説明

炭酸カルシウム顆粒

【課題】極めて成形しやすい顆粒、及び極めて成形しやすい顆粒を調製する方法の提供。
【解決手段】中央粒径が10〜25μmの第1の粉末状組成物及び中央粒径が0.1〜10μmの第2の粉末状組成物を含む顆粒状組成物。好ましくは、粉末状組成物のうち少なくとも1つが炭酸カルシウムである。更に好ましくは、第1の粉末状組成物の中央粒径は12〜17μmであり、第2の粉末状組成物の中央粒径は1〜5μmである。当該顆粒は、薬剤及び機能性食品の製錠に有用であり、成形したとき、これまでに入手可能なものよりも小さい錠剤サイズが得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に極めて成形しやすい顆粒及びそれを調製する方法に関する。より詳細には、本発明は、薬剤及び機能性食品の製錠に使用する極めて成形しやすい炭酸カルシウム顆粒に関する。
【背景技術】
【0002】
カルシウムは、人体中の必須栄養素及び最も豊富なミネラルである。カルシウムは、健康な歯や骨の構築、血液凝固、筋収縮、及び神経機能において重要な役割を果たす。これらの利益の他に、カルシウムは結腸ポリープの再発リスクを低減させることが最近示唆されている。Baron J. A. et al. New England Journal of Medicine 1999; 340: 101-107を参照のこと。特に、カルシウムは、男性と女性のどちらにおいても骨粗鬆症が原因の骨量減少のリスクを低減させる。これらの利点にもかかわらず、全アメリカ人の半数が十分な量のカルシウムを摂取していないことが予想されている。より厄介なのは、骨粗鬆症を発生するリスクが最も高いグループである女性の80%がカルシウムを十分摂取していないことである。
【0003】
この不足は、1つには、医師によって推奨されているカルシウムの1日摂取量が大量であることが原因である。成人のカルシウムの米国推奨1日許容量(「USRDA(United States Recommended Daily Allowance)」)は、800〜1,400mgである。全米科学アカデミー医学研究所(National Academy of Sciences, Institute of Medicine)は、50歳以上の人々には1日当り1,200mg、また19歳未満の人々には1日当り1,300mgのカルシウム摂取量を推奨している。驚くことではないが、医師は、他のどの栄養補助食品よりもカルシウム補助食品を推奨している。
【0004】
市販のカルシウム補助食品は、通常石灰石及びカキの殻を含む炭酸カルシウムの自然源から製造される。炭酸カルシウムはカルシウム元素を40重量%しか含まないので、推奨基準を満たすためには約2.5〜3.5gの炭酸カルシウムを毎日摂取しなければならない。こうした大量の炭酸カルシウムを含む錠剤を製造するのは現実的ではない。このため、補助的なカルシウムレジメンには、通常500〜600mgのカルシウムからなる錠剤を毎日2錠投与することが含まれる。しかし、これらのカルシウム投与量でも、ほとんどのカルシウム錠剤は飲み込むには極めて大きく困難であり、或いは不快である。この問題は、製剤中に賦形剤も存在する場合には悪化する。任意の固形の投与薬剤又は機能性食品の場合と同様に、大きな錠剤サイズは、しばしば患者の服薬遵守の低下を招く。この欠点は、カルシウム補助食品の他に、総合ビタミン及び高用量薬剤など大量の有効成分を含む錠剤で一般に生じる。
【0005】
錠剤サイズを縮小するための従来の手法には、製錠中の成形圧を増大させること及び錠剤中の有効成分の一部又は全部の用量を減らすことが含まれる。これらの手法のどちらも欠点を伴う。例えば、製錠中の高い成形圧により、壊れやすい脆い錠剤が得られるかもしれない。さらに、成形圧が錠剤の崩壊及び溶解特徴に影響を与え、有効成分の生物学的利用能が変化するかもしれない。錠剤当りの1種又は複数の有効成分の量を減らすことにより、所要量を達成するのにより多くの錠剤の摂取が必要となり、或いはいくつかの総合ビタミンの場合のように、特定の有効成分が不足する。例えば、最も商用の総合ビタミン錠剤では、カルシウムのUSRDA推奨用量の10〜20%しか供給されない。他のビタミンをより高レベルで供給するために、これらの錠剤中のカルシウムのレベルを減らす必要がある。
【0006】
炭酸カルシウム錠剤は、他の薬剤及び機能性食品の錠剤のように、固形の製剤に圧力をかけることによって調製される。粉末状製剤には、成形に必要な凝集及び流動特性を本質的に持っているものもある。しかし、炭酸カルシウムは、ほとんどの粉末のように直接成形される能力を欠いており、造粒として知られている方法を通してより製錠に適した形態に変えなければならない。
【0007】
一般に、造粒方法には、粒子の接着特性を増大させる薬剤と一緒に乾燥粉末を処理して粉末粒子の安定した凝集をもたらすことが含まれる。当技術分野で周知の造粒法には、湿式造粒、乾式造粒、及び流動床造粒がある。これらのうち、湿式造粒が最も広く使用されている方法である。湿式造粒では、乾燥粉末成分を適当なミキサー中でブレンドし、続いて結合剤を加え、さらに混合して、所望の粘稠度を得る。乾燥した後、顆粒状の組成物は、通常易流動性の砂様構造をもつ。造粒は、満足な硬さ及び破砕性をもつ錠剤に、成形するために必要とされる凝集性及び成形性をもたらす。
【非特許文献1】Baron J. A. et al. New England Journal of Medicine 1999; 340: 101-107
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
極めて成形しやすい顆粒が継続的に求められている。したがって、従来知られているものよりも小さい錠剤に成形できる顆粒を提供することが本発明の目的である。さらに、顆粒を調製するための製剤及び方法を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述の目的によれば、極めて成形しやすい顆粒及び極めて成形しやすい顆粒を調製する方法を提供する。錠剤に成形する場合、これらの顆粒は、当技術分野でこれまで実現可能ではなかった小さなサイズ又は体積を有する錠剤をもたらす。本発明の好ましい実施では、炭酸カルシウム顆粒が得られる。以下の実施形態及び実施例は好ましい炭酸カルシウム顆粒に関するものであるが、本発明の方法は、どんな粉末状物質の顆粒にも有用となることが理解されたい。したがって、本明細書において開示されている方法又は製剤に基づいて作製した任意の顆粒は、本発明の範囲内に含まれるように企図されている。
【0010】
驚くべきことに、極めて成形しやすい炭酸カルシウム顆粒は、高剪断が得られるミキサー中で炭酸カルシウムを含む組成物を混合し、対流式乾燥機中で組成物を乾燥することによって生成することが判明している。小さい中央粒径(median particle diameter)からなる粉末状の組成物を含む製剤を使用することによって成形性の改善がさらに達成される。異なる中央粒径からなる粉末状組成物を2種以上含む製剤を使用することによってさらなる改善が達成される。これらの製剤を本発明の造粒方法と併せて使用する場合に本発明の利益が最も十分に実感されるが、本発明はそのように限定されていない。従来技術の任意の造粒方法と併せて使用した場合にこの製剤によって改善された顆粒が生成することが企図されている。
【0011】
本発明の一態様では、中央粒径が約0.1〜約20マイクロメートル(「μm」)の粉末状物質を含む顆粒を提供している。この実施形態による好ましい顆粒の中央粒径は、約1〜約15μmである。
【0012】
本発明の別の態様では、中央粒径が約10〜約25μmの第1の炭酸カルシウム組成物及び中央粒径が約0.1〜約10μmの第2の炭酸カルシウム組成物を含む顆粒状組成物を提供している。好ましい実施形態では、第1の炭酸カルシウム組成物の中央粒径は約12〜約17μmであり、第2の炭酸カルシウム組成物の中央粒径は約1〜約5μmである。
【0013】
本発明の別の態様では、中央粒径が約10〜約25μmの第1の炭酸カルシウム組成物;中央粒径が約1〜約10μmの第2の炭酸カルシウム組成物;及び中央粒径が約0.1〜約1μmの第3の炭酸カルシウム組成物を含む顆粒状組成物を提供している。
【0014】
本発明のさらに別の態様は、高剪断が得られるミキサー中で粉末状組成物を混合するステップと、対流式乾燥機中で組成物を乾燥するステップを含む造粒方法を提供する。本発明のこの態様による方法の好ましい実施形態は、(1)高剪断が得られるミキサー中で粉末状炭酸カルシウム、マルトデキストリン及び任意選択で追加の賦形剤を混合するステップと;(2)組成物に水を加えて混合するステップと;(3)組成物に油を加えて混合するステップと;(4)対流式乾燥機中で得られた組成物を乾燥するステップとを含む。
【0015】
本発明の別の態様は、高密度炭酸カルシウム顆粒を提供する。この点について、平均タップ密度が約0.9〜約2.0g/cmの顆粒状炭酸カルシウム組成物を提供している。平均タップ密度が約1.1〜約2.0g/cmの好ましい顆粒状炭酸カルシウム組成物を提供している。本発明による最も好ましい顆粒状炭酸カルシウム組成物のタップ密度は、1.3g/cmよりも大きい。
【0016】
本発明の他の態様は、開示した顆粒を含む錠剤を提供する。本発明の顆粒から調製した錠剤の密度は、市販されているカルシウム補給錠剤よりも約20%〜約35%大きい。したがって、本発明の顆粒から調製した錠剤の体積は、市販されているカルシウム補給錠剤の体積よりも約20%〜約35%小さい。
【0017】
本発明のこれらの及び他の態様は、以下の本発明の詳細な説明及び添付の特許請求の範囲を参照することにより、より明確に理解することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下の本発明の説明では、特に指定のない限り、使用した用語にはそれらの当技術分野における通常及び慣用的な意味があることを理解されたい。本明細書では、「顆粒」という用語は、成形して錠剤にするために十分な凝集特性をもつ易流動性組成物を意味する。「造粒方法」という用語は、当技術分野で湿式造粒、乾式造粒、流動床造粒、凝集及び球状化として知られている方法を含むが、それだけには限定されない。
【0019】
1.顆粒組成物
本発明の一態様は、高密度で極めて成形しやすい顆粒組成物を提供する。本発明の好ましい実施では、顆粒組成物は炭酸カルシウムを含む。
【0020】
種々の中央粒径を有する炭酸カルシウム粉体が市販されていることは、当技術分野ではよく知られている。例えば、中央粒径が0.7〜20μmの範囲の食品用及びUSPグレードの炭酸カルシウム粉体は、OMYA, Inc.社(ジョージア州Alpharetta)、J. M Huber. Corp.社(ジョージア州Atlanta)、及びMinerals Technologies Inc.社(ニューヨーク州New York)などの供給業者から入手可能である。
【0021】
表1に示すように、中央粒径がより大きい炭酸カルシウム粉体では、直接成形した場合、中央粒径がより小さい炭酸カルシウム粉体よりも高密度の組成物が得られる。
【0022】
【表1】



【0023】
粒径と密度の関係に基づいて、当業者は、高密度で極めて成形しやすい顆粒を生成しようとして中央粒径が大きい炭酸カルシウム粉体を選択する気になるはずである。しかし、驚くべきことに、単独では充填密度が比較的低い、中央粒径が小さい炭酸カルシウム粉体を含む顆粒状組成物は、中央粒径がより大きい炭酸カルシウム粉体からなる顆粒状組成物と比べて成形性が改善していることが判明している。したがって、中央粒径が小さい炭酸カルシウム粉体を含む顆粒状組成物は、成形したときに意外に小さい錠剤をもたらす。
【0024】
本発明の一実施形態では、中央粒径が約0.1〜約20μmの粉末状炭酸カルシウムを含む炭酸カルシウム顆粒を提供する。この範囲内で、例示的な顆粒は、中央粒径が約3.5、6、及び12μmの炭酸カルシウムを含む。好ましい実施形態では、顆粒状組成物は、中央粒径が約10〜約12μmの炭酸カルシウムを含む。本発明の顆粒状組成物は、それだけには限らないが、マルトデキストリン、アラビアゴム、油及び水を含む他の成分をさらに含んでいてよい。
【0025】
本発明の実施では、平均値付近の狭い粒径分布を有する粉末状組成物を使用することが望ましいことが判明している。粒径の分散は粉体の中央粒径と関連しているので、「狭い粒径分布」という用語は、一般に定量化できないことが確認されているはずである。さらに、それぞれの中央粒径の粉体に関連する製造限界は、平均値付近の分布に影響する。中央粒径が狭い粉体を選択することは、当技術分野の範囲内である。
【0026】
本明細書では、粉体の約65%以上のかさ体積の粒径が5〜25μm(中央値から±66%)であり、且つ約40%以上のかさ体積の粒径が約10〜20μm(中央値から±33%)である場合、中央粒径が15μmの炭酸カルシウム粉体の粒径分布は狭い。同様に、粉体の約50%以上のかさ体積の粒径が4〜20μm(中央値から±66%)であり、且つ約30%以上のかさ体積の粒径が約8〜16μm(中央値から±33%)である場合、中央粒径が12μmの炭酸カルシウム粉体の粒径分布は狭い。粉体の約55%以上のかさ体積の粒径が2〜10μm(中央値から±66%)であり、且つ約25%以上のかさ体積の粒径が約4〜8μm(中央値から±33%)である場合、中央粒径が6μmの炭酸カルシウム粉体の粒径分布は狭い。粉体の約50%以上のかさ体積の粒径が1.2〜5.8μm(中央値から±66%)であり、且つ約25%以上のかさ体積の粒径が約2.3〜4.7μm(中央値から±33%)である場合、中央粒径が3〜4μmの炭酸カルシウム粉体の粒径分布は狭い。粒径分布が狭い適当な炭酸カルシウム粉体には、OMYA−Cal FG 15、OMYA−Cal USP 15、OMYA−Cal LL OC FG 15 BTH、OMYA−Cal LL USP 15、OMYA−Cal LL USP 15 BTH、OMYA−Cal FG−10AZ、OMYA−Cal FG−6AZ、及びOMYA−Cal USP−4AZの商標名でOMYA, Inc.社から入手可能なものがあるが、それだけには限定されない。
【0027】
好ましい粉体の中央粒径分布は狭いが、どんな粉体も本発明で有用であることが企図されていることが理解されたい。例えば、前述よりも中央値付近の分布が広い中央粒径12μmの炭酸カルシウム粉体は、従来技術のものよりも成形性が優れた顆粒をもたらす。
【0028】
本発明の実施では、中央粒径が小さい粉体を中央粒径がより大きい粉体と併せて使用すると有用なことも判明している。本発明の一実施形態では、顆粒組成物は、中央粒径が約10〜約25μmの第1の粉末状組成物及び中央粒径が約0.1〜約10μmの第2の粉末状組成物を含む。
【0029】
第1及び第2の粉末状組成物は、どんな粉末状物質であってもよい。第1及び第2の粉末状組成物は、有効成分及び賦形剤を含む薬剤及び機能性食品の錠剤の製剤で使用されている物質であることが好ましい。本発明によって有用であると企図されている粉末状物質及び賦形剤の例には、炭酸カルシウム、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸第一鉄及び他の鉄化合物、ラクトース、セルロース、微結晶性セルロース(アビセル)、カオリン、マンニトール、マルトデキストリン、油、塩化ナトリウム、デンプン、粉砂糖、タルク(ケイ酸水酸化マグネシウム)、並びにシリカがあるが、それだけには限定されない。本発明の好ましい実施では、第1及び第2の粉末状組成物は炭酸カルシウムである。
【0030】
本発明の好ましい実施形態では、第1の粉末状組成物は、中央粒径が約12〜約17μmの炭酸カルシウムを含み、第2の粉末状組成物は、中央粒径が約1〜約5μmの炭酸カルシウムを含む。本発明のより好ましい実施形態では、第1の粉末状組成物は、中央粒径が約15μmの炭酸カルシウムを含み、第2の粉末状組成物は、中央粒径が約4μmの炭酸カルシウムを含む。
【0031】
第1及び第2の粉末状組成物は、それぞれ任意の重量%の顆粒状組成物を含んでいてよい。好ましい実施形態では、第1の粉末状組成物は、約50〜約100重量%の顆粒状組成物を含み、第2の粉末状組成物は、約0〜約50重量%の顆粒状組成物を含む。より好ましい実施形態では、第1の粉末状組成物は、約60〜約80重量%の顆粒状組成物を含み、第2の粉末状組成物は、約20〜約40重量%の顆粒状組成物を含む。最も好ましい実施形態では、第1の粉末状組成物は、約70重量%の顆粒状組成物を含み、第2の粉末状組成物は、約30重量%の顆粒状組成物を含む。
【0032】
本発明による第1及び第2の粉末状組成物は、必ずしも同一の化合物ではないことを理解されたい。例えば、第1の粉末状組成物は賦形剤であってよく、第2の粉末状組成物は有効成分であってよく、或いは逆の場合も同様であることが企図されている。本発明の一実施形態では、第1の粉末状組成物は炭酸カルシウムであり、第2の粉末状組成物はタルクである。
【0033】
本発明による別の顆粒状組成物は、中央粒径が約10〜約20μmの第1の粉末状組成物、中央粒径が約1〜約10μmの第2の粉末状組成物、及び中央粒径が約0.1〜約1μmの第3の粉末状組成物を含む。第1、第2、及び第3の粉末状組成物は、それぞれ任意の重量%の顆粒状組成物を含んでいてよい。好ましい実施形態では、顆粒状組成物は、約60〜約80重量%の第1の粉末状組成物、約20〜約40重量%の第2の粉末状組成物、及び約0.5〜約5重量%の第3の粉末状組成物を含む。
【0034】
第1、第2及び第3の粉末状組成物は、それぞれ独立に任意の粉末状物質から選択することができる。好ましい実施形態では、第1、第2、及び第3の粉末状組成物のうち少なくとも1つは炭酸カルシウムである。より好ましい実施形態では、第1、第2、及び第3の粉末状組成物はいずれも炭酸カルシウムである。
【0035】
本発明の顆粒状組成物は、前述の粉末状組成物に加えて他の物質を含んでいてよい。例えば、顆粒又は得られた錠剤にある種の物理的特性を付与するために、顆粒に賦形剤を加えることが望ましいかもしれない。本発明で使用できる賦形剤には、希釈剤、結合剤、流動促進剤、滑剤、崩壊剤、着色剤、香料、甘味料、及び溶解遅延剤があるが、それだけには限定されない。本発明による好ましい賦形剤は、マルトデキストリン及び油である。それらが含まれる場合、顆粒状組成物は、約2〜約10重量%のマルトデキストリン及び約0.1〜約1重量%の油を含むことが好ましい。
【0036】
薬剤又は機能性食品に適合する任意の油又は油様物質は、本発明で有用であろうことが企図されている。好ましい油は、キャノーラ油、鉱油、ココナッツ油、綿実油、菜種油、ヒマワリ種子油、ヤシ油、植物油及び大豆油である。鉱油が本発明で最も好ましい油である。
【0037】
製剤はさらに、1種又は複数の親水コロイドを含んでいてよい。薬剤又は機能性食品に適合する任意の親水コロイドは、本発明の顆粒に使用することができる。好ましい親水コロイドは、それだけには限らないが、アルギン酸塩、カラギーナン、デキストラン、ファーセルラン、ペクチン、ゼラチン、ガム寒天、ローカストビーンガム、ガティガム、グアーガム、トラガカントゴム、アラビアゴム(acacia)、アラビアゴム(gum arabic)、キサンタンガム、インドゴム、タラガム、セルロース誘導体、デンプン誘導体、及びその組合せを含む植物ガムから選択される。特に有用であることが判明している植物ガムの1つは、アラビアゴム(gum acacia)である。
【0038】
本発明の顆粒状炭酸カルシウム組成物は、易流動特性及び高密度、砂様構造を有する。好ましい顆粒は、Van Kelかさ密度及びタップ密度ゲージを用いて測定した平均タップ密度が約0.9〜約2.0g/cmである。顆粒状組成物の平均密度は、約1.1〜約2.0g/cmであることがより好ましい。本発明による最も好ましい顆粒状組成物の平均密度は、約1.3〜約2.0g/cmである。
【0039】
2.造粒方法
本発明の別の態様は、高密度で極めて成形しやすい顆粒組成物を調製する方法を提供する。
【0040】
本発明の造粒方法は、(1)高剪断が得られるミキサー中で粉末状物質及び任意選択の賦形剤など追加の成分を混合するステップと;(2)得られた組成物を対流式乾燥機中で乾燥するステップとを含む。
【0041】
方法の好ましい実施形態は、(1)高剪断が得られるミキサー中で粉末状炭酸カルシウム、マルトデキストリン及び任意選択の追加の賦形剤を混合するステップと;(2)組成物に水を加え、それと混合するステップと;(3)組成物に油を加え、それと混合するステップと;(4)得られた組成物を対流式乾燥機中で乾燥するステップとを含む。炭酸カルシウム、マルトデキストリン、及び油の量は、上記の割合によって決定する。加える水の量は、炭酸カルシウムの量に対して約5〜約20重量%であることが好ましい。しかし、水の量は、顆粒の所望の密度及び構造に応じてより多くても少なくてもよい。本発明の実施では、熱水又は蒸気を使用することが望ましいことが判明している。水は、約93℃以上に加熱してから炭酸カルシウムと混合することが好ましい。組成物を水と混合した後、組成物は約45℃〜約50℃の温度に達することが好ましい。
【0042】
方法のより好ましい実施形態は、(1)高剪断が得られるミキサー中で、上記のように異なる中央粒径分布を有する少なくとも2種の粉末状炭酸カルシウム組成物とマルトデキストリン及び任意選択の追加の賦形剤とを混合するステップと;(2)約200rpm〜約300rpmのミキサー速度で約60秒間混合するステップと;(3)炭酸カルシウム組成物の合計量に対して約5〜約20重量%を占める量の熱水又は蒸気を加えるステップと;(4)約6分間混合するステップと;(5)組成物に油又は油様物質を加え、それと混合するステップと;(6)得られた組成物を対流式乾燥機中で乾燥するステップとを含む。
【0043】
顆粒状組成物は当技術分野で既知の任意の方法によって乾燥できるが、この組成物は対流式乾燥機中で乾燥することが好ましい。対流式乾燥機の例には、棚型乾燥機、垂直流動床乾燥機、水平流動床乾燥機、噴霧乾燥機、及び衝突加熱式乾燥機が含まれるが、それだけには限定されない。乾燥機の状態を調整して含水量が約1重量%未満の最終組成物を得ることが有用であることが判明している。本発明の好ましい実施では、組成物を乾燥機中で約50℃〜約150℃に加熱する。
【0044】
混合すべき物質の合計量、ミキサーの速度、及び羽根の設計などの要因にある程度応じて上記の混合時間が異なることが理解されたい。得られた顆粒の所望の構造及び密度を達成するために混合時間を最適化することは、当技術分野の技術の範囲内である。
【0045】
それだけには限らないが、ホバートミキサー及び当技術分野で「高剪断」ミキサーとして知られているミキサーを含む高剪断が得られる任意のミキサーを方法中に使用できることが企図されている。
【0046】
本明細書において記載されている方法は、高密度で極めて成形しやすい顆粒状組成物の調製に一般に適用でき、上記製剤を造粒することに限定されないことが理解されたい。同様に、本明細書において記載されている製剤を、それだけには限らないが、流動床造粒方法を含む当技術分野で既知の任意の造粒方法に使用した場合、改善された顆粒状組成物をもたらすことが企図されている。
【0047】
本明細書において開示されている顆粒は、薬剤及び機能性食品の錠剤を調製するのに有用である。本発明による錠剤は、すりこみ錠剤、咀嚼錠、ペレット剤、丸剤、湿製錠、皮下注射用錠剤、発泡錠、徐放錠、及び即時放出錠を含むが、それだけには限定されない。本発明の顆粒から調製した錠剤は、密度が市販されているカルシウム補給錠剤よりも約20%から少なくとも約35%高い。したがって、本発明の顆粒から調製した錠剤の体積は、市販されているカルシウム補給錠剤よりも約20%から少なくとも約35%小さい。
【実施例1】
【0048】
本発明の方法を用いて、中央粒径が約6μmの炭酸カルシウムから顆粒状炭酸カルシウム組成物を調製した。この製剤のための成分を表2に記載している。
【0049】
【表2】



【0050】
Collette Gral Model 600高剪断ミキサーのボウルに、炭酸カルシウム(OMYA−CAL FG−6AZ)及びマルトデキストリン(Maltrin M100)を表1に示した量で充填した。これらの成分を約200〜約300rpmのミキサー速度で60秒間混合した。次いで、水道から約93℃に加熱した精製水を混合物に加えた。組成物から蒸気が発生しなくなるまで(約6分)組成物を混合した。次いで、ミキサーの先から通したラインによって供給した噴霧ノズルを用いて鉱油を組成物上に噴霧した。組成物を約1分間混合した。
【0051】
次いで、混合ボウルを下げ、組成物をビニール袋に捕集した。次いで、移動漏斗によって組成物を振動供給装置中に注ぎ、その装置により装入物はベルトコンベヤー上に置かれた。ベルトコンベヤーによって計量ベルト上に組成物が運ばれ、そのベルトにより組成物が均一に計量されてCarrier型QAD/C 1260 S水平流動床対流式乾燥機中に供給された。乾燥機温度を制御して、約100℃〜約150℃の生成物温度を得た。乾燥機の末端部から出てきた組成物の含水量は約1重量%未満であった。
【0052】
18×18 U.S.メッシュスクリーンを用いて乾燥組成物を篩にかけ、それを通過した粒子を第1のバッチとして捕集した。スクリーン上に残った過大粒子を捕集し、Crack−U−Lator回転造粒機に通して、過大粒子のサイズを縮小した。次いでCrack−U−Latorからの排出物を18×18 U.S.メッシュスクリーンに通し、第1のバッチと合わせた。
【0053】
顆粒状組成物は、易流動性であり、砂様構造を有していた。組成物は、粉末状炭酸カルシウムと比べて口当たりが改善しており、「粉っぽさ」が軽減していた。
【0054】
得られた乾燥顆粒のタップ密度を、Van Kelかさ密度及びタップ密度ゲージを用いて測定した。炭酸カルシウム顆粒のタップ密度は、約1.1g/cm以上であった。この顆粒から調製した、炭酸カルシウム600mgを含む錠剤は、市販されている600mg Caltrate(登録商標)錠剤よりも体積が約20%小さかった。
【実施例2】
【0055】
顆粒密度に対する中央粒径の効果をさらに調べるため、本発明の方法を用いて、中央粒径が約10μmの炭酸カルシウム粉体(OMYA−CAL FG−10AZ)から顆粒状組成物を調製した。この製剤のための成分を表3に記載している。
【0056】
【表3】



【0057】
造粒方法は、実施例1で説明した方法と同じであった。
【0058】
得られた乾燥顆粒のタップ密度を、Van Kelかさ密度及びタップ密度ゲージを用いて測定した。炭酸カルシウム顆粒のタップ密度は、約1.0g/cm以上であった。この顆粒から調製した、炭酸カルシウム600mgを含む錠剤は、市販されている600mg Caltrate(登録商標)錠剤よりも体積が約20%小さかった。
【実施例3】
【0059】
本発明の方法を用いて、中央粒径が約15μmの炭酸カルシウム(炭酸カルシウム LL USP 15、OMYA, Inc.社)から顆粒状組成物を調製した。この製剤のための成分を表4に記載している。
【0060】
【表4】



【0061】
造粒方法は、実施例1で説明した方法と同じであった。
【0062】
得られた乾燥顆粒のタップ密度を、Van Kelかさ密度及びタップ密度ゲージを用いて測定した。炭酸カルシウム顆粒のタップ密度は、約1.0g/cm以上であった。この顆粒から調製した、炭酸カルシウム600mgを含む錠剤は、市販されている600mg Caltrate(登録商標)錠剤よりも体積が約20%小さかった。
【実施例4】
【0063】
この実施例は、本発明の方法において中央粒径が異なる炭酸カルシウム組成物を2種含む製剤を使用することによって達成される密度の改善を例示している。表5に示したように、組成物は、50:50重量比の中央粒径が約15μmの炭酸カルシウム(Cal Carb OC USP PDR)と中央粒径が約6μmの炭酸カルシウム(OMYA−CAL FG−6AZ)を含む。
【0064】
【表5】



【0065】
造粒方法は、実施例1で説明した方法と同じであった。
【0066】
得られた乾燥顆粒のタップ密度を、Van Kelかさ密度及びタップ密度ゲージを用いて測定した。炭酸カルシウム顆粒のタップ密度は、約1.1g/cm以上であった。この顆粒から調製した、炭酸カルシウム600mgを含む錠剤は、市販されている600mg Caltrate(登録商標)錠剤よりも体積が約20%小さかった。
【実施例5】
【0067】
この実施例は、70:30重量比の中央粒径が約15μmの炭酸カルシウム(Cal Carb OC USP PDR)と中央粒径が約4μmの炭酸カルシウム(OMYA−CAL USP−4AZ)を含む顆粒状組成物をもたらす。
【0068】
【表6】



【0069】
造粒方法は、実施例1で説明した方法と同じであった。
【0070】
顆粒のかさ密度は約0.9g/cmであった。得られた乾燥顆粒のタップ密度を、Van Kelかさ密度及びタップ密度ゲージを用いて測定した。炭酸カルシウム顆粒のタップ密度は、約1.1g/cm以上であった。この顆粒から調製した、炭酸カルシウム600mgを含む錠剤は、市販されている600mg Caltrate(登録商標)錠剤よりも体積が約20%小さかった。
【実施例6】
【0071】
この実施例は、中央値付近にブロードな粒径分布をもつ中央粒径が約10μmの炭酸カルシウムを含む顆粒状組成物をもたらす。
【0072】
【表7】



【0073】
造粒方法は、実施例1で説明した方法と同じであり、熱水の量は、混合中に加えた炭酸カルシウムの重量に対して約10重量%と同程度であった。
【0074】
得られた乾燥顆粒のタップ密度を、Van Kelかさ密度及びタップ密度ゲージを用いて測定した。炭酸カルシウム顆粒のタップ密度は、約1.25〜1.31g/cmであった。この顆粒から調製した、炭酸カルシウム600mgを含む錠剤は、市販されている600mg Caltrate(登録商標)錠剤よりも体積が約20%小さかった。
【0075】
前述の好ましい実施形態の説明によって本発明を説明したが、特許請求の範囲に記載の本発明の精神又は範囲から逸脱することなく当業者がこれらの実施形態の変更形態及び変形形態を作ることができることを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
i.中央粒径が1〜25μmの第1の粉末状組成物;及び
ii.中央粒径が0.1〜10μmの第2の粉末状組成物
を含む顆粒状組成物。
【請求項2】
第1及び第2の粉末状組成物のうち少なくとも1つが炭酸カルシウムを含む、請求項に記載の顆粒状組成物。
【請求項3】
第1及び第2の粉末状組成物がそれぞれ炭酸カルシウムを含む、請求項に記載の顆粒状組成物。
【請求項4】
第1の粉末状組成物が5〜100重量%の顆粒状組成物を含み、第2の粉末状組成物が0〜50重量%の顆粒状組成物を含む、請求項からのいずれかに記載の顆粒状組成物。
【請求項5】
第1の粉末状組成物の中央粒径が1〜17μmであり、第2の粉末状組成物の中央粒径が1〜5μmである、請求項からのいずれかに記載の顆粒状組成物。
【請求項6】
第1の粉末状組成物の中央粒径が15μmであり、第2の粉末状組成物の中央粒径が4μmである、請求項からのいずれかに記載の顆粒状組成物。
【請求項7】
i.中央粒径が1〜25μmの第1の粉末状組成物;
ii.中央粒径が1〜10μmの第2の粉末状組成物;及び
iii.中央粒径が0.1〜1μmの第3の粉末状組成物を含む顆粒状組成物。
【請求項8】
第1、第2、及び第3の粉末状組成物のうち少なくとも1つが炭酸カルシウムを含む、請求項に記載の顆粒状組成物。
【請求項9】
第1、第2、及び第3の粉末状組成物のいずれも炭酸カルシウムを含む、請求項に記載の顆粒状組成物。
【請求項10】
第1の粉末状組成物が5〜100重量%の顆粒状組成物を含み、第2の粉末状組成物が1〜50重量%の顆粒状組成物を含み、第3の粉末状組成物が0〜20重量%の顆粒状組成物を含む、請求項からのいずれかに記載の顆粒状組成物。
【請求項11】
第1の粉末状組成物の中央粒径が1〜17μmであり;第2の粉末状組成物の中央粒径が1〜5μmであり;第3の粉末状組成物の中央粒径が0.5〜1μmである、請求項から10のいずれかに記載の顆粒状組成物。
【請求項12】
第1の粉末状組成物の中央粒径が15μmであり;第2の粉末状組成物の中央粒径が10μmであり;第3の粉末状組成物の中央粒径が0.7μmである、請求項から11のいずれかに記載の顆粒状組成物。
【請求項13】
請求項1から12のいずれかに記載の顆粒状組成物を含む錠剤。
【請求項14】
顆粒状組成物を含む錠剤が、炭酸カルシウム600mgを含有する場合に600mg CALTRATE(登録商標)錠剤よりも体積が20%〜35%小さい、請求項13に記載の錠剤。

【公開番号】特開2011−105743(P2011−105743A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−14234(P2011−14234)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【分割の表示】特願2006−521872(P2006−521872)の分割
【原出願日】平成16年7月14日(2004.7.14)
【出願人】(506034651)デラボー エル.エル.シー. (7)
【Fターム(参考)】