説明

炭素材料及びその製造方法

【課題】高価な白金等貴金属及びそれらの合金を含まない、燃料電池用電極触媒等に好適な炭素材料を提供する。
【解決手段】特定の繰り返し単位からなり、特有粘度が0.05〜200dL/g(メタンスルホン酸溶媒、試料濃度0.03g/100mL、測定温度25℃)である全芳香族ポリベンゾイミダゾールを、不活性ガス雰囲気下、500〜1,500℃において焼成することにより、燃料電池用電極触媒等に好適な炭素材料を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素材料及びその製造方法に関する。更に詳しくは、全芳香族ポリベンゾイミダゾールを焼成して得られる炭素材料及びその製造方法に関する。該炭素材料は良好な酸素還元作用を有し、燃料電池用電極触媒として好適である。
【背景技術】
【0002】
高効率、無公害の燃料電池、特に電気自動車(FCEV)や定置用電熱併供システム(CG−FC)に用いられる固体高分子型燃料電池の実用化は、地球温暖化及び環境汚染問題に対する重要な解決策の一つとして注目されている。しかし、燃料電池においては、そのカソードで起こる酸素還元反応を促進するために、資源量が少なく極めて高価な白金を触媒として多量に使用する必要があり、このことが燃料電池の実用化の大きな障壁になっている。そこで白金等の高価な貴金属を必要としない、燃料電池用電極触媒の開発が大きな注目を集め、わが国はもとより米国をはじめとする世界中で精力的にその研究開発が行われている。それらの研究の主流は鉄やコバルト等の卑金属を活性中心とする電極触媒の開発であるが、得られる電極触媒の発電性能は十分ではなく、また耐久性の面でも問題があり実用化に至ってはいない。
例えば特許文献1は、炭素材料の原料となる有機物として熱硬化性樹脂類を用いて、貴金属以外の遷移金属及び窒素が添加された炭素材料を調製し、この炭素材料を用いた燃料電池用電極触媒及びその製造方法が開示されている。この電極触媒は、従来のものに比べて優れた性能を示してはいるが、白金を使用した電極触媒にはまだ及ばないばかりか、多量の金属化合物をポリマーに添加する必要があるためコスト削減の効果は小さい。
そこで、より優れた活性を有する安価な電極触媒及びその材料が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−26746号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Polymer,39,(1998)p.5981
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は高価な白金等貴金属及びそれらの合金を含まない、燃料電池用電極触媒等に好適な炭素材料及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の全芳香族ポリベンゾイミダゾールを焼成して得られる炭素材料が、優れた酸化還元活性を有し、燃料電池用電極触媒として好適であることを見出した。即ち、本発明によると、本発明の上記目的及び利点は、第一に、
下記一般式(A−1)
【0007】
【化1】

【0008】
で表される繰り返し単位及び下記一般式(A−2)
【0009】
【化2】

【0010】
で表わされる繰り返し単位からなる群より選ばれる少なくとも1種の繰り返し単位からなり、特有粘度が0.05〜200dL/g(メタンスルホン酸溶媒、試料濃度0.03g/100mL、測定温度25℃)である全芳香族ポリベンゾイミダゾールを、不活性ガス雰囲気下、500〜1,500℃において焼成して得られる炭素材料によって達成される。
本発明の上記目的及び利点は、第二に、
上記の全芳香族ポリベンゾイミダゾールを、不活性雰囲気下500〜1,500℃において焼成する、炭素材料の製造方法によって達成される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の炭素材料は、高い酸素還元活性を有し、燃料電池用電極触媒として用いられるほか、各種化学反応の触媒として好適に用いることができる。
本発明の炭素材料の製造方法は、高い酸素還元活性を有する有用な炭素材料を簡易な方法により安価に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態の例について述べるが、本発明は以下の例に限定されるものではない。
<全芳香族ポリベンゾイミダゾール>
本発明で使用される全芳香族ポリベンゾイミダゾール(以下、「ポリマーA」ということがある。)は、上記一般式(A−1)で表わされる繰り返し単位及び上記一般式(A−2)で表わされる繰り返し単位からなる群より選ばれる少なくとも1種の繰り返し単位からなり、特有粘度が1〜50dL/g(メタンスルホン酸溶媒、試料濃度0.03g/100mL、測定温度25℃)のものである。
上記特有粘度の算出方法を以下により詳細に述べる。
本発明における特有粘度とは、溶媒としてメタンスルホン酸を用い、該溶媒に上記全芳香族ポリベンゾイミダゾールを濃度0.03g/100mLにて溶解した試料溶液の粘度(η)及び該溶媒自身の粘度(η)を25℃にて測定し、これらの値の比(η/η)、即ち相対粘度(ηrel)を算出し、この相対粘度の値から下記数式(i)により求めた値である。
ηinh=(ηrel)/C (i)
(数式(i)中、ηrelは相対粘度であり、Cは上記の試料濃度0.03g/100mLである。)
ポリマーAの特有粘度は、1.0〜50dL/gであることが好ましく、2〜30dL/gであることがより好ましく、更に3〜10dL/gであることが好ましい。
【0013】
<全芳香族ポリベンゾイミダゾール(ポリマーA)の製造方法>
本発明で用いられる全芳香族ポリベンゾイミダゾール(ポリマーA)は、非特許文献1(Polymer,39,(1998)p.5981)に記載の方法に準じて、良好な生産性で工業的に製造することができる。
即ち、下記一般式(B−1)
【0014】
【化3】

【0015】
で表わされる化合物及びその強酸塩よりなる群より選ばれる少なくとも1種(以下、「芳香族テトラアミン化合物」ということがある。)と、下記一般式(B−2)
【0016】
【化4】

【0017】
(上記一般式(B−2)中、Lは水酸基、ハロゲン原子または基OR(ただしRは炭素数6〜20の芳香族基である。)である。)
で表わされる化合物(以下、「芳香族ジカルボン酸化合物」ということがある。)とを反応させることにより製造することができる。
上記一般式(B−1)の芳香族テトラアミン化合物の強酸塩における強酸としては、例えば塩化水素酸、リン酸、硫酸等を好ましく挙げることができる。上記一般式(B−2)中のLのハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子等を挙げることができる。上記一般式(B−2)中のRの芳香族基としては、例えばフェニル基、トルイル基、ベンジル基、ナフチル基等を挙げることができる。ここで、Rの芳香族基における水素原子のうち1つ又は複数が、各々独立に、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子;メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基等の炭素数1〜6のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数5〜10のシクロアルキル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基等で置換されていてもよい。
ポリマーAを製造するに際して使用される芳香族テトラアミン化合物と芳香族ジカルボン酸化合物との使用割合は、これらのモル数が下記数式(ii)
0.8≦(b1)/(b2)≦1.2 (ii)
(数式(ii)中、(b1)は芳香族テトラアミン化合物の使用モル数であり、(b2)は芳香族ジカルボン酸化合物の使用モル数である。)
を満たすことが好ましい。ここで、数値(b1)/(b2)が0.8より小さい場合や1.2より大きい場合には、重合度の十分なポリマーを得ることが困難となる場合がある。(b1)/(b2)の下限は、0.9以上とすることが適当であり、より好ましくは0.93以上であり、更に好ましくは0.95以上である。また、(b1)/(b2)の上限としては、1.1以下とすることが適当であり、より好ましくは1.07以下であり、更に好ましくは1.05以下である。従って、本発明における数値(b1)/(b2)の最適範囲は、0.95≦(b1)/(b2)≦1.05ということができる。
【0018】
ポリマーAを製造するための芳香族テトラアミン化合物と芳香族ジカルボン酸化合物との反応は、無溶媒下における加熱溶融反応及び溶媒中における反応のいずれも採用することができるが、適当な溶媒中で攪拌下に加熱反応させることが好ましい。反応温度は、50〜500℃とすることが好ましく、100〜350℃とすることが更に好ましい。反応温度が、50℃より低いと反応が十分に進行しないことがあり、一方500℃より高いと分解等の副反応が起こり易くなる場合があり、好ましくない。反応時間は温度条件にもよるが、1時間〜数十時間とすることが好ましい。反応は加圧下から減圧下で行うことができる。
芳香族テトラアミン化合物と芳香族ジカルボン酸化合物との反応は、無触媒でも進行するが、芳香族ジカルボン酸化合物の基Lが基ORである場合には、必要に応じてエステル交換触媒を用いてもよい。ここで使用されるエステル交換触媒としては、例えば三酸化アンチモンの如きアンチモン化合物;酢酸第一錫、塩化錫、オクチル酸錫、ジブチル錫オキシド、ジブチル錫ジアセテートの如き錫化合物;酢酸カルシウムの如きアルカリ土類金属塩;炭酸ナトリウム、炭酸カリウムの如きアルカリ金属塩;亜リン酸ジフェニル、亜リン酸トリフェニルの如き亜リン酸塩等を例示することができる。
また、芳香族テトラアミン化合物と芳香族ジカルボン酸化合物との反応において、芳香族ジカルボン酸化合物として上記一般式(B−2)中のLが水酸基のもの、即ち芳香族ジカルボン酸を用いる場合には、該芳香族ジカルボン酸と上記式(B−1)で表される化合物との塩を調製し、これを反応させてもよい。
芳香族テトラアミン化合物と芳香族ジカルボン酸化合物との反応に際しては、必要に応じて溶媒を用いることができる。ここで使用される好ましい溶媒としては例えば1−メチル−2−ピロリドン、1−シクロヘキシル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジフェニルエーテル、ジフェニルスルホン、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、リン酸、ポリリン酸等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
反応中のポリマーの分解及び着色を防ぐため、反応は乾燥した不活性ガス雰囲気下で行うことが望ましい。
【0019】
<全芳香族ポリベンゾイミダゾール(ポリマーA)の焼成方法>
上記のようにして調製した、ポリマーAを焼成、即ち高温で熱処理することにより、ポリマーAの炭素化が起こり、本発明の炭素材料(炭化物)を得ることができる。この焼成の際の温度としては500〜1,500℃の温度が採用され、好ましくは600〜1,200℃であり、より好ましくは650〜1,000℃である。焼成時間は1〜300分とすることが好ましく、10〜180分とすることがより好ましく、更に30〜100分とすることが好ましい。
焼成は、不活性ガス雰囲気にて行われる。ここで、好ましい不活性ガスとして、例えば窒素、アルゴン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。上記不活性ガスは、その酸素濃度が100ppm(体積基準)以下であることが好ましく、20ppm以下であることがより好ましく、10ppm以下であることが更に好ましい。
<炭素材料>
本発明の炭素材料はその酸素還元開始電位が0.7V以上と高いものである。そのため、本発明の炭素材料は、燃料電池用電極触媒として好適に使用することができるほか、各種化学反応、例えば酸化物の還元反応の触媒として好適に用いることができる。
【実施例】
【0020】
以下、実施例により本発明方法を更に詳しく具体的に説明する。ただし、これらの実施例により本発明の範囲が限定されるものではない。
以下において、全芳香族ポリベンゾイミダゾールの特有粘度、酸素還元活性及び炭素化収率は、それぞれ、下記のようにして求めた。
(1)全芳香族ポリベンゾイミダゾールの特有粘度(ηinh
メタンスルホン酸に全芳香族ポリベンゾイミダゾールを濃度0.03g/100mLにて溶解した溶液を試料用液とし、25℃において該試料溶液の粘度(η)及び溶媒(メタンスルホン酸)の粘度(η)をそれぞれ測定して相対粘度(ηrel=η/η)を算出し、これを基に上記数式(i)により特有粘度を求めた。
(2)酸素還元活性
酸素還元活性は、回転電極法によりリニアスイープボルタンメトリーを行って測定した酸素還元開始電位として求めた。
なお、リニアスイープボルタンメトリーの手順は以下A〜Dに示した。
A.プラスチックバイアルに、焼成により得られた炭素材料5mgをとり、ガラスビーズをスパチュラ一杯、ナフィオン50μL並びに蒸留水及びエタノールをそれぞれ150μLずつ加え、20分間超音波をあててスラリーとした。
B.上記スラリーを4μLとり、回転電極のガラス状炭素上に塗付し、飽和水蒸気雰囲気下で乾燥した。
C.乾燥後の回転電極を作用極とし、Ag/AgCl電極を参照極とし、白金線を対極とした。電解液である0.5M硫酸に酸素を30分バブリングした後、自然電位を測定した。
D.次いで、600s初期電位を印加した後に、掃引速度1mV/s、回転速度1,500rpmで、0.8V vs.Ag/AgClから−0.2V vs.Ag/AgClまで測定を行った。
E.上記測定で、−10μA・cm−2における電圧値を酸素還元開始電位として算出した。なお、酸素還元開始電位は、銀/塩化銀(Ag/AgCl)電極を用いて測定した値を標準水素電極(NHE)基準値に換算して示した。
(3)炭素化収率
炭素化収率は、焼成後の炭化物の重量及び焼成前の前駆体ポリマー(全芳香族ポリベンゾイミダゾール又は全芳香族ポリアミド)の重量から、下記数式(iii)により求めた。
炭素化収率(%)=(焼成後の炭化物の重量)/(焼成前の前駆体ポリマーの重量)×100 (iii)
【0021】
合成例1<モノマーの合成>
2,3,5,6−テトラアミノピリジン三塩酸塩1水和物17.772質量部を、窒素で脱気した水100質量部に溶解した。2,5−ジヒドロキシテレフタル酸13.208質量部を1mol/L−水酸化ナトリウム水溶液137質量部に溶解して窒素で脱気した。
上記2,3,5,6−テトラアミノピリジン三塩酸塩1水和物の溶液を、2,5−ジヒドロキシテレフタル酸二ナトリウム塩水溶液に10分間かけて滴下した。その後、24.3質量部のポリリン酸、35質量部の窒素で脱気した水及び1質量部の酢酸を加え、生成した塩をろ取して回収した。得られた塩を、窒素で脱気した水3,000質量部に分散混合し、再度ろ取して回収した。この分散混合及びろ取操作を3回繰り返し行った後、得られた固体(塩)を十分に乾燥することにより、2,3,5,6−テトラアミノピリジンの2,5−ジヒドロキシテレフタル酸塩を得た。
合成例2<ポリマーAの合成>
上記合成例1で得られた2,3,5,6−テトラアミノピリジンの2,5−ジヒドロキシテレフタル酸塩22.88質量部にポリリン酸62.54質量部及び5酸化リン14.76質量部を加え、100℃にて1時間攪拌混合した。その後、2時間かけて140℃に昇温し、140℃にて更に1時間攪拌を行った。その後、1時間かけて180℃に昇温し、180℃にて更に5時間反応を行い、ドープを得た。得られたドープは、ポリマー18質量部及びポリリン酸82質量部を含有していた。偏光顕微鏡による測定の結果、このドープは液晶性を示すことが分かった。このドープを水にて再沈殿して洗浄することにより、全芳香族ポリベンゾイミダゾール(ポリマーA1)を得た。
このポリマーA1につき、上記の方法によって測定した特有粘度(ηinh)は5.5dL/gであった。
【0022】
比較合成例1<全芳香族ポリアミドの合成1>
塩化カルシウム19.21質量部を、窒素気流下、フラスコ内で250℃にて1時間乾燥した。フラスコ内の温度を室温に戻した後、N−メチル−2−ピロリジノン(NMP)365質量部及び4,4’−ジアミノ−3,3’−ビフェニルジオール12質量部をこの順で加えて溶解し、溶液とした。この溶液を氷浴により0℃に保ちつつ、テレフタル酸クロリド11.26質量部添加し、0℃で1時間、次いで50℃で2時間反応を行い、ポリマーのNMP溶液を得た。
得られた溶液の一部を大量のイオン交換水中に投入して析出したポリマーをろ取して回収し、水で2回及びメタノールで1回、順次に洗浄後、真空乾燥することにより、下記式(R1)
【0023】
【化5】

【0024】
で表される繰り返し単位からなる全芳香族ポリアミド(ポリマーR1)を得た。
このポリマーR1につき、溶媒として硫酸を用い、試料濃度0.5g/100mL、30℃の条件にて測定を行って求めた特有粘度(ηinh)は5.73dL/gであった。
比較合成例2<全芳香族ポリアミドの合成2>
塩化カルシウム15.8質量部を窒素気流下、フラスコ内で250℃にて1時間乾燥した。フラスコ内の温度を室温に戻した後、N−メチル−2−ピロリジノン(NMP)300質量部及び5(6)−アミノー2−(4−アミノフェニル)ベンズイミダゾール(cas. reg no 7621-86-5)10質量部をこの順で加えて溶解し、溶液とした。この溶液を氷浴により0℃に保ちつつ、テレフタル酸クロリド9.05質量部添加し、0℃で3時間、次いで50℃で3時間反応を行った後、水酸化カルシウム3.303質量部を加えて反応を終了し、ポリマーのNMP溶液を得た。
得られた溶液の一部を大量のイオン交換水中に投入して析出したポリマーをろ取して回収し、水で2回及びメタノールで1回、順次に洗浄後、真空乾燥することにより、下記式(R2)
【0025】
【化6】

【0026】
で表される繰り返し単位からなる全芳香族ポリアミド(ポリマーR2)を得た。
このポリマーR2につき、溶媒として硫酸を用い、試料濃度0.5g/100mL、30℃の条件にて測定を行って求めた特有粘度(ηinh)は4.3dL/gであった。
【0027】
実施例1<全芳香族ポリベンゾイミダゾールを用いた炭素材料の調製及び該炭素材料の酸素還元活性の測定>
上記合成例2で得られた全芳香族ポリベンゾイミダゾール(ポリマーA1)を窒素雰囲気下、900℃において60分間加熱して炭素化処理した後、ボールミルを用いて粉砕することにより、炭素材料を得た。
この炭素化収率及び得られた炭素材料の酸素還元開始電位の測定結果を表1に示した。
比較例1及び2<全芳香族ポリアミドを用いた炭素材料の調製及び該炭素材料の酸素還元開始電位の測定>
上記実施例1において、全芳香族ポリベンゾイミダゾール(ポリマーA1)の代わりに、上記比較合成例1及び2で得られた全芳香族ポリアミド(ポリマーR1及びポリマーR2)をそれぞれ用いたほかは実施例1と同様にして、炭素材料をそれぞれ得た。
これらの炭素化収率及び得られた炭素材料の酸素還元開始電位の測定結果を、それぞれ表1に示した。
【0028】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の炭素材料は、燃料電池用の電極触媒、各種化学反応の触媒等として好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(A−1)
【化1】

で表される繰り返し単位及び下記一般式(A−2)
【化2】

で表わされる繰り返し単位からなる群より選ばれる少なくとも1種の繰り返し単位からなり、特有粘度が0.05〜200dL/g(メタンスルホン酸溶媒、試料濃度0.03g/100mL、測定温度25℃)である全芳香族ポリベンゾイミダゾールを、不活性ガス雰囲気下、500〜1,500℃において焼成して得られることを特徴とする、炭素材料。
【請求項2】
請求項1に記載の炭素材料を製造するための方法であって、
上記一般式(A−1)で表される繰り返し単位及び上記一般式(A−2)で表わされる繰り返し単位からなる群より選ばれる少なくとも1種の繰り返し単位からなり、特有粘度が0.05〜200dL/g(メタンスルホン酸溶媒、試料濃度0.03g/100mL、測定温度25℃)である全芳香族ポリベンゾイミダゾールを、不活性ガス雰囲気下、500〜1,500℃において焼成することを特徴とする、炭素材料の製造方法。

【公開番号】特開2011−6280(P2011−6280A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−150950(P2009−150950)
【出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術開発機構「固体高分子形燃料電池実用化戦略的技術開発/要素技術開発/カーボンアロイ触媒」にかかる委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000003001)帝人株式会社 (1,209)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【出願人】(504145364)国立大学法人群馬大学 (352)
【Fターム(参考)】