説明

炭化炉の熱利用システム

【課題】今日では自然体験や体験観光が人気を集め、炭焼き体験や自然体験なども注目され、炭焼き窯を体験観光等に利用するにあたり、効果的な余熱或いは廃熱を再利用する炭化炉の熱利用システムを提供する。
【解決手段】簡便な方法によって実用と観光を兼ねた施設が有機的に融合したシステムを、炭化炉と、該炭化炉に設置された熱捕集用の配管と、該配管に接続されてその捕集された熱を利用する農業用、温浴用、養殖用、観光用等の施設を有し、熱捕集及び利用のために配管内に水を循環せしめ、またその水を循環して再利用することにより実現した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭焼き窯などの商用窯の熱を利用するシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
炭焼き窯、食品加熱用石窯などの商用窯においては、熱源のエネルギーは専ら加熱焼成にのみ利用されていた。一部特開2001−49262に於いて開示されているように排煙の余熱を利用して温水を得る取り組み等が存在するのみである。
【特許文献1】特開2001−49262号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来、炭焼き窯などの商用窯においては、熱源のエネルギーを有効に利用するため、余熱或いは廃熱の再利用を行うことは殆ど行われていなかった。
【0004】
また、今日では自然体験や体験観光が人気を集め、炭焼き体験や自然体験なども注目されている。しかし、炭焼き窯を体験観光等に利用するにあたり、効果的な余熱或いは廃熱の再利用方法はなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、炭化炉と、該炭化炉に設置された熱捕囚用の配管と、該配管に接続されてその捕囚された熱を利用する農業用、温浴用、養殖用、観光用等の施設を有し、熱捕囚及び利用のために配管内に水を循環せしめ、またその水を循環して再利用することに特徴がある。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、炭化炉と、該炭化炉に設置された熱捕囚用の配管と、該配管に接続されてその捕囚された熱を利用する農業用、温浴用、養殖用、観光用等の施設を有するものである。このシステムを用いることにより、炭焼きそのものの体験観光と、温浴によるリラックス、温水を利用した遊歩道等の観光施設、さらには農業施設や養殖施設等の実用と観光を兼ねた施設が有機的に融合した施設を提供することが出来、以て産業に貢献することが出来るものである。
【0007】
また本発明は、炭化炉の外壁等からの熱を有効利用することにより、環境に優しく、観光面でも好イメージを有する施設を提供することが出来る。
同じく本発明は、炭化炉から生成する可燃ガスを捕囚利用すること及び炭化炉で生産された炭を活用することによっても、環境に優しく、観光面でも好イメージを有する施設を提供することが出来る。
【0008】
また本発明は、農業用ビニールハウス等の内部に木道を設け、これを本発明に係る熱供給システムによって加熱或いは冷却することにより、快適な環境での自然体験観光を可能にし、環境に優しく、観光面でも好イメージを有する施設を提供することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
簡便な方法によって実用と観光を兼ねた施設が有機的に融合したシステムを、化炉と、該炭化炉に設置された熱捕囚用の配管と、該配管に接続されてその捕囚された熱を利用する農業用、温浴用、養殖用、観光用等の施設を有し、熱捕囚及び利用のために配管内に水を循環せしめ、またその水を循環して再利用することにより実現した。
【実施例1】
【0010】
図1は、本発明の1実施例を示すチャートである。本実施例では、まず炭化炉(炭窯)に配設した配管に水を通し、温水を得ることで利用する熱源とした。配管は銅製のパイプを用い、窯体の外壁全面に配設した。なお、配管の設置位置は窯の基体底部、側面、上面等いずれにも可能であり、また排煙の煙道、煙突等にも配設出来る。さらに、一部は窯の内部に通すことも可能である。本実施例に於いては配管は外壁面に設置したが、前記の通りその配設位置はこれに限定されるものではない。また、配管の材質、配設密度、管径なども効率等を考慮の上任意に設定出来る。
【0011】
前記配管から得られた温水を、本実施例に於いては3分割し、風呂用、ビニールハウスにおける農業用、観光用の木道の暖房用に利用した。なお、これらの用途はこれに限定されるものではなく、温浴用としては通常の入浴用以外のサウナ風呂・岩盤浴等の温浴、温砂浴などに利用しても良いし、農業用としては温室等の他の施設に用いても良い。また、これらの利用に際してはこれらのうちどれか一種或いは二種以上を任意に組みあわせて利用出来る。
【0012】
これら施設に於いては、一般には利用されていなかった炭化炉の廃熱を活用して、環境に優しく、観光面でも好イメージを有する施設を提供することが出来た。
【0013】
さらに本実施例では、前記施設で利用した後の温水を池に集め、魚とエビの養殖用として利用した。これらはやや温度が低くなった排水でも十分な効果があり、一部はある程度の汚れがあっても問題ない。排水の更なる利用により、本システムの環境に対する効果は大きいものとなった。ただし、これら養殖池は本発明に係るシステムに必須の要件ではなく、省略しても良いし、口述の循環のための濾過池として配設しても良い。
【0014】
前記の養殖池を経過した排水は、これを回収し、濾過した後に本発明に係る炭化炉に再度流入させ、循環するシステムとした。これによって、環境に優しく、観光面でも好イメージを有する施設を提供することが出来る。ここで、濾過装置は本発明に係るシステムに必須の要件ではなく、省略しても良い。
【0015】
斯様に本発明に於いて、炭化炉の外壁等からの熱を有効利用することにより、環境に優しく、観光面でも好イメージを有する施設のトータルシステムを提供することが出来た。
【実施例2】
【0016】
次に、本発明に係る他の実施例として、炭化炉の休止時、炭の搬出や材料の搬入時等の非稼働時に温水を供給するため、システム内の炭化炉外にボイラーを設置して用いた。炭化炉の休止時に外部ボイラーを稼働することにより、システムに継続的に熱を供給することが可能となる。
【実施例3】
【0017】
次に、本発明に係る他の実施例として、炭化炉の排気系に可燃性の排気ガスを圧縮捕集する装置を備え、得られた液化可燃ガスを、自動車、農業機械、林業機械等の燃料として利用し或いは該加熱炉或いは外部のボイラーに於いて利用するようにした。炭化炉からの可燃ガスを利用することは、エコロジー的にも優れ、観光利用にあたってのイメージアップの一助ともなる。
【0018】
本実施例に於いてはさらに、実施例2に示した外部ボイラーの燃料として前記捕囚した可燃ガスを用いた。これにより、燃料費の低減が図れるとともに、観光利用にあたってのイメージアップの一助ともなる。
【実施例4】
【0019】
本実施例に於いては、炭化炉への一時給水源として沢水を用い、夏期等の温熱の利用が必要とされない時期に本システムをそのまま利用して農業用施設の冷却や観光施設の冷房、木道の冷却等に利用するようにした。
【0020】
本実施例の方法を用いることにより、特に大きな設備投資なしに夏期等に於いても観光資源の有効利用が図れた。
【実施例5】
【0021】
次に、本発明に係る他の実施の形態として、ビニールハウス内に木道を設置し、この木道を本システムによって冷暖房することによって季節に関係なく快適な農業体験、自然体験を可能にすることができた。
【0022】
ここで、本実施例に係る木道はビニールハウス内に設置するのみに限定されるものではなく、屋外や、通路等のために設置された造作内にあっても問題ない。またその面積は単に通路のみならず、人が滞留出来るスペースを有していても良い。
【0023】
本実施例に於いては、木道の材料として3寸角の角材を用い、これを敷き並べて用いた。角材の表面は素足で歩行しても危険がないように研磨した。これらの敷設にあたり、本発明に係る熱供給のための配管を角材の間に挟み込むようにして、伝熱させるようにした。これにより、木道が快適な温度に保たれ、例えば冬期でも素足で歩行・自然観察が可能になり、体験観光資源として非常に有効であった。
【0024】
なお、木道への配管の敷設にあたっては、材木の側面或いは下部に凹部を設け、ここに配管を通すようにすることで、木道の間隙を無くすようにすることも出来、効果がある。また、木道等の材質は角材等に限定されるものではなく、一般のフローリングに用いられる材料や、石材その他の他の材質であっても問題ない。
【産業上の利用可能性】
【0025】
炭化炉と、該炭化炉に設置された熱捕囚用の配管と、該配管に接続されてその捕囚された熱を利用する農業用、温浴用、養殖用、観光用等の施設を有するシステムを用いることにより、炭焼きそのものの体験観光と、温浴によるリラックス、温水を利用した遊歩道等の観光施設、さらには農業施設や養殖施設等の実用と観光を兼ねた施設が有機的に融合した施設を提供することが出来、以て産業に貢献することが出来るものである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明にかかるシステムの一例を示すチャートである。(実施例1)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質、草本、繊維質、及びこれらの加工物等を加熱炭化する炉と、該炭化炉の外周及び/又は内部及び/又は煙突部に設置された熱捕囚用の配管と、該配管に接続されてその捕囚された熱を利用する手段を有し、該熱の利用手段は農業用及び/又は温浴用及び/又は養殖用及び/又は観光用の施設であって、該熱捕囚及び利用に係る媒体は水を主成分とする液体であり、該媒体は熱利用後に回収されて、濾過等の処理後に該炭化炉の外周及び/又は内部に設置された熱捕囚用の配管に再度流入する一部循環構造を有することを特徴とする、炭化炉の熱利用システム。
【請求項2】
木質、草本、繊維質、及びこれらの加工物等を加熱炭化する炉であって、該炉は排気系に可燃性の排気ガスを圧縮捕集する装置を備え、得られた液化可燃ガスを、自動車、農業機械、林業機械等の燃料として利用し或いは該加熱炉或いは外部のボイラーに於いて利用することを特徴とする、炭化炉から得られる可燃ガスの利用方法。
【請求項3】
請求項1記載の炭化炉の熱利用システムであって、該熱利用のための配管には循環系以外から取水する機構を有し、該循環系以外からの取水には湧水、沢水等を利用し、夏期等温熱利用の要求が少ない時期には炉での炭化燃焼を中止することにより、該配管に接続された農業用及び/又は温浴用及び/又は養殖用及び/又は観光用の施設に於いて冷房機能を発現することを特徴とする、請求項1記載の炭化炉の熱利用システム。
【請求項4】
請求項1記載の炭化炉の熱利用システムであって、該システムには該炭化炉の停止時等に補助的に熱供給するボイラーを備え、該ボイラーに於いてその燃料の少なくとも一部として該炭化炉にて製造された炭及び/又は請求項2に係る炭化炉から得られる可燃性ガスを利用したことを特徴とする、炭化炉の熱利用システム。
【請求項5】
請求項1記載の炭化炉の熱利用システムであって、該システムに於いて熱利用する施設の一に、入浴、サウナ浴、温砂浴等の温浴施設を有することを特徴とする、炭化炉の熱利用システム。
【請求項6】
請求項1記載の炭化炉の熱利用システムであって、該システムに於いて熱利用する施設の一に農業用施設を有し、該農業用施設はビニールハウス、温室等の加温栽培施設及び/又は氷室等の寒冷栽培施設であることを特徴とする、炭化炉の熱利用システム。
【請求項7】
請求項1記載の炭化炉の熱利用システムであって、該システムに於いて熱利用する施設の一に観光用施設を有し、該観光用施設は屋外及び/又は屋内に於いて歩行或いは滞留する場所を提供し、該施設は該熱供給システムにより加温或いは冷却されることを特徴とする、炭化炉の熱利用システム。
【請求項8】
請求項6乃至7記載の炭化炉の熱利用システムであって、該農業用施設はビニールハウス、温室等の加温栽培施設及び/又は氷室等の寒冷栽培施設であって、該農業用施設は観光用施設を兼ね、該農業用施設内に散策用の遊歩道が設置されてなることを特徴とする、炭化炉の熱利用システム。
【請求項9】
請求項7乃至8記載の炭化炉の熱利用システムであって、該観光用施設の散策用の遊歩道は木製でなり、該木道を構成する材木間に間隙を設け、ここに熱利用のための配管を配設することを特徴とする、炭化炉の熱利用システム。
【請求項10】
請求項7乃至8記載の炭化炉の熱利用システムであって、該観光用施設の散策用の遊歩道は木製でなり、該木道を構成する材木には背面又は側面に凹部が構成されてなり、該凹部に熱利用のための配管を配設することを特徴とする、炭化炉の熱利用システム。

【図1】
image rotate