説明

炭素繊維強化樹脂組成物およびその成形品

【課題】本発明は、機械的特性、表面外観等に優れ、特に引張強度、曲げ弾性率、外観・意匠性に優れた炭素繊維強化樹脂組成物を提供することをその課題とするものである。
【解決手段】熱可塑性ポリアミド樹脂(A)100重量部に対して、(B)炭素繊維10〜300重量部、および(C)球状充填材0.1〜30重量部配合してなる炭素繊維強化樹脂組成物であり、(C)球状充填材が中空状充填材であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械的特性、表面外観等に優れ、特に引張強度、曲げ弾性率、外観・意匠性に優れた炭素繊維強化樹脂組成物を提供することをその課題とするものである。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂の機械特性を向上させるための手段として、ガラス繊維や炭素繊維等の繊維状充填材を配合することは一般的に知られている。一般的な配合手法としては、熱可塑性樹脂と繊維のチョップドストランド(短繊維)を押出機中で溶融混練することにより繊維強化樹脂組成物が得られる手法が用いられる。
【0003】
しかし、近年プラスチックの高性能化に対する要求が高度化し、金属同等の剛性が求められるようになってきている。金属同等の剛性を実現するためには、繊維状充填材を高充填し繊維長を長く保つ必要があるが、一般的な繊維状充填材を用い押出機中で溶融混練する手法では溶融混練時の剪断により繊維が折損すること、多量の繊維状充填材起因の剪断発熱によって樹脂を劣化させることなど多くの問題があり、熱可塑性樹脂と繊維状充填材を押出機で溶融混練する手法では高性能化には限界があった。
【0004】
また、要求性能として金属同等の剛性と同時に意匠性を向上するため良外観が求められるようになってきている。しかし、前記繊維状充填材を高充填する手法で得られた成形品は、高光沢であっても、うねり状凹凸が発生する問題により良外観が得られないため、機械的特性と外観・意匠性の両立は困難であった。
【0005】
これに対し、特許文献1において軽量化、高剛性化を行う目的でナイロン6に特定の炭素繊維を添加する手法が提案されている。しかしながら、炭素繊維を用いた軽量化、高剛性化は達成されるものの、うねり状凹凸が発生し外観が大幅に悪化する傾向にあり、外観・意匠性に問題がある。また、特許文献2においても軽量化、高剛性化を行う目的で、芳香族ナイロン(MXD6)に特定の炭素繊維を添加する手法が提案されている。しかしながら、炭素繊維を用いた軽量化、高剛性化は達成されるものの、うねり状凹凸が発生し外観が大幅に悪化する傾向にあり、外観・意匠性に問題がある。特許文献3においては特定ポリアミド樹脂に充填材を添加し摺動特性を向上させる手法が提案されている。しかしながら、うねり状凹凸に関する記載はなく、炭素繊維の記載はあるものの実施記載はなくそれに伴う優れた効果についても記載されていない。さらに、特許文献4において特定ポリアミド樹脂に特定化合物、充填材と炭素繊維を併用添加し、耐衝撃性と表面光沢を向上させる手法が提案されている。しかしながら、光沢に優れるもののうねり状凹凸に関する記載はなく、炭素繊維の記載はあるものの実施記載はなく、それに伴う優れた効果についても記載されていない。
【0006】
以上の通り、樹脂組成物において、ポリマー原料、繊維状充填材等原料面で様々な工夫は為されているが、金属同等の剛性が得られ、優れた外観・意匠性が得られるような公知技術は存在しなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−1964号公報(請求項1)
【特許文献2】特開2006−1965号公報(請求項1)
【特許文献3】特開平7−228774号公報(請求項1)
【特許文献4】特開2010−209247号公報(請求項1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記課題を解決し、炭素繊維強化により、優れた機械的特性、外観・意匠性を改善した炭素繊維強化樹脂組成物を提供することをその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記課題を解決するために本発明者らが鋭意検討した結果得られたものである。
(1)(A)熱可塑性ポリアミド樹脂100重量部に対し、(B)炭素繊維を10〜300重量部、および(C)球状充填材を0.1〜30重量部配合してなる炭素繊維強化樹脂組成物であって、
(2)(C)球状充填材が、中空状充填材であることを特徴とする(1)に記載の炭素繊維強化樹脂組成物。
(3)球状充填材が、ガラスバルーンであることを特徴とする(1)〜(2)のいずれかに記載の炭素繊維強化樹脂組成物。
(4)(B)炭素繊維のストランド強度が1〜5GPaであることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の炭素繊維強化樹脂組成物。
(5)(1)〜(4)のいずれかに記載の炭素繊維強化樹脂組成物を成形してなる成形品。
(6)うねり曲線の算術平均高さ(Wa)値が3μm以下であることを特徴とする(5)に記載の成形品。
【発明の効果】
【0010】
本発明の炭素繊維強化樹脂組成物は、引張強度、曲げ弾性率が大幅に優れながら、表面外観(うねり状凹凸)が良好な組成物を提供できる。そのため、機械的特性に加え外観・意匠性が必要な自動車部品、電気・電子部品、建築部材、スポーツ用品部品など各種用途に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の炭素繊維強化樹脂組成物について具体的に説明する。
【0012】
本発明の炭素繊維強化樹脂組成物に使用する(A)熱可塑性ポリアミド樹脂とは、熱可塑性を示す樹脂であれば特に限定されず、ポリアミドとしては、ポリマーの繰り返し構造中にアミド結合を有するものであれば、特に限定されるものではない。
【0013】
ポリアミド樹脂としては、ラクタム、アミノカルボン酸及び/又はジアミンとジカルボン酸などのモノマーを重合して得られるホモポリアミドおよびコポリアミドそしてこれらの混合物が挙げられる。
【0014】
前記ラクタムとしては、炭素数6〜12のラクタム類であり、ε−カプロラクタム、エナントラクタム、ウンデカンラクタム、ドデカンラクタム、α−ピロリドン、α−ピペリドン等が挙げられる。また、前記アミノカルボン酸としては炭素数6〜12のアミノカルボン酸であり、6−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、9−アミノノナン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸および13−アミノトリデカン酸が挙げられる。前記ジアミンとしては、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレジアミン、デカメエチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、1,4−ビスアミノメチルシクロヘキサン等の脂環式ジアミン、及びm−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−キシリレンジアミン、及びp−キシリレンジアミン等の芳香族ジアミンが挙げられる。
【0015】
前記ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、1,1,3−トリデカン二酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ダイマー酸等の芳香族・環状構造を有するジカルボン酸が挙げられる。
【0016】
具体的な例として、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリウンデカメチレンアジパミド(ナイロン116)、ポリビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ナイロンPACM12)、ポリビス(3−メチル−4アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ナイロンジメチルPACM12)、ポリノナメチレンテレフタルアミド(ナイロン9T)、ポリデカメチレンテレフタルアミド(ナイロン10T)、ポリウンデカメチレンテレフタルアミド(ナイロン11T)、ポリウンデカメチレンヘキサヒドロテレフタルアミド(ナイロン11T(H))、ポリウンデカミド(ナイロン11)、ポリドデカミド(ナイロン12)、ポリトリメチルヘキサメチレンテレフタルアミド(ナイロンTMDT)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ナイロン6T)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ナイロン6I)、ポリメタキシリレンアジパミド(ナイロンMXD6)及びこれらの共重合物、混合物等が挙げられ、中でも、成形性および表面外観の観点から、ナイロン6、ナイロン66、ナイロンMXD6、ナイロン9T、ナイロン10Tおよびこれらの共重合ポリアミドが好ましく、ナイロン9T、ナイロン10T、ナイロンMXD6がより好ましく、ナイロン9Tが特に好ましい。
【0017】
これらポリアミド樹脂の重合度には特に制限がないが、サンプル濃度0.01g/mlの98%濃硫酸溶液中、25℃で測定した相対粘度として、1.5〜7.0の範囲のものが好ましく、特に2.0〜6.0の範囲が好ましい。(A)熱可塑性ポリアミド樹脂には、長期耐熱性を向上させる添加物として、銅化合物が好ましく用いられる。なかでも1価の銅化合物とりわけ1価のハロゲン化銅化合物が好ましく、酢酸第1銅、ヨウ化第1銅などを特に好適な銅化合物として例示できる。銅化合物の添加量は、熱可塑性ポリアミド樹脂(A)100重量部に対して0.01〜2重量部であることが好ましく、さらに0.015〜1重量部の範囲であることが好ましい。添加量が多すぎると溶融成形時に金属銅の遊離が起こり、着色により製品の価値を減ずることになる。銅化合物と併用する形でハロゲン化アルカリを添加することも可能である。このハロゲン化アルカリ化合物の例としては、ヨウ化カリウムおよびヨウ化ナトリウムが特に好ましい。
【0018】
本発明の炭素繊維強化樹脂組成物に使用する(B)炭素繊維とは、特に制限がなく、公知の各種炭素繊維、例えばポリアクリロニトリル(PAN)、ピッチ、レーヨン、リグニン、炭化水素ガス等を用いて製造される炭素質繊維や黒鉛質繊維であり、また、これらの繊維を金属でコートした繊維でもよい。中でも機械的特性向上が可能なPAN系炭素繊維が好ましく利用できる。炭素繊維は通常チョップドストランド、ロービングストランド、ミルドファイバーなどの形状であり、直径15μm以下、好ましくは5〜10μmである。
【0019】
本発明に用いる(B)炭素繊維の形態は、特に制限されないが、数千から数十万本の炭素繊維の束、あるいは粉砕したミルド状の形態で用いられる。炭素繊維束については、連続繊維を直接使用するロービング法、あるいは所定長さにカットしたチョップドストランドを使用する方法を適用し、用いることが可能である。
【0020】
本発明に用いる(B)炭素繊維はチョップドストランドを用いることが好ましく、チョップド炭素繊維の前駆体である炭素繊維ストランドのフィラメント数は1,000〜150,000本が好ましい。フィラメント数が1,000本未満であると、製造コストが上昇し、150,000本を越えると製造コストが上昇するとともに、生産工程における安定性が大きく損なわれることがある。
【0021】
本発明に用いる(B)炭素繊維のストランド弾性率は、特に制限はないが、150〜1000GPaが好ましく、220〜700GPaがより好ましく、さらに好ましくは250〜500GPaである。ストランド弾性率が150GPa未満であると、炭素繊維強化樹脂組成物の機械特性が発現しない場合があり、1000GPaを超えると、製造コストが上昇し好ましくない場合がある。
【0022】
本発明に用いる(B)炭素繊維のストランド強度は、特に制限はないが、1〜10GPaが好ましい。
【0023】
得られる炭素繊維強化樹脂組成物の外観・意匠性を重視する場合は、1〜5GPaが好ましく、強度を重視する場合は5GPaを越え10GPa以下が好ましい。ストランド強度が1GPa未満であると、得られる炭素繊維強化樹脂組成物の強度が発現しない場合があり、10GPaを超えると、製造コストが上昇し好ましくない場合がある。
【0024】
ここで、ストランド弾性率およびストランド強度とは、炭素繊維単繊維3000〜90000本よりなる連続繊維束にエポキシ樹脂を含浸硬化させて作製されたストランドの弾性率および強度をいい、ストランド試験片をJISR7601に準拠して引張り試験に供して得られた値である。
【0025】
本発明に用いる(B)炭素繊維は、(A)熱可塑性ポリアミド樹脂と(B)炭素繊維との接着性を向上するために、(B)炭素繊維に表面酸化処理を行ってもよく、その場合、通電処理による表面酸化、オゾンなどの酸化性ガス雰囲気中での酸化処理をしても良い。
【0026】
また、炭素繊維(B)の表面に、樹脂の濡れ性の改善、取り扱い性の向上を目的として、カップリング剤や集束剤等を付着させたものを用いてもよい。カップリング剤としては、例えば、アミノ系、エポキシ系、クロル系、メルカプト系、及びカチオン系のシランカップリング剤等が挙げられ、アミノ系シラン系カップリング剤が好適に使用可能である。集束剤としては、例えば、無水マレイン酸系化合物、ウレタン系化合物、アクリル系化合物、エポキシ系化合物、フェノール系化合物及びこれら化合物の誘導体から選ばれる1種以上を含有する集束剤が挙げられ、ウレタン系化合物、エポキシ系化合物を含有する集束剤が好適に使用可能である。炭素繊維(B)中の集束剤の含有量は、0.1〜10.0重量%であることが好ましく、0.3〜8.0重量%がさらに好ましく、0.5〜6.0重量%が特に好ましい。
【0027】
また、本発明に用いる(B)炭素繊維のストランドにサイジング剤を付与し、さらにチョップド炭素繊維とする方法としては、例えば特公昭62−9541号公報におけるガラス繊維チョップドストランドで採用されている方法や、例えば特開昭62−244606号公報や、特開平5−261729号公報などの方法を適用することができる。
【0028】
本発明における(B)炭素繊維の配合量は、(A)熱可塑性ポリアミド樹脂100重量部に対し、(B)炭素繊維が10〜300重量部である。好ましくは30〜200重量部であり、より好ましくは50〜180重量部であり、さらに好ましくは60〜150重量部である。10重量部より少なくなると、本発明の炭素繊維強化樹脂組成物の機械特性が不十分な恐れがあり、300重量部より多くなると、製造することが困難になる可能性がある。
【0029】
本発明の炭素繊維強化樹脂組成物に使用する(C)球状充填材は、たとえばガラスビーズ、球状シリカ、球状アルミナが挙げられ、さらにガラスバルーン、セラミックバルーン、シラスバルーン等の中空状無機充填材、有機樹脂バルーンなどの中空状有機充填材、フラーレンなどが挙げられる。中でもコスト面、樹脂組成物の特性に優れることから、ガラスビーズ、ガラスバルーンが好ましく、ガラスバルーンがより好ましい。
【0030】
本発明の(C)球状充填材の平均粒子径は、1〜300μmであることが好ましく、5〜100μmであることがより好ましく、10〜50μmが最も好ましい。
【0031】
平均粒子径が1μm未満では分散不良により凝集塊が生じやすくなり、均一な成形品が得られず機械的物性が低下する場合があるので好ましくない。平均粒子径が300μmを超えると本発明の炭素繊維強化樹脂組成物の機械特性が低下することがある。なお、中空充填材の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置を使用し、乾式測定法により測定したD50値(重量比が50%にあたる粒子径)を平均粒子径とする。
【0032】
本発明の(C)球状充填材において、中空状無機充填材を使用する場合、その耐圧強度(体積減少率が10重量%以下となる静水圧)が5MPa以上であることが好ましく、100MPa以上がより好ましく、150MPa以上がさらに好ましい。耐圧強度が5MPa未満の場合、一般的な押出機による押出成形中に、中空充填材が樹脂の圧力により破壊されないようにするのが難しくなることがある。なお、平均耐圧強度はASTM−D3102(グリセロール使用)に準拠して測定された値である。
【0033】
本発明における中空状無機充填材の真密度は0.01〜1.0g/cmであることが好ましく、0.05〜0.35g/cmであることがさらに好ましい。真密度が0.01g/cm未満の場合、樹脂成分と混合し溶融する際に中空状無機充填材が破砕することがあり、1.0g/cmを超える場合、本発明の炭素繊維強化樹脂組成物の機械特性が低下することがある。なお、比重はASTM−D2840(エアーコンパリソンピクノメーター使用)に準拠して測定する。
【0034】
本発明における中空状無機充填材の体積中空率は、好ましくは40〜80%、より好ましくは60〜80%である。なお、ここでいう体積中空率(単位:%)とは、下記の式によって求められる概算値である。
(体積中空率)=100×{(1−(σ1/σ2)}
ここで、σ1は中空状無機充填材の真比重を表し、σ2は中空状無機充填材を構成する材料の比重を表す。
【0035】
このような好適な体積平均粒径、強度および体積中空率を満たす中空状無機充填材としては、例えば、住友スリーエム(株)のグラスバブルズ“S60HS”、“iM30K”を挙げることができる。
【0036】
本発明における(C)球状充填材は、熱可塑性ポリアミド樹脂との接着を改善する目的で、予め表面処理剤で処理してもよい。表面処理剤として、たとえば、シラン系、チタン系、アルミニウム系、ジルコニウム系などが挙げられ、処理剤の使用量はフィラーの0.1〜5質量%であることが好ましく、0.5〜3質量%であることがさらに好ましい。処理方法としては、例えば、希釈によるスプレー法や溶液中への浸漬法などが挙げられる。
【0037】
本発明の(C)球状充填材の配合量は、(A)熱可塑性ポリアミド樹脂100重量部に対して、(C)球状充填材が0.1〜30重量部である。0.5〜20重量部がより好ましく、1〜10重量部がさらに好ましい。球状充填材が0.1重量部未満の場合、効果が十分でなく、30重量部を超えて添加する場合、機械特性が損なわれる。
【0038】
本発明に用いる(C)球状充填材の添加方法としては、特に限定されるものではないが、押出し機において、ホッパーから、あるいは、サイドフィーダーを用いて添加することができる。また、(C)球状強化材マスターバッチ加工することで、成形時にベース樹脂で希釈し、使用することもできる。
【0039】
このような炭素繊維強化樹脂組成物の製造方法の中でも、高融点の熱可塑性ポリアミド樹脂を使用する場合には、中空フィラーの破損を確実に防止するため、例えば、熱可塑性ポリアミド樹脂、を溶融混合機中で十分に溶融混合し、この混合物の溶融粘度が最も低下した時点で、炭素繊維、中空フィラーを混合する方法が挙げられる。したがって、押出溶融混錬機を用いた場合、上流側から熱可塑性ポリアミド樹脂を供給し、この溶融混錬機の途中(下流側)から炭素繊維、中空フィラーを供給するといった溶融混錬法が採用される。
【0040】
本発明の炭素繊維強化樹脂組成物は、樹脂組成物を射出成形して得られた成形品の表面のうねり曲線の算術平均高さ(Wa)値が5μm以下であることが好ましく、より好ましくは3μm以下、以下である。また、うねり曲線の算術平均高さ(Wa)値の下限値は0μmであり特に限定されない。うねり曲線の算術平均高さ(Wa)値が5μmを越えると、炭素繊維強化樹脂組成物の表面に目視によってもうねり状凹凸が目立ち外観・意匠性が大幅に低下しているため好ましくない。ここでのうねり曲線の算術平均高さ(Wa)値とは、JIS B0601で定義されるものであり、射出成形により作製した80mm×80mm×3mmの角板成形品を用い、表面粗さ測定装置(ACCRTECH社製)を用いて、評価長さ20mm、試験速度0.6mm/secで、成形品表面を測定して得られるうねり曲線の算術平均高さ(Wa)である。
【0041】
本発明の炭素繊維強化樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、安定剤、離型剤、紫外線吸収剤、着色剤、難燃剤、難燃助剤、滴下防止剤、滑剤、蛍光増白剤、蓄光顔料、蛍光染料、流動改質剤、耐衝撃性改良剤、結晶核剤、無機および有機の抗菌剤、光触媒系防汚剤、赤外線吸収剤、フォトクロミック剤などの添加剤、球状充填材以外の充填材、他の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を添加することができる。
【0042】
本発明において、安定剤としては、熱可塑性樹脂の安定剤に用いられるものをいずれも使用することができる。具体的には、酸化防止剤、光安定剤などを挙げることができる。これらの安定剤を配合することで、機械特性、成形性、耐熱性および耐久性に優れた炭素繊維強化樹脂組成物および成形品を得ることができる。
【0043】
本発明において、離型剤としては、熱可塑性樹脂の離型剤に用いられるものをいずれも使用することができる。具体的には、脂肪酸、脂肪酸金属塩、オキシ脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪族部分鹸化エステル、パラフィン、低分子量ポリオレフィン、脂肪酸アミド、アルキレンビス脂肪酸アミド、脂肪族ケトン、変成シリコーンなどを挙げることができる。これらの離型剤を配合することで、機械特性、成形性、耐熱性および耐久性に優れた成形品を得ることができる。
【0044】
本発明において、難燃剤としては、臭素系難燃剤、塩素系難燃剤、リン系難燃剤、窒素化合物系難燃剤、シリコーン系難燃剤およびその他の無機系難燃剤から選択される少なくとも1種の難燃剤を用いることができ、難燃性および機械特性に優れるという点で、上記難燃剤から選択されるいずれか2種以上の難燃剤を用いることが好ましい。
【0045】
本発明において、臭素系難燃剤の具体例としては、デカブロモジフェニルオキサイド、オクタブロモジフェニルオキサイド、テトラブロモジフェニルオキサイド、テトラブロモ無水フタル酸、ヘキサブロモシクロドデカン、ビス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)エタン、エチレンビステトラブロモフタルイミド、ヘキサブロモベンゼン、1,1−スルホニル[3,5−ジブロモ−4−(2,3−ジブロモプロポキシ)]ベンゼン、ポリジブロモフェニレンオキサイド、テトラブロムビスフェノール−S、トリス(2,3−ジブロモプロピル−1)イソシアヌレート、トリブロモフェノール、トリブロモフェニルアリルエーテル、トリブロモネオペンチルアルコール、ブロム化ポリスチレン、ブロム化ポリエチレン、テトラブロムビスフェノール−A、テトラブロムビスフェノール−A誘導体、テトラブロムビスフェノール−A−エポキシオリゴマーまたはポリマー、ブロム化フェノールノボラックエポキシなどのブロム化エポキシ樹脂、テトラブロムビスフェノール−A−カーボネートオリゴマーまたはポリマー、テトラブロムビスフェノール−A−ビス(2−ヒドロキシジエチルエーテル)、テトラブロムビスフェノール−A−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロムビスフェノール−A−ビス(アリルエーテル)、テトラブロモシクロオクタン、エチレンビスペンタブロモジフェニル、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート、ポリ(ペンタブロモベンジルポリアクリレート)、オクタブロモトリメチルフェニルインダン、ジブロモネオペンチルグリコール、ペンタブロモベンジルポリアクリレート、ジブロモクレジルグリシジルエーテル、N,N’−エチレン−ビス−テトラブロモテレフタルイミドなどが挙げられる。
【0046】
本発明において、塩素系難燃剤の具体例としては、塩素化パラフィン、塩素化ポリエチレン、パークロロシクロペンタデカン、テトラクロロ無水フタル酸などが挙げられる。
【0047】
本発明において、リン系難燃剤の具体例としては、通常一般に用いられるリン系難燃剤を用いることができ、代表的にはリン酸エステル、縮合リン酸エステル、ポリリン酸塩などの有機リン系化合物や、赤リンが挙げられ、流動性、機械特性および難燃性に優れるという点で、縮合リン酸エステル、ポリリン酸塩、赤リンのいずれか1種以上が好ましく、縮合リン酸エステルがより好ましく、芳香族縮合リン酸エステルがさらに好ましい。芳香族縮合リン酸エステルとしては、レゾルシノールポリフェニルホスフェート、レゾルシノールポリ(ジ−2,6−キシリル)ホスフェートなどを挙げることができる。
【0048】
本発明において、窒素化合物系難燃剤としては、脂肪族アミン化合物、芳香族アミン化合物、含窒素複素環化合物、シアン化合物、脂肪族アミド、芳香族アミド、尿素、チオ尿素などを挙げることができ、難燃性および機械特性に優れるという点で、含窒素複素環化合物が好ましく、中でもトリアジン化合物が好ましく、メラミンシアヌレートまたはメラミンイソシアヌレートがより好ましく、中でもシアヌール酸またはイソシアヌール酸とトリアジン化合物との付加物が好ましく、通常は1対1(モル比)、場合により1対2(モル比)の組成を有する付加物を挙げることができる。なお、上記窒素化合物系難燃剤の分散性が悪い場合には、トリス(β−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートなどの分散剤や公知の表面処理剤などを併用してもよい。
【0049】
本発明で用いられるシリコーン系難燃剤としては、シリコーン樹脂、シリコーンオイルを挙げることができる。前記シリコーン樹脂は、RSiO3/2、RSiO、RSiO1/2の構造単位を組み合わせてできる三次元網状構造を有する樹脂などを挙げることができる。ここで、Rはメチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、または、フェニル基、ベンジル基等の芳香族基、または上記置換基にビニル基を含有した置換基を示す。前記シリコーンオイルは、ポリジメチルシロキサン、およびポリジメチルシロキサンの側鎖あるいは末端の少なくとも1つのメチル基が、水素元素、アルキル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、アミノ基、エポキシ基、ポリエーテル基、カルボキシル基、メルカプト基、クロロアルキル基、アルキル高級アルコールエステル基、アルコール基、アラルキル基、ビニル基、またはトリフロロメチル基の選ばれる少なくとも1つの基により変性された変性ポリシロキサン、またはこれらの混合物を挙げることができる。
【0050】
本発明において、その他の無機系難燃剤としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、アンチモン酸ソーダ、ヒドロキシスズ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、メタスズ酸、酸化スズ、酸化スズ塩、硫酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化第一鉄、酸化第二鉄、酸化第一錫、酸化第二スズ、ホウ酸亜鉛、ホウ酸アンモニウム、オクタモリブデン酸アンモニウム、タングステン酸の金属塩、タングステンとメタロイドとの複合酸化物酸、スルファミン酸アンモニウム、臭化アンモニウム、ジルコニウム系化合物、グアニジン系化合物、フッ素系化合物、黒鉛、膨潤性黒鉛などを挙げることができる。本発明においては、難燃性および機械特性に優れるという点で、水酸化マグネシウム、フッ素系化合物、膨潤性黒鉛が好ましく、フッ素系化合物がより好ましい。フッ素系化合物としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン/エチレン共重合体、ヘキサフルオロプロピレン/プロピレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド、ビニリデンフルオライド/エチレン共重合体などが好ましく、ポリテトラフルオロエチレン粒子と有機系重合体とからなるポリテトラフルオロエチレン含有混合粉体も好ましい。
【0051】
本発明の樹脂組成物の製造方法は、本発明で規定する要件を満たす限り特に限定されるものではないが、例えば、熱可塑性ポリアミド、炭素繊維、球状充填材、必要に応じてその他の成分を融点以上において、単軸またはニ軸押出機で、均一に溶融混練する方法や、溶液中で混合した後に溶媒を除く方法などが好ましく用いられるが、生産性の点で、一軸または二軸押出機で均一に溶融混練する方法が好ましく、流動性および機械特性に優れた樹脂組成物を得られるという点で、二軸押出機で均一に溶融混練する方法がより好ましい。なかでも、スクリュー長さをL,スクリュー直径をDとすると、L/D>30の二軸押出機を使用して溶融混練する方法が特に好ましい。ここで言うスクリュー長さとは、スクリュー根元の原料が供給される位置から、スクリュー先端部までの長さを指す。
【0052】
本発明において、溶融混練する場合に、各成分を投入する方法は、例えば、投入口を2カ所有する押出機を用い、スクリュー根元側に設置した主投入口から(A)熱可塑性ポリアミド樹脂、(B)炭素繊維、(C)球状充填材および必要に応じてその他成分を供給する方法や、主投入口から(A)熱可塑性ポリアミド樹脂およびその他成分を供給し、主投入口と押出機先端の間に設置した副投入口から(B)炭素繊維、(C)球状充填材および必要に応じてその他成分を供給し溶融混合する方法、主投入口から(A)熱可塑性ポリアミド樹脂およびその他成分を供給し、主投入口と副投入口の両方から(B)炭素繊維、(C)球状充填材および必要に応じてその他成分を供給する方法が挙げられ、機械物性および生産安定性に優れるという点で、主投入口から(A)熱可塑性ポリアミド樹脂およびその他成分を供給し、主投入口と押出機先端の間に設置した副投入口から(B)炭素繊維、(C)球状充填材を供給し溶融混練する方法が好ましい。
【0053】
本発明の炭素繊維強化樹脂組成物は、通常上記の如く製造されたペレットを射出成形して各種製品を製造することができる。かかる射出成形においては、通常の成形方法だけでなく、適宜目的に応じて、射出圧縮成形、射出プレス成形、ガスアシスト射出成形、発泡成形(超臨界流体の注入によるものを含む)、インサート成形、インモールドコーティング成形、断熱金型成形、急速加熱冷却金型成形、二色成形、サンドイッチ成形、および超高速射出成形などの射出成形法を用いて成形品を得ることができる。これら各種成形法の利点は既に広く知られるところである。また成形はコールドランナー方式およびホットランナー方式のいずれも選択することができる。
【0054】
また本発明の炭素繊維強化樹脂組成物は、押出成形により各種異形押出成形品、シート、フィルムなどの形で使用することもできる。またシート、フィルムの成形にはインフレーション法や、カレンダー法、キャスティング法なども使用可能である。更に特定の延伸操作をかけることにより熱収縮チューブとして成形することも可能である。また本発明の炭素繊維強化樹脂組成物を回転成形やブロー成形などにより中空成形品とすることも可能である。
【0055】
本発明において、上記各種成形品は、自動車部品、電気・電子部品、建築部材、スポーツ用品部品、各種容器、日用品、生活雑貨および衛生用品など各種用途に利用することができる。具体的な用途としては、エアフローメーター、エアポンプ、サーモスタットハウジング、エンジンマウント、イグニッションホビン、イグニッションケース、クラッチボビン、センサーハウジング、アイドルスピードコントロールバルブ、バキュームスイッチングバルブ、ECUハウジング、バキュームポンプケース、インヒビタースイッチ、回転センサー、加速度センサー、ディストリビューターキャップ、コイルベース、ABS用アクチュエーターケース、ラジエータタンクのトップ及びボトム、クーリングファン、ファンシュラウド、エンジンカバー、シリンダーヘッドカバー、オイルキャップ、オイルパン、オイルフィルター、フューエルキャップ、フューエルストレーナー、ディストリビューターキャップ、ベーパーキャニスターハウジング、エアクリーナーハウジング、タイミングベルトカバー、ブレーキブースター部品、各種ケース、各種チューブ、各種タンク、各種ホース、各種クリップ、各種バルブ、各種パイプなどの自動車用アンダーフード部品、トルクコントロールレバー、安全ベルト部品、レジスターブレード、ウオッシャーレバー、ウインドレギュレーターハンドル、ウインドレギュレーターハンドルのノブ、パッシングライトレバー、サンバイザーブラケット、各種モーターハウジングなどの自動車用内装部品、ルーフレール、フェンダー、ガーニッシュ、バンパー、ドアミラーステー、スポイラー、フードルーバー、ホイールカバー、ホイールキャップ、グリルエプロンカバーフレーム、ランプリフレクター、ランプベゼル、ドアハンドルなどの自動車用外装部品、リレーケース、コイルボビン、光ピックアップシャーシ、モーターケース、ノートパソコンのハウジング、シャーシおよび内部部品、CRTディスプレーハウジングおよび内部部品、プリンターハウジングおよび内部部品、携帯電話、モバイルパソコン、ハンドヘルド型モバイルなどの携帯端末ハウジング、シャーシおよび内部部品、記録媒体(CD、DVD、PD、FDDなど)ドライブのハウジング、シャーシおよび内部部品、コピー機のハウジング、シャーシおよび内部部品、ファクシミリのハウジング、シャーシおよび内部部品、パラボラアンテナなどに代表される電気・電子部品を挙げることができる。更に、VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、ビデオカメラ、プロジェクターなどの映像機器部品、レーザーディスク(登録商標)、コンパクトディスク(CD)、CD−ROM、CD−R、CD−RW、DVD−ROM、DVD−R、DVD−RW、DVD−RAM、ブルーレイディスクなどの光記録媒体の基板、照明部品およびハウジング、シャーシ部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品などに代表される家庭・事務電気製品部品を挙げることができる。また、電子楽器、家庭用ゲーム機、携帯型ゲーム機などのハウジング、シャーシおよび内部部品、各種ギヤー、各種ケース、センサー、LEPランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント配線板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドホン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、トランス部材、コイルボビンなどの電気・電子部品、サッシ戸車、ブラインドカーテンパーツ、配管ジョイント、カーテンライナー、ブラインド部品、ガスメーター部品、水道メーター部品、湯沸かし器部品、ルーフパネル、断熱壁、アジャスター、プラ束、天井釣り具、階段、ドアー、床などの建築部材、コンクリート型枠などの土木関連部材、釣竿部品、リールのハウジング、スプールおよびボディー部品、ルアー部品、クーラーボックス部品、ゴルフクラブ部品、テニス、バドミントン、スカッシュ等のラケット部品、スキー板部品、スキーストック部品、自転車のフレーム、ペダル、フロントフォーク、ハンドルバー、ブレーキブラケット、クランク、シートピラー、車輪、専用シューズ等の部品、ボート用オール、スポーツ用ヘルメット、フェンス構成部材、ゴルフティー、剣道用防具(面)および竹刀などのスポーツ用品部品、歯車、ねじ、バネ、軸受、レバー、キーステム、カム、ラチェット、ローラー、給水部品、玩具部品、結束バンド、クリップ、ファン、パイプ、洗浄用治具、モーター部品、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などの機械部品、育苗用ポット、植生杭、農ビの止め具などの農業部材、骨折補強材などの医療用品、トレイ、ブリスター、ナイフ、フォーク、スプーン、チューブ、プラスチック缶、パウチ、コンテナー、タンク、カゴなどの容器・食器類、ホットフィル容器類、電子レンジ調理用容器類化粧品容器、ICトレイ、文房具、排水溝フィルター、カバン、イス、テーブル、クーラーボックス、クマデ、ホースリール、プランター、ホースノズル、食卓、机の表面、家具パネル、台所キャビネット、ペンキャップ、ガスライターなどとして有用である。特に自動車用内装部品、自動車用外装部品、スポーツ用品部材および各種電気・電子部品のハウジング、シャーシおよび内部部品として有用である。
【0056】
本発明の炭素繊維強化樹脂組成物および成形品は、リサイクルすることが可能である。例えば、樹脂組成物およびそれからなる成形品を粉砕し、好ましくは粉末状とした後、必要に応じて添加剤を配合して使用することができるが、繊維の折損がおきている場合、得られる樹脂組成物は、本発明の成形品と同様の機械強度を発現することは困難である。
【実施例】
【0057】
本発明をさらに具体的に説明するために、以下、実施例および比較例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0058】
使用原料としては下記のものを使用した。
【0059】
(A)熱可塑性ポリアミド樹脂
<A1>ナイロン9T樹脂“ジェネスタ”N1001D(株式会社クラレ製)(融点262℃)。
【0060】
(B)炭素繊維
<B1>炭素繊維“トレカ”カットファイバーTV14−006(東レ株式会社製、原糸T700SC−12K:引張強度4.90GPa、引張弾性率230GPa)。
【0061】
(B’)ガラス繊維
<B1’>チョップドストランド;CS3DE459(日東紡社製、繊維径7μm、繊維長3mm)。
【0062】
(C)球状充填材
<C−1>ガラスバルーン;商品名「グラスバブルズS60HS」(真比重0.60、平均粒子径30μm、耐圧強度124MPa)。
【0063】
(C’)板状充填材
<C1’>ガラスフレークREFG―301(日本板硝子製、平均粒子径約600μm
)。
【0064】
[実施例1、比較例1〜3]
表1に記載の組成で、熱可塑性ポリアミド樹脂(A)をシリンダー温度を300℃、スクリュー回転数を200rpmに設定した二軸押出機(日本製鋼所製TEX30α)主ホッパーに供給後、(B)炭素繊維および球状充填材(C)を、サイドフィーダーを用いて溶融樹脂中に供給し、ダイから吐出されたストランドを水中にて冷却、ストランドカッターにより長さ3.0mm長にカットしてペレット化を実施し、炭素繊維強化樹脂組成物ペレットを得た。
【0065】
前記で得られた炭素繊維強化樹脂組成物ペレットを80℃で一昼夜真空乾燥し、射出成形機(住友重機械社製SE75DUZ)を使用し、シリンダー温度300℃、金型温度80℃(角板成形時は140℃)、射出速度100mm/sec、射出圧を下限圧(最低充填圧力)+5MPaでそれぞれの試験片を成形し、次の条件で物性を測定した。
【0066】
[耐衝撃性]:ISO179に従い23℃でシャルピー衝撃強さ(ノッチ付き)を評価した。
【0067】
[引張強度]:ISO527に従い23℃で引張強度を評価した。
【0068】
[曲げ強度、曲げ弾性率]ISO178に従い23℃で曲げ強度および曲げ弾性率を評価した。
【0069】
[比重]ISO1138に従い比重を評価した。
【0070】
[表面粗さ]:射出成形で得られた80mm×80mm×3mmの角板を使用し、表面粗さ測定装置(ACCRTECH社製)を用いて、評価長さ8mm、試験速度0.6mm/secの測定条件で成形品表面の算術平均粗さ(Ra)値を評価した。
【0071】
[表面うねり]:射出成形で得られた80mm×80mm×3mmの角板を使用し、表面粗さ測定装置(ACCRTECH社製)を用いて、評価長さ20mm、試験速度0.6mm/secの測定条件で成形品表面のうねり曲線の算術平均高さ(Wa)値を評価した。
【0072】
【表1】

【0073】
本発明のとおり(A)熱可塑性ポリアミド樹脂、(B)炭素繊維および(C)球状充填材を用いた実施例1は、シャルピー衝撃強度、引張強度、曲げ強度、曲げ弾性率に優れるとともに、低比重かつ外観特性の指標である表面粗さ、表面うねりも低い値であり、金属並の機械的特性と外観・意匠性が両立できている樹脂組成物である。
【0074】
比較例1〜3においては、シャルピー衝撃強度、引張強度、曲げ強度、曲げ弾性率、比重、表面粗さおよび表面うねりのいずれかが不十分である。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の炭素繊維強化樹脂組成物は、引張強度、曲げ弾性率が大幅に優れながら、表面外観(うねり状凹凸)が良好な組成物を提供できる。そのため、機械的特性に加え外観・意匠性が必要な自動車部品、電気・電子部品、建築部材、スポーツ用品部品など各種用途に好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)熱可塑性ポリアミド樹脂100重量部に対して、(B)炭素繊維10〜300重量部、および(C)球状充填材を0.1〜30重量部配合してなる炭素繊維強化樹脂組成物。
【請求項2】
(C)球状充填材が、中空状充填材であることを特徴とする請求項1に記載の炭素繊維強化樹脂組成物。
【請求項3】
(C)球状充填材が、ガラスバルーンであることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の炭素繊維強化樹脂組成物。
【請求項4】
(B)炭素繊維のストランド強度が1〜5GPaであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の炭素繊維強化樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の炭素繊維強化樹脂組成物を成形してなる成形品。
【請求項6】
うねり曲線の算術平均高さ(Wa)値が3μm以下であることを特徴とする請求項5に記載の成形品。

【公開番号】特開2013−10847(P2013−10847A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−143862(P2011−143862)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】