炭化珪素半導体装置およびその製造方法
【課題】ゲート−ソース間およびゲート−ドレイン間のキャパシタンスの低減と、JFETをオンさせる際に必要なゲート印加電圧が高電圧になることを抑制する。
【解決手段】凹部4c内に形成されたi型(イントリンシック半導体)側壁層5を介してp+型ゲート領域6を形成する。このような構成とすれば、n+型層4とp+型ゲート領域6との間にさらにp+型ゲート領域6よりも低濃度のp-型層が必要とされない。このため、n-型チャネル層3に直接接触している高濃度のp+型ゲート領域6によって、n-型チャネル層3内に伸びる空乏層幅を制御できる。したがって、n+型層4とp+型ゲート領域6との間にさらにp-型層が備えられる場合と比較して、ゲート印加電圧が高電圧になることを抑制できる。また、p+型ゲート領域6の側面がi型側壁層5によってn+型層4と分離されるため、ゲート−ソース間およびゲート−ドレイン間のキャパシタンスを低減できる。
【解決手段】凹部4c内に形成されたi型(イントリンシック半導体)側壁層5を介してp+型ゲート領域6を形成する。このような構成とすれば、n+型層4とp+型ゲート領域6との間にさらにp+型ゲート領域6よりも低濃度のp-型層が必要とされない。このため、n-型チャネル層3に直接接触している高濃度のp+型ゲート領域6によって、n-型チャネル層3内に伸びる空乏層幅を制御できる。したがって、n+型層4とp+型ゲート領域6との間にさらにp-型層が備えられる場合と比較して、ゲート印加電圧が高電圧になることを抑制できる。また、p+型ゲート領域6の側面がi型側壁層5によってn+型層4と分離されるため、ゲート−ソース間およびゲート−ドレイン間のキャパシタンスを低減できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、JFETもしくはMESFETを備えた半導体装置およびその製造方法に関するもので、ワイドバンドギャップ半導体、特に炭化珪素(以下、SiCという)を用いたSiC半導体装置に適用すると好ましい。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1において、高周波かつ高耐圧に適したSiCにて構成されるJFETが提案されている。図13は、このJFETの断面図である。この図に示されるように、SiCで構成された基板J1上に、p-型バッファ層J2とn-型チャネル層J3およびn+型層J4を順に積層したのち、n+型層J4の表面からn-型チャネル層J3に達する凹部J5をエッチングにて形成している。そして、凹部J5内にp-型層J6を介してp+型ゲート領域J7を構成すると共に、p+型ゲート領域J7から離間するように、金属層J8を介してソース電極J9およびドレイン電極J10が形成されることにより、特許文献1に示されたJFETが構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第7560325号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示したノーマリーオンJFETでは、p+型ゲート領域J7が直接n+型層J4に接触させられることで濃度変化が急峻となるPN接合とならないように、p+型ゲート領域J7をp-型層J6にて囲んだ構造としている。このため、p+型ゲート領域J7とn+型層J4との間、つまりゲート−ソース間およびゲート−ドレイン間のキャパシタンスが大きくなり、高周波の実現に限界があるという問題がある。さらに、濃度の薄いp-型層J6から広がる空乏層によってn-型チャネル層J3をピンチオフさせる設計にしなければならず、JFETをオフさせる際にp+型ゲート領域J7に対して高電圧を印加しなければならないという問題もある。
【0005】
なお、ここではJFETについて説明したが、キャパシタンスが大きくなるという意味ではMESFETに関しても同様のことが言える。
【0006】
本発明は上記点に鑑みて、ゲート−ソース間およびゲート−ドレイン間のキャパシタンスの低減が図れると共に、JFETをオンさせる際に必要なゲート印加電圧が高電圧になることを抑制できるJFETを備えた半導体装置およびその製造方法を提供することを目的とする。また、ゲート−ソース間およびゲート−ドレイン間のキャパシタンスの低減が図れるMESFETを備えた半導体装置およびその製造方法を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、基板(1)の主表面の上にエピタキシャル成長にて第1導電型の半導体からなるチャネル層(3)を形成すると共に、チャネル層(3)の表面上にエピタキシャル成長にて、チャネル層(3)よりも高不純物濃度の第1導電型の半導体からなる第1導電型層(4)を形成し、第1導電型層(4)を貫通するように凹部(4c)を設けることで、第1導電型層(4)をソース領域(4a)とドレイン領域(4b)とに分離する。そして、凹部(4c)内において、該凹部(4c)の側面上にi型(イントリンシック半導体)側壁層(5)を形成すると共に、チャネル層(3)およびi型側壁層(5)の表面にエピタキシャル成長により、i型側壁層(5)によってソース領域(4a)およびドレイン領域(4b)から離間して配置される第2導電型のゲート領域(6)を形成し、さらに、このゲート領域(6)の表面にゲート電極(7)を形成した構造とすることで、JFETを構成することを特徴としている。
【0008】
このようなJFETでは、凹部(4c)内に形成されたi型側壁層(5)を介してゲート領域(6)を形成できるため、第1導電型層(4)とゲート領域(6)との間にさらにゲート領域(6)よりも低濃度の第2導電型層が必要とされない。このため、チャネル層(3)に直接接触している高濃度のゲート領域(6)によって、チャネル層(3)内に伸びる空乏層幅を制御できる。したがって、第1導電型層(4)とゲート領域(6)との間にさらに第2導電型層層が備えられる場合と比較して、ゲート印加電圧が高電圧になることを抑制することができる。また、ゲート領域(6)の側面がi型側壁層(5)によってソース領域(4a)およびドレイン領域(4b)と電気的に分離された構造とされているが、i型側壁層(5)が半絶縁性という非常に不純物濃度が低い半導体で構成されていることから、ゲート−ソース間およびゲート−ドレイン間のキャパシタンスを低減することが可能となる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1と同様の構造において、i型側壁層(5)およびチャネル層(3)の表面にショットキー電極にて構成されるゲート電極(7)を備えた構造とし、i型側壁層(5)によってソース領域(4a)およびドレイン領域(4b)からゲート電極(7)が離間して配置されるようにしたMESFETを構成することを特徴としている。
【0010】
このようなMESFETについても、凹部(4c)内に形成されたi型側壁層(5)を介してゲート電極(7)を形成できるため、ゲート−ソース間およびゲート−ドレイン間のキャパシタンスの低減することが可能となる。
【0011】
これら請求項1または2に記載のJFETもしくはMESFETを備えた構造は、請求項3に記載したように、半導体材料として、ワイドバンドギャップ半導体が用いられる半導体装置に適用すると好適である。
【0012】
請求項4に記載したように、ワイドバンドギャップ半導体としてSiCを用いる場合には、基板としてSiC基板(1)が用いられ、i型側壁層(5)を凹部(4c)内にエピタキシャル成長させられたi型SiCにて構成することができる。
【0013】
この場合、請求項5に記載したように、例えばi型側壁層(5)の不純物濃度は1×1011〜1×1014cm-3とされる。また、請求項6に記載したように、i型側壁層(5)は厚さは、0.1〜1.0μmとされる。
【0014】
また、チャネル層(3)もSiCにて構成されることになるが、この場合、請求項7に記載したように、チャネル層(3)の不純物濃度は、例えば1×1016〜1×1018cm-3とされる。同様に、ゲート領域(6)もSiCにて構成されることになり、この場合、請求項8に記載したように、ゲート領域(6)の不純物濃度は、例えば5×1018〜5×1019cm-3とされる。
【0015】
請求項9に記載の発明では、SiC基板(1)を抵抗率が1×1010〜1×1011Ω・cmである半絶縁性のSiCにて構成することを特徴としている。
【0016】
このような半絶縁性のSiCにて構成することで、JFET作動時に発生する電波を吸収することが可能であるため、高周波に適したSiC半導体装置とすることができる。
【0017】
請求項10に記載の発明では、SiC基板(1)とチャネル層(3)との間にゲート領域(6)よりも低不純物濃度で構成された第2導電型バッファ層(2)が備えられていることを特徴としている。
【0018】
このように、SiC基板(1)と第1導電型層(3)およびチャネル層(5)との間にゲート領域(6)よりも低不純物濃度で構成された第2導電型バッファ層(2)を備えることにより、耐圧を向上させることが可能となる。
【0019】
請求項11に記載の発明では、JFETが備えられる半導体装置の製造方法として、主表面を有する半導体材料で構成された基板(1)を用意し、主表面の上にエピタキシャル成長によって第1導電型の半導体にて構成されるチャネル層(3)を形成する工程と、チャネル層(3)の表面上に、エピタキシャル成長にて、チャネル層(3)よりも高不純物濃度の第1導電型の半導体からなる第1導電型層(4)を形成する工程と、第1導電型層(4)の表面から異方性エッチングを行うことにより、第1導電型層(4)を貫通して該第1導電型層(4)をソース領域(4a)とドレイン領域(4b)とに分離する凹部(4c)を形成する工程と、凹部(4c)の側面上にエピタキシャル成長によってi型側壁層(5)を形成する工程と、i型側壁層(5)の表面上および凹部(4c)の底面上にエピタキシャル成長を行うことにより、i型側壁層(5)によってソース領域(4a)およびドレイン領域(4b)から離間させられる第2導電型のゲート領域(6)を形成する工程と、ゲート領域(6)に電気的に接続されるゲート電極(7)を形成する工程と、ソース領域(4a)に対して電気的に接続されるソース電極(8)を形成する工程と、ドレイン領域(4b)に対して電気的に接続されるドレイン電極(9)を形成する工程とを行うことを特徴としている。このような製造方法により、請求項1に記載のJFETを備えた半導体装置を製造することができる。
【0020】
請求項12に記載の発明では、i型側壁層(5)を形成する工程は、凹部(4c)の底面上および側面上を含む第1導電型層(4)の表面上にエピタキシャル成長によってi型側壁層(5)を形成するためのi型層(20)を形成する工程と、該i型層(20)のうち凹部(4c)の内側に配置された領域をエッチングにて除去する工程とを含み、ゲート領域(6)を形成する工程は、i型層(20)の上にゲート領域(6)を形成するための第2導電型層(22)を形成する工程を含み、ゲート電極(7)を形成する工程において、ゲート電極(7)の少なくとも一部の層をパターニングしたのち、該パターニングされたゲート電極(7)の少なくとも一部の層をマスクとして、第2導電型層(22)およびi型層(20)をエッチングすることにより、ゲート領域(6)およびチャネル層(5)のパターニングを行うことを特徴としている。
【0021】
このように、ゲート電極(7)をマスクとしてゲート領域(6)およびi型側壁層(5)をパターニングしているため、これらをセルフアライン(自己整合)で形成することが可能となる。ゲート領域(6)をパターニングしてからゲート電極(7)を形成する場合には、小さくなったゲート領域(6)の上にゲート電極(7)を形成しなければならないため、マスクズレなどからゲート電極(7)の形成が難しくなる。しかしながら、このようにゲート電極(7)をマスクとしてゲート領域(6)およびi型側壁層(5)を形成することで、これらの形成を容易にすることが可能となる。そして、ゲート電極(7)とゲート領域(6)とを広い面積で確実に電気的に接続できることから、ゲート抵抗も低くなり、高速スイッチングが可能なJFETとすることが可能となる。
【0022】
請求項13に記載の発明では、i型側壁層(5)およびチャネル層(3)の表面にショットキー電極にて構成されるゲート電極(7)を備えた構造とし、i型側壁層(5)によってソース領域(4a)およびドレイン領域(4b)から離間してゲート電極(7)が配置されるようにしたMESFETについて、請求項19と同様の製造方法を適用していることを特徴としている。このような製造方法により、請求項2に記載したMESFETを備えた半導体装置を製造することができる。
【0023】
請求項14に記載の発明では、i型側壁層(5)を形成する工程は、凹部(4c)の底面上および側面上を含む第1導電型層(4)の表面上にエピタキシャル成長によってi型側壁層(5)を形成するためのi型層(20)を形成する工程と、該i型層(20)のうち凹部(4c)の内側に配置された領域をエッチングにて除去する工程とを含み、ゲート電極(7)を形成する工程において、ゲート電極(7)の少なくとも一部の層をパターニングしたのち、該パターニングされたゲート電極(7)の少なくとも一部の層をマスクとして、i型層(20)をエッチングすることにより、i型側壁層(5)のパターニングを行うことを特徴としている。
【0024】
このように、ゲート電極(7)をマスクとしてi型側壁層(5)をパターニングしているため、i型側壁層(5)をセルフアライン(自己整合)で形成することが可能となる。i型側壁層(5)をパターニングしてからゲート電極(7)を形成する場合には、小さくなったi型側壁層(5)の上にゲート電極(7)を形成しなければならないため、マスクズレなどからゲート電極(7)の形成が難しくなる。しかしながら、このようにゲート電極(7)をマスクとしてi型側壁層(5)を形成することで、これらの形成を容易にすることが可能となる。
【0025】
請求項15に記載の発明では、凹部(4c)を形成する工程では、第1導電型層(4)の表面に、凹部(4c)の形成予定領域が開口するフォトレジストまたはシリコン酸化膜にて構成されたマスクを配置したのち、該マスクを用いた異方性エッチングを行うことにより、凹部(4c)を該凹部(4c)の側面が底面に対して85〜86°の傾斜角度となるように形成することを特徴としている。
【0026】
このように、フォトレジストまたはシリコン酸化膜にて構成されたマスクを用いた異方性エッチングを行うことにより、凹部(4c)を形成することができる。このように形成される凹部(4c)は、側面が底面に対して85〜86°の傾斜角度となる。
【0027】
請求項16に記載の発明では、凹部(4c)を形成する工程では、第1導電型層(4)の表面に、凹部(4c)の形成予定領域が開口するメタルマスクを配置したのち、該メタルマスクを用いた異方性エッチングを行うことにより、凹部(4c)を該凹部(4c)の側面が底面に対して89〜90°の傾斜角度となるように形成することを特徴としている。
【0028】
このように、メタルマスクを用いた異方性エッチングを行うことにより、凹部(4c)を形成することができる。このように形成される凹部(4c)は、側面が底面に対して89〜90°の傾斜角度となる。
【0029】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1実施形態にかかるJFETを備えたSiC半導体装置の断面図である。
【図2】p-型バッファ層2をソース電極8に電気的に接続する場合の一例を示した断面図である。
【図3】図2に示したJFETを備えたSiC半導体装置の製造工程を示した断面図である。
【図4】図3に続くJFETを備えたSiC半導体装置の製造工程を示した断面図である。
【図5】図4に続くJFETを備えたSiC半導体装置の製造工程を示した断面図である。
【図6】図5に続くJFETを備えたSiC半導体装置の製造工程を示した断面図である。
【図7】本発明の第2実施形態にかかるJFETを備えたSiC半導体装置の断面図である。
【図8】図7に示したJFETを備えたSiC半導体装置の製造工程を示した断面図である。
【図9】本発明の第3実施形態にかかるJFETを備えたSiC半導体装置の断面図である。
【図10】本発明の第4実施形態にかかるJFETを備えたSiC半導体装置の断面図である。
【図11】本発明の第5実施形態にかかるMESFETを備えたSiC半導体装置の断面図である。
【図12】図11に示したJFETを備えたSiC半導体装置の製造工程を示した断面図である。
【図13】従来のJFETの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0032】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係るJFETを備えたSiC半導体装置の断面図である。以下、この図を参照して、SiC半導体装置に備えられたJFETの構造について説明する。
【0033】
図1に示されるSiC半導体装置は、半絶縁性(Semi-insulating)のSiC基板1を用いて形成されている。半絶縁性とは、ノンドープの半導体材料などにより構成され、半導体材料で構成されているものの絶縁材料に近い抵抗率(もしくは導電率)を有するものを意味する。例えば、本実施形態で用いている半絶縁性のSiC基板1は、抵抗率が1×1010〜1×1011Ω・cm、厚さ50〜400μm(例えば350μm)とされている。このSiC基板1の主表面の上には、p-型バッファ層2が成膜されている。このp-型バッファ層2は、より高耐圧を得るために設けられたものであり、p型不純物濃度が1×1016〜1×1017cm-3(例えば1×1016cm-3)、厚さ0.2〜2.0μm(例えば0.4μm)とされている。
【0034】
p-型バッファ層2の表面には、n-型チャネル層3が形成されている。n-型チャネル層3は、チャネル領域が形成される場所であり、例えばn型不純物濃度が1×1016〜1×1018cm-3(例えば1×1017cm-3)、厚さ0.1〜1.0μm(例えば0.2μm)とされている。
【0035】
n-型チャネル層3の表面には、n+型層4が形成されている。n+型層4は、凹部4cによって紙面左右に分離されており、紙面左側のものがn+型ソース領域4a、紙面右側のものがn+型ドレイン領域4bを構成する。これらn+型ソース領域4aおよびn+型ドレイン領域4bは、n型不純物濃度が5×1018〜1×1020cm-3(例えば2×1019cm-3)、厚さ0.1〜1.0μm(例えば0.4μm)とされている。
【0036】
凹部4cは、n+型層4の表面からn-型チャネル層3に達するように、つまりn+型層4を貫通するように設けられている。この凹部4cは、側面が基板垂直方向に平行となるように形成されていても良いし、基板垂直方向に対して若干傾斜して形成されていても良いが、凹部4cの側面は、例えばSiC基板1の主表面がC面((000−1)C面)やSi面((0001)Si面)とされる場合には、p-型バッファ層2、n-型チャネル層3およびn+型層4がSiC基板1の主表面の面方位を受け継いで成長することから、それに垂直な面であるa面とほぼ平行となる。
【0037】
凹部4c内には、当該凹部4cの側面を覆うように、i型側壁層5が形成されている。i型側壁層5は、半絶縁性であるi型SiCにて構成されており、不純物濃度が1×1011〜1×1014cm-3(例えば1×1012cm-3)、厚さ0.1〜1.0μm(例えば0.2μm)とされている。
【0038】
また、凹部4c内における底面および側面、つまりn-型チャネル層3の表面およびi型側壁層5の表面上には、p-型バッファ層2よりも高濃度となるp+型ゲート領域6が形成されている。p+型ゲート領域6は、i型側壁層5によってn+型ソース領域4aおよびn+型ドレイン領域4bから離間して配置された状態となっている。このp+型ゲート領域6は、p型不純物濃度が5×1018〜5×1019cm-3(例えば1×1019cm-3)、厚さ0.1〜1.0μm(例えば0.4μm)とされている。
【0039】
p+型ゲート領域6の表面には、ゲート電極7が形成されている。ゲート電極7の端面(側壁面)は、p+型ゲート領域6やi型側壁層5の端面(側壁面)と面一となっている。このゲート電極7は、複数の金属層の積層構造にて構成されており、例えばp+型ゲート領域6に対してオーミック接触させられるNiSi2等のNi系金属層、Ti系金属層、さらにはAl配線もしくは外部との電気的接続を行うためのワイヤとの接合性を考慮したAu層が順に形成されることで構成される。Ni系金属層は、0.1〜0.5μm(例えば0.2μm)、Ti系金属層は、0.1〜0.5μm(例えば0.1μm)、AlもしくはAu層は、1.0〜5.0μm(例えば3.0μm)とされている。なお、図1中では、ゲート電極7にp+型ゲート領域6の表面の凹みが受け継がれた形状として記載してあるが、ゲート電極7の表面が平坦になるまで埋め尽くされていても構わない。
【0040】
また、n+型ソース領域4aの上にはソース電極8が形成され、n+型ドレイン領域4bの上にはドレイン電極9が形成されている。これらソース電極8およびドレイン電極9も、例えばゲート電極7と同材料で構成されている。
【0041】
このような構造によってJFETが構成されている。そして、図示しないがシリコン酸化膜やシリコン窒化膜などで構成される層間絶縁膜や保護膜等によって、各電極間が電気的に分離されることで、本実施形態のSiC半導体装置が構成されている。
【0042】
このように構成されるSiC半導体装置に備えられたJFETは、ゲート電極7に対してゲート電圧を印加していないときには、p+型ゲート領域6からn-型チャネル層3側に伸びる空乏層(およびp-型バッファ層2からn-型チャネル層3側に伸びる空乏層)によってn-型チャネル層3がピンチオフされている。そして、この状態からゲート電極7に対してゲート電圧を印加すると、p+型ゲート領域6から伸びる空乏層が縮小される。これにより、n-型チャネル層3内にチャネル領域が形成され、チャネル領域を介してソース電極8とドレイン電極9との間に電流が流れる。このように、本実施形態のJFETは、ノーマリオフ型の素子として機能することができる。
【0043】
このようなJFETでは、凹部4c内に形成されたi型側壁層5を介してp+型ゲート領域6を形成できるため、n+型層4とp+型ゲート領域6との間にさらにp+型ゲート領域6よりも低濃度のp-型層が必要とされない。このため、n-型チャネル層3に直接接触している高濃度のp+型ゲート領域6によって、n-型チャネル層3内に伸びる空乏層幅を制御できる。したがって、n+型層4とp+型ゲート領域6との間にさらにp-型層が備えられる場合と比較して、ゲート印加電圧が高電圧になることを抑制することができる。また、高速スイッチングが可能なJFETにでき、より高周波に適したSiC半導体装置とすることが可能となる。
【0044】
また、p+型ゲート領域6の側面がi型側壁層5によってn+型層4と電気的に分離された構造とされているが、i型側壁層5が半絶縁性という非常に不純物濃度が低いi型SiCで構成されていることから、ゲート−ソース間およびゲート−ドレイン間のキャパシタンスを低減することが可能となる。
【0045】
さらに、SiC基板1を半絶縁性のもので構成することにより、JFET作動時に発生する電波を吸収することが可能であるため、より高周波に適したSiC半導体装置とすることができる。
【0046】
次に、このような構成とされるJFETを備えたSiC半導体装置の具体的な適用形態について説明する。本実施形態のJFETでは、p-型バッファ層2が備えられていることから、このp-型バッファ層2をソース電極8に電気的に接続することで、グランド接続することが可能である。図2は、p-型バッファ層2をソース電極8に電気的に接続する場合の一例を示した断面図である。
【0047】
この図に示されるようにソース電極8と電気的に接続する場所において、n+型ソース領域4aの表面からn+型ソース領域4aおよびp-型バッファ層2を貫通する凹部11が形成されている。この凹部11内にソース電極8が入り込むように形成されることにより、p-型バッファ層2をソース電極8に電気的に接続している。そして、シリコン酸化膜等で構成された層間絶縁膜12を介して、ソース電極8がゲート電極7やドレイン電極9と電気的に分離された構造とされることで、図2に示すJFETが構成されている。このように、p-型バッファ層2をソース電極8に電気的に接続することで、p-型バッファ層2をグランドに固定することが可能となる。
【0048】
なお、この図では、ゲート電極7とソース電極8およびドレイン電極9をそれぞれNi系金属層で構成される第1層7a、8a、9aと、Ti系金属で形成される第2層7b、8b、9b、およびAlまたはAuなどで構成される第3層7c、8c、9cの三層構造で構成した場合として記載している。また、SiC半導体装置のうちソース電極8よりもJFET形成領域から離れた位置に形成された凹部13は、JFETと他の領域とを素子分離するための素子分離溝を構成するものである。
【0049】
続いて、このような構成とされるJFETを備えたSiC半導体装置の製造方法について説明する。図3〜図6は、図2に示したJFETを備えたSiC半導体装置の製造工程を示した断面図である。これらの図を参照して、図2に示すJFETを備えた半導体装置の製造方法について説明する。
【0050】
〔図3(a)の工程〕
主表面がC面とされた半絶縁性のSiC基板1を用意し、そのSiC基板1の主表面の上に、p型不純物濃度が1×1016〜1×1017cm-3(例えば1×1016cm-3)、厚さ0.2〜2.0μm(例えば0.4μm)のp-型バッファ層2をエピタキシャル成長させたのち、例えばn型不純物濃度が1×1016〜1×1018cm-3(例えば1×1017cm-3)、厚さ0.1〜1.0μm(例えば0.2μm)のn-型チャネル層3をエピタキシャル成長させる。さらに、n-型チャネル層3の表面上に、n型不純物濃度が5×1018〜1×1020cm-3(例えば2×1019cm-3)、厚さ0.1〜1.0μm(例えば0.4μm)のn+型層4をエピタキシャル成長させる。
【0051】
〔図3(b)の工程〕
n+型層4を部分的にエッチングすることにより、n-型チャネル層3に達する凹部4cを形成する。具体的には、図示しないメタルマスクにて、もしくは、フォトリソグラフィ工程を経てSiO2等のエッチングマスクでn+型層4のうち凹部4cの形成領域以外の部分を覆ったのち、RIE等の異方性エッチングを行うことで凹部4cを形成する。例えば、メタルマスクを用いる場合には、凹部4cの側面の傾斜角度が89〜90°となり、SiO2等のエッチングマスクを用いる場合には、凹部4cの側面の底面に対する傾斜角度が85〜86°となるが、SiC基板1の主表面がC面((000−1)C面)やSi面((0001)Si面)とされる場合には、いずれの場合も凹部4cの側面はa面とほぼ平行になると言える。
【0052】
〔図3(c)の工程〕
n+型層4の表面および凹部4c内に、不純物濃度が1×1011〜1×1014cm-3(例えば1×1012cm-3)の半絶縁性であるi型SiCにて構成されたi型層20をエピタキシャル成長させる。
【0053】
〔図4(a)の工程〕
i型層20の表面に、凹部4cのうちi型側壁層5の形成予定領域よりも内側、つまりi型側壁層5が形成されない位置が開口するLTO等で構成されたマスク21を成膜する。
【0054】
〔図4(b)の工程〕
マスク21にてi型層20を覆った状態でRIE等による異方性エッチングを行う。これにより、凹部4c内において、i型層20のうちi型側壁層5として残されない内側の部分が除去され、凹部4c内の側壁にi型層20が残される。
【0055】
〔図4(c)の工程〕
マスク21を除去した後、凹部4c内におけるn-型チャネル層3の表面上およびi型層20の表面に、p型不純物濃度が5×1018〜5×1019cm-3(例えば1×1019cm-3)、厚さ0.1〜0.5μm(例えば0.4μm)となるp+型ゲート領域6を形成するためのp+型層22をエピタキシャル成長させる。
【0056】
〔図5(a)の工程〕
p+型ゲート領域6の表面のうち素子分離用の凹部13の形成予定領域以外をマスク23にて覆った後、RIE等の異方性エッチングを行うことでSiC基板1に達する凹部13を形成する。
【0057】
〔図5(b)の工程〕
マスク23を除去した後、再び凹部13内およびp+型ゲート領域6の表面のうち凹部11の形成予定領域以外をマスク24にて覆い、RIE等の異方性エッチングを行うことで凹部11を形成する。
【0058】
〔図5(c)の工程〕
マスク24を除去したのち、凹部11内を含めてp+型ゲート領域6の表面のうちゲート電極7の形成予定領域以外の領域を覆うように、メタルマスクもしくはシリコン酸化膜等で構成される図示しないマスクを配置したのち、ゲート電極7のうちの第1層7aおよび第2層7bを構成するNi系金属層およびTi系金属層を成膜する。そして、マスクを除去することで、リフトオフにより、ゲート電極7の形成予定領域にのみ第1層7aおよび第2層7bを残す。
【0059】
〔図6(a)の工程〕
第1層7aおよび第2層7bをマスクとして異方性エッチングを行う。これにより、第1層7aおよび第2層7bが形成された領域以外が所定厚さだけエッチングされ、p+型層22およびi型層20がパターニングされてp+型ゲート領域6およびi型側壁層5が形成されると共に、凹部11がp-型バッファ層2に達した状態になる。このような形成方法によってp+型ゲート領域6およびi型側壁層5を形成することにより、ゲート電極7の端面(側壁面)とp+型ゲート領域6やi型側壁層5の端面(側壁面)とが面一となる。
【0060】
〔図6(b)の工程〕
ソース電極8およびドレイン電極9の形成予定領域以外の領域を覆うように、メタルマスクもしくはシリコン酸化膜等で構成される図示しないマスクを配置したのち、ソース電極8およびドレイン電極9のうちの第1層8a、9aを構成するNi系金属層および第2層8b、9bを構成するTi系金属層を成膜する。そして、マスクを除去することで、リフトオフにより、ソース電極8およびドレイン電極9の形成予定領域にのみ第1層8a、9aおよび第2層8b、9bを残す。さらに、必要に応じて熱処理を行うことにより、ゲート電極7やソース電極8およびドレイン電極9の第1層7a、8a、8bをシリサイド化し、NiSi2とすることで低抵抗化することもできる。
【0061】
〔図6(c)の工程〕
基板表面全面にシリコン酸化膜等で構成される層間絶縁膜12を配置した後、パターニングしてゲート電極7の第2層7bやソース電極8およびドレイン電極9の第2層8b、9bを部分的に露出させるためのコンタクトホールを形成する。
【0062】
この後、Al層を成膜したのちパターニングしたり、もしくはAuのメッキ処理などにより、ゲート電極7とソース電極8およびドレイン電極9の第2層7b、8b、9bの上に第3層7c、8c、9cを形成する。このようにして、図2に示すJFETを備えたSiC半導体装置を製造することができる。
【0063】
このような製造方法によれば、ゲート電極7をマスクとしてp+型ゲート領域6およびi型側壁層5をパターニングしているため、これらをセルフアライン(自己整合)で形成することが可能となる。p+型ゲート領域6をパターニングしてからゲート電極7を形成する場合には、小さくなったp+型ゲート領域6の上にゲート電極7を形成しなければならないため、マスクズレなどからゲート電極7の形成が難しくなる。しかしながら、本実施形態のようにゲート電極7をマスクとしてp+型ゲート領域6およびi型側壁層5を形成することで、これらの形成を容易にすることが可能となる。そして、ゲート電極7とp+型ゲート領域6とを広い面積で確実に電気的に接続できることから、ゲート抵抗も低くなり、高速スイッチングが可能なJFETとすることが可能となる。
【0064】
さらに、n+型ソース領域4aやn+型ドレイン領域4b、n-型チャネル層3およびp+型ゲート領域6をすべてエピタキシャル成長によって形成した構造としており、イオン注入により構成した部分が無いため、ゲートリーク電流を低減することもできる。
【0065】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態のSiC半導体装置は、第1実施形態に対してゲート電極7の構造を変更したものであり、その他に関しては第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0066】
図7は、本実施形態にかかるJFETを備えたSiC半導体装置の断面図である。この図に示されるように、本実施形態では、ゲート電極7の側面がp+型ゲート領域6やi型側壁層5の端面(側壁面)と面一となっておらず、p+型ゲート領域6の上において当該p+型ゲート領域6よりも幅狭なゲート電極7が形成された構造とされている。その他の構造に関しては、第1実施形態と同様である。このような構造としても、凹部4c内に形成されたi型側壁層5を介してp+型ゲート領域6を形成できるため、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0067】
このような構造のJFETを備えたSiC半導体装置は、第1実施形態のように、ゲート電極7をマスクとしてp+型ゲート領域6やi型側壁層5のパターニングを行うのではなく、p+型ゲート領域6やi型側壁層5を形成してからゲート電極7を形成するという製造方法により製造される。これについて、図8に示す本実施形態のSiC半導体装置の製造工程を示した断面図を参照して説明する。
【0068】
まず、第1実施形態で説明した図3(a)〜(c)および図4(a)〜(c)に示す工程までを行い、図8(a)に示す断面構造を得る。続いて、図8(b)に示すように、CMP等による平坦化処理によって図中破線で示した位置まで除去し、表面の平坦化を行う。これにより、凹部4c内にのみp+型層22やi型層20が残り、p+型ゲート領域6やi型側壁層5が形成される。
【0069】
その後、図5(a)、(b)に示す工程を行って凹部11、13を形成したのち、図8(c)に示すように、表面全面にシリコン酸化膜等で構成される層間絶縁膜12aを形成し、さらに層間絶縁膜12aをパターニングしてp+型ゲート領域6の表面やn+型層4等のうちソース電極8およびドレイン電極9とコンタクトされる領域を露出させるためのコンタクトホールを形成する。続いて、p+型ゲート領域6の表面の露出部分以外の領域を覆うように、メタルマスクもしくはシリコン酸化膜等で構成される図示しないマスクを配置したのち、ゲート電極7のうちの第1層7aおよび第2層7bを構成するNi系金属層およびTi系金属層を成膜する。そして、マスクを除去することで、リフトオフにより、ゲート電極7の形成予定領域にのみ第1層7aおよび第2層7bを残す。
【0070】
この後は、図6(a)〜(c)と同様の工程を行うことで、図7に示したSiC半導体装置を製造することができる。このような製造方法によっても、第1実施形態と同様に、i型側壁層5を有するJFETを備えたSiC半導体装置を製造することができる。
【0071】
ただし、このような製造方法の場合、図5(c)に示した工程を行うときに、ゲート電極7をマスクとしてp+型ゲート領域6やi型側壁層5をパターニングしていないため、p+型ゲート領域6やi型側壁層5をセルフアラインによって形成できなくなり、第1実施形態と比較してゲート電極7の形成が難しくなることになる。したがって、セルフアラインによってp+型ゲート領域6やi型側壁層5を形成するという効果およびゲート電極の形成を容易にするという効果を得るのであれば、第1実施形態で示した製造方法を用いるのが好ましい。
【0072】
なお、ここでは、第1層7aと第2層7bの両方をリフトオフによって形成する場合について説明したが、まず第1層7aをリフトオフによってコンタクトホールよりも幅広に形成しておいたあと、熱処理によってシリサイド化させ、その後、エッチングにより第1層7aのうちシリサイド化していない部分のみを残すような工程とすることもできる。このようにすれば、第1層7aがp+型ゲート領域6上にのみ残るようなセルフアラインとすることができる。
【0073】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態のSiC半導体装置は、第2実施形態に対してゲート電極7の構造を変更したものであり、その他に関しては第2実施形態と同様であるため、第2実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0074】
図9は、本実施形態にかかるJFETを備えたSiC半導体装置の断面図である。この図に示されるように、本実施形態では、第2実施形態で説明した層間絶縁膜12aを備えることなくゲート電極7を形成したものである。このような構造としても、凹部4c内に形成されたi型側壁層5を介してp+型ゲート領域6を形成できるため、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0075】
このような構造のJFETを備えたSiC半導体装置は、基本的には、第2実施形態のSiC半導体装置と同様の製造方法により製造されるが、ゲート電極7の形成工程について、層間絶縁膜12aを形成することなくゲート電極7の第1層7aおよび第2層7bをリフトオフにて形成することになる。
【0076】
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態について説明する。本実施形態のSiC半導体装置は、第3実施形態に対してp-型バッファ層2を無くしたものであり、その他に関しては第3実施形態と同様であるため、第3実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0077】
図10は、本実施形態にかかるJFETを備えたSiC半導体装置の断面図である。この図に示されるように、本実施形態では、SiC基板1の主表面の上にp-型バッファ層2を形成することなくnー型チャネル層3を直接形成した構造としている。
【0078】
このような構造とされていても、基本的には第3実施形態と同様の効果を得ることができる。ただし、第3実施形態と対してp-型バッファ層2が無くされているため、第3実施形態と比較すると耐圧が低くなる。
【0079】
なお、このような構造のSiC半導体装置も、基本的には第3実施形態のSiC半導体装置と同様の製造方法によって製造できるが、第3実施形態と異なり、p-型バッファ層2が無くなることから、p-型バッファ層2の製造工程やソース電極8とp-型バッファ層2との電気的接続を図るための凹部11の形成工程等が省かれることになる。
【0080】
また、ここでは第3実施形態の構造に対してp-型バッファ層2を無くした構造について説明したが、第3実施形態に限らず、第1、第2実施形態の構造に対してp-型バッファ層2を無くした構造とすることもできる。
【0081】
(第5実施形態)
本発明の第5実施形態について説明する。本実施形態のSiC半導体装置は、第1実施形態の構造をJFETではなくMESFETに適用したものであり、その他に関しては第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0082】
図11は、本実施形態にかかるMESFETを備えたSiC半導体装置の断面図である。この図に示されるように、本実施形態では、第1実施形態に対して、p+型ゲート領域6をなくして、n-型チャネル層3の表面に直接ゲート電極7を形成した構造としてある。ゲート電極7は、ショットキー電極とされており、n型SiCに対してショットキー接触させられる金属にて構成され、厚さ0.1〜1.0μm(例えば0.2μm)で構成されている。
【0083】
このように構成されるSiC半導体装置に備えられたMESFETは、ショットキー電極とされたゲート電極7に対してゲート電圧を印加していないときには、ゲート電極7からn-型チャネル層3に対して仕事関数差に基づいて伸びる空乏層によってn-型チャネル層3がピンチオフされる。そして、ショットキー障壁を超えるゲート電圧を印加すると、n-型チャネル層3内にチャネル領域が形成され、ソース電極8とドレイン電極9との間に電流が流れる。このように、本実施形態のMESFETも、ノーマリオフ型の素子として機能することができる。
【0084】
このように、MESFETについても、凹部4c内に形成されたi型側壁層5を介してゲート電極7を形成できるため、ゲート−ソース間およびゲート−ドレイン間のキャパシタンスの低減することが可能となる。
【0085】
続いて、このような構造とされるMESFETを備えたSiC半導体装置の製造方法について説明する。ただし、本実施形態のMESFETをSiC半導体装置の製造方法は、基本的には、第1実施形態で説明したJFETを備えたSiC半導体装置の製造方法と同様であるため、異なる部分についてのみ説明する。
【0086】
図12は、図11に示したMESFETを備えたSiC半導体装置の製造工程のうち、第1実施形態の製造工程と異なる部分について示した断面図である。
【0087】
まず、第1実施形態で説明した図3(a)〜(c)および図4(a)、(b)に示す工程までを行う。その後、図12(a)に示すように、凹部4c内におけるn-型チャネル層3の表面上およびi型層20の表面に、n型SiCに対してショットキー接触させられる金属層30を成膜する。続いて、ゲート電極7の形成予定領域が開口する図示しないマスクを用いてゲート電極7およびi型層20をパターニングし、ゲート電極7およびi型側壁層5を残す。この後は、図5(a)、(b)に示す工程を行ったり、図6(b)、(c)に示す工程を行うことにより、図11に示すMESFETを備えたSiC半導体装置を製造することが可能となる。
【0088】
なお、ここで説明したMESFETの製造方法は、基本的には、図3〜図6に示したJFETの製造方法のうち、p+型ゲート領域の製造工程を無くしたものであるが、第1実施形態のようなp+型ゲート領域6が必要なくなるため、i型側壁層5を凹部4cよりも幅広にパターニングしておき、その上にゲート電極7を形成すれば、ゲート電極7の形成が容易になる。この場合、図4(b)の工程において、i型層20のうちi型側壁層5として残されない内側の部分を除去する際に、i型層20のうちのn+型層4上の不要部分も同時に除去しておき、ゲート電極7については、上記したリフトオフによって形成することができる。
【0089】
(他の実施形態)
上記各実施形態では、ソース電極8を直接p-型バッファ層2に接する構造としているが、SiC基板1の表層部のうち凹部11と対応する部位、もしくは、p-型バッファ層2のうち凹部11と対応する部位にp+型コンタクト領域が備えられるようにしておき、凹部11がp+型コンタクト領域に達するようにすることで、ソース電極8とp-型バッファ層2とがp+型コンタクト領域を介して電気的に接続される形態としても良い。
【0090】
また、上記各実施形態では、n-型チャネル層3をチャネルとするnチャネルタイプのJFETおよびMESFETを例に挙げて説明したが、上記各実施形態で示したn型とp型を反転させたpチャネルタイプのJFETおよびMESFETに対して本発明を適用しても良い。
【0091】
また、ゲート電極7、ソース電極8およびドレイン電極9の構造を三層構造とし、Ni系金属層、Ti系金属層、AlまたはAuからなる金属層を例に挙げた。しかしながら、これらは単なる一例を示したものであり、例えば下層から順にNi/Ti/Mo/Au、Ti/Mo/Ni/Au、Ni/Mo/Ti、Ti/Mo/Ni、Ti/Mo、Ni/Moとされる積層構造であっても良いし、TiまたはNiのみの単層構造としても構わない。
【0092】
また、上記実施形態では半導体装置としてSiC半導体装置を例に挙げて説明したが、Siを用いた半導体装置に対しても本発明を適用できるし、他のワイドバンドギャップ半導体装置、例えばGaN、ダイヤモンド、AlNなどを用いた半導体装置に対しても本発明を適用することもできる。
【0093】
なお、結晶の方位を示す場合、本来ならば所望の数字の上にバー(−)を付すべきであるが、パソコン出願に基づく表現上の制限が存在するため、本明細書においては、所望の数字の前にバーを付すものとする。
【符号の説明】
【0094】
1 SiC基板
2 p-型バッファ層
3 n-型チャネル層
4 n+型層
4a n+型ソース領域
4b n+型ドレイン領域
4c 凹部
5 i型(イントリンシック半導体)側壁層
6 ゲート領域
7 ゲート電極
8 ソース電極
9 ドレイン電極
11 凹部
12 層間絶縁膜
【技術分野】
【0001】
本発明は、JFETもしくはMESFETを備えた半導体装置およびその製造方法に関するもので、ワイドバンドギャップ半導体、特に炭化珪素(以下、SiCという)を用いたSiC半導体装置に適用すると好ましい。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1において、高周波かつ高耐圧に適したSiCにて構成されるJFETが提案されている。図13は、このJFETの断面図である。この図に示されるように、SiCで構成された基板J1上に、p-型バッファ層J2とn-型チャネル層J3およびn+型層J4を順に積層したのち、n+型層J4の表面からn-型チャネル層J3に達する凹部J5をエッチングにて形成している。そして、凹部J5内にp-型層J6を介してp+型ゲート領域J7を構成すると共に、p+型ゲート領域J7から離間するように、金属層J8を介してソース電極J9およびドレイン電極J10が形成されることにより、特許文献1に示されたJFETが構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第7560325号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示したノーマリーオンJFETでは、p+型ゲート領域J7が直接n+型層J4に接触させられることで濃度変化が急峻となるPN接合とならないように、p+型ゲート領域J7をp-型層J6にて囲んだ構造としている。このため、p+型ゲート領域J7とn+型層J4との間、つまりゲート−ソース間およびゲート−ドレイン間のキャパシタンスが大きくなり、高周波の実現に限界があるという問題がある。さらに、濃度の薄いp-型層J6から広がる空乏層によってn-型チャネル層J3をピンチオフさせる設計にしなければならず、JFETをオフさせる際にp+型ゲート領域J7に対して高電圧を印加しなければならないという問題もある。
【0005】
なお、ここではJFETについて説明したが、キャパシタンスが大きくなるという意味ではMESFETに関しても同様のことが言える。
【0006】
本発明は上記点に鑑みて、ゲート−ソース間およびゲート−ドレイン間のキャパシタンスの低減が図れると共に、JFETをオンさせる際に必要なゲート印加電圧が高電圧になることを抑制できるJFETを備えた半導体装置およびその製造方法を提供することを目的とする。また、ゲート−ソース間およびゲート−ドレイン間のキャパシタンスの低減が図れるMESFETを備えた半導体装置およびその製造方法を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、基板(1)の主表面の上にエピタキシャル成長にて第1導電型の半導体からなるチャネル層(3)を形成すると共に、チャネル層(3)の表面上にエピタキシャル成長にて、チャネル層(3)よりも高不純物濃度の第1導電型の半導体からなる第1導電型層(4)を形成し、第1導電型層(4)を貫通するように凹部(4c)を設けることで、第1導電型層(4)をソース領域(4a)とドレイン領域(4b)とに分離する。そして、凹部(4c)内において、該凹部(4c)の側面上にi型(イントリンシック半導体)側壁層(5)を形成すると共に、チャネル層(3)およびi型側壁層(5)の表面にエピタキシャル成長により、i型側壁層(5)によってソース領域(4a)およびドレイン領域(4b)から離間して配置される第2導電型のゲート領域(6)を形成し、さらに、このゲート領域(6)の表面にゲート電極(7)を形成した構造とすることで、JFETを構成することを特徴としている。
【0008】
このようなJFETでは、凹部(4c)内に形成されたi型側壁層(5)を介してゲート領域(6)を形成できるため、第1導電型層(4)とゲート領域(6)との間にさらにゲート領域(6)よりも低濃度の第2導電型層が必要とされない。このため、チャネル層(3)に直接接触している高濃度のゲート領域(6)によって、チャネル層(3)内に伸びる空乏層幅を制御できる。したがって、第1導電型層(4)とゲート領域(6)との間にさらに第2導電型層層が備えられる場合と比較して、ゲート印加電圧が高電圧になることを抑制することができる。また、ゲート領域(6)の側面がi型側壁層(5)によってソース領域(4a)およびドレイン領域(4b)と電気的に分離された構造とされているが、i型側壁層(5)が半絶縁性という非常に不純物濃度が低い半導体で構成されていることから、ゲート−ソース間およびゲート−ドレイン間のキャパシタンスを低減することが可能となる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1と同様の構造において、i型側壁層(5)およびチャネル層(3)の表面にショットキー電極にて構成されるゲート電極(7)を備えた構造とし、i型側壁層(5)によってソース領域(4a)およびドレイン領域(4b)からゲート電極(7)が離間して配置されるようにしたMESFETを構成することを特徴としている。
【0010】
このようなMESFETについても、凹部(4c)内に形成されたi型側壁層(5)を介してゲート電極(7)を形成できるため、ゲート−ソース間およびゲート−ドレイン間のキャパシタンスの低減することが可能となる。
【0011】
これら請求項1または2に記載のJFETもしくはMESFETを備えた構造は、請求項3に記載したように、半導体材料として、ワイドバンドギャップ半導体が用いられる半導体装置に適用すると好適である。
【0012】
請求項4に記載したように、ワイドバンドギャップ半導体としてSiCを用いる場合には、基板としてSiC基板(1)が用いられ、i型側壁層(5)を凹部(4c)内にエピタキシャル成長させられたi型SiCにて構成することができる。
【0013】
この場合、請求項5に記載したように、例えばi型側壁層(5)の不純物濃度は1×1011〜1×1014cm-3とされる。また、請求項6に記載したように、i型側壁層(5)は厚さは、0.1〜1.0μmとされる。
【0014】
また、チャネル層(3)もSiCにて構成されることになるが、この場合、請求項7に記載したように、チャネル層(3)の不純物濃度は、例えば1×1016〜1×1018cm-3とされる。同様に、ゲート領域(6)もSiCにて構成されることになり、この場合、請求項8に記載したように、ゲート領域(6)の不純物濃度は、例えば5×1018〜5×1019cm-3とされる。
【0015】
請求項9に記載の発明では、SiC基板(1)を抵抗率が1×1010〜1×1011Ω・cmである半絶縁性のSiCにて構成することを特徴としている。
【0016】
このような半絶縁性のSiCにて構成することで、JFET作動時に発生する電波を吸収することが可能であるため、高周波に適したSiC半導体装置とすることができる。
【0017】
請求項10に記載の発明では、SiC基板(1)とチャネル層(3)との間にゲート領域(6)よりも低不純物濃度で構成された第2導電型バッファ層(2)が備えられていることを特徴としている。
【0018】
このように、SiC基板(1)と第1導電型層(3)およびチャネル層(5)との間にゲート領域(6)よりも低不純物濃度で構成された第2導電型バッファ層(2)を備えることにより、耐圧を向上させることが可能となる。
【0019】
請求項11に記載の発明では、JFETが備えられる半導体装置の製造方法として、主表面を有する半導体材料で構成された基板(1)を用意し、主表面の上にエピタキシャル成長によって第1導電型の半導体にて構成されるチャネル層(3)を形成する工程と、チャネル層(3)の表面上に、エピタキシャル成長にて、チャネル層(3)よりも高不純物濃度の第1導電型の半導体からなる第1導電型層(4)を形成する工程と、第1導電型層(4)の表面から異方性エッチングを行うことにより、第1導電型層(4)を貫通して該第1導電型層(4)をソース領域(4a)とドレイン領域(4b)とに分離する凹部(4c)を形成する工程と、凹部(4c)の側面上にエピタキシャル成長によってi型側壁層(5)を形成する工程と、i型側壁層(5)の表面上および凹部(4c)の底面上にエピタキシャル成長を行うことにより、i型側壁層(5)によってソース領域(4a)およびドレイン領域(4b)から離間させられる第2導電型のゲート領域(6)を形成する工程と、ゲート領域(6)に電気的に接続されるゲート電極(7)を形成する工程と、ソース領域(4a)に対して電気的に接続されるソース電極(8)を形成する工程と、ドレイン領域(4b)に対して電気的に接続されるドレイン電極(9)を形成する工程とを行うことを特徴としている。このような製造方法により、請求項1に記載のJFETを備えた半導体装置を製造することができる。
【0020】
請求項12に記載の発明では、i型側壁層(5)を形成する工程は、凹部(4c)の底面上および側面上を含む第1導電型層(4)の表面上にエピタキシャル成長によってi型側壁層(5)を形成するためのi型層(20)を形成する工程と、該i型層(20)のうち凹部(4c)の内側に配置された領域をエッチングにて除去する工程とを含み、ゲート領域(6)を形成する工程は、i型層(20)の上にゲート領域(6)を形成するための第2導電型層(22)を形成する工程を含み、ゲート電極(7)を形成する工程において、ゲート電極(7)の少なくとも一部の層をパターニングしたのち、該パターニングされたゲート電極(7)の少なくとも一部の層をマスクとして、第2導電型層(22)およびi型層(20)をエッチングすることにより、ゲート領域(6)およびチャネル層(5)のパターニングを行うことを特徴としている。
【0021】
このように、ゲート電極(7)をマスクとしてゲート領域(6)およびi型側壁層(5)をパターニングしているため、これらをセルフアライン(自己整合)で形成することが可能となる。ゲート領域(6)をパターニングしてからゲート電極(7)を形成する場合には、小さくなったゲート領域(6)の上にゲート電極(7)を形成しなければならないため、マスクズレなどからゲート電極(7)の形成が難しくなる。しかしながら、このようにゲート電極(7)をマスクとしてゲート領域(6)およびi型側壁層(5)を形成することで、これらの形成を容易にすることが可能となる。そして、ゲート電極(7)とゲート領域(6)とを広い面積で確実に電気的に接続できることから、ゲート抵抗も低くなり、高速スイッチングが可能なJFETとすることが可能となる。
【0022】
請求項13に記載の発明では、i型側壁層(5)およびチャネル層(3)の表面にショットキー電極にて構成されるゲート電極(7)を備えた構造とし、i型側壁層(5)によってソース領域(4a)およびドレイン領域(4b)から離間してゲート電極(7)が配置されるようにしたMESFETについて、請求項19と同様の製造方法を適用していることを特徴としている。このような製造方法により、請求項2に記載したMESFETを備えた半導体装置を製造することができる。
【0023】
請求項14に記載の発明では、i型側壁層(5)を形成する工程は、凹部(4c)の底面上および側面上を含む第1導電型層(4)の表面上にエピタキシャル成長によってi型側壁層(5)を形成するためのi型層(20)を形成する工程と、該i型層(20)のうち凹部(4c)の内側に配置された領域をエッチングにて除去する工程とを含み、ゲート電極(7)を形成する工程において、ゲート電極(7)の少なくとも一部の層をパターニングしたのち、該パターニングされたゲート電極(7)の少なくとも一部の層をマスクとして、i型層(20)をエッチングすることにより、i型側壁層(5)のパターニングを行うことを特徴としている。
【0024】
このように、ゲート電極(7)をマスクとしてi型側壁層(5)をパターニングしているため、i型側壁層(5)をセルフアライン(自己整合)で形成することが可能となる。i型側壁層(5)をパターニングしてからゲート電極(7)を形成する場合には、小さくなったi型側壁層(5)の上にゲート電極(7)を形成しなければならないため、マスクズレなどからゲート電極(7)の形成が難しくなる。しかしながら、このようにゲート電極(7)をマスクとしてi型側壁層(5)を形成することで、これらの形成を容易にすることが可能となる。
【0025】
請求項15に記載の発明では、凹部(4c)を形成する工程では、第1導電型層(4)の表面に、凹部(4c)の形成予定領域が開口するフォトレジストまたはシリコン酸化膜にて構成されたマスクを配置したのち、該マスクを用いた異方性エッチングを行うことにより、凹部(4c)を該凹部(4c)の側面が底面に対して85〜86°の傾斜角度となるように形成することを特徴としている。
【0026】
このように、フォトレジストまたはシリコン酸化膜にて構成されたマスクを用いた異方性エッチングを行うことにより、凹部(4c)を形成することができる。このように形成される凹部(4c)は、側面が底面に対して85〜86°の傾斜角度となる。
【0027】
請求項16に記載の発明では、凹部(4c)を形成する工程では、第1導電型層(4)の表面に、凹部(4c)の形成予定領域が開口するメタルマスクを配置したのち、該メタルマスクを用いた異方性エッチングを行うことにより、凹部(4c)を該凹部(4c)の側面が底面に対して89〜90°の傾斜角度となるように形成することを特徴としている。
【0028】
このように、メタルマスクを用いた異方性エッチングを行うことにより、凹部(4c)を形成することができる。このように形成される凹部(4c)は、側面が底面に対して89〜90°の傾斜角度となる。
【0029】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1実施形態にかかるJFETを備えたSiC半導体装置の断面図である。
【図2】p-型バッファ層2をソース電極8に電気的に接続する場合の一例を示した断面図である。
【図3】図2に示したJFETを備えたSiC半導体装置の製造工程を示した断面図である。
【図4】図3に続くJFETを備えたSiC半導体装置の製造工程を示した断面図である。
【図5】図4に続くJFETを備えたSiC半導体装置の製造工程を示した断面図である。
【図6】図5に続くJFETを備えたSiC半導体装置の製造工程を示した断面図である。
【図7】本発明の第2実施形態にかかるJFETを備えたSiC半導体装置の断面図である。
【図8】図7に示したJFETを備えたSiC半導体装置の製造工程を示した断面図である。
【図9】本発明の第3実施形態にかかるJFETを備えたSiC半導体装置の断面図である。
【図10】本発明の第4実施形態にかかるJFETを備えたSiC半導体装置の断面図である。
【図11】本発明の第5実施形態にかかるMESFETを備えたSiC半導体装置の断面図である。
【図12】図11に示したJFETを備えたSiC半導体装置の製造工程を示した断面図である。
【図13】従来のJFETの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0032】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係るJFETを備えたSiC半導体装置の断面図である。以下、この図を参照して、SiC半導体装置に備えられたJFETの構造について説明する。
【0033】
図1に示されるSiC半導体装置は、半絶縁性(Semi-insulating)のSiC基板1を用いて形成されている。半絶縁性とは、ノンドープの半導体材料などにより構成され、半導体材料で構成されているものの絶縁材料に近い抵抗率(もしくは導電率)を有するものを意味する。例えば、本実施形態で用いている半絶縁性のSiC基板1は、抵抗率が1×1010〜1×1011Ω・cm、厚さ50〜400μm(例えば350μm)とされている。このSiC基板1の主表面の上には、p-型バッファ層2が成膜されている。このp-型バッファ層2は、より高耐圧を得るために設けられたものであり、p型不純物濃度が1×1016〜1×1017cm-3(例えば1×1016cm-3)、厚さ0.2〜2.0μm(例えば0.4μm)とされている。
【0034】
p-型バッファ層2の表面には、n-型チャネル層3が形成されている。n-型チャネル層3は、チャネル領域が形成される場所であり、例えばn型不純物濃度が1×1016〜1×1018cm-3(例えば1×1017cm-3)、厚さ0.1〜1.0μm(例えば0.2μm)とされている。
【0035】
n-型チャネル層3の表面には、n+型層4が形成されている。n+型層4は、凹部4cによって紙面左右に分離されており、紙面左側のものがn+型ソース領域4a、紙面右側のものがn+型ドレイン領域4bを構成する。これらn+型ソース領域4aおよびn+型ドレイン領域4bは、n型不純物濃度が5×1018〜1×1020cm-3(例えば2×1019cm-3)、厚さ0.1〜1.0μm(例えば0.4μm)とされている。
【0036】
凹部4cは、n+型層4の表面からn-型チャネル層3に達するように、つまりn+型層4を貫通するように設けられている。この凹部4cは、側面が基板垂直方向に平行となるように形成されていても良いし、基板垂直方向に対して若干傾斜して形成されていても良いが、凹部4cの側面は、例えばSiC基板1の主表面がC面((000−1)C面)やSi面((0001)Si面)とされる場合には、p-型バッファ層2、n-型チャネル層3およびn+型層4がSiC基板1の主表面の面方位を受け継いで成長することから、それに垂直な面であるa面とほぼ平行となる。
【0037】
凹部4c内には、当該凹部4cの側面を覆うように、i型側壁層5が形成されている。i型側壁層5は、半絶縁性であるi型SiCにて構成されており、不純物濃度が1×1011〜1×1014cm-3(例えば1×1012cm-3)、厚さ0.1〜1.0μm(例えば0.2μm)とされている。
【0038】
また、凹部4c内における底面および側面、つまりn-型チャネル層3の表面およびi型側壁層5の表面上には、p-型バッファ層2よりも高濃度となるp+型ゲート領域6が形成されている。p+型ゲート領域6は、i型側壁層5によってn+型ソース領域4aおよびn+型ドレイン領域4bから離間して配置された状態となっている。このp+型ゲート領域6は、p型不純物濃度が5×1018〜5×1019cm-3(例えば1×1019cm-3)、厚さ0.1〜1.0μm(例えば0.4μm)とされている。
【0039】
p+型ゲート領域6の表面には、ゲート電極7が形成されている。ゲート電極7の端面(側壁面)は、p+型ゲート領域6やi型側壁層5の端面(側壁面)と面一となっている。このゲート電極7は、複数の金属層の積層構造にて構成されており、例えばp+型ゲート領域6に対してオーミック接触させられるNiSi2等のNi系金属層、Ti系金属層、さらにはAl配線もしくは外部との電気的接続を行うためのワイヤとの接合性を考慮したAu層が順に形成されることで構成される。Ni系金属層は、0.1〜0.5μm(例えば0.2μm)、Ti系金属層は、0.1〜0.5μm(例えば0.1μm)、AlもしくはAu層は、1.0〜5.0μm(例えば3.0μm)とされている。なお、図1中では、ゲート電極7にp+型ゲート領域6の表面の凹みが受け継がれた形状として記載してあるが、ゲート電極7の表面が平坦になるまで埋め尽くされていても構わない。
【0040】
また、n+型ソース領域4aの上にはソース電極8が形成され、n+型ドレイン領域4bの上にはドレイン電極9が形成されている。これらソース電極8およびドレイン電極9も、例えばゲート電極7と同材料で構成されている。
【0041】
このような構造によってJFETが構成されている。そして、図示しないがシリコン酸化膜やシリコン窒化膜などで構成される層間絶縁膜や保護膜等によって、各電極間が電気的に分離されることで、本実施形態のSiC半導体装置が構成されている。
【0042】
このように構成されるSiC半導体装置に備えられたJFETは、ゲート電極7に対してゲート電圧を印加していないときには、p+型ゲート領域6からn-型チャネル層3側に伸びる空乏層(およびp-型バッファ層2からn-型チャネル層3側に伸びる空乏層)によってn-型チャネル層3がピンチオフされている。そして、この状態からゲート電極7に対してゲート電圧を印加すると、p+型ゲート領域6から伸びる空乏層が縮小される。これにより、n-型チャネル層3内にチャネル領域が形成され、チャネル領域を介してソース電極8とドレイン電極9との間に電流が流れる。このように、本実施形態のJFETは、ノーマリオフ型の素子として機能することができる。
【0043】
このようなJFETでは、凹部4c内に形成されたi型側壁層5を介してp+型ゲート領域6を形成できるため、n+型層4とp+型ゲート領域6との間にさらにp+型ゲート領域6よりも低濃度のp-型層が必要とされない。このため、n-型チャネル層3に直接接触している高濃度のp+型ゲート領域6によって、n-型チャネル層3内に伸びる空乏層幅を制御できる。したがって、n+型層4とp+型ゲート領域6との間にさらにp-型層が備えられる場合と比較して、ゲート印加電圧が高電圧になることを抑制することができる。また、高速スイッチングが可能なJFETにでき、より高周波に適したSiC半導体装置とすることが可能となる。
【0044】
また、p+型ゲート領域6の側面がi型側壁層5によってn+型層4と電気的に分離された構造とされているが、i型側壁層5が半絶縁性という非常に不純物濃度が低いi型SiCで構成されていることから、ゲート−ソース間およびゲート−ドレイン間のキャパシタンスを低減することが可能となる。
【0045】
さらに、SiC基板1を半絶縁性のもので構成することにより、JFET作動時に発生する電波を吸収することが可能であるため、より高周波に適したSiC半導体装置とすることができる。
【0046】
次に、このような構成とされるJFETを備えたSiC半導体装置の具体的な適用形態について説明する。本実施形態のJFETでは、p-型バッファ層2が備えられていることから、このp-型バッファ層2をソース電極8に電気的に接続することで、グランド接続することが可能である。図2は、p-型バッファ層2をソース電極8に電気的に接続する場合の一例を示した断面図である。
【0047】
この図に示されるようにソース電極8と電気的に接続する場所において、n+型ソース領域4aの表面からn+型ソース領域4aおよびp-型バッファ層2を貫通する凹部11が形成されている。この凹部11内にソース電極8が入り込むように形成されることにより、p-型バッファ層2をソース電極8に電気的に接続している。そして、シリコン酸化膜等で構成された層間絶縁膜12を介して、ソース電極8がゲート電極7やドレイン電極9と電気的に分離された構造とされることで、図2に示すJFETが構成されている。このように、p-型バッファ層2をソース電極8に電気的に接続することで、p-型バッファ層2をグランドに固定することが可能となる。
【0048】
なお、この図では、ゲート電極7とソース電極8およびドレイン電極9をそれぞれNi系金属層で構成される第1層7a、8a、9aと、Ti系金属で形成される第2層7b、8b、9b、およびAlまたはAuなどで構成される第3層7c、8c、9cの三層構造で構成した場合として記載している。また、SiC半導体装置のうちソース電極8よりもJFET形成領域から離れた位置に形成された凹部13は、JFETと他の領域とを素子分離するための素子分離溝を構成するものである。
【0049】
続いて、このような構成とされるJFETを備えたSiC半導体装置の製造方法について説明する。図3〜図6は、図2に示したJFETを備えたSiC半導体装置の製造工程を示した断面図である。これらの図を参照して、図2に示すJFETを備えた半導体装置の製造方法について説明する。
【0050】
〔図3(a)の工程〕
主表面がC面とされた半絶縁性のSiC基板1を用意し、そのSiC基板1の主表面の上に、p型不純物濃度が1×1016〜1×1017cm-3(例えば1×1016cm-3)、厚さ0.2〜2.0μm(例えば0.4μm)のp-型バッファ層2をエピタキシャル成長させたのち、例えばn型不純物濃度が1×1016〜1×1018cm-3(例えば1×1017cm-3)、厚さ0.1〜1.0μm(例えば0.2μm)のn-型チャネル層3をエピタキシャル成長させる。さらに、n-型チャネル層3の表面上に、n型不純物濃度が5×1018〜1×1020cm-3(例えば2×1019cm-3)、厚さ0.1〜1.0μm(例えば0.4μm)のn+型層4をエピタキシャル成長させる。
【0051】
〔図3(b)の工程〕
n+型層4を部分的にエッチングすることにより、n-型チャネル層3に達する凹部4cを形成する。具体的には、図示しないメタルマスクにて、もしくは、フォトリソグラフィ工程を経てSiO2等のエッチングマスクでn+型層4のうち凹部4cの形成領域以外の部分を覆ったのち、RIE等の異方性エッチングを行うことで凹部4cを形成する。例えば、メタルマスクを用いる場合には、凹部4cの側面の傾斜角度が89〜90°となり、SiO2等のエッチングマスクを用いる場合には、凹部4cの側面の底面に対する傾斜角度が85〜86°となるが、SiC基板1の主表面がC面((000−1)C面)やSi面((0001)Si面)とされる場合には、いずれの場合も凹部4cの側面はa面とほぼ平行になると言える。
【0052】
〔図3(c)の工程〕
n+型層4の表面および凹部4c内に、不純物濃度が1×1011〜1×1014cm-3(例えば1×1012cm-3)の半絶縁性であるi型SiCにて構成されたi型層20をエピタキシャル成長させる。
【0053】
〔図4(a)の工程〕
i型層20の表面に、凹部4cのうちi型側壁層5の形成予定領域よりも内側、つまりi型側壁層5が形成されない位置が開口するLTO等で構成されたマスク21を成膜する。
【0054】
〔図4(b)の工程〕
マスク21にてi型層20を覆った状態でRIE等による異方性エッチングを行う。これにより、凹部4c内において、i型層20のうちi型側壁層5として残されない内側の部分が除去され、凹部4c内の側壁にi型層20が残される。
【0055】
〔図4(c)の工程〕
マスク21を除去した後、凹部4c内におけるn-型チャネル層3の表面上およびi型層20の表面に、p型不純物濃度が5×1018〜5×1019cm-3(例えば1×1019cm-3)、厚さ0.1〜0.5μm(例えば0.4μm)となるp+型ゲート領域6を形成するためのp+型層22をエピタキシャル成長させる。
【0056】
〔図5(a)の工程〕
p+型ゲート領域6の表面のうち素子分離用の凹部13の形成予定領域以外をマスク23にて覆った後、RIE等の異方性エッチングを行うことでSiC基板1に達する凹部13を形成する。
【0057】
〔図5(b)の工程〕
マスク23を除去した後、再び凹部13内およびp+型ゲート領域6の表面のうち凹部11の形成予定領域以外をマスク24にて覆い、RIE等の異方性エッチングを行うことで凹部11を形成する。
【0058】
〔図5(c)の工程〕
マスク24を除去したのち、凹部11内を含めてp+型ゲート領域6の表面のうちゲート電極7の形成予定領域以外の領域を覆うように、メタルマスクもしくはシリコン酸化膜等で構成される図示しないマスクを配置したのち、ゲート電極7のうちの第1層7aおよび第2層7bを構成するNi系金属層およびTi系金属層を成膜する。そして、マスクを除去することで、リフトオフにより、ゲート電極7の形成予定領域にのみ第1層7aおよび第2層7bを残す。
【0059】
〔図6(a)の工程〕
第1層7aおよび第2層7bをマスクとして異方性エッチングを行う。これにより、第1層7aおよび第2層7bが形成された領域以外が所定厚さだけエッチングされ、p+型層22およびi型層20がパターニングされてp+型ゲート領域6およびi型側壁層5が形成されると共に、凹部11がp-型バッファ層2に達した状態になる。このような形成方法によってp+型ゲート領域6およびi型側壁層5を形成することにより、ゲート電極7の端面(側壁面)とp+型ゲート領域6やi型側壁層5の端面(側壁面)とが面一となる。
【0060】
〔図6(b)の工程〕
ソース電極8およびドレイン電極9の形成予定領域以外の領域を覆うように、メタルマスクもしくはシリコン酸化膜等で構成される図示しないマスクを配置したのち、ソース電極8およびドレイン電極9のうちの第1層8a、9aを構成するNi系金属層および第2層8b、9bを構成するTi系金属層を成膜する。そして、マスクを除去することで、リフトオフにより、ソース電極8およびドレイン電極9の形成予定領域にのみ第1層8a、9aおよび第2層8b、9bを残す。さらに、必要に応じて熱処理を行うことにより、ゲート電極7やソース電極8およびドレイン電極9の第1層7a、8a、8bをシリサイド化し、NiSi2とすることで低抵抗化することもできる。
【0061】
〔図6(c)の工程〕
基板表面全面にシリコン酸化膜等で構成される層間絶縁膜12を配置した後、パターニングしてゲート電極7の第2層7bやソース電極8およびドレイン電極9の第2層8b、9bを部分的に露出させるためのコンタクトホールを形成する。
【0062】
この後、Al層を成膜したのちパターニングしたり、もしくはAuのメッキ処理などにより、ゲート電極7とソース電極8およびドレイン電極9の第2層7b、8b、9bの上に第3層7c、8c、9cを形成する。このようにして、図2に示すJFETを備えたSiC半導体装置を製造することができる。
【0063】
このような製造方法によれば、ゲート電極7をマスクとしてp+型ゲート領域6およびi型側壁層5をパターニングしているため、これらをセルフアライン(自己整合)で形成することが可能となる。p+型ゲート領域6をパターニングしてからゲート電極7を形成する場合には、小さくなったp+型ゲート領域6の上にゲート電極7を形成しなければならないため、マスクズレなどからゲート電極7の形成が難しくなる。しかしながら、本実施形態のようにゲート電極7をマスクとしてp+型ゲート領域6およびi型側壁層5を形成することで、これらの形成を容易にすることが可能となる。そして、ゲート電極7とp+型ゲート領域6とを広い面積で確実に電気的に接続できることから、ゲート抵抗も低くなり、高速スイッチングが可能なJFETとすることが可能となる。
【0064】
さらに、n+型ソース領域4aやn+型ドレイン領域4b、n-型チャネル層3およびp+型ゲート領域6をすべてエピタキシャル成長によって形成した構造としており、イオン注入により構成した部分が無いため、ゲートリーク電流を低減することもできる。
【0065】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態のSiC半導体装置は、第1実施形態に対してゲート電極7の構造を変更したものであり、その他に関しては第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0066】
図7は、本実施形態にかかるJFETを備えたSiC半導体装置の断面図である。この図に示されるように、本実施形態では、ゲート電極7の側面がp+型ゲート領域6やi型側壁層5の端面(側壁面)と面一となっておらず、p+型ゲート領域6の上において当該p+型ゲート領域6よりも幅狭なゲート電極7が形成された構造とされている。その他の構造に関しては、第1実施形態と同様である。このような構造としても、凹部4c内に形成されたi型側壁層5を介してp+型ゲート領域6を形成できるため、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0067】
このような構造のJFETを備えたSiC半導体装置は、第1実施形態のように、ゲート電極7をマスクとしてp+型ゲート領域6やi型側壁層5のパターニングを行うのではなく、p+型ゲート領域6やi型側壁層5を形成してからゲート電極7を形成するという製造方法により製造される。これについて、図8に示す本実施形態のSiC半導体装置の製造工程を示した断面図を参照して説明する。
【0068】
まず、第1実施形態で説明した図3(a)〜(c)および図4(a)〜(c)に示す工程までを行い、図8(a)に示す断面構造を得る。続いて、図8(b)に示すように、CMP等による平坦化処理によって図中破線で示した位置まで除去し、表面の平坦化を行う。これにより、凹部4c内にのみp+型層22やi型層20が残り、p+型ゲート領域6やi型側壁層5が形成される。
【0069】
その後、図5(a)、(b)に示す工程を行って凹部11、13を形成したのち、図8(c)に示すように、表面全面にシリコン酸化膜等で構成される層間絶縁膜12aを形成し、さらに層間絶縁膜12aをパターニングしてp+型ゲート領域6の表面やn+型層4等のうちソース電極8およびドレイン電極9とコンタクトされる領域を露出させるためのコンタクトホールを形成する。続いて、p+型ゲート領域6の表面の露出部分以外の領域を覆うように、メタルマスクもしくはシリコン酸化膜等で構成される図示しないマスクを配置したのち、ゲート電極7のうちの第1層7aおよび第2層7bを構成するNi系金属層およびTi系金属層を成膜する。そして、マスクを除去することで、リフトオフにより、ゲート電極7の形成予定領域にのみ第1層7aおよび第2層7bを残す。
【0070】
この後は、図6(a)〜(c)と同様の工程を行うことで、図7に示したSiC半導体装置を製造することができる。このような製造方法によっても、第1実施形態と同様に、i型側壁層5を有するJFETを備えたSiC半導体装置を製造することができる。
【0071】
ただし、このような製造方法の場合、図5(c)に示した工程を行うときに、ゲート電極7をマスクとしてp+型ゲート領域6やi型側壁層5をパターニングしていないため、p+型ゲート領域6やi型側壁層5をセルフアラインによって形成できなくなり、第1実施形態と比較してゲート電極7の形成が難しくなることになる。したがって、セルフアラインによってp+型ゲート領域6やi型側壁層5を形成するという効果およびゲート電極の形成を容易にするという効果を得るのであれば、第1実施形態で示した製造方法を用いるのが好ましい。
【0072】
なお、ここでは、第1層7aと第2層7bの両方をリフトオフによって形成する場合について説明したが、まず第1層7aをリフトオフによってコンタクトホールよりも幅広に形成しておいたあと、熱処理によってシリサイド化させ、その後、エッチングにより第1層7aのうちシリサイド化していない部分のみを残すような工程とすることもできる。このようにすれば、第1層7aがp+型ゲート領域6上にのみ残るようなセルフアラインとすることができる。
【0073】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態のSiC半導体装置は、第2実施形態に対してゲート電極7の構造を変更したものであり、その他に関しては第2実施形態と同様であるため、第2実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0074】
図9は、本実施形態にかかるJFETを備えたSiC半導体装置の断面図である。この図に示されるように、本実施形態では、第2実施形態で説明した層間絶縁膜12aを備えることなくゲート電極7を形成したものである。このような構造としても、凹部4c内に形成されたi型側壁層5を介してp+型ゲート領域6を形成できるため、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0075】
このような構造のJFETを備えたSiC半導体装置は、基本的には、第2実施形態のSiC半導体装置と同様の製造方法により製造されるが、ゲート電極7の形成工程について、層間絶縁膜12aを形成することなくゲート電極7の第1層7aおよび第2層7bをリフトオフにて形成することになる。
【0076】
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態について説明する。本実施形態のSiC半導体装置は、第3実施形態に対してp-型バッファ層2を無くしたものであり、その他に関しては第3実施形態と同様であるため、第3実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0077】
図10は、本実施形態にかかるJFETを備えたSiC半導体装置の断面図である。この図に示されるように、本実施形態では、SiC基板1の主表面の上にp-型バッファ層2を形成することなくnー型チャネル層3を直接形成した構造としている。
【0078】
このような構造とされていても、基本的には第3実施形態と同様の効果を得ることができる。ただし、第3実施形態と対してp-型バッファ層2が無くされているため、第3実施形態と比較すると耐圧が低くなる。
【0079】
なお、このような構造のSiC半導体装置も、基本的には第3実施形態のSiC半導体装置と同様の製造方法によって製造できるが、第3実施形態と異なり、p-型バッファ層2が無くなることから、p-型バッファ層2の製造工程やソース電極8とp-型バッファ層2との電気的接続を図るための凹部11の形成工程等が省かれることになる。
【0080】
また、ここでは第3実施形態の構造に対してp-型バッファ層2を無くした構造について説明したが、第3実施形態に限らず、第1、第2実施形態の構造に対してp-型バッファ層2を無くした構造とすることもできる。
【0081】
(第5実施形態)
本発明の第5実施形態について説明する。本実施形態のSiC半導体装置は、第1実施形態の構造をJFETではなくMESFETに適用したものであり、その他に関しては第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0082】
図11は、本実施形態にかかるMESFETを備えたSiC半導体装置の断面図である。この図に示されるように、本実施形態では、第1実施形態に対して、p+型ゲート領域6をなくして、n-型チャネル層3の表面に直接ゲート電極7を形成した構造としてある。ゲート電極7は、ショットキー電極とされており、n型SiCに対してショットキー接触させられる金属にて構成され、厚さ0.1〜1.0μm(例えば0.2μm)で構成されている。
【0083】
このように構成されるSiC半導体装置に備えられたMESFETは、ショットキー電極とされたゲート電極7に対してゲート電圧を印加していないときには、ゲート電極7からn-型チャネル層3に対して仕事関数差に基づいて伸びる空乏層によってn-型チャネル層3がピンチオフされる。そして、ショットキー障壁を超えるゲート電圧を印加すると、n-型チャネル層3内にチャネル領域が形成され、ソース電極8とドレイン電極9との間に電流が流れる。このように、本実施形態のMESFETも、ノーマリオフ型の素子として機能することができる。
【0084】
このように、MESFETについても、凹部4c内に形成されたi型側壁層5を介してゲート電極7を形成できるため、ゲート−ソース間およびゲート−ドレイン間のキャパシタンスの低減することが可能となる。
【0085】
続いて、このような構造とされるMESFETを備えたSiC半導体装置の製造方法について説明する。ただし、本実施形態のMESFETをSiC半導体装置の製造方法は、基本的には、第1実施形態で説明したJFETを備えたSiC半導体装置の製造方法と同様であるため、異なる部分についてのみ説明する。
【0086】
図12は、図11に示したMESFETを備えたSiC半導体装置の製造工程のうち、第1実施形態の製造工程と異なる部分について示した断面図である。
【0087】
まず、第1実施形態で説明した図3(a)〜(c)および図4(a)、(b)に示す工程までを行う。その後、図12(a)に示すように、凹部4c内におけるn-型チャネル層3の表面上およびi型層20の表面に、n型SiCに対してショットキー接触させられる金属層30を成膜する。続いて、ゲート電極7の形成予定領域が開口する図示しないマスクを用いてゲート電極7およびi型層20をパターニングし、ゲート電極7およびi型側壁層5を残す。この後は、図5(a)、(b)に示す工程を行ったり、図6(b)、(c)に示す工程を行うことにより、図11に示すMESFETを備えたSiC半導体装置を製造することが可能となる。
【0088】
なお、ここで説明したMESFETの製造方法は、基本的には、図3〜図6に示したJFETの製造方法のうち、p+型ゲート領域の製造工程を無くしたものであるが、第1実施形態のようなp+型ゲート領域6が必要なくなるため、i型側壁層5を凹部4cよりも幅広にパターニングしておき、その上にゲート電極7を形成すれば、ゲート電極7の形成が容易になる。この場合、図4(b)の工程において、i型層20のうちi型側壁層5として残されない内側の部分を除去する際に、i型層20のうちのn+型層4上の不要部分も同時に除去しておき、ゲート電極7については、上記したリフトオフによって形成することができる。
【0089】
(他の実施形態)
上記各実施形態では、ソース電極8を直接p-型バッファ層2に接する構造としているが、SiC基板1の表層部のうち凹部11と対応する部位、もしくは、p-型バッファ層2のうち凹部11と対応する部位にp+型コンタクト領域が備えられるようにしておき、凹部11がp+型コンタクト領域に達するようにすることで、ソース電極8とp-型バッファ層2とがp+型コンタクト領域を介して電気的に接続される形態としても良い。
【0090】
また、上記各実施形態では、n-型チャネル層3をチャネルとするnチャネルタイプのJFETおよびMESFETを例に挙げて説明したが、上記各実施形態で示したn型とp型を反転させたpチャネルタイプのJFETおよびMESFETに対して本発明を適用しても良い。
【0091】
また、ゲート電極7、ソース電極8およびドレイン電極9の構造を三層構造とし、Ni系金属層、Ti系金属層、AlまたはAuからなる金属層を例に挙げた。しかしながら、これらは単なる一例を示したものであり、例えば下層から順にNi/Ti/Mo/Au、Ti/Mo/Ni/Au、Ni/Mo/Ti、Ti/Mo/Ni、Ti/Mo、Ni/Moとされる積層構造であっても良いし、TiまたはNiのみの単層構造としても構わない。
【0092】
また、上記実施形態では半導体装置としてSiC半導体装置を例に挙げて説明したが、Siを用いた半導体装置に対しても本発明を適用できるし、他のワイドバンドギャップ半導体装置、例えばGaN、ダイヤモンド、AlNなどを用いた半導体装置に対しても本発明を適用することもできる。
【0093】
なお、結晶の方位を示す場合、本来ならば所望の数字の上にバー(−)を付すべきであるが、パソコン出願に基づく表現上の制限が存在するため、本明細書においては、所望の数字の前にバーを付すものとする。
【符号の説明】
【0094】
1 SiC基板
2 p-型バッファ層
3 n-型チャネル層
4 n+型層
4a n+型ソース領域
4b n+型ドレイン領域
4c 凹部
5 i型(イントリンシック半導体)側壁層
6 ゲート領域
7 ゲート電極
8 ソース電極
9 ドレイン電極
11 凹部
12 層間絶縁膜
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主表面を有する半導体材料で構成された基板(1)と、
前記基板(1)の前記主表面の上にエピタキシャル成長にて第1導電型の半導体により形成されたチャネル層(3)と、
前記チャネル層(3)の表面上にエピタキシャル成長にて、前記チャネル層(3)よりも高不純物濃度の第1導電型の半導体にて形成された第1導電型層(4)と、
前記第1導電型層(4)を貫通するように設けられ、前記第1導電型層(4)をソース領域(4a)とドレイン領域(4b)とに分離する凹部(4c)と、
前記凹部(4c)内において、該凹部(4c)の側面上に形成されたi型(イントリンシック半導体)側壁層(5)と、
前記チャネル層(3)および前記i型側壁層(5)の表面にエピタキシャル成長により形成され、前記i型側壁層(5)によって前記ソース領域(4a)および前記ドレイン領域(4b)から離間して配置された第2導電型のゲート領域(6)と、
前記ゲート領域(6)に電気的に接続されたゲート電極(7)と、
前記ソース領域(4a)に対して電気的に接続されたソース電極(8)と、
前記ドレイン領域(4b)に対して電気的に接続されたドレイン電極(9)と、を有したJFETが備えられていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
主表面を有する半導体材料で構成された基板(1)と、
前記基板(1)の前記主表面の上にエピタキシャル成長にて第1導電型の半導体により形成されたチャネル層(3)と、
前記チャネル層(3)の表面上にエピタキシャル成長にて、前記チャネル層(3)よりも高不純物濃度の第1導電型の半導体にて形成された第1導電型層(4)と、
前記第1導電型層(4)を貫通するように設けられ、前記第1導電型層(4)をソース領域(4a)とドレイン領域(4b)とに分離する凹部(4c)と、
前記凹部(4c)内において、該凹部(4c)の側面上に形成されたi型側壁層(5)と、
前記チャネル層(3)および前記i型側壁層(5)の表面に形成され、前記i型側壁層(5)によって前記ソース領域(4a)および前記ドレイン領域(4b)から離間して配置されると共に、ショットキー電極にて構成されたゲート電極(7)と、
前記ソース領域(4a)に対して電気的に接続されたソース電極(8)と、
前記ドレイン領域(4b)に対して電気的に接続されたドレイン電極(9)と、を有したMESFETが備えられていることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
前記半導体材料として、ワイドバンドギャップ半導体が用いられていることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記ワイドバンドギャップ半導体は炭化珪素であって、前記基板として炭化珪素基板(1)が用いられており、
前記i型側壁層(5)は、前記凹部(4c)内にエピタキシャル成長させられたi型炭化珪素にて構成されていることを特徴とする請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記i型側壁層(5)の不純物濃度が1×1011〜1×1014cm-3であることを特徴とする請求項3または4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記i型側壁層(5)は厚さ0.1〜1.0μmであることを特徴とする請求項3ないし5のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項7】
前記チャネル層(3)の不純物濃度が1×1016〜1×1018cm-3であることを特徴とする請求項3ないし6のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項8】
前記ゲート領域(6)の不純物濃度が5×1018〜5×1019cm-3であることを特徴とする請求項3ないし7のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項9】
前記炭化珪素基板(1)は抵抗率が1×1010〜1×1011Ω・cmである半絶縁性の炭化珪素にて構成されていることを特徴とする請求項3ないし8のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項10】
前記炭化珪素基板(1)と前記チャネル層(3)との間に前記ゲート領域(6)よりも低不純物濃度で構成された第2導電型バッファ層(2)が備えられていることを特徴とする請求項3ないし9のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項11】
主表面を有する半導体材料で構成された基板(1)を用意し、前記主表面の上にエピタキシャル成長によって第1導電型の半導体にて構成されるチャネル層(3)を形成する工程と、
前記チャネル層(3)の表面上に、エピタキシャル成長にて、前記チャネル層(3)よりも高不純物濃度の第1導電型の半導体からなる第1導電型層(4)を形成する工程と、
前記第1導電型層(4)の表面から異方性エッチングを行うことにより、前記第1導電型層(4)を貫通して該第1導電型層(4)をソース領域(4a)とドレイン領域(4b)とに分離する凹部(4c)を形成する工程と、
前記凹部(4c)の側面上にエピタキシャル成長によってi型側壁層(5)を形成する工程と、
前記i型側壁層(5)の表面上および前記凹部(4c)の底面上にエピタキシャル成長を行うことにより、前記i型側壁層(5)によって前記ソース領域(4a)および前記ドレイン領域(4b)から離間させられる第2導電型のゲート領域(6)を形成する工程と、
前記ゲート領域(6)に電気的に接続されるゲート電極(7)を形成する工程と、
前記ソース領域(4a)に対して電気的に接続されるソース電極(8)を形成する工程と、
前記ドレイン領域(4b)に対して電気的に接続されるドレイン電極(9)を形成する工程と、を有したJFETが備えられる半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記i型側壁層(5)を形成する工程は、前記凹部(4c)の底面上および側面上を含む前記第1導電型層(4)の表面上にエピタキシャル成長によって前記i型側壁層(5)を形成するためのi型層(20)を形成する工程と、該i型層(20)のうち前記凹部(4c)の内側に配置された領域をエッチングにて除去する工程とを含み、
前記ゲート領域(6)を形成する工程は、前記i型層(20)の上に前記ゲート領域(6)を形成するための第2導電型層(22)を形成する工程を含み、
前記ゲート電極(7)を形成する工程において、前記ゲート電極(7)の少なくとも一部の層をパターニングしたのち、該パターニングされた前記ゲート電極(7)の少なくとも一部の層をマスクとして、前記第2導電型層(22)および前記i型層(20)をエッチングすることにより、前記ゲート領域(6)および前記チャネル層(5)のパターニングを行うことを特徴とする請求項11に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
主表面を有する半導体材料で構成された基板(1)を用意し、前記主表面の上にエピタキシャル成長によって第1導電型の半導体にて構成されるチャネル層(3)を形成する工程と、
前記チャネル層(3)の表面上に、エピタキシャル成長にて、前記チャネル層(3)よりも高不純物濃度の第1導電型の半導体からなる第1導電型層(4)を形成する工程と、
前記第1導電型層(4)の表面から異方性エッチングを行うことにより、前記第1導電型層(4)を貫通して該第1導電型層(4)をソース領域(4a)とドレイン領域(4b)とに分離する凹部(4c)を形成する工程と、
前記凹部(4c)の側面上にエピタキシャル成長によってi型側壁層(5)を形成する工程と、
前記i型側壁層(5)の表面上および前記凹部(4c)の底面上に、前記i型側壁層(5)によって前記ソース領域(4a)および前記ドレイン領域(4b)から離間させられるショットキー電極にて構成されるゲート電極(7)を形成する工程と、
前記ソース領域(4a)に対して電気的に接続されるソース電極(8)を形成する工程と、
前記ドレイン領域(4b)に対して電気的に接続されるドレイン電極(9)を形成する工程と、を有したMESFETが備えられる半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記i型側壁層(5)を形成する工程は、前記凹部(4c)の底面上および側面上を含む前記第1導電型層(4)の表面上にエピタキシャル成長によって前記i型側壁層(5)を形成するためのi型層(20)を形成する工程と、該i型層(20)のうち前記凹部(4c)の内側に配置された領域をエッチングにて除去する工程とを含み、
前記ゲート電極(7)を形成する工程において、前記ゲート電極(7)の少なくとも一部の層をパターニングしたのち、該パターニングされた前記ゲート電極(7)の少なくとも一部の層をマスクとして、前記i型層(20)をエッチングすることにより、前記i型側壁層(5)のパターニングを行うことを特徴とする請求項13に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項15】
前記凹部(4c)を形成する工程では、前記第1導電型層(4)の表面に、前記凹部(4c)の形成予定領域が開口する前記フォトレジストまたはシリコン酸化膜にて構成されたマスクを配置したのち、該マスクを用いた異方性エッチングを行うことにより、前記凹部(4c)を該凹部(4c)の側面が底面に対して85〜86°の傾斜角度となるように形成することを特徴とする請求項11ないし14のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項16】
前記凹部(4c)を形成する工程では、前記第1導電型層(4)の表面に、前記凹部(4c)の形成予定領域が開口するメタルマスクを配置したのち、該メタルマスクを用いた異方性エッチングを行うことにより、前記凹部(4c)を該凹部(4c)の側面が底面に対して89〜90°の傾斜角度となるように形成することを特徴とする請求項11ないし14のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項1】
主表面を有する半導体材料で構成された基板(1)と、
前記基板(1)の前記主表面の上にエピタキシャル成長にて第1導電型の半導体により形成されたチャネル層(3)と、
前記チャネル層(3)の表面上にエピタキシャル成長にて、前記チャネル層(3)よりも高不純物濃度の第1導電型の半導体にて形成された第1導電型層(4)と、
前記第1導電型層(4)を貫通するように設けられ、前記第1導電型層(4)をソース領域(4a)とドレイン領域(4b)とに分離する凹部(4c)と、
前記凹部(4c)内において、該凹部(4c)の側面上に形成されたi型(イントリンシック半導体)側壁層(5)と、
前記チャネル層(3)および前記i型側壁層(5)の表面にエピタキシャル成長により形成され、前記i型側壁層(5)によって前記ソース領域(4a)および前記ドレイン領域(4b)から離間して配置された第2導電型のゲート領域(6)と、
前記ゲート領域(6)に電気的に接続されたゲート電極(7)と、
前記ソース領域(4a)に対して電気的に接続されたソース電極(8)と、
前記ドレイン領域(4b)に対して電気的に接続されたドレイン電極(9)と、を有したJFETが備えられていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
主表面を有する半導体材料で構成された基板(1)と、
前記基板(1)の前記主表面の上にエピタキシャル成長にて第1導電型の半導体により形成されたチャネル層(3)と、
前記チャネル層(3)の表面上にエピタキシャル成長にて、前記チャネル層(3)よりも高不純物濃度の第1導電型の半導体にて形成された第1導電型層(4)と、
前記第1導電型層(4)を貫通するように設けられ、前記第1導電型層(4)をソース領域(4a)とドレイン領域(4b)とに分離する凹部(4c)と、
前記凹部(4c)内において、該凹部(4c)の側面上に形成されたi型側壁層(5)と、
前記チャネル層(3)および前記i型側壁層(5)の表面に形成され、前記i型側壁層(5)によって前記ソース領域(4a)および前記ドレイン領域(4b)から離間して配置されると共に、ショットキー電極にて構成されたゲート電極(7)と、
前記ソース領域(4a)に対して電気的に接続されたソース電極(8)と、
前記ドレイン領域(4b)に対して電気的に接続されたドレイン電極(9)と、を有したMESFETが備えられていることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
前記半導体材料として、ワイドバンドギャップ半導体が用いられていることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記ワイドバンドギャップ半導体は炭化珪素であって、前記基板として炭化珪素基板(1)が用いられており、
前記i型側壁層(5)は、前記凹部(4c)内にエピタキシャル成長させられたi型炭化珪素にて構成されていることを特徴とする請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記i型側壁層(5)の不純物濃度が1×1011〜1×1014cm-3であることを特徴とする請求項3または4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記i型側壁層(5)は厚さ0.1〜1.0μmであることを特徴とする請求項3ないし5のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項7】
前記チャネル層(3)の不純物濃度が1×1016〜1×1018cm-3であることを特徴とする請求項3ないし6のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項8】
前記ゲート領域(6)の不純物濃度が5×1018〜5×1019cm-3であることを特徴とする請求項3ないし7のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項9】
前記炭化珪素基板(1)は抵抗率が1×1010〜1×1011Ω・cmである半絶縁性の炭化珪素にて構成されていることを特徴とする請求項3ないし8のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項10】
前記炭化珪素基板(1)と前記チャネル層(3)との間に前記ゲート領域(6)よりも低不純物濃度で構成された第2導電型バッファ層(2)が備えられていることを特徴とする請求項3ないし9のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項11】
主表面を有する半導体材料で構成された基板(1)を用意し、前記主表面の上にエピタキシャル成長によって第1導電型の半導体にて構成されるチャネル層(3)を形成する工程と、
前記チャネル層(3)の表面上に、エピタキシャル成長にて、前記チャネル層(3)よりも高不純物濃度の第1導電型の半導体からなる第1導電型層(4)を形成する工程と、
前記第1導電型層(4)の表面から異方性エッチングを行うことにより、前記第1導電型層(4)を貫通して該第1導電型層(4)をソース領域(4a)とドレイン領域(4b)とに分離する凹部(4c)を形成する工程と、
前記凹部(4c)の側面上にエピタキシャル成長によってi型側壁層(5)を形成する工程と、
前記i型側壁層(5)の表面上および前記凹部(4c)の底面上にエピタキシャル成長を行うことにより、前記i型側壁層(5)によって前記ソース領域(4a)および前記ドレイン領域(4b)から離間させられる第2導電型のゲート領域(6)を形成する工程と、
前記ゲート領域(6)に電気的に接続されるゲート電極(7)を形成する工程と、
前記ソース領域(4a)に対して電気的に接続されるソース電極(8)を形成する工程と、
前記ドレイン領域(4b)に対して電気的に接続されるドレイン電極(9)を形成する工程と、を有したJFETが備えられる半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記i型側壁層(5)を形成する工程は、前記凹部(4c)の底面上および側面上を含む前記第1導電型層(4)の表面上にエピタキシャル成長によって前記i型側壁層(5)を形成するためのi型層(20)を形成する工程と、該i型層(20)のうち前記凹部(4c)の内側に配置された領域をエッチングにて除去する工程とを含み、
前記ゲート領域(6)を形成する工程は、前記i型層(20)の上に前記ゲート領域(6)を形成するための第2導電型層(22)を形成する工程を含み、
前記ゲート電極(7)を形成する工程において、前記ゲート電極(7)の少なくとも一部の層をパターニングしたのち、該パターニングされた前記ゲート電極(7)の少なくとも一部の層をマスクとして、前記第2導電型層(22)および前記i型層(20)をエッチングすることにより、前記ゲート領域(6)および前記チャネル層(5)のパターニングを行うことを特徴とする請求項11に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
主表面を有する半導体材料で構成された基板(1)を用意し、前記主表面の上にエピタキシャル成長によって第1導電型の半導体にて構成されるチャネル層(3)を形成する工程と、
前記チャネル層(3)の表面上に、エピタキシャル成長にて、前記チャネル層(3)よりも高不純物濃度の第1導電型の半導体からなる第1導電型層(4)を形成する工程と、
前記第1導電型層(4)の表面から異方性エッチングを行うことにより、前記第1導電型層(4)を貫通して該第1導電型層(4)をソース領域(4a)とドレイン領域(4b)とに分離する凹部(4c)を形成する工程と、
前記凹部(4c)の側面上にエピタキシャル成長によってi型側壁層(5)を形成する工程と、
前記i型側壁層(5)の表面上および前記凹部(4c)の底面上に、前記i型側壁層(5)によって前記ソース領域(4a)および前記ドレイン領域(4b)から離間させられるショットキー電極にて構成されるゲート電極(7)を形成する工程と、
前記ソース領域(4a)に対して電気的に接続されるソース電極(8)を形成する工程と、
前記ドレイン領域(4b)に対して電気的に接続されるドレイン電極(9)を形成する工程と、を有したMESFETが備えられる半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記i型側壁層(5)を形成する工程は、前記凹部(4c)の底面上および側面上を含む前記第1導電型層(4)の表面上にエピタキシャル成長によって前記i型側壁層(5)を形成するためのi型層(20)を形成する工程と、該i型層(20)のうち前記凹部(4c)の内側に配置された領域をエッチングにて除去する工程とを含み、
前記ゲート電極(7)を形成する工程において、前記ゲート電極(7)の少なくとも一部の層をパターニングしたのち、該パターニングされた前記ゲート電極(7)の少なくとも一部の層をマスクとして、前記i型層(20)をエッチングすることにより、前記i型側壁層(5)のパターニングを行うことを特徴とする請求項13に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項15】
前記凹部(4c)を形成する工程では、前記第1導電型層(4)の表面に、前記凹部(4c)の形成予定領域が開口する前記フォトレジストまたはシリコン酸化膜にて構成されたマスクを配置したのち、該マスクを用いた異方性エッチングを行うことにより、前記凹部(4c)を該凹部(4c)の側面が底面に対して85〜86°の傾斜角度となるように形成することを特徴とする請求項11ないし14のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項16】
前記凹部(4c)を形成する工程では、前記第1導電型層(4)の表面に、前記凹部(4c)の形成予定領域が開口するメタルマスクを配置したのち、該メタルマスクを用いた異方性エッチングを行うことにより、前記凹部(4c)を該凹部(4c)の側面が底面に対して89〜90°の傾斜角度となるように形成することを特徴とする請求項11ないし14のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−159714(P2011−159714A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−18747(P2010−18747)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]