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炭素繊維前駆体繊維束およびその製造方法
説明

炭素繊維前駆体繊維束およびその製造方法

【課題】樹脂含浸性および開繊性が良好で、強度が高い炭素繊維束を製造できる炭素繊維前駆体繊維束を提供する。
【解決手段】複数の単繊維からなり、該単繊維がアクリロニトリル系重合体からなる炭素繊維前駆体繊維束であって、単繊維の断面の長径と短径との比(長径/短径)が、1.35〜1.5であり、単繊維の表面の最大高さ(Ry)が、0.42〜0.6μmであり、Ry/(長径/短径)が、0.31μm以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化複合材料の強化材として使用される炭素繊維束の製造に好適に用いられる炭素繊維前駆体繊維束およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維強化複合材料には、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維等が使用されている。中でも、炭素繊維は、比強度、比弾性率、耐熱性、耐薬品性等に優れ、航空機用途、ゴルフシャフト、釣り竿等のスポーツ用途、一般産業用途の繊維強化複合材料の強化材として使用されている。炭素繊維を用いた繊維強化複合材料は、例えば、以下のようにして製造される。
【0003】
まず、ポリアクリロニトリル系重合体の単繊維からなる前駆体繊維束を、焼成工程(耐炎化工程)にて、空気などの酸化性気体中、200〜300℃の温度で焼成して耐炎繊維束を得る。次いで炭素化工程にて、不活性雰囲気中、300〜2000℃の温度で耐炎繊維束を炭素化して炭素繊維束を得る。そして、得られた炭素繊維束を、必要に応じて織物等に加工した後、これに合成樹脂を含浸させ、所定形状に成形することにより繊維強化複合材料を得る。
【0004】
炭素繊維束の製造に用いられる前駆体繊維束には、焼成工程において繊維束がばらけて、繊維束を構成する単繊維が、隣接する繊維束に絡まったり、ローラに巻き付いたりしないように、高い集束性が要求される。しかしながら、集束性の高い前駆体繊維束から得られる炭素繊維束は、その集束性の高さのため、樹脂が含浸しにくいという問題を有していた。
【0005】
また、炭素繊維束を製織して得られる炭素繊維織物は、樹脂を含浸する際に、樹脂のボイドが発生しないように、できるだけ目開きの小さい織物とする必要がある。そのために、製織中または製織後に何らかの開繊処理が施される。しかしながら、集束性の高い前駆体繊維束から得られる炭素繊維束は、その集束性の高さのため、開繊しにくいという問題を有していた。また、炭素繊維織物は、目開きの小さい均一な織り目が要求されるため、嵩高い炭素繊維束が必要とされていた。
【0006】
これらの問題点を改善する方法として、特許文献1では、アクリロニトリル系重合体の単繊維の断面の長径と短径との比(長径/短径)が、1.05〜1.6であり、ICP発光分析によって測定されるSi量が、500〜4000ppmの範囲である炭素繊維前駆体繊維束とすることで、焼成して炭素繊維としたときに樹脂含浸性、開繊性が良好となる炭素繊維前駆体繊維束が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−20927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の実施例で得られた炭素繊維前駆体繊維束は、開繊性、および強度は良好であるものの、樹脂含浸性は5.1以下しか得られておらず、改善の余地がある。
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、樹脂含浸性および開繊性が良好で、強度が高い炭素繊維束を製造できる炭素繊維前駆体繊維束およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決すために本発明の炭素繊維前駆体繊維束は、アクリロニトリル系重合体からなる炭素繊維前駆体繊維束であって、単繊維の断面の長径と短径との比(長径/短径)が、1.35〜1.5であり、単繊維の表面の最大高さ(Ry)が、0.42〜0.6μmであり、Ry/(長径/短径)が、0.31μm以上である。
【0010】
アクリロニトリル系重合体が、アクリルアミド単量体単位を0.5〜4質量%含むことが好ましい。
単繊維の表面の中心線平均粗さ(Ra)が、0.07〜0.15μmであり、Ra/(長径/短径)が、0.05μm以上であることが好ましい。
単繊維の表面にしわを有し、局部山頂の間隔(S)が、0.7〜1.0μmであり、S/(長径/短径)が、0.5μm以上であることが好ましい。
繊維束の総繊度が、15000dtex以下であることが好ましい。
【0011】
また本発明の炭素繊維前駆体繊維束の製造方法は、95質量%以上のアクリロニトリル単位を含有するアクリロニトリル系重合体の有機溶剤溶液からなる紡糸原液を、有機溶剤濃度52〜58質量%、温度30〜50℃の有機溶剤水溶液からなる第1凝固浴中に吐出させて凝固糸にするとともに、前記凝固糸を第1凝固浴中から紡糸原液吐出線速度の0.8倍以下の引き取り速度で引き取る工程と、前記凝固糸に対して、有機溶剤濃度60〜70質量%、温度30〜50℃の有機溶剤水溶液からなる第2凝固浴中にて2.6〜3.5倍の延伸を施す工程と、第2凝固浴中での延伸を終えた、膨潤状態にある繊維束に対して3倍以上の湿熱延伸を行う工程と、前記湿熱延伸後の繊維束に対して、0.4〜1.5質量%に調整したシリコン系油剤の添油処理を行う工程と、前記添油処理の後、前記繊維束を乾燥した後に、1.2〜4倍のスチーム延伸を施す工程とを有する。
【0012】
アクリロニトリル系重合体が、アクリルアミド単量体単位を0.5〜4質量%含むことが好ましい。
得られる炭素繊維前駆体繊維束の総繊度が15000dtex以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、樹脂含浸性および開繊性が良好で、強度が高い炭素繊維束を製造できる炭素繊維前駆体繊維束が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】中心線平均粗さ(Ra)を説明する、炭素繊維前駆体繊維束の単繊維表面の断面図である。
【図2】最大高さ(Ry)を説明する、炭素繊維前駆体繊維束の単繊維表面の断面図である。
【図3】局部山頂の間隔(S)を説明する、炭素繊維前駆体繊維束の単繊維表面の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の炭素繊維前駆体繊維束は、複数のアクリロニトリル系重合体の単繊維(以下、単に繊維ということもある。)を束ねたトウである。
アクリロニトリル系重合体としては、アクリロニトリル単位を95質量%以上含有する重合体が、炭素繊維前駆体繊維束を焼成して得られる炭素繊維束の強度発現性の点で好ましい。アクリロニトリル系重合体は、アクリロニトリルと、必要に応じてこれと共重合しうる単量体とを、水溶液中におけるレドックス重合、不均一系における懸濁重合、分散剤を使用した乳化重合などによって、重合させて得ることができる。
【0016】
アクリロニトリルと共重合しうる単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニル類;(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸等の酸類およびそれらの塩類;マレイン酸イミド、フェニルマレイミド、(メタ)アクリルアミド、スチレン、α−メチルスチレン、酢酸ビニル;スチレンスルホン酸ソーダ、アリルスルホン酸ソーダ、β−スチレンスルホン酸ソーダ、メタアリルスルホン酸ソーダ等のスルホン基を含む重合性不飽和単量体;2−ビニルピリジン、2−メチル−5−ビニルピリジンのピリジン基を含む重合性不飽和単量体等が挙げられる。これらはいずれか1種を用いてもよく2種以上を用いてもよい。
炭素繊維前駆体繊維束の製造時における凝固の緻密性を確保するため、アクリロニトリル系重合体が、アクリルアミド単量体単位を含むことが好ましい。アクリルアミド単量体単位の含有量としては0.5〜4質量%が好ましく、1〜3.5質量%がより好ましい。アクリルアミド単量体単位が0.5質量%未満では、凝固の緻密性への効果が不十分であり、強度の高い炭素繊維が得られにくくなる。また、4質量%を超えると重合体のコストアップが著しくなるため好ましくない。
【0017】
本発明におけるアクリロニトリル系重合体の単繊維の断面の長径と短径との比(長径/短径)は、1.35〜1.5であり、好ましくは、1.36〜1.49である。長径/短径比が前記範囲内にあれば、前駆体繊維束の焼成工程通過性と、これから得られる炭素繊維束の樹脂含浸性および開繊性とを同時に満足することができる。長径/短径比が1.35未満では、単繊維間の空隙が減少し、得られる炭素繊維束の樹脂含浸性および開繊性が不十分になりやすい。長径/短径比が1.5を超えると、繊維束の集束性が低下し、焼成工程通過性が悪化する。また、ストランド強度が低下する傾向にある。
【0018】
(単繊維の繊維断面の長径と短径との比(長径/短径)の測定方法)
本発明における、単繊維の断面の長径と短径との比(長径/短径)は、以下のようにして決定される値である。
内径1mmの塩化ビニル樹脂製のチューブ内に測定用の単繊維の束を通した後、これをナイフで輪切りにして試料を準備する。
ついで、前記試料を単繊維の断面が上を向くようにしてSEM試料台に接着し、さらにAuを約10nmの厚さにスパッタリングしてから、走査型電子顕微鏡(PHILIPS社製、製品名:XL20)により、加速電圧7.00kV、作動距離31mmの条件で観察し、単繊維の断面の長径および短径を測定し、長径を短径で割ることで長径/短径の比率を求める。
同様にして、前記チューブ内に通した単繊維の全部について長径/短径の比率を求め、その平均値を、単繊維の断面の長径と短径との比(長径/短径)とする。
【0019】
本発明の炭素繊維前駆体繊維束のSi量は、500〜4000ppmの範囲であることが好ましく、1000〜3000ppmの範囲であることが更に好ましい。Si量が前記範囲内にあれば、前駆体繊維束の焼成工程通過性と、これから得られる炭素繊維束の樹脂含浸性および開繊性とを同時に満足することができる。Si量が500ppm未満では、繊維束の集束性が低下し、焼成工程通過性が悪化する可能性がある。また、得られる炭素繊維束のストランド強度が低下する可能性がある。Si量が4000ppmを超えると、前駆体繊維束の焼成時にシリカが多く飛散し、焼成安定性が悪くなる。また、得られる炭素繊維束が、ばらけにくくなり、樹脂含浸性および開繊性が悪くなる。
前記Si量は、炭素繊維前駆体繊維束を製造する際に使用されるシリコン系油剤に由来するものである。Si量は、ICP発光分析装置を用いて測定することができる。
【0020】
本発明におけるアクリロニトリル系重合体の単繊維強度は、好ましくは5.0cN/dtex以上であり、より好ましくは6.5cN/dtex以上であり、さらに好ましくは7.0cN/dtex以上である。単繊維強度が5.0cN/dtex未満では、焼成工程での単糸切れによる毛羽の発生が多くなって焼成工程通過性が悪くなる。
【0021】
本明細書におけるアクリロニトリル系重合体の単繊維強度は、単繊維自動引張強伸度測定機(オリエンテック社製、製品名:UTM II−20)を使用し、台紙に貼られた単繊維をロードセルのチャックに装着し、毎分20.0mmの速度で引っ張り試験を行い強伸度測定することによって求められる値である。
【0022】
本発明の炭素繊維前駆体繊維束は、単繊維の表面に繊維束の長手方向に延びるしわを有していることが好ましい。かかるしわの存在により、本発明の炭素繊維前駆体繊維束は、良好な集束性を有すると同時に、得られる炭素繊維束は、良好な樹脂含浸性と開繊性とを有するようになる。
しわの深さは、以下の中心線平均粗さ(Ra)、最大高さ(Ry)および局部山頂の間隔(S)によって規定される。
【0023】
図1〜3は、炭素繊維前駆体繊維束を構成している単繊維の、繊維長さ方向に対して垂直な断面における、単繊維表面の断面形状を模式的に示した図である。
単繊維の表面の中心線平均粗さ(Ra)とは、図1に示すように、粗さ曲線からその中心線mの方向に基準長さLだけ抜き取り、抜き取り部分の中心線mから測定曲線までの偏差の絶対値を合計し、平均した値である。中心線平均粗さ(Ra)は、レーザー顕微鏡を用いることによって測定される。
単繊維の表面の最大高さ(Ry)とは、図2に示すように、粗さ曲線からその中心線mの方向に基準長さLだけ抜き取り、抜き取り部分における、最も高い山頂線と中心線mとの間隔Rpおよび最も低い谷底線と中心線mとの間隔Rvの合計値(Rp+Rv)である。最大高さ(Ry)は、レーザー顕微鏡を用いることによって測定される。
局部山頂の間隔(S)とは、しわの間隔を規定するパラメータであり、図3に示すように、粗さ曲線からその中心線mの方向に基準長さLだけ抜き取り、抜き取り部分の隣り合う局部山頂間の間隔S1、S2、S3、・・・の平均値Sである。局部山頂の間隔(S)は、レーザー顕微鏡を用いることによって測定される。
【0024】
最大高さ(Ry)は、0.42〜0.6μmであり、好ましくは0.42〜0.56μmである。最大高さ(Ry)が0.42μm未満では、得られる炭素繊維束の樹脂含浸性、開繊性が悪くなり、嵩高さが不十分となる。最大高さ(Ry)が0.6μmを超えると、繊維束の表面積が増加して静電気が発生し易くなり、繊維束の集束性を低下させる。また、得られる炭素繊維束のストランド強度が低下する。
また、Ry/(長径/短径)は、0.31μm以上である。0.31μmより小さいと繊維の断面形状(長径/短径)に比べて相対的に繊維表面のしわが小さいことになり、得られる炭素繊維束の樹脂含浸性、開繊性が悪くなる。
すなわち、繊維の断面形状は、長径/短径の値が大きいほど、より扁平な楕円となる。良好な樹脂含浸性および開繊性を得るために、Ry/(長径/短径)の値が、所定の値以上であることが必要とは、繊維断面における楕円の扁平の程度に応じて、ある程度以上のしわの高さが必要であり、楕円がより扁平になるほど、必要なしわの高さがより大きくなることを意味する。
【0025】
中心線平均粗さ(Ra)は、好ましくは0.07〜0.15μmであり、より好ましくは0.07〜0.13μmであり、さらに好ましくは0.08〜0.12μmである。中心線平均粗さ(Ra)が0.07μm未満では、得られる炭素繊維束の樹脂含浸性、開繊性が悪くなり、嵩高さが不十分となる。中心線平均粗さ(Ra)が0.15μmを超えると、繊維束の表面積が増加して静電気が発生し易くなり、繊維束の集束性を低下させる。また、得られる炭素繊維束のストランド強度が低下する。
また、Ra/(長径/短径)は、0.05μm以上であることが好ましい。0.05μmより小さいと繊維の断面形状(長径/短径)に比べて相対的に繊維表面のしわが小さいことになり、得られる炭素繊維束の樹脂含浸性、開繊性が悪くなる。
すなわち、良好な樹脂含浸性および開繊性を得るために、Ra/(長径/短径)の値が、所定の値以上であることが好ましいとは、繊維断面における楕円の扁平の程度に応じて、ある程度以上しわの粗さが大きいことが好ましく、楕円がより扁平になるほど、好ましいしわの粗さがより大きくなることを意味する。
【0026】
局部山頂の間隔(S)は、好ましくは0.7〜1.0μmであり、より好ましくは0.7〜0.9μmである。局部山頂の間隔(S)が0.7μm未満では、得られる炭素繊維束の樹脂含浸性および開繊性が不十分となる。局部山頂の間隔(S)が1.0μmを超えると、繊維束の表面積が増加して静電気が発生し易くなり、繊維束の集束性を低下させる。また、得られる炭素繊維束のストランド強度が低下する。
また、S/(長径/短径)は、0.5μm以上であることが好ましい。0.5μmより小さいと繊維の断面形状(長径/短径)に比べて相対的に繊維表面のしわが小さいことになり、得られる炭素繊維束の樹脂含浸性、開繊性が悪くなる。
すなわち、良好な樹脂含浸性および開繊性を得るために、S/(長径/短径)の値が、所定の値以上であることが好ましいとは、繊維断面における楕円の扁平の程度に応じて、ある程度以上しわの間隔が大きいことが好ましく、楕円がより扁平になるほど、好ましいしわの間隔がより大きくなることを意味する。
【0027】
本発明の炭素繊維前駆体繊維束を構成するアクリロニトリル系重合体の単繊維の数は、好ましくは、12000本以下であり、より好ましくは6000本以下であり、さらに好ましくは3000本以下である。単繊維の数が12000本を超えると、トウハンドリングおよびトウボリュウームが増加し、乾燥負荷が増大することから、紡糸速度を上げることができなくなる。また、均一な交絡を与える事が困難となり、その結果、焼成工程での通過性が悪化する。
【0028】
本発明の炭素繊維前駆体繊維束の総繊度は、15000dtex以下であることが好ましい。より好ましくは10000dtex以下である。総繊度が15000dtexを超えると乾燥負荷が増大し、紡糸速度を上げることが困難となるため好ましくない。
総繊度の下限値は特に限定されないが、生産性を確保する点で1000dtex以上が好ましく、3000dtex以上がより好ましい。
【0029】
次に、本発明の炭素繊維前駆体繊維束の製造方法について説明する。
[1]まず、95質量%以上のアクリロニトリル単位を含有するアクリロニトリル系重合体の有機溶剤溶液からなる紡糸原液を、紡糸口金を通して、第1凝固浴中に一定の線速度(紡糸原液吐出線速度)で吐出させて凝固糸を形成し、第1凝固浴中から凝固糸を一定の速度(引き取り速度)で引き取る。
紡糸原液に使用する有機溶剤としては、例えば、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。中でも、ジメチルアセトアミドは、溶剤の加水分解による性状の悪化が少なく、良好な紡糸性を与えるので、好適に用いられる。
紡糸原液におけるアクリロニトリル系重合体の濃度は、10〜40質量%が好ましく、15〜25質量%がより好ましい。前記範囲内であると良好な紡糸性が得られやすい。
【0030】
紡糸原液を押し出すための紡糸口金には、アクリロニトリル系重合体の単繊維の一般的な太さである、1.0デニール(1.1dtex)程度のアクリロニトリル系重合体の単繊維を製造する際の孔径、すなわち15〜100μmの孔径のノズル孔を有する紡糸口金を好適に使用できる。ノズル孔の孔数は、得ようとする炭素繊維前駆体繊維束を構成する単繊維の数と同じである。
【0031】
第1凝固浴は、有機溶剤の濃度52〜58質量%、温度30〜50℃の有機溶剤水溶液からなる。第1凝固浴の有機溶剤としては、紡糸原液に使用する有機溶剤と同様のものが挙げられる。紡糸原液に使用する有機溶剤と第1凝固浴の有機溶剤とは同じであってもよく、異なってもよい。溶剤回収工程を複雑にしないために同じであることが好ましい。
第1凝固浴の有機溶剤濃度が低いと繊維の断面の長径/短径の値が大きくなる傾向があり、有機溶剤濃度が高くなると長径/短径は1に近くなる。本発明において、繊維の断面の長径/短径の値を1.35〜1.5の範囲とするためには、第1凝固浴の有機溶剤濃度を52〜58質量%とすることが好ましい。
第1凝固浴の温度が前記範囲であると、得られる凝固糸にマクロボイドの発生がほとんど見られず、最終的に得られる炭素繊維束の強度が良好なものとなる。第1凝固浴のより好ましい温度は20〜40℃である。
【0032】
第1凝固浴中から凝固糸を引き取る速度(引き取り速度)は、紡糸原液を、紡糸口金を通して第1凝固浴中に吐出させる際の線速度(紡糸原液吐出線速度)の0.8倍以下とする。すなわち「引き取り速度/紡糸原液吐出線速度」の値が0.8以下であり、この範囲であると良好な紡糸性を維持することができる。「引き取り速度/紡糸原液吐出線速度」の下限値は特に限定されないが、紡糸速度を上げて生産性を向上するためには0.4以上が好ましい。
【0033】
本工程において第1凝固浴から引き上げた凝固糸は、第1凝固浴および紡糸原液に由来する有機溶剤と、第1凝固浴に由来する水を含有しており、凝固糸が含有する液体中の有機溶剤の濃度は、第1凝固浴における有機溶剤の濃度を超えている。このため、凝固糸は、表面だけが凝固した半凝固状態となっており、次工程の第2凝固浴中での良好な延伸性が得られる。
【0034】
炭素繊維前駆体繊維束を構成する繊維は表層部と繊維内部とが均一に配向していることが好ましい。本工程において、第1凝固浴中での凝固糸製造の際の「引き取り速度/紡糸原液吐出線速度」が低いと、第1凝固浴中で形成される凝固糸の凝固が均一になりやすく、表層部と繊維内部とが均一に配向した繊維が得られやすい。一方、「引き取り速度/紡糸原液吐出線速度」が高すぎると、第1凝固浴中での凝固糸の凝固と延伸とが同時に起こり、第1凝固浴中で形成される凝固糸の凝固が不均一になる。従って、これを第2凝固浴中で延伸しても、繊維内部まで均一に配向した繊維にはなりにくい。
【0035】
[2]次に、第1凝固浴から引き取った凝固糸を、第2凝固浴中にて2.6〜3.5倍に延伸する。第2凝固浴は、有機溶剤の濃度60〜70質量%、温度30〜50℃の有機溶剤水溶液からなる。
第2凝固浴の有機溶剤としては、紡糸原液に使用する有機溶剤と同様のものが挙げられる。紡糸原液または第1凝固浴の有機溶剤と、第2凝固浴の有機溶剤は同じであってもよく、異なってもよい。溶剤回収工程を複雑にしないために同じであることが好ましい。
本発明では、第1凝固浴の有機溶剤濃度よりも第2凝固浴の有機溶剤濃度の方が高く設定される。第2凝固浴の有機溶剤濃度を高くすることにより、第2凝固浴中での延伸倍率を上げることが可能となり、しわを深くすることができる。第2凝固浴の有機溶剤濃度および温度を前記の範囲とすることにより、単繊維切れの発生を防止しつつ、2.6〜3.5倍の延伸を安定して行うことができる。
第2凝固浴での延伸倍率が2.6倍よりも低いと、しわが深くなりにくくなり、3.5倍よりも高いと、単繊維切れが発生し易くなり、紡糸安定性が低下し、しかもその後の湿熱延伸工程での延伸性が悪化する。
【0036】
なお、第1凝固浴から引き出した凝固液を含んだままの膨潤状態にある凝固糸は、空気中で延伸することも可能であるが、本工程のように第2凝固浴中で延伸することにより、凝固糸の凝固を促進させることができ、また、延伸時の温度制御も容易になる。
上記の条件で第2凝固浴中での延伸を行うことにより、最大高さ(Ry)が0.42〜0.6μm、Ry/(長径/短径)が0.31μm以上の炭素繊維前駆体繊維束を得ることが可能になる。
【0037】
[3]続いて、第2凝固浴中での延伸を終えた膨潤状態にある繊維束に対して湿熱延伸を行う。これにより繊維の配向をさらに高めることができる。湿熱延伸は、具体的には、第2凝固浴中での延伸を終えた膨潤状態にある膨潤繊維束を、水洗に付しながらの延伸、あるいは熱水中での延伸によって行われる。水洗と同時の延伸は紡糸工程の簡略化、効率化の点で好ましく、熱水中での延伸は生産性の点で好ましい。
湿熱延伸における延伸倍率は2.5倍以上である必要があり、3倍以上が更に好ましい。2.5倍よりも低いと、繊維の配向を高める効果が不十分となりやすい。延伸倍率の上限は特に限定されないが、紡糸工程の安定性の点からは4倍以下が好ましい。
【0038】
[4]次に、湿熱延伸を終えた繊維束に対してシリコン系油剤の添油処理を行う。シリコン系油剤としては、例えばアミノシリコン系油剤等、一般的なシリコン系油剤を用いることができる。シリコン系油剤は、0.4〜1.5質量%の濃度に調製されて用いられる。シリコン系油剤の濃度が0.4質量%未満であると繊維への油剤の付着量が少なくなりすぎて好ましくなく、1.5質量%を超えると油剤の付着量が多くなりすぎて好ましくない。シリコン系油剤の濃度のより好ましい範囲は0.8〜1.5質量である。
【0039】
[5]次に、シリコン系油剤の添油処理を終えた繊維束を乾燥し、さらにスチーム延伸機で1.2〜4倍に延伸する。スチーム延伸を実施することで、安定に高倍率での延伸が可能になり、また、静電気の発生による製造工程でのトラブルを抑制することができる。スチーム延伸の延伸倍率は1.2倍以上であり、好ましくは1.5倍以上である。
仮に、スチーム延伸の代わりに乾熱延伸を実施すると、しわが深くなりすぎて繊維束の表面積が増加して静電気が発生し易くなり、繊維束の集束性を低下させる。また、得られる炭素繊維束のストランド強度が低下する。
【0040】
[6]次に、スチーム延伸を行った繊維束に対して、必要に応じてタッチロールで水分率の調整を行った後、公知の方法でエアーを吹き付けて交絡処理を施し、炭素繊維前駆体繊維束を得る。本発明において交絡処理は必須ではないが、炭素繊維前駆体繊維束のフィラメント同士に交絡を付与する事で、集束性を付与して1本のトウの形態を保持する繊維束が得ることができる。また繊維束をばらけにくくして、焼成工程通過性を向上させることができる。
【0041】
交絡処理が施される前の繊維束の水分率は、好ましくは15質量%以下であり、より好ましくは、10質量%以下であり、さらに好ましくは、3〜5質量%である。水分率が15質量%を超えると、繊維束にエアーを吹き付けて交絡を施した際に、単繊維が交絡しにくくなる。
本明細書における水分率は、ウエット状態にある繊維束の質量wと、これを105℃×2時間の熱風乾燥機で乾燥した後の質量w0 とにより、水分率(質量%)=(w−w0 )×100/w0 によって求めた数値である。
【0042】
交絡処理を施した炭素繊維前駆体繊維束における交絡度は、好ましくは5〜20ヶ/mの範囲であり、より好ましくは10〜14ヶ/mの範囲である。交絡度が5ヶ/m未満では、交絡を付与することにより繊維束をばらけにくくして焼成工程通過性を向上させる効果が充分に得られない。交絡度が20ヶ/mを超えると、得られる炭素繊維束の樹脂含浸性および開繊性が悪くなる。
本明細書における炭素繊維前駆体繊維束の交絡度とは、繊維束中の1本の単繊維が隣接する他の単繊維と1mの間に何回交絡しているかを示すパラメータである。交絡度は、フックドロップ法により測定される。
【実施例】
【0043】
以下、本発明について実施例を示して詳しく説明する。
本実施例における各測定は、以下の方法によって行った。
(Si量)
まず、試料をテフロン(登録商標)製密閉容器にとり、硫酸、次いで硝酸で加熱酸分解した後、定容として、ICP発光分析装置(ジャーレルアッシュ社製、製品名:IRIS−AP)を用いて測定した。
(交絡度)
乾燥状態にある炭素繊維前駆体の繊維束を用意し、垂下装置の上部に前記繊維束を取り付け、上部つかみ部から下方1mにおもりを取り付けつり下げた。ここで用いるおもり荷重は、デニール数の1/5のグラム数とした。前記繊維束の上部つかみから1cm下部の点に前記繊維束を2分割するようにフックを挿入し、2cm/Sの速度でフックを下降させた。フックが前記繊維束の絡みによって停止した点までのフックの下降距離L(mm)を求め、次式によって交絡度を算出した。尚、試験回数はN=50とし、その平均値の小数点1桁まで求めた。
交絡度=1000/L
ここで用いたフックは、直径が0.5mm〜1.0mmの針状で、表面が滑らかに仕上げ処理されたものである。
【0044】
(しわ形状)
乾燥状態にある炭素繊維前駆体の繊維束をスライドガラスに貼り付け、レーザー顕微鏡(レーザーテック株式会社製、製品名:VL2000)を用い、繊維軸方向に対して垂直方向にRa、Ry、Sを測定した。測定は、繊維束を構成する単繊維から任意に選ばれた10本について行い平均値を求めた。得られたRa、Ry、Sの平均値と断面形状の測定結果から、Ra/(長径/短径)、Ry/(長径/短径)、S/(長径/短径)を算出した。
(総繊度)
まず、温度23±5℃、相対湿度60±20%の雰囲気中で、炭素繊維前駆体繊維束をボビンから長手方向に1m撚りが入らないように正確に切断して1本目のサンプルとした。次に前記で切り取った1本目のサンプルから、繊維束の長さ方向に沿って50m離れた位置で、同様にして2本目のサンプルを正確に切り取り、以下同様にして50mおきに合計20本のサンプルを切り取った。
採取した20本のサンプルを105℃、1時間の条件で乾燥機にて乾燥させ、電子天秤にて長さ1mの各サンプルの乾燥後質量(単位:g)を測定し、全データの平均値(Mとする。単位:g/m)を求めた。得られた平均値(M)を用い、炭素繊維前駆体繊維束の総繊度は次式により求めた。
炭素繊維前駆体繊維束の総繊度(dtex)=M(g/m)×10000(m)
【0045】
アクリロニトリル系繊維束(炭素繊維前駆体繊維束)を焼成して得られる炭素繊維束の評価方法は、以下の通りである。
(樹脂含浸性)
炭素繊維束を約20cm切り取り、グリシジルエーテル中に約3cm浸し15分間放置した。グリシジルエーテル中から取り出した後3分間放置し、下から3.5cmのところで切り落とし、残った炭素繊維束の長さ、質量を測定した。炭素繊維束の目付けから吸い上げたグリシジルエーテルの質量割合を算出し、樹脂含浸性の指標とした。
(開繊性)
炭素繊維束を0.06g/単繊維の張力下、走行速度1m/分で金属ロール上を走行させた際のトウ幅を測定し開繊性の指標とした。
(炭素繊維のストランド強度)
JIS−7601に準じて測定した。
【0046】
[実施例1]
アクリロニトリル、アクリルアミドおよびメタクリル酸を、過硫酸アンモニウム−亜硫酸水素アンモニウムおよび硫酸鉄の存在下、水系懸濁重合により共重合し、アクリロニトリル単位/アクリルアミド単位/メタクリル酸単位=96/3/1(質量比)からなるアクリロニトリル系重合体を得た。前記アクリロニトリル系重合体をジメチルアセトアミドに溶解し、重合体濃度が21質量%の紡糸原液を調製した。
【0047】
前記紡糸原液を孔数3000、孔径75μmの紡糸口金を通して、濃度55質量%、温度30℃のジメチルアセトアミド水溶液からなる第1凝固浴中に吐出させて凝固糸にし、第1凝固浴中から前記凝固糸を、紡糸原液吐出線速度の0.8倍の引き取り速度で引き取った。前記凝固糸を引き続き濃度60質量%、温度30℃のジメチルアセトアミド水溶液からなる第2凝固浴に導き、浴中にて2.8倍に延伸した。
【0048】
ついで、前記繊維束に対して水洗と同時に3倍の湿潤延伸を行い、これに1.5質量%に調製したアミノシリコン系油剤を添油した。前記繊維束を、熱ロールを用いて乾燥し、スチーム延伸機にて1.9倍に延伸した。その後、タッチロールにて繊維束の水分率を調整し、前記繊維束に繊維当たり5質量%の水分を含有させた。ついで、前記繊維束を、エア圧405kPaのエアーによって、交絡処理し、ワインダーでボビンに巻き取ることにより、単繊維繊度1.1dtex(1.0デニール)、総繊度3300dtexのアクリロニトリル系繊維束を得た。主な製造条件を表1に示す。
【0049】
得られたアクリロニトリル系繊維束について、断面形状、Si量、単繊維強度、交絡度およびしわ形状を測定した。結果を表2に示す。
さらに、アクリロニトリル系繊維束を空気中230〜260℃の熱風循環式耐炎化炉にて50分間処理し耐炎化繊維束となし、ついで耐炎繊維束を窒素雰囲気中下で最高温度780℃にて1.5分間処理し、さらに同雰囲気下で最高温度が1300℃の高温熱処理炉にて約1.5分処理した後、重炭酸水素アンモニウム水溶液中で0.4Amin/mで電解処理を施し、炭素繊維束を得た。得られた炭素繊維束の樹脂含浸性、開繊性およびストランド強度を評価した。結果を表3に示す。
【0050】
[実施例2〜6、比較例1〜11]
実施例1において、第1凝固浴の有機溶剤濃度、第2凝固浴の有機溶剤濃度、第2凝固浴中における延伸倍率、湿熱延伸における延伸倍率、およびスチーム延伸機による延伸倍率のうちの1つ以上を、表1に示すように変更したほかは実施例1と同様にしてアクリロニトリル系繊維束を得た。得られたアクリロニトリル系繊維束の単繊維繊度はいずれも1.1dtex、総繊度は3300dtexであった。
なお、比較例2、3、12は第2凝固浴で糸切れが発生したため、アクリロニトリル系繊維束を作製できなかった。
得られたアクリロニトリル系繊維束について、実施例1と同様の測定を行った。結果を表2に示す。
さらに、実施例1と同様にしてアクリロニトリル系繊維束を焼成して得られた炭素繊維束について実施例1と同様の評価を行った。結果を表3に示す。
【0051】
【表1】

【0052】
【表2】

【0053】
【表3】

【0054】
表3の結果に示されるように、単繊維の繊維断面における長径と短径との比(長径/短径)が、1.35〜1.5であり、単繊維の表面の最大高さ(Ry)が、0.42〜0.6μmであり、Ry/(長径/短径)が、0.31μm以上である実施例1〜6のアクリロニトリル系繊維束は、これを用いて製造された炭素繊維束の樹脂含浸性、開繊性、および強度のいずれも良好であった。
これに対して、第1凝固浴の有機溶剤濃度が60質量%と高い比較例1、5、9で得られたアクリロニトリル系繊維束は、単繊維の長径/短径比が1.32、Ryが0.42未満、Ry/(長径/短径)が0.31未満といずれも小さく、アクリロニトリル系繊維束から得られた炭素繊維束は、樹脂含浸性および開繊性に劣っていた。
また第1凝固浴の有機溶剤濃度が70質量%とさらに高い比較例4は、前記長径/短径比が1.02、Ryが0.20、Ry/(長径/短径)が0.20といずれも小さく、樹脂含浸性、開繊性、および強度のいずれも劣っていた。
第1凝固浴の有機溶剤濃度が50質量%と低い比較例6、8、11では、前記長径/短径比がそれぞれ1.52、1,53、1,52と大きいのに対して、Ryが0.42未満でしわが浅く、Ry/(長径/短径)が0.31未満と小さいため、アクリロニトリル系繊維束から得られた炭素繊維束は、樹脂含浸性および強度に劣っていた。
第1凝固浴の有機溶剤濃度が40質量%とさらに低い比較例7は、Ry/(長径/短径)は0.38と実施例と同等であるが、前記長径/短径比が1.72、Ryが0.65と大きいため、樹脂含浸性および開繊性は良好であるものの、強度が大幅に劣っていた。また集束性も劣っていた。
第2凝固浴の有機溶剤濃度が75質量%と高い比較例10は、前記長径/短径比は1.42であり実施例と同等であったが、Ryが0.36と小さくてしわが浅く、Ry/(長径/短径)が0.25と小さいため、樹脂含浸性および開繊性に劣っていた。
第2凝固浴の有機溶剤濃度が55質量%と低い比較例2、12、およびは第2凝固浴中での延伸倍率が4倍と高い比較例3では、第2凝固浴で糸切れが発生し、アクリロニトリル系繊維束を作製できなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリロニトリル系重合体からなる炭素繊維前駆体繊維束であって、
該炭素繊維前駆体繊維束を構成する単繊維の断面の長径と短径との比(長径/短径)が、1.35〜1.5であり、
単繊維の表面の最大高さ(Ry)が、0.42〜0.6μmであり、
Ry/(長径/短径)が、0.31μm以上である炭素繊維前駆体繊維束。
【請求項2】
アクリロニトリル系重合体が、アクリルアミド単量体単位を0.5〜4質量%含む請求項1に記載の炭素繊維前駆体繊維束。
【請求項3】
単繊維の表面の中心線平均粗さ(Ra)が、0.07〜0.15μmであり、
Ra/(長径/短径)が、0.05μm以上である請求項1または2に記載の炭素繊維前駆体繊維束。
【請求項4】
単繊維の表面にしわを有し、局部山頂の間隔(S)が、0.7〜1.0μmであり、
S/(長径/短径)が、0.5μm以上である請求項1〜3にいずれかに記載の炭素繊維前駆体繊維束。
【請求項5】
繊維束の総繊度が、15000dtex以下である請求項1〜4のいずれかに記載の炭素繊維前駆体繊維束。
【請求項6】
95質量%以上のアクリロニトリル単位を含有するアクリロニトリル系重合体の有機溶剤溶液からなる紡糸原液を、有機溶剤濃度52〜58質量%、温度30〜50℃の有機溶剤水溶液からなる第1凝固浴中に吐出させて凝固糸にするとともに、前記凝固糸を第1凝固浴中から紡糸原液吐出線速度の0.8倍以下の引き取り速度で引き取る工程と、
前記凝固糸に対して、有機溶剤濃度60〜70質量%、温度30〜50℃の有機溶剤水溶液からなる第2凝固浴中にて2.6〜3.5倍の延伸を施す工程と、
第2凝固浴中での延伸を終えた、膨潤状態にある繊維束に対して3倍以上の湿熱延伸を行う工程と、
前記湿熱延伸後の繊維束に対して、0.4〜1.5質量%に調整したシリコン系油剤の添油処理を行う工程と、
前記添油処理の後、前記繊維束を乾燥した後に、1.2〜4倍のスチーム延伸を施す工程とを有する炭素繊維前駆体繊維束の製造方法。
【請求項7】
アクリロニトリル系重合体が、アクリルアミド単量体単位を0.5〜4質量%含む請求項6に記載の炭素繊維前駆体繊維束の製造方法。
【請求項8】
得られる炭素繊維前駆体繊維束の総繊度が15000dtex以下である請求項6または7のいずれかに記載の炭素繊維前駆体繊維束の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−12363(P2011−12363A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−158035(P2009−158035)
【出願日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】