説明

炭化物含有発光体を有する白熱ランプ

白熱ランプには発光体が備えられている。この発光体は充填物とともにエンベロープ内に真空に収容されている。ここでこの発光体は金属炭化物を有している。この金属炭化物の融点はタングステンの融点を上回る。電流供給部は、ワイヤから成る発光体と統合されて製造されており、コーティングされている。このコーティングは脆弱性を低減させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、請求項1記載の上位概念に記載された、炭化物含有発光体を有する白熱ランプから出発する。ここでこのランプは特に、TaCから成る発光体を有するハロゲン白熱ランプのことであるか、またはその発光体がTaCを構成部分またはコーティングとして含むハロゲン白熱ランプのことである。
【0002】
従来技術
多くの文献から、炭化物含有発光体を有する白熱ランプが公知である。これまでにまだ解決されていない問題は、発光体の強く制限されている寿命と高い脆弱性である。US1854970号に記載された、脆弱性の問題の解決方法は、発光体をタングステン等からなる金属コアと、その上に被着されたレニウム含有層から製造することである。ここでは引き続き、炭化タンタルコーティングが被着される。
【0003】
炭化タンタルは、タングステンより約500K高い融点を有している。従って、炭化タンタルから成る発光体の温度を、タングステンから成る発光体の温度より格段に高く調節することができる。発光体の温度が高く、かつ可視スペクトル領域における炭化タンタルの放射が強いので、炭化タンタルランプ(=炭化タンタルを発光体として有するランプ)によって、タングステンから成る従来の電球体を有するランプよりも、格段に高い光量が得られる。これまで、炭化タンタルの商品化には主に炭化タンタルの脆弱性および高温時の発光体の迅速な脱炭化、ないし崩壊がネックとなっていた。脆弱性の問題を克服するために、特許文献において例えば最適な炭化方法の使用(DE1.558.712、US3.650.850)、他の炭化物/材料とTaCとの合金(例えばTaC+WC、TaC+HfC等、US3.405.328、US4.032,809を参照)の使用および保持材料の使用(US1854970を参照)が提案されている。
【0004】
TaCランプの構成時に製造技術的なコストをできるだけ少なくするために、TaCランプを、水晶技術における従来の低圧ハロゲンランプと同じ幾何学的形状で構成することが提案されている(例えば図3参照)。
【0005】
図3は、片側で圧潰されている白熱ランプ1を示している。これは硬質ガラスからなるエンベロープ2および圧潰部3を有している。この圧潰部内には、2つのフィルム4が埋め込まれている。フィルム4では、それぞれ外部電流供給部(5)および内部電流供給部6が終端している。この内部電流供給部は、エンベロープの内部で、軸方向の発光体7と接続されている。
【0006】
このためにはまずはじめに、タンタルワイヤからなるフィラメントが製造され、このフィラメントを使用してロッド状ランプが形成される。引き続き、ロッド状ランプ内でタンタルワイヤから成る発光体が、メタンと水素の混合物を用いて炭化される。炭化の基本的な特質に関しては、例えば、S.Okoli、R.Haubner、B.Lux著「Surface and Coatings Technology47(1991)、585頁〜599頁およびG.Hoerz著「Metall27」(1973)、680頁を参照されたい。この関連においては、炭化反応の2つの特質が重要である:
(1)炭化時には、はじめに壊れやすい亜炭化物TaCが形成される。その後、炭素をさらに供給するとTaC相が形成される。
(2)炭化反応は、温度が高いほど迅速に行われる。
【0007】
発光体を炭化のために必要な温度まで加熱する、最も簡単な方法は、適切な電圧を発光体に印加することである。しかしこの場合には、熱導出によって、発光体の端部から圧潰部へ向かって温度下降が生じてしまう。発光体では、あらゆる場合に充分に高い温度が調節されるので、完全な炭化が行われる。しかし圧潰部のすぐ上の温度が低いと(主に、700℃を下回る)、炭化は全く行われない。この領域で完全な炭化に必要な温度を調節設定するのは困難である。タンタルから成るワイヤーがまだ存在している、圧潰部に直接的に接している領域と、完全に炭化された発光体の間には、壊れやすい亜炭化物TaCが生じる領域が存在する。衝撃負荷時に発光体は有利にはまさにこの領域で壊れる。課題は、この領域における脆弱性が低減されるように、この領域をできる限り保護するないし安定させることである。このような安定化は、少なくとも、ランプを顧客へ確実に搬送することを可能にする。
【0008】
壊れやすい亜炭化物TaCが占有するクリチカルな領域を被覆コイルまたはスリーブを用いて保護することが可能である。これはDE−Az102004014211.4(まだ公開されていない)に記載されている。
【0009】
択一的に、タンタルから成る発光体をランプ内に組み込む前に炭化することもできる。しかし、この場合にはTaCから成るフィラメントの取り扱いがクリチカルである。なぜなら、TaCはまだ非常に脆弱だからである。従ってこのプロセスはほぼ実行不可能である。
【0010】
本発明の説明
本発明の課題は、請求項1の上位概念に記載された、炭化物含有発光体を有する白熱ランプ、殊にハロゲン充填ガスを伴う白熱ランプの寿命を長くすること、かつこの発光体の脆弱性の問題を克服することである。
【0011】
上記の課題は、請求項1の特徴部分に記載された構成によって解決される。特に有利な構成は、従属請求項に記載されている。
【0012】
本発明では、このために統合的な発光体が使用される。ここでは、2つの電流供給部が巻かれた発光体の延長部である。発光体と電流供給部は唯一のワイヤから構成される。電流供給部は部分的にコーティングされる。ここでは、コーティングと発光体のある程度の間隔が有利である。この間隔は、作動中に、電流供給部のコーティングされた部分とコーティングされていない部分の間の境界箇所で達する温度のために設けられている。
【0013】
壊れやすいTaCが生じる領域における発光体の脆弱性を回避ないし低減させるために、コーティングの2つの異なる実施形態を提案する。
【0014】
第1の有利な実施形態は、TaCフィラメントの炭化を実施する前に、次のような箇所で、炭化の前にコーティングによって保護するという考えに基づいている。すなわちそこに生じる低い温度が原因でタンタルの炭化が終了せず、それに相応して主に壊れやすい亜炭化物TaCが生じる箇所である。コーティングは、主に、タンタルを相応する領域において、炭化の間ポンプチューブを介して供給される炭素含有雰囲気から遮蔽する。従ってこの箇所では炭化は行われない。2000℃を超える非常に高い温度で、有利には約2300℃を越える温度にある、元来のタンタルから成る発光体の領域だけには、保護層が設けられず、従って完全にTaCに炭化される(正確な境界値は各周辺条件に依存する)。添付の図1を参照されたい。壊れやすい亜炭化物TaCの形成は、炭素が温度勾配の方向において縦方向に拡散することによって、完全には回避されない。しかし、比較的小さい領域に制限することができる。第2には、コーティングは、亜炭化物が存在する幅の狭い領域が保護層によって機械的に安定される場合に、出力側(Abgangs)の安定化のためにも用いられる(表面で生じる亀裂形成の回避)。保護層は、顧客への確実なランプ搬送を保証するために、少なくとも炭化プロセスを克服しなければならない。その後に保護層は、具体的なコストに依存して、もはや必ずしも必要ではなくなる;拡散または科学的プロセスによる保護層の形成は(部分的にでも)場合によって甘受される。しかし保護層は通常は所望されていない。保護層の材料は、保護層の無い場合に壊れやすい亜炭化物が生じてしまうであろう温度では溶融または気化してはならない。すなわち融点はできるだけ約2000℃を超えるべきであり、より良好には格段に2000℃を越えるべきである。TaCから成る移行領域の保護時には、この原理に従って次のことが重要である。すなわち、出力側でコーティングが発光体近傍の箇所まで取り付けられ、出力側でのコーティングされていない箇所と、コーティングされている箇所の間の移行領域が既に次のような高い温度にあることが重要である。すなわち、コーティングの終端部に直接的に続いている電流供給部の領域で、タンタルの完全な炭化が行われるような高い温度にあることが重要である。従って通常は、コーティングは−少なくともコーティングされていない領域への移行部近傍の領域において−次のように薄くなければならない。すなわち、ここでコーティングによって高い熱放出が生じないように薄くなければならない。典型的な層厚は、1〜50μmである。この各値は、使用されるコーティング材料およびコーティングされるべきワイヤーの厚さに依存する。出力側近傍の「比較的低温の」領域では、付加的に機械的安定性を得るために、コーティングはより厚くてもよい。すなわち層厚は勾配を辿り、ここで圧潰部縁部の方向におい層厚は連続的に、または跳躍的に上昇する。
【0015】
第2の有利な実施形態では、出力側は比較的厚い材料層によって囲まれており、これによって一方では出力側は機械的に安定し、他方で、壊れやすい移行相TaCを伴うこの箇所は、発光体近傍の箇所へシフトされ、「てこの柄を短くすること」によって、衝突負荷時に、衝突耐性が高められる。典型的な層厚は、50〜200μmの領域にある。この場合、比較的厚い保護コーティングが、DE−Az102004014211.4(まだ公開されていない)に記載された被覆コイルと同様の機能を担う。この場合には、保護コーティングに対する材料として、原理1で挙げた物質の他に、次のような金属も使用可能である。すなわち、炭素によって、同じように壊れやすいが、その脆弱性はTaCの脆弱性ほど高くない炭化物を構成する金属である。例えば、タングステン、モリブデン、ハフニウム、ニオブまたはジルコニウム等の金属ないしその炭化物が考えられる。例えば炭化ホウ素または炭化ケイ素等の非金属の炭化物の使用も可能である。
【0016】
比較的高い要求に対しては、第1の実施形態に相応する保護層の使用が、DE−Az102004014211.4に記載された被覆コイルの使用と組み合わされる;ここから結果として、スイッチオンに対する安定性(Einschaltfestigkeit)の上昇等のさらなる利点が生じる。コーティングは、出力側で炭化を阻止する、ないしは遅らせる;被覆コイルは、さらなる安定化のために用いられる。重要なのは、コーティングがさらに、被覆コイルの終端部を超えて、発光体の方向に延長されることである。なぜなら、被覆コイルの終端部ではまだしばしば、炭化が終結できないほど低い温度が生じてしまうからである。
【0017】
ここに記載した本発明は殊に、エンベロープ体積が低減されたランプに関する。ここでエンベロープ内壁から発光体までの間隔、殊にその発光部分までの間隔は、最大で18mmである。殊にエンベロープ直径は最大で35mmであり、殊に5mm〜25mmの間の領域であり、有利には8mm〜15mmの間の領域である。このように小さい寸法のエンベロープの場合、殊に直径の小さいエンベロープの場合、固相がエンベロープ壁に析出される危険性に対する措置が必ずなされなければならない。このような小さいエンベロープ直径の場合には、フィラメントの色温度に応じて、エンベロープの黒化が2重循環プロセスを介して、まだ公開されていないDE−Az10356651.1に記載されているように、格段に低減される、ないしは回避される。
【0018】
有利な実施形態では、電流供給部は、少なくとも部分的にコーティングによって被覆されることで保護される。
【0019】
殊に、軸に対して軸方向または横方向に配置された発光体は、片側で、または両側で閉成された、ことに圧潰されたエンベロープである。
【0020】
有利には、発光体は、一重巻きされたワイヤである。電流供給部として使用されるこのワイヤの終端部は巻かれていない。発光体に対するワイヤの典型的な直径は50〜300μmである。典型的に発光体は、5〜20回の巻きから構成されている。発光体のできるだけ高い安定性を得るための有利な上昇係数は、1.4〜2.8である。
【0021】
特に有利には、コーティングは電流供給部の領域上に延在している。これは、エンベロープ内部からエンベロープ材料内に侵入している。通常エンベロープは1つまたは2つの圧潰部によって閉成されている。このような領域は圧潰部縁部と称される。さらに、壊れやすさは、まさにこの圧潰部縁部の領域において特に高い。なぜなら、ここでは高い湾曲モーメントが生じるからである。
【0022】
特に有利には、コーティングは、エンベロープ内部の電流供給部の長さの少なくとも10%を超えて延在し、有利には少なくとも50%を超えて、特に有利には少なくとも80%を超えて延在する。比較的薄い層を有する第1の実施形態に相応するコーティングにとって重要なのは、コーティングが発光体近傍箇所まで引き上げられ、保護されていない箇所での温度が既に、ここで完全な炭素化合が行われ、壊れやすい亜炭化物TaCが生じるのが回避されるほど高いことである。第2の実施形態に相応するコーティングは支持部として用いられる;これはできるだけ幅広く、出力側へ引き上げられるべきであり、これによって、できるだけ高い安定が得られる。
【0023】
この観点は特に重要である。なぜなら、軸方向の発光体のコンセプトは基本的に、効果を上げる被覆をエンベロープ上に取り付けるのに良好に適しているからである。例えば、US−A5548182に記載されているように、いわゆる赤外コーティング(IRC)が公知である。相応にエンベロープも特別にこれに合わせて整合され、例えば公知のように、楕円状または円筒状に成形される。
【0024】
特別な利点はハロゲン充填物の使用において生じる。なぜなら、適切な寸法設計時には、発光体材料に対する循環プロセスだけでなく、コーティングの材料に対する循環プロセスも考慮されるからである。例は、Reをコーティング材料として使用し、Brをアクティブなハロゲンとして使用する場合のRe−Br循環プロセスである。このような充填はそれ自体公知である。殊にここでこれは、まだ公開されていないDE−A10356651.1に記載されているような、2重循環プロセスに対する充填のことである。
【0025】
さらに本発明の構造は、従来の構造よりも格段に容易である。なぜなら殊に、最大で80VまでのNV用途の場合には水晶の梁が必要ではなく、多くの場合に被覆コイルを省くことができ、さらに、既に炭化されている、TaCからなる発光体と電流供給部の間の問題を含む接触接続(溶接または狭持ないしはクランピング)が必要でないからである。既に炭化された、TaCから成る発光体の取り扱い時にはしばしば材料の壊れやすさの故に、発光体の端部に損傷が生じる。
【0026】
有利には、発光体の材料はTaCである。しかしHf、NbまたはZrの炭化物も適している。さらに、種々異なる炭化物を合わせたもの、例えばTaCの炭化物とHfCの炭化物を合わせたものも適している。
【0027】
本発明は殊に、最大で50Vの電圧を伴う低圧ランプに適している。なぜなら、このために必要な発光体は比較的中実に構成され、そのためにワイヤは有利には50μm〜300μmの間の直径、殊に最大で150μmの直径を、100Wの最大出力を伴う一般的な照明目的のために有することができるからである。300μmまでの厚いワイヤは殊に、出力1000Wまでのフォト光学用途の場合に必要とされる。特に有利には、本発明は片側で圧潰されているランプに対して使用される。なぜならここでは発光体は比較的短く保たれ、これは同じように脆弱性を低減させるからである。しかし、両側が圧潰されたランプおよび配電電圧ランプに対する使用も可能である。
【0028】
図面の簡単な説明
以下で、本発明を複数の実施例に基づいてより詳細に説明する。
【0029】
図1は、第1の実施例に従った炭化物発光体を有する白熱ランプであり、
図2は、第2の実施例に従った炭化物発光体を有する白熱ランプであり、
図3は、従来技術の、炭化物発光体を有する白熱ランプである。
【0030】
本発明の有利な実施形態
図1は、片側が圧潰されている白熱ランプ1を示している。この白熱ランプは、水晶ガラスから成るエンベロープ2と、圧潰部3と、内部の電流供給部6を有している。この内部電流供給部は、圧潰部3内のフィルム4を発光体7と接続させる。発光体は一重に巻かれた、軸方向に配置されたTaCから成るワイヤである。発光体の巻かれていない終端部14は、ランプ軸に対して横向きにさらに案内されている。外部の給電線5は外側でフィルム4に接続されている。エンベロープの内径は5mmである。フィラメント端部14はさらに、ランプ軸に対して平行に曲げられ、そこで、統合された延長部として内部の電流共有部6を構成する。電流供給部6には少なくとも、作動時に2000℃より高くならない、その全長の一部にわたってコーティング8が設けられている。これは、以下に記載する材料から成る。
【0031】
第1の実施形態に対する実施例
例えば、金属であるレニウム(融点:3453K)、ルテニウム(融点:2583K)、オスミウム(融点:3318K)およびイリジウム(融点:2683K)は、炭化物を形成しない、ないしは僅かな程度しか炭化物を形成しない。ここでは炭素は比較的僅かにしか溶性ではない。これらは炭素に対して実質的に不浸透性である。例えば、発光体でのルテニウムの使用に関しては、特許文献US1854970号を参照されたい。従って、まずは約2500Kを下回る温度までしか加熱されない、タンタルからなる発光体の領域をこれらの金属から成る保護層によって取り囲むことができる。温度が高い場合には、タンタルおよび上述した金属の材料は相互に拡散するので、少なくとも炭化プロセスに耐えるためには、保護層の厚さは充分に大きく選択されなければならない。典型的に、層の厚さは1μm〜50μmの間である;これは炭化プロセスの設計に応じる。金属の被着は、例えば電気分解、CVD析出またはスパッタリングプロセスで行う。
【0032】
択一的に、保護層の材料が、高融点化合物から成ってもよい。これは発光体の出力側のタンタルとも、炭素を含有しているランプの雰囲気とも反応してはならない、ないしはタンタル内に内方拡散してはならない。
【0033】
例えばHfB、ZrB、NbBおよびTiBは、少なくとも2800Kまで、炭化物への気相からの炭素含有化合物との反応に対して安定している。さらに化合物HfB、ZrBおよびNbBは、全体的にここで関連している温度領域全体にわたって、タンタルとの反応に対して安定している。これとは異なり、TiBは、タンタルによってTaBに変化する(ここで生じるチタンはいずれにせよ過度に低い融点を有している)。従って、例えば、HfB、ZrBおよびNbBは必要な保護層に対する可能な材料である。なぜなら、これらはタンタルから成る基板とも、炭素含有のランプ雰囲気とも反応しないからである。このような場合には、比較的薄い層厚が使用可能である。これは有利には0.5μm〜5μmの間の領域にある。ホウ化タンタルの使用(場合によっては、表面のホウ化によって得られる)も、個々の場合には有利である。なぜなら、ホウ化タンタルは炭素と気相において反応せず、まずはホウ素がワイヤの内部に内方拡散しなくてはならないからである。これによって炭素のさらなる拡散が充分に長く遅延される。
【0034】
窒化物HfN、ZrN、NbN、TiN、VNおよびTaNは、炭化物へのメタンから成る炭素との反応に対して、約1000Kまでの温度またはそれを下回る温度でしか安定していない。殊にZrNは比較的高い温度(約1500K)まで、ランプ雰囲気内の炭素と反応せず、HfNも(1100Kまで常に)比較的安定している。ZrNおよびHfNは、該当する温度領域ではタンタルと反応してTaNにはならない。すなわち、窒化ジルコニウムと窒化ハフニウムは、窒化タンタルよりも安定している。これとは異なり、NbNおよびVNはタンタルと反応して、TaNになる;TiNは約2000Kの過度に低い温度のもとで崩壊する。従って、2つの材料HfNおよびZrNは、保護カバーに対する材料として条件付きで適している。約1500Kを上回る高温でHfNおよびZrNが各炭化物に変わるためには、特定の反応時間が必要である。これは、その下にあるタンタルワイヤの領域を炭化から保護するために充分である。これは炭化時の方法実行および積層される層の厚さに応じる。同じように、TaNによるタンタルワイヤのコーティングも該当領域において個々の場合において、実際に発光体の炭化の間に役割を果たさないように、該当領域の炭化を遅らせるのに充分である。
【0035】
さらに、2つの層材料から成るシステムの使用も可能である。例えば、タンタルワイヤはまずはZrNまたはHfNによってコーティングされる。これら2つは、該当する温度の領域においてタンタルと反応しない。タンタルの上に被着された第1の層はその後、例えばレニウム、オスミウム等によってコーティングされる。これはZrNないしHfNと、さらにランプ雰囲気からの炭素と反応する。このようにして、個々の層システムのそれぞれの所望されていない特性が避けられる。これはすなわち、金属であるレニウム、オスミウム等がタンタル内に拡散すること、および窒化ジルコニウムおよび窒化ハフニウムが反応して各炭化物に成ることである。このようなシステムは比較的長い時間にわたって安定している。
【0036】
さらに、タンタルワイヤの該当領域を窒化ホウ素によってコーティングすることができる。窒化ホウ素が分解し、これに続いてタンタルが反応してタンタルがホウ化タンタルまたは二ホウ化タンタルに成ること、ないし窒化タンタルの安定が低減することは、多くの場合、緩慢に進行し、タンタルの炭化は充分に長く先延ばしされる。おなじように炭化ホウ素を使用することができ、その分解時には有利には安定したホウ化タンタルまたは二ホウ化タンタルが生じ、炭化タンタルは生じない。炭化ホウ素の分解、タンタルとの反応およびタンタル内部へのホウ素原子の拡散のために必要な時間によって炭化が先延ばしされる。
【0037】
上述した例の特別なケースは、タンタルからの炭化前に存在している出力側のパッシブ化である。これは、ホウ化または窒化によって行われる。これによって、後続の炭化プロセス時には、炭化はクリチカルな温度領域において充分に長く遅延される、ないし阻止される。この場合には、保護層は出力側に被着されず、むしろ、表面はホウ素または窒素とタンタルの化学反応によって「パッシブ化」されるか、ないしは炭化の速度が充分に低減される。
【0038】
第2の実施形態に対する実施例
発光体の出力側はこの場合には層によって積層される。この層の厚さは、有利にはコーティングされるべきタンタルワイヤの直径の10分の1〜半分の間である。コーティング材料としては、原理1の説明の際に挙げられた金属の他に、付加的に、タングステン、モリブデン、ハフニウム、ジルコニウムまたは他の炭化物を構成する材料が考えられる。最も容易な場合には、保護層はタンタルから成る。ないしは始めから、出力側の領域において、発光体の領域におけるよりも、より大きい直径のタンタルワイヤが使用される。
【0039】
これまで記載した方法は、炭化ハフニウムまたは炭化ジルコニウムまたは炭化ニオブ等の他の金属の炭化物を発光体として有するランプでも使用可能である。
【0040】
図2は、両側で圧潰された白熱ランプ20を示している。これは管形電球としても公知である。このランプは、水晶ガラスから成るエンベロープ21と、2つの圧潰部24および25と、給電線27とを有している。この給電線は、発光体26と接続されている。エンベロープの内径は15mmである。発光体26は一重巻きされており、TaCから成る。電流供給部27は部分的に、ホウ化ハフニウムから成るコーティング30によって被覆されており、それ自体公知のように、圧潰部24、25上に設けられているソケット部28において終端する。
【0041】
付加的にコーティングないし、コーティングで達するピーク温度を含まないコーティングの一部は、さらに例えばモリブデンから成るフィラメントワイヤまたは固定されたスリーブによって取り囲まれる。これはDE−Az102004014211.4(まだ公開されていない)内の原理に記載されている。
【0042】
一般的に、ランプは有利には炭化タンタルから成る発光体を使用する。この発光体は有利には、一重巻きされたワイヤから成る。
【0043】
エンベロープは水晶ガラスまたは硬質ガラスから製造されており、エンベロープ直径は5mm〜35mmの間、有利には8mm〜15mmの間である。
【0044】
充填物は主に、場合によっては少量(15質量%まで)の窒素が混入されている、不活性ガス、殊にAr、KrまたはXe等の希ガスであり、さらに炭化水素、水素およびハロゲン添加物も挙げられる。
【0045】
有利には、巻かれたワイヤである発光体材料として炭化ジルコニウム、炭化ハフニウムまたは種々異なる炭化物の合金が適している。これは例えばUS−A3405328号に記載されている。
【0046】
択一的には保持材料から成る発光体も使用される。これは例えばコアとしてレニウムワイヤまたは、炭素繊維である。ここでこのコアは、炭化タンタルまたは他の金属炭化物によってコーティングされている。これに関しては、まだ公開されていない特許出願DE−Az10356651.1を参照されたい。
【0047】
さらに、TaCから成る発光体の上にまずは炭素を析出することが可能である。これは例えば、高いCH−濃度を有する雰囲気内でTaC発光体を加熱することによって行われる。その後、このような炭素層上に炭化タンタルが析出される。例えば、CVDプロセスにおいてタンタルが析出される。タンタルはその後、取り囲まれている炭素および/または、例えばCH含有雰囲気内での外部からの加熱によって炭化される。例えば炭素繊維のコーティングとは異なり、これは次のような利点を有している。すなわちTaC発光体を、タンタルから出発して、より容易に、任意な形状で製造することができるという利点を有している。
【0048】
充填物に対する基準として、0.1〜5質量%の炭素割合、殊に2質量%までの炭素割合が有効である。水素割合は、少なくとも炭素割合に相応し、有利には炭素割合の2倍〜8倍である。ハロゲン割合は最大でも炭素割合の半分であり、殊に炭化割合の5分の1〜20分の1であり、有利には10分の1である。有利にはハロゲン割合は、最大で水素割合に相当し、有利には最大で水素割合の半分に相応すべきである。ハロゲン割合に対する基準は500〜5000ppmである。これら全ての表示は、1barの低温下の全圧力に関する。圧力が変化すると、個々の濃度表示は次のように計算し直されるべきである。すなわち絶対的な物質量が得られるように計算し直されるべきである;例えば圧力が2倍になると、ppmでの濃度表示は半分になる。
【0049】
24V/100Wランプで具体的な試みを開示する。色温度は3800Kである。このランプでは、125μmの直径を有する(炭化されたタンタルから成る)TaCワイヤを使用する。このワイヤは一重に捲回されており、コーティングされていない出力側よりも格段に良好な崩壊特性を示す。崩壊テストは衝撃振り子によって行われた。
【0050】
これとは異なり、その他の点は同一である、モリブデンまたはタングステンから成る通常の堅い電極保持部を使用しているランプは格段に壊れやすい。なぜなら、中実のMo保持部を使用する場合には、Mo電極まずはタンタルから成っているフィラメントとの間の接続点に近い発光体箇所は次のような低い温度を有するからである。すなわち、炭化が終了しない程低い温度を有するからである。すなわち壊れやすい亜炭化物がそこを占有してしまう。従ってこの場合には、MoないしW保持部に固定された、発光体への電流供給部を、上述した様式で発光体の炭化を阻止する層で覆う。従って、この箇所で亜炭化物は生じない。これに関しては図4を参照されたい。コーティングされた部分とコーティングされていない部分の間の移行領域でのみ僅かに亜炭化物が生じる。しかしながらこれによって、全体的な構造に非常にコストがかかってしまう。
【0051】
このために、電極(すなわち、主にモリブデンまたはタングステンから成る中実の電流供給部)はランプ作動中に緩慢に気相から炭素を収容し、少なくとも発光体固定部近傍の高温領域において、炭素に対する「ゲッター」として作用する。これによって、循環プロセスがランプ内で阻止される;発光体への炭素の回帰はもはや行われない。これを回避するため、ないしは炭素収容を遅らせるために、多くの場合においいて、このような構造の使用時に、電極を少なくとも高温領域自体内で、炭化を阻止する層によって保護することが推奨される。例えば、電極を、上述した金属であるレニウム、オスミウム、ルテニウムまたはイリジウムによってコーティングすることができる。択一的に、ホウ化ハフニウム、ホウ化ジルコニウムおよびホウ化ニオブによる電極のコーティングが可能である。例えばホウ化モリブデンは炭化モリブデンよりも安定しているので、電極を外部からのホウ化によってパッシブ化することができる。さらに、MoまたはW電極を、窒化ハフニウム、窒化ジルコニウム、窒化ニオブ等の窒化物によってコーティングすることが可能である;このような化合物は、炭化ないしはランプ動作中に緩慢に炭化物に変化するが、このために必要な時間は、層厚が充分に厚く選択されている場合には充分に長い。上述の金属から、中実の電流供給部を完全に設計することも可能である。
【0052】
コーティングが設けられた発光体は、通常の条件のもとでのランプ搬送に適している。他のコンセプトでは、発光体は、ランプ搬送のために特別な措置がとられなければならないほど壊れやすい。
【0053】
発光体のゆがみは、フィラメント出力側が短く選択されるほど低減する。ゆがみの原因は、炭化時の体積増大である。このような体積増大は、殊に長さを増長させることによって顕著になる。障害となるゆがみによって発光体の巻き線内で傾きが生じるのではなく、発光体が全体的に、軸位置から側方へ傾斜することが明らかである。このようなゆがみの回避は、それ自体公知のようにIRCコーティングの意図でエンベロープ上で干渉フィルタを使用することが絶対的な前提条件である。これに関してはEP765528を参照されたい。
【0054】
スリーブが付加的に使用される場合には外寸は最大で、発光体のワイヤの直径の2倍に相当する。スリーブが薄くなると、その重量も低減する。
【0055】
ここではコーティングは、可能な限り密接に、給電部に直接取り付けられることは自明である。しかし、このコーティング内にさらに挿入される支柱補助部を使用してアースを離隔して付加的に挿入することは、明確には除外されない。このことは、たとえばUS3355619に開示されている。前記支持補助部は付加的なワイヤの形である。一方では、この付加的ワイヤは付加的な支持補助部として作用し、他方ではフィラメントリードにおいて、充填ガスプロセスのための付加的材料ないしは完全な充填ガス添加物は固形で、ランプ内に挿入される。ここではたとえば、被覆された炭素繊維を挿入するか、または、ハロゲン化された炭化水素化合物から成るプラスチック繊維を挿入する。
【0056】
直径が10mmであるエンベロープとTaCから成る発光体とを有するランプの場合には、次の成分から成る完全な充填ガスが得られる:
1バール(低温下の全圧力)Kr+1%のC+1%のH+0.05%のCHBr
ここでの濃度表示は、質量%である。
【0057】
電流供給部および発光体が統合的に、1つの部分から構成されている場合でさえも、次のことは排除されない。すなわち、電流供給部の材料が発光体内において金属の割合または金属炭化物の割合を、他の化学量論で有していることは排除されない。このケースは殊にレニウム等のコーティング材料が、タンタル等の他の金属から成るワイヤ内に内方拡散する場合に生じる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】第1の実施例に従った炭化物発光体を有する白熱ランプ。
【図2】第2の実施例に従った炭化物発光体を有する白熱ランプ。
【図3】従来技術の、炭化物発光体を有する白熱ランプ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化物含有発光体を有する白熱ランプであって、
当該白熱ランプは、前記発光体を保持する電流供給部を有しており、
発光体は充填物とともに、エンベロープ内に真空に収容されており、
前記発光体は金属炭化物を有しており、当該金属炭化物の融点はタングステンの融点を上回る形式のものにおいて、
前記電流供給部はワイヤから成る発光体と統合して製造されており、
前記電流供給部の少なくとも一部はコーティングによって取り囲まれている、
ことを特徴とする、炭化物含有発光体を有する白熱ランプ。
【請求項2】
前記発光体は少なくとも自身の表面で炭化タンタルから成り、殊に一重巻きされたワイヤである、請求項1記載の白熱ランプ。
【請求項3】
前記エンベロープは水晶ガラスまたは硬質ガラスから成り、5mm〜35mmの間のエンベロープ直径、有利には8mm〜15mmの間のエンベロープ直径を有している、請求項1記載の白熱ランプ。
【請求項4】
前記充填物は、場合によっては少量の窒素が添加されている、不活性ガス、殊に希ガス、並びに少なくとも炭化水素、水素および少なくともハロゲン添加物を含む、請求項1記載の白熱ランプ。
【請求項5】
前記発光体は一重に巻かれたワイヤであって、有利には50〜300μm、殊に150μmまでの直径を有している、請求項1記載の白熱ランプ。
【請求項6】
前記電流供給部上のコーティングは、前記発光体近傍箇所まで延在しており、当該電流供給部のコーティングされていない部分の温度は少なくとも約2000℃またはそれを上回る、請求項1記載の白熱ランプ。
【請求項7】
前記コーティングの厚さは最大で、前記ワイヤの直径の1/4である、請求項1記載の白熱ランプ。
【請求項8】
前記コーティングはレニウムまたはオスミウムまたはイリジウムまたはルテニウムまたはこれらの混合物から成る、請求項6記載の白熱ランプ。
【請求項9】
前記コーティングはハフニウムのホウ化物またはジルコニウムのホウ化物またはニオブのホウ化物またはタンタルのホウ化物またはそれらの混合物から成る、請求項7記載の白熱ランプ。
【請求項10】
前記コーティングは、金属窒化物、殊に窒化ハフニウムまたは窒化ジルコニウムまたは窒化タンタルから成る、または、非金属化合物、殊に窒化ホウ素または炭化ホウ素または炭化ケイ素またはこれらの混合物から成る、請求項1記載の白熱ランプ。
【請求項11】
前記電流供給部は、エンベロープの1つまたは2つの密閉部分内で密閉されており、前記コーティングは少なくとも、当該密閉部分の境界面まで延在している、請求項1記載の白熱ランプ。
【請求項12】
前記電流供給部は金属、殊にタンタルから成り、前記発光体は金属炭化物、殊に炭化タンタルから成り、
前記電流供給部にコーティングが設けられ、当該コーティングは、前記電流供給部を発光体近傍箇所まで、事前に行われた金属の化学反応によってパッシブ化し、パッシブ化されていない部分の温度が少なくとも約2000℃またはそれを上回ることによって得られる、請求項1記載の白熱ランプ。
【請求項13】
前記コーティングはホウ化タンタルまたは窒化タンタルまたはこれらの混合物から成る、請求項12記載の白熱ランプ。
【請求項14】
前記コーティングの厚さは少なくとも、前記電流供給部のワイヤの直径の1/15である、請求項1記載の白熱ランプ。
【請求項15】
前記発光体は炭化タンタルから成り、前記コーティングは金属であるタングステンまたはモリブデンまたはハフニウムまたはジルコニウムまたはタンタルまたはニオブまたは場合によっては上述した材料の炭化物から成る、請求項1記載の白熱ランプ。
【請求項16】
前記層は第1のコーティングから成り、
当該第1のコーティングの上に、当該第1のコーティングを部分的または完全に覆う、第2のコーティングまたは被覆部が取り付けられる、請求項1記載の白熱ランプ。
【請求項17】
前記電流供給部上に被着された第1の層は電流供給部の材料と反応せず、
充填物と接触している第2の層は充填物と反応せず、
当該2つの層の材料は相互に反応せず、少なくとも炭化の持続時間の間は相互に内方拡散しない、請求項16記載の白熱ランプ。
【請求項18】
直接的に電流供給部上に被着されている第1の層は窒化ジルコニウムまたは窒化ハフニウムから成り、
充填物と接触接続している第2の層はレニウムまたはオスミウムから成る、請求項16記載の白熱ランプ。
【請求項19】
前記発光体への電流供給部は、例えばWまたはMoから成る、格段に大きい直径を有する別の電流供給部、いわゆる電極に固定されており、
前記発光体への電流供給部は自身の全長にわたって、または部分的に前記発光体固定部近傍の比較的高温の領域においてのみ、請求項1から18までのいずれか1項に記載された様式でコーティングされている、請求項1記載の白熱ランプ。
【請求項20】
前記電極の表面は、レニウムまたはオスミウムまたはルテニウムまたはイリジウムによってコーティングされている、請求項19記載の白熱ランプ。
【請求項21】
前記電極の表面はホウ化物、例えばホウ化ハフニウムまたはホウ化ニオブまたはホウ化ジルコニウムによって、または窒化物、例えば窒化ハフニウム、窒化ニオブまたは窒化ジルコニウムによってコーティングされている、請求項19記載の白熱ランプ。
【請求項22】
前記電極の表面は、殊にホウ化によってパッシブ化されている、請求項19記載の白熱ランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−507099(P2008−507099A)
【公表日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−521780(P2007−521780)
【出願日】平成17年7月6日(2005.7.6)
【国際出願番号】PCT/DE2005/001198
【国際公開番号】WO2006/007814
【国際公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(390009472)パテント−トロイハント−ゲゼルシヤフト フユール エレクトリツシエ グリユーラムペン ミツト ベシユレンクテル ハフツング (152)
【氏名又は名称原語表記】Patent−Treuhand−Gesellschaft fuer elektrische Gluehlampen mbH
【住所又は居所原語表記】Hellabrunner Strasse 1, Muenchen, Germany