説明

炭素繊維扁平糸織物の製造方法

【課題】炭素繊維の扁平糸を緯糸及び経糸として用いてなり、緯糸及び経糸の扁平状態が維持されている炭素繊維扁平糸織物を製造する。
【解決手段】炭素繊維の扁平糸を用いてなる炭素繊維扁平糸織物をレピア織機で製織するに際し、緯糸給糸側12に、扁平面13,15を上下方向に向けた傾斜状態の架渡し緯糸部分21を形成するための緯糸支持部20と糸端挾持部17を上下に配設する。レピア6に設けられた緯糸把持部11は、第1の把持部56と第2の把持部79を有する。第1、第2の把持部56,79は、扁平な傾斜状態にある架渡し緯糸部分21を、レピア6の往復動方向で見た両側から把持する。緯糸把持部11が緯糸を把持した後に糸端挾持部17が糸端側16を離す。レピア6は、緯糸2aを扁平状態を保持しながら経糸開口内を後退して緯糸2aを緯入れする。緯入れ後、緯糸把持部11は緯糸2aを離す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素繊維扁平糸織物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維からなる扁平糸を経糸及び緯糸として用いて製織してなる炭素繊維扁平糸織物(以下扁平糸織物ともいう)の複数枚を積層し、この積層体にエポキシ樹脂等の樹脂を含浸させて形成した炭素繊維強化の樹脂成形体は、軽量で高い強度特性を有しているために、自動車や航空機の構造材料、建築用の耐震材料等、各種の構造材料として好適に使用されている。
【0003】
かかる樹脂成形体が所望の構造材料として高い強度特性を発揮するためには、該樹脂成形体の内部に殆どボイドが発生しないように前記積層体に樹脂を密実に含浸することが要求される。しかしながら従来は、該積層体に樹脂を各部均一に密実に含浸することは、前記炭素繊維扁平糸織物の織り上がり状態の品質に限界があったために困難であった。この品質の限界についてより詳しく説明すれば次の如くである。
【0004】
かかる扁平糸織物は、炭素繊維の扁平糸を緯糸及び経糸として用いて製織されるが、通常、緯入れの容易性からレピア織機で製織されている。しかしレピア織機による製織にあっても、経糸は扁平状態を保持するのが容易であったが、緯糸は、その扁平状態を保持して安定的に緯入れするのが困難であり、該扁平糸に撚りがかかり易く、又、扁平糸に捩じれが生じ易い問題があった。そして扁平糸に撚りや捩れが発生すると、該扁平糸が該撚り等がある部分で糸幅が狭い収束状態となるために、該撚り等がある部分で織物の内部に空隙が生じた。又、該撚り等がある部分で織物が分厚くなるために織物厚さにムラが生じて織物表面に凹凸が生ずることとなり、各部均一に製織できず、扁平糸織物の織り上がり状態の品質に限界があったのである。
【0005】
このように従来の扁平糸織物は、その内部に空隙が生じ易く、又、積層された扁平糸織物同士の間に空隙が生じ易かったことから、前記積層体に樹脂を含浸させて前記樹脂成形体を製造する際、これらの空隙に阻害されて樹脂を積層体の各部に均一に密実に含浸させることができなかった。その結果、前記樹脂成形体には、この空隙部分において樹脂中にボイドが集中的に発生することとなり、前記樹脂成形体の強度特性が不均一となってしまい、該樹脂成形体は、その高い強度特性を期待できなくなった。
【0006】
又、前記のように扁平糸に撚りや捩れが発生して扁平糸が収束状態になると、緯糸間の空隙が大きくなるので、緯糸の打ち込み本数を増加させて該空隙を減少させる必要が発生した。その結果、織物の目付けが大きくなるので、前記扁平糸織物を軽量に形成できなくなるばかりか、緯糸の使用量が増大して扁平糸織物の製造コストの上昇を招くことともなった。
【0007】
かかる従来の問題点に鑑み、炭素繊維からなる扁平糸を緯糸及び経糸として用いて炭素繊維扁平糸織物を製織するに際し緯糸をその扁平状態を保持して安定的に緯入れさせんとして、特許文献1(特開2009−263799号公報)が開示する炭素繊維扁平糸織物の改良型製造方法が提案されている。
【0008】
特許文献1が開示する改良型製造方法は、扁平糸からなる緯糸をレピアによって緯入れするものであり、緯糸の緯入れ装置aは、図28〜30に示すように、扁平糸からなる緯糸bの糸端側cとその上流側dの2箇所を夫々把持する第1把持部e及び第2把持部fと、経糸開口h内で進退動作するレピアgに設けられて、該第1把持部e及び第2把持部fの間に保持された緯糸部分b1を把持して経糸開口h内に挿入する第3把持部jとを具えるものであった。そして、該第1把持部e及び該第2把持部fは、開閉可能な一対の回転自在な回転盤k,kから構成されており、該第2把持部fは、第1把持部eに対する距離を略一定に保った状態で、筬mの前後移動に伴って前後移動できるようになされていた。又、前記第3把持部jは、図29〜30に示すように、固定盤nと該固定盤nに対して開閉可能な挾み板pとを有し、該固定盤nに対して該挾み板pを開いた状態で、緯糸部分b1を該固定盤nと該挾み板p間に一旦通過させ、レピアgが戻る際に、固定盤nに対して挾み板pを閉じて、該固定盤nと該挾み板p間に緯糸部分b1を挾み込むように構成されていた。
【0009】
前記構成の緯入れ装置aにおける、前記第3把持部jによる緯糸bの把持動作及び該第3把持部jで把持された緯糸bが経糸開口hに挿入される動作は次のようであった。先ず、図28に示すように筬mが後方に移動した状態で、図29に示すように、緯糸bの第1把持部eと第2把持部fとで把持された緯糸部分b1が斜めになって、レピアgに対する給糸位置rに配置される。この際、前記第2把持部fは前記第1把持部eに対する距離を略一定に保った状態で前後移動でき、緯糸bの、第1把持部eと第2把持部fとで保持された部分が、引っ張られたり弛んだりすることが防止されるようになされていた。そして、第2把持部fの移動の際に、緯糸bは、第1把持部e及び第2把持部fの保持部において、扁平方向に沿った回転ねじり力を受けることになるが、両把持部e,fが、回転盤k,kによって緯糸bを把持しているので、回転盤k,kの回転により、緯糸bがねじれて細くなってしまうことが防止される。レピアgが前進するに伴い、前記緯糸bは、図29に示すように、扁平状態を保ちつつ、前記固定盤nの外方に湾曲した先端部分sに案内されて、挾み板pと固定盤nとの間を通過する。
【0010】
ついでレピアgが図30に矢印で示すように後退し始めるのであるが、このとき、緯糸bは、挾み板pと固定盤nとの隙間を通して、両者の間に挾み込まれた状態にある。この挾み込みは、挾み板pと固定盤nとの面間でバネの付勢力により弾性的になされるので、緯糸bを扁平状態のまま保持させることができる。こうして、レピアgの第3把持部jが緯糸bを図30、図31に示すように扁平状態で把持するのであった。
【0011】
ついで、図28に示すように、第1把持部e及び第2把持部fの回転盤k,kが夫々開き、レピアgが緯糸bを引っ張りながら後退し、レピアgの第3把持部jに把持された緯糸bが、経糸開口h内に挿入される。そして、筬mが前進して、挿入された緯糸bを筬打ちするものであった。
【0012】
かかる構成の緯入れ装置aを用いる従来の改良型製造方法によるときには、前記第1把持部eと前記第2把持部fとが、開閉可能な一対の回転自在な回転盤k,kを具えていたため、緯糸bの、該第1把持部eと第2把持部fとで保持されて斜めになった緯糸部分b1は、扁平面t,tを上下方向に向けた扁平状態となるので、第3把持部jは該緯糸bを該扁平状態のまま把持できることになった。第3把持部jが、緯糸bを扁平状態のまま把持する点については特に問題はなかった。
【0013】
しかしながら、レピアgが該緯糸bを引っ張りながら後退する際に次のような問題があって、扁平糸織物の織り上がり状態の品質に限界があった。即ち、図31に示すように、前記第3把持部jにより把持された前記緯糸部分b1の延長方向f1は、レピアgの往復動方向f2に対して傾いた状態にあることから、該第3把持部jは、該傾いた状態の緯糸部分b1を扁平状態のまま把持することになる。このように把持した後、前記第1把持部e及び第2把持部fの回転盤k,kが夫々開き、図28に示すように、レピアgが緯糸bを引っ張りながら後退し、これにより、レピアgの第3把持部jに把持された緯糸bが経糸開口hに挿入されることになる。このように緯糸bを把持した状態を保ちつつレピアgが後退する際、該把持された緯糸bは、前記のように傾いたf1の状態からレピアの往復動方向f2に向きが強制的に変えられることになる。そのため図32に示すように、該第3把持部jから一定の長さに亘って(例えば10〜20cmの長さに亘って)緯糸bが収束され、該収束された部分uに縦皺が発生し易い問題があった。このように縦皺が発生すると緯入れが不安定化し、その結果、緯糸給糸側と反対側の織物端側が不均一化する問題が生じた。そのため、かかる不均一化する問題を回避するためには、少なくとも該集束する分(例えば10〜20cm程度)をロス糸としてカットせざるを得ない不経済があったのである。
【0014】
かかる不経済を許容すれば特に問題がないようにも思えるが、このようにして得られた炭素繊維扁平糸織物を積層して形成した積層体に樹脂を含浸させて樹脂成形体を製造する場合を考えると、扁平糸織物の織り上がり状態の品質について次のような問題があった。即ち、該第3把持部jから一定の長さに亘って緯糸bが収束されるため、該収束の影響は、前記ロス糸となる部分に止まることなく、このロス糸部分を除いた、織布を構成している扁平な緯糸部分にまで及び易かった。このように収束の影響を受けた該緯糸部分は、扁平糸に撚りがかかり易く、又、扁平糸に捩じれが生じ易かったのであった。かかることから前記と同様、撚りや捩れがある部分で織物の内部に空隙が生じた。又、その部分で織物が分厚くなるために織物厚さにムラが生じて織物表面に凹凸が生ずることとなった。このように、従来の改良型製造方法によるときも、従来と同様、扁平糸織物の織り上がり状態の品質に限界があったのである。
【0015】
このように改良型製造方法によって製造された扁平糸織物は、その内部に空隙が生じ易く、又、積層された扁平糸織物同士の間に空隙が生じ易かったことから、前記積層体に樹脂を含浸させて前記樹脂成形体を製造する際、これらの空隙に阻害されて樹脂を積層体の各部に均一に密実に含浸させることができなかった。その結果、前記したと同様に、前記樹脂成形体には、この空隙部分において樹脂中にボイドが集中的に発生することとなり、前記樹脂成形体の強度特性が不均一となってしまい、該樹脂成形体は、その高い強度特性を期待できなくなった。
【0016】
又前記と同様に、撚りや捩れが発生して扁平糸が収束状態になると、緯糸間の空隙が大きくなるので、緯糸の打ち込み本数を増加させて該空隙を減少させる必要が発生した。その結果、織物の目付けが大きくなるので、前記扁平糸織物を軽量に形成できなくなるばかりか、緯糸の使用量が増大して扁平糸織物の製造コストの上昇を招くことともなった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2009−263799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、炭素繊維のマルチフィラメントを扁平に束ねてなる扁平糸を緯糸及び経糸として用いてなる炭素繊維扁平糸織物を、織られた状態において該緯糸及び経糸が、実質的に無撚りで実質的に捩れがなく扁平状態が維持された安定状態のものとして製造でき、然も、より軽量に形成でき又、製造コストの低減も期し得る炭素繊維扁平糸織物の製造方法の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記課題を解決するため、本発明は以下の手段を採用する。
即ち、本発明に係る炭素繊維扁平糸織物の製造方法の第1の態様は、炭素繊維のマルチフィラメントを扁平に束ねてなる扁平糸を緯糸及び経糸として用いてレピアにより製織されてなり、該緯糸及び該経糸は、織られた状態で扁平状態が維持されている製造方法であって、レピアヘッドに設けられている緯糸把持部が、緯糸給糸側において扁平状態で給糸された前記緯糸をその扁平面を上下方向に向けて把持し、該緯糸把持部が、該緯糸の扁平状態を保持しながら前記経糸開口内を後退して該経糸開口内に該緯糸を挿入し、かかる緯入れ後、該緯糸把持部が該緯糸を離す工程を含む。前記緯糸給糸側には、給糸された前記緯糸の糸端側を、前記扁平面を上下方向に向けて挾持する糸端挾持部と、該糸端側の上流側を前記扁平面を上下方向に向けて支持する緯糸支持部とを設け、前記レピアが前記緯糸を把持する際は、該緯糸支持部と該糸端挾持部を、何れかが上に位置した上下配置の状態とすることにより、両者間に架け渡された架渡し緯糸部分を、前記扁平面を上下方向に向けた傾斜状態となす。そして、前記緯糸把持部が具備する第1の把持部と第2の把持部とで、前記扁平な傾斜状態の緯糸を、レピアの往復動方向で見た両側から、又は上下から、前記扁平面の幅方向を該往復動方向と直交する方向にして把持させ、前記糸端挾持部は、該第1の把持部と該第2の把持部とによって前記緯糸が把持された後に前記糸端側を離すようになし、前記レピアを、前記第1、第2の把持部が前記緯糸を前記の如く把持して前記緯糸の扁平状態を保持しながら前記経糸開口内を後退させて、該緯糸を該経糸開口内に挿入し、緯入れ後、該第1、第2の把持部が緯糸を離すことを特徴とするものである。
【0020】
本発明に係る炭素繊維扁平糸織物の製造方法の第2の態様は、炭素繊維のマルチフィラメントを扁平に束ねてなる扁平糸を緯糸及び経糸として用いてレピアにより製織されてなり、該緯糸及び該経糸は、織られた状態で扁平状態が維持されている製造方法であって、レピアヘッドに設けられている緯糸把持部が、緯糸給糸側において扁平状態で給糸された前記緯糸をその扁平面を上下方向に向けて把持し、該緯糸把持部が、該緯糸の扁平状態を保持しながら前記経糸開口内を後退して該経糸開口内に該緯糸を挿入し、かかる緯入れ後、該緯糸把持部が該緯糸を離す工程を含む。前記緯糸給糸側には、給糸された前記緯糸の糸端側を、前記扁平面を上下方向に向けて挾持する糸端挾持部と、該糸端側の上流側を前記扁平面を上下方向に向けて支持する緯糸支持部とを設け、前記レピアが前記緯糸を把持する際は、該緯糸支持部と該糸端挾持部を、何れかが上に位置した上下配置の状態とすることにより、両者間に架け渡された架渡し緯糸部分を、前記扁平面を、レピアの往復動方向で見た両側に向けた垂直状態となす。そして、第1の把持部と第2の把持部とで、前記垂直状態の緯糸を、レピアの往復動方向で見た両側から、前記扁平面の幅方向を該往復動方向と直交する方向にして把持させ、前記糸端挾持部は、該第1の把持部と該第2の把持部とによって前記緯糸が把持された後に前記糸端側を離すようになし、前記レピアを、前記第1、第2の把持部が前記緯糸を前記の如く把持して前記緯糸の扁平状態を保持しながら前記経糸開口内を後退させて、該緯糸を該経糸開口内に挿入し、緯入れ後、該第1、第2の把持部が緯糸を離すことを特徴とするものである。
【0021】
本発明に係る炭素繊維扁平糸織物の製造方法の第3の態様は、前記第1の態様、前記第2の態様において、前記第1の把持部は、前記レピアヘッドに設けられて前記往復運動方向で摺動し得る摺動把持片の先端部分として構成されると共に、前記第2の把持部は、水平面内又は垂直面内で回動し得る回動片の先端部分として構成されており、前記第2の把持部は、当初は、前記第1の把持部の前記緯糸の前記扁平面と当接し得る当接部分から外方に外れた回動状態にあり、この状態からレピアが前記往復動方向で前進することにより、前記摺動把持片が前記往復動方向で後退して、前記第1の把持部と前記第2の把持部とが、前記緯糸の、前記往復動方向で見た両側に位置するようになされており、この状態で、前記回動把持片が、前記第1の把持部と前記第2の把持部とが対向するように回動することにより、前記緯糸が該第1の把持部と該第2の把持部との間に介在される如くなされ、この状態で前記摺動把持片が前記第2の把持部に向けて前進することにより、該第1の把持部と該第2の把持部とによって前記緯糸が把持されるようになされていることを特徴とするものである。
【0022】
前記第1〜3の何れかの態様において、前記扁平糸は、炭素繊維のマルチフィラメントの24000〜60000本を扁平に束ねたものとするのがよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明は以下の如き優れた効果を奏する。
(1) 本発明に係る製造方法によるときは、炭素繊維のマルチフィラメントを扁平に束ねてなる扁平糸を緯糸及び経糸として用いてなる炭素繊維扁平糸織物をレピアにより製織するに際し、扁平糸からなる該緯糸を扁平状態のまま緯入れできるため、該炭素繊維扁平糸織物を、織られた状態において緯糸及び経糸が実質的に無撚りで実質的に捩れがなく扁平状態が維持された安定状態のものとして製造できる。従って、製造された炭素繊維扁平糸織物は、織糸間の空隙が殆どなく、織物厚さにムラが生じず、又、織物表面に凹凸が殆どないという高品質のものとして仕上げられることとなる。
このように本発明によるときは、扁平糸織物を高品質なものとして製造できるため、例えば、該扁平糸織物の複数枚を積層してなる積層体にエポキシ樹脂等の樹脂を含浸させて、炭素繊維強化の樹脂成形体を製造する際は、扁平糸織物の内部や積層された織物同士の間に空隙が殆どないために、該積層体に樹脂を各部均一に密実に含浸させることができる。従って本発明によるときは、軽量で高い強度特性を有する炭素繊維強化の樹脂成形体を製造可能となる。
【0024】
(2) 加えて本発明によるときは、無撚りで捩れのない扁平状態で緯糸を緯入れできることから、緯糸の打ち込み本数が必要以上に多くなって織物の目付けを設計以上に大きくすることがなく、扁平糸織物をより軽量に製造できることとなる。又、このように緯糸の打ち込み本数が必要以上に大きくならないことから、緯糸の使用量が必要以上に増大することがなく、扁平糸織物の製造コストの低減も期し得ることとなる。
【0025】
(3) 特に、前記扁平糸を、炭素繊維のマルチフィラメントの24000〜60000本を扁平に束ねたものとすれば、製造された炭素繊維扁平糸織物の複数枚を積層し、この積層体にエポキシ樹脂等の樹脂を含浸させて炭素繊維強化の樹脂成形体を製造するに際して、強度特性に優れる樹脂成形体を無理なく製造できることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】炭素繊維扁平糸織物の一例を示す部分平面図である。
【図2】本発明に係る製造方法を実施するためのレピア織機の一例を、緯入れ装置が、扁平糸を扁平状態を保持しながら緯入れしている途中状態を示す斜視図である。
【図3】その緯入れの終了間近の状態を示す斜視図である。
【図4】その緯入れが終了した状態を示す斜視図である。
【図5】緯入れ終了後にレピアが緯糸を離した状態を示す斜視図である。
【図6】本発明に係る緯入れ装置の構成を、レピアの緯糸把持部が架渡し緯糸部分を把持する直前の状態で示す斜視図である。
【図7】レピアの緯糸把持部が緯糸を把持した状態を示す斜視図と断面図である。
【図8】緯糸挾持部を構成する定置挾持片と可動挾持片とが緯糸を挾持した状態と、該可動挾持片が上昇した状態を示す側面図である。
【図9】緯糸挾持部と緯糸支持部の作用を説明する説明図である。
【図10】緯糸把持部の構成を、回動把持片と摺動把持片の動作と共に示す斜視図である。
【図11】緯糸把持部の構成を、回動把持片と摺動把持片の動作と共に示す平面図である。
【図12】緯糸把持部の構成を、回動把持片と摺動把持片の動作と共に示す平面図である。
【図13】緯糸把持部の構成を、回動把持片と摺動把持片の動作と共に示す平面図である。
【図14】緯入れ終了後における緯糸把持部の緯糸把持状態を示す平面図である。
【図15】緯入れ終了後に緯糸把持部が緯糸を離した状態を示す平面図である。
【図16】緯糸給糸側への緯糸の供給状態を示す斜視図である。
【図17】緯糸把持部が緯糸を把持する直前の状態を示す斜視図である。
【図18】緯糸把持部が緯糸を把持した状態を示す平面図である。
【図19】レピアによる緯入れ途中段階を示す説明図である。
【図20】レピアの緯入れ終了間際の状態を示す説明図である。
【図21】レピアの緯糸把持部が、垂直状態にある架渡し緯糸部分を把持する寸前の状態を示す斜視図と、緯糸把持部が緯糸を把持した状態を示す断面図である。
【図22】緯糸把持部の他の構成を説明する斜視図と側面図である。
【図23】その緯糸把持部を示す中間省略の平面図と、第2の把持部の回動動作を説明する斜視図、断面図である。
【図24】その緯糸把持部が緯糸を把持した状態を示す斜視図と断面図である。
【図25】架渡し緯糸部分を構成する緯糸挾持部と緯糸支持部の配置状態を上下逆に構成した斜視図である。
【図26】回動把持片と摺動把持片の他の態様を示す平面図である。
【図27】緯糸把持部が緯糸を把持する直前の状態を説明する斜視図である。
【図28】従来のレピア織機における緯入れ装置をその使用状態で示す斜視図である。
【図29】レピアの第3把持部が扁平状態の緯糸を把持する直前の状態を示す斜視図である。
【図30】レピアの緯糸把持部が緯糸を扁平状態で把持した状態を示す斜視図である。
【図31】その把持した状態を示す平面図である。
【図32】従来の製造方法の問題点を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0027】
図1は、本発明に係る炭素繊維扁平糸織物の製造方法(以下製造方法という)によって製造された炭素繊維扁平糸織物(以下扁平糸織物という)1の一例を示すものであり、炭素繊維のマルチフィラメントの多数本を扁平に束ねてなる扁平糸2を緯糸2a及び経糸2bとして用いて平織されてなり、該緯糸2aと該経糸2bは、その糸幅と実質的に同等の織糸間隔で配列されている。そして、該緯糸2a及び該経糸2bは、織られた状態で実質的に無撚りで実質的に捩れがなく扁平状態が維持されている。本実施例においては、前記扁平糸2の炭素繊維のマルチフィラメント数は24000〜60000本に設定されており、前記緯糸2bと前記経糸2aの幅L1は6〜18mm幅に設定される。該フィラメント数が24000本の場合は、その幅L1は、例えば6〜12mmに設定され、フィラメント数が60000本の場合は、その幅は、例えば8〜18mmに設定される。
【0028】
かかる構成を有する炭素繊維の扁平糸織物1を製造する製造方法は、例えば図2に示すレピア織機3によって実施される。該レピア織機3における緯入れ装置4は、経糸開口5内に、扁平糸2からなる緯糸2aを、図示しない駆動機構により往復運動を行うレピア6によって挿入する装置である。並列された経糸2bが、後のヘルドフレームのヘルド(図示せず)と前のヘルドフレームのヘルド(図示せず)とに交互に挿入されて2組の経糸組7,9が形成され、該前後のヘルドフレームが所要タイミングで互いに逆方向に上下動することにより前記経糸開口5が形成される。そして該レピア6は、棒状のレピア本体8の先端部分をなすレピアヘッド10に緯糸把持部11が設けられており、該緯糸把持部11が、緯糸給糸側12で給糸された前記緯糸2aをその扁平面13,15を上下方向に向けて把持した後、前記経糸開口5内を後退して該緯糸2aを前記緯糸開口2内に挿入する如くなされている。
【0029】
そして前記緯糸給糸側12には、図6に示すように、給糸された前記緯糸2aの糸端側16を、前記扁平面13,15を上下方向に向けて挾持する糸端挾持部17と、該糸端側16の上流側19を前記扁平面13,15を上下方向に向けて支持する緯糸支持部20とが設けられている。前記レピア6が前記緯糸2aを把持する際は、該緯糸支持部20が前記糸端挾持部17よりも上方に位置されることにより、両者間に架け渡された架渡し緯糸部分21が、前記扁平面13,15を上下方向に向けた傾斜状態を呈するようになされている。
【0030】
前記緯糸把持部11は、図7に示すように、扁平な傾斜状態の前記架渡し緯糸部分21を、レピアの往復動方向F1で見た両側から、前記扁平面13,15の幅方向F2を該往復動方向F1と直交する方向にして把持する。前記糸端挾持部17は、該緯糸把持部11が緯糸2aを把持した後に前記糸端側16を離すようになされている。又前記レピア6は、前記緯糸把持部11が前記緯糸2aを前記の如く把持した状態を保持しながら前記経糸開口5内を後退して緯糸2aを経糸開口5内に緯入れした後、図5に示すように、該緯糸把持部11が緯糸2aを離すように構成されている。以下の説明では、前記往復動方向F1を左右方向と言うことがある。又、前記往復動方向F1の緯糸給糸側12に向かう方向を左方向F3と言い、該左方向F3の側を左側又は左と言うことがある。又、その反対側に向かう方向を右方向F4と言い、該右方向F4の側を右側又は右と言うことがある。
【0031】
前記糸端挾持部17は、緯入れされた緯糸2aを筬打ちするために前方に移動できる筬22(図2)と共に前後方向で移動できるものであり、該筬22を構成する下枠23の左の筬端側25(図2)に設けられている。該糸端挾持部17は、図6に示すように、該筬端側25に定置状態に配設された定置挾持片26と、該定置挾持片26に対して上下動でき該定置挾持片26との間で前記緯糸2aを、前記扁平面13,15を上下方向に向けて挾持する可動挾持片27とを具えている。
【0032】
該定置挾持片26と該可動挾持片27は、前後方向に稍長く形成されており、本実施例においては図6〜7に示すように、該定置挾持片26の上面部の、左右方向(レピアの往復動方向)の中央部分に、前記緯糸2aをソフトに挾持できるようにするために、ウレタンゴム等からなるゴム質弾性片29が突設されている。
【0033】
前記可動挾持片27は、図6、図8に示すように、上面28が前方に向け下方に稍傾斜しており、該可動挾持片27の後部32が支持アーム30に固定されている。そして該支持アーム30は、平行クランク機構33により、後方に向け上方に移動できるように、又、その逆方向に移動できるように構成されている。然して該可動挾持片27は、図8(B)に矢印で示すように、前記定置挾持片26から浮き上がるように上昇できる一方、図8(A)に矢印で示すように、前記可動挾持片27が前記定置挾持片26に向けて下降でき、該可動挾持片27と該定置挾持片26との間で前記緯糸2aを扁平状態で挾持できる。
【0034】
前記緯糸支持部20は、図6、図9(A)(B)に示すように、前端35が開口して前後方向に稍長いガイド溝36を有する横長のU字状に形成されており、その下支持片37で前記緯糸2aの下の扁平面15を下方から支持すると共に、その上支持片39が、上の扁平面13を下方に向けて押すことができるようになされている。そして、該上支持片39の側面40には、該緯糸支持部20を所要に上下動させる昇降装置(図示せず)に取り付けられる垂直支持片41の下端部42が固定されている。
【0035】
該緯糸支持部20が、前記緯糸2aを挾持してなる前記端糸挾持部17の稍左側且つ稍上側に位置した状態で、該糸端挾持部17と該緯糸支持部20の下支持片37との間に緯糸2aが所要のタイミングで架け渡される。このように架け渡された架渡し緯糸部分21は、図9(A)に示すように、前記扁平面13,15を上下方向に向けた傾斜状態を呈する。そして該緯糸支持部20は、この状態から、図9(B)に示すように、前記上支持片39が前記緯糸2aを稍押し下げて該緯糸2aが前記定置挾持片26の上端43に近接した高さとなるまで下降できる。緯糸支持部20はこのように、下支持片37が緯糸2aを下方から支持した状態と前記上支持片39が緯糸2aを上方から支持した状態との間L2(図9)で上下動できる。
【0036】
前記緯糸把持部11は、本実施例においては図10〜12に示すように、前記扁平な傾斜状態の緯糸2aを、レピアの往復動方向(左右方向)F1で見た両側から、前記扁平面の幅方向F2(図7)を該往復動方向F1と直交する方向にして把持する、第1の把持部56と第2の把持部79とを具えている。該第1の把持部56は、前記レピアヘッド10(図2)に設けられた支持台45の上面46の後縁側部分47において前記往復動方向F1で摺動し得る左右方向に長い摺動把持片49を用いて構成されている。又、前記第2の把持部79は、前記上面46の前縁側部分50において前記往復動方向F1に延長し且つその中央部分51が該上面46で突設された枢軸52で枢着されて水平面内で回動し得る回動片53としての回動把持片53aを用いて構成されている。
【0037】
前記摺動把持片49は図7、図10〜11に示すように、その先端部分に、ウレタンゴム等からなるゴム質弾性片55が固定されており、該ゴム質弾性片55の端面は、前後方向に稍長く形成された第1の把持部56を構成している。又、該摺動把持片49の下面側には、図11に破線で示すように、前記左右方向F1に長いバネ収容溝59が設けられ、該バネ収容溝59に、例えばコイルバネとしてのバネ部材60が収容されている。該バネ部材60は、稍圧縮された状態で、その先端61が前記バネ収容溝59の先端62で支持されると共に、その基端63は、前記後縁側部分47の稍右側部位で突設されたストッパ突部65で支持されており、これにより該摺動把持片49は、該バネ部材60の付勢作用によって、常時は左方向F3に突出するようになされている。
【0038】
又、該摺動把持片49の上面には操作突部66が突設されている。該操作突部66は、図10に示すように、左側の面(摺動把持片49の前記第1の把持部56側の面)が、例えば垂直な係合面69として形成されると共に、該操作突部66の上面70は、先端67側から基端71側に向けて下方に傾斜した傾斜面に形成されている。そして図3、図7に示すように、前記支持台45の上面を覆うように固定されたカバー片72の後縁側に設けられた欠切部73の先端縁75が該係合面69を受け止めることによって、該摺動把持片49の左方向F3への突出量が規制されている。
【0039】
又、前記回動把持片53aは、例えば図10〜11に示すように、前記枢着部76よりも先側(左側)の部分77は、前記摺動把持片49に沿って延長しており、その先端部分には、前記摺動把持片49の前記第1の把持部56の左側に位置して該第1の把持部56と対向し得る、例えば、直線状を呈する前記第2の把持部79が、L字状に屈曲形成されている。そして、前記回動把持片53aの前記枢着部76よりも基端側(右側)の部分81は、その後縁が、右方向に向けて後方に傾斜する後側傾斜縁82とされると共に、該基端側の部分81の前縁は、前方に向けて凸の前側湾曲縁83として形成されている。
【0040】
又、前記基端側の部分81の前記後側傾斜縁82に連なる右縁85には、左方向に向けて円弧状に凹む前の係合凹部86と後の係合凹部87が該右縁85の前後に、隣り合わせて設けられている。そして前記支持台45の右側部分88には、図10(C)に示すように、水平面内で回動し得る回動アーム89の一端側90が枢着されると共に該回動アーム89の他端側94には、水平面内で回転自在の係合ローラ91aとしての係合部91が枢着されており、該係合ローラ91aが図10(A)(B)に示すように、前記前の係合凹部86と後の係合凹部87に係合し得るようになされている。そして該回動アーム89は図10(C)に示すように、前記係合ローラ91aが前記前の係合凹部86又は後の係合凹部87と係合した状態を弾性的に保持し得るように、コイルバネ92の付勢作用によって、左方向F3に向けて付勢されている。
【0041】
該係合ローラ91aが図10(A)、図11(A)に示すように前記前の係合凹部86と弾性的に係合することによって、前記第2の把持部79の先端95が前記第1の把持部56の前端96側に位置する第1回動状態93で前記回動把持片53aが保持される。又、該係合ローラ91aが図10(B)、図11(B)に示すように前記後の係合凹部87と弾性的に係合することによって、前記第2の把持部79と前記第1の把持部56とが左右方向で平行して向き合った第2回動状態97で前記回動把持片53aが保持される。そして前記カバー片72は、図3、図7に示すように、このように支持台45に取り付けられた回動把持片53aを上側から覆うようになされている。
【0042】
図6、図11(A)は、前記操作突部66の係合面69が前記カバー片72の前記欠切部の先端縁75に当接した状態を示し、この状態で、前記摺動把持片49の第1の把持部(左端)56が前記支持台45の左端100から突出した状態にある。この状態で前記回動把持片53aは、図11(A)に示すように、前記係合ローラ91aが前記前の係合凹部86と係合することによって、前記第2の把持部79の先端95が前記第1の把持部56の前端96側に位置する前記第1回動状態93にある。この状態で、前記レピア6が図6に示す左方向F3に前進して、前記係合面69が押圧部101により図6、図12に矢印で示すように右方向F4に押されると、図12に示すように、前記摺動把持片49の右端102が前記回動把持片53aの前記後側傾斜縁82に当る。
【0043】
この状態で、摺動把持片49が押圧部101により更に右方向F4に押されると、前記回動把持片53aが図12に矢印で示す時計回りF5に回動し、最終的には図11(B)に示すように、前記係合ローラ91aが前記後の係合凹部87に嵌まり合った状態となり、これによって前記第2回動状態97が保持される。この状態で、前記摺動把持片49の前記第1の把持部(左端)56は、前記支持台45の左端100の稍内方(右側)に位置した状態となり、前記第2の把持部79と前記第1の把持部56とが左右方向で平行して向き合った状態となる。図11(B)は、このように向き合った状態で、前記緯糸2aが、該第2の把持部79と前記支持台45の左端100との間に介在された状態を示している。
【0044】
その後、前記レピア6が右方向に移動して前記係合面69が前記押圧部101から離れると、前記バネ部材60の付勢作用によって前記摺動把持片49が図11(B)に矢印で示すように左方向F3に摺動し、図13、図7に示すように、前記緯糸2aが、その扁平面13,15の幅方向F2を前記往復動方向(左右方向)F1と直交する方向にして前記第1の把持部56と前記第2の把持部79との間で把持されることになる。このようにして緯糸把持部11が緯糸2aを把持した後、図7(A)に示すように、前記糸端挾持部17が前記糸端側16を離す。
【0045】
そして前記レピア6が、図2に示すように、前記緯糸把持部11が前記緯糸2aを前記のように把持した状態を保持しながら前記経糸開口5内を後退して緯糸2aを経糸開口5内に緯入れする。このようにして緯入れされた後、該レピア6が図14に矢印F4で示すように更に後退するに伴い、前記回動把持片53aの前記前側湾曲縁83が傾斜押圧部102で徐々に押されることにより、該回動片53が水平面内で反時計回りF6に回動する。この回動動作によって、最終的には図15に示すように、前記係合ローラ91aが前記後の係合凹部87から外れて前の係合凹部86に係合した状態となる。これにより、前記第2の把持部79の先端95が前記第1の把持部56の前端96側に位置する前記第1回動状態93を呈することになる。この状態で、前記緯糸把持部11が緯糸2aを離す。
【0046】
次に、本発明に係る緯入れ装置4による緯入れについてより詳細に説明する。前記緯糸2aと経糸2bは、炭素繊維からなる扁平糸2を用いている。該扁平糸2は、例えば、炭素繊維のマルチフィラメント(例えば径が7μ)の24000本を扁平に束ねてなるもので、該扁平糸の幅寸法は例えば7mm程度のものを用いることができる。
【0047】
図1は、該扁平糸を緯糸2aと経糸2bとして用い、該緯糸2aを経糸開口5(図2)内に緯入れして例えば平織する場合を示している。該緯糸2aは、図示しないボビンから引き出されて後、図16に示すように、上下の弾性挾持板103,103で所要に挾持されて後、所要間隔で並設された丸軸状のガイドバー105,105,105,105を蛇行状態に走行して、適度に張力が付与され、その後、上下平行した水平片106,106が形成する小間隙挿通部107に通される。この小間隙挿通部107に通されることにより、該緯糸2aは、ねじれないようにガイドされ、その扁平面13,15を上下方向に向けた安定状態で保持され、前記緯糸給糸側12に導入される。
【0048】
該緯糸給糸側12には、図6に示すように、給糸された前記緯糸2aの糸端側16をその扁平面13,15を上下方向に向けて挾持する前記糸端挾持部17と、該糸端側16の上流側19を前記扁平面13,15を上下方向に向けて支持する前記緯糸支持部20とが設けられている。緯糸給糸側12に供給された緯糸2aは、前後方向に長いコ字状を呈する前記緯糸支持部20の前記ガイド溝36に挿通せしめられ、該緯糸2aの糸端側16が、前記糸端挾持部17で、レピア6による緯入れ動作毎に所要タイミングで挾持される。
【0049】
次に、前記レピア6による緯入れについて説明する。該緯入れは、前記経糸開口5内を前記緯糸給糸側12に向けて前進するレピア6の前記緯糸把持部11が、給糸された緯糸2aをその扁平面13,15を上下方向に向けて把持することから始まる。
【0050】
該緯糸把持部11による緯糸2aの把持に先立って、図6に示すように、前記糸端挾持部17が、前記定置挾持片26に対して前記可動挾持片27を閉じて、給糸された前記緯糸2aの糸端側16を前記扁平面13,15を上下方向に向けて挾持する。本実施例においては前記定置挾持片26の上面にウレタンゴムからなるゴム質弾性片29が設けられているため、該糸端挾持部17による緯糸2aの挾持は緩衝作用が発揮されてソフトに行われる。このようにして前記糸端挾持部17が緯糸2aを挾持すると共に、該糸端側16の上流側19が、最上昇位置にある前記緯糸支持部20の前記下支持片37で支持される。このようにして糸端挾持部17と緯糸支持部20との間に架け渡された架渡し緯糸部分21は、前記扁平面13,15を上下方向に向けた傾斜状態となされ、該架渡し緯糸部分21には、前記緯糸2aが前記ガイドバー105を蛇行状態に走行されていること等によって適度な張力が付与されている。そして、該架渡し緯糸部分21の上下方向略中央部位109が、前記緯糸把持部11で把持されるようになされている。
【0051】
図6は、レピア6の前進によって、前記緯糸把持部11が前記架渡し緯糸部分21に接近した状態を示している。該レピア6が更に前進すると、緯糸把持部11の、前記摺動把持片49に設けられている前記操作突部66の前記係合面69が、前記糸端挾持部17の右側(レピア6が後退する方向の側)に隣り合わせて設けられている前記押圧部101(図6)に当接し、該押圧部101で前記操作突部66が右方向に押されることになる。該押圧部101は、本実施例においては、軸線が上下方向であるゴム製筒状に構成されている。
【0052】
該操作突部66が該押圧部101に押されるまでは、図11(A)に示すように、前記係合ローラ91aが前記前の係合凹部86と係合した状態にあって、前記回動把持片53aが前記第1回動状態93を呈しており、前記第2の把持部79の先端95が前記第1の把持部56の前端96側に位置している。この状態でレピア6が前進すると、図11(A)に示すように、適度の張力が付加された前記架渡し緯糸部分21の上の扁平面13が該第1の把持部56に接触した状態となる。
【0053】
レピア6が更に前進するにつれ、前記押圧部101が前記係合面69を右方向F4に押圧する。これに伴い、図11(A)に示すように、前記摺動把持片49が前記バネ部材60の付勢作用に逆らって右方向F4に移動せしめられ、該第1の把持部56と前記第2の把持部79との間の間隔が大きくなるが、この間、前記上の扁平面13が前記第1の把持部56に当接した状態が保たれる。右方向F4に更に移動した後、図12に示すように、該摺動把持片49の右端102が前記回動把持片53aの前記後側傾斜縁82に当接する。
【0054】
その後も操作突部66が右方向F4に押されて前記摺動把持片49が右方向F4に移動を続けると、前記回動把持片53aは図12に矢印F5で示すように時計回りに回動し、当初は前の係合凹部86に係合状態にあった前記係合ローラ91aが、最終的には、図11(B)に示すように前記後の係合凹部87と係合状態となる。これにより、前記第2の把持部79と前記第1の把持部56とが、所要間隔を置いて左右方向で対向した前記第2回動状態97を呈しこの状態で保持される。この状態で、図11(B)、図17に示すように、前記第1の把持部56が前記支持台45の左端100の内方(右側)に稍控えた状態となると共に、前記上の扁平面13が前記支持台45の左端100に当接した状態となる。
【0055】
この状態で前記レピア6が後退すると、前記係合面69が前記押圧部101から離れることによって、前記バネ部材60の付勢作用により前記摺動把持片49が左方向F3に向けて前進し、最終的には図7、図18に示すように、前記架渡し緯糸部分21が、その上下の扁平面13,15の幅方向F2を前記往復動方向(左右方向)F1と直交する方向にして、該第2の把持部79と該第1の把持部56との間で安定的に且つ確実に把持されることになる。これにより、緯糸把持部11による緯糸2aの把持が完了する。該緯糸把持部11が緯糸2aを把持する際、該緯糸2aは、図6に基づいて前記したように、その糸端側16においてのみ糸端挾持部17で挾持されており、緯糸支持部20では何ら挾持されていない。従って、傾斜状態にある架渡し緯糸部分21を第1の把持部56と第2の把持部79とで把持する際、前記緯糸支持部20から緯糸2aが所要長さ自由に引き出されるため、緯糸2aの把持を無理なく行うことができる。
【0056】
もしも、緯糸支持部20側においても緯糸2aが挾持された状態にあるとすれば、該緯糸把持部11が緯糸2aを把持する際に緯糸2aが無理に引っ張られる状態となって緯糸2aを損傷する恐れがあるが、このような問題を引き起こす恐れがない。なお、前記第1の把持部56にはウレタンゴムからなるゴム質弾性片55が設けられているため、前記緯糸把持部11による緯糸2aの把持は緩衝作用が発揮されてソフトに行われる。
【0057】
このようにして緯糸把持部11が緯糸2aを把持した後、図7(A)、図19(A)に示すように、前記糸端挾持部17の前記可動挾持片27が浮き上がることによって該糸端側16の挾持状態が解除される。その後、図2〜3に示すように、把持した緯糸2aの扁平状態を保持しながらレピア6が後退する。このレピア6の後退は、前記緯糸把持部11による把持部及びその近傍部分においても緯糸2aが絞られたり捩じれたりすることなく扁平状態を保持しながら行われる。
【0058】
この後退の際、前記緯糸支持部20が稍下降すると同時に該可動挾持片27が上昇する。この上昇により、図8(B)、図19(B)に示すように、前記緯糸2aが該可動挾持片27の上面28に載る。このように載った緯糸2aは、該可動挾持片27が図8(B)に矢印で示すように、後方に向け上方に移動するにつれ、図8(C)に矢印で示すように、該可動挾持片27から滑り落ちる。そして、レピア6の後退が続く間、前記緯糸2aが、図19(C)で示すように、前記緯糸支持部20の上支持片39で下向きに押された状態で支持され、該緯糸支持部20で支持されている緯糸2aの高さが、前記緯糸把持部11で把持されている緯糸2aの高さに略等しくなるので、緯糸2aは、扁平状態を保持しながら経糸開口5内に安定的に挿入されることになる。
【0059】
レピア6による緯入れが完了した後、前記可動挾持片27が図20(A)に矢印で示すように下降することにより、図20(B)に示すように、前記定置挾持片26と該可動挾持片27との間で緯糸2aが挾持される。これと同時に、緯入れされた緯糸2aの右端部側110が、図4に示すように右端側挾持部111で挾持される。該右端側挾持部111は、図3〜4に示すように、所要間隔を置いて平行して配置された3本の水平な丸棒状の支持軸112,112,112を具える下の挾持部材113と、隣り合う下の支持軸112,112間、112,112間に上から下に向けて挿入される水平な丸棒状の支持軸115,115を具える上の挾持部材116とを具えている。そして、該上下の挾持部材116,113が開いた状態で、図3に示すように、その間117をレピア6が後退でき、レピア6が後退した後、該右端側挾持部111の稍右側部位で、緯糸2aが図示しないグリップ装置でグリップされた後に、該下の挾持部材113に対して該上の挾持部材116が閉じ、これにより図4に示すように、緯糸2aが屈曲状態で挾持され、このように緯入れされた緯糸2aは、捨耳用の把持用経糸で把持される。
【0060】
このように右端側挾持部111が緯糸2aを挾持した後、図5に示すように、前記緯糸把持部11が緯糸2aを離す。この緯糸2aを離す動作は、前記レピア6の後退が終了する直前において、図14に示すように、前記回動把持片53aの前記前側湾曲縁83が傾斜押圧部102で後方に向けて押圧されることにより行われる。このように押圧されると、前記回動把持片53aが図14に矢印F6で示すように反時計回りに回動し、図11(A)に示すように、前記係合ローラ91aが後の係合凹部87から外れて前の係合凹部86に嵌まり合い、前記第1回動状態93が保持されることになる。この状態で、緯糸把持部11による緯糸2aの把持が解除されるのである。その後、糸端挾持部17が緯糸2aを挾持した状態で、前記筬22が筬打ちのために織前119に移動する間に、前記緯糸2aが前記糸端挾持部17の近傍に配設された図示しないカッタにより切断される。
【0061】
筬打ち後に筬22が後退するに際に、前記経糸組7,9の上下位置が前記ヘルドによって逆転する。そして図20(C)に示すように、前記緯糸支持部20が上昇し、前記緯糸挾持部17と該緯糸支持部20との間に架け渡された架渡し緯糸部分21が構成されることになり、又、筬打ちが完了した直後に、前記グリップ装置によるグリップが解除されると共に、前記上下の挾持部材116,113が開いて前記間117が形成され、レピア6は、次の緯入れに具えて待機する。
【0062】
前記扁平糸織物1はかかる工程を経て製造されるものであり、前記レピア6による緯入れは、前記したように、前記緯糸把持部11による把持部及びその近傍部分においても緯糸2aが絞られたり、撚りがかかったり、捩じれたりすることなく扁平状態を維持しながら行なわれる。従って、前記緯糸2aや経糸2bは織られた状態で、糸の全幅に亘って実質的に無撚りで実質的に捩れがなく扁平状態が維持されており、製造された扁平糸織物1は、緯糸間の空隙が殆どなく高密度な織り上り状態となる。又、このように無撚りで捩れがないことから織物厚さにムラが生じず、従って織物を薄く形成でき、又、織物表面に凹凸が殆どない。この織物厚さを例示すれば、扁平糸2の炭素繊維のマルチフィラメント数が24000本の場合は0.3〜0.45mm、扁平糸2の炭素繊維のマルチフィラメント数が60000本の場合は0.6〜0.9mmに設定される。
【0063】
本発明によるときは、扁平糸織物1をこのように高品質に製造できることから、該扁平糸織物1の複数枚を積層しこの積層体にエポキシ樹脂等の樹脂を含浸させるときは、扁平糸織物1の内部や積層された扁平糸織物同士の間に空隙が殆どないために該積層体に樹脂を各部均一に密実に含浸させることができる。これによって、軽量で且つ高い強度特性を有する炭素繊維強化の樹脂成形体を製造できることとなる。なお該樹脂としては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂、アクリル樹脂、ナイロン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等の熱可塑性樹脂を使用できる。このようにして製造された成形体は、自動車や航空機の構造材料、建築用の耐震材料等、各種の構造材料として好適に使用できる。
【0064】
加えて本発明によるときは、前記のように、前記緯糸2a及び前記経糸2bは実質的に無撚りで実質的に捩れがなく扁平状態が維持されることから、緯糸の打ち込み本数が必要以上に多くなって織物の目付けが設計以上に大きくなることがなく、扁平糸織物を軽量化できる。又、織糸の使用量が必要以上に増大して扁平糸織物の製造コストの上昇を招くこともない。
【実施例2】
【0065】
本発明は、前記実施例で示したものに限定されるものでは決してなく、「特許請求の範囲」の記載内で種々の設計変更が可能であることはいうまでもない。その一例を挙げれば次のようである。
【0066】
(1) 前記製造方法において、扁平糸からなる前記緯糸2aの糸幅と前記経糸2bの糸幅は、炭素繊維扁平糸織物1の用途に応じて所要に設定できる。
例えば、該炭素繊維扁平糸織物1の複数枚を積層し、この積層体にエポキシ樹脂等の樹脂を含浸させて炭素繊維強化の樹脂成形体を製造する場合は、該樹脂成形体の用途に応じ、緯糸2a、経糸2bの何れかを他方に比して広幅に形成することがある。
又、扁平糸織物の用途により所要の目的を達成できる限り、緯糸の糸幅をより広くすれば、それだけ、扁平糸織物の製造効率を向上させることができる。
【0067】
(2) 前記炭素繊維扁平糸織物は、前記のように平織によって製造されることの他、綾織や繻子織等によって製造されることもある。
【0068】
(3) 図21は、前記糸端挾持部17と前記緯糸支持部20との間に架け渡された架渡し緯糸部分21が、前記扁平面13,15を、前記レピア6の往復動方向F1で見た両側に向けた垂直状態となされた場合を示すものであり、図21(A)は、かかる垂直状態の架渡し緯糸部分21を、前記緯糸把持部11が把持する直前の状態を示しており、図21(B)は、該緯糸把持部11が緯糸2aを把持した状態を示している。
【0069】
(4) 図22〜24は緯糸把持部11の他の構成を示すものである。該緯糸把持部11は、図22〜23に示すように、前記レピア本体8内に収容されて前記往復動方向F1と平行する軸線回りに回動(垂直面内で回動)できる回動片53としての回動操作軸53bの先端に、例えば半丸軸状や角軸状、平板状等を呈する第2の把持部79を屈曲形成してなるものである。該回動操作軸53bは、例えば図23(A)に示すように前記レピア本体8の後側部分114に設けられており、該レピア本体8の長さ方向に所要間隔を置いて設けられた軸受123に軸支されてなる。そして、前記第2の把持部79は、図24に示すように、前記と同様にして構成された摺動把持片49の第1の把持部56との間で前記架渡し緯糸部分21を、前記扁平面13,15の幅方向F2を前記往復動方向F1と直交する方向にして把持できる。該第2の把持部79は、前記回動操作軸53bの回動操作によって、図22(A)、図23(A)(B)に示すように、前記第1の把持部56と向き合う水平状態と、図22(B)に一点鎖線で示し、又図23(C)に示すように、上向きに直角を呈する起立状態との間で回動できるものであり、該回動の操作は、例えば図23(C)に示すように、該回動操作軸53bの基端側125に設けられたレバー126をカム駆動等によって正逆回動させることによって行うことができる。該レバー126が、図23(D)に実線で示す下向き傾斜状態となったときは、前記第2の把持部79が図23(B)に示す水平状態を呈する一方、該レバー126が、図23(D)に一点鎖線で示す上向き傾斜状態となったときは、前記第2の把持部79が図23(C)に示す起立状態を呈するようになされている。
【0070】
(5) 前記糸端挾持部17及び前記緯糸把持部11は、緯糸2aを損傷しないように挾持でき、又、把持できるものであればその構成は限定されてない。好ましくは前記実施例で示したように、前記定置挾持片26、前記摺動把持片49に、ウレタンゴム等のゴム質弾性片を介在させるのがよい。
【0071】
(6) 図25は、前記とは逆に、緯糸挾持部17を緯糸支持部20よりも上方に位置させることによって、傾斜状態の架渡し緯糸部分21を形成する場合を示すものである。
【0072】
(7) 図26は、前記とは逆に、水平面内で回動し得る回動片53としての回動把持片53aを支持台45の後縁側部分47に配設すると共に、前記摺動把持片49を支持台45の前縁側部分50に配設してなる緯糸把持部11を示すものである。
【0073】
(8) 図27は、前記とは逆に、回動片53としての回動操作軸53bをレピア本体8の前側部分127に配設すると共に、前記摺動把持片49をレピア本体8の後側部分114に配設してなる緯糸把持部11を示すものである。
【0074】
(9) 前記架渡し緯糸部分21が前記扁平面13,15を上下方向に向けた傾斜状態とされた場合、前記緯糸把持部11が、前記扁平な傾斜状態の緯糸2aを、上下から、前記扁平面13,15の幅方向F2を前記レピアの往復動方向F1と直交する方向にして把持することもある。
【符号の説明】
【0075】
1 炭素繊維扁平糸織物
2 扁平糸 2a 緯糸
2b 経糸 3 レピア織機
4 緯入れ装置
5 経糸開口
6 レピア
10 レピアヘッド
11 緯糸把持部
12 緯糸給糸側
13 扁平面
15 扁平面
16 糸端側
17 糸端挾持部
19 上流側
20 緯糸支持部
21 架渡し緯糸部分
22 筬
26 定置挾持片
27 可動挾持片
28 上面
29 ゴム質弾性片
37 下支持片
39 上支持片
45 支持台
49 摺動把持片
53 回動片
53a 回動把持片
55 ゴム質弾性片
56 第1の把持部
79 第2の把持部
82 後側傾斜片
83 前側湾曲縁
86 前の係合凹部
87 後の係合凹部
91 係合部
101 押圧部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素繊維のマルチフィラメントを扁平に束ねてなる扁平糸を緯糸及び経糸として用いてレピアにより製織されてなり、該緯糸及び該経糸は、織られた状態で扁平状態が維持されている炭素繊維扁平糸織物の製造方法であって、
レピアヘッドに設けられている緯糸把持部が、緯糸給糸側において扁平状態で給糸された前記緯糸をその扁平面を上下方向に向けて把持し、該緯糸把持部が、該緯糸の扁平状態を保持しながら前記経糸開口内を後退して該経糸開口内に該緯糸を挿入し、かかる緯入れ後、該緯糸把持部が該緯糸を離す工程を含み、
前記緯糸給糸側には、給糸された前記緯糸の糸端側を、前記扁平面を上下方向に向けて挾持する糸端挾持部と、該糸端側の上流側を前記扁平面を上下方向に向けて支持する緯糸支持部とを設け、前記レピアが前記緯糸を把持する際は、該緯糸支持部と該糸端挾持部を、何れかが上に位置した上下配置の状態とすることにより、両者間に架け渡された架渡し緯糸部分を、前記扁平面を上下方向に向けた傾斜状態となし、
前記緯糸把持部が具備する第1の把持部と第2の把持部とで、前記扁平な傾斜状態の緯糸を、レピアの往復動方向で見た両側から、又は上下から、前記扁平面の幅方向を該往復動方向と直交する方向にして把持させ、前記糸端挾持部は、該第1の把持部と該第2の把持部とによって前記緯糸が把持された後に前記糸端側を離すようになし、
前記レピアを、前記第1、第2の把持部が前記緯糸を前記の如く把持して前記緯糸の扁平状態を保持しながら前記経糸開口内を後退させて、該緯糸を該経糸開口内に挿入し、緯入れ後、該第1、第2の把持部が緯糸を離すことを特徴とする炭素繊維扁平糸織物の製造方法。
【請求項2】
炭素繊維のマルチフィラメントを扁平に束ねてなる扁平糸を緯糸及び経糸として用いてレピアにより製織されてなり、該緯糸及び該経糸は、織られた状態で扁平状態が維持されている炭素繊維扁平糸織物の製造方法であって、
レピアヘッドに設けられている緯糸把持部が、緯糸給糸側において扁平状態で給糸された前記緯糸をその扁平面を上下方向に向けて把持し、該緯糸把持部が、該緯糸の扁平状態を保持しながら前記経糸開口内を後退して該経糸開口内に該緯糸を挿入し、かかる緯入れ後、該緯糸把持部が該緯糸を離す工程を含み、
前記緯糸給糸側には、給糸された前記緯糸の糸端側を、前記扁平面を上下方向に向けて挾持する糸端挾持部と、該糸端側の上流側を前記扁平面を上下方向に向けて支持する緯糸支持部とを設け、前記レピアが前記緯糸を把持する際は、該緯糸支持部と該糸端挾持部を、何れかが上に位置した上下配置の状態とすることにより、両者間に架け渡された架渡し緯糸部分を、前記扁平面を、レピアの往復動方向で見た両側に向けた垂直状態となし、第1の把持部と第2の把持部とで、前記垂直状態の緯糸を、レピアの往復動方向で見た両側から、前記扁平面の幅方向を該往復動方向と直交する方向にして把持させ、前記糸端挾持部は、該第1の把持部と該第2の把持部とによって前記緯糸が把持された後に前記糸端側を離すようになし、
前記レピアを、前記第1、第2の把持部が前記緯糸を前記の如く把持して前記緯糸の扁平状態を保持しながら前記経糸開口内を後退させて、該緯糸を該経糸開口内に挿入し、緯入れ後、該第1、第2の把持部が緯糸を離すことを特徴とする炭素繊維扁平糸織物の製造方法。
【請求項3】
前記第1の把持部は、前記レピアヘッドに設けられて前記往復運動方向で摺動し得る摺動把持片の先端部分として構成されると共に、前記第2の把持部は、水平面内又は垂直面内で回動し得る回動片の先端部分として構成されており、
前記第2の把持部は、当初は、前記第1の把持部の前記緯糸の前記扁平面と当接し得る当接部分から外方に外れた回動状態にあり、この状態からレピアが前記往復動方向で前進することにより、前記摺動把持片が前記往復動方向で後退して、前記第1の把持部と前記第2の把持部とが、前記緯糸の、前記往復動方向で見た両側に位置するようになされており、この状態で、前記回動把持片が、前記第1の把持部と前記第2の把持部とが対向するように回動することにより、前記緯糸が該第1の把持部と該第2の把持部との間に介在される如くなされ、この状態で前記摺動把持片が前記第2の把持部に向けて前進することにより、該第1の把持部と該第2の把持部とによって前記緯糸が把持されるようになされていることを特徴とする請求項1又は2記載の炭素繊維扁平糸織物の製造方法。
【請求項4】
前記扁平糸は、炭素繊維のマルチフィラメントの24000〜60000本を扁平に束ねてなることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の炭素繊維扁平糸織物の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載の炭素繊維扁平糸織物の製造方法により製造された炭素繊維扁平糸織物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【公開番号】特開2013−14858(P2013−14858A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−148933(P2011−148933)
【出願日】平成23年7月5日(2011.7.5)
【出願人】(592082778)株式会社豊通マシナリー (8)
【Fターム(参考)】