説明

炭素繊維複合材料の接合部材の製造方法

【課題】炭素繊維複合材料とアルミニウム材とを接合した積層体を提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂をマトリックスとする炭素繊維複合材料とアルミニウム材とからなる、下記工程1)〜4)を含む積層体の製造方法。
1)アルミニウム材表面の少なくとも一方に微細なポーラス構造を形成させる工程、
2)アルミニウム材のポーラス構造形成面上に熱可塑性樹脂層を配置する工程、
3)該熱可塑性樹脂を溶融し、アルミニウム材のポーラス構造中に熱可塑性樹脂を入り込ませる工程、
4)アルミニウム材と炭素繊維複合材料とを、該熱可塑性樹脂層を介して重ねて、これらを加熱および加圧し接合させる工程

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は炭素繊維複合材料とアルミニウム材とを接合した積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維複合材料は比強度、比剛性が高く極めて優れた材料として重用されている。しかしながら従来マトリックスとして熱硬化性樹脂を用いた炭素繊維複合材料を異種材、特に金属と接合する際には機械的な接合であるボルト・ナット、リベットなどや、接着剤を用いた接合が用いられている。ボルト・ナットなどによる機械的な接合は一般に重量増が嵩むほか、特に複合材料においては接合点に応力が集中し、最悪の場合、最初の応力集中点を起点として次々に破壊が進行していく懸念がある。接着剤を用いる接合では一般に強度を確保するため一定厚の接着剤層を確保することが必要であり、特に大型部材を接合する場合には相当量の接着剤を要し、結果として得られた部材の大幅な重量増が懸念されるほかその強度も接着剤のみでは必ずしも充分でないという欠点があった。さらに接着剤は一般に実用強度を得るまでに時間が掛かるため養生工程を考慮しなければならない。特許文献1には熱硬化性炭素繊維複合材料において金属と双方に親和性のある中間樹脂層を配置して接合する方法が記されている。一方において熱可塑性炭素繊維複合材料は、成形における生産性、成形後に熱加工ができるなどの加工性において熱硬化性炭素繊維複合材料より優れており、樹脂が相溶する範囲内においては材料同士が溶着により接合し、マトリックス樹脂並の接合強度が期待できる。熱可塑性の炭素繊維複合材料を金属に溶着させるには、マトリックスとして用いている熱可塑性樹脂そのものが金属に対して溶着できる必要がある。特許文献2、3には金属表面に処理を施して、樹脂と金属を接合することが記されている。また特許文献4、5のように表面を微細なポーラスにしたアルミニウム材に樹脂を射出成形することによってアンカー効果により接合できることが記されており、金属の表面加工が簡便であることから考えても極めて有効な方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−297927号公報
【特許文献2】特公平5−51671号公報
【特許文献3】WO2009/157445号公報
【特許文献4】WO2004/055248号公報
【特許文献5】特開2007−182071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は樹脂をマトリックスとする炭素繊維複合材料とアルミニウム材とを接合した積層体の製造方法である。
【0005】
熱可塑性炭素繊維複合材料の利点は熱を加えれば容易に形状が変わることから、熱硬化性炭素繊維複合材料に比べ極めて短い時間で射出ないしはプレス成形ができることである。したがって熱可塑性樹脂をマトリックスとする炭素繊維複合材料であれば、成形と同時または成形の直後に金型内で熱圧着によって極めて簡便に接合ができれば極めて効率的に表面のポーラスなアルミニウム材との接合体を得ることができる。しかしながら特許文献4、5に記された方法は射出成形、つまり溶融樹脂をかかるアルミニウム材に高圧で接触させる方法である。
【0006】
熱可塑性炭素繊維複合材料は熱可塑性樹脂が炭素繊維束に「滲みこんだ」状態にあって、その材の表面に必ずしも均質に樹脂が存在するわけではないため炭素繊維の比率が高い場合樹脂の「欠乏した」部分が存在する。熱可塑性炭素繊維複合材料を特にプレス成形などの低圧で接合させる場合、アルミニウム材の細孔部分に樹脂が入り込まず充分な接合強度が発現しなかったり、所々に樹脂が入り込んだ状態となって接合強度が大きくばらついたりする懸念があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは熱可塑性炭素繊維複合材料とアルミニウム材との接合を鋭意検討した結果、アルミニウム材表面の少なくとも一方に微細なポーラス構造を形成させ、かかるポーラス構造と複合材料間に熱可塑性樹脂層を配置し、該熱可塑性樹脂層を溶融させることによりアルミニウム材と熱可塑性炭素繊維複合材料とを強固に安定して接合できることを見出し、本発明に到達した。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、熱可塑性炭素繊維複合材料とアルミニウム材との強固な接合体を安定して得ることができる。さらに本発明方法では、炭素繊維複合材料とアルミニウム材とを接合して積層する工程と成形工程とを同時に、あるいは連続して行うことも可能であり、炭素繊維複合材料とアルミニウム材の積層部材を短時間かつ少ない工程で得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】接合部材の断面模式図
【図2】表面処理アルミニウム材表面の走査型電子顕微鏡観察例
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は下記工程1)〜4)を含む熱可塑性樹脂をマトリックスとする炭素繊維複合材料とアルミニウム材とからなる積層体の製造方法である。
1)アルミニウム材表面の少なくとも一方に微細なポーラス構造を形成させる工程、
2)アルミニウム材のポーラス構造形成面上に熱可塑性樹脂層を配置する工程
3)該熱可塑性樹脂層を溶融し、アルミニウム材のポーラス構造中に熱可塑性樹脂を入り込ませる工程、
4)アルミニウム材と炭素繊維複合材料とを、該熱可塑性樹脂層を介して重ねて、これらを加熱および加圧し接合させる工程
工程2)〜4)は順次行っても、同時に行っても良い。また接合形状を設計どおりに得るために型を用いることが好ましい。このように熱可塑性樹脂層を介して溶着させることで射出成形などのように高圧で溶融樹脂を接触させる必要はなく、プレス成形など比較的低圧でアルミニウム材と溶融樹脂を接触させることができる。
【0011】
以下本発明の実施形態について説明する。本発明の接合部材の一態様(断面模式図)を図1に示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0012】
[熱可塑性炭素繊維複合材料]
本発明における熱可塑性炭素繊維複合材料とは、熱可塑性樹脂をマトリックスとし、強化繊維として炭素繊維を含む材料である。炭素繊維複合材料は、炭素繊維100重量部に対し熱可塑性樹脂が50〜1000重量部含まれているものであることが好ましい。より好ましくは、炭素繊維100重量部に対し、熱可塑性樹脂50〜400重量部、更に好ましくは、炭素繊維100重量部に対し、熱可塑性樹脂50〜100重量部である。
【0013】
熱可塑性炭素繊維複合材料における炭素繊維の形態は、とくに限定されず、連続繊維であっても、不連続繊維であっても良い。
【0014】
連続繊維の場合、もちろん部材の大きさや形状などにより不連続となるので、繊維長100mm超のものを連続繊維とする。連続繊維の場合は、織編物、ストランドの一方向配列シート状物及び多軸織物等のシート状、または不織布状の形態が好ましい。なお、多軸織物とは、一般に、一方向に引き揃えた繊維強化材の束をシート状にして角度を変えて積層したもの(多軸織物基材)を、ナイロン糸、ポリエステル糸、ガラス繊維糸等のステッチ糸で、この積層体を厚さ方向に貫通して、積層体の表面と裏面の間を表面方向に沿って往復しステッチした織物をいう。繊維を一方向に配置する場合は、層の方向を変えて多層に積層する、例えば交互に積層することができる。また積層面を厚み方向に対称に配置することが好ましい
【0015】
熱可塑性炭素繊維複合材料のマトリックスである熱可塑性樹脂は、具体的には、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリ乳酸、ポリアミド樹脂、ASA樹脂、ABS樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、およびこれらの樹脂から選ばれる2種類以上の樹脂組成物が挙げられるが特に制限はない。
【0016】
不連続繊維は、不連続の炭素繊維を分散して重なるように配置したランダムマット状のものが好ましく挙げられる。この場合の平均繊維長は10mm以上100mm以下、平均繊維径は3〜12μmが好ましい。不連続の炭素繊維は複合材料中で2次元ランダムに配置されていることも好ましい。炭素繊維は複合材料中で炭素繊維束の状態で存在していてもよく、また炭素繊維束と単糸の状態が混在していることも好ましい。
【0017】
[アルミニウム材]
本発明に用いるアルミニウム材とは1000〜700番台アルミニウムやその合金が好ましく用いられる。アルミニウム材表面の微細なポーラス構造としては、具体的には表面に開口した直径が25〜120nmの孔が無数に存在するようなものである。表面に開口する全ての孔の少なくとも85%が直径25nm〜90nmの孔であることが好ましい。
【0018】
[工程1]
工程1のアルミニウム材表面に微細なポーラス構造を設ける方法としては、とくに限定は無いが例えば一般的な陽極酸化処理によって形成できる。すなわち、一般的な方法で脱脂、洗浄したアルミニウム材を20℃から40℃のリン酸、硫酸、シュウ酸などの電解液に浸漬し、該アルミニウム材を陽極として5〜30V程度の電圧を5〜60分間印加して行う方法が具体的に挙げられる。電解液の濃度は一般的に5〜20重量%であることが好ましい。またアンモニア水溶液、ヒドラジン水溶液などのアルミニウムを穏やかに酸化する水溶液も好ましく用いられる。接合しようとするアルミニウム材の形状にとくに限定はなく、得ようとする接合部材に合わせて適宜選択できる。かかる微細なポーラス構造は、例えば走査型電子顕微鏡などで観察することができ、その一例を図2に示すが、直径25nm〜90nmの孔が観察できる。
【0019】
[熱可塑性樹脂層]
熱可塑性樹脂層は、熱可塑性炭素繊維複合材料とアルミニウム材とを強度を保って接合させるために必要な層である。熱可塑性樹脂層は、アルミニウム材のポーラス構造形成面と炭素繊維複合材料間に配置され、熱可塑性樹脂を溶融し、アルミニウム材のポーラス構造中に熱可塑性樹脂を入り込ませる工程を経て、本発明の積層体が形成される。
【0020】
[工程2]
工程2において、熱可塑性樹脂の面状体をアルミニウム材のポーラス構造形成面上に、熱圧着させる、あるいは溶融樹脂を射出成形により薄く貼り付けたりして熱可塑性樹脂層を配置することができる。面状体を用いる場合、その形態にとくに限定はなくフィルム状、織物状、不織布状、またはシート状の形態が挙げられる。
【0021】
[工程3]
工程3において、該熱可塑性樹脂を溶融し、アルミニウム材のポーラス構造中に熱可塑性樹脂を入り込ませる。具体的にはいったん熱可塑性樹脂を溶融させたのち固化させて、アルミニウム材のポーラス構造中に熱可塑性樹脂を入り込ませる。
この場合、熱可塑性樹脂の面状体を溶融させる温度は、熱可塑性樹脂の溶融温度+15℃以上かつ分解温度−30℃であることが好ましい。溶融のための加熱方法としては外部ヒーターによる伝熱、輻射などが挙げられ、さらにアルミニウム材(B)を電磁誘導により加熱する方法が、樹脂との接合面を直接加熱することができるため好ましい。
この場合、溶融した熱可塑性樹脂を接触させるときのアルミニウム材の温度は、熱可塑性樹脂の溶融温度+15℃以上かつ分解温度−30℃であることが好ましい。熱可塑性樹脂層とアルミニウム材との接合強度はかかるアルミニウム材表面に形成せしめたポーラス構造に樹脂が染み込んでアンカー効果を発揮させることが重要であり、アルミニウム材の温度がその範囲以下であるとかかる効果が発揮されない場合があり、またその範囲を超えると樹脂の分解が進むことがある。
このように設けられた熱可塑性樹脂層の厚みは好ましくは5μm以上5mm以下であり、より好ましくは20μm以上4mm以下であり、さらに好ましくは40μm以上3mm以下である。熱可塑性樹脂層の厚みが5μm未満では溶着に必要な樹脂が不足し充分な強度が得られない場合がある。熱可塑性樹脂層が5mmを超えると両者に剪断的な荷重が掛かった際に接合面にモーメントが働いて全体として強度が低下することがある。かかる熱可塑性樹脂層を5μm以上設けることで溶着の際に充分な樹脂を供給することができ、さらには炭素繊維がアルミニウム材に接触することが防止できるため電蝕防止が期待でき好ましい。なおアルミニウム材のポーラス構造中に熱可塑性樹脂を入り込ませる工程の前後で熱可塑性樹脂層の厚みの減少は多少あるものの、μmオーダーではほとんど認識されない。
【0022】
[工程4]
工程4ではアルミニウム材と炭素繊維複合材料とを、該熱可塑性樹脂層を介して重ねて、これらを加熱および加圧し接合させる。加圧条件としては溶着面に0.01〜2MPa、好ましくは0.02〜1.5MPa、さらに好ましくは0.05〜1MPaの圧力をかけることが好ましい。圧力が0.01MPa未満では良好な接合力が得られないことがあり、また加熱時に複合材料がスプリングバックして形状を保持できず素材強度も低下する場合がある。また圧力が2MPaを超えると加圧部分が潰れ、形状保持が困難となったり、素材強度が低下したりすることがある。
アルミニウム材を電磁誘導により加熱する方法が、樹脂との接合面を直接加熱することができるため好ましい。本発明方法では、炭素繊維複合材料とアルミニウム材とを接合して積層する工程と成形工程とを同時に、あるいは連続して行うことも可能である。この場合工程3のアルミニウム材の加熱工程と樹脂の成形工程は同時とすることが、溶着強度を高くする上も、工程の短縮化、熱エネルギーの効率化からも好ましい。工程上同時にできない場合は、成形を予め行った後でアルミニウム材を加熱し積層体を得ることもできる。
【0023】
[積層体]
このようにして得られたアルミニウム材と炭素繊維複合材料との積層体は、例えば自動車、船舶、航空機などの一構造部材として用いることができる。本発明の積層体は、JISK6850にしたがって測定した剪断接合強度が6MPa以上となることが好ましく、7MPa以上がより好ましく、8MPa以上がさらにより好ましい。また接合強度の上限は実質30MPa程度である。本発明で得られる積層体は、強度が必要とされるような構造部材として好適に用いることができる。構造部材としては例えば自動車などの移動体を構成する部品などが挙げられる。積層体の接合箇所数に限定はなく、面積に比例した接合強度を得ることができる。
【実施例】
【0024】
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0025】
[参考例1:熱可塑性炭素繊維複合材料の製造]
炭素繊維(東邦テナックス社製の炭素繊維“テナックス”(登録商標)STS40−24KS(繊維径7μm、引張強度4000MPa)を、開繊させながら長さ20mmにカットし、炭素繊維の供給量を300g/minでテーパ管内に導入し、テーパ管内で空気を炭素繊維に吹き付けて繊維束を部分的に開繊しつつ、テーパ管出口の下部に設置したテーブル上に散布した。またマトリックス樹脂として、2mmにドライカットしたPA66繊維(旭化成せんい製 T5ナイロン 1400dtex)を500g/minでテーパ管内に供給し、炭素繊維と同時に散布することで、平均繊維長20mmの炭素繊維とPA66が混合された、厚み4mm程度のランダムマットを得た。このランダムマット2枚を重ね、300℃に加熱したプレス装置にて、2.0MPaにて5分間加熱し、厚み1.6mmの成形板を得た。
【0026】
[参考例2:アルミニウム材の表面処理]
長さ100mm、幅25mm、厚み1.6mmの5052アルミニウム材を濃度20.0g/L、温度60℃の水酸化ナトリウム水溶液中で60秒間脱脂を行った後、充分に水洗を行った。かかるアルミニウム材を陽極とし、一方鉛板を陰極として、温度20℃、濃度200〜400g/Lのリン酸水溶液中で約30V電圧を約20分印加してアルミニウム材表面に微細なポーラス構造を形成せしめ、充分に水洗、乾燥し表面処理したアルミニウム材を得た。上記処理によって得られたアルミニウム材表面のポーラス構造の径を評価したところ平均値は60nmであった。
【0027】
[実施例1]
参考例2で得られた表面処理したアルミニウム材の両面にそれぞれナイロン6フィルム(ユニチカ・エンブレムON25μm厚、溶融温度225℃)を2枚ずつ配置した後、電磁誘導加熱により250℃まで昇温させ、直ちに常温まで冷却した。ナイロンフィルムは溶融〜密着した後、固化し、表面にナイロン6層を有するアルミニウム材を得た。参考例1で得られた熱可塑性炭素繊維複合材料を長さ100mm、幅25mmに切り出し、上記ナイロン層を有するアルミニウム材とシングルラップで25mm×25mmの範囲で重ね、金型を用いて250℃、0.2MPa、5分間加熱加圧し、熱可塑性炭素繊維複合材料とアルミニウム材との接合部材を作成した。かかる接合部材を5枚作成し、インストロン5587万能試験機により速度1mm/分で引っ張り試験を行ったところ、接合強度の平均値は10MPaであった。
【0028】
[実施例2]
参考例2で得られた表面処理アルミニウム材と、参考例1で得られた熱可塑性炭素繊維複合材料とを320℃、0.1MPa、5分間加熱加圧したほかは、実施例1と同様に接合部材を5枚作成し、同様に速度1mm/分で引っ張り試験を行ったところ、接合強度の平均値は11MPaであった。
【0029】
[実施例3]
参考例2で得られた表面処理アルミニウム材の両面に2mmのナイロン6シート(溶融温度225℃)1枚を配置し、参考例1で得られた熱可塑性炭素繊維複合材料と240℃、1MPa、5分間加熱加圧したほかは、実施例1と同様に接合部材を5枚作成し、同様に速度1mm/分で引っ張り試験を行ったところ、接合強度の平均値は8MPaであった。
【0030】
[比較例1]
実施例1と同様の工程で、ナイロン6フィルムは用いず、参考例2で得られた表面処理した長さ100mm、幅25mm、厚み1.6mmのアルミニウム材をそのまま使う以外は実施例1と同様に熱可塑性炭素繊維複合材料とアルミニウム材との接合部材を作成した。かかる接合部材を5枚作成し、インストロン5587万能試験機により速度1mm/分で引っ張り試験を行ったところ、接合強度の平均値は5MPaであった。
【符号の説明】
【0031】
1 熱可塑性炭素繊維複合材料
2 熱可塑性樹脂層
3 アルミニウム材の微細なポーラス構造
4 アルミニウム材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂をマトリックスとする炭素繊維複合材料とアルミニウム材とからなる、下記工程1)〜4)を含む積層体の製造方法。
1)アルミニウム材表面の少なくとも一方に微細なポーラス構造を形成させる工程、
2)アルミニウム材のポーラス構造形成面上に熱可塑性樹脂層を配置する工程、
3)該熱可塑性樹脂を溶融し、アルミニウム材のポーラス構造中に熱可塑性樹脂を入り込ませる工程、
4)アルミニウム材と炭素繊維複合材料とを、該熱可塑性樹脂層を介して重ねて、これらを加熱および加圧し接合させる工程
【請求項2】
工程3)において、アルミニウム材を電磁誘導により加熱して溶融させる請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項3】
工程4)において、加圧時の圧力が0.01以上2MPa以下である請求項1または2に記載の積層体の製造方法。
【請求項4】
熱可塑性樹脂層の厚みが5μm以上5mm以下である請求項1〜3のいずれかに記載の積層体の製造方法。
【請求項5】
炭素繊維複合材料において、熱可塑性樹脂の存在量が、炭素繊維100重量部に対し、50〜1000重量部である請求項1〜4のいずれかに記載の積層体の製造方法。
【請求項6】
熱可塑性炭素繊維複合材料とアルミニウム材とが接合強度6MPa以上で接合している請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法により得られる積層体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−187861(P2012−187861A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−54287(P2011−54287)
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【出願人】(000003001)帝人株式会社 (1,209)
【Fターム(参考)】