説明

炭化物を含む発光体を備えたグローランプ

本発明は、充填ガスとともに管(2)内に真空密に収容されかつタングステンよりも融点の高い金属炭化物を含む発光体(7)を備えたグローランプ(1)に関する。本発明によれば、電流線(10)が第1のセクション(6)および第2のセクション(15)の2つのセクションから成る。第1のセクション(6)は発光体(7)と一体にワイヤから成形されており、本来の電流線として機能する第2のセクション(15)は熱耐性の高い材料から成形されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は請求項1の上位概念に記載の炭化物を含む発光体を備えたグローランプに関する。これは特にTaCから成る発光体を含むかまたは発光体の要素またはコーティング部の要素としてTaCを含むハロゲングローランプに関する。
【0002】
従来の技術
種々の刊行物から炭化物を含む発光体を備えたグローランプが公知である。ただしこれまでこうしたランプについて、耐用期間がきわめて制限されているという問題が未解決であった。国際公開第01/15206号明細書には、発光体と別個の支承レームとを接合する手段が開示されている。
【0003】
炭化タンタルはタングステンに比べて約500K高い融点を有する。そのため炭化タンタルから成る発光体の温度はタングステンから成る発光体の温度よりも著しく高く調整することができる。炭化タンタルの発光体の温度は高く、可視スペクトル領域で発光が大きいので、炭化タンタルランプ(発光体として炭化タンタルを備えたランプ)は従来のタングステンから成る発光体を有するランプに比べて格段に高い光効率を実現することができる。炭化タンタルランプの市販化は、これまでのところ、炭化タンタルの脆弱性および高温による発光体の早期の脱炭化および破壊のために進んでいなかった。脆弱性の問題を克服するために、最適な炭化方法を使用することが独国出願第1558712号明細書および米国特許第3650850号明細書において提案されており、炭化タンタルTaCと炭化物材料との合金、例えばTaC+WC,TaC+HfCなどを使用することが米国特許第3405328号明細書および米国特許第4032809号明細書において提案されており、支持体材料を使用することが米国特許第1854970号明細書において提案されている。
【0004】
炭化タンタルランプを組み立てる際にかかる製造コストをできるだけ小さく抑えるために、従来の石英ガラス技術を用いた低圧ハロゲンランプ(図3を参照)と同じジオメトリで炭化タンタルランプを組み立てることが提案されている。
【0005】
図3に示されているように、一方側の封止されたグローランプ1は硬質ガラスから成る管2,封止部3および内部の電流線6を有しており、この電流線は封止部3内でシート4を介して発光体7に接続されている。シート4は外部の給電線5に接続されている。
【0006】
このためにまずタンタルワイヤから成る巻線が成形され、この巻線を用いてロッド状ランプが製造される。続いてタンタルワイヤから成る発光体がロッド状ランプ内でメタンおよび水素の混合気を用いて炭化される。当該の炭化の基本的な特性については、S.Okoli, R.Haubner, B.Lux, "Surface and Coatings Technology"47, 1991の585頁〜599頁およびG.Hoerz, "Metall" 27, 1973の680頁に記載されている。ここでは炭化反応の2つの特性が重要である。すなわち、(1)炭化の際にはまず亜炭化物Ta2Cが形成され、さらに続けて炭素を供給することによりTaCが形成されること、(2)炭化反応は温度が上昇するにつれて迅速になることである。
【0007】
発光体を炭化に必要な温度まで加熱する最も簡単な手段として、発光体に適切な電圧を印加することが挙げられる。しかしこのとき熱伝導のために発光体の端部から封止部へ向かって温度の勾配が生じる。発光体ではいずれの場合にも充分な高温が生じるので、一貫した炭化が行われる。しかし封止部の直接上方では温度は低く、たいていの場合700℃を下回ってしまい、そもそも炭化が起こらない。この領域では完全な炭化に必要な温度を調整することが非常に困難である。したがってタンタルワイヤから成る封止部の直接近傍の領域と完全に炭化される発光体の領域とのあいだに、脆弱な亜炭化物Ta2Cの領域が生じてしまう。この領域では突き合わせの負荷により発光体が破損しやすい。ここに当該の領域を保護または安定化し、破損の危険を低減しなければならないという課題が生じる。安定化により少なくとも確実に顧客のもとへランプを搬送することができるようになる。
【0008】
脆弱な亜炭化物Ta2Cの支配的なクリティカル領域を巻線カバーの使用により保護する手段が例えば未公開の独国出願第102004014211.4号明細書に記載されている。
【0009】
前述した問題を回避するための最近のストラテジとして、フレームを用いてタンタル巻線をランプ管に固定する手段が挙げられる。この場合例えばタンタルワイヤから成る巻線を例えばモリブデンから成る中実なフレームに溶接し、続いてワイヤを炭化タンタルへ炭化する。しかし、タンタルワイヤよりも格段に径の大きいモリブデンワイヤの電流線を介した大きな熱放出のために、強い温度グラジエントがタンタル巻線に沿って溶接部まで生じる。こうしてタンタルワイヤは溶接部付近では完全には炭化されず、特に脆弱な亜炭化物Ta2Cの支配的な領域が生じてしまう。この領域では突き合わせの負荷により発光体が破損しやすくなる。この問題を解決するには付加的なコストをかけなければならない。例えば、炭化プロセス前にTa,Hf,Nb,Zrまたはこれら金属の合金から形成される発光体の端部が炭化に対してコーティングにより保護される。
【0010】
発明の開示
したがって本発明の課題は、請求項1の上位概念に記載の炭化物を含む発光体を備えたグローランプ、特にハロゲン充填ガスを用いるランプにおいて、耐用期間を長くし、発光体の損傷の問題を克服することにある。
【0011】
この課題は請求項1の特徴部分に記載の構成により解決される。特に有利な実施形態は従属請求項に示されている。
【0012】
本発明によれば一体式の発光体が使用され、2つの電流線が巻き回された発光体の延長部となっている。発光体および電流線は唯一のワイヤから形成される。
【0013】
本発明は、タンタルワイヤの炭化の際に亜炭化物の段上に炭化物が残ってしまうような温度領域を生じさせないことにより、脆弱な亜炭化物TaCの形成を完全に回避するという着想に基づいている。このためにタンタルワイヤから成る巻線のうち封止部へ向かう下方の低温部分は他の材料から形成される。タンタルワイヤから成る巻線は他の材料から成る第2のワイヤに溶接される。この第2のワイヤはタンタルワイヤの径のオーダーで充分に小さな径を有する。したがって放熱度が大きくなり、フレームを使用する場合などに生じる損失が低減される。巻線を形成するためのワイヤ材料は生じる温度のもとでも炭化物を形成してはならない。なぜなら炭化物は一般に脆弱性が高く、また電気抵抗が高いためスイッチオン耐性が著しく低減されてしまうからである。巻線の端部は、高融点を有しかつ充分に硬く、タンタルと比較可能な導電性および熱伝導性を有し、気相から輸送された炭素と反応しない別の材料の比較的薄いワイヤから成形しなければならない。このような材料として金属であるレニウム、オスミウムおよび場合によりルテニウム、イリジウムなどが当てはまる。これらの金属は高融点を有し、それぞれレニウム3453K,オスミウム3318K,ルテニウム2583K,イリジウム2683Kである。これらの金属はタンタルとともに合金を形成し、その合金がタンタルワイヤとレニウム、オスミウム、イリジウムまたはルテニウムから成るワイヤとのあいだの溶接部となる。2つの金属の接合部はタンタルワイヤが完全に炭化される温度となる。タンタルワイヤが完全に炭化される下方の限界温度はワイヤ径と炭化の際の境界条件(メタン濃度、炭化プロセスにかけられる時間など)とに依存して定まる。典型的には下方の限界温度は2200K〜3000Kの範囲にある。2つの金属の接合点は1カ所であるため、ランプ駆動時に熱的に必要以上に高い負荷は受けず、3000Kを下回る。いずれにしても巻線と比べて著しく低い温度となる。端部から蒸発した金属の管壁への凝結は適切なハロゲンの循環プロセスにより容易に阻止することができる。
【0014】
ここで説明している本発明は特に管容積の低減されたランプに関する。発光体、特に発光部から管の内壁までの距離は最大で18mmである。管径は最大で35mm、有利には5mm〜25mmの範囲、特に有利には8mm〜15mmの範囲である。このように小さな寸法、特に径の小さい管では、固体物質が管壁に析出する危険があり、対策を講じることが必須となる。管径が小さい場合、巻線の色温度に応じて、独国出願第10356651.1号明細書に記載されているように、2重の循環プロセスにより管の黒化が著しく低減されるかまたは回避される。
【0015】
特に軸線方向または軸線に対して横断方向に配置された発光体は一方側または両側が閉鎖または封止された管である。
【0016】
有利には、発光体は1重に巻き回されたワイヤであるが、その端部は給電に用いられる始端として巻き回されない。発光体に対する典型的なワイヤ径は50μm〜300μmである。典型的には発光体は5個〜20個のターンから成っている。発光体のできるだけ高い安定性を達成するための有利な勾配係数は1.4〜2.8である。
【0017】
特に有利には、本来の電流線として機能する部分は管の内側から管の材料内へ入りこむ領域まで延在している。通常、管は1個または2個の封止部によって閉鎖されている。移行部の領域は封止縁部と称される。
【0018】
特に有利には本来の電流線として機能する部分は炭化物を形成しない材料から成り、電流線の温度特性に依存して、電流線全体の長さの少なくとも50%、有利には少なくとも80%を超えて延在する。
【0019】
有利には、発光体は軸線方向に延在する。なぜなら軸線方向に延在する発光体を使用するコンセプトは効率を増大するための管へのコーティングを被着するのに良好に適しているからである。これについて良く知られているのはいわゆる赤外コーティングIRCであり、例えば米国特許第5548182号明細書に記載されている。相応のことが周知のように楕円体状または円筒体状に成形された管の外部にも当てはまる。
【0020】
特に有利にはハロゲン充填ガスが用いられる。これは適切な寸法設計がなされさえすれば、発光体の材料の循環プロセスのみならず、場合によっては電流線の材料の循環プロセスも開始させることができるからである。この種の充填ガスは公知である。特に2重の循環プロセスのための充填ガスとして、独国出願第10356651.1号明細書に記載されているものが挙げられる。
【0021】
さらに本発明のランプの構造は従来のランプの構造よりも格段に簡単に実現できる。なぜなら、特に最大で80Vまでの低圧分野での適用に対して、安定化のために石英ガラスのロッドおよび巻付けコイルのいずれも必要ではなく、さらにTaCから成る既に炭化された発光体と電流線とのあいだの問題の生じやすい接触部(溶接部、クランプ部または圧着部など)も必要ないからである。既に炭化されたTaCから成る発光体を処理する際には材料の脆弱性のために発光体の端部にしばしば損傷が生じる。
【0022】
有利には発光体の材料はTaCである。またHf、NbまたはZrの炭化物も適している。さらに前述の炭化物の合金も適している。さらにTaまたはTaCも適用可能である。
【0023】
本発明は特に最大で50Vまでの低圧ランプに適している。なぜなら必要な発光体を、最大出力100Wの一般用途向けに、中実かつワイヤ径50μm〜300μm、特に最大で150μmまでに構成することができるからである。特に300μmまでの太いワイヤは出力1000Wまでのフォトオプティクス分野に用いられる。特に有利には本発明は一方側が封止されたランプに適用される。これは発光体を短く保って破損の危険を低減することができるからである。しかし本発明は両側が封止されたランプおよび電源電圧で動作するランプにも適用可能である。
【0024】
電流線は管の1個または2個の封止部内に収容されており、そのうち本来の電流線として機能する部分は少なくとも封止部の界面まで延在している。封止部としてはピンチ封止部または溶融封止部が使用されることが多い。
【0025】
有利には電流線の第2のセクションすなわち本来の電流線として機能する部分の径は少なくとも電流線の第1のセクションの160%までであり、有利には110%〜140%である。巻き回されたワイヤである発光体の径dLKと本来の電流線として機能する低温部分の径deSとの関係の手がかりは、発光体から封止部の界面(封止縁部)までの平均温度のもとで、径の比が熱伝導度λの比の逆数の根から係数3より大きくは偏差しないということである。つまり径の比は熱伝導度の比の逆数の1/3倍から3倍までのあいだに存在する。したがって
【数1】

が成り立つ。
【0026】
図面の簡単な説明
以下に複数の実施例に基づき本発明について詳細に説明する。図1には炭化物発光体を備えたグローランプの第1の実施例が示されている。図2には炭化物発光体を備えたグローランプの第2の実施例が示されている。図3には従来技術の炭化物発光体を備えたグローランプが示されている。図4には電流線の第1のセクションから第2のセクションへの移行部が示されている。
【0027】
本発明の有利な実施例
図1には一方側の封止されたグローランプ1が示されており、これは石英ガラスから成る管2,封止部3および内部の電流線10を有しており、この電流線は封止部3内でシート4を介して発光体7に接続されている。発光体7は1重に巻き回され、軸線方向に延在するTaCワイヤである。その端部14は巻き回されておらず、ランプ軸線に対して横断方向に存在している。外部の給電線5は外側でシート4に接している。管の内径は5mmである。巻き回されていない端部14はランプ軸線に対して平行に屈曲され、電流線10の第1のセクション6をなしており、さらに小さな継ぎ目を経て本来の電流線の機能を果たす第2のセクション15をなしている。第1のセクションの長さX1は典型的には電流線10の全長Xの20%であり、第2のセクションの長さX2は電流線10の全長Xの80%である。電流線の第2のセクション15はレニウムから成り、溶接点8を介して電流線の第1のセクション6へ溶接されている。
【0028】
径dLK=0.125mmのタンタルワイヤの巻き回された発光体7は径deS=0.155mmのレニウムワイヤから成る本来の電流線として機能する部分15に接続されている。このことは図4に示されている。第2のセクション15のレニウムワイヤは第1のセクション6のワイヤよりも大きな径を有している。これはタンタルに比べて約35%小さいレニウムの導電性および約15%小さいレニウムの放熱度λを補償するためである。電流線10の全長Xは封止縁部12から発光体7の巻線の端部14までを計算したものである。これは低温部すなわちレニウムから成る80%の部分と高温部すなわちタンタルおよび炭化後の炭化タンタルから成る20%の部分とから成る。低温部は本来の電流線の機能を果たす第2のセクション15に対応し、高温部は発光体としての第1のセクション6に対応する。
【0029】
ここで説明している構造は他の金属炭化物、例えばハフニウム炭化物、ジルコニウム炭化物、ニオブ炭化物などの発光体を備えたランプにも適用可能である。
【0030】
図2には両側が封止された管状電灯として知られるグローランプ20が示されている。このグローランプは石英ガラス21から成る管、2つの封止部24,25および発光体26に接続された電流線27を有している。発光体26は1重に巻き回され、TaCから成る。電流線27の第1のセクション22は発光体の巻き回されていない端部によって直接に形成されており、溶接点30を介して、オスミウムから成る本来の電流線として機能する部分である第2のセクション29に接続されている。第2のセクション29は周知のように封止部24,25に接合されたベース部28で終端している。管の内径は15mmである。発光体はリング状支承部またはガラスフィンガを介して管内でセンタリングされる。これらの手段は公知である。ガラスフィンガを使用する場合、ガラスフィンガによって包囲される発光体の領域をRe,RuまたはOsなどの他の材料から成る阻止部材として形成するか、または当該の領域に相応のコーティングを設けると有利である。
【0031】
一般には、ランプは、炭化タンタルのワイヤから成りかつ1重に巻き回された発光体を備えていると有利である。
【0032】
管は5mm〜35mm、有利には8mm〜15mmの管径を有する石英ガラスまたは硬質ガラスから成る。
【0033】
充填ガスは主として不活性ガス、特にAr,KrまたはXeなどの希ガスであり、場合により少量の窒素、例えば15mol%までの窒素が調量される。これにさらに炭化水素、水素およびハロゲン添加物を添加してもよい。
【0034】
有利には巻き回されたワイヤである発光体の材料として、ジルコニウム炭化物、ハフニウム炭化物または例えば米国特許第3405328号明細書に記載されている種々の炭化物の合金が適している。
【0035】
これに代えて、例えばレニウムワイヤなどの支持体材料および炭素ファイバなどのコアから成る発光体を用い、このコアに炭化タンタルまたは他の金属炭化物をコーティングすることもできる。これについては未公開の独国出願第10356651.1号明細書を参照されたい。
【0036】
別の手段として、TaCから成る発光体上にまず炭素を析出させる。これは例えばTaCを高濃度のCH雰囲気において加熱することにより行われる。次に当該の炭素層上に炭化タンタルが堆積される。例えばCVDプロセスにおいてタンタルが堆積され、周囲の炭素を通しておよび/または外部から、CHを含む雰囲気において加熱することによりこれが炭化される。炭素ファイバのコーティングとは異なり、TaC発光体はタンタル成分のために任意の形状に製造することが容易であるという利点を有する。
【0037】
基本的には充填ガスについて炭素成分0.1mol%〜5mol%、特に2mol%が相当する。水素成分は有利には少なくとも炭素成分がある場合、当該の炭素成分の2倍〜8倍である。ハロゲン成分は最大で炭素成分の1/2、有利には1/5〜1/20であり、特に有利には1/10である。ハロゲン成分は最大で水素成分に相応し、有利には最大で水素成分の1/2に相応する。基本的にハロゲン成分は500ppm〜5000ppmである。これらのデータは全て冷間充填圧1barのもとでの値である。圧力が変化する場合、個々の濃度値は物質の絶対量が維持されるように換算される。例えば圧力が2倍になったとき、全ての濃度のppm値は1/2になる。
【0038】
具体的な試験は24V/100Wのランプに対して行われた。色温度は3800Kである。ランプは径125μmの炭化タンタルから得られたTaCワイヤを発光体として使用している。このワイヤは1重に巻き回されている。このランプは、径190μmおよびそれ以外の条件の等しいワイヤから成る発光体を備えたランプに比べて、格段に良好な破損耐性を示した。破損抵抗試験は衝撃振子を用いて行われた。
【0039】
通常の、モリブデンから成る硬い電極支持体を使用する同様のランプは著しく破損しやすい。なぜなら、中実のモリブデン支持体を使用する場合、発光体の位置とモリブデン電極およびタンタル巻線の接続点とが近いと温度がきわめて低くなり、炭化プロセスが終了せず、脆弱な亜炭化物が支配的となってしまうからである。この問題を解決するには付加的なコストをかけなければならない。例えば、炭化前にTa,Hf,Nb,Zrまたはこれらの金属の合金から形成される発光体の端部が炭化に対してコーティングにより保護される。
【0040】
前述のケースに代えてMoまたはWから成る電極支持体を設け、熱伝導の値を小さくするためにこれを薄くし、接合点近傍のTa巻線も完全に炭化されるようにすると、ワイヤ径が小さいのでMo電極そのものも完全に炭化し、これが弱点となってしまう。この問題を解決するには、電極自体を炭化防止層または炭化にきわめて時間のかかる層でコーティングしなければならない。例えば電極は上述した金属すなわちレニウム、オスミウム、ルテニウムまたはイリジウムのいずれかから成る層によってコーティングされる。これに代えて電極のコーティングは例えばハフニウムホウ化物、ジルコニウムホウ化物およびニオブホウ化物で行ってもよい。例えばモリブデンホウ化物はモリブデン炭化物よりも安定しているので、電極を外部からホウ化によってパシベーションすることもできる。別の手段として、Mo電極またはW電極のコーティングをハフニウム窒化物、ジルコニウム窒化物またはニオブ窒化物などの窒化物で行ってもよい。これらの化合物は炭化プロセスでは炭化物への変換が緩慢であり、層厚さをきちんと選定すれば充分に炭化プロセスを耐え抜くことができる。
【0041】
本発明の電流線を備えた発光体は通常の条件のもとでのランプの搬送にも良好に適している。他のコンセプトでは発光体が破損しやすくなり、ランプの搬送に特別な措置を導入しなくてはならなくなる。
【0042】
電流線全体の長さ、すなわち発光体から封止縁部までの距離はこの場合には問題とならない。なぜならTaからTaCへの不完全な変換に起因する問題が2つのステップによって解決されているからである。すなわち電流線の下方の第2のセクションは別の材料から形成されており、また第1のセクションは短く、材料であるTaが確実にTaCへ変換されるのである。管の最大長は例えば25mmを問題なく上回り、50mmまたは75mmまで延長することができる。
【0043】
10mmの管径を有しかつTaCから成る発光体を備えたランプは、具体的には、冷間充填圧1barのKr+1%C+1%H+0.05%CHBrの成分から成る充填ガスを有する。濃度値はmol%で表される。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】炭化物発光体を備えたグローランプの第1の実施例を示す図である。
【図2】炭化物発光体を備えたグローランプの第2の実施例を示す図である。
【図3】従来技術の炭化物発光体を備えたグローランプを示す図である。
【図4】電流線の第1のセクションから第2のセクションへの移行部を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化物を含む発光体(7)および該発光体を支承する電流線(10)を有しており、前記発光体は充填ガスとともに管(2)内に真空密に封入されており、前記発光体はタングステンよりも融点の高い金属炭化物を含む、
発光体を備えたグローランプにおいて、
少なくとも1つの電流線(10)の第1のセクション(6)は発光体(7)と一体にワイヤから成形されており、電流線(10)のベースから遠い側の第2のセクション(15)は例えば溶接部(8)を介して前記第1のセクション(6)に接合されており、また該第2のセクションは炭化物を形成しない硬質かつ高融点の材料から成り、さらに該第2のセクションの材料の導電性および熱伝導性は前記発光体の材料の導電性および熱伝導性と同じかそれより小さいオーダーである
ことを特徴とする発光体を備えたグローランプ。
【請求項2】
前記発光体(7)は少なくともその表面が炭化タンタルから成り、例えば端部(14)を除いた部分が1重に巻き回されているワイヤである、請求項1記載のランプ。
【請求項3】
前記管(2)は石英ガラスまたは硬質ガラスから成り、管径5mm〜35mm、有利には8mm〜15mmを有する、請求項1記載のランプ。
【請求項4】
前記充填ガスは不活性ガス、例えば希ガスであり、場合により少量の窒素、少なくとも1つの炭化水素、水素、少なくとも1つのハロゲン添加物を含む、請求項1記載のランプ。
【請求項5】
前記発光体(7)は1重に巻き回されたワイヤであり、有利には径50μm〜300μm、特に有利には径150μmまでである、請求項1記載のランプ。
【請求項6】
前記電流線の第2のセクション(15)の長さは前記発光体の近傍位置まで延在するように選定されており、前記電流線の第1のセクション(6)の温度は前記溶接部(8)の領域を含めて少なくとも2000℃以上である、請求項1記載のランプ。
【請求項7】
前記電流線の第2のセクション(15)の材料として金属であるレニウム、オスミウム、ルテニウムまたはイリジウムのいずれかが単独でまたは合金として使用される、請求項1記載のランプ。
【請求項8】
前記電流線(10)は前記管の1個または2個の封止部(3)内に収容されており、そのうち本来の電流線として機能する部分は少なくとも前記封止部の界面(12)まで延在している、請求項1記載のランプ。
【請求項9】
巻き回されたワイヤである発光体の径dLKと本来の電流線として機能する部分の径deSとの比が、前記発光体(7)から前記封止部の界面(12)までの平均温度のもとで、熱伝導度λの比の逆数の根から係数3より大きくは偏差しない、つまり径の比が熱伝導度の比の逆数の根の1/3倍から3倍までのあいだに存在し、
【数1】

が成り立つ、請求項1記載のランプ。
【請求項10】
前記電流線の第2のセクションの径すなわち本来の電流線として機能する部分の径は最大で前記電流線の第1のセクションの160%までであり、有利には少なくとも110%〜140%である、請求項9記載のランプ。
【請求項11】
前記電流線の第2のセクションの材料として炭化物を形成する金属、例えばモリブデンまたはタングステンのいずれかが使用され、該第2のセクションの表面がレニウム、オスミウム、ルテニウムまたはイリジウムのいずれかによってコーティングされる、請求項1記載のランプ。
【請求項12】
前記電流線の第2のセクションの材料として炭化物を形成する金属、例えばモリブデンまたはタングステンのいずれかが使用され、該第2のセクションの表面がホウ化ハフニウム、ホウ化ニオブまたはホウ化ジルコニウムなどのホウ化物または窒化ハフニウム、窒化ニオブまたは窒化ジルコニウムなどの窒化物によってコーティングされる、請求項1記載のランプ。
【請求項13】
前記電流線の第2のセクションの材料として炭化物を形成する金属、例えばモリブデンまたはタングステンのいずれかが使用され、該第2のセクションの表面は例えばホウ化物によりパシベーションされる、請求項1記載のランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−507100(P2008−507100A)
【公表日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−521781(P2007−521781)
【出願日】平成17年7月6日(2005.7.6)
【国際出願番号】PCT/DE2005/001199
【国際公開番号】WO2006/007815
【国際公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(390009472)パテント−トロイハント−ゲゼルシヤフト フユール エレクトリツシエ グリユーラムペン ミツト ベシユレンクテル ハフツング (152)
【氏名又は名称原語表記】Patent−Treuhand−Gesellschaft fuer elektrische Gluehlampen mbH
【住所又は居所原語表記】Hellabrunner Strasse 1, Muenchen, Germany