炭化水素選択酸化触媒及びその製造方法
【課題】炭化水素(HC)を選択的に酸化することができる炭化水素選択酸化触媒及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】炭化水素を選択的に酸化する炭化水素選択酸化触媒1及びその製造方法である。炭化水素選択酸化触媒1は、3d遷移金属の酸化物2と5価又は6価の遷移金属の酸化物3、又は3d遷移金属の酸化物の3d遷移金属の一部に5価又は6価の遷移金属が置換固溶してなる固溶体4を含有する。炭化水素選択酸化触媒の製造にあたっては、溶解工程と水溶液乾燥焼成工程とを行う。溶解工程においては、3d遷移金属の塩と、5価又は6価の遷移金属の塩とを水に溶解させて遷移金属水溶液を得る。水溶液乾燥焼成工程においては、遷移金属水溶液を乾燥させ、焼成する。
【解決手段】炭化水素を選択的に酸化する炭化水素選択酸化触媒1及びその製造方法である。炭化水素選択酸化触媒1は、3d遷移金属の酸化物2と5価又は6価の遷移金属の酸化物3、又は3d遷移金属の酸化物の3d遷移金属の一部に5価又は6価の遷移金属が置換固溶してなる固溶体4を含有する。炭化水素選択酸化触媒の製造にあたっては、溶解工程と水溶液乾燥焼成工程とを行う。溶解工程においては、3d遷移金属の塩と、5価又は6価の遷移金属の塩とを水に溶解させて遷移金属水溶液を得る。水溶液乾燥焼成工程においては、遷移金属水溶液を乾燥させ、焼成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素(HC)を選択的に酸化することができる炭化水素選択酸化触媒及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車等の内燃機関から排出される排ガス中に含まれる炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)等を浄化するために排ガス浄化触媒が用いられている。排ガス浄化触媒としては、例えば貴金属である白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)等の三元触媒が広く知られている。
【0003】
ところが、貴金属は、コストが高く、また、資源枯渇の観点から安定供給にも懸念がある。
そこで、近年、非貴金属酸化物を用いた排ガス浄化触媒が開発されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−104973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、非貴金属酸化物を用いた排ガス浄化触媒においては、安価ではあるものの、酸化雰囲気(高酸素濃度雰囲気)ではCOとNOとの反応が起こり難くなるという問題がある。また、NOxの浄化には、COの存在が必要であるが、白金、パラジウム、非貴金属酸化物等からなる従来の排ガス浄化触媒は、比較的低温でHCだけでなくCOも酸化してしまう。そのため、従来の排ガス浄化触媒においては、NOxの浄化温度に到達する際には、NOxを浄化するために必要なCOが不足してしまう。それ故、従来の排ガス浄化触媒においては、NOxの浄化が不十分となってしまうという問題がある。したがって、従来の三元触媒、酸化触媒等を単独で又は組み合わせて用いても、排ガス中のHC、CO、及びNOxを効率よく浄化することは困難である。
【0006】
そこで、HC、CO、NOx等を含む排ガスにおいては、CO及びNOxの浄化の前段階にとしてHCを選択的に浄化することができれば上述のような問題が解消されると考えられる。しかし、排ガス中からHCを選択的に浄化できる触媒はほとんど開発されていないのが現状である。
【0007】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたもので、炭化水素(HC)を選択的に酸化することができる炭化水素選択酸化触媒及びその製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、炭化水素を選択的に酸化する炭化水素選択酸化触媒であって、
3d遷移金属の酸化物と5価又は6価の遷移金属の酸化物、及び/又は3d遷移金属と5価又は6価の遷移金属との酸化物固溶体を含有することを特徴とする炭化水素選択酸化触媒にある(請求項1)。
【0009】
第2の発明は、炭化水素を選択的に酸化する炭化水素選択酸化触媒の製造方法であって、
3d遷移金属の塩と、5価又は6価の遷移金属の塩とを水に溶解させて遷移金属水溶液を得る溶解工程と、
上記遷移金属水溶液を乾燥させ、焼成する水溶液乾燥焼成工程とを行うことを特徴とする炭化水素選択酸化触媒の製造方法にある(請求項6)。
【0010】
第3の発明は、炭化水素を選択的に酸化する炭化水素選択酸化触媒の製造方法であって、
3d遷移金属を含有する酸化物と、5価又は6価の遷移金属の塩とを水に混合することにより、3d遷移金属を含有する酸化物が水に分散し、5価又は6価の遷移金属の塩が水に溶解する混合液Aを得る液相混合工程Aと、
上記混合液Aを乾燥させ、焼成する乾燥焼成工程Aとを行うことを特徴とする炭化水素選択酸化触媒の製造方法にある(請求項9)。
【0011】
第4の発明は、炭化水素を選択的に酸化する炭化水素選択酸化触媒の製造方法であって、
3d遷移金属を含有する酸化物と、5価又は6価の遷移金属を含有する酸化物とを混合して混合物を得る混合工程と、
上記混合物を焼成する焼成工程とを行うことを特徴とする炭化水素選択酸化触媒の製造方法にある(請求項12)。
【0012】
第5の発明は、炭化水素を選択的に酸化する炭化水素選択酸化触媒の製造方法であって、
3d遷移金属の塩と、5価又は6価の遷移金属を含有する酸化物とを水に混合することにより、3d遷移金属の塩が水に溶解し、5価又は6価の遷移金属を含有する酸化物が水に分散する混合液Bを得る液相混合工程Bと、
上記混合液Bを乾燥させ、焼成する乾燥焼成工程Bとを行うことを特徴とする炭化水素選択酸化触媒の製造方法にある(請求項15)。
【発明の効果】
【0013】
上記炭化水素選択酸化触媒は、3d遷移金属の酸化物と5価又は6価の遷移金属の酸化物、及び/又は、例えば3d遷移金属の酸化物の3d遷移金属の一部に5価又は6価の遷移金属が置換固溶してなる固溶体のような3d遷移金属と5価又は6価の遷移金属との酸化物固溶体を含有する。即ち、炭化水素選択酸化触媒は、酸化鉄、酸化銅等の遷移金属酸化物(3d遷移金属酸化物)と、酸化ニオブ、酸化タングステン、酸化モリブデン、酸化タンタル等の遷移金属酸化物(5価又は6価の遷移金属酸化物)とを少なくとも含有するか、又は、酸化鉄、酸化銅等の遷移金属酸化物(3d遷移金属酸化物)における遷移金属の一部にニオブ、タングステン、モリブデン、タンタル等の5価又は6価の遷移金属が置換固溶した固溶体のような3d遷移金属と5価又は6価の遷移金属との酸化物固溶体を少なくとも含有する。
そのため、上記炭化水素選択酸化触媒は、炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、及び窒素酸化物(NOx)を少なくとも含む例えば自動車の排気ガスなどの混合ガスにおいて、一酸化炭素及び窒素酸化物をほとんど酸化することなく、炭化水素を選択的に酸化することができる。
【0014】
また、第2の発明は、溶解工程と水溶液乾燥焼成工程とを行うことにより、炭化水素を選択的に酸化する炭化水素選択酸化触媒を製造する方法にある。
溶解工程においては、3d遷移金属の塩と、5価又は6価の遷移金属の塩とを水に溶解させて遷移金属水溶液を得る。これにより、3d遷移金属(イオン)と5価又は6価の遷移金属(イオン)が均一に混じりあって水に溶解した遷移金属水溶液を得ることができる。
【0015】
また、水溶液乾燥焼成工程においては、上記遷移金属水溶液を乾燥させ、焼成する。これにより、上記遷移金属水溶液中の3d遷移金属及び5価又は6価の遷移金属を酸化させ、3d遷移金属の酸化物と5価又は6価の遷移金属の酸化物とを含有する炭化水素選択酸化触媒、及び/又は3d遷移金属と5価又は6価の遷移金属との酸化物固溶体を含有する炭化水素選択酸化触媒を得ることができる。このようにして得られる炭化水素選択酸化触媒は、炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、及び窒素酸化物(NOx)を少なくとも含む例えば自動車の排気ガスなどの混合ガスにおいて、一酸化炭素及び窒素酸化物をほとんど酸化することなく、炭化水素を選択的に酸化することができる。
【0016】
また、第3の発明においては、液相混合工程Aと乾燥焼成工程Aとを行うことにより、炭化水素選択酸化触媒を製造する。
上記液相混合工程Aにおいては、3d遷移金属を含有する酸化物と、5価又は6価の遷移金属の塩とを水に混合する。これにより、3d遷移金属を含有する酸化物が水に分散し、5価又は6価の遷移金属の塩が水に溶解する混合液Aを得ることができる。
【0017】
また、上記乾燥焼成工程Aにおいては、上記混合液Aを乾燥させ、焼成する。乾燥により、3d遷移金属を含有する酸化物に5価又は6価の遷移金属を付着させ、焼成により5価又は6価の遷移金属を酸化させることができる。その結果、3d遷移金属の酸化物と5価又は6価の遷移金属の酸化物とを含有する炭化水素選択酸化触媒、及び/又は3d遷移金属と5価又は6価の遷移金属との酸化物固溶体を含有する炭化水素選択酸化触媒を得ることができる。このようにして得られる炭化水素選択酸化触媒は、炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、及び窒素酸化物(NOx)を少なくとも含む例えば自動車の排気ガスなどの混合ガスにおいて、一酸化炭素及び窒素酸化物をほとんど酸化することなく、炭化水素を選択的に酸化することができる。上記第3の発明の製造方法においては、特に炭化水素に対する選択性に優れた炭化水素選択酸化触媒を得ることができる。
【0018】
また、第4の発明においては、混合工程と焼成工程とを行うことにより、炭化水素選択酸化触媒を製造する。
上記混合工程においては、3d遷移金属を含有する酸化物と、5価又は6価の遷移金属を含有する酸化物とを混合して混合物を得る。
また、上記焼成工程においては、上記混合物を焼成する。これにより、3d遷移金属の酸化物と5価又は6価の遷移金属の酸化物とを含有する炭化水素選択酸化触媒、及び/又は3d遷移金属と5価又は6価の遷移金属との酸化物固溶体を含有する炭化水素選択酸化触媒を得ることができる。このようにして得られる炭化水素選択酸化触媒は、炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、及び窒素酸化物(NOx)を少なくとも含む例えば自動車の排気ガスなどの混合ガスにおいて、一酸化炭素及び窒素酸化物をほとんど酸化することなく、炭化水素を選択的に酸化することができる。上記第4の発明の製造方法においては、特に浄化性能に優れた炭化水素選択酸化触媒を得ることができる。
【0019】
また、第5の発明においては、液相混合工程Bと乾燥焼成工程Bとを行うことにより、炭化水素選択酸化触媒を製造する。
上記液相混合工程Bにおいては、3d遷移金属の塩と、5価又は6価の遷移金属を含有する酸化物とを水に混合する。これにより、3d遷移金属の塩が水に溶解し、5価又は6価の遷移金属を含有する酸化物が水に分散する混合液Bを得ることができる。
また、上記乾燥焼成工程Bにおいては、上記混合液Bを乾燥させ、焼成する。乾燥により、5価又は6価の遷移金属を含有する酸化物に3d遷移金属を付着させ、焼成により3d遷移金属を酸化させることができる。その結果、3d遷移金属の酸化物と5価又は6価の遷移金属の酸化物とを含有する炭化水素選択酸化触媒、及び/又は3d遷移金属と5価又は6価の遷移金属との酸化物固溶体を含有する炭化水素選択酸化触媒を得ることができる。このようにして得られる炭化水素選択酸化触媒は、炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、及び窒素酸化物(NOx)を少なくとも含む例えば自動車の排気ガスなどの混合ガスにおいて、一酸化炭素及び窒素酸化物をほとんど酸化することなく、炭化水素を選択的に酸化することができる。上記第5の発明の製造方法においては、特に浄化性能に優れた炭化水素選択酸化触媒を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施例1にかかる、炭化水素選択酸化触媒における各酸化物粒子の分散状態を示す説明図であって、アルミナ粒子と2種類の酸化物の粒子とからなる様子を示す説明図(a)、アルミナ粒子と固溶体の粒子からなる様子を示す説明図(b)。
【図2】実施例1にかかる、炭化水素選択酸化触媒を担持したハニカム構造体の全体を示す説明図(a)、炭化水素選択酸化触媒を担持したハニカム構造体の径方向の断面を拡大して示す説明図(b)。
【図3】実施例1にかかる、炭化水素選択酸化触媒を担持したハニカム構造体を排気管内に配置した様子を示す説明図。
【図4】実施例1にかかる、炭化水素選択酸化触媒(試料E1)の温度と、三元ガスの浄化率との関係を示す説明図。
【図5】実施例1にかかる、従来の酸化鉄からなる排ガス浄化触媒(試料C1)の温度と、三元ガスの浄化率との関係を示す説明図。
【図6】実施例2にかかる、炭化水素選択酸化触媒(試料E2)の温度と、三元ガスの浄化率との関係を示す説明図。
【図7】実施例2にかかる、炭化水素選択酸化触媒(試料E3)の温度と、三元ガスの浄化率との関係を示す説明図。
【図8】実施例2にかかる、炭化水素選択酸化触媒(試料E4)の温度と、三元ガスの浄化率との関係を示す説明図。
【図9】実施例3にかかる、炭化水素選択酸化触媒(試料E5)の温度と、三元ガスの浄化率との関係を示す説明図。
【図10】実施例3にかかる、従来の酸化銅からなる排ガス浄化触媒(試料C2)の温度と、三元ガスの浄化率との関係を示す説明図。
【図11】実施例4にかかる、炭化水素選択酸化触媒における5価又は6価の遷移金属(W)の量と、炭化水素(HC)の浄化率が50%となるときの温度T50との関係を示す説明図。
【図12】実施例4にかかる、炭化水素選択酸化触媒における5価又は6価の遷移金属(W)の量と、炭化水素(HC)に対する酸化の選択性との関係を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の好ましい実施形態について説明する。
本発明において、炭化水素選択酸化触媒は、炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、及び窒素酸化物(NOx)を少なくとも含む混合ガス(例えば自動車の排気ガス)において、一酸化炭素及び窒素酸化物をほとんど酸化することなく、炭化水素を優先して選択的に酸化させることができる。
したがって、炭化水素選択酸化触媒は、排ガス浄化装置、炭化水素濃度センサ等に用いることができる。
【0022】
排ガス浄化装置の用途としては、上記炭化水素選択酸化触媒を例えばハニカムに担持させて排ガス流路に配置することにより、排ガス中から炭化水素を選択的に酸化して浄化させることができる。この場合には、一酸化炭素(CO)及び窒素酸化物(NOx)を含むが、HCをほとんど含有しない排ガスを生成することができる。そのためこの場合には、排ガス流路において、上記炭化水素選択酸化触媒を担持したハニカムの下流側に、Pt、Pd等の貴金属や、Fe、Cr、Cu等の遷移金属又はその酸化物を担持したハニカムを配置することにより、下流側のハニカムにおいてCOとNOxとを反応させ、これらを十分に浄化させることが可能になる。
また、炭化水素濃度センサにおいては、上記炭化水素選択酸化触媒によって、例えば排ガス中に含まれるHCを選択的に酸化し、このときの酸素濃度の変化を測定することにより、排ガス中のHC濃度を選択的に測定することが可能になる。
【0023】
上記炭化水素選択酸化触媒は、3d遷移金属の酸化物と5価又は6価の遷移金属の酸化物を少なくとも含有するか、又は3d遷移金属と5価又は6価の遷移金属との酸化物固溶体を少なくとも含有する。
上記炭化水素選択酸化触媒においては、3d遷移金属の酸化物と5価又は6価の遷移金属の酸化物、及び上記酸化物固溶体が共存していてもよい。
【0024】
上記炭化水素選択酸化触媒においては、3d遷移金属の酸化物と5価又は6価の遷移金属の酸化物のうち、主成分を3d遷移金属の酸化物にすることができる。また、上記固溶体においては、3d遷移金属と5価又は6価の遷移金属のうち、主成分を3d遷移金属にすることができる。
【0025】
上記炭化水素選択酸化触媒においては、3d遷移金属の酸化物と5価又は6価の遷移金属の酸化物のうち、主成分を5価又は6価の遷移金属の酸化物にすることもできる。また、上記固溶体においては、3d遷移金属と5価又は6価の遷移金属のうち、主成分を5価又は6価の遷移金属にすることができる。この場合には、上記炭化水素選択酸化触媒の炭化水素に対する選択性を向上させることができる。
【0026】
また、上記炭化水素選択酸化触媒は、上記5価又は6価の遷移金属を、上記3d遷移金属に対して1.25atm%〜75atm%含有することが好ましい(請求項2)。
5価又は6価の遷移金属が上記3d遷移金属に対して1.25atm%未満の場合には、炭化水素に対する選択的な酸化特性が低下するおそれがある。より好ましくは2.5atm%以上がよい。一方、75atm%を超える場合には、炭化水素に対する酸化特性自体が低下し、より高温での酸化が必要になるおそれがある。より好ましくは50atm%以下がよい。
【0027】
また、上記炭化水素選択酸化触媒において、上記3d遷移金属としては、例えばFe、Cu、Co、Mn、Ni、及びTi等から選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
好ましくは、上記3d遷移金属は、Fe及び/又はCuであることがよい(請求項3)。
この場合には、炭化水素に対する選択的な酸化特性をより向上させることができる。より好ましくは、3d遷移金属は、Feであることがよい。
【0028】
また、好ましくは、上記5価又は6価の遷移金属は、W、Mo、Nb、及びTaから選ばれる少なくとも1種であることがよい(請求項4)。
この場合には、炭化水素に対する選択的な酸化特性をより向上させることができる。
【0029】
また、上記炭化水素選択酸化触媒は、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、及び二酸化珪素から選ばれる少なくとも1種をさらに含有することが好ましい(請求項5)。
この場合には、上記炭化水素選択酸化触媒を、例えばコージェライト等からなるハニカム体に担持させ易くなる。そのため、上記炭化水素選択酸化触媒を排ガス浄化装置に適用し易くなる。
【0030】
上記炭化水素選択酸化触媒は、溶解工程と水溶液乾燥焼成工程とを行うことにより製造することができる。
上記溶解工程においては、3d遷移金属の塩と、5価又は6価の遷移金属の塩とを水に溶解させて遷移金属水溶液を得る。
3d遷移金属の塩及び5価又は6価の遷移金属の塩としては、水溶液中で3d遷移金属のイオン、5価又は6価の遷移金属のイオンを生成するものを採用することができる。また、後工程の水溶液乾燥焼成工程において、3d遷移金属、及び5価又は6価の遷移金属以外の成分(塩の陰イオン)は焼失するものであることが好ましい。
具体的には、3d遷移金属の塩、5価又は6価の遷移金属の塩としては、それぞれ、塩化物塩、硝酸塩、水酸化物、及びアンモニウム塩等を用いることができる。
【0031】
また、上記溶解工程においては、上記3d遷移金属に対する上記5価又は6価の遷移金属の量が1.25atm%〜75atm%となるように上記3d遷移金属の塩と上記5価又は6価の遷移金属の塩とを水に溶解させることが好ましい(請求項7)。
この場合には、炭化水素に対する選択的な酸化特性により優れると共に、より低温で炭化水素の酸化が可能な炭化水素選択酸化触媒を製造することができる。より好ましくは、2.5atm%以上、50atm%以下がよい。
【0032】
また、上記溶解工程においては、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、二酸化珪素から選ばれる少なくとも1種を水に添加することが好ましい(請求項8)。
この場合には、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、二酸化珪素から選ばれる少なくとも1種をさらに含有する炭化水素選択酸化触媒を製造することができる。かかる炭化水素選択酸化触媒は、例えばコージェライト等からなるハニカム体に担持させ易くなる。そのため、上記炭化水素選択酸化触媒は、排ガス浄化装置に適用し易くなる。
【0033】
次に、水溶液乾燥焼成工程においては、上記遷移金属水溶液を乾燥させ、焼成する。
上記遷移金属水溶液の乾燥は、例えば温度80〜180℃で行うことができる。この乾燥により、水分を蒸発させることができる。上記水溶液乾燥焼成工程においては、乾燥後に得られる固形物を焼成する。焼成温度は、例えば温度300〜1050℃にすることができる。この焼成により、上記炭化水素選択酸化触媒を得ることができる。
【0034】
また、上記炭化水素選択酸化触媒は、上記溶解工程と上記水溶液乾燥焼成工程を行う方法の他に、次のようにして作製することもできる。
即ち、3d遷移金属を含有する酸化物と、5価又は6価の遷移金属を含有する酸化物とを混合して混合物を得る混合工程と、上記混合物を焼成する焼成工程とを行うことによって、上記炭化水素選択酸化触媒を得ることができる。上記混合工程は、固相で行うこともできるが例えば水等の溶媒(液相)中で行うこともできる。この場合には、上記焼成工程の前に溶媒を蒸発させる乾燥工程を行うことにより、乾燥後の固形分として上記混合物を得ることができる。
【0035】
また、上記炭化水素選択酸化触媒は、次のようにして作製することもできる。
即ち、3d遷移金属を含有する酸化物と5価又は6価の遷移金属の塩、又は3d遷移金属の塩と5価又は6価の遷移金属を含有する酸化物を水中で混合し、酸化物と塩との混合液を得る液相混合工程と、上記混合液を乾燥させ、焼成する乾燥焼成工程とを行うことによって、上記炭化水素選択酸化触媒を得ることができる。上記液相混合工程後に上記混合液を乾燥させると、3d遷移金属を含有する酸化物の表面に5価又は6価の遷移金属の塩が析出した複合体、又は5価又は6価の遷移金属を含有する酸化物の表面に3d遷移金属の塩が析出した複合体を得ることができる。この複合体を焼成することにより、上記炭化水素選択酸化触媒を得ることができる。
【0036】
上記混合工程及び上記液相混合工程においては、上記溶解工程と同様に、上記3d遷移金属に対する上記5価又は6価の遷移金属の量が1.25atm%〜75atm%となるように、混合を行うことが好ましい(請求項10、請求項13、及び請求項16)。より好ましくは、2.5atm%以上、50atm%以下がよい。
【0037】
また、上記混合工程及び上記液相混合工程においては、上記溶解工程と同様に、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、及び二酸化珪素から選ばれる少なくとも1種をさらに添加することが好ましい(請求項11、請求項14、及び請求項17)。
上記混合工程及び上記液相混合工程においてさらに添加する上述の酸化アルミニウム、酸化チタン等は、上記3d遷移金属を含有する酸化物、及び5価又は6価の遷移金属を含有する酸化物等とは別の粉末材料として添加することもできるが、上記3d遷移金属を含有する酸化物との複合体、及び5価又は6価の遷移金属を含有する酸化物等との複合体として添加することが好ましい。具体的には、例えば酸化アルミニウムを添加する場合には、3d遷移金属を含有する酸化物と酸化アルミニウムとの複合体、5価又は6価の遷移金属を含有する酸化物と酸化アルミニウムの複合体を用いることができる。
この場合には、焼成時に、3d遷移金属を含有する酸化物の粒子同士、又は5価又は6価の遷移金属を含有する酸化物の粒子同士が凝集することを抑制することができる。その結果、上記炭化水素選択酸化触媒の浄化性能の低下を抑制することができる。
【0038】
また、上記炭化水素選択酸化触媒を製造するにあたって、上記3d遷移金属としては、上述のごとく例えばFe、Cu、Co、Mn、Ni、及びTi等から選ばれる少なくとも1種を用いることができる。また、上記3d遷移金属は、Fe及び/又はCuであることがよく(請求項18)、上記5価又は6価の遷移金属は、W、Mo、Nb、及びTaから選ばれる少なくとも1種であることがよい(請求項19)。
これらの場合には、炭化水素に対する選択的な酸化特性をより向上させることができる。
【実施例】
【0039】
(実施例1)
次に、炭化水素選択酸化触媒の実施例につき、図1〜図5を用いて説明する。
本例においては、炭化水素を選択的に酸化する炭化水素選択酸化触媒を製造する。
図1(a)及び(b)に示すごとく、本例の炭化水素選択酸化触媒1は、3d遷移金属の酸化物2と5価又は6価の遷移金属の酸化物3、及び/又は3d遷移金属と5価又は6価の遷移金属との酸化物固溶体4を含有する。本例においては、3d遷移金属がFe、5価又は6価の遷移金属がWである炭化水素選択酸化触媒1を製造する。
また、本例の炭化水素選択酸化触媒1は、酸化アルミニウム5をさらに含有する。
【0040】
本例の炭化水素選択酸化触媒の製造にあたっては、溶解工程と水溶液乾燥焼成工程とを行う。
本例の溶解工程においては、3d遷移金属の塩と、5価又は6価の遷移金属の塩とを水に溶解させて遷移金属水溶液を得る。
また、水溶液乾燥焼成工程においては、遷移金属水溶液を乾燥させ、焼成する。
【0041】
以下、本例の炭化水素選択酸化触媒の製造方法につき、詳細に説明する。
まず、Feに対するWの量が50atm%となる配合割合で、硝酸鉄とタングステン酸アンモニウムパラ5水和物とを水に溶解させた。得られた水溶液に、水に酸化アルミニウムを分散させたアルミナ分散液を添加した。ここで添加する酸化アルミニウム量は、焼成後に得られる酸化鉄と酸化アルミニウムとの重量比が1:3となるような配合割合に調整した。
【0042】
次いで、水溶液を温度120℃で乾燥させ、水分を除去して固形物を得た。この固形物を温度600℃で焼成し、炭化水素選択酸化触媒の粉末を得た。これを試料E1とする。
X線回折(XRD)による分析結果から、本例の炭化水素選択酸化触媒1(試料E1)は、酸化鉄(3d遷移金属の酸化物2)と酸化タングステン(5価又は6価の遷移金属の酸化物3)とを含有すると共に、酸化鉄の一部は、その鉄の一部にタングステンが固溶した固溶体4を形成していると考えられる(図1(a)及び(b))。
【0043】
次に、本例の炭化水素選択酸化触媒をハニカム体に担持し、排ガスに対する浄化性能を評価する。
具体的には、まず、図2(a)及び(b)に示すごとく、コージェライトセラミックスからなる円筒形上のハニカム構造体6を準備した。ハニカム構造体6は、四角形格子状に配された多孔質のセル壁61と、このセル壁61に囲まれた四角形状の多数のセル62とを有する。
【0044】
次に、上記のようにして作製した炭化水素選択酸化触媒(試料E1)を水に分散させて触媒スラリーを作製した。次いで、触媒スラリーにハニカム構造体を浸漬し、引き上げることより、炭化水素選択酸化触媒をハニカム構造体6に付着させた。そして、ハニカム構造体を乾燥させ、加熱した。
このようにして、図2(a)及び(b)に示すごとく、セル壁61等に試料E1の炭化水素選択酸化触媒1が担持されたハニカム構造体6を得た。
【0045】
次に、図3に示すごとく、試料E1を担持したハニカム構造体6を排気管7内に配置し、排気管7内に流量20L/分で排ガスGを流通させた。ハニカム構造体に流入させる排ガスG(G0)中の三元ガス(CO、HC、NO)の濃度は、それぞれCO:4600ppm、HC:1700ppm、NO:2500ppmとした。
【0046】
次いで、ハニカム構造体6に流入させる排ガスGの温度を昇温速度20℃/分で室温から徐々に上昇させた。そして、ハニカム構造体6を通過した後の排ガスG(G1)中に含まれる各三元ガスの浄化率(%)を測定した。
各三元ガスの浄化率は、ハニカム構造体6を通過する前の排ガスG(G0)中における各三元ガスの濃度とハニカム構造体6を通過した後の排ガスG(G1)中における各三元ガスの濃度との差を求めると共に、この差を、ハニカム構造体6を通過する前の排ガスG(G0)中における各三元ガスの濃度で除し、100分率で表すことにより算出することができる。その結果を図4に示す。図4において、横軸は排ガスの温度(℃)を示し、縦軸は浄化率(%)を示す。なお、排ガスG中に含まれる各三元ガスの濃度は、HORIBA製のMEXA1500Dにより測定した。
【0047】
また、本例においては試料E1の比較用として、酸化鉄からなる排ガス浄化触媒を準備した。
かかる排ガス浄化触媒は、酸化鉄と酸化アルミニウムとを重量比が1:3となるような配合割合で水中に混合し、乾燥し温度600℃で加熱して得られたものである。これを試料C1とする。
試料C1についても、試料E1と同様にしてこれをハニカム構造体に担持し、排ガス(三元ガス)に対する浄化性能を評価した。その結果を図5に示す。図5において、横軸は排ガスの温度(℃)を示し、縦軸は浄化率(%)を示す。
【0048】
図4及び図5より知られるごとく、試料E1及び試料C1は、排ガス中のHCを酸化して浄化できることがわかる。試料C1においては、温度450℃を超えたあたりからCOも浄化され、さらに温度550℃を超えたあたりからNOも浄化されており、HCだけでなく、CO及びNOも浄化されている(図5参照)。これに対し、図4に示すごとく、試料E1においては、HCを酸化して浄化する一方、CO及びNOについてはほとんど浄化していない。
このように、本例の炭化水素選択酸化触媒(試料E1)は、炭化水素(HC)を選択的に酸化することができる。
【0049】
(実施例2)
実施例1においては、3d遷移金属がFeで、5価又は6価の遷移金属がWである炭化水素選択酸化触媒を製造したが、本例においては、3d遷移金属がFeで、5価又は6価の遷移金属がMo、Nb、又はTaである3種類の炭化水素選択酸化触媒(試料E2〜E4)をそれぞれ作製する。
本例において、試料E2が5価又は6価の遷移金属としてMoを用いた炭化水素選択酸化触媒であり、試料E3が5価又は6価の遷移金属としてNbを用いた炭化水素選択酸化触媒であり、試料E4が5価又は6価の遷移金属としてTaを用いた炭化水素選択酸化触媒である。
【0050】
各試料E2〜試料E4は、実施例1の塩化タングステンの代わりに、それぞれ塩化モリブデン、塩化ニオブ、塩化タンタルを用いた点を除いては、実施例1の試料E1と同様にして作製した。
XRDによる分析結果から、各炭化水素選択酸化触媒(試料E2〜試料E4)は、酸化鉄と、それぞれ酸化モリブデン、酸化ニオブ、又は酸化タンタルとを含有すると共に、酸化鉄の一部は、その鉄の一部にそれぞれモリブデン、ニオブ、又はタンタルが固溶した固溶体を形成していると考えられる。
【0051】
次に、実施例1の試料E1と同様に、各試料E2〜試料E4の炭化水素選択酸化触媒をハニカム構造体に担持し、排ガス(三元ガス)に対する浄化性能の評価を行った。その結果を図6〜図8に示す。図6が試料E2の結果、図7が試料E3の結果、図8が試料E4の結果である。図6〜図8において、横軸は排ガスの温度(℃)を示し、縦軸は浄化率(%)を示す。
【0052】
図6〜図8より知られるごとく、試料E2〜試料E4の炭化水素選択酸化触媒は、実施例1の試料E1と同様に、HCを酸化して浄化する一方、CO及びNOについてはほとんど浄化していないことがわかる。
したがって、本例によれば、実施例1のWだけでなく、Mo、Nb、及びTa等の5価又は6価の遷移金属を用いても、炭化水素を選択的に酸化して浄化できる炭化水素選択酸化触媒を製造できることがわかる。
【0053】
(実施例3)
実施例1においては、3d遷移金属としてFeを用いて炭化水素選択酸化触媒を製造したが、本例は、3d遷移金属としてCuを用いて炭化水素選択酸化触媒(試料E5)を製造する例である。
【0054】
本例の炭化水素選択酸化触媒は、実施例1の硝酸鉄の代わりに、硝酸銅を用いた点を除いては、実施例1の試料E1と同様にして作製した。これを試料E5とする。
XRDによる分析結果から、本例の炭化水素選択酸化触媒(試料E5)は、酸化銅と、それぞれ酸化タングステンとを含有すると共に、酸化銅の一部は、その銅原子の一部にタングステンが固溶した固溶体を形成していると考えられる。
【0055】
次に、実施例1の試料E1と同様に、試料E5の炭化水素選択酸化触媒をハニカム構造体に担持し、排ガス(三元ガス)に対する浄化性能の評価を行った。その結果を図9に示す。図9において、横軸は排ガスの温度(℃)を示し、縦軸は浄化率(%)を示す。
【0056】
また、本例においては、試料E5の比較用として、酸化銅からなる排ガス浄化触媒を準備した。
かかる排ガス浄化触媒は、酸化銅と酸化アルミニウムとを重量比が1:3となるような配合割合で水中に混合し、乾燥し温度600℃で加熱して得られたものである。これを試料C2とする。
試料C2についても、ハニカム構造体に担持し、排ガス(三元ガス)に対する浄化性能を評価した。その結果を図10に示す。図10において、横軸は排ガスの温度(℃)を示し、縦軸は浄化率(%)を示す。
【0057】
図9及び図10より知られるごとく、試料E5及び試料C2は、排ガス中のHCを酸化して浄化できることがわかる。また、試料C2においては、HCだけでなくCO及びNOも浄化されている(図10参照)。これに対し、図9に示すごとく、試料E5においては、試料C2よりも優れた浄化性能でHCを浄化する一方、試料C2比べてCO及びNOに対する浄化が抑制されている。
したがって、本例によれば、実施例1のFeだけでなく、Cu等の3d遷移金属を用いても、炭化水素を選択的に酸化して浄化できる炭化水素選択酸化触媒を製造できることがわかる。
【0058】
(実施例4)
本例は、5価又は6価の遷移金属(W)の量の異なる複数の炭化水素選択酸化触媒を作製し、そのHCに対する選択的な浄化性能を評価する例である。
具体的には、まず、Feに対するWの量を変えて異なる配合割合で硝酸鉄と塩化タングステンとを水に溶解させた。次いで、実施例1と同様に、水溶液にアルミナ分散液を添加し、乾燥後焼成してW量が異なる複数の炭化水素選択酸化触媒を作製した。
【0059】
次に、実施例1と同様にして、各炭化水素選択酸化触媒をハニカム構造体にそれぞれ担持し、排ガス(三元ガス)に対する浄化性能の評価を行った。そして、本例においては、各炭化水素選択酸化触媒について、HCの変化量(浄化率)が50%になるときの温度T50(℃)を求めた。その結果を図11に示す。同図において、横軸はFeに対するWの添加量(atm%)を示し、縦軸はHCのT50(℃)を示す。
【0060】
また、本例においては、各炭化水素選択酸化触媒について、HCに対する浄化の選択性を評価した。
選択性(%)は、次のようにして算出した。
具体的には、まず、実施例1の浄化性能の評価と同様に、本例の各炭化水素選択酸化触媒をそれぞれ担持した各ハニカム構造体をそれぞれ排気管内に配置し、排気管内に流量20L/分で排ガスを流通させた。排ガス中の三元ガス(CO、HC、NO)の濃度は、CO:4600ppm、HC:1700ppm、NO:2500ppmとした。次いで、ハニカム構造体に流入させる排ガスの温度を600℃まで上昇させた。そして、温度600℃の条件下において、ハニカム構造体に担持された各炭化水素選択酸化触媒による酸化によって浄化されたCO及びHCの浄化濃度を求めた。
CO及びHCの各浄化濃度は、ハニカム構造体を通過する前の排ガス中のCO及びHCの濃度とハニカム構造体を通過した後の排ガス中のCO及びHCの濃度との差から求めることができる。
そして、COの浄化濃度をCCO(ppm)、HCの浄化濃度をCHC(ppm)とすると、選択性S(%)は、S=CHC/(CCO+CHC)×100という式から算出することができる。
その結果を図12に示す。同図において、横軸は各炭化水素選択酸化触媒におけるFeに対するWの添加量(atm%)を示し、縦軸はHCの選択性(%)を示す。
【0061】
図11より知られるごとく、3d遷移金属であるFeに対する5価又は6価の遷移金属であるWの添加量が増大すると、HCを酸化して浄化するために必要な温度が高くなる傾向にあり、HCに対する酸化性能が低下することがわかる。図11より、W等の5価又は6価の遷移金属の添加量は、Feなどの3d遷移金属に対して75atm%以下が好ましいことがわかる。より好ましくは50atm%以下がよい。
【0062】
また、図12より知られるごとく、3d遷移金属であるFeに対する5価又は6価の遷移金属であるWの添加量が少なくなると、HCに対する選択的な浄化性能(選択性)が低下する傾向にあることがわかる。図11より、W等の5価又は6価の遷移金属の添加量は、Feなどの3d遷移金属に対して1.25atm%以上が好ましいことがわかる。より好ましくは2.5atm%以上がよい。
【0063】
このように、本例によれば、炭化水素選択酸化触媒においては、5価又は6価の遷移金属の添加量を3d遷移金属に対して1.25atm%〜75atm%にすることにより、3d遷移金属が本来有するHCに対する酸化性能を損ねることなく、HCに対する選択的な酸化性能を向上できることがわかる。
【0064】
(実施例5)
本例においては、実施例1とは異なる製造方法により、複数の炭化水素選択酸化触媒(試料E6〜E8)を製造し、その性能を評価する例である。
まず、3d遷移金属を含有する酸化物と、5価又は6価の遷移金属の塩とを水に混合する液相混合工程(液相混合工程A)及び乾燥焼成工程(乾燥焼成工程A)を行って、炭化水素選択酸化触媒(試料E6)を製造する例について説明する。
上記液相混合工程Aにおいては、3d遷移金属(Fe)を含有する酸化物と、5価又は6価の遷移金属(W)の塩とを水に混合することにより、3d遷移金属を含有する酸化物が水に分散し、5価又は6価の遷移金属の塩が水に溶解する混合液Aを得る。
また、上記乾燥焼成工程Aにおいては、混合液Aを乾燥させ、焼成する。
【0065】
以下、具体的に説明する。
まず、酸化アルミニウムを水に分散させた酸化アルミニウム分散液に、硝酸鉄を溶解させた。硝酸鉄は、Fe2O3量に換算したときの重量比がAl2O3:Fe2O3=60:20となるように溶解した。次いで、混合液を乾燥し、温度600℃で焼成することにより、酸化鉄と酸化アルミニウムとの複合体粉末(Fe2O3/Al2O3粉末)を得た。
【0066】
次に、Fe2O3/Al2O3粉末を水に分散させ、Feに対するW量が1.25atm%となる配合割合で、分散液にタングステン酸アンモニウムパラ5水和物を溶解させた。得られた混合液を温度120℃で乾燥させ、水分を除去して固形物を得た。この固形物を温度600℃で焼成し、炭化水素選択酸化触媒の粉末を得た。これを試料E6とする。
【0067】
また、本例においては、3d遷移金属を含有する酸化物と、5価又は6価の遷移金属を含有する酸化物とを混合する混合工程、及び焼成工程を行って、炭化水素選択酸化触媒(試料E7)を製造する。
混合工程においては、3d遷移金属(Fe)を含有する酸化物と、5価又は6価の遷移金属(W)を含有する酸化物とを混合して混合物を得る。
また、焼成工程においては、混合物を焼成する。
【0068】
以下、具体的に説明する。
まず、酸化アルミニウムを水に分散させた酸化アルミニウム分散液に、硝酸鉄を溶解させた。硝酸鉄は、Fe2O3量に換算したときの重量比がAl2O3:Fe2O3=30:20となるように溶解した。次いで、得られた混合液を乾燥し、温度300℃で焼成することにより、酸化鉄と酸化アルミニウムとの複合体粉末(Fe2O3/Al2O3粉末)を得た。
また、酸化アルミニウムを水に分散させた酸化アルミニウム分散液に、タングステン酸アンモニウムパラ5水和物を溶解させた。タングステン酸アンモニウムは、WO3量に換算したときの重量比がAl2O3:WO3=30:47となるように溶解した。次いで、得られた混合液を乾燥し、温度300℃で焼成することにより、酸化タングステンと酸化アルミニウムとの複合体粉末(WO3/Al2O3粉末)を得た。
【0069】
次に、Feに対するWの配合割合が75atm%となる配合割合で、Fe2O3/Al2O3粉末とWO3/Al2O3粉末とを混合し混合物を得た。この混合物を温度600℃で焼成し、炭化水素選択酸化触媒の粉末を得た。これを試料E7とする。
【0070】
また、本例においては、3d遷移金属の塩と、5価又は6価の遷移金属を含有する酸化物とを水に混合する液相混合工程(液相混合工程B)及び乾燥焼成工程(乾燥焼成工程B)を行って、炭化水素選択酸化触媒(試料E8)を製造する。
液相混合工程Bにおいては、3d遷移金属(Fe)塩と、5価又は6価の遷移金属(W)を含有する酸化物とを水に混合することにより、3d遷移金属の塩が水に溶解し、5価又は6価の遷移金属を含有する酸化物が水に分散する混合液Bを得る。
また、乾燥焼成工程Bにおいては、混合液Bを乾燥させ、焼成する。
【0071】
以下、具体的に説明する。
まず、酸化アルミニウムを水に分散させた酸化アルミニウム分散液に、タングステン酸アンモニウムパラ5水和物を溶解させた。タングステン酸アンモニウムは、WO3量に換算したときの重量比がAl2O3:WO3=60:47となるように溶解した。次いで、得られた混合液を乾燥し、温度600℃で焼成することにより、酸化タングステンと酸化アルミニウムとの複合体粉末(WO3/Al2O3粉末)を得た。
【0072】
次に、WO3/Al2O3粉末を水に分散させ、Feに対するW量が75atm%となる配合割合で、分散液に硝酸鉄を溶解させた。得られた混合液を温度120℃で乾燥させ、水分を除去して固形物を得た。この固形物を温度600℃で焼成し、炭化水素選択酸化触媒の粉末を得た。これを試料E8とする。
【0073】
また、本例においては、上記試料E6〜E8と比較するために、実施例1と同様に溶解工程及び水溶液乾燥焼成工程を行って2種類の炭化水素選択酸化触媒(試料E9及び試料E10)を作製した。
具体的には、試料E9は、Feに対するWの量が1.25atm%となる配合割合で硝酸鉄とタングステン酸アンモニウムパラ5水和物とを水に溶解させた点を除いては、実施例1の試料E1と同様にして作製した。
また、試料E10は、Feに対するWの量が75atm%となる配合割合で硝酸鉄とタングステン酸アンモニウムパラ5水和物とを水に溶解させた点を除いては、実施例1の試料E1と同様にして作製した。
なお、試料E9及び試料E10の作製にあたっては、焼成時の焼成時間を2時間とした。
【0074】
以上のようにして作製した試料E6〜試料E10について、Feに対するW量(atm%)を後述の表1に示す。なお、W量は、例えば透過型電子顕微鏡(日本電子(株)製の「JEM−2010FD」)にて炭化水素選択酸化触媒の粒子を元素定量分析することにより算出することができる。
【0075】
次に、実施例1と同様にして、上記試料E6〜試料E10の炭化水素選択酸化触媒をハニカム構造体にそれぞれ担持し、排ガス(三元ガス)に対する浄化性能の評価を行った。そして、各試料について、HCの変化量(浄化率)が50%になるときの温度T50(℃)を求めた。その結果を表1に示す。
また、実施例4と同様にして、各試料について、HCに対する浄化の選択性(%)を測定した。その結果を表1に示す。
【0076】
【表1】
【0077】
表1より知られるごとく、酸化鉄とタングステン酸アンモニウムとを水に混合する液相混合工程Aを行って作製した炭化水素選択酸化触媒(試料E6)は、T50が十分に低く、実用上十分に優れた浄化性能を発揮できると共に、Feに対するW量が同じである試料E9と比較して炭化水素に対する選択性がさらに向上していた。
一方、酸化鉄と酸化タングステンとを混合する混合工程を行って作製した炭化水素選択酸化触媒(試料E7)及び酸化タングステンと硝酸鉄とを水に混合する液相混合工程Bを行って作製した炭化水素選択酸化触媒(試料E8)は、実用上十分に優れた炭化水素に対する選択性を発揮できると共に、Feに対するW量が同じである試料E10と比較してT50がより低下しており、浄化性能がさらに向上していた。
【0078】
したがって、本例によれば、上記試料E6のように、原料の混合時に、3d遷移金属を含有する酸化物と、5価又は6価の遷移金属の塩とを水に混合する液相混合工程Aを行うことにより、炭化水素に対する選択性が特に優れた炭化水素選択酸化触媒を得ることができることがわかる。
また、上記試料E7のように、原料の混合時に、3d遷移金属を含有する酸化物と5価又は6価の遷移金属を含有する酸化物とを混合することにより、浄化性能が特に優れた炭化水素選択酸化触媒を得ることができることがわかる。
また、上記試料E8のように、原料の混合時に、3d遷移金属の塩と、5価又は6価の遷移金属を含有する酸化物とを水に混合する液相混合工程Bを行っても、浄化性能が特に優れた炭化水素選択酸化触媒を得ることができることがわかる。
【符号の説明】
【0079】
1 炭化水素選択酸化触媒
2 3d遷移金属の酸化物
3 5価又は6価の遷移金属の酸化物
4 固溶体
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素(HC)を選択的に酸化することができる炭化水素選択酸化触媒及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車等の内燃機関から排出される排ガス中に含まれる炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)等を浄化するために排ガス浄化触媒が用いられている。排ガス浄化触媒としては、例えば貴金属である白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)等の三元触媒が広く知られている。
【0003】
ところが、貴金属は、コストが高く、また、資源枯渇の観点から安定供給にも懸念がある。
そこで、近年、非貴金属酸化物を用いた排ガス浄化触媒が開発されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−104973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、非貴金属酸化物を用いた排ガス浄化触媒においては、安価ではあるものの、酸化雰囲気(高酸素濃度雰囲気)ではCOとNOとの反応が起こり難くなるという問題がある。また、NOxの浄化には、COの存在が必要であるが、白金、パラジウム、非貴金属酸化物等からなる従来の排ガス浄化触媒は、比較的低温でHCだけでなくCOも酸化してしまう。そのため、従来の排ガス浄化触媒においては、NOxの浄化温度に到達する際には、NOxを浄化するために必要なCOが不足してしまう。それ故、従来の排ガス浄化触媒においては、NOxの浄化が不十分となってしまうという問題がある。したがって、従来の三元触媒、酸化触媒等を単独で又は組み合わせて用いても、排ガス中のHC、CO、及びNOxを効率よく浄化することは困難である。
【0006】
そこで、HC、CO、NOx等を含む排ガスにおいては、CO及びNOxの浄化の前段階にとしてHCを選択的に浄化することができれば上述のような問題が解消されると考えられる。しかし、排ガス中からHCを選択的に浄化できる触媒はほとんど開発されていないのが現状である。
【0007】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたもので、炭化水素(HC)を選択的に酸化することができる炭化水素選択酸化触媒及びその製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、炭化水素を選択的に酸化する炭化水素選択酸化触媒であって、
3d遷移金属の酸化物と5価又は6価の遷移金属の酸化物、及び/又は3d遷移金属と5価又は6価の遷移金属との酸化物固溶体を含有することを特徴とする炭化水素選択酸化触媒にある(請求項1)。
【0009】
第2の発明は、炭化水素を選択的に酸化する炭化水素選択酸化触媒の製造方法であって、
3d遷移金属の塩と、5価又は6価の遷移金属の塩とを水に溶解させて遷移金属水溶液を得る溶解工程と、
上記遷移金属水溶液を乾燥させ、焼成する水溶液乾燥焼成工程とを行うことを特徴とする炭化水素選択酸化触媒の製造方法にある(請求項6)。
【0010】
第3の発明は、炭化水素を選択的に酸化する炭化水素選択酸化触媒の製造方法であって、
3d遷移金属を含有する酸化物と、5価又は6価の遷移金属の塩とを水に混合することにより、3d遷移金属を含有する酸化物が水に分散し、5価又は6価の遷移金属の塩が水に溶解する混合液Aを得る液相混合工程Aと、
上記混合液Aを乾燥させ、焼成する乾燥焼成工程Aとを行うことを特徴とする炭化水素選択酸化触媒の製造方法にある(請求項9)。
【0011】
第4の発明は、炭化水素を選択的に酸化する炭化水素選択酸化触媒の製造方法であって、
3d遷移金属を含有する酸化物と、5価又は6価の遷移金属を含有する酸化物とを混合して混合物を得る混合工程と、
上記混合物を焼成する焼成工程とを行うことを特徴とする炭化水素選択酸化触媒の製造方法にある(請求項12)。
【0012】
第5の発明は、炭化水素を選択的に酸化する炭化水素選択酸化触媒の製造方法であって、
3d遷移金属の塩と、5価又は6価の遷移金属を含有する酸化物とを水に混合することにより、3d遷移金属の塩が水に溶解し、5価又は6価の遷移金属を含有する酸化物が水に分散する混合液Bを得る液相混合工程Bと、
上記混合液Bを乾燥させ、焼成する乾燥焼成工程Bとを行うことを特徴とする炭化水素選択酸化触媒の製造方法にある(請求項15)。
【発明の効果】
【0013】
上記炭化水素選択酸化触媒は、3d遷移金属の酸化物と5価又は6価の遷移金属の酸化物、及び/又は、例えば3d遷移金属の酸化物の3d遷移金属の一部に5価又は6価の遷移金属が置換固溶してなる固溶体のような3d遷移金属と5価又は6価の遷移金属との酸化物固溶体を含有する。即ち、炭化水素選択酸化触媒は、酸化鉄、酸化銅等の遷移金属酸化物(3d遷移金属酸化物)と、酸化ニオブ、酸化タングステン、酸化モリブデン、酸化タンタル等の遷移金属酸化物(5価又は6価の遷移金属酸化物)とを少なくとも含有するか、又は、酸化鉄、酸化銅等の遷移金属酸化物(3d遷移金属酸化物)における遷移金属の一部にニオブ、タングステン、モリブデン、タンタル等の5価又は6価の遷移金属が置換固溶した固溶体のような3d遷移金属と5価又は6価の遷移金属との酸化物固溶体を少なくとも含有する。
そのため、上記炭化水素選択酸化触媒は、炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、及び窒素酸化物(NOx)を少なくとも含む例えば自動車の排気ガスなどの混合ガスにおいて、一酸化炭素及び窒素酸化物をほとんど酸化することなく、炭化水素を選択的に酸化することができる。
【0014】
また、第2の発明は、溶解工程と水溶液乾燥焼成工程とを行うことにより、炭化水素を選択的に酸化する炭化水素選択酸化触媒を製造する方法にある。
溶解工程においては、3d遷移金属の塩と、5価又は6価の遷移金属の塩とを水に溶解させて遷移金属水溶液を得る。これにより、3d遷移金属(イオン)と5価又は6価の遷移金属(イオン)が均一に混じりあって水に溶解した遷移金属水溶液を得ることができる。
【0015】
また、水溶液乾燥焼成工程においては、上記遷移金属水溶液を乾燥させ、焼成する。これにより、上記遷移金属水溶液中の3d遷移金属及び5価又は6価の遷移金属を酸化させ、3d遷移金属の酸化物と5価又は6価の遷移金属の酸化物とを含有する炭化水素選択酸化触媒、及び/又は3d遷移金属と5価又は6価の遷移金属との酸化物固溶体を含有する炭化水素選択酸化触媒を得ることができる。このようにして得られる炭化水素選択酸化触媒は、炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、及び窒素酸化物(NOx)を少なくとも含む例えば自動車の排気ガスなどの混合ガスにおいて、一酸化炭素及び窒素酸化物をほとんど酸化することなく、炭化水素を選択的に酸化することができる。
【0016】
また、第3の発明においては、液相混合工程Aと乾燥焼成工程Aとを行うことにより、炭化水素選択酸化触媒を製造する。
上記液相混合工程Aにおいては、3d遷移金属を含有する酸化物と、5価又は6価の遷移金属の塩とを水に混合する。これにより、3d遷移金属を含有する酸化物が水に分散し、5価又は6価の遷移金属の塩が水に溶解する混合液Aを得ることができる。
【0017】
また、上記乾燥焼成工程Aにおいては、上記混合液Aを乾燥させ、焼成する。乾燥により、3d遷移金属を含有する酸化物に5価又は6価の遷移金属を付着させ、焼成により5価又は6価の遷移金属を酸化させることができる。その結果、3d遷移金属の酸化物と5価又は6価の遷移金属の酸化物とを含有する炭化水素選択酸化触媒、及び/又は3d遷移金属と5価又は6価の遷移金属との酸化物固溶体を含有する炭化水素選択酸化触媒を得ることができる。このようにして得られる炭化水素選択酸化触媒は、炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、及び窒素酸化物(NOx)を少なくとも含む例えば自動車の排気ガスなどの混合ガスにおいて、一酸化炭素及び窒素酸化物をほとんど酸化することなく、炭化水素を選択的に酸化することができる。上記第3の発明の製造方法においては、特に炭化水素に対する選択性に優れた炭化水素選択酸化触媒を得ることができる。
【0018】
また、第4の発明においては、混合工程と焼成工程とを行うことにより、炭化水素選択酸化触媒を製造する。
上記混合工程においては、3d遷移金属を含有する酸化物と、5価又は6価の遷移金属を含有する酸化物とを混合して混合物を得る。
また、上記焼成工程においては、上記混合物を焼成する。これにより、3d遷移金属の酸化物と5価又は6価の遷移金属の酸化物とを含有する炭化水素選択酸化触媒、及び/又は3d遷移金属と5価又は6価の遷移金属との酸化物固溶体を含有する炭化水素選択酸化触媒を得ることができる。このようにして得られる炭化水素選択酸化触媒は、炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、及び窒素酸化物(NOx)を少なくとも含む例えば自動車の排気ガスなどの混合ガスにおいて、一酸化炭素及び窒素酸化物をほとんど酸化することなく、炭化水素を選択的に酸化することができる。上記第4の発明の製造方法においては、特に浄化性能に優れた炭化水素選択酸化触媒を得ることができる。
【0019】
また、第5の発明においては、液相混合工程Bと乾燥焼成工程Bとを行うことにより、炭化水素選択酸化触媒を製造する。
上記液相混合工程Bにおいては、3d遷移金属の塩と、5価又は6価の遷移金属を含有する酸化物とを水に混合する。これにより、3d遷移金属の塩が水に溶解し、5価又は6価の遷移金属を含有する酸化物が水に分散する混合液Bを得ることができる。
また、上記乾燥焼成工程Bにおいては、上記混合液Bを乾燥させ、焼成する。乾燥により、5価又は6価の遷移金属を含有する酸化物に3d遷移金属を付着させ、焼成により3d遷移金属を酸化させることができる。その結果、3d遷移金属の酸化物と5価又は6価の遷移金属の酸化物とを含有する炭化水素選択酸化触媒、及び/又は3d遷移金属と5価又は6価の遷移金属との酸化物固溶体を含有する炭化水素選択酸化触媒を得ることができる。このようにして得られる炭化水素選択酸化触媒は、炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、及び窒素酸化物(NOx)を少なくとも含む例えば自動車の排気ガスなどの混合ガスにおいて、一酸化炭素及び窒素酸化物をほとんど酸化することなく、炭化水素を選択的に酸化することができる。上記第5の発明の製造方法においては、特に浄化性能に優れた炭化水素選択酸化触媒を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施例1にかかる、炭化水素選択酸化触媒における各酸化物粒子の分散状態を示す説明図であって、アルミナ粒子と2種類の酸化物の粒子とからなる様子を示す説明図(a)、アルミナ粒子と固溶体の粒子からなる様子を示す説明図(b)。
【図2】実施例1にかかる、炭化水素選択酸化触媒を担持したハニカム構造体の全体を示す説明図(a)、炭化水素選択酸化触媒を担持したハニカム構造体の径方向の断面を拡大して示す説明図(b)。
【図3】実施例1にかかる、炭化水素選択酸化触媒を担持したハニカム構造体を排気管内に配置した様子を示す説明図。
【図4】実施例1にかかる、炭化水素選択酸化触媒(試料E1)の温度と、三元ガスの浄化率との関係を示す説明図。
【図5】実施例1にかかる、従来の酸化鉄からなる排ガス浄化触媒(試料C1)の温度と、三元ガスの浄化率との関係を示す説明図。
【図6】実施例2にかかる、炭化水素選択酸化触媒(試料E2)の温度と、三元ガスの浄化率との関係を示す説明図。
【図7】実施例2にかかる、炭化水素選択酸化触媒(試料E3)の温度と、三元ガスの浄化率との関係を示す説明図。
【図8】実施例2にかかる、炭化水素選択酸化触媒(試料E4)の温度と、三元ガスの浄化率との関係を示す説明図。
【図9】実施例3にかかる、炭化水素選択酸化触媒(試料E5)の温度と、三元ガスの浄化率との関係を示す説明図。
【図10】実施例3にかかる、従来の酸化銅からなる排ガス浄化触媒(試料C2)の温度と、三元ガスの浄化率との関係を示す説明図。
【図11】実施例4にかかる、炭化水素選択酸化触媒における5価又は6価の遷移金属(W)の量と、炭化水素(HC)の浄化率が50%となるときの温度T50との関係を示す説明図。
【図12】実施例4にかかる、炭化水素選択酸化触媒における5価又は6価の遷移金属(W)の量と、炭化水素(HC)に対する酸化の選択性との関係を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の好ましい実施形態について説明する。
本発明において、炭化水素選択酸化触媒は、炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、及び窒素酸化物(NOx)を少なくとも含む混合ガス(例えば自動車の排気ガス)において、一酸化炭素及び窒素酸化物をほとんど酸化することなく、炭化水素を優先して選択的に酸化させることができる。
したがって、炭化水素選択酸化触媒は、排ガス浄化装置、炭化水素濃度センサ等に用いることができる。
【0022】
排ガス浄化装置の用途としては、上記炭化水素選択酸化触媒を例えばハニカムに担持させて排ガス流路に配置することにより、排ガス中から炭化水素を選択的に酸化して浄化させることができる。この場合には、一酸化炭素(CO)及び窒素酸化物(NOx)を含むが、HCをほとんど含有しない排ガスを生成することができる。そのためこの場合には、排ガス流路において、上記炭化水素選択酸化触媒を担持したハニカムの下流側に、Pt、Pd等の貴金属や、Fe、Cr、Cu等の遷移金属又はその酸化物を担持したハニカムを配置することにより、下流側のハニカムにおいてCOとNOxとを反応させ、これらを十分に浄化させることが可能になる。
また、炭化水素濃度センサにおいては、上記炭化水素選択酸化触媒によって、例えば排ガス中に含まれるHCを選択的に酸化し、このときの酸素濃度の変化を測定することにより、排ガス中のHC濃度を選択的に測定することが可能になる。
【0023】
上記炭化水素選択酸化触媒は、3d遷移金属の酸化物と5価又は6価の遷移金属の酸化物を少なくとも含有するか、又は3d遷移金属と5価又は6価の遷移金属との酸化物固溶体を少なくとも含有する。
上記炭化水素選択酸化触媒においては、3d遷移金属の酸化物と5価又は6価の遷移金属の酸化物、及び上記酸化物固溶体が共存していてもよい。
【0024】
上記炭化水素選択酸化触媒においては、3d遷移金属の酸化物と5価又は6価の遷移金属の酸化物のうち、主成分を3d遷移金属の酸化物にすることができる。また、上記固溶体においては、3d遷移金属と5価又は6価の遷移金属のうち、主成分を3d遷移金属にすることができる。
【0025】
上記炭化水素選択酸化触媒においては、3d遷移金属の酸化物と5価又は6価の遷移金属の酸化物のうち、主成分を5価又は6価の遷移金属の酸化物にすることもできる。また、上記固溶体においては、3d遷移金属と5価又は6価の遷移金属のうち、主成分を5価又は6価の遷移金属にすることができる。この場合には、上記炭化水素選択酸化触媒の炭化水素に対する選択性を向上させることができる。
【0026】
また、上記炭化水素選択酸化触媒は、上記5価又は6価の遷移金属を、上記3d遷移金属に対して1.25atm%〜75atm%含有することが好ましい(請求項2)。
5価又は6価の遷移金属が上記3d遷移金属に対して1.25atm%未満の場合には、炭化水素に対する選択的な酸化特性が低下するおそれがある。より好ましくは2.5atm%以上がよい。一方、75atm%を超える場合には、炭化水素に対する酸化特性自体が低下し、より高温での酸化が必要になるおそれがある。より好ましくは50atm%以下がよい。
【0027】
また、上記炭化水素選択酸化触媒において、上記3d遷移金属としては、例えばFe、Cu、Co、Mn、Ni、及びTi等から選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
好ましくは、上記3d遷移金属は、Fe及び/又はCuであることがよい(請求項3)。
この場合には、炭化水素に対する選択的な酸化特性をより向上させることができる。より好ましくは、3d遷移金属は、Feであることがよい。
【0028】
また、好ましくは、上記5価又は6価の遷移金属は、W、Mo、Nb、及びTaから選ばれる少なくとも1種であることがよい(請求項4)。
この場合には、炭化水素に対する選択的な酸化特性をより向上させることができる。
【0029】
また、上記炭化水素選択酸化触媒は、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、及び二酸化珪素から選ばれる少なくとも1種をさらに含有することが好ましい(請求項5)。
この場合には、上記炭化水素選択酸化触媒を、例えばコージェライト等からなるハニカム体に担持させ易くなる。そのため、上記炭化水素選択酸化触媒を排ガス浄化装置に適用し易くなる。
【0030】
上記炭化水素選択酸化触媒は、溶解工程と水溶液乾燥焼成工程とを行うことにより製造することができる。
上記溶解工程においては、3d遷移金属の塩と、5価又は6価の遷移金属の塩とを水に溶解させて遷移金属水溶液を得る。
3d遷移金属の塩及び5価又は6価の遷移金属の塩としては、水溶液中で3d遷移金属のイオン、5価又は6価の遷移金属のイオンを生成するものを採用することができる。また、後工程の水溶液乾燥焼成工程において、3d遷移金属、及び5価又は6価の遷移金属以外の成分(塩の陰イオン)は焼失するものであることが好ましい。
具体的には、3d遷移金属の塩、5価又は6価の遷移金属の塩としては、それぞれ、塩化物塩、硝酸塩、水酸化物、及びアンモニウム塩等を用いることができる。
【0031】
また、上記溶解工程においては、上記3d遷移金属に対する上記5価又は6価の遷移金属の量が1.25atm%〜75atm%となるように上記3d遷移金属の塩と上記5価又は6価の遷移金属の塩とを水に溶解させることが好ましい(請求項7)。
この場合には、炭化水素に対する選択的な酸化特性により優れると共に、より低温で炭化水素の酸化が可能な炭化水素選択酸化触媒を製造することができる。より好ましくは、2.5atm%以上、50atm%以下がよい。
【0032】
また、上記溶解工程においては、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、二酸化珪素から選ばれる少なくとも1種を水に添加することが好ましい(請求項8)。
この場合には、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、二酸化珪素から選ばれる少なくとも1種をさらに含有する炭化水素選択酸化触媒を製造することができる。かかる炭化水素選択酸化触媒は、例えばコージェライト等からなるハニカム体に担持させ易くなる。そのため、上記炭化水素選択酸化触媒は、排ガス浄化装置に適用し易くなる。
【0033】
次に、水溶液乾燥焼成工程においては、上記遷移金属水溶液を乾燥させ、焼成する。
上記遷移金属水溶液の乾燥は、例えば温度80〜180℃で行うことができる。この乾燥により、水分を蒸発させることができる。上記水溶液乾燥焼成工程においては、乾燥後に得られる固形物を焼成する。焼成温度は、例えば温度300〜1050℃にすることができる。この焼成により、上記炭化水素選択酸化触媒を得ることができる。
【0034】
また、上記炭化水素選択酸化触媒は、上記溶解工程と上記水溶液乾燥焼成工程を行う方法の他に、次のようにして作製することもできる。
即ち、3d遷移金属を含有する酸化物と、5価又は6価の遷移金属を含有する酸化物とを混合して混合物を得る混合工程と、上記混合物を焼成する焼成工程とを行うことによって、上記炭化水素選択酸化触媒を得ることができる。上記混合工程は、固相で行うこともできるが例えば水等の溶媒(液相)中で行うこともできる。この場合には、上記焼成工程の前に溶媒を蒸発させる乾燥工程を行うことにより、乾燥後の固形分として上記混合物を得ることができる。
【0035】
また、上記炭化水素選択酸化触媒は、次のようにして作製することもできる。
即ち、3d遷移金属を含有する酸化物と5価又は6価の遷移金属の塩、又は3d遷移金属の塩と5価又は6価の遷移金属を含有する酸化物を水中で混合し、酸化物と塩との混合液を得る液相混合工程と、上記混合液を乾燥させ、焼成する乾燥焼成工程とを行うことによって、上記炭化水素選択酸化触媒を得ることができる。上記液相混合工程後に上記混合液を乾燥させると、3d遷移金属を含有する酸化物の表面に5価又は6価の遷移金属の塩が析出した複合体、又は5価又は6価の遷移金属を含有する酸化物の表面に3d遷移金属の塩が析出した複合体を得ることができる。この複合体を焼成することにより、上記炭化水素選択酸化触媒を得ることができる。
【0036】
上記混合工程及び上記液相混合工程においては、上記溶解工程と同様に、上記3d遷移金属に対する上記5価又は6価の遷移金属の量が1.25atm%〜75atm%となるように、混合を行うことが好ましい(請求項10、請求項13、及び請求項16)。より好ましくは、2.5atm%以上、50atm%以下がよい。
【0037】
また、上記混合工程及び上記液相混合工程においては、上記溶解工程と同様に、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、及び二酸化珪素から選ばれる少なくとも1種をさらに添加することが好ましい(請求項11、請求項14、及び請求項17)。
上記混合工程及び上記液相混合工程においてさらに添加する上述の酸化アルミニウム、酸化チタン等は、上記3d遷移金属を含有する酸化物、及び5価又は6価の遷移金属を含有する酸化物等とは別の粉末材料として添加することもできるが、上記3d遷移金属を含有する酸化物との複合体、及び5価又は6価の遷移金属を含有する酸化物等との複合体として添加することが好ましい。具体的には、例えば酸化アルミニウムを添加する場合には、3d遷移金属を含有する酸化物と酸化アルミニウムとの複合体、5価又は6価の遷移金属を含有する酸化物と酸化アルミニウムの複合体を用いることができる。
この場合には、焼成時に、3d遷移金属を含有する酸化物の粒子同士、又は5価又は6価の遷移金属を含有する酸化物の粒子同士が凝集することを抑制することができる。その結果、上記炭化水素選択酸化触媒の浄化性能の低下を抑制することができる。
【0038】
また、上記炭化水素選択酸化触媒を製造するにあたって、上記3d遷移金属としては、上述のごとく例えばFe、Cu、Co、Mn、Ni、及びTi等から選ばれる少なくとも1種を用いることができる。また、上記3d遷移金属は、Fe及び/又はCuであることがよく(請求項18)、上記5価又は6価の遷移金属は、W、Mo、Nb、及びTaから選ばれる少なくとも1種であることがよい(請求項19)。
これらの場合には、炭化水素に対する選択的な酸化特性をより向上させることができる。
【実施例】
【0039】
(実施例1)
次に、炭化水素選択酸化触媒の実施例につき、図1〜図5を用いて説明する。
本例においては、炭化水素を選択的に酸化する炭化水素選択酸化触媒を製造する。
図1(a)及び(b)に示すごとく、本例の炭化水素選択酸化触媒1は、3d遷移金属の酸化物2と5価又は6価の遷移金属の酸化物3、及び/又は3d遷移金属と5価又は6価の遷移金属との酸化物固溶体4を含有する。本例においては、3d遷移金属がFe、5価又は6価の遷移金属がWである炭化水素選択酸化触媒1を製造する。
また、本例の炭化水素選択酸化触媒1は、酸化アルミニウム5をさらに含有する。
【0040】
本例の炭化水素選択酸化触媒の製造にあたっては、溶解工程と水溶液乾燥焼成工程とを行う。
本例の溶解工程においては、3d遷移金属の塩と、5価又は6価の遷移金属の塩とを水に溶解させて遷移金属水溶液を得る。
また、水溶液乾燥焼成工程においては、遷移金属水溶液を乾燥させ、焼成する。
【0041】
以下、本例の炭化水素選択酸化触媒の製造方法につき、詳細に説明する。
まず、Feに対するWの量が50atm%となる配合割合で、硝酸鉄とタングステン酸アンモニウムパラ5水和物とを水に溶解させた。得られた水溶液に、水に酸化アルミニウムを分散させたアルミナ分散液を添加した。ここで添加する酸化アルミニウム量は、焼成後に得られる酸化鉄と酸化アルミニウムとの重量比が1:3となるような配合割合に調整した。
【0042】
次いで、水溶液を温度120℃で乾燥させ、水分を除去して固形物を得た。この固形物を温度600℃で焼成し、炭化水素選択酸化触媒の粉末を得た。これを試料E1とする。
X線回折(XRD)による分析結果から、本例の炭化水素選択酸化触媒1(試料E1)は、酸化鉄(3d遷移金属の酸化物2)と酸化タングステン(5価又は6価の遷移金属の酸化物3)とを含有すると共に、酸化鉄の一部は、その鉄の一部にタングステンが固溶した固溶体4を形成していると考えられる(図1(a)及び(b))。
【0043】
次に、本例の炭化水素選択酸化触媒をハニカム体に担持し、排ガスに対する浄化性能を評価する。
具体的には、まず、図2(a)及び(b)に示すごとく、コージェライトセラミックスからなる円筒形上のハニカム構造体6を準備した。ハニカム構造体6は、四角形格子状に配された多孔質のセル壁61と、このセル壁61に囲まれた四角形状の多数のセル62とを有する。
【0044】
次に、上記のようにして作製した炭化水素選択酸化触媒(試料E1)を水に分散させて触媒スラリーを作製した。次いで、触媒スラリーにハニカム構造体を浸漬し、引き上げることより、炭化水素選択酸化触媒をハニカム構造体6に付着させた。そして、ハニカム構造体を乾燥させ、加熱した。
このようにして、図2(a)及び(b)に示すごとく、セル壁61等に試料E1の炭化水素選択酸化触媒1が担持されたハニカム構造体6を得た。
【0045】
次に、図3に示すごとく、試料E1を担持したハニカム構造体6を排気管7内に配置し、排気管7内に流量20L/分で排ガスGを流通させた。ハニカム構造体に流入させる排ガスG(G0)中の三元ガス(CO、HC、NO)の濃度は、それぞれCO:4600ppm、HC:1700ppm、NO:2500ppmとした。
【0046】
次いで、ハニカム構造体6に流入させる排ガスGの温度を昇温速度20℃/分で室温から徐々に上昇させた。そして、ハニカム構造体6を通過した後の排ガスG(G1)中に含まれる各三元ガスの浄化率(%)を測定した。
各三元ガスの浄化率は、ハニカム構造体6を通過する前の排ガスG(G0)中における各三元ガスの濃度とハニカム構造体6を通過した後の排ガスG(G1)中における各三元ガスの濃度との差を求めると共に、この差を、ハニカム構造体6を通過する前の排ガスG(G0)中における各三元ガスの濃度で除し、100分率で表すことにより算出することができる。その結果を図4に示す。図4において、横軸は排ガスの温度(℃)を示し、縦軸は浄化率(%)を示す。なお、排ガスG中に含まれる各三元ガスの濃度は、HORIBA製のMEXA1500Dにより測定した。
【0047】
また、本例においては試料E1の比較用として、酸化鉄からなる排ガス浄化触媒を準備した。
かかる排ガス浄化触媒は、酸化鉄と酸化アルミニウムとを重量比が1:3となるような配合割合で水中に混合し、乾燥し温度600℃で加熱して得られたものである。これを試料C1とする。
試料C1についても、試料E1と同様にしてこれをハニカム構造体に担持し、排ガス(三元ガス)に対する浄化性能を評価した。その結果を図5に示す。図5において、横軸は排ガスの温度(℃)を示し、縦軸は浄化率(%)を示す。
【0048】
図4及び図5より知られるごとく、試料E1及び試料C1は、排ガス中のHCを酸化して浄化できることがわかる。試料C1においては、温度450℃を超えたあたりからCOも浄化され、さらに温度550℃を超えたあたりからNOも浄化されており、HCだけでなく、CO及びNOも浄化されている(図5参照)。これに対し、図4に示すごとく、試料E1においては、HCを酸化して浄化する一方、CO及びNOについてはほとんど浄化していない。
このように、本例の炭化水素選択酸化触媒(試料E1)は、炭化水素(HC)を選択的に酸化することができる。
【0049】
(実施例2)
実施例1においては、3d遷移金属がFeで、5価又は6価の遷移金属がWである炭化水素選択酸化触媒を製造したが、本例においては、3d遷移金属がFeで、5価又は6価の遷移金属がMo、Nb、又はTaである3種類の炭化水素選択酸化触媒(試料E2〜E4)をそれぞれ作製する。
本例において、試料E2が5価又は6価の遷移金属としてMoを用いた炭化水素選択酸化触媒であり、試料E3が5価又は6価の遷移金属としてNbを用いた炭化水素選択酸化触媒であり、試料E4が5価又は6価の遷移金属としてTaを用いた炭化水素選択酸化触媒である。
【0050】
各試料E2〜試料E4は、実施例1の塩化タングステンの代わりに、それぞれ塩化モリブデン、塩化ニオブ、塩化タンタルを用いた点を除いては、実施例1の試料E1と同様にして作製した。
XRDによる分析結果から、各炭化水素選択酸化触媒(試料E2〜試料E4)は、酸化鉄と、それぞれ酸化モリブデン、酸化ニオブ、又は酸化タンタルとを含有すると共に、酸化鉄の一部は、その鉄の一部にそれぞれモリブデン、ニオブ、又はタンタルが固溶した固溶体を形成していると考えられる。
【0051】
次に、実施例1の試料E1と同様に、各試料E2〜試料E4の炭化水素選択酸化触媒をハニカム構造体に担持し、排ガス(三元ガス)に対する浄化性能の評価を行った。その結果を図6〜図8に示す。図6が試料E2の結果、図7が試料E3の結果、図8が試料E4の結果である。図6〜図8において、横軸は排ガスの温度(℃)を示し、縦軸は浄化率(%)を示す。
【0052】
図6〜図8より知られるごとく、試料E2〜試料E4の炭化水素選択酸化触媒は、実施例1の試料E1と同様に、HCを酸化して浄化する一方、CO及びNOについてはほとんど浄化していないことがわかる。
したがって、本例によれば、実施例1のWだけでなく、Mo、Nb、及びTa等の5価又は6価の遷移金属を用いても、炭化水素を選択的に酸化して浄化できる炭化水素選択酸化触媒を製造できることがわかる。
【0053】
(実施例3)
実施例1においては、3d遷移金属としてFeを用いて炭化水素選択酸化触媒を製造したが、本例は、3d遷移金属としてCuを用いて炭化水素選択酸化触媒(試料E5)を製造する例である。
【0054】
本例の炭化水素選択酸化触媒は、実施例1の硝酸鉄の代わりに、硝酸銅を用いた点を除いては、実施例1の試料E1と同様にして作製した。これを試料E5とする。
XRDによる分析結果から、本例の炭化水素選択酸化触媒(試料E5)は、酸化銅と、それぞれ酸化タングステンとを含有すると共に、酸化銅の一部は、その銅原子の一部にタングステンが固溶した固溶体を形成していると考えられる。
【0055】
次に、実施例1の試料E1と同様に、試料E5の炭化水素選択酸化触媒をハニカム構造体に担持し、排ガス(三元ガス)に対する浄化性能の評価を行った。その結果を図9に示す。図9において、横軸は排ガスの温度(℃)を示し、縦軸は浄化率(%)を示す。
【0056】
また、本例においては、試料E5の比較用として、酸化銅からなる排ガス浄化触媒を準備した。
かかる排ガス浄化触媒は、酸化銅と酸化アルミニウムとを重量比が1:3となるような配合割合で水中に混合し、乾燥し温度600℃で加熱して得られたものである。これを試料C2とする。
試料C2についても、ハニカム構造体に担持し、排ガス(三元ガス)に対する浄化性能を評価した。その結果を図10に示す。図10において、横軸は排ガスの温度(℃)を示し、縦軸は浄化率(%)を示す。
【0057】
図9及び図10より知られるごとく、試料E5及び試料C2は、排ガス中のHCを酸化して浄化できることがわかる。また、試料C2においては、HCだけでなくCO及びNOも浄化されている(図10参照)。これに対し、図9に示すごとく、試料E5においては、試料C2よりも優れた浄化性能でHCを浄化する一方、試料C2比べてCO及びNOに対する浄化が抑制されている。
したがって、本例によれば、実施例1のFeだけでなく、Cu等の3d遷移金属を用いても、炭化水素を選択的に酸化して浄化できる炭化水素選択酸化触媒を製造できることがわかる。
【0058】
(実施例4)
本例は、5価又は6価の遷移金属(W)の量の異なる複数の炭化水素選択酸化触媒を作製し、そのHCに対する選択的な浄化性能を評価する例である。
具体的には、まず、Feに対するWの量を変えて異なる配合割合で硝酸鉄と塩化タングステンとを水に溶解させた。次いで、実施例1と同様に、水溶液にアルミナ分散液を添加し、乾燥後焼成してW量が異なる複数の炭化水素選択酸化触媒を作製した。
【0059】
次に、実施例1と同様にして、各炭化水素選択酸化触媒をハニカム構造体にそれぞれ担持し、排ガス(三元ガス)に対する浄化性能の評価を行った。そして、本例においては、各炭化水素選択酸化触媒について、HCの変化量(浄化率)が50%になるときの温度T50(℃)を求めた。その結果を図11に示す。同図において、横軸はFeに対するWの添加量(atm%)を示し、縦軸はHCのT50(℃)を示す。
【0060】
また、本例においては、各炭化水素選択酸化触媒について、HCに対する浄化の選択性を評価した。
選択性(%)は、次のようにして算出した。
具体的には、まず、実施例1の浄化性能の評価と同様に、本例の各炭化水素選択酸化触媒をそれぞれ担持した各ハニカム構造体をそれぞれ排気管内に配置し、排気管内に流量20L/分で排ガスを流通させた。排ガス中の三元ガス(CO、HC、NO)の濃度は、CO:4600ppm、HC:1700ppm、NO:2500ppmとした。次いで、ハニカム構造体に流入させる排ガスの温度を600℃まで上昇させた。そして、温度600℃の条件下において、ハニカム構造体に担持された各炭化水素選択酸化触媒による酸化によって浄化されたCO及びHCの浄化濃度を求めた。
CO及びHCの各浄化濃度は、ハニカム構造体を通過する前の排ガス中のCO及びHCの濃度とハニカム構造体を通過した後の排ガス中のCO及びHCの濃度との差から求めることができる。
そして、COの浄化濃度をCCO(ppm)、HCの浄化濃度をCHC(ppm)とすると、選択性S(%)は、S=CHC/(CCO+CHC)×100という式から算出することができる。
その結果を図12に示す。同図において、横軸は各炭化水素選択酸化触媒におけるFeに対するWの添加量(atm%)を示し、縦軸はHCの選択性(%)を示す。
【0061】
図11より知られるごとく、3d遷移金属であるFeに対する5価又は6価の遷移金属であるWの添加量が増大すると、HCを酸化して浄化するために必要な温度が高くなる傾向にあり、HCに対する酸化性能が低下することがわかる。図11より、W等の5価又は6価の遷移金属の添加量は、Feなどの3d遷移金属に対して75atm%以下が好ましいことがわかる。より好ましくは50atm%以下がよい。
【0062】
また、図12より知られるごとく、3d遷移金属であるFeに対する5価又は6価の遷移金属であるWの添加量が少なくなると、HCに対する選択的な浄化性能(選択性)が低下する傾向にあることがわかる。図11より、W等の5価又は6価の遷移金属の添加量は、Feなどの3d遷移金属に対して1.25atm%以上が好ましいことがわかる。より好ましくは2.5atm%以上がよい。
【0063】
このように、本例によれば、炭化水素選択酸化触媒においては、5価又は6価の遷移金属の添加量を3d遷移金属に対して1.25atm%〜75atm%にすることにより、3d遷移金属が本来有するHCに対する酸化性能を損ねることなく、HCに対する選択的な酸化性能を向上できることがわかる。
【0064】
(実施例5)
本例においては、実施例1とは異なる製造方法により、複数の炭化水素選択酸化触媒(試料E6〜E8)を製造し、その性能を評価する例である。
まず、3d遷移金属を含有する酸化物と、5価又は6価の遷移金属の塩とを水に混合する液相混合工程(液相混合工程A)及び乾燥焼成工程(乾燥焼成工程A)を行って、炭化水素選択酸化触媒(試料E6)を製造する例について説明する。
上記液相混合工程Aにおいては、3d遷移金属(Fe)を含有する酸化物と、5価又は6価の遷移金属(W)の塩とを水に混合することにより、3d遷移金属を含有する酸化物が水に分散し、5価又は6価の遷移金属の塩が水に溶解する混合液Aを得る。
また、上記乾燥焼成工程Aにおいては、混合液Aを乾燥させ、焼成する。
【0065】
以下、具体的に説明する。
まず、酸化アルミニウムを水に分散させた酸化アルミニウム分散液に、硝酸鉄を溶解させた。硝酸鉄は、Fe2O3量に換算したときの重量比がAl2O3:Fe2O3=60:20となるように溶解した。次いで、混合液を乾燥し、温度600℃で焼成することにより、酸化鉄と酸化アルミニウムとの複合体粉末(Fe2O3/Al2O3粉末)を得た。
【0066】
次に、Fe2O3/Al2O3粉末を水に分散させ、Feに対するW量が1.25atm%となる配合割合で、分散液にタングステン酸アンモニウムパラ5水和物を溶解させた。得られた混合液を温度120℃で乾燥させ、水分を除去して固形物を得た。この固形物を温度600℃で焼成し、炭化水素選択酸化触媒の粉末を得た。これを試料E6とする。
【0067】
また、本例においては、3d遷移金属を含有する酸化物と、5価又は6価の遷移金属を含有する酸化物とを混合する混合工程、及び焼成工程を行って、炭化水素選択酸化触媒(試料E7)を製造する。
混合工程においては、3d遷移金属(Fe)を含有する酸化物と、5価又は6価の遷移金属(W)を含有する酸化物とを混合して混合物を得る。
また、焼成工程においては、混合物を焼成する。
【0068】
以下、具体的に説明する。
まず、酸化アルミニウムを水に分散させた酸化アルミニウム分散液に、硝酸鉄を溶解させた。硝酸鉄は、Fe2O3量に換算したときの重量比がAl2O3:Fe2O3=30:20となるように溶解した。次いで、得られた混合液を乾燥し、温度300℃で焼成することにより、酸化鉄と酸化アルミニウムとの複合体粉末(Fe2O3/Al2O3粉末)を得た。
また、酸化アルミニウムを水に分散させた酸化アルミニウム分散液に、タングステン酸アンモニウムパラ5水和物を溶解させた。タングステン酸アンモニウムは、WO3量に換算したときの重量比がAl2O3:WO3=30:47となるように溶解した。次いで、得られた混合液を乾燥し、温度300℃で焼成することにより、酸化タングステンと酸化アルミニウムとの複合体粉末(WO3/Al2O3粉末)を得た。
【0069】
次に、Feに対するWの配合割合が75atm%となる配合割合で、Fe2O3/Al2O3粉末とWO3/Al2O3粉末とを混合し混合物を得た。この混合物を温度600℃で焼成し、炭化水素選択酸化触媒の粉末を得た。これを試料E7とする。
【0070】
また、本例においては、3d遷移金属の塩と、5価又は6価の遷移金属を含有する酸化物とを水に混合する液相混合工程(液相混合工程B)及び乾燥焼成工程(乾燥焼成工程B)を行って、炭化水素選択酸化触媒(試料E8)を製造する。
液相混合工程Bにおいては、3d遷移金属(Fe)塩と、5価又は6価の遷移金属(W)を含有する酸化物とを水に混合することにより、3d遷移金属の塩が水に溶解し、5価又は6価の遷移金属を含有する酸化物が水に分散する混合液Bを得る。
また、乾燥焼成工程Bにおいては、混合液Bを乾燥させ、焼成する。
【0071】
以下、具体的に説明する。
まず、酸化アルミニウムを水に分散させた酸化アルミニウム分散液に、タングステン酸アンモニウムパラ5水和物を溶解させた。タングステン酸アンモニウムは、WO3量に換算したときの重量比がAl2O3:WO3=60:47となるように溶解した。次いで、得られた混合液を乾燥し、温度600℃で焼成することにより、酸化タングステンと酸化アルミニウムとの複合体粉末(WO3/Al2O3粉末)を得た。
【0072】
次に、WO3/Al2O3粉末を水に分散させ、Feに対するW量が75atm%となる配合割合で、分散液に硝酸鉄を溶解させた。得られた混合液を温度120℃で乾燥させ、水分を除去して固形物を得た。この固形物を温度600℃で焼成し、炭化水素選択酸化触媒の粉末を得た。これを試料E8とする。
【0073】
また、本例においては、上記試料E6〜E8と比較するために、実施例1と同様に溶解工程及び水溶液乾燥焼成工程を行って2種類の炭化水素選択酸化触媒(試料E9及び試料E10)を作製した。
具体的には、試料E9は、Feに対するWの量が1.25atm%となる配合割合で硝酸鉄とタングステン酸アンモニウムパラ5水和物とを水に溶解させた点を除いては、実施例1の試料E1と同様にして作製した。
また、試料E10は、Feに対するWの量が75atm%となる配合割合で硝酸鉄とタングステン酸アンモニウムパラ5水和物とを水に溶解させた点を除いては、実施例1の試料E1と同様にして作製した。
なお、試料E9及び試料E10の作製にあたっては、焼成時の焼成時間を2時間とした。
【0074】
以上のようにして作製した試料E6〜試料E10について、Feに対するW量(atm%)を後述の表1に示す。なお、W量は、例えば透過型電子顕微鏡(日本電子(株)製の「JEM−2010FD」)にて炭化水素選択酸化触媒の粒子を元素定量分析することにより算出することができる。
【0075】
次に、実施例1と同様にして、上記試料E6〜試料E10の炭化水素選択酸化触媒をハニカム構造体にそれぞれ担持し、排ガス(三元ガス)に対する浄化性能の評価を行った。そして、各試料について、HCの変化量(浄化率)が50%になるときの温度T50(℃)を求めた。その結果を表1に示す。
また、実施例4と同様にして、各試料について、HCに対する浄化の選択性(%)を測定した。その結果を表1に示す。
【0076】
【表1】
【0077】
表1より知られるごとく、酸化鉄とタングステン酸アンモニウムとを水に混合する液相混合工程Aを行って作製した炭化水素選択酸化触媒(試料E6)は、T50が十分に低く、実用上十分に優れた浄化性能を発揮できると共に、Feに対するW量が同じである試料E9と比較して炭化水素に対する選択性がさらに向上していた。
一方、酸化鉄と酸化タングステンとを混合する混合工程を行って作製した炭化水素選択酸化触媒(試料E7)及び酸化タングステンと硝酸鉄とを水に混合する液相混合工程Bを行って作製した炭化水素選択酸化触媒(試料E8)は、実用上十分に優れた炭化水素に対する選択性を発揮できると共に、Feに対するW量が同じである試料E10と比較してT50がより低下しており、浄化性能がさらに向上していた。
【0078】
したがって、本例によれば、上記試料E6のように、原料の混合時に、3d遷移金属を含有する酸化物と、5価又は6価の遷移金属の塩とを水に混合する液相混合工程Aを行うことにより、炭化水素に対する選択性が特に優れた炭化水素選択酸化触媒を得ることができることがわかる。
また、上記試料E7のように、原料の混合時に、3d遷移金属を含有する酸化物と5価又は6価の遷移金属を含有する酸化物とを混合することにより、浄化性能が特に優れた炭化水素選択酸化触媒を得ることができることがわかる。
また、上記試料E8のように、原料の混合時に、3d遷移金属の塩と、5価又は6価の遷移金属を含有する酸化物とを水に混合する液相混合工程Bを行っても、浄化性能が特に優れた炭化水素選択酸化触媒を得ることができることがわかる。
【符号の説明】
【0079】
1 炭化水素選択酸化触媒
2 3d遷移金属の酸化物
3 5価又は6価の遷移金属の酸化物
4 固溶体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素を選択的に酸化する炭化水素選択酸化触媒であって、
3d遷移金属の酸化物と5価又は6価の遷移金属の酸化物、及び/又は3d遷移金属と5価又は6価の遷移金属との酸化物固溶体を含有することを特徴とする炭化水素選択酸化触媒。
【請求項2】
請求項1に記載の炭化水素選択酸化触媒において、上記5価又は6価の遷移金属を、上記3d遷移金属に対して1.25atm%〜75atm%含有することを特徴とする炭化水素選択酸化触媒。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の炭化水素選択酸化触媒において、上記3d遷移金属は、Fe及び/又はCuであることを特徴とする炭化水素選択酸化触媒。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の炭化水素選択酸化触媒において、上記5価又は6価の遷移金属は、W、Mo、Nb、及びTaから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする炭化水素選択酸化触媒。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の炭化水素選択酸化触媒において、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、及び二酸化珪素から選ばれる少なくとも1種をさらに含有することを特徴とする炭化水素選択酸化触媒。
【請求項6】
炭化水素を選択的に酸化する炭化水素選択酸化触媒の製造方法であって、
3d遷移金属の塩と、5価又は6価の遷移金属の塩とを水に溶解させて遷移金属水溶液を得る溶解工程と、
上記遷移金属水溶液を乾燥させ、焼成する水溶液乾燥焼成工程とを行うことを特徴とする炭化水素選択酸化触媒の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の炭化水素選択酸化触媒の製造方法において、上記溶解工程においては、上記3d遷移金属に対する上記5価又は6価の遷移金属の量が1.25atm%〜75atm%となるように上記3d遷移金属の塩と上記5価又は6価の遷移金属の塩とを水に溶解させることを特徴とする炭化水素選択酸化触媒の製造方法。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の炭化水素選択酸化触媒の製造方法において、上記溶解工程においては、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、及び二酸化珪素から選ばれる少なくとも1種を水に添加することを特徴とする炭化水素選択酸化触媒の製造方法。
【請求項9】
炭化水素を選択的に酸化する炭化水素選択酸化触媒の製造方法であって、
3d遷移金属を含有する酸化物と、5価又は6価の遷移金属の塩とを水に混合することにより、3d遷移金属を含有する酸化物が水に分散し、5価又は6価の遷移金属の塩が水に溶解する混合液Aを得る液相混合工程Aと、
上記混合液Aを乾燥させ、焼成する乾燥焼成工程Aとを行うことを特徴とする炭化水素選択酸化触媒の製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の炭化水素選択酸化触媒の製造方法において、上記液相混合工程Aにおいては、上記3d遷移金属に対する上記5価又は6価の遷移金属の量が1.25atm%〜75atm%となるように上記3d遷移金属を含有する酸化物と上記5価又は6価の遷移金属の塩とを水に混合することを特徴とする炭化水素選択酸化触媒の製造方法。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の炭化水素選択酸化触媒の製造方法において、上記液相混合工程Aにおいては、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、及び二酸化珪素から選ばれる少なくとも1種を水に添加することを特徴とする炭化水素選択酸化触媒の製造方法。
【請求項12】
炭化水素を選択的に酸化する炭化水素選択酸化触媒の製造方法であって、
3d遷移金属を含有する酸化物と、5価又は6価の遷移金属を含有する酸化物とを混合して混合物を得る混合工程と、
上記混合物を焼成する焼成工程とを行うことを特徴とする炭化水素選択酸化触媒の製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の炭化水素選択酸化触媒の製造方法において、上記混合工程においては、上記3d遷移金属に対する上記5価又は6価の遷移金属の量が1.25atm%〜75atm%となるように上記3d遷移金属を含有する酸化物と上記5価又は6価の遷移金属を含有する酸化物とを混合することを特徴とする炭化水素選択酸化触媒の製造方法。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の炭化水素選択酸化触媒の製造方法において、上記混合工程においては、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、及び二酸化珪素から選ばれる少なくとも1種をさらに添加することを特徴とする炭化水素選択酸化触媒の製造方法。
【請求項15】
炭化水素を選択的に酸化する炭化水素選択酸化触媒の製造方法であって、
3d遷移金属の塩と、5価又は6価の遷移金属を含有する酸化物とを水に混合することにより、3d遷移金属の塩が水に溶解し、5価又は6価の遷移金属を含有する酸化物が水に分散する混合液Bを得る液相混合工程Bと、
上記混合液Bを乾燥させ、焼成する乾燥焼成工程Bとを行うことを特徴とする炭化水素選択酸化触媒の製造方法。
【請求項16】
請求項15に記載の炭化水素選択酸化触媒の製造方法において、上記液相混合工程Bにおいては、上記3d遷移金属に対する上記5価又は6価の遷移金属の量が1.25atm%〜75atm%となるように上記3d遷移金属の塩と上記5価又は6価の遷移金属を含有する酸化物とを水に混合することを特徴とする炭化水素選択酸化触媒の製造方法。
【請求項17】
請求項15又は16に記載の炭化水素選択酸化触媒の製造方法において、上記液相混合工程Bにおいては、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、及び二酸化珪素から選ばれる少なくとも1種を水に添加することを特徴とする炭化水素選択酸化触媒の製造方法。
【請求項18】
請求項6〜17のいずれか一項に記載の炭化水素選択酸化触媒の製造方法において、上記3d遷移金属は、Fe及び/又はCuであることを特徴とする炭化水素選択酸化触媒の製造方法。
【請求項19】
請求項6〜18のいずれか一項に記載の炭化水素選択酸化触媒の製造方法において、上記5価又は6価の遷移金属は、W、Mo、Nb、及びTaから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする炭化水素選択酸化触媒の製造方法。
【請求項1】
炭化水素を選択的に酸化する炭化水素選択酸化触媒であって、
3d遷移金属の酸化物と5価又は6価の遷移金属の酸化物、及び/又は3d遷移金属と5価又は6価の遷移金属との酸化物固溶体を含有することを特徴とする炭化水素選択酸化触媒。
【請求項2】
請求項1に記載の炭化水素選択酸化触媒において、上記5価又は6価の遷移金属を、上記3d遷移金属に対して1.25atm%〜75atm%含有することを特徴とする炭化水素選択酸化触媒。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の炭化水素選択酸化触媒において、上記3d遷移金属は、Fe及び/又はCuであることを特徴とする炭化水素選択酸化触媒。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の炭化水素選択酸化触媒において、上記5価又は6価の遷移金属は、W、Mo、Nb、及びTaから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする炭化水素選択酸化触媒。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の炭化水素選択酸化触媒において、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、及び二酸化珪素から選ばれる少なくとも1種をさらに含有することを特徴とする炭化水素選択酸化触媒。
【請求項6】
炭化水素を選択的に酸化する炭化水素選択酸化触媒の製造方法であって、
3d遷移金属の塩と、5価又は6価の遷移金属の塩とを水に溶解させて遷移金属水溶液を得る溶解工程と、
上記遷移金属水溶液を乾燥させ、焼成する水溶液乾燥焼成工程とを行うことを特徴とする炭化水素選択酸化触媒の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の炭化水素選択酸化触媒の製造方法において、上記溶解工程においては、上記3d遷移金属に対する上記5価又は6価の遷移金属の量が1.25atm%〜75atm%となるように上記3d遷移金属の塩と上記5価又は6価の遷移金属の塩とを水に溶解させることを特徴とする炭化水素選択酸化触媒の製造方法。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の炭化水素選択酸化触媒の製造方法において、上記溶解工程においては、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、及び二酸化珪素から選ばれる少なくとも1種を水に添加することを特徴とする炭化水素選択酸化触媒の製造方法。
【請求項9】
炭化水素を選択的に酸化する炭化水素選択酸化触媒の製造方法であって、
3d遷移金属を含有する酸化物と、5価又は6価の遷移金属の塩とを水に混合することにより、3d遷移金属を含有する酸化物が水に分散し、5価又は6価の遷移金属の塩が水に溶解する混合液Aを得る液相混合工程Aと、
上記混合液Aを乾燥させ、焼成する乾燥焼成工程Aとを行うことを特徴とする炭化水素選択酸化触媒の製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の炭化水素選択酸化触媒の製造方法において、上記液相混合工程Aにおいては、上記3d遷移金属に対する上記5価又は6価の遷移金属の量が1.25atm%〜75atm%となるように上記3d遷移金属を含有する酸化物と上記5価又は6価の遷移金属の塩とを水に混合することを特徴とする炭化水素選択酸化触媒の製造方法。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の炭化水素選択酸化触媒の製造方法において、上記液相混合工程Aにおいては、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、及び二酸化珪素から選ばれる少なくとも1種を水に添加することを特徴とする炭化水素選択酸化触媒の製造方法。
【請求項12】
炭化水素を選択的に酸化する炭化水素選択酸化触媒の製造方法であって、
3d遷移金属を含有する酸化物と、5価又は6価の遷移金属を含有する酸化物とを混合して混合物を得る混合工程と、
上記混合物を焼成する焼成工程とを行うことを特徴とする炭化水素選択酸化触媒の製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の炭化水素選択酸化触媒の製造方法において、上記混合工程においては、上記3d遷移金属に対する上記5価又は6価の遷移金属の量が1.25atm%〜75atm%となるように上記3d遷移金属を含有する酸化物と上記5価又は6価の遷移金属を含有する酸化物とを混合することを特徴とする炭化水素選択酸化触媒の製造方法。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の炭化水素選択酸化触媒の製造方法において、上記混合工程においては、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、及び二酸化珪素から選ばれる少なくとも1種をさらに添加することを特徴とする炭化水素選択酸化触媒の製造方法。
【請求項15】
炭化水素を選択的に酸化する炭化水素選択酸化触媒の製造方法であって、
3d遷移金属の塩と、5価又は6価の遷移金属を含有する酸化物とを水に混合することにより、3d遷移金属の塩が水に溶解し、5価又は6価の遷移金属を含有する酸化物が水に分散する混合液Bを得る液相混合工程Bと、
上記混合液Bを乾燥させ、焼成する乾燥焼成工程Bとを行うことを特徴とする炭化水素選択酸化触媒の製造方法。
【請求項16】
請求項15に記載の炭化水素選択酸化触媒の製造方法において、上記液相混合工程Bにおいては、上記3d遷移金属に対する上記5価又は6価の遷移金属の量が1.25atm%〜75atm%となるように上記3d遷移金属の塩と上記5価又は6価の遷移金属を含有する酸化物とを水に混合することを特徴とする炭化水素選択酸化触媒の製造方法。
【請求項17】
請求項15又は16に記載の炭化水素選択酸化触媒の製造方法において、上記液相混合工程Bにおいては、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、及び二酸化珪素から選ばれる少なくとも1種を水に添加することを特徴とする炭化水素選択酸化触媒の製造方法。
【請求項18】
請求項6〜17のいずれか一項に記載の炭化水素選択酸化触媒の製造方法において、上記3d遷移金属は、Fe及び/又はCuであることを特徴とする炭化水素選択酸化触媒の製造方法。
【請求項19】
請求項6〜18のいずれか一項に記載の炭化水素選択酸化触媒の製造方法において、上記5価又は6価の遷移金属は、W、Mo、Nb、及びTaから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする炭化水素選択酸化触媒の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−196660(P2012−196660A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−256417(P2011−256417)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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