(A)を85〜99重量%、および炭素原子3〜12個のカルボン酸と、炭素原子を16個以上含む脂肪族アルコールとのオレフィン性エステルのホモポリマー(B)を1〜15重量%含む、組成物に関する。
【0027】
前記組成物の特定の一実施形態によると、上記ホモポリマーは、5000〜20000、好ましくは10000〜19000の重量平均分子量Mwを有する。
【0028】
好ましくは、上記ホモポリマーは、炭素原子を18〜50個含むアルコールとアクリル酸とのオレフィン性エステルである。
【0029】
好ましくは、上記ホモポリマーは、炭素原子18〜40個の炭化水素側鎖を含むポリアクリレートである。
【0030】
好ましくは、本発明の上記組成物において、上記フィルター通過性添加剤は、エステル単位を20%以上含有する、エチレンとビニルエステルとのコポリマーおよびターポリマーから選択され、これらエステル単位は、酢酸ビニル系エステル、プロピオン酸ビニル系エステル、アルキルアクリレート系エステル、およびアルキルメタクリレート系エステルのうちの1種、またはこれらの組合せから選択され、前記アルキル基は炭素原子を1〜7個含んでいる。
【0031】
好ましい一実施形態によると、上記フィルター通過性添加剤は、(i)エチレンと、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルおよびバーサチック酸ビニルから選ばれた一種または二種のビニルエステルとのコポリマーまたはターポリマー、および(ii)エチレンと,(アルキル)アクリレートおよび/もしくは(アルキル)メタクリレートとのコポリマーまたはターポリマーの一種、またはこれらの混合物から選択され、エステル単位を20〜40重量%含んでいる。
【0032】
好ましい一実施形態によると、上記フィルター通過性添加剤は、(i)エチレンと、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルおよびバーサチック酸ビニルから選ばれた一種または二種のビニルエステルとのコポリマーまたはターポリマー、および(ii)エチレンと、(アルキル)アクリレートおよび/もしくは(アルキル)メタクリレートとのコポリマーまたはターポリマーから選択され、3000〜20000の分子量を有する。
【0033】
好ましい一実施形態において、本発明の上記組成物は、酢酸ビニル単位を25〜30重量%含む、エチレン酢酸ビニルコポリマーを85〜98重量%と、炭素原子18〜40個の炭化水素側鎖を有し、かつ、平均分子量が10000〜19000であるポリアクリレートを2〜15重量%とを含んでいる。
【0034】
他の目的として、本発明は、硫黄0〜5000ppmと、本発明の上記組成物10〜5000ppmとを含有し、任意で、他の添加剤、清浄剤、分散剤、解乳化剤、消泡剤、殺生物剤、付香剤、セタン価向上剤、防錆剤、摩擦緩和剤、潤滑向上剤、燃焼向上剤、曇り点改良剤、流動点改良剤、沈殿防止剤、および導電性改良剤が混合されている、炭化水素留分に関する。
【0035】
好ましくは、この炭化水素留分は、150〜450℃の沸点を有し、結晶化開始温度Tccが−5℃以上、好ましくは−5℃から+10℃である留分であって、(i)直留からの留分、(ii)真空蒸留による留分、(iii)水素化処理された留分、(iv)真空蒸留による留分を接触分解および/もしくは水素化分解して生じる留分、(v)ARDS(常圧残渣脱硫)型変換および/もしくはビスブレーキング法から生じる留分、(vi)フィッシャー・トロプシュ反応留分に由来する留分、ならびに(vii)植物系バイオマスおよび/もしくは動物系バイオマスのBTL(バイオマス・トゥ・リキッド)変換から生じる留分のいずれか1種またはこれらの混合物、及び(viii)植物油のエステル、動物油のエステルまたはこれらの混合物とから選択された留分から由来する留分、から構成された群に由来する少なくとも1種の炭化水素カットを含んでいる。
【0036】
好ましくは、上記炭化水素留分は、炭素数18以上のn−パラフィンを、4重量%以上含有している。
【0037】
好ましくは、上記炭化水素留分は、炭素数24以上のn−パラフィンを、0.7重量%以上含有している。
【0038】
好ましくは、上記炭化水素留分は、C24〜C40n−パラフィンを0.7〜2重量%含んでいる。
【0039】
他の目的として、本発明は、本発明による上記炭化水素留分を少なくとも1つ含み硫黄を0〜500ppm含む、ディーゼル燃料に関する。
【0040】
他の目的として、本発明は、本発明による上記炭化水素留分を少なくとも1つ含み硫黄を0〜5000ppm含む、暖房用燃料油に関する。
【0041】
他の目的として、本発明は、本発明による上記炭化水素留分を少なくとも1つ含む重油に関する。本発明は、ディーゼル燃料、または家庭用燃料油とも称される暖房用燃料油として使用できる留分にも適用してもよい。これらの留分は、結晶化開始温度すなわちTccが−5℃以上、好ましくは−5℃から+10℃である。この結晶化開始温度TccはDSC(示差走査熱量計)によって測定でき、この方法により、最初のパラフィン結晶が形成する温度を測定することができる。一般的に、このパラフィンは、炭素原子18個以上の鎖長を有するノルマルパラフィンに相当し、特に炭素原子24個以上のノルマルパラフィンが、温度低下時に最初に結晶化する。
【0042】
本発明の利点は、本発明のいわゆる「向上性」化合物の使用によって生じる共同作用にあり、これにより、従来のフィルター通過性添加剤またはLFT(フィルター通過可能限界温度)添加剤の効率を向上させ、従来のフィルター通過性添加剤単独の作用では低下させることが難しい、上述したような炭化水素留分のフィルター通過性温度を低下できる。
【0043】
このようにして、本発明は、特に、炭素原子18個以上のn−パラフィンを4重量%以上含有している炭化水素留分における、ホモポリマー系の向上性化合物の使用に関する。より詳細には、この炭化水素留分は、炭素数24以上のn−パラフィンを0.7重量%以上含有している。好ましくは、この炭化水素留分は、150〜450℃の沸点を有するカットであり、C24〜C40n−パラフィンを0.7〜2重量%含有した混合物を含んでいる。
【0044】
本発明のフィルター通過性添加剤は、エステル単位を20重量%以上含有する、エチレンのコポリマーまたはターポリマーである。これらのエステル単位は、酢酸ビニル系エステル、プロピオン酸ビニル系エステル、バーサチック酸ビニル系エステル、(アルキル)アクリレート系エステル、および/または(アルキル)メタクリレート系エステルであって、前記アルキル基は炭素原子を1〜7個含む。好ましいフィルター通過性添加剤は、エチレンと、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、(アルキル)アクリレートおよび(アルキル)メタクリレートから選択される少なくとも一種とのコポリマーのうち1種、またはこれらの混合物から選択され、エステル単位を20〜40重量%含んでいる。好ましくは、本発明で用いられるフィルター通過性添加剤は、分子量5000〜20000のコポリマーまたはターポリマーである。前記コポリマーまたはターポリマーは、エステル単位を20〜40重量%含んでいる。
【0045】
フィルター通過性添加剤の効率を向上させる、本発明の添加剤は、炭素原子1〜7個のアルキル基で任意で置換されていてもよいアクリル酸と、炭素原子を16個以上、好ましくは炭素原子を18〜50個含むアルコールとのオレフィン性エステルの重合によって得られるホモポリマーである。
【0046】
上記ホモポリマーは、5000〜20000、好ましくは10000〜19000の重量平均分子量Mwを有する。
【0047】
好ましくは、上記ホモポリマーは、炭素原子18〜40個の炭化水素側鎖を含むポリアクリレートである。
【0048】
上記向上性化合物の効率は、その分子量、上記アルコールの鎖長、およびエステルを合成するのに用いたカルボン酸の性質に応じて異なる。従来のフィルター通過性添加剤またはLFT添加剤の効率を向上させる本発明のホモポリマーは、容易に処理可能な炭化水素留分の流動点を改良するのに有用であるポリアクリレートの群から選択される。なお、これら全てのポリアクリレートが、従来のLFT添加剤との共同作用に関して効率的であるわけではない。
【0049】
本発明の炭化水素留分は、150〜450℃の沸点を有し、結晶化開始温度が−5℃以上、好ましくは−5℃から+10℃である留分から選択され、直留からの留分、真空蒸留による留分、水素化処理された留分、真空蒸留による留分を接触分解および/もしくは水素化分解して生じる留分、ARDS(常圧残渣脱硫)型変換および/もしくはビスブレーキング法から生じる留分、フィッシャー・トロプシュ反応留分に由来する留分、ならびに植物系バイオマスおよび/もしくは動物系バイオマスのBTL(バイオマス・トゥ・リキッド)変換から生じる留分、ならびに植物油のアルキルエステルまたは動物油のアルキルエステルまたはこれらの組合せを含む留分で構成される。
【0050】
本発明の他の目的は、150〜450℃の沸点を有し、結晶化開始温度がゼロに近く、特に−5から+10℃である炭化水素留分に用いる、添加剤の共同作用組成物である。
【0051】
上記共同作用組成物は、フィルター通過性添加剤と本発明のホモポリマーとからなる混合物を含んでおり、フィルター通過性添加剤とホモポリマーとの割合は、本発明の炭化水素留分の、NF EN116規格に従い測定されるLFT(フィルター通過可能限界温度)について共同効果を生じる割合である。
【0052】
より詳細には、上記共同作用組成物は、エチレンと、炭素原子3〜5個のカルボン酸および炭素原子1〜10個のモノアルコールとのビニルエステルとの、コポリマーおよび/またはターポリマーを含む少なくとも1つのフィルター通過性添加剤を85〜99重量%と、炭素原子3〜12個のカルボン酸と;炭素原子を16個以上含む脂肪族アルコールとのオレフィン性エステルのホモポリマーを1〜15重量%とを含んでいる。
【0053】
上記共同作用組成物中のホモポリマーは、5000〜20000、好ましくは10000〜19000の重量平均分子量Mwを有する。このホモポリマーは、炭素原子を18〜50個含むアルコールとアクリル酸とのオレフィン性エステルである。好ましくは、上記ホモポリマーは、炭素原子18〜40個の炭化水素側鎖を含むポリアクリレートである。
【0054】
本発明の上記共同作用組成物に適したフィルター通過性添加剤は、エステル単位を20重量%以上含有する、エチレンのコポリマーおよびターポリマーから選択され、これらエステル単位は、酢酸ビニル系エステル、プロピオン酸ビニル系エステル、(アルキル)アクリレート系エステル、および(アルキル)メタクリレート系エステルから選択され、これらアルキル基は炭素原子を1〜7個含んでいる。好ましくは、上記フィルター通過性添加剤は、(i)エチレンと、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルおよびバーサチック酸ビニルから選ばれた一種または2種のビニルエステルとのコポリマーまたはターポリマー、および(ii)エチレンと、(アルキル)アクリレートおよび/もしくは(アルキル)メタクリレートとのコポリマーまたはターポリマーから選択され、エステル単位を20〜40重量%含んでいる。上記コポリマーまたはターポリマーは3000〜20000の分子量を有する。
【0055】
本発明の好ましい一実施形態において、上記共同作用組成物は、酢酸ビニル単位を25〜30重量%含む、エチレンと酢酸ビニルとのコポリマーを85〜98重量%含み、炭素原子18〜40個の炭化水素側鎖を有するポリアクリレートを2〜15重量%含み、かつ、平均分子量が10000〜19000である。
【0056】
本発明の他の目的は、硫黄を0〜5000ppm含み、上記共同作用組成物を10〜5000ppm含有し、任意で、他の添加剤、清浄剤、分散剤、解乳化剤、殺生物剤、消泡剤、付香剤、セタン価向上剤、防錆剤、摩擦緩和剤、潤滑向上剤、燃焼向上剤、曇り点改良剤、流動点改良剤、沈殿防止剤、および導電性改良剤が混合される炭化水素留分に関する。
【0057】
本発明の炭化水素留分は、150〜450℃の沸点を有し、結晶化開始温度Tccが−5℃以上、好ましくは−5℃から+10℃である留分であって、(i)直留からの留分、(ii)真空蒸留による留分、(iii)水素化処理された留分、(iv)真空蒸留による留分を接触分解および/もしくは水素化分解して生じる留分、(v)ARDS(常圧残渣脱硫)型変換および/もしくはビスブレーキング法から生じる留分、(vi)フィッシャー・トロプシュ反応留分に由来する留分、ならびに(vii)植物系バイオマスおよび/もしくは動物系バイオマスのBTL(バイオマス・トゥ・リキッド)変換から生じる留分のいずれか1種またはこれらの混合物及び、(viii)植物油のエステル、動物油のエステルまたはこれらの混合物とから選択された留分から由来する留分で構成される群に由来する少なくとも1種の炭化水素カットを多く含んでいる。上記炭化水素留分は、炭素数18以上のn−パラフィンを4重量%以上含有しており、好ましくは、炭素数24以上のn−パラフィンを0.7重量%以上含有している。
【0058】
上記共同作用組成物に対してより効果的な炭化水素留分は、炭素数24〜40のn−パラフィンが0.7〜2%含まれており、n−パラフィンの組成分布は連続的であっても不連続であってもよい。すなわち、n−パラフィンの全ての組成が存在していてもよいし、またはその内の幾つかは存在していなくてもよい。後者の場合には組成が不連続となり、特に、留分の混合物が作られたときに不連続性が形成される。
【0059】
本発明は、さらに、燃焼油、硫黄を0〜500ppm含む油、および/もしくは硫黄を0〜5000ppm含む家庭用燃料油に関し、さらにまたは船舶用機関および工業用ボイラーの燃焼油として使用される重油に関する。これらの製品の大部分は、本発明の少なくとも1つの炭化水素留分により形成される炭化水素基材であり、残りの部分において、本発明の向上性化合物を含有する共同作用組成物を50〜5000ppm含有している。上記共同作用組成物は、添加剤、清浄剤、分散剤、解乳化剤、殺生物剤、消泡剤、付香剤、セタン価向上剤、防錆剤、摩擦緩和剤、潤滑向上剤、燃焼向上剤、曇り点改良剤、流動点改良剤、沈殿防止剤、および導電性改良剤で構成される群からの少なくとも1つの添加剤と共に、上述の燃料または燃焼油に含まれていてもよい。
【0060】
本発明の利点を示すための実施例を、以下に示すが、これらは本発明を限定するものでない。
【0061】
実施例1
この実施例は、本発明の構成要素の性質およびこれと比較するための化合物を示している。
【0062】
フィルター通過性添加剤、すなわちLFT(CFPP)添加剤単独ではフィルター通過性が向上され難い本発明の炭化水素留分をFiと称し、上記添加剤でフィルター通過性が向上される炭化水素留分をGiと称する。これらの炭化水素留分を以下の表1に示す。
【0063】
【表1】

【0064】
*パラフィンの重量%は、液体クロマトグラフィと気体クロマトグラフィとの組合せで測定される。
FT=流動温度
LFT=フィルター通過性温度
CPT=ASTM D2500またはEN 23015により測定される曇り点温度
TCC=示差走査熱量分析(ACDもしくはDSC)により測定される、またはIP 389−93に従い測定される結晶化開始温度
【0065】
燃料として使用される炭化水素留分について測定されるFT温度すなわち流動点は、炭化水素が流動できる最低温度である。
【0066】
CPTすなわち曇り点温度は、パラフィンの析出および結晶化の視認によるものであり、結晶化開始温度Tccの測定よりは正確でない。
【0067】
低温で炭化水素留分に析出するパラフィン結晶のLFTすなわちフィルター通過可能限界温度は、限界温度である流動点FTと結晶化開始温度Tccとの中間である。このフィルター通過可能限界温度LFTは、フィルターを詰まらせないほどに結晶サイズが十分に小さくなっている温度を評価するためのものである。
【0068】
一般的に、フィルター通過可能限界温度LFT、流動点FTおよび結晶化開始温度Tccそれぞれの変動は、必ずしも互いに関連しているのではなく、それよりも炭化水素留分の化学組成に依存することが多い。
【0069】
本発明による炭化水素留分F1、F2およびF3は、n−パラフィンのうち炭素数が24を超えるものは0.7重量%以上であり、結晶化開始温度Tccは−5℃以上である。他方、炭化水素留分G1およびG2のn−パラフィンのうち炭素数が24を超えるものは0.7重量%未満であり、結晶化開始温度Tccは−5℃未満である。
【0070】
パラフィンの分布は液体/気体クロマトグラフィによって測定される。この方法により、中間留分におけるC〜C30のn−パラフィンの濃度を測定することができる。
【0071】
液体クロマトグラフィを用いて、最初の工程において、中間留分を化学構造(飽和芳香族、単環芳香族、二環芳香族および三環芳香族)に応じて分離することができる。n−パラフィンは飽和留分であり、回収されて気体クロマトグラフィーカラムに投入され、沸点に応じて、すなわち炭素数に応じて分離される。最後に、これらのパラフィンはキャリブレーション(較正)により定量化される。
【0072】
使用されるフィルター通過性添加剤は、エチレンと酢酸ビニルとのコポリマーであり、以下の表2においてEVAiとして示す。
【0073】
【表2】

【0074】
向上性化合物として用いられたポリアクリレートをBiと称し、その特性を、Solvarex 10型(炭素原子が8〜20個で沸点が140〜320℃である芳香族炭化水素カット)の芳香族系溶媒に溶かした活性成分30%として以下の表3に示す。
【0075】
これらポリアクリレートは、例えば、以下に示すように、内部窒素雰囲気下でのモノマーの重合により得られる。
【0076】
100重量部の上記モノマーを、70度のオーブンで予め溶融してから、158重量部の芳香族溶媒(Solvarex 10またはSolvarex 150)に溶解させる。こうして得られた混合物は、6時間半のあいだ連続的にタンク内に投入されて窒素雰囲気下でかき混ぜられる。なお、前記タンクには、芳香族溶媒75重量部、有機過酸化物4重量部の混合物があらかじめ投入され、100℃に昇温されている。モノマーの投入中、設定温度は100℃で維持される。次に、この反応炉は冷却され、生じる樹脂は、4―メトキシフェノールを100ppm加えられて安定化される。こうすることで、未反応のモノマーの後重合により保存中にポリマーの平均分子量が変化しないようにする。
【0077】
【表3】

【0078】
実施例2
この例は、本発明の炭化水素留分FiおよびGiに対するLFT添加剤の効率について、本発明による向上性化合物Biの効果および影響を示すことを意図する。
【0079】
表4は、炭化水素留分FiおよびGiに対する、向上性化合物B1単独の効率と、LFT添加剤EVA1およびEVA2を組み合せた場合の向上性化合物B1の効率とを比較して得られた結果をまとめたものである。
【0080】
【表4】

【0081】
結晶化開始温度Tccが−5℃以上の炭化水素留分Fiは、LFT添加剤EVAi単独では効果がないかまたは効果が薄いが、LFT添加剤EVAi/向上性化合物Biの共同作用混合物を用いると効果を示す。他方、結晶化開始温度Tccが−5℃未満の、本発明に含まれない炭化水素留分Giは、LFT添加剤EVAiでのみ効果があることが判明している。
【0082】
なお、向上性化合物Biのみでは、炭化水素留分Fiに対しても炭化水素留分Giに対しても、フィルター通過可能限界温度を向上させる効率は示されない。
【0083】
実施例3
この実施例は、本発明に含まれる炭化水素留分Fiのフィルター通過可能限界温度(LFT)の減少についての、向上性化合物BiとLFT添加剤EVAiとの相対濃度の影響を示している。
【0084】
表5は、LFT添加剤EVAi/向上性化合物Biの組成物の留分中の各濃度において、向上性化合物Biの濃度が変化したときの炭化水素留分F1およびG1のフィルター通過性温度(℃)をまとめたものである。
【0085】
【表5】

【0086】
LFT添加剤EVA1/向上性化合物B1の割合を変化させて行った試験では、炭化水素留分Fiの場合、向上性化合物が少量のときに最適の効率が得られることを示している。
【0087】
また、炭化水素留分Giの場合、向上性化合物Biの濃度を増加させるとLFT添加剤EVA1の効率が失われ、炭化水素留分のフィルター通過性温度が上昇する。
【0088】
実施例4
この実施例は、カルボン酸とアルコールとのオレフィン性エステルのポリマーから選択される、本発明の好ましいポリマーを示している。
【0089】
課題は、炭化水素留分F1およびF2のフィルター通過性温度を減少させるにあたり、カルボン酸の性質およびアルコールの鎖長の影響を示すことである。
【0090】
本発明の共同作用組成物において、カルボン酸とアルコールとのオレフィン性エステルのホモポリマーの含有量は4.5%で、EVA1の含有量は95.5%である。
【0091】
この実施例において、炭化水素留分F1およびF2における組成物含有量は、0から300ppmである。
【0092】
得られた結果を、LFT温度(℃)について以下の表6にまとめる。
【0093】
【表6】

【0094】
向上性化合物の効率は、アルコールの鎖長と、ポリエステルを合成するために使用されるカルボン酸の性質とに応じて変化する。
【0095】
上記の表6における効率の試験は、C12〜C40の鎖長のアルキルアクリレートの単独重合により(実施例1に記載された作業工程に従い)合成された向上性化合物を用いて行われた。
【0096】
上記の結果は、明らかに、アルキル鎖の大部分が炭素数16を超えるポリマーにおいて向上性化合物の好ましい効果が生じることを示している。最良の結果は、C18〜22アクリレートおよびC30〜40アクリレートで得られる。
【0097】
向上性化合物B1を、C18〜C22アクリレートとビニルアクリレートとの共重合(割合:70/30)、またはC18〜C22アクリレートと2−エチル−ヘキシルアクリレートとの共重合(割合80/20および50/50)により合成したポリマーに置き換えて行った試験では、これらのコポリマーが対応するC18〜C22アクリレートに比べて効率的でないことを示している。これらのコポリマーは、本発明の炭化水素留分のLFT温度に関して不利な作用さえ生じる。
【0098】
カルボン酸の性質も、重要なパラメータであり、向上性化合物B1をC12、C16またはC1824メタクリル酸エステルのホモポリマーに置き換えて行った上記の試験では、これらのホモポリマーが、対応するアクリル酸エステルの単独重合体ほど効率的でないことを示している。
【0099】
この実施例は、本発明の炭化水素留分のフィルター通過性温度に関し、フィルター通過性添加剤の効率を向上させる化合物として、本発明で要求されるポリアクリレートを選択することが、従来技術からみて自明でないことを実際に示している。本発明による、組成物の共同作用を生じる組合せによってのみ、結晶化開始温度Tccが−5℃以上の炭化水素留分のLFT温度を低下させるという課題が解決できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素留分において、フィルター通過性添加剤の効率を向上させるためのホモポリマーの使用であって、
前記炭化水素留分は、150〜450℃の沸点を有し、示差走査熱量分析で測定される結晶化開始温度が−5℃以上であり、
前記ホモポリマーは、炭素原子3〜12個のカルボン酸と、炭素原子16個以上の鎖を含み任意でオレフィン性二重結合を有する脂肪族アルコールとのオレフィン性エステルから得られるホモポリマーであり、
前記フィルター通過性添加剤は、エチレンとエステル単位とのコポリマーおよびターポリマーから選択され、これらエステル単位は、酢酸ビニル系エステル、プロピオン酸ビニル系エステル、(アルキル)アクリレート系エステル、および(アルキル)メタクリレート系エステルから選択され、これらアルキル基は炭素原子を1〜7個含んでいる、コポリマーおよび/またはターポリマーに基づくものであり、
前記炭化水素留分は、フィルター通過性添加剤単独の作用では低下させることが難しい炭化水素留分である、使用。
【請求項2】
請求項1において、炭化水素留分は、示差走査熱量分析で測定される結晶化開始温度−5℃から+10℃を有する、使用。
【請求項3】
請求項1または2において、炭化水素留分が、炭素数18以上のn−パラフィンを、4重量%以上含有している、使用。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項において、炭化水素留分が、炭素数24以上のn−パラフィンを、0.7重量%以上含有している、使用。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項において、炭化水素留分が、C24〜C40n−パラフィンを0.7〜2重量%含んでいる、使用。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項において、フィルター通過性向上添加剤が、エステル単位を20重量%以上含有するエチレンとのコポリマーである、使用。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項において、フィルター通過性添加剤が、エチレンと酢酸ビニルとのコポリマー、エチレンとプロピオン酸ビニルとのコポリマー、エチレンとバーサチック酸ビニルとのコポリマー、エチレンと(アルキル)アクリレートとのコポリマー、およびエチレンと(アルキル)メタクリレートとのコポリマーのうち1種、またはこれらの混合物から選択され、エステル単位を20〜40重量%含む、使用。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項において、ホモポリマーが、炭素原子1〜7個のアルキル基で任意で置換されているアクリル酸と、炭素原子を16個以上含むアルコールとのオレフィン性エステルの重合によって得られたものであり、5000〜20000の重量平均分子量Mwを有する、使用。
【請求項9】
請求項8において、ホモポリマーが、10000〜19000の重量平均分子量Mwを有する、使用。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項において、ホモポリマーが、炭素原子18〜40個の炭化水素側鎖を含むポリアクリレートである、使用。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項において、炭化水素留分が150〜450℃の沸点を有し、且つ、直留からの留分、真空蒸留による留分、水素化処理された留分、真空蒸留による留分を接触分解および/もしくは水素化分解して生じる留分、常圧残渣脱硫型変換および/もしくはビスブレーキング法から生じる留分、フィッシャー・トロプシュ反応留分に由来する留分、植物系バイオマスおよび/もしくは動物系バイオマスのバイオマス・トゥ・リキッド変換から生じる留分、ならびに植物油のアルキルエステルもしくは動物油のアルキルエステルを含有する留分のうちの1種、またはこれらの組合せから選択されることを特徴とする、使用。
【請求項12】
A)エチレンとエステル単位とのコポリマーおよびターポリマーから選択され、これらエステル単位は、酢酸ビニル系エステル、プロピオン酸ビニル系エステル、(アルキル)アクリレート系エステル、および(アルキル)メタクリレート系エステルから選択され、これらアルキル基は炭素原子を1〜7個含んでいる、コポリマーおよび/またはターポリマーを含むフィルター通過性添加剤と、
B)炭素原子3〜12個のカルボン酸と、炭素原子を16個以上含む脂肪族アルコールとのオレフィン性エステルのホモポリマー
との混合物を含む組成物であって、
前記AおよびBは、沸点が150〜450℃であり示差走査熱量分析で測定される結晶化開始温度が−5℃以上である炭化水素留分の、NFEN116規格に従い測定されるフィルター通過性温度LFTに関して共同効果を生じる割合で含まれ、
前記炭化水素留分は、フィルター通過性添加剤単独の作用では低下させることが難しい炭化水素留分である、組成物。
【請求項13】
請求項12において、炭化水素留分は、示差走査熱量分析で測定される結晶化開始温度−5℃から+10℃を有する、組成物。
【請求項14】
エチレンとエステル単位とのコポリマーおよびターポリマーから選択され、これらエステル単位は、酢酸ビニル系エステル、プロピオン酸ビニル系エステル、(アルキル)アクリレート系エステル、および(アルキル)メタクリレート系エステルから選択され、これらアルキル基は炭素原子を1〜7個含んでいる、コポリマーおよび/またはターポリマーを含む少なくとも1つのフィルター通過性添加剤(A)を85〜99重量%、および
炭素原子3〜12個のカルボン酸と、炭素原子を16個以上含む脂肪族アルコールとのオレフィン性エステルのホモポリマー(B)を1〜15重量%
を含む、組成物。
【請求項15】
請求項12から14のいずれか一項において、ホモポリマーが、5000〜20000の重量平均分子量Mwを有する、組成物。
【請求項16】
請求項15において、ホモポリマーが、10000〜19000の重量平均分子量Mwを有する、組成物。
【請求項17】
請求項12〜16のいずれか一項において、ホモポリマーが、炭素原子を18〜50個含むアルコールとアクリル酸とのオレフィン性エステルである、組成物。
【請求項18】
請求項12〜17のいずれか一項において、ホモポリマーが、炭素原子18〜40個の炭化水素側鎖を含むポリアクリレートである、組成物。
【請求項19】
請求項12〜18のいずれか一項において、フィルター通過性添加剤が、エステル単位を20重量%以上含有する、エチレンのコポリマーおよびターポリマーから選択され、これらエステル単位は、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アルキルアクリレート、およびアルキルメタクリレートのうちの1種、またはこれらの組合せから選択され、前記アルキル基は炭素原子を1〜7個含む、組成物。
【請求項20】
請求項12〜19のいずれか一項において、フィルター通過性添加剤が、(i)エチレンと、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルおよびバーサチック酸ビニルから選ばれた一種または二種のビニルエステルとのコポリマーまたはターポリマー、および(ii)エチレンと、(アルキル)アクリレートおよび/もしくは(アルキル)メタクリレートとのコポリマーまたはターポリマーのうち一種、またはこれらの混合物から選択され、エステル単位を20〜40重量%含む、組成物。
【請求項21】
請求項12〜20のいずれか一項において、フィルター通過性添加剤が、(i)エチレンと、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルおよびバーサチック酸ビニルから選ばれた一種または2種のビニルエステルとのコポリマーまたはターポリマー、および(ii)エチレンと、(アルキル)アクリレートおよび/もしくは(アルキル)メタクリレートのコポリマーまたはターポリマーから選択され、3000〜20000の分子量を有する、組成物。
【請求項22】
請求項12〜21のいずれか一項において、酢酸ビニル単位が25〜30重量%である、エチレン酢酸ビニルコポリマーを85〜98重量%含み、平均分子量が10000〜19000であり、炭素原子数18〜40の炭化水素側鎖を有するポリアクリレートを2〜15重量%含む、組成物。
【請求項23】
硫黄0〜5000ppmと、請求項12〜22のいずれか一項に記載の組成物10〜5000ppmとを含有し、任意で、他の添加剤、清浄剤、分散剤、解乳化剤、消泡剤、殺生物剤、付香剤、セタン価向上剤、防錆剤、摩擦緩和剤、潤滑向上剤、燃焼向上剤、曇り点改良剤、流動点改良剤、沈殿防止剤、および導電性改良剤が混合されている、炭化水素留分。
【請求項24】
請求項23において、150〜450℃の沸点を有し、結晶化開始温度Tccが−5℃以上である留分であって、(i)直留からの留分、(ii)真空蒸留による留分、(iii)水素化処理された留分、(iv)真空蒸留による留分を接触分解および/もしくは水素化分解して生じる留分、(v)常圧残渣脱硫型変換および/もしくはビスブレーキング法から生じる留分、(vi)フィッシャー・トロプシュ反応留分に由来する留分、(vii)植物系バイオマスおよび/もしくは動物系バイオマスのバイオマス・トゥ・リキッド変換から生じる留分のいずれか1種またはこれらの混合物、及び(viii)植物油のエステル、動物油のエステルまたはこれらの混合物とから選択された留分から由来する留分、
から構成された群に由来する少なくとも1種の炭化水素カットを含む、炭化水素留分。
【請求項25】
請求項24において、結晶化開始温度Tcc−5℃から+10℃を有している、炭化水素留分。
【請求項26】
請求項23〜25のいずれか一項において、炭素数18以上のn−パラフィンを、4重量%以上含有している、炭化水素留分。
【請求項27】
請求項23〜26のいずれか一項において、炭素数24以上のn−パラフィンを、0.7重量%以上含有している、炭化水素留分。
【請求項28】
請求項23〜27のいずれか一項において、C24〜C40n−パラフィンを0.7〜2重量%含んでいる、炭化水素留分。
【請求項29】
請求項23〜28のいずれか一項に記載の炭化水素留分を少なくとも1つ含み、かつ硫黄を0〜500ppm含む、ディーゼル燃料。
【請求項30】
請求項23〜28のいずれか一項に記載の炭化水素留分を少なくとも1つ含み、かつ硫黄を0〜5000ppm含む、暖房用燃料油。
【請求項31】
請求項23〜28のいずれか一項に記載の炭化水素留分を少なくとも1つ含む重油。

【公開番号】特開2013−76093(P2013−76093A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−12919(P2013−12919)
【出願日】平成25年1月28日(2013.1.28)
【分割の表示】特願2009−518923(P2009−518923)の分割
【原出願日】平成19年7月6日(2007.7.6)
【出願人】(505036674)トータル・ラフィナージュ・マーケティング (39)
【Fターム(参考)】