説明

炭素数3以上の含酸素化合物の製造方法

【課題】エタノールを反応させて、炭素数3以上の含酸素化合物、特にアセトンを高収率で長時間にわたり安定して製造する方法を提供する。
【解決手段】触媒存在下でエタノールと水とから炭素数3以上の含酸素化合物を製造する方法であって、前記触媒が、鉄と、亜鉛と、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属とを含有し、かつ亜鉛に対するアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属のモル比が0.2〜2であることを特徴とする炭素数3以上の含酸素化合物の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒存在下でエタノールと水とから炭素数3以上の含酸素化合物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
触媒を用いてエタノールを反応させ、炭素数3以上の含酸素化合物、特にアセトンに転換する方法は、古くからよく知られている。
アセトンは、近代化学工業では、主にナフサの熱分解等で生成するプロピレンから製造されているが、石油資源の枯渇あるいは大気中への化石原料起源の二酸化炭素放出を抑制するための方策として、バイオマス原料からの製造方法が見直されている。
エタノールは、バイオマスの発酵等により容易に製造できるため、エタノールからのアセトン合成は、エタノールの転換反応として有用である。
【0003】
ここで、非特許文献1では、鉄及びアルカリ土類金属からなる酸化物触媒を用いてエタノールを反応させた場合、収率約70%でアセトンが得られることが記載されているが、触媒寿命が短いことが記載されている。
【0004】
非特許文献2及び非特許文献3には、亜鉛及びアルカリ土類金属(Ca)からなる酸化物触媒を用いたエタノールからのアセトン合成反応が記載されており、亜鉛に対するアルカリ土類金属のモル比が0.1の場合に、最も高いアセトン収率(91%)が得られるが、アルカリ土類金属のモル比を0.1より増大させた場合には、アセトン収率が急激に低下することが示されている。しかし、これら文献での反応成績は、反応開始後30分の成績であり、触媒寿命に関する詳細な記載はない。また、アルカリ金属(Na、K)を添加した触媒も記載されているが、アセトン収率は低い。
【0005】
また、非特許文献4は、鉄と、種々の金属からなる酸化物触媒を用いたエタノールの反応について検討したものである。鉄と亜鉛とを組み合わせた場合に、最も高いアセトン収率が得られているが、アルカリ土類金属(Ca、Ba)及びアルカリ金属(Na、K)を添加した触媒では、アセトン収率は低い。また、鉄と亜鉛からなる触媒を用いた連続反応を行っているが、約24時間で、アセトン収率は86%から57%に低下している。
【0006】
その他、銅触媒(非特許文献5)、鉄−ジルコニウム触媒(特許文献1)等が報告されているが、いずれも活性が不十分、あるいは長期の劣化に関する検討は行われておらず、これらのエタノールから炭素数3以上の含酸素化合物、特にアセトンを高収率で安定的に製造する方法は未だ確立されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−209059号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Journal of the Indian Chemical Society,Industrial and News Edition,第16巻,109〜113ページ(1953年)
【非特許文献2】Journal of the Chemical Society,Chemical Communications,1987年,394〜395ページ(1987年)
【非特許文献3】Applied Catalysis,第52巻,237〜248ページ(1989年)
【非特許文献4】Journal of Materials Chemistry,第4巻,853〜858ページ(1994年)
【非特許文献5】Applied Catalysis A:General,第172巻,117〜129ページ(1998年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述のように、長時間にわたり安定してエタノールを反応させ、炭素数3以上の含酸素化合物、特にアセトンを高収率で製造する方法は確立されていなかった。
従って、本発明は、長時間にわたり安定してエタノールを反応させ、炭素数3以上の含酸素化合物、特にアセトンを高収率で製造する炭素数3以上の含酸素化合物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究を進めた結果、特定の組成の触媒を用いることにより、長期間にわたり安定してエタノールを反応できることを見出し、本発明を完成した。すなわち本発明は下記の通りである。
【0011】
[1] 触媒存在下でエタノールと水とから炭素数3以上の含酸素化合物を製造する方法であって、
前記触媒が、鉄と、亜鉛と、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属とを含有し、かつ亜鉛に対するアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属のモル比が0.2〜2であることを特徴とする炭素数3以上の含酸素化合物の製造方法。
[2] 鉄に対する亜鉛のモル比が、0.01〜10である[1]に記載の炭素数3以上の含酸素化合物の製造方法。
[3] 炭素数3以上の含酸素化合物が、アセトンである[1]又は[2]に記載の炭素数3以上の含酸素化合物の製造方法。
[4] 前記エタノールと水とが含水エタノールに由来する[1]〜[3]のいずれかに記載の炭素数3以上の含酸素化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、エタノールを反応させて、炭素数3以上の含酸素化合物、特にアセトンを高収率で長時間にわたり安定して製造する方法が提供される。
これにより、バイオマスを有効に利用して有用な化学品の製造を実施でき、化石資源の消費抑制及び大気中への化石原料起源の二酸化炭素の放出抑制に貢献することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の炭素数3以上の含酸素化合物の製造方法は、特定の触媒存在下でエタノールと水とから炭素数3以上の含酸素化合物を製造する。
当該触媒としては、鉄と、亜鉛と、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属とを含有してなり、亜鉛に対するアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属のモル比(以下、「M/Zn」(M:アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属)ということがある)が0.2〜2となっている。
【0014】
本反応における従来の知見(非特許文献2及び非特許文献3)では、アルカリ金属を導入すると活性が低下し、またアルカリ土類金属の亜鉛に対するモル比を0.1より増大させた場合、活性・選択性が急激に低下することが知られている。
【0015】
これらの知見からすると、本発明のM/Znの範囲は特異的なものであるといえる。本発明の触媒では、M/Znが0.2より少ない場合、及びモル比が2より大きい場合には、活性及び選択性が低下するため、効率が悪くなる。当該M/Znは、0.2〜1であることが好ましい。
【0016】
また、触媒中の鉄に対する亜鉛のモル比は、0.01〜10であることが好ましく、0.02〜5であることがより好ましく、0.05〜1であることがさらに好ましい。当該モル比が0.01〜10であることで、副反応を抑制しアセトン選択率を向上させることができる。
【0017】
本発明に係る触媒は、上述の成分比率範囲内の組成とすれば、どのような方法でも調製できる。
例えば、上記成分比率に調製した鉄、亜鉛、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の塩を溶解させた水溶液に、アンモニア水等の塩基を滴下して沈殿を形成させ、濾過後焼成する方法や、市販の酸化鉄の粉末に、亜鉛の塩、アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩の水溶液を含浸させた後に焼成する方法、等で調製することができる。
【0018】
このようにして調製した触媒粉末は、一般的なバインダー(シリカ、アルミナ、ケイ酸塩等)と混練し成型することによって、固定床反応器で使用可能な成型触媒となる。
【0019】
本発明での反応に使用するエタノールは、発酵法その他、種々の方法で製造される一般的なエタノールを使用することが可能で、水やアセトアルデヒド等の不純物を含んでいてもよい。
【0020】
エタノールと水との比率は、水を含んでいるとアセトン選択率が向上するため、エタノールに対する水のモル比率は、0.1〜10であることが好ましく、0.5〜5であることがより好ましく、1〜3であることがさらに好ましい。
これらの比率よりも高い純度のエタノールを使用する場合、上述の比率となるように、エタノールを水で希釈するか、あるいは別途、水をリアクターに供給するのがよい。
【0021】
本発明に係る反応は、固定床、移動床、流動床等どのような形式でも実施できるが、成型した触媒を管状反応器に充填して、エタノールと水とを供給する固定床流通式で実施されることが好ましい。
【0022】
当該反応における空間速度は、400〜6500h-1とすることが好ましく400〜4000h-1とすることがより好ましい。
【0023】
反応温度は250〜600℃であることが好ましく、300〜550℃であることがより好ましく、350〜550℃であることがさらに好ましい。
反応圧力は、減圧、常圧、加圧のいずれでも実施できるが、常圧〜やや加圧の雰囲気で実施されることが好ましい。
また、本反応は、窒素、水素、炭化水素ガス等の共存下でも実施することができる。
【実施例】
【0024】
(実施例1)
(1)触媒調製
硝酸亜鉛六水和物(和光純薬工業製、Zn(NO32・6H2O、純度99.0%以上)3.74g、硝酸ストロンチウム(和光純薬工業製、Sr(NO32、純度98.0%以上)1.09gをイオン交換水4.00gに溶解させ、亜鉛とストロンチウムを含む水溶液を調製した。
【0025】
定温乾燥器にて120℃で18時間以上乾燥した酸化水酸化鉄(関東化学製、FeO(OH)、純度95.0%以上)10.03gに、先に調製した亜鉛とストロンチウムを含む水溶液を添加してスラリー状とし、この状態で5分間こねてスラリー状物質を作製した。
【0026】
作製したスラリー状物質を、マッフル炉にて200cm3/min.の空気流通下、120℃(5℃/min.で昇温)で6時間乾燥し、さらに600℃(5℃/min.で昇温)で3時間焼成を行って、鉄、亜鉛、ストロンチウムを含有する赤褐色の固体(SrO/ZnO/Fe23触媒)を得た。
【0027】
(2)分析方法
得られた触媒中の元素組成分析は、ICP(誘導結合プラズマ)発光分光分析法により行った。ICP発光分光分析法による組成分析は、島津製ICPE−9000型ICP発光分光分析装置で行った。測定試料としては、分析しようとする触媒をフッ化水素酸と塩酸との混酸で溶解し、酸溶液としたものを用いた。
測定結果から、触媒中の亜鉛に対するストロンチウムのモル比は0.39、触媒中の鉄に対する亜鉛のモル比は0.12であった。
【0028】
(3)炭素数3以上の含酸素化合物の製造
当該製造に用いた反応管は二重構造をしており、外側はSUS316製の管(φ27.2×t5.5mm)、内側は石英製の電気溶融管(φ15×t2.0mm)であり、その内側に石英製の熱電対用内挿管(φ3.5×t1.0mm)を有する。
【0029】
触媒を粉砕し、300〜600μmに分級した後、この触媒(粉砕品)2.00gを、反応管に充填し、触媒層の上下に石英ウールを詰めて触媒を保持した。触媒層の高さは、3.0cmであった。
【0030】
触媒を充填した上記反応管に、窒素を18.2cm3/min.(25℃、1気圧換算、以下同じ)で流しながら外部加熱によって触媒層の温度を400℃まで昇温し、そのまま1時間保持した。
その後、常圧で反応管入口側から、エタノール、水、窒素を、33:50:17のモル比となるように連続的に供給して反応を行った(入口側全ガス流量:18.3cm3/min.)。
【0031】
反応開始から1時間後、反応管出口ガスを、オンラインガスクロマトグラフ装置で分析したところ、エタノールの転化率は100%であり、ペンタノン類を含む炭素数3以上の含酸素化合物の収率は、反応開始から1時間後で88%、アセトン収率は84%であった。
【0032】
その後、触媒層の温度を400℃に保持したまま、原料の供給を100時間継続し、同様に反応管出口ガスを分析した。反応開始から100時間経過後もエタノール転化率は100%であり、ペンタノン類を含む炭素数3以上の含酸素化合物の収率100時間後で90%、アセトン収率は84%であった。
【0033】
ここで、エタノール転化率、アセトン収率、ペンタノン類を含む炭素数3以上の含酸素化合物の収率は、式(1)〜(5)により算出した(モル量で計算)。
【0034】
エタノール転化率
=100×(反応器入口エタノール量−反応器出口エタノール量)/反応器入口エタノール量 ・・・式(1)
【0035】
アセトン収率
=100×反応器出口アセトン量/(反応器入口エタノール量/2) ・・・式(2)
【0036】
なお、上記式は、次の反応式に基づくものである。
2C25OH+H2O→CH3COCH3+4H2+CO2 ・・・式(3)
すなわち、転化率100%、選択率100%の場合、エタノール2モルからアセトン1モルが生成することになる。
【0037】
2−ペンタノン収率
=100×反応器出口2−ペンタノン量/(反応器入口エタノール量/3)・・・式(4)
【0038】
なお、上記式は、次の反応式に基づくものである。
3C25OH→CH3CO(CH22CH3+4H2+CO2 ・・・式(5)
【0039】
炭素数3以上の含酸素化合物の収率は、式(2)と式(4)で求めた収率の和により算出した。
【0040】
(実施例2)
実施例1において硝酸ストロンチウムの代わりに、硝酸カルシウム四水和物(和光純薬工業製、Ca(NO32・4H2O、純度99.9%以上)を使用した以外は同様な方法により、鉄、亜鉛、カルシウムを含有する触媒(CaO/ZnO/Fe23触媒)を得た。触媒中の亜鉛に対するカルシウムのモル比は0.45、鉄に対する亜鉛のモル比は0.12であった。
【0041】
この触媒2.00gを実施例1と同様に反応管に充填し、触媒層の温度を400℃に保持し、エタノール、水、窒素を、33:50:17のモル比となるように連続的に供給して反応を行った(入口側全ガス流量:19.3cm3/min.)。
【0042】
反応開始から1時間後、反応出口ガスを分析したところ、エタノールの転化率は98%、ペンタノン類を含む炭素数3以上の含酸素化合物の収率は91%、アセトン収率は85%であった。
【0043】
(実施例3)
実施例1において硝酸ストロンチウムの代わりに、硝酸バリウム(和光純薬工業製、Ba(NO32、純度99.0%以上)を使用した以外は同様な方法により、鉄、亜鉛、バリウムを含有する触媒(BaO/ZnO/Fe23触媒)を得た。
触媒中亜鉛に対するバリウムのモル比は0.38、鉄に対する亜鉛のモル比は0.12であった。
【0044】
この触媒2.11gを実施例1と同様に反応管に充填し、触媒層の温度を400℃に保持し、エタノール、水、窒素を、33:50:17のモル比となるように連続的に供給して反応を行った(入口側全ガス流量:37.1cm3/min)。
【0045】
反応開始から1時間後、反応出口ガスを分析したところ、エタノールの転化率は99%、ペンタノン類を含む炭素数3以上の含酸素化合物の収率は90%、アセトン収率は86%であった。
【0046】
(実施例4)
実施例1において硝酸ストロンチウムの代わりに、硝酸リチウム(Aldrich製、LiNO3、純度99.99%以上)を使用した以外は同様な方法により、鉄、亜鉛、リチウムを含有する触媒(LiO/ZnO/Fe23触媒)を得た。
触媒中亜鉛に対するリチウムのモル比は0.43、鉄に対する亜鉛のモル比は0.11であった。
【0047】
この触媒0.353gを実施例1と同様に反応管に充填し、触媒層の温度を450℃に保持し、エタノール、水、窒素を、33:50:17のモル比となるように連続的に供給して反応を行った(入口側全ガス流量:18.3cm3/min.)。
【0048】
反応開始から1時間後、反応出口ガスを分析したところ、エタノールの転化率は97%、ペンタノン類を含む炭素数3以上の含酸素化合物の収率は91%、アセトン収率は89%であった。
【0049】
(実施例5)
実施例1において硝酸ストロンチウムの代わりに、硝酸ナトリウム(Aldrich製、NaNO3、純度99.995%以上)を使用した以外は同様な方法により、鉄、亜鉛、ナトリウムを含有する触媒(NaO/ZnO/Fe23触媒)を得た。
触媒中の亜鉛に対するナトリウムのモル比は0.40、鉄に対する亜鉛のモル比は0.11であった。
【0050】
この触媒0.356gを実施例1と同様に反応管に充填し、触媒層の温度を500℃に保持し、エタノール、水、窒素を、33:50:17のモル比となるように連続的に供給して反応を行った(入口側全ガス流量:18.3cm3/min.)。
【0051】
反応開始から1時間後、反応出口ガスを分析したところ、エタノールの転化率は98%、ペンタノン類を含む炭素数3以上の含酸素化合物の収率は91%、アセトン収率は89%であった。
【0052】
(比較例1)
実施例1で使用したものと同じ酸化水酸化鉄10.03gに、イオン交換水4.00gを添加してスラリー状としその状態で5分間こねてスラリー状物質を作製した。
【0053】
作製したスラリー状物質を、実施例1と同様にして乾燥、焼成し赤褐色の固体(Fe23触媒)を得た。
【0054】
得られた赤褐色固体を粉砕し300〜600μmに分級し、この触媒(粉砕品)0.353gを実施例1と同様に反応管に充填し、触媒層の温度を400℃に保持し、エタノール、水、窒素を、33:50:17のモル比となるように連続的に供給して反応を行った(入口側全ガス流量:19.3cm3/min.)。
【0055】
反応開始から1時間後、反応出口ガスを分析したところ、エタノールの転化率は62%、ペンタノン類を含む炭素数3以上の含酸素化合物の収率は66%、アセトン収率は44%であった。
【0056】
(比較例2)
酸化水酸化鉄と硝酸亜鉛六水和物とを用い、硝酸ストロンチウムは使用しない他は、実施例1と同様な方法で、鉄、亜鉛を含有する触媒(ZnO/Fe23触媒)を得た。
触媒中の鉄に対する亜鉛のモル比は0.13であった。
【0057】
この触媒0.354gを実施例1と同様に反応管に充填し、触媒層の温度を450℃に保持し、エタノール、水、窒素を、33:50:17のモル比となるように連続的に供給して反応を行った(入口側全ガス流量:37.5cm3/min.)
【0058】
反応開始から1時間後、反応出口ガスを分析したところ、エタノールの転化率は99%、アセトン収率は81%であった。
その後、触媒層の温度を450℃に保持したまま、原料の供給を19時間継続し、同様に反応管出口ガスを分析したところ、エタノール転化率は73%であり、アセトン収率は52%に低下していた。また、ペンタノン類を含む炭素数3以上の含酸素化合物の収率も、反応開始から1時間後87%、19時間後57%に低下していた。
【0059】
(比較例3)
硝酸亜鉛六水和物10.03gをイオン交換水50.12gに溶解させた亜鉛を含む水溶液に、水酸化アンモニウム溶液(Aldrich、NH4OH、28.0〜30.0%)を滴下しpH=7.0に調整し白色懸濁液を得た。吸引濾過により得た固形物を定温乾燥器にて120℃で24時間乾燥し、白色の水酸化亜鉛を得た。
【0060】
水酸化亜鉛3.50gと、水酸化カルシウム(和光純薬工業製、Ca(OH)2、99.9%)0.292gをイオン交換水1.00gを加えながら混ぜ合わせた。得られた白色固体をマッフル炉にて200cm3/min.の空気流通下、80℃(5℃/min.で昇温)で6時間乾燥し、さらに500℃(5℃/min.で昇温)で3時間焼成を行って、亜鉛、カルシウムを含有する白色の固体(CaO/ZnO触媒)を得た。触媒中の亜鉛に対するカルシウムのモル比は0.10であった。
【0061】
この触媒0.400gを実施例1と同様に反応管に充填し、触媒層の温度を500℃に保持し、エタノール、水、窒素を、33:49:18のモル比となるように連続的に供給して反応を行った(入口側全ガス流量:37.5cm3/min.)
反応開始から1時間後、反応出口ガスを分析したところ、エタノールの転化率は55%、アセトン収率は18%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒存在下でエタノールと水とから炭素数3以上の含酸素化合物を製造する方法であって、
前記触媒が、鉄と、亜鉛と、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属とを含有し、かつ亜鉛に対するアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属のモル比が0.2〜2であることを特徴とする炭素数3以上の含酸素化合物の製造方法。
【請求項2】
鉄に対する亜鉛のモル比が、0.01〜10である請求項1に記載の炭素数3以上の含酸素化合物の製造方法。
【請求項3】
炭素数3以上の含酸素化合物が、アセトンである請求項1又は2に記載の炭素数3以上の含酸素化合物の製造方法。
【請求項4】
前記エタノールと水とが含水エタノールに由来する請求項1〜3のいずれか1項に記載の炭素数3以上の含酸素化合物の製造方法。

【公開番号】特開2012−240913(P2012−240913A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−108832(P2011−108832)
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年9月26日付け委託契約(平成22年3月19日付け変更契約)、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「新エネルギー技術研究開発/バイオマスエネルギー等高効率転換技術開発(先導技術開発)/セルロース系バイオマスエタノールからプロピレンを製造するプロセス開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける出願
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】